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#1
第033回国会 外務委員会 第14号
昭和三十四年十一月二十四日(火曜日)
    午前十一時二十六分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君
   理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君
   理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君
   理事 床次 徳二君 理事 小林  進君
   理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
   理事 堤 ツルヨ君
      池田正之輔君    石坂  繁君
      加藤 精三君    鍛冶 良作君
      菊池 義郎君    久野 忠治君
      小泉 純也君    二階堂 進君
      福家 俊一君    古川 丈吉君
      前尾繁三郎君    森下 國男君
      山口六郎次君    岡田 春夫君
      柏  正男君    勝間田清一君
      田中 稔男君    穗積 七郎君
      春日 一幸君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  小林 絹治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊関佑二郎君
        外務事務官
        (アジア局賠償
        部長)     小田部謙一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
十一月二十四日
 委員愛知揆一君、宇都宮徳馬君、園田直君、野
 田武夫君、山村新治郎君及び帆足計君辞任につ
 き、その補欠として久野忠治君、池田清志君、
 山口六郎次君、二階堂進君、大坪保雄君及び戸
 叶里子君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員池田清志君及び大坪保雄君辞任につき、そ
 の補欠として古川丈吉君及び鍛冶良作君が議長
 の指名で委員に選任された。
同日
 理事田中織之進君同日理事辞任につき、その補
 欠として戸叶里子君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
十一月二十日
 千九百五十九年の国際小麦協定の締結について
 承認を求めるの件(条約第三号)(参議院送
 付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関
 する協定の締結について承認を求めるの件(条
 約第二号)
     ――――◇―――――
#2
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。理事田中織之進君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○小澤委員長 御異議なければさよう取り計らいます。
 この結果、理事が一名欠員となりますので、その補欠選任を行なわなければなりませんが、これは慣例に従い、委員長において御指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○小澤委員長 御異議がなければ、戸叶里子君を理事に指名いたします。
     ――――◇―――――
#5
○小澤委員長 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、以上二件を一括議題とし、質疑を行ないます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。春日一幸君。
#6
○春日委員 まず、冒頭に委員長を通じて、両党の本委員会の当事責任者に厳重に警告を発せられたいのであります。それは両党の当事者が連絡不備のためにこの貴重な審議に先がけこの一時間を浪費いたしました。今後こういうことのないように、議員は十二分に時間をかけて審議を尽し得るように、かくのごときむだを省くために、事前に万全の打ち合わせをされまするように、委員長において両党の当事責任者に厳重に警告を発せられたいと存じます。
#7
○小澤委員長 春日君の御注意はきわめて正当のことでありまして委員長は極力その線に沿うて努力をいたします。
#8
○春日委員 そこで外務大臣にお伺いをいたしますが、ベトナム共和国がわが国に請求をいたしておりまする賠償請求権の根拠となりまするものは何でありますか、その法律、条約等についてこの際御答弁願います。
#9
○藤山国務大臣 ベトナムが日本に賠償を請求しております根拠は、たびたび申し上げておりますように、サンフランシスコ条約によりまする義務でございます。
#10
○春日委員 そういたしますると、サンフランシスコ平和条約の第十四条、これが中心となる根拠条約であると思うのでありますが、この十四条には厳に役務賠償の原則を規定いたしておると思うのでございます。このベトナム賠償ではその原則が破られて、生産物賠償を行なおうといたしておるのでありますが、この法的根拠は何に由来しておるのか、この点を明確にいたされたいと思うのであります。
#11
○高橋政府委員 第十四条の解釈の問題になりますので、私から補足的に御説明させていただきます。十四条ではなるほど御指摘の通り日本人の役務ということになっておりますが、この解釈につきましては広義及び狭義、二つながらの解釈が成り立つものと思います。すなわち生産物でございましても、役務によってそれが生産物に化体したのだ、そのような広義の解釈も可能ではないかというふうに考えておる次第でございます。そして、この解釈で十四条に基づきまして賠償をいたしましたところ、必ずしも狭義の解釈による必要はない。ここの主眼とするところは、外貨負担を日本にかけないというところが最も重要な主眼ではないか、そういうふうに解しまして、外貨負担ということに対しまする制限のほかは、役務ということを広義に解釈をして賠償を行なっている、こういう事情でございます。
#12
○春日委員 まずこの生産物賠償に対していろいろと疑義があると思うのでありますから、この疑義を明快にいたしたいと存ずるのでございます。今お説の通り、十四条は役務賠償の原則を確立をいたしておる。そこで今役務の中には生産を含むことになっておる。従ってここに広義解釈のきっかけが出て参ると思うのでございます。そこでその原料については外国為替上の負担を日本に課さないこと、これがまた第十四条の中において日本に保証されておるところでございます。これは最も重視しなければ相ならぬと思うのでございます。これをよし広義に解釈をしたといたしまして、日本産の原料をもってする生産を含むものとする場合におきましては、あるいはそのような了解が成り立つかもしれないのでございますが、一部でも外国産の原料を必要とする生産については、相手国からその原料の供給がない限り日本としてはこれに応ずる義務はないのでございます。これは第十四条において、日本国が存立の基礎を危うくしないように明確に桑港条約の中で日本に保証されておるのでございます。しかるにこのベトナム賠償協定では第二条第三項におきまして、「外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施しなければならない。」と規定しておるのでありますけれども、ここに、外貨の追加負担のない限りということは、今までのあらゆる賠償協定、すなわちビルマの賠償協定、インドネシアの賠償協定、フィリピンの賠償協定、いずこにも用いられなかったところの文字であります。外貨の追加負担のない限り、外貨の通常負担と認められる生産物賠償を容認しておるということが新しい形態でございまして、広義の解釈が許されるとする場合は、すなわち大体において第十四条の精神、それから桑港条約全体に流れておりますところの精神から徴しまして、あるいは今申し上げましたように役務の変体としての生産物あるいはフィリピンとの賠償協定の中において理解されましたところの通常の負担というようなもの、こういうような場合はあるいは認められ得るかもしれないとかりに百歩譲ったといたしまして、少なくともここに外貨の追加負担をしない限りは認めてもいい、こういうような表現をするということは明らかに行き過ぎであると思うが、この点についていかにお考えになっておりますか。
#13
○高橋政府委員 お答え申し上げます。先ほどの御答弁申し上げた点を補足してお答え申し上げたいと思いますが、外貨負担と申しましても、少しでも外貨負担がありますれば全然いけないのだというふうにわれわれは解しておりません。私どもといたしましては、この外貨負担の問題がどの程度に入りました場合にこの条約で考えているところの外貨負担になるか。これは個々の場合における程度の問題であるというふうに考えております。
#14
○春日委員 あなたの方がそのように勝手に独断的に解釈をされることは――これはその協定を実施するにあたっては、しょせんは日本国民の血税による、こういう立場においてそういう独断的な解釈はあなたには許されないのでございます。私どもはやはり忠実にサンフランシスコ講和条約を履行しなければ相ならぬでございましょうが、しかしながらこの条約に定められております範囲内においてのみ義務を課せられておるのでございまして、この範囲を越えて過剰サービスをするということは、少なくともわが国の行財政の現状において、それは度を越えたことと申さなければ相ならぬでございましょう。これは申し上げるまでもなく素朴な理論であるかもしれませんけれども、原材料からの製造が必要とされる場合には、外国為替上の負担を日本国に課さないために、原材料は当該連合国が供給しなければならねばならぬと明確に規定いたしておるのでございます。従いまして役務賠償の原則が確立をされて、そうして役務の変形であるところの生産にもこれを及ぼしてはおりますけれども、その限界というものは、明らかに日本国の国内産の原料あるいは通常に輸入いたしておりますものの余剰原材料とか、そういうような広義の解釈の可能な限界というものはおのずからそこにあろうと思うのであります。今回のように、こういうような表現を用いて、結果的に生産物賠償というものが自由自在にできるというような、そういうような協定を取り結ぶということは、明らかにサンフランシスコ講和条約によって日本に課せられておるところの義務、また日本に保証されておるところの権利、これをみずから放棄したものであると思う。これは私は行き過ぎであると思う。この点政治的に大臣はいかにお考えになっておるのでありますか。
#15
○藤山国務大臣 御承知のように、外貨負担の問題は、むろん日本の終戦後の現状からいいまして困難な問題であります。従って、サンフランシスコ条約にも、そういうことを自由に賠償を受ける国が要求したのではいけないという限定を設けたわけであります。従って、先ほど春日委員のお話もありましたように、一般的な普通の輸入によって取り行なわれております生産物というものは当然必要であろうかと思います。一般的にやってよろしいという範疇に入ると思います。ただしかし、特殊な何か必要のために外貨を使って、特殊な計器を使うとか、あるいは特殊な何か原料をそのためにだけ輸入してやるということは適当でないことであります。でありますから、今回その意味で書きましたことは当然のことでありまして、従来書きませんでも今回書いたことはなお慎重であった、こういえると思います。
#16
○春日委員 私は、日本国民の利益を守られる外務大臣の立場において、少なくともこの第十四条の規定保証、この立場に立って当然交渉の過程においていろいろな主張がなされたと思うのでございます。すなわち、生産物賠償を請求されるいわれのないこと、また日本がそれに応ずる義務を課せられておらないこと、このことは当然交渉の過程において主張されたと思うのであります。にもかかわらず相手がこういうような生産物賠償を要求して参ったについては、それぞれの事情がなければならぬと存ずるのでございます。従いまして、この際相手方が十四条の限界を越えてそのような生産物賠償にまたがるところの膨大要求をするに至ったその理由、事情について御説明を願いたいと存ずるのでございます。
#17
○藤山国務大臣 今回の交渉にあたりまして、たびたび申し上げておりますように、従来の交渉と同じように専門的な委員が寄りまして賠償を受ける国の立場からこういう種類の生産物が必要である、それらについては日本においては特別な外貨負担があっては困るわけでありますから、従来と同じように物によっては特別な外貨負担がかかるから、そういうものは賠償の範疇に入れられないんだ、種類に入れられないんだということをわれわれも主張してきておるわけであります。従いまして、今回妥結いたしましたものも、通常輸入によりますものを原材料とした生産物以上に、特殊なものを、外貨負担を新たにやりまして提供するということは厳にいたさないようにして参らなければなりません。現在の段階におきまして、以上申し上げたような交渉をやって参っておるわけでありますが、今後実施計画が、批准が終わりましていよいよ実施するという段階におきましても、それらの問題については、われわれとして特殊の外貨負担のものについては、これを拒絶して参ることは当然でございます。
#18
○春日委員 私の伺っておりますのはこういうことでございます。たとえば一九五三年の九月に二百二十五万ドルにわたるところの沈船引き揚げ協定が仮調印をされました。このベトナムとの賠償協定は、大体においてこの限界というところで、たしか三十一年の予算資料にも提出されておったところであります。にもかかわらず、その後南ベトナムがこれに調印をしない。そうして一方的に国際信義を無視して破棄してきた。そうでございますね。大体スタートは二百二十五万ドルなんです。ところが今回これがかれこれ二百億円になんなんとする膨大要求になってきたについては、君の方はもと二百二十五万ドルしか要求していなかったじゃないか、そんな要求をすることは不当だというので、一九五三年九月の沈船引き揚げ協定の仮調印を根拠として、当然日本政府の代表としては、日本国民の利益を守る立場において、その不当な要求に対して、この十四条をたてにとってそれぞれの交渉がなければならぬと思うのであります。にもかかわらず、相手が二百二十五万ドルの仮調印をしたものを破棄して、あらためてこのような膨大な要求をしてくるについては、それぞれの論拠がなければならぬ。相手は何を言ってきたか、これを伺っておるわけでございます。
#19
○藤山国務大臣 御承知のように沈船引き揚げはいわゆる中間賠償という形におきまして交渉が継続され、また仮調印もいたしたわけでございます。従って、二百二十五万ドルというものは全賠償額からいえば非常な小額でありますことは当然でありまして、これはインドネシアの場合においても、フィリピンの場合の中間賠償の沈船引き揚げの場合におきましても同じことであります。正確な数字には、あとで政府委員から申し上げますけれども、フィリピンの場合におきましても非常に大きな額になっております。それはあるいは賠償額から見ますと、中間賠償の沈船引き揚げというのは非常に小さい額だということが申し上げられると思うのでありまして、そのこと自体が、われわれは中間賠償の性質から申して全部であるとは申し上げかねると思います。
#20
○春日委員 それは不実なことを答弁されておると思うのでございます。と申しますのは、私どもがいろいろ調査をいたしておるのでありますが、たとえば昭和三十年度「国の予算」という文献を一つお調べ願いたいと思うのでございます。これは大蔵省主計局内財政調査会が責任を持って編集をいたしておる資料でございます。これによりますると、第七章賠償等特殊債務処理費 第一節賠償等特殊債務処理費 二賠償費の四の中に「ヴェトナムに対する賠償」として次のような記述があるのでございます。それによりますと、「仏印三国のうち、ラオスはサンフランシスコ平和条約会議においては対日賠償要求を行っておらず、カンボヂャは二十九年対日賠償要求権を放棄した。ヴェトナムに対する賠償については、二十八年七月両国政府代表の間で合意に達した沈船引揚げによる賠償協定(総額八億一千万円、二百二十五万ドル三カ年分割実施)によって、大部分解決されるはずのところ、その後ヴェトナムの都合により、正式に調印されずに、今日に至っている。同国の政情不安のため、三十年度に実施に移されるかどうかは疑問である。」こういうふうに政府が書いておるのでございます。今大臣の御答弁によりますと、中間賠償というものは相手方が要求するものの中のほんの一部分にしかすぎないものであって、彼らはその当初からそのような額を期待しておったのだという御答弁でありますけれども、その当時大蔵省が責任を持ってわれわれに配付いたしております三十度「国の予算」なる資料の中には、これによって、すなわち八億一千万円によって大部分のものが解決されるはずのところ、こういう工合にうたっておるのでございます。これは大臣の御答弁とこの三十年度の「国の予算」という中に政府が述べておりまするところと著しく隔たっておると思うのでございますが、この点はいかがでありますか。
#21
○藤山国務大臣 むろん賠償交渉でありますから、当方が非常に少額を主張してスタートを切って参りましたことは当然であります。でありますから、沈船賠償に際しましても、われわれはできるだけ少額な沈船賠償で済めばそれが一番いい。しかし、向こうとしては二億五千万ドルを主張しておったわけであります。その他の国との賠償関係から見ましても、とうてい二百二十五万ドルで最終的に解決するとは予想されておらなかったわけであります。
#22
○春日委員 この点を一つお互いに虚心たんかいに明快にいたしましょうこういう工合に政府が書いておるのです。ベトナムに対する賠償については「八億一千万円によって大部分解決されるはずのところ」とうたっておるのですよ。こういうことは、今大臣が答弁された、八億一千万円というものは彼らが当初から計画的に要求しておったところのほんの一小部分であったのだということは不実なことではないか。この点を明らかにせなければ次の質問ができません。この点一つありのままに述べていただこうではございませんか。その間においてそれぞれの交渉があったと思います。交渉の記録もあると思います。私はそれをまた後日資料として提出の要求をいたしたいと思うのでありまするが、いやしくも大蔵省のこの資料の中で――これは沈船引き揚げ協定に関する要求ということではないのですね。すなわちベトナムに対する賠償についてはこれでその大部分の解決を見るはずのところ、相手方が一方的に破ったのでおじゃんになった。しかし、本年度においては政情不安だからまとまるような気配もない、このことを述べておるのです。この点いかがでありますか。
#23
○藤山国務大臣 ありのままに申し上げておるわけでありまして、当時二億五千万ドルを主張しておったベトナム側の要求に対して、われわれはむろんできるだけ少ない金額で済ましていきたい。むろん戦争によって迷惑をかけたことでありますから、誠意を持ってやらなければなりませんけれども、しかし金額はできるだけ少ない金額でやりたいということは、日本の国民、政府がみな一致した考えだと思います。従って、二億五千万ドルというような大きな金額に対して、われわれはそうは払えないのだ、このくらいでいかざるを得ないのだということを主張することは、当時から当然そうあるべきだと思います。しかし、交渉でございますから、お互いに話し合って逐次歩み寄っていくということも当然やらなければならぬことであります。そういう意味におきまして、ありのままに申し上げておる次第でございます。
#24
○春日委員 それでは伺いますが、このベトナムとの交渉の大体の日取りをたどってみますると、一九五一年サンフランシスコ平和会議に、南ベトナム側が賠償の支払いを期待する旨正式に態度を明らかにした。それから次いで一九五三年九月二百二十五万ドルの沈船引き揚げ協定が仮調印され、次いで一九五六年南べトナムが前記の協定を破棄して賠償交渉の再開を申し入れた。そして一九五九年五月十三日あなたとマオ南ベトナム外相との間でこの協定が調印された。そこで私が今伺っておりますのは、この四つのポイントの中で、二億五千万ドルというような膨大要求を相手が口を切ってきたのは、いつであるかということであります。
#25
○伊関政府委員 二億五千万ドルの金額が出ましたのは、たしか五三年の七月三十七日の会議において、沈船の交渉をいたしておるときでございます。
#26
○春日委員 その次の会議はいつですか。
#27
○伊関政府委員 沈船の会議は、ずっと九月まで何回もやっております。
#28
○春日委員 だから二億五千万ドルの口を切ったのはいつですか。
#29
○伊関政府委員 五三年の七月二十七日だと思います。いずれにしましても五三年の七月中でございます。
#30
○春日委員 そういたしますとこれは何ですか。大蔵省がこうやって書いておるのですが、このベトナムに対する賠償については二十八年七月両国政府代表の間で合意に達した沈船引き揚げによる賠償協定、これによって大部分解決されるはずのところ、というのはうそですか。
#31
○伊関政府委員 当時から向こうは、この沈船協定の交渉をやっておりますときに、百万ないし二百万ドルの沈船引き揚げというものを初めから申し出ております。その際に、賠償総額の一ないし二%に当たるというふうな注釈をつけております。それに対しましてわが方は、とてもそんな二億五千万ドルなんという数字は問題にならないということを、繰り返し主張いたしておりまして、結局合意議事録におきましては、ベトナムの賠償はベリー・スモールであるということをこちらが言っております。それに対して向こうは、ただテーク・ノートするということで、二億五千万ドルの数字を引っ込めてはおりません。ただ交渉に当たっておりましたわが方の交渉の当事者にいたしますれば、なるべくこういうものでもって少なくしたいという気持を持っておりましたから、その大蔵省の書いておりますものは、わが方の考え方といいますか、わが方の希望といいますか、そういうものを書いておるのでありまして、先方との間に、そういうことによって話がまとまっておるというものではございません。
#32
○春日委員 それはまことに妙なことを言われるものだが、私は読んで字の通り、大蔵省が、政府がベトナムに対する賠償については、これで大部分解決されるはず、という確信の上に立って言っておるのですよ。これにて解決されたら非常に好ましいだとか、解決されたいものだというようなことを述べておるのじゃない。しかも私は異様なことを伺うのだが、一九五三年の九月に、沈船引き揚げ協定が仮調印されておるわけですね。そのときに相並行して、一方において賠償交渉というものは行なわれておったのでありますか。相手方はだれと日本側はだれとで、一体その賠償協定の交渉が行なわれておったのでありますか。私どもの知る限りにおきましては、南ベトナムが前記の協定を破棄して賠償交渉を再開した日時は、三年経過した一九五六年ごろに始まったものと理解しておるのでありますが、違うのでありますか。そして三カ年たって再開された後、交渉は七カ年にわたって本日まで続けられて、藤山さんがこれに調印した、こういうふうに理解しておるのでありますが……。もう一ぺん言いますが、一九五三年九月に仮調印されて、それが向こうで本調印されないまま三カ年間経過した。それから向こうから再開の申し出があって、一九五六年に交渉が再開された。それから七カ年間かかってこの交渉ができた、こういう工合にわれわれは理解しておりますが、違うのでありますか。
#33
○伊関政府委員 沈船につきましては五三年に交渉があったわけでございます。それから純賠償につきましては一九五六年の一月から始まっておりますが、この沈船の交渉の経過におきましても、向こうは二億五千万ドルというふうな数字を出しますし、わが方はベリー・スモールであるというふうな発言をいたしておりますから、このころからすでに純賠償につきましても前哨戦が行なわれておったというふうなことは言えると思います。純賠償につきましてのほんとうの交渉というものは、五六年の一月からでございます。
#34
○春日委員 そういたしますと、これは後ほど他の責任者から伺わなければならぬと思うのでありますが、あなたがそういう答弁をされますけれども、現実に第十四条の中では、請求権、財産に関する取りきめの中で「連合国が希望するときは、生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を当該連合国の利用に供する」云々と規定されておる。従いまして、役務賠償、なかんずく表徴的なものは沈船引き揚げ、こういう工合に理解されておったのが、実際問題としてその当時の通念です。そこでこういうような条約ではわれわれに理解できないというふうな国々、連合国の中でもフィリピンなんかは、こんな条項などは理解できないのだから、納得できないのだから、われわれはこれを批准しないんだということで、現実問題としてサンフランシスコ条約を批准しないでおるような連合国もあるのですよ。従いまして、今あなたが言われるように、この講和条約が調印された二年後にいきなり、その当時における通念を著しく踏み越えて、このような二億五千万ドルの要求が、しかも生産物を含めて要求され得るような、そういう情勢の中でもありませんでした。その当時においては、御承知の通りビルマの賠償もその翌年です。フィリピンもインドネシアもずっとあとです。どこもなされていないときに、その当時における第十四条の国際的な理解の通念、この条章の厳粛なる規定、それからいまだどこも前例がない、そういうようなときに、この二億五千万ドルに当る膨大な、生産物をも含むところの賠償を、南ベトナムが単独にこれを固有の権限として主張するような、そういう政治的な背景もないし、法律の基準もない。また二十六条にいうような、二国間の平和条約の同一利益の均霑保障条項、こういうようなものが適用される段階にはないのですよ。そのときに、相手が二億五千万ドルを要求したというのはほんとうですか。それは一体だれが要求し、だれがその要求にこたえておったのですか。その人の氏名、場所、これを一つ明らかにされたい。
#35
○伊関政府委員 今の二億五千万ドルの要求が出ましたのは、五三年七月二十七日と申し上げましたが、これは先方の土木局長であるジエムというのが申し出たわけでありまして、これは本国に帰りまして、本国政府の意向として持ってきたのであります。わが方の当事者は大野参事官でございます。
 それからただいまのお話でございますが、すでに平和条約の調印の際に、向こう側は大きな賠償要求をするということを申しておりますし、ほかの国との関係におきましても、日本とフィリピンにつきましては、すでに一九五一年一月に、津島さんが向こうのエルサルデ外相との間に話し合いを始めております。またインドネシアにつきましても、五七年の十一月にジュアンダ外務大臣と津島さんとの間に、やはりそういう問題が起きております。いずれの国も、そうした大きな数字をそのころから出しております。
#36
○春日委員 私はこの際明確にいたしておきたいことは、この十四条に規定されているわが国の賠償の義務についてであります。義務は果たさなければならないけれども、せっかく連合国が日本の国家としての存立の基礎を確保するために保障してくれた権利までも放棄するというようなやり方は、今そのことごとくの負担が国民の血税によってまかなわなければならぬ点から考えましても、これは大いに慎重を期してもらわなければならぬことは、言うを待ちません。今あなたはフィリピンと津島さんとの関係のことを述べられておりますけれども、フィリピンについては、やはりフィリピン自体がこの講和条約第十四条との関係において特に慎重な態度、合法的な態度をとって、その手続を正当に踏んできておると思うのであります。たとえて申しますると、フィリピンはサンフランシスコ平和条約を調印した際に、この十四条の役務賠償の規定それ自体に反対を表明をいたしまして、そうして現金の賠償、少なくとも生産物賠償を要求いたしまして、よって第十四条の留保の声明をいたしておるわけであります。ところがベトナムはその声明をいたしておりません。いいですか。フィリピンは役務賠償を後日要求するという意思をサンフランシスコ講和条約において明らかにしておりまして、特に十四条の適用の留保を声明いたしまして、それがゆえにこの平和条約を批准はしていない。すなわちフィリピンとしてはまだ賠償に関しては日本との間に直接の交渉をして、その話し合いの満足いくような妥結ができた際に初めてこの平和条約を批准するという態度をとったことは御承知の通りであります。ところがベトナムはそのような留保もしていない。そうしてその批准をたちまちしているのです。これはフィリピンの場合と全然立場を異にしておると思う。すなわち、その適用の留保の声明をし、その条約を、日本との間において、すなわち津島さんとの間において大むねフィリピンが了解できるような取りきめに達した後でなければ批准しないという態度をとってきているのですね。それとこのベトナムの場合とは全然その立場が違うと思うのです。インドネシアの場合でも、調べてみまするとこれまたフィリピンと同様の立場をとりましたけれども、その後平和条約全体に対してこれを承認することができない、こういうことになって、そうしてこれは単独の二国間の平和条約を結ぼうということで、このサンフランシスコ講和条約の賠償については何ら拘束を受けないということが法的に明確になっておるわけであります。その後津島さんと日比間の賠償協定が進められたのだが、そのときには役務賠償のほかに日本に外国為替上の負担を特にかけないという範囲内において原則として資本財の賠償を認める、そういうことで昭和三十一年に日比賠償協定が妥結しておるわけでございまして、これはベトナムとは全然その立場が違います。法の手続も違っております。これはビルマ、インドネシアとあたかも同然の処理がされておるように言われておりまするけれども、これは私は根本的にその根拠を異にしておると思うが、この点いかがでありますか。
#37
○伊関政府委員 ベトナムのチャン・ヴァン・フー首相でありますが、五一年九月七日に次のような趣旨の演説を行なっております。日本の手により被害をこうむったものが賠償を受ける権利を明示しているが、主として役務提供の形式により与えられる賠償は原料をほとんど持っていないベトナムにはあまり役に立たない。日本と同じようにベトナムはその経済再建のために大量の資本導入を必要としている。従って役務提供による賠償を受けることは法定通貨でない貨幣を受け取ると同じようなものである。ゆえにわれわれは他のもっと有効な支払い形式が研究され、規定された手段に加うるに通常の賠償を特に期待していることを要請しなければならない。ついで九月十八日には、ベトナムは日本に対して少なくとも二十億ドルの賠償支払いを要求するであろう。日本は十分な時間が与えられればこの支払いが可能で、それは日本経済の復興を阻害しないであろうと考えている。支払い方法は両国の交渉によって決定されることになろうが、それはできるだけ早く開始されることを希望する。こういうふうに五一年から考え方としては、ベトナムもこういう考え方を持っているわけです。
#38
○春日委員 そういう考え方を持っておれば、ベトナムとしては――私はしろうとですから法律論で戦うわけじゃありませんけれども、だれが考えてみたって、そのような役務賠償だけでは満足できないものであるならば、それはちょうどフィリピンがとったと同じように、第十四条の適用はいやだ、だからこの権利は留保するとか、かるがゆえにこのサンフランシスコ条約は批准しないとか、こういう態度がとられるにあらざれば、第十四条を含めたところの条約に連合国の一員として署名しておいて、納得しておいて、そうしてあとでどんな演説をやったところで、そんなものは有権的なものじゃございません。やはり有権的な処理というものは、その条約に署名した以上は、その権利義務がその両当事者国に課せられるものと思います。その点はいかがでありますか。
#39
○伊関政府委員 私が申し上げておりますのは、ベトナム側が平和条約を批准するときからこういうふうな考え方を持っておる。それが表明されておるということだけを申し上げております。
#40
○春日委員 それは単にそういうようなものの見方、考え方、そういうものを述べたにとどまるのであって、何ら法的効果を持っておりません。やはりそれを批准した以上は、私はいろいろとビルマ賠償を調べてみたが、ビルマ賠償はサンフランシスコ講和条約の拘束を受けない。だから現在の賠償が行なわれても、これは許さるべきである。インドネシアにおいても、これは別個の手続によって単独平和条約が結ばれて、その平和条約の条章の中に明示してある。そのような生産物賠償の条項が両国間において応諾されておる。だから生産物賠償をやってもよろしい。フィリンピンにおいては、ちゃんとそのような手続をとり、そこでその十四条の適用を留保して、そうしてサンフランシスコ講和条約の批准は、この賠償協定と相前後してやっておる。こういう手続を明確に踏んでおるのです。それを踏むにあらざられば生産物賠償を日本に求めることができないからこそ、そのような手続が踏まれておるのです。そうでなければインドネシアだってサンフランシスコ講和条約を署名するでありましょうし、あるいはフィリピンだってそのように相前後してこれを批准するでありましょう。だが、そうしては生産物賠償を要求することができないし、役務賠償だけでは自国が受けた損害とその苦痛をいやすことができない。その大確信の上に立って彼らはそのような法的手続を踏んでおる。ところが、一方南ベトナムにおいては、何らそういうような法的手続をとることなく、ただ一人の政治家がそのような希望をある場所において述べた、見解を表明したというようなことだけでもって生産物賠償がなし得るものとして、またなさねばならぬものとあなた方がひとりで考え込んで、二百億円を国民の税金の中から向こうにやろうという。こういうようなことは不当なことだと私は思う。この点は大臣いかがでありますか。
#41
○藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように役務というものが、単純ないわゆる労働力を提供する、あるいは労働力に伴って技術を提供するというだけでなく、特にサンフランシスコ平和条約には日本の外貨負担にならないものということも書いてあるわけでありまして、それから考えますれば、当然一般役務による原料によって、いわゆる役務の集積である生産物を賠償に当てることは否定されておるとは思っておりません。なおその上に特別にそういうものを作るために特別な外貨負担が要るというようなことは望ましいことでもなし、またそういうことは平和条約にも書いてございませんから、それらのものはわれわれとしても十分順奉して参るつもりで今日までやってきておる次第でございます。
#42
○春日委員 私が申し上げておることとやや答弁が食い違っておると思うのでありますけれども、私はただこの点だけを一つ明らかにいたしたいと思うのです。この生産物賠償がベトナムに対してなし得るかどうかという問題、これは日本国民の立場としてそのような義務が日本に課せられておるものかどうか。この点だけを事務的に一つ明らかにしていただきたいと思うのです。たとえばビルマにも生産物賠償、資本財賠償ということがあるし、インドネシアにもある。それからフィリピンにもあるけれども、それはよって来たるところの法的根拠を異にしておる。ところがベトナムだけは、由来するところの法的根拠というものは、このサンフランシスコ講和条約ただ一つなんです。そのただ一つのサンフランシスコ講和条約には、明らかにわが国の負担になる、ならぬという問題、これは関連はいたしておりまするけれども、この原則、これを役務賠償と限定しておるのです。そうしてその生産物による賠償を受けようとするような場合は、原材料を供給しなければならぬと書いてあるのですから、今や日本国が、その経済力があるないというような、そういうような事実関係は別個の問題として、この条約そのものから来たるところの解釈は、ベトナムとしては日本に対して生産物賠償を請求することはでき得ない、こういう工合に理解をせなければならぬと思うが、この点いかがでありますか。
#43
○高橋政府委員 お答え申し上げます。先ほどお答え申し上げた通りでございまして、役務というのを、ただいま御指摘の通り非常に厳格に解する場合の役務ということも考えられますが、やはり役務によって化体されたところの財貨というような広義の解釈もこれはできるわけでございます。
 それから第二点といたしまして、フィリピンもベトナムの場合も手続的にはこれは同じ場合ではないか、すなわちフィリピンも賠償協定をいたしまして、その後賠償協定とともに平和条約に批准いたしまして、双方とも協定と平和条約によって拘束を受けるという立場になっております。
#44
○春日委員 くどいようでありますけれども、たとえば前段の、日本国でとれたものですね。あるいは陶磁器であるとかカンテンであるとかいうような、その原材料物資が純国産であるというようなものならば、今あなたのおっしゃったような御答弁で理解がかなうかもしれませんけれども、今度あなた方が賠償の中で予定されておりますものは、カンテンや茶わんじゃないのでございましょう。やはり発電所であるとかさまざま大きなものが予定されておる。鉄鉱石、マンガンあるいは粘結炭、これはことごとく外国からわが国は輸入せざるにあらざれば、そのようなものを供給することはできません。これは明らかに外国為替上の負担を新しく日本に課せるものです。そういうようなことは第十四条が厳にこれは禁止しておる。日本にはその場合の拒否権を保障しておる。これは一体どういう関係になりますか。役務の化体としての生産物ということは、その生産物そのものにもよるでありましょう。日本の国土からとれる泥によってできるところの茶わんであるとか、あるいはカンテンであるとか、その他何があるか知らぬけれども、そういうようなものでこの二百億を賠償するということになれば、これはまた他の禁止条項であるところの日本の貿易を阻害するという意味において、これまた禁止になっておる、どこかにひっかかる。だから、私はサンフランシスコ講和条約を唯一無二の賠償請求根拠法とする場合においては、役務賠償以外にはなかなかそのような言いのがれは許されないと思う。さればこそフィリピンの諸君は、それに対する留保宣言をしたりあるいはインドネシアのように、これはややこしい、われわれの受けた損害もその苦痛もこれによってはいやされない、だからこのような条項は批准できないといって批准しないでおくか、そういう態度が許された後、初めて生産物賠償が可能であると思う。これは御無理ごもっともというので、その当時の、岡田君に言わせればかいらい政権だと言っておるのだが、アメリカの言う通り、フランスの言う通り、何でもいいから盲判を押しておいて、その通りだその通りだといっておいて、取る方だけとんでもないことを要求してくる。そのような方法は私は許されないと思う。この点はいかがでありますか。
#45
○高橋政府委員 ただいまの外貨の追加負担の点でございますが、これは少しでも外貨的な部分があれば、それは絶対にだめであるというふうに私は解しておりません。負担になるような外貨の場合には、これにおいて制限されておりますが、要は外貨負担をかけたものであるかどうかという相対的な、比較的な問題であろうと考えておる次第であります。
#46
○春日委員 そういたしますと、わが国は御承知の通り、綿花にしろ羊毛にしろ、鉄鉱石からマンガンから粘結炭から、重油からガソリンから、ことごとく外国から輸入をいたしております。日本の産業というものは、その原材料をことごとく輸入に依存いたしておること、御存じの通りです。ここで三百億になんなんとするところの賠償をされるわけでありまするけれども、そこに書いてあるところの生産物――何か焼きを入れようと思えば重油が要る。鉄ならば、やはり製鉄の過程において鉄鉱石もマンガン鉱も粘結炭も要ると思う。そういうようなものに全然関係なしにこのベトナム賠償ができますか。またそういう方針が立っておるのでありますか。見通しも明確になっておるのでありますか。
#47
○小田部政府委員 お答えいたします。従来外貨の負担がないという解釈は、このインドネシア賠償におきましても、それからフィリピンにおきましても交換公文の形におきまして――たとえばインドネシアを読み上げてみますと「かつ外国為替上の追加の負担が日本国に課せられないように実施しなければならない。」つまり外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように実施されなければならないという規定がありまして、これはベトナムの今の協定と同じでございます。またフィリピンの方は交換公文のような形によりまして、大体そのようなことが述べてあります。そこで従来の解釈として、外国為替上の負担と申しますと、まず日本国は御説の通りほとんど原材料というものは大部分を外国から仰いでいることは、事実でございます。ところがここで、それでは総合外貨負担率が幾らくらいあるかということを考えてみますと、これは企画庁の三十三年度に出ている表によりますと、一六・四%でございます。つまり一つの解釈は、この総合外貨負担率より著しく大きくならないもの、それからもう一つは、追加外貨負担率の問題は、たとえば船の問題を考えてみますと、船ももちろん鉄板とか石炭とか、それはいろいろかかるでしょうが、そのうちであるジーゼルエンジンをスイスのものにしてほしい、あるいは英国のものにしてほしい、そういうようなときに限って、そのものにのみ特別に外貨を振り充てるということは、従来の賠償の実施上もこれは断わっております。これは向こうに断わっておるか、向こうに外貨を負担させているわけでございます。そこで通常の外貨負担率かもしくは市場で獲得できるというものにおきましては、従来もやっておるわけでございます。それからベトナムの賠償協定も、またインドネシアの賠償協定は二条の三項に同じような文句が使ってある次第でございます。
#48
○春日委員 あなたのそれは全然間違いですね。大体私は外交のことはしろうとだが、経済の問題は、まことにこれは日本における有数の権威なんだ、この外貨負担とわが国の建設資材、消費資材との関係は、これは専門用語では限界輸入性向といって、消費物資については一九%、百円のものならば十九円はこれは外貨消耗に通じるのです。そうして賠償するようなこういうような資本財については二七%、百円のものを国内で消費するとすれば、その二十七円というものは外貨の消耗を来たす。これはもう定説なんです。ただその年度によって多少一、二%の狂いはあるけれども、現在の輸出入と国内消費との限界の中において、大体その限界輸入性向というものはそれだけのものである。そうすると、ここに二百億円の建設資材と資本財を出していけば、その中の二七%、かれこれ三〇%、この六十億円というものは外貨の消耗を来たすということは明確なんですよ。従いまして、今回の賠償協定を実施しようとすれば、明らかに第十四条がわが国に保障しておる、そうして連合国に禁止をしておるところの日本の外貨を、現実に六十億円近い負担を新しく追加するものである、これは明確です。にもかかわらず、今あなたが、引例されたところのインドネシア賠償協定あるいはフィリピンの賠償協定、ビルマの賠償協定、これはどんなふうにそういうような追加負担があっても、やむを得ないと思うのです。それはサンフランシスコ講和条約に拘束を受けない。ビルマは、ビルマとの二国間の平和条約であり、インドネシヤもまた、インドネシャとの二国間の平和条約であって、そういうことは日本がやるということを明らかに平和条約の中に結んでおる。生産物賠償を行なうことを明らかに約束をしておる。約束をしておるから、義務を果たすのは当然のことです。けれどもサンフランシスコ講和条約のみにはそういうようなことは、今申し上げたように日本に対して保障し、連合国に対して禁止しておる。にもかかわらず、今回ここに新しく外貨負担を日本にかけるのです。それだけのものを賠償しないでおき得るということはどういうことかというと、たとえばラオスにしてもカンボジアにしても、わずかに経済協力、経済援助、特にそういうような形において、それぞれその賠償権というものが放棄されておる。それと大同小異の地域に対する問題を、われわれは取り扱っておるのでありますよ。でありますから、われわれはこの第十四条の規定においてはこれを強く主張し、そして連合国の好意に報いるのは当然のことじゃないかと思うのですね。そして日本国だって、今行財政は貧困をきわめておる。現実にあのような伊勢湾台風の大災害が起きたときに、ほんとうに多くの諸君が塗炭の苦しみの中にある。けれども財源乏しくして十分なる措置もとり得ないというような現状じゃないか。こういう中において、二百億円という出さなくてもいいような金を出すということについては、一体それは何のためにそういうことをするのか、国民は大きな疑惑を抱かざるを得ない。私はこの点を特に指摘して、権利もない相手に何のためにそのような二百億円というような大きな金を出すのか、この点を私が納得できるまで明らかにしていただきたいと思います。
#49
○藤山国務大臣 先ほど来御説明申し上げておりますように、通常一般輸入によります原材料の問題につきましては、サンフランシスコ条約の役務によります生産物、役務の集積である生産物、その中に含まれております。そうした問題については、われわれは生産物をもって役務の集積と考えます以上、当然のことだと思います。特に外貨負担を――先ほど賠償部長も御説明申し上げました通り、特に賠償にあたって外貨負担が加わる、当然われわれとしてそういうものは出せないということは今日までも申しておるわけでありますし、また拒絶もいたしております。そういう関係がありまして、春日委員とその点については解釈が一致しない、あるいは全然別個の立場であるということを申し上げざるを得ないと思います。今日、日本といたしましては、当然サンフランシスコ条約の義務を履行して参る必要があるわけであります。その点の問題につきましては、ベトナム全域に与えました損害と苦痛と破壊と、そうした問題を総合的に考えまして、そして話し合いの上で適当な金額を定めてそれを賠償することは、われわれの義務履行の一番大きな重点だと考えております。
#50
○春日委員 私どもは、やはりすべてのことが適切妥当に処理されなければならぬと思うわけであります。たとえば、今ここに申し上げたことに対する的確な御回答がありませんけれども、何といったところでこのベトナムの場合は、そういうような要求を日本にする必要な手続が踏まれていない。あるいは特に救済を第二十六条に求めたといたしましても、すなわち連合国に対するその利益の均霑条項を援用しようと思ったところで、もうすでにこれは三カ年を経過してしまっておりますから、時効にかかって、彼としては主張の根拠がなくなってきておる。従って今ベトナムとして日本に要求し得るものは、わが国が他国にいかなる賠償を行なったとしても、それは例にはならぬ。従って彼らが主張し得る根拠というものは、この第十四条が唯一無二のものである。唯一無二の中には明らかに役務賠償、これの原則の確立をいたしておる。特に強い言葉でアクセントも強く、原材料は当該連合国が供給しなければならない――そういうようなものを供給しない方針だと言われておりますけれども、われわれが仄聞しておるところによりますと、今度の賠償の対象となるものは、ダニム・ダムの建設であるとか肥料会社の建設であるとか、その他いろいろのそういうような資本財が予定されておるように伺っております。消費物資であるコーヒーやお菓子ですらも、外貨とのつながりは一九%と言われておる。いわんやそのような資本財は、二七%、二八%という膨大な外貨消耗につながるのです。この二百億円の賠償が、日本に対して新しい外貨の負担をかけないということは言い得ないと思うのですね。明らかにこれは外貨の負担を日本に追加するものです。従いましてこれは私は第十四条違反であって、日本はこのような協定に対しては応諾する必要はない、国会としては批准する必要はない、こういうふうに考えるのであります。同時にまたこのベトナムですね。これは私一つ考えていただきたいと思うのだが、カンボジアは人口が四百七十四万、国土面積が十七万平方キロ、ラオスは百六十五万、二十三万六千八百平方キロ、相当の国土と人口を持っておる。これは南ベトナムとは大同小異な形で、私は日本の進駐によるところの苦痛を受け損害があったと思う。こういうような国々に対しては、実にわずかな、賠償ではない経済協力の形でしかやっていないのです。こういうような国々すなわち仏印三国との間において、私は著しく均衡を失する形になりはしないかと思う。第十四条の関係においても、ラオス、カンボジアに対してわが国が行なったその実績に徴しても、これこそ明らかに私はあまりにも行き過ぎなものであると思う。あまりにも国民に負担を課するものである。さらによってもって、このことを契機として北ベトナムの怒りを激発する、挑発する形になる。出すべきことでないと思うのでありますが、この点いかがでありますか。
#51
○藤山国務大臣 仏印三国の損害といいますか、それにつきましては、むろんラオス、カンボジアに比べましてベトナムの損害が大であることは、申すまでもないことであります。三国の賠償と申しますか、カンボジア、ラオスは賠償ではございません、放棄いたしましたから、その好意に対して経済協力的な措置をとったわけでございます。大体仏印三国をかりに一〇〇とすれば、やはりラオス、カンボジアは二〇くらいであって、その八〇がベトナムであることは大体言えるのではないか、いろいろな方面から聞きまして。そうしますと、先ほどの三千九百万ドルというものは約百四十億くらいになるわけでありまして、ラオス、カンボジアに十億、十五億という、二十五億ほどのものと対比しますと、やはりこのベトナムの賠償に対して二割見当に相なっておるわけでありまして、著しくこれがバランスを失っているというふうには、私どもは考えておらぬのであります。
#52
○春日委員 結局、私が今質問をいたしておりまする骨子は、あらゆる点から考えてこれは一つ大臣によくお聞き取りを願いたいと思うのでありますが、ベトナム賠償に対するその適否の論議というものが、今深刻に行なわれているのです。こういうものをやらなければならぬかどうか国民は全く疑惑を抱いておる。ほんとうに平和進駐をしたのだし、仲よく日本の占領下においても喜々として向こうの住民の平和的生活があったことは、みんな知っておることなんですね。にもかかわらずドゴール政権が帰ってきて、そして宣戦布告をしたから、またそれを契機としてフランス軍の武装を解除したからというようなことで、わずかな小ぜり合いはあった。あったけれども今ここに二百億円というような賠償をせなければならぬかどうか。この前にはフランスに対するそういうようないろいろな現地における負担をも含めて金塊三十三トンでありまするが、その他いろいろな現金の支払いが行なわれておる。それを百五十億としますると、この二百億を加えると現実の問題としまして三百五十億くらいになるんですよ。すでにフランスに対してはあのときのを加えますと合計かれこれ百五十億くらいを支払い済みに相なっておるわけであります。すなわち日本軍が昭和十五年九月旧仏領インドシナに平和進駐をしたが、その進駐に伴う軍備及び物資の買付は、日本から為替銀行を通じて送金される仏印のピアストル、これでやった。次いで昭和十六年五月日・仏印経済協定の取りきめができて、この協定によって円とピアストルとの相互清算による決済制が採用された、その結果軍備に必要なピアストル貨は旧横浜正金銀行によって金のイヤマーク、または外貨の提供によって行なわれることとなっておった。さらに昭和十八年一月日・仏印間に新たないわゆる特別円制度が採用されて、インドシナ銀行と横浜正金銀行との間に特別円勘定が設けられて、この特別円は後日金または銀に兌換し得る外貨に振りかえることとして、特別円による軍備を調達することとなった。以上のような日・仏印間の取りきめによって戦後これが清算が行なわれ、金で支払われるものについては昭和二十五年一月、日本は占領軍の了解のもとに金塊三十三トン、ドルに換算して三千七百万ドル、円で百三十三億円に相当するものをフランスに支払い、また特別円については昭和三十二年三月、十六億七千二百万円を支払っておるわけでございます。
 そこで賠償請求は、この百五十億円プラスかれこれ二百億円という形になるのでありますから、言うならば日本の負担というものは三百五十億円になるのです。十億ドルですか、これは膨大なものになるんですよ。だから今大臣が、大体ラオスとカンボジアに十億、十五億くらい払ってあるから、それとそう著しく均衡を失するものではないと言われるけれども、ただその賠償協定ばかりではない、日本がその負担においてフランス連合、並びにそのフランス連合の構成分子であったところのこの南北ベトナムを含めて、すでにそれだけの百五十億という金が事実上賠償してあるのです。そこへもう一ぺんやるのですから、従いましてこれがラオス、カンボジアと均衡がとれておるなどということは、私は認識不足もはなはだしいものであって、事実を曲げる答弁もひどいと思う。そんなばかなことはないでございましょう。だからこういう意味で、このような賠償というものは、日本国民の現在の経済情勢、窮乏しておる者はひどく窮乏しておる、そういうような人々に対する社会政策もいまだしのときに、仏印に対して百五十億払っておいて、もう二百億払うというような、こんなことは、サンフランシスコ条約第十四条がせっかく日本に対して保障しておってくれ、連合国に対してこれを禁止しておる条項にまさしく正面から背反すると思う。この問題はいかがでありますか、もう少し心を開いてそうして行きがかりというようなものに拘泥せずに御判断になるお気持はありませんか。
#53
○藤山国務大臣 この問題が非常に誤解されておるわけでありますけれども、御承知の通り、今回の戦争が始まりました昭和十六年には日仏間に基本協定ができまして、そうして仏印に進駐する場合の諸般の決済についての取りきめが行なわれたわけでありますが、当時すでに金は――最初からいろいろ動いたかと思いますけれども、日本からフランスに渡しました三十三トンの金というものはイヤマークされておるのでありまして、イヤマークされておるということ自体は、フランスの金なんだということでございます。でありますから、何か新しく日本が金を払ったというのではなくて、戦時中輸送が困難でありますからイヤマークされた金が日本銀行の場所に置いてあった。それを金を輸送してフランスに持っていったということなんでございまして、今の協定の一九四四年八月二十五日における残高というものは、ドルが若干と円の勘定がございまして、それを十六億七千万円で決済をいたしたのでありまして、このこと自体は賠償関係と全然別個の問題でございます。
#54
○春日委員 それは違っております。これはもう明確に違っております。それはどういうことかと申しますると、仏印とその他の南方諸国、たとえばインドネシアとか、あるいはまたフィリピン、こういうような土地における軍費調達の方式が明らかに違っておるのです。たとえば当時フィリピン、インドネシア、ビルマの南方占領地域においては軍費及び物資の買付のためにはそれぞれペソ、それからギルダー、ビルマについてはルピーといったような、現地に既存に流通しておる通貨と対価で現地通貨表示の軍票を軍が発行した。こんなものは金の裏づけはございません。発行しっぱなしなんです。紙きれと同じものなんです。ただそれを占領軍という権威によってこれがオーソライズされておったのです。しかもそれを引き揚げてきたときには、それに対してはまるで一銭五厘も払わずして、何の裏づけもしないで、そのまま帰ってきてしまって今日に至っておる。さればこそそういうような損害に対して彼らが補償の要求をしてきているから、ビルマに対しても、インドネシアに対してもまたその他の国々に対しても、そういうような経済上の与えた損害、いけにえに対して補償する意味をも込めてああいう賠償がなされておる。ところが軍備調達の方法が仏印においては違っておる。それは何か。それは日・仏印のこういう協定によりまして、すべてが平和進駐になっておる、だから軍票というものは発行する、あるいは今申し上げたようなそういう通貨方式をとるのだが、しかしそのためには結局その裏づけとなるところの金を準備しておいて、そうしてそれによって決済が行なわれておる。言うなれば、そんな表現はできるかできないか知らぬけれども、平和進駐しておったところの日本軍は、いわばお客さんみたいなものですね。お金で物を買ったんですよ。買ったそのお金の、発行さしたところのお金の裏づけは今申し上げたような、すなわち昭和三十二年において十六億円でありまするか、それから昭和の二十五年に三十三トンでありまするか、そういう形によってぱちっと裏づけをしておる。迷惑をかけているかもしれないけれども、かけた分に対しては、品物を買ったんだが、買ったものに対しては代金は払っておる。ビルマとインドネシアとそれからフィリピンにおいてはそのことをなしていない。違うのでありますよ。だからその賠償額の中においては、これは今回ベトナムに支払う二百億に該当するものプラスこの百五十億円、これを加えて判断するにあらざれば、これは正当な解釈とは言いがたいと思うのです。この点いかがでありますか。
#55
○藤山国務大臣 お説ではございますけれども、私どもはただいま申し上げましたような見解が正当な見解だと思っておるのでありまして、今回の賠償にあたって、そういうような貨幣上のいろいろな損を、あるいは迷惑をかけた、最後の一年間にかけたものを幾らに見積もるかということは別個の問題として、問題自身は全く別の関係にあるということを考えております。
#56
○春日委員 これはあなた方のやり方が間違っておったから、こういう結果になってきたということを想起せなければなりません、現実の問題として。この三十三トンそれからこの十六億円、これはベトナムに払っておれば大体賠償としての効果を、役割を果たしておる。ところがそれをあなた方が間違ってフランスにやったものだから、本人たちはもらっていないというので、そこでまた大きな要求をしてくるのですよ。フランスが持っていってしまったしりを日本国民が血税でぬぐわなければならぬということがありますか、現実の問題として、私はこの際この点については明確にしておかなければならぬと思うが、政権がかわったのだから、これは当然ベトナムに承継せらるべき性質のものであったと思う。これがベトナムに承継されていたならば、ベトナムの戦争損害の大部分というものは、金を払って調達したのだから、金の裏づけとなる金を送ることによって、私は大部分のもの、全部とは言わぬけれども、大部分は帳消しになった。そうしてこの百五十億によってベトナムの経済復興というものも相当に私はなし得たと思う。賠償の意義をもそこに込めて、問題の処理がなし得たと思う。これが結局はフランスに支払われてしまい、フランスはこれを持っていってしまったことによって、いつしかそこにわが国民からすれば仏印の原地住民に対する二重払いというか、二重払いでなければ過当な払いというか、そういうような形になってきたと思うのですね。だからこの問題は仏印、今のベトナムとフランスとの間においても交渉されるべき問題であって、何もかも日本に対してこういう三百何十億という膨大な要求を寄せてくるということは当たらぬことだと思いますね。この点はいかがでありますか。
#57
○高橋政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、これは御承知のように軍費その他白米、小麦、その他日本の輸入の対価の支払いに充てるために、フランスの政府からピアストルの供出をしてもらいまして、それによって支払った。従いましてその見合いとしての円を支払ったわけであります。従いまして、それはあくまで日本とフランス政府との間の、言いかえますればフランスの国庫との間の債権債務関係でありまして、これをただいま御指摘の点においては支払ったが、支払った後にどうするかということは、これはフランスとベトナムとの関係である、もちろん御指摘の通りであります。ただこのような問題は、一般的な国際法上も承継しないということになっておる。これは政府間の債権債務の関係であります。
#58
○春日委員 私は政治的な取りきめとか政治的な要素を含む取りきめというものは、やはりその国の政治政体がかわったときは承継さるべきものだということは、これは国際通念であろうと思います。実際問題として。だからフランスが払わなかったということは、これはごうもあなたの答弁によって正当性を持たない。少くとも行政上の取りきめであるとか、あるいは行政上の協定というようなものはこれはなんでありましょうけれども、こういうような問題は当然問題になってくると思う。私はそこでお伺いするのだが、特別円の調印、これは外務大臣は岸さんであったと思うのでありますが、われわれが承知いたしております範囲内では、重光外相はこれをフランスに支払うという協定に調印するわけには参らぬということで拒否の態度をとっておられたと理解いたしておりますが、この点のいきさつは局長連中どういうふうに受け取っておられましたかな。
#59
○高橋政府委員 署名は一九五七年の三月二十七日に岸信介及びアルマン・ベラール両首脳者の間に行なわれております。重光大臣区云々の件は私は承知しておりません。
#60
○春日委員 この三十二年三月、十六億七千二百万円、これをフランスに支払っております。このフランスに支払っておりますときの外務大臣はだれでありますか。
#61
○高橋政府委員 岸兼摂外務大臣であります。
#62
○春日委員 藤山さんが御就任になったのはいつでありましたか。
#63
○藤山国務大臣 七月十日であります。
#64
○春日委員 そういたしますと、前任の重光外務大臣はこの特別円の支払いをフランスに行なうということについては、これは疑義があるからようやらない、こういう態度をとっておられたとわれわれは承知いたしておりますが、この点はいかがでありますか。他の局長御承知ありませんか。
#65
○高橋政府委員 私承知いたしました範囲では全然その事実はございません。
#66
○春日委員 まあそれにいたしましても、この機会に明確にいたしておきたいことは、現実に軍費の調達方法というものは違っておったということですね。仏印においては平和進駐だからむちゃなことはできない、すべて政府との間で協定を結んで、そういうような発行したものについてはそれぞれイヤマークをつけて後日これを弁償する、そういうような金の現物の準備もしておいて、そうして二十五年の一月には連合軍の出した了解を得て、フランス政府に対して三十三トン払ったわけですね。けれどもその三十三トンをフランスがそのまま自分の国へ持っていってしまったので、従って現地住民、ベトナム南北両国としてはその恩恵を受けることができなかったからいろいろと問題が後日にまたがってきておる、こういうことなんですよ。そういうように理解をいたしますと、そのギルダーの軍票にしろ、ルピーの軍票にしろあるいはペソの軍票にしろ、それが軍票を出しつぱなしにしてほうっておいて帰ってきたのとこれは事情が違うのでありますから、そういう点においては二重払いの点、過重払いの点というものが起きてくるわけです。従いまして、ラオス、カンボジアのそれに比べてこの百五十億円というものがそんなに過大でないという外務大臣の御答弁は適当なものではない。事実に反するものである。この点について外務大臣の御見解はいかがでありますか。
#67
○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、特別円の問題、金塊の問題は、これはイヤマークしてある問題でございますから、むしろ別個の問題だと思うのであります。十六億七千万円を払いましたこと自体は、今申し上げたような決済をいたしたことでありまして、お話のようにそういうような状況にあったのだから、従って最後の一年における貨幣流通上の、何と申しますか、経済効果というものをどういうふうに賠償に見るかという問題はございますが、しかし問題自身は別個の問題だ、こう考えております。
#68
○春日委員 私はこの問題をいろいろと、さらにちょっと局面を変えて、新しい場面から質問に入りたいと思いますが、何時ごろまでおやりになりますか……。
#69
○小澤委員長 どうぞあなたの分だけ済ましていただきたい。
#70
○春日委員 大体私はあともう二時間くらい……。
#71
○小澤委員長 春日一幸君の発言中でありまするが、この際、昼食のため暫時休憩いたします。
    午後零時五十六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時五十三分開議
#72
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 両件について質疑の続行をいたします。春日一幸君。
#73
○春日委員 次は一つ角度を変えまして、今回の南ベトナムとの賠償協定が、北ベトナムの反対と、またその強い抗議を無視して強行されんとしておるこの不当性について、疑義を明らかにいたしたいと存ずるのであります。
 現在の国際社会におきまして、一つの国家が二つの国家に分裂している顕著な事例といたしまして、まずこのベトナム、それから中国、ドイツ、朝鮮、四つの国家をあげることができると思うのでございます。ベトナムはベトナム民主共和国とベトナム共和国、中国は中華民国と中華人民共和国、朝鮮は朝鮮人民共和国と大韓民国、ドイツも東西に、いずれも二つに分かれておるわけであります。このうちで、ドイツと朝鮮につきましては、これは日独敗戦の結果、米ソの分割占領にその端を発しておる。それからベトナムと中国とは、日独敗戦による内乱に端を発しておる。そういうところで軌を一にいたしておると思うのであります。しかしながら、これら八つの国家は、その分裂の過程がいかであれ、またこの国家を他の国家が承認するとしないとにかかわらず、いずれも独立主権の国家といたしまして、厳然として存在している事実に何人も目をおおうことはできないと存ずるのでございます。私は、国際社会に伍せんとするわが国の今後の外交は、この厳然たる事実を基礎として、その方針と政策は、平和と正義を守るという方向を自主的に確立しなければ、後日に大へんな悔いを残して、国家百年の計を誤ることになりはしないかと存ずのでるあります。藤山外務大臣は、このような見解に対してどのように理解をされておるのか、この点をまず明らかにされたいと存ずるのであります。
#74
○藤山国務大臣 戦後分裂国家の形態ができましたことは、まことに遺憾だと思うのでありまして、その原因がいろいろあることは今御指摘の通りだと思います。これらの分裂国家が早く統一国家になりますことを、われわれは強く考えておる次第でございます。
#75
○春日委員 私がお伺いをいたしましたのは、あなたのこいねがわれるところが、そのような分立いたしておりまする国家の統合であることは、何人もそのような希望を持つことは当然であろうと思うのでありますが、日本の外交政策の責任者たる外務大臣藤山さんといたしましては、その外交政策を樹立するにあたりましては、このような事実の上に即して、かつは平和と正義とを基盤として、その中から外交政策、外交方針というものを打ち出していくのでなければ、後日に問題を残してくる、大へんな後悔をしなければならぬような事態に逢着する場合がなくはない。従いまして私は、こういうような事実関係を一体どう扱わんとされておるのであるか、この点をお伺いをいたしたいのでございます。
#76
○藤山国務大臣 現実にお話しのような分裂国家があることもわれわれ重視して参らなければならぬこと当然でございますが、同時に、それぞれの国に対して過去のいろいろいな経緯がございます。その今日に至りました歴史的発展の過程というものをわれわれがないがしろにいたしますこと自体、また非常に現実に即しないということにも相なってくるのでありまして、それらのことを勘案して外交としては進めて参らなければならぬこと、申すまでもないことと存じております。
#77
○春日委員 現代国際社会においては、いろいろな条件が錯綜いたしまして、非常な急テンポで流動しておると思うのでございます。従いまして一つの観点の上に立って、それに固着した考え方で、そのような音を立てて流れる現実の流動変化、情勢の推移に全然目をおおうて、こういうふうに考えておったんだから、こういうようないきさつだからということで、その方針をめくらめっぽうに押し進めていかれるということは、はなはだもって危険なことになるであろうし、またそのような無理押しをすることは、事実に反する措置をとられることは、必ず後日破綻を生じてくる。その結果は国家、民族が負わなければならない。このことを警告的に申し上げておくのでありますが、当然そのような御理解があってしかるべしと思いますので、それでは私は質問を進めまするが、今まで外務大臣の御答弁を伺っておりますると、政府はこのベトナム賠償協定は、この賠償を南ベトナム政府に支払うことによってこれが全ベトナムに及ぶものと断定されておるのでありますが、私は、そのような解釈は法理的にも、また政治的にも効果を持つものであるかどうか、この一点をはなはだしく疑わざるを得ないのでございます。こんなような前例や慣行が今までにあったかどうかを私はお伺いするのでありまするが、ただいま一国家が二つの国家に分裂している国家を、今顕著な例として八つの国家をあげました。そこで日本が現在その八つの国家の中のいずれかの一国家との間に二国間の条約を締結しておることがありますかどうか。ありましたならば、その条約と相手国の名前をここでお答え願いたいと思います。
#78
○藤山国務大臣 中華民国と平和条約を締結しております。
#79
○春日委員 そこで現在において一国が二国に分裂しておる国家の顕著な例として八国家ある。その八国家の中で日本との間に二国間の条約を結んでおる事例といたしましては、台湾政府を相手といたしまする中華民国との間に締結された平和条約がただ一つあるばかり、こういう御答弁でございました。従いまして、この中華民国との間に締結された平和条約というものは、これを一つの基準としてまたその前例として特に重視されなければ相ならぬと存ずるのでございます。そこでこの日本と中華民国との間に締結された条約が、その施政権の及ばざる地域というものに対してどのように規定しておるか。これをいろいろと調べてみますると、この条約の中におきましては、特にこんな交換公文を交換して、その適用地域の限界を明確にいたしておることが明らかにされました。すなわちこの条約の条項が、中華民国に対しては中華民国の支配下に現にあり、または今後入るすべての領域にのみ適用する、こうあるのでございます。これは中共政府の事実上の存在を認めて、そうして日華平和条約は、直接には中華人民共和国と何らのかかわりのなこととして日本は対処いたしておると理解すべきであると思うのでございます。私は、これが日本としては当然の態度であり、また一国が二国に分かれておりまする場合、その分かれておる一国のみと条約を結ぶ手段、方法としてはこれ以外にはないものと考えておるのでございますが、この関係はいかがでありますか。
#80
○藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、いろいろそれにつきましては歴史的な過去の経緯もございます。でございますから、すべてを必ずしも一律に扱うわけには参らないと存じております。現在のベトナムの場合におきましては、御承知の通り、フランスの植民地から解放後の経緯からみましても、ベトナムが全ベトナムを代表する政府として認められるわけであります。またサンフランシスコ条約に調印した事実からみましても、そう見ますのが適当であると思いまして、われわれといたしましてはそういうふうな見解をとって問題の処理をいたしております。
#81
○春日委員 冒頭に申し上げました通り、国際社会はいろいろとテンポ早く流動しておる。いろいろな変化が現実にもたらされておるのでございます。私は後ほどまたその問題だけを中心としてお伺いをする予定でおりますが、たとえばジュネーブ協定では、ベトナムの地位につきまして英・米・中・ソその他当事国が集まって一定の協定をいたしておるのでございます。すなわちサンフランシスコ講和条約が締結された当時のベトナム共和国の資格とか地位とかいうようなものは、その後のこのジュネーブ協定による国際間の取りきめによって、相当の変更があると思うのでございます。それはそれといたしまして、この点明らかにしておかなければなりませんことは、台湾政府との間に結ばれた条約の中では、これは明らかに一つの国が二つに分かれておるから、従いましてその条約の効果の及ぶ範囲というものを交換公文で明確にしておる。現在台湾政府の支配下にあって、あるいは将来入るべきところという工合に規定しておるのです。私は、これが唯一無二の前例なんだから、従ってそのような国と政治条約あるいは政治的要素を含む条約を結ぶような場合には、この前例というものは厳に踏襲さるべきものだと思うのでございまして、そのことなくしてはいろいろな紛争を巻き起こしてくる。こういう立場においてこれを重視いたしておるのでございます。
 この際、特にお伺いをしたいのだが、このベトナム賠償協定では、その効果を全ベトナム地域に及ぶものとしておる。日華条約におきましては、台湾政権のその施政権の及ぶ範囲と規定しておるのに、このベトナム賠償協定では、その協定の効果の及ぶ範囲を全ベトナム地域に規定しておる。そこでこの北ベトナムはどうなっておるかと申しますと、そこにはホー・チミンを頭領とするところの政府がある。そうして北ベトナムの地域には国土と国民があって、その主権のもとにおいて厳然たる国家がそこに存在をしておる。従いまして、この北ベトナムの領域に発生したすべての戦争損害、少なくともこういうものについては、そういう国家があるのに、そこへは支払わないで、その分も含めて南のベトナムに支払うということは、日華平和条約に対するわが国の態度とあまりにも根本的に違っておると思うのでございます。この点は、一体どういうわけでこういうような根本的な変化がベトナムの場合に適用されて、そうして台湾との場合にはそういうような制限の方式をとったのか。現実に即する立場を台湾との間にはとり、そうしてベトナムとの間には現実を無視したころの立場をとっておる。これは一体どういうわけでこういうような豹変が許されるのか、この点の所見を伺いたいと思います。
#82
○藤山国務大臣 ベトナム共和国が成立の過程から申しまして、全ベトナムを代表する政府であるということは、われわれ日本の見解ばかりではございません。四十九ヵ国が同じ見解をとっておるわけでございます。またジュネーブ協定におきましても、軍事休戦線としての十七度線というものをきめておりますけれども、これは領域が分割され、あるいは領土的な関係がないということは、明瞭にされておると思っております。そういう状況でございまして、しかもサンフランシスコ条約調印にあたりましても、全ベトナムを代表する政府として調印をいたしておるわけであります。むろんベトナムの中にありまする対立政権との間にジュネーヴ協定のごとく公正な選挙が行なわれまして、一つの単一政府ができますことは望ましいことであります。しかし、それが困難であります。以上、われわれが統合政府として全ベトナムを代表する政府にこの義務を適用するのは当然のことだと考えております。
#83
○春日委員 それでは一つ問題を解剖して解きほぐしてお伺いをしたいと思うのでありますが、北ベトナムには十五万五千平方キロの国土、それから千四百五十万、これだけの国民を基礎としてホー・チミンのいわゆるベトナム人民共和国という国家が事実上存在しておることをお認めになりますか。これを承認するしないということは別問題であります。これに対していかがですか。
#84
○藤山国務大臣 日本は承認しておりませんし、そうした形態において認めておらないわけでありますが、ソ連その他十二ヵ国が北ベトナムの人民共和国を承認している事実は承知いたしておりますし、認めております。
#85
○春日委員 そういたしますと、日本の外務大臣は、北ベトナムの地域とその人民は、ベトナム人民共和国という別個の政府の統轄下にあり、しかもそういう国家というものが現実に存在しておるということは、あたかも中華人民共和国という中国政権が中国大陸に現存すると同じような意味において認めておられる、こういう工合に理解してもよろしゅうございますか。現実に貿易も行なわれております。
#86
○藤山国務大臣 ベトナムと中国とは、先ほども申し上げましたように、それぞれの歴史的な過程が違っておりますので、必ずしも同じようにすべてを考えるわけには参らぬと思います。むろんわれわれといたしましては、今まで申し上げております通り、南の政府が全ベトナムを代表する政府だという観点からして、問題をすべて解決をはかってきておるわけでありまして、それに反対する見方をいたしておる国があるということは事実でございますが、われわれとしてはそういう立場はとっておらぬのでございます。
#87
○春日委員 そういたしますと、中国と北ベトナムとの間では、国家が成立をした過程においていろいろと違っておるから、これに対するわが国の理解は必ずしも同一のものではないという御答弁がございました。その相異なる点を一つ具体的にお示しを願いたいと思うのであります。
#88
○藤山国務大臣 御承知の通り、われわれとして考えておりますことは、過去の戦後のいろいろないきさつが違っております。ベトナムの場合におきましては、フランスが植民地解放にあたりまして、仏印におきまするその植民地、領土等の解放の方式をきめまして、そうしてそれぞれを交渉の相手として、政府として認めた過程がございます。中華民国と中華人民共和国との間にはそういった意味での過程というものはございません。いろいろな点から歴史的発展の過程が違っておりますので、それらの問題に対する見方は当然変わるべきが妥当と思います。
#89
○春日委員 私はそれは何だか理解ができません。何となく違うような気がするというようなことをおっしゃっておるということはわかりますけれども、どこが違っておるから違った待遇をしなければならぬのだ、こういう工合には理解ができ得ないのであります。私が申し上げております通り、ベトナムと中国とは、日独が敗戦をいたしましたその結果内乱が生じたのです。内乱の結果、それが二つに分かれたということで軌を一にいたしておる。北ベトナムも、それから中国との関係も、これは戦争によって内乱が起きた。同じことなんです。南北朝鮮の場合と東西ドイツの場合は、日独が敗戦をした、そうしてそこでソ連軍とアメリカ軍とが分割進駐をした。そこでこれが二国に分かれた。こういうような形でドイツと朝鮮は似ていると思う。ところがベトナムと中国との間には、内乱の事態によって二国家が分裂せざるを得ない形になって結局したということなんですから、私は、北ベトナムも中国の立場も、日本とのそれにおいて何にも違ったものはないと思う。さらに御承知の通り一九五四年でありますか、ジュネーブ協定におきまして、この問題についてもすでに地域的、集団的な一つの取りきめ――一九五四年七月二十一日に協定されましたジュネーブ協定においては、その現実を容認した形の上においてそれぞれの声明が発せられ、宣言がなされておる。単なる内乱軍というような待遇でないことは、少くともこのジュネーブ協定を契機としてオーソライズされてきていると思う。私は、日本国政府が中華人民共和国に対する態度と、日本国政府がこのベトナム人民共和国に対する態度と、ことさらに取りかえなければならぬという理由はごうまつもないと思う。ありとすれば、その点何がゆえに相異なる態度をとらなければならないのか、それを一つ私のようなしろうとにもわかるような御説明を願いたい。
#90
○藤山国務大臣 ジュネーブ協定につきましては、御承知の通り内乱的な状況にあります軍事交戦状態というものを、できるだけ平和のために解決しようという努力が払われたわけでありまして、このこと自体が一つの軍事休戦の問題であるというふうにわれわれは理解をいたしているわけであります。そういうわれわれの理解でありますが、成立以来の経過から申しますと、私どもとしては、先ほどから申し上げております通りの経過をたどってきております以上、やはり今日南のベトナムを全ベトナムを代表する政府として日本が認めることは当然でありまして、それとわれわれが賠償協定をやりますことも、これまた当然のことだと思うのであります。そういうような歴史的ないろいろ発展過程の経過というものが違っていることはおわかりいただけると思うのであります。そういう事情のもとにわれわれとしては判断せざるを得ないのであります。
#91
○春日委員 たとえば中共の場合でございますが、これはその当時の主権国家は中華民国国民政府であります。これに反逆をして内乱が起きて、そして領土と国民とを占有して、そこに政府ができて国家が形成されたわけです。片一方の仏印においては、ホー・チミン軍がその当時の主権者であるフランス連合に対して反逆をし、反乱を起こし、そしてそこで領土と国民を占有することによって国家が形成されて、今日幾つかの国家によって承認されて、そしてジュネーブ協定においても――これは私はずっと時間をかけて全休戦協定の各条文から各国の宣言、それから各国代表のステートメント、あいさつ、全部読んでみたのでありますが、それは南北ベトナムを対等の立場に置いているのです。南ベトナムからいろいろの非難の意見が述べられたけれども、それはあるものは黙殺され、あるものは否決をされておる。そういうことによってベトナムの立場は、南北機会均等の立場において、そうして一九五六年七月に施行を約束されているところの民主的な統一総選挙までは、すべての政府は、結局その軍の管轄下にあるところの施政権を行なうというかりそめの取りきめが行なわれておるのであって、片方を正統国家とみなし、片方を反逆軍とみなすというような取りきめには絶対になっておりません。フランスのマンデス・フランス首相のこの言葉から、交換文書から、それから周恩来の演説から、アメリカの代表から、すべてこれをベトナム民主共和国政府代表として待遇いたしておる。そういうわけでありまするから、私は中華民国とこのベトナム民主共和国との、国家形成の、生成の由来、経過、形態、そうして現在現存する実態、何も変わっていないと思うのです。中共も幾つかの国家によって承認されておる。それからベトナム民主共和国も幾つかの複数国家によって承認されて、今国際社会の一要員になっておる。そういうわけでありまするから、わが国からながめまするときに、中華人民共和国もベトナム民主共和国も同じ関係なんです。承認をしていない。だからわが国とは直接のそういう関係はないけれども、現実に存在する国家としての権威ということについては、実質においても関係においても私は同じものだと思う。この点、特に異ならねばならぬという理由は、今の御答弁ではわかりません。もう少しわかるように、何か御説明の方法はありませんか。
#92
○藤山国務大臣 ジュネーブの協定というものは軍事休戦協定でありまするから、対等の立場において話し合いをさせなければ成り立たないものでありますが、しかし、今お話しのように、他の事情と違うと申すような点でありまするけれども、むろん南ベトナムは、今日、地域から申しましても、あるいは人口から申しましても、その人口の数あるいは地域、面積等の状態から見ましても、十分台湾とは違った立場におることは御理解いただけると思うのであります。過去の歴史的経緯ばかりでなく、現実の事態においてもそういう問題が考えられるわけであります。われわれとしては、当然その上に立って問題を処理していくことが必要だと考えております。
#93
○春日委員 私が質問をいたしておりますのは、台湾との条約の中においては、台湾政府の施政権の及ぶ、主権の及ぶ範囲内においてしかこの条約の各条項の効果は及ばぬと規定してあるのですね。にもかかわらず、南ベトナムとここに結ばんといたしておりまするところの賠償協定には、全域に効果が及ぶとなっておる。はなはだしく違っておるのです。はなはだしく違っておるからには、中共と北ベトナムとの間には、相当の資格条件において違わせるに足るだけの相違点というものがなくばなるまいというのが私の考え方なんです。それに対する明確な御答弁がないと、私としては、やはり国際社会において現存するところの事実の上に立って公正な判断をして外交方針、外交政策を打ち立てんとすれば、やはり台湾政府との間にとられたところの条約の効果の及ぶ範囲というものについての、同じような方式がとられてしかるべきではあるまいか、こういう工合に考えざるを得ないのです。この点、私がわかるように何らかの形で御答弁が願えませんか。
#94
○藤山国務大臣 先ほど来申し上げております通り、南ベトナムを全ベトナムを代表する政府として――フランス植民地あるいは保護領等の解放、仏印三国の解放事情から見まして、私どもは、南ベトナムが、その歴史的経過から見ましても当然全ベトナムを代表する政府と見るのは不当ではない、こう思っております。同時に、今お話しのありましたように、地域的にもあるいは人口的にも、台湾と中共との関係とはだいぶ異なっております。またジュネーブ協定そのものも、休戦協定でありますから、南北を認めて、対等の立場で話し合いを一応させております。けれどもジュネーブ協定そのものの精神は、全ベトナムの公正な選挙のもとに、全ベトナムの統一政府ができるということを願望にしておるわけであります。その場合に、どういう形において選挙を通じてできるかということは今後の問題だと思います。しかし、いずれにいたしましても、そういうような将来の統一が起こるとすれば、これらの今われわれが締結しておりますものは、その統一政府に引き継がれまして、当然将来実施されていくことでありますので、われわれが現在扱っておりますような扱い方をいたしましても、決して不当であろうとは考えておらぬのであります。
#95
○春日委員 台湾政権と中共政権との関係と、南北ベトナム政権との関係を人口、国土の対比率で述べられております。もとより中共の人口が多く、国土の面積が比較してはなはだしく広いということはもう明白でありますけれども、ならばといって、南北の国土と人口の比較をしてみますると、国土においては、南ベトナムは十七万平方キロであるのに対して、北ベトナムは十五万五千平方キロ、全く匹敵しておるみたいなものです。似通ったものです。ところが一方人口になりますと、北ベトナムは一千四百五十万、南ベトナムは一千二百三十万、これは南ベトナムの方が少ないのですね。こういうような関係からいいますと、現実に、根本的に、その国家分立の大小の関係が中国のそれとはなはだしく相異なっておるということにはならぬ。なるほど台湾は小さいことは小さいですけれども、この南北の比較からいいますと、やはり人口においては、中共と同じように、北ベトナムが南のそれに比較して二百二十万も多いのです。こういう関係になっておるということと、それからこれによって今大臣が述べられたところの地理的、人口的な対比率に対する御答弁は当を得ないものだということは明らかになったと思うのであります。同時に、北ベトナムの国際的地位というものは――大臣もおそらくこのインドシナに関するジュネーブ会議の関係文書は全部何回か御検討になっておると思いますが、私もこれを非常に不思議なことに思って、何回も難解な文章を読んでみましたが、これを通ずる精神は、結局は一口でいうならば、これは、南ベトナム当局の任務は、ベトナムを統合する総選挙までの間、臨時に南ベトナムにおける行政を担当するだけのもの、北ベトナムまた同様なり、こういう工合に理解せざるを得ないと思うのであります。今あなたは、一応北ベトナムに対して国家としての地位を与えて、そのような待遇をしておると言っておるけれども、一応も二応もない。少なくとも国際社会においてあのようなカンボジアから、ベトナムから、アメリカ合衆国、フランス、ラオス、ベトナム民主共和国、中華人民共和国、ソビエト社会主義共和国連邦、こういうようないわゆるベトナムを中心とする直接間接の関係を持つことごとくの国家が集まって、このような重大な休戦協定を含むところのジュネーブ協定、平和協定を作成いたします場合、すべて国家として待遇し、ことごとくそのような扱いをしておるのです。でありまするから、そのことは何ら中華人民共和国とベトナム民主共和国との問には、具体的地位に優劣があるというわけでもなく、また、他の一国との間の人口あるいは国土の対比率において問題にならないほどの懸隔があるわけのものではない。いわば似たようなものです。国家生成のその歴史も、日独の敗戦によるところの内乱の勃発ということで、これまた軌を一にしている。何にも違うところはない。にもかかわらず、一方に対して条約を結ぶときには、その主権の及ぶ範囲内にその条約の効果を限定し、今や南ベトナムと条約を結ぶ場合には、全ベトナム国土を包含するということは、これは不公正ではないか、不合理ではないか、どうも何人も理解ができないのではないか、私はこのように疑義を持たざるを得ないのでありまするが、何とか私どもが納得できるような、理解ができるような御答弁というものはできませんか。どうですか。局長連中で何とかやれませんかね。
#96
○藤山国務大臣 今お話しのようにジュネーブ協定にあるそういう政府を全ベトナムの政府と見るか見ないかというのは、国によって違うと思いますけれども、少なくも世界の大半の四十九ヵ国というものが、それを全ベトナムを代表する政府と認めていることは事実でございます。
#97
○春日委員 私の質問にまともにお答えをいただいておりません。それとも私の頭が専門の問題に入り過ぎておるので理解ができないのか、ちょっと私自体も判断に因るのでありますが、もう一ぺん、私が前に御質問をいたしましたことについて、そのものずばりで一つ御答弁願えませんか。もう一ぺん質問を繰り返してみましょうか、どんなものですかね。――ではもう一ぺん繰り返してみましょうか。
 中国とベトナムとの関係は、その国が二つに分かれた原因が、日独が敗戦をしたことに原因して、そこで内乱が勃発したことに由来している。だから同じことだ。それからその現在における国際的地位は、幾つかの複数国家によって承認されて、そうして現実に国家としての経済活動も、政治活動もいたしておるんだから、現存することは事実である。何人も否定することはできない。それから国土と国民との分布率も、北ベトナムの方は人口が二百二十万も多いんだし、国土はわずか一万五千平方キロメートル少ないだけで、同じようなものだ。こういうときに、一方台湾と条約を結ぶときには、その条約の効果の及ぶのを台湾政府の主権の及ぶ範囲内でこれを限定しておるのに、南ベトナムと条約を結ぶときには、全ベトナムをその条約の効果の及ぶ範囲と想定しておるということはなぜだ、このことを伺っておるのです。
#98
○藤山国務大臣 たびたび御質問がありまして、私はよく了解いたしておるつもりでありますが、私の重ねての答弁を一つ聞いていただきたいと思うのであります。
 いわゆる仏印三国と申しますか、仏印の保護領なり、あるいは植民地なりが、独立を戦後いたします過程において、むろん先ほども御指摘のありましたように、フランスは一応ホー・チミンと話し合いをしたこともありますけれども、これを相手にせず、そうしてバオダイと話し合いをいたして、御承知の通り仏印というものの独立の処理をいたしたわけであります。その場合に、ラオス、カンボジアができたと同じように、ベトナム全土の代表者としてこれを仏印が認めて、そうして独立をさせたわけであります。その経緯というものは、シナ大陸に行なわれました事実とは全く違った事実だと思います。また南ベトナムと北ベトナムとの人口の差あるいは面積の差というものは、面積は南の方が大きいんだ、人口は北の方が若干多い、二百万多いということでありますが、日本が平和条約を中華民国と結びましたときの中華民国の方における施政権を持っております人口なり、あるいは国土なりというものの大きさを比べてみますれば、これまた大へんな違いだと思います。そのほかに、今お話のありましたように、ジュネーブ協定におきましても、これは休戦のために一つの交渉をいたしたわけでありますが、その限りにおいては対等に扱いましたけれども、その他の場合においては四十九ヵ国対十二ヵ国というような承認国の違いもございます。従って、それらの現実の事態も認めて参らなければなりませんし、またジュネーブ協定自身が、将来統一さるべきことを、しかもこれは全ベトナムを通じての公正な選挙のもとに政府ができることを希望しておる事実から見ましても、われわれは、南を全ベトナムの代表と認めておる限りにおいては、統一政府というものはそういう選挙を通じましても、それの前提をなす政府だと思います。むろん北を認めておられる国の方々はそういうふうには考えておられない。これらのものは全く見解の相違になろうと思いますが、そういう事情から見まして、今のお話のような、中華民国と条約を結びますときにありました状態とは全く違ったものだと私は確信を持っているのでございます。
#99
○春日委員 ほんとうに見解の相違ですな、これは。私は、これをこれ以上お伺いをいたしましても、的確な御答弁が得られないことをはなはだ遺憾とするのでありますけれども、押し問答いたしておりましては、まるきり見解の相違で堂々回りになろうと思いますので、別の角度からお伺いをしてみたいと思うのでありますが、なおその前にちょっと一言つけ加えて御参考に供したいと思うのであります。
 フランス代表の、そのときのマンデス・フランス、この人が、南ベトナムの代表でありますトゥラン・ヴァン・ドー、これがさんざんぱら毒づいておることについて、すなわち南ベトナムの要求が黙殺され、その主張が否決されて、そうして北ベトナムの立場が保障されるような停戦協定のあり方、それについてさまざまに毒づいておることについて、回答をいたしております。いろいろなことを言っておられるけれども、フランス最高軍司令官の決定というものは、われわれはその権限と職責の範囲内で行動したことであって、要らぬことだ、この通り決定したのだ。そしてさらに、今外務大臣がホー・チミンを相手にせずとフランスが言ったと言っておられますけれども、その相手のホー・チミン主席の宣言に言及をいたしております。そうして、「軍令の決定に従ってこれらの共同体は、フランス当局が今まで認めていたものとは別の当局の管轄下に置かれている。重大な自由の保障について与えられた約束――本代表は、ここに信仰の自由を尊重することについてのホー・チミン首席の最近の宣言に言及する。すなわち『われわれは、これらの約束が支持されることについて確固たる期待を有するものである』と――が、その伝統的な信仰を尊重することにより、人民に安らかな生活を続けさせるという確固たる希望を有するものである。」、要するに、今大臣が、フランス政府はホー・チミンを相手にせず、こう言ったのだから、ホー・チミンという者の政治的地位、国際社会における地位というものは問題にならないみたいなことをおっしゃっておいでになりますけれども、最初はホー・チミンを相手にせずということを言ったのでありますが、今や、フランスは一九五四年の七月二十一日のこの協定の中においては、実にボー・チミン主席の言うたこと、すなわちホー・チミンの保障によってベトナムの人民に安らかな生活を続けさせることができるという確固たる希望をフランスは持っておるんだ。ホー・チミンに期待して、そうして南ベトナム政府の反論を押えておる。これは私どもしろうとが読んでも、読んで字の通り理解ができるのでありますから、従ってフランス政府はホー・チミンを相手にせずと昔言ったかもしれぬけれども、その後情勢の変化があって、そうして南ベトナムの要求を押えるのに北ベトナムの言動をもってする。いいですか、南ベトナムの非難にこたえるのに北ベトナムヘのフランス政府の信頼をもって行なっておる。これがジュネーブ協定であります。そういうような工合にして、やはり国際社会の相互間の関連というものは動き、かつ条件の変化とともにこういう形になってきておるということを率直にお認めを願わなければならぬと思うのであります。今耳打ちがあったようでありますが、何か新しいたよりでもありましたか。(笑声)
#100
○藤山国務大臣 別に新しいたよりもございません。(笑声)ジュネーブ会議の性質から申しまして、御承知の通り戦闘が行なわれて、それを停止するという立場においては、両当事者というものをともになだめていかなければならぬことは当然のことであります。平和を招来し、そこに危険性を排除していくということのためには、そういうような政治的ないろいろな表現をした説明なり、あるいは言説をしなければならぬことは当然のことだと思うので、そのこと自体が特にフランスが北べトナムを承認したとか、あるいは過去の経緯を全部それによって否定したという意味のものでは全然ございません。
#101
○春日委員 それは少なくとも、このようなソ連とそれからアメリカと、中華人民共和国その他関係国が全部集まったこのジュネーブ会議において、公の席によって特に記録にとどめたところのマンデス・フランスの回答を、ただ単に両方をなだめるためにフランスがとった手練手管だというふうにあなたが理解されては、それは正当な理解というか、少なくとも一国の外務大臣が外交文書や外交文献を理解するあり方としては、あまりにも意図あっての理解みたいなもので、これは公正な御答弁ということにはならぬと思うのです。しかし、この点を私どもが堂々回りしておっても問題の核心に入りませんから、進んで伺いをいたしますが、ならば、承認していないことは積極的に否認しているものではないと思うのです。言うならば、これはまだ承認する段階に至っていないことを意味するにとどまると私は思う。私どもは後日歴史の推移によってこれを承認することになるやもしれぬ。あるいは中共の問題だって、早く国交を回復して云々という世論は、アメリカなんかでもギャラップ調査にずっと現われてきておるところです。また上院においても、そういうような意見がどんどんと頭を出してきつつすらあるのでございます。でありますから、承認していないということは、日本国がそれを否認しておる、このような国家あるべからずと否認していることを意味するものではないのであって、現実にはいまだ承認する段階に至っていない、承認することになるかもしれない。私はこういうふうな関係にあると思うが、この点はいかがでありますか。
#102
○藤山国務大臣 一般に申しまして、承認をするかしないかというのは、そのときのいろいろな状況下に判断をいたさなければならぬのであります。現在日本といたしましては、北ベトナムを承認はいたしておりません。南ベトナムを全ベトナムを代表する政府として承認いたしております以上は、北ベトナムを承認するわけには現状において参らぬことは御理解をいただけると思います。
#103
○春日委員 私は、この際ちょっとお伺いをいたしますが、政府はベトナム共和国を承認されておりますね。その承認したときはいつか、承認したときの領土とその主権の及ぶ範囲をどういう工合に理解して承認したのか。そのときに交換された文書でもあれば御提出を願いたいが、この点をお伺いいたします。
#104
○高橋政府委員 一九五一年のサンフランシスコ会議におきまして、ともに会議において平和条約に署名をいたしました。その事実によってベトナムを承認したということになります。
#105
○春日委員 そのときに国土と国民はどういう工合に理解して承認をされておりますか。公の文書か何かありましたか。
#106
○高橋政府委員 一九四八年、九年のころにフランスからベトナムが独立をいたしまして、全ベトナムを代表する政府としてサンフランシスコに招請を受けたベトナム政府及びベトナム国、これと調印いたすことによりまして、これを承認したということになる次第であります。
#107
○春日委員 そういたしますと、こういう関係が現実に生まれてくると思うのですよ。一九五一年にベトナムを全ベトナムを代表するところの正統国家としてこれを承認した。ところが内乱がずっと激しくなってきて、これをおさめることのためにジュネーブ休戦協定が設けられ、そうして、その独立と平和のためにさまざまな協定が取りかわされた。それは一九五四年ですから、三年後にそういう事態が新しく国際社会の中に取りきめが行われたわけです。そういたしますと、なるほど一九五一年に日本国がベトナムを承認するとには、それを全体国家の代表としてその政府を認めることはあるいは可能であったかもしれない、むりからぬところであったかもしれない、あるいは異論のないところであったかもしれないけれども、三年後において、南北ベトナムにおける戦争をおさめなければならないというところから、このような地域的な集団的な国際社会の取りきめが行なわれた。これを契機として南ベトナムの施政権、主権というものに一つの拘束が現われてきておる。すなわち、主権の制限がここになされて、現実には別個の国家というものが一九五四年七月二十一日に新しく誕生してきておる。それまではフランスとホー・チミンとの間におけるいろいろな取りきめであったかもしれないけれども、今度はソ連もアメリカも中共も、それから近隣諸国も加えたそのような集団国家によって、このベトナム国の主権というものに制限が加えられてきた。そうして現在に至ってきておる。従いまして、承認したときと現在とでは、一九五四年のジュネーブ協定を契機として、その国家の形態に変革があると思うが、その点はどうでありますか。
#108
○高橋政府委員 その点につきましては、ジュネーブ協定はあくまでこれは休戦条約でございまして、不幸にして発生しました戦闘をとにかくここで休戦にして押しとどめようという協定であると考えます。従いまして、それがその当時の国家の性格を変更するほどの公的な力を持つものではないというふうに考える次第であります。
#109
○春日委員 少なくともこの第六条においては、この間もあなたが引例された通り、軍事境界線というものはこれは暫定的なものである、かつ政治的な、あるいはまた領土的な限界線としてこれを了解することはいかぬと言っておるが、これは北ベトナムにも言っておることであり、同時に南ベトナムにも言っておることであります。両方に言っておることなんであります。従いまして、十七度線というものを境界線として事実上国家がここに分断されたと見るべきですね。そうしてそのことについて共同宣言でこれらの関係諸国が調印をいたしておる。従いましてこの文書の中には、あくまでも南ベトナムの主権というものは、その潜在主権でも何でも、それを北ベトナムにも留保するということはないのです。そんなばかなことはないというて、南ベトナムの何とかいう代表が非常な抗議を申し入れたわけです。このようなことは潜在主権を圧殺するものであって不当なることだ、こんな取りきめがあるかと言うたが、それが否決され、黙殺されておる。そうして最終的にはマンデス・フランスが、そんなことを言わぬでもよろしい、ボー・チミンの言や信頼すべし、よってその国民の自由というものはホー・チミンの言によって保障されるから、やがて問題は一九五六年七月に施行される総選挙でどっちにでもきめてくれ、こういうことになっておるんですね。そういうわけでありますから、サンフンシスコ講和条約において日本国が承認をしたときの条件と、一九五四年におけるこのジュネーブ協定のときにおける変革、そのことを考えて対ベトナム外交方針というものを立てるにあらざれば、これは現実に遊離したというか、現実を無視した扱い方と断ぜざるを得ない。この点いかがでありますか。
#110
○藤山国務大臣 必ずしも現実を無視しているわけでございません。ジュネーブ協定の精神は、やはり統一をすることであろうかと思います。そうしてそれは公正な選挙でもってやっていく。ただジュネーブ協定は、軍事境界線をきめ、休戦をやり、平和の状態をそこに持ち来たしたいために行われた一つの協定であること申すまでもないのであります。従って、その限りにおきまして何ら他のことが制限されているということは、われわれとして考えないのでありまして、お説のような意味にはとれないと私どもは考えております。
#111
○春日委員 これは全然見解の相違といいまするか、自説を固執して譲らぬというか、私はこう思うのだから、あなた方はどうでも勝手に解釈してくれという傍若無人な態度というか、これは実に困った態度ですな。そういう答弁では困りますよ。それでは私どもが問題の本質を突きとめて、国家と民族のために善良な審議をすることはできませんよ。私はこう思うのだから、ほかにどういう条約があるか知らぬし、どういう慣例があり、どういう法律の基礎があるか知らぬが、勝手に解釈しておってちょうだいといった、棒をのんだようなことで、われわれがこのような条約や協定や法律を基礎にして質問しておるときに、私はこうだという考え方だけを述べておられる。これでは非常に困ると思うんです。私は誠意を持ってお伺いしておるのだから、よかれあしかれ問題の核心に触れて事実に即した審議をしないと困ると思うのです。
 そこで私は、何と言われましても、まただれが読んでもその通りだと思うのでありますが、このジュネーブ協定の規定による南ベトナムの権利というものは、停戦協定や、その宣言、それから各国代表のあいさつ、一切から生まれてくるところの共通の理解は、南ベトナム当局の任務というものは、ベトナムを統合する総選挙までの間、臨時に南ベトナムにおける行政を担当するだけだ、こういう工合にしかこれは書いてありません。また北ベトナムに対しても同様のことでございます。
 私は、この際お伺いをしたいのでありますが、一体藤山外務大臣は、国際間の地域的な集団的な取りきめ、協定、条約、こういうものは、わが国が署名しておると、加盟しておるといなとを問わず尊重されますか、あるいは全然無視されますか。どういう方針ですか。
#112
○藤山国務大臣 むろん調印しておりません条約を尊重するかしないかということは、そのときの事情によることは申すまでもないと思います。多数の国が調印しております協定というものを、できるだけ尊重していく。しかもそれが平和につながっておるものにつきましては尊重していくということは、原則としてはそうであろうと思うのであります。しかしながら、必ずしもある程度の多数の国が調印をいたしたからといってそれにわれわれ調印していない国が、全部その趣意を尊重しなければならぬというものではないと思います。ジュネーブ協定については、私ども毎々申し上げておりますように、われわれは調印はしておらぬけれども、できるだけその精神を尊重していきたい、こう重ねて申し上げておるのであります。
#113
○春日委員 私は、ある地域あるいは一国の問題について、直接間接に関係のある諸国家が、そこに地域的なあるいは集団的な取りきめをした場合においては、それに直接あるいは間接の関係を持つ他の国家は、やはりその精神を尊重して、それの方向に従って処理をすることが国際道義ではないかと思うが、あなたの御答弁によりますると、署名してないところでどういう問題があろうと、こちらは勝手にやっていいんだ、またやるんだということでは、これは国際協調の精神にも反するし、特にまたジュネーブ協定なるものが、平和のために、そしてそれら諸国の独立を完成することのために取りきめられておる重要な協定であるだけに、私は、直接日本がそれに参画していないといえども、やはりその精神は尊重されなければならぬものと理解をするが、この点はいかがでありますか。
#114
○藤山国務大臣 たびたび申し上げておりますように、私どもは、ジュネーブ協定には調印はいたしておりませんけれども、その精神はできるだけ尊重していきたいということについては繰り返しここで述べておるつもりであります。むろん世界のいろいろな協定がございましょう。あるいは共産圏の中だけの協定もありまして、これも世界的な協定と言えないことはないわけであります。そういうものがいろいろあろうと思いますので、必ずしも尊重できないものも私は絶無ではないと考えておることを申し上げただけでありまして、有力な国が相集まって、できるだけ平和にいこう、そしてできるだけそれらに対して十分な善処をしていこうというような問題については、われわれ平和の外交を推進していきたいものとしては、できるだけ尊重していくこと申すまでもございません。
#115
○春日委員 私は当然のことであろうと思うのであります。そういうようなときには、やはり国際社会に伍する一員といたしまして、そういうような趣意によって協定妥結されたところのその国際社会の方針というものは当然尊重されなければならぬと思うのであります。にもかかわらず、今度の賠償協定は、その決定の方向と相反するような結果を生じてくる心配があるわけなんです。と申しますることは、この賠償協定、すなわち南ベトナムに払うところのこの賠償が北ベトナムにもいくのだ、こういう理解の上でこの賠償がなされようといたしております。しこうして北ベトナムは、大臣もお読みになっておるでありましょうが、一九五七年六月二十七日ベトナム民主共和国国民議会の常務委員会代表トン・ドックタン氏が、衆参両院の議長に対して、これは認めない、南ベトナムに対してこんな賠償を行なっておるようだが、そんなものはかくかくの次第によって認めないと長文の文書をよこしておる。そういたしますると、北ベトナムの意向に反して、意思に反して、そうして事実主権も及んでないような地域と国民に対してその賠償が及ぶものと期待をしてやるということは、これは明らかに北ベトナムの主権の侵犯であり、いわば南北両ベトナムに対する内政の干渉になると思うのです。これはやはりジュネーブ協定そのものに根本的に対立するというか、これをじゅうりんする、無視するという形に現われてくると思う。この点いかがでありますか。
#116
○藤山国務大臣 ジュネーブ協定におきまして、平和裏にベトナムを統一されることを望み、単一政府のできますことを望んでおりますことは申すまでもない。しかし、そうかといって、現状のような事態にありますときに、それぞれ、統一政府と認めます、全ベトナムを代表する政府と認めます方と友好関係を持つ国が、それらの国を助けますことは、決してそのこと自体が全部非友好的な措置だとは思いません。私ども南ベトナムを正統政府と思っております国は南を助けておりますが、北を正統政府と認めているものは北を助けておると思います。そういう限りにおきましては、そのこと自体が、全ベトナムの友好関係を害するというふうには解し得ないと考えております。
#117
○春日委員 あなたはバンドン会議に御出席なすったときに、南北ベトナムの統一促進の決議を特に支持されておるわけなんですね。こういう態度と、今分裂しておって、片方は絶対こんなものは払ってもらっちゃ困る、わしは知らぬぞ、こう言っておる。勝手に払うなら払え、われわれの方はあとで請求するぞと言ってきておる。片方に味方を深くすることによって、片方をより以上敵の側に激発していくんですよ。これはあなたがバンドン会議においてとられた態度と全然二律背反だ、全然背反する行動と態度といわなければならぬでございましょう。バンドン会議におけるあなたの心境と今の心境とどんなものでございますか。
#118
○藤山国務大臣 全ベトナムの国民が幸福になり、生活が向上し、あるいは経済的な向上発展をはかるということは、これは統一を前提としても当然友好国としては考えて参らなければならぬことでありまして、そのこと自体が私は特に統一を妨害するということではない、こういうふうに考えておるわけであります。従って、統一を希望しながらも、それぞれの国を承認しておる立場から見ますれば、できるだけ全ベトナムのために経済的な援助もやらなければならぬというのは、これはあたりまえのことだと考えております。
#119
○春日委員 この問題はどうもいつも堂々回りをするようでありますから、それではこういうようにお考えにはなりませんか。かりに千歩譲って、南ベトナム政府をベトナム全土を代表する正統政府と承認することが、かりにあなたのおっしゃる通り正当なものと仮定をいたしまして、だがしかし、北ベトナム政府は現存いたしておる。しこうして、この北ベトナム政府がこの賠償協定に反対抗議をいたしておる事実も徴さなければならぬ。次いで、かつ戦争の被害が北ベトナムの領域に発生した事実もこれを重視しなければならぬ。この三つの要素を勘案いたしまするときには、今日の段階では、賠償を支払うということは早計であるとはお考えにならないか。たとえば、ただいまお話しになった通りに、バンドン会議において、あなたは南北のベトナムの統一をこいねがわれた。ところが、賠償を払いましょう。払うけれども、今あなたの方の状態は南北に分かれていらっしゃる、そうして北ベトナムに被害も多かったのだし、また北ベトナムの政府からもこんな抗議がきておるから、お払いしたい気持はやまやまだけれども、まずあなたの方の国家統一ができなければ払うにも払えない、それじゃ何とか一つ早いところ統一してもらえぬか、協定されておるように総選挙も一つすみやかにやってもらえぬか、その上において一つ十分理由がある賠償をいたしましょう、こういうような工合に、やはりその時限を今に置かないで、賠償支払いを通じて、南北のベトナムが統一できるような形にこれを協力支援するというようなあり方があっていいと思います。この点はいかがでございますか。
#120
○藤山国務大臣 むろんこの統一ができまして払い得れば、それに越したことはないと思います。しかしながら御承知の通り、現状においてはなかなか統一が行なわれません。そうしてこれもたびこび私が申しておりますように、一九四六年でありましたか、ロンドンに、ソ連とイギリスとが寄りまして、その際当分選挙が行なわれることはむずかしいであろうというようなことを関係国にも通知いたしております。そういう事情でありますれば、われわれとしては、サンフランシスコ条約の義務を早く果たして参りまして、そのこと自体が、ベトナムの経済復興なり何なりに役に立っていくということでありますれば、当然できるだけ早い機会にこれらの義務を実行して参りますことが必要なことだ、そういうふうに考えております。
#121
○小澤委員長 関連質問として、岡田春夫君に許します。
#122
○岡田委員 ちょっと外務大臣に伺っておきます。これは非常に重要なので伺っておきたいのですが、ジュネーブ協定の問題です。先ほどから大臣並びに条約局長は、これは休戦の協定である、こうお話しになっておりますが、まず第一点に伺いたいのは、確かにあなたの言われるように休戦協定はあります。それと同時に、最終宣言が採択になっております。この最終宣言の性格というものはどういうものであるか、この点についてまず伺いたいと思います。
#123
○高橋政府委員 最終宣言は、これは会議においてなされました宣言でございます。この宣言には、各国はこれに署名はいたしておりません。休戦条約の方は、御承知の通り署名いたしております。従いまして、条約上から考えますれば、休戦条約は一つの拘束ある協定ということになっておりますが、この宣言は、そういう意味の、条約上の意味における拘束力とか、そういう問題ではございません。しかし宣言である以上、この協定をここに了承するとか、協定が戦闘行為の終結を祝するとかいうふうに書いてありますので、この協定自体に対しまして、これを支持するところの意思の表明であろうとそれは考えます。
#124
○岡田委員 これは条約局長のお説の通りに、日本の国内でも誤解されておるのですが、ファイナル・デクラレーションが、署名をいたしていないとか、いるとかいうような問題があるのですが、これはやむを得ざる事情において署名をしなかったのではなくして、このファイナル・デクラレーションそれ自体の性格として、署名を初めからしなかったわけだ。こういうものであって、署名がないから、これは拘束力がないとかあるとかいう、そこから問題なんですが、これは外務大臣、特に尊重するとかしないとか言われますので伺っておきますが、ファイナル・デクラレーション、これは初めから署名はないのであります。ですから、署名はないから拘束する必要はないという、そういう問題ではなくて、実はこういうような宣言の形態というのは、たとえば大西洋宣言あるいはその他の宣言と同じように、これは条約よりもそれ以上の力を持っておるところの宣言である、そういう意味のものとして、デクラレーションはきまっておるのだとわれわれは解釈しておる。そうではなくて、これは署名がないから協定よりも拘束力はないのである、こういう意味に解釈していいのかどうか、そういう点をまず伺っておきたいと思います。
#125
○高橋政府委員 この会議の宣言を見ますと、ただいま申し上げましたように、条約の形態をとっておらず、条約ではございません。しかしこの宣言は、これは本来ならば、この宣言をなした全部の国が一致してこの宣言を支持できれば適当じゃなかったかと思いますが、各国がいろいろなやはり問題を蔵しておったということも、これも記録で明らかでございます。従いまして、この宣言といいますものは、ただいま申し上げましたようなジュネーブ協定で休戦条約ができたということを、会議の文章を通じまして、いわば会議の議事録として、このような宣言をここに採択しているものであろうと考えます。
#126
○岡田委員 この点の解釈上の問題だけを言っていると、関連質問ですから長くなりますから、これは私のときにまたあらためてやります。しかし、この最終宣言によって規定された規定については、これは少なくとも参加国全体はこれによって守らなければならない。法的な義務がないにしても、少なくともこれを守っていかなければ、休戦というものは継続され得ない。そういう点で、これは休戦協定と不可分な関係に立つと思うのですが、どうですか。
#127
○高橋政府委員 この宣言は、共同宣言として一致した部門、それからそうではなくて個別的な宣言もあります。従って、ただいま御指摘の通り、非常に複雑いたしております。それを全部の宣言を総合的にやはり読んで、これを解すべき問題であろうと思います。
#128
○岡田委員 それではこのファイナル・デクラレーションの中で――これは藤山さんによくお聞きしたいのでありますが、これは単なる停戦協定ではなくて、独立の保障、統一の保障、こういう政治的な協定までファイナル・デクラレーションに書いてあるのでありますが、この点はいかがなんですか。先ほどのあなたの答弁でいうと、単に軍事的な停戦の協定であるというがごときの答弁がありましたが、そうではなくて、政治的な取りきめがはっきり出ているのですが、この点はいかがですか。
#129
○藤山国務大臣 むろんこの協定でもって軍事的な停戦をやって参るわけであります。その背後に大きなやはり将来に対する希望というものを、これは表明していかなければならない。そういうような精神的な意味においてそれを見るべきでありまして、そのこと自体を特に強調する必要はないのではないか、こう思っております。
#130
○岡田委員 この点についても、関連ですからあまり詳しく言いませんが、それではちょっと伺っておきますが、休戦協定並びに最終宣言、それに関連するいろいろな公文書がございます。この中で、私の記憶している限りにおいては、条文の中に、明文としてベトナム民主共和国という言葉がはっきり出ております。この点が出ているか出ていないか、この点をまず伺います。
#131
○高橋政府委員 これは休戦協定第十四条b項に出ております。
#132
○岡田委員 休戦協定第十四条b項に、「ヴィエトナム民主共和国」と出ております。ところが、それではベトナム共和国という言葉がどこかに出ておりますか。藤山さんいかがですか。
#133
○藤山国務大臣 条約局長から御答弁させます。
#134
○高橋政府委員 ちょっと見当たりません。
#135
○岡田委員 御承知のように、この休戦協定の中でも、ベトナム民主共和国というのは、明文上明らかになっておる。日本の政府が認めるか認めないかは別ですよ。この会議それ自体において、ベトナム民主共和国というのははっきり出ている。ところが、藤山さんの今承認しようとしているベトナム共和国というものは、休戦協定に全然出ていないんですよ。ジュネーブ協定のどこに、これはあなたどれによってあれするのですか。これは署名していないから、これに拘束される必要はないというようなお考えなんですか、どうなんですか。
#136
○藤山国務大臣 軍事休戦協定でございますから、当時ベトナム側はフランスの軍司令官のもとに行動をともにしておりました。従って、フランスの軍司令官の名においてすべてのことが行なわれたと思います。
#137
○岡田委員 それですと、あなたはそういう御答弁になるのならもっと伺いますが、フランス連合というのは、署名しているのは、あなた休戦協定ですよ。フランス連合によってこれは権限を委任されているということなんですか。それではどういう点で委任されているんですか。
#138
○高橋政府委員 休戦協定は、御指摘の通り、フランス連合軍司令官として署名いたしております。これはフランス連合、ベトナムを含めましたフランス全体の連合の軍司令官としての地位をもって署名しております。
#139
○岡田委員 その限りにおいては、その連合軍の司令官は、リパブリック・オヴ・ベトナム、これを拘束し得るというその権限を、フランス連合軍が持っているわけですね。
#140
○高橋政府委員 これは基本的にはフランス連合のワク内におけるベトナム、フランス連合組織の問題でございます。
#141
○岡田委員 そうするとあれでしょう。フランス連合との関係ではありますが、リパブリック・オヴ・ベトナムというものは、軍事主権というものを、その限りにおいて制限されていることになりますね。
#142
○高橋政府委員 これはベトナムとフランス本国との関係におきまして、そのような拘束を持つ、その問題であります。
#143
○岡田委員 それではベトナム民主共和国はフランス連合によって拘束されますか。
#144
○高橋政府委員 拘束されません。
#145
○岡田委員 それではベトナム民主共和国は軍事面においてだけでも完全な主権を持ち、リパブリック・オブ・ベトナム、南ベトナムはフランス連合の関係においては、軍事体系においても制限を受けているという事実は明らかではありませんか。外務大臣どうです。
#146
○藤山国務大臣 そうした事実が、南が独立国として全ベトナムを代表するという意味においては、違いはございません。
#147
○岡田委員 それは何ですか。あなたの答弁は、サンフランシスコ条約の話を言うのですか。私のはジュネーブ会議の話を言ったのですよ。ほかの話を言ったってだめですよ。ジュネーブ会議の話を私は聞いているのです。軍事的制限を受けているのじゃないかということを聞いているのですよ。
#148
○高橋政府委員 そういうフランス連合内のワクにおきまして、仏本国とフランス連合の構成するベトナムとの関係が、そのような御指摘のような関係でございます。軍事的な協力関係である、こういうふうに私は考えます。
 それから、つけ加えて申し上げさせていただきたいと思いますが、これもたびたび御答弁申し上げたところかと思いますが、これは休戦協定でございますので、いろいろそういう名称は使っておりますが、しかしこれがその現在の法的立場を変更するような関係ではないと思います。
#149
○岡田委員 それでは具体的に――この点は留保いたします。私の質問のときもう少し伺いますが、それでは具体的に伺いましょう。藤山さんも、これは条文を見ながらやって下さい。そうでないと、藤山さんの言っておることは、ジュネーブ会議の質問をやっているのに、サンフランシスコ条約の答弁をしたってどうにもならないので、だからここに条約がありますから、あなたなかったら見せてあげてもいいのだけれども、ファイナル・デクラレーションの第九条をごらん下さい。デクラレーションの第九条に、「ヴィエトナムの南部及び北部地域の権限のある代表的な当局並びにカンボディア」云々、これはカンボジアの方はベトナムに関係ないから一応除きます。代表的な当局は、「戦争中当事国の一方にいずれかの方法で協力した者」云々とあります。この「当事国」というのは何ですか。
#150
○高橋政府委員 それはこの休戦協定の処理の過程においてそのような呼称をもって呼んでいるということでございます。
#151
○岡田委員 いや、私はそういうことを聞いているのじゃないです。当事国というのは具体的に何ですかを聞いておる。ベトナムとフランスとの間の関係においては、フランス共和国というのはありますが、もう一つありますね、当事国の一方というのだから。
#152
○高橋政府委員 第九項でございますが、それは北と南でございます。「北部地域の権限のある代表的な当局」、パーティということになっております。
#153
○岡田委員 それはパーティは「北部地域の権限のある代表的な当局」これを意味する。当事国の関係はこれは違うのです。当事国は、これは何かというと、戦争中の当事国の一方ですから、そのあとに「いずれかの方法で協力した者又はこの者の家族に対し、個別的もしくは集団的報復を許してはならない。」と書いてある。だからこれは当事国が一方はフランス共和国なら一方はベトナム民主共和国でしょう。違いますか。
#154
○高橋政府委員 第九項でございますが、その末段に、これは戦争中いずれか一方の当事者――やはりパーティでございます。
#155
○岡田委員 パーティというものは、それは確かに翻訳ではそういうことになりますが、これはあなたの方の翻訳ですよ。国と書いてあるじゃないですか。外務省条約局昭和三十一年三月編さん、これはパーティというものは、確かに相手側という訳もありますが、同時にパーティズは、これは国と訳する場合も当然あるでしょう。あるからこういうふうに書いてある。これは外務省の本です。しかも、私は春日さんに借りたんですよ。国というのは間違いだという意味ですか。
#156
○高橋政府委員 この場合正確さを欠いていると思います。右のこの訳文は、未定稿というふうに書いてあるのでございます。
#157
○岡田委員 しかしこれは高橋さんに何も私は言っているんじゃない。私はこの点を藤山外務大臣に聞きたかったんだけれども、パーティズというものは、ジュネーブ会議のファイナル・ディクラレーシコンだけで国と訳したのではないんですよ。あなた方の条約局で作られたいろいろな翻訳の中で、パーティズというのを国と訳している例は幾つもあります。これは二国間条約にもある。これは一つ例をあげてもいいんだけれども、これは国でないということがどうして言えるんですか。当事国というのは誤訳であるという意味はどうして言えるのですか。藤山さんこれは国でないのですか、どうなんですか。
 それでは私は関連質問だからこれは留保します。これ以上言いません。いいですか、藤山さん、よく聞いておいて下さい。ベトナム南部の権限ある代表的な当局、この当局で南ベトナムの機関の性格が現われておる。これが南の機関の性格です。ベトナム民主共和国の性格は、当事国の一方ということで、ベトナム民主共和国の性格は現われておる。第九条で明らかに当ベトナム民主共和国が正統の国としての扱いを受け、片方は単なる行政担当管理機関であるという性格を明文上明らかにしているじゃないですか、これはどうなんですか。藤山さん、全体として、条約局長に、おれは知らぬからというので、文章も読まないで、おれは知らぬ、おれは知らぬと言ってもだめですよ。
#158
○藤山国務大臣 外務省の条約局の見解として、今岡田君が言われるように、南の政府というものが国でないというふうには解釈いたしておりません。
#159
○岡田委員 私はこの点については留保しておきます。
 それではもう一点伺います。十二条、これは高橋さんもお読みいただいてけっこうです。十二条の中で、これは重要です。「前記の三国の主権、独立及び領土の統一及び保全を尊重し、かつ、その国内問題」――国内問題というのは何ですか。これはパーティで、国内ではないんですか――「についてのすべての干渉を慎むことを約束する。」こうはっきり書いてある。これは国じゃありませんか。藤山さん、どうですか、これは違うんですか。
#160
○高橋政府委員 この国内問題、インターナル・アフェアーズでございます。そこで各自が国内問題については干渉を慎まなければならないということを申しておるわけでございます。
#161
○岡田委員 国内問題という点ははっきりお認めになりました。その国内問題の中には、ベトナム民主共和国も入る。なぜならば、その冒頭にこう書いてあるじゃありませんか。冒頭に「各参加国は」と書いてある。各参加国の中にはベトナム民主共和国は入っておるのじゃありませんか。これは国じゃないですか。藤山さんどうです。国でしょう「各参加国は」――ここにはパーティとは書いてありませんよ。これは国じゃないですか。いかがです。
#162
○藤山国務大臣 北のベトナムを承認しておる国もあるわけでありまして、これらの国が寄ってジュネーブ会議をやったわけであります。従いまして、休戦協定の場合にお互いの立場をできるだけ尊重した表現等を用いるということは、これは当然のことだと思うのでありまして、そういう意味において、これらの休戦協定にはいろいろそういう言葉が用いられたと思います。しかしながら、日本としては南を国として、正統政府として認めておるわけであります。
#163
○岡田委員 私はこれで終わります。この点について留保いたします。しかしながら、あなたのお認めの通りに、北の方を認めた国も入っておるから参加国と書いたのだ、こういうことによってジュネーブの協定という、こういう宣言が生まれたとするならば、この国際的な宣言によって、ベトナム民主共和国というのは、ジュネーブ協定に関する限り、これが国家として認められているということは明らかにしている。こういう点については、私これは関連質問ですからこれ以上やりません。いずれこの点については、私の質問のときにあらためて具体的に質問を続け参ります。私はこれで留保いたします。
#164
○春日委員 私は、条約局長がそのパーティを国家と見るか、団体と見るか、何となく国家でないような答弁をされましたが、それは不当なことだと思うのです。これは明らかに国家です。それは申し上げるまでもなく、日本がそれを認める認めないということと、国家として存立していることとは全然別個の問題である。われわれが認めないということによって国家が抹殺されるわけではないのです。現実に認めようと認めまいと、ソ連、中共もその他の国々も、十一ヵ国もこれを認めて国家と承認をしておるのでありまするが、国家というものを日本の藤山国務大臣が認めようと認めまいと、これは厳然たる事実なんです。だから、そんなものはパーティもネーションもないですよ。その点は明確だと思うのであります。ただ問題として残るのは、そういうような答弁をされるということは、明らかにその国家を抹殺せんとするような意図のもとに答弁をされておるものと、これは北ベトナムに誤解を与えるおそれなしとしない。私はそういう意味で、他国の内政に干渉したり、いやしくも国家として存立しておるものを、ことさらにジュネーブ協定においてネーション、パーティという言葉で、明らかに国家としての処遇を受けておるのに、しかもそればかりではなにし、大統領とか大臣閣下とか首相閣下とかいう名前でそういう応酬がされておるのに、ことさらにそのパーティというものはネーションでないということを、国家でないということを言われるということは、これは北ベトナムに対してもまた中共に対しても誤解を与えて、国際的な社会においてわが国の立場を不利にするものであるから、厳に御注意を願いたいと思うのであります。
 そこで本質論に入りますけれども、ただいま私は千歩も万歩も譲って、現在かりに藤山さんがおっしゃるように、岸内閣が言うておるように、南ベトナム政府をベトナム全土を代表する正統政府と承認することがかりに正しいと仮定した場合、けれども、このような工合に北ベトナムという国家が存在しておるし、そうしてこの北ベトナム政府は、日本の国会の両院議長に対して、こんなことをやってもらったら困るといって反対と否認と抗議がここにやってきておるのです。これは現実の問題である。そうして、もう一つの現実は、何といっても戦争の被害が南よりも北に多かったという事実、これは戦記によっても明らかですね。こういうような段階で、今ここで賠償を行なうということは早計ではないかとお伺いをしたら、大臣は、サンフランシスコ条約第十四条によって、条約上の義務を負わされておるから、これはやらなければならぬ、こういうようなことを言っておられる。私はこの際こういうような情勢下においては、私たちはしたいのだけれども、しようにもし得られないのだ、これが私は現実の実情に即する判断ではないかと思うのですが、この点はいかがでありますか。
#165
○藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、統一ができてこれを払うことができますれば、義務を履行することができますれば、これは非常に好ましいことだと思います。しかし、現状において必ずしもそれが達成されない以上、いつまでもわれわれはサンフランシスコ条約の義務を履行しないわけには参りません。そして、それを履行しますこと自体は、われわれが全ベトナムを代表する政府としてこれに履行するわけでありますから、その限りにおいて私は不適当であるとは考えておりません。
#166
○春日委員 このジュネーブ協定では、第七項でベトナムを統一することのために一九五六年七月にその統一選挙が行なわれなければならないと規定をいたしておる。そこで統一の時期というものはすでに三年間に過ぎておるのだが、本日までなおかつこの統一選挙が、ジュネーブ協定の協定にもかかわらず行なわれないという理由は、一体どういう事情によるものでありますか、お知りになっておりまする範囲内について一つお答えを願いたいと思います。
#167
○藤山国務大臣 全ベトナムにおきます休戦協定によって、この話し合いをいたしました両当事者というものは、やはり今日までもいろいろの国内の事情からして、十分機が熟しておらぬと思います。それには公正な選挙というものが取り行なわれるか取り行なわれないかという問題もございましょう、いろいろな事情もありまして、今日までできておらぬのでございます。
#168
○春日委員 いずれにいたしましても、将来十年とか二十年とか、あるいはいつかわからないというような問題ではないと思うのであります。いやしくも、この協定によりましては、その限られた時限というものは一九五六年、三年前です。従いまして、最もすみやかに統一というもののための選挙が行なわれなければ相ならぬのであります。ところが片一方において異議を申し立て、片一方またそれに応じて、いろいろな応酬があってまとまらぬ。そうすると結局このジュネーブ協定というものは、ここに協定されても、実際の効果を最終的におさめてはいない。だから何らかの措置をとらねばならぬという次の段階へのいろいろな発展があると思うのであります。そういたしますると、何らかの措置を講じて統一をはかる方法が一つ、統一はもうはかれないから、これを二国は二国として、別個の国家としてもはや承認せざるを得ないというような場合が一つ、まあこういうような発展があると思うのであります。しかもその発展たるや、ここの協定によって決定された一つの時限をすでに経過しておることにかんがみましても、これは早急にされなければならぬのでありましょう。この参加した国際間の努力によってその統一選挙がなされるか、いろいろ話してももうだめだ、だめなのならばもう一ぺん戦争を再開して問題を力づくで解決をつけるか、あるいはまたこの両国というものが現存するその事実の上に対して、これを現実として認めていくか、何らかの方法があるのであって、現在は過渡期なんですね。最終的段階のものではないのですよ。何らかの決定への前進のその過程であるのですね。この過程にある中において、一国にだけ賠償を払うというようなことは、サンフランシスコ講和条約のあらゆる条章から考えましても、そのような義務は課せられていない。今は早計ではないかということが一つ、早計でないとしても、払おうと思っても払うべき可能な状態に置かれてはいないということは、サンフランシスコ講和条約に署名したところの五十何ヵ国でありますが、ことごとくこれは話せばわかることなんです。私はこれを払うことによって、一方に満足を与えると同時に他方の怒りを激発する、そのような不利な賠償をわれわれ日本国民の血税によって払わなければならぬかどうか、日本国として深甚な考慮をめぐらさなければならぬ段階にあると思うが、どうですか、この点について御答弁を願いたいと思います。
#169
○藤山国務大臣 サンフランシスコ条約の義務を果たしますことは、われわれとしてできるだけ早い時期に義務を果たしますことは、これは日本国民としても、戦争によっていろいろな迷惑をかけたことに対して、当然のことだと思います。ところが今お話しのように、いろいろな事情があるではないかというお話でございます。しかしながら、われわれとして統一を待つということも今日の状況ではなかなか困難でありますが、しかしそうかといって、それでは二つの国が必ず生まれるのだという断定はないのでありまして、将来やはり統一に向かっての努力はされると思います。統一に向かっての努力がされるとするならば、ことにジュネーブ協定に調印している国は有力なこれらの関係国でございますから、むろんそれはジュネーブ協定の精神に従ってできるだけのことをいたすことであると思います。そういう状況下にありますならば、われわれとしては義務を履行する上において、やはり賠償を通じてできるだけ全ベトナム国民の利益になりますように努力して参ること、これまた当然のことでありまして、私といたしましては、これを進めていくことが適当であろうと、こう考えておる次第であります。
#170
○春日委員 それならば、めども立たぬから、とにかく南ベトナム、これはサンフランシスコ講和条約に署名をしておるのだから、やはり賠償請求権があるから、応諾の義務があるので払わねばならぬとするならば、それは金銭の多寡は別といたしまして、この二百億なら三百億というものは、その現実に即してこれは南べトナムに、あなたが請求されるならあなたの主権はこれこれだ、たとえば十七度線以南であって、人口は千二百五十万なら千二百五十万、こういう国家からあなたの国家はなっておるのだから、それによってあなたの方に払いましょうということで賠償協定を結ぶべきものであって、その賠償協定の、金銭の多寡は別といたしまして、これが北ベトナム、あるいは全然国家の主権を異にしておる、その政体を異にしておるところの北ベトナムの分もあなたに払うのだから、というようなばかげた論理の合わない払い方をしないで、南ベトナムと賠償協定をやるのだったら、南べトナムの損害と南ベトナムの国民に与えた苦痛だけに限定して賠償協定を結ぶ、こういうことはできないのでありますか。
#171
○藤山国務大臣 先ほどジュネーブ協定のときにも御説明申しました通り、ジュネーブ協定は単なる軍事休戦協定でありまして、従って政治的な国際的な意味におきましては、やはり今日まででも全ベトナムを代表する政府として南が認められておるわけであります。その限りにおいてわれわれとしてはこれを対象としてその義務を履行するということは、これまた当然のことだ、こう考えております。
#172
○春日委員 これは重要な問題だと思うのですよ。北ベトナムの国会からこういう厳粛な意思表示がある、南ベトナムを全ベトナムの代表として、ここへわれわれを対象とする分まで払われるそうだが、それは不当なことだから反対である、こういう意思表示をしてきておる、現実の問題として。そこで私が今申し上げておりますることは、南ベトナムに払わなければならぬとするならば、これは南ベトナムに進駐したことによって与えた損害と与えた苦痛をいやすことのための賠償協定をなすべきであって、北ベトナムには、交渉してないから払うことができないならば、払うことができないという形でこれはやっぱり留保しておくべきものだ。これは中華民国との間においてその条約が結ばれたときにも、その見解がはっきり立てられておる。やはり台湾政権の主権の及ぶ範囲ということが厳格にされておるのだから、今度だってかりにこの二百億円が多過ぎると思うならば、これを百億なら百億、五十億なら五十億にして、そしてあなたの方が後日北ベトナムをも選挙の結果統合されて、そうして全ベトナムの主権国家になられたときに、払っていない分はあらためて払いましょう、こういうことならば北ベトナムは怒りはしないと思うし、われわれだってこれならば納得がいけると思う(「藤山さん、あなたの先輩の岡崎さんもそう言っていますよ」と呼ぶ者あり)岡崎さんも言っているそうですがね。(笑声)
#173
○藤山国務大臣 繰り返して申し上げております通り、われわれは全ベトナムを代表する政府、それを南と認めておりますので、それに対して払うわけであります。そうして、それによってやはりベトナムの国民の幸福になるという立場を考えております。それでありますから、われわれとしてはそういう立場をとりまして、そして今日この問題の解決をはかってきたわけでございます。
#174
○春日委員 審議を尽くしていく過程において、こういうような疑義が現われて参りましたら、やはりその上に立っていろいろな方針に発展がなければ、議会が審議したって何にもならぬですね。私はこう思うのだから、だれが何といったってこうなんだということは、(「ファッショだ。」と呼ぶ者あり)ファッショだと言ったけれども、まるきり全体主義であって、これは民主主義ではありません。
 私は、それでは法律論の立場から、別の角度から、一つこれを検討してみたいと思うのでありますが、このベトナム賠償協定は、他日かりにこの南ベトナムが北ベトナムを征服して併合したとき、あるいは南北ベトナムが合意して合併したとき、これは私はこの協定は何ら後日支障は、問題は起こさないと思うのです。ところがもし北ベトナムが南ベトナムを征服して併合したような場合、またはジュネーブ協定によってこの選挙が行なわれまして、北ベトナムが政治勢力の圧倒的勝利を占め、その指導権が北ベトナムの政治勢力によって圧倒的に占められたような場合、こういうようなときに、その新政府はあらためてまだ賠償されていない北ベトナム地域に対する戦争の損害について賠償を請求してくることは必然であろうと思う。ちゃんとここにそのことを留保しております。われわれは後日それを請求するのだと言って、はっきり宣言をしております。そうすると、今度日本は、あのときに全部払っておいたのだと言ったところで、相手は承知しない。そんなことは君の方が勝手にやったことだから、こっちは知らぬ。現にもらっておらない。たとえば今南ベトナムへ三年年賦で金を払ったところで、北ベトナムヘは行きはしません。南ベトナムの経済復興なりそういう方面に使われて、北ベトナムには行きませんから、北ベトナムが後日そういうような選挙によって圧倒的に北部勢力が支配勢力を占めたような場合や、あるいは戦争によって南部ベトナムが北部ベトナムに併合されたような場合は、日本はしょせんは二重払いという形に追い込まれてしまうと思うのです。こういうような場合についてどういう想定をされておるのですか。
#175
○藤山国務大臣 北ベトナムの方が武力でもって南を統一するというようなことは、おそらくこれは南からの場合も同じでありますけれども、むろんジュネーブ協定の精神にも反することだと思います。従って、統一ということは公正な選挙を通じて行なわれることでありまして、そのこと自体は、やはり新しい政府というものは、統一政府というものは、そのときにあります国際関係をずっと継承して、そして条約等につきましては継承していくことは当然なことだと思うのでありまして、今日私どもはその機会に二重払いになるというようなことは考えておりません。
#176
○春日委員 それは今そういうことを言われますけれども、国際法上の慣例をいろいろあなたも専門家だからおわかりになっておると思うのだけれども、その国の政治体制に変革がもたらされたときには、政治条約とか政治上の要素を含む条約というものは継承されないというのが原則になっております。たとえば一九一七年のケレンスキー内閣のときも、帝政ロシヤを利するところの、資本主義諸国との間に締結されておったところの一切の条約は全部ケレンスキーがこれを廃棄宣言して、他の資本主義諸国はこれを黙認してきておる。そういうようなふうにその国の政治的な体制に変革がもたらされたときには、政治条約というものはこれは継承されないというのが原則になっておる。従いまして、今回かりに北ベトナムがそういうような形によって南ベトナムを征服したような場合、そういうことはないとしても、今度はかりに選挙によって行なったとしても、北ベトナムの諸君は、ことに公文書をもってわが国の両院議長に対して、日本政府がこの問題について南ベトナムのみを対象にして行なっておる交渉は、ジュネーブ協定の精神及び国際法に相反するとともに、ベトナムの実情にそぐわないという理由で無効である、こう言っておるんですね。無効であるという立場において彼らが選挙して圧倒的多数を占めた場合においては、すなわち国際法の政治条約不継承の原則によって無効宣言をすることは明らかだ。そうすると日本としては国際慣例に基づいても、それではもう一ぺん君の方で――南ベトナムの分は賠償が済んでおるが、北ベトナムの分は済んでおらぬから、これは事実ですから、事実に即して処理というものはしなければならぬ。相手もまた事実に基づいて請求して参るでありましょう。そうすれば現実に戦争があって最も被害の多かった地域に賠償が行なわれていないという事実に即して、われわれはもう一ぺんこの賠償を支払わなければならぬという事態に追い込まれてくると思うが、この点どうか。
#177
○藤山国務大臣 日本といたしましては、北の損害までを賠償の対象にいたしておりますので、そういうことを言われましても、われわれとしては北までを対象にして支払ったのだということを当然主張して参ることでございます。
    〔発言する者多し〕
#178
○小澤委員長 静粛に願います。
#179
○春日委員 まことに恐縮でありますが、雑音が激しくてわかりませんのでもう一ぺん一つ……。
#180
○藤山国務大臣 お話しのような事態が起こりました場合に、当然日本としては、今日全ベトナムを代表せる政府として、その地域内における南北両方の損害に対してこれを支払っておりますので、北の方の損害には支払わぬというような理由に対してわれわれはそれを応諾するわけにはいかぬということを申し上げておるわけでございます。
#181
○春日委員 郵便の取りきめだとかあるいは船舶の交通の取りきめとかいうような行政上の手段を取りきめたところの条約は、これは政体に変革があった場合でも継承されるのが国際慣例と聞いておりますけれども、こういうような政治条約、政治的な要素を含んでおる条約は、政治の政体そのものが変わってきたときには、あとに相異なる政体がきてこれを継承するというようなことはありません。いわんや反対の政権がくるんですから。従って、前のものが取りきめたことを継承するというようなことはないのであって、いろいろな前例においても、ケレンスキー内閣はあまり古いかもしれませんけれども、その後においてもいろいろな政治条約、これは不継承の原則というものがあると私どもは理解いたしております。そういうわけで、北ベトナムが全然賠償を受けていないという事実というものは、動かすことはできない。事実によって後日そういうような場合には、やはり賠償を請求してくると思うのです。今やホー・チミンの国家の基礎もだんだんと固まって参ったと思うので、容易にこれは解体される見通しもありませんし、そういうような中においては、やはり何といってもこの問題はわが国の将来に大きな問題を残すものであるということは、私は日本国民たる者ことごとく心配をしておると思うのです。この点を一つ明快にしていただきたいと思います。
#182
○藤山国務大臣 むろん過去の歴史で、革命等がありまして政体の変更したような場合に、そういうことが往々ございます。ありますけれども、そのこと自体は国際信義の面に対して相当な大きな影響を与えていることも事実でございまして、従って国際信義を守る上からいって、革命等の場合におきましても、できるだけ前のものを継承していくのが国際信義を保つゆえんではないかというのが、これが今までのおそらく国際社会における一般的な考え方だと思います。まして御指摘のありましたように、ベトナムが公正な選挙を通じて一つの政権が樹立されるという過程においては、今申し上げたような激しい革命等の過程ではなくて、平和裏に選挙されました政府ができていくことでありますから、当然従来の条約というものをその政府が継承していくことはむろんのことだと思うのでありまして、それを白紙に返すことは大きな国際信義を破るゆえんではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、われわれとしては全ベトナムの損害あいは苦痛というものを対象にしてこれを払っておりますので、われわれとしては、この際請求を受けましても、その理由を十分に明示することができると考えております。
#183
○春日委員 国際社会においても国内においても、すべての政治というものは、やはり道義と条理というものにかなわなければだめです。私があなたに申し上げたいことは、このサンフラシスコ講和条約に定められておる賠償の精神というものは、これはわれわれとして相手に御迷惑をかけたんだから、それを陳謝する誠をそこに示そう、条約の中にはその精神を受けて、特に賠償請求権を持つ国というものは日本軍によって占領された国であること、占領された上に損害をこうむった国でなければならぬ、そういう資格条件というものを厳粛に規定しておるのですよ。戦争をやった国をどことどこと賠償を支払うというようなことではないわけだし、だからそういうわけで、道義、条理の点からいけば、この南北ベトナムに関する限りは、南ベトナムに払うならば北ベトナムというものには一体どうするんだということは、国民感情としてあっていいと思うし、また向こうの国民が、全く占領されて、そして戦闘行為が行なわれたのは南よりも北に多かったというこの事実に徴しても、これを要求することは、現実の問題としてあたりまえです。さればこそこの北ベトナムの政府は、その代表がわが国の衆参両院議長に書簡を呈して、従ってそこに無効宣言をしておる。このような日本政府と南ベトナム政府との賠償協定というものは無効である、こういう宣言をしておるのだから、後日政治政体が変革されたときに、まだ受けていないところの賠償についてその請求を行なうことは、何も信義にもとるものではありません。黙っておれば信義にもとるかもしれないけれども、後日そのようなこともあるべしというので、特にここにくぎをさしてきておる。くぎをさされてきた以上、このくぎを重視して後日に備えるということが、やはりわが国の外務大臣の方針でなければならぬ。それを何と言おうとかんと言おうと、こういうふうになっているんだからやるのだということで、相手を不信呼ばわりしたところで、これは国際社会に通用いたしません。私はそういうような意味合いにおきまして、よしや南ベトナムそのもの、これに賠償を払わなければならぬとするならば、むろんその損害を与えた限界において、その国の主権の及ぶ範囲の中においてこれを支払うべきものであって、いやしくも、君の方に払うから君とけんかしておる相手にもこれで帳消しだぞということを言って、相手が納得しますか。これでは論理に合わない。道義も条理も償わない。国民もお互いに乏しい中から財布をはたいて税金を払うわけだけれども、この税金がほんとうにあの戦争の償いをする税金ならば、乏しき中からどんなにも喜んでさくでしょう。けれども、そういう没義道、没理論的な形でその税金が使われるということでは、とてもとても納得できるものじゃないのです。やはり私は国民とともに、そうして東南アジアのそのような国民の心をも、戦争犯罪の責任を痛感するならば、よく理解しつつ、問題の処理をいたすべきだと思うのでありますが、この点はどうですか。
#184
○藤山国務大臣 むろんこの賠償を払いますときに、おのおの賠償を受けます国のことを十分考えて参らなければならぬことは当然でございます。従って、われわれとしても、そういう点については十分考慮をして参ってきております。しかしながら、先ほど来何回も繰り返して申し上げております通り、われわれとしては、北に迷惑をかけたから、それは払わないのだというのではないのであります。今日の日本が承認して全ベトナム代表国としておりますのはベトナム共和国でありますから、それに対して全ベトナムを代表する政府として北に対するものも支払って参るのであります。先ほどお話がありましたように、むろんいろいろ議論はあろうかと思いますが、しかし、選挙を通じてでき上がりました政府が国際信義の立場からいっても、国際信用の立場からいっても、それぞれ今日まで負っておりますいろいろな義務その他につきましては、当然これを承認していきますことが、新統一政府ができました場合にも国際上の信義を確保するゆえんなんでありまして、今日からそれをそうでないという判断をいたすこともいかがかと思うのであります。われわれといたしましては、今日までの経過して参りました過程から申しまして、今申し上げたような方針をとりつつこの賠償を妥結いたしたわけでございます。
    〔発言する者あり〕
#185
○春日委員 今小林君が言うように、南ベトナムが北を統一した場合はいいし、合意によって合併した場合もいいけれども、相手国のことだから何をやり出すかわからぬ。それだから、北ベトナムが南ベトナムを兵力によって統合いたしましたり、あるいはジュネーブ協定で約束されたような統一選挙が行なわれた場合、人口は何といっても二百二十万人北が多いのでありますから、その立場からいっても、あるいはいろいろな背景の中からいっても――かりに北の政治勢力が圧倒的な多数の力でそのような新政権が生まれました場合、これはやはり新しい問題もそこへ残していく。その結果、わが国が二重払いの義務を新しく課せられるような場合になってきたら、日本国民はたまったものではないと思うし、どう考えてみたって、全然他国の領土と他国の国民ですよ。君の方に払うからこの金も今度帳済みになってしまうのだと言い切ったところで、これは一人よがりの一人合点というものです。決して相手方を首肯せしめるものではない。こういうような賠償のあり方というものは、常識でも、法律論としても、条約論としても、政治理論としても、どこから見たところであり得ないことだと私は思う。これは没義道、理不尽なやり方といわなければならぬ。
 そこで、私はもう一つだけ伺っておきたいと思うのでありますが、ジュネーブ協定の第十二条では、「ジュネーブ会議の各参加国は、カンボディア、ラオス及びヴィエトナムとの各自の関係において、前記の三国の主権、独立及び領土の統一及び保全を尊重し、かつ、その国内問題についてのすべての干渉を慎むことを約束する。」こういうことを規定いたしているわけであります。そういたしますと、今あなたがおやりになろうとしている賠償協定は、どうも、北ベトナム政府の存在をことさらに無視し、現実にあるものを自分だけ目をふさいで、そうして、かつはまたこのような抗議もこれを黙殺して、これに対立する南ベトナムの要求にのみ応諾しようとしている。これは明らかに北ベトナムの主権をそこねて、そうしてベトナム両国の国内問題に現実に干渉している。たとえば北ベトナムとしては、そのまま払ってもらっては困ると言う、それなのにあなたが払うのだから、これは両方の言い方を聞いたような形にはなっていない。そうして現実に北ベトナムにもその金が行くならば、これはまた諒恕すべき点もあるけれども、これは南ベトナムに払えば、明らかに南ベトナムの限界にその金はとどまる、その施設はそこにとどまる、行きはしないのです。サンフランシスコ講和条約に規定されているところの賠償の精神というものは、全然そこへは通じなくなる。私は、これは非常に不当なことだと思うのでありますが、これはジュネーブ協定第十二条に照らして厳に戒めてある内政干渉になるおそれがあると思うが、この点どうですか。
#186
○高橋政府委員 ただいま御指摘の第十二項でございますが、これはベトナム全体につきまして主権、独立、領土の統一、保全を尊重し、国内問題に干渉を慎しむようにということでございます。サンフランシスコ条約第十四条の義務を履行することと、この国内問題の干渉とは関係のないことであろうと私としては考えます。
#187
○春日委員 それは同じことになってきている。私の言うのは、サンフランシスコ講和条約の義務を果たすことはいいけれども、それはやはり南ベトナムの主権の及ぶ範囲、南ベトナムの政府のもとで生活をしておる国民を対象とする。そういうやり方を現に日華条約でもやっておる。台湾政権の主権の及ぶ限界にその条約の条項の効力を限定しておるのだから、それと同じようにやったらサンフランシスコ講和条約の義務はりっぱに果たせると思う。もしこれに対して南ベトナムが文句があったら、これは国際裁判所に訴えてもらって、そうして世界の世論の中にどっちが正しいか聞いてもらったがよろしい。それだけの確信がなくて何としますか。私はこの点については、こういうふうにやりかけておるのだからこうやるのだというような、全くばかの一つ覚えと言っては語弊があるかもしれないけれども、正論に耳を傾けない、天人ともにこれを戒めておる、この天の戒めを聞こうとしない、全くあきれ果てた態度と申さなければなりません。
 そこで、私は最後にトン・ドックダン氏のこの書簡についてお伺いをいたします。この書簡の冒頭に、北ベトナム政府は、日本と南ベトナムとの間に、対ベトナム軍事賠償についての話し合いが始められてから、三年間にわたってこれに対する北ベトナムの態度を表明してきたと言っております。さらにその次のところで、その後に抗議を繰り返したと述べておりまするが、この際その北ベトナムが主張したいわゆる反対の立場の表明、抗議したときとその内容、これはどういうふうなものでありますか、お示し願いたい。
#188
○伊関政府委員 北ベトナム側は、何べんもいろいろな声明において反対しております。たとえば五七年十一月二十六日北ベトナム外務省声明がございますし、五八年二月十二日……。
#189
○春日委員 それはどういうことを言っておるか、中身を言って下さい。
#190
○伊関政府委員 南北を含めて全ベトナムは第二次大戦中日本軍に占領されたため、人命及び財産について多大の損害を受けた。従って北ベトナムも賠償を日本に請求する資格を有する。日本政府と南ベトナム当局との個別的交渉は正当なものではない。ジュネーブ協定によって南ベトナム当局は日本に賠償を請求するために全ベトナム人民を代表する資格を持たない。北ベトナム政府は対日賠償請求権を留保する、こういう同じような声明を何べんもいたしております。
 その次は、北ベトナム労働党機関紙社説、日本は南ベトナム当局と一方的賠償交渉を行なうことによって、全ベトナム人民の合法的利益を侵害しておる。北ベトナムは日本と南とのいかなる協定をも容認しないし、日本に対する賠償請求権を留保する。
 それから五八年十月五日、北ベトナム外務次官談。北ベトナム政府は、日本政府と南ベトナム当局との賠償問題についてのいかなる協定も承認しない。北ベトナムは賠償要求の権利を引き続き留保する。
 それから五九年三月、北ベトナム外務省声明。日本政府と南ベトナム当局との間のいわゆるベトナム賠償についてのいかなる協定も承認できない。
 五九年五月十日、北ベトナム外務省声明。北ベトナム政府は、日本政府と南ベトナム当局とが結ぶいかなる賠償協定をも承認しないことを再三声明しておる。北ベトナム政府は、この協定が効力がないものと認めるとともに日本政府に賠償を要求する権利を留保するものである。岸内閣はこの行為によって起こる責任を負うべきである。
 もう一つ最後に、五九年五月十四日。岸政府が十三日南ベトナムとの間で調印した賠償協定は完全に無効で、北ベトナム政府はこの協定に断固反対する。このような行為は北ベトナムに対する敵対行為であり、その結果については岸政府が全責任を負うべきである。日本人民は南ベトナムに対する賠償に反対し、闘争を進めてきた。日本人民は今後もこの不法な賠償協定を日本の国会で通過させないように戦うことを信ずる。
 これが最後であります。
    〔「反対する根拠がわかったぞ」と呼ぶ者あり〕
#191
○春日委員 私どもが北ベトナムの期待にこたえてやっておるなどというようなヤジを佐々木君が飛ばしておりますけれども、はたしてその通りであるかどうか、君たち自体がよくわかっておると思うのであります。自民党の内部の諸君にも、これは全くどうも疑わしい賠償だし、どうしても理解ができないので、僕たちも反対をしたいのだけれども、しかし与党の悲しさ口を封じられてせつないものだとしばしばわれわれにささやかれておるのであります。
 私は最後に申し述べておきたいことは、大臣の生命や局長の生命は、きょうあってあしたないけれども、日本国の生命、日本国民の生命というものは悠久であります。私は、今北ベトナムの政府がこのような正式な抗議文書を発し、さらにしばしばの声明と国家の意思を表明いたしておるのであるから、あとで賠償の請求をするぞ、そのようなものは無効だぞと言っておるにもかかわらず、これに対して目をおおい、耳をふさいで、そうしてこのような暴挙をあえて強行せんとする、国家の前途を危うくする最もはなはだしいものであると断ぜざるを得ないのであります。私はこのような意味合いにおいて、本日十時ごろから数時間にわたりましてサンフランシスコ条約第十四条の役務賠償の定義から、あるいは生産物賠償すべからざる点から、それから後日法律的の問題を残すであろうこと、それからまた現実の問題として主権の及ばざる他の地域に対してこの条約の効果を及ぼそうと意図しておる。そのようなことが何ら効果のないものであるということなどについて、私は多くの角度から誠をもって質問をしたのです。ところがそれに対する御答弁というものは、まるっきりヒョウタンナマズみたようなもので、的をはずされて誠意ある御答弁を得ていない。従いまして私どもは、これはなお引き続いて審議をしなければならないのですが、私はもう少しこういうような政府側の態度であっては、きめ手を考えて、そしてあらためて他の問題について質問をいたしまして、あくまでこのような没道義なこの条約については、われわれ国民の意思のあるところを、国内国外に向かって明らかにしなければならない、こういうことで本日は、他に質問をしなければならない面もたくさんありますけれども、質問を留保して、本日の私の質問は終ります。
#192
○小澤委員長 戸叶里子君。
#193
○戸叶委員 私は今春日委員の非常に熱心ないい御質問を伺っておりましたけれども、それに対する政府側の答弁というのは、まことにおざなりにすぎないのでございまして、私も国民の一人としてまことに残念だと思います。国会においてさえも私どもが残念に思うのですから、一般の大衆の人たちはどんなにかくやしがっているだろうということを私は感ぜざるを得ないのでございます。そこで今度のベトナムの賠償ということに関しましては、調印以来、報道界、言論界、そしてまたあちこちで疑念というものを抱いております。そして国民は、何かしらこのベトナム賠償というものに釈然としないものが残っているわけでございます。そこでこの多くの問題を含んでいるベトナム賠償というものを、しゃにむに押し通そうとするところに、いろいろの大きな問題が出てくるのでございまして、一昨日の読売の川柳の、ベトナムへ気前のよさが気にかかり、というその通りに、国民の抱いた疑念の一端がちょうどその言葉で尽きているのじゃないかということを感じるわけでございます。そこでほんとうの議会制度という意味から考えまして、このベトナム賠償に関しましては、政府や与党の主張というものを多数決でもって何が何でも押し通すというような態度ではなくて、私どもはあくまでも国民の声を十分に聞いて、訂正すべきことは訂正して、納得のいく方法を講じていかなければならないというふうな責任を感じているものでございます。そこで本委員会での質疑というものも不満足のままで採決強行というようなことは、議会制度の根本をじゅうりんする暴行でありますから、まさかこういうようなことはしないと思いますけれども、念のために私は一応警告をしておきたいと思います。なおこの協定はいつまでに発効しなければならないというとか、そういうような規定もないのでございますし、この国会で何でも承認を与えなければならないというような規則もないのでございますし、義務もないのでございますから、十分な国会審議ということがなされなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。従って与党の方にもお願いしたいことは、十分意のあるところを尽くさせるというふうなことをお守りいただいて、そして決して中途で打ち切りをするのだというようなことをしないようにしていただきたい。これをお願いする次第でございます。
 そこでこの協定は長い間懸案になっておりますので、もう資料も十分整っていると思いますが、まだ出ておらない資料として要求したいことは、日仏の特別円の基礎となりましたところの昭和十六年の日仏基本協定と政府間の取りきめ、これを私は至急に出していただきたい、まず最初に資料の要求をする次第でございます。前からもときどき問題になっておりましたけれども、なかなかはっきりしておらない点は、このバオダイ政権の問題でございます。終戦直前に日本が独立させましたバオダイ帝のアンナン国についてでございますけれども、日本とアンナン国との関係は、一体国際法上はどうなっておるのでございましょうか。それは明示的な承認でございましょうか、それとも黙示的な承認であったか、この点を伺いたいと思うのであります。
#194
○伊関政府委員 最初にちょっと戸叶委員にお断わりいたしまして、せんだっての松本委員の御質問に対して、留保しました点、調べた上で御回答申し上げると申し上げました点を御回答いたします。その技術協力会社とベトナム国防部との契約書の問題でございますが、これは会社の方で公表したくない、こう申しております。それでこれは差し上げるわけに参らないわけでございます。それからベトナム共和国の軍事基地所在地を示した地図をここにお示しになりまして、わが方の調べとどうかという御質問がございました。これはサイゴンの久保田大使からよこしておりますもの、これは北越の、北ベトナムの放送をもとにして作ったものでありまして、それと完全に一致しております。その次に東洋精機の銃弾工場、これが国際監視委員会において取り上げられているかどうかという御質問でございますが、これは電報で照会いたしましたところ、九月に北ベトナムから国際監視委員会に対してこの問題が提起されておりますが、国際監視委員会としては、いまだ何らこれを議論いたしておらない。そのほかに日本に関する苦情は出ておらないということでございます。それから一昨年以後に、海上自衛隊を含む百五十人がベトナム共和国に行った事実があるか、これは海上自衛隊に確かめましたが、そういう事実はございません。それから松本委員がベトナムに対する軍事援助、軍事予算について、パーセンテージをあげて御説明になりました。これは専門的でございますから、われわれの調べを松本委員に御連絡いたします。大体同じでございますが、ちょっとパーセンテージの違うところがございますので、後ほど差し上げたいと思います。
#195
○戸叶委員 今アジア局長が、この前松本委員の留保された質問に対して答弁をされておるわけでございます。並びに資料についてのことを述べられたわけでございますが、私が今申し上げました資料についてのことは、何らおっしゃっておりませんけれども、いかがでございましょう
#196
○高橋政府委員 ただいまの協定でありますが、協定文はございます。しかし写しというか余部は全然ございませんので、もし全部をということになりますと時日がかかるわけであります。従いまして、すぐただいま提出するというわけにはいかないのでありますが、もし委員会の御要求その他がございますればまた後刻考えます。
#197
○戸叶委員 私もそんな非常識なことは申しません。資料として出してほしいと言うからには、一日なり二日なりの余裕があるわけでございますし、あるいはもしそれでも間に合わないといえば、これは仕方がないです。ある程度の期間を置いてお出しになっていただければいいと思います。今すぐに出せと言っておりませんから、どうかその点をお考えになって出していただきたい、こういうふうに、考えるわけでございます。
#198
○伊関政府委員 それからただいま御質問がございました三月十一日かに、バオダイが一応独立みたいなことを申しました。この日本との関係でありますが、これはいわゆる国際法上の関係というふうなものは全然ございません。事実問題として、バオダイにある程度の内政をまかしたというにすぎないのでありまして、国際法上の関係というものは何らございません。
#199
○戸叶委員 そうしますと、日本とアンナン国との関係、このことだけを伺いたいのですが、はっきりと承認をしておられるのか、それともこれはいわゆる黙示的に承認をされておるのか、明示された承認かどちらかをはっきり伺いたい。
#200
○伊関政府委員 私が承知をしておる限り、その当時は土橋司令官が総督というふうな地位を兼任しておりますし、アンナン国というものに対しては、これは何らそういうふうな大使館としてこれと交渉するということもございません。軍が要するに最高顧問を出したという程度でありまして、原住民との関係をうまくやるために、内政の一部をなるべくまかすようにしたという程度でありまして、法律上の問題はございません。
#201
○戸叶委員 それでは政府が否定されるところのいわゆるかいらい政権ということがはっきりしたんじゃないでしょうか、この点をもう一度伺いたいと思います。
#202
○伊関政府委員 土橋中将もこの間言っておられましたが、要するに現住民との間の摩擦を少なくするために、まかせるものはまかしておくというのでありまして、この政権を将来育て上げて独立国にするとかいうふうな考えではなくて、実際問題として円満にやらせるという程度の軽いものだったということを言っているわけであります。
#203
○戸叶委員 私はそういうふうなことを伺っているのではなくて、自民党の方でも大へん時間をお急ぎのようですから、答弁の方もなるべく簡潔に、聞いたことに答えていただきたいと思います。
 そこで伺いたいのは、それでは今おっしゃったような形ならば、これはいわゆるかいらい政権というのと同じですねということを伺っているので、そうだとか、そうじゃないとかおっしゃっていただけばけっこうです。
#204
○伊関政府委員 事実は今申し上げた通りでございますから、これを何と呼ぶかは呼び方だと思います。
#205
○戸叶委員 それではさらに伺いますけれども、フランスとアンナン国との間の国際法上の関係はどうなっておるのでしょうか、これを伺いたいと思います。
#206
○伊関政府委員 当時のアンナン国とフランスの間には、別に何も関係はないと思います。
#207
○戸叶委員 たしかこの間の参考意見で横田教授は、アンナン国は国際的に承認されておらなかったと言っておりますけれども、これは時間的に他の諸国から承認される余裕がなかったことによるのか、それともまたアンナン国を樹立するということ、そのことが国際法上不当であったのかどうか、その点の判断を伺いたいと思います。
#208
○高橋政府委員 ただいまのアンナン国の問題でございますが、従来ございました一八八四年かと思いましたがアンナンとフランスとの保護条約の問題のアンナン国でございますね。これはフランスの保護国、しかし実態は非常に直轄植民地に近いような権限を持っておりましたが、そういうアンナン国があったことは事実でございます。
#209
○戸叶委員 私はそのことをあとの問題として確かめておきたかったわけでございます。
 そこで伺いたいことは、植民地が独立をいたしますまでに、今まで植民地国がこれを承認しなければならないという国際法上の規定はないと思うのでございます。幾ら抑圧されておりましても、被植民地人民の独立要求を植民地国が拒否する場合に、その植民地の人たちが独立をしたいということを願って、それを実力で獲得するというようなことは不法行為ではないし、また国際法上の違反行為ではない、こういうふうに考えるわけでございますけれども、民族の独立に理解を持つという政府の見解を伺っておきたいと思います。
#210
○高橋政府委員 一般の植民地の問題でございますが、やはり母国がそこに主権を持っておるのでございますから、それから独立をするということは、その主権を持っておる母国との間の平和的な話し合いで行なわれるべきであろうと考えます。
#211
○戸叶委員 その場合に、もしも平和的な話し合いで行なわれなかったような場合には、どういうふうに御理解なさいますか。
#212
○高橋政府委員 あくまで平和的に行われるべき問題だというふうに考えるわけであります。
#213
○戸叶委員 それではホー・チミンの反仏独立運動に対する政府の所信について伺いたいと思います。
 第二次大戦後各地に起こりました反植民地運動あるいは国連憲章で確立された民族自決原則に照らして、答えていただきたいと思いますが、政府は民族自決原則というものをイデオロギーに結びつけているように見受けられる傾向がございますが、そういうふうな立場は、あまりにもへんぱな立場だと言わざるを得ません。最近の一体制共存の承認の立場から離れるといわざるを得ない態度でございまして、現代の国際政治上当を得たものということはできないと思いますが、この点に対する政府のお考えを伺いたいと思います。
#214
○藤山国務大臣 民族独立をしたい、植民地的な支配を脱却したいということに対しては、われわれとしても同感でございますけれども、しかしそれがあくまでも平和的に、話し合いのうちに行なわれることが当然であると考えております。
#215
○戸叶委員 今までの政府の答弁を聞いておりますと、民族の独立というようなことを非常に妨げているような傾向があるように私は考えるのでございます。たとえてみますと、今度のべトナムの問題を考えてみましても、社会主義制度の確立を目ざすのであるならば、これを独立ということから否定していて、もしそれが資本主義体制をとっているならば、これを承認している。そういうふうな考え方がどうも政府の考え方の底を流れているように思うのでございますけれども、それでは民族独立運動の正しい評価とは考えられませんが、この点に対して藤山さんの御意見を伺いたいと思います。
#216
○藤山国務大臣 民族が独立します場合に、できるだけ平和的に、話し合いのもとに独立していくということがまず第一の前提だと思います。しかしむろんわれわれ政府として、自由主義を信奉しているのでありまして、従ってできるだけ自由主義的な政府ができることは望ましいことであると思うのであります。これは当然のことであります。(「それが内政干渉だ」と呼ぶ者あり)特に内政干渉とかなんとかいう問題ではなしに、そういうことを考えることは当然だと思います。
#217
○戸叶委員 そういうふうな藤山さんのような観点に立っての民族独立というお考えというものは、その国の内政干渉もはなはだしいものだと思いますし、そういうゆがんだ考えに立っての民族の独立というようなことはあり得ない。それはほんとうの意味の民族独立を助けるものとは私は思わないのでございますけれども、この点はいかがでございましょうか、もう一度伺っておきたいと思います。
#218
○藤山国務大臣 日本としてわれわれは自由主義を信奉しておりますから、自由主義の形において新しく国ができ上がっていきますことは望ましいことである、こう思いますことは、一向に内政干渉でもなんでもございません。むろんそうかといってわれわれはそういうような社会主義国としてできたものを、一々否定しているわけでもございません。しかしわれわれ政府の立場としてどうかと言われれば、われわれは皆さん方と違って自由主義を信奉しておりますので、その立場において同情していくことは当然のことだと思います。
#219
○戸叶委員 今の藤山さんの御答弁を伺っておりますと、藤山さんの持っていらっしゃるイデオロギーなり考え方を押しつけていこうとするような考え方でございまして、この行き方は非常に日本の国民にとって私は不幸だと思うのでございます。そのあとで、自分としては社会主義の考えを持っている国に対しても一々否定をするものではないというようなことを、多少良心がとがめられるか、何かおっしゃいましたけれども、事実問題としてはそういうふうな態度を少しもとっておられない。そこに私はいろいろな問題が起こると思うのでございますし、この委員会においての質疑応答を見ておりましても、藤山さん、心の中ではこう答えたくないと思いながらも、わけのわからないような答弁をされているという混乱に陥るのでございますから、そうした独善的な考え方というものは、この際民族独立という立場から考えたときに、私は改めていくべきではないかと思うのでございます。藤山さん自身の考えとして、資本主義の立場に立っての民族独立は認めるけれども、社会主義の立場に立っての民族独立というものは非常にむずかしい。しかし事実としては社会主義の民族独立ということもあるんだと、こういうふうな考えはお持ちになっていらっしゃると思いますが、いかがでございましょうか。念のためにもう一度伺いたいと思います。
#220
○藤山国務大臣 民族が独立して国家を作ります場合に、われわれは一々それに干渉はいたしておりません。ただ、自由主義を信奉しておりますわれわれとしては、自由主義の政府ができることを希望することは、私はこれは当然のことだと思うのです。(「明快」と呼ぶ者あり)
#221
○戸叶委員 自民党の方が明快とおっしゃいますけれども、私は明快じゃないと思うのです。藤山外務大臣は、自由主義の政府ができることを望むのであって、望むことは私は自由だと思うのです。しかし社会主義による民族独立ということも一応認められてもいいんじゃないかというふうに考えるわけでございますけれども、これ以上藤山さんと議論をしても平行線だと思うので、あとはほかの方からやっていただこうと思っております。ただ私ははっきり申し上げたいことは、藤山さんのようなへんぱな考え方を持って日本の外交というものを進められることは、非常に日本の国民にとって不幸である、両方の陣営を、はっきり率直に認めていくという態度を今後においてはとっていっていただきたい、これを要望して先に進みたいと思います。そこで、ここで御答弁を伺っておりますと、政府はたびたび、サンフランシスコの平和条約による賠償の義務を早期に履行する必要があるから、南北ベトナムの統一をするのを待たないでここで強行しようというふうに考えているようでございます。けれどもサンフランシスコ条約十四条を見てみますと、賠償の支払い期限は何ら書かれておりません。いつまでにしなければならないというようなことは書いてないのでございまして、賠償支払いの義務だけを確認して、実際の支払いというものは後日を期しても、条約不履行の責任というものは負わされない、こういうふうに考えるのでございますが、いかがでございましょうか。さらに、特に私がこれを申し上げますのは、ここで何たびか繰り返されたことでございますけれども、今こんなに問題のある、南だけへのベトナム賠償というのは払う時期ではない、もう少し考慮すべきだという意見が圧倒的に盛り上がってきておりますし、さらにまた、先ほどもちょっと触れられましたけれども、藤山外相の先輩である岡崎元外務大臣も、そういうことをはっきり言っておられますし、また元仏印の特派使節であった松宮順氏もそういうふうなことを言っているのであって、法律論だけではとても片づかない問題であるから、国会の承認はしばらく留保すべきだというようなことを言われているわけでございます。このように、外務省出身の方、あるいは藤山さんの先輩でさえもこう言っておられますことに対して、一体どういうふうにお考えになっていられるのでございましょうか。それらを無視しても、何が何でも強行しようとするその理由は一体どこにあるかを、はっきり承りたいと思います。
#222
○藤山国務大臣 人間は顔が違っておりますように、いろいろ意見も違う場合があろうと思うのでありまして、外務省出身者でありましてもいろいろの意見を持っておることは、これは当然のことだと思います。それがまた自由主義社会における非常にいいところではないかと思うのであります。そういう意味において岡崎君が先般新聞紙上に若干の自分の説を述べられておったと思います。私もこれを見ました。決して見なかったとは申しません。しかし私は、今日サンフランシスコ条約の調印国として、われわれとしてその義務を――それは何年までという期限が書いてないのだから、いつまでもいつまでも引き延ばしていっていいのかといえば、これはやはりすみやかに、誠意を持って、われわれが損害を与えた人々に対する償いの意思を表示して、その問題の解決をはかっていきますことが必要でありまして、期限がないからいつまでも延ばしていいのだというふうなことは、考えるべきではないと思うのであります。でありますから、全体として賠償の問題というものは早ければ早い方がいいということは、これはもう申すまでもないことであります。南ベトナムに対する賠償というものは、従来の御質問にお答えして、たびたび申し上げておりますように、私どもとしては今日これを解決していくことが適当だ、こういうふうに考えておるわけでございます。
#223
○戸叶委員 藤山外務大臣のそういう答弁を、不誠意な、形式的な答弁というのでございます。なぜならば、私どもも、桑港条約によりましてなるべく早く、損害を与えた国に対して賠償を払わなければいけないということぐらいは、知っております。そうしてまた、日本の国として払うべき賠償は払わなければならぬということは、わかっておるわけなんです。けれども、こんなに長い期間を置いて問題になり、この委員会で何が一体問題になっておるかということを、もう一度よく考えていただきたいと思うのです。損害を与えた国に対してその償いをするんだとおっしゃいますけれども、実際問題として南ベトナムに対しては、この前の委員会で条約局長かアジア局長かがちょっと言われましたように、南ベトナムには俗に鶏三羽といわれておりますように、ほんとうにわずかの損害しか与えておらないわけでございます。しかも、この南と北の大きな問題があり、北から、南ベトナムだけに払うことに対する反対意見を述べておられる。そしてまた賠償額の決定についても、私たちが納得いかないこういうふうな問題をかかえているわけなんです。なおかつ桑港条約に調印をしたところのその責任者であった岡崎元外務大臣が反対をして、今急ぐべきじゃないということを言っていられるのは、その間の事情を最もよく知っている人たちが、これはしばらく延ばした方がいいのじゃないかという意見なんです。ですから私は今特に急いでやらなくてもいいじゃないかというのであって、藤山外務大臣の、顔が違うから考え方も違うという、そういうふうな問題で片づけられるものじゃなくて、その責任者である元外務大臣が根拠があってこう言われているんですから、もう少し謙虚にお聞きになってもいいのではないかということを、私は伺っているわけでございます。この点について外務大臣の決意のほどをもう一度伺いたいと思います。
#224
○藤山国務大臣 私は、先輩が言われました意見その他につきましては、決してそれを嘲笑したり、あるいは誠意を持たないで拝見したりはいたしておりません。できるだけ注意いたして拝見をいたしております。しかし今日、ベトナムの賠償を払う時期が早いかおそいかといえば、われわれとしては決して早いとは思っておりません。ことにベトナムのいろいろな事情があることも承知しておりますけれども、しかしジュネーブ会議を経ましても、統一ベトナムの実現はなかなか困難であるというような時期になっておりますとすれば、われわれとすれば、やはりわれわれの見るベトナムを代表する政府に対して、できるだけ早い期間に全ベトナムの損害に対して、われわれが誠意を尽くして、日本の経済が許す限りの賠償を支払って参りますことは、国際信義の上からいいましても、また東南アジアのいろいろ関連をしております国々に対しても、私どもは必要だと思っておるのでありまして、そういう意味において、私どもは現在賠償を払いますことは決して早いとは思っておりません。
#225
○戸叶委員 外務大臣は、何が何でもこのベトナム賠償協定を通そうという根拠に立っての議論を進められておりますので、どんなに正当な意見を申し上げましても、これに耳を傾けるだけの余裕をお持ちになっておらないことは、まことに私は残念だと思うのでございます。
 私は北ベトナムからの要求の問題とか、あるいは特別円の問題等につきましては、先ほど春日委員がお聞きになったばかりでございますので、この点を省略いたしまして、そこでこの損害についての根拠につきまして伺いたいと思います。さきごろ政府から出されました莫大な数字に基づいての損害、これはベトナム側から出されたというふうに答弁をされているわけでございますが、それを基準にいたしまして一年間の戦争損害というようなものを出しているわけでございます。しかしその一年間の統計というものも、この委員会ではっきりされたことは、何とか一年間分を出せと言われたので、かけたり、足したり、割ったりして、一応その場をつくろうために出したというようなことがはっきりわかったわけでございますけれども、この一年間の損害に対する賠償金の三千九百万ドル、こういうものは、ほかのビルマとかインドネシア等の四年間も戦って、そしてまたいろいろとひどい作戦をやった、そういう国々の損害に対する賠償というものと比べてみると、一年間にしてはあまりにも私は多過ぎるのではないかと思うのでございます。しかもその損害として与えた大部分は北の方で、その賠償のお金をもらう方は南の方だ、北に損害を与えておいて南の方に賠償金を与えるというようなことでは、だれが見てもこれは納得のいかないことだと思うのでございますけれども、この点につきましても何たびか議論がされております。しかし私はもう一度はっきり伺いたいことは、他の国の賠償と比べて一年間の額としてはあまりにも多過ぎるのではないかというふうに考えますけれども、この点はいかがでございましょうか。
#226
○藤山国務大臣 むろん他の国々にも賠償を四つ払うわけでございますが、それぞれの国で事情が違っておりますことは先般の委員会でも申し上げた通りでございます。物的損害はフィリピンとビルマに多かった。物的損害が比較的インドネシアとベトナムには少なかったというような特殊の事情もございます。ただしかし物的損害がなかったといいましても、精神的な損害というようなものもありますし、経済的な困難ということもあります。それらのものをすべて総合的にわれわれは考えて、そうしてこの問題を考えていかなければならぬというわけなのでございます。そういう観点に立ちまして、私どもはむろんベトナム側の主張しておりますことが全部その通り正しいとは思っておりません。従ってわれわれはそれを念頭に置きながら、日本の財政経済の事情の許す限りにおいて賠償額をきめて参らなければなりませんし、必要最小限度の、向こうをなぐさめる上においては多額のものが望ましいことではありますけれども、日本の財政経済の事情等も勘案して、必要最小限度の点から交渉をせざるを得ない。そういう点で今回まとまりましたものは、他と比べて特に著しく多いとはわれわれ考えておらないのでございます。
#227
○戸叶委員 著しく多いとは考えておらない、こういうふうな御答弁でございますけれども、私は、これは藤山外務大臣の独断にすぎないと思います。どんなに多いかということは私もあとからずっと申し上げてみたいと思いますが、現に一つの例を取り上げてみましても、ビルマからは、このベトナム賠償がきまったとたんに、五条の一項にある再検討条項によって日本の政府に再検討してもらいたいというふうな申し入れがあったということを伺っておりますが、いかがでございましょうか。
#228
○藤山国務大臣 これもすでにたびたび御答弁を申し上げているのでありまして、本年の春ビルマから再検討条項を引用して日本に話をして参りましたことは申し上げた通りでございます。その際ビルマ側が指摘して参りましたことは、インドネシアとフィリピンの賠償との関連において自分の再検討条項をもう一ぺん提出して、そして検討してもらいたいというのでありまして、ベトナムについては何ら触れておりません。
#229
○戸叶委員 私はよそで聞いているかもしれませんけれども、この委員会ではどなたも聞いていないというふうに考えておりましたので伺ったわけでございますが、調印された直後にこういうふうな申入れがあったということは、やはりベトナム賠償に非常に関係があるのではないかと思うのです。そこで政府にお願いをしたいのは、その申し入れがあった全文をここに出していただきたいと思うのでございます。
#230
○伊関政府委員 先方も、向うのこの文書は発表してもらいたくないと言っております。
#231
○戸叶委員 先方がそういうふうに言われるとおっしゃるのですけれども、やはり私どもは参考としてその内容を知っておきませんと、今度の賠償協定に関係があるものでございますから、何らかの形で、秘密会議でもけっこうですから、一応知らせていただきたい、こういうふうに思いますけれども、いかがでございましょうか。
#232
○伊関政府委員 先方の文書は四月に参っておりますが、その中ではベトナムには全然触れておりません。自分よりも賠償額が多い国のことだけを問題にしております。これははっきりいたしております。(「局長じゃなく、外相を出せ」と呼ぶ者あり)
#233
○藤山国務大臣 皆さん方も御承知の通り、外交交渉におきまして、相手方の発表を好まない文書を出すわけには断じて参りません。
#234
○戸叶委員 私は非常にこの問題と関係があると思いますし、ビルマの再検討条項についての、この委員会で昭和二十九年ごろに質疑応答をやっております点を引き合いに出しましても、いろいろそこに関係のある点を見出すのでございますけれども、これはあとの機会にもっと詳しく、その内容をもう少し何らかの形で知らせていただいてから進めていきたい、こう考える次第でございます。
 そこで先ほども春日氏が少し触れられたことでございますが、沈船引き揚げ協定というのが一九五三年に交渉を始めまして、九月十六日には二百二十五万ドルをこえないものとするという協定に仮調印までしたわけでございます。ところがこれが断わられた理由というようなものに対しましては、先ほどからの答弁を聞いておりますと、これは中間賠償なんだからというふうな形で、私どもに納得のいくような答弁が何らされておらないことは、私はまことに残念だと思うのでございます。何の理由もなしに向こうから断わってくるというようなことはないのであって、何かそこに理由がなければ私は断わってこないと思うのですが、この点についてもう一度伺いたいと思います。
#235
○藤山国務大臣 こまかい点につきましては、アジア局長から御説明いたさせますが、沈船引き揚げ問題につきましては、御承知の通り日本との中間賠償の話があります前に、ベトナム自身が国際入札をやりまして、そうして賠償とは関係なしに沈船引き揚げをやろうと試みたことはございます。その後中間賠償としてこれを提議して参りましたので、日本も話に応じたわけでありますが、その後の経過を見ておりますと、向こうはさらに仮調印いたしましたものを破棄して、そうしてさらにコマーシャル・ベースの入札をやらしているというような事情にあるわけでございます。向こう側といたしましては、やはり沈船引き揚げというものはコマーシャル・ベースでやりたいというのが初めからの本意ではなかったかと考えております。日時等につきましてのこまかい点については、アジア局長から御説明いたさせます。
#236
○戸叶委員 今の御答弁でございますけれども、非常にうがった見方をする人たちは、ちょうどこのころはビルマあるいはインドネシアその他の賠償協定が話に乗ってきているころであった。そこで二百二十五万ドルというような線を出してみたけれども、どうもほかの国はもう少し取れそうなんだからというふうな形でこの沈船協定を破棄したというふうに聞いておりますけれども、この点の事実をお知らせ願いたい。これが一つ。
 そしてまたもう一つ外務大臣に伺いたいことは、こういうふうに一応沈船協定というものに仮調印をしておきながら、向こうの考え方でこれを破棄してきたということは残念なことだとお思いにならないかどうか、これを伺いたいと思います。
#237
○藤山国務大臣 当時沈船引き揚げの交渉にあたりまして、御承知の通り他の国との賠償の話もぼつぼつ出ております。従ってベトナム側がどういうことでこれをやめたかということは、はっきりいたしません。しかしながら、先ほど来申し上げましたように、経過をずっとあとを顧みてみますと、そういう感じがすると思います。われわれとしては、むろん中間賠償として全賠償額の――相当少ない金額にいたしましても、せっかくある程度話しができたものが行なわれなかったということは残念であることは申すまでもございません。
#238
○戸叶委員 私がそれをお聞きいたしますのは、たとえば今度の沈船協定にいたしましても、そしてまたフィリピンの場合の大野・ガルシア協定にいたしましても、先方側からの考え方によってこれが仮調印したものまで破棄されているわけなんです。そこで私は思い出しますのは、日米安保条約、この改定というようなものも、まあ日本側から改定してくれ、藤山さんの言葉をお借りしますと、改定してくれといって一生懸命言っているわけですけれども、国会の中でもいろいろ反対意見も出ておりますし、そうしてまた大衆の人たちも、それに対して、非常な危険な問題を含んでいるというので、反対意見が出ているわけです。だとするならば、こういうふうに向こうからだけ断わられるということに甘んじていないで、もしも安保条約なり何なりが不当なものであるならば、これに反対する、もっと先に延ばすというようなことぐらいのことは言えてもいいんじゃないかということを、この協定にからんで考えるわけでございますけれども、相手国ばかりに弱くて、日本が不当だと思っても何でもそれを引き受けてしまう。一度言い出したものはやはり面子を立てていこうとする。そういう弱体外交というものは許されないと思いますが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
#239
○藤山国務大臣 私は戸叶委員と意見が違うのでありまして、日米安保条約の改定は不当であるとは考えておりません。従いまして、交渉を中絶する考え方はございません。私は、外務大臣として各国と交渉をいたしておりまして、決して相手国側の意向だけを聞くということは考えておりません。ただ賠償交渉のようなものは、日本が苦痛を与えた場合の問題でございます。そういうことでありますれば、できるだけ向こう側の意向も尊重していくということは、私は日本の外務大臣として当然とるべきだ、こう考えております。
#240
○戸叶委員 次に伺いたいことは、沈船引き揚げ協定が断わられまして、そのあとで二年たってからこの賠償を全般にわたって話し合おうという話が一九五五年に出てきたようでございますけれども、当時の大使が小長谷大使でございますが、小長谷大使がこの交渉に当たっていて、なかなか長い間成功をしなかったというのは一体なぜでしょうか。この点を伺いたいのと、もう一つは、その後植村さんがこの賠償の折衝に行ったわけでございますけれども、植村さんが行ったのは、向こうからの要請で行ったのか、それとも日本から行くように命令して行ったのか、どちらでございますか。
#241
○藤山国務大臣 賠償交渉につきまして相当な時間がかかりましたことは、これは向こう側が相当巨額の要求をしてきているからでございます。そういうものをわれわれとしてそのままのむわけには参らないことは当然でございます。でありますから、われわれとしてはできるだけ向こう側を説得し、時間をかけても適当な金額まで持ってこなければならぬのであります。そういう経過で長い時日を要したことになろうと思います。植村君も一番最初は東南アジアに視察に行きまして、その場合にベトナムに寄ったのでありまして、いろいろ向こう側の希望等も聞いてきているわけでございます。私が就任前のことでありますからつまびらかに存じておりません。ただ、私が外務大臣に就任いたしまして、九月に植村君を出しましたときには、まだ金額が非常に向こう側としては一億五千万あるいは二億ドルといっておった時代でありまして、何かもう少し事情を探りたい、向こう側を説得してみたい。たまたま私の就任前にも植村君が向こう側へ行っておりましたので、先生を特使として出しますことは適当な処置だと思って、私としては行ってもらったわけでございます。
#242
○戸叶委員 植村さんが五七年の九月に一度行きまして、まとまらないで、その次に岸さんが行って、それからまた五七年の十二月に行って、そうして大体まとまったわけでございますけれども、この間に岸首相が行って何らかの話し合いをつけてきたのか、それともこの植村さんが最後に行って話し合いをつけたのか、この点のいきさつを伺いたいと思います。
#243
○伊関政府委員 岸総理が行かれましたときは、ただこういう問題はお互いに早く解決しようという一般論だけでございまして、十二月に植村さんが行かれたときにこの具体的な数字が出ておるわけでありまして、そのときも話し合いはついておりませんでしたが、植村さんが提案したあくる年のたしか三月になりまして、向こうが受けてきたというのが実情でございます。
#244
○戸叶委員 植村さんが二度目に行ったときには、岸さんが先に行って大体ベトナムと話をつけた上で、二度目に植村さんが行ったときにはきまっていた。しかしその後南ベトナムの方で承認したのが三月であって、二度目にはきまっておらないとおっしゃったのは、これは間違いじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
#245
○伊関政府委員 植村さんは九月に一度行かれまして、話がつかずに帰られまして、それから十一月に総理が行かれまして、そして早期解決のために植村さんをもう一ぺん派遣して話をしようということを言っておられます。それに基づきまして、十二月に植村さんがまた行かれまして、そのときも話はつきませんでしたが、そのときに最後に、このお互いに出ました数字というものをあくる年の三月になって先方側がこれを受諾すると言ってきたわけであります。
#246
○戸叶委員 お互いに出た数字というものは幾らだったんですか。
#247
○伊関政府委員 それが現在まとまっておる数字でございます。
#248
○戸叶委員 それはおきまして、さらにこの数字に関連して問題を進めて参りますけれども、岸首相が訪問をされまして共同声明を出しておるはずでございますけれども、この共同声明を、ここでもしできたら読んでいただきたいと思います。
#249
○伊関政府委員 「岸日本国総理大臣は、一九五七年十一月十九日より同二十一日までの間ヴィエトナム共和国政府の賓客として、その首都サイゴンを訪問した。ヴィエトナム共和国訪問を機会に、岸総理大臣はゴ・ディン・ディエム・ヴィエトナム共和国大統領と国際情勢ならびに両国が共通の関心を持つ諸問題につき懇談を遂げた。同大統領と同総理大臣は、日本とヴィエトナムの両国がひとしく熱望する世界平和に貢献するために国連憲章の原則および目的に従い行動することにより、国連の権威を強化することが必要であることを強調した。この目的のため、岸総理大臣は、ヴィエトナム共和国が一日も早く国連への加盟を認められるべきであるとの日本政府の意向を表明した。ゴ・ディン・ディェム大統領と岸総理大臣は、賠償問題が早期かつ最終的解決を見ることが日本およびヴィエトナム両国の友好関係の強化に寄与するものであると考えた。善意と理解の雰囲気の裡に行われたこの会談の終了に当り、同大統領と同総理大臣は、自由諸国の中において日本国とヴィエトナム共和国との関係がさらに強化せられ、発展することに対する信念を表明した。」。
#250
○戸叶委員 大体そのときに岸首相の腹の中にもこの程度のものがというようなことを含んで私はこの共同声明になったと思うのでございますが、この三千九百万ドルという数字が決定するまでのいきさつで私どもはこの委員会で幾たびかの質疑応答を聞いていたわけでございますけれども、どうもその数字の根拠、出てきた額の算定というものが、私には納得がいきません。しかしここでもう一度それを私はいろいろと議論しようとは思いませんけれども、政府からの答弁を聞いておりますと、大体において的確な資料はないけれども、お互いに話し合って大体この辺できめていこうというようなことできめられたということと、もう一つは、植村特使に対しまして最高はこのくらい、最低はこのくらいというふうな、その範囲内でやるようにという訓令を出した。しかしそれは賠償の過程での拙劣さというようなものもわかることだからはっきりここでは説明できない、こういうふうに答弁されたと思うのであります。これはこれでいいといたしますけれども、これは私どもとしては満足はしません。けれどもこれはこれで認めたといたしまして、この三千九百万ドルという数字が出るまでに、私は実に不思議だと思うことがございます。それは三十四年の三月十六日のここの外務委員会に参考人として出席された久保田さんの意見を聞いておりますと、賠償のことを自分は知らないで昭和三十年の九月にベトナムをたずねたときに、ダニムの発電所を見ていってくれ。そこでそこを見た。そして三十一年の九月に計画書を出してくれというので計画書を出した。ところがフランス側の方でも計画書を出している。そこでこの両方の選択をするために国連の技術委員会から三人の専門家が出て、三十二年ごろにこれらの人たちが判定をして日本案が採択されたと言っております。そこでまたさらに問題になることは、フランスの方ではお金を出すから、日本の方でも何とかしてこのためにはお金を出してくれないか、資金を出してくれないかと言われたけれども、自分は技術屋であるから、経済協力のようなことでおやりなさい、そうすれば何とか解決がつくでしょう。ほかの世界銀行なりあるいはほかの形の経済協力ということを求められるならばいいけれども、そうしてまたそれに十分値する仕事なんだからおやりなさい。しかし日本の国がこれに対して、ただでやって上げるというようなことは、これは話が違うですよと言って帰ってきた。ところがそれがだんだん借款の形で話が進んでいくと思っていたら、これが大事だと思うのですけれども、いつの間にか向こうの政府の希望通り、いやその希望を受けた日本側、あるいはこちら側がきめたのか知らないけれども、このものが賠償に移ってしまった、こういうことを言われておるわけです。それが三十二年です。そうしてこの賠償が三十四年にきまっているわけでありまして、こういうふうな点から考えてみますと、大体内容がきまってしまって、賠償が調印されないうちからその使い道が詳細にきまっているというような、そういう賠償の支払い方式は私はどこにもないと思うのです。使い道から賠償が逆算されていくというような行き方は、この賠償の支払いとしては邪道であり、またサンフランシスコ条約の十四条から見ても、こういうことは当たらないと思うのですけれども、これはいかがでございましょうか。
#251
○藤山国務大臣 久保田氏が初め設計の依頼を受けました。それは久保田氏だけでなしにフランスの方にも設計を依頼したわけであります。そういうことを考えてみますと、ベトナムはダニム・ダムというものをできるだけやりたいという希望を持っていたことは事実だと思います。御承知のように今までいつでも説明を申し上げておりますように、賠償の交渉にあたりましては、他面では金額の交渉をいたして参りますが、他面では技術専門家が寄りまして、賠償を受ける国がどういうものを希望するか、そうしてそれが特別な外貨を要しないで日本からそういうものが出せるかどうかというような技術的な検討もいたしておるわけであります。でありますから、そういう際に、向こう側からぜひふだんからやりたいと思っていたものが、そういうような技術的交渉の過程において出てきて、これはぜひやってもらいたいということは、私は非常に自然な姿であろうかと思います。ただそれらのものをやりますのに、金額がはたして適当かどうかというような問題は、金額論として別個に考えていかなければならぬのでありまして、過程においては何ら不思議なことはないように思っております。
#252
○戸叶委員 そうしますと、使い道がはっきりわかって、そうしてそれを賠償に充てるというような賠償のきめ方でも不自然ではないというふうにお答えになるわけでございましょうか。
#253
○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、向こう側としては、賠償を有効に使うためには、こういうものが自分の方としては優先的にほしいのだというようなものは列記してくるわけでございます。従って、工業センターというようなものも列記してきております。沈船というようなものは順位からいうと非常に低いところに置いて話し合いを技術的にはしております。でありますから、むろんダニム・ダムそのものがきまって、賠償の金額がきまったというのではなく、賠償の金額は別個に交渉しながら適当な内容のものをきめていくという形になること申すまでもございません。
#254
○戸叶委員 そうしますと、三千九百万ドルの算定の基礎というものは、明らかにダニムの見積りが算定の基礎になっている、こういうふうに了解してよろしゅうございましょうか。
#255
○小田部政府委員 それは交渉の途中におきましては、三千七百万ドルはダニムと、あるいは工業センターは二百万ドルというふうな話し合いが行なわれましたけれども、これができますと、一括した数字で三千九百万ドルが賠償という数字でございます。それでございますからして、先方の希望によりましてあるいはダニムのうちの第一期工事だけやろうという申し出がありましても、これは協定の違反でもございませんし、また沈船協定というものがその中に合意されるということもあるし、使用の方法におきましては今後いろいろ実施計画を組みまして、いろいろ相談協議し同意に達する次第でございます。
#256
○戸叶委員 今聞いておりましても、はっきりと今度の三千九百万ドルの賠償額の算定の基礎というものは、ダニムの工事というものが算定の基礎になっているということになると思うのです。そうなってくると、今までさんざん出されました戦争損害の資料とかなんとかかんとか、だいぶ問題になりましたけれども、そういうことが何も算定の基礎にならないというふうなことになるのじゃないかと思うのですけれども、この辺のところをもう少しはっきりさせていただきたいと思います。
#257
○伊関政府委員 戦争損害というものは三千九百万ドルよりはずっと大きいものであるということは、私は何度も御説明申し上げたわけでありまして、それをそういう数字に押えますために、最も向こうの希望するダニムというものを使いまして、そしてそのダニムの工事のどの部分までを日本が負担するかということで三千七百万ドルというものが出たわけであります。よその国の賠償におきましても、いろいろと先方の希望するものがたくさん出ております。ベトナムの場合もダニムだけではございませんで、そのほかにいろいろなものを向こうは言っておったわけでありますが、金額が小さいので、こちらがたくさんの金額を払う意思がございませんので、どうしてもダニム一つ、それに工業センターというものがちょっと乗っかっただけであります。よその場合でありますと、二億とか二億三千万ドルとか五億五千万ドルでございますと、いろいろ計画がたくさんあるものでございますから、一つというふうにならぬのでありますが、金額が小さいためにこれ一つに限定されたような感を与えるのでございます。これは金額が小さいという結果でありまして、よその場合と交渉の過程においては一つも違わぬわけであります。
#258
○戸叶委員 金額が少ないとおっしゃいますけれども、これは当然だと思うのです。というのは私どもにしてみれば、これだけの金額だって小さいとは思いません。大きいと思うわけです。けれども、先ほどおっしゃいますように損害はもっと大きかったのだけれども、三千九百万ドルに話し合いで落ちつけたのだ、それは私はあたりまえだと思う。賠償協定を結ぶ場合においては、お互いに値切り合うと言てっはおかしいけれども、これだけのものをぶつけられてきた、巨額のお金を投げかけられてきた、しかし日本の経済能力、支払い能力というものを考えたときにそれでは払えないからこうしましょうと言って話していって、よくやくある程度の金額にまとまるのだと思うのです。そういう点からいいますと、今度の三千九百万ドルというものがほかの国の賠償総額と比べれば、私は決して少ないとは思っていない。というのは、金額そのものに表われてきたトータルは少ないかもしれませんけれども、与えた損害から払う割合というものは、私はほかの国と比べたらはるかに多いと思っております。しかもそれが北ベトナムに与えた損害も含んでいるというふうなことを考えましたときに、そして南ベトナムだけに払うということを考えたときに、むしろ非常に多いということを考えるわけです。ですから今アジア局長のおっしゃった言葉というものは、私の伺っている質問に対するお答えじゃないと思うのです。私が伺っておりますのは、賠償額三千九百万ドル算定の基礎になったものは、ダニムというものが非常に算定の基礎になっているのですねということを伺っておるのでございます。
#259
○伊関政府委員 賠償の金額は、損害というものを頭に描きまして先方が大きな数字を出し、こちらがいろいろな考慮から小さい数字を出し、交渉の結果きまるのでありますが、そのきまるときにこのダニムというものが一つの考慮に入っておることは事実でありますが、これが算定の基礎というのは少し言い過ぎだと思います。ほかの考慮がもちろん入っておるわけでございます。
#260
○戸叶委員 先ほど私が申し上げました日本工営の技術士であるところの久保田さん、この久保田さんでさえも三千九百万ドルの決定については不思議に思っているわけなんです。自分はダニムを建設することは非常にいいことだけれども、しかしただでやってくれというようなことはむずかしい、むしろ借款でやったらいいというふうに言っていたけれども、いつの間にかそれが賠償に肩がわりしてしまった、これはまことに不思議なことだといって、久保田さんでさえ言っておるわけです。ですからどんなにこれを否定されてみましても、そしてまたその賠償の過程の歴史を日を追って考えてみましても、ダニム・ダムを建設するには大体三千九万ドルかかる、じゃあちょうどいいからこれを賠償にしようじゃないかというふうに持っていったとしか思えないわけです。それを戦争損害によるものだとかなんだとかかんだとかおっしゃるので、私はそこに大きな答弁の上の悩みが出てくるのじゃないかというふうに考えるわけでございますが、この問題でこれ以上言っていても同じだと思いますから先に進みますが、それではこのベトナム賠償協定の中の附属書に、「水力発電所の建設」とありますけれども、これはダニムのことをおっしゃるわけでしょうか。
#261
○小田部政府委員 ここには単なる水力発電と書いてありまして、ダニムということは協定のどこにも出てきておりません。しかし従来の交渉の経緯から見まして協定が承認されれば、先方はおそらくダニムというものを持ち出してくるだろうと想像しております。
#262
○戸叶委員 そうしますと、水力発電所の建設ということは、書いてはないけれども、これはダニムということでございますか。
#263
○小田部政府委員 協定上はダニムということには読めませんし、ダニムというような何らの協定上の合意はございませんが、交渉の経過におきまして、ダニムが出ておりますし、またあすこで発電所をするということになれば、ダニムがその地点でございますから、これはダニムということになると思います。
#264
○戸叶委員 ダニムということになるわけじゃないですか。ただダニムということに書けない理由は、この条約の四条ではっきりと「この協定の規定、両政府がこの協定の実施のため行う取極の規定及び当該時に適用される実施計画に合致するものでなければならない。これらの契約は、前記の基準に合致するものであることを日本国政府により認証されなければならない。この項に定めるところに従って認証を得た契約は、以下『賠償契約』という」というふうに政府によって認証されなければならないから、ダニムという言葉が書けないだけであって、実際はダニムということをここに書きたいのだけれども、条約違反になるから書けない、こういうふうに了解してよろしゅうございましょうか。
#265
○小田部政府委員 私の考えでは、これはダニムということをそのとき書こうとすれば書いても差しつかえないのだと存じます。ただ賠償の認証という方は、そのダニムというのをやりましても、毎年々々ことしはどのくらいやるというような実施計画を向こうが出しまして、そうしてその実施計画をお互いに合意して参ったときに、そのときに具体的な計画というものができるものでございます。ですからたとえば協定上もダニムと書いても、これは差しつかえなかったのではなかろうかと思っております。
#266
○戸叶委員 そうしますとダニムということを書きますと、それがきまってしまってからあとから認証しなければならないのですから、認証される前にダニムというものを書いてもいいんでしょうか。
#267
○小田部政府委員 認証と申しますのは、大体賠償計画をやりますときには、向こうがどういう計画をやる、ことしはこれに必要なセメントとか鋼材はどのくらい要るというような調子で、向こうが持ってくるのでございます。そうしてその実施計画が合意ができますと、今度は個々の契約を向こうのミッションなり政府と日本人の業者が結んできてそれを政府に持ってくる。そのときに政府が認証するというところで初めて認証というものが出てくるのでございます。もう一つまたダニムと書かないで、発電所とある方がばく然としておりますし、この方がランプサムの金がいろいろな方面に使いやすいというふうなこともあるわけであります。
#268
○戸叶委員 そうしますと、二千九百万ドルというのは、ある部分はダニムに使って、そうしてまたある部分は何かほかにも使える、こういうことでございますか。
#269
○小田部政府委員 交渉の過程におきましては、ダニムという話も出てきて、いろいろな数字も出てきたかと思いますが、ここで合意されたのは三千九百万ドルという数字でございますから、そのうちの幾らがどれに使われるというようなことがございましても、あとは両政府間で合意されるその他の生産物及び役務という項に入ればよろしいわけでございます。
#270
○戸叶委員 もう一つ伺いたいことは、この前勝間田委員の質問に対しまして、賠償計画の内訳というもので、第一次に二千四百万ドル、第二次に千三百万ドル、そしてこの第一次に二千四百万ドル・プラス現地通貨の七百五十万ドルを使うのだ、こういうことを賠償部長が答えておられると思いますけれども、この七百五十万ドルというのは何に使われるのでございましょうか。
#271
○小田部政府委員 現地通貨の使われますものはダニムの分もございましょうし、あるいは工業センターを作りますれば工業センターに働くところのべトナム人というような問題も起こってくると思います。そういうようなもので現地通貨というものは必要なんでございます。この賠償協定によりますと、日本は日本人の役務並びに日本人の生産物ということになっておりますので、現地通貨は先方の方でこれを支弁しなければならない建前になっております。
#272
○戸叶委員 この七百五十万ドルという数字と経済協力の七百五十万ドルという数字とは合致しているわけですけれども、これは何ら関係がない数字でございましょうか。
#273
○小田部政府委員 経済協力の七百五十万ドルは、この七百五十万ドルも合計しましてダニムの経済建設にやる、こういう意味でございます。
#274
○戸叶委員 そうしますと、現地通貨の七百五十万ドルというのは、現地で調達するということなんですか。
#275
○小田部政府委員 何らかの方法によりまして現地で調達するということになろうと思います。
#276
○戸叶委員 この何らかの方法というのは、具体的にどういう方法なんでしょうか。
#277
○小田部政府委員 これはいろいろな方法があることだと思います。ベトナム政府の予算から出すというのも一つの方法だし、その他いろいろな方法があることだと思います。
#278
○戸叶委員 政府の出す方法もあろうし、その他のいろいろな方法があるとおっしゃるのですけれども、その他のいろいろな方法ということがどうも気になる点がありますので、もうちょっとはっきりしていただきたいと思います。
#279
○藤山国務大臣 御承知の通り、賠償にあたりましてベトナム政府がどういうことをやるかということは、ベトナム政府側の問題でございますので、われわれとしては賠償金額に応じます生産物を向うに供与するということだけでございます。
#280
○戸叶委員 何かその点が私ははっきりしないのですけれども、この借款協定の七百五十万ドルとそれから現地の通貨の七百五十万ドルというのは、全然関係ないというふうに言い切られるわけでしょうか。
#281
○小田部政府委員 ダニムの工事をやりますと現地通貨は千二百万ドルかかります。それから経済借款の方は、これは輸銀の借款でありますから、大体機械類だとかその他のものが出るので、その間における関係は、直接関係はないと思います。
#282
○戸叶委員 直接関係はないけれども、何らか関係があるのでしょうか。というのは、七百五十万ドルと七百五十万ドル、偶然同じ数字が出たというのは少しおかしいのじゃないかと思うのですが……。
#283
○小田部政府委員 七百五十万ドルの消費財を提供するというふうに協定のただし書きか何かに書いてあります方は、あれだけ向こうが消費財がほしいということがありますし、それから従来の賠償の実績を見ましても、あの程度の消費財は出しているというので、いわば消費財を提供する最大限度をきめたものと御了承いただきたいと思います。
#284
○戸叶委員 そうしますと、日本から消費財を持っていってそれを売って、そしてその見返り資金をこれに充てるというふうなことも考えられるわけですか。
#285
○小田部政府委員 日本の賠償協定におきましては、その他の国もそうでございますが、日本国といたしましては、日本国の生産物と役務を相手国に提供するということで終わっておりまして、それをその国がどういうふうに使っていくがということは、経済の発展並びに民生発展に使っているという以外にはわかっておりません。
#286
○戸叶委員 そうしますと、私の直接聞いておりますのは、経済他方というものは役務とそれから生産に限られているわけです。ところが日本から消費財を持っていって、その見返り資金をこれに充てるということになりますと、これは賠償の意図する目的と達ってくると思うのですけれども、この点はいかがでございましょう。
#287
○小田部政府委員 たとえで申しますれば、フィリピンの例などを申し上げるとこの間の関係はよくわかると思いますが、わが方としましては、日本人の生産物並びに日本人の役務をフィリピン政府に渡すのでございます。そこでフィリピンには賠償法というのがございまして、そのうちの四割は政府が使い、そのうちの六割は民間が使うということになっておるのでございますが、そういうようなことは先方の政府のやることでございまして、当方としましては、賠償協定の建前上、日本人の役務と生産物を相手国に渡す。しかも相手の政府に渡すということになっております。
#288
○戸叶委員 私ちょっとこの辺がよくわかりませんので、もう一度元へ戻って、伺いたいのですけれども、第一次計画の二千四百万ドル・プラス現地の通貨が七百五十万ドルということになっておりますが、この七百五十万ドルとそれから借款の七百五十万ドルとは全然別個で、借款は借款で七百五十万ドル日本から出ていく、あとの七百五十万ドルはベトナムか何が知りませんけれども、何かの形で現地通貨を作るのだ、こういうふうにおっしゃるのですか。何もこの現地通貨というものと日本とは関係がないとおっしゃるわけなんですか。
#289
○小澤委員長 もう少し丁寧に説明してやりなさいよ。
#290
○小田部政府委員 借款の方は、ダニムのダムを建設しますために、あるいは賠償でやるかもしれませんけれども、それで足りない分がありましたならば、あるいは賠償でやらないときはそれでもよろしゅうございますが、とにかく輸銀からこれを借りるということになっておるわけでございます。
 それからもうつの賠償のうちから七百五十万ドルを消費財として提供するということは、三千九百万ドルのうちからとにかく七百五十万ドル向こうの要求がありましたら、それを消費財として提供する。そうすればそこでわが方の賠償協定上の義務は終わるわけでございます。それをあるいは配給するなりあるいは売るなりそれは先方の自由なんでございまして、それは従来の賠償協定の実施にあたりましても、相手の政府に渡しますれば、それから先その政府が民間に貸すなりあるいは民間に売るなり、そういうことをしていたわけでございます。
#291
○戸叶委員 まだ私はわかりません。たとえばこの借款の方はダニムの建設のために使う。それで足りなかったらば賠償の金額をこっちに持ってくるのだ。そうして今度は七百五十万ドルの現地通貨というものは三千九百万ドルのうちから七百五十万ドルだけとっておいて、そしてこれはまず出すのだ、こういうふうにおっしゃるのですけれども、この七百五十万ドルというものを賠償の中から取り出して現地通貨にするというそのあり方が私はどうしてもわからないのですけれども、これをはっきりさせて下さい。
#292
○藤山国務大臣 三千九百万ドルのうち消費物資みたいなのもでよけい渡すわけには今回の賠償では参りません。御承知の通り、ビルマの賠償以来現地からはしきりと消費物資を出してくれといってきております。従ってわれわれとしては、三千九百万ドルのうち、七百五十万ドル以上は消費物資は渡せないという限界を一応置いて、初めからそれを規定しているわけであります。現地通貨とかなんとか言いますから、何か混乱いたしますけれども、そういう意味において御理解をいただければはっきりすると思います。経済協力の七百五十万ドルというものは、金額がたまたま似ておりますけれども、これは輸銀のワクの中から向こう側が適当と思う借款をして、そうして物を買っていくわけであります。何を買っていくかという問題は、今後実施協定に入ってみなければわかりません。
#293
○戸叶委員 そこに私、大きな問題があると思うのです。三千九百万ドルのうちから七百五十万ドルというものは、この消費物資なり何なりで別にやるのだということになってきますと、これはこの賠償協定の意味する内容と異なってくるし、これは間接に現金賠償というふうなことになってくると思うのです。私はこの点はどうしても納得のできないことで、三千九百万ドルの賠償といってきめておきながら、七百五十万ドルだけは違う消費物資で渡して、その見返り資金でもってこの向こうの需要に応ずるというふうなことになると、これは賠償協定違反になると私は考えますけれども、どうでしょう。
#294
○小田部政府委員 賠償協定の建前からいいますと、日本の生産物と日本の役務を相手国の政府に提供するということになっております。それでこの場合、ほかの例をとりましても、生産財のこともございますし、ビルマのような消費財の多いこともございます。そして、相手国政府でその生産財を受け取った場合に、政府がみずからその生産財を、自分の工場を必ずしも運営するのではございませんので、機械の場合におきましても、民間に貸し付けることもございます。それから、消費財の場合には、政府がこれを全部自分で使ってしまう意味ではありません。あるいは職員に配給することもございましょうし、あるいは一般の人に売るということもあり得るわけでございます。それですから、その結論としまして、政府が貸したものに対して現地通貨が入るということもございましょうし、売ったものに対しても現地通貨が入るということもあるのでございまして、これはベトナム賠償協定が実施に移されたというときばかりでなく、その他の賠償協定を通じまして、全部相手国がやっている仕組みでございます。
#295
○戸叶委員 そうしますと、三千九百万ドルの賠償という形じゃなくて、そのうちの七百五十万ドルは、消費物資なりなんなりで日本から送るのだというようなことを、なぜ協定の中にはっきり言っておかなかったのでしょうか。またそういうふうなことを言うことになると、一体十四条との関係はどうなるかということが問題になると思うのです。この点をもう少しはっきりさせていただきたいと思います。
#296
○小田部政府委員 第十四条との関係と申されますが、日本人の役務並びに生産物ということでなっておるのでありまして、この七百五十万ドルというようなものが日本人の消費財でございましても、日本人の役務並びに生産物ということになりますから、賠償協定の違反にはならないと存じております。
#297
○戸叶委員 私質問を続けていてもいいんですけれども、私が言っては政府とのやりとりが平行線になりますから、違う角度から岡田さんに聞いてもらいたいと思います。
#298
○小澤委員長 関連質問として岡田春夫君。
#299
○岡田委員 賠償部長に伺いますが、生産物賠償というのはどこから出てきますか。私、十四条の原文を見ていたからちょっとすわっていたのですが、生産のためのサービスであって、どこに生産物賠償が出ますか。
#300
○小田部政府委員 フィリピン、ビルマその他インドネシアの協定におきましても、生産物並びに役務というものを提供することが出ております。
#301
○岡田委員 私の伺っているのは、フィリピン、インドネシアの例を聞いているのではない。あなたは十四条によって生産物賠償が出るというから、どれから出ているか聞いている。生産賠償じゃないですか。原文を見てごらんなさい。そこに原文があるんでしょう。生産物じゃないですよ。
#302
○小田部政府委員 午前中条約局長の御説明いたしました通り、役務というのを狭義に解釈もできますが、広義に解釈しまして、フィリピン、インドネシア、ビルマというような場合には生産物というものも提供しております。
#303
○岡田委員 それでは一応百歩譲って生産物賠償がいいとしても、向こう側の目的とすることは生産物によって現地通貨を取得するという目的のために、生産物を送ったというのは、これは十四条のどれによって適用できますか。
#304
○高橋政府委員 向こうでそれをどういうふうに使用しますかということは、それは先方の問題でございまして、われわれの協定及び交換公文ではそういう生産財を出すということにいたしております。
#305
○岡田委員 条約局長に伺いますが、交渉の過程の中で現地通貨分という話が出ているでしょう。
#306
○高橋政府委員 交渉の経過の問題はいろいろあるかもしれませんが、条約の文面では、われわれはあくまでも生産財、そういう財貨を向こうに出すということになっております。
#307
○岡田委員 それは条約局としてはそうだろうと思いますよ。しかし交渉の中では、賠償の問題のいろいろなそういう経過が事実あった。これはうそだといったって、賠償部長知っているじゃないか。この前去年の成田君の質問のあとで、われわれが外務委員会でいろいろやっておるときに、あなた方の方で、これは現地通貨分としてはっきり答弁しているじゃないですか。これは賠償部長違うのですか。
#308
○小田部政府委員 それは交渉の経緯において、いろいろな話はございましたかもしれませんが、しかし協定に出てきます場合には、日本政府としてはベトナム政府に対し、日本国の生産財並びに消費財を出すということになっております。
#309
○岡田委員 そこの点は、この協定を結んだ議事録の中に出ているでしょうこういう議事録の中に出てないと言えますか。あなたの方でこの前はっきり言っているじゃありませんか。これは実質的に現地通貨分であるということを、あなた方は何度答弁しているのですか。去年から五回も六回も七回も八回も答弁していますよ。それを今になって違う。なるほど協定の上にはそんなことは書いていませんよ。協定の上に書いてないから戸叶さんが問題にしておるのじゃないか。実際上の現金賠償のもぐりじゃないかと言っているのじゃないか。それを協定の中に書いてない、そんなことは戸叶さんは前からわかっていますよ。実際それについてはっきり答弁しているじゃないか。うそならば、速記録を今晩から調べてごらんなさい。われわれだって出しますよ。こういう議事録の中にそういうものがありませんか、あるじゃありませんか。これは条約局の条約の問題じゃないのですよ。実際の問題ですよ。はっきりしているじゃないか。調べてから答弁して下さい。
#310
○伊関政府委員 そういう議事録はないそうでありまして、わが方としましてはあくまでも役務と生産物を出すのでありまして、それが結果においてどうなるかは先方のやることでありまして、わが方はあくまで現金などを出すわけでありません。物と役務を出しているわけであります。
#311
○岡田委員 それでは今までの三回も五回も答弁しているのは、それは全部間違いだったというわけですか。速記録に残っていますよ。去年からの外務委員会ではっきり言っているのですよ。藤山さんが答弁しています。藤山さんどうです。
#312
○伊関政府委員 間違いになるかなりませんかは、向こうがどう使うかによってきまるわけであります。
#313
○岡田委員 そういう答弁を私は要求しておりませんよ。間違いになるかどうかということではなくて、前の速記録の答弁に残っている。これは、藤山さんがそのとき言ったのは間違いだったのか、こういうことを聞いているのです。藤山さんどうなんです。伊関局長の問題じゃないですよ。
#314
○藤山国務大臣 私はそういう答弁をいたしたことはないと考えておりますけれども、御承知の通り、今回の賠償にあたりましても生産物を出していく、役務の集積である生産物、こういうことになっておりますので、その限りにおいて、私どもは答弁を今日までもいたしてきております。
#315
○岡田委員 そういう不明確な――私はあなたの方から説明を何度も聞いているのですよ。そのときに三千九百万ドルの中で七百五十万ドルというのは現地通貨分である。この点は私も質問して、あなたはそれについてその通りですと答えていることを記憶しているからあえて言っている。それではもう一つ別に伺いますが、伊関さんもこれは一緒に答えていただいていいけれども、七百五十万ドルというものは、向こうにおいて現金で、現地の通貨分であった場合においては、それは正しいのだということになりますね。そうでなかった場合には間違いだ、こういうことですね、あなたの今の答弁を聞いていると……。
#316
○伊関政府委員 われわれは七百五十万ドルの消費財を渡すわけでありますから、それを先方がどう使うかは今後の問題でありまして、間違いになるかならぬか、これは今後の問題であります。
#317
○岡田委員 私はそんなことをさっきから聞いてない。協定の上ではその通りです。実質的にはどうなんだということをさっきから聞いている。実質的には現地通貨……(「仮定の問題だ」と呼ぶ者あり)そうじゃない。現地通貨分は七百五十万ドルとはっきり答弁しているんだ。答弁をしているのに今になってわかりませんというなら、それじゃあなた方はベトナムさんのあなたまかせですか。外務省の方針はないの。そうじゃないか。全然方針がない。前に方針がきまっておったけれども、今になったら国会を通過させるために方針がなくなって、ごまかすんだということじゃないか。それでは現地通貨分であった場合には、実質的にはそれは賠償の部分が現金になるんだ。これは事実なんでしょう。
#318
○伊関政府委員 消費物資として渡しましたものを向こうの政府が処分しまして、現金収入を得ますれば、それでそれを使えばそれは現地通貨になるわけであります。しかしこれはほかの国にもみなあることであります。
#319
○岡田委員 ほかの国がやったからそれでいいということにはなりませんよ。それをもって理由にならないのですよ。あなた方が今言っておるのは、生産物賠償という名目に隠れて現金賠償をやろうとしておるのだ、これがほんとうのねらいなんだ。こういうごまかしをやろうとしておるのだ。しかもこの賠償の金額は全部税金じゃないですか。国民の税金じゃないか。二百億円の国民の税金をサンフランシスコ条約によりますといって、そういう看板を利用しながら、このサンフランシスコ条約のもぐりをやって現金賠償しようとしておるじゃないですか。これは明らかじゃありませんか。そうじゃないとあなた方は否定ができますか。(発言する者多し)委員長静粛にさせて下さい。理事が騒いでいる。
#320
○小澤委員長 静粛に願います。
#321
○伊関政府委員 現金で出せば現金賠償でありますが、物で出した以上は現金賠償とは考えません。
#322
○岡田委員 それを称して三百代言的な発言だというのです。生産物で出せば――そんなことはわかり切っていますよ。あなたに聞かなくとも協定の上では生産物なんだ。あなた方はこう書いておる。それではこれを伺いましょうか。賠償の用途によって賠償金額を決定したと言っているでしょう。違いますか。
#323
○伊関政府委員 賠償交渉で妥結します際に、その用途も一応参考になっておるということを申し上げておるわけであります。
#324
○岡田委員 これで終わりますが、賠償の用途を先にネゴシエーションをするとはっきり出ているじゃありませんか。そのネゴシエーションの上に立ってこの協定をきめたので、協定の上には確かに生産物賠償になっていますよ。しかし実質的には現金を賠償するということじゃありませんか。これはだれが見ても国民はわかりますよ。そんなうまいことを言ってごまかしたって、国民は納得しませんよ。明らかにごまかしですよ。現金賠償である。私は関連質問ですからこれ以上はやりません。
#325
○戸叶委員 今岡田委員の関連質問で、私の足りないところを補っていただいたと思うのですが、私自身もこの点は非常に不明朗だと思っております。協定から見れば、そうした今やりとりしたような、質疑応答をしたようなことは見えませんけれども、政府の答えられた答弁の節々からずっと総合的に考えてみますと、やはり現金賠償のもぐりというようなところがどうしても見られるわけでありまして、そういう点から見ましても、この賠償協定というものは、どうも私たちは納得がいかないわけです。この問題はこの程度にいたしますけれども、七百五十万ドルの借款というものと現地通貨の七百五十万ドルというものが一致したというようなところも、これは偶然の一致といえばそれまでですけれども、何かその辺にも割り切れないものが私どもは残っているわけでございまして、なおこの問題はもう少し深く研究してきたい。そうして次の機会にもう少しただしてみたい、こういうふうに考えます。
#326
○小澤委員長 関連質問として勝間田清一君を許可します。
#327
○勝間田委員 私は賠償の性格が非常に長い間に変わってきたと実は考えるのでありまして、三千九百万ドルのうちで七百五十万ドルに相当する部分を消費財で出そう、こういうことの考え方の中には、ただいま質問のあったように、現金賠償に近い性格を持ったものがあると私は考える。しかし同時に、今日私は外務大臣に一つお尋ねをしたいと思いますけれども、私が一番懸念をしておる問題は、賠償の支払いを通じて貿易が一体どういうことになるであろうかということが、私は一番大きな問題だと考えておる。そこで今日まで、ビルマの賠償にいたしましてもあるいはフィリピンの船舶賠償にいたしましても、賠償の行われる結果が、日本のその当該国に対する貿易の減少となって現われておる特に一番大きな問題は、やはりビルマに対するスルメであるとかあるいはその他の食料であるとか、あるいは綿製品であるとか、こういう消費財の輸出ということが、その当該国に対して非常な貿易の減退の原因になっておる。これが今日の一番大きな賠償に対する反省でなければならぬと私は考える。その反省を行なわずして、ここで消費財で賠償すること、しかもそれを国内通貨の資源にする、こういう考え方は、私は賠償のやり方としては一番悪いやり方であると考える。
 そこで私はここであらためてお尋ねしたいのですけれども、一体こういう賠償のやり方というものは、従来の賠償の反省であるかどうか、それからもう一つは、このことを行なうことによって、南ベトナムに対する貿易にどういう影響を及ぼすか、この点を数字的に明白にしていただきたいと私は思う。
#328
○藤山国務大臣 賠償実施と貿易の将来の問題ということは、一口にはなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、御承知の通り日本から賠償によりまして、優良な、しかも適当な商品が出て参りますことは、現地における日本商品の価値というものを認識させるのに大きな役割を演ずることだと私は思います。従いましてそれぞれの国が賠償によって受け入れられたものによって建設をし、あるいはそういう経済復興をやっていくというような場合に、その機械その他日本商品の優良性がわかってくる、また同時にそれらの部分品その他の将来の通常貿易による輸入が興ってくるということに相なりますので、私は長い目で見て貿易に決して悪い影響を与えるとは考えておらぬのであります。むろん当面、今日東南アジアの各国というものは、それぞれ通貨事情なり何なりが非常に悪うございます。御承知の通りでございます。従って購買力というものがそう大きく期待できない。これを何とかして購買力をつけたいというのが、日本の経済外交の一つの主眼点でございますけれども、購買力が今日ない。しかも日本といたしましても、米が相当豊作が続くというような場合に、向こうから相当米を買ってくるわけにいかぬ。向こうから買うものもないという事情では、当面必ずしも貿易が十分じゃないという国があることはむろんでございます。しかしそのこと自体がすぐ賠償からきたものだというふうに即断はいたしかねると思います。
#329
○勝間田委員 今大臣のおっしゃっていることは生産財のことを言われておるわけです。私は消費財の賠償を行なうことによって、日本の貿易にどういう影響を及ぼすかということを聞いているのであります。
#330
○藤山国務大臣 消費財につきましても同じことが私は言えると思うのでありまして、やはり日本商品の優良性というようなものが認識されてきますれば、当然リピーテッド・オーダーというものは通常貿易のルートによってくるわけでありますから、そういう点から見まして、特に貿易を阻害するということはあり得ないと考えております。
#331
○勝間田委員 大臣、私の質問に答えてくれておらないのです。それならば私はっきり聞きますけれども、南ベトナムに対する日本の輸出貿易はどういう品物がどのくらいあったのですか、これを一つお聞かせ願いたい。
#332
○藤山国務大臣 こまかい点についてはアジア局長から御答弁いたさせます。
#333
○伊関政府委員 南ベトナムに対します貿易のほとんど九割以上がICAの買付になっております。ICAの買付の中には五〇%ちょっと上回ったものが繊維であります。その他に機械だとかあるいはセメントというふうなものがその次に大きいものでありまして、今後は車両等がふえるのではないか、こういうふうに考えております。
#334
○勝間田委員 七百五十万ドルの消費財の賠償については、どういう品物が向こうから要望されておるのか、それをお聞かせ願いたい。
#335
○小田部政府委員 現在のところ、向こうから要望されている消費財は具体的にございませんが、ただしかし従来の賠償協定の実施にあたりまして消費財を要求されます場合は、たとえばビルマなどから消費財を請求されますような場合には、日本の通常貿易の妨げにならないようにということに非常に重要関心を持っておりまして、それでもし通常貿易を阻害するような場合には、これをお断わりするとか、あるいは通常貿易は特にある平均年度まで買ってもらうとかというようなことをして合議をしております。
#336
○勝間田委員 今までの貿易は御存じの通り、たとえば昨年度の実績を見ましても、繊維が二千三百九十七万ドル、ずっと下がってセメントが四百十八万ドル、それから窒素質の肥料が百三十八万ドル、機械類が百九十四万ドル、それからゴム、タイヤ、チューブが百五万ドル、これが日本はいわゆる輸出超過になっておりますから、ICAによってこれは買われておるのであります。そこで日本の消費物資をこの際出した場合、消費物資は何であるかということになると、セメントであるとか繊維であるとか窒素質肥料だとかこういうものに私はなると思う。輸出超過の国にしかも消費物資がこれしか輸出されていない。そこへ消費財の賠償が支払われたときにおける貿易に対する影響は致命的でありませんか。それをもう一つ私ははっきり申しましょうこの繊維については過去すでに輸入禁止が行なわれているじゃありませんか。でありますから一九五七年、一九五八年、今度半年にわたって輸入禁止の方途が行なわれ、人絹に対する輸入制限が行なわれて、この二千三百九十七万ドルの繊維輸出だけでも激落しておるのが今日の状態ではないですか。そうならばベトナムの賠償というものについての七百五十万ドルの消費財の輸出が行なわれた場合においては、日本の貿易に対する影響は致命的じゃありませんか。今日特恵関税制度も作られず、しかも繊維に対する輸入制限に対する政策もまだ完成を見ておらず、そこに消費財が出されたときにおいては、日本の対ベトナム貿易というものは致命的になると私は考えておる。これに対する政策、対策は一体何ですか。
#337
○伊関政府委員 現在輸入制限をいたしております銘柄は、日本が出しておるものとは違います。日本が出しておりますものは輸入制限いたしておりません。
#338
○勝間田委員 それでこれらのベトナムに対する綿製品のあれがあって、人絹織物に対する問題も新たに加わった。そうしてこの繊維に対する非常な致命的な影響があって、一九五七年には三千二百五十四万ドルあった貿易が、一九五八年には二千三百九十七万ドル、一千万ドル下がった。これがすなわち綿製品に対するベトナム側における制限の結果から生まれたものなんです。貿易にはっきり出ておる。そういう状態のところに、ここで消費財のまた輸出をやっていくということになれば、ベトナムに対する貿易は全く不振になる。それに対する政策というものを明確にしてもらわなければ、今日のこの問題についての賛意を私は表することができない。だから私はこのベトナムヘの輸出貿易に対する影響とそれに対する対策は何か、これを聞かしてもらいたいと思う
#339
○伊関政府委員 先ほど申しましたように、輸入制限の対象となって打撃を受けておりますのは、台湾、インド等の下級綿布と考えられております。一般日本製品につきましてはプリントとかエンボスと書いてありますが、これらは制限品目に含まれておりませんので、大きな影響は受けておりません。それから繊維製品の輸出実績が減っておりますのは、ICAの援助の減少によるものであります。
#340
○勝間田委員 それについては私質問を留保いたします。
#341
○戸叶委員 今貿易の問題が出ましたので私も伺っておきたいのですけれども、この賠償協定の二条三項には、「この協定に基く賠償は、日本国とヴィエトナム共和国との間の通常の貿易が阻害されないように」、というふうに書いてあります。当然この協定を結ぶことによって、通常の貿易が阻害されないであろう、こういうふうに政府はお考えになっていらっしゃると思いますが、私どもはこれを反対に考えておるわけですが、この点はいかがでございますか。
#342
○小田部政府委員 通常の貿易が阻害されないようにということは、われわれの方では向こうがたとえば消費財がほしいといった場合は、通常の貿易が阻害されるような消費財は出せないというような調子で従来は処理をしてきております。
#343
○戸叶委員 これからさらに広く解釈をいたしまして、貿易全体の面から考えましても、ベトナムと協定を結ぶことによって全般的に日本とベトナムとの間の貿易というものは、これまでよりも決して減るようなことはないのだ、こういうふうにお考えになるかどうか、藤山外務大臣に伺いたいと思います。
#344
○藤山国務大臣 むんろ賠償をやりました結果、貿易が減ろうとは考えておりません。東南アジアの国々のそれぞれの経済事情によって減ることはありましょうとも、賠償のために減るというふうには考えておりません。
#345
○戸叶委員 私どもの観点と今の政府の観点とは違うわけなんです。と申しますのは、この賠償協定の審議にあたって、何度も政府がはっきりと言ったことは、この賠償協定というものは、その内容は北にも及ぶのだということを言われております。私どもは、そういうことはあり得ないという観点に立っているにもかかわらず、政府はその内容が北にも及ぶのだ、だとすれば、政府のその考え方でいくならば、北にも及ぶのだから、北の貿易というものもこの中に入っていると思うのです。そうなってくると、北は、はっきり、今度南のベトナムとの賠償協定を結ぶということによって、貿易協定というものに対してはもう不満を申し出てきているわけなんです。そうなれば、全体的に見たときに貿易というものが減るじゃありませんか。それを、いや、減りませんというような言葉、一方においては南ベトナムだけの賠償を対象にしておきながら、しかも、条約の解釈においては北ベトナムにまで及ぶという、こうした矛盾した言い方というものは私は納得できないと思うのです。
#346
○藤山国務大臣 むろん、将来北との貿易も盛んにしていくことは必要だと思います。そうして今日までの実情から申しましても、先般数字等も申し上げました通り、まだ経済関係においては減っておらぬのでありますから、われわれとして、他の事情を別にいたしまして、今の経済的な購買力やその他の事情は別にして、特に減ろうとは考えておりません。
#347
○戸叶委員 政府と私との観点が違いますから、この程度にいたしますが、そこでもう一つ伺いたいことは、この条約が発効することによって三十四年度の予算措置というものはどういう科目から幾ら計上するつもりか、この点を伺いたいと思います。
#348
○藤山国務大臣 賠償金の支払いにつきましては、御承知の通り賠償等特別会計がございまして、その中へ毎年繰り入れられておりまして、その中から支払うことになっております。そういう科目において整理されてくると思います。
#349
○戸叶委員 この賠償協定をどうしても急いで通したいというお考えがあるからには、予備費から幾ら出すという大体のお考えはあると思うのですが、三十四年度は一体どのくらい出すという想定のもとにこの協定を国会に出しているか、これを伺いたい。
#350
○小田部政府委員 これは三十四年度の賠償等特別会計の中にことし一年分の三十六億ですか、三十六億の予算は入っておるはずでございます。
#351
○戸叶委員 今の答弁の語尾の方がはっきりしませんが、三十六億入っておるというのですか。おりますかおりませんか。
#352
○小田部政府委員 入っております。
#353
○戸叶委員 今度の災害対策等で相当の予算が要るわけでございますけれども、そういう点から考えましても、今計画されている通り実施できる御予定でございますか。計画通りに運営できるというふうにお考えでございますか。
#354
○藤山国務大臣 もちろん来年度の予算のことでございますから、今後の予算の成立にあたりましてこれがきまって参ることは当然でございます。賠償関係の科目というものは、今申し上げましたように賠償等特別会計によってやっておるわけであります。大体これは全部ラウンド・ナンバーで処理されてきておるわけでありまして、御承知の通り、インドネシアにいたしましてもあるいはフィリピンにいたしましても、
 一年総額幾らという大体の見当がございます。それですから、それを目当てにして予算措置はされていることになりますけれども、しかし、そのに中おいて必ずしもその予算全部が使われるということには――たとえば長期にわたる船というようなものになりますと、すぐに全額が出ていくわけではございません。でありますから、若干その賠償等特別会計の中で出入りはございます。
#355
○戸叶委員 私、来年度予算のことを聞いているのではなくて、今年の三十四年度予算の中でどれだけ使えるかということを伺っているわけでございます。
#356
○小田部政府委員 本年度の予算の中に、賠特会計として一括したものの中に、特にベトナム分を勘定に入れた中に三十六億円入っております。
#357
○戸叶委員 三十六億円というのはベトナム賠償のものも入って組んであるとおっしゃるのですか。それではベトナムには大体どのくらいお充てなさるつもりでございますか。
#358
○小田部政府委員 ベトナム賠償に相当するものとして、三十六億円ありますので、それを加えた額のものが賠償等特別会計の中に入っております。
    〔「同じことを言うな、時間がたってしょうがない」と呼ぶ者あり〕
#359
○小澤委員長 静粛に願います。
#360
○戸叶委員 私は、この賠償の問題が、私たちの税金で払われるというふうな関係上国民も非常に関心を持っておりますし、私も一生懸命やっているわけでございまして、なるべく人の出した質問に重複しないような形でもって努力しているわけでございますから、あまりヤジをやらないようにしていただきたいと思います。私も大体ここで質疑をやめて、あとの条約のこまかいことについては次の機会にしたいと思うのですけれども、もう一つ伺っておきたいことは、三十四年の三月にベトナム側から、植村特使が大体話をつけてきた賠償額というものに対してよろしいと言ってきた。ところが、それから五カ月もほっておいて、八月になりましてからようやく久保田大使に交渉を始めさせているわけなんです。その間五カ月間というものをほっておいているわけでございますけれども、政府は今度の賠償というものを非常にお急ぎになっていらっしゃる。それで何でもかんでもこの国会で通そうというふうに急いでいらっしゃる。にもかかわらず、一度きまって向こうからよろしいと言われてきたのに、なおこまかい賠償の話し合いなり協定を作るまでに、八月まで五カ月間もそのままほっておいたというその理由は一体なぜでございましょうか。そのときにちようど国会が開かれておりましたから、国会でいろいろ言われるのは大へんだというようないろいろな問題も持っていらっしゃったので、わざわざ八月までそれを延ばしていられたのではないかと私どもは考えているわけでございますけれども、この点についてもお伺いしておきたいのであります。それほど自信がない賠償協定ではないかと私は考えるのであります。
#361
○藤山国務大臣 賠償の経過の中においていろいろ進んだり、おくれたりすることはございます。それが一々国会の影響があるのだというふうにわれわれ考えながら進めてはおりません。
#362
○戸叶委員 それはおざなりの答弁なんです、なぜ私がこの点を言いますかと申しますと、もう、こっちから話を持っていってきまっちゃって、それで向こうは三月にはいいと言ってきているわけなんです。それにもかかわらず、この五カ月間というものはそのままブランクにしておいて、そうして八月になってからやり出したというところに、何かそこに国会等の関係もあったのではないかというふうにも考えるわけでございますが、政府としてはそんなことはあり得ませんというふうにお答えになるじゃないかと思っております。そこで、私は、今までの質疑応答から考えましても、あるいはまたきょう行なわれました春日氏の質問に対する政府の答弁を見ましても、まことに納得のいかない点が多いのでございます。ことに北ベトナムの問題、北ベトナムと南ベトナムとの問題、そして中国との問題、こういったいろいろな問題をはらんでいるわけでございますから、少なくともこの国会におきましては十分な審議をして、そしてあまり急がないというふうな態度をとっていただきたいことを要望いたしまして、こまかいことについては次の機会に譲っていきたいと思います。
#363
○小澤委員長 この際暫時休憩いたします。
    午後六時十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後十一時四十五分開議
#364
○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 本日は時間がありませんので、この程度にいたし、次会は明二十五日午前零時五分より開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。
    午後十一時四十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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