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#1
第033回国会 本会議 第23号
昭和三十四年十二月二十二日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第二十号
  昭和三十四年十二月二十二日
    午後一時開議
 一 国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案(佐々木盛雄君外四名提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 蚕糸業振興審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案(佐々木盛雄君外四名提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
    午後四時七分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 蚕糸業振興審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
#3
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。
 内閣から、蚕糸業振興審議会委員に参議院議員小山邦太郎君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
 国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案(佐々木盛雄君外四名提出)の趣旨説明
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 佐々木盛雄君外四名提出、国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案の趣旨の説明を求めます。提出者佐々木盛雄君。
    〔佐々木盛雄君登壇〕
#6
○佐々木盛雄君 国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案につきまして、私は、提案者を代表いたしまして、提案趣旨について説明を行なわんとするものであります。
 去る十一月二十七日に日米安全保障条約改定交渉の打ち切りを要求する集団示威運動が行なわれた際に、集団陳情に名をかりた一万数千名の暴徒が国会構内に乱入し、神聖なる議事堂をじゅうりんいたしましたわが国憲政空前の不祥事態の発生を契機といたしまして、再びかくのごとき不祥事件の発生を繰り返さないために、加藤衆議院議長は、さきに、議院運営委員会理事会におきまして、おおむね本案同様の試案を提示されたのであります。私たちといたしましては、立憲政治擁護のために、与党と野党との政争を越えた立場から、議長の諮問にこたえて、議院運営委員会全員一致の立案といたしたいと、あらゆる努力を試みたのでありまするが、不幸にして野党諸君の同調を見るに至らず、ついに、議長試案に若干の補足を加えて、ここに議員提案の形式をとるのやむなきに至ったことは、まことに遺憾にたえない次第でございます。(拍手)
 まず、この法律の目的は、国権の最高機関である国会がその機能を完全に行なうために、国会議事堂周辺の静穏を保つことによって、国会議員の登院と国会の審議権を確保せんとするものであります。従って、何人も、この目的達成のため、国会議事堂周辺の静穏の保持によって、議員の登院と国会の審議を妨害しないようにしなければならない旨を、まず規定いたしたのであります。しかしながら、このことは、憲法において保障された集会や表現の自由を否定するものでは毛頭ないのでありまして、私たちは、国会の審議権の公正なる行使を確保する立法措置を講ずることこそが、最も合憲的にして、かつ、議会政治擁護の根本要件であると信ずるのであります。(拍手)
 従来、国会の周辺に集団示威運動等が行なわれた場合には、国会としては、なるべく不要の摩擦を避けるために、やむなく当日の国政審議を中止するなどの措置をとって参ったのでありますが、今回の不祥事件において、議事堂周辺の道路においては議員の国会登院が著しく妨げられたのみならず、ことに、議員会館と議事堂との間の道路は全くふさがれて、議員の通行は不能となった事実にかんがみまして、この際、国会として万全の措置を講じ、もって不測の事態の発生を予防することが絶対に必要であると考えるのであります。(拍手)
 さて、私たちは、この法律案を起草するにあたって、次の二点について特に意を用いたいのであります。
 第一は、本法に規定する国会周辺と申しましても、なるべくその範囲を最小限にとどめたことでありまして、英・米・西独等の諸外国におきましては、国会周辺一帯の広範なる地域を指定して、集団行動についての厳重なる禁止規定を設けておるのでありまするが、本法におきましては、その適用区域を国会周辺一帯としないで、主として国会に通ずる道路と一部の国会用地のみに限って秩序を保持すべき場所といたしたのであります。
 第二は、その限られた道路や区域においても、集団示威運動等をあらかじめ全面的に禁止することを避けて、必要やむを得ない場合にのみ適当な措置をとり得るようにいたしたのであります。すなわち、国会周辺道路上における集団示威運動等のために、国会議員の登院や国会の審議権の公正な行使が阻害されるおそれがあると認められる場合には、衆参両院議長は、連名で、東京都の公安委員会に対し、その集団示威運動等の許可の取り消しや条件の変更を要請したり、または、警視総監に対して、その集団示威運動等を制止するための必要な措置を講ずるように要請できることといたしたのでございます。従って、この要請がなされたときは、公安委員会はこれに対応して必要な措置を講ずるようにすることとし、また、警察官は、その集団示威運動等の主催者や責任者や参加者に対して、必要な限度において警告を発したり、その行為を制止したりすることができるようにいたしたのであります。しかしながら、これらの要請を受けた公安委員会や警視総監がいかなる措置をとるかは、もっぱら、その自主的決定にゆだねたのであります。
 次に、請願につきましては、憲法において定められている通り、平穏に行なう限りにおいては、言論、表現、集会の自由とともに国民の基本的権利として認められておるところでありますが、しかし、たとい請願・陳情の名目のもとに行なわれる集団示威運動でありましても、実際上平穏なる行為と認められないものは本法の適用を受けるべきものといたしたのは、当然の措置であると信ずるのであります。(拍手)
 また、罰則につきましては、集団示威運動に参加した者が議事堂またはその構内に侵入いたした場合には、本法によらずして、一般刑法の規定によるのでありますが、特に、他人を指揮し、他人に率先して侵入した者に対しましては、本法の適用によって刑を重くいたしたのであります。(拍手)すなわち、国会議事堂こそは、国民の代表者が国政を審議する神聖なる殿堂であって、これを群衆の陣頭に立って侵害することは、単なる住居侵入のみならず、実に、わが国立憲政治の存立を危うくするものであるからであります。(拍手)
 また、集団示威運動等の威力を用いて議員の登院を妨害した者についても特に罰則を設けましたのは、国会構成員たる議員の登院こそは国政審議のための不可欠の前提要件であるからであります。(拍手)
 以上が本法律案の概要でありまするが、私は、ここに、同僚議員各位が、わが国議会政治の擁護のために、この際、政党政派の対立を越えて、大乗的見地に立って満場一致の御賛同あらんことを心から期待をいたしまして、提案趣旨の説明を終わる次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案(佐々木盛雄君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑
#7
○議長(加藤鐐五郎君) ただいまの趣旨の説明に対して、質疑の通告があります。順次これを許します。中村高一君。
    〔中村高一君登壇〕
#8
○中村高一君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま提出されました国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案につきまして、提案者に質問をいたしたいと思うのであります。
 ただいま、提案の説明を聞きますと、この法案の提出は、十一月二十七日の国会が混乱いたしましたことを対象にしておるようでありますが、まず、私が提案者にお聞きしたいのは、こういう憲法上のいろいろの問題を含んでおります法律案を、あと会期が数日しかないこのときに、どうして一体提案されたのか。おそらくは、こういう法律案でありますから、十分な審議をせられる御用意はあるものと思っておりますけれども、憲法に関係したこういう法案を一気にこの会期末に出して押し切るというような、そういう不祥事をいたさないように、特に私は希望いたしておきたいのであります。(拍手)
 この法案が提案されました経過も今説明がありましたけれども、最初発表された、議長の計画された当時の案を見ますと、一つは、周辺のデモを禁止するという法律案であり、もう一つは、ただいま説明されたような、議長が都の公安委員会に要請をしたり、あるいは警視総監に要請をするという、この二つの案であったのでありますが、結局、あとの案を採用して、ただいま提案されておるのでありますが、なぜ、こういう経過をとって、議長が要請をするという法案になったのか、御説明を願いたいのであります。
 また、この法案を見ますと、議長が都の公安委員会に要請するとか、あるいは警視総監に対しまして阻害行為の排除を求める、こういう法案でありますけれども、現在、衆議院の議長は、国会内におきまするところの院内警察権を持っておることは、御承知の通りであります。この院内警察権が、必要ある場合におきましては、議長の要求によって、内閣に向かって警察官の派遣を求めるということに相なっております。しかるに、今度の法案では、議長が内閣に要請を求めるのではなくして、都の公安委員会とか警視総監にその要請をするというのであります。これは、国会の権威のためにも、まことに惜しむべきことだと思うのであります。(拍手)諸君も御承知の通り、国会は国権の最高機関でありまして、議長は内閣に向かって警察官の派遣を求めることができるようになっておるものを、今度の案では、都の公安委員会とか、警視総監に要請ができるということは、みずから議長の権限を非常に下げるものとして、われわれは遺憾に思っておるのであります。(拍手)議長は、当然、内閣に向かって要請すべきである。しかも、この法案を見ますと、――これから佐々木君がお答えになるのかどうかわかりませんけれども、都の公安委員会の方の条文を見ると、議長の要請があった場合に必要な措置をとらなければならないと書いてあります。ところが、警視総監の方は、そういう行為をすることができるとあって、公安委員会の方は議長の要請通りやらなければならぬが、警視総監の方は、やってもやらなくてもいいということになっております。この点をおわかりになるかどうか、今お調べになっていただきたいと思うのであります。こんなばかなことをやらしたならば、もし、議長が都の公安委員会に要請をする。一体、都の公安委員会と衆議院の議長との関係は、官制の上においてどうなるのか。議長の要求は、全部公安委員会は開かなければならないというならば、公安委員会というものの任務が尽くせないではないですか。また、それならば、公安委員会が聞かなければならぬとするならば、警視総監も聞かなければならぬとするならばわかる。ところが、警視総監の方は、聞いてもいい、聞かなくてもいいということになっておって、こんなばかなことはありませんよ。よく法案を見なさい。
 それから、次は、昨年の警職法の問題が起こりましたあと、御承知の通りに、自由民主党と社会党との間で国会の周辺の秩序に関する特別委員会が作られまして、いまだにその委員会が存在いたしております。この委員会で、われわれが警察当局に対して、現在の法律で院外の集団行為が取り締まれないかどうかを尋ねましたときにあたって、警察当局は、現在の法律で十分でありますと答えておる。現に、一般の刑法もあり、あるいは道路交通取締法もある。都の公安条例もあるし、あるいは衆議院の集団陳情取締要領というようなものがあって、警察当局は、これで十分だということを答えておる。取り締まる方が十分だと言うのに、国会でそんなよけいな法律を作る必要がどこにあるかを私は聞いておる。
 先日の、十一月二十七日のデモの取り締まりができなかったではないかということが、おそらく提案者として言いたい点だろうと思うのでありますけれども、あの取り締まりにつきましては、私も現場におりまして見ておったのでありますけれども、あの日の取り締まりは、取り締まりの警官が不手ぎわであったか、あるいは、意識的にデモを侵入さしたと見なければならない。(拍手)今まで、たびたびにわたってデモの取り締まりをいたしておりますけれども、あのチャペル・センターの破られたことはないではないか。今度のときは、まるで、あの取り締まりがいいかげんでありましたために、すぐに警戒を突破しておるし、あるいはまた、正門の前においても、警察官がいつものように堅固な人がきを作れば防げないはずはなかったのであります。むしろ、諸君の考えておるような法律の必要は絶対にありません。(拍手)おそらくは、こういう法律を通そうとするのは、次の安保条約の国会に備えて、諸君は、今から頭を使ってこういうものを作ろうとしておる。党利党略のために法律を作ることは断じて許されません。(拍手)
 ことに、公安条例というようなものが、すでに裁判所におきまして数回にわたって憲法違反だという判決も行なわれておるのにもかかわらず、またもや、この公安条例と同じような法律を作ろうとするところに、われわれは問題があるのでありまして、この公安条例について裁判で示されたものを見まするならば、集団行為について、単なる届出制を定めるくらいならばいいけれども、そうでなくして、一般的な許可制をきめて、国民の自由を縛り、これを事前に抑制することは憲法違反だと説明されておるのでございます。(拍手)諸君は、これほどの憲法違反であるという問題を、再びこの法案の中に出してきておるのは、すなわち、第四条の、都の公安委員会に対して許可の取り消しを求めるというのでありますから、この許可自体が憲法違反だとして議論されておるのです。それをそのまままた持ってきてやったのでは、憲法違反にもう一つ諸君は憲法違反を重ねることになる。(拍手)幾ら諸君が議員の提出によってこの法案を通そうとしても、こうした法律上の議論のあるものを、そのまま持ってくるというようなことは、十分に考えてもらわなければならないことでありますから、この点についての諸君の考慮をわれわれは要求いたしておるのであります。
 なお申し上げたいのは、もう一つ憲法上の疑義があることであります。それは、憲法第九十五条によれば、一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければならない、この九十五条の規定のあることであります。議事堂周辺とは申しましても、東京都の一地区であることは言うまでもありません。この法案が東京都にだけ適用されるものであることは、争う余地がない。すなわち、一つの地方公共団体にのみ適用されるものであります。添付されておりまするところの図面によりましても、この図面の通路は、決して国会の専属の通路でもなければ、国会付属の道路でもなくして、東京都民が自由に通行し得るところの公道であります。(拍手)
 今まで、その住民の投票を受けました特別法はたくさんあります。首都建設法であるとか、あるいは広島の平和都市建設法、長崎に適用されました国際文化都市建設法、あるいは旧軍港市転換法、あるいは国際観光温泉文化都市建設法等は、いずれも、その一地方に限られた法律でありますために、住民の投票を受けてきた。ただ、北海道開発法だけは、これは例外とされましたことは、特別に権能を与えたり、あるいは権限を侵すものでなくして、単に北海道に利益を与えるだけだということで除外されておるのであります。
 しかし、今度のこの法律は、これが通りまするならば、憲法上の集会、結社、あるいは表現の自由というものに対する制限を受けることはもちろんであります。特に、東京は政治の中心地帯でありまして、議会があり、政府のあるこの場所においては、常に請願・陳情が行なわれ、あるいは集会、行進等は常に行なわれる特殊なこの東京都内におきまして、都民がその権利・義務の上においていろいろの制限を受けるこの法律は、どうしても住民の投票を受けるということが当然だとわれわれは考えておるのであります。(拍手)この点に関しまして、提案者はいかに考えておられるか。
 この法案は憲法にいろいろの関係を持ったものでありますから、政府に対して、あるいは議長に対しても、所見をただしたかったのでありまするけれども、きょうの議事の運営の上において、提案者だけに質問をせよということでありますから、別の機会に、それぞれ、また政府、議長に対して所見を承りたいと存じまして、私の質問を終わりにいたします。(拍手)
    〔山村新治郎君登壇〕
#9
○山村新治郎君 ただいま、あと会期を数日に控えた今日、この法案をなぜ出したかという御質問が第一にございましたが、御存じのように、この問題につきましては、去る警職法のあの国会不祥事件の際に各党問において行なわれましたる四者会談以来の懸案でございます。同時に、今回議長さんが四党に対しまして諮問されましたところの最も重要なる問題でございまするからして、おそらく、この国会の関係者御一同は深い御理解があると信ずる次第でございます。そして、また、国会の審議権の確保こそは、これは一日も欠くべからざるところの重大事でございます。従いまして、私どもは、一日もすみやかにこの法律案が通らんことを念願してのことにほかならない次第でございます。
 なお、現在の法律で取り締まりができるではないかという質問でございまするが、現在の法律では、残念ながら、先般の十一月二十七日のような事件が巻き起こりましては、取り締まり不可能でございます。すなわち、ここに私どもがこの法律案を出したゆえんがあるのでございます。ただいま、中村君は、先般のあの不祥事件の際にも、警察側で防げば防げたのじゃないかという御議論があったようでございまするが、ここに私ども遺憾に存じますることは、議員のバッジをつけた方が、議員だからおれを通せという呼び声のもとに大衆を乱入させたということは、まことにけしからぬことであると思っておる次第でございます。従って、この法律案がたとい通ったといたしましても、議員の方々が、議員のハッジをつけて、バッジの光にものを言わせてこの法律を破るようなことのないように、くれぐれも御自粛を願いたいと存ずる次第でございます。
 なお、公安条例の関係の問題につきましては、佐々木議員から詳しく御答弁を申し上げる次第でございまするが、特に、憲法九十五条に関連をいたしまして、住民投票が必要ではないかという御議論のようでございまするが、この法律は東京都の住民だけに適用する法律ではございません。全国民に適用する法律でございまするからして、この九十五条のことについては考える必要なしと私は信ずる次第でございます。
 以上、答弁申し上げます。(拍手)
    〔佐々木盛雄君登壇〕
#10
○佐々木盛雄君 私の分担する限りにおいてお答えをいたしたいと存じます。
 まず、この法律案がなくても取り締まりができるではないかという御趣旨のようでございます。申すまでもないことでありまするが、道路交通取締法の違反であるとか、公務執行妨害であるとか、住居侵入等に該当いたしまするものは、それぞれの法規によって処罰されることは当然でありまするが、この法律は、特に議員の登院と国会の審議権の公正なる行使を確保するために事前措置を講ずることを目的といたしておりますから、法律の根本の目的が相異なるわけでありまして、現在の法律においては十分でないところを、今回の法律によって立法措置を講じたいと考えるわけであります。
 次に、さきに議長試案の中にはA、B二つの案があったというお話でございまするが、申すまでもなく、その通りでございまして、二つの案が議長さんから示されたわけであります。B案というのは、国会周辺の区域につきまして、非常に広範なる区域を全面的に禁止することを前提とするものであって、外国におきましては、たとえば、アメリカやイギリスや西ドイツなどにおきましては、非常に広範な区域を限定し、その区域内においては一切の集団行為というものを厳重に禁止する規定を設けておるわけでありまするが、わが国の現状におきましては、諸君の御意見も十分参酌いたしまして、まずA案を取り入れたわけでありまするが、A案の方は、そういうことをするのではなくして、必要な場合において、衆参両院議長が、連名で、東京都の公安委員会ないし警視総監に対して適当な措置をとるべきことを要請することだけを規定いたしたわけでありまして、今日の段階におきましては、むしろ、このA案の方が適当ではなかろうか、かように考えたわけでございます。(拍手)
 また、中村君の御説を承っておりますと、公安委員会とか警視総監に要請することは、議長の権限が非常に低下するんだ、なぜ内閣に向かって行なわないかというお説でありまするが、これには少しく中村君のお考え方に錯誤がありはせぬかと考えます。国会の審議権を確保するため緊急の必要がある場合には、直接公安委員会または警視総監に対して要請することの方が適当でございまして、その方が、より地方自治尊重の立場から必要である、かように考えまして、この規定を設けた次第でございます。(拍手、発言する者多し)決して議長の職権が低下するとは考えておりません。次に、デモ規制は現行法の議長の権限でもできるではないかというお説でございまするが、両議院の議長は、院内の警察権は持っておりまするが、御承知のように、院外の警察権は持っていないわけでございます。ところが、十一月二十七日のあの事件を考えてみましても、院内の議長の職権ではどうすることもできないわけでありまするから、やはり、二十七日のあの事件等から考えましても、院外における国会の静穏を乱すがごとき行為につきましては何らかの立法的措置が必要ではなかろうかと考えるわけであります。(拍手、発言する者多し)
 また、議長が要請して公安委員会の許可の取り消しであるとか変更をすることは自治権の侵害とならないか、こういうお話でございまするが、議長の要請は、公安委員会に対して、その公安委員会の持つ権限の発動を要請するわけでありまして、新たに公安委員会に議長が義務を課するというものでもなく、また、議長が警察権を指揮するというものではございませんから、決して自治権の侵害にはならないと考えるわけであります。(拍手)
 さらに、憲法第九十五条のいわゆる特別法ではないか、こういう御質問でございまするが、この法案は、決して一つの地方公共団体そのものを対象とするのではなくて、一定の地域内のデモの行為を対象とするのでありまして、従って、それは単に東京都という一地方公共団体の住民だけに限られたものではないのでありまするから、憲法九十五条の特別法には該当しないと考えております。
 さらに、もう一点は、非常に重大な点でありまするが、特に中村君が強調されておりまするのは、今度の公安条例をもとにした案というものは、公安条例がすでに違憲であるという判決も出ておるから、従って、その公安条例というものを基準にして作ったこの法律というものも、違憲のおそれがありはせぬかという御質問のようでありますが、いわゆる公安条例につきましては、すでに、新潟県の公安条例に関しましては、これは憲法に違反しないという最高裁判所の判決も出ております。(拍手)東京都におきましては、東京都の公安条例に対しまして、違憲であるという判決と、また、合憲であるという判決とがございまするが、いずれも下級裁判所の段階でございまして、いまだ最高裁判所の判決が出ておりません今日の段階におきまして、最終的決定を見るまでの間この立法措置を講ずるということは、法律上何ら疑義のない措置であると考えておるような次第であります。
 最後に、国会乱入事件が警察の計画的陰謀であるがごときことを申され、責任を転嫁するというような言辞は、まことに遺憾しごくでございまして、私は、これに対する答弁につきましては、むしろ、議院の品位と議員の良識に訴えまして、答弁を差し控えたいと考える次第であります。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(加藤鐐五郎君) 武藤武雄君。
    〔武藤武雄君登壇〕
#12
○武藤武雄君 私は、社会クラブを代表いたしまして、昨日議員立法として自由民主党佐々木盛雄君外四名の諸君より提出されました国会の審議権の確保のための秩序保持に関する法律案について、ただいまより質疑を行なうものであります。
 まず第一に、この法案は、議長が先般議院運営委員会において議長試案の形で提出をされた第二回目のA案の肉づけ案と称するものと全く内容を同じくする点についてであります。私ども社会クラブは、議長試案が示された際に見解を明らかにいたしたごとく、今回の暴力によるデモ隊の国会乱入事件の跡始末については、在任中にかかる不祥事態を引き起こした議長は、国民の国会を預かる最高の責任者として、まず、みずからその政治的責任を明らかにし、しかる後に、必然的に事件当事者もみずからの政治的責任をとるとによって、初めて民主政治下における議会の責任体制は確立され、国民また、このことによって事件の重大性を認識するとともに、国会の権威に対して新たなる認識が生まれ、国民みずからこれを守ろうとする世論を形成する結果となることを強く指摘いたしまして、その処置の誤りなからんことを要求いたしたのであります。従って、その責任をみずからとることなく、単に責任を国民に転嫁して、デモ規制法のごときものを立案するならば、国民が、みずからの国会としてその権威を保持し、これを守らんとする意欲は起きてこないのであります。その場合には、百の法律を作ったといたしましても、なきにひとしいものとなるであろう、と、われわれは指摘しておったのであります。
 しかるに、その後、議長は、去る七日、みずからの責任を何ら明らかにすることなく、ただ一方的に、淺沼議員以下の議長職権による懲罰委員会付託を宣告いたしたのであります。従って、われわれは、事件当事者がみずからその政治責任をとる意思なく、今日に至り強権の発動を見たことは、責任体制を特に重しとする民主政治のため、はなはだ遺憾なことであると考え、天下にその所信を声明いたしたのであります。(拍手)しかしながら、議長があえて強硬措置をとった以上は、みずからもその責任をとる決意を明らかにしたものと考え、われわれは、また強くそれを期待いたしたのであります。
 しかるに、その後、議長は、みずからの責任について何ら触れることなく、逆に、議長試案を議員立法に肩がわりせしめ、与党議員をして提案せしめるに至っては、国会の最高の権威どころか、単なる与党自民党のかいらい的議長であることを、天下にみずから表明したものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)このような議会の運営が正常にして責任の存在する運営のあり方と考えて、提案者は本法律案を提出したのであるかどうか、その所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 第ニに、この試案が議運に提出されたまま、その取り扱いについて何ら議論の進展もないままに、議員立法にすりかわった理由についてであります。おそらく、議長並びに与党は、事件発生以来のわが社会クラブの一貫した主張並びに国民世論の動向から考え、法案の審議に入ることは不可能であると判断をし、その政治責任をのがれる意味と、また、この機会に便乗して、大衆運動に制限を加える絶好の機会と判断し、しゃにむに今会期中に押し通そうとする与党と、片や、責任のがれのため、片や、便乗しようとする相互利害の一致によるなれ合い提案となって、この法案が出てきたと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)この無責任きわまる国会の現状を、どのように国民が判断し、はたしてこの立法によって国会の権威が保たれると考え、そういう所信のもとにこの法案を出されたのか、念のために提案者の所信をお伺いしておきたいと思うのであります。
 次に、法案の内容に触れて質問をいたします。
 第一に、国会だけが特に法律によって保護されなければならないとする法律的な根拠は一体どこにあるのか、お聞きいたしたいのであります。もちろん、国会は立法の府としての権威を保持しなければならないとする一般道義上の理念ではなくて、法律的根拠について提案者の明確なる見解をお聞きいたしたいのであります。
 第二に、国会議員の登院を一般人の通行と特別に区別してこれを保護することは、憲法第十四条の、すべて国民は法のもとに平等であるという精神に反することになると思うのであるが、区別をする法律的な根拠は一体どこにあるのか、提案者の見解を承りたいのであります。
 第三に、法案では国会議員の登院と国会の審議権の公正な行使の確保という名のもとに、屋外集会、集団行進または集団示威運動等を規制し得ることにこの法案においてはなっているが、これは大衆運動を法によって規制するもので、憲法第二十一条の集会、結社及び言論、表現の自由、及び、憲法第十六条の請願する権利の規定に反すると考えるが、その法律的理由を提案者にお聞きいたしたいのであります。
 第四に、法案にいう「国会議員の登院と国会の審議権の公正な行使に著しく影響を与えるおそれがあると認められる場合」とは、具体的にいかなる場合か。その規定の解釈いかんによっては、正常なデモまでが議長の個人的認定により規制さるる危険が多分にあるのであります。現在のごとき政党政治のもとにおいて、場合によっては個人に罰則がかけられるような事実認定の権限を議長に与えるのは行き過ぎであるとわれわれは考えるのであるが、この点、刑法の罪刑法定主義の原則に照らして違反をすることにはならないかどうか、提案者の見解を承りたいのであります。
 第五に、国会議事堂またはその構内に侵入した者に対し、一般の住居侵入罪と区別して、なおこれに特に重い刑罰を課した理由について伺いたいのであります。公共の施設たる国会といえども、院の面会規則あるいは取締要領等に定められている以上、これを不法に犯す者は、当然、現行法の不法侵入の罪が構成されるものと考えるのであります。参考までに申しますと、衆議院集団陳情取締要領、二の方法の項の6、「必要により、議院構内の通行を制限する。」とありますが、(イ)の中に「前庭は記章帯用者及び許可を受けた者以外の通行を厳禁する。」とあります。(口)の項には「後庭(陸橋下通路から内部)は必要に応じ記章帯用者、傍聴券所持者及び許可を受けた者以外の通行を禁止する。」と規定しておるのであります。この規定がある以上、この法律が一般の刑法と別に規定されなければならない理由について、お伺いをいたしたいのであります。
 第六に、国会の審議が法律と警官によってなされなければ確保できないという状態のもとでは、もはや、民主政治は成り立たないと考えるのであります。こうした問題は、あくまで国民の良識と道義心によって解決さるべきもので、法によって規制すべき性質のものではないと考えるのであります。特に、憲法上も疑義のあるかかる法律の取り扱いは特に慎重を期すべきであると考えるのであります。この際、かかる法案を提出しなければならないという差し迫った情勢があると考えておられるのかどうか。もし、この法案の提出が、前に述べたごとく、十一月二十七日のデモ事件に基づいて行なわれたものであるとするならば、その理由はまことに薄弱であるといわなければなりません。こうした考え方は、法の規定によってすべて民主主義は確立できるという近視眼的なものの考え方と一致するのでありまして、民主主義の本質を理解しない考え方であると考えるのであるが、提案者の率直なる所信をお伺いいたしたいのであります。
 第七に、法案は、国会議員の登院と国会の審議権を確保するという名のもとに、屋外集会、集団示威運動を規制するとともに、これを指揮し、または国会議事堂、構内に侵入した者に罰則を課すること及び登院を妨げた者に罰則を課することを内容としておるが、これらは、いずれも、現行の刑法、道路交通取締法、軽犯罪法あるいは衆議院議員面会規則、さきに述べた衆議院集団陳情取締要領等によって十分規制し得るもので、新たに法案を作る必要はないと考えるのであるが、この法案を作ることによる実益は、現行法と比へてどの点にあるのか、提案者の見解を伺いたいのであります。
 最後に、あえて私は繰り返しまするが、真に民主主義政治の権威を高めるゆえんは、かかる一片の法律案でなくて、議長以下、事件当事者の責任を明らかにすることであると思うのであります。私は、議長に、再度、国家、国民の立場から一言いたしたいのであります。議長は、昨日、去る十七日の議事手続を指摘されました社会党提出の不信任が否決をされたことによって、わが事なれりとするならば、私は何をか、言わんやであります。わが社会クラブ代表の池田議員は、社会党提出の不信任の理由とは内容を異にするが、不信任に賛成をした討論の中で明らかにしたごとく、与党が数の多数によって正論を押え得たとしても、天の声たる国民の世論は押え得ないことを、私は知らなければならないと思うのであります。かりに百歩譲って、事件当日の議長の処理がおおむね妥当であったとしても、虎の門事件の前例ではないが、国会始まって以来の大不祥事件に対し、在任中のゆえのみをもってしてでも、その政治的、道義的責任を明らかにすることこそが先決であると考えておるのであります。議長は、今こそ、国民が議会政治に対する不信の念をますます深めつつあることに思いをいたし、議会政治最高の栄誉をになう責任者として、国民の前に深くこうべをたれて、その政治責任を明らかにしていただきたいと私は思うのであります。
 また、私は、この際、かつての同志であり、先輩であり、同じ革新の立場に立つ社会党の諸君に対し、真情を吐露して言いたしたいのであります。
 昨日の議長不信任提案の発言の中に、二十七日のデモ事件は国民の正当なる請願・陳情であり、事故発生の原因は政府の多数横暴の国会運営にありとして、なお、外国、特にアメリカの国会の通行自由の運営を模範といたしまして、あたかも非民主的なわが国国会の門戸開放の戦いであったともとれる発言があったのでありまするが、国会の論議にあたり、みずから、悪法は法にあらず、矛盾せる規定は規定にあらずとするならば、一般国民は一体何を尺度として法秩序並びに社会秩序の維持をはからんとするでありましょうか。(拍手)国政に当たる者みずから議会の権威を高めるために努力し、悪法や矛盾する規則や規定は、国民の世論と支持を得て法律の改正を通じ、議院の審議を経て国民の利益を正しく守る努力をしてこそ、初めて民主的な社会主義政党として国民の信頼をかち得るゆえんであると、私は考えておるのであります。(拍手)
 また、私は、提案者たる自民党の諸君に一言したいのであります。議長が、今日まで、他の責任者は追及するが、自己の責任については明らかにしなかった責任の一半は、与党の諸君にもあると考えておるのであります。今日まで、与党の諸君は都合の悪いときは、議長は党籍にないからと主張して逃げてきたのであります。しかし、反面、議長を利用して、都合のよいときは与党の圧力を十分に発揮し、議長の名において院議を強行するのが常法であったのであります。多数による暴力の批判はここから起きてくるということをお考え願いたいのであります。これでは、いかなる人物といえども、国民に信を与える議会の運営は困難であると私は考えるのであります。
 私は、この際、与野党あげて猛反省をし、みずからの責任を回避して、罪なき国民大衆に法の呪縛を強化することなく、すみやかに法案を撤回して、おのおのその責任の所在を明らかにするのが、国会の権威を保持し、国民みずからの国会として高い品格を保ち得る最善の道であることを、国民の名において切望いたしまして、私の質問を終わらんとするものであります。(拍手)
    〔山村新治郎君登壇〕
#13
○山村新治郎君 御質問の内容を承っておりますると、大部分が議長の責任問題に対する御意見のようでございます。従って、この問題につきましては、私どもはお答えする必要はないと存ずる次第でございます。
 ただ、この法律案は、たまたま議長が提案されたA案をそのまま出したのではないかという御趣旨の御質問がございましたが、その通りであるとお答え申し上げる次第でございます。ということは、御存じのように、議長さんにおかれましては、先般の、あの十一月二十七日の不祥事件の跡始末といたしまして、何とかして今後再びああいうような不祥事件が起きないようにということを苦慮されまして、各党を集められて、A案、B案の両案を示された次第であったのでございます。従いまして、私どもは、議院運営委員会におきまして御相談を申し上げて、でき得ることでございましたならば、せっかくの議長さんの御諮問でございますから、いわゆる議院運営委員会の提案としてこれを取り扱う旨を主張し続けて参った次第であったのでございます。ところが、残念なことに、もしもこの議長さんの試案を議院運営委員会という委員会名義でもって提案する場合には、絶対にあらゆる審議権を放棄するという態度を野党の方々が示されたるがゆえに、やむなく、私どもは、ここに自民党議員の提案によりまして、議長提案のA案を支持したゆえんでありますることを、お知り願いたい次第でございます。
 なお、申し上げたい点がございます。それは、あとで佐々木君からもいろいろ御説明がございまするが、こういうような法律を作らなくてもよろしいのではないかという御意見でございます。確かに、法三章をもって足りるということは、これは民主主義の理想でございますが、現実の問題といたしまして、国会周辺の静穏を保つためには、世界じゅうの各国を調べてみましても、あるいはアメリカ、あるいはイギリス、フランス、西ドイツに至るまで、あらゆる国会は、その周辺の静穏を保つために、この種の法案がきまっておりますことを、御参考に願いたい次第でございます。
 あとは佐々木君が答弁を申し上げます。(拍手)
    〔佐々木盛雄君登壇〕
#14
○佐々木盛雄君 武藤君の御質問にお答えいたします。
 国会や国会議員に対して特権的な取り扱いをすることは不当ではないかという御趣旨のように拝聴いたしました。申すまでもないことでありまするが、近来、文明社会におきましての民主主義というものは、法秩序の確立の上に打ち立てられておるものでございます。主権在民の新しい憲法のもとにおきまして、国会は国権の最高機関と規定されております。国会議員は、国会を構成するためには絶対必要なものでありまするが、その国会議員の登院を妨害するとか、あるいはまた、公正なる審議権を行使することができないというごときことは、まことに、これこそ非民主主義、非立憲的行為であるといわなければなりません。従いまして、それらに対する必要な最小限度の措置を講じますることは、決して憲法に違反するものでもなく、民主主義に違反するものでもない、かように考えておる次第でございます。
 また、集会等を弾圧するということにはならないかというお話でございますが、先刻も提案趣旨の中に申しましたように、平穏のうちに行なわれまする集団陳情を全面的に忌避するというのではございません。国会に対して集団的圧力をかけて、国会周辺の秩序を非常に乱すごとき場合や、国会議員の登院ができないという場合にのみ適用するわけでありまするから、決して全面的に集会、言論、表現の自由を弾圧するものでないことは申すまでもございません。
 また、中村高一さんの御質問にお答えした点は省略をいたしまするが、衆議院には議員面会規則や集団陳情取締要領等があるのではないか、こういうようなお話でございました。申すまでもないことでありますが、そういう法律や規則というものは、院の内部において適用されるものでありまして、院外に適用されるものではございません。従って、先刻申し上げまするような議事堂周辺の静穏維持に適用されることはございません。申すまでもないことでありまするが、国権の最高機関である殿堂を集団的圧力から守るために必要な最小限度の法律を作るわけでありまするから、先刻来説明いたしましたこの法律の内容というものが、決して憲法に違反したり、民主主義に反するものではないという、かたい信念に基づきまして、今回の立案をいたしたような次第でございます。(拍手)
#15
○議長(加藤鐐五郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#16
○議長(加藤鐐五郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十三分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        農 林 大 臣 福田 赳夫君
ソース: 国立国会図書館
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