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#1
第033回国会 外務委員会 第16号
昭和三十四年十一月二十六日(木曜日)
    午前一時二十七分開議
 出席委員
   委員長 小澤 佐重喜君
   理事 岩本 信行君 理事 菅家 喜六君
   理事 佐々木盛雄君 理事 椎熊 三郎君
   理事 床次 徳二君 理事 堤 ツルヨ君
      池田正之輔君    石坂  繁君
      加藤精三君     鍛冶 良作君
      菊池 義郎君    小泉 純也君
      鈴木 善幸君    二階堂 進君
      長谷川 峻君    福家 俊一君
      古川 丈吉君    森下 國男君
      山口六郎次君    春日 一幸君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
 出席政府委員
        外務政務次官  小林 絹治君
        外務事務官
        (アジア局長) 伊關佑二郎君
        外務事務官
        (アジア局賠償
        部長)     小田部謙一君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
十一月二十六日
 委員久野忠治君及び前尾繁三郎君辞任につき、
 その補欠として長谷川峻君及び鈴木善幸君が議
 長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第一
 号)
 日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関
 する協定の締結について承認を求めるの件(条
 約第二号)
     ――――◇―――――
#2
○小澤委員長 これより会議を開きます。
 日本国とヴィエトナム……。
    〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
    〔「両件に対する質疑を打ち切られんことを望みます」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
#3
○小澤委員長 ……。
    〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕
    〔「委員長、無効だ」「委員長、不信任々々々」と呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然」
#4
○小澤委員長 不信任案が出ましたから、菅家君、かわって下さい。
    〔委員長退席、菅家委員長代理着席〕
    〔「仮議長、無効だ、解任決議案が出ているじゃないか、仮議長無効だ」「社会党退場々々」「あんたたちうしろに下がりなさいよ、委員部の責任者は出て来なさい」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
#5
○菅家委員長代理 それはいけません、混乱するから……。守衛を下げるということはいけません。議席に着きなさい。議席に着かない者は相手にしません。
    〔「あなたは仮議長として何の権限がある」と呼び、その他発言する者多し〕
#6
○菅家委員長代理 守衛の諸君は速記者を妨害をしないようにそこを守って下さい。発言のある方は発言を求めて下さい。ただいま……。
    〔「こういう状態で審議を強行するということはいかぬよ」と呼ぶ者あり〕
#7
○菅家委員長代理 ただいま外務委員長小澤佐重喜君に対する不信任案の動議が提出いたされました。
 これをお諮りいたします。これに反対の諸君の挙手を願います。
    〔反対者挙手〕
#8
○菅家委員長代理 挙手多数。小澤君の不信任案は否決されました。(拍手)
    〔菅家委員長代理退席、委員長着席〕
    …………………………………
    〔委員長退席、岩本委員長代理着席〕
    …………………………………
    〔岩本委員長代理退席、椎熊委員長代理着席〕
    …………………………………
    〔椎熊委員長代理退席、菅家委員長代理着席〕
    …………………………………
    〔菅家委員長代理退席、床次委員長代理着席〕
    …………………………………
    〔床次委員長代理退席、委員長着席〕
#9
○小澤委員長 念のため皆様に申し上げます。現在委員会は閉会中でありまするが、社会党の議員諸君が本室に入場しておりませんので、念のため入室の要求をいたしますから暫時お待ちを願います。――ただいま事務局員が社会党の控室に参りましたところが、事務員がおりまして、一人も議員が残っておらぬそうでありますから、はなはだ審議放棄で残念でございまするけれども、このまま進行いたすことにいたします。
 先刻、委員会の議事に関して行き違いがあり、混乱の事態が生じましたことは、委員長といたしましてまことに遺憾に存じます。
 なお社会党の小林進君外一名から、委員長に対する不信任動議が提出されておりますので、佐々木盛雄君提出の質疑打ち切りの動議に先だってこれを議題に供するわけでございますが、私の一身上のことでありますから、理事菅家喜六君に本席を譲ります。
    〔委員長退席、菅家委員長代理着席〕
    〔春日委員「それはどういうことだ、そんなことはやったことじゃないか、やったことをなぜやるのか、そんな再確認をするようなのはおかしい」と呼ぶ〕
#10
○菅家委員長代理 委員長の指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。
 小林進君外一名提出の委員長不信任動議を議題とし、その議事を進めます。
 まず提出者の弁明を許します。――趣旨弁明の発言がありませんから、直ちに討論に入ります。
 討論はございませんか。――討論がなければ、直ちに採決いたしたいと存じます。
 これより採決に入ります。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#11
○菅家委員長代理 起立少数。よって、小林進君外一名提出の委員長不信任動議は否決されました。
 委員長の復席をお願いいたします。
    〔菅家委員長代理退席、委員長着席〕
     ――――◇―――――
#12
○小澤委員長 先刻佐々木盛雄君から両条約に対する質疑終局の動議が提出され、委員長はこれを採決し、可決の旨を宣告いたした次第でありまするが、議場混乱のため明瞭を欠く点がありましたので、会議録を明らかにするためにも、また、重要案件である点よりいたしましても、あらためて佐々木盛雄君提出の質疑終局の動議について採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#13
○小澤委員長 起立多数。よって、本動議は可決されました。
 右の結果、両条約に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#14
○小澤委員長 次に、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件及び日本国とヴィトエナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件、右両件を一括議題として討論に付します。
 討論の通告がありますので、順次これを許します。
 堤ツルヨ君。
#15
○堤(ツ)委員 私は、わが社会クラブを代表いたしまして、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定の締結について承認を求めるの件、日本国とヴィエトナム共和国との間の借款に関する協定の締結について承認を求めるの件につき、反対の意見を表明いたしまして、ここにその根拠を明らかにいたしたいと思います。
 本三十三国会は、ベトナム賠償問題を中心として召集されるのであるということは、かねてから論ぜられておったところでございます。けれども、不幸にして、はからざる相次ぐ台風のために、このベトナム共和国の賠償並びに借款の承認を求める件と並行いたしまして、伊勢湾台風を中心とするところの災害予算と二つの重要案件、さらに加うるに、炭鉱離職者の救済問題に関する法律など出て参りまして、いろいろ問題は山積いたしましたけれども、しかし何と申しましても、一番大切な問題はこの賠償の問題でございました。で、国民は非常に大きな関心を持っておるのでございまして、今国民環視の中でこの法案が政府与党の一方的な強行によって採決されんといたしております。こうした問題は、何と申しましても、日本国民全体の肩の上にかかってくる問題でございますので、納得のいくところの賠償、そして将来悔いを残さないところの賠償がなされなければなりませんという立場から、私たちはこの賠償問題と取っ組んで参りました。けれども、このベトナム共和国との賠償並びに借款協定を承認するにあたりまして、政府といろいろ問答を重ね、慎重審議をして参ります途上におきまして、日がたつにつれてその疑点を解明し、国民の前に納得がいかなければならないのが国会の使命であるにもかかわりませず、審議を重ねれば重ねるほど疑点が増し、そしてさらに、この法案の通過の日が迫れば迫るほどなおさら政府が答弁に困るというような問題が出て参りまして、依然として釈然としないのでございます。いかに自由民主党の方々がこれを強行採決なさろうといたしましても、私は、衆人環視の中で行なわれます今この採決にあたって、国民は自由民主党に対するところの不信の念をますます深めると思うのでございます。なぜならば、私たちはこの賠償問題をめぐっての審議、これをいろいろと検討して参りましたところが、この賠償の算定根拠、あるいは今の世界情勢の中にあって、微妙な一つの民族が二つに分かれておるというこの分裂ベトナムを対象として、はなはだむずかしい現実の前に立たされた日本のこの賠償問題が、法的に解釈し得ても、どうしても現実が許さないという難問題がころがっており、なおかつ、南に払えば北がこれを了承しないというようなはっきりした事実もございまして、どうしても今払うべき時期でないことが非常にはっきりいたしておりますると同時に、その方法におきましても、これは禍根を残すものでございまして、何としても、政府が反省され、面子を捨てて、虚心たんかいにこの賠償問題を一度白紙に還元して考え直さなければならないという世論の中に立たされておりながら、どうしてもこれを強行なさろうとするのでございます。こうした情勢は、幾日かの審議を通じて国民の前に明らかにされておりますが、ついにきのうからいろいろと難関を突破して参りましたこの委員会におきましても、このうっぷんに耐えかねた日本社会党がただいまこの法案の審議権を放棄するに至るまでの経過を考えますると、まことに無理からぬものがあるのでございまして、態度そのものには批判の余地はございまするけれども、しかし、釈然としないところのこの賠償問題、疑点ますます限りないところのこの賠償借款の問題をどうしても通そうというのならば、国民の前に国会議員としての良識がどうしても済まないというところの日本社会党の立場も了解できると思うのでございます。私たちもこうした同じ観点に立ちまして、徹底的な審議を要求して参りました。私たちはまだまだこれが慎重に審議されなければならないと存ずるものでございまするけれども、数を持たれるところの自由民主党は、白を黒といい、黒を赤と言いながら、この強行採決に臨まれようとし、遂に数をもってこの事態に立ち至ったのでございます。まことに、七、八時間前を思い出しますると、残念なことでございますが、できれば、話し合いの中に何とかして政府の反省を求めると同時に、自民党も、野党であるわれわれの主張に対して、良心をもって同調されるように、話し合いの広場を求めたいと努力して参りましたけれども、遂に協調ならず、わが小会派といたしましても、幾たびかあっせんに入りまして、決裂しないように努力をして参りましたけれども、どうもこれは、最後のときを迎えました。しかも、この最後のときを迎えるにあたって、私たちが信頼をして参りました小澤委員長が、最後の日に臨んで、残念ながら、議会の審議の歴史に一つの汚点を残すところの大きな失敗を重ねてしまったのでございます。国会の正常化、そして私たちは議会主義に徹して、民主主義を尊重するというところの建前をとって、自由民主党の皆様方と協調して参りたいと存じ、常に相談をして参りましたのに、小澤委員長は、遂に自由民主党の比力に抗しかね、質疑打ち切りの動議を提出せんとするところの自民党と遂に妥協いたしまして、私たちに何の相談もなく、一方的にこの質疑打ち切りの動議を取り上げて、まことにお恥ずかしい混乱の中にこれを遂に取り上げて、ただいま不可思議にも御訂正になりましたように、速記録にさえも載っておらないような、実にみじめなこの動議の取り上げ方と、そして国民が見ましたら非常に残念がるであろうところの光景をさらしながら、遂にこの場に及んだのでございます。私たちは、それからも、ただいまに至りますまで、七、八時間何とかしてこの不当な行為を認められまして、白紙に還元し、今までのそうした非常に理不尽なあり方を委員長みずからが認められまして、これを抹殺し、そして無効になさることを忠告して参り、また理事会の再開を求めて、これが訂正を主張して参りましたけれども、遂に自民党と相いれず、小澤委員長は自民党と同調されまして、そして今一方的に、私たちの主張がいれらいないまま、強行採決をされようとしておるのでございます。私たちは、こうしたあり方に対しまして、大きな不満を持つものでございますけれども、しかし私たちは、国民から一票々々をもらって選出されて参りましたところの選良でございます。国会議員としての使命は、あくまでも議会の中にあって、この議会主義を尊重することによって、国民にこたえ、国民の意思を尊重しなければなりません。実に私たちは立腹の限りでございまするし、この場にいたたまれないところの感情をこの胸の中に持つものでございますけれども、議会主義の一つ一つの石を築いていくところの礎石たらんために、涙をのんでここに列席をいたしました。しかし列席をいたしました私たちが、理不尽な不当行為に腹の底から屈服してしまったというような解釈をなさるならば、自民党の議員の諸公は、選良としての良心を持たないものでございまして、どうぞ今後こうした、実に国民の前に恥ずかしい姿はないように一つ御努力をいただきたいと思うのでございます。
 以上申し述べまして、私はこの協定についての、私たちがどうしても反対しなければならないところの理由を申し上げて、私たちの根拠を明確にいたしておきたいと思うのでございます。
 そこで私がまず第一に明らかにいたしておきたいのは、この日本国とベトナム国との賠償並びに借款を協定するにあたりまして、賠償額総額を借款と含めまして五千五百六十万ドルの数字が出されて参りました。沈船協定が二百二十五万ドルで一応調印されておりましたものが、二十数倍にはね上がって五千五百六十万ドルという巨額に及び、一体どうしてこうした不可思議な値段がきめられたのであろうということに対して、大きな国民の疑惑の目が向けられておりました。従って審議の途上におきまして、その賠償総額についての算定根拠を明確にしていただきたいということを私たちは政府に質問をいたしました。ところが、手をかえ品をかえ、社会党並びに社会クラブから数人が立ってこの算定根拠をいろいろと質問してみましたけれども、当時この協定を結ぶにあたって五千五百六十万ドルを決定いたしました根拠になるところの日本側が持って出た数字というものが、私たちの国会審議の前に明らかにされないのでございます。一方的にベトナムは何々を要求したとか、いや何が幾らであったとかいうような向こう側のものは明示されましたけれども、当時日本側から持って出たところの数字というものが、われわれ国会議員の前に明確に示されないまま今日まできてしまっております。そしてこの答弁に立たれますところの賠償部長、今そこにおいでになります条約局長、伊關アジア局長、これを統率なさるところの藤山外務大臣、こういう方々の態度並びにその手の中を拝見いたしておりますと、実に不勉強で、当然持って出なければならないところの資料を持って出ないばかりか、自分たちの不勉強をたなに上げておいて、倣岸不遜な態度をもって国会議員にそのへいげいした態度で臨み、お前たちが何のかんの言うたって、この賠償はきまったんだから、自民党が数で通してくれるんだと言わねばかりの顔をして臨んだ不遜な態度は、私は忘れることができないのでございます。条約局長や外務省のお役人の方々は、政府自民党の公僕としてあるのではなくて、国民のための公僕でありますがゆえに、納税者を守る局長であり、大臣でなければなりません。しかるに、納税者、国民が納得のいくところの資料を持って出なかったということは、何といたしましても、これを認定するにあたって、反対されなければならない致命傷であると私は存ずるのでございます。私はこの算定根拠が明確でないと同時に、むしろあのダニム・ダムを中心とするところの日本のある資本家のベトナム進出のための一協力者として、政府が賠償をうまくこれにすべり込ませた感があるところのこの算定根拠の明確でない五千五百六十万ドルに対しましては、どうしてもこれを許すことができないのでございます。資本家が南ベトナムに対する工場施設建設費用を出してきた数字から、この賠償を逆算したのではないかというような懸念が持たれておりましたけれども、算定根拠が明らかでないところを見ますると、私たちはどうも、こうしたすでに日本の資本家が進出しておるところの工場施設などから逆算したところの費用が、そのまま充てられておるということを認めざるを得ないのでございます。この協定実施にあたって、日本が賠償協定を結んでくれればおれは一もうけするんだというところの業者が、ほくそえみながらこの国会を見ておるということは、国民のためにまことに残念にたえないことでございます。
 なお次に、この協定実施の結果、北ベトナム、南ベトナムの問題に今後幾多の問題を残さないかということが論議されましたが、遂に南ベトナム、北ベトナムというものに対して確固たる信念を持って最後まで答えることができなかったのが、政府の立場ではなかったかと私は思うのでございます。たとえば、自分の思想が違うがゆえにこれを否定したい気持がまず先に立ってしまって、北ベトナムを地球の上から抹殺して、南ベトナムだけを正統政府として、これを対象としてサンフランシスコ条約十四条をたてに賠償の義務を強調して参りましたけれども、何と申しましても、私は幾多の答弁を通じて、やはり現実においては日本政府といえども、北ベトナムを一つの国家として認めざるを得ない現実の上に立たされておる。この現実に将来も悩まされて、この賠償は二重払いの懸念があり、再び北ベトナムから要求されるものであるということを確信いたしたのでございます。サンフランシスコ平和条約十四条の義務を果たしてしまえば、何らもはや地球の上にはベトナムとの賠償問題は残らないんだと言い切っておりまするけれども、しかし現に私たちが公聴会にお呼びいたしました外務省の顧問である東京大学名誉教授の横田さんは、藤山外務大臣と言葉を異にいたしまして、北ベトナムはこれは現実に共産圏各国が認めるところの一つの国家であるということを主張いたしました。また藤山さんは北ベトナムを抹殺せんがために、これを政党団体だとか、交戦中の民間団体だとか、いろいろまことにお苦しい答弁をなさいましたけれども、しかし林法制局長官も横田参考人と同じように、一つの現実的に認めなければならないところの国家であるということを証明いたしておるのでございます。こうした国家を無視して、日本政府が南ベトナムのみを対象としてこれを支払うところの今回の賠償並びに借款協定は、北並びに南に対するところの大きなジュネーブ協定違反であり、将来この二つの対立にさらにみぞを作るところの日本の実に悪い立場を全世界から非難されなければならないところの問題となっておるのでございます。誠意をもっていたしますところの賠償が、相手に少しも喜ばれないところの、害あって利なきところの賠償を、国民は一体どう思うでございましょうか。こうした問題につきましても明快な答弁をなされない。しかも政府内部の見解は種々雑多でございまして、どうしてもこれは私たちが賛成するわけにはいかない理由の一つであるのでございます。
 さらにもう一つ、参考人中川さんがはっきりと申しましたが、この南ベトナムとの賠償協定実施の結果、今後北ベトナムとの間に経済断交、あるいは貿易途絶の結果がもはや目の前にきておるということを、幾多の例をあげて申したのでございます。民間人の方々がやっと開けましたところのべトナムとの貿易に、非常な苦心をなさって、せっかく協定を結び、とりきめのできる計画のある貿易で立ち上がらんとするとき、ことしの五月からこの協定がつぶれ、積んであった荷物が動かせなくなったり、売ってもらうはずのものを向こうがしぶったりいたしまして、業者はすでに大きな損害をこうむっておるのでございます。正しくいえば、これらの損害に対しても、補償と、そして打開の道が講ぜられなければならないのでございますけれども、これらの人々の非常な犠牲を顧みることなく、何ら害はないのだといってこれを無視いたしまして、協定実施をいたそうとしておるのでございます。こうした点から考えまするときに、私たちは将来の貿易面におきましても、私が本会議で質問いたしました通り、大きな障害のある問題として反対の理由に数えなければならないと思うのでございます。将来北ベトナムから賠償を要求される懸念があるばかりか、経済断交あるいは貿易途絶、人的、文化的交流も将来大いにしなければならないところの両民族でございますけれども、岸内閣のこうした北ベトナムを無視するところのあり方によりまして、将来の道が国民の前から閉ざされようとしておるということは、非常に残念なことでございます。賠償を支払ったことによって国民に明るい前途が開けなければならないにもかかわらず、賠償を支払うことによって北ベトナムの千五百万の人たちとの間に、暗いとびらがすでに締められつつあるということはまことに残念なことでございまして、この協定に反対をしなければならない理由も、ここにあると思うのでございます。
 なお私たちは日本が将来国際場裏に出まして、いろいろな国々の人たちとお互いに共存共栄の道を開いていかなければならないのでございますけれども、そのためには日本みずからが国際緊張を緩和させて、お互いに思想は異にいたしましても、平和共存し得るところの、私たち日本人の平和と自主独立の道を世界の大きな広場に見出していかなければならないのでございますけれども、岸内閣が必要以上に南ベトナムを正統化し、北ベトナムを抹殺せんとするところのあり方によりまして、私たち日本民族はアジア・アフリカ諸国からは非常に不信の眼をもって国民全体が見られつつあるのでございます。どうかこうした点を考えまするときに、私たちは藤山さんがみずから出席されましたバンドン会議の共同コミュニケにも盛られたベトナム統一促進の決議をみずから破らないで、一つあらゆる問題は統一後に解決するというところの両ベトナムの将来の希望と精神にのっとって、南北統一後まで待たれなければならないということを主張して参りましたけれども、これもお聞きにならないのでございます。
 なお、もう一つ申し上げておかなければならないことは、南ベトナムに対するところの今度の借款並びに賠償協定が、後進国であるところのべトナムの開発を援助し、技術を与え、資源を開発することによって、私たちの高度な技術や、そして工業水準がこの人たちとともに生きるという道は、当然見出していかなければならないのでございまするから、後進国の援助に私たちは反対をするものではないのでございまするけれども、しかしこれは賠償の問題と切り離して純粋な経済援助の意味から考えられなければならない問題であるのでございます。ところが藤山外相は、この経済援助と賠償協定並びに借款とをうまくかみ合せることによって、アメリカ資本と日本の資本家がベトナムで手を握り、しかもこれが五〇%、いな七〇%軍事基地の強化や軍備の増大に使われておるところの経済力と混合されて、どうもこの日本から出しまするところの賠償の行方は非常にあやしげなものでございまして、これも世界各国から非常に疑惑の目をもって見られておるのでございます。私たちが賠償をいたしますならば、また借款をいたしますならば、これらは純粋にベトナムの人たちが平和に生き、そしてみんなが喜んでくれるものでなければならないのでございまするけれども、武器を作ったり、弾丸を作ったり、また軍事力増強のための電力に使われたりするようなことがあるということは、ことに不幸な、二つに分かれたベトナムの立場から見まするときには、うっかりすると同民族がこの日本の賠償によってたまを撃ち合わなければならないのではないかという不安を持ってながめておるということは、まことに許すべからざる賠償であるといわなければならないと思います。
 こうした点をいろいろ列挙いたしますると、わが国の自主独立を推進する立場から、納税者の立場に立っていろいろと考えまするときに、この五千五百六十万ドルという賠償並びに借款は、どうしてもこの際藤山外相は反省されまして、一応考え直してもらわなければならないのが今の段階であると思うのでございます。藤山外務大臣もいろいろと新聞の論調なども御研究になっておると思いまするけれども、きのうから、いや数日前から、いやこの国会が始まりましてからの賠償問題に対するこれらの論点の多くは、政府よ急ぐなかれ、面子を捨てて白紙に返せ、そしてどうか自民党もこれを強行採決することなく、国民の前に明瞭にしろ、どうしてもわからないときには、国民に納得がいかないからこの際は一応中止をして延ばしますという良心的な処置をされたら大きな進歩だとさえ論ぜられておるのでございます。私はこうした虚心たんかいな態度をもって藤山さんが臨まれまするならば、国会もこんなに恥ずかしい姿を呈しなかったでしょうし、また自民党の方々ももう少し謙虚になられたのではないかと思うのでございます。
 こうした理由の上に立ちまして、私たちはこの賠償並びに借款協定に対しましてはどうしても賛成することができないのでございます。
 もう少し詳しい反対討論をいたすべきであると思いますけれども、何分にも与野党とも、なお政府の方々も、きのうから、いやおとといから睡眠不足の方も多うございまして、あくびをしながら私の討論を聞いていらっしゃるふまじめな自民党の委員もあるやに、私はうしろから空気を感じたのでございます。こういうことは非常に残念でございます。しかし私もいたずらに引き延ばしをその目的とするものではございませんので、以上をもちまして、簡単ではございまするけれども、私たちの反対の数点をあげ、この承認は、社会クラブとしてはどうしても自民党の方々と同調できないことを強調いたしまして、討論を終わりたいと思います。(拍手)
#16
○小澤委員長 床次徳二君。
#17
○床次委員 私は、ただいま議題となっておりまする、日本国とヴィエトナム共和国との間の賠償協定及び借款に関する協定の締結につき承認を求めるの二件に関し、自由民主党を代表し、賛成の意を表するものであります。
 ベトナム国政府は、全ベトナムを代表する正統政府として、昭和二十六年九月平和条約に署名し、翌二十七年六月にその批准書を寄託した結果、これにより、わが国は同条約第十四条に基づき、同国に対し賠償義務を負うことになったのであります。この賠償に関する交渉は、幾多の紆余曲折を経てようやく今回の協定が締結せられるに至ったのでありますが、これをもってわが国が関係する賠償問題を全部解決することになったのでありまして、単にベトナム共和国の経済の回復、国民生活の向上に資するのみならず、わが国が友好親善関係を強化し、さらにアジアの平和の増進に寄与することを認め、まことに意義深きものを感ずるものであります。しかしながら本案件の審議にあたり種々論議がありましたので、この際わが党の見解を明らかにいたしておきたいと存じます。
 第一は、わが国は協定の相手方のベトナム共和国をベトナム全体の正統政府と認めておることであります。これはすでに政府の数次の説明によっても明らかなのでありますが、わが国はベトナム国バオダイ政権を正統政府と認め平和条約を結びましたが、その政府を継承したベトナム共和国は、わが国のみならず現在四十九ヵ国より正統政府として承認せられておることによりましても、その地位は明らかでありまして、ベトナム共和国を全ベトナムの正統政府と認める以上、ベトナム人民共和国は正統政府でないことは当然のことであります。われわれの見解に反対する者は、特に一九五四年七月のジュネーブ協定によりベトナムは南北に分立せられておるものと認め、ベトナム共和国は全ベトナムを代表するものでないと主張しておるのでありますが、これはことさら同協定を誤解するものであります。何となれば、同協定は現存の戦闘行為を停止せしめるための軍事的な非政治的な協定であります。十七度線は南北の国境線を意味するものでないことをここに明らかにしておく次第であります。よってベトナムは二つの国土に分けられておるのではないのでありまして、従ってベトナム共和国は全ベトナムを代表するものであることを申し上げておきたいと思います。
 第二に、この賠償の効果は全ベトナムに及ぶことを認めておるのでありまして、わが国は正統政府のバオダイ政府と平和条約を締結し、その政府を承継したベトナム共和国と賠償協定を締結しているものでありますから、この賠償がベトナム全体と日本との間を有効に拘束するものでありまして、このことは国際法上当然の事柄であり、従って将来南北が統一せられた場合におきましても、この協定は統一政府に承継せられるものであります。従って今度支払われますところの賠償は全ベトナムに及ぶものであり、また将来統一せられた場合におきましても、統一政府によって継承せられるものである以上、今回の支払いをもって十分でありまして、二重支払いの必要はないことを明らかにいたしておきたいと思うのであります。
 第三に、賠償金額は妥当な金額であると認めるものであります。わが国は、仏印には当初は平和進駐をいたしましたので、その間の損害は少なかったのは当然でありますが、昭和十九年八月より日仏が戦争状態に入るとともに、大規模な作戦及びゲリラ討伐作戦等によりまして、非戦闘員の殺傷、住宅、工場、道路、橋梁等の破壊を生じたのであります。ことにサイゴンには南方総軍司令部がありましたために、有形無形の損害は相当なものでありました。さらに先方は、当初二十億ドル、後に二億五千万ドルを主張したのでありましたが、わが国といたしましては、外交交渉の関係上、損害額の積算の基礎等は発表いたしておりませんが、その損害及び苦痛は推察し得るのであります。数次の折衝により、ようやく三千九百万ドルにまで低減し得たのでありまして、これを予想されるところの損害額に比すれば、はるかに少額にて妥協し得たものというべきであります。すでに実施しておりますインドネシア、ビルマ、フィリピン等に比較いたしまして、決して過大なものではない、妥当なものと認めるものであります。なお、かくのごとく努力して妥結し得たところの金額をもちまして、水力発電所及び機械工業センター等の事業が行なわれんとするものでありますが、これは水力発電所を建設せんがために、賠償金額を決定したものでないことも明らかである次第であります。
 第四といたしまして、賠償の実施決定は、南北ベトナム統一のときまで延ばすべきものとの説もありますが、この意見はとるべきものでないと認めておるものであります。元来わが国はジュネーブ協定及びバンドン宣言を尊重し、南北ベトナムの統一を希望することは、他の国に決して劣るものではないのであります。しかしながら現状におきましては、ジュネーブ協定において予定されたところの統一選挙の時期はすでに経過し、その実現の見通しもつかないのであります。しかるに反面におきまして、わが国が国際社会に復帰してすでに七年余を経ておりまして、他の賠償求償国との間は全部解決を見ておるのでありまして、現在南北統一ができぬことを理由といたしまして、予見されぬ将来にまで賠償の債務の履行を延引させることは、著しく国際信義に反するとともに、同国を正統政府と認めておりますこととも矛盾することになるのであります。よって統一を待たずして賠償を行なうものでありまして、まことにやむを得ざる、かつ適正なる処置というべきであります。いわんや今回の賠償はダニム水力発電所とか、あるいは機械工業センター等が予定せられておりますが、これは同国の経済開発、民生安定に役立つものであります。将来締結せらるべき通商航海条約とともに、わが国とベトナム両国経済、文化親善関係の増進に著しく期待されておるのでありまして、賠償実施の効果は十二分に待つべきものがあると存ずる次第であります。さしあたり賠償により利益を受くる地域は、南方に限られましょうとも、将来は全ベトナム住民の福祉増大に寄与するものと考えるのであります。
 なお賠償は戦争損害に対するものでありますから、平和進駐時代に属するところの仏印特別円の問題とは全く別個のものであり、これと二重払いとなるというごときは全然当たらないのであります。このことを付言いたしたいと思います。
 また賠償の実施は今後両国において協定する実施細目によって実施せられるものでありますので、右に関して汚職その他不明朗なる事実というものは、全く存在せざることを明らかにしておきたいと思うのであります。
 以上述べましたところによりまして、今回の賠償及び借款の協定締結は、きわめて適切であると認めますが、いやしくも賠償が国民の多大なる犠牲と負担によりまして実施せられる以上は、政府はその実施並びに運営の適正のために、国民の期待に沿うべく十分なる努力をせられたいのでありまして、政府は国民の世論にかんがみ、この実施上の慎重なる注意とともに、その協定の内容等に関しましても、国民に十分なる理解を求むべく努力をせられたいのであります。
 これによりまして私は両件に関する賛成の討論を終わる次第でありますが、将来本賠償の実施によりまして、ベトナム共和国民の民生の向上、産業の発展に寄与し、さらに日本、ベトナム両国の友好親善関係、経済提携を一そう増進し、アジアの平和のためにこの賠償が大いに寄与せんことを祈って討論を終わる次第であります。(拍手)
#18
○小澤委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#19
○小澤委員長 これより両件を一括して採決いたします。
 両件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#20
○小澤委員長 起立多数。よって、両件はいずれも承認すべきものと決しました。
 この際ただいま議決いたしました両件の委員会報告書の作成についてお諮りいたします。
 これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#21
○小澤委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたします。
 次会の開会日時は公報をもってお知らせいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
    午前六時五十五分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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