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#1
第033回国会 予算委員会 第8号
昭和三十四年十一月十三日(金曜日)
    午前十一時三十六分開議
 出席委員
   委員長 小川 半次君
   理事 上林山榮吉君 理事 北澤 直吉君
   理事 西村 直己君 理事 野田 卯一君
   理事 八木 一郎君 理事 井手 以誠君
   理事 今澄  勇君 理事 田中織之進君
   理事 佐々木良作君
      青木  正君    稻葉  修君
      内海 安吉君    江崎 真澄君
      岡本  茂君    川崎 秀二君
      久野 忠治君    佐々木盛雄君
      周東 英雄君    田中伊三次君
      床次 徳二君    松浦周太郎君
      水田三喜男君    山口六郎次君
      山崎  巖君  早稻田柳右エ門君
      淡谷 悠藏君    石村 英雄君
      岡  良一君    北山 愛郎君
      黒田 寿男君    島上善五郎君
      楯 兼次郎君    鈴木  一君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
        農 林 大 臣 福田 赳夫君
        通商産業大臣  池田 勇人君
        建 設 大 臣 村上  勇君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 益谷 秀次君
 出席政府委員
        調達庁長官   丸山  佶君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
 委員外の出席者
        通商産業事務官
        (公益事業局
        長)      小室 恒夫君
        専  門  員 岡林 清英君
    ―――――――――――――
十一月十二日
 委員佐藤觀次郎君及び高田富之君辞任につき、
 その補欠として河野密君及び岡田春夫君が議長
 の指名で委員に選任された。
     ――――◇―――――
本日の会議に付した案件
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)
 昭和三十四年度特別会計予算補正(特第1号)
 昭和三十四年度政府関係機関予算補正(機第1
 号)
     ――――◇―――――
#2
○小川委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第2号)、同特別会計予算補正(特第1号)、同政府関係機関予算補正(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。質疑を続行いたします。佐々木良作君。
#3
○佐々木(良)委員 私は社会クラブを代表いたしまして、本委員会におきまして、ほんとうは私どもが抱いておりますところの外交方針に対する政府の態度につきまして、さらにまた今度の予算の中心的な問題でありますところり災害問題についての基本的な考え方について、質問を展開いたしたい、こう思ったのでありますけれども、御承
 知のように、この委員会はすでに最終
 の段階に差しかかっておりますし、外
 交問題は外務委員会において、さらにまた災害関係の問題はすでに災害の特別委員会が開かれておりまして、この
 予算のあとを待ちかまえておる様子でもありますので、むしろ私は、時間の関係もありますから、これらはそれらのおのおのの委員会に譲りまして、この予算委員会におきましては、当然に論議されなければならない問題でありながら、今のような問題が中心になっておるがためにほとんど論議されておらないところの経済問題を中心に質疑を展開いたしたいと思います。特に最近におけるアメリカ経済の変調を中心としての世界経済の変化に対しまして、日本経済を担当せられるところの経済各閣僚の対処の方針並びに同じような意味で自由化問題が相当具体的な日程に上っておりつつありますが、これに対する政府の態度等を中心にして質疑を展開いたしたいと思います。
 ただその前に、純粋の問題で一つだけ大蔵大臣に聞いておきたいのでありますが、災害の激甚地指定のための基準の発表が本委員会におきまして昨日行われまして、これに対するいろいろな角度からの質疑は、先ほど言いましたように、わが党の代表も特別委員会において展開をいたしますから、たとえば高率適用地以外に実質的にしわが寄ってくる結果になるのではなかろうかとか、あるいはまた指定漏れの市町村の苦情処理についての方針はどうなっておるのであるかとか、あるいはさらに基本的に、きのう社会党の佐藤議員から提出されましたところの、今度の激甚地指定によりますと、ワクがずいぶんふえて参りますので、実質的に今度の補正予算のワクの中ではほとんど不可能と思われるのでありますけれども、それの措置をどう考えておられるのか等々につきましては、特別委員会における質疑に譲りたいと思いますが、ただ一つ私は予算委員会の立場でお伺いをいたしておきたいと思いますのは、今年度、三十四年度一般会計予算の決定の際に、予算総則の八条におきまして「国が昭和三十四年度において、財政法第十五条第二項の規定により災害復旧その他緊急の必要がある場合において債務を負担する行為をすることができる限度額を三十億円と定める。」災害復旧等国庫債務負担行為の限度額が三十億と定められまして、そしてこれは今申し上げましたように、この条文に明らかなように、災害復旧その他の緊急必要の場合の措置が一応ここに決定されておるわけでありますが、大蔵大臣は、今度の災害関係の予算を組まれるにあたって、あるいは災害関係に対処されるにあたりまして、このすでに決定されております八条の問題はどういうふうに扱っておられるのか、あるいは今後扱われるのか、方針を承りたい。
#4
○佐藤国務大臣 事務当局から説明いたさせます。
#5
○石原政府委員 財政法の規定に基づきまして、毎年予算総則におきまして、災害復旧その他予測し得なかった事態に対処いたしまするための国庫債務負担行為の規定が、佐々木委員がお示しのようにございます。これはあるいは国会が開かれない、あるいは補正予算が提出せられないというようなときのことを考えまして、予備費あるいはこれに見合いまする国庫債務負担行為として、毎年御承知のように予算総則をもちまして御議決をいただいておるわけであります。従いまして、今回のごとく臨時国会がございまして補正予算を提出いたしまするときには、おのおのそのときに応じました案件を提出いたしまして、御議決をいただくわけであります。そういうような機会がございませんときの手段として考えておるものでございますから、今回といたしましては、別途従来から御説明申し上げておりますように、国庫債務負担行為の具体的な事柄につきましての御議決を仰いでおりますので、一般的な、いわばほんとうの緊急事態、国会も間に合わない、あるいは補正予算もその機会がないというときに処しまするものとは別の方法で今回は御議決をいただきたいと存じます。
#6
○佐々木(良)委員 そうしますと、今度はこの八条は発動しない、つまり今年度はこの条項はもう流れる、こう見ればいいわけですか。
#7
○石原政府委員 おおむねさようのことに相なるかと思いますが、念のために申し上げますれば、これから年度末までに何事かあるかもしれないということがございますから、いわばそういうような緊急の用に役立たせるためのものでございますから、絶対にあり得ないということは申し上げられませんが、今回の災害につきましては、先ほど申し上げましたように予算並びに国庫債務負担行為というものをもっと具体的な形におきまして御提案を申し上げておるということでございます。
#8
○佐々木(良)委員 趣旨はわかりましたけれども、これは今お話がありましたように国庫債務の負担行為でありますから、本年度の歳入財源を予定しておるものではないわけであります。来年度あるいは来々年度の歳入を予定するものでありますから、御承知のように今度の災害補正の中では財源措置が非常に窮屈に考えられており、さらに今お話がありましたように、昨日発表されましたところの指定基準にいたしましても、私どもはそれを非常に不満には思っておりますが、その提示されたものだけから見ましても、今の予算のワク内では非常に困難かと思うわけであります。従いまして、私はこれは追及いたしませんけれども、これらも十分活用されて、いわゆる役人行政になって、実際は今のような激甚地基準を出したけれども、事実上着工できるものはおそらくそのような状態にはなるまい。言うなれば逆に着工をおくらせることによってごまかそうというような態度が政府官僚の中に見えないように、一つ十分御配慮をお願いいたしたいと思います。
 次に、先ほど申し上げましたような方針に従いまして、経済政策を中心にお伺いをいたしたいと思います。
 御承知のように日本経済の近況は、順調な生産の伸びと国際収支の好転という二つの柱にささえられまして、現在一見権衡を保持しつつ拡大の道をたどっておるようでありまして、経済界も異常な好況をもたらしておるようでありますから、その意味におきましては私は御同慶にたえないと思います。従いまして、私は、一応喜ばしいこの現象に対しまして、あえて水をさそうというものではありませんけれども、日本経済の底の浅さ、これは私どもしみじみと何回も痛感させられたことであります。同時にまた政府の経済政策のタイミングの悪さ、これは私どももたびたび指摘いたしておりまして、おそらく閣僚諸公もそのことは痛感されておるのではなかろうかと思います。これらの日本経済の底の浅さと、従来経済施策の政府のタイミングの悪さというものを私どもは骨身にしみて知っておりますがゆえに、この際特に政府に注意を喚起する意味におきまして、現在の経済現象の中で特別注意をしなければならぬと思われるような問題を二、三とらえて政府の所信を伺いたい、こう思うわけであります。
 現在の好況、すなわち数量景気と称せられておりますものをささえておりますものは、今申し上げましたように、国内物価の安定ということと、それから国際収支の好転というこの二つの柱でありますから、この二つの柱の健全性をまず吟味いたしたいと思います。
 まず現下の国際収支の好転から見ていきたいと思いますけれども、世界経済繁栄の反射のような形で日本経済は今潤っておるわけでありますが、この世界経済の動きの中に、私は最も注目して見なければならぬ問題あるいは現象が二つあると思います。その一つは、言うまでもなく自由化の方向でありまして、その自由化の方向は、またブロック化の傾向とともに問題を提示しつつあるわけでありますから、この世界経済の動きの中におきまして、現在進みつつありますところの自由化の傾向と、それと関連して起こりつつありますところのブロック化の傾向は注目しなければならぬ現象であると思います。さらにもう一つの問題は、先ほど申し上げましたアメリカ経済の変調、言葉をかえればあるいはドルの危機ということになるかもしれませんが、このアメリカ経済の変調というものは、それはそのまま世界経済へ、さらにまた日本経済への影響は非常に重大でありますので、この二つの問題は、目下一番大切な問題として私どもが注目しなければならない現象だと思います。むしろさかさまの見方からすると、変調アメリカ経済と、それから立ち直りを始めておるところの西欧経済、この二つが一緒になって、立ちおくれの状態にある日本経済に対して、両方が一緒になって圧力をかけ始めておるというのが、私は、現在の世界経済の中でわが日本経済を何とかうまく間違えないように連れていこうとする場合に見なければならぬ中心点かと思います。従って、この二つの圧力に対して、大蔵大臣並びに他の経済閣僚は、どういう方針で現在日本経済を持っていこうとしておるのかというここが、私どもの一番気になるところでありますので、これからまず質問を展開いたします。
 アメリカ経済の逆調、変調というのは、言葉をかえればドルの危機という問題になろうかと思いますが、佐藤さんは御承知のように、ちょうど一年前、私は、ちょうど昨年の今ごろの臨時国会におきまして、明らかにこの問題を提示しまして、アメリカの金流出が今世界経済に与えつつある影響が非常に大きい。これに対しまして大蔵大臣はさっぱり注意を払っておられぬようだし、それから当時三木経済企画庁長官も、少し金の値段が上がりそうだから外国は買い占めておるのではなかろうかと思いますというようなことでお茶を濁しておられたわけでありますが、これらを私は強くその危険性を指摘いたしまして、当時佐藤大蔵大臣にも注意を喚起したはずです。特に当時の立場から、日本政府のドルに対する盲信に対して反省を求め、常識的な日本の金準備を進められることが必要でないかということを申し上げたわけでありますが、御承知のような形で、昨年の暮れからことしの春にかけて、ある程度政府は金の準備もされたようでありますが、昨年の私の警告から現在の状態に至りますまで、なおこの状態はますます深刻化して参っておりますことは大蔵大臣も御承知だろうと思います。外電の伝えるところによりますと、昨年はアメリカの国際収支は大体三十五億ドル見当の赤字しかなかったものが、本年度は四十億ドルとかあるいは四十五億ドルとかあるいは五十億ドルを越すのではなかろうかというような見方がされており、これに関しましていろいろな検討が開始されておるようであります。御承知のピックという人の警告も出ておりまして、彼の警告によりますと相当神経を使っておられるようであります。国際収支の今年度の赤字見通しが四、五十億に対して、アメリカの金保有高は、十月末では百九十五億ドルと非常に減少いたして参りまして、二百億ドルを割ってきたわけでありますが、この二百億ドルを割ってきた金の保有高に対しまして、今のピック警告は、御承知のようにこれはアメリカの金と交換し得る外国政府のドル資産百二十億見当があるし、それから外国の民間短期投資分が六十億ぐらいはあるし、合わせると百八十億くらいになる。さらにまた、アメリカの中の流通銀行券の二五%程度は金の裏づけをするという意味での金の必要が八十億くらいはある。合わせると二百六十億くらいになりますから、アメリカは理論上すでに七十五億ドルの不足をしておるのだというような観点に立って、そうしてもしアメリカの金がさらに十億ドルないし十五億ドルも流出するようなことになれば、実質上金恐慌が訪れるかもしれない。このためアメリカが金の売却禁止を宣言しなければならぬようなことになれば、それこそ通貨の地震が資本主義世界をゆすぶるだろうというように警告いたしまして、アメリカ経済に対して思い切ったデフレ政策か、あるいはドルの切り下げか、いずれかの方法を選ばなければならぬだろうということを警告いたしております。同じような観点に立ちまして日本の三井銀行の社長の佐藤さんが、最近論文を出しておられるのを佐藤大蔵大臣も読んでおられるのではなかろうかと私は思います。これらのアメリカ経済の変調に対しまして、特にアメリカの金流出のとどまらぬ状態に対して、もう一つひっくり返して言いますと、アメリカの国際収支がますます変調を来たしつつある現象に対しまして、佐藤さんはどういう観点からこの問題を見ておられるか、まず大蔵大臣のこの現象に対する所見を伺いたいと思います。
#9
○佐藤国務大臣 国際経済が非常に拡大傾向にある、そうしてその拡大傾向にある中で、一つはアメリカ経済の変調、もう一つは一面貿易の自由化が行なわれ、同時にブロック化の危険があるのではないか、この点は、世界経済が発展はしながらも、こういうものを内部に包蔵しておるのではないかというこの御意見につきましては、私も同様の点を指摘するものでございます。今回のIMFや世銀の総会等におきまして、私自身も自由化の方向はけっこうだが、同時にブロック化のおそれはないかということを実は発言し、指摘したものであります。またアメリカ自身の経済が変調だと申しますか、最近の国際収支の面でアンバランスの状態を現出しつつあるではないかという点、これは各国とも注目を引いておる点であります。
    〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕
 この総会におけるアメリカ財務長官アンダーソンの演説のうちにもございましたが、通常国際収支の面においては、アメリカ自身は、三十億ドル前後の黒字だ、しかしながら海外軍事援助の金額が大体三十億ドル程度、さらにまたアメリカの資本投資、これが二十億ドル程度、あるいはまた経済援助費が二十五億ドルにも上る、従って、その観点から見ると四十五億ドル程度の赤字になる、こういう言い方をいたしております。しかしその四十五億ドルというものが、国際収支の面においてドル流出の現像を起こしておる、こういう事態には変わりはございませんが、いわゆる国際収支の面における赤字と申しましても、ただいま申し上げるような観点に立っての赤字現象でございまして、この点では、この見方についての弁護も行ない得るのではないかと実は思います。
 かような、原因はどうあろうとも、ともかくドルは流出するのだ、その意味において、アメリカの金自身が非常な苦しい状態になってくるのではないか、こういうことを自分は指摘しているのだ、こういうのが佐々木さんの御意見だと思いますが、その観点に立ってみまして、こういうような状態が長続きするかどうか、これはおそらく欧州の経済そのものが競争力を持ってきた今日――特別な対外援助を、アメリカ自身が対外援助の方針に変更を来たさない限り、欧州の経済力が競争力を持った今日でございますから、なかなか簡単には変わらぬだろうと思いますが、アメリカ自身も、かような状態が長続きするとなると、その国際的観点に立っての在来からとっておる海外経済援助であるとか、あるいは海外に対する資金の投資なり、こういうことについて、アメリカの立場に立っての考え方が生まれてくるかと思います。しかし、ただいままでのところはさような措置をとらないで、従前同様の対外経済援助あるいはむしろ積極的に海外投資をアメリカ自身が進めておるということでございまして、この観点に立って世界経済を拡大さし、膨張さしていく、こういうことを申しておるのでございます。この点は、私はもちろん等閑視するわけには参りませんが、今後の動向等を見ました場合に、これが国際経済に非常に重大な影響を及ぼすものだ、かように断定することは早計ではないかと思います。
 またこの金の流出という観点に立ちまして、この金の価格が現在のままで維持できるかどうかということが、今回私が出席しました国際通貨基金でも問題になったところでございまして、金の価格を現在の状態を堅持するということを声明いたしておりますし、また国内におきましては、アメリカ自身は公定歩合の引き上げを行ない、経済の安定に積極的に努力を払っております。こういう点で、私は御指摘になるような点を特に軽視はいたしませんが、また留意はいたしますが、もう今日からこういう危険があるのだと断定することは不適当ではないか、かように私自身は考えております。
#10
○佐々木(良)委員 日本の経済大臣だけではありませんが、大臣というのは寿命が短いものですから、佐藤さんも非常に私は簡単な返事をされると思います。今、佐藤さんが言われたような、そういう甘い見方で世界経済を見ておるのは、おそらく各国の経済大臣のうちで日本の佐藤大蔵大臣くらいではなかろうかと私は思うわけです。あなたの一番関係の深いように見える銀行当局でも、やはり金の価格問題というものは不可避ではなかろうかという見方をしておりますし、それから現実にアメリカのドル不足というものは、軍事援助とか今言われたようなことが原因ではない。この基本的なドル不足の問題は、むしろアメリカ経済、アメリカの貿易が、輸出の伸びがとまるというところにあるわけでありまして、それはいろいろアメリカの国際政治上の立場もありましょうが、その原因にはやはりアメリカの商品の物価高、従って、またコスト高というところに原因があるわけでありまして、私はその辺は非常に深刻だと思います。そして同時にまた伝えられるところによりますと、一九六一会計年度の予算を審議する過程において、大統領の対外援助要請額を大幅に削減をしようかという動きが、御承知のようにアンダーソン財務長官のもとで作業も行われておるというふうに聞いておりますし、それからこれはあとでこの問題に触れますけれども、今度の東京のガット総会においてジロンが中心になって発言をしたあの動きは、現実にアメリカの貿易の収支を改善しようとする努力が非常に具体的に目に見えてきつつあると思います。このアメリカの代表の貿易の収支じりをよくしようとする動きと、それから海外援助に対する一つの考え方の転換とを、現在のアメリカ経済の変調とにらみ合わして、もう少し佐藤さん深刻に考えてもらわないと、私はどうも安心ならぬ気がいたしますが、そうしますと佐藤さんはあれですか、たとえば今度の六一年度の海外援助の方針についても、それからそれが特別にすぐ日本に影響を受ける危険性を持っておる特需についても、それから今の貿易の問題についても大して心配されておらぬのですか。
#11
○佐藤国務大臣 先ほど申しましたように、いろいろ問題のあることは私もちゃんと認め、これに対する対策は考えなければなりません。ただいま御指摘になりますように、私がアメリカに参りまして、商務長官に会い、あるいはアンダーソンに会いました際にも、アメリカの貿易収支をもっとアメリカに有利にしたい、この考え方がアメリカ政府にあることはよくわかります。そういう観点に立ってのいろいろな施策、具体的な貿易あるいは為替の自由化等についての要望のあることもよくわかります。これはもちろんそれを無視するものではございません。それから同時に、対外経済援助その他の点について、国内においてただいま佐々木さんが御指摘になりましたように、このままやっていけぬじゃないかという議論のあることも承知いたしておりますが、総体の動きといたしましての考え方は、こういうような事態に対して国内経済を立て直すこと、また金融等の面で特別な措置をとること、これによってこの危機を克服していきたい、在来のいわゆる対外政策にあまり変更を加えないでいきたいという努力も、同時に見のがすことができないということを私は実は指摘をいたすのであります。強く要望しておりますことは、為替貿易の方向においての自由化、これはIMFにしても、また世銀にいたしましても、その基本的方針は堅持しておるのだから、その方針は貫きたい、従って、このガットの総会等におきましても、そう露骨な話は出ておりませんが、日本経済のあり方についても、ぜひともこの自由化の方向で、世界経済の拡大の方向に協力してくれということは強く要望しておる。これはひとりアメリカばかりではございません。各国とも、その考え方で終始しておる、かように私は見て帰ったのでございます。
 ただいま御指摘になります金の問題等につきましても、ただいまの金の値段を変えるということは非常に重要な問題でございますが、一部においてあるいは金産地等において、金の価格を変えたいという動きのあることも見のがせない問題であります。これはひとりアメリカの国際収支の観点に立っての言い分ではなくて、金産国自身の立場からの強い要望だ、かように看取できるのでございますが、それにいたしましても、IMFにおける米財務長官の発言は、アメリカとしては金の価格を堅持したい、これはまた堅持する、アメリカ自身でこれを変更することはしないということを実ははっきり申しておるのであります。
 また先ほど申しましたように、通常の貿易じりにおきましても、三十億ドルの黒字を現出しておる。しかしながら軍事援助なり、あるいは経済援助なり、または資金の海外投資なり、そういうことで四十五億ドルの赤字が出ておるというこの数字も、アンダーソン自身が総会において発言いたしたところでございます。その点を御披露いたしまして、私どもは十分注視をする必要はございますが、直ちにこれをもちまして経済がこういう方向へ行く、金の値段は必ず変わる、あるいはアメリカ自身が対外援助についても大幅な縮減をし、そうして海外援助、いわゆる世界経済の発展というものに対して従来示して参りました積極的な意欲をこの際に非常に後退させ、大変更を来たす、かようには私どもは考えたくないし、また考えるような状況ではない、かようなことを実は申しておる次第であります。
#12
○佐々木(良)委員 自由化問題と関連をいたしますから、従って貿易問題はあとに残しますけれども、今のお話に基づきまして、それでは具体的に一、二だけ伺って先にいきたいと思います。
 大蔵大臣の見通しでは、今のような動きは、御承知のように現在国際収支の黒字、大体今年度二億ドル見当と見ておられると思いますけれども、それに対しまして、事実あらゆる意味の特需を含みまして――あらゆる意味の特需は少くとも四、五億はあると思いますけれども、これに対する影響はなしとごらんになりますか。
#13
○佐藤国務大臣 本年度の状況におきましては、私は特に大きな変化があるとは考えたくないのであります。
#14
○佐々木(良)委員 来年度に対してはいかがですか。
#15
○佐藤国務大臣 来年度の問題については、これはおそらくアメリカ自身におきましても、アメリカの国会におきましていろいろな審議が行なわれるに違いないと思います。また一般的な情勢の変化等もございましょう。そういう意味でいろいろの変化が出てくるだろう、しかしこれはアメリカの会計年度が御承知のように六月一ぱいまでございますから、その間にもう少し明確な状態になるだろう。そこで私どもは、日本の貿易そのものは今の状態をぜひとも持続させたい、今日の経済発展の傾向を維持したい、かように考えておりますので、アメリカ自身の政策の変更がありましても、私どもは、特需の面ではどういう影響を受けるか、これは別といたしましても、国際収支の面におきましてはわが国経済を伸展さしていくように、この機会に基本的な自由化の方向を示すと同時に、在来にもましての経済の体質改善、十分の競争力を養うように、この際に政府もその施策を中心に推し進めますが、同時に財界の積極的協力も心から望んでおる次第であります。
#16
○佐々木(良)委員 国際収支の中の特に貿易問題につきましては、先ほど言いましたようにあとに触れたいと思います。今私が問題にしておるのは特需でありまして、今のお話は、特需の問題は特需の問題として、貿易じりで国際収支を黒字に持っていくようにいたしたい、こういうお考えのようでありますが、今私の聞いておるのは、こういうアメリカ経済の変調が特需に及ぼす影響はどうかと聞いておるわけです。そうしてもう一つ伺いますが、現在の国際収支の見通し、黒字の中で、特需はどれくらい内容を持っておりますか、そのウェートとの関連において御説明を願いたい。
#17
○佐藤国務大臣 ことしの特需は四億五千万ドルでございますが、私は今日までのところ、この関係が特に変わるというような材料はつかんでおりません。
#18
○佐々木(良)委員 ですから先ほど大蔵大臣が指摘されたように、貿易じりで発展をしたい、こう考えられましても、国際収支の黒字全部が二億ドル程度の中で、特需の関係が四億五千万ドルもあるのですよ。従いまして、私はまず第一に、貿易の問題の先に、こういう問題が起きれば一番先に大蔵大臣がお取り上げになってお考えにならなければならぬものは、すぐに特需にどう影響が出てくるかという問題だろうと思うのです。私はこの特需の中で、御承知のような米軍が直接使う米軍消費の部分と、それから国際協力局関係の資金に当たる部分があると思いますけれども、この二つについて六一年度のアメリカの現在アンダーソンのところで作業されつつある予算見通しとの関連で全然考えておられないのか、少しはどういう格好に影響がくるかというふうに考えながら今検討を進められておるのか、この見通しを聞きたいのです。
#19
○佐藤国務大臣 本年が四億五千万ドルであることは先ほど申しましたが、大体三十五年度もその前後の金額だ、かように私どもは想定をいたしております。
#20
○佐々木(良)委員 その四億五千万ドル、来年度もそうだというのは、そうするとアメリカ経済の現在の変調はこの特需には関係なしという御判断ですか。特別に国際協力局関係の資金にも、それから米軍の直接消費に当たる部分にも関係なし、こういう判断ですか。
#21
○佐藤国務大臣 今四億五千万ドル同額あるいはそれ以上とは申しませんが、大体その程度で、これは一千万ドル程度減るとかいうようなことはありましても、大体四億五千万ドル程度は期待できるというように考えております。
#22
○佐々木(良)委員 これは水かけ論になりますからやめましょう。ただし現在のアメリカ経済が直面しておるところの苦悩が、それはそのまま今のアンダーソン財務長官の作業の中でも相当な色を示しつつあるわけでありますので、私は十分考慮されんことを、この次の通常国会における予算委員会にもう一ぺん取り上げますから、御承知願いたいと思います。
 それから具体的に聞きますけれども、この間アメリカに行かれましたときに、ガリオア、イロアの資金の返済問題が何か問題に上がったように聞いておりますけれども、私はこの動きもまた今のアメリカ経済の変調と関係なしとしない、こう見ておるわけでありますが、どういうことになっておりますか、お伺いしたいと思います。
#23
○佐藤国務大臣 ガリオア、イロアの問題ですが、せんだって私アメリカに参りました際に、行きます前、特に米政府から、大蔵大臣が来るのだったら、ガリオア、イロアについての処置の問題について日本側政府の考え方を明確に一つ話をしてもらいたい、こういうことがございました。これは事実でございます。このガリオア、イロアの問題につきましては、過去吉田内閣以来、毎回実はこれが問題になっておりまして、国内におきましても、国会においてしばしば政府の基本的な考え方についてのお尋ねを伺って参っております。たえず政府が申しておりますのは、これは政府としては債務と心得る、かような考え方をいつも表明して参りました。いわゆる債務、債務自身だ、こういう厳格な意味のことは申してはおりませんが、債務と心得るという表現をして参っております。私、昨年大蔵大臣になりました当初、米側からこの問題についての処理方を勧められたのでございます。しかし当時の情勢のもとにおきまして、日本政府といたしましては、なお経済力等から見まして今日その問題を取り上げることは不適当だというような観点で、今日まで遷延して参ったのでございます。おそらく私の前任者であられる幾人もの大蔵大臣もこの問題についてはアメリカ側から処置をいろいろ要望されてこられたに違いないと思います。
    〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
ことに西独関係についての経済援助物資の跡始末がつきましてから後は、ひとり日本だけが残っておるという意味もありまして、米側は非常に強く要望しておる、かように私どもは看取いたして参ったのであります。
 そこで私どもも日本政府が数次にわたって申しておりますように、債務と心得ておるもの、これをいつまでもこのままにしておくわけにはいかないこと、これは私どもの考えのうちにございますが、それにいたしましても、経済援助の金額が一体幾らであるか、ガリオア、イロアの総額は一体幾らであるか、これはなかなかつかみにくいものでございます。御承知のように、占領中において経済援助として提供したものもございましょうし、その後において、やや事態が変わってから後に出してきたものもございます。そういうわけでなかなか基本的な数量をつかむことは困難な今の状況にもなっております。従いまして、この問題の処理をいたすにいたしましても、基本的に数量を確かめることが第一の問題だ。これを確かめる作業を一つ続けてするというこの点が一つのポイントになるわけであります。過去おきまして、新聞等にも一部報道いたしておりますが、あるいはアメリカ側では幾らを提示した、日本側においては幾らを提示したというようなことがいわれておりますけれども、これはいずれも公式な問題では実はないのでありまして、この問題を取り上げるとなりますならば、やはり基本的な数字、金額から確認していく、そういう段階に進まなければならない、かように実は考えますので、その点を十分話し合って参りまして、もちろん一回の会談でこれがきまるわけのものではございません。今後その金額の決定をすることをいつの日かに取り上げなければならない、実はかように考えておりますが、まだ具体的にそれは進んでおりません。ただ私ども参りました際に、債務と心得ておるのであるからわれわれもいつまでもこれを返さない考え方ではいけない、しかし返すについてはいろいろその金額を決定するとか、あるいは弁済の方法等について、あるいはまた日本が弁済した後のそのものの使い方等についても、これは返したものだから当方で何も言うことはないようだが、われわれの希望だけは十分聞いてもらいたいという程度の話をいたしまして、帰っておるのが現状でございます。
#24
○佐々木(良)委員 わかりかねるわけでありますが、アメリカに行かれましたときの話の内容とあなたの受けられた印象から、この問題はいつごろの日程に具体的に上がってきそうな判断をされましたか。われわれの日本経済の中で、あるいは大蔵大臣として、あなたはいつごろ日本経済のどういう段階でこの問題を現実に考えればいいか、つまりいつごろの日程に上がってくるかというふうな、時期の問題をどう考えましたか。
#25
○佐藤国務大臣 出かけます前は、できればできるだけ早くという気持が、正直に申してございます。しかし私ども参りますうちに伊勢湾台風が起こり、大へんな損害でもございますし、こういう際に債務を返すといって、私ども予算を作ることについて非常に困難性がある。この点はアンダーソンに会いました際も、自分が渡米前の状況と渡米後の状況で非常な重大な変化があるのは伊勢湾台風だということを十分実は説明いたしてございます。今日のところその時期そのものについては、私ただいまはっきり申し上げる段階になっておりませんが、私どもといたしまして災害対策、これに十分力をいたし、ことに来年度予算編成の大きな柱に、治山治水対策あるいは災害対策というものがなっておる。こういう際でございますから、来年度予算に直ちにこの返済の数字が出てくるということは、ただいまの状況では私自身は考えておりません。ただ問題は、かように申しましたからといって、債務と心得ておるものについてこれを処理する方法の努力を怠るという意味ではございません。またアメリカ側自身もおそらく当方のただいま申すような債務と心得るについての十分の処理方法、この基本的な考え方を決定することは大事なことであり、今の時期的な問題についてアメリカ側が特に非常に急ぐということには、私は必らずしも今回の訪米では受け取らなかったのでございます。しかしながら債務と心得る以上、いつまでも具体的に問題を進めないでおくことは、これは両国の関係から見まして望ましいことではない、かように考えております。問題は予算にそういうものが計上されるかどうかというポイントであろうと思いますが、今日の状況では来年度の予算にこれが顔を出してくるとは実は考えておりません。
#26
○佐々木(良)委員 この問題は政治的な問題でありますと同時に、深刻な経済的な問題でもあろうかと思います。政治問題として本来私ども日本人が受けておりましたこれまでの印象は、たびたび問題に出ておりましたように、これはおそらくアメリカの意図ではなくて、当時の日本側の政府なりあるいは役人なりの意図かもしれませんけれども、実際に日本の国民にはずいぶんこれは恩着せがましい感じでほんとうは印象つけられておる。今は明確に債務と心得ておるのだから返さなければならぬという今度は明確に義務の方を主張される、この辺に、ほんとうをいいますと、国民感情はすらりと受け取れない何か奇妙なものを感ずるわけであります。従いまして、この問題の処理にはそういう国民感情のあることを十分考えられながら対処されたいと思います。それから同時に経済問題としてこれをとらえました場合に、現在のアメリカのドル危機の問題と関連して参りますと、私は相当強く具体的な要望がアメリカからくるのではなかろうかという心配をいたしておるわけでありますが、もしそういう状態になってくる場合に、これの日本の経済が受ける影響は甚大でありますから、十分一つ配慮されますように希望を申し上げまして、次の問題に移りたいと思います。
 この米ドル危機の問題の最後に、御承知のようにこの春日本の金準備につきまして、ある程度準備を進められたわけでありますが、その後大蔵大臣はこの日本の金準備について考慮されるつもりはございませんか。結論だけ一つ伺っておきます。
#27
○佐藤国務大臣 絶えず考慮いたしておりますが、なかなか金自身買うにいたしましても、まだ国際価格――金の価格をアメリカが維持するということ、先ほど申しましたように、今のところではアメリカが一番安く買えるようです。そういう関係もありまして、金を買うにいたしましても、私ども経済的に十分考えて処置して参るつもりであります。
#28
○佐々木(良)委員 昨年来私は主張し続けておりますように、日本だけの問題ではなくて、私は常識的な準備を進めてもらいたい。西欧各国並びにアジア各国と比べましてあまりに低い日本の金準備というものは、これがアメリカヘの政治的従属あるいはアメリカ依存の政治的な感じ方と混同されやすいわけであります。私ども邪推すると、それをすぐ一緒にして皆さんに問題を提示したいような気持にさえなるのであります。たびたびそのことは私は申し上げておると思う。従いまして、政治的な問題とも関連がありますから、少なくとも自主独立外交だとかなんとか言われます限り、西欧諸国並みにいけないとしても、アジア諸国の常識を出るくらいな形の金準備は、早急に進められるように私は希望いたしておきたいと思います。それから問題を次の経済自由化の問題に移したいと思いますが、先ほど申し上げましたように、現在繁栄をきわめておるように見える日本経済は、その背景が世界経済の動きであり、しかもその世界経済の中にやはり非常に注目すべき現象として、アメリカ経済の変調と、そうしてもう一つは今の世界的な自由化の傾向だと思います。従いまして、この自由化の傾向というものに対しては、すでに昨年来経済の有識者並びにこの議会の中におきましても、政府に対しまして、根本的な考え方が強く立てられるように従来とも述べられておったと思います。それにもかかわらず、実際の状態は、いうならば通産当局官僚並びに大蔵当局官僚の中で、貿易技術の問題あるいは為替管理技術の問題として検討されておったようでありますが、根本的に内閣として総合的な判断、総合的な政策を立てて、そしてそれを順次にどういうふうな段階で実施していくかということについてはまことに私は遺憾の意を表せざるを得ない状態であったと思います。しかもその結果が、御承知のような今度の東京のガット総会において、明確にわが日本の自由化に対する態度の不鮮明な点、それが追及をされたような形で、ガット総会も日本にとりまして所期の目的を達成しそうにもない、楽観できない状態であると思うわけでありますが、この自由化の問題に対しましての政府の基本的な方針を大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思います。関連をいたしまして、今度は物の面についての自由化の問題について基本的な考え方を通産大臣から承りたいと思います。
#29
○佐藤国務大臣 御指摘になりますように、ただいま世界経済拡大方向は、各国とも為替貿易の自由化というこの大道に立っての世界経済の拡大ということにお互いに協力するという考え方に立っておるわけであります。わが国もその基本的な考え方に反対するものではございません。その考え方に協力を惜しまないものでございます。
 そこで今日まで自由化がなぜおくれていたか、これは申すまでもなく、過去におきましての国際収支の問題でございます。わが国の国際収支の面において相当心配があったというので今日までなかなか自由化が具体化しておらなかった。しかしながらもうすでに外貨準備も十二億五千万ドルをこすというような今日になって参りますと、国際収支の面からこの自由化をはばむという大きな問題は実はなくなっております。ことにまたわが国経済の発展から見ましても、貿易を拡大すること自身がとりもなおさず日本経済の膨張であるということを考えます場合に、わが国もやはりみずからができることでありますならば自由化の方向に踏み切り、その自由化の線において各国の協力を得ること、これが同時にわが国経済の特質からも望ましい点でございます。
 かような点を考えて参りますならば、わが国といたしましては在来から理論的に賛成ができ、また経済の本質から申しましても、自由化の方向に踏み切るべきわが国経済の特質、さらにまた今までこれをはばんでいた国際収支の面も改善されたということになって参りますと、これについてその方向へ踏み切る、今その時期がきておる、かように私ども考えます。しかしながらこの自由化に踏み切りました場合に、国内経済において幾多の影響のあること、これは見のがすことができません。御承知のようにわが国におきましても国内産業育成の立場に立って幾つもの保護政策をとって参っております。この保護政策をとっております産業自体が自由化の後にどういう影響を受けるかということは当然考えていかなければなりません。たとえば農産物資等についてはその点が非常に大きく私どもが考慮すべき点だと思います。あるいはまた業界そのものが自由化の結果非常な過当競争になる、こういうような危険、これは当然避けて参らなければなりません。まだその他にもあると思いますが、そういうような二、三の点についての考慮を十分払いまして、そして自由化の方向に進むべきではないか、かように実は考えております。
 ただここで問題になりますのは、準備ができた後に自由化を実現をするのか、自由化をしてそして準備を進めるのか、こういうような点でその前後の問題でいろいろ議論もあるだろうと思います。これは技術的な問題になって参りますが、同時にやはり基本的な方針を明確にしておくこと、そして業界のたよるべき線を明示することが必要ではないかと思います。過去におきまして、私がアメリカに参ります前に二、二とった処置もございますし、また帰ってから後も通産大臣等しばしば新聞等にも発表いたしておられますように、今後の行き方等についてははっきり明示されておるものもあるのであります。ところで期間的な問題といたしまして、やはり各種国内産業に及ぼす影響等を考えます場合に、自由化の方向に踏み切ったからといって直ちに自由化の処置が全部にとられるわけのものでもありません。特に国会において準備をすべき事項等もございます。私どもはできるだけ早目に準備を完了いたしまして、そして順次これを拡大していく。これはひとり原材料ばかりでなく、製品についてもそういう考え方てあります。
 ところで今一番問題になりますのは、為替管理の面でドル地域について特別な差別待遇をとっておる品種が十品目ございます。このものがまず第一に解除されることが基本的な問題でございましょうし、さらに全般的な品目等についてもA・A制の拡大等があるだろうと思います。これらの点につきましては、それぞれ所管省の方の御意見をお聞き取りいただきたいと思います。
#30
○池田国務大臣 為替貿易の自由化は私年来の主張でございまして、今後随時できるだけ早い機会に準備を整えまして実行していくつもりであります。
#31
○佐々木(良)委員 農林大臣のこの問題に対する所見を伺いたいと思います。
#32
○福田国務大臣 私もただいま大蔵大臣が述べられた基本方針には賛成でございます。さような意味をもちまして、私の所管する物資についても逐次その方針に準じて準備を整えていきたい、かように考えておるわけでございます。ただいま大蔵大臣が述べられました対ドル差別待遇の十品目の中には、農林関係の物資が六品目あるのです。ラワン材、マニラ麻、牛脂、ラード、牛皮、大豆かようなものであります。ただいま申し述べましたような方針で一月早々からラワン材については差別の撤廃をいたしたい、かように考えています。またマニラ麻につきましても、おそくも三月までには撤廃を行ないたい。続いて牛脂、ラード、牛皮、かようなものの撤廃をいたしたい。最も問題になりますのは、大豆でございますが、大豆については国内生産者並びに菜種の生産者、また搾油業者、あるいは中小企業の豆腐、油揚げなどの製造業者、さようなものに与える各種複雑な影響があります。かようなものの調整方法につきましてただいま検討中であります。
#33
○佐々木(良)委員 この為替貿易の自由化の問題は言葉の上では、まさに大蔵大臣が触れられましたように、部分的な問題でなしに基本的な日本経済の問題であります。従いまして、私はその対策も当然に総合的に進められなければならぬ、こう思っておるわけでありますが、現在までの様子を見ておりますと、事実私が最も心配するような意味での自由化に対する対策、準備は進められておらないように思います。大蔵大臣は先ほど準備が整った後に自由化をする方がいいか、あるいはそれを並行的にやるかというお話がありましたが、大蔵大臣、どうですか、今進められておるのは、逆に大蔵省と通産省の事務技術上の手順だけではないですか。たとえば三十四年度の予算編成の方針の中で、通産行政に対して、あるいは農林行政に対して、今の自由化の風に当たってもいいような体質改善への対策が相当含まれておりましたか、大蔵大臣の感じを承りたい。
#34
○佐藤国務大臣 三十四年度予算そのもので体質改善等についてのいろいろの予算は項目としてもあげ、相当の金額を計上いたしております。この点では私はそれぞれ自立、同時にまた競争力等を養うことに順次力をかしておる、かように考えております。しかして今後の問題になりますのは、ただいま農林大臣のお話にもございましたが、農林物資等について、特定の価格支持政策により農産物価格を維持し、農家収入を維持する、こういうものと外国農産物との競争という観点になりますと、従来の方針について私どももこれを急速に変更するわけには参らない点もあると思います。場合によりましたら、関税という問題ももちろん浮かんでくると思います。かような問題になりますれば、国内の法制的な手続を必要とするということにも実はなるのであります。問題は、そういうことをいたしましても、やはり産業自身が合理化されないと、その為替の面における特別な差別待遇が直ちに関税で変わるというだけでも、いわゆる自由化のうまみというものは出てこない、かように考えますので、これらの点について十分慎重に審議をし、十分意見を調整していく必要があるのではないかと考えておる次第であります。
#35
○佐々木(良)委員 お三人とも大蔵省の秀才でありますから、私の聞こうとしておるポイントはおそらく十分御承知のことだと思います。にもかかわらず本格的な答弁がないのは、ほんとうは内閣に政策がないのではなかろうか。今のようなお話でありますならば、当然に三十四年度の予算の編成の際に、この自由化に対するところの大方針を掲げられて、その方針に従っての手順日程をきめられて、それに対する対策がおのおの各省においてなされなければならなかったと思います。ところが現実には今のところほとんどそれはなされておらぬ。御承知のように大蔵省関係の仕事というのは、上下〇・五%程度のドル相場の拡大をやった程度のものでありまして、別に本質的な問題には掘り下げられておりませんし、通産省関係にいたしましても――これはまたあとで聞こうと思いますが、たとえば中小企業の問題につきましても、あるいは繊維工業の問題にいたしましても、自由化を前提としての体質改善を進めることが並行的に扱われておらぬ、農林省についても同じだと思います。しかし今これをどうこう言うてみても、あなたは言葉で返されるだけだと思いますから、私は言葉の返事だけを要求いたしませんけれども、ほんとうに深刻にこの自由化に対する岸内閣としての根本的な方針と手順が私は欠けておったと思う。逆に東京ガット総会で相当圧力が出てきたものだから、本来この問題の推進力でありますところの通産大臣を中心にして、ばんばんばんと行きつつある。まさにこれはどろなわ式の形で今物の面の自由化が進められつつある。しかもそれはアメリカからの圧力が最大の原因になっておる。従って国内での基本的な政策樹立があって、その政策に従っての対策ということではない、この不安を非常に感じているのです。従いまして私は今の根本的な方針があって、その手順に従って進められておらないことを強く不満に思うのでありますが、たとえば三十五年度予算編成の方針を論議される場面はもう目の前に迫っているのでありますから、三十五年度の予算編成のこの問題に対する態度と関連して、大蔵大臣の基本的な方針をもう一ぺんお聞かせ願いたいと思います。
#36
○佐藤国務大臣 今までの予算面においての問題は、体質改善についての努力は払われておる、これは先ほど申した通りであります。その後大蔵省当局がとりました問題で特にあげられますものは――ただいまドルのお話が出ておりますが、ドルの話であるとか、あるいは凍結円の問題であるとか、あるいは外資導入の方法についての緩和政策であるとか、自由化の方向への諸準備がことしの外貨予算編成の際に織り込まれておりまして、ことに下期予算編成にあたりましては、それらの点が一そう具体的に計上されて参っております。これらの点は見のがすことのできないことでありまして、政府自身が自由化の方向への諸準備を進めて参った、これらも材料として私は説明がでざると思います。またただ説明ばかりではなく、その方針のものとにただいま申し上げたような外貨予算の編成等にあたりましても特に留意をいたした次第であります。ところで今後問題として残りますのは、一部どういたしましても関税政策を加味せざるを得ないということになるだろう、そういう点が通常国会におきまして御審議をいただくように発展して参るもの、かように考えております。問題は、いわゆる一般予算の面におきましても、自由化の方向としてのいわゆる業界の基礎強化――この予算はこれをあげることができますが、同時に外貨予算編成の基本的方針が、ただいま申し上げる自由化の方向へ踏み切る、かようになりますと、この編成の基本的方針も変わって参るのでございます。そういう点において私どもさらに注意をいたすつもりでございます。
#37
○佐々木(良)委員 大蔵省所管の準備の一つの問題としての円為替導入の問題は今どういうふうに考えておられますか。
#38
○佐藤国務大臣 為替貿易の自由化と申します以上、いつの日にかはこの問題も自由にしなければならない問題だ、これも理論的にさように考えます。ただ誤解を招くおそれがございますから、しからばさような時期はいつ到来するかという点につきましては、私どもが申し上げることはこういう国会でございましても不適当な問題だ、かように私考えております。
#39
○佐々木(良)委員 ヨーロッパにおける通貨の自由交換性の回復は非常な急テンポで進んでおりますが、それとの関連におきまして相当急速度に考えておられますか。
#40
○佐藤国務大臣 そのテンポ等をも含めて、私はその点を発表することは差し控えさせていただきたいと思います。
#41
○佐々木(良)委員 国内の株相場等に対する刺激やその他の言葉は佐藤さん、非常に簡単に吐かれますけれども、基本的に、むしろ国民がほんとうに聞きたい政府の態度、政策になりますと非常に慎重になってこられておるわけであります。私は相当不満を禁じ得ませんけれども、しかしその立場もあろうかと思いますから、あえて追及はいたしません。次に、これは通産大臣になろうかと思いますが、もし所管が違ったならば他の大臣でもけっこうでありますが今の自由化問題と関連をいたしまして、これから少し具体的に二、三話を進めて参りたいと思います。
 その第一は、今度のガット総会におきましていわゆる三十五条援用撤回要求の問題が出されておりますが、これは外務大臣はここにおられませんけれども、この見通しについてお伺いをいたしたいと思います。
#42
○池田国務大臣 ガット三十五条の問題につきましては、従来個別的に各国との折衝を重ね、またこの総会におきましても外務大臣より強く要望いたしたのでございます。しかしただいまの状態ではお話のように日本が相当為替貿易を何と申しますか、閉じております関係、しかもまた日本の物資が一時的に非常に流れ込むというような事例もあります関係上、われわれの努力にもかかわらず、まだ英、仏、豪州等十四カ国がわれわれの言うことを聞いてくれておらぬのであります。私はこういり情勢からかんがみまして、わが国もできるだけ早く自由化すると同時に、また相手国に対しまして日本商品がなだれ込むということのないように、輸出入取引法あるいは貿易管理令等に適当な措置をいたしまして、できるだけ早く三十五条の撤廃を実現いたしたいこ考えております。
#43
○佐々木(良)委員 新聞の報ずるとこりによりますと、イギリス、フランス等は今お話のような日本品の大量進出を押える方法が何かはかにない限り、この三十五条撤回ということにそのまま乗ってきそうにない様子を示しておるように聞いておりまして、従って今度の東京ガット総会中には三十五条の援用撤回ができそうな国は一つもなさそうだ、こういうふうな話が伝わっておりますが、そういう状況でしょうか。
#44
○池田国務大臣 まだ会議中でございまして結論を申し上げるわけにはいきませんが、十四カ国みな同じような立場ではないのでございます。ある国におきましてはもうちょっとというところでございまして、われわれは先ほど申し上げましたようにできるだけ自分の方の制度も改める、そして各国も日本の立場を了解してもらうよう努力いたすと同時に、今後交渉を続けていきたと思っております。
#45
○佐々木(良)委員 こういうところにおける日本の本格的な努力といいますか、押しといいますか、態度といいますか、その辺がほんとうは日本の実力ではないのですか。佐藤さん、あなたは最近ずいぶん外国に行かれまして、経済会議その他に臨まれるわけでありますが、日本の人々が普通に印象いたしておりますような形で何だかずいぶん背伸びをして、日本がまた列強の中に加わったような印象を持っておるかもしれないし、あるいはそういう感覚でまた――これは話が違って、大蔵大臣ではなくて、外務大臣がおられなくて恐縮でありますけれども、そういう感じで国際政治の中においては、たとえば安保条約の改定問題にからんでみても、相当背伸びしたような、自意識過剰な状態で国際政治に対処しておられるような気がする。ところが、国際経済の面で現実に日本に寄せられておるところの一般の批判は、三十五条援用撤回の要求にもかかわらず、ほとんど今度の総会では一国といえどもそれの見込みがなさそうな状態であり、むしろ戦前のような形で日本の商品に対する非常な警戒の目をもって見ておる。この警戒をまだ日本は諸外国に対して解いておらない。解く努力をしておらないのか、あるいは本格的にその問題に取り組んでおらないのか、その辺に私は日本が国際経済の場でほんとうの仕事をできるかできぬかの一番ポイントがあるような気がするわけでありますが、大蔵大臣、御所見を承りたい。
#46
○佐藤国務大臣 日本経済の地位、これは非常に高く買われておることは事実であります。また私どももその期待に沿うような最善の協力と努力をするつもりでございます。しかし、私いろいろつぶさに考えてみます際に、なおなお日本経済としては工夫しなければならぬ点というか、さらに努力を要する点が多々あるように思います。今外国、IMFや世銀等の一般的な考え方から見ますと、先進工業国さらにまた経済の低開発国、この二つのグループに分けてよく説明をいたしますが、日本がいわゆる先進工業国に比肩し、劣らない、こういうような特殊な産業もございますけれども、今いわれておりますいわゆる先進工業国というものと比べてみますと、なお経済力としてはやや劣る点もあるのではないか、かように私は率直に事実を認めておる次第であります。
 そこで、私は今の国民なりあるいは財界各界の方々が、この先進工業国の仲間入りをして、それにふさわしい、みずからがその地位にあるといっても、必ず相手国もそれを了承をしてくれるような地位に推し進めたいというその努力に対して、また政府自身も今日各国が日本経済に期待するものも非常に大きい点、これを指摘しまして、私どもはこの発展していこうというこの力に十分の協力をいたすつもりでございます。
 もう一つこの際につけ加えておきますが、戦前におきましては一国の力によりまして、他の低開発国等について特殊な考え方を持つというような気持も多分にあったと思いますが、最近の国際経済、IMFあるいは世銀等の支配的な考え方は、国際的機関を通じて低開発国に対する協力をする、そうしてそのことが世界経済を発展さすゆえんだ、こういう方向によほど考え方がまとまってきた、かように私ども考えます。
 そこでわが国の経済力はいわゆる先進工業国の一員として、そのトップに立つものではもちろんございませんが、先進工業国の一員としての扱い方をされる、こういう意味では国際機関に対する協力も応分の協力をしていく。たとえばインドに対するIMFの特別融資をする融資団を形成するという場合におきましては、日本の経済力をもっていたしまして他の米、独、英あるいはイタリア、カナダ等と同額ということにはいかないまでも、日本は応分の協力をするというふうな態度をとって参ったのでございます。問題はやはり別に気位を高くするわけではございませんが、明るい希望を持つ。同時にまた各国の期待に沿うように今日の経済力を進展さしていく。これが政府の務めでもあり、同時にまた財界の方々に課せられた務めでもある、かように私は考えておる次第でございます。
#47
○佐々木(良)委員 三十五条援用撤回の要求は、現実には先ほど言いましたような形で日本の自由化のおくれに対する各国の批判ということで逆にすりかえられつつあるのではないか、私はそういうふうに心配しているわけです。しかもそのことは、自由化のおくれに対する批判によってすりかえられつつあるということは、そのまま日本経済がほんとうは今あなたが言われたような工業国とかなんとかいうことではなくて、低賃金をベースとした戦前の日本経済機構、その日本経済の国際経済に対するおくれ、現実にそれが病根をそのまま日本経済が持っておるところに基本的な原因があるのではなかろうか。このことに対する基本的な反省がない限り、日本が国際経済の中に堂々と進出していくところの方法はないのではなかろうか、このことを心配しているのです。ですから三十五条撤回の要求の問題と関連して今出てきておるといわれるところのいわゆる低価格品の問題、同じように今度のガット総会におきまして低価格品の処理に関する専門委員会というものが設置されたように聞いておりますけれども、それは御承知のような基本的な後進国の問題が出発点にはなっておりますけれども、三十五条の援用撤回というふうな問題が日程に上らざるを得ないような状態になったときには、同じようにこの低価格品の処理に関する具体的な規制がなされて、日本も同じような状態にくぎづけされるのではないかということを私は心配しておるわけであります。通産大臣、この低価格品に関する処理の専門委員会が取り上げようとしておる問題、その問題と三十五条の援用撤回の問題と私は似たような心配をいたしておるわけでありますけれども、今扱われておる様子とそれから見通しをお聞かせ願いたいと思います。
#48
○池田国務大臣 ガット総会におきましてアメリカの代表が、今お話の通り、後進国あるいは低賃金国につきまして特別の検討をしなければならぬという発言をしたことは知っております。この発言に基づきましてただいま九カ国の代表が集まって問題がどこにあるかということを審議する段階でございます。私はガット三十五条の問題と直接に関係あるとはただいまのところ考えておりません。九カ国の集まりの会合はまだ十分審議に入っておりません。これからの問題だと思って注目はいたしておりますが、直接の関係があるとは私は考えておりません。
#49
○佐々木(良)委員 直接の関係がないことは私も承知いたしておりますが、この委員会において述べられ、そうして現実に三十五条の援用撤回の問題が日程に上ろうとするときには、この低価格品処理の問題に関連をさせて、日本商品がいわゆる低賃金と関係づけられながら事実上三十五条同様なあるいはそれ以上の規制措置を講ぜられるおそれはないのか、そのことを私は心配しておるわけです。
#50
○池田国務大臣 低賃金国の問題は従来からの問題であります。これを突き詰めて申しますと、ガット自体につきましての問題が起こってくると思います。従いまして私の考えでは、これはまだ研究段階である、直ちにこれがどういう結果を生むというふうなことは私は想像しておりません。
#51
○佐々木(良)委員 三十五条の問題や今の低価格品の問題について、私は政府当局に強く要望をいたしておきたいのは、今のような研究段階であるとかいうようなことではなしに、現実に今問題がこの辺で協議をされておるわけでありまけすれども、その中で相も変らず世界各国から日本経済に向けられておる目は、かつてと同じような形で低賃金を前提としておるところの日本商品の非常に低価格な、悪かろう安かろう――安かろう悪かろうかしれませんけれども、そういう形で外国に入ってくるところの脅威でありまして、このことはかつてのダンピング問題と同じような形で日本経済に対する世界各国の脅威、脅威というより警戒になっておると思います。この世界各国の平和な経済発展を阻害するという日本経済に対する警戒の目をなくしない限り、日本が本格的に世界経済の中でお互いに互譲の精神に従っての平和な発展というものは非常に困難であろう。私はそのことを非常に心配をいたしておるわけでありまして、ほんとうはここに外務大臣を呼んでおったのでありまして、おられないのはまことに残念でありますが、藤山外務大臣がおられたならば、本来、藤山さんは経済外交を中心にして立たれたのでありますから、今問題になっておる安保改定等にずいぶん意地の張り通しみたようなことをされておるけれども、それはそれとしても、そのことよりもまず先に戦前の日本経済と同じような形で世界経済で理解され、警戒をされておるような、そういう警戒を解かれることこそ経済外交の一番中心ではなかろうか。そのための努力がされておったならば、三十五条の問題も、低価格品の問題も、私どもはもっとスムーズにガット総会において日本が平和な形として諸外国に理解されておったのではなかろうか。そのことがまだ十分に理解されておらないところに、現在の政府の外交政策といいますか、経済政策といいますか、国際世界に対する態度に私は大きな疑問を持たざるを得ないということを言うわけであります。どうか一つ関係の閣僚におかれましては、そういう観点に立って、今後日本経済が世界経済から妙な意味での警戒を持たれないような形で、堂々と競争のできるような形で世界経済に寄せられるような状態を作られる努力をお願い申し上げたいと思います。
 さらに私は先ほどちょっと触れましたけれども、この自由化の問題と関連をいたしまして、世界貿易におけるブロック化の傾向についてお伺いをいたしたいと思います。大蔵大臣の所見を伺いたいと思いますが、御承知のように一方におきまして自由化の波はとうとうとして世界経済をおおいつつある。同時に御承知のような形で欧州共同体を中心とするところのブロック化の傾向もまた非常に強く推し進められつつありますが、この自由化の傾向とブロック化の傾向の中において、日本経済をどう持っていかれようとするのか、基本的な考え方をまず伺いたいと思います。
#52
○佐藤国務大臣 このブロック化の見方でございますが、今日までそう露骨なものが出て参っておるとは私は考えません。ただ欧州諸地域に入ります場合に一国のとります態度が全地域に及ぶということはございます。しかしながら外部に対する競争の面で自分たちの持つ力で他に対抗するというものは露骨には出ておらないと思います。元来から申しまして自由化の方向にいたしましても、どこまでもお互いが協力して世界経済を伸展さすというのが基本的な考え方であります。手近なものだけでどうこうするという考え方のものではございません。しかしこの欧州共同市場これ自身が、扱い方によりまして非常に排他的になるとか、あるいはこの団体の他域に対する進出を積極的に進めるというようなことが露骨になって参りますと、いわゆるブロック化の心配が出て参るのであります。そこでそういう点はIMFなどの考えではございませんし、私どももそういう説には賛成できません。そこでお互いにそういう点について今十分注意を喚起しておる段階でございます。
 そこでわが国の経済そのものといたしましては、先ほど来お話がありますように、国内にも幾多の問題がありますが、国際的には十分競争力に耐え得るその素質を持たなければならないのであります。これは申すまでもなく、品質は良好で、しかも価格の面において競争のできるようにする。そういう意味における国内体制の整備、この一語に尽きると思います。そういう意味において私ども努力いたしておる次第であります。
#53
○佐々木(良)委員 大蔵大臣は故意かあるいは故意でないか知りませんけれども、私の問いのほんとうの中心に答えられておらない。私の言うのはそういうことではありませんで、現実にブロック化の傾向が進みつつあるけれども、そのブロックに対して日本の貿易をどういうやり方でアタックしようとするかということと、もう一つは、各ブロックブロックが強くなりつつあるけれども、たとえばアジアを中心としてあるいは太平洋を中心として別な意味の日本経済を中心とするようなブロック化という言葉は悪いが、そういう別の観点からの対策が必要ではなかろうか、こういう観点から日本経済並びに世界経済を見ておられるかどうかという根本的なことを聞いておるわけであります。今大蔵大臣は、ぼうっとしたような形でブロック化は進みつつあるけれども、大したことはなかろうというような感じを言われましたが、ガット総会において欧州共同体というものはどういうふうに扱われたか。現実にはイギリスを中心とするところの反対勢力は、あるいはむしろ逆にこの欧州共同体というものを承認せざるを得ないような状態に今なりつつあるではないですか。それと反対のような形で、イギリス等は今度逆に自由貿易地域連合というものを強化しつつありますし、ラテン・アメリカ共同市場というような形のブロック化が強化されつつある。こういう方向を大蔵大臣は見ないのか。まずこの方向をどう見るのか。このブロックはおのおの解消して、本格的、全面的な自由化の方向に向かいつつあると見るのか。むしろ一般的な自由化という声の中でそういうブロックブロックが別な強化の方向をたどりつつあると見るのか。どっちの見方をされておりますか。
#54
○佐藤国務大臣 やはり全体といたしましての国際協力による経済の発展、こういう方向が本筋であり、その方向に変わっていくものだと私は考えております。昨年発足いたしましたコンモン・マーケットの思想そのものにつきましても、必ずや世界経済を発展させることによって世界の平和は確保される、この観点に立っておるに違いないと、かように確信いたしております。この点がいわゆるブロックの強化により、逆に経済の発展を阻害したり、あるいは低開発国に対する特殊な関係においてこれは発達させるというような方向はお互いに必ず反省し合う。こういう方向に進むものだ、かように私は見ております。
#55
○佐々木(良)委員 そういう善良な大蔵大臣を持っておる日本国民は不幸だと思います。それならば今進められつつあるところの世界の自由化というものは、どういう方向に行きつつあるとごらんになりますか。私は、これは新しい意味での国際対立がますます激化しつつある形と見るわけですが、あなたは十九世紀的なああいう自由化が今進められつつあるとごらんになるのですか。そうしてまた、今のブロック化の傾向は、自由化の方向に解消せねばならぬのではなくて、するという見通しで日本経済をリードされようとするのですか。
#56
○佐藤国務大臣 自由化を進めます基本的な問題は、世界経済を形成しております一国だけの立場を強く守るということは不適当だと思います。この意味に立っての問題だ、かように私は理解いたしております。またそうすることが日本経済の伸展上、特質上からも望ましいことだと考えます。私どもIMFに参りましての受ける感じは、お互いに協力して世界経済を発展させていく、その意味の努力をあらゆる面においてしていく、従って資本的に強力なものがやはり低開発国の資本についても協力をしていく、あるいはまた貿易上の面におきましても、一国経済のみにとらわれることなく、もっと大局的な立場に立って、国際的な経済を発展させていく、こういう方向で物事を見ていく気持に変わりはない。そこでIMF自身の考え方も、順次これはIMFに取り上げる国際的機関によりまして低開発国の開発を進めていく。今回の第二次世銀の構想などは非常にはっきりした構想でございます。私はこの構想をやはり進めていくべきだと、かように考えております。
#57
○佐々木(良)委員 時間がありませんので、まことに残念でありますが、私はこの問題の結論は一つ大蔵大臣に強く注意を喚起しておきたいと思います。今のあなたの言われておるようなことならば心配ないですよ。そういうものではない。片一方におきましてどんどんと自由化の方向が進められるということは、それだけ競争が激化しつつあるということでありまして、世界経済の発展の方向を各国が推し進めておるのではない。各国がますます自国に有利な地位を獲得しようとする努力が自由化の方向になっている。いいですか、世界経済を発展させようという方向で各国がやっているのでないことは、あなたよく知っておられるでしょう。自国が有利な立場に立つために世界経済の自由化の方向が今出てきつつある。そのことと、また一ぺんに今の理想に到達できない問題があるから、地域におきましてはブロック化の問題が出てきつつあるわけだ。ヨーロッパの共同体の問題は、今のような形で自由化の方向が強くなればなるほど欧州共同体の方向は強くなりつつあります。あなたの言われるような格好ならば、なぜラテン・アメリカの共同市場論が今ごろ出てきたり、あるいはまたイギリスを中心とする自由貿易諸国のブロック化が、今度のガット総会を中心にして、もっと強化される方向になったり、出てきたりしますか、その辺に対するあなたの見方の甘さというものに対しましては、ほんとうにがっかりさせられたわけであります。通産大臣、あなたは自由化の方向を強くとっておられるわけでありますので、この辺に対処しても大丈夫だろうという見通しに立って、自由化の方針を進めておられることだと思いますが、それにつきましても、岸内閣の中でそういう基本的な世界経済の見方が論議されず、あるいはそれに対する日本経済の持って行き方が十分論議されておらないことは、私はまことに残念です。
 私は、最後に大蔵大臣と通産大臣にこの問題について特別に希望しておきますけれども、今の自由化とブロック化とのこの二つの方向に対しまして、一番最初大蔵大臣が言われましたように、欧州共同体なら欧州共同体というものがますます強化されて、それから日本ははじき出されていく格好になっていくわけでありますから、はじき出されないような方法を力一ぱい、一番最初あなたの言われた原則論で、このブロックの中へなお日本商品が入っていくための措置を講じてもらいたい。これが第一。しかしながらこれと並行的に、今のように二つも三つもの世界経済のブロック化の方向が進みつつある。従って去年の暮れあたりからも東南アジアを中心としての経済閣僚の動きがあったでしょう。私は春、この委員会において注意を喚起したのもそれなんです。経済外交の中心をここに置かれたいと言って、岸総理や藤山外相に注意を喚起したのも、ほんとうはそれだったのでありまして、そういうように世界の自由化の方向と相矛盾するような形で進みつつあるところの世界ブロック化の傾向に対して、日本経済を中心として、一番近いところに東南アジアの経済を持っておるのでありますから、これとの結びつき、あるいは太平洋諸地域という形でもいいと思いますが、それらの連帯的な経済発展の道を――世界全部ではありません。近隣の一番近い諸国と経済提携を深めていく方法をなぜもっと講ぜられないのか。私は日本外交が、いつでもヨーロッパその他の遠いところだけを相手にしまして、そうして世界列強というような形で背伸びをしようしようとしておるのと同じことで、日本経済もまた遠くの方ばかりを見ておりまして、一番近いところの連携強化の経済方策がとられておらないことを最も強く私は指摘しておるわけであります。
 どうかこの自由化とブロック化との方向に対しましてもう一つ認識を深められて、ブロックに対する対策と同時に、日本経済の周囲の近隣諸国と経済提携を進められる道を、もっと具体的に考えられることを私は強く要望しておきたいと思います。具体的に東南アジアの各諸国の動きがあったでしょう。日本にも大統領が次々にやって来たり、岸さんも向こうを訪問されたりするその中で、具体的な問題が提示されたことを私は知っている。それらの問題に対しましてほんとうの意味で取り組んでおられないことを私はまことに残念に思うわけであります。
 時間がきてしまいましたが、あと五分か十分だけいただきまして、最後にこの自由化が進められつつある過程で先ほどちょいちょい出ましたが、具体的な問題を指摘いたしまして、そうして具体的な御所見を一、二伺って終わりにいたしたいと思います。
 この自由化に伴う諸準備の過程におきまして、あるいは今進められつつあります自由化の過程において、私はほんとうに、たとえば企業が国際経済の国際社会に裸になってくるとすれば、当然合理化が進められてくるから、そこから出てくるであろうところの失業、雇用問題、それらについての本質的な検討がほとんどされておらないことを残念に思いますし、同時に中小企業の問題について通産大臣にお伺いいたしたいと思いますが、先ほど来自由化の問題が相当具体的に進められつつあることを説明されまして、せんだっての十日、十一日に発表された内容も私は承知いたしておりますが、これらから直接問題が出てきておるのは、本質的な日本の中小企業問題というものが私は新たにクローズ・アップされてこざるを得ないと思います。その中小企業のクローズ・アップしてくる問題は、一つは大企業との間における賃金格差と同時に生産性の格差、日本の大企業と中小企業との間における賃金格差と同時に生産性の格差、それは御承知のような形で世界経済との関連において同じような賃金格差と生産性の格差という問題が、そのまま日本の中小企業を襲ってくると思いますけれども、これに対する対策が並行的に進められなければ、私は自由化のほんとうの意味をなさないと思う。特にそういう方向が進められないならば、日本の中小企業はもろに、むしろ自由化の一番ひどいしわ寄せになろうと思いますけれども、御所見と対策を承りたいと思います。
#58
○池田国務大臣 ただいまのお話は全く同感でございまして、私は戦後早急に生産拡充を希求する余り、大企業に対しまして相当の政府資金を出しておりましたが、もう今後は主として中小企業の合理化に向かっていくべきだと考えておるのであります。それが日本経済全体を伸ばすゆえんであると考え、為替自由化の問題もさることながら、産業政策として私は中小企業を重視するようにやっていきたいと思います。
#59
○佐々木(良)委員 今お話がありましたように、中小企業の賃金格差の問題の前提になっておるところの生産性の格差の問題は、私は非常に大きく注目していただきたいと思います。生産性の格差の問題はそのまま設備の大企業との間における格差の問題であり、設備の問題はそのまま設備資金の問題であります。通産大臣よく御承知の通りであります。この設備資金に対しまして、一つ十分なる方途、自由化の方向を進められるのと並行的に進められんことを私は強く希望いたしたいと思います。三十四年度におきましては、多分十億円程度でしたかの項目だけみたいな金が出ましたけれども、本格的に自由化が進められるならば、これは十分な設備資金を準備されなければ完全に片手落ちになって参ると思いますので、今のお話を中心に進められることを強く要望いたします。
 それから今度は農林大臣に伺いたいと思いますが、この間十二日付の農林省の輸入制限緩和措置に対する発表を私も見ましたし、先ほどの基本的な考え方は私も承知いたしましたが、農林大臣は本来農林専門よりも大蔵、通産の方が専門だったかと思いますが、日本の農民の持っておりますところの、あるいは農村経済の持っておりますところの基本的な問題は、ちょうど今中小企業問題で指摘したところの問題と同じ問題である。しかも中小企業問題の場合には、これは単なる経済問題みたいなことに一応なっている。農民の場合はほとんど社会問題ということになっております。今のような自由化の方向がとられる場合に、とうとうとして押し寄せてくるところの農産物が、日本農民に及ぼす影響について十分考慮されておることだろうと思いますけれども、日本の農産物価に対する安定方策について、これに対応する考え方としてどういうお考えを持っておられますか。
#60
○福田国務大臣 自由化の政策が世界的に進められましても、農産物資につきましては、各国とも鉱工業の製品と異なりまして、おのずから防衛の政策がとられているのではないか、かように考えております。しかしながらただそれらの政策、基本的な流れの中におきましても、特に問題となるものから逐次自由制に移していきたい、かように考えておるわけでございまして、さような考え方をとります順序といたしまして、先ほどまず第一に対米ドル地域に対するところの差別を撤廃したい、かような考え方をとっておる次第でございます。対ドル差別を撤廃する場合におきましても、お話のようにそれに伴いまして諸国から農産物資が自由に入ってくるという態勢に相なりますので、それに対しましては、わが国の農業経営に重大なる影響がないようにという配意につきましては、万全の処置をしなければならぬ。ただ農村につきましては、御指摘のようにいかにも生産性が低いわけであります。この対ドル地域に対する問題もさることながら、日本農業全体といたしまして、鉱工業に比べまして生産性が非常に低い。これは近代経済の特色とも申すべき科学技術の導入というようなものが、農産物資においては受け入れにくいという特性もあろうかというふうに考える次第でございますが、とにかく農産物資につきますところの生産性の向上ということ、これは農業政策を進めていく上の基本的な考え方でなければならぬし、同時にこれが貿易の自由化というものに対する施策として力を持つものである、かように考えておる次第でございます。当面大豆なんかについて問題が起こりますが、そういう考え方でこの大豆に対する諸施策も進めていきたい、かように考えております。
#61
○佐々木(良)委員 農業の問題と中小企業の問題との基本的な相違といいますよりも、施策者として、政治家としての立場から頭に入れておいていただかなければならぬ問題と思いますのは、中小企業関係の問題の根本は、生産性の問題だと私は思います。そして生産性の問題は、今の設備資金の問題だと思います。しかし日本農業の場合には、生産性向上だけでは解決できぬ問題がはっきりある。だから生産性向上の問題を取り上げる前に、あるいはこれと並行して今一番具体的にやらなければならぬ問題は価格安定政策だと思う。その中の格別に重要な農産物に対しましての価格安定の政策をとられて、それで柱を突っぱりをしておいて、農民生活のともかくも最低限の突っぱりをしておいて、それから農業経済に対するメスを入れられなければ、直ちに社会問題に発展してしまうと思います。御承知のように、これまでたびたび支持価格制を中心とするような重要農産物に対する価格安定政策をとられようとした。とられようとしたけれども、これは一ぺんだってほんとうの支持価格制度として実を結んだことがありますか。糸、繭の問題は農林大臣御承知の通りだと思う。牛乳の問題は今さら言うまでもない。ともかくも農産物の価格という問題につきましては、私は今経済政策の中で放置せられておるところの一番最大の問題であり、今の国民生活のための政策の中の盲点であると思います。従いまして、この自由化の問題を今のような格好で進められるとするならば、農林省は本格的に重要農産物の価格安定問題と取り組まれるのでなければ、これは私はおそらく非常に大きな問題を農村に巻き起こす、こう思いますので、一つ十分対策を並行的に進められんことを希望いたします。時間がなくなりましたので、具体的な問題に対する質問は省略せざるを得ません。
 ただ通産大臣にもう一つ私は希望しておきたいと思いますのは、綿花の割当制を廃止することになるだろうと思いますが、綿花の問題も自由化の問題と関連しまして、原綿の取引所を作りたいとかなんとかいう話が出ておるのを新聞で拝見しました。私はこれは当然だろうと思います。当然だろうと思いますが、今通産大臣として施策を、あるいは研究を進められなければならぬ問題は、今の原綿の取引所の問題もさることながら、それよりも、農業問題や中小企業問題と同じ意味において、これまでそれが生産制限の一番柱になっておった、それが今度はどういうふうな変化をしてくるかということ、並びに競合する繊維の調整問題としてのほんとうの繊維企業対策だと思います。これは必ずしも資金を導入して合理化を進め、生産性を向上すればいいというだけの問題ではなしに、繊維工業としての基本的な問題が一つ考慮されなければならぬ問題だろうと思いますので、どうかそれらも並行的に検討を進められんことを希望いたしておきたいと思います。
 私は最後に、ほんとうは物価問題に触れたいと思いましたけれども、時間がなくなりましたので省略をいたします。
 ただ大蔵大臣に対する最後の質問として御了承願えるならば、物価問題というものはまだ重要な段階にはきておらないように見受けられます。しかしながら物価のじり高歩調、それから今度の三千億になんなんとするところの超過支払い、そうして設備資金がだんだんとふえてきそうな傾向等をにらみ合わせるときに、私は目下最も細心な注意が大蔵大臣の手元においてされつつなけらねばならぬ段階だと思います。そういう段階でありますから、タイムリーに政策を実施されないというと、これは重大な結果になろうと思いますので、十分配慮を要望いたしたいと思います。
 それと関連して一言お願いするならば、この間の公定歩合引き上げに関する言明は、私はほんとうはどうかと思います。ちょうど株価のああいう段階のときにああいう発言をされることは心ある政治家としてどうか、私はほんとうは遺憾にたえなかった。最も慎重を要する問題であればあるほど、ああいういかにも株価の問題と関連されて受け取られるような形でものを言われることはまずい。どうか一つこの点は十分配慮されて、この物価問題に対処せられんことを望みますけれども、あの公定歩合をやらぬという方針についてどういうお気持であったか、気持だけを拝聴いたしたいと思います。
#62
○佐藤国務大臣 簡単にお答えいたしますが、物価の問題は御指摘の通りまことに重大な問題でございますので、私どももこの問題については十分検討を加えたい、そして今後の問題として善処して参る考えでございます。
 ところでせんだっての公定歩合の問題でございますが、事柄は日銀総裁が名古屋で発言された事柄についての大蔵大臣の批判を求められたということが実際でございまして、私の方から積極的に公定歩合をいじらないとかいうような話をしたわけではございません。もちろん公定歩合の問題でございますから、日銀総裁にまかしてあることでございますが、日銀総裁は情勢によって公定歩合の適否は考えるということを言われたのでございます。しかしながらこういう時期にさような一般的な原則論を話されました場合に、これまたいろいろに解釈されるのでございます。そこで記者諸君から実際問題は一体どうなんだ、こういうような突き進んだ話がございました。一般的な公定歩合の取り扱い方の問題だけではなしに、今日の段階においてはそういう点は具体的に考えが入っておらない、こういう事実だけを申したものでございます。積極的に私の方から発表したという意見ではない、この点を御了承いただきたいと思います。
#63
○佐々木(良)委員 外務大臣が見えましたから、外務大臣にちょっと一口だけ最後にお願いしたいと思います。
 私はきょうは外務大臣に対しましては、この委員会やあるいは外務委員会におきまして取り上げられておるような、現在のベトナム問題やあるいは安保改定問題を中心としたところの日本の外交政策の基本をお伺いしたいとは思っておらなかったのであります。むしろあなたは財界の出身でもありますから、純粋な経済問題といたしまして経済外交の基本がさっぱりないではないか、あなたの最も得意とするところの経済外交の基本がどこにも生かされておらないということを指摘して、そうしてあなたに反省を私は求めようと思ったわけでございます。時間がありませんから省略をいたしますが、安保改定問題にうき身をやつされて、そうして言うならばアメリカのごきげん伺いに懸命になられております際に、日本の東京で開かれておりますガット総会においては、まだ日本が戦前と同じようなダンピングでもやるのではなかろうかという国の印象を諸外国に与えながら、御承知のような形で三十五条の援用撤回問題もほとんど期待薄でありますし、むしろそれとは逆に低価格品に関する専門委員会というものが設けられまして、そうしてもし三十五条の撤回が実現しそうな状態の場合には、これとかわるような形で日本商品に対しまして、あるいはそれ以上の規制措置でもとられんずるような勢いさえも見えつつある。こういう周囲の日本商品に対する警戒に対しまして、あなたはもっとも本質的な問題のとらえ方をして、それが低賃金を中心とする日本のかつての経済構造に原因があるということを承知されて、そういう外交的な国際経済的な視野から、日本経済のいわゆる二重構造に対する非常に強烈な批判をされて、国際経済の中に迎え入れられるような立場をあなたは強く岸内閣に対して発言をされたい、こう思うわけでありますし、同時にこの問題と並行的に進められつつありますところの世界の自由化の方向において、自由化の方向が強くなるのと並行して、御承知のように欧州共同体でありますとかラテン・アメリカの共同市場でありますとか、あるいは自由化を目標とするブロックでありますとか、こういう形で一つの経済的なブロック化が進められつつあるのも、また否定しがたい世界経済の動きである。このブロック化の傾向と自由化の傾向の中で日本は挾撃されておるような状態になっておりますので、従ってあなたの経済外交の基本として、今のようなブロック化に対してどうしてそのブロック化を突き破りながら日本商品をその中に突入していくかということと並行的に、昨年の暮れ以来東南アジア諸国との経済問題に対する、あるいは経済閣僚同士の話し合いもいろいろな角度でなされよう、なされようとしたチャンスがあったわけでありますから、これらを十分とっつかまえて、そして世界のブロック化の傾向に対処するために、もっと近隣の東南アジアなり、あるいはアジア・ブロックなり、あるいは太平洋ブロックなりという形での近隣諸国との経済提携の方法を、一つ本気で具体的に考えられたいということを私は強く希望いたしておきたいと思います。
 時間がきましたので御答弁は要求いたしませんけれども、私の意のあるところを十分承知されて生かされんことを希望いたしまして質問を終わりたいと思います。
#64
○小川委員長 午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。
    午後一時二十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時八分開議
#65
○小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。岡良一君。
#66
○岡委員 私は、今国民の注目を浴びておるコールダーホール改良型動力炉――少し言いにくい名前でございますので、このごろはやりのマグノックス炉と申しますが、この炉の導入について、特にその安全性と経済性について中曽根原子力委員長、佐藤大蔵大臣、池田通産大臣等に御所信を承りたいと思います。
 今度のこの臨時国会は災害対策を中心といたしますが、御存じのように、このような大規模な動力炉を導入いたしました場合、万一の全面的な事故が起こりますると、アメリカの公式な記録によっても、金額にしても七十億ドル、居住あるいは耕作の用に供し得ない土地が十五万平方マイル、こういうような大災害が公式な記録によって警告されております。そういう意味で私はこの炉の安全性、経済性というものは、政府といたしましても念には念を入れ、人事を尽くし、万全を期していただかねばなるまいと存ずるのでございますが、この点、原子力委員長の御所信を承りたいと思います。
#67
○中曽根国務大臣 原子炉の導入につきましては、国民の安全を第一にいたしまして、慎重に決定いたしたいと思います。去る九日、安全審査部会から答申がございましたので、さっそくきのうから原子力委員会としましてはこれを取り上げまして、審査している次第であります。
#68
○岡委員 特にわが国は原水爆で大きな犠牲を払っておりまするだけに、原子炉に対しては必要以上な恐怖感があります。この国民感情に伴いましても、ぜひとも、特に大きな災害の予想される動力炉については格段なる慎重さを切に要求いたします。
 そこで今お話しの安全審査部会の答申も九日にありました。私は、この安全審査部会の答申は、もう一度審査をやり直すべきものであろう、このように考えておるのでございます。その理由を逐次申し上げまして、委員長の御所信を承りたいと思います。
 まず第一に、このような答申というものは満場一致をもって支持される、こういう形をとるべきものと存じます。これがあるいは政治的な、また人文科学的な論文であればいざ知らず、自然科学の分野における決定というものは、御存じのように、その原理が妥当性を持っておるかどうか、そのことを実験のデータの解析などを通じて確かめるという態のものでございますので、その安全性について責任を持たない、こういう方がおられるということになりますと、私はその答申自体の信憑性というものが著しくそこなわれるものであろうと思います。なぜ満場一致でこの答申案がなされなかったかということについて、私どもはこの答申案そのものの権威、その信憑性というものを疑わざるを得ないのが第一点であります。この点についての委員長の御所信を承りたいと思います。
#69
○中曽根国務大臣 私は、安全審査部会の答申は権威あるものだと信じております。また満場一致でなかったということは遺憾でございますが、少くとも出席者に関する限りは満場一致でありました。われわれはこれを権威あるものとして取り上げまして審査いたしたいと思います。
#70
○岡委員 私が、この安全性ありと認めるという答申が信頼性がないと言うのは、私どもは国民の側から判断をして申し上げておるのでございます。原子炉の安全性を審査するその場において、ある者は安全であると言い、ある者は安全でないと言う、こういう結論が出るということになりますると、国民自体が、そこで導入された炉の安全性というものに対して異議を差しはさまざるを得ないわけでございます。そういうことになりますると、先ほども申しましたように、国民感情として原子炉の安全性に対して大きな疑義を持っておるだけに、慎重の上にも慎重を期そう、期すべきであると申し上げました。委員長もその通りであるとお答えになりました。ところが、それに対して、安全性に責任を持てないという委員が出てきたということになれば、この原子炉の安全性に対して国民は何と受け取るのでありましょう。私はそういう意味で、このような大がかりな、しかも巨大な災害が予想されるような炉については、満場一致の結論を審査部会としては出すべきものである。そのように努力すべきものである。原子力委員会としてもそのように努力し、指導すべきものであると確信をいたしておるのでございます。重ねて御所信を承りたいと思います。
#71
○中曽根国務大臣 安全審査部会は約百十回にわたりまして、小委員会並びに委員会を開いて詳細なる検討をいたしたようであります。またあのときの会議におきましては出席者は多分二十人であったと思いますが、二十人全部賛成の意見でありまして、坂田さんは書面をもって今のような、自分は責任を負えないという意味の意思表示があったそうであります。これは欠席でございました。原子力委員会といたしましては、安全審査部会の結論及び坂田さんの意思表明等すべてをわれわれの検討の材料にいたしまして、これから審査いたして参りたいと思います。しかし、一応安全審査部会が百十回の会議をやり、日本の最高の権威者を網羅して慎重にやった結果というものについては、われわれはこれを権威あるものと見たいと思います。
#72
○岡委員 坂田委員が安全性について責任が持てないということは反対意見でございます。従って、それが最終的な答申を決定する事前に矢木会長にもたらされておる以上は、やはり多数決をもってこの答申案が安全なりと認めたということはいなめないと思いますが、形式論議はよしましょう。ただ私は、この場合問題は、坂田委員が個人の委員ではございません、日本の学術会議を代表しておられる。こういう重大な立場に立っておられるだけに、私は、坂田委員がこの安全性に責任を持たないということは、日本の学界、日本の学術会議がその安全性に責任を持たないということを意味するのであって、ここに私は坂田委員の、この一人ではありますが、安全性に責任を持てないというこの御主張というものは、きわめてこのマグノックス炉の安全性に対しては大きな不信を表明しておるものと存じます。ここにこの答申の権威というものがますます信憑性がない、信頼性がないということになろうかと思いますが、委員長の御所見はいかがでございましょう。
#73
○中曽根国務大臣 坂田委員は学術会議の代表者としておいでになったのではないと思います。学識経験者、専門家の一人として安全審査部会に御参加していただいたものとわれわれは承知いたしております。それから原子炉のような新しい発明、新しい分野を開拓していく科学技術につきましては、必ずしもすべてが満場一致でいくものとは――それが一番理想的ではありますが、必ずしも満場一致でいつもいくものとは考えられないように思います。現にイギリスにおきましては、コールダーホールの炉はすでに二年間にわたって運転の実績を持っておりますし、さらにハンターストンとかブラッドウェルとか、そのほか現に三カ所ないし四カ所においてイギリスは日本と同じタイプの炉を構築中でもあります。そういうあらゆる運転の実績や、さらに科学技術的検討を経て安全審査部会の結論というものは出てきているものとわれわれは考えます。従って、若干の反対の御意見はかりにあったといたしましても――われわれはもちろんその反対の意見はいろいろ調査してみますけれども、一応権威ある議論によって安全であるという認定が出たものとわれわれは考えます。
#74
○岡委員 後段の御答弁については後ほど触れます。前段の坂田委員が学術会議の代表としてではない、こういうお話でございます。当時私の記憶によれば、坂田昌一教授は学術会議の議長を通じて学術会議が推薦を求められて委員に選任をせられた経過と私は記憶いたしております。このこともまたあとでよく調べてみたいと存じますが、しかしかりにその手続がそうでなかったといたしましても、御存じの通り、坂田委員は日本学術会議の原子力問題委員会の委員長でございます。学術会議には、あるいは放射線影響調査特別委員会とか、あるいは原子核特別委員会とか、核融合委員会とか、それぞれ会員外のものも含めた特別の委員会があって、ここでは専門的な検討を進めておられる。ところが原子力問題委員会というのは、学術会議がかつて決定をいたしました原子力開発の基本原則、自由、民主、公開、平和、この原則に立って日本の原子力の研究開発が進めらるべきかいなかということに、会議を代表して大きな責任を負っておるのが原子力問題委員会の仕事になっております。その委員長としての坂田氏は、当然学術会議の大きな、総会で決定したこの決議を体してこの審査部会に臨んでおられるのでございまして、私は、これは当然学術会議のこの重要な決議を代表せられるものであることはいなめないと思います。そういう意味合いにおいて、私は坂田委員が責任を持たない、こういう御発言があったことは、この答申そのものが日本学術会議の総会の意思というものに大きく違反をしておるということを私はいなめないと存ずるのでございます。そこで私は、特に坂田委員がなぜ責任を持てないかという理由を若干表明しておられますが、その中でその運営において激しく抗議をしておられる点が見受けられます。それは資料の公開を求めておられる点でございます。私は、安全審査部会において、もしこのような秘密主義というものがあったといたしますならば、これは原子力基本法そのものを全く無視することでもあり、当然上部機関としての原子力委員会の責任も免れないと存ずるのでございますが、はたしてこのような事態があったかどうか、その点について原子力委員長としての御所信を承りたい。
#75
○中曽根国務大臣 安全審査部会の委員の方々には申請書は全部ごらんに入れているわけでございます。しかし、この申請書を一般に直ちに全開するということに関しては、商業上の秘密がありまして、これはイギリスの原子力公社及びイギリス側の会社との関係もありまして、商業上の秘密に関しては、これは秘密を守るということが国際商業道徳になっておりまして、日本が単独に破るというわけに参りません。日本の原子力三原則という中にも、商業上の秘密までも公開しろということは、当時からも要求されておらないのであります。しかし、専門家の委員の皆様方には詳細設計全部を知っていただかなければなりませんから、これはお見せしております。しかし、一般に申請書の内容も公開することが好ましいと思いますので、現在イギリスの原子力公社等と折衝しておりまして、最大限、許す限り公開するように今努めております。二十日くらいまでには、ごく一部の秘密を要する部分を除いては公開できるものと考えております。
#76
○岡委員 去る七月三十一日に、この炉の安全性について公聴会が催されました。そのときにも、やはり学術会議を代表する二、三の公述人は、資料がもらえない、資料をくれなくてどうして安全性の判断ができょうかということで、激しく異議を唱えておられたことは御記憶のことと思います。先般私も、この炉の構造について資料をいただきに参りましたときに、ある部分はやはり商業上の秘密としてこれを渡すことはできないというお話でございました。私どもは、申し上げるまでもなく、やはり議員としては調査し得る権能を持っておるはずでございますが、このような形で、いわゆる商業上の秘密という形において重要な問題が秘密のままにされておる。こういうことでは、一体日本の原子力のほんとうに民主的な開発というものは望めないかと心配をいたすものでございます。と申しますのは、公開という原則と、民主という原則は、これは不可分のものでございます。やはりありていのことを全部ぶちまけて、そして関係者が納得する、そこに初めて民主的な原子力の開発というものを進めることができるのでございまして、そこに基本法第二条の精神というものがあるわけでございます。でありますから、商業上の秘密というようなことをもって、これに深い関心を持つ学者に対して重要な部分が秘密にされる、あるいはまた国会議員の調査という権能に対してもこれが大きく制約される。こういう取り扱いでは、私は日本の原子力の民主的な開発というものは不可能と存ずるのでございます。私はそういう意味で、これまでの技術庁のあり方というものは、ともすれば商業上の秘密に隠れて公開の原則を踏みにじっておる。このような態度はまことに許しがたいと存ずるのでございますが、今後このような点については、あくまでも基本法の原則に立って十分に公開をせられる御決意でございますか、この点をもう一度お伺いいたしたいと思います。
#77
○中曽根国務大臣 特許とか、ノー・ハウに関する部分は、これは工業ないし商業上の秘密に関することでありまして、この部分はやはり現在の国際通念に従って、秘密を保つということはやむを得ないことと思います。しかし、安全審査部会の委員の方々は、これは全部知っていただかなければいけませんから、その詳細設計全部をごらんになっていただいておるわけであります。しかし、これを国民一般に公開するということになりますと、国際条約等でも保護されている工業所有権、特許とかノー・ハウというものまで侵害されるおそれがありますから、それでは向うも日本と協力して原子炉を築造するということを望んでこないわけであります。そういうような国際慣行、国際通念に従いまして、やむを得ないところは、これは国民一般には公開できないと思うのであります。しかし、国民の不安や誤解をなくすために、できるだけ公開に努めるということは、われわれも当然のことと思いまして、その趣旨に沿ってただいま努力している最中なのであります。
#78
○岡委員 国民一般にすべて公開しろと申し上げているのではございません。現に先般の公聴会において、ある学術会議の代表は何と申しておりましたか。東大の藤本助教授は、万一この炉が事故を起こしたときにどの程度の放射能を出すか、この資料さえも会社側は拒否してくれなかったということを申しておるではありませんか。一体こういう状態で、安全性に対して重大な関心を持つ、一般の国民というよりもその方を専門に取り扱っておる学者でさえもがこのようなことでは、確信の持てる科学的な結論は出し得ないわけであります。私はそういうことを申し上げておるのでございます。それはさておきまして、第二にこの答申について私どもが納得いたしがたいものは、この答申案というものは、結局実験的な証明ということがいわばサボタージュをいたしておる。それをそのまま認めておるということに、私はこの答申の安全と認めるという結論というものはきわめて妥当ではない、こう感ずるのでございますが、この点についての御所信はいかがでございますか。
#79
○中曽根国務大臣 この答申の中で、実際に設計して詳細設計をする場合とか、あるいは施工するときには、こういうふうにやってほしいというような、希望条件あるいは工事上の注意が書いてあることは今御指摘の通りございます。しかしこれは原子炉の安全性の審査の上から見て、安全自体をそこなうという、審査基準そのものをそこなうというようなものではなくて、工事の実施上こういう点はこれから注意していけという注意事項なのでありまして、こういうことはこういう大きな膨大な工事についてはよくあることでありまして、大体の基本設計、それから詳細設計、それから部分的な非常に詳細な極微の設計までいろいろあるわけでありますが、現在審査しておるのはその極微の設計まではなかなか審査できるものではありません。その設計を作るまでには、実際築造していきながらいろいろやっていかなければならぬところがあるわけであります。そういう将来の施工あるいは詳細設計の場合にはこういうふうにやることがよろしいというふうな注意事項があるのでありまして、これは当然のことであろうと思います。
#80
○岡委員 私はそういうことを申し上げておるのではございません。なるほどこの答申案を拝見いたしますと、ほとんど各ページごとに、思われる、必要と思われる、望ましい、こういう表現があります。自然科学者として書く論文というものは、こういうものであってはならない。思われるとか、期待されるとか、望ましいという言葉が一ページに三つも四つも出ておる。それだけでも私はこの答申案というものは、むしろきわめて作為の満ちた政治的なものではないかとさえ考えたいくらいでありますが、しかし、せっかく日本の権威のある諸君が努力されたのでありますから、そこまでは問いません。ただしかし、実験が伴っておらない、実験によってそのプリンシプルの正当性というものが証明されておらないという事実はここにある。たとえばその最も大きなものの一つ二つを申し上げますと、燃料でございます。燃料物質でございます。燃料要素につきましては、この答申案はこういうふうに言っておる。「この中空型燃料要素は新しい型であってまだ使用実績がないのであるが、この点にかんがみ、その予定使用条件に近い状態で燃料要素の炉内試験などを行ってその使用上の安全が確められたうえで実施することになっている。」これは実験は将来のことになっておるわけです。将来実験し確かめた上でこれが実施されることになっておる。ということになれば、この答申は災害の最も大きな原因となり得る燃料については、安全性というものは将来にゆだねておるではございませんか。御存じのように、われわれが英国やアメリカと動力協定を結びましたとき、特に英国側はこういう発言をいたしております。英国が日本に引き渡す燃料については、その安全性はできるだけ完全なものにしようとは努力するが、それにもかかわらず完全であるとは言いがたい、しかもこの燃料に基づく災害というものは予想外に大きいものであるから、従って万一の場合の損害賠償は日本政府がやるべきである、あの不面目な免責条項をここでわれわれはになっておるのでございます。この肝心の燃料要素については、設計上は安全である、しかしながら将来実験をやった上で安全を確かめるのである、こういうことが書いてあります。自然科学の分野におきましては、こういうことは許されません。プリンシプルが妥当であるかどうかということは、実績によって、実験によって立証されて初めて最後の結論というものが出なければなりません。これを怠っておるではございませんか。
#81
○中曽根国務大臣 ただいま御指摘になりました例としての中空燃料の場合でございますが、これはイギリスが現にやっております燃料にさらに改良を加えまして、燃料効率をよくした燃料のやり方なのであります。今までのコールダーホールでやっておったものをやっておれば、それでもいいわけであります。しかし、さらに効率的なものをやろうという意味でイギリス側と協議して研究した結果、新たに改良を加えたのが中空燃料でありまして、この中空燃料を使うにつきましては、数理計算はいろいろ出ておるわけです。物理理論としてのいろいろな数理計算でも安全性の問題はいろいろ出ておるのでありますが、しかしながら数理計算だけではいけないから、実際使う場合には、イギリスその他におきまして原子炉の中で使ってみて、その効率を確かめた上でやるというふうに特に念を入れてやっておるわけであります。これは新しい改良をやる場合には当然伴う措置でありまして、かえってそういう措置をやらなければ万全を期しているとはわれわれは言えないと思います。今までのものを使うということは安全であるかもしれませんが、それでは新しい発展がないわけです。そうしてさらに改良しようという場合には、
 こういうことを積み重ねていきまして、もっと効率のいい原子炉ができていくわけであります。安全につきましては、理論的にはすでに証明済みである。さらに実験の上、確かめてこれを使えるというので、心配はないと思っております。
#82
○岡委員 しかし、それが問題ではございませんでしょうか。要するに、中空燃料というものが安全であるというその実証は、実験で初めてされるわけです。実験の結果が出ない限り、プリンシプルの上で安全であるといっても、これは仮定にすぎません。これが自然科学というものでございます。ところが、これは実験はあとでやる、現に去年の九月イタリアのSENNという発電会社が国際入札でもって世界銀行からの融資でこれと同じ十五万キロワットの実用動力炉を備えることになりました。世界銀行は世界の権威を集めて、この導入する炉の入札に応募する各会社の設計がはたして経済的にいけるかどうか、安全であるかどうかということを検討いたしました。そのときに、今われわれが買おうとしているところのこの炉というものは落ちているのです。なぜ落としたのか、SENNはその後公の報告を出しております。この炉について問題点として指摘しておるのは、中空燃料というようなものはまだ作られたばかりで、実験的証明がないからであるということをいっておるじゃありませんか。実験的証明がないということは、安全であるか効率的であるかわからないということであります。それにもかかわらず、原子力委員長が安全である、効率的であると言うことは何を根拠に言われるのでありますか。
#83
○中曽根国務大臣 イタリアの場合におきましては、いろいろ国際政治的な影響もあったやに聞いております。しかし、現に御本尊であるイギリスにおきましては、コールダーホール型で動いておるのが一つございます。その上にチャペルクロスにおいて二基今建設していて、来年の末には二つとも運転をし始めます。それからバークレーにおいて同じく二十七万五千キロのものが一九六〇年に動きます。またブラッドウェルにおいては三十万キロ、ハンターストーンにおいて三十万キロ、ヒンクレーポイントで五十万キロ、これも一九六二年完成の目標で現に建設中であります。こういうようにして、イギリスにおいては改良に改良を加えながら、イギリスの電力事情を緩和するために、大体これと同じタイプのものを作りつつあるわけであります。これがあぶないというなら中止するはずでございますが、営々として所期の目的通りこれを推進しているところを見ても、それほど危険があるとは考えません。日本の専門家が向こうの実績をいろいろ勉強もいたしましたし、理論的にいういろいろ両方で検討したものでありますから、私は安全であると考えております。
#84
○岡委員 とにかく科学的真実というもの、自然科学の真実というものは、そういうものではないのです。英国の事情も申されましたが、私はあとでそれに触れましょう。英国でも、中空燃料は、一応実用規模のものにおいては採用されておりません。これは実験炉で試験をしてから、はたして効率的にいいのか、あるいは安全であるかということが確かめられる段階になる。この事実を原子力委員長にもはっきり認識していただかねばなりません。たとえば、このほかコンテナーの問題もあります。御存じのように、大型の原子炉というものはなかなかの猛獣だから、コンテナーというおりの中に入れようじゃないか、入れてくれという要求が先般の公聴会においても地元から口々に要求されておりました。ところがこの安全審査部会の答申を見ると、コンテナーは必要じゃない、おりに入れなくても、ちゃんとならしてあるから、いいのだというふうに出ておるのでございますが、この点について委員長、いかがお考えでございますか。
#85
○中曽根国務大臣 コンテナーのような膨大なコンクリートあるいは鉄のおおいを作って、そうして大きなお金をかけるよりも、むしろ内部の改良、緊急冷却装置、自動停止装置という方にお金をかける方が有効であるというのが大体委員の御見解のようでございまして、コンテナーのような膨大な重量のあるものを作った場合、かえって地震の場合に害をなすかもしれない、こういう思慮もありまして、コンテナーは要らないという判定になったように聞いております。私は専門家ではありませんからよくわかりませんが、イギリスの炉とアメリカの炉と比べてみた場合、イギリス・タイプの炉におきましては、コンテナーをつけておるところはございません。従いまして、私はコンテナーは要らないものと思います。むしろ自動停止装置とか緊急冷却装置とか、そういう内部の安全保障を確実にする方向へ力を入れた方が合理的であると考えております。
#86
○岡委員 私はやはり中曽根委員長のお考えは、どうも安全という問題を会社の側から取り上げようとしておられるような感じがして仕方がございません。コンテナーが要るか要らないかは、別に専門的な問題ではございません。念には念を入れることで、大きなもので、がっちりしたもので囲んだ方がよかろう、こういうことは常識的にわれわれとしても当然考えるところでございます。しかもこれが万一の場合にどういう作用をするか。放射能が外に飛び散るのをどういうふうに防ぐことができるかということについて、これもアメリカの原子力委員会が発表しておるところの事実がございます。この原子力委員会の発表を見ますると、もう一重外部にがんじょうな格納庫をもって炉を取り囲んでおくことが、安全性にどういう影響があるかということについて、こういう数字をあげております。これはアメリカの原子炉安全諮問委員会の公式な発表の数字でございますが、コンテナーがあった場合には、事故が発生しても、死の灰が原子炉から外に出ない確率は百分の一回から一万分の一回、それから死の灰が原子炉の容器から出ても、コンテナーがあるからその中にとどまって外に飛び散らない見込みはどうか。千分の一回から一万分の一回である。大量の死の灰がコンテナーの外に放出される、コンテナーの外にまで飛び出して大きな災害を及ぼすこの確率はどうか。これは十万分の一回から十億分の一回である、こう言っておるのです。これはアメリカの公式な数字でございます。ですからこの数字を逆にいえば、コンテナーがあれば外部のものの被害を受ける確率は百分の一あるいは十万分の一で済む。コンテイナーがなければ外部へ灰が飛び出してくるからして、その確率というものは非常に大きくなる、こういうことを数字の上で一応はっきり出しているのでございます。でありまするから、この炉が緊急冷却装置なり緊急停止装置なり、いろいろなものがあったといたしましても、やはり念には念を入れて慎重に安全性を期するとするならば、私は当然コンテナーを安全審査部会がうたってよかったと思う。ところがコンテナーをつけないという申請書にそのままめくら判を押しておるものと私は言わざるを得ないのであります。いかがでございましょうか。
#87
○中曽根国務大臣 安全保障部会がめくら判を押したとは私は考えません。御承知のように、アメリカの濃縮ウラン系統の炉はタイプが小さいのですが、イギリスの天然ウラン系統の炉は非常にタイプが大きいのであります。岡委員これはすでにごらんになった通りでございます。従いまして、炉の性格がまるきり違うのでございますから、構造、保安等も違ってくるのは当然でありまして、イギリス炉のタイプにおいて今建設中のもの、将来建設するものについて、コンテナーをつけているという例は聞いておりません。従って、これはアメリカ系の炉とイギリス系の炉のタイプ、機能の差からきておるものだとわれわれは考えます。
#88
○岡委員 よく中曽根委員長は、英国の炉は二重、三重の安全装置があり、またコンテナーの費用でこのような安全装置の方にお金を仕込んである、こういうことでございますが、しかし先ほどお話いたしました、イタリーのSEMMが国際入札いたしまして、これにとうとう落札をいたしましたアメリカの炉、この炉はやはり、この報告を見ると、二重、三重の冷却装置も停止装置も持っております。二重、三重の緊急事態に対する装置を持っておる。にもかかわらず、やはりコンテナーというものをつけておる。またアメリカのマッカローは、炉の安全については私は世界的な権威と存じますが、いかなる炉においてもコンテナーは不可欠だと申しております。ところが、こういうやはり世界の権威者の主張というものがこの場合裏切られておる、無視されておる。私はこういう点でもこの炉がコンテナーが要らないというような、この答申に現われた態度というものは、私は、決して正しく住民の側に、被害を受ける住民の側に立っておらない、十五億かかるからコンテナーはつけたくないという会社側の利益を代表しておる、こう疑われてもいたし方がないと存じます。そういうようにきわめてへんぱなものである、へんぱな答申であるという点につきましては、たとえば万一事故が起こったときに、この炉がどのくらいの有害な放射能を出すかという点について、会社側の申請書によれば二十五キューリーしか出さない、こういうことでございます。ところが御存じの英国の原子力公社の原子炉の安全部長、原子炉の安全についての当の責任者であるファーマー氏は、二百五十キューリー、十倍の大きな数字を示しておるのでございます。私は、こういう点から見ましても、おそらく世界一過小に見積もったところのこういう放射能数字を出しておるという点から見ても、またそれを是認しておるというこの答申というものの妥当性を疑わざるを得ません。その点についての委員長のお考えはいかがでございましょうか。
#89
○中曽根国務大臣 放射線障害対策につきましては、この答申の第九章にも明記しておりまして、最悪の事態をいろいろ解析しております。この答申によりますれば、最悪の事態といえども国際水準をはるかに下回る状況でありまして、安全であると判定せられております。これをわれわれは今後さらに審査を継続していきたいと思っておりますが、一応はこの審査の結果は尊重されていいと考えております。現に日本がとっておりまする態度は、ICRP、国際放射線防護委員会が出しました結論等も十分に考え、またイギリス、アメリカ等においての職業人並びに一般人に対する放射線防護の比率等も考えまして、むしろイギリス、アメリカなんかよりはさらに厳格な条件を当てはめてこの炉は作られておるわけであります。そういういろいろな観点から検討いたしまして、私は安全であると考えます。
#90
○岡委員 私は許容濃度というようなものを問題にしておるのではございません。事故のときにこの炉が最大どれだけの有害な放射能を出すか、それが二十五キューリーである。そういう数字というものは、私は、これほどの大規模な実用炉において、世界のどこにあるかと言いたいのでございます。こういう点が前提となって許容量というものもまた出てくるわけでございまするが、私はこの前提が全く誤っておるのではないか、しかもこの炉を買い込もうとする当の英本国、しかも原子炉安全部長といえば原子炉の安全についての責任者であり、権威者でなければならぬ。この人が二百五十キューリーということを言っております。ところが申請書では二十五キューリー、私はそういう二十五キューリーをのんで、その上で従って許容度のはるかに下であるという結論を出されるというところに、この安全性に対するきわめてずさんな考え方、極端に申せば会社の言葉をそのままうのみにしておられる、住民の放射能被害というものは問題にしておられない態度である、非常に一方的な答申であって、ここにも私はこの答申というものの科学的な信憑性というものを疑わざるを得ません。現にファーマー氏はそう言っておるではございませんか。ローマの学会ではっきり発表しておるではございませんか。
#91
○中曽根国務大臣 ファーマーの論文が出ましたものですから、わざわざ原電側においてはファーマーを日本に呼びまして、いろいろ所信を尋ね、また共同研究もしてみたわけであります。そのファーマーの論文というものを一応基準にしてみた場合でも、ファーマーは東海村は安全であるということを結論しておりました。このことは記者会見でも公表したところでございます。ファーマーの報告の中でポイントは三つばかりございますが、そのうちの一つとしてややひっかかると思われた点は、北の方に人口一万一千の久慈町があるという点であります。しかしその点に関しましても、ファーマーは、人口一万以上の人の集団がない方が好ましいと書いてはおりましたが、それは保健物理上、つまりいろいろ検査をしたり、身体検査、健康診断その他をしたりする場合に多いと手数がかかるから、なるたけ少ない方が便利であるという意味であれを指摘したということを聞いております。そういう点からいたしまして、一万一千を上回る久慈という町が北の方にありましても、それは致命的条件ではない。なるほど少なければ少ないほどいいけれども、それがために設置してはならぬという条件ではないということをフアーマーは言っておりまして、われわれもそのように承知しております。
#92
○岡委員 私はそういう都会のことを言っておるのではございません。要するに事故の場合におけるマグノックス炉がどの程度有害な放射能を放射するか、これは付近の住民にとってはきわめて重大な問題でございます。それをファーマー氏は二百五十キュリーという。ところが原電の方では二十五キュリーという。そこでなるほど委員長も言われる通りに、ファーマー氏は日本に参りました。日本に参って現地を視察いたしました。そうして若干の意見を漏らしております。ただファーマー氏のその意見というものは、これはお役所からもらったファーマー氏のステートメントでございますが、ここで読み落としてならない大前提がございます。ファーマー氏はちゃんとこう言っておる。私の英国における任務は、英国原子力公社の保健安全部の安全関係の長であることを説明したい。私は英国原子力公社を通じて英国の原子力産業の開発上必要な安全に関する注意事項について、他の政府機関に助言する責任も持っておる。このような責任があるために、安全問題に対する私の態度は、原子炉運転に関する現在の知識における不確かさや将来原子炉運転方法に変化があるかもしれないことなどの判断をしなければならない。その結果、私は炉の運転者の態度とは異なったものである。私の態度は原子炉設計者のそれよりもはるかにストリクトな見方をいたします。こう言っておる。要するにファーマー氏は原子炉の安全に責任を持っておる。国民に責任を持っておるから、その立場において起こり得るあらゆる悪い条件というものを考えて、最も悲観的な線を引くのである、こう申しておる。私は、原子炉の安全審査部会というものはこのような態度に立たなければなるまいと思います。このような態度に立って、被害を受ける者の側から、受けさせないという努力をする、これが私は安全審査部会の諸君の任務じゃないか。ところがそうではない。ファーマー氏の二百五十キュリーが二十五キュリーというまだ経験も何にもない原子力発電会社の申請書をそのままうのみにして、これを間違いないと言っておる。ここにも安全審査部会の答申案なるものの安全と認めるということに対しては重大なる疑義があると思います。重ねて委員長の御所見を伺います。
#93
○中曽根国務大臣 ファーマーはその職責上非常に厳格な条件を好ましき条件として出すことは当然であると思います。われわれ原子力委員会といたしましても、国民の安全ということは最も重大なことでありますので、なるたけ最大限の厳格な条件を当てはめつつ、しかも経済性その他の点も考え、立地条件その他の点も考え、今の日本の状況に合うように、しかも国民の安全ということは必須の条件といたしまして、いろいろ判断を下しておるわけであります。そういう見解から原子炉の平常時及び最悪事故時におけるヨードの放出あるいはアルゴンの放出あるいはガンマー線の放出等をすべて検討いたしました結果、安全であるという結論に達したものと考えております。
#94
○岡委員 問題は、前提として万一の事故の場合に何キュリー出すかということが、公衆の安全の側に立っておるファーマー氏は二百五十、原電は二十五だ、ここに問題がある。その二十五をのんでおるというところに私はこの安全審査部会の結論の科学的の信憑性が疑われると申しておるのでございます。
 その次の問題でございますが、今わが国がこの大型の炉を導入するときに
 一番心配な点は、御存じのように地震の問題でございます。何しろこの炉は二、三万個の黒鉛のれんがを積み重ねるのでございますから、万一地震でガラガラとくるということになれば大へんな事故を起こすことは当然でございます。この地震に対する設計、これは
 一番念には念を入れなければなりません。ところが、この地震の安全設計という点に関してこの答申を拝見いたしますと、何らこれも実験的な証明の裏づけがございません。プリンシプルを妥当と認めるだけで実験的に安全の証明がございません。これでは、耐震設計は安全であるというこの答申というものはまことに疎漏千万なものであり、科学的に正当なものとは言えないと存ずるのでございますが、いかかでございます。
#95
○中曽根国務大臣 地震の点は、これは一番重要視して検討した点でありまして、この点は岡さんと見解を異にするのを遺憾に存じます。武藤東大教授以下をイギリスにわざわざ派遣いたしましたり、特に混合の共同研究会を作ったりいたしまして、これは厳重にやりました。そうして建築研究所におきましても、相当な金を出しまして振動試験も実施いたしましたし、それから黒鉛の構造等につきましても、両者協議の結果、新しいハチの巣型の組み合わせ式の黒鉛の築造という方法を考えまして、地震については、関東大震災の三倍程度の強度のものがきても大丈夫であるという条件のもとに設計がなされておるとわれわれは聞いております。
#96
○岡委員 ところが、この答申案を見ますと、地震に対してはこういうことが書いてあります。「今後その細部設計を合理化し確実にするため、GEC側で行なう実験と緊密な連絡を保ちつつ、会社側においても独自の立場においての実験の継続が望ましい。」今後とも実験を続けて安全性を確かむべきであると、こう書いてあるわけであります。御存じのように今実験がされたとおっしゃいますけれども、これは要するに中性子の照射などで黒鉛のれんがが膨脹する、ふくれるということで、相当なお金を使って会社側は実験をされました。一月の初めには公開実験もされました。ところがことしの六月になってから、ふくれるのではない、縮むのである、こういうことが明らかになった。そこであわてて今度は耐震設計のやり直しをやられた。そうして英国側とこちら側とでいろいろと連絡をされながら打ち合わせをせられ、その結果新しい設計ができ上がっておる。でありますからこの設計については、設計のプリンシプルとしての安全性を保証するに足る実験というものが行なわれ得るはずがございません。英国できわめて、それこそほんとうにきわめて小規模なものがあったということは聞いておりますが、それ以上大きな実験というものは聞いておりません。御存じのごとく、科学的な実験というものは小規模から中規模、中規模から大規模へと進めて、さて実際のものに適用できるかどうかという相似率というものを求めてからでなければ信憑性が出てこない。この薬が人間にきくかきかないかということをためすには、初めはモルモットに使い、イヌに使い、そうして人間に使ってきくかきかないかということで、初めて人間に用いていくという段取りをやる。ところがこれは、全くモルモット段階というよりも、アミーバ段階程度な実験はされておりますけれども、相似率を求めて、実用規模にほんとうにやってみたときに安全であるかどうかという実験的な証明というものは何もやられておりません。これでは私は、一番心配しておった地震に対する安全設計としては、決して妥当なものではない、かように思うのでございますが、いかがでございましょうか。
#97
○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、地震については特にこれを重視いたしまして対策を講じたのでございまして、黒鉛の収縮の問題が出ましてからも、武藤教授以下地震に関する調査団をイギリスに派遣して、そしてさらに地震に対抗し得るような設計等についても考案をし、また黒鉛の積み重ね方等につきましても新しい考案をし、周到な手配をしておるものとわれわれは考えます。しかしこれから築造していく上について、順次できていく上について、できた順に部分的に振動試験をしてみて、はたして設計通りできているかどうか、これを確認することは当然でありまして、そういう厳重な措置を審査報告書は要求しておるのであります。これは念には念を入れる措置でありまして、当然のことと思います。
#98
○岡委員 今申された武藤清東大教授、この方は九月の二十六日以来英国のGECと、黒鉛がふくれるかと思ったら縮むということで地震に対する安全設計のために英国に打ち合わせに行っておられる。この武藤教授が帰られた新聞記者団会見においてこういうことを言っておる。安全審査の段階では、プリンシプルとしての安全性が検討されればよい、実施設計が完了しなくてもよいと思う、次に工事施行認可申請があり、発電炉ができ上がったときには竣工検査があるので、完成までには次次と改良した設計を採用することになろう、こういうことを言っておる。確実な実験的証明というものは武藤さん自身があとに譲っておられる。しかも英国には地震がない、日本には地震があるから、レンガ作りの大型な炉を入れてはあぶないぞということで、われわれは地震に一番心配をしておったことは御存じの通り。さて、ところがこの武藤さんの発表を見ると、十月の初めに予定されておった英国のメーカーの振動実験は、実験台が完成していなかったために立ち会うことができなかった、こういうことを言っておられる。地震のある国から、地震が一番問題だというのでせっかく現地へ出かけて行って、わずか一月足らずの時間を実験台が完成していなかったからといって帰ってきておる。私は責任ある学者ならば、実験装置そのものにまでも、実験の方法そのものにまでも中へ入って参画をして、実際に実験をやってみて自分の目で確かめてくるという、そういう責任感がなければならないと思います。ところがそれが何ら行なわれておらぬ。そして実験はあとあとのことでよかろう、こう言っておる。安全審査の段階ではプリンシプルだけでもいい、これでは実際にやってみて万一事故が起こったらどうなりますか。科学的な結論というものは、繰り返し申しますように、実験の裏づけがなくては信用ができないものなのです。実験の裏づけが耐震設計という一番重大なポイントではないではありませんか。当事者がそれはあとでいいと言っておるではございませんか。自分が出かけながら地震の実験の立ち会いさえもやっておらない、そういう報告を基礎にして耐震設計が安全であるなどということは、私はそこつ千万だと思いますが、いかがでございましょう。
#99
○中曽根国務大臣 この審査部会の報告書の中にも第七章地震対策というところがございまして、相当膨大なスペースをこれに使っておるのであります。この中にも書いてあります通り、第五十九ページに、原子力発電会社及びGEC側において、模型並びに部品に対し各種の構造耐力実験が行なわれ、これらの実験によって得られた資料が構造設計、数値解析並びにその検討に利用されている、こう書いてあります通り、相当な実験はやっておるのであります。従いましてやっていないということは何かお間違いではないかと思います。
#100
○岡委員 私が申し上げているのは、小さな規模の実験はやったということは聞いております。しかしそれがさていよいよ実用規模の動力炉を導入する場合の安全審査の基準として、実験証拠的証明としてはまだ十分なものではない。黒鉛がふくれるというあの前提に立ってさえも相当な巨費を使う。一億に近い金を使い、半年以上の日数を使って実験をやっておる。ところが今度は半年たってから、ふくれると思ったら縮むのだ、そうなれば地震の場合はやり直しだということで、さて地震の場合大丈夫だという結論が出ておるまでにはほんの二、三カ月のインターバルしかありません。その間にそういう大規模の実験ができるはずのものでもございません。だからやはり実験はあとに大規模のものは残していこうということを現場へ行った人自身が申しておる。そうしてみれば、耐震設計は大丈夫だというその裏づけとしての実験というものはまだ行なわれておらないと私は見ざるを得ないのでございます。そうしてそういうように実験的な裏づけがない安全審査というものは、科学的には私は価値の十分にないものであると言わざるを得ないのでございます。
 そこで私はいろいろ中曽根委員長からもお話を承りました。私も率直にこの安全審査部会の答申についての意見を申し上げましたが、私は若干の点でやはりあなたと大きな食い違いがあります。とにかくまずいろいろな資料については秘密主義というような傾向が非常に多い。しかも安全審査部会は、学術会議を代表すると見てもいい方が、この安全性に対しては責任を持てないということを言い切られたということになりますと、これは国民の炉の安全性に対する信頼というものは大きくそのことによって失われる危険性があるということ、それから答申の内容が、これも先ほども申しましたように、望ましいとか、あるいはと思われるとか、必要であると認めるというふうに厳格な、まじめな、責任感のある科学者の作った答申とはほんとうに見えないような表現が随所に用いられておる。私はそういう点でもこの答申についてはきわめて疑義を持っております。
 それはそれといたしましても、繰り返し申しますように、科学的な決定としては、それに必要な実験的証明というものが十分に裏づけられておりません。そういうようなことを考えますと、特に事故が起こったときの放射能がどれだけ出るか。これは公衆の安全という立場から、ファーマー氏は二百五十、ところが同じその炉を買おうとする日本の会社は二十五キュリー、これを審査部会がのんでおる。コンテナーも地元の人があれほど作ってくれというのを、単に技術的な理由からこれを拒否しておる。こういうようなことから見まして、私は安全審査部会の答申というものに大きな疑義を持っておるのでございますが、この際いま一度お伺いをいたします。真にコールダーホール改良型マグノックス型の動力炉を導入するというなら、もう一ぺん万人が納得のいく、しかも公正に科学的な安全性の答えを出していただかなければならぬ。これではきわめて不満足でございます。不十分であります。もう一度私は安全審査というものはやり直す必要があると思いますが、委員長の御所見はいかがでしょうか。
#101
○中曽根国務大臣 坂田委員のお手紙の中では三つの点を指摘しておられるようでございまして、第一は学術会議と事前に協議して交渉すべし、この点についてはこの二十七日の部会において、兼重さん及び矢木さんから、これは専門部会であって、専門家が集まって科学的に専門家の意見として検討すべきものなのであって、そういう専門家の専門的な機関が学術会議と横断的に連絡するというのは変だ、それはもっと上級あるいは別な機関がそういうことをやるべきだという御議論がありまして、坂田さんは沈黙を守られたようであります。私もそれは矢木さんや兼重さんの意見が正当のように思います。第二に申請書を公表しろということは、やはり工業所有権の保護、ノー・ハウやパテントの関係で国際条約や国際通念に従ってこれを処理しなければ、日本の将来の工業や技術の水準の向上は望めないということもありまして、これもやむを得ない。しかし二十日ごろまでにはできるだけこれを公表するように、今英国側と交渉している最中であります。第三番目の原子炉の安全性評価についての基本的態度が不明確である、具体的には事故時における一般人に対する緊急線量の限界等が不明瞭である、こういうお話があったようでありますが、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、一般人に対してはイギリスやアメリカは二百レムまでは大丈夫だという水準をとっておるのを、この原子炉の場合におきましては二十五レム、すなわちそれぐらい少ないものが出てきても危険であるという、イギリス、アメリカ以上の厳格な要件を基準にして審査しておるのであります。こういう点から見ましても、私は安全審査部会の結論は合理的であると考えております。しかし原子力委員会は大所高所に立って判断しなければなりませんし、国民の安全ということが第一の大事な要件でありますので、われわれはさらに大局的見地に立って検討を加えていきたいと思っております。
#102
○岡委員 大局的見地とは具体的にどういう見地でございますか。
#103
○中曽根国務大臣 それはたとえば経済性の問題もありますし、それから設置する場所の隣に飛行場その他がございますが、そういう問題についても人心に及ぼす影響、そういう心理的効果等も考えまして、単に技術的見地のみならず、総合的な見地から判断を加えようという意味であります。
#104
○岡委員 私は、特に大局的な見地と言われまするので、御注意を喚起したいと思います。私は大局的な見地で御検討になるならばこのマグノックス炉というものが、英国なら英国の国内においてどう評価されておるかということを、じっくり一つ調べていただきたい。また国際的に見てこの炉がどういう評価を受けておるかということを、よくお調べを願いたい。それよりも原子炉そのものの安全性というものが、現在国際的にどう評価されておるかということを十分御検討願いたい。まずそれが大局的な見地のポイントだと私は思います。御存じのように英国でウインズケールの炉が三年前に大事故を起こしました。あのときまであの炉がそういう事故を起こそうなどとは、だれ一人思っていなかった。ところが調べてみたら、やはり中性子が長い間黒鉛を照射した場合には、予想し得ざる新事実が起こる。これが異常な熱の分布を来たして、それがあの事故の原因になったという新しい事実が発見されております。このウィンズスケールの炉もやはり形としては同じ黒鉛減速、天然ウラン型で、ただ空気と炭酸ガスだけが違っておる。あるいは今入れようとしておるこのコールダーホール型炉についても、二年前にはいわゆるプラスの温度係数という問題が非常に大きくクローズ・アップされて騒がれたことがございました。それも寄ってたかって非常な安全装置をつけて、そこでどうやらこの問題は防がれ得るということに相なったわけでございます。さてことしになってから、中性子の照射によって、熱も加わるから黒鉛はふくれるだろうと思っておったところが、半年したら逆に縮むんだ、これじゃいけないということで、今度は耐震設計を初め、設計のやり直しをしなければならぬ、こういうように英国本国におけるこのマグノックス炉あるいはそれに近い炉の安全性が、次々と新しい事実によってくつがえされてきておる。人間は神様ではないのですから完全なものというわけにはいかないでしょう。しかし原子炉、原子力の平和利用というものは、何と申しましても本格的に出発してから十年と少しばかりです。従って中性子によって物質が照射された場合に、化学的に物理的にどんな変化が起こるかということは、まだ非常にアンノーン・ファクターが多い。アンノーン・ファクターが、知られてくるつどに大きな変更を加えなければならない、安全性というものが考え直されねばならないというのが国際的な今日の原子炉の段階でございます。この事実をよく原子力委員会というものは把握してもらわなければならない。そういたしますならば、私は三百五十億というような大枚の資金を投じて、そしてアンノーン・ファクターの多い、従って技術的に安全性がまだ確実ではないこういう実用炉を日本に導入するということが、はたして日本の原子力の平和利用の発展のためにいいかどうかという、こういう点を私は原子力委員会は十分に御検討いただかねばならないと思う。私をして言わしむれば、日本においてはまだ早い。そういうアンノーン・ファクターの多いものを莫大な資金を投じて入れるよりも、やはり日本にはもっと小型な――各国が一生懸命新しく再発足して、原子力発電の研究を始めていろいろなものをを作り出した。でありますからその中からピック・アップをして、そして日本の科学者の潜在能力をそこに動因をしながら、日本人もやはり研究という段階をもっと力強く進めて、実用に取りつく前にこれをやっていく段階にきていると思う。世界の原子力の発電に対する態度が、そういうふうに変わってきているのだから、日本が今大きなものを作っても、四年後には各国にすぐれたものがどんどんできることになって、古色蒼然たる記念碑のようなものを日本が抱きかかえなければならない羽目になるというよりも、やはり将来に備えていく、こういう方針に立って、日本原子力委員会としてはこの原子力発電政策というものを根本的に立て直すべきであると存じます。その点についての委員長の御所信はいかがでございましょうか。
#105
○中曽根国務大臣 御指摘になりました事故を起こしたイギリスのウィンズケールの炉は、あれは戦争中からプルトニウムを生産する目的で、軍事用に作った粗雑な炉であります。しかし今運転しているコールダーホールの炉は、多少プルトニウムを作っておりますけれども、主として発電用に、平和目的を主として作られたものでありまして、そのために非常に厳重な管制が行なわれておるわけであります。このコールダーホール炉はすでに二年間の運転の実績を持っておって、事故を起こしたということを聞いておりません。しかもわれわれが考える場合に、一番大事なことは運転実績ということなのであります。いかにデザインがよくても、理論がよくても、実際運転して一年なり二年なり安全に行われたという実葉ないものは、これは日本へ持ってくるわけに参りません。現在世界の原子力の趨勢にかんがみまして、そういう運転実績があって安全度があるのは、イギリスのコールダーホール・タイプしかございません。われわれはそういう観点から、運転実績というものを非常に重大な要件とも考えまして、また諸般の状況を考えてこの炉にきめたのでございます。またイギリスにおきましても、先ほど申し上げましたように、この炉及びこの改良型が一番適当であるということで、先般作りました五カ年計画ないし十カ年計画というものをくずざずに、そのまま建設しておるのであります。先ほど申し上げましたように、コールダーホールには今七万キロが二基動いている。それからチャペルクロスは一九五九年末、すなわちことしの末にこれも二基運転し出します。それからバークレーは来年、これは二十七万キロ、プラッドウェルは来年三十万キロ、ハンターストーンはその次ぐ年、すなわち三十万キロ、それからヒンクレーポイントは五十万キロ、これはその翌年、こういうようにイギリスは既存のコールダーホール改良型の炉を依然として建設していく方針を進めておるのでありまして、このイギリスの状況を見ましても、コールダーホール・タイプ炉が危険であるというふうにわれわれは考えられないのであります。
#106
○岡委員 何しろはるばる離れた国のことでありますから、情報で話をすることはやめたいと思いますが、ただ確実に言えることは、今日本が導入しようとするコールダーホール改良型炉というものは、英国のどこにも運転されておりません。中空燃料を使った炉もございません。バーン・アップ三千度を出しておる炉もございません。現在英国で運転されているものは、電力よりもプルトニウムをとろう、少なくとも電力とプルトニウム併用炉が二年間運転実績があるだけでございます。純商業的な発電所用炉というものはまだ現実に運転されていないという事実を、あなたは否定されるものじゃないと思います。また一方私の得ておる情報によれば、プラッドウェルなりあるいはチャペルクロスにいたしましても、やはりいろいろな英国の事情からいたしまして、この炉も純発電用からプルトニウム生産の併用炉にしようという改造が行われたということも聞いております。そういうことでございますから、運転実績があると申しまするが、現に今入れようとする炉は、燃焼率は向うは平均千三百度しか上っておりません。日本は三千度でございます。これは理論的に三千度上る、四千五百度上るといいますけれども、現実にたいて三千度上げておりません。でありますから、運転実績というものは、きわめて不完全な運転実績であるということは、これは原子力委員長も御存じだと思います。
 時間もございませんから次に移りますが、大蔵大臣にお伺いいたします。と申しますのは、御存じのように、こうして原子力産業がどんどん勃興して参りますと、各国とも原子力の災害については国が補償しようという政策を打ち出しておるようでございます。そうなりますと、国民の血税でもって万一の災害を国が補償するという以上は、大蔵当局としても、原子炉の安全性というものについては重大な関心を注がれるべきことと思うのでございます。念には念を入れなければならぬと存ずるのでございますが、この点大蔵大臣は、この原子炉の安全性というものについての御所信を、この機会に一言お伺いをいたしておきたいと存じます。
#107
○佐藤国務大臣 この点は先ほど来お話を伺っておりまして、最も重要なポイントだと思います。そこで原子力委員会におきましては、特別に安全部会を設けて、科学的に十分検討いたしておるわけでございます。私は技術者ではございません。この専門的な安全部会の答申、この意見を尊重する立場でございます。
#108
○岡委員 先ほど大蔵大臣もお聞きのように、原子力委員会がいろいろな要素を加えて、この答申を重要な参考として導入の可否を決定するという態度でございますので、私は先ほどもるる申し述べましたように、安全審査部会の答申というものは、科学的に見て正確を欠いた部分がたくさんある、こう申し上げておるのでございまして、どうか大蔵省当局としても、この原子炉の安全性については、今のような投げやりなお考えではなく、やはり十分に御検討していただくことが妥当と存じますので、この点を強く要望いたす次第でございます。
 池田通産大臣にお尋ねをいたしますが、経済性の問題でございます。この原子力発電というものが、一体経済的に採算に合うものと評価されておられますかどうか、この点についての大臣の御所信を承りたいと思います。
#109
○池田国務大臣 原子力を平和的に利用しますにつきまして、今お話の発電の問題が起こっております。われわれの調査したところによりますと、大体火力発電と同じ程度ではないか、こう考えておるのであります。もちろん金利その他の関係もございまするが、原子力発電所は初めの建設費、資本費が七〇%ばかりかかります。しかし燃料費が相当安い。しかし火力発電は燃料費が六〇%ばかりかかりますので、大体二十年間の計算でやっていけば、火力発電ととんとん程度に相なると思います。
#110
○岡委員 お役所のお調べの数字もいただきました。大体原子力発電並びに新鋭火力二十年の、耐用年数八〇%の実働といたしまして、大体二十年間の通算とすれば、一キロワット時が四円六銭、四円七銭というおっつかっつの数字のようでございます。ただ私は経済性ということになりますれば、通産大臣としても大きな関心もあり、責任もあろうと存じますので、この機会に、日本における原子力発電というものの経過をぜひ一つ御検討願いたいと思うのでございます。御存じのように、今から四、五年前に英国のヒントン卿が来られた。原子力発電をやれば一キロワット時〇・六ペンスだ――日本にすれば二円五十銭くらいでしょうか。そこで当時の委員長の正力さんが、それでは原子力発電をやるべきだということで、私をして言わしむれば、少し独走をされたようでございます。ところが一昨年原子力委員会が策定いたしました原子力発電に関する長期計画、これでは一キロワット時が大体四円四十銭から四円七十五銭の間で行けるだろう、こういう計数が出ておりました。ところが先ほど来たびたび申し上げましたように、いろいろな事情がございまして、設計の変更をしなければならぬ、安全装置を加えなければならぬ、こういうことから資本費が非常に増大をいたして、その結果四月に原電が出された数字は、一キロワット時四円九十八銭である。ところが最近聞きますと、これが五円ほどに上ってきておるというような形で、さっき私は安全性についても、まだまだ原子力発電所というものは実験段階だと申しましたが、この経済性を見ましても実験段階でございます。こういう実験段階にあるような事情というものを、国としては十分に検討を加えた上でないと、経済性の判断というものは立ちがたいと思います。今私はほんの素通りしたような形で事実を列挙いたしましたが、原子力発電の経済性、一キロワット時のこのコストというものは、こういうふうにだんだん上ってきておる。これはここで上らないという確信はだれも持てないと私は思います。そういたしますれば、言葉をかえて言えば、原子力発電の経済性を判断し得る段階に今日はない。日本だけではない。どこの国もないと私は思うのでございますが、この点についての通産大臣のお考えはいかがでございましょうか。
#111
○池田国務大臣 技術的にわたりますので、事務当局より御答弁させたいと思います。
#112
○小室説明員 建設費の計算が、英国のGECと原子力発電会社との間にまだ最終的な契約もできておりませんし、また細部の設計等について、今後さらに検討して変わってくる面もございます。ただいまの経済性の判断について一応調査いたしましたところは、現在の原子力発電会社から出ております申請書の数字その他を勘案して、一応の推算をいたしたものであります。しかしながら将来工事費その他の点で若干の変動がありましても、大勢観察として、原子力発電と新鋭火力の発電とのコストの比較は、大体甲乙のないところにくるじゃないかという感じは持っております。
#113
○岡委員 内容の紹介はやめますが、これは八日の朝日新聞の記事でありますが、米、英、ソの原子力発電は当分計画はおくれる、こういう記事が出ておる。なぜおくれておるのか、またおくらせしめておるのかということが書いてございます。こういうわけで、現在の原子力発電については、アメリカや英国やソ連邦のような原子力に関する先進国においても、再検討の時代に入ってきておる。昨年九月のジュネーブ会議においても、原子力発電の技術並びに経済性は再検討の段階であるという発言が非常に強かったことがございます。私はそういう意味において、ぜひ一つこういう点は御考慮を願わなければなるまい、国際的な視野から御判断を願いたいと存じます。
 なお、大蔵大臣にもお尋ねをいたしたいのでございますが、このコールダーホール改良型マグノックス炉の本家であるイギリス本国の状態でございます。これもしばしばこの六月以来、あるいはタイムス、エコノミスト、あるいはフィナンシャル・タイムスなどの論説を見ますと、英本国でもマグノックス炉というものに対する自己批判が非常に起こってきておる。原子力発電政策は別な形に切りかえなければならぬ、こういう点が出ておるのでございます。これもお役所からいただいた資料でありますが、英国の下院が去年の夏から一年近くかかって、一体英国の原子力発電政策はこれでいいのかどうかということを、英国下院の予算特別小委員会というものを設けて、経済性を吟味いたしております。そのコメントがございますので、私はここに簡単に読みます。英国下院の原子力発電に関する予算特別小委員会のコメントでございます。こう言っております。まずマグノックス炉による原子力発電所の成功は云々と言って、この炉は一応の成功は見た、しかしながらマグノックス炉は、建設コストが高いという欠点があり、これを引き下げるためには、一定量の燃料からより多くの熱を引き出すこと、タービンの効率を高めるため運転温度を上げることなど若干の条件を書きまして、そこでAGRはこの目的を持つものであり云々ということで、英国はこれからは今導入しようとするマグノックス炉からAGR炉へ転換をするのであるというコメントを出しております。これかあらぬか、最近の外電によりますると、いち早く英国の燃料動力相は、当初はコールダーホール改良型マグノックス炉に予定されておったダンゲネスの発電所、これをAGR型に変えようということを発表いたしております。これは新聞の情報でありまするが、もしそうであるとすれば、下院のコメントは燃料動力相によって確認をされ、英国の原子力発電政策は大転換でございます。このAGRの炉というのは、特に燃料は御存じのように低濃縮ウランを使っておる。そういうわけでございますから、当の英国のいわば衆議院においてさえも、こういう見解がはっきり出てきておる。このことを通産大臣としても十分に吟味をしていただかねばなりません。
 なお、私は大蔵大臣にお尋ねをいたします。安全性については、なるほど権威の意見を聞こう、私は技術者でないと申されますが、御存じのように、原子力発電株式会社というものは、二〇%は開発銀行が出資しております。残りの八〇%はそれぞれ国が投融資をしておる電源開発なり、あるいは九電力が出資することになっております。しかもコールダーホール改良型を導入いたしますと、資金計画を見ますと、なお今後四カ年間に約六十億の国の出資を求めておる計画になっております。そうでありますから、万一経済性においては見込みがない、また疑義がある、こういうものを導入をしたら、国の資金が投ぜられるのでございますから、これは当然予算上、決算上、大きな問題を残すのでございます。この点においても、私は大蔵大臣として経済性の問題については決して無関心であってはならないと存じまするが、その点についての御見解をもあわせてお聞きをしたいと思います。
#114
○佐藤国務大臣 御指摘のような点も十分検討いたしまして、予算化する場合には慎重な態度で臨む考えでございます。
#115
○岡委員 もう一問だけお伺いをいたしますが、これは通産大臣、中曽根原子力委員長にお尋ねいたしたいと思います。それはことしになって参りましてから、原子力産業会社というものが続々できてきておるようでございまするが、このような状態は放任をしていいかどうか、この点について原子力産業の育成についての御所信を、通産大臣並びに委員長から承りたいと思います。
#116
○池田国務大臣 民間会社におきましても、原子力の研究につきましては相当熱意を持ってやっておるようでございます。将来の燃料問題、ことに高度の科学性を持ちまする原子力の研究は、民間においてやって何ら差しつかえない、こう考えております。
#117
○岡委員 ただ現状をいかに見られるかということを私はお伺いをいたしておるのでございます。御存じのように原子力産業というのは、相当に、かつ広い技術的な基盤を必要とする。同時に一個のユニットな事業にいたしましても、相当な資金を必要とすることは御存じの通りでございます。ところがそれがことしになってから七つできております。その七つできておる出資会社を見ますると、セメント屋がある、土建屋がある、あるいは重電機器関係のものがある、あるいは燃料の加工成型に関係ありと思われるのもあれば、あるいは重水の会社もあれば、減速材の会社もある、貿易商も入っておるというような、言ってみれば一種の原子力コンツェルン、こういうものが日本にすでにもう七つできておる。ところが一方英国ではこの春は五つでございました。それがここ三カ月の間に三つになりました。なぜ三つになったかというと、結局もう英国政府の発注、海外からの発注もあまりないだろうというので、来年はせめて一つの産業グループが一つずつの発注を受け持とうではないかというような考え方のようでございます。こういうわけで、十分技術的な基盤もある英国の産業グループが、五つが三つになっている。ところが一方日本では、何もなかったものがこの一年足らずの間に突如として七つ出現しております。一体日本にこのコンツェルンに対する市場がありましょうか。三百五十億で、たとえばマグノックス炉を買うといたしましても、国内ではおそらく百五十億程度のものを調達し得ればぎりぎりといわれております。こういうようなしわばきわめて盲目的な形において、日本に原子力産業がどんどんコンツェルンの形で出てくる。これでは日本の正しい原子力政策、正しい原子力の研究開発というものを、歪曲しようとする傾向がなきにしもあらずと思うのでございます。そういう意味において、この原子力コンツェルンというものに対しては、やはり原子力産業の特性にかんがみても、原子力委員会なり政府としては、公共的なコントロールというものがどうしてもなくてはならないと存ずるのでございます。特に原子炉は一歩あやまてば軍事利用に使われる危険があるだけに、基本法が明確に平和利用の方向を示しているだけに、やはり民間会社にものをゆだねるという経営方式ではなく、最高にはやはり国家のコントロールというものをあくまでも堅持していくという方針がなければならないと存ずるのでございますが、この点について通産大臣並びに委員長の御所見を重ねてお伺いいたしたいと思います。
#118
○池田国務大臣 私の聞いておりますところでは、大体今五つほどあると思います。最近に明電舎等がやるとか聞いております。しかもこの五つのものはおのおの型が違っておりまして、そうしてまだ基礎的研究の程度でございます。今これを行き過ぎだとかなんとかいうのでとめるということは、いかがなものかと存じます。
#119
○中曽根国務大臣 通産大臣と同じ考えでございますが、新しい事業の分野でありますから、いろいろな企画を持って、いろいろな角度から、企業が進められていくということは考えられることであります。こういう新しい企画や事業に対して官僚統制をやって、上からこれを統制するということは、適当でないとわれわれ原子力委員会も考えます。かりにむだが将来出てくるというようなことがあるとすれば、これは自主調整で自然に調節が行なわれていくようになるのではないかと思います。ただ燃料に関する部分は、国際条約の関係やあるいは平和目的その他いろいろな関係がありますので、国家がある程度規制をしなければならないと思っております。
#120
○岡委員 原子力産業をいかに育成するか、公共的な管理、私は官僚統制を申すのではありませんが、できるだけ公共的な管理という方式が、原子力産業の育成の上には大筋として、プリンシプルとして必要である。これはわが党の主張でございますので、ここでは申し述べません。
 最後にただ一点だけ、あの演習場の問題について一言お伺いしたいと思います。この演習場の問題は、他の委員会でもいろいろ論議を尽されたようでございますが、最近原子力委員長としても、何らか積極的な方途にお出になったというような新聞の記事も承っておりますので、この点をお聞かせ願いたいと思います。
#121
○中曽根国務大臣 演習場における模擬爆弾の投下ということは、安全審査部会の審議におきましてもいろいろ検討したようであります。それでもまあ安全だという結論のようであります。しかし、原子力委員会といたしましては、やはり総合的にこの問題を取り上げなければならぬと思いまして、原子力委員会の安全審査部会における結論は、現状の程度で続くならば安全である、将来これに変化があれば考慮する必要がある、こういうことでありますので、最小限現状のものは続くように規制しなければならぬと思います。そういう観点から、必要ある場合は、米軍当局に対しましても、外務省あるいは調達庁を通じまして申し入れをいたしまして、必要なる規制を行なうようにいたしたいと思っております。
#122
○岡委員 この安全審査部会の会長の矢木さんの報告書の提出に際して、演習弾の誤投下の実情を調査し、「現在模擬爆弾のみを使用しており、かつ誤投下も南方に多く、その件数も減少しつつあるという現状に基いて問題はないと判断をいたしました。」なお、しかし、最後にこういうただし書きがある。「原子力委員会よりの諮問に対する科学技術的調査結果答申でありまして、それ以上ではない、それ以上は立法あるいは行政措置で云々」と書いてあるわけでございまして、審査部会の答申案としては、演習場に関する結論は、私は決して科学的に正確性が十分あると言えないという感じがいたしました。と申しますのは、私、実は四日ほど前に現地へ行って見て参りました。ところが、なるほど誤投下の数も減っておるようでございます。いろいろ状態はよくなってきておるのでございますが、そうかと思えば、一昨日、御存じの通り、五百ポンドの模擬爆弾の誤投下がありました。陸上にこれが落ちております。私は、専門家に、五百ポンドの模擬爆弾――爆弾そのものも見せてもらいましたが、そのようなものが落ちたときにどういう影響があるか、たとえば一メートルのコンクリートに一マッハのスピードでこれが落ちたらどういう影響があるかということをお聞きすると、やはり一メートルのコンクリートは全部突き刺してしまうそうでございます。でありますから、これは、原子炉と申しましても、本体は三メートル、四メートル、相当堅固なものでございましても、やはり制御装置であるとか、あるいは燃料の搬入、搬出の施設であるとか、いろいろその遮蔽のもろい部分があるわけでございます。もし微妙なコントロール装置にこれが入って墜落をするというようなことになれば、この自動装置は停止をする。炉は、そのために、結局相当長期間停止をする。そして微妙な自動装置というものも復旧しなければならぬ。これは経済的に見て大へんなことだろうと思います。使用済み燃料を加えておる搬出装置というもの、これも大したシールではございませんから、これがもし万一にも誤投下などによって事故を起こすということになれば、これは直接死の灰の危険もあるわけでございます。しかし、そういうまれな例外は抜きといたしまして、現地へ行って一番心配になったことは、飛行機が八年の間に十回墜落をしておるということです。御存じのように、爆撃演習場だけではなく、戦闘演習場も沖合いはるかにございます。あの上空は、相当広範囲にわたって、いわゆる空のデンジャラス・エリアになっておる。そういうことでございますので、墜落事故がある。しかも、安全な南の方ではなくて、あの日本原子力研究所の北の方にも一回も二回も落ちております。五百ポンドや百ポンドの模擬爆弾なら差しつかえございませんが、今米軍が使用しておる戦闘機は七トン、B57は五十トンです。機体はこっぱみじんに散りましても、発動機は中に入るであろうということを申しております。そういうことでございますると、コールダーホール型だけの安全ではございません。あそこにはすでに炉が一基運転をしておる。来年はCP5、再来年は国産炉、引き続いて動力試験炉、やがては日本の原子力センターとなるであろう。同時に、御存じのように、今あそこには千名の職員がおります。四年たてば二千名といわれておる。その中には、お金で買いがたい若い原子力の科学者がおるのです。万一これがこの墜落事故なんかによって損傷を受けるということになると、これは単にコールダーホール型の安全性の問題ではない。日本の原子力センターそのものが大きく脅威を受ける。ひいては、日本の原子力政策そのものがそこに大きな頓挫を来たす。そういう観点からいたしまして、要するに東海村上空において墜落事故が起こらないためには、どうしても沖合いの演習場、戦闘演習場、対地訓練場というものは撤去してもらわなければならぬ。世界のどこに一体原子炉が密集しておる原子力センターのすぐかたわらに爆撃演習場や戦闘訓練場がございましょうか。中曽根委員長は、原子力施設周辺の整備については、原子力都市計画のようなものでも作りたい、人口の制限も考慮したいというふうなことも申しておられましたが、問題は、そういうものではございません。もっと大きな脅威がある、この事実を十分に一つ御認識をいただいて、私は、コールダーホールのみならず、演習場を撤去しない限りは、原子力センターとしても東海村は不適格地である、こう申し上げたいのでございまするが、委員長の御所信を承りたいと思います。
#123
○中曽根国務大臣 先般起こりました誤投下は、これは五百ポンドではございませんで、二十五ポンドの模擬爆弾でございまして、原子力研究所とは反対の方の南の山林に落ちております。それから、空域につきましては、三つほどございますが、一つは原子力研究所から東方十里の海上にあるわけであります。十里も離れておりますから、かりにあそこで戦闘機の演習をやりましても安全であると考えられております。原子力研究所の上にある制限空域は、あそこの近所で模擬演習、模擬爆弾の投下をやっておるものですから、ほかの飛行機が入ってきてはあぶないというので、ほかの飛行機を入れないという意味において安全性を確保しておるのでありまして、従って原子力研究所や原電が炉を置くことに対する危険性ではないわけであります。かえってほかの飛行機を入れないために、演習をしている場合に安全性が確保されているという問題であるだろうと思います。それから北の方は、久慈の上空からさらに北の方にございますが、これは現在は使用しておらないようであります。いずれにいたしましても、原子力施設の周辺の安全を確保するということは非常に大事な要件でありますから、原子力施設が安全になるように、防衛庁並びに外務省とも協議をいたしまして、必要なる措置はとりたいと思います。現在飛んでおります飛行機は、五十トンというお話でございましたが、二十二トンが最大のものでございます。こういう条件もいろいろ解析いたしまして、安全であるという結論が出ておるのでございます。
#124
○岡委員 私の質問は一応打ち切りたいと思います。問題は、二十五ポンドか五百ポンドか、二十二トンか五十トンかの問題ではないと思うのでございます。かりに二十二トンにいたしましても、発動機は何トンかでございましょう。万一、それが単に施設の上に落ちなくて周辺に落ちましても、その衝撃波というものは相当なものが予想されるわけでございます。要は、やはり日本の原子力センターを守って、日本の原子力政策をいよいよ将来大きく発展をさせるという見地から見て、どうか中曽根委員長としては、米軍の都合という立場でものを考えないで、日本の原子力政策と、それに従事するあのパイオニア的なまじめな科学者たちを思って進める、こういう考え方に立っていただきたいと存ずるのでございます。
 大型炉につきましては、国際的な観点から思いとどまるべきであるということを、私はるる事情を申し上げたのでございますが、どうか原子力委員会といたしましても、これらの諸点を十分お考えになって、特に大局的見地から国際的な原子力発電の実情というものを十分お調べの上で、これが実験段階であるならば、あわてて日本は実用炉を導入する必要はございません。その資金をもっと有用に活用する道が多々残されておるのでございますから、そのような認識に立たれるならば、ぜひとも日本の原子力発電政策を大きく転換をしていただくようにお願いをいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。(拍手)
#125
○小川委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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