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1959/12/21 第33回国会 参議院 参議院会議録情報 第033回国会 農林水産委員会 第16号
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1959/12/21 第33回国会 参議院

参議院会議録情報 第033回国会 農林水産委員会 第16号

#1
第033回国会 農林水産委員会 第16号
昭和三十四年十二月二十一日(月曜
日)
   午後一時二十一分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
十二月十九日委員植垣弥一郎君辞任に
つき、その補欠として小山邦太郎君を
議長において指名した。
本日委員仲原善一君辞任につき、その
補欠として松野孝一君を議長において
指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     堀本 宜実君
   理事
           櫻井 志郎君
           藤野 繁雄君
          小笠原二三男君
           戸叶  武君
           森 八三一君
   委員
           石谷 憲男君
           岡村文四郎君
           小山邦太郎君
           重政 庸徳君
           高橋  衛君
           田中 啓一君
           松野 孝一君
           大河原一次君
           北村  暢君
           清澤 俊英君
           羽生 三七君
           北條 雋八君
  政府委員
   農林省蚕糸局長 大澤  融君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       安楽城敏男君
  参考人
   日本生糸輸出組
   合理事長    肥田 啓治君
   全国養蚕農業協
   同組合連合会副
   会長      近藤 好一君
   農     業 内林喜三郎君
   日本製糸協会会
   長       安田 義一君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選
○繭糸価格の安定に関する臨時措置法
 の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(堀本宜実君) ただいまから農林水産委員会を開きます。
 最初に、委員の異動について御報告いたします。
 去る十九日、植垣弥一郎君が辞任され、小由邦太郎君が選任され、本日、仲原善一君が辞任され、松野孝一君が選任されました。
 次に、仲原善一君が委員を辞任され、理事が一名欠員になっておりますので、その補欠互選を行ないます。
 その方法は、成規の手続きを省略し、便宜、委員長から指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#3
○委員長(堀本宜実君) 御異議ないと認め、藤野繁雄君を理事に指名いたします。
  ―――――――――――――
#4
○委員長(堀本宜実君) 繭糸価格の安定に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、ただいまから、かねて問題となり、各位におかれましても御関心が高いと存ぜられまする本法案に関し、参考人の意見を伺うことにいたします。
 参考人の各位におかれましては、年末押し迫って、格別の御多忙のところをお差し繰り、御出席をいただき、ありがとう存じました。これから順次御意見を伺いたいと存じますが、御意見の陳述は、一人十五分以内でお願いをいたします。
 なお、委員から参考人に対する質疑は、五人の方の陳述が終ってからお願いをいたします。
#5
○小山邦太郎君 先ほど電話がありまして、安田義一参考人は、この前、衆議院で呼ばれたときと、だいぶ情勢も変わっておるからというので、関係の業者を集めて、今研究しておられ、責任を持った答弁をいたしたいので、それがため、あるいは二時半ごろまでかかるであろということですが、御了承いただきたいと思います。
#6
○委員長(堀本宜実君) 承知いたしました。
 それでは、日本生糸輸出組合理事長肥田啓治君からお願いをいたします。
#7
○参考人(肥田啓治君) 私は、すべての産業というものは、生産と消費の調和がとれる、そういう産業が発達し、また、これに関係している者がしあわせになると思っておりますが、いかんせん繭糸業というものは、戦時中は食糧の方に転換したために、ほとんど極度に減らされてしまったのであります。まず、何をおいてもこれの生産を回復するということが、ここ十年くらいの最も大尊な問題でございましたので、生産増進ということに極力政策の重点が置かれて参ったので、その結果として、繭の生産というものが着実に強化されてきたことは、大へんけっこうなことだったと思います。
 その半面において、今度は消費の方はどうかと申しますと、戦時中にほとんど日本から出なかったものですから、向うの方では、そこで生糸というものを使う産業が停止してしまった。その間に新興繊維が非常に興って参りまして、そうしてその方に移ってしまった。そうして新興繊維の技術の進歩その他の脅威を受けて、消費の増進開拓、こういう問題はなかなか進展の速度が鈍かった。この生産と消費の速度のテンポの不調和が結局積もり積もって、昨年度のような不幸にぶつかって、十万俵の滞貨ができるということになった、大局的に私はそう考えるわけであります。
 そうして昨年の不幸から、それじゃ新しい状態について、どういう値ごろでという問題が発見されて、新しい値ごろでスタートが切られました。それともう一つは、世界の経済の好景気が味方しまして、今年は生糸、絹物ともに、今まで全く壁にぶつかっておった新興繊維の脅威の壁をぶち抜くように、生糸のまき返えしの勢いが非常に強く展開してきておったのであります。従って、絹物はもろちんでございますが、生糸にしましても、民間貿易が始まって以来、今年は第一の実績を今作りつりある道すがらであったわけでございます。不幸にして、今度その政府手持ち生糸の放出の問題について、いろいろの手続きの問題がございまして御検討願うようになりましたりで、ここに先行きはどらなるかということを皆心配して、新しい取引が停滞して参りました。中には、このままに生糸を使っていくべきか、あるいは化繊の方に転ずべきか、すべてはこの決定のいかんによってきめなければならぬというような、ある一つの模様眺め、ここ一カ月はかりは取引というものは停頓しておるような次第でございます。
 何しろ、生糸と申しますものは、そのコストの大部分は繭でありまして、また、繭は農産物の関係上自然の現象にも支配されやすくて、供給面からだけ考えても、なかなか市価の波乱高下をはらむのでございます。その結果として、これの安定措置というものが考えられておるのでありますが、この安定措置が、上についても下についても、そこで人為の策が直接作出してくるということになりますと、安定が、かえって不安定の結果を導くようなものになりますので、その安定帯というものは、なるべく上にも下にもつかずに、直接の波動がないようなのが理想でございますが、これもなかなか、ときによってそれがまぬがれがたいことでございますが、従いまして、そういう意味合いのものでございますから、来年度の安定の幅というものは、こうこうだということを前年度にきめまして、そのきめたことは、めったにこれは変えないことが原則でありますし、また、業界としては望ましいことであるわけでございます。そういう工合で、まあ、生糸というものは、いろいろの国にもできておりましたけれども、フランスも滅び、イタリーもほとんど滅びかけてきて、今、中共と日本、その中共もまだ日本に追いつかずで、世界の中では一番日本が生糸の生産国として大事な生産国であるわけであります。この日本の大事な生糸、組物が、せっかく、世界の新興繊維だとかいうようなものに圧迫されていたやつを、壁を突き破って、今しんしんことして行こうとしている際でございますから、当面しているすべての問題は、諸先生方が慎重に御審議を願って、なるべくすみやかに、この今振興をとめていることを、また再び日本の蚕糸業のために進展をするようなことを、ひとえに業界の人々はもう皆望んでおるわけでございます。
 私はそれだけであります。
#8
○委員長(堀本宜実君) どうもありがとうございました。
 次に、全国養蚕農業協同組合連合会副会長近藤好一君。
#9
○参考人(近藤好一君) 私、近藤でございます。このたび参考人としてお呼び出しを受けましたので、その問題に対しましてお答え申し上げる次第でございます。
 蚕糸業の問題については、全く戦前戦後を問わず、きわめて関心が深く、特に日本の輸出産業として重要視されておったことは申し上げるまでもないのでございますが、特に戦後における実態というものは、御承知のように、戦争目的のために一歩を進めました関係からいたしまして、戦後、蚕糸業を推進していくということに対して、なかなか容易でなかったわけでございまするが、その間、また化学繊維の進歩も御承知の通りでございます。何といっても日本の農業者の中に蚕業というものが深く取り入れられておりますだけに、この蚕業の振興こそということで、先生方初め政府におきましても、蚕業の振興施策として、蚕業が伸展できるように御協力をお願いしておったわけでございます。
 たまたま御承知のように、政府の五カ年計画に基づきまして、養蚕というものをずっと伸展してきたわけでございます。その半ばにして、三十三年度におけるあの実態というものを考えますときに、あれは業界全体を通して非常に不安を醸成したわけでございますが、あの素因というものも、いわゆる考えを深くするならば、農民自体と申してもいいと思うのでございますけれども、行政の立場あるいは指導の立場に立ちまするところの政府の要路者の方々におきましても、もっと幅を広く計画をもくろんでいただいたとするならば、昨年のように千四百円、いわゆる十九万円最低、二十三万という安定法の意義も立ってあったわけでありまするけれども、それがたまたま御承知のような結果で、最低繭価というものが臨時措置によって十四万円、最高が十八万、こういうようなケースが出て参ったことを考えましたときに、生産費の関係を考えますというと、言うまでもなく、繭の一貫目の生産費が千十二円というような非常に低い価格になるわけでございまして、生産費自体の姿は千五百七十円という価格になるわけでございまするけれども、千十二円というような価格でありますれば、これは養蚕農民は立ちいきができないということで、昨年のあの施策等については農民も心を痛めて、今後の養蚕をどうするかというようなことを深く考えておったわけでございまするが、たまたま世界の景気の上昇、こういうことを考えるときに、景気、不景気はなかなか人為をもってはかり得ることはできない。いかなる経済学者といえども、この景気を人為によって動かすということを完全にすることは、とうてい不可能である。一部あるいはできるかもしれませんけれども、自然というものに対してはどうにもならぬことでありまして、このことを考えますときに、本年のこの実態からして、非常に繭の生産が、昨年、政府が二割制限というようなことを声を大にいたしましたことも、ここに逆に出まして、三十四年度の春以来からきわめて繭の不足を招来する。特に昨年ああいうような結果をもたらした。すなわち三浦尤農林大臣が山形等で申された言葉の中に、まあ蚕糸業というものもどうにもならぬ、十二万か、あるいは十三万か、どうにもならぬというような声が出たことによって、買手筋のアメリカにおいては、おそらくこれが買い控えをいたしたということが大きな素因をなしまして、本年の初頭における、五月ごろからぼつぼつ買気を増して、また、それに対する六月ごろになって、おそらく前年と同様、新糸が出るころは安いであろうと予測しておったときに、繭の減産はもちろんでありまするけれども、海外情勢が極端に生糸というものに対する魅力をほとんどが持ってきたということを考えますときに、大きくそこに需要が出てきたわけでございますつが、何と申しましても、今回御諮問にあずかりまする問題の繭糸価格の安定、すなわち五万俵の処置ということに対して、朝野をあげまして、いろんな御意見があるわけでございまするが、私は三十四年の年に生糸がたくさん売れましたということは、三十三年の今申し上げた買い控えの反動もありますが、戦後新らしい繊維が大きく発明されますと、新らしいものが、着ておるものが誇りとなっておったのでありますが、生糸の不調もそのことが一つの原因となっておったのだと思います。しかしながら、三十三年秋から、世界の景気が先ほど申し上げました通り、きわめてよくなって参りましたので、新興繊維にあきがきたというても過言でない。やはり組織物が非常によいというこの魅力を持たれまして、人気がきわめて上昇いたして、今後、平和が続く限り、この傾向はだんだんと強くなるのではないかと思うのであります。今後、生糸の消費は大幅な増加を見ることであろうというふうに観察されるのでございます。
 そこで、安定法の四万三千俵を今売ると、目先の相場でございまするが、相当下がるということは申し上げるまでもないのでありまして、一部の人を除きましては、生産者も消費者も、この四万三千俵を一ぺんに出すというようなことは大きく喜ばないものであろうと、こう考えるのであります。なお、養蚕者としても同様でございます。三十五年度もあまり増産にはならないと私は思うのであります。なぜならないかということは、三十四年度における台風等があだをなしまして、あの大木すらも倒伏するという、おそらくは倒れまいという大木が例れた。それだけにあらゆる木の根をゆすっておるということ、小さな桑の木でありましても、やはり葉がついておるものが強風にあおられた関係上、根が非常にいたんでおるというふうな関係で、この春はおそらく発育が非常に劣るのではなかろうか。ですから樹勢は衰えておるという形になれますので、秋、晩秋の関係に対してどうかというと、これまた三十五年度の関係は、そういうような素因をもとといたしまして、肥料を加えたといたしてみましても、春蚕にはきりかないのだし、秋、晩秋には今のような木が衰えております関係上、繭の生産が少ないというような関係もありまするので、かなり期待をかけておる三十五年度の繭の総生産は減らぬじゃろうという御意見もございますけれども、私は相当減るのじゃないか。特に本年の異常気象のような状態からして、今にして山々が大きく雪を持つような関係を思いますときに、凍霜害もある程度昨年より以上に私は今にして心配をしておるものでございますので、生産というものはそう伸びないのだというふうに考える次第でございます。なお、二十三万とか、あるいは二十五万とかというような点でございまするが、もしこれを一ぺんに出すということなら相場はぐっと下がってくる、同時に、下がったあとは申し上げるまでもなく青天井になる。世界の景気はずっと伸びて参りますると、二十三万から二十五万円程度になる可能性が非常に多いのでございまして、このときにおきまして、少なくとも二十一万ぐらいのものをここに出しておいてはどうか。もしそうでないとするならば、二十五万にも、あるいは二十三万にもなるというふうになりますると、消費は非常に減退をするおそれがあるのじゃなかろうか。減退いたしますならば、これはもう業界を通して、蚕糸業全体というものが政府の御心配して下さっているような結果になると、とんでもないことだというふうに考えますので、少なくとも二十一万程度ぐらいでずっといけるような態勢をとっていただくならば、消費者といい、生産者といい、そうばかなことはないのではないかと思います。
 なお、二万俵の関係ですが、私はどうしても四万余俵の関係のうちで、少なくとも二万俵ぐらいは三十五年度に残しておいたらどらかと、こんなふうに考えることは、以上述べるような筋からしてそう考えるのです。政府も三万俵弱を買いかえをすると声明したのであるから、法律の改正をしても、その三万俵、すなわち十一月に売りました五千俵を含んだ糸でございまするが、それを売ればまあ面子も立つのではないかと、こんなふうに考えます。欧米とも失業者は少なくなった。最近ロンドンから帰った人に聞いてみましても、ほんとうに人が得られないというふうな、ロンドン自体における景気もよろしいようでありますし、ヨーロッパ、アメリカ等における景気も極端によくなっておる。特に欧州の景気がよいということになりますと、生糸が五%の混織をしたのですが、二〇%混織するようになっておる。すなわち四倍の消費数得量になっておるのでありますので、旧来よりは四倍以上の糸が要るということになるわけであります。こういう点からいってもこの景気の上昇が出ておる。米国は三十五年秋の大統領の選挙があるので、御承知の通りでございますが、それまで小さいインフレを起こし、景気をよくしようとしておるのではないかと考えられるわけでありまして、自然、欧州もよくなってくることは先ほど来から申し上げております通りでありまして、特にソ連と米国が手を握らんとしておるこのとき、この平和外交の成功することができるとするならば、世界の景気は一段とより以上よくなることは、これは今後何といっても、岩戸景気とかいっておりますけれども、これは五十年輩の人は今後この景気には遭遇することができないだろうというふうな意見も各地に出ておるような景気の上昇の姿も見えるのでありまして、いずれの方面から見ましても景気がよくなりますから、生糸が二十万円から二十一万円に安定しておれば、消費が増加するから、異常なく高値を押えることができる。よって二万俵、政府が持っておるということになるとするならば、二万俵持っておる必要があるのではないか。ですから二万俵持つということに対しまして、少なくとも月に五千俵程度ずつぐらいを出す。福田農林大臣の意見を聞きますると、まあ一応法律は通すのだ、よってこれは価格安定審議会並びに振興審議会を開いて、そこで諮問をいただきましてやる、そして競争入札をするのだと、こういう意見を福田大臣としても申されておるのでありますが、しかしながら、その入札をするといたしましても、月五千俵程度の入札でありまするならば、これはいいのでありまするけれども、これを全体を一度に出すというようなことをするならば、先ほど以来申しますような結果をもちまして非常にまずい点がある。さつきも申し上げた点と同様でございますが、何といたしましても、養蚕農民といたしましては繭の生産費を割るような価格ではいけないのであって、もちろん養蚕者におきましても生産費の低減に最大の努力を惜しまないものでありますが、何といっても千十二円程度の買いで安定がどうのこうのというようなことでありまするならば、とんでもないことでありまするので、繊維業者さんもあえてどうこうはございませんが、今後の養蚕経営に対して、他の農産物の価格と比較して見た場合に、保証措置の問題、特に養蚕の収入の問題等は、これは国と農民間とにおきまして、何としても農民の仕事でございまするので、生産費低減には最大の努力を惜しまずに生産費を下げて、そうして需要者の方々に安くやるという考え方を持っておりまするが、要するに、この景気に対してひとり養蚕だけが低くていいという理屈はありませんし、また、生糸を扱う業者だけが不遇というような立場に置かれなくてもよろしいのではないか。少なくともこの措置につきましては、四万俵の問題は、二万俵程度はこれは一応出すとしても、あるいは逆に三万俵を出してもかまいませんけれども、いずれにしても、月五千俵程度の措置を行ないまするならば、糸価はずっと安定いたしまして、ここに問題がなくなるのじゃないか。特に、この出しまする糸は、二十三万を血税で、法律改正をして下さるということですから、出すとするならば、このものは少なくとも直接需要者の方々に行き渡るような御配意を願うならば、業界全体を通してよくなるのではないか。取引所に一本で出すということは不見識ではなかろうか。少なくとも血税によって二十三万円という押えを持っておりまして、五万俵の糸をしまってありましただけに、これは重大な責任があるのではないか。こう考えますので、一言、お呼び出しを受けまして、意見を申し上げて御参考に供することができまするならば、しあわせだと考える次第でございます。
#10
○委員長(堀本宜実君) どらもありがとうございました。
 次に、群馬県藤岡市上大塚、内林喜三郎さんにお願いします。
#11
○参考人(内林喜三郎君) お呼び出しを受けました内林でございます。農民の気持を率直に訴えたい、かように考えるものであります。
 この繭糸価格安定法というものが初めて実施されるときに、農民の間には強い不満があったわけであります。それは、ほかの企業はどんどん統制が撤廃されて、自由に利益が見ていけるそのときに、われわれ農民の生産するものは、まず大切な米麦において食管法という法律を設けて厳重に国家権力で私たちの利益を抑えつけてきておる。この養蚕の問題については、農民は少なくともわれわれ農民の生産するもので外国のお金の取れる一番大切なものなんだ、そういう気持で養蚕農民がこれから真剣にやろうというときに、この繭糸価格安定法が出たのであります。私たち農民が真剣に努力しようとすれば、国ではいつでも法律をもって私たちを押えつけるのだ、こういうことの強い不満がございましたけれども、私たちは農民の同志の人たちに、いや、そうじゃないのだ、この法律を見れば、高いときには国が抑えるけれども、下がってきたときには十九万円で価格を維持してくれるというのだ、農民の一番大切なことはその生産の安定しているということだ、経営の安定しているということが一番大切なんだ、そういう点で、今は不満であっても、値の上がったときばかりは考えられないのだ、下がったときのことも考えたら、国がこらして十九万で保証してくれるというのだから、まずありがたいことなんだ、そういう気持で努力するのが大切なんだ、そしてできるだけ自分たちも生産費を切り詰めてやろうじゃないか、そういうことで私は皆さんとともに養蚕に真剣に取り組んできたわけであります。そして昨年のあの結果、私たちは非常に期待がはずれたわけです。私たち養蚕農民の生産費を償ってくれるであろうという、この期待をかけた法律が、はなはだ残念ながら、去年の春蚕においてはその価格の維持をするのが製糸家の犠牲においてなされた、夏秋蚕に対してはめんどうをみてくれなかった、それのみか、千円養蚕にしなさいということで引き下げをされた。皆さん、農民が丹精をこめて作ったものが、一年で生産費が一躍千円に値下げできるでしょうか。農林省では約千六百円の生産費がかかっているのだということを発表をしておきながら、去年のあの価格維持ができなくなったら、農民には千円養蚕をしろ、こういうことで全国養蚕連や、県の養蚕連を通じて、私たち農民にしいてきたわけです。そんなことが、手のひらを返すように百姓にできるものでしょうか、絶対にこれはできないものです。そうして私たちをだましたことになったわけです。養蚕農民をだましたのです。私たちは真剣に、おれたちの働いたもので外国の金が取れるのだぞということでやってきた。ところが、このような情けない仕打にあった。
 ところがことしになって、ようやく繭の値段が出てきた。おれの方から出た、おらの方から出た福田先生が農林大臣になったら、繭の値が出てきたので、まあよかったというので、私たちの方の福田先生が農林大臣になったので、おれたち養蚕家も救われる、福田農林大臣は、養蚕で育って、養蚕で学校を出してもらって今日になった、ほんとうにおれたちのことを知ってくれる農林大臣だ、まあよかったということで、真剣に取り組んできたら、ことしの八月、あの秋蚕の繭の値ぎめのときに、法律を改正して、そうして二十三万でなければ売れない生糸も一ぺんに市場に流して、価格を下げるということになった、実にひどい仕打だというので、農民は恨んでおります。おらが県から出た大臣が、そんなに百姓を、法律を改正してまで値下げしていじめるのかというのが、群馬県養蚕農民の一致した声であります。
 私たち養蚕農民は、安定計画を立てたいという念願で、たばこ耕作者と同じようにしてもらいたいというのが養蚕農民の念願です。たばこ耕作者は、利益は少ないけれども安定しているのです。三十年も五十年もの間、厳重に専売法という法律で取り締まられていても、たばこ耕作者の計画というものは非常に安定している、だからたばこ耕作者というものが年々ふえていく、希望者がふえていく。ところがこの養蚕の関係については、ようやく戦後、国がめんどうをみてくれるのだと思って、よかったというけれども、それがたよりにならなかった。私はこの養蚕というものについてみますときに、この生糸の生産されるのは、世界で、日本と隣の中共だけなんだ、中共では、ああいうふうに国が厳重に管理して、生産者の生産費も心配してくれる、販売まで国で心配してくれる、そういうときに、日本のような状態で、あの国家権力による生糸の放出だとか、あるいはそれの引き締めだとか、そういうことになったら、いつまでも日本の百姓は、隣の中共に左右される目にあうじゃないかというのが百姓の心配している点です。だから私たち百姓に対しては、ぜひたばこ耕作者と同じように、できたら専売法でもしいてもらって、安定した農業経営をさしてもらいたいというのが、私たち農民の一致した気持であります。それを私たちがたよりにしてきたのに、農民を犠牲にして十八万円の価格を維持するのだという、農林省のお役人が、去年もことしも勝手に相場を左右する、価格を左右する、維持価格といっても、安定法といっても、養蚕農民にはたよりにならないのが実態です。ぜひ農民の期待を裏切らないような、朝に晩に取りかえるような施策をしないでもらいたい。昔の人は朝令暮改といったが、その通りの方法を今の政府でやっておって、私たち養蚕農民に少しも安定した仕事をさせてくれないのです。私どもの県から出た農林大臣が、繭の取引が始まったときに、これを放出していじめるということは実に情けない仕打だと群馬の養蚕農民は言っています。私はそういう観点から、ぜひ厳重な統制というものは必要であって、統制をとっていただきたいということに異論はございません。しかし現在のように、朝に晩に変えるようなことでは、統制の意義をなしません。でありますから、少なくとも国家百年の大計とは言わなくても、一年ぐらいは安定した安定法にしてもらいたいと思う。こういうのが農民としての考え方であり、今度の法律を改正して、農民を犠牲にする、これを十八万で売るときには、生産費をはるかに下回った千四百円という価格です。こういう国で定める安定法という法律が、百姓を犠牲にした法律であったのでは、私たち百姓は何としてもがまんできないということを皆さんに訴えるわけです。
 ここで皆さんの御審議いただくことが、日本中の農民にすぐに影響することでございますので、慎重に、朝に晩に変えるようなことをしないで、安心して百姓をさせていただきたいというのが農民のお願いでございます。
#12
○委員長(堀本宜実君) どうもありがとうございました。
 安田さん、大へん御迷惑をかけまして……。もう先ほどから始めておりますが、どうぞお願い申し上げたいと存じます。日本製糸協会会長安田義一君。
#13
○参考人(安田義一君) 遅刻いたしまして申しわけありません。たまたまこの問題で、ただいま日本製糸協会常任理事会で審議中でございますので、大へんおくれまして……。
 私は、ただいま御審議をいただいておりますこの法律案につきましては、いろいろの前提はございますが、十八万で政府は生糸を売るべきであるという態度を実は数日前まで持っておったわけでございます。と申しますことは、いろいろ手続上、たとえば安定法によりまする二十三万という最高価格をそのままにしておいて、措置法の糸だけ十八万で売る、そういうような取りきめをいたしました手続上には、あるいは若干の問題があったかもわかりませんが、とにかく政府は、措置法による糸を十八万で売ることによって、この三十四生糸年度は、事実上、最高価格を十八万円にするのである、こういうふうにおきめになった。また、当時私も繭糸価格安定審議会の委員といたしましてその席に連なりまして、さように了解をいたしておりましたわけでございます。そういう意味で、私、途中でございましたが、ただいまの御意見にも朝令暮改は困る、こういう御発言がございましたが、私もそういう意味で、できるだけそういう約束は守るべきである。そういう態度を実はとっておったのでございます。
 しかしながら、本案が衆議院通過の際に、付帯決議がつきました。この付帯決議は、もちろん政府御当局といえども御尊重をなさるものと存じますが、衆議院のお考えは、これを売り出すには、実需者の手に入るように、公正な競争によってやるべきであろうという御意見が一つ出ております。また、柄糸価格安定審議会にも意見を求めるべきである、こういうようなことでございまするが、この付帯決議に表われております趣旨は、必ずしも十八万で売らなくてもいい、こういうことではなかろうか、かように考えますと、私は従来の主張を変える――といって、私はプリンシプルは変わっておりませんが、しかし十八万で売らないということになりますれば、一体、政府は何でこの糸を売るのだろうということに、いささか疑問を感ずるわけでございます。私は、政府のオブリゲーションを果たすためにいたし方ない、製糸といたしましては、前回も衆議院で、私申し上げたのですが、晩秋繭は一万掛をこえた仕入れをいたしております。一万掛をこえたということは、繭の原料だけで十六万以上ということでございます。これがどうして十八万で売れましょう。製糸の採算は非常に苦しい。もう赤字は目に見えておるのでございます。私どもの団体でも、非常に内部はやかましい。会長は何で十八万説に賛成するのだといって、私は会議のたびにいろいろとつるし上げられておるのでございますが、これは国の約束を果たす、こういうことによって、世界――というと少し話が大きいのでございますが、内外の需要者から生糸があいそをつかされるのでありまして、しょっちゅうぐらぐらしてたんじゃ、おれたちはもう生糸を使わないと、そういうことになるのがこわいから約束はなるべく守りましょうと、そのために製糸もできるだけがまんをいたしましょうと、しかし、私どもの売る糸は政府のお持ちになってる糸よりは新しい、できたてのほやほやの糸でありますから、少しは高く売りますよということを申し上げ続けてきたわけでございまするが、ここに情勢が変わったと申しまするか、競売――まあ競売というふうに飛躍していいかどうかわかりませんが、公正な競争によって政府が糸をお売りになると、実勢価格というものをよくきわめろ、相談しろということでございまするならば、私は、これは政府がすでに約束を破ると、そういう、好むと好まざるにかかわらず約束を破らねばならぬ段階にこれはきたと、かように考えますれば、私は何で売るのかということに少し疑問を持ったのでございます。約束を守るために売るんなら、私は双手をあげて賛成をいたします。しかし、もう約束を破るんだということであれば、私は、売る目的が少しぼやけてきた。需給を緩和するためであるか、糸価を安定するためであるか、そういうために売るならば、私は十八万円に拘泥する必要がない、かように考えております。私は、もうそれなら売らない方がいいんじゃないかと、実はそうも考えるのです。まあ、少し言い過ぎかもしれませんですけれども、十八万という約束を守らないということでありますならば、私はまあ一つの考え方といたしまして、農林省の御計算になっております生糸の生産費、繭の生産費、それを合計いたしたものは二十万一千円と記憶をいたしております。こういう価格も私は一つの標準ではなかろうか。しかし、私は、もっと根本的に考えまして、この際、この委員会でも一つよく御検討をいただきたいと思いますが、何のために生糸を売るかということをよくきめなければならぬ。糸価の安定のためということでありますれば、これはあまり高くなってもいかぬし、あまり安くなってもいかぬということで、中庸を得た価格で売っていただくことが、将来の暴騰暴落を防ぐことになるかと存じます。また、本年の生糸の需給関係から申しますると、先般売り出されました措置法によります生糸並びに今問題になっております生糸のうち、約二万俵もしくは二万五千俵ぐらいは本年度の需給では余ると、こういう計算になっておりまするので、私はぜひそれは売らぬでおいてもらいたい、しまっておいていただきたい。残りの物をなるべく市場に圧迫のないようにごくわずかずつ、需給緩和という方法でお売りを願うと、こういうことは私は、需給を緩和するという意味での一つの売り方だと思います。それから、糸価を安定させるんだということでありますれば、まあ、時価が幾らということもいろいろ問題でございましょうが、昨今の現物相場は三千二百四十円でございまするから、まあ、それにあまり差のつきませんように売っていただきたい。高値を押えるという意味でありますれば、私は二十一万円以上で売っていただきたい。売る目的が、まあ、くどいようでございまするが、政府の約束を果たすということをもう捨てたのならば、その三つの売り方しかなかろうと、かように考えるわけでございます。
 また、何か御質問がございましたらお答えいたします。
#14
○委員長(堀本宜実君) ありがとうございました。まだ磯野辰一君がお見えになっておられません。連絡の行き違いか、あるいは不在かよく調べて、今調査中でございますが、ただいまおいでになっておられます参考人の陳述は全部終了いたしましたので、参考人に対し御質疑の向きは御質疑を願うことにいたします。
#15
○小笠原二三男君 肥田さんにお尋ねしますが、直接、この法案から離れるかと思いますが、あなたの方でおやりになっておる商売の御関係から、海外市況の点から見まして、日本の生糸の相場はどの程度のところが一番輸出の伸びがある、今後においてもそういう意味で、どの程度のところに安定させることが海外市場の関係からいえば好ましいというふうにお考えになっておられるのですか。
#16
○参考人(肥田啓治君) 今の御質問は大へんむずかしい問題でございまして、どの程度がいいかという問題は、これはやはり非常にむずかしい問題でございまして、これさえはっきりすれば問題ないのでございますが、ただ、今まで十八万円でずっと進んできて伸びた、そうしてここでぐらついてきておるので、まあ海外の消費者も迷っておる。中にはヨーロッパの方の市場では、これがどうきまるかによって将来の不安を感じて、ほかの新興繊維にかわろうかということを考えておるわけでございます。ただ問題は、先ほど近藤さんも非常におっしゃいましたですが、景気が非常にいいだろう……いろいろの問題も、みんなこれは将来のことに関することでございまして、この将来のことというものは、結局、なかなかいろいろの計算を立てて見たところで予測のできない問題で、今までこれほど――結局、年の初めから大かた九万俵には本年のカレンダー・イヤーでもいくのじゃないかというところまで進みましたけれども、ちょっとここにきて、ぱっととまるということになりますから、まあ私はその年度内というものくらいは価格のレベルは変わらないということが一番これはいいことだ。そうしてまた、それは政府が内外に声明した、約束を守るという意味からもいい。なぜならばそれは、また今後、来年度というものを、新しい約束を、安定法を考えてしなければならぬ。してもしても、日本政府のやっておることは常にわけがわからなくなるということになると、その信頼が失われるというような意味合いにおいて、私は十八万円で出すことをこの前も言ったわけでございますが、今のお話の十八万円の問題も、ここ一カ月ぐらい停滞してみますと、そうすると結局十八万円ではない。そうすると、今のきのう、きょうの相場は二千二百四十円、これは十九万円をこしております。しかし、このときは、別段新しい取引というものは今まであまりない。ごくそれは差し迫ったものだけを買っておるわけでございます。国内におきますれば、それはどうせ生糸取引というのは先物取引をしておりますから、どっちにしても船積みがおくれれば買わなければならぬという問題も起きますけれども、新しく買うところの気勢はなかなか見えておりません。しかし、見えておらぬからといって、ここで線を引いて、これ以上はいけないかというと、それはまだ、一ついよいよきまって、それ以上はいけないということになればついてくるかもしれませんが、そこまでの見込みというものはなかなか立ちにくいかと思います。まあとにかくあまり飛び離れたものになりますと、非常に危険を覚悟しなければならぬと思います。従って私は、一番理想は、十八万円の放出というものが理想でございますが、この問題の経過のうちに、現実の相場というものはもうすでに一カ月以上も出てきておりますから、これは必ずしも今度、これを十八万円とすることにもやはり困難があるかもしれませんが、これはやはりどういうことになりますか、この問題が論議されたあとで繭糸価格安定審議会にかかるでございましょうが、入札するというところにいくのでなければ、このくらいならよろしい、このくらいという問題は、これはなかなか神様以外はわからない問題だと考えております。
#17
○小笠原二三男君 商売柄わからない方がいいわけでしょうが、近藤さんも、安田さんも共通しておっしゃっておられることは、安定法の五万俵は、わずかずつ、たとえば月五千俵なら五千俵程度売る、そして二、三万程度のそれは翌年度へ残すのがいい、こういうことを言っておられるのですが、そのことはこの今の三千二百四十円、十九万をこしておるこの相場を大体通していくと、それ以上にはならぬ、安定の中間価格はその辺だということになっていく見通しなのかどうか、この点を安田さんからお伺いしたいですね。
#18
○参考人(安田義一君) 相場のことは大へんわかりにくいものですから、何ともお答えはできないのでございまするが、私が申し上げておりまするのは、この政府の意図を、売る目的いかんということにいろいろかかり合っておりますわけでございます。需給の緩和をはかる、本年は明らかに生糸の供給不足でございまして、せっかく売れるものを何もセーブしなくてもいいだろう、こういうことでございますれば、大体需要家のたえ得る価格という意味におきまして、競売ということも私は一つの方法ではなかろうかと考えます。私は相場観と申すと、非常に個人の意見になり過ぎるわけでございまするが、私はやはり十八万ぐらいのところが需要もついても参り、よく売れる価格だと思っております。ただ本年は、繰り返し申し上げますように、相当の糸不足になっておりまする関係上、それより上値が出ております。一ころは三千四百円というような価格も出たわけでございまするが、これは私は私なりの解釈から申しますると、機屋さんが先物の織物を売りまして、なかなか糸が手に入らない、どうも暴騰しそうだということで、やむなく手当をした、他の安い糸との平均を見て買った価格であろう、かように考えますので、非常に大胆なことを申し上げて相済まぬのですが、やはり糸価の中心は十八万前後であろう、これが需給関係によりまして上にも行き下にも行くというふうに考えております。
#19
○小笠原二三男君 それで現状では、結局需給緩和という意味で、月々五千俵なら五千俵程度ずつ出す、こういうような形でいくならば、やっぱり二十万台のところは一つの実勢価格、政府で言う今後売り渡す時価と大体認定される、現状においては十八万ということはもう時価としては相当開きがある、こういう御認識がおありですか。
#20
○参考人(安田義一君) ただいまの価格というものは、清算取引につきましてはいろいろな思惑が入っておりまするので、当限と先物と大へんな相違をいたしております。ただいまきょう現在は三千二百四十円でございまするが、この価格が妥当かどうかと申しますことは、大へん解釈のむずかしいところではございまするが、これは多少供給に懸念がある。たとえば今御審議をされておりまする法律が通るか通らないかというような思惑も加味して、多少私は強目の価格と、かように解釈をいたしております。
#21
○小笠原二三男君 それでまた戻って肥田さんにお伺いしますが、今の相場、二十万台というこの相場は、あなたの方の御商売からいえば、海外の市況に重大な影響を与えますか。
#22
○参考人(肥田啓治君) それは先ほども申したようにまだわかりません、はっきり。なぜならば、現在のところにおいては、新しい買い物というものは停頓して今ちょっと休んでおります。それでこの問題が、この法律案が通過するかしないかということによって、いよいよしたならば、それはまたその問題で、もしそれが需要が強ければその辺にもいきましょうし、また、こえるかもしれません。しかし、あるまた場合によれば、それだけの十八万円でいけるものも、生糸の問題でそれを多少こしたかもしれませんが、あるできたものが、そこが合うからそれで買いついてきたのでございますが、これが今度上がってきた場合に、今度は結局新興繊維との競合が激しい、その競合の中にみんな機屋というものはさらされておるのですから、それで合うか合わぬかという結論は、これがやはり通過してみないとはっきりしたことは、見込みでどうだろうか、こうだろうというようなことはなかなかわれわれの決断のつかない微妙な問題でございます。
#23
○小笠原二三男君 それでは肥田さんと安田さんにお伺いしますが、この法案が今審議されておる途中で、政府の所信というものが表明され、十八万円の売り渡し価格を堅持するという向きは、ちょっと方向が変わったと申しますか、そういう状態になったわけですが、これは御両人の業界では、もう十八万円の実質最高価格というもので政府はやり抜こうという精神ではなくなったんだというふうに御認識になっておられるのかどうか、政府の態度について皆さんの御判断をお伺いしておきたい。
#24
○参考人(肥田啓治君) 私はこの問題についてどうきまるか、一向われわれ、全然どちらだということはよう判断しておりません。ただ問題は、これがどうきまりましても、きまったらそのきまった条件によって使う機屋は、使う者は、合うものはそれで使っていきましょうし、合わないものはほかの方に転向しましょうし、私はこれがどっちになるかという問題はまだ一向わからない、そういう不安で、私も不安ですが、また、海外の方も不安で模様をながめておる状態であるわけです。
#25
○参考人(安田義一君) 私の業界では十八万堅持という線が変わってきたと、かように事態を解釈いたしております。
#26
○小笠原二三男君 それから安田参考人のお考え、三つあるといってお話しになっておりますが、これは非常に興味のあるお話でして、政府側に一つ、ああいう疑問が出ておりますから、何のためにまた今の条件に三つ言われた中の、どれをどの精神で五万俵を取りくずしておるのかということを明解に一つ御答弁願いたい。
#27
○政府委員(大澤融君) ただいま御審議願っております法案は、なぜ提案したかということを、先般来いろいろ御説明申し上げたわけでございますが、時価が十八万円でかりになかった場合にはどうかという仮定の御質問の上であのようなことをいろいろ申し上げておりますが、私どもといたしましては、あくまでも十八万円という糸価の維持に努力をいたしておるわけです。そうした方向で今後も進みたい、こう思っております。従いまして、その線で売り方なり、あるいはその他の方法なんかというものも繭糸価格安定審議会に諮って、衆知を集めて、そこできめて参る。あくまでも、ねらいは十八万円維持という従来の方針、あの努力はして参るつもりでございます。
#28
○小笠原二三男君 安田さんのおっしゃっているのは、私の聞きょうが悪いかどうかわかりませんが、十八万円という時価、すなわち実質本年度最高の価格で売るという線でなくて、入札、競売、こういう方法になってくるというと、その点で糸価に変動が来た、すなわち十八万円で売る、売らないということはもう確定しなくなる、くずれてきておる。そうなれば糸価安定という理由だけからなら何ら売る必要がないと認める、こういうことを言っているので、それと真正面あなたのお考えとはぶつかっているわけです。従って、その水掛論的でなく、安田さん自身にもわかるように一つ局長から説明願いたい。単に糸価安定ということだけなら売る意味がない、こういう意見が一つの業界から出ておるわけです。
#29
○政府委員(大澤融君) 重ねて申し上げますが、十八万円そのもので売るということと、十八万円維持をねらいにして売るということとは必ずしも同一じゃないと思いますけれども、当初、法案を提案いたしました当時は、十八万円そのもので売って、しかも、十八万円が堅持できるという見通しであったわけでございますが、それがかりにくずれるとするならば、十八万円そのもので売るということはできなくなる場合においても、十八万円を維持しようという努力はやって参ろう、こういう意味でございます。
#30
○小笠原二三男君 さあ私わからぬのですが、安田さんにお尋ねしますが、今のような御意見に、あなたとしまして御主張があったらお聞かせ願いたい。
#31
○参考人(安田義一君) 私は、政府としましては十八万円という価格を維持するために努力をなさることは当然だと思います。ただし、現実の問題といたしまして、この衆議院の付帯決議のように、何か公正な競争をして政府の糸を売る、こういう場合には、私は実際上は十八万円が維持できないというか、もっと高くなるんじゃないかと思うのです。商売人の勘といたしまして。そうしますと、十八万を維持するということは事実上放棄された、こうまあ考えなければならぬ。そういたしますと、局長さんとしては私はお立場も、お考えもよくわかります。ただ、現実に十八万が維持されないということになりますると、私は、どうもそうしてまで糸を売るという目的を、もう一ぺん少なくとも繭糸価格安定審議会委員としては考え直したい、こういうことを申し上げているわけなんでございますが、これでよろしゅうございますか。
#32
○小笠原二三男君 安田さんのお考えは私の方にはよくわかるのですが、しかし、局長に聞くとどうもその点がわからぬ。三月の審議会に諮ったときの局長の御主張、審議会委員のいろいろな御意見、そして慎重にせられたいという答申があって、そしてなお今日の事態で入札、競売になれば、現状においては十八万以上の価格が出るであろう。それだけでもう十八万堅持が破れる。破れるならば、その十八万堅持のための方向で今、糸を放出するということは意味がない。すなわち、この法案の目的というものが、十八万堅持のために五万俵を取りくずして売るのだということの意味がもう本質的に失われるという対立意見なんですね。これは私もこの前から申し上げている主張なんです。いや、そんなことはないのだと、十八万円というものを、上下の幅はあっても、それは十八万円堅持の方向とは著しく違う相場は出ないのだと、こういうお見通しがあるのでない限りは、必ずも局長は一方的に今の安田さんの御意見に反論を加えることはできないだろうと思うのですが、もう一度御見解を示しておいていただきたい。
#33
○政府委員(大澤融君) 私が申し上げますのは、このような政府の売り物がなくなるというような、いわば断層ができる前の状態であったならば、政府のものを十八万円即十八万円で売りまして、十八万円堅持の今までの方針が貫いていけたと思いますが、今日のように、一時的に政府の売り物がなくなるというようなことがあった場合、先ほども申されたように、きょうは三千二百四十円くらいの時価が、時価と申しますか、取引があるようでございますが、そうした場合、この法案通過の後には、御審議願っております時価で売ると、今持っておる糸を時価で売れるようにするという法律改正でございますが、たとえば競売の方法であるとかいうようにいたしますならば、一時的には十八万円より高い値段が出るということは考えられることでございますが、そういう形で供給に政府の糸が立てられていくということによって、徐々に十八万円に近い値段に糸価がなっていくということで十八万円の努力ができるという意味でございます。
#34
○小笠原二三男君 一時的なことはあっても、徐々に十八万円に安定してくるということの根拠が全然私にはわからない。どうして十八万円に寄ってくるのですか。
#35
○小山邦太郎君 関連して質問したい。今、局長の答弁を聞くと、私はこの際、局長は深く考え大いに反省しなければいかぬのじゃないかと思う。なぜならば、ああいう態度でおるということは、衆議院の付帯決議の精神に重きを置いておらないのではないか。付帯決議で競売でやれといえばやる、すなわも、形はそれに従うが、局長の希望はあくまで十八万円になるように努力するというのではないか。努力ということはどういうことをいうのか。十八万ということが当初決定のときにはおそらく十八万にも売れないだろうと思うほどの状況であったので、糸価安定委員会ではこれを最高価格としたしかも、その当時、安定委員会に諮問の売る糸の対象は、糸価安定の臨時措置法で買った糸であって、その他の糸、すなわち糸価安定法によるものは二十三万円でなければ手がつかないということになっているのだ。そうだから、今度この法律を変えて十八万にしようという心がまえであったことはよくわかります。説明にもそう書いてある。ところが、その後の情勢の変化は、その主張を固執するの不可なるに思いをいたし、衆議院においても、実勢等を無視した非常に間違ったことじゃないか。かりにその意図はその当初として必ずしも悪くないことであったとしても、今日の状況から十分実勢に沿った妥当な線を見出してやるように、決して十八万を堅持するように君の努力を求めるということは、あの付帯決議のうちどこを見ても一つも見えない。さればといって、将来のことは、先ほど専門家に聞いてもわからないというくらいめんどうな問題だから、直ちに委員会を開いて衆知に訴えて、その方法も必ずしも今までの方法でなしに、出し方、売り方、あげて衆知に訴えておやりなさい。しかも、他方業界の人ばかりでなく、さらに知識経験者その他議会のうもにも相当な関心を持った者が委員等となっておるのだから振興審議会もすみやかに開いて根本策を早く立てろ。根本策であるからといっても現実を無視しては根本策はできません。であるのに、局長の答弁はあくまで十八万に持っていきたいと見られる。あなたはどうなのだ、十八万円に圧力をかけるため、一方ではあまり一どきに出さないようにと希望する向きの多いのに、一どきに出さないでは十八万になりそうもないから、一どきに出さなければならないでしょう。需要より供給の方が多ければ下がるにきまっているのだ。現に十九万五千で売っておるのを、これを下げようというのは、需要以上に出さなければ下がりません。それを一ぺんに十八万にしたらあなたは満足でしょう。しかし、需給調整に役立つ政府の持も糸は四万五千俵しかないのだ。さように無理をしてやっていって、今度それが終えてしまったらどうするのか。先ほど私は肥田さんの御意見も伺った。なるたけきめたものは動かさない方がいいだろう、もちろんだれだって望むところだ。しかしながら、糸価の安定というものは、一年だけこれで安定すればあとはまた非常に差異があってもいいというものじゃない。私は相場というものはあまり極端に上ぶったり下がったりしないということが大事だ。それがために法律ですでにその精神が織り込まれている。すなわち、重大なる変更があったときには年度中間においてもこれを変更することができる。その変更するということは、その一年だけを目がけて変更の必要を感ずるのじゃない。翌年はどうなるのだろう。三年も向こうのことはわからないとしても、せめて来年の、三十五年度に重大な変化を与えないようにするにはどうするかということを考えなければならない。そういうことを考えると、あの衆議院においての付帯決議というものは十八万にこだわるな、そうしてこの持っておる糸を最も有効に使って、下げないことはもちろん、あまり上がらないで長くこの相場の続くようにすることが安定だ。そういうことをねらって私はあの決議はできておると解釈しておるが、そうではないのですか。あるいはそうではなくて、私の十八万堅持に共鳴されているのだ、そういう意味かどうか。おかしな話だ。
#36
○政府委員(大澤融君) 私の表現にまずいところがあって誤解をいただいたのでは困るのでありますが、あくまでも私が申し上げましたことは、この法案を御審議願っております私どもの態度を申し上げているのでありまして、衆議院で御決議があり、ここでいろいろ御意見のあるところをよく頭に入れて、そこで書いてありますように、たとえば衆議院の御決議によれば、「実勢価格を正しく反映せしめ、」云々ということでございますので、そうした意味合いを入れて安定審議会の御意見を聞く、こういうところで安田参考人等から今のような御意見もお聞きできるわけでありまして、その上であとの糸の売り方なりをきめて参りたいと考えております。
#37
○小笠原二三男君 私の質問に答えてもらいたい。
#38
○政府委員(大澤融君) 先ほど来申し上げましたように、私どもの法案御審議をお願いする態度といたしましては、十八万円を維持する努力を払うために、こうした法案を通していただいて処置をさしていただきたい。この法案が通った上、いかなる方法で、どういうふうにやったら一番いいかということは、安定審議会の御意見を聞いてやって参りたい、こういうことでございます。
#39
○小笠原二三男君 あなたのさっきの答弁では、入札のとき衆議院の付帯決議を尊重することは、前々から話されているのだから、従って、入札となれば、一時的に高い落札になるであろうということもあなたはお認めになった。けれども、それは十八万円に落ちつかせる努力もしなければならぬということを言っておった。その落ちつかせる努力というものは、根拠として放出呈をふやす、今、小山委員のおっしゃったように、需要以上に糸を出す一点にかかっていると思う。それ以外に入札操作をする方途はないと思う。それならそれでいいのです。そのことを御答弁願いたい。私は一応あなたの主張している立場に立って質問をしている。気持は小山さんのおっしゃるような気持を持っているわけです。一応あなたのお話に乗って質問しているのですよ。
#40
○政府委員(大澤融君) ですから、先ほど来申し上げますように、政府の手持ちの糸を市場の供給の側に立たせるということによって、先ほどのような目標を出して参りたいということでございます。
#41
○小笠原二三男君 それには永続性があるのですか。
#42
○政府委員(大澤融君) 先ほど来お話し申し上げておりますように、十八万円程度の価格であったならば、需給関係はこうなるだろうということをお示ししておりますが、あの需給関係から見まして、私は可能だというふうに思っております。
#43
○小笠原二三男君 あとのことは委員会で質問しますが、そんなら最後にもう一点だけお尋ねして私は終わります。あなたは今の小山委員の質問に対する答弁では、実勢価格は衆議院の付帯決議のように尊重しなければならぬ。また十八万円堅持の方針も骨子もこれも守らなければならぬと、こう言っている。それが調整される方向というものは何ですか。衆議院の決議通りにいくなら、十八万円という時価を否定されたと、私らはみなしている。従って、そういうことにこだわることなしに、ウエートはあくまでも実勢価格に見合った時価を設定して出す。その方法として適当に十八万なり、十八万一千なりと時価をきめて、それで買うという者には、だれにでも売るという建前ではなく、入札によることがその実勢価格相場をそのまま反映する道であるとして、入札、こういう形の売り渡し方法というものを決議していると思うのです。違いますか。
#44
○政府委員(大澤融君) 自主性価格を正確に反映するということは、おそらく入札の方法はそういうことになろうと思います。たとえば、入札の方法によっても、政府の手持ちのものを供給の中につき込んでいくということで、私が先ほどから申し上げております十八万円堅持の努力ということとは矛盾をしないでやっていくような方法が考えられなければならない、こういうふうに思っております。そういうふうなことを含めて安定審議会で御審議を願うことになろうと思います。
#45
○戸叶武君 安田さんが十八万円堅持が変わってきたという事態を衆議院の付帯決議に関連をして、商売人の勘として認め、そうして、これは十八万円より高くなると認定しているようでありますが、どうも局長の方は提案理由の説明の趣旨と食い違ってはいかぬというところに無理な答弁を続けて、あちら立てればこちらが立たぬというふうな、何か矛盾したような答弁が見えますが、局長の答弁はあとにして、安田さんに質問します。安田さんがこの結論を導き出すまでの今までのお考えは、十二月九日には衆議院の参考人として、生糸の現物相場は二千三百九十円、これを換算いたしますと、約十九万八千円と言われ、そうして、輸出織物につきましては、二十万ちょっと上でもまあ損はない。しかし、二十万何千円ということになれば、輸出が減ってくるのではないかというようなお話をし、本日は生糸現物相場三十二百四十円だと、高値を押えようとするならば、二十一万円で売ってもらいたいというようなお話もどっかにあったようですが、どうも二十一万円で売ってもらいたいという言葉の裏には、何か売らなくてもいいのじゃないかという含みもそこに持っての何か投げ言葉のようでありますが、われわれしろうとには、商売人のかけ引きはどういうところにあるかわかりませんが、はっきりもっと物を言って下さい。
#46
○参考人(安田義一君) 私は当初は政府の約束というものを守ってもらいたい。これは肥田参考人からも先ほど私この耳で聞いたわけでございますが、一たん約束したことは、なるべく守ってほしい。ことに海外は、非常に日本の糸価安定制度というものが、衆議院の決議のところにも書いてありますが、非常に複雑でございまして、外国では措置法の糸と安定法の糸というものが分かれているというようなこともわからなくて、おそらくガヴァメントの持っている糸という、こういうふうに解釈していると思うわけです。従いまして、私どもこの業界に関連のある者は、二つの糸の種類があり、一方は十八万円で売っても、一方は法律を改正しなければ売れないのだというようなことが、向こうには正確に映っていないと、私はそう考えましたものですから、なるべく十八万円ときめたものはぜひ堅持していただきたい。また政府といたしましては、三月の安定審議会におきまして、事実上これが最高糸価になるというお含みで御説明もいただいておる。従って、当日の安定審議会の委員長の御意見等も、小山先生からお話がございましたが、それはともかくといたしまして、本年度は十八万が堅持されるものなりと、こういうふうに生糸を使う方の団体の人々は確信をいたしましていろいろの仕事をしてきたのだと思います。従いまして、そういうものをみだりに変えるべきでない。安定法の中には非常に重大なときには、これを変えることもできるという規定はございますが、これは、私どもの考えが間違っておりますかどうですか、私どもは平価の切り下げでありますとか、為替の何か変化があるというような重大なときのことを予想した法律である、かように考えておったわけでございます。従いまして、私は、十八万で政府は売るべきである、私どもは高い繭を仕入れておりまするから、なるべくそれより上で売る努力をいたしますが、どうかそれは大目で見ていただきたい、こういう主張を続けて参りました。同時に、全量を売るかどうかという問題も、十八万で安定法の糸まで持ち出してきて売るということが内外の需要者の約束にこたえるということであれば、量もこれは制限すべきでない、どんどん売らなければその趣旨が貫けない、こういう私は考えを持っておりました。しかし、これは私は国会の方のいろいろの関係はよくわかりませんが、衆議院でこういう付帯決議がついたということは、十八万では売ってはいけないということの、思表示ではなかったか、法治国において、国会がこういう付帯決議をおつけになれば、私は、先ほどどなたかのお話もございましたが、十八万円ということは否定された、かように考えざるを得ない。実はきょうきのうの、昨今の生糸相場というものも、そういうものがすでに反映をしている、かように考えております。そこで、もうそういう約束は守らないのだということになりますれば、私どもも無理して一万掛の繭を十八万近くに売るというようなことをすれば、業界は耐えられないわけでございまするから、もう約束を守らないなら一つ振り出しに戻ってものを考えていただきたい、そういうふうに申し上げたわけでございます。そこで、振り出しに戻ってものを考えるとしますれば、政府のただいま持っている糸が、糸価の高値を押えるという目的にお使いになるのならば、私は時価より上に、これより以上は困るというときに売り出すべきだ、高値押えなら。大体今の相場、もしくは局長さんが言われるように、もう少し下が蚕糸業を何か繁栄させるによい価格である、そういうことでありますならば、これは審議会においてそういう趣旨において皆さんの御討議をわずらわすべきだ、かように考えております。安定とは何そやということになるわけでございまするが、これは私は高からず低からずというところが安定ではなかろうか、さように考えまして、安定のために売るというのならば、私は、今の実勢相場に近いところがやはりよいのではないか。それからもう売る目的を別に考えまして、需給関係の緩和のために売るのだ、本年は明らかに生糸が供給不足であるから、政府の持っている糸を需給をやわらげるために売るのだということでありますれば、これは私は将来にも備えて糸を来生糸年度にも残し、かつ、現在の売り出される、かりに四万三千俵でございますか、四千俵でございますか、その半分程度を本年の需給関係の安定のために売るということでありますれば、なるべく糸価に悪影響を与えないように売っていただきたい、それには小刻みに売るということが私どもの乏しい知恵で考えられる一方法でございます。
#47
○戸叶武君 それでは、先ほどの説明の中における、高値を抑えようとするならば二十一万円で売ってもらいたいというのは一種の放言に類するものですか。
#48
○参考人(安田義一君) 放言というと何でございます、これは二十一万が高値押えの適当な価格であるかどうかということは、放言と言われますと、私もお答えに困るのですが、たとえばというふうに御解釈を願いたいと思います。
#49
○戸叶武君 局長に、今、やはり安田さんがあげている点で政府が市価の高値を抑えるなら少しあとに売り出せという説と、もう一つ、蚕糸業安定ならば、審議会を開いて高からず低からず値をきめていくべきじゃないかというような点がありますが、あとで質問はいたしますけれども、その点だけでも簡単に一つどういうふうな政府は意図を持っているか、この需給関係と安定のための関連を。
#50
○政府委員(大澤融君) これは先ほど小笠原委員の御質問にもお答えいたしましたように、私どもの態度といたしましては、十八万円維持の努力をするということのために糸の売り方を考えていかなければならぬのじゃないか、そうしたことも含めて安定審議会の意見を聞くということになると思います。
#51
○戸叶武君 最後に、業者の方の方でも、この衆議院におけるところの付帯決議というものを、法治国における国会の付帯決議というものを非常に重視せられて、もう十八万円で売ってはいけないんじゃないかというこの決議がなされた以上は、これに拘束されざるを得ないのじゃないかという観点で認識を持っておりますが、どうも政府の方の局長の答弁だと、これを認めるかのごとく、また、これを認めざるがごとく、何か当初からこの行政官庁の、ある意味においては思い上がってと言っては失礼ですが、自分たてが当初に押し出したところの意見というものを、国会の付帯決議があろうがなかろうが強引に押し通そうというような、この態度がほの見えるので、この点が、これはわれわれはここで静かに聞いているが、これが衆議院におけるところの委員会に響いたならば非常な不愉快、不愉快じゃなくて、これは問題にされる発言がさっきからしきりになされているのでありますが、業界の人であっても、国会における付帯決議というものの意義というものを重視しているのに、あなたはあまりこの点を重視しないで、軽く見ておって、当初の提案理由というものを曲げるのは、なかなかこれはあとで議論があるから、これはむずかしい問題があるという、そのところの警戒性から何かおっかなびっくりか、それとも強引さで物を言っているのか、その点が筋が立たない点がありますが、そこをはっきりするように説明して下さい。
#52
○政府委員(大澤融君) 私は衆議院の付帯決議をすなおに受け入れて物事を進めていきたいという気持に変わりはございません。
#53
○清澤俊英君 そこで局長にちょっとお伺いしますが、今までの審議会というのは諮問機関なんだ。この前の三月三十一日に十八万円できめておるのもこれは審議会である。この間のあなたとの質問の中にもここのところを私とだいぶ討議し合ったんだが、大体、あのときの空気としても、どうせ政府は、われわれ聞いているのだが、その聞いたことを実際にほんとうにやるのかやらぬのか、こういうことを非常に疑っているんですよ。そうして十八万円それ自身が、大体の人はわからない、御説明がわからない、こう言っているんです。それはまあそれでいいですよ。そうやった結論はたぶんいろいろ疑義もあったでしょうが、安田さんの言葉を聞いても、そういう点がうかがわれる。しかし、それまでの話なんだから一応現実はそれでいこう、しかし、あとに残った安定法の分だけは二十三万円という線があるんだからこういうつもりであれは通している。そこで、私が政府にお聞きしたいのは、今度衆議院の決議を重んじてやる、こう言われておるけれども、この前、審議会に諮問機関として相談を受けられたそのときあなた方が引き下がって、そうして本生糸安定法が二十六年に出ました際には、政府は何ら安定価格に対しまする価格決定にはタッチしなかったんですよ。これはここに森さんもおられるが、タッチしておりません。それを改正をして、いろいろ事情はあったでしょうが、今日のような諮問機関に変えられたんだ。そこへ、いろいろの強権が行なわれている。これが問題になっているだろうと思う。そこで、衆議院の決議を尊重せられるというが、そのときの審議会にかけられる態度というものは、これは別だろうと思うのです。諮問の別な投げ出し方をして、そうしてほんとうに集まった人はそれぞれの立場があろうと思うのです。養蚕家もあれば製糸家もあれば取引所の人たちもあれば機屋もある。それは皆おのおのの業態があって損得が分かれるんです。この立場の人が白熱の議論をして出てきたものを一応率直にのまれる決意を持ってお答えになっているのかどうか、これをここではっきり言って下さい。
#54
○政府委員(大澤融君) 従来もそういう態度で臨んでおりますし、これからもそういう態度で臨むつもりでおります。
#55
○清澤俊英君 あなたは従来からもうその態度で臨んでいると言われるけれども、あの三十一日の速記録をごらんなさいよ。そこにちゃんと出ているじゃないか。従来でもわれわれが幾ら言ったってそうじゃないんだ。今度の、それをやられるのかどうかと聞いても、あなたは今でも同じ答弁をしておって、結論はどうもそうじゃないらしい、わしらこの間言うた通り。
#56
○政府委員(大澤融君) 法案が成立の上は、今のようなことを審議会に諮りまして、そうしてこの審議会の意見を尊重して事を処理して参りたい、こう思っております。
#57
○森八三一君 本生糸年度の安定帯というものを、すでに業界の意見を聞いて決定をしておるという前提があって、いろいろ政府側の答弁があるし、その中に多少言葉の足りない点もありまして、いろいろ物議をかもしておることがあります。私は、その点については他日に譲りますが、ここで参考人の皆さんにお伺いいたしたいのは、今の国際的な繭糸の需要と供給の実勢、一般的な経済事情等を考えまして、私どもしろうとにはわかりませんが、直接に取引をなさっていらっしゃる専門家の立場では、おそらくお先まっ暗で、その日その日の状態だけで判断をしていらっしゃるわけではないと思います。そんなばかげた商売はないと思いますが、その程度の見通しをもって行動をしていらっしゃることは間違いない。そこで、本生糸年度の安定帯価格というものをきめたんだから、世界に信をつなぐためには、安田さんもしばしばおっしゃいましたように、動かさない方が好ましいというのでありますから、先刻申し上げましたような実勢なり、見通しなりから考えますと、一体どの程度にいたしますることが、世界の信用も失墜しないで、実際の取引も円滑に行なわれて、今後の生糸取引の安定がはかれるとお考えになるのか、そのことを一つ専門家の立場で安田さんの見通しを聞きたいのです。
#58
○参考人(安田義一君) 大へんむずかしい御質問でございまするが、たまたま私十月の月中から十一月の初めニューヨークに行っておりまして、これはアメリカだけでございまするから、欧州とあるいは事情が違うかもわかりませんが、いろいろ知時間ではございまするが、見て参りましたところの感想では、私は、アメリカに関する限りは、そう生糸は安くなくても売れるという感じを持って参りました。ただ彼らが一番言うことは、糸価を安定してくれと、こういうことをしきりに、もうこれはだれに会っても言うわけでございまするが、それじゃ、どういうふうに安定するのだと聞きますと、彼らはにやにや笑って、どうかおれたちに損をさせないようにしてくれ、こういうことを申しております。これは要するに暴落がこわい、そういう意味だと私は解釈をいたしております。従いまして、もう私も大胆なことを言っておしかりを受けるかもしれませんが、言わしていただきますれば、二十万くらいの糸はアメリカでは決して高いとは思わないと私は考えております。ただし、これは国内商品でもございまして、内地の、ことに小幅織物、具体的に申しますれば丹後でありますとか長浜でありますとか西陣等におきましては、私はやはりもう十九万では少し使えなくなってきておる、率直にこういうふらに考えます。やはり国内の小幅は、もう十九万以下でなければついてこない。輸絹の方は、これはいろいろ織物にも違いがございまするが、小幅織物業者よりはもう少し高く生糸は買える、これは輸出織物の価格から逆算をいたしまして、私はさように考えております。しかし、すべての輸出商品がやはり国内である程度消費されないで余って参りますると、外国にたたかれます関係上、国内の小幅の需要というものはやはり尊重をしなければ輸出もできない、また、できても値が通らない、こういう関係がございますので非常にむずかしゅうございまするが、私どもは、国内の小幅がやはりついてくる価格を度外視しては価格というものは考えられない、かように考えております。
#59
○森八三一君 そうしますと、私、しろうとでわかりませんが、輸出貿易の面だけから見ていけば、今日の世界の経済実勢から考えて、今きめられておる最高十八万円という今生糸年度の最高価格はもう妥当なものではない、しかし、国内の需要から考えますれば、必ずしもそうは言い切れないということの御答弁だと私は了承いたしました。そういうふうに受け取ってよろしゅうございましょうか。そいつをさらにもう一歩突っ込んで、国内と国外を分けてきめるというわけには実際の取引上いかぬと思います。そういう両面を勘案して、さて、それでは一体どの辺に安定させることが好ましいか。私もかつて二年ほど前に向こうに行ったときに、関係の業者からとにかく安定ということを非常に強く望まれましたので、今でもそのことはしろうとの頭として受け取っております。そのときにも必ずしも十九万円とか二十万円とかいう額でなしに、極端な議論をすれば、二十一万円でも二十二万円でも安定をするということを非常に強く言われました点から考えますると、必ずしも今の十八万円というものにくぎづけにする必要もないというふうにも思われるのでありますが、そう申して、一体どの辺が今の現時点において妥当であり、将来一年くらいを見通してどの辺が妥当だとお考えになるのか。ということを申し上げますのは、現在の安定価格十八万円というものを政府では非常に強くお考えになり、それに近づけることを努力するということを言っていらっしゃいますが、努力することがむだなことであれば、これは変えることが正しい方向だと私はしろうとながら思うから、こんな質問をするのですが、いかがでございましょうか。
#60
○参考人(安田義一君) 価格問題は、どうもだれもが推定、推測できない問題でございますので、非常にどうも離間を仰せつかって、はなはだお答えに窮するわけではございまするが、顧みますと、私は、本年の三月に十八万というふうにきめましたことが、ここまで生糸の需要を引っぱってきた大きな原因であったと思います。従いまして、これは私は非常にいいことであった、また先般、農林大臣が法律を改正しても十八万を堅持すると、こういう御声明があったと記憶をいたしておりまするが、当時といたしましては、これまた非常にヒットでありまして、これによりまして、生糸需要というものは、さらに伸びて参ってきたわけでございます。従いまして、今ここでどうもそれがよかったとか悪かったとかいうことを論ずるのは、何か非常に事が複雑に相なるかと存じまするが、ただいま御質問の現時点におきましては、私は一般環境も非常に好転をいたしておりまするし、アメリカの景気もよろしいようでございます。欧州の方で非常に糸の需要がございまするのも、これは織物になってアメリカに行くものが多いのだというふうにいわれております。私は確認をいたしたわけでございませんが、さようにいわれておりまするので、当時よりは糸価のいどころは高くても人はついてくる、かように考えまして、内需と平均の価格を出せと言われますと、はなはだどうも計算もしにくいわけでございまするが、やはり十八万前後というところはいいところだと思います。これは冷静に考えまして。今、少し供給不足相場ということが出ております。やはり国としては、十八万を中心にして、上は二十万ないしそれから上でしたら、これはやはり何か少し価格を押えるようなことを考えるべきだと、かように考えております。
#61
○森八三一君 そうしますと、今の十八万円というものの前後が実勢ではないが、そういうことをしばしば声明もし、取りきめてきたことによって需要が喚起せられ、輸出も伸びてきたことだから、これをあまり大幅に変更するということは、将来また需要の減退を招集するなどの心配も持たれるので、その辺で大体のところを取りきめていくようにすることが好ましいという御見解と承ったのですが、そうすれば、その十八万円に近づくような努力をするという政府の考え方も受け取れるが、実際四万六千俵より持っていないという実態ですね、それと世界の需要の実勢というものを考えて、現時点でそういうことが日本政府の力なり業界の協力によって実現し得る見通しというものが持てるか、持てないか。ただ理想論として考えましても、力なしにそういうことを言ったってこれはむだなんですね。これが三十万俵も五十万俵も持っておれば、これは可能かもしれません。けれども、数量には限界がある、そういう持っておる実力を考えながら、そういうような希望にこたえていくということが可能か不可能かという見通しは、いかがなものでございましょうか。
#62
○参考人(安田義一君) 私が十八万と申しましたのは、中心がという意味でございまして、従来も比較的生糸は、御存じのように騰落の激しいものでございまするからして、上下二、三万の幅ということが当然予想されるわけだと思います。はたして政府の今所有されております生糸で価格のコントロールができるか、こういう御質問でございまするが、私はやはりただいまの相場の基調をなしておりまするものが、需給不足というところに大きな原因が一つございます。従いまして政府が糸を出すということは、何といっても価格を下の方にもっていく力を持っておる、かように考えております。高値を押えるということは、その高値いかんにもよりましょうが、私は相当の数量を持たなければ高値は押さえられないのが通常の場合であると考えますが、これはもう一つ、いわゆるマーケットの自律作用と申しますか、高くなればやはり使い手が少なくなるという形において、ある時間をかけますればやはり妥当なところへ下がってくる、かように考えますので、高値押えは量がある方がその始末はしいいんですが、量がなければ青天井だというふうにも私はものを考えなくてもいいんじゃないか、かように考えております。
#63
○清澤俊英君 第一にお伺いしたいのですが、安田さんが今言われた十八万円が望ましい、そこらがいいんじゃないか、こういう線の十八万円という意味を一つお伺いしたいのですが、実は、この十八万円というやつが出て参りましたのは、臨時措置法で買いました五万俵ですね、それの処置の際には、たしか四万円の幅を見て高値として十八万円、従って、妥当線の糸価は十六万円になっておる。それはあなた方の方がよく御存じだ。そうなっておって、下値が十四万。そうすると政府の考え方の望ましい安定価格が十六万円、そうして今あなたのおっしゃっていることは、十八万円が大体妥当じゃないかということで二万円の基本線が違ってきた。従って、これを安定価格として認めますならば、幅を四万円持っていったら二十万ぐらいになります。最高が二十万円ぐらいと見て十八万円ぐらいにおさまる。これが今までの考え方の妥当線です。そう私は考えておるが、それはどうなんですか。
#64
○参考人(安田義一君) ただいまの御質問は現時点においてということでございましたので……、最近は、当時中心値を十六万といたしましたときよりも、やはりそれだけ水準が上がってきた。今の実勢では、やはり十六万円が中心だというのでは少し中心が低くなっておる、こういう意味で申し上げたわけであります。糸価というのは、最低値にくっついておるときもありますが、最高値にへばりついているときもございますから、中心がどこでなければならぬというふうにあまり固執して考えなくても、かりに中心が十六万であっても、十八万とか十八万五千あたりに上値がくっついておっても、それでもいいわけではないか。
#65
○清澤俊英君 ちょっとわからない。私の聞いているのは、基本の基準価格が違ったのだ、こうあなたがおっしゃるから、そうなれば今までの例からいえば、安定帯価格として処置するには、三十万から十六万円と、こう変わるのがほんとうじゃないか、こうなれば十八万円を中心として動くのではないか、これは大体の生糸価格の趨勢と見るべきであろう、こう私は了解しているのだ。あなたが十八万円ぐらいが妥当じゃないかと言われるので、そうすると、基本の十六万円がくずれてきたのではないか、こういう考え方に立つのです。
#66
○参考人(安田義一君) 私は別に基本がくずれたとは考えていないのですが、と申しますことは、かりに例を申しまして、十六万中心で十四万――十八万ということで糸価を維持していこうというのが、去る三月の審議会の決定でございますね。そのときが最高値と考えておった。今は最高値であるかどうかわかりませんが、そのとき最高値と考えられておった上にくっついておる状態なんです。ということは、需給関係が非常に逼迫しているから、安定帯の一番天井に今いるわけですね。あるいは天井を突き抜けようとしている。従って、私は天井なら十八万でもいいじゃないか。安定帯の考え方ですが、常に一番中心値というものに厳にいなければならない、天井に行ってはならないという考え方なら、確かにその基準は上がっています。しかし、こういう需給情勢のときに、天井にいるから基準も上がったとまで考えなければならないかということは、私はちょっともう少しものを見きわめて考えたいと思っております。
#67
○清澤俊英君 そうしますと、私はあなたと議論をしておらぬのです。私はしろうとでよくわかりませんから、いろいろお伺いするのですが、三月三十一日に安定帯のワクがきまった。そこで、あなた方が春繭のなにを五月にお買いになった。大体近藤さんは売り方、内林さんも売り方。買い方は安田さん。これはどちらもよくおわかりでしょうが、春繭は一千四百円見当だと思う。晩秋蚕に至っては千六百円から千七百円、平均すると少なくとも千五百五十円くらいにいっているのではないか、こう私は思うのです。それを中心にして糸価というものを出して参りますれば、あなたの方は御商売だ、私が申し上げなくてもわかっている。さっきあなたが言った通り、買った繭の値でいけば二十万円以上に売らなければならない。これは真実であろうと思う。あなた方があの臨時措置法でお買いになるときは、この分はそれでよいが、この次はそれ以上に上がるだろう、その目安がなければ、二十万になる前に仕入れができないわけなんです。そのときはもう腹がちゃんときまっていただろうと思う。きまらなければ買うことができない。製糸屋さんがそういう繭を買われるわけがない。その上に追い払いをしてやれ、これははっきりしている。追い払いは。きまった値段のほかにまたプレミアムをつけてやっている。これは糸価まで出ているときも、出ていないときもあるが、それは私は聞かないからわからない。はなはだけしからぬものが出た。それが高いものを買われるときは、もう十八万円は突破するものであるという観点に立たれておったのではないか。ここはどうなんですか。私が非常に疑問に感ずるのは、十八万円でいいとか、あるいは十八万円が妥当だとか、こういうことを言っておりながら、そのうしろではそういう意図で買っておられる。養蚕家は非常に喜んでおる。養蚕家の目から見れば非常にありがたい。そこはいろいろなものがあったと思いますが、大体そこが私は中心じゃないかと思うが、もう少しつじつまの合った話をしていただかないと、事がどこらで何しているのか私はわからない。近藤さん、この点どうなんですか。あなたからお伺いします。
#68
○参考人(近藤好一君) ただいまの問題でございまするが、全く今おっしゃる通りだと思うのです。と申しますことは、取引にあたりまして、昨年のあの状態からいって、ことしの春一、二月ごろからずっと上げてきた。結局、全養連として、統計を一つつかんでみようというのでつかみましたが、約三百万貫余の繭が不足するということをつかんだ。大体製糸の方の考え方は、秋蚕において安く入るだろうというような見越しを持っておった。われわれもどうかと考えておったのですが、繭の生産が少ないということ、大体さっき申し上げましたけれども、春繭が出て、新糸になれば安くなるのだという業界筋の見方、製糸の方の見方も大体そう高くはならぬのじゃないか、うまくいくのではないかと見ておられた。で、秋の取引になりますというと、ここに安田さんをおいてどうかと思いますが、かけ引きがちょっとあったように見受けられるのであります。よってずっと上がってくる、先ほど申し上げました通り、世界の景気というものはだんだん上がってきている。要するに労働問題から考えてみても、アメリカにおける労働者の待遇の関係から見て、ソ連に負けないような態勢をとるというような立場から、いわゆる大衆、労働者が購買力をずっと増してきたという立場から、生糸の需要も増してきておるという関係もありますし、ヨーロッパ筋の関係も、中共から糸がいかぬ、中共自体においても織物に加工してやはり持っていくという形になっている、ヨーロッパ筋ではまあ日本の糸が回るというような関係から大へんずっとふえてきておる。そして晩秋蚕の取引の関係でありますけれども、これらについてはかなり製糸も取引が済んだ後に政府の方に値上げ方式を考えてもらおうじゃないかというようなことを暗に見ておったようでありますが、要するに、先ほどの安田さんの御答申の意見から考えますときに、確かに安田さんの方から、買い側からいえば十八万で堅持していくならばということがむしろ大へん楽だというふうに見えるが、反面には、自分で買っているところの引き受けた繭というものは、現在各地でもそうですが、この間も山梨に参りますというと、生繭一貫目千九百四十円で取引が行なわれている実情で、なお、糸量は十六匁五分というような繭が処理されている。群馬県の繭取引を見ても、一万五掛協定されておりますが、実質においては一万三百以上の掛目になっているというふうに考えられる。こういう点を考えると、ここで糸の価格というものを一応十八万のめぐりでこうだということを考えていくとするならば、確かにそれは買い側からいえばちょっと値下げに見えるけれども、養蚕者として製糸のかけ引きから見たときに、また一面、十八万めぐりでいいのだけれども、十八万めぐりということになれば、非常に生産費を極端に割るような態勢が出てくるのだが、繭値だけは上がっているからいいわけだが、繭値の問題ですが、十八万、十八万ということによって一生懸命押えてきたことによって、すぐ今プレミアムがついたということでありますけれども、十八万でいくんだ、加工費がないのだと、こういうようなことで押えてきたのに押えきれない、で自然の相場が出ておる立場から、そこで出さなくちゃならぬというような問題が出ているので、現在安田さんの配下にあるところの全国の各製糸家はどうなっているかというと、まあ非常にもうかっている人もあるかもしれませんけれども、大多数が貧乏をしていくんだという話がありますけれども、もし十八万めぐりで貧乏をしないということになりますと、まあ安田さんの方としては相当もうけているような形になるのではないかと考えられるのですが、何としても現在私どもが見る範囲では、製糸の金融も容易でないように考えますときにもうかっておらない、先ほどのお話しの通り、私も向こうへ行ってみても、安田さんも最近行ってこられた。向こうでは安定すればいいのだ、十九万が二十万でも二十一万でもその価格が維持できるような……大幅なのこぎりの刃のような差がつくようなことであれば、先に仕入れて織物に回したあと売るというときに、大きな幅が出てくるというと大きな損をする、まあもうけさしてもらいたいと、確かにおっしゃる通りで、だれでも商売をしていく上においてはもうけることが商売ですから、当然アメリカ人といわず、日本人といえども同じことだ、こう考えるのですが、いろんなことを述べたのですけれども、大体結論といたしまして、何としてもこれまでの状態から見たときに、安田さんも語っちゃいないと思いまするし、私どもの考え方としても、高さ低さの考え方もあったんですけれども、どうも製糸の見方が、かけ引きがあり過ぎたし、養蚕家にもかなり不安を与え、現在少しの掛目協定外の金を出しておる関係もありまするけれども、単に仕入れ仕入れなどで来年の春の取引というものは、おそらく繭が相当減収する、減収しないまでも現在の政府保管糸が約五万俵、現在四万五千俵、これを全部出せば、先ほど申した通り、がらがらくる、がらがらきても、その後大きく上がってくるけれども、そういうふうな不安な状態をみずからがアメリカ側に与えるということは非常にまずいのでありまして、来春の繭などはおそらくとてつもない相場が出てくることは、これはもら人為の問題でなく、自然の景気によって出てくるのであるからして、ここで安田さん等もあまり紳士ぶらないで、十八万が製糸としてよいだろうとかでなく、二十一万が適当だと、はっきりして、押えていくということが必要である、この権威ある委員会に対して一つ御発表が……十八万をどうこうということでなくて、二十一万なら二十一万、二十二万がいいんだという程度で、委員長に一つ取りなしていただくような方法をとっていただくことが望ましい、こう考えるのであります。
#69
○清澤俊英君 安田さんに聞きますが、大体結論が出ていると思うんですが、あなたがさっき二十一万と言われた、需給の中心にした価格を、安定を押えた、二十一万ぐらいを最高として押えた方がいいんじゃないか、これは正直な答えだ、あとでちょっとくずされたけれども、大体それくらいにいくんだろうと思わなければ、糸を買いませんよ、それは生産かま数が非常にふえているんですから、繭から見ますれば。だからそれらの打ち方の無謀な競争もあって高値を買わなければならぬ事情はよくわかっております、わかっておりますが、ある程度の目安があるから、ある程度やみ買いでも何でもして、いろいろなものを採算の中へ入れて、あるいはわしら聞きますと、失業対策の金を出すのを、それを回して買ったとか、いろいろな話を聞いております、御苦心のほどはよくわかりますが、とにかくにあれだけの価格で買われるということは、もう一つの目安があってのお買いだと思うんです。そうすれば、それを中心にして率直なものを出してもらいたい。
 それからその次についでに肥田さんにお伺いしたいのは、あまり同じような質問を繰り返すのもあれですから、これはもうやめたらいいじゃないかと思いますが、肥田さんは先ほど一番先に、幅を変えない方がいいんだと、その幅のあるものは、この間の臨時措置法……十八万円で売り出すことはよろしいが、あとに残ったものなどは二十三万円、十四万円ぐらいの線は残したらいいじゃないか、こういうお考えだったと思うんです、そういう御発言でないかと思うんです。大体あまり法律をいじって安定帯を突っ突いて変えることはよくない、幅を変えないことが原則で、変えない方がよいと思う、こうおっしゃっているんであります。そこでそれと関連しまして、あなたは大体十八万円ぐらいで出してもらうのが、いろいろ糸の関係もあるから、よろしいと、こういうこともそのあとで発言しておられるんだが、そこで問題は、あなた方のお話のほかに、いろいろな新聞の論調、業界雑誌の論調等を見ましても、もし政府の手持ちの糸が全部ここで十八万円ぐらいでもうぱっと出てしまえば、これはもう飛んでしまう、しまったあと何にもなくなったら、青天井だ。先ほどから安田さんも触れておられるし、また、近藤さんも触れておられる。そこで輸出業者としての肥田さんは、その点についてどうお考えになるか。青天井ということは通則じゃないかと思っておるんです。もうみんななくなったら天井を突いて青天井へ行くだろう、この危険を冒してまで全量を放すことが妥当か、妥当でないか、これは重大な問題です。そこで安田さんの言われるごとく、二万俵ぐらいのものは逐次売りなさい、急激な変動を与えないように逐次売りなさい、政府も十八万円を割った妥当な線でこれは一つ売っていきなさいと、これは安田さんの意見だったのです、あとの分は持っていた方がよかろう、こういう線なんです。あなたの御見解はどうなんですか。青天井は絶対出ない、心配要らないと、こうおっしゃるんですか、どうですか。
#70
○参考人(安田義一君) 十八万中心ということを申し上げましたのは、内需もついてき、外需も――もちろん外国は喜ぶでしょうが、内需も減らないようにして考えられる価格は幾らであるかという御質問に対して、私は理論として申し上げたわけなんでございますが、生糸は幾らで売りたいのだという御質問でありますれば、それは率直に二十万円近くで売りたいのだ、そういうふうにお答えをいたします。
#71
○参考人(肥田啓治君) 先ほどの御質問の方で、幅を変えない方がいいからというので十八万円と二十三万円の幅とおっしゃった点ですが、私はそういう意味ではなくて、これはこの三月にきまったとき、大体実際上においては十四万円と十八万円という幅が一般的に認識されたから、その幅を変えない方がいいと、そのことだけは一つ訂正しておきます。
 それから先ほどから価格の問題、見通しの問題、いろいろのこれが中心になってきておりますけれども、私つくづく考えるのに、これはもう専門家であろうが、だれであろうが、しろうとであろうが、将来ということのわかる人たちは全然ないと思う。これはことしの初めごろは十万俵というものはどうしたらいいのかというのがみんなの心配の種であった。なぜならば、昔は十万という滞貨糸を持っていても、そのころの生産が七十万、八十万ですから、そのうちの十万は何でもない。今は生産が三十二、三万、それで十万という滞貨をかかえたとき一体どうするかということはこの春ごろの悩みであった。今日何年先じゃない、ちょっと先は人間はなかなかわからないのでございます。そうしてここでお答えできる問題は、十八万円が適当であるかどうか知りませんが、とにかくこの十八万円という値段が決定して、世界の景気もよかったせいもありましょうが、各地に輸出が伸びたということは確実であります。これを今度は変更してそのままいくかどうかという問題を、これも予測になりますけれども、これはやはり十八万円で進むよりはある程度は何がかかってくるだろうと思う。それはわれわれわかりませんけれども、業者の方は結局ネクタイは絹に限るというけれども、値段が上がればそれも変わろう。結局今まで十八万円で進んでいった消費が――消費が伸びたという事実だけは過去の実績として確実でありましょう。今後変えていってそれがはたしてその同じべースでいくかどうか、まあこれもプロバビリティーの問題としては多少抑制がくる問題ではないか。それからまた、この需給関係だとかというものを、一部分、一部面の、まあ参考人が申し上げましても、それはほんの一部分でありまして、たとえば先ほどのように、輸出々々と――われわれは輸出をしておりますから輸出のことばかり申し上げますが、生糸というものを、合わせてなんぼになりましょうか、ことしが十六、七万俵になりましょうか、しかし、それは生産の半分であります。内需の消費というものがその半分、あるいは半分以上。そうすると、先ほどのお話のように、内需の値段に抵抗ができて、その方の消費が減退したならば、破綻はその方からできて参りまして、価格は維持できません。海外はなんぼでもこれでいいと言っていても、これは需給関係が逼迫してもその値段でもついて参りますけれども、内需の方が抵抗が多くなって、内需の方はとても十八万円や二十万円では買えない、内需の方は三割操短しようかという問題になりますと、その半分以上の内需の消費が減退するならば、すなわち需給関係は水のようなものですから傾いていく。傾けば価格はそこに変化が起きますから……。私はそういう意味において将来の問題がどうとかというものはこれはなかなかわかりませんから、もう決してわかったと言えるわけではありません、わからないと思います。
 それで今一番最後におっしゃいました問題を、このものを全部出したならばどうだろうかというお話で、新聞だとか雑誌などで想定を書いて出せば皆売れてしまうだろう、青天井になるということですが、ここにおいてまた一つ考えなければならぬことは、皆さんのお話の中で、ただいま当面している問題も、ごく当面している問題――ショート、レンジにものを考えるのと、ロングレンジ、日本の蚕糸業というものをロング・レンジに考えるということと、二つがあると思います。せっかくのこの消費の伸びた時期が、めったにしょっちゅうそういう時期があるものではないのだから、消費を一つ伸ばしていこう、消費の面が確保できるならば、これは生産の方も安心して養蚕ができるという面もありますから、その面におきまして、しかし現実の問題はどうだ、現実の相場は十九万なんぼになっている、三千二百四十円、五十円になっている、もうそれだったら十八万円は安いじゃないか、当面している現実の問題を考えると、そこに非常に不合理ができるようにも考えられますが、しかし、日本の蚕糸業をほんとうにロング・レンジに考えて発達させていこうということを考えますれば、年度内にきめたものをめったやたらに変えるということは、これはやはりマイナスになりゃしないかというふうに考えるわけでございます。
#72
○清澤俊英君 私が聞いているのは、先ほどのあなたの御説明、お話だというと、大体安定圏をあまり変えることはいけない、そこで本年の、三十三年度、四年度の繭並びに生糸は十八万円で、とにかくあなた方も出てきめられたので、これは価格安定審議会に出て一応きめられたのだから、それはわかった、わかったが、今この場にきて、その通りきめた二十三万円の、安定法によるあとの五万俵ですわ、それまでをすることがどうか、こういう意味合いで言われたのじゃないかと思います。幅を変えない方が原則でよろしいと、こういうお話をしておられる。そして今だというと、幅を変えていいというお話になって、一番先に言われたのとちょっと違うのです。私がお伺いをしましたのは、あなたがはっきりと前の臨時措置法のものはこうきまったのだから、これは変えないことはいいが、このあとの分は幅を変えた方がよろしい、こう私は言われたように聞いているので、ちょっと今の説明では変わっていますので、いまちょっとお伺いしておきます。
#73
○参考人(肥田啓治君) 幅を変える、変えないということについて申し上げましたことは、あの三月三十一日のときに十四万円と十八万円がきまりましたですね、そしてもう一つ二十三万円というものがもちろんあります。ところが、今日十万俵というものがございまして、それで二十三万円というものは糸価安定法の上で一番の上でありますから、十四万と二十三万円の幅になっていることは、これはその通りでございます。ところが、あのとき十四万円を下にして臨時特例法の意図は十八万円で売り出す、ところが、十四万円と十八万円というものが、先ほど安田参考人からもおっしゃったように、テクニカルに言えば、全く三つあったわけでございますけれども、現実には十四万円と十八万円というものが現実に、本年度内に払われていく幅だということを……まあある意味においては海外の人たちが説解したかもしれませんが、結局あれの問題はそういう工合に一般に了解した、その意味においての幅を変えない方がいいと私は言ったわけでありまして……。
#74
○清澤俊英君 逆ですね。
#75
○参考人(肥田啓治君) そういうことでございます。
#76
○田中啓一君 何しろ相場の問題がありますから、生き物のようなものをつかまえるものでございますから、なかなか私どもも拝聴いたしまして大へん参考になったのでございますが、本日は生産者側の参考人にお二人来ていただきまして、明日はどなたも生産者側の方がお見えになりませんから、この生産者側の方にお伺いをいたしたいと思うのであります。
 春繭は、今年の生産は約五百万一千六百トンで、前年より五%減少をしたということが農林省の報告でございます。それから更秋蚕の方は、前年度より四%減の六万トンと見込まれております。従って、合計すると、前年度は十一万六千七百二十四トンであったんだが、それよりもやや減少だと、こう春と夏とに分けて農林省は公式に報告をしているわけでございますが、大体その事実は間違いがございませんか、副会長の方から一つ。
#77
○参考人(近藤好一君) ただいまの繭の収穫量でございますが、大体にそれよりちょっと下回っていると思います。減り方がずうっとよけい減っているというふうに見てもいいと思います。
#78
○田中啓一君 そこで、私は春繭の減少のことはさもあろうと、こう実は思われるのです。というのは、春は繭の値段は安かろうと、こういうことで、はたで皆心配しておったと思うのです。ところが、秋繭になりますと、春繭がだんだんしり上がりになるのではないかと思うし、そこはよく私も存じませんが、しり上がりというほどにもいっておらぬ。なかなか安田さんの方は上手にお買いになったと、こういうことであったのかもしれませんが、私なら大ていその辺見込みをつけて、夏秋蚕を人いにやってやろうという気になったろうと思うのですが、そこらの気持がまだまだ底抜けに下がるという見込みであったというのか、いや、そうではなかったが、例の災害等がございまして、桑畑等もいためられたかと思いますので、そういった自然現象が主たるものなのか、あるいはまた経済的な事情が主たるものなのか、どちらでございましたでしょう。
#79
○参考人(近藤好一君) 自然現象か、それともそうでないかというお尋ねでございまするが、自然の災害関係の現象もあったと思いまするが、何と申しても昨年いためつけられておりますので、施肥等も非常に少なかったことと、農家の養蚕収入というものが全く少ないのでございます。たとえば一反歩の桑園からかりに三十貫とったとしましても、千五百円にしても四万五千円ということでありますから、他作物を考えますときに、耕作面積によって違いますけれども、蔬菜その他の一般農作物でいいますというと、十万円から上げている人が少なくない点もあるのであります。ところが、一反歩を利用して三万円程度の収入、あるいは四万円ということになりますと、実に少ない。それだけ農家のふところが容易でない。ですから、そういう点から施肥の関係も十分でなかったと思いますし、特にまた陽気に支配されるものでありますから、非常に発育も芳しくないということと、多少いたみもあったと思いますが、何としても自然の関係もありましょうし、また災害の関係もありましょうが、少ないことは事実でございます。それで、明年度についてはこの点がどうもまだ少ないということを深く憂えるものでございます。
#80
○田中啓一君 実は明年のことがお伺いしたかったから三十四年度のことをお伺いしたわけなんですが、三十三年度の夏秋蚕ですね、今からいえば一昨年ですね。あれは一方で、最低値段で政府は買い上げなければならぬということ、そこでこう際限なく買い上げるということではとてももたぬから、一つ生産制限をしてくれ、こういうこともまた言い出したわけであったのであります。何とか自発的に一つ生産者の共同の生産調整はできまいかというて、政府側の方は実は懇願をしたようなこともあったのですね。それで全養連もできるだけ協力をいたしますと、こういうことで多少はとどめてやっていただいたのでありますが、実はなかなか予期の通りには今のところは生産の減少は起こらないで、何ぼかは減ったに違いないけれども、そうは滅らないというような事実がございまして、まあ私はいずれかに生糸の価格を決定するものは、根本的には需給の関係でございましょう。現実は、途中にこまかいかけ引きはいろいろありますけれども、大勢はやっぱりそうであろうと思います。ところが、需要の方は非常に弾力性が大きいと申しますか、変動は大きいわけです。生産の方はそうはいかない。しかし、相当の価格であれば、漸次需要に追いつくように生産は増加するであろう、こう実は大勢を達観できないかと思うのでございますか。
 そこで、今、すでに明年のことを近藤さんはおっしゃいましたのですが、これは下手をすると政府の手持ちをみな売ってしまって、あとはどこまで上がっても何ともはや見ておる以外には手の下しようがないような状態になりはせぬか。それではどうもかえって生産界にとっても混乱を生ずるわけなんだから、そういうことにならぬようにやってくれということを近藤さんはおっしゃっておるように伺うのです。ごもっともな御意見だと私も思うのです。そこで、来年はとにかく生産をできるだけ増加していくということがいいのじゃないのだろうか。十八万円ではまだ足らぬからとても生産はできないと断わるよりも、養蚕連合会も組合も、一つ大いに力を入れていただいて、そしてあまり高くならぬように一つ生産を増加して、その勢いが見えれば、それはやっぱり需給均衡という方向になりますから、値段もむやみと、いかように青天井だといっても上がるわけはないと思う。説教するわけじゃありませんが、そこらの見通しでございますね、幸い内林さんもおいでになっておりますので、この質問は一つ両方からお答えを願えぬかと思いますが、来年の生産はどうなりましょうかね。
#81
○参考人(近藤好一君) 今、養蚕団体もこの需要の増大にちなんで爾の生産に一つせっかく努力したらどうか。できるかできないか、これは御意見でございますが、あくまで需要にこたえるような努力を全養連としても進めておりまするし、また各府県ともそれに対して養蚕家自体がそういう気持になっております。ただし、桑が永年作物だけに、機械でやる仕事と違いますので、その幅がなかなか調節できないということも認識の通りだと思います。
 そこで、さっき安田さんの方から出たのでちょっとなにさしていただきますが、どうも相場というものはだれにもわからぬのだという御意見でございます。全くこれはその通りだということを同感するのですが、神様ならわかるというお話をちょっとされたのですが、神様でもわからない、これはわからない。世界の情勢、たとえば災害関係の場合、静岡なら静岡に大風水害があった。米がうんとぺっちゃんこになっちゃった。これは大へんだというので、米の買い置きが必要じゃないか、買い置けばもうかりはしないか、こう考えてみた場合に、さて買ってみた、ところが、静岡の一局部が災害になっただけである、日本全体から見れば別にどうもこうもないという関係が出るので、相場の状態も日本だけ考えてみると、日本の内需の関係がどうかこうかという意見があります。景気というものはどこからくるかわかりませんけれども、かつて今回の、戦前における当時、東京の景気が工合がいい、大阪がいい、広島がいい。が、農村地方においては何ら景気なんか一向出てきはしない、何にも出てきはしない。現在は東京都におけるデパート等における一日の売り上げが二億とか三億とかいうが、農村に対しては、それに対しては一向に触れていない。けれども、その景気はだんだんしみてくる、東京から、群馬の方で言うならば、東京の景気がよかったのが大宮まできた、大宮はいいそうだといううちに熊谷にくる、熊谷がいいそうだといううちに前橋にくるということがあるわけです。それが、今度の景気というものが、私は講釈する必要はないけれども、御承知のように、戦争によって、欧米各国に支配を受けておったいわゆる属国的な国々が今日独立をしておる。搾取された国が今度独立するということ、搾取された国々というものは、申し上げるまでもなく、富を持っている国である。しかしながら、その国が支配を受けておるために、奴隷的な国であった。その国が独立したことによって景気が非常に大きく上昇したということは、これは争われない事実である。こういうことを考えるときに、世界の動きというものの上に立っての景気でありますので、日本がぎゃあぎゃあ言ったところで始まらぬので、世界の景気、気分が醸成されてきて、戦争が続けば、続いたあと必ず不景気がくる、不景気になれば平和になってくる。この景気というものは押えつけになるものではないのであって、ですから、私はどうしても、安田さんの方からいえば、安く買う方が一番いいのであって、御承知の通り、機屋さんはもうけほうだいにもうけておる、製糸家は泣く泣く貧乏しておる、養蚕家は高く売れてよかったというようなことを言っているけれども、恩に着せられてまで高く買ってもらう必要はない。二十二万でも、あるいは二十一万でも現に売っているんだと。たとえば、さきの農林委員会における安田さんの御意見等を聞いておりますると、十八万で売るのはよろしい、政府が売ってくれるのはけっこうだが、あなたの方は損じゃないかと言われれば、私の方は二十一万円で売っているというのは、これではちょっとうまくないのであって、景気というものは別に神様もわからないし、だれもわからないが、広く世界というものの点から見て、世界の動きを見て、それによって、景気というものはそこに発見されるであろうというふうにも観察されますことでありまして、今回の景気は、養蚕家もその景気に乗せていただきたい。こういうことを深く考えるものでありまして、繭の生産だけはせっかく努めますから、一つお願いいたします。
#82
○参考人(内林喜三郎君) 私は、この繭糸価格の問題になりまして、いずれも審議されるのが、製品になった生糸のことがいつも基礎になって審議されておる。いつも考えられないのが、原料を生産する原料の問題について論議されないのです。農民は皆様方に立場を訴える機会もないしいたしまするので、下がってくれば無言の抗議で私たち農民はお蚕をしなくなるということです。よくなれば、あわてて一生懸命増産に励もうというのが、農民の実際の姿なんです。上がってくれば何とかやるし、下がればやらないという。そして、ことしの問題は、もう昨年にこりごりしているからということで、桑園の整理をしたことが減収の一番大きな原因です。不作ではございません。群馬あたりの私どもの方でも、あまり不作ではございません。しかし、数量の減ったことにおいては事実でございます。これは昨年、国の方で、桑園を整理しなさい、補助金をくれる、こういうことであったのです。当時、補助金をくれるときに掘ろうということで掘ったのが、ことしの減収の一番の原因です。来年の問題につきましても、一番心配しておることは、どうも政府で十八万円でいやおうなしに押えるということであるならば、本気になってこやしもくれられないというのが現在の姿。それから昨年来、本気になって肥料を桑園にくれられないということが実態です。昨年の状態よりも、埼玉から群馬へ行って見ていただいても、桑園の伸びというものが一尺ぐらい昨年より短くなっています。桑園の伸びが一尺くらい短くなっています。当然、来年は、あわてて肥料をいたしましても減収になると思います。それはあまりにも原料である繭の生産者の立場を考えないで、十八万円がいいのだとかいうことを聞いておりますから、増産意欲がなくなっているということを私は申し上げます。増産意欲がないということが一番大切なことです。やはり私は、どのように蚕糸業を発展させようと、百姓が合わなければ、お蚕を飼わなくなる。飼わなくなってくれば、皆さんがどう審議しても何にもならないのだということで、私は農民は無言のうちに抗議するのだ、さように考えますから、よろしく御審議願いたいと思います。
#83
○田中啓一君 きっと、そういうような話が出るだろうと思いましたから、私、生産者の方にお伺いをいたしました。農林省の最近の調べによりますると、昨年の繭の売上高が、三十三年度は二百三十三億六千百万円、それから三十四年度は、若干推定が入りますですけれども。それに対して三百四十八億円、これは推定で概算です。パーセンテージで四・一%の増、こういうことになります。繭の売上高だね。そこで、今、生産量が減ったにもかかわらず、値段が高かったから、こういうふうに四・三%の増収になった、こういうことでございますが、そこで、まあ、さらに三十五年度は、おそらく世界的にも、日本的にも、そう景気は今年ほど上昇するかどうかわかりませんけれども、少なくとも減退ではないということが、ほとんど定説になっておるわけです。そこで、今の需要がどれだけ伸びるかどうかわからぬけれども、何しろ、荒っぽい弾力性を持っておる需要のことですから、青天井で奔馬のような勢いで一瀉千里で大混乱になるという心配が一面にあるのです。これをほんとうに防ぐ、安定させるのは生産供給であろうと思う、何よりも。なかなか、これはいろいろ売り方について御論議が出まして、トラの子の、残っておる四万五千俵、これをどう売るのか、こういうことで皆さんは論議されるし、ここへ局長が出てきて大いに頭を悩ましておるのだろうと思っておるのです。まあ一つ皆さんはよく御相談をしてうまいことをやりたいということに違いないと思うのです。そこで、こういう形勢ですから、やはり大勢をきめるものは生産であろうと私は思う。ですから、あまり意欲が起こらないということを言わないで、何とか一つこの辺で大いにやっていただけたら、安定ということに根本的に資するのだという気がするものでございますから、大へんくどいようなことを重ねてお伺いしますが、実は私ども何よりも繭の発展を考え、どんな経済になったかということを忘れておるのでは決してございませんということを申し上げまして、一つ大いに御奮発を要望いたしまして質問を終わりたいと思います。
#84
○清澤俊英君 これは肥田さん、安田さんだけに大体聞けばいいと思いますが、あなた方にお伺いしたいのですが、この間、五千俵放しましたね、交換糸と称して。これは実際の取り扱い上で違法の点があるのだと思うのですけれども、五千俵放しました。その際に聞きますと、農林省では申し込みが一万五千俵ほど、こう言われるのです。そこで抽せんでこれは売り渡された、十八万円で、こういう話を聞いておるのですが、ところが、実際の業界の人たちは異口同音に、実際の申し込みは四万俵であったと言うのです。そこのところはどうなんです。あなた方も入札した方の口だろうと思うのですが、これは四万俵が実際なんですか。そういうことはないだろうと思うのです。四万俵の申し込みがあったのだ、こう言われておるのですが、これはほかの方では大部分はそういう表現があるのです。これはどうなっておるのですか、肥田さん。
#85
○参考人(肥田啓治君) 私もはっきりその数字をあれしておりませんけれども、四万俵ぐらいあったのじゃないですか、申し込みは。
#86
○参考人(安田義一君) 私が聞いておりますのでは、何でも申し込みの一割ぐらい取れた、そういうことは聞いておりますから、それから推算しますと、申し込みはまあ十倍あったわけですね、まあ何万俵という数字は聞いておりません。ただ二、三の申込者はちょうど申し込んだ一割だけもらえたということを言っておりましたから。
#87
○清澤俊英君 そこでそうしますと、手持ち全部というわけですかね、五千が出て……こういう趨勢はどこにあるのですか、私は聞きたい。いろいろこの糸を取れば、一どきにぱっと取ればぱっと下がるんだと、こういう説もいろいろお聞きするが、その中で四万俵にぱっと飛びついていくという、大体そこの動きはどこにあるのか。これは非常に私は疑問なんです。全部何するわけはない。四万俵にもぱっと飛びついたところへ五千俵に飛びついたところに大へんな問題がある。あとにそういうことでぱっと出したならば一どきにぱっとこういきます。そうしてここでぱっと押えられて、ちょっと安いものですし、今の相場は上がっておるから少しぐらいがまんしてくれ、銀行へ行っても金は貸してくれるからというのでやったら、それは大へんなことになりゃしないか。私は商売知りませんがそういうことが考えられるのじゃないか、こういうふうに見ますが、そこらの点は商売に非常にたんのうな安田さんや肥田さんから、どういう心理状態が動いてそういうことになるのか、だから私はもっと非常な、底流にはいろいろあなた方おっしゃっているけれども、現実は底流にはもっと固いものがあるのじゃないか。ということは、あの三月三十一日の提案を審議なさるとき、どなたか知らぬ商売人の方、輸出商社でありますか、輸出問屋さんか知りませんが、私は現在十八万五千円で売っております、外国には十九万円で輸出はできます、こういう表現をしていられる。三月のあのときの相場はどうかといいますと、三月の三十一日の政府発表の値段によりますと、現実で十七万円、安値が十六万七円、高値が十八万九千円、取引所値段が十六万六千円弱、安値が十五万八千円と、こうなっている。非常な開きを持っているけれども、この時代に十八万五千円で売っております、外国には十九万円で売っておりますと、こういうことを審議会で発言しておられる業者がおられるのだけれども、それがずっときているのだから、本年の大体相場というのは、私は二十万円から二十一万円じゃないかと、こう思っている。現実の取引と清算の取引の相場と、そのほかにまだ何か一つあるのじゃないか、こういうふうに私はまあ解釈しているのですが、いろいろな材料を参考にしてみますと、そういうものが出ているのです。だから、はかり知れざるものが底流に残っている。そして今もあなたの申し上げる通り非常に苦しい御答弁だったと思うのですけれども、現にこれから二十万円で売らなければならない繭をお買いになっている。これは何かが底流にあるんじゃないか、それは否定できないのです。現実に商売人が十八万円にあれするということでお買いになるわけがない。ここには何か思惑というか、何か相場は神様でないからわからぬといいながら、やはり思惑というものはある。思惑自身は無鉄砲ではない、何かの目安があって思惑が行なわれている、私はそう思う。そうしますと、そこには何かの一つ底流をなす実勢というものが動いていると思う。それが一つで、これをあなた方からはお聞きできないところにわれわれの迷いがあります。ことに養蚕とか何とかというものに対しては、まだ養蚕なんかは農民が作っていくから、こうやってみればわかりますけれども、それを糸にして、これがまあ問屋さんにかかって、機屋さんに織られて、機にして外国に出るということはほとんどわかっている人はないでしょう。まあこれは小山さんぐらいのものです。あとはわからぬです。これが現実です。だから、そういうものがいろいろのデータで出てきますれば、ここにわれわれはぜひあなた方から解明してもらって、そうして日本の蚕糸振興が本気に取り入れられる実質の線を教えていただかなければならぬと思う。何だか知らない、何かそこに実質と離れたことをいろいろやられている。そうすると、これは私は悪くとりますと、いいじゃないか、十八万円でいって、現在二十万円で売れるから、十八万円で政府は早く出していただきたい、われわれはざあっとみんな買う、買っても約二十万円ぐらいでいくんだから。いけば一つ銀行に担保に行っても少しぐらいがまんできるんじゃないか、というような考え方じゃないかと思う、悪く考えれば。業界がそう考えておれば、十八万円、安く取ればいい、あとは考えるというふうにも悪くとればとれます。だから、われわれがもう少し納得できるような御説明を肥田さんからも安田さんからもお伺いしたい。そういう点に相当触れられておられるのは私はやはり近藤さんだと思うのです。
#88
○参考人(安田義一君) いろいろございますから一つ一つお答えいたしましょう。三月の安定審議会で十八万五千円でも売っているというようなことは、私は玉糸のことを玉糸製糸の人が発言したんじゃないかと思うのですが、当時はそんなことはなかったように思いまするので、玉糸製糸は確かにそのとき大へんよかったように思いますが、もう一ぺんお調べをいただきたいと思います。
 それから先般五千俵出ましたときに大へんな申し込みがあったと、これは当時、まあ時価であるかどうかわかりませんが、当時相当十八万円以上で実際に糸は取引されておったわけでございますが、それが一つと、もう一つは、当時、現在でもそれに近いのでございまするが、市場の情勢は普通先物で大体生糸は売っております。一月渡し、二月渡しということで売っておりますので、あのころは現物が非常に少なかった。その日渡しというか、きょうよこせというようなスポットなものが非常に少なかった。なぜそうなっておるかといいますと、製糸といたしましては、今お話が出ますように、玉繭を仕入れておりますので、なかなか安く売らないという事情がございます。同時に、当時はまだ晩秋繭の繭価協定がほとんど済んでおらない、従って繭は製糸の倉へ入っておりますけれども、まだ値段が養蚕家と協定ができていない、従って繭価は確定していないものが相当あったわけでございます。
#89
○清澤俊英君 三月三十一日ですよ。
#90
○参考人(安田義一君) 三月三十一日は、今中しましたように、そういう高値で契約しているとか売れているというのは、おそらく私は玉糸のことじゃないかと思います。肥田さんどうですか。
#91
○参考人(肥田啓治君) 玉糸です。それから絹糸の……。
#92
○委員長(堀本宜実君) 安田さん、どうぞお答え願います。
#93
○参考人(安田義一君) 後ほどまた肥田さんからお答え願うといたしまして、三月の審議会でそういう値段で売れているということは、私は玉糸のことをさしていると考えております。
 それから五千俵の買いかえのことなんです、今、ちょっとお話しかけたのは。それは当時といたしましては、確かに十八万円で政府から買いまして、すぐ転売をすれば、まあ糸の格にもよりましょうが、八千円から一万円くらい高く右から左に売れると、そういうような状況でございました。従いまして、まあ率直に正直に申しますと、宝くじを買うようなものだから一つ申し込んでやれと、こういうような空気があったようでございますね。実際には製糸にいたしましても交換生糸というような糸の手当も迫られておりましたし、輸出にいたしましても機屋にいたしましてもおそらく糸は乏しいさなかでございます。そういうことですから、十八万円にプレミアムがついたと、そういうことでだんだん横浜のうわさが、とうてい普通に申し込んだんではこないぞ、山かけて申し込めというようにみんなが沸いてきまして、そして実際必要以上に山をかけて申し込んだと、そういうことだと思います。しかし、それではそのときは実勢はどうだと、まあそういう御質問もあろうかと思いまするが、それはやはり、十八万以上だと見ているから、まあそういうことになるんですね。しかし、あれは、あれだけのものを客需要家が、ほんとうに心からそれだけ全部ほしいと、こういっていたんじゃないと思うんですね。やっぱり、よけい申し込まなきゃこないぞというんで、必要の何倍かを、それぞれの人が、まあそれぞれ、おれは十倍申し込むという人もあり、五倍という人もあったかもしれませんが、山をかけて申し込んだと、こういうことだと思います。
 それから、なぜお前たちはそういう高い繭を買うんだ、それには何か根拠があるんだろうという御質問でございまするが、きょう、実は私どもも、ここへまかり出ます前に同業者集まりまして、ハッパをかけられてきたわけでございまするが、いかにも繭が高い、一万掛の繭を買わされるんじゃこれはかなわぬ、どうかそういうことは、よく製糸の苦衷を訴えてこいと、こういうことを実は言われて参りましたわけでございます。まあこれは設備と繭のアンバランスというような関係もございましょうが、御承知のように、生糸製造設備臨時措置法という法律を御制定を願いまして、当時、五万かまの製糸設備を三割まあ減らすと、そういうことをいたしまして、それが最終的にまあ終わりました――まだちょっと残っておりますが、法律はこの十月でエクスパイアをいたしまして、あとは、清算とか、共助金の集金とかいう段階に入っておりますわけでございまするが、ほぼ、目的の一万五千かまを整理いたしたわけでございまするが、これがほとんどその三割の設備を、業者から、組合を作りましてその組合が買い取ったわけでございまするが、業者に渡しましたお金が、自動繰糸機を買うことにほとんど例外なく向けられたわけでございます。自動繰糸機も、いろいろ型がありましたのでございまするが、昨年十月、私どもの会社と富士精密工業とが提携をいたしまして、こまかいことですが、一斉装置という、私の方に特許を持っておるのです。これは回転を一斉に調節するあるしかけでございますが、これは私の方の特許でございまして、私ども――まあ片倉工業の特許でございまするが、これを富十精密がどうしても使わせろということで、私どもは特許料を取って富士精密に昨年の十月から使わせております。これが非常に自動繰糸機の発達に一つの力を与えまして、最近は、大体自動操糸機の能率というものは、普通操糸機の二倍をこえるというような能率でございます。従いまして、一万五千かま、廃棄したんですが、残りが自動機になったために、ほとんど、その設備と原料とのアンバランスというのはもとのもくあみになってしまった。従いまして、一部では、あの製糸設備の処理は失敗であったという御説もあるんでございまするが、私はそうは思っておりません。あのままだったらなお大へんだと、こうは思うのでございまするが、そういうわけで、設備と原料のアンバランスが非常にひどい。製糸もそろばん持っておりまするからして、そう繭は高く買いたくはないのでございまするが、繭の出盛りになりますというと、取り合いになりまして、おれの方は百円高く買う、おれの方は幾らだ、やあ、地盤料として幾ら出しましょう、というようなことで、競争になる。まあそういうことでつり上げて参ります。もう一つは、ここに、これは他の業界のことになりますからはなはだ申し上げにくいのですが、国用製糸という、繭地盤を持っていない業者があるわけでございます。こういう方々は、現金買い、群馬などでは現金買いで、俗に芦刈り場と称するような所がございます。そういう所は、だれでも行って買う。そういうことになりますと、おれは千六百円、おれは千七百円、おれは千七百五十円出すと、こういうことで、それでだんだんにつり上がっていく。そういうことからして、繭価というものは、いつも製糸としては割高に買い入れておるわけでございますね。ここ数年来私の記憶する限りにおきましては、繭糸価格安定法で定められておりまする生糸の加工販売費というものをフルにちょうだいしたことは一回もないのでございます。これは私は逆にこういうことからも言えると思うのでございます。たとえば、株式会社として株式市場に上場されておりまする製糸会社の株というものは、昨今は、いろんな事情からちょっと上がって参りましたが、大体額面そこそこでございます。配当いたしておりまするのは、郡是製糸と昭栄製糸でございますが、郡是は今日では製糸会社とは言えない。その製品の六割は製糸以外のものであります。まあ、神戸生糸、神栄生糸、並びに昭栄製糸というのがほんとうの製糸会社でございまするが、昭栄が一割を配当いたしておりまするが、あれは別の資産収入で配当をいたしております。私どもは御必要がありますれば、製糸会社の経理内容の分析をお届けいたしてもよろしゅうございますが、まことにその経営はつらいんでございます。つらいのにもかかわらずなぜ繭を高く買うか。これは製糸が一番おそろしいのはアイドルでございます。休業でございます。休業いたしましても、固定資産税はかかりますし、工場もまるきりからにしておくわけにはいかない。従業員には給料も払わなければならぬ。女子工員につきましても、これは失業保険制度というものもございますが、失業保険に均霑するには、ある一定の年月勤務しなければ失業保険はとれない。従いまして、おおむねその七割ぐらいの工賃というものは、帰郷させて、国へ帰しておいて払っておる。そういうことで、休業によりまするアイドル・コストというものが非常にこわいのでございます。まあ、自分の会社のことで申しわけありませんが、ほかに数字がありませんから御説明いたしまするが、私の方の工場では、全工場が一日休みますと、一日に二百七十万かかるのでございます。十日休みますれば二千七百万であります。従いまして、繭はちょっと高くて引き合わなくても休むよりは得だというときには、やっぱり繭を買わなきゃならぬのであります。こういうような事情がございまして、私どもは無謀に繭を高く買っておるわけではございません。それから、本年の晩秋には特異現象が実は出ました。と申しますることは、ひょっとしたらば、安定法の糸は十八万では出ないんではなかろうかという思惑が、ちょうど晩秋を買うときに、そういう思惑をする人が出たわけでございますね。そういう人たちは、もうその思惑で一万掛の繭を買ったわけでございます。それがつまり響いてきて、全国的に繭価水準が一そう高くなった、こういうことは私は事実だと思います。いろいろ御指摘がございましたが、製糸は、引き合うとか、先が非常に高いからという思惑よりも、一つはアイドル・コストがこわい、そういうことが一つ。それから一つは、ただいま御審議をいただいております法律の成否に一丁かけた人が何人かおる。これはざっくばらんな話です。横浜の清算相場はまさにそうなんであります。一方は、これは一丁はったんですよ。私は、なんでやるんだといえば、もう私どもの社員に報告をとりますと、いや理屈ではありません。横浜では一丁はっておるのですという報告を受けております。そういう事情でございます。まあ、ざっくばらんなお話をいたしますと、そういうことでございます。
#94
○参考人(肥田啓治君) 先ほどの御質問で、何かものを知っとったような、知っとって買ったような疑心暗鬼があったようでございますから、ちょっとそれにお答えしておきます。
 五千俵のときに数倍の応募者があったということは、これは先ほど安田さんからも御指摘がありましたけれども、なかなか数が小さい。そのときは新しい糸はそれより割高だ。古いけれども、十八万なら割安だから、当たればいい。しかし、なかなかそれは、証拠金も何も要らずに申し込めるものだったものですから、皆さんがそれに応募されたわけだったわけです。それで、売り出しの方法というものはトライアルにやられましたけれども、今後繰の返すべき問題ではないと私らは考えております。どうせ政府の糸を買いますにしましても、買ったとたんは、今度はみずからの金利と倉敷料を持つ。また持った糸の将来の値下がりの危険も負担すると考えるわけでありますが、何しろわずかな数量だったものですから、なかなか入りにくいということが一般のあれだった。それに証拠金も要らぬ。まあ宝くじでも買うようなつもりで皆さんが応募されて数が上がったんだろうと思いまして、別段に何やら初めからこれは上がることがわかっておる……。もっとも、あれは数量が少ないと、そういう近くの見込みも立ったかもしれません。それなら、あの売り出し方法というものは非常に拙劣であった。今後売り出しというものがあるならば、売り出し方法については十分検討されなければならぬということをわれわれは考えているようなわけでありまして、別段に裏も何にもございません。
#95
○清澤俊英君 そこで、そういう現象が五千俵に集まったとしますと、これは先に返りますが、衆議院の決定を尊重して実需筋に競争入札させて出す、こういうことになるのですね。その実需筋というものは、まあ衆議院あたりで考えておる人は実需筋を機屋さんというふうに考えておるが、実際の実需というものになってくると、輸出業者も実需者に違いないし、なかなか選別が困難になるわけです。そういうものが、簡単に実需筋というけれども、すぐ簡単に割り切って出せる実情でありますかどうですか、業界において。
#96
○参考人(安田義一君) 私は、機屋と輸出商でいいんではないかと、こう思っております、実需は。これは非常にどうか慎重に御審議をいただきたいと存じますことは、かりに国内の機屋にだけ――入札するという前提ですよ、入札の資格を与えるといたしますと、海外が非常に怒るだろうと思います。国内に安く売って、その輸出絹織物をおれの国に売ってくる。おれたちには高い糸を使わせて、それで競争しろ、それはけしからぬといって、私は輸出織物に非常に大きなひびが入るんではなかろうか。従いまして、糸そのものの輸出と、それから国内の機屋と、その率については私もここでどういうふうがいいかということはちょっと申しかねますが、少なくとも実需者の中には生糸の輸出商をお入れ願いたいと、こう考えております。
#97
○清澤俊英君 これは最後です。近藤さん、大体この法案が出ました際、養連は一つの方針を立てられたはずなんです。恒久対策と繭の保証制度を確立しろと、こういう態度を立てられた場合に、大体十八万円の相場とかなんとかいうものは大体考えないことにして、とにかくに養蚕家の成り立つ繭の価格であればそれでいいと、あとはタッチしないと、こういう気持なんでしょうか、どうなんでしょうか。
#98
○参考人(近藤好一君) ただいまの養蚕団体についての御質問でありまするが、団体としては、衆議院農林水産委員会の喚問に対して田原会長が申されております通りですが、生産費の八〇%から八五%を保証できるような価格に持っていってもらいたいということが一つの趣旨でありまして、いま一つには、今の恒久対策が立ったかどうか、こういうことでございますが、これはまだ今のところはっきりしていないように……。まだ具体的なものはありません。そういうことでございます。
#99
○清澤俊英君 そこで、ちょっと内林さんと食い違うのだね。まあ今のところは大体十八万円でいこうと。十九万円にしても、千四百円の八〇%でしょう。そうすると、十八力円になれば八〇%を割るのじゃないかと思う、生産費。それでついていけますか、あなた方はついていけると思うですか。
#100
○参考人(内林喜三郎君) 私は、全養連の方々がほんとうに養蚕者の立場に立ってやってくれているのだとは思いますけれども、養蚕家としては信用できないのだということだけをお答えいたします。
#101
○小笠原二三男君 もう時間も参ったようですから、私がすでにお尋ねしたことで次々に返事が出ていますから、もう一度取りまとめの意味でお尋ねします。
 安田さんにお尋ねしますが、先ほどは、この法案提出にあたって政府言明から見ると、本年実質最高価格、三月の審議会できめた十八万円のあれはくずれたものと認識されるというお答えであり、また他の委員からのお答えでは、現状においてはその当時の中心価格十六万円のやや上をいっているようだ、従って十八万円は当然またその上をいっても、実勢価格としては結局無理のないところになるという結論になるような御答弁であった。そこで、今度は質問の仕方を変えて、こらお尋ねしたい。三月決定されました実質最高価格十八方円というものは、現状にはそぐわないものであると御認識になっておられるかどうかというふうにお尋ねします。
#102
○参考人(安田義一君) 大へん微妙な御質問でございまするが、御質問の御趣旨が十六万円という基準値が妥当であるかないかという御質問でございましたら、私は、十六万という中心値は妥当であると、ただ上下の幅が狭過ぎたんだと、こういうふうに実は考えております。と申しますことは、三月の審議会でも、私は実は十九万円にしてくれということを主張した一人でございます。
#103
○小笠原二三男君 そうしますと、先ほど安田さんのまた各種のお問いに対する御答弁では、十八万の上下二、三万程度の開きがあってもやむを得ないという意味合いの御答弁がありましたから、そうしますと、結局二十万台という価格が出ても、それは苦しく不当である、特にコントロールしなくちゃいかぬという条件は今日あるのかないのかという問題になります。ところが、あなたの御答弁では、外需については大体いいだろうと。内需で小幅ものについては十九万、価格もちょっと強過ぎるではないかというふうなお話も出ておった。でありますが、法律上の建前はもうくずれてしまったという現状においては、残るものは私は安定法における法律上の最高価格とかなんとか、政府は安定法を眠らせているのだ。まあ法律の建前で審議会の言い分を聞きますと、法律の建前で、本年度のそれをきめなければならぬのだが、それをその五万俵は動くはずもないんだから、従って、前年通りの最高二十三万ということをきめて踏襲するだけだという、まあ局長の答弁があるんですね、三月のこの場合に。ですが、今日の状態においては、この最高二十三万円というものは法律上の建前だけでなくて、政府の建前としてもう考えられておっていいんでないか。その間の値段であるならば、政府が特に人為的に市場をコントロールする必要はないでないかという意見を、一方持ちたくなるわけなんです。十九万であれ、二十万であれ、二十三万の範囲であれば、法律の最高を示すところは二十三万なんだから。もら十八万という臨時的なこういう価格指示をもうくずしてしまって、そして安定法の生糸まで取りくずして使おうという限りは、法律上の建前、政府の建前としては、二十三万にはむろん実際上皆さんの公述では行かないんですね。一時行くとしても、二十万台あるいはまた下がるかもしらぬ。その程度の見通しであるならば、最高二十三万ということを引かして、十八万以上どこへ出ていこうが、特にそのために市場をコントロールする必要はないという意見を持ちたくなるんですが、その意見はどこか欠点があるんでしょらか。一つ御批判を願いたいですね。
#104
○参考人(安田義一君) これは安定帯とも、私、関連すると思うのでございまするが、私、衆議院にも参考人として呼ばれまして、その節も申し上げたわけでございまするが、ここに出ておりますもろもろの問題は、私は今後の繭糸価格安定法をどうするかということにも大へんかかり合いがあるように考えるのでございます。しかし、前提といたしまして、とにかく現在の安定法をこのまま堅持をしていく、そういう場合の安定帯の幅の問題でございまするが、私は安定帯の幅はなるべく大きい方がいい。これはまあ糸価安定という意味からいえば、福が狭い方が安定のワクが小さいわけですからけっこうでございまするが、私もこの業界には日が浅いのでございますが、生糸というものは、まことに魔もののように値が動きます。昨年のことを考えますと、きょうこんなような問題が起こるというようなことは、夢にも考えられなかったことでございまするので、安定帯の幅をなるべく広くする。そういう意味におきましては、私は、上下二万円の幅というようなこととか、中心が幾らだというようなことを論じるよりは、最低糸価十四万円に対して上値幾らということを考えたらいいんではなかろうかと思っております。
 そこで、御質問の二十三万でもよろしいじゃないかということでございまするが、これは私は少し高いんではないだろうか。と申しますることは、やはり山高ければ谷深しということわざもございますし、もう少し低い方が生糸というものは安定していくんじゃないかというふうに考えております。しかし、最高値の計算というものは、繭糸価格安定法によりますと、一つの計算方式があるようでございます。従いまして、私は今ここで幾らがいいかということはちょっと申し上げかねます。ただし、二十三万は商売人の勘としてはどうも少し高くないかなという感じがしていると、そういうことでお許しを願いたいと思います。
#105
○小笠原二三男君 率直に申しまして、私たち議員の立場でおって、政府に質問しますと、二十三万の最高価格というものは、これは法律上の最高価格、そうして実質上の最高価格は十八万なんだ、こういうことを言われる。しかし、実質上の最高価格十八万というのは、安定法二十三万のそれを引き受けて出てきている。子供の法律できまっていることなんですね。そうして審議会でも、皆さんは二十三万の法律上の最高価格というものは満場一致認めている。そうして一方、実際の建値、実質最高価格は十八万だという。ところが、現状では十八万はくすれたといい、しかも十八万以上に値上がりするであろうという想定もある。まして安定法の二十三万でなければ売ってならない、そういうものを放出してまで十八万に近づける努力をしなければならぬのであるかどうかということが、あなたの公述からみても問題になってきている。そうであれば、やはりその二十三万にはならぬのですから、なりそうなときには、この安定法の五万俵を何らかの操作をして出すということもいいでしょうが、大体そこまでは行かぬ。ちょうどいいところをまあ十九万なり二十万なり、そういうところに落ちつくという限りにおいては、それでいいのじゃないかという感じを持つ。
 まして、今出そうとしている生糸は、前にはもう再評価して、特別会計に国民の税金で二十億なら二十億損金を補てんしています。だから、今は損はないということであっても、なお十八万に売るということでは、諸経費、諸がかりがかかっている生糸ですから、工合が悪い。政府側に聞いても、まあ二十万四、五千円まで、諸経費含みでは、実質上再評価したものも実際の値段にはならないのではないか、こう言っている。そうすれば、なるべく損もしないし、業界も耐久力があるというなら、黙って自主的な業界の操作なりコントロールにまかして、一応様子を見るということも、方法ではないかというふうな感じを私たちしろうと論として持つのですね。それで、もしもそうでないとすれば、安定法そのものは、五力俵取られてしまえば、何のためにこれは法律になっているのだということになるわけで、何にも実体はなくなるわけですから、親の方の実体がなくなって、子供だけが生きてのこのこ歩くというのは、どうもおかしい。
 それで、形を変えて、今度はこういうふうにお尋ねしたい。今のこの安定法と臨時措置法とで、こういう法の改正をするということになったら、安定法は全く要らないのじゃないか。このことについては、あなた、その審議会の委員にもなっているこの権威ある審議会が、元も子もなくなるような論ですが、臨時措置だけで討議をするということは、どうお考えになっておられるか、法律の建前をですね。お尋ねしたい。そうしてまた、自主的なコントロールということは、どういうものかということをお尋ねしたい。
 それから、その点に対して、肥田さんにもお尋ねしたい。肥田さんは公述によりますと、人為的にいじくることはよくない、直接。間接でも、このいじくることはよくない。そうして価格はまた十八万なら十八万という趣旨なそうですが、安定していることがいい、こういうことを言っている。私は、その人為的にいじくるなということは、政府がめったやたらに介入するなという意味のようにも聞き取り、自主性にまかせろというふうにも聞き取れるのです。で、今日自主性にまかせていって、もう大体しのいでやっていけるような情勢にあるものかどうか。どうしてもこの五万俵というものを使っていかなければ、市場は混乱するという状態であるのかどうか。その点を率直にお答え願いたい。
#106
○参考人(安田義一君) 臨時措置法と安定法の関係でございまするが、昨年は、御存じのように、生糸の下値をいかにして支えるかということで、これは大へんな苦労をいたしました。本年は、逆に高いということで苦労をしておるというわけでございまするが、私はこれは昨年の反動が出ているのだ。真の糸価のあり方、居どころというものは、まあ先ほど来非常にむずかしいといういろいろな御説もございましたが、私はまだきめかねる状態ではなかろうか。昨年は非常に下に行った。それが今度は上にはねてきているということで、これがアウフヘーベンされて、そこに一つの糸価のほんとうの居場所というものが考えられると、こう考えるのですが、もちろん、こういう景気、不景気に非常に関係の深いものでございまするからして、ただそれだけでも、あるいはきめられないかもしれませんが、現状は私はノーマルではない、こういうふうに考えております。
 従いまして、おそらく、これは大へん立ち入ったことを申すのでございまするが、本年の三月の安定審議会において、政府当局としては、できるならば安定法による最高価格についても、何かお考えになりたかったのじゃないか。ところが、それがどこであるかということが当時としてはなおつかめなかったと、そういうことで、まあこういう形が出てきたのじゃないかと、かように考えまするので、私は、まだ措置法でやっていくような事態であると、こう考えておるわけです。しかし、これはもう言うまでもなく、時限立法でございまするからして、いずれは安定法に返らなければならない。そういう場合には――私はついででございまするので、せっかくの機会ですから、私の日ごろ考えていることをお聞き取りをいただきたいと思いまするが、安定帯はなるべく広くしていただきたい。それから、政府が売る玉がなくて高値を抑えるなんということは、私は事実上できないと思います。従いまして、今度は、安定法では、政府は二万俵なり三万俵なりは常時生糸を保有しておれと、こういうことを入れていただきたい。その生糸は、政府が欲するというよりは、安定法にきめられました最高価格を越えるときには、どうぞそれを放出して押えていただきたい。そのかわり、それの補充は、最低糸価でなくても買えるという道を、まあ幾らがいいかということは非常にむずかしいと思いますが、適当なときに補充をして、二万俵なり三万俵なりを持っていると、こういう法律にしていただきたいと、かように思うわけでございます。
 それから、先ほどいろいろ、きょうのお話からすれば二十三万ということでもいいじゃないかと、こういう御質問でございまするが、私も、冒頭に申し上げましたように、十八万ということで国の約束がもうこれは守れない。そういう十八万という国の約束が守れませんのならば、私はどうも売るという意義が少し薄れてきたという感じは免れないのでございます。そうすれば、二十二万ということにしておくということも、まあ一つの方法ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
#107
○参考人(肥田啓治君) 私は、去年下の方へ行き、ことし上の方に来て、非常に大きな経験を積みましたわけで、これは来年度の繭糸価格安定制度というものは、これらの経験を生かして、相当慎重に考えなければならぬと思います。
 それから、それじゃ、今ここに来たのだから、もうこれはほっといてもそれでいいじゃないか、そういうお考え方も成り立つと思いますが、しかし、何分にももう、これは幸か不幸か、八月の二十五日、大臣がやはりこのものを売り出す、法律を改正してでも消費者の方の人たちにこれを出すということを内外に約束された問題でありますから、しかし、それが今になっては、十八万円は少しくずれたという問題になってきて、はなはだ微妙になっておりますが、しかし、まず一応政府としては御努力をなさることの方が、需要者の身になり審議させられた建前からいっても、ある一つの真理ではないだろうか。スパッとされるよりも、これは非常に微妙な見解の相違が出てくると思いますけれども、とにかく、それでこうだと、こういって、全部蚕糸業に関係する人たちにそういう認識を与えられて、そうしてパッと年度の途中でやられれば、来年は非常によく考えなければなりませんが、今このときパッとやるということがはたしていいかどうか。これは、まだやはり臨時措置法というものを生かしておかれることの方が、将来のためにいいのではないか。まあ大へん微妙なことで、ここでちょっと即答はできませんですが、これはまた繭糸価格安定審議会のところなんかでも、皆さんの意見が出るに応じて、ゆっくり考えてみたいと思いますけれども、そう考えております。
#108
○小笠原二三男君 まあそれぞれの立場と事情があるものですから、これ以上お尋ねはしませんが、最後に、今この委員会では、肥田さんもおっしゃったように、なるべくすみやかにこの法案を上げてくれと。こちらの方はあすにでも上げてもらいたいという気分でおるけれども、私の方は、事情がわからぬものですから、よくまず聞くところは聞いて、通すべきものは通すということでいきたい。ところが、なぜそういうふうに、きょうは十二月二十一日ですが、二十二日からは、もう何か市場の方もどうにかなるのだそうで、何分にもこの法律を通しても間に合いそうでもないのに、急いで通せ、急いで通せと言うんですね。何かこれを急いで通すというと、特効薬みたいにすぐ効果がだれかにあるという関係があるのですか、どうですか。皆さん、さっきも言っておる。肥田さんも言っていたが、非常に早耳なので、その事情はわかっておると思うんですがね。急いで通せばどういう効果があるのか、御説明をしていただきたいのです。肥田さんが輸出の方でちょっと市場にも関係があると思うので、肥田さんに一つ。
#109
○参考人(肥田啓治君) 今の御質問でございますが、取引所は二十二日あれでございますが、しかし、取引所だとかああいう問題ではないのでございまして、この問題がどらきまるかというものがきまれば、海外も内地も、それじゃ今後はこういう工合になるという心がまえができるわけなんですから、この問題はやはり一日も早くどちらにでも決定されれば、業界というものはそれで今後の方針を立てるわけなんでございますから、そういう意味合いであれするので、一日を争うのだとかいって、あるいは、ことによると、取引所のことなんかお考えになって皮肉な御質問かもしれませんが、私は決してそういう意味合いじゃなくて、こういう不安定な状態は、なるべく早く決定したならば、業界はその決定に従って、今後の方針というものは、海外の方にでもそれが伝わっていろいろするということには、やはり時間がかかりますから、なるべくならば、早く決定されれば望ましいことだというだけでございます。
#110
○小笠原二三男君 こういうことも、国会内で、私、耳にしておるのですよ。まあどうせおくれて、二十二日、あすには間に合わない。しかし、二十四日にこの法律案が通れば、二十五日に審議会をさっそく開き、それぞれ売り渡し方法をきめる。二十五日に入札の告示をする。五日置いて三十一日に二万俵なら二万俵の受け渡しができる。だから、これは急がなくちゃいかぬのだ、こういうことも言うのを聞いております。実際上そういうことが緊急な事態として要請されておるのですか。市場なり業界においてそういううわさ、伝聞を御承知ですか。また、実際上そういうことが、三十一日にどうこうというようなことは、業界の商慣行としてやり得ることなのですか。私らは、それによっては時間的にも協力しなければならない立場にもなりますし、そこがそうでないとなると、一日ぐらいは慎重に審議をしたいというところもあるので、これは私の聞いておることは、非常にわれわれの審議の日程をきめるのには重要なことなんです。そういうことを前もって申し上げて、この年末をささえておる状況はどういうものなのか。安田さん、肥田さんにお伺いをしたい。もっとも、近藤さんも生産者側の立場で早耳になっていられるのなら、お聞きをしたい。
#111
○参考人(安田義一君) ただいま肥田参考人が申し上げましたことと、私は同意見でございまして、ただ、早くきめていただきたいと申しますことは、商売が実はとまっております。どっちになるかということで、毎日の商売ができないものですから、そういう意味では早くやっていただきたい、かように思います。それから、十二月の三十一日に入札ができるかどうかということでございますが、これは大体三十日に御用納めでございまするから、普通でしたらできませんが、そういうことであれば、やはり機屋さんあたりは非常に原料の手当に不安を覚えておりますから、大みそかでも私はやるだろうと、かように思いますが、御質問のように、どんな窮迫した事態があるのかとおっしゃられますと、私の業界ではそういう窮迫した事情はございません。ただ、きまるものなら年内におきめを願って、正月はそれなりに気を休めて正月を迎えたい、こういうことかもしれませんです。
#112
○参考人(肥田啓治君) 私も、これはなるべく早くきまるということは、停滞した状態が早く解除するからということだけでございまして、何か今おっしゃるように、年内に糸を何かしてから……。その意図がわからない。それだから、どうやられているというようなことは存じ上げません。しかし、方法がどうかというようなことがきまれば、それで織屋さんも何も、たとえ年内に糸の入札がなくても、それはこうきまったのだぞということだけだと思います。その意味において、しかし、なるべく早くすれば、今停滞しているのが早く解除されるということを考えております。
#113
○参考人(近藤好一君) 意見として同様であります。肥田さん、安田さんの意見同様であります。と申しますことは、言うまでもなく、今国会の関係の動きが業界全体の注視の的になっておりますだけに、横浜における状態といい、神戸の状態といい、地方の生糸の現状といい、この動きいかんがかかっての問題でありますので、結局、二万俵出すというようなことに一ぺんになるというようなことであるならば、これを入札させるということでありまするならば、これはさっき申し上げたような結果でありまして、非常な矛盾が起きてくる。もちろん、蚕糸振興なり安定審議会なり開かれて、その席において数量の制限等も調整するかもしれませんが、二万俵出すということは業界に大きな不安を投げるものです。また、きまらないでおるということも、どうなるかというようなことで、取引に対して上がるのか、それとも政府が十八万でどこまでも出すということならば下がるという、この不安が海外の需用筋に相当響いてくることは当然でありますので、できるならば二十一万なら二十一万で出すとか、あるいはそれを入札の場合に二十一万を最低とするとか、あるいは二十万を最低として二十一万程反で押しつけるとかというような形式で、さっき述べるように五千俵程度を出して参りまするならば安定した姿でいけるのだというふうに観察するので、できる限りやはり結論を出すことは望ましいのじゃないかと思います。それから、いま一つ、さっき安定法の問題が清澤先生から出たわけでありますが、これについては全養連としても、この間も理事会を開いたのでありますが、たまたま病気で欠席しておったわけでございますけれども、内容においては、繭糸価格安定法というものは、どうも養蚕者に対する繭の生産費保証というものがはっきり出ておらない。これは繭と糸というものはつながりがあるけれども、どうもこの点について釈然としない。生産費が保証されないような安定法であるとするならば、これは無論繭価の安定法として糸価の関係については切り離すべきではなかろうかというような意見もあったように聞いておりますが、はっきりしませんでございますが、要するに、それぞれ全養連においても目下検討していることを申し上げて、御参考に清澤委員の方にお答えしたいと思っております。
#114
○小山邦太郎君 この法案がなるべく早く通さなければいかぬ、通すことを徳望しておるということは、業界の明日の参考人はどうおっしゃるかわかりませんが、きょうおいでの方はみなそのようである。しかし、それほど早く通さなければいかぬ法律がここまでごたついたということは、十八万で押しつけようという行政措置が納得がいかないということから来たので、それがために衆議院においてはあれだけの条件をつけた。その条件は、これは十八万あくまで堅持ということではない。ゆとりのあるやり方である。さればこそ、先ほど参考人の方の御意見を伺いましても、十八万を維持してくれというのはひとり肥田さんだけであります。そのほかにはないということは何です。政府が、衆議院の付帯決議は尊重するということでありますから、尊重すれば、政府自身の考えよりは業界等及び知識経験者をもって組織しておりまする糸価安定委員会の意向に従っていくであろう。そうすれば、もうここを通せば、問題はあげて委員会に移る。そこで、私はこちらに御出席の四人のうち御三人にはその必要はないが、肥田さんにお尋ねしたい。肥田さんの先ほどのお話は、十八万ということを政府が確認したから、糸価安定法によって買い上げておる五万俵と臨時措置法の約五万俵、これを通じてのことだろうと思っておらるるようですが、繭糸価格安定法による五万俵は法律の上でそうはできないのであらためて問題となったのです。そこで好きでも嫌いでも、来年の三月といえば、もう三ヵ月しかない。そのときに、二十五年度の糸価は大いに慎重に考えなければいかぬということはお話の通りでございまするが、どのように慎重に考えても、ただ気分的に慎重にいくわけにもいくまい。材料をそれぞれ持って慎重にお考えをいただくのだと思うのですが、その材料としては、先ほど田中君その他からお話の通り、今日の経済界の趨勢から、大体常識的にもそう悪くはならぬ、横ばいもしくはことしのような勢いで伸びなくも幾らか上回るであろう。そうすれば、繭の生産費も決して三十四年度よりは下がるとは見られない。しかし、どのように生産費が高くても需要がなければ、これは問題にならない。ところが、需要は、先ほどのお話によっても、この三月には十万俵の糸の処分はどうなるだろうと思っておったものを、五万俵は難なく……。そしてその当時は十八万で売れるということは大したものだと思ったのに、これを難なく消化して、そうしてなお上昇線を保っておる。こういう状況にあることを考えると、三ヵ月後にもこれは十八万円で維持するということは、とてもできないじゃないか。それから、法律価格という二十四万、これは安田さんの意見によっても少し高過ぎるというお話もありましたが、そういうようなことを考えた場合に、肥田さんは、将来のことはわからない、今わからない。だれにもわかりませんが、常識的に見て三十四年度よりは三十五年度の方が最高価格は上がるべきものであろうということは、御判断になれるものかどうか、これを一つ伺いたいのであります。
 それから、いま一つは、それはわからぬならわからぬとしても、商売は一年限りでいくべきものではないから、なるたけその相場があまり大きな隔たりがなくいくということが望ましいことではないか。今十八万を無理に努力してやっても、今度はその次の最高価格はうんと上がって高くなる。こういうことをきめて、思いさま高くきめておけばいいかもしれないが、それは高過ぎる。すでに二十三万に高過ぎるという御議論があるくらいだから、そうすると、それより安いところをきめるためにも今の持荷を十八万円で放出し終ってしまっては高値を抑えようということができなくなる。そこでもまた、糸価安定の権威というものはなくなってしまうのではないか。あれやこれやを考えると、やはりこの十八万の問題は、先ほど来伺うと、貿易の面からいえばぜひそれを維持したいというふうな御希望も、一面無理からぬことだと思いますが、三月の後を考えると、必ずしもそれを固執の要はなく、すなおに、衆議院の付帯決議の精神を、むしろ生かして、この際は民間も受け入れて、その線に沿うように努力するということはいかがなものか、またそういうことの心がまえで早くこの法律を通しておかなければいかぬではなかろうかと私は思いますが、いかがなものでございましょう。お教えを請います。
#115
○参考人(肥田啓治君) 最初の問題からお答えいたします。来年度の問題は、慎重といっても、空に考えられるわけの問題ではもちろんございません。それは本年度の結局糸価の趨勢なんというものはよほどよく研究しまして、基礎の数値を出して、そしてこれにはいろいろの技術的な研究もございましょうけれども、なるべく接近した最近の居どころというものをつかめたところを統計的にも出しまして、それを中心にして、幅はなるべくあまり広くしては意味がありませんが、ここは痛しかゆしで、狭くすると上についたり下についたりする、なかなか安定制度の目的が達せられませんから、ある程度広げなければならぬだろうと思います。まあこの問題は非常に……。そこで、来年度の繭糸価格安定制度というものは、いろいろの方面から研究を尽くさなければならぬ問題だろうと思います。
 それから、二番目の十八万円という問題でございますが、これは十八万円をそれじゃ堅持するために、十八万円をすぐ出せということには必ずしもならぬわけでございます。なぜならば、十八万円と十四万円の幅で進んできた、政府から約束された問題だから、できるだけそれに努力をするという、政府の努力があってしかるべきだろうと思います。しかし、もうこの状態においては、なまで十四万円を出すということは、これは事実上不可能になっておるのではないかと考えます。なぜならば、この間の五千俵の売り出し方法というものが拙劣で、方法論が非常に考えられなければならぬ。それで、この方法論が考えられると、それをなまで出さなくても、とにかく十四万円―十八万円の幅というものは、あまり逸脱をしないように、持っている糸を出して供給を緩和していくという努力が払われる問題だろうと思うわけなんです。そう考えております。
#116
○小山邦太郎君 ちょっと、まだ私の質問が徹底しておらぬ。十八万のあなたの御主張はよいとして、二十五年度のそれに近づかるような見通しならけっこうだが、それに非常に幅が出てきたということになると、それは心配ないのか。それはいいか。今度は、年度を越えたら相場がずっと高くなるということになれば、もうその前から見込み高となるのは当然である。そうだから、実勢に沿ってというあの衆議院の決議は適切であると思うかどうか。
#117
○参考人(肥田啓治君) その点は、大へん、来年度の繭糸価格安穴制度を検討するときむずかしい問題があると思います。これは大へんむずかしい問題だと思いますが、しかし、政府の抑制措置と申しますか、とられる措置によりまして、年が明けても、今までのようにどんどん上がるか、上がらないか、これはだれにもわからない問題なんです。わからない問題ですから、この問題は、結局、来年度の繭糸価格安定制度を論ずるとき中心点をいずこに置くべきかという点は、結局、徐々にいった最近までの値段の動きというものを中心にしていって、なるべくそのギャップを少なくするという方法論を研究しなければならぬと思いますが、この点は大へんむずかしい問題で、われわれもよくわかりませんが、今ここでそう披瀝することの何はございませんですから。
#118
○委員長(堀本宜実君) 本日は、本件はこの程度にいたしまして……。
 参考人の皆さんにおかれましては、年末大へん御多忙のところ、しかも長時間にわたりまして御陳述をいただき、質疑にお答えいただきまして、まことに感謝にたえません。厚くお礼を申し上げます。
 本日は、これをもって散会いたします。
   午後五時八分散会
ソース: 国立国会図書館
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