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1960/12/22 第37回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第037回国会 外務委員会 第3号
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1960/12/22 第37回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第037回国会 外務委員会 第3号

#1
第037回国会 外務委員会 第3号
昭和三十五年十二月二十二日(木曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 堀内 一雄君
   理事 竹内 俊吉君 理事 野田 武夫君
   理事 森下 國雄君 理事 岡田 春夫君
   理事 戸叶 里子君
      愛知 揆一君    小泉 純也君
      椎熊 三郎君    正示啓次郎君
      床次 徳二君    前尾繁三郎君
      橋本 龍伍君    黒田 寿男君
      細迫 兼光君    森島 守人君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 小坂善太郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  津島 文治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (経済局長)  牛場 信彦君
        外務事務官
        (条約局長)  中川  融君
 委員外の出席者
        通商産業事務官
        (大臣官房審議
        官)      村上 公孝君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
十二月十九日
 平和会館の建設に関する陳情書(群馬県利根郡
 月夜野町大字下牧八百七番地池田正尊)(第一
 五九号)
 小笠原島返還に関する陳情書(東京都千代田区
 神田仲町二丁目十番地小笠原土地所有者委員会
 理事長森泉平助)(第二〇六号)
 北方領土の復帰に関する陳情書(札幌市南一条
 西十一丁目千島歯舞諸島居住者連盟理事長山下
 亮輔)(第二〇七号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 国際情勢に関する件
     ――――◇―――――
#2
○堀内委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 質疑の通告がありますので順次これを許します。細迫兼光君。
#3
○細迫委員 前もって外務大臣にちょっとお尋ねいたしますが、昨日は衆議における外務委員会の定例日になっておるのでありまして、委員会は万端の処置を整えて出席をお待ちしておったのでありますが、ついにお姿が見えないのでやむなく散会したのでありますが、これは衆議院外務委員会軽視の観念の現われではないかといって私どもはなはだ遺憾に思っておるのであります。事情いかがでありますか。
#4
○小坂国務大臣 まずもって私から深く遺憾の意を表したいと思います。実は私も昨日外務委員会が開かれるということを承知しておりませんで、はなはだお待たせをしたということを後ほど聞きまして残念に思っておる次第でございますが、私のところには昨日の午前中は、前からいろいろ申し込みがあった面会をやってもらうに適当な時間があるようであるという話がございましたので、だいぶ申し込みをためておりましたので、そういう外交関係の会談を済ませることに当てておりました。皆さんお待ちであるということを知っておれば何をおいてももちろん伺ったのでございますが、私は何も存じませんでしたので、心ならずもそういう失礼をいたしました。はなはだ無礼をいたしました。その点は一つ御容赦をお願いいたしたいと思ます。
#5
○細迫委員 定例日でもあり、かつ公報にも掲載してあることでありますから、知らなかったということは、いかにも、どうもお手落ちだと思います。しかし、根には持ちませんから御安心いただきたいと思います。
 通産省からは村上審議官御出席でございますか。――それから外務省の通商関係の方見えておりますか。
#6
○牛場政府委員 経済局長が来ております。
#7
○細迫委員 去年、一九五九年三月朝鮮民主主義人民共和国、すなわち俗に北朝鮮から六一年までに百万キロの火力発電設備を買い受けたいという申し入れがあったということでありますが、その事情を御存じならば一つ説明していただきたい。
#8
○牛場政府委員 北鮮の方でそういう火力発電の設備を買いたがっているという話は、私、日本の民間の方から伺ったことはございます。
#9
○細迫委員 これは金額にすれば六百億円をこえるものであるようであります。すでに西ドイツと北朝鮮との間に、数十万キロワットの購入契約ができておるそうでありますが、日本に対する百万キロの発電設備の購入希望につきましては、日本のメーカーとの間にまだ契約が成立していないそうでありますが、一体どういう事情でそれが成立しないのでありますか。
#10
○牛場政府委員 どうもそれは純粋な商業取引でございますので、私の方では事情を承知いたしておりません。北鮮の政府の方からわが国の政府に対して何か申し入れがあったということは全然ございませんで、全く民間ベースの話でございますから、日本のメーカーの方でどういうことを考えておりますか、これは私ども全然存じません。
#11
○細迫委員 もちろん民間のことだと思いますが、何かのことに障害がなければ、これはよい商売だと思うのです。直ちに契約が成立せにゃならぬはずだと思うのでありますが、これができていない。すでに西ドイツとはできておるというようなことは、わが国の貿易上、産業上重大な問題だと思うのであります。そのほか北朝鮮から石炭の購入希望が申し入れられており、年間数百万トンの購入希望があり、その中にはガス発生用の石炭がほしいということもあるようでありますが、これは日本の産出が少ないのでありますから、これが売られないことは理由がありそうにわかるのでありますが、日本が売り得るところの石炭を数百万トン買いたいということは、旱天に慈雨を望むがごとく、いわゆる石炭不況の折柄、こういう買い入れ希望があるということは、飛びついてもいきたいような話であると私らしろうとは思うのであります。それで仕方なく北朝鮮では、中国方面から買うておるそうでありますが、一体これはどういうわけで石炭が売られないか、事情を御承知ならば御説明を願いたい。
#12
○牛場政府委員 石炭の話は私全然聞いたことございません。
#13
○細迫委員 通産省ではわかりませんか。
#14
○村上説明員 北鮮への輸出につきましては、政府の輸出の承認にかからない品目であって、北朝鮮以外の地域から指定通貨を受け取るという条件であれば、現在でも輸出し得る態勢でございます。これは標準決済規則の解釈上そういうことにいたしております。なおお申し越しの石炭につきましては、別に輸出承認品目ではないと承知しておりますので、実際に本件の輸出の手続がなされたかどうか私も承知しておりません。
#15
○細迫委員 北朝鮮には非常に豊富な鉄鉱石がありますが、現在鉄鉱石を日本で購入しておるという事実はどういうふうな状況になっておりましょうか、通産省、外務省で御承知ならばその事情の御説明をお願いいたします。
#16
○村上説明員 北朝鮮との貿易は、昭和三十三年の五月に中共との貿易が中断いたしまして以来、大きな金額を示しておりません。と申しますのは、先ほどちょっと申し上げました標準決済規則の解釈上、輸入の方は輸出と異なり、北朝鮮から直接持ってくる物資につきましては、たとい他の地域から指定通貨で受け取るということになっておりましても、現在の規則の解釈上、標準外決済ということで政府の許可が要るわけであります。それで中共貿易が行なわれておりましたころは、これは私の聞き及んだところでございますが、大連経由で香港決済で入れていた。たまたま税関等で必ずしもその原産地、船積地を厳格にチェックしなかったので、あるいは北朝鮮のものが中共産ということで入っていたのではないかと思われるわけです。その点につきまして、必ずしも当時は厳格な態度をとっていなかったというふうに思われるのであります。そういうことで当時の実績は、三十一年の九月―十二月までで輸入が約十八万ポンド、輸出が三万三千ポンドでありましたのが、三十二年の一月―十二月には、輸入が七十一万ポンド、輸出が七十六万ポンド、大幅に伸びまして、さらに三十三年の一月―五月までは、輸入が約六十九万ポンド、輸出が七十五万ポンド、一月―五月という短い期間にしては、相当大きな比重を示すに至ったのであります。今申し上げたような事情で、中共貿易の途絶とともに非常に小さくなりまして、現在では香港を経由して参りますごくわずかなものが入っておる。これも建前は先ほど申し上げました大連経由の場合と同じでございます。私ども必ずしも原産地、船積地を厳重にチェックしなかった、その結果北鮮のものではないかと思われるものが若干入っておるということでございます。
#17
○細迫委員 いろいろな障害のために、形式的には北鮮からの輸入ということになっていないようでありますが、事実上鉄鉱石は、北朝鮮産出のものが相当に入っておるのが事実であります。そうしてそれは北朝鮮から出て参りまして、はなはだしきに至りましては、その船は門司に着きまして、石炭、水等を補給いたしまして、そうしてわざわざ香港まで行きまして、それからまた引き返して、門司あるいは若松へ荷揚げしておるというのが実情であります。こういう物資の輸入方法が一体日本のためになるかどうかなんです。問題はこれが日本のための処置であるかどうかなんです。それになお船も北朝鮮から直接に持ってきますれば日本の船を使っていいのでありますが、香港を回ってくるものは外国船をもってこなければならぬ。これにはもちろんドルが要ります。これだって大へんなものらしい。数字をあげられますけれども、一体こういうことが日本産業のためであるか。いや、これが一体日本のためのやり方であるかということが問題なんです。
 小坂外務大臣にお伺いいたしますが、以上の事実をお聞き取りになりまして、一体どういう御感想をお持ちになるか。それでいいと思っていられるのかどうか。何か改善しなければならぬとは思われないのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
#18
○小坂国務大臣 北鮮との貿易に限りましては、ただいま細迫委員が御指摘になりましたような点はあるようでありますけれども、日本の通商関係全般を大観いたしますると、今までのところはそういう措置をとらざるを得ない実情があったものと心得るのでございますが、常にわが国により有利に、全般を達観いたしましてやりまするように不断の努力を払って参りたいと考えておる次第でございます。
#19
○細迫委員 大体こういうまことに国益を無視したやり方が行なわれておるということにつきましては、昭和三十年十月二十四日の次官会議の決定というものがこういう不都合なやり方をせざるを得ない根拠になっておる。北朝鮮との貿易はまかりならぬというような趣旨のものらしいのでありますが、一体その三十年の次官会議決定というものはどういうものであるか。事務当局でいいですから御説明を願いたい。
#20
○中川政府委員 今御指摘になりました今から五年前の次官会議決定、私は正確には記憶がございませんが、その当時いろいろ韓国との間に日本人の漁夫を救出するというような問題がございまして、日韓間にいろいろ折衝していたのであります。韓国側におきましては日本が北韓鮮と貿易をするということについては非常な反対を唱えていたのでありまして、そのような事情からその当時そういう次官会議の決定があったのではないか、かように推定いたします。
#21
○細迫委員 その次官会議の決定というものはいまだに効力を持続しておるものであるかいなか。またその次官会議決定というものは一体どういう法律的な効果を持っておるものかどうか。単なる政策的なものの意味しかないものではないのであろうかどうか。そういう次官会議決定なるものの正当性、効果というものは現内閣もやはり持続して堅持しておるのであろうかどうか、ここらの点につきまして政府の御説明を願いたいと考えます。
#22
○中川政府委員 今問題になっておりますその当時の次官会議決定というものは今から五年前のものでございまして、私が御説明申し上げましたようにその当時における日韓間のそういうような状況というものが反映してできたものでございます。その後日韓間もいろいろ変転がございまして、ことに今年に入りましてからは従来の李承晩政権というものが倒れまして、新しい、ある意味で非常に民主的な合理的な政府ができておるというような事態もございます。必ずしもその当時の次官会議の決定――これはその当時の政府のいわば行政上の政策を総合する意味での一つの決定があったのだと思いますけれども、そういうものが今日においても生きておるかどかということは、必ずしも今の情勢の変化その他によりまして、そのまま生きておるというようには考えなくてもいいのじゃないかというふうに私どもとしては想像いたしておりますけれども、この点について別に新しくその効力を存続するとかあるいは廃止するとか、さような決定はその後なかったのじゃないかと考えます。
#23
○岡田(春)委員 ちょっと関連して。今の中川さんの御意見になにするようで悪いけれども、そういうあいまいな答弁では困るのです。生きてないなら生きてない、生きているなら生きている。これは私たちがここで伺っているときはそういう答弁で済むかもしれないが、実際の実務者としては、貿易をやる人は、その窓口へ行って言うときに、これは生きてないんだという前提に立って話が進められるなら問題はないんだけれども、逆にまだ生きているんだという話でいくのか、どっちなのか、そこの点をはっきりしてもらわないとやはり困るわけです。中川さんもしばらくロンドンにおられたわけで、その間の事情を御存じないと思うし、伊關さんもおられるけれども、局長クラスでそれがわからないというなら、もう少し今質問をやっていきますから課長の方へ連絡されて、その関係はどうなっているのかはっきりしていただいて、その上でその点を進めませんと、質問者としても、これではちょっと質問が続行できないと思うのです。ですからそこの点をはっきりしていただきたいと思うのです。形だけは生きているんだけれども、使わなくていいんだというならそれでもけっこうですから、はっきりしていただきたい。
#24
○伊關政府委員 次官会議決定はその後廃止いたしておりませんから生きております。
#25
○岡田(春)委員 そうすると先ほど中川さんから、新しい事態が起こっているんだけれどもそういう事態で実際の効力はないというような状態のような御答弁があったわけですが、それとだいぶ違うわけですね。生きてはいるけれども実行はしないというわけですか。
#26
○伊關政府委員 これをやりましたときは、韓国の方が対日貿易断絶措置をとる、三十年の八月でございましたか、そこでこういう決定が十月に行なわれたのであります。ですからこれが現在生きておるかどうか、廃止しておりませんから生きておりますが、韓国との関係におきまして、こういう決定を必要としたような事態が今また起こるであろうかどうかというふうな政治判断によってこの問題は処理すべきだ、こう考えます。
#27
○岡田(春)委員 というと、さっきから細迫委員からいろいろ質問があったように、実務上いろいろな取引が行なわれているわけですね。そういう場合は、実情はそれを適用しているんですか適用していないんですか、それを言って下さい。
#28
○伊關政府委員 廃止しておりませんから生きておりますけれども、五年の間にある面では緩和されているところがありますけれども、現実にある程度の貿易が行なわれております。これは大目に見ておるわけでありますが、ただ廃止いたしますればこれはもう自由になる。ほかに標準外決済とかいろいろなことがございましょうが、ともかくそれを離れまして、その政策としては廃止すれば自由になるということになるかと思います。そういう意味では生きておるのでありますが、多少五カ年間に大目に見ている面はあるわけであります。
#29
○岡田(春)委員 関連ですからもう一点で終わりますが、そうすると、あらためていえば、生きているのかいないのかと聞けば、生きていると言わざるを得ない、しかし実際には適用しないのだ、そういうように解釈してもよろしいのですか。
#30
○伊關政府委員 実際には適用しないというわけではございませんで、ある程度融通性を持たしておりますが、個々のケースで判断いたしておりますが、原則的には生きておる、適用に当たりましては、昔ほどかたくないというようなことだと思います。
#31
○岡田(春)委員 それもきわめて抽象的だと思うのです。ある程度融通性をきかせるというのは、何が基準で、どういうように融通性をきかせているということがわかりませんと、これはやはり事実上貿易を進める場合に、われわれとして判断ができないわけですね。だから、どういう点で――たとえば、次官会議決定の事項の、この項とこの項は生かしてこういうようにやっているとか、あるいは全部生きているのだけれども、それを適用する場合にこういう基準でどうしているというような点がありませんと、生きているような死んでいるような――そこいら辺を聞きたいのが先ほど来の質問者の御意見だと思うのです。そこの点を、なに今直ちにでなくても、電話でお調べいただいて、そのあとで御返事いただいてもけっこうなんですが、そこの点が重要だろうと思うのです。
#32
○牛場政府委員 この点は先ほど通産省の方から御説明がございましたが、要するに、原産地が北鮮のものが香港に回っていって、香港産に化けて入っていることを認めているということが、緩和しているということなんです。元来ならば、原産地を偽って入れば税関でつかまるわけですけれども、それは見のがしているわけです。直接北鮮から来るものは、はっきり原産地北鮮となってくるものは、今のところ、これももちろん許可を求めればいいわけでありますが、許可しないことにしているというのが現状であります。
#33
○戸叶委員 ちょっと関連して……。今の質疑答弁を伺っておりますと、一向にわからないのですけれども、それじゃ違う角度から伺いますと、もしこれが廃止されると、自由な形で貿易がやれるという御答弁でございました。そうだといたしますと、もし日本側がこれを廃止したいというふうな状態になって参りましたときには、どういうふうな手続をとれば廃止できるのでしょうか、この点を伺っておきたいと思います。
#34
○牛場政府委員 もう一度次官会議の決定を変えるということがございますれば、この次官会議の決定が要ると思います。行政面におきましては、標準決済規則を改正する手続が必要であります。
#35
○戸叶委員 日本側だけでそれをやっていいわけでございますね。そうだとするならば、もう次官会議の決定を変えるようなときが来ているんじゃないかと思いますけれども、そういうお考えはないかどうか、ついでに伺っておきたいと思います。
#36
○伊關政府委員 まだ全面的に廃止する時期でないと思っております。
#37
○細迫委員 今まである特定国――あるいはまだ北朝鮮は国として認めていないというような御観念かもしれませんが、ある一定の、特定の地域とは一切取引まかりならぬというようなことを、今までほかの地域でやられたことがありましょうか、どうでしょうか。
#38
○牛場政府委員 私の記憶している限りでは今までございませんです。
#39
○細迫委員 先ほどから申し上げましたように、かつて火力発電設備の購入希望の申し込みがあり、あるいはのどから手が出るほどのうまい話の石炭購入の交渉もあり、鉄鉱石なんかは現にいわゆる香港産に化けて入ってきておる。それを、門司の沖を通りながら、ただ香港まで一枚の紙切れをもらいに行ってくる。莫大なドルを使ってそういうことをやってくる。大きなものではそんなものでありますが、これは戦前の例をお調べになればわかりますけれども、北朝鮮からはほしいものが相当にあります。南朝鮮のノリと米だけというようなわけのものでないのであります。北朝鮮こそは一番近いところでどうしてもほしいものが多数にあります。小さいものから言いますれば、山口県の萩の夏ミカンなんかでもずいぶん出ておったのであります。皮が厚くてああいう北の方でも保存度が非常に高くてずいぶん出ておったもので、それに要する竹かごなんかを製造する業者なんかも、それでずいぶん潤うておったものであります。そのほか、日本海沿岸方面からは相当に、何やらかやら中小企業製品あるいは農産物等が行っておったものであります。北朝鮮との貿易の自由開設ということは、日本海沿岸の中小企業、農民のみならず、全国的に中小企業その他大産業におきましても非常な希望と期待を持っておる。しかるに、さっきから言いましたような非常な不合理な処置が行なわれておることはまことに遺憾でありまして、業者の方では決済は香港でもよろしいと言っております。それも不便ではありますけれども、まあこの段階において仕方がないだろう。だけれども、一つ香港まで紙切れ一枚もらいに行くというような、そんなばからしいことはやめてほしい。これは業者の声だけじゃありません、われわれが根本的な国策を考えまする場合に、いかにもばからしいことであります。おそらくは、これがそういう障害に直面しておることは、南朝鮮との関係だと思うのです。李承晩を怒らしてはどうにもならぬという、李承晩の顔色をうかがって、その背後のアメリカの顔色をうかがっての処置にすぎないと思うのです。自主外交を呼号なさる池田・小坂外交において、かかる不合理な、非日本的な処置は、これはすみやかに撤廃せられなければならぬと思うのでありますが、先ほど外務大臣の御答弁によりますれば、たしかすみやかに善処したいようなお言葉であったと思います。それ以上をお答えを求めることはお立場上困難かと思いますから、あえて御確答は求めませんけれども、これはすみやかに改訂してほしい。まずわれわれはアメリカから独立をしなければならぬと思います。しかし、池田・小坂外交も、大磯外交から独立をなさらなければならぬと思うのであります。
 今次官会議の決定、それと韓国及びアメリカに対する遠慮等を持ち出しましたが、そのほかに法律的あるいは条約的に北朝鮮とは貿易まかりならぬということをしなければならぬ制約が何かありましょうか。
#40
○中川政府委員 これは御承知のように朝鮮事変が始まりましたあとで、国際連合総会におきまして、一九五一年であったと思いますが、勧告がございます。中共及び北朝鮮は侵略を行なった、その事実に基づいて、軍事資材その他先方の軍備を増強するような資材はこれを送らぬようにという勧告がございます。その勧告は現在まで生きておるわけでございます。
#41
○細迫委員 それは軍事資材に限られておるものであって、軍事資材以外のものには及ばないと解釈して差しつかえないでしょうか。
#42
○中川政府委員 大体軍事に使えるような資材でございます。
#43
○細迫委員 では、大体国際的条約その他の打ち合わせという方面にも差しつかえない、かように確認をいたしてよろしいと思うのでありますが、そのほかに――もちろん北朝鮮とはそういう状況でありますから、ほとんど一切の話し合いのきっかけというものは作っておられない。たしか北朝鮮からは平等互恵の原則に基づいて日本と友好な取引がしたいという態度を表明しておると思うのでありますが、そういうような北朝鮮との関係において、北朝鮮がどういう態度をとっておるか、あるいはどういう申し込みをしておるかということについての事情を承りたいと思います。
#44
○伊關政府委員 私もまだ一年半ほどしかアジア局長をやっておりませんが、私がやっております間には、そういうふうな申し入れば私のところにはございませんが、この次官会議決定をやりました年、三十年でありますか、そのときに古屋貞雄議員外八名の国会議員団が北鮮首脳部と会談をしておられます。その結果として国交の正常化とか、貿易代表部の設置とか、文化交流、そういうふうな申し入れが向うからあったという事実がございます。その後どういうふうなことがございましたか、ちょっと記憶しておりませんが、これははっきりしたものがございます。
#45
○細迫委員 北朝鮮との間に漁業の協定あるいは海難救助、避難に関する協定、あるいは郵便の協定――通商は差しつかえがあるかのようでありますが、そういう話し合いを、個々の懸案を交渉開始することについて何かそうしてはならない支障がありましょうか。
#46
○伊關政府委員 貿易につきましては、私のところにもしばしば関係者の方からお話がございますが、ただいまお話のございましたような郵便とかあるいは漁撈とか、あるいは海難救助というようなことにつきましては、最近はそういう御要望というものは聞いておらないわけでございます、非常な切実な御要望があれば私の耳にも入る一と思うのでありますが。そういうことがございますれば、全般的な関係において検討しなければならぬと思います。
#47
○細迫委員 外務大臣にお聞きいたしますが、いろいろ従来のいきさつはあったようでありますが、韓国との問題においては小坂さんはまことに熱心であるようでありますが、一面、北朝鮮の問題は全くどうも頭にないようにお見受けするのであります。いかがでありましょうか、北朝鮮と何か積極的に一つ話し合いを始めてみようかというお心持までは動かないものでありましょうかどうか、お伺いしたいと思います。
#48
○小坂国務大臣 韓国との関係につきましては、ただいまお説のように予備会談を続行いたしておりますが、この韓国における南と北の関係は非常にデリケートのものがあることは御承知の通りでございまして、一九四八年の国連の決議に基づきまして自由選挙をやったわけであります。韓国側はこの国連の決議に従って、自由選挙を行なって、今の大韓民国というものができて、それに対して賛成したものが三十四ヵ国、他の八ヵ国でしたかは北鮮というものを認めておるわけであります。私ども今韓国との間に日韓会談を開始しておるわけでありますけれども、われわれのそうした、国連の構成員として、国連の決議というものを尊重する建前からいたしまして、韓国というものは国連における決議に基づいてできた政府でありますから、唯一の合法政府であるという見解をとっております。しかしながら同時にまた、三十八度線以北にそうした事実上の支配をしておるオーソリティ、権威があるということを認めるのは現実に即した考え方だと思っておる次第であります。従ってただいまの細迫委員の御質問は、そうした非常にデリケートな関係を反映するものだと思いまして、やはり時期もありましょうし、また全般の諸情勢というものを勘案しながらいかねばならぬことと思っておる次第でございます。
#49
○細迫委員 はしなくも国連の決議なり日韓会談の話が出て参りましたが、池田総理の去る十二日の本会議の山本幸一議員の質問に対する御答弁におきましても、あるいは従来小坂外務大臣の御答弁におきましても、この四八年の国連決議がしばしば出ておるのでありますが、この解釈は、少しく私はまだはっきりしないところが残っておるんじゃないかという気がいたすのであります。私は日本語のものしか読んでいないのでありますが、小坂さんの解釈は、少し拡大解釈をしておるんじゃないかという疑念があるのであります。すなわち、これは選挙の行なわれたその地域において一つの合法的な政府ができたのであって、これが全朝鮮の合法的な政府だということにならない。これは小坂外務大臣も誤解はしておられないと思うんです。だが、外務大臣のお話はいわゆる三十八度線以北にも政府が樹立されておるという事実をお認めでありますが、それが非合法だということは意味していないと思うのでありますが、そこの御解釈はいかがでありますか。
#50
○小坂国務大臣 現在の韓国の政府の支配権が北に及んでいないということは、これは事実上として私どももそう思うのであります。ただ、一つの国に二つの合法政府があるという建前はとれないわけでございまして、現在における国連の監視下において選挙を行なった合法と認められる政府は韓国政府である、こういうことであります。しかしその支配権は北緯三十八度線以北には事実上及んでいない、私どもはそういうことを頭に入れて日韓会談というものをやっておる、こういうことであります。
#51
○細迫委員 私の質問の線をちょっとはずして巧妙に言われたのでありますが、北朝鮮における政府が国連によって合法的とは認められていない、こういう意味でありますか。
#52
○中川政府委員 法律的な問題も含みますので、私から補足的な説明をさしていただきます。今問題になっております国連決議に書いてありますことは、細迫委員もお読みになりました通り、いろいろなことを申しまして、そのあとで、この政府、つまり大韓民国政府が朝韓における唯一のこの種の政府である、合法政府であるということを言っておるのであります。この種のというのは何であるかということになるのでありますが、それは前を受けまして、要するに朝鮮における相当部分、あるいは大部分と申しますか、相当部分を実効的に支配して、かつその地域において、国連の監視委員会が行きまして、その監視のもとに自由な選挙が行なわれた。その選挙に基づいてその合法政府ができたということが前に書いてあるのでありまして、従って朝鮮における唯一のこの種の政府である。この前のいろいろな事実を受けまして、この種の政府である、こういうことを言っているのであります。従ってこの大韓民国政府がこの種類のものとしては朝鮮における唯一の政府であるということは国連総会の決議が言っておるのであります。今、細迫委員の御質問になりました、それでは北朝鮮の政府を国連が合法政府でないと言っておるかどうかという点でございますが、これはまさしく御指摘の通り、北朝鮮政府を合法政府でないというような趣旨の決議はございません。しかしながら、同時に大韓民国政府についてはただいま申した通り合法政府という言葉を使っておりますが、北朝鮮につきましてはノース・コーリアン・オーソリティーズという字句をほとんど一貫して使っております。つまりそういう政権がある。実際上の権威と申しますか、そういうものがあるということでありまして、政府という言葉も大体において使っておりませんし、合法という言葉も使っていないのでありまして、若干そこに使い分けをしておるというふうに考えられるのでございます。
#53
○細迫委員 やや明解になりました。つまり北朝鮮の政府を非合法ときめつけているわけでない。反面から消極的に解しましてさように解せられると思います。私の疑問とするところは大体において了解をいたしました。それであればますます、先ほどから問題にしております北朝鮮との貿易、せめて直接輸入といいますか、業界ではどういう言葉を使っておりますか知りませんが、これは決済は香港でもよろしいと、ドルを使って紙切れ一枚取りに香港に行ってくるというばかなことはやめるということを妨げる何ものもないと思うのであります。どうぞ一つ小坂外交におきまして、このことは国のために有利な打開をぜひともすみやかにやってのけていただきたいことを要望いたしまして、問題を南の方に移します。
#54
○堀内委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
#55
○堀内委員長 速記を始めて。
#56
○岡田(春)委員 今の速記録から除いた部分については伺わないことにして、先ほどからの答弁等を伺っていると、朝鮮民主人民共和国、いわゆる北朝鮮との貿易とかその他の関係については非常にあいまいな態度なんですが、そういう点は南朝鮮との関係における政治的な考慮というようなことが基礎になっているような印象を受けますが、その点はいかがですか。それは先ほど御答弁もあったわけですが……。
#57
○小坂国務大臣 その点は十分頭に入れなければならない問題だと思います。
#58
○岡田(春)委員 いわゆる共産圏諸国の中で国交未回復の国との貿易という場合には、政府は政経分離の建前をとっているのですか、政経不分離の態度ですか。どちらですか。
#59
○小坂国務大臣 今共産圏の国で通商並びに外交関係ができていない国は、外蒙とアルバニアと二ヵ国でございまして、これらの国に対して私はこう思っているのです。政経分離とか政経不可分とか言いますけれども、非常に複雑になっております社会機構の中におきまして、一体どこまでが政治であるか、どこまでが経済であるか、交わる線というものは非常に不分明なものになっております。分離だとか不可分だとかいう、その言い方がすでにおかしい、こういうふうな気持で問題に当たりたいと思います。
#60
○岡田(春)委員 それじゃ具体的に中華人民共和国の場合の貿易についてはどうなんですか。
#61
○小坂国務大臣 これは私どもが言いますより、先方の考え方であります。お互いの関係でありますから、先方がどう考えるか、われわれもどう考えるか、お互いの考えを出し合って考慮すべきものだと思いまして、こちらからだけこういう考えだと言っても実効を上げるには至らないという考え方であります。
#62
○岡田(春)委員 これは先方の考え方ははっきりしていると思います。政経不分離。岸さんの内閣の場合には方針ははっきりしていたわけです。いいか悪いかは別ですよ。いいか悪いかは別だが、政経分離の態度をとっていた。池田内閣の場合には方針がないというわけですか。それとも方針があるんですか。向こうさん次第で、どっちにでもなるとおっしゃるのか、そこら辺はどうなんですか。
#63
○小坂国務大臣 ですから、私は政経といいますけれども、一体どこまでが政治であり、どこまでが経済だかわからないものを、分離とか、不可分とかいってみても意味がないことだ、こういうわけであります。
#64
○岡田(春)委員 それじゃ具体的に伺います。中国の場合には、中国は政経不分離が態度。これは前から変わらないんですが、そうする場合に、池田政府としてはこれに対する態度はどうかということです。それは政経分離であろうが、不分離であろうがかまわぬとおっしゃるなら、どういう建前でいくのかということが具体的にないとはっきりわからない。
#65
○小坂国務大臣 観念的に政経分離とか、不可分とか言っても意味はないということをいっている。具体的な問題について、それぞれについて判断していきたい、こう思います。しかし前の内閣が言うたような意味において、政治と経済というものを考えるならば、非常に抽象的な意味に、またがってのこれが政治、これが経済といった観念において考えるならば、政経は、政経不可分だと先方は言っておるから、こっちは可分だ、こう言っている。そういう意味においては、われわれは可分だ、こういうわけでございます。
#66
○岡田(春)委員 では政経可分だという建前に立っておられるとするならば、北朝鮮との貿易の関係においては可分ではなくて、日本の態度というのは、南朝鮮との政治的な考慮、いわゆる政経不可分の態度に基づいてやっておる。中国の場合には可分である。その考え方が幾らか違うわけなんですね。そういう点は外交方針として何らか矛盾をお感じにならないかどうか。
#67
○小坂国務大臣 ですから、私は先ほど申し上げておるように、政治がここまで、経済がここまでと、そういう分け方が一体おかしいのであって、具体的な問題に処して、経済問題のように思えるけれども非常に政治問題としては大きい、お互いにからみ合ってしまう問題もございますし、その場合その場合について判断しなければならないということを申し上げておるわけでございます。
#68
○岡田(春)委員 関連ですからこれで終わりますけれども、その点はもう少し本格的に私取り上げたいと思っていますが、ただもう一つだけ。これは先ほど細迫さんの御質問に対する御答弁が非常に不明確だと思うのですが、貿易関係の問題はいろいろな点があるとしても、たとえば先ほど御質問のあった気象協定とか、郵便協定、あるいは海難上の協定とか、こういう点については、中国との関係においても、これはこの間池田首相はやってもいいのだ、こういう考え方を御答弁になっておりますが、これについて、朝鮮の場合についてはどうなのか、はっきり御答弁を、この点だけは一つしていただかないと、何もかもそのときばったりでございますというのでは、これは委員会をやった意味をなしませんので、もっとはっきりしていただきたいと思うのです。
#69
○小坂国務大臣 これは理論だけでなくて、やはり政治の実際の情勢にかんがみまして、いろいろな関係する各般の情勢を勘案いたしまして、現在のところはこれはまだその時期ではない、かように思っております。その時期ではないと考えております。
#70
○岡田(春)委員 やる意思はない……。
#71
○小坂国務大臣 はい。
#72
○細迫委員 話はだんだん南へ入って参りますが、外務大臣は九月に韓国に飛んで行かれましたが、その使命なり意味なりがはっきりしない。総理大臣の書信でも持って行かれたのならば、その書信によってはっきりするのではないかと思うのであります。ああいう場合、大体慣例として、総理大臣の書信くらいは持って行かれるのが慣例ではないかと思うのでありますが、書信を持って行かれましたかどうか。韓国の元首に対して持って行かれたかどうか、並びに一体いかなる使命目的をもって行かれたのであるか。もう御表明になっておるかもしれぬと思いますが、私は聞いていないので、もし重複したら恐縮でありますが、一応御答弁を願います。
#73
○小坂国務大臣 私が九月初めに韓国に飛びました趣旨は、韓国とわが国との間は一衣帯水の間柄であります。本来こうした関係にあるということは、はなはだ不幸な関係にあるのでありますから、何とかその感情的にも張り詰めた冷たい関係、これをあたたかい関係に取り戻したい。厚い氷を解かしたいという気持で行ったわけでございます。従って日本政府は新政府ができた機会にわれわれの親善の気持を伝える、こういうことで行ったわけでございます。従いまして、飛行場に着きまして、私はメッセージを出しました。日本政府を代表して外務大臣が来た。そして日本における韓国への親善の気持を韓国政府並びにその国民に伝えるということを申した次第でございます。
#74
○細迫委員 書信は。
#75
○小坂国務大臣 所信というのは、今申し上げたように……。
#76
○細迫委員 総理大臣の書信を持っていかれたかどうか。手紙を……。
#77
○小坂国務大臣 手紙は持たないで参りましたが、外務大臣として参りますことは、一国の政府の代表ということで行ったわけでございますから、口頭でその気持を伝えた次第でございます。
#78
○細迫委員 韓国の国会においては、具体的には九月九日、九月十日に及んでおるのでありますが、韓国の民議院の本会議におきまして、小坂外務大臣の韓国訪問のことが取り上げられまして、いろいろその使命について質問を受けた際、張勉はこれに答弁して、あれは謝罪に来たんだという答弁をしておるのでありますが、一体そういう意味のものがあったかどうか。お言葉によれば、そういうものではなかったようでありますが、一応この韓国民議院における問答と対比いたしまして少しく違うようでありますから、はっきりしていただきたいと思います。
#79
○小坂国務大臣 そういう問答が向こうの民議院であったことについては、私はいさい承知しておりませんけれども、そういうことがかりにあったとすれば非常に違うのであります。私はさような言葉を言う記憶はございませんが、メッセージその他は今手元にありませんから、御必要があれば後ほどお目にかけたいと存じますが、さようなことはございません。ただ、非常に長い間の不幸な関係と、一言にして私は言うのでありますが、そういう関係にありまして、感情的にも冷たい気持になっておったものが、私の訪韓を契機といたしまして、非常にこの関係が変わったということは言えるのではないかと思います。その後にいろいろか人がいろいろな機会に見えまして、とかく最初に来るときまったときには非常に議論があったけれども、今日においてはあれはまさに親善のエポツクを画したものである。その後においての対日感情は非常に好転したということを申して参りまして、大きな意義を先方は認めてくれておるように感じております。
#80
○細迫委員 まあこの問題はデリケートでありますから、これくらいにいたしておきまして、たしか過去において韓国に対し請求権を放棄するということを日本側として言うたことがあると思います。これは一体いわゆる韓国に関するだけのことでありましょうか、あるいは朝鮮全地域にわたっての意味を含んでおるのでありましょうか、御説明をお願いしたいと思います。
#81
○伊關政府委員 韓国だけでございます。北鮮には及んでおりません。
#82
○細迫委員 私らも朝鮮との間に現在のような冷たい風が吹いておるということを非常に嘆かわしく思っております。一日も早くあらゆることが、あたたかく朝鮮海峡に暖流が流れ込むことを希望しておるのでありまして、いろいろな懸案、たとえば李承晩ラインのごとき問題が早く解決せられるということは、切望にたえない気持でおるのであります。しかるに仄聞すれば、そういう目前の現実的問題、いわゆる懸案の解決はたな上げにして、まず国交を回復するということに直進せられる方針で、日韓会談が本会議に切りかえられようという情報を承るのでありますが、真相はいかがでありましょうか、お伺いいたしたいと思います。
#83
○小坂国務大臣 先ほどちょっと申し落としましたが、私が訪韓いたしました際に最後の会見で、外務大臣が自今らは非常にこのたびのおいでをありがたく思って、そして自分らのささやかな気持の現われであるけれどもということで、李承晩ラインを越えたというかどで抑留せられました同胞を、刑期の終えざる者も含めて直ちに釈放いたしますということを誓ってくれたのでございました。そういう点などを見ましても、私は、先方が日韓関係の改善というものに対して、大いに意を用いているという感じを強く受けて現在に至っておるのでございます。
 ただいま御設問の点でございますが、なお詳しくアジア局長等から、会談に出ておりまするので、お話を申し上げた方がいいと思いますが、私は、全体の気持といたしましては、できるだけ早く懸案を全部処理して、国交を回復したいというふうに思っておりますけれでも、何せ先方もなかなか複雑なる事情もございますわけですから、そういう気持もある程度くみながら、会談を円満に、しかも成果を上げるように持って参りたい、こう思っておるだけでございまして、何も非常に大きな懸案をこちらが特に譲歩するという気持を持っておるということではないわけでございます。詳しくはまたアジア局長から申し上げさせたいと思います。
#84
○伊關政府委員 私たちがただいま会談をいたしておりますが、建前といたしましては、あくまでも全部の懸案をこの際解決したいという原則に立っております。ただ見通しといたしまして、非常にむずかしい問題をはらんでおります。この漁業とかあるいは請求権等につきましては、完全な解決というところには至らないということ、これを完全な解決をみますには、相当年月がかかるのじゃないかというふうなことも考えられます。その場合にはこうした漁業とか請求権等につきましては、原則的な了解に達して、細目につきましては、将来の交渉に譲るというふうなことはあり得るかもしらぬという予想はいたしております。要するに問題といたしましては、そういうふうにいたしまして原則をきめて、細目につきましては将来に譲って国交を回復した方が問題の全面的解決を早めるものであるかどうか、あるいはあくまでがんばって、全部の懸案が解決するまで国交が開かぬ、どちらの方がわれわれの所期しておる問題が全部解決するという目的に早く到達するか。交渉がそういう問題の細目につきまして難航いたしました場合は、むしろ国交を回復しますればどんどん日韓の空気はよくなりますから、そうしますとむずかしい点についての解決も早くなるのではないか、こういうふうなところを判断してきめたい、こう思っております。
#85
○細迫委員 情勢の判断、問題の難易の判断などからいたしまして、また根本的には韓国政府のみがあの地域における合法政府であるという国連決議がいつも政府の頭の中にあることがバックをいたしまして、懸案解決はたな上げで国交回復をまずやろうという結果に進んでいきはしないかということが想像せられて、一部私らは不安を感じておるのであります。わが国の目標は朝鮮全土を相手としての親善ということ、これは朝鮮民族が二つに分かれておる悲劇を隣組の者として見ておれないという人道的な問題もありますが、利害関係から申しましても、私どもは一日も早く朝鮮が統一せられ、それと親善関係が結ばれるようにということが方針の大本でなくてはならぬというふうに考えます。でありますから、あくまで日韓会談が南北統一のじゃまになるような種をまいてはならない、かように考えております。もちろん朝鮮国内のことはあの朝鮮民族のみならず決定することでありますから、われわれ干渉する限りのものではありませんが、念願としては持つことが当然だと思うのです。その考慮を払わなくてはならぬと思うのでありますが、そういうお考えを交渉の過程において頭のすみっこには持っておられるかどうか、これを一つお聞きしたいと思います。
#86
○小坂国務大臣 最も近い隣国である韓国とわが国との間に今までのような関係が存在してそれでいいということにはならぬと私ども考えております。そこで今会談を実はやっておるわけでありますが、この点については細迫委員においてもお認めをいただいておることだと思うのであります。そこで先ほど申し上げましたように、われわれは国連の決議に従いまして選挙をやった合法政府、これは大韓民国の政府である、こういうことの認識のもとにおきまして交渉しておるのでありますが、その事実上の支配権は三十八度線以北に及んでいない。その三十八度線以北におきましてはその地域を支配するオーソリティがあるということを頭に入れて交渉をしておるのでございまして、われわれはもとより、韓国、北鮮ともに統一的な選挙を行ないまして一つの国として統一せられることは、これはもう朝鮮民族自身においてもそう思われるでありましょうし、私どももさような考えを持っておるのであります。しかし現状においてそれだからといっていいという問題ではない、こういうふうに思っておるわけであります。
#87
○細迫委員 ぜひそういうお心がまえがあってほしいと思います。のみならず李承晩ラインなるものが不法なものであるという態度を従来政府もとっておられた。また竹島が韓国によって占領せられておることが不法なものであるという態度も従来政府がとっておられた態度であると思うのです。その態度は依然として池田内閣においても持続せられておることはもちろんであると解釈をいたしておるのであります。さようなほとんど基本的な重大な国権に対する侵害が行われておるということ、それをのみ込んだ形において一体国交回復ということがどういうことに相なるか、私はまことに不安であります。これはあるいは悪く解釈しますれば、そういう不法を容認したというようなことになりはしないか、そういうところまで私は不安を持つのであります。この点に対するお考えを承りたいと思います。
#88
○小坂国務大臣 いわゆる李承晩ライン並びに竹島に関する領土権の主張、この点につきましてわれわれは少しも前内閣当時の考えと変わっておりません。とにかくこの主張は非常に強いわれわれの主張であるのであります。そういう主張を一方において変わらず持っておるけれども、しかも韓国との関係はよくしたい。しかも先方の政府においては、李承晩政権と違った、合理的にものを解決し、しかも親日的な態度で臨んでいこう、こういう今までと変わった考え方を持っておるのでありますから、われわれもそうした気持をかき立てるといいますか、そういう気持になった機会に、日韓親善を進め、国交回復をしたいということで、まずもって私がソウルを訪問したようなわけでございます。その結果今会談が進行中でございますが、いろいろ経緯はございましょうが、われわれとしては今の細迫委員の御懸念のようなことはないようにいたしたいというふうに考えて交渉しておることを御了解願っておきたいと思います。
#89
○細迫委員 会談の内容にはもちろん国籍問題があることはほとんど公然の事実でありますが、これに対する基本的なお考えとして、わが方の主張と言いましょうか、どういう態度でやっておられるか。たとえば非常に懸念せられることは、韓国と国交回復ができましたならば、在日朝鮮人の国籍がすべて韓国籍になるものだという解釈もあるいは成り立たないとも限りません。そういう扱いからいたしまして、たとえば具体的な問題としましては、北朝鮮への帰還問題がそれで打ち切られるというような効果もそこから出ないとも限らないし、交渉する内容についてどういう押し問答があったかというようなことは、交渉過程でありますから、ここでお聞きするのはやぼだと思いますので聞きませんが、わが方の態度、わが方の原案としてはどういうお考えを持っておられるか、この一点だけはお聞きしておきたいと思います。
#90
○伊關政府委員 北鮮帰還に在日韓国人の法的地位並びに処遇問題が直接に影響するということは全然ございません。ただ永住権をもらいますと、要するに日本におる朝鮮人の地位が安定いたしますので、その結果としまして間接に北鮮に帰る人が減るということはあるいはあるかもしれませんが、直接には何らの関連がございません。それからまた日本におります者を全部韓国人として無理やりに取り扱うというふうな事態にはならないと私は思います。この点はまだ細目について打ち合わせておりません。やはり韓国人として取り扱う者は韓国ミッションの証明を持っておる者、韓国ミッションに登録した者というふうなことになるのではないか。これはまだ詰めておりませんが、大体の考え方はそういうふうに思っております。
#91
○細迫委員 国籍を選ぶことの自由と申しますか、自由と言っては少し語弊がありますが、いずれの国籍に属するかということは人権問題でもあります。国際慣例からいいましても、あるいは国連憲章からいいましても、本人の希望に反する処置をとるには重大な法的基礎が要ると思います。いやしくも御承知のような情勢のもとにおきまして、本人の希望に反する強制的な国籍に関する処置が行なわれないようにということを念頭に置いてやっていただかなければならない、かように要望いたしまして質問を終わることにいたします。
     ――――◇―――――
#92
○堀内委員長 次に閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。
 本委員会といたしましては、今国会が閉会中になりましても国際情勢に関する件について審査をいたしたいと存じますので、この旨を議長に申し入れたいと存じますが、御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#93
○堀内委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午前十一時五十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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