くにさくロゴ
【PR】姉妹サイト
 
#1
第033回国会 外務委員会 第7号
昭和三十四年十一月十三日(金曜日)
    午前十一時三十二分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君
   理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君
   理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君
   理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君
   理事 松本 七郎君 理事 森島 守人君
      池田正之輔君    石坂  繁君
      宇都宮徳馬君    野田 武夫君
      福家 俊一君    森下 國男君
      岡田 春夫君    柏  正男君
      勝間田清一君    田中 稔男君
      穗積 七郎君    堤 ツルヨ君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  小林 絹治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (アジア局賠償
        部長)     小田部謙一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
十一月十二日
 農民の海外移住促進に関する陳情書(福井県議
 会議長麻王伝兵衛)(第三二六号)
 日ソ近海漁場の安全操業確保に関する陳情書(
 北海道議会議長徳中祐満)(第三三五号)
 日韓漁業問題早期解決に関する陳情書(長崎市
 長田川務外十九名)(第三四八号)
 日米安全保障条約改定促進に関する陳情書(京
 都府熊野郡久美浜町役場佐野支所内葉賀昇)(第
 三六七号)
 日米安全保障条約改定に関する陳情書(調布市
 議会議長林米一郎)(第三六八号)
 日米安全保障条約改定反対に関する陳情書(西
 宮市和上町二一の七奥伍一外三名)(第三六九
 号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関
 する協定の締結について承認を求めるの件(条
 約第二号)
     ――――◇―――――
#2
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、以上二件を一括議題とし、質疑を行ないます。質疑の通告があります。これを許します。穗積七郎君。
#3
○穗積委員 ベトナム問題につきましては、今までわれわれの同僚の岡田君から、賠償の相手国である南ベトナム政府の性格、基礎、すなわち、これはかいらい政権ではないかという点と、それを代表した平和条約調印者の資格について、多くの疑問を持ちながら質疑を進めて参りました。これに対する政府側の答弁は、いまだわれわれを納得せしめるものになっておりません。昨日も、調印者の国籍その他の資格等についての問題につきましては、再調査を確約されておりますので、それに対する報告が行なわれ、なおかつ、その後に、条約解釈に関する正確なる審議、討議を進めていくべきだと思います。すなわち、一括いたしまして、調印者であるバオダイ政権の性格、基礎につきましての討議は、これを留保しておきたいと思います。従って、その岡田君が提起いたしております南ベトナム政府のかいらい性の問題については、議論を打ち切るのではなくて、後の機会に、正確なる資料と解釈が統一された後にこれを続行することをあらかじめ留保いたしました上で、私は、続いて他の面から、この現政府の性格、資格等について審議を進めていきたいと思うのです。あらかじめお含みおきをいただきたい。
 そこで、最初にお尋ねいたしますが、終戦後の一九四五年に、いわゆるホー・チミンによって代表されますベトナム民主共和国が独立宣言をいたしました。続いて、それとともに憲法を制定し、その憲法の中においては、第二条で領土問題に触れまして、ベトナム民主共和国の領土は、南、中、北部を含む完全な統一体であり、決してこれを分割することはできないという趣旨を盛った条文で明記した。その翌年の一九四六年に、この前岡田君が示しましたように、フランス政府とベトナムとの間における協定ができて、その署名には、ことごとくベトナム民主共和国の代表として署名が行なわれております。こういう点で、実はベトナムの民族独立国家の発足というものは、今ベトナム民主共和国から発足したわけです。フランスは、そういうような意味で二国間協定を結びながら、すなわち全地域の代表の政権としてのその政府を認めて協定を結びながら、翌年これを廃棄いたしまして戦争状態に入って、再び戦いを続け、民族的独立を圧迫して、今問題になっている今の南ベトナム政府を一九四八年に作り上げた、こういうことで出発しておるわけです。
 そでこでお尋ねいたしたいのは、このベトナム民主共和国に対するフランス側の承認は、一応国際条約上成立しておるものというふうにわれわれは考えます。その後のことは別ですよ。その一九四六年における協定締結当時においては、全ベトナム地域と全ベトナム人民を代表する独立政府としてベトナム民主共和国を承認しておる。それは、条約上の承認に至るか事実承認であるかは別といたしまして、その解釈は別として、少なくともそれ自身の基礎を確認しておる。それに対する解釈をこの際まず明確にして後にジュネーブ協定まで及びたいと思っておりますから、順を追うてお答えいただきたいと思います。
#4
○高橋政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、これは国際法上の独立国家、独立の政府としての承認ではないと考えております。これはしばしば私御答弁出し上げたと思っております。
#5
○穗積委員 独立を承認したしないということは別として、条約であるないは別として、少なくとも事実承認にはなりますね。
#6
○高橋政府委員 国際法上の問題としての承認ではないというふうに考えております。
#7
○穗積委員 いずれにしても、たとえば今わが国は中華人民共和国と国交回復はしていないし、政権は承認していない。しかしながらこの委員会でも問題になりましたように、たとえば郵便協定、航空協定あるいは漁業協定等を締結することによって、その締結者の相手の主体というものは、今申しました政権を事実上認めた上で、しかる後に締結が行なわれている。これは、国際条約における正式なる国交回復または政権承認の手続が完了したものというふうには必ずしも解釈ができない場合が、条約、協定の内容によってはあるかもしれぬ。しかしながら、少なくとも事実承認であることだけは間違いないと思うのです。そしてその協定の内容というものは、独立を尊重し、戦争をしない、これだけは明確になっておるわけです。ですから、ベトナム地域における従来の植民地支配をしておった地域並びに人民に対する独立の取り扱いの出発というものは、ここから始まっておる、こう確認をしなければならないと思うのですがいかがですか。事実承認の問題ですよ、もう少し正確に答弁していただきたい。
#8
○高橋政府委員 その点は、これはフランスの国内的な問題としてフランスの憲法的な領土構成の問題、そのように考えております。従いましてここはフランスがこの地域に一つの自治を認める、そういうフランスの意図であり、そのようなフランスの意図のもとにこの協定が行なわれている、こういうふうに考えます。
#9
○穗積委員 自治と解釈するかしないかは別ですよ。あるいは後に、あなた方が主張している一九四八年のフランスと南ベトナムとの間における協定にいたしましても、これは完全独立になっていない。完全独立とは言っていない。そしてまた一九五四年には、そのときには初めて完全独立の承認を与える条約を結びましたが、しかしこれは押えられて発効していない、認めていない。従って現在あなた方が言っておる南ベトナム政府それ自身も、完全独立は与えられておりませんよ。それを、前の場合においては地域的自治を予約した、今度の場合においてはフランス連合の中における一部独立といいますか、特にこの場合におきましては外交権をほとんど剥奪された状態で条約が結ばれておりますから、従って地域的自治と何ら変わらない。私は話しを変えてちょっと条約局長にお尋ねいたしますが、それなら中華人民共和国と日本と国交回復をしていませんね。そのときに、日本とこの間問題になった航空協定、郵便協定を結んだのは事実承認と認めるのが国際法上の通念だと思うのですが、それはどうですか。
#10
○高橋政府委員 その問題とこちらのフランスのこの場合とは、少し事情が違うのではないか、このように考えます。
#11
○穗積委員 それは違いますよ。そういうことを言っているのじゃなく、いわゆる国際法上における国交回復または政権承認、それを確約した内容を持たない、条約にまだ至っていない、だから国際条約上は相手の政権を完全に認めてはいない、しかしながらそのもう一歩前の段階において、今申しましたような政府の言葉を借りれば、いわゆる事務的なビジネスライクな協定等が結ばれた場合においては、少くとも相手政権の存在とその事実を認めておる、これは通念ですよ。条約局長、私はそんなことを言っているのじゃない。私は中国の場合とか、今度の北ベトナムの民主共和国の場合を一般的な国際条約上でいうから、一般国際条約上の通念として、そういう協定が結ばれた場合においては、相手国の政権承認には至っていないが事実承認にはなる、これは通念じゃありませんか。ごまかしちゃいけませんよ。あなたは政治的に判断して答弁する必要はない。私は、あなたが政治性にとらわれず、時の内閣が何党であろうと国際条約に対する良心をもって取り扱っておられるという点で敬意を表してきた。つまらぬ政治的なことなら、私は大臣に聞きますよ。国際条約上これは事実承認ですよ。かつてそういう答弁をしているのじゃありませんか。
#12
○高橋政府委員 このフランスとの一九四六年三月六日の協定を考えますと、私はこの協定はそのように考えることはできない、私はそのように考えます。
#13
○穗積委員 しからば中華人民共和国と郵便協定、航空協定を結んだ場合とこの場合とどう違うのか、そちらから説明をしていただきたい。
#14
○高橋政府委員 フランスの場合はフランスの一部をなしていたベトナム、この一部をなしていた国が独立する、またはするかしないか、そういう問題、フランスの領域の一部と本国との関係の問題でございますので、中共の場合とはこれは事情を異にしていると私は考えます。
#15
○穗積委員 この場合における自治の要求とは独立の予約である、どこをもってそういうふうに言われますか。事実的承認ですよ。ホー・チミンによって代表される全ベトナム地域を包含する憲法を持った、国会を持ったその代表に対して独立を予約するという意味であるかもしれない。しかしながらそれを認めて単なる地域的自治を予約したということは一体条文のどこにありますか。独立ではなくて地域的自治を予約したにすぎないという内容を持ったというならば、一体どこにございますか。それは条約の内容のどこにございますか、それを知らしていただきたい。
#16
○高橋政府委員 第一項に、フランス連合内のインドシナ連邦を構成する自由国として承認する、こういうふうにございます。
#17
○穗積委員 しからば一九四八年の今問題になっているバオダイ政権の場合と同じです。連合政府内における独立国、こういう意味です。何ら違わない。どこが違いますか。
#18
○高橋政府委員 四八年のアロン湾宣言では、フランスは厳粛にベトナムの独立を承認すると、独立の承認ということをここでは明瞭に述べておりますので、私はこれは本来の独立の承認である、このように考えます。
#19
○穗積委員 それはフランス連合内におけるということがあるからホー・チミンに対しては自治だ、そう言われたわけですね。それはどこにあるかと聞いているんですよ。独立ではなくて地方自治を与えるということは、自治地区として認めることであるということは一体どこにあるかということです。条約のどこにあるんですか。何条の何項か示してもらいたい。
#20
○高橋政府委員 この協定にインドシナ連邦を構成するといっております、すなわちほかのラオス、カンボジア、ベトムナとそれが一つの連邦を構成します。そしてその構成された連邦がフランスの連合のワク内に入る、それが第一点でございます。それから、この点まだ外交関係につきましては、全然将来の交渉に譲る。すなわちいかなる外交的な国際的なステータスを与えるかどうかということは、全然将来の問題にされている次第でございます。
#21
○穗積委員 しからばお尋ねいたします。その署名には何と書いてありますか。ホー・チミンというその代表者を単にベトナムにおける解放軍代表として扱っているのではありません。ベトナム民主共和国代表として扱っております。そんなばかな話がありますか。これから許そうとする独立への段階において、一九四八年のバオダィに対する場合の連合内における独立という場合と、それから前の四六年におけるホー・チミン代表に対する場合と段階の相違のあることならわかりますよ。しかしながらその場合においてすら、解放軍の代表として停戦協定を結んで、そこで認めていって平和的にやろうという話ではない。ベトナム民主共和国代表としてちゃんと署名がされておる。その国を事実承認せずしてそんなこと書きますか。そんなこと書くことを許しますか。冗談言っちゃ困るよ。もっとちゃんとした答弁をしていただきたい。政治的配慮は要りません、あなたに対しては。あなたは政治的配慮をする必要はないと思うんだ。
#22
○高橋政府委員 私、この段階におきましてはまだ国内法上の問題だった、このように考えます。
#23
○穗積委員 それはどういうわけですか。ベトナム民主共和国とちゃんと書いてあって、代表として認めていますよ。独立軍または独立同盟の政治団体の代表として認めているのではありませんよ。ベトナム民主共和国代表としてちゃんと署名してあるじゃありませんか。おかしいよ、そんな話は。
#24
○高橋政府委員 協定の実体的内容から判断して、私はそのような判断をいたす次第でございます。
#25
○穗積委員 藤山さん、どうですか。ちょっとおかしいと思うのですよ。本文の中にもベトナム民主共和国という名前がちゃんと出てきている。それからさらに最後の署名にもベトナム民主共和国の代表としての署名になっております。その協定そのものが政権承認の条約の内容には至っていないということは別といたしまして、その国、その政府の存在を認めずして、条約文の中にその国名を書いたり、代表署名の中に代表としての国名を書かせるなんということはあり得べからざることです。しからば一体何を代表してやったわけですか。地域的な集団、団体、または解放軍の軍隊を代表するものとして自治を予約したのですか。藤山さんにお尋ねいたします。
#26
○藤山国務大臣 私は条約局長の見解と同じでございます。
#27
○穗積委員 それはおかしいですよ。あなたは今までに中国問題についてわれわれが質問したときに、中華人民共和国との間における事務的な協定ならば、国交承認、政府承認まで至らないから可能性ないことはないんだ、こういうことを答弁された。その場合において、それは事実承認じゃないか、事実承認と解釈すればできるであろう、しかし国際法上における正式政府承認ではない、こういうことで逃げておられる。逃げておられますが、事実承認であることはこの場合認めておられる。今度の場合でもそうです。協定内容そのものが政権承認の協定の内容だっとは私は言っていない。しかしながら、その内容が単なるその地域における蜂起軍または集団、団体ではなくて、ベトナム民主共和国という国名を認めて、そしてそれに対する自治であるか、独立の予約であるか、それは別の問題と解釈する。しかしそういうことになっておるのに、それに対して、一は事実承認であり、一は事実承認でないということはおかしいと思うのです。藤山先生いかがですか。
#28
○藤山国務大臣 私はただいま条約局長の言った通りだと考えております。
#29
○岡田委員 それではその点に関連して一点だけ伺いますが、藤山さん、この点はいかがですか。先ほどから条約局長が御答弁になっておりますが、いわゆる自治的な地域として承認をする、こういう御答弁であったわけですね。とするならば、ここではエタという、日本語で言えば自由なる国家という言葉を使っている。これはフランス憲法の領土構成の六十条のどれに該当いたしますか。
#30
○藤山国務大臣 条約局長から答弁させます。
#31
○高橋政府委員 これはどれにも該当しないと思います。そういう特殊な使い方、特殊な文字を用いたと思います。
#32
○岡田委員 それじゃ領土構成ではないわけですか。
#33
○高橋政府委員 このような領土構成をやっていこう、こういうふうに考えたと思います。
#34
○岡田委員 それじゃ憲法にないことをフランスが勝手に、いいかげんにベトナムと話をしてきめた、それじゃフランスはベトナム民主共和国をだますためにそういうことをやったわけですか。
#35
○高橋政府委員 当時まだ憲法は発効しておりません。そこで大体こういう方向に憲法的構成をやっていこうというのが、フランスの回答だったと思います。
#36
○岡田委員 憲法が発効しておらないだけに、それは自治体であるとか国家であるとかということをあなたはどういうようにして規定するのですか。
#37
○高橋政府委員 このような協定に基づくところの構成を今後とっていこうというのがフランスの考え方です。当時フランスとしてはまだ憲法が発効してないという状態であったのであります。
#38
○岡田委員 私関連ですからもう一点だけ伺ってやめますけれども、そうするとフランスの方はそういうものを作ったという限りにおいて、その限りにおいて承認しておりますね。その場合には国の――ちょっと私はきょうはやらないつもりで原文を持って参らなかったのですが、ベトナム民主共和国政府という言葉を使っておりますね、そうすると国というのはあなたのおっしゃるところに関する限りは、インドシナ連邦内のラオスとかカンボジアと同じ、そうような解釈になりますね。そうすると、あなたの言われるアロン湾協定を例に出されておりますけれども、アロン湾協定の条約的な体系はエリゼ協定だと思いますけれども、エリゼ協定によると、同じようにエリゼ協定の決定でインドシナ連邦内におけるラオスとかカンボジアと同じような地位を与える、そういう点では四九年におけるエリゼ協定のエタと今のベトナム民主共和国のエタとフランスは常に同じ地位を考えておったことを意味するでしょう。
#39
○高橋政府委員 この四六年のホー・チミンとの協定では自治のエタ・アソシエよりももっと地位の低い自治を与えることを考えておった、こういうふうに考えます。
#40
○岡田委員 それはあなたの解釈でしょう、フランスの解釈ではないのでしょう。藤山さん、この点はっきりしておきますが、今までの御解釈はフランスの政府のコンファームの上に立ったものでなくて、日本の外務省の解釈でしょう、そうなんじゃありませんか。
#41
○高橋政府委員 これは協定を読みますと、フランス連合に直接入るというよりか、その入る一歩手前で連邦を構成する、その連邦が入るというふうになっております。それからもう一つは、そういうふうな外交関係は全然将来の問題に譲っております。従いまして、私はこの協定の解釈としては、そういう解釈しかする余地はないと考えております。
#42
○穗積委員 だからさっきから言っておるように、この協定そのものが政権承認の協定の内容を持ったものだと私ども主張しておるわけではないのです。ところがあなたは自治の予約だと言う、われわれは独立の予約だと解釈しておる。すなわち国際法上は事実承認だということだけは明確だとわれわれは主張しておるわけです。それに対してあなたは反論して、そうじゃなくてホー・チミンに対してはベトナム民主共和国の代表としてそういう自治または独立という内容を予約したものではなくて、単に地域的な自治予約にすぎないというわけですね。そうするならば、この協定の中では内容においても文章の中においても、または署名においても、ベトナム民主共和国の代表としての署名をフランスも認めて署名をしておる。そうであるならばホー・チミンは何を代表するものとして一体あなたは解釈しておるわけですか、解放軍を代表するものなのか、あるいは一地域集団の不確定な非常に小さいその目的の集団を代表するものとして自治を予約しておるものなのか、何の代表として認めておるわけですか。解釈はそこが問題なんです。
#43
○高橋政府委員 当時その地域に自治を持つものとしてこれを認めよう、こういうふうにフランスは考えたわけであります。と申しますのは当時フランスとホー・チミンとの交渉にあたりまして、フランスの総督のアルジャン・リュウ総督より高等弁務官のサントニーに対する訓令があります。それは三月四日の訓令です、三点あげております。その第二点、第三点は、フランス軍が上陸すること、戦闘を停止することということでありますが、第一点としては、この地域にはセルフ・ガヴァメント、自治を与えることだ、これがフランスの意図であった、このように考えます。そのような訓令に基づいてこの協定ができ上がった、少なくともフランスの意図はそこにあった、このように考えます。
#44
○穗積委員 フランスの訓令は問題ではありません。およそ国際間の関係というものは条約であります。交渉に当たっておるフランス代表に対して、フランス本国政府がどういう作戦的な訓令を与えようと、そのことは関係はない。そうじゃなくて、条約は条約文に現われたものです。そんなことはあたりまえのことです。つまらぬことを言ってはいけませんよ、どうですか。それじゃ具体的に聞きましょう。その場合に、三月の協定においては、一体このホー・チミンは何という団体を代表するのですか、それを聞きましょう、解釈上。
#45
○高橋政府委員 ベトナム共和国政府でございます。
#46
○穗積委員 ベトナム民主共和国ですよ。それじゃ政府じゃありませんか、国じゃありませんか。条約の内容は、その後の政権承認の内容には至っていない。しかしながら交渉する代表は、個人としてやったのじゃないですよ。交渉者は個人じゃありませんよ。個人のためにではなくて、人民のためにこの協定は結ばれている。そうでしょう。そうであるならば国じゃありませんか。そこで協定が結ばれたとすれば、しかも相手は政府だというならば、政府間協定ですから、これは国際法上解釈して明確に事実承認だ、内容的にいえば独立の予約である。当然のことです。いかがですか。
#47
○高橋政府委員 私はちょっと御意見と違っております。私は今申し上げた通りの意見、考えを持っております。
#48
○柏委員 関連して。ただいまの条約局長の答弁を聞いておりまして、私は何か条約局長の方で間違いがあるのじゃないかということを感ずる。というのは、決してベトナム民主共和国はフランスから独立した国家ではない。この国家は日本から独立した国家である。こういうことにつきましては、一九四五年の九月二日にホー・チミンが独立宣言をやっております。独立宣言の中に書いてある文句をお聞き願いたいと思います。「事実上、一九四〇年以来わが国は日本の属領となっていたのであって、フランスの植民地ではなかったのだ。日本軍が連合軍に降伏した際に、わが国民は一齊に立ち上がって政権を取り、ベトナム民主共和国を樹立した。われわれは実際にはベトナムを日本の手から取り戻したのであって、フランス人から奪い返したのではないのである。フランス人は敗走し、日本軍は降伏し、バオダイ帝は退位した。われわれはベトナムの独立を達成するために、百年にわたる植民地の桎梏を脱し、数十世紀にわたる君主制を廃して民主共和制を確立したのである。」こういうように独立宣言をやっておるのでございます。そういう意味におきましても、ベトナム民主共和国はフランスから独立したのではない。日本から独立したのだ。そういう点をお考えになれば、この協定が二つの政府間協定であったということがはっきりすると思いますが、どうお考えになりますか。
#49
○高橋政府委員 ただいまの点でございますが、日本は占領はいたしましたが、あの地域を併合したわけではございません。地域といたしましては、やはりフランスの領域でございましたので、フランスからの独立ということに法律的にはなると思います。
#50
○柏委員 しかし一九四五年の三月九日の日本の接収をお考えになったならば、フランスはその際に一切の権限を日本に移しておるはずでございます。松本俊一君がその間の事情を非常によく御存じたと思います。なおもしそれに対して必要があれば、松本俊一君に状況をお話し願いたいと思います。
#51
○高橋政府委員 ただいまの点は、領域としてはやはり申し上げました通りフランスの領域でございますので、独立云々の問題は対仏関係になるかと思います。
#52
○穗積委員 はなはだでたらめな解釈で、われわれはこういう答弁では納得できない。根拠がないですよ、論理的根拠がないと思うのです。今までの一般的解釈と全然違うじゃありませんか。根拠を示してない、結論だけですよ。一方的な結論だけを繰り返しておるのであって、それに至るわれわれの質問に対して何ら答えてない。そこでこれはまた柏君その他の同僚委員から――この問題についてはあらためて当時の松本俊一さんに出てもらって、討議することに留保いたしまして、前に一歩進みたいと思います。
 それではお尋ねいたしますが、言っておるところの一九四八年のフランス・ベトナム間の協定並びにバオダイの独立宣言、これがあなた方の説によれば、バオダィ政権が全ベトナムを代表する正統政府の条約上の根拠である、こういうことを言っているわけですね。そうであるならばお尋ねいたしますが、これが全ベトナム地域を代表する政権であるということは、一体どこで立証されますか。
#53
○高橋政府委員 この点も、たびたび私御答弁申し上げたかと思いますが、アロン湾宣言ではベトナムの独立をフランスは厳粛に承認しております。またこのときにフランスは、もちろん全ベトナムを代表するもの、全ベトナムの国としてこの独立の承認をいたしたのであります。翌年の一九四九年のエリゼ協定にも、その第一項にベトナムとは北、中、南の結合によるところのベトナムであるということをはっきり明言いたしております。
#54
○穗積委員 当時の状態はどういう状態ですか。そのバオダィ政権の統治権の及ぶ地域は一体どこまででしたか。さきには先ほどわれわれが主張したように、あなたと解釈はいささか違うけれども、ホー・チミンによって代表されるベトナム民主共和国、今日の北におる政府、これを全地域の代表政権として交渉しておるのであって、それを一方的にじゅうりんして戦争を再び始めて、戦争の交戦最中に自分が盛り立てて作ったかいらい政権というものは、その統治権というものは戦争中ですからまだ向こうに及んでない。それを勝手に全ベトナム地域を代表するものだということは、これは明らかに前のホー・チミンとの間に結んだ協定違反であり、そしてまた事実問題といたしましても、今日の台湾政府を全中国の代表政権というような場合とは全然違います。その政権を独立せしめて、政権との間に協定を結んだときに、その政権は始まって以来今日に至るまで一ぺんも北の地域並びに人民というものに統治権を及ぼした事実はないのです。今までそういう事実はありませんよ。たとえばここでわが日本国はどこそこの地域までおれのものだ、それらの地域と人民を統治する国家であると独立宣言して、それを他の一ヵ国が認めたという場合に、それが効力を発しますか、発しませんよ、そんなばかばかしいことは。その当時におけるバオダイ政権の統治権が、今日に至るまで北に及んだことはございません。その当時、統治権の及んでおった事実はどの程度でありますか。
#55
○高橋政府委員 実体問題の点――法律的にははっきりと全ベトナムに及ぶことを明言しておりますし、フランスの意図もそうであり、独立を受けるバオダイ側の意図もそうであった、このように考えます。
#56
○穗積委員 私先ほど言った通り、ただいままだ事実承認の段階であるけれども、ホー・チミン政権に対してもその協定を結んだときには、すでにそのホー・チミン政権は憲法を持っておる。憲法の規定の中で、北、中、南全統一政権としての主張をしておる。それを認めて協定を結ぶ以上は、相手の自治と憲法を尊重し合うことは原則上あたりまえのことです。それを認めて協定を結んでおるわけですね。条約解釈上おかしいじゃありませんか。
#57
○高橋政府委員 その点につきましては、たびたび御答弁申し上げておりますが、いささか意見を異にする次第でございます。
#58
○穗積委員 それでは、さらに一歩進めて、一括して討議いたしましょう。一九五四年のジュネーブ協定、これは、先ほど言いましたが、ホー・チミン政権が独立いたしましてから、これをフランスが認め、それをフランスが破って、勝手に南の地域だけにバオダイ政権を作って、これを勝手に全ベトナムの代表政権だということで押しつけた。それを政治的に各国が勝手に認めたということになってきておるわけです。ところが、その以後において今日まで生きておる決定的なものは、ジュネーブ協定だと思うのです。そこにおいては、南の政権と北の政権を認めて、明確に停戦協定の相手としてベトナム民主共和国というものがジュネーブ協定の中へ入っている。ちゃんと九ヵ国共同宣言の中にも入っているのです。そうでしょう。そうするならば、戦争中の四八年においては、フランスは勝手にバオダイ政権を全ベトナム地域を統治する代表政権だというふうに認めた。しかしながら、みずからの意思ですよ、われわれの解釈ではありませんよ、フランスと、バオダイ政府代表が入ったジュネーブ協定で十七度線以南は南の政権であるということを認めておるわけですね。その地域は、停戦協定地域ですから国境ではありません。国境ではないけれども、そのときに事実上北の方を統治しておるところの民主共和国というものがここで再び出てきている。国際法上出てきているのです。それを認めて、しかもこの二つは地域的に限定された暫定的な政権という立場に立っている。このときは、両方とも、翌年、五六年の国際管理のもとにおいて行われる平和的なる、民主的なる選挙によって統一が完了して、これが国連に加盟する、こういうことになっておるわけです。そこで、今までの一切のことがここで一応御破算にされて、整理されておるわけです。これは明確だと思う。従って、結論を先に申しますならば、今日この賠償協定の相手国である、相手政府である南ベトナム政府というものは、これは南の地域を統治する限定政府です。限定政権です。しかもこれは統一までの暫定的政権です。そういうふうになってきておるのです。それはどうですか。
#59
○高橋政府委員 その点も従来しばしば御指摘になった点でございますが、私しばしば御答弁申し上げていると考えております。
    〔発言する者あり〕
#60
○小澤委員長 静粛に願います。
#61
○高橋政府委員 その点につきましてもしばしば御指摘になった点でございます。私もしばしば御答弁申し上げたかと考えておりますが、この協定はあくまでも休戦協定でございまして、従いまして、遺憾ながら発生したところの戦闘をとりあえずこれで休止しようじゃないかというのがこの協定の主眼であると考えております。従いまして、この協定自体に法律的な、政治的な問題を含ましめるとしますれば、この協定自体が成立しなかったではないかと考えております。すなわち、これはあくまで戦闘を停止するというのが主眼であった、このように考えております。
#62
○穗積委員 戦闘を休止する協定であることは事実です。ところが、同時に、これは両方ともが暫定的なものであって、それを統一するということが予約されていることが大事な点なんです。これがこのジュネーブ協定の中心だと思うのです。それをちゃんと国際的に九ヵ国が宣言し、翌年のバンドン会議で藤山さんもその点を認めて承認をして、五六年に実行さるべきものが実行されないでおるのです。それがこの協定の内容なんです。従ってその場合に、論理的に明確に今日の政権というものは統一政権でないということを認めておるわけです。地域は、今言った通り、その政府の統治権の範囲はどこであるかというと、十七度線と必ずしも限らない。これは停戦協定の暫定的線ですから、事実上の。従って、これは国境ではありません。国境ではありませんが、この場合において統一ということを言っている以上は、統一の前の分裂ということが当然考えられているわけです。しかも、その協定の中には、先ほど言いましたように、民主共和国の名前が出てきておる。その代表によって認められて、それが調印されている。共同宣言の中でも、フランスだけではない。他の七ヵ国全部がベトナム民主共和国というものを認めて、そこで共同宣言が行なわれているわけです。その場合におきます地域は、十七度線と必ずしも限らぬでしょう。これは停戦線ですから。ところが、北の政府そのものはここで確認されている。そこで両方とも対等的な、暫定的なものだという論理に立っているわけです。おかしいではありませんか。停戦協定だけではありません。分裂を認めて、統一を予約して、確認している。
#63
○高橋政府委員 ただいま御指摘の点は共同宣言第七項にうたっている点でございますが、これは現実の事態を認めて、将来の企画と申しますか、将来総選挙を行なって統一しようという将来の方向をうたっているわけであります。従いまして、将来の計画の問題でございますので、現在のステータスを否定するものではない、このように考えております。
#64
○柏委員 高橋条約局長は、この十七度線によって政治的な措置はないと言っておられますが、しかし、休戦協定の第十四条をごらんになれば、「暫定的軍事境界線の双方にある二つの再集結地帯における政治的、行政的措置」ということが書いてあります。そして、その第二項、(ロ)の終りの方には、「問題の地域は相手側に移管されたものとみなされ、相手側がその責任をとる。」とある。この「相手側の責任」というのは行政的、政治的措置をさしている。そういうことはやはりここで二つの政治的、行政的分割が休戦協定によって明示されていると解釈すべきではないか、そう思いますが、条約局長、どう思いますか。
#65
○高橋政府委員 ただいまの点は、休戦協定の成立後に伴うその地方的な問題を処理するための措置でございます。すなわち、シヴィル・アドミニストレーションという言葉を使っているかと思います。従いまして、それが政治的な分割を意味したものではないというふうに考えております。政治的な問題といたしましては、これは共同宣言第六項に、政治的な、領土的な問題ではないということを言っておりますから、その点、第六項で政治的な分割であることは否定されていると考えます。
#66
○穗積委員 藤山外務大臣にお尋ねいたします。
 当時あなたは政府代表ではありませんでした。高碕さんが政府代表でしたが、あなたもバンドン会議には参加されて、このベトナム問題に対しての決議が行なわれておりますので、これに対してはあなたも責任があるわけです。この中においては明確にこのベトナムに対する日本側並びにアジア諸国の態度というものは、これが統一されて初めて全ベトナムの統一政府ができるというふうに解釈をして、すなわちその上で国連加盟を支持する、こういう決議が行なわれておるわけです。そういたしますならば、その当時におけるものは、明らかにジュネーブ協定を支持して、統一選挙が行なわれ、統一政府を樹立するということでありますから、従ってその当時において、今日まで続いておる遺憾な状態は、これは暫定的なる不確定な、そうして限定されたる両政府の並立、こういうことが論理的に認められておるわけです。あなたはそのときにどういう御解釈でこの決議に参加されたか、その当時のいきさつを明確にしていただきたいと思います。
#67
○藤山国務大臣 ただいま条約局長が御説明申し上げましたように、ジュネーブ協定というものは、政治的協定ではございませんで、軍事休戦協定でございます。と同時に、その際に統一という問題が出ておりますけれども、むろんベトナム国というのは一つでありまして、われわれは南の方の政府を正統と認めております。しかしそれに対して何らかの軍事行動があった、従ってそういう状態を平穏にして、国内に騒乱がないように選挙を通じて一つの政府ができることが望ましいのだということが精神でありまして、そのことはわれわれも賛成であることは申すまでもないことであります。
#68
○穗積委員 その場合に、あなたはジュネーブ協定のことが頭にございましたか。
#69
○藤山国務大臣 むろん当時ジュネーブ協定のあとでございますから、そういうことは存じております。
#70
○穗積委員 ジュネーブ協定の場合においては、一方のバオダイ政権は全ベトナムの正統政府だ、一方のベトナム民主共和国は単なるプライベートな団体、または蜂起軍にすぎないという取り扱いにはなっておりません。この協定の中では、これは両方とも対等な政府として取り扱われておる。そのことをあなたはどうお考えでございますか。
#71
○藤山国務大臣 どちらが全ベトナムの政府かと見るのは、それぞれ各国の見るところだろうと思います。国内における騒乱を、選挙を通じて国民の支持による一つの政府ができるという、選挙を通じていきます過程ということは、それは望ましいことだと思います。私どももそういうことができることを希望はいたします。
#72
○穗積委員 条約局長にお尋ねいたします。私が先ほど経過を申したのは、四六年には、ホー・チミン政権が全ベトナムの代表政府であるという、その憲法を持ったホー・チミン政府を認めて協定を結んだ。それは国家承認の協定ではありませんが、協定を結んだ。ところが都合が悪くなって今、度はバオダイ政権を作った。バオダイが全ベトナムを統治する代表政権だということで勝手に作った。これはフランスの政策が両方矛盾しております。しかしそれは過去の経過でございますが、今日まで生きておる一番大事なことは、ジュネーブ協定で、フランスも入り、南ベトナム政府も入り、北ベトナム政府も入り、その他の国も入って、九ヵ国全部一緒になってそこで認められておることは、しかもなおかつ条約文の中で認められておることは、ただベトナム民主共和国という名前が出ておるだけではなくて、対等の取り扱いになっております。あなたが言うように、一方のバオダイ政権は正統政府としての取り扱いであるが、一方は単なる解放軍の代表、または地域的なプライベートな代表、そういう取り扱いになっておる事実は、この条約の中にどこを探してもありません。すなわち南北の両政府というものは、政府として認められ、対等のものとして認められ、それが何も一方が一方を合併するのではなくて、民主的な人民の統一選挙というものが三ヵ国による国際管理委員会によって一九五六年に行なわれるということを明確にしているわけです。そうしたならば、一方を全ベトナムの代表政権とし一方はそうではないということは、一体条約文の中のどこにございますか。
#73
○高橋政府委員 先ほど御答弁申し上げたと思いますが、これはやはり将来の問題を総選挙で扱い、現在の問題としましては休戦協定のことを扱ったのであります。従いまして、その名称の使い方その他によりまして、その法的な効果をそれに与えるというようなものを考えたところの協定ではないと考えております。いささか今までの御指摘の点は私は意見を異にする次第でございます。
#74
○穗積委員 そうではなくて、条約文のどこにそういうことがあるかというのですよ。前に、フランスが四八年にバオダイ政権を全統一政府として認めておる、だからこうだという。それならば、四六年に全ベトナムを主張するホー・チミン政権の存在を認めて事実上協定を結んでおる。それを一応一切御破算にして、ジュネーブ協定では限定、暫定政府であるという立場に立って、期限を切って、しかも国際管理に移して統一を予約しておるわけです。それがこの協定のみそです。中心です。そのときに両政府は対等なのです。条約上対等に認められている。それが違うというならちゃんと言ってもらいたいのです。それじゃ、この北のベトナム民主共和国というものは一体何を代表するものですか、どういう団体ですか。
#75
○高橋政府委員 ジュネーブ協定では、休戦をいたしますので、休戦の必要上、おのおの戦闘の相手方とこのような対等な関係に立って協定を結ぶということは、当然ではなかろうかと考えております。しかしながら、それ以上の法律的な、政治的な意味――政府とか独立とか、そういう意味はないというふうに私は申し上げている次第であります。この点につきましては、御指摘の点でありますが、私はいささか意見を異にする次第でございます。
#76
○穗積委員 意見を異にするはいいが、そんな意見を聞いておるのじゃないのですよ。私は条約の解釈を聞いておるのです。そのときの戦闘行為の相手方であるというが、その相手が何かといえば、ベトナム民主共和国政府なのです。
#77
○伊關政府委員 御参考までに申し上げますが、英国の政府の外交文書がございます。その外交文書集、その中に、英国政府はベトナム民主共和国、それからベトナム共和国という言葉を並べてこのジュネーブ協定の関係で使っておりますが、それに加えまして注釈を加えまして、このベトナム民主共和国という名称を使うことは、英国が南のベトナムをベトナムのただ一つの正統政府と認める政策に何らの変更を来たすものでないという注釈をつけておりますから、日本の政府も英国的なこういう解釈に立っているわけであります。
#78
○穗積委員 藤山外務大臣に申し上げておきますが、秋はちょうど一昨年、岸さんが政府を代表してこのベトナムとの賠償協定に行かれる直前の国会において、実はわれわれはそういう立場に立って、そうして今の南ベトナム政府が全ベトナムの領土と全人民を代表する政権として賠償交渉をされることにはわれわれ賛成できない、南ベトナム政府は南ベトナムの地域と人民を代表する政府として交渉なさるならばよかろう、どういうことかと言ってお尋ねいたしました。そういうことをわれわれは希望したのです。そうしたら、岸さんはそのときに、こう答えておられます。穗積君の御意見については十分私は心得ております。賛成の意を表しておられるわけです。そういうことで交渉に行っておられるわけです。
#79
○藤山国務大臣 総理が何かそういうことを言われたそうでありますけれども、その後総理は取り消されておりまして「外務大臣のしたような答弁と同じたということを御了解いたたきたいと思います。過般の私の答弁は、やや統一解釈と矛盾したことになっておりますけれども、趣旨はただいま外務大臣のお答えしたように了解いたしておる」というふうに答弁を訂正されております。
#80
○穗積委員 それはあらためてまた岸さんにお尋ねをいたしたいと思っております。藤山外務大臣の言ったのと同じというのは一体どういう論理でそういうことになったのか。その論理の過程が問題なんです。ですからそれはまた別の機会にいたしたいと思います。
 そこでお尋ねいたしますが、実はジュネーブ協定並びにバンドン会議も統一ベトナムの国連加盟を支持しているということであったのですが、その後事実行なわれていない。従ってわれわれは統一が完了した後に、賠償問題は正式にやるべきだというわけです。ところが政府はそれが困難であるからそこで南ベトナム政府と協定を進めるんだ、こういう論理です。そこでそれではお尋ねいたしますが、一九五四年以後今日に至るまで、この協定で国際的に確約された統一選挙によるベトナムの統一というものが阻害されているのは一体どういう理由でございますか、外務大臣にお尋ねいたします。
#81
○藤山国務大臣 国内的にいろいろな事情があると思っております。従ってそれらの困難な事情のもとになかなかそういう選挙が行なわれないと思うのでありまして、ジュネーブ協定以後一カ年たちまして、当時ジュネーブ協定国の議長でありましたソ連とイギリスとがロンドンへ集まりまして話をして、当分統一選挙は望めないということを関係国に通告をいたしております。そういう事情でございますからなかなかこういう問題はむずかしいのじゃないか、こうわれわれ考えるのは当然だと考えております。
#82
○穗積委員 私のお尋ねしておるのは、平和的な合理的な民主的な国際協定が実行できないでおるのは、今言う通り実行できる見通しが非常に困難だということを言われるわけですが、そうではなくて、一体どういう理由によって困難なのか、それを明確に、どういう判断をしておられるかということを聞くわけです。
#83
○藤山国務大臣 双方にいろいろな事情があると思います。そういうような諸般のいろいろな事情のためになかなかそういう選挙がとり行なわれない。しかもとり行なわれない事情というものを、ジュネーブ会議の議長でありますソ連とイギリスとがロンドンへ寄りまして、そうして確認して、なかなかできないからということを関係国にも通告しておるのでありまして、われわれはそういう状況にあるという事態を正しく認識して参らなければならぬと思っております。
#84
○穗積委員 われわれの判断では翌年の五五年以後、アメリカがフランスにかわって今のゴ・ディンジェム政府を確立して、これに対して軍事的、経済的援助を行なって、特に軍事的援助を行なって、そして今日の統一を阻害している、結論的に言えば。その事実を外務省は調べ、認めておられますか。
#85
○藤山国務大臣 むろんそういう状態でありますから、自由主義――南を承認しておりますところは、南に対して援助を与えることは私は当然なことだと思います。北を承認している国は北に援助しておったかもしれません。そういう状態でありますから、南を援助したこと自体が、特に何か統一を妨げるということではないように思います。
#86
○穗積委員 これは今までも再々議論になりましたように、軍事的な援助、軍事物資まで含む軍事援助、これはジュネーブ協定の違反であると思いますが、条約局長はどう解釈しておられますか。
#87
○高橋政府委員 それはジュネーブ協定当事国間の問題であると考えております。
#88
○穗積委員 当事国であるとあるまいとは別として、その行為があったとすれば、それが今日われわれがベトナム政府と合理的なかつ民主的な賠償協定をしようとするのに阻害になっておるわけでしょう。だから統一を願望し、その統一の方法というものは、平知的、民主的なる選挙によってやるということを、調印はしておりませんが、その協定を認めて、そうしてバンドン会議でこれを支持しておる。日本もそれを願望しておる。それを阻害しておる事実に対してわれわれは無関係であるから知らない、こういうことでは――関係ないことはない、大いに関係があるのです。どうですか、それは。
#89
○高橋政府委員 条約的に、法律的に拘束されるということはないと思っております。
#90
○穗積委員 日本が拘束されるのではない。アメリカは締約国ですよ。それは極東の平和に関係してくるのです。極東の平和に大いに関係しておるじゃありませんか。しかもわれわれはラオスについても協定を結んでおらないのに、この間ラオスに行っている。これは国連という平和問題を中心とする関係でやっておるでしょう。協定の違反については調印国以外においても、国際的な平和問題、当然これは取り上ぐべき問題である。関連がなければならない。そういうことを調査しないのですか。締約国以外のことは何も知らないでいいということなんですか。
#91
○高橋政府委員 それはアメリカとベトナムとの関係でございますので、私からどうこう申し上げるのは、ちょっと差し控えさしていただきたいと思います。
#92
○穗積委員 今度の賠償協定そのものの実施内容が、軍事的性格を持つということになれば、われわれは締約国ではありませんが、ジュネーブ協定に反する、そう解釈しておられるでしょう
#93
○高橋政府委員 日本は当事国でありませんので、私が条約的に云々する問題ではないと考えております。
#94
○穗積委員 それでは武器による援助あるいは軍隊による援助あるいはまた軍事同盟を結ぶということも、何ら日本としては差しつかえないという解釈をしておられるわけですか。
#95
○高橋政府委員 これは条約的には、法律的な拘束は何もないということは、先ほど申し上げた通りでございます。いろいろな条約関係に入る場合には、相手国の、日本以外の国と条約関係にあってそれがどういうものであるかということを検討し、かつ尊重すべきは当然だと考えております。
#96
○穗積委員 だから再々言う通りに、この相手国であるベトナムに対して、それとの関係をわれわれがこれから交渉し実施する場合に、そういう意味で相手国に関係があるから、だからこそジュネーブ協定を尊重するのかしないのか。ジュネーブ協定の内容を知り、ジュネーブ協定を尊重する立場においてバンドン会議の決議が行なわれ、これに対しては日本も政治的な責任を持っておるわけだ。それは何かというならば、統一を実現すること。その統一を実現した後に国連加盟を支持するということ。従ってそれがどういうわけで行なわれないかということ。こういうことであるならば、一つはその原因を明確にし、そうしてジュネーブ協定そのものが軍事的な、軍事基地を初めとする軍隊の入国あるいは軍事物資に至るまで、これを援助することあるいはまた関係諸国と軍事同盟を結ぶことすらこれは禁止しておるわけです。その条約を尊重し、その条約に違反しないような協定を結び、賠償の実施を行なう、そういうことを考えることは、われわれの当然の義務じゃございませんか。いかがでございますか。
#97
○伊關政府委員 今回の賠償協定が承認されまして実施を予定されておりまする計画には、何ら軍事的なものはございません。われわれとしましても、ジュネーブ協定の精神というものは十分考慮しております。
#98
○穗積委員 軍事的内容を持っておるかおらぬかは、これからわれわれは明らかにしたいと思うのです。私の言うのはそういうことではありません。ジュネーブ協定を尊重する態度、ジュネーブ協定の法律上の拘束力だけでなくて、政治的なる、これに対するわれわれの責任、義務というものを私はここで問題にしているわけです。それを言っているわけです。ジュネーブ協定では、明確に平和的な取りきめというものが行なわれており、軍事的増強一切を禁止しております。それを尊重しなければならない。さらに、相手国はその条約によって拘束されておる、それをわれわれは支持して、政治的な決議ではありますけれども、バンドン決議をやっておるわけです。従って、日本だけでなくて、締約国相互の間における行為としてでも、ベトナム地域に対する軍事的な増強行為というものは、われわれは関心を持たなければなりない。条約の解釈では、これは違反であるという解釈は少くとも成り立つ、こういうことを言っておるのです。いかがでありますか。
#99
○伊關政府委員 ですから、今度の賠償協定によって実施されるであろうものには何ら軍事的なものはない、政府はこう確信しておるわけであります。
#100
○穗積委員 軍事的内容を持っておるかおらぬかということを聞いておるのではない。それは後の問題だと言っておる。そうではなくて、条約並びにバンドン決議に対するわれわれのオブリゲーションを聞いておるわけです。
#101
○伊關政府委員 モーラル・オブリゲーションといいますか、そういう精神は尊重してものを考えておるということは、総理もたしかおっしゃったと思います。
#102
○穗積委員 そうであるならば、しかも、われわれが賠償を実施しようとする相手国に対して、これの統一ができ、統一政府との間でやりたいという願望は、すでに日本政府も表明しておるわけです。そのことができない原因というものについて、われわれが明確にすることは当然のことだと思うのです。たからそれを聞いておる。どういうわけで、最もわれわれが支持し、最もわれわれが願望しておるところのジュネーブ協定の約束が実施されないのか、その原因を明確にすることは、賠償協定を行なう場合に当然の判断として取り上ぐべき問題だと思うのです。外務大臣、いかがですか。
#103
○藤山国務大臣 ただいままで御説明申し上げましたように、いろいろな困難があると思います。それを、ただ、何かアメリカの軍事援助だけがじゃまになっているの、だということにはわれわれ考えておりません。
#104
○穗積委員 私が言っているのはこういうことです。北ベトナムはいつでも自由選挙をやろうということをしょっちゅう繰り返して言っている。ところが、それを拒否しているのが南ベトナム政府なんです。問題は南ベトナム政府の中にあるわけです。だから、その原因はどこにあるかということを言っておるのです。
#105
○伊關政府委員 南ベトナム側から言わせますと、北越のあの制度のもとでは自由選挙は絶対に行なわれない、こういうふうに南ベトナム政府は言っておるわけです。
#106
○穗積委員 南ベトナム政府はどう考えているとか、あるいはまたアメリカがどう考えているとか、そういうことを聞いているのではない。事実を聞いているのです。そうしてその事実に対する調査と日本政府の認識を聞いておるわけです。だれが何を言っているということを私は聞いておるのではありません。
#107
○伊關政府委員 南と北が当事者でありまして、その南が、行なわれない、そういうことでは自由選挙は行ない得ない、こういっておりますから、当分行なわれないだろう、こういうことになるのでありまして、また、英国、ソ連両方のチェアマンでありますが、これも、この状況では当分行なわれないだろう、そういうことをいっておるわけであります。
#108
○穗積委員 それではその問題は、それを外務省としては認めておるわけですか、その言い分を正当な言辞として。
#109
○伊關政府委員 そういう言説を認める認めぬというよりも、実際問題として当分行なわれないだろう、そういたしますと、今度は別の条約上の義務というものが観点に、考慮に入ってくるわけです。
#110
○穗積委員 だから、その原因はどこにあるかということなんです。日本自身の判断はどうかということを聞いているのです。
#111
○伊關政府委員 日本自身は自由陣営に立っており、従って判断もその方から出てくるわけであります。
#112
○穗積委員 それでは時間も参りましたので、ここで、私はあとの討議のために資料を一、二お願いしておきたいと思います。
 まず第一は、ビルマを初めとして、今までに各国と賠償協定が締結され、しかも実施に入っているのがあります。その実施状況について明確な資料をいただきたい。これは、日本の側のと同時に、その賠償が行なわれたときに、相手国で一体それがどういうふうに実施されているかということを含んで資料を要求いたしたいと思います。
 もう一点は、この間ちょっと触れましたけれども、これは政府の問題ではない、国会の問題ですから、委員長で処理していただきたいのですが、本年の六月二十七日付で、ベトナム民主共和国の国会常任委員会の議長から、日本の衆参両議長にあてて、ベトナム賠償問題に対しての要望書がきております。それをわれわれはこの際明確にしていただいて、そして国会としては一体どういう態度をとるのか、そのことを明らかにするように委員会を通じて要望いたしておきたいと思いますので、ぜひそれを明らかにしていただくようにお取り計らいをいただきたい。委員長にお願いしておきます。よろしゅうございますか。
#113
○小澤委員長 穗積君の希望は十分尊重いたしまして、適当な処理をいたします。
#114
○小田部政府委員 今御要求のありました実施状況に関しましては、詳しくすればある程度の時間がかかることを御了承願いたいと思います。
#115
○小澤委員長 本日は、これにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。
    午後零時五十二分散会
ソース: 国立国会図書館
【PR】姉妹サイト