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1960/05/18 第38回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第19号
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1960/05/18 第38回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第19号

#1
第038回国会 科学技術振興対策特別委員会 第19号
昭和三十六年五月十八日(木曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 山口 好一君
   理事 菅野和太郎君 理事 中曽根康弘君
   理事 中村 幸八君 理事 前田 正男君
   理事 岡  良一君 理事 岡本 隆一君
      有田 喜一君    稻葉  修君
      佐々木義武君    西村 英一君
      細田 吉藏君    石川 次夫君
      田中 武夫君    山口 鶴男君
      内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 池田正之輔君
 出席政府委員
        内閣官房長官  大平 正芳君
        法制局参事官
        (第二部長)  野木 新一君
        科学技術政務次
        官       松本 一郎君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   杠  文吉君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局政策課
        長)      井上  亮君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害賠償に関する法律案(内閣提出第一
 〇六号)
 原子力損害賠償補償契約に関する法律案(内閣
 提出第一〇七号)
 水戸対地射爆撃場の返還に関する件
     ――――◇―――――
#2
○山口委員 これより会議を開きます。
 原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償契約に関する法律案の両案を一括議題といたします。
 質疑の通告がありますので、この際、これを許します。岡良一君。
#3
○岡委員 それでは池田長官に若干お尋ねいたします。
 先般のこの委員会で、外国のサプライヤーが供給した資材、燃料その他について求償権を放棄するということを明言されましたが、これは原子力委員長の御答弁としては、私は、いささか慎重を欠くのではないかという感じがいたします。この際、あらためて御所見を承りたいと思います。
#4
○池田(正)国務大臣 この問題につきましては、法制局ともいろいろ検討いたして、慎重にやったつもりでございます。従って、前会私から申し上げた点で大体間違いないつもりでございます。何か特に御指摘がございましたら……。
#5
○岡委員 この日米間の原子力協定第七条H項でございますが、これには、たとえば、米国は、ある種の原力子資材の引き渡し後は、日本側の安全な取り扱いあるいは使用について免責をされております。また、賃貸する特殊核物質についても、生産または加工、所有、賃貸、占有、使用から生ずる事故につき、米国は免責をされておる。しかし、この法律案では、申し上げるまでもなく、相当規模の事故が起こって、これが責任保険の契約の額を突破する不安もある等の事態が起こった場合には、国費をもって援助しなければなりません。ところが一方では、外国のサプライヤーが日本に供給した資材あるいは燃料等については求償権を放棄する。さて、事故が起こって調査した結果、外国から供給された資材なり燃料に事故の原因があったという場合にも、日本側としては、求償権はない、しかも、国費でこれを救済しなければならぬということは、これは私は筋の通った話ではないのじゃないかと思いますが、この点についての国務大臣としての御所見を承りたい。
#6
○杠政府委員 ただいまの岡先生の御質問でございますが、資材、設備等に、もしも瑕疵があったというようなことがございましたら、当然に瑕疵担保ということはこの特約では免れることはできませんので、免責はございません。しかし、ここで申します求償権と申しますものは、その瑕疵の結果かどうかわかりませんが、いずれにしましても、第三者に損害が及んだというような事故が起こった場合に、不法行為の責任としてサプライヤーの方が問われることを、求償権の特約によって免れさせようというような趣旨でございますので、前会もお答え申し上げましたように、国際的商慣習上、やむを得ない措置ではなかろうかと考えておるわけでございます。
#7
○岡委員 それでは、確かめておきたいと思うことは、今、局長が言われたように、この日米動力協定第七条H項によりますと、先ほど申しましたような趣旨でございます。でございますから、この協定第七条H項の解釈を反面から解釈いたしますと、ある種の原子力資材について、保管、管理以前の状態から起こった原因が引き続きある、たとえば、原子力資材の規格その他において誤謬があった、あるいは賃貸燃料につき何らかの瑕疵があった、そういうようなことのために損害が起こったときは、わが方としては、調査の結果、それが明らかになれば、当然求償権があるのだ、こういうことでございますか。
#8
○杠政府委員 私が申し上げておりますのは、そのきずがあることによって、その原子力事業者の損害は当然に求償し得る権利を持っており、決して特約条項でもって失うということではないということを申し上げておるのでございまして、第三者に及ぼす損害、つまり、第三者が原子力事業者に補償を要求する場合に、その原子力事業者が一たん補償いたしますが、その原子力事業者が、その提供されたところの資材等に瑕疵があったことに原因がある、瑕疵があることは、すなわち、故意に基づき、不法行為によるところのものだということを立証いたしましたといたしましても、原子力事業者が、あらかじめ特約によってその供給者の方の責任を免れさせておるというときには、決してそれがそのサプライヤー、すなわち、供給者の方へ求償権が及んでいくことはございません、というようなことでございます。
#9
○岡委員 そうしますと、具体的に、アメリカから賃借したところの燃料に瑕疵があった、さて、相当規模の原子力損害が起こる、七十億の賠償に迫られるという場合、五十億の責任保険に入っておる、従って、その二十億については国費でもって措置をした、しかし、このような措置については、日本側は相手国のサプライヤーに対して求償することを放棄する、こういうことですか。
#10
○杠政府委員 その通りでございます。確かに、御指摘の通りに不合理なようにもお考えになるかと思いますが、これは国際的な商慣習になっておりますので、やむを得ないところだろうと考えるわけでございます。
#11
○岡委員 国際的な慣習ということですが、商法あるいは民法、今は国際私法という観念があるかどうかわかりませんが、そういう建前からいけば、国際的慣習としては、あるいは損害、あるいは、一方が義務を放棄するというような事態が起こった場合、その約定も破棄する、条約でさえもこれを破棄するというようなことになっておる。そういうような取り扱いをされておるときに、事、原子力に関する限りは、外国のサプライヤーに対して求償権がない、そこで、第三者に対する損害賠償の責めを国が負う、国費でもってこれを支弁するというようなことは、具体的にどういう国際的な慣習があるわけですか。
#12
○杠政府委員 これは、アメリカが各国へいろいろ資材を提供しておりますけれども、アメリカにおける商慣習というものは、すべてそのようになっております。今の日本の国内法における民法、商法等は、この点に関する限りは適用がないということに相なっております。この点、法制局とも十分に議論をいたしたのでございますが、そのような解釈でございます。
#13
○岡委員 私は、法制局がどういう立場に立たれたかということは別にして、アメリカとの協定では、第七条のH項では、本文はこう書いてあるわけです。「日本国政府がこの協定に従って供給することを合衆国委員会に要請するある種の原子力資材は、注意して取り扱い、及び使用しない限り、人体及び財産に有害である。」この前提の上に立って、「日本国政府は、このような資材の引渡を受けた後は、アメリカ合衆国政府に関する限り、その安全な取扱及び使用について、すべての責任を負うものとする。」同様なことが燃料についても書いてある。だから、協定によれば、日本が受け入れた以上は、その取り扱いの安全については日本が責任を負わなければならぬ。従って、万一事故が生じても、アメリカはこれの責任を免れるということですね。ところが、引き渡しを受ける以前に事故の原因となるべき瑕疵があった、そして、この瑕疵が日本が引き渡しを受けた後においても存在するとすれば、これは取り扱いについての安全性という問題ではないわけです。そうすれば、事故の原因は、引き渡しを受ける以前からある。それが引き続いて、日本が引き渡しを受けた後においても事故の原因が持続しておるわけです。そして、この瑕疵が原因となって損害が起こった、賠償しなければならぬというようなことになった場合には、今度は日本の国内法で、相手国の民間業者との間におけるそのとりきめの中で日本が求償権を放棄するというようなことをきめる。その結果として、相当規模の損害が起こった場合には国費でこれをまかなうのであるというようなことは、立法の体系としても非常に矛盾しておる。これは長官、一体どう思われるか。
#14
○杠政府委員 条約の解釈の問題もございますから、私からちょっとお答え申し上げます。
 協定では「資材の引渡を受けた後」となっております。ただいまあげられました例は、引き渡しを受ける以前において瑕疵があるというようなお話でございますけれども、やはり協定におきましても、そのまま引き渡しを受けたならば、受けた後には、よしんばその前に瑕疵があったといたしましても日本側に責任があるという解釈でございまして、やはりそれと全く同様の趣旨の立法であるというように御解釈願いたいと思います。
#15
○岡委員 僕が解釈することは、どう解釈しようと主観的に自由なんだけれども、そういう主観的な解釈ではなく、この協定の条文からは、引き渡し後における安全な取り扱いについて日本側は責任を持つのだから、万一事故が起こってもアメリカは免責されると書いてあるわけですが、引き渡し以前における瑕疵というものは書いてないじゃないですか。ちゃんとこれには、この原子力に関係する資材等は人体に有害である、だから取り扱いに安全を要するとうたっておる。そこで、引き渡しを受けた後においては、日本は安全に取り扱いをする責任を持つのだから、万一事故が起これば、これについては日本側が責任をとらなければならない、アメリカは免責される。これは解釈も何もない、この通り読めばそう書いてある。ところが、相当規模の事故が起こったときには、この法律でいくと、日本側は何ら求償権を持たないということになると、協定においてさえもこのようにはっきり書いてあるのに、国内法で、さらにへり下ったというか、こういう取り扱いをするということは一つの矛盾じゃないかと私は思う。これは、やはり政府としても予算を支出しなければならないという問題になってくるので、解釈論争じゃなく、国務大臣としての責任ある御答弁を私は求めたいと思います。
#16
○池田(正)国務大臣 これは考えようによってややこしくなりますけれども、そう大してむずかしい問題じゃないので、先ほど局長から答弁した通りであります。
#17
○岡委員 それじゃ、法制局の専門的な立場から、この問題はどうお考えになりますか。この国と国との協定の中では、引き渡し前における瑕疵に基づく事故については、日本側は責任を問われないわけです。そうすると、相手方が責任を問われなければならない。ところが、この法律では、民間の業者と業者の取引の、いわば契約の中に、万一事故が起こっても責任はとりましょうと相手方を免責しておる。しかも、その事故の程度によっては国費でまかなわれなければならぬ。こういうことは、一体、法の体系として、あるいは国と国との間における政府間協定の関係において、国内法でこういうことができるのかどうか、こういう点の答弁を願いたい。
#18
○野木政府委員 途中で入ってきましたので、前後の事情が多少はっきりしない点もございまするが、問題は、原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の第七条H項とこの法律の第五条の求償権との関係はどうかというように拝察されるわけであります。それにつきましては、原子力協定の七条H項においては、「日本国政府がこの協定に従って供給することを合衆国委員会に要請するある種の原子力資材は、注意して取り扱い、及び使用しない限り、人体及び財産に有害である。」そういうものであることをうたいまして、そういうものであるから、「日本国政府は、このような資材の引渡を受けた後は、アメリカ合衆国政府に関する限り、「つまり、日本国政府とアメリカ合衆国政府との関係に関する限りは、その安全な取り扱い及び使用についてすべての責任を負う、すなわち、アメリカ合衆国政府については、引き渡しを受けた後には責任を云々しないというのでございます。ところが、この原子力損害賠償に関する法律案の五条の関係におきましては、たとえば、日本の業者がアメリカの業者から以上の原子力関係の資材の提供を受けた、そういう場合には、日本の業者とアメリカの業者との関係になるわけでありますから、この政府がアメリカ政府を免責するという係関とはちょっと関係が違ってくるわけであります。それでありまするが、この協定と同じような趣旨のことを考える方が、やはり日本の原子力産業の発展なりその他の事情から見て適切だろうということからいたしまして、この第五条第二項におきまして「求償権に関し特約をすることを妨げない。」という規定を置いておるわけであります。この法律案におきましては、日本の業者がアメリカの業者から資材の提供を受けたような場合に、それに提供以前から何か瑕疵、欠点があって、それが原因になって日本において事故が発生して、第三者の日本の国民に損害を生じたというような場合におきましては、いわゆる責任集中という原理におきまして、第三条で、おのおの原子力事業者が全部責任を負うということをうたいました。しかし、それでも供給者側に故意があった場合には、法制の建前として、そこまでも免除するのはちょっとどうかということで、一応求償権を有するということに五条第一項でしました。しかしながら、第二項におきまして、協定の趣旨もありまするし、「特定することを妨げない。」としまして、実際の運用におきましては、協定の、政府と政府との関係におきましては、日本政府は、米国政府から資材の引き渡しを受けた後には、もう米国政府に責任を問わないというのと同じように、その趣旨を実現するために、日本の事業者もアメリカの事業者に対しては、求償権というものが法律上では出るとしても、この特約でそれを行使しないようにする、そういうような特約を結ぶということにしまして、政府間の関係と業者間の関係と大体相同じような取り扱いにするということにしておるのでありますから、この法律はこの協定の趣旨とは全く同じ趣旨になると存ずる次第であります。
#19
○岡委員 そこのところが、どうも少しはっきりしないのですが、要するに、アメリカの業者から日本の業者が燃料の引き渡しを受けた、引き渡し以前に燃料にきずがあった、そこで、その引き渡しを受けて、これを燃料として原子炉を運転したら事故が起こった、その事故の原因は引き渡し以前にあるのだ、しかも、事故は引き渡し以前にあるその原因によって起こったわけですね。その場合に、相当規模の事故が起こる、国費をもって援助しなければならぬという場合が出てくる、そうすると、日本の国会は予算を議決しなければならない、ところが、その場合に、民間の業者と業者との間においてどんな損害が起こっても、相手国の方に責任をとらせない、少なくとも、第三者損害については相手国の業者は責任をとらない、こういうことがはたして妥当なのかどうかということが一つ。
 それから、もう一つは、今あなたがおっしゃったように、協定第七条H項では、引き渡し後における免責ですよ。引き渡し以前における事故の原因となるべきものについては何も書いてないということは、半面から言えば、引き渡し以前における事故の原因となるべききずは、重大なる過失であるか故意であるかはわからないが、いずれにいたしましても、これはアメリカ側の責任ではないかということなんですね。
#20
○野木政府委員 協定の七条H項におきましては、たとえ引き渡し前に何か燃料に欠陥があったという場合におきましても、日本国政府が引き渡しを受けた後におきましては、その欠陥から生じたところのいろいろの事故等につきましては、アメリカ政府に対して責任を問わず、日本政府が責任を負う、そういう趣旨に解せられているわけであります。従いまして、この法律におきましても、いろいろの国際関係におきまして、原子力の燃料を日本が入手するという関係におきましては、やはり責任集中という理論が各国の法制においてもとられているようであります。日本の法制においても、各国の法制並みの制度をとらないと、日本の原子力産業というものはなかなか育成することはできないというような関係にありまするので、この協定の趣旨と同じ趣旨におきまして、業者が外国の業者から買った場合におきましても、その資材にその以前から欠陥があって、その欠陥がもとになって事故が起きて第三者に損害を与えたという場合におきましても、やはり責任集中という理論におきまして、日本の原子炉の運転をなす事業者が集中的に責任を負う、しかしながら、その場合でも、相手の外国の事業者がその欠陥のあることを知りながら供給したというような場合には、いかにもひどいから、一応求償権を有するという建前にしております。しかし、協定の七条H項というような趣旨もありますので、それは業者間の特約で求償権について特別な措置をすることができるというような特別の規定を置きまして、実際の問題におきましては、その求償権について特約をいたしまして、一たん引き受けた以上は、日本の方が集中的に責任を負う、そうして、相手方に対しては求償の責任を問わない、そういうふうにいたしたいというのがこの法案の趣旨でありまするから、その点におきましては、協定の方向と一致しているのではないかと存ずる次第であります。
#21
○岡委員 外国から引き渡しを受けた燃料については、内閣総理大臣が原子炉の設置権者でもあるわけだから、行政上の責任としても、引き渡しを受けた燃料については、瑕疵の有無等について当然厳正なる審査をしなければならぬのでありますが、具体的に、今日までCP5についてどういうことをやったか、あるいはコールダーホール改良型の燃料についてはどういう瑕疵の有無等についての審査をされたか、伺います。
#22
○杠政府委員 コールダホールの燃料につきましては、まだ検査という状況に至っておりませんので、CP5の例についてお答え申し上げますと、CP5におきましては、日本原子力研究所が検査の衝に当たるよう科学技術庁の原子力局から委託いたしまして、そうして、アメリカのMアンドC社に参りまして検査をいたしております。その検査の方法はいろいろございますけれども、ただいまのところ、検査するのに、燃料を破壊せずして一番都合のいいのはラジオグラフィによるものであるということでございまして、そのラジオグラフィを十分に検討いたして、しかる後に引き取るというようなことにいたしております。
#23
○岡委員 これは一つぜひ最後に希望しておきたいのですが、今お話しのような趣旨で、アメリカから引き渡しを受けたものについても、事故は日本側がすべての責任をとる、場合によれば、万一きずがあって、それが事故の原因となった場合には国費でもまかなわなければならぬというような事態も予想される場合には、まず、その引き渡しを受けるときに、絶対に安全性を確保し得るように――もちろん、原子力の分野は未知の分野も多いですから、可能な限りにおける精密な検査をして、瑕疵の有無については厳正な審査をやるよう、私は強く希望したい。原子力委員長としての御所見を承りたい。
#24
○池田(正)国務大臣 それは、岡委員が言われる通りでありまして、引き渡し以前において従来もやって参りましたし、今後も十分やらなければならない、そういう建前に立って、今度は検査員もふやして、制度を確立したいということであります。ですから、これはあくまでも、引き渡し以前という――先ほどから御心配になっておられますけれども、いやしくも、日本も科学国家として立っている以上は、引き取る前に検査して、それでも、なおかつわからなかったという事態だとすれば、これは日本の科学の水準がなっていないということで、日本の科学力の許す限りにおいてベストを尽くして、これをあらゆる角度から検査する、こういう建前に立っていくべきだと思っております。
#25
○山口委員長 田中武夫君。
#26
○田中(武)委員 当委員会で今審議しております原子力損害賠償でございますが、損害賠償法を可決することも必要であり、けっこうなことでありますが、それ以前に、そういう事故が起こらないようにすることが、より大切であろうと思うのであります。そういう観点から、実は、総理に質問をしたかったのですが、予算委員会等の関係もありまして総理の出席ができない、
 こういうことでありましたため、かわって官房長官に来てもらっておるので、官房長官に総理にかわって、一省一庁といったような立場でなく、総合的な上に立っての答弁を願いたい、このように思うわけでございます。
 まず、第一にお伺いしたいことは、事故の原因を取り除く、そういう意味におきまして、御承知の水戸の対地射爆撃場の問題でございますが、常に問題になりましたように、東海村の原子炉のきわめて近い場所においてそういう事故を起こしたことも過去にございます。そういうような点から考えまして、まず、そういう事故のないようにするという立場から、この射爆場を返還させる、あるいは閉鎖をする、そうして、そういう事故の原因を除くというふうに政府の方でやってもらいたい、このように思うわけでございますが、この水戸の射爆場に関連いたしまして、あのような原子炉にごく近いところに爆弾が落ちるというような事態、もし、あれがもう二、三百メートル寄っておれば完全に大きな事故が起こったと思うのです。そういうことに対してどういう措置をとっておられるか、お伺いいたします。
#27
○大平政府委員 御指摘の水戸射爆場の問題につきましては、周辺の原子力施設の安全確保という立場から、ここ数年来、米軍側と公式または非公式に討議を重ねて参りました。当面の措置といたしましては、標的の移動とか、あるいは使用爆弾、飛行方向等を制限してもらうとか、降下速度を下げてもらうというような、演習方法の改善等につきまして米軍に申し入れて、その実現を見ておりますことは御案内の通りでございます。なお、原子力施設周辺に航空標識を設置する等の措置も講じて参りました。しかし、本件につきましては、なお、保安上の見地から、今後も一そう米軍と話し合いまして善処をして参りたいと考えております。
#28
○田中(武)委員 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約、すなわち、新安保条約ですが、それの第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定、すなわち、俗にいわゆる行政協定であります。それの三条三項には、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」こういう規定があるわけですが、この規定に基づいて、特にどのような考慮、ことに、今申しましたように、原子炉のごく近くにおいて演習が行なわれる、こういう観点から、この三条三項の規定に沿うたところの措置としては、具体的にどういうことを行なわれておりますか、また、どういうことをせよと政府は申し入れたことがあるか。
#29
○大平政府委員 その足旨に沿いまして、今申し上げましたような措置を講じて、米軍側の協力も得ております。航空標識を設定するとかいうような措置も講じて参っておるわけでございまして、今後といえども、なお施設が保安上必要であるということでございますれば、それを講ずるにやぶさかでございません。
#30
○田中(武)委員 同協定の第二条二項には、「日本国政府及び合衆国政府は、いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再検討しなければならない」云々、こうなっておるわけであります。従って、いかなる場合においても、日本の側から、そういうことは困る、ことに、公共の安全上、あるいは原子炉が近い、こういうところから、返還を申し入れる、こうした場合は、必ず応じなければならない、こういう規定になっております。さらに、同三項では、常に返還を目的として話し合わなければならぬという規定があるわけであります。こういう上に立つならば、先ほど言った三条三項の安全性の考慮ということから一歩進んで、返還せよ、あるいは返還を目的とした検討を常に行なわなければならない、こういうような規定もありますから、この射爆場について返還の申し入れをし、あるいは返還を目的とした話し合い、こういうことを、やられた事実はありますか、今後もやっていくつもりがあるかどうか、お伺いいたします。
#31
○大平政府委員 返還を求めるとなりますと、相互の信頼の上に立っております両国の関係でございますので、代替施設を考えるとかいうようなことにならなければならぬのでございますけれども、そういった条件を満たすことはなかなか困難でございますので、ただいまは、現状におきましてどういう保安施設を早急に整備しなければならないか、保安上の心配を取り除くということに力を注いでおるわけでございます。
#32
○田中(武)委員 そういうものがあることは好みませんが、百歩譲ったといたしまして、何も、よりによって原子炉のある、しかも、日本の現在では原子力のセンターである東海村に近いところでそういうことをやらなくたって、ほかにやるところもあろうと思うのです。今、原子力損害賠償法の提出を契機として、さらに突き進んで、そういう危険なもののそばでやってもらうことは困る、どこかほかへ移ってくれ、こう言うことは――そういうことをなくしてもらいたいと言うことが一番いいんだが、それは言えないとしても、ほかの場所にかわってもらうように協議することは一向に差しつかえないことでもあり、また、原子炉というものから考え、あるいは原子力災害という点から考え、現に、こうして国家が無限の大きな責任すら負うような立法がなされようとしておるとき、しかも、その原因となる事故を発生さすであろうという危険性の多いものに対して、これは勇敢に政府は合衆国に申し込むべきだ、こう思うのですが、どうでしょう。
#33
○大平政府委員 御指摘の点は考慮してみますが、御心配のようなことがないように、保安上十全の措置を講ずるという決意で当たっておりますことを御了承願いたいと思います。
#34
○田中(武)委員 御心配のようなことがないように、こういうことでございますが、現に、そういうごく近いところに落とされたということは、一回じゃないのです。今後も絶対ないとは言えないと思います。従って、そういう危険なもとを除く、事故発生の危険性を除いていくということが、立法よりより大事であろう、こう思うのですが、重ねて決意を伺います。
#35
○大平政府委員 今申し上げました通り、お申し出の点もとくと検討してみたいと思いますが、当面の措置としては、先ほど申しましたように、利用条件、使用条件というものを精細に吟味いたしまして、事故の防止に全力をあげるということを申し上げたいと思います。
#36
○山口委員長 関連質問がありますので、これを許します。石川次夫君
#37
○石川委員 ただいま田中委員の方から射爆場の返還について質問がありましたが、これは田中さんもおっしゃったように、実は、ほんとうは総理大臣に出席をしていただいて、この点についてとことんまで決意を披瀝していただきたいと考えておりましたが、ぜひ一つわれわれの意見を率直に聞いていただいて、総理大臣にわれわれの意のあるところを十分に伝えていただきたいということを、まず、もってお願い申し上げる次第であります。
 今の問題に関連して質問をしたいと思います。実は、ほかの委員会で、私が朝霞の返還の問題について質問をしたのでありますが、この朝霞は、当然返還されるものだという前提のもとにオリンピックの計画が進められたわけです。ところが、突如として返還は不可能だという回答に接して、非常にあわてまして、その結果、これは本来なら政府の所管ではないわけで、東京都が責任を持って開催をすべき行事ではあるけれども、しかし、日本としては有史以来の初めての大規模な国際的な行事であるという点で、政府としても無関心でおるわけにはいかないということで、外務大臣なり、あるいは政府当局自体が、積極的にアメリカとこの朝霞の返還の件について交渉を進めておるということを聞いて、これはきわめて当然な措置だというふうに考えるわけです。ところが、この射爆場付近にあります原研の問題は、これは一地方の問題ではなくて、政府があげてこの科学技術振興のために、原子力科学の推進のために、積極的にイニシアチブをとって推し進めて参ったということは、今さら言うまでもないと思います。従って、オリンピックの場合とは違いまして、これは政府自体が責任を持って対処しなければならぬ性質のものである。それと同時に、この危険性の問題については、この委員会では何回も申し上げておりますので、今さら繰り返す必要もないと思いますけれども、もうすでに誤爆が二百発くらいになっております。一番近いのは、この原研から去ること三百メートル程度のところにも落ちております。その後、今、官房長官がおっしゃったように、いろいろと手段を講じて安全を保つという点で、射爆場の的を海上に移すというような措置もとっておりますけれども、だからといって、この誤投下というものが跡を断ったわけではないのであります。この原研があるということだけでも相当危険であるところに、かてて加えまして、コールダーホールというのが隣接して作られる予定になっておりますことは、今さら申し上げるまでもありません。ところが、これは十五万六千キロというきわめて膨大な設備であります。これが一たん事故を起こすということになれば、はかり知れない大きな災害を与えるということで、今回提案されたこの損害賠償法案となって現われたわけでございますけれども、このコールダーホールというものを設置するに際しましては、地元の県当局としまして、絶対射爆場は返還されるんだということを前提としてこの設置に承認を与えることになっておりますことは、今さら繰り返すまでもないと思います。ところが、いまだにこの射爆場返還の交渉が遅々として進まない。今お話を伺えば、極力事故のないように、保安上の設備について十分な配慮をするんだと言っておられる。これは、中曽根さんもここにおられてよく事情はわかっておりまするが、射爆としては、陸上の的を海上に移したというふうなことで大体事故を少なくするという可能性はありますけれども、海上の方からの射爆訓練というものは、いかに海上に的を移しても決して安全だとは言えません。もう曲芸のように、ぐっと超低空でやって参りまして、さらに急上昇しまして、そこでたまを放つというような、軽わざのような射爆になっておるわけでございますから、いかに細心な保安上の施設、考慮を払いましても、絶対安全だという保証はできないということは、あの爆撃訓練を見て参りますと如実にそれがわかるわけです。従って、われわれは、原子力産業の健全な発達を願う見地からいたしまして、世界各国どこにも類のないような、原研の施設が集中しておるという点にも問題がありますけれども、これのすぐそばに危険な射爆場があるということになりますと、これは世界のどこにも例のないことです。定期航空路の下にも原子力の施設は作らないというのが各国の常識になっております。立場を変えて、これが日本でなくて、外国にこういうことがあったということになりますと、おそらく、国民の世論は絶対にこれを承認しないであろう。日本人だから、アメリカさんのことに対しては割合親善の気持というものが根源をなしておるかどうか知りませんけれども、黙々としてこれを黙認しておるという形になっております。最近、知事がアメリカに行って、向こうで話をした談話が大きくイブニング・ポストでしたか、何か有力紙にも出たそうであります。これで、もし事故が起こったらどうなるのだというふうなことが、でかでかとあちらの新聞にも出たそうでありますけれども、アメリカ人の良識に訴えて、これは必ず理解される、こういう性質のものだろうと思います。私は、実は、個人的に小坂外務大臣にも会ってこの話もいたしました。ところが、日米合同委員会というものがあるので、そこを通じて話をするほかないのだ、こういう話であります。しかしながら、筋としてはそうでありましょうけれども、少なくとも、今度の朝霞の返還の問題に見られますように、すなわち、東京都と向こうに交渉するのが筋だといっても、それにはまかせられないというので、政府が乗り出した。これよりもはるかに深刻な問題でもあるし、それから、一たん事故が起こった場合を想定いたしますと、たとえば、外国のウィンズケールにも若干の事故がありました、それからアメリカのアイダホにも事故がありましたけれども、それほど大きく日本では取り上げられませんでした。しかし、敷地の広さは、大体関東地方がすぽっと入るくらいの広さのところで起こった非常に大きい事故であります。日本ではそれほど大きな問題になってはおりませんが、日本であれに類するような問題が起きたら、おそらく社会動乱で、内閣総辞職は必然であります。それくらい原子力の事故は危険であるということを十分にお考えに入れていただいて、そして、私がお願いしたいのは、今の答弁では、何とか保安上の施設を完備さしたいというふうな御答弁でありますけれども、一たん事故があるということを前提として考えます場合には、そのような中途半端な考え方では重大な問題になる可能性を持っている、危険性があるということを一つ十分にお考えをいただきたいと思うのです。従って、私は、日米合同委員会の中でこの問題を処理するといいましても、向こうの軍部の態度は、むろん射爆場がなければ困るという一点張りで、代替地を見つけろというふうなことで、一歩も前進しないということが考えられます。しかしながら、これは、そういう段階での交渉ではなくて、もっとトップ・レベルで、もっと積極的な交渉を進めるべきである。というのは、先般茨城県議会で県当局が追及をされまして、前の言質をたてにとられて、当局は射爆場の返還に熱意がないのじゃないか、これをやるという約束であったのではないかという追及にあって、知事がアメリカに渡って交渉をしようというようなことになりましたけれども、知事が行って交渉するというのは邪道であります。これはあくまでも政府間の交渉にまかせなければならぬ。従って、そういう目的も含めて現在知事が向こうに渡っておりますけれども、所期の目的を達成することは非常に困難だと思います。従って、このような、正統なルートでなしに、知事がアメリカに渡って交渉しなければならぬところまで地元の方は追い詰められて、世論が非常に紛糾しつつある。この原子力の危険性というものがわかりつつあるということから、非常な不満が根強く燃え始めてきておるというこの現場の実情、現地の実態というものをよく御認識いただかなければならぬと思うのです。そこで、私がお願いをしたいのは、今までの考え方のように、日米合同委員会で処理するのだというようなことでは絶対にけりがつきません。そういう性質のものだろうと思うのです。従って、今度総理大臣が渡米されるときには、おそらく官房長官もついていかれるのではないかと思いますけれども、重要な案件の中にこれを一つつけ加えて、国民の立場に立って――もしアイダホと同じような事故が起こったら、もう大へんな動乱が起こる。これははっきり申し上げることができます。アメリカだから大した騒ぎになりませんでしたが、日本は立地条件が違う。今度の法案も、そういう事情の違うことを無視して、外国並みに作られた法案であるので、私は非常に不満の点が多いのですが、これはこの際除外いたします。ともかく、そういう実態をよく考えていただいて、今度の渡米にあたって、このことについても積極的に向こうと話し合うということこそ、国民の立場に立ち、また、原子力産業の正常な発達を期待するためにぜひとも必要なことだ、こう考えますので、その点の御決意を一つ御披瀝願いたいと思います。
#38
○大平政府委員 現地の実態に即しまして御注意をいただき、また、いろいろ啓発していただきましてありがとうございます。私どもといたしましては、演習場、基地全体につきまして、これは権利とか、義務とか、条約上の規定がどうなっているとかいうことも大事なことでございますけれども、本来、日米間の信頼と了解が基礎になるわけでございまするから、いきなり返還を要求するとか、そういうハイハンデッドな手段を講ずる前に、まず、現在の施設を前提にして科学的に検討を加え、精細な吟味を加えて、保安上の施設に十全を期する、それだけの誠意がまず必要ではないかと思うのでございます。しかし、これとても、あるいは今御指摘のように、いかに十全な施設を講じましても、なお限度を越えるような事態が起こらないとも限りません。そういう場合には、おっしゃるように高度の政治折衝によって業態を解決しなければならぬと思います。そういう段階になる場合におきましても、その前提として、今置かれた条件のもとにおいて、日本政府としては誠心誠意最善を尽くすという前提があって、初めて高度の政治折衝が実を結ぶと思うのでございます。ただいまの段階は、この茨城県のケースばかりでなく、全体につきましてそういう心がまえで当たっておるわけでございまして、それが限界を越えているというようなことになりますならば、当然これは高い政治的な見地から解決を求めなければならぬと思います。訪米の際にこういう問題を取り上げる決意があるかどうかという御質疑でございますが、もとより、今われわれが当面いたしておりまする非常に大事な問題でございますので、こういう件につきましても討議の対象にしていただくように用意をいたしております。
#39
○石川委員 訪米に際してこのことを真剣に取り上げていただくという御答弁でございます。その点については非常に意を強くいたしたわけであります。もし事故が起こったらとんでもないことになる。実は、私も、地元でこれの誘致をされるときには、それほど大きな事故がある性質のものだということは考えておらなかったわけでありますが、だんだんわかればわかるほど、これはとんでもないことになるという危険感をひしひしと感ずるようになりましたので、おそらく官房長官も、原子力というものを勉強されますと、ますますわれわれと同じような気持にならざるを得ないと思うのです。
 それはともかくといたしまして、今の前半の答弁は、私は率直に言って非常に不満であります。と申しますのは、この返還の問題は、コールダーホールあるいは原研が作られますとき、すでに一つの条件として提示をされまして、政府もこれに対して善処を約束しておられるわけであります。それから、中曽根さんなども科学技術庁長官になられましたときに、いち早くこの返還問題に取り組んで、一誠意を持って積極的な打開、解決をはかるということを約束され、歴代の科学技術庁長官は、そういう公約を確約されていたわけです。今その返還をいきなり交渉する段階ではないというふうな御答弁だとすると、これは単なる口頭禅、から約束で、実際は親身になってそういう積極的な交渉をしておらなかったのだという結果にならざるを得ないと思うのです。従って、今いきなりこの問題が出たことでないことは、今さら申し上げるまでもないわけであります。それから、事故が起こってから、それをきっかけとして、高いレベルでもって交渉を進めるというふうなお話ですけれども、事故が起こったときはおしまいです。とんでもないことになる。そういうことでありますので、事故が起こる可能性があるからこそ、原子力の安全という見地、あるいは原子力産業の健全な発達という立場でお願いしておるわけです。
 それと、私たちは、社会党ですから、もちろん基地に反対という立場もございます。しかしながら、私たちは、その立場を離れて、もちろん自民党の方々も全部同じ気持になって、きょうは決議文として返還に対する要望をしようということにまで全会一致で了解がついておるわけでございまして、その点も考えてもらいたいのと、あと一つは、実は、首都圏整備委員会の中で、このすぐ隣の那珂湊、勝田、そういうところは、最も重点を置いて百万都市を作ろうという第一の対象になっておるわけであります。ところが、そこにこの射爆場がある。従って、その発達に対して非常な――三百六十万坪という広大な面積ですから、その発展に対して非常な障害になっているということを、あわせて一つお考えをいただきたいと思う。何回も申し上げるようでございますけれども、今射爆場返還の問題が出たのではないのです。それはすでに十年間にわたって毎度々々地元からは陳情が出ておるので、誤投弾は二百発以上に達し、しかも、誤投弾その他によって死んだ人が六名も出ておるというような事態を考えても危険千万ですが、その程度ならまだいい。もし万一この原研あるいはコールダーホールの炉から事故が起こったら、これは繰り返し強調しますけれども、全く社会的動乱になる。これははっきりと申し上げておきます。これはイギリスやアメリカとは立地条件が全く違うということを念頭に置いて考えないと、ウインズケールは大したことはなかったじゃないかというふうな考え方でいったらとんでもないことになりますので、その点もあわせてよくお考えをいただいて、これはぜひアメリカに渡ったときに――これは知事も、大体向こうの副大統領ぐらいにはお会いしたようでありますから、おそらくこの話も出ておると思います。向こうの有力な、イブニング・ポストと思いますけれども、大きく取り上げて、事故が起こったら大へんだというふうなことが、世論にまでいっておらないようでありますけれども、わかる人には相当わかってもらっている。従って、これは軍部の段階ではなしに、アメリカに渡ったらぜひ積極的な交渉を真剣に取り組んでやってもらいたいということを重ねて申し上げますのと、事故が起こったら、あるいは何かのきっかけでということでなくて、返還問題は前からの引き続きの政府の責任であるという点を私は確認したいと思うのです。その点についての官房長官の御答弁をもう一回いただきたいと思います。
#40
○大平政府委員 私はちょっと言葉が足りなかったのですが、返還を求めることを遠慮しまして、弱腰であるというわけでは決してないのです。ただ返還を求めるのだ、返還の交渉をするんだということだけでは、実際問題の解決に必ずしも寄与するものじゃない。従って、そういうような事態を招来させるためには、与えられた条件で最善を尽くすということが同時に行なわれてないと、実り豊かなものにならぬのじゃないかという趣旨のことを申し上げたつもりでございます。それから、国といたしまして施設をいたしますと同時に、また、米国と条約、協定を結びましてやっております以上、国に責任がありますことは当然だと考えております。
#41
○石川委員 この点は、もう繰り返しませんけれども、大へん重要な問題だと思いますので、この委員会でも当然決議が出る運びになっておりますが、この射爆場の返還については、ぜひ一日も早く解決できるように積極的な御交渉をいただくことを心からお願いいたしまして、この点に関する質問を終わります。
#42
○田中(武)委員 ただいまの石川委員の――ことに、石川委員は東海村の近くでございますので、事情もよく承知の上で強い要望が出たわけでございますから、一つ官房長官から総理にも十分意見を具申していただいて、今度アメリカへ行かれたときには、ぜひその機会に解決ができるようにお願いいたしたい、このように私どもの方からも希望いたしておきます。
 次に、官房長官にお伺いいたしたいのでありますが、今回、原子力災害に対して、特にこのような無過失集中責任制の法律が出たわけであります。これは原子力産業がほかの産業より、一朝事故があれば大きな事故であるというような点、あるいは新しい産業だという観点から出されたのであろうと思うのですが、あえて事故を招く産業は原子力だけではございません。ことに、今後化学重工業の発展につれて、やはり相当な規模の事故もあり得る産業も出てこようと思うのです。あるいは第三者からいえば、原子力であろうが何産業であろうが、その産業の事故によって起こるところの災害に対しまして、これはやはり無過失について同じような賠償を要求する、この立場は同じだと思うのです。そこで、今回は原子力だけですが、他の産業、たとえば、化学重工業等については、今後政府はどのように考えておられるのか。これも一つの所管官庁の問題でないので、総理の代理としての官房長官からお答えを願いたい、このように考えます。
#43
○大平政府委員 巨大な施設ができまして、その操業をめぐりまして周辺の住民の生業、生活等に不測の影響を見る度合いがだんだん大きくなってきておるということにつきましては、田中委員と見解を同じくするものでございまして、いわゆる無過失賠償の法域で処理すべき問題がだんだん多くなってくるのではないかということを私どもも考えておるわけでございます。ただいま御提案申し上げて御審議をいただいておりまするこの両法案につきましても、そういう法域で取り上げました一つのケースでございます。今後、経済の進み工合によりまして、普通の規定の実定法で片づけることができないような問題が出て参りますならば、本件のように、政府の方で特別の立法をやっていって事態に対処するということは、政府の責任として当然だろうと考えております。
#44
○田中(武)委員 官房長官の御答弁は、先ほどもそうだったし、今もそうですが、そういう事態が起こりますならばと、こういうことなんです。起こってしまえばおしまいだ、こういうことになるわけなので、現在の民法の解釈からいっても、これは無過失責任ということは通説であろうと思う。従って、なくともやれるというような法律的な解釈が出ようと思うのです。しかし、原子力に対してこのような明確な無過失責任及び責任の集中という制度を確立せられたならば、他の産業に対しても同じような理念を持って臨むべきではなかろうか、このように考えるわけなんです。そこで、そのことに対して政府としての考え方を聞いておるわけであります。
 さらに、科学技術庁長官にもお伺いいたしますが、科学技術庁長官としても、科学の進歩はより一そう複雑な膨大な設備を必要とします。従って、事故が起きれば大きな事故になるということは、今後他の産業においても考えられるわけです。そういう点を科学技術の振興という立場から見まして、他の産業に対してどうするのがいいのか、これは両長官にお伺いいたします。
#45
○大平政府委員 私の答弁がどうも抽象的で恐縮でございますけれども、普通の産業災害でございますれば、それの技術は原子力技術のように未知の部分が少ない。従いまして、現実の産業の技術水準において住民の不安を取り除くような予防措置が、これは案外しやすい面があると思うのであります。従いまして、今審議いただいているような形における大規模の大胆な法案、そういったことは必ずしも普通の産業災害の場合にはないのではないか。その産業の技術の実体に即しまして、おっしゃるように、われわれの仕事は、災害が起こって跡始末すればいいなんというわけではございませんから、予防上の見地からも、立法すべき必要があれば、国会の方にお願いするにやぶさかではない、そう考えております。
#46
○池田(正)国務大臣 災害は、これは近代文化が進むに従って思わないところに発生していることは御承知の通りであります。ことに、実態的に見ますと、現在の災害の一番大きいものは交通関係に非常に多い。自動車関係だとか、それから、その次は鉱山、そういうような面にあるので、そういう面も政府としては当然考えなければならぬし、従って、最近、私は交通問題を取り上げて科学技術庁の立場からこれらの問題も除去しなければならぬということで取り上げたわけでございます。しかし、田中さんの御質問はそういうところではなくて、さらに、これから科学の進歩によってそういう面がだんだん多くなっていくのではないか、それに対処するにはどうするか、こういうことだと思います。それは、今、官房長官からも言われましたように、現在の段階では未知の部分もたくさん包含しております。原子力その他のものは大体わかっておる。しかし、大体わかっているからといって放置するものではないし、また、これから科学の発展、開発がどの程度までいくか、これまた未知の問題であまりす。従って、それはそれぞれに即応して措置を講ずるということは、科学技術庁の立場から当然でありまして、御心配になるようなことのないように十分に留意していきたい、かように考えます。
#47
○田中(武)委員 今おっしゃった交通事故については、すでに無過失責任制を明確にした法律があるわけなんです。私の申し上げておるのは、いわゆる産業といいますか、事業といいますか、このことによる災害、このような経済機構、産業機構になった場合に、これはもう明確に無過失責任を持っておるのだ、課するのだ、こういうことはもう通説だろうと思うのです。しかし、原子力はなるほど新しい産業である、未知のものである。従って、それの発展のためには十分な措置が必要である、こういうことから出ておりますことは了解いたしておりますから、この法案があえていけないとは言っていない、こういうものを作るならば、なお、他の産業に対しても、一般的な産業災害に関する賠償法といいますか、何かそういったものが必要ではなかろうか、こういうことを申し上げておる。政府としては、すぐにそういうことに対しても検討を進めてもらい、これと同じような無過失責任で、そうして、なお、被害を受けた第三者に対して、その救済に遺漏のないような措置を求めたい。たとえば、一昨年の秋ですか、横浜で火薬の爆発がありました。あるいは引き続き、運搬中の火薬の爆発で、多くのうちのガラスとか屋根を飛ばしたという事故、人はあまり死ななかったようですが、私、実は横浜の火薬の爆発は見に行ったわけです。そのときにも、結局被害を受けておるのは、生活保護を受けるような、そういう長屋のようなところが多いわけです。ばらばらになっておる。会社としてもそれを救済するなにがない、国もできない。そして、横浜の市役所ですか、区役所ですか等では、何か救済対策本部を持っておるけれども、十分なことができなということがあった。従って、火薬のようなものでも、一たび事故を起こせば、人命等にはそう大きな影響がないとしても、そのまわり一帯の民家に対して相当大きな被害を与える。その場合に、そういった会社自体が十分な補償ができないという場合もあろうと思います。従って、産業全般にわたっての同じような考え方を私は推し進めるべきではないかと考えるので、あえてこれを申し上げて希望いたしたいと思います。
#48
○石川委員 官房長官は大へんお忙しいようですから、長官に対する質問を一点だけ申し上げたいと思います。今度のこの災害賠償法案は、近い将来に原子力損害賠償の国際条約がまた改められるのじゃないか。現在のところは、国際的な金融市場で再保険にかけても、日本の災害賠償の関係は五十億がアッパー・リミットであるということで、この案法ではそういうふうに規定されておる。ところが、どういうところで話が出たのかわかりませんけれども、漏れ聞くところによると、原子力船の災害賠償につきまして、この保険金額を大体一億ドル――これは五十億円だから大体千五百万ドル足らずの程度だろうと思う。ところが、一億ドルということになると、大体七倍程度で三百六十億円、相当アッパー・リミットが上に上がることになりますけれども、国際的にそういうことになれば、これは当然の形で引き上げられざるを得ないだろうと思うのです。これは我妻教授に参考人として来ていただいたときにも、国際間の協定がそうなれば、当然五十億というものを上げなければならぬ、これはきわめて当然であるという答弁があったので、私たちは別に疑問に思っておりませんけれども、金額はかなり大きくなることでもありますので、内閣の立場から、そういうふうに国際協定が直れば、この五十億というものはそれに準じて引き上げられるのかどうか、念のために一つ承っておきたいと思います。
#49
○大平政府委員 今、御指摘のような国際条約ができ上がりまして、その条約が批准成立を見、わが国もこれに参加するということになりますならば、当然それと抵触する規定は、今おっしゃるような方向に措置すべきものと考えております。
#50
○田中(武)委員 科学技術庁長官にお伺いいたしたいのですが、この両案によりまして、国は事業者に対して補償契約を結んで、補償してやろう、こういうことで、事業者に対する国の保護といいますか、国の援助といいますか、これも相当大きなものであります。そこで、そういうような援助をするとなれば、一面において、監督なり、事業の運営について十分の指導あるいは介入が必要であろう、このように考えます。原子力の運転等についてはそれぞれの法律がありますが、経営面についてはどのような監督なり、あるいは指導なりをしようと考えておられるのか、その点をお伺いいたします。
#51
○池田(正)国務大臣 発電の場合は、御承知のように、公益事法によりまして、あと、その他の面については原研法によってこれを監督していく、こういう立場であります。
#52
○田中(武)委員 そういった、たとえば原子炉の運転についての規制だとか、そういう点についての法律はあるわけです。私の言っているのは、現在では、まだ原子力事業がそういう段階でない、こういうことになろうかと思います。はっきりいえば、もうけるときにはもうけるだけもうけさせておいて、そして一朝事故が発生した場合は、保険なりあるいは国の補償契約によってカバーしてやろう、そのために国は相当の支出を必要としているわけです。従って、その対象としては、経理面等においても、もっとざっくばらんにいえば、商法の規定を越えて監督の必要があるのじゃなかろうか、このように考えるわけなんです。その点についてはどう考えておいでになりますか。
#53
○池田(正)国務大臣 これは非常に大事なことでございまして、こまかいことは一つ局長から……。
#54
○杠政府委員 ただいま御指摘の点は、大臣からお答え申し上げましたように、まことに大切な点でありますので、行政指導の面におきまして十分に気をつけていきたい。ただし、つきましては通産省の所管になっておりますので、通商産業省とも十分に連絡をとって、利益金の有無、あるいは利益金の処分等について指導を行なっていきたいというふうに考えております。
#55
○田中(武)委員 この法律によれば、事業者の責任は、我妻先生の言葉をかりていえば青天井である。しかし、一応五十億円というところで保険なり、あるいは補償契約でカバーする、そうすると、大体の感じとしては、五十億までで、それから上はというような感じが出るわけなんです。しかし、実際は、法の精神はそうでなくして、者にそれ以上の損害に対しても持たすのだ、こういう趣旨なんです。それならば、現在ではもうかっていないかもしれませんが、そのときの用意のために別に積立金を作らすとか、あるいはまだ配当までいかないだろうけれども、配当までいく場合は配当の制限を行なうとか、商法の規定を越えて、そういう賠償積立金というものを行政指導でやるか、あるいは法律によって利益金のうちの何割を強制的に積み立てをさせるというような措置が望ましい、このように思うわけでございますが、その点はどうです。
#56
○杠政府委員 ただいま御指摘の点は、まことにごもっともでございまして、五十億円以上をこえたからすべて国が援助する、事業者は何も知りませんということは、まことによろしくないことだと考えております。従いまして、国の援助がありましょうとも、事業者といたしましては、利益金が生じましたおりには、当然その中から積み立てをしておかせるというような措置を講ずべきであると考えております。この点につきましては、発電全社の所管庁であります通商産業省とも十分に御趣旨のような点を打ち合わせまして、その通りに行政指導をして参りましょうというような、私の方の庁と通産省との話し合いになっております。
#57
○田中(武)委員 原子力災害の中にエックス線なんかは入るのですか、入らないのですか。
#58
○杠政府委員 エックス線は残念ながらこの法律の対象からは除外されておりますが、将来にわたりまして、やはりエックス線の被害ということも当然問題にしていくべきだろうと考えております。
#59
○田中(武)委員 この事業では入らない、しかし、エックス線の災害も無視できないから、ほかの方で考えていきたい、こういうことなんですが、具体的にどういう考えをお持ちでしょうか。
#60
○杠政府委員 御承知の通り、エックス線につきましては医療法等の規定もございますし、また、労働基準法によりますところの工業用エックス線その他の関係による従業員の被害というようなこともございますので、これは他の法律体系にもございますが、やはりその点についての保護ということも十分にはかっていただくようにしていきたい、われわれは連絡をとって参りたいということでございます。
#61
○田中(武)委員 そうすると、既存の法律においてやっていこうということなんですか。
#62
○杠政府委員 その通りでございます。
#63
○田中(武)委員 エックス線の災害も私は無視できないと思うのです。従って、こういった法律ができるならば、その中へ入れたらどうかという観念を持っておるのですが、あえて入れられないということは、すでにそういった法律があるからなんですか。
#64
○杠政府委員 エックス線による被害は確かにございますが、いわゆるここで申します第三者損害というものは、現在のところ起こっていないというふうな認識をいたしております。従いまして、従業員を含めるか含めないか、従業員の放射線による災害、これを扱いますおりに、今の厚生省、労働省等、関係省とも連絡いたしまして、十分な措置を講じていきたいということでございます。
#65
○田中(武)委員 おっしゃるように、これはその従業員とか近くの者であって、第三者は少ないだろう、そういうことは言えると思うが、やはり絶無とも言えない。従って、先ほど来言っておりますところの産業一般について、同じような考え方の措置が必要じゃないか、こういうことを強く要望しておきます。
 次に、岡委員も先ほど質問しておられたようでありますが、損害賠償法の第三条二項でございます。これによりますと、受取人の方で全責任を負うのだというようになっておるわけです。これは我妻先生によれば、国際条約がそうであるからというような答弁であったと思うのですが、この受け取る以前のいわゆる瑕疵と申しますか、ことに、故意または過失がある場合には五条によって求償権がある。ところが、故意または過失でない場合、そのもの自体に瑕疵があった場合、これは広い意味における過失だと思う。そういうような場合は五条が適用になるのか、それとも、受取人だけで泣き寝入りになるのですか。
#66
○杠政府委員 第三条におきましては、やはり受取人にすべて賠償責任があるという考え方でございます。
#67
○田中(武)委員 なぜ受取人ということに限定をしたのか。
#68
○杠政府委員 やはり被害者の保護ということに非常に重点を置いておりますので、原子力事業者の方の責任集中の原則を貫きたいということでございます。被害者がどちらへ賠償の要求をしたらいいかということで迷わないように、すなわち、原子力事業者の責任集中の原則を貫くという趣旨からでございます。
#69
○田中(武)委員 五条で、故意または過失があった場合には求償できる、こう持ってきたわけですね。そうすると、この故意はわかるのです。しかし、過失というのは、通常の過失なのか、重過失なのか。
#70
○杠政府委員 やはり重過失も、また通常の過失も、すべてを含んでの考え方でございます。
#71
○田中(武)委員 それじゃ、この五条のただし書き以下はどういうのですか。
#72
○杠政府委員 ただし書き以下は過失の場合が除かれておりまして、故意があるときに限る、しかも、それは資材を供給した人そのものか、またはその従業者の故意に限るというふうに限定いたしております。
#73
○田中(武)委員 なぜ限定したのか、なぜ過失を入れなかったのか。
#74
○杠政府委員 やはり第三者保護、すなわち、被害者保護ということに徹するという立場から、過失ということの挙証が非常に困難な場合が供給の場合において多うございますので、故意というふうに限定したわけでございます。
#75
○田中(武)委員 これは内部関係ですよ、求償権の問題ですよ。従って、第三者保護とは関係ありません。どうです。
#76
○井上説明員 第五条のただし書きの点でございますが、第五条のただし書きの点につきましては、これは前項におきましては一般的な方針をうたったわけでございますが、一般第三者と違いまして、資材の供給等をいたします者に対しましては、過失の有無というような点まで追及されますと、サプライヤーの立場になりますと、同じくサプライヤーは保険に入るとか、あるいは国家と補償契約を結んで何らかの損害賠償ができるような措置をしなければいかぬ、非常に法律関係が広範多岐にわたるわけでございます。従いまして、直接関係のあるこういう資材の提供者、サプライヤー等に対しましては法律関係を簡明にいたす趣旨で、特に故意だけに限定いたしたわけでございます。そういたしませんと、すべての関係――下請業者に至るまで、すべてがこの保険措置なり、補償契約なりというような措置をいたしませんと経営の安定ができない、非常に法律関係が不明確になるというような趣旨から、こういう集中的な考え方をとったわけです。
#77
○田中(武)委員 下請等の関係においてその補償関係が複雑になるので、そういう下請関係等については故意になる場合に限定した、そういう趣旨なのですね。
 次に、賠償補償契約法案についてお伺いしたいのですが、この三条三号、これは一体どういう意味ですか。
#78
○杠政府委員 いわゆる後発性障害と言っておりますけれども、原子力障害特有の現象でございまして、たとえば、原子力の障害を受けたけれども、そのときには何でもなかった、その後十年経過してみて、初めて障害が現われてきて、その障害に悩むというような事実がございます。そこで、そういう場合にも、この補償契約の対象として契約を結んでおきましたならば、第三者であるところのその被害者は泣き寝入りにならないというためのものでございます。その事実は、すなわち、原子力損害の発生の事実のあった日から十年を経過する日までの間に被害者から賠償の請求が行なわれていなかったというようなものが、――行なわれるのが普通でございましょうけれども、その間に、すなわち、障害の原因は潜在的にあるわけです。しかし、被害者がそれを明らかに自覚しても賠償の要求をしないというような場合もあり得ますので、そのような際にでも、十年を経過する日までの間に賠償をもらってない限りにおいては、その人はあくまでも補償契約の対象として、権利として保有さしてあるという規定でございます。
#79
○田中(武)委員 それでは、十年たってから後にそういう症状が起きたというときにやるのだ、こういう意味ですか。
#80
○杠政府委員 その通りでございます。
#81
○田中(武)委員 四号の政令は、一体どういうものをやるつもりですか。御説明願います。
#82
○杠政府委員 これは輸送途中に起こるところの原子力損害というようなものが考えられます。それからまた、一方、保険約款におきましては、保険約款上のいろいろな届け出といいますか、そういうことをいたしております。ことに、重大な事項に対しまして変更を行なったときには、その原子力事業者から保険会社に対して通知をしなければならないということになっておりますが、その通知を、たとえば怠ったというような場合には、保険金の支払いというものはございませんので、そういう際にでも、その補償契約を結んでおきましたならば、国家は補償いたしますというような内容の政令を考えております。
#83
○田中(武)委員 六条の補償料は一体どの程度に考えておられるのですか。
#84
○杠政府委員 ここに「補償契約に関する国の事務取扱費等を勘案して」と書いてございますように、この事務取扱費に多少のプラスというような程度で考えております。
#85
○田中(武)委員 そうすると、補償料というのは、結局は事務取扱費プラス・アルファ程度である。それなら、契約の対象としての相手方から取る補償料、これに対する基本的な条件は考えていないわけですか。
#86
○杠政府委員 契約の相手方は原子力事業者でございますが、その原子力事業者からも、やはり国の事務取扱費はもちろん当然もらいますけれども、それ以上に、今のプラス・アルファと申しましょうか、その料金をもらうことにしたいということでございます。と申しますのは、賠償法でほとんどの場合はカバーされますが、先ほど御指摘になりましたように、第三条におきますところの、地震または噴火によって生ずる原子力損害であるとか、あるいは正常運転をしておるにもかかわらず損害があるとか、あるいは後発性障害であるとかいうようなことでございます。非常に限られた、事故を原因とするところの損害が発生した場合に備えて、しかも、第三者を泣かせない、そのために備えての補償契約法でございますから、補償料金としてはやはり低率にきめておく。と申しますのは、原子力事業者は、すでに賠償法に基づくところの義務として、相当多額の保険料を支払うというようなことになっておりますので、このような措置をとっていきたいと思います。
#87
○田中(武)委員 私の言っているのは、第六条に「一年当たり、補償契約金額に補償損失の発生の見込み、」云々と書いてある、これをどの程度に見て、いわゆる事故率をどのように見て、基本金をどのように見ているか。たとえば、補償金に対して何%くらいのものを見込んでおるのか。それの算出は、何か基礎になるもの掛ける事故率ということになろうと思うのです。そのようなことをどのように見ておるのかということです。
#88
○杠政府委員 その点につきましては、保険の例にならいまして算定していきたいということでございまして、まだ具体的にここで御答弁申し上げるまでに固まっておりません。
#89
○田中(武)委員 この補償料とか補償金とかいうことは、この契約法の一番基礎だと思うのです。しかるに、その基礎になるべきものがまだきまっていない。もちろん、形式的には、この法律が通ってから、この法律に基づく政令という格好で出るだろうと思うのですが、その基礎となるものがきまっていないので答弁できないというようなことでこの法案の審議ができますか。
#90
○井上説明員 ただいまの御質問の補償料の算定の問題でございますが、この補償料につきましては、一年くらい前からいろいろ大蔵省と検討しておりまして、大体の考え方はある程度両省で出しておるわけでございます。ただ、この補償料を考えますときに一つ問題になりますのは、この国家補償契約は、御承知のように、補償契約法の第二条、第三条にも言っておりますが、基底をなしますのは民間の責任保険契約でございます。民間の責任保険契約によっては埋めることのできない損害がありましたときに、その埋めることのできない損害、第三条でうたっておりますように、地震とか噴火とか、あるいは正常過転とか後発性障害、こういうようなものにつきましては、国が補償契約で補償するということになっておりますので、率直に言いますと、民間の責任保険契約の保険料と国家の補償契約の補償料、この二つが合わさって、ほんとうの意味の補償料といいますか、保険料的なものになるわけでございます。従いまして、補償料だけとして、単独では実は補償料幾ら出すというのは必ずしも適当ではないと考えておりまして、この点につきましては、民間の保険料と合わせてこの補償料の算定を考えていくべきであろうというふうに考えておるわけでございます。現在、民間保険は御承知のようにすでに発足しておるわけでございます。すでに原研もこの民間保険には一応入っておりますけれども、しかし、この保険料も、ただいまのところ暫定保険料ということにさせておるわけでございまして、一年間の暫定、保険料ということで支払っておるわけでございますが、引き続きまして、この民間の保険料のあり方、補償料のあり方、特に補償料につきましては、民間保険の保険料とは違いまして、保険料的な性格ではございますが、国の事務取扱費というものを主眼に置いて、できるだけ妥当な線で出していきたい。たとえば、原子力関係につきましては、御承知のように、まだ事故発生の確率というものがございません。いわゆる通常の保険ですと確率によって字険料を出すわけでありますが、原子力関係については確率論的に保険料を算定できないものですから、たとえば、地震についていえば、耐震設計との関連、後発性障害につきましては、外国における検討あるいは日本における検討、そういったものから、これらのそれぞれについてどの程度の補償料をとるのが妥当かというように、こまかく検討いたしまして、先ほど言いましたように、民間の責任保険の保険料と国の補償料と合わせて、一体的にその料金をきわめていきたいというふうに考えておるわけでございます。
#91
○田中(武)委員 保険の方は、保険自体が営利事業ですから、それはわかる。ところが、補償料の方は国でとるわけなんです。今の説明によると、事務取扱費が主体になって、それにプラス・アルファだというふうに聞こえるわけです。この補償料で、危険率の方が事務費よりも軽視せられておるというところに問題があるのじゃないかと思うのです。補償金の算定にしてもそうです。すべて十条によって政令に委任されておるのです。この委任事項について明確な答弁がなければ、われわれとしては直ちに賛成できかねるのですがどうでしょう。
#92
○井上説明員 十条の政令への委任は、補償契約の締結の手続的なものをさしておるわけでございます。さらに、補償料の納付の時期は、毎年徴収いたしますが、それは毎年何月ごろ納めるというような手続的な規定でございますので、先ほど田中先生からおっしゃいましたような大きな政策問題ではないと者えております。むしろ、問題は、田中先生も御指摘のように、補償料をどの程度に、どういう考え方でとるかということかと存じます。私、先ほど国の事務取扱費が一応中心になっておるというような趣旨のお話を申し上げましたが、もちろん、必ずしもそれだけではございません。ただ、国が補償契約を結ぶというように、国の事務でこれをやりますからには、まず、第一に考えられますのは、事務取扱費ということになろうかと思いますが、ただ、あくまでもこの補償契約は保険的な性格でございますから、単に取り扱いだけでいいという性質ではございません。従いまして、六条にも明確に書いてありますように、補償契約金額に補償損失の発生の見込みというものも当然に配慮いたすわけでございます。この発生の見込み等につきましては、先ほど説明いたしましたように、地震の場合は、耐震設計とのにらみ合いで一つの算出根拠を出すわけでございます。それから、正常運転になりますと、これは全く確率的な計算はできませんので、ある程度通常の危険率というものを想定する以外になかろうかと存じております。それから、後発性障害も、これはいろいろ従来の学説、研究、あるいは日本におきましては、原爆障害のその後の被害の状況が貴重な参考資料になろうと思いますので、そういった点も考慮に入れて補償料を算定いたしたいと考えております。
#93
○田中(武)委員 そうでしょう、さっきのあなたの話は逆になっておった。事務取扱費が中心のような説明をされたから言ったのです。そうすると、補償金かける填補率が補償料になる、それじゃ、補償金というものを一体どういうようにして定めるのか。この事故率が出てこないと、補償料がきまらない。従って、十条の納付の時期だとかその他のことが、これも出てこないわけです。基礎は補償金と危険率であります。そのことについて、まだ十分なことができていない、そういうことじゃ、どうもこの法案について基礎があやふやであるといわざるを得ないのです。これについて資料を求めたいと思いますが、いかがです。いつまでに出せますか。
#94
○池田(正)国務大臣 これは、今、政府委員から申し上げたように、田中委員の御心配になりますこともごもっともでありますけれども、考え方としては、今、政府委員から申し上げた通りで、御心配になりますような点も十分に留意してやりますから……。
 なお、今御要求になりました資料等につきましては、いつでも――今日というわけにいきませんけれども、当然あるだけのものはお目にかけて。
#95
○田中(武)委員 長官は、御心配になるような云々ということですが、お答えはきわめて抽象的であります。従いまして、その基礎となる資料を要求いたします。その資料を検討の上で、もう一度法案を検討したいと考えますが、その取り扱いについては、理事会で一つ相談してもらいたいと思います。
#96
○山口委員長 ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#97
○山口委員長 速記を始めて。
 それでは、理事会で決定いたしました通り行ないます。他に御質疑はありませんか。――他に御質疑がなければ、両案に対する質疑はこれにて終了いたしました。
    ―――――――――――――
#98
○山口委員長 これより討論に入りますが、別段討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、原子力損害の賠償に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の方の御起立を願います。
  〔賛成者起立〕
#99
○山口委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
 次に、原子力損害賠償補償契約に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の方の御起立を願います。
  〔賛成者起立〕
#100
○山口委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#101
○山口委員長 この際、岡良一君より、原子力損害の賠償に関する法律案について附帯決議を付すべしとの動議が提出せられております。提出者よりその趣旨説明を求めます。岡良一君。
#102
○岡委員 本法案につきまして、三党共同の附帯決議案を提出いたします。
 まず、附帯決議の案文を朗読いたします。
    附帯決議
 一、本法の目的は、すべての原子力損害に対する被害者の保護を図るにあるから、本法実施に当っては、政府は左の事項の実現を図り、もって被害者保護に遺憾なきを期し、原子力の研究、開発及びその利用の推進に寄与するよう措置すべきである。
  (一) 安全基準を速かに設定し、これに基いて原子炉の過度集中を避け、周辺環境の整備を図る等原子力損害に関する予防措置を講ずること。
  (二) 原子力施設周辺地域の居住者等に対し線量調査を定期的に実施し、被害の早期発見に資するとともに損害認定の基礎資料とすること。
  (三) 原子力委員会において原子力損害の評価に関する具体的基準を設定すること。
  (四) 原子力損害賠償紛争審査会に関する政令において、原子力損害の状況及び損害の評価に関する重要事項を調査するため、必要あるときは審査会に特別委員を置くことができる旨を規定すること。
 二、原子力事業者の従業員の業務上受けた災害に対しては、労働者災害補償保険法の適用のほか、原子力損害の特殊性にかんがみ、必要に応じ、別途被害者の保護に遺憾なきよう立法その他の措置を講ずべきである。
   なお原子力損害に準ずる放射線障害の保護についても同様の措置を講ずべきである。
 三、五十億円を超える損害が発生した場合に、本法の目的である被害者の保護に遺憾なきを期するため、政府は、充分なる援助を行うと共に、あらかじめ、この被害者保護の目的に添うよう事業者の災害賠償に備え利益金の積立等について指導を行うべきである。
 四、近い将来、原子力損害賠償に関する国際条約が成立した場合には、政府はこれに応ずる必要な措置を講ずべきである。
 以上でございます。
 簡単に御説明をいたします。
 この法案の目的は、すでに委員会においても明らかになりましたように、すべての原子力損害に対する被害者の保護をはかることが根本の目的でございます。しかしながら、本法は基本程度でございまして、これに血を通わし、肉を通わすことは、政府の当然な仕事であり、原子力委員会の責任であろうと存じます。
 そこで、第一項中、(一)、(二)、(三)、(四)は、最小限においても、本法実施までの間にぜひとも適当な法制的措置等をとっていただいて、われわれの委員会に明らかにさしていただきたいのでございます。
 なお、第三項に関連をいたしまして、保険料あるいは補償料等でございまするが、原子炉事故の確率、あるいはまた世界における原子力事故の経験はまだまだ不十分でございますので、信頼すべきデータはないではございましょうけれども、しかし、わが国の特殊な事情にかんがみまして、この点においてもあわせ責任ある御検討をわずらわしたいと存ずる次第でございます。
 なお、第二項でございまするが、すでにじん肺法が国会を通過いたしております。しかしながら、あの審議にも現われましたように、労働省としては、独自な職業病を決定することはあまり好まないかのごとくに感ぜられます。また、同時に、すでに放射線の防護に関する法律の場合にも問題となりましたように、レントゲンの所管が厚生省であるか、科学技術庁であるかという、なわ張り的な扱いがありました。しかしながら、いずれにいたしましても、原子力あるいは、放射線に基づく疾病というものは、これはもう共通のものでございまするし、この法案の目的がこれらの救済措置にありますので、でき得べくんば、近代産業の発展ともとに新しく起こってくる職業病については――もともと労災法によってはとうてい救い得ない臨床的な、あるいはまた治療的な問題が出て参ります。願わくは、この諸点についても、各国の事例等を十分に御検討の上で、立法的な措置が必要かと存ずる次第でございます。
 以上、この附帯決議案につきまして、ぜひ政府並びに原子力委員会の善処を促すと同時に、池田原子力委員長、科学技術庁長官も、いずれは欧米に御出張のことかと存じます。どうかそういう機会には、各国における事例も十分に御調査いただきまして、このまだ骨格だけの損害賠償法を、花も実もある損害賠償法にしていただくように、この機会に切に希望をいたす次第でございます。
 皆さんの御賛同を切にお願いをいたしまして、私の提案の説明にかえたいと存じます。
#103
○山口委員長 以上をもって趣旨説明は終わりました。
 これより採決いたします。
 原子力損害の賠償に関する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議に御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#104
○山口委員長 御異議なしと認め、岡良一君の動議のごとく決しました。
 この際、附帯決議に対する政府の所信を求めます。池田国務大臣。
#105
○池田(正)国務大臣 ただいま附帯決議案が可決せられましたが、この附帯決議案に盛られた御趣旨は、いずれもごもっともなことで、特に、これらの問題は、長時間にわたって各委員から御審議を願い、またわれわれに対しても御注意、御勧告等もあり、また、参考人等も多数おいでを願って長時間にわたって御審議を願い、その結果こういうものが出たわけで、われわれといたしましても、十分にこの趣旨を体して御期待に沿わなければならぬと思うし、同時に、また、こういう新しい科学であり、事業でございますので、特にあらゆる角度から十分に留意いたしまして、今後万全の措置を講じたい、かように考えております。
    ―――――――――――――
#106
○山口委員長 なお、ただいま議決いたしました両法律案の委員会報告書の作成などにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#107
○山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#108
○山口委員長 この際、水戸対地射爆撃場の返還に関する件について、石川次夫君より発言を求められておりますので、これを許します。石川次夫君。
#109
○石川委員 水戸対地射爆撃場の返還に関する件につきまして、委員会全員の満場一致の決議をせられますことを心から望んでいる次第でございます。
 三党共同提案の案文を朗読いたします。
   水戸対地射爆撃場の返還に関する件
  各種原子炉の集中せんとする茨城県東海村が、米軍射爆撃場に隣接し、その上空が危険空域として指定されている実情は、世界的にも異例のことである。
  政府は、原子炉の安全性を確保してわが国における原子力の研究、開発及びその利用を推進するため、米軍射爆撃場がすみやかに返還されるよう積極的に措置すべきである。
  右決議する。
   昭和三十六年五月十八日
 この案文の内容につきましては、先ほど官房長官が見えられた際に申し上げておりまするし、さらに、再三この委員会で私から申し上げていることでありますので、この際繰り返すことは避けます。
 問題は、科学技術特別委員会の決議ではありますけれども、これはただ単に科学技術特別委員会あるいは科学技術庁だけで処置すべき性質のものではなくて、前々から、国民の世論の一つといたしまして、この委員会におきましても、また、国会におきましても重大な関心を持っていることでもあるし、当然この決議文の通り、すみやかに返還されるよう、政府としても積極的にこれを推進する責任があることを痛感する次第でありますので、ぜひこの委員会で決議をするとともに、政府当局におきましても、内閣の責任において、これの返還実現が一日も早いように、一つ責任を持って処理せられますことを心からお願いを申し上げて、私の提案理由の説明にかえる次第であります。
#110
○山口委員長 ただいまの石川次夫君の御発言の通り、水戸対地射爆撃場の返還に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#111
○山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 この際、ただいまの決議に対する政府の御意見があれば、伺うことといたします。
#112
○池田(正)国務大臣 ただいまの決議案の御趣旨はごもっともな次第でございまして、われわれも決してこれは等閑視しているわけではございません。同時に、これについては、先ほど官房長官から申し上げたように、内閣としても当然これに対する措置を講じたいと思っております。同時に、私自身も、今回アメリカを訪問するにあたっては、各種の資料をもって十分にアメリカ側とも折衝してみたい、かように決意いたしております。御趣旨に沿うように努力を重ねます。
    ―――――――――――――
#113
○山口委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じますが、その手続などにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#114
○山口委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
 本日は、この程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後零時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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