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#1
第033回国会 本会議 第12号
昭和三十四年十一月二十七日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十号
  昭和三十四年十一月二十七日
    午前零時五分開議
 第一 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 外務大臣藤山愛一郎君不信任決議案(淺沼稻次郎君外四名提出)
 外務委員長小澤佐重喜君解任決議案(淺沼稻次郎君外四名提出)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件
 昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案(内閣提出)
 昭和三十四年八月及び九月の風水害を受けた社会福祉事業施設の災害復旧費に関する特別措置法案(内閣提出)
 昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における失業対策事業に関する特別措置法案(内閣提出)
 昭和三十四年七月及び八月の水害並びに同年八月及び九月の風水害に関する失業保険特例法案(内閣提出)
 天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害に際し災害救助法が適用された地域における国民健康保険事業に対する補助に関する特別措置法案(内閣提出)昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた医療機関の復旧に関する特別措置法案(内閣提出)
 昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた者等に対する福祉年金の支給に関する特別措置法案(内閣提出)
 昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた事業協同組合等の施設の災害復旧に関する特別措置法案(災害地対策特別委員長提出)
 日程第一 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
    午前零時五十九分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(加藤鐐五郎君) 御報告いたすことがあります。
 元本院議長小山松壽君は去る十一月二十五日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。つきましては、議院運営委員会の議を経て特別の弔詞を贈呈することにいたしました。これを朗読いたします。
 衆議院は多年憲政のために尽力し特に院議をもってその功労を表彰されまたがって長きにわたり本院議長の重職にあたられた正三位勲一等小山松壽君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
    〔拍手〕
     ――――◇―――――
 外務大臣藤山愛一郎君不信任決議
  案(淺沼稻次郎君外四名提出)
     (委員会審査省略要求案件)
#4
○天野公義君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、淺沼稻次郎君外四名提出、外務大臣藤山愛一郎君不信任決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 天野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。外務大臣藤山愛一郎君不信任決議案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#7
○議長(加藤鐐五郎君) 提出者の趣旨弁明を許します。田中織之進君。
    〔田中織之進君登壇〕
#8
○田中織之進君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程せられました外務大臣藤山愛一郎君の不信任決議につきまして、提出者を代表いたしまして趣旨説明を行なわんとするものでございます。(拍手)
 まず、決議案文を朗読いたします。
   外務大臣藤山愛一郎君不信任決議
 本院は、外務大臣藤山愛一郎君を信任せず。
  右決議する。
  〔拍手〕
    理由
  藤山外務大臣は、疑惑に包まれた南ヴィエトナム賠償を国民の反対を押し切って自ら調印したばかりでなく、いままた充分な審議も尽さず、その批准を強行せんとしている。
  南ヴィエトナム賠償は、いうまでもなぐ本国会最大の課題であり、政府は、本国会の審議を通じて、その交渉の経過、並びに内容を明らかにして国民の疑惑を解くべきであるのに、藤山外相は、わが党の質問に対して、一つとして明確な答弁をなし得ず、また必要な資料の提出もできず、国民の疑惑はますます深まるばかりである。
  われわれの追求によって明らかになったことは、国民の血税をもって支払われる賠償の根拠、特に戦争損害は北ヴィエトナムが圧倒的に大きいのに南ヴィエトナムに賠償を支払う根拠並びに賠償算定の基礎が不明確なこと、南ヴィエトナムヘの賠償が全ヴィエトナムヘの賠償とはなり得ないこと、ジュネーヴ協定並びに最終宣言及びバンドン決議の精神に違反していること、南ヴィエトナム政権のカイライ性、この賠償が南ヴィエトナムの軍事力増強に使用されるおそれが強いこと、この賠償が全ヴィエトナム人の念願である南北の平和的統一を阻害し、わが国とヴィエトナム国との友好関係を破壊するものであること等であり、これらのことは今日、国民世論が一致して共感しているところである。
  われわれは、かかる疑惑の多い、不当なヴィエトナム賠償を調印し、かつ充分な審議も尽さず、国民世論を無視して批准強行をあえてしようとする藤山外相をこれ以上信任することはできない。これが、本決議案を提出する理由である。
  〔拍手〕
 さらに、私は、この提案の内容につきまして、若干の説明を加えたいと存ずるのでございます。藤山さんが、今から二年半前、第一次岸内閣の外務大臣として登場せられたときには、いわゆる、戦後幾たびか変わった外務大臣のうちで、純粋の民間人から起用された外務大臣として、与野党を問わず、国民各層から大きな期待を持って迎えられたことは、事実であると思います。それにもかかわらず、この藤山外相に対する多くの期待は、ことごとく裏切られてきておると思うのでございます。(拍手)
 古いことをあまり申しませんが、まず、昨年の三月調印せられました日中第四次貿易協定の実施は、藤山外務大臣が財界出身の人であるだけに、国民各層、ことに貿易関係業者は、これの実施のために積極的に努力せられることに対して大きな期待を持って迎えたのでございます。それにもかかわらず、あたかも、この協定を尊重して実施のために協力するかのごとき外務省の声明が発表せられたとたんに、当時の愛知官房長官から、これを否定するところの愛知談話なるものが発表せられまして、ついに、この与野党一致して北京に代表を送って調印をいたしました第四次貿易協定が実施に至らず、今日に至るまでの間、日中貿易が途絶状態にございました。そのために、昨日は、この下の社会事業会館におきまして、全国からの数千名の、いわゆる業者大会、岸政府に対する日中貿易再開を要求するところの大会が開かれたことも、藤山外相に対する大きな期待を裏切られたことに対する怒りを表わしたものであると申し上げて、あえて過言でないと思うのでございます。(拍手)
 その次は、藤山さんが外務大臣になられましてから調印をし、実施過程に入っておりまするインドネシア賠償、あるいは、藤山さんがまだ外相に就任する以前に、政府代表として、これまた賠償交渉の妥結に努力をされましたフィリピン賠償の実施等の過程おきまして、幾多の疑惑を生み出している問題は、これまた、財界出身として、これらの賠償の問題につきましては、日本経済との関係において十分考慮しなければならない問題を、時の政府とつながる特定の業者にやらせて、国民の血税によってまかなうところの賠償を汚しておるというような幾多の事例を生ぜしめたことも、これまた藤山外務大臣の責任の一つであると考えるものでございます。(拍手)
 さらに、三回にわたって原爆の被害を受けました日本国民が最も期待をいたしておりまするところの、いわゆる核兵器の製造、実験の禁止問題についても、そうでございます。藤山外務大臣は、この全国民の期待を一身に集めて、国連にみずから出席をいたしておるのでございますが、藤山外相の手によって国連総会に提案せられました核武装禁止に関する日本提案なるものは、日本の国民の願望とははなはだしくかけ違ったところの、きわめてなまぬるいものであるということも、私は、藤山外務大臣の国民の期待を裏切っておる第三の問題としてあげなければならないと思うのでございます。(拍手)
 第四の問題は、これは、引き続き本国会においても、また通常国会においても問題になりまするところの、安保改定の問題でございます。この問題は、藤山外務大臣の本演壇からの過般の中間報告を聞いて参りましても、これは改正ではなくて改悪である。現在の日米安全保障条約をはっきりとした双務的な日米軍事同盟に向けて発展させようとするものであり、その改定の内容なるものは、すべてアメリカの極東戦略の拠点に日本を持っていこうとするところのたくらみを包蔵いたしておるということでございます。(拍手)ことに、この点については詳しいことを申し上げることを差し控えまするけれども、安保条約の改定に伴いまして、在日米軍が極東の平和のために行動する米軍の行動範囲の問題につきまして、参議院におけるわが党の亀田議員の質問に対する答弁につきましては、与党内部におきましても問題となり、特に異例の幹事長談話をもって外務大臣の答弁が修正せられるというような醜態を演じておることでございます。(拍手)
 これらの問題一つを取り上げて参りましても、安保問題に関する限りにおきましては、藤山さんの御存じの通り、これを最初に取り上げましたところの重光外相は、ある意味から見れば、この安保改定の問題を持ち出したために政治的に失脚したとも言えるのでございます。さらに、重光外相に引き続いて外務大臣に就任せられた現在の岸総理、当時の岸外相も、この問題に取り組みましたけれども、国内の世論の動向の前に、この問題に対しては当初の意気込みが消えてしまったのであります。それにもかかわらず、藤山さんは、あえて火中のクリを拾うような形において、この問題をしゃにむに進めようとしておること、藤山さんの政治生命の長いことを、私も藤山さんが日本商工会議所の会頭になられた当時から存じ上げておる立場において、願うものでございますが、この安保問題に対する取り組み方をわれわれが見る場合に、残念ながら、あなたの命取りになるということを、この際、あらためて警告するものでございます。(拍手)
 さらに、藤山さんは財界関係から出ておるという意味におきまして、この安保のPRのために経済再建懇談会から政府・自民党に三億円のPR費が資金カンパされたということが伝えられております。そうでありましょう。西銀座のそば屋にまで安保賛成の懸垂幕が最近見受けられるようになりました。これは、安保改定の方向が、経済再建懇談会を中心とする、いわゆる軍需産業家、死の商人といかに深い関係にあるかということを如実に物語るものでございます。(拍手)今までの政治の過程において、こういうような現象はなかったということを、われわれは指摘しなければならないのでありまして、その意味からも、藤山外務大臣に現在の地位にとどまってもらうわけには参らないということを、われわれ社会党は主張するものでございます。(拍手)
 次に、今回私どもが藤山外務大臣不信任決議案を提出いたしました最大の理由でありますところのベトナム賠償についてでございまするが、まず、国民の血税をもって支払われる賠償の根拠が明確ではございません。それは、政府の答弁によりますると、サンフランシスコ条約に南ベトナムが参加したから、その第十四条に従って賠償の義務を負っておるというのでございまするが、はたして、南ベトナムが、いわゆる日本軍の平和進駐から終戦当時までの関係において、このサンフランシスコ会議に参加するところの交戦国としての独立国家であったかどうかという点について多大の疑問があることは、過般来の外務委員会あるいは予算委員会におけるわが党の岡田委員を初めとするところの同僚諸君の追及によって、政府側が明瞭に答弁できないところのこの事実をもってしても、私は明白であると考えるのでございます。(拍手)
 南ベトナムの賠償要求に対しまして、質問に対する政府側の答弁を伺っておりますると、日本側が、まるっきり戦争被害等についての資料を持たずに、南ベトナム側から出して参りましたところの数字に基づいて、きわめて政治的にこれを決定したという疑いが濃厚でございます。国会に提出をいたしました数字につきましても、政府委員の答弁によって明白な通り、全部南ベトナム側からの、何らの根拠のない数字の焼き直しにすぎないということが、この最大の理由でございます。
 次に、賠償支払いとの関係におきまして一番問題になるのは、ただいまも触れましたけれども、いわゆる南ベトナムが日本といつ戦争の状態に入ったかということに関する戦争始期の問題でございます。この点につきましては、昨日の外務委員会におけるわが党の岡田委員からのたび重なる追撃に対し、政府側は、満足なる答弁をいたしておりません。しかも、もし大東亜戦争が開始せられた直後に起こった平和進駐から始まっておるといたしまするならば、それは、あるいは軍の調達の対象として仏印において発行いたしました特別円に対するフランスヘの支払いによりまして、すでに一部分の支払いは済んでおるということも言えるのでございまして、その点から考えまするならば、明らかに二重払いの傾向を持っておるということでございます。(拍手)
 しかも、重要な問題は、南ベトナムに対しまするところの賠償支払いが全ベトナムヘの支払いになるかどうかという点については、これまた多大の疑問のあることは、委員会において指摘せられた通りであります。政府側は、この点につきましては、南ベトナム側にほとんど被害を与えておらない、戦争の被害を受けたのは北ベトナムであるということを、委員会においては言明をいたしておりまするが、私どもが昨日審議の継続を主張するにあたってこの点を強調いたしますると、本朝に至りまして、政府・自民党から、南ベトナム側に多大の損害を与えておるというような発表がなされておりまするけれども、これは、国会における答弁と全く正反対の、事実をまげて国民に報告しておるものでございます。われわれは、断じてこれに承服するわけには参らないのでございます。(拍手)
 現在、実際問題といたしまして、南北ベトナムが分裂状態にある、統一していないという現状におきましては、どうしても、この統一まで、ベトナム賠償をかりに支払うといたしましても、待つということが当然であるということは、単に社会党が主張するだけではなくて、去る十一月二十一日の東京新聞の夕刊には、安保条約あるいはサンフランシスコ条約締結当時の外務大臣でありましたところの岡崎勝男君が、当座は南だけに支払うこともやむを得ないけれども、額が多過ぎることが心配だし、北ベトナムに対してはこれを保留しなければならぬ、ということを述べております。さらに、藤山さんが調印をいたしましたところのベトナム賠償は、これを保留しなければならないということを、当時の仏印特派大使であった松宮順氏が述べておることをもっていたしましても、私どもの主張が決して藤山外務大臣に反対せんがために述べておることではないということが十分理解せられることと思うのでございます。(拍手)これが、南ベトナム賠償問題につきまして、私どもが藤山外務大臣を信任するわけには参らないところの第三の問題でございます。
 ことに、南北ベトナムの軍事休戦とその平和的統一を規定いたしておりますところのジュネーブ協定並びに最終宣言というものがございます。これに日本が直接調印国として参加しておらないことは事実でございますけれども、これが国際条約として現に存する限りにおきましては、この条約の精神を日本もまた尊重しなければならぬことは当然の義務でございます。(拍手)それにもかかわらず、それを守ろうとはせずに、むしろ、南北ベトナムの平和統一の阻害となるような軍事援助を内容とするところの今回の賠償支払いというものは、明らかにこのジュネーブ協定の精神に違反するものであるということを、私は指摘しなければならないと考えるものでございます。特に、委員会において明白にされましたように、東洋精機の機械輸出が銃弾工場となっておるという事実、あるいは、今回の直接賠償における三千九百万ドルの賠償のうち二百万ドルが工業センターの名において南ベトナムの兵器廠の建設のために直接振り向けられることがすでに予定せられておるというようなことは、岸総理や藤山外務大臣の国会における答弁と全く事実が違っておることを示すものでございまして、これは断じてわれわれの承服することのできない問題でございます。(拍手)
 ことに、南北ベトナムの統一の問題につきましては、藤山さんがまだ東京商工会議所の会頭であられた時代に、先年バンドンで開かれましたところのアジア・アフリカ諸国民会議に日本代表として参加せられまして、あなたが署名をされておるところのバンドン宣言にも違反する問題であるという点は、藤山さんが外務大臣としてその経綸を政治の上に外交の上に実施しようとする段階において、特に考えてもらわなければならない問題であるということを申し添えておきたいと思うのでございます。(拍手)
 ことに、昭和二十八年に、いわゆる中間賠償として二百二十五万ドルの沈船引き揚げ協定の仮調印がなされたことは、皆様も御承知の通りであります。ここに私が持って参りましたのは、「国の予算」という、大蔵省から発行いたしましたところの昭和二十九年度の予算に関する説明書でございますが、この四十五ページ、第三章の平和回復善後処理費の中にこういうように書いてあるのであります。「ヴェトナムとの間では、日本が沈船引揚げのため八億一千万円を支払うことを内容とする協定が仮調印され、同国の場合は、これで賠償は完結することとなっている。」と、大蔵省の発行した文書には書いておるのでございます。(拍手)だから、私どもは、この沈船引き揚げに関する議定書の訳文を資料として提出することを要求して参りましたが、今日に至るまで、ついに外務大臣は国会にこれを提出しなかったわけでございます。これは、この沈船引き揚げ協定の付属議事録に、これでベトナムに対する賠償はおしまいだという文言が入っておることを国民の前に隠そうとするために、あなたは資料として提出をしないのである、私は、このように断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)
 さらに、今度の賠償問題の中心になりますところのダニム・ダムの建設の問題については、すでに参議院の予算委員会におきまして、また外務委員会においても指摘されましたように、すでに三年前から外務省の調査員の資格を持つところの日本工営の久保田豊氏との間において向こう側との契約が調印をせられておるという事実でございます。政府は、この賠償が国会の承認を経た場合に具体的にどういう内容のものになるかという賠償の実施細目はこれからきまるのだと強弁をせられまするけれども、この賠償額は、実に、こうしたダニム・ダム、あるいは先ほど申し上げましたような工業センター等、すでに日本の民間業者と南ベトナム側との間に打ち合わせをせられたものを賠償に引き直そうというところに、今回の南ベトナム賠償の金額算定のいきさつがうかがわれるのでございます。これは、断じて、われわれ国民の立場において承服することができないのでございます。今朝の日本の一流新聞が、その社説において、この南ベトナム賠償は、国会審議の段階においては納得することができない、これを通常国会に向かって継続審議とすべきであるということは、ほとんど日本のマス・コミの取り上げているところでございます。
 こういう点を考えて参りましても、私は、藤山さんが外務大臣として登場せられたときに、国民の各方面から期待せられたその期待に報いる意味において、この賠償の批准を求めるということを即時中止しなければならない責任があなたにあると思うのでございます。どうか、その意味において、あなたがこの際外務大臣としてのこうした責任を感じられまして、その地位を去ることによって、岸内閣のアメリカに従属をしたところの外交政策の転換のいしずえになる意味においても、わが党が提出いたしました不信任案の採決前に外務大臣を辞任せられることを私は勧告するものでございます。(拍手)
 以上申し述べました趣旨によりまして、何とぞ、日本の国民を愛する意味におきまして、藤山外務大臣に全国民の名において退陣を求めるこの決議案に対しまして諸君の賛同を得られんことを心からこいねがいまして、提案の趣旨説明にかえるものでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(加藤鐐五郎君) これより討論に入ります。順次これを許します。岩本信行君。
    〔岩本信行君登壇〕
#10
○岩本信行君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案されました藤山外務大臣不信任案に反対をするものでございます。(拍手)
 御承知のごとく、藤山外務大臣は一昨年七月以来引き続き今日まで、わが日本国の外交の衝にあり、国際社会におけるわが国の地位の向上と、諸外国との友好関係の強化に献身し、よくその任を果たしてこられたのでございます。(拍手)
 今次国会におきまして審議しておりますベトナム共和国に対するところの賠償協定も、ひとえにこのような努力の現われでございまして、わが国は、同協定を通じ、サンフランシスコ平和条約によりましてわが国に課された義務を誠実に履行し、名実ともに名誉ある独立国といたしまして、国際社会の一員としての実をあげんとするにほかならないのでございます。(拍手)すなわち、サンフランシスコ平和条約によって国際社会に復帰することができたわが国にとりましては、そこに定められておりますところの賠償の義務を履行するということは、わが国が国際社会に復帰し得るための条件であったのでございます。ベトナムに対する賠償問題の処理を南北両ベトナムの統一まで待つべしという議論は、条約上の義務であって、かつ、わが国の国際社会への復帰の条件でありましたところの賠償問題の解決を、不確定の将来に引き延ばすことであって、国際条約上の義務をすみやかに順守することを念願するわが国の基本政策にも合致いたしませず、ひいては、また、わが国の国際信用を失うことともなるわけでございます。(拍手)
 わが国は、ベトナムの不幸な分裂に対しましては深い同情を寄せまして、一日もすみやかな統一の実現を望んでいることは申すまでもございませんが、わが国といたしましては、ベトナム共和国政府を全ベトナムを代表する正統政府として正式の外交関係を維持しておるのでございまして、また、自由民主主義諸国のほとんどすべてが、この点、わが国と同一の立場をとってきておるのでございます。しかして、サンフランシスコ条約に調印いたしましたのは、このベトナム共和国政府であるわけでございます。よって、今回の賠償協定がベトナム全体とわが国とを有効に拘束する協定であることは、おのずから明らかでございます。わが国は、ビルマを初めといたしまして、ベトナムを除くほかの賠償請求国との間の賠償の問題は、御承知の通り、すでに全部解決したのでありまして、今日このベトナム賠償問題の解決のみを遷延させるということは、国際信義にももとるのみならず、同じくアジアの一員といたしまして、アジア諸国の共鳴と信頼とを得るという観点から考えましても、とうてい許されぬところでございます。(拍手)藤山外務大臣が、先般この協定に調印いたし、今次国会にそのすみやかな承認を求めましたことは、政府として当然の措置であると認める次第でございます。(拍手)
 さらに、わが国外交の重要懸案でありますところの日米安全保障条約の改定問題を考えまするのに、現行条約は、今日まで七年有余にわたりまして、よくわが国の安全を保障してきたのでありますが、同条約は、その締結当時の事情を反映して、現状に即しない点がありますので、これが改正は、わが国の各方面から要請されていたのでございます。また、御承知の通り、本国会内におきましても、与野党を問わず、これが改定の必要につきまして、しばしば多くの人々から意見の開陳が行なわれたことは、反対の諸君でも御承知のところだと存じます。よって、藤山外務大臣は、昨年九月の故ダレス国務長官との話し合いを基とし、同じく十月以来、在日米国大使との間に十数回に及ぶところの公式会談を行ない、日米安全保障の面におきまして、わが国の自主性を確立し、国連憲章との関係を明確化し、また、わが国の対米義務をわが憲法の範囲内に限定するという、こういう方針を実現すべく努力を続けてきたのでありまして、交渉は近く妥結の予定でございます。これは、ひとえに、わが国の平和を守り、日米間の友好関係を将来にわたって安定化することを目的とするものでございまして、これが改定の実現ということは、極東の平和、ひいては世界平和の確保に寄与するところ大なるものがあると考えるのでございます。(拍手)過去一年余にわたる入念な交渉を通じまして今日これが実現を見ますことは、ひとえに藤山外務大臣の誠意と不断の努力とに負うものと確信いたす次第でございます。(拍手)
 さらに、国連における藤山外務大臣の業績は特に顕著でありまして、わが国が国連外交を通じまして今日の世界的地位を確保し得たのも、一にかかって同大臣の努力によったと言っても過言でないと信ずるのでございます。(拍手)藤山外務大臣は、わが国の国連加盟後、引き続き三回の総会にみずから出席し、核実験停止問題を含むところの軍縮問題の解決のため積極的貢献をいたしました。また、昨年の中近東問題に関する緊急総会では、諸君とともに超党派で激励演説をいたしまして、その結果、この緊急総会においては、関係各国代表との交渉を通じまして問題の円満な解決に努力する等、世界平和の確保のためにきわめて大なる役割を果たすことによって、国連におけるわが国の地位を大いに高めた事実があるのでございます。(拍手)これは、藤山大臣の誠実な人格と公正妥当な見解というものが広く各国の外相及びハマーショルド事務総長等に評価された結果でございまして、この意味においても、同大臣がわが国外交のために尽くした功績というものは、きわめて大なるものがあるのでございます。(拍手)
 また、藤山外務大臣は、一方において、わが国数年来の重要懸案でありますところの日韓交渉に積極的努力を行なうことによって、韓国との間の諸懸案の解決に努めているのでありまするが、他方、これとは別個に、在日朝鮮人の北鮮帰還を実現するための英断を行ないまして、御承知の通り、基本的人権に基づく居住地選択の自由という人道主義的な国際通念にのっとり、多くの困難を克服しつつ、国際赤十字委員会の協力を得まして、これが円滑な進捗をはかったのであり、現に着々として実現に進みつつありますことは、御存じの通りでございます。
 以上のような重要外交問題の処理と相並びまして、藤山外務大臣は、一方において、自由主義諸国との間に、単に政治面のみならず、経済、文化等の方面における協力関係をも強化促進することに絶えず努力して参ったのでありまして、その結果、近年、これら諸国との間に各種の通商貿易協定、文化協定等が締結されましたのみならず、わが国におきまして行なわれる各種の重要国際的行事、学術会議等の数は最近著しく増加しておるのでございます。ちなみに、過般東京で行なわれましたガット総会のごときは、その歴史上初めてジュネーブを離れて本邦で行なわれたのであります。他方、また、藤山外務大臣は、世界平和を促進するとの観点からいたしまして、共産圏諸国との国交回復に対しましても積極的努力を払いました結果、本年八月、九月におきまして、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア三国政府との間に、それぞれ正式に国交回復の合意が行なわれるに至ったことは、皆様も御承知の通りでございます。さらに、近年、ビルマ、フィリピン、インドネシア等に対するわが国の賠償の実施は着々と進捗しつつあるのでありまするが、これと並行いたしまして、アジア、中近東方面に対するわが国の経済協力もますます積極的に進められているのでありまして、その証拠には、最近とみにその面が活発化しておることは、御承知だと考えます。わが国の海外移住と相並び、わが国民の技術と労働力とは、海外諸国において著しくその声価を高めているのでございます。(拍手)
 これらの事実を考えますならば、藤山外務大臣が、就任以来よくその任を果たし、変転する国際情勢下において絶えず適切なる外交施策を施しますとともに、国際社会におけるわが国の地位向上に貢献せられましたことは、きわめて明らかでありまして、私は、自由民主党を代表いたしまして、わが党が今後とも同大臣を力強く支持いたすものであることを、ここにはっきりと申し述べますとともに、同大臣に対し提出されました不信任案に絶対反対を表明いたすものでございます。(拍手)
 最後に、私は一言申し上げます。おおよそ、一国の政治は、与党と野党とがありまして、研々相摩すところに発展の進路が見出されるものと存じます。そこで、私どもの自由民主党は、もとより責任ある与党でありまするからして、いよいよもって国利民福のためにあらゆる努力を払います。野党、特に社会党の諸君は、諸君みずからが唱えられておりますところの体質改善をすみやかに整備せられまして、健全な、現実的な、言うならば、英国の労働党的な、民主的な方向に躍進せられますことを希望してやみません。(拍手)
 重ねて、藤山外務大臣不信任決議案に、以上のような理由から断固反対いたしますとともに、提出者の五人を除いたその他全員が、わが党のこの趣旨に賛同せられんことを希望いたします。(拍手)
 以上をもって反対の理由の説明といたします。(拍手)
#11
○議長(加藤鐐五郎君) 高田富之君。
    〔高田富之君登壇]
#12
○高田富之君 私は、日本社会党を代表して、外務大臣藤山愛一郎君不信任決議案に賛意を表するものであります。(拍手)
 一体、一昨夜からきのうにかけましての国会の混乱、審議の停滞のよって来たるゆえんを、たれよりもよく知っているはずの藤山外相は、この事態に直面して、野党からこのような決議案を突きつけられるまでもなく、もし一片の良心があるならば、みずから深くその責任を痛感し、いさぎよく責任をとるのが当然であると思うのであります。(拍手)
 もともと、ベトナム賠償問題に関しては、すでに早くから国民の疑惑の的となっておったものであって、いわば、これは、いわくつきの賠償協定であったのであります。(拍手)
 そこで、わが党は、全力を尽くして真剣にこれと取り組み、国民の期待にこたえようと努力して参ったのでありますが、はたせるかな、審議に入ってみまするや、冒頭から政府は答弁に窮するという醜態をさらし、さらに審議の進むにつれまして、次から次へと重大な幾多の点について疑義が続出し、いずれも解明を与えられないまま、いよいよますます国民の疑惑を深める結果となって今日に至ったことは、否定すべからざる事実であります。(拍手)いやしくも、藤山外相は、みずからこの協定に調印した、名実ともに最高の責任者であります。しかるにもかかわらず、このような深まり行く疑惑に対して、みずからからだを張ってこれを解明しようとするような熱意は、その片りんだにも見受けられないのであります。(拍手)それのみならず、ことごとに答弁を回避して下僚に代弁をさせ、みずからは、あたかも他人ごとのような白々しい態度に終始したのであります。しかも、代弁させられた外務官僚の諸君も、これまた徹底した不勉強ぶりを余すところなく暴露したのであります。(拍手)このような醜態にたまりかねてか、与党の川島幹事長が外務官僚を呼びつけていわく、「野党議員でさえあれほど勉強しているのに、諸君は毎晩料理屋でうつつを抜かしているとは何事であるか」と。しかし、諸君、外務省の役人諸君をしかりつけるのは、これは少々筋違いではないかと思う。彼らは、この協定なるものの実態と裏面のいきさつを、だれよりもよく知っているはずであります。まともな人間であれば、良心の苛責に耐えかねて、やけ酒の一ぱいも飲みたくなるのは、人情の常であります。(拍手)不幸にして、彼らは、藤山外相ほどの鉄面皮さを持ち合わせていなかったまでであります。(拍手)
 私の最も驚き入りましたことは、委員諸君から再三再四にわたって要求された資料、すなわち、戦争中わが国がベトナムに与えた損害に関する資料の提出を迫られながら、ついに出せなかったという事実であります。一体、損害賠償の交渉をしようというのに、およそ幾らの損害を与えたかという推算もしないで、どうして交渉ができますか。(拍手)多くを言う必要はありません。この、子供にもわかる一つの事実からだけでも、いかにこの賠償交渉がでたらめしごくのものであったかは、きわめて明瞭であります。
 植村甲午郎特使を派遣するにあたっても、事実、何の計数的資料も持たせずに、一片の訓令だけで、手ぶらで交渉に当たらせたのであります。それだからこそ、当初、沈船引き揚げの仮協定が、わずか八億円でほとんど済んだものと政府自体が認めていたにもかかわらず、その後向こうの言いなりにふくれもふくれ上がって、ついに、二十数倍、二百億円にまでせり上がったという、(拍手)およそ常識離れのする奇怪千万な結果となったのであります。これは、国と国との厳粛なる賠償協定ではなくして、実は、商売人たる藤山氏が、同じ仲間の植村氏を使って、金もうけのための商談、すなわち、やみ取引交渉を行なったものに(発言する者多し)ほかならないのであります。聞くところによれば、すでに、植村氏を副会長とする経団連その他から、三億円の金が安保改定PRの資金として自民党に献金されたというではないか。(「懲罰々々」と呼び、その他発言する者多し)また、自民党は――諸君、静かに聞きたまえ。自民党は、財界の肝いりで、自由国民連合と称する外郭団体を作り、大々的な資金集めを開始すると言っている。諸君、財界人と結んで賠償の利権を与え、国民の血税で大もうけをさせたリベートで、今度は安保改定の政治資金としようとしている。金もうけと戦争準備と権力欲の三位一体となった保守党政治の醜状は、ここに遺憾なくその正体を暴露しているのであります。(拍手)委員会の審議がいよいよベトナム賠償をめぐる汚職問題の核心に触れようとする段階に入ったと見るや、にわかに審議打ち切りの暴挙に出たことは、(拍手)これによって見ましても、外相をめぐる汚職の疑いは今や決定的なものとなったと断ぜざるを得ないではありませんか。(拍手)もし、そう言われるのがくやしかったならば、外相みずからが国会に要請して、さらに一そうの慎重審議を要請すべきではなかったか。(拍手)
 次に一言したいことは、藤山外相には一貫した政治信念が全く欠けているということである、かつては、商工会議所会頭当時、バンドン会議にみずから出席して、南北ベトナム統一促進の決議に賛成署名をした御当人が、今度はまっこうからジュネーブ協定をじゅうりんして二つのベトナムを固定化し、あまつさえ、軍事紛争の火つけ役を買って出ようとしている。このような恥ずべき二枚舌、御都合主義は、藤山外交の顕著なる性格をなしているのであります。(拍手、「懲罰だ」と呼び、その他発言する者多し)日中国交問題にしても、朝鮮人帰還問題にしましても、あるいは原水爆禁止、軍縮問題にいたしましても、国連における言動にいたしましても、すべて御都合主義と二枚舌外交で、恥を世界にさらしたものであるといわなければなりません。(拍手)
 このような無責任きわまる外相であればこそ、平和へのとうとうたる世界の流れも、国民のごうごうたる反対の声にも耳をかさずに、安保改定、すなわち日米軍事同盟という無謀きわまる日米交渉を馬車馬のように推し進めているのであります。藤山の独走はけしからぬという声は、与党の諸君の中にも高まりつつあるではないか。(拍手)良識ある与党内のこの声にこそ、藤山外相はもっと謙虚に耳を傾けなければならぬと思うのである。(拍手)
 今や、わが国は、冷戦から共存への、世界史の画期的な転換期にあたりまして、従来の外交方針を根本的に再検討すべきときに立ち至っているのであります。この歴史的な重大時局に、わが国の運命を担当する最も重要な外相の地位に、このような無責任、無定見、かつ、自己の栄達の前に国家、国民を忘れた藤山氏のごとき人物をとどめておくことは、わが民族にとって取り返しのつかない不幸をもたらすことは必至であります。(拍手)
 私は、ここに声を大にして外相の即時退陣を要求して、私の所懐の一端を申し述べた次第であります。(拍手)
#13
○議長(加藤鐐五郎君) 武藤武雄君。
    〔武藤武雄君登壇〕
#14
○武藤武雄君  私は、社会クラブを代表いたしまして、ただいま上程されました藤山外務大臣不信任案に賛成をいたすものであります。(拍手)
 今回の臨時国会は、重要なる案件といたしまして、災害対策及び生活の危機にあえぐ石炭離職者の対策を中心とする補正予算案と、南ベトナム賠償支払い協定の承認に関する件の、わずか二件が中心であるのであります。しかるに、災害予算につきましては、政府の災害対策の実施内容が不明なるままに予算が成立しておるような、あと味の悪さを残しておるのでありまするが、これにもまして言語道断なるのは、南ベトナム賠償案件に対する藤山外務大臣の態度なのであります。(拍手)
 すでに、わが国は、ビルマ、フィリピン、インドネシア三国に対する賠償支払いにつきまして、三千五百億円、国民一人につき三千七百七十円の負担を背負っておるのであります。これに今回の南ベトナム賠償五千五百六十万ドルを加えますと、実に国民一人当たりの負担は三千九百八十六円、すなわち、ほとんど全国民が四千円に近い負担を背負うことになるのであります。このように国民に対し莫大なる負担をさらに重加する南ベトナム賠償協定の取りきめについて、政府は、まことに不可解なることは、何一つ満足な答弁を国民の前に述べることができない醜態をさらして参ったのであります。(拍手)
 第一に、支払い対象国として南ベトナムだけを選んだ理由は、全く根拠が薄弱であります。特に、将来南北ベトナム統一が実現をした場合、とりわけ北ベトナムが主体となって南ベトナムを合併した場合等においては、再度賠償請求を受ける可能性は十分にあるのでありまして、今年六月二十七日付の北ベトナム国会より本院正副議長あてにきた書簡には、今回の賠償の不当なる点を追及しておる事実が厳然としておるのであります。外務省が南ベトナムを対象国として選んだ行為は、まさに一方的な、独善的な判断といわざるを得ないのであります。(拍手)南北ベトナム統一の阻害となるばかりか、東南アジアの平和諸国との友好外交の見地よりすれば、まさにわが国の平和外交を毒するものというべきであります。政府は、サンフランシスコ条約の義務履行こそが国際信義であると力説をいたしておるのでありますが、賠償支払いを南北統一まで延期することこそがジュネーブ協定に合致するのでありまして、この点についての政府の判断は、国際外交の常識からはずれた、全く独善的判断といわざるを得ないのであります。(拍手)
 第二に、賠償交渉における基準となるべき戦争被害の資料について、政府は国会側が要求しておる資料の提出を怠っているばかりか、当然外務事務当局が調査をしておくべき資料すらも何ら準備しておらないのでありまして、外務省政府委員諸君の怠慢、不勉強、まことに驚くべきものがあったのであります。(拍手)藤山外務大臣の部下掌握は全くゼロというべきでありまして、外務当局の最高の責任者としての資格なきものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 特に、賠償支払いが電源開発に充当され、この工事はすでに日本工営と私的契約が成立しておりましたものを賠償に繰り入れられたのではないかとの疑惑がますます濃厚なるままに、政府当局の答弁はきわめてあいまいであり、今回の賠償支払いをはなはだ不明朗なものに追い込んでおる責任は政府みずからにあると申さなければなりません。(拍手)これらの責任は、あげて藤山外務大臣の負うべきものありまして、われわれは、このような状態において南ベトナム賠償協定を承認することは不可能であるばかりでなく、このように国民に疑惑を与え、海外に対してはわが国の信用を完全に失墜せしめるような協定を締結した外務大臣を信任していることは、断じて国民のためにも許されないのであります。(拍手)
 第三に、政府は、あきれ果てたるほどに、北ベトナムの実態について無知であります。ホー・チミン政府が国家として存在をしておった事実、最近は、北ベトナムとわが国との間には、香港経由を含めれば貿易実績が増大しつつある事実を指摘して、北ベトナムを無視することは世界政治の現実に合致しないばかりか、このような北べトナム無視の外交方針は世界の平和を守る道でないことを、誠意をもって政府にわれわれは説得をいたして参ったのでありますが、これに対する外務大臣の態度はどうか。北ベトナムを承認しない積極的な理由を何ら説明し得ないばかりか、藤山外務大臣の答弁は、常にあいまいで、何ら南ベトナムのみを支払い相手国として承認した積極的な理由も説明し得ない状態であります。
 以上、要約すれば、藤山外務大臣は、外務大臣としての最低必要資格である世界情勢の把握について全く無能であるといわなければなりません。(拍手)私ども社会クラブは、このような藤山外務大臣に、目下交渉中といわれる日米安保条約の改定問題をも含め、あらゆる外交案件をゆだねることは、わが国家、国民の将来を誤るおそれのあることを、国民とともにますます深く感じた次第であるのであります。(拍手)
 よって、われわれは、藤山外務大臣の不信任案に賛成をいたしまして、諸君の同意を得たいと思うのであります。(拍手)
#15
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#16
○議長(加藤鐐五郎君) 採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行ないます。本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。――閉鎖。
    〔議場閉鎖〕
#17
○議長(加藤鐐五郎君) 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
#18
○議長(加藤鐐五郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――開鎖。
  [議場開鎖〕
#19
○議長(加藤鐐五郎君) 投票を計算いたさせます。
    〔参事投票を計算〕
#20
○議長(加藤鐐五郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長朗読〕
 投票総数 三百三十一
  可とする者(白票) 百三十三
    〔拍手)
  否とする者(青票)  百九十八
    〔拍手〕
#21
○議長(加藤鐐五郎君) 右の結果、外務大臣藤山愛一郎君不信任決議案は否決されました。(拍手)
    ―――――――――――――
 淺沼稻次郎君外四名提出外務大臣藤山愛一郎君不信任決議案を可とする議員の氏名
   赤路 友藏君  赤松  勇君
   淺沼稻次郎君  足鹿  覺君
   飛鳥田一雄君  淡谷 悠藏君
   井伊 誠一君  井岡 大治君
   井手 以誠君  石川 次夫君
   石橋 政嗣君  石村 英雄君
   石山 權作君  板川 正吾君
   受田 新吉君  小川 豊明君
   大貫 大八君  大野 幸一君
   大原  亨君  太田 一夫君
   岡  良一君  岡本 隆一君
   加賀田 進君  加藤 勘十君
   柏  正男君  片島  港君
   勝澤 芳雄君  勝間田清一君
   角屋堅次郎君  金丸 徳重君
   上林與市郎君  神田 大作君
   川村 継義君  河野  正君
   木原津與志君  菊川 君子君
   菊地養之輔君  北山 愛郎君
   久保 三郎君  久保田鶴松君
   栗原 俊夫君  栗林 三郎君
   黒田 寿男君  小林  進君
   小林 正美君  小松  幹君
   兒玉 末男君  五島 虎雄君
   河野  密君  佐々木更三君
   佐藤觀次郎君  佐野 憲治君
   坂本 泰良君  阪上安太郎君
   櫻井 奎夫君  島上善五郎君
   島口重次郎君  下平 正一君
   東海林 稔君  杉山元治郎君
   鈴木茂三郎君  田中幾三郎君
   田中織之進君  田中 武夫君
   田中 稔男君  多賀谷真稔君
   高田 富之君  滝井 義高君
   楯 兼次郎君  館  俊三君
   辻原 弘市君  戸叶 里子君
   堂森 芳夫君  中澤 茂一君
   中嶋 英夫君  中原 健次君
   中村 高一君  中村 時雄君
   中村 英男君  成田 知巳君
   西村 関一君  野口 忠夫君
   芳賀  貢君  長谷川 保君
   原   茂君  日野 吉夫君
   帆足  計君  穗積 七郎君
   北條 秀一君  堀 昌雄君
   松浦 定義君  松平 忠久君
   松前 重義君  松本 七郎君
   三宅 正一君  門司 亮君
   本島百合子君  森島 守人君
   八百板 正君  八木 一男君
   八木  昇君  矢尾喜三郎君
   安井 吉典君  柳田 秀一君
   山口シヅエ君  山崎 始男君
   山下 榮三君  山田 長司君
   山中 吾郎君  山中日露史君
   山花 秀雄君  山本 幸一君
   横路 節雄君  横山 利秋君
   和田 博雄君  伊藤卯四郎君
   池田 禎治君  今村  等君
   内海  清君  加藤 鐐造君
   春日 一幸君  小松信太郎君
   佐々木良作君  竹谷源太郎君
   塚本 三郎君  堤 ツルヨ君
   土井 直作君  西尾 末廣君
   西村 榮一君  廣瀬 勝邦君
   松尾トシ子君  水谷長三郎君
   武藤 武雄君
否とする議員の氏名
   安倍晋太郎君  相川 勝六君
   逢澤  寛君  青木  正君
   赤城 宗徳君  秋田 大助君
   秋山 利恭君  足立 篤郎君
   天野 公義君  天野 光晴君
   綾部健太郎君  荒木萬壽夫君
   荒舩清十郎君  新井 京太君
   井原 岸高君  飯塚 定輔君
   生田 宏一君  池田 清志君
   池田 勇人君  池田正之輔君
   石井光次郎君  石坂  繁君
   石田 博英君  一萬田尚登君
   岩本 信行君  植木庚子郎君
   臼井 荘一君  内田 常雄君
   江崎 真澄君  遠藤 三郎君
   小川 半次君  小川 平二君
   小澤佐重喜君  大石 武一君
   大久保武雄君  大倉 三郎君
   大坪 保雄君  大野 市郎君
   大野 伴睦君  大平 正芳君
   岡崎 英城君  岡部 得三君
   岡本  茂君  奧村又十郎君
   押谷 富三君  加藤 精三君
   加藤 高藏君  鹿野 彦吉君
   賀屋 興宣君  鍛冶 良作君
   金丸  信君  上林山榮吉君
   亀山 孝一君  鴨田 宗一君
   川崎末五郎君  川島正次郎君
   菅家 喜六君  菅野和太郎君
   簡牛 凡夫君  木倉和一郎君
   木村 守江君  菊池 義郎君
   岸  信介君  吉川 久衛君
   清瀬 一郎君  久野 忠治君
   倉石 忠雄君  倉成  正君
   黒金 泰美君  小泉 純也君
   小枝 一雄君  小金 義照君
   小島 徹三君  小平 久雄君
   小林かなえ君  小林 絹治君
   小山 長規君  河野 孝子君
   河本 敏夫君  佐々木盛雄君
   佐藤 榮作君  佐藤虎次郎君
   佐藤洋之助君  坂田 英一君
   坂田 道太君  笹山茂太郎君
   始関 伊平君  椎熊 三郎君
   椎名悦三郎君  篠田 弘作君
   島村 一郎君  進藤 一馬君
   周東 英雄君  鈴木 正吾君
   鈴木 善幸君  砂原  格君
   瀬戸山三男君  園田  直君
   田口長治郎君  田中伊三次君
   田中 榮一君  田中 龍夫君
   田中 正巳君  田邉 國男君
   田村  元君  高石幸三郎君
   高瀬  傳君  高田 富與君
   高橋清一郎君  高橋 禎一君
   高橋  等君  竹下  登君
   谷川 和穗君  津島 文治君
   塚原 俊郎君  辻  寛一君
   綱島 正興君  寺島隆太郎君
   渡海元三郎君  徳安 實藏君
   床次 徳二君  富田 健治君
   内藤  隆君  中曽根康弘君
   中村 梅吉君  中村 幸八君
   中山 マサ君  永田 亮一君
   永山 忠則君  灘尾 弘吉君
   夏堀源三郎君  楢橋  渡君
   南條 徳男君  二階堂 進君
   丹羽喬四郎君  丹羽 兵助君
   西村 英一君  西村 直己君
   根本龍太郎君  野田 卯一君
   野田 武夫君  馬場 元治君
   橋本登美三郎君 橋本 正之君
   長谷川四郎君  長谷川 峻君
   八田 貞義君  服部 安司君
   濱田 正信君  濱地 文平君
   濱野 清吾君  早川  崇君
   原田  憲君  平井 義一君
   平野 三郎君  廣瀬 正雄君
   福家 俊一君  福井 順一君
   福井 盛太君  福田 赳夫君
   福田 篤泰君  福田  一君
   福永 一臣君  福永 健司君
   藤枝 泉介君  藤本 捨助君
   古川 丈吉君  保利  茂君
   坊  秀男君  細田 義安君
   堀内 一雄君  益谷 秀次君
   増田甲子七君  松岡嘉兵衛君
   松澤 雄藏君  松田竹千代君
   松永  東君  松野 頼三君
   松本 俊一君  三池  信君
   三浦 一雄君  三田村武夫君
   三和 精一君  水田三喜男君
   南  好雄君  村瀬 宣親君
   毛利 松平君  森下 國男君
   保岡 武久君  柳谷清三郎君
   山口六郎次君  山崎  巖君
   山田 彌一君  山中 貞則君
   山村新治郎君  吉田 重延君
   渡邊 本治君  渡邊 良夫君
    ―――――――――――――
 外務委員長小澤佐重喜君解任決議
  案(淺沼稻次郎君外四名提出)
     (委員会審査省略要求案件)
#22
○天野公義君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、淺沼稻次郎君外四名提出、外務委員長小澤佐重喜君解任決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
#23
○議長(加藤鐐五郎君) 天野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 外務委員長小澤佐重喜君解任決議案を議題といたします。
    ―――――――――――――
#25
○議長(加藤鐐五郎君) 提出者の趣旨弁明を許します。小林進君。
    〔小林進君登壇]
#26
○小林進君 日本社会党は、衆議院外務委員長小澤佐重喜君の解任決議案を提出いたしました。私は、この決議案に関し、日本社会党を代表して、その趣旨の説明を行ないたいと存じます。(拍手)
 ただいま開かれておる第三十三回臨時国会は、最も重要な案件を二つかかえておることは、皆様御承知の通りでありまして、その一つは、災害対策に関する件であり、他の一つは、すなわち、ベトナム賠償に関する国会承認の件でございます。
 小澤佐重喜君は、外務委員長として、この重要な案件の、正確に申し上げますならば、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件の案件について、国会法に基づき慎重なる審議を重ねて、民主的にこれを決定するという責任を負託せられておるのでございます。
 〔議長退席、副議長着席]
しかるに、小澤君は、この国会の負託を無視し、委員長としての公正中立の態度をかなぐり捨てて、自民党多数の暴力を背景にして、ついに国会議員の持つ審議権、基本的権利たる審議権を剥奪するに至ったのでございます。これ、わが党が小澤君をしてその職より解任せんとする主たる理由でございます。(拍手)
 この経緯をいささか具体的に申し述べますならば、一昨十一月二十五日午後三時四十五分より、衆議院外務委員会は、ベトナム賠償問題に関し、主として外務大臣への質問を続行いたして参りました。二党一派の申し合わせの通り議事を進め、午後九時四十分ごろ理事会を開いて、今後の日程につき懇談を重ねたのでございます。その際、自民党側理事は、主として今明日中にも審議の打ち切りを行なわんことを目途とし、わが党委員に対し、その打ち切りの日時を具体的に示すことを求めて参りました。これに対し、わが党理事は、具体的にいまだ解明されていない問題点を十項目に集約をして、さらに、これを印刷に付して示すとともに、あわせて、政府側がいまだ提出しておらぬ要求資料、すなわち、質疑の過程においてこれこれの資料をお出し下さいと要求しておる資料の中で、政府側の怠慢のためいまだ提出されておらぬ資料の名称を同じく印刷明記して、これらの要求を満たしてさえくれるならば、いつでも与党の要求に応じよう、審議が進まぬ原因はわれら野党の側にあるのではなくして、政府と外務官僚の不勉強と怠慢にその原因があることを、理論的に、事実をもって明らかにしたのでございます。(拍手)
 わが党は、これら十項目の、いまだ解明されておらぬ問題点につき、それぞれの分担者を決定いたしました。社会党は、審議の引き延ばしをはかっておるという批判を避けるため、その内容については、国民がどうしても聞いておきたいと願っている点を最も要領よくまとめて、その質疑の準備もいたして参りました。こういう誠実の上に立って、われわれは、期日の問題ではない、内容の問題であるがゆえに、問題点を明らかにしてくれないうちは、その日数を示すわけにはいかぬ、従って、もし政府がその質問に納得を与えてさえくれれば今日をもっても質問を終わろうではないかという、妥当かつ適切なる申し出をいたしたのでございます。(拍手)しかるに、与党は、断じてわれわれの要求をいれようとはしない。ただ時間を示せと言う。こうした問答を繰り返しているうちに、秋の夜はさえ月を乗せて深更に至りました。どうしても期間を示せと言うのであれば、今週一ぱいを目途にして努力をしようではないかというところまで妥協をいたしました。それがいまだお気に召さぬというならば、わが党の機関の決定を待って、最高機関、最高レベルでお話をおきめ願いたいということを、われわれは低姿勢でお願いをいたしました。
 しかし、それらの一切は全く無視された結果、ついに、二十六日午前一時ごろに至り、社会クラブ理事堤君の提案による今日じゅうに質疑を打ち切るという話し合いに応ずるかいなか、二つに一つの返事あるのみという、半ば脅迫的な態度をもって圧迫を加えられるに至ったのであります。(拍手)二十六日じゅうに質疑を打ち切るとは、そもそも自民党の予定のコースでございました。その予定のコースの案を社会クラブをして提案せしめるというがごとき、これ、まことに、われわれの断腸にたえざるところでございます。(拍手)きのうの友、きょうは自民党とわれとの中にありてわれを苦しむ。げに人生とは有為転変の限りなきものぞの感慨を深うせざるを得なかったのでございます。
 今日一日で一切の質問を問いただすことは、生理的にも、物理的にも、その不可能なる旨を答えまするや、理事会決裂を叫んで、まず社会クラブが勇ましく先陣を切り、次いで自民党の諸君が続いて理事席をけって立ち上がりました。かくするや、小澤委員長は、直ちに委員長席に着席をいたしました。理事会が紛糾すれば、あっせんの労を尽くすべき委員長が、理事会の閉会も告げずして、直ちに委員長席に着くとは何事ぞ。ここに彼の委員長たる資格を失墜する第一の理由が存するのであります。(拍手)それを見て、わが党委員が小澤君のそばにかけ寄り、彼をたしなめました。理事会を紛争のままに、閉会も告げず、委員長がこれを捨てて委員長席に着くとは何事ぞ、あなたは一体何をなさんとするのかということを問いまするに、彼は、理事会が決裂すれば、その先どうなるかは、言わぬでもわかっておるであろうという、ふてぶてしい言葉をはいておる。多数の威力で委員会を混乱に陥れようという、おそるべき暴動挑発の意図が隠されておる、そういう言葉を吐いておるのでございます。これ、まことに、ちまたに彷徨するやくざの脅迫と同じ態度でございます。(拍手)神聖なる国会の秩序を守ろうとする委員長としての崇高なる気持など一分も発見することができない。
 このやくざ的言動をもってする委員長を、もはや、しばらくもその席にとどめておくことができないということで、われわれは、直ちに、小澤君の前に、委員長不信任動議の文書を提出いたしました。自分に対する不信任案が提出されれば、言わずもがな、委員長代理を任命してその席を去り、静かに動議の決定を待つのが、国会法に定められた、委員長としてとるべき、たった一つの態度でございます。(拍手)しかるに、小澤君は何と言ったかと申し上げまするというと、「いまだ委員会は再開をしておらぬのであるから、受け取るわけにはいかない」、こういう返事でございます。委員長に対する不信任状は委員会休憩中には受理できぬという暴言でございます。何という無知、何という無能でございましょう。「そんなばかなことがあるか。受け取りなさい。笑われますぞ」と言うと、しぶしぶそれを取りながら、わきに置いて、委員会の再開を宣告いたしました。
 そうして、その次にはマイクも何もないままに、内容不明な発言をいたしたのでございます。後刻、速記を調べますと、「これより会議を開きます。日本国とヴィエトナム……。」、動議の発言がありました。これで終わっておるのでございます。何が何やらさっぱりわからぬが、ともかく、ベトナム賠償に関する質疑の打ち切り動議は成立させたという既成事実を作らんとしたことだけは明らかでございます。この形だけをとると、次いで、彼は、菅家理事を招いて委員長を代理せしめ、その席を下がったのであります。不信任動議はすべての議案に優先するという国会法に従わず、自己に課せられた不信任案を最優先的に扱わなかったこの事実は、国会の存続する限り、断じてこれを許すことはできぬのであります。この悪例が先例として残るならば、国会法はあってなきがごとしといわなければなりません。
 わが党は、この不信任動議と同時に、小澤君の解任決議案を衆議院議長に提出いたしました。この解任決議案は、久保田部長の手を通じて、間もなく小澤君の手元に届けられているはずであります。委員会における不信任と同じく、本会議場において決定さるべき解任決議案が提出されている限り、その決議案が決定されるまで、その職務を停止して、静かに裁決を待つのが、委員長としての政治的責任であり、政治家として守るべき道義的責任ある態度でございます。資格のない委員長によって会議が再開をされたり、審議が行なわれることは、全く不当行為であるがゆえに、われわれは、小澤君の解任決議案が決定するまで外務委員会の審議には応ぜぬという正当なる理由をもって、委員会場を静かに退場いたしました。(拍手)
 しかるに、これに対し、小澤君は、少しも反省するところなく、昨日午前六時ごろ外務委員会を再開し、わが社会党には何らの通告も発せず、自民党委員と社会クラブだけで、日本国とヴィエトナム共和国との賠償協定の締結について承認を求めるの件と、日本国とヴィエトナム共和国との借款に関する協定の締結について承認を求めるの件の二案を上程、賛否の討論を重ね、多数決をもって委員会を通過せしめるに至ったのでございます。これが小澤佐重喜君解任決議案を提出するに至ったまでの経過のあらましでございます。
 以上、要約して、その不当なる点を羅列いたしまするというと、一、外務委員会理事会を招集しておきながら、その協議のさ中に委員長みずからが理事会を放棄して委員長席に着いたこと。二、社会党提出の小澤委員長不信任動議を、休憩中であるがゆえにこれを受理できぬと称して、不法にも拒否する態度に出でたこと。三、開会を宣するや、最優先的に会議にかけるべき不信任動議を無視して、ベトナム云々という、全く言語不明の痴呆症的発言をして、これを正当に処理せず、国会法じゅうりんの行動に出たこと。四、ベトナム賠償質疑打ち切りの動議らしいものをうなった後に、委員長の席を菅家理事に譲り、初めて委員長不信任動議を処理せしめるにあたり、動議の提出者たる社会党委員の提案説明を一言も行なわしめず、直ちに採決に移り、多数をもって否決したこと。五、社会党は、不信任の動議提出と同時に、小澤君の解任決議案を議長の手元まで提出している限り、この決議案が本会議場において決定するまで、小澤君は委員長としての資格を政治的、道義的に失っておるにもかかわらず、その後、委員長席に着いて審議、採決をするという、全く不当、不法なる行為を行なっていること。これが小澤君をしてその委員長の職にとどめておくことのできぬ具体的な事例でございます。
 われわれが小澤君を解任せんとする問題の所在は、単にこれだけにとどまるものではございません。むしろ、問題はもっと基本的な原因に由来するのでございます。それは何か。ベトナム賠償それ自体に関する問題でございます。何もかにも不明瞭、不明確のままに、国民の血税二百億円をベトナム賠償の名において支払わんとするその行為自体にあるのでございます。
 われわれは、かつて、この国会の、この場所において、フィリピン国に対する賠償を審議いたしました。そのときは、通計二十五時間、九日間の期間をもって承認いたしておるのでございます。われわれは、インドネシア国に対する賠償問題を審議いたしました。そのときは、前後合わせて十一時間二十分、八日間の審議期間をもって承認いたしておるのでございます。なお、その前、われわれは、この国会において、ビルマ国に対する賠償について審議いたしました。そのときは、わずか一日、四時間をもって承認を与えておるのでございます。それは何ゆえか。賠償を支払うべき正当な理由が国民の前に明らかにされ、世論もまたこれを支持しておったからにほかならぬのでございます。(拍手)相手国に対して与えた損害を正しく認識し、戦争の贖罪を兼ねて、その損害と苦痛に対し、その程度の賠償はやむを得ぬということを、国民みずからが何の疑点もなく了承していたがゆえに、われわれは、この国民大衆の世論と正しい批判の上に立って、政府のその行為に、以上のごとき短時間をもって承認を与えたのでございます。
 この過去の実績に照らして、今日、われわれが、ベトナム賠償に関し、百有余時間を費しながら、なおかつ、その質問の時間を要求している理由は、言わずもがな、今日のこの政府のベトナム賠償に対しては、国民に何らの了解も納得も与えておらぬからでございます。(拍手)日々の新聞の報道はもとよりでございます。あらゆる機関は、あげてベトナム賠償の不当を糾弾いたしております。多くの疑問点のあることを告げており、その不可解な点を、国会の審議の過程において明らかにすることを要求いたしておるのでございます。この国民の願望を裏切って、一切の疑問点をおおいかぶし、力をもってこれを承認せしめんとするがごときは、天人ともに断じて許さざる行為でございます。(拍手)
 今、国民大衆は、次の点を明らかにしてくれることを心より要望をいたしております。
 第一点、われわれが損害を与えたのはベトナム国である。南北に分かれているベトナムに賠償を支払う必要がどうしてあるか。政府は、サンフランシスコ条約の義務履行による国際信義を唯一の理由にしているが、そのサンフランシスコの会議に臨んだベトナムの代表は、その国籍についていろいろの問題がある。その点は別にしても、一応、全ベトナムを代表するものとして参加したのであることは間違いがない。その後において、この国が二つに分かれてしまった限り、サンフランシスコ条約締結のときと事情は全く一変してしまったではないか。しかも、その事情は、相手側の一方的理由で事情が変わってしまい、全ベトナムについて戦争の償いをするという日本国の誠実なる義務、サンフランシスコで約束した義務が完全に履行できぬ事情にある限り、その形が原状に復するまで延期することこそ、むしろ、国際信義に報い、相手国人民にこたえるゆえんではないか。それを、南ベトナム国という、全体の中の一部の人民、一部の領土にのみ、その義務を果たさんとする理由は、一体何に基づくのか、いささかも明らかにしておらぬのでございます。(拍手)サンフランシスコ条約の義務履行などという、子供だましの、通り一ぺんの説明をもっては、とうてい納得することができぬという、この国民的疑問を解明するという余地を与えずして質疑を打ち切った小澤委員長を、国民の名において解任せんとするわれわれの要求は、しごく当然であると申し上げなければなりません。(拍手)
 第二点として、政府は、南ベトナム政府は全ベトナム国を代表する政権であることを公称しており、これを世界の四十数ヵ国が承認しているから、これを全ベトナムを代表する国家として認めることは、いささかも誤りがない、という主張を続けております。これに対し、国民は、さらば、同じような状態にある台湾政府を承認するときに、政府は、台湾政府は全中国を代表する国家であると言わなかったではないか。それは、事実においても、法律においても誤っているがゆえに、良心があるならば、そういうずうずうしい理屈を言い得ないからでございます。しかるに、事ベトナム国に関する限り、この見解を押し通さんとするのは、国民を愚弄するもきわまれりというのほかはございません。(拍手)その理由はどこにあるのか、その疑問を国民は知ることを要求いたしておるのでございます。
 北ベトナムの人口は一千三百万、南ベトナムの人口は一千二百万、北の方がむしろ多数であります。多数決の原則をもってすれば、多数人民を支配する北ベトナム人民共和国政府こそは、むしろベトナムの代表国政府であるといわなければなりません。(拍手)この矛盾を一つも明らかにすることのできぬことに対し、われわれは、国民の意思に従って、これを明らかにせんことを要望しているにもかかわらず、小澤君は、この質問の時間を不当にも断ち切ってしまうという行為をあえていたしたのでございます。これ、その職にとどめておくことのできぬ理由の第二でございます。(拍手)
 第三点として、北ベトナム政府は、この賠償に対し、しばしば、反対の旨を強硬に声明いたして参りました。非公式ではありまするが、北ベトナム人民共和国政府は、いつの日か日本国と正式に国交を回復するの暁には、日本国に対する賠償の請求権を放棄してもよろしい、日本がほんとうに前非を悔い、将来の侵略を全く行なわないという事実を明らかにする、たとえていえば、岸首相等の侵略の経験者が政治の責任者たる地位から引退をする、また、賀屋氏のような人が政府与党の外交調査会長をやるなどということが改められて、真に世界の平和を願う政治家、たとえば、松村さんとか石橋さんとかいうような人たちによって日本の政治が運営されるという事実が明らかにされれば、一切の賠償の請求権を放棄してもよろしい、われわれが迷惑を受け、損害をかけられたのは、日本の軍閥と官僚、それをあやつった少数の独占資本家によって行なわれたのであるから、われわれは、この少数の独占資本家に対してこそ憎しみを持っておるが、日本国人民に対しては何らの恨みを抱くものではない、日本の人民は、やはり、その軍閥や独占資本家、岸さんや賀屋さんのような官僚のために戦争にかり出され、命を失い、家を焼かれ、所を追われ、妻や子を失っておるのであるから、この戦争被害者から損害を補ってもらおうなどという気持は全くないということを明らかにする。こういうことを北ベトナムの要人は語っておったのであります。このような寛大な気持に対し、岸内閣は、これを土足にかけて、南ベトナムだけに賠償を支払わんとしておる。(「時間時間」と呼ぶ者あり)これあるがゆえに、北ベトナム国はその意思を硬化し、日本の両院議長並びに政府に対して、南ベトナムへの賠償の撤回を要求し、北ベトナムの賠償請求権を留保することを通告しておるのであります。
#27
○副議長(正木清君) 小林君、時間の範囲内で論旨を進めて下さい。
#28
○小林進君(続) 相手方の誠実を踏みにじり、これを憤激せしめ、求めざるもよろしい敵をあえて作り、そして、将来必ず二重払いのおそれある賠償をここに行なわんとするその理由、その理由を国民はあげて知らんとしているにもかかわらず、政府側は、いまだこれを納得せしめる理由を一つも明らかにしていない。しかして、その疑問をさらに明らかにせんとするわが党の正当な要求を、ついに小澤外務委員長はじゅうりんするに至ったのであります。これ、われわれが彼をしてどうしてもその席にとどめておくことのできぬ理由の第三でございます。
#29
○副議長(正木清君) 小林君、なるべく時間の範囲内で論旨を進めて下さい。
#30
○小林進君(続) 私は、すでに、私の知る北ベトナム人民共和国の真意を申し上げました。日本政府が南ベトナムだけに支払うという、そういうむちゃな行為を行なわなければ、将来賠償請求権を放棄してもよろしいという、その真意を申し上げたのでありまするが、しからば、一体、この南北ベトナムの国の中において、いずれの国がより被害を受けているかといえば、すでに皆様御承知の通り、われわれの被害を受けたものは、北ベトナムが圧倒的に多いのであります。南ベトナムに対しては、ほとんど損害を与えておらぬのであります。一九四五年、日本軍駐屯の当時に、北ベトナムに飢饉があった。一九四四年、冷害と水害があって、それが原因で飢饉があって、そのために餓死者が出た。ハノイにおいて、毎日五人とか十人とかの餓死者が出た。それが四、五カ月続いたのであります。冷害、水害で北に飢饉が起きて、それが南にも移ってきた。
    〔「議長、時間はどうした」と呼び、その他発言する者多し〕
#31
○副議長(正木清君) 小林君、趣旨弁明の範囲を逸脱しないように論旨を進めて下さい。
#32
○小林進君(続) なぜ南ベトナムにも災害の影響がきたかといえば、鉄道が七十キロも破壊されて、北の物資を南に運ぶことができなかったからであります。しからば、その鉄道を七十キロも破壊したのはだれか。日本軍かというと、日本軍ではない。アメリカ軍が破壊したのであります。アメリカの軍隊が鉄道を破壊して南ベトナム国人民が損害を受けたのならば、南に対してはアメリカこそ賠償に応ずべきではないかと言うに、日本軍が駐屯しておったからこそアメリカはベトナム国を攻撃したのであるから、やはり日本が賠償を支払うべきだというりのであります。日本が南べトナムに支払う賠償の内容とは、大体こんなものであります。戦争とは直接因果関係はない。むしろ、アメリカ軍隊のしりぬぐいみたいな賠償で、それによって国民の血税二百億円を取り上げられるのであります。そんなことで、国民が一体納得できますか。どうか損害の実際を示してもらいたい。納得のいくように示してもらいたい。この国民の正当なる疑問をもって、われわれが政府に迫っておるにもかかわらず、小澤委員長は、国民の側に立たず、政府官僚の側に立って、このわれわれの要求をじゅうりんするに至ったのであります。これが小澤君を解任せんとする第四の理由でございます。(拍手)
 賠償は、この際、特に公正を誓い、国民の前に一点の疑点もないよう明瞭に行なわれなければなりません。ビルマ賠償、インドネシア賠償、フィリピン賠償と進んでいくうちに、いつか国民の口から賠償成金などという言葉がささやかれるようになりました。賠償を種にして国民の血税をしぼりしぼり、富をなしている資本家が政府を取り巻いているという疑点に対する、国民の偽らざる声であります。大下商店等の複雑な政商が飛び出してきて以来、国民はさらにこの点過敏になっておりまするがゆえに、政府に一片の良識があるならば、この点は最も清潔でなければならぬのであります。
 しかるに、政府は、こういう国民感情を全く無視いたしまして、岸首相と最も親しい植村甲午郎氏を賠償使節に任命いたしておるのであります。植村氏とは何ぞ。経団連の副会長であります。名実ともに財界の世話役をもって……。
    〔「もうやめろ」と呼び、その他発言する者多し〕
#33
○副議長(正木清君) 小林君、――小林君、本論から逸脱しないように論旨を進めて下さい。
#34
○小林進君(続) 本業としている人であります。財界の世話役のみではありません。政党献金を主たる目的として経済再建懇談会なるものが生まれ、この懇談会を通じて、昨年度行なわれた衆議院選挙、今年度の参議院選挙に、数億の巨大な選挙資金が保守党に流れたことは、国民周知の事実であります。(拍手)植村甲子郎氏は、この経済再建懇談会の代表世話人でございます。政党献金の取りまとめ役でございます。自民党政府にとっては、両手を合わせて拝んでも拝み足らぬ大恩人でございます。
 約一カ月前と記憶しますが、各紙の報ずるところによれば、この植村甲午郎氏は、経済再建懇談会傘下の約四十社の財界人を集め、安保条約改定を……。
    〔「時間だ、やめろ」と呼び、その他発言する者多し〕
#35
○副議長(正木清君) 小林君、――小林君、たびたびの注意をきかなければ、遺憾ではありますが、発言を禁止いたさなければなりませんから、論旨を進めて下さい。
#36
○小林進君(続) はい。――いずれにしても、この植村氏が、岸首相の私友関係はもとより、自民党及びその政府といかに緊密不可分の関係にあるかは、以上をもっても明らかなる事実であります。(拍手)かような人を政府の代表として、二百億円の賠償支払い協定を決定せしめておることが、はたして明瞭なる外交折衝ということができましょうか。(発言する者多し)その植村氏の経歴を問わんとする国民の声と口と耳を小澤外務委員長は封じてしまったのであります。(拍手)これ、われわれが小澤君をその職にとどめておくことのできぬ第五の理由であります。(拍手)
 われわれが特に声を大にして訴えなければならぬことは、南ベトナムに対する日本の賠償は南ベトナム国の軍事力強化策を中心にして行なわれているという疑点が最も大きいということでございます。(拍手)米国が南ベトナムに対し巨大な軍事援助を行なっておることは、後述いたす通りでございます。その軍事援助をもとにして、南ベドナムが軍事基地の拡張をやっておることも、既定の事実であります。われわれは、その軍事基地の見取図を外務委員会に掲示して、政府側にその真偽をただしましたところ、それに間違いないことを政府側は答弁をいたしております。
  [「議長々々」と呼び、その他発言
  する者多し〕
#37
○副議長(正木清君) 小林君、――小林君、――小林君、どうぞ論旨を進めて下さい。
#38
○小林進君(続) はい。――これが間接にいかに南ベトナムの軍事力を強化するか、顧みて真にはだ寒いものを感ずるのでございます。しかも、その賠償は、間接的に軍事力を強化するのみならず、直接これを増強せる軍事施設さえ含まれておるのでございます。外務委員会に参考人として出頭したグエン・リン・ニエップ君は、「ベトナム人は特に賠償には重大なる関心を持っている。日本の賠償金の一部がベトナム人をしてベトナム人を殺すために使われていること、すなわち、戦略計画のために使われていることは、まことに遺憾にたえぬ。これは全く全ベトナム人の意向ではない。この賠償はベトナムが一つになるまで延期されるべきである」と証言をしておるのであります。(拍手)これこそ、偽らざる全ベトナム人の真の要求でございましょう。これに対して、自民党代表が、「どうしてこの賠償がベトナム人をしてベトナム人を殺すことになるか」という質問を発したとき、彼は、「通産省小出局長の答弁によれば、賠償輸出品の中に銃弾の製造をする工場が含まれていると言っているのではないか。銃弾は、まさか鶏を締め殺すためのものではあるまい」と答弁をしておるのでございます。(拍手)ベトナム人からもかくのごとくおそれられている兵器製造の工場を、なぜ輸出する必要があるのか。これこそ、南北ベトナム国家の対立をさらに激化せしめ、アジアの不信を買う以外の何ものでもないといわなければなりません。(拍手)これを行なわんとする政府の企図こそ、われわれの断じて了承し得ざるところであります。賠償支払いに名をかりて戦争を挑発するようなこの岸内閣の政策はあくまで追及をし、その真相を国民の前に明らかにしなければならぬ。国民大衆はこれを一番おそれておる。アジア、アフリカの国々も、日本のこれを一番おそれておる。世界の平和を愛好する全人類が、これを一番おそれておる。われわれは、この世界のすみずみに流れる岸内閣の戦争挑発性、反動性を解明して、その疑点を払拭しなければならぬ。
    〔発言する者多し〕
#39
○副議長(正木清君) 小林君、――小林君、――小林君、私の注意を聞かなければ……。
    〔発言する者多く、聴取不能〕
#40
○小林進君(続) こういう観点に立つわれわれの質問を、ついに小澤君は押えてしまったのであります。
    〔発言する者多し〕
#41
○副議長(正木清君) 小林君、――小林君、私の注意を聞かなければ……。
    [発言する者多く、聴取不能]
#42
○小林進君(続) これは断じて許される行為ではありません。これあるがために、われわれは小澤君の不信任と解任決議案を提出するに至ったのでございます。これが第六の理由でございます。(拍手)
 私は、最初、この説明のために約三時間を持続するように党から命ぜられましたので、そのために準備を進めたのでありまするが、議長から先刻御注意がありましたので、私は、これ以上論旨を進めることを中止いたしまして、最後の結論を一言申し述べたいと存じます。(拍手)
 小澤佐重喜君は、自民党内における純粋の党人派であります。戦前、戦中より積んできた、議会政治に慣熟しているその手腕とその卓越せる政治力は、高く評価されておるのでございます。
    〔発言する者多し〕
#43
○副議長(正木清君) 小林君、――小林君、発言の中止を命じます。――小林君の降壇を命じます。
    ―――――――――――――
#44
○副議長(正木清君) これより討論に入ります。順次これを許します。長谷川峻君。
    〔長谷川峻君登壇〕
#45
○長谷川峻君 私は、自由民主党を代表いたしまして、外務委員長小澤佐重喜君解任決議案に対し、反対の討論を行なうものであります。(拍手)
 このたびの第三十三回国会は、伊勢湾台風災害予算、ベトナム賠償の二議案を大きな柱として開かれたのであります。しかも、このベトナム賠償協定の審議に当たる外務委員長に、重厚誠実な人柄と、議会人として豊富な経験を持つ小澤佐重喜君を得ていたことは、院の内外を通じて、政治に関心を持つ者のひとしく信頼をしていたところであります。(拍手)
 そもそも、ベトナム賠償協定は、すでに過去数年にわたり国会で論議を重ねてきましたが、今会期において、この協定が外務委員会に付託されて以来、小澤委員長は、ベトナム賠償が、さきの戦争がもたらした最後の賠償である事情にかんがみ、日曜・祭日を除き、会議を開くこと十六回、質問者は実に二十数名に及びました。その間、小澤委員長は、質疑者に対する政府の答弁等に、いやしくも不当と思われる点に対しては再三注意を促し、審議の必要な資料収集に関しては、もっぱら政府を鞭撻し、これを提出せしめ、委員会運営の円満をはかることに努力されてきたのであります。ために、外務委員会の審議の能率は大いに上がって、二十四日午後においては、事実上、審議は終了するに至ったのであります。しかるに、日本社会党の質疑者は、特に事をかまえて従来の質疑事項を繰り返すのみで、再三に及ぶわが方の質疑打ち切りの交渉に対しましては、言を左右にして、さらに誠意なく、露骨に議事を引き延ばしの暴挙に出て参ったのであります。(拍手)従って、このままいたずらに推移すれば参議院の審議にも大きな支障を生ずる情勢でありますので、日本社会党の反対及び社会クラブの意見もありましたが、昨二十六日未明、与党委員の質疑打ち切りの動議を取り上げ、採決に付し、これが可決を見たのであります。しかし、この動議に反対の社会党委員の、例による集団の妨害を受け、委員長は、けがをいたしました。また、委員長の発言は徹底せず、速記録は完璧を欠いているかとも思われます。この点を取り上げ、社会党は、逆に、委員長に責任ありとして解任案の提出をなしたるごときは、盗人たけだけしいとはこういうことだろうと思うのであります。(拍手)しかも、質疑打ち切りの動議を提出したのは与党委員でありまして、委員長としては、国会法に基づき、委員提出の動議を議題にしたにすぎず、委員長の独断専行ではないのであります。すなわち、小澤委員長がこの措置をとりましたことは、まことに合法であり、かつ委員会運営の見地から見ましても、むしろ当然のことでありまして、これを解任の理由といたすことは、私どもの承服できないところであります。(拍手)しかも、その後、採決の際の妨害、混乱から、速記録の不備を知るや、社会クラブ出席の上に委員会を再開、日本社会党に再三出席方を確かめ、審議権放棄を慎重に確認した上で、昨日午前六時にベトナム賠償協定に対する与野党の討論、採決を終えたのであります。
 元来、小澤君は、委員長就任以来、外交は超党派でやるべきであるという信念から、公平無私、誠意をもって委員会運営に当たり、一十四日までは、与党よりはむしろ野党委員の絶賛を博してきたほどであります。さればこそ、わが国が独立回復後アジアに支払ってきた賠償関係の外務委員会における審議の状況を見ますと、昭和二十九年十二月十日のビルマ二億ドルの賠償は、四時間四十分で、わずか一日、三十一年六月三日のフィリピン賠償は、五億五千万ドルで、二十五時間二十五分、九日間、二十二年四月四日のインドネシア二億二千三百八万ドルは、十一時間二十分で、八日間、しこうして、このたびのベトナム賠償三千九百万ドルについては、実に三十四時間五十九分、十五日間にわたって審議を続けていることをもってしても、いかに公正、慎重であったかは、国民各位の御了解を得るところだろうと思うのであります。(拍手)これ、ひとえに、小澤君の政治見識と国会運営の手腕によるものでありまして、この際、小澤委員長の解任を求めるがごときは、私どものとうてい賛成し得ざるところであります。いわんや、先ほど社会党の弁士の趣旨弁明に見られるような、神聖なる議長から五度も六度も注意され、国会慣行を軽視する態度に表徴される日本社会党提出の解任決議案に対しては、絶対に反対を表明いたすものであります。(拍手)
#46
○副議長(正木清君) 大原亨君。
    〔大原亨君登壇]
#47
○大原亨君 私は、ただいま日本社会党を代表して小林進君より提出されました外務常任委員長小澤佐重喜君の解任決議案に対しまして、社会党を代表して賛成の意見を表明するものでございます。(拍手)
 われわれが小澤佐重喜君の解任に賛成する理由の一つは、今日、ベトナム賠償という、わが国民とアジアの人々が異常なる関心を持って注目している条約の批准にあたって、常任委員長という国会の公器を乱用して、自民党の党略のかいらいとなり、目に余る非民主的運営を強行したという点についてでございます。(拍手)
 解任賛成のもう一つの大きな理由は、かかる非民主的運営の中から生まれたベトナム賠償に対する底知れない疑惑の数々について、これを国民の間に明らかにせず、国会審議権の権威を冒涜した当面の最大の責任者が小澤佐重喜君であるということでございます。(拍手)
 以下、簡潔に、その氷山の一角でございますけれども、小澤委員長が委員長として適格性を欠如していること、並びに、その罪状の一端をあげて、諸君の御賛同を願うものでございます。(拍手)
 まず第一に、具体的な事実をあげるならば、去る常任委員会で、わが党の田中稔男委員が、賠償の基礎となるべき、戦争による損害の資料提出を、正式に要求いたしました際、委員長は、後刻取り上げると善処を約束しながら、全くこの言明を無視いたしておるのであります。さらにまた、一昨十一月二十五日夜、岡田委員の質問中、菊池義郎君が、国会議員の審議権を抹殺するような暴力的発言をなしたる際も、善処を約しながら、何らの処置もしていない。また、わが党の不信任案提出を無視し、継続中の理事会に諮ることもなく、無謀なる審議打ち切りを独裁的に宣言するなど、その態度は、まことにいんぎんのごとくなれども、無礼きわまる暴挙の連続といわなければなりません。(拍手)すなわち、小林進君より詳細に指摘された通り、昨二十六日午前零時過ぎ、理事会の休憩中、小澤委員長が独断で委員会を開き、委員長不信任動議を社会党が提出していたのにもかかわらず、資格のない小澤委員長が質疑打ち切りを宣した後、菅家理事の手で、わが社会党の不信任動議を取り上げたのである。わが党の不信任動議を取り上げないで、質疑打ち切り動議を可決しておきながら、また逆転して、菅家君が委員長代理として不信任動議をやり直し、その後また質疑打ち切りを宣言している。わが党提出の不信任動議の説明をも求めず、一方的に強行し、討論、採決を行なった。かくのごときことは、新憲法下、前古未曽有の醜態であり、暴挙であり、岸自民党内閣の権力主義の表徴であるといわなければならぬと思うのであります。(拍手)
 およそ、民主主義の政治、議会政治においては、多数決による民主主義の原則を基礎といたしておることは、言を待たないところでございますけれども、その裏づけとなる少数意見の尊重、対立討論を通じて、真実を明らかにすることが不可欠であると考えるのでございます。(拍手)この国民と真実に奉仕するという大原則をじゅうりんするならば、多数横暴、金権独裁の政治にほかならないのであります。(拍手)
 ベトナム賠償が、条約の当事者能力の点において、賠償金額の根拠において、賠償の対象となる時期において、あるいは賠償金の使途において、または特別円二重払いの問題などなど、数々の点において汚臭ふんぷんとして、その真実が解明されていない。いやしくも、国会の建設的審議とは事実とは何か、真実とは何かという、国会審議を進めることによって道理が通り、国民が納得するような結論が得られるようなものでなくてはならぬと考えるのであります。
 ベトナム賠償のごとき国会審議は、昨日朝の川島談話のごとく、平行線のままであるということは許されない。審議を通じて真実が明らかにされなければならない。にもかかわらず、社会党の質問が重なれば重なるほど、賠償をめぐる深い疑惑は払うことができないばかりか、ますます疑いが増大をいたしているのであります。(拍手)国民は真実を知る権利がある。二百億の血税の使途が国民の幸福とアジアの平和に役立つように心から願っており、これは国民の当然の権利といわなければなりません。この主権在民の民主政治を実践するのが議会でなければならない。
 今日、このような国会の混乱と、賠償をめぐる疑惑と混迷は、小澤委員長の負うべき責任であって、小澤君は常任委員長として全く落第であることを、この混迷の事態が実証いたしていると思うのでございます。議事運営が上手であるということは、手練手管で真実の叫びを手ぎわよく抹殺することでは断じてありません。(拍手)自民党内随一の議事さばき上手をもって任ずる小澤君が、このことを通じて国民の目をかすめたのであるならば、われわれ議会に席を持つ者として、憲政史上に一大汚点を残すこのような常任委員長に協力することは断じてできないのでございます。(拍手)
 特に、まだ明らかにされていないベトナムの賠償の疑惑の第一といたしまして、国民の血税を賠償として二重払いをしており、賠償の二重払いを合法化するため、明らかに、開戦の時期、賠償の対象となるべき期間について、国民をごまかさんといたしておる点であります。(拍手)一昨夜の岡田委員の最後の追及に対して、岸総理、藤山外相は、最後に答えることができなかったではないか。(拍手)岸総理が、A級戦犯としてさばきを受け、日本政府が了承し、サンフランシスコ条約でも引き継いでいる極東裁判の判決文第四章は、日本に対するフランスの開戦は一九四一年十二月八日としており、あるいは、仮調印までした問題の沈船引揚協定も同様である。しかるに、アメリカの手によってフランスに持ち出された金塊三十三トン、百五十六億円と、今次二百億円の賠償が、二重支払いであることは明々白々であって、この事実をごまかすために、開戦期日を一九四四年八月二十五日とし、戦争を一年間としたものであることは、まぎれもない事実であるのであります。(拍手)この政府答弁は、審議の平行線では断じてなく、インチキと真実との対立であるのであります。(拍手)この疑惑を明らかにするのが常任委員長の責任であるのに、進んで常任委員長は政府に資材と責任ある答弁を要求しない。これでは、もはや、権威ある国民の代表、わが国会の外務常任委員長たるの資格はないと断ずるものでございます。(拍手)
 また、サンフランシスコ条約締約国のバオダイ政権が唯一の賠償国であろといって、何とかの一つ覚えのように繰り返している政府の答弁に対し、わが社会党が、バオダイは不完全なる主権国である、たとえば、フランス連合の承認、バオダイの副署によって発効するような、不完全な条約締結の当事者能力しかないかいらい政権に対し、何で賠償を支払うのかという疑惑には、全然答えられていないのであります。賠償は、被害を受けた人民に対して、人道の立場より行なわれるものではないか。フランス人や外国のかいらい政権に支払うものではありません。このような疑惑を残したまま、審議打ち切りを自民党の意のままに強行するような常任委員長は、断じて信任はできないのでございます。(拍手)
 さらにまた、国民の血税であるベトナム賠償が、ジュネーブ協定に違反して、十五カ所の軍事基地を初めとするジェット基地、ミサイル基地、海軍潜水艦基地や、全地域の軍用道路の中心地に作るダニム・ダムや、兵器修理工場、火薬も作る尿素工場に使うために支払われる。しかも、国会の審議で国民の承認を得ないうちに、ひもつきの財界独占資本の代表植村甲午郎氏なる者と話をきめて、これをそのあとで国会にのめという、こういうむちゃなことが許されるであろうか。(拍手)この疑惑を解明できないで、どうして二百億円の金を出す国民を納得させられるか。平和と繁栄を願うアジアの人々に顔向けがどうしてできるであろうか。このことをほおかぶりして、独裁的審議打ち切りと採決を強行した小澤君のもとで国会の権威を守ることは、断じてできないと考えるのでございます。南ベトナムには今一千百万人、北ベトナムには一千三百五十万人、被害は北の地域である。藤山外相も、今のゴ政権は南地域だけに主権が及んでいると言っている。不完全きわまる政府資料を見ても、ほとんどが北の損害であって、南ベトナムは鶏三羽に二百億円、この不当なる賠償を、災害や生活難に苦しむ国民に納得させようというのか、はたして政治というものに値するでありましょうか。(拍手)われわれは、賠償を支払うなと言うのではない。ジュネーブ協定、バンドン会議の決議に沿って、南北統一ベトナムに対して、まとめて話をしようといたしているのであります。これが国民の利益であり、バンドン精神といわれるアジア連帯、共存の精神ではないか。賠償を払うべき相手に納得できるものを支払うべきであって、払うべからざるところに払おうとする岸内閣のやり方に対しては、国民は断じて承服いたさないでありましょう。
 最後に、われわれは、ベトナム賠償には承服できないという私どもの確信を、九千万国民とともにここに宣言をして、疑惑にふたをする役目をするような常任委員長は一日も一刻も早くその職を去って責任をとることを要求いたします。心ある諸君の満場一致の御賛同を得て国会の権威を守ることを訴え、私の討論を終わります。(拍手)
#48
○副議長(正木清君) 堤ツルヨ君。
    〔堤ツルヨ君登壇〕
#49
○堤ツルヨ君 私は、社会クラブを代表いたしまして、日本社会党より御提案になりましたところの、小澤佐重喜外務常任委員長の解任決議案に賛成をいたすものでございます。(拍手)
 さて、私は賛成をいたすのでございまするけれども、趣旨弁明に立たれました小林進議員より、公の場で、事を曲げた、あれだけの暴言がありました以上、これに屈服することはできません。(拍手)私は、そこにいらっしゃいます小林議員に静かに申し上げます。ゆえあって私たちが日本社会党とたもとを分かったとはいえ、古い同志として十年以上の国会生活をともにしてきたあなたが、趣旨弁明の中で、私の名前を特にあげて、二十六日を、私たちが自民党の委員長の考えによって提案せしめられたと誹謗したのでございます。私は、私個人の名前をあげておられますけれども、いやしくも私たちの会派を代表して理事を勤めてきたのでございまして、私個人の問題でなしに、会派全体の方々に対して、はっきりとしなければならないのでございます。
 御存じの通り、私は、一昨日の朝五時に宿舎に帰りました。昨日は朝八時に寝ました。二時間しか寝ておらないでベトナム賠償協定の審議をして参りましたが、何がゆえにこれほどまでに苦労をしなければならなかったかといえば、審議続行の建前をとらなければならない疑惑の多いベトナム協定でございますがゆえに、社会党とともに熱心に審議をしてきたのでございます。そして、御存じの通り、幾たびか自民党と社会党が決裂の危機に瀕しましたけれども、私たちの妥協案によって、現に二十五日のプログラムも無事になし終えたということは、衆目の認めるところでございます。(拍手)私たちは、日本社会党の方々とともに、ベトナム賠償協定に対しまして、真に手を握って、まじめな審議をして参りました。しかも、ゆうべは、日本社会党の方々は一時ごろに引き揚げられましたけれども、私たちは、七時間、何がためにがんばらなければならなかったか。多数の横暴をあえてする自由民主党に反省を求めるところの交渉がいかになされたかは、皆さんが御存じでございまして、事もあろうに、けさの新聞に、党をあげて保守のかいらい政党などと言われる日本社会党の立場とともに、小林議員の言葉は、許しがたいものでございます。(拍手)お互いに、政党が違いますれば政治信条も異にいたしますがゆえに、あるいは政策において、戦術において異なりまするときに、公の立場から批判をこうむることにあえて異議を唱えるものではございませんけれども、真実を曲げて、お互いに政治生命を持つ者が、舌の暴力をもってそのような言葉を発言なさることは、不謹慎もはなはだしいといわなければなりません。(拍手、発言する者多し)私は、何がゆえに日本社会党、社会クラブが保守党と結託しなければならない理由があるのか、同志として今日までやって参りました過去の経験の上に立って、歴史の上に立って、一番よく知るあなたが、そのような言動をなさることは、あなたの将来のために悲しむものであります。(拍手)私は、こうした、事実を曲げた、誤れる端摩憶測を発言されました以上、どうか責任を持って取り消されんことを要求するものであります。(拍手)
 さて、私は本論に入りますが、小澤外務委員長解任決議案に対しまして、今の趣旨弁明とは違った角度から、独自の立場において解任決議案に賛成をいたすものでございます。
 そこで、私は、本三十三国会における外務委員会におきまして、委員長の委員会におけるところの運営、態度などを、つぶさに拝見して参りました。おおむね勤務評定は可でございます。優良可の可でございます。私は公平であったと思うのでございます。従って、私たち会派におきましては、ここ数日来、日本社会党が小澤委員長の不信任案か解任決議案を出される状態になるかもしれない、しかし、そのときには、公平な立場に立って、この際は、この不信任案や解任決議案に賛成すべきではないとの結論を出しまして、国会対策でもこれを決定いたしておったのでございます。しかるに、小澤委員長は、きのうから今暁にかけまして、自由民主党が、いわゆるベトナム協定に関しまして、議案がいまだ審議のさなかにもかかわらず、突如として一方的に質疑を打ち切り、これが強行採決の暴挙に出て参りますや、自由民主党に反省を求めて、これを撤回させるのが任務であるにもかかわらず、むしろ先頭に立ってこれにくみするかのごとき行動を、自由民主党とともになさいまして、残念ながら、汚れた、ゆゆしき一ページを国会史上に加えられました。
 過去幾たびか多数の横暴が非難され、国会の正常化が両院の間でしばしば論ぜられて参りました。警職法における本院正副議長のとうとい犠牲も、その一つであったのでございます。お互いに、話し合いの広場の中で、国民に信頼される国会運営と、あくまでもまじめな法案の審議をすることこそ、われわれ選良に課せられた最上の義務でなければなりません。にもかかわらず、今回のベトナム賠償協定は、その額において、その方式において、幾多の問題点と疑惑があり、国民はこぞって不当性を論難いたしておる。政府の答弁はまさにしどろもどろでございました。尽くすべき審議はまだ尽くされておらないのでございまして、さればこそ、われわれ野党は、こぞって審議の続行を主張いたし、国民の納得のいくまで審議すべきだとの建前をとっておるにもかかわらず、これに目をつぶり、白を黒という政府与党にくみされたということは、まことに残念でございまして、九仭の功を一簣に欠くものといわなければなりません。(拍手)
 私は、かかる意味におきまして、本提案に賛成をいたし、解任を要求いたすものでございます。(拍手)
#50
○副議長(正木清君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#51
○副議長(正木清君) 採決いたします。
 本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#52
○副議長(正木清君) 起立少数。よって、外務委員長小澤佐重喜君解任決議案は否決されました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件
#53
○天野公義君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
#54
○副議長(正木清君) 天野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#55
○副議長(正木清君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 日本国とヴィェトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
#56
○副議長(正木清君) 委員長の報告を求めます。外務委員長小澤佐重喜君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
  [小澤佐重喜君登壇〕
#57
○小澤佐重喜君 ただいま議題となっておりまする日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、並びに、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
 ベトナムは、昭和二十六年分サンフランシスコ対日平和条約に署名いたし、翌年六月これに批准を了しましたので、ここに初めてわが国と正式の外交関係が開かれ、同時に、わが国は、ベトナムに対し、同平和条約第十四条に基づき賠償義務を負うこととなったのであります。
 そこで、わが国としては、ベトナムとの賠償問題を解決するため、昭和二十八年、沈船引き揚げに関する中間賠償協定の交渉を行ない、この協定の仮調印まで済ましましたが、先方の都合で正式調印に至らず、今回の賠償の本交渉に入り、植村特使の派遣等もありまして、交渉は妥結に至りました。本年五月十三日、サイゴンにおいて、この賠償協定及び借款協定が署名調印されたのであります。
 賠償協定の内容は、三千九百万ドルにひとしい円の価値を有するわが国の生産物及び日本人の役務を五年間にわたり賠償としてベトナム共和国に供与することを規定しておりますが、この協定の構成は、さきに結ばれましたフィリピン及びインドネシアとの賠償協定と大体同様であります。
    〔副議長退席、議長着席〕
 借款協定の内容は、日本輸出入銀行とベトナム側との契約に基づきまして、必要な日本国の生産物及び日本人の役務を調達するため、七百五十万ドルにひとしい円の額までの貸付が三年間に行なわれることになっております。
 この賠償は、借款とともに、ベトナムの経済建設と民生安定に寄与し、これを契機として、両国間の経済、通商、文化等の分野における交流や協力もますます増進することが期待される次第であります。
 この二件は、十月三十日、外務委員会に付託されましたので、政府の提案理由の説明を聞き、岸内閣総理大臣、藤山外務大臣、植竹郵政大臣並びに政府委員に対し質疑を行ない、また、参考人として学識経験者を招致し、その意見を聴取する等、会議を開くこと十数回にわたり、慎重なる審議を行ないましたが、その詳細につきましては会議録により御了承を願いたいのであります。
 かくて、昨二十六日に至り、自由民主党側より質疑終局の動議が提出され、これが多数をもって可決されました。続いて討論を行ない、社会クラブを代表して堤ツルヨ君から反対の意向が表明され、また、自由民主党を代表して床次徳二君から賛成の意向が表明され、採決の結果、本二件はいずれも多数をもって承認すべきものと議決いたしました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#58
○議長(加藤鐐五郎君) 質疑の通告があります。順次これを許します。帆足計君。
  [帆足計君登壇]
#59
○帆足計君 私は、ここに、日本社会党を代表いたしまして、ベトナム賠償問題につき、外務委員会において尽くし得ざりしところを、岸総理並びに藤山外務大臣に対し質問をなさんとするものであります。
 今日、ベトナム賠償問題は、深刻なる国民疑惑のうちに朝野の視聴を集め、その真相の究明こそは、本院に課せられた神聖なる義務となっておるのでございます。外務委員会における本問題審議の経過につきましては、すでに小林委員より詳細に御報告申し上げたところでありますが、われらの質問に対する政府の答弁は、常に一貫性を欠き、何ら本問題に関する疑惑を解き、国民を納得せしむるの論拠を示し得なかったことは、まことに遺憾にたえないところでございます。(拍手)
 申すまでもなく、国会は、国民の意思を代表して政治の理非をただす場所でございます。国民の前に問題の理非曲直が明らかでありませんような場合には、あくまでこれを追及し、政治を正しくすることが、国会議員の務めでもあると思うのでございます。従いまして、また、野党の質問に対しましては、政府は、常に誠意と確信があるならば、十分なる資料を提供いたしまして、その所信を明らかにすることが、当然の責務だと思うのでございます。(拍手)しかるに、今次外務委員会の審議の実情を見ますると、わが党の鋭い質問と世論の反撃に色を失った政府並びに与党の幹部は、ひそかに謀議をめぐらして、小澤委員長をして、質問戦の半ば、審議いまだ終わらざるに、一方的に審議の終了、討論終結を宣告し、いわゆる多数の横車をもちまして正当なる議員の発言を封ずるに至ったのでございます。諸君、今や、言論の府たる国会がわれらの口を封ぜんとする憤激にたえざる思いは、良識ある与党議員各位においても御理解下さることであろうと思うのでございます。(拍手)
 そもそも、ベトナム賠償二百億円は、同時に国民の血税でございます。二百億円は、とうとい国民の血と汗とをもってなされるものでございます。もとより、われわれは、日本国民として、賠償の責務からやみくもにのがれようとするものでないことは、言うまでもありません。しかし、賠償には賠償の道があり、それは公正なる論理と公正なる手続に従って行なわれなければならぬと思うのであります。
 正しい賠償の道筋とは何でありましょうか。すなわち、賠償の第一義は、過去における日本の侵略戦争の贖罪として、戦争の惨禍と被害を身をもって受けたる相手国人民の物心両面の償いをなし、旧怨、古い恨みを解消いたしまして、将来の友好のいしずえを築くことにあると思うのでございます。
 第二には、賠償交渉はだれを相手とし、だれに支払うかというならば、事理きわめて明白でございます。すなわち、それが究極の対象たる相手国人民の手に渡り、その福祉に貢献するために、その国土と人民の総意を完全に代表する主権国家に対してのみ支払わるべきものと思うのでございます。
 第三には、同時に、その賠償額の算定は、被害状況と支払い能力との双方の公正なる算定の基礎の上に立ち、いやしくも業界一部の利害や雑音等が介入してならぬことはもちろんのことでございます。(拍手)
 第四には、賠償の誠実なる履行により、相手国の人民に喜ばれるばかりでなく、アジアの平和に寄与し、隣邦諸国との緊張の緩和、アジア諸国民との将来の友好と信頼の増進に寄与すべき方向を心がけることが最も肝要と思うのでございます。(拍手)
 以上の四点につきましては、わが党のよって立つべき賠償の哲学ともいうべきもの、その基準ともいうべきものでありまして、良識ある与党議員各位におかれましても、おおむねこの原理には御賛同下さることと存じますが、これに対する外務委員会における政府の答弁はきわめて不十分でありましたので、岸総理並びに外務大臣に御所見のほどを承っておきたいのでございます。
 まず、第一並びに第二の基準に照らしまして、外務委員会において政府の説明で納得いかざるところを御指摘いたしますると、何よりもまず、日本政府が賠償支払いの相手方として選んでおるところの南ベトナムの政権は、形の方でこそ日本政府が承認している国でありましょうけれども、その実体において、責任を持ち得る領域は十七度線以南に限られておりますことは、周知の通りでございます。賠償の本義が、被害を受けた相手国人民に対する誠実なる償いにありといたしますならば、南ベトナム政権を相手として賠償を払いましたところで、北ベトナム千三百万の人民に及ぶものでないことはもちろんのこと、従いまして、これをしも全ベトナム人民の賠償と解することは、牽強付会であり、片手落ちの形式論でありまして、それは、いわゆる、古語にいう、形をもてあそんで実を忘れたもの、といわざるを得ないのでございます。(拍手)世評によりますれば、岸内閣は官僚内閣であり、そつもないけれども実もないといわれております。(拍手)誠がない、真心がないとも評されております。これはおおむね当を得た批評でありますことは、これまた、良識ある与党議員多数の方々の心ひそかに御同感下さるところであろうと思うのでございます。(拍手)
 そもそも、今日の外交、特にアジアの外交は、官僚的形式主義に堕してはならぬことはもとよりのこと、民族の風格の躍動する誠実と真心の上に立ったところの外交でなくてはならないと思います。賠償は、戦争の償いであるとともに、日本国民の真心の表現でありたいと思うのでございます。(拍手)従いまして、賠償の支払いは、その賠償がベトナム全国土、全人民に浸透し、ベトナムの全国民から喜ばれるように、すなわち、アジアの将来に平和と友好の種をまくという形において考慮さるべきものであると思うのでございます。(拍手)従いまして、また、ベトナムの全国土と全人民の総意を代表する完全なる主権の代表に対してのみ賠償が支払われるものであることは、当然のことと思うのでございます。
#60
○議長(加藤鐐五郎君) 帆足君に申し上げます。――帆足君、御注意申し上げます。あなたの質疑は委員長報告に関連しての質疑であります。
#61
○帆足計君(続) それは承知しております。
 そこで、委員長の報告に関連いたしましてさらに申し上げたいことは、与党の責任者たる川島幹事長は、過日、新聞記者との定例会見の席におきまして、人の言葉の受け売りだけれどもと前置きしつつ、たとえて言うならば、賠償問題は別れた女への手切れ金のようなものだ、と差し出口をいたしております。たとい座興のたとえ話でありましょうとも、このような賠償哲学が自民党を代表する幹事長の心中であるといたしますならば、その心事の俗悪なることに驚くばかりでございます。(拍手)川島幹事長の賠償手切れ金説、このへぼ哲学に対しまして、ぜひとも自民党総裁たる岸総理の御所見のほども伺っておきたいと思うのでございます。(拍手)
 第三に、賠償額算定の基準につきまして私どもが疑義を感じておりますこと、さらに、交渉の過程におきまして、業界の利害とからみ汚職のにおいさえいたしますことも、すでに同僚各議員諸兄から指摘されておる通りでございまするが、特にダニム発電所の建設費予算額と今次の賠償額とが期せずして完全に一致いたしておりますことが、はたして政府の弁明するがごとく、偶然の一致と言い切れますかどうか。この数字の奇跡につきまして、国民に納得いく資料と、交渉の経過の説明を、私どもはただいまの委員長の報告を聞くにつけましても、藤山外務大臣にお尋ねいたしたいのでございます。(拍手)
 第四に、南ベトナム政権の実際の支配の範囲が十七度線以北に及ばないことのほかに、バオダイ王以来、南ベトナム政権自体の性格そのものにも幾多の疑点のありますことは、すでに岡田春夫議員によって完膚なきまでに痛撃されたことは、諸兄の御承知の通りでございます。サンフランシスコ会議に代表を送りましたバオダイ王は、ナイトクラブの王様と俗称呼ばれ、フランスのお雇いの遊び人で、戦時中はわが軍閥のかいらいであり、戦後はフランスのかいらい政権になりました。これは世界周知のことでございます。さらに、ゴ・ディンジェム政権に至っては、フランスのかいらいからアメリカのかいらいに移りました事情も、諸兄の御承知の通りでございまするが、さらにこの際藤山外務大臣にお尋ねいたしたいことは、イギリスの著名なる作家グレアム・グリーン氏の「おとなしいアメリカ人」という小説をお読みになったかどうかということでございます。これは、最近映画にもなりまして、日本に参っておりますが、これをごらんになれば、ベトナムにおけるアメリカの策謀とかいらい政権の内幕が、手にとるごとく、たなごころをさすがごとく描かれておるのでございます。(拍手)この著名なる書物は、ノーベル賞の候補になっておるといわれておるくらいでございます。
 藤山外務大臣は、外務委員会におきまして、しばしばアジア善隣外交のことを口にいたしました。しかしながら、そもそも、アジア善隣外交とは何を意味するものでございましょうか。アジア善隣外交とは、隣邦中国との国交すら回復し得ず、インド、インドネシア、アラブ連合等、アジアにみなぎる民族独立の叫びも、米ソ両勢力に対するアジア諸国の中立政策の現実性をも理解することもなく、ただ、ひたすらに、アメリカのかいらい政権たるフィリピン、南ベトナム、台湾、李承晩の徒輩と運命をともにすることでありましょうか、藤山外務大臣の御所見をこの際伺っておきたいと思うゆえんでございます。
 二百億円という巨額の賠償を払うべからざる相手に支払うことの結果は北ベトナム民主共和国政府からも厳重なる抗議が参っておりますことは、大臣も御承知の通りでございましょう。このような北ベトナムの要求に対して、藤山外務大臣は、形式的法理論はしばらくおき、実際問題として、いかなる現実的見通しと実際的対策を持っておられるか、これも、ただいまの外務委員長の報告をもってしては納得し得ざるところでございますので、それに関連してお伺いいたしたいと思うのでございます。(拍手)
 さらに、藤山外務大臣は、さきに田中議員の指摘されましたように、かのバンドンにおけるアジア・アラブ諸国会議に出席せられまして、高碕国務大臣と行をともにせられたと伺っておりますが、しかりとするならば、今次賠償の南ベトナム政権への一方的支払いは、南北対立の激化を増し、統一への正しい動向に水をさすものとして、ジュネーブ平和会議の趣旨にもとるものと考えられるのでありますが、外務大臣はこれをどのようにお考えになっておられるかということも、われわれ伺いたいところでございます。
 さらに、南ベトナムとの間の賠償が批准されるに至りますと、ようやく糸口についたばかりの日本と北ベトナムとの友好、貿易関係は再び冷却することを憂慮いたす次第であります。藤山外務大臣は、南ベトナムヘの賠償が北ベトナムとの友好と貿易を阻害するという現実に対しまして、どのような見通しと対策をお持ちでございましょうか。これも外務委員会において伺うことのできなかった点でございます。
 以上述べましたところによりまして、南ベトナムヘの二百億円の賠償がいかに不合理なものでありますかは、いよいよ明らかであろうと存ずる次第でございます。今日、外交のことを論ずるにあたりまして、私どもの心にありますことは、ただ一つ、要は、アジアの平和と日本国民、日本民族の利害の見地でございます。ベトナム賠償を取りやめて、今日、日本国民にとって何の不利益がもたらされることがあるでありましょうか。たとい、サンフランシスコ条約締結の際に、政府のいわゆる二重国籍の代表者が出席いたしたにせよ、今日、南北ベトナムの苛烈なる対立をまのあたりに見て、ジュネーブ会議の平和の精神を尊重し、ベトナム国民待望のその統一の日まで賠償問題を見送ったところで、だれが反対する者がありましょうか。政府は国際信用を失うなどと申しておりますけれども、それは、せいぜい、アメリカのごきげんを損ずるぐらいのことが関の山であろうと思うのでございます。(拍手)このように、公正にして聡明な態度をとることこそ、少なくともアジアにおいては、隣邦中国を初め、インド、インドネシア、アラブ連合諸国等の理解と信頼とをかち得るゆえんであるとも思うのでございます。このようなことに、これまできまって差し出口をいたしておりましたのは、かつてはダレス長官でありました。しかし、今や、その人も天国に去られて、すでに幽明境を異にしておるのでございます。今や、二百億賠償を、今日の政府案のごとき、不用意、軽率にして不明朗なるいきさつのもとに南ベトナム政権に支払うといたしましたならば、南北ベトナムの対立を激化し、貿易に障害を及ぼし、ジュネーブ平和協定の精神を犯し、バンドン精神に違反し、日本国民の利益、その福利民福に反することおびただしきものあることを、われわれは憂慮するものでございます。(拍手)
 以上、今次賠償問題を世論を押し切って敢行なさる場合と取りやめた場合との利害得失を論じた次第でありますけれども、この日本民族の立場からするところの利害得失につきまして、藤山外務大臣の御所見を、逐条的に、具体的にお伺いしたいと、かねて思っておりましたが、外務委員会において、その機会すらなく、外務委員長の報告にありますように、突如として質疑が打ち切られましたので、これらの点も、与野党を問わず、本会議におきまして御説明のほどを、お願いいたしたいのでございます。
 最後に、結論として申し上げたきことは、今日、世界の流れの上に立ちまして、日本が今どのような歴史的地位にあるかという一つのことでございます。
 周知のごとく、今日は、原子力とミサイルと人工衛星の時代でございます。この歴史の偉大なる時代は、同時に、平和共存の時代とも、宇宙世紀の時代とも、人類平和の夜明け前ともいわれておるのでございます。すでに、全世界の軍備全廃案すら、国連加盟八十数ヵ国の賛成を得まして、審議の日程に上らんとしつつあるのでございます。かかるときの人類の最高の原理、外交の最高の原理は、平和と理性でありましょう。外交に平和と理性を貫くことこそは、今後良識ある保守と革新を通ずる共同の原理になるものとわれらは深く確信し、期待するものでございます。同時に、われらは、民族の運命、人民の利害は党派の利害より重しと見るものでございます。
 かかる観点から、すなわち、革新の観点から見ましても、または良識ある保守の観点から見ましても、本案は断じて容認いたしがたきものでありまして、与党議員各位中の良識の士は、本問題に関する限り、わが党の見解に必ず御共鳴下さることと思いますとともに、以上各項目につきまして、岸総理大臣並びに藤山外務大臣より、外務委員会並びに外務委員長報告に関連いたしまして、御答弁のほどを求めんとするものでございます。(拍手)
  「国務大臣岸信介君登壇〕
#62
○国務大臣(岸信介君) 御質問になりました点は、すでに委員会において幾たびか政府が所信を明らかにして、お答えをしたことでございます。ただ、不幸にして、われわれは、南ベトナム政府を全ベトナムを代表する正統なる政府として、あくまでもこれを交渉の相手としておる、この点に関する見解が違うだけでありまして、その他の点につきましては、すでに委員会でお答えをしておる通りであります。
 川島君の何か発言につきましての御質問でありましたが、私は、その事実を知りませんし、また、その事実についてはきわめて不明確でございますから、それを前提として、ここで意見を申し上げることは差し控えたいと思うのであります。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇]
#63
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまの御質問は、ほとんど御意見だと存じておりますけれども、御質問の部分は、全部、総理と同じように、私は外務委員会に出て答弁をいたしておりまして、同じ質問を受けておりますので、速記録をどうぞお読みいただきたいと思います。ただ、本日、それで触れておりません問題は、カンボジアが今日賠償を要求しておるということでございますけれども、そういうことはございません。
 なお、英国作家グリーンの「おとなしいアメリカ人」という本を読んでおりません。
 なお、私が委員会におきまして御説明申し上げましたことがおわかりにならないようでございます。先ほど、高田富之君の御発言がありまして、私が、何か商売をする、金もうけをするために、植村甲午郎君を使ってやみ取引をして、私自身がもうけた、というようなお話でございますけれども、そういう頭でもって私の答弁をお聞き下さいましたならば、おわかりにならないことは当然のことだと思います。(拍手)
#64
○議長(加藤鐐五郎君) 伊藤よし子君。
    〔伊藤よし子君登壇]
#65
○伊藤よし子君 私は、ただいまの小澤委員長の御報告につきまして、まだ不明確な点がございますので、その御報告に関連いたしまして、あらためて藤山外務大臣にお伺いしたいと思う次第でございます。(拍手)
 私は、この夏、ベトナム在留日本人の帰国者の出迎えのために、赤十字の人たちと北ベトナムへ参り、はからずもハノイに二十日間滞在する機会を得ました。私は、この北ベトナムへ参りましたことによって非常に強く感じて参りました点は、今日、南北ベトナムの統一ということが、ベトナム国民にとっていかに重大な問題であるかという点でございます。(拍手)
 御存じのように、ジュネーブ協定によって、現在、北緯十七度線を境にいたしまして、ベトナムは北と南に分かれているのでございます。第二次大戦によります非常な民族の悲劇といたしまして、私は、ドイツ、中国、あるいは朝鮮もしかりでございますが、同じように血の通った同胞が、親子、兄弟、妻子が、政治的な情勢によって、二つに余儀なく引き裂かれている現状でございます。この点におきまして、特にベトナムにおきましては、ジュネーブ協定によって、二カ年後に自由なる統一選挙が行なわれることになっておりましたので、南に住んでいる人たちも、この協定に従いまして――北の政府に従って参りますときに、妻子・家族を南に置いたまま出て参りましたし、また、北に住んでおりました人も、祖先伝来の……(発言する者あり)祖先伝来の墳墓の地を捨てて南に走ったというようなこともございまして、北ベトナムにおきまして、私どもが大へん世話になりました赤十字の人や、平和委員会の人たちの中にも、北緯十七度線の川を境にいたしまして、その対岸に年老いた老婆を置いて参りましたり、また、妻子を置いたままに、再び二年後には帰れるという予定でございましたのが、御承知のように、今日五カ年たちましても、まだこの南北が統一いたしませんで、交通もできず、手紙のやりとりもできませんで、今日に至っているわけでございます。南北ベトナムが統一をいたしまして、自由に行き来できるようになるということは、ベトナム民族のはだ身にじかに感ずる悲願であるということを、私は非常に強く感じて参りました。(拍手)
 幸い、日本は、あの戦争によって、沖縄の問題は別にいたしまして、この日本は二つに割れるようなことがございませんでしたので、皆様はそういう点について思いやりがおありにならないのではないかと思います。(拍手)しかし、日本は戦争によりましてベトナム国民に被害を与え、大へんな迷惑をかけてきたわけでございまして、この償いをするのが賠償の本来の目的であると思うのでございます。もちろん、先日参考人に出てこられましたベトナム人のニェップさんが言われましたように、戦争によって与えた被害は、単に物質的なもののみによって償えるものではございません。南ベトナム賠償ということを考えますときに、私は、ベトナム国民の悲願でございます統一を阻害する結果になりはしないかという点を非常に不安に感じるのでございまして、ただいまの委員長の御報告に関連いたしまして、二、三の点を藤山外務大臣に御質問申し上げたいと存じます。(拍手)ごく簡単に申し上げますから、しばらく御清聴を願います。
 第一の点は、藤山外務大臣は、外務委員会におきまして、ベトナムは、北緯十七度線を境に、現在北と南に分かれているこの実態については、これを認めておられます。しかし、法律論として、南ベトナム政府が全ベトナムを代表するものであるから、今回の賠償協定においては、全ベトナムを代表する政府として南に賠償を支払うのだ、と言っておられます。しかも、また、政府の御答弁によりますと、南北ベトナムが近い将来において統一し得る可能性がないとも言っておられます。そうであるとすれば、今回の賠償を支払うにあたりまして、南北は統一しないという前提に立ってこの賠償交渉をしておいでになるということになるわけでございまして、その結果は、南の政府に北の分まで支払うということになると思うのでございます。しかし、実際問題といたしましては、ただいまも申しましたように、北に支払ったことにならないと思うのでございますが、この点につきまして、実際問題といたしまして、藤山外務大臣の御見解を伺いたいと思うわけでございます。(拍手)
 第二に、政府は、サンフランシスコ条約の第十四条によって、南ベトナムに対して、国際信義の上からも早く賠償を支払わなければならない、ということを言っておいでになるのでございます。しかし、例のバンドン会議の決議についてでございますが、このバンドン会議のときには、日本がまだ国連に加盟前でございました。この会議の決議によれば、日本を初め、アジアの諸国の国連加盟を全会一致をもって採択しておるのでございます。その中には、統一されたベトナムが国連に加盟する資格を持つということが規定されております。藤山さんは、これに賛成されたはずでございます。ところが、昨年と今年の国連において、日本は南ベトナムの国連加盟の提案国になっておりますが、これはバンドン会議の精神に反していはしないかと思います。この点につきまして、藤山外務大臣のお考えを伺いたいと思います。(拍手)
 第三点は、政府、南ベトナムは四十九ヵ国が承認しており、北ベトナムは十二ヵ国しか承認していない、と言っていらっしゃいます。私は北ベトナムで調べたのでございますが、それによりますと、現在、北ベトナムを認めている国は三十ヵ国あるとされております。私は、この点につきまして、あまりに違いが多いのでございますので、この十二ヵ国というお調べについての根拠を藤山外務大臣にお尋ねしたいと思うのでございます。
 次には、このジュネーブ協定によって、二カ年後に統一選挙をするということに反対しておりますのは南ベトナム政府でございます。先日の外務委員会で、私の方の勝間田議員の質問に対しまして、藤山さんは、ジュネーブ協定に日本は調印はしておらないが、その精神は尊重したいということを言っておられます。ジュネーブ協定に違反している南ベトナム政府に今回の賠償を支払うということは、結果においては、日本がジュネーブ協定の精神に反することになると思うのでございますが、これこそは国際信義にも反すると思うのでございます。この点につきまして、藤山外務大臣のお考えを伺っておきたいと思うのでございます。(拍手)
 最後に、私はベトナムへ参りました。ベトナム人は、私どもと、はだの色も同じでございます。顔形も大へんよく似ております。また、私どもが参りましたときに、先日参考人に出てこられました福永さんも言っておられましたが、大へん日本がベトナムに対して戦争以来御迷惑をかけ、被害を与えておるにもかかわらず、私ども日本人に対しては大へん友好親善的な人たちでございまして、日本人の帰国者の取り扱いに対しても、大へんあたたかい、思いやりのある措置をとってくれたのでございます。私は、日本の国民も、ベトナムの国民も、今日みな平和を心から望んでおると思います。
 賠償というものは、最初に申し上げましたように、本来、戦争の跡片づけのものでございますし、戦争の償いのために支払うものでございます。ところが、日本の今回南ベトナムに支払います賠償は、南ベトナムの軍事建設にも役立つ結果になるではないかといわれております。(拍手)戦争の償いを賠償によってしまして、また再び戦争を準備するようなことに役立てるようなことになってはならないと思うのでございますが、この点につきまして、藤山外務大臣の御見解を伺いたいと思うのでございます。(拍手)
 また、賠償を支払うことによりましてベトナム国民との友好関係が進むべき性質のものでございますのに、現実の問題として、南北に対決しております現在、南ベトナムだけにこの賠償を支払うことによって、少なくとも全ベトナムの半分の人口を占めております北ベトナムの人たちに精神的に非常な打撃を与え、そして、尊い私どもの大切な血税をもって支払う賠償によって、ベトナムの国民の半数の人の恨みを買うような結果になりはしないかと思うのでございます。(拍手)日本の国民の間に敵意を増大させると同時に、また、南北ベトナム人相互の間にも敵意と対立を増大させる結果になると思うのでございますが、政府は南ベトナムを全ベトナムを代表する政府とおきめになっておりますが、これはベトナム国民の内政に干渉することになりはしないかと思うのでございます。(拍手)日本政府がどちらの政府をお好きになるかということは別問題でございます。私ども日本は、アジアの一員として、太平洋戦争によりまして、非常にアジアの諸国に迷惑をかけ、ベトナムにもまた大へん迷惑をかけたのでございますから、そういう日本の国が、ベトナムの国民に対して内政干渉にわたるような、北ベトナムを認めないというような、南だけが全ベトナムの代表であるということをきめる権利は、毛頭もないと私は思うのでございます。(拍手)この点につきまして、藤山外務大臣のお答えを伺いたいと思うわけでございます。
 これで私の質疑を終わります。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#66
○国務大臣(藤山愛一郎君) 委員会で全部御答弁を申し上げておりますので、ぜひとも速記録をごらんいただきたいと思います。
#67
○議長(加藤鐐五郎君) これにて質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#68
○議長(加藤鐐五郎君) これより討論に入ります。順次これを許します。勝間田清一君。
    〔勝間田清一君登壇]
#69
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されたベトナムに対する賠償に関する協定等に対して、絶対に反対の態度を表明いたしたいと考えるのであります。(拍手)しかも、ただいまわが党の議員が質問したのに対して、岸総理大臣並びに藤山外務大臣がきわめて傲慢なる態度であったことは、きわめて遺憾にたえないところであります。(拍手)
 わが党が本協定案に反対する第一の理由は、今政府が支払おうとしておる賠償の相手国が、賠償を受ける資格において重大な欠陥があり、しかも、適切でないということであります。何となれば、サンフランシスコ条約に参加したベトナムのバオダイ政府は、全ベトナムを代表せず、フランスの武力にささえられたる単なるかいらい政権であったといっても過言ではないのであります。(拍手)しかも、終戦直後、民族自決によって全ベトナムにわたる憲法と国会と政府を持ち、フランスもまたこれを承認せざるを得なかったベトナム民主共和国が厳存しておったことは、否定することのできない事実であります。(拍手)さればこそ、当時、ベトナム民主共和国は、こぞってバオダイ政権に反対し、サンフランシスコ条約の無効を訴えて一おるのであります。アメリカの政府でさえ、当初は、フランスのかいらい政権であるという理由で、その参加を拒否し、後に至ってインドが参加せず、逆にソ連が参加するという事態が生ずるやいなや、アメリカの陣営の頭数をふやそうというだけで、これを参加せしめたというのが、当時の実態であるわけであります。(拍手)
 賠償の相手国として適当でないというもう一つの理由は、現実にベトナムが南北に分かれておるという事実であります。政府の言うがごとく、南ベトナム政府をもって全ベトナム政府とみなすということが、全く事実に相違するのみならず、ジュネーブ協定に定められたベトナムの平和的統一を妨げる、いかにも理解しがたき暴論であります。このことは、吉田内閣が蒋介石政権を承認し、中華人民共和国を否認し、日本の外交史上未曽有の失敗をしたといわれるところの、あの外交以上の重大な誤りといわざるを得ないのであります。(拍手)
 反対の第二の理由は、賠償支払いの目的に反するということであります。私は、賠償の目的には二つあると思います。その一つは、戦争によって、相手国、特にその住民に与えた人的、物的の損害や精神的苦痛に対して賠償の責めを負って、同時に、これを通じて両国民の友好を回復し増進することにあると思うのであります。また、他の一面は、この賠償が適切に行なわれることによって、日本の貿易が拡大し、両国の健全な経済協力が増進することであると思うのであります。しかるに、今回の賠償協定は、南ベトナムに支払った賠償が北ベトナムに及ぶという何らの保障はないのであります。(拍手)しかも、南は、俗に鶏三羽といわれるがごとく、その損害はきわめて軽微であります。その圧倒的部分が北であることは、何人といえどもこれを否定することができないと思うのであります。(拍手)被害は、北、賠償は南、これではベトナム人が了解することができないのみならず、日本国民もまた、これを理解することができないと思うのであります。(拍手)それのみか、北ベトナム政府がわが衆参両院議長に寄せた公の書簡に明らかなごとく、この賠償は国際法とジュネーブ協定の精神に反し、日越両国民の友好を阻害するものであると強く訴えている事実は、われわれ日本国民として深く考慮しなければならぬと思うのであります。
 また、私は、今回の賠償協定において七百五十万ドルの消費財賠償が含まれておるということと、協定の実施が北ベトナムとの貿易に及ぼす影響の二点について、きわめてこれを重大視するものであります。そもそも、わが国の南ベトナムに対する輸出貿易は、昨年度において三千九百五十三万ドルでありましたが、これは、前年度及び前々年度に比較いたしまして、実に一千数百万ドルの激減であります。しかも、南ベトナムは、昨年に引き続き、繊維製品に対する重大な輸入制限措置をとっておるのであります。政府は、これに対する何らの対策もないまま、特に最恵国待遇も取りつけることもできず、しかも、七百五十万ドルに及ぶ消費財による賠償をここに行なわんといたしておることは、これらの地域に対するわが国の輸出が激減することは明らかであります。また、もし、この協定がここに決定されるならば、六百万ポンドに達しておる北ベトナムとの貿易は全面的に停止することを強調いたしたいと思うのであります。かっては中国との貿易を破壊し、このたびはベトナムとの貿易を破壊する岸内閣の外交は、断じて許すことはできないと思うのであります。(拍手)
 本協定に反対する第三の理由は、賠償額算定の根拠が皆目不明であること、二重払いの懸念があること、しかも、金額決定の経緯に重大な疑問のあること、従って、三千九百万ドルの賠償、その他合わせて五千五百六十万ドルの金額は、絶対に承認することができないということであります。(拍手)政府は、われらの強い要望にもかかわらず、日本がベトナムに与えた損害についての信頼に値する資料を、ついに提出しなかったのであります。従って、われわれは、五千五百六十万ドルの賠償と経済協力が妥当であるかどうか、これを決定することは、ついにできなかったのであります。(拍手)また、特別円に対して三十三トンの金塊を送って、すでにフランスに支払った部分と、今度の三千九百万ドルの支払いとが二重になるのではないか、こういう重大な疑念は、依然として残されておるのであります。(拍手)また、沈船引き揚げ協定の仮調印によって、一たん二百二十万ドルに決定していたものが、やみから棒に、二十四倍の五千五百六十万ドルになぜはね上がったのか、その経緯と理由とを政府は明確にされておらないのであります。(拍手)
 また、政府は、南の政府に払って全ベトナムに払ったこととすると、一方的にきめておりますが、やがてベトナムが統一したときに、新たな政権ができて、再び新たな賠償請求権が生まれてくるのではないか。外務省の顧問横田喜三郎君は、そのときは国際裁判に訴えればよいではないか、こう言われておるのであるけれども、はたして、勝つ見込みがあるのであるか。こうした疑問は、依然として解明されないままに残されておるのであります。こうした不明と混乱の中で、われわれの目にとまっておるただ一つ明らかな事実は、賠償金額三千九百万ドルが、日本工営株式会社が設計したダニム・ダム発電計画の資金と完全に一致しておることだけであります。(拍手)従って、三千九百万ドルの賠償は、すでに計画があったものに対して、あとから理屈をつけた以外の何ものでもないということが明らかであります。(拍手)かくして、私は、今なお重税に苦しむ日本の国民に対して、五千五百六十万ドルの賠償及び経済協力の金額が妥当であるという報告をする勇気を持たないのであります。
 本協定に反対する第四の理由は、以上のごとく、賠償支払いに当然考慮すべき重大条件に根本的な誤りや欠陥があるにもかかわらず、岸内閣が、何ゆえに賠償支払いを強行し、急ごうとしておるか、その真意に重大な疑いを持つのであります。(拍手)
 このことを解明するものは、現に起こっておる仏印三国をめぐっての国際的対立と新たな紛争にそのかぎがあると思うのであります。南ベトナムは、すでにフランスの支配権が衰退し、アメリカの支配が急速度に増大しつつあることは、周知の事実であります。軍事基地四十八カ所、二千二百名の米軍の指導員の派遣、並びに、年々二億二千万ドルに及ぶ軍事的援助は、すべてを物語っておると思うのであります。(拍手)しかして、このアメリカの支配権が漸次ラオス、カンボジアに及びつつ今日の国際緊張を起こしておることは、諸君の御案内の通りであります。
 かく見るとき、南ベトナムをもって全ベトナムとみなすという重大な意思を表明し、これに五千五百六十万ドルの賠償及び経済協力を強行しようとする岸内閣の態度というものは、アメリカの対仏印政策に協定し、あるいはその一部を肩がわりするところの冷戦参加の政策であると思うのであります。(拍手)これは、また、岸内閣が台湾や南朝鮮にとっておる政策と一貫するものであります。反共軍事同盟の中で重要な役割りを果たそうとする冷戦介入の政策であります。そして、また、この意味においては、日米安全保障条約の改正というものと深いつながりを持つ危険な賠償政策と断定せざるを得ないのであります。
 私は、最後に、わが党の積極的な態度を表明いたしたいと思います。政府はすべからく、この際、一切を白紙に返すべきであります。(拍手)ジュネーブ協定を支持し、南北が平和統一されるまでこの賠償を待つべきであります。(拍手)ジュネーブ協定によって停戦が約束され、南北の自由選挙による平和的統一が国際的取りきめになっておるという事実を尊重するということは、サンフランシスコ条約を忠実に守ることと何ら矛盾しないと思うのであります。(拍手)いな、むしろ、この態度をとることこそが、侵略戦争に深く反省し、平和憲法によってアジアの平和と繁栄に協力しようとしておる日本国民の当然の態度であると確信いたすものであります。(拍手)
 わが党は、以上の批判と、以上の積極的提案を示して、本協定の批准に絶対に反対するものであります。(拍手)
#70
○議長(加藤鐐五郎君) 佐々木盛雄君。
    〔佐々木盛雄君登壇]
#71
○佐々木盛雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりましたベトナム国との賠償協定並びにこれに伴う借款協定について賛成の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 サンフランシスコ平和条約第十四条の規定によりまして、日本は、戦争中交戦国に対して与えた戦争損害並びに苦痛に対しまして賠償支払いの義務を負わされておるのでありまするが、アメリカ、イギリス、オーストラリア、インド、中華民国等約十ヵ国は、いち早く日本に対する求償権を放棄いたしましたので、実際上、日本は、東南アジアの四ヵ国、すなわち、フィリピン・インドネシア、ビルマ及びベトナムの四カ国についてのみ賠償支払いを行なうこととなったのであります。このうち、フィリピン、インドネシア、ビルマにつきましては、順次解決を見まして、余すところベトナムただ一国となったのであります。
 しかしながら、ベトナムには、今日、不幸にして南北二つの政権が相対立し、すなわち、自由陣営に属するゴ・ディンジェム大統領のベトナム共和国と、共産陣営に属するホー・チミン主席のベトナム民主共和国とが相互いにベトナム全土に対する支配権を主張して抗争を続けておるのが実情でありまして、今回の賠償協定に対する賛否の両論もまた、この現実に対する認識の相違の所産といわなければなりません。しかし、われわれといたしましては、日本の賠償義務はサンフランシスコ平和条約に基づいて発生したものでありまするから、今日のいわゆる南ベトナム、すなわちベトナム共和国政府が、南北全土を代表する正統政府としてサンフランシスコ平和条約に調印し、その批准書を日本政府に寄託したのでありまして、いわゆる北ベトナムなるものはサンフランシスコ平和条約の当事国ではないのでありますから、われわれは、南ベトナム、すなわちベトナム共和国に対しての賠償義務を負うものでありまして、北ベトナムに対しましては条約上何ら賠償支払いの義務を負うべき筋合いではないのであります。(拍手)従って、今回の賠償協定は、南北ベトナム全体と日本とを有効に拘束するものでありまして、将来、かりに南北が統一されました場合におきましては、この賠償協定が統一政府によって継承されるべきことは、国際法上の一般原則として認められておるところであります。(拍手)
 また、社会党は、サンフランシスコ平和条約に調印したベトナム国首相のトラン・ヴァン・フー氏が二重国籍であったとの理由によって、サンフランシスコ平和条約第十四条の無効を主張するのでありまするが、およそ、国籍のいかんを問わず、その国の正統政府の全権委任状を持ち、連合国の資格審査を経て正式代表として認められました以上、その全権の調印した条約の効力について何らの疑義なきことは、国際法のABCといわなければなりません。(拍手)しかし、今日、南ベトナム、すなわちベトナム共和国を南北全土を代表する国家として承認いたしておりまするものは世界五十ヵ国に及び、これに反して、北ベトナムを承認するものは、わずかに一握りの共産陣営のみである事実よりいたしましても、日本がベトナムとの賠償問題をベトナム共和国との間に解決することは、もはや国際社会の通念に立脚するものといわなければなりません。(拍手)
 また、いわゆる南ベトナムに対する日本の賠償支払いは、ジュネーブ協定並びにバンドン宣言の趣旨に違反すると主張する向きもございます。しかし、日本は、申すまでもなく、ジュネーブ協定の当事国ではないのでありまするから、条約上何らの拘束を受けないことはもちろんでありまするが、たとい、このジュネーブ協定を全面的に尊重する立場におきましても、これは南北の戦闘行為を停止するための純然たる軍事的休戦協定でありまして、決して、何らの政治的または領土的境界線を定めたものでないことは、その共同宣言において明々白々なところでございます。また、バンドン宣言は統一されたベトナムの早期国連加入への期待を表明したものにすぎないのでございまして、南北統一問題と賠償問題とは全く別個の問題であり、今回の賠償協定がジュネーブ協定やバンドン宣言の趣旨に違反するものでは断じてないのでございます。(拍手)
 なお、今回のベトナム賠償は、先刻のお話のように、実際上日本軍が与えた損害以上に多額に過ぎるとの説をなす向きもございますが、昭和二十年には二回にわたる大作戦を行ない、この間、住民の殺傷、住宅、工場、道路、橋梁等の破壊甚大に達し、また、ベトナムには常時八万前後の日本軍が駐在し、南方諸地域の日本軍二十万の兵站補給基地となっておりましたために、世界三大米産地の一つとうたわれておりました南ベトナムは、その産米輸出におきまして、一九四三年の百万トンが、翌々年の一九四五年にはわずか四万五千トンとなり、実に九十五万五千トンの激減を見たのでありまして、かりに、この米価を一トン当たり百ドルといたしますならば、約一億ドルの損害をこうむっておるわけでございます。また、ゴムにおきましても、同じく一九四三年において七万五千トンであったものが、翌々年には一万二千トンに減少しておりまして、かりにトン当たり八百ドルといたしまするならば五千万ドル以上の損害となるのでありますが、この米、ゴムともに南ベトナムが主産地でありまして、これのみにても今回協定の純賠償三千九百万ドルの幾倍かに達するのでありますから、南ベトナムの損害鶏三羽と宣伝するがごときは、事実を捏造するもはなはだしいといわなければなりません。(拍手)
 また、賠償問題は、南北ベトナム統一実現後に解決をすればよいとの説をなす人もございます。もとより、われわれは、南北統一の一刻もすみやかに実現することを心から希望するものではありまするが、しかし、共産陣営と自由陣営の統一や合体が、選挙による自由なる国民意思の表示によってはとうてい不可能に近いことは、南北朝鮮や東西ドイツの場合と同じく、万人の認めるところでございまして、かくのごときは、まさに百年河清を待つにひとしい暴論といわなければなりません。(拍手)終戦以来すでに十四年に及び、賠償の問題がかくのごとく、長年月にわたって未解決のままに取り残されたことは、世界史上にその類例を見ないのでありますが、さらに、これをほとんど半永久的に不可能とさえ思われる南北統一後に持ち越さんとするがごときは、国際信義の上から見ましても、断じてわが国のとるべき態度ではないのであります。
 日本は、サンフランシスコ平和条約におきまして、相手国より賠償支払いを要求された場合には、すみやかにこれに応じ、誠意をもって解決すべき義務を課せられておるのでありまして、これは単にベトナム国に対する義務であるのみならず、連合国全体に対するわれわれの義務でありますから、この条約義務の忠実なる実行によって連合国の信頼にこたえ、国際信義を高めるとともに、ベトナム国に対する戦争損害の償いを日本国民の名において厳粛に表明することによって、わが国との友好親善関係を増進し、経済互恵の関係を打ち立て、さらに、かくして賠償問題の全面的解決によって一切の過去の戦争責任を完遂し、文字通り青天白日のもとに、東南アジア諸地域に対する経済進出の足場を固めんとするものでありまして、良識ある国民各位の深き理解に訴え、私は、ここに、自由民主党を代表いたしまして、満腔の賛意を表する次第でございます。(拍手)
#72
○議長(加藤鐐五郎君) 塚本三郎君。
  [塚本三郎君登壇]
#73
○塚本三郎君 ただいま議題となりました、日本国とヴィェトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィェトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件の両件に対しまして、私は社会クラブを代表して、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)
 私は、まず、ベトナム賠償に対するわが社会クラブの基本的立場を明らかにして、諸君の御理解を得たいと思うのであります一。わが社会クラブは、日本が戦争によってベトナムに与えた損害の賠償を免れるためにこれが反対を主張しておるものでは決してありません。賠償は、サンフランシスコ平和条約に基づく日本の厳粛な義務でありますから、正当な賠償については誠実にこれを履行し、その義務を遂行する努力を尽くすべきであると考えます。また、賠償を通じて日本とベトナムとの友好親善が強化され、経済協力が推進されることが期待できるものであるならば、これはむしろ非常に望ましいことと考えるのであります。しかしながら、一面において、賠償はわが国民の血税によって支払われるものであります。従って、賠償はあくまでも適正に行なわれなければならないものであって、いささかたりとも疑義を残したり、国民大衆にある種の疑惑を抱かせたままに強行するがごときは、絶対に避けなければならないと信ずるのであります。(拍手)このような基本的立場に立って、今回政府が調印したベトナム賠償協定の内容をつぶさに検討するときに、私は、このベトナム賠償の内容はきわめて不当なものであり、断固としてこれを排撃し、これに反対せざるを得ないことを、はなはだ遺憾に存ずるのであります。(拍手)
 その反対の理由の第一点といたしまして、私は、賠償の金額がはなはだしく過大であるということを指摘いたしたいのであります。すなわち、戦争の損害だけが賠償要求の根拠となるものであることは、サンフランシスコ条約第十四条に明記してあるところであって、何人も異論のないところでありまし、よう。それでは、戦争損害は何かといえば、すなわち、それは、その国の経済を収奪したことによる経済上の損害、また、戦闘行為による人的・物的損害、さらには戦争による精神的苦痛をさすとするのが国際的通念であります。しからば、あの太平洋戦争当時、日本軍は、はたしていかなる戦争損害を仏領インドシナに対して与えたものであるか。すなわち、日本軍は、昭和十五年九月、仏印に平和進駐しましたが、このとき、フランスのヴィシー政府は中立を宣言していたのでありますから、日本とフランスとの間に戦争状態がなかったことは、きわめて明らかなところであります。その後、昭和十九年八月に至って、ドゴール将軍がパリに帰還いたしました。政府は、このときをもって日本とフランスとが戦争状態に入ったとの見解をとっているのであります。しかしながら、私の見解をもってするならば、日本とフランスとが戦争状態に入ったのは、昭和二十年三月、日本軍が武力をもって仏印駐屯のフランス軍の武装解除を行ない、かつ、ドクー仏印総督から施政権を接収したときと解釈するのが至当であると考えるのであります。(拍手)何となれば、ドゴール政府が成立した後においても、この武装解除のときまでは、仏印においては全然交戦状態が見られなかったからであります。日本軍がフランス軍の武装解除を行なうに至って、初めてフランス軍との間に戦闘行為が行なわれましたが、これはきわめて短期間で、しかも、小規模に終わったのであります。従って、これによる戦争損害というものはきわめて軽微なものであったのであります。しこうして、このほかに考えられる戦争損害というものを、しいてあげまするならば、太平洋戦争末期におけるアメリカ軍の仏印爆撃、及び、日本軍によるゲリラ部隊の掃討戦等のことが考えられるのでありますが、これらも、今日問題となっておる南ベトナムにおいては、ほとんど損害を与えなかったのであります。このように見てくるとき、仏印においては、見るべき戦争損害はほとんどなかったといっても決して誇張ではないでありましょう。さればこそ、南ベトナム賠償は、鶏三羽、二百億円などという悪口雑言を沿びせられる始末なのであります。しかも、仏印の原住民は、日本軍の進駐当初より終戦に至るまで、終始一貫、平和を楽しみ、友好的な対日感情を持続していたことは、さきの外務委員会における参考人の意見に徴してもまた明らかなところであります。
 去る昭和二十八年九月に、一たん調印された南ベトナムとの沈船引き揚げ賠償協定においては、賠償額はドルで二百二十五万ドル、円で八億一千万円を限度とした、きわめて少額のものでありました。この沈船引き揚げ協定は、南ベトナム側によって、理由もなく、一方的に御破算にされてしまったのでありますが、少なくとも、この協定は、南ベトナムにおける戦争損害がいかに軽微なものであったかを示唆する有力な証拠ではないかと考えるのであります。(拍手)
 ここに、われわれが銘記すべきことは、旧仏領インドシナの三国のうち、ベトナムと同様に日本軍が平和進駐したラオスやカンボジアは、いずれも賠償請求権を放棄し、それぞれ十億円ないし十五億円程度の経済援助で円満な国交が続けられていることであります。かかる関係があるにもかかわらず、何がゆえにベトナムに対してのみ、純賠償、政府借款、経済協力を含めて二百億円という巨額の賠償をしなければならないのであるか、われわれのまことに了解に苦しむところであります。(拍手)
 第二点として申し上げたいことは、今回のベトナム賠償は、北ベトナムに起こった戦争損害分までも含めて、南ベトナムに対する賠償として支払おうとしているのでありますが、これは、はなはだしく不当なことであって、将来ベトナムとの友好関係に支障を来たすのみか、二重払いの問題を生ずるおそれなしとしないということについてであります。
 現在、ベトナムには、南にベトナム共和国、北にベトナム民主共和国が存在することは、厳然たる事実であります。しかも、この二つの国は、その生成の過程に曲折があるとはいえ、一九五四年のジュネーブ協定によって、南北ベトナムが民主的な自由選挙によって統一するまでの期間、それぞれの地域において施政権を行使しているものであることは、きわめて明白なる国際的事実であります。(拍手)しかるに、政府は、この国際的事実に目をそむけて、わが国が承認しているのは南ベトナムであり、北ベトナム政府は交戦中の民間団体であるなどと詭弁を弄しているのでありますが、かくのごとき国際的な事実を無視した外交は全くのナンセンスというのほかはありません。(拍手)外交は現実に立脚して堅実に進めらるべきであり、少なくとも、明白なる国際的既定事実に対しては、冷静にこれを直視する態度をもって臨むべきであります。われわれの見解では、ベトナム賠償は、南北ベトナムの統一の日までこれが締結を延期すべきものと考えるのでありますが、しかし、かりに一歩を譲って南ベトナムとの賠償が急を要すると認めたにしましても、それは南ベトナムに起こった戦争損害についてだけ考慮すべきであって、この方式こそが、南ベトナム政府に対する賠償支払いの必要かつ十分な条件であるのであります。
 ここに注目すべきは、今回の賠償協定に対して北ベトナム政府が異議を唱え、請求権を留保するとの声明を発していることであります。今回の賠償による利益は、南ベトナムの住民だけが受けるのであって、北ベトナムの住民には全く及ばないのであります。北ベトナム政府の請求権留保声明は、こういう住民感情の端的な発露として、政府はこれを率直に受け取るべきであり、この声に耳をふさいで、岸内閣が今回の賠償協定を強行することは、南北ベトナム間に感情の対立を起こさせて、その統一を妨げ、さらには、わが国と全ベトナムとの友好関係にも重大なる悪影響を及ぼす結果となるでありましょう。(拍手)かってバンドン会議において南北ベトナム統一促進の決議を支持した藤山外務大臣が、今は、南北ベトナム統一を逆に妨げるような、国際信義を無視した行為を平気でやろうとしている、その心中のほどがはかり知れません。
 わが国と北ベトナムとの経済関係を考慮するならば、ホンゲー炭を初めとする鉱物資源を北ベトナムに依存し、一方、北ベトナムは、その経済建設に必要な技術、資本、物資について、これを日本に期待する等、北ベトナムは、原料市場としても、また輸出市場としても、わが国にとって有望な将来を約束しているのに、岸内閣は、はたしてこのような内外の利害関係を十分かつ慎重に検討したものでありましょうか。政府、今回に限って、南ベトナム政府を全ベトナムを代表する正統政府だと主張しているのは、まことに不可解きわまることと申さなければなりません。(拍手)
 第三番目の反対理由としまして申し上げなければならないことは、すでにフランスに支払った特別円等と、これもまた二重払いになっているという点についてであります。
 日本軍の仏領インドシナに対する平和進駐に伴う軍費及び物資の調達は、日・仏印間に取りきめられた特別円等によってこれが行なわれていたことと、御承知の通りであります。戦後にこれが清算され、昭和二十五年一月、わが国は、占領軍の了解のもとに、金塊三十三トン、すなわち、これを円に評価すれば百三十三億円に相当するものをフランスに支払い、さらに、昭和三十二年三月、十六億七千二百万円をフランスに支払って、これが解決をつけたのであります。ところで、この特別円等の清算は、仏印の経済を収奪したことによる経済上の損害を補てんしたことを意味するものであり、従って、これは明らかに賠償総額の一部をなすものでありますから、これをフランスに支払ったのは誤りであり、当然これはベトナムに承継せらるべき性質のものであったのであります。これがベトナムに承継されていたならば、ベトナムの戦争損害の大部分のものは帳消しになるはずであり、また、この総額百五十億円に達する金塊と外貨はベトナムの経済復興に多大なる貢献をしたであろうことは、容易に想像されるのであります。これ、私が特別円等の支払いと今回の賠償とは二重払いになるといわざるを得ないゆえんのものであります。(拍手)
 この二重払いの問題について、さらにこれを明確にするために、仏印以外の南方占領地における軍費調達の方式と、その戦後における決済とを考えてみまするに、フィリピンやインドネシア、ビルマ等においては、それぞれペソ、ギルダー、ルピーとかいった現地通貨を表示した軍票を無制限に発行して軍費調達を行なったのであります。しこうして、戦後においては、この軍票が与えた経済上の甚大なる損害が、これらの国々の賠償要求の重要な根拠の一つとなっており、そのために、これら諸国の賠償要求は巨額に上ったのでありますが、しかし、いずれにしても、これら諸国の場合は、軍費調達に伴う経済上の損害は、賠償の形式においてこれが解決されているのであります。しかるに、ひとり仏印に対してのみ、この経済上の損害については、賠償とは全く別個に、金塊ないしは特別円決済といたしまして、すでに支払われているにもかかわらず、さらにこれが今回の賠償要求の中にも重要な根拠の一つとなって入っていることは、政府の弁明がいかにあろうとも、われわれ国民の納得し得ないところであるのであります。(拍手)
 第四点として申し上げたいことは、賠償の折衝経過がまことに不明朗であるばかりか、その対象工事についても、ある種の疑惑が持たれているということについてであります。
 サンフランシスコ平和条約第十四条は、日本に外貨負担をもたらさない役務賠償の原則を確立し、日本の賠償義務を役務賠償に限定しているのであります。この原則に忠実に準拠して調印されたのが、昭和二十八年九月の沈船引き揚げに関する賠償協定であったのであります。その後、いかなる情勢の変化があったものか、突如として、今回の二百億円に達する生産物賠償、役務賠償に変わってきたのであります。この生産物賠償は、明らかに、サンフランシスコ平和条約で定められた日本の義務を逸脱して、国民の負担を不当に増大せしめるものといわなければなりません。サンフランシスコ平和条約の当事国であるベトナムは、当然その第十四条に規定する役務賠償の原則の適用を受けるものであり、かつまた、サンフランシスコ平和条約発効後三年以内に限って援用できる第二十六条の同一利益均霑条項も、同平和条約が発効後六年以上経過した今日においては、すでにベトナムにその権利はなく、日本もまた第二十六条に拘束される義務はないのであります。従って、一部外貨負担を伴う生産物賠償を取りきめた今回のベトナム賠償は、条約上の義務のない特別の利益をベトナムに余分に与え、それだけ日本国民に不当なる負担を課そうとするものでありまして、かくのごときは、まことに言語同断、理不尽なる処置と断ぜざるを得ないのであります。
 さらに不可解なことには、今回の賠償のらち、純賠償百四十億四千万円という金額が、たまたま、日本工営株式会社が作ったダニム発電所の建設プランによる金額とほぼ一致することであります。偶然というにはあまりにも不可思議な数字の魔術でありまして、それかあらぬか、巷間にいろいろのうわさが取りざたされているのであります。いわく、ベトナム側が同工事をフランスなどの外国に発注する意向を示してから急速にベトナム賠償交渉がまとまったようだとか、いわく、その裏には何らかの取引があったのではないか等々、保守政権の続くところ必ず汚職あり、まことに汚職に敏感な国民の目には、この賠償交渉の経緯の裏に不明朗なものがありはせぬかという疑惑が抱かれているのであります。もしも賠償が一部業者の利益のために悪用されているという印象を国民がぬぐい得ないままにこれが強行されましたならば、国の不幸これに過ぎるものはないと断言してはばからないのであります。
 最後に申し上げておきたいことは、今回の賠償協定が、将来に禍根を残し、また、ひいては、わが国と東南アジア諸国との友好関係に悪い影響を及ぼすおそれなしとしない点についてであります。すなわち、政府は、南ベトナム政府がベトナム全土を代表する正統政府であるという非現実的なる仮定を根拠として、このような皮相の法理論をたてにとって、安易にベトナム賠償を行なおうとしているのでありますが、このことが、直ちに北ベトナムとの関係に暗雲を投げかけ、紛議を惹起する原因となるであろうことは、火を見るよりも明らかであります。日本と北ベトナムとの友好関係にことさらに水をさし、必要もないのに挑戦的態度をとることは、外交の常道を踏みはずした、愚の骨頂であります。
 さらにはまた、北ベトナムとの問題だけにとどまらず、東南アジア諸国に対しても、ジュネーブ協定の精神に反して南北ベトナムの統一を阻害する岸内閣の行動は、強い不信と非友好的感情を植え付けることになって、はなはだしく悪い影響を及ぼすことは疑う余地がないのであります。かくて、一片のベトナム賠償によって全体の東南アジア政策の基調がくずれるようなことでは、何のための東南アジア政策であったのか、岸内閣の矛盾撞着もここにきわまれりというべきであります。
 また、問題を賠償の一点にしぼって考えてみても、東南アジア諸国に対する賠償については、それぞれの戦争損害に応じて均衡が保たれていなければ、おさまりがつかないのであります。ベトナムに対して過大な賠償を行なえば、再検討条項によって増額要求の権利を留保しているビルマが黙っておりません。ビルマが増額要求をすれば、フィリピン、インドネシアも次々に問題を派生するおそれなしと、だれが保証できるでありましょうか。かりに、それらの諸国が何も言わないにしても、一国との賠償だけが過大に失することは、国際信義上から見て、とうてい許されないところであります。かくては、わが国は、賠償をめぐって東南アジアで孤立し、外交上窮地に陥らないとも限らないのであります。
 ひるがえって、目を国際情勢に転ずるとき、国際競争の熾烈化に対抗するため、世界の各国は、それぞれ地域的に共同して、自国の経済を強化しつつ世界競争に打ち勝とうとしているのが、世界の風潮であります。すなわち、昨年発足したヨーロッパ共同市場はその端的なものであり、この動きは、今や、中南米においても、また、かのアフリカにおいてすら、現実のものとならんとしておるのであります。ひとりわが東南アジアのみがこの世界の風潮におくれて、東南アジア結束の要望がほうはいとしてわき起こりつつありますときに、岸内閣のみがこの重大な認識に目をふさぎ、これに背を向けて、東南アジア諸国の結束に逆行するがごときベトナム賠償を強行することがありとしますならば、これは国家百年の大計を誤るのみか、重大なる失政でありまして、その強行は断固としてこれを阻止することこそが、わが社会クラブに課せられた重大なる使命であると考え、ここに強く反対の意見を表明する次第であります。
 願わくば、諸君の良心に訴え、かかる悪議案は本院の責任と本院の権威において断固として否決賜わらんことを心から切望いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
#74
○議長(加藤鐐五郎君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#75
○議長(加藤鐐五郎君) 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件外一件を一括して採決いたします。
 この採決は記名投票をもって行ないます。両件を委員長報告の通り承認するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。――閉鎖。
    〔議場閉鎖〕
#76
○議長(加藤鐐五郎君) 氏名点呼を命じます。
    〔参事氏名を点呼〕
    〔各員投票〕
#77
○議長(加藤鐐五郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。――開鎖。
    〔議場開鎖〕
#78
○議長(加藤鐐五郎君) 投票を計算いたさせます。
    〔参事投票を計算〕
#79
○議長(加藤鐐五郎君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
    〔事務総長朗読〕
 投票総数 三百二十九
  可とする者(白票) 百九十八
    〔拍手〕
  否とする者(青票) 百三十一
    〔拍手〕
#80
○議長(加藤鐐五郎君) 右の結果、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件外一件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)
    ―――――――――――――
両件を委員長報告の通り承認するを可とする議員の氏名
   安倍晋太郎君  相川 勝六君
   逢澤  寛君  青木  正君
   赤城 宗徳君  秋田 大助君
   秋山 利恭君  足立 篤郎君
   天野 公義君  天野 光晴君
   綾部健太郎君  荒木萬壽夫君
   荒舩清十郎君  荒井 京太君
   井原 岸高君  飯塚 定輔君
   生田 宏一君  池田 清志君
   池田 勇人君  池田正之輔君
   石井光次郎君  石塚  繁君
   石田 博英君  一萬田尚登君
   岩本 信行君  植木庚子郎君
   臼井 荘一君  内田 常雄君
   江崎 真澄君  遠藤 三郎君
   小川 半次君  小川 平二君
   小澤佐重喜君  大石 武一君
   大久保武雄君  大倉 三郎君
   大坪 保雄君  大野 市郎君
   大野 伴睦君  大平 正芳君
   岡崎 英城君  岡部 得三君
   岡本  茂君  奧村又十郎君
   押谷 富三君  加藤 精三君
   加藤 高藏君  鹿野 彦吉君
   賀屋 興宣君  鍛冶 良作君
   金丸  信君  上林山榮吉君
   亀山 孝一君  鴨田 宗一君
   川崎末五郎君  川島正次郎君
   菅家 喜六君  菅野和太郎君
   簡牛 凡夫君  木倉和一郎君
   木村 守江君  菊池 義郎君
   岸  信介君  吉川 久衛君
   清瀬 一郎君  久野 忠治君
   倉石 忠雄君  倉成  正君
   黒金 泰美君  小泉 純也君
   小枝 一雄君  小金 義照君
   小島 徹三君  小平 久雄君
   小林かなえ君  小林 絹治君
   小山 長規君  河野 孝子君
   河本 敏夫君  佐々木盛雄君
   佐藤 榮作君  佐藤虎次郎君
   佐藤洋之助君  坂田 英一君
   坂田 道太君  笹山茂太郎君
   始関 伊平君  椎熊 三郎君
   椎名悦三郎君  篠田 弘作君
   島村 一郎君  進藤 一馬君
   周東 英雄君  鈴木 正吾君
   鈴木 善幸君  砂原  格君
   瀬戸山三男君  園田  直君
   田口長治郎君  田中伊三次君
   田中 榮一君  田中 龍夫君
   田中 正巳君  田邉 國男君
   田村  元君  高石幸三郎君
   高瀬  傳君  高田 富與君
   高橋清一郎君  高橋 禎一君
   高橋  等君  竹下  登君
   谷川 和穗君  津島 文治君
   塚田十一郎君  塚原 俊郎君
   辻  寛一君  綱島 正興君
   寺島隆太郎君  渡海元三郎君
   徳安 實藏君  床次 徳二君
   富田 健治君  内藤  隆君
   中曽根康弘君  中村 梅吉君
   中村 幸八君  中山 マサ君
   永田 亮一君  永山 忠則君
   灘尾 弘吉君  楢橋  渡君
   南條 徳男君  二階堂 進君
   丹羽喬四郎君  丹羽 兵助君
   西村 英一君  西村 直己君
   根本龍太郎君  野田 卯一君
   馬場 元治君 橋本登美三郎君
   橋本 正之君  長谷川四郎君
   長谷川 峻君  八田 貞義君
   服部 安司君  濱田 正信君
   濱地 文平君  濱野 清吾君
   早川  崇君  原田  憲君
   平井 義一君  平野 三郎君
   廣瀬 正雄君  福家 俊一君
   福井 盛太君  福田 赳夫君
   福田 篤泰君  福田  一君
   福永 一臣君  福永 健司君
   藤枝 泉介君  藤本 捨助君
   藤山愛一郎君  船田  中君
   保利  茂君  坊  秀男君
   細田 義安君  堀内 一雄君
   益谷 秀次君  増田甲子七君
   松岡嘉兵衛君  松澤 雄藏君
   松田竹千代君  松永  東君
   松野 頼三君  松本 俊一君
   三池  信君  三浦 一雄君
   三田村武夫君  三和 精一君
   水田三喜男君  南  好雄君
   村上  勇君  村瀬 宣親君
   毛利 松平君  森下 國男君
   保岡 武久君  柳谷清三郎君
   山口六郎次君  山崎  巖君
   山田 彌一君  山中 貞則君
   山村新治郎君  吉田 重延君
   渡邊 本治君  渡邊 良夫君
 否とする議員の氏名
   赤路 友藏君  淺沼稻次郎君
   足鹿  覺君  飛鳥田一雄君
   淡谷 悠藏君  井伊 誠一君
   井岡 大治君  井手 以誠君
   伊藤よし子君  石川 次夫君
   石橋 政嗣君  石村 英雄君
   石山 權作君  板川 正吾君
   受田 新吉君  小川 豊明君
   大貫 大八君  大野 幸一君
   大原  亨君  太田 一夫君
   岡  良一君  岡田 春夫君
   岡本 隆一君  加賀田 進君
   加藤 勘十君  柏  正男君
   片島  港君  勝澤 芳雄君
   勝間田清一君  角屋堅次郎君
   金丸 徳重君  上林與市郎君
   神田 大作君  川村 継義君
   河野  正君  木原津與志君
   菊川 君子君  菊地養之輔君
   北山 愛郎君  久保 三郎君
   久保田鶴松君  栗原 俊夫君
   栗林 三郎君  黒田 寿男君
   小林  進君  小林 正美君
   小松  幹君  兒玉 末男君
   五島 虎雄君  河野  密君
   佐々木更三君  佐藤觀次郎君
   佐野 憲治君  坂本 泰良君
   阪上安太郎君  櫻井 奎夫君
   島上善五郎君  島口重次郎君
   下平 正一君  東海林 稔君
   杉山元治郎君  鈴木茂三郎君
   田中幾三郎君  田中織之進君
   田中 武夫君  田中 稔男君
   多賀谷真稔君  高田 富之君
   滝井 義高君  楯 兼次郎君
   館  俊三君  辻原 弘市君
   戸叶 里子君  堂森 芳夫君
   中澤 茂一君  中嶋 英夫君
   中原 健次君  中村 高一君
   中村 英男君  成田 知巳君
   西村 関一君  野口 忠夫君
   芳賀  貢君  長谷川 保君
   原   茂君  日野 吉夫君
   帆足  計君  穗積 七郎君
   北條 秀一君  堀  昌雄君
   松浦 定義君  松平 忠久君
   松前 重義君  松本 七郎君
   三宅 正一君  門司  亮君
   本島百合子君  森島 守人君
   八百板 正君  八木 一男君
   八木  昇君  矢尾喜三郎君
   安井 吉典君  柳田 秀一君
   山口シヅエ君  山崎 始男君
   山下 榮二君  山田 長司君
   山中 吾郎君  山中日露史君
   山花 秀雄君  山本 幸一君
   横路 節雄君  横山 利秋君
   和田 博雄君  池田 禎治君
   今村  等君  内海  清君
   加藤 鐐造君  春日 一幸君
   小松信太郎君  佐々木良作君
   竹谷源太郎君  塚本 三郎君
   堤 ツルヨ君  土井 直作君
   西村 榮一君  廣瀬 勝邦君
   松尾トシ子君  水谷長三郎君
   武藤 武雄君
#81
○天野公義君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
 すなわち、この際、内閣提出、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案、昭和三十四年八月及び九月の風水害を受けた社会福祉事業施設の災害復旧費に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における失業対策事業に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害並びに同年八月及び九月の風水害に関する失業保険特例法案、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害に際し災害救助法が適用された地域における国民健康保険事業に対する補助に関する特別措置法案、昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた医療機関の復旧に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた者等に対する福祉年金の支給に関する特別措置法案の八案とともに、災害地対策特別委員長提出、昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた事業協同組合等の施設の災害復旧に関する特別措置法案は、委員会の審査を省略して一括議題となし、委員長の報告及び趣旨弁明を求め、その審議を進められんことを望みます。
#82
○議長(加藤鐐五郎君) 天野君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#83
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
 昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案、昭和三十四年八月及び九月の風水害を受けた社会福祉事業施設の災害復旧費に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における失業対策事業に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害並びに同年八月及び九月の風水害に関する失業保険特例法案、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害に際し災害救助法が適用された地域における国民健康保険事業に対する補助に関する特別措置法案、昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた医療機関の復旧に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた者等に対する福祉年金の支給に関する特別措置法案、昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた事業協同組合等の施設の災害復旧に関する特別措置法案、右九案を一括して議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#84
○議長(加藤鐐五郎君) 委員長の報告及び趣旨弁明を求めます。災害地対策特別委員長南條徳男君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は会議録追録に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔南條徳男君登壇〕
#85
○南條徳男君 ただいま議題となりました昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案外七件につきまして、本委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 右の各法律案は、本年の数次にわたる風水害等に関し、これが対策として、それぞれ特別の措置を講じようとするものでありますが、以下、その要旨を簡潔に申し述べることといたします。
 公衆衛生の保持に関しては、伝染病予防費について、国の負担率を高め、上水道及び簡易水道の災害復旧費について国が二分の一の補助を行なうことができるようにし、また、保護施設及び児童福祉施設の復旧費について国の補助率を引き上げようとするものであります。
 また、国民健康保険事業に対しては、災害救助法が適用された地域において、国民健康保険を行なう保険者が、被災者に対して保険料または一部負担金を減免した場合、国が補助金を交付しようとするものであり、医療機関の復旧に関しては、公的医療機関の災害復旧費に対し国が二分の一の補助を行ない、私的医療機関については特別の金融措置を講ずることとし、さらに、被災者等に対する福祉年金について支給停止の要件を緩和し、今年度分から福祉年金の支給を行なおうとするものであります。
 次に、失業対策事業つきましては、労力費及び事務費に五分の四、資材費に二分の一の高率の国庫補助を行ない、失業保険につきましては、被害による事業の休止等のため休業するに至った失業保険の被保険者に対して失業保険金を支給することができることとしております。
 さらに、被害農林漁業者等に対する資金の融通に関しては、家畜、家禽及び小型漁船の取得等に必要な経営資金貸付等の道を開くほか、被害激甚地の農林漁業者に対し、経営資金の貸付限度額の引き上げ及び償還期限の延長の措置を講じようとするものであります。
 以上申し述べました特例措置は、いずれも政令をもって指定された被害激甚地に適用することにいたしております。
 以上が各案についての要旨の概略であります。
 次に、審議の経過の概要につきましては、すでに去る二十日の本会議において御報告いたした通りでありますが、なお、次の諸問題、すなわち、弔慰金、見舞金及び治療費の支給、生活資金等の貸付等による被害者に対する直接援護措置、健康保険、日雇労働者健康保険等に対する特別助成措置、失業保険金の支給に関する待期の特例措置、道路、交通機関等の途絶により就業することを得ない者に対する救済措置、天災融資法の融資対象の拡大及び償還期限の延長等につきまして、熱心なる質疑応答が行なわれたのでありますが、これらの詳細なる内容につきましては会議録に譲ることといたしますので、御了承願います。
 かくして、一昨二十五日質疑を終了いたした次第でありますが、次いで、公衆衛生の保持に関する特別措置法案、失業保険特例法案及び天災融資法改正案に対し、自由民主党、日本社会党及び社会クラブの共同提案として、各派を代表して自由民主党の田村元君より修正案が提出され、提出者よりその趣旨説明が行なわれました。
 公衆衛生の保持に関する特別措置法案に対する修正案の要旨は、新たに汚物処理等について三分の二の国庫補助を行なおうとするものであり、失業保険特例法案に対する修正案の要旨は、被害による事業の休止等のため引き続き三十日以上の休業者等に対しては七日間の待期の規定を適用しないことにしようとするものであり、天災融資法改正案に対する修正案の要旨は、真珠等のほかに、政令で定める水産動植物の養殖についても五十万円の融資を行なうこととしようとするものであります。
 なお、予算を伴う公衆衛生の保持に関する特別措置法案及び失業保険特例法案に対する各修正案については、内閣より善処する旨の意見が述べられたのであります。
 次いで、採決の結果、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害並びに同年八月及び九月の風水害に関する失業保険特例法案、及び、天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案の三件は、いずれも右の修正案の通り全会一致をもって修正議決し、その他の五件は、いずれも全会一致をもって原案の通り可決した次第であります。
 なお、天災融資法改正案に対し、全会一致をもって、政府は、今後さらに償還期限の延長、利子率の引き下げ等についても根本的な検討を加え、もって本法運用の適正を期すべきである旨の附帯決議がなされた次第であります。
 さらに、災害対策の推進をはかるため、生活保護法の適用、私立学校災害復旧、被災者援護、被災農業協同組合の再建整備、災害地対策等に関する件につきまして、全会一致をもってそれぞれ決議が行なわれました。
 以上申し述べましたが、本委員会は、その審議にあたりまして、終始、今次災害による多数の犠牲者及び罹災者の方々に深く思いをいたし、災害復旧の一日もすみやかならんことを念願して、党派をこえ、きわめて真剣に審議を尽くした次第であります。
 以上をもって御報告といたします。
 次に、議題となりました昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた事業協同組合等の施設の災害復旧に関する特別措置法案について、その提案理由の説明を申し上げます。
 本委員会においては、今次の災害対策について鋭意調査検討を重ねて参った結果、事業協同組合等の施設の災害復旧事業の促進をはかるために特別措置を講ずる必要を認め、自由民主党、日本社会党及び社会クラブの全会一致をもって本法律案を起草、提出いたしたものであります。
 その要旨は、事業協同組合等の施設の災害復旧事業に要する経費につき、四分の三を下らない率により補助を行なった府県に対し、国が当該補助に要する経費につき、その三分の二を補助することにより災害復旧を促進せしめようとするものであります。
 以上が本法案の提案理由並びにその要旨であります。
 何とぞ満場一致御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#86
○議長(加藤鐐五郎君) これより採決に入ります。
 まず、災害地対策特別委員長提出にかかる、昭和三十四年八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた事業協同組合等の施設の災害復旧に関する特別措置法案につき採決いたします。
 本案を可決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#87
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
 次に、内閣提出にかかる、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案外七案を一括して採決いたします。
 右八案中、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地域における公衆衛生の保持に関する特別措置法案、昭和三十四年七月及び八月の水害並びに同年八月及び九月の風水害に関する失業保険特例法案、及び天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案の三案の委員長の報告は修正、他の五案の委員長の報告は可決であります。八案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#88
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、八案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
     ――――◇―――――
#89
○議長(加藤鐐五郎君) 日程第一、法人税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#90
○議長(加藤鐐五郎君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長植木庚子郎君。
    ―――――――――――――
    〔報告書は会議録追録に掲載]〕
    ―――――――――――――
    〔植木庚子郎君登壇〕
#91
○植木庚子郎君 ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 現行の法人税法によりますれば、青色申告をしている法人が、ある事業年度で欠損を生じた場合におきましては、次の事業年度以降五カ年間これを繰り越し控除することを認めているのでありますが、青色申告をいたさない法人につきましては、この制度を認めていないのであります。しかしながら、およそ災害によって生じた損失は、事業経営上の他の損失とはその事情を異にしておりますので、これをそのままといたしておきますことは、税制上妥当を欠くものと申さねばなりません。よって、今回、青色申告をいたさない、いわゆる白色申告の法人につきましても、風水害、震災、火災等によりそのたなおろし資産、固定資産等に損失が生じたため、ある事業年度に欠損を生じた場合におきましては、当該欠損金のうち災害によって生じた部分に限りまして、青色申告法人の場合と同様に、五年間の繰り越し控除を認めるよう改正しようとするものであります。
 なお、青色申告をいたさない個人の場合につきましては、すでに本年四月の所得税法改正で、これとほぼ同様な措置を認めることになっていることを申し添えます。
 本案は、去る十一月十四日、大蔵委員会に付託となり、審議の結果、去る二十四日、質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決を行ないましたところ、全会一致をもって原案の通り可決となりました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#92
○議長(加藤鐐五郎君) 採決いたします。
 本案を委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#93
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
     ――――◇―――――
#94
○議長(加藤鐐五郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午前六時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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