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1960/10/21 第36回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第036回国会 本会議 第3号
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1960/10/21 第36回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第036回国会 本会議 第3号

#1
第036回国会 本会議 第3号
昭和三十五年十月二十一日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和三十五年十月二十一日
    午前十時開議
 一 国務大臣の演説
 二 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 池田内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 小坂外務大臣の外交に関する演説
 水田大蔵大臣の財政に関する演説
 迫水国務大臣の経済に関する演説
 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙
 裁判官訴追委員の選挙
 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙
 売春対策審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 厚生保護事業審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 蚕糸業振興審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 科学技術会議議員任命につき事後の承認を求めるの件
 公正取引委員会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 首都圏整備委員会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 中央更生保護審査会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 公安審査委員会委員長及び同委員任命につき事後の承認を求めるの件
 社会保険審査会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 労働保険審査会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午前十時三十六分開議
#2
○副議長(中村高一君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○副議長(中村高一君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、大蔵大臣から財政に関する演説、迫水国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣池田勇人君。
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#4
○国務大臣(池田勇人君) さきに、私は、国会の指名によりまして、内閣総理大臣の重責をになうことになりました。私心を去り、ただひたすらに謙恭と誠実を旨とし、全力を傾けて、私に与えられた職責を全ういたしたい決意であります。よろしく御支援のほどお願い申し上げます。(拍手)
 本月十二日、淺沼稻次郎君が、不慮の災厄に遭遇し、逝去されました。まことに哀惜痛恨にたえないところであります。申すまでもなく、暴力は民主政治に対する公然の敵であります。それは、左右を問わず、個人、集団の別なく、断じて排除しなければならないものであります。(拍手)私は、治安の確立こそ、あらゆる政策に先行する大切な要件であり、それがまた政治の指導と運営の根本でなければならないと存じます。そのためには、まず、国会を頂点とする政治と行政の運営が秩序正しく行なわれ、争いを話し合いによって解決する慣行が国民生活の全分野において確立されるよう忍耐強く努力しなければならないものと信じます。(拍手)同時に、暴力をわが国の社会から一掃しようとする全国民の不退転の決意が高揚せられ、国会と政府と各政党が、新たなる決意のもとに、あらゆる暴力の温床の除去に努める必要を痛感するものであります。(拍手)政府としては、国民と協力しつつ、社会秩序の維持に真剣に対処する決意であります。
 就任以来、私は、わが国の一部に見られた異常な社会的緊張を緩和し、人心と社会秩序の平穏を取り戻すことに心を砕いて参りました。そのために、私は、何よりも私自身を初め政府みずからの姿勢を正すべく、政府各省各庁に官紀の維持と振粛を求め、筋道を通した行政運営の確立を期して参ったのであります。(拍手)また、政治の運営にあたり、対立する利害と見解の存する場合には、各政党間はもとより、各当事者の間においても、闘争によることなく、相互の寛容と理解にささえられた話し合いによって事案の調和と解決をはかるよう強調して参りました。(拍手)三井三池の長期にわたる深刻な闘争が、第三者の賢明なあっせんを中心とする労使のしんぼう強い話し合いにより、ともかくも平和のうちに解決点を見出し得たことは、そういう意味においてわれわれの勇気を鼓舞するに足るものでありました。(拍手)
 現在、わが国においては諸制度の改正をめぐって各種の論議があり、憲法については、現行制度を維持すべきか改正すべきかの論争が展開されております。このような論争は、本来、問題の本質が国民各層の間で十分論議せられ、相当の年月を経て国民世論が自然に一つの方向に向かって成熟した際に、初めて結論を下すべきものと考えます。
 私は、外交と内政は本来一体不離のものであると信じます。国内の人心が平静を保ち、社会秩序が平穏に維持されることは、わが国の経済の繁栄と文化の向上の前提であり、わが国の国際的信用の向上と外交上の発言力を強めるゆえんであると存じます。
 御承知のごとく、本年五月に予定されておりました巨頭会談の決裂以来、世界は再び東西冷戦の状態に逆戻りしたかの観を呈し、現下の国際情勢は、全世界の期待にもかかわらず、国際緊張の緩和が決して容易でないことを示しております。加うるに、コンゴその他アフリカの新興諸国をめぐって東西両陣営の角逐が熾烈化し、今次国連総会は両陣営の対立の場と化した観があるのであります。このことは残念なことでございまして、国連自体にとりましても重大な試練でありましょう。最近、国連の権威について不信の念が表明されましたことは、私の遺憾とするところであります。私は、国際連合にあくまで信依し、その権威が加わり、その本来の機能がますます発揮されることを念願しつつ、建設的かつ実際的立場からこれを支持し協力を続けて参る所存であります。(拍手)
 昨今、アフリカその他において多数の国家が新たに独立を宣し、国連に加盟いたしましたことは、世界の平和と人類の進歩のために、まことに慶賀すべきところであります。これら新興国の国連における活動、なおまた、過般東京において開かれました列国議会同盟会議におけるこれら諸国の動向を見るとき、これらの国々が一致して米ソの対立の緩和と世界平和の実現を望みつつあることは十分理解し得るところであります。もとより、今日の国際情勢の不安定は、そのよって来たるところ深く、単なる願望や言葉をもってしては解決し得ざるところではありますが、これらの新興国がその独立の実をあげるために、世界平和を願うその熱意に対しては、共感と支持を惜しまないものであります。わが国といたしましては、これら諸国が今後その政治的、経済的、社会的基盤を固め、国際社会の責任ある一員としての役割を果たし得るよう十分協力いたして参りたいと思います。
 現内閣成立以来、政府は引き続き日米関係の改善に意を用い、まず、米国に小坂外務大臣を派遣して今後に処するわが政府の所信と決意を説明せしめ、十分な意思の疎通をはかった次第であります。また、先般発表されましたアイゼンハワー米国大統領と私との間の往復書簡におきましても、日米両国の提携関係が共通の利害と相互信頼の確固たる基礎の上に築かれ、将来ますます強固となるべきごとが確認されたのであります。なお、今回の皇太子殿下、同妃殿下の御訪米に際し、米国朝野から示されましたあたたかい歓迎は、今日日米両国国民の間に存する親近感を端的に象徴するものであります。(拍手)私は、ここに、国民を代表してこの機会に衷心から謝意を表明いたしますとともに、この日米両国の友好関係がますます深められますことを、かたく信じて疑わないものであります。(拍手)
 現在の国際情勢下においてわが国が平和外交を推進いたしますためには、たとえ政治理念や社会体制を異にする諸国とも平和裏に共存していかなければなりません。政府といたしましては、自由民主主義国としてのわが国の基本的立場を堅持することは言うまでもありませんが、平和外交の本旨にのっとり、共産主義諸国に対しても、あとう限り友好関係の増進に努める所存であります。(拍手)
 中国大陸との関係につきましては、相互の立場を尊重し、内政不干渉の原則に基づいて、漸次これを改善していくことが望ましいと考えます。特に、従来中絶状態にありました日中貿易に再開の機運が生まれることは、もとより私の歓迎いたすところであります。
 韓国との関係につきましては、本年八月、韓国に新政府が成立し、日韓関係の調整について韓国側の積極的な意向が表明されました。政府は、この機会をとらえて、日韓関係の改善に積極的に対処することとし、九月六日、小坂外務大臣を韓国に派遣して、新政府樹立に対する日本政府並びに国民の慶祝の意を伝えしめたのであります。その結果、日韓全面会談の予備会談を十月下旬から東京において開くことにつきましても意見の一致を見た次第であります。
 いわゆる低開発地域の経済的安定が、これらの地域の健全な政治的、社会的成長のため、ひいては世界平和のために不可欠であることが痛感され、この地域に対する経済的、技術的援助がきわめて重要な問題となってきております。わが国といたしましては、すでに各種の国際機関を通ずる経済技術援助にできるだけ参加協力しておりますが、今後一そうその努力を続けて参るつもりでございます。なお、先般東京で開催されました列国議会同盟会議の外交的成果にかんがみ、この種の国際会議等における外交的機会の活用については、特に国民外交の一翼をになうものとして、十分留意いたしたいと存じます。
 わが国経済が所期の高度成長を達成するためには、ますます貿易を伸張しなければならないことは申すまでもありません。私は、この貿易の伸張は世界のあらゆる国に対して行なわれ、均衡のとれた多辺的なものとなることを期待いたしております。さらに、わが国の貿易・為替の自由化は、わが国産業の健全なる発展のためにも、また消費者たる国民の利益のためにも、同時にまた、わが国貿易の伸張のためにも必要であると考えます。相手国にのみ自由化を求め、みずからはこれを回避するような態度は、もはや許されないのでありまして、国民各位の御理解を希望してやみません。
 自衛力の自主的整備充実は、独立国としての当然の責務でありますが、これは、もとより、わが国の国力と国情に応じたものでなければなりません。わが国が自国の安全保障の基礎を国連と日米安保条約に託しつつ自衛力の漸増方針をとって参りましたゆえんもここにあるのであります。わが国は、今日、世界において相対的に最も少ない国防費をもってよくその平和と安全を維持し、経済の目ざましい発展を遂げ得たのでありまして、このことは、歴代の保守党政権の外交的成功を裏づけるものであると確信いたします。(拍手)しかるに、わが国の一部には、中立主義がわが国の安全を保障するに足る有効な手段であると主張する風潮が見られるのであります。この種の主張は、第一に、まず、わが国をめぐる国際的環境に対する具体的検討を怠り、第二に、わが国の国力が東西間の力の均衡に多大の影響力を持つ事実を看過し、第三に、経済の高度化とその繁栄が自由国家群との協調を第一義的な基盤とするわが国の立場に対する洞察力を欠く等、一種の幻想であるとしか思われません。(拍手)これ、われわれが断じて中立主義をとらざるゆえんでございます。(拍手)私は、わが国の安全と繁栄を現実に即して保障すると同時に、世界の平和の維持に貢献するため、現行安保体制を堅持しつつ、変転する国際情勢に対して参る所存であります。
 文教の刷新充実と科学技術の振興は、民主政治の確立、新しい時代の繁栄、国民福祉の向上充実に不可欠の前提であります。文教政策の基本は、わが民族と国土と文化を愛し、高い人格と良識を持ち、国際的にも信頼と尊敬を受け得る国民を育成することにあります。(拍手)わけても、青少年がその持てる能力を十分に発揮し、国家社会の建設に自主的にその情熱を傾けるようにすることにあります。そのため、歴代の政府は、戦後の困難な状況のもとにおきましても、文教施策の充実に特に意を注いで参りました。政府は、その趣旨に沿って青少年の能力の一そうの開発を助長するため、低所得層の子弟の育英奨学、勤労青少年の教育体制の整備等につき積極的に施策して参る所存であります。(拍手)あわせて、スポーツ、芸術、文化の振興を通して明朗はつらつたる国民生活を招来するために、体育施設、社会教育施設の整備充実に一段と留意したいと存じます。(拍手)なお、中学校及び高等学校生徒の急増に対する措置は一日もゆるがせにできないものがありますので、中学校については本年度から思い切った措置をとり、三十六年度中にその完了をはかるべく、所要の準備を進めております。(拍手)
 科学技術教育はこれを特に重視し、公立私立の区別を問わず、その充実には特段の努力を傾ける決意であります。とりわけ、経済の成長政策に不可欠の前提である技術者、技能者の養成につき、大学理工系の拡充整備、工業高等学校の増設を年次計画的に実施いたしたいと存じます。(拍手)
 科学技術研究の領域においては、これまでの諸先進国の研究に依存する安易な行き方を是正して参ることが眼目でなければなりません。そのため、わが国独自の技術の創造開発に努めるとともに、貿易の自由化と所得倍増政策に伴う産業構造の高度化に備えるためにも、科学技術会議の答申を基礎として科学技術振興の施策を実現して参りたいと存じます。(拍手)
 わが国経済は、ここ数年来、著しい成長を遂げて参りました。特に、昨年度は一七%という目ざましい拡大を示し、本年度に入ってからも、おおむね順調に推移し、予想以上の拡大が期待されております。このような過去の実績から見ましても、わが国経済は強い成長力を持ち、今や歴史的な発展期にあると認められます。(拍手)そこで、政府は、今後十年以内に国民所得を二倍以上にすることを目標とし、この長期経済展望のもとに、さしあたり来年度以降三カ年間につき、年平均九%の成長を期待しつつ、これを根幹として政府の財政経済政策の総合的な展開を考えているのであります。(拍手)経済が国際的にも国内的にも均衡を維持しつつこのような高度の成長を遂げることは、もとより国民の自由な創意に基づくたくましい活動力によるものであります。私がかかる経済成長を無理に国民に押しつけようとしているのでは決してないのであります。わが国民は、過去十年間において、変動する国際経済にさおさしつつ、年平均九%以上のインフレなき経済成長を遂げて参りました。(拍手)私は、政府の施策よろしきを得れば、今後もそれに劣らない成長を生み出すに違いないし、その成長をささえる条件にも恵まれていることを確信するものであります。この経済の成長は、旺盛な設備投資による企業の合理化、近代化を通じて、生産の順調な増加をもたらしますので、物価の騰貴、通貨不安定等のインフレ的現象が生起する心配はないのであります。(拍手)世界においてわが国の物価が一番高い安定度を示し、輸出の増進と国民の実質所得の着実な向上を示していることは、このことを物語るものであります。(拍手)近ごろ一部の小売物価の値上がりを見ましたが、その原因は必ずしも一律ではありません。政府としては、それぞれの原因に応じて、独禁法の運用、供給、流通、輸送等の円滑をはかるなど適切な措置によって、不当な小売物価の上昇を押えるため格段の努力を傾ける決意であります。(拍手)
 経済の成長と国際収支の関係は、わが国にとっては特に重要な関心事であります。わが国経済の輸出競争力から見ましても、輸入依存度から見ましても、さしむき九%程度の成長率では、国際収支に赤字をもたらすおそれはないと信じております。
 経済の成長と関連して業種間または地域間における所得格差の問題につきましては、私は、むしろ、経済の成長こそ、その縮小を可能にするものであると確信しております。(拍手)中小企業に対する設備の近代化、金融措置の拡充や減税措置は、後に述べる農業基本政策とともに、所得格差の解消を大きく前進させるものであります。工場の地方分散等による地方における産業開発の促進、これに即応する工業立地計画、その他雇用促進策の実施によって地域的所得格差の解消を期待いたしまするが、これらはいずれも経済の十分な成長によってのみ可能となるものであります。(拍手)しこうして、経済の成長は国民自身の努力によって実現するものであり、政府の任務は、かかる成長実現への努力を円滑に働かすことのできる環境と条件を整備することにあると信じます。(拍手)このために、政府は、技術者、技能者の養成、道路、港湾の画期的整備、鉄道その他の輸送力の増強、通信施設の整備、土地、住宅、用水の確保に努める決意であります。また、教育や社会保障の拡充、農業や中小企業の近代化、公共投資、減税その他一連の政策は、それぞれ内需の喚起を通して高水準の成長確保の大きい柱となることを期待しておるのであります。(拍手)
 わが国には優秀な質に恵まれた豊かな労働人口があります。ここに現在のわが国経済成長の原動力があるのであります。国民の所得の増加、生活の向上充実は、働く意思と能力を持ったこの多数の国民のすべてがそれぞれりっぱな職場につき、その能力を存分に発揮するところから生まれるのであります。単に消極的な失業対策にとどまらず、労働の流動性を高め、経済の成長によって、新しい、よりよい職場を作り出し、もって雇用の高度化をはかることが今日の経済政策の眼目でなければならないと信じます。(拍手)
 農林漁業は、本来、わが国の物心両面における安定に大きい貢献をもたらし、政治、経済、文化等、各分野にわたる人材の大きい供給源としての歴史的役割を果たして参りました。一面、工業等の第二次産業、商業等の第三次産業の現状から、農林漁業人口の吸収が思うにまかせなかったため、その経営の近代化がはばまれ、その経済は非常に不満足な状態にとどまらざるを得なかったのであります。かかる経営の立ちおくれは、農林漁業と他産業との所得の格差を拡大し、第二次及び第三次産業部門の発展に対するブレーキともなり、日本経済全体の均衡のとれた成長発展をはばむ要素であったのであります。いつの日か、何人かが、この問題の解決にメスを入れなければならなくなっていたのであります。(拍手)すでに、前内閣においては、農林漁業の振興途上に横たわる基本問題に関する大規模な検討調査に乗り出したのでありますが、さらに、われわれは、所得倍増計画の推進に関連して、農林漁業の停滞を打開するに足る明るいフロンティアが開かれてきたことに着目するに至ったのであります。(拍手)近時の農村の変貌がすでに事実をもってその動向を示しておりますことは、御承知の通りであります。政府は、この動向に即応して、一方においては十分にその力を発揮する機会を持たない農林水産業の就業人口が自発的に喜んで移行する職場を第二次ないし第三次産業の面に作り出すと同時に、農林漁業自体が経済的規模と近代的施設に恵まれ、その所得を他の産業に劣らない水準にまで引き上げるよう積極的施策を推進する段階に来たことを率直に認めております。(拍手)すなわち、わが国の農林漁業を他の産業と均衡のとれるよう成長発展せしめ、さらに国際的水準に位する近代的産業として育成助長し、その地位の安定と向上をはかることを経済成長政策の一大眼目と心得、画期的施策を行なう決意であります。(拍手)
 わが国の社会保障制度は、国民の理解と協力によって、逐年たくましい前進を示しました。待望の国民皆保険もいよいまその完成を目前に控えており、国民年金制度の発足をも見るに至りましたことは、まことに同慶にたえないところであります。(拍手)しかし、現行の制度を精細に吟味すると、なお相当の改善充実をはからなければならぬところも決して少なくないと思うのであります。経済の成長途上において、国民の一部が依然日の当たらない谷間に取り残されることのないよう、政府としては周到な努力を惜しまないつもりであります。(拍手)そこで、当面、低所得層の生活水準の引き上げ、住宅の確保、子弟に対する教育機会の賦与等に特段の配慮を加えるとともに、結核、精神病等、長期にわたる療養を必要とする向きに対する国庫負担の増額をはかり、あわせて、社会保障制度の根幹である国民年金につき、改善すべき点は早急に改善していくつもりであります。(拍手)その他、社会保険制度の充実、環境衛生施設の整備と相待って、社会保障はなお一段と進めていきたい所存でございます。
 社会保障の充実には、もとより巨大な公的財源を必要としますが、その財源は経済の成長を通じて確保されます。他面、経済の成長は、社会保障の充実、公共投資や減税政策の推進に依存するところが大きいのであります。この三者については、私は、いずれを重しとし、いずれを軽しとする議論にはくみせず、全体の施策の調和ある展開を期しておる次第であります。(拍手)
 政府は、さきに示された一般職公務員の給与に関する人事院の勧告を尊重して、これを本年十月一日より実施することにいたしました。この勧告の対象となっていない特別職、地方公務員等に対しましても同様の趣旨に沿って措置する所存で、当面緊急を要する災害対策並びに学校急増対策とあわせ、所要の予算補正の準備を進めさせております。(拍手)私は、この際、公務員諸君が、よく綱紀の維持に努め、公費の節約、事務の簡素化、能率の向上に意を用い、広く国民の声に耳を傾け、真に国民の奉仕者としての職責を全うされるよう希望してやみません。(拍手)
 以上、新政策の基本方針を申し述べました。私は、民主政治のルールに従い、選挙の公明が保障され、政治が秩序正しく運営されて社会秩序が平穏に維持され、政治に対する内外の信用を高めて参りますことを施策の根本と考えております。(拍手)さらに進んで、優秀な資質に恵まれた国民のエネルギーをたくましい経済の成長に動員し、完全雇用と福祉国家の建設に向かって国民諸君とともに力強い前進をはかることを念願としておるものであります。(拍手)
 ここに所信の一端を述べ、国民諸君の一段の理解と協力を切望してやみません。(拍手)
#5
○副議長(中村高一君) 外務大臣小坂善太郎君。
    〔国務大臣小坂善太郎君登壇〕
#6
○国務大臣(小坂善太郎君) 第三十六回臨時国会の開会に際しまして、外交方針に関する政府の所信を明らかにいたします。
 私は、今回コンゴ問題に関する国連緊急特別総会及び第十五回国連通常総会に出席いたしまして、わが国の国連外交に関する基本方針について所信を明らかにいたしまするとともに、多くの国々の代表とも懇談いたしまして、短時日でありまするが、国連の実際の動きを体験いたしました。
 この体験から得ました私の結論は、アフリカの多数の新独立国の加盟を契機といたしまして、国連が今や重要な時期に際会しておるということであります。そもそも、これらの新加盟国を含みまして発展途上にある諸国の真の願望は、東西両陣営の対立にわずらわされることなく、自由と平和のうちにその独立の実をあげ、もって国民生活の繁栄と幸福を期することにあると信ずるのでありまするが、これらの諸国は、このような民族的願望の達成にあたりまして、国連の役割に期待するところきわめて大であると考えられるのであります。(拍手)従いまして、すべての国連の加盟国は、国連が世界平和維持のための唯一の機構としてますますその権威を高め、かつ、その機能を強化いたしまして、国連本来の機能を達成し得るよう、着実に、かつ建設的な支持と協力を与えねばならないのであります。私は、今次総会におきまして、わが国がこのような考え方で国連の事業に参加するものであることを明らかにいたしまして、その立場から、アフリカの問題、国際緊張緩和の問題、軍縮問題、特に核実験中止の問題並びに大気圏外の平和利用について所信を述べたのであります。特に緊張緩和につきましては、今次総会が、非難と宣伝の場に堕することなく、建設的な討議の場として役立ち、それによって東西交渉のために友好的な雰囲気を醸成すべきことを強調いたしたのであります。
 しかるに、今次国連総会におきましては、東西巨頭会談の流会後再び激化いたしました東西対立の情勢を反映いたしまして、新加盟国をめぐりまして自己の勢力の拡張をはかるために、本来国際協調の場であるべき国際連合を扇動と非難の舞台と化するがごとき、国連憲章の精神にも沿わざるごとき言動が見られましたことは、まことに遺憾でありました。
 過去においても国連は幾多の試練に際会いたしましたが、そのつど世界の公正な世論の支持のもとにこの試練に耐え抜き、着実な発展を続けて参りました。私は、今次国連総会における表面的な動きにもかかわりませず、結局は健全なる良識が矯激なる言動を押えまして、国連が平和維持機構として、より有効な、より大きな役割を果たし得るようになることを期待いたすものであります。(拍手)わが国といたしましては、このため、国連の政治、経済、社会の各分野におきまする具体的活動に対し、人と資金とを通じ、応分な、かつ、実質的な寄与を行なっていく所存でございます。これはまた、すべての国連加盟国が平和のため当然負うべき義務であると信ずるのであります。
 私は、国連総会に出席の機会に、ワシントン及びオタワを訪れまして、アメリカ及びカナダ両国の首脳と親しく会談いたしました。これらの会談におきましては、世界の情勢その他共通の関心事項について忌憚のない意見の交換を行ないまして、今後の外交施策上まことに有益であったのであります。特にハーター国務長官との会談におきましては、わが政府の今後に処する所信と決意を披瀝いたしまして、わが国に対する理解の増進と信用の回復に貢献し得たと考えておるのであります。
 政府といたしましては、今後、安全保障の分野においてのみならず、その基礎をなす政治、経済、文化、科学等、あらゆる分野におきまして日米両国の協力関係をますます緊密ならしめて参る所存であります。
 さらに、主要西欧諸国との関係につきましても、政治的信条を同じくする自由主義陣営の一員といたしまして、わが国とこれら諸国との友好協力関係の促進をはかるべきことは言うまでもありません。特に、近年西欧諸国が相互の緊密な協力のもとに世界政治上きわめて重要な役割を果たしております今日、わが国といたしましては、これら諸国との提携をますます強化いたしまして、政治、経済、文化の面におきまして緊密な協力を進め、相ともに世界の平和と繁栄のために努力して参りたい所存であります。その意味におきましても、かねてからの懸案でありましたイギリスのわが国に対する戦前請求権の問題が今般円満な解決を見るに至りましたことは、今後の日英友好関係の促進上きわめて意義深いものであると存ずるのであります。戦後、わが国は、わが憲法の理念にのっとりまして、政治信条を同じくする自由主義国家群と緊密に協力しつつ、わが国の平和と安全を確保し、経済の飛躍的な発展と一般国民の福祉の向上に大きな成果をおさめて参ったのであります。このような成果は、自由世界の一員といたしまして、わが国の基本的立場に負うところがきわめて大きいのであります。
 最近、わが国の一部におきましては、東西冷戦から逃避いたしまして、両陣営のいずれにもくみしないといういわゆる中立政策論や、わが国を非武装化し永久中立の制度をとるべし等の論が行なわれております。このような議論も同じく平和を希求する気持から出ているものが多いとは思われますが、遺憾ながら、これらの主張は、東西両勢力の対立関係を如実に反映し、政治的にも軍事的にもまことに不安定な極東に位するわが国の国際環境からいたしまして、わが国には中立維持の基礎条件が存在しないという客観的事実に対する認識を欠くものであります。(拍手)また、同時に、わが国の平和と安全と繁栄を可能ならしめている基盤をくつがえすおそれがあるものであると考えるのであります。特に、狭い国土に九千万の人口を擁しつつ、高度の経済的、文化的水準を維持しつつ、さらにこれを向上せしめなければならないわが国にとりましては、自由世界との緊密な協力が絶対に必要なのであります。(拍手)最近、わが国に対しまして、国内からも、国外からも中立政策をとるよう執拗な圧迫が加えられておりますが、これらの動きが最も警戒を要すべきものでありますことは、過去におきまして中立条約が一方的に廃棄せられました苦い経験や、あるいは共産主義陣営内において中立主義が全く認められていないという事実からいたしましても明白なことであるのであります。(拍手)
 しかしながら、このような自由主義国家としてのわが国の基本的立場は、わが国と政治理念や社会体制を異にする諸国との友好関係を維持し、その増進をはかることとは決して矛盾するものではありません。政府といたしましては、わが国の基本的立場はあくまでこれを堅持しつつ、平和外交の本旨にのっとりまして、相互の立場の尊重と内政干渉の原則のもとに、今後ともこれら諸国との友好関係の維持増進に努める方針であります。特に中国大陸との関係につきましては、まず貿易その他の交流を通じまして逐次両者の関係が改善されますことは、もとより歓迎するところであります。
 わが国が、アジアの一国としてアジア諸国との友好善隣関係に特に留意いたさねばならないことは申すまでもありません。わが国といたしましては、これらの友邦との協力関係をさらに進めまして、その信頼をかち得るとともに、民族の繁栄と福祉を求めるアジア諸国の正当な声は、これを広く国際社会に反映せしめるよう努力する考えであります。
 韓国に新政府が成立いたしましたるを機会に、私は、去る九月六日韓国を訪問いたし、新政府樹立に対する日本国民の慶祝の気持を伝えますとともに、新政府の指導者とも親しく意見を交換して参りました。また、久しく中絶しておりました日韓全面会談の予備会談を本月末から開くことについても意見の一致を見まして、このようにし長い間閉ざされておりました日韓友好のとびらが漸次開かれる機運になって参りましたことは、御同慶の至りに存ずる次第でございます。(拍手)日韓両国間の懸案解決への道は必ずしもたんたんたるものではないと思いますが、今回こそは、双方が親善と互譲の精神をもって交渉に当たり、すみやかに円満解決に達し得るように強く希望する次第であります。また、政治問題の解決と並びまして両国の経済交流を促進いたしますことは、両国国民双方にとりまして利益をもたらすものでありますから、政府といたしましては、この方面にも努力いたす考えであります。
 近年アフリカ諸国が相次いで独立を達成いたしましたが、これら諸国の動向が世界平和の将来に影響するところはきわめて大きいのであります。これらの新興諸国が今後国際社会の責任ある一員といたしまして世界の平和と繁栄に貢献するためには、政治的に、経済的に、社会的に、その基盤をすみやかに確立する必要があるのであります。わが国といたしましては、わが国が近代国家として成長して参りましたところの経験と知識を活用いたしまして、これらの諸国に対してあとう限りの協力をいたしたいと考えておるのであります。
 中南米諸国との関係につきましては、これらの諸国には現在わが同胞及び日系人約五十万人余が在住いたしまして、産業の各分野におきまして活発に活動いたしまして、これらの諸国の経済発展に大きな寄与をいたしておりますことは御承知の通りでありまするが、政府といたしましては、単に農業関係の労働力を送り出すということのみにとどまらず、技術及び経済企業協力と一体となった移住政策を推進いたしまして、これらの諸国との政治的、経済的関係の緊密化に資したいと考えておる次第でございます。
 次に、経済外交につきまして一言申し上げます。
 わが国の輸出が昨年三十四億六千万ドルに達しまして、前の年に比べて二割増加いたし、本年に入りましても、上期の実績は十八億五千万ドルに達しまして、前年の同期に比べまして、やはり二割方増加しておりまして、下期も同様順調に推移するものと見込まれております。このことは、国民生活の前途にまことに明るい希望を投げかけるものであると存ずるのであります。
 ただ、ここで、わが国の貿易の相手方について検討いたしてみまするに、昨年におきましては、輸出入とも、その約三分の一はアメリカ及びカナダであったのであります。しかも、昨年わが国の輸出が一昨年に比べまして二割方増加いたしましたのも、この両国に対する輸出の伸びに負うところが非常に大きかったのであります。しかしながら、このアメリカ及びカナダの市場に集中して輸出を伸ばすことは、相手国においても輸入制限運動その他の望ましくない動きを激化せしめるおそれがありますので、今後はこの両国に対しては特に秩序ある輸出に心がけねばならぬと思うのであります。
 他方、ヨーロッパの最近の経済発展はまことに目ざましいものがありまして、これに伴いまして、わが国のヨーロッパに対する輸出も、本年上半期におきましては前年同期に比べまして五〇%、五割方増加しておるのであります。この市場は、わが国にとりまして今後ますます有望なものとなるのではないかと存ずるのであります。ただ、ヨーロッパでは、最近、共同市場や自由貿易連合といった形で経済統合が非常に進んでおりまして、わが国といたしましては、これらの経済統合を形成する諸国が域外の第三国に対しましてもできるだけ自由な貿易政策をとることを強く希望いたしたいのであります。
 また、ヨーロッパ諸国とわが国との通商関係は現在必ずしも正常なものとは言いがたく、これらの諸国は、種々の理由をあげて、わが国からの輸入に対して差別的な制限を加えているのであります。いわゆるガット三十五条援用の問題も、これらのヨーロッパ諸国の日本に対する差別待遇の一つの現われであります。
 このような情勢にかんがみまして、政府といたしましては、今後、このヨーロッパ諸国の経済統合の動きを十分注視いたしまするとともに、現実の通商関係の改善のために大いに努力して参りたいと存ずるのであります。すでに本年七月署名を見ましたイギリスとの貿易取りきめにおきましても、わが国に対する差別待遇をできる限り撤廃せしめるように努力したのでありますが、さらに、これと並行いたしまして、数年来の懸案でありまする日英通商航海条約の締結についても、目下、鋭意努力を続けております。また、最近、ベネルックス三国、すなわちベルギー、オランダ及びルクセンブルグとの間に通商協定を締結いたしました結果、いわゆるインナー・シックス、欧州共同市場を形成いたしておりますこれら三国との通商関係も大いに改善されることが期待されるのであります。さらに、これを契機といたしましてフランスに対し、またイタリアに対し、通商関係の改善についてもこれを進めたい所存であります。また、オーストラリアとの通商協定も、過去三年間の実績はきわめて満足すべきものであったのでありますが、さらにこれを改定いたしまして、でき得れば同国のガット三十五条援用撤回が実現するような方向で、目下、同国政府と交渉中であります。
 ここで特に申し上げたいのは、わが国がアメリカ、カナダ、オーストラリアやヨーロッパ諸国といった先進国との貿易の拡大をはかるためには、わが国の側においても自由化を大いに促進する必要があるということであります。さらに、自由化は、わが国経済の国際的競争力を強め、また、消費者たる国民大衆の利益にもなるということを指摘したいのであります。
 次に、わが国の貿易の相手方として開発途上にある諸国の占める比重は非常に大きいのでありまして、昨年の実績を見ますると、アジア、アフリカ、中近東及び中南米向けの輸出はわが国の総輸出の半ばを占めており、これら諸国との経済関係の増進は一日もゆるがせにできないのであります。このためには、わが国との通商関係を安定した基礎の上に置くことが何よりも大切でありまして、政府といたしましては、これらの国との通商航海条約の締結に大いに努力をして参りたい所存であります。すでに本年八月マラヤとの間に通商航海条約とほぼ同様の内容を持つ通商協定が発効いたしまして、これに伴って、同国は、わが国に対するガット三十五条援用を撤回いたしたのであります。また、現に政府はフィリピンとの間に通商航海条約の締結を交渉中であり、さらに、近くインドネシアとの間にも通商航海条約の締結交渉を開始することになっております。
 しかしながら、これらの諸国との経済関係の緊密化をはかりますためには、単に通商関係の改善のみをもってしては足らないのであります。どうしてもこれらの諸国に対しましては経済的、技術的な援助を行なう必要があると存じます。
 わが国といたしましては、すでに世界銀行の増資に応じ、国際開発協会、いわゆる第二世銀に対しましても、近く加入の上、出資を行なう予定であるなど、国際機関を通ずる経済技術援助にはできる限り協力して参ったのでありまするが、さらに二国間の経済技術援助につきましても、総額十億ドルに上る賠償を誠実に実施して相手国の経済開発に協力しており、また、コロンボ・プラン等を通ずる技術協力も行なっておるのであります。ただ、最近の傾向といたしましては、わが国が加入しておりまする開発援助グループやインド及びパキスタン債権国会議における討議からもうかかえまするように、わが国が機械輸出のため行なっております短期及び中期の輸出信用供与だけでは、国際収支の慢性的な赤字に悩んでおりまするこれらの諸国の経済発展にとっては十分でないのでありまして、今後は、開発途上にある諸国、特に東南アジア諸国に対する経済協力を推進する見地に立ちまして、輸銀資金の積極的な活用や、前国会以来御審議を願っておりまする海外経済協力基金の利用等の方法について、できる限り長期の資金援助をこれらの諸国に与えることができまするよう努力する必要があると信ずるものであります。また、最近、世界の各方面におきましても技術援助が経済援助の効果的利用に寄与するところ大であるとの認識が高まっておりまするが、わが国といたしましては、この技術援助の面におきましても今後さらに積極的な貢献をいたして参りたいと思うのであります。この点に関連いたしまして、わが国はかねて国連が行なっておりまする開発及び技術援助のための特別基金に対し、来年度におきましては画期的に拠出金を増額する所存であります。また、コロンボ・プランの総会が今月末から東京において開催せられますることは、まことに意義深いのでありまして、この機会に国民各位が経済技術援助につきましてさらにその関心を深められんことを切望する次第であります。(拍手)なお、従来わが国は開発途上にある諸国に対し農業技術援助及び医療援助についても協力して参ったのでありますが、これについても今後さらに協力を進めたい考えであります。
 以上、当面の外交問題に関しまして政府の所信を明らかにいたしました。このようなわが国外交の基調にありまするものは、自由と平和のうちに国民生活の繁栄を確保するとともに、世界の平和と人類の福祉に貢献せんとする日本国民の誠実な念願であります。大戦の惨禍を深刻に反省し、原爆を体験した唯一の国民といたしまして、日本国民の平和に対する熱意は世界のいずれの国民にも劣らぬものがあると存ずるのであります。私は、この日本国民の平和に対する念願を常に念頭に置きまして、複雑な国際情勢に対処し、誠実に、しかも弾力性ある態度をもって参りたいと思うのであります。平和は単なる美名にとどまってはなりません。真に日本国民の平和と安全を確保し、一そうの繁栄をはかるためには、現実を無視した空虚な宣伝に惑わされることなく、常に冷厳なる国際情勢の現実に即し、地道に、しかも自主的に、平和と繁栄を確保する道を探求していかなければなりません。(拍手)
 私は、わが外交の運用にあたりまして、以上のごとき心がまえをもって対処したいと存じまするが、およそ、一国の外交が自主的かつ強力に展開されますためには、国民各位の十分なる御理解と積極的な支持が不可欠の要件であります。国民から遊離した外交では、実効ある外交施策の展開はできません。私は、わが国外交の運営にあたりまして、現実の正しい認識の上に立った国民各位の良識を十分に反映いたして参りたい所存であります。切に国民各位の御支援を仰ぐ次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○副議長(中村高一君) 大蔵大臣水田三喜男君。
    〔国務大臣水田三喜男君登壇〕
#8
○国務大臣(水田三喜男君) 私は、この機会に、わが国当面の財政経済に関する所信を申し述べたいと存じます。
 わが国経済は、昨年度、目ざましい成長を遂げたのでありますが、本年度に入りましても、依然として順調な拡大傾向を持続しております。すなわち、鉱工業生産は、昨年度の急速な増加のあとを受けまして、本年度も引き続き拡大しており、年度初来八月までの鉱工業生産指数の上昇は七%をこえております。これを年率に換算いたしますと約一七%に及ぶのであります。この生産の拡大は、家計の消費支出の増加、企業の設備投資の増大、輸出の増進等、最終需要の着実な伸張の上に達成せられたものであります。しかも、この間、国際収支の均衡基調は依然として保持され、外貨の準備高は、本年度に入って以来、二億九千七百万ドルの増加を示し、九月末には十六億五千八百万ドルに達しました。また、物価の面におきましても、卸売物価はおおむね安定した動きを示しております。消費者物価につきましては、やや上昇いたしておりますが、騰貴を見ている主要な商品である生鮮食料品の価格の上昇は、季節的、一時的な要因によるところが多かったのでありまして、総体として、漸次落ちつきを取り戻しつつあるものと考えられます。
 以上申し述べました通り、安定した基調の上に経済の拡大成長が実現しつつあることは、日本経済の実力が一段と大きくなったことを示すものとして、国民各位とともに心から喜びたいと存じます。(拍手)
 申すまでもなく、経済運営の目標は、雇用の拡大と国民生活の絶えざる向上にあります。この目標を達成して参りますため、今後も、通貨価値の安定と国際収支の均衡を確保しながら、高度の成長を実現して参ることが必要であります。政府は、今後十年以内に国民総生産の倍増を期し、当面、来年度以降三カ年におきましては、年平均九%に及ぶ経済成長の実現を目途とするものでありますが、最近におけるわが国経済の著しい発展の跡に徴しましても、今後、財政金融を通ずる適切な施策を進めることにより、その実現は十分期待し得ると考えるのであります。
 私は、このたび、国際通貨基金及び国際復興開発銀行の年次総会に出席し、各国の財政金融関係者と親しく意見を交換する機会を得たのでありますが、これらの人々が、いずれもわが国経済が適切な財政経済施策のもとに目ざましい成長発展を遂げたことに対し深い敬意と信頼感を持っていることを知り、まことに意を強くしたのであります。今回、ワシントン輸出入銀行に対し、中小企業近代化のための機械設備輸入資金の融資を要請いたしたのでありますが、その実現の見通しにも明るいものがありますことは、このような信頼を如実に示すものとして、まことに喜ばしいと存ずるのであります。私は、今後とも、財政経済の堅実な運営により、わが国に対する国際的な評価をいよいよ高め、もって国際経済との連携を深め、わが国経済の一そうの伸展をはかりたいと念願いたすものであります。
 次に、当面の財政政策の方向について一言いたしたいと思います。
 幸いにして、今後わが国経済の発展に伴い、相当多額に上る財源の増加を見込み得るものと予想されるのであります。従いまして、今後の財政の運営に当たりましては、その健全性を堅持しつつ、この増加する財源をもって、経済成長の基盤の造成と国民生活の均衡ある向上を積極的にはかって参る所存であります。このため、特に、私は、減税、公共投資及び社会保障に重点を置いて必要な諸施策を推進していきたいと考えております。
 まず、減税につきましては、昭和三十六年度において、国税、地方税を合わせ平年度一千億円以上の減税を断行いたす考えであります。私は、経済の発展を推進するものは、基本的には国民の創意工夫と企業の自主的努力を基本とする民間経済のはつらつたる活動にあると信ずるものであります。この意味において、国民の租税負担の軽減合理化をはかり、もって勤労意欲を高め、民間資本の蓄積を進め、国民生活と経済活動に明るい希望を与えることはきわめて重要であります。昭和三十六年度においては、所得税において、配偶者控除の新設、専従者控除の拡充、給与所得控除の拡張及び税率の緩和等を行なって、勤労者、中小商工業者、農林漁業者等、中小所得者の負担軽減をはかりたいと存じます。また、法人税において、機械設備の耐用年数の短縮、中小法人の留保所得課税の軽減等を行ない、企業資本の充実に努めたい所存であります。なお、国民の待望する所得税の減税については、できる限り早くその期待にこたえるため、明年一月から実施するよう努める考えであります。
 さらに、私は、この際、減税の実施は、経済の成長に伴う租税収入の増加状況と財政需要とを勘案し、昭和三十七年度以降も引き続き行なって参る所存であることを明らかにいたしたいと存じます。
 次に、公共投資についてでありますが、今後、わが国経済が高度の成長を遂げて参りますためには、その基盤たる社会資本の充実を図ることが急務であります。これがため、輸送需要の増加に応ずる道路、港湾及び国鉄への投資、産業活動の拡大に対処する工業、農業用水の確保等、産業基盤の拡充整備に努めますとともに、住宅、上下水道等、生活環境施設の充実改善、国土保全施設の強化及び農林水産業近代化のための基盤整備を推進いたしたいのであります。
 また、国民生活の安定とその均衡ある向上をはかるためには、本来経済の成長を通じて国民所得の増大と国民福祉の向上を実現していくことが基本でありますが、同時に、社会保障の充実をはかることが福祉国家としての当然の責務であります。すなわち、医療保障及び国民年金の充実、生活保護の改善、児童及び母子対策の強化、失業対策の合理化等に努め、この面の施策の充実に特段の配慮をいたしたいと存ずるのであります。
 以上、私は、当面の財政政策の方向について申し述べましたが、次に、今後の金融政策の基本について申し述べます。
 経済の安定的な発展をはかるためには、今後とも金融政策の適切な運用に努め、金融の持つ経済調整機能を十分に発揮させることの必要なことは言うまでもありません。
 これとともに、今後の金融政策について、私は、特に、金利問題の重要性を痛感いたすのであります。
 現在、わが国の金利水準が国際的に見てなおかなり割高であることは否定できません。今後、経済の一段の拡大を期して参りますためには、わが国企業の国際競争力を高めていくことが重要な条件であります。そのためには、企業みずから積極的にその体質改善に努めなければならないことは申すまでもないのでありますが、同時に、この割高な金利水準を、金融の持つ調整機能を考慮しながら、しかも、あとう限り国際的水準にさや寄せしていく努力が肝要であると考えるのであります。一方、わが国の金利高が、基本的には、経済の急速な成長に伴う強い資金需要に対し、資本の蓄積がややもすれば追いつかないという事情に基因していることも事実であります。従って政府といたしましては、今後とも、資本蓄積の促進、安定的外資の導入等を通じ、資金の供給を円滑にするとともに、金融機関の経営の合理化を推進し、環境の整備をはかり、漸次、金利水準の低下の方向に誘導いたして参りたいと存じます。
 また、中小企業向け政府関係金融機関の金利につきましては、近い機会にその引き下げを実現いたしたいと考えております。
 最後に、為替政策について言いたしたいと存じます。
 政府は、本年六月、貿易為替自由化計画大綱を決定し、以来、この線に沿って自由化を推進して参りました。貿易・為替の自由化が今や世界の大勢であり、同時に、わが国経済が国際競争場裏にあって、真の成長を達成していくための不可欠の方向であることにつきましては、今さら多言を要しないところであります。今後、私は、その国内経済に及ぼす影響に慎重な配慮を加えながら、引き続き自由化の推進をはかり、また、これと同時に、輸出の増進につきましても、特段の努力を払って参りたい所存であります。
 貿易・為替の自由化と並んで、最近の国際経済におきまして最も重要な流れの一つは、低開発国に対する開発援助を中心とする国際経済協力の緊密化であります。わが国といたしましても、この流れに沿って施策を進めることが国際社会の一員としての責務であると同時に、また、輸出市場の開拓のためにも大きな意義を有することを痛感いたすのであります。政府は、すでに、国際開発協会への参加及び海外経済協力基金設置の方針を決定いたしているのでありますが、今後におきましても、国力に応じ、積極的にこの方向に努力して参りたいと存ずる次第であります。
 以上、当面の財政経済に関する所信を申し述べましたが、このような財政経済諸施策を推し進めることによって、わが国経済の絶えざる繁栄と国民生活の着実な向上を期することが私の念願であります。国民各位の深い御理解と御協力を切望してやみません。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○副議長(中村高一君) 国務大臣迫水久常君。
    〔国務大臣迫水久常君登壇]
#10
○国務大臣(迫水久常君) 池田内閣の政策の大綱につきましては、すでに池田総理大臣が申し述べられました。私は、これに関連して、わが国の経済に関する若干の政府の考え方を申し上げまして、国民各位の御理解と御協力を得たいと存ずるのであります。
 わが国の経済が、ここ数年来、まことに目ざましい成長を遂げて参りまして、昨昭和三十四年度にはその成長率は一七%にもなり、さらに本年度においても一〇%をこえるであろうと見込まれるような順調な成長をいたしておりますことは、すでに御承知の通りであります。これは、生産が順調に伸びております一面、これに対応する需要の面におきましても、産業の合理化、近代化のための設備投資が活発に行なわれ、輸出も大いに伸張いたし、個人消費の支出も個人可処分所得の上昇によって著しく増加いたしました結果、生産と需要が均衡し得たことによるものでございます。その結果、卸売物価は安定いたし、外貨準備高も今や十六億ドルをこえることになりまして、わが国経済は著しく充実し、安定して参つたのであります。
 このような落ちついた経済の拡大基調は、今後も引き続き維持し得るものと考えられますので、この経済の拡大を安定的に確保いたしますため、政府におきましては、国民所得倍増計画と名づけまして、国民総生産を実質額において倍増するについてとるべきもろもろの方策の策定を進めておるのであります。この計画は、現在、経済審議会において、今後およそ十年間に国民総生産を倍増することを目標として作成中でございまして、近く答申がある予定になっております。倍増をかりに十年間で達成するとすれば、年平均の成長率は七・二形となるのでありますが、最近の経済の推移にかんがみまして、ここ当分の間は、相当高い成長を期待し得るものと思われます。従って、政府は、少なくとも昭和三十六年度以降三カ年間においては、年平均九%の経済成長は可能であると考えまして、これを政策実施上の目標とすることにいたしたのであります。
 従来の経済運営の態度を反省いたしてみますと、わが国経済の体質が弱く、底が浅いという面が強調されました余り、とかく、経済の成長を控え目に見て参りました。そのため、勢い財源の見積もり等も控え目になりまして、政府の施策もおのずから制約を受けざるを得なかったのであります。これがため、政府のもろもろの施策が、結果から見ますれば、国民経済の現実の動きに必ずしも即応していない面も見受けられたのであります。よって、政府におきましては、民間部門の経済の動きと政府の施策とが歩調の合ったものにいたしますために、実勢と認められる目標を設定することにしたのであります。従って、この九%の成長率を目標として設定しました意味は、池田総理大臣も申されました通り、わが国経済を引っぱって、無理にでもこの程度の成長を遂げしめようというのではなくて、政府施策と経済の動きとのに大きな食い違いを生ぜしめないために必要であるということにあるのであります。
 世上、この九%の成長率を見込むこが無理ではないかという議論を往々にして聞くのでありますが、これに対しては、まず、過去五カ年間の成長率が平均九%以上に達しているという事実に着目いたしますと同時に、以下申し上げるようなわが国経済の根強い成長要因を十分考えてみる必要があると思います。なお、日本社会党及び民主社会党におかれても、目標を達するための手段は異なるようでありますが、ほぼ同程度の成長を見込んでおられるのでありまして、まことに意を強うする次第であります。
 わが国経済の今後の成長要因を考えますにあたりまして、まず、世界経済の動向を考えてみますと、米国における景気の見通し等から、世間では、その先行きを心配する見方もあります。しかし、米国については、工業生産は停滞しておりますが、これは主として在庫調整によるものでありまして、最終需要は、個人消費も政府支出も減少することなく、また、財政、金融面からも、てこ入れがなされておりますので、私は、米国景気の先行きについては悲観的な見方をする必要はないと考えております。また、西ヨーロッパ諸国の経済も、全般的には先行きが悪くなると判断すべき要素は特に認められません。このような実情から、私は、世界経済の先行きについて心配する必要はないと思いますが、たとえそのような徴候が現われましても、最近では、各国とも、政府、民間を通じて景気変動を回避し得る体制が漸次整えられつつありますので、世界経済の動向については、総じてこれを不安視する必要はないものと考えます。
 一方、わが国経済は、ここ数年の成長によってその体質は大いに改善され、底は深くなって参りました。これは、国民の勤勉と新しい技術を消化するすぐれた能力がその基本になっておるのでありますが、企業設備の近代化、合理化がまことに驚異的な速度で進行いたしたことによるのであります。このため、いわゆる生産性の向上は目ざましいものがあるのでありまして貿易の自由化にも耐え得られるよう、国際競争力は逐次強化せられつつあるのであります。この傾向はまず大企業に始まったのでありますが、今後、政府の施策と相待って、中小企業の分野にも浸透いたし、経済の各部門に行き渡ることは間違いございません。
 このように、わが国経済の力は、生産の面においては、質的にも量的にも著しく拡大されたのでありまして、むしろ、問題は、これに対応する需要の側にあるのであります。需要の項目は、申し上げるまでもなく、公共投資を中心といたしまする財政支出、民間設備投資、個人消費、輸出などでありますが、その各項目について検討してみたいと思います。
 まず、公共投資でございますが、公共投資は、率直に申しまして、従来おくれがちでありました。このことは識者の認めるところであり、われわれも身近かにこれを感じているのであります。しかし、今後は、この公共投資を経済の成長におくれないよう、むしろ先行するような心がまえで拡充するようにいたしたいと思うのであります。なお、公共投資は、最も必要な部門から重点的に実施し、効率的な運用をはかる必要のあることはもちろんでございますが、その目的は、すべての産業活動の基礎となるべき産業基盤の整備とあわせて、国民生活向上のための生活環境の改善にあるのであります。従って、公共投資が大企業など一部の産業に特に有利になるのではないかと見る見解は、全く当を得ておりません。(拍手)
 次に、民間設備投資については、最近における急速な伸び率が今後においてもそのままの勢いで継続するとは当然考えられないところでありますが、日進月歩する技術の進歩に伴いまして、今後とも、その額は相当な額に達するものと思われます。設備投資は、現在においてもすでに過剰あるいは重複の状態にあり、その傾向は今後ますます増大するのではないかと心配する向きもありますが、私は、わが国の企業家並びに金融当局者はきわめて高い良識を持っていると信じますがゆえに、鹿を追う者山を見ずといった愚かなことは決してしないことを信ずるのであります。近く策定せられる国民所得倍増計画は、この場合の道しるべとしての役目も果たすことと思いますし、国民所得倍増計画を策定する意義も実はこの点にあるのでございます。
 今後需要の側において最も重視しなければならないものは、総需要の半ば以上を占める個人消費であります。経済の成長に伴いまして雇用は着実に増大いたし、それによって個人消費が増大することは当然でありますが、同時に、所得倍増の道程において、経済の成長に照応して、賃金給料等の労働の対価が次第に上昇していくことが予想せられ、このことは、政府としても好ましいことと考えておるのであります。しかして、今後さらに行なわれるであろうと考えられる減税並びに計画的に拡大せられていくところの社会保障も、この個人消費の増加のためにきわめて大きな役割をすることと思うのであります。このように個人消費の着実な伸びは、とりもなおさず、国民生活内容が質も量も充実向上することを意味するものでありまして、わが池田内閣が目標としている福祉国家完成の基本的方針にも沿うものであります。
 次に、輸出の伸張であります。今後の経済の拡大に伴って、原材料、燃料及び国民生活の向上のための消費物資の輸入が増加することは当然予想されるところであります。従って、これに見合うように輸出をふやしていくことは必要欠くべからざることでございますが、このことは、同時に、経済成長のための需要要因として重要なのであります。輸出増進の基本は、もちろん、わが国産業の国際競争力の強化にあるのでありますから、各企業が、さきに述べたように、労働対価の上昇を生産性の向上によって吸収するよう努力することが絶対必要でありますが、輸出品を付加価値の小さいものからより大きいものに転換するよう努めることも肝要であります。政府においても、経済外交の推進、低開発国に対する経済協力、金融の円滑化、企業の体質改善等のための租税政策など、各般の適切な措置を講じまして、世界の各地域に対して輸出の増進をはかりたいと思うのであります。貿易の自由化もこの意味からぜひ促進しなければならないと考える次第であります。このように、政府と民間が一体となって協力するならば、世界経済の変化に対処しながら、今後引き続き必要な輸出を確保することができると信じております。
 以上述べましたところによって明らかなことく、将来、需要と供給とは十分に均衡を保ちまして、わが国経済は円滑に成長していくものと考えるのであります。これがためには、もちろん、政府の施策がよろしきを得ることが肝要でありますが、以下、今後における経済運営の基本的問題について若干申し上げたいと存じます。
 第一は、産業構造の高度化の促進であります。高度の経済成長を達成するためには、個々の企業の生産性を上げると同時に、産業構造の比重を生産性の低い部門から高い部門に移す必要があります。すなわち、第二次産業及び第三次産業を中心として経済の発展を考えなければならないのであります。中でも重工業及び化学工業を重点といたし、ことに、雇用吸収力が高く、附加価値も大きく、将来輸出産業として最も期待される機械工業を重視すべきであると考えておるのであります。
 もちろん、これは、第一次産業を軽視する意味では決してありません。たとえば農業についても、その所得の向上をはかるために農業経営の近代化を積極的に推進する必要があるのでありまして、この点については、すでに池田総理大臣から詳細に申し述べられておるのであります。
 第二は、全国総合開発の促進であります。わが国において産業の発達が地域によりまして著しく異なっておりまして、一部の地帯ではすでに工業が飽和状態に達しておるのに対して、他面、低開発地域も存在することは、御承知の通りであります。従って、資源、土地、人口、産業関連施設など、産業の基礎要件を考えながら、産業の分散をはからなければ、今後の産業の円滑なる発展はとうてい期し得られないと思うのであります。よって、総合的な観点から全国開発計画の樹立に努めまして、低開発地域の開発を促進しようと思うものであります。
 第三は、所得格差の是正であります。所得格差は、地域間、産業間及び階層間に見られるのでありますが、地域間の所得格差については、ただいま述べました全国総合開発の促進によってこれを縮小しようとするものであります。産業間の所得格差のおもなる問題は、第一次産業と他の産業との間並びに大企業と中小企業との間の問題であります。前者につきましてはすでに述べましたが、中小企業に対しましては、特段にきめこまかく意を用いる方針であります。すなわち、中小企業の協調体制を整えまして、金融政策並びに財政及び租税上の措置をおもな手段といたしまして、その近代化、合理化を促進し、生産性を向上し、もって中堅産業としてわが国経済成長の重要な部門を担当せしめんとするものであります。
 なお、所得格差の是正について、労働条件の改善、社会保障の計画的拡充が、階層間の所得格差の是正に重大な寄与をするものであることを申し上げておきたいと思います。
 第四、科学技術の振興と人的能力の向上であります。わが国産業の生産性向上も、また国際競争力の強化も、究極においては、科学技術の振興と人的能力の向上が最大の要件であることは、申すまでもございません。西ドイツにおきましては労働力の不足のために経済の成長が鈍化してきたといわれておりますが、わが国においても、長い期間には労働人口の増加が鈍化し、その不足が予想せられるとともに、今後における産業高度化の進展を考えますときは、人の質の向上は真剣に考えていかなければなりません。従って、技術系統の学校、研究施設の拡充、技能者養成のための画期的な施策を講ぜんとするものであります。
 第五は、消費者の立場に立った行政の推進と物価の安定であります。戦後、わが国経済は、長らく需要が供給を上回る状態にありましたので、経済政策は供給力を増大することを重点として運営されてきたのでありますが、前に述べました通り、今後は需要の面を重視しなければならないのであります。ことに、その場合、個人消費が重要な項目となるのでありますが、経済成長を円滑に達成し、同時に、国民生活の内容充実をはかりますためには、消費者の立場に立った行政を推進することの必要性を痛感するものであります。今後の経済は、申さば買手市場になるのでありますから、おのずから消費者の立場は有利になるわけでありますが、消費者の利益の擁護等について一そうの施策を講じなければならないと思います。
 この場合、最も重要な問題は物価であります。現在、経済の高度成長を推進する場合には、物価が上昇するのではないかという心配をされている向きもありますから、少しくこの点について申し述べたいと思います。
 インフレ的な物価の上昇は、申すまでもなく、需要が供給を超過する場合に起こるのでありますが、現在のわが国経済の実勢から見て、局部的または一時的の場合を除きまして、総体的には需要が供給を超過する危険は、まず全くないと申してよいと思います。従ってインフレ的な物価の上昇は起こり得ないのであります。問題は、局部的または一時的の需給関係の変化に基づく物価の上昇、並びに、労働対価の上昇を生産性の向上によって補い切ない部門における物価の上昇であります。
 最近、世上関心の的である消費者物価の上昇は、主としてこの種のものでありまして、局部的または一時的要因によるものにつきましては、わが国は相当額の外貨を保有しておりますから、機動的な輸入などによって需給の調整をはかることが可能であり、現にそのような措置によって、大部分解決の方向に向かいつつあるのであります。また、業者間申し合わせ等の形によって独占価格的なものが形成されるおそれのあるものにつきましては、独占禁止法などによって厳重に監督しておりますし、政府が直接関与し得る公共料金については、この際努めてその値上がりを抑制する方針であります。
 なお、私は、消費者物価について将来最も重視すべきは居住費関係であると考えますから、この点については十分対策を講ずることにしたいと思います。
 概括的に申しますれば、消費者物価は今後若干ずつ上昇の傾向を持つものと思われます。これは、価格構成の内容において労働対価の占める部分が多いものもあり、また、物資自身の質が高級化いたしましたために価格が高くなるものもあるからであります。なお、生活内容の向上に伴ないまして、より高級なものを消費するための家計費の増加を、消費者としては物価の上昇と錯覚している場合もあるような気持がいたします。政府としては、今後、消費者の立場に立って、消費者物価の動向については、こまかい関心を持ちまして、総合的に十分に対策を講ずる所存でございます。総体的に見まして個人の収入の増加は、はるかにより高い割合をもって進行いたしますから、今後、国民生活は、実質的に着々と充実向上していくものと申しまして決して過言ではないのであります。(拍手)
 政府は、以上述べましたところに基づきまして今後慎重の経済運営の方策を進めたいと考えております。しかし、経済は生きものでありますので、経済の成長の道程において、ときどきの変化は当然ございましょう。従って、常時経済の動きを見詰めながら、景気の変動をできるだけ回避する措置を講じつつ、民間部門の創造能力と活動力が十分発揮されるよう適切な誘導を行ないまして、経済成長の目的を達成したいと思うのであります。私は、将来の国民生活の内容が、衣食住についても、また、文化生活についても、いかに充実し、高度化するかということを考えますとき、輝かしい希望のわくのを禁じ得ません。国民各位におかれましても希望と自信を持って邁進せられんごとを切望してやまない次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#11
○副議長(中村高一君) この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時二十四分開議
#12
○副議長(中村高一君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
#13
○副議長(中村高一君) 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員が一名欠員となっておりますので、この際同予備員の選挙を行ないます。
#14
○天野公義君 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備貝の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられ、その職務を行なう順序については議長において定められんことを望みます。
#15
○副議長(中村高一君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#16
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。
 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に徳安實藏君を指名いたします。
 なお、予備員の職務を行なう順序は第二順位といたします。
     ――――◇―――――
#17
○副議長(中村高一君) 次に、裁判官訴追委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行ないます。
#18
○天野公義君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#19
○副議長(中村高一君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。
 議長は、裁判官訴追委員に中島茂喜君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#21
○副議長(中村高一君) 次に、日本ユネスコ国内委員会委員が一名欠員となっておりますので、この際同委員の選挙を行ないます。
#22
○天野公義君 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#23
○副議長(中村高一君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。
 議長は、日本ユネスコ国内委員会委員に三池信君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#25
○副議長(中村高一君) お諮りいたします。
 内閣から、売春対策審議会委員に本院議員猪俣浩三君、同神近市子君、同河野孝子君、同田中角榮君、同福家俊一君、同本島百合子君、同山下春江君、参議院議員市川房枝君、同高野一夫君、同藤原道子君、同山本杉君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#26
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
#27
○副議長(中村高一君) 次に、更生保護事業審議会委員に本院議員高橋禎一君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
#29
○副議長(中村高一君) 次に、蚕糸業振興審議会委員に参議院議員大河原一次君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#30
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
#31
○副議長(中村高一君) 次に、科学技術会議議員に梶井剛君を任命したので、科学技術会議設置法第七条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#32
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#33
○副議長(中村高一君) 次に、公正取引委員会委員に石井幸一君を任命したので、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第三十条第四項の規定により、その事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#34
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#35
○副議長(中村高一君) 次に、首都圏整備委員会委員に友末洋治君を任命したので、首都圏整備法第八条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#37
○副議長(中村高一君) 次に、中央更生保護審査会委員に巣山末七君を任命したので、犯罪者予防更生法第五条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    [「異議なし」と呼ぶ者あり]
#38
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#39
○副議長(中村高一君) 次に、公安審査委員会委員長に山崎佐君を、また、同委員に廣瀬豐作君、正木亮君、山名義鶴君をそれぞれ任命したので、公安審査委員会設置法第五条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
  [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#41
○副議長(中村高一君) 次に、社会保険審査会委員に簗誠君を任命したので、社会保険審査官及び社会保険審査会法第二十二条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#43
○副議長(中村高一君) 次に、労働保険審査会委員に大石清治君を任命したので、労働保険審査官及び労働保険審査会法第二十七条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#45
○副議長(中村高一君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。河上丈太郎君。
    〔河上丈太郎君登壇]
#46
○河上丈太郎君 私は、日本社会党を代表して、政府の施政方針に対し質問をいたさんとするものであります。
 本月十二日、わが党の委員長淺沼稻次郎君は、三党首立会演説会におきまして、演説の途中で、暴漢の手によって刺殺されました。淺沼稻次郎君は、私が社会主義運動に投じて以来の友人であり、わが国の勤労大衆の解放のために四十年の長きにわたって戦ってきた人でございます。大衆から親しまれ愛された淺沼君の生命を一瞬にして奪い去ったテロの凶刃に対し、私は憤りの念を押えることができないのであります。(拍手)本来ならば、きょうは、淺沼君が社会党を代表してこの壇上から池田総理に質問をいたすはずでありました。ところが、不幸にして、それがもはや永久にできなくなったのであります。私は、淺沼君の不幸なるできごとを中心として、政府の所信をただしたいと思うのであります。(拍手)
 私が総理に対して聞きたい第一の点は、総理は今度の事件についてどのような責任を感じておられるかということでございます。(拍手)
 淺沼君は、刺される寸前まで、民主主義と議会政治の擁護を叫び続けて参りました。およそ民主主義と議会政治の何ものにもかえがたい長所は、反対党の存在が許され、その政治的活動に完全な自由が与えられているということであります。(拍手)与党、野党のそれぞれの党首がおのおのの政見を述べ合う立会演説会は、この言論の自由を発揮する最もよい場所であります。ところが、この場所におきまして野党第一党の党首が、その演説の途中において刺し殺されたのであります。自分と意見を異にする相手を凶器をもって刺し殺すようなことが許されるとするならば、それは民主主義そのものの破壊であると考えます。(拍手)ましてや、淺沼君は、民主主義の擁護を強く訴えていたのであります。その淺沼君に向けられたるやいばは、民主主義そのものに向けられたるやいばでなくて何でありましょうか。(拍手)
 池田総理は、すでに二回にわたって池田君の眼前において血が流れるのを見られております。最初は、池田君が自民党総裁に選出され、その祝賀のときに、首相官邸においてであります。二度目は、先日、日比谷公会堂の壇上において、君のすぐ前で淺沼君が刺されたときであります。歴代の総理大臣にして、池田総理ほどその眼前において血の流れるのを見た人は、おそらく他にありますまい。(拍手)
 このような不祥事の頻発は、決して偶然ではないと思います。それは、岸、池田二代の自民党政権が右翼の台頭に対し何らの措置をとらなかったことに起因するものであると私は考えます。(拍手)このような自民党の態度は、ついに淺沼君の暗殺という許すべからざる罪悪を引き起こしたのであります。この事件に関し、池田総理はいかなる責任をとろうとせられているのでありましょうか。この事件に対する政府の責任は、山崎国務相の辞職だけですでに解消したと考えておられるのでありましょうか。池田総理及びその他の閣僚等は全く政治的責任なしという考え方でおられるのでありましょうか。この事件に深い衝動を受けたすべての国民は、かかる責任回避に対し、言い知れない不満と疑惑を持っておるのであります。(拍手)私は、断じて、この際、内閣全体として責任をとるべきだと信ずるのでありますが、池田総理の所見をお尋ねいたしたいのであります。(拍手)
 私の質問の第二の点は、政府は右翼の動きについてどういう措置をとったか、また、とろうとしておるかということであるのであります。
 戦前並びに戦時中に、右翼は軍部及び財界から資金を得て横行濶歩したことは、周知の事実であります。戦後、彼らは、石橋内閣に至るまで約十二年間は鳴りをひそめておりました。彼らが活発なる活動を始めたのは、岸内閣のもとで警職法改正案が大きく政治的な問題となってからであると思います。特に、新安保条約に反対する国民運動が全国的に盛り上がったときには、その活動は目に余るほどでありました。彼らの一部は、公然とヘリコプターを使ってビラをまくような挙に出ました。一体、彼らの活動の資金はどこから出ておるものでありましょうか。(拍手)この当然の疑問が今日まで答えられることなく放置されておったのであります。(拍手)しかし、もうこれ以上放置することは許されません。池田総理は、先ほどの施政方針の演説において、その温床を根絶せねばならないと言われておりましたが、政府は具体的にいかなる措置をとられようとするのでありましょうか、これをお伺いとたいのであります。(拍手)平穏な市民生活を守る責任を負う政府は、当然、この資金源について深いメスを入れ、国民の疑問に対し、その内容を明らかにすべきであると私は思うのであります。政府はこのような処置をすみやかにとられる決意があるかどうかを、この際承っておきたいのであります。(拍手)
 私の質問の第三点は、テロを賛美し、これを愛国の名のもとに是認するという一部の風潮に対し、政府はどういう見解を持って、どういう処置をとるか、ということであります。
 淺沼君が殺された後、「淺沼が殺されたのは当然の報いであり、彼を殺した男は愛国者である」という驚くべき発言が一部の人々によって唱えられておるのであります。淺沼君は、その全生涯をささげて勤労大衆のために戦った人であります。しかし、彼は、いまだ一度たりといえども、暴力をふるったり、テロを賛美したことは絶対にないのであります。(拍手)彼は、身に寸鉄を帯びず、ただ三寸の舌をもって国民に対し信念を訴えてきたにすぎないのであります。これは社会主義者として当然のことであります。われわれ社会主義者はヒューマニストであり、これを最上の誇りとするものであります。個人の生命とその人格の尊厳を最高のものとして尊重するものであります。これは、単にわれわれの信念であるのみならず、われわれの行動によって立証されておるのであります。(拍手)新安保条約反対運動のさ中において岸君は、われわれの陣営から激しい批判を受けましたが、われわれの側から岸君に指一本触れたことがあったでしょうか。(拍手)首相官邸において岸君を刺した犯人は、自民党の通行証をつけて大手を振って官邸に出入りしていた右翼であります。このたび淺沼君を殺した犯人もまた同じ右翼であります。これらの事実に目をつぶり、ことさら左翼の集団暴力などと騒ぎ立てるのは、問題の本質をそらそうとする陰謀であるのであります。(拍手)どの文明国でも、労働運動の諸権利と国民の請願権とは憲法によって認められておるところである。一度も選挙に問われなかった新安保条約のごとき重大なる案件は、総選挙によって国民の信を問えと請願するのは、日本国民としての当然の権利であるのであります。(拍手)憲法に基づくこのような大衆行動を、生命を奪うことを目的とする個人テロと同じ平面において論ずることは、結局、テロを合理化し、賛美するに終わることは明らかであります。(拍手)
 淺沼事件に関して見のがすことのできないのは、かかるテロ行為が愛国の美名に隠れて正当化されていることであります。われわれは、戦前の数多くのテロ行為が愛国のもとに賛美され、白昼公然と人殺しをする者が、愛国者として天下を濶歩した事実を知っております。このような無法状態を放置しておいたために、ついにわが国は何百万の血を流した戦争に引きずり込まれ、取り返しのつかない多くの犠牲を払ったのであります。われわれは戦前のかかる歴史を再び繰り返してはならぬと私は思うのであります。(拍手)
 さらに、もう一点見のがすことのできないことは、淺沼君を殺した犯人が、また自民党の河野一郎君、石橋湛山君をもねらっていたと伝えられていることであるのであります。言うまでもなく、河野君は日ソ国交正常化を積極的に推進した人であり、石橋君は日ソ協会会長として日ソ友好を進め、また、日中国交の正常化のために努力されている人であります。これらの人々の生命をねらっているということは、現在日本と中ソ両国との間にある不自然な関係を是正しようとする保守党陣営内の良識ある人々の勢力をもテロによって押しつぶそうとしていることを意味しているのであります。(拍手)
 私は、この際、特に自民党の諸君に、ついこの間のことを思い出していただきたいと思うのであります。戦前、テロ、暗殺のやいばは、最初、無産陣営の人々に向けられたのであります。しかし、無産陣営が相次ぐテロと弾圧によって沈黙せざるを得なくなってからは、同じやいばは、今度は保守陣営の人々の胸に向けられたのであります。これは歴史の事実であります。自民党の良識ある諸君が、今ここで社会党の淺沼一人の血の流れたのを黙って見過ごすならば、やがてテロのやいばは意外なる方面に波及するおそれがあることを忘れないでいただきたいのであります。(拍手)
 最後に、これは質問ではありませんが、ただ、三十年間社会主義運動に携わってきた私の心からのお願いとして皆さんに聞いていただきたいのであります。
 本日、私は、この本会議場において、今はなき淺沼君のために、党を代表して演壇に立っております。この際、私は、無量の感慨をもって、今を去る三十一年前の昔のことを思い出します。昭和三年、わが国に初めて普通選挙が実施され、私もまた、革新陣営を代表する初の無産政党議員の八人の一人として国会に選出されたのであります。当時の八人の中で今日議席を持っているのは、西尾君と水谷君と私の三人になっております。昭和四年三月五日の夕刻のことであります。その八人の同志の一人、山木宣治君が、右翼に殺されました。私は、その死を追悼する意味において、その翌日、衆議院の本会議において、質問の形式をもって演説をいたしたのであります。その私が、三十一年後の今日、このたびは私の最も敬愛してきた淺沼君が凶刃に倒れ、その死に関連して政府に対して質問をいたさなければならないことは、私にとって、まさに断腸の思いであります。(拍手)
 山本宣治君は、治安維持法の緊急勅令に最も強い反対者でありました。そのとき、私は次のようなことを申したのである。「山本君の死は、今日のうっせきしているところの、日本の陰うつなるところの反動政治と反動思想との犠牲であると、かたく信ずるものであります。」「私はこの意味を探らなければならない。来たるべき将来の民衆は、この山本君の死と、そうして治安維持法――通過されたこの案に絶大なる意義を見出して、山本君のしかばねを踏み台として、将来の民衆が再び立つときがあるであろうと私は信ずるのであります。」こう私はその際演説で述べたのであります。淺沼君が再び台頭してきたテロリズムのために倒れた今日、再び淺沼君の死と、そうして、淺沼君が最も強く反対してきた新安保条約と、淺沼君が最後まで叫び続けた民主主義擁護と議会政治確立について、一そうその意義を探らなければならないと思うのであります。
 最後に、私は、私個人についてあえて言わしていただきたい。
 私は、本年六月、安保闘争のさなかに、衆議院の面会所において暴漢に刺されました。私は、この際、この壇上をかりて、特に皆さんに訴えたい。テロ、暗殺に関する追悼演説のごときは今後再び繰り返されないことを願って、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#47
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 テロあるいは暴力に対します考え方は、河上君と全く同一でございます。私は、お話のごとく、面前で、岸さん、淺沼さん、この両人が難にあわれたときに居合わせた者でございまするから、テロに対しまする憎悪の念は決してだれにも負けない気持でおります。(拍手)従いまして、御質問の、今回の事件にする責任の問題でございまするが、私は、総理大臣といたしましては、再びかかる事件が起こらないような社会情勢を作り出すことに努力することが総理大臣の責任と考えます。(拍手)ただ、法律的にどうかという問題につきましては、私はないと思います。責任はございません。また、私は、この事案の重大性を政府は深く認識しているのだということを国民に知ってもらうために、高い政治的立場から山崎国務大臣の辞任を認めたのであります。かかるテロ事件によって内閣が交代するというようなことは、民主主義のルールに反するのみならず、国民の好まざるところであります。(拍手)
 なお、テロの温床を撲滅するためにはいろいろな問題がございます。私は、私自身のみならず、国民の皆さん、ことに国会の各政党の方々とともに、これを究明し、今後かかることの起こらないよう一致していきたい考えでおるのであります。
 また、テロリストが愛国者であるというふうなことは、われわれは毛頭考えておりません。そんな暴論は、われわれは絶対用いていないのでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#48
○副議長(中村高一君) 保利茂君。
    〔保利茂君登壇〕
#49
○保利茂君 私は、自由民主党を代表し、政府の施政方針につき、二、三の重要問題にわたり質問を行なうものであります。
 去る十二日、日比谷公会堂において、日本社会党淺沼中央執行委員長が遭難、急逝せられましたことは、まことに痛恨のきわみであります。私は、故淺沼委員長の霊に対し、心から哀悼の意を表する次第であります。(拍手)
 さきには社会党の河上顧問、また、わが党の岸前総理大臣に対する傷害事件があり、今回は、白昼しかも公開の演壇において凶刃に倒されるという、憎むべき、また悲しむべき事件が発生したのであります。この不祥事件は、全国民に深刻なる衝撃を与え、わが国民主政治の上に大きな汚点を残したのみならず、ようやく回復の途上にありましたわが国の国際的信用をそこない、国民の大多数が民主的、平和的な文化国家の理想を目ざし、その建設を熱願いたしておるにもかかわりませず、わが国民が今なお民主主義を解せざる、反民主的民族であるかのごとき誤解を世界の各国民に与えることを、
 心から憂うるものであります。(拍手)指導的立場にある政治家が相次いでテロの襲撃を受けたということは、国家の前途にとり、ゆゆしき事態であります。大にしては組織的、計画的な集団暴力から、個別的暴力はもとより、特に、極右、極左のいずれを問わず、暴力をもって政治を動かそうとする政治暴力は、まさに民主主義の最大の敵であります。(拍手)この際、徹底的にこれを根絶し、平和国家としての治安確保のために、わが国政治の運営に全責任をともに持っております各政党が、党派を超えて、全国民とともに抜本的、効果的な対策を講ずることが急務であると思うのであります。(拍手)
 今日の暴力横行やテロ続発のよって来るところは、もとより、単純ではございません。中央執行委員長を失われた社会党の方々が、今日非常に複雑な感情を持っておられることはよくわかりますけれども、長い間にわたった戦争、敗戦、占領というわが国民族の悲劇的試練の中に失われました国民道徳、人心の荒廃に因由することは、否定できないところと存じます。(拍手)今回の犯人が年齢至らぬ一少年学生でありましたことは、特に世の父兄の胸を打つものがあります。人命を軽視し、暴力を英雄視するような俗悪な出版物、映画のはんらんが暴力の発生を助長している事実に目をおおってはならないと存じます。(拍手)
 特に重視を要するのは教育の面であります。近年の非行青少年の増加の一半の要因が教育にあることは否定できません。教育内容の問題ももちろんでございますが、さらに重大なことは、一部教師の教育態度であると存じまする。(拍手)階級闘争理念の影響を強く受けている偏向教育者が道徳教育を拒否しながら、集団暴力の先頭に立って法秩序の破壊に狂奔するような態度が、純真な児童生徒に悪い感化を与えていないということができましょうか。(拍手)教育こそ、実に国民教養の源泉であります。今こそ、家庭、学校を通じ、教育の姿勢を正し、心から児童生徒を愛し、教育に熱意と良心を持たれる大多数の教育者を初め、宗教家の奮起を促し、民主主義国民道義を確立するために適切なる措置がとられなければならないと存じますが、総理大臣並びに文部大臣の御所見はいかがでございましょうか。(拍手)
 なおまた、暴力に対する取り締まりの制度と責任体制、すなわち、占領政策のもたらした治安機構の上には、今日なお、制度上にも不備、欠陥を包蔵しているのではないか。憲法第六十五条に示す通り、行政権の一切が内閣に帰しまする以上、今回のような事件が起こりました場合、ただいまの河上議員のお言葉もございますように、常に政府の責任を追及せられるのでございますが、それはまた国民感情の自然の向かうところかとも存じます。私は、山崎前国務大臣が、事態収拾のために、高度の政治的判断の上に立ち、国務大臣を直ちに辞任せられました厳粛なる態度に、心から敬意を表するものであります。(拍手)また、現在の社会風潮のもとにおける治安の任務遂行がきわめて困難であることも十分了といたすものでございますが、それにもかかわらず、国民の素朴なる感情をもっていたしますと、去る六月における安保改定阻止国民会議や、あるいは全学連等の集団により繰り返されました数次の不祥事件、今またこのような事件の続発にもかかわりませず、しかも、内閣総理大臣の権限を離れ、厳正なる中立性を保障されている治安機関に何らの責任なしという見解に対しましては、その当否は別といたしまして、多くの国民が容易に釈然たり得ないことも事実であろうと存じます。(拍手)このような事態に顧み、今こそ、わが国民主主義の発展を阻害する暴力根絶のために、党派を越え、国民の良識を集め、教育の面、治安機構の面等にわたり、大胆に占領政策の残滓を反省し、その大道を確立すべきときであると痛感いたすものでございますが、総理大臣の御所信のほどを伺いたいのでございます。(拍手)
 次にお尋ねいたしたいことは、外交政策の根本についてでございます。
 戦後の国際情勢きわめて不安定の中にあって、世界の国々のうちで最も少ない防衛負担をもってなおよくわが国の安全を確保し、国民が不安なく国家再建に邁進し、今日の繁栄を持ち来たらしましたことは、池田総理大臣が申されるように、わが国の安全を国際連合と日米安全保障条約に託してゆるがなかったところにあります。(拍手)岸前内閣総理大臣の超人的な忍耐と努力によって築き上げられました新安保条約により、わが国の安全はいよいよ磐石不動のものとなったことを、国民とともに喜ぶものであります。(拍手)しかるに、私どもの信ずるこの基本的方向が特に、社会党の諸君によって、まっこうから拒否されておりますことは、まことに遺憾でございます。(拍手)すなわち、わが国政治における最大の悲劇は、外交政策における与・野党の妥協なき対立であります。一国の運命にかかわるような外交政策が、与党と野党の間に百八十度も異なるというようなことは、世界の文明国には例を見ないところであります。(拍手)わが国と同様、保守政党と革新政党の対立する国でありましても、外交と国防の基本政策につきましては与・野党の間に大きな意見の相違がないのが通例であります。しかるに、わが国の現状を見まするに国連中心の立場に立って、自由諸国家との緊密なる連繋を保持しつつ、共産圏諸国とも相互に内政不干渉の立場に立ち、経済、文化の交流を促進せんとするわが党の基本方針に対し、社会党は、アメリカ帝国主義は日中共同の敵とする観念が今なおその外交政策の基調となっているのであります。このような外交政策の妥協なき対立が内には、国政の運営を混乱し、議会政治の危機をすら招き、外には、国際信用をそこなうばかりでなく、不当な内政干渉を誘導するすき間を作り、わが国の威信を著しく傷つける結果にもなろうと存ずるのであります。(拍手)私は、わが国政治の最大の課題は、このようなはげしい外交政策の対立を少しでもやわらげ、国内の融和と団結を背景として強く平和外交を進めることのできるようになってこそ、初めてわが国が世界外交の上に大きな地歩を占め得ると確信するものであります。(拍手)内政、外交の一体化ということも、外交は内政の延長ということも、ごこに大きな意義があると信ずるのであります。
 しからば、外交に対する百八十度の主張の対立を調整する方法は何か、それは、結局は国民の意思であります。国民大多数の欲するところに従い、国民の意思を尊重し、与党も野党も謙虚に外交政策を推進するということが民主政治の正道であり、国民外交の真髄であると思うのであります。(拍手)私は、来たるべき総選挙において、わが国外交の基本方針についての国民の意思が表示せられましたならば、わが党はもとより、社会党も、民社党も、その意思を尊重し、多数の意思に歩み寄り、できるだけ意見の調整をはかるということが望ましいと信ずるのであります。(拍手)そのためには、党首会談を開かれるなり、あるいは超党派的外交問題を研究する機関を創設する等のことを考慮することも適当かと思うのであります。これらの点について総理大臣の御所信を伺いたいのでございます。(拍手)
 次にお伺いいたしたい第三点は、経済の成長政策と、主として農業及び中小企業との関係についてでございます。
 わが国経済の過去の実績を顧み、着実なる基礎の上に立って、今後十年間に生産と所得を二倍以上に到達せしむる目標のもとに、今後三年間は年率平均九%の経済成長を確保しながら、完全雇用と福祉国家実現を目ざすわが党の構想は、新政策の中心であり、また、池田内閣の性格を象徴する基本政策でもあります。わが党がこの新政策を発表いたしまするや、社会党もまた、あとを追いかけるように、四年間年率一〇%、ただし初年度八%という計画を発表いたされたのでありますが、私は、その内容の是非は別といたしまして、各党がそれぞれの立場からひとしく経済成長政策を国民の前に示し、これを来たるべき総選挙の論点とする態度は、共通の広場を広げるという意味から申しましても歓迎いたすものであります。(拍手)
 ところで、経済成長政策の価値を決定するものは、言うまでもなく、その実行の手段であります。経済の発展を保証するに足る政策がはたして間違いなく実行されるかどうかということが、経済政策の価値を決定するかぎであると信じます。
 そこで、お尋ねをいたしたいことは、各階層、各業種、各地域間の所得の均衡をどうして確保するかということであります。今後毎年三年間に九%という経済の伸び率それ自体には、多くの方々もあえて否定はいたしておりませんが、問題は、農林漁業とその他の産業、中小企業と大企業、都市と農村等の間に均衡のとれた発展がはたしてできるかどうかの点につきましては、疑いを抱く向きも少なくないと思うのであります。ことに、農業につきましては、総理大臣の農業人口六割減の発言が一部に誤解を与え、また、ことさらにこれを曲解して、いわゆる貧農切り捨て政策などと誹謗し、ために無用の不安を与えているのでありますが、私どもは、高度の経済成長の目標を達成する場合、成長産業が、好むと好まざるとにかかわらず、第二次、第三次産業に集中するのが実情であり、また必至と見るものであります。その必然の結果といたしまして、農山漁村の就業人口が逐次減少することは、すでに今日までの事実がこれを示し、また、今後の否定できない傾向であります。この傾向を適切に誘導して、できるだけ自立農家を育て上げ、農業近代化達成の暁において、農業のみによって生活する就業人口は六割程度減少し、四割程度になるであろうと想定をいたすのであります。これを称して、社会党は、貧農切り捨て政策、あるいは小面積の零細農の耕地を法律の力をもって取り上げるがごとき宣伝をされておりますが、社会主義を信奉される社会党ならばいざ知らず、自由経済をモットーとするわが党におきましては、強制措置をもってこれを達成するというがごときことは、想像だもできないところであります。(拍手)ことに、わが党は、後進地域の開発、工業技術者の大量養成等の新政策を通じ、農村に工場を分散誘致することをもって一つの重要政策といたしているのでありまして、農業のみにより生活する農業就業人口は大幅な減少を来たしましても、農村人口の減少を期待いたしておらないことを、特にこの際強調いたしておく次第であります。(拍手)
 総理大臣の施政演説におきましても、こられにつきまして万全の対策を明らかにされておるのでありますが、要は、その実行であります。農漁業の所得低位を是正し、均衡を確保するための根幹となる施策は、もちろん生産、価格、流通、農村生活の各面に及ばなければならないのでございますけれども、まずもって後進地域の思い切った開発、他の一つは、農業経営の改善や転換のために必要な助成と資金の大幅な投入であります。
 そこで、特にお伺いをいたしておきたいのは、第一は、後進地域の開発や産業の地方分散について、具体的にはどのような対策を用意されておるかということであります。
 第一は、農林漁業に対する投融資であります。農林漁業所得を他産業と均衡のとれた姿に伸ばしますためには、経営規模の拡大と生産性の向上が二大前提であることは言うまでもありません。そのためには、相当巨額の資金を投入する要があります。これまでも国の補助や財政資金による融資が年々増加されてきているのでありますが、この程度をもっていたしましては、わが党の期待する農林漁業の近代化と所得の向上は困難であると思うのであります。もとより、財政資金には一定の限度がございますから、この際、農林中金系統の資金を思い切って活用する工夫をいたすことが必要であると存じます。(拍手)そもそも、農民から集めた農林中金系統資金が農民に利用せられないで、巨額の資金が他の部門に回されているということに対しましては、この際、特に注目すべきであると存じます。この資金が比較的農民に利用せられない最大の原因は、貸し出し金利の高いことにあります。従って、この金利を引き下げることが農業に活用する前提条件となると信じますが、政府に何らかの具体策が用意されているかどうか、伺いたいのであります。(拍手)
 前内閣以来、政府とわが党は、わが国経済の発展に即応し、取り残されようとする農山漁村の行き詰まりを打開し、その近代化をはかるとともに、豊かなる農村生活を確保いたしまするために、相携えて農林漁業基本問題と真剣に取り組み、ほぼその結論に達し、今や、すみやかに農業基本法を制定し、わが国農林漁業の向かうところを明らかにいたし、農村、漁村の大衆に希望をする強力なる施策を講ずべき段階にあると存じますが、政府にその用意があるかどうかをお尋ねいたします。
 次に、貿易の自由化は、今や世界の大勢であり、わが国の高度の経済発展を期するゆえんでもあります。もとより、自由化達成の過程におきましては、各品目ごとに慎重なる検討と対策を講ずべきであり、大企業、中小企業を問わず、自由化に耐え得る力を養うよう、政府は十全の対策を講ずべきであります。そのためには、まずもって減税と金利の引き下げであります。わが党は、減税につきましては、明年度一千二百億円の減税を行ない、後年度におきましても引き続き相当の減税方針を明らかにいたしておりますが、これとあわせて、さらに国際競争力を培養するためには、金利の引き下げが絶対に必要であります。特に中小企業におきましては、豊富なる資金の供給もさることでございますが、日夜高金利にあえいでいる実情にかんがみ、当面する年末金融対策として、いかなる用意が行なわれておりますか、また、その金利をどうするかということが第一点。さらにまた、全般的な金利の引き下げについて、わが党は金融の中立性の必要を認めるのでありますが、政府としては、金利を引き下げるための環境をどのように作り上げるか、また、具体的に金利をどうして引き下げるかの方針を明らかにせられたいのであります。
 経済政策に関連して、いま一点お尋ねいたしたいことは、物価問題であります。
 施政演説にも政府の考えを明らかにされておりますが、国民の中には、ややともすると、一部の誇大な宣伝に惑わされ物価の前途に不安を抱く向きも少なくないのであります。経済が繁栄し、賃金が上昇いたしますれば、その賃金をおもな構成要素とする料金や、中小企業、零細企業の取り扱う品物の値段がある程度上昇するのは、避けがたい傾向であります。しかし、それをできるだけ抑制し、国民生活に不安のないようにすることが政治の任務であります。今回、政府は、公務員のベース・アップを実行せられましたが、それ自体はまことにけっこうなことであるといたしましても、それが他に波及して、生産性の向上によって吸収される限度以上に一般賃金の引き上げを招き、物価にはね返るといった悪循環を来たさないように留意すべきであると存じます。ことに、鉄道運賃を初め、もろもろの公定料金の引き上げはできるだけ押えることが望ましいのであります。私は、所得の上昇が常に物価に先行すべきであると信ずるものでありますが、この際、政府が明確なる方針と目標とを持って、総合的な物価対策を強く推進されることが必要であると信じます。これを示すことによって物価に対する過度の不安を除去するのみならず、不当な値上がりを防ぐためにも効果的であると信ずるからであります。これらの点につき、政府のお考えを求めるものであります。
 さらに、経済成長の前提をなす公共投資の中で最も重要な道路の整備についてお伺いをいたします。
 すでに、三十三年度から、五カ年間一兆円計画をもって、その整備を進めて参っておりますが、最近の輸送の激増は予想をはるかに上回り、新経済成長政策の達成の上からいたしまして、すでに時代おくれとなっておるのであります。この際、すみやかに画期的な道路整備計画を立て、近代的道路の整備を急ぐ必要があると信じますが、どのような構想を有せられるか、明らかにせられたいのであります。(拍手)
 私どもの新政策の三大支柱の一つであります社会保障につきまして、わが党は、飛躍的に成長を続けるわが国経済の繁栄によってもたらす新たなる財源を国民の各層に漏れなく均霑させ繁栄の中の貧困を排除し、豊かなる、また、安定した国民生活をもたらし、国民各層間の社会的緊張摩擦を緩和し、社会の基盤を安定させる方策の画期的前進を決意いたしておるものであります。
 そこで、この際お尋ねいたしたいことは、国民年金の取り扱いについてであります。御承知のように、国民年金制度は社会保障中の重要な制度であり、これによって国民全体をして老後の生活に不安なからしむるためのものであります。しかるに、来年度から拠出年金制がいよいよ発足しようとする今日の段階において、総評や社会党がその実施を妨害する態度に出ていることは、まことに遺憾とするところであります。(拍手)国民年金制度は、社会党の諸君も参加しておられる社会保障制度審議会において十分その論議を尽くし、成案せられ、国会におきましてもまた慎重審議の末成立した制度であります。それにもかかわらず、その実施を公然と妨害するがごときは、責任ある公党の態度として、まことに奇怪というほかはありません。(拍手)
 わが党は、現行の拠出制年金の内容につきましては、理論はさておき、国民感情に必ずしも即していない点のあることを率直に認めるものであります。たとえば、途中で死亡した者はかけ捨てになるとか、あるいは、障害年金や母子年金は、三年間拠出していなければもらえないとかいった点、その他改善を必要と考える諸点につきましては、福祉年金の改善とともに、制度の実施に先だち、すみやかにこれを改め、国民の十分なる理解を得て円滑に実施できるようにすることが緊要と信じます。政府は、この際、できるだけ具体的にその考え方を明確に示されることを希望いたすものであります。(拍手)
 最後に、私は、池田総理大臣は、息詰まる社会的緊張の中に政権を担当せられ、国家と国民に対する敬虔な態度をもって、よく社会的緊張をやわらげ、ひたすらにわが国の繁栄と豊かなる国民生活の実現に向かって努力を続けられる真剣さが、広く国民の期待と信頼をかち得られたゆえんであると信じます。(拍手)切に総理大臣初め内閣諸公の御健闘を希望して質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇]
#50
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 暴力事件についてのお考えは、全く同感でございます。そのよってくるところは、教育問題あるいは各般の戦後の事情がございます。また、治安関係機構につきましても、私は、単に機構いじりでなしに、今の機構をいかに運用していくか等々を考えまして、各派を越え、国民とともに、われわれ政治家が先頭に立って、治安対策を今後講じたいと考えておるのであります。(拍手)
 外交問題につきまして、与・野党がまっこうから違った考えでおるということは、わが国民の最も不幸な点でございます。(拍手)私は、今回の経済成長率で、社会党、民主社会党の方々が成長率が同じような意見になられたように、今度の選挙によりまして、はっきり安保体制を国民の多数が支持するならば、ここで十分お考え直しを願いたいというのが、やまやまでございます。(拍手)私は、この外交問題の重要性にかんがみまして池田内閣成立直後、民間、財界各般の方々のお集まりを願いまして、外交問題懇談会を組織し、各業種の人から意見をいただくよう、懇談会を設けたのであります。今後、外交一致の方向に向かいまして、この懇談会を利用いたしたいと考えておるのでございます。(拍手)
 次に、経済成長の問題でございまするが、私の経済成長を考え出します最も重要な根本は、各地域間、各業種間の所得の格差を少なくすることが政治の根本問題と考えまして、これを達成するために経済の成長を叫ぶのであります。皆さん、もし経済の成長がなくて、このままほうっておいたならば、縮小で格差が多くなるばかりでございます。私は、経済の成長の間において小所得者、低所得者を他の所得者よりもうんと上げるのには成長よりほかにないと考えたからでございます。(拍手)
 その一つの問題といたしまして、農家が十年後に所得が倍以上になったならば、農家が六割くらい減ることがあるかもわからぬと私が申しましたが、それを、まともに、事情を考えずに、流言飛語が行なわれておるようでございます。皆さん、今の農家の現状は、専業農家、農業所得のみをもって立つ農家と、第一種兼業農家、すなわち、農業所得が過半で、賃金収入と農業以外の所得が半分以下の第一種兼業農家、そうして第二種兼業農家とは、農業収入はほとんどなくて、おおむね賃金収入の第二種兼業農家、こう三つに分かれておるのであります。しこうして所得が今の倍にも三倍にも四倍にもなったならば、第二種兼業農家というものは農家とは言えぬようになる。今保利君の言われたように、四割残るというのは、農業専業の農家が四割になる、こういう意味に考えれば、御心配は何らなくなると思うのであります。(拍手)われわれ自由民主党は農村が国発展のもとをなしていることを考え、常に農業政策には慎重にかつ熱心にやってきたわれわれでございます。農村をはずしてどこに経済の伸張がございましょう。この点は、はっきり申し上げておきます。(拍手)
 また、後進地域の開発につきましては、私は、都会集中よりも、農村、地方に工業を持っていって、農家の方々が、労賃を取りながら、日曜百姓と申しますか、奥さんや御主人は日曜日だけ、こういう、農村がほんとうに近代化される日本を作ろうとするのが念願でございます。従いまして、低開発地域に対しまする産業復興につきましては、ごらんいただけばわかりますが直ちにこの経済成長の過程においてやっていく考えでございます。
 次に、農林中金の資金について申しておられましたが、農林中金の資金が、ただいま農業以外の方面に使われておりますことは、お話の通りでございます。しこうして、この農林中金のお金を農業、漁業、水産業に持っていくためには、農業を近代化し、企業として立つようにしていくことが先決問題でございます。日本の農林水産業を、徳川時代や明治時代の初年のように、三反百姓、五反百姓だけでやっていけというような考え方では、この農林中金に集まった金を使えっこない。私は、農業を大規模企業化して農林中金のお金が自然に流れるような、農業をりっぱな企業としていくことが先決だと考えておるのであります。(拍手)
 自由化の問題につきまして申し上げまするが、私は、他の機会に申し上げておりますように、為替・貿易の自由化は、日本経済を高度に発展さすための手段でございまして、自由化自体が目的ではない、日本の経済の拡大発展が目的でございまするから、拡大発展を阻害するような自由化はいたしません。世界の情勢に従いまして、いかなる規模においていかなる速度においてやるかということは、世界の情勢、わが国の産業の実態を見きわめながら、適正に進めていくつもりでございます。
 なお、物価問題につきまして簡単に申し上げまするが、保利さんのお話のように、物価は所得の上昇を越えては絶対になりません。物価の上昇は賃金の上昇よりもうんと下であることが絶対要件であります。従いまして、世界各国を見ましても、卸売物価につきましては、各国に比べて非常に安定しておるのであります。賃金は上昇しておりまするが、卸売物価は絶対に上がっておりません。一%程度で、世界にその例を見ないのでございます。しこうして、小売物価は、さきの施政演説、あるいは企画庁長官から申し上げましたごとく、季節的の理由で最近上がって参りましたが、賃金は三割上がって、物価は一時的にしても一割も上がっていないのでございまするから、保利さんがおっしる通りに、実質的の生活は非常に楽になっているといわなければなりません。(拍手)ことに、最近の生産性の向上によりまして、労賃はどんどん上がり、公務員の給与も上がって参りました。物価が安定し、また、小売物価もだんだん政府の施策よろしきを得て下がるならば、わが国民の実質生活は非常によくなっていくことを申し上げておきます。(拍手)
 次に、道路の問題でございまするが、昭和三十三年に一兆円の道路計画を立てましたことは、お話の通りでございます。しかし、現状から申しまして、わが国の産業発展に沿うべく、道路と鉄道には最も力を入れなければなりません。私、私見をもっていたしまするならば、今後の五カ年間に大体二兆円近い予算を作りまして、一級国道は、五年以内に、ほとんど一〇〇%近く、九五、六%を完成し、二級国道につきましても、できれば五割以上舗装したいという考えでいっております。これは、こうしなければ経済の成長が達成できないのであります。だから、所得倍増論から当然くる道路拡充計画であることを御了承願いたいのであります。
 社会保障制度の中心をなしまする拠出制年金につきましても、今お話しのごとく、国民の大多数が喜んで加入せられるように早急に改善の措置をとることをここでお約束申し上げて、お答えにいたします。(拍手)
    〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇〕
#51
○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。
 お説の通り、青少年の非行の続出の姿は、まことに悲しいことに存じます。また、そのことが教育のよしあしと相当の因果関係を持つことも、お説の通りだと存ずるのであります。従いまして、日本の教育につきましても、いろいろと施策すべきものがあろうかと思います。
 第一に、終戦後、GHQが、日本の政府に対しまして、修身教育を直ちにやめろと厳命を下したことを、皆様御承知であります。自来、日本の、特に義務教育の過程におきましては、道徳教育はいわば全然放任されて最近に参っておると申しても過言ではございません。言いかえれば、子供たちは、何がいいことか何が悪いことかということを教えられないままに義務教育課程を終わるという状態であったのであります。そこで、文部省といたしましては、約二百人になんなんとするその道の権威者にお願いをいたしまして、新しい教育課程を近く実施することに決定をいたしております。その中に、道徳教育を特別の科目として、十分、子供たちに、何がいいことか何が悪いことかを、新しい憲法に基づいての教育内容として教えることに決定をいたしておりますが、これに対しまして、どういうことか、日教組がまっ正面から反対をいたしておることは、遺憾千万でございます。(拍手)
 第二に、教育課程において道徳を教えることの必要なことは、今申し上げた通りでありますが、教える先生そのものが子供たちのいわばお手本になるものでございますから、お手本らしく、先生にふさわしくなってもらいたいと、私は子供たちの両親とともに願っておるのであります。(拍手)倫理綱領というのを見てみますと、日教組というのは、教師である以前に労働者である、マルクスの言うところのブルジョア対プロレタリアの考え方において、階級闘争理論に立って、教育の場において、この青少年を、歴史的課題解決、言いかえれば、革命のための有能なるにない手として育成せよと書いておりますが、このような、革命を目ざし、革命のにない手として育て上げるということを綱領に持つような団体が教職員の団体であることは、日本の子供たちのためにまことに不幸であると申さなければなりません。(拍手)
 そこで、私は、この団体を取りつぶすとか弾圧するとかいうことは考えておりません。それはやろうと思ってもできませんからであります。しかしながら、私は、世の子供たちとその両親とともに、五十万と称せられる日教組構成員のよき先生方に、良識を取り戻して、今御指摘申し上げたような間違った綱領をみずからの見識で作り変えていただきたい。そうして、子供と両親が信頼するに値する団体にみずからなっていただいたらどうだろう、こういうことを御希望申し上げておるのも、そのゆえでございます。(拍手)日教組の中にただいま三千名の共産党員がおりますが、これらの人々が中心になりまして、そうして、世間周知のごとき好ましからざる言動をいたしておることは、私が申し上げるまでもないところであります。願わくは、それ以外の良識ある先生方が、今申し上げる通りの行動をとって、全国民の期待にこたえていただきたい、かように存ずるのであります。(拍手)
 このほかに、私は、これだけではいけないので、家庭におきましても、子供たちの御両親が、十分に、いわゆるよき意味のしつけをしていただいて、社会教育の面におきましても万全の措置を講じて、ただいま保利議員の仰せになりました、御心配になりました青少年の非行事件が最小限度になることを国民とともに希望し、努力をし続けたいと存じます。(拍手)
    [国務大臣小坂善太郎君登壇]
#52
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申し上げます。
 保利さんのお説のように、わが国の国防費は、総体的にきわめて少額でございます。念のために、数字を、昨年度の統計のありますものについて申し上げてみますと、カナダは、国防費が三六・六%、社会保障費につきましては、これは一七・二%でございます。西ドイツの場合は、二九・七%が防衛費でございまして、社会保障費は三三・二%、さらにイギリスでは、二三・六%、防衛費は二二・一%、わが日本におきましては、総予算に対して、防衛費は九・六%、社会保障費は一七・四%でございまして、かかる少額の防衛費をもって、しかも、社会保障費は防衛費の倍も支出しているような国家は、近代国家としてはまれに見る構成だと考えるのであります。(拍手)しかも、なお、こういう体制をもって東西両陣営が屹立し、しかも、国際連合において、よく、いまだ、その安全保障理事会等の拒否権発動等によりまして、国連のみにたより得ない現状よりいたしまして、日米安保条約を結んで、この少ない防衛費でもって国の安全を保っていくということは、これは、好むと好まざるにかかわらず、私は当然の国の行き方であると信じて疑わないのであります。(拍手)
 しかも、わが国の自衛隊のわずか二十万の人員、しかも、それに対してのアメリカ軍の人員が、日本を取り巻くところの各国に比べていかにも少数でありますことを思いますときに、どうして、この条約から、あるいは日米軍事同盟であるとか、攻撃的な条約であるとかいう言葉が出てくるのかということを、私はとうてい理解することができないのでありまして、この点から見ましても、日米安保条約はいかにも防衛的なものであって、今後、社会党の諸君ともよくお話を申し上げましてこの国のゆるきない体制を作って参りたいと考えておるのであります。保利さん御指摘のようにき与・野党間において外交の政策が根本的といってよいくらい違うということは、まことに残念なる事実であります。
 およそ、民主主義国というものは、これは議論のあるのは当然ございます。しかしながら、政争は水ぎわまでと申しまして、外交の問題に対しては、国が一致して他に向かうのが当然の建前であるのであります。(拍手)私は、外交政策というものは、何も、趣味であったり、自分の好みであってできるものではなくて、国家国民のために必要なる経済的基盤というものを背景にしておるものだと思うのであります。その意味におきまして、総理大臣の言われましたように、外交問題懇談会というものにおいて、これは各界各層、経済界も労働界も入っておりますが、そうした人たちによって、まずその国の外交の基盤というものの認識を深めて、そして、ぜひ社会党、民社党の各位にもお願いをいたしまして、超党派外交の基盤を作って参りたい、さように考えておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣中山マサ君登壇〕
#53
○国務大臣(中山マサ君) 国民年金制度は所得保障制度であるということは、私が申すまでもないことでございましょうが、先ほど保利議員のお言葉の中にもございましたように、これは、社会保障制度中央審議会におきまして、社会党のお方々も、また、民社系のお方々も、その他の学者のお方々も、御一緒にここで御審議が行なわれ、しかも、三十四回国会におきまして、これが国会の大きな問題となりまして審議論争されたそのあとで国会を通過いたしました事実にかんがみまして、私は、なぜに、民主的と称せられるところの総評の方々が、かく民主的に通りました法案に対して、かくも猛烈に御反対をなさるか、その民主主義の程度を疑わざるを得ないのでございます。(拍手)それで、私どもは、これを来年から実施するということには決して一歩も引かないつもりでおるのでございますが、しかし、いよいよこの問題を慎重に審議をいたしておりまする間に、国民の声もいろいろの角度で出てきております、いわゆる掛け捨てをきらうというところの考え方が現われておりまするので、もし不幸にして死亡された場合には死亡一時年金というものを差し上げようということを考え始めております。また、六十五才まで生き延びられるかどうかわからないから、六十才になったらほしいとおっしゃる声も御老人方の中から出ておりますることにかんがみまして、敬老の意をもちまして、六十才になられましたならば、六十四才までの間は減額ではございまするけれども、御承知の上ならばこれを取っていただこうということに考えておるのでございます。それで、死亡なさいましたお方の奥さん、あるいはその子供があれば、その方には母子年金を差し上げるようにしたい。また、母親がない場合には遺児年金として差し上げたらどうだろうか。また、障害年金ということも考えておりまするので、この解散の後に国会が始まりましたならば、こういう問題を国会において取り上げまして、再び御審議を願いまして、こういう手直しをするということを私どもといたしましては考えておるということを申し上げまして、御心配を除去したいということをここに御答弁申し上げる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣南條徳男君登壇〕
#54
○国務大臣(南條徳男君) 農業問題につきまして、総理から重要な問題についての御答弁がございましたが、農業基本法の問題について政府はどのような考えであるかという御質疑がございましたので、お答え申しておきたいと思います。
 この問題は、非常に画期的な重大な問題でございまして、農業収容人口と他産業との格差を縮める、あるいは農家の所得を伸ばしてその生活の安定をさせるために、政府は、御承知の通り、経済の成長をはかっておるのでございますが、そこでこれに対しまして、十分その基礎的な内容を作らねばならぬと思いまして、農業基本法を通常国会に提案すべく、ただいま準備中でございます。その内容等につきましては別な機会に申し上げますが、これを要するに、社会党の諸君から、先般、総理の発言は、農業人口に対して、いかにも零細農民を切り捨てて、他産業にこれを振り向けるのだというような、冷酷無比な施策のような批判がございましたけどれも、政府が農業基本法を作るという趣旨は、日本のこの恵まれざる零細農民の生活の向上をはかって安定を策するための、いわゆる最もあたたかい手を差し伸べるところの基本法でございますから、この農業基本法という法を作る精神から申しましても、零細農民に対して冷酷な政策を作るというような考えは毛頭ないということを、御理解願いたいのでございます。
 また、農家の金利の引き下げの問題、中金の金利引き下げの問題についても保利議員から御質疑がございましたが、農林省といたしましては、この点については常に要望がある問題でございまして、今度農業基本法等を制定する内容におきましても、これらの問題を十分検討いたしまして、この御要望に沿いたいと考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#55
○副議長(中村高一君) 西尾末廣君。
    〔西尾末廣君登壇〕
#56
○西尾末廣君 私は、民主社会党を代表して政府の施政方針演説に対し、池田総理大臣に質疑を試みんとするものであります。
 これに先だって、過日日比谷公会堂における三党首立合演説会において演説中、凶刃に倒れた盟友、社会党委員長淺沼稻次郎君のみたまに対し、深甚なる哀悼の意をささげたいと思うのであります。(拍手)
 一切の暴力に反対して、民主主義と議会政治を守ることを党是とするわが民社党員は、安保採決以来のわが国民主主義の危機が今回のテロによって一そう高まったことを深く憂慮しつつ、一そうの決意を固めて議会制民主主義を守り抜くことを、ここに淺沼稻次郎君のみたまにお誓い申し上げる次第であります。(拍手)
 さて、私が総理にお伺いいたしたい第一の問題は、議会制民主主義のあわ方についてであります。
 わが民主社会党は、わが国の民主主義と議会政治がいまだ未成熟であることを深く憂え、わが国の最大の政治課題は議会制民主主義の確立であるとして、立党以来、このため、終始一貫、努力を続けてきたのであります。しかるに、去る第三十四通常国会においては、安保条約問題をめぐって、わが国政治史上未曽有の混乱を来たし、ために、内には政治の空白と社会不安を引き起こし、外には、わが国の国際信用を一挙に喪失させたのであります。このことは、議会人全体、もちろん、われわれも含めての責任として深く反省せねばならないと存ずるのであります。(拍手)
 思うに、民主政治とは、国民のために国民とともに政治することであります。しかるに、自民党は、安保問題に対する国民の疑惑を解明しようとせず、また、日とともに盛り上がる安保反対の国民の声に耳を傾けず、院内においては十分なる討論を行なわしめず、警察官に守られながら、一党独裁の単独採決の暴挙をあえてしたのであります。(拍手)かかる行為は、言うまでもなく、旧憲法時代の権力支配の政治方式でありまして、断じて民主政治とはいえないのであります。(拍手)他方、社会党は、目的のためには手段を選ばぬとの建前から、言論の府である院内において、あたかもストライキのすわり込みのごとき実力行使をあえてし、また、臨時大会を開いて、民主政治における最高の地位たる議員の職責を放棄するところの総辞職を満場一致で決定し、院外大衆行動の先頭に立って、共産党や全学連と提携して政権打倒をはからんとするに至ったのであります。これは、議会政治を軽視し、大衆行動を重視するものであって、議会制民主主義にはなはだしく背反するものであることは、きわめて明白であります。(拍手)
 わが民社党は、五月十九日のあの大混乱の際にも、これが収拾の方法を清瀬議長に申し入れたのでありますが、議長の拒否にあって、ついに混乱の防止ができなかったのは、まことに残念であります。さらに、わが党は、かかる議会政治の醜態は議会制民主主義の危機であると深刻に考えたがゆえに、今後絶対にこのような単独採決をしないこと、並びに、今後絶対に院内において実力行使をしないことなどを内容とする三党申し合わせによる自粛決議案を提案したのであったが、自民、社会両党とも、言を左右にして賛成しなかった。このことは、自民、社会両党とも、今後においても相手方の出方によっては単独採決または実力行使をあえてすることを留保したことになるのではないかと思うのであります。(拍手)
 かくて、政党も議員も何ら反省するという実を示さなかったのでありまして、民主主義の殿堂であるべき国会みずからが非民主的行動によってその権威を失墜するに至ったことは、暴力横行の風潮を作り出したものといわねばなりません。(拍手)すなわち、五月十九日の議会混乱以後、左翼の大衆団体による集団的な実力行動と右翼団体の個人的暴行並びにテロが連鎖反応的に行なわれたのであります。今回の淺沼委員長遭難事件は、かかる背景のもとに起こったのであって、決して単独かつ孤立した突発事件ではなく、安保騒動以来、河上丈太郎君、岸前総理と相次いだ遭難と一連の関係に立つものであります。
 以上のことを前提として、池田総理にお尋ねいたしたい第一点は、まず、今回の事件の直接の背景であるテロ行為をいかに評価し、これにいかに対処せんとするのでありますか。総理は、その施政方針の中で、一切の暴力を排除する決意であると述べておられるが、今回の事件の根の深さについて、はたして十分なる認識をお持ちでありましょうかどうか、疑いなきを得ないのであります。われわれのごとく、戦前から無産運動、社会運動に挺身し、弾圧やテロのあらしをくぐり抜けて生き延びてきた者からすれば、今回の右翼テロ事件が、あの悪夢のような、戦前のわが国特有の暗殺風潮の復活であることを、真にはだ身にひしひしと感じ、その凶悪性と戦い、あくまでテロの絶滅を期する決意であります。(拍手)
 わが民社党は、その綱領が示しますように、個人の尊厳が重んぜられ、人格の自由な発展ができるような社会を建設しようとするものであります。従って、暴力と独裁には断固反対し、なかんずく、右翼のテロは、政治以前の問題として、無条件に排撃するものであります。また、歴史的にも、現代的にも、右翼暴力団は常に保守党との間につながりのあったことは、周知の事実であります。(拍手)総理は、自民党の総裁として、保守党の名誉のためにも、また、総理として、アイク訪日阻止事件に次いで起こった第二のわが国の対外信用の失墜を回復するためにも、この際、抜本塞源的に右翼テロを根絶する一大英断に出るべきであると思うのでありますが、総理の御所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 第二点は、右翼テロに対する徹底的な対策と所要の治安対策は最小限度の措置として当然であるが、しかし、この際、それにとどまらず、民主主義と議会政治に反し、これに挑戦する一切の暴力は、左翼の集団的な実力行使であろうと、右翼の個人的テロたるとを問わず、これを一切排斥することが特に必要だと思うのであります。(拍手)
 しかして、これがための第一の要件として、まずもって各政党が国会の運営において民主主義に反する行動を再びなさない旨をここに誓うことが絶対に必要だと確信するものであります。(拍手)その意味で総理にお尋ねいたしたいことは、与党であり、第一党である自民党みずからが民主政治に徹すること、すなわち、まず隗より始めよとの言葉の通りに、自民党は今後絶対に単独採決などという暴挙はあえてしないことをこの際言明すべきであると思うが、御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)
 第二に質疑を試みたいのは、外交問題についてであります。
 今日、日本を取り巻く世界の情勢は、一方に米ソの深刻な対立があるとともに、アフリカ、ラテン・アメリカにおける独立運動と強烈なる民族主義の台頭があり、これと相並行して、世界貿易の自由化の問題がひしひしとわが国に迫っておるのであります。かくのごとく、国際政治において、また、国際経済において、激しい対立と競争の中で、わが国の運命を誤りなく導き、かつ発展の方向に推進することは、われわれ政治家に課せられた、きわめて重大なる使命であります。わが国は、地理的にも経済的にも両陣営の中間にあるから、米ソの冷戦激化のあおりを受け、大きく左右に動揺するであろうことを、われわれは今より憂慮するものであります。しかるに、自民党は、無気力にも対米追随となり、一方、社会党は、反米親ソのにせ中立政策をとっており、かかる情勢は、わが国論を東西に二分することとなるのであります。安保条約をめぐる両党の先鋭なる対立も、実にここに問題の原因があったのであります。この国論分裂の危機を取り除き、わが国の平和と民族の統一を守るためには、国家の安全と外交問題については、なし得る限り与・野党の間に見解の接近と一致が望ましいのであります。もちろん、超党派外交は政府・与党の創意と責任において行なわれるべき性質のものであります。しかるに、いまだかつてかかることは、長い間の自民党の政府においてはやらなかったのであります。もっぱら秘密外交に終始したのであります。
 この際、わが党はどういう考え方を持っておるかということを申し上げますならば、われわれは、野党もまた、国家の統治については責任を持つべきであると信じておるのであります。また、外交や安全の基本問題については、いやしくも党利党略の具に供しないとの建前をとっておるのであります。(拍手)従って、政府・与党が誠心誠意を持って野党に諮るならば、われわれもまた建設的な態度でこれを迎え、対処する心がまえをここに表明するものであります。(拍手)首相は、この問題につきまして外交懇談会を考えておるようでありまするが、単に外交懇談会だけではなく、三党間においても何らかの意見の交換をするような工夫をすべきではないかと思うのてありますが、以上の私の所論につきまして、総理のお考えを伺いたいと思うのであります。(拍手)
 外交問題に関する第二の質問は、国連外交についてであります。
 東西両陣営の対立激化と、新独立国家群の新加盟とによりまして、国連外交の重要性はいよいよ増大してきたのであります。それゆえに、今次国連総会には、アイゼンハワー、フルシチョフ並びにマクミラン、ネールなど、その他多くの首相や元首が参加して、世界平和と自国の利益のために懸命の努力を尽くしておるのであります。しかるに、わが国からは小坂外相が冒頭演説の際にわずかに出席したにとどまりまして、わが国独自の自主性ある外交活動をほとんど展開しなかったのであります。(拍手)これでは、自民党のうたい文句でありますところの国連中心外交の名に反するとともに、池田内閣の自主性なきアメリカ追随外交の正体を露呈したものであります。(拍手)この点に対する総理の弁明を承りたいと思うのであります。
 外交問題に関する第三の質問は、新安保条約についてであります。
 新安保条約は、岸内閣の非民主的にして強引なやり方によって、大多数国民の懐疑と反対の中に、強行的に成立せしめられたものであります。これでは日米間の永続的な友好と協力に支障を来たすであろうということは、アメリカの一部の識者も認めておるところであります。政府は、この際、過去の行きがかりにとらわれず、少なくも極東への出撃のための駐留の禁止、第五条共同防衛条約の廃止、事前協議における拒否権や条約期限短縮の問題などについて米国と再交渉し、再改定に努めるべきであると思うが、所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、再改定を待つまでもなく、新条約の実施にあたっては、日本国内における措置として、事前協議については、政府は必ず国会に諮り、その同意のもとに行なうよう慣習を確立すべきであると思うが、いかがでありましょうか、この点についても御説明を願いたいと思うのであります。(拍手)
 外交問題に関する第四の質問は、共産圏外交についてであります。
 日米新安保条約の成立に伴って、わが国の対共産圏外交が一そう重要になったことは、多言を要さないところであります。わが党は、アメリカ帝国主義戦争勢力であり、ソ連、中共は社会主義平和勢力であるなどという、中ソに迎合する外交方針には全く反対であります。(拍手)あくまでも、わが国の自立独立の立場に立ち、アメリカとの協力を続けながら、なおかつ中ソとの外交関係を改善したいと考えるものであります。それには、まず国連における中国代表権はこれを中共政府に認めるとともに、台湾問題は国連の場において解決するのが正しいと考えておるのでありますが、これに対する政府の考え方をお伺いいたしたいのであります。(拍手)
 また、総理は、共産圏からも畏敬される外交ということをしばしば発言されておるのでありますが、その内容は少しもわからないのでありまするから、この際明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、総理の演説全体を伺いますると、岸内閣の外交方針をそのまま踏襲しただけでありまして、何らの新味もないのであります。この際、もっと前向きの姿で、以上私が申し上げましたことにつきまして十分に考慮を払っていただきたいと思うのであります。
 質問の第三は、経済政策についてであります。
 池田総理は所得倍増論を提唱されましたが、しかし、重要なことは、所得倍増ではなくて、国民の実質的生活の安定と向上であります。(拍手)しかるに、政府は、国民に耳ざわりのよい倍増論は提案したが、物価は、どの程度に、そして、いかにして押えるか、また、景気の発展上昇に伴って、十年後には物価はどの程度上がって、収入とのバランスがいかにとられるかという物価政策を、どこにも示していないのであります。しかも、最近、物価は著しく上がりぎみでありましてわれわれの日常生活におきましても、本年八月現在では、前年同期に比較いたしまして四・八%上がっており、おそらく、その後の騰貴を入れまするならば、およそ六%近く上昇しておると見なければならないのであります。この勢いで進みまするならば、所得の増加はあっても国民生活の向上は期待できないと思うのでありますが、この点について所信を承りたいと思うのであります。(拍手)
 池田内閣の新政策についての第二の問題点は、経済の高度成長が、それ自体で、おのずからわが国経済の二重構造や社会のゆがんだ面を是正していくかのような、安易な楽観論に終始しておるということであります。すなわち、池田新政策のように、大企業を中心とする近代産業の活発化によって年九%程度の経済成長を実現していけば、自然と中小企業や農業にも潤いが及び、雇用も増加し、失業も少なくなるというような手放しの楽観は許されないのであります。(拍手)いな、大企業と中小企業との格差、工業と農業との所得の格差はかえって拡大し、低所得階級は、物価高とも相待って、一そう苦しむ結果になるであろう、とわれわれは心配するものであります。(拍手)われわれ国民の望んでいるのは、大資本、大企業中心の成長発展ではなくして、中小企業の近代化と農業の近代化、並びに、一千百万人に及ぶところの低所得階層の中産階級への引き上げを含んだところの均衡ある経済発展と経済二重構造の解消であります。(拍手)公共投資につきましても、その中の相当重要な部分は、これを中小企業及び農林漁業の近代化に使用すべきであって、大企業偏重は断じて排さなければなりません。
 総理は、農業人口を十年後には四割に減らすと言われましたが、問題は、農村人口が離農、脱農で減ずるという経済現象が中心ではなくて、農村人口あるいは農業人口を合理的に減らして他産業に吸収するにはいかなる政策を用意するか、また、残った人口で適正規模の近代的な農業を経営せしめるにはいかなる政策が必要であるかであります。特に、農村人口または農業人口が減っても、老人と婦女子だけで低能率な農業を続けるのでは、何ら農業を含めた均衡ある経済の発展とはならないのであります。(拍手)以上の諸点につきまして、総理の率直なる見解を伺いたいと思うのであります。
 さらに、池田新政策について総理にたださんとする点は、わが国人口九千三百万人のうち、実に一千百万人の低額所得者の保護をどうするかの問題であります。池田総理が組閣早々提示された社会保障、減税、公共投資の三本建の政策は、一応好評でありました。しかるに、時日が経過するに従いまして、これが逆転して、公共投資がクローズ・アップされ、社会保障は影の薄い存在となってしまったのであります。そもそも、社会保障とは何ぞや。池田内閣は、これを政治の愛情なりとしばしば言っておられますが、これは語るに落ちた池田内閣の性格の暴露であります。社会保障とは、支配者が被支配者に対する、富者が貧者に対するれんびんの情によって与えるものではなくして、憲法第二十五条の、国民は健康にして文化的な生活を営む権利があるとの精神に従って、政治家の常に心しなければならない国家の義務であります。(拍手)この根本的な考え方につきまして総理はいかに考えておるか、もしこれに御同感でありまするならば、最初に言明したところに立ち返られて、まず何よりも先に社会保障に重点を置くべきであると思うが、いかがでありましょうか。
 次の質問は、労使関係の改善についてであります。
 高度の経済成長を期待するためには、技術の革新と労働生産性の向上が必須の条件であります。しかるに、わが国の労使関係の中には、三井三池の争議に代表されたように、きわめて対立的、破壊的なものがあるのであります。私は、労使双方に対し、日本の平和と繁栄のために再び三池を繰り返すな、と強く叫びたいのであります。(拍手)政府はこの労使問題についていかにお考えになっているか、お尋ねいたしたい。
 また、中小企業並びに零細企業におけるところの労働賃金並びに就労条件は、大企業に比較して、はなはだしく低い。これもまた高率経済成長のための重大なる障害でありますが、これをいかなる方法によって是正し、解決しようとするのでありますか、この点も御答弁をわずらわしたいと思うのであります。(拍手)
 以上をもちまして私の質問を終わるのでありますが、総理の答弁を求めるにあたりまして、私の考え方を一そう了解していただくために、これをいま一度要約いたしてみますると、まず第一に、わが国の政治の最大の課題であり、かつ政策以前の重大なる問題は、民主主義と議会政治の確立であります。これがためには、まず政党が民主主義に徹し、無条件に一切の暴力の行使と暴力による威嚇をやめることを天下に声明することから始めなければならぬと思うのであります。(拍手)
 第二は、外交と国の安全との基本的な問題につきましては、これを党利党略の具に供してはならない、政府のイニシアチブによる超党派的一致が望ましいが、その前提として、まず自民、社会両党が、それぞれ米ソの国際的な対立をわが国に持ち込まないとの反省が必要であります。(拍手)
 第三に、池田新政策は、高度経済成長による所得倍増をうたい文句としているが、実は、物価騰貴によって国民の生活を実質的に低下せしめ、いたずらに大企業のみ高度成長の恩沢を受け、中小企業との格差はますます拡大するのを放任する無責任なる政策であり、中小企業や農林漁業に対する育成と体質改善を具体的に用意していないところの弱肉強食の冷酷なる政法の姿であります。(拍手)わが党の経済八カ年計画は、これに反し、人間の自由を尊重しつつ、経済に計画性を導入し、社会主義的手法によって完全雇用の達成、社会保障の充実、所得の引き上げと均等化を実現せんとするものである。すなわち、上を押え、下を引き上げて、全国民を中産階級化し、経済の二重構造を解消せんとするのがねらいでありますがゆえに、わが党は、経済、社会の体質改善と国民生活の平準化が目的であり、高度経済成長率の維持はその手段にしかすぎないのであります。かかる意味におきまして、われわれは、池田内閣の新政策とは明確に対決するものであります。しかも、他面、このような根本的な社会の改革は、これを自由の制限や暴力革命などによらず、議会を通じて民主的、平和的に実現せんとするところに、わが党の特色があるのであります。(拍手)
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#57
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 民主主義のあり方、議会制度のあり方につきましては、大体同感でございます。これはすでに私が本院におきまして御説明申し上げた通りで、私は、あくまで寛容と忍耐をモットーとし、話し合いで進んでいきたいと考えております。
 外交問題につきまして、対米追従であるとおっしゃいまするが、私は、日本の置かれた立場から考えまして、すなわち、自由主義の建前から、そうしてまた、経済立国の建前から、アメリカを中心とした自由主義国家群と提携していくことが基本であるのであります。従いまして、これと提携して参りまするが、中ソ両国を排撃するものではございません。行く行くは提携していくよう努力していくのであります。
 なお、外交問題につきまして三党首会談、これは私も望むところでございます。外交懇談会につきましては、池田内閣成立直後設けまして、もう会議を開いております。三党首におきまして外交問題の基本を討議するということは、私もお願いしたいところでございます。大いに賛成いたします。
 安保条約の各項にわたっての改正の点は、ただいま考えておりません。また、事前協議の場合、国会に諮るということはいたしません。私は、事後には諮りまするが、この問題は政府の責任であります。しかし、国民の気持、いろいろな点を考慮いたしまして、政府の責任においてやりたいと考えております。
 それから、中共との関係でございまするが、われわれは、自由陣営の一員として自主的に国連に対処しておるであります。今、微妙な場合におきまして、ここで、中共を国連において議題にする問題、議題にしてから後にこれを承認する問題等々につきまして申し上げることは差し控えたいと思います。
 また、自由国家群から信頼せられ、共産主義の国々から畏敬せられるということは、うらはらを言っているのでございます。そうして、外交は内政の延長でございますので、日本がほんとうにりっぱな国になり、そうしてまた、りっぱな国になるのには、自由国家群の信頼を受けることでございます。自由国家群の信頼を受けて、ますますりっぱになれば、共産主義の国々から内政干渉的なことを言われぬようになるのが、畏敬せられるということでございます。(拍手)
 また、外交問題は岸内閣と同じだと申しまするが、自由民主党自体に変わりはないのでございます。私は、外交政策は以前と同様な方法で続けて行きます。しかし、情勢の変化によりましては、その情勢に応じて適当な措置をとることは、もちろんでございます。
 次に、経済の成長でございますが、物価が騰貴した場合に、経済の数字が伸びたからといって、これは何にもならないことは、もう説明を要しない。物価問題に触れないとおっしゃいますが、物価は安定の度を土台にして成長を論じておるのでございますから、前提として物価は騰貴しないということでございます、しこうして、小売物価が上がる問題につきましては、先ほど来説明した通りでございまして、政府は、あくまでこれに対しまして善処していく考えでございます。
 なお、われわれが大企業に対してのみよくやっている、こうおつしゃいますが、これは少し見方が違うのではございますまいか。中小企業や農村に対しましていかなる措置をとるかということは、今度の補正予算並びに来年度の予算をごらんになったならばおわかりと思います。大企業は、戦後、相当発展して参っております。しこうして、大企業の発展には、どうしても中小企業の拡大発展が不可欠でございます。私は、今後は、中小企業、農村に、大企業その他よりうんと力を入れる考えでおるのであります。
 次に、私が社会保障に対して非常に軽くなったということでございますが、何でそういうことをおっしゃるか、わかりません。社会保障というものは、初め言ったように、最もむずかしい問題で、最も頭を悩まし、最も力を入れておる問題でございます。従いまして、社会保障に対しまして私がいかなる措置をとろうかということは、選挙中並びに来年度の予算をごらんになればおわかりになることと思います。(拍手)
 なお、労働生産性の向上でございます。この労働生産性の向上は、西尾先生と全く同感で、私も三池を繰り返すなということを言っておる一人でございます。
 なお、中小企業の労賃につきましては、中小企業を育成していくことによって、中小企業と大企業の格差、ことに労賃の格差がだんだん縮まってくるのであります。それが経済成長のねらいの一つでございます。最低賃金制の問題もまだ十分に施行せられてはおりませんが、私は、できるだけ早い機会に、最低賃金制が、各地に、各産業に行なわれることを希望しておりますし、また、最近の経済の上昇によりまして、この最低賃金制の拡大がわれわれの予想通りに進んで行き、また、中小企業の実質賃金も相当上がっておることは、西尾先生も御存じと思うのであります。
 以上、お答えいたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#58
○天野公義君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十二日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#59
○副議長(中村高一君) 天野公義君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#60
○副議長(中村高一君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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