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#1
第033回国会 本会議 第6号
昭和三十四年十一月六日(金曜日)
   午前十一時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第五号
  昭和三十四年十一月六日
   午前十時開議
 第一 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 この際お諮りいたします。鮎川金次郎君から、病気のため、三十九日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#5
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(米価審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、本院議員白井勇君を米価審議会委員に任命することについて、本院の議決を求めて参りました。同君が同委員につくことに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#7
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同君が米価審議会委員につくことができると議決されました。
     ―――――・―――――
#8
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、商品取引所審議会会長及び同審議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、商品取引所法第百三十九条第四項の規定により、向井鹿松君を商品取引所審議会会長に、石黒武重君、島剛君、日比谷平左衛門君、藤田国之助君を同審議会委員に任命したことについて、本院の承認を得たいとの申し出がございました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#10
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#11
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、運輸審議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、運輸省設置法第九条第三項の規定により、武田元君、青柳一郎君、波多敏夫君を運輸審議会委員に任命したことについて、本院の承認を得たいとの申し出がございました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#13
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#14
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、電波監理審議会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、電波法第九十九条の三第二項の規定により、松方三郎君を電波監理審議会委員に任命したことについて、本院の同意を得たいとの申し出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#16
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#17
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、日本放送協会経営委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、放送法第十六条第三項及び放送法の一部を改正する法律(昭和三十四年法律第三十号)附則第二項の規定により、阿部真之助君、靱勉君、楠山義太郎君、千葉雄次郎君、浜田成徳君、村上巧児君を日本放送協会経営委員会委員に任命したことについて、本院の同意を得たいとの申し出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#19
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
#20
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、労働保険審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○議長(松野鶴平君) 御異議なしと認めます。
 内閣から、労働保険審査官及び労働保険審査会法第二十七条第三項の規定により、上山顕君を労働保険審査会委員に任命したことについて、本院の承認を得たいとの申し出がございました。本件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#22
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって承認することに決しました。
     ―――――・―――――
#23
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、中央更生保護審査会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(松野鶴平君) 御異議なしと認めます。
 内閣から、犯罪者予防更生法第五条第一項の規定により、大竹武七郎君を中央更生保護審査会委員に任命することについて、本院の同意を得たいとの申し出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#25
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#26
○議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、社会保険審査会委員長の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#27
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 内閣から、社会保険審査官及び社会保険審査会法第二十二条第一項の規定により、川上和吉君を社会保険審査会委員長に任命することについて、本院の同意を得たいとの申し出がございました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#28
○議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。
     ―――――・―――――
#29
○議長(松野鶴平君) 日程第一、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)。
 両件について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。藤山外務大臣。
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(藤山愛一郎君) 去る五月十三日に、サイゴンにおきまして、わが国とベトナム共和国の全権委員の間で署名されました日本国とベトナム共和国との間の賠償協定及び借款に関する協定の締結につきまして御承認を求めるの件に関し、趣旨の説明をいたします。
 ベトナムは、昭和二十六年九月にサンフランシスコにおいて平和条約に署名し、翌昭和二十七年六月には同条約の批准書を寄託いたしました。この平和条約の第十四条に基づきましてわが国がベトナムに対し賠償支払いの義務を負うことになったことは、御承知の通りであります。よって、わが国といたしましては、ベトナムとの賠償問題の解決をはかり、もって戦後のアジアにおける平和外交を推進するため、昭和二十八年の沈船引き揚げに関する中間賠償協定交渉以来ベトナムと交渉を重ねて参ったのであります。交渉は幾多の紆余曲折を経ましたが、本年四月末に至り双方の意見は一致し、賠償協定及び借款協定草案が完成いたしましたので、五月十三日にサイゴンにおきまして双方の全権委員により署名調印が行なわれた次第でございます。
 わが国は、賠償協定によりまして、三千九百万ドルにひとしい円に相当する生産物及び役務を五年の期間内に賠償としてベトナムに供与することを約束したのであります。賠償の実施方式は、従来の賠償協定と同様に、直接方式、すなわちベトナムの賠償使節団と日本人業者との間で直接に結ばれる賠償契約によることを原則とし、わが国は、その賠償契約に基づく支払いの額を負担することによって賠償義務を履行するものとなっております。その他、使節団に一部の外交特権を認めること、賠償契約に関する紛争の解決について、最終的には日本の裁判所に提訴し得ること、協定の実施についての協議機関として合同委員会を設置すること等につきましても、ビルマ、フィリピン、インドネシア三国との賠償協定と同様に定められております。
 また、借款に関する協定は、ベトナム政府等がその必要とするわが国の生産物及び役務を調達し得るために、日本輸出入銀行との契約に基づいて、同銀行から七百五十万ドルにひとしい円の額までの貸付が三年の期間内に行なわれることを定めており、政府といたしましては、日本輸出入銀行が前記の貸付のための所要資金を確保できるように措置をとることを約束いたしております。
 前記の二協定のほかに、経済開発借款といたしまして、九百十万ドルを目標額とする民間の商業借款につきましても、交換公文の形式により取りきめを行ないましたが、その内容の実現は、フィリピン及びインドネシアの二国に対する経済開発借款と同様に、もっぱら日本側民間業者の通常の商取引として行なわれるものであります。
 なお、賠償協定の署名にあたりまして、両国全権委員は、賠償協定の実施が両国間の友好関係と経済関係をますます緊密ならしめるものであること、及び、両国政府がすみやかに通商航海条約締結のための交渉を開始することの二点について、共同宣言を発表いたしております。
 今次の賠償協定は、わが国が条約上賠償義務を負っているアジア諸国との間の賠償協定として最後のものでありますが、わが国が平和条約上の義務をできる限りすみやかに果たしますことは、国際信義の上からも望ましいことであるとともに、他方、この賠償の実施は、前記の借款と相待って、ベトナムの経済建設と民生安定に寄与し、共同宣言にもあります通り、両国間の友好親善関係を強化し、政治、経済、通商、文化の各般にわたる両国間の協力を一そう緊密にするものと確信いたすものであります。
 以上が日本国とベトナム共和国との間の賠償協定及び借款に関する協定の締結について御承認を求むるの件についての趣旨でございます。(拍手)
#31
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。佐多忠隆君。
   〔佐多忠隆君登壇、拍手〕
#32
○佐多忠隆君 ただいま提案されましたベトナム共和国への賠償と借款に関する協定の締結について、私は日本社会党を代表して、岸総理大臣、藤山外務大臣、池田通産大臣等に若干の質問をいたします。
 政府は、一九五一年にサンフランシスコで対日平和条約に署名したベトナムに、条約第十四条に基づいて賠償支払いの義務を負ったからこれに支払う、しかも、このベトナム共和国、いわゆる南ベトナムが全ベトナムの唯一正統の政府であるから、これに支払えば全ベトナムヘの賠償義務は免れると主張します。なるほどベトナム共和国は現に四十九カ国から承認されております。しかしその成立からいえば、一九四九年に南ベトナムのバオダイ政権としてその独立が認められ、一九五〇年以降、アメリカ、イギリス等に順次承認をされました。一九五四年には、修正された独立条約が、あらためて南ベトナムとフランス政府との間に仮調印をされましたが、私の記憶に間違いがなければ、本条約はまだ正式には調印されておりません。従って法律的に見れば、南ベトナムとフランスとの関係すらいまだ明確化されていないのであります。他方すでに一九四五年に、北ベトナムではベトナム民主共和国が独立を宣言し、その領土は南・中・北部を含む完全な統一体であり、決してこれを分割することはできないといたしました。そして翌一九四六年には、フランスとベトナムとの間に、「フランスはベトナム民主共和国を、独自の政府、議会、軍隊、財政を持つフランス連合国内の自由国として承認するとともに、南・中・北部ベトナムの統一に関しては、人民投票により決定することを認める」との協定を結んでおります。
 このように、ベトナムの独立の経緯からみても、ベトナム共和国が全ベトナムの唯一正統な政府でないことは、あまりにも明瞭であります。(拍手)さればこそ一九五四年のジュネーブ会議には、ベトナム民主共和国とベトナム国の両者がともに参加し、その最終宣言では、現在の南北ベトナムの十七度境界線は、軍事境界線として暫定的なものであり、政治的または領土的境界線とは解釈し得ないこととなっています。そしてベトナムは、独立、統一、領土保全の原則を尊重して、自由選挙によって民主的に政治的に問題を解決すべきことが望まれております。
 また、一九五五年のバンドン会議には、南北両ベトナムがいずれもおのおの独自なものとして招かれ、しかも両者がすみやかに統一さるべきことが決議されました。このことは、藤山外相も私も、ともに当時の高碕全権の顧問として会議に出席して、この目で見、この耳で聞いた事実でありますからよもやお忘れにはなりますまい。
 以上の事実から、南ベトナムを唯一の正統政府として、これに賠償をすれば万事終われりとする岸内閣の態度は明らかに間違いであります。さればこそ、ベトナム民主共和国は、岸政府の賠償協定に反対し、賠償請求の権利を留保することをしばしば声明をしております。問題が残ることは明らかです。これでも岸総理は、藤山外相は、政府の態度は間違っていない、問題は残らないと主張されるのかどうか。そう主張されるのであるならば、その理由を、これまでの答弁のように単なる希望的な観測でなく、事実に基づいて的確にお答えを願いたい。
 次に、ベトナムヘの賠償と借款の数字的根拠についてお尋ねをいたします。
 政府の説明によれば、賠償に三千九百万ドル、政府借款に七百五十万ドル、民間商業借款に九百十万ドル、合計五千五百六十万ドルを供与することとなります。これは何を根拠とされた金額であるか。政府は抽象的に、戦争災害、他国との比較、わが国の支払い能力等を勘案したと言う。ベトナムは、戦争損害を二十億ドルと算定をしておりますが、わが国はこれをどう見積もっておるのか。戦争はいつから始まり、どこで行なわれたのであるか。戦争損害は、南北ベトナムの地域別に見てどう配分をされると算定しておられるのか。侵略と戦争は北から行なわれ、賠償は南に行なわれるという不合理をどうお考えになるか。(拍手)賠償総額からいえば、ビルマが二億ドル、フィリピンが五億五千万、インドネシアが二億二千三百万、これに比べてベトナムが三千九百万ドル、年割額について見れば、前三者がおのおの二千万または三千万ドルに比べて、ベトナムが一千万ドルに及んでおります。戦争災害等から考えて、ベトナムへの負担が多きに失することは一見明白であります。これでも他国との比較を適正に考慮したと言われるのであるならば、その根拠を数字的に明らかにされることを要求をいたします。政府は、賠償交渉にあたって、最初ビルマに対しては非常に辛く、厳正でありましたが、フィリピンに対してからは甘く、ルーズになっております。その一半の理由は、賠償交渉に事業家か、利権屋が介入し始めたからであります。この傾向は、岸総理大臣の時代になってから目に余るものがありま丁。ビルマ賠償には賛成をし、これを促進したわれわれが、フィリピンやインドネシアの賠償に反対したのは、この弊害を憂えたからであります。われわれは当時、この誤れる政府の態度が改まらない限り、ビルマは再検討条項を取り上げて賠償増額を要求するだろりと警告をいたしました。が、政府は、そんなことは絶対にないと断言をしました。不幸にしてわれわれの予言は的中をして、ビルマは再検討を要求してきました。この交渉はその後どう進んでいるのか、政府はこれにどう対処しようとするのか、お答えを願いたい。第三に、南ベトナムとの賠償交渉の経緯についても了解のできない数々の点があります。政府は初め、ベトナムとの親善友好関係を促進するには経済技術協力によることが大切であるが、それを賠償によってやることは、これを考えておらなかった。ベトナムと同じインドシナ地域にあり、同程度の災害を受けたラオスやカンボジアが、賠償請求権をみずから放棄した事実から考えても、ベトナムとの交渉をこの方向に持っていくべきことは当然であります。久保田大使も植村特使も、当初はその方針で進んでおりました。しかるに、昭和三十二年十一月に岸首相がみずからベトナムを訪問し、ゴ・ディン・ジェム総統と会見されて以後は、賠償でこれを支払う方針に急に改められたもののようであります。なぜこうなったのか。賠償の主要な内容となるダニム・ダムの設計契約に当たった日本工営の久保田社長は、賠償ではなく、借款で十分に可能であるのみならず、日本輸出入銀行との間にも一応の話し合いはついていた。もし賠償でなく借款でやっていたら、今ごろはすでに工事も完了し、稼働しているはずで、両国のためにもこの方がよかっただろうと、衆議院の外務委員会でその意向を漏らしております。岸内閣の重大な失敗と言わざるを得ません。岸総理、藤山外務大臣に、これらの経緯を十分に御説明を願いたい。
 第四に、賠償、借款の内容、対象についてお尋ねをいたします。
 賠償協定の付属書に言う水力発電所の建設とは、最大出力十六万キロワットのダニム・ダム発電所の建設をさしているのかどうか。これはすでに一九五六年の九月に、日本工営の久保田社長によって設計契約書ができ上り、ベトナム政府に提出をされております。これによると、その建設のために要する外貨資金は三千七百万ドルと言われています。また、付属書にいう機械工業センターの設備には二百万ドルと見積もられています。両者を合計するとまさに三千九百万ドル、今度の賠償協定の数字とぴったり合うのであります。なお、ダム建設用資本財の買付に要する外貨資金は七百五十万ドルといわれます。これが借款協定の金額とびた一文も違わない金額であります。さらにまた、経済開発に関する交換公文で約束した九百十万ドルは、尿素製造工場の建設その他に当てられるということになっております。これらを総合すると五千五百六十万ドル、今度のベトナム賠償、借款の総合計とぴったり合って、びた一文も違わない金額となります。このように考えて間違いないのかどうか、藤山外務大臣にお尋ねいたします。もしそうだとすれば、今度の賠償、借款の決定は、これまでのものとは運びの順序がまさに逆になっております。業者や利権屋が一つ一つの具体的な内容を持った計画を先方とあらかた話し合いをつけ、それを賠償と借款に組み込ませたというべきでありましょう。業者や利権屋はこれをぼろいもうけ仕事として着手をし、その支払いの負担や責任は、これを賠償や借款として、政府に、従って国民に押しつける以外の何ものでもありません。(拍手)これまでは、特にビルマの場合は、まず政府によって賠償や借款の大ワクがきめられ、これが協定となった後に、さらに逐次個々の対象が実施計画としてきめられて参りました。今度はこれが全く逆であります。岸総理は、藤山外務大臣は、賠償や借款のごとき、国民に多大の負担を長く負わせる厳粛な行為が、今度のように乱用されてもいいとお考えになるのかどうか、明確にお答えを願いたい。
 第五に、今度の賠償や借款の効果についてお尋ねをいたします。藤山外務大臣は、これがベトナムの経済建設と民生安定に寄与し、両国間の友好親善関係を強化し、政治、経済、通商、文化の各般にわたる両国間の協力を一そう緊密にするものと確信しておられます。はたしてそうでしょうか。それならば、なぜこれらの協定の締結と同時に最恵国待遇の取りきめができなかったのか。これができなかった以上、友好親善関係は大いに強化されたとは言えないと思いますが、その辺の関連を詳しく御説明を願いたい。
 なお、池田通産大臣にお尋ねをいたしますが、この賠償と借款が両国の貿易拡大に寄与すると考えられるのかどうか。なるほど現在では、すでに御答弁があったように、南ベトナムとの貿易額の方が北より多いことは事実でありますが、これはその大部分がアメリカのICA資金の買付にほかなりません。しかも、それは今後むしろ減少が見込まれます。他方、豊富な地下資源を持ち、長期経済建設を着々と進めつつある北ベトナムは、長期に将来を考えれば、南よりもむしろ有望と言うべきでありましょう。が、その北ベトナムとは、この賠償と借款によって貿易は中絶され、友好関係は全く破壊されることになります。この辺の事情を池田通産大臣はどう見通されるのか。
 これに関連して、さらに池田通産大臣にお尋ねをしたい。政府は、これまでビルマ、フィリピン、インドネシアの賠償、借款協定を結ぶにあたって、これを契機として、これらの国々との貿易規模は飛躍的に発展するだろうし、発展させると約束をいたしました。しかるに、過去二、三年の結果はどうなっておりますか。あなたの通産省の調査によれば、三国に対するここ両三年の通常輸出額はそれほどふえないばかりか、むしろ昨年からは減少を示しております。賠償物資を与えたことが機械類や金属製品を初め諸物資の直接輸出量を減らしたのであります。とすれば、政府の見通しは誤り、政策は失敗に帰したと言わざるを得ません。政府はこの責任をどうとり、今後の政策をどうするつもりか、池田通産大臣に的確な答弁を求めます。
 最後に、この賠償と借款の結果が国際緊張を激化し、アジアの平和に脅威を与えることについて、岸総理と藤山外務大臣にお尋ねをいたします。この協定が全ベトナム人の悲願である南北ベトナムの統一を阻害し、両者の対立を激化することは、冒頭に詳しく述べた通りであります。さらに、アメリカは、中国や北ベトナムに対する核兵器、ミサイルの軍事基地を南ベトナムに構築し、ダニム・ダムの電源開発もアメリカの巨大なミサイル基地とその周辺の軍事工業化に関連すると言われております。また、アメリカ海軍と経済協力局が管理するサイゴンの造船所へ日本政府があっせんをして技術者二十人を派遣いたした技術協力は、何を目的とし、その後どうなっているのか。また東洋精機がカン詰機械輸出と称して銃弾工場のプラント輸出を行なったことの経緯はどうなのか。これら一連の日本の行動は、アメリカによる南ベトナムの軍事基地化に日本が協力することを意味します。今度の賠償と借款は、それをさらに促進することとなります。これはアジアの平和にとって重大な脅威となります。平和に共存し、冷戦をやめようという世界の最近の趨勢に逆行し、人類の幸福を破壊いたします。
 このような意義を持つ今度の賠償と借款は、いましばらく中止し、南北ベトナムのすみやかな統一を待つべきでありましょう。その上で、あらためて真に全ベトナム人民の平和と幸福をもたらすための経済建設、経済協力を協議すべきでしょう。岸総理は、その政治的態度をこのように改むべきだと思うがどうか。私はこれを岸内閣に切望して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#33
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 ベトナムの政府の成立については、御指摘のようにいろいろな経緯をとったものでございます。しかしながら、今日四十九カ国がベトナム共和国政府を承認しておりますのは、これは全ベトナムを代表する正統政府として承認をしておるわけであります。これに対して、ソ連、中共等十二カ国は、全ベトナムを代表する正統政府として北ベトナム政府を認めておることは御承知の通りであります。われわれはこうした国際的のこの情勢のもとにあって、しかもベトナム共和国政府の前身であるバオダイ政府がサンフランシスコ条約に調印をし、批准書を寄託したことは、先ほど外務大臣が述べた通りであります。しこうして、これに対してサンフランシスコ条約上、その十四条の規定による賠償の義務があることも御承知の通りであります。われわれは、国際的のこの日本の立場を考え、また、日本が平和条約による賠償義務を一日も早く果たして、そうして国際の一員としてこれらの国々と友好親善関係を進めていくことは、最も必要であります。特にわれわれの関心の最も深い東南アジア諸国との間の問題をこれによって解決することが最も適当であるという見地に立って、今回この賠償協定を、ベトナム全土を代表する正統政府として認めて、ベトナム全土に対する賠償を行なおうとしておるものでございます。
 賠償額の算定等につきましては外務大臣からお答えをすることにいたしますが、この賠償の形式をとることについて、私が三十二年十一月にベトナムを訪問した際に、急に従来の方針が変わったように御指摘になりましたが、それは事実に反しております。従来、御承知の通り、ベトナム側は損害を二十億と見、これに対して二億五千万ドルの要求を続けてきておりますし、また、それを一億ドルというふうに幾らか減額してきておるという状況が当時の状況でありまして、決して借款形式によって、あるいは経済協力の形式によってこの問題を解決しようというふうなベトナム側の意見では絶対なかったのであります。これは当時の経緯から明瞭でありまして、私が参ったことによって急に賠償方式に変わったというのは事実に反しております。
 それから、今回のこの賠償額三千九百万ドル、またその他の政府借款、民間借款等のものにつきまして、具体的のプロジェクトが先にきまって、そうして金額が逆算されたのではないかという御指摘でございます。これは、従来ベトナムとの間の交渉が御承知のように七年間にわたっており、金額が非常に大きな額を向こう側が日本に要求し続けてきておりまして、一体、賠償によって、あるいは経済協力によって、どういうことをベトナム側が特に要望しておるかというようなことは、自然、交渉の途中で話が出たことは当然でございます。これはほかの場合と違いまして、長い期間であり、また、金額におきましても、ほかの国に対するような額とは――全体の額が非常に小さいものでありますから、自然、どういうことをベトナム側で要望しているかというようなことが話に出ることは、これは当然であったと思います。そういうことから、水力電気の開発の問題であるとか、あるいはベトナムの国情から肥料工場が望ましい、これをぜひ自分たちの方において作っていきたい、あるいは今後のベトナムの繁栄、経済の確立のために、機械のセンターを作りたいというような話が出たことは、これは当然であったのであります。しかしながら、この額が、従来この交渉の段階においてベトナム側が主張してきておる賠償額が非常に大きいので、われわれは、これを小さくせしめるためにいろいろ交渉をしてきたというのが、これが現実のことでありまして、そういう経緯をとっておるわけであります。
 それから、このことが国際緊張の強化になりゃしないか、アメリカが南ベトナムに対して軍事基地化を行なっている、それに協力する――軍事体制に協力するものではないかという御質疑でございます。今日世界各地において民族が統一されておらない所がたくさんあるのでありまするが、これが平和的に統一されることになれば、もちろんわれわれとしてはこれによらなければならぬことは言うを待ちません。そうして、ジュネーブ協定が、先ほども御指摘になりましたように、一つの軍事協定として、休戦協定として作られており、また、それにおいて統一の方法が述べられておりますが、この方法によって、いわゆる自由選挙の方法によって統一されるという事柄は、今日のところにおきましてはほとんど望むことができないというように、この当時のソ連やあるいはイギリス等も、それをはっきりと認めておるような状況であります。従って、今日のこの不安定な状態にいつまでも置くことがいいのか、日本との間において、先ほど申しましたようなサンフランシスコ条約によるところの義務を、日本との間に早く果たすことがいいかということは、私どもは、これを第一に考えてきたわけであります。決して、これによって南北統一を妨げるとか、あるいは、いわんやアメリカのここにおける政策を助ける一環としてこれをやるというような考えは、毛頭持っておらないということをはっきり申し上げておきます。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#34
○国務大臣(藤山愛一郎君) 佐多議員の御質問に対して、総理が言われなかったところを補足して申し上げたいと思います。
 南ベトナムを今日の正統政府として認めるかどうかという先ほどの御質問でございましたが、戦争が終わりましたときに、フランスが仏印三国をどういうふうにして独立さしていくかということを考えました。その際、むろん、一時ホー・チミンと交渉したこともございますが、しかし、結局、一九四八年の六月五日に、全ベトナムを代表する政府としてこのバオダイを認めまして、そうして、それがアロン湾宣言ということになっております。翌一九四九年の三月六日にエリゼ宣言というものが発せられておりまして、明らかに全ベトナムを代表する政府としてバオダイを認めておるわけであります。当時、仏印三国を処理するわけでありますから、ラオス、カンボジアにつきましても国境を画定して、それを決定いたしたのでありまして、その関係から見ましても、ベトナムが当然全ベトナムを代表する政府としてフランスが認めたということは明らかだと存じております。今のエリゼ宣言につきましては、一九五〇年の二月に仏・ベトナムの協定が批准をいたされております。同時に、英米官等の各国がこれを承認して参ったわけであります。その後、先ほど御指摘がありましたように、国民投票によりまして政体が変わりまして、共和国になったわけであります。しかしながら、共和国はすべての権利義務を引き継いで参っておるのでありまして、従って、最初に認められましたベトナム国のすべての権益を承継しながらやって参りまして、その後、先ほど総理が言われましたように、逐次、承認国がふえて参りまして、現在では四十九カ国が承認をいたしております。従って、こういう点から見まして、私どもといたしましては、ベトナム全域を代表する正統な政府ということを認めておるわけであります。そうして、これに対して賠償を支払います義務というものは、申すまでもなく、サンフランシスコ条約の調印国でございまして、当時、サンフランシスコに招請されて、これに調印し、われわれは、その結果としてこの義務をしょって参っておるわけでございます。
 そこで、それでは賠償の額はどういうことであるか、また、期間はどういうことであるか、こういうことでありますが、日本といたしまして、戦争の開始の時期というものを、交戦時期というものを定めるのには、一九四四年八月二十五日、いわゆる、ド・ゴールがパリに帰りまして、明らかにフランスの主権者となった日をもって、戦争開始日といたしております。従いまして、それから戦争終結までの間の期間における損害賠償、戦時損害賠償ということに相なるわけであります。その期間に、御承知のように、一九五五年の三月には、明号作戦という作戦をしておるわけであります。六月にはイ号作戦と申しまして、シナの方面から北部に入ってきております。これによりまして、相当の餓死者も出、相当の損害を与えたことはもちろんでありまして、これらを含めて、全ベトナムを代表する政府として賠償の交渉をいたしておるわけでございます。そこで、今申し上げましたような金額でございますけれども、賠償につきましては、純賠償が三千九百万ドルでありまして、七百五十万ドルが借款協定でございます。この借款協定は、世銀並みの利子をつけまして、三カ年据置で七年間で償還をするのでありますが、政府といたしましては、移民に対して、この資金の手当をするという、これ以上の責任は負っておりません。また、経済開発借款の九百十万ドルと申しますものは、これはインドネシア、フィリピン等にもありましたように、純民間の商業ベースによる借款でございまして、政府は何らの責任を負っておりません。ただ、そういうことができていくことを望ましいと考えておるということでございます。従いまして、純賠償として三千九百万ドルであることは申すまでもないわけでございます。
 なお、ビルマの再検討条項について今どういう状態にあるかというお話でございました。本年春、ビルマの在京大使から、日緬平和条約第五条一項による再検討条項がございますが、これによりまして、日本に対して再検討を申し込んで参ったわけでございます。当時の文書によりますと、インドネシアあるいはフィリピンと比べて再検討をしてもらいたいということで、このベトナムに関しては言及をいたしてきておりません。そこで、日本といたしましては、ただいま交渉をいたしておりますが、われわれといたしましては、フィリピン、インドネシアとの賠償の振り合いから申しまして、ビルマの今日までの賠償が不適当であるとは考えておりません。従いまして、現在、そういうことを十分説明をしながら、他方、経済協力その他を将来とも進めていくのだということで、今日交渉の過程にございます。
 次に、賠償の内容があらかじめ決定されておるので、どうも運びが逆ではないかというようなお話でございます。従来の賠償から申しましても、御承知の通り、賠償を要求する側から、損害あるいは要求額というものを出して参ります。日本といたしましても、賠償の実情から、また、日本の経済状況その他財政状況から推しましてこの金額の問題につきましても、少額の問題から逐次交渉を開始していくことは当然でございますが、同時に、ビルマ、インドネシアとの賠償におきましても、どういうものを賠償にしていくかということを、両賠償の場合においても、専門家のコミッションができまして、事前に、どういうプロジェクト、どういう品物を日本が出せるか、また、どういうことがやれるかということを、専門家会議をやっておりまして、そこで、こういうものが現地側からはほしい、こういうものが、現地側としては順位をつけて、こういう順位をわれわれとして要求するのだ、そうして考えてもらいたいということが言ってこられますのでありまして、従って、賠償の決定につきましては、むろん、金額の問題の交渉と、また、賠償内容の問題等につきましてどういうものをやることが相手国に適当であるか、しかも、それ自体が日本の生産物であり得るかどうか、多額のパテントその他を買わなければ、そういう製品の要求に応じられないようなものについては、これはできるだけ日本としても避けて参らなければなりませんので、そういう点についての、一方には積み上げ方式を作っておるわけでございます。従いまして、今回の賠償におきましても、ダニム・ダムの問題でありますとか、機械工業センターでありますとか、そういう種類のものが、向こう側としては非常に優先的な順位をもってやってもらえれば大へんけっこうであるということを言っておるわけであります。むろん、このダニム・ダムの問題につきましては、国際入札によりまして、日本工営がフランスと競争をいたしまして、そうして、それを両者比較いたしまして、国際連合の技術委員会の人にベトナム側が委嘱いたしまして検討いたしました結果、日本の設計が非常によろしいということになったわけでございます。そういう状況でありますから、従ってビルマ側としてもこういうものを一つやってみたいと申すのは当然だと思うのでありまして、そういう点について、われわれもできるだけそういう希望が少ない金額の中で達成せられるということはむろん考えて参りましたけれども、何か業者の要請によってこういうものを入れるというようなことは、私ども交渉にあたって全然考えておりません。
 また、ただいま三千七百万ドルと二百万ドル、機械工業センターと言われましたが、この機械工業センターその他と書いてあるわけでありまして、むしろそれらの三千九百万ドルの中からは賠償コンミッション等の経費を出すようなこととにも相なりましょうし、これらのものは、実施を進めて参ります上において、それらのものをどういうふうに割り振っていくかというようなことは、今後の検討に待たなければならぬと思うのであります。
 なお、賠償借款の効果について言われました中に、特に私どもに対して、通商航海条約、将来のそういう問題、最恵国待遇の問題等についての御質問がございました。今日この賠償をやりまして、ベトナム側といたしましては、日本に対して差別待遇をいたしてはおりません。また、われわれといたしましては、これを基本化するために通商航海条約を早期に締結することを希望いたしておるのでありまして、共同宣言等にこれをうたったわけであります。ただ、現在の事情におきまして、ベトナム側は、あらゆる他国からの要求、フランスでも、アメリカに対しても、実は通商航海条約はまだ作った経験がないので、非常にこわいような感じを持っております。しかし、今度の共同宣言にもありますように、通商航海条約を作っていくという約束をいたしておりますので、これらのことは、今後の外交交渉上において進めて参りたいと考えておるわけであります。
 で、今日この賠償は、ただいま御説明申し上げましたようなことでわれわれはやっておるのでありまして、従いまして、特に何かアメリカの軍事的な手先になってやっているんだとか、そういうことは全然ございません。
 なお、東洋精機なり、あるいは技術者の問題等については、通産大臣から御答弁申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点の南ベトナムとの貿易関係でございまするが、現に関税につきましては最恵国税率を適用いたしておるのでございます。
 次に、北ベトナムとの貿易関係でございまするが、賠償交渉が行われましたときに、北ベトナムは、対日貿易は原則的に中絶するという声明をいたしましたが、その後わが国関係業界の要望をも受け入れ、北ベトナム政府の外国商業部が、日本各層の要望により、当面配慮的な貿易を行なうとの声明を行なった。まあただいまのところ、従来通りに貿易が行なわれております。これは、やはりわが国が非常に輸入超過国でございまして向こうといたしましても、お話の地下資源、たとえば無煙炭等をわが国に輸出したいという気持がございます。また、現に輸出しておりますので、私は、北ベトナムとの関係は、賠償交渉いかんにかかわらず、有無相通ずる原則によって今後も相当期待いたしたいと考えております。
 第二の御質問の、賠償を支払っておるビルマ、インドネシア、フィリピンとの貿易関係は、その後発展していないじゃないか、そういう御質問でございます。これは、佐多さん御承知の通り、東南アジアは、過去二、三年の間、いわゆる農産物価格の下落によりまして外貨が非常に不足いたしておるのであります。そうしてまた、わが国といたしましては、インドネシアを初めとして、オープン・アカウントの貿易形式をやめまして、現金決済になった関係上、外貨不足と、それによって貿易が従来のように円滑にいっておりません。しかし私は、今まで実施いたしましたこの賠償が実を結んで、これらの国々の経済開発ができれば、だんだん東南アジアとわが国との関係は緊密化し、そうして末広がりになることを期待いたしておるのであります。それがわれわれの賠償をいたします念願の一つであるのであります。
 次に、東洋精機の問題でございますが、これは、昨年五月三十一日に塚本総業株式会社とベトナムの新興通商との間に契約ができまして、五月三十一日に通産省に輸出の申請が出たのでございます。しこうしてその輸出品目は、工場設備用設備機械一式と、こうなっているのであります。しかも、スタンダード・ペイメントでございまして、標準決済という場合におきましては、通産省におきましては、その内容を一々検査しないのが例でございます。すぐお金がもらえるものならば、しかも向こうからよろしいと言っている、こういう場合には品目を精査いたしません。ことに申請者が塚本総業となって、何ら弾薬に関係があると知らなかったものでございますから、これを許したのは事実でございます。結果においてこれが弾薬製造のプラントであるということはあとから知りまして、そうして塚本総業に対して相当の抗議をいたしているのでございます。今後こういうことのないようにいたしたいと思います。
 それから、技術者の問題でございますが、これは所管でございませんが、一応私の聞いているところでは、日本技術協力会社とベトナム政府との間に技術者派遣の契約がございまして昨年の四月に十九名の技術者が参りました。その後九名こちらに帰りました。去年の七月にまた二名追加して行っているそうでございます。これは、為替管理の方から聞き及んだことでございます。(拍手)
#36
○議長(松野鶴平君) 佐多忠隆君。
   〔佐多忠隆君登壇、拍手〕
#37
○佐多忠隆君 岸総理大臣は、先ほど私が、岸総理のベトナム直接訪問によって賠償方針が変わったのじゃないか、賠償でやるという方針に変わったのじゃないか、そのいきさつをと申しましたのに対して、そういうことはないというふうにお答えになっただけであります。私は、そのいきさつを詳細に事実をもって提示、説明を願いたいと言った。と申しますのは、私の調べによりますと、なるほどベトナム側からは、一九五六年の八月に始まった当時の小長谷大使との間から、二億五千万ドルの賠償要求があったことは事実であります。しかし日本は、これを賠償の問題としては拒否し続けて参っていることも、総理がよく御存じの通りであります。こえて五七年三月になりまして、インドシナの特別円をフランスに支払う、これで政府は、大体賠償の問題を片づけるというお気持であったのかもしれませんが、これがかえって、インドシナに払われずに、フランス政府に支払われた結果として、いろいろな問題ができてきてさらに賠償り要求を強くいたしておりますけれども、それにもかかわらず、五七年の九月植村特使が参ったときには、明らかに賠償ではやらないのだということを、明瞭に拒絶をいたしております。その前後に、日本工営の先ほど申しました久保田社長は、同じ折衝をいたしたときに、賠償でなくて、経済協力で、借款で、融資でという問題を出して、ややそれに同意を得るかのごときいろいろな事実があったにかかわらず、そういうふうに進展をしているときに、岸総理が飛び込んで行って、賠償の共同声明をやられた。そういういきさつによって方針が変更になったのでありますから、これらの点を首相みずから詳しく御説明になることを私は要求をいたしているのであります。同時に、そういう方針変更が失敗であることは、先ほどるる申し述べた通りであります。
 第二点の、この唯一正統な政府としての扱いの問題でありますが、なるほど総理も外務大臣も御説明のように、一方は四十九カ国が承認をしておるし、他方は十二カ国の承認にすぎないというような問題はありますが、事実は先ほど申しましたように、フランスはベトナム民主共和国をまず独立国として承認をし、その後またバオダイ政権を承認をしておる。しかもその場合に、前者の承認を取り消す等々のことは何らなされておらない。かるがゆえに、ジュネーブ会議においても、また、バンドン会議においても、先ほど申しましたように、両国がおのおの独自のものとして招請をされて、そういう取り扱いを受けておる。従って、南だけが唯一正統の政府であるとして扱うということは、日本の独善にすぎないのであって、現実はそれに違っておる。従って、また繰り返し申し上げたように、問題は必ず残るのでありまして、この問題を残らないとは政府も言われないだろうと思う。それに対する態度をどういうふうにお考えになっているか、あらためて詳しく御説明を願いたい。
 さらに、先ほど外務大臣が借款の方は輸出入銀行が相手であるから、政府に責任はないということを言われた。そういう無責任な、ルーズな気持でおられるから問題を間違うのであります。輸出入銀行は、私から申し上げるまでもなく、れっきとした政府機関であるということは、大臣もよく御承知の通りでありましょう。かるがゆえに、政府に責任がないんだというお言葉は、ここではっきりと取り消していただきたい。そういうルーズな考え方で賠償、借款を扱われるから、今度のような失態を演ずることになるのでありますから、その点の取り消しもあわせてお願いをいたします。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#38
○国務大臣(岸信介君) お答えをします。
 ベトナムと賠償交渉の問題につきましては、実は七年余にわたっておるということを申し上げておきます。この間において、われわれのこの交渉の経緯は、ベトナム側が二億五千万ドルという巨額をわれわれの方に要求をし、われわれの方はそういう大きな額の賠償をすべきものではないという、この金額の点につきまして、両者の間に非常な大きな隔たりがあったのであります。方式自体におきまして、一切の賠償はしないんだというふうな考えでもって初めからこの交渉に当たった経緯はございません。この意味におきまして、私が参りまして、そういう賠償方式に切りかえたんだというふうな御意見でありますが、そういう事実は、今申しましたような経緯からいいましてないのであります。初めから賠償の方式については、これをやる、しかしながら、金額についてベトナム側の二億五千万ドルという巨額なものではないという、この金額について非常な大きな隔たりがあって交渉が長引いたのは事実でございます。
 次に、ベトナムの政府を正統政府として、全ベトナムを代表するものとして賠償するということについての見解につきましては、先ほど私が申し上げた通りに政府は考えておるのでありまして従って、全ベトナムに対して、この全ベトナムを代表する正統政府として、ベトナム共和国との間に今回の戦争によるところの損害を一切賠償するという、この関係に私どもはなる。従ってあとに問題が残るというふうには考えておらない。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#39
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御質問の第一は、北の方ともフランスは折衝していたじゃないか、また承認をしていたじゃないかということでございますけれども、むろん、先ほどもちょっと申し上げましたように、北の方と折衝したことはございます。しかしながら、一九四六年の十二月には、フランス軍と衝突をいたしております。翌一九四七年の二月に、フランスはベトナム共和国を、いわゆる北ベトナムでございますが、北ベトナムを相手としないということを言っております。
 それから輸出入銀行が政府の機関でないというような趣旨の発言をしたといたしましたならば、つつしんで取り消します。(拍手)
    ―――――――――――――
#40
○議長(松野鶴平君) 東隆君。
   〔東隆君登壇、拍手〕
#41
○東隆君 私は参議院社会クラブを代表して、日本・ベトナム賠償協定と、日本・ベトナム借款協定について、岸首相と関係閣僚に質問をいたします。
 第二次世界戦争後、オーストラリアは、軍国主義日本の復活をおそれ、日本による侵略が再び起きぬために、太平洋沿岸の国々で集団安全保障条約を結ぼうと主唱いたしました。このように不信を買い、危険視された日本が、国際社会に復帰し、アジアの諸国と友好関係を結ぶため、被害国に賠償をすることはきわめて重要な意義があります。しかし同時に、これがわが国民の血税であることを忘れてはなりません。現在わが国民は、ビルマ、フィリピン、インドネシア等に多額の賠償を支払いつつあります。この負担に耐えているのは、賠償に対して国民に深い理解があるからと言わなければなりません。今回、政府はさらに二百億円に上る賠償額と借款の協定をベトナムと結び、その承認を求めております。この際、政府は、国民の理解を進めるため、両協定を結んだ理由を国民の前に明らかにする必要があります。なぜかなれば、岸内閣は本年五月、国民に十分な理解を与えないのみか、こうごうたる非難の中に調印を急ぎ、今日その承認を国会に求めているからであります。この、まさにいわくつきの協定に対し、政府は明快な答弁をし、国民の疑義と不安を一掃する責務があります。質問の第一は、賠償が二重払いにならぬという根拠を明らかにしてほしいことであります。南ベトナムに対する賠償が南北ベトナムの賠償になるという点についての藤山外相の説明は不明確であります。南ベトナムは四十九カ国、北ベトナムは十二カ国が承認している。多くの国から承認されている南ベトナムを代表する国家として、これに賠償を支払うのは、南北両ベトナムに支払うことになるというお答えには納得ができません。今日十七度線を境として南北の両ベトナムの主権国家が存在していることは、承認国の多少によるのではありません。二つの主権国家が存在するという現実的な観点から賠償は処理されなければならぬはずであります。南北ベトナムの統一については、藤山外相は「喜ばざるを得ないのでありまして」と、消極的賛成を表していますが、この二カ国間に統一選挙が行なわれる場合、統一政府がこの賠償協定を否認し、新たに賠償請求を起こすことは、岸内閣が中共その他から敵視政策を進めていると見られている今日、協定の破棄ぐらいは朝飯前のように思われます。これは日本と統一ベトナム間の問題でなく、東西冷戦の中にあって、国民が戦争を回避するために二重払いをさせられるときであります。日本国民の不安とするところは、藤山外相の国際法理論による説明では、その不安は解消されないのであります。現実に二つのベトナムが存在する場合に、その一方に賠償することは、統一ベトナム政府に血税を再び支払わなければならぬことになります。統一ベトナムは岸政府も望むところであります。この統一ベトナムに対し、将来二重払いをすることはないという根拠を明確に説明されたいのであります。
 第二は、このような不安な賠償が調印されることによって、従来の諸国家との間に結ばれた賠償協定の再要求が起こることであります。現に、ビルマは再検討条項に基づいて増額の要求をしてきたと伝えられております。南ベトナムに対する賠償批准が行われるならば、ビルマはさらに強く増額要求の態度に出るでしょう。その際、今回のベトナム賠償の算定の基準が国民の前に明らかであり、国民の納得し得るものならば、ビルマの再要求に対し、国民みずからが判断し、その態度を明らかにすることができましょう。しかしながら、国民が疑心暗鬼の中にあるとき、日本政府は、いかにしてビルマの強い増額要求をはねのけるか、説明を願います。
 第三の質問に移ります。北ベトナムとは現に数十億円の貿易が行なわれています。北ベトナムは、わが工業生産物の有望な市場であると同時に、わが製鉄業に必要なホンゲイ炭の供給源であります。将来、開発を押し進むべき貿易圏であります。この貿易の中絶は賠償批准と期を一にすると想定されます。北ベトナムとの貿易中止が、平和外交を破り、日本国民生活に大きな影響を及ぼすことは火を見るよりも明らかであります。このマイナス面に対し、現在については、先ほど通産大臣より説明がございましたが、外務、通産、大蔵の各省はいかにこれに対処されるか、明らかにされたいのであります。
 次に、総理大臣に二点伺います。総理は、国際緊張は雪解けに向かいつつあると施政方針演説のうちに明らかにされました。また、わが国民は、政府が国際緊張緩和に積極的な役割を果たすことを期待しているのであります。従って、南北ベトナムの統一は文字通り押し進むべきであります。しかるに今回の賠償協定を取り結ぶことは、南北ベトナムの分割を固定し、その統一を阻むことになります。この矛盾に対し、総理はいかように国民を納得させるか、その割り切り方について考え方を述べられたいのであります。
 第二は、不幸にしてこの賠償並びに借款協定が承認されたときであります。特定の商社がもうけるためにすでに暗躍しているという国民の疑惑があります。直接、業者とベトナム政府間に交渉が進められるからであります。この際、国民の疑惑を一掃するために、両協定による供給物資の中身を明らかにするとともに、原価並びに輸送費その他の明細を、実績として国民の前に公表する必要があろうと思うのであります。国民を納得させるために公表する決意があるかいなかを、総理の口から明書をせられたいのであります。
 最後に、北ベトナム政府は十一月一日、藤山外相の賠償に対する態度を非難ずる声明を発しております。また、先に北ベトナム政府は賠償要求権を保留することも明らかにしております。われわれは、わが国政府が正当な根拠に基づく主張を持ち、他国からする非難が根拠を持たず、不当なるものであるならば、わが政府の正当性を擁護するにやぶさかでありません。しかしながら、今回の北ベトナム政府が日本政府に損害賠償を要求するのは、南北ベトナム両地域全人民の権利であるとして、南ベトナムとの協定を承認しないことを強調する場合、これに対して、われわれは明確な政府の方針が示され、今回の賠償が全ベトナムに及ぶものであるという確固たる説明がない限り、われわれは、わが国政府の方針を支持し得る根拠を持たないのであります。従って、総理は今回の協定に対し、その実施を見合わせ、国民の深い理解を進めるために再検討することが、わが国の進むべき道であると理解され、安保条約改定とともに、この両協定を国民の意思に問うため、議会を解散する意思がないか、所見を尋ねて質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#42
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 今回われわれがベトナム共和国政府との間に結んだ賠償協定は、将来、ベトナムが統一された場合に、統一政府に対して二重払いになるおそれはないかという御質問であります。言うまでもなく、われわれはベトナム共和国政府を正統政府として全ベトナムを代表するものとして、今回の賠償協定を結ぶものであります。しかし、現実にジュネーブ協定にもありますように、休戦状態にあって、事実上民族が分かれているという状況でありまして、これが統一を望むことはこれは当然であり、また、そういうことができなければならぬと思いますが、統一政府ができる場合におきましては、私は当然ベトナム共和国政府の持つところの権利義務を継承するというのが国際法の通念でありまして、われわれはいかなる意味においても将来二重払いをする考えを持っておりません。
 次に、国際緊張の緩和の点から見て、今回の賠償をすることが南北統一を妨げることになりはしないかという御質問であります。現在、南北ベトナムが統一をできないという理由は非常に深いものがあり、またその溝は大きいのでございます。これは御承知の通りであります。従って、われわれが賠償するかしないかというようなことによって、統一ができるできないというような問題ではないことは言うを待たないのであります。われわれは先ほど来申し上げているように、国際の一員として、われわれの平和条約上の義務を、われわれが一日も早く、この日本の負うておる責任を果たすことによってそうしてあらゆる国との友好親善の関係がかなっていくものと、こういう見解に立っておるわけであります。
 次に、このベトナムの賠償が実施される場合において、具体的の契約の内容等を公表しろというお話であります。先ほど外務大臣が御説明申し上げましたように、この賠償協定も、フィリピンやインドネシア等との協定、条約と同じように、いわゆる直接賠償主義をとっておりまして、当該国と日本の商社との間の契約によってやられるのであります。しこうして、その契約の内容については、もちろん日本政府においてこれが審査をいたしております。従来の例の通りでありますが、これを公表するということは従来もいたしておりませんし、また、することは適当でないと思います。
 最後に、このベトナムの賠償協定及び安保条約を兼ねて国会を解散しろというお話でありますが、しばしばお答、え申し上げておりますように、私はそういう意思を持っておらないのであります。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理がお答えになりました以外の私に対する直接の項をお答えいたしたいと思います。
 ビルマ側の強い再要求をいかにして拒否することができるのかというお話でございます。先ほど御説明申し上げましたように、ビルマは、本年春、条約についての再検討条項を申し入れて参っておることは事実でございまして、ただいまの日本・ビルマ平和条約五条一項によってこれを申し出て参ったわけであります。むろん当時の申し入れば、インドネシア及びフィリピンを特に文書の上で指示して参ったわけでありまして、ベトナムについて、文書の上でそれを比較するというようなことを書いてきておりません。従いまして、インドネシアとフィリピンとビルマとの関係においてこれを見て参るわけであります。現在の交渉におきましても、その点についてわれわれとしては不当でないのだ、そうしてこれが適当な金額であるのだということを現在主張しております。そういう正しい理解を進めながら、今日なお交渉を続けているのが現状でございます。
 なお、ベトナムとの貿易の中止は必至だと思うが、これに対してどう思うかということでございます。先ほど通産大臣がお答えになりましたように、北ベトナムとの貿易関係は、現在比較的スムーズにいっておりまして、昨年の数字から見ますと、本年の一―七月は、昨年の数字よりは輸出入ともふえております。従いまして、今後もここらの関係を、できるだけ貿易関係をスムーズにして参りますようにやって参りますことは、もう当然のことでありまして、われわれとしては、できるだけそういう方策をとって参りたい、こう考えております。
 なお、賠償の協定ができて、そしてその実施の内容について説明しろということでございますけれども、批准を経まして、いよいよこれが発効いたしますと、実施協定を作って参ります。そして、その実施協定は、御承知の通り、従来のように年度割りその他になって参ると思うのでありますが、それらについてはむろんベトナムと日本の業者との協定を承認を与えるように要求されてくるわけでありまして、そういう際には当然その内容もわかる、世間にわかることはむろんのことでありまして、そういうことを隠そうとはわれわれは考えておりませんが、現在実施協定に入っておりませんので、細目は何も決定はいたしておりません。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(池田勇人君) 北ベトナムとの貿易関係は、ただいま外務大臣、また先ほど私がお答えいたしました通り、日本との関係は、わが国がホンゲイ炭等地下資源の輸入国でありまして、従いまして、私は、日本も買ってきましょうし、そのかわりに向こうからも買っていただくよう、相互に貿易は増進をしていくことを期待いたしております。(拍手)
#45
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって、御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十六分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、請暇の件
 一、国会法第三十九条但書の規定による議決に関する件(米価審議会委員)
 一、商品取引所審議会会長及び同審議会委員の任命に関する件
 一、運輸審議会委員の任命に関する件
 一、電波監理審議会委員の任命に関する件
 一、日本放送協会経営委員会委員の任命に関する件
 一、労働保険審議会委員の任命に関する件
 一、中央更生保護審査会委員の任命に関する件
 一、社会保険審査会委員長の任命に関する件
 一、日程第一 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)
ソース: 国立国会図書館
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