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#1
第033回国会 本会議 第3号
昭和三十四年十月二十八日(水曜日)
   午後二時九分開議
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  昭和三十四年十月二十八日
   午後一時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際、一昨日の会議において設置されました風水害対策特別委員会の委員を指名いたします。これを参事に朗読させます。
   〔参事朗読〕
 風水害対策特別委員
 秋山俊一郎君  井上 清一君
 石谷 憲男君  稲浦 鹿藏君
 江藤  智君  木村篤太郎君
 草葉 隆圓君  古池 信三君
 小林 武治君  小山邦太郎君
 郡  祐一君  斎藤  昇君
 重政 庸徳君  西川甚五郎君
 山本 米治君  吉江 勝保君
 米田 正文君  大倉 精一君
 清澤 俊英君  栗山 良夫君
 小酒井義男君  田中  一君
 成瀬 幡治君  羽生 三七君
 藤田藤太郎君  安田 敏雄君
 大竹平八郎君  小平 芳平君
 向井 長年君  森 八三一君
     ―――――・―――――
#4
○議長(松野鶴平君) 日程第一、国務大臣の演説に関する件。
 岸内閣総理大臣、村上国務大臣、佐藤大蔵大臣、藤山外務大臣から、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。岸内閣総理大臣。
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(岸信介君) ここに、臨時国会が開かれるに当たり、災害対策その他当面する諸問題と、これに対処する所信を明らかにしたいと思います。
 過般来の相次ぐ台風は、全国各地にきわめて多数の死傷者と被災者を出しました。私は、これらの方々に対し、深く哀悼と同情の意を表するものであります。特に、このたびの第十五号台風による被害が、死者、行方不明者合わせて五千名をこえ、高潮による水没が、長期かつ広範囲にわたるなど、史上まれに見る大規模なものでありましたことは、まことに遺憾であります。
 政府は、時を移さず、応急救助については中央災害救助対策協議会を開き、復旧については中央に災害復旧対策協議会を設け、対策に当たるとともに、現地に中部日本災害対策本部を置き、中央から責任者を派遣し、現地において適時機宜の対策を協議推進せしめ、陸海空自衛隊より、延べ人員三十万人余、多数の艦艇、航空機、車両等を動員して、被災者の救助と災害の復旧とに全力をあげてきたのでありますが、ここに、今国会に所要の予算と法律案を提出し、すみやかな審議を願うこととしたのであります。政府は、あとう限りの財源をもって、災害の復旧と民生の安定に万全を期する決意であります。これにより被災者が一日も早く立ち直り、被災地の復興が一そう促進されるものと確信いたします。被災者におかれましても、受けられた打撃に屈することなく、力強く復旧に立ち上がられるよう心からお祈りいたします。
 政府は、今次災害の事例にもかんがみ、早急に治山治水対策を中心とする基本的災害対策について、総合的かつ科学的に検討を加え、恒久的災害予防の方途を樹立し、これを強力に推進して国土保全の万全を期する所存であります。
 なお、今次災害に対して、広く国民各層並びに世界各国から、あたたかい見舞いの言葉や義捐金、救済物資などが続々送られてきましたことは、まことに感謝にたえないところであり、特に被災者の救出と保護のため、迅速かつ適切な協力を与えられた在日米軍当局の厚意に対して、深甚な謝意を表明するものであります。
 ベトナムに対する賠償問題に関しましては、本年五月、サイゴンにおいて、わが国との間に協定の調印を終えたのでありますが、これをもって、ビルマ、フィリピン及びインドネシアに次いで、わが国が条約上賠償義務を負っているアジア諸国との間の賠償協定の締結は完了するわけであります。私はまた、これを契機としてわが国とベトナムとの友好関係が増進され、ひいては、貿易、海運等、各分野における両国間の関係が一そう緊密なものとなることを確信いたします。
 最近の経済は、国際収支の黒字が続き、物価の安定が維持されるなど、順調な景気の持続が期待される状況にあり、また、世界経済全般も拡大傾向を示しつつあります。このような経済全般の好況にもかかわらず、石炭鉱業は深刻な不況に悩んでおり、著しい経営不振から多数の離職者が発生しておりますことは、憂慮にたえないところであります。政府は、石炭鉱業の根本的体質改善について積極的な施策を推進して参るとともに、その離職者対策に万全を期する所存でありますが、とりあえず、緊急に炭鉱離職者の再就労、援護等について所要の措置を講ずることといたしております。石炭鉱業の再建につきましては、労使が協力してこれに当たることが何よりも肝要でありますが、関係労使の対立が次第に深まりつつある現状は、まことに遺憾にたえないところであります。労使双方は、石炭鉱業の置かれている現状を十分認識し、いたずらに対立意識にかられることなく、ともに同一産業のにない手として、共通する現下の危機を相協力して打開するよう、今後とも平和的な話し合いの中から事態の収拾がはかられることを念願してやみません。
 私は、去る七月、八月の両月にわたり、約一カ月、欧州及び中南米各国を訪問して、それぞれの政府首脳者と意見の交換を行ない、親しく現地の情勢を見て参りました。この間、各国首脳者との会談を通じて痛感いたしましたことは、国際場裏におけるわが国の地位と役割とが、とみに重きを加えつつあるということであります。また、東西両陣営の接触点たるヨーロッパにおきましては、集団安全保障体制の強化、あるいは、いわゆる欧州統合化の推進等、自由主義陣営の強化について非常な努力が見られ、主要各国首脳が一致して考えているところも、自由主義諸国の結束の強化と、それを背景にした話し合いによる平和の実現ということでありました。この意味におきまして、わが国といたしましては、欧州におけるこれら諸国との友好関係を今後とも促進する必要を痛感した次第であります。
 政府は、つとに日米両国関係の改善を企図して、わが国の自主性を高めつつ、両国の協力体制をさらに合理的なものとするため、日米安全保障条約の改定に関する協議を進めつつありますが、このことは、わが国の安全と繁栄とを確保するのみならず、自由主義陣営の結束を強化し、世界平和の確立に資するものとの確信に基づくものでありまして、過般の各国訪問により、さらにその確信を深めた次第であります。
 過日のフルシチョフ・ソ連首相の訪米によって、国際間の諸問題を話し合いによって解決しようという雰囲気が一段と醸成されましたことは、まことに画期的なことであります。私は、このような両陣営の話し合いによって国際間の懸案が解決され、世界平和を一歩一歩前進させることを、衷心より願うものであります。
 ここに所信の一端を述べ、国民諸君の協力を心から切望してやみません。(拍手)
     ―――――・―――――
#6
○議長(松野鶴平君) 村上国務大臣。
   〔国務大臣村上勇君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(村上勇君) 私は、政府を代表いたしまして、本年発生いたしました風水害につき、その状況を御報告申し上げます。
 まず、過般来の相次ぐ風水害による多数の犠牲者の方々に衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災者の方々に対しまして深く御同情申し上げる次第であります。
 本年は、七月に入り数次にわたる局地的豪雨があり、特に、台風第五号の影響を受けて、福岡県、山口県を初め、各地に相当な被害の発生を見ました。引き続き八月におきましては、まず、台風第六号が四国、近畿、中部及び関東の各地方に被害を与え、次いで台風第七号が来襲し、近畿、中部、北陸及び関東の各地方にわたり甚大な被害の発生を見たのでありますが、特に山梨、長野両県下においては、富士川、千曲川等の異常出水による大被害を受けたほか、河川上流からの土砂の流出によるいわゆる土砂害がその被害を大きくしておるのであります。台風第七号の被害状況を申し上げますと、死者、行方不明者合わせて二百四十一名、建物の全壊流失合わせて約四千棟、公共土木施設の被害報告額約三百八十四億円、農林水産業施設の被害報告額約二百五十三億円に達しており、また、災害救助法の適用された市町村は実に百三十四市町村に及んでおります。また、八月下旬には、石川県等数県に豪雨による災害があり、特に石川県能登半島においては甚大な被害を受け、さらに九月に入り、中旬には台風第十四号により主として北海道及び九州地方の各県に被害の発生を見たのであります。
 次に、九月下旬に発生を見ました今次台風第十五号による被害の状況について申し上げます。本台風は、愛知、三重、岐阜、奈良、兵庫、滋賀、京都、鳥取、福井等の各県を初め、国土の大半に激甚な被害をもたらしたのでありまして、これによる被害の広範囲にわたること、死傷者の数の大なることにおいて未曾有のものであります。ことに伊勢湾の海岸地帯においては、既往の最高潮位を約一メートル以上も上回る異常な高潮により、海岸堤防及びこれに接続する河川の堤防が至る所で欠壊し、高潮の浸入によって多数の尊い犠牲者を出しましたほか、住宅、公共施設、農地、工場その他諸産業施設について甚大な被害をこうむったのであります。また、牧田川、紀の川、天神川、千代川、円山川、九頭龍川等の沿岸地域においては、それらの河川の破堤によって激甚な被害をこうむりました。現在までに判明いたしましたおもなる被害の状況について申し上げますと、死者、行方不明者合わせて五千二百七十六名、被災世帯は約三十五万四千世帯、建物の全壊流失合わせて約三万九千棟、半壊約十万五千棟、公共土木施設の被害報告額約八百五億円、農林水産業施設の被害報告額約四百四十九億円に達しており、その他文教施設、交通通信施設、商工業等の産業施設の被害は甚大な額に上っております。なお、災害救助法の適用を受けた市町村は五百六十四市町村の多きに達しておるのであります。
 これらの激甚な被害の発生に対処し、政府といたしましては、被災者の救助、応急復旧等、緊急の措置に遺憾なきを期するとともに、公共施設等の災害復旧につきまして、全力をあげて必要な措置を講じて参っておる次第であります。
 特に、台風第十五号による災害対策につきましては、九月二十八日、中央災害救助対策協議会を開催し、また同二十九日、中央に災害復旧対策協議会を設置するとともに、災害対策を強力に、かつ機動的に推進するため、同日現地に副総理を本部長とする中部日本災害対策本部を設置いたしまして、関係各省より責任者を派遣し、地元関係当局と連携して、被災者の集団避難を初め、食糧その他の物資の供給等、被災者の応急救助に万全を期し、また、防疫に努めて伝染病等の大量集団発生を防止し、民心の安定をはかった次第であります。さらに、海岸、河川の堤防の応急締め切り、交通通信施設の復旧、応急住宅対策等に全力を尽くしておりますが、特に、伊勢湾沿岸の被災地の民生を安定し、復興を促進するためには、長期かつ広範囲にわたる湛水を一刻も早く排除することが先決でありますので、海岸、河川の破堤個所の仮締め切り工事を早期に完了するよう努力いたしております。すでに名古屋市南部の地区については仮締め切りと排水を完了し、また名古屋市西部地区、三重県長島町北部等については、仮締め切りの完了を見ましたが、現在は、破堤浸水の特に著しかった愛知県海部地底並びに木曾川下流地区の締め切りに万難を排して努力中であります。
 なお、今次災害におきましては、政府は、特に自衛隊より延べ人員三十余万人の多数の応援を求め、また車両、航空機、艦艇等を動員して被災者の避難、浸水地域の仮締め切り工事等、応急措置に協力せしめた次第であります。
 以上、今年の災害の状況につきましてその概要を御報告いたしましたが、政府といたしましては、さらに被災地の救助を徹底し、また、公共施設、農地、農林水産業施設等の早期復旧に努めますとともに、再度災害を防止するため、その実施にあたり必要なものにつきましては、単なる原形復旧にとどめず、所要の改良を加えたいと存じます。なお、今次災害にかんがみまして再びこのような災害を惹起しないよう、治山治水対策等国土保全に関する施策を、計画的に、かつ強力に推進する所存であります。
 以上をもちまして私の災害報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(松野鶴平君) 佐藤大蔵大臣。
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手]
#9
○国務大臣(佐藤榮作君) 昭和三十四年度補正予算を国会に提出し、御審議をわずらわすことになりましたので、ここにその大綱を説明し、あわせて財政金融政策について所信の一端を申し述べたいと存じます。
 去る九月の伊勢湾台風その他今年度の累次にわたる風水害は、広範かつ大規模なものであり、死者、行方不明者合わせて五千人をこえる犠牲者を生じ、各地に甚大なる損害の発生を見るに至りました。私は、ここに衷心より被災者各位に対し深甚なる哀悼と同情の意を表するとともに、被災者各位が一日も早く復興に立ち上がられるよう心からお祈りいたします。
 政府といたしましては、すでに関係法令及び予備費の範囲内において応急の対策を講じて参ったのでありますが、今回さらにあとう限りの財源を調達して、被災者の救助及び生業の再建等、民生の安定に遺憾なきを期するとともに、被災施設の復旧にあたりましては、将来再びかかる災害を繰り返すことのないよう、充実した対策を講ずることといたしたのであります。
 まず、補正予算の内容につきまして、その概要を説明いたします。一般会計の歳出の追加額は六百十四億円でありますが、これが財源確保のため格段の工夫をいたした次第であります。すなわち、租税収入につきましては、現在の一般的好況を勘案し、年度末までの増収をでき得る限りこれを見積もり、法人税を主体として四百九十億円の増加を計上するほか、税外収入につきましても専売納付金等の増加四十八億円を計上いたしました。しかしながら、なお不足する財源を補うため、やむを得ず既定経費の節減を断行することにより七十六億円を調達することといたしたのであります。
 次に歳出について申し上げます。そのおもなものは直接災害対策にかかる経費であります。今回、風水害対策費として本質に追加されましたものは三百四十四億円であり、ほかに新たに追加されました予備費八十億円もまた主としてこれに充てられることとなる見込みであります。
 特に、災害対策として意を用いました事項は、第一に、被災地における民生の安定及び生業の再建をはかったことでありまして、このため、災害救助の内容を改善し、住宅及び農林漁業施設の復旧の促進をはかり、特に、農地につきましては、明年の作付に支障のないよう配意し、これらに要する経費として百七億円を計上いたしております。第二に、今次災害において、高潮による被害が激甚であったことに顧み、科学的にも検討を加え、大規模な海岸堤防事業等新たな構想による高潮対策を講ずるとともに、公共土木施設等の復旧の充実をはかり、特に、明年の台風襲来期までに重要な河川及び海岸の被災堤防の復旧を促進することとし、これらに要する経費として二百二十一億円を計上いたしました。このほか、文教施設の復旧費等として十一億円を計上し、その実施に遺憾なきを期した次第であります。また、災害復旧工事の促進に資するため、三十六億円の国庫債務負担行為を特に計上いたしております。
 なお、今回の補正予算におきましては、地方交付税交付金八十五億円を計上いたしました。これにより、地方債の政府引き受けの増加と相まって、地方自治体の所要財源は確保されるものと考えるのであります。
 以上のほか、政府は、石炭鉱業に対する緊急措置を講ずるため七億二千八百万円を計上いたしました。すなわち、現在不況に悩む石炭鉱業に対する基本的な対策につきましては、目下、鋭意検討をいたしておりますが、とりあえず、その離職者に対する応急措置の必要を認め、今回の補正予算により所要の措置を講じた次第であります。
 また、義務教育費国庫負担金等法令の規定に基づく義務的性質の経費であって、地方自治体において立てかえ支弁にかかるものを補てんするための経費九十一億円を、今回の補正に合わせて計上いたしました。
 次に、財政投融資による災害対策について、その概略を説明いたします。
 今回の財政投融資の追加につきましては、郵便貯金及び簡保資金等において現在見込み得る原資の増加をすべて充当いたしましたほか、既定計画の一部振りかえ及び公募債の増額により、でき得る限り所要資金の捻出に努力し、総額五百一億円の追加を行うことといたしたのであります。
 追加のおもな内容といたしましては、中小企業対策といたしまして、中小企業金融公庫等に対し、百五十億円の政府資金の追加を行ないますほか、金利等の貸し出し条件についても特別の配慮を行なうことといたしました。なお、中小企業信用保険公庫に十億円の政府出資を行ない、信用補完の機能の強化をはかることといたしております。また、住宅金融公庫の災害貸付ワクを九十五億円に、農林漁業金融公庫の災害貸付ワクを百四十億円に増大することとし、所要資金としてそれぞれ四十億円を計上いたしました。さらに、災害に伴う地方自治体の資金需要の増加に対応して、地方債において百六十億円を追加することといたした次第であります。
 以上のほか、この際、中小企業の年末金融対策といたしまして百億円の政府資金を手当することといたしたのであります。
 以上申し述べました諸措置により、別途御審議を願うことといたしております各般にわたる特例法と相待って、公共土木、農地及び農業施設災害の初年度における復旧割合におきまして例年を上回る進捗率となる等、従来に比し充実した災害対策を講じ得るものと確信する次第であります。
 次に、この機会に、最近の経済情勢について申し上げたいと思います。わが国経済が、昨年秋以来、急速な回復からさらに上昇へと、きわめて順調な過程をたどってきていることは、御承知の通りで為ります。すなわち、国民消費水準の向上、輸出の好調等、着実な需要の伸びを背景に、企業の経常状況及び雇用の情勢等も著しい改善をみたのでありますが、との間、物価はおおむね安定した確認にあり、また、国際収支も終始黒字基調を持続し、本年九月末における外貨準備高は十二億九百万ドルに達しているのであります。しかしながら、他面、設備、在庫両面の投資に対する企業の根強い拡大意欲からして、経済の先行きを警戒する声も一部に聞かれるのであります。しこうして、今回政府が災害復旧のために講じます各般の施策によりまして、相当規模の資金が放出されることとなるわけでありますが、これによって、従来着実な上昇を続けて参りましたわが国経済の安定と均衡に支障を来たすことのないよう、企業及び金融機関におかれましては、一そう慎重な配慮のもとに衝動されるよう希望いたす次第であります。
 私は、先般、ワシントンで行なわれました国際通貨基金及び国際復興開発銀行の総会に出席いたし、各国の財政金融関係者と親しく意見を交換する機会を得たのでありますが、その際、痛感いたしましたことは、為替貿易の自由化が今や世界経済の大きな流れであるということであります。このような世界の趨勢は、日本経済の特性から見ても歓迎すべきことであり、この際、わが国としても強力に為替貿易の自由化を推進すべきものと考える次第であります。従って、政府といたしましては、国内経済に与える影響について慎重な配慮を加えつつ、着実にこれが実施を進めて参る所存であります。関係各界におかれましても、この方針に即し、積極的に必要な体制を整備せられたいのであります。
 以上、補正予算の概要を説明し、あわせて今後の経済政策の一端について私の所信を明らかにいたしたのであります。国民各位液も政府の意のあるところを了とせられ、一そうの御協力を切望いたす次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(松野鶴平君) 藤山外務大臣。
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(藤山愛一郎君) 本臨時国会の開会にあたりまして、わが国の当面する外交上の諸問題と、これに対処する所信を明らかにいたしたいと存じます。
 私は、本年九月初旬、国連総会に出席のため渡米いたしたのでありますが、ほぼ時を同じゅういたしましてフルシチョフ・ソ連首相の訪米が行なわれましたので、その直後に親しくハーター米国務長官とも会談をいたし、国際情勢全農とともに、今後の日米両国の関係につきましても同長官と隔意のない意見の交換を行なうことができたのであります。
 すでに、本年初頭の通常国会に際しても明らかにいたしましたごとく、私は、わが外交の基調として、あくまでも平和外交を旨とし、このため国際問題はすべて平和的手段によってのみ解決さるべきことを主張して参ったのでありますが、このほど米ソ両国首脳の話し合いにおいて国際問題の平和的解決という原則が一応確認されましたことは、政府といたしましても歓迎するところであります。
 今回の両国首脳の話し合いの結果を見まするに、問題は主として欧州問題、しかもその重点はベルリンの危機回避に置かれた模様であり、期限付き条件のもとにおける交渉というような事態は一応回避されましたけれども、すべては今後に予想されます外相会議なり、巨頭会談なり、長期にわたる折衝の結果にかかるものと考えるのであります。
 軍縮問題に関しましても、最近、国連において英国及びソ連より全面的な軍縮案が提出される等、軍縮を通ずる緊張緩和の新たな努力を行なおうとする傾向が見られますことは、まことに喜ばしいことであります。わが国といたしましては、多年主張し続けて参りました核実験中止協定の早期締結を最も重要視するものでありまして、これが今後の全面的軍縮問題解決の契機となることを願うものでございます。
 われわれは、これら東西間の話し合いが今後逐次具体的成果を見ることを希望し、これがためにあらゆる努力が払わるべきことを期待するものであります。その際、自由民主主義諸国といたしましては、ますますその結束を強固にして、いささかのゆるぎのない立場に立ち、共産陣営との公正かつ合理的な話し合いに臨む体制を整えることが最も肝要であり、今後長期にわたる忍耐強い交渉を行なうことによって初めていわゆる雪解けも期待し得るものと考えるのであります。
 次に、今次国会において御審議をお願いいたしますベトナムとの間の賠償協定及び借款に関する協定につき御説明いたします。
 ベトナム国政府は世界の約五十カ国よりベトナムにおける唯一の正統政府として承認されており、一九五一年九月八日のサンフランシスコ平和条約には全ベトナムを代表する正統政府としてこれに調印をいたし、翌五二年六月十八日、同条約批准書を寄託いたしたのであります。これによりまして、わが国は、ベトナムに対し、平和条約第十四条に基づく賠償支払の義務を負うことになったのであります。その後、本件賠償に関する交渉は七カ年の長きにわたって続けられ、幾多の紆余曲折を経ましたが、ようやく本年五月調印を見るに至った次第であります。
 本賠償協定は、わが国が条約上賠償義務を負っているアジア諸国との間の賠償協定として最後のものでありますが、わが国が平和条約上の義務をできる限りすみやかに果たしますことは、国際信義の上からも望ましいことであるとともに、他方、この賠償の実施は、ベトナムの経済建設と民生安定に寄与し、両国間の友好親善関係を強化し、政治、経済、通商、文化の各般にわたる両国間の協力を一そう緊密にするものと確信いたすのであります。
 次に、当面の重要案件について御説明いたします。
 政府は、過去一年にわたり日米安全保障条約改定の交渉を行なって参ったのでありますが、その要旨はすでに国会におきましても累次にわたり御説明して参ったところであります。すなわち、現行条約締結後七年を経過し、名実ともに独立国としての地歩を確保いたしましたわが国として、安全保障の分野における日米両国間の協力関係を今日の事態によりよく適合せしめるとともに、国連憲章の精神にのっとりつつ、わが国の独立と安全とを確保し、両国の友好関係をさらに促進することを目的とするものであります。政府は次期通常国会において新条約の承認を求めるべく交渉の進捗をはかっております。
 日韓会談につきましては、本年八月十二日再開以来、法的地位委員会と漁業委員会が開催されておりますが、政府といたしましては、過去における日韓両国間の複雑な経緯にかかわらず、相互の努力によってすみやかに信頼感を確立し、大局的見地から諸懸案の公正かつ合理的な解決に努め、もって日韓両国間の恒久的友好関係の基礎を築きたいと念願いたしている次第であります。
 また、釜山に抑留されている日本人漁夫の帰還問題につきましては、政府は引き続き努力して参りました炉、近くこれが実現に至るものと期待いたしております。
 なお、在日朝鮮人の北鮮帰還問題につきましては、九月二十一日より帰還申請の受付を開始いたし、実施の段階に入らんとしております。わが国といたしましては、本件は個人の自由意思に基づく帰還であるという基本方針を堅持しつつ、帰還が所期のごとく円滑に実施されるよう万善を期しております。
 国連におきましては、わが国は昨年一月以来、安保理事会の非常任理事国として、各種国際紛争の平和的解決のため公正かつ建設的な態度をもって努力して参りましたが、最近はラオス問題に閲し、その事態の平静化のため積極的な役割を果たしましたことは、各位の御承知のところであります。この非常任理事国の任期は本年末をもって終了いたし、わが国は来年初頭より経済社会理事会の理事国として、世界の経済的、社会的発展を通じて国際平和を強化するという国連の事業に積極的に参加することになりました。私は、今後ますます重きを加えるわが国の責任を自覚いたし、国連の平和建設事業にでき得る限りの協力をしていきたいと考えておるものであります。
 すでに御承知のごとく、このたびわが政府の招請にこたえて、ガット総会が初めてジュネーブを離れ、その第十五回総会が東京において開催されておりますが、私はこの機会に、訪日する各国の関係大臣及び代表が親しくわが国の産業経済の実情を視察され、その認識を深められんことを期待するものであります。同時に、今回の総会が契機となり、多年懸案となっておりますわが国に対する貿易上の差別待遇撤廃の問題がすみやかに解決することを期待するものであります。
 以上、当面の諸問題に関し報告かたがた私の所信を明らかにいたしました。各位の深い御理解と御支援とを要請する次第であります。(拍手)
#12
○議長(松野鶴平君) ただいまの演説に対し質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#13
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   牛後二時五十四分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、風水害対策特別委員の指名
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件
ソース: 国立国会図書館
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