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1960/10/21 第36回国会 参議院 参議院会議録情報 第036回国会 本会議 第3号
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1960/10/21 第36回国会 参議院

参議院会議録情報 第036回国会 本会議 第3号

#1
第036回国会 本会議 第3号
昭和三十五年十月二十一日(金曜日)
   午後一時十六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第三号
  昭和三十五年十月二十一日
   午後一時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件。
 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、迫水国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。池田内閣総理大臣。
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(池田勇人君) さきに、私は、国会の指名によりまして、内閣総理大臣の重責をになうことになりました。私心を去り、ただひたすらに謙恭と誠実を旨とし、全力を傾けて、私に与えられた職責を全ういたしたい決意であります。よろしく御支援のほどお願いいたします。
 本月十二日、淺沼稻次郎君が、不慮の災厄に遭遇し、逝去されました。まことに哀惜痛恨にたえないところであります。申すまでもなく、暴力は民主政治に対する公然の敵であります。それは、左右を問わず、個人、集団の別なく、断じて排除しなければならないものであります。(拍手)私は、治安の確立こそ、あらゆる政策に先行する大切な要件であり、それがまた政治の指導と運営の根本でなければならないと存じます。そのためには、まず、国会を頂点とする政治と行政の運営が秩序正しく行なわれ、争いを話し合いによって解決する慣行が国民生活の全分野において確立されるよう、忍耐強く努力しなければならないものと信じます。同時に、暴力をわが国の社会から一掃しようとする全国民の不退転の決意が高揚せられ、国会と政府と各政党が、新たなる決意のもとに、あらゆる暴力の温床の除去に努める必要を痛感するものであります。政府といたしましては、国民と協力しつつ、社会秩序の維持に真剣に対処する決意であります。
 就任以来、私は、わが国の一部に見られた異常な社会的緊張を緩和し、人心と社会秩序の平穏を取り戻すことに心を砕いて参りました。そのために、私は、何よりも私自身を初め政府みずからの姿勢を正すべく、政府各省各庁に官紀の維持と振粛を求め、筋道を通した行政運営の確立を期して参ったのであります。また、政治の運営にあたり、対立する利害と見解の存する場合には、各政党間はもとより、各当事者の間においても、闘争によることなく、相互の寛容と理解にささえられた話し合いによって事案の調和と解決をはかるよう強調して参りました。三井三池の長期にわたる深刻な闘争が、第三者の賢明なあっせんを中心とする労使のしんぼう強い話し合いにより、ともかくも平和のうちに解決点を見出し得たことは、そういう意味においてわれわれの勇気を鼓舞するに足るものでありました。
 現在わが国においては諸制度の改正をめぐって各種の論議があり、憲法については現行制度を維持すべきか改正すべきかの論争が展開されております。このような論争は、本来、問題の本質が国民各層の間で十分論議せられ、相当の年月を経て国民世論が自然に一つの方向に向かって成熟した際に、初めて結論を下すべきものと考えます。
 私は、外交と内政は本来一体不離のものであると信じます。国内の人心が平静を保ち、社会秩序が平穏に維持されることは、わが国の経済の繁栄と文化の向上の前提であり、わが国の国際的信用の向上と外交上の発言力を強めるゆえんであると存じます。
 御承知のごとく、本年五月に予定されておりました巨頭会談の決裂以来、世界は再び東西冷戦の状態に逆戻りしたかの観を呈し、現下の国際情勢は、全世界の期待にもかかわらず、国際緊張の緩和が決して容易でないことを示しております。加うるに、コンゴーその他アフリカの新興諸国をめぐって東西両陣営の角逐が熾烈化し、今次国連総会は両陣営の対立の場と化した観があるのであります。このことは残念なことでございまして、国連自体にとりましても重大な試練でありましょう。最近、国連の権威について不信の念が表明されましたことは、私の遺憾とするところであります。私は、国際連合にあくまで信依し、その権威が加わり、その本来の機能がますます発揮されることを念願しつつ、建設的かつ実際的立場から、これを支持し協力を続けて参る所存であります。
 昨今、アフリカその他において多数の国家が新たに独立を宜し、国連に加盟いたしましたことは、世界の平和と人類の進歩のために、まことに慶賀すべきところであります。これら新興国の国連における活動、なおまた、過般東京において開かれました列国議会同盟会議におけるこれら諸国の動向を見るとき、これらの国々が一致して米ソの対立の緩和と世界平和の実現を望みつつあることは十分理解し得るところであります。もとより、今日の国際情勢の不安定は、そのよって来たるところ深く、単なる願望や言葉をもってしては解決し得ざるところではありますが、これらの新興国がその独立の実をあげるために世界平和を願うその熱意に対しては、共感と支持を惜しまないものであります。わが国といたしましては、これら諸国が今後その政治的・経済的・社会的基盤を固め、国際社会の責任ある一員としての役割を果たし得るよう十分協力いたして参りたいと思います。
 現内閣成立以来、政府は引き続き日米関係の改善に意を用い、まず米国に小坂外務大臣を派遣して今後に処するわが政府の所信と決意を説明せしめ、十分な意思の疎通をはかった次第であります。また、先般発表されましたアイゼンハワー米国大統領と私との間の往復書簡におきましても、日米両国の提携関係が共通の利害と相互の信頼の確固たる基礎の上に築かれ、将来ますます強固となるべきことが確認されたのであります。なお、今回の皇太子殿下、同妃殿下の御訪米に際し、米国朝野から示されましたあたたかい歓迎は、今日、日米両国民の間に存する親近感を端的に象徴するものであります。私は、国民を代表して、この機会に衷心から謝意を表明いたしますとともに、この日米両国の友好関係がますます深められますことをかたく信じて疑わないものであります。
 現在の国際情勢下においてわが国が平和外交を推進いたしますためには、たとえ政治理念や社会体制を異にする諸国とも平和裏に共存していかなければなりません。政府といたしましては、自由民主主義国としてのわが国の基本的立場を堅持することは言うまでもありませんが、平和外交の本旨にのっとり、共産主義諸国に対しても、あとう限り友好関係の増進に努める所存であります。中国大陸との関係につきましては、相互の立場を尊重し、内政不干渉の原則に基づいて漸次これを改善していくことが望ましいと考えます。特に従来中絶状態にありました日中貿易に再開の機運が生じましたことは、もとより私の歓迎いたすところであります。
 韓国との関係につきましては、本年八月、韓国に新政府が成立し、日韓関係の調整について韓国側の積極的な意向が表明されました。政府は、この機会をとらえて、日韓関係の改善に積極的に対処することとし、九月六日、小坂外務大臣を韓国に派遣して新政府樹立に対する日本政府並びに国民の慶祝の意を伝えしめたのであります。その結果、日韓全面会談の予備会談を十月下旬から東京において開くことについても意見の一致を見た次第であります。
 いわゆる低開発地域の経済的安定が、これらの地域の健全な政治的・社会的成長のため、ひいては世界平和のために不可欠であることが痛感され、この地域に対する経済的・技術的援助がきわめて重要な問題となってきております。わが国といたしましては、すでに各種の国際機関を通ずる経済技術援助にできるだけ参加協力しておりますが、今後一そうその努力を続けて参るつもりであります。なお、先般東京で開催された列国議会同盟会議の外交的成果にかんがみ、この種の国際会議等における外交的機会の活用については、特に国民外交の一翼をになうものとして十分留意いたしたいと存じます。
 わが国経済が所期の高度成長を達成するためには、ますます貿易を伸張しなければならないことは申すまでもありません。私は、この貿易の伸張は世界のあらゆる国々に対して行なわれ、均衡のとれた多辺的なものとなることを期待いたしております。さらに、わが国の貿易・為替の自由化は、わが国産業の健全なる発展のためにも、また消費者たる国民の利益のためにも、同時にまた、わが国貿易の伸張のためにも必要であると考えます。相手国にのみ自由化を求め、みずからはこれを回避するような態度は、もはや許されないのでありまして、国民各位の御理解を希望してやみません。
 自衛力の自主的整備充実は独立国としての当然の責務でありますが、これはもとよりわが国の国力と国情に応じたものでなければなりません。わが国が自国の安全保障の基礎を国連と日米安保条約に託しつつ、自衛力の漸増方針をとって参りましたゆえんも、ここにあるのであります。わが国は、今日、世界において相対的に最も少ない国防費をもって、よくその平和と安全を維持し、経済の目ざましい発展を遂げ得たのでありまして、このことは、歴代の保守党政権の外交的成功を裏づけるものであると確信いたします。(拍手)しかるに、わが国の一部には、中立主義がわが国の安全を保障するに足る有効な手段であると主張する風潮が見られるのであります。この種の主張は、第一に、まずわが国をめぐる国際的環境に対する具体的検討を怠り、第二に、わが国の国力が東西間の力の均衡に多大の影響力を持つ事実を看過し、第三に、経済の高度化とその繁栄が自由国家群との協調を第一義的な基盤とするわが国の立場に対する洞察力を欠いた、一種の幻想であるととか思われません。(拍手)これ、われわれが断じて中立主義をとらざるゆえんであります。私はわが国の安全と繁栄を現実に即して保障すると同時に、世界の平和の維持に貢献するため、現行安保体制を堅持しつつ、変転する国際情勢に対処して参る所存であります。
 文教の刷新充実と科学技術の振興は、民主政治の確立、新しい時代の繁栄、国民福祉の向上充実に不可欠の前提であります。文教政策の基本は、わが民族と国土と文化を愛し、高い人格と良識を持ち、国際的にも信頼と尊敬を受け得る国民を育成することにあります。わけても、青少年がその持てる能力を十分に発揮し、国家社会の建設に自主的にその情熱を傾けるようにすることにあります。そのため、歴代の政府は、戦後の困難な状況のもとにおいても、文教施策の充実に特に意を注いで参りました。政府は、その趣旨に沿って青少年の能力の一そうの開発を助長するため、低所得層の子弟の育英奨学、勤労青少年の教育体制の整備等につき、積極的に施策して参る所存であります。あわせて、スポーツ、芸術、文化の振興を通じて明朗はつらつたる国民生活を招来するため、体育施設、社会教育施設の整備充実に一段と留意いたしたいと存じております。なお、中学校及び高等学校生徒の急増に対する措置は一日もゆるがせにできないものがありますので、中学校につきましては本年度から思い切った措置をとり、三十六年度中にその完了をはかるべく、所要の準備を進めております。
 科学技術教育はこれを特に重視し、公立、私立の区別を問わず、その充実には特段の努力を傾ける決意であります。とりわけ、経済の成長政策に不可欠の前提である技術者、技能者の養成につき、大学理工科系の拡充整備、工業高等学校の増設を年次計画的に実施いたしたいと存じます。科学技術研究の領域においては、これまでの諸先進国の研究に依存する安易な行き方を是正して参ることが眼目でなければなりません。そのため、わが国独自の技術の創造開発に努めるとともに易の自由化と所得倍増政策に伴う産業構造の高度化に備えるためにも、科学技術会議の答申を基礎として、科学技術振興の施策を実現して参りたいと思います。
 わが国経済は、ここ数年来著しい成長を遂げました。特に昨年度は一七%という目ざましい拡大を示し、今年度に入ってからも、おおむね順調に推移し、予想以上の拡大が期待されております。このような過去の実績から見ましても、わが国経済は強い成長力を持ち、今や歴史的な発展期にあると認められます。そこで政府は、今後十年以内に国民所得を二倍以上にすることを目標とし、この長期経済展望のもとに、さしあたり来年度以降三年間につき、年平均九%の成長を期待しつつ、これを根幹として政府の財政経済政策の総合的な展開を考えているのであります。経済が国際的にも国内的にも均衡を維持しつつ、このような高度の成長を遂げることは、もとより国民の自由な創意とたくましい活動力によるものであります。私がかかる経済成長を無理に国民に押しつけようとしているわけでは決してないのであります。
 わが国民は、過去十年間において変動する国際経済にさおさしつつ、年平均九%以上のインフレなき経済成長を遂げて参りました。私は、政府の施策よろしきを得るならば、今後もそれらに劣らない成長を生み出すに違いないし、その成長をささえる条件にも恵まれていることを確信するものであります。この経済の成長は、旺盛な設備投資による企業の合理化、近代化を通じて、生産の順調な増加をもたらしますので、物価の騰貴、通貨不安等のインフレ的現象が生起する心配はないのであります。世界においてわが国の物価が一番高い安定度を示し、輸出の増進と国民の実質所得の着実な向上を示していることは、このことを物語るものであります。近ごろ一部の小売物価の値上がりを見ましたが、その原因は必ずしも一律ではありません。政府としては、それぞれの原因に応じて、独禁法の運用、供給、流通、輸送等の円滑をはかるなど適切な措置によって、不当な小売物価の上昇を押えるために格段の努力を傾ける決意であります。
 経済の成長と国際収支の関係は、わが国にとっては特に重要な関心事であります。わが国経済の輸出競争力から見ましても、輸入依存度から見ましても、さしむき九%程度の成長率では国際収支に赤字をもたらすおそれはないと信じております。
 経済の成長と関連して、業種間または地域間における所得格差の問題につきましては、私は、むしろ、経済の成長こそ、その縮小を可能にするものであると確信いたしております。中小企業に対する設備の近代化、金融措置の拡充や、減税措置は、後に述べる農業基本政策とともに、所得格差の解消を大きく前進させるものであります。工場の地方分散等による地方における産業開発の促進、これに即応する工業立地計画、その他雇用促進策の実施によって地域的所得格差の解消を期待いたしまするが、これらはいずれも経済の十分な成長によってのみ可能となるものであります。
 しかして経済の成長は国民自身の努力によって実現するものであり、政府の任務は、かかる成長実現への努力を円滑に働かすことのできる環境と条件を整備することにあると信ずるのであります。このために、政府は、技術者、技能者の養成、道路、港湾の画期的整備、鉄道その他の輸送力の増強、通信施設の整備、土地、住宅、用水の確保に努める決意であります。また、教育や社会保障の拡充、農業や中小企業の近代化、公共投資、減税その他一連の政策は、それぞれ内需の喚起を通して高水準の成長確保の大きい柱となることを期待しておるのであります。
 わが国には優秀な質に恵まれた豊かな労働人口があります。ここに現在のわが国経済成長の原動力があるのであります。国民の所得の増加、生活の向上充実は、働く意思と能力を持ったこの多数の国民のすべてがそれぞれりっぱな職場につき、その能力を存分に発揮するところから生まれるのであります。単に消極的な失業対策にとどまらず、労働の流動性を高め、経済の成長によって新しい、よりよい職場を作り出し、もって雇用の高度化をはかることが、今日の経済政策の眼目でなければならないと信ずるのであります。
 農林漁業は、本来、わが国の物心両面における安定に大きい貢献をもたらし、政治、経済、文化等、各分野にわたる人材の大きい供給源としての歴史的役割を果たして参りました。一面、工業等の第二次産業、商業等の第三次産業の現状から、農林漁業人口の吸収が思うにまかせなかったため、その経営の近代化がはばまれ、その経済は非常に不満足な状態にとどまらざるを得なかったのであります。かかる経営の立ちおくれは、農林漁業と他産業との所得格差を拡大し、第二次及び第三次産業部門の発展に対するブレーキともなり、日本経済全体の均衡のとれた成長発展をはばむ要素であったのであります。いつの日か、何人かが、この問題の解決にメスを入れなければならなくなっていたのであります。すでに前内閣においては、農林漁業の振興途上に横たわる基本問題に関する大規模な検討調査に乗り出したのでありまするが、さらにわれわれは、所得倍増計画の推進に関連して、農林漁業の停滞を打開するに足る明るいフロンティアが開かれてきたことに着目するに至ったのであります。近時の農村の変貌がすでに事実をもってその動向を示しておりますことは、御承知の通りであります。
 政府は、この動向に即応して、一方においては十分にその力を発揮する機会を持たない農林漁業の就業人口が、自発的に喜んで移行する職場を第二次ないし第三次産業の面に作り出すと同時に、農林漁業自体が経済的規模と近代的施設に恵まれ、その所得を他の産業に劣らない水準にまで引き上げるよう、積極的施策を推進する段階にきたことを率直にわれわれは認めておるのであります。すなわち、わが国の農林漁業を他の産業と均衡のとれるよう成長発展せしめ、さらに国際的水準に位する近代的産業として育成助長し、その地位の安定と向上をはかることを経済成長政策の一大眼目と心得、画期的施策を行なう決意であるのであります。(拍手)
 わが国の社会保障制度は、国民の理解と協力によって逐年たくましい前進を示しました。待望の国民皆保険もいよいよその完成を目前に控えており、国民年金制度の発足をも見るに至りましたことは、まことに御同慶にたえないところであります。しかし、現行の制度を精細に吟味すると、なお相当の改善充実をはからなければならないところも決して少なしとしないのであります。経済の成長途上において国民の一部が依然日の当たらない谷間に取り残されることのないよう、政府としては周到な努力を惜しまないつもりであります。そこで当面、低所得層の生活水準の引き上げ、住宅の確保、子弟に対する教育機会の賦与等に特段の配慮を加えるとともに、結核、精神病等、長期にわたる療養を必要とする向きに対する国庫負担の増額をはかり、あわせて社会保障制度の根幹である国民年金につき改善すべき点は早急に改善していくつもりであります。その他、社会保険制度の充実、環境衛生施設の整備と相待って、社会保障はなお一段と進めたい所存でございます。
 社会保障の充実には、もとより巨大な公的財源を必要といたしまするが、その財源は経済の成長を通じて確保されます。他面、経済の成長は、社会保障の充実、公共投資や減税政策の推進によるところが大きいのであります。この三者に対しましては、私は、いずれを重しとし、いずれを軽しとする議論にはくみせず、全体の施策の調和ある展開を期している次第であります。
 政府は、さきに示された一般職公務員の給与に関する人事院の勧告を尊重して、これを本年十月一日より実施することにいたしました。この勧告の対象となっていない特別職、地方公務員等に対しましても、同様の趣旨に沿って措置する所存で、当面緊急を要する災害対策並びに学校急増対策とあわせて、所要の予算補正の準備を進めさせております。私は、この際、公務員諸君が、よく綱紀の維持に努め、公費の節約、事務の簡素化、能率の向上に意を用い、広く国民の声に耳を傾け、真に国民の奉仕者としての職責を全うされますよう希望してやみません。
 以上、新政策の基本方針を申し述べました。私は、民主政治のルールに従い、選挙の公明が保証され、政治が秩序正しく運営されて、社会秩序が平穏に維持され、政治に対する内外の信用を高めて参ることを施策の根本と考えております。さらに進んで、優秀な資質に恵まれた国民のエネルギーをたくましい経済の成長に動員し、完全雇用と福祉国家の建設に向かって、国民諸君とともに力強い前進をはかることを念願としておるものであります。
 ここに所信の一端を述べ、国民諸君の一段の理解と協力を切望してやみません。(拍手)
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#5
○議長(松野鶴平君) 小坂外務大臣。
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(小坂善太郎君) 第三十六回臨時国会の開会に際しまして、外交方針に関する政府の所信を明らかにいたします。
 私は、今回コンゴー問題に関する国連緊急特別総会及び第十五回国連通常総会に出席いたしまして、わが国の国連外交に関する基本方針について所信を明らかにいたしまするとともに、多くの国々の代表とも会談いたし、短時日ではありまするが、国連の実際の動きを体験いたしました。
 この体験から得ました私の結論は、アフリカの多数の新独立国の加盟を契機といたしまして、国連が今や重要なる時期に際会しているということであります。そもそも、これら新加盟国を含みまして、発展途上にありまする諸国の真の願望は、東西両陣営の対立関係にわずらわされることなく、自由と平和のうちにその独立の実をあげ、もって国民生活の繁栄と幸福を期することにあると信ずるものでありまするが、これらの諸国は、このような民族的願望の達成にあたって、国連の役割に期待するところきわめて大であると考えるのであります。従いまして、すべての国連加盟国は、国連が世界の平和維持の機構としてますますその権威を高め、かつ、その機能を強化して、国連本来の使命を達成し得るよう着実かつ建設的な支持と協力を与えなければならないのであります。私は、今次国連総会におきまして、わが国がこのような考えで国連の事業に参加するものであることを明らかにいたしまして、その立場から、アフリカ問題、国際緊張緩和の問題、軍縮問題、特に核実験中止問題及び大気圏外の平和利用等についての所信を述べたのであります。特に、緊張緩和につきましては、今次総会が非難と宣伝の場に堕することなく、建設的な討議の場として役立ち、それによって東西交渉のために友好的な雰囲気を醸成すべきことを強調いたしたのであります。
 しかるに、今次国連総会におきましては、東西巨頭会談の流会後、再び激化いたしました東西対立の情勢を反映いたしまして、新加盟国をめぐって、自己の勢力の拡張をはかるために、本来国連が国際的な協調の場であるにもかかわりませず、扇動と非難の舞台と化するがごとき、国連憲章の精神に沿わざる言動の見られましたことは、まことに遺憾とするところであります。
 過去におきましても、国連は幾多の試練に際会いたしましたが、そのつど世界の公正な世論の支持のもとにこの試練に耐え抜いて、着実な発展を続けて参ったのであります。私は、今次国連総会における表面的な動きにもかかわりませず、結局は健全なる良識が矯激な言動を押え、国連が平和維持機構として、より有効な、より大きな役割を果たし得るようになることを期待いたしておるものでございます。わが国といたしましては、このため、国連の政治、経済、社会の各分野におきまする具体的な活動に対しまして、人と資金を通じ、応分な、かつ、実質的な寄与を行なって参る所存でございます。これはまた、すべての国連加盟国が平和のために当然負うべき義務であると信ずるのであります。
 私は、国連総会出席の機会に、ワシントン及びオタワを訪れまして、アメリカ及びカナダの両国の首脳と親しく会談をいたしました。これらの会談におきましては、世界の情勢その他共通の関心事項について忌憚のない意見の交換を行ない、今後の外交施策上まことに有益であったのであります。特に、ハーター国務長官との会談におきましては、わが政府の今後に処する所信と決意とを披瀝いたしましてわが国に対する理解の増進と信用の回復に貢献し得たと考えております。
 政府といたしましては、今後、安全保障の分野においてのみならず、その基礎をなす政治、経済、文化、科学等、あらゆる分野におきまして、日米両国の協力関係をますます緊密ならしめて参る所存であります。
 さらに、主要西欧諸国との関係におきましても、政治的信条を同じうする自由主義陣営の一員といたしまして、わが国とこれら諸国との友好協力関係の促進をはかるべきことは言うまでもありません。特に、近年西欧諸国が相互の緊密な協力のもとに、世界政治上きわめて重要な役割を果たしておりますことは、皆様御承知の通りでありますが、わが国といたしましては、これら諸国との提携をますます強化いたしまして、政治、経済、文化の面におきまして緊密な協力を進め、相ともに世界の平和と繁栄のために努力して参りたい所存であります。しかして、その意味におきましても、かねてからの懸案でありましたイギリスのわが国に対する戦前請求権の問題が今般無事円満なる解決を見るに至りましたことは、今後の日英友好関係の促進上きわめて意義の深いものであると存ずるのであります。
 戦後、わが国は、わが憲法の理念にのっとりまして、政治信条を同じうする自由国家群と緊密に協力しつつ、わが国の平和と安全を確保し、経済の飛躍的発展と一般国民の福祉の向上に大きな成果をおさめて参ったのであります。このような成果は、自由世界の一員といたしましてのわが国の基本的な立場に負うところがきわめて大きいのであります。最近、わが国の一部におきましては、東西冷戦から逃避し、両陣営のいずれにもくみしないという、いわゆる中立政策論や、わが国を非武装化して永久中立の立場をとるべし等の論が行なわれているのであります。このような議論も、同じく平和を希求する気持から出ているものが多いとは思われるのでありまするが、遺憾ながら、これらの主張は、東西両陣営の対立関係を如実に反映し、政治的にも軍事的にもまことに不安定な極東に位するわが国の国際環境からいたしまして、わが国には中立維持の基礎条件が存しないという客観的事実に対する認識を欠くものと存ずるのであります。また同時に、わが国の平和と安全と繁栄を可能ならしめている基盤をくつがえすおそれがあるものと存ずるのであります。特に、狭い国土に九千万人の人口を擁しつつ、高度の、経済的な、また文化的な水準を維持し、さらに、これを向上せしめていかなければならないわが国にとりましては、自由世界との緊密な協力こそが絶対に必要なのであります。最近わが国に対しまして、国外からも中立政策をとるよう執拗な圧迫が加えられておりまするが、これらの動きが最も警戒すべきものであることは、過去におきまして、中立条約が方的に破棄されたにがい経験や、あるいは共産主義陣営内におきまして中立主義が全く認められていないという事実からしても明白なことであると思うのであります。(拍手)
 しかしながら、このような自由主義国家としてのわが国の基本的な立場は、わが国と政治的な理念や社会的な体制を異にする諸国との友好関係を維持し、その増進をはかることと、決して矛盾するものではありません。政府といたしましては、わが国の基本的な立場はあくまでもこれを堅持しつつ、平和外交の本旨にのっとりまして、相互の立場を尊重し、しかも、相互に内政不干渉であるという原則のもとに、今後ともこれらの諸国との間の友好関係の維持増進に努める方針であります。特に中国大陸との関係につきましては、まず貿易その他の交流を通じまして逐次両者の関係が改善されますることは、もとより歓迎するところであります。
 わが国がアジアの一国といたしまして、アジア諸国との友好善隣関係に特に留意いたさねばならないことは申すまでもありません。わが国といたしましては、これらの友邦との協力関係をさらに進め、その信頼をかち得るとともに、民族の繁栄と福祉を求めんとするアジア諸国の正当なる声は、これを広く国際社会に反映せしむるように努力いたしたい所存であります。
 韓国に新政府が成立いたしましたる機会に、私は去る九月六日、韓国を訪問いたしまして、新政府樹立に対する日本国民の慶祝の気持を伝えまするとともに、新政府の指導者と親しく意見の交換をいたしました。また、久しく中絶しておりました日韓全面会談の予備会談を今月末から開くことにつきましても意見の一致をみ、このようにして長い間閉ざされておった日韓友好のとびらが漸次開かれて参りまする機運になって参りましたことは、御同慶の至りであります。日韓両国の懸案解決への道は必ずしもたんたんたるものではないと思いまするが、今回こそは双方が親善と互譲の精神をもって交渉に当たり、すみやかに円満解決に達し得るように強く希望をいたしている次第であります。また、政治問題の解決と並んで、両国の経済交流を促進いたしますることは、両国国民双方にとりまして多くの利益をもたらすものでありまするから、政府といたしましてはこの方面にもできるだけ努力したい所存であります。
 近年、アフリカ諸国が相次いで独立を達成いたしましたが、これら諸国の動向が世界平和の将来に影響するところはきわめて大であります。これらの新興諸国が今後国際社会の責任のある一員として世界の平和と繁栄に貢献するためには、政治的、経済的、社会的にその基盤をすみやかに確立することが必要であります。わが国といたしましては、わが国が近代国家として成長し来たった経験と知識を活用いたしまして、これら諸国に対しましてあとう限りの協力をなすべきものと考えているのであります。
 中南米諸国との関係につきましては、これらの諸国には現在わが同胞及び日系人約五十万人余が在住いたしておりまして、産業の各分野におきまして活発に活動いたし、これら諸国の経済発展に大きな寄与をされておりますることは、すでに御承知の通りであります。政府といたしましては、単に農業関係の労働力を送り出すということではなくして、技術及び経済企業協力と一体となった移住政策を推進いたしまして、これら諸国との政治的経済的関係の緊密化に資したいと考えておるのであります。
 次に経済外交の問題につきまして一言申し上げます。
 わが国の輸出が昨年三十四億六千万ドルに達しまして、前の年に比べまして二割増加し、本年に入りましても上半期の実績は十八億五千万ドルに達しまして、前の年の同じ期に比べまして、やはり二割方増加しており、下半期も同様に順調に推移するものと見込まれておりまして、国民生活の前途はまことに明るいのであります。ただここでわが国の貿易の相手方について検討してみる必要がございます。昨年におきましても、輸出入ともその約三分の一はアメリカ及びカナダとの間のものでありまして、しかも昨年わが国の輸出が一昨年に比して二割方増加いたしましたのも、この両国に対する輸出の伸びに負うところが非常に大きかったのであります。しかしながら、このアメリカ及びカナダの市場に集中して輸出を伸ばしますることは、相手国におきましても輸入制限運動その他望ましくない動きを激化するおそれがあるのでありまするから、今後はこの両国に対しましては特に秩序ある輸出に心がけねばならぬと存じます。
 他方、ヨーロッパの最近の経済発展はまことに目ざましいものがありまして、これに伴いまして、わが国のヨーロッパに対する輸出も、本年上半期におきまして前年に比べまして五・〇%方増加をいたしておりまして、この市場はわが国にとって今後ますます有望になるのではないかと存ぜられるのであります。ただヨーロッパにおきましては、最近共同市場や自由貿易連合といった形で経済統合が非常に進んでおりまするが、わが国といたしましては、これらの経済統合を形成する諸国が域外の第三国に対してもできるだけ自由な貿易政策をとることを強く希望いたしたいのであります。またヨーロッパ諸国とわが国との通商関係は現在必ずしも正常なものとは言いがたいのでありまして、これらの諸国は種々の理由をあげて、わが国からの輸入に対しまして差別的な制限を加えておる実情であります。いわゆるガット三十五条援用の問題も、これらのヨーロッパ諸国の日本に対する差別待遇の一つの現われであります。
 このような情勢にかんがみまして、政府といたしましては、今後このヨーロッパ諸国の経済統合の動きを十分注視するとともに、現実の通商関係の改善のために大いに努力して参りたいと思うのであります。すでに今年七月署名をみましたイギリスとの貿易取りきめにおきましても、わが国に対する差別待遇をできる限り撤廃するように努力いたしたのでありまするが、さらにこれと並行いたしまして、数年来の懸案でありまする日英通商航海条約の締結につきまして目下鋭意努力を進めておるのであります。また最近ベネルックス三国、すなわちベルギー、オランダ、ルクセンブルグとの間に通商協定を締結いたしましたる結果、欧州共同市場を形成しておりますいわゆるインナー・シックスのうち、これらの三国との通商関係も大いに改善されることが期待されるのであります。さらにこれを契機といたしまして、フランスあるいはイタリアとの間の通商関係についても改善をはかりたいと目下鋭意折衝中であります。また、オーストラリアとの通商協定も、過去三カ年の実績はきわめて満足すべきものがあったのでありますが、さらにこれを改定して、でき得れば同国がガット三十五条援用撤回をいたしまするよう、その方向で目下同国政府と交渉中でございます。
 ここで特に申し上げたいのは、わが国がアメリカ、カナダ、オーストラリアやヨーロッパ諸国といった先進国との貿易の拡大をはかりますためには、わが国の側においても自由化を大いに促進する必要があるということであります。さらに、自由化はわが国経済の国際的競争力を強め、また消費者たる国民大衆の利益にもなることを指摘いたしたいのであります。
 次に、わが国の貿易の相手方といたしまして、開発途上にある諸国の占める比重は非常に大きいのでありまして、昨年の実績を見ますると、アジア、アフリカ、中近東及び中南米向けの輸出はわが国の総輸出の半ばを占めておりまして、これらの諸国との経済関係の増進は一日もゆるがせにすることはできないのであります。このためにはまずわが国との通商関係を安定した基礎の上に置くことが何よりも必要でありまして、政府といたしましては、これらの国との通商航海条約の締結に大いに努力して参りたい所存であります。すでに本年八月マラヤとの間に通商航海条約とほぼ同様の内容を持つ通商協定が発効いたしまして、これに伴って同国はわが国に対するガット三十五条の援用を撤回いたしたのであります。また、現に政府はフィリピンとの間に通商航海条約の締結を交渉中であり、さらに近くインドネシアとの間にも通商航海条約締結交渉を開始することに双方の合意をみております。
 しかしながら、これら諸国との経済関係の緊密化をはかりますためには、単に通商関係の改善のみでは足らないのでありまして、どうしてもこれらの国に対して経済的、技術的な援助を行なう必要があるのであります。わが国といたしましては、すでに世界銀行の増資に応じ、さらに国際開発協会いわゆる第二世銀に対しましても近く加入の上、出資を行なう予定でありまする等、国際機関を通ずる経済技術援助につきましてはできる限り協力して参ったのでありますが、さらに二国間の経済技術援助につきましても、総額十億ドルに上る賠償を誠実に実施して相手国の経済開発に協力しており、またコロンボ・プラン等を通ずる技術協力をも行なっております。ただ最近の傾向といたしましては、わが国も加入しております開発援助グループいわゆるDAGやインド及びパキスタン債権国会議におきまする討議等からもうかがえますように、わが国が機械輸出等のために行なっております短期及び中期の輸出信用だけでは、国際収支の慢性的な赤字に悩んでおりますこれらの諸国の経済発展にとりましては十分でないのでありまして今後は、開発途上にある諸国、特に東南アジアの諸国に対する経済協力を推進する見地に立ちまして輸銀資金の積極的な活用や、前国会から御審議を願っております海外経済協力基金の利用等の方法によりまして、できるだけ長期の資金援助をこれらの諸国にも与えるよう努力する必要があると信ずるものであります。また、最近世界の各方面におきまして、技術援助が経済援助の効果的利用に寄与するところきわめて大であるという認識が高まっております。わが国といたしましては、この技術援助の面におきましても今後さらに積極的に貢献して参りたいと思うのであります。この点に関連いたしまして、わが国は、かねてから国連が行なっております開発及び技術援助のための特別基金に対しまして、来年度におきましては画期的に拠出金を増額する所存であります。また、コロンボ・プランの総会が今月末から東京において開催されることはまことに意義深いところでありまして、この機会に、国民各位が経済技術援助につきましてさらにその関心を深められんことを切に希望する次第であります。なお、従来わが国は、開発途上にある諸国に対し、農業技術援助及び医療援助につきましても協力して参りましたが、これについてもさらに協力を進めたいと思う次第であります。
 以上、当面の外交に関しまして政府の所信を述べたのでありまするが、このようなわが国外交の基調にありまするものは、自由と平和のうちに国民生活の繁栄を確保するとともに、世界の平和と人類の福祉に貢献せんとする日本国民の誠実な念願であるのであります。大戦の惨禍を深刻に反省し、原爆を体験した唯一の国民といたしまして、日本国民の平和に対する熱意は世界のいずれの国民にも劣るものではありません。私は、この日本国民の平和に対する念願を常に念頭に置きまして、複雑な国際情勢に対し、誠実にしかも弾力性のある態度をもって対処して参りたいと思うのであります。平和は単なる美名にとどまってはならないのであります。真に日本国民の平和と安全を確保し、一そうの繁栄をはかるためには、現実を無視した空虚な宣伝に惑わされることなく、常に冷厳なる国際情勢の現実に即しまして、地道に、しかも自主的に、平和と繁栄を確保する道を探求していくべきであると考えるのであります。(拍手)
 私は、わが外交の運用にあたりまして、以上のごとき心がまえをもって対処して参りたいと思いまするが、およそ一国の外交が自主的かつ強力に展開されまするためには、国民各位の十分な御理解と積極的な支持が不可欠の要件と思うのであります。国民から遊離いたしました外交からは実効ある外交施策の展開は望むべくもありません。私は、わが国外交の運営にあたりまして、現実の正しい認識の上に立った国民各位の良識を十分に反映して参りたい所存でございます。切に国民各位の御支援を仰ぐ次第であります。(拍手)
#7
○議長(松野鶴平君) 水田大蔵大臣。
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(水田三喜男君) 私は、この機会に、わが国当面の財政経済に関する所信を申し述べたいと存じます。
 わが国経済は、昨年度、目ざましい成長を遂げたのでありますが、本年度に入りましても、依然として順調な拡大傾向を持続しております。すなわち、鉱工業生産は、昨年度の急速な増加のあとを受けまして、本年度も引き続き拡大しており、年度初来八月までの鉱工業生産指数の上昇は七%をこえております。これを年率に換算いたしますと約十七%に及ぶのであります。この生産の拡大は、家計の消費支出の増加、企業の設備投資の増大、輸出の増進等、最終需要の着実な伸張の上に達成せられたのであります。しかも、この間、国際収支の均衡基調は依然として保持され、外貨の準備高は、本年度に入って以来、二億九千七百万ドルの増加を示し、九月末には十六億五千八百万ドルに達しました。また、物価の面におきましても、卸売物価はおおむね安定した動きを示しております。消費者物価につきましては、やや上昇いたしておりますが、騰貴を見ている主要な商品である生鮮食料品の価格の上昇は、季節的、一時的な要因によるところが多かったのでありまして、総体として漸次落ちつきを取り戻しつつあるものと考えられます。
 以上申し述べました通り、安定した基調の上に経済の拡大成長が実現しつつあることは、日本経済の実力が一段と大きくなったことを示すものとして、国民各位とともに心から喜びたいと思います。
 申すまでもなく、経済運営の目標は、雇用の拡大と国民生活の絶えざる向上にあります。この目標を達成して、参りますため、今後も、通貨の安定と国際収支の均衡を確保しながら、高度の成長を実現して参ることが必要であります。政府は、今後十年以内に国民総生産の倍増を期し、当面、来年度以降三カ年におきましては、年平均九%に及ぶ経済成長の実現を目途といたしておりますが、最近におけるわが国経済の著しい発展のあとに徴しましても、今後、財政金融を通ずる適切な施策を進めることによって、その実現は十分期待し得ると考えるのであります。
 私は、このたび、国際通貨基金及び国際復興開発銀行の年次総会に出席し、各国の財政金融関係者と親しく意見を交換する機会を得たのでありますが、これらの人々が、いずれもわが国経済が適切な施策のもとに目ざましい成長と発展を遂げたことに対し、深い敬意と信頼感を持っていることを知り、まことに意を強うしたのであります。今回、ワシントン輸出入銀行に対しまして、中小企業近代化のための機械設備輸入資金の融資を要請いたしたのでありますが、その実情の見通しにも明るいものがありますことは、このような信頼を如実に示すものとして、まことに喜ばしいと存ずるのであります。私は、今後とも財政経済の堅実な運営により、わが国に対する国際的な評価をいよいよ高め、もって国際経済との連携を深め、わが国経済の一そうの伸張をはかりたいと念願いたすものであります。
 次に、当面の財政政策の方向について一言いたしたいと思います。
 幸いにして、今後わが国経済の発展に伴い、相当多額に上る財源の増加を見込み得るものと予想されるのであります。従いまして、今後の財政運営にあたりましては、あくまでその健全性を堅持しつつ、この増加する財源をもって、経済成長の基盤の造成と国民生活の均衡ある向上を積極的にはかって参る所存であります。このため、特に私は、減税、公共投資及び社会保障に重点を置いて必要な諸施策を推進していきたいと考えております。
 まず、減税につきましては、昭和三十六年度において、国税、地方税を合わせ平年度一千億円以上の減税を断行いたす考えであります。私は、経済の発展を推進するものは、本来的には国民の創意工夫と企業の自主的努力を基本とする民間経済のはつらつたる活動にあると信ずるのであります。この意味において、国民の租税負担の軽減合理化をはかり、もって勤労意欲を高め、民間資本の蓄積を進め、国民生活と経済活動に明るい希望を与えることはきわめて重要であります。昭和三十六年度におきましては、まず所得税において、配偶者控除の新設、専従者控除の拡充、給与所得控除の拡張及び税率の緩和等を行なって、勤労者、中小商工業者、農林漁業者等、中小所得者の負担軽減をはかりたいと存じます。また、法人税において、機械設備の耐用年数の短縮、中小法人の留保所得課税の軽減等を行ない、企業資本の充実に努めたい所存であります。なお、国民の待望する所得税の減税につきましては、できる限り早くその期待にこたえるため、明年一月から実施するよう努める考えであります。さらに私は、この際、減税の実施は、経済の成長に伴う租税収入の増加状況と財政需要とを勘案して、昭和三十七年度以降も引き続き行なって参る所存であることを明らかにいたしたいと存じます。
 次に、公共投資についてでありますが、今後、わが国経済が高度の成長を遂げて参りますためには、その基盤たる社会資本の充実をはかることが急務であります。これがため、輸送需要の増加に応ずる道路、港湾及び国鉄への投資、産業活動の拡大に対処する工業。農業用水の確保等、産業基盤の拡充整備に努めますと同時に、住宅、上下水道等、生活環境施設の充実改善、国土保全施設の強化及び農林水産業近代化のための基盤整備を推進いたしたいのであります。
 また、国民生活の安定とその均衡ある向上をはかるためには、本来、経済の成長を通じて、国民所得の増大と国民福祉の向上を実現していくことが基本でありますが、同時に、社会保障の充実をはかることが福祉国家としての当然の責務であります。すなわち、医療保障及び国民年金の充実、生活保護の改善、児童及び母子対策の強化、失業対策の合理化等に努め、この面の施策の充実に特段の配慮をいたしたいと存ずるのであります。
 以上、私は当面の財政政策の方向について申し述べましたが、次に、今後の金融政策について申し述べます。
 経済の安定的な発展をはかるためには、今後とも金融政策の適切な運営に努め、金融の持つ経済調整機能を十分に発揮させることの必要なこととは言うまでもありません。これとともに、今後の金融政策について、私は特に金利問題の重要性を痛感いたすのであります。現在、わが国の金利水準が国際的に見て、なおかなり割高であることは否定できません。今後、経済の一段の拡大を期して参りますためには、わが国企業の国際競争力を高めていくことが重要な条件であります。そのためには、企業みずから積極的にその体質改善に努めなければならないことは申すまでもないのでありますが、同時に、この割高な金利水準を、金融の持つ調整機能を考慮しながら、しかも、あとう限り国際的水準にさや寄せしてゆく努力が肝要であると考えるのであります。一方、わが国の金利高が、基本的には経済の急速な成長に伴い強い資金需要に対し、資本の蓄積がややもすれば追いつかないという事情に基因していることも事実であります。従って、政府といたしましては、今後とも資本蓄積の促進、安定的外資の導入等を通じて資金の供給を円滑にするとともに、金融機関の経営の合理化を推進し、環境の整備をはかって、漸次、金利水準を低下の方向に誘導いたして参りたいと存じます。また、中小企業向け政府関係金融機関の金利につきましては、近い機会にその引き下げを実現いたしたいと考えております。
 最後に、為替政策について一言いたしたいと存じます。
 政府は、本年六月、貿易為替自由化計画大綱を決定し、以来この線に沿って自由化を推進して参りました。貿易為替の自由化が今や世界の大勢であり、同時に、わが国経済が国際競争場裏にあって真の成長を達成していくための不可欠の方向であるごとにつきましては、今さら多言を要しないところであります。今後、私はこの国内経済に及ぼす影響に慎重な配慮を加えながら、引き続き自由化の推進をはかり、また、これと同時に、輸出の増進につきましても特段の努力を払って参りたい所存であります。
 貿易為替の自由化と並んで、最近の国際経済におきまして最も重要な流れの一つは、低開発国に対する開発援助を中心とする国際経済協力の緊密化であります。わが国といたしましても、この流れに沿って施策を進めることが国際社会の一員としての責務であると同時に、また輸出市場の開拓のためにも大きな意義を有することを痛感いたすのであります。政府は、すでに国際開発協会への参加及び海外経済協力基金設置の方針を決定いたしているのでありますが、今後におきましても、国力に応じ、積極的にこの方向に努力して参りたいと存ずる次第であります。
 以上、当面の財政経済に関する所信を申し述べましたが、このような財政経済諸施策を推し進めることによって、わが国経済の絶えざる繁栄と国民生活の着実な向上を期することが私の念願であります。国民各位の深い御理解と御協力を切望してやみません。(拍手)
    ─────────────
#9
○議長(松野鶴平君) 迫水国務大臣。
   〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(迫水久常君) 池田内閣の政策の大綱につきましては、すでに池田総理大臣がお述べになりました。私はこれに関連して、わが国の経済に関する若干の政府の考え方を申し上げまして、国民各位の御理解と御協力を得たいと存じます。
 わが国経済が、ここ数年来、まことに目ざましい成長を遂げて参りまして、昨昭和三十四年度の成長率は一七%にも達し、引き続いて本年においても成長率一〇%をこえる見込みであるほど順調に経済が成長しつつありますことは、すでに御承知の通りでございます。これは、生産が順調に伸びている一面、これに対応する需要の面においても、産業の合理化、近代化のための設備投資が活発に行なわれましたこと、輸出が大いに伸張しましたこと、個人消費支出も個人可処分所得の上昇によって著しく増加いたしましたことによって、生産と需要とが均衡し得たことによるものでございます。その結果、卸売物価は安定し、外貨準備高も今や十六億ドルをこえることになりまして、わが国経済は著しく安定し、充実して参ったのであります。
 このような落ちついた経済の拡大基調は、今後も引き続き維持し得るものと考えられますので、この経済拡大を安定的に確保いたしますため、政府におきましては、国民所得倍増計画と名をつけまして、国民総生産を実質額において倍増するについてとるべきもろもろの方策を策定しつつあるのであります。この計画は、現在、経済審議会におきまして、今後およそ十年間に国民総生産を倍増することを目標といたしまして作成中でありまして、近く答申がある予定になっております。倍増をかりに十年間で達成するといたしますれば、年平均の成長率は七・二%となるのでありますが、最近の経済の推移から見ましてここ当分は相当高い成長を期待し得るものと思われるのであります。従って、政府は、少なくとも昭和三十六年度以降三カ年間においては、平均年九%の経済成長は可能であると考えまして、これを政策実施上の目標とすることにいたしたのであります。
 従来の経済運営の態度を反省してみますと、わが国経済の体質が弱く、底が浅いという面が強調されたあまり、とかく経済の成長を控え目に見て参りました。そのため、勢い財源の見積り等も控え目になりまして、政府の施策もおのずから制約を受けざるを得なかったのであります。これがため、政府の諸施策が、結果から見まして国民経済の現実の動きに必ずしも即応しない面も見受けられたのであります。よって、政府におきましては、民間部門の経済の動きと政府の施策とが歩調の合ったものにするために、実勢と認められる目標を設定することにしたのであります。従って、この九%の成長率を目標として設定しました意味は、池田総理大臣も申されました通り、わが国経済を引っぱって、無理にでもこの程度の成長を遂げしめようという趣旨ではなくて、この程度の成長率を見込むことが、政府の施策と経済の動きとの間に大きな食い違いを生ぜしめないために必要であるということにあるのであります。
 世上、この九%の成長率を見込むことが無理ではないかという議論を往々にして聞くのでありますが、これに対しましては、まず、過去五カ年間の成長率が平均九%以上に達している事実に着目をするとともに、以上述にべるようなわが国経済の根強い成長要因を十分考えてみる必要があると思います。なお、日本社会党及び民主社会党におかれましても、目標を達するための手段は異なるようでありますけれども、ほぼ同程度の成長を見込んでおられるのでありまして、まことに意を強うするものであります。(拍手)
 わが国経済の今後の成長要因を考えるにあたって、まず世界経済の動向を考えてみますと、米国における景気の見通しなどから、世間では、その先行きを心配する見方もあります。しかし米国については、工業生産は停滞しておりますが、これは主として在庫調整に触るものでありまして、最終需要は、個人消費も政府支出も減少することなく、また、財政・金融面からも、てこ入れがなされておりますので、私は、米国景気の先行きについては悲観的な見方をする必要はないと考えておるのであります。また、西ヨーロツパ諸国の経済も、全般的には先行きが悪くなると判断すべき要素は特に認められません。このような実情から、私は、世界経済の先行きについて心配する必要はないと思いますが、たといそのような徴候が現われましても、最近では、各国とも政府、民間を通じて景気の変動を回避し得る体制が漸次整えられつつありますので、世界経済の動向については、総じてこれを不安視する必要はないものと考えております。
 一方、わが国の経済は、ここ数年の成長によりまして、その体質は大いに改善せられ、底は深くなって参りました。これは、国民の勤勉と新しい技術を消化するすぐれた能力がその基本になっておるわけでありますが、企業設備の近代化、合理化がまことに驚異的な速度で進行いたしたことによるのであります。このため、いわゆる生産性の向上は目ざましいものがあるのでありまして、貿易の自由化にも耐え得るよう、国際競争力は逐次強化せられつつあります。この傾向はまず大企業に始まったのでありますが、今後、政府の施策と相待って、中小企業の分野にも浸透いたし、経済の各部門に行きわたることは間違いありません。
 このように、わが国経済の力は、今後の発展に対応し得るよう、生産の面においては質的にも量的にも著しく拡大されつつあるのでありまして、むしろ問題は、これに対応する需要の側にあるのであります。需要の項目は、申すまでもなく、公共投資を中心とする財政支出、民間設備投資、個人消費、輸出などでありますが、その各項目について検討してみたいと思います。
 まず公共投資でありますが、公共投資は、率直に申しまして従来おくれがちでありました。このことは識者の認めるところであり、また、われわれも身近にこれを感じているのでありますが、今後は、公共投資は経済の成長におくれないよう、むしろこれに先行するような心がまえで拡充するようにいたしたいと思うのであります。なお、公共投資は最も必要な部門から重点的に実施し、効率的な運用をはかる必要のあることはもちろんでありますが、その目的は、すべての産業活動の基礎となるべき産業基盤の整備とあわせて、国民生活向上のための生活環境の改善にあるのであります。従って、公共投資が大企業など一部の産業に特に有利になるのではないか見る見解は、全く当を得ておりません。
 次に民間設備投資については、最近における急速な伸び率が、今後においてもそのままの勢いで継続するとは当然考えられませんが、日進月歩する技術の進歩に伴って、今後ともその額は相当な額に達するものと思われます。設備投資は、現在においてもすでに過剰あるいは重複の状態にあって、その傾向は今後一そう増大するのではないかと心配する向きもありますが、私は、わが国の企業家並びに金融当局者は、きわめて高い良識を持っていると信じますがゆえに、シカを追う者山を見ずといった愚かなことは、決してしないことを信ずるのであります。国民所得倍増計画は、この場合の道しるべとしての役目も果たすことと思いますし、国民所得倍増計画策定の意義はこの点にもあるのでございます。
 今後需要の側において最も重視しなければならないものは、総需要の半ば以上を占める個人消費であります。経済の成長に伴いまして雇用は着実に増大し、それによって個人消費が増大することは当然でありますが、同時に、所得倍増の過程におきまして、経済の成長に照応して、賃金、給料等の労働の対価が次第に上昇していくことが予想せられるのであります。このことは、政府としても好ましいことと考えております。しかして今後さらに行なわれるであろうと考えられる減税並びに計画的に拡大せらるべき社会保障も、この個人消費の増加のためにきわめて大きな役割をすることと思います。このような個人消費の着実な伸びは、とりもなおさず国民生活内容が質も量も充実向上することを意味するものでありまして、わが池田内閣が目標としている福祉国家完成の基本的方針にも沿うものであります。
 次に輸出の伸張であります。今後の経済の拡大に伴って、原材料、燃料及び国民生活の向上のための消費物資の輸入が増加することは当然予想されるところであります。従って、これに見合うように輸出をふやしていくことは必要欠くべからざることでありますが、このことは、同時に経済成長のための需要の要因として重要なのであります。
 輸出増進の基本は、もちろんわが国産業の国際競争力の強化にあるのでありますから、各企業が、さきに述べた労働対価の上昇を生産性の向上によって吸収するよう努力することが絶対必要でありますが、輸出品を、付加価値の小さいものから、より大きいものに転換するよう努めることも肝要であります。政府においても、経済外交の推進、低開発国に対する経済協力、金融の円滑化、企業の体質改善等のための租税政策など、各般の適切な措置を講じまして世界の各地域に対して輸出の増進をはかりたいと思います。貿易の自由化も、この意味からぜひ促進しなければならないと考えます。このように、政府と民間が一体となって努力するならば、世界経済の動向の変化に対処しながら、今後引き続き必要な輸出を確保することができると信じます。
 以上述べましたところによって明らかなごとく、将来需要と供給とは十分に均衡を保ち、わが国経済は円滑に成長していくものと考えるのであります。これがためには、もちろん政府の施策のよろしきを得ることが肝要でありますが、以下、今後における経済運営の基本的問題について若干申し上げたいと存じます。
 第一は、産業構造の高度化の推進であります。高度の経済成長を達成するためには、個々の企業の生産性を上げると同時に、産業構造の比重を生産性の低い部門から高い部門に移す必要があります。すなわち、第二次産業及び第三次産業を中心として経済の発展を考えなければならないのであります。中でも重工業及び化学工業を重点とし、ことに、雇用吸収力が高く、付加価値も大きく、将来輸出産業として最も期待される機械工業を重視すべきであると考えております。もちろんこれは、第一次産業を軽視する意味では決してないのでありまして、たとえば農業についても、その所得の向上をはかるため、農業経営の近代化を積極的に推進する必要があるのでありまして、この点については、すでに池田総理大臣からお話があったのであります。
 第二は、全国総合開発の推進であります。わが国において産業の発達が地域によって著しく異なっており、一部の地帯ではすでに工業が飽和状態に達しておりながら、他面、低開発地域も存在することは御承知の通りであります。従って資源、土地、人口、産業関連施設など、産業の基礎条件を考えながら産業の分散をはからなければ、今後の産業の円滑なる発展はとうてい期せられないと思うのであります。よって総合的な観点から全国開発計画の樹立に努め、低開発地域の開発を促進せんとするものであります。
 第三は、所得格差の是正であります。所得格差は、地域間、産業間及び階層間に見られるのでありますが、地域間の所得格差については、ただいま述べました全国総合開発の促進によってこれを縮小しようと思います。産業間の所得格差のおもな問題は、第一次産業と他の産業との間並びに大企業と中小企業との間の問題であります。前者についてはすでに述べましたが、中小企業に対しては、特段にきめこまかく意を用いる方針であります。すなわち、中小企業の協調体制を整え、金融政策並びに財政及び租税上の措置をおもなる手段としてその近代化、合理化を促進し、生産性を向上し、もって中堅産業としてわが国経済の成長の重要な部分を担当せしめんとするものであります。なお、労働条件の改善、社会保障の計画的拡充が、階層間の所得格差の是正に重大なる役割をするものであることをここに申し上げておきたいと思います。
 第四は、科学技術の振興と人的能力の向上であります。わが国産業の生産性向上も、また国際競争力の強化も、結局においては、科学技術の振興と人的能力の向上が最大の要件であることは申すまでもありません。西ドイツにおいては、労働力の不足のために経済の成長が鈍化してきたといわれておりますが、わが国においても、長い間には労働人口の増加が鈍化いたし、その不足が予想せられるとともに、今後における産業高度化の進展を考えますときは、人の質の向上は真剣に考えていかなければなりません。従って技術系統の学校や研究施設の拡充、技能者養成のための画期的な施策を講ぜんとするものであります。
 第五は、消費者の立場に立った行政の推進と物価の安定であります。戦後、わが国経済は、長らく需要が供給を上回る状態にありましたので、経済政策は、供給力を増大することを重点として運営されてきたのでありますが、前に述べました通り、今後は需要の面を重視しなければならないのであります。ことに、その場合、個人消費が重要な項目となるのでありますが、経済成長を円滑に達成し、同時に国民生活の内容充実をはかるためには、消費者の立場に立った行政を推進することの必要性を痛感いたすものでございます。今後の経済は、申さば買手市場でありますから、おのずから消費者の立場は有利になるわけではありますが、消費者の利益の擁護等について一そうの施策を講じなければならないと思います。
 この場合、最も重要な問題は物価であります。現在、経済の高度成長を推進する場合には、物価が上昇するのではないかという心配をされている向きもありますから、少しくこの点について申し述べたいと思います。インフレ的な物価の上昇は、申すまでもなく、需要が供給を超過する場合に起こるのでありますが、現在のわが国経済の実勢から見まして、局部的または一時的の場合を除いて、総体的には、需要が供給を超過する危険はまず全くないと申してよいと思います。従って、インフレ的な物価の上昇は起こり得ないのであります。問題は、局部的または一時的の需給関係の変化に基づく物価の上昇並びに労働対価の上昇を生産性の向上によって補い切れない部門における物価の上昇であります。最近世上関心の的である消費者物価の上昇は、主としてこの種のものでありまして、局部的または一時的要因によるものにつきましては、わが国は相当額の外貨を保有しておりますから、機動的な輸入などによって需要供給の関係の調整をはかることが可能でありまして、現にそのような措置によって大部分解決の方向に向かいつつあるのでございます。また、業者間申し合わせ等によって独占価格的なものが形成されるおそれのあるものにつきましては、独占禁止法などによって厳重に監督いたしておりますし、また、政府が直接関与し得る公共料金については、この際努めて値上がりを抑制する方針であります。なお私は、消費者物価について将来最も重要視すべきは、居住費の関係であると考えますから、この点については十分対策を講ずるようにしたいと思っております。
 概括的に申しますれば、消費者物価は今後若干ずつ上昇する傾向を持つものと思われます。それは、価格構成の内容において労働対価の占める部分が多いものもありますし、また、物資自身の質が高級化したため価格の上昇するものもあるからであります。なお、生活内容の向上に伴って、より高級なものを消費するために家計費が増加したのを、それを消費者としては物価の上昇だと勘違いしている場合もあるように思います。政府としては、今後消費者の立場に立って、消費者物価の動向については、こまかい関心を持って、十分に総合的に対策を講ずる所存であります。総体的に見て、個人の収入の増加は、はるかにより高い割合をもって進行いたしますから、今後国民生活は、実質的に着々充実向上していくものと申して決して過言ではないのであります。
 政府は、以上述べましたところに基づき、今後慎重に経済運営の方策を進めたいと考えております。しかし、経済は生きものでありますので、経済成長の過程において、時々の変動は当然ございましょう。従って、常時経済の動きを見つめながら、景気の変動をできるだけ回避する措置を講じつつ、民間部門の創造能力と活動力が十分発揮されるよう適切な誘導を行ないまして、経済成長の目的を達成したいと思います。私は、将来の国民生活の内容が、衣食住についても、また文化生活についても、いかに充実し、高度化するかということを考えますとき、輝かしい希望の湧くのを禁じ得ません。国民各位におかれても、希望と自信を持って邁進せられんことを切望してやまない次第でございます。(拍手)
#11
○議長(松野鶴平君) ただいまの演説に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
     ―――――・―――――
#13
○議長(松野鶴平君) この際、お諮りいたします。苫米地英俊君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、松村秀逸君から同予備員を、後藤義隆君から裁判官訴追委員をそれぞれ辞任いたしたいとの申し出がござました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#15
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員並びに裁判官訴追委員の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
#17
○田中茂穂君 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員並びに裁判官訴追委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#18
○光村甚助君 私は、ただいまの田中君の動議に賛成いたします。
#19
○議長(松野鶴平君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に井野碩哉君、同予備員に岸田幸雄君、裁判官訴追委員に下村定君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#21
○議長(松野鶴平君) 内閣から、検察官適格審査会委員予備委員大谷藤之助君、畑地農業改良促進対策審議会委員仲原善一君、九州地方開発審議会委員後藤義隆君の辞任に伴う後任者の選出または指名を求めて参りました。
 つきましては、この際、日程に追加してその選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#22
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認きます。
#23
○田中茂穂君 検察官適格審査会委員予備委員その他の各種委員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#24
○光村甚助君 私は、ただいまの田中君の動議に賛成いたします。
#25
○議長(松野鶴平君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、検察官適格審査会委員予備委員に安部清美君、畑地農業改良促進対策審議会委員に堀本宜実君、九州地方開発審議会委員に林田正治君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#27
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(売春対策審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、衆議院議員猪俣浩三君、神近市子君、河野孝子君、田中角榮君、福家俊一君、本島百合子君、山下春江君、本院議員市川房枝君、高野一夫君、藤原道子君、山本杉君を売春対策審議会委員に任命することについて、本院の議決を求めて参りました。これらの諸君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#29
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもってこれらの諸君が売春対策審議会委員につくことができると議決されました。
     ―――――・―――――
#30
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(更生保護事業審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、衆議院議員高橋禎一君を更生保護事業審議会委員に任命することについて本院の議決を求めて参りました。同君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#32
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同君が更生保護事業審議会委員につくことができることと議決されました。
     ―――――・―――――
#33
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(蚕糸業振興審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#34
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、本院議員大河原一次君を蚕糸業振興審議会委員に任命することについて本院の議決を求めて参りました。同君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求ます。
   〔賛成者起立〕
#35
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同君が蚕糸業振興審議会委員につくことができると議決されました。
     ―――――・―――――
#36
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、科学技術会議議員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#37
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、科学技術会議設置法第七条第三項の規定により、梶井剛君を科学技術会議議員に任命したことについて本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#38
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#39
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、公正取引委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第三十条第四項の規定により、石井幸一君を公正取引委員会委員に任命したことについて本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#41
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#42
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、首都圏整備委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#43
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、首都圏整備法第八条第三項の規定により、友末洋治君を首都圏整備委員会委員に任命したことについて本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#44
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#45
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、公安審査委員会委員長及び同委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#46
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、公安審査委員会設置法第五条第三項の規定により、山崎佐君を公安審査委員会委員長に、廣瀬豊作君、正太亮君、山名義鶴君を同委員会委員に任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#47
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#48
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、中央更生保護審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#49
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、犯罪者予防更生法第五条第三項の規定により、巣山末七君を中央更生保護審査会委員に任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#50
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#51
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して社会保険審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#52
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、社会保険審査官及び社会保険審査会法第二十二条第三項の規定により、簗誠君を社会保険審査会委員に任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#53
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#54
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、労働保険審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、労働保険審査官及び労働保険審査会法第二十七条第三項の規定により、大西清治君を労働保険審査会委員に任命したことについて、本院の承認を求めて参りました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#56
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって承認することに決しました。
 次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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