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1960/04/19 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第12号
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1960/04/19 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第12号

#1
第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第12号
昭和三十六年四月十九日(水曜日)
    午後一時四十七分開議
 出席委員
   委員長 山口 好一君
   理事 齋藤 憲三君 理事 前田 正男君
   理事 岡  良一君 理事 岡本 隆一君
      有田 喜一君    稻葉  修君
      佐々木義武君    谷垣 專一君
      西村 英一君    保科善四郎君
      細田 吉藏君    石川 次夫君
      小林 信一君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 池田正之輔君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       松本 一郎君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   島村 武久君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   杠  文吉君
 委員外の出席者
        原子力委員会委
        員       有沢 広巳君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局政策課
        長)      井上  亮君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        災補償部長)  村上 茂利君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害の賠償に関する法律案(内閣提出第
 一〇六号)
 原子力損害賠償補償契約に関する法律案(内閣
 提出第一〇七号)
     ――――◇―――――
#2
○山口委員長 これより会議を開きます。
 原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 質疑の通告がありますので、この際、これを許します。岡良一君。
#3
○岡委員 御多用の有沢先生に委員会に来ていただきまして、このたび、原子力の災害補償小委員会における主査として三年にわたっての御苦心が実りまして、われわれこの委員会でも災害補償法案の審議をいたしておるのでございますが、この機会に先生から、この災害補償法案の持つ新しい意義、あるいはまた、この補償法案について今日までの御苦心、また、さらによりよき方向にこれを修正するというようなことができないものか、これは先生の御希望、御期待でございますが、そういう点について率直に承りたい、こう思っております。
#4
○有沢説明員 原子力の損害賠償に関する措置といたしまして、私どもは、日本の原子力平和利用を進める上におきまして最も重要な基礎的な条件だというふうに考えておりまして、ずいぶん長い間この問題に取り組んで参ったわけでございます。原子力の平和利用で最も重要なことは、言うまでもなく、原子力の利用が安全に行なわれるということでございます。この面につきましても委員会は十分の考慮を払って、いろいろの措置を講ずるようにいたしております。しかしながら、そういう安全性に関して慎重な考慮を払って、これなら大丈夫だというところにおきまして実際に平和利用を行ないます場合に、たとえば過失であるとか、あるいはまだ人間の知識が及ばなかったような部面において何らかの事故が起こるということも考えておかなければならない点であります。原子力発電につきましては、そういう危険の起こる確率というものは、おそらく百万分の一とか千万分の一というふうな、計算上では一応そういうことが言えると思いますけれども、実際の生活におきましては、ほとんど危険がない、こういうふうに言ってもよろしいかと思います。しかし、今申しましたように、運転者の何らかの過失、あるいは人知の及ばなかった領域におけるできごとによりまして事故が起こるという場合をも想定いたしまして、その場合、十分損害の補償が第三者に対して与えられるような措置を考えておくということが、また原子力発電の事業を進める上において大へん重要な、不可欠な要件である、こういう趣旨から、今回原子力損害の賠償に関する法律案を考えてみたわけでございます。その観点から、この賠償に関する法律案の考え方の基礎になった点を若干お話し申し上げまして、岡委員の御質問にお答えを申し上げたいと思うのであります。
 原子力の事故が起こりまして損害が発生した場合には、第三者の損害を十分に、かつ迅速に補償することができるようなことを眼目にいたしておるのであります。従って、いろいろその場合に考うべき問題が生まれてくるのであります。第一には、その損害の賠償に当たる者、責任者をどうするかということでございますが、それは原子力事業者の責任に全部を帰せしめるということを考えております。そして、その場合におきまして、責任がほんとうに客観的にオペレーターの方にあるのかないのかというふうな問題につきましては、むろん、現実にはそういう問題が起こるかもしれませんけれども、第三者に対する損害賠償ということに関しましては、無過失責任をこの事業者に課せしめるというこうで、疑念のないように取り計らっておるわけであります。ですから、その事故損害につきましては、法律上の訴訟をもって初めて決定するというふうなことではなく、いやしくも、そこに原子力事故があって第三者に損害を発生せしめた場合には、その責任は、無条件に無過失責任としてオペレーターの方に帰せしめる、こういうことにいたしております。それでありますから、原子力事業者といたしましては、全部の責任を一身に引き受けることになりますので、万々一そういうことはないわけでございますけれども、かりに、これが発生した場合におきましては、原子力の損害の特性といたしまして、場合によりましては、かなり巨額の損害に上ることもあり得るわけであります。従って、事業者に無過失責任を全面的に課するということになりますと、場合によりましては事業者に支払い能力がない、あるいは支払い能力があるといたしましても、事業者としてはほとんど倒産のほかない事態に陥ることも考えられます。そこで、事業者が一応法律案では責任を引き受けておりますけれども、実際の支払い能力につきましては、その危険を事業者としては他に分担してもらわなければならないようになってくるわけであります。また、この法律案の考え方もそういうふうになっております。すなわち、原子力保険に加入いたしまして、発電事業者といたしましては、原子力保険をつけていただいて、その保険金の支払いをもって第三者の損害を賠償する、こういうことは、一方におきましては、第三者に対する損害を十分カバーすると同時に、事業者の非常に大きな責任をこういう方法で軽からしめていく、つまり、事業者といたしまして、年々保険料を払えば、自分が引き受けている大きな責任を一応果たすことができる、そういう態勢に持っていきたいと考えたわけでございます。ところが、何分にも、原子力の危険率の計算が今日のところまだ科学的に行ない得ないような状態でありますので、原子力保険業といたしましても、そうそう無制限に危険を引き受けるということができない。ことに、御承知のように、原子力保険業となりますと、いずれも再保険制度を世界的にとっております。日本の保険プールにいたしましても、引き受けた危険を全部保険プールで引き受けるわけではありませんので、イギリスなりその他の原子力保険業者にこの危険を分担してもらうという制度になっております。ことに原子力保険におきましては、そのことが最も重要なことに相なってくるのであります。そこで、日本の原子力保険プールもこれをイギリスの再保険に出すわけでございますが、イギリスの原子力保険といたしましては、一つは、その引き受け得る保険額におきましても制限がありますし、また、いろいろの面におきまして引き受けかねる危険があるわけであります。現実に申しますと、日本の場合におきましては、国際原子力保険プールといたしましても、そう巨額の引き受けを、再保険として引き受けることができない。日本の保険プールといろいろ相談しました結果、これが大体五十億円程度ということに相なってきたのであります。それで、五十億円は、原子力事業者といたしましては、その責任を保険プールに肩がわりをしてもらうことができるようになったわけでありますが、ただ、その危険の中で、保険プールが引き受け得ない危険が幾つかあります。それは、たとえば地震の危険であるとか、あるいは告知義務違反の危険であるとか、そういう客観的な危険、主観的な危険があるわけであります。そこで、そういう五十億円の範囲内におきましても、今申し上げましたような客観的な危険から発生した損害、または主観的な危険から発生した損害につきましては、保険では見てくれないという次第でありますので、この保険の穴になる部分を一体どうするかということが一つの問題になってきたわけであります。なるべくそういう穴のないように、保険で十分危険を分担してもらいたいということは、われわれは非常に強く希望いたしたわけでありますけれども、何分にも、今申し上げましたように、保険、特に原子力保険につきましては、国際的な保険市場に再保険としてこれを出さざるを得ない関係にあります。そして、その再保険市場といたしましてはロンドンが最も有力でありますから、ロンドンの言い分をある程度聞かなければ、日本の保険プールもこれを引き受けることができない関係にあります。そこで、私どもは、最後の手段といたしまして、この保険の穴になっておる部分につきまして、それが保険の穴だからといって第三者の損害のめんどうを見ないわけには参りませんし、また、その点が保険の穴になっているから事業者がそれを負担すべきであるというふうに申すこともできません。そこで、今回は、国家と事業者との間に国家補償契約を結んでいただきまして、そういう穴につきましては国家がめんどうを見よう、そういう方針をとりまして、従って、この点におきましては、五十億円までの損害につきましては、保険と国家補償契約に基づく支払い、この二段がまえの措置を講ずることにいたしたのであります。大体私どもは、損害が五十億円以内の点におきましては、時効といいましょうか、後発性障害に対する損害も十分これを補てんすることができるような措置になっておると考えております。
 次は、損害が五十億円以上に上った場合に、それでは一体どうなるかということでありますが、法案の建前から申しますと、一応全部原子力事業春が第三者に対する責任を引き受けていくことに相なるのであります。そういたしますと、五十億円以上の規模の損害ということになりますと、これはそうそう起こり得ないとも言えるのでありますけれども、しかし、何分にも、先ほど来申し上げております通り、万々が一といいましょうか、実際に事故が起こった場合を想定しての措置を考えておるし、また、考えておく必要があると思いますので、その五十億円以上の損害が起こった場合に、これを原子力事業者の責任であると言い切ってしまっておいたのでは、原子力事業は成り立たないようなことに相なろうと思います。つまり、そんな大きな損害を引き受けるような原子力発電会社というふうなものを企画する人はおそらくなくなると思います。また、かりに、ありましても、おそらく財政的にもきわめて基礎の弱い第二会社みたいなものを作って、そうしてこの原子力発電離業をやる、つまり、法律をくぐるわけではないにいたしましても、法律をなるべくうまくかわしていくような方途を講ずるおそれもあります。それは原子力発電を大きく育てるゆえんではないと考えるわけであります。そこで、本来ならば五十億円以上というふうな損害が発生した場合には、国家がこれを補償してくれれば一等いいわけでございますが、しかし、何もかも、いつも国家におんぶするということ一点張りで考えるのもいかがなものかと考えまするので、大蔵当局ともいろいろ御相談を申しました。結局、五十億円以上の損害につきましては、国家が原子力発電専業の発達を考えて、また、損害状況をも考えて、原子力事業者が大きく負担しておる責任を緩和するために政府の方で何らかの援助をする、こういう考え方を打ち出したのであります。むろん、その援助する場合におきましても、損害の報告を国会にするとか、あるいはその跡始末といいましょうか、国家が援助する場合の跡始末が一体どうなっておるかということをも国会に十分にお諮りいたしますし、また、他方、原子力委員会におきましてもその意見を政府に提出するというふうなことも考えまして、国家の原子力事業者に対する援助を通して第三者の損害賠償に当たるにあたりまして、なるべく遺漏のないようにという考え方をいたしておるのでございます。まあ、ほかの国の損害賠償につきましてもいろいろの特徴を持っておるようでございますが、日本の場合におきましても、保険に入ることは各国共通でございますけれども、この五十億円以上の損害をどう第三者に対して賠償するかということにつきましては、日本の場合は、今申し上げましたように、それ以上のものは、政府が原子力事業者に対して事業の発展のために援助をする、そうしてその場合には、政府が国会に対して報告し、政府も国会の意見を聞く、また、原子力委員会も独自の立場で、政府にこの五十億円以上の損害に対する賠償措置についての意見を申し上げる、こういうことで、第三者――これは非常に起こり得ない場合ではございますけれども、その第三者に対する賠償を十分にやっていくようにいたしたい、こういう考え方をいたしておるわけでございます。
 大ざっぱなお話しをもって岡委員の御質問にお答えすることになりましたが、また御質問がありましたならば、御質問に応じましてこまかいことをお答えいたすことにしまして、一応私のお答えを終わります。
#5
○岡委員 いろいろ御苦心のほどは十分承りました。私はこの法案の基本的な若干の点について、主査をしておられた有沢先生に一応お伺いいたしたいと思うのですが、第一には、昭和三十四年の十二月十二日に、原子力委員会原子力災害補償専門部会、これが原子力災害補償専門部会答申書というものを提出しております。この答申書はこの法案に完全に生かされているかどうか、この点でございますが、先生の御所見を承りたいと思います。
#6
○有沢説明員 私の考えでは、その骨子になっておる点は生かされておると思いますが、この答申につきましては、その四ページのところにありますように、委員でありました主計局長が三及び四の項について、それから石野銀行局長が、第二項の(2)のうち、損害賠償措置として認められる責任保険契約の内容は、政令で定めることとする。及び同項の(3)のうち、責任保険契約の締結の拒絶に関する適当な措置の区分について、それぞれ態度を保留したということになっております。この二人の委員の保留のもとにこの答申が行なわれております。そして、二人とも大蔵省の方でありましたので、結局、問題は大蔵省との問で話を進めるということになったわけでございます。
#7
○岡委員 大蔵省の主計局長あるいは銀行局長の石野委員、この両氏が態度を保留された部分、特に主計局長が保留された第三項、第四項は、この答申の重要なかなめではないかと私は思うのです。ところが、御提出の法案ではこれがはたして生かされておるのかどうか。まず、援助というような表現がございますが、一体、援助とは、具体的な内容としてどういうものをさしておるのかという点でございます。
#8
○有沢説明員 国家の原子力事業者に対する援助にはいろいろのやり方もあると思いますが、私は、国家が援助をする場に、お金を支出するということが一つの大きな援助だと思います。また、災害の事情によりましては、五十億円以上といいました場合に、五十一億円とか二億円とかいうふうな、割合に五十億円をこえる部分が小さい場合には、必ずしも国家自身が一億円、二億円の金を事業者に援助として提供しなくとも、場合によりましてはその事業者が負担することもできますが、ただ、その負担するについては、融資を仰ぐというふうなことも起こり得ると思います。ですから、その援助の仕方は、形としてはいろいろ考えられますが、ともかくも、原子力事業者がその五十億円以上の損害でもうやっていけないようになる致命的な打撃をこうむらないような形にしなければならない。その目的が達成されるような方法、形式で国家が援助するということに相なろうと思います。そういうことでありますから、大蔵省はなるべく金を出さない方がいいとお考えになりましょうが、委員会が独自の意見を政府に提出するということも、その場合においてどういう形のものが適切であろうかということについての意見も述べることになろうと思いますし、また、国会に政府がいろいろな報告をするということも、国会の御意見を政府に直接お述べになる機会を作る、こういう趣旨でございまから、援助の方法、仕方というものには、その場合その場合において適切ないろいろの形があるということを私どもは予想いたしております。
#9
○岡委員 万一、あってならないことだが、大きな災害が発生をした場合、当然、事態を国会に報告し、さらに、所要の予算を政府は国会に要求しなければならないと思います。その場合の政府の権限と責任を明らかにしておく必要があると思う。単に援助ということでございますと、たとえば、大正十二年九月の関東大震災の事例を私調べてみますと、暴利取締令を出す、あるいは債務支払いの一定期間の猶予、俸給の繰り上げ特例、所得税、営業税、輸入税の免除または軽減、罹災者の緊急輸送、罹災地入居の制限、こういう緊急措置をやっておる。一方では、帝都復興院、帝都復興審議会、帝都復興計画法等の法案を国会に提出されて、復興の仕事をやっておられる。ところが、万一にも原子力災害というようなものが若干大規模な形で起こりますと、震災のように一ゆれして済んだというわけにいかないのです。そこには、やはり国家として相当の財政支出を必要とする。援助ということになれば、今私が言った関東大震災の場合に政府がとられたような、いわば災害援護法、扶助法的な政策というものが、われわれには援助ということからすぐ印象づけられる。答申書ははっきり国家の補償をうたっておる以上、やはり援助でなく、補償という原則を打ち立てて、いざ、まさかのときには政府の責任を明らかにすべきである、こう私は考える。ここにこの損害賠償法の一つの問題点があるのではないか。率直に申し上げて、主査としての先生はこれで満足なのかどうか、この点を一つお聞かせいただきたいと思います。
#10
○有沢説明員 五十億以上というような巨大な災害が起こった場合に、第三者の損害を賠償する仕方の一等簡明な方法は、全部国家が補償するのだ、こういうことであろうかと思います。しかし、その場合において、大蔵省あたりで考えられるのは、五十億円以上の損害は、五千万円でも一億円でも全部補償するのか、そうしなくてもいいのじゃないか、こういうことを言われるわけです。なるほど、五千万円や一億円――五十億円というのは、何もそこに非常に根拠があってきめたのではなくて、先ほど申し上げましたように、保険業界の危険に対する判断から五十億円というものがきまってきたわけです。ですから、私は、もっと三百億円とか五百億円くらいに保険をつけることができるならばということをずいぶん話をしてみたのですけれども、これはどうしても国際的な取りきめから、そういうわけにはいかないのだ、保険業界の支払い能力からいって、そういうことはできない、保険業界の最大の支払い能力は五十億円であるということできまってきておる五十億円でございますから、そこにあまり一つの科学的な根拠というものはないということです。それをちょっと越えたところの場合を持ち出されますと、それはむろん国家だ、こういうふうに言うわけにもいかない点がある。ところが、それに反しまして、今、岡さんの事例に出ましたように、関東大震災のような大大事故が起こって、その損害が非常な巨額に上った場合、この場合には、保険が三百億円とかいうふうになっておりましても、むろん、とてもそれで片づくとも考えられない。やはり国家としてその損害に対するめんどうを見ていかなくちゃならぬ。ですから、援助という言葉は、一方から見ると、損害の補償というものと比べますと、言葉の上からは大へん弱いようでございますけれども、しかし、その包摂している内容は、かなり弾力性のある内容を持っておると考えることができると思います。私は、最初、五十億円以上の損害の場合には、もうすぐ国会にそれを報告して、国会でお取りきめを願ったらどうか、こういうふうに考えました。けれども、そういうやり方は、どうも日本の場合には適切でない、やはり政府の方から何か案を出さなければいけないのだ、こういうお話でありましたので、政府からどういう第三者補償のための援助をするかという案を作られてこれを国会に報告する、損害の報告と、そういう案の報告をして、国会でそれを一つ御決定を願う、こういう方法が結局実情に適したことになるのではなかろうか、実はこういうふうに考えまして――大蔵当局のおっしゃることは、先ほども私申し上げましたように、五十億円をちょっとこえたら、そこで国家が全部責任を負うというのはおかしいじゃないか、そういう事例を引き出しての反駁でございます。その逆の場合には、むしろ、私の方は国家補償がいいじゃないかというふうに考えるわけですが、そういう場合をも両方含めた形のものとして考えますと、もっと弾力的な内容を持った援助ということでも差しつかえがなかろう、こういうふうに考えたわけであります。
#11
○岡委員 この点は、いずれ大蔵大臣に御出席を願って、大蔵省としての腹づもりをわれわれははっきり承っておかなければならないと思います。
 原子力局長にお伺いしますが、今年度予算には、やはり国家の補償について若干の予算が計上されているやに聞いておりますが、いかがですか。
#12
○杠政府委員 債務負担行為といたしまして二十億円の金を計上しております。
#13
○岡委員 二十億計上された積算の基礎は。
#14
○杠政府委員 本年損害賠償の対象になりますところの炉の出力等を勘案いたしまして、それを根拠にいたしまして出しております。
#15
○岡委員 出力を根拠にすることはわかっている。では、出力を根拠として、具体的にどういう計数をはじいて二十億という数字になったのか。
#16
○杠政府委員 完全な積み上げ計算ということではございませんで、大体現在稼働するところの炉を考慮して、二十億程度考えるのがいいのではなかろうかということでございます。
#17
○岡委員 非常に、俗にいうどんぶり勘定で、どうも何ですが、それでは有沢委員にお尋ねします。
 さらに原子炉が今後幾つも稼働いたして参ります。そういたしますと、やはりこの計上された債務負担行為としての補償のための国の財政支出は増額されなければならないと思いますが、この点についての見通しを一つ。
#18
○有沢説明員 予算に計上しております債務負担行為の二十億でございますが、これは、現在というか、ことしじゅうに稼働する炉に対して国家補償契約を結ぶ場合のその金額の総計になって参ります。ですから、来年度稼働する炉につきましては、来年度の予算にまたそれを計上することに相なろうと思います。
#19
○岡委員 従って、その場合に、やはり原子力委員会としては、予算要求をされる以上、かりに、その基準の一つとして、その炉の熱出力を基準にされることも当然だと思いまするが、そういう一つの基準をはっきり設けられる必要があるという点なのです。今のお話では非常にばく然としておるので、かりに、熱出力のどれだけのものが幾つできて、それについて、熱出力何キロについてどれだけの補償という基準が何もできておらないというようなことでは、国の財政支出としては、私は根拠が非常に薄弱な状態と思うので、その点をぜひはっきりと定めていただかなければならないと思いまするが、お取り扱いについての御方針を承りたいと思います。
#20
○有沢説明員 お答えいたします。
 その点は政令できめることになっておりまして、案の程度でございますが、一万キロ以上のものについては幾ら、百キロから一万キロまでの間は幾らと、それは研究用のものが多いでしょうから、比較的低くきめております。とにかく、まだほかに検討すべき問題がありますので、まだ一応の案の程度でございますけれども、いずれ政令ではっきりきめることに相なっておりまして、それがきまりましたならば、それに基づく予算を毎年々々計上していくことに相なるわけでございます。
#21
○岡委員 それから、この答申の第四項でございますが、答申では、原子力損害賠償処理委員会というものを設けるべきだということがうたってある〇この処理委員会は行政委員会としての権限を持たせなければならないということになっております。そして、この委員会の行なった裁決に対する不服については、高等裁判所に対する不服の訴えのみを認めるなど特別の措置を講ずべきであるということが強く主張されております。ところが、御提出のこの法案を見ますると、原子力損害賠償紛争審査会というものが設けられる。審査会は「原子力損害の賠償に関して紛争が生じた場合における和解の仲介を行なわせるため、政令の定めるところにより、」云々、その機能も、紛争についての和解の仲介を行なう、さらに、原子力損害の調査及び評価を行なう、そして、これらに関して必要な点は政令で定めるということで、どうも答申が主張しておるところの非常に強い行政委員会としての権限を持った原子力損害賠償処理委員会が、きわめて後退をしておるという印象を私は受けるわけです。一体、こういう程度の、いわば権限としては、答申に比べて低い権限を持っておる損害賠償紛争審査会で、適正な、あるいは力強い和解の仲介が行なわれるのか、迅速な損害の調査が一体行なわれるのかというような点に私は非常に疑義を持たざるを得ないわけでございますが、この点についての有沢委員の御所見いかん。
#22
○有沢説明員 最初に、この部会での討論では、この答申書にありますように、行政委員会を設けて云々ということでございましたが、行政委員会ができましても、この損害発生というものが、われわれとしてはほとんど考えられないものであって、従って、審査会というふうなものを設けまして和解をさせるということが一つと、もう一つ、原子力損害の調査及び評価につきましては、それぞれ特別の機関を設けましてこれを行なっていくことである程度十分でないだろうか、常置の行政機関を設けておくというふうなことを考えるのはあまりリジッドに過ぎる、こういうふうな意見も一方にありまして、結局われわれはその方をとることにいたしました。行政委員会はだんだん制度の上からいってもなくするような形に進んでおりますので、いわんや損害発曲ということにつきましては、ほとんど考えられない場合でございます。それを初めから行政委員会を設けて、常置機関として活動せしめていくといっても、実際そう仕事がないじゃないか、こういうことになりまして、従って、調査、研究、評価の基準を設ける、基準をどういうふうにするか、損害の調査の方法をどういうふうにするか、それから評価の基準をどういうふうに考えるかということにつきましては、これはわれわれの方で、科学技術庁の原子力局の方にそういう機関を設けてやるつもりでございます。実際損害が起こって、それの賠償を行なう場合には、これはいろいろ紛争が起こり得るわけでございまして、その紛争のために賠償の支払いが長引くというふうなことがあっては困ると思います。そこで、その紛争処理の仕事というものは、現実の場合には大へん重要な問題であろうから、このことはちゃんとしたことにしておこう、ちゃんとした規定にしておこうというので、この十八条を起こしたわけでございます。専門部会においては行政委員会を設けろという議論もかなり強く出まして、答申書にはそういうことになっておりますが、それは少しリジッドに過ぎるのではないかという意見もあったにはあったわけでございまして、法案では、少数意見でしょうが、その少数意見の方が採用されておるわけでございます。
#23
○岡委員 御事情も若干わかりますが、しかし、御存じのように、ウィンズケールの事故の場合、たまたま私は事故の翌々日にロンドンに到着いたしました。事故が起こるとすぐ、当時のイーデン首相が三名か四名の委員を任命いたしまして、そうして調査と損害の評価をみんなヘリコプターを飛ばして実に迅速に行なっておる。最近のアメリカのSL1炉についても、原子力委員会の委員が現場に飛んで、非常に責任ある迅速な行動をやっておる。問題は、形式的な権限ではなく、この損害の評価などについては、もちろん、適正な基準を原子力委員会が設けられることは当然でございましょう。基準に当てはめて、事実起こった災害についてはどの程度の評価をすべきか、これはよほど権威ある機関をもって迅速にやらなければならぬ、これが各国の事例のようでございます。特に、またわが国の場合、国民感情もありまするので、このような措置をぜひとるのだ、このような御決意でおられるのか、これは政府の委員長の御決意も承りたいのでありますが、有沢先生の御所見も承りたい。
#24
○有沢説明員 実際に事故が起こったという場合になりましたならば、むろん事故の原因の調査、それから損害の評価ということを、迅速にしかも、厳密に行なわなければならないと考えておりますので、それに対する手配といいますか、準備というものは、原子力局の方で、委員会がこれを指導して研究中でございます。ですから、それがもし起こりますならば、すぐさま出動していただいて、そして事故の調査並びに損害の評価というものをやっていただく、それは非常に重要な点でございますから、私どもも十分配慮しつつあるところであります。
#25
○岡委員 先ほどの国家補償のための債務負担行為として計上する要求予算の基準をどういうふうにするのかという点を、具体的な資料として出していただきたい。それから、今、有沢先生のおっしゃった評価の基準あるいはその調査のための出動体制等についても、原子力委員会なり原子力局として、この程度の心がまえがあるのだというようなことを、次の機会でもいいからはっきりお示し願いたいと思います。
 有沢先生に一つお尋ねをいたしますが、この法案の第一条に目的がうたわれております。「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。」これは、やはり何といってもまだ非常に不可知な分野をたくさんかかえておる原子力の開発でございますから、われわれは潜在的な危険性というものを予想しなければならない。そこで、その立場から、この「被害者の保護を図り、」一体これがこの法案の目標なのか、あるいは「その原子力事業の健全な発達に資すること」が優先的な目標なのか、これは、いわば二律背反的な一つの目標になりますが、原子力委員会としては、一体重点をどちらに置いておられるか、この点を一つ承りたいと思います。
#26
○有沢説明員 原子力の発電につきましては、一方においては、発電事業そのものは民間がやり――必ずしも民間がやらなくてもいいのですけれども、民間もやるということになっております。他方、被害者の場合は、それが国家の事業であれ、民間の専業であれ、いずれもそういう原子力発電という事業がそこに興ったがために発生する損害でございます。ですから、この法律の基本目的は、まずもって被害者の保護をはかり、それから、事業者が民間の場合においては、その民間の事業が成り立っていけるように保護をはかる、こういう考え方になっておるわけでございまして、ここに「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資する」ということを目的にしておるこの順序の通りお考え願ってけっこうだと思います。
#27
○岡委員 原子力災害から公衆の安全を守り、また、損害を、原子力専業者並びに必要な場合には政府が出動して補償をする、これがこの法案の重点である〇そこでお尋ねいたしたいことは、これは先生がいつもお説きになることでございますが、今は技術革新の時代で、新しい生産手段というものがどんどん開発される、それに伴って、地域住民なり社会に対していろいろな影響を及ぼす、これが社会的衝撃ともいわれ、また、自然科学の社会に対する挑戦ともいわれておるというようなことを先生から私どもお聞きしたことがございます。そこで、当然現代の政治の大きな課題は、この衝撃、この挑戦をどう調整をしていくか、緩和していくかということが、この技術革新の時代における政治の大きな課題になってきたということも、私どもはその通り同感であります。そういう趣旨の上に立ってこの法案というものが提出をされておる、これがこの法案提出の基本的な根本の精神ではないか、こう私は思っておるわけであります。その点について先生の御所見を承りたいと思います。
#28
○有沢説明員 岡委員からおっしゃられた通りのことが、私どもが考えておるこの法案の根本方針だと考えます。
#29
○岡委員 そこで、若干私どもの立場から思うことなんですが、何しろ技術革新の時代には、そのプラントの規模と申しましょうか、ますます巨大化する、従って、なお巨大な資金が要る、そういう形で、雪だるまがふえていくような形において産業経済構造の中におけるいわゆる寡占支配というものが強化されてくる。現在政府は、その所要の資金についても、いろいろな金融機関を通じて政府資金を投入しておる、あるいは日常においても、法人税について特別な措置を講ずる、あるいは特別償却制度などを設ける。さて、しかも、この私企業が、今度は災害を一般公衆に及ぼすような事態を起こしたときに、国がさらにこれに対してバック・アップするということに私は一つの矛盾といいましょうか、感ぜざるを得ないのです。この点、一般原則を、日本なら日本の今日の社会構造の中でどう調整するかというところに一つのめどがあるのではないか、ポイントがあるのではないかと思っているわけでございますが、先生の御所見をお聞きしたいと思います。
#30
○有沢説明員 岡委員の御質問は、科学技術の革新の時代に、その科学技術の革新を担当していくものが何人であるか、また、何人であったがいいかという御質問のように思われますが、社会主義社会というふうなことになれば、むろん、これはみな国家が担当することになります。今日の資本主義社会におきましては、一方では、民間でなし得る科学技術の革新は民間が担当する。民間ではとうていなし得ないような科学技術の革新につきましては、これは政府が担当する。つまり、今日の経済は、だれもが言っておりますように、政府部門と民間部門とが相当――従来は政府部門がかなり小さく、ほとんど部門というふうなことになっていなかったのですけれども、今日のような時代になりますと、政府部門がかなり大きな経済活動を一方にいたしております。ですから、そういう政府部門と民間部門とが混合している、いわゆる混合経済の場合においては、今私が申し上げましたように、民間部門で担当し得ない部分、そういう問題については、政府部門がこれを担当していくようにすべきではないか、こういうふうに実は考えております。そこで、原子力事業あるいは産業の発展ということを考えますと、実際原子力が今までずいぶん発達をしてきたとはいいながら、まだまだ開発すべき点、研究を進めるべき点、こういう部面が大へんたくさんあります。そういう部面は、いかに大きな会社といえども、なかなかそういう部面を担当することはできないのでありますから、これはやはり政府部門が担当すべき原子力の開発分野であろうと考えます。しかし、もうある程度採算に乗るといいましょうか、事業としてやっていけるような部面につきましては、これは民間部門が民間の資本を投入いたしてやってもらいたい。つまり、国家としましては、たくさんほかになすべき仕事があるのでありますから、民間部門がやり得べき点は民間に担当していただく、こういう考え方に立ってしかるべきじゃないかと考えております。
#31
○岡委員 今度初めて、原子力の開発のためにこの責任保険契約というものを求め、強制し、さらにはまた、災害がその契約額を上回れば国がこれを援助する、これが今後の新しい政治の方向を示すものだと思う。ただ、これだけで私は済まないと思う。だから、新潟県で天然ガスが出る、天然ガスが出れば地下水も出てくる、地盤が沈下する。地下水の需要、水資源の需要は、今後の日本の新しい工業発展に不可決なのです。そうしてみれば、やはり巨大産業が産業構造を高度化されれば、そこに不測の影響をその地域住民なり社会に与えてくる。これはその一つの端緒をなすものであるという意味において、私は非常に重要な性格を持っておると思うのです。特に、原子力の場合、英国やフランスの場合は、やはり公共管理と申しますか、公社形態というような形でやっておる。日本の場合も、そういう形態がほんとうは正しいのじゃないか、妥当なのではないかというふうな感じもするわけなんです。これは余談ではございますが、先生の御所見を承っておきたい。
#32
○有沢説明員 イギリス、フランスあたりは、国が開発をいたしまして、それを公社の形で実際に適用しておるようでございますが、日本の場合は、幸か不幸か、というよりも、私は幸いだと思いますけれども、原子力は全くの平和利用に限定されております。そこで、民間がその分野を担当することも可能になってきておる、こういうふうに実は考えております。燃料であるとか、あるいは炉の製造であるとかいう部分は、むろん民間でやってやれない仕事ではないと思います。電力につきましては、これはもう電力一般の行政問題で、電力が国家管理とか国有形態で行なわれておる場合には、むろん原子力の発電もその中に入ってくると思いますが、日本の場合には、今のような九電力で主として開発しておる、こういう状態でございますから、原子力事業というものを民間でもやっていける段階になりました場合には、民間の電力会社がこれを営まれるということになろうかと思います。ですから、電力産業というものをどういうふうに考うべきかということになれば、また違った考え方もあり得ると思いますけれども、現在の電力産業のもとにおいて原子力発電を行なっていこうということになれば、やはり今の民間会社としての九電力が――これは公共性はかなり強く持っておると思いますけれども、そういうパブリック・ユーテリティで行なっていっても差しつかえがないのじゃないか、こういうふうに考えます。
#33
○岡委員 問題は、災害が起こらなければそれに越したことはない、また、起こらしめてはならないということでございます。私は、先般来この委員会で、そのつど強く強調しておるのでございますが、なぜ原子力委員会は安全基準というものを早く設定しないかという点でございます。たとえば、損害賠償法というようなものを私どもが真剣に審議するためには、やはり安全基準というものが大前提だと私は思うわけです。ところが、きのうも資料としていただきましたが、安全基準専門部会の方では、まだまだ結論が出ておらない。数字をいろいろ取り扱っておられるようでございますが、出ておらない。ところが、一方、最近の「内外事情」の何かを読みますと、アメリカのマッカローあたりでも、もうすでに安全基準は法制化すべきだということをはっきり言っておる。アメリカもまた、去る二月には安全基準についての新しい構想を出しております。日本の炉というのは英国から買い、アメリカから主として買っておるのだが、しかも、日本は広島や長崎の手痛い記憶をまだ国民は持っておる。そうして、しかもまた、これらの国々に比べて人口密度その他の点で悪い条件を持っておる。それであればあるほど、この安全基準部会が数字をもてあそばれることもけっこうだが、政治的配慮として、原子力委員会は安全基準というものをはっきり示す、そうして、まず、このようにしてわれわれは原子力災害というものは防ぐんだ、しかし、それにもかかわらずというときに、この法律をもって対処するというのが私は事の順序だろうと思う。一番かなめの前提が欠けておるということは、私は非常に遺憾だと思いまするが、先生の御所見を伺いたいと思います。
#34
○有沢説明員 安全基準を早く作ることが非常に重要な先決的な問題だということは、私どもも十分心得ているところでございます。けれども、何分にも、安全基準部会にそれを諮問いたしまして、その答申の出るのを待っておるのでございますが、学者の先生方が甲論乙駁と申しましょうか、あるいはまだまだ十分解明し尽くされない問題点がある結果でありましょうか、まだ答申をいただくところに至っておらないのでございます。今、岡議員から御指摘になりましたアメリカのAECにおきましても、そういう一つの見解を去る二月ですか発表いたしております。そこで、私どももなお一そう取り急いで――といって、そうでたらめなものを出されては困りますけれども、なるべく審議を急いで、そうして安全基準部会の答申を早く出していただくように督促をいたしておる次第でございます。それからまた、アメリカのあのAECの要綱といいましょうか、これにつきましても、あれは百二十日の余裕期間があって、その間にはいろいろの方面からの意見も出ることと思っておりますので、どういう意見が出て、それに対してAECがどういうふうに考えるかということを十分この際トレースしておく必要があるだろうというので、その方面も督励をしてやっておる次第でございまして、なるべく早く岡議員の御説が実現するように努めたいと考えておる次第でございます。
#35
○岡委員 しかも、最近の新聞に発表されているのによると、通産省の方で発電所についての安全基準の第一次答申というものを一応やっておる。これは抽象的ではありますが、原子力発電所の設置にあたっては、近くに人口密集地がないこと、川、湖沼、海に流れる排水が公衆に放射線障害を与えないこと、発電所のまわりに一定の面積の非居住地域を設けることといったようなことがあります。原子炉などに事故が起こったとき、警報、緊急停止、非常冷却非常閉鎖などの制御装置ができるよう施設を設計する云々というのが出ておる。新聞の記事でございますから、数字が出ておるのかどうかわかりませんが、しかし、こういうふうに、一番安全の総元締めでなければならない原子力委員会がぐずぐずしておる岡に、たとえ抽象的な原則でも、一方でこういうものを出しておる。こういうところに、これからの原子力行政というものの、特に原子炉の安全保守というものが重大問題になってくる、非常に多面的になってくる傾向が見える。このことは遺憾千万な話でありますけれども、これはやはり原子力委員会に帰属した大きな高い責任という立場で、ぜひ一つ安全基準の問題と真剣に取っ組んで、できるだけ早く答えを出しておかなければならないと私は思うものですから、切にお願いいたします。
 それから、この法律案をお出しになるにつきまして、起こり得べき災害の評価というものについては、一体いかなる資料を参考とせられたか。先般資料要求をいたしましていただきました大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算というものがございますが、これを参考にされたのですか、この点承りたいと思います。
#36
○有沢説明員 大型原子炉の災害試算でしたか、それは私たちも一ぺん拝見いたしたわけでございますが、しかし、何分にもそれの起草者といいましょうか、あるいは意見をまとめられました委員会の御趣旨から申しますと、災害の計算の仕方をどういうふうにしたらいいかということを考えて報告書を作ったものであって、従って、そういう計算をする場合には、なるべく大きい災害を想定した方が計算をしやすいのじゃないか、そういう趣旨で作られたという話を聞いております。
 それでは、そのこと自体、その報告書の災害の規模その他については、それが客観性を持っているものとは考えなくてもいいかということでありましたが、実は、私どもの方の災害補償専門部会ではそれを基礎にはいたしませんでした。むしろ、もっと小さい規模の災害といいましょうか、ウィンズケールその他のものは考慮いたしましたけれども、実際は災害の規模の想定というものにつきましては、もっと小さいものを考えてやったわけでございます。それでもまだ一応三百億、五百億というふうな数字は出ておったのですが、先ほど申し上げましたように、それは保険ではカバーができない、こういうことに相なったわけでございます。
#37
○岡委員 大蔵省に予算を要求するとき、予算総則では、やはり産業の育成のためには国費の支出は認めておる。しかし、さて今度は、政府のお役所が大蔵省とかけ合いするときには、アマウントを持っていかないと、なかなか話がらちがあかないのであります。そこで、大蔵大臣なら大蔵大臣にこの席上で政府の御決意のほどをわれわれが確かめようとするときには、やはりアマウントを持たなければいかぬ。ここにいただいたのは大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算ですが、あとなお、この法案を御提出なさるときに参考とせられた災害評価をぜひ出してもらいたい。これは原子炉の設置者は全然要らないと言ってきているのを、いや、どうもあぶないからというのですから――原子炉の設置者のものは私どもしばしば拝見しているのですが、あれがあのままいくならば、何も損害補償の法律案をわれわれは作る必要はない。だから、やはりそこには、潜在的な危険性というものに対する世界的な努力が今後まだまだ明確な線を出すではありましょうけれども、しかし、やはりこういうように出された以上は、一体何を参考とされているのか、資料はぜひ一つ委員会にお出しを願いたい。
 それから、この炉の安全について、言い古されたことでございますが、損害の賠償、さらにはまた、国の援助ということになりますると、例の東海村の爆撃演習場の問題があるわけなんです。一時あれも誤投下が割合に少なかったようです。ターゲットも海の沖の方へ持っていってくれていた。飛行機の進入コースも違った。ところが、最近また二、三回誤投下をやっているようですが、やはり原子炉の安全な立地条件としては、民間飛行場でも滑走路のコースに置くなといわれておるくらいである。爆撃機が演習をしておるその下に原子炉を置くなんというのは、おそらく世界にあまり類例のないことだと思います。そういう点で、原子力委員会としては、その後何か手を打たれたことがあるのかどうか。中曽根君のときには、ターゲットの移動等について若干相手方との間に話し合いがついたが、また最近はそうじゃないというような状態が起こってきております。これは何かやはり手を打つ必要があると思います。有沢先生は、ライシャワー大使と御懇意だろうと思いますから、話をしてもらわないと非常にあぶないですよ。これは原子力委員会として、もう少しこの際損害賠償について国が予算的責任を持つというふうな態勢になられて、われわれの納得のいくような対策が講ぜられなければならぬと思うが、御所見を承りたいと思います。
#38
○有沢説明員 確かに岡委員が御指摘になりましたように、あそこに爆撃演習場があるということは、立地的に原子炉を設置するのにかなり悪い条件だと考えます。それで、前の中曽根長官の場合にも、かなり厳重にそのことを申し入れをいたしまして、飛行機の進入方向であるとか、いろいろそういう点の取りきめをいたしまして、その後は割合誤投下が少なかったのですが、最近、また少し誤投下が多いように見受けられますので、私どももやかましく申しまして、約束が違うじゃないかということをかなり強く申しまして、原子力局あるいは大臣の方からも、強くその点を先方に申し入れていただいたはずでございます。これは事態の推移をもう少し見ておりまして、どうしても誤投下がやまないというふうなことになれば、われわれも、さらに一歩前進した考え方を持たなければならないことに相なろうかとも考えておりますが、今、私どもは、先方の出方といいましょうか、そういうものを見守っておる段階でございます。
 一方、ライシャワー大使とは、多少面識はあるといたしましても、これはどうも、すぐさまそういう申し入れをすることができるかどうか、ちょっとわかりませんが、もしいい機会がありましたならば、ちょっとそういうことも言ってみたいという気も私はいたしております。
#39
○石川委員 関連して。ただいま岡委員の方から、誤投下の対策についてお話がございましたけれども、私は、その隣村の地元の関係があるわけでありますから、特に関心が強いのであります。そこで、政務次官が来ておられますが、ほんとうなら大臣にもよく聞いておいていただきたいのですが、原子力委員にかわって松本次官にお尋ねしてみたいと思います。
 これは何回も話し尽くされたことでありますが、この委員会でも、一度防衛庁長官に来ていただいてるるお話を申し上げたのですけれども、実はコールダーホール型の発電炉をあそこに備えつけるということの条件でございます。これは当時、知事が公聴会にも出られまして、契約書をはっきりかわしたわけではございませんけれども、あそこに射爆場があるという前提でこのコールダーホール型を持ってくるということは非常に危険であり、また、不安であるということで、茨城県民に対して、この射爆場を、コールダーホール型が完成するまでには必ず返してもらう約束のもとに、契約書には明記はいたしておりませんけれども、コールダーホールの原子炉を設置することに賛成するという立場をとっておられた。従って、最近そういう約束がどうなっているかということです。
 それから、特に首都圏整備委員会の方で、あの隣の勝田というところに相当膨大な工場誘致の団地を設けまして、県内で一番重点を置いた開発をするということになったわけでありますが、しかも、そのことは、原子力委員会の方には、私の聞いたところでは何も御相談がなかったようであります。それから、原子炉の周辺都市整備法案というものを提出される気配もあるけれども、いまだに提出されるという見込みは立っておらない。しかも、そういう前提を置きながら工場誘致を着々と進めて、東海村を中心とし、日立、勝田、水戸というものを中心として百万の大都市を作ろうという構想があって、それが原子力委員会の方には全然連絡がとられないままで進められておるということであります。この射爆場は三百六十万坪を占めておりますが、これは茨城県の中小企業の工場の全面積の倍くらいの面積になる。しかも、非常に枢要な地域を占めておるということで、産業開発というような観点から、また、一つには原子力の発展のためには、その大前提として、その地域の絶対的安全性を確保することが必要であることは言うまでもないと思います。特に、その二つの理由から、最近になって知事は、県議会の席上で、どうしても射爆場を返還してもらわなければ炉の設置ができないじゃないかというようなことで追及をされた結果、これは失言であったかどうかはわかりませんが、アメリカに渡ってケネディに直訴をすると言わんばかりの言質を与えてしまったというようなところまできております。従って、今の茨城のわれわれの立場といたしますと、射爆場は絶対に返してもらうのだということであり、これがほうはいたる世論になっております。このことをきっかけに、反米感情に火をつけるという可能性もなきにしもあらずというところまできております。これは決して好ましい状態ではないと考えております。知事はすでにアメリカに渡っております。これが直訴という形になるかどうかはわかりませんが、そのことも、何とか話をしたいというような意欲を持って行かれたのだろうと考えております。
 それで、最近の演習場の状態は、コースを変えたというふうなことをいわれております。これは賢明なる有沢さんに今さら私から御説明をするまでもありませんが、昔は、急降下爆撃あるいは水平爆撃で演習をやっておりましたから、ほぼ正確に目標物に対して爆弾投下ができた。ところが最近は、レーダーを避けるという意味で、超低空でずっと近接するという、いわゆる隠密行動をやる。そうして、目的物の近くになってから反転して急上昇をやり、急上昇したところで爆弾を落とすというような形になっております。これは一つには、核爆弾を投下するための訓練だというふうにわれわれは理解しておりますが、それでなくとも、非常なスピードで、しかも、急降下して目的物に命中させるということでなくて、反転をして上昇して、そこでたまを放つという形ですから、どんな名人がやろうとも、正確に投下するということは不可能だと思います。しかも、これは未熟の人のための射爆訓練でありますから、誤投下がないという保障はないわけであります。従って、コースを変えたといたしましても、今までにすでに百五十件から二百件くらいの誤投下があり、一番近いのは原研から三百メートル付近にも落ちております。その付近には四百軒ばかりの民家がある。これはよけいなことかもしれませんが、六人くらいの人も死んでいる。そういうふうなことで、原研がなくても非常に危険だという印象を与えておる。そこへもってきて、あの曲芸のような投下訓練をまのあたりに見ていますと、一体これでいいのかというような不安を持つことは、きわめて自然な人情だろうと思います。それは、あの射爆場の付近の人ばかりでなく、茨城県民すべての人が、射爆場はどうしても返してもらわなければあそこら辺の発展は望めないし、それ以上に、原研はどこかに持っていってもらいたいというような、反動的な気分まで最近は醸成されてきております。最近、そこへもってきて、二日続けて誤投下があった。そこで、科学技術庁長官の方から強硬な抗議が行って、それでしばらくの間中止ということにはなりましたけれども、現在、また射爆場の訓練を再開したということになっておるわけです。これは私から繰り返して申し上げるまでもなく、どう考えても、これが日本でなくて、アメリカかヨーロッパのどこかの国で、ほかの国の飛行機が来て原研あるいは大きな原子力発電炉のあるところで爆弾の投下訓練をやっているなんということを聞いたら、国民が承知するとはとうてい考えられない。日本人は非常に従順だから、アメリカに協力するという考え方で、まだおとなしくがまんをしているというふうに思いますけれども、この立場を変えて、アメリカ、ヨーロッパの国民ならば絶対に僕は承服しないだろうと思う。そういうこともよく考えていただいて、幸いに、ライシャワー大使と有沢さんは親しい間柄のようでございます。これは、機会があればそういう話もしてみたいということではなくて、これはどうしても解決をしてもらいたい。そうしないと、どういうふうにあの問題がこじれて発展をするかはかり知れないという気もするし、そういうふうにもしたくないと思うし、また、だれが考えても、どうしてもあの原研のわきでもってあの曲芸的な投下訓練をやって、絶対に危険がないということは言えないと思うわけでありますから、これは社会党とか自民党とかいう問題ではありません。これはだれもひとしく考えることです。これはこの委員会におきましても、それから政府当局におきましても、それから原子力委員会におきましても、どうしてもこの危険性を十分にお考えいただいて、これはこの間外務大臣とも個人的に話をしましたけれども、これは軍事委員会でやるのが建前だということを承っております。建前ではありましょうが、それだけではケリがつかないということは、軍事的な立場の人と話をしたのでは、やはり自分たちの訓練をどうするのだという考え方が先行するわけです。だから、それだけではケリがつかないと思う。やはりそれよりも高い段階で政治的な折衝をして、どう考えても、あんな危険なところで曲芸のような投下訓練をやるということは、間違いがないという保障はないわけですから、これはぜひとも一つ要望として、別に今から御答弁を要求するわけではありませんが、おりに触れてこのことを強調したいと思っております。松本次官も、ぜひ長官の方にもお話をしていただきたい。これは決して社会党が独自の基地返還という立場で要求するということでないわけです。そういう気持もないことはありませんけれども、それ以上に、県民の感情として、また、国民感情としても、絶対にあのような危険な射爆場は原子力の正常な発展のために解決をしなければならぬというような立場で、長官の方からも、ぜひ閣議での了解を得て、そういう折衝を――方法はいろいろありましょう、それはおまかせしますけれども、実現をするように、私は、このことが解決しないと、何回でもこの委員会でこの問題について話さなければならぬ。それだけの必要性、緊急性もあるというふうに考えておりますので、ぜひその点を御了承願って善処をしていただきたい、このことを特にお願い申し上げておきます。
#40
○松本政府委員 ただいま石川委員のお話ですが、先般の委員会でも私お答えいたしましたので、その後、科学技術庁としても池田長官を中心に寄り寄り協議をいたしまして、何とか早く善後策を、こういうことで、日米合同委員会の方に申し込みました。幸いにも、誤爆の原因も十分究明するということで、一時演習を中止いたしております。しかし、日米合同委員会に出ておる日本側の委員は、外務省と調達庁でございまして、科学技術庁からは残念ながら出ておりませんので、外務省、調達庁に、池田長官から強く、ああいうことをやるのならもう返還せいということまで申し込みました。しかるところ、最近の状況は、この十日に合同委員会が開かれ、いろいろ調査研究した結論として、六千メートル以上の高度から演習をして間違いが起こった、であるから、これからは三千メートル前後の高度から演習をやるということ、いま一つは、コースを一定に定めて、間違いの起こらないようにやる、第三は、いわゆる原子力関係のところには標識を立てる、こういう三点で、しばらくの間演習を継続するということになっという報告を受けました。これが十日ですから、その後一週間ほどたちますが、演習をやったのかやらぬのかということは、まだ現地から報告が来ておりませんが、今後、万一にもまた誤投下というようなことが起これば、それが、かりに東海村の近くであろうとなかろうと、事は非常に重大になりますし、万が一原子炉の近くにでも落ちる、あるいはそれがために原子炉にひびが入る、被害が起きるということになれば、それでなくても日本人は原爆というものには神経過敏ですから、日本の原子力産業に重大なる障害になります。このことは、日本のみならずアメリカのためにもならぬ、こういうことから何らかの名目を立てて早く返還させることが必要だということに皆の意見が一致しまして、もうしばらく成り行きは見よう、しかし、なるべく早い時期に一つ返還してもらおう、それには、先ほど石川委員のお説のごとく、いわゆる原子力発電も間もなく動く、そして、それをエネルギーとしての関連産業をあの三百五十万坪の敷地に設置するということになってくれば、これはある程度筋も通るというようなこと等も考えて、今後強くアメリカの了解を求めることにいたしておりますから、どうぞその点一つ御了承願いたい、こう存じます。
#41
○石川委員 今の答弁を聞いて、またちょっと心配が一つ出てきたのです。非常に御尽力いただいていることは感謝いたします。今後ともよろしく願いたいと思うのですけれども、三百六十万坪にわたる広大な地域を何とか活用しなければならぬという問題が、返還という場合になればその後に出てくるわけです。そのときに、原子力の関連産業を持ってくるというお話ですけれども、実は、原研で今実験炉として動いているのはCP5二基と、あと四基ばかりで、六基くらい。それに集中の限度というものに対する学界の定説というものがまだまとまっておらないけれども、どう考えても、あまり集め過ぎているのじゃないか、世界的に、どこにもあんなに集中しているところはないのだというようなことに対する不安を私たちは持っているわけなんです。そこで、原子力の関連産業ということで政治的折衝をすれば、返還をしてもらうにも非常に話がしやすいというお気持はよくわかる。よくわかるのですけれども、その関連産業とは一体何だろうかということになりますと、新たな問題が提起されてくるわけです。実を申しますと、全体としてのきまった意見ではございませんけれども、県の相当有力な連中の中では、今度は軽水炉の発電、濃縮ウランの発電とかいうようなものを持ってくることを前提として交渉をしようではないかという動きもないではないのです。ところが、コールダーホール一つ持ってくるにつきましても反対意見が相当強くあったものに対して、日本の産業界からの要望ということももちろんありますが、日本としても、やっぱりこういうふうに炉を一つ思い切って先行するという産業界のエネルギーを尊重しようじゃないかという気持で、われわれは間接的にも協力した、こういう経過を持っておりますけれども、これ以上大きな濃縮ウランの炉を持ってくるということになりますと、これ以上は限度で、とうてい東海村に集中することは許されないと私は思う。それで、私は、念のために申し上げるわけなんですが、関連産業につきましても、実験炉、あるいは動力炉、ましていわんや、大型の動力炉というふうなものを持ってくるということについては、どう考えても、われわれはこれ以上はどうにもできない。県民の立場から、あるいは科学技術の振興の立場からいっても、とてもそういうことは許さるべきではない、こう考えておるわけなんです。その点について有沢さんあたりはどう考えているか、一つ御見解を伺いたい。
#42
○有沢説明員 東海村に原子炉があまり集中し過ぎるというようなことについては、私もいけないと考えております。ですから、あそこに置かれる炉といたしましては、おのずからもう限度がある、そういうふうに考えておりまして、今後新しく設置する炉が幾つか予定されているようでありますけれども、その予定されている炉がことごとくあそこに設置されるというふうには私は考えておりません。ですから、関連産業を持ってくるというような事柄につきましては、炉を置くというよりは、むしろ、機器を作るというようなことは若干考えられるかもしれません。あの爆撃演習場が返還された暁には、そういうことが考えられるかもしれませんが、返還されるからあそこに炉をというようなイージーな考え方から、あそこへ集中させるというのは、やはり好ましくないと私は考えております。
 それから、なお、団地をあちこちに作る、原子炉周辺地帯の整備というような問題につきましても、私どもはいろいろ考えて、これはなかなか地元の方々との利害といいましょうか、そういう点もあります。それからまた、片方においては、国家の補償、賠償というようなものと関連いたしますので、相当十分に検討を加えていかなければならないと思って、実は、原子炉周辺地帯の整備法案というようなものは、だいぶたなざらしになってわれわれのもとにあるわけですが、これにつきましても、どうも最近の状況を見れば見るほど、一刻も早く何らか整えなければならぬというふうに考えておりますので、もうしばらく時間をかしていただきたい、こういうふうに考える次第であります。
#43
○松本政府委員 ただいま石川委員さんから、原子力関連産業という言葉ですが、地元としてはごもっともでして、ちょっと私の言葉が足らなかったのかもしれませんが、幸いにも、コールダーホールが二十五万キロワットの電力もできるということになれば、この電力を使って、いわゆる平和産業で大いにあの付近が発展する、こういう意味合いのエネルギーをと申した言葉でございまして、どうかそういう意味での関連産業と一つ御了承いただきたい。そして、アメリカとしても、そういう動力源が近くにできれば、それをもととした産業というものが近くにできるのもやむを得まいというような理由で、返還を強く要求するということを実は申したわけでありまして、どうか一つ御了承いただきたいと思います。
#44
○石川委員 松本さんのおっしゃることはよくわかりました。ただ、地元の方に、濃縮ウランの発電炉を作りたいという希望も一部に相当根強く動いておるのですから、念のためそういうことを申し上げたので、御了承願いたいと思います。
 それから、これはあとで私あらためて、できるならば補償問題に関連しまして質問をするときにも触れて質問をするつもりでございますけれども、万一アメリカの訓練でもって誤投下があって、それで災害が起こった場合の補償の問題は一体どうなるかということは、きわめてむずかしい問題になってくるだろうと思うのです。あらためてこれは質問いたしますけれども、幸い有沢さんも来ておられますから、その場合の処置は一体どうなるかということを一つ承っておきたいと思います。
#45
○有沢説明員 この法案が成立いたしますと、事故の原因がアメリカの誤投下にあったにいたしましても、とりあえず、第三者に対しましては、この法案に従って支払いが行なわれます。それで、そのあとで原子力発電会社でしょうか、それの方からアメリカに対してその賠償を請求する、こういう手続になろうかと思います。ですから、アメリカ側の誤投下が事故の原因であるという場合には、日本が泣き寝入りになるということはないと私は思います。
#46
○石川委員 これはまたあらためて御質問いたしますから、きょうはあまり追及いたしませんけれども、この交渉は相当むずかしいと思うのです。どうも、保険でやっているから、それでいいじゃないかというふうな考え方もなきにしもあらずなんです。しかし、事が日本の国内に原因が存するのではないという場合には、やはり保険料相当ということではなくて、はっきり損害の全額について弁償させなければならぬというふうに、卒直に国民感情からいって考えるわけですけれども、なかなかそういう交渉は成り立たないのではないかという危険があるものですから、その点については、この先一体どうなるかという点についても、一つ研究をしておいていただきたい。あらためてまた御質問したいと思います。
#47
○岡委員 これは原子力委員会もよく御注意願いたいのですが、ビキニのときの被爆者は金一封で済まされました。同じ軍事的な訓練で、同じ軍事的な実験ですから、これが通例になっておるようです。沖繩の場合なんかもみんなその金一封です。ですから、その原子力発電株式会社が、アメリカに求償権をたてに要求するなんということはとてもできっこない。問題は、やはりここは使わないでもらうということです。それで、この損害賠償法を出して国が財政支出をになうというふうなことで、世界にも異例な、上空が外国の爆撃演習のために制限区域となっておるところに原子炉を密集させるということは問題にならないと思うので、これはいずれ池田さんに御出席願って御質問したいと思います。特に誤投下ならば、私も砲弾を見ましたが、二十五ポンド程度ですから大したことはありません。しかし、万一飛行機が落ちたら一体どうなるか、コールダーホールの炉に縦や水平にマッハのスピードで飛び込んだら一体どうなるか、あるいはまだ小さい炉だからというので、割合にシールドなんかが薄弱な場合に、その近くにもし飛行機が墜落した場合には、その衝撃はどうなるか、その影響については、まだ原子力委員会は一つも解析しておらぬというのですから、この点、委員会としては非常に無責任だと私は思う。ですから、こういう点は十分解析をして、そのようなことであればどうするかという、やはり科学的な根拠に基づいて、日本の原子力平和利用のためにという決意のもとに、ぜひとも米側と強く交渉してもらわなければならぬ。
 最後に、私お尋ねいたしたいことは、この法律案第二条によりますと、「従業員の業務上受けた損害を除く。」ということになっておるわけです。何しろ、原子炉に万一事故が起これば、まずまっ先にその犠牲になるのは従業員でなければならない。ところが、この従業員の損害については、この法律案では賠償の責めに任じないといえば、一体従業員の安全というものは何が保障してくれるのかという点でございますが、有沢さんに伺いたいと思います。
#48
○有沢説明員 この法律は、第三者に対する損害の賠償でありまして、従業員につきましては、別に原子力事業に従事する従業員に関する法律といいますか、法律かどうかわかりませんが、賠償の措置を考えるということに、考え方がそうなっております。それで、このことは、私たちも最初から労働省の方にその方面の御研究をずっとお願いしておるわけでございますが、とりあえず、労働省のお話では、労災保険制度が、去年ですか改正になりまして、その労災保険においては、長い疾病であるとか、あるいは後発性の疾病であるとかいうものに対する補償も見ておるから、とりあえずはそれでやっていけるけれども、しかし、なおもっと、この従業員の災害補償のために特別のことを考えてもらいたい、こういう御希望があるのでございます。それで、その点について、私ども専門部会を設けまして、その専門部会で従業員の災害補償に関する意見を検討していただくことになって、今部会が開かれております。いずれ、その案を得ましたならば、また御審議を願うことに相なろうかと考えております。
#49
○岡委員 せっかく第三者に対する損害賠償の法律案を御提出になるならば、やはり、この対象から除外された従業員の災害に対する補償措置をあわせて御提出になるのが私は当然だと思うのです。これはあらためて立法措置をとられるということでございますが、労災補償部長も来ておられますけれども、これまで放射能障害の場合、ケースにおいていろいろ地方庁あたりから伺いが来ていると思うのです。労災法適用上の意見について御方針を伺っておる例があると思うのですよ。労災法の建前から、きわめてその適用に疑義があるというふうなケースが放射能ではずいぶん起こり得ると私は思う。そういうケースについて少し御説明を願いたい。
#50
○村上説明員 従来は、まだ原子力によりますところの被災労働者というのはございませんで、主としてラヂウム放射線、紫外線、エックス線及びその他の有害放射線による疾病というのが、労働基準法施行規則第三十五条によりまして業務上の疾病、かように規定されております。この三十五条の第四号の規定に該当する労働者に対しまして、業務上の疾病ということによりまして療養補償、休業補償、障害が残ります場合には障害補償、こういう補償をしておるわけでございます。ただいまの先住の御指摘の点は、おそらくどの程度の症状になった場合にこれが業務上の疾病、つまり、労働基準法施行規則第三十五条第四号にいうところの業務上の疾病に該当するか、その基準が非常にむずかしくはないかという御指摘であろうと思うのでございますが、この点につきましては、一応専門医の御協力をいただきまして、一応基準は示してございます。ただ、従来のケースを見て参りますと、現在も係争中のケースがございますが、必要な期間、療養は補償いたします。しかし、なおったあとで障害が残る、その障害が放射線によるところの障害でございまして、つまり白血球が少ないとか、からだに倦怠を覚えるというような、胸腹臓器に障害があります場合に、それが労働能力にどの程度影響を及ぼすかという問題と関連いたしまして、障害補償を行ないます場合の障害等級の何等級に該当するかという事実認定をめぐりまして、若干の問題があるように思います。
#51
○岡委員 たとえば、放射能を持続的に照射を受けた場合起こり得るいろいろな病気があろうと思います。その中で、たとえば骨ガンとか肺ガンというようなものを考えてみましょう。彼は大学を卒業し、そして原子力研究所へ入った、ところが三十でやめた、四十五で骨ガンになった、あるいは肺ガンになった、これが原子力研究所におって持続的な放射能の照射を浴びたためになったのかといえば、同じそこに働いている者であっても、骨ガンやそういうものになる人が割合少ない。そうすれば、一体それをだれが判定するかということは、現在の医学ではできないと思う。現在の医学は、そういう可能性を示すだけです。事実、四十五で骨ガンになった者は、これは原子力研究所で十年間放射能を浴びておった、それが蓄積してこのようになったということをだれも証明する者はいない。こういう例は一つの抜け穴じゃないでしょうか。労災で救えますか。
#52
○村上説明員 確かに仰せの通り、問題は、医学的な因果関係をどこまでたどり得るかという問題になって参るかと思うのです。ただ、私ども、いわゆる職業病を扱っておりまして、それが業務上の疾病として補償すべきものであるかどうかという問題になりますと、そういう長期にわたって影響を受けまして、症状が明らかになったというような疾病につきましては、放射線以外にも幾つかの職業病があるわけでございます。そういうものは、結局職歴と申しますか、そういう状態になり得る職場にどの程度働いておったかという職歴並びに現在の症状、たとえば、エックス線ならエックス線によって起こった障害としての症状の特殊性を備えておるという現在の症状、それから職歴等を総合的に判断いたしまして判断するより仕方がない。たとえば、先生よく御承知のけい肺のごときに至りましては、これは患者の数が相当ございますので、こういう場合には、このような基準で認定すべきだという、その基準が比較的確立されておりますが、放射線障害のような場合には、そうケースが多くありませんので、そういった基準が十分に確立されていない。将来、さらに検討を要するという問題はあるかと存じます。しかし、いずれにしましても、医学的な症状判断と、それから、職歴といったものを総合的に判断いたしまして決定するよりほかないのではないか、こういうように考えます。
#53
○岡委員 別にあなたと議論するのではないのですが、さっき私が申し上げたようなケースについては、現在の医学では認定の基準というものはありません。方法もありません。なぜならば、人によって抵抗力が違うのです。その抵抗力が違うということを判定する基準は、医学的にはありません。かりに、四十五になって骨ガンになった場合、これは放射線を浴びて骨ガンになった者だって、放射線を浴びないで骨ガンになった者だって、われわれ医者の方からすれば、その組織を顕微鏡で調べた場合には、これは同じものなのです。だから判定する基準がない。放射線は、私らの最近の医学的な研究によると、やはり生殖能力が大きな影響を受ける、それから奇形児を産む、寿命が短くなるということは、これは動物実験としてははっきりしておるわけです。こういうことは、やはりもろもろの一つの職業病だ、職業的な犠牲だと思います。これは、いずれ明日、専門の田島博士あたりに来ていただいてよく御意見を伺いますが、立法措置をされるということであるならば、やはり労災法を改正するとか、健康保険法を改正するとかいうことでは、私はもうとてもできないと思うのです。少し改善はされるかもしれませんが、あの治療方針などでは治療のできない病気がある。慢性の敗血症なんかで、たとえば、症状が固定して白血球が七千五百なら七千五百になったとしましても、やはり彼は季節的に頭が痛いとか、倦怠感があるとかいうことで、まともな生産能力というものがないのです。そういうようなものをどう評価してやるかということにも問題があろうと思う。それも、すぐ直後に起こってくればいいけれども、ずっと先になって起こってくる。治療指針なんかでいえば、そういう状態に対してはブドウ糖を注射したり、ビタミンCを注射したりしてはいけないということになっている。むだなことだといっておる。それでは、これをわれわれは手をつかねて見ていなければならない。このために、特に研究しておる諸君のそういう不幸な状態を、われわれはよく見ておかなければならないと思う。だから、これはやはり新しいジャンルの職業病として、起こり得るあらゆる可能性を医学的にも十分検討して、そうして、ここに働く諸君に悔いなからしめる、憂いなからしめるという法的措置はすみやかにやるべきだと私は思う。池田長官もお見えになったので、この際御所見を伺わせていただきたい。
#54
○池田(正)国務大臣 今お話を聞いておりますと、これは私などにはとうていわからない専門のことが多いようでございますが、ただ、私として言い得ることは、おそらく、医学上わからない問題が御指摘のようにあった、その場合にどういう解釈を下すかといえば、その患者に有利なような解釈、すなわち、たとえば、その職場におったために起こった病気じゃないという反証が上がらない限りは、その職場におったためにできたんだというふうな解釈をして、その人を助けていくといったようなものの考え方が私は正しいのじゃないかと考える、こういうふうに思いますが、有沢さんどうですか。こういうふうに考えてこれは解釈すべきじゃないか。しかし、実際問題として、今度いよいよ法律論なんかになりますと、これをどういうふうに立法化していくかということになってくると、これは非常にむずかしい問題になりますので、これはなお将来とも十分に、現在の労災法その他ではいけない面があるとすれば、それによらない何らかの方法を考えるというような意味で、十分に今後検討する必要がある、かように考えております。
#55
○岡委員 従業員の災害による補償については、労働省あたりは、じん肺法のように職業病というようなジャンルを設定することはあまり好ましくないというような気持だとも聞いておるのですが、その点いかがですか。
#56
○村上説明員 このいきさつを申し上げますと、昨年労災保険法の一部を改正いたしまして、従来のけい肺特別保護法における給付を労災保険制度の方に吸収いたしまして、新たに年金制度を設けたわけでございます。そのときの御議論の一つに、職業病法というものを作ったらどうであろうか、こういう御意見がございました。この点につきましては、私どもは、第一には、職業病という定義が実ははっきりしないのでございまして、制度としては、先ほど申し上げました労働基準法施行規則の第三十五条に、業務上の疾病という考え方で、いわゆる職業病を列挙しておるわけでございます。そういう職業病自体の考え方が必ずしも明確でないということと関係いたしまして、その問題の取り上げ方を、予防を中心に置くか、あるいは補償を中心に置くかという考え方が第二に問題になってくるわけでありますが、かりに、補償の問題を考えますと、外国の労働者災害補償保険制度がほとんどすべてそうでありまして、特殊な職業病補償法といったようなものはございません。これは一般の労災保険制度の中で包括的に扱う、こういう建前になっております。結局、ただいま先生がおっしゃいました倦怠感を覚える、疲れる、労働能力が低下するというような問題は、ほかの中毒症状にもあることでございまして、そのような状態になった場合に、どの程度に労働能力が失われるか、つまり、労働能力の部分的欠損あるいは完全欠損という角度から、あらゆる業務上の疾病と同じ基準によって判断いたしまして、けい肺の場合はどの程度労働能力が欠損した、あるいは放射線障害の場合はどの程度労働能力が欠損したと見るか、こういう立場で評価をしておるのが外国の立法例の共通した態度でございます。それにいたしましても、具体的な認定の問題になりますと、これはケース・バイ・ケースで判断せざるを得ない。その判断の場合には、やはりそのときにおきますところの医学的水準に従いまして判断せざるを得ない。医学的に因果関係が説明できないものを、たとえば療養を保障すると申しましても、療養行為、医療行為ができないものにつきまして医療保障をするということはむずかしいわけでございます。こういった問題につきましては、制度の問題と合わせまして、専門の医師の方々の御協力をいただきまして、私どもは、いわゆる職業病の認定基準につきましても絶えず検討を進めておるような次第でございまして、医学が漸次進歩して参りますと、従来、医学的な因果関係なしと思われたものも、医学的な因果関係ありというふうに精緻な判断を下すことが可能になる場合もありますので、そういった事実認定の基準につきましては、法律というよりも、むしろ、そういった医学の進歩に即応しまして、基準を適切に規定し得るような建前によりまして適正を期したい、かように思っておる次第でございます。
#57
○岡委員 このけい肺法がどうやら日の目を見るまでには、私の記憶では七年ぐらいかかっていますよ。その間、いろいろああでもない、こうでもないということで、やっと去年の国会でじん肺法ということで一応できた。問題は、やはりケース・バイ・ケースに犠牲の側に立っている者に有利に解釈するという大臣の気持はわかる。しかし、これを実際に適用するということになると、やはりその立法化がなくちゃ、これは人情だけでは問題は解決しない。特にこの放射能障害なんかの場合には、かりに、二十一で原子力研究所に入り、二十五で嫁さんをもらう、三十になっても子供ができない、そこでお嫁さんの身体検査をすると、受胎能力があるが、男の検査をしたら無精虫状態だということはあり得る。一体これはだれが――これは人情大臣はわかるだろうが、新婚の家庭に子供ができない、そういうことは、お金で評価できないと思うけれども……。また、できるにはできたけれども、かたわができた、頭が小さかったり精神薄弱児ができるということは医学的には言えるのだからね。だから、こういうような放射能障害は、従来の職業病の概念でも包括できないような非常な危険をはらんでおるものだ。こういう問題は、やはり十分に、包括的にこの人たちに有利な立法措置を特別にやるべきじゃないかと私は思うんです。
 それから、これは地域住民の国保や健保にも私は該当すると思うんです。かりに、東海村の原子炉の近くにおる人たちが被害を受けないとも限らない、そういう災害の事故があったのではなく、個人の抵抗力のいかんによっては、私は受け得ると思うのです。しかも、この前も委員会で御指摘申し上げているように、現在の原子炉について、ある取り締まり規則では、いわゆる排気孔における最大許容濃度が国際基準の十分の一であればよい。ある取り締まり規則では、地域住民の場において、この最大許容の十分の一でいかなければならぬということになれば、東海村に四つの原子炉が集中すれば、十分の四の放射能というものが常時放出されるわけです。そうなりますると、あの近所に放射能障害者が起こり得ないとは限らない。さて、起こったところが、国民皆保険の建前から、これは国保だ、健保だということで、どこのお医者さんへ行ったって、今のような厚生省の保険局の治療指針では、ビタミンBやCやAを補給しなければならぬといったって、これはちょっと待ってくれ、ブドウ糖も待ってくれ、医者がやったって自腹を切らなければならぬ状態だ。また、それから演繹されて、先ほど申し上げたような労働不能状態なり、あるいは不完全な生産しかできないというような状態が起こる。あるいは行く行くはガンになるとか、いろいろなことが起こる。そういう場合に、健保、国保でも、ちょっとこの網の目にかからないような、やはり身体障害というものが起こり得ると思うので、これはいずれ明日、専門の田畠博士等からも御意見を聞いて、われわれとしてもやはり善処を求めたいと思いますが、やはり放射線障害という新しい疾病に対し、あるいはまた、その放射線の災害による犠牲者というものは、単に第三者損害のワクの中にも入ってくるのでありまして、そういう身体的条件の者については、新しいジャンルの救済措置をぜひ私は立法する必要がある。そう思います。これらの点については、いずれまた、あとあと私どもの意見も申し上げたいと思います。
 池田長官がこられましたので、特にこれは繰り返しあなたに申し上げておくのだけれども、第一には、安全基準を早く原子力委員会で作ってもらいたい。アメリカも、もうすでに二月には一応の草案をまとめて閲覧に供し、各関係者の意見を求めておるのだから、せめて、原子力委員会が出されなければ、アメリカの基準を資料として出してもらいたい。それに対して、原子力委員会としてもはっきり意見を言ってもらいたい。われわれの損害の賠償じゃなくて、損害の賠償をしなくてもいいような事態が最善の事態なのです。しかるに、大前提としての安全基準を出さない。損害賠償額のようなものでも、アメリカでは、この保険契約金額というものに対しては、その地域の人口密度を非常に大きな要素として計算をしておるようです。先ほどの二十億の債務負担行為については、積算の基礎がほとんど何もない。熱出力についてはどれだけだというような点も、やはり国の支出である以上、どんぶり勘定ではいけない。
 それから池田長官、飛行場の誤投下の点ですが、これも模擬爆弾でいいけれども、飛行機でも落ちたら大へんなことになりますよ。だから、われわれ有沢先生にもお願いしておるのだけれども、原子力委員会として強硬に――そういう危険性をわれわれがそのまま認めながら損害賠償を論ずるというのは、日本の国会の権威においても私はナンセンスだと思う。だから、原子力委員会としては、やはり一つはっきりした方針を出してもらいたい。これについては、また適当な機会に責任ある御答弁を願いたいと思います。
 以上、一応総括的にお尋ねをいたしましたので、きょうは私はこれで終わります。
#58
○齋藤(憲)委員 関連して。私は、この間御質問申し上げて、大体この法案に対しましては、満足でなくても、緊急必要性上、この法案の通過を心から希望しておるものであります。ただ、これは私の欠席しております間に質問があったかどうかわかりませんが、第二条第二項に「当該原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く。」というのがあるのです。これは労災法によって十分補いがつくから、この点は心配がないという御答弁がございましたので、私は、一応それを了といたしたのでありますが、家へ帰って考えてみますと、どうもこの点がまだふに落ちない点があるわけであります。というのは、私から申し上げるまでもなく、原子力平和利用は、あらゆる科学上の進歩した技術を応用して、災害を未然に防ぐ万全の処置を原子力委員会その他の機関においてやられておるわけでありますから、私といたしましては、今日の原子力平和利用の職場においては、一時原子力というものに対して恐怖を抱いたようなばかな考え方というものは、だんだん薄れている、非常に安全性が濃くなってきていると思う。これはその実質のPRにもよるのだろうと思うのでありますが、なおかつ、先ほど有沢委員の仰せられましたように、どこかに未知の分野があって、これに対する恐怖の精神的被害といいますか、そういうものが残っている、こう私は思うのであります。それが、従業員は労災保険でもって災害補償ができるからこれはよろしいといっても、先ほど専門的な見地から岡委員が申し述べられました通り、いろいろな障害が起きてくる。特に生殖の障害が起こるとか、あるいは今度は奇形児が生まれてくる。普通遺伝的に考えていって、この家庭には奇形児が生まれないということが大体わかっているのに、ぽこりと奇形児が生まれた、そういう場合に、従業員の災害はこれから除くということになっている。そうすると、従業員の子供にできた奇形児に対しての賠償というのは、一体どこでやられるのですか、そういうことを御答弁願いたいと思う。
#59
○杠政府委員 お答え申し上げす。
 従業員の子供さんは従業員でないことはもちろん確かでございますから、従いまして、従業員という解釈には入らない。しかし、従業員の業務上となっておりますから、業務上奇形児を生むとかいうような損害をその従業員が受けている場合、そのときの子供さんというものは、やはり第三者、すなわち、従業員は第二者でございますから、第三者という概念の中に入る。従いまして、その障害の認定がいつの時期になるかとかいうことについては、いろいろ事実認定上の問題がございましょうけれども、第三者として包括していく、すなわち、この損害賠償法にいうところの第三者の損害というふうに含めて処置していきたいという方針でございます。
#60
○齋藤(憲)委員 そうすると、今の御解釈によりますと、子供が腹の中に入っているときに、もそういう放射能障害によって奇形児的な存在にあったということは、第三者的状態であるというわけですね、そうですが。
#61
○杠政府委員 それは、すでにおなかの中にいるというのは婦人の場合でございます。男性の場合には、おなかの中にいるという表現が当たるかどうかわかりませんけれども、すなわち、胎児の状態であるかどうかということでございましょうが、胎児でなくても、そういう胎児を生じ得るところの状況にあるその時点において損害を受けたというふうに認定されるものだろうと考えております。だろうと申しましたのは、そのようなことになりますと、先ほど申しましたように、その損害を受けた時点における事実認定の問題ということに相なりますので、行政当局が、その事実認定を仮定の問題においていたすわけには参らないものでございますから、だろうというような表現でお答えするよりはかなかろうと思うのでございますけれども、その従業員であったおりに損害を受けた、たとえば、従業員でなかった場合のときのことを考えられておると思いますが、従業員であったおりの損害を、そのときの遺伝因子であるということがもしも証明されるということであるならば、生まれてきたところの子供は、当然に損害を受けたというふうに解釈すべきであろうと考えております。しかし、その損害を受けた時点のとらえ方は、あくまでも事実認定ということに相なると思うのでございます。
#62
○齋藤(憲)委員 私の言っているのは、さっき長官も御答弁になったように、原子力災害に対する損害賠償は、その受けたであろうところの人に、解釈の可能な限りにおいてこちらは善意に取り計らって災害の賠償をしてやるのだというところからいきますと、このうちは健全なうちで、どうも奇形児なんか生まれたことがないのに、おやじが原子力の事業場におったために、むすこに奇形児が生まれたという、従来の労災においては解決のできないようなケースが生まれたときに、労災でもってこういう補償が成り立つのか、こういうのですよ。それは第三者だとか第二者とか区別すれば、はっきりした損害の価値は出てくるけれども、第二者と第三者の事業場における相関関係によって起きるところの損害があるわけです。精神的な労苦とかいうものは……。むすこが受けたところの損害と、奇形児が生まれたために受けたおやじの損害というものは、別個な損害だと考えておる。そういうのは、今の労災でばんと割り切って、長官の言われるような可能な限りにおける善意の賠償というものはできるか、こういう質問をしている。
#63
○村上説明員 第三者か第二者かという議論が出たようでございますが、事業主に対する第三者といえば、私どもは、労働者も入り得る可能性があると思います。しかし、それは別といたしまして、一般のいわゆる第三者につきましては、これは不特定多数人であり、それから損害が発生した場合に、いわゆる無過失賠償責任制度というものがなければ、民法の不法行為論でそれを処理するより仕方がない。しかし、その場合に、損害賠償額の算定は非常に裁判技術上もむずかしい問題があるようでございますから、それではいけないだろうというので、そういう法制のないところに作ったのがこの賠償法ではないかというふうに私ども理解しておったのであります。ところが、労働者につきましては、労働者災害補償制度がある。労働基準法上もありますし、労災保険法上もあるわけでございます。従いまして、こういう災害補償制度があるものと、不特定多数の第三者とか、一方においては補償制度があり、一方においてはなしという関係でありますから、不特定多数の第三者につきましては、御審議になっておるような法律も非常に必要であろう。労災保険におきましては一応体制が整備されておる。これは原子力のみならず、従来とも、放射線障害患者につきましては扱ってきたわけであります。ところが、この労災保険で扱うということになりますと、おのずから原則的な制約を受けるわけであります。つまり、これは事業主が無過失賠償責任を負っておるのでありまして、その負う責任は、労働者が負傷、疾病、死亡等の災害によりまして、いわゆる稼得能力、アーニング・キャパシティを喪失いたしまして、従来得ておったところの賃金収入が得がたくなる、そういう損失を填補するという制度であると私どもは心得ております。従いまして、奇形児が生まれたという場合に、その奇形児が生まれたことによって当該労働者は労働能力を一部喪失した、あるいは完全喪失したという関係にはないわけでありまして、使用者の無過失賠償責任を根拠といたしますところの労災保険によりまして、その奇形児に対して補償するという考え方は出てこないのじゃなかろうか、かように私思うのでありまして、ただいま原子力局の方から、第三者として損害賠償の問題になり得るというような意味のお話がございました。その場合におきましても、あるいは労災保険その他の制度で考える場合におきましても、損害賠償額の算定をいかようにするかというような技術的な問題については、非常にむずかしい問題があるのではなかろうか。私ども、そういった奇形児の補償につきましてどうしたらいいかということを、外国の立法例もあさってみたこともありますが、寡聞にいたしまして、そういった点についてはなかなか制度が整備されていない、こういう事実を発見したのでございます。しかし、何分まだ研究不十分でございますから、そういった点につきましてさらに一そう研究を重ねてみたい、かように思います。
#64
○齋藤(憲)委員 どうも専門的になってむずかしくてわかりませんから、質問はやめますが、私が御質問申し上げておるのは、そういうような未知の世界における不安というものをこういう法案によって除去しないと、法律の効果は出ていないのじゃないか。たとえば、一つの事例として考えたのですが、今のは、奇形児は生活していきますね。生活していくと、第三者としての損害というものを今後どうして訴えてもらうかということもできるけれども、それじゃ、ぽっくり死産した場合は、明らかにそれは奇形児の死産です。それは今までから考えると、これは放射能障害で奇形児となって、生命を得ずして、生まれてきたときに死んでおったというような場合、これを災害補償の問題として一体どう取り扱うか、まだ原子力障害というものは未知の世界があるのだから、未知の世界に対して法律上統一したところの見解をはっきりと表示して、一般大衆に安心を与えるというのが法律の一つの大きなねらいじゃないか、そういう点について一つ十分御検討を願いまして、また、もっと深刻な専門的な質問が出たときにはっきりお答えのできるように、一つ御当局に御勉強願いたい、こういう老婆心で質問いたした次第であります。
#65
○山口委員長 本日はこの程度といたし、これにて散会いたします。
   午後四時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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