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#1
第033回国会 社会労働委員会 第2号
昭和三十四年十一月十二日(木曜日)委員会にお
いて、次の通り小委員及び小委員長を選任した。
 診療報酬及び薬価に関する小委員
      池田 清志君    大石 武一君
      田中 正巳君    八田 貞義君
      藤本 捨助君    柳谷清三郎君
      岡本 隆一君    小林  進君
      滝井 義高君    中村 英男君
      今村  等君
 診療報酬及び薬価に関する小委員長
                藤本 捨助君
 医療制度に関する小委員
      大石 武一君    大橋 武夫君
      田中 正巳君    八田 貞義君
      藤本 捨助君    柳谷清三郎君
      多賀谷真稔君    滝井 義高君
      八木 一男君    堤 ツルヨ君
 医療制度に関する小委員長
                田中 正巳君
    ―――――――――――――
昭和三十四年十一月十二日(木曜日)
    午前十時五十五分開議
 出席委員
   委員長 永山 忠則君
   理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
   理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
   理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君
   理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君
   理事 堤 ツルヨ君
      池田 清志君    大橋 武夫君
      倉石 忠雄君    藏内 修治君
      河野 孝子君    齋藤 邦吉君
      田邉 國男君    中村三之丞君
      中山 マサ君    柳谷清三郎君
      山下 春江君    伊藤よし子君
      大原  亨君    多賀谷真稔君
      中村 英男君    今村  等君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   
        総理府技官   佐々木義武君
        (科学技術庁原 
        子力局次長)  法貴 四郎君
        厚生政務次官  内藤  隆君
        厚生事務官
        (大臣官房長) 森本  潔君
        厚 生 技 官
        (公衆衛生局
        長)      尾村 偉久君
        厚生事務官
        (社会局長)  高田 正巳君
        厚生事務官
        (保険局長)  太宰 博邦君
 委員外の出席者
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局アイソト
        ープ課長)   鈴木 嘉一君
        大蔵事務官
        (主計官)   岩尾  一君
        厚 生 技 官
        (保険局医療課
        長)      館林 宣夫君
        厚生事務官
        (年金局福祉年
        金課長)    高木  玄君
        専  門  員 川井 章知君
    ―――――――――――――
十一月九日
 委員伊藤よし子君辞任につき、その補欠として
 阿部五郎君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員阿部五郎君辞任につき、その補欠として伊
 藤よし子君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十一月六日
 保健婦、助産婦及び看護婦の産前産後の休暇中
 における業務の正常な実施の確保に関する法律
 制定に関する請願(小林絹治君紹介)(第二一
 号)
 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
 法の一部改正に関する請願(板川正吾君紹介)
 (第五九号)
 同(柏正男君紹介)(第六〇号)
 同(荒舩清十郎君紹介)(第一二八号)
 同(小沢貞孝君紹介)(第一二九号)
 同(加藤勘十君紹介)(第一三〇号)
 同(吉川久衛君紹介)(第一三一号)
 同(堀昌雄君紹介)(第一三二号)
 同(山下榮二君紹介)(第一三三号)
 業務外の災害によるせき髄損傷患者援護に関す
 る請願(柏正男君紹介)(第六一号)
 豊富町に開拓基幹病院設置に関する請願(芳賀
 貢君紹介)(第六六号)
 社会福祉施策の整備促進に関する請願(池田清
 志君紹介)(第九二号)
 牧園町の有村、殿湯両地区の簡易水道布設に関
 する請願(池田清志君紹介)(第九三号)
 せき髄損傷患者の援護に関する請願(田中龍夫
 君紹介)(第九四号)
 動員学徒犠牲者援護に関する請願(田中龍夫君
 紹介)(第九五号)
 失業対策事業の労力費、補助基本日額引上げに
 関する請願(原茂君紹介)(第一三四号)
同月十日
 老人憲章制定に関する請願(池田清志君紹介)
 (第一七九号)
 原爆被害者救援に関する請願(受田新吉君紹
 介)(第一八〇号)
 同(野原正勝君紹介)(第一八一号)
 同(綾部健太郎君紹介)(第三一二号)
 同(井岡大治君紹介)(第三一三号)
 同外二件(石橋政嗣君紹介)(第三一四号)
 同外八件(石村英雄君紹介)(第三一五号)
 同(一萬尚田登君紹介)(第三一六号)
 同外一件(大橋武夫君紹介)(第三一七号)
 同外四件(大原亨君紹介)(第三一八号)
 同(大西正道君紹介)(第三一九号)
 同(加賀田進君紹介)(第三二〇号)
 同(勝澤芳雄君紹介)(第三二一号)
 同(勝間田清一君紹介)(第三二二号)
 同外二件(金子岩三君紹介)(第三二三号)
 同(神近市子君紹介)(第三二四号)
 同(柏正男君紹介)(第三二五号)
 同(菊地養之輔君紹介)(第三二六号)
 同外二件(木原津與志君紹介)(第三二七号)
 同(久保田鶴松君紹介)(第三二八号)
 同(栗原俊夫君紹介)(第三二九号)
 同(五島虎雄君紹介)(第三三〇号)
 同(小松幹君紹介)(第三三一号)
 同(阪上安太郎君紹介)(第三三二号)
 同(佐々木更三君紹介)(第三三三号)
 同外一件(志賀健次郎君紹介)(第三三四号)
 同(杉山元治郎君紹介)(第三三五号)
 同(高田富之君紹介)(第三三六号)
 同外二件(田口長治郎君紹介)(第三三七号)
 同(田中伊三次君紹介)(第三三八号)
 同(田中武夫君紹介)(第三三九号)
 同外二件(綱島正興君紹介)(第三四〇号)
 同(渡海元三郎君紹介)(第三四一号)
 同(戸叶里子君紹介)(第三四二号)
 同(中崎敏君紹介)(第三四三号)
 同(永田亮一君紹介)(第三四四号)
 同(中原健次君紹介)(第三四五号)
 同(中村幸八君紹介)(第三四六号)
 同(中村英男君紹介)(第三四七号)
 同(西村英一君紹介)(第三四八号)
 同(西村力弥君紹介)(第三四九号)
 同外二件(馬場元治君紹介)(第三五〇号)
 同(原健三郎君紹介)(第三五一号)
 同(平岡忠次郎君紹介)(第三五二号)
 同(廣瀬正雄君紹介)(第三五三号)
 同(堀昌雄君紹介)(第三五四号)
 同(山下榮二君紹介)(第三五五号)
 同(山本猛夫君紹介)(第三五六号)
 国立病院等に勤務する医師及び歯科医師の待遇
 改善に関する請願(勝間田清一君紹介)(第一
 八二号)
 同(池田清志君紹介)(第二六五号)
 同(勝間田清一君紹介)(第二六六号)
 中小企業退職金共済事業団の組織運営の改善に
 関する請願(吉川久衛君
 紹介)(第一八三号)
 同(中澤茂一君紹介)(第一八四号)
 同(原茂君紹介)(第一八五号)
 同(松平忠久君紹介)(第一八六号)
 けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護
 法の一部改正に関する請願(中澤茂一君紹介)
 (第一八七号)
 同(石山權作君紹介)(第三一〇号)
 同(五島虎雄君紹介)(第三一一号)
 国民健康保険審査事務費国庫負担に関する請願
 (池田清志君紹介)(第二六四号)
 新日本国民厚生特別公社設立等に関する請願
 (永田亮一君紹介)(第二六七号)
 原爆被害者援護に関する請願(逢澤寛君紹介)
 (第三〇七号)
 同(黒田寿男君紹介)(第三〇八号)
 同(小枝一雄君紹介)(第三〇九号)
 動員学徒犠牲者援護に関する請願(大橋武夫君
 紹介)(第三五七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
十一月七日
 民生安定事業費全額国庫負担に関する陳情書
 (横浜市議会議長津村峯男)(第七九号)
 千島、歯舞諸島よりの引揚者に対する援護等に
 関する陳情書(横浜市議会議長津村峯男)(第
 一〇八号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 小委員会の設置並びに小委員及び小委員長選任
 に関する件
 派遣委員より報告聴取
 厚生関係の基本施策に関する件
     ――――◇―――――
#2
○永山委員長 これより会議を開きます。
 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。診療報酬及び薬価に関する調査をなすため小委員十一名よりなる診療報酬及び薬価に関する小委員会を、また医療制度に関する調査をなすため小委員十名よりなる医療制度に関する小委員会をそれぞれ設置することとし、各小委員及び小委員長の選任につきましては委員長に一任を願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○永山委員長 それでは診療報酬及び薬価に関する小委員には
      池田 清志君    大石 武一君
      田中 正巳君    八田 貞義君
      藤本 捨助君    柳谷清三郎君
      岡本 隆一君    小林  進君
      滝井 義高君    中村 英男君
      今村  等君
を指名し、小委員長には藤本捨助君を指名いたします。
 また医療制度に関する小委員には
      大石 武一君    大橋 武夫君
      田中 正巳君    八田 貞義君
      藤本 捨助君    柳谷清三郎君
      多賀谷真稔君    滝井 義高君
      八木 一男君    堤 ツルヨ君
を指名し、小委員長には田中正巳君を指名いたします。
 なお小委員及び小委員長から辞任の申し出がありました場合は、その許可について委員長に御一任願うこととし、小委員及び小委員長に欠員を生じた場合の補欠選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○永山委員長 御異議なしと認め、さ
 ように決しました。
     ――――◇―――――
#5
○永山委員長 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 発言の通告がありますので、順次これを許します。八田貞義君。
     ――――◇―――――
#6
○八田委員 監査問題について大臣にお尋ね申し上げたいのです。前の委員会で監査問題について御質問申し上げましたが、埼玉県の加藤医師の自殺事件でございます。これは動機が監査にあったというふうなことが伝えられております。これは非常に全医界に大きなショックを与え、この自殺事件を契機として監査の方法に改善刷新の方法が講ぜられてしかるべきだ、こういう意見が圧倒的に多いわけです。前の委員会におきまして詳細に質問申し上げ
 たわけでありますが、その後において厚生当局としてどのような改善刷新の方法をお考えになったか、あるいは改善刷新の方法としてどのような腹案を持っておられるか、これを大臣から一つ御答弁願いたいと思います。
#7
○渡邊国務大臣 埼玉県事件の真相に
 つきましては、先般事務当局よりるる申し上げた通りでございまして、われわれも追憶である点につきましては十分認めております。今後の監査制度に
 ついてどういうような処置を講ずべきか、あるいはすでに処置をとったかということについては、私どもといたしましてはよりより協議いたしておりますが、監査の点につきましては十分にやわらかな気持を持って、そして取り締まるというよりも指導という点に重点を置いて、そして今後この監査制度というものが、円満に医療行政が遂行されるようにいたしたいと考えております。
#8
○八田委員 大臣から御答弁のように、監査というものは指導であって、指導は愛と寛容でいかなければならぬ。まことにごもっともでございます。ただ今日の監査のやり方が、患者の実態調査が主要になって、それで監査がやられていくわけです。患者の実態調査というものについての信憑性というものは、これはいろいろと問題のあるところであります。これを基本にしてやっていくところに問題があるのでございますから、こういった患者の実態調査というものが法的に裏づけがあって、患者の実態調査というものが監査の基本資料をなすものであるというふうには私は考えていないわけです。これがいわゆる法的な裏づけがなくて、今までの慣習というならば慣習でやられておる、こういうことなんですね。ですからそのやり方が非常に問題になっておるのでございまするから、このやり方を変えていかなければならぬ。患者の実態調査というものを基本としなくても他のやり方があるだろう。また患者の実態調査をやるにしても、今まで厚生省が主となってやってきた監査の方法を、もっと民主化されたような方法でやろうじゃないか、こういうようなことを考えるわけです。
    〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
この点について、指導は愛と寛容でやらなければならぬ、こう言うのであります。ところが患者の実態調査というものは、巷間伝えるところによれば特高警察的な調べ方でやられておるのだ。しかもその調べ方によって得られた資料というものがはなはだ信憑性において乏しい、こういうところに問題があるのです。この点をお尋ねをしておるのでございますから、この点についての御答弁をお願いしたい。
#9
○太宰政府委員 便宜私からお答え申し上げます。監査をいたします場合に患者の実態調査をやるということに
 ついてのお尋ねでございますが、これは今日においては医療はお医者さんと患者との間に行なわれている、それの支払いの点だけがいわゆる保険者の方に回ってくる、それでその場合に、はたしてその医療の内容が適正であったかどうかということについて指導的な監査をいたすわけでございます。どうしてもその場合に、医療を受けた患者の方についてもある程度調べなければならない、それでないと監査の実があがらない、こういうことになるわけであります。これは指導の点についても同じようなことが言い得ると思うのであります。ただ書類の書き方が字がきたないとかどうとかいうような指導ならば格別でございますが、医療の内容が適正に、効率的にいくようにという指導をいたします場合には、やはりそれについては、場合によってはそういうこともいたさなければならぬ点があろうと思います。監査につきましては、そういう意味で少くとも医療を受けた人の話を聞いてからでないと、適切な、公正な監査もできないわけでございます。従いまして私たちは今日の制度のもとにおきましては、どうしても患者の実態調査ということはやらねばならぬ。しかしながらそのやり方については十分また、何と申しますか、御指摘のような特高的な面になることがもしありといたしますならば、これは十分に気をつけてやらなければいけない。しかし、そういう点はもちろん考えていかなければなりませんし、また人間でございますから、記憶というものについてもあるいは薄れることもあるかもしれません。そういうようなものも十分考慮に入れてこれの使い方というものを考えなければならぬ、こういうことは私どもも常々注意いたしておるところであります。今後さらに注意したいと思います。ただしそれのやり方として、民主化された方法というのはどういう意味かわかりませんが、これは一つ考えねばならぬ点があると思います。というのは、そういうような面について、あまり多くの人が行って、大っぴらで調査するようなことは、あるいはその患者の方の立場というものもあろうかと思います。まあそういうような点は、何もこれでもって患者の人をきめつけるわけではございません。そういうようなやり方については、必ずしも大っぴらに大勢の人が行って聞くのがいいということは私は言えないと思います。要するにそれがどれほどものをいうか、あるいはどの程度の心がまえでやるか、こういう問題であろうと思います。
#10
○八田委員 今の局長からの答弁にありますように、実態調査をもとにしてきびしい監査を行なうということは、法的な面から見ましても、また人間の記憶の信憑性から見ましても問題のあるところでございます。結局やり方の問題になって参りますが、やり方の問題としまして、一体厚生当局としまして、特に大臣といたされまして、事前の患者立ち入り調査というものを改めて、地元医師会とともに慎重な下調査をやる考えはあるかどうか。もう一つは、監査よりもむしろ医師会よりの指導強化の方式が非常に民主化された合理的な方法と考えるのでありますが、この点についての大臣の御見解をお伺いしたい。
#11
○渡邊国務大臣 たいへんけっこうな御意見でございまして、そういう方向で指導いたしたい、かように考えております。
#12
○八田委員 非常に大臣から率直明快な御答弁がございました。ありがとうございました。
 それでもう一言大臣にお願いしたいのですが、できるならば監査というものはなくしてしまうのが一番いいのですが、今の方法として、結局医師会の指導強化というものを中心とした監査をやっていくのだ、こういうことでやっていかなければならぬのですが、今までの厚生省の一体監査のやり方というものを簡単に触れてみますと、保険局でやっておられる監査方策というものはあまりにも観念的であって、かつ行政管理上監査事務そのものを甘く見くびっているようなところがたくさんあります。監査に従う技官陳の貧弱というものは非常に目につくのですね。こういうところが、厚生省が今までやってきた監査行政というものが非常に貧弱で、しかも手を抜いておるといえば手を抜いているというような格好になっている、大切な問題です。ですから、この点は先ほど申し上げましたような対策の二つの基本点、すなわち事前の者患立ち入り調査を改めて地元医師会とともに慎重な下調査をする。それから監査よりもむしろ医師会よりの指導強化の方式、これが一番民主化された合理的な方法になってくるわけです。
 次いで、一体どのような方法が一番末端の医師諸君が望んでおられるかということを、いろいろな医師会関係の雑誌に投書された、そういった声をここで大臣に申し上げまして、そうして御参考に供したいと思います。まず今まで医師会の真実な叫び、どうかこういうふうに監査というものはあってほしいというところの叫びを全部総括して申し上げてみますと、まず厚生省によるところの保険医の直接監査というものを廃止してほしい、これが大きな命題になっております。監査に関する基本線だけを厚生省は決定して、そうして地方庁に一応指令するのだ、これが第一の段階になっております。すなわち一切の監査事務を地方庁に委譲するようにしてほしい。第二段階といたしましては、委譲を受けた地方庁は各都道府県医師会長と緊密に連絡協調して、厚生省指令の基本線に沿うように
 一切の監査事務を遂行するのだ。すなわち地方庁というものは事務的に指導監督すべきで、保険医についての医療監査というものはあげて都道府県医師会執行部に代行せしめるのだ、こういう第二段階を作ってほしい。その次の段階として、各都道府県医師会は保険医の監査事務を遂行するために監査委員会を設ける。この監査委員会というものは当該郡市区医師会より各一名の委員を互選して、そして構成するということ、これが第三の段階です。この下の一番最後の段階として、各郡市区医師会はその選任された一名の委員を中核としてさらに小委員を設けて、地元会員の医療内容その他の診療上の事務操作に関して常時指導を強化していく、こういった一つの方式というもの、体系というものを作り上げてほしいというのが現在末端において診療に当たられておるところの医師の方々の要望でございます。これを大臣に申し上げまして、この医師会の声を頭の中に入れられまして早急に民主化された、しかも合理化されたところの監査というものを実現していただくようにお願いいたしまして私の質問を終わりますが、さらに大臣の御答弁をお願いします。
#13
○渡邊国務大臣 御意見はごもっともでございますが、全部医師会にこれが監査をおまかせするという段階じゃまだございません。医師会の意見を十分尊重いたしまして、最も民主的に指導的な監査をするようにいたしたい、かように考えております。
#14
○太宰政府委員 今の大臣のお話でおわかりいただけたと思いますが、監査権というのはこれは行政権であり、厚生大臣の権限でございます。その前提として監査、調査ということにつきましては、大臣から申し上げたように、そのやり方などについて医師会の意見を聞くことはありましても、医師会にまかせることはできないことであります。これは申し上げておきます。それからただ、大臣が申されましたように、監査というものはやはり指導という意味のあたたかい気持でやるというのが本旨でございます。その前提といたしまして、監査のほかに指導というものがあっていいじゃないか、これは当然でございます。この指導となりますれば、何もこれは行政官庁だけが指導しなくても、たとえば医師が所属しております医師会なども十分指導する。ことに今度の埼玉事件のような場合に、私どもが一番遺憾に思います点は、おそらくあの場合に加藤医師は良心的に診療なさったのでありましょう。しかしカルテの書き方その他というものについて、これが忙しいということでほとんど奥さんなり家庭の人にまかせっきりになったところにそもそもの間違いが出てきたのじゃないだろうか。それは結局保険診療というものについては、事務という点をどうしてもある程度お願いしなければいかぬ、必要最小限度の事務というものだけは果たしてもらわなければいけない点がルーズになっておる。この点につきましては、私どもさらにそういう意味の指導というものをしなければならぬ。これは関係の団体においてもその感を非常に深くしておられるようでありまして、指導という面につきましては十分に医師と手をつないで、そういう面で努力して参りたい、かように考えておる次第であります。なお、あと地方の第一線の方々のいろいろの声というものを承りましたが、これは十分検討させていただきたいと思います。
#15
○八田委員 もう一ぺん。今ちょっと重大な点を聞き漏らしておるかもしれませんが、この問題について今まで日本医師会とお話し合いをされたことがございますか。またこれからおやりになるというようなお話だったのですが、今まで何か話し合いをされましたか。
#16
○太宰政府委員 関係の方面とは非公式に、どうして指導をよりよくしていこうかということについては話し合いをいたしおります。
#17
○八田委員 非公式にお話をお進めになったそうでございますが、どうか一つ大臣、指導というものは愛と寛容でなければならぬのですから、指導の面においてただいま申し上げましたような、ほんとうに愛と寛容に沿った方法でやっていただくようにお願いいたします。
#18
○渡邊国務大臣 わかりました。
#19
○藤本委員長代理 伊藤よし子君。
#20
○伊藤(よ)委員 私は九月末に社労関係の視察のために広島へ参りまして、広島の原爆病院を視察する機会を得ました。私は原爆のおそろしさは理論的にはよく存じておりましたが、現実に平和記念館を参観し、また原爆病院を視察しまして、なまなましい被災者の姿に触れ、今さら原爆のおそろしさに身ぶるいをいたしたわけでございます。原爆が落とされた直後ならいざ知らず、十五年もたちました今日においても、ぽつんぽつんと原爆病のために死んでいく人が絶えないということと、昨日まで元気に働いておりました人が急にからだの調子が悪くなって、いろいろ調べてみると、白血球が少なくなって原爆症であるということのために入院するというような人もおりますことを伺いまして、重ねてそのおそろしさが非常に身にしみたわけでございます。それにつきましては、私はこの病院でいろいろ患者の方にお会いしてお見舞をしている間に気がつきましたことでございますが、入院していらっしゃる方の九割近くが婦人であるということでございます。しかもその御婦人の中にはおばあさんのような方が多いわけでございます。つまり生活の担当者でございます未亡人だとか男の方が割合に少ないわけでございまして、男の方で入院していらっしゃる方のお話を伺いましたら、いろいろ生活の問題もあって、働いているとだんだん白血球が少なくなって苦しくなってくるので、入院してしばらくたつと幾らかよくなる、そこで退院して働いている間に、また苦しくなって入院するといったようなせっぱ詰まった方が入院していらっしゃるという実情をお伺いしたわけでございます。そういう点から考えてみまして、私はこの原爆症にかかった方がほんとうに安心して入院治療ができるような状態になっていないのじゃないかという点を非常に感じたわけでございます。またいろいろ病院側で聞いてみますと、原爆症にかかっている人の三割近くが生活保護層の方で、またその三割くらいがボーダー・ラインの方たちだということでございました。これらの人々が、ただいま申し上げたような観点からいたしましても、生活問題のために安心してせっかくある医療制度も活用できないのではないかということを感じたわけでございますが、こういう点について御当局のお考えを伺いたいわけでございます。
#21
○渡邊国務大臣 原爆被害者に対しましては、原爆被爆者の医療に関する法律でできるだけの医療保障をやっておるような現在でございます。生活にお困りの方に対しましては、生活保護の規定によりましてできるだけ手の届くように私どもが措置を講じておる次第でございますが、今後この点につきましても、なお一層下部に対する始末について徹底的な措置を講じていきたい。現在のところは生活保護と医療保障、こういう二つの面でやっておるわけでございます。ただ非常に生活にお困りで、この御本人が病院に通っておるうちに家庭が困っておられるという面につきましても、そういう場合におきましては、家族を対象といたしましたところの生活保護という面につきまても十分に考えておるわけでございます。
#22
○伊藤(よ)委員 その生活保護の制度は、ただいま大臣おっしゃったような制度があると思うのでございますが、現在の生活保護の範囲内ではとても原爆症に対する抵抗力を増すというようなことには参らないと思うわけでございます。こういう点について、私はもっと普通の生活保護でない何かお考えをいただかなければならぬということを感じるわけでございますが、ただいまで十分とお考えになっているのか、もう一ぺんその点をちょっとお伺いしたいと思います。
#23
○渡邊国務大臣 その他、世帯更生資金の貸付や、お年玉寄付金の制度等も活用いたしまして、できるだけ広範囲に援護措置を講じているような次第でございます。
#24
○藤本委員長代理 大原君。
#25
○大原委員 ただいま伊藤委員からもお話がございましたが、私はこれから、原爆被爆者の医療法を援護法に改正すべきではないか、その問題点でございます治療のワクの拡大や、あるいはそれらを通じて放射能の影響とか、あるいは治療の研究、こういう問題や、あるいは医療の裏づけになる生活保障の問題、遺族の援護の問題、こういう問題を中心といたしまして、広く放射能等の関係もございますから科学技術庁、あるいは原子爆弾の間際法上の問題もございますから外務省の条約局長、大蔵省その他厚生省以外にも関係者の皆さんに対して御質問をいたしたいと思います。
 昨年来、橋本厚生大臣、それから坂田厚生大臣、これはバッターの交代するのが非常に早いので、審議をいたしておりまして、だいぶんその趣旨については御理解いただいておいたのですが、なかなか政府の態度の決定が促進をされていない、こういうふうに私どもは大体において推測いたしました。しかし、与党の皆さん方も非常に熱心であるし、今や国民の世論も、もうこの問題については、医療法を援護法へ踏み切るべき段階にきておると思います。従って、前の大臣はどの大臣も、どうも立法上の客観性の問題からいろいろ問題があるというふうにお話しでございました。しかしこの問題につきましては、とにかく趣旨については、実際に現場へ行ってみても、これは人道上も看過できないので、何とか研究しよう、こういうことになっておったのであります。前の大臣のままでありましたら、どういう研究をされたかということで、事務当局を含んで御質問をいたすことになるわけですが、特に厚生大臣は新しく御就任になりまして、この問題を一つぜひとも正しい理解の上に立って御努力いただきたいと思うのです。原爆の被爆の実相につきましては、アメリカが落としたという点もありまして、占領中は、被爆の実相が伝わらなかった。しかし、昭和二十七、八年ごろから、特にビキニの水爆実験以来、非常に放射能に対する関心が深まったことは御承知の通りです。そこで、放射能に対する関心が深まってくると一緒に被爆の実相というものが明らかになって参りまして、広島、長崎を中心といたしまして、今全国に約三十万人のいわゆる被爆者がおると言われておるのですけれども、この問題はたくさんの人の関心を呼んでおる。特に造血機能、増殖機能、こういうものに影響があるということで、特に増殖機能の関係から遺伝の問題が出てきておるのであります。
    〔藤本委員長代理退席、八田委員長代理着席〕
 御承知のように被爆はその落ちましたときの熱風と、それから空気が異常に膨張いたしまして、爆風が起きて参りまして、それからその瞬間には、放射線で中性子とかガンマー線とかいうふうに専門家にいわれている放射線がございまして、塵埃やその他雨等にまじりまして人体に入ってくる、こういうことがございました。それだけでなしに、今申し上げたように二次放射能、残留放射能といわれているものが非常に人体に影響を及ぼしておって、学徒動員などで死体を運搬いたしましたり、そういういろいろな仕事をやりました人も、やはりそういう原爆症の症状を呈する、こういうことであります。しかもそれらの人々が三十万人をこえるというのです。一瞬のうちに死んだ人が広島、長崎の中で三十万人、そうして被爆者が三十万人、これが全国に散らばっておるわけです。それが最近の原水爆の実験等の放射能の増加によりまして、被爆者に対し非常に大きな心理的影響を与えているわけです。従って、先ほど申し上げたように、四つの点について、逐次これから御質問申し上げますけれども、私がまず最初に大臣の御所見を伺いたい点は、ついせんだっても、こういう情勢の中で政府の施策は伸びてない、あるいは研究も進んでないということから、去る十一月一日の午前六時二十分、これは新聞に出ておるところによりますると、東京都港区青山の神宮外苑テニス・コートのわきで、若い父親と、病院の母親より連れ出した生後十二日の赤ちゃん、女の子ですが、これが心中をしておった。その若い父親は原爆症遺伝の不安におののいておった。最近白血球が減少しており、不具の子が生まれたのを苦にいたしまして、子供を連れて心中をいたしたというふうに伝えておるのであります。そのお父さんの方は長崎の造船所で学徒動員で働いておった。そのときに被爆いたしまして、四日間爆心地をさまよって、残留放射能の影響も受けた。こういうことであります。この問題はいろいろな角度から問題となると思うのですが、まことに残酷で非人道的なことであると思うのです。三十万の人が全部そういう精神的な大きな恐怖や影響を受けておる、こういうことは断定はいたしませんけれども、ともかくも現実に原水爆の実験も続けられて、放射能もふえておる、こういう状況におきまして、これはやはり非常に大きな社会問題であると私は思うのです。厚生大臣はこのことにつきまして何とお感じになりますか、その点をまず最初に率直にお伺いいたしたいのであります。
#26
○渡邊国務大臣 近ごろ放射能問題は、だんだん世間の関心が高まって参りまして、われわれ関係当局といたしましても、これに対しまして十分な対策を立てなければならぬ、こういうふうに考えております最中で、早急にこの結論を見出したいと考えます。
#27
○大原委員 厚生大臣と科学技術庁の長官にお尋ねをいたしたいのですが、最近、十月の二日に湯川博士やノーベル賞を受けましたアリメカの化学者であるポーリングという博士など五人が、フランスの科学アカデミーへ報告書を出しました。その中に、先ほど厚生大臣にはお話し申し上げたのですが、あとで逐次科学技術庁の長官にも御質問申し上げるのですが、広島、長崎の原爆被爆者で放射能を受けた人が、さらにその後の実験の結果による放射能を次々と受けていくわけでありますが、その報告書によりますると、その一つに、基礎的な算定によれば、「一個の核爆発から出る放射能は一万三千人の異常児の出産を引き起こす。」これは先般新聞に出ておりましたが、代々木で父親が生後十二日目の赤ちゃんを連れて心中したという話を今したわけでありますが、そういう一万三千人の異常児の出産を引き起こす。「過去の核実験はすでに十四万人の異常児の出産を引き起こしている。」
 もう一つは、「核実験によってすでに生じた相当量の炭素14は、将来百二十三万人の異常児を生み出すに十分な量である。重大な遺伝的影響が多くの世代にわたって及ぼされよう。」
 それからもう一つ調べてみますと、「これらの数字に立った基礎算定は、過去の核実験によりすでに放出された放射能は現在生きている人々のうち、十四万人に白血病と骨髄ガンによる死をもたらし、約百万人に各種のガンを発生させることを物語っている。」こういう報告書を出しました。こういう放射線の影響について、これを政治の面に取り上げておるのは、科学技術庁と厚生省が二本柱であると思うのですが、こういう放射能の影響、あるいは広島、長崎に落ちました原子爆弾の放射能の影響、こういうものは科学技術庁の方においては、新しくできました研究所において取り上げられておるんですか、あるいはどこで取り上げているんですか。
#28
○中曽根国務大臣 放射線の障害予防という問題は、日本にとって非常に重大な問題でありますから、政府といたしましては、関係各省といろいろ協力してやっております。科学技術庁関係といたしましては、さきに国会の御協賛によりまして、放射線医学総合研究所というものを千葉に作りまして、今その基礎研究部門を充実させておる最中であります。この基礎研究部門といたしましては化学、物理、生物、生理病理、障害基礎、環境衛生、臨床、この七つの研究部を作りまして、今その基礎的な研究を努力してやっておる最中であります。なお基礎研究に伴いまして、臨床実験が伴わないといけませんので、病院を今作っておりまして、近く着工の上三十五年末に完成して、三十六年一月から開院して病人を収容して、研究と同時に治療に充てる予定であります。
#29
○大原委員 厚生省の方には、公衆衛生上の見地からのいろいろの研究機関がありますが、こういうふうに次から次へと具体的な数字をあげて、遺伝の問題等を含んで、放射能の影響というものが発表になっておるのです。だからその問題についてどこが責任を持って取り上げ、そうして国民に対して正しい認識のもとに、それぞれの対策を立てる、こういう面について厚生省はどういうところで扱っておるのですか。
#30
○中曽根国務大臣 今の放射線障害に関する基準という問題については、国際的にも委員会がありまして、日本からは都築博士が行っております。そうしてこの委員会で関係各国がデータを持ち寄って、国際的な基準を作るように努力しておりまして、例のいわゆるICRPの勧告が出ておって、大体その基準を設定しておるのであります。その基準を越さないように、むしろそれをさらに下回るくらいに科学技術庁の告示が出ておりまして、告示の許容量内に原子炉あるいはラジオ・アイソトープの取り扱い基準を設定しておる次第であります。
 なお遺伝やその他の問題については、遺伝というものは非常に長期の観測をしなければわからぬものでありますから、まだ推測の範囲を出ないと思います。湯川さんが声明のようなものをフランスのアカデミーか何かに出したということを私も聞いておりますが、あれも一応の試算であって、そう権威のあるものではない、ただ同好の人々がそういう試算を出したという程度であろうと思うのです。現にそれはICRPの中には取り入れられておらないのを見ましても、そういう程度のものであると私は推測しております。
#31
○大原委員 ICRPつまり放射線防御国際委員会はその勧告の中において、生殖年令到達までに、つまり結婚年令だと思うのですが、累加放射能が二十五レントゲンをこえないように措置をすること、こういうふうに出ておるようであります。その勧告を受けるのは科学技術庁なんですか。もう一つその次に、科学技術庁はそれを受けて、それを公示するだけなんですか。これは公衆衛生の面から非常に大きな問題です。特に広島、長崎の被爆者はこの取り扱いについて非常に大きな関心を持っておるわけです。だから、権威のあるものではないと長官は言われたけれども、そういう責任官庁なり経路なりは、はっきりいたしておりますか。
#32
○中曽根国務大臣 総理府に放射線審議会というものがございまして、その放射線審議会が国際委員会等の状況をよく調べて、国内基準を作っておるのであります。そして放射線審議会の事務局は、科学技術庁が担当しております。その科学技術庁の長官の告示をもって、今のような国内許容量をきめております。従いまして国際的な基準を上回らないように、国内的にも厳重に取り締まっておりまして、たとえばレントゲンにいたしましても、あるいはその他の普通のラジオ・アイソトープの取り扱いにいたしましても、あるいは原子炉を設定する場合の基準につきましても、その基準によって厳重に取り締まっておる次第であります。
#33
○渡邊国務大臣 厚生省におきましては、原水爆関係の連絡調査会というものを公衆衛生局を中心に作りまして、各省と連絡をいたし、あるいは省内におきまして、これが対策並びに援護措置等につきまして、十分調査研究を進めておる次第であります。
#34
○大原委員 これは公衆衛生上の問題ですから、調査研究だけじゃしようがないが、厚生大臣にはあとでまた伺いましょう。それで科学技術庁の長官に伺いますが、普通人の放射能の許容量はどれだけなのですか。
#35
○中曽根国務大臣 ICRPの勧告及びわが庁の告示につきましては、関係政府委員に説明いたさせます。
#36
○佐々木政府委員 ただいまのところでは、一週間三百ミリレントゲンでございます。
#37
○大原委員 普通の人の一週間の放射線許容量は、今の御答弁のように、外部照射で〇・三レントゲンだが、広島、長崎両被爆者の六〇%以上は、一瞬のうちに五レントゲンを上回る放射能を受けている。このために被爆者の半数以上が今なお病気がちだ、こういうふうに言われておるのです。だから〇・三レントゲンが許容量である場合に、広島、長崎の被爆者の受けたレントゲン、これは私の調査によりますと、そういうふうになっておるのですが、あなたの方の御見解はどうですか。これはおそるべきことですよ。
#38
○法貴政府委員 技術的問題なので、私の方からお答え申し上げます。三百ミリレントゲンというのは、〇・三レントゲンでございますが、それに比べて原爆を受けましたときの線量というものは、一時的でありますが、非常にそれを上回る量になるということは当然のように考えられます。
#39
○大原委員 累加放射能ですね。その後の実験によりまして、放射能がだんだん多くなっていくわけですが、その影響を広島や長崎の被爆者、全国で三十万に余る被爆者は受けるわけですけれども、そういう許容量という関係の研究は科学技術庁だと言われましたが、科学技術庁の方では研究の結果、どういう御見解を持っておられますか。
    〔八田委員長代理退席、委員長着席〕
#40
○中曽根国務大臣 広島、長崎の原爆の場合は、そういう防護措置や何かを全然考えないで、戦争行為でああいう強力なものを突如としてやられたものですから、われわれが考えておる許容量以上のものを受けたことは当然と思います。またそのために非常な災難が降りかかってきたことも考えられるわけであります。しかし、ああいう悲劇にもかんがみまして、わが国はその後はそのような悲劇を再び起こさないように、レントゲンあるいは放射線の防護につきましては非常に厳重な管理を行なっておりまして、今のような基準を設定して注意しておるわけであります。それで現在、広島市や長崎市における放射能の程度はどういうふうであるかということは、もちろん許容量の範囲内にあると思いますが、一たん受けられた方々が体内にいろいろな現象を起こしておるということは、またそういう宣言を受けたわけでありますから当然考えられることでありまして、これは今やっている規制の問題とは別に、医療の問題としてわれわれは考えなければならぬ問題だと思います。
#41
○大原委員 その点はいいのです。私がお尋ねしたいのは、基礎的な研究、影響の研究が広島、長崎を含んでなされておるのかどうかということを一つ聞きたいのと、あなたの御答弁の中で、許容量を上回っていないということを言われたのですが、放射能というのは、私は医学の専門ではございませんけれども、一年や二年で蒸発するようなものではないらしいですね。これは何千万年だと言う人もおるわけで、その他いろいろ言われております。だからそういうことについては研究をしておられるのですか。この二つの点について、あらためて御質問いたします。
#42
○中曽根国務大臣 放射線医学総合研究所におきましては、そういうことをすべて含めて基礎研究の中に入れてやっておるわけであります。
#43
○大原委員 どういうスタッフと、どのくらいな人員と予算でやっておられるか。
#44
○中曽根国務大臣 放射線医学総合研究所におきましては、現在百六十三名、今まで使った予算は約十三億円であります。そうしてさらに研究の充実をはかるために、薬学と遺伝の二研究、それから技術、それから東海村の原子力研究所の中に東海支所、それから先ほど申し上げましたような病院部の新設を今はかっておる最中でありまして、さらに来年度といたしましては百八十七名の定員の増加を要求しておる最中であります。
#45
○大原委員 長官はなかなか明快な御答弁をされるのですが、この科学的な知識においてはやはり十分じゃないと思うのです。あなたの御答弁の中で許容量の問題に触れたのですが、許容量については、広島、長崎の被爆者は累加放射能その他の影響によって許容量を越えるから、いろいろな障害が身体にあるでしょう。だから全般的に見ましてそういう点の実情はどういうことになっておるのか。私はこれからの総合研究機関の問題、現在の研究機関のあり方の問題について御質問をしようと思いますが、そういう実態を把握されておりますかと聞いたら、把握されておる、許容量は越えておりませんと簡単に言われたが、そうでないから問題になっているんですよ。
#46
○中曽根国務大臣 現在の広島市や長崎市はもちろん許容量の範囲内であるわけです。さもなければあぶなくて人なんか住めませんし、その点は調べまして許容量以下であるということでやっておるわけであります。しかしあのときに原爆を受けられた方は、すでにもう受けておるわけでありますから、そのために障害が起きておるわけであります。それは医療の問題で、むしろ厚生省の方のお医者さんの研究の問題である。それと同時にわれわれの方は、放射線障害ということが今申し上げました総合医学研究所の研究題目でもあるのですから、そういう問題を基礎研究の中に入れてやっておるわけであります。そうしますと、つまり医療という意味の問題と、それから研究の問題と、あの問題には二つあるわけであります。われわれの方はその基礎研究の一つの素材として研究の中に入っておるということを申し上げておるわけであります。
#47
○大原委員 影響については科学技術庁ですね。それから治療とか医学上の問題の研究は厚生省ですか。
#48
○中曽根国務大臣 そうです。
#49
○大原委員 厚生大臣、間違いありませんか。そういう分野がはっきりしていないじゃないですか。どこで研究しておりますか。その影響を含んで医療の問題を衛生上の見地から研究しておるのはどこですか。
#50
○渡邊国務大臣 先ほど申し上げました連絡調査会におきまして、環境衛生部会におきましては大気、水、土、食品衛生部会において食品の問題、医学部会において患者の医療あるいは医術的な見地からこれを検討いたしております。これは学者及び関係各省のいわゆる権威ある専門家をもってこれに充てておるような状況であります。
#51
○大原委員 広島や長崎の被爆者の放射能の影響については科学技術庁が一応やると今言ったのだが、その治療の研究とかそういうものはどこで扱っておるのですか。
#52
○尾村政府委員 広島、長崎の被爆者の医学上の問題でありますが、これは終戦後から、境地に国立予防衛生研究所の支所を設けてあります。これは広島の方が二十八名、それから長崎の方は十二名の職員を置きまして、これが調査研先を直接一部分担しております。
 それからなお、ただいま大臣から申し上げました原爆被爆に関する調査連絡協議会、この協議会自身は研究は直接いたしておりませんが、国内の放射線あるいは広島、長崎に関する診断、治療につきましては、関係の幾つかの大学研究室が、これは学問研究として相当突っ込んでやっております。これらの研究をこの調査会でまとめまして、分担等も連絡調整して総合能率を上げる、こういうことになっておりますので、従いまして、研究の機関とも言えるわけでございます。そのほかにもう一つは、日本学術会議の中に放射線影響調査特別委員会というのがございまして、これが先ほど御意見に出ましたICRP等の勧告等につきましても詳しく小委員会を作りましてやっておられまして、しかもこれの参加委員は同時に、厚生省の所管であります先ほどの原爆の調査連絡協議会の委員を相当数が兼ねております。同時に、それはまた原爆医療法に基く原爆医療審議会、これがやはり症状を認定するということが治療の研究調査になりますので、これをも相当数がダブって兼ねておりますが、こういう形で研究と調査を進めておる、こういうふうになっております。
#53
○大原委員 科学技術庁の長官の御答弁で、広島、長崎の被爆したときの影響等については、これは済んだことなんだ、それはその通りです。だから今度は厚生省の関係なんだ、こういう御答弁ですから、現在残っておる人々の治療の研究あるいは累加放射能によるその人の身体に及ぼす影響、そういう問題等については厚生省が担当していることになるわけですね。あとで私は長官にもう一回尋ねたいことがあるのですが、今申し上げたようにABCCの中に予研の支所があるわけです。この支所は今までどれだけの予算を使ってどういうことをやってきたのですか。
#54
○尾村政府委員 ABCCに置いてあります予研の支所は、ABCCは日本における被爆者の調査をやっておりますが、これとタィ。アップして、ここに参ります被爆者の診断によりまして身体上の変化等を追求検査する、今まではこういう業績でございまして、これは直接治療はいたしておりません。
#55
○大原委員 外務省のアメリカ局長が見えていないから、ABCCの性格についてはあとにいたしますが、その中に予防研究所の支所があるのです。関係のお医者さんや、あるいは一般民衆の中の声は、これは私の個人の見解といたしましても、ABCCはすぐやめろとか、そういうことはない。研究の結果について公開されて、これが民主的に人道的に利用されれば問題ないわけです。しかしながらABCCの研究というのは、被爆者と非被爆者を分けまして、それを一々何万人かとりまして、その比較対象をする研究の程度なんですね。これが基本だと思うのです。だから病院その他があるとはいうものの、ほとんど治療等についての研究はないし、実際の被爆者の要求に応じていないわけですよ。しかも予防研究所の支所につきましては、おそらく厚生省は今までどうすべきだというふうなことについて指導監督したことはないと思うのです。何をやっておるかわからぬと思う。それで人件費だけしか支払っていないから、研究費とか経営費なんかないのです。何ができるのですか。だから私は何をやっているのかということをお聞きしたのです。おそらくそういう点は今日までずっと占領以来の継続でやっておられるのだろうと思うのですが、自主的な立場でこうすべきだという点で意見をどんどん出して、そうして実際に被爆者の要求に応じた研究をしていないのじゃないかと思う。この点いかがですか。
#56
○尾村政府委員 ただいま申し上げましたような人員でもございますし、人員の構成が、今言いますように、ABCCという大きなものがございますが、これと日本側との研究の連絡調整機関というような性格で今までずっと進んできております。御指摘のように直接これらの支所の職員のみをもってして多数の患者の個々の身体の変化等の研究あるいは診断ということは今まで進んでおりません。従いまして、今後予研の支所を拡充して、現地においてはたしてこれから医学研究の相当な部面をになわせた方がいいかどうかということについてはまだ検討中でございまして、現在の形を少しくらい強化するような形では、今の一番の問題の被爆者の医療問題ということから考えますと、必ずしも適切と思っておりませんので、これは別な方法の方に重点を置いていった方がいいのではないか、こう存じます。
#57
○大原委員 学術会議その他を通じてと思いますが、大学その他に対する委託研究費を出しておられるということですが、この委託研究費はどれくらい出されましたか。最近の予算額を年次別にお話し願いたい。
#58
○尾村政府委員 これは概数を申し上げますと、今年度が約百万円、これは原爆の治療研究費というはっきりした名目でとっているもので、百万円でございます。このほかに従来は科学研究費のうちと、それから先ほど申し上げました原爆被爆に関する調査連絡協議会、これに対する経費というものが別個にございます。それから大学の方は、これは厚生省からの直接の経費ではありませんで、文部省関係の科学研究費ですが、こちらは今詳細な資料を持っておりません。
#59
○大原委員 委託費の去年と一昨年の額を言って下さい。
#60
○尾村政府委員 三十三年度が百五十万円、三十二年度が百八十万円、それから三十四年度が百万円でございます。
#61
○大原委員 公衆衛生局長は、ABCCと併置されている予防研究所の支所も自主的な機能を発揮していないということについては認められて、不十分だというようなお話です。大学の委託研究費についてもだんだんと減っている。被爆者の問題は国際的にも非常に関心が深いし、この問題は原水爆の禁止という観点から見ても、被爆者を作らぬという人道的、超党派的な運動ですから、そういう点から考えてみても――被爆者が全国に三十万散らばっている。この間も心中したという報道があった。非常に放射能の影響について敏感だし、原爆の当時の影響について非常に真剣に考えて神経をとがらせている。各階層がいろいろな例をあげたら、人道上黙視できないことがたくさんある。そういうことをいろいろ追及してみると、科学技術庁の研究所も発足間もないけれども、これも研究の分野だけは明確になりましたけれども、厚生省がそれを受けてやる際に、実際に私ども承知している範囲内においては、やはり各市町村自治体がそういう正しい認識の上に立って行政指導をしたり、治療法を研究したりすることが非常におくれているのではないか。特に予算が百八十万円から百五十万円に減って、また百万円に減ったということはどういう考えなのか。厚生大臣はこれを妥当と思われますか。また大蔵省の主計官が見えておられるそうですから、その御見解も承りたいと思います。
#62
○渡邊国務大臣 予防研究、治療対策の面におきましてはもちろん厚生省でございます。しかし科学的見地に立って、これが人体にどういうふうに影響を及ぼすか、こういうことになりますと、やはり科学技術庁の本来の研究胆目であろう、かように考えております。
#63
○中曽根国務大臣 今私の方にちょと関係することがあると思いますのでお答え申し上げたいと思いますが、科学技術庁に放射線医学総合研究所ができましたのは、広島、長崎の原爆患者の問題も含めまして、基礎的な大規模研究を必要とするという考えで実はできたのであります。そのために御意見の仕事の中に――念のために読んでみますと、「放射線による人体の障害並びにその予防、診断及び治療に関する調査研究を行うこと。」それから「放射線の医学的利用に関する調査研究を行うこと。」それから「放射線による人体の障害の予防、診断及び治療並びに放射線の医学的利用に関する技術者の養成訓練を行うこと。」こういう三つの目的をもって作られておるわけであります。それで今お話の筋に関係しますことは、先ほど申し上げましたように、基礎的部面の研究部門が七つあるわけでありますが、その中で臨床研究部というものがあるのです。それから先ほど申し上げましたように病院部を今作りつつある。この臨床研究部並びに病院部が、原爆患者の必要な方においでいただいて、病院に入っていただいて、研究もさしていただく、それと同時に治療の方の研究にも当らしていただく、こういう考えでできておりまして、政府全体といたしましては、今まで足りなかったのを、この放射線医学総合研究所を作ることによって相当大規模に、また本格的に放射線と人間との関係に取り組んでいるわけであります。この研究所が相当大きく発展していったらお尋ねの筋に沿うようになるのじゃないかと思います。
#64
○大原委員 三年くらい前までは、やはり放射能の人体に対する影響についてはいろいろ議論があったのです。しかしだんだんと、放射能の影響による、こういうふうに推定できる病状が広島、長崎の被爆者にも出て参りました。確かにそれは間違いないことです。そこでこの放射能が医学的に人体にどういう影響を及ぼすか、こういう問題は、都築博士などは、細胞の中の核に放射線が作用することがわかったので、外面は何でもないように見えるけれども、人体の基本的な組織に障害を起こすからいろいろな病状になってくるんだ、こういう御見解なのです。これは新聞にも本にも発表されておるわけです。そういう点では、中曽根長官の方は幾らふろしきを広げられましても、家が建ったばかりですから、成果をあげようと思ってもそうできぬことですね。それから厚生省の方もやはりスタッフもないし、予算もないし、大蔵省の方が予算を削っていると思うのです。主計官の答弁がないけれども、けしからぬと思う。どういうような見解だろうかと思うけれども、事務的に大なたをふるうなんということはもってのほかです、たくさんの人命や、人道上大きな影響を及ぼしているのですから。このことはまたあとで聞きますが、そういうことから考えてみまして、私はやはりこういう人道上の問題が次から次に出ていることから見まして、非常に看過できない問題があると思うのです。
 そこでお尋ねしたい点は、この医療法の問題、援護法の問題と関係が深いわけですが、放射線が広島、長崎の問題を中心といたしまして人体にどういう影響を及ぼして、大体どういう病気の原因になっておるのか。文書には起因するというふうになっておりますが、これは科学技術庁の方の管轄だと思うので、最後ですから、どういうふうな病気があり、どういう人体に影響があるかという点について研究されておる範囲――やはりなおす方も被爆者の状態を正しく認識しなければならぬ。そこから問題が出発するのですから、そういう事実について御発表を願いたい。
#65
○鈴木説明員 お答えいたします。放射線から受けます病気として、一番慢性の障害から受けます終局のものは、大体白血病が多いわけでございます。それからもう一つはガンでございます。極端な大量のものを受けました場合は、すぐ死ということが考えられますけれども、慢性の障害といたしましては、大きなものはこの二つだろうと思います。
#66
○大原委員 遺伝的な影響はどうなんですか。
#67
○鈴木説明員 今申し上げましたのは、御本人に生ずる病気でありますが、もちろんその量が相当な量に達しますれば、遺伝子にも影響を及ぼしますから、たとえば種々の奇形児ができるとか、そういう遺伝的な影響もあろうと思います。
#68
○大原委員 公衆衛生局の方は、医療法の対象にはどういう病気をしておるのですか。
#69
○尾村政府委員 大まかに分けまして、血液系統の疾病と、それから肝臓に関する疾病、内分泌系、それから悪性新生物、このほかにこれは放射線だけでなくて、放射線と同時に、広島、長崎の原爆は熱線と爆風が伴っておりますので、どこからどこまでが放射能だけとはきまりませんが、そういうものとしては白内障、精神神経系統の病気、熱傷、外傷、こういうものを現在まで対象といたしまして原爆医療法で認定いたしております。その中で一番多いのは、血液疾病の中のいわゆる貧血でございます。これが全体の認定数の半数を占めております。それに次ぎまして白血球の異常、これは白血病までには参りませんが、非常な減少ないしは増加の段階にある白血球の異常が第二番目、第三番目が肝臓疾患でありまして、肝機能障害、それとほとんど同じくらいのものが先ほど言いました混合の原因によります熱傷、いわゆるやけどでございますが、大体以上のようなもの、その他はそれより少ない数でございます。
#70
○大原委員 この前放射線の後遺症の研究会が広島でありましが、これは全国から集まりました研究会で、新聞報道その他を見ますと、たとえば現地でもいわれておりますが、被爆当時髪の毛が抜けるとか、皮膚に斑点ができる、血を吐く、内出血をする、こういういろいろなことが次から次へと出ておったのが、身体の衰弱に従って周期的にそういう現象が起きてくるわけです。二年とか三年とかで起きてくる。そういう人は、たとえばからだがだるくなるし、性欲もなくなる。こういういろんな症状が出ておる。これがやはり夫婦関係などいろいろな問題について、離婚問題などが次から次へとできているわけです。そういういわゆる原爆ぶらぶら病といって、医者がはっきり原因をこうだというふうに、あなたの方であげた範囲で言うことができぬもので、医者が、これは当時の症状から見たならば明らかに原爆症であるというふうに考えるような病気が、治療の認定をはずれているわけです。こういうことは、一つ例をあげましたけれども、非常に大きな社会問題になっているし、都築さんなんかも取り上げて言っておる。ですから原爆症に対する根本的な考えが、政府の今の非常に手薄な研究機関においては違うのじゃないか、こういう点が問題になっているのですけれども、これについてはどうですか。
#71
○尾村政府委員 これは都築先生も入っております原爆審議会でしばしば政府側からも提案いたしまして、この原爆症というものはどういうものを具体的に含めるかということをいつも論議していただくのでございますが、今のぶらぶら病、なんとなしに生活能力が下がっておるというものは、今までの病気の範疇に何としても結びつかぬものでございますので、これはどうしても研究の結果による新しい範疇あるいは病名さえ――まあそういうことになるかと思います。そういうふうに存じておりまして、病気の観念では結びつかない。説明ができないのだ。ただ今の御指摘の中にありました紫斑病とかあるいは出血傾向、いわゆる出血しやすいということでございますと、これはある程度はっきりした症状になりますので、そういうような症状の一つでも二つでもはっきりしておりますものは、極力従来の病名あるいはわかっております病気に結びつけまして考える、こういうことで進んできております。
#72
○大原委員 まだあるのですが、中曽根長官に最後に一つだけ質問するのですが、やはり実際にこのことを真剣に考えた人はこういうことを言っておるわけです。今までのいろいろな研究機関なり制度というものの欠陥を補うためには、特に広島、長崎の被爆者が全県に三十万、こういう人々をやはり治療しながら原子爆弾の影響というものをずっと研究していく、そういうことで、放射能が造血機能とか増殖機能とか組織細胞、いろいろなものに対して影響がある、都築博士もそういうふうに言われているのです。それがどういう形によってやってくるか。たとえば白血病になったら、傷を受けると出血がとまらない、こういうようなこともあるわけです。そういうような臨床的な、医学的な、治療上の研究も含んでやらないと、放射能の影響というものがはっきりつかめないのだ。これは人類が今まで経験しなかったことなんだから、そういうことについて国が全責任を持ってやってもらいたい。これは国の責任じゃないか。あとで外務省の条約局長が見えたら御質問するのだが、これは明快な中曽根長官だから御理解いただけると思うが、簡単に言うと、これは戦時国際法の非戦闘員だということでなしに、原子爆弾は、毒とか毒ガス以上の、大量殺戮兵器以上の兵器なんです。これは実定法からも慣習法からも戦時国際法規に違反するのです。それをそういう場合には国とか――国際法の当事者は国である。しかし法の趣旨というものは、被害者は人道上の見地から救うということでなければいけないと思うのです。それでは一体そういうふうな国の責任において、戦闘行為において、しかも非戦闘員あるいは国際法違反の放射能の影響を、毒ガスとか細菌とか、それ以上の致命的なそういう損害を起こしている、非戦闘員に対してやっている、そういう国際法上の違反した行為において被害を与えておいて、そうして被害を受けた人間が今日まで結婚もできなければ、就職もできなければ労働もできない、十分の治療も国がしてくれない、そういうようなことは常識から考えて、人道上から考えてあり得ないと思うのだ。サンフランシスコ条約で賠償請求権を放棄したのだったら、国が当然責任を負うべきなんだ。特別立法の根拠がここにあると思うのだ。しかも根治療法についての研究も何もないのじゃないか。私は中曽根長官にそれ以上は言いませんが、あなたのところの放射線医学研究所、ベッドも作っておられると思うのだが、それは東海村とかそれに関係する問題はほかの常任委員会でやるから質問いたしません。原子炉等の問題も含んでいろいろあるでしょうから申し上げませんが、そのようにいろいろな問題を含んで臨床的な研究をされるということはいいことなんです。しかし広島、長崎のような原爆症がわからないで、それが大きな被害で、今生活上も社会上も医学上も苦しんでいる、そういう人たちに対してこたえることはできない。これはやはり現地において実際に病院と研究所が兼ね備わっておって、そしてそれを国が責任を持って治療しながら研究して、そして正しい放射能の影響というものを研究する、そしてそれに対する予防措置を講ずる、こういうことが絶対必要だと思うのです。従って私は、国際法上の問題もございましたし、中曽根長官は国務大臣でございますから、政府において総合的な被爆者に対する対策というもの、単に三、四十万の問題ではない、人道上の問題として、実験が今中止されておりますが、どんどんあったわけですから、そういう問題も含んで、積極的に閣議においてもこのことは発言して推進して、ほんとうに党派とかそういうことでなしに、人道的な立場に立って必要な措置をやってもらいたい。大蔵省なんかは、大学なんかの病院にある程度被爆者がおる。それを集中的に組織的に研究してないからだめなんだけれども、そういうために委託研究費なんか計上しておれば、こんなにへずってしまっている。そういうことではこの社会問題は解決しない。これは念のために一言聞いていただきたいのですが、広島、長崎原爆障害対策協議会が二十八年から三十三年、これは広島市とか長崎市にある原対協が原爆死亡者の百八十二人を調査した。死亡傾向の特徴は、肺臓ガンなどを初めいろいろな障害が多かった。そういうことからピカドンに対する灰色の人生、こういうことで、なぜおれたちはこんなに苦しい目を見ていかなければならぬのかという気持が、その調査の中からずっと出てきたデータができておる。その原爆障害者の中には精神障害者が非常に多いといいます。広島県下で三万二千の精神障害者の中で、半分くらいが原爆症ノイローゼあるいはその絶望感から来たアルコールとかその他の中毒、そうして広島においてはそういう青年や男女の自殺率が全国で一番高いと言われている。その原因を聞いてみるとそういうことがあるという。先般の十月二日に、お父さんが生後十二日目の赤ちゃんを母親の手からとって心中した、これは自分はなお遺伝による影響であると確信しておるわけだ。ノイローゼにかかっているから……。そういうことが次々と起こっているわけだ。私は放射線医学研究所も大いにやってもらいたいが、しかしそういう実態に即応したようなことを国がもう少し予算を出して、そうして根治療法を徹底的に研究するということが、今日の政治家の人道的な責任だと思うのです。その点について、これは中曽根長官の方の範囲はお聞きいたしましてわかりましたから、今度は公衆衛生局の方を中心といたしまして、厚生省に御質問いたしますので、御質問は打ち切りますが、閣議やその他、全般的にこの問題を推進していただくように私は心から一つお願いしておきたいのです。最後に御所見を一つお伺いさせていただきます。
#73
○中曽根国務大臣 御鞭撻まことにありがとうございます。御趣旨はごもっともであると私も思います。検討いたしまして私はできるだけ努力をいたしたいと思います。
#74
○尾村政府委員 先ほどの三年間、百八十万、百五十万、百万円と減りました形になっておりますが、これは研究内容が実は三十四年以降内科研究だけに重点的にしぼったわけでございまして、その前には眼科と外科関係の研究、いわゆる三種類をやっておった。これは先般の六月半ばにやりました研究発表会でも大体結論が出たごとく、外科と眼科についてはこの十五年間の経過と研究で大体結論が出たということで内科関係、ことにただいまお話しのような生活力の低下という、これは各臓器を全般にわたって研究することになりましたのでこちらに集中する、こういうことで一応項目整理で、この比例の点では減っておる。しかしながらそれを重点的にやりますために明年度、これはまだ今政府部内で予算要求中のことでございますが、厚生省で現在要求いたしておりますのは、三十四年度百万円に対しまして、約二百四十万円くらいが今の総合研究には要るということで、現在積算をいたしまして要求中でございます。
#75
○岩尾説明員 厚生省に計上されております原爆障害対策費は、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律に基いて計上されておるのでございまして、三十二年からでございますが、主体は健康診断と医療費ということになっております。なお今お話のございました調査研究費が計上されております。それで従来は、三十二年からの経過を見ますと、実際には三十二年全体で一億七千二百万計上されておりましたけれども、いろいろと診断の結果、実績といたしましてはそこまでいきませんで、約五千万程度の使用額。三十三年度は一億六千九百万計上いたしまして、大体一億三、四千万というような経過をたどっております。われわれといたしましては、もちろんこの予算を特に削ろうというような意図はないのでございますが、今申しましたように実績がそこまで出ておりませんので、なるべく実績に応じた予算を出したい。なお調査研究費につきましては、今公衆衛生局長からお話がございましたように、項目整理ということと、それから全体としての原子爆弾に関するいろいろな症状の研究につきましては、学術的な研究もございますし、臨床的な研究もございます。先ほども答弁にございましたように、文部省あるいは厚生省に計上されております研究費というものを全体として見ていくべきではないかということで、こういう結果になったのであります。
#76
○大原委員 その点は、内科なら内科に限定したから順次外部の研究対策費、の予算が少なくなった、こういうことでございますが、しかしそれ以上に研究の分野というものは、これはいろいろ問題が大きくなるほど足りないわけです。責任ある研究がなされていないわけです。主計官は非常にお忙しいと思うのだが、これからの私の質問をお聞きいただきまして、少し理解をしてもらいたいと思う。
 厚生大臣に研究問題について御答弁をお願いしたいのですが、今までの研究機関はABCCに付置されておるとか、あるいはABCCの研究自体がどうこうということは言わない。やはりあそこに貴重な資料もあることだから、平和共存すればいいと思うが、とにかく今のそういう被爆の実相や研究が――原爆症が、次から次と学術的に新しい影響が出てきておるわけです。ですからそれらの問題を、実際に患者が数限りなく出ていくのですから、それを治療し、療養していくという中で、やはりこの被爆の影響とその治療法を研究するような、自主性を持った研究機関の設立をすべきじゃないか、そういう点について真剣に考うべきじゃないか、こういう点について厚生大臣の御所見をお願いいたします。
#77
○渡邊国務大臣 国務大臣御意見ごもっともでございまして、われわれはさような線で大いに予算獲得の面におきましても、また関係各省と協議をいたしまして、徹底的な検討を進めて参り、対策を樹立していきたい、かように考えております。
#78
○大原委員 それから原爆医療法の第七条、第八条等に含まれておりまする原爆障害に基因する負傷疾病、こういう問題がございまして、あまりにも因果関係が経験主義に陥っている。これは未知の分野なんです。こういう点でいろいろ問題が起きております。原爆ぶらぶら病といって、原爆を受けた当時、放射能を受けた当時の症状を呈する。労働能力もないし、それから体力が落ちてくるというようなことが周期的に起きてくる場合もあるし、いろいろな症状が起きてくる。そういういろいろな問題を含んでいて、これは放射能の影響ではないというふうには断定できない。こういう問題については放射能の影響であるという前提で研究と治療が進んでいくように、現行法の医療範囲をもう少し拡大する。ただし、だれでもかれでもただで医療するということでなしに、これには審議会が要りますけれども、その医療について拡大をする。そういう点について御見解をお聞かせいただきたい。
#79
○渡邊国務大臣 もちろん放射能の影響を受けました類似患者に対しましては、同様な取り扱いに範囲を拡大いたしていきたい、かように考えております。
#80
○大原委員 これは厚生省にお尋ねいたしたいのですが、基因すると言いますと、列挙主義になります。だからそういう症状を呈する者は包括的に治療をする。新しく交通事故とか何とかいうのは別ですけれども、そういう面において国が責任を持って医療保障をしていく建前にするためには現行法を改正する必要があるのではないか。今大臣が原則的には御賛成なさったのですが、こういう点について専門家の御意見を聞きたいと思います。
#81
○尾村政府委員 原子爆弾の障害作用の基因でございますが、これは基因してからの潜伏期間、これを拡大解釈いたしますと、今まで潜伏しておって新たに起こったものも、もとが基因になるということで、しいてこじつければ現行法でもある程度救えるものが相当出てくるであろうという見解を持っております。しかし立法の趣旨から申しますと、さようなことよりも、調査の結果に基づきまして、どうしてもあたりまえに解釈すれば救われないという患者が相当あって、しかもそれがほかの一般の国民と違った頻度あるいは症状ということでありますれば、これは改正を要するかと存じております。
#82
○大原委員 それからこの医療法はたしか特別立法になっておったと思いますが、その特別立法が機能を発揮していないという原因は、いろいろ今日まで本委員会で審議をいたしたところであります。それはなぜかというと、端的に申し上げますと、医療の裏づけになる生活保障の問題です。先ほど伊藤委員からも原爆病のお話がありましたが、生活に心配のある人は入れないということであります。こういう現状を打開するために、医療を受ける人に対して生活保障の道を考えるべきではないかと思うのですが、これは政治的な問題でありますから、厚生大臣にお伺いいたしたいと思います。
#83
○渡邊国務大臣 現在のところは、やはり生活保護法によって見ていきたいと存じておりますが、その問題は将来の問題として検討いたしていきたいと考えております。
#84
○大原委員 生活費がないために治療ができなかったり、健康維持ができない、次から次といろいろな問題が起きている。こういうことについては今お話をいたしましたけれども、大臣はお認めになりますか。
#85
○渡邊国務大臣 これは十分検討してみたい、かように考えております。
#86
○大原委員 それでは、これは御答弁いただけると思うのです。大蔵省の方も見えておりますが、厚生省の省議で、自民党の方でも御決定になったと思うのですが、今事務的な予算折衝をしておられる中に交通費があるというふうに承知いたしておりますが、交通手当の支給については御賛成ですね。その予算折衝の状況を一つお答えいただきたい。
#87
○渡邊国務大臣 交通費並びに栄養手当の面につきましては、これは十分に財政当局と了解ができつつあるところでございます。
#88
○大原委員 大蔵省の方は、要求に対してどう思われるのですか。
#89
○岩尾説明員 その点は、五十円の交通手当ということで約五十万円、非常に少ない額でございますが、ほかの結核その他につきましても交通費まで見たということはございませんし、それから実は先ほど申しましたように、昨年予算が実際に余ったわけでございます。そこでその余った中で、健康診断車を二台入れまして、それで回っていただくというような措置も講じております。そういうような点も検討いたしまして、まだ大蔵省といたしましては申し上げる段階に至っておりませんが、よく検討いたしたいと考えております。
#90
○大原委員 それを聞きましたらみんな非常に失望しますよ、検討するという言葉がついておるからそれ以上追及いたしませんが。
 それから被爆者の家族の生活保障の問題は、今問題になっておる通りです。生活保障の裏づけといたしましては、安んじて家族が――その中には栄養費、病院に入院したり通院したりする際の費用も含めて補償する問題とか、被爆者の家族の問題があります。それから被爆死亡者の遺族、これは全面的な致命的な非人道的な、あるいは死亡者の遺族の中には被爆者も多いという実情から考えて、やはり国際法上の問題は、今人道上の問題と申し上げましたが、特別立法をいたしまして、――戦争犯罪人でもやはり恩給をもらっているのですから。そうでしょう。だから均衡上から考えても、これは国際法上の違反事件ですから、当然遺族の援護に対してもなすべきではないかと思いますけれども、厚生大臣いかがですか。
#91
○渡邊国務大臣 なかなか重大な問題でございまして、遺族につきましての援護措置もやはり、生活保護法、生活保護法とばかり申し上げるようでございますけれども、その他世帯更生資金であるとか母子福祉法とか、そうした面において十分見ていきたい。ただいま遺族に対して具体的にどういうふうにするかということにつきましては、十分これも検討しなければ明確にお答えすることができません。
#92
○大原委員 これは検討されているのですからあとに問題を残しておきまして、最後の方にいくのですが、今社会保険、特に健康保険や国家公務員の共済組合保険というふうなのがありまして、長期の療養に対しましては、結核の場合のように、長期の療養一年半以上三年というのがあります。ですから原爆症に対しましてもやはり長期療養を要するというふうにして、保険給付の面でそういう道も選べるように、厚生省関係の健康保険の政令等を改正する必要があるし、またそうすることが妥当ではないかと思いますけれども、厚生大臣でも関係局長でも、一つこの点についてお答えいただきたいと思います。
#93
○太宰政府委員 私から便宜お答えいたします。健康保険法におきましては疾病にかかっております者につきまして、労務に服しない間傷病手当金として、賃金の六割程度が原則でありますが、出しておりますことは御指摘の通りであります。その中で特に結核につきましては厚生大臣が指定いたしまして、その支給期間を通常六カ月から一年半まで支給いたしております。ただいまの御質問は、原爆の被爆者で治療を受けている被保険者について、やはり同じように考えられぬかという趣旨の御質問かと思いますが、これは御承知の通り原爆の被爆者については特別立法措置をしておるというような趣旨からいたしまして、もしそういう人たちにも生活的な手当をする必要があれば、そういう面で議論をなさるべき筋でなかろうか。健康保険の分野におきましては、大体皆さんが拠出した保険料をもととして、それを財源として支給いたしておりますので、この方にこれを呼び入れるということについては、私としてはただいまのところ適当ではない、かように考えております。
#94
○大原委員 治療の認定がおくれて、三カ月もかかる、認定を受けたときは死んでいたという実例があるのです。これはもう少し地方に出向くなり、運営上の考慮なりいたしまして、専門家を含めて小委員会でも設けて、機動的に実情に即するようにスピードを早めてもらうということはできませんか。
#95
○尾村政府委員 最近は認定も以前よりはるかに早くなっております。しかも中央の審議会の審議を要するものは例年半分以下に比率がなっておりまして、どんどん減らしております。それでなおかつおそいというような例がございますならば、地方だけで済む基準をもう少しさらに詳細にいたしまして、簡便な認定基準を考慮したいということで、先般原爆審議会でも相談いたしておりますが、御趣旨に沿いたいと思います。
#96
○大原委員 まだ検討されている問題が多いわけでありますから、残った質問はまた次の機会にいたしまして、最後に申し上げたいのですが、原爆病院に入院していて婚期を失しましたある娘さんが、私どもがお見舞いいたしましたときに言っておりましたが、先ほど申し上げたように、どうして自分たちだけが十四年後の今日まで黒い影につきまとわれなければならぬのか、こういうことは納得できぬ。閣議で厚生大臣は御発言願いたいのですが岸さんは一回も原爆病院に見舞いに行かない、慰霊碑の前に来たこともない、近くまで来られるけれどもどうして岸さんは関心がないのだろうと患者の人は言っております。山口県の隣でありますから、選挙のときでも警告を受けながら猛烈なパレードやなんかやられるのですが、そういうように患者は思っております。こういう問題は党派とかそういうことでなしに、人道上の問題ですから国の責任で、みんなが喜ぶように施策をしていただいて、処理していくのだという建前で、医療上、生活上について国が保障する、こういう点について厚生大臣は大きな決意を持って党内や政府の中におきまして御発言をして推進していただきたい、これを最後にお願いするわけですが、大臣の御所見をお伺いいたしまして、答弁いかんによりましてはもう一回質問いたしたいと思います。
#97
○渡邊国務大臣 御意見を尊重いたすことといたしましょう。
#98
○永山委員長 二時まで休憩いたします。
    午後零時四十分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時四十五分開議
#99
○永山委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
 先般、水俣病に関する実情調査のため現地に委員を派遣いたしたのでありますが、この際派遣委員より報告を承ることにいたします。柳谷清三郎君。
#100
○柳谷委員 熊本県水俣市周辺におけるいわゆる水俣病に関する調査について御報告申し上げます。
 今回の調査は、去る十月三十日から十一月四日まで五日間にわたって、農林、商工の各委員会と共同でわれわれ社会労働委員会もこれに参加し調査いたしたのでありまして、本委員会からは五島委員、堤委員、それに私が参加いたしました。以下調査結果の概要について御報告申し上げます。
 まず水俣病といわれている病気についてでありますが、熊本県の南、鹿児島県との県境にほど近い水俣市を中心とした一定の地域に発生する奇病であって、中枢神経疾患を主症とする脳病であります。手足の麻痺、言語障害、視聴力障害、歩行障害、運動失調及び流涎等、特異的かつ激烈な病状を呈し、気違いと中風とが併発した症状といわれるゆえんであります。私どもは水俣市立病院に入院しておる二十九名の患者及び自宅療養患者について視察したのでありますが、それぞれ長期にわたって、いつ治癒するともわからぬ果てなき療養生活を送っており、また重症者においては意識すらない者、あるいは発作的に激烈なけいれんを起す者等、正視するにたえない悲惨きわまりない症状を有する病気であります。
 しかも本病は水俣湾周辺に産する魚介類を相当量摂取することにより発病し、性別、老幼の別なく、その上一般に貧困な漁民部落に多発し、家族、姻族発生が濃厚であるという実情であります。
 現在これが治療方法としては、ビタミン及び栄養の補給等、一応の手だてはあるとはいえ、一たん発病するときは、完全治癒することはなく、幸いにして死を免れた者も、悲惨な後遺症のため廃人同様となる、まことに憂慮にたえない疾病であります。この種の病気が昭和二十八年末一名の初発患者を見て以来、現在までの患者総数七十六名の多きに達し、中でも昭和三十一年は最も多く、四十三名の患者の発生を見ておるのであります。しかも従来水俣市の地域に限られていたものが、去る九月に至って、同市の北方約五キロの芦北郡津奈木村に親子二名の新患者が発生し、患者発生地域がさらに拡大されて参った次第であります。しかして昭和三十年以来すでに二十九名が死亡しており、その死亡率は四〇%近い高率を示しておるのであります。
 水俣病の原因究明については昭和三十一年から始められており、当初にねいては濾過性病原体によるものとの疑いが持たれ、次に重金属による中毒と考えられ、毒性物質として、マンガン、セレン、タリウムが有力視され、かつ魚介類による媒介とされていたのであります。しかしこれらの物質は、いずれも単独では水俣病と全く一致する病変を起こさしめることができなかったのであります。
 その後、政府においても原因究明のための調査委託費等を支出し、熊本大学医学部を中心として研究を進め、引き続き本年においては、厚生大臣の諮問機関である食品衛生調査会に水俣食中毒部会を設け、さらに調査研究の結果、毒性因子として新たに水銀説が有力となり、去る七月十四日、中間報告として魚介類を汚染している毒物として、水銀がきわめて重要視される旨、発表されたのであります。
 その根拠としては、各種障害の臨床的観察か有機水銀中毒ときわめて一致すること、あるいは病理学的所見において神経細胞及び循環器障害が有機水銀中毒に認められること、また動物実験においても、ムラサキイガイをネコに与えた場合と自然発生ネコとは全く同様の変化を起こし、さらにエチール燐酸水銀をネコに経口的に投与するときも、貝類投与の場合と同様であり、かつ患者及び罹患動物の臓器中から異常量の水銀が検出される点等をあげいるのであります。
 なお、水俣湾の泥土中に含まれる多量の水銀が魚介類を通じ有毒化されるメカニズムはまだ明白でなく、今後究明すべき点としているのであります。この食中毒部会の中間発表に対し、新日本窒素肥料株式会社においては、水銀については研究に着手したばかりで、実験に基くデータは発表の段階に至らないが、科学的常識上及び食中毒部会のデータの不備な点について、次の通りの見解を発表し、有機水銀説は納得できないとしているのであります。すなわち、水俣工場は昭和七年以来今日まで二十七年間、酢酸の製造に水銀を使い、また昭和十六年以降においては塩化ビニールの製造にも水銀を使っており、これら水銀の損失の一部として工場排水とともに水俣湾内に流入しているのは事実である。しかもその量は操業以来酢酸の生産量十九万トン、塩化ビニール三万トン程度であるところから、六十トン、最高の場合において百二十トンということであります。しかるに昭和二十九年になって、突然水俣病が発生した事実は無視できない。また水俣病は昭和二十八年以前には全くなく、二十九年から突発したことは、昭和二十八年、同二十九年を境として、水俣湾に異変が起こったと考えるのが常識的と思われるというのであります。
 また、有機水銀であるメチール水銀及びエチール水銀は有機溶剤に溶けやすく、エチール燐酸水銀は水にも可溶である。
 有機水銀のこのような性質にもかかわらず、熊本大学における既往の動物実験結果においては、貝類を有機溶剤で処理した場合、抽出された部分からは発病を見ず、抽出残渣の方から発病する。このことは工場における実験とも全く同様結果であって、この結果、毒物はアルキル水銀化合物ではない等反証しているのであります。なお、新日本窒素肥料株式会社は、資本金二十七億円で、水俣工場を主たる工場とし、同工場においては、年間硫安、硫燐安等約三十万トン、塩化ビニール、酢酸等三万トン、その他十二万トン、計四十五万トンを製造し、現在一時間約三千六百トンの排水を水俣湾に放出しているのであります。
 しかし、会社の資料によると、この排水は機器の冷却用が主体であって、直接製造工程から出る排水は一時間約五百トン程度であり、その水質は問題にならないということであります。すなわち、去る七月における分析表を見ると、水俣湾流入排水及び八幡排水は、それぞれペーハー六・三、一一・九、水銀一リットル当たり〇・〇一、〇・〇八ミリグラム、マンガン〇・二二、〇・〇五ミリグラム、過マンガン酸カリ消費量二四一等となっております。
 私どもは、工場における排水処理状況を視察するとともに、明神崎、恋路島及び柳崎に囲まれた水俣湾及びさらに天草あるいは長島、獅子島等の島に囲まれた不知火海の二重の袋湾になっている現地の状況を視察したのであります。水俣湾においては、過去における排水による堆積物と思われるどろが三メートル以上にも及び悪臭を放っている実情であります。
 また、終戦時海軍所有の爆弾を投入したと称されていた湾についても、その現地において当時の責任者であったという元海軍少尉甲斐氏から当時の実情を聴取したのでありますが、すべて水俣駅に搬出し、一発も投棄していないということでありました。
 以上の通り、水俣病は水俣市周辺に産する魚介類を摂取することにより発病する関係から、水俣市鮮魚小売商組合は、すでに八月一日水俣市丸島魚市場に水揚げされる魚介類のうち、水俣近海でとれたものは、たとい湾外のものであっても絶対買わぬとの不買決議を行ない、以後漁民は全面的に操業を停止するのやむなきに至り、収入の道は全く断たれている次第であります。また近隣の漁村においても、これが連鎖反応のため甚大な悪影響をこうむり、日々の食生活にも事欠くに至り社会問題となっている次第であります。
 かかる事情のもとにおいて、去る八月三十日には、水俣市長を初めとする九名の漁業補償あっせん委員のあっせんにより、会社から水俣市漁業協同組合に対して、水俣病関係を除く工場排水による漁業被害補償として毎年二百万円を支払うことを約定するとともに、昭和二十九年以降の追加補償金二千万円及び漁業振興資金一千五百万円、計三千五百万円を支払っておるのであります。
 このようにともかく水俣市漁協に対しては補償措置がとられているものの、日奈久と姫戸を結ぶ線以南の二十三漁協、関係漁民四千名余はすべて操業不能に陥り、他の海域に漁場を求めなければ生活できない状態に立ち至っている次第であります。これがため、私どもが参りまとた十一月一直においても、熊本県漁連が中心となる不知火海水質汚濁防止対策委員会の関係漁民数千人が参集しており、切実な陳情を受けたのであります。その後これら関係漁民の一部が工場に押し入り、事務所を損傷する等、暴挙に出たことは遺憾に存ずる次第であります。
 最後に本問題の対策について申し上げます。帰京後調査団一行が相寄り現地の実情及び要望事項を中心として協議の結果、次の事項をすみやかに実施すべきである趣旨の申し合わせをいたした次第であります。
 一、早期に原因を究明するため、厚生、農林、通産等関係各省庁がそれぞれ分担して調査研究を実施するよう協力態勢を確立すること。
 二、調査海域を定めること。
 三、水俣湾内の浚渫を行ない、過去の沈澱物を除去すること。これがためには袋湾の埋め立てを考慮する。
 四、生活保護法による各種扶助及び社会保険各法の給付について万全を期すること。
 五、入院患者の増加に伴い、水俣食中毒患者台療費補助金の増額をはかるとともに、現行補助率三分の一についてもその引き上げを考えること。
 六、家庭療養患者に対しても見舞金の支給等救済措置を講ずること。
 七、水俣食中毒部会研究費の増額をはかること。
 八、医療機関の拡充を考慮すること。
 九、生活保護法の特例法制定につき検討すること。
 十、失業保険の実施について検討すること。
 以上私の御報告を終ります。(拍子)
     ――――◇―――――
#101
○永山委員長 次に厚生関係の基本施策に関する件について質疑を続行いたします。小林進君。
#102
○小林(進)委員 私は国民福祉年金の問題について実は大臣、年金局長等にお伺いいたしたいと思っておるのでありますけれども、大臣も局長も何かお差しつかえがあるそうでございますので、主としてほんの事務的な数字に関する問題等を一つお尋ねをして、基本的な問題はまたの機会に譲りたいと思います。
 十一月から実施をせられまして、もうだいぶ時日も経過いたしておりますので、その実施状況をお聞かせ願いたいと思うのであります。
#103
○高木説明員 御承知の通り福祉年金につきましては、市町村での受付は九月一日から全国一斉に始めております。十月十五日現在の市町村に書類が出てきております状況を申し上げますと、老齢福祉年金は予定されております受給者の六割五分が提出が終っております。障害福祉年金は三割三分、母子福祉年金は二割一分という状況でございます。十月三十一日現在の報告では四十府県地区が出そろって参っておりますが、その四十府県について割合をとってみますと、この半月の間に、老齢福祉年金につきましては予定されている受給権者の八割二分がすでに請求手続を終わっております。それから障害福祉年金は四割二分、母子福祉年金は二割七分という状況でございます。
 ただいまの数字でおわかりのように、老齢福祉年金は順調に行っておりますが、障害福祉年金、特に母子福祉年金の書類の出工合いが非常に悪うございます。障害福祉年金の提出の状況が悪いのは、障害の程度が国民年金法別表の一級に該当するかどうかについて医師の廃疾認定診断書を請求の際添付することになっておりますが、その診断書を作るのに手間取っているのが実態であります。たとえば県の方から巡回診療の班が回ってくるときに診断書を作ってもらおうというので、巡回診療の班の回ってくるのを待っているような状況もございます。それから障害福祉年金については、交通不便な僻地とか離島等においてお医者さんがおられない、医療機関がないために診断書が作れないという実態もございます。そういったところについては本人が障害の程度、状態について申立書を添付して裁定請求をするように指導いたして参っております。その本人の申立書によって一たん受け付けて、後日それをある時期に整理して県から医師をそれらの地域に派遣して、実地診断によって廃疾の程度を決定するように措置したいというふうに考えております。そういった特例措置を考えておりますので、障害福祉年金については今後書類の出工合が非常によくなってくるのではないかというふうに見込んでおります。
 母子福祉年金の書類の出工合が悪いのは、私ども考えますのに、一つは母子世帯の方々がお子さんを保育所に預けて昼間働きに出るために、昼間わざわざ役所に出かけて行って手続をすることができにくいというような実態があるのでございます。こういった点については、それぞれの府県において、市町村に休日等において受付け事務をそういった方についてはするように指導しておるのでございます。それから母子福祉年金については、老齢と障害に比べていろいろ添付する書類がむずかしくなっております。これはことしの十一月一日現在において、夫と死に別れて義務教育のまだ終わっていない子供を扶養している母子世帯について出すわけでありますが、夫の死亡の時点の五年、六年前にさかのぼって、しかもその関係が法律上の正規の届出がなされている婚姻ではなくて、内縁関係あるいは夫が外国人である場合は、そういった夫が死亡したこと、あるいは夫の生計維持関係、身分関係を立証する書類を作るのに非常に苦労しておられるように感じます。正規の法律婚の場合は、おおむねは戸籍の面で身分関係等が証明されますので比較的楽でございますが、内縁関係、外国人の夫の場合のそういった保証の書類がむずかしいという声も聞いております。
 それから大体の傾向を見ておりますと、老齢福祉年金につきましては、私どもが当初予定しておりました受給者の数字とそう遠い増減はないように見込んでおります。障害福祉年金につきましては、全国で十八万二千人の方がことし福祉年金かもらえるのじゃないかしいうふうに私どもは見込んでおりましたが、これが一割ないし二割増加する傾向を示しておる。これは今まで隠れておりました障害者が、年金がもらえるということで手続をとるようになってきたということから、今までは身体障害者の数は主として身体障害者手帳の発行数等で推定いたしておりましたが、そういった隠れておられた障害者が出てきたというところにあると思います。
 それから母子福祉年金につきましては、実は昨年の予算を作ります場合に、昭和三十一年に実施いたしまして母子世帯の全国実態調査によりまして推計いたしまして、四十万七千の母子世帯が福祉年金をもらえるだろうというふうに考えておったのでございますが、どうも実態を見ておりますと、この数字が二割ないし三割程度過大な見積もりがあったような気もいたしております。都会地の、ことに大都会の母子寮等の実態を調べますと、入寮しておられる母子世帯の六割ないし七割が夫と生別した母子世帯でございまして、死別の母子世帯というものが三割ないし四割程度しかいないというような実態であります。夫と死別した母子世帯というものは、終戦直後は戦争によって夫を失ったということで、いわゆる戦争未亡人問題というのが非常にやかましかったのでございますが、今日におきましては、そういった方々は軍人恩給なり遺族年金の支給を受けており、またお子さんの年令も十四才以上にはなっておられるわけであります。そういったことから、この福祉年金とは直接の結びつきは出てこないわけであります。つまり福祉年金は子供が義務教育終了前でございます十六才未満であり、軍人恩給の公務扶助料等をすでに受給しておられる方々には福祉年金は支給されないことになっているわけであります。従いまして私どもの実感といたしましては、今日における母子問題というものの中心と申しますか、ウエートといたしましては、生別母子世帯の方の問題にウエートが移っているのでありまして、死別母子世帯というものは、私どもが当初予定したものに比べますと、実態としてはそれほどの数字はいなかったのじゃないか、こういうふうに考えられるような状況でございます。
#104
○小林(進)委員 今までの申請の状況が、十月末現在で四十県とおっしゃいますから、まだ六、七県ほど残っておるわけでございますので、正確な数字ではないと思いますけれども、まず老齢が八割二分、それから障害が四割二分、母子が二割七分、こういうふうにおっしゃるのであります。実際の数字は厚生省の当初予定と同じのがあったり、当初予定までいかないのがあったりするというふうに御勘定になっているという御所見も承っておるのでありますけれども、われわれの方から見ますと、九月からやって、あまりにも事務の進捗がおそ過ぎるという感じ、その過程におけるいろいろの問題がわれわれのところへ出てくるのでございまして、依然として官僚事務というのはこんなに冷たいものかというふうな感じを受けるケースが幾つもございます。そういうことも次々にお伺いしたいと思うのでございますけれども、順序からいって、老齢年金は、今のお話では当初の数字と大体予定通り合っているとおっしゃるが、一体七十才以上の老齢者を何百万人と踏んで、その中の該当者が何百万人で、当初のものとぴたりといっているとおっしゃるのか。数字をもって総数とその資格者をお聞かせを願いたいと思うのであります。
#105
○高木説明員 お答えします。三十四年におきます七十才以上の老齢者の数は、人口問題研究所の資料によりまして三百十万六千人ということに見込んでおります。そのうちにすでに恩給その他公的年金を受けておられる方、また一定以上の所得があるためにもらえないというような方を差し引きまして、ことしは大体百九十八万六千人の方が受給できるというふうに見込んでおるわけでございます。
#106
○小林(進)委員 老齢年金は、三百十万六千人に対して、所得あるいは他の保障等があって資格のない者も出てきますから百九十八万六千人、これは比率にしますと何%になりますか。
#107
○高木説明員 大体六割五分ぐらいだと思います。
#108
○小林(進)委員 私がモデルとして一つ調べた市の数字を御参考までに申し上げて、質問の材料にしたいと思うのですが、私が調べました市は、事前審査なんかも八月ごろからやりまして、非常に計画的、能率的に事を終始していったのでございますが、それによりますと、老齢年金におきましては、申請者――明確にみずから該当しないといってあきらめている人はしないのですから、私は何とか該当するだろうという望みを持って申請した人の総合計が五千五百九十六人です。そのうちで該当者が三千二百三十八人。政府の善政に基づいて私もいよいよ月千円もらえるという楽しみを持って申請して、ぴたりとはねられた者が二千三百五十人です。人口十五、六万、二十万足らずの市でございますけれども、そこにおけるパーセンテージは六二%です。それから母子年金におきましては、これも自分は資格があると思って、今おっしゃるように、昼間働いていてなかなか手続に行けないというような、そういう不便も耐え忍んでいそいそとして手続に行ったけれども、はかなくはねられてだめになってしまって、合格した者が三〇%。それから障害年金におきましては、相当率がいいのですが五八%です。これも一級か二級か、自分は一級でいいだろうと思って行ったのが五八%ということですね。だから巷間にも、こんなものなければいいのだ、何もなければ当てにしないのに、こんなものを作って、もらえるようなはかない望みを持たして罪を作るだけだ、こういう声が非常に高いのです。そういうことを一体皆さん方はどういうふうに考えられているのか。こういうことに対する数字が間違っているのか、あるいはまたそういうことがあるのはあたりまえだというふうにお考えになるのか、一つ事務当局の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
#109
○高木説明員 ただいま先生がおあげになりました数字でありますが、老齢が五千五百九十六人のうち、三千二百三十八人がもらえて二千三百五十八人がだめになった、大体六二%というお話でございます。実は老齢福祉年金につきまして先ほどちょっと御説明が落ちましたけれども、農村地帯、特に単作地帯の農村におきましては、非常に顕著にそういう事例があるのでございますが、年寄り自身が、全然働いておらず収入を上げておらないにもかかわらず、実際はむすこさんが農業経営を主宰しておられるにもかかわらず、所得の名義人になっておられるという例があるのでございます。そういったことのためにことしの福祉年金はもらえないという事例がございます。これが、今申しましたような単作の農村地帯におきましては、私どもが当初予定しておりました数よりも上回っております。六二%という数字を示しましたのは、もしそれが農村地帯でありましたら、そういった面の影響が出てきたのではないかと考えられます。
 それから母子世帯は三〇%というお話でございますが、この母子世帯の中で、自分が該当すると思われた数の中に、いわゆる生別の母子世帯が相当入っておったのではないかというふうな気がいたします。国民年金法は夫と死別した母子世帯に限定しておりますので、そういう点から、自分がもらえると思ったのが、いわゆる夫に遺棄されたとか、そういうような夫と生き別れたような母子世帯の方がもらえるというふうに考えられたのではないかというように考えられます。
 それから障害福祉年金につきましては、これは結局自分の障害が国民年金法の一級に該当するかどうかということの、自分がどう考えるかという問題でございまして、今まで身体障害者手帳をもらっておられる方でありますと、大体身体障害者福祉法の一、二級の方が国民年金法の一級に該当するわけでございますが、中には、身体障害者手帳の中では二級ということになっておりましても、もう一ぺんよく診断いたしますと国民年金法の一級に該当しないというような事例も間々出てきておりまして、そういった観点から、障害の程度についての見込みについて、あるいは見込み違いがあった人が含まれているのではないか、こういうふうな気がされるわけであります。
#110
○小林(進)委員 今たまたま老齢年金について、農村の老齢の諸君の問題が出ましたから、それについて一つお伺いするのですけれども、あなたはその当時は国会で答弁されないから、私はあなたを責めるわけではないけれども、そういう農村においては農村経済の逼迫で、財布を離してしまえば――財布ばかりではない。名義人の問題もあります。名義人に委任しておけば五千円ばかりの特別軽減があるというような、そういう問題もございますけれども、そればかりではない。財布をせがれやむすこに渡してしまえば、もはや自分というものは小づかい銭ばかりしかない、納屋の中で子供のお守りをさせられるだけだという農家の老人の生活の悲惨さからいって、腰が曲がって七十五才になっても財布を離せない。経済が豊かならば財布を離す。社会保障が完備していれば財布を離すけれども、腰が曲がっても財布を離せないという悲惨な状態だから、このままで国民年金をおやりになりますと、一番ほんとうに助けてあげなければならない、一番適用してあげなければならない農村の老齢者がほとんど該当しませんよ。だから、この法はざる法になりますよということを、私どもは国会においてこれを審議するときに何回厚生省に申し上げたかわかりません。その答弁をお見せしましょうか。そんなことはありませんとあなた方は非常に楽観されておった。当時の速記録を見て、下さい。そして今になってみれば、立法して半年も一年もたたないうちに、
 ぬけぬけとわれわれの質問したそのわれわれの言葉をもってあなた方は答弁としておられる。実に無責任きわまる
 と思うのですよ。そういうことはあなたを責めてもしようがありませんけれども、こういうことはやっぱり率直に、あのときは間違いました、不明でございましたといって責任ある答弁をしてもらわなければなりませんよ。また言います。これは繰り返しますが、そういうことなんです。それはやっぱり官僚です。役人なんというものは、やっぱり自分の世間の狭いことと、実情を知らないことをみずから謙虚に反省してもらわなければいけない。われわれはこれを知っているがゆえに、先見の明があるがゆえに、何回これを繰り返したかわかりません。必ずこういうことがありますよということを言っても、やらない。そしてわれわれの質問をもってみずからの答弁としている。こういうことは卑怯千万ですよ。そして今になれば何か手続をとれ、手続をとれば来年の五月から一つ受けられるようにする、あなた方はこういうような行政指導をおやりになっている。こんなことも実に私はけしからぬと思っている。現実に資格があるならば、そういう形式の問題じゃない。単なるそういう農村のつまらない、五千円とか、そういう問題にかられてやっているという事実がわかるならば、何で遡及して十一月から扱いをやらないのですか。手続が済んだら来年の五月からやるというその関係を、一つ私はお間かせを願いたい。
#111
○高木説明員 所得税法の上で、先生御承知かと思いますが、実質課税の原則というものがございまして、事業なり資産から生じます収益を、法律上帰属するものではなく、実質的にその収益を享受するものに課税するのだという建前になっております。農村等におきまして、そういう実質課税の原則があるにもかかわらず、単なる名義人である老人の名前で税の申告が行なわれているというのはどういう点にあるかと申しますと、これは一つにはいろいろなしきたりがあろうかと思いますが、同時に、老人の所得名義によって申告することによりまして、所得税法の上では、老年者控除ということで、税額で五千円控除の恩典があるわけでございます。そういう、税額の面で五千円控除してもらえるということの恩典がありますために、実は老人名義で所得の届け出をしておるという例が多いわけなのであります。この名義所得の問題は、私どもが現在まで各県から聞いた報告によりますと、西の方の中国
 でありますとか、四国とか、そういった方では大きな問題になっておりません。従って、この問題が非常にやかましく言われているのは東北、北陸の方面でございます。私どもが所得制限をやりますときにとらえまする所得というものは、私どもが独自の所得調査の機構なり組織を持っておるわけではございませんで、あくまでも課税台帳の上の所得ということで所得制限をかけておるわけであります。従いまして、老人の名義で前年に所得申告をいたしました以上、課税台帳は老人の所得ということになっておりまして、しかもそのことによって所得税の上では、税額五千円の控除という恩典を受けておるような実態でございます。そこで従来は、田畑等の不動産の所有権をむすこに譲らなければ名義が変えられないというように考えられておられた方が多いのでございますが、国税庁から、これにつきまして、生計を同じくする親族間におきます農業経営者の判定について通達が出ております。むすこさんの年令がおおむね三十才以上であるる場合に、そうして実際にむすこさんが農業の経営を主宰しておられる場合には、不動産の所有権名義はそのままにしておいても所得名義は変えられるのだ、こういうふうな通達が出ているわけでございます。従いまして、本年のところは前年の所得によりまして課税台帳上の所得で支給停止をいたしますので、本年はもらえませんが、ことしの所得税の申告にあたりまして、むすこさんに名義を譲りますれば、来年の五月分からは福祉年金がもらえるようになる、こういうことなのであります。先生がおっしゃいました通り、実は私どもも立案当時から名義所得の問題は気がついておりましたが、その名義所得の問題がどの程度出てくるかという数字の見込みにつきましては、確かに見込み違いがございました。
#112
○小林(進)委員 滝井委員の御質問もございますので、私はほんのつなぎでやったのでありますから、重点は抜かしておいてあらためてやりますけれども、半分にしておくわけにいきませんから結論に移ります。
 また申し上げますけれども、これは今度は支給日は三月におやりになるのですね。その申請をして、資格があるということは認められたけれども、三月前に死んでしまうというと一体どうなるのですか。これはくれないのだそうですね。そのくれないという理由ですが、満七十才には間違いないのだから、十一月からくれるというならば、ちゃんと十一月には資格を持っているのですが、それをただ、あなた方が十一月にくれるべき金を来年の三月になってくれるという。ほんとうならば十一月、十二月と毎月やれば問題はないけれども、まとめて三月に上げますと言う。その三月までに死んでしまったならばくれないということは理論上合わないと思うのでありますが、くれないことの明確なる理論的根拠をお示し願いたいと思います。それはごまかしてはだめですよ。
#113
○高木説明員 現在国民年金法の規定の上から申し上げますと、ただいま先生のおっしゃいました通り、ことしの十一月に受給権が発生された方でも、三月までになくなりますと、その方がなくなりましたことによって母子福祉年金をもらえる方が出てきた場合を除きましては、もう失権して支給を受けないことになっております。これはどういう考え方かと申し上げますと、この福祉年金を受ける権利というものは
 一身専属の権利であって、いわゆる相続というようなものは考えない、こういう思想に基づいているわけでございます。
#114
○小林(進)委員 ははあ、なるほど。それは相続権の問題にひっかけたなかなか巧みな論理ですけれども、しかしこの人は死んでも、やはり自分は意識があろうとなかろうと、社会常識で、死ねば自分の死体をやはり始末する費用が要るのです。だから今の独占資本の世の中では、死んでいきたい、しかし死んだところで葬式ができないからしばらく長生きしておこうという、こういう考え方が実際にはあるのです。だから死んでいってもやはり葬式代くらいはあなたのおっしゃる身分権として残しておかなければならぬ。今やはり千円なり二千円なり、それは自分たちの子孫に譲る金ではない。自分の跡始末をするその人個人に必要な金でありますから、そういう意味においてもこれはやはりやらなければならないと思います。御答弁願いたい。
#115
○高木説明員 ただいま先生の御指摘された問題は、実は各府県からそういう点についてすでに意見が出てきておりますが、確かに一般の受給者の方々は、十一月分からもらえるという気持が強いわけでございます。先生の御指摘のような問題、まことに私どもとしても痛いところでございますけれども、ただこの問題につきましては、とにかく現在の国民年金法の規定ではどうにもならない、法律改正をせざる限りどうにもならないという性質の問題なのでございます。
#116
○小林(進)委員 けれどもこういうことは、ただくれないために人心の機微を奪い、世間の常識を奪って――官僚という言葉はおきらいかもしれませんけれども、冷たい法理論一般は、われわれの常識、既存の社会通念にはどうしてもマッチしない。くれたくないという信条一方でそういう理屈をおつけになってくれてない。これは非常に牽強付会な言です。そんなことは国会の私たちとあなた方の間において多数決や何かで通過しても、それは決して国民大衆を納得させる理論じゃない。ですからそういう意味でお互いにやはり大衆の立場に立って、社会通念の上に立って、そういう誤りが誤りであるならば、謙虚に法律の不備を改めるというふうに私は考えていただきたいと思う。小林進の質問にうまく答弁してあいつをごまかしてやった、そういうさもしいやりとりで終わらせないようにしていただきたい。ついでに申し上げますが、法律は改正してもらってもいいのです。
 それから今申しますように老齢年金の名義の問題、ようやく七十才まで生き長らえてやれやれと思ったときに、お前は供出米の名義になっているからやれない、こういうことはやはり改めて、特にくれてもらいたい。国民年金などというものは、農村のこういう老人や一般市民を一番中心にして作られた法律ではありませんか。その一番ねらいにしている農村の老人連中が、単に供出米の名義になっているということでもらえない。そういうことなども、巧みな理屈でごまかすのでなくて、やはり人心の機微をとらえるということで改正してもらいたいと思う。
 第三点は母子年金、これは生別でももらえるだろうと思ったけれども、生別はもらえない。この問題もやはり国会で執拗に申し上げた。夫と別れて女のかぼそい腕で十六才以下の子供をかかえて生活戦線に働いているこの苦しみ、死別した母子家庭と生別した母子家庭と一体どのくらいの相違があるか。ただ生別と死別の原因が違うだけで、人生の荒波でいたいけな子供をかかえて働いている点では何も変わりはない。生理的にも肉体的にも精神的にも、何も苦しみは違わない。むしろ精神的な苦痛は死に別れよりも生き別れの方が多いかもしれない。それをあなた方は同じ条件に働いているものを、死別したものだけは母子年金をやるが、生き別れはやらない、こういうことではかってみたら、同じ労働戦線で荒波にもまれて働いているものの中でたった三〇%、七〇%は全部資格がないということで、この人生の荒波にほうり出していく。こういう残酷な法律の建前はいかぬ。私はあなたに答弁を求めませんが、一つ真剣に考えて、やはり法律改正の方へ努力をしていただきたいと思います。まだいろいろ申し上げたいことがありますけれども、あなたも最高の責任者でもございませんので、大体これくらいにとどめまして、また後日、日を改めてお伺いをすることにいたします。
#117
○滝井委員 ちょっと尾村さんの方からお願いします。いろいろたくさん根本的な問題について尋ねたいことがありますが、大臣がおられませんから、ます第一に、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律が三十二年六月であったと記憶しますが、施行されることになった。そして十七業種の環境衛生同業組合が都道府県単位にできて、その連合会が中央にできる、こういうことになりまして、先般、多分中央に適正化の審議会ができて、それぞれの業種の適正化価格と申しますか、そういうものの基準をおきめになったと思うのです。その中央でおきめになった概要を御説明願いたいと思うのです。
#118
○尾村政府委員 先般理容業とクリーニング業につきまして、中央適正化基準が適正化審議会によりまして決定を見まして、これが厚生大臣に対して答申を見たわけでございます。その内容につきましては、今回が中央適正化基準を作ります最初のものでございますので、まず最初に全般につきまして、適正化基準を審議するのに標準になる
 一般的な思想というものをきめるということで、最初審議をいたしまして、その共通な線をますきめる、その次に具体的に出ております理容業とクリーニング業につきましての営業の規制、それから適正料金、この二つにつきまして、それぞれの業種ごとにきめたわけでございます。料金の方につきましては、あくまで中央の適正化基準でございますので、これが直ちにそれぞれの具体的な、ある地方の業者の最低料金ということではございませんが、それぞれの地方ごとに、地域の事情に応じてきめるということになります参考の標準になります。そういうような料金を両者についてきめたわけでございます。
#119
○滝井委員 理容とクリーニングがきまりましたが、他のものは一体どういう状態になっておるのですか。
#120
○尾村政府委員 ただいま美容業と興行場につきまして申請が出ておりまして、これをごく近く中央審議会で審議を開始することになっております。もうすでにこれにつきましては部会に付託をいたしまして、それだけは決定済みでございます。
#121
○滝井委員 美容と興行場は今申請中で部会に近く付託するということですが、理容とクリーニングの適正化規定ができて、同時にまた適正化の基準ができたのですが、その具体的な基準額というものは一体幾らなのか、それでその算定の科学的な基礎というものを大ざっぱに説明していただきたい。そしてできれば次会にその資料を御配布願いたいのです。
#122
○尾村政府委員 今日私この質問を予期しませんでしたので、まことに申しわけないわけでございますが、資料を持って参っておりません。これは全部印刷物にして詳しく出ておりますので、一つ取り寄せまして、それを差し上げた方が間違いがないと存じます。大体は知っておりますけれども、正確を期するために、さように御了承願いたいと思います。
#123
○滝井委員 ではそこらはあとにしまして、ちょっとお尋ねしたいのは、生活協同組合その他が自己の組合員に、たとえば理容とか美容を利用せしめるために組合の指定を作るわけですね。その指定の定義ですが、一体どういうことが指定ということに当てはまるのか、それをちょっと御説明願いたいと思うのです。
#124
○尾村政府委員 ただいまのは基準ができまして、適正化規定は府県ごとに作られるわけでございまして、まだ規定はできておりません。これは基準を流しまして、それに基づきまして、過当競争があると認められる府県の同業組合が申請をするわけでございます。現在一、二県で、もうすでに県に申請は出ております。この過当競争の条件でございますが、これはその条件に当てはまるような調査事項といいますか、その内容になります事項を十七種目と定めまして、これを流しております。これに総合的に該当いたしますと要件がきまる、こういうふうにいたしております。
#125
○滝井委員 あるいはきょう突然言ったのでおわかりにならないかと思いますが、たとえば生活協同組合で、あなたの店は理容とか美容の指定店だということをきめますね。その指定という
 ことをやった場合に、その散髪屋さんなり美容師さんは、生活協同組合の職員なのかどうかという点です。職員でなければならぬのかどうかということです。そういう点の疑問が一つ出てくるわけです。
 それからもう一つは、指定をするときには、その指定をする生活協同組合が一切の施設から人件費を全部提供しなければ指定にならないのかどうか。単に、君を指定にする、はいなりました、こういうことでいいのか。その指定というものの範囲、限界という点をはっきりしておかないと、これはいろいろ問題が出てくる思うのです。と申しますのは、たとえば一つの町に理髪屋さんが三軒あった、ところが三軒とも指定しちゃった、こうい場合があり得るわけです。そうしますと、その三軒の人たちは、この生活協同組合の規定に従って、他の地区より安くしなくちゃならぬという問題が出てくるわけです。そうすると、たまたますぐ隣接した町に床屋さんは六軒あったが、その隣の町から、三軒とも安いこの町にやってくる、こういう可能性がそこに出てくるわけです。そういう問題があるので、この指定というものの定義を一体どういう工合にきめるかということは、非常にこれは大事なことになってくるんだと思うのですが、そういう点、何か御研究になっているのかどうか。
#126
○尾村政府委員 ただいまの指定という意味は、いわゆる環適法に盛られておる指定という意味でございましょうか。
#127
○滝井委員 生活協同組合の員外利用というものは、原則として許さないわけです。そうすると、一つの町に三軒しか床屋さんがなかった場合、生活協同組合の方でその三軒全部を指定にしてしまったということになれば、生協の人はもちろんそこで安くやるわけです。町の人からは高くとりますが、し、かし三軒とも指定されているんだから、そしてほかに床屋がないから、安い料金で町の人もやっている。そうすると隣接する町の者がやはり来るわけです。そうするとその三軒は、たくさんお客さんが来ればいいわけですから、これはけっこうなことだ。一軒なら問題があるが……。そういうことは起り得るわけですよ。だからこの指定というものの限界というか定義というか、そういうことを一つはっきりしてくれませんかと、こういうことなんです。
#128
○尾村政府委員 御質問の趣旨はよくわかりました。生活協同組合の、たとえば理髪店でございますか、理容所でございますか、これは生活協同組合が経営しておる理容所ということでございまして、今までいろいろ問題のございました、生活協同組合が既存の理容所の利用を指定する、特にそこを利用することを指定するということは、これは生活協同組合の特別な形で、今度環適法で考えておりますものの対象にはならぬわけでございます。
#129
○滝井委員 そこで生活協同組合の経営するものということになりましたから、そうしますと、さいぜん申したように、そこに働く理容師なら理容師は、生活協同組合の職員でなければならないのかどうかという、こういう人間性の帰属の問題が出てきます。それから生活協同組合が経営するということは、施設と人間と全部含むものなのかどうか。しかしこれは単に、私が経営することにいたしますよ、こういうことを言うても、経営しておるといえばしておるし、してないといえばしてない。外から見ては実態がわからないわけですね。生活協同組合が経営するという、その経営するというのは、そこの職員でなければならないということになれば、これははっきりしてくるわけです。あるいは施設や経営費を単に生活協同組合が提供するということで、経営しているということになるのかどうかということは、問題が出てくるわけですね。だから、生活協同組合が経営をするというその実態はどういうものか、こういう点が問題になると思います。
#130
○尾村政府委員 これは還適法の対象になります組合員をきめるときにおきましても、たとえば理容師の場合には、理容師法に基く理容所ということが対象になっておりまして、この理容所の営業者、すなわちこれは開設者でございます。これで全部組合員を規制していると同じ趣旨で、やはりこの環適法で考える場合には、開設者が協同組合の場合には協同組合になっておる。従いまして、建物等はもちろん借家の場合もございましょうけれども、これはあくまで一般の理容所と同じように、開設者であるということでございます。従って、その開設者がはっきり、定款があるような場合に、それにうたわれておる協同組合の職員という場合もありましょうし、いわゆる賃金払いで、職員ということではありませんけれども、その開設者が自分の営業をさせるために雇っておるという形ならば、それは職員ということには限定いたしません。しかし広い意味では、あくまで人と営業権と申しますか、営業それ自体の責任者が協同組合である、こういうふうに解しておるわけであります。
#131
○滝井委員 だいぶわかってきました。そうしますと、生活協同組合が経営をしておるということは、生活協同組合の代表者が開設者でなければならぬ、究極はこういうことになるわけですね。従って、それが施設をよそから提供されようと、あるいはそこに働く人たちが賃払いの者であろうと、とにかく名義は生活協同組合が開設者、こういうものならば、いわゆる指定という名義をあげてもかまわない、こういう形になるのですか、そこらあたりもう一ぺん確認しておきたい。
#132
○尾村政府委員 理容所の開設についての許可を受けた者が生活協同組合であれば――ということは、これは生活協同組合という名前は、普通理容師法では取り扱っておりませんで、その代表者という形は、協同組合によっていろいろあるかと思いますけれども、必ずそれを対象にしておる。それが開設者になっておれば、それはもう協同組合の理容所、こういうふうになるわけでございます。
#133
○滝井委員 わかりました。単なる指定という字句をかぶせただけではいかぬ。開設者が生活協同組合の代表者でなくちゃならぬ。よくわかりました。あとは一つその資料が来てからでけっこうでございます。
 次は監査のことですが、午前中、八田委員から結論的なことが大臣に質問をされましたが、大臣の答弁によってみましても、一挙に医師会に監査をまかせるというわけにいかぬような答弁でございました。十分意見を尊重して監査をやる、こういうところであったようですが、そこで一応、少し系統的に監査ということについてお聞かせを願いたいと思うのです。
 質問は昭和二十八年六月十日の保発第四六号の監査要綱に従ってお尋ねしたいと思いますが、一人の医師が、まず厚生省の監査にかかるまでには一体どういう過程でかかるようになるかということなんです。これはこの監査要綱を見ると、いろいろたくさんな過程があって監査にかかることになっておるわけですね。その監査にかかるようになるプロセス、こういう形で厚生省の監査にひっかかってくるということを一つ簡単にずっと御説明願いたいと思います。
#134
○館林説明員 今お話のありました監査要綱にありますように、現在監査の対象になります事例は、不正または不当の疑いのある場合に監査対象となるわけでございますので、何らか疑問な点が生じた場合に監査にかけるわけでございます。その何らか疑問の点の生ずる根拠は、たとえば支払い基金で審査の際にいろいろ疑問の点が生じて照会をする、あるいは照会をしないまでも来ていただいて御説明を聞く、こういうようなことをいたしましても、どうもその御説明がなかなか納得がいかない、そういうような事例で、これは一度十分診療内容を伺わなければならないというような事例も生じてくると思いますし、また患者を調査いたしておりまして、請求明細書の内容等から判断して、どうしても一度直接に伺わなければならないというようなことになる場合のあるわけでございます。主として今日監査対象になるものは、それらの理由によって対象となるわけでございます。その監査対象に一応考えました事例につきましては、さらに十分間違いがないように各種の調査をし、また従来の診療報酬の請求内容等も詳細に検討しました上で、なお多くの場合はそれらを監査対象にする旨につきましては、一応その所在の都道府県の医師会、歯科医師会等にも連絡いたしまして、その上で監査対象として決定して、おいでをいただいて調べるわけでございます。
#135
○滝井委員 そうしますと、この監査要綱を見ますと、「書面監査」というのがあるんですね。その「書面監査」というのは、一体どういう内容のことなんですか。
#136
○館林説明員 今申しましたように、支払い基金の審査の状況あるいは別の面の患者調査等、何も特にその医師を特定対象としないで行なったような患者調査から疑問が持たれたような保険医につきまして、診療報酬請求の従来の状況、あるいは審査上の注意を受けたか受けないか、どういう点を注意を受けておったかというような、直接患者調査をするとかあるいは直接その担当医師に聞くということをしないで、各種の資料をもとにして検討をすることを書面監査というふうにこの場合にはいっておるわけであります。
#137
○滝井委員 この診療報酬請求書について監査を行なう、それが原則としてまず第一に出てくるのはその書面監査なんです。そうしますと、出てきた請求書の字づらだけで一体ほんとうの監査ができるかどうか、こういう疑問なんです。私はむしろこういう診療報酬請求書の書面監査という言葉が適当でないという感じがするんです。これは請求書の調査というくらいのところでなくてはならぬのではないかと思うのです。ところがこの大上段に振りかぶったところから見ると、もう第一歩からかみしもを着ているんです。こういう点、ます書面監査というからには、今あなたの言われたようなことくらいなら、診療報酬の調査というくらいでいいと思うのです。
 それから監査の前にあらかじめ患者について実地の調査を行なうのですが、一体そのやり方はどういうやり方をするのかということです。これを御説明願いたいと思うのです。
#138
○館林説明員 ただいま私この文面上の「書面監査」の説明を間違えましたので、訂正いたします。そこに書いてございます「書面監査」とは、いわゆる監査でございます。各種の書面上の事実を取りそろえまして、保険医においでをいただきまして、その書面上現われた事例について一応お伺いをするということをさしておるのでございます。その保険医においでをいただいて、書面上現われたいろいろの疑問点についてお伺いをする前に、その疑問点については患者調査をすることが建前である、こういうふうに書いてあるわけでございます。従って私が前に説明しましたような調査というような意味ではございませんで、あくまでもこれは書面につき監査をするということであります。いわゆる普通の監査でございます。その点説明を間違えましたので、訂正いたします。
 ただいまお尋ねのございました患者調査はどういうやり方でやるか、こういうことでございますが、普通は多くの場合必ずしも診療問題だけではなくて、患者の資格等の問題もありまして、広く一般的に患者について調査をしておるわけであります。その患者について調査をしておる間に、特にある医師に限って不正または不当の疑いのある事実、これはあくまでも疑いの問題でございますが、会って話を聞かなければ説明のつかないような疑問な点が出て参るわけでございます。そのような場合に、さらに詳細にその疑問な点を生じた医療機関あるいは医療担当者について患者の例数を広げて調査をするわけでございます。その場合は特に請求明細書について行なうわけでございまして、一般的な患者に対する、あるいは被保険者の指導というような一般行政のような調査をするというわけではございませんで、診療内容あるいは診療の事実等について例数を多く、その医療機関が扱った、あるいは保険医の扱った患者について質問をして、請求明細書の内容と引き比べて、あるいはその当時の病状を聞くわけであります。
#139
○滝井委員 そうしますと、どうも今の書面監査というのは結局診療報酬請求明細書について、実質的に書面かと思ったら、本人に来てもらって書面監査をやる。こういうことになると、それは書面監査でないわけなんですね。本人に来てもらって、本人を目の前に置いてやる監査というものは書面監査じゃないわけですよ。面前監査です。そうなるとこれはおかしいのです。そして今あなたは患者をあらかじめ実地調査をする。その場合には何も監査を目的としたのじゃない。普遍的に一般的に患者の調査をやるのだとおっしゃるが、この易行はこれは明らかに書面監査をやるが、その前にあらかじめ建前として該当患者、診療報酬請求明細書に一致する患者を調査しておる、こういうことだと思うのです。そうしないと、それはもう実にたくさんな社会保険出張所の人員を必要とすることになるわけです。この場合は明らかに監査前あらかじめ患者について実地調査をされるものは、あくまでも書面監査を行なうその診療報酬請求書の患者でなければならぬと思うのですが、どうも今のあなたの解釈はおかしいと思うのです。しかもその本人に来てもらって書面監査というのでは――それは書面監査じゃないですよ。
#140
○館林説明員 この監査要綱には、いわゆる保険医について行なう監査についてほかに何らの前述がございませんで、いわゆる保険医について行なう監査のことを書面監査と述べてある、かように解するわけでございます。
#141
○滝井委員 どうも本人に来てもらってやる監査を得面監査というのはおかしいと思うのです。しかも患者を実地に行って当たっておって、そして今度は療養担当者も来てもらう、こういうことです。患者の方には聴取書を書き、しかも場合によっては始末書までとる。そして書面監査というものに臨むのに医者に来てもらうのですから、それは書面監査でないはずなんです。あなた方が監査を一切書面監査と言われるならば、それは一応そら受け取っておきましょう。そうすると、この監査は診療に支障のない日時を選ぶことになっておるわけです。これは実際に診療に支障のない日といえば日曜日、診療の休みの日でなければならぬはずです。一体実態はそういう実態かどうかということですね。医師の公休的な休診日に監査が行なわれておるかどうかということです。
#142
○館林説明員 「つとめて」と書いてございますが、もちろんなるべく診療に支障のないよう努力はするわけでございますが、またこれは行政事務として扱うわけでございますので、やはり行政庁としても一応の計画を立てまして、その計画のもとにおいでをいただきたいという御連絡をするわけでありまして、どうしてもやむを得ず監査に来られない、こういうことでございますれば、日をあらためて適当な日に変えるというようなことをして、実際上はなるべく診療に支障がないよう努力はしておるわけであります。もちろんここにこまかいことが書いてございませんので、監査の際に個々の医療機関に立ち入って、そこで伺うという方法もあるわけでございますが、またそれが一番監査には診療に支障のない方法かもしれませんけれども、従来から医師会等と連絡の上で一定の場所においでをいただいてやる方法が実際上はとられておるわけでございまして、もちろんその間ある程度の時間の空費があるわけでございますが、御協力を願って監査をしておるわけでございます。
#143
○滝井委員 実は診療に支障のない日ということは、実際には診療に支障のあるウイークデーに行なわれておるわけです。従って行政が優先をして、人間の命を守る診療の方が行政に付随をするという形が結果としては出てきておるわけであります。ことに診療に支障のない日なんていうのは訓示規定に現実はなってしまっておるわけです。で、こういう点監査をやられようとするならば、そうして医者が首をつったりしないようにするためには、やはり日曜日あたりにしてやることが親心だと思うのです。そうして行政の方は一人行けばいい。日当も旅費ももらうのですから。ところが医者と患者の方はそうはいかぬ。休めば休んだで損になるし、患者も大へん迷惑になる。行ってみたら先生がいない。きょうはどこへ行っておるんだろう。何か県庁へ監査に呼ばれておるらしいぞということになると、加藤医師でなくても村じゅうにすぐ広がってしまう。これは休みの日にやればそういうことはない。先生の休みの日だということになれば、そういうこともなくなるわけです。だから診療に支障のない日を選ぶのを建前としておりながら、実際には行政なんだからという、その行政の権威でやるところに、やはり私は問題があると思うのです。だから、一年に厚生省がやるのは、第一期は四月から九月、第二期は十月から三月、こういうことですから、出ていく時間はそうそうしょっちゅう行くわけじゃないですから、行った技官の一人、二人がある程度そこを犠牲にしてもらえばいいということになるのです。だからそこらの配慮をして、こういう制度を実施するときには、何も行政はウイークデーでなければならぬということはないと思うのです。そういう意味で、ある程度これは考慮すべき点じゃないかと思うのです。
 次は、その次の「社会保険医療担当者監査調査書」、これは被監査医療担当者についてそれを作成することになっておるのですが、これは一体だれが作るのですか。その責任者は技官の医者なのですか、それとも事務官ですか。
#144
○館林説明員 これは監査に従事する担当官が作るわけでありまして、本省と地方との共同監査におきましては、本省から監査に参りました担当技官並びに地方ではその監査を施行した府県の保険課長がその責任において作成するわけでございます。また地方だけで行ないます監査におきましては、保険課長が作成するわけでございます。
#145
○滝井委員 そうしますと、中央のものについては技官と保険課長、地方のものについては保険課長と、まあ名前はそういうことになるのでしょうが、実際に中央から出張していった技官がとてもこんな詳しいものを作れるはずはないわけですね。まず社会保険医療担当者監査調査書様式をごらんになると、診療科名、病床数それから保険医の氏名等がありますね。それから学歴、職歴、出身学校名、卒業年次、保険としての経験年数、社会保険における過去の罰、保険診療に対する講習会出席率、それから問題はその次の経営状況です。社会保険関係と一般との平均一日あたりの患者数、社会保険関係における最近三カ月間の平均一カ月間件数、日数、点数査定率、こういうものになっておるわけです。はなはだしいのになると、貯金通帳まで見せてくれということになるわけですな。税務署と同じです。診療録の整備及び記載状況、受診者資格に関する事項、診療に関する事項、診療取り扱い状況、こういうことになっているのですね。私の知っておるのでは、一体一カ月幾ら収入があるか、預金はどのくらいあるのかということは、どういうところからくるかというと、こういう経営状況からくるわけです。経営状況、過去三カ月間の平均一カ月間の件数とか日数、点数査定率、一日あたりの平均患者数、こういうことになれば、一体一日幾らもうかっておるのか、こういうことになるのだ。頭を横に振っているが、実際そういうことがあるわけです。私はこういう経営状況なんかなぜ聞くのかということを聞いたことがあるが、その人がこういう悪いことをするのはどういう経済状態かを知る必要があるのだ。その経営状態によってやはり悪いことをしたりすることがある。貧すれば鈍するということもあるのだ、こういう話もあったのです。しかし、こと監査調査書というものは、様式は裁判所の検事の作る調書と同じようなものでしょう。それと同じようにきびしいのです。それは東京から行った技官や保険課長の名前はついておるでしょうが、実際はだれがやるかということです。これは実際には社会保険出張所の職員がやりますよ。問題はやはりこういうところから出てくるのですね。私はそうだと見ておるのですが、実際にこういうことを技官や保険課長が自分でやれますか。
#146
○館林説明員 もちろん個々の内容は補助職員を使いまして調べさせるわけでございます。その結果判断して、それを調査書に盛り込みまして、技官並びに保険課長の責任において作成するわけでございます。今お話のありました貯金がどの程度であるかということはおそらくないことと思います。ここに書いてございます経営状況と申しますのは、その内容は左に示すようなことの経営状況をさしておるものでございまして、別にその医師が非常に貧乏であるとか非常に豊かであるとかいうことをここで調べようとするわけではないわけでございます。
#147
○滝井委員 それならば経営状況なんというのは必要ないわけです、豊かな経営状態であろうと貧しい経営状態であろうと、こんなものを調べる必要はないわけです。ところがその経営状態によって、犯罪を――犯罪と言っては語弊があるが、不正水増し、不当請求ということが起こるその要因をやはり見ようとしておるのではないかと私は思うのです。だからこそこんな状態を書きますと、やはり頭の非常によい技官は、これは一ぺん貯金も調べておく必要があろう、こうなるのです。財産も聞きますよ。この家はお前のものかどうかということも聞きますよ。借家かどうかということも聞きますよ。だからやはりこの状態を、監査の調査書というのを見ると、これはあとで私は詳しく監査書の状態から御説明していきますが、これはもう一ぺん検討してみる必要があると思うのです。私今から二、三年前にも一ぺん監査の要綱でやったのですが、当時は私も時間の関係で詳しくやれませんでした。しかしあなた方が、これはなるほど名前は技官なり保険課長の名前でやりますけれども、実際は末端の職員が作るのです。医者の家に行って作るのですから、だからこういう点については監査に必要な最小限度のものにする必要があるのです。経営状態までいけば必ず貯金通帳から動産、不動産からみないくのです。私がその調べる者になってもやはりやりますよ。その家の経営状態を調べるなら、一体借金が多いか少ないかということを調べなければ、こういうことだけをやるのはナンセンスです。何万件あろうと何千点あろうと、一日何千点であろうと、そういうことはあとで監査の対象になるかもしれぬけれども、過去三カ月間とか、一日平均あたりの患者数ということを調べていくと、そういう財政上の問題、経理上の問題に必ず立ち入ってくることになるのです。ですからこういう点についてはもう少し御検討いただく余地が私はあると思うのですが、保険局長どうですか。
#148
○太宰政府委員 ちょっと私も深く研究しておらぬので、適切なお答えになるかどうか。一応経営状況と表題みたいなものがついておりますが、その中身はそこにありますような監査を行ないます一般的背景という程度のものであろうかと思います。御指摘のように、何もここで特に不必要なところまで根掘り葉掘り、聞く必要のないことまでやる必要は毛頭ないわけでございます。その辺の点につきましては、私どもといたしましても大体監査に必要な限度においてやるべきもの、かように考えておる次第であります。
#149
○滝井委員 忠実な出先の第一線の職員というものは、なかなかここでこうしてしゃくし定木の文章を読むようにはいかぬのです。やはり自己の調査が完全無欠のものでなければ、いよいよ出るところに出たら工合が悪いということになる。だから経営実態を知ろうとするならば、やはりその人の財産、その人の預金、動産、不動産、借家か自分の家か、こういうことまで調べることは常識ですよ。だからこういう経営状態を調査するということになれば、そこまでいく方がむしろ普通なんです。それが役人の立場から見れば善良な官吏ということになるのです。それで、こういう項目を載せなければそういうことはなくなるのです。これは三カ月間の平均一カ月間の日数とかなんとかいうのは、それはあなたの方の基金でお調べになればわかることなんです。だからこれは基金でもおやりになるでしょうが、しかし実際にこれはその医師にあたって調べるということも裏づけとして必要になってくるものだから、必ず医者にこういう質問が出てくるのです。だからそういう点については御検討をしてもらいたい、こう私は思うのです。
 それからこの指定の取り消しの場合の調査書、それから関係資料というのがあるのですが、その指定を取り消す場合の関係資料の写しというものは――一体関係資料というのはどういうものをいうのですか。
#150
○館林説明員 ただいまの監査調査書が主たるものでございますが、そのほか必要に応じて請求明細書あるいはカルテの写し等が主たるものでございます。なお弁明書もとる場合がございます
#151
○滝井委員 そうしますと、関係資料というのは明細書やら診療録、こういうものですか。これは私はそうじゃないと思うのですが……。
#152
○館林説明員 現在実際にやっておりますのは、そのようなことで取り扱いをしていると思います。
#153
○滝井委員 私はどうもそうじゃないと思うのです。ます指定を取り消す場合には、その指定を取り消すための監査の調査書というのは、いわばその証拠書類になると思うのです。監査の調査をした具体的な調査資料ですから、いわば証拠書類です。すなわちその診療録やら請求明細書なり患者の実態調査の調査書じゃないかと思うのです。そして関係資料というのは付属書類じゃないですか。たとえば金銭出納簿やら薬品の受け払い、支払いの状況の帳簿、こういうのがいわゆる関係資料、すなわち付属書類じゃないのですか。そうでないとこれは合わぬのです。
#154
○館林説明員 監査調査書には、監査の結果いろいろ判明した点あるいはなお不明な点等が出てくるわけでございます。それらの根拠となるべき関係書類でございますので、従って請求明細書にはどのような請求がなされており、患者の調査の結果はどうであって、カルテにはどう書いてあったかというようなことが主でございます。
#155
○滝井委員 実態はあとで言いますが、今私のいったような状態です。まず指定の取り消しをやる場合に証拠書類がなければならぬわけです。証拠書類というのは請求書と診療録と患者の実態調査以外にはないわけです。それは前に申しました社会保険医療担当者監査調査書というものは、これはお宅がこういうものを作りますけれども、実際証拠の書類として出てくるものは、こういうものの基礎となるのは何かというと、請求明細書、それから診療録、患者の実態調査の書類、これだけです。そうすると、あと付属書類として、関係資料という中に付属して出てくる資料がなければならぬわけです。それは何を出しておるか、金銭出納簿、薬品の受け払い、支払い状況の帳簿です。これをやっておるわけです。これはあなたの方の実際に監査をやった技官の書いておる論文の中から私は持ってきておるわけです。これだけが監査のときの証拠書類とそれから付属書類でございますということをちゃんと書いてあるのです。あなたのところの技官が書いておりますよ。これだけ監査の問題が大きな問題になっているのですから、館林さんにしても保険局長にしても、一体どういう状態で行なわれるか、もう少し現場の実態を調査されておく必要がありますよ。実態はそうなんです。あなた方はそこをもう少し研究をしていただきたいと思うのです。私は、あなた方はどうもそこはうといようでございますから、またあとで具体的に入ります。
 そこで、指定を取り消す場合にまず内議が行われるわけですね。その内議が行われる場合に、「故意に不正又は不当な診療を行ったもの、」こういうことがあるわけです。それから「重大なる過失により不正又は不当な診療」というのがあるわけです。それから「軽微なる過失により不正又は不当な診療」この判断です。「故意に不正又は不当な診療を行った」とか、「重大なる過失」とか「軽微なる」とかいうようなこの判断は、だれがどういう基準で行なうのですか。ここらあたりがやっぱり私は一番大事なところだと思う。だれが科学者である医者のやったものを、これは非常に故意のものだ、これは重大な過失によるものだ、これは軽微な過失によるものだという判断をやるのですか。そうしてその際は一体どういうことでそれをきめるかということですね。ここに(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と、こうありますが、これによって指定の取り消しになるか、保険医の一カ月なら一カ月の停止になるのか、あるいは懲戒くらいになるのか、譴責になってくるのか、いろいろきまってくると思うのです。一つ、だれが判断をし、どういう基準でそういうものをやるのか、それを教えていただきたいと思うのです。
#156
○館林説明員 こういう処分の限界というものは、全般的に一つの規則を作ることがむずかしいのは、あたかも、たとえば食品衛生法違反で、何日か食品店を休業させるというような場合にも、これを休業させるかさせないか、あるいは十日の休業が適当であるのか二十日の休業が適当であるのかというようなことがむずかしいし、またそういう基準がなかなかできるものではないと同じように、この問題はむずかしいものであります。ただこの監査要綱で明白でございますのは、取り消しと戒告との間に大きな段階があるわけでありまして、故意に行なったという点が戒告あるいは注意ではないわけでありまして、指定取り消しになるのは、故意に間違いを起こした、そういう点が特に強調せられており、また故意でない部分については、重大な過失という表現を用いてあるわけであります。故意であったかないかということの判断は、もちろん監査対象者が故意であったといえばかなり明白になって参りますけれども、客観的にも故意であったと判断できる事例については、やはり取り消しの扱いをする、こういうことにいたしておるわけであります。ただこれがはたして故意であったかどうかということは、たった一例、二例程度、請求内容と患者の供述あるいはカルテの記載と間違っておったということだけで判断することは十分私どもとしても注意をして判断をすることにいたしております。もちろん保険の事務は非常に複雑でございますので、事務上の誤りも相当あり得るもの、かような考え方で処理をいたしておるわけであります。また患者の記憶が必ずしも正しいものではないというようなことも十分考慮の中に入れた上で判断をいたしておるわけであります。重大なという意味は、普通の場合はます重大な過失で指定取り消しになるという事例はあまり多くございません。ほとんどないといってもいいほどでございますが、何度も注意をしても、あるいは最近監査にかかってもなおかつ直らなかったというような事例がこれに該当してくるものと思います。なお一番今申しました点で注意すべき問題は、患者の記憶が必ずしも正確でないという点であります。ただその点は、実際に患者の調査をやってみますと、どの医師の患者についても記憶はそれほど差異はないと思われるのでありますが、ある医師に集中的に食い違いが起こってくる。同じ調査官が調査をいたしておりまして、ある医師だけに集中的に間違いが起こってくる。しかもその間違いが、全く事務上の間違いももちろんあり得ると思いますが、請求内容の方が実際患者の供述したものよりも多い方向にばかり間違いが出てくる。むしろ事務上の間違いが多ければ脱落する方が通常の常識上考えられるのでありますが、過小請求というふうに思われるものはほとんどない。ほとんどが過大請求である。しかも同じように調査をしたにもかかわらず、ある特定の医師だけのものが非常に間違いが集積してくるというようなことを判断の材料にいたしまして処分をきめるわけであります。
#157
○滝井委員 その重大な過失があったとか故意とかいうその判断は、一体だれがするのかということなんです。その判断をする最高の責任者はだれかということです。もちろんそのものを――さいぜん私は譴責と言ったが、譴責はないので、戒告、注意です。その取り消しにしたり戒告にしたり、注意にしたりするのは、社会保険医療協議会に諮問をしてやられるのですね。しかしその前に、これは重大な過失のあったものだ、これは故意の不正をやっている人なんだという、その最高の判断をする人はだれですか。保険課長ですか、技官ですか。どちらですか。県には課長と技官とあるのですか……。
#158
○館林説明員 処分は知事が行なうわけでございますので、処分に関する最高責任者は知事であります。厚生省は内議に対して意見を申し述べるわけでございます。従いまして実際の調査の責任者は監査いたします都道府県保険課長でございますが、その調査の結果をもとにいたしまして、本省におきましては医療課において合議をいたしまして、その判断をもとにして局長名をもって本省の意見を述べるわけであります。現地におきましてはそれをもとにしまして県の意見をまとめまして、これを地方医療協議会にかけるわけであります。その地方医療協議会の諮問の答申に基づいて都道府県知事が最終決定をするわけであります。
#159
○滝井委員 少し頭が悪いせいか、はっきり言ってもらわなければ……。「都道府県知事は、保険医又は保険者の指定する者が左の何れか一つに該当するときは、当該都道府県社会保険医療協議会に諮問して、その指定を取消し」云々とこうなっておるわけですね。そしてその処分決定前に当局に内議をするわけです。当局というのはおそらく厚生省、保険局だろうと思うのです。名目上は都道府県知事が故意とか重大な過失というものを決定するわけです。しかしそれは名義上だけであって、実際にそういう判断のものさしを当ててやるのは一体だれがやるのかということなんです。それは技官がやるのか、それとも保険課長がやりますかということなんです、実際の行政の運営の面では……。
#160
○館林説明員 現地におきましては本省の意見、監査の結果等を勘案しまして、原案は事務的には保険課が作るものと思います。しかしながら、もちろん上司たる民生部長あるいは厚生部長等と相談した上で原案を作りまして、これを地方医療協議会にかけると思います。ただしそれはあくまでも原案でございまして、地方医療協議会の審議によりまして、その答申をもとにして知事が最終決定するわけでございます。現在までのところほとんど地方医療協議会の意見通りに処分が行われております。
#161
○滝井委員 どうもなかなか役人の社会というのは責任の所在がはっきりしておらぬので、ここらの大事な判断をする中心になる人は、文字の面ではそれは知事になっておる。しかし実際その判断をする人がだれかおらなければならぬ。中心的にこうだという判断をする人が。それがどうも民生部長にいってみたり――民生部長は大体県で保険行政に力がないのですね、保険課長なんです。ところが保険課長は事務官ですから、技官でないのですから、そうすると、医療の内容、実態というものがなかなかわかりかねるところがある。というと、どうも技官のような感じもするが、そうでもないようでもある。どうもそこらあたり、もう少しやはりこういうものを判断を下す人、責任者は一体だれなんだ。それでその人の責任において知事が受けて、知事の名前でやるのだということをもう少しはっきりこれからやっぱりする必要があるのです。というのは、あとでいろいろ出てきますが、そういうところがはっきりしておらぬところに、やはりもやもやとしたものが出てくるのです。だれがやった、主体的な責任者というものを置いておかなければいかぬのです。
 それから指定の取り消しのおそれがあると認めるときは、監査終了後弁明の機会を与えなければならぬことになっておるのですね。その弁明の与え方ですね。今度の埼玉県の加藤君の場合は、弁明の機会を与えられる前になくなったのですね。私はこの弁明の与え方が問題だと思うのです。監査が終了したときには、大体お前はどのくらいになるのじゃということは、いつの間にか風のたよりにわかってくるのですね。そこで私は、監査をやるときには本人を呼んでやるのですから、だからそこで本人にまず第一次の弁明をさせるべきではないかと思うのです。そうしてもう一回日にちを与えますから書面で出して下さい、こういうことでないかと思うのです。そこでおそらく弁明の機会は形式的に与えられると思うのですが、その弁明の与え方が監査が終って不日、何日かのうちに、日時と場所と事故と認められる事項の概要を本人に通知することになるわけです。ところが本人は、あとで私具体的に監査の状況をいろいろ質問しますが、呼ばれて油をしぼり取られれば、もうあと弁明を――するのはするでしょう。しかしもうおれの罪はきまった、
 こう思いがちなんです。だからやはり間髪を入れずそこでやらせる。同時に不足の分についてはあとで書類で反駁の資料を出してくれ。そこで弁明の機会を与える、そしてなお不足分については後日もう一ぺん出してくれ、こういう形の方がいいのじゃないかと思うのです。実際はおそらくそういう形になっておるだろうとは思いますが、やはり監査要綱の文書の上にもそういう形をとることの方が親心じゃないかと思うのです。それは一体どうやられておりますか。
#162
○館林説明員 御質問の通り、その場で弁明を受け、あらためてもう一度弁明書を出してもらうということが一番望ましいわけでございまして、実際にもそういう扱いをいたしております。従いまして監査調査書の中にあります診療担当者の弁明、または意見というところは、その場で意見を述べたものをその場で書いてもらうわけであります。その上であらためて弁明書は別個に取るようにしておるわけであります。ただ場合によりましては、弁明の気持がないということを言われる方がときにはありますので、そういうときには弁明書は出て参りませんけれども、ほとんどの場合がそういう形をとっております。
#163
○滝井委員 時間がありませんから先に進みますが、最近基金に、監査によって過誤があった、こういうことを決定されて返還をした金は一体どのくらいですか。二、三年前に聞いたときには七百万かそこらしがなかったと思いますが、現在どのくらいありますか。
#164
○館林説明員 ちょっと資料を持っておりませんので、あとで調べてお答えいたします。
#165
○滝井委員 監査対象になるケースとして現在一番多いというか問題になるものは差額徴収なんです。そこでこの差額徴収の意味と範囲ですが、まず普通の保険医がおりまして、そこに家伝薬がある。保険の普通診療をした、そのほかに同時に家伝楽を渡したという場合には、これは差額徴収になるかどうかということです。たとえば湿しんがたくさんできて健康保険の治療をした、なお患者の要望によって――私の故郷にありますが、胎毒下しというのがあるのです。湿しんの治療のほかに今度はそれをやるわけですね。そういう場合は、これは差額徴収になるかどうかということです。これは皆さんの方で患者の実態調査をやるわけです。そうすると、私は健康保険のほかにこれだけの金を払いました、こういうことになるわけです。健康保険証をもって受診いたしましたが、別にこれだけの金をこの薬をもらうために払いました、こういう場合の家伝薬は保険で認めませんね。その場合差額徴収になるのかどうか。
#166
○館林説明員 その家伝薬を渡して、それに対する診療報酬を受け取れば、差額徴収になります。
#167
○滝井委員 そうしますと、そういう場合は今多いですね。健康保険でやって、健康保険は健康保険で終って、そしてそのあとに別個に家伝薬を渡したわけですから、そのお金をもらっている。これは差額徴収になるというならば、そういう場合は非常に多いですよ。その次は保険の診療をやって、そしてその上に患者に特殊の薬を薬局を紹介をして自費で買わせる。この薬を飲みなさいといって自費で買わせる。これは差額徴収と言えるかどうか。もう一つは、医者の家に薬を取り寄せてやった方がその患者が薬局で直接買うより安いので、医者が取り寄せてやって、それを患者に保険診療のほかにプラスして実費で売ってやる。それは患者にとっては薬局で買うよりは安いので、非常に恩典に浴したわけですが、それは差額徴収になるのかどうか。薬局を紹介して買わした場合と、薬局から医者が取り寄せて、患者が薬局から買うよりか安い実費で提供した場合、これは差額徴収になるか。
#168
○館林説明員 初めの方のお話ですと別に差額徴収ではござませんが、保険診療のやり方としては不当であると判断されるわけであります。保険診療の範囲内で患者を治療をしておるべきものを、保険診療外の分野の診療上の指導をするということは、もちろんその買わした薬の種類にもよりますけれども、一般的には不当の場合があります。ただ何か栄養的なものであるならば、すなわち医師が処方をするような薬ではなくて、栄養補給の意味の薬といわないまでも、そういう種類のものであれば、これはものによっては不当と言い切れないものもあるかもしれませんけれども、大部分は不当と判断できます。それからなお医帥が買っておいて、それを実費で患者に分けるという場合に、その実費の意味が問題でありますけれども、もしもそれが薬の代金であるとすれば、薬事法の方ですでに一つの問題があるだろうと思います。その薬を与える気持が、診療上必要であるという判断でそういう扱いをしたとすれば、保険診療の扱いとしても不当である、一種の差額徴収ではないか、さように判断できます。
#169
○滝井委員 今の自費で買わせてやることが不当であるのならば、不当は、故意または不正、または不当な診療を行なったもので、これは取り消しになるわけです。館林さんの議論でいくと全国の大学病院、保険医療機関、これは全部取り消しですよ。全国の大学病院は、渡辺さんも病気で大学にいらっしゃってみると、保険証を持っていくと、保険のほかに必ず薬をたくさん買わせます。この薬で一つやってあげますからといって、買わしてやりますよ。至るところの大学がやっておりますよ。これは大学みんな指定の取り消しですよ。
 次には火傷があって火傷の処置をした。ところが今度はこれは内服薬ではなくて、患者みずからが買えば差額徴収じゃないのだが、医師が指示をして買わせるとこれは不当になるわけですね。家伝薬のあるところはこういう場合はざらですよ。それはもう慰者の方が買いに行きます。患者の方が自分でどんどん医者に尋ねて買いに行くという場合が多いのです。
 それからもう一つ乙表の病院が、自分の病院では検査ができない、だから今度は甲表の病院に非常にむずかしい検査を依頼をした。そうして患者にその検査料を支払わしたというときは、差額徴収になりますか。
#170
○館林説明員 その診療の扱い方の問題だと思いますが、中表の病院で検査をする場合に、乙表の病院の依頼によって単に検査だけをしたということなのか、一日甲表の病院の診療を受けたという解釈になるのかということによって違ってくると思います。しかしいかなる場合でありましても、被保険者本人であれば、患者から金を取るということは差額徴収になります。
#171
○滝井委員 そうしますと、これは非常に重大なことなんですね。御存じの通り乙表の検査料と甲表の検査料とは違うわけです。甲表は検査料が乙表よりか高いことが原則になっおるわけです。これは検査や技術を重んずるのが甲表の建前ですから。従って、甲表の病院に患者が来て乙表の病院に行き、乙表の病院に来た患者が甲表の病院に行けば大した問題はない。しかしその検査物を乙表の病院から甲表の病院に送る場合に、その乙表の病院は、自分のところで検査をやれば安いが、甲表の病院に持っていけば非常に高いのだ、こういった場合に、乙表の病院はその検査料を向こうに払うことはできないわけです。だからそれは向こうに頼んで検査しましたから、あなたこれは払えと金をもらえば差額徴収だというのがあなたの理論ですね。これはやはり甲乙両表ができておる矛盾なんです。これはまるで善意で患者のために検査をして、病気をなおそうとして、そして自分のところでやりにくいからということでしてやったものが、こういう実態です。大臣今お聞きのように、この監査にかかるものは、差額徴収が非常に多いのです。差額徴収ということで故意とか不正とか不当とかいうことになってくるわけです。ところが今大臣、東京の病院五、六軒回ってごらんなさい、こういうものはざらです。患者さんに薬を買わしてやるというのはざらです。特に健康保険で認められていない薬――医療協議会が今のように開かれない状態のもとでは、どんどん新しい薬ができていますが、その新しい楽は、医療協議会がストップしておりますから、保険で使えないのですから、患者に買わしてやるのが医者としての当然の義務です。医者としてのヒュマニズムの精神を燃やして当然のことをやると監査にひっかかってしまう。こういう矛盾が監査というものの中に現われてき始めたのです。これを一体どうするかということです。健康保険というものは、世間では制限診療といっておりますけれども、その平均的な医療の水準を見れば、これは自由診療よりは平均は高いと思うのです。自由診療を受ける者には金持も貧乏人もおりますから、金持の治療はいいけれども貧乏人の治療は悪いので、平均するとそれは保険の水準よりか私は下だと思うのです。そういう意味では、平均すれば医療としては保険の水準の方が自由診療よりは私は上をいっておると思うのです。しかしいざ鎌倉という重大な病気になったときに、保険というものが差額徴収というものによって監査にひっかかる、こういうことから、医者は大事なときに身をかわさなければならぬという、医学的な良心を実践することができないという苦悩と矛盾が現在の保険の中に出てくるのです。だからこういう点は、医者は率直に言ってこっそりやっておるわけです。患者もこっそりやってもらっておるのです。ところがたまたまその医者が何かの不正があって、そして患者の実態調査を受けるということになると、イモづる式にこういうものが出てくるわけです。だから私は今大学の例をあげました。この前、この病棟は健康保険の診療をいたしませんという病院があったが、これなんかも典型的な差額診療です。あとで出てきますが、若い技官が入院料の差額診療の問題をどう決定するか、非常に悩んでおります。第一線の入院料の差額徴収問題です。一緒に金を払うのですから、どこまでが入院料でどこまでがあれかわからぬ場合が出てくるのです。今東京のある大きな病院で、この病棟は健康保険を取り扱いませんと書いておるのは、個々の問題については差額徴収ではないが、保険医療全体の立場から見たら、これは明らかにその病棟は差額徴収をやっておるわけです。だからいわばこれは呑舟の魚です。ざこは網にひっかかったけれども、こういう大きな魚は逃げておるというのがこの形態です。たとえばあなた方の国立東京第一病院もやっておったのですよ。洋服たんすみたいなものを貸して、その金を取っておったのです。だからこういう点の差額徴収の限界、その意義というものは、やはり今後保険診療をわれわれ見る場合に非常に重大なところですよ。今私があなたに一々尋ねなければそれが差額徴収になるかどうかわからぬという程度に、われわれ専門家もわからぬくらいです。いわんや日々診療しておる療養担当者諸君はなかなかわかりかねるのです。大臣も、これはなかなか専門的になりますからおわかりにくかったと思いますが、とにかく患者さんに保険診療をやって、これだけでは不安定だから、もっとこの薬を買いなさいといって自費で買わしたら、それは不当になるわけです。自分で安く買ってやって、その実費でやったら、これは明らかに不正であり不当になって、監査の対象になるわけです。大臣、これが今の保険の実態なんですよ。だからここらあたりを一体どうするかということですね。こういう形でやれば、おそらく今全国に七万何ぼの保険医がおりますが、これは全部ひっかかる。どの医者でも、今保険でできないものがあるからやっております。今の栄養剤になるようなものはその中に入る。栄養剤のパンビタンでも薬なんですから、そういうものがいいということになると、パスやマイシンを栄養剤で飲ませましたといえばそれまでですよ。りくつは幾らでもつくのです。だから差額徴収の意味と範囲というものは、栄養剤みたようなものならいい――みたようなものじゃ、薬というものは似たり寄ったりですから、何でもみたようなものになってしまう。こういう点、一体大臣としてどうお考えになるのかということです。これは医療の本質に触れる問題なんです。いわば厚生省が医療国営をやるのだと武見会長から言われておる。私も一緒になってやっておるのだと言われますが、とにかくここらあたりが一番大事なところなんです。日本の医療というものを社会化する、その場合に医療の本質というものをくずさずにどうやっていくかという問題がこの差額徴収に集中的に現われてきておるのです。この点、大臣一体どうお考えになっておりますか。
#172
○渡邊国務大臣 従来までの厚生当局といたしましては、いろいろ法規その他の点からいたしまして、今までの解釈は無理からぬ点があったろうと思うのです。しかし現在の実態を見まして、そしてこの差額徴収の限界、その他詳細にこれを検討いたしまして、そしてある程度差額徴収――差額徴収という言葉になりますかどうかわかりませんが、この実態を見きわめまして、事務当局とも、何らかこれに対する解釈というか、取り扱いというものを今研究しようというところにきております。
#173
○滝井委員 大臣がそこまで言われますならば、この健康保険に新しく発見された有効な薬が取り入れられるまでには、二年、三年の時間がかかるわけです。だからその有効な薬が出ましたならば、その薬について実費程度で患者に提供することは、これは違反でないならないのだというような、そういう基本的な方針をこの際思い切って出される方がいいのじゃないかと思うのです。そして保険の医療というものは今認められた薬価基準に出ておるこれなんだ。しかしそのほかに新しくたとえばパスやマイシンが出た。ストレプトマイシンは今は一本が二、三百円しかしないものが、初めは一万円も一万二千円もしました。そういうものをこっそり使わせると、これはやみからやみにいきますから、そういうものは使ってもよろしい、しかしこれはできるだけ安い、実費に近いところで患者に提供して下さい、それじゃ医学的良心を満足するために認めましょうという、何かそういう、まだ保険に採用されない薬に限って認めるなら認める、こういう方法をやはり当座としてはお考えになったらどうかと思うのです。今一挙に差額徴収を持っていきますと、これは健康保険はくずれてしまうのです。野放図な差額徴収論というものは健康保険の崩壊を来たすわけです。だからある一定の限られた新薬、それを新薬が出たときに、大体これが結核なら結核あるいはガンならガンにきくということは、厚生省の優秀な技官諸君が少し調べればわかるわけです。だからそういう差額徴収ができる薬は、こういうものについては認めましょうというものを告示したらいいのです。その中で、たとえば一年なら一年を限ってだんだん実績を作って認められれば、早く健康保険に入ってくる。実際に患者に臨床的に使われれば、その薬の実態は大学ごまかしてやるよりか早くわかってくるわけです。そういう点の考慮は一体どうですか、大臣。
#174
○渡邊国務大臣 ただいまも申し上げました通り、実態に即応しまして行政措置をとりたいと思っております。今あなたが申されましたように、あるいは私がさっき申しましたように、直ちに差額徴収という言葉でこれを表わすかどうかということは、これは検討しなければならぬのでございますが、実態に即応いたしまして何らか行政措置があれば、これを検討させてみたいと考えております。
#175
○滝井委員 非常に重大な御発言でございますので、ぜひ一つ実態に即応して、文字は差額徴収という言葉は使わなくともけっこうです。いわゆる実態が差額徴収という、そういう形態のものを何らか行政的に一つ御考慮をしていただくそうですから、ぜひ一つすみやかにそういう措置をおとりになっていただきたいと思います。これで大臣はけっこうでございます。
 その次に監査の対象となる点で、いわゆる診療報酬請求書の返戻回数または査定された件数の著しく多いものは監査の対象になるわけです。実はその請求書が戻ってくる、医者の方に返される状態についてです。これは再三私もいろいろの経験を持っておりますが、現在たとえば、これは私は新聞で見たのですが、大阪の請求書の中で返された件数は一・四五%、一万四千から一万五千件くらいです。ところがその返すのが実にしゃくし定木ですよ。請求書の返戻にしゃくし定木の返し方をやるのです。生活保護なんかも特にそうです。これは邪推かもしれませんが、基金は金の支払いをできるだけ延期して、利子でもかせぐつもりで返すんじゃないかと思われるくらいに返すのです。今その典型的な実例を示しますが、福島社会保険出張所発行の継続療養証明書で診療をした。ところが請求書を出しましたところが、府県名記入漏れの付せんがついて返ってきたのです。それで調べましたところが、その持ってきた保険証は、保険証じゃなくて実は経続療養証明書ですから、継続療養証明書に書いていないのです。それから福島社会保険出張月と書いて その発行所ははっきりしておるのだが、その被保険者の事業所もその継続療養証明書に書いてないのです。発行はその人の地元の社会保険出張所のものですから、これは発行は地元の社会保険出張所のものでございますと、府県名は記入していない、そういう回答をしたのです。そうしたらまた今度は月末に社会保険出張所の方から、基金の方から継続療養証明書の写しを出せといってきたわけです。付せんもついて、今度は二度目のやつがまた返ってきたわけです。そうすると、たまたま患者の継続療養証明書の期限がもう切れて、患者にそのときは返してしまっておったわけです。そこで電話で基金に、こういうようになっておりますが、もう患者に返して手元にないのだ、こういう電話の連絡をしたところが、君の方の記号はナカナホで、大阪にそういうナカナホという記号はないのだ、こういうことなんです。ところが医者は、ナカナホが大阪であるか東京であるか福岡であるか知らないわけです。ところがそういうことを二度も医者に送り返すならば、電話で基金が、発行した社会保険出張所に問い合わしたらいい。ところがわざわざ丁寧に二度も医者に返す。医者も二度送る、基金からも二度返す、こういうことなんですね。この人は返戻が二回あるということになるわけです。こういうことは初めからやればいいのに。それからそう言ったら、では社会保険出張所に基金から問い合わせましょうと、こういうことになって、これはケリがついておるのです。こういう場合が一つ出た。もう一つは、京都の農林省の共済組合の家族を診療した。それが四月分の請求なんですが、ところが今度八月になったら、お前の診療した患者は認定外だという付せんがついて返ってきた。そこで医者は認定外というのは何か知らない。認定外というのは何だろうか、意味がわからぬ。そこで、認定外とは一体どういうものでございますかと問い合わせたところが、君の診療したその家族は原簿の被扶養者の欄に書いていないのだ、こういうことなんだ。だから返すのだ。ところが医者の方は、被保険者の保険証にその家族の名前を書いて、きちんと保険者の判が押してあれば、これはやることになる。原簿に書いてあるか書いてないか、医者の知ったことじゃないのです。それを医者に返してくる。はなはだしいのは、男女の男か女かに丸をつけ忘れると返ってくるのです。昔は生年月日がついておりましたが、生年月日を忘れていると返ってくる。今は生年になりましたが、この前ガアガア言ってこうなった。健保の請求書の日雇いか健保かに丸をつけ忘れると返ってくる。請求書を出すときには日雇いは日雇い、健保は健保で一括して出すのですから、その中に入っておるのが健保か日雇いかわかる。健保の中に一括されているものに丸をつけ忘れても大体健保なんです。そういうものは全部返ってくるのだ。書類を返すのに、粒々辛苦療養担当者が苦労して診察したものを、きわめて簡単に返すのです。少しも事務的に何かしてやろうという親心がないのですよ、行政に。で、こういう点はもう少しやはり基金は考えなければいかぬと思うのです。あまり基金が官僚化してくるということは、私は非常によくないと思うのです。こういうことから、結局自分の方の間違いについてはたな上げをしておって、片一方に間違
 いがあればこれはガンといく。こういうやり方についてはやはり考えてもらわなければいかぬと思うのです。特に返すなんというのは、何かよほど大きなミスがなければ返さぬようにしてやるべきじゃないかと思うのです。生年月日とかなんとか、男とか女とかというちょっとした間違いぐらいならば、やはり基金がみずから社会保険出張所に電話して聞いてみるくらいの親心があっていいじゃないか。付せんをつけて返したりするより、本家本元に聞いてみたら一番早いと、こう思うのです。しかし、まあそれはそうもいかぬ場合があると思いますが、私の知っておる例では、実に簡単な場合でも返してくるのです。何県が件数が多い、何の何兵衛が返された件数が多いから監査だ、こういう場合が多いのです。こういう点はもう一つ考えてもらいたいと思うのです。そういう場合、あなた方何か返すのにはっきりとした基準でも与えておるのですか。
#176
○館林説明員 もちろん診療担当者においでをいただいて御説明を求めるというようなこともしておるわけでありますが、あまり支払基金で勝手に査定をしたりなどするよりは、十分診療担当者の意見を聞いた上で査定をするという意味合いで、最近、昔に比べて返戻の程度が多くなってきておるわけであります。この返戻の程度が多くなってきておるということは、必ずしも不親切にする、あるいは事務を繁雑にするというような意味合いではなくて、むしろ診療担当者の納得を得た上で取り扱いたいという気持でやっておることでございますが、中には御指摘のような事例もあるいはあるかと思います。また、一面、支払基金も事務がだんだんふえて参る傾向がありまして、それに応じての職員の増加もできない。また、審査は一定の期間にやらなければならないというようなこともありまして、十分サービスをするというようなところまでいかない面があるかと思います。私どもの方から、特にこういうものまでは返戻するようにというような指示はしておらないわけでございますが、もしも支払基金で十分に処置できるものがありますれば、もちろん個々に返戻するというようなことをしないで扱ってもらうように、間違いがあれば私の方から十分指示いたすつもりでおります。
#177
○滝井委員 その返戻の指示というのは、ぜひ簡単なものは返さないようにしてもらいたいと思うのです。
 次は監査会場です。これは一体どういう形式でやっておりますか。
#178
○館林説明員 御質問の趣旨を取り違えておるかもしれませんが、監査会場は主して行政庁の一室を使ってやるわけでありまして、その監査会場へは、監査官及び補助職員、患者調査に当たった職員等が行政庁から出まして、被監査者のほかに、医療担当者の団体から役員の一部が出てきて行われるわけであります。
#179
○滝井委員 私は、これは神奈川県に行って聞いてみましたし、新聞に書いてあるのも見ましたが、監査会場の形式は裁判形式になっておるでしょう。まずその前面に監査官、県と厚生省の技官が並びますね。それからコの字になって、前に技官がおるわけですから、どちらでもいいですが、左手に机を置いて県の医師会長と課長が並べば、右の方には調査員が並ぶわけですね。そうして、そのまん中に被監査者が立つといいますか、そういう形になると裁判形式でしょう。何といいますか、いわゆる被告がここに立って、そして裁判官が前におって、こちらに検事さん、こちらに弁護人みたような――課長は弁護人じゃないけど、弁護人みたいな人がおる、こういう形でしょう、そうですね。
#180
○館林説明員 多くの場合、今裁判形式というお話がありましたが、配列としては、一方の側に役人がおりまして、一方の側に医師、歯科医師の方々がおられて、その前に被監査者がすわるという形がとられると思います。
#181
○滝井委員 監査場のあの重苦しい空気、開始前の緊張は何と神経をすり減らすものであろう、と若い技官が書いております。だから、そこには非常に緊張した空気がみなぎっておるということなんです。従って、それはやはり裁判形式だと思うのです。そういう形式は私はやめるべきではないかと思うのです。これはまだ罪人ではない、罪は確定していないのですから。これはどうです、局長さん、今こういう形式でやられておるのです。これは実際に神奈川県でやったのを、図まで新聞に載っておったから聞いてきたのですが、この通りです。監査官がそこにすわるなら、その前に行ってひざを突き合わせて話す、うしろには調査をした人が一人おって、医師会長か何かを横に立ち会わせるというようにして二、三人でこれはできると思うのです。それが今言った裁判所のような判事と検事――監査官というのは判事と検事と両方兼ねておるので、この人は論告もやるし罪状をあばくこともやる。判事、検事の両刀を使っている。一定のわらじをはいている。そこに羊が引かれるような工合に療養担当者を連れていかれるのですから、そういう裁判形式はおやめになったらどうですか。
#182
○館林説明員 私もその問題については考えております。と申しますのは、いろいろ間違いがあったかどうかというようなこと、いろいろ御本人から伺うのにそういう形で伺うこと、特に問題になりますのは、同僚である医師会の役員が数名来ておって、そういう人たちの前で言いにくいこともあるようであります。従いまして、場合によりましては、別室で被監査者のほかに一人二人程度でしんみり話をして、その上でよくわかったということで、また監査会場へ帰ってきて、今別室で話したことを披露して、それを調査書に書く、こういう形をときどきとることがありますが、その方がかえって今お話のありましたような重圧を感ずることもなく円滑に行なわれる面もございますので、ただいまのような監査の形は確かに重苦しい空気であり、重圧を与えるような点がありますので、検討したいと思っております。ただこの問題は、監査要綱に基いて、どこの府県でも医療担当者が数名立ち会っておるわけであります。このような問題にも触れてくることでございますので、十分慎重に扱って参りたいと思っております。
#183
○滝井委員 とにかく裁判形式はやはり廃止しなければいかぬと思うのです。
 それからもう一つは、患者の証言がうそであった場合には、その患者は偽証罪になりますか。
#184
○太宰政府委員 すぐ偽証罪になるか、ちょっと検討しなければなりませんが、故意にその診療担当者を陥れようという悪意がありました場合については、少し問題になるかもしれません。これは検討してみなければわからないと思います。
#185
○滝井委員 実は患者を調査する場合に、お前の言うことがうそであったならばこれは偽証罪になるという例があるのです。それはどうしてかというと、前にも申しましたように、あらかじめ患者につき実地調査をやります。そのときに患者の聴取書をとるわけです。あるいは患者に不正があったら始末書をとる。その聴取書には署名捺印をする。そうしますと、患者の方としては、これは非常に事重大なことだと考えるわけです。神奈川県で実は患者の実態調査をやって、そして監査に乗り出してみた。ところが患者のとった調書が全部うそだった例が出てきておるのです。これは神奈川県をお調べになればおわかりだと思う。全部うそだった例がある。そうしてその医者は何にもなくて帰されております。そうしますと、そういう場合に、一体患者が、偽証罪になるぞ、こうおどされると、患者はおろおろしちゃってますますわからなくなるのです。
#186
○太宰政府委員 偽証の罪というのは刑法にあるわけでございます。これは法律によって宣誓した証人ということでありまするから、それは偽証という罪には――御指摘のような患者調査をしたときに、かりに悪く考えまして患者が何かしても、それが直ちに偽証罪にはならない、こういうふうにただいまのところは思います。ただ健康保険法の八十八条の二というところに、やはり虚偽の答弁をしたというような場合に罰金に処すというような規定がありますので、こちらの方にかかるかと思いますが、偽証ではないと思います。
#187
○滝井委員 そうしますと、そういう点は健康保険法の八十八条の二の虚偽の答弁をした場合には罰金だと私も思うんです。これはある地方の技官には、それは偽証罪だと言っておる人があるのです。だからその点は十分罰金だということを教えておいてもらいたいと思うんです。それからもう一つは、もうこれでやめますが、大事なところに来たものだから……。その調査員が不実記載をしたときは、これは行政処分になるのかならないのか。調査員の調査をした患者の調査やら、それからその他いろいろの実態調査が――患者調査をやるわけなんですから、それがうそを書いておったという場合には行政処分になるのかどうか。
#188
○太宰政府委員 公務員はそういう調査という上司に命ぜられた仕事を当然誠意をもって果たさねばならないことは申し上げるまでもないわけであります。それがただいま御指摘のような場合に、自分が故意をもって不実の記載をし、それによって何らかの―これは当然公務員として正当なる職務を遂行しておるものとは思われません。これは何らかの意味において行政処分の対象になると、こういうふうに私は考えます。
#189
○滝井委員 行政処分の対象になるんですか。
#190
○太宰政府委員 この行政処分といっても、それは程度によって、処分し、それから情状酌量、猶予ということもあろうかと思いますが、要するにそういう意味で何らかその行為に対して上司から指摘をされることであることは間違いないと思います。これは当然故意によって不実の記載をやった、そういう場合でございますね。
#191
○滝井委員 これはきわめて重大なところなんです。まず第一に患者の言ったことがうそであったということになれば、患者は健康保険法八十八条の二によって、虚偽の答弁をしたということで、これは罰金になるわけです。その虚偽の答弁をもとにして記載をした調書というものは不実で、事実を書いてないわけです。事実を書いてない。だからそのために、その善良な療養担当者というものが、不当に迷惑をこうむったわけです。そうすると、その不実の記載をした公務員というものが、あなたの方では行政処分になるということですが、その法律上の根拠はどこにあるんですか。
#192
○太宰政府委員 ちょっと誤解があると思います。今のお話は、患者の方が故意か何かで間違ったことを言う、公務員はそれを知らずにそのまま書いてきた、従って不実の調書ができた、こういうことでございますね。
#193
○滝井委員 そうです。
#194
○太宰政府委員 これは公務員としては故意によって不実の調書を作ったわけではございませんから、これはその公務員を処罰の対象にすることはできないと私は思います。ただしそれの程度が、いわゆる重大過失とかなんとかいうことになるような特別な場合があれば別ですが、まず普通の場合は、公務員としては自分がそういうことを知らないで、自分としては誠実に職務を果たした、たまたまその患者の方がその診療担当者に何か悪意を抱いていて、虚偽の報告をなした、そういうようなことでありますれば、これはその公務員については何らとがはないと考えます。
#195
○滝井委員 こういう場合は、実は結果として患者は虚偽のことを言ったということがわかってくるわけです。何となれば、二カ月も三カ月も前の診療報酬請求書をもとにして患者の実態調査が行なわれるわけですから、従って患者というものは忘れておるわけです。忘れておるから患者は間違ったことでもそれが真実なりとして報告をしておるわけです。真実なりとしてまた書いておるわけですよ。ところがそれはみんな根っこから間違ってしまっておった。これは明らかに結果は不実記載です。間違っておることを書いておる。その罪を受けて、まさにその裁判形式の監査を受けようとする医者にとっては、これは全くぬれぎぬを着せられたことになるわけです。だからこれはその監査の対象になった療養担当者から見れば不実記載です。だから患者は罰金、公務員はその患者だけの証言を信じて、もっと客観的科学的な証拠の収集を怠ったということで不実記載になるのですよ、これは広義に解釈すれば……。十分こういうむずかしい問題がここに出てくるわけです。法はすべての人に、関係者に平等に作用しなければならぬので、今言ったように重大な過失があったり、軽微な過失があったりしても、これは監査の対象になって、注意とか警告を受けることになるわけです。一方今度はその証拠書類を出した方の公務員の側は、そういうことをしても何にもならぬということになると、法というものはきわめて不均衡に作用するということになるわけですね。だからこういう点、やはり私はだんだん厳密に検討をしていくと、監査の問題というものは非常にむずかしい問題が出てくるのです。そうなるとこれはやはり犯罪捜査と同じように、とことんまで調べてからやらねばならぬ、こういうことになるわけです。こういう点が非常に微妙な問題が出てくるので、監査のやり方についてはやはり相当検討を要する。まあ私は今すぐ監査を廃止せよとは申しません。しかし監査のやり方については相当検討をして、新しい皆保険体制下における不正診療、乱診乱療を一体どう防止するかという点についての、やはり根本的な検討をしなければならぬ時期がきておると思うのです。これから私少し現実問題についてやりたいと思いますが、時間がありませんから次回に譲りまして、きょうは一応これでやめておきますが、今の答弁だけを一つ承っておきます。
#196
○太宰政府委員 だいぶ誤解があるようでございます。法律は一つの専門分野でございますので、その解釈はむずかしい点がございますが、やはり基本になりますのは健全なる社会常識でございます。そこで御指摘のような、たとえばある患者がその診療担当者に底意を抱いておりまして、たまたまそういう患者調査というような機会をもととして、あらぬことを申告し、そうして間違った調書を作らしておるということになりますれば、その点につきましては、先ほど申し上げたような罰則の適用があるわけであります。しかしながら、患者の過去の記憶を聞くわけですが、しかしそう何年も古いことを聞くわけじゃありませんで、なるべく近いことを聞くわけでありますからことに病気のようなものにつきましては、普通の日常茶飯事のことと違っておりますから、ある程度のことは大体正確に言えると思います。しかしお互い人間でありますから、つい間違って、記憶違いとかあるいは勘違いということで言うこともあるかもしれないと思うのです。その場合に、直ちにそれをもって、その患者をどうこうということも、これはお互い人間としてはどうであろうか。従ってそういう場合には罰せられるというようなことにはなかなかならないと思います。そしてまたそれによって作りました書類というものは不実の記載――不実記載という言葉が一つの特殊な意味を持って参りまして、そこに故意をもってうその文書を作り上げる、虚偽の文書を作り上げるということになりますと、これはそうではないと思うのです、今の場合は。ただ調べます者があるいは熟練の度合いがもっとよければ、眼光紙背に徹するような格好でもってそれを聞きただせば正確に聞きただすことができる。しかし普通の場合にも、患者の言うことをうっかりそのまま聞いてくるという場合もあり得ると思います。従いまして私どもはそういう患者調査というものについては、先ほど来医療課長も申し上げ、また毎々申し上げますように、必ずしもこれが絶体確実だとは思っておらないのであります。当然そういうような経過でできるものでありますから、これはまま間違いもあると思います。従いましてそれは診療担当者の方と会って、そしてこういうことであるがどうかといってその人の意見を聞くわけです。そこで当然記憶違いのものならばまた出て参りましょう。それがもし故意によってあらぬことを言ったということになれば、当然それはそこに出てくるわけです。出て参りますれば、私どもの方はそこは公正なる判断によって、それをもってどちらが正しいかということを判断する。場合によりましては、もう
 一ぺん患者調査をやるということもあり得るわけであります。従いまして、そういうようなことでやっておるわけでございまして、ただ患者が書いたものは、これは絶対に正しいのである、これに対して認めないような場合には診療担当者が悪いのだというような先入観をもって臨むようなことはさせていないつもりであります。またそうあってはならぬ、かように思います。さような意味において、監査ということは確かに御指摘のようになかなかむずかしいことでございますし、これをやります監査官というものは、人間としてよくでき上がった人が行くようにすべきょうに私どもは指導したいと思っております。また監査上の点については、先ほどお話がございましたが、これはそういう監査を受けること自体においてすでに非常に憂うつな気持で見えるわけでございますから、なるべくそういう気持をほごすようなことは考えております。しかしながら、やはり一つの監査という大事な行為について議論するわけでありますから、関係の者がやはりそこに集まってくる。ということはどうしても避けがたいことかもしれません。しかしそういう場合におきましても、極力不必要な恐怖心なり、あるいはそういうことによって上がってしまって何を言ったかわからぬようなことのないようにこれは作っていかなければならぬ。つまり公正なる真実を見出すということがねらいでございますから、その点については先ほど医療課長も申し上げましたように、今後とも十分注意して参りたい、かように考えます。
#197
○滝井委員 私はあなたの方の監査をやった人のいろいろの経験を書かれたものを二、三読んだことがあるのです。それについて実は少し質問をしてみたいと思いましたが、時間もございませんから、きょうはこのくらいにして、もう一回結論的にそこらの点だけ監査について質問させていただきたいと思います。次会にそれを譲ります。どうもありがとうございました。
#198
○永山委員長 次会は明十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後五時三十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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