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#1
第033回国会 本会議 第7号
昭和三十四年十一月十一日(水曜日)
   午前十時二十五分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第六号
  昭和三十四年十一月十一日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件。
 外務大臣から、日米安全保障条約改定に関する交渉の経緯について発言を求められております。藤山外務大臣。
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(藤山愛一郎君) 日米安全保障条約改正交渉に関する現在までの経緯に関して、御報告いたしたいと存じます。
 安全保障条約の改正は、日米間の多年にわたる重要懸案でありましたが、一昨年六月、岸総理とアイゼンハワー大統領との会談において、当時の共同声明が明らかにしております通り、安全保障に関する諸問題を検討するため、日米安全保障委員会が設置されることとなり、この委員会は、同時に、安全保障の分野における日米関係を両国の国民の必要及び願望に適合するよう調整することを考慮する任務を与えられ、ここに安全保障条約改正への道が開かれたことは御承知の通りでございます。
 自来、条約改正の問題に関し、日米間に非公式に意見の交換を行なった結果、機ようやく熟するに至りましたので、昨年九月、私はワシントンを訪問して、故ダレス国務長官と会見し、条約改正交渉の開始を提議するとともに、条約改正に関する日本の希望事項を申し入れた次第であります。当時申し入れました事項を要約いたしますと、安全保障条約は現在まで日本の平和を守るため重要な寄与をなしてきたが、現行条約は、その締結当時の事情を反映し、必ずしも日本の国民感情に沿わぬ点があるので、これを現在の日本の国情及び国際的地位にふさわしいように改正する要がある。さらに内容的にいえば、米国の日本防衛に対する援助義務を明確化すること、日本の負うべき義務は憲法の範囲内に限らるべきこと、条約運営に関し日本の発言権を強化し、特に在日米軍の配備及び装備の重要な変更、並びに極東の平和及び安全の維持のため日本の施設及び区域を作戦的目的に使用することを事前協議の事項とすること、条約に一定の期限を設けること、その他現行条約中現状にふさわしくない諸点に所要の改正を行なうことであります。ダレス長官はこれに対して、日本側の事情に対する十分な理解を示し、条約改正の交渉を行なうことを応諾し、現在の交渉か開始されるに至った次第であります。
 その後引き続き、同年十月、東京において、マッカーサー在日米国大使との間に条約改正に関する第一回公式会談を行なう運びとなったのでありますが、さらにこの間、広く国内世論の動向に注目しつつ、新条約の内容につき具体的検討を加えました結果、その大綱につき日米間の見解調整も漸次進捗し、現在まで公式会談を重ねること十六回に及びまして、いまだ案文についての最終的調整は完了していないのでありますが、交渉はほぼ妥結に近づいている次第であります。以下新条約の内容につきまして、その概要を御報告いたしたいと存じます。
 新条約は、まず前文において、日米両国は民主主義の原則を擁護し、両国間の経済協力を緊密化すべきこと、国連憲章を尊重し、すべての国と平和的に共存することを希望すること、及び両国が国連憲章に定める自衛の固有の権利を有することを確認するとともに、両国の極東の平和及び安全の維持に対する関心を表明することとなると存じます。
 条約本文につきましてはその内容となる事項は概要次の通りでございます。
 第一は、日米両国が国連憲章の原則に従い、国際紛争を平和的に解決することとし、国連の目的に違背するような武力の行使または武力による威嚇を行なわない。また、日米両国は、国連の平和維持機構としての機能強化に努力するということであります。御承知の通り、現行条約は、日本の国連加盟前に締結された事情もあり、国連憲章との関係についての規定を欠いておりますので、新条約においては、これに関する明確な規定を設けることにより、日米両国は国連憲章に従い行動すべきこと、及び新条約は国連憲章のワク内における安全保障の措置であることを明らかにし、さらに進んで、日米両国が他の平和愛好国と協力して、国際平和維持の機関としての国連強化に努力すべき旨を表明することといたしたのであります。
 第二は、日米両国は、民主主義の原則を尊重し、安定と福祉を増進して友好関係の強化に努め、さらに経済的協力関係の緊密化に努力するとの趣旨を表明することであります。日米両国が安全保障上密接な協力関係に立つことは、両国が政治経済上の広範な協力の基礎を有することによってのみ可能であります。この点において、日米両国は現に民主主義の共通の基盤に立ち、経済的にもきわめて緊密な関係にありますが、新条約においては、この関係をさらに発展せしめるとの両国の政策を明らかにすることといたしたのであります。
 第三は、日米両国は、個別的に、また相互に協力して、武力攻撃に抵抗するためのそれぞれの能力を憲法の範囲内で維持発展させるとの意図を表明することであります。この条項の趣旨は、日米両国が安全保障上の協力関係にある上は、各自、自衛のための能力を涵養するためみずから努力し、また協力するということでありますが、日本としては、憲法の範囲内でこれを行なうべきことを明らかにする所存であります。なお、自衛力の規模、態様等は、各自その国力、国情等に応じ、自主的に決定すべきものであるとは申すまでもないところであります。
 第四は、日米両国は、条約の施実に関し随時協議するとともに、日本の安全または極東の平和が脅かされる場合は直ちに協議することであります。日米安全保障の体制をすべて両国間の協議により運営していくということは、新条約の基本的考え方であります。従って、条約の実施に関し、常時密接に連絡を保つとともに、日本の安全が脅威されるとか、または極東の平和が害されるような事態を生じた場合は、これに対処するため直ちに協議を行なうことといたしたのであります。
 第五は、日本の施政のもとにある領域において武力攻撃があった場合は、日米共通の危険に対処するため、憲法の規定と手続に従って行動することを宣言するとの趣旨を規定することであります。この場合、国連憲章第五十一条に基づき武力攻撃に対してとられた措置は直ちに安保理事会に報告され、安保理事会が平和回復の措置をとった場合は終止されることとなります。現行条約は、米国に日本駐兵の権利を認めておりますが、少なくとも条文上においては、日本防衛の義務が明記されておりません。現在米軍の撤退が進んでおりますので、米国の日本防衛義務を明確化することは、侵略を未然に防止するため特に重要であると考えるものであります。この点に関連いたしまして、通常の安全保障条約においては、特定の地理的範囲における各締約国の領土に対し攻撃が加えられた場合における相互援助を規定していることは御承知の通りであります。しかしながら、日本の場合、憲法上の関係よりも、外国領土防衛の義務を負うことは考えられないことであり、従って、条約地域は日本領土に限定することといたした次第であります。日本領土で現在日本の施政下にない地域、特に多数同胞の居住する沖縄に対しては、国民感情上も特殊の関心が抱かれることは当然でありますが、この点に関しては、世論の帰趨を見定めつつ、慎重検討の結果、当面、条約地域は現に日本の施政下にある地域に限定することといたしましたが、将来これらの地域の施政権が返還されれば自動的に条約地域に入ることとなる次第であります。すでに申し述べました通り、米国の日本防衛義務を規定するため、日本の施政下にある領域において攻撃があった場合には、両国は、憲法上の規定と手続に従い所要の行動をとるという趣旨の、この種の条約における通常の方式の規定を設けることとなっておりますが、条約地域が日本の施政下にある領域に限定されていることは、新条約の著しい特徴であります。在日米軍に対する攻撃は、日本自身に対する攻撃なしには行ない得ないところでありますから、日本として自衛上これに対処すべきことは当然であり、新条約により実質的に何ら新しい義務を負うことにはならないのであります。
 第六は、日本国の安全並びに極東の平和と安全に寄与するため、米国軍隊による日本の施設及び区域の使用を許すことであります。日本の安全及び極東の平和と安全を維持するため日本に米軍の駐屯を認めることは、現下の情勢より見て依然として必要であると考えるものであります。なぜかならば、極東の平和と安全なくして日本の平和と安全は期し得ないと信ずるからであります。米軍駐屯は、日本の安全及び極東の平和と安全の維持を目的とするものでありますが、米国が国連憲章の目的と原則に従い行動すべきことは、その現実の政策の示すところであるのみならず、新条約においても確認されるところであります。従って、極東の平和と安全の維持のため米軍が軍事行動をとるのは、国連の行動の一環として侵略に対処する場合か、国連憲章第五十一条に基づく自衛権行使の措置として行なうかのいずれかであることを付言いたしたいと存ずる次第であります。
 第七は、条約の期限に関して、条約発効後十年を経過した後は、いずれの当事国も一年の予告でこれを廃棄し得ることとするとともに、国連が日本区域の平和と安全のため十分の定めをする措置をとったときは、この期間内においても効力を失うものと定めることであります。
 安全保障の体制において特に重要なことは、安定性であると考えます。すでに申し述べたところに明らかなように、新条約の性格は全く防衛的のものであり、今後における国際情勢の進展において、日米間に安全保障の体制が存在することにより困難な事態が生ずることは考えられないところでありまして、日本が今後平和的に発展をはかっていく上にも、十年という安全保障上の安定期間を持つことは重要であると考える次第であります。もちろん国連により日本の平和が保障される時期のすみやかに到来することは強く希望するところであり、新条約にもこの趣旨を明らかにすることといたします。これに関連し、日米両国が国際平和維持の機関としての国連の強化のため努力すべき旨を表明することとなることは、すでに申し述べた通りでございます。
 第八は、条約の付属交換公文において、米軍の日本への配備及び装備における重要な変更、並びに極東の平和と安全のために日本領域以外に対して作戦行動するため、米国が日本の施設及び区域を基地として使用することは、日本政府との事前協議を要する事項とすることを明らかにすることとなっております。なお、これらの事項に関して、米国は一方的行動をとらないということは、日米間の交渉の過程においてすでに明確に了解されているところであります。現行条約においては、少なくとも条文上は、これらの事項に対して何らの規制がなされていないことは御承知の通りであります。米国はこれまで条約の運営にあたり、事実上努めて日本政府及び国民の意向を尊重しているのではありますが、新条約においては、日本の発言権を確立し、国内の不安を一掃するため、条約の運営、特にこの二つの事項について、明文上、日本の自主的立場を明確化することとにいたしたいと考える次第であります。
 なお、行政協定につきましては、協定締結後現在までの運営上の経験及びNATO協定及びNATO諸国の協定運営状況などにかんがみ、現行協定の内容を各条にわたり検討いたしました結果、第二十四条緊急事態に関する規定及び第二十五条二の(b)項の防衛分担金条項を削除し、第二条及び第三条施設及び区域、第九条出入国、第十一条通関、第十二条調達及び労務、第十四条特殊契約者、第十八条民事請求権等の規定に、所要の改正及び運営上の改善をはかるとともに、その他の条項につきましても必要な調整を行なうこととし、交渉を進めて現在に至っておりますが、行政協定につきましても交渉は妥結に近づきつつある次第であります。
 以上申し述べました通り、このたびの交渉は、今日まで日本の平和を守るため重要な役割を演じてきた日米安全保障の体制を堅持しつつ、両国の相互信頼と協力の関係を基礎として、現行条約を現状に即するよう改正することを目的とするものであります。しこうして、この交渉における日本側の基本的立場を重ねて要約すれば、新条約は、国連のワク内における安全保障の措置として、厳に防衛的性格のものとすること、日本の負うべき義務は憲法の範囲内にとどめること、及び日米対等の基礎に立って条約の運営における日本の自主性を確立することの三点を根幹とするものであり、幸いにして、米国側の理解ある態度により、交渉はこの線に沿いとりまとめることができると確信いたしている次第でございます。
 世界における緊張緩和は、わが国外交の最も重要な目標でありまして、国連を中心として今後ますますこの方向へ努力すべきことは申すまでもないところであり、現在大国間に話し合いにより局面の打開をはかる気運が起こっていることはむろん歓迎するところであります。しかしながら、東西両陣営ともに集団安全保障の体制をゆるめる兆候は何らうかがえず、むしろ集団的安全保障体制の基礎に立つ話し合いと見るのが正しいと考えるものであります。政府といたしましては、現存する安全保障の体制を合理化して、日本の平和を守ることに遺憾なきを期し、安全保障上の安定性を基礎として日本の平和的発展の道を開くことを念願とするものであります。
 以上、安全保障条約改正に関する日米間の交渉の経緯について御報告いたしたのでありますが、政府といたしましては、交渉の妥結とともに、すみやかに新条約及び新協定に調印し、次期通常国会においてこれが承認を求める運びといたしたいと考えている次第であります。(拍手)
#5
○議長(松野鶴平君) ただいまの演説に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。中田吉雄君。
   〔中田吉雄君登壇、拍手〕
#6
○中田吉雄君 私は、ただいま行なわれました藤山外務大臣の安全保障条約改定に関する中間報告に対しまして、日本社会党を代表しまして、岸総理、藤山外相並びに関係各大臣に質問せんとするものであります。
 安全保障条約の改定は、わが国の平和と独立にとって重大な問題であります。従って政府は、わが党の要求を待つまでもなく、政府の行なわんとするところを国会を通じ堂々と国民に訴え、また国民の一半を代表する社会党の主張に対しましても、これに謙虚に耳を傾け、野党と国民の理解と協力のもとに、誤りなき外交の推進を期すべきだと思う次第であります。しかるに岸内閣は、安保改定に関する日米の交渉は、ただいまの報告の通り、今やほとんど終わりまして、条章や字句の整理段階になって、社会党の要求に屈しまして、やっと中間報告をするというごときは、秘密独善、近代外交の何ものかを知らないものであって、国民とともに、わが党の深く遺憾とするところであります。
 現行安保条約の片務性を改め、これを対等のものにしたいという政府かねがねの主張は、新条約第五条の相互防衛にすりかえられ、その第三条には、新たに防衛力漸増の義務を負わされ、第六条には、占領時代の遺物であり最も重大な問題であります米軍の駐留を無制限に許しています。しかも第十条では、アメリカは今後十年、日本をその戦略体制の中に置き、その期限の弾力性についても耳をかさず、アメリカは日本に対しまして本質的な譲歩はいささかもいたしておりません。米国が防衛上の義務を負ったというようなことは、戦略上から見れば、きわめて意味の小さいことと言わなければなりません。昨年からの交渉の経過を見ましても、岸総理は、党内調整が難航し、藤山外相が四苦八苦されている際に、あたかも、どこの内閣の問題であるかというように、藤山外相にほとんどまかせきりであり、また藤山外相に至っては、国民的な要望をひっさげて強くアメリカに当たるの気魄なく、はなはだしきは、アメリカの意をそんたくし、国内向けの放送に終始されました。これでは日本の外務大臣ではなく、アメリカの代理大使であるといっても過言でないと思うわけであります。(拍手)たとえば、新条約は、日米相互防衛条約ないしは日米安全保障条約というべきものを、「日本とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障に関する条約」というような長たらしい表現でもって、軍事同盟の本質から国民を欺瞞せんとする点は、断じてわが党の容認しないところであります。政府は、この間、日本側としては自主性を確保し、国民の要望を最大限に取り入れるように努力されたと礼賛されていますが、これではむしろ外交上の無力を国民に深く陳謝すべきであります。この際、過去の行きがかりにとらわれず出直すべきだと思うが、総理の所見を伺いたいと思う次第であります。
 またこの交渉で、政府が最も強く主張し、アメリカの譲歩をかち得た点はどこであるか、またアメリカ側が最も固執して譲歩しなかった点はどの点であるか、具体的にその内容を明らかにされたいと思う次第であります。
 元来、アメリカの対ソ政策、その一環である日米安保体制は、アメリカの原爆独占、戦略爆撃機の圧倒的な優位及び周辺基地綱を前提として成り立つものであります。しかるに、今や原爆の一千倍の威力のある水爆を米ソ両勢力が持ち、戦略爆撃機はミサイルに急速に取りかえられ、周辺基地の価値は著しく減殺しています。従って、アメリカでさえ、すでに三千億ドルという膨大な軍事支出をもっても、その世界政策の展開が行き詰まっております。かえってアメリカ経済の国際競争力を弱め、おびただしい金の流出となり、内外両面から政策の転換が迫られております。このようなとき、わが国の戦略的な地位を過大に評価し、安保体制を強化することは、共同防衛の美名のもとに、アメリカの極東政策の危険と軍事費の転嫁を受けることが関の山であります。国際情勢に逆行し、有害無益の改定と言わなくてはなりません。
 政府は、口を開けば、中立政策は非現実的であると言っています。しかし、安保体制を強化し、米国とともに核兵器とミサイルを持つソ連や中国を仮想敵国にすることが、どうしてわが国の平和になりましょう。原爆戦には防衛なく、水爆戦には勝利者がないといわれる今日において、政府の政策こそ最も非現実的だと言わねばなりません。(拍手)本来、安全保障は相対的であって、絶対的な安全保障はあり得ません。米ソの原水爆とミサイルの間にあるわが国は、そのいずれにも偏せず、米ソの軍事力をわが国から引き離し、その衝突を防ぎ、万一の際にはその渦中に入らないという、社会党の積極的中立の外交政策こそ国民の願望であります。より危険の少ない、最も現実的な政策と言わなければなりません。また、政府は、中立外交は中国やソ連を利するものであると反対しております。しかし、ソ連が日本に求めるものは、日本の侵略ではなく、敵性のない中立日本であります。またアメリカが日本に求めるものは、中ソの陣営に入らない日本であります。戦略的に見て、ソ連が日本を無傷で占領することは不可能であります。またアメリカも、米ソ戦争が起きました際に日本を防衛することもできません。ここにおいて米ソの日本に対する戦略的な要求が一致し、日本の中立政策の成立する前提があるわけであります。従って、中立政策はアメリカの政策と矛盾するものでもなく、何ら反米政策でもないわけであります。アメリカは、独立戦争以来今世紀まで八十年、モンロー主義をとって参りました。モンロー主義こそ疑いもなく中立政策であります。中立政策は容共でないことはこれをもっても明白であります。実に、中立外交は、強国の間にはさまれ、その支配に悩む小国が、自国の発展のためとるべき最良の外交政策であります。原爆とミサイルの発展、米ソ交換訪問は、中立政策の可能性を一段と増して参りました。中立政策は非現実的で容共的であるというようなことを言って、アメリカの政策を是認するようなことはとるべきでありません。政府は、せめてアメリカ寄りの中立政策について真剣な考慮を払うべきだと思うが、所見を伺いたいと思うわけであります。
 申すまでもなく、施設、区域の使用と駐兵権は、講和の代償としましてアメリカが得た占領の継続とも称すべき一大特権であります。当時、サンフランシスコ会議で吉田総理ただ一人署名されたにすぎません。イギリスのアスター女史のごときは、講和、安保の両条約を押しつけて、日本にアメリカが駐留を継続することは、原爆を落としたことに比すべき罪悪だと言っております。従って、この日米間における最も困難なこの問題を、安保条約の改定ではぜひ解決しなくてはなりません。最近、カリフォルニア大学の政治学教授ダグラス・H・メンデル博士の調査によると、米軍の駐留に対する日本人の反対は年とともにふえ、五八年二月に東京で行なった調査では、反対者の比率は、賛成八に対して五八%であり、同教授はこの報告の中で、私は日本において米軍駐留に対する広範な民衆の敵意を見出したと言っております。これが反対は単に社会党や共産党の一手販売ではありません。日米の紛争の根源はここにあるわけであります。しかるに、ただいま拝聴いたしました藤山外相の報告、伝えられる新安保条約草案、行政協定では、現行の駐兵権をそのまま認めておりますが、これでは一年もかかって何のための安保交渉であったか、その外交交渉を疑わざるを得ません。(拍手)占領中と通算し、合計二十五年、四分の一世紀も外国軍隊が駐留しなくては日本が守れないというごときは、もはや安全保障の名に値しません。むしろ外国軍隊の駐留による日本支配の形態と言ってもいいと思うわけであります。
 新条約草案第六条によると、日本国における合衆国軍隊の地位及び区域の使用については別に合意することといたしていますが、これでは、アメリカか必要といえば、原則としてどこでも提供しなくてはなりません。いわゆる全土基地であります。フィリピンですら、今年八月十四日、在比米軍基地縮小覚書に調印いたしました。クラーク・フィールド空軍基地等、たった四カ所に限定しました。他の基地の管理権と一切放棄することになったのであります。これでは、長い間アメリカの植民地であったフィリピンの基地協定以下と言わなくてはなりません。現在米軍に貸与せる基地の種類、面積、駐留軍の数、並びに新条約によってこれがどのような変化を来たすか、その点について日米交渉の経過をはっきりされたいと思う次第であります。
 また政府は、なぜこれを有事駐留とせずに常時駐留とされたかという点であります。外電は、これでもってアメリカはまた十年間日本に駐留することができる、アメリカ外交の勝利であると伝えています。講和、安保、両条約締結当時、国務省は、当初、有事駐留で日本が防衛できるという立場をとりました。国防省の主張で現在の状態になったことは御案内の通りであります。藤山外相も当初この点を主張されたということですが、アメリカ当局から拒否されたと承っていますが、その事実についてお伺いしたいと思うわけであります。ウォルター・リップマン、ハンソン・ボールドウィン、ジョージ・ケナン等、アメリカ一流の外交・軍事専門家は、米軍の日本からの撤退を主張いたしています。そうしてハワイ、サイパン等に駐留することによって十分日本の安全が保障されるといたしております。もし安保解消の前提といたしまして、新条約が有事駐留となりまするならば、今日のわが国の不幸である革新と保守との外交上におけるところの大きなギャップは次第に調整され、ここに大きな外交の前進が開けると思うわけであります。北大西洋条約でも、加盟十四カ国のうち、オランダ、デンマーク、ベルギー、ギリシャ、ポルトガル、イタリア等には平時は駐留いたしていません。米軍の平時撤退こそ安保改定の核心であり、極東の平和と日米友好の大きなきっかけだと思いますが、政府の所見をお伺いしたいと思うわけであります。過般出ましたコンロン報告も、日本から撤退し、有事駐留に切りかえることを主張いたしています。政府は真剣にこの問題を考慮さるべきではないかと思う次第であります。
 藤山外務大臣は、米軍の日本領域外の作戦行動や核兵器持ち込みに対する事前協議は、ただいまの御報告のように、拒否権を含むものであることをしばしば言明されております。しかるに、最近の毎日新聞が伝えました外電によっても、事前協議は何ら拒否権を含むものではない。承諾や同意でないことは、米議会に提出されない交換公文に譲ったことでも明白だと報じていますが、事実と非常に違うではありませんか。これでは政府は、アメリカと日本で二枚鑑札を使って国民を欺くもので、重要なる自主性の回復は全く空文であると言わなくてはなりません。今年九月二十九日、フィリピンの政府の同意なしにはアメリカはフィリピンに長距離弾道ミサイルを持ち込まないという米比協定を取りきめました。これは重大だというので、たしか本日、防衛庁の林統合幕僚会議議長はこの視察のためにフィリピンに行かれたはずであります。米国がフィリピンに与えた拒否権がなぜ日本に与えられず、米国の信義にたよるほか仕方がないというようなことでは、安保改定の資格はないと言わなくてはなりません。交換公文でなしに本文に拒否権を明確に規定するように再交渉すべきだと思うが、政府の所見を承りたいと思うものであります。(拍手)
 藤山外相は、安全保障における安定性の重要性を力説されました。これは条約の内容によることであって、特にそれは条約によって広大な外交特権を持つアメリカについて言うことであります。わが国にとっては、条約期間をきめる重点は、むしろ選択の自由が一そう重大であると言わなくてはなりません。特に軍事同盟から、ともすれば起こりがちな大国の横暴や行き過ぎをいつでもチェックできるように、期限内でも破棄できるようにするということは、これは外交上の常識であります。藤山外相は、期限内でも協議で終わらせることができるということをあちこちの安保のPRで申されております。それができるなら、なぜ一体それを明記しないのであるか。特に、もうそう長くもないといわれる岸内閣が、今後十年も、あとあと国民に迷惑をかけるようなことは、深く慎んでもらいたいと思うわけであります。(拍手)
 アメリカでは、私も昨年国会議員団の一人としてアメリカを見せていただきましたが、軍用機生産は非常な不況で、斜陽産業と称されております。軍用機からミサイルへの当然の結果であります。軍用機生産は、アメリカでは一九五五年に八千でありましたものが、昨年は四千に半減をいたしております。アメリカ政府の武器購入予算の中で、ミサイルは五五年に五・五%であったものが、五九年には二三・六%とふえております。ロッキードにきめました源田空幕長も認めていますように、もう軍事評論家の間では、有人機の将来はせいぜい十年だといわれております。防衛庁が当初三百機と予定したものを二百機に減らしましてミサイルに切りかえましたのは、這般の消息を物語るものであります。五年後に国産化が完了し、パイロットが養成できたころには、ちょうどロッキードは博物館行きであります。(拍手)これでは、ロッキードの製造会社、三菱重工業や川崎航空等のメーカーの救済や安全にはなっても、わが国の安全にはならぬことは明白であります。もはやロッキードかグラマンか以前の重要な問題であります。なぜ根本的な問題を解決せずこのようなことをいたしたか。一説によれば、安保条約調印のため渡米する岸総理が、日本の防衛決意を示すための手みやげに、ロッキードを急いできめたといわれております。その真相を承りたいと思うわけであります。
 また、主力戦闘機の決定は、防衛計画の一環としてなされたものであると思うが、これに参画された佐藤大蔵大臣は、防衛六カ年計画を財政上認めたことにならないかどうか。また、明年度の防衛庁費は、六カ年計画の初年度分として組むのであるか、そういう点を承りたいと思うわけであります。さらに防衛六カ年計画は、これは安保改定と重大な関係があるのですが、アメリカの軍事援助、国民所得の見通し等、非常に不確定な要素が多く、ずさんきわまりないもので、再検討すべきだと思うのですが、いかがでありましょう。
 なお、この際あわせて、この安保条約の改定は、アメリカの軍事援助と深い関係にあるのですが、今後もアメリカから軍事援助を受けることになると思うのですが、ガリオア、イロアの件であります。アメリカはこれが返済を求めているようでありますが、その交渉の経過と見通しはどうであるか。アメリカの下院歳出委員会における一九五一年度ガリオア予算公聴会におきましては、ヴォルヒーズは、日本が負担する終戦処理費は、ガリオア、イロアの対日援助費と相殺しても、なおアメリカが二〇%得な勘定となると言って、対日援助費と終戦処理費が相関関係にあることをうたっているわけであります。そういう点で、どのように政府はこれと対処されるか伺いたいと思うわけであります。
 わが国は、終戦以来今日まで十五年、安保条約を結んでからすでに七年、安保体制に従属して参りました。しかしながら、外では日ソ、日中、日韓、国内では政情不安等、何一つ内外の重要な問題が解決いたしません。これは中ソ両国を仮想敵国としたアメリカの戦略体制、安保体制が生んだ必然の結果であります。わが国が侵略されなかったのは、藤山外相の言われるように決して安保条約があったからではありません。ソ連と陸続きで、同盟条約に入らないフィンランドやスエーデンが侵略されなかったことをもって見ても明らかであります。しかもミサイルと核兵器の時代、なおさらソ連を仮想敵国とする安保体制を強化するよりなことは断じてすべきではありません。歴史的に見ましても、日英同盟、日独伊等の同盟の時代は、軍事同盟のない時代よりかもはるかに短いものであります。安保体制なしには夜も日も明けないという日本人のこの安保根性の打破こそ重要と言わなければなりません。
 吉田総理は講和条約、鳩山総理は日ソ友好を実現されました。わが国は中国問題で国の運命を誤りましたが、私たちが再びあやまちを犯さないためにも、中国問題こそわが国運の将来に関する重要な問題であります。わが国は中国に対して一千万の人を殺し五百億ドルの損害を与えたと言われます。アメリカに気がねをしてこの中国と講和をしないことは、道義的にも許されないと思うわけであります。政治体制をこえた問題であります。また、安保体制の強化より、日中友好の促進、両国親善こそが、日本の平和と安全のためにけっこうだと思う次第であります。このような際、岸総理が日中問題は静観と言われることは、実はアメリカ外交への追随であります。日中関係の打開ができない岸内閣は、日本の安全と平和のためにやがて退陣が迫られるでしょう。安保改定の藤山外相は、次期総裁の資格を喪失されたと言っても過言ではありますまい。
 このような際、コンロン報告が出ましてセンセーションを巻き起こしております。これはあたかも日本社会党の政策の剽窃ではないかと思われるほど、わが党の重要政策の多くを盛っています。中国は承認すべきであると申しております。池田通産大臣は、かつて国務大臣当時、中国を承認し、同時に台湾の独立と安全を国際的に保障するという、ダレスの最高の法律顧問であったセリグマンの見解を支持されたことがあります。後継総裁を目ざす池田大臣は一体どういうお考えであるか。すでに政治的な信念を放棄されたのであるか、伺いたいと思うわけであります。
 最後に、政府の弁明にもかかわりませず、予防駐留は国連憲章の精神に違反します。また、憲法のワク内と称することによって再軍備と共同防衛の違法性を阻却することはできません。平和憲法を実質的にじゅうりんする岸内閣に平和を求めることは断じてできないと思うわけであります。ドイツは「十八才以上の青年は兵役の義務を有す」という憲法が改正されるまでは再軍備もいたしませんでした。NATO条約にも加盟いたしませんでした。現在、憲法改正ができない際に、何よりもこの憲法を重要視し、もっと厳粛な態度で憲法に臨むべきだと思うわけであります。国運の消長に関しまする再軍備並びに安保改定については、国民の世論を聞いてもおそくはないと思うわけであります。日本の長きにわたる将来に関することを、国際信義に藉口してしゃにむに行なうべきではないと思うわけであります。
 以上私の質問を終わりまして、政府の責任のある答弁を求めるものであります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(岸信介君) 安保条約の改定の問題につきましては、先刻藤山外務大臣が説明を申し上げましたような経緯で、われわれは多年この問題の解決に努力をして来、またこれが実現につきましては、国民の意向、動向等も十分に尊重して、そうしてこれが改定の実現をしたいということで今日まで参っておるのでございます。従いまして、今日これを白紙に返して出直す意思はないかというお話でございますが、私どもはそういう考えはございません。かくのごとき慎重な態度で、また各種の重要な事項につきまして十分な検討を加えた上において改定に臨み、また今日まで交渉をしてきておるのでありますから、これを白紙に返して出直すというような意思は持っておりません。
 第二は、いわゆる中立政策をとることが、こういう安保条約を結ぶというようなことよりは、日本の安全を保障するに合理的な道であるという御意見でございましたが、この中立政策の問題については、私がしばしばこの席よりもお答えを申し上げております通り、中立政策というこの観念そのもの、これは別として、実際に中立政策を唱えておるところの、またそれが唱えられておる時代とそうしてその国の情勢というものを頭に置かなければ、政治的にこれを採用することはできないと思います。(発言する者多し、拍手)と申しますのは、日本におきまして中立政策を唱えており、この安保条約を廃棄しようという考え方が、容共的な考え方からそういうことを主張しておる者が一部あることは、これは事実でございます。(発言する者多く議場騒然、拍手)また同時に、そうでない考えをもってこれを主張しておられる方もあるのであります。私が中立政策を唱えておるのに二つあるということを従来申し上げておるのはそこであります。私は全部そうであるとは決して申しておりません。しかしながら、結果においてそういうわれわれのとってきた自由主義の立場、自由主義国との協力、日米協力という線から離れて、容共的な方向に一歩進むということに利用される結果になるということを私は申しているのであります。(発言する者多く議場騒然、拍手)そういう意味において、日本においてこれを現在においてはとるべきものではないというのが私の信念でございます。(拍手)いろいろ交渉の内容等についての御質問につきましては、外務大臣からお答えすることにいたします。
 また、次期戦闘機をきめたことが安保条約の改定と関係のあるような御議論でございましたが、これは全然違っているのであります。この次期戦闘機の問題は、国防会議におきまして国防を国力及び国情に応じて漸増するという国防計画の一部でございまして、その機械の問題についていろいろと検討してこれをきめたわけでございます。これは全然安保条約の問題とは関係ございません。
 日中問題の解決のことについての御議論でございます。私どもは、この日中問題につきましては、これまた、しばしばわれわれの考えを申し述べております通り、われわれは、この現在の状態に決して満足しておるものではない。しかしながら、この両国の間におけるところの友好親善を進めていくのには、今日の段階においては、いわゆる政治と経済とを分けて、経済関係やあるいは文化関係等も推し進めてこれを積み重ねていくことが、両国の関係を解決するに最も適当である、こういう考え方を私どもは堅持しておるのでございます。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理が答弁されました以外の点について御答弁申し上げます。アメリカとの交渉につきましては、先ほどの報告で申し上げましたように、日本としては、最初から主張しておりますように、アメリカ側が日本防衛の義務を持ってもらわなければ困る。また、条約に対する発言権を強化していく。あるいは配備、装備もしくは作戦基地の使用等につきましては事前に協議をする、あるいは期限等のないものに対して期限をつけるというようなことに対して、強く主張して参ってきたわけでありまして、交渉自体の内容については、むろん申し上げることはできませんけれども、私としては最善を尽くしたという確信を持っております。
 次に基地の問題でございますが、今回の条約におきまして、どうも基地を日本全土どこへでも設けられるのじゃないか、フィリピンは四カ所じゃないか、こういう御指摘があったと思います。むろん日本の基地を設定いたします場合に、いずれの土地に設定するかということにつきましては、日本と話し合いの上できめるわけでありまして、日本がそれらについて十分日本としての適当な場所と思う所を、やはり基地貸与の場合にも主張することは当然のことでありまして、従って、どこどこときめますよりも、現在ありますものを一応認めた上に、今後もこれがふえてこようとは思っておりません。しかし、それらのものについての整理というもの、それらについてはむろんわれわれの意思を十分いれていくわけでありまして、フィリピンにおきましても四ヵ所にはなっておりますけれども、米軍が必要とする基地は、フィリピン側で共同使用するということを承知しておるのでありまして、四カ所以外にも共同使用する場所があるように聞いております。
 なお、有事駐留の問題でございますが、この点は、われわれとして当然日本を守ってくれることでありますから、いてもらうことが必要であることもちろんでございます。しかし、現在における実情を申しますれば、現在陸上兵力はすでに撤退をいたしておるのでありまして、条約上におきましてこういう問題が扱われておりましても、実際は必ずしも常時相当に兵力がいるというような場合がないことはむろんであります。また北大西洋条約におきましても、条約自体には基地貸与の規定はございませんけれども、北大西洋条約当事国間の各自の軍隊の地位に関する協定によりまして、有事駐留のみを前提としたものではない。現に英仏独伊諸国には米軍が駐留をいたしております。そういう状況でありますので、私どもとしては現在の方針で進んで参りたいということを考えております。
 事前協議については、協議ができるのかということと、もう一つは、なぜ交換公文にしたかという御質問であったと思います。今回の条約は、先ほど御説明申し上げました通りいろいろな点で協議をしながら、運営して参るわけでありますが、その中で、特に配備、装備並びに作戦基地としての使用というようなものを摘出いたしまして、そうして交換公文にいたしたことは、それだけこれを重く扱ったということでありまして、この交換公文によりましたことが条約本文より軽くなったということは、条約の慣例上からございません。また、事前協議に当たりまして、協議でありますから、話し合いがつかなければ当然実行されないのであります。従って、お話のありましたように、拒否する権能を持っております。われわれ話し合いをいたしておりましても、当然それを前提として、アメリカ側も認めて話し合いをいたしております。
 次に、十年の条約は長過ぎるじゃないか、安定性というけれども、その必要はないんじゃないか、変えた方がいいじゃないか、こういう御質問であったと思います。私は、この種の安全保障に関する条約につきましては、やはり一定の安定性が必要だと思うのでありまして、十年は適当であろうということを考えている次第でございます。
 なお、予防駐留ということは国連憲章に違反しないかという最後の御質問でありました。集団安全保障体制をとっておりますのでありまして、国連の憲章には違反いたしておりません。(拍手)
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(赤城宗徳君) お答えいたします。ただいまお話のように、軍用機が有人機からミサイルに移行するというのは、これは世界の情勢でもあり、これは当然だと思います。しかしながら、さればといって有人機が全然用をなさなくなる、こういうことは考えらにならぬか思うのですが、誘導弾を射ち出すのは、飛行機から射ち出すこともありますし、地上から射つこともあるし、軍艦から射つこともあるのであります。そういう点におきまして、空対空の、ミサイルというようなものは、これは有人機から射ち出すことにもなります。それからまた防空につきましては、御承知のように有人機と高射砲とミサイルの三者の均衡がとれたものが、これは理想的だと思います。そういう意味におきまして、有人機はだんだんミサイルに移行する傾向はありますが、ミサイルによってはなし得ない機能を有人機は備えておりますから、有人機が絶対に不必要になる、こういうことはない、こう考えております。
 なお、第二次防衛六カ年計画はどうなっているか、こういうことでございますが、御承知のように第一次三カ年防衛計画を立てまして、三十五年度が終期になっているのでありますが、その目標に到達し得なかったものもあるし、一部修正をするものも出てきたわけでございます。でありますので、防衛の性質上ある程度の長い計画を必要といたしますので、三十五年度を初年度にするか、三十六年度を初年度にするかということにつきましては、なお検討の必要がありますけれども、お話のあったように、有人機からミサイルに変わるというようなこともありますので、ミサイルの一部などを開発導入するというようなものも含めて目下検討中でありますが、最終的な決定は、国防会議の議を経てきめたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま次期戦闘機決定についての防衛計画との関係のお尋ねがございました。ただいま防衛庁長官からお答えいたしましたように、今回の次期戦闘機決定は、申すまでもなく三十二年六月に決定いたしました第一次計画の残部の問題でございます。いわゆる第二次計画と申しますものは、防衛庁内において検討されておるものが、ただいま長官からの説明でもあるやに伺いますが、まだ大蔵当局との交渉を持っておりませんし、また国防会議にもかかっておりません。従いまして、次期戦闘機の問題は第一次計画の残部の問題だと、かように御了承いただきたいと思います。予算編成にあたりまして、いかにこれを取り扱うかという問題でございますが、もともと防衛計画そのものは、わが国財政力とにらみ合わせ、経済力とにらみ合わせまして漸増の方針でございます。ことに最近のような台風を受けておるこの際でございますので、来年度の防衛費の予算を激増するような考えはもちろん持っておりません。
 ガリオア、イロアの返済の問題についての交渉の経過並びにその後の見通しをお尋ねでございました。一九五一年になされたヴォルヒーズ陸軍次官の発言などを引用されて、その交渉の経過並びに見通しについてのお尋ねでございましたが、終戦処理費あるいは軍事援助、これと、いわゆるガリオア、イロアのような経済援助とは性質の違うものでございまして、これは別途に私どもとしては取り扱うつもりでございます。このガリオア、イロアの基本的な考え方につきましては、わが国政府は、長い間、これをわが国の債務と心得ると、かような基本的な態度に立ってこの問題を取り扱って参っておるのでありまして、今日このガリオア、イロアの総額はまだ決定されておりません。過去におきまして、いろいろの資料等からいろいろな説が出ておりますが、大体金額といたしましては二十億前後の金額ではないかと、かように考えます。しかし、このガリオア、イロアの問題を取り上げるといたしますならば、当然日米間におきまして、その基本的な総額を十分協議の上、約得のいくところで決定すること、これが一つの重大なポイントであります。同時にまた弁済方法等につきましても、十分私どもの立場において、私どもの主張すべきことを主張したい、かように考えておりますが、ただいままでのところ具体的交渉には入っておりません。この一事を御披露いたしておきます。(拍手)
   〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕
#11
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。中田さん御承知の通り、アメリカ合衆国におきましては、外交政策ことに中共に対しましてのいろいろの議論が従来からあるのでございます。しこうして、昨年の六月に、米国外交政策調査会長であるセリグマンが、しかもダレスと四十年間の友だちであるこの権威あるセリグマンが、彼の意見を発表いたしましたので、私は新聞記者会見において、こういうセリグマンの意見が出たよということを紹介しただけで、セリグマンの意見に賛成の意を表したのではございません。紹介しただけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(松野鶴平君) 千田正君。
   〔千田正君登壇、拍手〕
#13
○千田正君 私は、ただいま行なわれました藤山外務大臣の日米安全保障条約改定交渉に関する中間報告に対しまして、賛否の態度いかんはいずれ他日の機会に譲ることといたしまして、きわめて限られた時間ではありまするが、二、三の点について若干の質疑を行ないたいと思うのであります。
 まず、日米安全保障条約の改定交渉の根拠につきまして総理大臣並びに関係大臣にお伺いしたいと思います。従来の政府の国会答弁、各地における講演等の断片的報道を総合してみますると、安保改定交渉の根拠となったものは、およそ次のものであると思われるのであります。すなわち、それは、第一に日米安全保障条約を必要とする理由として、かつて政府はまず(1)単独で強大な軍事力を擁して自国の防衛を果たし得る国は米ソのみであり、日本は集団安全保障体制の力を必要とするということ。(2)国際連合が平和の確立のために十分な力と機能を発揮するまでは、日米の提携を必要とするということ。(3)米ソ首脳の交換訪問により緊張緩和の傾向がみられるが、ドイツ問題を初め、いまだ具体的に解決したものはないという点。(4)中ソ友好同盟条約の中に、日本を仮想敵国とした軍事条項があり、これに無関心ではおられない等々をあげ、第二には、七年前の現行条約を改定しなければならぬ理由として、現行条約がその後の事態の推移により実情にそぐわなくなったという点をあげ、具体的には自主性の回復、対等性の確立、双務性の創設、あるいは防衛体制の本格化等々をあげているのであります。これによってみると、主として政府は、アメリカと日本が自由主義ブロックの一員として対等に存在し得るようにすること、換言すれば、日本の完全なる独立のために改定に踏み切ったというのでありますが、その中において非常に危惧される点は、改定交渉の実体的基礎が、自主性や双務性云々という言葉に表わされているように、いかに政治的、経済的協力をうたっておりましても、それは七万五千の警察予備隊から出発して、今日は十八万の地上部隊を持つ旧陸軍に匹敵する兵力を中心とするところの、陸海空三軍の自衛隊の拡張と、その兵力の行使に重点を置かれているのではないかという点であります。自衛隊の違憲論争はすでに古くからあり、その結論も出ないうちに、自衛権に関する政府のいわゆる統一見解が次々に変貌している現在、憲法第九条が改正されたというのでもなく、国防軍が創設されて、それが個別的及び集団的自衛権を有することが確認されているという事実もないままに、自衛隊の増強という事実を基礎に安保改定をはかるということは、憲法違反の疑いがあると思うのでありまするが、これらの点に関して岸総理にお伺いいたしたいということは、第一に現在の科学の進歩は、戦争を起こす要因よりも、戦争を起こせないという国際情勢に対し、いかなる国を仮想敵国にし、また軍事同盟にひとしい改定をするのであるか。正しい判断のためには月の裏面をも観察する態度が必要ではないか。この点について御見解を承りたいのであります。第二には、集団的自衛権は自衛隊の増強を意味するのではないかという点であります。第三には、集団的自衛権と憲法第九条との関係に矛盾はないかという点であります。第四には、法律論的にはとにかくといたしまして、政治的に岸内閣の動向に不安を抱く国民に、安保改定と自衛隊の増強並びに国民の財政負担の増加等の関連を何と御説明になられるかという点であります。
 第五は、国民の世論のいかんを問わず、内閣の運命を賭しても改定断行の意思であるかどうか。昨日の新聞報道によりまするというと、滞米中の河野一郎氏は、ハーター国務長官との会談において、期限内改定論について話し合ったことが問題になっておるようでありまするが、首相は、このように党内の統一が十分でないままに、なおこの問題の強行をする意思があるのかどうか、この点の御答弁をいただきたいと思うのであります。
 次に、藤山外務大臣並びに赤城防衛庁長官にお伺いいたします。
 まず第一に、国連憲章の中で最も不十分であり、かつ例外的規定とさえ言われるところの第五十一条に基づく軍事同盟方式は、明らかに時代逆行のそしりを免れず、平和憲法を持つ日本は、この解消のためにあらゆる努力をなすべきであるという観点から、まず第一に、現行条約を国連憲章第五十一条に基づく軍事同盟方式の条約に改定することは、国連憲章の精神及び変化しつつある国連中心主義外交の妨げにならないかどうかということと、軍事同盟方式を白紙に還元して、むしろアメリカとアイスランドの関係のごとく、軍事条項を含まない日米間の条約に改める考えはないかどうか。また、国の運命を左右するこの種の外交問題の処理にあたっては、国論を統一してこそ真の外交というべきであって、国会を中心として各党各派の代表あるいは各界の代表からなる審議機関を設けて、慎重に研究して、統一したる方針を打ち出して、将来の日本の国民のために永遠の生命を守るべきが至当ではないか、この点をお伺いしたいのであります。
 次に、第二の点については、まず最初に、わが国の自衛隊に個別的自衛権があるとしても、日本の領土内にある米軍への攻撃に対抗して、自衛隊が米軍に協力して作戦行動を起こした場合、これは個別的自衛権の発動であるのか、その延長であるのか、あるいは集団的自衛権の発動であるのか、その区別をはっきりさしていただきたいと思うのであります。次に、わが国の自衛隊にも集団的自衛権があるという根拠を示していただきたい。たとえ海外派兵のおそれがないと仮定いたしましても、集団的自衛権の確立の結果、極東における国際の平和及び安全に寄与するための米軍の軍事行動により、わが国もまた戦乱に巻き込まれるであろうというおそれは、戦後十四年を経ました今日といえども、微妙な国民感情と心理に多くの暗影を与えるであろうことは、為政者として最も警戒しなければならないことであると思いますが、この点はいかがでありますか。
 第三には、内乱と安保の関係についてであります。現行条約の内乱条項は、あまりにも独立国としての体面を傷つけ、不当な内政干渉の印象を与えることは、今までも多くの論者の指摘してきたところであります。今回これが削除されることと思いまするが、外相みずから認められるように、第四条の協議事項は、明らかに米軍もまた内乱に出動し得るものであり、これでは、自主性の回復や独立の完成とは事実上ほど遠いものであることをおそれざるを得ないのであります。日米協調は、あくまでも独立国同士の対等の協調でありたく、かりにも不必要な誤解を招くような規定は、これを消滅させるにしくはないのであります。今後の交渉にそれを期待しつつ、この点についての外務大臣の御所見をお伺いしたいのであります。
 第四に、きわめて多くの論争を呼んだ事前協議について質問いたします。多くの反対論者は、事前協議が、その内容において承諾または同意の意味を含まないがゆえに、きわめて一方的で、日本から見て力のないものであり、ミサイル戦略の現代においては、アメリカが全く無視しており、まことに無益な空文であると主張しておることはすでに御承知の通りであります。しかしながら、条約としてかかる規定は、全く存在しないよりは存在している方がより多く妥当であると考える人もあるのでありますが、ただ一つ危惧すべき点は、事前協議に拒否権を含め得るとしても、日米間の力関係に依存する度合いが大きく、政治的には、わが国が独立を真に達成するまでは、これが実効を期待することはきわめて少ないということのみならず、軍事的には全く疑問であり、また、もし政府の説明するように拒否権を発動した場合、すなわち、米軍が日本国の領域内における施設及び区域を日本の防衛以外の目的で作戦行動に使用することを不可能ならしめた場合、日本の防衛のみならず、新しく極東の平和と安全の維持を目的とした新条約の意味が全く失われるという、前後撞着した結果を生むこと、及び、その場合に、交換公文による事前協議によらず、条約案第四条の協議事項による協議で切り抜けるという裏道が用意されているのではないかという点であります。これらの諸点について、疑問の残らぬように外務大臣からお伺いしたいと思うのであります。
 さらに第五の質問は、核兵器の持ち込みについてであります。最近の米比基地協定によれば、フィリピン側と事前協議することなしに米軍基地に長距離ミサイルを持ち込まない旨の協定が成立したようでありますが、大多数の日本人の核兵器の製造、実験、使用を禁止すべきであるとの希望がますます広範に要望されている現状にかんがみまして、核兵器持ち込み禁止に万全の努力を尽くされるであろうと信じますけれども、防衛用小型核兵器の使用は違憲ではないという再三の政府答弁を思い起こすごとに、アメリカに対して核兵器持ち込み禁止を要求しようともしない政府の態度に不安の念にかられるのは、あながち私一人ではないと思うのであります。まして、核弾頭をつけないとはいえ、サイドワインダーが到着した今日においてはなおさらであります。政府は、この際、小型核兵器を含めて一切の核兵器を持ち込まないこと、核武装はこれを避けることを、外務大臣及び防衛庁長官に強く要望し、明確なる御答弁を得たいと存じます。
 最後にただ一点、かくも多くの問題点を持つところの日本の安全保障体制について総理大臣にお伺いいたしまするが、日本が自由主義ブロックに属し、対米協調を基本とすることを正しいと仮定しても、日本と同じく自由圏に属し、西欧陣営の一員でありながら、一切の軍事同盟を拒否することによって安全保障を得ているところのオーストリア方式にこれを切りかえるという考えがないかどうか。将来の日本の命運をかけての重大問題でありますので、何とぞ総理大臣の明快な御答弁をお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一点は、どこを仮想敵国としてこの条約を結ぶかという御質問でありますが、しばしば申し上げております通り、われわれは、旧憲法時代のように、あるいは他の諸国が持っておりますように、いわゆる仮想敵国というものを設けて、そうしてこれに対抗する防衛計画国防計画を定めるというような態度はとっておらないのであります。われわれ自身としましては、とにかく日本の安全と、日本が他から侵略された場合にこれを排除するに必要な最小限度の実力を備えていこうというので、日本の憲法の趣旨から申しまして、そういう仮想敵国を設けて、これと軍備の競争をしていくというような考え方ではないのでございます。
 第二は、この条約を結ぶことによって、何か防衛費が激増しやしないかという点に対する御質問でございますが、そういうことはわれわれ考えておりませんで、先ほど外務大臣が御説明申し上げました通り、われわれのこの防衛計画というものは、国防会議において自主的に日本の国力と国情に応じて定められるものでございまして、決してこの改定によって防衛費が増強されるというふうには考える必要はないと思います。
 憲法との関係においてどうかというお話でございますが、これも外務大臣が御説明申し上げました通り、われわれが負う義務は、はっきり憲法の範囲内で、従っていかなる場合におきましても、他の相互防衛条約、あるいは集団的条約、自衛権に基づくところのこの条約のような、日本以外に出て、日本以外の侵略、たとえアメリカとこれを結びましても、アメリカの領土――日本以外の領土に出ていって、日本がこれに対して処置するということの義務は一切負わないのでありまして、日本の領土、日本の施政下にある領土だけに限っておるということでございますから、憲法との関係は御心配は要らない。
 次に、岸内閣に対して国民は非常に不安を持っておるというお話でございますが、御承知のように、私は国民のいろいろな声に対しては謙虚に耳を傾けるべきことは当然であると思います。しかし、半年前に行なわれました参議院の選挙におきましても、国民の大多数は、やはり岸内閣を支持されておるという結果が出ております。
 次に、こういう条約改定については国民の意見を十分に尊重していかなければならぬというお話でございます。もちろん、私はそういう意味において、国民に十分理解納得をしてもらいたい。その協力のもとに行なっていかなければならぬということを考えておるのでございます。そういう意味におきまして、政府もまた足らない点につきましては、十分に一つ努力をして参るつもりでございます。
 党内の意見の調整云々の御意見でございましたが、これは党の最高機関である議員総会におきましては、われわれ一致した党議をきめておりますので、御心配は要らないと思います。
 最後に、日本はこういう方式をとらずに、オーストリア方式をとったらどうだという御議論でございます。一国の安全を保障する体制というものは、その国が置かれておるいろいろな客観的の情勢から判断して、その国に最も妥当な適当な方法をとっていくことが、私は安全を保障する道として、まさにそうなければならぬと思います。従ってオーストリアにおいてとられておる方式は、オーストリアの諸種の事情からそういう方式がとられておりますが、日本としては、日本の置かれておる情勢から考えまして、日米安保体制の堅持によってやっていくことが、日本の安全の保障のために最も適当であるというふうに考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(藤山愛一郎君) 私に対する御質問に対して御返答申し上げます。
 国連憲章五十一条に対する御意見でございましたが、国連憲章五十一条は適当な条項じゃないじゃないかというような御意見もあったようでございます。しかしながら、現在世界の安全保障のために国連憲章五十一条が支持されております。将来の問題としては、いかに考えるべきかは研究題目でございましょうけれども、現状においては、国連憲章五十一条によって、各国が安全保障のことを考えておることむろんでございます。従って現在国連外交の妨げになることはないと考えております。
 それから日本の基地におきます米軍に対する攻撃に対して日本が行動いたします場合は、むろん日本の領土、領海、領空というものを侵して参るのでありまして、そのときは、政府がかねてから申しておりますように、個別的自衛権の発動であるわけでありまして、そういうことで行動いたすわけであります。
 それから内乱条項につきましては、むろん、今回は御承知のように削除をいたして参ります。従いまして、内乱について当然アメリカ軍が出るというようなことはございません。むろん間接侵略、近ごろ武力攻撃にひとしい間接侵略というものも世界の事情にはございます。でありますから、武力攻撃にひとしい間接侵略については、もちろん協議をいたさなければならぬときがあるであろうと思います。しかしながら、普通の内乱というものについては対象にいたしておりません。
 それから事前協議につきまして、作戦につきましては協議をしても、力関係でうまくいかないのじゃないかという御質問でありますが、これは当然われわれといたしましても、独立国の立場でもって協議をいたすことであります。でありますから、単に国が大きいとか力が強いとかいうだけでなしに、信義の上に立って話し合いをいたすことでありますから、そういう意味において、私どもはそういう何か力関係で押されるというようなことはないと信じております。
 核兵器につきましては、かねて総理が国会で言明しておられます通り、自衛隊は核武装をしないということを言っておられます。また、核兵器の持ち込みを許さぬということを総理が言明しております。その通りにわれわれは岸内閣の続く限り考えております。(拍手)
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(赤城宗徳君) 自衛隊に集団的自衛権があるという根拠はどうかというお尋ねであります。このことに対しましては、藤山外務大臣からただいま御答弁がありましたが、アメリカの駐留軍が攻撃を受けましたときには、日本に対する攻撃なくしてはあり得ないことでありますから、自衛隊としては直接侵略に対処する、これが主要任務でありますので、自衛隊は当然これに対抗できるわけであります。この意味におきましては、これは個別的自衛権の範囲の問題であります。この場合に、アメリカの軍隊も防衛するのでありましょうが、これは直ちに集団的自衛権というかどうかは、これは言葉の問題だと思います。自衛隊に対してこのために新しい任務を付加されるということはありません。もちろん、外国に出て行って、外国を援助するという意味の集団的自衛権というものは持っておりません。
 第二に、自衛隊が核装備をするか、あるいはまた、核兵器の持ち込みについてどうかというお尋ねでありましたが、これも今、藤山外務大臣が御答弁申し上げた通りであります。
 第三に、自衛隊の核装備の問題でありますが、日本みずからが核装備をしないということは、日本みずからが決定することでありますので、特に条約などで米国に対して約束するということは、これは不適当だ、こういうふうに考えております。なお、自衛隊の核装備を行なわないということは、総理大臣からしばしば言明している通りであります。また、持ち込みついての事前協議につきましても、外務大臣から答弁がありましたように、拒否する権利も持っているのでありまするから、協議の上において、政府の方針をはっきりさせる、こういうことであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(松野鶴平君) 田畑金光君。
   〔田畑金光君登壇、拍手〕
#18
○田畑金光君 私は社会クラブを代表し、藤山外相の安保条約改定交渉に関する中間報告について、総理、外相、防衛庁長官に対し、以下数点の質問を行ないたいと思います。
 まず、外相は、今回の条約改定の必要論は日本国内の事情だけによるとしておりますが、はたしてそうでありましょうか。すなわち、日本の国力の充実、国連加盟による国際的地位の向上、防衛力の充実のみが改定交渉を可能にしたと見ておりますが、これは他の反面を見失っておると思います。米国が改定交渉に応じた背景は軍事政策の変更のためであり、また、ミサイル戦略の現在、基地としての日本の価値が減じてきたところに重要な要因があると思います。米陸上部隊の引き揚げもその現われであって、政府があえてこのことに触れるのを避けるのは、対等性の名のもとに軍備の強化をはかろうとする意図が隠されておると思います。政府の見解を承ります。
 次に、現行安保条約は、米ソの軍事的衝突が頂点に達した朝鮮戦争を背景として結ばれた条約であるということであります。平和条約は日本に独立を許したが、同時に調印された安保条約は、独立体制に重大な制約を加えたのであります。ゆえに、安保体制をどうするかという点で意見の対立がありまして、安保体制を強化し、アメリカとの関係を強めることが日本の安全保障の道であり、望ましき方向であるとするのが政府のとっている態度であります。これに対し、世界の対立する二大陣営の中にあって、一方に味方し、一方を仮想敵国とすることは、対立の激化をもたらすだけであって、平和の保障とはならない。対立の緩和はノン・アラインメントの立場に立つことであるとする。従って、現行条約は解消されなければならないとするのが、私たちの基本的立場でございます。政府は、現行条約は無期限であるが、これを十年に定めることにより、自主性を回復したと言っております。はたしてそうでありましょうか。政府の見解とは逆に、現行条約は暫定条約と見るのが妥当でございまして、しかも十年間は固定化し、一方的選択により改廃の可能性の道を閉ざしたことは、明らかに政府の主張とは正反対に、自主性の喪失を意味するものといわなければなりません。流動する世界情勢下にありまして、わが国のみが条約改定を通じアメリカとの軍事体制を強化することは時代逆行にほかなりません。この際、国民世論に耳を傾け、条約解消の方向に沿いつつ、改定に再検討を加えるとか、あるいは期限については一年の予告期間をもって改廃の自由を保留する等、国民の不安と疑問をやわらげるべきであると考えますが、政府の所信を承ります。
 第三にお尋ねしたいことは、条約適用地域についてであります。政府与党においては、当初、沖縄、小笠原を含めるかどうかという点で意見の対立を来たしましたが、結局はこれを除外いたしております。しかし同時に、沖縄住民の感情から申しますならば、大きな不満であり、憤りを禁じ得ない問題でありましょう。この際、政府は独自に、あるいはアメリカと協力しつつ、経済の発展、住民の福祉向上に努力し、あわせて施政権返還のために強く交渉を持つべきだと考えますが、どうでございましょうか。過般、発表されたコンロン報告書によれば、アメリカは沖縄を最終的には日本へ返還する準備を進め、一方その間、沖縄に対する経済援助を増加し、政治的自治拡大を行なうべきであると申しておりますが、このようなアメリカ国内における動き等を十分に政府は考慮すべきであると考えます。さらに、沖縄、小笠原につきましては、施政権返還と同時に適用地域に入れることになっておりまするが、これら米軍基地に対し、あらかじめ防衛義務を想定しながら返還問題を取り扱うことは、大きな疑点を残すものであると考えます。将来、返還後、あらためて日米協議事項として措置することが、自主性の立場においても必要であると考えまするが、政府の所見を承りたいのでございます。
 次にお尋ねしたいことは、日本の領域内におきまして攻撃が加えられましたときには、日米両国が共同の行動をとることになっております。このほか、駐留米軍は事前協議を条件といたしまして極東の平和と安全のため出動することができる、この問題でございます。これらのことは、昨年八月の金門、馬祖をめぐる台湾海峡の緊張状態を見ましても明らかなように、日本が他国の戦争に巻き込まれる危険性が強くあるのでございまして、現行条約と何ら変わりのない深刻な不安を国民に与えるものと申さなければなりません。
   〔議長退席、副議長着席〕
一体、極東とはどの範囲をさすのであるか。衆議院における藤山外相の答弁を見ますと、フィリピン以北、中国の一部、沿海州に至る日本を中心とする地域と申されておりますが、これによって見ましても、改定条約の軍事同盟的性格はいよいよ濃厚になって参っております。政府の説明を聞くと、極東の平和と安全がすなわち日本のそれと同一であるかのように思い込ませることによって危険性を薄めようとしております。こういう理論を展開いたしますならば、極東の平和と安全のためであるならば、極東地域の外に出ることも可能であると考えまするが、この際、政府の所信を承っておきたいと思います。政府はあらためて、極東の平和と安全のために米軍の出動を認める条項は、協議事項があるから不安はないのだというような言葉のごまかしではなく、勇気を持ってこれが削除に当たらなければならないと考えまするが、政府にその勇気があるかどうかを承っておきます。
 次にお尋ねすることは憲法との関係においてであります。政府の説明は、憲法上の制約を設けてあるから新たな義務負担はない、自主性はそこなわれないと言うのであります。バンデンバーグ決議の趣旨も、「憲法の規定に従い」という修飾語があれば新たな義務負担にもならない、軍備の強化にもならないと言うのでございます。相互防衛義務も、憲法上の手続に従うという規定を入れれば憲法違反にあらずと言っております。わが国憲法は、御承知のように開戦手続等を定めておりません。このことは、わが憲法が、相互防衛義務の履行等は全然予測していないことを意味しているわけであります。ゆえに、条約改定の内容は明らかに現行憲法の精神に矛盾衝突するものであると考えますが、あらためて政府の見解を承りたいと思います。
 次に、私は総理並びに外相に国際情勢の認識についてお尋ねいたします。政府の情勢判断は、十年一日のごとく、冷戦の論理、力の均衡論でありまして、何らの発展性も融通性もございません。岸総理は本年夏、一ヵ月にわたり、欧州、中南米諸国を歴訪され、各国の首脳と会談され、大いに国際情勢特にアジアの情勢について検討を重ねてこられたはずでありますが、驚いたことには、いよいよ力の政策に自信を深めてこられたというこの事実であります。国民の期待に反するもはなはだしいと申さなければなりません。察するに、この段階において方針を変えることは岸内閣の死命を制することになるから、あえて世界の大勢に目をおおわんとするものではなかろうかと考えるわけでございます。一内閣の存立のために国家民族の運命を誤ってはならないのであります。核兵器の手詰まりは、東西首脳の軍縮に対する真剣な取り組みとなって現われ、米ソ最高指導者による、国際紛争の解決は力によらず平和的方法によるとする原則確認は、平和共存に大きな前進のきっかけを作っております。このとき、自由主義陣営の力の結束こそ平和保障の道であるとする岸・藤山路線は、深刻な自己反省を加える必要があろうと考えます。今日必要なのは、日米安保条約を相互軍事同盟に強化することでなくて、どうすればこれを解消するかの漸進的段階的方途を求めることでなければなりません。
   〔副議長退席、議長着席〕
単に言葉で国連憲章を尊重することではなくて、軍事同盟を排除して、どうすれば国連の一体化、国連の強化をはかるかという問題に、真剣に取り組むべき時期であると思います。また、日本の安全保障のためには、東西両陣営の話し合いを進め、緊張緩和のため日本自体が努力する必要があろうと考えます。すなわち、日中国交回復の方途を探究し、アジア非核武装地帯の設置提唱等は、まさにその具体化の一つでございます。この際、岸内閣は、謙虚に内外情勢の見通し判断について反省を加えられる必要があろうと考えまするが、御所見を承りたいのでございます。
 最後に、政府の防衛方針についてお尋ねいたします。過般、政府は、次期主力戦闘機の機種選定を終わり、二百機の国産化を予定しております。さらに、数日前、国民の目をごまかし、抜き打ち的にサイド・ワィンダーの受け入れを終わりましたが、三十五年度以降はミサイル化を急ぐ方針のようであります。国民の側から見れば、たまらない不安と焦燥感を禁ずることはできません。好況とはいえ、一部産業の不振や深刻な失業問題、不完全きわまる社会保障、災害対策予算の追加支出等を考えるとき、政府がなおかつ今日の国内国際情勢に背を向けて第二次防衛六カ年計画を遂行しようということは、時代錯誤であると考えますが、政府の見解をあらためて承りたいと考えます。
 以上をもって私の質問を終わることにいたします。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 この条約の改定は、アメリカ側の軍事政策の変更によるものじゃないかという御質問でございます。先ほど藤山外務大臣が御説明申し上げましたように、今回の安保条約改定は、数年にわたって日本側から提案し、しかも改定の要点についても日本側からこれを提唱して、アメリカ側の承諾を得ていることでございまして、この点は、アメリカ側から、何かアメリカ側の政策が変わって、アメリカ側から押しつけられたというふうな意味にとれるのでありますが、そういう事情では全然ないのでございます。こちら側からの提案であり、こちら側からの要求に基づくものであるということを御了承願いたいと思います。
 次に、安保条約の期限の問題についての御質問でございますが、これは藤山外相が御説明申し上げましたように、この種の条約については、安定した状態に置くことがその国の安全と国民の生活の向上のために適当であるという考えでおります。
 最後に、国際情勢の判断をどういうふうに考えているかという御質問でございます。御指摘のありましたように、私も、ことしの七月から八月にかけまして、欧州のいわゆる現在問題になっている国々の首脳者と親しく意見の交換をいたしまして、国際情勢の分析というものを、当時問題になっているヨーロッパにおいて、いろいろな方面から考えてみまするというと、お話のように、われわれも、現代の軍事科学の発達から見て、将来これが現実に用いられるということになるということは、これは人類の破滅を来たすものであり、従って、これに対してそういう力を現実に使用して問題を解決するということではなくして、話し合いによって問題を解決しなきゃならないという動向が強く現われており、またこれは世界の平和を増進する上において望ましいことであるということを、私も強く感じたわけでございます。また、それが国際の実勢だろうと思う。しかしながら、その背後に、それでは全然力というものを無視して、力というものをそれでは全然捨てて話し合うかと、こう申しますというと、そうではないのでありまして、現実に自由主義国の国々は提携をかたくし、共産主義の団結に対してそういう力を背景として話し合いをして、そうして両方の共存の道を見出そう、こういう際でございますし、集団的安全保障体制というようなものも、決してこれを解消するというような現実の状況ではないのでございます。こういうことに基づいて、私どもは、決してこの改定がいわゆる国際情勢に逆行するものであるというような議論は当たらない、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#20
○国務大臣(藤山愛一郎君) 沖縄、小笠原を適用地域から除いたことについては、将来外交交渉でもって施政権返還を促進する必要があるのではないか。――これはむろん、当然われわれは、外交交渉におきまして今後とも沖縄の施政権返還というものについては努力をいたして参りたいと、こう考えております。また、施政権が返還される場合に、当然この安保条約の適用地域に入るのだから、その限りにおいて現在の基地の問題その他どういうふうになるのだというお話でありました。これはむろん、そういうことが、将来返還が起こります場合には、条約地域に入ることは今申し上げた通りでありますけれども、その中の処理というものは、当然そのときにおける外交交渉で行なわれることになろうと思います。
 事前協議につきましては、御承知の通り、私どもといたしましては、極東の平和と安全というものが日本の平和と安全を維持する上において非常に必要だと考えております。今日までの条約では、日本の基地を無制限に基地として使用して各方面に出ていくことができるわけであります。従いまして、今回は、極東の平和と安全を維持するにいたしましても、できるだけ有効な、日本に何か危険があったような場合に出てもらうことが必要ではありますけれども、そうでない場合、いたずらに巻き込まれるというような状況になってはならぬので、そこで、御承知の通り、今度は協議事項にいたしたわけでありまして、われわれといたしましてそういう点を留意しておること、むろんでございます。
 それから、国際情勢の判断についていろいろ御質問がありまして、国連の強化を当然やるべきじゃないか。――私どもといたしましても、むろん国連の強化をやる必要があろうと思っております。将来、平和維持機構としての国連を強化して参りますことが必要であり、また今回の条約においても、国連が平和的処置を極東においても、あるいは世界的にとるような場合に、われわれはそれに対してこういう安保条約を解消することも考えられるのでありますが、むろん、国連平和維持機構を強化していくことは必要だと思います。私が九月に第十四回総会に参りましたときにも、国連の機構なり組織を検討して、そうして将来国連の強化に資するように、冒頭演説におきましても、その旨の所信を述べておるのでありまして、国連強化については、われわれとしても今後できるだけの努力をいたしたいと、こう思っております。(拍手)
   〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕
#21
○国務大臣(赤城宗徳君) 第二次防衛計画は時代錯誤ではないか、こういう御指摘でございます。先ほど質問された方にも御答弁いたしましたように、第一次防衛計画は三十五年度が終期になっています。その三カ年の防衛計画の中で目標に到達できないものもありまするし、あるいはまた、その計画の中で修正を要するものも出てきたわけでございます。そういうことでありますので、三十五年度から四十年度を終期といたしまして第二次防衛計画を策定中でございます。御承知のように、防衛はその年その年だけで思いつきでやるというわけには参りませんので、ある程度の期間の計画を立て、その年次に入りましては年次の業務計画を立て、その上にまた予算との折衝をしまして、その年その年は決定いたすわけでございます。国防の基本方針にもありまするように、国力、国情に応じて、自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備する、こういう国防の基本方針にもなっておりますので、その線に沿うて目下検討中でございます。むちゃな、あるいは、何といいますか、非合理的なことをやろうというようなことは全然考えておりません。(拍手)
    ―――――――――――――
#22
○議長(松野鶴平君) 石黒忠篤君。
   〔石黒忠篤君登壇、拍手〕
#23
○石黒忠篤君 私は、緑風会を代表いたしまして質問いたしたいと存じます。
 今日、米ソの両首脳が会談を行ないまして、これが将来いわゆる東西雪解けを来たさしめんとしつつあることは、その意義をきわめて高く評価すべきであり、これに対して多大の期待をつなぎたく考えるものであります。しかしながら、さればというて、国際共産主義固有の脅威を思うとき、直ちに安保条約廃止すべしとの主張を肯定するわけにはとうてい参らないのであります。(拍手)そこでわれわれは、今後も日米安保条約の必要を認め、その改定についての政府の中間報告に連関して、二、三、総理及び外相の意見をただし、今後の審議に資したいと考えております。
 総理は一昨年、この改定問題をひっさげて米国を訪問し、日米新時代に入ったと声明した当初においては、両国対等の立場の双務的な相互防衛条約にするというようなことであったと記憶をいたします。しかるに、昨年十一月ごろになると、外相は、米国のわが国に対す防衛義務に対し、わが方は沖縄、小笠原を区域からはずすこととして基地貸与義務だけの協定の形となるであろうというようなことを申され、今回の中間報告もその通りでございます。しからば、新条約は基地貸与協定であるのか、または、報告第五の後段の、在日米軍に対する攻撃を日本も防衛することを義務とするというところで、これを相互防衛条約とするという気持であるのか、はたまた、報告第二の、経済協力――それは、安保条約としては直接に関係のない条項でありまするが、それを新たに挿入することによって、これに相互協力条約の名前をかむらしめんとするのであるか。相手のあることとは言い条、根本義においていかにも一貫性を欠いたうらみがあるのであります。よろしく、新条約の性格とそれを正しく表明する名称を国民の前に明示して、おもむくところを知らしめることがきわめて肝要であると考えますが、この点に関して政府の答弁を求めます。
 また、報告第七として、安全保障上、十年の安定期間を定めることとしておるが、それには自民党内においても、今なおこれをフレキシブルなものにしようという主張があるのであります。私は、ただいまこの主張の可否を申すのではありません。聞くべきところもあるように思います。が、今これを論ずるのではありませんが、これを強く主張しっ放しで国会をあとにして外遊しました有力なる一党員がおるように思います。その人は、昨日の新聞によりますると、米国国務省に期限内改定論を検討する必要を申し入れ、かつ、ハーター長官の、安保条約交渉についての満足の意思表示を、自分が了承したようにとられては事実に反することとなるというて、強く主張したようであると伝えられております。さきに自民党の元老ともいうべき一党員が中共におもむき、また、帰ってきて、総理の外交を非難しており、今また安保に対してかくのごとき現状であるのを、総理はこれをいかに考えられるか。われわれは、立法府に連なっておる者として、憲法第七十三条による政府の外交権を常に極度に尊重し、事、外交に関しては超党派でいくべきものであることをこいねがっておるものであります。それゆえに、過般、同僚佐藤尚武君は、野党の首脳者が中共政府と共同して日本政府を攻撃する声明をなしたときに、それをけしからぬ不都合事として、この壇上で糾弾したのでありました。今、与党のかくのごとき状態は、さらにさらに、われわれをして、この国の外交のために憤懣せしむるものであります。政府、自民党は、今後の外交がかような統一性なき状態で進められるのも、それはいたし方がないと放置していく気持であるか、外相及び総理の所見を伺いたいのであります。
 安保条約改定に関しては、今国内に賛否両論がきびしく対立をいたし、国民は帰趨に迷っております。これは自民党多年の重要懸案であるから、とくに研究審議を遂げて、国民の了解、啓発を行ない、堂々たる主張であらしめねばならぬはずであったと思います。しかるに、政府はこれを怠り、自民党は、先般の選挙にただ政策の一項としてこれを掲げたのみで、候補者は投票者の反対をおそれて多く口にせずにしまいました。政府与党の得票の多数がこの主張によって戦いとられたものとは決して申されません。最近にわかに講演会等を催したようでありますが、地方講演に行くことを逡巡する党員が多かったと聞いております。今日国民が事を了解せざるままに、賛否両説の間に迷うておるのは、政府与党の趣旨徹底の啓発努力に欠けるところがあったと私は思いますが、総理及び外相の所見を伺いたいのであります。
 なお、報告第八において、事前協議を付属交換公文に譲ったことを、外相は非常に重要視したからであると言われますが、はたしてさようであるか。われわれの聞いておるところでは、交換公文はアメリカの議会に提出せられないというところがあるように思いますが、その交換公文に譲ったゆえんを、どうぞ正直にこの壇上において公表していただきたい。外交のことでありますので、相手方がありますから、いろいろなかけ引きがあろうと思います。国民に正直にその点を申されれば納得をすることもあろうかと思います。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(岸信介君) お答え申し上げます。
 今回のこの安保条約の改定に際しまして、全面的な改正をし、新しい条約の形式をとるつもりでおります。従って、その名前をどうするかという問題に関しましては、内容を最も明確に示すような名称にすることが必要であろうと思います。今度の条約の内容につきましては、先ほど外務大臣が説明を申し上げましたように、単なる安全保障の点ばかりでなくて、広く両国の相互協力のことに関しての規定を設け、今後日米の相互の協力を増進していくという趣旨を示す意味におきまして、相互協力ということを名称のうちにも入れるつもりでございます。
 第二の、この安保条約の改定について、党内においてもいろいろな意見があり、さらに、それが外交上いろいろな紛淆を来たしておるという点についての御質問でございます。もちろん、こういう重要な問題でございますから、多数の党員の間におきましてもいろいろな意見があったことは、これは事実でございます。その意見を調整するために、党におきましては、それぞれの機構、機関を通じて意見を十分戦わせ、党としての最後の意見を決定するように努力をいたして参ったのであります。その結果、過般、党の最高機関である議員総会におきまして、われわれは、明確にこの問題に関する党の意見というものを確定をいたしたのであります。今おあげになりました河野君のアメリカにおける言動等につきましては、われわれ、新聞等がいろいろなことを報じておりますが、新聞の記事だけでこれを云々することは適当でないと思いますが、はっきり、河野君が去るときに、外交の問題については政府がアメリカ政府と交渉するものであって、これを紛淆するような疑いを受けることは自分としては絶対にしないということを明約して参っておりますので、新聞の報道等につきましては、なお調べてみなければわからぬと思いますが、いずれにしても、申し上げるまでもないことでありますが、外交の交渉は、もちろん、政府の責任において一元的にこれを行なっていかなければならぬことでありまして、与党は政府と一体になってこれを支持していくという建前で進んでいかなければならぬことは言うまでもないところであります。
 なお、この安保条約の改定の問題について、十分に国民の理解、納得、その協力の上にこれを推進しなければならない。その点に関して政府与党等の、従来、PRに関する点においては努力が足りない、また、十分なその方法が講ぜられておらないという点についての御指摘でございます。私は、決してわれわれが十分なるこの点において方法を講じたと申し上げることのできないことを遺憾と存じますが、十分今後注意して、この問題に関しまして、特に国民の理解と納得、その上に協力を得るように努力を続けていくつもりでございます。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#25
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま名称の点について総理から御答弁がございましたが、それに関連して、私の新聞談話等が引用されておりますので申し上げたいと思いますが、むろん、今回のこの交渉にあたりまして、日本の負うべき義務というものは主として基地だということを当時申したわけであります。アメリカのいわゆる防衛の義務に関して基地だ、そういう意味からいいまして、新聞紙上等で、基地協定的な性格が多分にあるということも書かれたことは事実でございます。今回の条約は、総理が先ほど言われましたように、相互の協力の立場をもってこれを運営していくことになります。従ってできるだけ適当な名称をつけることの必要であることは当然でありまして、われわれとしては内容にふさわしいような名称を最終的にむろんつけて参りたいと存じております。
 それから、この事前協議、配備、装備及び作戦の点を交換公文に落としたのは、どういうわけかということでありますが、これは条約交渉の通例として、あるいは条約締結の通例として、交換公文に落としたとか、あるいは交換公文の方が条約よりも低いとかということは国際慣例上ございません。先ほど申し上げましたように、本条約中に諸般の協議が包括的に書かれております。従ってその中から、特に配備、装備なりあるいは作戦なりのものを摘出いたしましてそういう特殊のものを交換公文にするのは、条約交渉上の通例でございまして、決してこれはそういう落としたという意味ではございません。これは正直な答弁でございます。
 なお、啓発活動その他について十分にやらなければいけないじゃないかということは、もう言うまでもなく当然でございまして、この条約改正をいたしますにあたりまして、国民の諸君が十分条約改正の本質を理解してもらいますことは必要であり、それによって国論の統一が期せられていくことでありますから、われわれといたしましては、できるだけ条約の内容を各方面に周知させることに努力して参りたいと思います。むろん今日まで、この種の大きな条約をやりますことでありますから、党内にいろいろな意見がそれぞれ人によってあったことは当然でございましょう。しかしながら、今日では統一されて、そうして党の方針もきまって、最終的決定に進んでおるわけでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#26
○議長(松野鶴平君) 須藤五郎君。
   〔須藤五郎君登壇、拍手〕
#27
○須藤五郎君 私は日本共産党を代表して、岸総理並びに藤山外相に質問をするものであります。明確にお答えを願いたいと思います。
 まず、冒頭に指摘しておかねばならぬことは、ただいまの外務大臣の中間報告なるものは全く国民を愚弄したものであります。アメリカとの間にすでにやみ取引を済まし、それを国民に押しつけようとするものであり、外相の態度は許すことのできないものであります。
 この点を指摘し、第一に聞きたいことは、フルシチョフ、アイゼンハワー両首脳が、その共同声明の中で、未解決のすべての国際問題は、力を用いずに、交渉という平和的方法によって解決されるべきであるということに同意したと述べておるが、総理と外相は、この一大歴史的事実を一体何と見ているのでありましょうか。これを、全世界に向けての厳粛な不戦の誓い、すなわち戦争をしないという誓いであると、まじめに受け取っているのかどうか。それとも、これは米ソ両首脳の一片の気やすめであり、ごまかしの言葉と受け取っているのであるか。まず、この点を聞きただしたいと思います。
 第二に、フルシチョフ首相が国連に提案し、日本もその参加国の一員として、世界八十数カ国によって採択され、十カ国軍縮委員会によって討議されることになった全般的で完全な軍備撤廃の計画を、総理並びに外相は、はたして真剣に遂行しようと決意しているのかどうか。この点を私は、しかと確かめておきたいと思います。
 平和を愛し、冷戦のすみやかな終結を願う全世界の国民は、米ソ両首脳のこの不戦の誓いと、フルシチョフ首相の全面軍縮の提案を、心から喜んで迎え、これに励まされて平和共存のために、軍拡競争の重荷をはねのけるために、一そう決意を新たにし、ますます団結を固めて戦い抜こうとしてやるのであります。イギリスを初め、アメリカにおいても、西欧資本主義諸国においても、今やこの方向に向けて確実に大きな変化が起こり始めている。こうして世界は、今、真に新しい国際関係の局面に入りつつあると確信をもって言えるのであります。この国際情勢の力強く新しい変化を正しく認識せず、すでに古くさくなり、破産したところの力の政策と、いわゆる自由陣営の結束だけにしがみつこうとする国家は、世界の大勢からは置き去りにされ、孤立し、経済的発展の活路を見失ってしまうことは、もはや、だれの目にも明らかであると言わなければなりません。ただいまの中間報告においても、総理と外相は、新たな安保条約の締結を、もはや既定の事実としてしゃにむに国民に押しつけようとしております。すなわち、一部のアメリカ帝国主義者とますます結託を固くし、その隷属のもとに、日本と日本国民を、この古くさい、破産した政策に縛りつけ、中国やソ連を初めとする社会主義諸国を敵視して、冷戦の終結どころか、むしろ、それをそそのかし、わが国の核武装化に道を開こうとしているのであります。めくらヘビにおじずとは言いながら、総理と外相のこのような態度は、まさしく世界の情勢の変化に目をおおい、世界の大勢にまっこうからそむくものと言わざるを得ません。
 私は最後に聞きたいと思います。新安保条約の内容は、わが国の独立をますますおくらせ、わが国をアメリカ帝国主義者の原子戦略体制の極東における最先端に縛りつけ、しかもわが国の核武装化を進めるものであり、中国との国交回復の道を閉ざすものであることは、ここで私が繰り返すまでもなく全く明らかであります、
 私がここで特に指摘しておかねばならないと思う点は、第一に、安保条約の実体ともいうべき行政協定の基本点は、そのまま残されていることであります。たとえば基地管理権がそれである。これこそは、占領の継続であり、アメリカの日本に対する軍事支配の拠点をそのまま残そうとするものである。それだけではない。日米間の軍事協力と日本の軍事力の増強のため、日本の人力、資源、産業をあげてその目的に使用することを規定したMSA協定に至っては、一指も触れようとしておりません。この事実は、総理と外相の安保改定の意図を最も露骨に示しているものであります。第二に、憲法の範囲内でというごまかしについてであります。総理はみずからも広言するごとく、天下周知の憲法改悪論者である。しかも、すでに事実上幾多憲法を無視し、じゅうりんしてきていることも、これまた国民のあまねく知るところであります。それだけではなく、政府は、憲法よりは条約が優先するという立場をとっております。このように憲法改悪を前提とし、憲法を条約に従属させる立場をとっている総理が、幾ら憲法の範囲内だと言ってみても、これこそ全くの飾り文句であり、国民をごまかすためのものであることは明らかであります。
 岸内閣のこのような意図とごまかしが明らかになるにつれて、安保条約改定反対、廃棄の要望が、わが国民の間に日増しに増大しているだけではなく、今日アジアの諸国においては、各国共産党を初め十億の人民がこぞって強大な統一戦線を結成して、岸内閣の政策、日米安保条約の粉砕に立ち上がり、わが国民の反対闘争の支援を誓っている事実を何と見るか。このような打ちかちがたい強力な反対の力に抗し、これにまっこうから挑戦してでも、なおかつ安保改定を強行しようとするのであるか、岸総理の所信を聞きたいと思う。わが党は、日本国民並びに十億のアジア諸国民とともに安保条約粉砕と平和のために戦うことをここに誓うものであります。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 フルシチョフ、アイゼンハワー大統領の共同声明によりまして、米ソ両国の首脳部が、将来懸案の事項を力で解決するということでなくて、話し合いで、交渉によって解決しようということが声明されておるというこの情勢、すなわち、国際間におけるいろいろな問題の解決を、力を現実に使用することなく、話し合いで解決しようということは、非常にけっこうなことであり、望ましいことであり、これを推進していくようにわれわれも努力をしなければならぬことは言うを待たないことは、しばしば申し上げておるところであります。しかしながら、それと、この安保条約の問題、安保体制の問題とは、私は、すぐそれだから安保体制をやめろという議論には決してならないと思うのであります。現在この世界の大勢は、東西両陣営とも集団的安全保障の体制というものをゆるめるようなところまでは現実にいっておらないので、これはよく御承知の通りでありまして、現在あるところの安保条約を堅持して、これの最初から不合理な点が多々あるのを合理的に直そうという考えであります。
 憲法との関係につきましては、しばしばいろいろな事項につきましてわれわれが申しております通り、憲法とこの条約とが違反するものではないという確信のもとに交渉を進めております。(拍手)
   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍手〕
#29
○国務大臣(藤山愛一郎君) 国際情勢その他の見方につきましては、総理と同様でありますので、省略いたします。
 行政協定の基地管理の問題で御指摘がございましたが、今回の条約におきましても、アメリカ軍が基地を使用する権利等を有するのではなくて、日本が話し合いで基地を貸与することになろうと思います。そしてむろん基地を貸与します以上、基地の中でもってできるだけ便利に処理できますようにいたして参らなければなりませんけれども、今のような形において交渉をいたしておりますので、今の行政協定よりはずっとよくなりますことは申すまでもございません(拍手)
#30
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時五十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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