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1960/12/17 第37回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第037回国会 予算委員会 第6号
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1960/12/17 第37回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第037回国会 予算委員会 第6号

#1
第037回国会 予算委員会 第6号
昭和三十五年十二月十七日(土曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 船田  中君
   理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君
   理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君
   理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君
   理事 田中織之進君 理事 横路 節雄君
      相川 勝六君    赤澤 正道君
      井出一太郎君    稻葉  修君
      臼井 莊一君    小川 半次君
      上林山榮吉君    菅  太郎君
      菅野和太郎君    北澤 直吉君
      倉石 忠雄君    櫻内 義雄君
      田中伊三次君    床次 徳二君
      中野 四郎君    羽田武嗣郎君
      橋本 龍伍君    藤井 勝志君
      前田 正男君    松浦周太郎君
      松野 頼三君    松本 俊一君
      三浦 一雄君    山崎  巖君
      安宅 常彦君    淡谷 悠藏君
      川俣 清音君    木原津與志君
      北山 愛郎君    小松  幹君
      河野  密君    島上善五郎君
      楯 兼次郎君    辻原 弘市君
      堂森 芳夫君    永井勝次郎君
      野原  覺君    井堀 繁雄君
      受田 新吉君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  池田 勇人君
        法 務 大 臣 植木庚子郎君
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
        大 蔵 大 臣 水田三喜男君
        文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
        厚 生 大 臣 古井 喜實君
        農 林 大 臣 周東 英雄君
        通商産業大臣  椎名悦三郎君
        運 輸 大 臣 木暮武太夫君
        郵 政 大 臣 小金 義照君
        建 設 大 臣 中村 梅吉君
        自 治 大 臣 安井  謙君
        国 務 大 臣 小澤佐重喜君
        国 務 大 臣 西村 直己君
        国 務 大 臣 迫水 久常君
        国 務 大 臣 池田正之輔君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
 委員外の出席者
        大蔵事務官
        (管財局長)  山下 武利君
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
十二月十七日
 委員臼井莊一君、菅太郎君及び岡良一君辞任に
 つき、その補欠として藤井勝志君、逢澤寛君及
 び安宅常彦君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員逢澤寛君、藤井勝志君及び安宅常彦君辞任
 につき、その補欠として菅太郎君、臼井莊一君
 及び岡良一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)
 昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)
     ――――◇―――――
#2
○船田委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)、同じく特別会計予算補正(特第1号)、以上両案を一括して議題といたします。
 質疑を続行いたします。井手以誠君。
#3
○井手委員 補正予算に対する質問の締めくくりとして、時間の関係から財政問題にしぼって三、四お尋ねをいたしたいのであります。
 補正予算に出されております戦争損害に対する補償六十八億円、これは日本の民間会社が空襲にあったその損害、その会社に出資しておったアメリカの法人に対して六十八億円を払うというのでありますが、この問題について、私はことしの春総締めくくりの質問として、時の大蔵大臣にお尋ねをいたしましたところ、日本政府としては支払う必要はございませんと答弁をなさっておるのであります。ところが今回は、委員会の審決の結果としてこれを支払うことに出ておるのでありますが、この問題は、民間会社の戦争損害に対する支払いでございますので、その審決に従うといたしましても、その内容を明らかにする必要があると考えますので、そのいきさつについて若干説明を願いたいのであります。
#4
○水田国務大臣 今の問題は、日米財産委員会に付託されて審議された結果、本年七月二十日に同委員会が補償金額を六十八億円とするという審決を下しました。その内容を申しますと、株式を発行した日本の会社が、開戦時に持っておった固定資産の戦争損害について、これには両国政府の金額はおおむね一致しておりましたが、割合に小さい問題で建設仮勘定を含めるかどうかというのが一つの争いでございましたが、委員会は、この問題については米国側の見解を認めて、補償金額は約三十五億円というふうに査定されました。それから発行会社が開戦のときに持っておったたなおろし資産の損害は、これも米国側の主張が認められまして、補償金額は約四十七億円と査定をされました。それから財産委員会に付託されたあとで、新たに米国側から追加請求された損害項目は、これは日本側の主張が通って損害掲載から除外されることになりました。これによって軽減された補償金額は、大体八十一億円でございます。それから損害額から差し引くことを許されているものにつきましては、日米両国政府の主張を向こうが勘案して、約十四億円と推定される金額が差し引かれるということになりました。ですから、米国側の主張の百六十二億円の要求が、最後に六十八億円という損害の審決を受けた、こういう経過になっております。
#5
○井手委員 日本の政府は、ただいまも申し上げましたように、支払う必要がないという主張を繰り返しておったと思う。ところが新聞の報道によりますと、いつまでも審査を延ばしてはいけないというような意味からでしょう。委員長の話に応じて妥結を急いだという情報を聞いておるのであります。あくまでも六十八億円にも上るものを補償するという場合には、日にちは少々延びても私は主張をあくまでも通すべきではないかと思いますが、その間のいきさつはどうですか。
#6
○水田国務大臣 これは財産委員会において審議が進んでおったことでございまして、ただ審決がやがて下るだろうという前に、それが下ったあと将来いろいろ友好的な関係を阻害されるようなことがあっても困るというので、これが済んだあとはいろいろ円満にやっていきたいというような話をした事実はあるということを聞いておりますが、別にこれがきまっても支払いを延ばしていいとか、あるいはその金額を話し合いできめるというような運動をした事実は一切ございません。
#7
○井手委員 それでは進んでお尋ねいたしますが、戦争損害を受けた、特に賠償金額の多い関係の会社である東芝、日本電気、住友電気工業、特にこの三社についてお伺いいたしたいのであります。爆撃を受けた、損害を受けた日にちとその損害額、それから補償時と言われている、いわゆる時価は、昭和二十七年四月二十八日の講和発効の日だと私は承知をいたしておりますが、その物価の指数はどうなっておりますか、あわせてお伺いをいたします。
#8
○水田国務大臣 詳しいいきさつは、事務当局からお答えいたさせます。
#9
○山下説明員 ただいまお尋ねのありました点でございますが、爆撃を受けた日にちは、ただいまここには正確な資料はございませんが、大体昭和二十年五月前後であろうと思います。損害額は、開戦時に有しておりましたところの固定資産並びにたなおろし資産の損害の実額に、その当時の米国側の持ち株率をかけて審決がなされておるわけでございます。審決に現われておりますところの損害額といたしましては、東芝につきましては固定資産が二十二億五百万円、たなおろし資産が二十四億八千三百万円、それから日本電気につきましては、固定資産が三億六千八百万円、たなおろし資産が十四億八千六百万円、住友電気につきましては、固定資産が二億七千八百万円、たなおろし資産が三億三千万円でございます。物価倍率は二〇〇ということになっております。
#10
○井手委員 ただいまの答弁は、委員会の審決の結果だと思うのですが、日本側の主張が私は聞きたかったのであります。あなたの方の政府の言い分が聞きたかった。
 進んでお尋ねをいたしますが、開戦時にその株式はアメリカのインタナショナル・ゼネラル・エレクトリック、並びにインタナショナル・スタンダード・エレクトリック、このおもなる二社が持っておった、この株式は接収されたわけでありますが、その後の管理、いわゆる戦争の被害を受けたときまでの利益金はどう処理されたのか、またその後どう処分されたのか、その点をお伺いいたします。
#11
○山下説明員 的確なお答えにならないかと思いますが、この株式の損害をどういうふうに算定するかという問題につきましては、いろいろ議論の分かれるところでございます。ただし平和条約十五条に引用されておりますところの連合国財産補償法の十一条並びに十二条にそれの株式の損害の算定というものが一応規定されておるのでございまして、それによりますと、開戦時に会社に存在しておりましたところの財産が、戦争によりまして損害を受けましたときは、その損害額、それに当時の持ち株率をかけたものが一応の損害額としてあがるわけであります。ただし十二条の方に規定がございまして、開戦後に会社が取得しました財産が補償時において値上がりをしておる、つまり連合国株主の関知しない間に会社がそれだけの財産の値上がりというものを持っておった場合には、それを超過額として差し引くということが規定されておるわけでございます。この連合国財産補償法の解釈をめぐりまして、日本側の主張と米国の主張とが対立しておった、こういうことでございます。
#12
○井手委員 私がお尋ねしているのは、その接収されたアメリカ法人の利益金の処分です。日本の政府がアメリカの二つの会社の持っておった株式を接収した、その株式に対する会社の利益配当はどうなっておるかと聞いておるのであります。たとえば、それは東芝で処分をしたのか、あるいはインタナショナル・ゼネラル・エレクトリック会社の口座に入っておったのか、日本政府の収入になったのか、その点をお聞きいたしておるのであります。
#13
○山下説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、戦争が始まりましてから、敵産でありますところの株式は、敵産管理法によりまして日本政府がこれを管理しておりました。管理しておりました間の配当等は敵産管理勘定に入っておりまして、間もなくそれが日本人の株主に売却されたわけでありまして、その売却代金はまた敵産管理勘定に入れたわけであります。その後の配当というものは連合国の株主には渡っておらないわけであります。
#14
○井手委員 それは話が少し違う。開戦時の昭和十六年十二月八日以降空襲を受けたときまでの、敵産として接収された株式に対する配当、それは今おっしゃった株式の処分とは違います。その利益金は今の時価にすれば数十億円になるのでありましょうが、その分はどこの収入になっておるかと私は承っておるのであります。私が聞いたところでは、これはこのアメリカの法人の口座に入れてあると私は思う。すなわちその利益というものは、その会社の方に入っておるはずです。それを私はお尋ねしておる。私が申し上げておるのは、今度六十八億円にも上る戦争の損害を補償しようというのに、その間の利益についてはすでにアメリカの法人に渡っておるから私はお尋ねしておるのであります。
#15
○山下説明員 ただいまお答え申しましたように、敵産株式の売却代金というものは連合国株主の名義として管理したわけでございまして、戦後それはその当時の売却代金でもって返還をいたしております。もっとも理論的に申しますと、この損害額からその返した金額は差し引くべきであるということになるわけでございますが、審決ではその額も考慮してこの六十八億円をきめたということになっております。
#16
○井手委員 その数カ年にわたる会社の配当は、どこの収入になっておるかということを私はお尋ねしておるのであります。その株式を売却した代金というものとは違う。株式を売却するまでの管理された期間の利益金の処分は、どこの収入になっておるかということを私はお尋ねしておるのであります。
#17
○山下説明員 売却されるまでは、その配当金というものは連合国人の名義でもって敵産管理勘定に預かっておったわけでございます。
#18
○井手委員 それは違います。それはこのアメリカのインタナショナル・ゼネラル・エレクトリック会社の口座に入っているはずですよ。そこで調べてごらんなさい。
 重ねてお尋ねいたしますが、その利益金を配当されたあとで株主が、昭和二十四年でございますか、政令か何かによってそのアメリカの法人に持ち株は返されておる。それはそうでしょう。それは幾ら返されておりますか、その点をお尋ねいたします。私がここでお尋ねしておるのは、戦争の損害としてアメリカに六十八億円を払う。民間会社の戦争損害に対して日本の政府が国民の税金で払わなければならないのでありますから、その内容については明らかにする義務があると思って私はお尋ねしておるのであります。二重払いになるおそれはないかということでお尋ねしております。
 さらに私はお尋ねいたします。一緒にお答えを願いたい。株を戻すときに、当時は東芝に対してはエレクトリック会社は八十五万株であったものを、戻すときには千二百万株戻しておるはずです。その点を明らかにしてもらいたい。
#19
○山下説明員 ただいまのお尋ねでございますが、インタナショナル・ゼネラル・エレクトリック会社の名義でもって特殊財産管理勘定にありましたものは三億三千百万円であります。これを引き出して会社に返しておるわけでございます。それから返すとき株が当時の株よりもふえておるというのは、敵産管理の途中におきまして増資がございましたので、それの子株をつけて戻したわけでございます。それの払い込み金五十円をとってつけて戻しておる、こういうことでございます。
#20
○井手委員 その子株をつけて戻した、子株というのは相当の株数です。その時価の計算はこの審決において考慮されておりますか。
 そこでもう一つお尋ねします。昭和十六年の開戦時から昭和二十年の空襲で損害を受けた期間の利益は、すでに会社の方に戻されておる。二十四年には株式が小株を添えて一千二百万株は渡されておる。そのときの五十円というものの時価というものは計算に入っておりますか。
#21
○山下説明員 これはいろいろな見方がございますが、とにかく敵産管理の間におきましては、その財産は凍結をされておりまして、会社の自由にはならなかったわけでございます。その間の物価の変動によりまして、会社側としても株主としても相当の損害を受けておる、こういうことは十分言えると思うのでございます。ただそれに対しまして、戦後は値下がりしましたところの五十円でもって払い込まして、子株を与えたというふうな利益もございます。両方相殺と申しますか、片一方においては、そういう損害もある、片一方においてはそういうふうな利益も与えているというようなことで返還の措置を講じたわけでございます。
#22
○井手委員 この問題は非常に複雑でございますので、私はあまり詳細なことはお尋ねをいたしませんけれども、東芝において昭和二十五年の資本金は二十六億円であります。今度損害が補償されようとする金額は三十八億二千万円です。総資本を上回る戦争の損害というものが考えられますか、その点をお尋ねしたい。
#23
○山下説明員 この審決に現われております金額は、先ほど申し上げますように、物価倍率二〇〇というものがかかっておるわけであります。平和条約発効時の物価で計算をされておるわけであります。
#24
○井手委員 アメリカの都合のいいときには二〇〇の倍率をとる。またたなおろし資産その他の問題がありましょうけれども、戦争によって注文がふえた、仕事が拡大した、隆盛になったという利益は私はあると思う。その分については考慮されておりますか。
#25
○山下説明員 そのお尋ねの点が、先ほど申し上げました連合国財産補償法の十二条にありますところの超過額の差引計算というところに現われているわけでございます。日本側はこれを相当多額に主張いたしまして、当時補償の必要がほとんどないと申し上げておったときには、これを大きく見ておったわけでございますが、その後いろいろと米国側との意見の対立がございまして、審決はちょうどその間をとった仲裁的な裁決になっておるわけでございます。全面的にアメリカ側あるいは日本側の主張を認めたというわけではございません。その中間的な裁決になっておるわけでございます。とにかく戦争中におきます利益、つまり連合国人の関知しない間の利益というのは損害額から差し引くというのが補償法の建前になっておるわけであります。
#26
○井手委員 その差し引くところのものについては、たとえば東芝の場合において八十五万株が千二百万株に子株がふえて戻しておるということ、それは開戦時から空襲の損害を受けたそのときの先刻おっしゃった三億数千万円の金も含んだものではありましょうけれども、千二百万株に膨張しているのです。そういう利益をされた分についてはあまり倍率というものは考えられていないということを私は申し上げたい。私はここですでに審決された――これは平和条約第十五条(a)項によって行なわれるものでありますから、これを取り消せとかなんとかと私は申し上げません。私がこれを取り上げたのは、民間の戦争の損害に対してアメリカの民間会社に日本の政府が払うという、この国民全部の税金で払わなくちゃならぬ重大な問題でございますから、少なくとも私はその内容を明らかにする必要があると思って申し上げておるのであります。
 そこで私は大蔵大臣にお伺いをいたします。私は実はことしの三月のあの答弁、日本の政府は支払う必要はありませんというそのお言葉がありましたから、本来ならばこういう理由でやむなく審決に従いましたという、当初に説明がほしかった。ここで私はお尋ねをしますが、今日までこういう補償は、アメリカ関係以外のもの、イギリスその他にすでに払われたものは幾らであるか、残されているものはどういうものがあるか、その点をお伺いをいたします。
#27
○山下説明員 現在までに支払われましたものは、総額におきまして約百十億円でございます。
 補償の請求をいたしました国籍別に申しますと、アメリカが五十六億一千四百万円、イギリスが四十一億五千六百万円、オランダ三億八千八百万円、フランス二億三千八百万円、カナダ一億二千五百万円、インド二億七千三百万円、大体そういうふうな数字になっております。
#28
○井手委員 それは支払われたものですか、今後のものはどうなりますか。今係争中のもの、紛争中のものはどうなっておりますか。
#29
○山下説明員 アメリカのほかに係争中のものといたしましてはイギリス、フランス、オランダ、オーストラリア等がございます。
 このうちイギリスにつきましては、先ほど日英財産委員会の審決がございまして、大体二億円という審決額に相なっております。そのほかはごく小さい金額でございまして、フランスにつきましては、株式の件数が一件、同じくオーストラリアにつきましては株式の件数が一件、それからオランダにつきましては船舶の返還の請求が一件、これだけでございます。
#30
○井手委員 オランダの船舶については、向こうの要求は幾らですか。
#31
○山下説明員 これは補償ということではございませんで、いわゆる返還請求と申しますか沈んだ船の代船を戻せという要求でございます。
#32
○井手委員 向こうの要求によれば、金額にしてどのくらいのものですか。
#33
○山下説明員 向こうの要求によりますと、大体七億見当でございます。
#34
○井手委員 この問題はお尋ねすればするほど複雑になりましてわかりにくくなるのであります。この六十八億の審決に対して政府当局の陰の声を聞けば、困ったことになった、これは何とかならないのか、どうもおかしい、おかしいということでございますが、これは日本の敗戦によってやむを得ない事情もありましょう。しかしこういう民間会社の空襲損害を支払うことに対して、今後もなお若干残っております。おそらく政府も満足してお払いになると思いませんが、この機会に政府の代表から――、総理あるいは大蔵大臣からこの戦争損害の補償について一言承っておきたいと思う。
#35
○水田国務大臣 連合国財産補償法によってこの損害の補償を処理することになっているわけでございますが、今申しました問題も、当初日本政府は一億二千万円ぐらいが日本の支払うべき損害額として適当だという考えを持っておって交渉した問題ですが、これに不服があるときには、この日米財産委員会で処理する。しかもこの機関は最終の審決機関であって、これには従わなければならぬということになっております。日英の問題にしましても、日米の問題にしましても、どうせ両国の主張が一致することは、こういう複雑な問題であり得ませんので、政府としてはこれは支払うべきものである、これは支払うべきものでないという争いをするのは当然でございますが、この争いをした結果の審決でございますので、この審決をさらにくつがえしてどうこうするとか、解決する機関は御承知の通りございませんので、これに従うより仕方がない。日英の問題もしかりですし、日蘭の問題もしかりで話がつきませんから、この委員会の審決に待つという態度をとるより仕方がございませんので、今後残された問題は、この審決によって処理するという方針でございます。
#36
○井手委員 審決であるからいたし方ないという結論だけは理解できないでもありませんけれども、これはやはり日本として支払う必要がないという建前をとっておるならば、もっともっと強く主張して国民の了解を得なくちゃならぬ、かように私は考えるのであります。その点を要望しておきます。
 次に、総理にお伺いをいたしますが、いよいよ池田総理は総選挙における公約を盛るところの三十六年度予算の編成に着手されるはずであります。そこでお伺いをいたしますが、この席でも何回となく約束をされました減税、公共投資の増額並びに社会保障制度の拡充について、三十六年度予算には三千億円にも上る自然増収があるといわれておるのでありますから、池田総理の信を問うと申しますか、あるいは腕を存分に発揮できるこの機会でございますので、その公約、新政策をいかに予算に盛るか、その金額についてはっきりした数字はもちろん言えませんけれども、あれほどの公約でございますから、どのくらいは三大公約に盛りたいとお考えになっておるのか、私は詳細は聞きませんけれども、心がまえを承りたいのであります。
#37
○池田(勇)国務大臣 この問題は、三十六年度の予算をごらんいただくのがいい、その前にどの程度ということを申し上げることは、少し早過ぎるのじゃないかと思います。ただ、三つの柱の問題で、減税の点につきましては一月から源泉課税所得を軽減しようとしておりますので、これにつきましては、一応いわゆる平年度千億円以上、これは申し上げなければならぬ筋合いであります。しかし、その他の公共投資とかあるいは社会保障制度拡充のための経費ということは、今せっかく全体の経済の動き等を見まして、今後考えていくべき問題である。ただ心がまえといたしましては、社会保障制度につきましては従来の拡充程度以上にいたしたい、こう思っておるのであります。
#38
○井手委員 社会保障制度については従来以上の拡充とおっしゃいますが、それはどの程度のものでございますか。
#39
○池田(勇)国務大臣 私の記憶では、大体今から十年ぐらい前は三百億前後だった。これが十年間に千五百億ほどふえている。今は、昭和三十五年度の社会保障関係経費は千八百三十億と見ております。この千八百三十億が、多分前年に対しまして今年は三百億程度ふえておる。それから三十四年度は三十三年度に対して二百億程度ふえておると思っております。この、一昨年二百億、昨年に対して今年が三百億、こういうふやし方よりももっとふやしたいという気持でおります。
#40
○井手委員 今の御答弁ですと、少なくとも三百億円以上はふやすということになるのであります。総理はしばしば記者会見やあるいはほかの機会において、三つの公約はいわゆる三本の柱であり足である、どれが短くとも立っていけないということを言われておるのであります。減税に一千億円、社会保障に一千億円、公共投資の増額に一千億円、そうきれいに一千億円ずつはいかぬでありましょうけれども、この前池田総理は大蔵大臣のときに、一千億円減税、一千億円施策というものをキャッチ・フレーズにされたことがございます。重ねてお伺いをいたしますが、社会保障制度については従来増額した分、少なくとも三百億円以上はふやしたいというお熱意のようでありますが、それでは公共投資の増額はどれくらいにお考えになっておりますか。
#41
○池田(勇)国務大臣 公共投資の問題は各般にわたっております。従いましてどの程度にするかという問題は、さしむき各省所管の事柄でございまして、総理大臣が今ここで予算の編成方針もきまらない前に幾ら幾らと申し上げることは適当でないと考えております。
 それからまた、来年度が今年度の当初予算の租税収入に対しまして三千億円以上ふえる、こういっておるのでございますが、この三千億円のうちから減税の額を引きます。それから当然増、ことに公務員給与の引き上げによりまする平年度五、六百億という、まあ五百億程度になりましょうが、それを引かなければなりませんし、また三千億円の増収がありますと、地方交付祝の方が大体五百億近い増が出て参りますので、なかなか一般に想像されるほど使い得る新規使用財源というものは十分ではないのであります。そこで、三つの柱といっても、金額的に三つの柱でなく考え方が三つの柱であるということを御了承願っておきたいと思います。
#42
○井手委員 御答弁の後段の方の、なかなか財源もそう簡単に見つからないということは、私は本音だろうと思う。その点を今からぼつぼつあなたにお聞きしようと思っておるのです。
 そこで引き続いてお尋ねいたしますが、三大公約を実現するために、私はなかなか財源もそう簡単に出てこないと思っておりますが、一般会計において、公債を発行される意思はございませんか。従来池田総理は公債発行についてかなり積極的な意見を持っておられるようでありますし、財源の苦しさのあまり、あるいは公債を発行されるではなかろうかという一般の一部の懸念もあるようでありますので、この機会にお伺いをいたしておきたいのであります。
#43
○池田(勇)国務大臣 一般会計の財源に充つるため昭和三十六年度におきまして公債を発行する考えはございません。
#44
○井手委員 大蔵省にお伺いをいたします。義務的経費のいわゆる当然増についてお伺いをいたしたいのであります。国債償還それから賠償、地方交付税、給与費等々についてお伺いをいたします。
 国債償還において、来年は外国債の元本を償還しなくてはならぬ償還期限が到来しておるのが、二百数十億円に上ると思うのであります。これはこの前の言明からも借りかえはできないはずであります。その国債償還の、少なくとも借りかえはできぬで増加する分。賠償は三十五年度においてはかなりの繰り越しがございましたが、本年度はその余裕がないと思います。その点。地方交付税において、減税に伴う交付税や三税の増収に伴う交付税が幾らになるのか、今回のベース・アップに伴って給与費が幾らふえるのか。なお防衛費において、国庫債務負担行為あるいは継続費の歳出化に伴う最小限度の増加はどのくらいなのか。あるいは人口増に伴ういろいろな義務的経費の増加はどのくらいか、その点をお伺いいたします。
#45
○石原政府委員 事務的な問題でございますので、私から便宜お答えを申し上げます。
 第一の国債償還の問題でございますが、これは先ごろ三十四年度の剰余金が確定をいたしておるのであります。その剰余金のうちでガソリン税の増収並びに所得税、法人税、酒税の三税に対します地方交付税相当分を差し引きました半分が国債償還に充てられることに相なるわけであります。その額が二百二十億というふうに計算をされるわけであります。ただいまお尋ねのございましたように、来年度外債の償還期に当たっておるわけであります。本年度まだ実行を終わっておりませんので、正確な計数は出ませんが、若干の繰り越しが出る見込みでございますから、現在といたしましてこの二百二十億円の剰余金の半分――その二百二十億円の国債償還額をもちまして従来通りの償還ができる見込みでおります。
 賠償でございますが、賠償は御承知の通り、三十五年度におきまして繰越金が五十八億円ございました。これも今年度実行してみなければわかりませんが、こういうような巨額の繰越金の期待はしがたいかと思っております。
 地方交付税の関係でございますが、これは増収がどうなるか、三税の関係がどうなるかということによるわけでありまして、御承知のように、地方交付税プロパーが二八・五%、臨時交付金を引き続き来年度も継続するといたしますれば〇・三、合計いたしますと二八・八%ということになります。大体三税の増収におきます割合は八割見当に相なるかと思います。増収額の見込みに対しまして八割をおかけいただきまして今の率を乗ずればその数字が出るわけであります。(井手委員「幾ら、これは二千億くらいか」と呼ぶ)これは増収額の見方によりますから、その金額によりまして計算できるかと思います。
 それから地方のベース・アップの財源でございますが、これは先ごろ資料をもって御配付を申し上げましたように、一般会計負担におきまして一応四百六十五億と見ております。これはなお今後におきまして精査をいたしまする数字でございますが、それは一つの平年額としての基礎数字としてお考えいただきたいと思います。
 それから防衛費の関係でございますが、これもお示しのように、前年度以来の国庫債務負担行為、継続費、そういうものがございましてプラス、マイナスの関係がございます。これはかつて前議会のときに前大蔵大臣がお答え申し上げましたように、大体百億を下らない額に相なるだろうということを申し上げたわけであります。
#46
○井手委員 主計局長はあまり明確な数字を示しませんでした。三十四年度の剰余金は幾らですか、もう一ぺん。
#47
○石原政府委員 五百十二億であります。
#48
○井手委員 主計局長の説明並びに各方面から得た資料によりますと、来年度、三十六年度は、いわゆる義務的経費の増加が、国債償還、防衛費、賠償、地方交付税、これは大体四百五十億くらいでしょう、給与費がただいま御説明のあったように四百六十五億、それらを加えますと一千五百億前後になるのじゃなかろうかと思うのでございます。
 この機会に私は古井厚生大臣にお尋ねいたします。あなたの方では国民年金の手直しをなさるそうであります。その費用はどのくらいになるのか。どのくらいを見込まれておるのか。すでにこの点については総理からも言明をされております。相当今日まで期間もたっておりますからすでに計算はできておると思います。その点をお伺いいたしますのと、厚生省関係における義務的経費の増加はどのくらい見込まておるか、その二点をお尋ねいたします。
#49
○古井国務大臣 国民年金の手直しのためにふえる経費でありますが、これは御案内のように、拠出制の方は、まだどれだけのことを改正するかも最後的にはきまっておりません。二つばかりの項目はやろう、こういうことになっておりますけれども、あとはこれからの問題であります。そこで拠出制の方の関係で十九億六千万、それから福祉年金の方の改正で、これも、もう少し手続において固めなければならぬ点がありますけれども、大体九億四千万、これが国民年金関係の改正に伴う分であります。
 それから次は義務的経費の自然増ですが、これは生活保護費の関係が約四十六億、それから国保の関係約六十二億、それから国民年金の関係、これが約百七十四億、それから援護関係の遺族年金、障害年金の関係が約八億、大ざっぱに申しまして三百億近くになるのではないかと思います。
#50
○井手委員 国民年金の手直しについて、福祉年金と拠出制年金で二十九億ばかり、それは池田総理の新政策の一つでしょうから、これは除外をいたします。この二十九億がいいかどうかについては、私は今日は触れません。不満の点だけ申し上げておきます。そういたしますと、これを除外しましても厚生省関係で義務的経費の増加が三百億、これらを加えますと、来年度の新政策によらない義務的経費の増加が一千五百億内外ということになるのであります。大蔵大臣、よく聞いておって下さい。そこで、減税に初年度は一千億あるいは九百何十億になるかもしれません。それと義務的経費の増加一千五百億前後、これは若干の違いは出てくるでありましょう。そうなりますと、三千億といわれる自然増収に対して、三大公約を実施するに必要な財源としては、五百億円かあるいは七、八百億円にすぎないということになるのでありますが、その点は大蔵大臣はどうですか。
#51
○水田国務大臣 経費の当然増は、私どもの大体申し上げた程度の金額はあると思います。それで大体三十五年度の当初予算に比べて三千億円以上の増収があるだろうと思っております。これはまだ数字が確定いたしませんが、いろいろ見込みをつけまして、私どもは政策経費は従来と比べてことしは画期的と言えるかどうか知りませんが、相当の政策経費を織り込んだ予算の編成ができるという今のところは見込みを持っております。
 ただ社会保障費は私どもは思い切った強化をするつもりでございますが、問題は金だけ多くつければいいということでは済まない問題がたくさんございまして、私どもは社会保障政策はできるだけ早く内容を強化したいと思っておるのですが、御承知の通り、まだ制度としての体系が整っていないという問題がございますので、予算強化もさることながら、社会保障制度を早く体系づけるということが今一番必要な時期ではないかと思います。これの体系づけを行なわないで、一方に予算的な強化をいたしますと、他方との均衡を失したり、いろいろ矛盾する問題がたくさん出るということで、私どもは国民健康保険の問題にしましても、全体が整備統合されてくるのでしたら、全体の内容強化を一挙にやれるという、問題がございますが、これが予算編成上なかなか体系が整っていないための困難さというものを持っておりますので、そういうものを克服してもなおかつ今までの伸び方に比べて画期的に伸ばす予算の編成をやろうというので今苦心をしております。
 公共事業費も同様でございますが、これは御承知の通り、公共事業につきましては、たとえば道路におきましては今まで五カ年計画というものがございましたので、この計画に従って予算を計上しておりましたが、今度はそうではなくて、今の五カ年計画ではとてもやっていけない。今の交通の実情から見ましても、ここで道路の整備計画は急がなければならぬという事情に迫られておりますので、来年度を起点とした新しい五カ年計画を立てて、それによった予算の計上をしようという方針になっており、新五カ年計画の策定を今やっている最中でございますし、治山治水の方も同様でございますから、こういう四、五年の見通しをつけた計画を作ることを今急いでおります。これができ次第それに沿った予算の確保だけは私はどうしてもやりたいという考えを持っておりますので、全予算のうちで財源が十分でないという場合には、不要不急のものを削ってもこういう政策の重点的なものについては、来年度の予算編成で十分気をつけてやりたいというので、今そういう問題で苦慮しているところでございますが、今おっしゃられる程度の政策費ではございません。
#52
○井手委員 新政策を盛るところの新財源はあまり期待できない。しかし、画期的な予算を組みたい、しかし、予算だけではなくして体系を立てていきたい、整備したい、こういうふうになって参りますと、あなたがいつか記者会見かその他で二十七カ月予算とか言われたことがありましたが、一カ年ではなかなか公約が実現できないから、二カ年に割ってやろうという、意味がどうも私はそういうふうに受け取れてならぬのであります。そこで今あなたからせっかくお話がありました道路予算、公共投資の総額で一番中心になるものは道路関係でありましょう。その点について建設大臣にお伺いをいたします。
 あなたの方で計画をされた新五カ年計画による三十六年度の事業費、その事業を実施するための国費は幾ら予定をされておりますか。一般財源だけでいいです。
#53
○中村国務大臣 御承知の通り、ただいま大蔵大臣から申し上げましたように、昭和三十三年度を起点とする五カ年計画を今日まで進めて参りましたが、現在の道路事情及び産業経済の発展に伴いまして、明年度から新しく五カ年計画を発展的に組みかえまして進めて参りたいと思っております。大体総額といたしまして、建設当局としては二兆三千億の線を考えて、来年度どういうふうに盛り込むかにつきましては、目下財政当局と事前の折衝中でございまして、明確な線はまだ私からちょっと申しかねるような次第でございます。
#54
○井手委員 三十六年度の道路予算についてはまだ明確なことを申し上げられぬとおっしゃいますが、二兆円を均分いたしますと、相当の金額になるはずです。あなたの方では三十六年度は事業費を三千億円、そのうち国費を一千七百十五億円予定されておるはずです。二兆三千億円の道路新五カ年計画、これは池田総理も何回も公約なさったものです。これは間違いなく実行なさるでありましょう。その場合に一般財源が四千六百三十億円という予定をされておる。そうなりますと、初年度だけでも、ガソリン税によるいわゆる目的税を除きましても相当一般財源から出さなくてはならぬということになる。おそらく五百億円くらいふやさなくちゃならぬでしょう。大蔵大臣、考えてごらんなさい。あなたがあれほど公約なさった道路拡充、これには一般会計から特別会計の方に、ガソリン税のほかに五百億円くらい持ち出さなくては三十六年の計画は立たないことになります。そうなりますと先刻申し上げたように、三千億円の自然増収の中に義務的経費の当然増と減税を引いたその残り、それは道路だけで消えてしまうではございませんか。その点はどうです。
#55
○水田国務大臣 今二兆三千億円と申されましたが、この二兆三千億円計画でいきますと、地方財政にかける負担が非常に多過ぎるというような問題もございますし、また道路の整備の仕方、順序、いろいろ実情から考えて経済効果を発揮できるような道路計画というような観点から見ますと、私は二兆三千億円計画というものは簡単に立てられないのではないかという考えを持って、今そういう観点からこの計画の検討を始めておるときでございますので、この金額は幾らになるか、従って来年度の予算で一般会計からどれだけ出さなければならぬかというところまではまだ今のところきまっておりません。
#56
○井手委員 大体見当がつきました。池田総理、今お聞きでしたか。あなたは何回も、道路建設には二兆三千億やる、五カ年でやりますと何回もおっしゃった。ところがあなたの方の水田大蔵大臣は地方の負担分その他いろいろなむずかしい条件があるからどうも困難だと言っておる。あなたはこれはやるつもりですか。やるなら別の財源についての構想がございますか。
#57
○池田(勇)国務大臣 道路拡充計画につきましては、案が二つ、三つございます。十年間六兆円、あるいは小さいもので十年間四兆六千億円、その間の案もございます。しかし私は選挙中に道路拡充計画をいたしますとこう言ったとき、数字をあげて二兆三千億円とは一回も言っておりません。どういうことを言ったかというと二兆円近い予算を組むと、はっきりこれは言っております。二兆円近い予算と選挙中に言っております。
 それからもう一つお考えいただきたいのは、五年間というときに初年度をどうするかという問題がございます。それから地方の負担の点も考えましょう、だからこれを均分になさるということはいかがなものか。それから大体一般会計からの補給は三十億あるいは五十億が今までの例でございますが、来年は少しふやしたいという気持でおります。
#58
○井手委員 新五カ年計画において、初年度は均分されることはおかしいではないかという御答弁でありましたけれども、これは財政の点も考えて建設省においては初年度は七分の一しか見ていないのです。池田総理は、私は一回も二兆三千億円を約束したことはないとおっしゃる。この間の本会議においてはっきりおっしゃっておる。会議録を見られたらはっきりわかる。その点ははっきりいたしておりますから、今いろいろその点をここで申そうとは思いません。私はここで財源問題について、これは今から編成される明年度予算のことでございますから、私はこれ以上は追及はいたしません。ただ今まで本会議において、三千億円にも上る自然増収があるから、明年度は精一ぱいの公約が実現できるということを盛んにおっしゃったのであります。なかなかそう簡単にはいきませんよ。財源から申しますと、そうお考えになっておるようには予算には盛られないという、その点を特に私は申し上げたかったので、この点をいろいろお尋ねしたわけであります。
 次にお尋ねをしたいのは、本日の新聞によりますと、政府はいわゆるガリオア、イロア、対米債務の交渉を急ぐという新聞の報道が出ておるのであります。私はこの点は本日は時間の点もございますので深くは申し上げませんけれども、今日までこの対米債務の交渉問題は、お互いに向こうから迫られるまでは、ぎりぎりになるまではあまり触れないようにしようではないか、私どもはこの対米債務については、終戦処理費あるいは当時の援助物資という建前から、この支払いには反対をいたしております。政府はそれに対して、債務ということは国会の認承を得ておりませんから、債務と心得るというように言葉を濁してある、しかしいずれにしてもこの問題に触れるということは、何かの形において政府は払わなければならぬということになりますので、私どももこれを追及を避けて参りました。それは池田総理もほかの関係大臣も御承知であろうと思う。ところがけさの新聞によりますと、アメリカのドル防衛に協力するために、日本から進んでその債務は支払いましょうという交渉を急ぐと書いてある。しかもその点について池田総理と外務大臣の意見がすでに一致しておる、こう書いておりますが、私は非常にこの新聞記事を見て意外に感じました。国民感情の問題もある。借りた方、債務と心得ておる立場であるならば、何も急ぐ必要はないではないかと私は考える。その点について池田総理と小坂外務大臣の間には、すでに基本方針については十分な意思の疎通が行なわれたと報道されておりますが、この点について池田総理からお答えを願います。
#59
○池田(勇)国務大臣 まず当初の問題の来年度の予算編成につきましては、私は本年度の当初予算に対して三千億円以上の増収を見ておるのであります。その以上というのがどの程度になりますか、お話の点のように、いろいろ厄介な問題がございます。しかし私は大蔵大臣を初め各閣僚とともに、全知全能をしぼりまして公約の実現を期しておるのでございます。
 次にガリオア、イロアの返済問題でございますが、私は大蔵大臣当時からこのことは債務と心得ます、こう申し上げておるのであります。しからば債務にする場合には、もちろん国会の承認を得なければなりません。しかしてこの問題につきましては、外務大臣の意見は聞きましたが、私は自分の責任におきまして今考慮中でございます。結論は出しておりません。しかもこういう問題は外交の機微に関することでございます。また国内問題としても重要な問題でございますので、取り扱い方につきましては慎重に考えておるのであります。きょうある一新聞に出ておりました。私も読みましたが、これは外務大臣と総理大臣だけの問題ではございません。大蔵大臣の問題もあります。もちろん大蔵大臣にも相談しなければなりません。私は重要な問題でございますので、まだはっきりした腹をきめていないということを申し上げておきます。
#60
○井手委員 重ねてお伺いをいたしますが、それでは明春早々日本の政府から債務の交渉を申し出るということは、それはありませんね。
#61
○池田(勇)国務大臣 そういうことにつきまして慎重に考えておるのでございます。だから明春早々申し出るか、申し出ないか、ここではっきり申し上げられません。
#62
○井手委員 この対米債務の問題については、国会においても何回となく衆参両院で論議をされた問題でございます。きわめて重大であります。私どもは支払う必要はないという建前をとって、今後も進みたいと思っておりますが、問題はお話の通り、外交交渉の点もございましょう。それから国民感情の点もございますから、交渉なさる前には、やはり国会に対して事前に何らかの方法で説明し、政府の方針を明らかにされたいと思う。その点を私はお伺いしておる。
#63
○池田(勇)国務大臣 御意見は御意見として承っておきます。
#64
○井手委員 最後に公共料金について簡単にお伺いいたしたいと思います。主として企画庁の長官になるかと思います。一千億の減税をされましても、たとえば年間五十万円の所得者に対して、減税の恩典というものは月に六百円前後であろうと思うのであります。ところが最近物価の値上がりというものはとてもひどい。各方面の調査によりますと、一カ月の生計費は最近五千円も六千円も上がっておるということが言われておるのであります。さらに公共料金の値上げというものが最近非常に問題になっておる。特に九州電力においてはことしの七月十四日に一割七分五厘五毛、ものによっては六割の値上げを含んだ電力料金値上げの申請が行なわれておりますが、けさの新聞によりますと、東京電力においてもまた大幅の値上げを申請しようという動きが報ぜられておるのであります。池田総理は九月の何日でございましたか新聞記者会見において、公共料金の値上げには自分は反対である、ただ赤字の会社だけについては若干考えなくてはならぬということをはっきり言われておるのであります。私はここにその記者団との会見の速記録を持っております。池田総理は、私はうそは申しませんとおっしゃった。本会議でみえを切っておられる。そうなると今黒字で利益を上げて配当をしている電力会社の値上げ申請に対しては、もちろん却下なさるであろうと私は考えておりますが、この点に対する企画庁長官のお考えを承りたいのであります。
#65
○迫水国務大臣 これは第一次池田内閣当時の閣議の了解事項でございますが、公共料金の値上げについては、この際これを極力抑制することとし、そして当分の間そういうものはすべて閣議に報告して了承を求めることにするといこうとを閣議で了解をいたしております。しこうして電力料金の値上げの問題は、実は通産大臣の専管事項でございまして、本来閣議の決定を要しない事項なのでありますが、特に取り扱いを慎重にいたしますために、そういうような閣議了解をしておるような次第でございまして、方向といたしましては、極力これを抑制する方向であるということをお答え申し上げます。
#66
○井手委員 極力抑制するということでありますが、それだけでは――池田総理はただいま申しましたように値上げはさせるつもりはない。ただ赤字の会社だけについては、若干考えなくてはならぬということをはっきり言明なさっておる。これは九月七日の記者会見である。私は今回の九州電力の値上げ申請、これがもし若干でも認められるということになると、これを突破口として相次いでいろいろな公共料金の値上げ申請が行なわれるだろうと思う。従って九州電力に対する政府の態度というものはきわめて重大であると私は考えております。池田総理は、うそは言いません、赤字のものについては考えるけれども、その他については値上げはいたさせませんと言明をなさっていることを考えますると、おそらく通産大臣は九電の値上げ申請については、私はたといこれが小幅といえども承認はなさるまいと考えておりますけれども、通産大臣いかがでありますか。
#67
○椎名国務大臣 記者会見のことは私は存じませんが、極力公共料金はこれを抑制するということは、閣議の席上において総理のお言葉として私は聞いております。私も公共料金はこの際極力これを抑制すべきものであると考えてはおりますが、九州電力の料金問題につきましては来たる二十日に聴聞会を開くことになっておる。国会の御意見ももちろん参考にいたしますが、この聴聞会の状況にもかんがみまして最終的の判断を固めたい、こう考えておる次第であります。
 ただ御承知の通り、電力の状況は年々非常に需用が急増しておりまして、九電力の再編成の当時、水火力で九百万キロ程度のものが十年そこそこですでに二千万キロを突破しようとしておる。今後もこの需用の増勢は相当強化されるものと私は考えておるのでありまして、所得倍増計画によって一体どれくらいの電力の需用が十年後においてあるかということを大体推計いたしましても、約五千万キロを必要とするというような計算になっておるのであります。エネルギーの重要な給源として電力に依存するところがきわめて多いのでございまして、この電力の増設ということは重大な問題であります。これを不足させて産業あるいは国民生活に非常な御迷惑を与えるというようなことは、絶対に避けなければならないわけであります。さようなことを考えまして、今回の九州電力の料金値上げ問題につきましては慎重に一つ考慮して参りたい、かように考えております。
#68
○井手委員 池田内閣は所得倍増が最大の公約であります。その所得倍増について、都市と農村との格差をいかにして縮めるかということについて、先般この委員会において後進地域の工場誘致については財政、税制、金融面で思い切ったやり方を考えねばならぬと言明されておる。いわゆる産業の地方分散を強調されておるのであります。これは新聞でもほめられております。また自民党においても後進地域に対する新工場の地方分散について政調でも相当研究を進められているようであります。ところが九電の値上げがもし小幅な値上げでも行なわれるといたしますならば、ただでさえ全国第三位に高い九州電力の料金、これが日本一の高料金になるのであります。今ですら北九州の一部を除くほとんどの地域は後進地域として工場の誘致ができない。むしろ工場が閉鎖されておるという状態を改めるには、産業にとって一番大事な電力を値上げされることになりますと、その後進地域における産業というものは破壊されるおそれがあります。そういう意味で私はすでに今日でも一割の配当を行なっておる、この間までは一割二分の配当を行ない、数十億の黒字を上げておる九州電力の値上げについては私は絶対にまかりならぬと考えておりますが、所得倍増の立場からも一つ池田総理からうそのない言明を願いたいと思います。
#69
○池田(勇)国務大臣 九月の十日か十一日だったと記憶いたしますが、福岡に参りましたときにこの質問が出まして、私はお話のように答えているのですが、もっと詳しく言っております。電気料金等公共料金は上げたくない。しかしその会社が成り立たぬようになって、そうして電力が非常に減ってその地方の産業を萎縮させたり、あるいは電灯が暗くなるというふうなことでは、これは公益上の建前からいって困るので、合理的なものにつきましては考えなければいかぬ、こう言っておるのであります。絶対に上げさせないというのではない。私が通産大臣のときもガス料金につきましては東京、大阪、名古屋は上げております。しかし考え方としては上げたくない。こういうことで閣議決定もいたしておるのであります。
 九州電力の状況を申しますと、やはり相当の需用増があるのであります。そして新規の発電設備というものは水力、火力にかかわらず相当の資本費がかかるわけであります。しかも九州電力の今回の発電拡充計画は外資も借りなければならぬ、こういうふうな状況でございまして、その会社が適正な経営のできるということが、九州における電力需給を円滑にするために必須の条件であるのであります。上げたくはございません。しかし私は九州地方の産業の発展という意味からも、合理的なものならやむを得ないと考えておるのであります。今後におきましても産業の基本である電力というものにつきましては、相当の拡充計画を行なわなくてはならぬ。同時に私は石炭専焼というものが将来重油に変わる、あるいは石炭の流体化等によりまして低品位炭等を使う方法等をとりまして、できるだけこれが上がらないように、できれば安くなる――ということはなかなかむずかしいようでございますが、上がらないように努めていきたいと考えておるのであります。
#70
○井手委員 建設費については増資あるいはその他の努力によってまかなうべきものである。たとえば新しいりっぱなアパートを作るために、今までのほかの人の部屋代を値上げするというようなことは、だれが考えても納得できるものではございません。部屋を修繕するのならともかくも、その部屋はそのままにして別のアパートを建てるその建設費を値上でまかなうということは許されません。九州電力は赤字で困っているわけではございません。この間まで一割二分の配当をしているではございませんか。しかもなお九電というものは経営陣において内紛が絶えません。いろいろなスキャンダルも報道されておる。値上げ申請についていろいろと考えるならば、それより前に経営陣の刷新を行なうべきだと私は考える。企画庁長官にお尋ねをいたします。あなたは公共料金を上ぐべきでないというお話がありました。九州地方については企画庁長官はよく御存じであろうと思います。大体この問題は電力を九分割したところに問題の発端がある。電力は全国一律でなくてはなりません。それが分割されたためにこういう地域の格差がある。そのために工場誘致もできないという後進性に悩んでおる。産業を発展するためには、若干の値上げもいたし方ないであろうという池田総理のお話でありましたけれども、値上げをするならばよその電力会社の倍くらいになりましょう。それでどうして産業の発展ができますか、産業の地方分散ができますか。企画庁長官は、物価という問題については、料金についてはあなたが主管大臣である。私は、あなたが公共料金は上ぐべきでないと言ったことについて、もう一回あなたの誠意ある御答弁を願いたいのであります。
#71
○迫水国務大臣 私は、先ほど申し上げました通り、公共料金その他一般の物価の上がらないようにという、その方を守る方の立場でございますから、できるだけ全力をあげて公共料金の、九州電力の値上げもこれは抑制したい、こう考えておる次第でございます。
#72
○井手委員 ただいまの答弁で不満でありますが、時間がございませんので、これで打ち切ります。
 せっかく減税をなさっても物価がどんどん上がったのでは、何のための減税かわかりませんし、減税の恩典に浴せない多くの国民というものが料金の値上げによって非常に苦しむから、料金については特に慎重に取り扱ってもらいたいことを私は要望いたしまして、私の質問を終わります。
#73
○船田委員長 以上をもちまして昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)及び同じく特別会計予算補正(特第1号)に対する質疑は終了いたしました。
 午後一時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。
    午後零時二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十六分開議
#74
○船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 井手以誠君外十五名並びに受田新吉君外一名より、それぞれ昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)及び同じく特別会計予算補正(特第1号)の編成替えを求めるの動議が提出されております。
    ―――――――――――――
#75
○船田委員長 この際、順次その趣旨説明を求めます。田中織之進君。
#76
○田中(織)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)の編成替えを求めるの動議を提出をいたします。以下この動議を提出いたしました理由につきまして、簡単に御説明を申し上げたいと存じます。
 第一は、歳入についてでございますが、政府案は、本年度当初予算に対して、約千六百三十億円の租税自然増収が出るものと予測し、そのうち千五百十四億円を歳入補正に充当しております。しかし私どもは、さらにこれ以上に、六百億円をこえる租税自然増収が出るものと測定いたすものでございます。また特に法人税等におきましては、大口脱税が各種の方法によって行なわれておることは周知のところでありまして、こうした点に税務行政の力点を注げば、さらに大幅な税収増加を見込むことができるのでございます。よって政府は、本年度の当初予算編成に際しての税収見込みが、大幅に食い違ったことの責任を明らかにするとともに、この際、今次補正予算においては、予測され得る妥当な限度において、最大限の歳入補正を計上すべきであると考えるものでございます。また年度内減税の一環といたしまして、勤労者の年末手当に対して減税を行なうことは、かねての懸案事項となっていたのでありますが、この際、一万円までの範囲を限って非課税とすべきであると考えるものでございます。
 第二に、歳出についてでございまするが、まず不急不要の支出については、当然節減するべきでありまして、ことに当今の国際情勢の推移から見まして、わが国の防衛力維持増強の政策は、全く時代錯誤であることが明らかになって参りました。従って防衛庁費は大幅に削減すべきであると考えるものでございます。それに対して国民生活向上の見地からの歳出を増額すべきであると考えまするので、その点について申し上げますると、まず公務員給与の改善については、人事院勧告の通り、五月一日から実施すべきであります。また所得倍増の建前からいっても、当然下級公務員の給与引き上げの幅を大きくすべきであるにもかかわらず、政府案の給与案では著しく上厚下薄でございます。この偏向は根本的に改めるべきでございまして、年末手当も民間に準ずる建前から、さらに〇・五カ月分を増額することが必要だと見るものでございます。また公務員ではありませんが、社会福祉施設職員は、社会のためにきわめて、重要な仕事に従事しながら、その待遇は恵まれておりませんので、この際公務員に準じて年末手当を増額することが必要であると見るものでございます。
 以上述べたような趣旨に基づきまして、国家公務員と同様に地方公務員にも給与の改定を行なうべきでありますが、その財源としては地方交付税交付金の増額があるとはいっても、なおそのほかに一般会計からの財源供与が必要だということを主張するものでございます。
 雇用問題としては、石炭産業の合理化に伴う炭鉱離職者、アメリカのドル防衛策に伴いまする駐留軍離職者等が、特にいわゆる多発的性格を持ち、その対策を緊急に講ずる必要がございます。また一般失対労務者に対しては、政府も五百円のもち代を支給しようといたしておりまするが、これでは不十分でありまするから、年末手当を相当増額すべきであると主張するものでございます。
 生活保護基準の現在の水準があまりにも低く、憲法違反であることはすでに過般の判決によって明らかに示されておりまするので、年度途中ではありまするが、生活保護基準の五割引き上げを断行すべきであると主張するものでございます。また生活保護世帯の生活条件の整備のための制度を新設すべきであります。生活保護世帯への年末もち代はこれまた五百円となっておりまするが、これでは不十分であるから、五人世帯には少なくとも三千円の水準くらいまで増額すべきことを主張するものでございます。
 災害復旧については、小規模災害を補助対象に含めるとともに、再度災害を防止する見地から、改良復旧を大幅に織り込む必要があると考えるものでございます。また高率補助の適用を拡大し、災害で打撃を受けている地方自治体の復旧を促進すべきであると考えるものでございます。
 中小企業年末金融対策では、政府は商工組合中央金庫へ産投会計を通じて二十億円出資増加を行なうことになっていますが、中小企業向けの金利の引き下げを促進するにはこれでは不十分でありますから、このほかなお産投特別会計への繰り入れを増額して、これを商工中金あるいは中小企業金融公庫、国民金融公庫への出資に充てるべきであるということを主張するものでございます。
 最後に、歳入補正額を増額すれば、そのうちの三税の税収増加に伴って地方交付税交付金がふえてくることは言うまでもないのでございまして、これについての増額をも要求するものでございます。
 以上わが党はただいま述べましたような方針に基づきまして、政府がこの補正予算案を組みかえられんことを要求するものでございます。
 以上本動議の提案説明にかえるものでございます。(拍手)
#77
○船田委員長 井堀繁雄君。
#78
○井堀委員 私は民主社会党を代表いたしまして、政府提出の本年度予算補正二案に対しまして撤回を求めますとともに、わが党の組みかえ動機を提出いたし、その説明をいたしたいと思うのであります。
 組みかえを要求いたします第一の理由は、政府の補正予算編成方針が一貫性を欠いておる点と、財政政策の鉄則でございます国民への平等還元の方針を無視しておる点を強調いたしたいのであります。政府案は歳入補正で一千五百七十二億二千百万円の租税の自然増収を計上しておりますが、この金額は当初予算のほぼ一割に相当する巨額なものであります。わが党は当初予算の審議にあたりまして、政府に再三租税収入に対する過小見積もりについて警告をいたしたのであります。また予算委員会の公聴会などで公述人から租税収入の伸びについてもっと積極的な期待をいたしてはどうか、あるいは減税は本年度中に可能であるなどの意見が述べられております。わが党は本年の自然増収につきましては、少なくとも二千億を下回らないものになるのであろうという分析をいたしておるのであります。このような財源の過小評価は、故意に社会保障など国民の生活安定のために、特に池田内閣が今次の総選挙で公約をいたしました問題について当然なすべき措置を怠って、あべこべに財政投融資資金や防衛関係費の財源にこれを温存するのではないかという疑いを持たれるのであります。こういう傾向は私は決して進歩的な財政政策の方針ではないと断ぜざるを得ないと思うのであります。
 今日このような税の自然増収をもたらしました日本の経済の拡大や財政上の増加をもたらしましたその原因は、申すまでもなく勤労者のしし営々として努力いたしました結果でありまして、かかる租税の自然増収というものは当然還元さるべき、すなわち勤労者の生活安定、特に低額所得者のために、その生活向上並びに安定のために予算を増額補正すべきものであったと思うのであります。
 政府は本年度の租税自然増収一千六百三十億程度の評価でありますが、このうち一千五百七十二億円を補正財源に充当していますが、この点わが党といたしましては非常な疑いを持っておるのであります。さきにも述べましたように、本年度の租税自然増収が二千億を下回ることは絶対にないと分析をいたしておるのであります。それは経済企画庁の発表によります本年度の経済成長率は、一月には六・六%と推定しております。十一月にはそれを一〇・六%に修正をいたしております。また大蔵省は租税の自然増につきましては選挙前には一千三百億と推定をし、選挙後になりますと一千六百億であると修正をいたしておるのであります。さらに事務当局の部内における意見などを総合いたしますと、その上に三百億程度の増収の見込みがあるとの意見があるようであります。こういうふうに分析いたし、またその最も有効な資料となるべきものは、本年の十一月の租税収入の実績調査報告であると思うのであります。この報告を今日まだ出していないのは、おそらくこの国会の予算審議待ちではないかと思われるのであります。従いましてわが党は政府に対しまして、歳入補正財源としての租税自然増収を二千億見積もるべきであり、またその全額がこれに繰り入れらるべきではないか。
 組みかえ要求の第二の理由でありますが、食管特別会計への繰り入れ二百九億円、公立中学校の校舎整備費の四十億円などは、これは明らかに歳出補正のワクをはみ出した新規項目について計上さるべきものでありまして、これは本年度の予算の歳入財源は当初予算に計上さるべき財源と見合っての新規要求であると思いますから、政府案についてはこの点は当然であると思います。しかしながら、政府案の歳出補正の項目を検討いたしてみますと、災害関係費、社会保障、及び文教関係費不足補てん、あるいは賠償等特殊の債務処理費、及びその他の経費として計上されておる退職手当あるいは退官手当の、明らかに補正措置であるものと、財源があるから追加支出する中学校校舎整備費等が置かれておるのでありますが、わが党はこの点について政府が計上しておりまする補正財源に余裕があるのではないか。政府案の公務員の給与改善費の充実でありますとか、あるいは追加項目として低所得者の対策関係費の新規計上を当然組むべきであったのではないか。これをこの際あらためてわれわれは組むことを要求いたしたいのであります。
 組みかえを要求いたします第三の理由でありますが、不要不急と思われる経費の削減を要求したいのであります。この点は政府は非常に怠慢であるとすら思うのであります。たとえば防衛庁費の昭和三十四年度の末を見ますと百九十一億、さらに三十三年度は二百二十三億円、さらにさかのぼってみましても、毎年度大体二百億内外の使い残りがあります。こういう点から二百億程度の削減は当然でありまして、予算執行の上に障害を来たすようなものではないと断ずることができると思うのであります。わが党は防衛政策以前の問題として、かような不要不急の防衛庁費二百億というものを当然歳出減額補正にいたすべきであることを要求いたすのであります。
 さらにわが党の組みかえ要求の内容でありますが、これはさきに皆様のお手元に配付いたしました資料で御参考に願いたいと思うのであります。
 第一は、本年度の租税の自然増収を当然歳入補正に繰り入れる全額として、二千億をわれわれは政府案の中に要求したいと思うのであります。約四百二十七億増額することになりますが、この増額分のうち約三百五十億は、所得税と法人税並びに酒税、俗に言う三税の増収分と見込みますので、これを地方交付税交付金として歳出増にはね返る金額に見積もりまして、九十九倍円ぐらいと推定いたすのであります。
 第二は、政府案は源泉所得税についてのみ臨時特例法による年度内の減税をいたすことになっておりますが、課税の公平の原則の上から参りますと、申告所得についても同一水準の減税をするべきであると思うのであります。これが約三十億の減税となります。
 第三は、公務員給与改善についてでありますが、政府案はその実施の時期を人事院勧告に反しまして十月の一日と定めておりますが、これはやはり人事院の勧告通り五月の一日にさかのぼって給与を改定いたすべきであると思うのであります。また自民、社会両党の方々も人事院勧告案は認めておいでになりますが、しかしこの案は上に厚く下に薄いのであります。給与の格差というものをますます拡大する傾向のものでありますから、これは改めたい。すなわち初任給の八千円を少なくとも一万円程度に引き上げ、そして順次下級者、中級者の俸給をコントロールしまして、適正な給与と改めるチャンスではないか。この点にこの補正予算を考慮すべきであると思います。
 また期末手当につきましては、人事院勧告通り民間給与並みに引き上げるということは当然のことでありますが、支給額としましては、できるならば〇・一九カ月分を要求いたしたいと思うのであります。
 第四は、災害関係費でありますが、歳出項目がいずれも緊急な事項でありまして、被害の甚大な地域につきましての事業費でありますから、完全にこれを実施するということにいたしまして、地方の財政負担を軽減するためにも、国庫の負担を平均四分の三に引き上げるべきではないかと思います。この歳出増は約八十億円でありますが、これを要求いたします。
 第五は、社会保障関係費についてでありますが、公務員の給与改善に準じまして、同じく国庫が責任を持っております日雇い労働者の給与であります。これはさらに生活保護費の充実と並んで、当然この際補正をすべきであると思います。わが党は日雇い労働者については給与を一カ月平均五十円を最低引き上げる。年末手当といたしましては三日分を最低増額いたしまして十五日分支給いたす。生活保護費につきましては年末に際して一時扶助金を新たに支給し、かつ対象人員を緊急に増員できるように弾力性を持った必要額を計上いたします。わが党はこのように新規補正項目を設けまして、低所得者の対策費の新規計上を要求するものでありますが、この金額は約百億円歳出増となります。
 第六に、公立中学校校舎整備費については、中学校だけではなく高等学校についても増設の費用を計上して、校舎の不足を打開すべきではないか。わが党はこれに三十億円を要求いたします。
 わが党の一般会計の予算補正組みかえは、歳入面では政府案より増額するもの四百五十九億円、減額するものが三十億、差し引き政府案より四百二十九億円の増額となります。歳出面では、政府案より歳出増加となるものが六百二十九億円、防衛庁費の二百億円の減額によりまして、差し引き四百二十九億円の増加となります。その結果わが党の補正規模は、政府案より歳入歳出ともに四百二十九億円の増額となり、約一千九百四十三億円で均衡することとなるのであります。
 なおわが党は、財政投融資についてでありますが、政府案は一般会計予算歳出補正といたしまして産業投融資特別会計への繰り入れ百二十億円を計上しておりますが、これを輸出入銀行の原資追加に充当しようとしているようでありますが、輸出入銀行の資金補てんは民間資金によって可能なはずであると思われますから、一般会計予算より繰り入れられる資金は、まずこういう点から判断をいたしまして、中小企業金融に充当できると思いますので、さように要求いたします。
 また政府案は産業投資会計の前年度の剰余金二十五億円を加え、商工中金に向けておりますが、わが党は商工中金二十五億円はそのまま、中小企業金融公庫と国民金融公庫にそれぞれ六十億を追加出資として、中小企業の金融を円滑ならしめることができる。これを要求いたします。
 以上申し上げましたように、わが党の組みかえ要求提案の説明は前段の通りであります。最後に繰り返して申し上げますが、自民、社会両党とも、今回の補正予算案は本来当初予算の財源をもって当初予算に歳入計上すべき予算編成であったにもかかわらず、かかる事態を起こしたのでありますから、この際この点を十分配慮されまして、自民、社会両党とも、何とぞ今回わが党の要求いたしまするように、財政の基本鉄則に基づきまして組みかえをなさらんことを希望いたしまして、私の説明を終わりたいと思います。
#79
○船田委員長 これにて編成替えを求めるの動議の趣旨説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#80
○船田委員長 これより井手以誠君外十五名提出の編成替えを求めるの動機、受田新吉君外一名提出の編成替えを求めるの動機及び政府原案を一括して討論に付します。青木正君。
#81
○青木委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、政府提出の昭和三十五年度予算補正両案に賛成し、社会党及び民主社会党からそれぞれ提出されました予算組みかえの動機に反対の意見を申し述べたいと存じます。
 御承知の通り、わが国の経済は、未曽有の発展をたどり、その成長率は、三十四年度におきまして一七%、今年度におきましても一〇%をこえるものと見込まれております。これは、わが党内閣による経済成長政策の輝かしい成果でありまして、過ぐる総選挙におきまして、わが党が国民の圧倒的多数の信任をかち得た原因もここにあると存じます。
 もとより、経済の成長を円滑に進めるためには、経済諸要素の均衡ある発展が必要でありまして、そのためには、経済基盤強化と並んで、生産性の低い部門の育成助長、所得格差の是正等の方策が政府に課せられた重要な課題であると存じます。このための総合的諸施策は、来たるべき通常国会において、昭和三十六年度の予算及び他の法令となって現わるべきものでありますが、この三十五年度の補正予算におきましても、基本的には同一の配慮によるものであり、従って、経済成長政策の一環をなすものであります。
 すなわち、一般会計におきましては、経済上昇に伴う租税の自然増収千五百七十二億円を財源として、これを公務員の給与改善費、災害復旧費その他の諸経費、さらには明年一月からの減税に振り向けようというのであります。
 まず、公務員の給与改善費二百十四億円でありますが、これは公務員と民間給与所得者との所得格差是正のため、人事院勧告をほぼ完全に近く実施したものであります。このような全面的な給与改善は、ここ数年来見られなかったところでありまして、もとより、われわれの賛成するところであります。
 なお、このような措置とあわせまして、行政事務の簡素化、能率化等にも留意する必要があろうと存じます。
 次に、公務員の給与改善費と並んで大きな費目は災害関係費であります。今回の補正は、本年災の分八十億円、伊勢湾高潮対策を含めた過年災の分二百七億円、その他チリ地震津波の被災地に対する事業費等を合わせまして、総額二百九十億円の追加でありまして、これにより災害復旧事業は万全のものと思われるのであります。
 給与改善及び災害関係以外の経費の中で特に注目すべき点は、社会保障及び文教関係の経費がはなはだ多いことでありまして、これは、施策の重点がこれらの面に向けられておることを端的に示すものとして、大いに賛意を表するところであります。
 そのうち一、二を申し上げますと、公立中学校の校舎整備費として四十億円が追加計上されておりますが、これは三十六年度進学の生徒数の増加に対応するものでありまして、従って、従来のように、当該年度の分は当該年度の予算でというやり方を改めた、一つの進歩であると言えると存じます。
 また、社会保障関係では、生活保護費及び児童保護費の中に、わずかではありますが、年末の一時金を計上しておりますことは、年の瀬を控えて、経済的に恵まれていない方々にささげる贈りものというべきでありましょう。
 諸経費の増加と並んで申し上げなければなりませんことは、明年一月からの源泉所得の減税であります。これは、言うまでもなく、明年度を期して行なわれる一千億減税が頭を出したものでありまして、特に特例法まで設けて減税の恩典を広く勤労者に及ぼそうとした点、政府の減税に対するなみなみならぬ熱意がうかがわれるのであります。
 最後に、申し上げなければなりませんことは、この予算と関連しての中小企業金融対策であります。すなわち、年末対策として、国民、中小の両公庫、商工中金等へ資金運用部等から百八十億円の融資を行なうほか、商工中金の貸出金利を引き下げるため、産業投資特別会計から商工中金へ二十億円の出資を行なう等、細心の配慮がなされております。
 以上が政府原案に対する賛成の理由であります。
 次に、社会党及び民主社会党の組みかえ動議について反対の理由を申し上げます。
 まず、社会党の組みかえ要綱の中には、歳出入全般についての詳細な数字が示されておりません。もちろん、先ほどの趣旨説明の中で、若干の数字的説明はなされておりますが、いずれにしても、この程度の説明では、予算規模がどの程度になるのか、歳出入がバランスするのかどうか見当がつかず、はなはだおざなりの組みかえ案と言わざるを得ないのでありまして、本委員会の権威のためにとらざるところであります。
 次に、これは民主社会党の組みかえ動議にも共通した点でありますが、いずれも歳入を過大に見積もり、それだけ給与費その他の歳出をふやそうとしております。これはまことに失礼な言い分でありますが、政権の座にない政党の、いわば人気取りのゼスチュアとも言わざるを得ないのでありまして、責任あるわが党のいれるところではありません。このような理由からいたしまして、私は両党の組みかえ動議に反対するものであります。
 以上をもって私の討論を終わります。
#82
○船田委員長 淡谷悠藏君。
#83
○淡谷委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、昭和三十五年度一般会計予算補正及び特別会計予算補正に対し、政府原案並びに民主社会党の組みかえ動議に反対、日本社会党の組みかえ動議に賛成の討論を行ないます。
 一体、今回の予算は補正予算とはいっておりますが、池田内閣が総選挙後初めて世に問う予算でございますので、単なる事務的な組み方にとどまらない新年度予算の性格をうかがうに足るものとして、そこに片鱗でも示されていなければならない性格のものでございます。
 この予算を、まず歳出に見て参りますと、給与改善費を最も大きく取り上げております。国家公務員の給与を改善するためのものといっておりますが、依然としてこの改善は上に厚く下には薄い改善――改善と呼ぶにふさわしくない改善と私には考えられます。同時にまた、内容に至りましては、自衛隊の予算のごとき、明らかに本来の改善の方向を誤ったものといい得るものであります。この給与の増加要求も防衛二法案、すなわち防衛庁の設置法及び自衛隊法の成立を見越してのものであって、その二法案成立の見込みがほとんどついていない今日、まして欠員が一万八千人もあり、その欠員の給与をここで削減しないで盛っていくこと自体が、いたずらに不用額を増すおそれが十分にあるのであります。本来、防衛庁の予算は、年ごとに多額の不用額を出しておることはしばしば指摘されております。しかもさらにまた八千名の増員をこの二法案の通過によって見込みまして、その補正増額を必要とするということは、とうていこれは理論に合わない。むしろ逆にこれを削減すべきことが本来の姿であると思いますので、わが党の組みかえ案を私は極力支持いたします。質疑応答の過程で西村防衛庁長官は、同じ自衛隊でも火災出動と建設の任務につく自衛隊には志願者も非常に多いと答弁されている。地元民もこれを喜んでおるという。むしろ無益な戦争を誘発するようなおそれのある自衛隊の予算は、進んで長官が返上されまして、わが党の主張する国土建設隊を中心とするこの予算組みかえ動議に御賛成下さいますように特にお願い申し上げます。
 次に、一般公務員の給与につきましても、先ほど触れました通り、まことに上には厚く下には薄い。この公務員の給与はむしろ五月一日にさかのぼって支給さるべきものである。それから地方公務員も国家公務員と同じようにその給与改善を実施する。さらに地方交付税交付金の増額分以外に国で必要な予算措置を講ずべきものと考えるのであります。さらに公務員の年末手当等についても〇・五カ月分は計上し、社会福祉施設の職員についても、あるいは地方公務員についても、今申し上げました通り、同じこの改善の対象としてなすべきが本来の姿であると思うのであります。
 減税等につきましても、勤労者の年末手当のうち一万円までは非課税とすべしとするわが党の主張は、当然妥当としてお取り上げを願いたい。
 特に社会保障につきましては、いろいろ先ほどから自民党の青木委員が本来の主張であるということを言っておりますが、どうも私どもに言わせますと、これまた給与改善と同じように、まことに社会保障という名にも値しないものでありまして、総理は公共投資と減税と社会保障は池田内閣の三本の柱だと言っておりますが、中で一番短い柱はどうも社会保障であるらしい。一千億減税はやっても一千億の社会保障は必ずしもやるとは言っていないという答弁もなされておりますが、一千億の社会保障をやらないまでも、この生活保護世帯に対して年末五百円のもち代を出すといったようなことを誇らかに言う気持が、私にはどうしても納得がいきません。このもち代を出すという主張は、閣議で総理がみずから持ち出した案であると聞いておりますが、五百円のもち代では、幾ら失対労務者でもその生活は持ち上がるものではないと思う。これは私はもう少し徹底した社会保障の名にふさわしい態度を打ち出してもらいたい。生活保護基準を非常に低くしまして、憲法違反の判定さえ受けておりますこの基準は、さらに五割を引き上げること、寝具や家屋の修繕ぐらいは、この年末にあたって心配のないような措置を講じてやるのが、社会保障として当然のことであると考えるのであります。同じ社会保障でも、他の公共投資や減税に比べてあまり短い柱では、この歳末に際しまして、柱が一本短いので屋根が傾いてしまうといったような心配もございますので、その辺は十分御考慮願いたいと思うのであります。
 食管特別会計の赤字の問題は、慎重に考慮すべきものであると思うのであります。このままの姿でいつまでもあっていいかどうかは、これは重大な問題であります。特に、通常国会で農業基本法さえ出してくるという場合に、日本の農業の生産構造等も十分考えてこの問題の根本を突きとめてみる必要がある。私は、今の保護農業をやっていかなければならない事態においては、この赤字補てんは当然の政府の義務と思いますけれども、農業そのものに対してこれはあえて総理にもう少し深い理解を持っていただきたいと思うのであります。答弁の過程を通じて聞いておりますと、総理は、ときどき選挙前にとりました低姿勢を忘れまして、がぜん高姿勢に返ることがしばしば答弁を通じて行なわれました。たとえばわが党の主張しました中立外交につきましても、総理は先般の答弁におきまして、ぶらぶらして遊んでいるのが中立だと思っていると言っておる。何も私どもは中立外交をぶらぶらして遊んでいるというふうに言った覚えはございませんが、この食管特別会計に対する川俣委員の質問に対しましても、総理は、簡単に農業人口を半分にすれば所得が倍になる――農業人口を半分にすれば所得が倍になるといったような、簡単にして不親切な認識で今後の農業問題一般に処してもらいたくもなし、特に食管特別会計の内容に至りましても十分なる御配慮を願わないと、取り返しのつかない乱脈を示すことは明らかだろうと思いますが、そういう点に対する配慮が十分なされていなかった。災害につきましても、まだまだ補助率を引き上げるとか、あるいは地元負担を軽減するためのさまざまな処置をとるとか、これは言うべきことがたくさんございます。
 特に私はきょうの井手委員の質問かあら総理にはっきり申し上げておきたいのは、賠償に関する問題であります。今回の旧連合国人の本邦内財産の戦争損害の補償にしましても、あるいは前々国会で追及されたベトナムの賠償の問題にしましても、国民の目の届かない遠いところでとかくの評を招いておるということは、はなはだ遺憾にたえません。この際国民の疑惑が解けるような明確な答弁をほしかったのでありますが、これは遺憾ながら得られませんでした。こういう形で今後また賠償が行なわれるならば、たくさんの戦争犠牲者がまだ国内にいる場合、まことにゆゆしき問題として遺憾の意を表したいと思うのであります。特に東芝の株のごときは、まだ外国の会社が株主になっておるということも聞いておりますし、それが出資額に上まさる賠償をとるような形が行なわれましては、これは非常に憂慮すべき事態をかもし出すと思うのであります。
 次に、産業投資の問題であります。もう所得の倍増だけではなくて、所得の格差をなくするということも再々総理は言っておられますが、具体的に現われた形を見ますと、どうも総理の認識の中に一般庶民の生活というものは入っていないのではないかと思う。従ってこの産業投資などの面を見ましても、私は今にして非常に大きな反省を持ってもらいたい。今度の産業投資特別会計への繰り入れは、前年度剰余金の受け入れとともに百四十五億円、うち百二十五億円は日本輸出入銀行へ出資するためのものである。日本輸出入銀行については、輸出の増加に伴う資金需要の増大による融資資金の不足を生じたがためであると言っておられます。しかし同銀行の貸付状況を見ます。と、もう少し私は慎重な態度がほしいと思う。造船会社など大口融資が非常に多い。昭和三十四年度は総額六百四十七億八千四百万円と前年度を百七十六億九千五百万円と大幅に増加した上に、昨年度の融資承諾による未貸付分百十四億六千六百万円を本年度に繰り越しております。今度予算補正によって出資する百二十五億はまさにこの繰越分と見合うものであります。しかも回収は昨年度の四百四十九億四千六百万円に対しまして、三百六十四億九千四百万円、すなわち回収率昨年度の九五%に対して本年度は五六%と大幅に下がっているのであります。総理は船舶企業は中小企業が多いと言っておりましたが、この輸銀の貸し付けた会社の中では大口の船舶業者が非常に多い。総額が大体一千九十六億二百五十七万八千円というものは今日なお貸付残額として残っておりますが、この六十社でこれだけの額であります。そのうちおよそ百億円以上の貸付残額を持っております会社は、アラスカパルプ、浦賀船渠、三菱造船、石川島播磨重工業、こういったような明らかに大資本優遇の産業投資の姿が露骨にも現われてきておるのであります。なぜこれだけの優遇と配慮を中小業者の金融あるいは農村金融の方にも与えられなかったのでしょうか。所得格差の解消という口の下から、もうすでに現われたあなたのうそのしっぽがのぞいているのであります。そのためには商工中金、中小企業金融公庫、国民金融公庫に対して、ただ金利の補助というだけではなく、この歳末金融を控えまして、思い切った出資を多くしまして、その金融難を救ってやるのがまことに親切な政治であると私は信ずるものであります。なお地元負担の重圧のために政府の施策さえ受けることのできなくなっている後進地域の開発のためにも、融資の道を開いて金利の引き下げをなすべき義務があると思うのであります。
 こうしたたくさんの施策をしなければならないのに、大ていの場合政府は財源がないということを口実にしてこれまで逃げて参りました。しかし今度の補正予算の歳入を見ますると、明らかに税収の見通しを誤っておる。自民党の愛知委員自体がその質問の中で、千五百十四億円という程度のものではないということ、この税収の増加の見通しはそんなものじゃないということを言っておられる。これは明らかに税収の見通しを誤っているのであります。むしろ一歩突っ込んで考えるならば、ことさらに税収を隠しておいて、これを自由に使おうという意図さえわれわれには感じ取れる。われわれはさらに六百億円以上の自然増収があると見込んでおりますわが党の組みかえ動議、さらに本年度は当初予算に見込まれたほかに二千億円の自然増収となるという建前から、この組みかえ動議を大胆に受け入れて下さいまして、なさなければならないさまざまの策に対して大胆率直に踏み出されんことを私は心から希望するものであります。予測され得る妥当な限度内で最大限の歳入補正を計上したわが党の組みかえ案の方が、はるかに正しい行き方であることを私はここに強調するのであります。
 結論として申し上げたいのは、池田総理は所得格差の解消の有力な手段は所得倍増である。と言っておりますが、私はこれは論理が逆であると思う。逆に所得倍増のためにはまず所得格差の解消から始めるべきものであってこれを行なわないで所得倍増だけを考えるならば、いたずらに大資本の擁護になり、ますます貧富の差を大きくすることは目に見えております。どうか私どものこの組みかえ動議、一歩控え目になった民社党の組みかえ動議より、徹底してこの施策を行なおうとしておりますわが日本社会党の組みかえ動議に、総理は十分なる寛容と忍耐をもって従われまして、これは自民党の愛知委員を初め先頭に立ってこの新しい案を支持していただきたい。
 同時にこの補正予算を見ておりますと、やはり何といいましても新年度の予算の一斑がうかがわれます。これは総選挙の場合に総理が国民に約束をいたしましたあの方向とはかなりずれた方向に私は出てきておると思う。これは御無理もございますまい。総理の生活と庶民の生活との間には相当大きな格差がございますので、この格差は容易に意識の上においても埋まるものではない。どうかその点では最も庶民の生活に近く庶民の意識を持って政治をやっております日本社会党に大胆に同調せられますよう特にお願い申し上げまして、私の日本社会党の組みかえ動議の賛成の討論を終わります。
#84
○船田委員長 受田新吉君。
#85
○受田委員 私は民主社会党を代表して政府が提出しておりますところの本年度予算補正の二案と社会党が提出されました組みかえ案に反対をして、ただいま井堀委員より朗読いたしましたわが党提出の政府案組みかえ要求に賛成をするものであります。
 今井堀委員が提案理由の説明を申し上げた中で明らかなように、政府が出しておる原案というものは、補正予算というよりは本来は当初予算としてこれを編成さるべきそういう財源や歳出項目が多分に含まれておったわけであります。また本案に編成されておる食糧管理特別会計の繰入金とか中学校の校舎の整備費、公務員の給与改善費、そういうものはいずれも明年度予算において継続してこれを計上される項目であるのです。ところが、この意味におきましてはこの政府というものは明年度の予算の前提となって接続する十五カ月予算の一部をなすものと見ても差しつかえないのではないでしょうか。そういう意味で政府が補正予算案の提出にあたって補正という名目に隠れて当初予算との関係を実にあいまいにしておるということ、また明年度予算との接続について何らの展望も本国会において明らかにしておりません。大蔵官僚出身である池田さんが総理大臣をやっておられる現内閣としては、これはあまりにも不勉強で国民に対して非常になまけておる、不誠実ということを示す以外に何ものもないと思っておるのであります。
 私がここで政府案に反対してわが党の提出の組みかえ動議に賛成する最も大きな理由の一つは次の点であります。
 政府は本案におきまして一千五百億円をこえる租税自然増収を歳入補正として計上しておるわけであります。ところが本年度の自然増収は大体千六百三十億程度にとどまるであろうとの推計を政府はしておるのでありますが、わが党としてはこの政府のこのような推計がどうしても信用できない。なぜであるかと言うと、今まで何回も予算を編成されておる自民党といたしましては、この税の自然増収というものにはっきりした根拠をお持ちにならないで、いつもいつも予算規模の一割程度というものはこれが狂ってくる、自然増収を見込まなければならぬという現状になっておる。これは当初にはっきりそういう目標を打ち立てなければならぬ。そういう点においてこの予算編成の考え方というものが歳入を、租税収入その他を非常に過小見積もりをしておるという現象が政府の考え方に中にあることを否定できないのです。この点につきましてわれわれといたしましては、特に歳入予算というものをきわめて明確な基礎の上に立てていくという、そういう態度に政府が根本的に考えを直さない限りには、この日本の予算編成というものに非常に大きな支障が起こるということを指摘したいのであります。
 また具体的に一、二の例をあげてこの政府原案の不当をついてみたいと思うのでありますが、一例はこの政府が当初予算で生活保護費の対象になる人員を百四十六万七千と算定をしております。ところが実際においては二百万をこえるところのこれらの対象になる人たちがおるであろうと推定されており、実際に非常な生活困窮にあえぐ日の当たらない谷間で苦労をしている人が非常な数に上っておるということがわかっておりながらも、こういう厳しい数字に押えておる。そして今度の予算編成の一つの規模として千四百億をこえる租税収入の計上の中で百二十億円というものは産業投資特別会計へ繰り入れて、その金額がそのまま輸出入銀行への出資に向けられておる。大体輸出入銀行などは、ここで何らかの形で政府自身が金融政策を上手にやるならば、民間資金の肩がわり等で十分まかない得る立場にあるわけです。そういうところには百二十億をそっくり持っていって、そして生活保護費、医療費扶助等の方に持ち込んでいる予算というものはわずかに二十七億しかない。これを百四十万をこえる該当者に振り当ててみると一律にどれだけ追加されるかというと、百五十円です。スズメの涙です。こういう状態を見たときに、自由民主党や政府、特に池田さん――池田さんはせっかく長期政権を夢みておられながら、この歳出の面においても、これを補正する立場においても、特定の大企業を擁護して、非常に不幸な立場に立って、取り残されておる人々を取り残しておるという自由民主党の大企業擁護政策、恵まれざる大衆を塗炭の苦しみにそのまま取り残すというこの考え方を暴露していると言って過言でないと思うのです。幾つもの例をあげる時間がありませんから、私は結局自由民主党のこの根本的な考え方がこの補正予算案の中にも流れていることを、一例をあげてついて、わが党の組みかえ要求のこの動議こそが、これらの政府案の欠陥をそれぞれ是正していって、現段階においては最も公正な補正予算の構想であることを確信しておるわけであります。
 なお社会党の提出した組みかえ動議につきましては、御趣旨の点の大半については共鳴をすることができるのでございますが、予算審議に必要な、先ほど自民党の青木君からも指摘された点、すなわち計数が明らかにされておらぬという点、これは非常に重大な欠陥であって、この点において残念ながらわれわれとしては賛成することができないのであります。
 以上申し上げた趣旨にのっとりまして、自民、社会両党の諸君がどうぞわが党の組みかえの動議に賛成をされることを希望して、討論を終わります。
#86
○船田委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#87
○船田委員長 これより採決に入ります。
 まず井手以誠君外十五名提出の編成替えを求めるの動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#88
○船田委員長 起立多数。よって井手以誠君外十五名提出の編成替えを求めるの動議は否決されました。
 次に、受田新吉君外一名提出の編成替えを求めるの動議を採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#89
○船田委員長 起立少数。よって受田新吉君外一名提出の編成替えを求めるの動議は否決されました。
 次に、昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)を一括して採決いたします。以上両案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#90
○船田委員長 起立多数。よって昭和三十五年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十五年度特別会計予算補正(特第1号)は、いずれも原案の通り可決いたしました。(拍手)
 委員会報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#91
○船田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
     ――――◇―――――
#92
○船田委員長 なおこの際お諮りいたします。
 閉会中審査申し出の必要があります場合には、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#93
○船田委員長 御異議なしと認めさように決しました。本日はこれにて散会いたします。
    午後二時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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