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1960/12/12 第37回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第037回国会 本会議 第6号
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1960/12/12 第37回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第037回国会 本会議 第6号

#1
第037回国会 本会議 第6号
昭和三十五年十二月十二日(月曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和三十五年十二月十二日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
 二 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 池田内閣総理大臣の所信についての演説
 水田大蔵大臣の昭和三十五年度補正予算についての演説
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時七分開議
     ――――◇―――――
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
 国務大臣の演説
#3
○議長(清瀬一郎君) 内閣総理大臣から所信について、また、大蔵大臣から昭和三十五年度補正予算について、おのおの発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣池田勇人君。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#4
○国務大臣(池田勇人君) このたび行なわれた総選挙において、各党はそれぞれ政治に対する心がまえと政策を国民の前に明らかにし、その厳粛なる審判を仰いだのであります。その結果、与党たる自由民主党は国民多数の根強い支持を得、私は再び内閣総理大臣の重責をになうこととなりました。ここに決意を新たにして、この国民の信頼と期待にこたえたいと思います。(拍手)
 今回の総選挙が政策中心の論議にともかくも終始したことは、わが国の民主政治の一つの前進であったと思います。他面、それにもかかわらず、選挙自体のあり方についての国民の批判はまことにきびしいものがあることも否定できません。私は、この批判にこたえて、広く国民の協力を得て選挙の公明を期する措置を積極的に検討いたしたいと存ずるのであります。(拍手)
 総選挙において公約した諸政策は、明年度予算の編成を中核としてできるだけすみやかに具体化し、順次国会の審議をお願いいたしたいと考え、目下、鋭意準備を急いでおります。従って、この際は、当面の諸問題につき方針を明らかにしたいと存じます。
 まず、現下の国際情勢を見まするに、過般の国連総会において集約されております通り、国際緊張緩和への道は決してたんたんたるものではありません。しかしながら、私は、人類の英知と諸国民の平和に対する熱意は、必ずや世界の平和を確保し得るものと信ずるものであります。(拍手)外交政策の運用にあたりましては、わが国が国際社会の責任ある一員として今後とも世界の平和と安全に寄与するとともに、わが国民の福祉と繁栄をはかるため、国際情勢の推移に対応しつつ、弾力性のある心がまえで、自主的かつ慎重な施策を講じて参る所存であります。
 本年十一月、米国大統領選挙の結果、民主党のケネディ候補が次期大統領に就任することになりました。私は、アイゼンハワー大統領の前後八年にわたる治政下において米国がわが国に示された好意と協力に心から感謝するとともに、明年初頭発足いたします民主党政府のもとにおいても、日米両国の友好協力関係がますます緊密化することを期待し、かつ、確信するものであります。(拍手)
 最近、米国政府は、対外収支改善方策を明らかにいたしました。米国政府が、世界経済に対する自国の責任の重要性にかんがみ、国際収支の均衡回復のため対策を講ぜんとする努力は、十分理解し得るところであります。もとより、この施策のわが国経済に対する影響につきましては、慎重に検討、対処する必要がありますが、私は、自由諸国の連帯性の自覚のもとに、共同の努力によってすみやかに事態が改善されることを期待するものであります。
 この措置によって生ずる特需の減少等は、わが国経済の自立過程において予想される試練の一つであって、わが国の経済力の内外にわたる発展によってこれを克服するよう努力しなければならず、また、それは可能であると信ずるのであります。(拍手)従って、長期的視野に立つ経済運営の指針として目下具体化を急いでいる経済成長政策については、その構想を組みかえる必要はないものと存じます。また、世界経済自由化の趨勢に即応する貿易自由化につきましては、わが国貿易の拡大と世界経済の発展拡充のため、これを慎重に進めて参る態度につきましても、変改の要を認めないものであります。
 さらに、私は、今後、米国のみならず、広く自由諸国全体との協力関係の強化に特に留意して参りたい考えであります。なかんずく、英国その他の西欧諸国との間におきましては、世界の当面する各般の重要問題に関し、緊密な協力と話し合いを進めるとともに、A・Aグループ並びに中南米諸国との経済交流の一そうの進展を期して参りたいと存じます。共産圏諸国とは、相互の立場の尊重と内政不干渉の原則のもとに、あとう限り相互の理解と友好関係の増進をはかって参る所存であります。
 およそ、外交は一国の運命にかかわるものであり、外交政策の効果的展開のためには、国際情勢の客観的判断に基づく国民各位の強力な支援が必要であります。一たび国民大多数の支持するところが明らかとなった問題につきましては、その事実を尊重し、国内の政争を国外にまで露呈することを避けることが望ましいことであると私は信ずるものであります。(拍手)政府といたしましては、わが国の外交政策に国民各界の公正な意見を十分に反映いたしますよう、今後とも一そう留意して参る所存であります。
 私は、さきに、政権を担当して以来、新しい福祉国家の建設のためには経済の成長が不可欠の前提であり、同時に、経済の成長のためには、物価の安定をはかりつつ、公共投資の拡大と減税及び社会保障制度の拡充を精力的に進めて参らなければならないことを終始主張して参りましたが、今回の選挙を通じて、この政策が広く国民大多数の賛同を得たものとの確信を強めた次第であります。(拍手)このため、政府は、目下明年度予算の編成を急ぎ、施政の全般について検討を進めている次第でありますが、その一部についてできるだけ早く実施するという意味において、今国会に総額千五百十四億円に及ぶ補正予算と所要の法律案を提案し、もって公約の実現に一歩を進めたのであります。(拍手)
 経済成長政策の眼目の一つは、経済の伸長によって、高い所得効率を持ったより多くの就業の機会をつちかいつつ、各般の所得格差の解消に前進することであります。その意味において、特に農林漁業政策と中小企業対策はきわめて重要な意義を持つものであります。政府は所要の施策について準備を進めておりますが、この際としては、中小企業者に対する年末金融対策を講ずるとともに、今次補正予算においては、商工組合中央金庫に対する出資を増額し、その貸し出し資金量の増加と金利の引き下げをはかることといたしました。なお、わが国経済の拡大発展を実現するためには、輸出の伸長がその前提であります。このため、とりあえず日本輸出入銀行に対する出資を増額し、プラント輸出の促進と経済協力の推進をはかることといたしました。
 わが国の社会保障制度は、いよいよ国民皆保険と国民年金の両制度を二大支柱としてその体系的整備をはかるべき段階に至りました。これによって国民生活の一そうの安定と向上に資するため、現行制度の至らない点はこれを拡充強化する方針で、所要の措置を準備中であります。
 特に拠出制国民年金については、その実施態勢も整備されつつあり、また、各年金制度間の通算措置など、拠出年金実施に伴う諸般の措置も進められておりますので、死亡一時金制度の創設等、改善すべき点はこれを改め、実施に移す用意を進めております。(拍手)
 国民の租税負担の現状に顧み、国民生活の安定向上、勤労意欲の増進、中小企業の振興、企業の体質改善等をはかるため、平年度一千億円以上の減税を実現すべく法制化を急いでおりますが、一月から三月までの間に支払われる給与所得の源泉徴収税額の軽減は、この際実施することといたしました。(拍手)
 文教の刷新と科学技術の振興は、すべての施策の前提ともなるべきものでありまして、私は特に力を注いで参る決意であります。なかんずく、中学校及び高等学校生徒の急増対策は、一日もゆるがせにできないところでありますので、とりあえず中学校につき所要の予算補正の措置を講ずることといたしました。(拍手)
 公務員の給与に関しましては、さきに行なわれた人事院の勧告を尊重し、一般職の職員の給与につき本年十月一日にさかのぼって改定することといたしました。特別職、地方公務員等の給与についても同様の趣旨に沿って改定し、これに必要な法案及び補正予算を今国会において御審議願うことといたしております。私は、公務員諸君が一そうその職務に専念され、その能力を十二分に発揮されることを期待するとともに、その執務の能率化と厳正な規律の保持を期して参る所存であります。
 以上、所信の一端を申し述べたのでありますが、国民諸君の力強い支援を切に希望してやみません。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(清瀬一郎君) 大蔵大臣水田三喜男君。
    〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#6
○国務大臣(水田三喜男君) ここに、昭和三十五年度補正予算を提出するにあたり、その概要を御説明いたします。
 私は、前国会におきまして、当面の経済情勢と今後の経済運営の目標について所信を明らかにいたしたのでありますが、幸いにして、わが国経済はその後も安定した基調の上に引き続き順調な拡大過程をたどっており、本年度の経済成長率は、年度当初の予想を上回って、実質一〇%をこえるものと見込まれるのであります。最近、アメリカ政府は国際収支の悪化に対処する諸方策実施の方針を決定し、注目を集めております。これによって、わが国の国際収支もある程度の影響を受けることは覚悟せねばなりませんが、政府の企図いたしております諸政策の基本を変更する必要が生じたものとは考えません。政府といたしましては、今後とも国際経済協調の精神に立って対外経済の諸問題に対処するとともに、内外情勢の推移に細心の配慮を払いつつ、わが国経済の均衡ある成長を期して参る所存であります。
 次に、今回提出いたしました補正予算について申し述べます。
 今回の補正予算は、経済の拡大に伴う法人税等租税及び印紙収入の自然増収を歳入に計上し、国家公務員給与の改善を初め、災害関係費その他当初予算作成後発生した事由に基づき、本年度内に措置を講ずる必要のある経費並びに社会保障及び文教関係の国庫補助金、負担金の不足額補てん等、法律に基づく義務的経費の追加の財源に充てることといたしたのであります。その総額は千五百十四億円でありまして、これにより、昭和三十五年度一般会計予算総額は、歳入歳出とも一兆七千二百十一億円と相なるのであります。また、特別会計の予算についても所要の補正を行なうことといたしております。
 まず、一般会計補正予算の歳出追加のおもな内容について、その概略を御説明いたします。
 第一は、給与改善に関する経費であります。
 国家公務員の現行給与水準は、民間給与の上昇に伴い、これとの間に相当の格差を生じております。このため、先般の人事院勧告の内容を尊重して所要の改定を行なうこととし、これに要する経費として、義務教育費国庫負担金分等を含め、二百十四億円を計上いたしております。
 第二は、災害関係費であります。
 昭和三十五年発生の災害につきましては、既定の予備費をもって応急の措置を講じたのでありますが、さらに、今回八十億円を追加し、その復旧に遺憾なきを期しております。
 なお、チリ地震津波の被災の状況にかんがみ、その被災地域に対して津波対策事業を実施することとし、所要の措置を講ずることといたしました。
 また、昭和三十四年以前の発生にかかる災害の復旧事業費及び伊勢湾高潮対策事業費につきましては、昭和三十五年度予算編成後の調査の結果、相当の増加を生ずることが明らかとなりましたので、予定の進捗率を確保するため、二百七億円を追加計上することといたしております。
 第三は、公立中学校の校舎整備費であります。
 公立中学校の校舎の整備につきましては、従来とも意を用いて参ったのでありますが、現在までの実施状況に顧みますとき、生徒数の増加が特に著しい昭和三十六年度におきまして、生徒の円滑な収容を行なうためには、あらかじめ措置を講ずることが必要となりましたので、今回、さらに四十億円を追加計上いたすこととしたのであります。
 第四は、日本輸出入銀行及び商工組合中央金庫への出資に伴う産業投資特別会計への繰り入れであります。
 わが国貿易の拡大とともに、輸出金融等に対する需要は毎年増大してきているのでありますが、ことに本年度におきましては、当初予算における見込みを大幅に上回るに至りました。このため、日本輸出入銀行に対し、その融資資金の不足を補うため、百二十五億円の出資を行なうことといたしたのであります。
 また、中小企業の金利負担の軽減をはかる方針に関連して、商工組合中央金庫の貸し出し金利の引き下げに資するよう、同金庫に対し、新たに二十億円の出資を行なうことといたしました。
 これらの出資を行なう必要上、産業投資特別会計において不足する財源を一般会計から補てんすることとし、百二十億円を計上いたしたのであります。
 第五は、社会保障及び文教関係の国庫補助金、負担金の不足額の補てんでありまして、生活保護費、国民健康保険助成費、義務教育費国庫負担金等、法律に基づく義務的性格の経費について、百三十八億円の追加計上を行なうことといたしました。
 第六は、食糧管理特別会計への繰り入れであります。
 昭和三十五年産米の収穫見込みが大幅に増加するに至ったこと及びその買い入れ価格が当初予算における見込みを上回って決定されたこと等によって、同特別会計の赤字が増加いたしましたので、これらを補てんするための経費として、二百九億円を追加計上いたしました。
 第七に、所得税、法人税及び酒税を歳入として追加計上することに伴う地方交付税交付金等三百六十一億円を計上いたしたのであります。
 このほか、さきの日米財産委員会の審決に基づき、賠償等特殊債務処理費に六十八億円を計上するとともに、今後の財政需要に備えるための予備費二十億円を計上いたしております。次に、歳入について御説明いたします。
 以上申し述べました歳出に対する財源といたしましては、租税及び印紙収入の自然増収をもって充てることといたしております。当初予算におきましては、租税及び印紙収入を一兆三千三百六十六億円と見込んでいたのでありますが、経済規模の予想以上の拡大を反映し、法人税等を中心とし、当初の見積もりに比し、総額千五百七十二億円に達する増加が見込まれるに至りました。この増収見込額から、後に申し述べますように、明年一月から実施予定の所得税の減税額五十八億円を差し引いた千五百十四億円を歳入として計上いたしたのであります。私は、すでに前国会において、昭和二十六年度においては、所得税及び法人税を中心として国税、地方税を合わせ、平年度一千億円以上の減税を断行いたす考えを明らかにしたのであります。この方針に基づき、今般、政府に提出せられました税制調査会の答申を基礎として、現下の情勢に最も即応した税制の改正を行なうことといたしております。このうち、国民の期待の大きい所得税の減税については、昭和三十六年分所得からこれを行なう所存で、来たる通常国会に所要の法律案を提出する所存でありますが、特に給与所得及び退職所得につきましては、あらかじめ、明年一月以降の源泉徴収税額から減税による利益を及ぼすことを適切と考えまして、これに必要な所得税法の臨時特例法案を提出することといたしております。
 次に、財政投融資の追加について、その概略を御説明いたします。
 追加のおもな内容といたしましては、一般会計予算の補正に関連し、さきに申し述べました日本輸出入銀行への出資百二十五億円及び商工組合中央金庫への出資二十億円のほか、災害及び公立中学校校舎整備等に伴う地方自治体の資金需要の増加に応ずるため、地方債において百十四億円を追加することといたしております。また、中小企業の年末金融対策といたしまして、国民金融公庫等に対し、合計二百億円の政府資金を手当てすることとし、遺憾なきを期した次第であります。
 以上の財政投融資の追加に必要な原資につきましては、一般会計から産業投資特別会計に対する繰り入れのほか、資金運用部資金並びに簡易生命保険及び郵便年金積立金において現在見込み得る原資の増加をもって充当いたすこととしております。
 以上、昭和三十五年度補正予算の大綱を御説明いたしました。何とぞ、政府の方針を了とせられ、本補正予算に対しすみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#7
○議長(清瀬一郎君) この際、暫時休憩いたします。
    午後一時三十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時二十五分開議
#8
○副議長(久保田鶴松君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#9
○副議長(久保田鶴松君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。山本幸一君。
    〔山本幸一君登壇〕
#10
○山本幸一君 私は、日本社会党を代表して、総理の所信表明に対し、以下、数点の質問をいたしたいと存じます。(拍手)
 まず、私は、先ほど総理の所信表明をお聞きして、残念なことには、何一つ内容をお聞きすることができなかったのであります。(拍手)はなはだ遺憾だと存じております。過ぐる総選挙の際の池田総理の公約は、選挙が終わったとたんに次から次へとくずれつつあるのは言うまでもございません。
 私は、この際、経済問題等の公約につきましては同僚の質問に譲ることにいたしまして、あれだけ派手に登場した所得倍増計画がアメリカのドル防衛の一声でぐらつき、兜町をあわてさせ、自民党の内部からすらもその変更を迫る声が起きている事実を見のがすことはできないと存じます。(拍手)
 また、社会保障は、今回の組閣人事に明らかに現われました通り、過日発表された厚生白書は、かねてわれわれの心配いたしました通り、政府の所得倍増計画によってはますます所得の格差は広がり、低額所得者階層の増大をもたらすことを明らかに指摘していると思うのであります。しかも、この厚生白書にあわてふためいた総理は関係者をしかりつけたと伝えられているのでありますが、まことに皮肉といわなければなりません。
 さらに、選挙中しばしば強調した話し合い政治は、池田総裁みずからの手によってくつがえされてきたのであります。すなわち、過般の議長選挙、常任委員長の選任などで明らかなように、擬装的な話し合いの姿を見せるため、時間をかけたように見せかけながら、その実は、多数の力によって一方的に押し切り、独占するという態度は、従来と何ら変わるところがございません。(拍手)一体、総理の公約は、選挙用だけのものであったのか。国民は、池田総理もまた前岸総理の三悪追放と同じ運命をたどることをおそれているのであります。総理は、これらの公約を誠実に実現し、もって国民の期待にこたえる意思があるのかどうか、まず第一に伺っておきたいと存じます。
 第二は、アメリカとの関係についてお伺いを申し上げます。
 現在、国際情勢は、ケネディ新大統領の出現、世界共産党声明における平和共存政策の確認、また、アジア・アフリカ諸国などにおける中立主義の台頭など、大きく動きつつあるのでありますが、これは、池田総理の、中立は幻想であるという言明とは全く逆に、最も実際的、現実的な政策であることを示していると思われるのであります。(拍手)しかるに、選挙中、総理は、アメリカと結んでソ連と対立するのほかはないと公言されたことが伝えられているのでございますが、一国の総理大臣が、特定国の名をさして、これと対立するというがごとき言動は、前代未聞の事柄であるばかりか、総理の思慮に欠けた態度とその国際的感覚の古さには、ただただ驚くほかはございません。(拍手)もっとも、この言明は、安保条約を基礎とする自民党政府の外交方針を、歯にきぬを着せずに表現したものであるともいえましょう。だが、しかし、原水爆、ロケット時代の今日、ある特定の国と結んで他の特定国と対立することは、軍事的に見て日本の安全を脅かすことはもちろん、九千万国民を破滅に導くものでありまして、さきのU2機事件によっても、国民の目にますますはっきりしてきていると思うのであります。その上、最近アメリカ政府がとったいわゆるドル防衛措置は、政治的、経済的に見て、アメリカとの協調がいかに不安定なるものであるかを、国民にいやというほど示したと存じます。(拍手)ドル防衛措置によって最も多くのショックを受けたものは、すなわち、韓国、台湾、沖繩、南ベトナムなどでありまして、この事実は、アメリカとの結びつきが強くなればなるほど、これらの国家の自主性は失われ、アメリカが一方的な措置をとった際には、その影響がいかに深刻であるかを示していると思うのであります。また、最近のアメリカ景気の停滞、金の流出によるドルの弱化などは、アメリカ経済の地位が相対的に低下したことを証明しているのであります。このような状況のもとに、なおアメリカ追従の方針を主張するのは、みずから進んで日本の地位を弱化し、かつ、危険に陥れることになるのでありますから、この際は、かえって中立の方向に勇気をふるって前進することのみが日本の地位を強化し、その繁栄を保障するものであると思うのでありますが、総理にその決意がありやいなや、お伺いをいたしたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、最近モスクワで行なわれた世界共産党声明において、平和共存政策を強力に推進することが明らかにされたのであります。平和のためなら悪魔とも話し合えという言葉があるように、われわれは、この言明をすなおに受け取りまして、これにこたえ、平和共存を実現するために一そうの努力を払うべきであると信ずるのであります。そのため、私は、東西首脳会談の開催こそ、平和共存実現に重要なる一歩を画するものでありまして、全世界の人々はみな強くこれを望んでいると思うのであります。この際、政府は、東西首脳会談推進のために、米、ソ、英、仏の各首脳に積極的に働きかけて、それを実現させることに努めるべきであると思いますが、総理の所見をお尋ねいたしたいと存じます(拍手)
 第三は、日本と中国との関係についてでございます。
 第二次世界大戦が済んでからすでに十五年を経過いたしておるにもかかわらず、わが国は、すぐ隣の中国との間にいまだ国交が回復をしていないのであります。このような不自然な状態は、二千年の歴史を持つ両国の関係から見てとうてい長続きしないことは、何人の目にも明らかでございましょう。この行き詰まりを打開し、日中両国の関係を正常化することこそ、現在わが国外交の最大の課題であるといわなければならぬと存じます。(拍手)また、われわれの言う中立外交とは、現実的には日中国交回復をさしているのであることを、この際、私は明らかにしておきたいと存じます。
 ところで、第一次池田内閣の成立後の動きを見てみますると、日中関係打開の熱意が全く見られないばかりか、国連総会において中国の代表権承認問題が表決に付せられた際、日本は、アメリカの意のままに、うしろについて、これに反対投票をし、その後の国連関係における各種の国際機関においても、常にアメリカに追従しているのでございますが、全く情けない次第ではございませんか。(拍手)池田総理は、先般来、口を開けば、日本は大国であるとおっしゃる。まさにその通りであります。その大国であるべき日本が、事ごとにアメリカに追従するに至っては、大国の言葉に恥ずべきであるとともに、わが国の自主性いずこにありやと疑わなければならぬのであります。(拍手)
 そこで、私は、総理にお伺いいたしますが、中国の国連並びにその関係諸機関における代表権問題について、今後もなお、アメリカの言うままに、一貫して反対投票をなさるつもりか、それとも、自民党政府として、せめても棄権ぐらいはすることにより、アメリカに対して大国日本の自主性を示し、同時に、日中国交回復に対する前向きの姿勢を天下に明らかにする意思をお持ちかどうか、明確にしていただきたいと思うのであります。
 さらに、日中関係において当面最も緊急を要する問題は、政府間貿易協定の締結でありましょう。長崎国旗事件をきっかけに、両国間の貿易が断絶してから、すでに二年有余になるのでございますが、日本政府にはいまだ貿易再開の熱意は全く見られないどころか、池田総理は、選挙中に、共産圏との貿易はだまされると公言されているのであります。皆さん、およそ、一国の総理が、他国と貿易をすればだまされるなどという非常識、不見識な言辞を弄した例を、私は寡聞にして知らないのであります。このことは、かつて、岸総理が、台湾政府の大陸反攻作戦を支持するとの暴言を吐きまして、内外のひんしゅくを買ったと同様、池田内閣もまた岸前内閣と何ら変わるところはないと非難を受けることは当然といわなければなりません。(拍手)しかも、池田総理自身、先日の記者会見で、ソ連との貿易は今日順調に増加し、最近は長期協定が締結され、数十億に上る造船の発注さえ行なわれていると公にされたのでございます。しかしながら、このことは、池田総理の言葉をもってすれば、ますますソ連にだまされていることになるのでありますが、一体、総理はいかにお考えでございましょうか。現実は、日ソ貿易の拡大によって両国ともに外くの人々が利益を受けていることは、否定のできない事実でありましょう。また、このような日ソ貿易の伸展をまのあたり見て、国民が日中貿易の再開を要望するのは、きわめて当然のことではないでしょうか。現在、中国側は、政府間貿易協定を締結する用意があると言明しており、従って、この問題は、一に自民党政府の決意いかんにかかっておるのでございますが、総理は、この際、中国側と閣僚級の会談を開き、政府間貿易協定を締結し、他の懸案の解決をはかる考えがあるのかどうか、この際、お尋ねをいたしたいと存じます。(拍手)
 これと関連して、いわゆる超党派外交について一言いたしたいと思います。
 五年前、鳩山内閣のもとにおいて日ソ国交正常化が行なわれたとき、わが党はこれを強く支持し、保守陣営内の一部アメリカ一辺倒分子の妨害にもかかわらず、ついに日ソ共同宣言の調印、批准が成功したのでございます。これは、わが党が一貫して鳩山内閣の日ソ国交回復の方針を支持、激励したからにほかなりません。われわれは、池田内閣が中国との間に政府間貿易協定を締結し、日中国交正常化の方向に一歩を踏み出すならば、わが党はあげてこれに支持、協力する用意のあることをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。(拍手)
 第四は、日韓会談についてでございます。
 わが党は、ともにアメリカと軍事同盟を結んでおります韓国と日本とがその関係を緊密化することについては、きわめて慎重な態度をとらなくてはならないと考えておるのであります。特に、朝鮮が三十八度線によって分割され、その南北両国の間に戦争のあったことを思い起こすとき、われわれは、日韓関係のいわゆる正常化が将来わが国の外交路線を引き返しのできない袋小路に導かないように、細心の注意が必要であると思うのでございます。また、われわれは、最近、李承晩政権崩壊後、韓国において、全朝鮮の中立化による統一を要望する声が著しく高まってきたことに重大な関心を払わなければならぬと存じます。伝えられるところによりますと、韓国政府の代表は、数回にわたって公然と韓国、台湾、日本、フィリピン、アメリカを含めた同盟条約を提唱しているというのでございますが、もし、このようなことが実際に行なわれるとしたら、わが国は新安保条約反対のとき以上の大きな混乱に投げ込まれるであろうことを、私は、この機会に声を大にして警告するものでございます。(拍手)このような重大な内容を持つ日韓会談について、今次選挙において、政府・自民党は一言も触れていなかったのでありますが、もし、それ、かかる会談が進められるとするならば、それは、岸内閣のもとで行なわれた二年半前の総選挙において、警職法や安保改定について全く触れなかったものと同じであり、われわれとしては断じてこれを黙視することができないと存じます。日韓会談については、去る九月一日、わが党の公開質問状をもって総理にただしたのでございます。しかるに、今日に至るも何らの回答もないのでありまして、きわめて遺憾なことと存じます。
 そこで、私は、この際、次の二点について総理の明快な答弁を要求するものでございます。
 その一つは、日韓会談は韓国政府を全朝鮮を代表する唯一の正統政府として認める立場に立って行なわれるものであるかどうか、いま一つの問題は、日本、韓国、台湾、フィリピン、アメリカを連ねる条約を結ぼうとする意図はあるのかどうか、率直に答弁をされたいと存じます。(拍手)
 第五は、沖繩の施政権返還についてでございます。
 言うまでもなく、沖繩は日本の領土であるのにかかわらず、今なおアメリカの実質上の軍政下にございまして、その通貨もドルが通用しておるのであります。そのため、今度のドル防衛によるアメリカ側の一方的措置によって一大打撃をこうむり、日本の領土でありながらも日本商品をボイコットするという、全く道理に合わない現象が起きているのであります。沖繩の同胞は一日もすみやかなる日本復帰を熱望いたしておるのでございまして、政府は、沖繩施政権返還実現のために、すみやかにアメリカ政府と交渉すべきであると思うが、総理の所見をお尋ねいたしたいと存じます。(拍手)
 第六は、金権政治についてでございます。
 御承知の通り、選挙は政策の対決であることは、今さら言を待たないのであります。しかるに、わが国の現状は、ほとんど政策以前の段階で選挙が戦われて、その勝敗が決せられているのが実情でありましょう。選挙に際して自民党が財界から莫大な資金を受け、その金額は選挙の回数を重ねるごとにいよいよ大きくなり、特に、今回の選挙には、それが空前の額に達したことは、財界の首脳部自身が公然と認めているところでございます。(拍手)今回の選挙で経済再建懇談会が自民党に出した金は表向き八億円といわれ、それ以外に、この額をはるかに上回る金が、失礼でありますが、自民党内の派閥を通じて投ぜられたということは、公然の秘密とされておるのでございます。(拍手)一体、政策の対決が選挙のあるべき姿であるとするならば、何ゆえかかる莫大な金が選挙に必要とされるのであろうか。答えはすこぶる簡単であります。それは買収の一言に尽きるからであります。(拍手)現に、今次総選挙においても、買収等の悪質違反は、そのほとんどが、残念ながら、自民党の候補者諸君であることによっても明らかでありましょう。(拍手)わが党は、かねがね、わが党内
 の悪質違反者については、情においては忍びないが、厳重な処分をすることを、天下に明らかにいたしたのでございます。総理は、一体、あなたの方のこれら悪質違反者に対して、どのような政治的、道義的責任を感じておられるのか、明確な御答弁をいただきたいと存じます。(拍手)
 次に、金権政治の最も悪質な事例として世人の記憶に新たなるものは、御承知の、岸総裁から池田総裁に至る二回の自民党総裁選挙でありましょう。自民党の総裁たらんとする者は、財界本流のバックと強い支持がなければその地位を得ることができないといわれているのでございます。すなわち、最もよく金を集め、これを散じた者こそ、自民党の総裁資格者と称せられるのであります。このことは、外国ではどうしてもわからぬと言っております。しかし、遺憾ながら、わが国の保守党政治の実態であるといわなければならぬと存じます。(拍手)このままに放置すれば、国民が議会政治そのものにあいそをつかす日がこないという保証は、何人もできないでありましょう。民主主義と議会政治を守ろうとするものが金権政治の排撃を叫んで立ち上がるのは、今こそ一番必要なことではないかと存じます。(拍手)金権政治の悪弊の根源は、選挙に金がかかり過ぎるのでありまして、この問題にメスを入れることなしに、この弊害を断ち切ることはできないと存じます。わが党は、特にこの点に留意し、金のかからぬきれいな選挙を実現するため、選挙法を抜本的に改正し、悪質違反の厳罰、連座制の強化、選挙公営の拡大などを行ない、さらに、政治資金規正法を改正し、政党と財界の関係をガラス張りにすることを提唱しているのでございますが、これらの諸点について総理の誠実なお答えを伺いたいと存じます。(拍手)
 第七に、憲法改正問題についてでございます。
 ここ数年来、憲法改正は選挙のつどのテーマとなり、今回の総選挙でも一つの争点であったことは、言うまでもございません。池田総理は、たとえ自民党が三分の二以上の議席を占めても、憲法改正は国民の意思に反して行なわない、と言明されたのであります。今回の選挙の結果では、憲法擁護の勢力が三分の一の議席を上回り、再び改正の不可能なことが国民の意思によって明らかになったのでございます。(拍手)従って、岸内閣のもとにおいて憲法改正の意図を持って作られた憲法調査会は、全くその存在理由を失ったことは明らかでありますから、われわれは、もはや同調査会をすみやかに解散し、国民の不定にこたえるべきであると思うのでございますが、総理はどのようなお考えであるか。(拍手)
 また、これと関連して、教育基本法を初め、秘密保護法や治安立法を制定するという意向が伝えられておるのでございますが、あわせて総理のお答えを要求するものでございます。(拍手)
 最後に、ここ数年来、国会において与・野党激しい対立が生じ、しばしば混乱が見られたのであります。しかし、その際問題になった案件を見ると、実質的に憲法の内容に触れる重大な性質を持つものばかりであり、かつまた、総選挙の際に国民に対して公約しなかった案件等であるのでございます。選挙の際には国民に耳ざわりのよい甘言をもってし、選挙が終われば開き直り、国民の権利や生活を脅かす案件を、多数の力にものを言わせて押し通すというやり方が続いたのでは、議会政治が正常に円滑に運営されるはずはございません。さきに、選挙中の三党首討論会において、わが党は、選挙の公約になかった重要案件はもちろんのこと、国民の多くが反対し、与・野党の意見が激しく対立する案件等については、国会を解散し、選挙を通じて民意を問うなり、または国民投票等によって国民の意思を問うべきであることを提唱したのでございますが、これは民主的な議会政治のあり方として最も基本的な問題であると思うのであります。この提唱に対して、総理は、この本会議を通じて、あらためて所見を明確にしていただきたいことを要求いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
 なお、答弁によりましては、再質疑をいたしますることを、あらかじめお断わりを申し上げておきたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#11
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の点は、所信表明でおわかりいただけるところもあると思いますが、なるべく重複を避けながら御答弁を申し上げます。
 所得倍増計画につきまして、アメリカの今回のドル防衛措置がいかなる影響があるかという点でございます。これにつきましては、申し上げましたごとく、われわれは、安易に考えてはおりませんが、わが国経済の内外における発展によって、努力によって、この目的を達し得る、所得倍増計画は達し得ると私は信じておるのであります。(拍手)
 その次の、社会保障は後退したではないかというお話でございまするが、決して後退いたしておりません。社会保障制度の拡充は、われわれが三本の大きい柱として公約した最も重要な事項でございまするから、厚生白書のいかんにかかわらず、全力を尽くしてやっていきたいと考えておるのであります。(拍手)なお、厚生白書につきまして関係当局をしかったというお話でございまするが、実は、しかったのではないのでございます。あの厚生白書にあります統計が、一九五三、四年、すなわち、昭和二十七、八年ごろの統計を出しまして、いかにもこれよりほかに統計がないのだといって、古い前の時代、何と申しますか、占領直後の数字を、今、七、八年後に出して、これよりほかにないというのは、勉強が足りない、とたしなめただけでございます。(拍手)
 次に、話し合いの政治につきましては、私が政権担当以来、常に国民に公約しておるところでございます。私は、今回の召集後の問題におきましても、進んで三党首会談を設け、そうして、他の二党に私の所信を十分申し上げて、できるだけ円滑にいくようにし、本会議を開くことを二、三日待ったのも、話し合いでいくという私の趣旨、公約を実行したにすぎないのであります。(拍手)
 次に、中立主義の問題でございまするが、私は、さきの国会で申し上げましたごとく、わが国の置かれた立場から考えまして、また、将来の国民の福祉等から考えまして、わが国は中立主義は今のところとらないとはっきり申し上げ、これによって選挙をやり、国民がこれを認めて下さったと私は確信を持っておるのであります。(拍手)
 また、アメリカのドル不安定によって日本の経済が不安定になり、あるいは自由国家群の経済が不安定になると即断せられることは、国際経済情勢から離れておると思います。われわれは、自由国家群の経済界におけるアメリカの地位を考えまして、アメリカのとった措置はアメリカとして当然であり、自由国家群としてこれを援助するにやぶさかでない、ともにドル価値の維持にわれわれは協力していきたいと考え、かくすることによって自由国家群の経済が安泰になると私は考えておるのであります。(拍手)
 次に、平和共存の問題でございまするが、モスクワの会議におきましても言われておりまする通り、平和共存とは階級闘争の手段である。私は、そういう意味から考えまして、万国がほんとうに平和で立ち行くことを念願するものでございまするが、今直ちに、この情勢からいって、両国巨頭会談の開催を私が言い出すということは、よほど考えなければならぬ問題だと考えております。
 なお、中共問題に対しまして、日本が国連においてアメリカに追随しておるというお話でございまするが、決してそうではございません。われわれは、世界の情勢、ことに自由国家群の間のいろいろな考え方をずっと検討いたしまして、先ほども申し上げましたごとく、自主的に弾力性ある態度をとっていこうといたしておるのであります。(拍手)
 また、中共との政府間貿易につきましてお答え申し上げまするが、われわれは、前内閣が言っておりましたごとく、積み重ね方式によって徐々に貿易拡大をしていこうというのが、われわれの考え方でございます。この政府間貿易協定が、もしそれ、中共承認とつながるものであるならば、先ほど中共問題についてお答えした通りに、われわれは慎重に考えなければなりません。しかし、貿易の拡大は、たびたび申しておりまするごとく、われわれの常に念願しておるところでございます。なお、中共貿易をしたらだまされるということを御引用になりましたが、この事実は、私は、長崎事件の直後、数億円の契約が一時に破棄せられまして、政府も民間も困ったことは、歴然たる事実でございまして、これを申しておるのであります。(拍手)
 超党派外交につきましては、私も考え方は賛成でございまして、さきの所信表明につきましても、各界の世論を十分参酌して外交方針をきめていきたいと考えております。従いまして、私は、さきに組閣しましたとき、外交問題懇談会という会を設けまして、財界、民間各界の方々に集まっていただいて、いろいろ意見を聞くことにいたしておるのであります。私は、日本の外交をきめます場合におきまして、各界のいろいろな考え方を参考にして、今後適正な外交方針を打ち立てていこうと考えております。
 次に、日韓会談でございまするが、日韓の国交の正常化は、私は、わが国民の念願するところと考えておりますので、日韓会談を始めておるのでございます。しからば、今の韓国は朝鮮全体との関係からどうかという御質問でございまするが、これは、御承知の通り、一九四八年の国際連合におきまして、国際連合監視のもとに行なわれた政府を正統なものと見るということに一応相なっておるのであります。従いまして、われわれは、この韓国政府を相手にしておりまするが、事実問題として、三十八度線の以北に別の政府があることは頭に置いて交渉をいたしておるのであります。次に、NEATOの問題でございまするが、NEATOの問題は、まだ正式に各国話し合いをきめておりません。私は、このNEATOの問題が、単なる経済的の問題ではなくて、軍事的の問題であるならば、わが国の憲法から申しましても、軍事協定を結ぶことはなかなかむずかしいことであることは、御承知の通りでございます。従いまして、軍事協定をやる考え方はございません。
 次に、沖繩施政権返還の問題でございますが、私は、これを願うことにつきましては、あなたより人後に落ちません。しかし、この問題は重要な問題でございまして、私は、今にわかに返還の交渉をする考えは持っておりません。
 次に、金権政治の問題でございまするが、私は、さきにも申しましたごとく、今回の総選挙は政策で争ったのでございます。しこうして、われわれの政党が党務の適正なる運営をいたすために、財界から寄付金を募ることは従来の例でございまして、特に今回は多いとは私は聞いていないのであります。総裁選挙につきましては、私は全然関知しておりません。
 次に、公明選挙につきましては、先ほど申し上げましたごとく、私は、今回の総選挙によりまする世論にかんがみまして将来ほんとうにりっぱな選挙、公明選挙が行なわれるよう、国民とともに努力を続けていきたいと考えております。(拍手)
 次に、憲法改正の問題でございますが、すでに御承知のごとく、私は、憲法の改正は数だけできまる問題ではないと考えております。従いまして、今後、国民の世論等を洞察いたしますと同時に、われわれといたしましても、憲法改正の必要ありやいなや、改正するとすればいかなる点をどうするかという問題につきまして調査研究は進めますが、その研究が終わったからといって、直ちに解散し、数で押し通すという考え方は毛頭持っていないことを重ねて申し上げておきます。
 次に、三党首会談での話し合いで、力で押し通すことはしない、これは私は申し上げました。しかし、今後、公約しなかった問題につきましては常に解散をするとも約束はいたしておりません。いかなる問題で解散するかということは、国会の気持、あるいはもっと国民の世論を聞いていたすべきでありまして、私は、その事態にあたりまして慎重に考慮いたしたいと考えております。(拍手)
#12
○副議長(久保田鶴松君) 山本君から再質疑の申し出があります。これを許します。山本幸一君。
    〔山本幸一君登壇〕
#13
○山本幸一君 ただいまの総理の御答弁は、聞けば聞くほど私どもは納得ができませんし、さっぱり内容がわかりません。
 まず、第一に御質問申し上げたいのは厚生白書でありますが、厚生白書を、総理は、あれは戦後二十七、八年ごろにできたものを、七、八年後の今日出したものであって、これに注意をしなければいかぬ、こういうことをおっしゃってみえますが、これは、どうも、総理が逃げ言葉をおっしゃっておられるのであって、少なくとも、厚生白書は、最近の政府の所得倍増計画に基づき、政府の所得倍増計画を進めるならば、貧富の差がこのように大きくなるということを指摘したのでありまして、私は、このことに強く触れようとは存じません。いずれ委員会等で詳細な検討をする機会があろうと存じます。
 それから、なお、特に、私は、質問の前に総理に御注意を喚起したいのですが、総理の御答弁を聞いておりますと、対中国問題については、結論からいえば、岸総理の時代の敵視政策を上回るものだと私は拝聴いたしました。私は、総理の考え方がどこにあろうと、少なくとも、一国の総理大臣が他国を刺激するような言動を軽率に吐かれることに、まず疑いを持ちます。
 さらに、私は、総理にお尋ねをしたいのですが、総理は、選挙のことにつきまして、全く私の申し上げた質問のポイントをはずされておられます。私は、こういう席上でありますから、露骨な質問は実は差し控えておったのであります。先ほど申し上げたように、今度の選挙を通じて、買収事犯の多くは、失礼でありますが、政府・与党側にあるのだということを指摘いたしました。それで、おおむね勘のいい総理はおわかりだと思いました。しかるに、総理は何らの反省がございません。もしお聞きいただけるならば、具体的に申し上げましょう。自由民主党の最高幹部で、しかも、またぞろ閣僚に選ばれたこの人が、おそらくきょうもひな壇に着席しておられると存じますが、二年半前の総選挙に買収事犯を起こしまして、その会計責任者、いわゆる事実上の選挙責任者が、夫婦ともに逃亡して、行方がわからないじゃありませんか。(拍手)そればかりではございません。総理、その人が今度また買収事犯を起こして、多くの運動員が買収事犯でつかまっておるんですよ。私は、こういう点について、お互いに謙虚な態度がない限りは、日本の選挙をきれいにすることはできないと思う。(拍手)従って、私は、総理に対して、そういうことについての所見を伺ったわけであります。問題は、露骨に申し上げることを差し控えただけであります。
 さらに、いま一つの問題は金権政治でございます。これも、私は失礼と存じましたから多くは触れませんでした。わが党の同僚成田政審会長が、十月二十三日の予算委員会で、あなたに対していろいろ質問をいたしました際に、これに触れました。しかるところ、このときのあなたの答弁は、「私は総裁選挙のことについては関知しておりません。一銭も金を使っておりません」とおっしゃいました。なるほど、池田総理の金は一銭も使わなかったかしらぬが、総裁選挙に金がたくさん使われたことは、これは、私でなく、全国民の知っておるところでございます。(拍手)しかも、私どもは、こういうことはいいことではありませんので、今後お互いに直していく、特に自由民主党が進んで直していくところに、私は金権政治がなくなると信じております。特に、あなたの方の最高幹部であられ、その当時総裁選挙の対立候補に立たれた人が、ある週刊誌を通じて、「自民党の総裁選挙は金がかかり過ぎる、おれの負けたのは金で負けたんだ、池田さんはおれより金をこのように使った」、こう言って明らかにしておるではありませんか。(拍手)これは、われわれ社会党が言うのではありません。自民党の最高幹部が言うのです。総裁選挙の対立候補が言ったことです。なぜ、あなたはそういう点をはっきり認めて反省なさらぬのですか。その反省があれば、私は金権政治はおのずから直っていくと存じます。総理の明快な御答弁を承りたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#14
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点は、厚生白書の問題でございます。この厚生白書の中に、各国の予算に対する社会保障費の割合が載っておったのでございます。日本は、予算に対しましての社会保障費が七・六%となっております。これは、昭和二十八年か二十九年の一兆円予算のときの社会保障関係経費が七百億円程度だったと思います。昭和二十七、八年のころでございます。しこうして、ドイツ、イギリス等々が載っておりますが、日本の社会保障制度は、御承知の通り、過去七、八年の間に急速に伸びてきたのでございます。伸びる前の数字を、しかも、六、七年前の数字を、最も新しい数字だと先般の白書に載っておりましたから、もっと新しい数字を出すべきでないか、すなわち、その当時は七百億円の社会保障費が、今では千八百億円になっておるのであります。この事実をよく統計に表わすようにしなければならぬということを申したのでございます。(拍手)
 なお、中共との問題につきましては、私は、組閣当初、また、さきの所信表明でも、お互いの立場を尊重し、内政不干渉の原則のもとに、できるだけ緊密な関係を強化していきたいということは、私は中共関係の基本の方針で変わりはございません。
 次に、選挙の違反問題でございまするが、お話しの通り、違反の起こることは、最も避けなければならぬ、忌むべき最大の問題でございます。従いまして、違反問題につきましては、私は、警察あるいは検察庁の裁断を待つことが最も適当だと考えております。
 なお、総裁選挙につきましては先ほど申し上げた通りでございまするが、お話しのごとく、金権政治は打破しなければならぬということは、あなたと同感でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#15
○天野公義君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十三日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#16
○副議長(久保田鶴松君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#17
○副議長(久保田鶴松君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後六時十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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