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#1
第033回国会 本会議 第6号
昭和三十四年十一月十日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和三十四年十一月十日
    午後一時開議
 第一 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
 第二 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
 第三 社会保険審査会委員長任命につき同意を求めるの件
    …………………………………
 一 国務大臣の演説
 二 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 日程第一 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
 日程第二 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件
 日程第三 社会保険審査会委員長任命につき同意を求めるの件
 藤山外務大臣の日米安全保障条約改定に関する交渉の経緯についての演説
 国務大臣の演説に対する質疑
 大貫大八君の故議員野澤清人君に対する追悼演説
    午後二時九分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。
 議員吉田茂君、同北澤直吉君、同小坂善太郎君及び同愛知揆一君から、豪州との友好親善の増進及び視察のため、十一月二十五日から本会期中、議員灘尾弘吉君から、中華民国政府の招請により同国訪問のため、十一月十四日から十一月二十五日まで十二日間、議員橋本龍伍君から、米国、欧州及びアフリカにおける政治経済事情調査のため、十一月十五日から本会期中、議員本名武君から、スイス、ドイツ、フランス、イタリアにおける農業関係現地調査のため、十一月十三日から十二月五日まで二十三日間、右いずれも請暇の申し出があります。
 これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 畑地農業改良促進対策
  審議会委員の選挙
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第一、畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙を行ないます。
#6
○天野公義君 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
#7
○議長(加藤鐐五郎君) 天野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、畑地農業改良促進対策審議会委員に松浦周太郎君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 日程第二 中央更生保護審査会委
  員任命につき同意を求めるの件
#9
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第二につきお諮りいたします。
 内閣から、中央更生保護審査会委員に大竹武七郎君を任命したいので、犯罪者予防更生法第五条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第三 社会保険審査会委員長
  任命につき同意を求めるの件
#11
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第二につきお諮りいたします。
 内閣から、社会保険審査会委員長に川上和吉君を任命したいので、社会保険審査官及び社会保険審査会法第二十二条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#13
○議長(加藤鐐五郎君) 外務大臣から日米安全保障条約改定に関する交渉の経緯について発言の通告があります。これを許します。外務大臣藤山愛一郎君。
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#14
○国務大臣(藤山愛一郎君) 日米安全保障条約改正交渉に関する現在までの経緯に関して御報告いたします。
 安全保障条約の改正は、日米間の多年にわたる重要懸案でありましたが、一昨年六月、岸総理とアイゼンハワー大統領との会談において、当時の共同声明が明らかにしております通り、安全保障に関する諸問題を検討するため、日米安全保障委員会が設置されることとなり、この委員会は、同時に、安全保障の分野における日米関係を両国の国民の必要及び願望に適合するよら調整することを考慮する任務を与えられ、ここに安全保障条約改正への道が開かれたことは、御承知の通りであります。
 自来、条約改正の問題に関し、日米間に非公式に意見の交換を行なった結果、機ようやく熟するに至りましたので、昨年九月、私はワシントンを訪問して、故ダレス国務長官と会見し、条約改正交渉の開始を提議するとともに、条約改正に関する日本の希望事項を申し入れた次第であります。
 当時申し入れました事項を要約いたしますと、安全保障条約は現在まで日本の平和を守るため重要な寄与をなして参りましたが、現行条約は、その締結当時の事情を反映し、必ずしも日本の国民感情に沿わぬ点があるので、これを現在の日本の国情及び国際的地位にふさわしいように改正する要がある。さらに、内容的にいえば、米国の日本防衛に対する援助義務を明確化すること、日本の負うべき義務は憲法の範囲内に限らるべきこと、条約運営に関し日本の発言権を強化し、特に在日米軍の配備及び装備の重要な変更並びに極東の平和及び安全の維持のため、日本の施設及び区域を作戦的目的に使用することを事前協議の事項とすること、条約に一定の期限を設けること、その他、現行条約中、現状にふさわしくない諸点に所要の改正を行なうことであります。ダレス長官は、これに対して、日本側の事情に対する十分な理解を示し、条約改正の交渉を行なうことを応諾し、現在の交渉が開始されるに至った次第であります。
 その後、引き続き、同年十月、東京において、マッカーサー在日米国大使との間に条約改正に関する第一回公式会談を行なう運びとなったのでありますが、さらに、この間、広く国内世論の動向に注目しつつ、新条約の内容につき具体的検討を加えました結果、その大綱につき日米間の見解調整も漸時進捗し、現在まで公式会談を重ねること十六回に及びまして、いまだ案文についての最終的調整は完了していないのでありますが、交渉はほぼ妥結に近づいている次第であります。
 以下、新条約の内容につきまして、その概要を御報告いたしたいと存じます。
 新条約は、まず前文において、日米両国は民主主義の原則を擁護し、両国間の経済協力を緊密化すべきこと、国連憲章を尊重し、すべての国と平和的に共存することを希望すること及び両国が国連憲章に定める自衛の固有の権利を有することを確認するとともに、両国の極東の平和及び安全の維持に対する関心を表明することとなると存じます。
 条約本文につきましては、その内容となる事項は、概要次の通りでございます。
 第一は、日米両国が国連憲章の原則に従い、国際紛争を平和的に解決することとし、国連の目的に違背するような武力の行使または武力による威嚇を行なわない。また、日米両国は、国連の平和維持機構としての機能強化に努力するということであります。
 御承知の通り、現行条約は、日本の国連加盟前に締結された事情もあり、国連憲章との関係についての規定を欠いておりますので、新条約においては、これに関する明確な規定を設けることにより、日米両国は国連憲章に従い行動すべきこと、及び、新条約は国連憲章のワク内における安全保障の措置であることを明らかにし、さらに進んで、日米両国が他の平和愛好国と協力して、国際平和維持の機関としての国連強化に努力すべき旨を表明することといたしたのであります。
 第二は、日米両国は、民主主義の原則を尊重し、安定と福祉を増進して友好関係の強化に努め、さらに経済的協力関係の緊密化に努力するとの趣旨を表明することであります。
 日米両国が安全保障上密接な協力関係に立つことは、両国が政治・経済上の広範な協力の基礎を有することによってのみ可能であります。この点において、日米両国は、現に民主主義の共通の基盤に立ち、経済的にもきわめて緊密な関係にありますが、新条約においては、この関係をさらに発展せしめるとの両国の政策を明らかにすることといたしたのであります。
 第三は、日米両国は、個別的に、また相互に協力して、武力攻撃に抵抗するためのそれぞれの能力を憲法の範囲内で維持発展させるとの意図を表明することであります。
 この条項の趣旨は、日米両国が安全保障上の協力関係にある上は、各自、自衛のための能力を涵養するため、みずから努力し、また協力するということでありますが、日本としては、憲法の範囲内でこれを行なうべきことを明らかにする所存であります。
 なお、自衛力の規模、態様等は、各自その国力、国情等に応じ、自主的に決定すべきものであることは申すまでもないところであります。
 第四は、日米両国は、条約の実施に関し随時協議するとともに、日本の安全または極東の平和が脅かされる場合は、直ちに協議することであります。
 日米安全保障の体制をすべて両国間の協議により運営していくということは、新条約の基本的考え方であります。従って、条約の実施に関し常時密接に連絡を保つとともに、日本の安全が脅威されるとか、また極東の平和が害されるような事態を生じた場合は、これに対処するため直ちに協議を行なうことといたしたのであります。
 第五は、日本の施政のもとにある領域において、武力攻撃があった場合は、日米共通の危険に対処するため、憲法の規定と手続に従って行動することを宣言するとの趣旨を規定することであります。この場合、国連憲章第五十一条に基づき武力攻撃に対してとられた措置は直ちに安保理事会に報告され、安保理事会が平和回復の措置をとった場合は終止されることとなります。
 現行条約は、米国に日本駐兵の権利を認めておりますが、少なくとも条文上においては、日本防衛の義務が明記されておりません。現在米軍の撤退が進んでおりますので、米軍の日本防衛義務を明確化するととは、侵略を未然に防止するため特に重要であると考えるものであります。この点に関連いたしまして、通常の安全保障条約においては特定の地理的範囲における各締約国の領土に対し攻撃が加えられた場合における相互援助を規定していることは、御承知の通りであります。しかしながら、日本の場合、憲法上の関係よりも、外国領土防衛の義務を負うことは考えられないことであり、従って、条約地域は日本領土に限定することといたした次第であります。日本領土で現在日本の施政下にない地域、特に多数同胞の居住する沖縄に対しては、国民感情上も特殊の関心が抱かれることは当然でありますが、この点に関しては、世論の帰趨を見定めつつ、慎重検討の結果、当面、条約地域は現に日本の施政下にある地域に限定することといたしましたが、将来、これらの地域の施政権が返還されれば、自動的に条約地域に入ることとなる次第であります。
 すでに申し述べました通り、米国の日本防衛義務を規定するため、日本の施政下にある領域において攻撃があった場合には、両国は憲法上の規定と手続に従い所要の行動をとるという趣旨の、この種の条約における通常の方式の規定を設けることとなっておりますが、条約地域が日本の施政下にある領域に限定されていることは、新条約の著しい特徴であります。在日米軍に対する攻撃は、日本自身に対する攻撃なしには行ない得ないところでありますから、日本として自衛上これに対処すべきことは当然であり、新条約により実質的に何ら新しい義務を負うことにはならないのであります。
 第六は、日本国の安全並びに極東の平和と安全に寄与するため、米国軍隊による日本の施設及び区域の使用を許すことであります。
 日本の安全及び極東の平和と安全を維持するため日本に米軍の駐屯を認めることは、現下の情勢より見て依然として必要であると考えるものであります。なぜかならば、極東の平和と安全なくして日本の平和と安全は期し得ないと信ずるからであります。
 米軍の駐屯は、日本の安全及び極東の平和と安全の維持を目的とするものでありますが、米国が国連憲章の目的と原則に従い行動すべきことは、その現実の政策の示すところであるのみならず、新条約においても確認されるところであります。従って、極東の平和と安全の維持のため米軍が軍事行動をとるのは、国連の行動の一環として侵略に対処する場合か、国連憲章第五十一条に基づく自衛権行使の措置として行ならかのいずれかであることを付言いたしたいと存ずる次第であります。
 第七は、条約の期限に関して、条約発効後十年を経過した後は、いずれの当事国も一年の予告でこれを廃棄し得ることとするとともに、国連が日本区域の平和と安全のため十分の定めをする措置をとったときは、この期間内においても効力を失うものと定めることであります。
 安全保障の体制において特に重要なことは、安定性であると考えます。すでに申し述べたところに明らかなように、新条約の性格は、全く防衛的のものであり、今後における国際情勢の進展において日米間に安全保障の体制が存在することにより、困難な事態が生ずることは考えられないところでありまして、日本が今後平和的に発展をはかっていく上にも、十年という安全保障上の安定期間を持つことは重要であると考える次第であります。
 もちろん、国連により日本の平和が保障される時期のすみやかに到来することは強く希望するところであり、新条約にもこの趣旨を明らかにすることといたします。これに関連し、日米両国が国際平和維持の機関としての国連の強化のため努力すべき旨を表明することとなることは、すでに申し述べたところであります。
 第八は、条約の付属交換公文において、米軍の日本への配備及び装備における重要な変更並びに極東の平和と安全のために日本領域外に対して作戦行動するため、米国が日本の施設及び区域を作戦基地として使用することは、日本政府との事前協議を要する事項とすることを明らかにすることとなっております。なお、これらの事項に関して、米国は一方的行動をとらないということは、日米間の交渉の過程において、すでに明確に了解されているところであります。
 現行条約においては、少なくとも条文上は、これら事項に対して何らの規制が課せられていないことは、御承知の通りであります。米国は、これまで、条約の運営にあたり、事実上、努めて日本政府及び国民の意向を尊重しているのでありますが、新条約においては、日本の発言権を確立し、国内の不安を一掃するため、条約の運営、特にこの二つの事項について、明文上、日本の自主的立場を明確化することといたしたいと考える次第であります。
 なお、行政協定につきましては、協定締結後、現在までの運営上の経験及びNATO協定及びNATO諸国の協定運営状況などにかんがみ、現行協定の内容を各条にわたり検討いたしました結果、第二十四条緊急事態に関する規定及び第二十五条二の(b)項の防衛分担金条項を削除し、第二条及び第三条施設及び区域、第九条出入国、第十一条通関、第十二条調達及び労務、第十四条特殊契約者、第十八条民事請求権等の規定に、所要の改正及び運営上の改善をはかるとともに、その他の条項につきましても必要な調整を行なうこととし、交渉を進めて現在に至っておりますが、行政協定につきましても交渉は妥結に近づきつつある次第であります。
 以上申し述べました通り、このたびの交渉は、今日まで日本の平和を守るため重要な役割を演じてきた日米安全保障体制を堅持しつつ、両国の相互信頼と協力の関係を基礎として、現行条約を現状に即するよう改正することを目的とするものであります。しかして、この交渉における日本側の基本的立場を重ねて要約すれば、新条約は、国連のワク内における安全保障の措置として、厳に防衛的性格のものとすること、日本の負うべき義務は憲法の範囲内にとどめること及び日米対等の基礎に立って条約の運営における日本の自主性を確立することの三点を根幹とするものであり、幸いにして、米国側の理解ある態度により、交渉はこの線に沿い取りまとめることができると確信している次第であります。
 世界における緊張緩和は、わが国外交の最も重要な目標でありまして、国連を中心として、今後ますますこの方向へ努力すべきことは申すまでもないところであり、現在、大国間に話し合いにより局面の打開をはかる機運が起こっていることは、もちろん歓迎するところであります。しかしながら、東西両陣営ともに集団安全保障の体制をゆるめる徴候は何らうかがえず、むしろ、集団的安全保障体制の基礎に立つ話し合いと見るのが正しいと考えるものであります。
 政府といたしましては、現存する安全保障の体制を合理化して、日本の平和を守ることに遺憾なきを期し、安全保障上の安定性を基礎として、日本の平和的発展の道を開くことを念願とするものであります。
 以上、安全保障条約改正に関する日米間の交渉の経緯について御報告いたしたのでありますが、政府といたしましては、交渉の妥結とともに、すみやかに新条約及び新協定に調印し、次期通常国会においてこれが承認を求むるの運びにいたしたいと考えている次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#15
○議長(加藤鐐五郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。
 戸叶里子君。
    [戸叶里子君登壇]
#16
○戸叶里子君 私は、ただいま報告されました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約改正の報告に対しまして、日本社会党を代表して、首相並びに外相に若干の質疑を試みんとするものであります。(拍手)
 質問の前に申し上げたいことは、この条約が日本国の運命を左右するものであり、また、国民の多数が戦争に巻き込まれるおそれがあるものとして反対しているにもかかわらず、ただいまの中間報告は、何らその核心に触れす、全くおざなりのものであったということは、まことに残念でございます。もっと詳しく内容を説明し、問題点はここにあるから一緒に考えてほしいという、まじめな報告を期待していたのであります。(拍手)しかし、報告として出されたものは全く一方的解釈に基づいたもので、はなはだ遺憾でございます、せめて答弁は納得のいくように答えていただきたいことを要望いたします。
 まず、最初にお尋ねすることは、なぜ改定を急ぐかということでございます。安保改定のための国内世論も一致せず、与党内においてさえも異論があるのに、経済再建懇談会からPRのため三億円目標に寄付金を集めるというような自信のない改定であるにもかかわらず、一方、今年の末か来年調印のため首相及び外相が訪米しようとしていると報道されております。この時期はすでに決定されたのでありましょうか。もし決定されようとするならば、今日の国際情勢にあまりにもうとい政府として国民から不信の念を買うのみならず、アメリカとの間に何らかの約束でもあってそんなに急ぐのであろうかと、痛くもない腹を探られ、かえって日米間に疑惑の念を抱かせる結果となると思うのであります。(拍手)
 今日の世界政治のあり方は、話し合い外交へと変わってきております。数年前までは考えられなかったニクソン副大統領の訪ソ、アイクとフルシチョフの相互訪問等が実現され、直ちにその成果は期待されなくとも、少なくとも、戦争回避と軍備縮小、あるいは撤廃への道の開けつつあることは、だれでも認めるところであります。(拍手)このような、前途に希望を感じさせる方向に世界の人たちが努力しており、また、一方においては、スエーデン、オーストリア、アラブ連合、インド、インドネシア等、軍事同盟に反対して一つの大きな線を描いてきておりますし、こうした情勢は、日米安保条約の結ばれた当時、すなわち、日本がアメリカ軍の占領下で、米ソの対立も非常に危険な関係にあった当時、そして朝鮮戦争の直後という時代とは変わってきているのであります。また、砂川問題の判決にあたって、米軍駐留は憲法違反の決定を見ております。しかるに、今、最高裁の最終的な判決がきまっておりません。法を守る国として、法の権威を失墜しないためにも、この結論の出るのを待つべきではないでしょうか。(拍手)にもかかわらず、改定を行なって、軍事同盟的性格を持たさなければならない理由はどこにあるのか、はっきりさせていただきたいのであります。(拍手)
 首相の予算委員会等の答弁によりますと、このたびの条約は、防衛上の協力のほかに、政治的、経済的の協力を含む広範なもので、軍事条約という言葉に誤解があると言われております。なるほど、改正を想定されている二条において経済協力をうたっております。しかし、日本がこの条約によって経済的に有利になるという根拠を具体的に示していただきたいのであります。(拍手)なぜならば、経済的交流の場合には、通商航海条約とか、ガットとか、その他の個々の経済関係の条約によって話し合いが行なわれるべきであります。今日の日米間の経済問題は、繁栄の面も考えられると同時に、中小企業の圧迫も出現してきていることは、大豆、ミシン、石炭等の面からも言えることであって、むしろ、経済関係の条約の是正によって経済の発展をはかるべきであります。経済条項をうたったのは軍事条約の内容をカムフラージュしたのであるという感じ以上に、この条約によって軍需産業に寄与し、死の商人を潤すのみではなかろうかとの感を一般に高めるでありましょう。(拍手)従って、これらの経済関係の条約とは別に、ここに経済提携を挿入したのは、国民一般の文化的向上をはかる生産にいかに役立つかを、もっと具体的に説明していただきたいのであります。
 次に、私は、中立の問題でお伺いしたいと思います。私たちが念願するところは、日本がいかなる軍事同盟からも離脱して軍事的中立を確保し、現在アジアに存在する緊張状態をやわらげ、日本自身も戦争の危機から遠のかせることであります。それには、安保条約のような軍事同盟によって一方的に拘束される状態をなくし、中国と国交を回復し、ソ連とも平和条約を結び、あらゆる国に対して自主独立の立場から日本の前進をはかるべきであります。(拍手)これこそ、中立への前進の姿であります。ところが、首相は、予算委員会において、「中立政策には二つあり、真の中立と容共的中立とある」とおっしゃっていられます。この中立論は、自分の解釈を有利ならしめる政治論ならばいざ知らず、国際法的に見て、中立論というものがはたして二つあるかどうかを伺いたいのであります。(拍手)さらにまた、首相は、「戦争直後の国力が弱かったときならともかく、ここまで日本の国力が回復してきた現在、中立にとどまり得るという見方は甘い」と言われておりますが、これは逆であります。国力が強い国ほど、中立を唱えて、どこの国とも戦わず、一方に偏しない態度を表明して引きずっていくところに、初めて世界の平和への貢献ができるのであります。(拍手)このときこそ、真の中立が真の効力を発揮するのであります。首相は、むしろ、中立への努力を回避し、一方の陣営にのみ深入りを望んでいるのではないでしょうか。この点の首相の御見解を承りたいと存じます。(拍手)
 また、これと一連のつながりを持つと思われますのは、先ごろの国連総会において、藤山外務大臣は、「共産陣営の唱える平和とわれわれの求める平和とは異なる性質のものであるかもしれない」と発表している事実であります。これでは平和共存などあり得べくもなく、国民は混乱するのみであります。平和とは、イデオロギーを超越したものであり、人種的差別によるものでもありません。平和への過程は異なるにしても、最終目的の平和は一つであるべきであります。(拍手)こんな不自然な平和論を国際舞台で振り回されては、私たち国民こそ迷惑しごくであります。(拍手)外務大臣は、この二つの平和を考えた上で安全保障条約の改定に臨んでいるのか、明確にお答えを願いたいのでございます。
 次に問題になることは、バンデンバーグの決議と憲法との関係であります。政府は、自国の憲法の規制と手続に従って行動を起こすという言葉を挿入することによって、いかなるときにも憲法に反しない、と答弁しております。ところが、今までの政府の憲法に対する態度を見ていると、日本が攻撃されたときには、攻撃してきた基地をたたいても国を守ることは憲法上許されているとか、防御用の核兵器を持つことは違憲ではないというように、憲法の解釈の範囲が次々と拡大され、既成事実を作っては、それを国民に押しつけてきているのであります。(拍手)従って、政府がどんなに憲法を守るといって説明してみたところで、今日の政府に対しては信用できないというのが、国民の声であります。(拍手)
 今回、政府は、バンデンバーグの決議に従って、限定された条件ではありますが、共同防衛の義務を負うことを約束しようとしております。すなわち、日本の領土内にいる駐留アメリカ軍とか基地が攻撃された場合には、日本への攻撃とみなして共同防衛に立つというのであります。しかし、この場合、日本の領土、領海、領空で米軍が攻撃されるときには、すでに日本の領土が侵されているので、その攻撃に対しては固有の自衛権を発揮すると言っております。しかし、アメリカ軍が駐留するなり基地があるから日本の領土主権が侵されるのであって、本来日本に対する攻撃がないのに、どうして固有の自衛権を用いるのでありましょうか。(拍手)これは明らかに集団自衛権であります。ところが、日本にいるアメリカ軍を守るために武力を使うことは憲法上許されません。一方、条約においては共同防衛の義務を約束しながら、一方、集団自衛権を否定しております。この矛盾を内蔵しながらも、改定当時は、このごまかしも通用するでありましょう。しかし、これまでの政府のあり方から見ても、また、軍事行動には連鎖反応の伴うものである点から考えても、国民は、自衛権行使の範囲から発展して、将来は集団防衛の協力態勢、武力の行使になることをおそれるものであります。外務大臣は、いかなる根拠によってこれを否定する自信をお持ちになるのでありましょうか。また、日本の領土内のアメリカ人への攻撃に対しては集団自衛権の行使であるが、憲法違反のおそれがあるため前述のような苦しい答弁をされていると理解してもよいかどうかを、念のため伺っておきたいのであります。(拍手)次に、駐留軍の使用目的については、日本国の安全と極東の平和と安全の維持に寄与することにあるといわれております。この極東の平和と安全の維持という言葉は、現行条約中の言葉を受け継いでおり、これがなかなかの問題であります。日米安保条約締結当時の責任者であり、当時の条約局長であった西村氏は、次のように言っております。「アメリカの軍隊は極東における国際の平和と安全に寄与するために使用できると規定している。このことは、極東の平和と安全のために使用される合衆国軍隊は極東地域で行動するであろうが、条約上は極東に限定されるものでない。極東の平和と安全のためならば極東地域外に出て行動しても差しつかえないことになるのである」、こう規定しているのであります。例をあげれば、フィリピンが極東に入らなくても、これが極東の安全を脅かすと考えると、そこまでアメリカが出動しても差しつかえないことになるのであって、こうなると、SEATOにもつながれば、ベトナムの南北の紛争にも関係を持つことになるのであります。(拍手)西村氏は、今日は条約局長ではありません。しかし、当時の責任者であり、しかも、その時と同じ極東の平和と安全との言葉が今日なお使われているのでありますが、アメリカ軍の行動の範囲は極東の地域に限られるのでありましょうか。極東の安全と平和のためならば極東外の地にも軍事行動がとれると解釈するのでありましょうか。交渉にあたって、極東とはどの範囲を言うのか、はっきり承りたいのであります。(拍手)また、この西村元条約局長の安保制定当時の考え方と同じ考え方で今回の改定にも折衝されているのかどうかを、はっきり伺いたいのであります。日本の安全のためにのみじっとしていられるのであるならばまだしものこと、日本を足場にして、方々の戦争、紛争に手を出されては日本が戦争に巻き込まれることを最もおそれるものであります。国民の危惧しているこの点を、いかに御解明になることができるでありましょうか、承りたいのであります。と同時に、自民党の方々も、極東の安全と平和の言葉をとることを望まれると思うのでありますが、この点の御見解を承りたいのであります。(拍手)今回の改定にあたり、政府は交換公文に事前協議をうたっております。一つは、在日米軍の配備及び装備に関する重要な変更が行なわれるとき、もう一つは、在日米軍が日本領域内の施設及び区域を日本防衛以外の目的で作戦行動に使用しようとするときであります。すなわち、この中に、米軍の移動とか核兵器の持ち込み等について事前協議をするということであります。このときに用いられる言葉は、コンサルテーション、協議であって、同意を意味するアグリーメントではありません。政府は、日本には当然拒否権があると説明しております。しかし、私が八月アメリカで読んだ新聞の中にも、また、毎日新聞社の特派員の報道した十一月八日の新聞記事を見ましても、アメリカは近代戦で間髪を入れぬ機動性を最も重視しており、事前協議に拒否権など認めていないのであります。(拍手)政府は、自分だけで勝手に自信を持ってみても、条約に保証されなくて、どうして効果を上げることができましょうか。(拍手)ことに、サイドワインダーなど秘密裏に持ち込むような政府のやり方を見ても、権力に圧せられがちな政府が、はっきり同意を必要とすると書かないようでは、事前協議も名ばかりになってしまうと思うのであります。(拍手)日米関係は絶対信頼の置ける間柄であると誇っている政府に、このくらいの取りつけが、なぜ話し合いでできないのでありましょうか。(拍手)
 安保条約に関連して、国民の権利義務に関係のあるのは行政協定であります。ところが、この行政協定の中には、日本の国民の自主性は認められておりません。にもかかわらず、ただいまの報告を伺ってみても、根本的問題で、一向に改定しようとされている態度が見えないのであります。
 最も重大な点を二、三点あげてみましょう。基地の提供に関してでありますが、米比の関係を見ると、基地貸与協定が別にあり、その中に、別表によって基地を置く場所が指定されているのであります。わが国においては、基地設定に対して地元民が納得がいかず、同じ同胞でありながら流血の惨事を見た砂川問題を初めとして、幾多の問題があります。基地さえなければあんな思いをしなくてもよかったのに、と残念でたまりません。政府は、今後も、無制限に、しかも、基地を一定のところに指定もせず、今までの形で設置しようとされるのでございましょうか。安保条約の改定にのみ夢中になる前に、冷静にこの行政協定を改定し、せめて基地を減らし、基地の固定した場所くらいは話し合うべきであると思いますが、これに対する政府の見解を承りたいのであります。(拍手)
 また、現行の協定では、施設及び区域内または隣接する地域において出入りの便をはかるのに、アメリカは必要な権利、権力、権能を有すると規定しております。基地は合衆国の完全な権力のもとに置かれ、ちょうど、かつての中国の租借地と同じ扱いをされるのであります。他国の国家権力を使われても、なおかつこれを黙認しているとは、あまりにも自主性なきものといわなくてはなりません。(拍手)条約改定が対等を目ざしているとするならば、外国の権力を自由に振り回すことができるというような屈辱的な面から、まず、改定すべきであります。これに対する政府の見解を承りたいのであります。(拍手)
 その他、労務関係、あるいは税金関係にしても、日本国内に駐留しながら法律は守られず、一たん獲得した既得権はアメリカが失いたくないとの観点に立っての行政協定の改定であっては、百害あるのみであります。
 以上は、行政協定の一部の問題にすぎません。西ドイツが駐留米軍との行政協定を結ぶのに三年もかかったといわれておりますが、それだけ慎重に取り扱って、国民の権利義務をそこなわないように努力したことを考え、一方、安保条約を軍事的条約に改定するのを急ぐの余り、国民に関係の深い行政協定をなおざりにしている現政府の態度に、強く反省を求むるものであります。(拍手)
 私の限られた質問内容においてさえ、今回の改定は緊急にやるべき理由は考えられないことと、安保条約の不必要さが判然したと思うのであります。いな、むしろ、十年間の長きにわたって軍事同盟を固定化さすことは、あまりにも急ピッチで進んでいく世界情勢に逆行し、新発足しようとする世界の歴史に背を向けている態度といわなくてはなりません。(拍手)政府は、すみやかにその非を悟り、苦悩を抱きつつもなお世界の平和へ努力をしている世界の人々と同じ波に乗って前進されるために、この改定を打ち切り、解消へ持っていくことを要望する次第であります。(拍手)もし、どうしても改定をするというならば、調印を急がず、その内容を国民に示し、解散によって民意を問うべきであると思いますが、政府の所信を最後にお尋ねして、私の質問を終わる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#17
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一点は、いろいろな理由をあげられまして、この安保条約改定を急ぐ必要はないじゃないかという御質問でありますが、何かこの点に関して与党内に意見が統一していないということの御趣旨がありました。これは非常な誤りでありまして、わが党におきましては、それぞれの機関に諮り、われわれの意思を統一する議員総会においてこれを議決しておりますから、そのようなことは御心配が要らないと思います。(拍手)
 また、国際情勢の変化についての御議論でございましたが、われわれは、しばしば申し上げておる通り、世界の大勢が、話し合いによって、東西両陣営とも共存の道を見出すように真剣な努力をしており、これは非常に世界の平和を作り上げる上において望ましいことと思うのであります。しかしながら、すでに外務大臣の経過報告にも申し上げておる通り、それが一躍して両陣営とも集団的安全保障の体制を解くような情勢にはなっておらないのであります。(拍手)この点をよく御理解をいただかなければならぬと思います。すでに経過報告で申し上げておる通り、安保条約の成立最初から、当時の特殊事情から、この現行の安保条約がきわめて日本の立場から見まして不合理であり、不平等であり、自主性がなかったことは、従来、国会の論議におきましても、野党からしばしば攻撃的な御議論が行なわれたところであります。これを、今回合理的な基礎に立って改定をしようということでありまして、先ほど来説明を申し上げましたような経緯をとって、日米の間に交渉が進行しておるのでありまして、この状況のもとにおいて、これを打ち切り、あるいは取りやめたりすべきものでないことは、言うを待たないのであります。(拍手)
 次に、経済協力の面に関して、そういう問題は、あるいは個々の通商条約なり、あるいはガットのことできめればよい、一体、この条約に経済協力の点をあげて、どれだけの日本に対する利益があるのかという御質問であります。もちろん、貿易の関係であるとか、関税の関係であるとか、個々の具体的の問題につきましては、それぞれ国際条約が結ばれることは当然であります。しかしながら、その基礎として――そういう個々の条約や、あるいはいろいろの関税上の取り扱い、その他、貿易の伸張についての基礎となるととろの、両国の理解と信頼と協力ということを大きくうたうことは、そういう個々の問題を解決する上において非常に役立つことは、これは当然でございます。従って、これをこの条約に入れたのであります。
 それから、中立政策に関しての御質問でございます。中立政策という考え方について、私は、現在日本にこれを唱えておられる人々の意見が大体二つあるということを、しばしば申しております。これは、日本における中立論を唱えておる人々の現実の姿であります。従って、その一つは、日本の従来の自由主義の立場、自由主義的立場、これに基づく日米協力、自由主義国の協力という関係から離脱して、いわゆる容共的方向に一歩を進めんとすることを意図している議論が一つあることは、これは事実であります。しこうして、純粋な中立論の議論も、結果的に申しますというと、それと同様な結果になるということを、私は従来申しておるのでございます。(拍手)われわれは、あくまでも自由主義、民主主義の立場を堅持して、従来のような自由主義国との協調、従って、日米協力関係を強化するという立場に立って、日本の繁栄と安全をこの上ともはかっていくつもりであります。(拍手)
 最後に、この問題に関して、国会を解散して民意に問えという御議論であります。この点に関しましては、私がしばしば明確に申し上げておる通り、政府は、この問題に関して解散をする意思は持っておりません。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#18
○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理がお答えをされました以外の点についてお答えをいたしたいと存じます。
 私に対する第一の点は、お前が国連に行って演説をした中に、共産主義の平和と自由主義の平和とは違うじゃないかということを言ったのじゃないかということを言われたと思います。私どもは、過去の経歴から、また、過去の国際経緯から見まして、自由主義が考えております共存の平和は、共産主義の平和というものと若干今日まで違っておるように、現実に考えております。それは、おそらく、共産主義の諸国にいたしますれば、世界が共産主義に全部なってしまえば一番平和だと思っているのではないかと思いますけれども、私どもは、そういうふうには考えておりません。従って、われわれの考えておりまする平和と共産国家の考えております平和とは若干違っていることを考えておるのでありまして、これを国連で私は申しました。別に国連の中において笑われたことはございません。(拍手)
 バンデンバーグ決議のことでありますけれども、今回の条約にあたりまして、バンデンバーグ決議の精神を入れて参りますことは、私ども、これを試みておるのでございまして、バンデンバーグ決議は、御承知の通り、アメリカが、バンデンバーグ自身が、孤立主義を捨てますときに上院に出しました決議案でございます。いろいろの点がございますけれども、その中に、要するに、自分で自分を守るということが第一であって、そうして、その自分でもって自分を守るという国と、アメリカはこういうような協力の関係が初めて打ち立てられるのだというのが、バンデンバーグ決議の趣意でございます。従って、アメリカがそれらの決議を体して参りますその趣旨というものは、われわれも日本が自分の国を自分で守るという決意を持っておりますことは当然でありますし、しかも、それを、自分の経済の事情、あるいはそのときのいろいろな情勢によりまして、自主的に自分が守る力を進めていくというのでありますから、そのこと自体は何ら憲法に抵触するものではございません。しかも、われわれは、これらの条項を書きます上において、あくまでも、申し上げておりますように、憲法の範囲内であることを限定して初めからアメリカと話し合いをいたしておるのでありまして、その点について何等遺憾の点はございません。
 また、日本におりますアメリカ軍が攻撃されるじゃないかということを言われるのでありますけれども、日本におりますアメリカ軍は、御承知の通り、国連憲章のワク内で行動するのでありまして、特に侵略的な活動をするものではございません。また、その信頼の上に立たなければ、こういう条約は結べないのであります。従って、国連の条項の範囲内において、ワク内においておりますアメリカ軍、しかも、それは日本を守るアメリカ軍でございます。日本におるアメリカ軍を攻撃するためには、当然、日本の領土、領空、領海を侵して参らなければ攻撃できないのでございまして、そのこと自体は、ただいま申し上げました前提とあわせまして、日本に対する攻撃であることは、申すまでもないのであります。しかも、今回の条約によりまして、事前協議によって、日本以外の土地にアメリカの軍隊が出ていく場合においては日本と協議することにいたしておりますので、アメリカの軍隊というものは、みだりに日本から出て参ることはございません。従って、そういう、日本を防衛する以外に活動はしない、そのアメリカ軍を、日本の領空、領海、領土を侵して攻撃する場合には、日本に対する攻撃とみなさざるを得ないのは当然のことだと存じます。
 なお、装備の点について、協議事項に入れております。これは協議でございますから、協議がととのわなければ当然実行はされないのでありまして、われわれは、交渉の過程におきまして、協議によって話がととのわなければ、むろん実行できない。従って、その限りにおいて拒否することができることは当然でございます。
 それから、行政協定の問題でございますけれども、行政協定につきましては、むろん、国民の権利義務に直接相当大きな関係を持っております。現在の行政協定は、占領行政当時の引き継ぎもございまして、先ほど御指摘になりましたように、自主的な点も欠けておる面がずいぶんございます。そういう点をできるだけ改正していくことが、われわれのねらいでございます。かつ、また、NATO協定その他等も参考にいたしまして、そうして進めて参らなければならぬので、そういう点について、十分われわれは注意をしながらやって参っていきたいと存じております。先ほど御指摘のありました第三条の点等につきましても、われわれは、現在まだ交渉の過程でございますから、申し上げられませんけれども、できるだけ御希望のような意味にただいま交渉を努力しておる次第なのでありまして、いずれ交渉が妥結しましたならば、それらの内容については申し上げることができると思っております。(拍手)
    〔発言する者多し〕
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#19
○国務大臣(藤山愛一郎君) 極東の平和と安全についてを落としましたから申し上げます。
 極東の平和と安全は、当然、今度の条約にも、前文もしくは条項等について書き込んで参るわけであります。申すまでもなく、日本の安全は極東の平和と安全なしには保てないことは当然でございます。同時に、極東の平和と安全が日本に非常に大きな影響を与えてくるととも、これまた当然でございます。従いまして、今度の条約に極東の平和と安全ということを入れておるのでありまするが、その範囲は、ただいま申し上げます。
 極東の平和と安全について……(発言する者多し)従いまして、極東の平和と安全を入れますが、それでは、極東の平和――極東という地域はどこだと言われることでありますが、これは、日本の周辺を中心にしまして、フィリピン以北――大体、そういう通常観念に従って、フィリピン以北であります。フィリピン以北、沿海州に至る、というところであります。
    ―――――――――――――
#20
○議長(加藤鐐五郎君) 竹谷源太郎君。
    〔竹谷源太郎君登壇〕
#21
○竹谷源太郎君 私は、社会クラブを代表して、ただいま行なわれました藤山外務大臣の安保条約改定に関する経緯報告に対し、幾つかの事項について質問をいたします。
 まず最初に、私は安保条約改定とその背景についてお尋ねしたいと存じます。
 岸首相並びに藤山外務大臣は、ただいまの答弁と経緯報告において、国際的に東西両陣営の緊張は緩和に向かってはいるが、このことと安保改定は決して矛盾するものではない、との見解を表明されました。この見解に対し、私は、遺憾ながら、断じて承服することはできません。
 顧みますると、この一年以来、世界の情勢は著しい変貌を遂げつつあるのでございます。すなわち、核兵器による軍備競争は、アメリカとしても、人類破滅の危険がありますとともに、さすが巨大なるアメリカ経済にとりましても大きな重圧となり、経済破綻を来たすおそれが出て参りました。(拍手)ソ連もまた、米国と同じ悩みを持つばかりでなく、国内においては自由化の底流があって、これがため、フルシチョフ政権維持のためにも、軍備競争に重大な考慮を払わなければならなくなって参ったのであります。米ソ両国が、このようなせっぱ詰まった背景のもとに、フルシチョフの訪米となり、アイク、フルシチョフの会談を契機として、世界は大きく転換をいたしつつあるのであります。
 一方、国連においては、フルシチョフの全面完全軍縮の演説、また、アメリカ国連代表の軍縮提案となりました。再び、フルシチョフは、ソ連最高会議の席上で、ソビエト社会主義連邦共和国の名において軍縮宣言演説を行なったのでございます。続いて、国際連合政治委員会においては、米ソ両国が中心となって、八十二ヵ国が満場一致軍縮決議案を可決いたしました。このことは、世界が共通の目的に向かって真剣に大きく足を踏み出そうとしていることであり、国際問題を、力によらず、話し合いの平和的方法で解決しようとする態勢をとりつつあることにほかならないのでございます。これを、東西両巨大国家が外交上のかけ引きにこのようなことをしておるのだ、こう簡単に片づけるようなわが政府の考え方は、はなはだしく世界情勢の認識判断を誤っているものと、私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 今や、世界のすべての国が、軍備縮小を通じ、全面的な軍備撤廃への努力を行なっていることは、わが国の立場からすれば、まことに喜ぶべき事態であり、政府はかかる方向に積極的な努力を傾注してこそ、国際社会にわが国の地位を向上せしむることになるものと信じて疑いません。しかも、この八十二カ国軍縮決議にはわが国も共同提案国となっており、その決議の中には、各国政府に対し軍縮問題の建設的解決に至るため全力をあげるよう要請する、と強く主張されているのであります。かかる決議をみずから推進しながら、他方においては、同じ時期に、わが国の軍備を一そう拡大強化することを必然的に伴うところの安保条約の改定を強引に推し進めようとする政府の態度は、国民の全く了解に苦しむところでございます。(拍手)このような世界の情勢に逆行する政府の態度は、国民の間に深い疑惑と不安をかもし出しているのでございます。今や激しく流動しつつある国際情勢を、政府はどのように認識せられているか、そして、これと重大なる関連性のある安保改定をどのように処理せられんとしているのであるか、これらの事柄について、岸首相のはっきりした御答弁をお伺いしたいのであります。(拍手)
 第二に、国民生活の観点から質問をいたします。
 安保条約を相互防衛条約方式に切りかえることは、わが国民の上に重大な影響を及ぼすものとなることは、火を見るよりも明らかでございます。まず防衛庁費の増額が必然的に生じて参り、それはすべて国民の負担に転嫁せられるのでございます。しかも、バンデンバーグ決議に基づいて、自助及び相互援助による防衛能力の維持発展を約束しようとしております。ただいま、外務大臣は、新たな義務を負うことにはならない、こう申しております。しかしながら、現行安保条約の前文に書いてありまする、アメリカは日本の防衛能力の増強を期待する、こういう文字通り、日本は従来防衛能力を漸増して参りました。今度は、新しい条約の条文中に武力増強をうたうならば、年々巨大な金額を軍事費として支出し、さらにこれがウナギ登りに増大することは、容易に予測されるところでございます。今日、わが国民が切実に求めるものは、ロッキード戦闘機でもなければ、サイドワインダーでもございません。豊かな生活と平和な社会であります。冬を前にしてなお住む家を持たない水害被災者に対する、すみやかな救済措置でございます。国民の血税を国民の求めざるものに使用することは、政治が信を国民に失うゆえんでございます。(拍手)
 また、政府は、口を開けば、日米協力を唱え、安保条約改定が日米協力を促進するものであるかのごとく言っております。私ども、日米両国民が平等の基礎の上に協力関係を樹立することは望んでいるところでございます。しかしながら、そのためには、日米両国間に存在する不平等な諸関係、たとえば、貿易上のアンバランス、わが国農民を圧迫するところの余剰農産物の輸入問題などこそ、まず解決することが前提であります。政府は、これらの問題は新条約の日米経済協力によって解決するのだと、こう言っておられるが、軍事関係を深める安保改定は、真の日米両国民の協力の基礎とはならないばかりか、特定国と鋭い敵対関係を作り出し、かえってわが国の平和と安全の脅威となり、他面、わが国経済の自主的拡大成長の妨げとなるのであります。(拍手)先日、アメリカ上院外交委員会が発表しましたコンロン報告さえも、日米関係の重点は軍事よりも経済に置くべきであると主張し、さらに進めて、日本の対中共貿易の拡大を認めなければならないと、このように報告いたしております。私は、これらの、わが国民生活の上に与える安保改定の影響について、総理大臣はどのようにお考えであるか、お伺いをいたしたいのであります。(拍手)
 第三に、私は、条約改定の内容について、二、三お尋ねをいたしたい。
 新しい、改正せんとする条約案の第五条に、日米両国は、日本の施政権下の領域で日本あるいは在日米軍に対する攻撃があった場合、これを自国の平和と安全を危うくするものと認め行動する、こういう規定があるようであります。これによると、本来日本に対する攻撃ではないものを、すなわち、在日米軍に対する攻撃を日本に対する攻撃と認める、こういうのであるから、先ほど戸叶さんがおっしゃったように、日本は集団的自衛権を行使すると、こういうことになると思うが、その点について、もう一度外務大臣のお考えを伺いたい。もし、在日米軍に対する攻撃に向かって、日本は、日本の領土を侵犯されたものとして個別的自衛権で行動するのであるならば、第五条から日本の防衛義務を削ってもよいのではないか。外務大臣の御見解を承りたい。(拍手)
 次に、条約文中に使われている極東というこの言葉はどの地域をさすのであるか。先ほど戸叶代議士から質問があったのに答弁がない。私は、はっきりその地域を示してもらいたいと思う。極東における平和と安全のためという理由によって、在日米軍基地が米軍によって使用せられ、これらの基地から米軍が出撃をいたします。それゆえに、日本は、日本の意思にかかわりなく戦争に巻き込まれる事態を引き起こすおそれがあるので、事きわめて重大である。(拍手)これに対する解釈はまちまちであって、極東ソ同盟、朝鮮、中国、日本が極東であると、こういう狭い解釈もあるようであります。しかし、イギリスのエンサイクロペディア等には、タイ国から、日本、カムチャッカまで入る、こういっている。アメリカは、この広い区域をとるに違いない。世界において、本来一つであるべき国が二つに分かれておって、紛争、爆発の危険をはらんでいる国々は、ドイツ、ベトナム、台湾、朝鮮、これらの四ヵ国でありまするが、この四つのうちの三つまでが極東に入るということになる。ラオス、北ベトナムの紛争、あるいは中共、インドの国境紛争が拡大をしたら、日本はどうなるのであるか。それゆえにこそ、条約適用の地理的範囲をこの際明確にしていただかなければならない次第であります。(拍手)
 次に、行政協定についてお伺いをいたしたい。
 安保条約改定とともに、その実施を規定する行政協定がどのようなものになるかは、きわめて重要な問題であります。従来、行政協定については、特別契約者、民事裁判権、労務関係、基地使用の権限などについて、わが国の自主性をそこなうところの、まことに屈辱的な内容を含んでおったのであります。さらに、行政協定の運営にあたって、われわれは多々不満を持っている。これについて、ただいま外務大臣から簡単な改正案の説明がありましたけれども、その程度では字句の修正にすきないと思う。実質的な対等性、自主性のある改正点を、国民の前にこの際明らかにしていただきたい。(拍手)
 第四に、私は岸首相にお尋ねをいたしたい。
 私どもは、現行の安保条約が、わが国敗戦の結果として軍事占領の置きみやげであり、また、朝鮮戦争の副産物であったと考えるものであります。本来、わが国が自主独立の立場を守るためには、東西両陣営の冷戦に介入しない、アメリカと中国、ソ連の双方に対して積極的に友好関係を結び、緊張緩和に努めることが基本でなくてはなりません。この観点から、いずれの国とも軍事的な結びつきを持たない、これが肝要である。かつ、また、緊張緩和の国際情勢の動きから見ましても、現行の安保条約は解消せしめることが正しい方向であります。この立場に立って、政府は改定を取りやめ、現行安保条約を土台として、これに改定を加えることによって漸進的に解消をはかるべきであると考えます。(拍手)私どもは、安保条約の解消は、日米両国間とわが国社会に紛争や混乱なしに達成すべく、漸進的、段階的に進めなければならないと信ずるからであります。そのためにも、私どもは、条約改定案の白紙還元を強く要求するものでございます。(拍手)
 しかしながら、なおも政府が従来からの行きがかりにとらわれて改定を強行しようとするならば、わが社会クラブもまた、ぜひ国会を解散し、民意を問うべきことが当然であると信ずるものである。なぜならば、政府の意図する安保改定は、軍事基地提供の条約を軍事同盟条約に変更し、わが国の内外政を質的に転換する、きわめて重大なものであり、かつまた、過般の総選挙において課題として掲げられていなかった問題なるがゆえであります。この点につきまして、岸内閣総理大臣の御所見を伺いたい。
 最後に、私は、昭和十五年に米内大将が当時の重臣に送った手紙の一節を引用し、岸首相並びに藤山外務大臣の猛省を促したいと考えます。その一節は、「魔性」――これは悪魔の性質のことでありまするが、「魔性の歴史というものは、人々の脳裡に幾千となく蜃気楼を現わし、又その部分々々を切り離して種々様々にこれを配列し、又自らは姿を晦ましておいて、所謂時代政治家を操って、一寸思案してはこの人形政治屋に狂態の踊りをおどらせる。踊らされるものは、こんな踊りこそは、自分の目的を達することのできる見事にして荘重なものであると思いこんでしまう。かくして魔性の歴史は、人人を一歩々々と思いもよらぬ険崖に追いつめてしまうのである。然し荒れ狂う海が平穏におさまるときのように、狂踊の夢から静かにさめてくると、どんな者どもでも、彼等の狂踊の場面で幻想したことと、現実の場面で展開されたことは、まるで似てもつかない別物であることに気がつき、驚き悲しみ、歎くものである」、これが米内大将が当時の重臣に送った手紙の一節でございます。私は、岸さんと藤山さんは、米内大将のこの手紙の一節について、どのような感想をお持ちであるか、これを最後の質問として、私の演説を終わる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#22
○国務大臣(岸信介君) お答えを申し上げます。
 第一の問題は、先ほど戸叶議員に対して私がお答えしたことと同様になると思いますが、要するに、現在の国際情勢が、東西両陣営の対立そのものがなくなるということではなくして、従来、対立を、あるいは力をもって解決しようという動向が、話し合いによって平和的に解決しようという方に動いてきておることであって、これは非常に望ましいことであり、世界平和を作り上げる上において、われわれもその動向を強めていくように協力しなければならないと、こう考えるのでありますが、しかし、それが直ちに現在持っておる力の関係を両方とも捨てるというところに至っておることではないのであります。今回の、こういう話し合いが行なわれるからといって、それは、要するに、それぞれ力を背景として話し合いをする、そうして共存の道を見出していく。従って、共産圏の側におきましても、自由主義の側におきましても、従来からの集団安全保障体制を解消するとか、あるいはそれをなくしていくというような徴候は少しも見られないことは、竹谷議員もよく御承知だろうと思います。こういう情勢のもとに、われわれが、現在あるところの日米安保体制というものをやはりこれは堅持し、しかし、その現行条約には、成立の最初から、われわれ日本国民として満足できないような幾多の不合理な点を内在しておるのでありますから、これを改正して合理的なものにしようというのが私どもの考えでありまして、決して国際情勢と矛盾したり、抵触したり、あるいは逆行するものではないと、私どもは考えております。(拍手)
 第二は、国民生活との関係に対する御質問でありますが、私ども、この安保条約の改定ができますと、あるいは現行のもとにおきましても、日本の防衛力をどういうふうにしていくかということは、国防会議においてきめることになっております。そうして、われわれは、これを国力と国情に応じて漸増するという基本方針を定めて現在に至っております。将来に向かっても同様でありまして、この安保改定によって防衛費が激増するような御懸念をお持ちのようでありますが、決してそういうことはないのであります。従いまして、その点は、ただ国民生活を圧迫するような結果には絶対にならないと私は信じております。日米の協力、ことに経済協力の問題に関しても、われわれは、今日まで、戦後日本がこれだけの経済的発展をしてきたことは、日本国民の非常な努力の結果であることは、言うを待ちません。しかしながら、同時に、日本が自由主義の立場を堅持して、この自由主義の国々と提携をし、特に日米協力のもとに日本の経済の復興をはかったことに負うところまた少なくないということは、これは現実の事実であり、何人もこれを否定するものはないのであります。実際、日本のこの経済は、貿易に依存する点が非常に大きいのでありますから、共産主義国とも、あらゆる国々と、貿易を増進するようなあらゆる努力をしていかなければならぬことは、言うを待ちませんが、そのうちにおきましても、日米間の貿易額というものが日本の全貿易額の上に占めるところの重要性は、きわめて大きいものがあります。従って、これを改善していき、内容を充実していくことは、日本の経済の発展に資するものであり、国民生活の向上に私は役立つものであると信じております。
 最後に、この改定を取りやめて、そうして漸進的な解消の方向へ進むべきであり、また、それができなければ解散して民意に問えという御議論であります。改定を取りやめて漸進的解消の方向に進むということは、具体的に申しまして、私、御質問の内容をよく理解できませんけれども、しかしながら、たびたび申し上げておる通り、私どもは、改定は現行条約の不合理を改めることであって、これを今日取りやめるという考えは持っておりません。しかし、今度の条約には、説明申し上げました通り、十年の期間を置いて、その後においては、一年の予告期間をもって一方的に解消することができるようにしてございます。解散の点に関しましては、先ほどお答え申し上げました通り、私は、この問題について解散する意思は持っておりません。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#23
○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理の答弁されました以外のところを申し上げます。
 日本の基地にある駐日米軍が攻撃された場合、先ほども御質問があったと思うのでありますが、日本の領空、領海、領土を侵さなければ、むろん、日本の基地におりますアメリカ軍を攻撃することはできないのであります。従って、日本としては自衛権を行使せざるを得ません。同時に、アメリカ自身も自衛権を行使することになると思います。これが協力してやりますことが、場合によって集団安全保障の形だということでありましょうけれども、軍事協力のこういうような意味でのお互いの防衛は一向に差しつかえないわけでありまして、従って、ただいまお話しになりましたように防衛義務を削ることは必要ないと考えております。
 第二に、極東の地域でございますが、先ほど御説明申し上げましたように、フィリピン以北、中国の一部あるいは沿海州、そういう、いわゆる日本を中心にいたしましたこの地方を、われわれとしては極東ということにいたしておる次第であります。
 それから、行政協定につきましては、できるだけ内容的にも改善をいたして参りたいと存じております。ただいまお話のありましたのは、民事裁判権の請求権の問題だと思います。現行行政協定におきましては、アメリカ軍と日本政府との民事請求権の相互法規になっておりますが、今回は、アメリカ軍と自衛隊との間の相互法規という、できるだけ狭い形にいたして参り、かつまた、公務の判定等につきましては、日本人を裁定者とする最終的裁定ということに、ただいま進めております。従って、内容等につきましても、まだ交渉中でございますから、はっきり申し上げかねますけれども、そういう点について努力をいたしておりますので、相当内容に触れて改善されることになろうかと思っております。(拍手)
#24
○議長(加藤鐐五郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
 大貫大八君の故議員野澤清人君に対する追悼演説
#25
○議長(加藤鐐五郎君) 御報告いたすことがあります。
 議員野澤清人君は去る十月十八日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。同君に対する弔詞は議長において贈呈いたしました。
 この際、弔意を表するため、大貫大八君から発言を求められております。これを許します。大貫大八君。
    〔大貫大八君登壇]
#26
○大貫大八君 私は、諸君の御同意を得まして、議員一同を代表し、去る十月十八日病のため逝去いたされました本院議員正五位勲三等野澤清人君に対し、つつしんで追悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)
 私は、野澤君とは郷里を同じゅうするばかりでなく、かつて作新学院の同じクラスで机を並べて勉強し、弁論大会において互いに競争した仲であります。政治家となってからも、所属政党こそ異にしていましたが、平素何かと親交を重ね、君の人格、識見に対しては日ごろから深い敬意を払っていたものでありまして、今この友を失い、この上もない悲しみに打たれているものであります。(拍手)
 野澤君は、栃木県河内郡上三同時の旧家の出身で、明治四十年七月の生まれであります。先代の近太郎氏は、多年にわたって栃木県会議員に在職された県下有数の名望家で、晩年には推されて県会議長の重職につかれました。父君のすぐれた資質を受け継いだ野澤君は、中学卒業後、上京して東京薬科大学に学び、昭和五年同校を卒業されるや、直ちに小島化学株式会社に入社して、実務についてさらに研さんを積まれました。昭和十一年に至り、みずから第一化学工業所を設立し、その社長となって、社運の興隆に渾身の努力を払われたのであります。
 しかるに、昭和十六年、君は召集を受けて軍務につき、薬剤科の将校となって関東軍に配属され、終戦後は、不幸にしてシベリアに抑留されて、二年有余にわたり辛苦の生活を送られました。二十三年十一月、無事復員し、さきに第一化学工業所が他社と合併発展した関東化学株式会社の社長に就任されました。その後、社業に精励されるかたわら、昭和二十五年、母校東京薬科大学の理事長に迎えられて後進の育成に力を注ぎ、同校の研究諸施設を拡充し、全国私立学校にいまだまれなアイソトープ実験室を設けるなど、不滅の業績を残されたのであります。また、昭和二十七年には、日本薬剤師協会副会長となり、斯業の発展と全国薬剤師のために尽力し、よく業界の信望を一身に集めておられたのであります。
 君は、昭和二十七年十月の第二十五回衆議院議員総選挙に郷里栃木県第一区より出馬し、みごと当選せられました。その後、今日まで、当選三回、在職五年三カ月に及んでおられます。
 この間、君、主として厚生委員会、社会労働委員会の委員または理事となって縦横の活躍を示されました。すなわち、豊富な知識をもって熱心に委員会の審議に当たり、よく委員長を助けて委員会の円満なる運営をはかり、あるいは環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案などの立案を推進し、その成立に努力されたのでありまして、君の発言は、常に党派をこえて委員諸君の傾聴するところでありました。
 君は、また、三たび選ばれて社会保障制度審議会委員に就任し、わが国における国民健康保険制度の改革及び国民年金制度の大綱立案に参画し、本院にあっても、終始全力を傾注してこれが確立をはかられたのであります。かくて、国政の審議に尽瘁し、社会生活の改善、国民福祉の増進のために貢献された君の功績には、特に著しいものがあるとたたえるべきであります。(拍手)
 君は、また、自由民主党にあっては、総務局庶務部長、政務調査会社会部長の要職について党務に尽力し、同僚議員諸君の強い信頼を受けておられました。(拍手)
 思うに、君は、まことに重厚な性格であるとともに、かたい信念を持して、正しいと信ずる道をあくまでも貫き通す人柄でありました。しかも、きわめて人情に厚く、よく他人のためをはかり、帰郷に際しても、三等車の一隅で、乗り合わせた人々と隔意なく談笑するという気軽さを持っておられたのであります。かのシベリアにおける抑留生活に際しても、君は、ソ連人に対して常に堂々たる態度を持して折衝し、よく三千人の部下を庇護され、同胞のことごとくが君の徳に服して、多大の信頼を寄せたと伺っております。(拍手)
 また、平素から、農村生活の合理化に、公衆衛生の向上に、熱心な指導を続けておられたのでありまして、君に接した人々が深く君を敬愛したのも、その人徳のしからしむるところと申すことができると信じます。(拍手)
 昨年八月、第二十九回国会の終了後、君は、社会労働委員会から青森、岩手両県下に派遣され、同地の社会施設、医療、公衆衛生などの実情についてつぶさに調査視察されたのでありますが、八月三十一日、青森において突如として病にかかり、入院のやむなきに至ったのであります。十月、小康を得て帰京し、専心加療に努められ、病状は一進一退のうちに推移したのでありますが、今秋、病勢にわかに悪化し、御家族の手厚い看護もむなしく、ついに不帰の客となられたのであります。けだし、炎天下であまりに激しい活動を続けられたことがこの不幸を招いたものでありまして、野澤君は、まことに生命を賭して議員の職責を遂行されたものと申すべきであります。(拍手)しかも、君がみずからその政治生活の最大の目標とし、畢生の努力を傾注されてきた、社会保障制度の二大支柱である国民健康保険法と国民年金法とは、去る通常国会において通過成立したのでありますが、君は、当時すでに病床にあり、その審議に加わることができなかったのでありまして、その心中いかばかりであったかとお察しすることができるのであります。(拍手)
 かくて、わが国の社会保障制度は一応の形は整ったとは申せ、ようやくその緒についたばかりで、幾多の問題を残しておるのであります。従って、今後、足らざるを補い、その発展を促進するためには、野澤君のごとき高邁なる識見と卓越した才幹との持主に期待するところがはなはだ多いのでありまするが、今、君を失い、この希望の空しくなったことは、ひとり本院のみならず、国家にとり、まことに大きな損失であります。しかも、よわいいまだ五十二才の前途ある身をもって、真の社会福祉国家の建設に多大の抱負を抱きながら逝去されたことを思うとき、痛恨きわまりないものを覚えるのであります。(拍手)
 ここに、野澤君の長逝に対し、その人となりを追慕し、衷心より御冥福をお祈りして、もって哀悼の言葉といたします。(拍手)
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#27
○議長(加藤鐐五郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十二分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        文 部 大 臣 松田竹千代君
        厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
        農 林 大 臣 福田 赳夫君
        通商産業大臣  池田 勇人君
        建 設 大 臣 村上  勇君
        国 務 大 臣 赤城 宗徳君
        国 務 大 臣 石原幹市郎君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
出席政府委員
        内閣官房長官  椎名悦三郎君
        法制局長官   林  修三君
        総理府総務長官 福田 篤泰君
ソース: 国立国会図書館
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