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1960/12/13 第37回国会 参議院 参議院会議録情報 第037回国会 本会議 第5号
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1960/12/13 第37回国会 参議院

参議院会議録情報 第037回国会 本会議 第5号

#1
第037回国会 本会議 第5号
昭和三十五年十二月十三日(火曜日)
   午前十時四十分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五号
  昭和三十五年十二月十三日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。小酒井義男君。
   〔小酒井義男君登壇、拍手〕
#4
○小酒井義男君 私は日本社会党を代表して総選挙後、初めて召集されました今国会の意義と、昨日行なわれました政府の演説に関連して、主として池田総理大臣に対して質問をいたします。
 国民諸君の期待と注視のもとで開かれました今国会は、第二次池田内閣の組閣と議長人事をめぐって、開会冒頭より空転を続け、召集日から数えて八日目のきのう、ようやく政府の施政演説が行なわれたのでありますが、こうした不手際の原因は、衆議院の議長候補に、人もあろうに、安保騒動の最大責任者であった清瀬一郎議員を持ってきたことにあったのでありますが、池田総理は、衆議院の議長候補をだれにするかは、党内問題であり、他党が異論を唱えることは内政干渉であると言われました。国会の権威を高めるためには、与野党の一致して推薦することのできる議長を選ぶべきであると私は思います。それが新しい国会が正常化に向かう第一歩でなければならないと思うのであります。これでは、池田総理が幾たび政治の姿勢を正すと言われましても、寛容と忍耐を説かれましても、無理を押し通すための寛容と忍耐でありましたら、それは単なる戦術にすぎないのであります。安保国会の混乱について、池田総理に反省の気持がおありになるなら、当時の清瀬議長の行動についてどのように考えておられるのか、これが政治の姿勢を正すと言われる総理の発言とどういう関連を持つことになるものか、承わっておきたいのであります。
 また、池田総理は、低姿勢で選挙に臨み、初め話し合いによる政治を強調し、その後これを取り消し、再び党首会談を提唱されたのでありますが、総選挙後、わが党から日中貿易の打開について党首会談を申し入れますと、参議院出身の委員長代行は党首ではないという非常識な断わり方をされたのであります。池田総理の低姿勢は、選挙のときの得票目当ての宣伝用であり、権謀術策であったのかと、国民も期待に反した気持を持ったであろうと思われます。
 そこで、この機会に、次の二点について池田総理から確認をいただくことは、今後のために必要であると思いますのでお伺いします。その一つは、総選挙のときの公約になかったような重要な問題で、国民の強く反対するもののあるときには、国会を解散して、あらためて国民の意見を聞く意思がおありになるかどうか。その二は、今もって寛容と忍耐を強調しておられるのでありますから、今後は、安保国会において、当院においても過半数に近い議席を持つ全会派を無視して、安保条約関係の国内法のみならず、被買収農地調査会法その他多くの法律案までも単独議決をしておるのでありますが、今後は多数で無理押しをするようなことは絶対にしないということのお約束が願えますか。今後のために総理の心がまえが承わっておきたいのであります。
 次に、選挙法の改正についてでありますが、池田総理は、昨日の演説におきましても、このたびの総選挙の結果に言及して、政策中心の選挙であったという一方の面だけを強調し、自由民主党の政策が国民の支持を受けた結果であると言われたのでありますが、このたびの選挙を反対の面からながめますと、金力と権力と圧力の選挙であったのであります。そのため、最高の腐敗選挙といわれ、一億総買収とさえ書き立てられ、今度の選挙は選挙制度そのものにきびしい批判のあがっておる選挙であったことは、御承知の通りであります。買収供応等の悪質な違反件数も大へんな増加ぶりでありますし、表に出ないものがどれだけ多いか、はかり知ることができません。自由民主党の候補者の得票が多いか少ないかで自治体への補助金に手心を加えると、圧力を加えたり、部落には得票の割当を行ない、それが少なかったら、学校の校舎を建てない、道路の舗装ができなくなる、橋がかからなくなるというような、露骨な運動がやられた地方も、各地で見られたのであります。これでは民主政治も公明選挙も看板倒れというものであります。議会政治の信用回復は、まずきれいな選挙から出直すことが必要であります。わが党は、定員不均衡の是正、連座制と悪質違反の罰則強化、公営の徹底、政治資金の規正強化などを重点として、選挙法の大幅な改正を行なうべきであると考えておりますが、特に選挙法の改正は、解散近しという空気の中では、それを実現することが困難な問題でありますから、総選挙も終わって世論の高まっている今が絶好の機会であると思います。公平な学者や専門家の手による改正案の作成と早期の立法化に直ちに着手される御意思をお持ちになっておらないかどうか、お伺いいたしたいのであります。
 次にお尋ねいたしたいことは、最近の内外情勢の変化と、これに対処する政府の外交経済政策についてであります。
 先般行なわれましたところのアメリカ大統領選挙において、民主党のケネディ候補が次期大統領に当選されましたことは、アイク、ダレスの冷戦政策に耐え切れなくなったアメリカ国民の現状打破を求める要求が、民主党の政策とケネディ氏の若さと政治力に期待をかけた結果であろうと思います。わが党は、ケネディ氏の当選に対して心から祝意を表しますとともに、ケネディ政権のもとで日米間の国民的な友好関係が打ち立てられる新時代の実現することを期待するものであります。ところが、総理も御承知のように、最近アメリカ民主党系の有力議員が次々とわが国を訪れ、重要な報告が出されておるのであります。去る十月二十二日に上院外交委員会に提出されましたマンスフィールド議員の極東に関する報告におきましては、わが国の現状に深い観察を加え、将来への展望が述べられ、経済的諸要因については特に注意が払われ、結論的考察と勧告の中では、最も大切なことの一つとして、わが国の貿易がアメリカに依存している現状を多角化し、多様化すべきであると論じております。また、それに伴ってわが国の将来進むべき外交路線にさえ触れているのであります。その後、スパークマン議員の上院外交委員会に送った報告も、日中関係の打開の可能性を論じており、その表現や程度の差はありますが、内容においては一脈の共通するもののあることを見のがすことができないのであります。大統領選挙の際にも、ケネディ氏は、グレス外交においてアメリカの国際信用は失われたと言い、これを回復すると約束しているのでありますが、これらのことを考え合わせますと、ケネディ政権の対外政策が進むであろう路線を予想することが不可能ではないと思います。特に明年一月の大統領事務引き継ぎを前にして、対外軍事援助の打ち切り、防衛費、後進国援助費の肩がわりを初め、わが国への貿易自由化計画の日程の切り上げ問題があり、ガリオア、イロアの返済等が要求されるのではないかと伝えられておりますが、これに対しても、池田総理を初め関係閣僚は、いたずらに過去の経済成長を自分の手柄とするばかりでありまして、積極的に将来の対策を講じようとはされていないように見受けられるのであります。英国を初め西欧諸国に見られるように、対外政策には弾力性を持たせることが、今後の変化に対処する重要な課題であると思いますが、そのことにお気づきをされておるかどうか、伺いたいのであります。
 池田総理は、ICAの打ち切りが発表されても、年間一億一千万ドル程度のことは問題でないと言い、わが国の外交方針は変える必要がないの一点張りでありますが、こうした保守的な態度は、西欧各国の東西貿易拡大攻勢に立ちおくれを見ることは必至であります。池田総理も、今こそ国際情勢の認識を改めて、弾力的な外交政策をとるべきであると思いますが、その意思をお持ちでないか、伺いたいのであります。
 特に貿易自由化の問題についてお尋ねします。ドル防衛措置として、わが国への貿易自由化計画の日程切り上げが要求されるのではないかと伝えられておりますが、これに対して各大臣や出先機関の見解はまちまちであります。去る十二月二日のワシントンにおけるドル節約影響会議も、結論として、アメリカのドル防衛対策の結果、わが国の貿易自由化に対する圧力増大は避けられないと見ております。去る八日の午後、池田内閣組閣後初めての記者会見を聞いておりますと、池田総理は、一記者の質問に答えて、「ケネディ氏の当選が閣僚の大幅入れかえの理由にはならない、米国のドル問題も影響がないし、米国経済も頭に入れて国際収支などを見てきている」と言っておられます。大蔵大臣も「アメリカのドル防衛によるわが国への影響は大したことはない。経済計画は既定方針通りである」と答えておられるのであります。その後も相変わらずの強気で、心配することはないと言っておりますが、それだけでは国民の不安は消えるものではないのであります。今もって根本的な総合対策はとられておりませんし、また発表もされておりません。貿易自由化は、当然、弱肉強食政策となって農業や中小企業にしわ寄せされ、大資本では合理化攻勢となって現われてくるものであります。これに対する政府の対策と見解をお示し願いたいのであります。
 また、ガリオア、イロアの返済が要求されるのではないかと伝えられておりますが、わが党はこれに対して、今までに日本側の支払った占領軍費や防衛分担金負担を合計すると、もはや残るものはないと考えておりますが、特に国民の立場からしますと、当時の物資はすべて正当なる代価を支払っているのであります。これが再び国民の税金やその他の負担によって返済されることには承服することができない気持のあることを見のがしてはなりません。積み立てられた見返り資金を低利で使って復活強化されたところの一部の独占的大資本のあることも、忘れられてはいないのであります。これに対する政府の見解と、国民の納得する説明がお願いしたいのであります。
 また、政府はドル防衛の措置を過小に評価されているのでありますが、時間がたつに従って、例外のないきびしいものであることや、これがICAによる一億一千余万ドルにとどまらず、広く国内産業に影響することも明らかになったのであります。十二月二日のワシントンにおける日本大使館の合同会議は、アメリカの今後の景気見通しについて、景気はすでに横ばいから下降に入った。今のところ五七―五八年の後退よりは軽微との見通しであるが、しかし、立ち直りの要素はまだ出ていないから、今後の見通しを楽観することはできない、という見解をとっております。もし、アメリカの不況が長引けば、経済政策もさらにきびしいものになることを予想しなければなりません。今のところ、一挙にわが国からの輸入が制限されるとは思えませんが、それにしても、手放しで楽観することは禁物ではないかと思います。アメリカが、輸入の制限、輸出の助成という手を打つごとになりますと、国際的な競争は今より激しくなり、わが国の貿易にも深刻な影響となることは明らかであります。私は悲観的な悪条件を並べてみたのでありますが、楽観する材料がないとしましたら、最悪の場合も一応予想して対策を立てることが必要ではないかと考えるからであります。アメリカの経済に依存することを大前提とした海外経済協力構想や経済成長政策はむずかしくなり、所得倍増計画は実行不可能になったと思いますが、はたして公約の通り進める自信をお持ちになっておりますか、伺いたいのであります。(拍手)
 昨日の衆議院でのわが党の代表質問に対する答弁でも、所得倍増計画は達成できると言っておられますが、それなら、明年度の予算に裏づけされた、明年度を第一年度としての年次別、産業別、階層別の計画案はいつでき上がっていつお出しになるのか、その達成には政府は責任をお持ちになるのか、池田総理からお答え願いたいのであります。
 わが党は、日本経済を成長させるためには、産業の高度化と、それを受け入れるところの市場の開拓が必要な条件であると考えているのであります。産業の高度化に伴う重化学、機械工業製品の輸出市場となれば、後進の開発地域であって、中国、ソ連のシベリア地域、インドを中心とした東南アジア地域をあげることができます。これに対して、まず中国及びソ連など社会主義圏の市場べの一切の貿易制限を撤廃して、全面的に貿易を促進することや、特に中国の経済建設とソ連のシベリア開発計画との結びつけを考え、長期的な貿易協定を結び、アジア・アフリカの低開発地域に対しては、経済技術協力を軸として、借款の供与、輸入の拡大をはかり、日本、中国、ソ連、並びにアジア・アフリカ諸国の間に多角的な貿易を発展させることが必要であると考えておるのであります。特に、今直ちに実行する問題としては、日中両国間の関係を改善することであります。
 そこで、日中貿易の打開について具体的にお尋ねをいたします。すでに、財界においても、中共問題と真剣に取り組む時期が来たという意見があり、所得培増計画の成長率にこだわるヒとなく、輸出振興策を第一に取り上げよという声もあるのであります。さきに中国の周恩来首相からは、日中関係打開の第一歩として、貿易の政府間協定の提案がされており、最近には高碕達之助氏の訪中が行なわれております。現在日中貿易の障害となっているのは、ココム制限を初め、通産省が去る十一月十一日に発表した輸出貿易管理規則による中国の強制バーター指定地域の問題があり、ロンドン銀行決済を直接政府関係機関による為替決済方法に改正することなどがあります。政府がこれらの問題の一つ一つに誠意を示していけば、岸内閣以来最悪の状態にある日中関係は次第に好転するものと信ずるのでありますが、池田総理も事態を率直に正視する勇気を持たれるべきであると思います。この機会に、日中関係打開のため進んで積極的な提案を行なう意思をお持ちでなやか、具体的な方針を示してお答えを下さるよう強く要望するものであります。
 最後に、日韓両国間の関係について政府の方針が承りたいのであります。昨日以来、日韓両国間の非公式な交渉が行なわれているとを報道しておるのでありますが、外務省はこれを否定をいたしております。しかし具体的に六億ドルという数字まで表に出ていることであり、全然事実無根のことではないと思えるのでありますので、調査の結果と今後の方針が承りたいのであります。かつて岸内閣の当時、わが党の反対を押し切りて南べトナムヘの賠償がきめられましたが、その後、南ベトナムの情勢は不安定を続け、先般のクーデターは一応鎮圧をされたものの、今なお政情はきわめて安定を欠いていると伝えられております。これと、北ベトナムとわが国の間に行なわれている通商関係を比較しますときに、南北に二分されている朝鮮との関係には格段の注意を払い、慎重な方針をもって臨むことが必要であります。南北朝鮮の統一問題や中立化の動きの中で軽率な交渉は行なうべきでな、と思いますが、現状と将来の方針が承りたいのであります。
 私の質問は一応以上で終わりますが、池田総理がどのような答弁をなさいますかわかりませんが、わが国の政治経済は今大きな曲がりかどに差しかかっていると私は信じております。アメリカの今後の出方がどうなるにしても、特需や援助が永久に続くと思うことは間違いでありますから、今こそ自主独立の平和外交に進む決意を固めるべきであります。池田内閣にとっても重大な時期であり、その責任を自覚されるべきであることを強調して私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 議会の運営につきましては、多数党であるわれわれといたしましては、たびたび申し上げるごとく、寛容で忍耐強く話し合いを続けていく、この方針に変わりはございません。従いまして、議案につきましてわれわれが単独審議をすることは絶対にいたさない考えでございます。従いまして、他党におきましても、物理的に単独審議に陥らないよう御協力を願いたいと思います。なおまた、公約になかった重要問題につきまして、それがととのわなかったときには解散をするかというお話でございまするが、この解散ということは非常な重大問題でございまして、案件を見て、そうして国会並びに世論の動向に従うべきだと考えております。
 第二に、選挙法の改正でございまするが、昨日触れましたごとく、今回の選挙につきましては非常に批判があるのであります。私はこの国民的批判にかんがみまして、今後公明な選挙が行なわれるよう国民の協力を得、またいろいろ制度につきまして検討を加えていきたいと考えております。
 第三の日米外交問題でございまするが、私は、1過去の状況から申しまして、共和党政府が民主党政府にかわったからといって、外交の基本に変化はないと考えております。従いまして、今後日本の外交方針といたしましては、昨日申し上げましたごとく、世界の平和のために国連の強化に努め、また自由国家諸国と協調しながら、慎重に、しかも弾力性のある措置をとっていきたいと考えておるのであります。
 次に、貿易の自由化でございまするが、の問題は、アメリカのドル防衛のいかんにかかわらず、先般来ガットにおきましても非常に強い要望があるのであります。また私は、日本の国際的地位、また日本の貿易拡大の点から申しましても、また国内産業の整備の点からいっても、貿易の自由化はできるだけ早くやらなければならないということは多年の私の念願でございます。従いまして、ドル防衛の問題のあるなしにかかわらず、私は、国内の産業等の状況を見ながら、既定方針で進んでいきたいと考えておるのであります。なお、お触れになりました農業、中小企業の問題でございますが、これは先般も申し上げましたごとく、農業につきましては、もう各国の例があるがごとく、自由化いたしましても、直ちに農業について全面的ということはないのでございます。どうぞその点は御安心を願いたいと思います。
 またガリオア、イロアの返還の問題につきましては、われわれは五、六年前からこのガリオアは債務と心得ております。この方針は変わりはございません。しかし今正式にこれが交渉は受けていないのであります。われわれは債務と心得ましてこれに善処いたしたいと思っております。
 なお、アメリカの景気の問題につきましていろいろお話がございました。いろいろ議論はございましょう。しかし少なくともケネディ氏は、今までにない年五%の成長率でアメリカの経済を支持していくといっております。従いまして、ある程度のリセッションはございましょうが、私は、アメリカもやはり高原景気とは申しませんが、相当の景気対策をとりますので、アメリカの景気によって日本の経済が非常に混乱するとは私は考えておりません。ただ、問題のICAその他軍事援助の問題でございます。私は過去二年来、日本におけるICAが一億一千万ドル、あるいは一億二、三千万ドル、これは大した問題ではないと考えておるのじやございません。相当の問題でございます。また軍事援助の三億余りの問題につきましても、家族五万五千人がいつごろ引き揚げるか、何人引き揚げるかによりまして、数千万ドルの違いは起こって参ります。さしむきの問題といたしまして、全部が一ぺんになくなった場合には二億ドル程度の計算ができまするが、私はこういう問題でなしに、アメリカの輸出が過去二、三年間非常に伸びが少なくなっておるのであります。従来多いときには七十億ドル輸出超過、その状況が昨年は二十億ドルの輸出超過にすぎない。そうすると、軍事援助その他経済援助は六十億ドルでございまするから、赤字になっておる。だから私は、全体で十億ドルと踏んでおられるこの今回の防衛措置よりも、アメリカの輸出ドライブが日本の輸出にどう影響するかということを慎重に考えなきゃならぬ、こういう問題を持っておるのでありまして、今回の防衛措置につきまして、われわれはこれをほんとうに軽く見ておるのじやございません。少なくとも五、六年前に、われわれが西欧諸国と同じように、アメリカがドルを持ち過ぎているのだ、これを西欧やあるいはわれわれが持つようにしなければならぬという主張が現に行なわれてきたのでございまするから、自由国家の諸国としてはお互いにドルを防衛して、お互いの経済の安定を招来するように努力しなきゃならぬ。わが国の経済がドル防衛によって一つも影響がないとか心配がないとかいうのじゃない。私が申し上げましたごとく、影響はありまするが、これは克服できることであると言っておるのでございます。従いまして、所得倍増計画におきましても、ただいまのところ、私はこういういろいろな試練がございまするが、予定通りやっていけることと考えておるのであります。
 なお倍増についての年次別を出せ。――私は三年間平均九%程度の上昇を考えております。今年におきましても、われわれの予定を少し上回わる程度の成長を見つつあるのでございます。いずれ、この年次別の分は三年間にわたりましては早急に作ってみたいと考えております。
 なお多角貿易、これは私も賛成でございます。昨年は一昨年に比べましてアメリカとの貿易は五割程度ふえました。ことしはあまり伸びませんが、その反対に西欧との貿易は昨年に比べて今年の上半期には五割近く伸びておるのであります。できるだけ多角的貿易を考えていきたい。従いまして、日ソの間におきましても、延べ払いその他によりまして相当ふえる見込みが立っておるのであります。私はこれと同じように、中共との貿易につきましても、積み重ね方式でどんどん貿易が進んでいくことを期待いたしておるのであります。
 なお日韓交渉につきましては、せっかくただいま交渉中でございます。従いまして、問題になっている案件をここで申し上げることはできません。しばらく結果をお待ち願いたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(水田三喜男君) 私べの御質問は、やはりドル防衛政策がこの日本経済にどういう影響を与えるかという御質問だと思いますが、今総理からお答えになりましたように、影響は当然日本にはございまするが、これは克服できるということでございますが、その影響もどれだけの影響があるかということは、今あの指令に基づいた米国政府の具体策、具体案は、今のところ一つしか明らかになっておりません。つまりICA資金による域外調達を原則的に停止するというだけでございますから、日本への影響を今のところ正確につかむわけには参りませんが、かりに軍人家族の引き揚げが行なわれるとしましても、これは明年度以降の問題でございますし、軍関係の調達が打ち切られるとしましても、すでに契約したものべはさかのぼらないということでございますから、日本にほんとうに響くのは昭和三十七年以後で、本年度、三十五年度には影響がございませんし、三十六年度において若干の影響は考えられますが、しかしアメリカの援助が打ち切られるというと、それにかわって、アメリカ側でも申しておりますように、日本からの輸出をもって被援助国をまかなうことになるだろうと言われておりますので、従って域外買いつけの停止が行なわれましても、一部日本からの輸入となって来ますので、この関係がどういうふうになるかということを考えますと、今考えられている影響よりも、もう少し少なくて、国際収支に影響を及ぼすようなことはあまりないというのが、今私どもの見方でございます。もちろん昭和三十七年度以降は、日本経済にいろいろな影響が現われて来ることを私どもは考えておりますので、この対策は十分するつもりでおりますが、三十五年度の国際収支には影響がないということと、三十六年度の影響も軽微で、経常収支が赤字になるような事態にはならない。資本勘定を入れますと、三十六年度の見通しも相当大幅な国際収支の黒字を予定されるというのでございますから、そういう意味で、私どもはそう心配しなくても済むということを言っておりますし、また、その影響が、私どもの想像以上の影響が出てきたにしましても、今総理の言われたように克服する方法は相当考えられるというのでございますから、政府は真剣にこの問題は考えておって心配ないというのに、心配があるんだあるんだと騒ぎ立てるのは少しどうかと思っておりますので、その点はどうか一つ……。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(松野鶴平君) 相馬助治君。
   〔相馬助治君登壇、拍手〕
#8
○相馬助治君 私は民社党を代表して、池田総理並びに関係閣僚に対し若干の質問をいたしたいと存じます。
 首相は、まずその所信表明におきまして、今回の総選挙が政策中心の論議にともかくも終始したことは、わが国の民主政治の一つの前進であると述べておりまするが、言葉としてはまさにその通りでございまするが、国民が注視している問題は、公約した諸政策が果してどのように実行されるかであろうと存じます。
 従って公約は順次国会の審議をお願いすると逃げを打っておりますけれども、問題は、より緊要、緊急であり、根本的でなければなりません。
 第一に指摘しなければならないことは、池田内閣の政治基盤というものは、その選挙公約に徴しますれば、安保体制の確立と対米貿易拡大に基礎を置く所得倍増論であったはずであります。ところが、その基盤たるものが、ケネディ氏の当選、その結果予想されるアメリカ伝統のダレス外交の変更、ドル防衛の所得倍増計画に与える深刻な影響、こういうふうに大きく変更され、また変更されようとしておるのでありまして本来ならば、今般の所信表明は、こうした現実の変更の上に率直に立って、新なる決意をもって進むべき道を国民に示すべきであったのでありまするが、残念ながら、片の事務報告的な所信演説であって、その国策遂行の熱意と具体策の見当たらないということは、多くの識者、政党すべて国民の大なる不満としているところでありまするし、かつ公約であったところの国連機能の充実、所得倍増という言葉は、言葉としても今回の所信表明の中に出てくることが期待されたものが、消えてなくなっていることに対して、国民は疑問をすら抱いているのであります。池田内閣のその政策推進の自信というものを、この際、諸外国、特にアメリカ国策の変更に伴って、断固として打ち出すべきではないか。要するに、この辺では洞ケ峠をきめこんでおるのだという自信のなさを示すものであるとするならば、これは何をか言わんやでありまするが、私はむしろ、総理は新内閣の政治行動の基盤を選挙当時とは変わったと認識し、その認識の上に立ってその決意を表明すべきではなかったかと思いまするが、その基本的な政治基盤変更の問題に対してどのような見解をお持ちであるか、お答え賜わりたいと存じます。
 特に、このことに関しまして、具体的に首相の所見をただしたいことは、衆議院の質問においても、ただいま小酒井氏の質問においても現われておりますが、国民の聞かんとするところの、また願うところの第一点は、中国の国連加盟の問題と日中貿易の拡大の問題に対して、一体、政府は何を考えておるかということであろうと存ずるのであります。アメリカにおいては、ケネディの当選以来、従来のダレス外交修正というものが世界じゅうの期待であります。また、これがケネディの選挙公約でもあったはずなのでありまするし、一方、共産圏十二カ国の代表、八十一カ国の共産党幹部がモスクワに会合して、共産圏諸国の結束というものを固めておるのであって、こういう国際情勢は、何としても、これをわれわれは静かに厳粛に見て、その国の行く手を定めなければならないのであって、そのときに、国連中心主義でやりますとか、中共に畏敬される外交政策をとりますというような言葉では片づかないものがあるのであって、それが具体的には何なのか。そうして国民に何を要求するのか。また、明年秋の国連総会では、中国の加盟問題が出て参りますが、アメリカの鼻息をうかがうのでなくて、問題は、ケネディがどうするかではなくて、アメリカがどうするかではなくて、ケネディをどうするか、アメリカをどうするかくらいの、やはり気魄を池田さんに持ってもらわなければならないのでありまして、わが党といたしましては、世界平和のためにも、国連強化のためにも、隣国との友好を深めるためにも、中国の国連加盟と日中貿易促進を考えておるものでありまするが、これに対して具体的なる池田さんの見解を、この議会を通じて国民の前に明らかにしてほしいと思うのでございます。
 次に、安保条約と国連問題について一言承りたいことは、マンスフィールド報告以来、米国内にも、新安保条約を一方的に日本に押しつけたのは、これは失敗であった、こういう見解が一方に起きております。ケネディ自身も六月の上院において、もはや基地を維持し得なくなった地域では、それにかわる新たなる計画を創造しなければならないと言っておるのであります。私どもの党は、つとに、安保条約の段階的解消を主張いたし、自衛力増強の約束であるとか相互防衛方式、在日米軍の常時駐留方式の削除を主張いたし、安保条約の持つ危険性を取り除くことを主張して参ったのでございまするが、この国際情勢の変化、米国内における世論の変化等に対応いたしまして、今日なお池田内閣は、安保条約をそのまま堅持せんとするのか。それとも、新たなる立場に立って、この問題について積極的考慮を払わんとするもののであるかどうかを伺いたいのであります。しかも、国連中心ということはわかるけれども、国連中心というのは、国連がきめたことを、その下請機関として忠実にやりますというのか。一そうであってはならないのであって国連に対して何を訴えんとするのか、日本として何を主張せんとするのか、国連を中心として、その機構を生かして、日本が訴えんとするその方針を、国民の前にこの際明らかにしてほしいと思うのでございます。
 特に、今回この所信表明において、国民の聞きたかったことは、ドル防衛の政策に対して、日本の産業界がどのような影響を受けるか、この貿易界がどのような形になって現われてくるか、その深刻な影響に対して国はどう考えるかであったのでなければなりません。御承知のように、大統領は、ドル防衛を至上の問題として、十一月十六日のドル節約命令の発表の中に、特に西欧諸国と同時に、アジアにおいては日本の国一国だけをあげて、それの対象として指摘しております。大した変化がないと言っても、このことは、アメリカ自身が重大なる変化のあることを認めているのであります。特にアジアにおいて日本だけが名前としてあがっているということに、われわれは、与野党をあげて、国民的な感覚の上に立ってこのことを注視しなければなりません。私は、従って、あげ足をとって、安心しろと言っているのに安心できないと言っているのはおかしいというような、あの水田さんの冗談まじりの答弁に対して、きわめて不満であります。
 これは、社会党が聞いているのでも、民社党が聞いているのでもない。日本の国民が疑問とするがゆえにこそ、われわれはかく質問戦を展開するのでありまするがゆえに、この問題に対しましては、具体的に、一体、関連を持つところの中共貿易に対してどんな心がまえを持つか、貿易自由化のこまかい施策は何か、輸出振興のために、日本としてはこういう積極的対策をとるのだというような、具体的なことをあげて、そのことが野党に反対されようと、どうしようと、そういう明瞭な具体策をあげて安心しろと言うならば、国民は安心し得る道もあろうということを指摘いたし、この際、特に経済通の首相に対し、具体的な事例をあげ、その見通しを国民の前に明らかにすることを私は要求するものであります。
 次に、補正予算の問題について若干質疑を展開して参りまするが、千五百十五億に上る補正予算、この予算を見るときに、私どもが疑問とするのは、今、日本の置かれている国内政治情勢の中において、一千百万人に上る低額所得者に対して、政府がいかなる補助政策、援助政策をとるかということに、注目の一点が集められていたはすであります。これが見過ごされている。しかも、補正に名をかりて、総選挙宣伝の一部の跡始末をやろうとしている。財源となるところの租税自然増収をあいまいにしてごまかして、必要で可能な補正措置、緊急にして必要なる年末の措置というものを全く怠っている。この限りにおいては、水田蔵相の考え方というのは、甘いのか、それともふざけているのか、それともまた、やむを得ずしてかかることになったのであるか、その了解にわれわれは古しむのであって、わが党が補正予算に要求するものは、第一に、給与引き上げの根本的な解決の問題であり、第二に、災害対策の問題でありまするが、これは十分なる予算措置が全くない。これに対してどのように首相は考え、次の本格的予算においてこれに関連していかような見解を持つのであるか。その見通しを加えて、質問に対してお答えを願いたいと思います。
 次に、この補正予算に関連して医療問題についてお聞きをいたしたい。池田内閣は、社会保障の前進を選挙においても公約された。まことにりっぱであった。しかし、事実は後退をしている。衆議院における質問に対して後退していないと申しておりますが、皮肉にも、今回起きている病院スト一つ解決しないところに、池田内閣の社会保障の問題に対する熱意がうかがわれるのであります。
 元来、看護婦さんであるとかお医者さんであるとかいう人は、良識の人が多い。長い長い間、犠牲的精神に立って、その低い給与の中に困難な仕事を続けてきたのが、今回爆発をした。これは、つつましやかな彼らの願いがあまりにも押えられてきたがゆえに、人権ストとしての性格を帯びて今回の問題となったのであって、単なる労使間の労働の問題ではないのであってより根本的なものを含んでおりますと同時に、長きにわたる保守党内閣の厚生行政のでたらめが、今日火を噴いていると見るべきであります。従いましてこの問題に関しましては、日本の医療制度全般の問題を特に池田首相はどのように考えるか。とてもこれは中労委や都市労委にまかしておいて解決する問題ではない。労使間の問題ばかりでもない。事、人命に関係ある問題でありまするがゆえに、特に首相に承っておきたいのであります。
 なお、この問題について厚生大臣に具体的な問題を承りたい。これらの問題は、中央医療協議会において根本的に検討すべきでありますが、御承知の通り、日本医師会との問題に端を発してこれが開店休業のままであるが、日本医師会と厚生官僚との長きにわたる紛争というものは、政党政治の中において自民党にとってもあるいは野党にとっても不幸なることであると指摘しなければならない。これに対してあなたはどのような手を積極的に打たんとするのか。厚生大臣になったからといって、棚からぼたもちをもらったと言って、うちょうてんになって喜んでいるような方ではなく、あなたは真剣に厚生問題について積極的な意図を持っていると思って私はあなたに期待するがゆえに、あなたの正確なる所見を承りたい。また看護婦さんその他を含めての医療従業員の身分上待遇上の改善をこの際どういうようにするつもりか。診療単価の改定の問題、甲乙両表の一本化の問題、国民皆保険に伴う社会保険制度の全面的抜本的改正の問題、これら医療全般に対しまするところのあなたの責任ある考え方というものを、この際お聞かせ願うと同時に、病院ストに対して厚生大臣としていかなる手を打たんとするかについてお尋ねしておきたいのであります。
 次に、文教問題について首相に率直に承りたいことは、従来保守党のやって参った文教政策というものは、吉田内閣以来一貫して日教組弾圧対策に終始して、必要な予算措置を講ぜず、みずから教育の中立性を主張しながらその中立性を破ってきたところに、特徴があるのでございます。第一次池田内閣において荒木文相は、日教組に対して属姿勢をもって有名であった。第二次池田内閣においても、あなたは池田さんによって信頼をされて再任をされた。この問題の陰にわれわれが考えることは、荒木文相は学校教育基本法の根本的改正を主張すると言っている。これは荒木さんであるから相当研究をされておっしゃっているのであると思います。文部官僚のしり馬に乗って下僚の書いた作文を読み上げるものでないということを私は確信しております。しからば、学校教育基本法の改正というようなものは、池田首相、次の政策の問題であります。これに対して荒木さんを信任されたあなたは、一体この学校教育基本法に対していかなる見解を持たんとするものか。その見解に対しまして私は首相の明快なる答弁を承り、必要とあらば、荒木文相よりもそれらの点に対する所見を承っておきたいと思うのであります。
 最後にただしたいことは、民主主義の立場から、その根本であるべきところの議会主義擁護の立場に立つ国会運営の問題でございます。私ども民主社会党は、結党の当七より議会主複の立場に立ち、終始一貫して努力して参り、左右の暴力に対抗して真実の民主主義確立のために進んで参ったのでありますが、率直に申しまして、今回の選挙にわれわれは敗れました。しかし、わが党の良識は滅びるものではなく、わが党の存在理由はここに確たるものあることを自負いたしまするとともに、三百五十万にのぼる信任は、民社が議会擁護の政党として与えられたる信任状であると確信いたしております。この立場に立ってお尋ねしたいことは、先ほどの小酒井氏の質問に対して答えて、物理的単独審議に陥らぬように願いたいと、相手に、げたを預けた答弁をしております。これは池田さんらしからない答弁であると言わなければならない。一体、政党、責任内閣のもとにおいて総裁であり総理大臣であるあなたは、明らかに国会運営に対しては議長とともにその責任を分担し、これに対して協力しなければならない必然的な責任と運命とを持っている。この際、池田内閣総理大臣は、議会主義擁護の立場に立ってこれら国会運営に対しまするところの率直なる見解あらば承っておきたいと思うのであります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手]
#9
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 政治情勢その他国際的の情勢につきましては、私が第一次池田内閣を組織した当時とあまり変わりはございません。私は変化ないものと認めております。お話の共産圏関係国並びに八十一カ国の共産党幹部会同につきましても、私は中ソの問題が重要な問題であって、結論といたしましては、従来と変わりないと私は見ているのであります。なお、中共貿易につきまして具体的なことを出せとおっしゃいまするが、私はたびたび申し上げましたごとく、日中関係は、歴史的にも地理的にも、またいろいろな点から申しまして、隣邦仲よくすべきものだということに変わりございません。しかし、国際情勢の現段階において私が中共問題に対しまして勇み足をするということは厳に慎まなければならぬと思います。従いまして、私は申し上げておりまするがごとく、国連を中心とし、また自由国家群と協調を保ちながら、弾力的な措置をとっていくとお答え申し上げているのでございます。情勢を見ながらいろいろ自分らの考えを自由国家群並びに国連で発表いたします。決してアメリカに追従する外交をとらないことをはっきり申し上げておきます。
 なお、安保条約につきましても、ただいま申し上げましたごとく、国連を中心とし、また国連が、世界の安全、またわが国の安全と独立を保障するまでは、安保条約でいくのが一番いい道だと考えているのであります。情勢の変化によりましてこれをどうするかということは、将来の問題として、ただいまは安保条約を改正しようとかその他の考えは持っておりません。
 ドル防衛の問題につきまして、十九カ国のうち日本だけがアジアで指定された、こういうことでございます。日本だけが経済力が強くてしかもそういう問題が起こってもあまら影響を受けないということであるのであります。十九カ国のうち、ほとんどヨーロッパでございまするが、他の国は、ヨーロッパにおきましても、ドイツ、イギリス、フランス、ベルギーぐらいがおもなものであります。そしてアジアでは日本だけでございます。しかもICAのうちの相当部分は日本であるのでございますから、日本を指定しているのであります。これは日本の力が強くなったことを現わしている証拠でございます。
 なお、ドル防衛につきまして対策はどうか、こういうことを国民に知らしたらどうか。――御承知の通り輸出は四十億ドル前後にふえて参りました。昔のことを申して恐縮でございまするが、特需関係で一番多かったのは朝鮮事変直後の昭和二十六年、二十七年でございます。二十六年には六億数千万、二十七年には七億九千万ドル、八億近い特需があったのが、今は四億数千万ドルになっている。なおかつ日本の経済力は非常に伸びてきている。八億ドルがだんだん減ってきて、そしてここ二、三年は五億前後を保っているのであります。しかもその間に、貿易は、昭和二十六、七年は十一億ドルであったのが四十億ドルになっているのであります。これを考えますと、日本の経済がここまで進んでおってICAが全部なくなっても一億二、三千万ドル、影響はありまするが、とにかく国際収支に大したことはないということは、大蔵大臣の言う通りでございます。ことに、御承知の通り今年におきましては、国際収支の黒字は五億ドルないし六億ドルといわれておるのであります。私は、これをもって安心はいたしませんが、四十億の輸入に対して年末には二十億ドルの外貨を持つというようなことは、これは世界にもその例がないのでございます。私は、決して楽観はいたしませんが、こういうふうに日本の国際収支もよくなっておるし、日本の国際貿易も伸びていっておるし、日本の経済も非常に強くなっている今の段階で、七億、八億の特需のあった昔とは違ってきていることを、国民によく御了解を得てそうしてこういう試練に耐え得るよう、国民に努力していただきたいと考えておるのであります。もちろん貿易振興政策につきましても、従来は各国に負けないような施策をとっております。また、今回「の予算で百二十五億の輸出入銀行べの出資等につきましても、貿易振興のことからきていることでございます。私は、日本の今の状況を考えながら、また将来の日本のあり方、世界の貿易の状況を考えながら、一つの試練として、しかも克服できる問題として、私はともにともに努力していきたいと言っているのでございまして、決してこういう問題にひるむような日本国民でもありませんし、日本経済でもないということを、はっきり申し上げておくのであります。
 なお、補正予算におきまして、公務員の給与につきましては、人事院の勧告を尊重し、かつ日本の財政状況から、この程度でがまんしていただきたいと考えて提案いたした次第でございます。災害復旧につきましても、あとう限りの予算措置を講じております。今後におきましても国土保全の見地から、また民生安定の上から、災害復旧につきましてはできるだけの措置を講じていきたいと考えております。
 病院ストにつきましては、お話の通りまことに遺憾でございます。われわれは、今までこの病院等の管理機構その他につきまして不十分な点があったことを、今回あらためて痛切に感じたのでございます。私は、今後医療制度の大改革と同時に、病院の管理機構につきましても最善の努力を尽くしていきたいと考えております。
 文教政策でございまするが、これはわれわれとしては、ことにわが国といたしましては、文教政策には他の国に負けない予算を使っている、いわゆる重要視している事柄であるのでございます。従いまして国の基本である文教政策につきましては、私は薄身の努力をこれに傾けていく考えでございます。御質問の教育括本法の改正問題につきましては、事、重要でございます。この問題は、文部大臣ばかりでなく、内閣全体、国全体として慎重に考えなければならぬ。私は、今後十分この教育のあり方につきまして新しい観点から、また今までのことも頭に入れながら検討していきたいと考えておりまするが、結論はまだ出しておりません。
 なお、議会主義の問題でございまするが、率直に申し上げます。私は単独審議はいたしません。どうぞ皆さん御協力を願いたい。寛容で忍耐強く、ほんとうに話し合いで、りっぱな国会を運営していくことを、ここにあらためてお誓い申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(水田三喜男君) 補正予算についての御不満でございましたが、給与の問題は、私ども人事院の勧告を尊重して、内容をほとんど手直しをしないで、そのままのむという態度で、できるだけの措置をとったつもりでおります。また、災害復旧に関する費用でございますが、今年度災だけでなくて、三十四年度以前に発生した災害につきましても、その後の調査の結果を見て、今回二百九十億以上の補正を行なったということで、私どもとしては万全を期したつもりでおります。(拍手)
   〔国務大臣古井喜實君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(古井喜實君) お答え申し上げます。
 まず病院ストの問題であります。病院ストがこういうふうに長引いておりますことは、人命を頂かる医療機関のことでもありまして、まごとに心配にたえぬところであります。一日も早く円満な解決の日を迎えたいものと熱望いたしております。これにつきまして、御案内のように、労働大臣もいろいろ御尽力になっておりますから、当面のこのストも適当な解決を得ると思いますが、私どもの立場といたしましては、こういうふうなストが起こりますのも、病院の経営管理の中に根源があると思うのであります。ことに企業体としての病院の経営という点には、やまやま改善すべき点があるように思うのであります。この問題に私どもの立場で取り組みたいものと考えまして、今、方法論について検討中でありますので、きわめて近いうちにその方向で動きたいと思います。
 次に医療協議会の問題であります。行き詰まりになっておりますことは、まことに困ったことであります。社会保険の医療内容も、あるいは診療報酬などのことも協議をする機関が、いわば麻酔しておって、この問題が進まないというようなことは、まことに困ったことでありますので、これを軌道に乗せますように、一つ決心を持って当たりたいと思っておりますから、御承知を願います。
 それから医療制度全体の問題でありますが、いろいろ問題もあるごとでありましてこの四月から発足しております調査会も、もう活動を始めておりますし、根本的に、全般的にこの問題はこの調査会ともどもに進めていきた、いと思います。
 なお最後に、社会保障の問題全体でありますけれども、これはただ池田内閣の公約だなどでなしに、近代国家の大きな課題でありますので、私も力は足りませんが、せいぜいこの前進のために努力していきたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(松野鶴平君) 市川房枝君。
   〔市川房枝君登壇、拍手]
#13
○市川房枝君 私は池田総理に対して幾つかの質問を申し上げたいと思います。
 第一は、選挙中に池田総理が有権者に対してなさいました「私はうそを申しません」という公約について伺いたいと思います。池田総理は、選挙の終わりごろテレビのスポットで「私はうそは申しません」と言って頭をお下げになったですね。私はそれを見て非常にうれしく思いました。というわけは、二、三年前のことでありまするが、本院の同僚議員であります永野護氏が運輸大臣をしておられましたときに、「経済界と政治界とはどう違いますか」という私の質問に対して、「経済界は信用が大事なので、うそを言ってはいけないのです。しかし政界はうそを言わなくてはならないのです」というお返事がありました。私はすかさず「政治界もうそを言わないようにしていただきたい」、こう申し上げたのであります。この永野氏の言葉は、冗談ではなく、経済界から政治界に入られた同氏の痛切な叫びだと受け取りました。うそを言わなくてはならない政治界、うそで固まっている政治界だとしましたらば、国民の信頼が得られないことは当然でありますし、そこから汚職が生まれてくるのも当然だと言わなくてはならないと思います。そこで私は、機会あるごとに国民の方々にこのことをお伝えして、選挙の際には、主権者としてうそを言わない政治家を出すように訴えて参りました。このときに、総理が、私はうそを申しませんという公約が出ましたので、私はうれしく思ったわけでありますし、これで総理はだいぶ票をおかせぎになったのではないかと思います。しかし問題は、総理がこの公約を実行していただく、それが大事な問題だと思います。いや、この公約は首相個人としての公約ではなくて内閣の首班としてまた、多数党である自由民主党の総裁としての公約であると思いますから、その立場で、うそを言わない自民党、うそを言わない政界とするために努力をしていただかなければならないと思っております。そこでお伺いしたいのは、どうしてこういう公約をお取り上げになりましたか。永野氏のように、現在の政治界はうそを言わなくてはならないとお認めになっているかどうか。またこの公約実現についての今後の御決意のほどを伺いたいと思います。
 第二に、婦人大臣の問題及び婦人全体の地位の向上について総理の御所見を伺いたいと思います。婦人大臣の任命については、実は、前総理の岸さんが、自分の方から、私が内閣を組織したら婦人を大臣に任命しますと約束しながら、とうとう、うそをおっしゃったことになってしまいました。ところが池田総理は、最初の組閣の際、中山マサさんを厚生大臣に任命されました。婦人大臣は外国では珍しくありませんけれども、日本では初めてのことであり、婦人たちはもちろん、
 一般からも非常に歓迎されたことは、総理御自身がよく御存じだと思います。しかし中山さんは、厚生大臣として役所にすわっておいでになる時間よりも、看板娘として、同僚議員及び党の選挙運動に引っぱり回されることが多かったようで、大臣として勉強し、その職務を果たすことが幾分おろそかになったように見受けられました。これは中山さん御自身の責任でもありますけれども、むしろ内閣なり党の方の責任だと思います。それなのに、第二次組閣では首になり、婦人たちは、失望というよりも、選挙が済んで用がなくなったからなのかと、みな憤慨をしております。けさも二、三の友人から電話が参りまして、池田総理に抗議をしてほしいということを言って参りました。もっとも総理は、今度の組閣に際し、参議院の自民党に対して、婦人大臣を推薦するように申し入れられたが、適任者がないというので拒絶ざれたと伝えられております。もしこれが事実だとすれば、参議院自民党の婦人議員の方々に対するはなはだしい侮辱だと思います。同僚婦人議員の方々の名誉のためにも、そのいきさつをここで総理からはっきりさせていただきたいと思います。なお、今度はやむを得ないといたしましても、次の機会に婦人大臣を実現下さるかどうか。また大臣だけでなく、一般行政面で、婦人の局課長などを増加していただきたいと思います。あるいは外交面では、過去四年間引き続いて国際連合総会に政府代表として婦人が出席し、りっぱに役割を果たしておりますが、大使、公使はまだ任命されたことがございません。世界各国、特に東南アジア各国では、ほとんど、どこの国でも婦人大使を任命しておりまするが、それらについて総理の御所見を伺いたいと思います。
 第三は、文教の問題について伺いたいと思います。総理は、昨日の所信表明の演説で、文教刷新には特に力を注いで参る決意でありますとお述べになりました。文教の刷新もちろん賛成でありまするが、教育は国家にとってきわめて重要であるだけに、何をどう刷新なさるのか、きわめて慎重であってほしいと思います。一文部大臣の思いつきや、一内閣あるいは一政党の党派的立場で簡単に左右されては、子供たちが困ります。荒木文部大臣は、大臣におなりになるや、突如として教育基本法の改正を提唱され、直ちに着手さ以れるかのごとき印象を与えておられまするが、教育基本法は、憲法に基づく重大な法典でありまして軽々にこれを扱うべきではないと思います。私は、教育基本法が掲げている民主的平和的教育の目標は非常にりっぱなものであって、文部当局としては、この基本法の趣旨の実現のために努力すべきではないかと思います。もっとも、この教育基本法といえども、将来改正することがあっても差しつかえないと思いますが、しかしその場合には、国家的立場に立って、まず野党と十分私は協議し、民間の知能を集めて検討し、国民多数の納得の上で取り上ぐべきだと思います。池田総理の教育に対しての基本方針及び教育基本法に対するお考えは、先ほど御答弁がありましたが、重ねてもう一度お伺いしたいと思います。
 第四は、選挙と金の問題について伺いたいと思います。選挙が済みました十一月二十五日の朝日新聞を見ますと、自民党の大橋副幹事長は、今度の総選挙で一番問題になったのは金がかかり過ぎたという点であろうとおっしゃっております。また、社会党の成田政審会長も、今度の選挙のように目にあまるほど金がかかった選挙はないとおっしゃっております。民社の中村総務局長もまた、選挙をやって痛感させられたのが金がかかり過ぎたことだと、いずれも金のかかり過ぎたことを嘆いておられます。事実、財界からの選挙費用としての寄付は、経済再建懇談会からの八億円のほかに、直接派閥あるいは個々の候補者に寄付されておりまする金があるので、総計二十億円ないし三十億円とうわさをされ、選挙前から、今度は莫大な金が動くであろうということは予想されていたところであります。新聞などでは、二当一落、すなわち二千万円なら当選するが一千万円では落選するというように言っておりましたが、はたしてどのくらい金が使われたでありましょうか。これは、表向きから申しますれば、選挙のために受けた寄付あるいはその使途は、政治資金規正法によって、十二月五日までに選挙管理委員会に届け出なければならないことになっておりまするが、自民党からはまだ届け出ておりません。個々の候補者の収支の届け出も十二月五日締め切りでありますが、この方は大体提出済みでございます。広島県の選挙管理委員会に届け出られました池田総理御自身の選挙費用は、法定選挙費用六十四万二千八百円のところ、約八割の五十四万二千六百三十七円の支出となっております。東京都選管に届けられました都内の当選者二十七名の方々の選挙費用の一覧表を持っておりまするが、あまり長くなりまするので、一区から三区までの方々だけのをちょっと読んでみます。第一区法定選挙費用百六十七万八千四百円のうち、自民党安井誠一郎氏百四万四千九百十八円、社会淺沼享子氏九十六万七千六百二十七円、自民田中榮一氏百二十七万円、社会原彪氏六十四万九千五百五十五円。第二区は、法定選挙費用百六十四万百円に対しまして社会党加藤勘十氏七十三万三千百九十九円、自民宇都宮徳馬氏百五万九千九百五十一円、社会大柴氏七十七万八千二百五十五円。第三区、法定選挙費用百三十四万六千五百円のところう社会党鈴木茂三郎氏八十六万五千四百二十三円、自民賀屋興宣氏六十三万七千七百八十八円、民社本島百合子氏六十五万八千八百九十一円。お聞き下さいましにょうに、法定費用の三割か四割で済んでいる方もございます。もちろん、仁のほか、届出を要せざる費用が要りますが、大したことではございません。選挙費用がほんとうにこの届け出り程度のお金で済んでいるのでありましたならば、非常にけっこうであり、問題はないと言えます。収入のところを見ますると、不思議なことがあります。それは、党本部から公認料として出ております金が、自民党より社会党の方が多いのであります。すなわち、自民党十五人のうち、田中、安井、賀屋の三民は本部からもらっておられません。宇都宮、岡崎、鈴木王氏は百万円ずつ、その他九人の方は五十万円ずつ、合計七百五十万円であります。社会党十一人のうち、淺沼氏百二十五万、大柴氏百五万、島上氏八十万、原氏七十五万、帆足氏六十五万、加藤氏外四名の方は五十五万円ずつ、山口氏二十五万、合計七百五十万円であります。たまたま同額でありますが、一人ずつの平均にしますと、自民党五十万円、社会党六十八万円となっております。一体、財界からの献金何十億円という金はどこへ行ったのでありましょうか。三党の代表者が金がかかるとおっしゃったのは、結局、事前運動や、選管への届出には書けない買収供応等に使われたことになります。総理も、三党代表者と同様に、この間の選挙には非常に金がかかったということをお認めになっておられますか。また、選挙法によって届け出されておりまするこの選挙費用の数字は、総理御自身のを含めて、正確だとおっしゃられましょうか。いや、正確ではない、インチキだとしたら、そういうインチキなのが正々堂々と役所を通っているという事実をどういうふうにお考えになりますか。財界からの政治寄金が選挙や政治を腐敗させ、自民党内の派閥を培養するものとして、今度ほど問題となったことはございません。財界でも、有識者の中には、これをやめようという空気が出てきております。総理は、銀行、会社及び労働組合からの寄付を禁止する、しかし、個人からの一定限度の寄付は認めるというように、政治資金規正法を改正する御意思がないかどうか、お伺いしたいと思います。
 第五は、公明選挙の問題について伺いたいと思います。総理は、昨日の所信表明演説で、「選挙の公明を期する措置を積極的に検討いたしたいと存じます。」と仰せられましたが、具体的にはどんな措置をお考えになっておられますでしょうか。衆議院においては、解散の直前に公明選挙の決議が行なわれましたし、解散の直後には、政府においても公明選挙の声明をお出しになりましたが、選挙の結果は、選挙違反が、十一月十一日現在で、前回よりも五割増しの九千二百六十七件の二万七百名となっており、候補者で取り調べを受けている方は八日現在で二十三名にも上り、まことに今までにない不公明選挙でございました。違反者の党派別の数字は当局で遠慮して発表しないことになっておるそうであります。しかし、警察当局の談話によりますると、自民党が断然多い。民社党にも相当の違反が出ている。社会党も今までよりは少しふえているということでありまして、遺憾至極に存じます。金のかからない、選挙違反のない公明選挙、理想選挙を実現するためには、政治資金規正法あるいは公職選挙法を改正するとともに、有権者の政治啓発が必要だと思います。二十九年の公職選挙法の改正によって、選挙が公明かつ適正に行なわれるよう、選挙人の政治常識の向上に努めることが選挙管理委員会の任務となりましたが、委員会の組織は従前のままであって、何らの変更が加えられておりません。有権者の政治啓発を十分に行なおうとするならば、この際、委員会の組織を再検討し、これを強化する必要があると思いますが、総理の御所見はいかがでありましょうか、お伺いしたいと思います。
 第六は、選挙法の改正の問題について伺いたいと思います。今度の選挙の結果、抜本的な公職選挙法の改正を要望する声が国民の間に非常に強いことは、総理御自身もよく御承知のことと存じます。今度の選挙法の改正は、先般の総選挙の実情にかんがみまして、技術的な、あるいは部分的な改正でなく、抜本的に選挙区制を取り上ぐべきだと思います。もっとも、区制については、自民党では小選挙区制を主張されておるようでありまするが、私は、日本の現状においては、西ドイツで実施しておりまする小選挙区制と比例代表制を併用することが最も適当だと考え、前からそれを主張して参っております。総理は、先ほどの御答弁でも、選挙法の改正をするとおっしゃっておりましたが、いつごろどんな順序で着手をなさいますでしょうか。また、国民の間には、各政党の話し合いによる選挙法の改正は、結局、議員の方々に都合のよいことばかりきめ、ほんとうに国民の希望する改正はできないということで失望をしております。そうして、むしろ選挙法の改正は、公正な第三者機関で立案し、国会はこれを承認するようにしてほしいとの希望が強いのでありまするが、この点についての総理の御所見はいかがでありましょうか、お伺いしたいと思います。以上は私の質問の大要でありまするが、それを終わるにあたりまして、一点だけ特に総理に切望したいことがございます。わが国の経済の成長率は、各国にその比を見ないほど高く、しかも、それは最近の現象だけでなくて、実に明治以来そうであったことが実証されております。しかるに、わが国の政治の進歩はまことに遅々たるものがあり、議会制度七十周年を迎えながら、いまだに、議会政治と公正な選挙の確立、よき政党政治の慣行の確立等が行なわれておりません。政治においては、日本は西欧諸国に比べてまさに百年、二百年おくれていると言ってもいいと思います。この点での国際的な信用は、私はゼロだと言ってよいと思います。総理は経済問題のベテランでいられまして、経済の成長や所得の倍増等に非常に熱心であり、それはそれでまことにけっこうでありまするが、私は、なぜ日本の政治がおくれているのか、経済の成長と政治とのアンバランスというものが何を結果するかというようなことについて深く思いをいたし、勇気と英断をもって対処されんことを希望してやみません。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 私は、お話の通り、うそを申しませんと国民に誓いました。いろいろな政治家がいろいろ言っておりますが、私は、その信条で進んでいきたいと考えております。いろいろうその効用もあるそうでございます。私は政治家としてうそは申しません。
 なお、女大臣の問題でございますが、この閣僚の選考事情につきましてここで一々申し上げることは適当でないと思います。また、参議院に適任看なしという御返事は私は聞いておりません。私は事実無根と考えております。なお、今後におきましては、女子の方もできるだけ政界に出てもらい、また、仕事についてもらいたいということは、私の初一念でございます。今回やめましても、今後こういう機会のあることを私は心から望んでおる次第でございます。
 文教の刷新、ことに教育基本法の問題につきましては、先ほども申し上犀ましたごとく、これは一文部大臣、一内閣の問題ではございません。十分名方面と慎重に検討をしながら、改正すべきや否や、改正するとすればどういう点かということは、やはり国民の世論並びに他の党とも私は相談していくのがほんとうのやり方ではないかと考えております。
 その次に、選挙費用の問題でございますが、私の選挙費用は電話で聞いただけでございます。私は一切選挙区に帰りません。また、この前の選挙のときも一日足らずしか帰っておりませんので、選挙は選挙民にまかせっきりだったと私は考えております。ただ、私の出す費用でございますから、電話で聞き及んでおります。他の方々につきましても、私は正否の点は申しませんが、誠実に申告されておることと考えておるのであります。
 なお、政治資金規正法でございますが、この政治資金規正法は、やはり選挙法並びに政党法等との関連の法案を検討の上で、私は今後慎重に研究していきたいと考えておるのであります。
 なお、公明選挙を実現するにはどうやったらいいか。――私は、法律の改正も必要でございますが、それ以前の問題に、各候補者、ことに国民がその気になってもらうような、いわゆる宣伝啓蒙をすることが第一だと考えております。と同時に、私は選挙法の改正につきましても、今お話の点がございましたが、多岐にわたっております。すなわち、あるいは人口との割合の区制をどうするか、あるいは連坐制をどうするか、あるいは進んでは小選挙区制によるかどうか、いろいろ重要な問題がございますが、しかし、これは民主主義育成の上において、選挙の公明ということが基本でございますので、私は一全力をあげてこの問題について取り組んでいきたいと考えております。
 なお、お話のように、経済は非常に世界の歴史にもないくらいよいよなっているが、政治に対する国際信用は非常に落ちている、その通りでございます。私はたびたびそれを聞くのでございます。私が組閣以来、自分の身を修め、家を正し、ほんとうに自分が姿勢を正して、そうして寛容と忍耐で話し合いの機会を持っているというのも、こういう意味から申し上げておることでございまして、私は、経済の発展、国民生活の向上もさることでございますがこの政治のあり方をよくして、経済の発展と同時に、日本人の、日本の政治を信用してもらうようにすることが一番の大きい問題だと私は考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○議長(松野鶴平君) 杉山昌作君。
   〔杉山昌作君登壇、拍手〕
#16
○杉山昌作君 私は、参議院同志会を代表いたしまして、池田首相に三つの点を質問申し上げたいと存じます。
 質問の第一は、選挙の粛正と公職選挙法の改正に関してであります。本件につきましては、先ほど来、同僚議員からも質問がございましたように、今回の総選挙がきわめて不公明な選挙に終わりましたことは、まことに遺憾と存じます。これまでの選挙のうちで最も不公明な選挙だといわれておるのでありまして、国民はきびしくこれを批判し、今日選挙粛正の叫びがほうはいとして起こり、選挙法の改正が強く要望されておるゆえんでございます。昨日の本議場におきます所信表明において、首相も、この国民の批判にこたえて、選挙の公明を期する措置を積極的に検討いたしたいと述べましたことは、はなはだわが意を得たことでありますけれども、しかし、これはあくまで検討であってはならないと思うのでございます。先ほど来、市川議員から、きわめて適切な、また具体的な質問に対しましても、依然として首相は、善処しよう、検討しようということでございますけれども、今日はすでに検討善処のときではないと考えるのでございます。世論はほうはいとして選挙法の改正を要望いたしております。また、自民党の中にもその意向はあると思います。また、第二党である社会党におきましても、先ほど小酒井議員が、選挙法の根本的な改正を強く要望しているような状態であります。また、われわれ同志会においても、無所属においても、これを問題としているときでありますので、私は、この時期において、しかも今日におきましては、先般の選挙の不公明は、国民、議員ともに、痛切に感じておるし、なおかつ、次の選挙に対しまして、議会関係、選挙関係の人が、まだ心支度をする必要のない時期、この時期こそが私は選挙法の改正をするのに最もいい時期であると考えるのであります。具体的に申しますならば、この次の通常国会にこれに関する法案を整えて提出するのでなければ、従来の例を見るように、龍頭蛇尾に終わる公算がはなはだ多いと思うのであります。にもかかわらず、首相は、今もって積極的に検討をする、善処をするというのでは、はなはだわれわれとしてはもの足らないのでございます。どうか首相は、今日ここで、そういうことではなしに、必ず次の通常国会には出すのだ、これこれの順序をもって現に支度をしているのだということを表明されて、われわれの納得を得るようにしていただきたい。われわれは、それに対しては全力をあけて協力して、改正案の通過をはかりたいと存ずるものでございます。その点に対する首相の一段のはっきりしたところの御答弁を伺いたいと存じます。
 次にお尋ねいたしますのは改正の内容についてでありまするが、この内容を今一々お伺いするのは、はなはだ時期尚早であると存じますけれども、改正の方向あるいは目標をお示しいただいたらと考えるのでございます。それにつきましては、先ほど市川議員からも詳しくいろいろな目標が示されたのでありまするが、さらに私はそれにつけ加えまして選挙が今回のように政策で争われないで、同志の泥試合に終わることのないようにぜひするということが、目標の大きな一つでなければならないと存じます。昨日の所信表明におきまして、首相は、今回の総選挙が政策中心の論議に終始した云々と言っておられますが、これは党首の遊説等におきましては、なるほど政策中心に終始したのでありますけれども、一々の票の実際のやり取りにつながっておりますところの個々の候補者の運動におきましては、決してそうではないのでございます。反対党の候補者の政策で票を争うというよりも、むしろ同じ党内の候補者同士が泥試合をしているという場合がきわめて多いのでございます。これは国会を解散して信を国民に問うというような選挙の意義をまるで抹殺するものであるばかりでなく、こういうふうな票争いにおきましては、必然に、事前において選挙民の歓心をかう必要があり、選挙が始まったら選挙ボスを抱き込まなければならないというように堕するのでございまして、ここに私は選挙に金がかかる一番の大もとが胚胎している、また、選挙の不公明を来たすこれが根源であると思うのでありますので、ぜひとも今度の選挙法の改正におきましては、選挙は政策をもって争われるのであるから、さようなふうにすることを大きな目標にしていただきたいと思うのであります。それがためには、あるいは選挙区の改正というようなもの、あるいは選挙運動に対して党自身の活動の分野を広げるというような、いろいろな問題がありましょうけれども、これこそが私は、選挙の本義を生かし)公明な選挙をやる中心の課題であろうと思いますので、この目標につきましては深甚の考慮を払っていただきたいと思うのでございます。
 質問の第二は、国会運営の正常化についてであります。過般のNHKのテレビ放送における三党首会談において、今後、自民党は単独審議はしない、社会党は審議放棄とかあるいは実力による審議阻止はしないという公約が成立いたしました。当然のことではありますけれども、これまでこういうことが実行できなかったことにかんがみまして国会の不正常の最大禍根が除かれるわけでありまして、私は同慶にたえないところであります。しかしながら、会談のやりとりを、しさいに見ておりますと、両党首とも、この公約が無条件絶対のものではない、それぞれ相手の党の出方に何らかの条件をかけているように感じられまして、その点、はなはだ不安でありましたけれども、幸いに、先ほど相馬議員の質問に対しまして、池田首相は、私の方は絶対に単独審議はやりませんと、はっきり言い切られました。自民党としましては、無条件絶対に単独審議はやらないという意思を表明されたので、私はその点まことにわが意を得たものと思って多とするものでございます。同時に私は、これが実行につきましては、池田首相におかれても深甚の考慮を払われたいと思うのでございます。それは、首相は今日までしばしば寛容と忍耐ということを強調されて参っております。国会運営の正常化に対する多数党の基本的な心がまえとしては、私はそれでなければならないと思って敬意を表するのでありますが、しかし、さればといって、漫然と話し合いを続けていたずらに時を過ごして国会の活動に空白を生ずるようなことが、もしありましたならば、これをしも国会運営の正常化とは断じて申し上げられないと存ずるのであります。その意味におきまして、私は、今国会の冒頭、衆議院議長の選挙に関しまして、与野党の間の話し合いがつかずに二日間の空白が生じたことは、まことに遺憾とするものであります。しかし、かく言えばとて、私は、決して寛容と忍耐による話し合いを打ち切れとか、やめろというものではありませんが、ただ、寛容と忍耐の話し合いを続けるといたしましても、それにいたしましても、それは適時に相手方を説得して話を決着に至らしめるだけの努力と、きぜんたる態度がなければならぬと思うのであります。もしその努力を怠り、その態度を失うならば、この寛容と忍耐は無為無力と同義になることを私はおそれるのであります。私は少なくとも寛容と忍耐をもって話し合いで事を進めていただきたいと思うけれども、同時に、それは適時に話し合いが決着する、相手方を納得させるというところの努力を一段とせられることを希望するものであります。
 質問の第三点は、アメリカのドル防衛措置のわが国経済に及ぼす影響についてでございます。先般、アメリカ政府の発表したドル防衛措置は、自由世界の経済にいろいろな影響を与えるものでありまして、世の注目を集めた問題であります。特にアメリカの経済と密接な関係を有するわが国の経済に対しては、少なからざる影響があるものとしてわれわれはその成り行きに少なくない心配をかけているものでございます。しかしながら、これについての政府の見解は比較的楽観的であるやに見受けられるのであります。昨日の首相の所信表明におきましてもこの措置によって受けるわが国の痛手は、自立過程における一つの試練であって、わが国はこれを克服して経済の成長をはからなければならないし、また、はかり得るであろうというふうな、ぎわめて元気のいいことを言っております。しかし、そんなことで済ませる問題であるかどうか、私は心配をいたすものでございます。政府が安心しろというのに、心配だ、心配だというようなことではありませんで、真に、われわれはどんなふうに展開するであろうかということを心配するものでございます。
 そこで、あらためて総理大臣に伺いたいと思いますのは、今度のドル防衛措置をアメリカがとるに至っだ事情は、一体なへんにあるだろうかということでございます。この事情いかんによりましては、ドル防衛措置が今後どういうふうに発展していくかということも、大いに注目を要する次第であろうと考えます。先般、本院の大蔵委員会におきます大蔵大臣の御答弁によりますと、今回の米国の措置は、近年打ち続く金の流出を防止しようとするものであって、その金の流出は、海外駐在軍の経費とか、ICA資金による海外調達とかいうような特殊の国際収支から起こったものでありまして、決してアメリカの貿易が逆調になったとか、その他、本来の経済事情の変化に基づくものではないという見解を披瀝いたしまして、ドル防衛措置のよってきたるゆえんを、きわめて浅く局限したものと理解されているやに見受けられたのであります。しかしながら、米国経済には、この一両年、何か変調が起こりつつあるということは、識者も指摘して参ったところであります。思うに、それは戦後ずっと高い生産と高い賃金の組み合わせによりまして世界に比を見ないところの経済力を有し、はるかに諸国に優越したところの経済力を誇っておったアメリカが、その後、各国の経済成長によりましてその優位が漸次失なわれつつある。言いかえれば、世界経済の構造的な変化が起こりつつあるという悩みが、今日アメリカにあるのではあるまいか。その悩みが今回のドル防衛措置を行なうに至った大きな背景であるとするならポ、そうならば、これは言うなれば、アメリカ経済の巻き返しとして今度の防衛措置をわれわれは理解しなけれげならないのであります。従ってその措置は、ひとり海外駐在軍の経費を節約するとか、あるいはICA資金によス海外買付けの停止をするというのにとどまらず、さらに各国の貿易自由化の促進であるとか、あるいは低開発諸国援助の各国による肩がわりの要求でおるとか、さらには輸入の防圧、輸出の増進として現われてくることが考えられるのでございます。この点につきましては、池田首相も、ICA資金による海外調達の停止というようなことよりも、最近、アメリカは非常に輸出の超過が減っておりますので、それからくるところの輸出ドライブ、これがわれわれとしては非常に心配になるのだとおっしゃったそのことが、まさに私がここに述べたことと一致するものであろうかと思うのであります。もしそうであるとするならば、首相の言うがごとくに、これは日本経済発展の過程における一つの試練だ、これを乗り越せるのだというふうに、安易に考え得るものかどうかを疑いたいのでございます。日本の経済は、最近、非常に貿易が順調であるということで、先ほど首相はここで数字をあげて述べられましたが、その貿易の順調が、アメリカの輸出ドライブあるいは今回の措置によってそれが妨げられるということが見えるとするならば、日本の経済のこれまでのような貿易増加による伸展が、そこではばまれることになりはしないかということをおそれるものでございます。われわれは、かく言えばとて決して心配をし、悲観をするものではございませんで、首相が申されるように、日本経済ばますます大きくなるのである、それを乗り越えるであろう、その意気あるいはその決意をもって当たるべきことには同意いたしますけれども、そのことが、かえって国民の緊張と努力をゆるめるようなことにもなりますならば、われわれは逆の結果に陥ることをおそれるものであります。首相から、さらにもう一回、ここでその所信を披瀝願いたいと考たる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手]
#17
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 選挙法の改正につきましては、先般来申し上げておる通りでございます。私は、選挙法自体につきましてどういう点を改めるかということは、今後十分研究していきたいと思います。従って、次の通常国会に出すことはできないと思います。ただ、私は、先ほど申し上げましたごとく、法の改正と同時に、あるいはそれ以前に、やはり国民がその気になってもらい、いわゆる公明選挙の徹底を先にいたしたい、そうして法の不備その他につきましては今後十分検討していきたい、こういう考えでおるのでございます。従いまして、公明選挙の宣伝その他にりきまし、ては、来年度予算に相当盛っていくつもりでございます。法の提案は、私は今のところ考えておりません。
 それから、寛容で忍耐強いことはけっこうであるが、空白があってはいかぬ。お説の通りでございます。これは、一人が寛容で忍耐強くてもこれはいけないことで、みんながそのつもりにならなければ目的は達成されないと考えております。
 なお、ドル防衛につきましていろいろ御質問がございましたが、私はアメリカの経済自体を非常に悲観しておるのではございません。私は、アメリカの経済に対しての考え方は、そう不景気は来るのじゃないだろうということ、五七年、五八年のあのリセッションまどにもないだろう。なおかつ、今五千億ドル以上の国民所得を続けております。また、次の大統領も、先ほど申し上げましたように、積極政策を考えております。アメリカ全体の経済界が非常に不況になるとは私は考えておりません。
 しからば、なぜアメリカがドル防衛をしなければならないようになったか。これは先ほど申し上げましたごとく、アメリカの輸出入あるいは国際収支というものは、大体七十億から、五、六十億ドルくらいがずっと輸出超過でございます。一九五八年からこれが衰えまして、昨年が二十億ドルの輸出超過になっております。しこうして、片一方では軍事援助、経済援助等におきまして大体五十億程度。四十億、五十億程度の貿易外支出をいたしております。従いまして、七十億、六十億程度の輸出超過をしておるときには、とんとんでございます。ことに、アメリカは信用がありますので、各国は短期資金を持っていきますので、一時二百数十億ドルの金を持っておった。そういう状態のときには、西ヨーロッパあるいは日本はドル不足で非常に困っておった。アメリカのドルが、西ヨーロッパ、日本に出てくるようになってこそ、初めて自由国家群の経済が正常化になるのだ、こういうことをわれわれは常に言って、借款その他でやっておる。ここ三、四年来、ことに二、三年来、ヨーロッパの共同市場あるいは貿易連合等々、ヨーロッパの経済力が非常に強くなって参りました。また、日本も、先ほど申し上げます通り、相当ドルをためていっております。こういう関係で、アメリカは輸出が減った。そうして経済援助、軍事援助を今まで通りやっていくとすれば、この赤字をどうしようかという問題が起こってくる。われわれは早晩起こってくると考えておったのであります。従って、アメリカとしては、自分の方の輸出をふやすと同時に、経済援助、軍事援助である程度持てる国になったヨーロッパ、日本が、低開発国の開発に資金援助をやるべきじゃないか、こういう考えで来ておるのであります。
 私は、全体から見まして、適当なアメリカの考え方で、いろいろ心配をなさいますが、私の見るところでは、こういう日本の状態で、このドル防衛問題がかくも国会で非常に議論になるとは、私は考えていなかった。しかし、お答えはいたしますが、私は、申し上げましたごとく、これは一つの試練だ。こういうことはいろいろあります。いろいろありますが、一つの試練を乗り越える。しかも、国際収支の状況は先ほどお話し申し上げました通りであります。だから、私は、これはこれで、ただこれの原因を、もとを申し上げますと、アメリカの賃金の上昇によります三年来、四年来のいわゆるクリーピング・インフレーション、これが一つの原因である。そしてアメリカの金利が安くて、ヨーロッパ、日本の金利が高い、こういうことも一つの短期資金が出ていく原因でございます。いろいろ原因はございますが、私は、大ざっぱに申しますると、今の輸出が伸びなくて、経済援助、軍事援助は今まで通りに必要だというところから来るのでございますから、これはアメリカの失策でもなければ、また、われわれが今後それはドル防衛を行なえということは言えない。お互いにこの危機を乗り切らなければならぬと考えておるのであります。私は、安心してどうこう言うのではございません。安心してどうこう言うのではございませんが、一つの試練でありますが、日本人の英知と努力によっていくならば、この試練は乗り越えるだけの力ができてくる、こういう意味でございます。安心して下さいという意味ではございません。乗り越えるように努力をしようというのが私の国民各位に訴える言葉であるのであります。私は、御心配いただきまして恐縮でございます。どうぞあなた方の御心配のないように国政を運営していきたいと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#18
○議長(松野鶴平君) 北村暢君。
   〔北村暢君登壇、拍手〕
#19
○北村暢君 私は、日本社会党を代表して主として内政問題について首相並びに関係閣僚に対し質問をいたします。
 アメリカのドル防衛のわが国に対する影響の問題については、各議員の質問のあったところでありますが、重ねてお伺いをいたしたいと思います。今年の年頭にあたって、あらゆる経済関係の評論家は、一九六〇年は黄金の六〇年であり、史上空前の繁栄の年となるであろうと予言いたしました。しかし、現在この予言は全くはずれてしまったのであります。その現われはアメリカのドルの危機であります。ここ数年来、アメリカの金準備は急激に減少の一途をたどってきました。そしてついに本年十一月には最低安全線といわれる百八十億ドルを割るに至ったのであります。この根本の原因は、アメリカの過大な防衛支出、世界の至るところに基地を設けて米軍を駐留させていること、いわゆる自由主義諸国に対中ソ戦略を維持させるために、過大な軍事援助、経済援助を支出していること等であるのであります。従ってアメリカがもしも真にドル危機を脱しようと思うならば、対中ソ敵視政策をやめて、平和共存の原則を受け入れ、そして軍備縮小を断行する以外に方法はないのであります。ところが、アメリカ政府は、依然として対中ソ戦略を固執しながら、そのワク内でドル防衛政策を講じようとしておるのであります。そのため、あるいはアメリカ軍の駐留費を相手国に負担させようとか、後進国援助費用を西欧諸国や日本に肩がわりさせようとか、あるいはICA資金の海外発注を取りやめてアメリカ国内の業者に発注するとか、あるいはアメリカと関連する貿易物資の輸送をアメリカ船にやらせようとか、そうした一連のドル節約の方法をとろうとしておるのであります。しかし、こうした姑息な方法をとっても、それによってアメリカの金準備の減少を防ぎ得るかどうかは疑問であります。すでに国際的な資本市場においてアメリカのドルの信用は完全に失墜し、ドルを売って金にかえようとする各国の傾向をとどめることはできません。こうして現在よりもさらに、ドルの信用が下落する場合、アメリカ政府としては、結局、ドルの平価切り下げを行なうか、通貨の金準備率を引き下げるか、金の売却を停止するか、こうした最後の非常手段に訴えざるを付なくなるでありましょう。
   〔議長退席、副議長着席〕
 質問の第一点は、アメリカ政府のドル節約政策のわが国経済に及ぼす影響であります。すでにアメリカのハーター国務長官は、ICA資金の海外における買付を停止する方針を明らかにいたしました。また、在日米軍の支出も削減せられるでありましょう。こうしたことは、いわゆる特需収入の減少をもたらすでありましょう。また、過去のガリオア、イロア資金の返済が要求されることも必至でありましょう。さらに、わが国の対アメリカ通常輸出も、アメリカ側の規制措置によって困難性を増し、その反面、日本に対する輸入自由化の圧力は、一そう強化せられるものと想像されます。こうしたことは、わが国の国際収支に直ちに響いてくることは明らかであります。この面から、早くも政府の所得倍増計画は破綻に瀕していると断ぜざるを得ません。政府は高度経済成長政策を修正する意思はないか、お尋ねをいたします。
 第二点は、危機打開についてであります。日本としてこの危機を回避するためには、貿易の対米依存度をもっと低下させ、対共産圏貿易の比重を増大させることが最も有効な方法でありま参す。すでに、今年三月の日ソ貿易協定の締結以来、わが国の対ソ輸出は優に一億ドルを上回ろうとしております。今後もソ連のシベリア開発の発展に伴ってきわめて大きな可能性をはらんでおります。中国貿易においても、日本政府さえ一歩踏み切るならば、日中政府間貿易協定締結によって、日中貿易額を飛躍的に拡大すべき条件は成熟しております。関係業界においてもこれを望む声が急速に高まっている現状でありますが、池田首札は対共市田貿易打開の方向に踏み切る決意がおありになるかどうか、責任ある答弁を承りたいと存じます。
 次に、公務員給与の問題についてお尋ねいたします。第一は、従来人事院の勧告は、実施の時期を明示していなかったために、公務員の給与は常に民間給与より二年おくれとなっていたのであります。この弊害を除去するために、今回の勧告は、特に五月一日から実施されることが適当と考えると、実施の時期を明示しているのであります。また、給与担当大臣は、人事院勧告が実施の時期を明らかにするならば、その通り実施したいと答弁しております。政府は二言目には、政府は勧告を尊重するから、公務員も法律を守ってもらいたいと要請してきましたが、今回は政府みずからが勧告を無視し、十月一日実施を強行しようとしていることは、まことに遺憾であります。このことは、公務員が政府に対し不信の念を抱く結果ともなっているのであります。首相並びに給与担当大臣は、この際、勧告通り五月一日から実施すべきであると思うが、所信を承りたいと思います。第二は、給与体系が上に厚く下に薄いことについてであります。平均二千六百八十円のベース・アップとなっているが、内容的には最低がわずか一〇%の六百円の引き上げに対し、最高が三〇%の二万三千八百円の引き上げで、その格差は莫大であります。また、特別職に至ってはさらにひどく、大臣は六四%の七万円、総理大臣は六七%の十万円の上昇であります。首相は前臨時国会において、しばしば、所得倍増とは、上の方は二、三割にとどめ、下の方は三倍、四倍に上げて均衡をとることであると、もっともらしく答弁されておりますが、あれは選挙用の答弁であったのでありましょうか。それとも、このような公務員の給与の上厚下薄の実情は御存じなかったのでしょうか。この上厚下薄は、理論的根拠もなく、人事院みずからも、中堅以下を引き上げればよりよい体系になったろうと答弁しているのであります。中堅層以下の職員にとっては、生活改善はおろか、消費物価の値上がりによって実質賃金は逆に切り下げとなり、大きな不満を呼んでいるのが実情であります。政府は理論的にも実態的にも立証されている公務員給与の上厚下薄の不合理をすみやかに是正すべきであるが、首相並びに給与担当大臣の所信を承わりたいと思います。第三に、年末手当の問題でありますが、人事院は現在の年末手当の官民の差〇・二九カ月分を、理論的根拠がないにもかかわらず〇・一カ月分の引き上げにとどめ、以下を無視したことは、全く不合理であります。さらに、一民間の職員と公務員を比較するならば、当然二・五ヵ月分以上を支給すべきであることは明らかでありまするが、首相並びに給与担当大臣の所信を承っておきたいと思います。
 次に、病院ストの問題についてお尋ねをいたします。今重大化しております病院ストは、最低賃金制の実施、一律三千円のベース・アップ、定員増加などを要求する経済闘争であると同時に、前近代的労務管理の改善を求める一種の人権闘争であります。賃金について一例をあげると、日赤の場合、看護婦の初任給は大学卒業程度にもかかわらず九千四百円の低さで、十年間たってもわずかに一万四千七百円にしかならないのであります。他の民間病院ではこれより低いところは幾らでもあります。また、労働条件は建物や施設の近代的であるのとは対照的に劣悪であります。特に看護婦は、看護婦兼事務員兼雑役婦兼技術師兼薬局員として、全く人間を無視した労働条件に甘んじているのが多いのであります。病院経営者が、「忍従は天使の美徳なり」として、すべてをナイチンゲール精神で合理化してきたところに、今日の病院ストをこじらせている根源があると言わなければなりません。しかしながら、人命に関係する仕事の性質上、これ以上病院ストを放置することは許されません。労働大臣は、三池争議では敏腕を発揮して高く評価され、再任されたようでありますが、今次病院ストにはいかなる特効薬をお持ちになるかをお伺いいたしたいのであります。また、労働基準監督行政上手落ちがなかったかをお尋ねいたしたいと存じます。
 今次病院ストは、純然たる労働問題であることは、前に述べた通りでありますが、医療保険行政に関連することも否定できない事実であります。すなわち、わが党が多年の要求にもかかわらず、保険医療制度の改善をサボってきた厚生行政の失敗であり、政府の責任であります。わが党は、早急に保険診療を中心とする医療保険制度を改善するとともに、結核及び精神病の費用の全額と各種健康保険の一部の国庫負担を増額すべきであると考えるが、首相並びに厚相の見解と対策をお尋ねいたしたいと思います。
 次に、厚生白書に対する政府の態度を伺っておきたいと思います。白書は、社会保障最優先を主張し、経済の高度成長の背後には国民所得の格差の拡大するおそれがあることを指摘し、さらに所得倍増計画の十年間の社会保障費一兆五千億円程度では、日本を名実ともに福祉国家とするにはほど遠いとしているのであります。池田首相は、白書の趣旨実現のために、就任当初の方針に立ち返り、社会保障を最優先とすべきであると思うが、首相の鮮明な態度の表明を求めます。
 次に、農業問題についてお尋ねいたします。
 その第一は、年率九%の経済成長率と、農業に対する影響についてであります。首相は新政策決定の際、それまで所得倍増計画の立案のために採用してきました年率七・二%の経済成長率を、向こう三ヵ年間、年率九%にすることに急に変更いたしました。御存じの通り、成長率七・二%の内訳は、第一次産業二・八%、第二次産業九%、第三次産業八・三%、運輸その他八・八%で、その平均全産業が七・二%となり、産業別ウエイトを考慮して七・八%としているのであります。池田首相は、この七・二%を九%とされたのでありますから、その場合の産業別の成長率はどのようになっているかについて、まずお尋ねをいたしたいと思います。この点は、前臨時国会で問題になり、ついに明らかにされなかったことでありますから、具体的にお答えいただきたいと思います。しかしながら、本日もまた明快なお答えがいただけないのでないかというような気がいたします。それは、池田首相の経済の根本理念であります高度経済成長理論の弱点を暴露する結果になることを首相みずからが知っているからにほかなりません。首相は、過去の実績から相当な安全率を見て九%を出しているから、心配はないと申されておりますけれども、全産業が比例して成長率が高くなれば、首相のおっしゃる通りになるのでありまするが、実際にはそうはいかないのであります。すなわち、第一次産業は、首相の言われる過去の実績からしても、二・八%以上を見込むことはまず不可能であります。第三次産業も大したことはない。第二次産業がひとり十数。パーセントの飛躍的発展を遂げることは疑う余地がないのであります。従って産業間の二重構造がいよいよ激化することは明白であります。この場合、生産面のギャップを所得の面で無理に均衡をとろうといたしますというと、結果的に首相の言われるように、農民六割の首切りでもしない限り、数字が合わなくなってくるのであります。従って農民六割削減論は、もともと農業の側から計算されたものではなく、大資本のための高度成長の要求から出たものであって、財界のチャンピオンとして登場した池田首相が、大資本、大企業を優先し、農業軽視の本質を暴露したと言わなければなりません。農民を不安と混乱に陥れた責任は重大であり、首相の反省を求める次第であります。
 第二は、農民六割削減論についてさらにお尋ねいたします。現在農業人口を千五百万人として、首相の言われるように十カ年間に四割に減らすとすれば、年々九十万人ずつ九百万人を他産業に移動せしめ、農村には六百万人しか残らないことになります。しかるに所得倍増計画によりますれば、農業人口は現在の約三割減の」千万人ないし
 一千百万人にしか減少しないと見ております。また農業基本問題調査会の答申案では、さらに減少率は低く、千百五十万人が残ることになっているのであります。また、戦後最高の成長率を示しました三十四年度でさえ、年に三十三万人しか減少しなかったのであります。以上のごとく、それぞれの調査並びに実績から判断いたしましても、農民六割削減論は机上の空論と言わなければなりません。これが農民の首切りでなくて何でありましょうか。もし、首相の言われる六割削減が実現するとするならば、どんなことになるでしょう。農業から他産業べ人口が移動する場合、その要求は男子労働者であり、青年層に集中することが予想せられますので、農業人口の過半数は女でありますから、農村には戦時中と同様、老人と女と子供しか残らないことになります。従って農業労働力の質的量的低下は避けられず、農業の近代化、合理化どころではなく、日本の農業の破壊であります。首相はこの際、一切の行きがかりを捨てて農民六割削減論を撤回する意思はないかどうか、お尋ねをいたします。
 第三に、兼業農家離農対策についてお尋ねいたします。私は農民六割削減論の撤回を要求いたしましたが、決して現在のままの零細農の温存を考えているものでもなければ、占い農本主義を主張しているものでもありません。経済の高度成長がおのずから雇用を拡大し、地域間、階層間、産業間の格差も自然に解消し、所得が倍増するという、手放しの楽観主義に反対しているのであります。首相の言われる農民六割削減論は論外でありますけれども、所得倍増計画の三割の減少すら、なかなか困難であると考えるのであります。本年二月現在で行なわれた世界農業センサスの速報によれば、昭和二十五年から三十四年までの十年間に、農家人口の減少は約一〇%の三百五十二万人であるが、老人、婦人が逆に増加しており、戸数の減少は約二・五%の十六万戸にすぎない、兼業戸数は逆にわずかながら増加の傾向を示しているのであります。この農家戸数の減少しないことが、今後の農政上の重大問題であります。現在、六百万農家は、専業農家二百一万戸、第一種兼業農家二百二十万戸、第二種兼業農家百六十五万となっていますが、首相は、農業を従とする五反以下の第二種兼業農家は実態的に農民ではないと、きめつけて、事足れりとしているようでありますが、それだけでは問題の解決にはならないのであります。この兼業農家が完全に農地を手放すことが必要なので罵ります。そうでない限り、日本農業の欠点である零細性を克服することに役立たないからであります。しかるに、現実は首相の思惑とは逆な方向に進んでいるのであります。すなわち、社会保障、技術養成、住宅等の諸問題、あるいは二重構造、低賃金、職場の不安定等の悪条件が根強く残っているために、農民は完全に転業に踏み切れず、容易に農地を手放そうとしないのであります。ここでも日本経済の二重構造をすみやかに解消することが前提条件であることを知らねばなりません。兼業農家の離農対策の成否は、直ちに構造政策の実現に影響する重大問題でありますが、首相並びに農相はいかなる具体策をお待ちになるか、お伺いいたしたいと思うわけでございます。
 第四は、貿易の自由化と農業の関係についてお尋ねいたします。貿易、為替の自由化の進展に伴い、逐次農産物にもその影響が現われ参りました。すなわち、大豆の問題がいまだ完全に解決していないうちに、突如として砂糖の自由化の方針を決定したようであります。これと密接な関係にあるテンサイ糖、結晶プドウ糖に与える影響は甚大なものがあると思うが、政府はこれに対する具体策をお持ちになるかどうか。農相並びに通産大臣にお尋ねいたしたいのであります。また、政府は肥料二法により、国内の農民には一かます七百八十九円の高い硫安を売り、台湾、南朝鮮等へは五百五十円の安い値段で輸出をしてきたことは御承知の通りであります。これら出血輸出が累積いたしまして最近では、ついに輸出会社の赤字は百十五億円に達したのであります。これらの措置をめぐり、問題は政治的にも複雑化して参りまして本年度の肥料価格はいまだに決定していないのが実情であります。これに加えて、米国のドル防衛対策の一環としてICAの資金による域外買付けの停止の問題が起こり、硫安工業界は深刻な影響を受けて混乱をまぬがれません。これらの事態は、従来の政府の肥料行政の失敗であって、直接消費者の農民にその犠牲を負わせるべきものでは断じてありません。政府はこの困難な肥料問題に対し、いかなる対策をお持ちになるのか、お尋ねいたします。
 最後に、所得倍増計画と農業基本法案との関連についてお尋ねいたします。政府の所得倍増計画の中の農林政策は、基本問題調査会の趣旨を取り入れた、いわば農業革命ともいうべき画期的政策転換を含むものであることは、今さら言うまでもありません。しかるに、所得倍増計画の中の農林関係の施策はきわめて不十分であり、農業軽視の傾向が露骨に現われているのであります。一例をあげますならば、十年間の農業関係の行政投資額は一兆円で、行政投資総額十六兆円に対する比率は五・六%で、戦後最低の三十四年度の七・四%をはるかに下回わるものであります。このような状態では政府自民党の農業政策はまず財政面からくずれ、全国農民の期待に沿うことはできないものと考えるので、あります。農業構造政策の実現のためにも思い切つた財政投融資がなされなければ、農業の近代化も合理化も画餅に帰することは明らかであります。所得倍増計画の最終決定は、主として農業関係の不備のために遅延しているようでありますが、この計画が確立しない場合、当沿公約の農業基本法の提出にも支障をきたすと考えるのでありますけれども、池田首相並びに農相の所信を承って、おきたいと思います。
 以上をもって私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。およそ経済の成長は外部から押しつけられる問題ではないのであります。経済成長は国民の熱意と行動によって創造されるのであります。でき上がるりであります。国民の熱意と行動によってそれが成就されるのであります。われわれといたしましては、この国民の創造力――ポテンシャル・エナージーを刺激し、強化して、そうしてこの国民のポテンシャル・エナージーか自由な姿で伸びていくような環境を作ることが、経済の成長の根本と考えます。従いまして私はこういう意味におきまして今まで歩いてきたこの日本の経済、そして今まで国民が熱意こ行動をもって努力されたこの経済成反は続けていこう、続けていってもらおうというのが、私の考え方でございます。従いまして、私は、今回いろいろのドル問題等がございまするが、この経済成長を続けていく、変更する考えはございません。これは私は国民に約束した十大政策の一つでございます。
 次に、共産圏諸国との貿易につきましては、お話にもありましたごとく、ソ連との貿易は幸いに非常に伸びて参っております。今年は大体輸出が五十万ドル、向こうからの輸入が八千万ドル、一億三千万ドル程度の輸出入ができそうでございまするが、あるいは、ことによったらもっとできるかもわかりません。私はこれを伸ばしていこうと思っております。また同じ共産圏のルーマニアとも貿易協定をやりまして、今後飛躍的に伸びていく。私は共産圏との貿易はこれを推し進めていくのに何らやぶさかではございません。非常に熱心に考えておるのでございますが、これがいわゆる、何といいますか、政府間貿易とか、事、承認とか外交の重要な問題に触れます場合には、そこまでいかずに、積み重ね方式でどんどんやっていきたいというのが、私のただいまの考え方でございます。あるいは情勢変化によりますれば、これは世界自由国家群全体の気持が変わってくるならば、われわれはそれ以前に適当な措置をとることにやぶさかではございません。私は今のところはこれだけ申し上げるよりほかにないのであります。
 また給与問題につきましては、人事院の勧告を尊重することを原則といたしております。ただ問題は、五月にさかのぼってやるかという問題につきましては、財政の事情が許しませんので、これはがまんしていただきたいと思います。なお、実質賃金が下がっていると言われまするが、私の見るところでは、年々実質賃金は上がっていると統計が示していると思います。
 なお、病院ストにつきましては、先ほど申し上げました通り、まことに遺憾なことでございまするが、根本的なその原因を究明し、また医療制度その他とも関連いたしまして、万全を期したく努力していきたいと思います。なお、厚生白書に述べておりますところは私は全く同感でございまして社会保障制度の拡充強化はわれわれの重大な政策でございます。社会保障制度を最優先するかという問題、その最優先という言葉がこれは問題でございまするが、私は昨日の所信表明でも、福祉国家の建設が第一だと、こう言っております。従って福祉国家の建設ということは、社会保障制度が非常に大きなウエートでございまするが、社会保障制度をいかなるテンポでやっていくかということにつきましては、それはそのときの経済あるいは国力の状況を考えなければいかぬ。福祉国家の実現が私は最終の目的であるということは、はっきり申し上げておきます。
 なお、農業問題につきましていろいろうんちくを吐露せられましたが、私は、六割削減とか貧農切り捨てということを一切言っていないのです。経済の成長がずっと進んでいくならば、農業というものは非常に変わってくる。今の日本の農業というものは、徳川時代あるいは明治時代そのままが残っているんじゃないでしょうか。だから私は、いっかはだれかの手で農業というものをほんとうにりっぱな企業として成り立つようにしなければいかぬ。他の産業と見劣りのしないような農業にすることが私の根本の方策でございまして、貧農切り捨てとか六割削減とかということは、これは聞き違えて言っていることで、私の口から一切削減と言っておりません。これは、はっきりここで申し上げる。そこで私は、この日本の農業を、多角経営、規模を強化していかなければいかぬ。多角経営であり、また規模を強化していかなければいかぬ。そういうようにして農業をりっぱなものに育てていくためには、経済の成長とかね合わせていこうというのが趣旨でございます。そうして、今の六百万世帯あるいは千五百万人、こう言っておられますが、お話にある通りに、専業農家、第一次兼業、第二次兼業等々、これを農民と言うか、いわゆる農業人口と言うか、農家人口と言うか、この点の定義もきめていかなければならぬ。しかし、いずれにいたしましても、日本の経済が非常に拡大していく場合におきましては、農業人口が相当減っていき、そして減るばかりでなしに、農業をりっぱな企業に育て上げるということが一番重要な問題でございます。人の減る減らぬというのは第二の問題と私は考えているのであります。従いまして、所得倍増と農業基本法との問題はうらはらでございます。いかにして農業をりっぱな企業とし、工業、商業と対等な格好でいけるようにするかというのが私がやりたい重要な施策でございます。どうぞ今後とも十分努力して参りまして、皆さんのお気に入るよう、国民がかくよくやったと言われるような事績を現わしたいと努力いたしているような次第でございます。どうぞ御協力をお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(迫水久常君) 給与担当の大臣としてのお答えを申し上げまするけれども、公務員の給与改定につきましては、ただいま総理大臣が御答弁になりました以上に私がつけ加えることはございませんので、さよう御了承を願いたいと思います。(拍手)
  [国務大臣石田博英君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(石田博英君) 病院ストの実情についてまず第一に、労働基準法違反の事実がなかったかどうかという御質問でございますが、昭和三十二年以来、病院その他医療機関を基準法の監督の重要事業場の一つといたしまして、初年度は約四百五十、次年度、三年度は二千七百事業場について、調査、監督を進めて参りました。その違反事実につきましてはその矯正方に努力をいたしておるわけでございます。その結果、他の事業場と比較をいたしました場合に、一がいには申せないのでございますけれども、しかしながら、病院の労務管理、経営管理の上に幾つかの問題がございますことは、これは事実でございます。従って、病院ストの解決には、現在当面いたしております事態の応急的な解決のほかに、根本的な諸問題、基底に横たわる諸問題の解決が必要でございます。そこで根本的な基底の問題の処理は、やはり直接監督をいたしておりまする厚生省におかれまして所要の準備を進め、検討をお進めいただくことが必要でございます。労働省といたしましては、選挙中から再三その希望を申し述べて参ったのでございますが、今回、古井厚生大臣の御就任によりまして、意欲的にこの問題にお取り組みいただいておりますことを心強く存じておる次第でございます。
 次に、現在当面をいたしておりまする事態の処理につきましては、私はやはり第三者の公正なあっせんによって御解決を願いたいと思うのであります。先ほど三井三池の問題の処理の例をあげられ、何か特効薬のようなものがないかどうかという御質問でございます。しかし、これは大へん失礼ではございますが、労働組合出身の北村さんの御意見とも受け取れないのであります。労働争議には原則として政府が介入すべきものではないのでありまして、自主的な交渉によって解決せられ、さらにそれが困難な場合は、第三者、地方労働委員会あるいは中央労働委員会のあっせんによって御解決を願う。政府といたしましては、その争議が適法の状態において行なわれております限りは、労使双方の自主的な判断によって処理願うのが建前でございます。そこで、それでは三井三池の場合に政府がなぜ介入をしたか、こういう御質問になると思うのでありますが、これはきわめて非常の事態であります。きわめて非常の事態でありましたが、しかし、それでもなお労使双方に対して勧告をするにとどまってあっせんの内容自体は第三者機関である中央労働委員会にお願いをいたしておる次第でございます。従いまして現在の事態の判断をいたしますと、病院の争議はまず適法に行なわれております。必要な保安要員も確保せられておりますることは、不幸中の幸いと考えておるのであります。しかし、それとてもこのまま放置することは許されないのでありまして、労働省といたしましては、争議の解決のじゃまになるような要素を除去する。すなわち、あるいは一例をあげますと、日赤等におきましては、本部の労務管理の責任体制がとられていないという場合におきまして、それがとられるように指導をいたしますとか、あるいは先ほど申しましたような基底に横たわります問題の処理にあたってそれがすみやかになされますように勧奨するという努力を目下重ねておるのであります。しかし、だんだんと年末も迫っておりますし、いつまでもこういう状態が続くことは社会不安の一つともなりますので、私どもは全力をあげて、第三者のあっせんによって事態が円満に処理せられることを期待し、努力をしているのでございまして、第三者のあっせんに労使双方が応ぜられるように一つ御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣古井喜實君登壇、拍手]
#23
○国務大臣(古井喜實君) 医療制度についていろいろお話でございました。現在の医療体制は、まずこの医療機関を見ましても、公的なものと私的なもの、公的なものでも国立、公立、公益法人など、まことに混雑をいたしております。医療の方法につきましても、社会保険だけではなしに、御承知の通りにまだ個人診療の面も大きなウエートを持っております。私はやはり、社会保険、保険診療がこういうふうに前進してきているというこの事実をもとにいたしまして、ここを中心にして医療制度を整えていくことがよいことだと思うのであります。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、もうすでに医療制度調査会が発足して活動を始めていることでありますから、十分ここで各方面の衆知を集めて検討してよい結論を得たいと思います。同時に、調査会の結論ばかり待っているわけには参りませんので、待たずに政府だけで処理できることは、来年度の予算においてもこれを実現したいと考えておる面はございます。たとえば結核、精神病等の面において、国の負担を増し、個人負担を減らしていくということは、これは明年度の予算でぜひ実現したいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたしますが、所得倍増は農家にしわ寄せをさせられるのではないか、資本家の保護じゃないかというようなお話でありますが、これはまことにお考え違いだと思います。私どもが新しい農村、新しい農業の行き方についていかにするかということは、戦後における日本農業の政策の中心が、米を中心とした食糧増産政策にあったことは皆さん御承知の通りであります。当時の状態といたしましてはこれが最もよかったのでありまして、効果は十分あげて参りましてその当時における農業生産と鉱工業生産との伸びと、うものは、逆に農業生産の伸びが多かったような実態であります。しかし、今日は非常に事情が異なりまして、戦後、講和条約発効後における日本における鉱工業の伸びというものは、すでに皆様御承知の通り、農業と鉱工業との間における成長度の伸びの差というものが非常に大きくなり、その結果というものが農業所得と他産業との所得格差になって参っております。これをいかにして直すかというのが私ども池田内閣の農政の基本でございます。
 そこで、それをいかにして直すかという問題になりますときに、こまかいことは略しますが、農業を中心とする生産物と鉱工業の生産物との商品化率の問題の差というものから、もはや日本農業における新しい行き方としての、作物についての考え方を変えなければならないのではないかという点が点。また零細農の多いこの農家の実態というものから考えてこれをどういう形に伸ばすかということが一つの考え方であろうと思います。こまかいことを略しまして、これを中心に考えて参りましても、これをどうして伸ばすかということを考えたときに、今御質問者の御指摘のように、日本農業と、うものは専業農と第一種兼業、第二種兼業に分かれている。農業人口におきましても、御指摘のように三つに分かれている。これをどういうふうに持っていくかということが問題でありますが、何といたしましても、農業それ自体の所得を引き上げてそうして生産性を高めて、農家の所得を上げるという方向はもちろん必要であります。まず第一にこれが考えられなくてはならぬ。しかしながら、第二点といたしましては、何といたしましても、農業それ自体だけで問題の解決は困難なことは、あなた方御承知の通りであります。従ってそれは農外所得というものをいかにして引き上げるかということにおいて農家所得の増加を考えなければならぬ。ともすれば、議論される方は、農業に関する問題だけを取り上げて、これはいかにやってもできないじゃないか、これくらいの二・八%では、ほかに追いつかないじゃないかという議論が出ると思いますが、この点はよくお考えを願って、農業の所得を増加するということは、日本の国民経済の上からやらなければなりませんが、同時に、農家所得というものを引き上げるということは、農業所得の問題だけではなくして、農外所得の増をいかに持っていくかということを考えていくべきだろうと考えるのであります。そういう見地に立って私どもは考えておりまするし、従って、また、それをやるについて、零細農家について、あとで御質問になりました農業法人問題等につきまして、私どもは、零細農家の集団共同化という問題を考えつつ、これが解決に進みたいと、かように考えておりまするし、また、農業の近代化ということによって、労力を節約しつつ生産性を高めるという方面において、農業機械の購入その他の助成等も、農業法人等の力によってこれを持っていくということも考えておる次第でございます。従って、私どもの考え方は、決して、この所得倍増計画というものが、資本家のためになるので、農家のためにならぬというようなお説は、お考え違いじゃないかと考えます。
 第二のお尋ねの点、農業と自由化問題に対する影響でありますが、これは御承知の通り、今日まで約四七%、農業生産品目について自由化いたしましたが、これらはむしろ自由化した方が日本の農業者のためにもなるような品目をとらえて自由化してございます。これからの問題は、あくまでも、農家に対して影響のあるものにつきましては、西欧諸国における農業国におきましても、必要なものに対しては保護政策をとっておるのであります。私どもの方も十分それを考えて、時期と方法を考えて参りたいと思っております。
 その次のお尋ねでありますが、肥料問題にお触れになりました。肥料について高過ぎはせぬかということでございます。しかし、肥料につきましては、ほかのものと違いまして、戦後ずっと毎年々々、合理化に伴って安くされたもののメリットは全部肥料の方に与えて参りました。ただ、御指摘のように、輸出の方は少し安いじゃないかという、その問題であります。これは輸出競争市場の確保のために、外国の方が相当無理な方法で売って参りました。それに対抗して安く売っておりますが、しかし、この安くしたもののしわ寄せば農家に持ってきてはならぬということは、肥料日本の趣旨でありますが、これは農家には影響はございません。しかし、将来の問題としましては、もっと肥料の生産合理化に力を入れて、より安い肥料を農家に与えつつ、輸出に対しても堂々と各国と太刀打ちできるようにいたしたいと、かように考える次第であります。
 お尋ねのICAの問題でありますが、これはなるほど影響がないとは申しません。今日、日本の肥料輸出の相手方――韓国あるいは南べトナムの方面においても、輸出の地方で、相当大きな割合がICA資金によって払われております。しかしながら、これを全部取りやめるということになれば、影響がないとは申しませんけれども、しかし、この地方はどうしても肥料を絶対に要するところであります。しこうしてドイツ等が入れておりますのも、日本と同じ立場に立つわけであります。アメリカ等はどうかというと、余力はない。従って、これに対しましては、政府といたしましても何とか特別な方法を考えてもらいたいと思いますが、しかし、ICAに対して具体的な措置がまだきまっておらぬようでありますが、今日、直ちにあわてる必要はないと考えております。
 それから、最後にお尋ねでありますが、所得倍増と基本法の問題であります。前大臣のときから農業基本法の原案が今できておりますが、私は、十分この内容を検討いたしましてよりよいものを作っていきたいと思いますが、あなたのお話のように、何か所得倍増計画は行政投資額が少ないので云々というお話でございますが、これは、先ほど申しました、新しい農業を進めるについて、選択的に、売れる作物、もうかる作物に転換するというような問題等も考えますときに、どれだけの農地というものが対応していけるかという基本の問題をあわせて考えて、公共投融資を考えるべきであって、ただ金額だけふやしさえすればいいという考えではございません。従って、また、所得倍増に関する問題は、単なる公共投資だけの問題ではなくて、新しい農政を執行するについて必要な、非公共的のものについても予算もあるわけであります。これらをあわせて考えて十分御趣旨に沿うて、新しい農政が円滑に進められるよう努力いたしたいと考える次第であります。(拍手)
   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(椎名悦三郎君) 肥料の問題について御質問があったようでありますから、この問題についてお答えいたします。
 ただいま硫安の問題につきましては暫定価格を実施して参っておりまするか、やがてこの問題につきましては、生産者の方面をよく考えまして生産コストとも見合い、ともどもに立ち行くような方策をあわせ講じて、その見台いのもとに肥料価格を合理的にきめたい、かように考えておる次第であります。(拍手)
#26
○副議長(平井太郎君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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