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#1
第033回国会 外務委員会 第3号
昭和三十四年十一月七日(土曜日)
    午前十時三十分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君
   理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君
   理事 松本 七郎君
      愛知 揆一君    石坂  繁君
      菊池 義郎君    北澤 直吉君
      椎熊 三郎君    園田  直君
      福家 俊一君    森下 國男君
      柏  正男君    勝間田清一君
      堤 ツルヨ君    穗積 七郎君
      帆足  計君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  小林 絹治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (賠償部長)  小田部謙一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
十一月七日
 委員伊藤卯四郎君辞任につき、その補欠として
 堤ツルヨ君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十一月六日
 在日朝鮮人の帰国促進に関する請願(倉石忠雄
 君紹介)(第一三号)
 同(中澤茂一君紹介)(第一一四号)
 同(原茂君紹介)(第一一五号)
 核実験及び核武装反対に関する請願(關谷勝利
 君紹介)(第六九号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関
 する協定の締結について承認を求めるの件(条
 約第二号)
     ――――◇―――――
#2
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件の両件を一括議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐々木盛雄君。
#3
○佐々木(盛)委員 ベトナム賠償につきましては、先般外務大臣から提案理由の御説明は承ったわけでありますが、従来外務委員会の慣例として、かような重要案件につきましては非常に難解な外国語を御説明願うことになっているわけでありますが、一つ本日も慣例に従いまして一応逐条説明をお願いいたしたいと思います。
#4
○小田部政府委員 御説明いたします。日本国とベトナム共和国との協定の大きいものは賠償協定と、それから国会に提出して御承認を願っておりますものは日本国とベトナム共和国との借款に関する協定と二つでございます。あとは参考資料としてお配りいたしました。
 まず賠償協定のおもなところを御説明いたしますと、この賠償協定は従来フィリピンやインドネシア、それからビルマと結びました賠償協定とほとんどあまり差異はございません。まず一番重要なところは第一条でございまして、それは、「日本国は、現在において」云々「に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から五年の期間内に、以下に定める方法により、賠償としてヴィエトナム共和国に供与するものとする」、これはほかの協定にも、額はビルマの場合は二億でございますし、フィリピンの場合は五億五千万でございますが、それをこういうふうに払うという同じ文句が書いてあります。その第二項には、普通の協定は非常に額が多いものでございますから、毎年平均幾らという額になって十年なら十年に大体やることになっておりますが、この協定は三千九百万ドルの賠償でございます。まず最初の三年間のうちに三十六億円つまり一千万ドル、それからあとの二年間のうちに残りの四百五千万ドルにひとしい円の年平均額によって行なうということが書いてございます。
 それから第二条には、「賠償として供与される生産物及び役務は、ヴィエトナム共和国政府が要請し、かつ、両政府が合意するものでなければならない。これらの生産物及び役務は、この協定の附属書に掲げる計画の中から選択される計画に必要な項目からなるものとする」となっておりまして、まずこの賠償協定が議会の御承認を得まして発効した後に至りまして、ベトナム政府の方からどういうものをやりたいかということを日本側に要請してきて、そこで日本側はこれをいろいろ審議いたしまして、どれはいい、どれは悪いということをいうのでございます。それでその第二条一項の後半に書いてある部分は、生産物及び役務は協定の附属書に掲げてあります。すなわち発電所、機械工業センターの設備、第三に両政府間で合意されるその他の生産物及び役務の供与、その中から選択されなければならないことになっております。それから第二番目に、この第二条には、これはどの協定にも大体入っておるのでございますが、「賠償として供与される生産物は、資本財とする」、原則としては資本財とする。ただし、向うから請求があった場合には「資本財以外の生産物を日本国から供与することができる」ということがありまして、いわゆる消費財というものを提供することができることになっております。これはフィリピンの場合もインドネシアの場合も、同じようなことでございます。ただその次の第三、これもほかの協定も同じでございますが、これは日本から役務の場合はあまり問題はありませんが、資材を出す場合に、「外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない」、もう一つは「通常の貿易が阻害されないよう」ということが書いてございます。ここで外国為替上の追加の負担と申しますのは、日本は御承知の通りほとんど原料は外国から買ってきておるのでありまして、そこで通常の外貨の負担は賠償する場合があるのでございます。それか追加の負担、特別の負担をそのためにするというようなときは、これは断わるという原則になっております。従来も断わっておるわけでございます。それから消費財などよく出します場合には、賠償でやっても普通の貿易が減るということがあってはならないというか、できるだけ消費財などをやる場合に通常の貿易と抵触しないようなものをやるというようなことになって、おります。
 それから第三条は生産物、これは実施計画の部分でございまして、毎年一回実施計画を大体両方の政府で協議の上決定するものでございます。つまりベトナム政府はこういうものを作るためにことしはこういう資材と役務がほしいということをいって参ります。わが方としましては資材が外国為替上の追加負担があるかどうかというようなことを考えまして、また消費財の場合は、通常の貿易が阻害されるかいなかというようなことを考えまして、その結果いいということになれば同意をするということになっております。これもほかの協定と同じでございます。
 第四条は「第六条の1の使節団は、」と書いてありますが使節団の条項があとに出てきますから、第六条の1の使節団ということでございますが、「各年度の実施計画に従って生産物及び役務の」、これは直接契約の原則がきめてありまして、これはほかの賠償協定の場合も同じでございまして、向うはベトナム政府を代表する使節団、従来普通各国政府を代表する使節団が東京に来ておりますが、それともう一つは日本国の市民もしくは日本国の会社というものは直接契約を結ぶことになっておりますので、直接契約をいたしましたものを、政府としましてはこれがこの協定に違反するかどうかというようなことを基準にいたしまして、これを認証するわけでございます。その次の第二項は、そういう直接契約ではあるけれどもその直接契約が「この協定の規定」とそれから「この協定の実施のため行う取極の規定」この協定のもとにおきまして、今後どういうふうな方法で認証するかとか、どういうふうな方法で送金するかというのは通常の場合、各国の場合もそうですが、両国政府で合意されるものでございます。その規定に従わなければならない。この規定に従って、そういうことに従っているということがわかれば、日本国政府が認証しなければならない。この認証を得た契約を賠償契約と、こういうふうに言っております。それから第三は仲裁条項の規定でございます。それから第四は「1の規定にかかわらず、賠償としての生産物及び役務の供与は、賠償契約なしで行うことができる。」これはたとえば東京にミッションが駐在するということになりますれば、ミッション経費というものが要るのでございます。そういうような場合に契約じゃなくて、ミッションから言ってきたものを実施計画によって、年にたとえば一千万円要るとか、適当な費用を相手方に供給することをきめてございます。これは賠償契約がなくてできる、協定というフォームをとらなくてできるということが書いてあります。現在やっておりますのはミッション経費とか、あるいは銀行にミッションが払う費用でございます。それをやっております。
 それから第五条はこれは一応日本側は金をミッションに支払う。実はミッション、銀行が授権されまして、授権先が銀行ということになっておりますが、ここでは一応使節団にかかる債務をわが方はこれを果たさなければならない。その支払いは日本円で行なう。その次が賠償協定の義務が履行した時期が書いてあるわけでございます。「日本国は、前項の規定に基く円による支払を行うことにより及び支払を行った時に、その支払に係る生産物及び役務をヴィエトナム共和国に供与したものとみなされ、」そこまで契約賠償義務を履行したものとするということになっておりますから、いくら日本が賠償義務を負っておりましても、そのうちで、ベトナムのミッションから授権された銀行あてに小切手を切って向こうに渡した瞬間にこの限度までは賠償義務を履行したもの、こういうふうに考えられておる次第であります。
 それから、第六条以下は、これはおもに使節団に関する規定でございまして、ほかの国の協定にもこのままございます。第六条の1項は、まず、ミッションが置かれるということ、それから、ミッションの事務所は東京に設置されるということです。それから、使節団の日本国におけるあれは、その他義務の遂行のためには外交官待遇に似たものを与えるというようなことが書いてあります。それから、第4には、使節団の長及び上級職員の二人は一般的に認められる外交上の特権及び免除を与えられる。その他5、6は、使節団の適用される法の範囲というものが書いてある。7は、裁判のこと。
 そこで、七条は、これは普通の規定で、どこの規定にもございますが、「この協定の円滑なかつ効果的な実施のため必要な措置を執るものとする。」それから、ベトナム共和国として現地の労務、資材及び設備を提供するというようなことで、これは向こうで仕事をするときの規定でございます。その他は大体大したことはございません。それからもう一つ、第5に、ベトナム共和国は、日本から行った生産物を再輸出しないことを保証するということが書いてある。これも普通の賠償協定に書いてあります。
 それから、第八条は、東京にミッションが来ますから、そこで合同委員会をやる。
 第十条は、この協定の解釈及び実施に関する紛争の規定でございます。大体そういうことでございます。
 そこで、附属書には、ほかの協定ですと額が非常に多いものですから網羅的にいろいろな品目があげてありますが、この場合は、発電所と、機械工業センターと、両政府間で合意されるものの三つにしぼってあるわけでございます。
 なお、協定に関しましては参考としてお手元に差し上げてあると思うのでございますが、一つは、細目に関する交換公文、これは、ここで御説明するまでもなく、行政権の範囲内でできる細目的なものが書いてあるのでございます。もう一つは、賠償協定第二条2にいう生産物に関する交換公文というのがございます。これによりますれば、わが国は、資本財以外の生産物の供与を七百五十万ドルをこえない額までやるということが書いてあります。どういう生産財以外のものをやるかということは、実施計画のときに合意するということが通常の例でございます。
 それから、その次に、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定でございますが、これは、七百五十万ドルにひとしい円の額までの貸付を、この協定の規定に従い、この協定の発効の日から三年の期間内に、ベトナム共和国にやるということが書いてあります。
 それから、この規定の中で一番重要な規定は第三条の2項でございまして、この第三条第二項の「日本国政府は、日本輸出入銀行が前項の規定に従って締結される契約に基いて貸付を行うために必要とする資金を確保することができるように、必要な措置を執るものとする。」これが重要な規定でございまして、ほかの借款――もう一つ九百十万ドルに関する借款の交換公文がございますが、その場合は、日本輸出入銀行は金がないから貸さないということができるのでございますが、この場合は、金がないから貸せないと言えないように、日本政府としてそれだけの額は確保するようにするということが書いてあるわけでございます。
 それから、それ以外には、この借款協定は大して重要なことはございません。ただ、輸銀からの貸付でございますが、これは賠償の履行と密接な関係をつけるために、一条の2には、両政府が合意する計画実施に必要なる日本国の生産物及び日本人の役務は、製品としてどの程度のものをやる、ということを話をするにようにしております。
 それから、最後に、経済開発に関する交換公文でございます。九百十万ドルにひとしい円の額までの長期貸付または類似のクレジットとありますが、これは、両国の関係法令に従って行なわれるものとするということになっておりますから、もし業者がこれを輸銀に持ってきた場合に、こういうことに日本としても、まあまあ関係法令の範囲内で便宜をはかろうじゃないかということが書いてあるだけでございます。
 大体以上でございます。
#5
○堤(ツ)委員 議事進行に関して。委員会で質問続行中でございますけれども、私は、議事進行について、私の会派として委員長にお取り計らいをいただきたいと思います。と申しますのは、ベトナム賠償論戦は今国会の重要課題であり、外務委員会におきましては、本会議の論戦とは別に、非常に慎重な審議がかわされなければならないのであります。きのうの予算委員会を通じて、御存じの通り、非常に大きな疑惑と国民の不信の中に、今審議が外務委員会でなされようとしておりますけれども、この重大なときにあたって、与党の十九人おいでになるところの委員のうち、出席するからとおっしゃいましたけれども、今は三人であります。最後のところは数で押えたらよいという態度かもしれませんけれども、最も大切な与党委員がこうした審議に加わらないで、最後は数で押えてしまおうという行き方は、日本社会党の審議権放棄と同時によくない態度だと思います。従って、もう少し与党委員がまじめな態度を示されないと、このような、国民を侮蔑した委員会の席上でベトナム賠償が論議されるということは、選良の一人として、私たちの会派として納得できません。従って、自民党が、もう少し与党としてまじめな態度をとられるまで、委員会は中止されて、その態勢を整えられると同時に、問題にしておられる日本社会党の御出席も悪いようでございますから、一つ考慮していただきたいと思います。委員長の処置をお願いいたします。
#6
○小澤委員長 堤さんの御発言はきわめて妥当な御発言であります。あなたの方でももう一人いるのですから、どうぞ御出席するようにお願いいたします。また、私の方でも極力協力いたしますから、もう少しお待ちを願いたいと思います。休憩の点は御了承願います。
#7
○佐々木(盛)委員 ただいま逐条的に御説明を願ったわけでありますが、この説明を承っておりますと、三千九百万ドルについて、水力発電所の建設と、機械工業センターの設備と、第三番目に、両国間で合意されるその他の生産物及び役務の供与、この三つが賠償の内容になっておるわけであります。三千九百万ドルというものの内訳は、三千七百万ドルが水力発電所の建設費用で、二百万ドルが工業センターの設備の費用だというふうに、もうすでに事前にきまってしまっておるといたしますと、第三の、両国間で合意されるその他の生産物及び役務の供与というのは、実際問題として、金は一文もないということになるではないでしょうか。この附属書には三つの場合が、しかも、それが合意によって初めて賠償が成り立つことになっているわけであります。非常に矛盾しておるように私は思うのです。すでに一方においては額というものをきめてしまっておいて、そうしてあとの方でこの三つの中から選ぶということになっておることは、実際問題として、観念的には成り立ちますけれども、具体的な金が一文もない。第三に回される金が一体この三千九百万ドルのどこから生まれてくるか、こういう点一つ御説明願いたいと思います。
#8
○小田部政府委員 これは、あるいは水力発電所が三千七百万ドルとか、機械工業センターが二百万ドルとかいう話が交渉の過程において出たかと思います。しかし、この協定のどこを見ましても、まず水力発電所というものに関しましても、協定上からはダニムということは出てこない。ダニムのことは、向こうがこれを要請した場合に、日本としても異議ないと思いますが、出ておりません。機械工業センターに至りましては、一体どういう内容のものかということも突き詰めた話をしてないということでございます。そして御指摘の通り、三千七百万と二百万がもしほんとうに固定したものであれば、ミッションがこちらに来ましても、ミッションに払う金は一文も出てこない、あるいは銀行の手数料も一文も出てこないということになるのでありまして、実は、水力発電所の建設に関しましても、将来ビッドする場合に、もしダニムということを向こうが申しまして、日本側が法律上これをアクセプトいたしましても、これが三千七百万になるか、ビッドの結果それ以下になるかということはわからないのであります。機械工業センターに至りましては、二百万ドルかかるのか、百万ドルかかるか、五十万ドルなのか、向こうの内容につきまして、こちらの合意する範囲内におきまして、きまってないのであります。ですから、実際上も金はどこに幾らということはきまってないのでございますから、「両政府間で合意されるその他の生産物及び役務の供与」の金は十分ここから出るのでございます。
#9
○佐々木(盛)委員 私たちは今まで外務当局から御説明を承っておりましたときも、大体三千七百万ドルがダニムの発電所計画に必要であって、あとの二百万ドルが工業センターに回るのだというように大体内訳を承っておったのですが、これは全然間違いだったのですか。
#10
○小田部政府委員 これは、交渉の経緯におきまして、そういうふうな話は、大体ダニムをやるのには向こうが幾らぐらいという額でやったので、機械工業センターも内容もはっきりきめないでやったものでございますから、その数自体というものは賠償協定実施上何ら拘束力があるものと考えておりません。先方もそれはそう考えておるというのであります。そうであるから、「両政府間で合意されるその他の生産物及び役務」が出たのでありまして、これを三千七百万ドル、二百万ドルと正確に考えますと、ミッションの経費も何も出てこないという非常におかしいことになるのであります。
#11
○佐々木(盛)委員 そうすると、大体三千七百万ドルと二百万ドルというように分けること自体が、これは観念的にも、実際の上においても間違いないのですか。
#12
○小田部政府委員 これは、たとえば三千七百万ドルの方をとってみますと、ダニムを向こうが非常に希望しており、おそらく賠償協定が締結されれば言ってくるだろうと思うのでございます。その場合、日本政府としても異議ないということになりますれば、これが一千万ドルというような少ないことはない、三千七百万ドルに近い数字かなにかにはなるだろうと思うのですが、これはビッドによってきまる数字でございまして、何とも言えないのでございます。それから機械工業センターというものの今までの交渉の経緯を見ましても、一体これが何であるかということの具体的な話は全然詰まっていないのであります。そうでありますから、これは詰めてみれば、どのくらいの額になるかということはわからないのでございます。そういうわけで、それでは全然三千七百万、二百万の数字が交渉の経緯において出なかったかということ、出たことは出たのでありますけれども、これは一種の見積もりなり、また交渉の途次における考え方でありまして、現在においては、かかる数字には拘束されないということであります。
#13
○佐々木(盛)委員 第一条の第一項の、五年の期限以内に賠償を供与しなければならぬ、あるいは第二項において同じように、最初の三年間に幾ら、その次に幾らということが規定してあるのですが、この年次計画というものは何を根拠に割り出されたものでありますか。向こうの、たとえばダニムの発電所の建設計画等とにらみ合わせてできたものではないのでありますか。
#14
○小田部政府委員 これは、たとえばもしダニムを向こうが持ってくると仮定し、日本がそれにオーケーすると仮定しましても、年次の計画によってダニムをもし建設するといたしましても、初年度はどれだけのセメントなり、どれだけの役務なり、どれだけの鋼材が要るというふうにこれをブレーク・ダウンするということができるのであります。それから機械工業センターというものを持ってきましても、その他のものを持ってきたと仮定しましても、そのときどきに支払う限度が、たとえば一千万米ドルに等しい円をこえない額以上には初年度は支払いができないわけであります。そこでその限度において、片方においてダニムより大きい計画があっても、片方においてことし支払う額は、ダニムなりいろいろなものを寄せましても、最初は一千万米ドルをこえられない、その次も一千万米ドルをこえられないというように、資材がその年々の支払い額に応じたものが組まれている。それが年度計画でございまして、その年度計画は、賠償協定が批准されたあとで、先方がこういう計画をやる、それにはこれだけの資材が初年度に要るということになっているわけであります。ですから、年次計画というものは、どういうものを持ってくるかということはわからないのであります。
#15
○佐々木(盛)委員 私はよく説明がわからないのですが、そうするとこれは、日本の支払い能力に応じて年次計画がきめられたのですか。そうではなくして、向こうの方の要求に基づいてこれはきめられたのでなかろうかと思うのですが、もし向こうの方の要求に応じてきめられたものならば、向こうにある年次計画というものと、それからダニムやあるいは工業センターなどの建設計画というものから割り出されたものじゃなかろうかと私は考えたわけなのでありますが、そうではなくて、今の御説明だと、日本の払う範囲内で、そうして向こうの建設計画というものはことごとく日本の支払いによって左右されるのだ、拘束されるのだ、こういうふうな御説明のようですが、これはそういうことから割り出された数字でありますか。
#16
○小田部政府委員 これは額が非常に――というとあれですが、額が一千万ドルというように少ないからでございますが、その他の賠償協定の場合も、たとえば年に二千万ドルとか二千五百万ドルとかいう、日本としてはこれ以上支払わないで、一年にはこれだけの支払いをするのだというのがあるのでございます。その中で向こうがいろいろ計画を持ってくる。しかし計画を持ってきても、その年はその限度においてしかできないのでありまして、その限度以上の円を支払うような年次計画というものは持ってこられないわけであります。そこで、たとえばダニムは持ってくると思いますが、ダニムを持ってきましても、ダニムの工事としても、またこれは実際上もそんなにふやすことはできないと思いますが、第一年度においては、ダニムその他いろいろなものを合わせまして、その範囲内に支払いが終わるような計画というものを今後合意しなければならぬわけであります。前から詳しい年次実施計画というようなものがきめられているのではないのであります。
#17
○佐々木(盛)委員 私は附属書の書き方がまずかったのじゃないかと思うのでありますが、附属書の中に、水力発電所と、第二には工業センターと、第三に今後両国で合意する生産物及び役務というように三つあるわけですが、三千九百万ドルという純賠償の中からダニムの発電所の建設費に充当されるということは、もとより当然のことだと思うのです。そうすると、工業センターが何ぼかかるかわかりませんが、大体第三項のためにどれくらいな金がなお残される予定でございますか。
#18
○小田部政府委員 これは今まで説明いたしました通り、水力発電所が、たとい向こうが持ってきて、こっちが合意いたしましても、これが幾らでビッドが落ちるかわかりませんし、機械工業センターにいたしましても、規模その他によりまして、この工業センターは、向こうが言い出してもこちらが困るというようなこともございますから、幾らかかるということはわかりません。それがわかりませんから、正確に、両国政府間で合意されるその他の生産物及び役務が幾らと申し上げることは、今ここではできないわけであります。
#19
○佐々木(盛)委員 附属書に規定されておりまする第一、第二、第三の建設について、日本側に申し出たときに、日本側と合意ができないということで、たとえばダニムの発電所を向こうが持ってきても、日本との相談が合わぬというので取りやめにすることもできるのですか。
#20
○小田部政府委員 水力発電所の建設、機械工業センターの設備と書いてありますが、両方とも向こうがいやだということになって、何か別のことをしようということになれば、そうして両方の合意が成立すれば、理論上できないことはないと思いますが、しかし通常は水力発電所の建設と書いてあるから、これがあるいはダニムでやるか、あるいはその他の場所でやるか。やるという権利は向こうが持っておるわけであります。
#21
○佐々木(盛)委員 附属書の第一、第二はすでに合意されたものではないのですか。
#22
○小田部政府委員 第一、第二は向こうが非常にこれを望んできたので入れたという経緯があるので、これをやる。水力発電所をどういう規模でどこにやるかということは、協定上は書いてありません。機械工業センターの内容はどういうことをやる、規模はどれくらいでやるということは、この合意には入っておりませんが、これは一応そういう意味では、日本政府としても異議がないということであります。
#23
○佐々木(盛)委員 従って第一、第二は正式に最終決定はないまでも、一応両国間で合意しているのだとすると、それにどれくらいな経費がかかるということを頭の中で考えますと、第三に残される、政府間で合意されるその他の生産物及び役務供与ということに回される金というものは、ほとんどないのじゃないかと思うのです。かりにあったとしても微々たるものでしょう。大したことはできないのでしょう。
#24
○小田部政府委員 理論的にこれを考えますと、たとえば第二をとってみましても、これは第一期、第二期の工事がございまして、これは分けられるものなんでございます。そこでこれは交渉の過程においては第一、第二というようなことも入ったかもしれませんけれども、第一期で向こうが終えるということも、この協定上からは可能なんでございます。そこで私が申し上げる通り、第三に残される金がどのくらいあるかということは、この協定批准後の実施状況を見てみないとわからない、そういうことであります。
#25
○佐々木(盛)委員 非常にくどいことを聞くようですが、水力発電所を途中で、第一次計画でやめてしまうというようなこともあるのですか。
#26
○小田部政府委員 それは第一期の工事と第二期の工事と分かれ得るものでありまして、第一期八万キロ、第二期八万キロということも考えられるのでございますが、八万キロワットの電力で向こうは十分で、その他の仕事がしたいということになりますれば、それも可能なんでございます。水力発電所の建設、機械工業センターというような一、二の例を例示しまして規定し、あとは総括的に、両国政府間で合意されるというふうに書いてあるのでございますから、その点は自由なんでございます。
#27
○佐々木(盛)委員 私はその問題を深く承る必要もないと思いますけれども、ベトナム政府で設計を募集して、日本の日本工営かどこかで引き受けて、日本側の設計を採用することになったというように承っております。そういう説明を今まで聞いておりましたが、その設計というものをあなたは全然御存じないのですか。設計によるとどれくらい金がかかるか、どういう計画だというようなことは、外務省の関知するところでない、こういう立場ですか。
#28
○小田部政府委員 設計は私らの方でも見ております。それには第一期工事、第二期工事というようなことは書いてあります。ただしかし久保田工営の設計は、一番最初は七万二千キロワットのものを書いていた。ところがこれを国連に出したときに、フランス側が十六万キロワットだから、一つ十六万キロワットのものを出してみたらどうかというので、八万キロ、八万キロというようなことになったわけであります。そこで私の聞いたところでは、日本工営の調査も七万二千キロワットまではあるいは正当であったと思いますが、その後は別に深い調査もしないで八万キロ、八万キロという数字を出したのでございまして、この数字がはたして正当なものかどうか、この点はわからないと存じます。
#29
○佐々木(盛)委員 私は確認しておくわけですが、そうするとこの第一条の日本の支払い時期の問題、金額の問題等については、附属書に規定された各種の建設費用等とは全然関係がない立場においてきめられたものである、こういうふうにわれわれは考えておいていいわけですね。
#30
○小田部政府委員 ベトナム政府がこれらのものを持ってくるかもしれませんし、そうでないものを加えて持ってくるかもしれませんが、とにかくこの協定が発効いたしましたときに、実施計画を持ってきた場合に、両国政府でいろんな見地から検討しようというための規定でございます。
#31
○佐々木(盛)委員 それじゃ、まあその程度にしておきましょう。
 それから、きのう私は予算委員会における岡田君の質問を聞いておりまして、また本日の新聞などを見まして、ベトナム政府の代表としてサンフランシスコ会議に出かけていって調印した人間がフランス人の国籍を持っておるので、従ってベトナムの国内法の規定に従って、国籍がフランス人である者がベトナムを代表するようなことはできないことだから、サンフランシスコ条約というものは無効であるのだというふうな、私は初めて聞いたお説でありまするが、そういう説を主張されたわけであります。それに対して外務大臣も条約局長もその合法性を主張されておったようでありますが、きょうの新聞などを見ると、政府が答弁に窮してしまったというようなことも書いてあります。政府としてはそんなことでちっとも答弁に困っておるわけではないと思います。それでこの際明確にしておいてもらいたいということと、私どもが常識的に知っておりまする範囲におきましても、外国人がその国の全権委任状を持って国際会議に出かけていって、条約を結んだというような例も一、二ならずあったように思われます。かような点から考えまして、私どもこの際世の中の誤解を一掃する意味におきまして、外務大臣からもお話を願い、また条約局長などからも一つそういう点についての具体的な事例を表示して、国民に誤解のないようにしていただきたい。何分賠償というものは国民の税金につながっておるだけに、国民は重大な関心を持っておるわけでありますから、それが社会党の主張されるような、サンフランシスコ条約は無効であるのだということになりますと、国民として非常な疑惑を持つ。私たちは何も全権となったフランス人に金を払うわけではないのでありますけれども、そういうことを主張されますと、世の中に非常な疑惑もあるわけでありますから、この際私は政府として明確に御答弁願っておきたいと思うのです。きのうの岡田君に対しても、外務大臣の御説明で十分だと思うのでありまするが、あれで不十分であるというような見解も新聞に出ているようなわけでありますから、この際一つ明確に言ってもらい、また条約局長あたりからも一つ具体的な例をもって、説明する意味において、啓蒙する意味において明確にしていただきたいと思います。
#32
○藤山国務大臣 こまかい点については条約局長から補足説明させますが、条約を結びます場合にだれに全権委任状を出すかということは、別段条約の効力に影響を及ぼすものではないと思うのであります。成規の全権委任状が出まして、しかも会議においてそれが資格審査の上で、会議に参加した人が適当な、合法的な資格を持った代表だとして会議に参列するということになりますれば、当然それが調印したものは国際関係においては有効であろうと思います。ただその人がその国内でどういう関係にあったかということはありましても、そのこと自体は国際関係の上に影響を及ぼす問題ではございません。私こまかい事例は存じておりませんけれども、たとえば国連に参りまして、多分サウジ・アラビアだったと思いますが、今年も出て参りましたが、シリアの国籍を持っておる大使がおります。これは二重国籍だと思いますが、これが国連にサウジ・アラビアの大使として来ておりまして、国連の総会に出席して、代表としての資格審査を終わって、代表の権限をふるっております。私の乏しい経験でも現在そういうものもございますので、私といたしましては今申し上げたところで適当だと考えております。
#33
○高橋(通)政府委員 今大臣の御説明の通りでございますが、私が今思いつきます事例といたしましても、たとえばイタリア・エチオピア戦争のときのエチオピア代表、これはエチオピアの国籍ではなく、多分英国の国籍だったと思います。国際連盟においてそのイタリア・エチオピア戦争の問題が審議されたときに、エチオピアの代表として出ていると思っております。
 それからまだその他、たとえば国際連盟における中国の代表も、中国及びアメリカの二重国籍を持っていたというようなこともありますし、国籍の点については多々そういう事例があるかと思っております。
#34
○佐々木(盛)委員 従ってその全権のトラン・ヴァン・フーという人間がフランス人であったか、あるいはそうでなかったかというようなことは、私は問い合わせたりする必要もないことだろうと思うのです。そういう意味でなくして岡田君がどこの国籍の人でありましたかということを聞かれるならば、外務省が参考までにどこかに問い合わせてみてもけっこうでありますが、その国籍がどうかということによって、条約の有効性がどうかこうかという問題について、疑念が生じるというような性質のものでは全然ないと私は思っております。従ってそういう意味で、後ほど国籍を参考までに聞いてみましょうといこう程度ならば答弁してもけっこうでありますが、新聞などによると、何かこの国籍問題でサンフランシスコ条約そのものが有効か無効かということにつながっておるのだというような印象を与えていることは、私は非常に残念だと思います。私はかつての吉田さんなら、答弁の限りではありませんというようなことだと思うのであります。これは社会党から初めてそういう珍説を聞いたわけでありますが、それにしたところが今ごろ出すのは、ちょっと証文の出しおくれの格好でもあるようでありまして、ナンセンスだと思うのであります。
 それはその程度に打ち切りまして、私この前のときにちょっと大臣にお聞きしかかったのでありますが、例の賠償で、今度南ベトナムに払えば、将来北ベトナムが要求することがあっても、これは払う必要はないのだという国際法上の通念に立っておられるわけです。そこで中共についても、すでにわれわれは蒋介石政権を今日合法政権、正統政権として承認し、国際連合にもこれは加盟しておるし、世界のほとんどすべての国々がこれを承認している立場から、その国民政府政権が賠償の請求権を放棄した限りにおいては、将来中共政権が日本に対して賠償請求の権利はない、従ってまた日本としてはそういうものに応ずる必要はない、こういう見解を私は堅持すべきだと思うのでありますが、その点について重ねてもう一度大臣からお聞きしたいと思います。
#35
○藤山国務大臣 お説の通り中華民国との間の協定によりまして、サンフランシスコ条約を引用しながら賠償の権限だけを除外いたしております。その限りにおいて、むろんわれわれとして賠償は放棄されたものと思っております。
#36
○佐々木(盛)委員 これは正式に言ってきたものはないでありましょうが、中共の毛沢東方面で、日本に対する賠償を七百億ドル、邦貨に換算すると二十五兆二千億だそうでありますが、こういったものを請求する権利を留保するというようなことを、何かの機会に表明していることはありますか。
#37
○伊關政府委員 そうしたはっきりした意思表示があるという記憶は、ちょっとございません。
#38
○佐々木(盛)委員 今度の日本と朝鮮との日韓会談においても、賠償というものが問題になっておりますが、この日韓会談における賠償の根拠というか、それはどういうところから出ているのでありましょうか。
#39
○藤山国務大臣 韓国に対しては賠償という問題はございません。お互いに財産請求権の問題は残っておりますけれども、賠償という関係のものはございません。
#40
○佐々木(盛)委員 今まで韓国側は、財産請求権の立場から日本にこれを要求してきていることは、かなりのものが要求されておりますか。
#41
○藤山国務大臣 御承知のように、韓国は日韓会談を再開いたします場合に、いわゆる財産請求権という名目のもとにいろいろな主張をいたしてきております。しかし一昨年の暮れでございますか、日韓会談を開きます予備会談のときに、財産請求権の問題について一つの解釈ができました。そして相互に持っているものを相殺した上で初めて請求すべきものがきまるのだ。あるいは日本が残してきたもの、韓国がこっちに持っているもの、そういうものを相殺した上でありますから、従ってそういう財産請求権の上においても、そう大きなものはあり得ないと思っております。
#42
○佐々木(盛)委員 韓国の場合においては、かりに財産請求権があるという立場をとるならば、期間はいつごろから起こった期間についてでありますか。今度のベトナムに対する賠償だとか、中華民国に対する賠償ということは、もとより今度の戦争の期間が明らかになっておるわけでありますが、財産請求権でありますから、賠償とは本質は違うといたしましても、これはいつごろから始まっていつごろに――極端なことをいうならば神功皇后の三韓征伐以来だということになるわけでありますが、大体どういうふうな根拠に立ってきておるものか、私は参考までに一つ教えていただきたいと思うのであります。
#43
○高橋(通)政府委員 韓国との問題は、平和条約の第四条の問題でなかろうかと思うのでありますが、すなわち第四条では韓国が独立いたしましたら、独立いたしました地域と日本とのお互いの貸し借りと申しますか、請求権というのは、これを特別の取りきめの主題として特別に取りきめてそれを清算するのだ。こういう規定が第四条の趣旨だと思っております。従いまして時期とかそういう問題は、おそらくそういう特別取りきめの個々の問題として話し合う問題ではなかろうか。すなわち戦争の開始だとか、そういう賠償の問題とは別でございますから、お互いに一つの国が独立して分離する。そうしますと分離した独立した国と、前に属していた国との関係におけるいろいろな財産整理の問題が起こりますから、その問題ではなかろうかと思います。
#44
○佐々木(盛)委員 それは日本に対する義務規定でありますか。額は別としても当然それには応じなければならぬという一つの義務が規定されておることですか、第四条というのは。
#45
○高橋(通)政府委員 そのように両方で話し合いできめなければならない、こういうふうになっております。従いまして話し合いをこちらからも、しなければなりませんし、向こうからも話し合いを求めてきた場合には、それに応じまして、そしてそこで解決をしろという規定でございます。
#46
○佐々木(盛)委員 そうすると日本としては、当然向こうの話し合いには応じなければならないわけですね。最終的にどういう額がきまろうとも、これは一応頭から問題にしないということではいけないことになっておるわけですか。
#47
○高橋(通)政府委員 その通りだと思います。
#48
○小澤委員長 堤ツルヨ君。
#49
○堤(ツ)委員 外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。私がこの間本会議の席上で総理大臣にもお尋ねしたのでございますが、南北統一後のベトナムに対して賠償を支払うべきが正当である。これに対して南だけをもって政府は対象としておられる。南だけに賠償をされてその後、北ベトナムは賠償の請求権を保留しておると従来言ってきておるが、賠償後あらためて北ベトナムから賠償を要求してきたときにはどうなさるのか、これが再度要求されないという自信がおありになるのか、また絶対にしないというところの何か一文をかわしておられるのか、こういう点について私が御質問いたしました。そのときに政府側の答弁は、依然として統一後に再要求をされることはないと思う、という日本政府の一方的な見解を述べてこられました。それからまた二、三日たちまして、やはりはたせるかな北ベトナムは、後日あらためて私たちは請求権を保留して、この問題を持ち出すのだということを正式に発表いたしております。これはあくまでも日本政府の一方的見解であったことが、あらためて国民の前に証明されておるわけです。そういたしますと、国民はやはりこれは二度払いの懸念があるということを今日もなお疑惑を持っておるわけでございますが、これに対して私たちは、政府の一方的な解釈でなしに、はっきりとした国民の前に証明のできる根拠を明らかにしていただきたいと思うのですが、これがまだありません。従ってこの席上でも一つこれをはっきりしていただいて、ぼかさないで、こういう根拠に基づいて二度と要求されないのだ。向こうは一方的にそういう発表をしておるかしらないけれども、政府はこういう理由によって要求されない自信があるのだという根拠を、一つこの席上ではっきりしていただきたいと思います。
#50
○藤山国務大臣 統一になりますれば、当然統一された政府がこうした国際上の諸条約、諸協定というものを引き継いで参りますことは当然なことだと思います。これは南と取りきめたものでも、北とどこかの国と取りきめたものでも、南北統一されればともに継承されていくことになろうと思います。そうしてわれわれといたしましては、当然今回の条約も統一政府によって継承される。そうして今回の協定というものは、私どもといたしましては、全ベトナムに対する地域を対象としての南のベトナム共和国に対して払っておるわけでありますから、北の方に払っていないというわけではございません。従ってその限りにおいても統一後に継承されたものが全土に及んでおるということは言えると思います。しかも今回の条約締結にあたりまして、南ベトナム側からは今後こうしたところの関係は、戦時中の関係は一切これを終了したということを意思表示を受けておりますので、その限りにおきましてもそれが引き継がれていくわけでありますから、そういう意味において私どもは請求されないと考えております。
#51
○堤(ツ)委員 ただいまの御答弁で、継承されると思うという外務大臣のお言葉がございました。これは慣例だとかいう御弁解があるかと思いますけれども、私は、南北間で南がもらったものは将来統一後に北はこれを継承して異議を持ち出さないのだという南北間の了承、また南に対して払うところの政府の立場に対する北側の了承というものがなかったら、これは問題にならないと思います。これは国際問題にいたしましても、またお互いに、私たち個人の立場におきましても、向こうはそう思っているだろうということを両方が言っておりましても、これは確証にならないのでございまして、両方が相思相寄って確認した何ものかがなければ、私は、北ベトナムからも再請求されないという実証にはならないと思う。この間いろいろ言われます、南ベトナム政府は自由主義陣営の、ことにフランスのかいらい政権だ。逆の思想の人から言わしむれば、北ベトナムは共産主義陣営のかいらい政権だ、こういう水かけ論が行なわれております。こういう思想的な対立を背景として微妙な空気の中にありますところの、北ベトナムというものから政府が何かの一札をとらないで、南ベトナムだけを対象として話を進めていくということは、これは私はほんとうに国民に納得がいかないと思います。お払いになる前に、私たちがこれを了承します前に、やはり北から政府が確証をとるというのでなければ問題にならないと思うのです。ここのところを一つ、とっておられないのですから一つそういう努力をしようとなさる意図があってしかるべきだと私は思うのですが、いかがでございますか。
#52
○藤山国務大臣 現在のような北と南との状況において、われわれはそういう確証を北からとり得るとは思っておりません。同様なことが、おそらく北を援助している国も将来統一をむろん願っておるのですから、南からそういうものをとらなければ援助ができないといっているわけでもないと思います。でありますから、その関係においては私どもはやはり国際通念で、国家が統一されて一つの政権ができますれば、その政府というものは統一後にそれらのものを引き継いでいくということは当然のことだ、そう考えております。
#53
○堤(ツ)委員 並行線になりますから、私はこの点について私たちの主張をはっきりしておいて、この質問はまたあとから聞きます。
 それからもう一つ、この間伺ったことでございますけれども、北ベトナムとの貿易にこの賠償が非常に影響しやしないかということが問題になっております。これは三月二十四日の松本七郎さんのベトナム賠償に関する本会議場での質問の中でも相当克明につかれておりますが、北ベトナムと日本との貿易が今日まで盛んに行われておるわけなんです。この貿易が、実は日本が協定を承認して、調印をすっかり終わってしまいますと、そのときには請求権を保留すると言っておる北ベトナムが、同時に貿易をストップさせる危険があるという見方をしておる人が非常に多いのでございます。これに対しては、そういう心配はないんだ、むしろ年を追ってこの賠償問題が取り上げられてからでも、貿易の率は伸びておるのであって、決して減っていくとか、それがストップされるとかいうふうな心配はないんだということを政府はお答えになりましたけれども、これは非常にでたらめな御答弁のようでありまして、私は当然北ベトナムが貿易をストップさせる懸念があるという見方をいたしておりますが、ほんとうにしないという自信がございますか、これをちょっと伺いたい。
#54
○藤山国務大臣 今日、南ベトナムとの賠償の折衝というのは、すでに七年有余を経過いたしておるわけであります。ことに昨年以来相当に交渉が妥結に近づいたというような状況にもございます。従ってこの問題を深刻に考えるとすれば、当然北ベトナム側におきましても、賠償というものに対して今日でもすでに神経質にならざるを得ないと思います。ことに貿易の面を見ますると、輸出は一昨年が二百万ドルでありましたのが、昨年は百四十四万七千ドル、それから本年は一月から七月までに二百七万ドルくらいになっております。また輸入の方も昨年の六百八十八万九千ドルに対しまして、本年は一月から七月までの半年間に四百十九万五千ドルですから、これを倍増すれば、昨年の六百八十八万ドルに対して約五割くらいふえるような貿易が現在進行しておるわけであります。そういう点から見ますと、貿易関係というものは、私ども今後盛んに進んで参るのではないか、そう存じております。
#55
○堤(ツ)委員 今外務大臣がお答えになりました数字、よろしゅうございますか。私はその数字をもとにしての質問は後日に譲ろうと思っておりましたので、明細な貿易額のこの二、三年の消長のデータを持ってきておりませんが、これはあらためて大臣がお示しになった数字と照らし合わせて、ほんとうにうそをおっしゃっていらっしゃらないか、はっきりしたいと思います。しかし私たちが承知いたしますところでは、実際第一線に立って向こうの人たちと苦しい中から貿易をしている人たちの陳情や数字を伺いますと、日本政府の答弁はでたらめもはなはだしい。ことに藤山さんが行かれまして、本格的に賠償の問題が調印される見通しがついてからというものは、本気で向こうが相手にしてくれないのだ、そうして約束したものまでもストップする懸念があるのだということをるる言っておられます。これは私は数字的根拠をもって、また次の委員会にお尋ねをしたいと思いますけれども、私たちの見解では、北ベトナムの賠償の請求権をあらためて出すというところの主張と同時に、貿易に対しましては今後その通りにいかないという見解の上に立って質問をいたしておりますので、これはあとに残しておきたいと思います。
 私はもう一つ外務大臣にお伺いをいたします。いろいろと商社が先にすでに行っているのだというようないかがわしい風評が、このベトナムの賠償協定をめぐってあるということは、私が本会議でちょっと触れたのでございますけれども、今現に日本工営の名前も賠償部長の口から出ておりましたけれども、ベトナムの賠償借款の背景に民間資本家というものがいろいろございます。また触れますけれども、今年の三月二十四日に松本七郎さんが相当こまかい商社の名前を出して疑惑の点をついておられます。ところがこれに対するところの政府の答弁は、そういうややこしいことはないのだという反証は一つもないわけなのです。大臣が三人寄られましても、なぜ反論ができないかということを非常に私は不思議に思います。従ってこれは日本の資本家が企業的な計画を持ち、施設、資金をベトナムの賠償に逆算したのではないか。向うから一方的に出されたところのダニム・ダムか、計画の上に乗って、政府が戦争被害と何ら関係なしに、向こうから持ち出されたものにこちらから乗っていって、被害を無視した、非常に業者に踊らされたような賠賠協定を結びつつあるのだという印象を与えることにつきましては、少くも本会議でこういうふうに松本さんあたりにつかれましたならば、一つ一つの名前をあげて責任ある反論をなさらなければ、私は国民は納得しないと思うのです。今日はお忘れになっておりましたら無理かと思いますけれども、ちらほら出ておりますところの商社、資本家の名前につきましては、一つ一つ国民が疑点を持たない答弁ができるように御用意を願って、この外務委員会ではっきりしていただきたい。今この席上でどの商社が名前が出ておるじゃないか、これはどうしたんだということを私は申し上げません。もう一度官報の速記録とか、今までの論戦、いろいろの問題をお調べいただきまして、ちらほら出ております幾つかの商社や資本家の疑いを持たれております点を、この次に一つ委員会ではっきりしていただく。そうでないと、非常に急がれるが、急がれるについては商社が先に行って仕事をやっているのじゃないか、これが政府の要人あたりと連絡があるので、この人たちにどんどん金を出してやらなければならぬから賠償協定の承認を急いでおるんだ、こういう勘ぐった見方をされても、政府の御反論がない限り疑われっぱなしであるということは、おわかりになると思う。どうぞこれははっきりと答弁していただきたい。これは今私が求めましても時間がありませんし、にわかでございますから、私は次の委員会に御答弁をいただくようにお願いをいたしておきます。この御答弁だけでもだいぶ時間がかかると思いますから、きょうはこれだけで、あとまた私はあらためて質問を続行させていただきます。
#56
○藤山国務大臣 御指摘のありましたどういう商社でありますか、私ども存じておりませんが、少なくも私がはっきり申し上げられますことは、この賠償にあたりまして、いろいろの商社の力によってわれわれの交渉が動かされたことは、断じてないことだけははっきり申し上げられると思います。
 また日本工営の関係におきましては、申し上げております通りベトナム側が水力発電所を作りたいということで、この賠償とは関係なしに国際入札をいたしまして、フランスと日本とがその設計に応じたわけであります。その設計に応じましたのが日本工営でございます。そうしてその設計について、いずれを採用するかということをベトナム側においては国連の技術委員の三人に委託して調査した結果、日本工営の設計が適当であろうということに決着をいたしたのであります。
 これを賠償に載せるか載せないかという問題でございますが、むろんベトナムとしては、こういう水力発電というような全ベトナムにも将来好影響を及ぼし、またベトナムの産業開発にも適当であろうというので、これらのプロジェクトを優先的にやりたいと希望いたすことは当然のことだと思います。しかしそのこと自体が、外務省が何か交渉に際して、そういう一々の業者を助けるという立場において交渉をいたしたことは全然ございませんし、また日本工営はすでに設計監督料を四十五万ドルほどもらっております。従ってその限りにおいては何の関係もございませんし、今後はベトナムがもし賠償でやるといたしますれば、ベトナム自身が公の入札等をして工事をいたすことになろうと思うのでありまして、その工事関係者等も全然きまっておりませんし、それらのものをわれわれが推薦することも予期しておりません。そういうような状況でございますから、今後の賠償を通じまして、そういう点が交渉に影響されておらぬということだけははっきり申し上げたいと思います。
 なお個々の問題につきましては、いずれ政府委員の方から、また後日御答弁する機会があるかと思います。
#57
○堤(ツ)委員 ただいま大臣がおっしゃいましたけれども、これは松本さんの質問の要旨だけで、これはお聞きになったことですけれども、こういうひどいことを言われているのです。私が政府の要人だったらこういうことを聞きっぱなしにしないのです。ところが御答弁がないのです。「日本工営は、」もうちょっと前から読みますが、「ダニム・ダムは、すでに戦時中におきまして日本が計画したこともあります。戦後は、久保田豊氏が社長をしておられる日本工営が民間ベースの契約で従事してきたものでございます。それが、そのまま純賠償に繰り入れられまして、三千九百万ドルのうちの三千七百万ドルという、ほとんど全部を独占しておる状態であります。そのため、日本工営は私設賠償庁の観を呈して、賠償そのものがまだ国会で承認も受けておらない前から、商社、電機電線メーカー、土建業者などの間では、この日本工営と結んで賠償の分け前を獲得するための乱戦を展開していると報ぜられておるのでございます。その間、日本工営は、植村甲午郎氏を通じまして、賠償繰り入れのための強い働きかけを政府に対して行なったと報ぜられているのでございますが、この間の事情を首相からつまびらかにしていただきたいのであります。」こういうことを言われている。このときの岸さんの御答弁にも、非常に怒ったような答弁もないわけなんです。私ならこういうことを言われますと、とんでもないぬれぎぬでありますから、徹底的にはっきりしなければならぬと思いますけれども、しかしこれ全体を拝聴いたしまして、通り一ぺんの――もちろん関係があるとも言えませんから、ないといった程度のものでございまして、やはりこの点は、ベトナム賠償に関する限りは、今までの賠償にはそういうことがなかったのでございますけれども、疑惑のあるおりからでありますので、一つこの辺を十分注意して私に答えていただきたいと思います。
#58
○藤山国務大臣 日本工営に関する限り、私ども請託を受けて賠償にこれを繰り入れたということは全然ございません。ただいま申し上げました通り、ベトナム側が長い間の懸案としてそういうものを要求してきて、そうして日本工営はこれがコンサルティング・エンジニアとして設計をいたして、すでに四十五万ドルを賠償と全然別個にもらっております。従って日本公営の設計が適当なものだと国連の委員会で認められておりますから、あるいはベトナム側としては実際にプロジェクトをもしやるとすれば、日本工営の設計を採用するかもわかりませんけれども、しかしその場合に今申し上げたように、賠償部を通じて直接契約でベトナム政府が日本の民間の工事請負人あるいはメーカーと契約をするわけでありまして、日本工営はそういう立場には、監督以上にはないと思います。むろん民間の業者でありますから、こういうふうな場合にいろいろ策動して、もしそういうことが起これば日本工営として非常に向こう側に信用があるから、そういうところの口ききをしてもらいたいとかいろいろ策動したかもしれませんが、われわれ外交交渉上そういうことについて何らの関係を持っていないことは、はっきり申し上げておきたいと思います。
#59
○小澤委員長 菊池委員。
#60
○菊池委員 南ベトナムを正統の政府として賠償を払うことは当然であると思いますが、もしこの国際法のルールをはずしてしまったならば、今日中共の要人は国際法を無視して、蒋介石が帳消しにした対日賠償を日本から七百億ドル、邦貨に換算して二十五兆二千億円になる賠償を取るということを放言しておるのでございます。もし日本がこの南ベトナムに対するところの、これを正統政府として認めないで統一を待つようなことがあるといたしますならば、この中共要人たちが放言しております七百億ドルの賠償を、日本が中共と国交回復のときにおいて払わなければならない当然の羽目に陥ると思いますので、この問題につきましては断固たる態度をもって臨みたいと思います。御答弁は要りません。一言申し上げておきます。
#61
○小澤委員長 それでは本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時四十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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