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#1
第033回国会 本会議 第3号
昭和三十四年十月二十八日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二号
  昭和三十四年十月二十八日
    午前十一時開議
 一 国務大臣の演説
 二 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 岸内閣総理大臣の演説
 村上国務大臣の本年発生の風水害の災害報告
 佐藤大蔵大臣の昭和三十四年度補正予算に関する演説
 藤山外務大臣の外交に関する演説
 議員請暇の件
 国務大臣の演説に対する質疑
    午前十一時五十七分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#3
○議長(加藤鐐五郎君) 内閣総理大臣から演説の通告があります。また、村上国務大臣から本年発生の風水害の災害報告に関し、大蔵大臣から昭和三十四年度補正予算に関し、外務大臣から外交に関し、演説の通告があります。順次これを許します。
 内閣総理大臣岸信介君。
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#4
○国務大臣(岸信介君) ここに、臨時国会が開かれるにあたり、災害対策その他当面する諸問題と、これに対処する所信を明らかにしたいと思います。
 過般来の相次ぐ台風は、全国各地にきわめて多数の死傷者と被災者を出しました。私は、これらの方々に対し、深く哀悼と同情の意を表するものであります。(拍手)
 特に、このたびの第十五号台風による被害が、死者、行方不明者合わせて五千名をこえ、高潮による水没が、長期、かつ、広範囲にわたる等、史上まれに見る大規模なものでありましたことは、まことに遺憾であります。
 政府は、時を移さず、応急救助については中央災害救助対策協議会を開き、復旧については中央に災害復旧対策協議会を設け対策に当たるとともに、現地に中部日本災害対策本部を置き、中央から責任者を派遣し、現地において適時機宜の対策を協議推進せしめ、陸海空自衛隊より、延べ人員三十万人余、多数の艦艇、航空機、車両等を動員して、被災者の救助と災害の復旧とに全力をあげてきたのでありますが、ここに、今国会に所要の予算と法律案を提出し、すみやかな審議を願うこととしたのであります。
 政府は、あとう限りの財源をもって、災害の復旧と民生の安定に万全を期する決意であります。(拍手)これにより、被災者が一日も早く立ち直り、被災地の復興が一そう促進されるものと確信いたします。被災者におかれましても、受けられた打撃に屈することなく、力強く復旧に立ち上がられるよう心からお祈りいたします。(拍手)
 政府は、今次災害の事例にもかんがみ、早急に治山治水対策を中心とする基本的災害対策について、総合的、かつ、科学的に検討を加え、恒久的災害予防の方途を樹立し、これを強力に推進して国土保全の万全を期する所存であります。(拍手)
 なお、今次災害に対して、広く国民各層並びに世界各国からあたたかい見舞の言葉や義援金、救済物資などが続々送られてきましたことは、まことに感謝にたえないところであり、特に被災者の救出と保護のため、迅速、かつ、適切な協力を与えられた在日米軍当局の厚意に対して深甚な謝意を表するものであります。(拍手)
 ベトナムに対する賠償問題に関しましては、本年五月サイゴンにおいてわが国との間に協定の調印を終えたのでありますが、これをもって、ビルマ、フィリピン及びインドネシアに次いで、わが国が条約上賠償義務を負っているアジア諸国との間の賠償協定の締結は、完了するわけであります。私は、また、これを契機として、わが国とベトナムとの友好関係が増進され、ひいては貿易、海運等各分野における両国間の関係が一そう緊密なものとなることを確信いたします。
 最近の経済は、国際収支の黒字が続き、物価の安定が維持されるなど、順調な景気の持続が期待される状況にあり、また、世界経済全般も拡大傾向を示しつつあります。このような経済全般の好況にもかかわらず、石炭鉱業は、深刻な不況に悩んでおり、著しい経営不振から多数の離職者が発生しておりますことは、憂慮にたえないところであります。政府は、石炭鉱業の根本的体質改善について積極的な施策を推進して参るとともに、その離職者対策に万全を期する所存でありますが、とりあえず、緊急に炭鉱離職者の再就労、援護等について所要の措置を講ずることといたしております。(拍手)
 石炭鉱業の再建につきましては、労使が協力してこれに当たることが何よりも肝要でありますが、関係労使の対立が次第に深まりつつある現状は、まことに遺憾にたえないところであります。労使双方は、石炭鉱業の置かれている現状を十分認識し、いたずらに対立意識にかられることなく、ともに同一産業のにない手として、共通する現下の危機を相協力して打開するよう、今後とも平和的な話し合いの中から事態の収拾がはかられることを念願してやみません。(拍手)
 私は、さる七月、八月の両月にわたり、約一カ月欧州及び中南米各国を訪問して、それぞれの政府首脳者と意見の交換を行ない、親しく現地の情勢を見て参りました。この間、各国首脳者との会談を通じて痛感いたしましたことは、国際場裏におけるわが国の地位と役割がとみに重きを加えつつあるということであります。また、東西両陣営の接触点たるヨーロッパにおきましては、集団安全保障体制の強化、あるいは、いわゆる欧州統合化の推進等、自由主義陣営の強化について非常な努力が見られ、主要各国首脳が一致して考えているところも、自由主義諸国の結束の強化と、それを背景にした話し合いによる平和の実現ということでありました。この意味におきまして、わが国といたしましては、欧州におけるこれら諸国との友好関係を今後とも促進する必要を痛感した次第であります。
 政府は、つとに日米両国の関係の改善を企図して、わが国の自主性を高めつつ両国の協力体制をさらに合理的なものとするため、日米安全保障条約の改定に関する協議を進めつつありますが、このことは、わが国の安全と繁栄とを確保するのみならず、自由主義陣営の結束を強化し、世界平和の確立に資するものとの確信に基づくものでありまして、過般の各国訪問により、さらにその確信を深めた次第であります。(拍手)
 過日のフルシチョフ・ソ連首相の訪米によって、国際間の諸問題を話し合いによって解決しようという雰囲気が一段と醸成されましたことは、まことに画期的なことであります。私は、このような両陣営の話し合いによって国際間の懸案が解決され、世界平和を一歩一歩前進させることを衷心より願うものであります。(拍手)
 ここに所信の一端を述べ、国民諸君の協力を心から切望してやみません。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 国務大臣村上勇君。
    〔国務大臣村上勇君登壇〕
#6
○国務大臣(村上勇君) 私は政府を代表いたしまして、本年発生いたしました風水害につき、その状況を御報告申し上げます。
 まず、過般来の相次ぐ風水害による多数の犠牲者の方々に衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災者の方々に対しまして深く御同情申し上げる次第であります。(拍手)
 本年は、七月に入り数次にわたる局地的豪雨があり、特に、台風第五号の影響を受けて、福岡県、山口県を初め各地に相当な被害の発生を見ました。引き続き八月におきましては、まず、台風第六号が四国、近畿、中部及び関東の各地方に被害を与え、相次いで台風第七号が来襲し、近畿、中部、北陸及び関東の各地方にわたり、甚大な被害の発生を見たのでありますが、特に山梨、長野両県下においては、富士川、千曲川等の異常出水による大被害を受けたほか、河川上流からの土砂の流出による、いわゆる土砂害がその被害を大きくしておるのであります。台風第七号の被害状況を申し上げますと、死者、行方不明者合わせて二百四十一名、建物の全壊、流失合わせて約四千棟、公共土木施設の被害報告額約三百八十四億円、農林水産業施設の被害報告額約二百五十三億円に達しており、災害救助法の適用された市町村は、実に百三十四市町村に及んでおります。また、八月下旬には、石川県等数県に豪雨による災害があり、特に石川県能登半島においては甚大な被害を受け、さらに九月に入り、中旬には台風第十四号により、主として北海道及び九州地方の各県に被害の発生を見たのであります。
 次に、九月下旬に発生を見ました今次台風第十五号による被害の状況について申し上げます。本台風は、愛知、三重、岐阜、奈良、兵庫、滋賀、京都、鳥取、福井等の各県を初め、国土の大半に激甚な被害をもたらしたのでありまして、これによる被害の広範囲にわたること、死傷者の数の大なることにおいて未曽有のものであります。ことに、伊勢湾の海岸地帯においては、その最高潮位を約一メートルも上回る異常な高潮により海岸堤防及びこれに接続する河川の堤防が至るところで決壊し、高潮の浸入によって多数の尊い犠牲者を出しましたほか、住宅、公共施設、農地、工場その他諸産業施設について甚大な被害をこうむったのであります。また、牧田川、紀ノ川、天神川、千代川、円山川、九頭龍川等、これらの沿岸地域においては、それらの河川の破堤によって激甚な被害をこうむりました。現在までに判明いたしましたおもなる被害の状況について申し上げますと、死者、行方不明者合わせて五千二百七十六名、被災世帯約三十五万四千世帯、建物の全壊、流失合わせて約三万九千棟、半壊約十万五千棟、公共土木施設の被害報告額約八百五億円、農林水産業施設の被害報告額約四百四十九億円に達しており、その他、文教施設、交通通信施設、商工業等の産業施設の被害は甚大な額に上っております。なお、災害救助法の適用を受けた市町村は、五百六十四市町村の多きに達しております。
 これらの激甚な被害の発生に対処し、政府といたしましては、被災者の救助、応急復旧等、緊急の措置に遺憾なきを期するとともに、公共施設等の災害復旧につきまして、全力をあげて必要な措置を講じて参っている次第であります。(拍手)
 特に、台風第十五号による災害対策につきましては、九月二十八日、中央災害救助対策協議会を開催し、また、同二十九日、中央に災害復旧対策協議会を設置するとともに、災害対策を強力、かつ、機動的に推進するため、同日、現地に副総理を本部長とする中部日本災害対策本部を設置して、関係各省より責任者を派遣し、地元関係当局と連携して、被災者の集団避難を初め、食糧その地の物資の供給等、被災者の応急救助に万全を期し、また、防疫に努めて伝染病等の大量集団発生を防止し、民心の安定をはかった次第であります。(拍手)さらに、海岸、河川の堤防の応急締め切り、交通通信施設の復旧、応急住宅対策等に全力を尽くしておりますが、特に、伊勢湾沿岸の被災地の民生を安定し、復興を促進するためには、長期、かつ、広範囲にわたる湛水を一刻もすみやかに排除することが先決でありますので、海岸、河川の破堤個所の仮締め切り工事を早期に完了するよう努力しております。すでに、名古屋市南部の地区については仮締め切りと排水を完了し、また、名古屋市西部地区、三重県長島北部等については仮締め切りの完了を見ましたが、現在は、破堤浸水の特に著しかった愛知県海部地区並びに木曽川下流地区の締め切りに万難を排して努力中であります。
 なお、今次災害におきましては、政府は、特に自衛隊より、延べ人員三十万余及び多数の車両、航空機、艦船等を動員し、被災者の避難、浸水地域の仮締め切り工事等、応急の措置に協力せしめた次第であります。
 以上、今年の災害の状況につきましてその概要を御報告いたしましたが、政府といたしましては、さらに被災地の救助を徹底し、また、公共施設、農地、農林水産業施設等の早期復旧に努めますとともに、再度災害を防止するため、その実施にあたり必要なものにつきましては、単なる原形復旧にとどめず、所要の改良を加えたいと存じます。なお、今次災害にかんがみまして、再びこのような災害を惹起しないよう、治山治水対策等国土保全に関する施策を計画的、かつ、強力に推進する所存であります。
 以上をもちまして私の災害報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#7
○議長(加藤鐐五郎君) 大蔵大臣佐藤榮作君。
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#8
○国務大臣(佐藤榮作君) 昭和三十四年度補正予算を国会に提出し、御審議をわずらわすこととなりましたので、ここに、その大綱を説明し、あわせて財政金融政策について所信の一端を申し述べたいと存じます。(拍手)
 去る九月の伊勢湾台風、その他今年度の累次にわたる風水害は、広範、かつ、大規模なものであり、死者、行方不明者合わせて五千六百人をこえる犠牲者を生じ、各地に甚大なる損害の発生を見るに至りました。私は、ここに、衷心より被災者各位に対し深甚なる哀悼と同情の意を表するとともに、被災者各位が一日も早く復興に立ち上がられるよう、心からお祈りいたすものであります。(拍手)
 政府といたしましては、すでに関係法令及び予備費の範囲内において応急の対策を講じて参ったのでありますが、今回、さらにあとう限りの財源を調達して、被災者の救助及び生業の再建等、民生の安定に遺憾なきを期するとともに、被災施設の復旧にあたりましては、将来再びかかる災害を繰り返すことのないよう、充実した対策を講ずることといたしたのであります。
 まず、補正予算の内容につきまして、その概要を説明いたします。
 一般会計の歳出の追加額は六百十四億円でありますが、これが財源確保のため、格段の工夫をいたした次第であります。すなわち、租税収入につきましては、現在の一般的好況を勘案し、年度末までの増収をでき得る限りこれを見積もり、法人税を主体として四百九十億円の増加を計上するほか、税外収入につきましても、専売納付金等の増加四十八億円を計上いたしました。しかしながら、なお不足する財源を補うため、やむを得ず既定経費の節減を断行することにより、七十六億円を調達することといたしたのであります。
 次に、歳出について申し上げます。そのおもなものは、直接災害対策にかかる経費であります。今回、風水害対策費として、本費に追加されましたものは三百四十四億円であり、ほかに新たに追加されました予備費八十億円もまた、主としてこれに充てられることとなる見込みであります。
 特に、災害対策として意を用いました事項は、第一に、被災地における民生の安定及び生業の再建をはかったことでありまして、このため、災害救助の内容を改善し、住宅及び農林漁業施設の復旧の促進をはかり、特に、農地につきましては、明年の作付に支障のないよう配意し、これらに要する経費として百七億円を計上いたしております。第二に、今次災害において、高潮による被害が激甚であったことにかんがみ、科学的にも検討を加え、大規模な海岸堤防事業等、新たな構想による高潮対策を講ずるとともに、公共土木施設等の復旧の充実をはかり、特に、明年の台風襲来期までに重要な河川及び海岸の被災堤防の復旧を促進することとし、これらに要する経費として二百二十一億円を計上いたしました。このほか、文教施設の復旧費等として十一億円を計上し、その実施に遺憾なきを期した次第であります。
 また、災害復旧工事の促進に資するため、三十六億円の国庫債務負担行為を特に計上いたしております。
 なお、今回の補正予算におきましては、地方交付税交付金八十五億円を計上いたしました。これにより、地方債の政府引き受けの増加と相待って、地方自治体の所要財源は確保されるものと考えるのであります。
 以上のほか、政府は、石炭鉱業に対する緊急措置を講ずるため、七億二千八百万円を計上いたしました。すなわち、現在不況に悩む石炭鉱業に対する基本的な対策につきましては目下、鋭意検討をいたしておりますが、とりあえず、その離職者に対する応急措置の必要を認め、今回の補正予算により所要の措置を講じた次第であります。
 また、義務教育費国庫負担金等、法令に基づく義務的性質の経費であって、地方自治体において立てかえ支弁にかかるものを補てんするための経費九十一億円を、今回の補正にあわせて計士いたしました。
 次に、財政投融資による災害対策について、その概略を説明いたします。
 今回の財政投融資の追加につきましては、郵便貯金及び簡保資金等において、現在見込み得る原資の増加をすべて充当いたしましたほか、既定計画の一部振りかえ及び公募債の増額により、でき得る限り所要資金の捻出に努力し、総額五百一億円の追加を行なうことといたしたのであります。
 追加のおもなる内容といたしましては、中小企業対策といたしまして、中小企業金融公庫等に対し百五十億円の政府資金の追加を行ないますほか、金利等の貸し出し条件についても特別の配慮を行なうことといたしました。なお、中小企業信用保険公庫に十億円の政府出資を行ない、信用補完の機能の強化をはかることといたしております。また、住宅金融公庫の災害貸付ワクを九十五億円に、農林漁業金融公庫の災害貸付ワクを百四十億円に増大することとし、所要資金として、それぞれ四十億円を計上いたしました。さらに、災害に伴う地方自治体の資金需要の増加に対応して、地方債において百六十億円を追加することといたした次第であります。
 以上のほか、この際、中小企業の年末金融対策といたしまして、百億円の政府資金を手当することといたしたのであります。
 以上申し述べました諸措置により、別途御審議を願うことといたしております各般にわたる特例法と相待って、公共土木、農地及び農業施設災害の初年度における復旧割合におきまして、例年を上回る進捗率となる等、従来に比し充実した災害対策を講じ得るものと確信する次第であります。
 次に、この機会に、最近の経済情勢について申し上げたいと思います。
 わが国経済が、昨年秋以来、急速な回復からさらに上昇へと、きわめて順調な過程をたどってきていることは、御承知の通りであります。すなわち、国民消費水準の向上、輸出の好調等、着実な需要の伸びを背景に、企業の経営状況及び雇用の情勢等も著しい改善を見たのでありますが、この間、物価はおおむね安定した基調にあり、また、国際収支も終始黒字基調を持続し、本年九月末における外貨準備高は十二億九百万ドルに達しているのであります。
 しかしながら、他面、設備、在庫両面の投資に対する企業の根強い拡大意欲からして、経済の先行きを警戒する声も一部に聞かれるのであります。しこうして、今回、政府が災害復旧のために講じます各般の施策によりまして、相当規模の資金が放出されることになるわけでありますが、これによって、従来着実な上昇を続けて参りましたわが国経済の安定と均衡に支障を来たすことのないよう、企業及び金融機関におかれましては、一そう慎重な配慮のもとに行動されるよう希望いたす次第であります。
 私は、さきに、ワシントンで行なわれました国際通貨基金及び国際復興開発銀行の総会に出席し、各国の財政金融関係者と親しく意見を交換する機会を得たのでありますが、その際痛感いたしましたことは、為替貿易の自由化が今や世界経済の大きな流れであるということであります。このような世界の趨勢は、日本経済の特性から見ても歓迎すべきことであり、この際、わが国としても、強力に為替貿易の自由化を推進すべきものと考える次第であります。従って、政府といたしましては、国内経済に与える影響について慎重なる配慮を加えつつ、着実にこれが実施を進めて参る所存であります。関係各界におかれましても、この方針に即し、積極的に必要な態勢を整備せられたいのであります。
 以上、補正予算の概要を説明し、あわせて、今後の経済政策の一端について、私の所信を明らかにいたしたのであります。国民各位も政府の意のあるところを了とせられ、一そうの御協力を切望いたす次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(加藤鐐五郎君) 外務大臣藤山愛一郎君。
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#10
○国務大臣(藤山愛一郎君) 本臨時国会の開会に際し、わが国の当面する外交上の諸問題と、これに対処いたします所信を明らかにいたしたいと存じます。
 私は、本年九月初旬、国連総会に出席のため渡米いたしたのでありますが、ほぼ時を同じゅういたしましてフルシチョフ・ソ連首相の訪米が行なわれましたので、その直後に親しくハーター米国務長官とも会談をいたし、国際情勢全般とともに、今後の日米両国の関係につきましても、同長官と隔意ない意見の交換を行なうことができたのであります。
 すでに本年初頭の通常国会に際しても明らかにいたしましたごとく、私は、わが外交の基調として、あくまでも平和外交を旨とし、このため国際問題はすべて平和的手段によってのみ解決さるべきことを主張して参ったのでありますが、このほど、米ソ両国首脳の話し合いにおいて、国際問題の平和的解決という原則が一応確認ざれましたことは、政府といたしましても歓迎するところであります。
 今回の両国首脳の話し合いの結果を見まするに、問題は主として欧州問題、しかも、その重点はベルリンの危機回避に置かれた模様であり、期限付条件のもとにおける交渉というような事態は一応回避されましたが、すべては、今後に予想される外相会議なり、巨頭会談なり、長期にわたる折衝の結果にかかるものと考えるのであります。
 軍縮問題に関しましても、最近、国連において英国及びソ連より全面的な軍縮案が提出される等、軍縮を通ずる緊張緩和の新たな努力を行なおうとする傾向が見られますととは、まことに喜ばしいことであります。わが国といたしましては、多年主張し続けてきた核実験中止協定の早期締結を最も重要視するものでありまして、これが今後の全面的軍縮問題解決の契機となることを願うものであります。
 われわれは、これら東西間の話し合いが今後逐次具体的成果を見ることを希望し、これがためにあらゆる努力が払わるべきことを期待するものであります。その際、自由民主主義諸国といたしましては、ますますその結束を強固にして、いささかのゆるぎない立場に立ち、共産陣営との公正かつ合理的な話し合いに臨む体制を整えることが最も肝要であり、今後長期にわたる忍耐強い交渉を行なうことによりまして、初めて、いわゆる雪解けも期待し得るものと考えるのであります。
 次に、今次国会において御審議を願いますベトナムとの間の賠償協定及び借款に関する協定につき御説明いたします。
 べトナム国政府は、世界の約五十カ国よりベトナムにおける唯一の正統政府として承認されており、一九五一年九月八日のサンフランシスコ平和条約には、全ベトナムを代表する正統政府としてこれに調印し、翌五二年六月十八日、同条約批准書を寄託いたしたのであります。これによって、わが国は、ベトナムに対し、平和条約第十四条に基づく賠償支払いの義務を負うこととなったのであります。その後、本件賠償に関する交渉は七カ年の長きにわたって続けられ、幾多の紆余曲折を経ましたが、ようやく本年五月調印をみるに至った次第であります。
 本賠償協定は、わが国が条約上賠償義務を負っているアジア諸国との間の賠償協定として最後のものでありますが、わが国が平和条約上の義務をできる限りすみやかに果たしますことは、国際信義の上からも望ましいことであるとともに、他方、この賠償の実施は、ベトナムの経済建設と民生安定に寄与し、両国間の友好親善関係を強化し、政治、経済、通商、文化の各般にわたる両国間の協力を一そう緊密にするものと確信いたすものであります。
 次に、当面の重要案件について御説明いたします。
 政府は、過去一年にわたり、日米安全保障条約改定の交渉を行なって参ったのでありますが、その要旨、すでに国会におきましても累次にわたり御説明して参ったところであります。すなわち、現行条約締結後七年を経過いたし、名実ともに独立国としての地歩を確保いたしましたわが国として、安全保障の分野における日米両国間の協力関係を、今日の事態によりよく適合せしめるとともに、国連憲章の精神にのっとりつつ、わが国の独立と安全とを確保し、両国の友好関係をさらに促進することを目的とするものであります。政府は、次期通常国会において新条約の承認を求めるべく交渉の進捗をはかっております。
 日韓会談につきましては、本年八月十二日再開以来、法的地位委員会と漁業委員会が開催されておりますが、政府といたしましては、過去における日韓両国間の複雑な経緯にかかわらず、相互の努力によってすみやかに信頼感を確立し、大局的見地から、諸懸案の公正かつ合理的な解決に努め、もって日韓両国間の恒久的友好関係の基礎を築きたいと念願いたしている次第であります。
 また、釜山に抑留されている日本人漁夫の帰還問題っにつきましては、政府は引き続き努力をして参りましたが、近くこれが実現に至るものと期待いたしております。
 なお、在日朝鮮人の北鮮帰還問題につきましては“九月二十一日より帰還申請の受付を開始いたし、実施の段階に入らんとしております。わが国といたしましては、本件は個人の自由意思に基づく帰還であるという基本方針を堅持しつつ、帰還が所期のごとく円滑に実施されるよう万全を期しております。
 国連におきましては、わが国は、昨年一月以来、安保理事会の非常任理事国として、各種国際紛争の平和的解決のため、公正かつ建設的な態度をもって努力して参りました。最近は、ラオス問題に関し、その事態の平静化のため積極的な役割を果たしましたことは、各位の御承知のところであります。この非常任理事国の任期は本年末をもって終了いたし、わが国は、来年初頭より、経済社会理事会の理事国として、世界の経済的、社会的発展を通じて国際平和を強化するという国連の事業に積極的に参加することになりました。私は、今後ますます重きを加えるわが国の責任を自覚いたし、国連の平和建設事業にでき得る限りの協力をして参りたいと思うものであります。すでに御承知のごとく、このたび、わが政府の招請にこたえて、ガット総会が初めてジュネーブを離れ、その第十五総会が東京において開催されておりますが、私は、この機会に、訪日する各国の関係大臣及び代表が親しくわが国の産業経済の実情を視察され、その認識を深められんことを期待するものであります。同時に、今回の総会が契機となり、多年懸案となっておりますわが国に対する貿易上の差別待遇撤廃の問題がすみやかに解決することを期待するものであります。
 以上、当面の諸問題に関し、報告かたがた、私の所信を明らかにいたしました。各位の深い御理解と御支援とを要請する次第であります。
     ――――◇―――――
#11
○議長(加藤鐐五郎君) この際、暫時一休憩いたします。
    午後零時四十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時十八分開議
#12
○議長(加藤鐐五郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#13
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。
 議員河野一郎君、同櫻内義雄君、同重政誠之君及び同八木徹雄君から、欧米各国における政治経済事情調査のため、十月二十九日から十一月二十九日まで三十二日間請暇の申し出があります。
 また、ブラジルにおけるアマゾン地域移住三十周年記念祭出席のため、議員千葉三郎君から、十一月四日から十一月二十六日まで二十三日間、議員吉川衆知君から、十月三十一月から十一月二十八日まで二十九日間、右いずれも請暇の申し出があります。
 これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#15
○議長(加藤鐐五郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。淺沼稻次郎君。
    〔淺沼稻次郎君登壇〕
#16
○淺沼稻次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、岸総理大臣の施政演説に関連して、祖国日本の当面しておる内治外交の重大課題について質問せんとするものであります。
 ただいま開かれておりまする臨時国会は、さきに、わが党が、憲法の規定に基づきまして、衆参両院とも定員の四分の一以上の署名をもって、それぞれの院の議長を通じて政府に要求したのであります。すなわち、第一には、安保改定交渉の中間報告、第二に嫁、岸総理の外遊報告、第三には、最近の日本経済の動向並びに経済危機の打開、第四には、南ベトナム賠償問題、第五には、引き続いて起こっておる風水害の政府の施策、こういう工合に案件を付して臨時国会の召集を要求したのであります。しかし、政府は、この開会をちゅうちょして現在に至りました。開会をちゅうちょして現在に至ったことは、はなはだ遺憾であります。しかも、われわれが一番要求した日米安全保障条約改定の交渉の経過について詳細な報告がなかったことは了解ができないのであります。(拍手)総理大臣の演説原稿を見まするならば、原稿にして三行であります。さらに加えまして、外務大臣の演説の中は七行のみであります。しかし、このことにつきましては、総理大臣みずから街頭に出て国民に訴えております。さらに、自民党幹部会におきましては、また、議員総会におきましては、その内容について外務大臣が報告して、そして党議をきめておるのであります。このようなことをやりながら、この国会に対しては何ら中間報告をしないというところに重大な課題があると私は思うのであります。(拍手)
 そこで、まず、この点よりお伺いをしたいのでありまするが、安保交渉の現在までに至る経過を見ると、岸内閣は、民主主義、議会主義の原則を踏みにじるものといわなければなりません。(拍手)改定交渉が始められたのは昨年秋であります。それ以来、国民は全くつんぼさじきに置かれ、その内容については全然知らされておりません。(拍手)自民党は、本年五月の参議院選挙の争点としてこれを取り上げることを故意に避けたのであります。現に、政府の委託した世論調査においてさえ、五〇%以上のものは安保改定は知らないと答えておるようであります。そこで、われわれは、国会を通じて政府の中間報告を求め、国会の論議を通じて国民が聞かんとするところを聞いてしかるべきと存じて、これを要求したのでありますが、これをやらないことは、はなはだ遺憾と思うのであります。ここに、政府の態度は、明らかに反対党の存在を軽視し、国会を軽視し、一党独裁の姿が現われておるといわなければなりません。(拍手)
 これより安保改定に関して質問をいたしますが、安保改定は世界情勢に逆行しておると思います。ソ連、アメリカの首脳部の交換訪問、フルシチョフ・ソ連首相の訪米で、東西冷戦の氷が解け始めました。これを一そう促進して、平和の機運を強力に進めることが、世界各国政府の責任であると私は思うのであります。(拍手)東西首脳会談も、本年じゅうか、あるいは来春には必ず開催され、核実験禁止協定、全般的な軍縮協定の話し合いが促進される情勢にあります。
 振り返ってみまするならば、一九五〇年代、この十年間は、まさに危機の時代でありました。世界は戦争と平和の間を危うく切り抜けてきたのであります。そうして、今ようやく平和への見通しが開けて参りました。これからの一九六〇年代の十年間は、との平和の風がいよいよ強まり、世界は恒久平和と軍縮の時代に入ることが期待されております。現在の日米安全保障条約は、一九五〇年代の危機と冷戦の時代の遺物であります。かくのごときものは冷戦の氷とともに過去に葬らるべきものであると私は信ずるのであります。(拍手)
 しかるに、岸内閣は、これを今改定して、日米間の双務的軍事同盟を結び、今後、最低十年間、日本の運命をこの条約に縛りつけようとしておるのであります。これはソ連、中国を敵視する軍事同盟であります。必然的に韓国、台湾等とつながる反共軍事同盟に発展する可能性を持っておるのであります。(拍手)すなわち、今アメリカと台湾との間には相互防衛条約があります。現に金門、馬祖に問題が起きたときに、アメリカの第七艦隊は介入せんとしたのでありまするが、原子力戦争に発展する危険性を感じて、アメリカ軍部も慎重な態度をとりました。しかし、一歩誤れば、台湾と中国との争いにアメリカが出て、その極東の平和という名において日本が介入させられるような結果を生じやしないかということを、私どもは憂えるのであります。(拍手)今後世界は緊張緩和と東西交流の六〇年代を迎えようとしているときに、これは著しい時代錯誤であります。時代の歯車に逆行するものは必ず滅びる運命にあります。
 われわれは、国の外交政策を一部の階級やグループの利益に従属させてはならないと思うのであります。(拍手)韓国が米韓同盟を結んでおるのは、倒壊に瀕しておる李承晩政権の余命を保たんがためであろうと思うのであります。(拍手)台湾の蒋介石政権が米台軍事同盟を結んでおることは、米軍を台湾に引き入れることによって国民党政権の終えんを引き延ばすための工作であろうと思うのであります。(拍手)同様に、岸内閣が日米安全保障条約を改定せんとするのは、これを契機に警職法の改悪、防諜法、小選挙区制、労働三法改悪、農村の反動的支配等々を実現して、現憲法のもとで日本国民の獲得しておる民主主義を剥奪し、もって一部独占資本の独裁体制を維持しようとする野望に端を発しておると私は思うのであります。(拍手)岸内閣は大資本家グループの階級的利益のために日本民族の運命を犠牲にするもの、これが岸内閣の外交政策であるといっても過言ではないと私は思うのであります。(拍手)
 改定案は、ヴァンデンバーグの決議に基づいて、十年間の長きにわたって日本がアメリカと実質的な軍事同盟を結ぶことになるのであります。現在、表に現われておりまする条約の内容を見ましても、たとえば、新条約第三条には、「日本は自助及び相互援助により単独で対抗するための能力を維持し、かつ発展させる」というヴアンデンバーグの決議による義務を明らかにしております。単独で何と対抗する能力を持つか、それは言わずとはっきりしております。中国、ソ連と対抗するためでありましょう。ところが、今日は、ICBM、原水爆の時代であります。こうした軍備とは何を言うかといえば、それは、必然的に、防衛庁第二次防衛力整備長期計画でも、こういうことをいっておるのであります。「核用、非核用を問わず、ミサイル兵器を持つ」とはっきり申しておりますように、アメリカ軍の指揮のもとに日本を原水爆兵器で武装化しようとすることは明らかであると私は思うのであります。(拍手)岸内閣は、二年来、そんなことはやらない、今でもそれを言っておるのでありますが、防衛庁の計画には、今申し上げましたように、核用、非核用ミサイルは持つといっておるのであります。ここに核兵器持ち込みの必然性があると私は思うのであります。
 さらに、防衛庁計画では、戦車や、あるいはジニット戦闘機、あるいは潜水艦等を国産化しようとしておるのであります。これらの財政負担は、防衛庁の計画が示しておるように、六年後には、現在の防衛費の二倍となって、二千九百億となるといっておるのであります。これによって国民の生活は圧迫されざるを得ないのであります。すなわち、今回の安保改定に伴い、平和の脅威のみならず、国民生活は非常な圧迫を受けるのであります。こういう点について、総理の所見を承っておきたいと思うのであります。
 しからば、このように充実して参ります軍備によって何をなすかと申し上げまするならば、安保改定案の第五条の中には、こういう文句がうたってあります。「両締約国は、日本国の施政下にある領域において、いずれか一方の締約国に対する武力攻撃が自国の平和および安全を危くするものと認め、自国の憲法上の規定と手続に従って、共通の危険に対処するため行動することを宣言する。」こうあるのであります。すなわち、共同防衛の姿がはっきり現われておるのであります。これは、日本自体が攻撃された場合は、米国が日本の防衛のために行動し、在日米軍が攻撃された場合は、日本側が防衛に立つということで、まさに相互防衛条約であります。(拍手)さきに藤山外相がアメリカの新聞記者に語ったところによりますならば、もし、日本にあるアメリカ軍事基地、アメリカ駐留軍を攻撃するものがあれば、日本の敵として戦うであろう、ということを言っておるのであります。明らかに共同防衛条約になっておることを裏づけておると思うのであります。
 これは非常に重大であります。憲法上から見まするならば、国際紛争を解決するためには戦争を永久放棄するという規定を持っておるのであります。しかし、日本が国際紛争の解決の手段として戦争を採用するような国家になりはしないかと私どもは思うのでありまして、ここに大きな憲法違反を犯す結果となるのであって、実に重大であるといわなければなりません。(拍手)総理の所見を承っておきたいのであります。
 特に、この改定案は、若き青年の血潮をアメリカに売らんとするところの、いわば買弁的な政策であるといっても過言ではありません。岸総理は、東条内閣の閣僚として、太平洋戦争宣戦布告の責任者であります。署名人であります。そして、鬼畜米英を倒せといって、数百万の国民はその血潮を流しておるのであります。十五年たった今日、今度はアメリカと結んで、アメリカのために若き青年の血潮をよこせ、こう言っておるのであります。(拍手)まさに権力主義者としての岸総理の姿がよく現われておると私は思うのであります。岸総理は、この戦争責任についていかように考えるか、この点も伺っておきたいのであります。
 さらに、安保改定の重要な問題の一つは、その期限の問題であります。緊張緩和が世界の大勢となっておる今日、十年の長きにわたって日本を拘束する軍事同盟を結ぶことに対しては、自民党の内部にも大きな異論があり、外交調査会は多数決を強行せざるを得なかったのであります。(拍手)さらに加えまして、自民党の議員総会におきましても、意見を留保する者があったといわれておるのであります。このような条約に対して、与党の意見さえ満足にまとめることのできないということは、いかに国民の意思に逆行しておるかということを現実に証明しておると思うのであります。(拍手)
 また、このほか、問題となった極東の平和と安全のための米軍出動、間接侵略に対する米軍の介入を許し、アメリカの内政干渉を許したこと、行政協定の大幅改定に失敗したこと等、与党でさえ、まだ批判の声が絶えないありさまであります。また、自民党の有力なる幹部は、藤山外相はアメリカに向かって交渉していない、自民党に向かって交渉しておる、アメリカ側でだめだといえば、もうそれで交渉をあきらめてしまって、アメリカ側の言い分を自民党にのませようと努めておる、と語っておるのであります。(拍手)これは、断わっておきますが、自由民主党の幹部、しかも有力なる幹部の発言であります。かくのごとき事情であるから、岸総理は、日本の完全独立と平和のために、改定交渉をすることを打ち切るべきであると思うのでありますが、この考えを承りたいと思うのであります。(拍手)
 次に、お伺いしたいと思いますることは、わが国外交の基本であります。およそ、一国の内治外交の基本はどこに置くべきかといえば、それはその国の憲法に置くべきであると思うのであります。憲法は、その国の内治外交の基本であり、国家活動の源泉であります。祖国日本は、冷厳なる敗戦の後、戦争に対し鋭い批判が行なわれ、偉大なる変革を行ないまして、その進むべき方向を憲法によって決定したのであります。その結果、第一には、主権在民の大原則が打ち立てられ、基本的人権が保障され、さらには、戦争放棄の規定が確認されたのであります。すなわち“憲法の前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」とあります。さらに、憲法第九条には「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定をしっておるのであります。(拍手)従いまして、日本の外交はこれを基点として行なわれていかなければならぬのであります。それには、いずれの国とも軍事同盟を結ばない、軍事基地反対、戦争不介入、中立堅持、これが日本外交の基本でなければならぬと私は思うのであります。(拍手)
 しかるに、対日平和条約が締結せられた際、アメリカとの間に軍事基地提供のために日米安全保障条約を結び、そして、日本にアメリカ軍隊が駐屯するようになったのであります。ここに問題があります。わが党は、日本が東西両陣営の中にあっ完全独立国家になるためには、アメリカとの軍事関係を切り、中ソ友好同盟の中にある対日軍事関係もその解消を求めて、日本の積極的中立を保障するために、日・米・中・ソを中心として、それぞれの国との間において不可侵条約を結び、さらに、それぞれの国の上においては、お互いの領土、独立は尊重する、さらに、内政の干渉はやらない、侵略はしない、互恵平等の立場に立って、平和共存の大原則の上に、われわれは日・米・中・ソを中心に新しい安全保障体制を作り、積極的中立政策を保障すべきである、と主張しておるのであります。この社会党の主張の積極的中立政策に対して、岸内閣の一部には必死となって反対しておるものがあります。
 しかし、諸君、たとえば欧州のオーストリアは、米・英・仏・ソ四大国の保障のもとに、中立政策をとっておるのであります。アジア・アフリカ地域には広大なる中立地帯が形成されております。また、アメリカ自身について考えてみましても、モンロー主義の宣言を行ない、アメリカは他国の問題に干渉しない、他国もまたアメリカの問題に干渉すべからずという方針をとった。これが一つの典型的な中立主義であるといっても過言ではないと思うのであります。このモンロー主義のもとにアメリカは国力を発展させ、しかも、現在はモンロー主義を放棄して他国を隷属せしめんとしておるのであります。さらに、そのアメリカでさえ、東西の力の関係からいたしまして、ソ連との間に直接相互訪問の道を開き、さらに緊張緩和の道を探求しておるのであります。かかる情勢のもとで、わが国は、従来の外交方針を転換して、その完全独立と平和のため積極的中立政策をとるべき絶好の機会なりといわなければならぬと思うのであります。(拍手)それによって世界の緊張緩和に大きく貢献して、文字通りアジア外交のイニシアチブを握るときと思うであります。また、中国・ソ連、アジア諸国の間に貿易も無制限に拡大し、将来無限の可能性を持っておる広大な市場と結びつくべきであると思うのであります。それこそ、日本経済発展の道と思います。このために、安保条約改定交渉を打ち切り、外交政策の転換を行なうべきであると思うのでありますが、総理の所見を承っておきたいと思うのであります。
 次に承りたいのは、日中国交回復の問題であります。岸総理は、日中の関係においては静観的態度をとっておられます。はなはだ遺憾であるといわなければなりません。さきに、英国の保守党の党首マクミラン首相は、みずからソ連を訪れ、話し合いによって国際緊張の緩和に努力したことが、米・ソ両首脳の相互訪問、東西首脳部会談のきっかけとなったのであります。日本の保守党の代表者たる岸総理も、この際、安保条約改定によっていたずらに中国を敵視する政策を取りやめ、極東並びにアジアの緊張を緩和し、世界の平和に寄与するため、みずから率先して、中国との間に、虚心たんかい、友好親善の話し合いを行ない、日中国交をすみやかに回復すべきであると思うのであります。
 岸総理と同じ党派に席を置く石橋湛山氏は、病躯を押して、国家百年の長計のために中国を訪問し、岸内閣の政策転換を要求しております。その識見には、まさに敬服するものがあります。(拍手)また、自民党の長老松村謙三氏も、今、中国にあります。今や日中国交回復は日本天下の世論となっておるといっても過言ではないと思うのであります。(拍手)すなわち、今までは、日中国交回復を論ずる者ね革新政党側だといわれたのでありますが、保守党とはいえ、自由民主党の中に、これはやらなければならないというものが漸次ふえており、国民的大勢になっておるということを知ってもらわなければならぬと思うのであります。(拍手)そこで、国民の世論を見て、この際、私は、中国と日本との間における国交回復のため一段の努力を払うかどうか、承りたいと思うのであります。
 次に伺いたいのは、ベトナム賠償問題についてであります。一九五四年の七月ジュネーブ宣言は、南北ベトナムを分かつ軍事境界線十七度が暫定的のものであります。いかなる場合においても、政治的または領土的境界線をなすものでないことを確認しておるのであります。今回の南ベトナムに対する賠償をもって全べトナムに対する賠償にかえようとする政府の態度は、明らかにジュネーブ宣言に反するといわなければならぬと思うのであります。(拍手)さらに、一九五五年のバンドン会議には、南北統一してベトナムの国連参加を支持し、ベトナムの統一はアジア・アフリカ諸民族の一致した要望であります。しかも、バンドン会議には、藤山愛一郎氏も日本商工会議所会頭として参加をしております。さらに、日本政府代表も参加して、決議に賛成をしておるのであります。しかるに、今回の賠償問題の取り扱いは、バンドン会議の決議を否定するものでありましょう。国際信義に反する行為といわりなければなりません。(拍手)かくのごとき政府の行動は、結果においては、日本をアジアの孤児たらしめる方向にいかしめるものと思いまして、はなはだ遺憾しごくといわなければならぬと思うのであります。(拍手)ジュネーブ宣言並びにバンドン会議の決定を支持、尊重し、また、アジアの緊張緩和・世界の平和を願うならば、かかるベトナムの統一を阻害する賠償は今直ちに支払うべきでないと思うのであります。少なくとも、統一が達成されるまで待つべきであると思うのであります。現に、北ベトナムは、ベトナムの統一実現後は賠償請求権は放棄してもよいと言明しておるのであります。何を好んで賠償を急ぐか、了解に苦しむのであります。本年五月、南ベトナムと賠償協定の調印がなされた直後、北ベトナムは、将来賠償請求権は留保すると正式に声明しております。政府はいかなる態度をとるか、また承りたいと存ずるものであります。(拍手)
 政府は、すでに昭和二十五年一月、金塊三十三トン(当時の金額にして百三十四億円相当)、さらには、三十二年三月、十六億七千万円と、二軍の支払いをフランスに対してやっておるのであります。当時、日本とフランスとの間には戦争状態はなく、日本軍の仏印進駐によって戦争の被害を受けたものは、フランスではなくして、ベトナム人民であります。(拍手)フランスに支払う必要はごうもありません。ベトナム人民に支払うべきものを支払わずに、必要のないフランスに支払い、今また、今度は北ベトナムを無視して、南ベトナムのみに賠償を払わんとしておるのであります。賠償、それは戦争の犠牲に対する支払いであります。これはやらなければなりません。しかし、それは国民の血税で支払われるのであります。政府が、この国民の血税を全ベトナム人民に支払わないで、二重、三重、でたらめな支払い方をやることには承服できないのであります。(拍手)この政府のやり方に対しては、徹底的に糾弾をされなければなりません。特に、この賠償が、一部独占資本家の利益と結びつき、汚職の疑いがかけられていることは、インドネシアの賠償の場合と同様でありまして、まことに遺憾しごくといわなければなりません。(拍手)
 南北ベトナムの平和的統一にとって、アメリカの南ベトナムに対する軍事援助の強化は、北ベトナムとの対立を激化するものであります。その統一を阻害するものであります。われわれは、このアメリカの態度を非難し、平和のためにその方針の是正を要求すべきであると思うのであります。しかるに、今回の南ベトナムに対する賠償は、むしろ、アメリカのこの軍事援助を間接に支持せんとするものでありまして、はなはだ了解に苦しみ、南ベトナムの軍事化を促進する結果となると思うのであります。(拍手)過去の侵略戦争によってアジア諸民族に与えた損害や戦争の責任について何ら反省することなく、賠償の名において再び戦争準備に協力することは断じて許されないのであります。(拍手)これらの諸点につきまして、政府当局の考えを承りたいと思うのであります。
 次に、風水害対策と補正予算について伺います。政府は、今回の補正予算で、災害対策費は、地方交付税増額をあわせて約四百二十四億円を計上し、そのため、税の自然増収あるいは専売益金など、財源は洗いざらい出した、こう言っておるのであります。ところが、それだけの支出では、結局焼け石に水であることは、政府も認めておるようであります。一般会計の補正予算が一千億円、財政投融資の追加に一千億円の要求が殺到しております。これをどうするか。政府は財源を洗いざらい出したといって逃げておるのでありますが、これでは問題は解決がつかないのであります。ほんとうに財源がないかといえば、決してそうではありません。それは、一千三百億の軍事防衛費の削減、このことを考うべきであると思うのであります。(拍手)
 今回の大災害におきまして、自衛隊の隊員の諸君が救助、災害対策に大活躍をいたしました。しかし、それは岸内閣の再軍備政策を合理化する理由にはならないと私は思うのであります。(拍手)わが党が、自衛隊を平和国土建設隊と改め、防衛費は災害復旧、国土開発に使うべきであるといって一貫して主張して参りましたことが具体化しておるのが、現地の姿ではなかろうかと思うのであります。岸内閣は、国を守り、国民を守るために自衛隊の増強が必要であるといわれております。しかし、ごらんなさい。今、フルチョフの全面的軍縮提案がなされ、アメリカのハーター国務長官も、イギリスの外務省も、これを真剣に検討すべきであると言っておるのであります。しかも、国際連合では取り上げて、これと取っ組んでおるのであります。この際に、原水爆、月ロケットの今日、一機二億、一億ががるジュット戦闘機が何で必要であるか、常識ある者には、これがいかに浪費以外の何ものでもないということがわかるのであります。(拍手)
 今年の風水害で、東海地区においては、死者、行方不明者合わせて五千数百名という尊い人命が奪われておるのであります。民間の財産五千億、公益施設で二千億の損害をこうむっております。祖国日本は、かくのごとき災害を毎年冷々受けておるのであります。岸内閣は、この緊急の際、防衛費の増強はこれを取りやめて、その費用をもって災害対策に充てるべきであると考えるのでありますが、これについて総理の考えを承っておきたいと思うのであります。(拍手)
 さらに、ここで指摘しておきたいと思いますることは、戦後、日本に多い一つの特徴は何であるかといえば、災害が多いということであります。戦後十年間、昭和二十一年から三十二年まで、風水害の被害総額は、人命損失九万一千人、はんらん面積七百五十万町歩、被害家屋が六百四万戸、総被害金額は二兆五千八百億円といわれております。巨大なものであります。これを毎年に平均してみますならば、年間に七千六百余人の人命を失い、六十三万町歩がはんらんし、五十万戸以上の家屋が被害を受け、さらには、二千百五十四億の富が失われておるのであります。実に重大であるといわなければなりません。それは何のためであるかといえば、昭和二十九年の建設省の建設白書がこれを明らかにしております。そうして、特に、戦時中、治山治水事業がそでにされた結果、水源山地の山林は乱伐され、土地も無計画に利用されたため、河川の状態は著しく荒廃し、そのため、この戦後のわが国に大きな被害がきておると思うのであります。これ、すなわち、日本が、民族と民族との争い、戦争にその全力を集中して、自然との争いを放棄したところの結果がこうなっておるといっても過言ではありません。(拍手)まさに、戦後起きておりまする天災、それは災害にあらずして政治災害であるといっても過言ではないと思うのであります(拍手)本年の災害は、まさに、自然のいたずらに対する岸内閣敗北の姿がここに現われておると思うのであります(拍手)この意味合いにおいて、私どもは、日本国民が文化国家として日本国を建設していく以上、あらゆる場合において自然のいたずらに対抗して参らなければならぬと思うのであります。そうすることが、私は文化国家をうたうゆえんであろうと思うのであります。そこで、政府は、この際、災害に対する総合的な研究をやるために、総合科学研究所、こういうようなところを作って大いに研究をしたらいかがであろうかと私は考えておるのであります。
 次に、石炭問題につき質問をいたします。
 今日、石炭鉱業は、政府の政策の貧困と、石炭資本家の無策から、重大な危機に直面をしております。すでに九州筑豊地区には約六万人の失業者が生活に追われ、大手炭鉱において大量の首切りが行なわれておるのであります。今や、炭鉱は大きな社会問題を提起しておるのであります。(拍手)この打開策は一刻の猶予も許しません。
 申すまでもなく、石炭鉱業は、その無謀な戦争の廃墟の中から日本経済の復興をはかるために大量の国家資本がつぎ込まれ、数十万の労働者を投入して生産の拡大をはかって参ったのであります。その後、今日に至るまで、炭鉱労働者は、低賃金と労働強化を強要されながら、劣悪な作業条件のもとに働いてきたのであります。今や、この人々が失業のちまたにほうり出されんとしておるのであります。これに対して、政府はいかなる態度をとるか、伺いたい。失業者とは、働く意思はある、働く力もあるが、働く場所なき者が失業者となっておるのであります。従って、失業者諸君の中には、政府に対して、働かせろ、食わせろという要求を出す。政府の政策の欠陥によりこのような状態になった以上は、政府は、当然の帰結として、これらの人に食を与え、さらに仕事を与えていくということをやらなければならぬと思うのであります。これに対する政府の施策を承りたいと存ずるのであります。(拍手)
 さらに、石炭鉱業が重油その他外国からのエネルギーに侵食されておるのは、政府の政策の貧困と石炭資本家のサボタージュ、ここからきておるということを指摘しなければなりません。(拍手)従いまして、このエネルギー資源革命の今日において、これをいかに処理するかということを、お伺いしたいと思うのであります。
 以上申し上げまして私の質問演説は終わりますが、答弁いかんによりましては再質問もするということを留保いたしまして、これで降壇をいたします。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#17
○国務大臣(岸信介君) 第一点は、安保条約に対しての各方面からの御質問でございますが、第一に申し上げておかなければならないのは、この国際の現状の分析につきまして、淺沼君と私どもは非常なかけ隔たりがあるということであります。フルシチョフのアメリカ訪問によって、世界が直ちに雪解けの方向に大きく動き出しておるというふうにごらんになることは、これは国際の実情に私は合致しておらないと思うのであります(拍手)私どもはあくまでも、世界平和の推進のために、話し合いによってこの情勢を作り上げることは必要であり、そういう機運が動いておることは認めますけれども、これによって直ちに雪解けとなり、各国が、従来の関係、すべての軍縮その他のものを一挙にして解決するというような情勢では決してないのであります。(拍手)この点を、まず、はっきりと認識していただかなければならない。従って、私が演説において申し上げましたように、自由主義国は共産主義国の団結に対抗して結束を強化して、そうして、それを背景として話し合いによって平和を作り上げていくというのが、国際の現状であります。この国際の現状を無視した議論は、私は、実際から離れる、こういわざるを得ないと思う。従って、たとえば、今お話しになりました積極的中立政策、米・ソ・日・中の四カ国の間の不可侵条約によって日本の安全を守ろうというようなことは、現在、中立政策というものが、われわれに最も身近いアジアにおいてもどういう状況にあるか、インドの国境の問題を一つ取り上げてお考えになりましても明白である。われわれは、やはり、現実に即して、沼本の平和と、そうして安全、その上に繁栄をはかっていくという考え方に立たなければならないのであります。(拍手)
 安保条約の政定を目して、日米間の軍事同盟を作るのだというふうにお話しになりましたが、これはしばしば私どもが国会において説明を申し上げております通り、現在あるところの安保条約体制というものを基礎にして、これの不合理、これの実情に適さないものを改正していくというのが、われわれの考えであります。従来、現行の安保条約制定の当時から、その不平等性や、日本の自立性のないことが、当時の野党からも攻撃をされ、その後におきましても国会の論議になっておることか明きらかであるごとく、私どもは、これを、合理的基礎に、日本の自主性を認めた条約に改めようということでありまして、これによって新たに軍事同盟を作るというような性絡では全然ないのであります。(拍手)
 また、安保条約の改定が、警職法の問題や、あるいは秘密保護法や、小選挙区制や、労働法の改正等につながる問題として御議論がありましたが、これらは全然別の問題でございます。その必要があるものについては別個の見地から論議すべきものでありまして、安保条約と何らの関係ないものであります。(拍手)
 また、いろいろな理由をおあげになりまして、安保条約の交渉を打ち切れという御意見でございましたが、結論的に申し上げますが、私どもは、これの交渉を打ち切る考えは持っておりません。明確に申し上げておきます。と申しますのは、言うまでもなく、先ほど申しているように、現在の安保条約というものが、いかにも日本の自主性を無視して、アメリカ一方的であり、また不平等であるという、従来非難されたような欠陥を持っておりますから、これを改めるということは当然必要であると思います。
 また、この改定について、憲法と何か抵触しやしないかというような御議論でございます。私どもも、もちろん、日本憲法の特殊性と、日本憲法に対して条約が抵触するというようなことがありましては政府としての責任が尽くせないわけでありますから、その点に関しましては十分な意を用いておりまして、決して憲法違反の点はございません。まず、おあげになりました憲法九条との関係でございますが、憲法九条は、御承知のように、独立国としてわが国が持っておる自衛権を否定したものではないのであります。われわれが他から不正な攻撃を受け、侵略を受けた場合において、それに手をこまぬいて甘んじておらなければならぬという規定でないことは、これは何人も疑いを持たないと思うのであります。(拍手)従いまして、われわれが国力と国情に応じて自衛隊を設けて日本の防衛に当たり、同時に、われわれと目的を同じくし、友好関係の基礎に立っておる国と協力して、そうして日本の安全とその平和を守るというこも、の条約億、決して憲法九条に違反するものではないのであります。(拍手)
 なおまた、いろいろ自由民主党内においてこの条約に対して議論がある。従って、そういう意味から党内調整がうまくいかないんじゃないかというような御懸念の御議論がありました。もちろん、私どもは、党の民主的運営の見地から、議論のありますことは十分に尽くして、そうして、いかなることがあっても、党が分裂をしたり、あるいは協力が破れるということのないように、党内の意見を取りまとめることに留意いたしておりますから、その途上におきましていろいろな意見が出ることは、これは当然であります。しかしながら、最後には議員総会において党の意見を決定することになっておりまして、これは満場一致決定をされておりますから、御心配は要らないのであります。(拍手)
 それから、第二は、中国に対する国交回復についての御議論でございます。私は、決して、中国が言っているように、かつて敵視政策をとったことはございません。(拍手)いかなる場合においても、そういうことをいたした覚えはございません。私どもは、お互いが政治体制を異にし、イデオロギーを異にする場合におきましても、その立場をおのおの理解し、尊重し合って、そうして互いに友好関係を進めていくというのが、私どもの考えの基礎でございます。従って、決してそういう敵視政策をとった覚えはございません。
 次に、ベトナムとの賠償協定の問題でありますが、これは、御承知の通わ、サンフランシスコ条約第十四条に基づいて、その締約国との間において、われわれが条約上の義務として賠償の協定を結ぶわけでございます。すでにビルマやフィリピン、インドネシアとはこれが締結をされまして、今日残っておりますのはベトナムであります。これが最後のものとして、今回協定を結ぼうというわけであります。ジュネーブの条約は、御指摘にもありましたように、これは休戦協定でありまして、この協定の前後によって、いわゆるベトナム政府の法律的な地位が変わったわけではございません。従って、私どもは、べトナムの正統政府として、このサンフランシスコ条約においてわれわれが義務を持っておるべトナム政府、その後におけるベトナム共和国政府と交渉いたしまして条約を結ぶわけでありまして、決してジュネーブ条約に違反するものではありません。また、バンドン会議の決議におきましても、いわゆるこのベトナムの統一ができることは、これは望ましいことであることは言うを待ちませんが、今申し上げましたように、私どものこの今回の協定の締結は、サンフランシスコ条約に基づくものであって、サンフランシスコ条約の義務をできるだけ早くわれわれが果たすということは、国際的な信義からも当然のことであります。従って、バンドン会議の決議とも何ら違反するものではございません。
 また、仏印の特別円との関係でございますが、言うまでもなく、日仏間の基本協定に基づく特別円は債務の支払いの問題でありまして、賠償の問題とは何ら関係ないものでございます。
 さらに、ベトナムの賠償協定は、アメリカの対ベトナム軍事政策を助けるためにやっているのじゃないかというお話でございましたが、そういうことは絶対にございませんで、今申しましたように、われわれとしては忠実にサンフランシスコ条約の義務を遂行するということでございます。
 さらに、ベトナム賠償問題について何か汚職のようなものがあるというような疑惑を持たれましたが、そのことは、私は、確信を持って、絶対にないということをこの席から明確にいたしておきます。(拍手)
 次に、災害対策につきまして、防衛費を削減してこの災害対策に充てろという御議論でございます。防衛費は、御承知のように、国防会議できめております国防計画に基づき、すなわち、日本の国情と国力に応じて漸増するという方針にのっとりまして、私どもは、民生の安定、国民生活を阻害することのない範囲内においてこれをやろうとして参っております。一国が独立国としてその安全と平和を守るために必要な防衛費を全部削減して、そうして災害対策費にするということは、私どもはとうてい考えられないのであります。ただ、今回の節約につきましては、各機関においてそれぞれ協力をいたしまして、防衛費の中からも一部節約が行なわれて災害対策費に回っておると私は承知いたしております。
 戦後災害が相次いで起こることに対して非常に憂慮にたえないという御意見につきましては、私も全く同感でございます。従って、これに対しては、総合的に、また科学的に、あらゆる点から検討して、基本的な政策を立てて、そうして将来に備えなければならぬということは、演説においても申し上げたところであります。それについて何か科学的な研究所を建てたらどうかという御議論でございます。私どもも、その必要を認めまして、科学技術庁内に、すでに風水害についての科学的な研究をする委員会を設けて、いろいろと各方面から研究をいたしております。さらに、それらの結論をも得て、通常国会におきましては基本的な強力な政策を樹立したい、かように考えております。
 最後に、石炭鉱業についてのお話でございました。私も演説の中に申し上げました通り、この点に関しましては、特に政府として意を用いております。石炭業自体をいかにして成り立たしていくか。これは、最近におけるエネルギー源のいろいろの変化、また推移等によりまして、石炭業が全世界的に不況になっておることは、御承知の通りであります。特に、石炭の賦存状況の悪い、また機械化の進んでおりません日本におきまして、大きくこれが響いたということも当然でございます。これをいかにして合理化し、石炭業というものが成り立つようにし、労使ともに、これに従事する人が将来に希望が持てるような産業にしていくにはどうしたらいいかということにつきましても、いろいろ根本的に政府におきましては検討いたしております。今回の臨時国会におきましては、とりあえず、御指摘もありましたように、今日出てくる離職者に対して、これが就労及び援護のために政府としては強力な施策をしなければならない。一方におきましては、これらの労務者が他の事業に就労できるような職業訓練も必要でありましょうし、その他の援護施策を強力に行なっていく考えでございます。
 以上、御答弁申し上げます。
#18
○議長(加藤鐐五郎君) 淺沼稻次郎君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。淺沼稻次郎君。
    〔淺沼稻次郎君登壇〕
#19
○淺沼稻次郎君 今総理大臣の答弁の中で、国際情勢のことにつきまして、私は、東西両陣営の首脳部の交換訪問というようなことになれば、それが一つの雪解けになるであろう、こう申し上げたところが、必ずしもそうでないということの答弁があったのであります。総理大臣の演説の中には、こういう文句を最後にうたっておるのであります。――私の申し上げていることには何ら変わりはない。「過日のフルシチョフ・ソ連首相の訪米によって、国際間の諸問題を話し合いによって解決しようという雰囲気が一段と醸成されましたことは、まことに画期的なことであります。私は、このような両陣営の話し合いによって国際間の懸案が解決され、世界平和を一歩々々前進さぜることを衷心より願うものであります。」こうやって演説をしておいて、今度は、それがならないと否定するのでありますから、演説と答弁との間にはそういう差がある。(拍手)こういうのが、ある意味では、そつのない答弁とはまさにこのことであろうと私は思うのであります。さらに加えまして、この施政方針の演説と同じようなことを外務大臣が言っておる。外務大臣も同じようなことを言い、総理も同じようなことを言っておる。しかも、私が同じようなことを言ったら、総理の答弁は別で、そんなことはないというのでありますから、一体どこに重点を置いて外交を展開するかわからない。(拍手)それは、私はやはり施政方針の演説でやったことを土台として答弁をしてもらわなければならないと思うのであります。
 それから、次に、安保交渉は打ち切らない、こう言われたのでありまするが、そこで、私は、それなら、いつ調印をされるのか、伺いたいのであります。今年末あるいは来春、岸総理が渡米されるということでありまするが、そのためにおいでになるのかどうか、伺っておきたいと思うのであります。
 現在、日本では、日米安全保障条約に基づいてアメリカ軍隊が日本にとどまっておることは憲法違反であるという、いわゆる東京地方裁判所の伊達判決なるものがあるのであります。(拍手)しかも、現在最高裁において争いが続いておるのでありまして、この判決が行なわれるまでは、いかに独裁、独善的な岸内閣であっても、裁判の決定を無視することはできないであろうと私は思うのであります。(拍手)従いまして、最終的な判決があるまでは調印はできないということに私はなろうと思うのでありますが、このことを伺っておきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、日米安全保障条約の改定は、十年間日本がアメリカとの間に特別な軍事関係を結ぶのであります。すなわち、日本にあるアメリカの基地並びにアメリカ駐留軍を攻撃するものがあれば、日本が立ってこれを守ると、こういっておるのでありますから、明らかに相互防衛条約、軍事同盟であることには間違いありません。しかも、一歩誤って、極東の平和という名のもとにおいて使われた場合においては、日本の自衛隊は、一歩誤れば、海外派兵の運命も免れないようなことになるのであります。まさに日本の国のある姿を変える協定であるといっても過言ではありません。(拍手)従いまして、このような重大なことをやる場合においては、政府は主人公たる国民の意思を聞くべきであると私は思うのであります。憲法第七十二条の、内閣の行なう事務の中で、第三項として、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」と、こういっておるのであります。従いまして、このような重大なるところの協約でありまするならば、いわば、調印をする前に国会の解散をいたしまして、そうしてそれを国民に訴えて、その国民の決定に従うのが当然であると私は思うのであります。(拍手)従いまして、最終的には国会を解散して国民の世論によって決定するかという、この意思を私は承っておきたいと思うのであります。
 さらに、日中国交回復の問題につきまして、政府におきましては、いわば、政治と経済を分離し、もうける方はやるが、政治的なやつはあと回しだ、こうやっておるのでありますが、これは、私は、それぞれの国の立場を考えて、和平をやるにいたしましても、やはり第一には政治的な解決をしなければ、あとの問題は解決できないと思うのであります。経済的なことをやって金もうけをするが、対立はまだ続ける、戦争状態は残していくということであってはならぬと思うのであります。そういう意味合いにおいて、政治、経済一体、石橋さんが言っている通りに、これに関心を持たれまして、一日も早く日中国交回復のために努力されることを要求するものであります。
 さらに、風水害並びに他の問題につきましては、それぞれの同志から質問をすることにいたしまして、これで打ち切りますが、ただ一点申し上げたいのは、私どもは、自衛隊の改組をやったらどうかということを言っておるのであります。すなわち、現在において自衛隊の持っておりまするところの任務は、直接侵略並びに間接侵略に対抗しておる。しかし、戦後、一つの特徴としては、自然からくる、空からくる一つの自然的な侵入というものがあるのであります。これに対して対抗する国土建設隊、あるいは国土開発隊に切りかえていく方が私はいいのではなかろうかと言って、これを指摘しているのでありまして、この点もよくお考えの上に答弁あらんことを切望いたします。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#20
○国務大臣(岸信介君) 国際情勢の問題につきましては、私が先ほど申し上げたことは、議事録でごらん下さいますというと、決して私の演説と違っておらないことが明瞭であると思います。(拍手)
 調印の時期につきましては、私は、この条約の審議を十分に尽くすために、通常国会の冒頭にこれを提案したいということを国会において申し述べたことがございます。それまでに間に合うように調印をいたしたいと考えて現在交渉を促進いたしております。
 砂川判決との時期の関係についての御質問でありますが、私ども政府としては、別にこの判決の時期とは関係なし、われわれの信念に基づいてやっております。
 調印前の解散については、私どもはそういうことは考えておりません。このことを明確に申し上げておきます。
 日中関係の調整につきまして、政治と経済との不可分ということと、これを分離してやろうということの考えの違いは、政治といわれていることの内容が、あるいは台湾における国民政府と日本との関係であるとか、あるいは日米関係であるとかいうものに触れての関係であるとか、あるいは今日の国際情勢のままにおいて承認をすることが日本の立場から不可能であることを無視して、政治、経済を一緒にして考えることはできないということを、私ども申し上げておるのであります。
 自衛隊の改組の問題につきましては、もちろん、自衛隊の本来の任務を私どもは変える考えを持っておりません。現在の自衛隊法におきましても、災害に際して人命や財産を救助するために出動ができることになっておりますし、また、訓練の意味において建設工事等もできることになっておりまして、これらの規定を十分に運用して必要に応ずるつもりでおります。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○議長(加藤鐐五郎君) 下平正一君。
    〔下平正一君登壇〕
#22
○下平正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先刻行なわれました岸内閣総理大臣の施政方針演説並びに関係大臣の報告演説等に関しまして、主として災害対策を中心に若干の質問をいたしたいと思うのであります。(拍手)
 質問に入るに先立ちまして、今次の災害に関し、物心両面にわたる未曽有の被害に遭遇せられました全国被災地の罹災民の皆様方に、心からなる御同情とお見舞を申し上げるものであります。(拍手)
 詳細な点につきましては、今国会にわが党の要求で設置をいたされました災害地対策特別委員会あるいは関係委員会で質問を申し上げることにいたしまして、とこでは特に重要なる根本的な問題についてのみ社会党の立場を明らかにしつつ質問を申し上げる次第であります。
 先刻の報告にもありました通り、今次の災害は、特に本年は、四月から幾つも幾つもの災害が連続をいたしまして、その被害総額はおよそ七千億といわれる、実に莫大な被害であります。被害の範囲におきましても、被害金額百億円をこえる府県が十数県を数えるという、実に大規模な災害であります。特に十五号台風、いわゆる伊勢湾台風の被害は史上最大といわれます。先ほどの建設相の報告の通り、その規模はまことに大きく、その被害の程度はきわめて深刻であります。同時に、今度の災害の特徴は、その被害の時期が非常に長引いているということが大きな特徴であります。学校に一例をとりましても、台風が去ってより一カ月以上たった今日、中小学校の休校が、被害東海三県で五十二校、三部授業を行なっておる学校が百二十九校という、まさに未曽有の大災害であります。
 こういう大災害に対する政府の応急対策、あるいは救援対策、あるいは恒久的な対策等をながめてみますると、一口に言って、それは怠慢であります。不誠実であります。思うに、このことは、今次の災害に対する実情の把握の不足と、政策の欠如、復旧に対する熱意の欠如から生じていると思うわけであります。(拍手)私どもは、今次の災害は、二十八年度の大水害、加うるに関東大震災が重なったほどの、きわめて異常な大災害と考えております。従って、あらゆる努力を尽くし、予算措置を集中して、国をあげて復旧に努力をしなければならないと考えておりまするが、この被害の実情に対する認識、復旧に対する決意、特に、具体的には、昭和二十八年度災害以上の特別法ないしは特別措置が必要と考えまするが、この点に対する総理大臣の所信を伺いたいと思うわけであります。
 次にお伺いいたしたい点は、今度の災害の特徴は、民間の産業の被害がきわめて大きく、かつ破壊的であったことであります。同時に、湛水が広範にわたり、排水が不可能のために、災害が長期にわたったことが特徴であります。このことは、必然的に、罹災者の生活に対して重大なる影響を与えております。政府のこれまでの対策を見てみますると、公共災害に対する対策の欠除もさることながら、この膨大な罹災民に対する直接的な援護措置ないしは中小企業に対する復興措置がきわめて欠除をいたしておるのであります。罹災後一カ月を経た今日、いまだに湛水地域は二千平方キロメートルもございます。水中にそのまま没している世帯は十万を数えているわけであります。災害によって収穫寸前の耕地を奪われて、ほんとうにその日の生活に困る農民、あるいは、工場が全滅してしまって、いまだに就職の機会のない労働者、あるいは、想像もできないような山林の被害によりまして、特に失業保険の対象ともならないような山林日雇い労働者、あるいは、多くの漁船を失った漁民等々、今次災害のために生活の方途を失った膨大な罹災民に対する援護措置はきおめて冷淡であります。(拍手)
 また、災害の応急措置についてもきわめて不完全でありまして、たとえば、災害救助法に例をとってみまするならば、給食費を例にとっても、当初はわずかに五十円。罹災民の強い不満や私どもの強い要求によりまして、二回にわたって値上げをいたしましたけれども、いまだに九十円。名古屋地区における給食は、最低百三十円はかかるわけであります。給食費のこういった不足は、必然的に罹災民の体力低下となりまして、栄養失調者が続出をする傾向にあるということを、最近の新聞は伝えております。毛布、食糧の配給にしても、はなはだしきは三日間も現地に行き渡らないというところが数多くあったわけであります。私は、この際、災害救助法を改正し、罹災者援護法を制定して、こうした罹災民の救助に万全を期する必要があると思いますが、内閣総理大臣の所見を承りたいのであります。(拍手)
 災害救助法には、災害救助対策協議会が、内閣総理大臣が会長で、総務長官が事務局長で、中央に設けられております。先ほどの総理大臣の報告では、きわめてこれが有効適切に働いたかのごとく報告をされておりましたが、今次の大災害に遭遇いたしまして、このような災害救助法がきめる災害救助対策協議会のあり方では、全然救助の用をなしておりません。(拍手)食糧の遅配や、救援物資が行き届かなかった原因は、一つには、災害が起こってから、あわてて乾パンを集める、毛布を集める、方々買いあさってみたけれども、どうにも足らず、自衛隊の貯蔵品を放出して、ようやく間に合わしたという、ここに大きな原因があるわけであります。さらに、調達をされた物資が現地に行き渡らない原因は、せっかくの物資を水没地帯に運搬する舟が全然ない。さらに、今回の高潮による冠水地帯等においては、予報によって、十五号台風では冠水をするということが前もってわかっていたのでありまするが、特に鍋田干拓地等においては、あの膨大な地域の中に避難場所一つもないというありさまであります。避難命令が来ても、避難をしようにも避難をするところがないというのが実情であります。
 さらに、今回の救援活動の中で特に大きな役割を果たしたのはヘリコプターでございます。当時、自衛隊のヘリコプターは、小牧に一機しかありませんでした。八方手を尽くして、浜松その他から救援を求めて集めたヘリコプターがようやく五機、米軍艦のカーセジ号の応援によりましたところの大型ヘリコプター二十六機が、いかに今回の災害に対して罹災民の救出とか救恤品の配給に大きな力を発揮したかは、どなたも御承知のところでございます。また、予報の伝達とか避難の徹底した場所においては、物的な被害は別といたしましても、人的な被害はきわめて僅少で済んだことも、これも明らかな事実であります。
 わが党は、このような今次大災害の経験から、この際、救助法を徹底的に再検討して、食糧、衣料、医薬品、舟艇、ヘリコプター等の備蓄をするとともに、僻地における無線設備の設置、あるいは避難施設等を設ける等の改正を行なうとともに、今日わずか七千万円しかないこの災害救助法に関する予算を増額して万全の対策を講じなければならないと考えるのであります。時代に逆行いたしましたところの再軍備のためには五年分も十年分もの備蓄はするが、国民のための、民生安定のための備蓄はできないというのでありましょうか。政府の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 また、民生安定をはかるために、新しく罹災者援護法を制定して、罹災者に対する見舞金、死亡者に対する弔慰金、これを支給するとともに、生活困窮者に対する長期の生活資金の貸付、全額国庫負担によるところの医療費の保障等を行なうべきものと考えまするが、この点について関係大臣の所見を承りたいのであります。(拍手)
 さらに、被災地における被災民を救済するために、大規模なる救農土木事業あるいは高率失対事業等も必要と考えるのであります。また、名古屋周辺におけるところの臨海工業地帯における中小企業の壊滅的な被害に対しましても、各種の助成措置はもちろん、長期資金の融資等々の特別の対策が必要と考えられまするが、これらについても、おのおの関係大臣の御答弁をわずらわしたいのであります。
 次に質問を申し上げたいのは、補正予算の点でございます。今次の災害復旧に対する補正予算の各省要求は、先ほども若干触れられたようでありますが、補正予算において約一千億円、財政投融資において約一千億円に及んでおると聞いております。先ほど佐藤大蔵大臣の説明を聞いておりますると、補正予算の中に占める災害関係の補正予算はわずかに三百四十四億円、財政投融資は四百一億円、実に要求額の半分にも満たない状況であります。先刻の演説では、あらゆる努力をして民生の安定と災害の復旧をはかると言われましたが、国民が、罹災民が待っておるのは、実は演説ではありません。具体的な予算措置を国民は待っておるのであります。(拍手)この予算では、今次大災害は、絶対に、救済はおろか、復興はできないと考えます。このような予算を組んで、これで政府・与党が国民に宣伝をした災害対策国会でありますと言えるでありましょうか。(拍手)特に、岸内閣総理大臣は、七号台風の際に、山梨、長野県下を回りました。また、十五号台風の際には中部地方を視察いたしましたが、そのときに、あなたは一体何と罹災民に演説をいたしましたか。今回の災害復旧については、法律や規則にはこだわらないし、また、金のことも心配をかけないから、どうか、とにかく早く復旧するように努力をしてくれ、こういって演説をして回ったではありませんか。(拍手)災害国会と、特に鳴りもの入りで宣伝した国会で、なぜこの約束を完全に果たさないのですか。岸総理の約束は、被災民はまじめに受け取っております。旱天に慈雨を望むがごとく、まじめに待ち焦がれておるのであります。(拍手)これでは、国民に私は申しわけないと思う。国民をだますもはなはだしいと思うのです。(拍手)この点に対する岸内閣総理大臣の責任のある答弁を、罹災民にかわって要求をいたしたいと思うわけであります。(拍手)
 こういうような、口先だけでその場を糊塗している無責任なやり方というものは、今度の災害ばかりではありません。これは、歴代保守党内閣の、特に国土開発保全に対する共通的な立場であります。先ほど、淺沼書記長が、災害と予算の点について、過年度災害について触れられましたが、一年間に二千数百億円、一年間五十五万戸、冠水地帯が全耕作面積の一割の六十万町歩という年々のこの災害に対して、どれだけそれでは処置をして参りましたか。最近の、これらの復旧工事の進捗状態をながめてみれば、二十九年から三十二年までは、御承知のように、災害が非常に少なかった年であります。従って、未復旧工事は相当大幅に進展をいたしておりますが、それでも、今日依然として復旧が完成をされていないのは、二十八年度災害で九%、二十九年度災害では八%、三十一年度災害では一三%、三十二年度災害では、驚くなかれ、三四%も未復旧個所が残っているのであります。昭和三十三年度の末における公共土木施設の未復旧額だけを見ても三百五十七億円という状況であります。もし、政府が、この災害の少なかった昭和二十八年度以降三十二年までの間に、かりに三百億円か四百億円の災害予算を増額していたとするならば、災害の復旧工事は一〇〇%完成されております。災害の個所が夫復旧のために起こった今次の災害は当然防ぐことができたはずであります。(拍手)
 また、政府は、災害予算を組む場合に、いわゆる三・五・二方式をとっておりますけれども、このような方式が未復旧による再被害の最も大きな原因であることは、御承知の通りであります。特に、建設省で指摘いたしております通り、未復旧工事個所の増破率は非常な高率を示しているわけであります。放置された復旧工事のおかげで、国民は当然防ぐことのできるはずの災害で苦しめられ、そればかりではなくて、その災害の額とか災害の範囲を異常に大きくいたしているわけであります。また、毎回の災害で御承知の通り、特に今回の災害でもそうでありますが、改良復旧工事の行なわれたところは比較的災害が少なく済んでおり、原形復旧の工事個所の被害が非常に大きいということであります。原則として改良復旧を認めないという、この政府の消極的な災害対策というものが、災害を防ぐことができないばかりでなくて、一たん起こった災害の被害をますます増大させているのであります。(拍手)この際、戦時中の臨時軍事費調達の遺物と言われます三・五・二方式を改めるとともに、原形復旧を完全なる改良復旧主義に改める必要があると思いまするが、それに対して、先ほどの政府の演説のような抽象的なことでなくて、具体的な答弁をお願いいたしたいと思うのであります。(拍手)
 今次の災害のような異常災害の場合には、通り一ぺんの考え方や、いわゆる通り一ぺんの通常の予算措置では復旧が不可能であります。わが党は、この際、民生安定と災害の完全な復旧のために一千億円の災害補正予算と、大幅な財政投融資を行なうべきだと考えております。その財源につきましては、先ほど淺沼書記長が触れましたように、第一点は防衛費の問題であります。自衛隊の給料や契約支払い分を除いて、今日余す可能性のある金はおよそ三百数十億円と、われわれは推定をいたしておりまするが、この際・政府は、災害対策にこれを回すべきであろうと思います。(拍手)次に、接収貴金属による国庫収入で約三百億円の余裕金があるとわが党は推定をいたしておりまするが、この余裕金について、その内訳を公表することを要求いたします。同時に、これを災害対策費に充当すべきことを要求いたします。(拍手)これについて、政府は、まだ手続ができていな、から使えないというが、それは理由になりません。民間の分の約四十億円を差し引けば、残りの約三百億円は、確実に将来政府が処理し得るものでありまして、緊急のこの際、これを災害に回すべきだと考えるのであります。(拍手)接収貴金属に対する大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。また、国債整理基金についても、この際必要以上に見積もられている点があると思われまするが、これを削ることができないかどうか。さらに、財政投融資にいたしましても、郵便貯金の原資増加とか、あるいは農林中金の余裕金等、増加の余地が相当額考えられまするけれども、これらの点に対しても大蔵大臣の所見を伺いたいと思うわけであります。
 次にお伺いしたい点は、今日の地方財政はきわめて逼迫をしております。この逼迫をした地方財政の中で、今次の被害の深刻さは、とうてい自力復興は不可能であります。従って、小災害の復旧に対する国庫補助の新設とか、高率補助の適用とか、あるいは大幅なる起債の認可等、昭和二十八年の特例を上回る措置がこの際ぜひ必要と考えられまするが、関係大臣の、これらに対する見解、具体的な処置をお伺いいたしたいと思うわけであります。
 特に、この際、一点だけ、ぜひ明らかにしていただきたい点は、それは高率補助についてであります。特例法の高率補助は被害激甚地に適用をするとなっておりますが、この適用がきわめて重大な問題であります。漏れ聞くところによれば、建設省の要求は、適用都道府県を十七として強く主張をいたしたそうでありますが、大蔵省の査定では、これが三県に減らされたといわれております。議員の選挙区における利害関係から、この指定を得るための醜い政争も当然予想をされます。また、局地被害の取り扱い方いかんでは不公平なる配分になることも当然考えられます。この際、政府の激甚地に対する見解と、予算に盛られた範囲について、明確に御答弁をいただきたいと思います。
 次に御質問をいたしたい点は、これらの災害を未然に防ぐ根本的な恒久対策についての政府の所信をただしたいのであります。この種の災害について、よく、これは天災か人災かと、しばしばいわれまするけれども、私は、この災害は、防ぎ得ない天災にあらずして人災であり、政治の貧困であり、あえていうならば保守党内閣の怠慢であると指摘をいたしたいのであります。(拍手)かかる災害を根本的に防ぐ最も大きな問題は、何といいましても、砂防、植林、河川改修などの治山治水対策でございます。実績が示しておりまする通り、いつの風水害におきましても、砂防その他の施設の完備している河川においては、その被害はきわめて僅少であります。ところが、今日の実情はどうでありましょうか。砂防、植林、河川改修等には、ほとんど見るべき政府の施策、予算の投入がありません。まっかな、赤はだの山や、無堤あるいは老朽堰堤、あるいは、また、今回の風倒木一千万石に及ぶ森林被害も加わりまして、今日の日本は、少し降雨量が多ければ大災害を誘発するような危険な個所が至るところに散在をいたしております。今次の災害の一つの原因も、明らかに私はここにあると考えております。こうした災害を未然に防ぐための根本措置というものを全く怠ってきましたところの政府の怠慢、不誠意は、断じて私たちは許すことができないと思います。(拍手)たとえば、昭和二十八年には大へん大きな災害がありました。この災害を契機といたしまして、当時の吉田内閣では、治山治水協議会を作り、治山治水十カ年計画なるものを作ったことは、御承知の通りであります。これは、御承知の通り、全国の二千二百の河川の大改修ができ、洪水の調整、発電などの多目的ダムもできます。さらには、二千余の河川の砂防事業や海岸保全事業などが完全にできる計画でありました。そうして、これに要する費用は総額一兆二千七百億円、実に遠大な計画を発表されましたが、さて、それでは、この計画がどれだけ実施に付されて参りましたか。この計画が実施されるとするならば、年々はんらんする六十万町歩の大半は助かるという、年間二千四百億円の被害が二千億円は助かるという、大へんりっぱな計画でありましたが、どれだけ実施されたか。昭和三十三年末までの五カ年間に、その進捗率はわずか一四%にすぎないという実態であります。このままだと、当初の十カ年計画を三十カ年計画に延ばさなければならないと、建設省の白書さえも認めている状態であります。さらに、政府は、最近、新治山治水五カ年計画を発表いたしましたが、これもまた計画倒れであります。先日の参議院農林水産委員会で、政府に対する鞭撻の決議が行なわれました。この計画は、三千五百億円の投資をして、一年間七百億円の事業資金をもって砂防その他を行なうという計画でありましたが、初年度の三十三年度が三百八十四億円、三十四年度が四百二十億円、当初計画の二分の一という、きわめてみじめな状態でありました。(拍手)
 さらに、基本的な問題の一つは、海岸堤防の問題であります。御承知のように、今度の伊勢湾台風の被害が予想以上に大きかったのは、高潮によって海岸地帯の防潮堤が決壊したことが大きな原因になっております。(拍手)海面まり低いデルタ地帯を堤防一つで守るためには、海岸の保全、特に防潮堤の強度や高さに大きな問題のあることは言うまでもないところであります。災害の最も大きかった名古屋市南部の工業地帯の死命を制する防潮堤は、明治中ごろまでの高潮の最高基準で設計をされ、わずか五十センチ高いだけの高さしか持っていないわけであります。その後幾星霜を経る間に、地盤沈下などで防潮堤の役目を果たさないまでに放置されておるわけであります。その上に、二十八年度の災害で被害を受けた。この二十八年度の被害の復旧さえできていなかったところに、あの激甚な被害の発生した大きな原因があることを理解しなければならないと思います。(拍手)海面より低い国といわれますオランダの例をとってみるならば、防潮堤の建設は三、三百年間の高潮の記録をとっているそうであります。千年に一度くらいの高潮の被害でも完全に防げるような強さと幅、大きさを持っているそうであります。そして、この保守、保全には、慎重にして最善の手が施されると聞いております。今日の日本の海岸堤防の実態を見るならば、実にりつ然として身の毛がよだつような状況であります。こういうふうにいたしまして、政府の国土保全のための根本的、恒久的対策は、全くなきにひとしい現状であります。
 さらに、恒久対策のうちで、ぜひ一点だけ十分お考えをいただきたい点は、治山治水その他の機構の問題であります。障害の一つは、複雑なる官庁機構と、なわ張り根性による一貫性の欠如であります。砂防事業に見てみましても、建設省の直轄砂防があり、林野庁の山腹砂防がある。同じ山腹砂防であっても、森林は農林省、あるいは中小河川は建設省、海岸堤防に見ましても、干拓地は農林省、その他は建設省、こういう状態でありまして、これらの不統一というものが意外な被害を出しているわけであります。たとえば、今回の高潮の被害を見ましても、鍋田、碧南、城南干拓の堤防は農林省の事業でありまして、これらは全部全滅をいたしておりまするが、三河沿岸の幡豆海岸の建設省工事は、少しのいたみもなく、完全に残っているわけであります。さらに、東北開発とか、九州開発とか、北海道開発とか、幾つかの審議会があります。中部復興開発の機構もうわさをされているようでありまするが、所管は企画庁であり、計画をしても、実行に移すのは、それは各省別々、予算はばらばら、こういうような機構を改めまして、国土の開発とか建設、災害の復旧等を一元化し、強力に推進するためには、この際国土開発省のごとき省を設けることも検討の余地があると思いますので、御意見を伺いたいと思うのであります。(拍手)この際、私は、政府は深く今までの怠慢の責任を感じ、国民におわびをするとともに、強力なる恒久対策をぜひ講じていただきたい。先ほど、恒久対策について言明をされましたが、ああいった言明や言いわけは、災害の起こるたびに国民は聞いて、もう聞きあきているわけであります。どうか、もっと誠意のある具体的な対策というものを、ぜひお示しをいただきたいと思うわけであります。
 最後に、一点、自衛隊の改編と国土開発隊の創設についてお伺いをいたしたいのであります。今回の災害にあたりまして、自衛隊の即時出動態勢は必ずしも機敏ではなかったと言えますが、被災者の救出、応急措置等に対する自衛隊の出動・協力は、被災者を初め関係方面に感謝をされたのであります。しかしながら、わが党が常々提案しておるごとく、このようなときにこそ、自衛隊をして全面的に即時救援に当たらしめるべきが至当だと考えるわけであります。(拍手)さらに、これを推進いたしまして、常時国土開発事業に当てるべく改編をする必要があると思うわけであります。われわれは戦力としての自衛隊を憲法違反であるといって否定をして参ったことは御承知の通りでありまするが、自衛隊法によると、その主たる目的は軍事行動にあり、災害出動は従とされておるのであります。保守党の諸君は、共産主義の侵略があるからといって、外敵に備えるためが自衛隊のおもな任務であるといっておるのでありますが、平和憲法はこれを禁止いたしております。外敵がもし存在をするならば、話し合いの平和外交で解決するということが、平和憲法の精神であります。(拍手)かりに、もし、今日、日本の国土に危険があると考えるならば、それは台風であります。災害であります。私は、ほんとうに危険があるとするならば、台風、災害であると強調をいたしたいのであります。従って、また、この台風は年々歳々国土を襲って参ります。この外敵は、話し合いでは解決できないのです。(拍手)常に絶えざる努力と備えをしておかなければならないと思うわけであります。災害に対して出動する自衛隊の目的を、なぜその主要目的とてはいけないのですか。今回政府がアメリカとの間に調印を強行しようとしている安保条約によれば、自衛隊は、災害から国土保全という任務から遠ざかって、一そう戦略的な背景を帯びた治安維持、軍事行動の負担を義務づけることになります。自衛隊の使っている軍事的な装備、ジェット機やミサイル兵器の購入に使われている莫大な予算をもって災害復旧や救済に必要な資材、装備を充実して、全力をあげて平和国土の建設に当たるならば、私は、このたびのような悲惨な災害は事前に防止することが容易であったと考えるものであります。(拍手)これこそ、私たちが常に主張をいたしておりまする、自衛隊の国土開発隊への改編であります。もし、かりに、政府・与党の皆さん方が、今度の災害に関して、真剣に、そうして誠意のある対策をもって国民にこたえようとするならば、もはや自衛隊を国土開発隊に改編する以外にないことを率直に認めるべきだと思います。(拍手)政府・与党は、今日の災害で、国民から自衛隊が感謝をされたと喜んでおりまするが、国民が感謝をしているのは、鉄砲を持った自衛隊ではありません。シャベルを持ち、土のうをかつぎ、ブルドーザーを運転して、災害復旧に、国土の保全に汗を流し、献身的な努力をしている、この自衛隊に感謝をしているわけであります。(拍手)今や、自衛隊を国土保全に回せということは、社会党の言い分でなくて、実は国民の声であります。この点に対する岸内閣総理大臣の見解をお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
    [国務大臣岸信介君登壇〕
#23
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 第一点、今回の風水害に対する私の認識と私の熱意についての御質問でございました。言うまでもなく、私は、今回の十五号並びに七号台風につきましては、被害地も一巡いたしますし、また、いろいろな点から数字その他の検討もいたしておりまして、その惨害に対しましては、先ほどの演説で申し上げた通りに考えております。また、これが復旧並びに将来の対策につきましては、今回補正予算及び特別立法を提案して御審議を願っておる次第でございまして、この補正予算を編成するにあたりましては、十分、各地の事情に応じて、対策としそ十分なものを立てるという方針のもとに、私どもは編成をいたしております。(拍手)
 第二点の、自衛隊を国土開発隊に編成がえしろという御議論でありますが、その点に関しましては、先ほど淺沼君の御議論に対しましてもお答えした通りでありまして、私は、自衛隊の本来の任務、これはやはり直接、間接の侵略に対して日本を守り、そうして国民の安全と平和を守るということにあると思います。しかし、災害に対しましても十分その機能を発揮できるようにできておりまして、自衛隊法の運用によって十分にその目的を達すると考えます。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#24
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 補正予算の金額が少ないということでございますが、ただいま総理からお答えいたした通りであります。
 また、激甚地の定め方でございますが、御承知のように、特例法はどこまでも公平適正にこれを適用いたさなければならないことは申すまでもございません。そこで、さらに私どもは実情を十分調査いたしまして、しかる上でこの激甚地をきめて参る、かような考えでございます。
 接収貴金属特別会計について、これをこの財源に充て得るものはないかというお尋ねでありますが、御承知のように、今日まで数次にわたって、財源として政府の使用し得るものは使用済みでございます。そこで、残っておりますのは民間のものでございますので、今後さらにこれを調査する必要がございます。この際これを使うわけには参りません。
 国債整理基金特別会計から災害予算に繰り入ればできないかということでございますが、御趣旨のような点から、今回四億八千万円を計上いたしております。
 以上、お答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#25
○国務大臣(池田勇人君) 今回の災害をお受けになりました中小企業に対しましては、災害資金といたしまして百五十億円程度の融資を考えております。
 また、信用の拡大をはかるために、信用保険公庫に十億円の出資をいたし、また保険料率の引き下げ、保険の担保率の引き上げ等、適当な措置をとることにいたしておるのであります。(拍手)
    〔国務大臣村上勇君登壇〕
#26
○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。
 災害復旧は原形復旧の建前をとっているが、これでは再び災害を起こすおそれがあるという御質問であります。現行負担法は原形復旧を源則とはいたしておりますが、しかし、非常に災害が激甚で、一定の計画による改良復旧を行なう必要があると認めたものに対しましては、災害復旧工事と合わせて、災害関連工事として復旧することができるのでありますから、現行の負担法によって御質問の趣旨は達せられるものと考えております。
 それから、海岸堤防の建設計画についての御質疑でありますが、海岸保全は、わが国の地理的、経済的条件から見てもきわめて重大なことでありますので、治山治水対策の一環として、治水事業五カ年計画に盛り込みまして実施中でありますが、今後一そう強力に推進いたしたいと考えております。
 次は、治山治水五カ年計画について、それが進捗していないということでございますが、治山治水対策は、国土保全、産業基盤の強化拡充の見地からもきわめて緊要な施策でありますことは申すまでもないのであります。政府におきましても、これが推進に努力いたしておるところでありますが、諸般の財政事情等もありまして、十分にその進捗を見ていないということは、はなはだ遺憾であります。また、治山治水対策の今後の方針といたしましては、基本計画の中から、防災上、経済上特に緊要度の高いものを取り上げ、五カ年計画を策定した次第でありまして、これを的確に実施し、災害に先行した積極的な治山治水対策の推進をはかって参りたいと考えております。なお、この具体的実行方法につきましては、治山治水対策関係閣僚懇談会等におきまして検討中でありますが、早急に結論を得て、明年度あたりからは、ぜひとも実行いたしたいと思っております。
 国土建設行政が、海岸砂防等について農林省と建設省と分かれておる、これは非常に不便ではないかということでありますが、これは、その必要に応じて、主務大臣がともに緊密な連絡をとって遂行いたしておりますので、私は、さほど混乱はないと思っております。砂防におきましても、一方は森林砂防であわ、建設省のはいわゆる建設砂防でありますから、この点は、おのおの相談をしながらやっておりますので、絶対に心配ないと思っております。(拍手)
    [国務大臣福田赳夫君登壇〕
#27
○国務大臣(福田赳夫君) 救農土木をやれというお話でございますが、これは被害の実情に即しまして積極的にやる考えであります。そのための予算もとってありまするが、必要があれば予備金もこれを使用するつもりであります。
 第二に、復旧事業の年度配分を、今までの原則をやめて早くやれというお話でございましたが、従来の比率以上に、私どもといたしましても、これをやるつもりでございます。来年の農作業が春には必ずできるということを建前としてやっております。
 それから、激甚地の区分をどうするかということは、大蔵大臣からお答えがありました通りでございますが、大体、農地につきましては二十八年度災害の例に準じてやりたい、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣渡邊良夫君登壇〕
#28
○国務大臣(渡邊良夫君) 災害救助法の内容の拡大あるいは改正の点について御質問のようでございまするが、災害救助法につきましては、私どもも、このたび、期限の延長や、あるいは仮設住宅等の単価の引き上げ、あるいは、たき出し等の単価の引き上げ等もやりまして、十分にその措置をとるつもりでありますが、まださような御意見があるとすれば、また検討するつもりでございます。
 罹災者援護措置法につきましては、私どもは、これを生活保護で見る面と、あるいはまた、世帯更生資金、母子福祉資金のワクの拡大、補助の増額等によってこれを考えていきたいと存じております。
 その他、ヘリコプター、舟艇、いろいろの機材等も地方庁にこれを設置したらどうかということでございますが、将来は防災基本法ともにらみ合わせて十分検討いたしたいと考えます。
     ――――◇―――――
#29
○天野公義君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十九日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#30
○議長(加藤鐐五郎君) 天野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十二分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 井野 碩哉君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
        文 部 大 臣 松田竹千代君
        厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
        農 林 大 臣 福田 赳夫君
        通商産業大臣 池田 勇人君
        運 輸 大 臣 楢橋  渡君
        郵 政 大 臣 植竹 春彦君
        労 働 大 臣 松野 頼三君
        建 設 大 臣 村上  勇君
        国 務 大 臣 赤城 宗徳君
        国 務 大 臣 石原幹市郎君
        国 務 大 臣 菅野和太郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
        国 務 大 臣 益谷 秀次君
 出席政府委員
        内閣官房長官  椎名悦三郎君
        法制局長官   林  修三君
        法制局次長   高辻 正巳君
        総理府総務長官 福田 篤泰君
        外務省条約局長 高橋 通敏君
        大蔵省主計局長 石原 周夫君
        厚生大臣官房長 森本  潔君
ソース: 国立国会図書館
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