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#1
第033回国会 本会議 第5号
昭和三十四年十月三十日(金曜日)
   午前十時五十五分開議
  ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和三十四年十月三十日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第三日)。
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。森元治郎君。
   〔森元治郎君登壇、拍手〕
#4
○森元治郎君 私は、日本社会党を代表して、外交に関する若干の質問をいたしたいと思います。
 岸総理は、一昨日の衆議院において、米ソが国際問題を平和の手段で解決することに意見の一致を見たことはまことに画期的だと説明をされました。そして、その口の下から、わが党の淺沼書記長の質問に対し、一回のフルシチョフの訪問ぐらいで雪解けになるほど国際情勢はなまやさしいものではないと答弁をしております。また、東西の歩み寄りを歓迎する一方、総理は、自由陣営の結束を強化すべきだと言い、藤山外務大臣は、自由主義諸国としてゆるぎない立場に立って共産陣営との公正かつ合理的話し合いに臨む体制を作るのが肝要であると演説をしております。われわれも、きょう、あすに世界の平和が来るとは思っておりません。しかしながら、いやしくも戦争を放棄した国の総理大臣たる者は、小さい平和の糸口を見つけたならば、これが拡大に全力を尽くすのが当然の責務であると信じます。(拍手)総理、外務大臣は、この前後の矛盾をどう御説明されますか、はっきり御所見を伺いたいと思います。それとも平和はアメリカとソ連の間で話し合えばよいので、おれは刀をみがいているからよいというような態度では落第であります。こんな総理大臣は即刻退陣をしてもらわなければなりません。政府は、安保条約の改正とベトナム賠償を強行するため、なおしばらく国際の緊張を望むのか。平和がおそろしいのか。雪解けが始まったという言葉はフルシチョフと会談の後にアイゼンハワー大統領の口から出たものであったことを念頭に置いて、総理の所信を伺いたいと思います。
 また、総理も外務大臣も、施政方針の中で日本と中国との関係に一言も触れていないのはどうしたことか、これをお伺いします。自民党の中にも日中関係の打開を真剣に考える人が多くなってきたことは喜ばしいことであります。さきに石橋元総理大臣、今また松村老が御苦労されております。総理は、この努力をどういうふうに見ておられるか。私は、岸総理がイギリス政府から公式に否認されたのにもかかわらず、いまだにマクミラン首相が、あなたの中共への態度を是認してくれたものと信じておりましたところ、きのうの衆議院本会議で、日中関係のことはタイミングの問題になっているとの趣旨の御答弁があったのを重大視します。それは、いついかなる機会を意味するのか。あるいはアメリカの中共政策の変わるのを待ってと言うのか。まず安保改正をやって、日米力の背景でやる方が有利だと考えておられるのか。極東の平和と安全、その雪解けのためにも、総理の明快な御答弁を要求します。
 次に、安保改正についてお伺いをします。新安保条約は、経済、文化の協力で裏づけられた安全保障という名の軍事同盟であります。政府はこのように言われるのが大へんつらいらしいが。そして、その改正の内容については、自主性を高め、合理的なものにし、そして、安全と繁栄を確立するものだと言っておりますが、それはそう希望したかもしれませんが、でき上ったものを見ますと、相互防衛をうだったりっぱな軍事同盟であります。こんないい条約に反対するのは極左勢力だと岸総理は大みえを切っておられますが、かのマッカーシーというアメリカのすっとんきょう者が盛んに人に赤いレッテルを張っているうちに、ロケット競争においてアメリカは負けたという事実を、総理は知らなければなりません。足元の自民党はどうですか。極左勢力もだいぶあるように見られます。岸総理のお隣にも、時期尚早派の巨頭と目される方がすわっておられるようであります。ひより見とか、わからないなど、色とりどりのようであります。ただ党内派閥争いのバランスが平静を装っているだけにすぎません。国民世論を見ましても、わからない、無関心が半分あります。残りが賛成と反対に分かれている。政府は、条約上やらないという点だけを強調しておりますが、もし、何をやるか、そのやる方を明らかにしたならば、無関心の者はほとんどは反対に回ることは必至であります。安保改定のセールスマンが懸命の売り込みをやっても、必要から来る真の切実さがなく、盛り上がらないのは、岸内閣に対する国民の不信と疑惑があるからだと思いますが、総理の所見はいかがでございますか。
 以下、内容の数点にわたって批判をしてみたいと思います。
 自主性とか平等とか言っておりますが、条約改正案はアメリカ側から提案されたものではないでしょうか。それゆえにこそ、調印には、総理みずからがアメリカに出向いていくのだという疑問があるのであります。また、平等になったといいますが、平和憲法の日本と軍国アメリカが、権利義務を平等にやれるわけはありません。問題の行政協定も、右の理由から不平等を甘んじなければならないようであります。ただし書きをつけながらでは、ろくな行動はできません。
 また、この種の条約は、お互いの目標が完全な一致を要します。しかるに、これでは、日本は日本のことを考えているのに反し、アメリカ側は極東への出動に重点を置いていることが明らかであります。この心得方の相違は、やがて条約運営上に大きなそごを来たすことは明らかであります。
 また政府は、アメリカの日本防衛の義務を明らかにしたとか、アメリカが守ってくれるのだと宣伝をしておりますが、具体的にはどういうことでありましょうか。最近アメリカ国防当局筋が、日本だけに新条約の中で特別な待遇を与えることはできないと言っておるのは気にかかることであります。一体守ってくれるというのはどういう意味でしょうか。それは条約上に、条約草案の中にある「共通の危険に対処する」、武力攻撃があった場合には共通の危険に対処するという、対処という言葉がこれに該当するのか。この点は、その対処によって行動することにも関連して、赤城防衛庁長官から特別に答弁を求めます。
 ことに重大な点は、アメリカ軍の極東の安全と平和のための出動の条項であります。これは、単にアメリカ軍出動の目的を示しただけでありまして、行動の地域的限界を示したものではないだけに、かつて日本が東洋平和のためならばといって世界戦争に入ったように、日本がゆえなく戦争に巻き込まれる危険がここにひそんでおることを知らなければなりません。
 事前協議ということを何か大きなブレーキのように宣伝しておりますが、これは、自分の国が生きるか死ぬかというときに、アメリカは、日本が反対だから、ああそれでは出るのはやめましょう、あるいは核兵器は持ち込みませんと言うことはないのであります。ブレーキにはなりません。条約期限の十年、自民党で問題になっておりますが、これは、この間日本は防衛の努力をせよということで、宇宙時代にまことにのんきな話であります。
 改正条約は、以上のごとき危険あるいは欠陥をはらんでいるばかりでなく、かえって国の安全を危うくするものであります。現行憲法下では、再軍備はもちろん、かかる相互防衛条約を結ぶことはできません。われわれは日本の独立と平和のために断じて反対であります。(拍手)気運が盛り上がらないのを幸いにいたしまして、政府は、この際、安保改定を流して、解消への方策を考えるべきであろうと思います。
 そこで私は、一つの提案を持っております。アメリカが日本にこうやっていろいろ手をかけてくる期待はどこにあるかというと、日本が共産陣営に入らないことであります。自民党も社会党も、われわれ日本全国民は、どこの国の手下に入るつもりもありません。ですから、この日本人の気持をしっかりアメリカはとって、条約をやめて、アメリカ軍は撤退して、現行条約にかわる日米友好条約でも結んではいかがかということを提案をいたします。
 次に、ベトナムの賠償について質問をいたします。
 政府は、ベトナム賠償は、南ベトナムが平和条約に調印し、かつ多数の国国によって承認された正統政府であるから、これに支払いをなすことは当然であるとしておりますが、これには私は承服するわけに参りません。サンフランシスコ平和条約の調印国だからといいますが、これは、この会議の招請国であるアメリカがベトナムを会議に参加させたものでありまして、その結果日本は同国と関係を持つようになったのであります。当時戦敗国の日本としては、相手を選ぶ権利がなかっただけのことであります。われわれも、南ベトナムと日本が外交関係を持っている政府であることは認めまするが、一九五四年のジュネーブ協定によって、南ベトナムの実体は、行政管理的性格を持つようになりました。しかも、北ベトナムとやがて統一すべく規定づけられた政府となった現実をもあわせて考慮しなければ、賠償問題の正当な解決にはなりません。ベトナムはわが国と国交関係を持つ全ベトナム代表の唯一の合法政府であるという法律的形式論では進められないところに問題があると思うが、この点の御所見を承ります。
 賠償というものは、政府に対して行なうものではなく、政府を通じて、その国民に戦争中の償いをするものであります。南ベトナム政府の施政権が及んでいるのは、北緯十七度線までであります。これより北には、賠償請求権を留保しているベトナム民主共和国が厳然と控えております。従って、かりに南ベトナムに賠償を支払っても、事実上ベトナム全部に支払ったことにはならないのであります。それでもなお、南ベトナム政府は全ベトナムを代表しているものだから、これに支払えば、日本としては、これによって条約上の責任は果たしたことになる。賠償がその国でどのように処理されようと、それを云々することは内政の干渉だというのでは、無責任もはなはだしいのであります。われわれは、こんなことでは、国民の血税を断じて払うわけにはいきません。しかもベトナム人は、南も北も統一と独立を願っているばかりか、戦争による損害は、ほとんど北のみであります。バンドン会議では、統一ベトナムの国連加盟の支持が決定されております。藤山外相も、当時出席をされて異存ないはずであります。ところが、ベトナムは全ベトナムを代表しているという口の下から、ベトナムは二つに割れているということを認めていることはこっけいであります。政府は、ベトナムの統一を期待しているのかどうか。腹の底では、統一ベトナム政府ができてこれと賠償問題を解決するのが理想だが、これは今すぐの可能性がないから、次善の策として南ベトナムとやるほかはないと言われてもおります。真に統一を望むのかどうか、この際、はっきり政府の所信を示してもらいたいと思います。政府はまた、統一が実現したら南ベトナム賠償支払いは当然引き継がれるのが国際慣例だとしておるようでありますが、新政権から再検討を要求されたときにはどうするのか。賠償というものは、連合国であればだれでも求償権があるわけではありません。はっきりした根拠がなければなりません。賠償額においては、初めに二百二十五万ドル、それから二億五千万ドルとか二十億ドルとか、いろいろ数字が変って、やっと総額五千五百六十万ドル、約二百億円に落ちついた、その経緯を詳細に示してもらいたいと思います。特に、精神的苦痛を考慮しているという、その内容も示してもらいたい。賠償額がダニムの水力発電所の建設費から逆算されたもののようでありますが、これは、はなはだけしからない。このようなものは決して賠償というものには入らない、経済協力であります。賠償が最も割のいい商売だと思わせているのは、これは政府の責任であります。早く賠償を片づけたいと言っておりまするが、早くもビルマから、自分の方にも公正な待遇をしてくれと言われております。これは賠償額が過大であって必要でもないものを日本が払うからということを見抜かれたためであります。また、このようなことをすれば、韓国の対日賠償請求権、中共が留保している求償権にもどのように影響するかも伺います。
 最後に、この賠償支払いの結果、北ベトナムとの貿易関係は非常な打撃を受けると思いますが、通産大臣からこの点を伺いたいと思います。
 われわれは、このような賠償が南ベトナムの軍事態勢の強化に利用をされ、東南アジアの緊張を高め、平和をおびやかすことになるようなことには、断じてくみすることはできません。賠償には反対であります。南北ベトナムの統一に協力しつつ、その日まで待つべきものと信ずるものであります。
 私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 国際情勢の推移につきましては、私が演説で申し上げました通りに政府としては考えております。すなわち、世界の平和を推進する上において話し合いによって問題を解決し、武力によって問題を解決するということを絶対に避けていかなきゃならない、これは、かねてわれわれ考えておる考え方でありますが、そういう方向に国際の情勢が動きつつあることは非常に歓迎すべきことであるという考えに立っております。しかし、その話し合いということは、言うまでもなく、その背後におけるところの力を背景として話し合いをすることであり、また、話し合いによって全然考え方の違っておる東西両方の共存の道を見出そうということでありまして、両方が今までの関係を一切御破算にして融和するということではないことは、これは言うを待たないのであります。従って、そういう意味において、今日なお両陣営とも、おのおの理想を同じくし、考えを等しくしているところの国々との間の提携結束を強化してそうして話し合いをするというのが国際の情勢であることは言うを待たないのであります。そういう意味において、私どもは、やはり自由主義の立場を堅持して、そうして自由主義国家の間の結束を十分にはかって、そうして両陣営の間の話し合いによって問題を解決して、平和の方向に進んでいこう、これが私どもの考え方の基本でございます。従いまして、私どもはその意味において、あるいはヨーロッパにおいてヨーロッパ統合の問題であるとか、あるいはNATOの強化の問題であるとか、あるいはその他地域的な安全保障の体制であるとかいうことは、依然としてこれを持続して、そうして話し合いによってものを解決するという方向に進んでいくべきもので、これが国際の現状である。また、その現実に立ってわれわれが平和を促進することを考えていくことが現実的な考え方であるということでございます。従ってこういう考えから見ますというと、私は、フルシチョフとアイゼンハワーの相互訪問ということと、われわれが安保条約を合理的基礎の上に改定しようということは、何らの矛盾でもなければ撞着でもない、こう考えておるわけであります。
 第二に、日中関係の問題でありますが、日中の関係は、私がしばしば申し上げておる通り、現状はきわめて両国のために不幸である。従って、両国とも政治体制やイデオロギーを異にしておるけれども、そのことを十分お互いが理解し合って、そうして友好親善の道を築き上げていくべきものであると、こう考えております。昨日も衆議院においてこの問題に触れて所信を明らかにいたしたのでありますが、要するに、いわゆる政治と経済は不可分であるとか、あるいは可分である――これを分けてやるということは、単純な理論の問題ではございませんで、現実に日中の間に存在しておるところの現実の問題としては、台湾の問題が非常な困難な問題でございます。また、国際連合におけるところの国際的世論の動向ということも、これを無視することのできない状況でございます。こういう状況のもとに、われわれが直ちに中国を承認し、また、これとの間にそういう関係が整理されずしてこの問題を解決するということは、日本の立場としてはとうていできない。従って、この方向にこの日中の間の問題を友好的に解決するためには、やはり文化的にあるいは経済的に交流を盛んにして、そうしてこの両方の基礎を作っていくということが、私どもの考え方の基礎でございます。従いまして、そういう実情を考えて見るといろと、今直ちに中国との間に政治問題を含めてこの問題を解決しようということは、その時期でない、こういうことを申し上げておるのであります。
 安保条約改定の問題に関しまして、いろいろの点をあげて御質問でありました。安保条約の改定の問題は、言うまでもなく、この現在ありますところの安保条約、現行の安保条約が、その制定の当時の特殊事情から、われわれ独立国とし、日本の自主的な立場から見まして遺憾の点が多いことは、この条約の成立当時、またその後において、国会においてもしばしば論議された通りであります。従って、これを合理的基礎の現在の日米間の状況に合致させ、また国際情勢に合致させ、さらに日本の自主独立の立場にふさわしいような合理的なものにするということは、日本として当然に考えなければならぬことでありまして、この見地に基づいて、われわれは数年来この安保条約の改定をアメリカに申し入れ、さらに一年余にわたって具体的の交渉を続けて今日にきたような次第でありまして、従いまして、私どもは今日この最後に、大体両方の意見の合致しようとしておるこの際に、これをやめるとか、あるいはそういう交渉を打ち切るというような考えを毛頭持っておらないことは当然でございます。この条約案が、アメリカの方から押しつけられて云々というふうな議論がございましたが、そういうことは絶対にございません。この問題は、最初に提案いたしましたのは、三年前の鳩山内閣のときでございますが、そのときにはアメリカはまだ時期尚早であるという議論でありました。一昨年、私が訪米の際には、まずその方向に関して基礎的な検討をするために安保委員会を設けて、一、二年にわたって、運営の面からこの検討をしてきたわけでありまして、さらに昨年の秋には、藤山外相が訪米の際に、ようやく日本のこの要望をいれて、それでは改定の協議に入ろうというふうになってきたわけでございまして、決してアメリカ側から押しつけられたものでないことは言うを待たないのであります。
 さらに、行政協定等において不平等であるという御指摘でございましたが、行政協定に関しましても全面的な検討を加えております。これは日本に外国軍隊の駐留を認めます以上、それの権利義務なり、それの地位なりというものについて定めなければならぬのでありますが、この現在の行政協定は、今日から見ますというと、日本の立場が十分に認められておらない。日本に不利な点が少なくないのであります。諸外国におきましても、あるいはNATOに加盟しておる国々その他の例を見ましても、日本の行政協定は不利な点が少なくないのでありまして、これを一般の国際観念に適合するような公正なものに全体を改めるという意味で、全体を検討いたしております。
 条約の目的について、日本とアメリカとその目的が違っておるじゃないか、従って、これの運営の上に支障を来たさないかという御質問でありましたが、これは条約にはっきりと、この条約の目的は、日本の安全を保障すると同時に、極東の平和と安全に寄与するという二つの目的を掲げておりまして、この点に関しまして日米の間に意見の相違があるわけではございません。また、アメリカが日本に対する防衛の義務を負うことについての御質問でありましたが、そのことにつきましては、はっきりと条約にその根拠を明らかにするつもりでございます。
 さらに、基地の使用や、あるいは重要な配備装備の問題についての事前協議についての御質問でございましたが、従来、こういう点につきましては、現行法においては、何ら日本の意思を問うこともなく、日本に相談することもなく、アメリカが一方的にすべてできるようになっておるのが条約の根拠でございます。条約上の文面にはそう表われております。しかしこれに対しては、日本が全然知らないうちに日本が戦争に巻き込まれるおそれがあるじゃないか、あるいは私が核兵器の持ち込みは認めないということをしばしば国会を通じて言明しておるにもかかわらず、それは条約上そういう根拠はないじゃないかというふうな非難があったわけでありますが、そういうことを将来なくするために、はっきりと事前協議の条項を置きまして、日本の意思を無視してそういうことのできないような根拠を明らかにいたすわけでございます。
 それから期限の点についての御質問でありましたが、こういう条約は言うまでもなく、ある相当な期間にわたって安定した基礎の上に両国が協力するということにおいて初めて成り立つのでありまして、従って私どもは、この期間、現行条約は無期限でございまして、条約上これを打ち切ることの期限が設けられておらないのでありますが、われわれはこれに対して十年という期間を置いて、その後においては、一年の予告をもって一方的に廃棄できるということにいたしたのでございますが、この十年の期間が長いとか短いとかいう御議論もあろうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、私はこの種の条約については、やはり両国間の信頼の上に協力が結ばれるわけでありますから、ある程度の安定した基礎が必要であります。その期間として十年を適当と認めたわけであります。
 最後に、安保条約を廃止して、日米友好条約というようなものをもって、これにかえたらいいじゃないかという御提案でございましたが、言うまでもなく、現在の国際情勢は、冒頭に申し上げましたように、やはりわれわれのこの安全を確保していき、その平和な生活を確保するという意味におけるこの体制を、今日廃止するということは、私は適当でない、やはり安保体制というものは、これを持続すべきものである、これを合理的な形に改めていくべきものである、かように考えておりますので、さような御提案につきましては、私は賛成をいたすわけに参りません。
 次に、ベトナムとの賠償協定の問題でありますが、私どもは、すでに森君から御指摘のありましたように、南ベトナム政府――ベトナム共和国政府を全ベトナムにおける正統政府として、このサンフランシスコ条約に基づくところの賠償協定をこれとの間に結ぼうということであります。これは全ベトナムを代表しておる正統政府としてわれわれは考えておるわけであります。ジュネーブの協定は、言うまでもなく、これは休戦協定でございまして、ベトナム政府のこの法的立場というものは、この条約の協定の前後において私は変わっておるものではないと思います。従って、私どもが正統政府として全ベトナムを代表しておると考えておる共和国政府と賠償協定を結ぶならば、それが将来、南北ベトナムが統一される、これはわれわれも望むところでありますが、その場合においてこの統一政府に当然引き継がるべきものであることは、これは国際条約の観念からいって当然でございまして、その後において、また別の賠償要求が出てくるなんということは、とうてい私どもは考えておりません。また、サンフランシスコ条約におけるところのこの賠償協定、われわれが賠償義務を負うておる国との間の賠償協定というものは、これをもって一応完了するわけであります。今、待ったらいいじゃないかというお話もございますが、われわれはやはりサンフランシスコ条約によって負うておる賠償義務というものを一日も早くこれを完了していくことが、国際信義の上からも当然であり、また、日本の国際的の地位から申しましても当然やるべきことであると考えております。これができ上がることによって、東南アジアと日本との関係は一そう私は友好的な関係が増進されるものと確信をいたしております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(藤山愛一郎君) 大筋については相当総理の御説明がありましたので、若干補足して申し上げたいと思います。
 今日の国際情勢、雪解けの状況等につきましては、総理と全く同じ考えを持っております。また、中共問題につきましては、当然、私は、将来これが解決の必要があろうとは考えておりますけれども、現在そういう時期でないことむろんであります。
 今回の安保条約の改定につきましては、御承知のように、日本側からこれを提起したことむろんでありまして、しかも、私がアメリカ側と交渉しているのに、何かアメリカ側の言うことだけを聞いているように言っておりますけれども、そういう事実はございません。われわれとして主張すべきことは当然主張しておりますので、その点は御安心をいただいてけっこうであります。
 今回のこの改定にあたりまして、日本防衛の義務を明記するかということであります。当然明記して参らなければならぬのでありまして、これを共通の危険と認めてその攻撃に対処すると、今、森議員が言われましたように、字句上の問題については、若干、今後十分慎重な検討を続けて条約文作成をいたして参りますけれども、御趣旨のような意味においてこれを書き表わしていくこと当然でございます。今回の安保条約の改定にあたりまして、アメリカが日本の防衛の義務を負うことは当然われわれの主張なのでありますから、そういうことを書いて参りたいと存じております。また、極東の平和と安全につきましても、日本の平和と安全というものは当然極東の平和と安全にもつながり、また極東の平和と安全が日本の平和と安全にも影響を及ぼすものでありますから、そういう点については、十分考慮して書いて参らなければならぬと考えておるわけであります。
 今回の安保改定にあたりまして、事前協議をするのか、拒否権があるかというお言葉であります。拒否権というものには若干字句上の問題がございますが、協議であります以上、同意を要することは当然でありまして、われわれは同意を要するという前提のもとにこの話し合いをいたしておるのであります。従って、日本の基地を作戦に利用するとか、あるいは核兵器の持ち込み等に対する事前協議というものは、日本の同意を要することむろんであります。
 十年の期限が長いかどうかということであります。これは総理がただいま答弁されましたように、われわれといたしましては、この種条約を信頼感の上で持って参ります上においては、十年が適当であろうと考えておるわけであります。
 今回の条約そのものは、御承知の通り、アメリカにおきましても日本におきましても、お互いに信頼関係の上に立ち、しかも、国連憲章五十一条のワク内における国連の平和処理を信条としてわれわれは締結をいたしていくのでありまして、みだりに戦争を挑発し、あるいは戦争に、侵略に参加していくというような趣旨でこの条約ができることではないのであります。国連憲章のワク内で立っていくことむろんでございます。
 それから、ベトナムの賠償の問題でございますが、ベトナム共和国を正統政府と認めるかという御質問だったと思うのであります。われわれとしましては、ベトナム共和国を今日世界の四十九カ国がすでに承認をいたしております。北ベトナムを承認いたしておりますのは十二カ国にすぎません。世界のすべての国と申しますか、大半の国がこれを承認いたしておるのみならず、歴史的に見ましても、フランスが仏印を解放いたしますときに、カンボジア、ラオスととも一に、このベトナム共和国を、今日のベトナム共和国の前身でありますバオ・ダイを承認して、それを全ベトナムの代表として、フランスもその独立を認めたわけであります。その後、御承知の通り、選挙を通じて共和国に変更になったわけでありまして、その経緯から申しましても、これを全ベトナムの代表として認めることは適当のことだろうと思います。しかも、今日サンフランシスコ条約に調印をいたしておりまして、当然賠償の主張の権利を持ち、また日本はその責任を持っておりますので、全ベトナムの代表としてこれに対して賠償の取りきめをいたしたことは当然のことだと思います。
 ジュネーブの共同宣言において統一を勧奨していることはむろんでございますし、バンドン会議におきましては、御承知の通り、国連加盟という趣旨を決定する決議の中に、日本も含めて、統一ベトナムが将来国連に参加することを希望するという決議はむろんございます。われわれとしては、統一ベトナムができることについてはむろん喜ばざるを得ないのでありまして、かねてから申しておりますように、分裂国家の問題が解決することは望ましいことであります。しかしながら、サンフランシスコ条約の義務を果たして参りますということ自体について、われわれはやはり国際信義の上から、適当な時期に適当にそれを果たしていくということは、やって参らなければならぬことだと思っております。
 また、賠償の金額がどういう経緯できまったかということでございますが、御承知の通り、ベトナム側といたしましては、全ベトナムの損害として二十億ドル程度の損害があったのだ。しかも、それは御承知の通り、多数の人命の損害、餓死者も出た。百万とベトナムは言っております。むろんそんなに多い人数ではないと思っておりますけれども、そういうことでありまして、精神的苦痛のありましたことも当然であります。われわれといたしましては、ベトナムがそういう状況のもとに二億五千万ドルの要求をいたしてきたのでありまして、これを折衝の上で三千九百万ドル、純賠償三千九百万ドルに限定をいたして、今日調印をしてきたわけであります。その調印の過程におきましては、インドネシアなりあるいはフィリピンとやりましたように、積み上げ方式とあわせ考慮しながら、この金額に決定をいたしたわけであります。ただいまお話のありましたようなビルマの再検討条項というのは、全くビルマの賠償協定の中にあります再検討条項から来ているのでありまして、ベトナムとの関係はございません。(拍手)
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。
 私に対する御質疑は、米国が共通の危険に対処するように行動するということだけでは、アメリカが日本を守ってくれる確証はないではないか、こういう御質疑でございます。今交渉していることによって、私は今のようなことはないと考えております。すなわち、日本に対する武力の攻撃は米国の平和及び安全を危うくするものと認め、この認識に立って共通の危険に対処するように行動する、こういう決意を表明しようというものでありますから、当然共通の危険に対処する行動がとられるわけであります。この行動の形態としては、武力攻撃に対処するのでありまするから、その行動が武力を中心とすることは言うまでもありませんけれども、これに限るものではありません。いずれにいたしましても、米国は右の認識と決意に基づきまして、事態に応じ、適当な措置を必ずとるものと思っております。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(池田勇人君) 北ベトナムとの貿易関係でございまするが、本年三月に貿易協定は破棄されました。しかし、関係業者の要望もございまして、破棄せられたにかかわらず、事実上は従来通り貿易が行なわれております。数字で申し上げますと、一昨年は輸出が五十九万ドル、昨年は百五十八万ドル、今年は八月までで八十八万ドル、こうなっております。わが国が輸入超過の国である関係もございまするが、私は、この事実を見ましても、今後北ベトナムとの貿易は期待し得るものと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(松野鶴平君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#10
○曾祢益君 私は、社会クラブを代表いたしまして政府に質問申し上げたいと存じます。
 まず最初に、本国会における岸首相初め各大臣の施政方針演説が、いずれも現実の事態に対する具体的な対策を明示せず、例のごとく抽象的な、かつ行政報告にひとしい低調ぶりであったことと、なかんずく、現下の国策の中心課題でありまする安保改定についてはほとんど触れることのなかったことを、すこぶる遺憾とするものであります。われわれ社会クラブは、国民生活を向上し、経済発展を促進して、積極的に国民の利益を守っていく新しい民主社会主義政党の設立を目ざして、ここに広範な働く階層の立場を代表して、政府に対し若干の質問をしたいと存じます。
 まず、災害対策についてであります。今回の伊勢湾台風は、常識をこえた大被害をもたらしました。しかし、このことは、天災であるという逃げ口上を許すことではないのでありまして実は国土保全を怠った歴代保守内閣の失政がもたらした人災でございます。それにもかかわらず、私どもは、いたずらに政府の施策のあら探しをするのではなく、国のあらゆる資源を総動員して復旧を促進するとともに、災いを転じて福となす抜本的な施策を講ずるよう、政府を督励していきたいと存じます。この見地に立って、まず質問いたしたい点は、現在いまだに広範な浸水地域が残っており、被害調査の進行につれて被害実額はさらに増大するものと思われまするが、政府は予備費八十億円の範囲で必要増額分をまかなえるお見込みであるかどうか、必要があれば第二次補正予算を年度内にも提出されるおつもりであるか、その際の財源措置をいかにされるか、これを総理、大蔵、建設省大臣にお伺いしたいのであります。
 総理大臣は、早急に治山治水対策を中心とする基本的災害対策を強力に推進して国土保全の万全を期すると施政方針中に言っておられまするが、国民が望んでいるのは、総理のこのような訓示や抽象論ではなく、国民の人命と財産を守り、国民生活に支障を来たさない保障であります。岸首相は、通常国会に基本対策を提出すると言っておられまするが、これを本国会中に提出される決意と準備をお持ちでないのか、少なくともその基本構想のアウト・ラインでも総理からここに潟示しを願いたいと存ずるのであります。
 第二に、補正予算編成についてお伺いいたしたいのであります。一般会計予算補正規模は六百十四億円命であります。その財源としては、租税その他の自然増収を約五百四十億円と見込み、このほかに既定経費の節約七十六億円を計上しておられます。総理並びに大蔵大臣の最近の経済情勢についての見解は、あまりにも簡単であり、なぜ税収その他で自然増収を五百四十億円と見込み得るのか、その根拠は全く不明でございます。そこで、私の質問点は、自然増収の見込みとその明確な根拠は何であるか、また、その背景となる経済見通しはどうなのかを明らかにされたいのであります。第二は、不足財源の補てんのため、各官庁にわたり既定経費七十六億円を節約いたしましたが、総理府節約分三億七千万円のうち、防衛庁予算節約はどれほどになっているのか、また既定経費節減の基準はどうであるか、民生安定費期をこのように優先的に削減した理由はどこにあるのか、はっきりお聞かせ願いたいのであります。第三に、政府は災害予算として三十六億円の国庫債務負担行為を計上しておられまするが、災害復旧工事費全体を継続費として編成し、年度予算で細分化されたり、工事が遅延するのを防止すべきではないでしょうか。政府は、この際、事業費予算の一部を年度をこえて使用し得るよう財政法を改正する御意向はないか。以上各点について、大蔵大臣よりお答えを願いたいのであります。
 第三に、政府の経済政策についての基本構想並びに当面の石炭産業危機対策についてお伺いいたしたいのであります。政府が本年春の参議院選挙前から宣伝しておられました国民所得倍増計画は、本国会開会を前にして、ついにその基本構想も計画数字もすべて御破算、総くずれとなってしまいました。われわれは、民主社会主義を政治理念として、国民生活の現実的利益を守る議会主義政党たらんとして新発足いたしましたが、わが国の長期経済政策構想についての当面の目標は、経済二重構造の矛盾に苦しむ農林漁民、中小企業者、低賃金労働者、母子世帯を含む生活困窮者等の所得水準の引き上げと、国民生活安定に基礎を置く労働生産性向上、これを起点とする経済発展の二つに置いております。政府は昨年度並びに本年度の経済白書でこの二つの目標を一応とらえておることは事実であるけれども、それは単なる口頭禅にすぎないのは遺憾千万であります。そこで、あらためてわれわれは政府に対し、経済政策の基本構想として、低所得者の生活水準引き上げと、働く者に納得のいく、すなわち、雇用を保障する労働生産性向上の二条件を根本に置くことを要望するわけでありまするが、首相並びに経済企画庁長官の明確なる所見を披瀝されたいのであります。
 次に、首相は、石炭産業については、根本的体質改善の積極策を推進するとか、労使が平和的な話し合いの中から事態の収拾がはかられることを念願するとか、全く無責任きわまる傍観的な態度を示されたのであります。石炭産業の危機は、産業構造の発展に伴う不可避な面もあり、これに政府の無為無策がからみ合って今日の非常事態を招来したものでございます。通産大臣は、石炭危機の打開策を当面の緊急対策と恒久対策に分かってここに明らかにされたいのであります。また、労働大臣は、離職者対策を具体的に御説明願いたいのであります。われわれは、石炭対策は、総合エネルギー対策の見地に立ち、国民経済という視点から真剣にとらえて、政府及び国会が恒久的に検討すべき課題であって私企業のワク内における労使の闘争に放任すべき段階ではないことを痛感するものであります。(拍手)この見地から、われわれは、石炭産業の危機打開と炭鉱労働者の雇用の安定をはかるため、経営者、労働者並びに消費者及び学識経験者を含める三者構成による石炭産業会議の設置を提唱し、これを政府並びに各党、さらには関係団体に申し入れておる次第でございますが、政府はこの提案についていかにお考えになるか。総理、経企長官、通産大臣より所見を述べられたいのであります。
 次に、外交問題に移ります。政府の推進しようとしている安保改定は、自主性を回復し、日本にとって不利な点を是正するなどを表面の理由としておられまするが、すでにほぼ確定した草案によれば、新条約は、軍事基地貸与を本質とする現在の安保条約から、バンデンバーグ決議を軸とする相互防衛条約への重大な質的転換であります。良識ある国民は、日本の外交の基本目標は、東西両陣営の冷戦に介入せず、自主的立場に立って冷戦の緩和に努め、アメリカ並びに中ソとの双方に対して平和友好関係を維持することでなければならないと確信しております。その意味からいって、敗戦、軍事占領の置きみやげであり、朝鮮戦争の副産物であった日米安保条約は解消し、日本はアメリカとの軍事的結びつきを薄め、将来これをなくす方向こそ正しいと考えております。むろんこのことは、日本が中ソの共産圏に加わるとか、その政治的、軍事的な圧力のもとに屈服するとかいう意味ではなく、中ソ友好同盟相互援助条約も解消されるべきであります。また、日米安保条約の解消も、重大な紛争と混乱なしに行なうことが必要であり、即時かつ一方的に破棄すべきでないことは言を待ちません。この意味から、安保条約の解消は、国際情勢、特に極東の安全保障条約体制との見合いにおいて考えらるべきであって、漸進的、段階的に行なうことを頭から否定すべきでないと信じます。いずれにしても、極東における両陣営の軍事的対立の緩和こそが、フルシチョフ訪米以来の米ソの雪解けの基本的方向に沿う正しい日本の外交路線でなければなりません。この見地からすれば、日米安保条約は、これを改定するとすれば、解消という建前と方向においてのみ考えらるべきであって、政府及び与党の大部分が考えておりますような日米相互防衛条約への転換、すなわち日米軍事協力における日本の積極的、能動的な役割の是認と、日米軍の協力の強化と安定の方向に進むことは全く邪道であることは、言を待たないところと信ずるのであります。共産諸国の動向を考え、なかんずく当面最も強硬な中共を隣邦とする日本が、当分の間その安全保障上何らかの方法でアメリカの協力を期待するという国民があるとしても、国民の多数は、この際、自主性の回復を名とする安保条約の改定を急いでやる緊急性を認めておらないし、いわんやこれを相互防衛条約に切りかえることについては、重大な不安を抱いていることは、すでに幾つかの世論調査で明らかな通りでございます。
 そこで総理に質問いたしたいのは、総理はいたずらに行きがかりにとらわれず、この際、安保改定を一たんとりやめとする御意向はないか。もしそうでないとするならば、少なくともその改定の方向を基本的に再検討して、相互防衛条約方式、具体的に申すならば、バンデンバーグ決議に基づく第三条の自助及び相互援助による防衛能力の維持発展の約束、並びに第五条の共通の危険に対処するための行動の宣言、平たく言えば、共同防衛の約束、これをとりやめて、基地貸与協定の性格のものとしての改定に問題を限定される御意向はないか。これは慎重にお考えの上お答えを願いたいのであります。
 あわせて新条約の中で、私をして言わしむるならば、基地貸与協定的な部分の内容について総理並びに外相に御質問申し上げます。
 第四条及び付属交換公文の事前協議につきましては、極東の平和と安全のためと称する米軍の渉外出動は、これを協議事項とせず、日本の同意を得ることを明確にすべきではないか。核兵器持ち込みについては、これまた協議によらず、絶対禁止とする御意向はないか。第六条について、米軍の常時駐留をおやめになる御意向はないか。また、駐留の目的を日本の安全に限り、極東の平和と安全維持云々を削除する御意向はないか。第十条期限については、十年の固定化には世論は反対である。一年の予告をもって改廃の余地を残すべきと思うが、いかなるお考えであるか。
 以上申し上げました通り、政府の安保改定はその基本的性格並びに内容ともに多くの難点と疑問点を持っております。そこでわれわれは、政府がこの際大局的見地から相互防衛条約を意味する安保改定はこれを白紙に還元することを強く要請いたします。(拍手)もし政府がこの態度に出て、安保解消を目途とした改定を考えるという場合においては、その内容について、われわれも責任ある野党の立場からこれを検討し、われわれの見解を明らかにする用意があることをこの際表明しておきます。しかしながら、政府がどうしても行きがかりにとらわれて相互防衛条約に切りかえる、つまり政府案による改定を強行するというのであるならば、われわれはこの改定に対しては断固反対するものであります。少なくとも、かかる日本の外交内政の基本に触れ、憲法に抵触する疑いきわめて濃厚な問題が、昨年の衆議院総選挙の課題でなかったことにかんがみ、この際、日米両国政府間に協定案文が確定し、仮署名した上、直ちに衆議院を解散して民意に問うことを、日本における正しい議会主義のルールを守る意味において強く岸総理に要求いたします。あえて総理の所信の披瀝を求める次第であります。
 最後に、同僚森議員が詳しく触れられましたベトナム賠償関係について簡単に一問だけ質問いたします。ベトナム賠償協定につきましては、政府は当初から、特別円の支払残高の問題との関係において二重払いではないかという疑惑をみずから国民に与えました。従って、われわれ国会としては、国民経済を守り、国民にむだな負担をかけないという見地から、慎重に慎重を重ねて審議しなければならないことは当然でございます。われわれは、北ベトナムに対しては友好的であり、南べトナムに対しては友好的でないというような態度をとるべしとするのではありません、また、統一まで一切の経済協力なり援助なりを、南にせよ、北にせよ、差し控えることを主張するものでもございません。しかし、南ベトナムに対して全ベトナムを代表する政府として賠償を支払うことは、統一の暁において、必ず債務を弁済したものだとはっきり認められ、二重払いの請求を受けるおそれが絶対にないとは断言できないと考えられるのであります。従いまして、ただいまも森議員に対する御答弁がありましたが、この点に関して、この賠償協定には私どもは賛成いたしかねるのでございまするが、総理から、この統一の暁における二重払いにならないという明確なる根拠をお示し願いたいのであります。総理及び外相の答弁を要求いたします。
 これをもちまして私の質問を終わりますが、時間がございましたならば、御答弁のいかんによって再質問をお許し願いたいことを議長にお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 第一の災害対策に関する御質問でございますが、私どもは、今回のこの十五号台風及びその前の台風や豪雨によるところの損害なりこれが対策に必要なる経費をできるだけ具体的に明らかにできるものは明らかにいたしまして、これに対する措置として十分に考慮して今回の補正予算を出しております。しかしながら、なお事情の明確にならない部分もございますので、さらに予備費として八十億を計上して、これらの対策に遺憾なきを期するつもりでございまして、これによって十分に対策としはできる考えで現在はおります。しかしながら、将来さらに事情が判明して、これでは対応することができないということが明確になり、さらにこれを補正する必要が生じますならば、その場合においてさらに考究検討しなければならないと思っておりますが、一応今日においては補正予算並びに予備費でこれに応じ得るという確信でこの案を出しているわけであります。
 また、基本的の対策につきましては、通常国会においてこれを提案いたすということを申し上げたのでありますが、この臨時国会の間にこれを出す考えはないか、あるいはこれについての基本的な構想はどう考えておるかというお尋ねでありますが、従来この治山治水の問題、さらに日本の地理的立場から申しまして海岸の堤防の問題、またいろいろな港湾等におけるところの施設等を見まするというと、ほんとうの各観点からの総合的な対策というものがまだ十分でないと私は思います。さらにこれらの対策を立てる上において、台風の実態やあるいはこれに対する対策としての科学的な施設につきましても十分でない点があると思います。これらの点を十分に検討いたしまして、将来にわたる基本的対策を立てることが必要であって、今具体的にどういうことをどういうふうにするということはまだ申し上げかねる段階でございます。
 第三に、経済問題に関する基本的な考えとして、日本における低所得階層に対してその所得を増大すること、及び完全雇用を目標として考えるべきであるというお考えをお述べになりましたが、私は両方とも全然同感でございます。われわれが国民所得倍増計画というものを一つ立てて参ります上においても、こうした産業別に農林水産業の所得が鉱工業に比して低いとか、あるいは中小企業と大企業との格差が非常に大きいとか、その他国民の間におけるところのいろいろな所得の不均衡をどういう方策で是正し、この倍増計画を実現するかということについては、検討をいたしておるのでございますが、今お話になる二つの考え方は、私どもも十分取り入れなければならない、かように思っております。
 次に、石炭の問題についてのお尋ねでございましたが、詳しいことは通産大臣よりお答えをいたします。経営者、労働者及び学識経験者を加えた三者の審議によって石炭鉱業の将来に関する方策を立てるべきだというお考えにつきましては、私どももその趣旨には異存ないのでありますが、今日あります石炭鉱業合理化臨時措置法による石炭鉱業審議会というものの権限を拡大するとか、機能を拡大し、それにおける構成者につきましてさらに考究検討いたしまして、御趣旨のような方向で考えて参りたい、かように考えております。
 次に、安保条約問題でございますが、これは別にわれわれは行きがかりであるとか立場上どうだということではないのでありまして、すでにしばしば申し上げましたように、この安保体制そのものは、今日の国際情勢における日本の安全と平和を守る上からいって、この体制そのものを今日やめるとかあるいは廃棄するというような時期では毛頭ないと思います。やはりこれは存続しておくことが日本の安全であり、日本の平和を守る上において必要であるという考えに立っております。しこうして、その不合理な点、内容的に申しまして、成立の当時からずいぶん論議されておる不合理な点、日本の自主性を認められない点につきましては、これを回復するように、また現在の事情に合うように改定をするという考えのもとに、すべての交渉をいたしておるのであります。従いまして、今日この条約改定の交渉を取りやめるとかあるいはまたこの安保条約改定を単に基地貸与条約にするというふうに範囲を狭めるというような考えは持っておりません。また適当ではないと思います。さらに内容的な点につきまして、たとえばこの基地の使用やあるいは核兵器の持ち込み等についての事前協議あるいは同意ということを明確にし、あるいは拒否ということを明確にしたらどうだという御意見でございますが、言うまでもなく、国際条約における事前協議ということは、相手方の同意を得ずしてこれを行なうことができないというのは、これは当然でございまして、私は、文章の上における同意ということは書いてございませんけれども、事前協議という趣旨はそういう意味であると思います。なお、核兵器の全面的拒否ということを明確にしろということでございますが、私どもは核兵器のみならず、装備の全般について、今後いろいろ科学兵器も発達していくことでありますから、これらに応ずるために、やはり事前協議、われわれの意思を無視して持ち込むことのできないという条項を明瞭にいたしておくことによって、十分私どもの趣旨は達するものと考えております。
 また常時駐留をやめたらどうだということでございますが、これはいろいろな必要に応じて考えるべきものであって、御承知のように現在の安保条約のもとにおきましても、陸上部隊は大部分、ことに戦闘部隊は全部日本から引き揚げておる実情でございます。しかしながら陸海空のすべてを常駐せしめないということは私は適当でないと思います。また期限の点につきましても御意見がございましたが、これも先ほど森議員に対してお答えした通りに考えております。
 調印後、仮調印した後において解散をして民意に聞けという御議論でございますが、私はその必要は認めておりません。われわれが国民から正当に委託されておる政府として、政府の権限に基いてこれを締結していくことは政府の権限であり、そうしてそれを国会に提案をいたしまして、国会の御論議によりまして批准の御承認を得るならば、それで差しつかえないものだと考えております。
 なおベトナムの問題につきましては、いわゆる二重支払いということが特別円の問題との関係もありますが、これはすでに曾祢議員も御承知のように、特別円の問題は、フランスとの間の債務関係、当時の条約に基づく債務関係の支払いでございます。賠償とは全然関係ない問題でございますから、この関係において二重払いということは考えられません。また一応南ベトナム政府に支払って、さらに将来統一した場合において、統一政府からさらに賠償の要求があったらどうする、二重払いになりはしないかという御質問でありますが、これは曾祢議員も御承知のように、現在のベトナム共和国政府は正統政府としてわれわれはこれを認めており、これは決して日本だけではなくして、国際の通念からいってこれは正しい見方でありまして、それが全ベトナムを代表する正統機関として、これとの間に賠償協定をしたる後におきまして、私どもはその政府がどういうふうに形態が変ってきましょうとも、これを受けつぐということは、それを受けつぐところの正統政府が、そういうふうな国際上正当に結ばれた条約を認めることは、私は当然のことであって、これとの間に二重支払いの問題は生じない、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(佐藤榮作君) 第一点について、災害復旧の補正予算の金額がこれでは不足するのではないかという点につきましては、ただいま総理からお答えをいたしましたから省略さしていただきます。
 第二点といたしまして、今回の自然増収をどういうように見積もったか、また経済の見通し等はどうだというお尋ねでございますが、今回の財源といたしまして四百九十億を計上いたしました。もちろん、最近の経済情勢は、御承知のように、安定から上昇へと引き続いて堅調を続けております。最近の税収の実績等から見ますと、この程度の増収は見込み得る、かように私ども確信をいたしたのであります。ただ、今回四百九十億を計上いたしまするに際しましては、増収分と同時に、災害地が広範であり、しかも激甚でございますので、相当の減収があるものと、かように考えまして、それらの調整をいたしました結果四百九十億を見積もった次第であります。この点は私ども十分確信をもってこの財源の確保ができる、かように思うのでございます。
 次に総理府関係の節約分についてのお尋ねがございました。今回の節約は公共事業費を対象にいたしまして、いわゆる民生安定の費用というような点には触れないという建前で、工事費関係から節約を捻出するという、こういうことを計画いたしたのであります。そこで防衛庁関係におきましても施設費を相当持っておりますから、各省同様にこれを査定いたしまして、この減額を願ったわけでございます。幸いにしてこれも協力を得ておる次第であります。
 次に、災害工事についてこれを継続費にしたらどうか、債務負担行為を計上しておるが、本来この事業そのものから見て次年度にもつながるものであるから、これを継続費にしたらどうか、またそのために所要の法律を整備したらどうか、こういう御意見であったかと思いますが、御承知のように、この災害につきましては、災害復旧を特に重要に取り上げておりまして、一昨日も御説明いたしましたように、農地等につきましては来年の米の作付けにおくれないように処置をいたしたいし、また河川等の災害復旧においては台風襲来前に一応の回復ができるように、かような観点から予算を組んだのでございます。従いまして、かように考えて参りますると、どうしても事業が継続的になって参ると思いますが、これは在来の予算編成、あるいは予算の実施におきましてもそういう点を特に工夫されまして、明許繰り越しの制度ができております。従いまして御指摘のような事業の継続等には、今日の法制のもとにおきましても支障を来たさない実情にございます。従いまして、私どもは別に今日法律を改正する必要はないと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣村上勇君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。
 予備費の点についてでありますが、災害総額につきましては現在調査中のものもありますので、今後多少の所要額について異動があるかとも思います。しかし、もし調査の結果、この予備費になお不足を来たすようなことが明らかになった場合は、あらためてその財政措置を検討いたしまして、災害対策に支障のないようにいたしたいと思っております。
 第二点の治山治水に関する基本対策につきましては、昭和二十八年に設置いたしました治山治水対策協議会で決定いたしました基本計画に基づきまして、その推進をはかっておるのでありますが、これらの事業をさらに強化して、さらにかつ計画的にこれを実施するためには、治山治水五カ年計画を定めまして、その的確な実行を期する。そのためにはなお本年二月、内閣に治山治水閣僚懇談会を設けまして、その財源の裏づけ、また実行方法等について検討いたしておるのでありますが、早急に結論を得まして昭和三十五年度には何とかこれによって実施いたしたいと思っておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣菅野和太郎君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(菅野和太郎君) 国民所得倍増についての御質問があったと思うのでございますが、国民所得の基本構想をやめたというようなお話がありましたが、これは何かのお間違いではないかと思うのであります。つきましては、今日までの作業の経過を御報告申し上げて御了解を得たいと思うのであります。
 先般の内閣改造で岸総理が国民所得倍増長期経済計画という所信を発表されて、その後、経済企画庁におきまして、まず基本構想を策定しなければならぬということで、さっそく策定に取りかかりたのであります。同時に自由民主党におきましても個々の基本構想の策定にかかりまして、自由民主党と経済企画庁とが協力して、大体基本構想が最近でき上ったのであります。その基本構想に基づきまして、その趣旨を尊重いたしまして、経済審議会に諮問いたしまして、これから具体的の策定に取りかかるという段取りになっておるのでありますからして、さよう御承知を願いたいと思うのであります。
 それから石炭産業についてのお尋ねがありましたが、お話の通り石炭産業につきましては、やはり根本はエネルギー問題を解決しなければなりませんので、経済企画庁にあります経済審議会にはエネルギー部会というものを設けまして数回にわたってこの問題を今審議いたしております。このエネルギー問題の審議を終わりますと、これを石炭産業の根本対策に資したい、こう考えておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(池田勇人君) 石炭鉱業に対しまする対策でございまするが、従来は生産の制限あるいは金融の措置、あるいはまた新昭和石炭会社を作りまして一部石炭の買い上げ等いたしておりまするが、何分にも競合の重油関係その他いろんな点が錯綜して参っておりますので、私はこの際、根本的な石炭対策、今お話のエネルギー対策のうち特に石炭対策につきまして根本的な措置をいたしたいと、ただいま研究いたしておるのであります。方向といたしましては、生産、販売、各方面におきまして徹底的合理化をはかりたい。すなわち、炭価の引き下げ、需要の確保、これが根本でございます。私はそういう意味におきまして、今お話の石炭鉱業に対しましての各方面の方々の合議機関、研究機関を設けたらいいじゃないか、こういうお話、しごく賛成でございます。今ございます石炭鉱業審議会の機構を拡大いたしまして、生産者あるいは労働者あるいは使用者あるいは学識経験者等の方々のお集まりをいただきまして、われわれの考え、そうして皆様方の考えを検討いたしまして、早急に根本的対策を樹立いたしたいと考えておる次第であります。(拍手)
   〔国務大臣松野頼三君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(松野頼三君) 炭鉱離職者の非常な激増に伴いまして、政府といたしましては、九月に予備費で一億三千万、今回の予算といたしまして、一般会計で七億二千三百万、そのほかに石炭鉱業の整備事業団から三億、また失業保険の特別会計から訓練所に二億、以上を計上する予定にしております。これによりまして大体二万人の要対策者に対する対策を立てまして、広域職業紹介で約三千八百、今回新たに提案いたします炭鉱離職者臨時措置法による緊急就労に、あるいは一般の公共事業に、あるいは失業対策あるいは鉱害復旧、合わせまして約一万三千、このほか、今回援護会という措置をとりますので、この移動援助として約四千人、職業訓練として一千人、約二万人以上の対策を立てて万全を期する所存でございます。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#17
○国務大臣(藤山愛一郎君) 曾祢議員の質問につきましては、総理がすでにお答えになりましたし、かつまた特に名前をさされまして、基地貸与協定、事前協議、米軍の常時駐留、期限十年というような点についての御質問が私にございましたが、総理がすでに明快に御答弁申し上げておりますので、全く同じ考えでございますので、さよう御了承願います。(拍手)
#18
○議長(松野鶴平君) 曾祢益君。
   〔曾祢益君登壇、拍手〕
#19
○曾祢益君 いろいろまだ疑問だらけでございますが、ただ一点だけ総理にもう一ぺん、重要な問題ですから御質問申し上げたい。
 それは、総理は今の私に対する御答弁の中でも、安保体制はこれを維持していきたい。これは体制という言葉はいろいろあれがあると思いまするが、アメリカによる防衛協力といいますか、これは変えない。しかし問題は、今アメリカとの防衛協力といいまするか、今の安保体制といいまするか、それをまあまあ続けていくということと、今政府がやられているような相互防衛条約にこれを切りかえるということには、これは非常な大きな問題の相違がある。この問題が起こってから政府の態度もしょっちゅうよろめいている。初めの段階では、まあ相互防衛条約方式だというようなことを、参議院の私の質問に対して総理はお答えになった、その後、警職法問題でいろいろつまずきがありまして、そのころには藤山さんは、こういうことはもうやめだ、基地貸与協定でいく、こういうことになった。その後政府は、また自民党の中の強い意見といいますか、国民に対する一つのうたい文句というようなことで、アメリカ軍を置いておく以上、これは守らせ、守る義務をはっきり書くのだ、これに重点を置いた結果が、何のことはない、バンデンバーグ決議を認めた。日本も限定された範囲であるけれども、確かに日本国内におけるアメリカ軍に対してははっきり共同防衛を認める、こういうことになっている。しょっちゅう政府の方針というものは全くぐらついておった。ですから、安保条約は、われわれから見ればない方がいい、これは逐次解消していくべきだ。かりにその立場はとらないにしても、一体常時駐留の問題をどうするか、あるいは駐留の目的が日本防衛にあるのか、それとも、極東の平和と安全を守るために、いわゆる日本を基地として使って海外出動をする……。
#20
○議長(松野鶴平君) 曾祢君、時間です。
#21
○曾祢益君 こういったことになっている。だから、保守党の立場に立っても非常に検討すべき問題がある。それを漫然として、しかも相互防衛方式でいくというところに、国民が納得せざる大きな点があろうと思います。従って私は、行きがかりにとらわれずと言ったが、これは決して抽象的な言い方でなく、現実には、あなた方の交渉、あなた方の対外、対内、対党内の折衝等から、しょっちゅう行きがかりにとらわれて、あっちこっちしている現状からいって、そういうことはやめにして、もし安保条約は一応残しておくというならそれも一つ。改定するというなら、今一言ったように相互防衛条約の方式にしないでこれを改定するということを真剣にお考えになることが、少なくとも保守党の立場から見て適当なやり方ではないか。この点についてはもっと真剣に率直に、非常に重要な段階ですから、お答え願いたい。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(岸信介君) 私どもは今度の安保条約改定によって実質的に日本の義務がふえるものとは考えておりません。これは各条にわたって御検討願うことになると思いますが、いわゆる相互防衛条約というものは、あるいは北太平洋における地域のNATOの相互防衛条約、その他のいろいろな条約がございますが、これらのような意味における相互防衛条約では私どもはないと、こう考えております。従って今お話のような点におきまして、日本の義務について実質的に非常な変更がある、こういうふうにお考えになることは、私どもの改定の内容と違っているということを申し上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#23
○議長(松野鶴平君) 森八三一君。
   〔森八三一君登壇、拍手〕
#24
○森八三一君 私は緑風会を代表いたしまして、災害対策につきまして若干のお尋ねをしたいと存じます。
 一瞬にして数千の非常に尊い生命と巨億の富を奪い去りました伊勢湾台風の被害は、文字通り空前のものでありました。すでに災害が発生いたしましてから一カ月余を経過いたしておりまする今日、なお水没をいたしておりまする相当広範な地域を存しているのであります。その惨害は言語に絶するものがあります。被災者の窮状は何と申し上げていいか、凄惨と申しましょうか、むざんと申しましょうか、全く表現する言葉がございません。私はここに心から被災者の皆さまに対しまして御同情とお見舞いを申し上げるものであります。この間、現地の府県や市町村当局を初めといたしまして、各種団体の諸君が、不眠不休、救援に、復旧に、懸命の努力を払っておられますることに対しまして、衷心感謝を申し上げるものであります。特に学生諸君や、自衛隊や、警察官の各位が、寝食を忘れて、救援に、水防に、あるいは治安に活躍せられておりますことについても、深く感謝を申し上げるものであります。
 政府におきましても、去月三十日、愛知県庁内に中部日本災害対策本部を設置して事態に対処せられますとともに、総理を初めとして関係各大臣が現地を視察調査せられまして、臨機の処置を講ぜられておりますのと、被災者に対して同情と激励の言葉を送って参られましたことは、私の多とするところであります。しかしながら問題は、現地における同情の言葉や激励の言葉、特に総理が、「伊勢湾台風は実に未曾有の大災害である、政府はこれが救援復旧に対して過去の例にこだわるようなことなく最大の施策を行なってその万全を期する所存である」という、そのお言葉だけでは問題は解決されません。その言葉の精神が具体的な法律となり、予算の上に具現されなければならぬことは申すまでもないと思います。財政上の関係や、事務能力や、先例などに籍口してお茶をにごすようなことは断じて許されません。のみならず寸刻の遷延もあってはならぬと思うのであります。すでに同僚の皆さまから私がお尋ねいたしたいと考えておりまする問題について相当の質疑が行なわれておりますので、あるいは重複するような場合もあろうとは存じまするが、以下数点に対しまして総理並びに関係大臣の率直な答弁を求めたいと存じます。
 今回の災害は予期せざるものであって、何ともいたし方がない、防止しようがない、全くの天災だなんという言葉をよく承るのでありまするが、その言葉は反面何らの反省がないということにもなるのであります。総理は、全く避けることのできない不可避的なものであって、そこに何らの手落ちはなかったとお考えでございましょうか。それとも結果論ではありますが、かくかくの点に遺憾の点があったとお考えでございましょうか。私どもはまことに残念なことではありますが、年々歳々大なり小なり台風や豪雨、冷害などの災害に侵されております。それらの経験にかんがみまして、いろいろなケースに即応する対策が常に立てられておらなければならぬはずであります。また、復旧の問題にいたしましても、再び災害を繰り返さぬように工事が完全に実施されておらなければならぬはずであります。もし幸いに対策が具体的に立てられており、復旧が完全であったといたしますれば、今般の災害も相当に軽減し得たものと私は確信をいたします。ここに人災と言われるゆえんが存するのだと思うのであります。そこで、すんだことをとやかく申し上げましても、死んだ子供の年を数えることになりますので、もうこれ以上申し上げませんが、将来の心がまえについて確固たる所信をお伺いいたしたい。
 その第一は、災害対策についての具体的な事前の計画を樹立する必要があるという問題であります。たとえば、自衛隊の出動、避難計画、応急資材の備蓄等々のことであります。昨日も質問に答えられまして、自衛隊の出動計画は十分立っているとおっしゃいますが、それは発生した災害に対して立てられているのでありまして、どの地点にどういうような災害が起きたときには、どこの自衛隊をどういうように出動せしめるかというような、事前の計画が十分に立てられておらんのではないかと思うのであります。避難計画にいたしましても、災害が発生いたしましてから、さてその地方の住民の諸君をどこへ避難せしめるかということで、受け入れ側との折衝をして、初めて避難の実が進められていくというような、後手々々に回っているというような状況ではなかろうかと思うのであります。どの地点にどういう災害が起きた場合には、どの地点に、どこの場所に避難せしめる、もしその予定地が災害に侵されているというような場合には、第二の避難場所はどこであるというようなことを、具体的に事前に樹立されておりますなれば、災害に際して尊き人命を失うようなことは相当に私は減じ得たと思うのでありまするし、今回の伊勢湾台風の実例に徴しましても、そういうことは明確に申されるかと思うのであります。
 さらに、特にこの際強調いたしたいことは、気象観測の充実とその観測の結果に基づく科学的な台風対策であります。すなわち、台風それ自体を解消する、あるいはその力を小さくする、あるいはその方向を変えさせるというような雄大な対策を持つべきではなかろうかと思うのであります。私の承っているところによりますれば、すでに科学者や気象学者等の間におきましては、ドライアイスとか、油、原子力などの利用あるいは応用によりまして、台風の方向を変更せしめたり分散せしめたりいたしますことが必ずしも不可能ではないとされているということであります。もちろん、いまだ学説的なものであるかとも存じますが、実用の域に達せしめるような研究がなされ、実験が持たれなければならぬと存ずるのであります。これがためには、もちろんわが国の国力だけや国内だけの地域的なことでは解決はむずかしいと思います。そこで、フィリピンその他南洋諸国や米国等との協調のもとに国際的な機構を持つべきであると存じますが、御意見はいかがでございましょうか。これこそがほんとうに平和を希求する近代国家のなさなければならぬことでもございますし、原子力を平和的に利用するというその最も最たるものと申し上げてもよろしいかと思うのであります。この際、年々歳々台風の洗礼に見舞われておりますわが国といたしましては、そういうような国際的な対策機構確立を提唱し、その実行を迫るべきであると思いまするが、御意見はいかがでございましょうか。
 なお、これと並行いたしまして、国内的にも、気象観測のための船舶、航空機の整備や、今回の災害にも相当に活躍をし、その成果を上げておりますヘリコプターにいたしましても、母船がないというような問題のために、国内のヘリコプターだけではうまく参りません。米国の援助を求めたような事態も現実に存在をいたしているのでございますから、そういうような事実にかんがみますれば、当然ヘリコプター母船や、あるいはその基地の設置など、きわめて重要な問題が提起をされていると思うのであります。基本的には、科学や技術の活用をはからなければならんと思うのであります。
 さらに、これらと、前にも申し述べました自衛隊の出動計画や退避計画、資材対策等々を総合的に立案、企画、実施する責任機構としての対策本部とか、対策庁とかというような種類の常設的機関を整備すべきであると存じまするが、あわせてお伺いをいたします。要するに、国際的な台風に対処するための機構、国内的な総合的な機構、この二つの問題に関する御所見をお伺いをいたします。
 その第二は、事後の措置であります。発生した災害の規模や、激甚性にかんがみ、そのつど立法措置や予算措置をいたして参ったのが、今日までの実情であります。もちろん、予備費や行政措置によって、ある程度の応急対策は講ぜられてはおりまするが、きわめて不十分であります。そのために、本格的な救援復旧対策が確立せられ、実施の段階に入りまするまでには、相当の日時を要しておりまするために、せっかく復旧に立ち上がった被災者や市町村当局その他の関係団体の失望を買ったり、その意欲を喪失せしめている場合がないとは申されません。のみならず、各省庁間の有機的な連絡を欠き、ばらばらで救援や復旧を混乱せしめている場合もないとは申されません。昨日、同僚議員の質問に対しまして、そういうような事態になりませんように、十分有機的な連絡がつくようにという御答弁でございましたが、そういうような御答弁は今までも再三再四繰り返されております。有機的に連絡をするということは、言葉の上ではきわめてきれいでありまするが、実際問題としてはなかなかその実が上がっておりません。そこで、私は災害対策の基本法とも申すべきものを制定して、迅速果敢に統一性のある措置を実施し得るようにいたすべきであると思いまするが、そういうような問題についての御構想なり御所見はいかがでございましょうか。
 特にこの際、確かめておきたいことは、すでに災害発生以来三旬を経過いたしました今日、今なお相当の広範な地域が水の中に浸っております。そこに住居をいたしておりまする被災者はきわめて気の毒な状態に置かれております。厳寒を控えまして生命の危険にもさらされているのでありまして、早く水魔から解放しなければなりません。そこで、昨日の質問に建設大臣お答えになりましたが、最後の締め切りが十一月末に予定されているということでありまするが、私はあらゆる知能と技術と財貸を総合的に投入いたしまするなれば、なおその期間は相当に短縮し得るのではないか、あるいは予算に縛られたり、その他の関係で、十一月末という一応の想定であろうとは思いまするが、被災者の悲惨な状況を考えますれば、この際一切の財政的問題を離れまして、全力をここに集中すべきであり、その期間を相当に短縮するの情熱を傾けなければならぬと思いまするが、いかがでございましょうか、その点をお伺いいたします。
 その三は、災害復旧については、従来いわゆる原形復旧ということで処理されて参りましたが、国会の強い要請もございまして、近時改良復旧を認めるということになりました。今回の災害処理に対しましても、昨日改良復旧を実施するという御方針を明確にお答えに相なっております。ところが、実際には財政上の関係からでありましょうが、なかなか実行が伴っておらぬというのが実情であろうと思うのであります。私はすでに昭和二十八年、十二号台風の復旧について具体的な事実を持っております。さような結果は、貴重な国費を乱費するというばかりではございません。災害を繰り返しているのであります。残念この上もないことでございます。私はそこで明確にしておきたい。今回の災害復旧にあたって、改良復旧をやるという方針だけはお示しになりましたが、その改良復旧の改良部分についても、復旧と同様の助成措置あるいは起債措置等を認めてやりませんというと、ただ口先だけで改良復旧を認めると申しておりましても、その実が上がらぬということになると思うのであります。そこで、改良部分についても復旧と同様の措置をするということにいたさなければならぬと存じますが、いかがでございましょうか。
 さらに、従来の慣行である三・五・二の年次別割り振りにこだわることなく、この際はできるだけの進捗を講ずべきであろうと思いまするが、予算の面で離日もお答えがございますしたように、二八%五ということが企画されている。そこで同僚の質問に対して、そういう二八%五という比率にこだわることなく、進むものであればどんどん進めていく。そうして予算が足りなければ追加をするかというようなお尋ねに対して、大蔵大臣はさような措置を講じないというような趣旨のお答えであり、本日曾祢議員の質問に対し、総理はそういうような場合には、第二次補正を考慮するというお答えがあり、大蔵大臣は本日の御答弁で、総理の答えに同調をせられましたので、そのことは一応解消をみたのではございまするが、私は来年の台風期までに何といたしましても現地が安心していけるような措置は講じなければならぬと存じます。そこで三・五・二の比率ということは一切この際は解消をし、やれるだけのことはやる。足りない予算は第二次補正を出すという決意をすべきであり、その実践をしなければならぬと存じまするので、重ねてこの点に対する確固たる所信をお伺いをいたします。
 第四は、農林漁業者等のごとき零細企業に対する復旧復興資金の問題であります。法律によりますると、自作農資金だとか、天災資金だとか、あるいは住宅資金だとか、いろいろの種類の資金がその用途に従って貸し出しをされるという仕組みになっております。そのことは必ずしもわからぬわけではありませんが、借り受ける農民から見ますれば、その農民の経済は一本であります。そこで、あちらからもこちらからもという、たくさんのルートがございますると、一つの経済でありまする農民の立場から、その手続がきわめて煩瑣になり、あるいは要求される書類を出すそういう手続のために、混迷これ疲れてしまっているというのが、私は現況であろうと思うのであります。のみならず、その貸付をいたしました資金の効率についても、あまり多くの場所から貸し付けるということによって、必ずしも効率を発揮しているというようにも言えない面があろうかと思うのであります。そこで借り入れ手続を簡素化する、あるいは償還についても十分な保証を考える、各方面から考察をいたしまして、この際、災害資金融通法というようなものを作り、一本の手続で始末がつくようなことを考えてやるべきであろうと思うのであります。もちろんその内容には、長期資金もありましょうし、短期資金もありましょうから、一農家に対して五十万ならば五十万という貸付資金の中で、三十万は年賦の長期資金、二十万は短期の資金というように、あるいは金利もその内容で区別をすればよろしいので、手続としては一本にまとめて簡素化をしてやるということが、被災者に対するあたたかい思いやりのある措置であろうと思うのであります。そういうような災害資金融通法というようなことに対しまする大蔵、農林両大臣の御所見はいかがでございましょうか。このことは、もちろん中小企業の場合にも当てはまることであろうとも存じます。
 次に、農林漁業のようなきわめて零細規模の経営を近代化、合理化せしめて参りますることは、日本農政の持つきわめて重要な当面の課題であります。私は、今回のこの災害を契機といたしまして、いわゆる禍を転じて福となすというような意味合いからも、災害の復旧に際しましてこの基本的な農業経営の改善を推進いたしまするために、住宅、畜舎あるいは農機具、運搬具等の施設の共同化を講ずべきであろうと存じます。そこには非常に資金効率を上げていくということも考えられまするし、あるいは生産の向上を期するというきわめて裨益する面も考えられまするので、どこまでも新しい日本農業の経営形態として共同化を推進するためにこの機会をとらえるべきであろうと思う。そのためには、そういうふうなことに積極的な推進の方向を向けるべきであり、それに順応いたしまする農民に対しましては、あるいはその組織に対しましては積極的な高率補助の助成対策を講ずべきであると思いまするが、いかがでございましょうか。農林大臣の御所見を伺います。
 最後に、今般の災害処理にあたって各種の特別立法が行なわれますることは当然であり、すでに政府におきましても二十数件の法律案を準備されていると伺うのであります。それらの法律の実施に際しましては、多くの場合に政令にその具体的な措置をゆだねるというようなことになろうと思うのであります。そこで私お伺いをいたしたいのは、私どもが提案されました法律案というものを十分審査いたしまして被災者に相対するとともに、復旧の万全を期しまするためには、その具体的な政令の内容というものを十分承知いたしませんというと、仏作って魂を入れぬというような残念な結果に陥る危険がないとは申されません。そこで、今般の法律案なり予算案と並行して政令案をも審議すべきであろうと思います。そのためには何といたしましても政令案を示されなければならぬのであります。政府は、政令は政府にまかされていることだからというような形式論でその提示を拒まれるようなことになっては大へんであります。審議に重大な関係をいたしまするので、関連する政令案は必ず委員会に提案をされたい、内示をされたいということを要求するものでありまするが、そういう措置をおとりになる御意思がございますかどうかお伺いいたします。
 以上をもちまして私の質問を終ります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(岸信介君) 今回の台風の惨害はまことに従来に例を見ないような――特に今日なお水没地があるというようなことから考えましても、政府はこれに対してあらゆる面から十分に検討をいたしまして、将来こういうことを繰り返すことのないように十分に対策を考えていかなければならぬと思います。
 今、森議員の御指摘のありましたような事前の対策、また事後の対策、双方とも大いに考えなければならぬと思います。特に今回の惨害におきまして尊い人命を多数に失ったということにつきましては、十分これは将来に対する対策の上におきましても中心問題として考えておかなければならぬ問題じゃないか、こういうふうに私どもも反省をいたしているのであります。特に水没地域におきましても、ある地域においては非常に事前の措置がよかったために、農地と家屋等は全部水没したけれども人命は少しも失われなかったというようなところもございますし、また非常に多くの人命を失ったというような場所におきまして、御指摘がありましたように、あらかじめ避難する場合における避難の方法や避難の場所等につきましても考慮しなければならぬ点が少なくないように思うのであります。いずれにいたしましても、この対策については十二分に実情の調査並びに今回の経験というものを生かして将来の対策を総合的にかつ科学的に立てていきたいと考えるのであります。
 御指摘になりました気象観測やあるいは台風対策の問題として国際的な協力をし、できれば国際的な機構等を考えたらどうかという御意見でありました。すでに私の聞いておるところによりましても、アメリカにおいてハリケーンの対策としてのいろいろな科学的な研究も行なわれておると聞いております。ただ何分にもこの問題はまだ十分手のつけられておる問題でもございませんし、きわめて困難な問題であることも御理解いただけると思います。ただ私の方といたしましては、今回の経験にかんがみまして、科学技術庁に臨時台風対策委員会というものを置き、科学者を動員していろいろ科学的な検討を加えております。従って、将来において国際的な協力やあるいはこれに対する科学的な対策というものはよほど重要なものとして考えていくべきであると、かように思っております。
 また、この台風対策について特別の機構を設ける、災害対策の実施やあるいは他の措置について特殊の機構を考える必要はないかという御意見でございますが、この点に関しましても、あるいは従来あるところのいろいろな各省間の連絡が十分でない。あるいはただ口先だけで有機的な連絡をとるといってもなかなかできない。従って何かこの対策を強力に実施するためには統一的な機構を考える必要があるのじゃないかというふうな御議論も私ども承っております。十分に検討をいたしていくべきものでありまして、今日のところにおいて直ちに現在ある機構をいろいろ機構いじりをするということはむしろ緊急な対策上は非能率的であると思います。しかし将来の問題につきましては十分に検討をいたして参りたい、かように思っております。
 その他の点につきましては関係大臣よりお答えを申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手]
#26
○国務大臣(中曽根康弘君) 台風の国際協力につきましてはただいま総理が申し上げた通りでございますが、科学技術庁といたしまして目下慎重に考慮し、その可能性を検討している最中であります。台風のような暴風の世界の被害国は、台風といたしましては日本、フィリピン、中国、韓国等であります。また、今、総理のお話のように、アメリカはハリケーンに毎年悩まされておりますし、インド、豪州は、同じくサイクロンという暴風に悩まされておるのであります。北大西洋におきましては、氷山と船との衝突を防止するために、例のタイタニック号の悲劇がありまして以来条約を結びまして、関係各国が気象及び氷山の監視をやっておるのであります。台風につきましても同じような被害が国際的にあるわけでありますから、そういうような国際協力ができることは私たちも望ましいと思っておりまして、特に検討しているわけであります。特に台風につきましては、アメリカにおきましてはナショナル・ハリケーン・プロジェクトというのがありまして、特に議会が毎年二百万ドルばかりこのためにのみ金を支出いたしまして、膨大な研究をやっております。今お話がありましたように、ドライ・アイスをまいて台風の進路を変えるという実験もやっております。それから豪州はサイクロンに悩まされておりますので、特に人工降雨の研究をやっておりまして、ドライアイスあるいは沃化銀をまいて、事前に雨を降らせるという研究がかなり進んでおるのであります。そこで日本も、米国や豪州の研究成果を受け入れまして、日本独自の研究を進めるべきであるとわれわれは考えます。そういう意味におきまして、米国や豪州あるいはその他可能なる諸国と研究協力関係を設定することが望ましいと思いますので、御趣旨の線に沿いまして私たちは検討を進めて参りたいと思います。しかし、そのためには、日本におきまする台風研究というものは、かなりまだ進んでおりません。そこで、気象庁に、気象研究所の中に台風研究部を設けまして、もう少し陣容を強化いたしまして日本も外国と密接に協力できるような態勢を進めて参りたいと思います。何とぞ御鞭撻をお願いいたします。(拍手)
   〔国務大臣村上勇君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。
 災害対策基本法につきましては目下検討いたしておりますので、大体通常国会ごろまでにはその成案を得るだろうと思っております。
 それから、浸水地域を一刻も早く解消するようにということにつきましては、私も全く森議員と同感でありまして、私どもは、あの災害直後から対策本部を設けまして地方の当局とも緊密な連絡をとりつつ、鋭意この浸水地域の解消のために努力いたして参っておるのでありますが、昨日もお答え申し上げましたように、どうしても、一番最悪な地帯が十一月の末日までかかるだろうということは遺憾でありますけれども、これは、御承知のように、自衛隊なり、あるいはたくさん人を入れればできるというものではないのでありまして、ただいま破堤個所は非常に深く掘れております。それに対して日本の国内であらゆる方法をいたしまして、サンド・ポンプ等を集結せしめて、これの埋め立てをやっておりますが、なかなか物理的にこれ以上のことはできないというほどの力を注がしておる次第であります。なお、御承知のように、資材の運搬につきましても、あの個所に四百隻という舟艇が集まって、全くいくさのようなことが日夜続いておるのであります。御承知の破堤個所が延べ十九キロというような、いまだかつてない広範囲にわたる破堤個所でありまして、これらが着々と今その締め切りを完了し、もうわずか残っておるのでありますが、そのわずかな個所がどうしても十一月末日になるだろう、しかしながら、一日でも一刻でも早くということを私ども念願して、被害者の気持になって努力いたしておる次第でございます。
 なお第三点の、原形復旧ではいけないということは、しばしば私どもがお答え申し上げておりますように、これはどうしても改良復旧にしなければならないという、そのように、予算措置におきましても、改良復旧として十分やり得るように予算措置をいたしておりますので、特に海岸堤防につきましては、十分に、われわれ将来かかることのないように、抜本的な復旧をいたしたいと思っておりますので、御了承願います。(拍手)
   〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。
 早く復旧工事をいたせということにつきましては、ただいま建設大臣からお話があった通りでございます。私ども農林省所管といたしましては、来年の農作業に間に合うようにということを根本方針といたしまして、万事準備を進めておる次第でございます。そのための予算措置も講じてある次第でございます。
 第二は、災害融資に関する手続を簡素化すべきではないかということでございまするが、御説まことにごもっともでございまして、災害に関しましては、農林融資といたしまして天災融通法によりまして、経営資金の貸付をいたしております。また農林漁業金融公庫から復旧資金を、また自作農資金をも貸し出しをいたしておるのでございます。お話のように、こういう三つの筋がありますので、受け入れをいたす農家の方でも不便ではあるまいかということも考えまして、その窓口といたしましては、これは農業協同組合でやるというふうに一本化をいたしてその簡素化をいたしておる次第でございます。農家が特に歓迎をいたしておりまするのは自作農創設資金でございますが、この手続がその性質上非常に厄介なのです。私も就任以来これを簡素化したいということを考えて参ったのでございますが、ちょうど今回の天災にも間に合いまして、非常に簡素に貸し出しをいたしておる次第でございます。
 なお、できる限りあたたかい気持を持てというお話でございますが、これは、承るまでもなく、さようなつもりでやっております。すなわち、災害の実情に応じましてワクを拡大いたしますとか、あるいは一戸当りの融資額の引き上げをいたしますとか、利下げをいたしますとか、あるいは償還期限の延長をいたしますとか、あらゆる努力をいたしておる次第でございます。災害資金融資法という制度を創設して一木化すべきだというような御意見につきましては、ただいま現行の制度で大体運用上いいのではないかという考えを持っておりますが、なお将来も問題といたしまして検討いたします。
 この機会に、経営の近代化、合理化を行なうべきではあるまいかという御説は、まことにごもっともな御意見と存じます。私どももさような考えをもちまして、この災害の復旧にあたりましては、共同作業施設でありますとか、あるいは農機具を購入いたしますとか、あるいは畜産共同飼育所等につきましてこれは、共同で行なうという際におきましては政府では補助をするという建前をもちまして、共同化の推進をいたしております。また今回は、二十八年度と違いまして、小型漁船につきましてその復旧を助成するということにいたしたのでございますが、これも、共同で復旧をいたすという場合に限り補助をするというような建前をとりまして、その共同化の助成をいたしていくつもりでございます。
 なお、政令をこの際法律と同時に審議の対象とすべしというお話でございますが、政令の要綱につきましては委員会におきましてごらん願いまして、御審議を得たいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(佐藤榮作君) 総理初め各大臣からお答えをいたしましたので、だいぶ尽きておるかと思いまするが、問題の災害復旧に関する工事あるいは三・五・二の基準、これらにつきまして財政的な裏づけは十分かという点でございまするが、御承知のように、関連事業としての改良工事、これを取り入れることにいたして今日の法律ができております。従いまして、いわゆる原状回復ということにのみとらわれる考え方ではございません。また三・五・二、この基準にいたしましても、これのみに強く縛っていくという考え方ではございませんが、御承知のように、災害復旧事業は、予測しがたい災害の復旧工事でありますし、できるだけ早くこれを完成すること、そうして民生の安定をもたらすということ、これが最も大事な要点でございます。しかして災害自身は、予測しないような大災害を招来いたしますが、これをまかないます財政力、これにはおのずから限度があるのであります。そこで、この改良工事や関連工事を取り扱うにいたしましても、何はさておき、原状といいますか、災害のもとを直すことに力が入って参るのであります。改良工事等は相当所要額も膨大でございます。従いまして、今日のこの災害復旧に対する予算措置といたしましての原状回復を促進するという意味においての超過累進率ですか、この超過累進率をそのまま改良工事に適用するということは、まことに困難な状況にあるということを御了承おき願いたいのであります。今回の災害復旧につきましては、今までたびたび御説明いたしておりますように、海岸堤防等について特に改良復旧工事を認めたり、あるいはまた、木曾川等直轄河川につきましては、三・五・二の基準にとらわれないで、さらに竣工率を高める等の処置をとっておりますが、基本的な考え方で全部を同率にしろ、いわゆる改良部分も原状回復の分も同一の率にしろと、こういうことにつきましては、私どもさらに検討を要する点がある、その意味におきまして、財政力に限りのあるということを一つ念頭に置いていただきたい、かようにお願いをいたします。また、その他政令、あるいはこの機会に共同化をはかれ等の諸点につきましては、先ほど農林大臣がお答えいたした通りでございますので、省略させていただきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○議長(松野鶴平君) 大矢正君。
   〔大矢正君登壇、拍手〕
#31
○大矢正君 私は日本社会党を代表して総理が行なわれた施政方針演説中、特に危機的状態を伝える石炭鉱業の問題、さらにその離職者対策を中心とし、あわせて先国会来、政府との間に議論を進めて参りましたILO条約の批准について、ただいまより総理を初め関係閣僚に質問をなさんとするものであります。
 一昨日、総理は同じこの演壇から、石炭鉱業の問題に触れ、石炭鉱業が深刻な不況に悩み、著しい経営不振から多数の離職者が発生していることは憂慮にたえないところであり、政府は石炭鉱業の根本的体質改善について積極的な施政を推進し、その離職者対策に万全を期す所存であると述べられております。そこで、私は総理の表明された所信が、事実予算上の裏づけを持ち、言われるごとく万全を期すことが可能であるかいなかを検討いたしましたが、遺憾ながら、その対策と計画については、国民世論の高まりや、同情と愛情、さらには、政治に対する憤りから生まれた黒い羽の共同募金等に対する言いわけ的施策の域を脱し切れないものであると結論づけざるを得ないのであります。(拍手)特にこのことは、離職者救済のための補正予算が難航に難航を重ね、臨時国会の召集日に至るもなお最終的な決定を見ることができず、しかも要求額に対し半分にも満たない予算措置しか講じ得なかった事実は、この点を明瞭に物語っていると思うのであります。最近、新聞で「灰色の谷」と呼ばれる離職者の集中した地域は、それが停滞的であることも原因となり、そこに住む人々の生活のみじめさは筆舌に尽くしがたいものがあります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 そこで、私はまず総理にお伺いをいたします。第一に、雇用の問題であります。最近、政府は三十四年度の経済成長率を一一%と結論づけ、この比較的高水準の成長率を背景とする限り、数量景気は持続し、国民所得と雇用の増大は可能であるとの楽観的見解を表明されているようであります。確かに労働省から発行されている雇用及び失業の状況を示す統計は、製造業、建設業等わずかではありますが、指数の上昇を示しております。もちろん、このことは政府の統計が百パーセント信頼に値するという前提が必要であります。しかし、この統計ですら、反面、鉱業部門における雇用指数は月々低下していることもまた示しておるのであります。さらに、雇用の裏面である失業状況では、完全失業者数が、最も近い本年六月の対比を見ても、それぞれ五十九万人と、謳歌する数量景気はいささかも反映されておりません。おそらく、政府統計に現われた雇用増は、暑気好転に際してのみ現われる臨時の雇用、言いかえれば、不完全就業者の増加にほかならないと思うのであります。また、わが国の特色といわれる六百万から七百万、あるいは一千万人をこえるのではないかとも推定される潜在失業者は、新たに発生した離職者の再就職をはばむ大きな要因ともなっており、景気の上昇に伴い、多少の数的変化はあっても、その質と量において著しい好転のきざしは、遺憾ながら見受けることができません。そこで、総理はわが国の雇用量の増加について、またその質的向上についていかなる方針と見通しを持っておられるのか、その所信を明らかにしていただきたいのであります。
 次に、総理の見解を承りたいことは、一昨日の、いたずらに対立意識にかられることなく、円満に事態の収拾炉はかれることを念願してやまないの所信表明についてであります。御存じのように、現在石炭関係の労使は、人員整理案をめぐって鋭く対立しております。もし、かりに人員整理が労使の話し合いによって行なわれたとした場合、整理された離職者は一体どうなるのか。失業保険の受給、日雇、そして生活保護法の適用というコースは、すでに既存の離職者があますところなくこれを指し示しているではありませんか。しかも、その数が七万人をこえるとあっては、いかに争議を好まない労働者といえども抵抗せずにはいられないでありましょう。また、運よく整理されずに残った人々といえども、政府の石炭施策のよろしきを得ぬ限り、絶えず、賃金はもとより、諸条件の切り下げと労働強化に脅かされる結果となります。石炭産業の実態を理解しない人々は、よく日本の炭鉱は外国に比べ生産性が低いと言われる。確かに能率だけを見るとそのような結果が出るかもしれません。しかし、トン当りの労務費において日本が外国に比し一〇%以上も低いという事実は、生産能率以上に賃金が低いことを物語るものであります。総理は、対立を避け、円満に解決されることを望んでおられるようであります。もちろん私もその点は賛成であります。しかし総理の円満解決は、あくまでも大幅な人員整理が前提であり、すでに通産省が大量の整理を前提とした立ち直り策を検討している事実を見ても、このことは明白であります。憂慮にたえないとか、期待するというような抽象的な立場の表明や他人ごとのような態度では、とうてい今日の危機を救うことはできません。また、政治の力なくして石炭鉱業と離職者を守ることは困難であります。総理は、現在以上に離職者が出ることもいたし方なしとの前提で、労使の円満解決を望んでおられるのかどうか。もしそうだとすれば、現状ですら吸収できない離職者を、さらにこれ以上増加させて果して救済の道があるのか、その基本的な方針を聞かせていただきたい。
 第三の総理に対する質問は、戦後一貫してとってきた炭主油従政策を完全に実施する考えがあるかどうかであります。最近、石炭の需要が予想通りの上昇を示さないことに伴い、油業界を中心とした業者団体は、積極的に石炭を主とする政策を油を中心とするエネルギー政策に転換せしめるべく、政府に働きかけているようであります。ところで、万一わが国のエネルギー主体が石炭から石油にとってかわられるような事態が発生すれば、石炭産業の衰退とともに、国際的な石油カルテルの独占価格にわが国のエネルギーは支配され、設備、準備に多大の日数を必要とする石炭産業の構造的特異性と相待って、わが国のエネルギー基盤を根底からゆすぶり、産業の各分野に不安と動揺を与える結果となります。また、油を中心とするエネルギー政策は、経済計画の中心的課題である雇用問題で、その行きづまりを示すことも、また当然であります。一国のエネルギーの大半を外国に依存し、しかも雇用の減退をもたらす政策は、長期の展望に立つ限り愚策であり、たとえその活用に多少の困難さはあっても、これを克服し、国内資源を高度に利用する態勢を作り、外貨の節約とともに雇用増加の国民的期待にこたえる政策こそ必要であります。最近のエネルギー消費の動向を見ますると、残念ながら年々油の比重が高められ、炭主油従政策は事実上くずれかかっております。総理は、エネルギーの主体を全般的な立場から判断してどうお考えか、お答えをいただきたい。
 次に、私は今までの質問と関連して、所管大臣である池田通産大臣に、当面する政策についての所見を承わりたいのであります。
 まず、明年度以降のエネルギー計画、さらには石炭の需給計画を通産大臣はお持ちになっておられるのかどうかをお伺いいたします。申し上げるまでもなく、今日の貯炭状況は平常貯炭を上回ること約八百万トンに達し、これが企業の金繰りを困難にし、賃金の遅払いを初め、資材費その他の面で、労働者はもとより、企業外部に対しても多大の犠牲を強要していることはご存じの通りであります。ところで、このような貯炭の激増は、もちろん経営者の不断の努力の足らなさと貯炭減少時における独占的高炭価に基因していることは否定いたしませんが、同時に、政府のエネルギー計画、特に石炭計画の誤算にもその要因があることを指摘しなければなりません。
   〔副議長退席、議長着席〕
 先ほども申し上げました通り、石炭産業が短時日に生産規模の変更をすることは困難であり、政府の確たる見通しと対処策が必要であります。最近、聞くところによると、通産省は三十七年度における生産規模を五千万トンとし、これに伴う労務者数は、現状の二十八万名を十九万名に減員する長期計画を策定されたようでありますが、もしこれが事実であるとすれば、エネルギー需要の増加にかかわらず、三年を経た後においても、なお石炭需要は本年のそれと大差なく、近々、二年ないし三年中には離職者が約九万名も激増するという、悲しむべき事態を引き起こすことになります。通産大臣はどんな見通しを持たれ、どういう方向で石炭政策を実施するおつもりか、お伺いをいたします。
 次に、通産大臣に質問いたしたいことは需給の調節についてであります。石炭産業が構造的な特異性のため、急激にその生産規模を縮小し、あるいは拡大することのできない点は、先ほども申し上げた通りであります。そこで、政府の出資によって、整備事業団に一定量の貯炭を持たせ、この貯炭を通じて、価格を含んだ需給の調節を行ない、一時的にもせよ、この危機を切り抜ける必要があると考えるが、通産大臣の所見を承わりたいのであります。
 また、通産大臣に対する第四点の質問は、石炭企業相互の販売を中心とした過当競争がますます激しさを加えつつある今日、この過当競争を防止し、交錯輸送等、いたずらに輸送費の高騰を招いている販売機構の現状を打開し、公正取引の確保と販売価格引き下げを考慮し、この際、販売機構の一元化の方向をとる考えはないか、質問をいたします。
 通産大臣に対する最後の質問は、ボイラー規制法の取り扱いと、特定産業に対する重油消費の制限であります。最近、電力を中心とする業界は、ボイラー規制法の失効を希望し、積極的に政府に働きかけているようであります。御存じのように、去る三十年成立を見たボイラー規制法は、石炭需要の減退防止と外貨節約の見地からなされたものであり、今日の逼迫した事態においてこれを失効させることは、石炭産業をしてますます窮地に追い込む結果となります。また、これと関連し、重油を大口に消費する産業は、さらに重油の消費量をふやすべく盛んに運動を行なっているようであります。この際、ボイラー規制法の存続と合わせて、特定産業の重油消費は、一定数量をもってこれを規制する措置を講ずべきであると考えるが、通産大臣の所見を伺いたい。
 次にお答えをいただきたいのは大蔵大臣であります。現在、制定を見ている関税定率法は、原油及び重油に対する関税として、それぞれ一〇%を規定しております。ところが、これはいまだに実施されず、特例措置として二%、六・五%の低率のまますえ置かれ、しかも、この特例措置による減収額は年間百億をこえる結果となっております。産業間の不平等な発展を是正し、社会保障充実の意味からも、油に対する関税は、明年三月の期限切れとともに、定率法通り一〇%課税を実行すべきであると考えるが、大蔵大臣の見解を承りたい。
 次に、同じく関連する内容で所見を伺いたいことは、重油に対する消費税の設定であります。最近の報道によりますと、西ドイツでは、国内資源の利用と石炭産業保護のため重油消費税を新設し、その歳入はこれをすべて離職者援護に回し、対策に万全を期す旨、きめられたようであります。わが国の三十五年度予算は、景気の上昇に伴い、歳入面において比較的多額の自然増が見込まれるとはいいながら、風水害による被害の早期復興が必要とする経費、また年々、当然増加すべき予算等を考慮すれば、軍事予算の大幅削減なしには十分な離職者対策費の捻出は困難であります。この際、離職者対策の万全を期し、灰色の谷から飢餓のどん底に落ち込んでいる人々を救うためにも、その財源に充当する目的を持つ重油引取税を新設する考えはないか、大蔵大臣の見解を承りたいのであります。もちろん、この際、中小零細企業で使用する分を非課税の対象とすることは申すまでもないことであります。また、この点については通産大臣からも同様お答えをいただきたい。
 最後の大蔵大臣に対する質問は金利の問題であります。今日、石炭企業がコスト中に占める金利の負担割合はまことに高いものがあり、この面から販売価格の高騰を招いている事実も見のがすわけには参りません。この際、コスト引き下げの見地からも、開銀及び中小企業金融公庫の石炭に対する貸出金利は大幅にこれを引き下げ、あわせて電力、船舶と同様、長期の返済期限にこれを切りかえるべきであると考えるが、大蔵大臣の見解を承りたい。
 続いて、私は労働大臣に対する質問に移ります。質問の第一は、離職者吸収の措置についてであります。最近、福岡県を中心として北九州一円には四万人をこえる離職者が集中をし、このまま推移すれば、明年春にはさらにこれが七万人をこえるであろうとの悲しむべき見通しが報ぜられ、どん底から再建を願う多くの人々の期待と希望に暗影を投げかけていることはまことに遺憾であります。炭鉱に働くこと三十年、戦前戦後を通じ、幾回となく訪れた不況と生活苦、そして災害にも耐えしのび、国からもらった表彰状を誇りに働いてきた老いたる鉱夫、その老鉱夫に今報いられたものは、不況の名による首切りと足を棒にしての職探しであります。未払い賃金さえ払われずにほうり出される労働者、一たび不況が訪れれば企業のしわをしょわされ、そ日雇い、生活保護へと転落しなければならない労働者、しかも、その日雇いすら大学に入るよりむずかしいと自期する離職者がいる現状、まことに不合理きわまりない世の中であります。労働大臣は、たとえ現地を訪れなくても今日の事態はおわかりのことと思います。今回の補正予算に盛られた対策費で果して離職者の吸収が完全に可能なのか、また賃金が一般失対並みの三百円をわずかに上回る程度では月収が八千円にも満たないことになり、離職者の働く意欲を喪失させ、生活保護へと転落させる結果となるが、以上二点について労働大臣はいかにお考えか、御答弁をいただきたい。
 これで私の石炭問題に対する質問を終わり、ILO条約批准についての質問に移ります。労働大臣も御了承の通り、この問題はすでに長い期間にわたってあるいは政治的に、あるいは法律的に論議の的となったものでありまして、各新聞は一せいに社説を掲げ、早期批准を主張し、労働問題懇談会またその早期批准を政府に答申したことは、すでに周知の事実であります。政府においても、これまでの国会においてしばしば批准する意思のあることを表明し、かつ、本年六月ジュネーブにおいて開催された第四十三回ILO総会の席上、倉石労働大臣は、日本が近い将来この条約を批准する旨を明らかにして各国の了解を求めたのであります。しかしながら、政府の言う誠意は不幸にして内外ともにこれを認めておりません。特にILO総会に臨んだ政府のあいまいな態度は理事会の反撃を買い、議長立候補辞退という、かつてない醜態を演ずる結果となったことは、われわれの記憶に新たなところであります。しかも、十一月にはILO理事会及び結社の自由委員会が開かれ、再度本問題が爼上に上ぼると聞いております。政府は再びこの轍を踏まないためにも、すみやかに条約八十七号の批准を行なう必要があると考えるが、この国会に批准の手続をする考えはないか、お尋ねをいたします。
 また、去る七月六日、衆議院社会労働委員会におけるわが党委員の質問に対して、政府は、本条約を批准する前提として本条約に抵触する国内法の調整が必要であり、すでに事務的準備を進めていると答弁されているが、国内法との調整はどの程度に進行しているのか、あわせて明らかにしていただきたいのであります。
 以上、私は、質問の時間の許された範囲内において、石炭問題とILOの条約の批准について質問いたしましたが、再質問の時間的余裕のない点を考慮され、十分納得のいくお答えをいただきたいことを最後に希望し、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一は、雇用問題についての御質問でございましたが、最近のこの雇用の状況は、経済界全体の状態がよくなっておりますので、順調に推移していることは統計に表われておる通りでございます。従って、失業の情勢も改善を見つつあるというのが現状であります。しかし、これでもって政府はもちろん手放しにこの問題を等閑視するものではございませんで、今後日本の企業の近代化やあるいは生産性向上に伴って起こってくるところの人員の余剰の問題や、あるいはまた、現在日本の雇用の内容と申しますか、中小企業の雇用の状況であるとか、あるいは農林水産業等に従事しておる者の所得の問題であるとかいうふうな面を考えてみまするというと、これらの雇用の内容を充実していくという必要のあることは当然でございまして、われわれが今後国民所得の倍増計画を立てていく場合におきましても、こうした低所得層の所得を多くしていく、それにはその職業を安定していかなければならぬ。この雇用の問題、失業の問題に関連して、そういうことも同時に考えて参らなきゃならぬと思っております。
 次に、石炭の問題につきまして、いわゆる労使の話し合いという問題でございます。すなわち、労使ともにこの石炭鉱業が直面しておる重大なる危機を十分に認識して、そうしてこれの更生のために、労使ともにその首脳者が現在話し合いを行なっておると聞いておりますが、こういうことが円滑に進行していくということをわれわれは望んでおるわけであります。しかしながら、ただ、この話し合いだけに一切をまかしておるということではもちろんございません。政府が今回の臨時国会に対して、離職者に対する援護や就労についての特別措置を講じておりますことも、また石炭業自体の将来の根本的な問題に関しましても十分検討してこれに対する対策を立てるべきことは当然でございます。
 それに関連して、炭主油従の問題についての御質問がございました。言うまでもなく、エネルギーの問題は産業全体の問題に非常な影響を持っておるものでありますから、できるだけ使用するところのエネルギー源の経済性というものは十分考えていかなければならぬことは言うを待ちません。しかしながら、同時に、そのエネルギー源の安定した供給を確保する意味から申しましても、またこれに従事しておるところの労務者の雇用の問題を考えましても、さらに日本経済として大事な外貨の問題から考えましても、石炭の問題を優先してエネルギー源として取り上げるべきことは当然であります。従って、ただこれを取り上げるからといって、これの経済性を無視してすなわち、どんなに高くてもこれがいいというわけではないのでありまして、従って、その価格の低下を考えても、経済性を向上せしめるように、今後の石炭鉱業の体質改善ということが必然的に起ってくる。それに応じて、あるいは離職者が生ずるという問題についての対策は、今、申しましたように政府としては十分強力にこれを推進していかなければならぬ、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(池田勇人君) 御質問は六点ございましたが、第一の石炭の需給計画並びに石炭政策につきましては、ただいま総理がお答えになりました通りであります。根本は、いろんな点から考えまして炭主油従の精神は私は堅持していきたいと思います。しかし、経済性を離れてはできません。従いましてただいまは、炭主油従の政策のもとに、いかに石炭企業に経済性を持たせて、他の燃料との競合について打ち勝ち得るか、その方法を考えておるのであります。従いまして、御質問の第一点の、石炭の需給計画もこれから出てくるのであります。今、通産省におきましては、大手十八社の計画を取りまして、その計画が適正なりやいなや、しこうして、この計画を実行するにつきましては、いかなる措置が政府としてなされなければならぬかという点につきまして検討を加えておるのであります。三十七年において五千万トン等々はまだ出ておりませんが、私は炭主油従の政策によりまして、できるだけ多くの石炭を掘り出して、国内燃料エネルギーに寄与いたしたいと考えておるのであります。
 御質問の需給調整に対して、政府が出資をしたらどうか。これはいろいろ従来議論がございましたが、ただいまは御承知の通り新昭和石炭が二百万トン程度の買い上げを計画しております。私は、政府が出資して買い上げるということは、石炭の性質からいって好ましくございません。従って需給調整をするのは、まず第一に生産を確保いたしまして、大手筋と長期契約でいくのが一番合理的な方法と考えております。
 次の販売機構の一元化、これもいろいろ研究されているのでありますが、販売機構を一元化するよりも、私は、今三千に及ぶという石炭の品種を統一することが先であると考えましていわゆる混炭用の貯炭あるいは規格統一につきましてただいま検討を加えておるのであります。
 第五のボイラー規制でございます。これは石炭の経済性を高める問題と関連してくる問題でございまして、今、ボイラー規制をどういうふうな方法でいくか、これは研究いたしておるのであります。これはその次の問題の重油あるいは原油の課税とも関連してくることでございます。ただいまドイツあるいはベルギー、イギリス等々の、同じ石炭について悩んでおる国々の施策を参考にいたしまして、近い将来にお目にかけ得ると考えております。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(佐藤榮作君) 鉱油についての関税臨時措置をやめたらどうかという御意見でございます。御承知のように、あの暫定的減免措置は、当時の状況から見ましてまず適切な措置であったろうと思いますが、最近は鉱油の原価あるいは運賃等も下降線をたどっております。また、先ほど来御指摘になりましたように、石炭危機とか唱えられている、そういう際でございますので、この関税の臨時措置を現状のままで置くかどうか、これは当然考究に値するものだと、かように考えておりまして、私ども検討中でございます。
 次に、重油についての消費税を新設してはどうかという御意見でございますが、ただいまの関税の臨時措置をやめるということ、あるいは消費税の新設、かようになりますと、他の産業に及ぼす影響もまことに甚大であろうと思います。従いまして、石炭離職者対策あるいは石炭鉱業対策、この全貌が明らかになりました上で、これらの点は関税の臨時措置法の取り扱い方とあわせて十分検討して参る考えでございます。
 次に、金利並びに返済期限の問題であります。御承知のように、現状におきましては、開銀及び中小企業金融公庫から石炭業者が金を調達いたしております場合には、電力や海運とは違いまして、金利が高い状況でございますが、石炭業界はいわゆる事業団を今日構成いたしております。いわゆる石炭鉱業合理化臨時措置法、この措置法に基づきまして整備事業団を構成いたしておりますが、この石炭鉱業整備事業団に対して、先ほど申しました電力、海運等の金利と、今日石炭が借りておる金利との差額、言いかえますならば、開銀におきましては二分五厘、中小公庫の場合におきましては二分八厘、この金利を企業主が整備事業団に納付をいたしまして、事業の整備に協力いたしておるのであります。従いまして、この関係では、実質的には石炭業者は海運や電力事業と同じように六分五厘の金利で運営している、こういうことになるのではないかと思います。また、この返済期限の問題ですが、返済期限の問題につきましては、今返済能力等、これを十分勘案いたしまして、適当に処理いたしておりますので、一がいに、特に返済期限を延長する、こういう措置をとらなくとも、今日の状態では一応処理ができておる、かように私どもは考えておるのであります。(拍手)
   〔国務大臣松野頼三君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(松野頼三君) 私に対する二点の問題にお答えをいたします。
 第一は、石炭の離職者の問題でございますが、特に石炭の特殊性にかんがみまして、今回新しい特別な立法を石炭離職者について立て、必要な予算の計上をはかったわけでございます。この内容につきましては、石炭のごとく相当高度な労働力をお持ちの方を一般的な失対に追いやることはいいことではないと考えまして、単価も引き上げた緊急就労という、石炭地帯の石炭労働者に合うような仕事を特に今回設置したのがこの特別立法の大きな一つの柱でございます。なお、将来ともに石炭のような有能な労働力でございますから、他の産業に対する吸収をはかるために、広域職業紹介の強化をはかる、あるいは家族の移動についての援護会の手当をする、また石炭のような大きな基本産業でございまするから、系統関連産業に円満な転職もはかっていただく、こういうことで、ただいま二万人という対策を立てましたけれども、この二万の数は、関係市町村、関係府県から出ました数と労働者で八月以来調査いたしました要対策者の数は大体二万人というのが一致しております。以上をもってお答えといたします。
 第二番目のILOでございますが、ILOの八十七号は、御承知のごとく、民主的な、自由な原則による基本法でございますので、政府としましても、いち早く二月にILOに対する批准の基本的態度を内外に宣明いたしております。その労働問題懇談会、労使三者構成になる懇談会の御答申の中にもございますように、政府としては公労法の改正をやれということが第一点であります。第二点には、国内法の整備をやれ。ただいま順調にその作業を進めております。同時に十分な企業体と労使間のよき労働慣行の確立をはかり、国内法を守れということも、この中に強くうたわれております。第三項には日本の労働法、労使法全般について再検討を行なえということも明記されております。従って、政府はその懇談会の趣旨を尊重し、二月に閣議決定をいたし、ただいまその三点について順調に作業を進めております。ただ一部の組合が違法状況を続けておるために、懇談会の精神に沿ってぜひ善処されることを期待して、そうして早期にこの問題が解決することを私は心から念願するものであります。(拍手)
#36
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#37
○議長(松野鶴平君) この際、お諮りいたします。井川伊平君から裁判官訴追委員予備員を辞任いたしたいとの申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#38
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#39
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して欠員中の裁判官訴追委員及び井川伊平君の辞任により欠員となりました同予備員の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#40
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
#41
○田中茂穂君 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#42
○光村甚助君 私は、ただいまの田中君の動議に賛成いたします。
#43
○議長(松野鶴平君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、裁判官訴追委員に井川伊平君、同予備員に北畠教真君を指名いたします。
     ―――――・―――――
#45
○議長(松野鶴平君) 内閣から、八月十二日任期満了の畑地農業改良促進対策審議会委員上林忠次君、仲原善一君、伊藤顕道君の後任者を指名されたいとの申し出がございました。
 つきましては、この際、日程に追加して、畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#46
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
#47
○田中茂穂君 畑地農業改良促進対策審議会委員は、その選挙の手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#48
○光村甚助君 私は、ただいまの田中君の動議に賛成いたします。
#49
○議長(松野鶴平君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#50
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、畑地農業改良促進対策審議会委員に上林忠次君、仲原善一君、伊藤顕道君を指名いたします。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五十四分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
 一、裁判官訴追委員予備員辞任の件
 一、裁判官訴追委員及び同予備員の選挙
 一、畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
ソース: 国立国会図書館
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