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1960/12/13 第37回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第037回国会 本会議 第7号
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1960/12/13 第37回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第037回国会 本会議 第7号

#1
第037回国会 本会議 第7号
昭和三十五年十二月十三日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  昭和三十五年十二月十三日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 公職選挙法改正に関する調査をなすため委員二十五人よりなる特別委員会、科学技術振興の対策を樹立するため委員二十五人よりなる特別委員会、国土の総合開発について諸施策を樹立するため委員二十五人よりなる特別委員会を設置するの件(議長発議)
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    午後二時四十分開議
#2
○議長(清瀬一郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(清瀬一郎君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。
 公職選挙法改正に関する調査をなすため委員二十五名よりなる特別委員会、科学技術振興の対策を樹立するため委員二十五名よりなる特別委員会、国土の総合開発について諸施策を樹立するため委員二十五名よりなる特別委員会、以上を設置いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(清瀬一郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
 ただいま議決せられました三特別委員会の委員は迫って指名いたします。
     ――――◇―――――
#5
○議長(清瀬一郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。石村英雄君。
    〔石村英雄君登壇〕
#6
○石村英雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として経済政策を中心として政府の所信をたださんとするものでございます。(拍手)しかし、その前に、二つばかり政治の基本についてお尋ねをしておきたいと思います。
 その第一点は、池田総理大臣は議会政治というものをどのように理解しておられるかという問題でございます。
 九月の二十六日だったと思いますが、自民党の新政策中央講習会というものがありまして、その席に出席せられました池田総理は、「今自民党と社会党との間には共通の土俵がない。現在自民党の政治のもとで国民は温室に入っているが、社会党が政権を取ると冷蔵庫に入れられるのだ。今度自民党がまた政権を取ると、今度は温室、これでは国民は大迷惑だから、今度の選挙で自民党は大勝を博して社会党を改心させて、社会党を自民党の土俵の中にはい上がらせなければならない」、こういうお話をなさっておられるのでございます。なるほど、社会党と自民党との間には意見の相違が根本的にございます。しかし、一体、議会政治というものは、意見の違いがあるということが前提となっておるものではないかと思います。意見が違うなら共通の土俵がない、そういう考えなら、現在のこの議会というものは、一体これは何でございましょうか。ただ、社会党はここでおしゃべりをする、池田さんは馬の耳に念仏で、勝手にしゃべっておれ、おれたちは勝手なことをするのだ、これでは議会政治というものはあり得ないと思います。(拍手)議会政治というものは、意見の違うものが一つの共通の土俵を作って話し合いをするのが議会政治だと思う。(拍手)決して、その共通の土俵なるものは、自民党だけの土俵でもありません、社会党だけの土俵でもないでございましょう。共通の土俵とは何か。それは言うまでもなく、憲法という土俵であります。(拍手)この憲法の上に乗って意見の違うものが話し合いをしていく、従って、憲法でやってはいけないというようなことは絶対にやらない、そういう立場に立って初めて議会政治が行なわれるのだと思います。(拍手)ところが、それを、今、社会党と自民党とは考えが違うから共通の土俵はないのだ、この選挙で社会党をぶっつぶして、社会党を改心させて、自民党の土俵にはい上がらせるということは、一つの独裁政治を池田さんはねらっておるといわなければならないと思います。(拍手)どうか、池田さんの、議会政治というものにつきまして、憲法という上に立って初めて議会政治がある、それをやっていかなければならない、憲法を守ることが政治の基本だということのお考えをはっきり聞かしていただきたいのでございます。今まであまりに自民党は憲法の土俵を踏みはずしてこられたから、こんな誤った考えに池田さんはおなりになったのではないかと思いますが、一つこのお考えをはっきりと聞かしていただきたいのでございます。(拍手)
 第二の点は、池田総理の頭の中には、政治の目的としては経済の発展ということがあるのみで、国民生活ということは頭の中には一かけらもないのではないかということでございます。(拍手)今度の所信表明でも、福祉国家の前提が経済の成長であるこういわれておる。一応理屈としてはその通りかもしれません。しかし、経済の成長ということは、手段であって、目的ではありません。池田さんは、この手段を目的と混同しておられるのではないか。(拍手)だから、近ごろ物価が上がるが、これをどう考えるか、と聞かれたのに対して、上がっておるのは小売物価だ、卸売物価じゃない、小売物価は経済にとって第三義的だ、と冷然として突き放された答弁をなさっておられるのでございます。なるほど、経済にとっては、小売物価は二義的かもしれません。しかし、国民生活にとっては、小売物価は第一義であるはずでございます。(拍手)頭の中に国民生活というものが全然残っていないから、このような経済の発展のみのことを考えていらっしゃるのではないかと思います。経済というものは、あるいは池田さん自身は、おれが出ていかなければ日本の経済はどうにもならぬとお考えかもしれませんが、ほうっておいても成長するものなら、経済は成長いたします。どうか、池田さんは、総理大臣である以上、常に国民の生活のみを考えてやっていっていただきたいと思いますが、どのようにお考えでございましょうか。(拍手)
 次に、経済の問題に質問を進めていきたいと思います。
 今日の自民党の経済政策の中心は、言うまでもなく、所得倍増計画でございますが、しかし、このことは、経済審議会の答申について池田総理自身にも御不満があり、与党内にも御不満がある問題で、答申は採用されておりません。どのような所得倍増計画が具体的に作られるか、まだわかりませんので、わからないものについてはあまり立ち入った論議は差し控えたいと思いますし、また、計画経済のもとでもなかなか思うようにいかないのが、自由放任の資本主義経済のもとで、やれ十年先に何ぼになるとかなんとかいったって、そんなものはわかったものではありません。それをまじめに取り上げて論議する方があるいはばかだといわれるかもしれませんので、まあそういう点は控えたいと思いますが、しかし、池田総理の経済というものに対するものの見方は、はっきりさせておかなければならないと思います。
 そこで、お尋ねをいたしますが、十年間に国民所得が二倍になる、あるいは向こう三カ年間に九%ずつ成長するとか、いろいろいわれております。これも、こまかく論議するならば、一体どこを基準にして九%の成長であると言われるのか、明らかにしてもらわなければならないと思いますが、そんなことは別として、池田総理自身のお考えでは、この十年間に二倍だとか、三カ年間に毎年九%ずつの成長ということは、これは最低線であって、実際はそれ以上成長するものだ、こうお考えになっているのではないかという点でございます。池田総理のお考えは、日本経済というものは非常に大きな成長力を内に抱いておる、従って、適当な政策をとるならば、この内にある偉大な勢力を解放するならば、日本の経済はうんと成長するんだ、そういうお考えで、われこそ、その成長力を、力を、エネルギーを解放する総理である、こう考えていらっしゃるのではないかと思います。そこで、その池田総理がお考えの、内にひそむ勢力を、力を解放する経済政策とは何か、具体的に御説明を願いたいと思います。今度は積極政策をとるんだ、こういうかけ声、それもおそらく自由主義の経済においては一つの刺激策となるでございましょうが、しかし、地道な政策がどのようなものがあるか、はっきりお示しを願いたいと思います。私の一つの想像では、池田さんの考えの中には、何か新しい金融政策というものを考えておられるのではないかと思います。一問一答ならお答えに沿ってお尋ねができますが、まあ、こういう席ですから、そんなことはできませんので、私の想像でお尋ねしますが、何か新しい金融政策、それを池田総理は持っていらっしゃるのではないか。つまり、経済が成長する、それに対して通貨の供給をしなければならぬ、それはどういう方法でやるかという問題でございます。日本の今日の金融制度、通貨制度は管理通貨制度だといわれておりますが、昔の金本位時代といっても、決して金本位一点張りの通貨政策ではありませんでした。やはり、保証準備の発行もあり、制限外の発行もあって、今日管理通貨制度だといっても、またでたらめに通貨を発行しておるわけではありませんが、経済の成長に伴う通貨の供給を今後どのようにしていくかということが一つの問題ではないかと思います。これに対する池田総理の積極的なお考えをお示し願いたいと思います。(拍手)国際収支が黒字のときには通貨は自然に供給されますが、国際収支がとんとんであったり、あるいは赤字となると問題でございます。とんとんになれば、通貨はそのままでは供給されない、赤字になれば収縮するそういうときに、一方では、経済の成長をはかろうとすれば、何らかの新しい通貨の供給策というものを見出さなければなりません。池田総理は、この点についてどのような政策を考えていらっしゃるか、はっきりとお示しを願いたいと思います。現在、一部には、日本銀行をして買いオペレーションを無条件でやらせる、それも一つの通貨供給の方法だといわれております。こういうことをおやりになるお考えであるか。もちろん、このことは日本銀行の政策委員会があるいは決定することかもしれませんが、政府自体としても、政府の代表を日銀の政策委員会に出しておるわけでございますから、どのような主張をこの政策委員会でおやりになるか、はっきりとお答えを願いたいと思います。こういう買いオペレーションを無条件でやるということは、財政法五条の違反になるのではないか。また、このことは、インフレーションにつながるのではないかということも、あわせてお答えを願いたいと思います。かりに、無条件の買いオペレーションを今後やらせるというならば、この点についての御配慮もまたお答えを願いたいと思います。
 次に、所得倍増計画はよくいわれることでありますが、所得の格差をむしろ拡大するのではないかという問題でございます。このことについては、せんだっての臨時国会で、与党の福田赳夫議員からも現に質問がありました。それに対して、池田総理大臣は、そういう所得格差を拡大するような所得倍増は所得倍増ではないのだ、上の者は二割か三割かしか所得はふえない、下の者は三倍にも四倍にも五倍にも所得がふえるのが所得倍増だ、こう答弁をしておられるのでございます。また、そのようにしなければ過剰生産になるおそれもあると、まあ言っておられるのであります。まことにごもっともな話でありますが、そのようにけっこうずくめのことがはたして行なわれるかということが問題でございます。御承知のように、急速な経済の成長をはかろうとするならば、同時に、急激な資本の蓄積をしなければなりません。また、現在、昭和二十八年ごろから最近にかけましても、急速な資本の蓄積が行なわれております。その結果、最近の経済が急激に成長したのだと思います。しかし、このような急激な資本の蓄積を行なわんとするならば、所得の少ないところに所得をうんとふやすという手段では資本の蓄積は不可能でございます。(拍手)所得の少ない人は買いたいものがたくさんある、毎日、幾らほしいものがあっても、買えないのをがまんしている、これに所得がふえれば、直ちに貯金するよりも、お店に行ってものを買わなければならない。そういう人のところの所得がふえて、資本の蓄積というものがはたして十分に行なわれるでありましょうか。このことは、最近の国民所得白書なんかを調べても、数字的にきわめて明瞭であろうかと思いますが、どうしてこういうことが行なわれるか、一つ池田総理のお考えを御説明願いたいと思います。(拍手)もし、池田総理大臣が、やはり、自分の自民党のこの所得倍増計画なるものは、下の者を確かに四倍にも五倍にもする計画である、こういうのなら、もう、まっ先に、現在の、今度の特別国会に出ている公務員のべース・アップでも、一級の者は三〇%前後も上がって二万三千八百円、一番下の八級者は一〇%前後しかしがらない、たった八百円しか上がらない。これでは話がまるで逆ではないかと思います。(拍手)むしろ、八級のような人を三〇%も四〇%も引き上げるというのならば話はわかりますが、池田さんの、下の者を四倍にも五倍にもするという趣旨から言うならば、このベース・アップは、全く池田総理の考えに逆行したベース・アップだといわなければならないと思います。どうでございましょうか。また、そのような奇特なお考えがあるならば、あの裁判所で憲法違反だときめつけられた生活保護基準なんかも、すぐ五割なり二倍なり、今度の国会あたりでおやりになってはどうかと思います。(拍手)また、現在、病院ストが行なわれておる。あの病院ストも、いろいろ封建的な問題もあるかと思いますが、一つは政府の医療というものに対する十分な配慮がない結果行なわれておると思います。この点に対しても、政府として積極的な態度を打ち出さるべきではないかと思います。また、こうした下の者の所得を三倍にも四倍にも五倍にもするというのならば、あの問題の最低賃金制なるものを、あのいいかげんな業者間協定というものでなしに、本物を作ることをまずお考えになってはどうかと思います。(拍手)ちゃんとした最低賃金制をしかないで所得を上げるといったって、政府の役人でもない者に、政府が金を簡単にやるわけにはいかないと思います。やはり、最低賃金制を、業者間協定でなしに、一万円とか一万五千円とか、そんなものをすぐお作りになって臨まれるのならば、なるほど、これなら下の者が三倍にも四倍にもなるのかということがわかるのでありますが、そんなことはほったらかしにしておいて、ただ、所得倍増とは下の者が四倍にも五倍にもなることでございますというのではただいたずらにラッパを吹かれるのみであって、内容はないということになると思います。(拍手)
 次に、所得倍増計画の中の問題である農業の問題についてお尋ねしたいと思います。
 私たちは、池田総理の、やれ農業人口が四割になるとか、三分の一になるとかいうことを、農民の首切り政策ではないかと批判しております。これに対して、池田総理は首切りではございませんと、いろいろな説明、弁解をなさっていらっしゃいますが、一つの弁解では、あれは兼業者が、兼業の所得の方がうんとふえるから、農業の方にはたよらなくなる、いわば、奥さんが家庭菜園を作るようなことになるのだ、そういう意味で農業人口が一つは減るのだ、こういう説明もしておられます。しかし、それならば、残った専業農家がはたして企業として成り立つような経営規模を持ち得るでありましようか。農業を企業としてやらせるというのならば、やはり土地の集中をやらして初めてそれは可能ではないかと思います。(拍手)依然として、兼業農家が他の仕事の所得がふえて、農業を問題にしなくなってもいいことになったからこれは農家でないのだ、こういう意味で人口が減るということでは、お話にならないと思います。また、首切りではなく、池田さんの御説明では、他の有利な仕事がどんどんできていくから、農業をやめてその方に移るのだ、という説明もしておられます。おそらく、池田総理としては、そういうことを考えておられるのだとは思いますが、それならば、あの農業の保護政策、今までずっととってきた保護政策を、一体、依然として続けられるのか、あるいは強化せられるのか、それとも、農業の保護政策は、一部の人が言うように、おやめになってしまうのかどうか、この点もはっきりと御答弁を願いたいと思います。(拍手)農業ではにっちもさっちもやれないという、その状態に追い込んでおいて、町に出ていく、それは自発的に出ていくのだという説明にはならないと思います。そうでないならば、あの十月十日の、この秋の裏作は、大麦や裸麦は種をまくな、まかせるなという、あの通牒は、どういう意味でお出しになったのか。ああいう、種をまくなという通牒が出て、農民はどうしたものかと、とほうにくれたのであります。池田総理として、農民の首切り政策を考えていないという立場に立てば、あのような冷酷な通牒が出せるものだとは思いません。どうか、この点もあわせて御答弁をお願いしたいと思います。(拍手)
 次に、問題は、経済の成長に非常な関係があるといわれる、今度のドル防衛の問題でございます。
 池田総理は、アメリカが今度とらんとしておる、とってきたドル防衛策は、日本の成長政策を左右するものではない、と言っておられます。また、わが国としても、各国とこれに協力しなければならない、と言っておられますが、一体、どのような協力をアメリカに対しておやりになるおつもりであるか、また、アメリカが具体的にどのような協力を求めてきておるか、御答弁をお願いしたいと思います。一体、世間で非常に重要視しておるこのドルの防衛について、池田総理が、経済の成長というものに対して、日本の経済の成長を左右するものでないと言うその楽観論なるものは、つまるところは、池田総理の経済というものに対する見方に基づいておると思います。誤った経済に対する見方が、あるいは将来取り返しのつかないことにならないとも限らないと思います。どうか、このドル防衛が日本の経済にいかなる影響を与えるか、もっと深刻に御検討をしてみていただきたいと思いますが、池田総理大臣の腹の中では、国際経済がどのようであろうとも、日本の経済は、冒頭申しましたように、非常に大きな潜在的な勢力を持っておるのだ、これを古い金融論にとらわれないでうまくやれば、りっぱに日本の経済は成長するものだ、そういうお考えがあるのではないかと思います。そうして、池田総理が、この場合に、日本の経済の成長をはばむものは労働力の問題か、そうでなければ土地の問題か、そんなところがあるいははばむかもしれない、国際経済の動向なんというものは、日本の持っておる大きな経済成長力をはばむものではないというお考えではないかと思いますが、一体、国際経済の影響がささたるものだといたしましても、日本の国際収支には大きな影響があるのではないかと思います。池田総理大臣は、やれ貿易の四十億ドル、これに対して一億ドルや二億ドルは大した問題じゃない、こう言っておられます。また、池田総理大臣は、日本の貿易というものが、今日の日本の輸出にいたしましても、総需要の一一、二%程度にすぎないということから、貿易の位置というものを非常に低く見ておられるようでありますが、やはり、一億ドルでも二億ドルでも、それは当然国際収支に影響を持ってくるものでございます。日本の現在の国際収支は、決して、一億ドル、二億ドルがマイナスになっても大した国際収支に影響はないといえるものではありません。今度の、ことしの見通しにいたしましても、通常取引での黒字というものは一億余りではないかと思います。あとは、外国から金を借りるとか、ユーザンスとか、あるいは特需の関係で、総合で六億ドルの黒字になる、そういうことになっておるのではないかと思いますが、一億ドルあるいは二億ドルの直接特需だけの現象でも日本の経済には大きな影響を与えますし、また、このドル防衛は、単に特需関係が減るというものだけではないと思います。アメリカは軍関係で十億ドルの節減をし、また、貿易関係では三十億ドルの増収をねらっておるようでございます。このことが、日本のみならず、世界の経済、貿易に大きな影響を与えるということは、言うまでもないと思います。池田総理大臣は、きわめて楽観的な、何か金融政策でごまかしていける、そのようにお考えではないかと思いますが、どうか、この点に対するはっきりした御説明を願いたいと思います。(拍手)
 最後に一つ。アメリカは、このドルの防衛が十分にできない場合には、あるいは平価の切り下げをやるかもしれません。現に、ニクソン氏は、ケネディとの争いの中で、ケネディ氏が大統領になるならば必ずやドルの切り下げをやるであろうという演説をしておると伝えられております。アメリカ国内においてもそのような見通しが立てられておる今日、日本として、あの十七億ドル余りあるドル、もし、このドルの平価切り下げがあったとき、どのような立場になるか、御説明を願いたいと思います。もちろん、積極的な損ではないかもしれません。十七億ドルを全部金で持っておるならば非常に有利なはずであります。しかし、これを今のままに置いて切り下げられたのでは一文にもなりません。大きな利益のあるとき、それをみすみす放棄してかまわないものであるかどうか、また、一体そういう予想せられる事態にどのように対処しようとしておられるか、これも明らかにお示しを願いたいと思います。(拍手)
 与えられた時間もほぼ尽きました。私は池田総理という方は、答弁は下手かもしれませんが、きわめて率直にものをお答えになるのが池田さんの最もいいところだと思います。貧乏人は麦飯を食えということも、資本主義の立場からいえば、あるいは当然でありましょう。貧乏人は麦飯を食えという言葉が、どんな貧乏人でも必ず麦飯を食わせるぞという意味で言われたのならば、われわれは大歓迎でありますが、資本主義の立場に立たれる池田総理は、貧乏人は麦飯を食え、食えない者は親子心中をしてもしようがない、こういうことをおっしゃるから問題になるのです。しかし、これは、資本主義という立場に立てば、おそらくきわめて当然なことでございます。そうした率直な答弁をおやりになるのですから、頭の中には今度は国民生活ということをじっくり入れた上での率直な御答弁をお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#7
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 私が以前に申し上げました二大政党論についての考え方を一部だけ引用なさいまして、全部を引用なさっていないから誤解が起こるのであります。およそ、二大政党というものは、根本的の国策については相一致しているのが英米の例であります。二つの政党は、離れ離れにならずに、お互いに相当交錯してこそ、初めて二大政党の妙味が現われる、と言ったのであります。二つの政党が意見の違うことは当然でございます。一緒ならば一つの政党になってしまう。しかし、今のように、この二つの政党が離れ離れになって同じ土俵を持たないということは、私は、政党政治としてよくない、従って、われわれも社会党のお考えを十分検討するが、社会党におかれても国民大多数の意見を十分頭に入れていただきたい、ということを申し上げるのであります。(拍手)
 なお、国民経済の発展を考えて国民生活のことを考えていないとおっしゃいまするが、私は、せんだっての施政方針に、――福祉国家を作り上げるということが政治の根本でございます。これは、すなわち、国民生活の安定と向上と完全雇用と社会保障制度の拡充であるのでございまして、経済の発展が福祉国家の手段であることは、だれも知っておることでございます。それを前提にして申し上げております。
 なおかつ、物価問題につきましても、たびたび申し上げました通り、世界経済の中におきまして、世界との比較、貿易その他の関係は卸売物価が第一義的でございます。しかし、小売物価は国民生活に直結いたしておりますから、この小売物価の上昇も極力押えねばならぬことは、われわれの財政経済の基本でございます。従いまして、今年の八月ごろから上がって参りました野菜あるいは豚肉、魚介類はどんどん下がって参りまして、野菜のごときは昨年の半分というものもあるのでございます。どうぞ、この点を御了承いただきたいと思います。
 次に、所得倍増論につきまして、通貨政策に対して何か特別の措置を考えておるかというお話でございまするが、私は、ただいまの通貨政策は日銀のやり方がけっこうだと思っております。所管は大蔵大臣でございまするから多くを申しませんが、通貨政策は資本の蓄積と金利の低下がその根本でございまして、今の管理通貨のもとにおける日銀並びに大蔵省の措置は、私は適当と考えております。
 なお、お話しの、時によりまして金融情勢を調整するための日銀の買いオぺは財政法第五条に違反するものではございませんことを、はっきり申し上げておきます。
 なお、貿易の順調によりまして、いろいろな手を打つことはございます。私は今から七、八年前、輸出超過によります輸出インフレを押えるために、いわゆるインベントリー・ファイナンスという非常手段をやったことがございまするが、今の程度の輸出増加ではこういう措置をとる必要はないと考えておるのであります。
 次に、低所得者に対しまするお考え、まことにけっこうでございます。私は、所得倍増、経済の成長を通じて、お話しのように、大所得者よりも低所得者の生活をうんと向上さすことが経済成長の目的であるのであります。(拍手)しかるところ、今回の給与の改定につきまして、上に厚く下に薄いとおっしゃいまするが、これは、人事院の勧告が、経済界、社会一般の状況を調べまして、役人の給与の今のあり方がよくないというので、これを是正しようとするのでございまして、私の、成長を通じての大所得者と低所得者との均衡をとろうという考え方と何ら矛盾するものではございません。(拍手)
 なお、つけ加えて申し上げまするが、最低賃金の問題あるいは労賃の問題は、今後、経済界の発展で、労働の需給関係の変化あるいは雇用の増加等等、また、社会保障制度あるいは生活保護基準の引き上げ等によりまして、私は、低所得者の生活水準を急速に向上し得ることを信じて、これに対して努力を進めておるのであります。
 なお、農業問題でございまするが、私は、貧農切り捨てとか、あるいは六割削減とかいうことは申したことはございません。経済が成長していくならば、農家の領域がだんだん第二次、第二次産業に向かっていくのでございます。すでに、もうその移動は過去数年間始まっておるということを御了承おき願いたいのであります。しこうして、私の農業政策に対しまする基本観念は徳川時代、明治時代のあの農業を、今この機会においてりっぱな企業として成り立つ農業に組みかえていこうというのが、私の念願であるのであります。(拍手)そのためには、農業法人、共同経営、あるいは土地収用、土地集中等、いろいろな問題が出て参りますので、次の国会に農業基本法を御審議願いまして、りっぱな企業としての農業を日本に育成する方法を講じていこうというのが私の念願でございまして、農家を切り捨てるとかどうこういうような、こういう考えではないということを、はっきり申し上げておきます。
 なお、最後のドル防衛の問題でございまするが、今回のアメリカのドル防衛措置につきまして、私は、何ら影響がないとは申しません。影響がございまするが、われわれの努力によって越え得るということを申し上げたのでございます。私は、ICA関係が一億一、二千万ドルだから心配は要らぬ、これは、そう申しておるのじゃございません。これは越え得るということでございます。御承知の通り、昭和二十七、八年ごろの特需関係というものは八億ドル近くあったのでございまするが、今、五億ドルになって、三億ドル少なくなりましても、日本の経済は倍に伸びておるではございませんか。しかも、先ほどお話のありましたように、今年の国際収支は六億ドルの黒字があるだろうといわれております。少なくとも、五億ドルの黒字はございましょう。従いまして、私は、ICAの減ることは影響はございます。ことに、また、お話しのように、輸出ドライブによりまして、アメリカが相当輸出に熱心になってくるときに、競争相手がふえることも考えなければなりません。従いまして、私は、こういう点を考えまして、成長政策をもっと進めて、幾分ともこれを後退することは全然考えていないことを申し上げて、お答えにかえる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(清瀬一郎君) 鈴木義男君。
    〔鈴木義男君登壇〕
#9
○鈴木義男君 私は、民主社会党を代表いたしまして、新しく成立した第二次池田内閣に対して、当面する諸問題について若干の質問を試みんとするものであります。
 民主社会党は、本年一月立党して、初めて総選挙という国民の洗礼を受けたのでありまして、所期の目的を達し得なかったとはいえ、国民から三百四十六万余票の信任を得ることができたのであります。わが民社党は、小政党とはいえ、今後とも、自民、社会の両党に伍して、議会制民主主義を堅持する政党として、雄々しく、勇敢に、議会政治の擁護と、国民生活の安定と向上のために努力する所存でございます。(拍手)
    〔議長退席、副議長着席〕
 昨日の総理の演説から受けた印象は、何でも重要なことは通常国会でという気がまえのようでありまするが、この国会は、特別国会とは申しながら、総選挙後初めての国会でありまして、普通の臨時国会とは違うのであります。新しく成立した政府がどういう政策を内外あらゆる方面に実施しようとするのであるかということを、国民はひとしく聞きたいと思っているのであります。これに答えることは内閣首班の義務であります。よって、私は、この際、それをお尋ねいたしたいのであります。
 第一にお尋ねいたしたいのは、議会制民主主義の根幹である選挙制度について、自民党の総裁として、また総理として、どういう心がまえを持っておられるか、ということであります。
 先般行なわれました総選挙は――終戦後、回を重ねるごとに選挙の実態はだんだん低劣化していることを感じるのでありまするが、その中でも、先般の選挙ほど腐敗した様相を目撃したことはないのであります。(拍手)古い人もそうでありまするが、新たに出ようとする人々は、百日選挙どころの話ではない、一年も、それ以上も前から、選挙区内のあらゆる団体や行事に寄付をする、婦人会、青年会、各種業者の団体、その会合、スポーツ、ピクニック、趣味の会、冠婚葬祭はもちろん、各町各村の鎮守の祭りにまで寄付をする、行事のないところは、行事を企画して、これに補助を与える、碁や将棋の会、魚つりの会にまで寄付をするのであります。後援会を組織させて、これに出席する者には、わずかの会費を徴するか、実際は会費も徴さないで、酒食の供応をする。その数、数千あるいは万をもって数えるのであります。いよいよ選挙が近づくと見るや、いろいろの形の自己宣伝文書、池田総理を初めとする知名の士の推薦状等が、選挙区内の有志に広く頒布されたのであります。この文書だけでも、印刷や発送費に数百万円を費やしたというものが少なくないのであります。与・野党を通じて、違反文書のはんらんは、今回の選挙の特徴であります。これらは、多くは、選挙に直接関係がないという口実や、告示前であるという口実をもって、検挙を免れておるようでありまするが、実質的には違反行為であることはもちろんであります。いよいよ実戦に突入してからは、さすがに、個々の有権者を買収するというようなのは比較的少なくなったようでありまするが、いわゆる幹部手当とか、旗振り料とかいうものが広くばらまかれたのであります。法定費というものは、おおむね百万円前後でありまするが、実際は一千万円、多きは二、三千万円から五千万円、それ以上も使ったと目せられる者が決して少なくないのであります。
 本来、選挙運動というものは告示を起点として始められるものでありまするが、告示のときには大体勝敗は決しているのであります。公職を金もうけの種と考えておらない少数の人々が、まじめに言論一本で戦っているのは、むしろ悲惨なる、こっけいのほかの何ものでもないのであります。百万、二百万で当選できるのは、選挙民の間にまだ若干の良識が残っていることを示すとともに、一種の奇跡というべきであります。こういう膨大な金が一体どういう方面から出てくるのであるか、非常な無理をして捻出していることも想像できます。さすがの財界も、このごろは悲鳴をあげているということであります。まれに候補者個人で工面する者もあるようでありまするが、こういう人々は、多くは、ついに、いわゆる井戸べいというものになってしまうのであります。要するに、万悪のもとは選挙に金がかかるということにあるのであります。(拍手)そのもとが正しくなければ、その上に築かれる政治が正しいはずはないのであります。選挙というものがこういう姿であってよいものであろうかという疑念は、おそらくは、すべての当選者も、当選に至らなかった者も、ひとしく、胸に手を当てるときに考えさせられることであると信ずるのであります。幸いにして、当選した者も、また次の選挙を失わないためには、翌日から、なしくずしの慢性の買収に従事するのであります。こうして、ほんとうに国家と国民を憂うる者は、次第にこのおそるべき選挙という行事から遠ざかるほかはないのであります。かくて、政界はますます質的低下を余儀なくされるのであります。
 私は、単に選挙法の改正だけを問題としておるのではありません。また、選挙区の大小や、定員と人口のアンバランスなどだけを問題としておるのではないのであります。もっと抜本的に、どうして選挙そのものを正しい姿に持っていくべきかということを考慮すべき段階と信ずるのであります。朝野ともに真剣に取り組むべき大問題と信ずるのであります。本来、われわれ自身がやるべき仕事でありまするが、渦中の人であるわれわれ国会議員にこれを託するのは適当ではありません。実情を知っているわれわれの意見は十分にしんしゃくされなければなりませんが、これが立案に当たる者は、むしろ、手のよごれない第三者でなければならないと信ずるのであります。その詳細は他の機会に譲りますが第二次池田内閣は、組閣後第一に着手すべき大事業として、選挙制度の抜本的改革に取り組むべきではないかと存ずる次第であります。この点について、池田総理の覚悟のほどを承りたいと存ずるのであります。(拍手)総理は、検討ということを言われたが、検討ではなくて、着手し、実行する勇気が大切と存ずるのであります。
 次にお尋ねいたしたいのは外交政策であります。この点は、すでに社会党の山本君から質問があったのでありまするから、簡略にいたしまするが、少なくも、近時国際情勢の上に起こった二つの大きな変化を計算に入れなければならないと信じます。
 一つは、アメリカの新大統領ケネディ氏は、その選挙中の言動から見ましても、従来のダレス路線に相当の修正を加えて、共産圏、ことに中共に対しても、よほど柔軟性のある方針をとるであろうと推定されることであります。一方、共産圏十二カ国の代表、八十一カ国の共産党幹部がモスクワに会合して、秘密会議であって詳細なことは不明でありまするが、結論として、戦争は避けられる、平和共存は可能である、と宣言したことであります。元来、ソ連と中共の間に、戦争不可避論について意見の相違がありましたのは、理論上の問題もきることながら、中共としては、一つの中国を主張する立場から、台湾解放の問題をかかえているからであります。しかるに、今般、中共も、戦争は避ける、避けられるという見解に同調したと見られるわけであります。戦争を回避してこの問題を解決するとすれば、二つの中国を認めるということを暗黙のうちに了解したものといわなければなりません。こういうときこそ、その隣国であり、東洋における先進国であるわが国が、イニシアチブをとつて、局面を打開することに努力すべきときではないかと存ずるのであります。
 池田総理は、選挙中、しきりに国連中心主義を強調され、中共に畏敬される外交政策をとるというようなことを言われたのでありまするが、具体的には、それはどういうことを意味するのでありまするか。おそらくは、明年秋の国連総会では、必ず中共の国連加盟問題が取り上げられ、採択されるであろうことは必至と信ずるのであります。こういう情勢に際して、わが国独自の用意があってしかるべきだと信ずるのでありまするが、いかがでありまするか。わが党は、中共の国連加入と、日中国交回復を一日も早く促進すべきであると考える。おそらくは、ケネディ新政権も中共加盟支持を打ち出すのではないかと予想されるのでありまするが、そういう場合に処して、池田内閣はどういう態度をとろうとしているというのでありましょうか。また、日中国交回復のためには、民間貿易の積み重ねを政府が積極的に指導助成すべきであり、また、政府みずから政府間交渉の機会を早くつかむことに最善の努力を傾けるべきではないかと考えるのでありまするが、いかがでありますか。このことは後に申し上げるドル防衛に伴う域外調達の縮減に対する対策としても、きわめて重要なことであります。
 また、安保条約の問題でありまするが、例のマンスフィールド報告以来、米国内にも、新安保条約を一方的に日本に押しつけたのは失敗であったという見解が盛り上がりつつあることは、御承知の通りであります。ケネディ氏自身も、本年六月、アメリカ上院で、もはや基地を維持することができなくなった地域では、それにかわる計画を立てなければならない、と述べたのでありまするし、ケネディ氏のブレーンであるチェスター・ボールズ氏も、アメリカの援助で贈ったものは必ずしも真の友好ではなかったとさえ述べておるのであります。ゆえに、わが党は、つとに、安保条約の解消を訴えて、第三条の自衛力増強の約束、第五条の相互防衛方式、第六条の米軍の常時駐留方式の削除、並びに安保条約の危険性を取り除くことを主張してきたのでありまするが、池田新内閣は依然として安保条約堅持の方針を貫くつもりであるのでありましょうか。総理の言う国連機能充実のためには、国連中心に軍縮の実現、核兵器の使用禁止を促進すべきものと考えまするが、これは安保条約の堅持とはまっ正面から衝突せざるを得ないわけであります。池田総理は、この矛盾する二つのものをどうして同時併存させようというのであるか、その御所見を承りたいのであります。
 次には、アメリカのドル防衛政策実施に伴うわが国経済への影響についてであります。これも山本君並びに石村君がすでに指摘したところでありまするから、努めて簡略に付しまするが、かねて好況を伝えられたアメリカ経済も、近時ようやく頭打ちとなって、景気は停滞から下降期に向かおうとしておるようであります。その徴候は、アメリカの金保有高が百八十億ドルの大台を割ったことであります。この状況から、アイゼンハワー大統領は、ドル防衛を至上の命題として、十一月十六日、在外駐留軍の家族二十八万人の本国帰還など七項目のドル節約令を発し、また、アンダーソン財務長官やジロン国務次官をヨーロッパ諸国に派遣してドル防衛への協力を求め、今月五日にはICA資金支出の中止をさえ発表するに至ったのであります。これに対して、池田総理の新聞記者諸君に対する談話でも、きのう、きょうのこの会議における御答弁でも、きわめて楽観的な見解を発表しておられるようでありまするが、はたしてそれでよろしいのでありましょうか。総理は、財政経済はわが輩の専門である、まかせておけ、という自信のようでありまするが、その自信というのがあぶないのであります。総理がどう言っても、もうすでに業界、財界ではすこぶる動揺と不安の色があることは、新聞等の伝える通りであります。数額にしてはわずかに四十分の一の減少にすぎないといいますが、経済現象は連鎖反応がおそろしいのであります。アメリカのこの政策によって、わが国は、まず特需の減少、アメリカの対日軍事援助の減少、ガリオア、イロア対日援助資金の返済、ついには日本製品の輸入制限という問題にまで発展しかねないわけであります。そこへ加わるものは貿易・為替の自由化であります。貿易自由化の対策は別の機会に論議いたしたいと存じまするが、少なくとも、中小企業に対して、ことに、わが国農業が最大の打撃をこうむると想定されるのでありまするから、これらに対してどういう対策をとるかという大綱ぐらいは、この際明らかにしておかれる義務があろうと存ずるのであります。(拍手)一つ言半句これに触れないのは、遺憾千万であります。
 それはともかくとして、ドル防衛についてのアメリカのこれらの措置によって、今後わが国の国際収支は政府の期待通りに進まないのではないかという懸念があります。これによって、総理の提唱する年九%の経済成長によるいわゆる所得倍増計画も怪しくなり、無理に高度の経済成長を維持しようとすれば、設備投資などの過剰によって、かつての神武景気のように、好景気のあとに大不景気がくるというようなおそれなしとしないのでありまするが、総理はこの点をどうお考えになっておられるのでありましょうか。やはり、その御計画に修正の必要はないとされるのであるか、御所見を承りたいのであります。この点は、国民がひとしく知らんとするところでありまするから、できるだけ具体的に御答弁を願いたいのであります。
 次に、補正予算についてでありまするが、これが詳細は予算委員会等においていたすこととして、ごく大綱についてだけ希望を述べ、兼ねてお尋ねをいたしたいと存じます。
 池田内閣は、今回、千五百十四億円に上る補正予算を提出したのであります。わが党は、補正予算の重要課題は、はなやかな好況の陰にかくれた一千百万人に上る低額所得者に政府がどういう援助政策をとるかにあると考えていたのでありまするが、今回政府提出の補正予算は、補正に名をかりて総選挙宣伝の一部の跡始末をはかり、財源となる租税の自然増収をあいまいにして、必要でかつ可能な補正措置、緊急な年末の措置を全く怠ったものであります。
 わが党が補正予算に要求するものは、まず第一に、公務員給与の問題であります。さきの人事院勧告を五月一日にさかのぼって完全実施し、勧告中の上下の格差拡大を是正し、特別職、地方公務員、三公社五現業職員の給与改定に必要な財政措置を確保し、給与引き上げに伴う人員整理を取りやめることであると思うのでありまするが、人事院勧告を完全実施できなかったのは何ゆえでありまするか、大蔵大臣にお伺いをいたしたい。
 補正予算に対するわが党要求の第二は、災害対策についてであります。補正予算の編成にあたって、チリ津波対策の、激甚地については大蔵当局も若干の譲歩を示して、この津波補助率を三分の二に引き上げたのでありまするが、その他の地方はいまだに三分の一補助でありまして、この寒空に水害の打撃に悩む被災者に国が十分の援助を与えることは当然であります。わが党は、災害の補助率をすべて三分の二以上に引き上げることを要求するものであります。
 第三の要求は、生活保護者等、貧困階層に対して政府があたたかい手を差し伸べることであります。今回の補正では、生活保護世帯や日雇い労働者等に対して、期末一時扶助料あるいは一時金を支給する措置が講ぜられております。これは、われわれの従来からの主張が受け入れられたものであり、一歩前進であると思うのでありまするが、その支給額は少なくとも一世帯二千円に引き上げるべきだと思うのであります。今日の生活保護基準額については、最低生活を保障するものでないことは、岡山県の結核患者が裁判において勝訴の判決を受けた実例を見ても明らかでありまするが、こういう低い基準額をカバーするものとして今回の一時扶助料の意義があるのでありまして、通常国会においてその基準額を改定することはもちろん。今回の期末一時扶助料についてもその支給額を引き上げるべきだと思うのでありまするが、蔵相の所見はいかがでありましょうか。
 さらに、お年玉付年賀はがきの社会福祉事業への寄付については今年限りで廃止するということを聞くのでありますが、福祉事業に対する対策が十分であればともかく、来年から年間六億五千万円減額されることは、福祉事業にとってはきわめて深刻な問題であります。政府は年賀はがきの寄付を廃止するのかどうか、もし廃止するものとすれば、これにかわる福祉事業への援助措置を講ずべきものと考えますが、政府の御所見を承りたいのであります。
 第四の要求は、食管会計の赤字補てんについては、現行食管制度を堅持して、かつ、生産費や農家所得を補償する米価算定方式の採用を前提として、必要経費を計上せよということであります。
 第五の要求は、申すまでもなく、中小企業に対する年末融資の確保であります。補正予算では、輸出入銀行の原資として百二十五億円を繰り入れておりますが、われわれは、これはすべて中小企業金融に振り向けて、輸出入銀行に対しては民間資金による計画的な補強を行なうべきであると信じておるのであります。
 以上五点にわたるわが党の補正予算に対する要求は、本年度歳入の自然増収見込みを最大限に補正財源に振り充てることによって初めて満たされるのであります。政府は何ゆえこういう措置に出なかったのであるか、出ることを得なかったのであるか、その御所見を承りたいのであります。
 最後に、池田総理に、念のため、後日のため承っておきたいのでありまするが、われわれは、今度こそは軌道に乗った国会の進行を期待して参ったのであります。しかるに、議長選任問題で三日間を空費した。まことに醜態かつ遺憾のきわみであります。一体、議長は、立法府運営の柱石でありまして、立法府独自の見識で選定すべきものであります。いかに政党の総裁を兼ねている場合でも、行政府の長たる総理が指示したり容喙したりすることは、好ましからぬことであります。われわれが特定の候補者に反対をしましたのは、その人の過去の業績が議長としてふさわしくないからであり、その欠陥は、選挙の洗礼を受けても、ぬぐい去られるものではないからであります。その人は、議会政治を救うために、信念に基づいて、あえて権道を選んだ、と言われるようでありまするが、それなら、辞表をふところにしてやるべき仕事であったのでありまして、推されたからといって再び議長の地位につくのは、いかがかと存ずるのであります。
 それはそれとして、われわれがその指名された人に反対したときに、それは他党の内政干渉だというような声を聞いたのであります。とんでもないことであります。自民党の代議士会長をきめるのとはわけが違うのであります。(拍手)各党にとって共通の議長であります。かねての申し合わせもある通り、すべての党が賛意を表し得る人を充てるのが常識であり、大原則であります。大使、公使を外国につかわそうとするときは、行ってから拒絶されないように、あらかじめ相手国のアグレマンをとるのが国際間の慣行であります。池田首相にもそれくらいの事前の配慮があってもしかるべきものではなかったろうかと存ずるのであります。私は、この点、総理の政治的感覚を疑わざるを得ないのであります。(拍手)私は、この立法府における神聖で最高の地位を、組閣工作の人繰りの派生物、つけたりにするようなことは、やめていただきたいと存ずるのでありまするが、この機会に総理の御所見を承っておきたいと思う次第であります。
 以上をもって私の質問を終わりといたします。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#10
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 さきの選挙につきましての国民の批判は、所信表明で申し上げましたごとく、われわれは大いに反省しなければならぬと思います。ことに、鈴木君の御意見には、われわれは大部分賛成するところがあるのであります。従いまして、選挙の制度の検討につきましては、検討するでなしに、検討に着手いたしますことを申し上げる。なお、また、法令の改廃のみならず、一般国民に対しまして公明選挙が今後徹底するように運動を進めていきたいと私は考えておるのであります。
 第二の外交政策でございまするが、お話しのモスクワにおける八十一カ国の代表者会議で平和共存が再確認されたと申しましても、ソ連圏の外交にさしたる変化は私はまだないと思います。ことに、平和共存とは社会主義と資本主義との階級闘争の一種の形態である、こうつけ加えておるのでございます。従来とあまり変わりはないと思います。
 また、民主党のケネディ次期大統領も、外交政策につきまして、お話しのように、直ちに大きく変わるとは私は考ておりません。また、国務長官の任命等から参りましても、私は、今までのアメリカの外交政策が急に変わろうとは、ただいまのところ思っておりません。
 なお、中共国連加盟の問題につきましてのお話がございまするが、これは国連自体として重要であるのみならず、わが国といたしましても、隣邦である関係上、よほど考えなければなりませんが、今、ここで、これが対策を申し上げることは早急であろうかと思います。
 次に、中共との貿易問題につきましても、私は、たびたび申し上げておりまするがごとく、まず積み重ね方式でいって、そうして拡大をはかることが適当であろうかと思います。
 次に、安保問題につきましても、これはアメリカが一方的に押しつけたという言葉がございまするが、私の知るところでは、改定をこちらから申し込んだという事実でございます。この点を御了承願っておきます。しかし、この問題につきまして、私は、こんりんざい改正を申し出ないというのではございません。今の情勢では、このままいくのが適当であると考えております。情勢の変化があれば、これが改正につきまして申し出るに何らとらわれるところはございません。
 次に、ドル防衛の問題でございまするが、先ほど来申し上げましたごとく、直接日本の国際収支の問題と、今後の世界貿易、日本の輸出の問題等等、いろいろ関連がございます。しかし、私は、たびたび申し上げまするごとく、日本人の英知と努力をもってすれば、これは乗り越えられる、それだけ日本の経済は以前とは違って強くなっているということを国民とともに喜ぶと同時に、これが万全の対策を講じようとしておるのであります。景気、不景気の調整につきましては、常にわれわれは意を用いまして、なだらかな経済の成長を念願しておるのであります。
 なお、議長選挙につきまして、お話しのごとく、組閣と議長を関連せしむることは私は絶対反対でございまするから、その方針でいっておるのでございます。議長の適任なりやいなやということは、われわれが考えまして適任と判断いたしまして、社会党、民社党とも私はお話を申し上げて、大体御了解を得たと思っておるのであります。しかし、賛成の投票がございませんでしたけれども、本会議を開くことをあれ以上延ばすことなしにお入りいただきまして、大体まあまあというところにいったと私は確信いたしておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#11
○国務大臣(水田三喜男君) 今度の補正予算は、補正予算本来の性質に基づいた予算の補正でございまして、政府の実行したい施策を予算に盛ったという予算ではございません。当初予算がきまってから後に発生した事由によって年度内に補正することが必要であるという項目に限った予算でございますので、この点は御了解願いたいと思います。
 それから、給与引き上げを十月になぜきめたかということでございますが、御承知のように、今回の人事院勧告は、実施の期日を大幅にさかのぼることを求めた異例のものでございましたので、政府は慎重に検討いたしましたが、一つは、予算制度の上からの考慮、一つは、地方財政その他関連機関の財政的な事情を考慮したことと、さらに、政府内の各般の施策との均衡というようなものを考えまして、十月一日から実施することを最も妥当だと考えて決定した次第でございます。(拍手)
#12
○副議長(久保田鶴松君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#13
○副議長(久保田鶴松君) 本日はこれにて散会いたします。
    午後三時五十七分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
   内閣総理大臣  池田 勇人君
   法 務 大 臣 植木庚子郎君
   外 務 大 臣 小坂善太郎君
   大 蔵 大 臣 水田三喜男君
   文 部 大 臣 荒木萬壽夫君
   厚 生 大 臣 古井 喜實君
   農 林 大 臣 周東 英雄君
   通商産業大臣  椎名悦三郎君
   運 輸 大 臣 木暮武太夫君
   郵 政 大 臣 小金 義照君
   労 働 大 臣 石田 博英君
   建 設 大 臣 中村 梅吉君
   自 治 大 臣 安井  謙君
   国 務 大 臣 池田正之輔君
   国 務 大 臣 小澤佐重喜君
   国 務 大 臣 迫水 久常君
   国 務 大 臣 西村 直己君出席政府委員
   内閣官房長官  大平 正芳君
   法制局長官   林  修三君
   総理府総務長官 藤枝 泉介君
   運輸大臣官房長 辻  章男君
ソース: 国立国会図書館
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