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#1
第033回国会 社会労働委員会 第4号
昭和三十四年十一月十八日(水曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 永山 忠則君
   理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君
   理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君
   理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君
   理事 滝井 義高君 理事 堤 ツルヨ君
      池田 清志君    大橋 武夫君
      亀山 孝一君    藏内 修治君
      齋藤 邦吉君    田邉 國男君
      柳谷清三郎君    山下 春江君
      伊藤よし子君    大原  亨君
      河野  正君    多賀谷真稔君
      中村 英男君    八木 一男君
      今村  等君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
        労 働 大 臣 松野 頼三君
 出席政府委員
        厚生事務官
        (大臣官房長) 森本  潔君
        厚生事務官
        (保険局長)  太宰 博邦君
        通商産業事務官
        (石炭局長)  樋詰 誠明君
        労働事務官
        (労政局長)  亀井  光君
        労働事務官
        (職業安定局
        長)      百田 正弘君
 委員外の出席者
        厚生事務官
        (大臣官房審議 
        官)      牛丸 義留君
        厚 生 技 官
        (保険局医療課 
        長)      館林 宣夫君
        専  門  員 川井 章知君
    ―――――――――――――
十一月十四日
 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を
 改正する法律案(大原亨君外十三名提出、衆法
 第一四号)
 炭鉱離職者臨時措置法案(内閣提出第三一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 炭鉱離職者臨時措置法案(内閣提出第三一号)
 厚生関係の基本施策に関する件
 社会保険診療報酬点数表の一本化に関する件
     ――――◇―――――
#2
○永山委員長 これより会議を開きます。
 去る十四日付託になりました炭鉱離職者臨時措置法案を議題といたし、審議を進めます。
    ―――――――――――――
#3
○永山委員長 まずその趣旨の説明を聴取いたします。松野労働大臣。
#4
○松野国務大臣 ただいま議題となりました炭鉱離職者臨時措置法案につきまして、その提案理由及び内容の大綱を御説明申し上げます。
 石炭鉱業におきましては御承知の通り深刻な不況に悩まされており、そのために多数の炭鉱労働者が離職している実情にあります。このような事態にかんがみ、政府といたしましては、従来から職業紹介、職業訓練、失業対策諸事業等の対策を推進して参りましたが、さらに総合的かつ有効な離職者対策を確立すべく検討を進めて参りましたところ、このたび成案を得るに至りましたので、ここに、炭鉱離職者臨時措置法案を提出いたし、御審議を仰ぐことといたした次第でございます。
 次に、その内容について概略御説明申し上げます。本法案は、炭鉱離職者が一定の地域において多数発生している現状にかんがみ、これらの者に特別の措置を講ずることにより、その職業と生活の安定に資することを目的としておりますが、その内容といたしまして、第一に、炭鉱離職者が多数発生している地域においては炭鉱離職者が職業につくことが困難であるという実情にかんがみ、労働大臣がその地域以外の地域においてそれらの者が職業につくことを促進するための職業紹介に関する計画を作成し、かつ、その計画に基づき必要な措置を講ずることといたしました、
 第二に、離職者の多数発生している地域において、炭鉱離職者緊急就労対策事業を計画実施し、炭鉱離職者に就労の機会を与え、生活の安定をはかることといたしました。また、この事業につきましては、高率の国庫補助を行ない、もって地方財政負担の軽減をはかることといたしました。
 第三に、職業訓練につきましては、炭鉱離職者の実情に即した特別の措置を講じ、これに対しては、一般の場合よりも高率の国庫補助を行ない、離職者が他の職業に再就労することを円滑ならしめることといたしました。
 第四に、石炭を目的とする鉱業権者が新規に労働者を雇用するにあたりましては、できるだけ炭鉱離職者を雇い入れるようにしなければならないこととし、公共職業安定所の積極的な職業紹介活動と相待って、これら離職者の就職促進をはかることといたしました。
 次に、炭鉱離職者が職業につくことに対して特別の援護措置を行なうことを目的といたしまして、炭鉱離職者援護会を設立し、移住資金の支給、職業訓練受講者に対する手当の支給、寄宿舎の設置等の援助、炭鉱離職者を雇用する雇用主に対する労働者用宿舎の貸与、就職を容易にするための職業講習の実施、公共職業安定所との連絡その他炭鉱離職者の求職活動に関する協力、生業資金の借り入れのあっせん、生活指導その他の業務を行ない、政府の施策に協力して離職者対策に万全を期することといたしました。
 また、この援護会の財源は、政府の補助金及び石炭鉱業整備事業団からの交付金のほか寄附金をもって充てることとしております。
 なお、本法は、その目的にかんがみ、施行後五年以内に廃止することといたしております。
 以上簡単でございましたが、この法案提案の理由並びにその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ、御審議の上すみやかに御可決あらんことを切に希望してやまない次第であります。
#5
○永山委員長 以上で御説明は終わりました。なお本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。
     ――――◇―――――
#6
○永山委員長 この際、大坪委員より発言を求められております。これを許します。大坪委員。
#7
○大坪委員 台風被害状況調査のため、社会労働、文教、農林、商工各委員会合同調査団の第五班として派遣されました山梨、長野両県下の状況について御報告いたします。
 私どもは社会労働、建設、農林水産、文教、商工の各委員が参加し、十一日から三日間にわたり、被災地をつぶさに視察調査いたしたのでありますが、両県は去る八月十四日の七号台風によってすでに未曽有の大災害を受け、さらに十五号によってきびしい追い打ちをかけられまして、被災者はもう自力では立ち上がれないほど痛めつけられ、その悩みは深刻なものがありました。
 すなわち、山梨県においては、台風七号による被害額三百十余億円、台風十五号はこれに百億円余の被害を加えております。伊勢湾台風の雨量三百五十ミリ、風速三十七メートル、七時間の強襲はようやく築き上げた一切の応急工事を一瞬にして水泡に帰せしめたのであります。
 長野県においては台風七号に続いて降ひょうの被害、さらに伊勢湾台風と、わすか一カ月の間に矢つぎばやの襲来は被災者をどん底の窮状に追い込んでしまいました。同県の被害総額は三百五十億円の巨額に達しております。視察日程を追って申し上げますと、第一日はまず山梨県日下部駅を振り出しに車で県下の被害地を回ったのでありますが、同県に入ってまっ先に目に映ったものは果樹の被害のはなはだしさでありました。リンゴの成木が根こそぎ倒され、むざんにも折られ、特産のブドウ園も見る影もなく打ちのめされているさまは目をおおうものがありました。県庁、地方事務所、市役所、農協事務所、あるいは被災現場等で報告を聴取し、陳情を受けましたが、陳情者の中には涙を浮かべて救済を訴え、被災農地の政府買い上げを要望する農民すらありまして、台風被害に対する政府の適切かつ迅速な措置を要望する声が強く感じられました。また同県では学校関係の受けた被害も多く、小、中、高校等の校舎、三百四十余校が、全半壊、流失等の被害をこうむり、今なお二千人の生徒が分散授業を受ける不便をしのんでいました。韮崎市では釜無川の決壊で流域二百町歩の耕地か全滅したばかりでなく、押し流されてきた一面の土砂と大きい石の荒野と化していました。農民は収穫を失ったばかりでなく、大きな石と砂の山を取り片づけるのにいかにして手をつけるべきか、全くぼう然自失という言葉通りの惨状でありました。第二日は長野県に参り、伊那、飯田、泰阜、塩尻地方の被災地を視察いたしましたが、長野県も果樹の被害が大きく、その被害総額は十億円余に達し、また全国の生産量の八割を産出したクルミが収穫期を前にして九〇%が折られたり、根こそぎになったりして、全滅に瀕していました。伊勢湾台風は同県では強風の被害が目立ち、この強風は全県下至るところに被害を与えていますが、山間僻地の貧しい農家が農作物とともに住家の被害を受け、県下住宅の被害は全壊二千五百余戸、半壊一万二千余戸に上っております。この日私どもは午前正八時より午後八時過ぎまで全行程三百キロ近く砂塵を浴びて被害地を視察しましたが、視察予定に入っていなかった千代村では私どもの車の通過を待ちかまえて被災農家に案内して窮状を訴えるなど、被災者は復旧のためには真剣に取り組んでいると同時に筆舌に尽くせない苦労が深く察せられました。
 第三日は豊科から穂高、松川、大町、須坂等を視察しましたが、松川村では乳川、中房川、高瀬川の堤防がそれぞれ決壊し、芦間川の河床は全面的に上がり、今後の降雨によっては、はなはだ危険な状態に置かれていました。また昔から不毛の土地として顧みられなかった山麓台地に終戦後入植して、十余年間貧困と戦ってきた外地引き揚げの開拓村五十戸は、両台風によって壊滅的な被害を受け、残されたものは投入した借財だけという惨たんたる実情でありました。
 以上、両県下の災害についての概況を申し上げましたが、次に社会労働委員会関係の事項について申し上げます。両台風で災害救助法の適用されました市町村は、山梨県では六市、二十五町、十八村、長野県では八市、二十二町、四十一村の多きに及んでおります。また水道施設の被害は両県ともにひどくやられ、ことに簡易水道が大きく打撃を受けておりました。上水道、簡易水道含めて長野県では四十市町村、六十四カ所、三千二百万円余、山梨県では六市二十一町村、百十五カ所、二千五百万円余に達し、これら被害の復旧には国の助成と融資によらなければ、とうてい復旧は困難であろうと考えられます。
 防疫面では、両県とも台風による伝染病の発生は全く見られず、むしろ例年に下回る現象は喜ばしいことであります。両県の要望事項のおもなるものを申し上げますと、一、災害救助法による応急仮設住宅の設置戸数並びに災害住宅の応急修理に対する特別基準の設定を願いたい。一、生活保護法による被保護世帯に対する一時扶助の拡大並びに災害による家屋補修の特別基準を設定されたい。一、災害による同和地区の共同作業所及び下排水復旧事業については国庫補助を増額されたい。一、被災引揚者の国債買い上げ償還資金を増額されたい。一、世帯更生資金の割当額を増額されたい。一、上下水道、簡易水道及び専用水道の災害復旧についてはワクの拡大及び補助率を四分の三に引き上げられたい。一、罹災市町村の災害清掃事業に対し助成の措置を講じられたい。一、緊急失業対策法に関する特別措置法を制定し、失対事業の補助率を労力費、事務費五分の四、資材費三分の二に引き上げられたい等であります。
 なお最後に所見を申し述べます。二つの、しかも巨大な台風の莫大な被害の復旧には、政府の救助と強力な援護が必要であることは言を待ちませんが、特に両県の被害のはなはだしかった果樹の育成は、今後長期間を必要とするため、災害農家に対しては立ち上りの助成と保護等、適切な措置が講ぜらるべきである。また決壊した河川、道路等の復旧工事並びに恒久対策として考慮すべき治山治水については、両県がともに水源地帯であり、山間地層の特質等をも十分研究し、検討を加えて、河川上流に砂防ダム等を設け、台風による河川のはんらんを防止すべきである。被災の開拓農家については、特に政府借り入れ資金の償還延期あるいは特別助成金等の措置が必要であろう。
 以上、第五班の報告を終わります。
     ――――◇―――――
#8
○永山委員長 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますので、これを許します。八田貞義君。
#9
○八田委員 保険監査の問題について質問いたします。保険監査の問題につきましては、当委員会では三回にわたって質問いたしておるわけでありますが、その後何ら改善された様子が見えない。そういうような状態のときに、また再び仙台におきまして、監査されたためと思われるような自殺事件が起こって参りました。こういった問題が相次いで起こるということは、保険監査のあり方について早急に改めていかなければならぬ、こういう重要な段階にきているわけであります。その意味におきまして二、三質問して参りますが、今度の仙台の事件は、保険監査に伴う自殺行為というふうに理解できるのでありますが、保険局長よりこの問題について説明をしてほしいと思います。
#10
○太宰政府委員 今度、仙台でまた痛ましい事故が起こったのでございますが、大へん遺憾に存じます。その内容を全部詳しいところまではまだ調べておりませんが、大体のところはつかんでおりますので、申し上げたいと思います。
 これは仙台市に開業しておられます神経科と内科の両科目で、相沢さんというお医者さんであります。十九床の有床診療所であります。これの監査をいたしましたのは、九月の二十六日であります。大体九時ごろから十二時ごろまで、午前中でやったわけであります。これは厚生省と宮城県との共同監査でございます。私の方からも係官、それから県の保険課長、立ち会いは市の医師会長と県の医師会の理事が立ち会っておるわけであります。大体、監査の内容といたしましては、不正請求の疑いがございます。これは入院していないものを入院しているとして請求いたしましたのが四件でございます。一件は健康保険関係でございまして、四カ月間、入院していないものを入院しているとして請求したものがあります。それからあとは国保の関係が三件ございまして、そのうち六カ月間、入院していないものを請求しておるものが一件、二カ月半ほど請求しておりますものが一件、あとは半月ほどのものが一件、こういうふうに長期間にわたって入院していないものを入院したとして請求したものが四件、これは不正請求でございます。それから不当の疑いの方は診療録の記載、これが非常に不備であって、記載していないものが相当ある。それからその他不当な診療がございます。そういうようなことが、大体明らかになったのであります。それで、当該お医者さんの弁明書も出ております。それを読みますと、事務員を雇いまして、それに全部そういうことをやらせておるというところに食い違いがあった。さようなことで、こちらの方でいろいろそのあとのことを考えておりましたが、医療協議会にまだ諮ってない前でありますが、去る十一月十三日に自宅で自殺された、こういう事案でございます。
 この点につきましても、なお詳細に調べておる段階ではございますが、やはりこの痛ましい事故が起きました一番大きな原因は、入院していない者を入院しているとしていること、それについてお医者さんは、そういう関係のことは一切事務員にまかせきりであるというようなことを申しておりますが、かりにそれが事実といたしますれば、そういうところにそもそもの大きな悲劇の原因があった、かように考えておるわけであります。この点につきましては、先般の埼玉の加藤さんの事件の場合におきましても、同じようにあの場合は家族の方にまかせきりであったというところにやはり悲劇のもとがあるようでございまして、社会保険診療という時代に入って参りますれば、やはりその制度が要求いたします最小限度の事務は責任を持って取り扱うということを考えていただきませんと、医者は聴診器だけ持っておればいいのであって、そういう事務のことは二次的、三次的であるというような考えでありますと、こういう大きな悲劇が起こることになるのじゃなかろうか。それだけが事件の原因とは申しませんが、それが大きなあれであろうということを考えておる次第であります。それで先般の際にも、いろいろこちらで御審議をわずらわしたのでありますが、監査のやり方等につきましても、いろいろ検討もいたしております。何と申しましてもただいまの監査のやり方は、不正不当の疑いがあるものだけをつかまえてやるというふうな建前になっており、その点がとかく監査というものを非常に暗くするわけで、監査を受けるということだけでも、何かそこに悪いことをしたのじゃないかというような疑いの目をもって見られるというようなことに勢いならざるを得ないのであります。そういう点につきましては、前にも申し上げましたように、ちょうど会計検査院のように、どこの役所が不正があるとにらんだから行くのだということではなしに、政府関係の各機関を毎年無差別平等に回っていくというようなやり方の方がいいのじゃないかというような点も今考えております。
 それから第二は、ただいまもちょっと触れましたように、指導の方を強化して参らなければならない。先ほどの例でも、私ども感じておりますることは、とにかく事務というものは不得手でもありますし、また煩雑なものでもありましょう。従いまして、とかくなおざりにされがちであります。しかし自由診療の時代と違いまして社会保険診療になりますれば、やはりその制度が、これだけはぜひお願いしたいというものは、お医者さんの方でもなおざりにしないで、それだけはやっていただきたい。もちろん御迷惑をかける度合いを少なくする努力はいたしますけれども、やはり最小限度のものはお願いしなければならぬ。そういうものに対する認識を促すPRといいますか、指導といいますか、こういう点については従来やっておったつもりでありまするが、とかくこれがなおざりにされておるような感じがいたします。従いまして、この点について個別指導を広く、かつひんぱんに行なっていたといたしますれば、少なくとも埼玉県の事故とか今回の事故は防ぎ得たのではないかというふうな感じもいたすわけでございます。この点につきましては、私どもも今後力を入れたい。同時にこの前申し上げましたように日本医師会の方におきましても、自分たちの会員でありますから、自分たちもそういう面について従来指導が十分でなかったことを感ずる、そこで一つ厚生省と相談してこれを強化する方法を講じていこうではないかということで、今話し合っている段階でございます。
 その他にもこまかい点でありますけれども、大きな点としてはこの二点について、できるだけすみやかに検討をし、関係の向きの協力を得ていきますれば、相当こういう不祥な事故は未然に防止し得るのではなかろうか、かような感じを今抱いておるわけでございます。
#11
○八田委員 ただいま、今度の仙台の事件は、監査の対象になったのは入院の四件というわけで、入院の四カ月とかニカ月とか六カ月とかいうふうにありましたが、一体患者がどういう人だったかは御報告がなかった。たとえば四カ月間入院しなかったものを入院とした、一体それはどういう患者だったか、女であったか男であったか、職業はどうであったかということは御説明がなかった。そういうこまかい点については実態をよく調べてみなければ何とも言えないわけですが、ただ問題は、先ほど局長がお話しになったように、指導に重点を置いていかなければならぬ、こういう発言があったわけです。ところが今度の保険監査は指導に重点は置いていなくて、すぐに監査に入った、こういうふうに考えられる。いわゆる一般で言われるところの網打ち式の実態調査が主であった。指導の面についてはほとんど何もやられていなかった。いきなり網打ち式の実態調査に入って、監査というきびしい方法をとられていった。これが問題であろうと思う。もちろん今までの御説明の中にも、監査をしてからだいぶたってからの死であるというお話がございまして、直接監査と自殺とが結びついたかどうかについてあいまいなお話があったのですが、結局監査直後よりも処分決定直前というものが一番医師に対して与える影響が大きい。しかも、もう一つ伺いたいことは、保険監査の内容に対して調べにあずかった監査官の態度です。この監査官の態度は、単に調べるだけであって、処分をどうするこうするというような権限は何もない。保険の監査というのは、単に調べて、それを上司に報告するだけですが、こういった保険監査官の態度について局長はどれまで認識されているか。私は仙台の医師会からも大体の内容は聞いて知っているわけでありますが、問題は保険監査官の調べ方が非常に特高警察的な峻厳なものであった、こういうことを言われているので、態度が非常に問題なのです。単に調べるだけの権限しか持っていない、その調べたことを上司に報告するという権限しか持っていない人が、特高警察的な態度で、しかも処分にまで立ち入ったような発言をしている。これが非常に問題だろうと思う。この点、保険局長は取り調べに当たった係官の態度についてどのように認識されているか、これを一つ伺いたい。
#12
○太宰政府委員 保険の監査に当たりますものの態度について、できるだけ慎重にやるようには前々から私ども指導いたしております。またそういう面についての御批判が多いわけであります。しかしながら今度のケースにつきまして私ども調べてみたところによりましても、格別どうということはございません。ただ先ほど申し上げましたように、今の監査というものが不正不当の疑いがあるというものについてやるようなことになっておりますので、そこへ呼び出された人は、どうも自分が悪いことをしている、それを調べられるのだというような気持でいるものでございますから、こちらの方の態度というものもとかくそういうふうに感じられることはあり得る、それだけによけい注意しているわけであります。それが非常に過酷であるというようなことはあり得ないわけであります。何となれば、これには立ち会いをされている方もいるわけでありまして、そういうことはあり得ないわけで、また今度もそういうことはないように思っております。しかしこれはそういうことは抜きにいたしまして、極力そういう点については慎重に、相手を恐怖の底に陥れることのないように十分注意しているつもりであります。今回の事件は、今そちらからお話がございましたように、約半月の期間がたっております。私はそれが原因であるとは思われないのであります。やはりほかの方に原因があるのではないか。それは別に原因を他に転嫁するわけではございませんで、御指摘の点は常々前から考えていることでございます。今後もそういう点は十分注意して参りたいと考えております。
#13
○八田委員 保険局長の答弁は了承するのですが、実際にやられている態度は、立会人がいるから保険監査官もそういうような態度はできない、注意が与えられているというのですが、実際は注意が与えられない。注意が与えられるような雰囲気に置かれていない。ほとんどもう一方的に監査というものが進められている。保険局長は、保険監査に伴う医者の自殺というものは二名だけだというお話のようでありますが、医者の側で三名出ている。これは埼玉の加藤さんの前に、川崎でしたか、やはり保険監査に伴う自殺があった。医師側において三名、歯科医の側において三名あるというふうに私は何っております。ですから、こういうふうに医療担当者側の歯科医師会と医師会を通じて六名の保険監査に伴うところの自殺者を出しておるということは、私はやり方が非常に問題だろうと思うのです。これは局長は、私は決してそういうような指導もしておりませんし、実際そういうことがないのだ、正しくやっておるのだ、こう言うのだろうけれども、実際はそうじゃない。こういった六名の犠牲者があったということについて、今まで保険局長はそういうことをお聞きになっておるかどうか、お聞きになっておらなかったら、さっそくお調べ願いたいと思うのです。この点どうですか。
#14
○太宰政府委員 それは監査というのはしょっちゅうやっておるわけでございまして、昔からやっておるのですから、その間にときたまこういう不祥事件が起こって、そういうこともないこともないと思います。しかしながらいろいろそういった事故が起こりますについては、すべてがその監査の監査官の態度なり言動が悪い、そういう理由で片づけることは私はいかがかと思うのであります。ことに最近におきましては十分にそういう点について、世間なり関係方面からの批判もあり、また省内においても十分注意しておるつもりであります。私はそういうようなものがこれの原因であるということは考えないわけであります。ただしこの監査に出ましたその場の雰囲気というものは、それはあまり愉快な雰囲気ではもちろんあり得ない。そういうような点から、これを受けるような方々が、普通ならば何も大した問題でないようなものでも、人によりましては、あるいはそこにいろいろな点を考えて異常に神経を使う方もおられると思うのです。そういうようなことは一がいには言えないと思うのです。ただしそれはそれといたしまして、言動その他については、先ほども申し上げましたように、これはやはり一つの事実を、相手の方が言うことを好まないようなことを伺って明らかにするわけでございますから、その点について決して快い言動でやっておるわけにもいかぬ場合もあるだろうと思います。しかしながらできるだけ言動には注意して、かりそめにもそういうことのために相手の方々が必要以上に恐怖心を起こしたりするようなことがないように、これは今後とも一そう注意して参りたい、かように考えます。
#15
○八田委員 保険局長は、監査のやり方が好ましくない雰囲気でやられているというような発言があったのですが、実際どのようにやられているか、大臣は監査のやり方をあるいは御承知がないと思うのです。実際監査の対象になった医師は、裁判の被告扱いなんです。これを一つ、一体監査のやり方をどんなような雰囲気でやっておるか御説明を願いたいと思うのです。
#16
○太宰政府委員 私、実はまだ就任後日が浅うございまして、一度見たいと思って、まだ見ておらないのですが、この間も滝井委員から、こんなものだというレクチュアを受けまして、近いうちにぜひ実地に見てみたいと思います。しかしながら確かにやはり今の監査のやり方が、そういう不当不正と疑うに足る事由があった場合にやるということでございまして、被告人扱いというようなことはどうかと思いますけれども、やはり何かそこに伺ってみてというような零囲気、あるいは出てくる方もそういうふうな気持で出てくるというようなことから、その場の零囲気というものは重苦しいものであろう。それから、やはり一人のお医者さんの、場合によっては身分にも関係するようなことが議論される。従いまして関係者一同が慎重にやるという意味から、ついその関係のある者が出てくるというようなことからして、数も多くなる。やはりそういうことは、受ける方からいえば、大ぜいの前に一人だけ呼び出されたというような変な心理状態になるかと思います。しかしこれは場合によりましては、何か別室で、さしでもってゆっくり話してやるということがいいこともあろうと思います。そういう点につきましては私ども検討して、それはできるだけ改善して参りたいと思います。
#17
○八田委員 保険局長は監査の現場を一回も見ておられぬという御答弁で、これだけの事件を起こしておいて、保険監査のやり方について自分の下僚は間違いがなかったんだというような報告だけ聞いてやっておられる態度は、私は非常に問題であろうと思います。先ほど申しましたように六名の犠牲者を出しているくらいなんですから、これはやはりよく調べて、現場に行って、一体どんなふうにやられているのだろうぐらいなことは常識として当然あるべき姿なんですよ。それをただ下僚の報告を聞いて、それをうのみにしてそのままにほっておく、これは非常に問題だと思う。一回も見ていないで改善しよう、直そうといっても、どこを直すのか、ちっともつかめないはずです。あなたが現場を見て、そうしてこういうところはいかぬということを正しくキャッチされて、それを直すという意欲がなくて、現場を見ないで、ただ下僚の報告を聞いて、そしてそのままに過ごしておくということでは、善処する、善処すると言っても、進歩が何もないじゃありませんか。これは私は保険局長が滝井委員からレクチュアを聞いて初めて、重苦しい空気だなということを印象づけられたという態度では、非常に遺憾と思う。これは、実際これだけの犠牲を出して、そのままにほっておくというふうに言われても仕方がない。やはりこういった監査要綱といった問題は実態に即してやっていかなければならぬ。これだけの犠牲者を出してきているのですから、早急に改めていかなければならぬのですよ。私はここで三回取り上げて、いつも善処いたしますということで答弁をいただいておりますけれども、ちっとも善処の形が見えない。このままでいったならば、また被害者が起こってくるというようなことになって参ります。早急にやってもらわなければならぬ。ところで、大臣にお伺いしたいのでありますが、大臣が就任以来いろいろと医療担当者の間に重大な問題が横たわって、解決のために御努力願っていることはよくわかるのでありますが、しかしほんとうに末端医師会が一番望んでおることは、監査のあり方に対する批判です。ぜひともこれを直してほしい、こういうことを一番強く叫んでおるわけであります。特に社会保険がだんだん進展して参りまして、患者対医者の関係というものが、全くその人間関係というものが忘れられてしまう、そういうような機構に置きかえられてきたわけです。たとえば二重指定の問題を取り上げてみましょう。二重指定というのは、要するに医師と患者との人間関係というものが機関という名前によって寸断される、こういうことになってしまった。たとえば例をあげてみますと、私的医療機関というのは社会医療の体系の中において本来自由な立場にあって、地域社会と密着しておったわけなんです。ところが社会保険の発達とともに、疾病時のみの関係に法をもって限局されて参りました。そうして本来の社会医療の姿というものは薄らいできてしまったのです。さらに二重指定制の実現によりまして、医師と患者との人間関係というものは社会化の名のもとに抹殺された、こういうような状態になってしまった。前の厚生大臣の坂田さんは、医師と患者との関係というのは人間関係でなければならぬということを非常に強調されている。特に坂田大臣が言われた言葉の中に、ミュンヘンの一医師が結核患者に一生をささげた。この人の名前はハンス・カロッサである。医療というものは最終は人間対人間の関係というものが一番大切なんだ、こういうことを坂田元大臣は言われております。そうしていかに医学が進み、保険医療が普及しても、しょせん医療というものは人間対人間の関係であり、ここに医療担当者の崇高な使命があるのだ、厚生行政はほかに類を見ないほど深く広いもので、医療担当者の協力がなければ厚生行政というものは進んでいかないのだ、その根本の中に人間対人間の関係を説いておられるのであります。私はこれがやはり厚生行政で一番大切な問題であると思います。ところが今度の仙台の事件、埼玉の事件にいたしましても、人間対人間の関係というものが機関指定によってすっかり絶たれてしまったというところに大きな原因がございます。特に仙台の事件を見ましても、医療協議会の構成問題というものについて非常にノイローゼぎみになった。医療協議会の構成は、二十四人の中に医療担当者が四名しかいない。これではとても自分の正しい医療に奉仕した気持というものが理解されない、これでは処分決定を受けて糧道を絶たれる、こういったような非常にショッキングな気持におそわれたわけであります。ですから、結局今度の問題は、二重指定と監査のあり方、それから医療協議会の問題というものがそこに横たわっておるわけであります。ですからこういった問題を解決していかなければならぬのでありますが、この解決には相当の時間を要します。こういったふうな事件がたくさんに起こったということは早く改めなければならぬ。そのためにこの監査のあり方について大臣としてできることは、改善を早急に進めるということであります。その改善を早急に進めるという方法に入られまして、それができるまでの間、今までのやり方については相当に問題もあるのであるから、今までのやり方の監査を一時中止する、これくらいの態度まで大臣が出られない限りは、下僚はなかなか動いて参りません。どうですか、大臣、こういったような犠牲者をたくさん出しておる場合、この検討は早急を要するものである、ぜひやらなければならぬ、こういうどたんばに追い込まれておるのであります。これをやるためには、今の局長の答弁によりますと、やはり現場というものに対する認識が非常に少ない。善処するといってもなかなかできない状態があります。ですからこれだけの犠牲者をむだな死にさせないためにも、大臣といたしまして、今までの監査のあり方についてはまことに遺憾な点がある、従って改善ができるまでの間監査を一時中止するというようなお考えがあるかどうか、一つお尋ねいたします。
#18
○渡邊国務大臣 このたびの宮城県下におきますところの自殺事件につきましては、まことに衷心から遺憾に思っております。これが監査制度によるところの、いわゆる従来の非常な弾圧的、取り締まり的な態度が、こういうような原因を来たしたということにつきましては、私どもも社会福祉国家におけるところの医療従事者につきまして、厚生省はやはりできるだけ親切、懇切、しかも監査する人は取り調べといったような態度ではなくして、懇談するというような態度で進ませなければならない、かように考えているわけでございます。監査方式につきましては先般来からすでに、この前の委員会におきましても私ども並びに事務当局が申しましたように、できるだけすみやかにこれを検討いたさなければならぬ。しかし末端に対しまして、現在いろいろ疑惑をこうむっているような人々に対しましては、事情を聞くところの監査官というものが、いわゆる取り調べ的な態度に陥られるような雰囲気がそこにかなりかもされるのではなかろうか、かように考えられるわけでございます。こういう点につきましても、十分に何らか具体的に指導いたしたいと思っております。すみやかにそのような態度に出たい、かように思っております。
#19
○八田委員 すみやかにというお言葉をお使われになりましたが、ほんとうに早急にやらなければならぬ問題なんです。じんぜん日を過ごして、ただ善処されるというようなことではとても解決できません。すみやかにというのが、どれくらいに考えているのか知りませんが、もう今月中くらいに大臣の意思を出されて、そして監査というものは指導が主なんですから――局長頭をかしげられておりますが、社会保険医療担当者監査要綱には、「方針」として、「監査を行うに当っては、医療担当者の指導に留意すること。」こういうことになっておる。ですから監査というものは指導が基本です。ところが監査の前に指導をやっていかなければならぬことになっておりまして、社会保険医療担当者指導大綱というものがある。ところがこの指導大綱というものはほとんど守られていない、これが問題であります。しかも指導大綱というものが昭和三十二年七月四日、保発第六二号として、保険局長通牒によって出されておりますが、この際に厚生省と日本医師会、日本歯科医師会の申し合せがあります。申し合せを読ましていただきますと、一、としまして、「指導を行うに当っては、知事は医師会、歯科医師会側と協議して計画を樹て、個別指導に際しては、両者相協力して行う。医師会、歯科医師会は右の指導に積極的に協力するものとする。」二、として、「指導の際発見せられた不当事項については、直ちにこれを監査の対象とすることなく、指導によってその改善を求めるものとする。但し、指導を行っても改善が行われない場合は爾後において適切な措置を講ずるものとする。」こういう申し合せがある。ところがこの申し合せは一つも行われていない。大臣はすみやかにというお言葉で答弁されましたが、これはほんとうに今月中にでもできることなんです。大臣のお考え一つでできることなんです。医療協議会の問題とかあるいは医療制度調査会の問題等は、相当時間をかけて、互いに協議して話し合いを進めていかなければならぬ問題でございますが、この監査の問題については、大臣一人でもっておできになる事項なんです。しかも保険局長以下の方々が、現場の監査をやっておる姿を実際につかんでいないというところに問題があるのですから、これは大臣からすみやかにというお言葉をいただいたのですが、それを私は今月中にというように理解いたしまして、ぜひとも今月中にはっきりとした監査のあり方について、民主的に、しかも末端医師会が要望するような方向に向かって、早急に改めて下さるようにお願いいたします。大臣、もう一つ御答弁をお願いしたいと思います。
#20
○渡邊国務大臣 さような指導大綱というものがあります以上は、それを再度徹底させるように、末端まで何らか措置を講ずることといたします。
#21
○太宰政府委員 ただいまお読みになりました医師会、歯科医師会との申し合わせ事項は、これは指導大綱についての申し合わせでございます。御承知の通り昔は指導監査というふうな一本の要綱になっておりました。それが重点が指導にあるのか監査にあるのかあいまいでありまして、そこで片方は監査要綱、それから片方は指導大綱というふうに二つに分けまして、監査要綱の方は監査が主体である、しかしその精神は指導の精神でいけ、こういうことになっております。指導大綱は監査に至らないものにつきましてやるわけであります。そこで指導の際に発見された不当事項については、ただ監査の対象にするばかりでなくて指導でいけ、すでに不正というものがはっきりした場合においてはどうしても監査でやらなければならぬ、こういうことであります。その点は御承知かと思いますが、申し上げておきます。
 それから、先般来言うたにかかわらず善処の形がない、善処したような形跡が見えないというお話でありましたが、これはとんでもない間違いでございます。私はその点について何らか改善いたしたいということで、関係の団体とすでに話し合っているということをこの間申し上げているわけであります。(八田委員「非公式じゃないか」と呼ぶ)非公式であろうが何であろうが、申し上げたはずであります。やはり私どもが勝手にやるということにつきましても、そういう関係者団体と円滑に運営していくためによく話し合いをし、向うもまた、自分たちも従来どうも指導が足りなかったことを痛感する――前の埼玉事件などもそうであります。ですからその点についてなお厚生省とよく協議して指導に力を入れていきたい、こういうことで、われわれも、それは大へんけっこうなことだ、そこまであなたの方でお考えいただくなら、わしらも何とかしてこういう事故を防ぎたいんだ、だから指導に力を入れていきましょうということで、そのやり方について相談しているわけであります。それが一週間やそこいらでできないからといって善処の形がないということは、問題はしかく簡単なものではないと思います。これはもう少し時間をかしていただきたいと思います。なお八田委員は医系の大先輩でもございますので、関係の方にまた私どもの真意もお伝えいただきまして、厚生省と協力してやるように、一つ御協力を賜わりたい。先ほど申し上げましたように、監査をやる場合に不正不当の疑いがあるものをやるということになりますと、最初から監査というものが何か暗いものになりまして、私どもも非常に不本意でございます。これは一つ関係団体とも話し合って、そういうことがないような雰囲気でやることに改めたいと思っております。こちらからお願い申し上げますが、どうか御協力をいただきたいと思います。
#22
○八田委員 医療担当者と話し合ったということであるが、一体非公式に何回話し合いを持たれたのか、その後一体いついつ持たれて、どのくらい進みましたか。善処の形がないと言ったことに対して、善処しておりますと言うけれども、非公式の会合を何回持って、一体どういう結果が出たのですか。その結果を一つ聞きましょう。
#23
○太宰政府委員 ただいままですでに三回話し合っております。非公式なあれでございますので、今回申し上げる段階でもございませんが、非常に両方とも協力的に話をしておりまするので、早急に結論を得て、また皆様方の御批判を仰ぐことにいたしたいと思っております。
#24
○八田委員 非公式にやったから発表の段階でないと言うけれども、善処したということは、たった三回やったことが善処なんですか。何も改善の効果は見られていないのじゃないですか。その点はどうなんです。一体だれとだれが会ったのですか。
#25
○太宰政府委員 別に秘密のあれでもありませんけれども、こういう席で申し上げることはいかがかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。話し合いをしておることで直ちに善処の効果が上がったとは私どもは申し上げませんが、今善処しておるということだけは申させていただきたいと思います。
#26
○八田委員 あなたは、善処の方向に向かっておるというだけのことであります。結果はちっとも上がっていないではありませんか。一体いつといつ三回やっておりますか、一体だれとだれが話し合いをしておりますか。
#27
○太宰政府委員 そういうことは御了承いただきたいと思います。
#28
○八田委員 しかし今のあなたの態度は一体何ですか。これだけの問題が起こっておるときに、自分の方のことを全部たなに上げて、こちらの方が大臣との間で話をしておることに対してそばからちょこちょこ言う態度はどうですか。大臣は政党の代表ですよ。国会議員として、こういった保険監査というものが今まで多数の人に精神的ショックを与え、しかも犠牲者を歯科医師会もまぜて六名も出しておるというに至って、あなた方はもう簡単に折れるべきです。さっそくやれ、これは大臣が言えばできますよ。あなた方はできないと言ったって、大臣が命令したらやってもらわなければならぬ。そうして三回会いましたというけれども、三回で一体善処の方向にどんな成果があったかということについてはここで御説明できません。それでは私らは質問できませんよ。あなた方の誠意というものを疑うようになって参ります。これだけの事件があって、あなた方が興奮したような態度でもって答弁するということは反省してもらいたいと思います。この点はやはり互いに協力し合ってやらなければならぬということをあなたは話された。その線に沿ってやらなければならぬのです。今の態度は、すなわち医療担当者に対して高圧的な態度でもって今まで三回くらいの話し合いはあったというふうに勘ぐられることになる。それでは話し合いはできませんよ。あなた方はやはり慎重な態度で――慎重な態度ということは、今までの起こった現実をよくお考えになって、そうして医療担当者とほんとうに話し合うような気持にならなければどうにもなりません。あなた方の方でちっとも折れないで、相手方にだけ折れさせる、これでは話し合いができません。そういう態度こそ私は問題にしておるのです。その点は反省してほしいと思う。一体局長はどうですか。
#29
○太宰政府委員 別に私不当なことを申し上げたつもりじゃございませんけれども、何かお気にさわりましたか。言動は今後さらに注意いたします。それから医師会側と話し合った、これはほんとうを言うと、非公式のことでありますから、申し上げるほどのことでないのですが、別に何もこそこそ裏話をしておるわけではございませんのでこれは医師会の副会長及び担当理事と私どもと会って、ただいまの進行状況はさっそく具体的なものについて一つ検討しよう、こういうところまで進んでおります。
#30
○八田委員 これ以上保険局長を追及しませんが、大臣と私の質疑応答の間に、大臣がいかにこの問題を心配されて円満に解決したいと思っておられるか、大臣のお気持はよくおわかりになったはずであります。その線に沿って一つ大いにやってほしいと思います。私はあなたの言動に対してとやかく文句を言いませんけれども、しかし主管局長として一番重要な立場にあるあなたの今の態度は、やはり下僚にも通じておるというふうに考えざるを得ません。どうかそういう態度は反省されまして、医師会とよくこの問題について話し合いされるように特に希望いたしまして、私の質問を終わります。
#31
○渡邊国務大臣 ただいまの問題につきましては、先般来事務当局と私たちの間で、どうしても何とかしなければならぬ、こういうことから、具体的に事務当局に命令をいたしましてやっておることでございますから、この点は安心していただきたいと思います。
#32
○永山委員長 滝井義高君。
#33
○滝井委員 十二日に、今八田君が問題にいたしております監査の問題について政府にいろいろ質問をいたしました。ちょうど私が声を大にして、十一月十二日の午前から午後にかけて監査の問題を質問をしておる最中に、はるか仙台の地においては、一人の医師が苦悩をしながら、監査の問題にどう対処しようか、こういう非常に沈痛な姿で熟慮しておった姿が目に見えます。そしてその質問が中断をされて次会に持ち越しになりましたが、その翌日の十三日に、五十五才の相沢医師が命を断ちました。私は先般来、といってもここ数年来、機会あるごとに監査の問題を問題にして参りましたが、私はこの問題を契機にして、十二日続けておりました質問を続行して、さらに大臣並びに局長にその実態を十分認識していただきたい、こういうことです。そしてその認識の中から、具体的にどういう工合にこれの監査方法というものを改善していくか、こういう問題をやはりつかんでもらわなければならぬと思うのです。
 そこで私は、先日までにおいては、日本の社会保険の監査において具体的にどういうことが一番問題になってくるかということを、いろいろと具体例をあげて御説明しました。たとえば最近の基金からの返戻の状態あるいは監査会場の状態、そしてその監査会場における非常に異様な空気、こういうものについていろいろ御質問を申し上げました。きょうは私は、今度は監査を受ける療養担当者の姿と申しますか、そういうようなものを少し浮き彫りしながら質問をしてみたい、こう思うのです。同時にその中から根本的な問題も、法律上の問題もからまして御質問をしてみたいと思うのです。監査の関門は、まず社会保険診療報酬支払い基金の審査会の審査から始まるわけです。監査の関門はまずここから始まります。――先に決議をやるそうですから、謙譲の美徳を発揮して、ではちょっとここであれしましょう。
     ――――◇―――――
#34
○永山委員長 ただいま田中委員より、自由民主党、日本社会党及び社会クラブの共同提案にかかる社会保険診療報酬点数表の一本化に関する件について、委員会において決議せられたいとの動議が提出されました。この際本動議を議題とし、まずその趣旨の説明を聴取いたします。田中正巳君。
#35
○田中(正)委員 この際、当委員会において決議案を提出いたしたいと思います。
 まず決議案の案文を朗読いたします。
   社会保険診療報酬点数表の一本化に関する件
  懸案となつていた社会保険診療報酬点数表の一本化については、政府は、昭和三十五年度予算要求において、その調査費を計上し、根本的検討を行わんとしている。
  政府は、甲乙二表の存在による混乱を防止し、国民医療の前進のために、可及的速やかに社会保険診療報酬点数表を実情に即した一本化に努力すべきである。
 案文は以上の通りであります。
 内容につきましてはただいまお聞きになったところで、さほど説明を必要としないと思いますが、念のために簡単に申し上げてみたいと思います。
 今日、社会保険診療報酬の点数表は甲乙二表になっておるのでありまして、またこの二表の中にそれぞれ甲地、乙地等のいろいろ区別がありまして、今日保険者も被保険者もまた医療担当者も、これをめぐって非常に混乱をいたし、迷惑をしておるのが実態であります。かような状態に対応いたしまして、かねがね政府も、また当委員会においても、しばしばこの点数表の一本化について要請をいたし、それぞれ努力をしているようでありますが、政府は昭和三十五年度予算要求において、その調査費を計上して根本的検討を行なおうとしていることは、ややおそきに失したきらいはありますが、まことに時宜を得た挙であるというふうに今考えているわけであります。当委員会といたしましては、この際この甲乙二表の存在によって社会医療保険の混乱をすることを防止いたしまして、国民医療が前進をするために、すみやかにこの社会保険診療報酬点数表を一本化していただきたい。その一本化する節には、今日の保険者、被保険者あるいは医療担当者の経済の実態、あるいは近代医術の実情等を勘案いたしまして、こういったようなものに即応したような点数表をすみやかに一本的に作っていただきたい、かように政府を激励をいたし、なおかつこの調査費については、確実に三十五年度予算において計上せられるようにという念願のもとに本決議案を提出するゆえんであります。何とぞ満場各位の御賛同を得られんことを切にお願いをする次第であります。(拍手)
#36
○永山委員長 以上で説明は終りました。
    ―――――――――――――
#37
○永山委員長 次に、本件について討論の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
#38
○滝井委員 ただいま議題になりました社会保険診療報酬点数表の一本化に関する決議に対しまして、日本社会党並びに社会クラブを代表して賛成の討論をいたします。
 われわれは昭和三十四年七月以来、国民医療の前進のために、社会保険診療報酬点数表、すなわち、世に言う甲乙二表の一本化を推進せんとして決議を出して参りました。ところが一部に誤解を生み、また途中で永山発言問題等の派生的な事態の発生のために、今日まで延び延びとなってしまっておったのでございます。今回与野党の意見統一が成りまして、医療行政の行き詰まりを打開をして、国民医療前進のために決議案提出の運びとなりましたことは慶賀の至りでございます。
 賛成の具体的な理由を述べてみますと、政府は、われわれの先般の質問において、昭和三十五年度予算要求で、医療経済調査費を要求して、医療経営の詳細な実態調査を行なわんとしておることが明白になって参りました。おそらくこの調査は、昭和二十七年三月並びに十月の調査以上の画期的なものとなるであろうとわれわれは考えております。この調査によって厚生省当局は、一本化の科学的な基礎をも同時に確立せんとする意図を持っておるように漏れ承っております。しかし注意をしなければならぬことは、現在の医療報酬の支払いの実態を見ていますと、甲表を採用するものが九%前後、乙表を採用するものが九一%前後、こういう状態です。こういう現状を基礎にして、もし政府の言うごとく、三十五年十月に医療経営の実態調査を行なっても、そこに出てくる姿は甲乙二表の姿しか出てこないということです。こういう点が一つあります。また異質の甲乙の二表を同時に調査しても、出てくる結果は異質のものであるということです。こう考えてみますと、直ちに一本化して、しかる後に十月の調査を実施をすることが、実は論理的には一貫をしておるように思われるのです。しかしとにかくこのような根本的調査費計上を前にして、あえてわれわれは再度ここに診療報酬の一本化の決議の提出に賛成する理由は、甲乙二表の存在による医界と医療の分裂、混乱に終止符を打ち、国民医療の前進を希求する大乗的な見地に立つからにほかなりません。政府はこの際、相当の期間を要する抜本的調査の実施と、すみやかなる一本化の至上命令の矛盾におぼれることなく、衆知を結集し、偉大なる政治力の発揮によって実情に即した一本化を断行することを願うものでございます。
 以上の見地から、本決議案に賛成をいたすものでございます。(拍手)
#39
○八田委員 ただいま議題となりました社会保険診療報酬点数表の一本化に関する決議につきまして、自由民主党を代表いたしまして賛成の討論をいたします。
 経済上の立場を異にする甲乙二表の存在は、国民医療の混乱をもたらしております。医療機関の協力関係は患者、診療所必須のものでありますが、甲乙異なる医療機関は協力に重大な支障を来たしていて、この不幸は患者に転嫁されております。
 第二に、同一医療行為に対し高低の二種の価格を長期にわたって放置することは、医療経済の混乱を誘致するものであります。医療以外の分野においてもしかかる事実を許したら、いかなる重大事態に陥るかを考えてみる必要があります。
 第三は、一カ年以内に統一すると元大臣が約束した政治上の責任も明らかにされておりません。
 本決議は、以上の三大要件に関するものであります。政府は、三十五年度予算要求において医療実態調査を企画しておられますが、異質的な二表、九一%、九%という調査対象数の著しい差をもってしては、調査結果は意義を持たないことになります。また医療担当者の協力を現状において求めることは困難であると思われます。実態調査の遂行は、関係医療機関の協力を求める態勢を整備し、早急に実情に即して一本化をはかる以外に、その調査を円滑に実施できないと思います。少なくとも一月一日から今申し上げましたような実情に即した一本化に努力されんことを願いまして、この議題に賛成するものであります。
#40
○永山委員長 これにて討論は終結いたしました。
    ―――――――――――――
#41
○永山委員長 本動議について採決します。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立]
#42
○永山委員長 起立総員。よって本動議は可決いたしました。
    ―――――――――――――
#43
○永山委員長 この際、渡邊厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。渡邊厚生大臣。
#44
○渡邊国務大臣 ただいま提案いたされました社会保険診療報酬点数表の一本化に関する決議案の御趣旨を尊重いたしまして、最大の努力をいたすつもりでございます。
#45
○永山委員長 なお本件の参考送付につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
#46
○永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
     ――――◇―――――
#47
○永山委員長 次に厚生関係の質疑を続けます。滝井義高君。
#48
○滝井委員 そこで、監査の関門というものは、社会保険診療報酬支払基金の審査委員会の審査から始まってくるわけでありますが、そうしますと、まずこの審査で非常に問題になったものが具体的には監査の網にかかってくることになります。ここで私は政府にお尋ねいたしておきたい点は、新しい昭和三十二年度にできました健康保険法のどの条文とどの条文が、あなた方が現在お使いになっておる監査要綱――昭和二十八年六月十日にお作りになった要綱とどの条文で関係してくるか、これをまず第一にお尋ねをいたしたい。
#49
○館林説明員 医療機関並びに医療担当者に対します監査は、健康保険法第四十三条の十によって調査を行なうわけであります。患者の調査は、同法の第九条の二第二項によって行なうわけであります。
#50
○滝井委員 そうしますと、四十三条の十によって行なうことになっておりますが、あなた方の今回仙台で行ないました相沢医師の監査は、これは四十三条の十のどういうところに該当をして相沢医師の監査を行なったのか。四十三条の十、これは長い条文で、速記が迷惑しますから読みませんが、この長い四十三条の十であなた方は監査を行なう、すなわち監査要綱というものはこれから出てきておる、こうおっしゃったわけですが、相沢医師は一体この長い条文のどういうところで監査にひっかけてきたのか、こういうことなんです。
#51
○太宰政府委員 四十三条の十の「診療録其ノ他ノ帳簿書類ノ」「提示ヲ命ジ、」あるいはその次の「出頭ヲ求メ又ハ当該職員ヲシテ」という、この四十三条の十のほとんどこれにかかるのじゃないかと思います。
#52
○滝井委員 ほとんど全部にかかるというのは、では具体的に私の方から尋ねますが、相沢医師は保険医療機関として呼ばれたのか、指定医として、保険医として呼ばれたのか、どっちか。
#53
○館林説明員 保険医療機関相沢診療所並びに保険医相沢鑑氏として呼ばれております。
#54
○滝井委員 大臣お聞きの通りです。一人の医師が呼ばれる場合には、保険医療機関として呼ばれ、保険医として呼ばれておるのです。これがいわゆる二重指定なんです。だから保険医として呼ばれて――これは一体罰はどっちに加わるのですか。保険医療機関相沢ということで呼ばれる場合には開設者として呼ばれている。それから保険医の相沢としても呼ばれる。一つは管理者として呼ばれる場合と、その管理者のもとにおける保険医として呼ばれる場合と二つある。そうするとこの場合は、相沢医師はおそらく使用人を持たないであろうから、管理者として、保険医として呼ばれている。一方には保険医療機関として呼ばれている。いかなる理由で二つお呼びにならなければならぬか。そういう法律のどこから二重に呼ぶ権限が出てきますか。
#55
○館林説明員 「開設者若ハ管理者、保険医、保険薬剤師其ノ他ノ従業者二対シ出頭ヲ求メ又ハ」云々と書いてございます。これによって呼ばれておるわけでございます。
#56
○滝井委員 なるほど四十三条の十は「保険医療機関若ハ保険薬局の開設者若ハ管理者、保険医、保険薬剤師其ノ他ノ従業者二対シ出頭ヲ求メ」とあるわけです。その場合は、あなた方はみそもくそも一緒に、何もかも一連のものを全部呼ぶという、こんなばかなことはない。この場合はやっぱりはっきりと、この問題についての責任というものが保険医療機関にあるというならば機関を呼んだらいい。もし管理者であるならば管理者として呼んだらいいのです。保険医療機関相沢何々、保険医相沢何々と、こういう呼び方というものはないと思うのです。だからどっちかそれをはっきりしなければいかぬ。そういうように十ぱ一からげにものを呼ぶということになったら、そこの従業者は全部呼ぶことになる。いいですか、あなたのような言い方をすれば、その他の従業者というので、従業者も全部呼ぶことになる。そういう言い方をすればそうでしょう。ところが、この場合は従業者は呼んでいないでしょう。看護婦や何かは呼んでおりはしない。だからあなたの方は二つを選択しなければならぬ、そうでしょう。だからそこらあたりの、これをもう少し明白にしておかぬと、私は一体どちらで呼ばれたんですかということを――ほんとうは僕らみたいに法律を知っておる者は、私を機関で呼んだんですか、人間として呼んだんですか、どちらですかと尋ねることになる。機関なら機関の答弁をし、保険医なら保険医の答弁をすればいい。これは答弁が違ってくる。従って監査をする場合には、あなたは今度は機関について尋ねますからということを言っておられたかどうか。こういうことは言っていない。こういうところにすでに昭和三十二年に強行した健康保険法の無理がある。一方においては人格のない機関というものを呼んでいる。一方においては人間を呼んでいる。ところがその人間というものは機関に従属する一つの歯車にすぎない。機関のもとにおいては大して発言権はない。だから相沢さんをあなたは両方でお呼びになったと言うならば、それじゃなぜその他の従業員を呼ばれなかったかということになる。しかもこの問題については、あなたの方が調査したときには、従業員がやったということがわかっておるはずです。そうすると、なぜ一番大事な従業員というものを呼ばれないか。なるほど事務長は来ておる。事務長だけでは問題は片づかない。そういう点について法律の書き方に不備がある。その点からまず答えて下さい。
#57
○館林説明員 ここに書いてある機関の開設者、管理者、保険医、その他の従業者に対してというのは、それらの中の必要な者に対して出頭を求めるということでございます。従いまして調査内容によって、ここに掲げられておる全部の種類の人員を呼ぶこともあるいはあるかもしれない。その一部で足りる場合は、その一部を呼ぶ場合もあるわけであります。宮城県の事例では、開設者兼管理者兼保険医である相沢医師と、事務長に該当する佐藤事務員とが監査に出頭しておるわけであります。
#58
○滝井委員 もう少し詳しく入りますが、出頭を求めるという行為と質問をするという行為とは同じですか、別ですか。
#59
○太宰政府委員 出頭を求めるというのは、当然おいでいただいて、そして質問するということであります。それから質問をするという場合は、これは特に出頭を求めるという行為を抜きにして質問をする、こういうことであろうと思います。ただ出頭だけ求めるというのは意味をなさぬわけですから、当然その中には質問をするということが含まれていると解釈いたします。
#60
○滝井委員 そうしますと、監査の場合には具体的には一体どう現われるかということです。出頭を求めるの中には質問が入るとおっしゃる。出頭を求める者には開設者も入っておるわけです。ところが質問を求める場合は関係者だけしか入らない。健康保険法を通したときに、あなた方はこれを作ってやっておるのですから、今になって額を集めて条文を研究するのじゃだめなんです。四十三条の十は一番大事なところですよ。その辺をもう少しはっきりして下さい。
#61
○太宰政府委員 質問を求めるのは、関係者に対して質問をなすのでございますから、全部ひっくるめて関係者という言葉で言っております。
#62
○滝井委員 そうしますと、関係者に質問するのだが、具体的に監査に現われたときにはどういうことになるのかということです。あなた方は出頭を求めるというのは出頭プラス質問だと言う。そうすると、質問だけのときがある、これは出頭させないでしょう。監査要綱ではこれがどう現われるか。質問のときはどういう工合に現われておるのですか。
#63
○館林説明員 監査要綱では、特に質問だけのことについて明記されておる点はないわけでございます。
#64
○滝井委員 出頭を求めて質問をするばかりが監査じゃなくて、四十三条の十がもし監査をやる条項だとするならば、これは当然質問をだけする場合があっていいわけです。それはやられていないということです。しかも診療録やら帳簿やら書類その他の物件は検査をする。検査をするときは、当然これは立ち入っていくのですから質問があるでしょう。ところがそのほかに別個に質問という形が法律で作ってあるわけです。だから出頭を求めてやるが、同時にそのほかにも質問だけがあっていいはずなんです。ところが監査要綱にはこれがない。なぜかというと、これは二十八年に作った要綱だからです。この法律は三十二年の三月に国会を通って改正されておるわけです。だからこの監査要綱と法律の間に脈絡がないという欠陥が、すでに監査要綱に現われてきておるわけです。こういう点については、やはり速急に改正をやらなければならない。今申しましたように、ある人間が保険医療機関として呼ばれているが、同時に保険医として呼ばれておるということならば、一体立はどうしたらいいかということです。それはわかりません。大きな病院ならばそれはわかる。ところが私的医療機関の一人の人が診療に従事しておる。開設者であり、管理者であり、機関であるというような場合はわからないですよ。そうすると、それを十ぱ一からげで呼び上げて、あれこれあれこれ尋ねたら、これは私は一体どれで答えたらいいのですかという質問をすることになるのです。だからそういう点をもう少し私ははっきりさせなければならぬという感じがするわけです。そういうまず一つの矛盾がある。そうしますと、そういうように呼ばれた人は、二つで今相沢さんは呼ばれておるわけです。そうすると当然法律的には四十三条の十二の指定の取り消しの条件、四十三条の十三の登録の取り消し、こういう二つの形が出てくるわけです。そうすると本人は、一体これはどっちが私に適用されるのかという迷いが出てくる。一人の人間が機関と人間との形で、両方で呼ばれておるのですから、一体人間の取り消しの方だろうか、機関の取り消しの方だろうかという疑問が出てくるわけです。こういう疑問の解明というのは、監査の場合一体どうやっておられるのか。当然あとで弁明書も出させますよ。しかし同時にそこで監査官はいろいろ機関の問題について、保険医の問題について論議をするわけです。そうすると四十三条の十二と四十三条の十三との関係ですね。これは当然保険医が知っておらなければならない問題なんです。
#65
○太宰政府委員 先ほど主管課長が申し上げましたように、今度の相沢さんのような場合は、診療所でございますから、自分が医療機関の開設者であり、また同時に自分が医師でもあるわけであります。そういう場合にこちらが伺います点は、当然機関という点についての問題と、それから保険医としての問題と、両方含めて伺うわけであります。またこれが大きな病院というようなもので、はっきりと機関の開設者とかあるいは個々の医師というものが分かれておりますような場合においては、伺うのはそれぞれの面について伺うわけでありますが、両方兼ねております個人のような場合においては、こちらが結局伺うのは、両方の面について一人の方に伺うことになる。ただしそれについてかりに処分をするというような場合におきましては、私の方は法律に照らしましてそれぞれ機関としての責任、あるいは医師としての責任というものを分けて考えまして、それぞれ機関としてはどう、あるいは保険医としてはどうということを考えているわけであります。
#66
○滝井委員 あなた方は法律の条文ではそうして分けられるわけですね。しかし監査を受ける本人については、実際問題としてそれは分けられないですよ。だからそこに立法の無理があるのです。それだったら病院のようなものの立法の建前と、個人のそういう一人のものの立法の建前と別建にしておかないと、こういう問題が出てくるのです。これは根本的な法律問題ですから、とにかくここに欠陥があることは明らかなんです。しかも四十三条の十のこの条文をお読みになっても、なかなかすっきりしないでしょう。読めば読むほどすっきりしないところが多いのです。
 もう一つこれに関連しますが、この前金銭出納簿、医薬品の購入払い出し簿、こういうものはあなたはやらないのだとおっしゃった。ところがこれは保険薬局なり保険医療機関につき検査をする場合は、帳簿書類その他の物件を検査することができるので、これは帳簿書類の中に入るのです。従ってお前の貯金通帳を持ってこい――金銭出納簿を持ってこいということは、貯金通帳まで発展するのです。この条文はそういうことになっているのです。館林さんはそういうものはやっていないとおっしゃるけれども、法律の建前はやるようになっている。出先の機関はみな大体やっている。だからこういう点についての認識、それから立法との食い違いというものがあるわけです。だから、こういう点はいずれにしても監査の問題を改正する場合に当然考えなければならぬ点です。そこで私は、大臣が時間がないそうですから、大臣に少し実態を知っておいていただきたいので具体的な質問に入っていきますが、現在監査官の形を見てみますと、監査官は、法律上は違いますが、実質的には裁判官と検事の形を両方、もろ刃の剣を持っておるのです。いわばこの監査官、技官の意思によって大体方向がきまってくるのです。もちろん最終的には医療協議会になっていきますが、きまってくる。従ってこの技官の態度というものは、裁判官の形であり、調査員の調査に基づく、今度は悪いところをあばき出す検察官の役割をやるのです。実質的にはいわば二枚鑑札を持っているのがこの監査官なんです。それでその監査官の形は大体峻厳型、もう実に峻厳きわまる叱吃激励をする形があります。今度は温和型があります。それから指導をしていこうという指導型があるのです。大ざっぱにいって大体こういう三つの型があるのです。そこで加藤君の場合、今度の相沢先生の場合でも、自殺に追い込んだのはどういう型かというと、峻厳型です。これは技官の名前を言うと技官の人権侵害になりますから、帰ってゆっくり二人の技官にお会いになってみるといいです。この二人の技官とも全国に定評があります。大体叱吃型です。非常に峻厳型です。大きい声を出します。大体そういう型です。そういう形にあったところにノイローゼが起こっています。いわゆる神経衰弱が起こって自殺に追い込む、こういう形です。これが大体監査官の形です。
 さて今度は受ける側の形です。受ける側の場合は大ざっぱにいって三つある。これは今後の監査の上において非常に大事なことです。まず一つは監査官のお説に対して御無理ごもっとも型です。何でも監査官の言うたことは、そうでございます、全くその通りでございますと、何ら積極的に自己の意思の表明をすることなく、御無理ごもっともという形です。これが一つです。それから第二の形は、監査官がいろいろ患者の実態調査をもってぐんぐん弱点をついていきますと、強硬に自己の診療報酬の請求書なり診療録をたてにとって、とにかく強硬に反抗していく強硬主張型です。これは監査を受ける医者の第二の形。第三の形は、監査官の質問に対して今度は逆に監査官に食いついていく形がある。そんなあなたの言うことは間違いだという、間違った処置があれば、そういうことは自分の保険医の現在の立場からやむを得なかった、こういうように強硬に主張していく、いわゆる逆攻勢質問型と申しますか、監査官に逆攻勢をかけて質問をしていくという形があるのです。
 そこで今度は、そういうものを監査官はどういう形で見るか、監査官の側からその三つの形を見るとどういうことになるかというと、まず逆攻勢質問型、逆に監査官に質問をしていく形の人は診療に熱意があって、監査官はこれは大した人だ、頼もしい先生だ、こう思うのです。こういう反応が監査官に現われてくるのです。それから第二型の、患者は当てにならぬ、おれの診療録と明細書が正しいんだという強硬主張型は監査官の心証を害するのです。このやろう、なんといういやな医者だ、こういう反応が監査官に現われてくるのです。ところが第一番の、監査官の説は御無理ごもっともですという形では、監査官は、この人間はなんとかいしょうのない先生だろう、よくまあこんな人に患者さんがたよれるなという感じを持つのです。そして自殺型というのは、まずこのかいしょうがないと思われる御無理ごもっとも型に出てくるのです。
 そこでさらにこれをこまかく分析していきますと、第一の御無理ごもっとも型で出てくるのはどういう診療報酬をやっておるかというと、これは全部ではありませんが、大体大局的に見て、そういう人の請求書は、奥さんが書くか、看護婦が書くか、事務員が書いております。従ってこれは科でいえば非常に患者の多い、簡単な処置で朝からわんさと患者の詰めかける眼科や耳鼻科にこういう形態が多く出てくるのです。その場合に一番問題になってくるのは、患者の実態調査の中から、患者の記憶が正しいか正しくなかったかということ、これが一番問題になるのです。患者の実態調査を基礎にしてやるのですから……。従ってまず患者に尋ねる場合には、注射は何本打ちましたか、往診は何回受けましたか、お薬は何回もらいましたかということが、患者の実態調査で一番問題になるのですから、患者の記憶が問題になるのです。そこで今後監査の爼上にのせる医師の患者の実態調査をやられる場合には、私はある程度療養担当者の団体との協力において、非常に大幅な不正請求その他があるというならば、そういう患者に対してもし調査をやられる場合には、療養担当者の側と一緒に行ってやるだけの寛大さが必要だと思うのです。これをやらぬところに問題が出てくるのです。だから私がこの前言ったように、その患者の証言がもしうそであった場合には、一体これは偽証罪になるかならぬかということなんです。ところが患者は、全くうそを言うつもりはなくて言っておる場合もあるのです。記憶が薄らいで、錯覚を起こして、三本の注射を五本してもらったとか、あるいは逆に五本してもらっても三本だったとか、こういう錯覚が出てくるのです。ところがそれは患者さんの方にしてみれば、陳述書に判まで押されて持っていかれておるのですから、今度は自分の記憶間違いというものについて、患者が神経衰弱になる問題が出てくるのです。しかも特に草深きいなかにおいては、その自分の診療を受けた先生が監査にかかるというようなことになったら、調べてごらんなさい、必ず患者は医者のところへ行く。患者のところへ社会保険出張所から調査に来ると、今度はその明けの日は医者のところに行って、先生、実はどこかおそろしい官庁の人が私のところに来て、根掘り葉掘り先生の診療のことについて聞きましたけれども、私はわからなかったからこう答えておきました。もし先生に迷惑がかかったら、済みませんがこらえて下さいよと言って断わりに来る、そういうのがある。だからこの患者の実態調査というものがきわめて重要な問題になってくる。
 それからもう一つ問題になってくるのは、この前私が申し上げまして、大臣はその改善を言明されたことでありますが、差額徴収の問題です。この差額徴収の場合で一番問題になるのは、いわゆる実費の場合です。同時に差額徴収で監査官が一番困るのは、入院の差額徴収です。現在健康保険では入院の差額徴収は認めているわけです。だからこの前私がここで申し上げましたように、この病棟は健康保険の患者は扱いませんと書いている保険医療機関さえある。ところがこれは論理的にいえば、その保険医療機関は、保険医療機関としては健康保険の違反をやっていることになる。ところがそういうものについては厚生省は何もできない。何もやっていない。なるほどそれは別かもしれないけれども、保険医療機関全体については、健康保険を取り扱わないといっておるのですから、これは明らかに法律違反です。そういう場合のほかに、入院料について差額徴収をやった場合が、監査のときになかなか決断が下しにくいことになるのです。あるいは入院料というのはこみになっているから、患者にはわからない場合が出てくるわけです。こういう点が監査について非常に問題になってくるのです。
 そこで、私はこの際具体的にやっていきたいのですが、患者の実態調査というものについて、大臣は一体どう改善をされるおつもりなのか。改善する意思があるかないかということが一つ。それから差額徴収について、やはりこの際明確にする必要がある。この二点についてもう一回大臣の御答弁を明白にこの場で得ておきたいと思います。
#67
○渡邊国務大臣 患者の実態調査につきましては、今までるるあなたから実情をお話し下さいましたように、いわゆる患者の記憶の点が非常に問題になるのでございますが、これらの点につきましても、漸次十分な検討を加えまして、あるいはまた開業医でありましたならば、土地の医師会等の意向をも尊重いたしまして、そして調査資料等に基づいて漸進主義で何とか考えていきたいと思っております。
 差額徴収の面につきましては、先般も申しました通り、これも私ども十分検討に値すべき問題であるとして、ただいま事務当局とも相談いたしまして、これもある程度漸進主義の態勢で、十分検討の後何らか実態に即応したようなあり方にしていきたい、かように私どもは考えております。
#68
○滝井委員 今大臣が、患者の実態調査なり差額徴収については漸進的に検討していく、事務当局にもそうやらせておるということですが、事務当局の方では、具体的に患者の実態調査なりあるいは差額徴収については、どうお考えになっているか。これはあなた方専門的な立場だからおわかりだと思うのですが、大臣の答弁に補足して、少し具体的に御説明を願いたいと思います。
#69
○太宰政府委員 患者の実態調査ということについては、お話のようにお医者さんにかかった方について、記憶をもとにして伺うわけでありますから、その間に、人によっては早く忘れた、あるいはあいまいになったというようなことは事実ございます。従いましてそういう面については、私どもも従来ともその患者の方に質問した答えを、必ずしも百パーセント間違いないものというような受け取り方をして監査に臨むようなことはしておらぬわけであります。こういう面につきましては十分心しておるつもりでありまして、ある場合には患者の実態調査を二度やったこともございます。そういうようなことで、これは従来とも考えておる点でありますが、これは今後ともさらに努力して参らねばならぬと思います。そこでこの患者の実態調査の点につきましては、これはあまり大ぜいの人をやるということは、またそこに問題も起こるわけでございますので、これはやはり従来のようなやり方でいきたい。しかしそれをもとにいたしまして直ちに監査をするということではございません。それからそれをもとにして医師会あたりと相談いたしまして、そしてその中で、これは一度診療担当者に来ていただいてよく伺わなければいかぬというものについて、それをもとにしてやっておるわけでございまするから、その点についてはなお医師会などとも十分さらに連絡を密にするように持っていきたい、かように考えておるわけであります。
 それから差額徴収の点については、これはあえてここで申し上げるまでもなく、社会保険医療におきまして大きな問題でございます。これについて何とかせねばならぬということで、いろいろ従来から検討もし、それから各方面でもこれは御議論があるわけでありまするが、しかし大体のところ、今日直ちに差額徴収を全面的に取り入れるというわけにはいかぬというのが大多数の御意向でもあるように思いますし、私どももまた今日のところではさように考えておるわけであります。それでその中から実態に即したものを逐次取り入れていく、こういうことで今日まで進んできております。この点につきましても、先般大臣からお答えいたしましたように、それをさらに取り入れるものがないかどうかということを今日検討しておりますので、そういう面についてはさらに進めまして、逐次そういうようなものを取り入れて参りたい、かように考えて、今内々研究しているところでございます。
#70
○滝井委員 差額徴収で一番問題になる点は、新しく薬が発見をされて、それが特殊の病気に非常に効果があるのだというときに、保険は御存じの通りすぐにこれを取り入れないわけです。そういう期間だけでも差額徴収というものをこの際やはり考慮をする。そうしてそういう場合には医師はできるだけ暴利をむさぼらずに実費で一つやってくれ――実費というのは、技術料をちょっと加えるくらいのが実費だとわれわれ考えておりますが、実費でやる。そこからそういう差額徴収をやるような――いわばあなた方が、この薬剤と薬剤については差額徴収をしていい薬剤でございますという告示をしたらいい。そうしてこれでは幾ら、これでは幾らという金額を示して、それでやってよろしい、それ以上取ったらいけませんぞ、何かこういう方法ででもおやりになる以外に、今のところ変な差額徴収をやると健康保険制度がつぶれてしまう。だから当面の段階としては、われわれは人間の生命を救うことが大事ですから、保険制度を守ることも大事だが、制度のために人間の生命がなくなることはいけませんから、まず制度も生かし、人間の生命もより生かすためには、そういう方法しか今の段階では考えられない。いろいろ頭をしぼってもそういう方法しかないのです。そういう方法について一体どうお考えになるか伺いたい。
#71
○太宰政府委員 新しい薬の点は、確かに差額徴収の中の一つの問題として従来から言われているむずかしい点でございます。私どもも今日、御存じの通り、入院料とか歯科の補綴とかいうものに差額徴収を認めておりますけれども、次の段階として検討しなければならぬものの一つに今御指摘のものがあろうと思います。これを具体的にどうするかというところまでただいま申し上げるまでに至っておりませんが、この点についても先般大臣からお答え申し上げましたように、私どもは今検討しておるところでございます。しばらくお待ちを願いたいと思います。
#72
○滝井委員 できるだけ速急にこういう問題は解決をして、そうしてころばぬ先のつえと申しますか、そういうようなことで保険医が監査の対象になるということのないようにしてもらいたいと思います。
 現在の日本の社会保険の一番大きな欠陥は、とにかく支払い方式が出来高払いの方式であるということ、しかもその出来高払い方式の審査というものが事後に行なわれるということであります。ここにやはりあとから患者をつかまえる、あるいはあとから患者のところに行っていろいろ追及をする、調査をする、今度は翻って医師の監査が行なわれてくる。そういうところからむしろ記憶違いその他から人権問題というものが出てきていると思うのです。だから根源はやはり支払いの方式の問題と事後監査、事後審査というところに問題の根本があるわけです。だから監査問題というものをほんとうにわれわれが取り組もうとすれば、支払い方式の問題まで返らざるを得ない。こういう問題が出てくるわけであります。この点はお認めになるのでしょうね。
#73
○太宰政府委員 そのように私どもも考えております。それだけにこの監査の制度と同時に、支払い方式の問題ということについても、われわれとしては検討していかなければならぬというような考えを持っておるわけであります。
#74
○滝井委員 そういう結論が出れば、今度はもう少し先に進みますが、今私は監査を受ける形は三つの形があるということで、三つの形を申し上げました。さらに今度その三つの形のものをもっともっと具体的に突っ込んでいくとどういう形になるかというと、監査にかかる可能性が非常に高いところのものは二つあるのです。両極になっている。一つは開業間もなくの若い医者です。これが監査の対象によくなる。それからもう一つは老医です。年を取っている医者です。こういうところが監査にかかりやすいのです。なぜ監査にかかりやすいかというと、開業間もない医者は――日本の医療費の動向を見るとプロレス曲線、いわゆるプロレスをわれわれがやるためには若いときでなかったらだめです。年を取ったらプロレスはだめですよ。これは日本の保険制度の欠陥です。若くてしりが軽くなければはやらないのです。従って筋骨隆々たる、今の新しい学問を受けたての若い医者がはやってくるわけです。従ってそういういわば活動的な若い医者が、いわゆる診療報酬を受け取る額が多いのです。件数も多いのです。そうすると、そういう医者は同時に事務が不なれです。もう今健康保険の事務というものは、実にしょっちゅう変わりますから、他の医学書を読むひまがない。健康保険の事務が変わった、薬価基準の改正やら事務の変更等、絶えず見ておかぬと、法律はしょっちゅう変わるし、通達はあるし、講習があるという工合で、若い医者ほど事務が不なれです。プロレス曲線の頂点をいくような若い医者は、患者が多くて講習なんかに行くひまがない。従って事務が不なれになっている。同時にそういう医者は、近代の医学では高度の技術と高度の設備を必要とする。だから開業資金というものをどこからか借りてきてやっているのです。その返済のために無理が出てくる。これは同時に現在日本の医療機関に低利に金を貸すところがないという金融上の問題にも問題が出て参ります。私は昨日災害の小委員会に行って、大蔵省を呼んで、現在厚生省が提案をしております私的医療機関の融資の特別措置の問題を質問いたしましたが、実に大蔵省の医療行政に対する認識はゼロです。普通の営利を目的とする中小の企業と同じようにしか考えていないということなんです。朝から大きな声を出して叱咤激励をして、ようやく医務局とそれから磯江という大蔵省の銀行局の特別金融課長との話し合いの結果を、三時間の余裕を与えてやっと持ってきましたが、まだその貸付限度が幾らになるか、百五十万になるのか、二百万になるのか、百万になるのかきまっていないのです。しかも医者に幾らの融資をやるのかワクがきまらない、答弁できない、こういう実態です。これは幸い渡邊大臣そういう点は熱心なようでありますが、厚生行政は金融にはゼロです。金融面が非常に弱い。大臣は、はしなくもさいぜん、今までの行政というものは弾圧と取り締まりの行政であったと言いましたけれども、この弾圧、取り締まりの行政だけではだめなんです。強く出るならば、悪い言葉で言えばあめをねぶらせるというか、どこかで金融的に助けて、あなた方の取り締まりの対象にならぬような体制を医療機関に作ってやる必要がある。ところが医療機関は金融に弱いのです。もう少し金融面のベテランというものを医務局なり保険局なり官房に置かなければいかぬ。牛丸君だけではだめなんです。そういう金融の面が弱いので、金融面のベテランを置かなければならない。それで、開業医というものは、開業する場合に高いところから借りてきてやっておるから無理が出てきておる、これなんです。そういういわゆるプロレス曲線というものがわれわれに示してくれておるように、監査の対象になるのが若くて活動的で、そしてどこからか金を借りてきている、そういうところに無理が出てくる。こういう奈落というのが現在の日本の医療行政の中にあるということです。これが一つの形です。
 もう一つの形は老医です。御存じの通り、現在の健康保険の制度というものは、やはりしりが軽くて、スクーター医者というのがはやるように、スクーターに乗ってどんどん行かなければだめなんです。高層建築の御殿のような年金病院や労災病院ができた世の中なんですから医療もサービスをある程度やらなければだめなんです。そういう形になってきた。従って老医というものは取り扱いの件数が少なくなってきております。五月には支払い基金からいろいろ統計が出ますが、支払い基金の統計をごらんになっても、年をとって一人でやっておる医者ほど診療の請求件数は少ないはずです。そういう老医は件数が少ない。そうすると、どういうことになるかというと、その老医というものは、大正から昭和の初期にかけての日本の資本主義の興隆期と申しますか、いわゆる開業医制度がまだはなやかな余じんを持っておったときの姿を維持しなければならぬというジレンマがあるわけです。ところが、全部が皆保険になったために保険の請求件数は少ない。まあ先生といわれるほどの何とかで、村に何か祭りでもあれば、大黒柱のところにすわる、寄付金も多い。ところが、自分の保険収入というものは少ない。こういうジレンマに陥っておるわけです。すなわち、自分の生活維持と社会的な体面というものは、資本主義のなごりをもって保っていかなければならぬ。今の社会保険制度のために収入は少なくなっていく。そして事務がめんどうくさくて、年をとって老眼鏡をかけたのではなかなか事務は覚えにくいという、若い医者と年寄りとが同じような事務のふなれの問題が起きてきておるわけです。ここなんです。従って、こういう体面を保とうとする五十五才の相沢さんあるいは加藤君――加藤君は四十才で若いですが、こういう人たちがひっかかってくると、いなかであるほど、これはやはり体面を重んずるということで、ぴちっと大きな精神的なショックになって、自殺という問題が出てくるのです。だから私はこれは人ごとではないと思うのです。お互いに現在若くてもだんだん年をとるのですから。
 こういう点から、監査官にもいろいろ形がありますが、たまたま峻厳型の監査官と御無理ごもっとも型の気の弱い人ががっちり会って、そしてそこに何か財政的、経済的な問題もからまってきたような場合には、必ずこれは自殺に行くかノイローゼになるか、どっちかです。これの経済的、心理的、社会的な分析はそういう結論にならざるを得ないのです。そこで、そういうものを防いでいくためには、やはりこれは皆保険のもとにおいては根本的にメスを入れなければだめなんです。今までのような状態ではだめなんです。
 そういうことでございますので、これはメスを入れなければなりませんが、今静岡県かどこかで石原忍先生が開業してやっております。最近読売の日曜版か何かに一ページとって書いておりました。村のすべての人が、石原先生に道で会うと、懇切丁寧に礼をする。石原先生はもうけた金を貧しい者にやる。貧しい者からは金をもらわぬでもよろしいのだ、こういうことなんです。その石原先生が、一体どう言っておるかというと、医者は、一日十人患者を見たらいいのだ、そして一日の労働時間は四、五時間でよろしい、そしてあとは近代の医学の研究、あるいは外国のいろいろの文献等を読んで、やはり近代的な医学の研究をやらなければだめだ、現在、日本の医者のレベルというものは非常に低い、これを上げなければいかぬのだ、こうおっしゃっておる。そうして、医者が四、五時間働いたら普通の生活のできる姿にしてやりなさい。そこで皆保険になったならば、どういうことをするかというと、少なくとも診察料――初診、再診というものは現在の甲表の二倍くらいにしなければだめだ。これは、まさに枯淡な、枯れた無欲な目で、草深い――静岡だったと思いますが、そういうところから日本の医療を静かに、客観的に見ている石原先生の声です。そうして、しかも、調剤というものは薬剤師にまかせたらよろしかろう――私は率直に申し上げますが、まかしたらよろしい、医薬分業になるのでしょう、まかしたらよろしい、同時に、帳簿の記入とか点数の計算なんというのを医者がやる、こういうばかなことはない、これは事務員にやらせなさい、従って事務員が一人雇えるだけの診療報酬というものを医者に与えなければいかぬのだ、そうして医者には学力をつけさせて少なくとも日本の医者は、皆保険になったら、大学の助教授か講師クラスの学力を持たなければだめですよということを先生はおっしゃった。そのためには、さいぜん私が言いましたように、複雑な事務をできるだけ簡素化して、支払い制度を根本的に改革する以外にだめだ、これが石原先生の声です。私は、石原先生の意見というものがその通り全面的にいいかどうか、なお検討の余地があると思いますが、あの学識のある、そして現実に、その自分の学問の一切をあげていなかの大衆のために尽くしておられる石原先生の声というものは、これは私は相当正鵠を射たものだ、当たっておると思う。日本の医療の欠陥をついておると思うのです。そういう点で、これはもうぜひあなた方の方において監査の方法を速急に変えてもらわなければいかぬ。そのためには、健康保険法の四十三条の七は、保険医療機関なり保険薬局、保険医、保険薬剤師は厚生大臣または都道府県知事の指導を受けなければならぬことになっておるわけですが、一体厚生大臣や都道府県知事はいかなる指導を現実にやっておるかということなんです。
#75
○館林説明員 中央におきましては、日本医師会と共同主催でときどき指導者の講習会を開きまして指導をいたす、その指導者が各都道府県に帰りまして、伝達講習をやっておるわけであります。都道府県は、その受講者が帰りまして、都道府県の保険課と医師会と共同で集団指導講習会を開いて指導をするというようなことが一つ。そのほかに、各都道府県で、この指導大綱に基づきましてそれぞれ指導計画を立てて、その指導計画につきましては、保険課と医師会、歯科医師会と十分協調を保って集団指導講習会をしばしば開く、あるいは個別に指導対象者を選定いたしまして、これも医療担当者の団体と協力をして指導に当たるという建前でやっておるわけであります。ただ実際の実務に追われまして、先ほど滝井委員からお話のありましたように、必ずしも末端まで指導が十分徹底しておるという段階とは言いがたい実情でございますので、これらの点は今後大いに促進して参りたい、かように思っております。
#76
○滝井委員 館林さん、今あなたは、中央でそれぞれ指導者講習会を開き、それが都道府県に帰ってまた指導者講習会をやって、だんだん末端にやっていっておるとおっしゃるけれども、私全部出ておりますが、こんなものは形式的なものです。居眠りをしにいくようなものです。夏の暑いときに何かむずかしいことをしゃべってやるだけで、五百人も千人も集めてやるような講習なんというのはナンセンスです。監査とか、指導なんというものはやはり郡市区の医師会単位でやらなければだめだ。それがやられていない。ただ四十三条の七というものは形式的にやられておるだけです。あなた方は四十三条の十の監査の方には非常に重点を置くけれども、四十三条の七に重点が置かれていないということです。特にその中に個別指導と集団指導があるのですが、集団指導というのは今のだろうと思う。個別指導は一体どういうことをやっておるかというと、何も行われていません。集めるだけです。集めてそういうものをやる。あなたの方の監査要綱を見るとどういうことになっておるかというと、十二日に読み上げましたように、この社会保険医療担当者監査調査書の中に、保険診療に対する講習会出席率というのがあるのです。だから医者は、とにかく出席しておかなければ監査の対象になるぞといって出ていくだけです。そういう形式的なもの、実態はそうなんです。私は正直に実態を申し上げましょう。あるいは医師会に怒られるかもしれませんけれども、申し上げましょう。あんな、地方の七百人も八百人も集めてやるような講習はやめた方がいい。ああいうものをやらせるのは医師会におまかせになって、そしてそういう金があるなら郡市区単位におやりになればいい。郡市区単位にお金を出して、そしてかゆいところへ手の届くような指導をやったらいい。技官が不足なら、技官を配置したらいい。県に二人か三人の技官を配置して――今一人か二人しか県にいません。あれを四、五人にしてやったらいい。それからもう一つ個別指導というものは具体的に何にもやっていない。個別指導をやるにはどうするかというと、これから具体的に大事なところになるが、たとえば福岡県でもこういうことをやっております。今月は十一月ですか、十一月分の診療報酬請求書を五日までに書き上げて、みんな医師会に持っていくわけです。そうしますと、五日なら五日でいいのですけれども、五日にそれを持ってきたならば、一年に二回か三回は診療報酬請求書を今度は県の審査委員と事務員が全部郡市区の医師会に出てきまして、そして持ってきた請求書を本人を前に置いて見るわけです。そうしますと、審査委員は、何郡の何兵衛はいつもザルブロの注射が多いとか、往診が多いとかいうことは、あなた方も御存じの通りちゃんとメモができています。その請求書を持ってきたときに、もう一ぺん見てみると、なるほど過去二、三カ月の統計から見てザルブロの注射が多い、あるいはこの人はどうも乱診の傾向があるというときには、本人を前に置いて審査委員がこれを繰って、これはどうですかと言って聞きながら一々指導していくのです。そういうやり方を郡市区単位に一年に二回ずつ――二回でなければ一回でもよろしい、二回やれば医者はぐっとよくなってしまう。その場合に医師会を立ち会わしたらいい。これはいわば型の変わった監査です。この場合においてどうしても納得ができないならば、先生、一つカルテを持ってきて下さい、そこへ持ってきてもらったらいい。何の何兵衛のカルテを持ってきて下さい、そうしますとみんなの前で、いわゆる裁判官の前で言うのと違って、ひざつき合わせて向き合いで話をするのですから、これは私が間違っておりました、今後私は注意をいたして改めましょう、こういうことになれば、それで自殺も何もない、これで済んでしまう。しかしあなたが再三にわたってこういうことをやるならば、われわれは監査というものにかけざるを得ませんよ、こういう忠告だけで直っていくのです。そういう個別指導が行なわれていないのです。三十二年の法律を通したときには、四十三条の七でちゃんとそういうことをわれわれは規定している。ところがあなた方は指導を個別指導と集団指導に分けられているけれども、集団指導を形式的にやるだけで個別指導がやられていない。ここに問題がある。個別指導の段階で療養担当者の団体に責任を持たせるべきだと思う。この人間については今後あなた方がいろいろ責任を持っていただきますよ、しかしそれで責任が持てないというならばわれわれの方で処理せざるを得ないということになって、そういう段階から厚生大臣のいういわゆる弾圧、取り締りの行政が出ていくというなら、やむを得ぬかなという感じがする。ところがそれをやらずして、弾圧、取り締りの行政がぬっと第一歩から出ていくところに問題がある。そういう点、どうですか。そういうようにあなた方がやる意思があるかないかということですね。
#77
○太宰政府委員 毎々申し上げておりますように、監査ということは厚生大臣に属した権限でございまして、これは実行いたして参りますが、しかし、ふだんの指導を抜きにしておいて、間違ったものだけを摘発するようなことが決してよくないことは、申し上げるまでもなく私どももそう考えておるわけであります。ことに最近の事例を見ますと、この人たちに指導しておったならば、こんな大事に至らずしてとどまったであろと思われることをひしひしと痛感するわけでございます。さような点につきましては、私どものみならず、先ほど申し上げましたように、関係団体の方でも、自分たちも一つその方面に力を入れたいというようなお話がございまして、私どももほんとうにお願いをしたいところであるということで、先般来その指導、特に個別的な指導の点を中心にして、どうしたらいいかということについて今話をしておる段階でございます。御指摘のように十分なる人手なり予算がなかなか得られませんので、従来こういう方面の指導が十分でなかったことはいなめないと思いますが、今後は、ただいまお話しになりましたようなことも十分参考にいたしまして、関係団体と一日も早く何らかの成案を得て実施していきたい。個別指導が相当徹底して参りますれば、監査にかかる件数もうんと減るだろうと思うし、また痛ましい事故は非常に少なくなるのではないか、私どももそれだけの期待を持って進んで参りたい、かように考えております。
#78
○滝井委員 今の地方の技官が予算の問題その他でなかなかうまく得にくいということでございましたが、それならばこうすれば簡単にできる。現在監査の関門というのはまず第一に審査委員会の審査から始まるわけですから、従って第一次的な指導監査を医師会に全部やらせてしまう。その場合の指導監査主任には、でき得べくんば審査委員長または審査委員がなるわけです。そうしてそこに、あなた方の技官が不足ならば社会保険出張所の所長、あるいは県の技官があいていれば技官、そういう人が立ち会ってやるわけです。それを何回かやっておるうちには、札つきの医者というものは必ず出てくる。あなた方が全国でおやりになっておる厚生省監査の対象になるのは百名前後でしょう。全国で百名あるなしじゃありませんか。そのくらいのものにふるいがかかってくるのですから、これはわかるわけです。そういうものが出てくれば、われわれ人間のからだに自浄作用、みずからを清潔にする作用があるように、民間団体でもそういう力があるわけです。そういうものは今度は医師会の内部で、やはり何と申しますか、浄化をしていく運動が必ず起こる。だからそういう点で、これを刑罪でやるというよりか、まず第一次的には道徳的な責任をその医者に持ってもらう、こういう形でやる。そしてそれがどうしてもいかなければ、第二次的には今年度は厚生省の技官がやっていく、こういう形をおとりになったら、私はそうむずかしくないと思うのです。そういう形をおとりになってもらいたいと思うのですが、その場合に、一体そういう行政を民間団体に委譲してやることが法律的に可能かどうかという問題になってくるわけです。いわばこの法律における四十三条の十の監査権というものは、厚生大臣とか知事にあるわけですから、従ってそういうものを民間のものに委譲することが法律の建前から可能かどうかという問題が出てくるのです。これをどう考えられておるかということが一つ。もう一つは、そういう監査を民間に委譲して行なわれておる例が他にあるかどうかということです。
#79
○太宰政府委員 厚生大臣に所属します権限を民間に委譲する、それでなければたとえば医師会が指導に乗り出すことができない、私どもはそう狭くは考えていないわけであります。医師会というものは、個々のお医者さんの集まっておる会である、そうして医療のそれぞれの向上を期待しておるならば、医師会みずからが民間の団体といたしましても、自分の会員についてこういうふうに指導していこうということで指導をされることは差しつかえないのじゃないか。ただしこれを受ける義務があるかどうかは別でございます。しかしそういう指導というような非常にけっこうなことであるならば、大多数の方は謙虚な気持で受けられると思いますから、それはそれで効果が上がっていくであろうというふうに私どもは考えます。それはまたそれでけっこうでございますが、相なるべくは、役所がまた指導する、医師会もまた別個に指導するというふうなことでダブることも効率的でございませんから、その点はお互いが話し合っていこう、厚生大臣の指導というのは行政権に基づく権限でございます。医師会はそうではございませんけれども、しかし指導というような事柄につきましては、実際のそういうような共同作業は私どもでできる、かように考えております。今日私どもは医師会に指導権を委譲するというようなことは考えてはおりませんけれども、お互いが日本の医療の改善、向上を願い、また医師のそういう間違いを未然に防止するということについては、お互いが協力すべき義務もあるわけでございまして、何らそれに対して拒むあれはないわけでありますから、お互いの共同作業によって十分に実が得られるもの、かように私は考えております。
 それから第二の、権限を民間に委譲した例があるかどうかという点は、今ちょっと思い当たりませんが、これはなんでございましたら、調べましてまた御報告してもよろしゅうございます。
#80
○滝井委員 実はそういう比較的権力的なニュアンスの強い行政を民間の団体に委譲しているのが、私は農林関係なんかの馬の団体とかいうものにあるのじゃないかとも思うのですが、私も調べておりません。あなた方が調べておればと思ったが、調べていなければ、一つ調べてもらいたいと思うのです。
 そこで、今の第一点の方で、医師会に権限を委譲するつもりはない、こうおっしゃいました。私はそこに問題があると思うのです。実は私が福岡県の県議会におるときに、われわれは国民健康保険を地域的に審査をしておったのです。たとえばAならAという市は、Aという市の医者の中から審査委員を出して、その市のものをやっておった。ところが東京都の課長から、今どこに行きましたか、田村二郎君が保険課長になって福岡県にやってきたのです。そうして、こういうやり方はいかぬ、全部一応県に取り上げてしまうのだといったので、私は出ていって田村君とやり合って、また元の通りにしたのです。ところが私が今度国会に出てきて県の方がるすになったら、いつの間にかまた巻き上げてしまった。そうして今度ブロック別にさせられた。民間団体が指導して、できるだけ自浄作用でやろうとしても、あなた方の方が権力で巻き上げてしまうのです。ここなんです問題は。だから医師会が自主的に第一次的な指導、監査をやらせるという私の提案というのは、特にその場合にあなたの方の任命しておる審査委員長か審査委員というあなた方の立場に近い人がその主任になって出てきたらいいんじゃないかということなんです。だからあなた方がこれはだめだというなら、法律を改正したいと思うのです。今度の臨時国会に、監査を第一次的には医者がやってよろしい、厚生大臣は療養担当者の団体に対して監査権を第一次的には委譲する、第二次的には、それが気にくわなければ厚生大臣がみずからやることができる、こういう改正をわれわれはやりたいと思うのです。あなたの方の答弁で、今の法律でもできますということならば、あるいは通牒なんかでそういう便法を講ずることができるというのなら、それでもいいと思います。しかしそうでないと、いつまでたってもよくなりません。権力だけではこういうものはだめです。先般同僚の、今落選しておりますが、井堀君が、科学者と法律家のけんかというものは科学者の勝ちだと言いました。私はそうだと思う。法律がいかに網の目を小さくしても、科学者がやろうと思ったらどうにでもできる。それをやらないようにする良心的なたくさんの科学者を作るというのが行政なんです。そういう点で大臣にお尋ねしたいのですが、私は行政の監査を全部医師会だけでやれとは言いません。その中の主任というものは厚生省が持ってきたものでもよろしい。具体的に当たる第一次の指導監査は主体を医師会のものに置いていく、そしてずっと指導をやる。そういう状態をうしろから厚生省なり県の保険課が見ておって、悪ければ第二次の指導権というものは当然あるのですから、出ていってやる。いわば第二次というものを厚生省が握っておくんだ、最終的な結着点は握っておく。やり方が悪ければその中からピック・アップしてやることができる。こういうクッションを置いて、一気にあなた方に行かずに、何か医師会の自浄作用というか、みずから医道を確立しようとする、こういう意欲を起こさせるために一応権限を譲ってみる、こういう考え方はどうですか。
#81
○渡邊国務大臣 大へんけっこうな御意見でございますが、現在の法律内におきまして、医師会等の協力を得ながら、私どもはこれをあまり峻厳な保険医制度というものではなくて、いわば一つのやわらかな、あなたの言われるところの検事または取り締まりといったようなことでなくて、判事的な態度で、将来監査というものをやわらかくしていきたい、やわらげてというよりも、民主的に運営をしていきたい。しかし御意見のような第一次段階におきまして委譲するということは、よい御意見として一応研究してみたいと思います。
#82
○滝井委員 よい御意見として検討していくということでございますが、実は大臣御存じの通り、第二期の監査は十月から三月までで、今監査の花盛りです。至るところで監査が行なわれている。従ってこの問題はやはり早急に結論を出す必要がある。そうしないと、あること三度で、また起こります。自殺者が出る。従って今のような問題を早く打ち出す必要がある。だからあなたの方でやれないとするならば、私たちは法律的に検討してみたい。今の客観情勢から見て、どうしても自浄作用というものを起こさせる必要があるという感じが濃厚なんです。厚生省の方で検討するならある程度の期間は待ちますが、あまりじんぜん日を送るとすれば、われわれとしては法律的に具体的にそういうことを織り込まざるを得ないという感じがする。
 そこで最後に大臣にお聞きしますが、今のような情勢でございますが、この際私の聞くところによりますと、東京都は二、三日のうちに都の監査をやることになっておったらしいのですね。ところが民生局長の意向で埼玉県の事件あるいは宮城県の事件等が起こったのを契機にして、中止をしたらしい。このままで監査を強行されるとすれば、おそらく全国的に相当の反撃が起こって参ります。私の客観情勢の分析ではそう見ています。同時に太宰さん、それから館林さん、それから技官に対する責任の追及ののろしというものは、非常な勢いで今上がりつつあります。はっきり申し上げておきます。そういう事態になったら、事態は私は重大だと思うのです。そこでこの際厚生大臣は勇断をもって、現在行なおうとしておるこの十月から三月の監査をとりあえず中止して、速急に監査の具体的な改善方法を樹立するまでは中止をする意思があるかどうかということですね。すでに東京都は中止したのです。
#83
○渡邊国務大臣 これは各府県で適当に、その地方々々の事情によってやっていることだろうと思いますが、厚生省といたしましては先ほど申します通り、今急にこの監査を中止するというわけにはいかないわけであります。
#84
○滝井委員 今の客観情勢では、行ってもやれませんよ、それは。私は断言しておきます。やれません。そしてまたその鈴木さんとか児玉さんとかいう問題の技官が地方に行ったら、それはだめですよ。そういう状態であなた方が強行されるというなら、これは大問題が起こってくることは確実です。きょうは私はそういう問題を事前に防ぐために言うわけなんです。そういう事態では、厚生省の技官はだれも行き手がありませんよ。行って、強く出たらまたどんなことが起こるか。柔かく出たら今度帰ってきたときにあなた方に怒られるかもしれない。進退きわまっておるというのが技官の姿だと思うのです。そういう中でこういうことを強行すること自体が問題なんです。だからここで、もはや政治的な判断によって監査しなければならぬというところにまできているのです。何も三カ月くらい監査を中止したって日本の医療はつぶれることはありません。だからすでに東京都はやめたんです。今からどこにあるかわかりませんが、まだ相当あると思うのです。第二期の監査をあなた方計画されておるはずなんです。そうすると、これは行った技官がやれませんよ。強くやったら反対される、柔かくやったら帰ってきて怒られるということなんです。だから大臣、私はやはりここではっきり御言明になる方がいいと思うのです。一つ中止をして、すみやかに具体的な方法を講じよう、こういうことでないとあなたの部下がかわいそうですよ。行ったってできません。私ここでたいこ判を押しておきます。
#85
○太宰政府委員 最近起こりました事故自体は、これは理由のいかんを問わず非常に痛ましいことであることは私ども考えております。しかしその内容を検討してみますると、私どもは、とにかく参りました技官がはなはだけしからぬことをやってこういう事故を起こしたというふうには思っておらないのでございます。今なくなった方のことを申し上げるのはなるべく差し控えたいと思いますけれども、それは一つの監査の対象になるような事例があるので、それについてこちら側でも言ったので、おそらくそういうことについていろいろな事情が伏在してああいう事故にもなったのだろうと思います。ですからといって監査を厚生省が中止するといういわれは私はないと思うのであります。その土地々々で各県が監査いたします分は、各県がいろいろ事務の繁閑、相手の状態等を相談の上でやっておることでありますから、それは各県にまかせておりますが、中央といたしましては、この際監査というものをある一定期間やめてしまう、こういうことは毛頭考えておらないわけでございます。
#86
○滝井委員 では言っておきますが、あなた方はこれから厚生省の監査をどこの県とどこの県とおやりになるのですか、来年の三月まで。それを一つここで言ってみて下さい。
#87
○館林説明員 目下のところ行く範囲につきましては、十二月初旬に四国三県を監査する予定を立てております。
#88
○滝井委員 ずっと一月、二月、三月、あるはずでしょう。
#89
○館林説明員 その他はまだ具体的に計画を立てておりません。
#90
○滝井委員 今館林医療課長からお聞きの通り、十二月までにあるのが四国三県だけなんですね。これは一県に五人ずつ行ったって十五人かそこいらなんです。これを今こういう情勢の中で強行されて何の得がありますか。十二月のものを二月か三月に延ばされても、ちょっとも行政に支障はないと思うのです。私は政治はここだと思うのです。その感覚があなた方にないところに問題がある。だからあなた方、今度この問題を解決せずに十二月に監査をやってごらんなさい。これはおそらく四国三県全部拒否が起こってくると思う。行ったって、できなくて帰ってきますよ。そのときに責任を問いますか。できなくて帰ってきてわれわれから追及され、あるいは医師会の問題を広げていくよりか、この際思い切って、一つ今年中中止しましょう――今年中中止するといっても、三県の中止だけではありませんか。一県三人ずつであっても九人、多くても十五人でしょう。そこらのものをやめずに強行して、一方大だんびらを振りかざしながら、一方手をつないで、非公式、極秘裏に太田さんとだれかと手をつないでやるというけれども、そんなことをやってもあれになってしまう。ほんとうに非公式に毎回々々やったって実を結びませんよ。この際話し合いされたとするならば、両方で握手をする、マホメットのように、片一方で剣を握り片一方でコーランでは話し合いになりません。療養担当者とあなたの方とではそういう段階ではないでしょう、今の段階では。われわれは一つきょう決議を出しました。私はこの次その決議を基礎にしてあなたに質問をしていきますが、そういう段階ではない。この段階で日本の医療を前進せしめようとするならば、その結び目を一つ一つほどいていかなければならぬ。私は永山発言のようなものがあっても、この問題で一つ忍耐をしてやっていきます。私はあなた方にお願いをしたいのです。少なくとも十二月までしか行なわれぬならば、十二月まででいいと思うのです。そうしてここ一、二カ月の間に積極的に話し合おうじゃないか、こういう形をとることだけの政治性は私はこの際持ってもらってよいと思うのです。渡邊厚生大臣御存じのように、それがないのです。たった四国三県だけで、あとの地方のものは地方におまかせするというのです。まかせられた東京都はやめてしまったでしょう。東京都はやめておるはずです。民生局長のあれで中止しておるはずです。聞いてみて下さい。
#91
○館林説明員 東京都は事務の都合で延期したようであります。
#92
○滝井委員 その通り、事務の都合で延期するというなかなかよい手を知っておるですよ。一つ厚生省も事務の都合で、滝井義高から文句を言われるから、十二月のものはしばらく延期しましょう――第一段階は十二月でよい、そうしてあなたの方の厚生省の監査さえ行かなければうまくいくので、これは非常によいサゼスチョンを大臣にしておると思う。大臣もよく御存じでありましょう、契機というものはそう大きなのろしのように上がってはこない、小さな契機をつかまえて大きな契機にアウフヘーベンしていくところに政治力があると思う。この点、事務の都合で十二月まで延期する、この際大乗的な見地に立って日本医師会と話し合うくらいのアドバルーンを上げてみて下さいよ。
#93
○渡邊国務大臣 十分協議の上、研究いたすことにいたします。
#94
○滝井委員 今の十分協議の上、研究するというお言葉を信頼をして、きょうはこれで終ります。
#95
○永山委員長 午後二時半まで休憩いたします。
    午後一時三十分休憩
     ――――◇―――――
    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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