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1960/10/22 第36回国会 参議院 参議院会議録情報 第036回国会 本会議 第4号
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1960/10/22 第36回国会 参議院

参議院会議録情報 第036回国会 本会議 第4号

#1
第036回国会 本会議 第4号
昭和三十五年十月二十二日(土曜日)
   午前十時三十一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四号
  昭和三十五年十月二十二日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際お諮りいたします。本日、大沢雄一君から議員辞職願が提出されました。辞表を参事に朗読させます。
   〔参事朗読〕
    辞職願
              私儀
 一身上の都合により参議院議員を辞職致したく格別の御詮議を以てお許し賜るよう御願ひ申し上げます
  昭和三十五年十月二十二日
       参議院議員
          大沢 雄一
   参議院議長
     松野 鶴平殿
#4
○議長(松野鶴平君) 大沢雄一君の議員辞職を許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#6
○議長(松野鶴平君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第二日)。
 昨日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。栗山良夫君。
   〔栗山良夫君登壇、拍手〕
#7
○栗山良夫君 私はこの際、池田首相初め関係閣僚に対し、日本社会党を代表いたしまして、施政方針、特に政治危機に関し、その所信を伺うものであります。
 顧みまするに、池田内閣は国民の求めた清新な内閣への期待を裏切り、岸亜流政権、岸延長内閣としてスタートしたのであります。でありまするから、池田首相は組閣と同時に国会の解散を行ない、三十五国会でくずれ去った議会の権威を取り戻す仕事から着手すべきでありました。にもかかわらず、首相はその職務を怠り、政治、外交の問題を二の次として、みずから経済政策に重点を置いた新政策なるものを発表し、低姿勢を宣伝しながら池田ブームを作り上げ、長期政権への工作に入ろうといたしておるのであります。このような筋の通らない、国民の目をかすめるような政治は、三十五国会混乱の真の政治責任を不明確としたため、河上丈太郎氏または岸信介氏に加えられたテロ行為に対しましても、深い反省と、そして適切な措置を講ずる機会を失わしめたのであります。そしてついに去る十月十二日には、社会党委員長淺沼稻次郎氏が凶刃に倒されるという、未曾有の不祥事件を惹起したのであります。公の団体の主催する三党首立会演説会で、政治の最高責任者である池田首相が至近の距離に控え、ラジオ、テレビを通じて全国民の注視の中で政策の発表の中途において暴漢に刺殺されるなどということは、想像を絶する痛恨事であります。映画や芝居ならいざ知らず、淺沼委員長刺殺の、あの身の毛もよだつような場面が写真にとられ、またテレビで実況放送されるなどということは、近代社会においてあり得べからざることであります。事実、世界において例のないことであります。まさに主権在民の民主政治はおそるべき最大の危機に陥れられたのであります。このことは、国内のみでなく、海外に与えたショックもまた想像を絶するものがあります。日本の軍国主義の復活のきざしではないのかとして国際信用の失墜は、はかり知れないものがあります。
 この日本政治の重大関頭に立って、池田首相の今とらるべき道は、あらゆるものに優先して、この救いがたい日本の民主主義を、憲法の定めるところに従って直ちに軌道に乗せること、ただこれのみであります。(拍手)民主政治の確立なくしては、外交を論じ、経済を説いても、およそナンセンスであります。デモや請願行動は、憲法が保障している国民の権利でありまして、このデモという示威圧力と、個人の生命をねらうテロ行為とを、左右の暴力という一語で相殺しようという言動ぐらい、民主主義を理解しないものはありません。(拍手)デモに若干の行き過ぎがあったとしても、テロとは全くその次元を異にするのであります。事態は遷延を許しません。テロを根絶し、民主主義を守るため、池田首相の不退転の決意と、すみやかなる行動を要請するものであります。首相とし、人間池田とし、淺沼刺殺現場の目撃者である池田首相は、いかなるショックを受け、何を直感されたか。あらゆる利害を越えて、安保国会以来、首相のとられた政治行動を内省しながら、その心境を本議場を通じて全国民に明らかにせられたいのであります。
 第二に、一切のテロ行為の絶滅を期し、治安の確保のための有効適切な措置を講ずるには、まずもって、事件の全貌、その背後関係を余すところなく明らかにすることでなければなりません。世論は、今回の事件を十七才の少年の単なる偏狭な時局感より起こった偶発事件ではないといたしております。有識者、報道機関、世論は、今春以来のテロ行為と合わせて、具体的な事実をあげて、その行為が組織的であり、保守党にも深い関係の疑いのあることを指摘しておるのであります。たとえば、十月二十一日付日本観光新聞は、「最近の右翼の動きと、その資金源を、当局のメモから探ってみた」として、その資料の根拠を示しながら、これを詳細に報道しておるのであります。他の記事をも参照しながら、おもなるものをあげますると、一、大日本愛国党を本年五月脱党し、全アジア反共青年連盟を結成した吉村氏は、七月あたりから、かなりの資金を集めており、そのとき、「近く大きな政治力の仕事をする」と漏らしていたということ。二、十月十日、赤尾氏等、大日本愛国党員が東京都選挙管理委員会に来て、「選管がわれわれを除外して三党だけの演説会を開くのはけしからん。淺沼は赤じゃないか。実力で阻止してみせる」とすごんで帰っておるということ。三、淺沼委員長暗殺事件当日、山口二矢は、愛国党員が舞台に向かって左そで付近で盛んにアジリ、またビラがまかれて、会場の注意がその方に向けられているすきに、反対側からかけ上がって凶行に及びましたが、これは全く計画的であり、警察本部では、山口という十七才の少年を使っての犯行は、必ず演出者がいると称しているということであります。四、短刀を腰につけて、体当たりでぶつかったやり方は、とうてい十七才の少年の、偶然に激発した感情に基づく行動とは何としても受けとれない。殺し屋として相当の訓練を経なければ行ない得ない行動であるということでありました。五、刺殺された淺沼委員長の遺体が日比谷病院から自宅に向かうとき、右翼のトラックがその付近をデモリながら、淺沼の死は当然の報いで、天罰であるなどと叫び、淺沼委員長の死をいたみ、涙している多くの市民のまゆをひそめさせたということ。六、事件の翌十三日、治安確立同志会、大日本愛国党、防共挺身隊、大日本独立青年党など、右翼十三団体の関係者が虎の門の霞山会館に集まり、愛国者懇談会を開き、山口二矢救援対策本部を治安確立同志会高津氏宅に設け、留置されている山口を激励し、救援することをきめた。こうしたことから、捜査本部では事件の背後に組織的なつながりがあると見ておるということ。以上の指摘点がもし事実であり、右翼の組織的活動が行なわれておるとしますならば、実にゆゆしいことであります。特に、右翼団体が殺人の現行犯を肯定するのみでなく、愛国者として賛美し、英雄視しようとさえしておる模様でありまするが、これはまさに傍若無人なテロ宣言とも言うべきであります。(拍手)また、従来のように表面的な形式調査のみで、背後関係なし、山口の単独犯行とでも結論されるならば、第二、第三のテロを誘発するおそれがあり、報道機関を通じて不確定ながら若干の真相を知らされて深い疑いの目をもって見ておる国民に、底知れない不安と動揺を与えるものであります。政府、特に首相、公安委員長は、万難を排して真相を究明して、その全貌を包み隠さず発表するとともに、テロ行為撲滅のためにとるべき政治的及び行政的具体策を明示すべきであります。
 第三に、いかに右翼団体といえども、資金なくしてその活動はあり得ないのであります。そして、その資金関係について、右翼団体と財界または自民党、またはその幹部との関係が問題とされていますが、これについても日本観光新聞等は次のように指摘しているのであります。一、捜査本部では、今右翼の活動資金がどこから出ているか内偵を進めているが、興業界、財界の一部または保守党の有力者がかなり個人的に金を出していることの確証をつかんでいる。山口の場合も、ことしの五月、愛国党を脱党した吉村、中堂両氏とともに、銀座の鳩居堂二階に全アジア自由反共連盟の本部を開いた。鳩居堂といえば銀座の一等地、部屋を借りる権利金のみでも坪百万円以上する。この金がどこから出ているか。山口の自供によると、資金源は日本浪曲協会、Nキャバレー、某信用金庫だといっているとのことである。二、山口が通学していた大東文化大学は右翼青年が多いという。山口の自供によると、同校に資金的援助を与えているのは、自民党の某実力者だという。同氏は同校の援助について、共産主義は最大の脅威である、これを粉砕しなければならない、参議院議員平島敏夫学長は個人的に親しいので、趣旨に賛同して応援すると語っているとのことである。大東文化大学は在学生に右翼のデモに進んで参加するよう呼びかけ、デモに参加すると一日二百五十円の日当を支給していたことがわかり、文部省では、公的な性格を有する学校の行為として疑問があると重視しているとのことである。三、また警視庁公安二課は、さる七月十四日、岸首相を首相官邸で刺した荒牧退助の調べから、自民党が昔の院外団に当たる団体、特に名を秘しているが、この団体に活動資金を出していたことを突きとめた。政談演説会の整理や、政治家の私設護衛などには、この団体を通じて右翼や「やくざ」が動員されていたということである。それを裏書きするように、当の荒牧は保釈金十万円也を払って出所し、事件前にはその日の生活にも困っていた老人が、豊島区池袋にある福泉閣アパートに、新品の家具、テレビを備え、新調のせびろまでととのえて、ぜいたくな生活を送っているとのことである。また、保釈金十万円は自民党の某氏から元尾崎咢堂氏の秘書横山老人の手を経て渡されたとのことである。四、また元法相、元防衛庁長官であった参議院議員のK氏が右翼の結集に力を注ぎ、資金ルートを作り与えたこと、自民党幹部の衆議院議員K氏が東京の某右翼に月十万円の応援費を支出していたこと等が詳細に述べられているのであります。これらの指摘された諸事項につき、真疑のほどを伺いたいのであります。
 聞くところによりますと、総選挙を控え、このたびの事件で受け身に立たされた政府及び自民党は、極力右翼との間には運動の面でもまた資金の面でも関係のないことを力説しようとの由でありますが、もしこれらの報道記事が若干でも事実である場合には、これを包み隠すことは、事件後発せられた首相及び関係閣僚、党幹部の、事件の背後関係を徹底的に追及してテロ行為の絶滅を期するという言明と全く相反することとなるのであります。政府声明のごときは全く空疎なものとして、国民の信を失うのみでなく、テロ行為の封殺のごとき百年河清を待つのたぐいとなり、日本の政治は好むと好まざるとにかかわらずファッショの道をたどるのであります。浜口首相の暗殺から始まって敗戦に終わったテロと軍国主義の時代を振り返って見ますときに、やがては自民党の諸君の上にもその害の及ぶことを覚悟されねばならぬと思うのであります。この際、政府、特に首相及び公安委員長は、民主政治を守るために、たとえ若干の不利な立場になりましょうとも、率直に右翼と保守党や財界との資金関係を積極的に明らかにし、これを公表するとともに、この関係を断ち切る具体案を提示せられたいのであります。
 第四は、この事件に対する政府の責任問題についてであります。すでに政府もその態度を明らかにせられた通りに、この事件の政治的、行政的な責任を徹底的に追及し、責任の所在を明白にすることが、事件解決のため当然過ぎるほど当然のことで、まさに国民の声でもあります。しかるに、これにこたえるべき政府や警察当局の今日までにとられた態度はきわめてあいまいで、不得要領、国民の納得し得ないものがあります。
 まず、事件突発直後この報を受けた自民党は三役会議を開いて、事件の政治責任を明らかにすべきことをきめ、首相に進言せられるとともに、一方、益谷幹事長、大橋副幹事長ら党執行部は、山崎公安委員長を初め柏村警察庁長官、小倉警視総監の辞職をも主張されたと聞いております。しかるに政府は、政治責任の所在について一片の説明すら表門することなく、山崎国家公安委員長の更迭を行うことによって政府責任を果たしたとされておりまるが、この唐突にして不鮮明な責任のとり方は国民の理解し得るものではありません。総選挙に臨む政府、与党の立場の苦しい点はわからぬではありませんが、この重大な問題は党利党略で規制すべきものでなく、あくまでも国民に納得と理解を与えるものでなければならぬのであります。政府の政治責任に対する考え方をこの際あらためで伺いたいのであります。国家公安委員会は警備に手落ちなしとして、政府、自民党の意見と対立したとのことであります。政府、自民党が警察行政に責任ありとし、政府が任命しながらその力の及ばない公安委員会が反対の結論を出した以上、政府としては当然に内閣総辞職を持って公安委員会の反省を求めるべきであると思うのであります。(拍手)
 また、公安委員会は具体的な説明を行なうことなく、警察行政の責任を否定されておるのでありますが、国民として承服し得ないものがあります。すなわち、このたびの事件は、演説会の開始と同時にマスコミを通じて全国に報道されましたから、その一部始終は国民周知のことであります。会場がヤジで荒れ切っていたこと、ビラまきが会場内で行なわれたこと、演説の雄である淺沼委員長の力をもってしても演説を中断せざるを得なかったことなどからして、何事か起こるなという予感がつきまとったというのが多くの聴衆の声でありました。治安の専門家として、このような雰囲気から判断して、事態のただならぬことを予知し得ないはずはありません。未然に不祥事を防止する策がなかったのでありましょうか。一年間に九回の検挙実績のある山口を見のがし、やすやすと壇上にかけ上がらせたことなど、警察当局の手落ちなしとの言明は、国民として承服できないのであります。政府との間にいかなる事情があるのか、うかがい知ることはできませんが、公安委員会は治安の責任を国民に対して持っておるのでありまするから、本議場を通じて、国民の承服し得る説明を求めるものであります。
 第五は、今後右翼の蠢動に対する政府の警備方針について伺いたいのであります。私どもの聞いておるところでは、今次総選挙にあたり、社会党の進出を実力で阻止するとのことで、右翼の活発な動きが見られるのであります。言論をもって争われる総選挙にあたり、候補者や運動員等に対し、このようなテロ行為が加えられるといたしまするならば、もはやこれだけで、言論、結社、集会の自由は奪われ、民主選挙は失われ、ファッショヘの道が残されるのみであります。これのみではありません。今春、毎日新聞が右翼の襲撃を受けましたことは記憶に新しいととろでありますが、十月十七日、信濃毎日新聞の報道するところによりますと、十月十五日、右翼の内幕をあばいた記事を掲載したという理由で、雑誌「政治経済」の編集責任者、小名孝雄氏は、多数の右翼人に料亭へ呼び出され、軟禁状態のもとで激しくつるし上げられたということが起こっておるのであります。政府は、即刻、東京はもとより、全国的に、右翼の組織の全貌、性格、活動の状況等を明らかにするとともに、憲法の条章に従い、言論、結社、集会、出版、その他一切の表現の自由を保障する具体的措置をとらなければならないのであります。特にこの社会不安の中で行なわれる選挙でありまするから、政党の幹部や候補者の身辺保護については、万全の警備を必要とするのであります。政府の具体的な措置を伺いたいのであります。
 第六に、文教政策の基本にいって首相の所信を伺いたいのであります。特に、今回の政治テロをきっかけとして、文教政策について各角度よりの批判が投げかけられております。わけても、池田低姿勢内閣中ただ一人の高姿勢大臣荒木文相は、十月十五日、参議院文教委員会において、終戦直後や司令部による教育の基本方針は、日本を再び立ち上がらせないことにあった、憲法もこの線に一貫しており、必ずしも国民の総意で作られたものではないとして、教育基本法を再検討するよりどころとしているようであります。さきにも述べたように、日本を再び立ち上がらせないことにあったというのは、軍国主義国家として立ち上がらせないという意味でありまして、米国が平和国家としての日本の隆昌を押え、敵国として日本に報復措置をとろうとしたものでないことは、憲法の前文を初め、すべての条章が明らかにしているところであります。この荒木文相の誤解に満ちた教育基本法に関する考え、憲法に関する批判は、憲法改正をしないという池田首相のもとにある閣僚としては不穏当のきわみではありませんか。特に、たびたび教育基本法の改正を唱え、占領軍から押しつけられたものだから、改正するのが当然だとか、いい日本人を育てることを明記していないから改めるべきだとか、いろいろの談話が報道されております。しかし、教育基本法第一条には「平和的国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」と定めておって、この基本法で教育された若い世代の大多数の人々が、民主的国家にふさわしい憲法をわきまえた世代として、あるいは都市に、あるいは農村において活動を続け、池田首相御自慢の世界に誇る経済の成長をささえておるのであります。これ以外に文部大臣はいい日本人として若い世代に何を求めようとしているのでありましょうか。淺沼委員長を刺し殺した山口青年は、「忠義とは自分を無にすることである、今は真の愛国者がいない」と力説していたということでありまするが、文部大臣はかかる青年を求めているのでありましょうか。私どもは再び愛国の美名のもとに、多数の若人の生命を奪い取るような戦前の体制に戻すことには絶対に賛成できないのであります。文相のこの考え方に対し、首相の率直な所信を求めるものであります。
 第七には、自衛隊の志願兵制度の限界と兵役の義務制について、首相の所信を求めます。御承知の通り、現在陸上自衛隊は、十七万名の定員に対し欠員が一万一千五百人に及んでいるのであります。現地部隊での定員不足はひどく、自衛隊が重点的に配置をしておる北海道でも、兵は定員の七〇%、中隊長、小隊長は半数あればよいほうだと伝えられておるのであります。また、兵の任期は、特殊部隊を除いて二年が原則でありまして、毎年二万ないし三万が除隊をし、警察予備隊以来の除隊者は十八万四千名に達しておりまするが、一度除隊をすれば、大部分が自衛隊とは全く無縁の青年に戻っておるのが現状であります。これはしごくもっともな話で、今まで経済界の不況時には、就職口のない青年または学資に恵まれない青年が、就職なり勉学の方便として自衛隊にその道を求めたのが大部分なのでありましょう。明年度の学校卒業予定者が引っぱりだこでありますように、経済界の好況が続き、就労条件が好転をし、また育英事業の発展で学生の就学条件がよくなればなるほど、将来の職業としては安定性の乏しい、しかも、性格のはっきりしない自衛隊は、ますます敬遠されることでありましょう。特に、池田首相提唱の所得二倍論が実を結び、完全雇用へ前進していくとするならば、さらにこの傾向は激しくなり、一万名増員すらおぼつかないことであります。志願兵制度は全く行き詰まることとなるのであります。このような状況の中でその定員を確保するためには、隊員に特別の待遇を与えて自衛隊への魅力をつなぐか、国民に兵役の義務を課して強制徴兵に進むか、いずれかの方法を必要とするのであります。兵役の義務制につきましては、自民党は今日まで、社会党の空疎な根拠のない自衛隊への誹謗であるとして軽く一笑に付してきましたが、現実の事態は、イデオロギーの問題としてではなく、経済の問題として切実に相なっておるのであります。また、右二つの方法によらないといたしまするならば、道はただ一つ、韓国が踏み切って五万人の兵力削減を断行いたしましたごとくに、わが国もまたこれに従う以外に道はないのであります。所得二倍論を中心として完全雇用への熱心な提唱者である池田首相は、以上三つのいずれの方法を選ばれるのでありましょうか、端的なお答えをお願いいたします。
 第八に、首相に伺いたいのは、現下わが国の思想的混乱の背景と混乱収拾に対する根本的な考え方についてであります。今次右翼テロに対する直接的な諸問題につきましてはすでに伺いましたが、問題はさらに深いところに根があるのであります。実は本年七月四日、ニューヨーク・タイムズはC・L・ザルツバーカーの論文を紹介して、「アメリカ政府は共和、民主両党の超党派的承認で、日本の中立、非武装を主張していたが、今では日本の非中立と軍備を主張する一大転回をやってのけた。明らかにこれらの政策のうちどちらかが誤まっているか、あるいはすでに誤まっていたのだ。」と述べ、「おじのマッカーサー元帥が日本を中立化するために奮闘したのは、わずか十数年前であった。」ところが、今では、おいのマッカーサー大使は、この日本の中立化を阻止するために奮闘している。このマッカーサー家の矛盾は、現在のアメリカの直面している苦難の根源である。」と書いているのであります。これを日本流に表現すれば、マッカーサー元帥は日本国憲法を指導し、おいのマッカーサー大使は憲法違反の指導をしているということであります。実に日本の思想の混乱はここからきているのであります。米国は、朝鮮戦争以後の国際政局に備えるために、対日政策を変更して、日本に強要したのであります。これを受けた自由民主党は、軽率にもこれに同調をし、憲法を軽視し、民主主義諸制度をあわよくば戦前の体制に一歩でも戻そうと努めているところから、この混乱が起きているのであります。
 これは単にマッカーサー家の矛盾、アメリカの苦難の根源であるという表現で済まされる問題ではなく、実に日本の悲劇であります。特に日本国憲法第九十九条の規定により、天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負うているのであります。この義務を負うている保守系の諸君が、その職責を怠り、外国の要請に基づいて、実質的に憲法を改正したと同一の行為を法律的にまた行政的にとろうとするところに、今日の混乱があるのであります。(拍手)
 もちろん社会党は、現憲法を、その前文が示しておるように高く評価し、多数国民の支持を得て、被占領当時と国際情勢がいかに変わろうとも、日本の安全のために、また、国内の秩序を維持するためにも、現憲法を守り抜くことが義務であるとともに、日本のために最善であるとしているのに、保守系の諸君がこれに耳をかされないからであります。そればかりではありません。憲法第九十九条の規定に従い憲法を守り抜こうとする革新系に対し、誹謗の限りを尽くす保守系の諸君の理不尽な態度にあるのであります。第三十五国会すなわち安保国会の混乱も、このためでありました。世論の反撃の前に岸首相が退陣せざるを得なくなったのは、自民党の政治が無理であったことをみずから認められたからであります。
 池田首相が、「力の政治はよくない。相互信頼を根本としなければならない。話し合いによって進めていくことが民主主義の本義である。」と言明されたのは、その非を認められたからにほかなりません。池田首相はまた、九月九日、大阪中之島公会堂の演説会で、「社会党は、総選挙で社会党が三分の一を獲得とない場合、自民党は憲法を改正することになると宣伝しているが、たとい憲法調査会が憲法を改正すべきであると結論を出しても、国民のほとんどが賛成をせず、しかも社会党の協力が全然得られない形で、一国の基本法である憲法の改正などできない。」と述べておられるのであります。この首相の言に従いまするならば、社会党が参加していない憲法調査会など全く無用の存在でありまして、首相は即刻これを解散させるための法的措置をおとりになる用意があるかどうか伺いたいのであります。
 また、憲法の改正は一応池田首相の言明のようにたな上げされるとしましても、今日までのごとく、憲法を軽視し、憲法の精神に反するような政治が行なわれては、世論を一そう惑わし、思想の混乱を深めることとなるのであります。かくて暴力の温床はますます発酵を続けるのであります。この際、非武装中立の憲法精神にのっとり、憲法を誠実に守ることにより国論を統一し、外交関係はもとより、国内体制全般にわたって政治の方向に再検討を加える理性と勇気を池田総理大臣はお持ちであるかどうかを伺いたいのであります。
 最後に、重ねて首相の誠実なる答弁を求めまして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣地田勇人君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。治安の確立は、あらゆる政策の前に立つものでございます。私は、内閣を組織いたしまして、この治安の確立、政治の姿を正すということに専念して参ったのでございます。しかるところ、それにもかかわらず、先般のような不祥事件が起こりましたことはまことに遺憾のきわみでございます。で、私は今後こういうことの起こらないように、ああいうことのないような社会情勢を作っていくことが私の責任であると考えておるのであります。従いましてあの不祥事件に対してどうしたらよいかという具体的の問題は、私も考えまするが、やはり国民全部、各政党が力を合わせてこれの防止に当たるよりほかにないと思います。(拍手)どうぞ栗山さんにおかれましても、今後の防止にできるだけのお知恵をかしていただきたいと考えております。なお、山崎国務大臣が辞任いたしましたのは、法律上の責任はございませんけれども、事案の重大性を深く認識しておるということを国民に表明するために辞任したのでございます。私はこれで一応の事柄は済んだ。今後治安確立に対しましてできるだけの措置をとっていとうといたしておるのでございます。
 次に、暴力に保守党が関係しておるというお話のようでございましたが、絶対に関係いたしておりません。
 なお、教育方針につきまして、どういう考えで教育方針を立てておるか。――私は、わが国民が、青少年が、わが民族を愛し、国を愛し、文化を愛して、そうして世界の人から信頼を受けるような人格の高いものを作ることが教育の根本方針でございます。荒木文相と何ら意見の相違はございません。
 次に、憲法問題についての御質問でございまするが、大阪の中之島公会堂で、私はあなたかここでお話になった通りを申し上げました。およそ憲法のような基本法におきましては、数をもって押し切るべき筋合いの問題じゃない。民主主義を言われ、議会主義、憲法を守ろうとしている社会党の方々が、もし自由民主党が三分の二以上を取ったならば是が非でも憲法を改正するんだというふうなことをおっしゃることは、ちょうど水鳥の立つ音を聞いて敵軍来たるというふうな格好でございます。民主主義を唱え、力の政治を排する以上は、私は数が足ったからこれを押し切るのだという考え方は持っておりません。しかもまた、憲法調査会は法律に基づいて今開いておるのであります。憲法調査会がどういう結論を出すかは私は知りませんが、その結論が出ましたにいたしましても、先般申し上げましたように国民の大多数が憲法を改正し、しかもこういうふうな改正をしたがよいという気持にならなければ、数だけで押すということは民主主義の根本に反するというのが私の考え方でございます。従いまして、改正するかあるいは内容をどうするかという、憲法調査会を廃止する気持はございません。それよりも、こういう重大な問題でございまするから、力の政治を排するあなた方におかれましては、快く進んで憲法調査会にお入りになるのがほんとうではございませんか。
 なお、私は申し上げまするが、アメリカの一評論家が日本に対しての批判をしたときに、私はこれに答えることは適当でないと思います。私は、マッカーサー大使に日本の政治を指導せられるというようなことは全然ございません。そういう問題をここで議論することは百害あって一利ないことを申し上げておきます。(「自衛隊の問題はどうした」と呼ぶ者あり)
 自衛隊につきまして答弁が漏れたことをおわびいたします。自衛隊、ことに陸上自衛隊におきまして一万一千五百人の欠員があることは御指摘の通りでございます。従って、徴兵制度をやったり特別の措置をしなければ欠員が埋められぬじゃないかという御質問でございまするが、徴兵制度は、憲法の改正でございますし、いたしません。また特別の恩典を与えなくても、今でも実は定員の四倍半の応募者があるのであります。従いまして、われわれが欠員を置いているのは、自衛隊員として最もりっぱな人を集めようとしておりますので、四倍半のうちから特に選んでいるのです。栗山さんのような御心配はございません。私はりっぱな自衛隊員を募集する気持でやっております。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(周東英雄君) 私にお尋ねの第一点は、当日の警備に手抜かりはなかったか、またそれに関連して警察自局の責任をお尋ねでありました。お答えをいたします。第一点、当日の警備に関しましては、三党首の演説会でありますので、いろいろ今日の国内精分から考えまして、十月の五日に選挙官理委員会側と丸の内警察署の間におきまして、会場の整理や警備体制などにつきまして詳細なまず打ち合わせを行ったのであります。その結果、主催者側は整理員を増強して、場内でいやがらせなどをする行為があった場合には、主催者側でこれを警告することになっており、警察としては場内に相当数の私服を配置するということによって場内を守り、別に制服部隊を場外に秘匿待機させるということにしておったのでございます。しかるに、そのあとで大日本愛国党が、三党首演説会だけを行なうことは非常に不公平だというような申し出があったのでありますから、当日いやがらせが行なわれたり、あるいは場内に事が起こることは困りますので、さらに警備体制をふやしまして、場内における私服並びに外に対して合計百五十九人程度の私服並びに制服を配置しました。そうして淺沼委員長に対しては、特に丸の内署員一名をもってその身辺警戒に当たらせたのであります。こういう準備をしたのであります。ちょうど、当日二時四十五分ごろに淺沼委員長の演説が始まりますると、場内の愛国党員は盛んにやじったり、あるいはビラをまいたりいたしました。特に二時五十分ごろに愛国党の一員が向かって右側から演壇にかけ上がって、淺沼氏に向かってビラを投げつけたというようなことが起こりました。直ちに右側におりました私服警官が追跡してこれを直ちに取り押えて検挙をいたしました。その状態から考えまして、愛国党員の不測の騒擾が起きては困りますので、あらかじめ配置してありました場内の後方にありました私服をも前へ出して、そうして警戒に当たらせた状況でございます。その間に二時五十分ごろに山口某なる者が入ってきたようでありますが、これがその二時五十分ごろにテレビとかラジオとかの施設のある陰から飛び上がって突進して、ああいう結果が起こった。まことに一瞬のできごとでありますが、非常に残念なことでありました。従って、予備警戒その他に対しましては、相当な手は打ち合わせをして打ってありまして、これによって重大な過失があったとも考えられません。これが当時の状況であります。
 さらに申し上げたいことは、警察官に対する責任の問題でございます。この点につきましては、御承知のように、今日は内閣総理大臣が公安委員を任命をいたします。警察庁並びに検察庁に対して、公安委員がこれを監督指揮するのであって、政府は何らこれに対して指揮監督する力は持っておりません。これは、あくまでも警察をして中立な立場をとらせるということであって、去る二十九年の本法律改正のときにおきましても、今日盛んに、政府が、これに対して処断をせよというようなお迫りをなさいますけれども、社会党の諸君、共産党、いずれも厳然たる態度で、政府の干渉許さずとしてお話になったことを思い起こしていただきたいのでございまして、あくまでも、政府は警察官に対して何ら指揮監督権はございません。なおかつ、その上に、警察事務に関しましては、公安調査庁も、また国家公安委員会も、これは監督はできません。すべて都道府県にこれをまかせてありまして、都道府県の公安委員会と都道府県が、こういうふうな具体的問題に関する警備その他については実行することになっております。私どもは、この制度それ自体がいい悪いの問題は、今後における治安をどうするかというあなた方の御心配に関連いたしまして、将来これを検討する必要はあると思う。しかしながら、具体的の問題について、ただいま直ちにこれをもって責任を問い、また、辞職を迫る、政治的圧力を加えることは、あなた方の御承知の通り、中立性の立場からやれないと思います。
 それから第二のお尋ねは、本件に関係した山口という犯人が、アジア反共青年連盟に属しておりまして、鳩居堂の二階を百万円もの権利金を出して借りておるので、それに対して保守党あるいは財界から金が出ておるのじゃないかというお尋ねでありますが、こういう事実はございません。この鳩居堂のビルの二階は某会社が持っておりましたが、倒産したので、その債権者の一人である宮川なにがしが百三十三名の債権者代表として今日持っております。それを無償で貸しておるのが、調べた結果出ております。資金の動きはございません。また、お尋ねは、これに対して保守党か何か特別な人が金を出しておるかという御心配でありますが、そういうこともございません。
 それから、本人が出ました大東文化大学というものに対して、学長が現参議院議員の平島敏夫氏であるから、何かそこに保守党とのつながりがあるかのようなお話でございますが、この大東文化学院と申しますか、それは今日、国漢を主として教えておる学校でありますが、学生の数は約四百人近くありますが、決して右翼学生が多いというものではないのでありますから、これは御安心なすってよかろうと思います。
 また、荒牧が保釈金を十万円もらったという、荒牧に対する保釈金十万円が横山某氏から出たというようななこと、これは事実であります。事実でありますが、それに関連して、保守党の某氏が継続的に金を出しておるというようなことが出ておったというお話ですが、そういう事実は今日までありません。
 なお、この山口に対して背後関係があるのじゃないかということでありますが、今日までの調査におきましては、そういう事実がまだあがっておりません。ただ吉村某氏というのが今日他の犯罪容疑をもって検挙、これを拘束して調査をいたしておりますが、なおただいまのお尋ねに沿うて、今後継続して調査を進めて参りたいと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(松野鶴平君) 郡祐一君。
   〔郡祐一君登壇、拍手〕
#11
○郡祐一君 私は自由民主党を代表して、民主政治を擁護いたしますため、きわめて重大な時局に際会している今日、当面緊要と認められる国務について、内閣総理大臣初め関係大臣の決意と所信をたださんとするものであります。最近、淺沼社会党中央執行委員長が暴漢に刺殺されるという、痛恨きわまりない事態が発生いたしました。哀悼の至りにたえません。公開の場所で、各政党の代表者がその政策と信念を発表する、最も厳粛真剣に傾聴さるべき機会に、少年の凶刃に公党の代表者が倒れるという事態は、まことに憂うべきことであります。事態そのものを糾明すべきは当然でありますが、教育、青少年対策、警備その他社会全般の現状について、深い省察が必要なのであります。左右を問わず、個人、集団の別なく、一切のテロ行為、暴力ざたを排撃し、その社会的、個人的のすべての温床との関連を絶ち、厳正に取り締まり、社会環境を浄化し、法秩序を確立してこそ、初めて民主政治は成長いたすのであります。
 思うに、池田内閣が成立いたしましたのは、安保条約改定にあたり、国内においては反対勢力が暴力によりて議会政治を混乱せしめ、外に対してはハガチー特使に対する暴行や米国大統領の訪日阻止によって国際信用を失墜せしめた直後であったのでありまして、従って池田内閣の第一の使命は、暴力を絶滅して、国内には安定感を植えつけ国際間にはその信用を回復して民主政治を擁護することにあると信じます。一方においては、破壊的勢力はこれを政治的にも社会的にも断固根絶いたしますとともに、一方においては、議会政治、民主政治が国民の総意に合し、国民の信頼を確保しますために積極的方策を講ずることが、政治家の責任でなければなりません。
 第一に明らかにされたいのは、総理大臣は民主政治擁護のためいかなる決意と方策を持っておられるかであります。
 民主政治の擁護について伺いたい一つは、暴力による秩序の破壊をいかにして防止し、治安の確保をはかるかということであります。比較的単純な暴力でありましても国民に与える不安は大きいのでありますが、個々の愚連隊、暴力団の排除についても、現行の刑事手続をもってしてはかなりな支障が感ぜられる実情であります。いわんや直接的なテロの場合、あるいは集団暴力の発生などを考えますと、その警備につきましても、検挙あるいは背後関係の追及等につきましても、現行制度にかなりの検討整備を加える必要があると信ずるのであります。政府は治安維持に終局の責任を持ちますが、これを確保いたしますため、いかなる治安機構が適当なりと考えられますか。けだし、十分な責任を負いますためにはそれに対応する権限が必要だからであります。暴力によって法と秩序とを破壊し、人間の憎悪心をあおって社会を混乱せしめる一切の破壊的行為を、厳に追及する信念を明らかにされますとともに、そのための法的措置についての構想を示されたいのであります。
 民主政治の擁護について伺いたい二つは、民主政治は、議会が国民の信頼をつなぎ得て初めて安定し、しかも議会に対する国民の意思は選挙において最も明瞭に示されること、申すまでもないところでありますから、公明選挙遂行に関する所信と選挙制度のあり方についての構想を示されたいのであります。民主政治の根本は、選挙によって表現される議会主義をどこまでも尊重し徹底させることであります。わが国の選挙はこの根本に沿うところの完全な普通選挙であり、国民の自由なる意思は選挙において最も率直に表現せられるのであります。この点、ソ連等の共産圏のごとく、選挙の名はありましても自由なる判断を許されない無価値な選挙制度とは全く実質を異にしているのであります。この点、民主国家として高く評価さるべきものと信ずるのであります。ゆえに、来たるべき総選挙において、国民の意思を最も公正に、いかなる外部の力にも影響されることなく表現されますために、真に公明な選挙を遂行すべきであり、これについての信念を示されたいのであります。また、選挙に関しまする制度は、当然選ばれる者のためよりも、有権者すなわち主権者である選ぶ者がその権限を百行使するのに最も適切な制度とすることが必要であります。この見地から、現行の制度は、はたして完全なものと考えられましょうか。総理大臣は、しばしば寛容と忍耐とをもって話し合いによる政治の運営を説き、国民にはその良識を期待されるのでありまするが、かくのごとく運営するためのルールとして、選挙制度なり国会制度なりを将来どうすることが最も民主的と考えておられまするか所見を明らかにされたいのであります。
 民主政治の擁護について伺いたい三つは、公務員のあり方についてであります。公務員が主権者たる国民への奉仕者であり、しかも他の国の立法例に類を見ないことでありますが、わが憲法は国民主権主義を公務員制度について明示しているのであります。従って、公務員のあり方が民主政治の擁護のために重要な役割を営むことは、きわめて明瞭であります。公務員の実情からみて政府が給与の改善を行なわれることは適当でありますが、同時に、公務員の能率と成績の向上を期することはもちろん、進んで公務員全般を通ずる適切な規範の確立が必要だと考えるのであります。公務員が法律で禁止する政治活動に公然と関与するがごときは、明らかに民主政治を冒涜するものであります。(拍手)この点、総選挙を前にしては特に注意が必要なのであります。
 公務員が職務を放棄しながら国民の奉仕者だといいましても、国民は信用いたしません。日教組の教師がはち巻をしてわっしょわっしょとやっておいて、教室に戻って来ては平和を説きましても、生徒は信用しないのであります。(拍手)国、地方を通じて多数の公務員はまじめなのでありますから、国民のひんしゅくを買う一部の公務員に対しては、その規律は厳にこれを正して国民の信頼を失わないようにしなければなりません。総理大臣は行政全般の最高責任者として、いかにして行政刷新の実をあげようとするか、所信を明らかにされたいのであります。民主政治擁護の見地から、まず以上の数点をただすものであります。
 第二に、外交政策について政府の所信をただし、わが国の安全と繁栄とをはかりますとともに世界の平和と人類の福祉に貢献することを期待するものであります。
 外交についてまず明らかにされたいのは、堅持しなければ日本の安全を期し得ない絶対の基本的立場は何であるかということであります。自由主義諸国との連係を緊密にし、日米安全保障体制によって国際的地位を安定させ、次第に国力の充実をはかっているのが、わが国の現状であります。日米関係は常に対等の立場に立っておりますることは、安全保障条約改定の経過においても明らかであります。自由主義国家、特に米国との友好関係の維持は太平洋の安定の基礎であります。太平洋の安定なくして日本の平和はあり得ないのであります。私どもにはきわめて明瞭なこの事実は、しかしながら、国民の前に逆に宣伝されているのであります。いわゆる中立主義論であります。政府は強く自由諸国との提携協力の推進を国民に訴えるべきであります。東西両陣営の境界線は、欧州においてはほぼ確定していますが、極東においてはいまだ決定的になっておらず、また局地的に見ました軍事的バランスを見ましても、欧州に比して、極東では共産側に圧倒的に有利であります。かかる地域において、共産圏が日本の中立に期待をかけ、これを自国に有利と判断することはきわめて当然であります。従って、日本人は、耳に入りやすい中立という言葉の響きのために、その背景を忘れることがあっては絶対にいけないのであります。国内における中立論者はこう言います。米国との安全保障条約は解消せよ、中共を即時承認せよ、国民政府の承認を取り消せ、これであります。このようにして、国民みずからが、日本を外交的に孤立無援の立場に置こうとするのであります。わが国の繁栄と安全とをみずから崩壊せしめんとするものであります。政府が安全保障体制による平和確保を期するにあたって、中立主義を否定しておられることは理解しますが、この機会に、さらに強く中立政策の意図するものを明らかにし、日本外交の基調として、これを排撃すべきゆえんを国民の前に示されたいのであります。
 次に、国連中心の外交について所信をただしたいのであります。問題を話し合いによる平和手段で解決しようとする国連中心外交は正しいのでありますが、国連の機能と活動とがいまだ当初の期待のごとく強力になっておりません現在、国連の動向をいかに考え、国連の活動にいかに寄与せんとするか、お尋ねするのであります。国連の動向として、アフリカの新しい十六の独立国の加盟等によりまして、いわゆるアジア・アフリカ諸国は四千三カ国となり、国連加盟国の半ばに近い勢力となりましたが、この勢力をいかに考えるべきでありましょうか。アジア・アフリカ諸国の多くは、最近まで西欧諸国の植民地であります。従って反植民地主義の空気が強いために、それらの諸国は社会主義体制をとっていないにもかかわらず、ソ連の反植民地主義の宣伝に乗ぜられるおそれがあるのであります。基本的には、自由主義国の立場に立ちつつ、アジア・アフリカ諸国との友好関係を深め、これらの諸国が外部からの撹乱戦術によって惑わされることなきを期しますため、いかなる構想を持っておられますか。また、これらの諸国の多くは新興国であり、経済的に後進国でありますから、その繁栄をはかるため、わが国として協力すべきものがあると考えますが、いかがでありますが
 また、国連が発足当時に期待されたような活動ができませんのは、安保理事会における大国の拒否権のため、機能の発揮のできない点もありましょうし、かつ、過般の国際連合総会におけるフルシチョフの戦闘的な言動によって、激しい冷戦のあらしを巻き起こしたような事例があるため、国連が平和と協調の場であり得なくなったこと等、各種の要因があると思うのであります。しかし、平和を念願するわが国としては、国際平和の推進の機構としての国連をさらに強めて参る努力と寄与をしなければならないと思いまするが、いかなる用意がありますか。国連中心外交のあり方について所信をお尋ねいたします。
 第三に、経済政策に関する問題について質疑をいたします。政府は、経済の現状を的確に把握し、十年後の所得倍増を目標として、減税と相待って、生産力の拡充、また有効需要の喚起、あるいは社会保障制度の充実等に重点を置く政策等を明らかにされました。日本経済の伸展が目ざましく、今後の見通しの明るいことは、国民の勤勉によること、もちろんでありますが、歴代の保守党内閣の経済政策が全体として正しかったことを明らかに示しているのであります。かくのごとく、明るい将来が期待されますが、その過程において、国民の間に疑問を抱かせることのないよう、さらに若干の点についてその信念を明らかにされたいのであります。抽象的な項目の羅列にとどまらず、具体的な見通しを示して国民の同調を求める意欲的な態度は大いにこれを多とするものでありますが、この際、その見通しについて、さらに次の点についてこれを明瞭にされたいのであります。
 問題の一つは、経済成長率に関してであります。当初三年間について高率な成長を期待することは、実績に徴して妥当と考えますが、その高率な成長と十年間の長期の見通しとをいかに調和して理解すべきかという点であります。すなわち、十年間の成長が、当初は高い上昇を示すが、後半は鈍化して、おおむね十年間で所得が倍以上になりまするのか、あるいは当初三年間に匹敵する成長率で、十年間を待たずして、相当それより短い期間で倍増を通し得ると考えられるのでありましょうか。十年後には倍どころではなく、二倍近くにもなろうと期待してよろしいのか。あるいは経済の高度成長には設備投資の伸張が大きいのでありまするから、後半の成長率が鈍化すれば、生産増、所得増、減税、資本蓄積、設備増という、経済拡大の循環が、その規模を小さくすることとなるのでありましょうか。循環の規模が小さくなるとすれば、その場合生ずる摩擦については、あらかじめ用意する必要があると考えるのであります。国民すべての期待する経済成長政策の遂行でありまするから、的確な見通しと安定した目標とを示されたいのであります。
 経済政策に関する問題の二つは、経済が今後成長して参る相当長期間にわたっての物価の見通し及びその対策であります。物価についての世上の不安は、特に消費者物価について早目に対策を講ずることによって解消し得るのであり、また、そのようにいたさねばならないのでありますが、ただ、注意すべきは公共料金についてであります。公共料金は、建設費の必要や貸金の上昇によって、人員の整理等を行なわない限り、ある段階では引き上げざるを得なくなる傾きがあります。しかも、公共料金の引き上げは、各種のサービス料金の上昇に刺激的な役割を演ずるものでありますので、当面これを抑制することはもちろん、将来も国民生活に及ぼす影響を考慮して、きわめて慎重に扱われたいのであります。けだし、公共料金については、特に賃金の上昇が生産性の向上によって吸収され、能率化と見合って行なわれるように留意されたいのであります。生産性向上を否定しながら賃上げ闘争を繰り返しているがごときは、わが国のみに見る現象でありまして、他国に全く例を見ないのであります。(拍手)卸売物価について数年来さしたる変化のない現状においては多く問題はないのでありまするが、この際、明らかにされたいのは、経済成長の長期間にわたる物価の推移をいかに見込んでいるかであります。ことに、高度の成長の過程において物価がいかに推移するであろうか、またこれを堅実なものたらしめるにはいかなる用意があるかを明らかにされたいのであります。すなわち、物価に多少の値上がりがありましても、所得がそれ以上に増加したならば問題はないのでありまして、最近数年間の賃金の上昇は、確実に消費者物価の若干の値上がりを吸収し得ていたのであります。実質において所得倍増の可能であることを物価の面から明らかにされたいのであります。物価についての関心は、国民各層にはなはだ深いものがありますので、特に明瞭にされることが望ましいのであります。
 経済政策に関する問題の三は、所得格差についてであります。国全体が豊かにならなければ国民の生活水準は向上いたしません。われわれは富を積極的に作り上げようとしているのでありまして、富の分配のみを考える社会党とは根本的な態度を異にしているのであります。分配だけを考えている社会党のような立場からは、新しい職場、新しい働き場所は一つも生まれないのであります。従って、日本経済の拡大には、企業の発展に力を入れなければならないこと当然でありまして、もとより大企業たると中小企業たるとの別はないのであります。近代的工業の目ざましい発展に伴って、中小企業もまた企業的に成長する政策が期待されるのでありますが、従来ややもすれば、産業間の格差、いわゆる二重構造が強まる傾向が見られましたので、そり解消には特に留意し、その方策、なかんずく中小企業の対策については、きめのこまかい周到な政策を期待するものであります。産業間の格差のほかに地域的格差の問題があります。地域的格差は、産業間の格差以上に考慮を要するものが多いのであります。後進地域は近代的産業を発展させる素地が乏しいものでありますし、電力などもむしろ高い例が多いのでありますから、よほど優遇した措置をとらなくては開発は困難なのであります。地域的格差を解消しますため、いかなる方法を講ぜられるのでありますか。所得倍増計画策定にあたりまして、産業立地に関する構想が伝えられるのでありますが、後進地域開発についていかなる用意がなされておりますか。以上申し述べた産業上の格差なり地域的格差なりが、経済成長によって初めて縮小し得るものであることは疑いないのでありますが、しかもなお、その目的を達しますためには強い決意と強い方策が必要なのであります。具体的措置を明らかにされたいと思います。
 経済政策に関しまする問題の四つは、農林漁業についてであります。農民生活の向上安定をはかりますのに常に支障になりますのは、現在のような零細な経営規模と、近代的農業とはほど遠い技術の点であります。農民諸君の勤勉と相待って、経営規模を大幅に拡大し、近代的農業技術を取り入れますならば、農業労働の生産性は著しく増大し、現在よりはるかに少ない労働力で、はるかに多くの収益をあげることができると考えられるのであります。国民経済の発展は、第一次産業から第二次、第三次産業へ労働力の大量移動を伴うことは当然でありまして、現に農業から他産業への労働力の移動はすこぶる顕著なのであります。従って、総理大臣の農業就労人口の減少の説明をとらえて、貧農の切り捨てであると論じます者は、資本主義であろうと社会主義であろうと、経済体制のいかんを問わず、農業人口の減少は経済発展の必然の過程であることを知らない者の議論であります。農村人口の減少は、他産業の高度な発展の結果でありまして、農業政策の目標は、あくまでも豊かな農村の建設であります。政府が農業の振興のため各般の政策を総合して強力に遂行することを期待いたしますが、この際、特に次の点を明らかにされたいのであります。一つは、農業の経営規模を拡大し、近代的技術を導入しますため、最も主眼とする政策はいかなるものであるかということであります。二つは、農村労働力を他産業に吸収する場合、産業立地の方針として、工場の農村分散をはかり、農業就労人口は減少しても、農村人口は維持する施策がとられることと信じますが、安定した雇用と所得とを保障しますために、労働力を受け入れる非農業部門において十分な受け入れ体制が必要だと考えられるので偽ります。すなわち、離農者に対する職業訓練等につき、いかなる用意があるかを明らかにされたいのであります。
 最後に、社会保障の充実について、長期的視野に立ち、計画的かつ段階的に社会保障を進展させますため、いかなる用意があるかをただすものであります。すでにお尋ねしましたごとく、経済の成長の目ざすところは、国民の福祉の増大をはかることであります。従って、全体として経済が成長し、国民所得が増大いたしましても、その果実を国民各層に分かち与えなければ、経済成長の真の目的を達成したとは言い得ないのであります。自民党の主張する経済成長政策は、経済成長によって得るところのもの、すなわち得たる果実を国民各層に分かち与えることを目標としますところに大いなる特長があるのであります。従って、われわれは、その施策の中心として社会保障を重視するものでありまするが、思うに、わが国の社会保障は、制度的にも財政的にも近年著しく充実しておりますし、一般会計予算に占める割合も、広義の社会保障費が二割以上を占めているのであります。従来、社会党の諸君が主張されましたるものより、はるかに多くの充実を見ているのであります。従って、一挙にこれを増加いたすことは無理でもあり、その必要もないのでありまするが、同時に、社会保障については、一歩々々、一年々々、これを充実していく必要があるのであります。現に、社会保障の分野におきましては、国民年金の改善、また生活保護基準、さらに国民健康保険の給付率の問題等、重要なる事項について、それぞれ解決をはかりつつあるのでありまするが、経済成長の過程におきまして、賃金の上昇によって吸収し切れない、減税の恩典にも浴さない低所得層について政府は各般の周到な措置をもって臨まれることと信じまするが、この恵まれない層に対し、特に社会保障の充実の必要が痛感されるのであります。公共投資や減税政策の推進と並んで、経済の成長を達成いたしまするため、無責任なる野党の態度は別といたしまして、政府においては、これらの公共投資や減税政策と相並んで重視する社会保障を、国民所得の増大と即応して、社会保障各制度間の調整をとり、その内容の充実をはかるべきものであると思います。いかなる長期計画によって、いかなる目標に到達されんとするか、社会保障充実についての構想を明らかにされたいのであります。
 池田内閣が、内政外交一体のもと、内には福祉国家の実現をはかり、外には自主外交の推進を期しておられまする努力を大いに多といたしまするとともに、現下国民の池田内閣に寄せる期待の大なるを思い、決意を新たにして時局に対処せられることを要望いたしまして私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(池田勇人君) お答えを申し上げます。
 暴力防止についての方策いかんという御質問でございまするが、私は、何と申しましても、国民一人々々が暴力防止の気持になっていただかなければならぬと思います。そのためには、やはり教育の問題も非常に重要でございます。しこうして、われわれは、このごろ何でもかんでも闘うのだという言葉がよく聞かれるのでございますが、私は、闘争というものは民主主義にはあまりよくないと思います。(拍手)闘争と憎しみは、これは破壊と滅亡でございます。私は、やはり協力し和親していくところに建設があるのでございまするから、そういう気持になっていただくようにいたしたいと思います。
 なお、治安機構とかあるいは警備の技術その他につきましては、十分今後検討していきたいと考えております。
 なお、公明選挙でございまするが、選挙が明るく正しく行なわれることは、もう民主主義になくてはならぬことであります。しかし、それだけになかなかむずかしいのでございます。私は、今後におきましても、選挙制度につきまして、どうやっていったらいいかまた選挙民の――国民の選挙に対する政治意識の高揚をはかっていく、このことは非常に必要であると思うのであります。まず金のかからない選挙あるいは選挙手続とか、こういう点につきまして十分検討していきたいと考えております。
 また公務員のあり方につきましては、お話の通り公務員が国民に奉仕する気持になり、規律を保持して、能率の向上をはかって、いくということが第一だと思います。今回の公務員の給与引き上げと同時に、政府におきましては、規律の保持と能率の増進、これを一緒にやるように指令いたしているのであります。
 次に外交方針でございまするが、AAグループも、国連に加入している諸国は、みんな平和を熱願しております。われわれは、非常にありがたいことでございまするが、このAA諸国の平和の熱願をますま伸ばしていくと同時に、彼らは独立はいたしましても経済的にはまだ非常に困っている状況でございますので、日本人といたしましては、できるだけ経済援助に向かって進んでいきたいと考えております。
 また経済の見通しで、十年間、初めはよくいくが、おしまいがだんだんだれるのじゃないかというお話でございますが、これはなかなか見通しはむずかしい。過去十年の状況を見まして、平均九%以上になっておりますが、年によって違うのであります。去年は一七%、その前は三%、その前は四・五%、こういうふうにずっと波が立ちまするが、政府は、今後なるべく波を少なくして、そうして三年間というものは、御承知の通り三十七年、三十八年、三十九年と、新労働人口が百七、八十万も毎年出てくる状況でございますので、その受け入れ態勢に基づきまして、三年間を一応立てていったのであります。そしてまた十年間の中では、中だるみ、しり上がりということもあります。中上がり、しりだるみということもございましょうが、これはこの三年間の様子を見まして、適当な措置をとるよりほかにないと思います。なお物価の見通しでございますが、卸売価格は動かないという前提でございます。小売価格というものは、サービスその他が加わってきますから、ある程度の上昇があるかもしれませんが、所得倍増によりまして十分これを吸収し得る。問題は、私は国際収支その他からいって、経済の問題は、これは卸売物価がどうなるかということが国際的に非常に問題であり、国内的にも問題。小売価格というものは、文化生活が進んでいきますために、だんだんある程度の上昇はやむを得ません。しかし、これは労賃の引き上げの何分の一とか何十分の一くらいにとどめたいと考えているのであります。
 所得の格差につきまして、いろいろお話がございましたが、地域的の格差につきましては、私は金融の面、税制の面、各方面から格差解消に努めていきたいと考えております。
 また豊かな農村を作ることが私の希望でございまして、農業に従事する人を減らすというのじゃないのです。だんだん減っていくように、よそへ行った方がいいようにして、豊かな農村を作るということが私の念願でございます。従いまして、農業から他の産業に移るためには、やはり技術が必要でございまするから、青少年の技術、また中年の方の技術指導にも力を進めていきたいと考えております。
 社会保障の問題につきましては、お話の通り、政治の一番大きい目的と私は考えているのであります。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(小坂善太郎君) 私に対する御質問は二点あったと思いますが、順次お答えを申し上げます。
 まず第一問は、わが国の外交方針は、国の繁栄と世界平和をはかるための新安保体制を堅持していくことであり、中立主義はわが国の安全について不適当であると思うがどうか、こういうことでございます。われわれは、国連中心主義ということを言っておりまして国連を強化して参りたいということを大きな外交方針にいたしておるのでありまするが、御承知のごとく現在の国連におきまして、安保理事会において大国の拒否権というものがありまして、一九五〇年に第五回総会で、その場合は平和結集決議というものに基づきまして緊急特別総会を開くことになっておるのであります。しかしながら、そうして特別総会の議決を経るということになりましても、その間にやはり補完的なものが要るわけでありまして、その意味におきまして日米間に安保条約が結ばれていることは、すでに御承知の通りでございます。そうしたこの安保条約というものを中心といたしまして、自由主義諸国との間に緊密に協力することによりまして、わが国の平和と安全を従来確保して参りましたのでありまするが、その間におきまして非常に少ない国防費をもってその間の補完の役割を果たしてきたということが言えると思うのであります。この年の予算におきましても、総予算の九・六%というものが防衛費でございまして、一方、社会保障費は一七・四%ということになっておりまして、これは世界の文明国の例を見まして、非常に少ない国防費で、しかも社会保障費がその倍になっておるということは、特筆すべきことかと考えるのでございます。こうしたことがやはり今日の経済の繁栄と国民生活の安定向上に大きな役割を尽くしておると思うのであります。従いまして、こうした環境をわれわれは維持、堅持して、さらに発展をさして参りたい、かように考えておるのであります。いわゆる中立論は、こうしたわが国の平和と繁栄の基礎をくずすおそれのあることを思いまして、われわれはこれに同意し得ないのであります。また、わが国の位置いたしまする国際環境を見ましても、政治的、軍事的にもなお不安定な極東におきまして、高度の工業国といたし、また九千万の人口をこの狭い国土に擁して、しかもその経済的な、あるいはまた文化的な水準というものがすでに高い、この高い水準をさらに発展せしめていくということが必要とされておりまするわが国にとりまして、現在の態勢というものは、そうした状況から最も適切なものであると考えておるのでありまして、こうした環境を現実にくずすおそれのある中立主義というものは、われわれはこれをとることはできないと考えておるのであります。わが国におきましては、中立主義の要件というものは現実に存在しない、かように考えておる次第であります。
 次に、国連中心の外交というが、わが国は国連をしてその機能を十二分に発揮させ、かつこれを強化していくベきであると考える、そのためのわが国の果たす役割をどう考えるか、またAA諸国との協力関係についての所信を、ということでございました。この点につきましては、すでに総理大臣から御答弁があった通りでございまするが、若干補足させていただきますると、国連は、今日わが国において、世界平和を維持するための唯一最高の機関と考えております。従って、これを達成しまするために地道な努力を構成国民はしなければならぬと思うのであります。これは国連の場を利用して派手な自己宣伝をしたりするということよりも、その構成員がまじめに、実質的に話し合いをするような雰囲気を作っていく努力が必要であると思うのであります。そうした意味から、実質的な決議の尊重あるいは人的な資金的な奇与をするというようなことをして必要な国連強化のための措置をとって、日本はその間において尊敬される立場をとって参りたいと考えておるのであります。AAグループは、総理大臣からお答えの通りでございまして、この諸国に属するわが国といたしましアジアの繁栄のために、またアジア・アフリカ・グループ全体の希望というものを強く国連に反映せしめるという態度をとると同時に、その繁栄に寄与するということについて積極的な寄与をいたしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
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#14
○議長(松野鶴平君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#15
○曾祢益君 私は、民主社会党を代表して、首相並びに関係閣僚の施政演説に対して質問いたしたいと存じます。
 わが党は、わが国の民主主義、議会政治が、左右の暴力に脅かされていることを憂慮して、民主主義と議会政治の擁護を基本理念の一つとして立党したのであります。しかも、去る第三十四国会においては、安保条約改定をめぐって、岸内閣、自由民主党による単独審議と、だまし討ちの安保強行採決という多数暴力と、一方では、社会党の議会主義に反する院内の実力行動という少数暴力とが、おくめんもなく行使され、これがため、わが国政治史上未曾有の混乱、議会の機能の停止と政治の空白、さらには重大な社会不安を引き起こし、また他方では、アイク訪日阻止が左翼の集団的圧力によって実現され、これら一連の事態は、わが国の国際信用を一挙に喪失させたことは、いまだ記憶の新たなるところであります。わが党は、これらの安保にからんで起こった事態が、わが国民主主義、議会政治に与えた傷あとは深く、決して岸首相の退陣と内閣の更迭だけで回復するような、なまやさしいものではないことを当時から警告し、最小限度の措置として、延長国会の末期に、国会自粛に関する各党の共同決議を両院において行ない、その中で、「多数党は単独審議を行なわず、少数党は実力行使をせず、各党は五月十九日の事態を繰り返さない」旨を厳粛に国民に誓うことを提案いたしたのでありまするが、自民、社会両党の賛成を得られず、ついにこの決議が行なわれなかったことは遺憾千万であります。むろん、この種決議だけで議会制民主主義が確立されるわけではありません。しかし、政党がこのような最小限度の反省と自粛すら行なわず、互いに相手方を攻撃しつつ、ひたすら過去を水に流そうとしたところに、民主主義の危機と政党の任務についての自覚や責任感の欠除があったことを指摘しなければなりません。(拍手)政党みずからが、単独採決による会期の延長と、だまし討ちの安保強行通過や、院内における実力行使の暴挙に出ることによって、言論の府、民主主義の殿堂である国会の権威を失墜せしめたことが、議会政治の空白に乗じた左翼団体の集団的実力行使と右翼団体のテロ行為という連鎖反応を起こさせ、また、三井三池の法と秩序に挑戦する暴動的な事態まで立ち至らせたのであります。それにもかかわらず、岸退陣と変則国会会期終了という幕切れだけで、民主主義と議会政治が再び軌道に乗ったかに考えるならば、それはあまりにも虫がよ過ぎるものと言わなければなりません。
 何人も、先般淺沼委員長に加えられた、かの憎むべき右翼テロを的確に予知し得なかったでありましょうが、しかし、安保騒動に際してすでに数回にわたって行なわれたこの種右翼の暴力が、選挙を前にして再び積極的に活動する危険について、政府当局、治安当局において十分な認識と対策がなかったことは、全く許しがたい怠慢と言わなければなりません。(拍手)
   〔議長退席、副議長着席〕
 われわれ民主社会党は、今回の右翼テロ事件が戦前からのわが国の特有の暗殺風潮の復活であることを特に重視します。戦後わが国の右翼テロが鳴りをひそめていたのに、何ゆえに最近に至って活動を開始したのか。前に申し述べたような、安保問題をめぐる国会の機能の喪失は、問答無用という、力と力の対決の風潮を呼び起こし、左翼の効果的な大衆行動に対する焦燥と無力感から右翼のテロが復活したのかとも思われるが、その背景や動機はしばらくおき、暴力、なかんずく政治的見解の異なるゆえをもって人命を奪うところのテコは、民主主義に対する挑戦というよりも、民主主義や政治以前の問題であるところの人間性や道義と倫理そのものに対する反逆であります。ゆえに、個人の尊厳と人格の自由なる発展を何よりもとうとぶところのわれわれ民主社会党は、右翼の暴力とテロに対しては一切の逃げ口上を許さず、無条件絶対にこれを排撃することを、ここにはっきりとお誓い申すものであります。
 わが国においては右翼並びに暴力団と保守政党または保守政党人との悪因縁は、周知の事実であります。首相は、自民党の総裁として保守党の名誉のためにも、また首相として、アイク訪日阻止に続いて第二の重大なわが国の対外信用の失墜を回復するためにも、この際、真に重大なる決意をもって、この事件の背後関係を徹底的にあばき、あわせてテロをその根元から絶滅を期すべきと信ずるが、昨日の施政方針においては、首相は、暴力の無差別排除とか、寛容と話し合いの政治とか、きわめて抽象的な表現を用いられておりまするが、テロ排撃に対する誠意と熱意が強く感ぜられなかったことについては、あらためてここに率直なる所信を披瀝されたいのであります。
 さらに、われわれは、この際、単に右翼テロの根絶にのみ終始すべきではなく、私が冒頭に申し述べました通りの暴力と反民主主義行動の連鎖反応の状況に顧みまして、民主主義と議会政治を脅かす一切の暴力は、多数党、少数党それぞれの暴力、左翼団体の集団的暴力、右翼の個人的テロなど、すべて形態を含めて、これを無条件に排撃することが特に必要と信ずるのであります。おのれのみが愛国者という愚かなうぬぼれと危険な使命観や、一方では、われわれのみが民主主義と平和と独立を守るものだという思い上がりと、そうして、そのいずれの側にも共通するところの、目的のためには手段を選ばないという人間性の否定と救いがたい独善、さらには、寛容と妥協を一切認めない絶対的な敵対感情、これらはすべて民主主義とは全く相いれないものであり、代議制度発達の人類の歴史の歯車を逆に戻させるものであります。(拍手)私は、このような左右の動反動の悪循環を今こそ断ち切ることが、わが国の議会制民主主義を守るための必須の条件と信ずるものであります。しかしてこれがためには、まずもって国会を運営するところの政党みずからが自粛自戒して、少なくとも、多数は少数を尊重し、少数は実力を行使しないという慣行を、相互に何らの留保なしに誓約することが肝要と思うが、多数党の総裁としての池田氏の率直なる所見を伺いたいのであります。
 次に、外交について御質問いたします。安保改定をめぐる苛烈な政争は、一面わが国の議会制民主主義を脅かしましたが、この問題のいま一つの面は、米ソの冷戦が国内に持ち込まれ、わが国内に三十八度線が作られ、民族の団結と国内平和に大きな傷を負わせたことであります。すなわち、パリ四巨頭会談の決裂と冷戦の激化という背景のもとに、岸内閣、自民党はアメリカ追随の日本を、また、社会党は中ソ迎合の日本を、それぞれ外交の路線として確立しようとして、妥協なき抗争をあえてしました。池田首相は施政方針演説において、現行安保体制の堅持を述べ、アイク訪日阻止以来のアメリカとの関係は、小坂外相の派遣と皇太子御夫妻の訪米にはってすでに円満に解決したかの楽観的な見方をして、安保改定の古傷にはなるべく触れまいという態度のようでございますが、パリ頂上会談の決裂を背景として行なわれた岸内閣の強引な新安保強行成立こそ、まさに私が述べましたこの冷戦激化外交の典型的な悪例であるのみならず、その安保強行通過の措置がかえって日米間の永続的な友好と協力に支障を来たしたことは、アメリカの識者も認めているところであります。われわれは、安保条約の廃棄それ自体が独立と平和であるというがごとき、国際情勢の現段階において建設的な安全保障の具体策を無視した暴論には組みしませんが、ウォルター・リップマンも述べている通り、アメリカが日本をいや応なしに軍事同盟に組み入れようとすればするほど、日本国民はかえって中立主義に引かれ、これに傾くのであります。池田首相や小坂外相は、今さら社会党などの中立論が建設的具体案を欠く点を攻撃するためにいたけだかになることはせめて、そのようなことは常識ある国民が判断しているのでございますから、政府としては、なぜ国民が中立主義のムードに傾くのかについて謙虚に反省し、その感情にこびるのではなくて、その戦争に加わりたくないという意のあるところにこたえ、アメリカとの軍事関係は逐次これを薄めること、つまり安保の段階的解消のために努力すべきではないか。この意味からして、わが党は安保問題は終わったものとは考えておりません。むしろ今からこそアメリカとの再交渉によって、自動的応援義務の条項、すなわち第五条のごときものの削除、常時駐留の廃止、少なくとも極東の平和のための駐留条項の削除、核兵器などの事前協議における拒否権の確立、条約期限の短縮などを内容とする改定に努めるべきだと主張するのでありますが、首相の見解を伺いたいのであります。
 いま一つの問題は、日米安保条約の再改定を待つまでもなく、条約の実施にあたっては、かねて与党内からすらも要望のあったごとく、本条約があくまで日本の欲せざる国際紛争にわが国を巻き込むことのないように運用することが肝要であります。特に、米軍出動に関する事前協議については、近く引退するアイクと岸前首相との共同声期では不十分でありますから、日本国内における措置として、事前協議を受けた場合、政府は必ずあらかじめ国会の意見を聞いてから回答するの慣習を確立すべきと思うが、総理の見解を明らかにされたいのであります。
 次に、日米新安保の成立に伴い、わが国の対共産圏外交が一そう重要となったことは言を待たないところであります。首相の言う共産圏からも畏敬される外交とはいかなるものか存じませんけれども、施政演説に示されたところでは、特に中国については、自由国家としての立場も堅持するとか、内政干渉の原則に基づく漸進的な関係の改善等々でございまして、それは事実上、岸内閣の無為傍観と異ならないのではございませんか。民社党は、アメリカ帝国主義は日中両国民共通の敵だというような中立主義にすら反する見方とか、中ソ迎合の外交路線は排撃します。しかし、もっぱらわが国の自主独立の立場に立った平和安全の見地から、アメリカとの協力を肯定しながら、なおかつ、中ソ、特に中共に対して、実質上のアメリカ追随の静観ではなしに、国連における中国代表権は中共に与え、かつ、台湾問題を含めた国問題の平和的解決を国連のワク内で推進するとともに、大陸中国との交流と友好について努力すべきと信ずるが、総理の見解を明らかにされたいのであります。
 私は、次に池田内閣の経済新政策について質問いたしたいと存じます。よって各項目について首相並びに蔵相、経企長官、農相、厚相よりそれぞれお答えを願いたいと存じます。新政策は、年九%の経済成長率を持続すれば、わが国経済の二重構造も賃金格差も地域格差も解消ができ、完全雇用も達成できるという、無責任かつ手放しの楽観論で貫かれております。このような積極施策は、かつての池田積極施策と同様に、インフレと外貨流出のため日ならずして破綻する運命をたどるのではないか。われわれは経済成長率の九%という数字にこだわって論争することは無意味と思いますが、首相は特に近年の卸売物価が安定していたことをあげて、物価騰貴、インフレの生起する心配はないとまで断言されました。しかし、最近消費物価は軒並みに騰貴し、東京小売物価について見れば、本年八月現在ですでに前年同期に比して四・八%高であり、現在すでに六%高に近づきつつあると思うのであります。このままで推移するならば、所得倍増計画は、実は物価三倍計画に落ちつくのではないか。最近の物価値上げは、中小企業の人件費負担の増加、公共料金が平均物価水準より下回っていた事実の是正のはね返りなど、経済構造から見てあながち理由がないわけではありません。さりとて公企業料金などの上昇はもう当然、必然といってしまうのならば、経済成長の犠牲は、結局庶民の消費生活が引き受けることになるのではないか。また政府の物価政策は、いたずらに中小企業のパン屋さんや床屋さんの協定料金いじめに終わることなく、肝心の鉄鋼公販価格や硫安価格の決定にあたって巨大メーカーに対する監督や鉄道、電信などの公共企業における経営改善、料金引き上げの抑制にこそ重点が置かれるべきではないか。このことは、さらに、より根本的な問題としては、経済成長計画を実行するためには、自由放任経済ではだめであり、基幹産業や独占企業に対する公共の管理を強めることが必要なのではございませんか。
 第二にお尋ねしたい点は、資金計画であります。政府の経済成長政策の最大の弱点というよりも、ずるく逃げている点は、財政金融を通ずる資金配分の問題に触れないで、あれもやる、これもやるという大ふろしきを広げている点にあるのであります。もし大企業の設備拡張、これに対応する市中銀行の貸付競争、金融繁忙などをもって高原景気と言っているならば、大企業と中小企業との企業格差はいよいよ広がり、経済成長の不均衡は一そうはなはだしくならざるを得ないのであります。従って経済成長にあたって均衡を保ち、かつ、緩急よろしきを得るためには、資金の計画的配分についての国家機能を強化することが絶対に必要と思いまするが、特に総理、蔵相、経企長官に御意見を伺いたいのであります。
 新政策について第三に伺いたい点は、経済成長と産業構造との関係であります。新政策のおそらく最大の欠点は、前にも述べました通り、経済成長がおのずから構造の格差をも解決するという、無責任かつ非情な自由放任経済論であります。首相はその点を施政方針の中でも大胆に、私はむしろ経済の成長こそ、業種間、地域間の所得格差の縮小を可能にするものと確信するとまで述べられております。すでに物価政策と資金計画の面から、私は新政策が庶民階級と中小企業や農林漁業の犠牲の上に進められていることを述べましたが、さらに新政策が、産業基盤の培養とか、貿易自由化をテコとしての高度加工産業の育成とかいう名目のもとに、公共投資と民間設備投資とが、産業構造の上層に位する大企業から流されていく。その結果、大企業、巨大資本のみが繁栄し、大企業と中小企業、工業と農業の収入の格差、さらに賃金格差は、縮まるどころか、一時的にもせよ拡大するのであります。そうして高度成長の結果、その潤いが下部構造にまで達するころには、貿易の自由化のしわ寄せと相待ちまして、多くの零細商工業や、おくれた農林漁業はすでに破産しているであろうということは、何人も否定できないところと信ずるのであります。そこで政府は、経済成長における経済の体質改善や構造の変革をいかにお考えになっているかを明らかにされたい。また公共投資において中小企業の設備の近代化、その生産性の向上、農林漁業の近代化、その協業化、適正規模化などのために、いかなる程度の資金配分を考えておられるのか、示されたいのであります。
 次に、首相はさきに農村有業人口を十年後には四割に減らせる、あるいは減ると述べられましたが、そうだとすれば、年平均九十万人の農民を他の職場に移すことになるわけであります。かりに、かかることが計数的、物理的に達成可能といたしましても、これが実現のためには、農民の土地に対する愛着からの抵抗、一家離散の苦痛等に対する抵抗、新職場の受け入れ態勢の不備から起こるテンション、農村からの若い労働力の離農、脱農の結果、老人と婦女子のみで経営するところの、依然たる零細規模の低能率農業の姿などの事態を伴うものでございまして、首相の言葉は、貧農切り捨て政策であるという批評も、これは当然と信ずるのであります。首相は、主食増産一点張りでやってきた従来の保守党の農業政策にメスを入れる蛮勇を持ったその意気は壮といたしますが、農林漁業に対する新しいフロンティアとは、第二次、第三次産業との均衡がとれ、さらに国際的水準に位する近代的産業にする画期的施策などという、あり得ない空疎な宣伝、うたい文句だけでは、全く実体が欠けるのではないか。これを伺うと、来年度の予算の内容を見てくれというのでありますが、それでは選挙が済んでおるのではございませんか。
 第四に伺いたいことは、新政策と公共投資、社会保障、減税のいわゆる三本柱との関係についてであります。周知の通り、池田首相は、当初、減税するよりもまずもって社会保障と言われましたが、その後これを改めて、今では大企業中心の公共投資と企業課税の特別措置ばかり幅をきかすところの減税とが主であって、社会保障の改善は、たかだか国保において結核と精神病に限り、かつ世帯主に限り、七割まで給付率を引き上げるという程度に終わってしまったのであります。来年度一千億の社会保障増額のかけ声も、実は三百億円の当然増を除くならば、実質的には二百億円どまりかと思われるのでありますが、それよりも、まず経済成長がすべてであり、社会保障のごときは、経済の基盤が強化した後に考えればいいという、かつての「欲しがりません勝つまでは」の思想に対しては、われわれは限りない怒りを禁じ得ないのであります。むろんわが党も、経済成長などはどうでもいいというのではございません。生産の向上、経済基盤の拡大、これがための公共投資の必要性を容認します。しかし、経済成長は、二重構造の解消と並行して進めらるべきであって、社会保障の充実と中小企業、農林漁業の近代化は、これがため経済成長がたとえおくれても、ぜひとも並行的に取り上げて進めなければならない課題と信ずるのであります。この意味からお尋ねしたいのは社会保障を、新経済政策の中で、また明年度予算編成上、いかに考えられるのか。また、とりあえずあの悪評の高い、そうして社会保障の名に値いしない拠出制国民年金の実施を延期し、さらに完全なものにするための研究をすべきと思うのでありますが、この点をいかにお考えでございましょうか。
 以上、私の述べましたところを要約いたしますならば、第一に、わが国の政治の最大の課題であり、政策前の問題は、民主主義、議会政治の確立であり、これがためには、まず政党が無条件に一切の暴力の行使と暴力による威嚇をやめることから始めるべきであり、総選挙はこの点に対する国民の審判でなければならないということであります。第二に、外交の基本については、なし得る限り超党派的な一致の努力が望ましく、そのためには、まず政府の努力が必要であるとともに、その前提として、自民党、社会党、それぞれ国内冷戦を強めるやり方に反省すべきであります。第三に、池田内閣は、所得倍増論や高原景気のムードを振り回して、羊頭狗肉、いや、牛頭馬肉の新経済政策で選挙を有利に迎えようとしております。わが党はこれと明確に対決して、高度経済成長をはかりながら、わが国の経済の二重構想を改め、まず一千百万に達する低い所得階層を引き上げ、上を押えて、全国民を中産階級化する、思い切った経済、社会の体質改善と、真の福祉国家の建設に当たるものであって、しかも他面、このような根本的改革を、民主社会主義の方法により、暴力や自由の制限ないしは革命によらず、三井三池の悲劇を引き起こさないで実現しようとするにあります。
 わが党は、以上の三本の柱を立てながら、本国会の論議を通じ、国民の前に自民、社会両党との相違点を明確にし、もって来たるべき総選挙を堂々言論戦を、もって戦い抜く決意であることをここに申し述べまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 御質問の第一点の暴力に関すること、暴力は御意見の通り絶対に排撃いたします。しかして今回の事件の背後関係につきましては徹底的に調査を進めております。なお、多数党としての態度につきましては、私の申し上げましたごとく、寛容で忍耐強く、しかも話し合いによって政治を進めていくことに変わりございません。
 第二の外交方針、米国追随、しかも安保条約は日米関係を悪くするという説がある。――私は一部評論家のそれは説でございまして国民の大多数は日米関係がよくなったと考えておるのであります。なお安保条的の改正、変更につきましては、ただいまその考えはございません
 次に経済成長の問題でいろいろ御意見がございましたが、私は実は民主社会党の八・八%の増強の内容を見たいのでございますが、ないのでございます。私は大体われわれと同じことをお考えになっているのではないかと思いますが、お話になりますと、だいぶん違っておるようでございます。お言葉にありました鉄鋼関係、鉄鋼関係は石橋内閣のとき――その前は、やみで一トン十万円しておったのでありますが、石橋内閣の財政政策で、鉄鋼の増産をやったために、今では下がりぎみで三万七、八千円、四万円程度でございます。この事態をごらん下すったらわかると思います。なお、卸売物価はまず十年間はほとんど動いておりません。これが続いていくものだと考えております。小売物価につきましては、先ほど来申し上げておりますように季節的の問題でございまして、たとえば昨年の五月に比べて東京の物価は四、五%上がったといっておりますが、その上がったのは、また今下がりつつありますから、長い目でごらん願いたいと思います。なお、資金の問題につきましては、政府の財政資金と財政投融資の資金につきましては、いずれ御審議願うことと思うのでございまするが、お話のように、資金を大企業に出しておるとおっしゃいますが、財政投融資でどれだけ大企業にいっているか、内容をお調べ下すったらわかると思います。昔は鉄鋼、石炭、造船、電気、この四大種目に出しておりましたが、電気は御承知の通り不足でございますから出します。船舶の方は、これは出しましてもほとんど中小企業が四、五割でございます。そうして鉄鋼には財政投融資は一つも出しておりません。しいていえば、特殊鋼に二、三億か、四、五億出しておるだけで、今は鉄鋼に出しておりません。石炭は百億円前後でございます。去年は七十億くらい、今度ふやしまして百三十億くらい、全体の五、六千億からいったら……。大企業、重点産業はそういう状態でございます。内容をお調べいただきたいと思います。なお、公共投資は、すぐ大企業だというふうにお考えになりますが、公共投資というものは大企業じゃないのです。港湾、道路、鉄道その他ございまして、公共投資は大企業とは関係ないということを一つお考え願いたいと思います。
 なお、所得格差の問題、資金関係の問題でございまするが、ことに御質問の、農民が毎年九十万人と、こういうふうな計算ではない。私は昨日申しましたように、農村の今の状況を見ますると、六百万人程度のうちで約三分の一余りは専業農家、そうしてまた二百三十万の第一次兼業農家、そうしてほとんど農業以外の収入のある第二次兼業農家が百六、七十万、これが所得が三倍、四倍になったとき、一反から二反の田を作っておる人が農家ということは私はできぬように思います。私の農家の減る内容を一つ吟味してから言っていただきたいと思います。なお、離村ということは考えずに、できるだけ農村に工業を持っていって、いわゆる日曜百姓のような農村に持っていく、ある新聞に、農家が、農民が転業するということになると、農村では老人と婦女子だけというふうなことを書いておる新聞がございました。そんな農村じゃない。明るい豊かな農村を作り、そして世界の農村と匹敵し 企業として成り立つ農業をこしらえていこうとするのが念願でございます。(拍手)
   〔国務大臣小坂善太郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申し上げます。
 社会党の皆さんの言われるように、中立主義にむきになって反駁することはないじゃないか、そんなことはできぬことはわかっておるというお話でございました。全体のそうした外交論争で、あまりむきにならぬようなムードを作っていけという建設的な御意見には、まことに私も同感でございます。ただ二つの巨人が相争っておって、何かそういうものから逃避したいと、こういう気持が戦争というものを非常にきらっておる日本国民の底流にあるということは、私もさように考えるのでありますが、ただそうした場合に、日本の現在置かれておる極東における諸種の環境、あるいは日本国自身の持つ、すでに高い文化的、経済的な内容、そういうものを、しかも大勢の国民のいるこの日本国民の構成しておる日本、こういうものがそのままほっておかれるだろうかということに対しましての認識が、なかなかむずかしい問題だと思います。私は、外交上の問題は、実は事実は一つしかないと思うのでありますが、これに対する批判が実に千差万別であるというところに日本の一つの大きな問題があると思いまして、そうした問題についてはできるだけ事実をお話し申し上げまして、その上で建設的な御論議をお願いするようにいたしたいと考えておるのであります。
 安保条約に関する問題は、すでに総理大臣から御答弁がありましたように、われわれはこれに対していじる考えは持っておりません。(拍手)
   〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(迫水久常君) 経済に関する問題につきましては、すでに総理大臣が御答弁になりまして、私から特に申し上げることはないと思います。ただ、曾祢君のお話の中に、資金統制と申しますか、金融統制をやるべきではないかというふうに聞きとれるお言葉がございましたけれども、そういうことは私どもの方は全然考えていないということを申し上げて御答弁といたします。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(水田三喜男君) 来年度の社会保障費の御質問でございましたが、施政方針で総理が述べられましたように、社会保障には格段の画期的な力を入れるということになっておりまして、問題は、予算額を幾らにするかということではございませんで、どういう社会保障の内容の強化の仕方をするかという問題から額が決定されてくる問題だと思っておりますが、今年、三十五年度の予算額は、全体の約一二%という割合になっておりますが、来年度はおそらく総予算に対するこの割合も相当ふえるのではないかという気がいたします。今この問題は、まだ本格的に来年度予算編成に入っておりませんので、今私どもは検討中でございますが、来年度は相当大幅の増加になると考えております。(拍手)
   〔国務大臣南條徳男君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(南條徳男君) 御質問にお答えいたしますが、農林省といたしましては、小売物価、消費物価の値上がりについてのいろいろな御質問がございましだけれども、ただいま総理大臣から御答弁のように、季節的なものがありましたが、最近においては、魚介類でも蔬菜類でもむしろ暴落いたして、この状態をどうささえるかというような状態になっておる次第でございます。家畜につきましても、豚肉が昨年から比べますと相当値上がりいたしましたが、これも緊急輸入等いたしまして、この価格も目下下落しつつある状態は御承知だと思うのであります。先般、パンその他うどん等の値上がりがございましたので、これは実は先月製粉業者が約三%と申しますか、一袋で二十五円の価格の値上がりを発表いたしましてこれが相当小売市場に影響するだろうと思いましたので、業者に協力を求めまして、先般この値上げの二十五円を値下げさせることにいたしました。かような措置をとっておる次第でございます。また、硫安の価格についての御質問がございまして、何か生産者に対する偏向的な価格のきめ方をして、農民に対してその所得をかえって減らすような措置ではないかという御懸念のようでございますが、絶対さようなことはございません。今日もこの硫安の価格審議会を開いておりますが、政府としては、先般バルク・ラインを指示いたしまして、農民の立場を考えて、今年、三十五年度の価格は三十一円七十二銭ということにきめまして、きょうの審議会にこれを諮っておるような次第であります。むしろ農民のためには非常なサービスをしたつもりの価格を諮問しておる次第でございます。
 貿易の自由化に伴って農産物が非常な悪影響を受けるのではないかという御質問、ごもっともでございます。従って、すでに政府としては発表いたしおりますが、米あるいは麦その他酪農製品等のような非常に低生産性のものにつきましては、農産物価格の自由化は一番最後でなければならない。従ってこれらのものが将来自由化するためには、農業の体質を改善いたしまして、この通常国会に御審議を願うところの農業基本法等の中にも十分これらに対する、農民の繁栄をもたらすような、また生産性を向上するような措置をいたしまして、しかる後に最後にこれらの問題に触れたいというのでございますから、決して御心配はないと思うのでございます。以上御答弁といたします。(拍手)
   〔国務大臣中山マサ君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(中山マサ君) 政府の社会保障に対する態度が変わったのではないかという御心配のようでございましたが、わが総理大臣におきましては、私はずっとお供をして遊説として歩いておりましたが、いずこにおきましても、減税、公共投融資、社会保障というものは三本の柱、すなわち、かなえの三本の柱である、だから、これが一本でも欠けたならば池田内閣の施策というものは完全なものではないと、国民にお約束をなさいましたのでございまするから、曾祢議員にはどうぞ御安心を願いたいと私は存じております。それで、社会保障費の新政策に占める地位はどうかという御質問でございましたが、これまた、わが厚生省におきまするところのいろいろなるパーセンテージのページをお開きいただきますれば、自然、毎年逐次パーセンテージは上がっているということが、賢明なる曾祢議員にはおわかりいだだけると私は思うのでございます。結局、所得倍増論というのがわが内閣のこれは大いなる柱でございまするから、御心配のように所得倍増のできない層もあるということでございまするので、この人たちのためにも、厚生省といたしまして政治のバランスをとるために私どもはがんばっておるのでございますから 必ずや御満足いただけるようになる、かように思うのでございます。
 国民年金の問題でございまするが、私が申し上げるまでもなく、この国民年金制度というものは所得を獲得するところの制度でございまして、いわゆる社会党の方々にも、また社民党のお方々……。(笑声)民社でございますか、そのお方々、及び学者のお方々をもって構成するところの社会保障制度審議会におきましてこれが御検討をいただきましたのに基づきまして、わが党がこれを国会に提出をいたしまして、三十四年の国会におきまして十分なる御審議をいただき、そうして国会を通過いたしたのでございますが、国会の御意思に従って私どもはこれを進めていく考え方でございます。いわゆる巷間伝えるところによりますれば、民主的といわれるところの総評、社会党、民社党におきましては、これを延期せよという御意見がございますが、それは国会軽視ではなかろうかと私は考えております。(拍手)そういうわけでございますから、私ども国会尊重を唱えている議員におきましては、これを国会の意思に沿うていくことが私は当然のことであろうと思います。しかし、巷間言っておりますように、人が死んだときに、それならばどうするか。かけ捨てをきらうという、これは人間のあたりまえの考え方でございまするが、この問題につきまして、一時の死亡年金を、一時年金の制度にしようということを考えております。御承知の通り、これにいわゆる農民、漁民あるいは中小企業の被用者にとりましては、全然年金制度がないのでございまするから、こういう階層のために考えられた問題でございまして、死亡一時金制度を創設する。また、六十五まではなかなか生きられないかもしれないという方々もございますので、御希望によりましては六十才から六十四才までは、これは減額にはなりますけれども、年金制度をそこから減額支給をしようという考え方でおります。そうなって参りますと、この死亡一時金制度につきましては、母子年金もここから出るようになりますし、あるいは母のない家庭でございましたならば遺児年金も出るようになって参りますし、障害年金も出て参りまするので、私はいわゆるこういう気の毒な階層のために政治をするということが最もよい政治であろうかと存じております。それで、三年かけていなければならないというこの問題も、あまり長くはないかというので、これも何とかして短縮すべきではなかろうかと、かように考えておりまするので、国会解散後新しい国会におきましてこういう問題を提出いたしまして、皆様方の御審議をいただいて、国民の幸福のために当たることを考えておりますることを申し上げて、御答弁といたします。(拍手)
#22
○副議長(平井太郎君) 北條雋八君。
   〔北條雋八君登壇、拍手〕
#23
○北條雋八君 私は、質問するに先立ちまして、去る十二日に惜しくも凶刃に倒れられました社会党委員長淺沼稻次郎君の御逝去に対しまして、衷心より哀悼の意を表し、つつしんで御冥福をお祈りするものでございます。
 さて私は、昨日行なわれました池田総理大臣の施政演説並びに閣僚の演説に対しまして質問したいと思います。
 質問の第一は、暴力の追放と議会政治の擁護についてであります。去る十二日、三党首公開演説会場において淺沼委員長が凶刃に倒れましたことは、党派に対する感情をこえて、国民あげての怒りであり一大痛恨事であります。たび重なるテロ事件の横行に対し、政府並びに取り締まり当局に対して、強くその責任を追及するものでございます。特に、淺沼事件は、総選挙を直前に控え、三党首がそれぞれ政策を発表して信を国民に問う、第一回の、しかも公開の演説会場において起こり、かつ、一未成年者の犯行の裏には、その背後に糸を引く黒幕の存在を全国民に思わしめておることは、事きわめて重大だと思います。他の主義主張に耳をかさず、問答無用的の直接行動は、民主主義を否定し一議会政治を破壊する民衆の敵であると思います。今こそ、現在の世相にひそむ、人命を軽視し、暴力行為を英雄化する険悪なる風潮に対しまして、政府は全力を傾倒してその根源を徹底的に糾明し、万全の策を講じて、淺沼君の死を意義あらしむべきことと固く信じます。暴力追放は、岸内閣の三悪追放の一つとして取り上げられた問題でありますが、追放どころか激増しておることは、まことに憂慮にたえません。その弊風一掃のためには、国会はもちろん、家庭、学校、職場、社会を通じ、環境を正すこともに、国民全体の責任と反省によりまして道義の高揚をはからねばならないと思います。国権の最高機関たる国会における過去幾たびかの乱闘事件も、「下、上にならう」のたとえのごとく、大衆に暴力容認の思想を醸成、助長したことは明らかであります。院内における実力行使はもちろん、審議権の放棄、数で押し切る単独審議、単独採決等の、形こそ変われ、暴力の一つと見るべきと思います。無理が無理を生む悪循環は、この際、断ち切らねばなりません。国民に垂範すべき国会議員上る者は、まずもって自粛自戒し、与党は大政党の矜持をもって野党に対し、説得と納得で協力を求め、野党もまた 寛容と妥協の精神を堅持して、あくまで法と秩序のワク内で行動を律し、党派の別なく順法精神に徹して、民主主義本来の姿に立ち返らせるよう、互いに最善の努力を尽くすべきときだと思います。そこで、次の四点について質問いたします。
 第一は、池田総理は、十八日の淺沼委員長に対する追悼演説の中で、暴力は共通の敵であるとして、これを根絶することを誓いの言葉とされております。私も同感でありますが、言葉のしたけでなく、あくまでも具体的にかつ強力に実行されることを心から切望してやみません。国民もこの点を大いに注視しておると思います。今や、暴力追放の声が全国に満ち満ちておるとき、国民が最も聞きたいのは、暴力はなぜ起こるのか、暴力はいかにして追放すべきであるかという点でございます。総理は、暴力を追放するため、全国民の不退転の決意が云々という言葉で、全国民的規模で暴力追放を実現せんと考えておるようであります。その具体的内容はしからば何であるのかを、この際、総理よりはっきり承りたいと思うのでございます。
 第二は、議会政治の擁護は、まず、自民、社会両党を初め、各党派がともに協力して審議に最善を尽くすことから始まると思うのであります。しかるに、この機会に当然各党一致で議決されてしかるべき暴力排除決議案すら、自民、社会両党間で、集団暴力の字句を決議案の文面上に表現するかどうかということについてもんちゃくを起こし、いまだにまとまりません。この一事によっても、両党間の感情的、政略的対立抗争意識は今なお強く、妥協協調の精神に沿って歩み寄りの気配が見えませんのは、まことに残念でたまりません。このような情勢下で、議会政治擁護のため特に与党総裁としていかなる新方策をもって臨まれますか。総理よりお答え願います。
 第三は、淺沼事件について治安当局に警備上手落ちの責任があったこと、及び責任者の処置について、選挙対策上、警察行政の中立性を侵害するがごとき言動のあったことについては、まことに遺憾であります。責任の所在を明らかにし、国民に納得させることは、将来のため当然でありますが、事件発生後の今日、国民の最も願望するところは、再びこのような事件を絶対起こさせないという治安当局の確信ある言明と謙虚な態度であると考えます。今後の心がまえと対策について、国家公安委員長より確信ある御答弁を願いたいと思います。
 第四は、右翼団体との関係についてであります。今回の淺沼事件につきまして背後関係があるということは国民大部分の観察であり、国民は治安当局の背後関係の糾明について、非常な期待を持ってその結果を注視しております。政府の取り締まりは、左翼にきびしく、右翼に手ぬるいとか、右翼の暴力団には自民党から資金が出ているかという風評すらあります。かって自民党議員がボスの葬式に花輪を呈し、国民のひんしゅくを買いました。個人、党を問わず、暴力団、ボスとのつながり、特に資金的つながりがあるとの疑惑一掃のため、政府はこの際、本事件を徹底的に糾明し、その潔白を立証する必要があると信じます。総理及び党の総裁として、池田首相より明確なる御答弁を願いたいと思います。
 質問の第二は、公職選挙法の改正であります。昨年六月、前内閣は、三十四年第五回参議院通常選挙における目に余る買収行為等に対するきびしい世論の批判にこたえてか、安保改定、所得倍増計画とともに、公職選挙法の改定を三大公約の一つとして明確に国民に約束されたのであります。昨年十月より、選挙制度調査会等の審議を経て、一成案を得たようでありましたが、その後変則国会に突入したため、これが実現を見るに至らず、ようやくにして、先ごろ来、衆議院公選法改正特別委員会におきまして、自民、社会、民社三者共同のもとに慎重審議を重ねたと称するものの、実際は二転、三転の醜態を重ねまして、しかもその内容たるや、国民の期待しているものとはおよそかけ離れたものでありまして、むしろ改悪的な傾向すら示しており、たわいもない妥協案とか、あるいは原始的な連呼法などと、国民の非難を受けております。国民の真に期待するものは、かような枝葉末節の改訂ではなく、買収行為等の絶無を期し、腐敗堕落せる選挙を明るくし、正しくして真に国家国民を思う、高邁にして有能なる人材の選出を願っておるものと思います。以下、選挙法改正の根本対策であり、国民が疑惑の目で見ておる次の二点についてお伺いいたします。
 第一は、金のかからぬ選挙を実現する一手段としては、まず政治資金規正法の改正であろうと思います。自治省発表による昭和三十二年以降の二大政党の政治資金収支状況を見ますのに、自民党は、三十二年、五億五千三百万円、三十三年、十四億五千七百万円、三十四年、十七億八千二百万円、また社会党は、三十二年、九千二百万円、三十三年、二億四千五百万円、三十四年、一億八千万円、かくのごとき数字となって現われております。この莫大な費用といえども実際は氷山の一角にすぎないのであります。しかしてその支出の大半は、公認料、貸付金、陣中見舞等の名義で、所属候補者に渡す軍資金となり、かくして買収の温床となることは、国民周知の事実でございます。金で選挙に勝ち、金で政権をとるならば、まさしくこれ利権政治であり、金権政治であると言えましょう。このようなことは、政治家のあるべき姿ではなく、また、政治は絶対にそうあってはならないと思います。また、政治はかくのごとき腐敗せるものとは決して考えないのでございます。かような幾多の不合理な点を見受けられる政治資金の規正に、今まで手をつけない政府与党のほおかぶり的態度は、いかなる理由に基づくのか。また、将来いかように改正するのか。池田総理大臣並びに自治大臣の御意見と御構想を伺います。
 第二は、連座制の強化についてであります。およそ総括主宰者や出納責任者は、その候補者の選挙運動に対し候補者より全幅の信頼を得て依頼された責任者であり、参謀であります。かような地位にある人が、たとえ善意にあれ悪意であれ、買収等の選挙違反を犯した場合は、候補者自身においてまず責任を国民に対してとるべきであろうと思います。総括責任者が多額の買収違反をなしているにもかかわらず、候補者か涼しい顔をして議席を得ることは、国民を欺瞞することもはなはだしく、議会の恥であると思います。過去幾たびかの例を見ましても、この種違反は新聞をにぎわしております。連座制を強化することは公明選挙への一歩前進であると思いますが、自治大臣の御意見はどうですか、お尋ねいたします。
 質問の第三は農林政策でありますが、いまだ予算の裏づけもなく、時間もありませんから、次の点だけお尋ねいたします。
 第一点、わが国の農家人口は全人口の三九%で、農業総生産は国民総生産の一三%であります。また、一般産業に対する農家所得は二分の一以下の低率で、従業者一人当たり所得は、製造業従事者の三四%であります。これは農家人口の過剰と経営規模の零細によるところが大きな原因であります。池田総理大臣は、高い経済成長が続けば、毎年七、八十万人の労働力を農村に求めなければならないので、十年間には六割ぐらい農家人口は減るだろう、さすれば単位労働当たりの所得の分配も当然ふえるという見解で、経済成長さえあれば、農業部門における所得格差の問題も、経営規模を拡大するという問題も解決できるという考えであります。しかし、農業就業人口は、昭和二十五年から三十年の五カ年間で、年に二十五万人、年率一・六%の滅で、この調子でいけば、十年後農業就業人口は約一千百七十万人となりまして、二割減で、六割減には、はるかに及ばないのであります。内容から言っても、青壮年が離農すれば、老人と女子がこれにかわって働きますから、就業人口を減らすためには、農家戸数の減少をはからなければなりません。しかるに昭和二十五年ないし三十年の五カ年間では〇・九%の減で、農業就業人口ほど減少しない実情であります。従って、この計画を推進するために、農村工業の振興、一般産業の地方分散、職業の補導・移民の推進、また、現行農地法による農地所有制限を緩和し、共同経営または法人化のための現行法の改正、その他特別な施策を講じなければならないと思いますが、これに対しまして農林大臣はいかなる具体策を持っておられるか、お示し願いたいと思います。
 第二点は、現在まで離農しても、雇用条件が悪く、低所得で、将来への不安から、飯米自給のため最小限度の農地は最後まで手離さない傾向であります。第二兼業農家として存続し、農家戸数の減少はなかなか容易なことではないと思います。就職先における将来の生活の保証がなければ、農業就業人口及び農家戸数の減少を期待し、推進することは、農家を自滅の道に追いやるにひとしく、きわめて危険と思います。農林大臣は、離農する農民に対する施策として、いかなる点を考慮に入れておられますか伺いたい。
 第三点は、移民は池田政策遂行のためにはきわめて重要かつ密接の関係を持っておるものであります。これまでも国策の一つとして重視されてきたにもかかわらず、実績は、昭和三十四年度送り出し計画一万人に対し、公募による移住者は計画の三分の一という低調ぶりであります。これは移民行政機構が複雑で総合性を欠き、運営が合理的でなく、移住者に対する援護、特に財産の処理、資金融資の不十分、現地受け入れ体制の不備など幾多の欠陥、隘路があります。これらについては、先月行政管理庁が移住行政について監査の結果を外務、農林両省に勧告しておる通りであります。移住促進のため、従来の棄民政策を改め、今後いかなる積極政策を講ぜられんとするか。また池田政策にはきわめて密接な関係のある移住問題が大きく取り上げられていないのは、移住政策を軽視しておるのではないか。この点、外務大臣、農林大臣よりお答えを願います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 暴力を排撃することは先ほど来申し上げた通りでございまして、私は、教育その他各方面から、暴力を排除しなければならぬという、国民一人々々の気持を起こしていただくようにすることと、また治安関係につきましては、警備技術の改善とか警察機構等につきましてもう少し検討していって、何とか各方面から一つ暴力排撃の手段を講じていきたいと考えております。
 議会政治のあり方につきましては、たびたび申し上げておるように、われわれ多数党はあくまで寛容で忍耐強く、話し合いによって事を運んでいくという考えでございます。
 また、今回のテロリストと自民党の関係、これは絶対にございませんから、さよう御了承願いたいと思います。明るい、正しい、金のかからない選挙、これはお話の通りでございまして、連座制につきましても、また政治資金規正法につきましても、今後私は検討していきたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。
 まず第一のお尋ねは、このたびの暴力の起因するところはどこにあるかということと、これに対処する所信を伺いたいということであります。
 このたびの淺沼事件というものは、まことに遺憾千万でありまして、私ども淺沼氏に対しては深く哀悼の意を表するのでありますが、その起こった事柄というものは、私は単なる現象形態たけ追って右翼暴力をどうするかということ、これは応急措置としては当然考えなければなりませんが、その起因するところは深いものがあると私は考えております。これは、戦後における教育問題、あるいは社会秩序、集団社会というものの秩序はいかに乱されているか、主張を通すためには手段を選ばぬというような考え方なり、そういうことが起こって参ったということは、これは影響なしと言われないのであります。ことに、また大きく考えますと、やはり戦後における左右両翼の動きというものがおのずから激しい対立関係になってきておるということも、こういう影響、こういう結果を起こした一つの原因だと思います。私どもは、そういうことを正すためには、まず政治家は与党野党を問わず、また特に国民全般、指導者階級にある言論界、新聞界、学界、財界、そうしてまた労働階級におきましても、暴力はいけないのだということの認識を深めたいと思うのであります。今日のごとく集団暴力はよろしい、憲法の認むる大衆行動から出ているんだと言いますが、そういう誤った考えということは、やはり右翼に対するこういうテロ行為を激発する問題になると思うのであります。(拍手)憲法は明らかに大衆行動によって請願の自由を認めておりますけれども、しかしながら、大衆行動によって鎖をもって衆議院の門を破壊したり、自動車を焼くということは、憲法では決して保障はしておりません。(拍手)私どもは断じて右翼のテロは排撃する覚悟を持っておりまするのでありますから、社会党の皆さんも、左翼に対しましても同じく集団暴力を絶対に排撃するということに同調していただきたい。私ども将来に向かっては、これからの国民の盛り上がり、暴力に対する排撃の考え方をもとにいたしまして処置をいたしていきたいと考えております。
 それから、応急の措置といたしまして今後どうするかということでありますが、あの問題の起こりまして後、直ちに全国警察に対してとりあえず緊急通達を出しております。それにつきましては、第一は、危険のある右翼人物及びその組織に対する視察内偵を強化すること、それから右翼指導者の言動とその影響に対する内偵を強化するということ、銃砲刀剣所持等取り締まりの強化をするということ、それから、ことに右翼暴力の対象となるおそれのある人々に対しましても身辺の警戒を強化いたします。ことにそれは、御当人がお断わりになれば別のことでありますが、総評その他の方々は大体お望みでありますようでありまして、これらに対しても警戒をやります。また、このたびの総選挙に臨みましては、選挙演説等におきましては、要求に応じまして、私服なりあるいは警察官を配置いたしまして、こういうことの二度と発生しないように私どもは努力をいたしたいと思っております。
 次のお尋ねは公職選挙法に関してであります。公職選挙法に関しましては御指摘の通りこの前決議もございました。自来、公職選挙法改正委員会ができて、いろいろと研究いたしておりましたが、今日までその成案ができなくて、この国会におきましても間に合いません。残念ながら出すことはできませんが、お話にありましたように、第一点、金のかからない選挙を行なうために政治資金規正法の改正をということであります。私どもこれに対しては賛成でありますが、これに対しましてはいろいろと問題が多いのでありまして、その立法の内容につきましては、さらに深く検討をいたしまして立案を進めたいと思います。第二に連座制を強化する考えはないかということでございます。これにつきましては、一口に連座制の強化と申しますが、これに対しては連座の原因の拡張ということが問題になります。その内容といたしましては、連座の原因となるべき犯罪の範囲の拡張とか、あるいは連座の原因となる犯罪行為者の範囲の拡張とか、免責事由の撤廃とか、いろいろございますが、いずれもこの場合は、普通の場合における刑事責任を負わす場合における処置としてかなり問題がありますので、どの範囲に、どういうことを連座制の中に取り入れるかということにつきましては、根本的にさらに調査を重ねました上に立案をいたしたいと、かように考えております。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣南條徳男君登壇、拍手〕
#26
○国務大臣(南條徳男君) 北條議員にお答えいたしますが、御質問の要旨は、今日の最も他産業と格差のある農村、多数の農民に対する将来の生活の安定、希望をどう考えるか。それに従って離農移住対策についてはどうかという御質問のようであります。北条議員からお話がありましたように、これに対する対策といたしましては、政府としては全く同感でございまして、特に農林漁業基本問題調査会におきまして最近答申がありましたので、この内容に基づくところの農業基本法案を通常国会に提案いたしたいという考えでございます。この内容につきましては他の機会にまた詳細に申し上げることがございますが、ただいま北條議員からもあげられたような、日本の農村の人口が非常に過剰であって、しかも一戸当たりの営農規模が非常に小さい。二反歩、三反歩というような農家が約五割、五反歩以下が四割もあるというような状態でございまして、かようなことが日本の農業の生産性を低め、また、他産業との所得の格差を著しく大きくしているものと思うのでございます。従って、今後はこれらに対しましては、十分この経営規模を拡大するような措置をとり、従って自然に他産業に流るる離農者に対しましては、職業訓練所あるいは広域職業あっせん所というようなものを拡充いたしまして、十分手厚いところの措置をしたいと考えるのでございますが、特にこの移住のための離農という問題について、移住政策はある意味においてはまことに非常に大きな高度の政策でございまして、一面、農家の青少年が大きな希望をもって新らしい天地を切り開くというところの、新らしいこの農村に対する政策でございます。また同時に、このことが営農規模を拡大するということにもマッチするわけでございますので、政府といたしましては移住審議会というものを内閣に作りまして、十分この点に対する検討をいたしておるので、最近におきましては、お説のように、非常に計画よりも少ない移民が送り出されておるということでございますけれども、昨年度は七千六百有余人でございましたが、今年度におきましては相当上回わりまして、所定の一方人以上の送り出しができるという見通しでおる次第でございます。これらに対する中央、地方の組織がいろいろ行管等から指摘されておるような面もございますが、かような点は十分政府といたしましても改善に努めている次第でございまして今後とも十分送り出しを達成するようにしたいと思っておるのでございます。
 また、この農家経済の安定のために、離農者に対する法制上の処置につきましても、今まで土地の所有ということに対する制約がございました。これは一部農地法の改正ということをも考えねばならぬというのでございまして、農業法人等が国会で審議をされているゆえんのものも、さようなことを考えて、この通常国会におきましては、農業基本法案の中に織り込みながら、かような点を考えたいと思うのでございます。さような観点から、政府といたしましては、十分経済の成長率に見合わせまして、そうして社会的にも経済的にも農民の地位を確保するような施策をとりたいと考えておるのであります。以上。(拍手)
   〔国務大臣小板書太郎君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(小坂善太郎君) 移住政策につきましては、昨日も申し上げた中に述べたのでありますが、中南米との経済協力ということにつきまして特に重点を置いて申し述べたつもりでございますが、御承知のようにラ米諸国におきまして現在五十万人からの日本人あるいは日系人がおりまして、諸種の活動をしておるのであります。われわれは今後におきまして単に農業のみならず経済協力あるいは技術協力の面におきまして、このラ米諸国におきまして非常に日本の経済的なあるいは技術的な実力というものを高く評価していただいておりますので、大いにそうした面からも移住政策を進めまして、南米諸国との間に経済的な協力を通じて、双方の国の繁栄に役立つようなそうした立場から進めて参りたいと、かように考えておるのであります。
 なお、まだ調印前でございますが、あるラ米諸国の中の国と近く移住協定を結びまして、さらにこういうことの移住が画期的に進むことが期待されておるのであります。全般的に年間一万人以上の移住者を送り出すということが進んでおりますととは、ただいま農林大臣からのお話によって明らかな通りであります。以上をもって終わります。(拍手)
#28
○副議長(平井太郎君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#29
○副議長(平井太郎君) 御異議ないと認めます。
 次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十七分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、議員大沢雄一君辞職の件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
ソース: 国立国会図書館
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