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1947/09/22 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第36号
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1947/09/22 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第36号

#1
第001回国会 司法委員会 第36号
昭和二十二年九月二十二日(月曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 荊木 一久君 理事 鍛冶 良作君
      榊原 千代君    安田 幹太君
      打出 信行君    八並 達雄君
      吉田  安君    岡井藤志郎君
      北浦圭太郎君    佐瀬 昌三君
      花村 四郎君    明禮輝三郎君
      大島 多藏君
 出席國務大臣
        内閣總理大臣  片山  哲君
 出席政府委員
        總理廳事務官  國鹽耕一郎君
        司 法 次 官 佐藤 藤佐君
        司法事務官   赤木  曉君
 委員外の出席者
        専門調査員   村  教三君
    ―――――――――――――
九月二十日
 裁判所豫金に關する法律案(内閣提出、参議院
 送付)(第六〇號)
の審査を本委員會に付託された。
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出)(第
 六號)
 經濟査察官の臨檢檢査に關する法律案(内閣提
 出)(第十二號)
 裁判所法の一部を改正する等の法律案(内閣提
 出)(第五一號)
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 會議を開きます。刑法の一部を改正する法律案及び經濟査察官の臨檢檢査等に關する法律を一括議題として審議を進めます。鍛冶良作君。
#3
○鍛冶委員 片山首相に對して、まず私の質問せんとする前提といたしまして、首相は施政方針演説において、本内閣は憲法を忠實に實施するをもつてその本分とするとおつしやるのでありますが、新憲法は舊來と變わらない思想がなお殘存するものと思いますので、どこまでも新憲法を忠實に實施するというようならば、新しく變わつた點を明確にし、かつ嚴格にこれを行われるものと考えまするが、その點首相のお考えはどうでありますか、伺いたいと思います。
#4
○片山國務大臣 ただいま鍛冶君からお示しの通り、現内閣は新憲法の精神を十分に守り、それを尊重することには當初から今日まで變わりはなく、今後といえどもこれを嚴に守つていきたいと思つております。つきましては、變つた點を一々ここで申し上げるわけにはいきませんけれども、變つたものは變つたものとして、その線に沿うて新憲法の精神を守つていくことは、御指摘の通りであります。
#5
○鍛冶委員 そこで新憲法第三十五條の問題にはいりまするが、第三十五條には、「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入及び押収を受けることのない權利は、第三十三條の場合を除いては、正當な理由に基づいて發せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。捜索または押収は、權限を有する司法官憲が發する各別の令状により、これを行ふ。」とございます。われわれは舊來においても、舊憲法のもとにおき、また刑事訴訟のもとにおいても、この原則は適用されるべきものと考えておつたのでありまするが、往々にして司法警察官または、はなはだしきに至つては警察官等によつて、この原則が蹂躙せられたことがたくさんある。これは首相も辯護士として長く實務についておられるから、十分御承知のところと考えます。それでいやしくも人の財産權を侵害し、居住權を侵害するがごときは、司法官憲と申しまするか、司法官たる裁判官の裁判に基づく令状がなくてはやつてはいなぬという、この原則を長年主張し、遂に現れたるものがこの條文だとかんがえるのであります。從いまして、これに基づいて人の住居にはいり、または人の所有權を侵してこれを捜査し、押収するというがごときことは、何としても司法官たる裁判官の令状をまつてやるべきものであるというこの原則は、絶對に動かぬものと考えまするが、首相はいかにお考えでありましようか。
#6
○片山國務大臣 お説の通りでありまして、司法問題においては、今の憲法の趣旨に從つて、嚴にこれを守つていかなければならと考えております。在來の弊害に鑑みて、犯罪捜査におきましては、令状なくしてやつてはいけない、必ずこれを必要とすることを趣旨とされたものと思つております。
#7
○鍛冶委員 今の首相の御答辯の通りであらなければならぬと心得ます。また現に檢察廳當局及び司法警察官等においても、大體この憲法實施以來、これに基づいてやつていると思いまするが、嚴格にこのことが行われていると首相の方でお考えになつておいででしようか。信念をもつておいででしようか。
#8
○片山國務大臣 新憲法實施後は、この精神を十分に守つて、その實際面を擔當いたしておりまする刑事訴訟法竝びに關連法規の改正は、目下御審議を願つているのではなかろうかと思いまするが、その精神には今お示しの通りの方向に進んでおることは間違いはありません。
#9
○鍛冶委員 まことの和外を得たる御答辯でありまして、ぜひこのことは嚴重に今後といえども行つてもらいたいものと考えます。つきましては、ただいまこちらへ出ております經濟査察官の臨檢檢査等に關する法律第一條でありますが、「經濟安定の本部總裁は、經濟安定の緊急施策の實施に關する監査に關する事務のため必要があると認めるときは、左に揚げる物資の生産、輸送、割當配給または使用について、關係者に報告させ、または經濟査察官にその事務所、営業所、工場、事業場、倉庫その他の場所に臨檢し業務の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。」とあります。この條文は言うまでもなく他人の営業所もしくは住居にはいつてこれを臨檢し、帳簿、書類等その他の必要なというのですから、それから見れば一切のものは含みましよう。必要だということの認定は、その査察官にあるのでありますから、そのものが本人の意思にかかわらず物件を檢査させることができるという規定でありますが、これはとりもなおさず憲法第三十五條に書いてある國民の權利を犯してやれるという規定に他ならぬのでありますが、かような權限をもし與えられるということになりますれば、司法官憲の發する礼状ということが要らないつもりでありましようか。それともこう書いても、司法官憲の礼状を一々もらつていいという意味の法律でありますか、その點を明確に承りたいと思います。
#10
○片山國務大臣 この第一條の規定は、第一行目に示しております通りに、「經濟安定の緊急施策の實施に關する監査に關する事務」こういうふうに前提いたしております。経済安定のために必要なる事務を遂行する上においてやらなくてはならない仕事がたくさんありますが、その事務を正しく行い、指示されたる仕事を十分に遂行せしむるためには、ただ單に企畫とか、机の上で考えるだけではなしに、物資の生産、輸送、割當、配給または使用について實地に調べなければならない。調べる場合に事務所、營業所、工場、事業場、倉庫その他の場所について行つてみないと十分なる仕事ができない、こういうような意味でありまして、さきにお示しになりました憲法の條項とは、その條項に限定されておる事項の中には、はいらない事項であると考えておるのであります。すなわち本法第一條は經濟上の問題の監査である。行政上の事務を遂行するために必要なる場合でありますから、礼状などは必要としない。こういうふうに考えておるわけであります。
#11
○鍛冶委員 はなはだどうも腑に落ちなぬ御答辯でもありまするが、目的はそれを問いません。憲法第三十五條は目的のいかんにかかわらず、何人もその住居、書類及び所持品について侵入、捜索及び押収せられることがないと、書いてあるのであります。經濟安定の目的であればよろしいということは、憲法のいずれから出て参りましようか。また住居の侵入及び捜索にはいらないのでありましようか。われわれはいずれもはいると思うのでありますが、その點を明示していただきたいと思います。
#12
○片山國務大臣 これはたしか鍛冶君も御承知と思いまするが、憲法第三十五條の審議にあたりまして、當時の司法大臣は、その立法の委員會において、三十五條は犯罪の捜査のためである。こういうふうに限定して、その誤解を解き、解釋を明白にしておるということであります。私もその解釋を正しいと考え、その解釋通りの憲法の運用をはかつていきたいと、かように思つておるのであります。そういう意味から申しまして、犯罪捜査のためではない。他の目的をもつていく場合においては、この限りではない。かように考える次第であります。
#13
○鍛冶委員 ただそう考えるとおつしやるだけならば、これはやむを得ませんが、三十五條にはさようなものはどこからも出て参りません。またここにも書いてあるとおり、第三十五條の場合を除いた。第三十五條は、これは明らかに犯罪のことでありまするが、犯罪などということは、悪いことをしておるという意味で調べるのだから、考えてみればもつと強くやつてもいい。犯罪がないということで、特別の目的があるからやるということになれば、これはまつたくいわゆる住居權というもの、及び信書の秘密を保持する權利というものは、ことごとく蹂躙せられることになるのであります。犯罪に限るのだ。それはある人がそういつたと言うことならばいいかもしれないが、この憲法三十五條の上において、さようなことは見られません。そこであなたがそうおつしやるのならば、前の司法大臣が言つたとか何とかでなくて、この條文の上からそうだとおつしやられるならば別であるが、そのことをもつてやられるというならば、いろいろなことにおいて重大なる弊害を生ずる。また先ほど申し上げたる新憲法を忠實に實施するという意味において、相反することが出てまいりまするがその點はさようなことで新憲法を忠實に實施するという御意見と一致するものでありましようか。明確に御答辯願いたいと思います。
#14
○片山國務大臣 今までの弊害は鍛冶君も十分御了承のことと思いまするが、犯罪捜査に名を藉りて、臨檢はする場合においても礼状をもたないで行つて、人權蹂躙の弊害を暴露したいというようなことが多かつたと思うのであります。そういうことを明白にするために、犯罪の捜査の場合においては、警察官に令状をもたさなければならない。そうしないてやたらに家宅捜索とか、あるいは逮捕とか、他人の住宅にはいるというようなことはよろしくない。こういうようなことが當時においても世論となつておつたと思うのであります。それを明白にしなければならないということで、三十五條がこの間の誤解を一掃する。解釋を統一したということを先ほども申しましたが、それが正しい解釋であると思つております。そこでいろいろほかの問題に名を藉りて、やたらな人が捜索に出るとか、あるいは人權を蹂躙する。ちよつと來いというようなことをやるとは、はなはだおもしろくないことであり、人權を蹂躙することが多分にあるので、そこに經濟安定のための施策を事務的に行うために、査察官というものをおいて、それがこういう問題に限つて査察官を行い得るということを、法律をもつて制定しよう。つまり三十五條とは別個に、特殊な問題に限つては特に目下の情勢上必要であるという見地から、特別の權限を與えよう、こういう意味でお諮りいたしておるのが、本法の精神であります。そういう意味ですからその條項は、今までの弊害として世論のやかましかつた問題とは別にお考え願えれば、問題の混淆は來さないのではなかろうかと考えておる次第であります。一にこれは現下の問題となつておりますところの、やみ物資の摘發でありまするとか、あるいは國民の要求されるところの生活必需品の、正式なるルートに出てこないものを、できるだけ出して、國民生活の役に立たしたい。こういうような意味を考えておるものであるますから、査察制度を置いてできるだけこれを明るみに出して、物資活用の方途を講じたい。こういう趣旨に他ならないのであります。どうかこの意味で二つは別個なものであるという意味に御了承を願いたいと思います。
#15
○鍛冶委員 首相が今お示しの目的のためにやられるということであれば、あるいは必要であるかもしれぬ。その點はあとで申しますが、私の言いまするところは住居權及び信書の秘密權というがごときのものは、目的のいかんによつて變るものでないので、目的が違うから犯してもいいのだということは、どこからも出てこないというところから來るのであります。なお實際問題からいたしまして、なるほど過去においては最も弊害のあつたのは、刑事訴訟法上における捜査の面でありました。そのころは今と異なりまして、經濟上における統制ということはなかつたのであります。そして統制上において今日まで言われるがごとき、非難または弊害というものはもちろんありませんでした。それゆえにそういうことが問題にならなかつたのでありまするが、今日は國民全體の生活の上から見まして、犯罪捜査ということよりか、この經濟統制ということに名を藉つて、いろいろの權利を侵害されることが、國民の最も苦しんでおるところである。何とかしてこれを逃れることができないか。かくのごときことをもつてやられるならば、われわれの生活をどうして保持しようといつて、現實國民全體がその非を鳴らしておる現今であります。實際の實情であります。そのときに今まで弊害がなかつたことだからこれでいいという御論議は通りません。殊にこの法律をつくるとき、この間出しましたときにいろいろ實例をわれわれは訴えられたのでありますが、何かの物價調査委員とかいうものが現在あるそうであります。そのものがやたらに委員の名刺をもつてやつてくる。しかのも實際の話を聽くと、大抵來るときは二人で來るそうであります。二人來て一人が前に行つた日には非常に強く言うて、まだある、もつと出せ、まだどうだといつてどんどんやる。それで手がつかぬので、家の者が拝むと、今日はこの程度で歸つてやると歸る、次の日には前日默つておつたやつが今度はおとなしく出て、おまえはこわがつていかぬから、いい加減おれに任せろと言つて、この間にいろいろの物資を現實にとつて、また安い値段で賣れと言つてもつて行く。まことに今日は監査だとか、檢査だとか言われるのは、まつたく世の中をやみにするのだとわれわれは聞かされております。このときにあたつて、過去においてその弊害がなかつたから、今度はいいとおいその御議論はあたらない。いわんや憲法第三十五條の明文に反するに至つては、何としてもわれわれは許すべからざる問題だと思いますが、首相はこの點いかにお考えになりますか。
#16
○片山國務大臣 鍛冶君が眞に人權を擁護しなければならない、自由を確保しなければならないということにつきまして、十分御檢討され、細心の注意をされておることに對しましては、まことに共鳴をいたします。最も必要なことであると思いますが、何分にも今日におけるわが國の經濟状態は混沌としておりまして、しかもうわさによりますと、隱退藏物資が相當なおあるというような話もありますし、いわゆる流通秩序が確立いたしておりませんので、一日も早くこの物流秩序の確立をはかつて、國家經濟の隆盛を來さなければからない。そうして個人の生活も安定するようにしなければならない。そうして個人の生活も安定するようにしなくてはならない。こういうような問題について、國民全體に新しい仕事が與えられておるわけであります。そういうことを國民全體の問題として考えてみまするときに、政府といたしましても、何とかその問題を國民の安心のいくような方法で處理していかなければならないと考えるのであります。新しく出てきた問題でありますが、今まで弊害がなかつたからという意味で申し上げたのではなしに、新しい問題として取上げられたる問題でありますから、經濟査察に關する問題は、國民に安心をせしむるように、できるだけのことをしなければならないと考えておる次第であります。その意味におきまして、いろいろ調べました結果、どうも臨檢しなくてはならないという結論に達した場合におきましては、この經濟官に査察權を與えないことには、せつかくの調査の仕事というものが、途中で尻切れになつてしまう形となつて、實績があがらないことになると思います。もちろん鍛冶君の御心配になるような在來の弊風を一掃いたしまして、官吏風を吹かすとか、あるいはやたらに人權を蹂躙するとか、非常識きわまることをやるとか、時をわきまえないで横暴をするとかいうことは、嚴に愼しむべきでありまして、そういう常軌をはずれたような行為はさせないつもりであります。そうしてほんとうに國家經濟確立のために、大衆の福祉増進を目安にいたしまして、流通秩序の確立と、物資を活用する精神によつて、こういう權利を與えることが適當ではなかろうかと思つております。すなわちその意味においては、憲法第三十五條の制限の中にはいらないで、別格の扱いをいたしておるような次第であります。
#17
○鍛冶委員 どうも腑に落ちません。その御議論を承つておると、目的のいかんによつては三十五條のここに書いてあるものを侵しても差支えないのだ、こういうように聞こえまするが、憲法の精神はさようなものとは思いません。なおただいま首相御指摘の経済秩序を保つということは、これはわれわれも贊成なんで、それを保つからといつて司法官憲の令状を得ぬでのいいというその御議論は、われわれは何としても納得のいかないところであります。殊に私は過去における實際問題からも申し上げまするが、過去において人權蹂躙ということはいろいろありました。ありましたが、犯罪捜査の面における人權蹂躙ということは、檢事においてはあまり聞かない。檢事は大抵法律の秩序を踏んで、刑事訴訟法に從つてやつております。ただその下に使われているいわゆる司法警察官なるものが横暴をきわめた。横暴というよりも、法律を無視した行為をやつたのであります。これは隱れもない事實であります。そこで常に言われることは。これは司法警察官なるものが教養がないからだ、かくのごとき教養の低いものに對して刑事訴訟法を運用させることはいかぬから、教養を與えなければならぬと常に言つておられたが、これは百年河清をまつことく、その實績があがつてこなかつたのであります。ところで憲法三十五條なるものができまして、この結果現状をみておりますと、檢事が押収捜索をしようとするときには、必ず判事の令状をもつて行つております。從いまして、司法警察官といえども、この下にいてはこれに從つてやつておるものと私は信じておる。しかるに今日の經濟査察官なるものは、どういうものが行くのかしらぬが、おそらく今までの司法警察官なるものと變りない者が行つておる。平たく言えば、檢事ほど教養のない者が行くであろう。さような者が行きましてこの權限を振廻わすにおいては、その弊害は實に火を見るよりも明らかである。今後さような弊害のないようにすると首相はおつしやつたが、あなたの御精神はよくわかります。しかし實際においてこれらの日本全國に行く者に對してどういう監察ができますでしようか。まずこの點が疑問であります。その點は檢事ですら裁判官の令状がなければいかぬと言つているのに、いわゆる昔から言う屬官級の者が言つて勝手なことをして、檢事のその他に均衡が合いましようか。檢事はこれをどういう目で見ますか。この二點について遠慮なくほんとうに首相の御精神から御答辯を願いたいと思います。
#18
○片山國務大臣 さきに私の申しましたのは、三十五條の精神を場合によつては破つてもいいというようなことは、少しも考えていないのであります。これは嚴に守つていかなければならぬまことに重大なことである。人權の擁護のためにも、司法制度の秩序維持のためにも、最も重大なことであるから、これは嚴守していかなければならない。しかし犯罪捜査ということを眞向に振りかざしていく場合には、判事の令状をもつていかなければならない。無手で行つて人をふん縛る。家宅捜索をやつて土足にかけるような、そんな亂暴なことをしてはいけない、こういう意味でありまして、目下御審議を願う本條とは違うのであります。本法はどこまでも經濟問題の査察、經濟問題のために調べなければならないというそういう目的をもつていく場合であるから、それは令状がなくてもよろしい。それはごく簡單な例をもつて見ますると、犯罪捜査の場合は、その人を縛るというようなことが主になりましよう。もちろん家宅捜索、證據物の押収というようなこともありましようけれども、大體の目標はその個人を逮捕するというようなことを目標としておると思うのですが、この本法の方はそうではなしに、ここにありまする通り、事務所、工場、營業所、倉庫、こういうようなところで、物資を目當としていく、その物資と關連いたしまして帳面を調べる、こういうようなことがあるのでありまして、それは嚴に區別されるものである。嚴に區別を立てなければならないのである。そうして疑惑を一掃し、ほんとにこのやつてきた目的を明らかにしなければならないものである。かようにして考えておるのであります。そこで今お示しのように、なるほどあまりわきまえない人々がすいぶんむちやなことをやつた弊害がたくさんあるのに鑑みまして、嚴にこれを取締まり、細心の注意を拂つていくようにしたいと考えておるのでありまして、その意味におきまして、政府は官吏機構の改革から、官吏道の刷新から、官吏は權力を振まわして上から下に臨むというようなやり方を一掃いたしまして、眞に國民のために働かなければならない、いわゆる國民の公僕の觀念に徹して官吏は仕事をしなければならないということを、組閣當初から今日まで口をすつぱくして數通の訓令を發し、なおあらゆる機會においてその趣旨の貫徹に努力いたしておるような次第であります。弊害に鑑みまして、この點は十分に斷行する決意をもつておりまするから、これも十分御了解を願いたいと思うのであります。そういたしまして、できるだけ在來の弊害に陥らない方法をもつて監査する、帳面を調べる、そうして物資活用の大目的を活かすために仕事に從來する者は努力する、こういう方針でやつていこうと思つております。
#19
○鍛冶委員 首相の御精神はまことにわれわれ可といたしまするが、官吏道の刷新なるものは、もちろん片山首相は徹底してその點を説いておいでになりまするが、舊來においてもその點をおろそかにした内閣はなかつたと心得ます。しかるになかなかその實現はできません。また首相はこれほど熱心におつしやるにもかかわらず、この經濟統制面において、官吏の横暴によつて、これは隱れもない事實であります。この際にさらにかくのごときものが出るならば、まつたく悪く言えばきちがいに刄物を持たせるようなことになりはせんかと考えるのであります。そして先ほど來言う憲法第三十五條の末項の精神に反するということになれば、それは便宜を離れて法の重大なる精神から深甚なる御考慮を煩わさなければならぬと思います。
 なおその點はそれくらいにして進んでお聽きしたいのは、一體經濟安定本部というものの本當の目的はどこにあるのでありましようか、その點をお伺いいたします。
#20
○片山國務大臣 これは御承知のごとくでありましようが、本年の五月一日の勅令によりまして、經濟安定本部というものが發せられておるのであります。その第一條に、經濟安定本部は「物資の生産、配給及び消費、貿易、勞務、物價、財政、金融、輸送、建設等に關する經濟安定の緊急施策について企畫立案の基本に關するもの、各廳事務の總合調整及び推進竝びに施策の實施に關する監査及びこれに關連する經濟統制の屬行に關する事務、」今長たらしく讀みましたこういうような相當廣汎にわたる仕事を擔當いたしておるのであります。すなわち企畫立案のみならず、企畫立案の實績がどう運營せられておるか、その調整、推進、施策の實施に關する監査監査まで含んで、經濟安定本部はこれをよく見守つていかなければならない。こういう任務を蔕びているのが經濟安定本部であります。
#21
○鍛冶委員 なるほどこれを讀めばわかるのでありまするが、私のお聽きしたい主要點は、經濟安定本部というものができますれば、現在ありまする各官廳各省というものの仕事が要らなくなる。そうじやなくて現在各省にある仕事はそのままやつてもらう。その仕事を統合し、また間違いのないようにそれを監査その他屬行というか、奨勵というか、そういう仕事をするものじやなかろうかと、かように考えまするが、しかし經濟安定本部というものが、各省でやることは悪いから、おれが代つてやるのだ、こういうことまでもをやるのか。そうじやなく、各省の仕事はもとの通りやる。これを十分統合し、または嚴格に行わせる、その仕事をやるものかなかろうか、かように考えますが、この點をお聽きしたいと思います。
#22
○片山國務大臣 各省はそれぞれの仕事がありますけれども、お互いに統合してダブラないように、かつまた相反しないように順序をよく守つて、それぞれの擔當の仕事を十分やつていこう、こういうことが最も必要なことであつて、今日においてもそういう方針でやつておるのであります。從つて安定本部は各省と獨立して、各省の上に位するというのではなしに、十分その間では連絡を取りつつ調整し合つていく、こういうふうに現にやりつつあるのでありまして、今日においては、大體順序よく各省間の事務遂行せられておると考えておるのであります。
#23
○鍛冶委員 しからば承りたいのは、隱匿物資等に關しては、隱匿物資等緊急措置例がありまして、今出ておりまする査察官の臨檢檢察に關する法律の面にも書いてありまする通り、隱匿物資の摘發その他については所管官廳というものがきなつておる。商工省竝びに地方長官ということになつておりまして、そこで十分やれなければならぬはずであります。しかるにそこでやれるにもかかわらず、安定本部でさらにこれをやらなければならぬという理由が、われわれには解せられないのであります。どこにそういう必要があるのでありましようか。その點を明示していただきたいと考えます。
#24
○片山國務大臣 御承知のような經濟事情でありまして、今日におきましては、總合體系というものが必要になつております。のみならず、地域も、全面的に物資關係の統合、その流れ等を各懸ブロック關係じやなしに、これを地理的にも統合して考えていかなければならぬ。すなわち商工省だけの問題ではなしに、商工、農林、大藏各省の關係もあれば、また栃木懸から群馬懸、埼玉懸、東京都というようなぐあいに、地理的にも跨つて、いろいろなる統合問題考えていかなければならない。國家全體の經濟、物流、物資の關係を總合的に考えて、まとめてこれを立案し、またその計畫がどういうふうに動いておるかということを見ていただくための仕事が、複雑になればなるほど必要であろうと思います。それで敗戰後の經濟再建のために、特に設置いたしました制度でありまして、これに實に緊急經濟對策確立のために必要なものであると思いまするし、またこの異常なる經濟の動きを、できるだけ早く確立せしめたるために心配をいたしておる點でおります。その點を御了承願いたいと思います。
#25
○鍛冶委員 お示しのような弊害はあるでありましようが、商工省は全國にわたつて權限が行われないことはありません。商工省をもつてなぜやれないのか。なおまた隱匿物資等をもつておるということになれば、これは犯罪になるのであります。犯罪の捜査の面といたしまして、檢察當局の力も借りられる。その活動を促して一向差支えない。このように現在いくらもやれるところの機關があるにもかかわらず、その機關を拔きにして、安定本部がやらなければならぬというその理由がわからなかつたのであります。商工省ではできない理由があるのか。檢察廳ではできない理由があるのか。この點をお聽きしたいのであります。
#26
○片山國務大臣 できないこともあるますし、できることもあるでしようし、いろいろあると思うのです。殊に他省との關係、今申しました農林、大藏その他司法、内務、いろいろな問題が出てくるだろうと思うのです。複雑になればなるほど、その交渉が非常に大きくなつてまいりまするから、全般に對する一つの方針を示す、こういうことがどうしても實際においては必要でありまして、たとえば物價の問題につきましても、どういうふうにその問題を取扱つていこうか。また素材の問題に付つきましても、金融の問題につきましても、いろいろの方面において複雑なる動きに對處するために、總合關係を立てていけなければならないということは、これは事實上要求されておることであろうと思います。これは現内閣においてただちに思い出したというだけではなしに、ずつと終戰後考えられておつたことでありまして、現内閣におきまして、さらにその必要を感じまして、これも實際面に表そうという意味で、實行面に移そうということになつてきたようわけであります。
#27
○鍛冶委員 お示しのところはその通りであります。從いまして、こういうことに對して經濟本部がやられるのならば一向構わぬ。それは今おつしやることはいわゆる企畫立案の基本に關する問題でありますから――ただいま私が問題にいたしておりまするのは隱匿物資の摘發に關する問題に限定して、お聽きしているのであります。隱匿物資の摘發については、關係官廳というものが十分あるのでありますから、經濟安定本部がみずから乘込んで出なければいかぬというその理由がわれわれには呑み込めないのです。また現にこの法律が出なくても經濟安定本部でやつておられるところを見ますると、やはり今までの法律上の權限のあるところにやらしておいでになる。われわれはそれがやれるものであるならば、經濟安定本部としては、それからのものは十分やれるように總合したる立案をし、またこれがここに書いてある通り、この推進または實施に關する監査その他をやられればよいので、自らとつて代つてやらなければならないという理由には納得いきません。いろいろの點は根本は私が總合したる企畫立案にもあると思いますが、そのほかの點で、こういう一つの小さい事柄に對して、やらなければならぬという理由がどこにあるのか、納得がいかないからお聽きしたいと思います。
#28
○片山國務大臣 いろいろ御心配はごもつともであり、一應そういうふうにもかんがえられまするが、やはり企畫だけで机の上の問題だけで机上の問題だけで終わるということになると實績があがらない、こういうふうになりまするので、安定本部に書いてあります通り、施策の實施に關する監査、これに關連する經濟統制の屬行というとこまで及ばないことには結論を得られない。やつている人も十分熱意が上がつてこない。そこまで統一して一貫して始めから終わりまでの連鎖を十分に保たしめるということも、事務を効果あらしめる上において、必要なことであろうと思います。要はその運用にあるのではなかろうかと思います。運用を誤れば、すべてはまずいのですが、他省とも連絡をよくして、お互いに相侵さないようにして、十分その目的を達せしめるということについては、十分注意を怠らないようにしたいと考えております。しかし一應はその筋の通つた結論に至までの實績をあげ得る途を與えていくということが必要であろうと、こう思うのであります。その意味において本法における監査制度ということが出てきたのでございまして、何もこれは他省を排撃して獨斷的に、獨占的に自分でなければやれないのである。こういうようなやり方でなしに、どこまでも調和を保ちつつ圓滿遂行を希望いたしておるし、またそういう進み方で、ぜひともやらさなければならないと考えておるのであります。
#29
○鍛冶委員 御指摘のようなことは實際にありましたでしようか。今まで他の官廳にやらしておいたんでは實績はあがらなかつた。そこで安全本部から見れば、これはもつとやらなければいかぬというので、こちらの方でやればよいということは事實上あつたかもしれませんが、われわれの考えおりますことは、安定本部というものは、みずからやらなければならぬと考うべきところであるか。他の省が實際やるべき權限をもつて働いておるのであるから、その省にもやらせるように、ここがたらぬからこの方法でやれと言つてやるのがほんとうか、この點を明確にしてもらいたい。もちろん足らなかつたことはあつたに違いない。また實際にわれわれも隱匿物資等の摘發については遺憾な點は十分みております。見ておりますが、そこでやらしてはいかぬので、安定本部でやらなければいかぬというこの考えが、日本の行政全體からながめて、はたしてよおいことであろうかどうであろうか。また安全本部なるものの本質からして、さようなことでいいのかどうか。商工省なら商工省でいくらやつても實際できないものかどうか、この點は首相はいかに見透しておいでになりまするか承りたいのであります。
#30
○片山國務大臣 今鍛冶君の言われるように、商工省でやれるのではあつたが、安本にそれを押しのけてやらす、こういうような對立的なやり方を避けまして、こういう問題については、立案せる事項がどういう面に現れて效果を發揮するかどうかを見きわめるという意味において、能率的に效果的にこれを考えていかなければならぬと思うのであります。いろいろの場合においても、他省との關連をよくしていく、排他的でなくして、どこまでも調和をはかつていくというように、十分努力いたすつもりであります。一にはこれは心構えと運用にあると思いますから、鍛冶君の指摘せられまして事項は、今後においても十分注意いたしたいと考えております。
#31
○鍛冶委員 御注意はよろしいのですが、具體的に申しますると、隱匿物資等臨時措置令においては、商工省でやらせることになつております。しかるにこの法律が出て、安定本部でみずからやられるということになると、この隱匿物資等臨時措置令に書いてある商工省の權限というものは事實上要らないことになる。それでいいのでありましようか。また商工省がある以上は、おのれの方でもやれるということになると、實際面において安定本部と商工省との權限爭いができ、なわ張り爭いが出てまいります。今後商工省にやらせないつもりなのか、商工省にもやらせるというのならば、なにゆえに安定本部がやるのか。安定本部と二つとのところで實際競争していることがある。そういうようなことが起こつてもよいのかどうか、この點具體的な問題から申し上げておるのでありますが、ひとつ首相から率直なるお考えを聽かせていただきたい。
#32
○片山國務大臣 商工省にやる權限がある範圍を消してしまつて、一切を全部安定本部で統一するというふうに、今までのものを取消して、これに集中するというのではなしに、商工省あるいは農林省でそれらの權限があれば、それはそのままとしておいて、安定本部におきまする統一的な施策遂行の面を一應生かして、他省との關係は運營上においては調和をはかつていく、こういうやり方がよかろうと思つておるのであります。決してそれは實際面においても矛盾せず、お互いの官廳のことでありますから、これらの問題については、十分調節し得ると考えております。よく繩張りがあるかということを聞くのでありまするが、豫算面においては、それらが今まではあつたかもしれませんが、こういう經濟對策をよくするとか、物資を活かしていくという面においては、必ず調和をはかつていかなければならないのでありますから、十分に調整ができると考えております。
#33
○鍛冶委員 動の私には腑に落ちません。隱匿物資を摘發する上において、總合的にやらなければならぬということは、摘發の方法を總合的にやらければならぬということでしようか。これは摘發のやり方が商工省のやり方と安定本部のやり方が違うということは考えられません。私はこの點特に實際の面から見て考えられることは、摘發したる物資をいかに處理するかということは考えられるものでありますが、それにたいしましても安全本部の方でちやんと商工省と連絡を密にして、商工省で摘發したものをここにやれと、基本的なことを安定本部で計畫されて商工省でやればいい。なお商工省で力が足らぬといえば、檢察當局の力を借りてもよろしい。それを拔きにして、なお總合的にやらなければならぬということは、私には考えられませんが、どこにあるのでありましようか。私は知識が私はその點を御教示願いたい。
#34
○片山國務大臣 どうも御教示とおつしやられても、私も實際面のことはよわかりませが、大體安本の法で考えておりますることを、きわめて果敢にやろうというときに、他省にそれ絵を連絡して、他省の發動がそこへくるということになると、時間的にも連絡的にもいろいろの故障が起きたり、時間をむだにすごすというようなことがあるのだろうと思うのです。そういうような場合に、一貫してその問題を最後まで突き止め得るというように貫く筋道を與えておきますと、問題がきわめて敏速に運ばれるものではなかろうか。その際に應援を求めるという場合には、連絡をとりつつやつていくことができる一つにこれは事務を敏活ならしめる効果を十分にあげ得るために必要だ、こういう意味で申し上げているのであります。
#35
○鍛冶委員 その意味ならば、安定本部として實際にはたらくべきできている行政官廳に力をつけるような方法を教示するだけで十分だと考えますので、その點の御答辯では我々は滿足できません。しかし同じことを繰返しておつてもいけませんから、他の面から承ることをにいたしたいと思います。
 首相は政府方針において徹底的に行政整理をやるということを名言しておいでになりますが、行政整理の実際的の方法といたしましては、そういう方法からやつていかれるおつもりであるか、この點をひとつ承ります。
#36
○片山國務大臣 行政全般にわたりましては、なかなか廣範圍でありますから、行政改革調査會を置きまして、齋藤國務相がその主宰者となつて、目下各方面にわたつてその改革案を立てつつあるのであります。まず御承知の通りの内務省の問題もあり、それに關連いたしまして自治問題、また港灣に關する問題、また地方局が扱つております地方の事務に關する問題、これをどういうふうに扱うかということが、これも目下御審議を願つていることと思うのであります、さらにまた公務員に關しましては、在來の制度に根本的改革を加えましたる國家公務員法を立案いたしまして、これまた目下御審議を願つておるような次第であります。さらにまた御審議を願うべき事項が相當あるのでありますが、發表の域にまだ至つておりません。遠からずお手元に出し得ると考えておるのでありまして、全般にわたつて官吏機構の改革に手をつけたいと思つて、人材の途用主義、能力主義によつて、眞に有能なる人士によつて國家の事務が遂行されることを期待し、自治制度は自治に基本をおいて、すべて自治制度の活用を願つて、國家は自治制度に對しましても、根本的な建前を明らかにして進んでいきたいという考えで、各般にわたつておるのでありまして、目下出ておりますものと、將來出ますものとからみ合わせて、行政制度刷新に關する政府のやり方を進めていきたいと思うのであります。
#37
○鍛冶委員 いわゆる健全財政を堅持するという建前から、財政上の見地等を考えて、なるべく有能なる者を採用し、でき得る限りその人員を減らして國費を減らそうというお考えではないでございましようか。
#38
○片山國務大臣 行政整理の問題であろうと思いますが、なかなかむつかしい問題でありまして、いわゆる失業者を多く出して、人を減らすということはできるだけ避けたいと思います。そこでいわゆる配置轉換を行いまして、企業を合理化的に按配をし、勞働力の配分を十分に合理化さしたいと思つておるのであります。特に問題は鐵道關係の職員、あるいは遞信に關する職員その他におきまして、配置轉換が考えられておるのであつて、目下それぞれ擔當におきまして、愼重に考慮しつつあるのであります。お示しのような意味において、できるだけ健全な財政を助ける意味から申しまして合理家をはかりますが、しかしできるだけ失業者を多く出さない方法を講じつつあつて、その間を愼重に考えつつあるような次第であります。
#39
○鍛冶委員 よくわかりませんが、健全な財政を堅持する建前は放さない。しかし失業者を出はだされぬ。こういう二つを今承つたのであります。そうしましすれば、健全財政はどこまでも堅持したいが、失業者を出すことは困るから、財政が殖えてもいたし方ないという御意見でございますか。
#40
○片山國務大臣 そこはなかなかむつかしいところでありまして、健全財政の堅持ということは、どこまでも守ります。守つていかなければインフレが高進しますから、その建前で進んでおるのです。しかしそれだらといつて、失業者に對することを少しも考えないということではいけませんから、その間の調節をはかることが、今日の政治のむつかしさであろうと思うのです。これは全然反したることではなしに、できるだけ努力をして、その間の調節をはかり得ることである。そのために今日の豫算問題もなかなかめんどうになつている。こういうふうでありまして、全然反するということを調和せしめようというのではないのでありまして、いろいろくふうをいたしますならば、その間の調節はでき得るのではなかろうかと思つておる次第であります。
#41
○鍛冶委員 どうもよくのみこめませんが、失業者はなるべく出したくないそれからといつて支出の膨張はできるだけ止めたい。こういうふうに聞こえますが、失業者を出さないからといつて、財政は殖えてもしかたがないのだ、こういう意味でありませんでしような。どこまでの財政は切詰めるのだ、それから配置轉換ということも考えられるが、失業者を救濟する必要上官吏を殖やしてもいいのだ、こんなお考えではないでしようね。言うてみれば、できるだけ支出は殖やさぬ。できるだけ整理はするが、できるだけ失業者は出さないのだ。その反面には國費の支出を膨張させない。なおかつ官吏はこれ以上殖やさない、この二つを原則として認められるのではないかと思いますがいかがでしようか。
#42
○片山國務大臣 つまり鐵道財政をかりに例にとつてみまするならば、大勢の職員を抱えているが、収入は少い。支出が相當殖えてくる。そこで人を減らして、支出を少くして財政のやりくりをやつていく。これは一番簡單であります。ところがなかなか複雑でありますが、鐵道經濟をやつていく方法として、考え出されることは、収入を殖やす途である。そこでやむを得ず、今囘の鐵道賃金の値上というようなことができてくるのであります。鐵道賃金の値上は、實に大衆生活を壓迫いたしまして、まことにつらいことではありますけれども、しかし萬やむを得ないこういうようなわけで、いろいろの面における凹凸を調整しつつやつていくので、甲か乙かのようにパチンパチンと決められないかと思います。そのいみにおきまして、できるだけ失業者は出さない方針でやつていく。しかし配置轉換をして、やむを得ず出まする失業者は、これはやむを得ない。これに對しましては相當の手を盡くして、失業手當であるとか、失業保險であるとかいうような社會政策的な法規をもつてこれを救濟する。一面においては經費の節減をはかつていかなければならぬ、いろいろの面が出てきますから、御指摘のように、甲か、しらずんば乙かという二つの途があるのみであつて、他に途がないというように狹められたる案でこれを解決しろ。こういうぐあいにはいかないと思います。いかないところに、今日の複雑なる經濟事情があるというように考えておるのであります。
#43
○鍛冶委員 それはパチッと甲乙にわかれないかもしれませんが、その目途はわれわれにはずつとつくのです。ただ私繰返して簡單にお伺いつますが、人員は殖えてもしかたがないのだ、こういうお言葉があるのは、できるだけ經費を少くし、人員は殖やしたくないというお氣持ちか、それだけお聽きしたいのであります。
#44
○片山國務大臣 技術者はどうしても人員を殖やさなければならない場面がある。簡單なる不熟練方面の事務については減らす場合もある。これを總合して配置轉換で新しく殖やす必要があれば殖やした所もある。こういうふうなぐあいになるのです。だからパチッといきにくいというのはそこなのです。その點配置轉換によつて合理的にこれを行つて、その結論はどうなつてるかということになれば、やむを得ず失業者が出る場合も想像される。こう考えるのです。經費はできるだけ節減しなくてはなりませんが、しかし御承知の通り、機械は磨り減つておる。もう修理しなければならない最後の場面まで來ておるような機械力でありまするから、これを修理しないことには、仕事はやつていけないという場合は、不可避的に、相當な經費が計上されここなければならない。こういう状態で、やむを得ず賃金の値上げをするというこよによつて、これを補助する。あるいは一般會計からの補充によつて、特別會計の救濟をやる。いろいろ総合して全體の埋合わせをやつていかなければならぬ。これはもちろん鐵道經濟を例にとつての話でありまするが、非常に複雑であるということが、問題解決の大きな對象となるということをお考え願いたいと思います。
#45
○鍛冶委員 鐵道だけでない、私は一般のことことこを伺つておる。首相の今のお言葉で、お氣持は大體わかりました。そこで私が聽きたいのは、できるだけ整理する。しかし失業者を出したくないから、配置轉換をやつていくといこうというそのお聽持は十分わかりましたが、現實はいかがでございましよう。たいへんな官吏の殖え方であります。しかも最も殖えておるのは、經濟上における統制面であると心得るのでありますが、われわれはそういうことの専門家でありませんから、よくわかりませんが、人々はもう今日のごとく日本の官吏の殖えた時代はない。未曽有である。國民六人に一人の官吏であるとか、七人に一人の官吏であるということを言われておりますが、これは首相の行政整理ということと一致しないのでありましようか。また健全財政を保持する上においてやむを得ないのでありましようか。いかがでありましようか。
#46
○片山國務大臣 健全財政はどこまでも守りますが、健全財政は消費政策ではないのであります。やるべきことはやらなくてはならない。やるべきことはやるが、その財源を赤字で補填しないで収入をはかつて、消極的な政策も考えていかなければならぬ。こういう建前で目下進んでおるのであります。そこでやらなければならない仕事というのは相當たくさんあります。御指摘の經濟安定に關するいろいろの計畫も、どうしてもやらなくてはならないことになつております。經濟安定の本部が非常に擴がりまして、官吏の數がその面においては多くなりましたことは、お示しの通り殖えておることと思います。しかしこれは日本の經濟を建直して、やみを撲滅して、ほんとうに國民全體が配給で生活をなし得る秩序を確立しようとするためには、そうしても手が要るのであります。國民全體が漏れなくその線に沿いまして、いわゆる國民運動の展開によつて官吏なしに秩序が確立して、やみを撲滅し得る立場に進みますことを理想といたしますが、目下の状態においては、なかなかそうは行きません。非常にその點は苦しいところであります。そこでやはりやみの撲滅とか、秩序の確立であるとか、經濟機構の建直しに關する國家の役員というものを、相當殖やさなければならないとかいう状況に立ち至つたのであります。しかし先ほど申しまするように、これはいわゆるサーベルを下げた官僚ではない。幾分そういう古い考えをもつておる者もあるかもしれませんが、われわれの心持ちといたしましては、嚴にこれを戒めて、たとえば窓口の改善をし、親切化しなければならないという方面に力を入れまして、眞に官吏は國民のために働かなければならないという意味で働かしめておるのであります。この方向については、國民全體もご協力願いまして、一日も早くこの國家經濟の建直しをやりたいと考えております。そういうことが實現せらるる曉におきましては、何も取締官吏を多くおく必要はないということになるのはいうまでもないと思います。
#47
○鍛冶委員 今就床みずからおつしやつたように、われわれ一番めにつきますのは、安定本部というものの厖大なる擴張であります。これはやむを得ずできたというようならばいた仕方ありませんが、まず私が聽きたいのは、各省における仕事というものは變りはないわけです。その家安定本部というものができたわけであります。安定本部がなければならぬというならば、それは安定本部がやるならば各省のものをもつてきてやる。いわゆる先ほどの首相も言われた配置轉換によつてやられるのならば、これはもちろんある程度の整理ということになりますが、各省はもとの通りおいてある。その上安定本部というどえらいものが載つてきております。このようにしますと、われわれはこれから先、一體日本というものはほとんど官僚だけで押切られる日本になるのでなかろうか、こおまで考えておりますが、安定本部にどうしてもやらなければならぬのならば、各省の仕事はどう整理されるか、各省はそのままにおくというなら、安定本部というものは先ほど言つたように各省に對する統計計畫をやればよろしいので、このものを働かせるということがほんとうじやないか、この點を首相はどうお考えになつておいでになりましようか、その點を承りたい。
#48
○片山國務大臣 先ほども申しましたように、相互の調整をはかつて、協力し助け合つていかなければならない、こういう複雑な情勢である會社情勢に鑑みて安定本部ができたのでありますから、目下のところにおいては、お互い協力し合つていけると思つております。數は殖えましたが、仕事がそれだけ殖えておるのであります。すなわち情勢の複雑化に對應するための仕事が殖えて、安定本部のおける官吏も勞働組合から、あるいは商業団體から、あるいは新聞人からというようなぐあいに、各方面から有能なる方々の参加を願つておるのであつて、國民の總力の集結ということを目指して進んでおるのであります。御心配のように威張つておつた官吏ばかりが殖えて國民が逼迫せられるという心配はなかろうかと思います。またこれについて國會の十分な御監督をお願いいたしたいと思いまして、趣旨といたしましては、できるだけ國民總力を結集いたしまして、この秩序の確立に邁進そういたしたい。こういう考えでやつておるものであります。
#49
○鍛冶委員 私の憂えますところは、このように安定本部が厖大になりますと、國費の支出が必然これに伴うことは論をまちません。この國費の膨張と、いま一つ根本的に考えていただきたい點は、人間というものは働かせるように仕向けなくちや働かぬものなのであります。お前のやることじや間に合わぬからおれがやるんだというので、上の者が代わつて仕事をやるようでは、下の者は飾り物になつてしまつて、仕事は骨拔きになつてしまつて働きません。そこで考えますのは、各省は元の通りにあるのでありますから、元の通りにあるものは働かせる。働いて國の政府をよくしてくれというのがほんとうじやないかと思う。それにお前の方じや間に合はないからおれがとつて代わつてやる。この態度の現に出ておられる。これで一體官吏道の刷新ができましようか。ほんとうに行政整理ができましようか、一般官吏が働くでありましようか。この點を承りたいのであります。國費の膨張はやむを得ぬとおつしやるのならやむを得ないが、でき得るならば減らさなければならぬことは當然である。そうして各省を働かせるという氣分がなくちやならぬ。しかるに今のところは働かせるどころではありません。お前のやることはいかぬからおれが代わつてやる、上長官が下級官のやることを見て、自分みずから下級官吏の仕事をとつてやるという状態にしか見えませんが、この點はいかがでありましようか。
#50
○片山國務大臣 御指摘のようにとつて代わつてやるというようなことは悪いことでありまするから、悪いことはどこまでもやめさして、この制度の趣旨に從つて、總動員して全部働かしめるというふうにしたいと思います。そういう御注意くだされば、その點は十分に調べまして、不心得のあるものは十分にこれに對して處理しなければならないと思つております。現在のところにおいては、すべてを働かせてて、ほんとうに再建のためにその力を發揮せしめる、こういう意味でやつておるのであります。今後においても、もしそういう不心得の者がありましたならば御注意願いたいと存じます。
#51
○鍛冶委員 不心得の問題ではありません。實際の問題であります。そこでこの經濟査察官に關する臨檢檢査等に關する法律に戻りますが、商工省にちやんと權限がある、その商工省を安定本部が安定本部令に書いてある通りに、これを推進する、また監査をする、これを督勵する、これをやつたらいいはずなのである。しかるにそれはいかないので、どうしても安定本部でやらなければならぬということになると、商工省において隱匿物資等緊急措置令の第一條によつて與えられたる權限はなきと等しきものになる。何ゆえにこれから商工省が要るかわけがわからぬことになる。これじや働きません。この意味において、私はこの法律だけではありません。一切のものに對して經濟安定本部について根本的の考え直しを、私は考えているのであります。首相はこれに對していかなるお考えをもつておられますか。
#52
○片山國務大臣 安定本部に對するいろいろの御意見が出ておりまして、國費多端の際に官吏の殖えることまた官吏に關する方面に費用の殖えること、從つて國民に對する刺戟等も多いというようなことからの御憂慮であると思いまするが、すでに發足いたしました今日におきましては軌道にも乗り、この窮乏せる經濟を建直していかなければならないということで、目下張切つて懸命な努力を拂つておるときでありますから、私といたしましてはこの機構を十分に活かしたいと思つております。弊害はもちろん取除き、その間違つた面は十分戒節いたします。つしかし眞に複雑多様になつておりまする客觀的情勢に對應いたしましては、相當の人が要るのであります。これを運用すればいいと思います。要はこれを活かして他との摩擦をなくし、國民に對する刺戟も少くして、本当に國民の信頼を博するようにこれを運用するということにあると思つております。その意味において、目下のところではこの多様なる客觀的情勢に對して、これだけの施設容易が必要であるという見地から案を立て、その立案の遂行に對しても責任を自覺して張切つてやつておる。こういう状態でありますから、ひとつこのやり方については、現下の情勢から必要であるということをお認め願いたいと思うのであります。御意見は十分に尊重いたして、運營の参考にいたしたいと考えております。
#53
○鍛冶委員 まことに誠意のある御答辯で、われわれ非常に頼もしく考えまするが、御精神はよろしいけれども、實際面から申しまして、私は同感の意を表しかねます。あまり長くなつてもいけませんから、私の結論を申しますると、要するに安定本部というものは、どこまでも各省は元の通りであるのだから、その各省が働き得るように、しかして先ほどから首相が言われたように、国策全體を總合してやれるようにこれを導き、計畫を立てて示し、そうしてこれを監査し、勵行するという、ここにあるのだと思うのでありますが、それではいかぬのであつて、またやり方が足らぬからおれが代わつてやらなければならぬというこのやり方は、私は今日の國情からして、最もよろしくないものと考えます。從いまして、今出ております臨檢等に關する法律も、さような意味から考えて、他の現在ある權限をもつておる機關におもいきつてやらせるようにこれを信頼し、これを督勵し、やらせるというのがほんようではないかと考えます。いわんや今申し上げましたる憲法第三十五條の明文に反する。先ほどかの首相の言葉で言えば、單に前司法大臣が言つた。そんな一人の口だけでは、はつきりわかりません。それらのことまでもあえて犯して、最も新憲法を忠實に實施しようというお心がけである片山首相が、この明文に抵觸する――かりにしないと言つてみたところがこれは問題になることは間違いありますまい。問題にならぬとおつしやるでしようか。そんなところまでも犯して、そうしてこのような法律をどこまでも實施しなければならぬとおつしやることは、われわれは腑に落ちないのであります。この點は十分御考慮を願いたい。なおしかし今私の申しますることが間違つておるならば、ここで御答辯願つても構いませんが、あとは御意見の相違だと言うことになれば、十分御考慮を御害したい。かように考えております。
#54
○片山國務大臣 御注意は十分了承いたしております。一言申し上げておきますが憲法第三十五條の紛淆を來さないように嚴にこれを守ります。もし犯罪捜査に關係のある場面にまりましたならば、經濟警察官は手をつけないで、新しく判事の令状をもろうとか、あるいは適法なる處置による方法でないことには處分の執行はできない、その限界を明らかにしなければならないと考えております。その點については、十分紛淆を來さないように處置さしたいと思つております。
#55
○鍛冶委員 ただいままことにわが意を得た御答辯を得まして滿足いたします。ただ現地において紛淆しないようにするとおつしやいますが、それはなかなかできるものではありません。どこが犯罪のためであるか、どこが經濟的のためであるか、その限界はできるものではありません。とにかく三十五條がある以上は、首相がおつしやつたように、原則として令状を取るということをやつていただきたい。そうでなかつたら、自分は經濟のためにやつたのだといつて、それが犯罪をおかすようなことに使われてしようがない。それだけのお氣付があるのならば、原則として令状を持つていくということに改めていただくならば、われわれは強いてこの法律に反對いたしませんから、當局と打合わせて、十分御考慮のほどをお願いしたい。かように申し上げまして、私の質問を終わります。
#56
○花村委員 關連して、…。私は昨日の質問に繼續して行こうと相なつておつたのでありますが、遲れてまいりましたので、鍛冶君が大體質問をせられたので、わたしはなるべく重複を避けて首相の明快なる答辯を希うものであります。
 まず昨日の刑法の一部を改正する法律案に對すしまする質問は、大體終わつたのでありますが、ただ一點結論的の御答辯を願いますことが濟んでおりませんので、最後に一點刑法の一部改正に關する問題に對しまして、質問をいたしたいと思うのであります。それは今日までの政府委員竝びに司法大臣の答辯によりますと、要するに皇室に關します罪の條章を削除いたしましたことは、結局において国際情勢に対處するために、あらゆる觀點から再檢討をいたしたのであり、またこれを存置すべくあらゆる面において努力したのであるが、遂に削除しなければならぬ結論に達した、こういう御意見であつたのであります。然るに昨日の首相の御答辯によりますと、政府委員竝びに司法大臣の御答辯とは異なつている。要するに根本的にこの種規定は存置する必要がないのである。要するに天皇は國民の一人として、國民の中にあらせられるのであるから、從つて法律上も国民と同様に扱うのがむしろ時代に即應する考えである、こういう御意見を漏らされた。そうしますと、今までの政府委員の説明竝びに司法大臣の説明と異なりまして、首相の言われるところは、根本的にその存置の必要がないのである、国際情勢の上から、その筋との折衝等から存置ができないのであるという他の政府委員の答辯と異なつておるのでありますが、この重大なる案件に對して、首相と司法大臣とその意見を異にし、また政府委員とも意見を異にするというようなことは、これは重大問題であろうと思うのでありますが、要するに閣内において意見がとういつしておらない、こういう點に對する首相の責任はどうおとりになるますか、それをまず第一に伺いたい。
#57
○片山國務大臣 不統一とか矛盾しているというようなお言葉がありましたが、私はそうは考えないのであります。私どもの考えとして私の申しあげたことも一つの理由であり、また政府委員竝びに司法大臣がお答えしたことも一つの理由であり、その間においては何も背馳はしていないと思います。二つの理由があつていいと考えております。その意味において、司法大臣及び政府委員は、その面において答えられ、私はまた他の面からあなたにお答えした、こういうわけでありますから、理由は一つでなくてはならぬということはないと、私は考えます。
#58
○花村委員 首相は理由は一つであると仰しやられるが、一つじやないではありませんか。政府委員竝びに司法大臣は、この規定を存置する必要もあるので、存置すべくその筋へもあらゆる努力を傾倒して善處したのであるけれども、国際情勢の上からみてこれを削除しなければならぬということになつた、こういう説明であつたのであります。しかもこれは懇談會において詳しいお話があつたのでありますが、懇談會で言われたことでありますから、私もここで申し上げるのを避けるのでありますが、しかし首相といたしましては、根本的にあなたの議論から言えば存置しないでもよろしいのである、從つて司法大臣や政府委員のごとく、その筋に向つて存置に關するあらゆる努力を拂うの必要もまたなしということに相なるので、そこが違つているのではありませんか。われわれはぜひ存置してもらいたいという意見を述べ、また多くの國民も、国民感情の上からいうて、存置を希望していることが看取せられるのであります。從つてその點を政府委員竝びに司法大臣に質問をしたところが、氣持においてはわれわれと同様であり、しかもその筋に向つてあらゆる面から存置に關する努力をしたのであるけれども、ついに国際情勢の上から存置を許さぬようなことになたから了解しろ、こういうお言葉であつたのであります。しかし首相の昨日からの御答辯によれば、そうじやない、存置するための努力は一向しておらぬじやありませんか。そうすると、司法大臣竝びに政府委員の言われたことと、首相の御答辯が異なつておる。そうすると、きのうの答辯は、首相はここで撤囘されるとおつしやるのですか、それをお尋ねしたいと思います。
#59
○片山國務大臣 つまり司法大臣竝びに政府委員がお答えしたことによりまして、表面の理由といたしましては私の申しあげたようなことで、最後の結論としては、そういう標榜になつてくる、こういう關係にあるのであります。つまり司法大臣の答辯は、心持をお答えし、經過をお答えし、結論においては、これはどうしても削らなければならないということになつた。削るについての理由としては、その心持、經過を表面に表すことが至難であることは、十分御了承願いうると思いますが、そういういきさつによりまして、表面の理由としては、私の申しあげたようなことが、法律的と申しますか、削除の理由として掲げるべき事項である。こういうふうで、經過と結論と關連させる關係において聽いていただければ、筋がちやんと通るいうふうに考えるのであります。
#60
○花村委員 そうしますと、どういうことですか。首相も皇室に關する罪は、削除をすることを希望しないのである。けれども国際情勢の上から、やむを得ずきのう言われたような説明をつけて、そうして削除せんければならぬという意見を發表せざるを得ないとおつしやるのですか。そこのところを率直に、もう少し單刀直入にはつきり御答辯を願いたいと思います。
#61
○片山國務大臣 私は懇談會にも出席しておりませんし、諸君と懇談會を開いて、いろいろ經過等を話し合つたことがありませんので、その點については關與しなかつたのでありますから、その問題をここで申し上げることはちよつと控えたいと思います。そういう意味で結論だけを申し上げるに止めたいと考えております。どうかその點は御了承願いたいのであります。
#62
○花村委員 そうすると少くともこの刑法の改正の中で、皇室の罪を削るこの問題に限りましては、司法大臣から内閣總理大臣に御相談もあつたことであろうと思います。政府委員の説明によりますれば、前内閣のときにおいても、政府をあげて、また吉田首相もみずから進んでこの問題の解決に最前の努力を盡くしたという報告を受けたのでありますが、なお現内閣も、そのあと承け繼いで、あらゆる努力を進めてきておるのであるというご報告があつたのでありますから、從つて司法大臣その他の政府委員から、首相にも削除に關する御相談があつたことであろうと思いますが、その相談は受けられましたか、どうですか、それをお伺いいたします。
#63
○片山國務大臣 それらの問題につきましては、内閣下打合わせの問題等ともいろいろ關連することでありますから、この席上においては御容赦願いたいと思います。そうしてそれらは經過として司法大臣及び政府委員が申し上げたことであつて、揚げるべき理由としては、私が申し上げた理由によつて削除することを表しておる、こういうことでお取扱い願えれば結構と思います。
#64
○花村委員 その點司法大臣も述べられたのでありますから、ここでそういう相談を受けたか、受けぬかということをお述べになることは、決して何らの差支えはないと思うのでありますが、首相がその點避せられるなら、それでよろしゆうございます。よいのでありますが、しかし最後に一言いたしておきたいことは、そういたしますると、首相はこの問題の存置に對して今後何らの努力を拂う意思はもつておらぬということだけは、明瞭におつしやられることはできましようか。それだけ承つておきます。あるいは努力をするというお氣持があるのであるか。それをお尋ねしておきます。
#65
○片山國務大臣 この前の委員會において、私は北浦君竝びに花村君のご質問に對しまして尊敬の念をもち、國民の一人として象徴たる天皇を崇め奉ることについては、同じ心持をもつているのであつて、決して人後に落ちないつもりである。殊に外國の君主と違いまして、多年國民感情の上から申しましても、國民感情の上から申しましても、國民性の上から申しましても、皇室を特別に扱うことにつきましては、十分な對策をとらなければならないという心持については、決して私どもは輕い考えをもつていないのである。十分これを國民道義に訴え、道徳心の上に強調していかなければならないと考えているのであります。これは象徴としての今日の天皇を十分に守つて、尊敬の念を發揚していかなければならいということをたびたび申し上げることによつても、御了承願い得ると思うのであります。ただ法律の取扱といたしましては、それとは別で、いろいろの情勢も考え、殊に日本の今日の立場等から考えまして、國民の心持を、また政府の心持を、特に私個人として皇室に對して尊敬の念を十分に深めておりまする心持などを、そのまま法規の上にあらわすことができない情勢にあるということは、十分諸君においても御了承されておると思うのであります。そういう意味で、道義心、道徳心とは別個に法律の取扱は考えていかなければならないと思います。政府としてひとたび責任をもつてこの刑法の一部改正案を諸君に提出いたしましたる目下の情勢においては、現在の立場においては、當分このままでいかなければならない情勢であるということは、十分にご了解賜り得ることと思うのでありますから、花村君の御質問もそういう意味での御質問でろうと考えまして、以上私の心境を申し述べておく次第であります。
#66
○松永委員 午前中はこの程度で休憩いたします。
    午後零時三十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十九分會議
#67
○荊木委員長代理 休憩前に引續いて會議を開きます。
 これより裁判所法の一部を改正する等の法律案を議題として政府の説明を求めます。
#68
○赤木政府委員 ただいま上程になりました裁判所法の一部を改正する等の法律案について提案理由をご説明いたします。
 改正憲法のもとみおける司法制度につきましては、さきに裁判所法が制定せられ、改正憲法の施行と同時に施行せられまして、從來の司法制度に畫期的な變革が加えられましたことは、すでに御承知の通りであります。しかしてこの新制度のもとに、本年八月四日最高裁判所の裁判官の任命をみたのでありまして、ここに改正憲法によりまして、重要なる任務を負擔される最高裁判所が發足するに至りましたことは、御同慶にたえない次第であります。政府におきましては、この最高裁判所及び引續いて近くの裁判官の任命を見まする最高裁判所以下の裁判所の發足にあたりまして、裁判所がその神聖なる使命を遂行いたします上に遺憾なからしめるため、裁判官その他の裁判所職員に關する諸法律をさらに檢討いたしまして、これに所要の改正を加えることといたし、ここに本法案を提出いたす次第であります。以下本法案につきまして、大略をご説明いたします。
 第一點は、裁判所調査官の身分に關する裁判所法の規定につきまして、從來これを二級といたしておりましたのを、今囘、一定の員數を限り一級ともなし得るものと改めまして、これにより裁判所調査官に一層の適材を得る道を開きまして、特に最高裁判所の機能の充實をはかろうといたすものであります。
 第二點は、下級裁判所の裁判官の任命のため、最高裁判所がその指名をいたす期間の延長であります。裁判所法施行におきましては、裁判所法施行後六箇月以内、すなわち本年十一月二日までにその指名をいたすべきものと定めておるのでありますが、裁判所法施行後、事情から、豫想以上に遲れましたために、その指名の期間を本年十二月三十一日まで延長いたすものであります。
 第三點は、裁判所の職員の定員の改正であります。この定員は、裁判所職員の定員に關する法律によつて定めているのでありますが、その後私的獨占の禁止及び公正取引の確保に關する法律の施行、竝びに經濟統制違反の取り締まり強化に伴う措置等によりまして、裁判官その他の増員を必要といたしますほか、最高裁判所の事務局の機構を整備充實いたしますために必要な裁判官等の増員をいたすものであります。
 第四點は、簡易裁判所の報酬につきまして、從來、「一般の二級の官吏の受けた俸給の額の範圍内」となつておりましたのを、「一級及び二級」と改めまして、その範圍を高く擴張いたし、簡易裁判所判事に一層の適材を得ようといたすものであります。
 以上、きわめて簡單ではありますが、本法案の御説明を申し上げました。何とぞ愼重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
#69
○荊木委員長代理 御質疑ございましたらどうぞ…。
#70
○安田委員 御提案の趣旨はまことに結構だと存じます。これに關連いたしましてお伺いいたしたいのでありますが、最高裁判所の長官、簡易裁判所の判事の待遇の改善は、十分お考えになつておるようでございますが、これに比例して、地方裁判所の判事の待遇は、現在のままでよろしいかということを、私どもは懸念いたすのございます。この點についての政府の御意見を承りたいのでございます。御承知のごとく、地方裁判所の判事は、新しい裁判所法によりまして、長い年限を經た人のみが任命せられることになつたのであります。この地方裁判所の判事の待遇は、從來の同じような考えのもとに、他の官吏よりも低い俸給があてがわれることになつては、その人材を得るのに困難になりはしないかというふうに考えられるのであります。私どもこの點につきまして、地方裁判所の判事の一級、二級の配置を、十分にかんがえなければならないのではないかというふうに考えております。あるいは地方裁判所の判事は、一級官のみにした方がよろしいのではないかというようなことも考えられるのじやないかと思うのであります。政府委員のお考えを承りたい。
#71
○赤木政府委員 ただいまの御質問に對しまして、お答え申し上げます。ただいまもお話がございましたように、裁判所法のもとにおきましては、判事は二箇年間の司法修生を了えまして、さらに十箇年間判事車補、簡易裁判所の判事、檢察官等の仕事に従事しなければならぬので、結局十二箇年間を要するということになるという次第でございます。司法修生に採用された後十二箇年間、これを大體他の行政官などに比較しますと、大學卒業後行政廳にはいりまして、十二箇年間經つた場合には、大體において勅任、もしくは勅任に近い、現在で言う一級官、もしくはこれに近いところまで大體昇進するような統計になつております。從つて裁判所法におきましても、いやしくも判事と名のつく者は、全部いわゆる一級官待遇ということにいたしたいつもりで、實は豫算の請求もやつたのでありますが、地方裁判所の判事につきましては、所長の四十九人が一級待遇で、あとの八百九十四人は全部二級待遇ということになつて、私どもとしては、はなはだ遺憾に存じておる次第でございます。ただいまの御質問の御主旨は、まことにわれわれとしてもありがたいお話でございまして、この點については、今後とも何とかしてこれを實現さしたいと思つておりますので、何とぞお力添えをいただきたいと存じます。
#72
○安田委員 政府委員のただいまの御説明でよく事情がわかりました。委員會において何か考える余地もあろうかと思いますので、私の質問はこの程度で終ります。
#73
○荊木委員長代理 鍛冶君。
#74
○鍛冶委員 この法律六十四號の一部を改正するあとの方がわかりません。「第三條に次の一項を加える。」とあつて、これは裁判所法第五十七條第二項の但書の規定により一級とすることはわかりますが、そのうち専任一名、専任四名と書いてあるのはどういう意味ですか。
#75
○赤木政府委員 これは從來豫算上最高裁判所の事務局は、事務總長以外には、次長という制度が認められまして、これが一級ということになつておりまして、その他の事務官は、すべて二級ということになつておりましたのを、さらに三人殖やしまして、専任の一級官を四人に増加し、事務局の構成を充實したいという趣旨でございます。
#76
○荊木委員長 裁判所法四十二條にあります判事補とはいかなるものを指していわれるのですか。
#77
○鍛冶委員 裁判所法によりますと、判事の地位を非常に高くいたしまして、先ほど申し上げましたように、司法修生というものを終えまして十箇年判事補とか檢察官、簡易裁判所のはんじというものをしなければ、いわゆる判事というものになれないという制度にいたしたのでありますが、司法修生を終えて判事になるまでの期間、これは判事補ということにいたしまして、判事よりやや權限が狭い特殊な制度を認めたわけであります。司法修生というものを終えますと、判事ということになる。これを十箇年間やつて判事としての資格がつく、こういうことになるわけであります。判事補は判事と大體において同じなのですが、たとえば裁判長になることができないとか、一人で特別のものを除いて裁判をすることができないとかいつたような規定はございますが、その他においては大體判事と權限においては大した相違はございません。
#78
○鍛冶委員 簡易裁判所の判事というものは、現在いくらほど任命される豫定であつて、現にどれほど任命になつておりますか。
#79
○赤木政府委員 簡易裁判所の判事は、豫算上もまた定員に關する法律におきましても、六百四十五人ということになつておりまして、この六百四十五人は、能う限り速やかに全部任命したい趣旨だと、裁判所の方から伺つております。なお、現在までのところでは、この簡易裁判所の判事は、正式にはまだ任命されていないと聞いておりますが、これは直接司法省の關與するところではありませんので、正確なところはちよつと申し上げかねますが、まだ正式に任命されていないと聞いております。
#80
○鍛冶委員 どのくらい現に豫定している者があるかわかりませんか。また任命した者があるか。
#81
○赤木政府委員 六百四十五人全部任命すると聞いております。
#82
○鍛冶委員 現に何名ですか。
#83
○赤木政府委員 これは最高裁判所の發足が非常におくれたものですから、現在のところは、最近に至つて最高裁判所の長官の人選が内定したと聞いておりますが、さらにその他の判事、簡易裁判所の判事、こうまいりますると、正式にはまだ一人も任命されていないのであります。しかし大體候補者として内定しておるのは、相當數おると聞いておりますが、ただ從來はこれが全部二級官でありました關係で、適當な人材を得ることがむずかしくて、そこで實は今この法律案をお願いするようなことになつた次第なので、一級官でできるということになりますると、よほど選考の範圍が擴がりまして、簡易裁判所の判事の充實ということに、非常に役立つかとおもいます。
#84
○鍛冶委員 その點を聞きたいと思つたのですが、實際は最高裁判所に司法省が考えておられるほどの人間を得られないのでないか、その點を聽きたいのです。そして一級官にするところじやない、もつと上の人も採用しようと思つても、待遇が悪いために來ない實情があるのでありませんか。
#85
○赤木政府委員 ただいまちよつと申し上げましたように、從來は二級ばかりであつたので、選考の範圍が非常に狭いわけであります。簡易裁判所の判事の性質から見ましても、元判事をやつて停年になつた人とか、元辯護士をやつておつた人とか、大學の先生をやつておつて引退された方、そういつたような方に、二度目の勤めをお願いするというようなことも、非常に結構なことと思うのですが、そういう方に簡易裁判所の判事をお願いするといたしますと、まず地位とか俸給とかは、かりに後當人は問題にされないとしましても、どうも二級待遇というだけではお願いするのに非常に不便だ。それがために現在思うような人が、なかなか得られない實情にありますので、ただいま申し上げましたように、選考の範圍を一級にまで擴げよう、こういう法案をここに出した次第なのです。
#86
○鍛冶委員 御主旨はよくわかりましたが、なお聽きたいのは、ここに書いてある先ほど言つた判事補たるものも、簡易裁判所の判事として使うということを聞いております。その點はいかがでしようか。
#87
○赤木政府委員 裁判所法三十六条によりまして、「簡易裁判所において裁判事務の取扱上さし迫つた必要があるときは、その所在地を管轄する地方裁判所は、その管轄區域内の他の簡易裁判所の裁判官又は地方裁判所の判事に當該簡易裁判所の裁判官の職務を行わせることができる。」こういうことになつておりまして、現在は地方裁判所判事に、この簡易裁判所の職務の代行をさせておる實情だと聞いております。
#88
○鍛冶委員 私の聽かんとするところは、ちよつと違うのです。簡易裁判所の判事がなかなか得られないので、判事補をもつて簡易裁判所の判事にする、こういうことを聞いたから、その點がいかがでしようかと、私は聽いたのです。これは四十四條にあります。
#89
○赤木政府委員 簡易裁判所の判事の資格といたしましては、三年以上判事補をやつた者はその資格があります。從つて三年以上の者については適宜に判事にすることもできれば、あるいは簡易裁判所の方にまわすことも、もちろんできるわけです。從つていろいろな事情で判事補になる人もあれば、簡易裁判所の判事にまわる人も考えられます。しかし三年以下の者は特別任用による場合以外は、簡易裁判所の判事たる資格はございません。
#90
○鍛冶委員 そうしますと、そこで先ほど簡易裁判所の判事は待遇が悪いからと言われる點も大いに考えられるが、堂々たる資格をもつて出ていく簡易裁判所判事を得ようとするときに、判事補と同格のものである、判事補でもやれる、その判事になるのだ。こういうことになつたら、待遇以上に人がいやがりませんか。この點非常に不均衡を起こしやせぬかと思うのですが、どうお考えになりますか。
#91
○赤木政府委員 裁判所の階級から申しますと、簡易裁判所は地方裁判所の下級ということになります。その判事の資格におきましても、原則として簡易裁判所よりは地方裁判所の方が嚴格であるということになるのは、やむを得ないことと存じます。しかし簡易裁判所は、特殊な性格をもつておるので、ただいま申しましたように、判事補を三年以上やつた人というような若い人もおれば、あるいはすでに功なり名遂げて一旦隱退した人が、また出てくるということも考えられる。また裁判所法四十五條におきましては、資格にかかわらず、特別任命ができるような制度もございまして、簡易裁判所の判事の中には、いろいろな經歴の人がある、こういうことになるわけです。
#92
○鍛冶委員 これはわれわれが今初めて言うところではないので、簡易裁判所は地方裁判所の下級裁判所であるから、その資格は下なんだ、これはわれわれ區裁判所のときに言うた言葉なのですが、そのときは非常に悪い影響を來し、またその頭をかえてもらわなければならぬと思つたから、私は言うたのです。ただいま功なりな遂げた者は隱居することになると思うのですが、そうではないと思う。いかに簡易裁判所であろうとも、裁判官というものは、そういうものでないと思う。どこへ出しても押しも押されぬ者なるのでなければいかぬと思う。しかし今までは區裁判所は簡單だから下級の者がやるものだ、地方裁判所にはりつぱな者が行つて、今度高等裁判所、大審院に行けば勅任官でなければいかぬという考えが今までありました。これはいかぬと思う。またこういう考えをもつておつたらいい人は簡易裁判所には來ません。そういう點を私は申し上げるので、そういう考えをもつてやり、またそういう制度にしておかれるということは、今後裁判官任命という上において、また裁判事務の處理という上において、たいへん悪いことだと思いますが、やはり相變らず簡易裁判所は下級だから、安い裁判官をやるのだという思想があるのかどうですか。
#93
○赤木政府委員 先ほど申し上げましたのは、ただ制度上の上で簡易裁判所の上級に地方裁判所がある。從つてその點からだけ言えば、その任用資格は、簡易裁判所判事よりも地方裁判所の判事に厳格となるのはやむを得ないと申し上げただけで、決して簡易裁判所というものを輕んじておるわけではもちろんないわけであります。
#94
○鍛冶委員 私が申し上げたいのは、要するにそういう考えでは裁判官に容易に得られぬと言うことを考えているから申し上げるのでありますが、そこで聽きたいのは、われわれ多年法曹一元ということを主張してきたのだが、これは政府委員としてこの點は御贊成でありますか。
#95
○赤木政府委員 いわゆる法曹一元化ということは結構なことだと存じます。その意味のとり方にもよりましようけれども、趣旨においてはむろん贊成でございます。
#96
○鍛冶委員 意味のとり方と言いますが、われわれ法曹一元制度の主張をいたしますのは、司法官試補から上つてすぐ裁判官になるということでは、實際の裁判ができない。どうしても、一定の年限法律事務の實際に携わつて、法律を知ると同時に、世情に通じる。法律をしてほんとうの國民生活に一致施せしめる裁判をしなければならぬという主張であります。それに御贊成であるならば、第一番に考うべきことは、司法官試補というものと區別することは、その制度の根本に相反しておるのであります。從いまして、このたび司法官試補というものと一本にして、全部司法試補にするという制度に改められたことは、まことに結構だと思うのだが、その中から試補の修習期間が濟んだら、その中から裁判官をとる。昔いわば、いい者だけを裁判官にし、滓だけを辯護士にする。こういう制度になつております。これでは法曹一元というものをぶち壊しておる。根本精神に反しておる。少くとも今簡易裁判所や、裁判所の判事を得ようとするときには、何と言われたつて、辯護士から採用する以外にはありません。一遍にやろうとするときに、こういう差等をつけたものをつくられたのでは、これは得られぬと思うのですが、私はこんなときにあなたを捉まえて議論しようとは思わぬ。私は機會あるごとに言わなければならぬと思う。私は多年言つておる。この裁判所法案というものは、昨年法制審議會のときにはなかつたのです。これがこの會議にぽつんと出てきた。私ははなはだ腑におちない。この點はどうお考えになるか。その點を一つ伺いたい。
#97
○赤木政府委員 簡易裁判所の判事任命につきましては、ただいまお話の事情がございますので、このたびその選考の範圍を一級まで擴張できるということにしたいので、現在の法案を出した次第であります。なお判事たるものは、必ず弁護士の經驗がなければならない、こういう意味での法曹一元化、こういうことは事柄が重大な問題なので、ちよつとここで簡單にはお答えいたしかねますので、十分研究いたしました上、適當な機會に政府の考えを申し上げたいと存じます。
#98
○鍛冶委員 さらにお考えを願うならば、刑事局長に私は言つておいたが、特に考えていただきたいと思います。この簡易裁判所の判事を六百人からのものを採用する。また檢察官も私は同様だろうと思う。これも補給せんければならぬ。あまり急いでやるのでなかつたならば別ですが、急いで得ようとするならば、何としても在野法曹から得るより他はありません。ところが在野法曹から一遍にとつて、それを補給しないということになれば、司法官ばかりになつて、在野法曹はいないということになる。在野法曹からとろうというなら、少くとも在野法曹なるものを考えていかなければならぬ。それは司法試補を終えた者を一遍辯護士の中に入れて、要するに裁判官のグループをつくつておかなければならぬ。それからだんだんいい者をとる。それでなかつたら片ちんばになると思います。それをどうも裁判官には頭のよいものだけをする、頭の悪い者は辯護士にすると現に口に上つておつた。こんな状態では、判事補なんかなかなか拔けない。これではとうてい日本の司法の發達はしていかない。だからお考えを願うなら、この點根本的に間違いであるということを基礎にして考えてもらうということを附け加えて質問を終わります。
#99
○荊木委員長代理 他に質疑ありませんか。――大體質疑は盡きたようでありますが、先ほど安田委員の御質疑は御意見のように承りましたが、あらためて委員會に修正案として出るかも知れませんが……。
 本日はこの程度で散會いたします。次會は明後日午後一時半から開會いたします。
    午後三時十七分散會
ソース: 国立国会図書館
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