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1960/10/23 第36回国会 参議院 参議院会議録情報 第036回国会 本会議 第5号
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1960/10/23 第36回国会 参議院

参議院会議録情報 第036回国会 本会議 第5号

#1
第036回国会 本会議 第5号
昭和三十五年十月二十三日(日曜日)
   午前十時三十九分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五号
  昭和三十五年十月二十三日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第三日)。
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。大竹平八郎君。
   〔大竹平八郎君登壇、拍手〕
#3
○大竹平八郎君 私は、参議院同志会を代表いたしまして、池田総理大臣並びに関係諸大臣に対しまして、若干の質問をいたしたいと思いますが、昨日の政府側の答弁を拝聴いたしておりますと、総選挙の決戦場を控えておるためか、おしなべて答弁がいかにも挑戦的のように、中立でありますわれわれにも印象づけられるのであります。(拍手)どうぞ大政党の襟度をお示し下さいまして、冷静に、しかも懇切に御答弁を願いたいと存ずる次第であります。
 私は、それより先に、去る十二日、日比谷公会堂におきまして三党首立会演説会の席上、凶刃に倒れられました淺沼社会党委員長の霊に対しまして、参議院同志会一同を代表して、深く哀悼の意を表する次第であります。知は、弱冠のころ、社会運動に関係ある仕事をいたしておりました立場から、淺沼委員長とは日本労農党創立当初より接触をいたしており、従いまして、同君の辺幅を飾らず、しかも富貴を求めず、ただただ一途に社会運動に没頭されてきましたことに対しまして、限りなき敬意を表しておるものであります。(拍手)今日幽明ところを異にいたしまして、今やあの温容に接することのできなくなりましたことは遺憾のきわみでございましてここに同君のありし日をしのびまして、衷心よりその御冥福を祈る次第であります。
 私は、大正末期から昭和初めにかけて起きました無産党あるいは大労働争議につきまして、必ずというほど、その指導者に対するテロのいろいろな事件をこの目で見てきたのであります。ことに忘れようとして忘れることのできないのは、当時労農党の代議士でございました友人山本宣治君が、神田の止宿先で東大七生社の一学生のために刺殺をされた事件でございます。さらに、労農党が政府によって解散を命ぜられ、当時山陰地方に遊説中でございました党首大山郁夫、水谷長三郎君が急遽帰京をいたしまして、東京駅頭において右翼団体の鉄心会の壮年に襲撃をせられた事件でございます。そのとき警察は、ホームに党員一人入ることを許しません。制私服警官と右翼団体によってホームは一ぱいになり、それに包囲せられましたのを私は見かねまして、大山、水谷両氏をかばい、三人でさんざん右翼の鉄拳を浴び、命からがら虎口を脱したことが、いまだに記憶になまなましいのであります。また私個人といたしまして、終戦後、武装の連合軍憲兵に、ある行き違いから暴力を振われ、歯を数本折られ、しかも拳銃でまさに一命を奪われんとした体験を持っておりますので、従って、暴力はその左右を問わず、また、その国の内外を問わず、絶対に根絶をしなければならないと高く叫ぶ一人でございます。そこで、この民主主義をまっこうから破壊する忌まわしきこの事件に関しまして、関係大臣に少しくお尋ねをいたしたいと思います。
 去る十八日、衆議院本会議席上、池田総理大臣の淺沼委員長追悼の演説は、国会史上おそらく特筆すべき内容のものであり、また、総理の態度といい、議場の厳粛なる空気といい、その与野党に与えました感銘というものは非常なものと思うのであります。また、それだけに、こうしたテロ事件の善後処置がいかに重要であるかは、あらためて言を要しないところであります。この事件についての警備上の問題や、右翼団体に対する取り締まり等の問題は、緊急措置としてすでに政府としてはそれぞれ対処し、また、大いに本国会を通じて検討究明せられておるのでありまするが、私は、そうした当面の問題とともに、さらにさかのぼって、日本にテロ行為、直接行為がなぜこうも多いかについて、日本人全体として大いに検討するの必要があると思うのであります。わずか十七才の少年がこの大事件を起こしたことは、おそらく何人かに教唆されたであろうと思うのであります。しかし、いかに教唆されましても、これを行動に起こすような思慮の浅い少年のあることをまず考えねばならないのであります。従いまして、青少年の教育については大いに反省の必要があるのであります。戦後になって、人権の尊重、人命の尊重が説かれてはおりますが、はたしてよく徹底いたしておりましょうか、自分の人権は主張し、自分の生命は大切にいたしましても、他人の人権を尊重し、他人の人命を尊重することの大切なことを忘れてはいないのでありましょうか。社会生活が多数の協同生活によって成り立っていて、各人が自分の主張だけを通そうといたしまするならば社会の秩序が保てないことを、はたして自覚をいたしておりましょうか。青少年の教育につきまして、荒木文部大臣にお伺いをいたします。
 それから、わが国ではまだ人命をあまりに軽く見る風潮が多いのでございます。芝居、テレビ、ラジオ、映画等のマス・コミに乗る殺人のいかに多いかは御承知の通りであります。そして、殺す方が非常に英雄視されるような傾向さえあるのであります。殺人というような、法律でも道徳でも禁止をいたしておりますことが、興味をもって見られ、英雄視されるような誤った環境が、思慮の浅い青少年の血なまぐさい犯罪を育てることになりはしないか、まことに憂うべき問題であります。そこで、この際、ぜひ私は、根絶いたしたいことは、プラカードに「岸を殺せ」、「何某を消せ」などの激越な字句がいかに左右青少年を刺激するかを、指導者は十分に留意し、再びこういう文字が街頭に出ないようお願いする次第であります。
 次に犯罪に対するところの不感症という問題でありますが、法を破って当然というような教育や思潮が流れてはいないでありましょうか、まことに疑わざるを得ません。神聖な法廷を大衆によって威圧するような状況が、戦後しばしば見られるところでございます。順法精神の高揚と法の権威を確立することが肝要であることを痛感いたすものでありますが、総理並びに法務大臣の御見解を承りたいと思います。
 往年、犬養総理大臣は、いわゆる五・一五事件によりまして、白昼総理大臣官邸において暗殺をせられましたとき、「問答無用」と言われ、「話せばわかる」と言った言葉は、あまりに有名であります。われわれは、この言葉を冷静にかみしめることが大切と思います。すなわち、「問答無用」の考え方は議会主義の否定であり、直接暴力に訴えることであります。相手を説得する力のないものが暴力に訴えて自己の主張を通そうとするときの言葉でございます。話し合いによって物事を解決するところに議会主義の根本があります。ところが現在の日本は、あまりに問答無用論が多いのではないでしょうか。多数党は多数にものをいわせて「問答無用」を振りかざし、少数党は説得力の不足を実力によってカバーするきらいはないでありましょうか。お互いに反省すべきであると思います。池田内閣は、組閣以来きわめて低姿勢をとり、忍耐と寛容を説いておりますが、多数党から私はまずその範を示すべきであると思います。もって日本人に自由寛容の精神を高揚させるよう努力すべきであると思うのでございますが、この際、特に池田総理大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
 次に、少しく当面の経済問題につきましてお伺いをいたします。
 まず貿易・為替の自由化についてであります。政府は去る六月二十四日に「貿易為替自由化大綱」を発表いたしました。これは岸内閣当時ではございますが、今般の施政演説の中にも高く述べられておりますので、あえてお尋ねをいたすわけでございます。貿易の自由化が発表せられました当時、この大綱に対してあまりに抽象的であって具体性を持たないといわれていたのであります。一月にこの計画の発表を予約いたしたときは、かなり詳細なスケジュールを発表するよう言明していたのでございますが、発表された大綱は、その肝心な商品別自由化計画において、早期に自由化するもの、近い将来に自由化するもの、時日をかけて自由化するもの、自由化は相当期間困難なものの四つのグループに分けておりますが、明確に時期を限ったものは、繊維原料の自由化を明年四月から実施するというだけでございます。これに対し、一部には、自由化恐怖論、自由化尚早論に牽制をせられて、自由化は後退したと言う者もあったほどでございます。国内的の面からだけ見まするならば、あるいは後退さした方がよいかもしれませんが、問題は、国際的に見てこれでよいかということでございます。国際経済社会の一員といたしまして、IMFやガットの非難を浴びぬことが肝心でございます。最近IMFの総会に出席をして帰国をいたしました水田大蔵大臣は、わが国も明年は国際収支上の理由からする為替制限は許されず、西独やイタリアのような勧告を受けることになろうという印象を受けたと私は聞いております。そういたしますると、自由化計画はその際に急速に時期を短縮していかねばならなくなるかもしれません。そうなりますというと、早くから三カ年八〇%自由化の線で進むと称し、経済界を震憾さしていたのが、一時後退したごとく歩調をゆるめ、さらにまた再び急速に自由化をするというので、経済界は右往左往することになりますが、この際、政府は確固たる具体的な自由化計画を立てるべきではないでしょうか。特に池田総理の御説明を願いたいと思うのであります。また水田大蔵大臣からは、三カ年間八〇%自由化でよいのかどうか。それを早める必要はないか。IMFの印象をこの際明確にしていただきたいと思います。一方、石井通産大臣にお伺いをいたします。自由化計画がいかに現在実施せられつつあるか。ことに、早期あるいは近い将来の自由化物資は、すでに自由化の準備ができておるかどうか。さらに加えまして、今後の自由化実施計画の順序を明らかにして、経済界全体に自由化の指針を明確に示していただきたいと、かように考えるのであります。
 次に物価問題と独禁法に関してお尋ねをいたします。小売物価が上昇しておりますることは、いかに政府が御答弁ございましても、これは否定し得ない事実でございます。政府は卸売物価が上昇していないから心配はないと言っておりますが、御承知のように消費者に響くものは消費価格でございます。ことに食料品価格の値上がりは、せっかくの所得倍増を無意味にいたしております。一般に工業生産物は、生産量増大に伴って生産コストが低下するはずのものでございます。しかるにそれが価格に反映しないのは、独占価格である場合が多いのであります。わが国は独占禁止法があって、一般に独占価格を許さないことになっておりますが、その独禁政策が昨年以来非常に弱くなりつつあることは、きわめて注目すべきことであります。本院商工委員会におきまして幾たびか論議をせられました新聞料金の値上げの問題のごとき、明らかに共同行為があったにもかかわらず、その協定に罰則がないからとの理由によって、独禁法違反でないとして問題にしなかったごとがございます。その後、大企業におけるカルテルは公然の秘密となり、話し合いによる値上げが行なわれております。貿易の自由化によって、産業界の秩序維持のきめ手でありまする為替割当がなくなったために、政府の一部には、独禁法を緩和してカルテルを認めようという意見がございます。もしそうなってカルテルによる独占価格が横行するようになりますと、貿易自由化によって中小企業者や消費者が期待する利益の大半は失われ、また所得倍増によって生活が楽になると思った一般国民の期待を裏切る結果になりはしないか。通貨価値の安定は経済政策の基本でございます。しかして経済成長もこの上に築かるべきものでございます。政府は価格安定と独禁政策についていかに考えているか、お伺いをいたします。
 続いて中小企業の設備資金確保についてお伺いいたします。今や貿易の自由化に対処いたしまして、企業は盛んに設備投資を急いでおります。これには大企業も中小企業の別もございません。中小企業が金融面において弱いことは周知の通りでございます。水田大蔵大臣は先般米国におかれまして、中小企業の設備資金借り入れの朗報をこの本会議上報告をせられましたが、大企業は自己の豊かな資本力に加えまして、株式、社債を通じて設備資金を導入し、また開銀より借り入れ、さらに今後は外資を入れる道も開けてくる有利の状況であります。従って大企業と中小企業との設備における格差は、いよいよますますはなはだしくなっていく実情でございます。中小企業のために池田総理大臣は従来格段の配慮をしてきていることにつきましては、私ども常に敬意を払っております。金融公庫を作り、商工中金の拡充強化に不断の努力をなしてきた等はその一例でございます。年末を控えまして、中小企業の年末金融対策も重要なんでございますが、いま少し長い目で見て、中小企業の設備資金を確保するために、金融公庫の基金を思い切って増額をするとか、設備近代化の資金貸し付け額を増大するとか、さらに信用保険に設備投資のための特殊保険を作って、民間資金の中小企業への導入をはかるとか、そうした一連の設備資金確保対策をお持ちかどうか。この際承っておきます。
 次に労働大臣にお飼いいたしたいのは、中年者の失業対策の問題でございます。貿易・為替の自由化、所得倍増計画の推進等は、日本の産業構造を大きく変えようといたしております。これは一方において労働力の大量需要と、他方、衰退産業の労働力大量排出が行なわれんとしているまことに皮肉な状況でございます。農業人口六割減などというのもその顕著なもので、また一面、炭鉱の大量失業者などもそれでございます。そうして他方におきまして新規学校卒業者の求人難が著しくなっていることなどにもその一例が見られるのでございます。若い者は求人難、中年者は就職難。問題はこの中年者にいかに職業を与えるかという問題でございます。この点に関しまして、政府は職業紹介所あるいは職業訓練を通じて、この矛盾を解決しようといたしておりますが、この際その対策を承りたいと思うのでございます。
 最後に、農業の生産性向上につきまして農林大臣にお伺いするのでございます。池田総理は農業人口の削減について発言し、各方面に非常な注目を引いております。しかも政府は、農村人口を減らしながら、農業の生産量は減らさないで、かえって年二・五%の増大率を見込んでいるのでございます。従いまして、従業する人口が減って生産量が増大するのであれば、一人当たりの生産高すなわち労働の生産性は著しく増大しなければなりません。その増大率は二一%をこえることになりはしないか。農業を含めた国民総生産の増大率九%よりも高くなり、従って、非農業よりもちろん高いということになるのでございます。加うるに、農業人口と一がいに申しますけれども、本院でたびたび発言がございました通り、現在の農業は、老人と女子の就業するところでございます。だからこそ、農業の生産性が低いわけでございます。
 その低い農業の生産性の増大率を二・五%見積もっておりまする原因を特にこの際明確にしていただきたいと思うのであります。あるいはは政府が、機械化によってそれを補てんをするということも言われることと思うのでございまするが、老年や女子によって機械化ということは、実際問題としてはできないのでございます。どうぞその点をこの際明らかにいたしていただきたいと思うのでございます。
 以上をもちまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 社会秩序の維持、治安の確立は、われわれの最も重要な事柄として考えておるのであります。しこうしてその根本は、お話の通りに、やはり順法精神の高揚でございます。私は、今の状況から見まして順法精神高揚運動を起こすべく、ことし、今月一日を法を守るの日ときめまして、法曹界各方面と協力いたしまして順法精神の高揚に努力いたしておるのであります。しこうしてまた、お話の国会の運営等につきましても、昨年来の現状を見まして、私は、内閣を組織するにあたりまして、まず第一に、政治の姿を正すべく、われわれ多数党は、お話の通りに、寛容と忍耐をもととして、話し合いで円満な国会運営をやっていく、これが私の発表いたしました第一の言葉であるのであります。この意味におきまして、今後努めて話し合いで国会運営をやっていこうと考えておるのであります。
 第二の貿易為替の自由化につきましては、決して後追いたしたわけではございません。わが国の経済を力強く、またこの上とも発展させ、世界の貿易拡大に協力していく上におきましては、どうしても自由化が必要であるのであります。また、それもできるだけ早くやるべきだと思いまするが、何と申しましても、十年、二十年の間、いわゆる経済的に鎖国方式をとった場合が多いのでございます。これを一時に改めるということは非常な激変を産業界に与えますので、私は、自由化の態勢を進めていって、なるべく早くやるように考えておりまするが、先般通産省で発表いたしました一次、二次、三次、そして将来相当長く残るものにつきましては、あの線をできるだけ早くやっていく方法で進んでいきたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 大竹議員が、近来の青少年犯罪続出のことを御懸念になりまして、いろいろお話淡ございましたことは、私も同感でございます。教育の問題がこのことに相当の関連を持つことも、また誰しも認めるところだろうと存じます。
 私は、終戦直後、昭和二十年の暮れに、時の占領政治の現われといたしまして、修身教育を直ちにやめろと厳命が下されました結果、最近に至りますまで、特に義務教育課程におきまして、何がいいか何が悪いかということを教えられないままに義務教育課程を終わらざるを得なかった子供たち、まことに恐縮に思う一人でございます。そこで、昭和三十三年、小学校に対しましては、道徳教育科を特設いたしまして、その徹底を期することに相なったことは、おくれたりといえども御同慶にたえないところでありますが、それに対しましては、全国民が知っております通り、日教組の執行部が絶対反対を唱えたのは、はなはだ遺憾と思うのであります。さらに、高等学校に対しましては、近く倫理、社会の科目を設けまして、いわゆる新しい課程のもとに特に指導の徹底を期する所存でございます、これに対しましても、日教組の執行部が正面切って反対をしておることは解せないことと思っておるのであります。(拍手)また、教師の日常の行動が学校の児童生徒に与える影響は重大であります。教師の自覚を要望しておるところでございます。それとともに、社会教育の面におきましても、勤労青少年に健全な勉学の機会を与えることも重要だろうと存じます。
 この意味において、定時制高校に対応しまして、青年学級、婦人学級の充実、ないしは青年の家の増設拡充等をはかりまして、団体訓練を通じて規律を尊ぶ習慣を養いたいと思うのであります。
 大竹議員も御指摘に相なりましたように、順法精神ということは、民主政治の基本的な常識であると思うのですが、共産党を初めとする諸君が、悪法は法にあらずなどと唱えておりますことは、まことに遺憾千万と心得ております。(拍手)戦後一般に、青少年を放任することが民主的であるかのごとく受け取られておる面もありますが、青少年の正しい指導につきましては、社会各層の人々の御協力をいただき、関心を寄せていただいて、社会環境の浄化に努めていきたいと存じております。(拍手)
   〔国務大臣小島徹三君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(小島徹三君) お答え申し上げます。
 確かに、最近における青少年の犯罪増加並びにその悪質化ということにつきましては、私たちも非常に心配しておる点でございます。その青少年が犯罪を犯し、かつ悪質化するということにつきまして、どういう原因かあるかということにつきましては、これは必ずしも日本だけの状態ではないのでありまして、社会制度を異にするロシアあるいはスエーデンその他アメリカ等におきましても、この青少年の犯罪の増加と悪質化には非常に苦しんでいるようでございまするので、一応これは、全世界的な何らかの原因があるのではないかということを私たちは検封いたしておるのであります。ことに、最近マスコミの一部に、暴力を露骨に表現いたしまして、人命を軽視するような表現をしたり、あるいはまた、性的刺激の非常に強烈なものがございまして、これがこれらの青少年の犯罪の増加並びに悪質化に影響しておるのではないかということがいわれておるのでございまして、私たちといたしましても、その点については十分慎重な検討をいたしておる次第でございます。これが対策といたしましては、もちろん青少年の犯罪を防止するととは当然でございまするけれども、何と申しましても青少年というものは、ある意味におきまして純粋と申しますか、世間知らずでございまするからして、おとなの社会におきまして、まず社会環境をよくして、おとなの社会において、暴力というものはあくまで排斥しなければならない、法を守ることが絶対に必要なんだというような社会環境を作ることが、まず大切ではなかろうかと私は考えておるのであります。これが対策といたしましては、一法務大臣のできることではございませんので、あるいは文部省、あるいは厚生省等のあらゆる力をお借りしなければならぬと思いまするが、ただいま考えておりまする法務省としてできる対策といたしましては、何と申しましても、犯罪を犯した者、これが刑の執行を終わって帰った時には、善良なる人間として法を守らなければならぬという気持になって帰るということが必要でございまするので、これの処遇につきましてはいろいろと研究いたしておる次第でございます。ことに青少年というものは、比較的その処遇いかんによりましては、割合早く善良なる気持を取り戻すものでございまするからして、青少年に対する、犯罪を犯した者に対する処遇ということにつきましては、目下真剣に考えてこれが対策を考慮中でございます。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。
 IMFにおきましては、お説の通り日本の自由化計画をなまぬるいとする空気であることは事実でございます。しかし、先ほど総理からも申されましたように、日本経済の特殊的な立場というものについての理解は非常に向こうに行き届いております。ですから、結局、今政府でぎめた自由化計画のあすこらあたりの線に沿って、無理をしないで早める気持で、これを着実にやっていくよりほかには仕方がない。あの程度でよろしいのじゃないかと私は思っています。御承知のようにこの商品輸入は三年以内に大体八〇%の自由化をやる、そのほか為替の方は二年以内に自由化したいというのがあの計画でございますが、為替面の方は、もうこの線に沿って、御承知のように、非居住者自由円勘定の創設とか、円為替の導入とか、これを初めとしまして、海外渡航商社活動などを中心とする規制を緩和しましたし、また、最近為替銀行及び商社の為替金融についての制限を緩和するというふうに、これは計画よりも少し早目にどんどん実施しておりますので、三年を要しないで為替面の自由化はできるのではないかと思っております。で、こういう方向で、無理をしなくて済む部門はどんどん早める。そのほかは、とにかく政府の計画の線に沿ってやる。この誠意が認められることによって、私は先ほど大竹さんが心配されたようないろいろな問題も適当に解決されるものと思っております。(拍手)
   〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(石田博英君) 大竹さん御指摘のように、最近の雇用情勢は、経済の拡大によりまして全体としては好転いたしておりますけれども、その間に非常に大きな不均衡がございます。特に年令層の不均衡という問題を御指摘でございますが、この処理のためには、何と申しましても、中老年層の職場の造出調査ということが必要でございますので、ただいま労働省の機構と経営者団体の機構と協力いたしまして、中老年層の代替し得られる職業の調査をいたしておる次第でございます。その一面、もう一つその背景をなしておりますものは、封鎖的な雇用制度、それから年功序列型の賃金制などというものが原因の一つでございますので、そういうことにつきましても目下基本的な調査研究をいたしまして、中老年層の職場の造出と雇用の増大に努めて参りたいと思っております。
 なお、職業訓練所等におきましても、最近中老年層の入所も増加いたしております。この傾向もさらに奨励をいたしまして、新しい技術をできるだけ身につけていただけるように指導して参りたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣石井光次郎君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(石井光次郎君) お答えいたします。
 まず第一番目に貿易の自由化はどういうふうなスケジュールで進んでいくか、相当に後退せずにやっていけるかというお尋ねであります。これは私どもといたしましては、大体貿易の自由化にどうやって運んでいけるかというのを四つに段階を分けております。まず、早期に自由化し得るもの、これは大体来年の十月ごろまでに実施し得るものはどういうものであるか。それから近い将来に自由化し得るものというのは、三十八年の四月ごろまでにやる。その次は、時間をかけて自由化するもの。それから第四番目には相当期間困難であろうというようなものでございます。この最後の部分はどんなものかと申しますと、米麦の類でございます。それから時間をかけてやらなければならぬのは銅とかニッケルとかいう品物があるのであります。今までに行なっておる自由化は四四%ぐらいでございますが、来年の四月ごろに原毛、原綿等の自由化をいたしますと、来年度には大体六〇%ぐらいには進んでいくだろうと、こういうふうに思っておるのであります。いろいろなこの自由化をやるにつきましての所要の対策を急ぎまして、そしてこの自由化をおくれないように、できるだけこれよりも早くできるものは進めるというような心持でやっていくつもりございます。
 それから第二番目にお尋ねの小売物価の上昇問題と独禁法の関係のお話がございましたが、御承知のように、昨年から一カ年ばかりの間に四〇%ほど小売物価が上がっております。これは食料品とサービス料金が大体上がっておるのでありますが、これは漸次落ちつきを取り戻して参っております。私どもの通商産業省に関係いたしますもので、繊維品であるとか、その他の耐久消費財等は、大体卸売物価が安定しておりまするような関係で、小売も大体におきますと、どちらかというと低落の傾向にあると思うのであります。これは十分注意して見ていきたいと思っております。
 それから独禁法の関係でございますが、これは、このごろ協同組合等で価格の問題を話し合って、それが値上がりになっているというような傾向があるんじゃないかという心配があるようにいわれるのでございます。この点は私どもとしては十分注意をいたしまして、もしそのために物価が不当に上がるような傾向でもありますれば、独禁法の発動は当然のことでありまするし、当省といたしましても十分注意して、そういうことのないように行政指導もしていきたいと思っておるのでございます。
 第三番目に、貿易の自由化に伴いまして、大小企業どこでも設備投資を急いでおるわけでございます。特に、中小企業関係では、設備投資になかなか金融という問題でむずかしい問題があり、ふだんもそうであるが、特にこの際において急がなくてはならぬのに、特別な措置を講じなくてはならんじゃないかというお尋ねでございます。中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫等の、中小企業に関係のありまする金融機関で、特にこの設備の近代化、資金の供給を円滑にするよう指令もし、それだけに努力もさせるようにいたしておるのでございまして、本年度におきまして、特に設備資金の供給を主としておりまする中小企業金融公庫では、七百十五億の資金を予定したわけでございますが、なかなか需要が盛んでございまして、この年末等におきましても、相当需要が多くなっておりますので、これらの点につきましての資金の追加というものを、ただいま大蔵省とも相談中でございます。相当な資金を出してもらって仕事を続けていくということにいたしたいと思っております。それから来年度になりますると、さらにこういうことの近代化のための需要、設備投資のための需要が多いだろうと思います。私どもといたしましては、今の中小企業関係の機関に対しまして、貸し出しをできるだけ多くしてもらうように相談を続けて参りまするとともに、また一般民間の方に対しましても、全銀連を通しまして民間資金を放出して、その方面によけい出してもらうように話を今続けておるところでございます。
 なお、御承知と思いまするが、中小企業振興資金助成法によりまして、国の補助金によって、その資金を通して、多少の無利子貸し付け等によりまして、これは小さい企業の方にいくと思うのでありますが、設備の近代化を進めていくというようなことで積極的にやっておるというような状態でございます。結論的に申しますと、御承知のように、設備投資というものが、この際、貿易の近代化に対抗するには一番大事な問題でございますから、できるだけその量を増し、そしてまた、同時に、一方においては金利を引き下げてもらうという問題について話し合いをいたしております。金利の多少の引き下げをやることにきまったことはどなたからか申し上げておる通りでありまして、近くこの三金融機関は、三厘方利子の引き下げを行なうつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣南條徳男君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(南條徳男君) 大竹議員の御質問にお答えいたします。
 近年、経済成長に相応いたしまして、他産業の構造変化が著しくなりました。これに対応して、農業生産がまた構造改善をしなければ、その格差が非常にはなはだしくなるということが懸念されました。お説の農村の生産性に対する御懸念でございますが、これに対しまして、農林省といたしましては特にこの点を重視して、この日本の農村というものは、非常に過剰な人口を抱えております。しかも、一戸当たりの営農規模というものは平均して八反七畝といわれておりますが、二反、三反というような零細農が多い現状でございます。従って、これに対してどういうふうに生産性を上げるかということにつきましては、今、農業基本法というような法案を作りまして、通常国会に御審議を願うのでございますが、かような法案の内容におきますると、他産業に毎年三十万から四十万まで、日本の農業就労者の約二%のものが流れている実情でございますから、今後もっとこれが流れるだろうと思うのでございますので、それに対応して、どうしてもこの営農規模を、二反、三反というふうな零細な人々が農業の共同経営をするような方向に導きたい。また、多角経営をするような方向にもいたしまして、いろいろな角度から農業の生産性を向上していきたい。また御懸念の、今の日本の農家が、老人あるいは婦女子でもって機械など使えないじゃないかということでございますが、今のように二反、三反歩というような営農でございますから、機械化ということは容易じゃないと思うのでございまして、農業を近代化するという意味から申しますれば、どうしても労力が減った場合においてこれを補うのには機械に頼らなければならぬと思うのでございます。今日の農機具というものは、非常に御承知のように発達をいたしまして、婦女子でも十分これを使用できるような農機具が多いのでございますから、この経営規模がもっと大きくなりますれば、十分私は農村における婦女子でもこの農業機具というものを使えるのじゃないかと思うのでございます。私は、日本の農家の婦女子くらい恵まれない、非常に虐待されている国はないと思っているのでございまして、日本の農業の近代化に伴って、かような方面の救済もしていきたいと思うのでございます。今まで日本の農業の生産性は約三%といわれておりましたが、幸い三十五年度におきまして、価格の面もございますが、六%に上がったような統計でございます。もちろんこれはそのまま受け取れませんけれども、今後農村人口が他産業に流れ、そうして農村の経営というものも近代化し、合理化することによって、これらの生産性を向上いたしまして、農村の経済というものが何とか他産業と均衡を保つようにしていきたいという考えでございます。(拍手)
#11
○議長(松野鶴平君) 藤原道子君。
   〔藤原道子君登壇、拍手〕
#12
○藤原道子君 私は、日本社会党を代表して、池田総理の施政方針に対して御質問申し上げたいと存じます。
 わが党淺沼委員長は、去る十月十二日、三党首立会演説会の壇上におきまして、右翼テロによって刺殺されました。池田さん、あなたの目の前で殺されたのであります。淺沼委員長は、死の瞬間まで、憲法を守り、議会政治と民主主義、平和を守るため、また来たるべき総選挙にはあくまで公明選挙をと、声を大にして叫び続けながら倒れたのであります。池田総理も、その施政の方針の中におきまして、民主政治のルールに従い、公明選挙が保証され、政治が秩序正しく運営され、社会秩序が平穏に維持されて、政治に対する内外の信用を高めることを施政の根本と考えると、強調されております。
 そこで、第一にお伺いいたしたいと存じますのは、議会政治、民主政治に対するその理念でございます。自民党の諸君は、平素、議会主義を否定し、暴力に訴える社会党と宣伝をしております。しかしながら、私どもは、委員長を先頭といたしまして、暴力を否定し、真の民主的な議会政治を守るために、きょうまでたゆまざる努力を続けて参りました。(拍手)しかるに、淺沼委員長は、憎むべき右翼テロによって刺殺されたのであります。民主的な議会政治とは、まず第一に、憲法を守り、その憲法のワク内で行なう政治でございます。第二点といたしましては、公約をあくまで忠実に実行し、これを通じて国民にその責任を明らかにいたすことでございましょう。第三点は、少数党の意見に耳をかすこと、その論議は十分尊重し、少なくとも多数の力で不当に押えつけるがごときことがあってはならないものと私は理解いたしておりますが、池田総理のお考えを伺いたいと存じます。
 自民党は、多数決が議会主義の全部であるように宣伝されておりますが、その前提、その基本が忘れられていることを指摘しなければなりません。自民党内閣によって憲法はじゅうりんされ、法律は守られず、金力と権力と右翼テロによって言論の自由さえも奪われようとしているのが現状でございます。公約に至りましては、内閣がかわるたびに、選挙のたびごとに打ち出されながらも、実行はされていない。今では選挙目当ての「えさ」であるとあきらめる以外にない状態は国民大衆のひとしく知るところでございます。(拍手)議会主義を口にしながら少数党の意見を多数をもって押し切るがごときは、民主主義の名に恥じることを知るべきだと思います。内閣がかわっても同じ自民党内閣であり、しかもあなたはその内閣の中心的な閣僚であったことを国民は知っております。民心の不安、政治への不信、不良青少年の激増、これらはあげて政治の責任と言わなければなりません。総理の御所見をお伺いいたします。
 次に、総理の言われる公明選挙とはいかなるものかを明らかにしてほしいと存じます。正しい政治は選挙からと申します。汚職を憎み、財界と政治の結びつきに国民が不信を抱いているとき、あなたの総選挙にはその資金が財界から公然と提供されました。しのぎを削るその争いに使われた金額は莫大なものであったことは、今や社会の語り草となっております。一党の総裁選挙に十数億の金が乱れ飛んだとうわさされたことは、それ自体、社会に与える影響は甚大なものがあると存じます。私は、法律が守られていないと申しました。公職選挙法がその最もよき例であると存じます。近く行なわれる解散、総選挙を前にいたしまして、盛んに事前運動が行なわれ、新聞は八当七落を伝えております。法定費用を超過した者は失格の規定があるとき、全く驚くのほかはありません。買収、供応は、罰則をしり目に、後援会の名のもとに、五十円、百円の会費で堂々飲みほうだい、食いほうだい、みやげものさえついてのサービスぶりは、まことに目に余るものがございます。あるいは婦人団体に寄付をしたり、わずかな会費で名所や温泉に案内をし、記念品と称して金品を贈るなど、テレビの劇にさえ扱われていることは、まことに嘆かわしい状態であります。およそ道徳教育に反するものと思いますが、いかがでございましょうか。
 さらに伺いたいのは、選挙違反で自殺者が出ても、あるいは夫人が留置されても、本人が知らぬで済まされ、総括責任者が違反に問われ、追及されて、いまだに夫婦連れで逃亡していても、当選した本人は重要な党の役職にあり、涼しい顔でまかり通っております。公明選挙を施政方針において強く主張された池田総理の総裁である自民党は、この人をも公認候補として決定されております。これでは、いかに公明選挙を口にされても、施政の方針にいかに美辞麗句を並べても、国民はすなおにこれを信じることはできないと思います。清潔な政治によって国民の信頼を得るためには、その出発点である選挙が正しく行なわるべきであると思い、憂うるのあまり、率直な御質問を申し上げましたが、この事態についての総理の御所信を伺いたいと存じます。
 次に、総理は、憲法改正は国民の納得が得られるまで行なわないとしばしば言明しております。新安保条約下において、はたして可能かどうか心配するものでありますが、これはしばらくおくとして、私は、ただ憲法を改正しないとの言明だけでは納得ができません。憲法の規定を、政治の上に、社会に生かすこと、その精神を貫くことを主張いたします。憲法が忠実に守られ、その理念によって行政措置の実施があるならば、毎日の新聞紙上をにぎわしている不幸なできごとの大半は解消できると信じます。私は、憲法を基本として以下、社会保障の実体について、さらに国民年金、国民健康保険、生活保護法などと関連いたしまして御質問申し上げたいと思います。
 まずお伺いしたいのは、社会保障に対する総理の理念でございます。現行の社会保障といわれるものが、救貧、救恤の感が強く、おおよそ社会保障とはかけ離れておると思いますが、いかがでございましょうか。すべての国民を対象として、老令、疾病、失業、生計の中心者の死亡等によって貧困に陥いるのを防止することを国家社会の責任として、これに社会連帯の責任で対処する制度で、福祉国家の実現を目途として行なわれるところに、社会保障の特質があると存じます。社会保障は、このような理念に基づいて窮乏に対処する一つの目的であり、手段であり、組織であると思います。従って、国民がひとしくさらされている危険に対して、平等に保障の対象となり、また同時に、受ける保障はあくまでも権利であって、最低生活が社会的公民権として保障されなければならないと存じます。従ってその内容は当事者の裁量によって左右されるべき性質のものではなく、救済や矯正であってはならないのであります。私は、この社会保障を政策の第一に掲げ、最優先として声明されました池田総理に対し、さすがに保守党においても近代的政治家であると敬意を表し、その実現を期待しておりました、国民の期待もまた大きなものがあったことは言うまでもありません。しかるに、伊勢談話以来急速に後退し、施政演説においてはほとんど刺身のつまにも至らない程度に扱われてしまったことは、非常に残念であり、かつその欺瞞に対して限りない憤りを覚えるものであります。戦後十五年、経済は著しい発展を遂げた、国民生活は向上し、雇用は増大し、労働者の給与はよくなったと大々的に宣伝しております。しかしその反面、貧乏はさらに増大していることを見のがしてはならないのでございます。政府は、国民生活が向上し、ラジオ、テレビ等消費経済の上昇を宣伝されているが、それはごく一部の限られた人々でございまして、その反面、月収一万円以下の人々、いわゆるボーダー・ライン層と呼ばれる人々が、九千三百万国民のうちで実に千百五十万とか、あるいは千五百万ともいわれております。さらに、その以下にあえいでいる、生活保護を受けております人が百六十七万人、さらに教育扶助、住宅扶助の単給受給者が、これとほぼ同数といわれております、しかも、これらの生活保護法適用者は最低の状態で、都市生活者の三分の一程度の生計費に押えられている極貧者であります。私は、このような状態が毎日の新聞に、母子心中、一家心中、家出、強盗、詐欺等の悲惨な記事が載っていない日がないことを見ましても、いかにこれが苛酷な規定であることかが実証されると思うのでございます。資本主義経済は、生産を伸ばし、一部の人々の所得は増大しても、これらの人々を吸収することはできない。それどころか、極貧者をますます増大させて参りました。
 このような状態の中で、さらに不幸な精薄者対策はいかがでございますか。知能指数が七〇以下の児童が百万人、成人においては二百万人といわれておりますが、諸外国の基準に従い、もし指数八〇以下といたしまするならば、その数はおそるべきものと思います。百万人をこえる精薄児のうち、保護施設にあるものはわずかに二%、通院施設は申しわけ程度、しかも施設にある二%の児童も、成人に達すれば、むごくも社会にほうり出されております。成人施設に対しての要望は熾烈であるが、政府は申しわけ的に、数百人のわずかな施設で、全国のこれらの親たちの涙も、子供の不幸も、社会の不安も放置されている現状でございます。保護が適切であるならば隠れた知能が見出され、山下清画伯も生まれる。少なくともその生活をささえるまでにはなれる者が放置され、社会の白眼視のためますます不幸に陥り、ついには社会不安へ一翼をになう結果をも来たしておるのでございます。
 さらに、肢体不自由児の問題も、法律はありながら、しかも、わずかな施設も、その不足から、回転率のおそい重症者はほうり出されているのが現実の姿でございます。
 精神病者も百三十万と厚生白書は報じておりますが、そのうち医療を受けておりますものはわずかに四%、田子対策において、保育所の不足において、環境衛生において池田さん、これが福祉国家の実態でございます。
 さらに、国民皆保険、国民健康保険が強制として出発しようといたしておりますとき、その中心ともいうべき結核対策においてはいかがでございましょう。現在要養護者は四百五十万、要医療者は三百六万、要入院者は八十六万人と厚生省は発表しております。しかも、結核のベッドはわずかに二十六万一千三百七十五床、しかも、この要入院者が八十六万ありながら、二十六万何がしかの病床が六万に近い空床を持っておるとはいかがなものでございましょう。しかも、大蔵省は、予算の節約から、厚生省に命じこれを他に転用する準備がひそかに行なわれているということを聞きます。これは一体いかなることか理解に苦しむものでございますが、この点をお伺いをさせていただきます。
 特に医療保護についてでありますが、保護の引き締めによって入院はできない、家族の経済状態から命令入所を受けても入院のできない人は山積し、社会に濃厚感染源としてこれが存在をいたしております。命令入所を拡大し、国庫負担で対策を考えているのはけっこうだが、一面、非開放性の生保患者を追い出す政策を出しておる。結核対策を強化するがごとく見えるが、実際は空床を増す欺瞞的措置であると言わざるを得ません。これらはいずれも医療保護のあまりにも苛酷な点を現わすものであり、しかも一部負担のなせるわざで、この際、抜本的に再考をすべきでありましょう。結核と精神病は国庫で、と主張される総理のこれらに対する御所信を伺いたいと思います。特に、本年八月中にもカナマイシンを使用すると予定されながら、今に至っても実行されていないことは、患者の期待に反するのみでなく、回復をおくらせ、病状を悪化させる結果となり、むしろ国庫の重大な損失と思いますが、この点もお伺いさせていただきます。憲法二十五条の規定に従い、生活保護基準額を引き上げ、収入の控除、期末手当等々において、この際、抜本的な改正を要すると思いますが、その点いかがでございましょうか。特に最近の新聞は、岡山療養所の療養患者朝日さんが厚生大臣を相手どって公訴を提起した事件に対し勝訴を与えたと報じております。生活保護の運営には非常に根深いものがあり、朝日さんの事例はほんの氷山の一角であることを総理に知っていただきたいと思います。私はこの問題に対しまして詳しく述べる時間がございませんが、厚生大臣が昨日の衆議院の答弁におきまして、生活扶助、この給付は十分である、こういうことを言明されておる。まことに厚生大臣としていかがと私は怒りを覚えるものでございますが、ほんとうにあなたは、三年間にシャツが二着であるとか、パンツが一年間に三着であるとか、おみそ代が一カ月に二十円であるとか、入浴は月に三、五回であるとかというような状態が、はたして正しいか、十分だとお考えになっておるかどうか、これを伺わなければなりません。
 次に、政府は、皆保険が出発し、低所得層から莫大な負担のかかる掛金を取っておりながら、僻地無医地区に対しましての対策がなおざりになっている点を指摘したいと思います。現在僻地地区と称するものが六百六十五地区といわれておりますが、これらの人は掛金はしているが、看護婦もおりません。医者もおりません。急病の場合などまことに重大な人道上の問題だと思いますが、この具体的な対策を伺いたいと思います。私は、皆保険を叫ぶ政府の医療対策がさか立ちをしているように思えるのであります。国立病院に特会制をしき、赤字病院は整理し、療養所にさえ特別会計をしかんとするがごときは、まことに許すことのできない問題だと思います。貧しい人に最高の医療を与え、国民を疾病から守り、その健康を保障するのが国の医療の態度でなければならないと思います。豊かな人は開業医にまかせてよろしい、貧しい人こそ国が医療の責任を負うべきだと考えまするが、この点に対しての御所見を伺いたいと思います。
 わが社会党におきましては、この悲しむべき結核に対しまして、予防から治療、後保護療養に至るまで、これを一本の結核医療法といたしまして、そうしてこの予算は全額国庫が持つ、健康保険からも生保からも全部抜き出してこの法律に集約して、結核は五年以内に追放する、この法案を出しておりますが、これも少数党の悲しさ、いまだ審議に至っておりません。この際、政府は、めんつを捨てて、国民の健康を守る立場から、すべて結核は一本とし、この費用は全額国庫で負担すべきものと思いますが、総理のお考えを伺いたいと思います。
 さらに、三十三年度の選挙に、「国民年金で老後を安楽に」との公約によって現行国民年金法ができました。待ち望んだ国民の前に示されたものは牛カンの中身と同じく、国民の失望は怒りに変じております。掛金が均一であること、期間の四十年は長過ぎること、支給が六十五才ではあまりにもおそいこと、特に低額者の、低額所得者の寿命等から考えてこれはあくまで引き上げること、支給額の少ないこと、途中死亡者の掛け捨てになること、経済的変動に対しての調整が法文化されていないこと、四十年後の三兆六千億にも達するといわれる資金の用途が明らかでない、これらに対する不平不満は日々に高まっております。現在の国保の掛金で苦しんでいるとき、さらに月々六百円くらいの掛金が、あるいは低額所得者に、農村に可能でございましょうか。この際、所得、資産、均等割として、さらに社会党案のごとく段階的に減免規定を設け、しかも支給は同額とする、年令を六十才にする、支給金額は生活のできる額まで引き上げる、経済的変動のあるときはスライドをする、これを法文化し、死後の掛け捨てに対しての考慮をする等々を私は要望し、この成案ができるまで、この実施は延期すべきものと考えますが、この点についてのお考えはいかがでございましょうか。さらに、資金の用途でございますが、大蔵省はこれをまだ始まる前から、資金部へ吸収し、財政投資に使おうと計画されていたようでございます。しかしながら、この資金は、あくまでも目的税的性格を持つものでございますから、別途会計といたしまして、社会保障の面にこれを使用すべきものと考えますが、この点いかがでございましょう。これらの国民の世論の反撃にあいまするや、政府は手直しをする、こう言っております。しかし、保険数理は非常にむずかしいものと存じますので、実施をしてから改正するよりも、あくまでもこれは法律において改正すべきものでございまして、この点につきましては、国会軽視に陥らないよう、あくまで延期して国会審議による改正を要望するものでございます。
 さらに、私は一点お伺いをいたします。最後に、北朝鮮帰還問題について伺います。協定期限の切れる十一月十二日以降はいかになされるのか。政府の内部には、北朝鮮との歩み寄りに強く反対する意見があると聞きますが、これはおそらく政治的顧慮であろうと思います。しかしこの問題は、どこまでも人道上の問題として処理すべきであって、帰りたい人が帰れるまで、あくまでこの協約は延長すべきものと存じますが、この点についての御所信を伺います。
 衣食住の安定、民主的な教育、完全雇用、働いて食える給与、これらによって初めて……。
#13
○議長(松野鶴平君) 時間が経過いたしました。
#14
○藤原道子君(続) 社会不安も解消できるものと思考し、愛情ある政治も、選挙のための対策ではなく実行されることを、総理に強く要望いたしまして、以上私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 民主主義の観念につきましては、お話の通り、憲法を守り、公約を実行し、少数党の意見も聞く、こういうことは全く同感で、私はこれによって進んでいきたと思います。
 次に、公明選挙でございまするが、公明選挙は清く正しく行なわれることがモットーで、そして卑近な例で申しますと、金のかからない選挙、こういうことに向かって各方面から努力いたしたいと思います。なお、お話の事前運動につきましては、取り締まりを強化するよう指令いたしておるのであります。
 社会保障の意義についてのお話でございますが、私もあなたと同様、社会保障制度は救貧で終わるとは考えておりません。救貧というよりも防食でなければならないのであります。従いましてわが党の政策に申しておりまするごとく、社会保障制度の拡充強化につきましては、従来にも増して強化する考えでございます。減税が主になるとか何とか言いますが、御承知の通り、来年度は大へんな自然増収がございまするが、石橋内閣の大蔵大臣のときには、一千億円しかやりませんでした。しかしその割合でいくと、減税を相当やらなければいかぬ、二千億とか千五百億やらなければならぬという議論がございますが、私はこの際は石橋内閣のときくらいにいたしまして、そして、それ以上の増収のあったものを、社会保障制度の拡充あるいは公共投資に充てようとしておるのでございまするから、決して後退はいたしておりません。三十六年度の予算をごらんになったら、よくもやったなとお驚きになるほどの(笑声、拍手)ことと思います。なお、防貧ということから申しまして、今、生活保護を受けておられる方の原因を調べますると、家族あるいは世帯主が結核あるいは精神病にかかって、そして非常に苦しく、生活保護を受けるような道を歩かれたということを私は聞いておるのであります。そういうのが重大な原因でございますので、今回におきましても、結核、精神病の方々の措置入院につきましては、全額を国、地方公共団体でしよう。また措置入院でなくても、国家の給付を五割から七割にこれをしょう、こういたしておるのであります。ただ、五割から七割にするのを世帯主にとどめるか、家族にまでいくかということは、全体の予算から考えるわけでございますけれども、お話の結核、精神病につきましては、特に力を入れたいと思います。
 お言葉の中に、これが福祉国家の実体かということでございますが、まだまだ福祉国家であるところまでいっておりませんので、社会保障制度に力を入れようといたしておるのであります。できるだけ早く、あなたのお話のように、福祉国家の実現を見たいと考えておるのであります。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(周東英雄君) ただいま、公明選挙につきましては総理からお答えがありましたので、繰り返すことはいたしませんが、私はこのことは、制度の問題並びに政治家の自覚と、それから政治意識の高揚、政治道義の高揚、国民一般の協力を得て、公明選挙、明るい選挙を実行いたしたいと思っております。(拍手)
   〔国務大臣中山マサ君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(中山マサ君) 社会保障が後退していやしないかという御質問でございまするが、今総理が仰せになりましたように、今度解散が終わりまして、いよいよ本格的に予算が出て参りましたならば、いかに私どもがこの社会保障ということに全力をあげているかということが御了承できると思います。それは今もお話がございましたように、医療保障、いわゆる貧乏というのは、結局病気を追放して初めて貧乏が追放できるものと私は思っておりますので、その点におきまして医療保障をしっかりとやらなければならないという考えでございます。
 また、年金制度というのは、これは所得を確保させる制度でございまするので、これもやはり世界の趨勢に学びまして、この問題に力を入れて参ろうかと思うのでございまするが、今も仰せになりましたように、結核の問題に対しては、総理から御答弁がございましたから省略いたしますが、空床の問題に対しまして空床ができてきたということは、いかに結核に対して、これまでの政府が力を入れたかということの証左であろうと私は思うのであります。しかし、このたびの私どもがとろうといたしておりまする精神病あるいは結核に対しまして七割に引き上げるということ、あるいは感染濃度の激しい人は全額公費負担で入所させるということ、また、そのほかのことによりまして、これが全国的に実施されるに至りますれば、今御心配の空床はないほど、これはこういう方々に対しまして、今度の行政措置によりましてこれが満たされるようになろうかと私は思っておりますので、どうぞ、この点は今後の私どもの施策をごらんいただいた上で御批判をいただきますればけっこうであろうかと思うのでございます。
 国民健康保険というものも、逐次力を入れて参っておりまして、明年四月一日までには、今は九五・四%ぐらいに参っておりますが、これが大体大都市も入って参りますと、これがほとんどみんながこの恩恵にあずかるようになるものと私は考えております。
 僻地対策でございまするが、いわゆる僻地に対しましては、これまでいろいろとお互いに心配をいたして参りましたのですが、約三百五十カ所につきましては、高率の補助の診療所を設置しようといたしております。また、医療金融公庫もございますることでございまするから、私立の病院、診療所にも融資をしていこうというので、無医地区の国庫負担を強化する考え方でございます。お医者様方の待遇につきましても、われわれがこの問題に力を入れている何よりもの証拠は、ベース・アップによりまして医療関係のお方々に奉仕しよう。御奉仕のそれに対するところの私どもの措置があるいは足らなかったかということを自覚しておるこれもまた一つの証左であろうと思います。それに、いわゆる公的の病院でないところの御自分の医院を持っていらっしゃいまする医師の方々に対しましては、ベース・アップをしようということでございまするから、こういうことによりまして、私どもが医療に対するところの熱意というものをお考え願いたいと思うのでございます。
 さて、国民年金の問題でございまするが、国民年金というものは、農村、漁村あるいは中小企業に勤めておる人たちを網羅しているのでございまして、今までこの人たちに対する年金制度というものはなかったのでございます。それを社会保障制度審議会におきまして、社会党あるいは民社党の系統のお方々もここで御審議賜わり、また、中立的な学者の方々の御答申にもよりまして、この問題が国会を通過いたしましたのでございまするから、これを私どもが実施いたしませんと、国会軽視ということになるおそれがあるということを私は考えておる次第でございます。いかなる法律といえども初めから完全なものはないのでございまするから、それで初めはお粗末かもしれませんが、いわゆる民主主義というものは、国民の声を聞きまして政治を進めていくのがその本質でございまするから、私どもは今度の国会が始まりましたならば、手直しをいたしまして、死亡一時金も出そうということをいたしております。これは実際にやりまするので、どうぞ一つごらんをいただきたいと思うのでございます。
 精薄児童でございまするが、精薄児童に対するところの施設はいろいろと不十分であるということは私どもも認めます。しかし、日本が敗戦になりましてわずか十五年や十六年でここまで手が届いてきておるということは、外国の人に言わせますれば、実に驚くべきところの進歩であるということを申しておりまするから、(拍手)これに対しましても私どもは懸命の努力をしていこうと思うのでございます。そういうわけでございまするが、今の岡山の療養所の患者から出されましたところの訴訟でございまするが、この基準はそのときどきの社会の経済状況または一般国民の生活水準、所得の状態を総合的に考えていかなければならないのでございます。今の提訴されましたこの問題は、三十一年に出て今第一審の判決をいただいたのでございまするが、私どもといたしますれば、もはやすでに給付の状況もこれは変わっているということを私は申し上げたいのでございます。私が昨日衆議院におきまして申し上げましたことに、これで十分であるということを言ったということを今藤原議員はおっしゃいましたが、私は十分などという言葉は使っておりません。不当に低いとは考えていない、不当に低いとは考えていないということを申し上げたので、この点をどうか御了承願いたいと思うのでございます。政府といたしましては、今のこの裁判の判決を十分研究をいたしまして、また、私どもといたしましては、これに対するところの対処をする考えでございます。
 北鮮の帰還問題でございまするが、むろん私どもはこれを人道上の問題と考えまして、いろいろと向こうの赤十字、当方の赤十字の方々と折衝していただきましたのでございまするが、私どもの考え方が向こうさまには十分御理解ができないとみえまして、決裂に及びましたことは、まことに残念なことだと私どもは考えております。しかし、今日もまだ折衝がいろいろ進められておりますることは、これには新しい道が開けるのではないかという希望を私どもは捨てておらないような次第でございます。
 カナマイシンの問題でございまするが、私どもは懸命になりまして、このカナマイシンの問題の解決のために全力をあげて厚生省が努力をしておるということを申し上げまして、御答弁を終わります。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#18
○国務大臣(水田三喜男君) 国民年金の積立金の運営についてのお尋ねでございましたが、御承知のように、この問題は大きい問題でございますので、ただいま資金運用部資金運用審議会、それから国民年金審議会、社会保障制度審議会、この三つの審議会から、この運用についての意見が表明されております。従って、この意見を十分に総合判断しまして、機構とか方式について、改めるべきところは改めてこの問題は関係者の十分御納得のいただけるような方式で運営することを私どもは考えたいと考えます。(拍手)
#19
○議長(松野鶴平君) 野坂参三君。
   〔野坂参三君登壇、拍手〕
#20
○野坂参三君 私は、日本共産党を代表して、まず、池田総理の政治に対する基本的態度について所信をただしたいと思います。池田総理と自民党は、政治の最大の課題は政治の姿勢を正すことであるとか、あるいはまた、民主政治のルールに従うことである、こういうふうに公言されております。しかし、一体、池山総理は、この公言、この公約をはたしてまじめに実行しておられるでありましょうか。そもそも池田内閣は、日本の歴史でかってなかったような事情によって作られたものであります。すなわち、安保条約反対、岸内閣退陣、国会の即時解散を要求して闘った多数の国民の力によって岸内閣が倒されたあとを受けて、その跡始末をするために池田内閣は成立したのであります。従って池田内閣は、当然この国民の要求に従って、直ちに国会を解散し、新安保条約の是非を民意に問うのがその唯一の使命であったはずです。しかるに池田内閣は、あつかましくも国会の解散を引き延ばしただけでなく、小坂・ハーター共同声明に示されているように、新安保条約を積極的に補強し、これを推進し、あまつさえ安保闘争に参加した国民を大量に処分し、この運動を弾圧することにやっきになっております。しかも、総理は、左右の暴力の排除と称して、右翼テロリスト集団の暴力と、憲法に保障された正当な国民の民主的集団行動とを意識的に同一視し、実際には右翼の活動を押える具体的な措置を少しもとろうとしておりません。かえって警察力を拡充して、治安確立の名のもとに、国民の民主的活動に圧力を加えることを、施政方針演説においてさえ露骨に表明しております。このようなやり方は、総理のいわゆる民主政治のルールを全く踏みにじったものといわなければなりません。それだけではありません。今度の総選挙が、前にも指摘しましたように、日米軍事同盟である安保条約を破棄して、わが国が平和、独立、中立、民主主義の道を進むか、それともアメリカ帝国主義の冷戦激化と中ソ敵視の政策にますます強く引き込まれ、日本の帝国主義、軍国主義の体制を強化していくか、この二つの方向のいずれを選ぶべきかを国民に問う重大な内容を持った選挙であります。それにもかかわらず、池田総理はその最も重大な争点から国民の目をそらさせ、意識的にこの選挙の意義と目的を抹殺しようとしております。しかも、この選挙にあたって、公明選挙を口にしながら、国民の真の政治的意思を正しく選挙に反映させる道を押えているのであります。池田内閣は、国民の意思が最も民主的に表明されるように選挙法を根本的に改正しないのはもちろん、人口増加に応じた定員数の改正さえもやろうとはせず、民主的政党、諸団体の選挙・政治活動の自由を大幅に制限しようとしております。その上に、買収と暴力と圧力によって、国民の意思が正しく反映される道を閉ざそうとさえしております。これがはたして、公明選挙とか民主選挙とか言い得るでありましょうか。このように、総選挙の内容の中心問題をねじまげ、全く自分らの都合のいい選挙をやることが、いわゆる議会政治を確立する道であると言い得ましょうか。全く逆のことを池田総理はやっているのであります。だからこそ、池田総理が今回の淺沼君暗殺事件にあたっても、国民の激しい追及にもかかわらず、言を左右にしてその政治責任をあくまでも回避する態度をとっている。このことは決して偶然なことではないと思います。池田内閣のこのような公約の裏切りとか、反民主的態度、政治的背信行為を、国民は断じて許すことはできません。私は国民にかわり、総理に対しその反省を促すとともに、即刻責任をとって総辞職することを要求するものであります。池田総理の所信をお聞きしたい。
 そもそも淺沼君が右翼テロリストに暗殺された事件は、決して偶発的なことではありません。これはアメリカ帝国主義と日本の保守反動勢力が安保条約を実施する上で大きな障害になっていた淺沼君をなき者にするとともに、これによって日増しに強くなっていくわが国民の力に打撃を与え、来たるべき総選挙でも、社会党、共産党、その他の民主的諸団体の進出を食いとめようとした陰謀の現われであります。これが淺沼君暗殺事件の政治的な意義であります。私はこの事件の真相の究明とその具体的な解決策を池田総理に要求するものであります。
 この際、私はまず次の諸点を指摘しなければなりません。
 第一に、この殺人犯人の所属しているテロ集団、全アジア反共青年連盟は、世界の網の目を張ったアメリカの謀略機関の指揮のもとに、台湾、韓国その他の反共テロ集団と連係しながら行動していたという事実であります。
 第二に、前に指摘しましたように、池田内閣が安保条約の反対闘争に参加した国民を大量に処分し、弾圧し続け、警察を初め、国家権力が暴力をふるい、さらに一方では荒木文相を先頭として、軍国主義と国家主義を鼓吹し、黒いファシズムの風潮をあおり立ててきたことであります。
 第三に、各種の資料によりますと、石坂泰三、高杉晋一諸氏を初めとする財界人、それから岸信介、岡崎英城、木村篤太郎の諸君を初め、自民党の一部の諸君が、右翼の連合体である新日本協議会その他の組織を通じて右翼の諸団体とその活動に政治的、思想的、財政的につながりを持っているということであります。さらに池田総理自身に深い関係のあるいわゆる宏池会、一これは形式的には解散されていることになっておりますが、この宏池会が行動右翼の全国愛国者団体会議と護国団などに多額の金を回しているという事実であります。これは三十五年度上半期の政治資金規正法に基づく届出にはっきりと明記されております。
 以上の諸点について国民は深い疑惑と不安に包まれております。私は、総理がこれらの点をここで徹底的に明らかにし、国民の疑惑と不安を一掃し、その根源を断つことを要求するものであります。
 さらに私は、直ちに当面実施すべき具体的措置について、次のことを要求します。第一に、反共右翼団体に対する究明と厳重な処罰、一切の右翼暴力団の解散、第二に、警察庁長官、警視総監、その他直接の治安責任者の即時罷免、現国家公安委員全員の解任。第三に、右翼団体の資金源の究明と根絶、右翼に関係あるすべての政界人、財界人のリストを公表してもらいたい。第四に、アメリカ帝国主義者及びその在日諜報機関と右翼団体との関係、韓国及び台湾のかいらい政権と右翼団体の往来と資金のつながりの追及。第五に、国民自身の手による右翼団体の暴露と追求に対する政府の保証。このことを私は強く要求します。なぜならば、政府治安当局がその追及をサボリ、しかも右翼が依然としてはびこっている現在、国民がみずからの手によってその撲滅のために活動することが絶対に必要だからであります。私は政府に対して、以上の措置を直ちに実行するとともに、これらすべての最高責任者としての総理と内閣の即時退陣を重ねて要求するものであります。最後に、私は、池田内閣のいわゆる新政策について一言触れなければなりません。この新政策の本質は……
#21
○議長(松野鶴平君) 野坂君、時間が来ました。
#22
○野坂参三君(続) 一口に言って、新安保条約の実施をてことして軍事的、政治的、経済的にアメリカ帝国主義への従属を進めながら、その中で政治、経済、軍事、イデオロギーの各分野で、日本の帝国主義と軍国主義の体制をますます強化し、その犠牲と負担を国民に一そう転嫁しようとするものであります。このような方向と内容を持つ新政策は、すでに現実に失敗しております。特にその外交政策において顕者に現われております。今次国連総会において、日本政府の代表がアメリカり手先として果たした役割は、アジア、アフリカ、南米の新興諸国はむろん、全世界の物笑いの種になったではありませんか。皆さん、このことは小坂外務大臣がだれよりも一番よく知っております。また国内においても、国民は池田内閣の新政策の本質を見破り始めております。安保反対のために闘ったわが国民の反撃にあい、必ず失敗するでありましょう。わが共産党は、その先頭に立って、池田新政策にまっこうから対決せんとするものであります。
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#23
○国務大臣(池田勇人君) 池田内閣は岸内閣の跡始末のための内閣ではございません。私は新しい外交政策また経済政策を立案いたしまして、そうして今までの各党の政治活動並びに今後の政策、これを国民に問おうといたしておるのであります。野坂さんはわれわれと対決されると言われますが、私は対決という言葉は使いたくない。ただ共産党とだけは対決いたしますから、何とぞよろしくお願いいたします。
 なお右翼団体に対しましてのいろいろなことは今関係方面で調査させております。私は事実のことはほとんどないと考えております。(拍手)
   〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕

#24
○国務大臣(周東英雄君) 私には質問を御指摘になっておりませんから、別にお答えを申上げる必要はないと思います。
#25
○議長(松野鶴平君) 平林剛君。
   〔平林剛君登壇、拍手〕
#26
○平林剛君 私は日本社会党を代表いたしまして、池田総理大臣の施政方針演説、特に経済政策に焦点をしぼり、若干の質問をいたしたいと予定をいたしておりましたが、まず冒頭に、昨日参議院本会議における周東国家公安委員長の不穏当な発言に対し、これを糾弾せざるを得ないのであります。(拍手)
 周東国家公安委員長は、北條島八議員が、社会党党首淺沼委員長に加えられた憎むべきテロに関連して、右翼の取り締まりを徹底的に行なうよう政府に要望したのに対し、「右翼暴力の対象となるおそれのある人々に対しても身辺の警戒を強化いたします。ことに、それは御当人がお断わりになれば別のことでありますが、総評その他の方々は大体お望みでありますようでありまして、これらに対しても警戒をやります。」と答弁されたのであります。第一に、「それは御当人がお断わりになれば別のことで」との発言は、右翼による計画的な刺殺行為と襲撃が心配をされ察知された場合でも、当人が断われば身辺の警戒をしないかの印象を国民に与え、人の生命の保護に任ずる国家公安委員長としては、その信頼をみずから傷つける不適当な言葉だと思うのであります。民主政治に対する公然の敵として国民全般がその絶滅を期そうとの怒りに燃えているとき、治安閣僚の言葉としてまことに不謹慎の至りと言うべきではありませんか。第二に、「総評その他の方々は大体お望みでありますようでありまして、これらに対しても警戒をやります。」とは、その発言の裏に、総評に対する敵視、これを特別扱いにしてひやかし的な態度がうかがわれまして、国民全般に中立的立場を守るべき職責から見て、まことに不用意な許すべからざる暴言と思うのであります。(拍手)
 昨日わが党栗山議員が、日比谷公会堂における三党首立会演説会において、野党第一党の党首が刺殺されるという一大不祥事、この悲痛なる事実に対して警備の責任を追及したときも、警備には重大な手落ちがあったとは思われないと答えましたが、これまた重大な発言であります。右翼の暴力と自民党との関係について、具体的事実をあげてその背後関係をただしたのに対し、目下警察当局がこれを調査中の段階において、その関係はないと独断するごときは、はなはだ公正を欠き、その答弁はしばしば常識を欠くのではないかと思われるのであります。私は周東国家公安委員長の不穏当な発言に対し、ここに厳重な抗議を行なうとともに、その釈明を要求いたしたいと思います。
 また総理に対しても一言したい。総理は施政方針演説の冒頭において、私は私心を去り、ひたすら謙恭と誠実を旨として与えられた職務を全うしたいと述べられたのであります。池田内閣の閣僚として、この総理の決意を無視し、これと反する態度をとられた周東国務大臣の発言に対し、どういう御見解をお持ちでありますか。総理の謙恭と誠実の言葉が、岸前総理と同じように、空虚な、から念仏と言葉だけの政治と理解させないためにも、一言御釈明をいただきたいと思うのであります。私は、この臨時国会に臨んだ池田内閣の閣僚が、野党の質問に対する挑戦的な態度と、政府答弁に名をかりて不必要な野党攻撃に出られる傾向をまことに遺憾に存じます。総選挙を前にして、初めて大臣におなりになった議員が、政府答弁において、わが党はと党派意識を過剰にしたり、うれしがって聞かないことまでも長々としゃべるのは、まだあいきょうがあります。同じ野党攻撃でも、石田労働大臣のように、「数字の正確を期する池田内閣の閣僚として」と前提し、批判を加えられましたのは、まだ巧まざるユーモアを感じます。しかし周東大臣のような発言は閣僚としても落第生であり許すべからざる態度でありまして、私はその反省と釈明を求め、かつ警告を発しまして、次の質問に移りたいと思うのであります。
 池田内閣の経済政策が、インフレなき高度の経済成長を持続し、今後十年以内に国民所得を二倍にするという拡大積極政策にあることは、今日までの演説と質疑応答の中で明らかとなりました。総理が熱烈な信仰に近い口調で、擬装された繁栄と福祉を説かれる態度を拝見いたしますと、まさに、売りものは「低姿勢」どころか、資本主義政党の新しいチャンピオンとして、驚くべき高姿勢と受け取れるのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 しかし私は池田総理に率直に申し上げておきたいと思うのであります。施策の表看板だけをいかに巧妙なべールに隠して十年後の夢を説こうとも、長い間保守党の金権政治に大きな怒りと不信を抱いて苦悩した国民は、財界の強力な支援で自民党総裁のいすを確保したとうわさされる池田総理の言葉一を、そのまますなおに信頼し期待を寄せるものでないということであります。
 政府の経済政策における欠陥と矛盾についてお尋ねする前に、私はまず総理に政治家としての責任について確かめたいと存じます。政府の経済政策の基礎が、歴史的な発展を遂げた日本経済の実力を自覚するところから始まり、経済の成長率を高めてゆけば、雇用の拡大、所得の格差も解消するという成長理論にあることは周知のところでありますが、その経済成長率に対する政府の見通しほど、この一、二年具体的政策の裏づけもなく変化したものはありません。初め自民党の新長期経済計画は、その成長率を六・五%と策定し、経済審議会における成長率は年平均七・二%と決定しておりました。しかるところ総選挙を控えて、池田総理は急遽これを向こう三カ年九%を持続させると修正を加えられたのであります。池田総理の経済成長率に対する見通しがどの程度の現実性を持っているか、合理性を持っているか、この場合しばらく触れないことにいたします。経済の成長率が高いということがすぐれた経済だと錯覚を起こしている着を除いて、国民の多くはそれに深い関心を寄せないからであります。しかし、多くの経済学者、専門家が結論づけた成長の見通しを、持ち前の強引さと見られる自信をもって高率成長に置きかえられた結果、総理の負うべき責任もまた倍増したことは間違いがないと思うのであります。池田総理は、昭和三十一年秋、石橋内閣の成立に際し、当時の大蔵大臣として積極拡大政策を提唱し、その口を閉じないとき、思惑輸入の増大から国際収支の悪化を招き、急激な引き締め政策によって多くの産業と国民を塗炭の苦しみに陥れ、いわば経済政策失敗の前科ある責任者であります。池田総理の過信に近い高度成長の中で、そのわずかな見通しの誤りによりましても悲劇的な影響を受ける国民生活を思うとき、総理は、再び拡大積極政策に失敗した場合、一体どういう責任をおとりになるか、国民の知りたいところであります。過日、首相官邸において、総理は、記者団の質問に対し、あのころはスエズ動乱があり、六、七億ドルの思惑輸入もあって、外貨が減ったけれど、私は心配はしてない、そのうち輸出は伸びると言ったが、その通りではなかったかと答えられておりました。たとえ一時的にせよ、国民経済を混乱に陥れ、その混乱の結果、多数の犠牲を生じた事実に目をそらした首相の弁明は、まさに冷酷非情というべきで、責任回避もはなはだしいと思うのであります、明確な御所信を示されたいのであります。
 池田内閣の偽装は、将来におけるインフレの懸念と、所得倍増より一足先に倍加する物価の上昇においても、うかがうことができるのであります。総理は、向こう三カ年、九%の高度成長を目ざしても、日本経済の総供給力は今の総需要より大きいので、インフレの心配はないと述べておるのであります。これは、はたして信用することができるでありましょうか。同じ政府の発表した経済白書によりますと、これからの経済成長の鈍化を予想し、押し寄せる自由化のあらしは、通産省試案として新聞に報ぜられた、三十八年度の国際収支の赤字六十億ドル、生産二〇%減、百三十七万人の失業という、日本経済に与える影響の調査結果の数字はともかくとして相当の困難が増大することは否定することができません。そこで、数字では魔術師と呼ばれる池田総理が、みずからの政権を維持するために、無理をしても九%の成長率を維持するのではないか。すべてを九%の数字に動員し、国民経済全般を九%に奉仕させる官僚政治家の危険を多くの経済学者が説いていることは注目すべき問題であります。そしてこの危険の存在する可能性は、すでに池田内閣が初め社会保障を最も優先させるかの構想を示しながら、いつの間にか公共投資を最優先にすりかえた事実が、最も雄弁に立証しておるのであります。(拍手)アメリカ経済における景気後退、自由化の影響などを考慮に入場れますと、政府は、今後相当思い切った設備投資と公共事業の拡大が必要となりまして、どうしてもますます積極的な公共投資にたよることとなり、近い将来、財源の不足を補うための赤字公債発行を避けることができないのではあるまいか。新政策においても公社債市場の育成がうたわれております。その準備体制を進めておるともとれるのであります。池田内閣の経済閣僚の中には、日本経済は今や公債を発行してもびくともしない実力を備えていると、強気にして楽観的な公債発行論もありますが、政府の経済見通しの破綻からくる公債発行政策こそ、国民のおそれるインフレヘの懸念というべきであります。私はこの点の御見解を承りたいのであります。
 また、国民生活に直接影響を与える物価は、所得倍増のかけ声がかかっただけで早くも値上がりを示しつつあり、十年あとの話よりも今日の物価対策を示せという国民の怒りとなっているのであります。念のため、今年に入ってから値上がりしたおもなものを拾いますと、元旦早々からガス料金平均一一・五%値上げ、二月には通運料金が七%、四月には大学授業料、地下鉄運賃が二十円から二十五円に、五月はマッチ、徳用箱で五円、六月は牛乳が一円、国鉄の旅客運賃が近距離で五%、七月はふろ代が一円、八月に入ると、食。ハン、しょうゆ二リットルで十円、みそ、キロ当たり五円、うどん、そば類五円、野菜は全国平均で昨年の三割五分、豚肉四割、牛肉二割、さらにクリーニング、理髪、パーマ料金、これから値上がりを予想されるものとしては、国鉄、私鉄のほか、電気代、郵便料金、水道代と続くのであります。もとより、これら消費者物価の上昇する原因は、戦時、戦後の統制やインフレによってゆがめられた物価構造を是正する意味を持つものや、最近の著しい経済の発展に伴って、一般の賃金、所得水準の上昇と、施設の拡大のために引き上げられたものと、原因は必ずしも一律ではありません。しかし、大勢としては、じり高であることは間違いありません。総理は昨日も、わが国の物価が世界で一番安定していることを誇りました。
 しかし、卸売価格が海外諸国に比較して大幅に変動しない理由は、過当競争や在庫の重複部分が先進国より多いことでありまして、あまり自慢できるものではないのであります。池田総理のように数字で物事を判断する政治家には、庶民の生活実情を把握することは困難でありましょうが、消費者価格の上昇傾向が、主として家賃、地代などの住居費、教育費、交通費、修養娯楽費などの雑費に高いことは、政府が物価対策に対し、もっと強い関心を寄せる必要を示唆していると思うのであります。
 一体、政府は、十年後の所得倍増を唱えますが、そのときの物価はどの程度の上昇と見積っておられるのでありますか。現実の家計に及ぼした物価の影響をどう把握しておられるのでありますか、現実に迫る国鉄、私鉄などの公共料金の引き上げ要望に対して、どういう態度をとられるか、私は、きめのこまかい、まじめな答弁を願いたいと存じます。消費者価格が多少上がっても、賃金がそれ以上に上昇をすればいいではないかというような答弁は、国民所得や賃金が一律に上昇するものでないことを無視し、また、繁栄の中の貧困と呼ばれる暗い谷間で生活苦に泣く国民が多数あることを知らない者の言葉というべきであります。
 政府の経済政策における最大の欠陥は、経済の成長さえ高めていけば雇用は拡大されて所得の格差は解消するという成長理論にも隠されていると思うのであります。池田内閣の施策は、表看板だけを見ますと、その性格は巧妙なべールに隠されておりますが、これを一皮むけば、貧乏人は麦を食え、中小企業の一つや二つ、つぶれても仕方がないという、根本的思想が消えていないのではないか。たとえば、新政策における、中小企業の近代化によってこれを育成するという言葉も、近代化という言葉の意味は、現体制のもとでは激烈な企業競争となり、この技術革新の競争に敗れた者は、現実の政治において一顧だに与えられておらないのであります。過去における保守政権の実績が示すように、神武景気という経済成長と拡大のもとにおきましても、大資本、大企業の強大化と比較して所得の格差、産業間の格差、都市と農村の不均衡はますます激しくなり、日本経済の内部矛盾がかえって拡大したことは、国民の悲しむべき体験であります。政府は、最近の好況を反映して雇用の増加したことを、鬼の首でも取ったように宣伝をいたしております。しかし、その増加した内容は、臨時工や日雇いの増加率の高さであることを、経済白書においても鉱工業における常用工六・一%増に対し、臨時工は三八・五%増加となると告白しているのであります。花形産業の電気機器の部門でさえ、全従業員の二二・六%が臨時工であるように、一たび景気が後退すれば、直ちに首切りの対象となり、再び町にほうり出される運命に置かれているのであります。賃金水準についても、政府は、最近中小企業の上昇率が大きく、賃金格差が解消しつつあると言われましたが、なるほど名目賃金は若干是正されたというものの、それは賞与などの特別給与、超過勤務手当の増加によるものでありまして、労働者には労働強化と時間延長が押しつけられたにすぎないのであります。そういう中で、資本家は、経済白書で報告されたように「全産業の企業収益は、三十四年度上期において前期の三七%を増加し、下期はさらにそれを三三%上回っている」のでありまして、生産や生産性向上の急上昇と比較して、スズメの涙にしか当たらなかったのであります。このようにながめますと、池田内閣の構想は、広範な大衆と低所得層に対して成長の果実を潤おすものではなくて、高度成長の名においてその生活が踏み台とされ、独占資本の発展に貢献するものであることは明らかであると思うのであります。池田総理が雇用の拡大と低所得層の格差解消を本気で進めるならば、まず労働時間の短縮は不可欠の条件であり、現行の臨時雇いの制度を是正するよう指導し、労働市場の安定性強化と不均衡是正をはかるべきであります。社会保障の拡充強化とともに、全国一律の最低賃金制を実施し、家内労働法を制定し、中小企業に対しては、特に零細企業経営の安定と発展に重点を置いて、積極的な体質改善をはかるべきであります。現実政治における国民の不安と危険に対し、政府は公約の羅列と口約束だけでなく、具体的な予算の裏づけと、金融、税制、財政投融資におけろ対策とをお示しいただきたい。また、明年度における財政投融資計画は、生活環境改善と社会福祉のための投資を大幅にふやすべきではないか。財政投融資資金の六割を占める資金運用部資金の運営を民主化するために、金融機関の代表や各省次官という官僚で占めている審議会委員の構成を至急改めてもらいたい。それらについて政府の具体的見解はどうか。
 次に注目すべき問題は、農業と他産業との所得均衡を目ざして、それを実現するため、農業の近代化と経営の企業化を進める政府の農業政策であります。池田総理は、地方遊説において「今後十年間に農業人口を現在の四割に削減する」と発言し、大きな不安と反響を農村に巻き起こしたばかりか、自民党内にも衝撃を与えました。総理馬脚を現わすとはこのことであります。首相の論拠は、高い経済成長が続けば、毎年相当の労働力を農村に求めねばならず、十年間に六割ぐらい減るだろうという、まことに荒っぽい計算をいたしておりましたが、遺憾ながら日本の農業は、そのような初等数学的論法で解決できないものを持っていると思うのであります。私は、産業構造の改革そのものを一般的に反対するものではありません。問題は、ではそのためにどういう対策が用意されているかということであります。そして、日本農業における経営の立ちおくれと他産業との所得格差増大は、今日までの保守党の政策によってもたらされたものではないかと言いたいのであります。
 この反省に立って、次の質疑に答えてもらいたい。
 池田総理は、十年後の日本農業における人口を六百万と測定いたしておりますが、そのときの農家戸数は幾らと見ているか。
 農業人口が四割に減るとして、その場合に、農業に残った者の所得は十年後にどうなるのか。
 労働力を農村から移動させるといいましても、工業地帯は限定されております。南九州、山陰、東北など県民所得の低い地方の不均衡は拡大されるばかりではないか。
 これら地域に残る零細農家に対して、政府はどういう対策を用意されているか。
 かりに離農する場合においても、都市における雇用条件は、臨時工や最低賃金制さえ確立できていない劣悪さにあるのではないか。
 これらに満足な回答のない限り、私は、それは池田内閣の貧農切り捨てであり、二軍構造の解消もあり得ないと思うのであります。(拍手)
 最後に私は、国民の注目する減税問題について、池田内閣の政策を批判しつつ、総理、大蔵大臣の御見解を承りたいと存じます。政府お得意の演説は、「保守党は連年減税を断行して経済の実力を養い」、「今回は租税体系を合理化と、一千億以上の減税を実施する」と約束するところにあります。しかしながら、国税だけで本年度千五百億円、明年度は三千億円をこえる自然増収を見込みながら、明年一月から実施される減税額がわずか一千億円に押えられたのは、私のはなはだ遺憾とするところであります。特に、「減税案は一時間あればまとめてみせる」と高言したにもかかわらず、時間的な理由をつけてこの臨時国会に提出しなかったことは、減税を選挙に利用する巧妙な政治的計算として、国民のまた納得し得ない態度と言うべきでありましょう。政府与党は、口を開けば「昭和二十五年シャウプ税制以来今日までの税制改正が、一貫して減税の歴史である」と自慢しているのでありますが、今日の国民の税負担の割合は、戦前の国民所得に対する割合一二・九%と比較して、実に二〇・五%をこえる重圧であります。高い経済成長が続けば、連年減税しなければ、国民は低姿勢どころか、税の重圧で立ち上がることができないと思うのであります。蔵相は財政演説において、減税の実施は三十七年度以降も続ける考えを明らかにいたしましたが、国民の税負担率は、一体幾らを目標としているのでありましょうか。税制調査会の答申した二〇・五%ですか、それともかつて自民党の公約した一八・七%ですか。今回の減税構想には、低所得層に効果ある間接税の軽減に全く触れておらないのでありますが、大衆課税の象徴たる物品税について政府の見解はどうか、酒、たばこに対する減税はいつ実施するのか、この際お伺いいたしたいのであります。
 池田内閣はまた、独占資本に忠実なる奉仕者である証拠として、私は、大法人には特に税金をまける租税特別措置法が、租税体系の合理化をうたいながら、今回もそのまま温存されている事実をあげたいのであります。(拍手)私国民諸君に訴えたい。昭和三十五年度における租税特別措置法による減免学は、大蔵省の発表分だけで、産業の助成、資本蓄積のための内部留保を含めて、総計千四百四十七億円に達し、これを地方での特別措置と合わせると、実に二千百億円をこえているのであります。これは三十五年度における国と地方の財政総額の約一割に相当している事実であります。租税特別措置法により大法人が非課税の恩恵を受けた準備金と引当金等の蓄積は、減税額だけで実に一兆四千億円に達しているのであります。この事実は、一体何を物語るものでありましょうか。池田総理は、「日本経済は昭和三十年ごろをもって復興を完了した」と、歴史的な発展を謳歌しているのにかかわらず、何ゆえこの大資本中心の租税特別措置法を撤廃しようとしないのか。私は、この悪法に対して徹底したメスを加えない限り、総理がいかに国民の繁栄と福祉を説こうとも、それは資本主義の繁栄と福祉を主張しておるのと同じことだと思うのであります。総理に冠せられている金権政治家のレッテルは、国民のうわさから消えることはないであろうことを、私はあえて申し上げたいのであります。租税原則である課税の公平を期するために、総理、蔵相は、租税特別措置法を具体的にどう処理するか。
 以上、私は池田内閣の経済政策における矛盾と欠陥を指摘し、偽われる繁栄と福祉を指摘いたしましたが、国民は、まことの幸福と繁栄のために、もう一つの経済政策のあることを、来たるべき総選挙を通じて知ることができるでありましょう。私は、これを心から期待いたしまして、質問を終わる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣周東秀夫君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(周東英雄君) お答えをいたします。昨日の発言に対しまして大へんおしかりを受けましたが、別にこれは他意はございません。今日の社会情勢におきまして、右翼テロの対象となるおそれのあるような人に対しましては、ぜひともこれを守りたいために、警視庁はこれが護衛を付することを望んで、御協力を求めておるわけであります。しかし、これを一方的に進めますということは、いろいろ誤解を招くこともありましょうし、また、その個人々々の御意思、お考えもありますので、連絡をとりまして、御意思、御承諾を求め、御希望をとっておるわけであります。その意味におきまして、中には場所的に自衛の措置を持っておるからといってお断わりになっておるところもありますが、総評関係におきましては、御承諾になり、御希望がありましたから、これにつけることにいたし、不測の問題の起きないように処置するということを申し上げたわけであります。なお、お断わりになりましたからこれをほうって置くということはございません。身辺に対して直接の護衛は付せられませんけれども、これを社会的に考えましてテロの起こらぬように、遠くからこれを保護することはもちろんでありますけれども、身辺直接の護衛に対しましては、本人の御意思を聞くことになっておることを申し上げた次第であります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(池田勇人君) 周東国務大臣に対しましての私の考え方は、周東国務大臣が事実を詳しく申し述べられたのございます。何も謙恭の気持がないということはないと存ずるわけであります。私は適当だと思います。
 次に、御質問に対しましてお答えいたしまするが、私は、実は時間があれば詳しく反駁いたしたいのでありますけれども、時間の関係上簡単にいたしまするが、ただ、簡単にし過ぎたために言葉が激越になったとか何んとかということがありましたら、前も て御了承願いたいと思います。石橋内閣の私の財政経済政策は失敗であったというお話でございますが、私は、内外ともに成功であったという評判を受けております。従って、国際収支は、長い目で見て何ら心配はない、生産は伸びてほんとに昭和三十三年を契機として、三十四年、三十五年のこの成長は、石橋内閣の財政経済の成功を物語るものと、私は確信を持っております。(拍手)
 それから九%の問題は、私が前から考えておったことなんでございます。前から考えておったことなんでございまするが、九%を発表いたしますると、二、三日の間は非常に驚かれたようでございまするが、一週間たったら、社会党も民主社会党も大体これと同じようなお考えになっておりますので、その内容につきまして違うところがございますが、考え方としては、私は三党とも大体一致したということを喜んでおります。
 それから社会保障制度が後退したと言われますが、どこに後退した事実がございましょう。私は、今御質問の平林君が、三千億の自然増収があるのに千億しか減税しないのはいかぬじゃないかと言われた。それは、社会保障制度をうんとやらなければならぬから千億円程度しかできない、それをよくお考え願いたい。これは大蔵大臣や主税局長に、あまり減税をすると社会保障制度が少なくなるから、あまり減税をしないでくれ、初年度千億円以上でいいぞ、こう言って、自然増収がどんどんふえて参りますけれども、千億円以上という言葉を変えさせないゆえんのものは、社会保障制度をたくさんしようとするゆえんでございます。
 次に赤字公債でございまするが、赤字公債は、今後の財政状況を見て考えるときがくるかもわかりませんが、いわゆる悪い意味の赤字公債は出すべきではございません。今でも特別会計等には出しておりまするが、一般会計で出さぬかということは、よほど研究しなければなりません。出すべきときであっても、出せるか出せないかという問題があります。すなわち、私は、今の日本の一般の金融界の状況、財政経済状況等から言うならば、もう出してもいいという考えを持っております。しかし、この考え方が、民間にいかなる影響を与えるかというので、昭和三十六年度には公債の発行はしないつもりでございまするが、将来、日本の経済を拡大して、よりりっぱなものにするときには、公債政策をとることが必要であり、またそうすべきだという時代がくると私は考えておりまするが、来年はいたさないつもりでございます。
 それから十年後の物価はどうなるか、これはなかなかむずかしいのですが、立案といたしましては、卸売物価は横ばいということで立案するよりほかにございません。だれにお聞きになってもそう答えると思います。小売物価は、いろいろなサービス関係で、ある程度は上がりましょう。
 それから公務員の給与の引き上げで、全体の予算を出さぬかというお話でございまするが、今国会は、私はそういうことは出さぬ。次の選挙後の特別国会で、はっきり申し上げたいと思います。ことに、近日中、大蔵省の案もできますので、特別国会に出すべく、今年度の補正予算の全貌は三、四日のうちに出ると思います。また、正札と申しますか、金額を非常にお知りになりたいようでございますから、選挙戦が始まりましたら、何とか大蔵省、各省を督励いたしまして、来年度の予算の大綱ぐらい出せるようになるかと思います。
 それからいろいろの点、初等数学とおっしやいますが、私は、加え算、引き算を知らないやり方よりも、初等数学の計画がいいと思います。
 農家の戸数でございますが、これは昨日も衆議院の本会議で申し上げております。私は、今六割減らすというふうなことは言ったことはない。十年たって日本の経済が倍以上になったときの姿は純粋農家、専業農家は六割ぐらい今の数より減ってくるだろう、こういう意味でございます。六割というのは、大体今、農家は六百万戸ですから、今の農家というのは、御承知の通り第二次兼業も入っております。第二次兼業、第一次兼業、専業農家、こうなって参りますと、所得が倍になって、今の第二次兼業なんかというのは、もう農家の収入が全体の収入の二割か三割、あるいは一割というときは、農家と言えぬでしょう。私は、十年後にはそういうものは農家と考えていないのですから、とにかく農業というものが多角経営で規模が拡大してそうして農業自体でやっていける純粋農家というのは、今のいわゆる千五百万農民というのが相当減ってくると言うのでございます。だから農業、農家というものの定義からきめてかからぬと誤解がございます。今の日本の農業というものが、徳川時代、明治時代の旧態依然たる農業で、これをこのままやっていこうなんという考え方は、産業革命を知らない、経済を知らない議論でございます。私は、農民を、ほんとうに農業として食えるように、明るい朗らかな生活をするように農村を持っていくためには、専業農家というものは非常に少なくなってくるということを現わしておるのであります。
 それから、租税特別措置法についてでございまするが、平林君は、もう財政のことはお詳しいので、租税理論も御存じと思いまするが、租税には、負担の公平とか収入増加とか、あるいはいろんな原則がございまするが、租税の原則の中に、経済政策に合致する原則というのが一つの大きい原則でございます。これは、租税を語る人の忘れていけないこと、ことに日本のように、産業がどんどん伸びているときには、この経済政策に合致する租税制度というものはぜひ必要なんです。そこで、相当やって参りましたが、だんだん日本の経済が固まって来、強くなってきますと、この租税措置法は、だんだんこれはやめていくことなんです。従って、大蔵大臣もお答えになると思いまするが、大蔵大臣も、だんだんやめていくと言われると思います。これが実情に沿った理論です。(拍手)
   〔国務大臣迫水久常君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(迫水久常君) 消費者物価の値上がりの問題について若干申し上げます。
 平林君の御質問は、消費者物価が具体的に標準家庭におけるどのくらいな影響を及ぼしてくるかというようなことについての御質問だったと思いますが、実は、それにつきましては、私の方でも相当に研究はいたしておりますが、いろいろの前提要件があり、また仮定の要件がございまして、ここで詳細にそのことについてお述べをすることは、時間的といい、場所柄といい、適当ではないと思いますので、いずれ機会を得て、そういうことは十分にお互いに論議をしたいと思います。ただ、抽象的に申しますれば、消費者物価が昨年の同期に比べまして約四%ばかり上がっておるのですから、その指数から家計に及ぼす影響を判断していっておおむね間違いはないんじゃないかと思っております。ただし、この消費者物価四%値上がりというのは、主として食料の値上がりによっておるものでありますから、その食料の方の部分は、今逐次値下がりをいたしつつありますので、本年全体を通じて見ますれば、もっとずっと影響は少なくなるものと考えております。また、私の方別な研究によりますというと、この同じ期間におきまして、実質的な消費水準は約四%上昇しているというここが統計上出ておりますがゆえに、これは要するに、その間における賃金の上昇を、賃金がそれだけ増加したということを示しておるものでございます。私は、平林君が簡単に、今も非常に簡単に、所得が倍になるよりも一足先に物価が倍になるというふうなことをおっしゃるのですけれども、総理大臣も御説明いたしました通り、卸売物価が上がらないという前提のもとにおいて、消費者物価だけがそう突拍子もなく上がっていく、所得が倍になる前に物価が倍になる、こういうことを簡単におっしゃる、その理論的根拠を理解するに苦しむものであります。(拍手)
   〔国務大臣石田博英君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(石田博英君) 臨時工の問題でございますが、現在なお相当数の臨時工が存在しておることは、御指摘の通りでございまして基本的には、この臨時工をできるだけ減らして、将来はなくする方向に持っていくのが労政の目的であると考えております。ただ、その臨時工が存在しておりまする原因を考えますと、直接的には、これは経営者が景気変動に安易に備えようとする考え方に出発するものであると思っております。ただし、間接的に考えますと、この背後には、やはり労働力の過剰と、それから経済の基盤の浅さから来る経営の見通しの困難というようなことがあると存じまするので、これを直して参りますためには、まず経済の基盤の強化、これに力を注ぐ必要があると存じます。しかし、現在この時点におきましては、労働基準法の厳正な適用によりましてこの臨時工の立場を守って参りたい、こう考えておる次第でございます。
 それから、労働時間の短縮の問題でございますが、これも、方向としてはきわめて好ましいことであると存じておりまするし、これが雇用の拡大をもたらすことも、御意見の通りでございます。ただ、大企業におきましては、生産性の向上と見合いながら漸進的にこれをやっていただきたい。しかも、労使の十分なる話し合いに基づいてやっていただくことが望ましいと考えております。ただ、一面におきまして、中小企業には、むしろ長時間労働がなお存在いたしております。この長時間労働を解消することが私は当面の目的ではないか。そのためには、これまた労働基準法の適用を厳正公平に行ないますと同時に、実情に沿うように漸進的にやって参りたい。つまり摘発や告発より、監督指導によってその行政効果を上げて参りたいと考えておる次第でございます。
 それから、全国一律の最低賃金制を施行する考えがないかという御質問並びに家内労働法制定についてのお尋ねであります。全国一律性の最低賃金についての議論は、私が前に労働大臣をいたしておりますときに、現行最低賃金法を提出いたしましたときに十分いたしたのでございます。従って、ここでさらにこれを繰り返しませんが、最低賃金制の確立ということにつきましては、現在施行一年で、大体適用労働者が三十一万程度になっております。これを今後三カ年間で二百五十万人の労働者に適用せしめたい。そうしてこの行政効果を上げる努力の過程を通じましてただいま御指摘の問題、御指摘の方向における改正の問題も研究して参りたい、こう考えておる次第でございます。
 それから家内労働法につきましては、ただいま家内労働調査会を設けまして御検討を願っておりますが、その中間的な御結論として、現在の家内労働の複雑な状態からかんがみまして、その新しい立法の背景を作りますために、さらに調査を進めるとともに、行政的に、立法を待たずして、行政的に行ない得るものについては適切な措置をするようにという、その適切な措置の具体的内容を添えた答申がございました。政府といたしましても、その答申の内容に賛成でございますので、できるだけすみやかに行政措置を行ないつつ、立法の準備を進めて参りたいと思っておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#31
○国務大臣(水田三喜男君) 減税の問題でございますが、減税は、税体系をくずして個々ばらばらな減税はやらないという方針から、税制調査会におきまして、三年がかりの予想で今この問題と取り組んでおることは、御承知の通りでございます。そこで、ようやく今、直接税中心の検討が進んで、中間答申が出て参ったという段階でございますので、私はこれを受けて、今度は所得税、法人税、直接税中心の減税案を今私は考えておるところでございまして方向もようやくきまりましたので、過日施政方針でも述べたようなことでございますが、間接税につきましては、まだ本格的な検討を経ておりません。今回の場合、中間答申を得られないということになっておりますので、この問題に取りかかって私どもが根本的ないろいろ改正案を準備するというのは、今の日程としては大体三十七年度以降になるというふうに考えております。
   〔国務大臣南條徳男君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(南條徳男君) お答えいたします。
 御質問の趣旨は、産業構造が変化するに伴って農村の農民の所得の格差が強くなるであろう、よってこの離職対策、農村における離農の対策と同時に、低開発地━━先ほどお述べになりました南九州あるいは山陰、東北地方、こういう低開発地の離農について特にどういう対策があるかという御質問でございました。この点につきましては、再々この席でも申し上げましたが、政府の農業対策といたしまして十分この地域の格差をなくし、また他産業と農民との所得の格差をなくする方向といたしまして、その恒久的対策として通常国会に農業基本法を御審議を願うことになっておるのでございます。その内容につきましては別な機会に申し上げるのでございますが、今の御指摘のさような場合においての低開発地における離農対策はどういうことになるかということでございますが、これはどういたしましても、低開発地における開発ということは、別な方途で低開発地の開発についての財政投融資その他の方法を政府としても考えておるのでございますから、かような面においてもぜひこれらの地域の開発を願うと同時に、農民の立場につきましても、政府が今農業基本法で考えておりますような所得を伸ばすためには、どうしても今の日本の人口の過剰である農村、また一戸当たりの営農規模が非常に小さいことというようなことから、かような面を協同化するような、あるいは多角経営するような方向によりまして農業の近代化という方向に持っていきたい、それによって現在の過剰人口が他産業の方に離農する場合における対策といたしましては、受け入れ側の方面においても、十分に雇用の拡大であるとか、あるいは社会保障の問題であるとか、あるいはいろいろな社会情勢を作っていただくことはもちろんでございますが、最低賃金法の拡充などももちろんでございますが、また、出す方の農村面におきましても、これらに対する職業の訓練所、あるいは広域職業のあっせん所というようなものを付設いたしまして、そうして十分離農者に対する立場を考えるわけでございますが、特に小規模の二反、三反と持っておる兼業農家などが離農する場合について、今までの険路はどういう点にあったかと申しますと、農地法に対する改正をしてやらなければなかなか容易ではないという面も考えまして、政府は、農業基本法の中にはこういう点も考えておるわけでございます。かようにいたしまして十分離農者に対する懇切丁寧な立場をとり、そうして残されておる農民に対しましても、先ほど総理の話されたように、営農規模を拡大いたしまして、そうして独立して日本の農家というものが、農業が近代的に立ち行くような方向に持っていきたい、こういう考えであります。(拍手)
   〔平林剛君「財政投融資の点について」と述ぶ〕
#33
○副議長(平井太郎君) 財政投融資の点について水田大蔵大臣の補足答弁を求めます。
   〔国務大臣水田三喜男君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(水田三喜男君) 財政投融資につきまして大資本中心主義をやめようというお話でしたが、財政投融資の内容をごらんになればおわかりになります通り、道路港湾から始めて、公共の福祉のための投融資が全体のうちで八〇%を占めておりまして、あの財政投融資の中で大資本偏重というようなものはどこにもございませんので、これは御承知願いたいと思います。
 それから運用機構を民主化せよというお話でございますが、これは先ほど申しました通り、三つの審議会から本意見が出ておりますし、この機構の民主化は、私どもは十分やるつもりで今改善案を検討しているところでございます。(拍手)
#35
○副議長(平井太郎君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時十七分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
ソース: 国立国会図書館
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