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1959/12/11 第33回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第033回国会 科学技術振興対策特別委員会 第8号
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1959/12/11 第33回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第033回国会 科学技術振興対策特別委員会 第8号

#1
第033回国会 科学技術振興対策特別委員会 第8号
昭和三十四年十二月十一日(金曜日)
    午前十一時開議
 出席委員
   委員長 村瀬 宣親君
   理事 西村 英一君 理事 平野 三郎君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
   理事 岡本 隆一君 理事 原   茂君
      秋田 大助君    八木 徹雄君
      飛鳥田一雄君    石川 次夫君
      石野 久男君    神近 市子君
      田中 武夫君    辻原 弘市君
      堂森 芳夫君    内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
 出席政府委員
        内閣官房長官  椎名悦三郎君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   原田  久君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   佐々木義武君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局次長)  法貴 四郎君
 委員外の出席者
        科学技術事務次
        官       篠原  登君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局次長)  島村 武久君
        参  考  人
        (東京大学工学
        部教授日本学術
        会議原子力特別
        委員会幹事)  向坊  隆君
        参  考  人
        (理化学研究所
        主任研究員日本
        学術会議原子力
        炉安全審査小委
        員長)     岩瀬 栄一君
        参  考  人
        (立命館大学経
        済学部教授日本
        学術会議第三部
        副部長同原子力
        問題委員会幹
        事)      小椋 広勝君
    ―――――――――――――
十二月十一日
 委員辻原弘市君及び松前重義君辞任につき、そ
 の補欠として神近市子君及び飛鳥田一雄君が議
 長の指名で委員に選任された。
同日
 委員飛鳥田一雄君辞任につき、その補欠として
 石川次夫君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員神近市子君及び石川次夫君辞任につき、そ
 の補欠として辻原弘市君及び松前重義君が議長
 の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 科学技術振興対策に関する件(コールダーホー
 ル改良型原子炉の安全性及び経済性に関する問
 題)について参考人より意見聴取
     ――――◇―――――
#2
○村瀬委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 ただいまよりコールダーホール改良型原子炉の安全性及び経済性に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。御出席の参考人は、東京大学工学部教授、日本学術会議原子力特別委員会幹事向坊隆君、理化学研究所主任研究員、日本学術会議原子力特別委員会原子炉安全審査小委員長岩瀬栄一君、立命館大学経済学部教授、日本学術会議第三部副部長、同原子力問題委員会幹事小椋広勝君、以上三名の方々であります。
 なお、先日決定いたしました参考人田島英三君及び堀尾正雄君は、本日は出席いたしかねるとの返事がありましたので、この際お知らせいたします。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会の調査のためわざわざ御出席を賜わりまして、ありがたく御礼申し上げます。
 ただいまよりコールダーホール改良型原子炉の安全性及び経済性に関する問題について御意見を伺うことといたしたいと存じます。なお、御意見は、向坊隆君、岩瀬栄一君、小椋広勝君の順序で伺うこととし、時間は約十五分程度としていただきまして、そのあと、委員諸君の質疑があれば、これにお答えを願いたいと存じます。
 まず、向坊参考人よりお願いいたします。
#3
○向坊参考人 向坊でございます。ただいま御紹介いただきました通り、東京大学の工学部におりまして、応用化学教室と原子力工学教室とを兼務いたしております。
 このたびお呼び出しを受けましたが、どういうことでお呼び出しを受けましたかわかりませんで、本日参りまして初めてわかりまして、はなはだうかつなわけでございますが、まだ通知状も届いておりませんような次第でございます。伺いましたところが、先日、学術会議の報告会におきまして、午前中の座長を勤めましたので、その関係で呼んだんだ、そういうことを承った次第でございます。それで、まず、当日の午前、座長を勤めましたときの模様を簡単に申し上げたいと存じます。
 当日は、午前の部は原子力発電会社より最近の問題、特にコールダーホール改良型の原子炉の安全性につきまして、最近改良せられた点についての説明があったわけでございます。ところが、最初に、原電の方が説明に入られる前に、何人かの方が立たれ、当日の会の進め方について疑義を申されたわけでございます。その趣旨は、要するに、原電の説明は、今までにもうたびたび学術会議としても伺っておるので、本日はその必要はない、原電の申請書に対して原子力委員会の安全審査部会がどういう審査をしたか、その審査報告書も公開せられたことであり、それに関する討論を主とすべきである、そういう意味での発言がございました。それに対しまして、当日の報告会を開きました責任者であられる伏見原子力特別委員長から、その意見ももっともであるけれども、せっかく報告会を開いたことでもあり、伺うだけのことは伺った上で討論しよう、ともかく、予定通り進めたいという御発言がありまして、結局、そういう意味で始まったわけでございます。
 原電からの御説明に対しまして、質疑の時間を節約する意味で、御質問がある場合には紙に書いて座長のところまで提出していただくように申したわけでございますが、初めの二、三の方の発言の御趣旨によることと思うのでございますが、質問は一つも提出されなかったわけでございます。従って、当日の報告会は、ここにおいでの岩瀬先生の午後の会議に主力が移ってしまったわけでございます。当日私の司会いたしましたときの事情はそんなものでございます。
 それから、コールダーホール改良型炉につきましての意見を申し述べるようにとの仰せでございますが、私は、それには非常に不適当でございまして、私の専門は電気化学並びに電熱化学と申す部門でございまして、原子力の方では原子炉材料を担当しております。従って、炉の設計とか、安全性とかいうものに対します私の考えは、しろうとの考えにすぎないので、こういう公の席で御参考になるようなものではないと思うのでございます。ただ、私は、ただいま東京大学に戻っておりますが、昨年の五月まで、科学アタッシェという役目でアメリカの大使館に在勤いたしまして、日米の原子力協定並びに国際原子力機関に日本が加入いたしますときの交渉、そういったものに従事いたしました次第でございますので、そういった私の専門並びに経歴を御考慮いただきまして御質問いただきましたなら、存じておることを回答させていただきいたいと思ます。
 簡単でございますが……。
#4
○村瀬委員長 次に、岩瀬参考人にお願いいたします。
#5
○岩瀬参考人 私は、日本学術会議原子力特別委員会の原子炉安全審査小委員会の委員長をいたしております。
 日本学術会議は、原子力関係の委員会が十二月二日に原子炉の安全性についての報告会を催しまして、その午後に、ただいま午前中の司会をいたされました向坊教授のあとを受けまして、原子力委員会の原子炉安全審査専門部会の矢木部会長から、審査の原理的な点について概要的な説明をお伺いいたしました。それが大体四十五分くらいのお話でありましたのですが、そのあと休憩に入りまして、質問のおありの方は紙に書いて提出を願いまして、それを整理いたしまして質問を続けたわけでございます。何分にも午前中の会議は、今申し上げましたように主点を全部午後に移しましたので、午後の質疑の時間は、予定では四十五分ということになっておりましたのですが、結果的には二時間四十五分になりまして、これの収拾方に、座長といたしましては相当苦心をいたしました。
 おもなる質問の点を申し上げますと、緊急事故時に公衆に障害が起こると考えられますような放射線の限界線量の値というものに触れた点でございます。これは基準の問題でございますので、数字の問題もございますけれども、学術会議といたしまして出てきた問題といたしましては、そのきめ方の手続についてむしろ問題があった、こういうふうに意見が出ていたように思います。
  なお、炉心の黒鉛の収縮というような問題が審査の経過において起こったわけでございまして、そのために炉の設計にもこれが相当に考慮されて、それで改良が施されたわけでございまして、そのときに、このような推定ができないようなことが、あるいは今後も設置の途中、設計の間というようなときにも考えられることではないか、今からは推定できないけれども、それの見積もりをどのようにしておられるのだろうかというようなことが疑問の点だったように思います。
 もう一つは、敷地の基準でございますが、これは東海村を選定されて、そこに原子炉を置くということでございまして、審査をされました方では、初めから東海村ということはきまっておりますので、少しそれ以前の問題のようにも座長としては受け取れたのでございますけれども、隣接したところがすぐに原子力研究所であって、そこには炉もある。こういうところへ、ことさらにまた炉を近くに置いて、もし万一のことがございましたときに、片一方の隣の炉はとめてしまっておくのか、どの期間とめておくのか、また、これは非常に万一のことになると思いますが、もし続いて事故が起こったときには許容量を越えるであろうという点でございます。
 なお、誤爆の問題、耐震の問題、燃料の領有の問題、これらについても多少の質疑がかわされました。
 なお、こまかい点に立ちわたるのでございますけれども、審査報告書の表現の仕方がかなりな――これはニュアンスといいますか、学者の方の考えの表現の仕方と、こういう報告書の書き表わし方というのでは、学者の意向というものは必ずしも率直に現われていないのではないか、こういう気持が質疑の中に出て参りました。
 ただ、何分にも時間のないときに座長として計らいますものですから、どうしてもあとに残すという問題もございまして、その当日、ここへちょっと持って参りましたけれども、原子力懇談会と素粒子論グループの共編で「コールダーホール改良型発電炉の安全性について」という表題で、原子力委員会原子炉安全審査専門部会報告書についての検討が分厚く出されております。これを取り上げて、さらに進めるというのにはとうてい時間がございません。それで、これについてはどのように計らうべきかというようなことも考えられたのですけれども、何かこのことについて検討あるいは懇談をする機会を作ってほしいというような声がそのとき出ました。
 大体の経過を申しますと、こんなことでございまして、なお、尽きない点は、座長といたしましては、その後の夕方食事を一緒にしながら、夜にわたりましたけれども、そのときの非公開の懇談会の席上へ問題を移しまして、閉会をいたしたわけでございます。大体の経過は、このようなことでございます。
 私自身は、座長は勤めておったのでございまするが、実は、専門は原子燃料の方のことでございます。燃料と申しましても、それを作り出す方の側でありまして、安全の問題、基準のとり方というようなことについては全くのしろうとと申し上げるほかはないのでございますが、学術会議の中に、また原子炉安全小委員会というのが設けられております。その委員長といたしましては、全くいわゆるニュートラルな形の者がいいんじゃないか、こういう意見がございましたので、私はニュートラルかどうか存じませんけれども、その立場から委員長を拝命いたしておるわけであります。特に個人の意見というようなものになりますと、その当日のやりとりは、いわゆる平行線状になっていたというふうに見えました。これは意見は科学的または技術的な見地から交換し、質疑は取り行ないましたが、それの結論を出すというような形には、司会はいたしませんでした。また、ある学者たちの持っております進歩的な、あるいは若い非常に自由な立場の方々の御意見は大へん参考になる点が多いのでありまして、今後進む原子力の開発についての実際にあたりましては、一々それを傾聴して、その注意を実現に移していくという施策が大へん大事なことであって、日本が進むためには、これは決してないがしろにしてはならないものである、こう痛感いたしておるものでございます。学術会議といたしましては、一月十八日にもう一ぺんこのことについて会議を行ないたい、こういう意向は持っております。とにかく、積極的に意見を受け入れるという態度、それから意思をよく疎通するというようなこと、学者の間の納得のいき得る批判は自由にしていただくこと、これによって――ただ、学術会議が、よく全体というような気分を持たれるのですが、反対意見であるというようなことは決してないのでございまして、いわゆる、いやがらせをやっておるというような形は私たちには決して感ぜられません。とにかく、注意はたくさんして、そうしてできるだけ取り入れていただいて、災害を未然に防止することができれば、これは特に日本のような原爆の洗礼を受けた国といたしましたは注意すべき事柄である、こう考えるのでございます。
 それで、先ほど許容量の基準の問題の手続ということを申しましたけれども、手続ということでは抽象的でおわかりにならないと思いますが、これは、従来は国際放射線防護委員会の勧告というのがこの基準についてはございます。それを日本でどのように受け入れるか。このとき、日本の食生活というのは外国と違いますので、これを考慮しながらきめなければならない。それで数字の問題には触れずに、手続の問題を特に言っておりますのは、学術会議のようなところでこれを十分検討して、その意見をくんできめていただきたいというのであるのに、このたびは、学術会議の方の意見よりも先に基準というようなものを考えられていくと、逆になっているのではないか、こういう点でございます。
 それから、もう一つ大事なことだと思いましたのは、原子炉の安全性を審査いたします場合には、審査の基準がなければならない。この許容量についても、もちろん、問題は基準という問題でありまして、これがどの点であるかということによりまして、審査は考えられることになるわけでありますが、ものさしがなくて、ものをはかっていってきめたというようなことがあるのではないか、そのような感じがするけれども、この点についてはどういうものであるか、こういう点が残っておるように思います。これらは、ただ当日の座長といたしまして率直に感じたことを、私のふだん考えていることも多少まぜまして、申し上げた次第であります。
#6
○村瀬委員長 次に、小椋参考人にお願いいたします。
#7
○小椋参考人 小椋でございます。この委員会で私の意見を申し上げる機会をいただいたことに、まず、お礼を申し上げます。
 私は、コールダーホール型の炉の経済性の問題について意見を申し上げたいと思います。ただいま向坊、岩瀬のお二人の先生から安全性についてのお話がございましたが、安全性の問題はいろいろに論議されておりまして、その間に新しい問題が提起され、また、その解決の道も出てくるという傾向がございまして、それは大へん喜ばしいと思いますが、経済性の問題は、まだそれほど十分に論議されておらないように存じます。国会でもこの問題を取り上げて審議をいただければ非常にありがたいかと思うのでありまして、その御参考に、私の意見を申し上げることにいたします。
 本月の五日に、原子力委員会がコールダーホール改良型の原子炉について政府に答申を出されておりますが、その中で、新聞報道によりますと、「計画的開発利用」という項目の中で、次のように答申されております。「発電用原子炉の開発のための長期計画に定める基本的方針に沿い、発電原価も若干の変動は予想されるが、おおむね新鋭火力発電の発電原価に匹敵し、実用規模の発電炉第一号として今後の技術開発を促進し、技術の確立と将来のエネルギー需給の安定をはかるうえに意義がある。」と申されておりますが、この原子力委員会の意見に対して、いささか私の意見を申し上げてみたいと思います。
 この新鋭火力の発電原価におおむね匹敵するものであるといわれております根拠と申しますか、あるいはこの問題が出ました発端は、昭和三十一年五月にイギリスの原子力公社のクリストフアー・ヒントン卿が日本を訪問されまして、イギリスでは十万キロワットの天然ウラン炭酸ガス冷却型原子炉の発電原価は一キロワット・アワー当たり〇・六ペンスが可能であるということを言明されまして、これを機会にして原子力委員会が訪英調査団を送り出された、このことに始まるわけでございます。調査団の報告の結論は、耐震対策その他の安全対策や経済上の点について今後さらに検討を加え、満足な結果が得られれば、この原子炉はわが国に導入するのに適するものであるということになったのでございました。その後、このイギリス炉の発電原価は〇・六ペンス前後が可能であるという見解がしばしば発表されておりますが、私は、こういう見解を見るときに思い出しますのは、ヒントン卿がその見解を、一九五七年三月にストックホルムで行なった講演でより詳細に展開されまして、そうして、これに対してイギリスの石炭庁の中央技術研究所長のキングズレー・ストレッチ氏が批判を加えておることでございます。ヒントン卿は、現在の火力発電の一九六〇年におけるところの一キロワット・アワー当たりのコストは〇・六ペンスである、これに対して、同じ年におけるところの原子力発電の発電費は〇・六六ペンスである、しかし、これが一九七〇年になれば、火力発電の原価は〇・六七ペンスに上がるのに対して、原子力発電の方は〇・四七ペンスに下がる、一九六五年ぐらいには、火力発電に対して原子力発電の生産費原価がほぼ匹敵するに至るであろうという見通しを立てておられます。これに対してストレッチ氏は、いや、一九八〇年ないし一九九〇年にならなければ原子力発電の原価は火力発電に匹敵することはできないという試算を出されております。
 さて、このストレッチ氏の出されました答えよりも、むしろ私は、ストレッチ氏がその答えを出すためにあげていますところの火力発電及び原子力発電のコスト計算に含まれている要素についての見解、特に原子力発電についてのコストを計算する場合に取り出しているところの要素の信頼性というものについての意見が重要であると考えます。その中で主要なものは、まず第一に、燃料というものはヒントン卿のいうように三千メガ・ワット・ディまで燃焼されないという点がアメリカのジュークス氏などによって主張されておる、そこで三千メガ・ワット・ディという燃焼度を仮定して、その上でコストを計算するのは無理である、また、第二の点は、原子力発電のコストの低下は、結局発電所のプラントのサイズの拡大によるものと考えるべきであるが、そうであるならば、原子発電の操業の信頼度というものは、もっとはっきりと証明されなければならない、それから、その次に第三の点としては、燃料の費用でありますが、プルトニウムのクレジットを非軍事的用途によって論証しようということははたして妥当かどうか、大きに問題である、また、燃料の燃えかす、つまり廃棄物の処理についての施設という、非常に重大性を持った、安全性についても関係があるところの問題に十分な注意が払われているとはいえない、このような点を考えると、原子力発電のコストは早急に下がるとは思えない、従って、ヒントン卿の出しておられる結論に対しては疑問がある、こういう結論を出しておられます。さらに、ストレッチ氏がこの点でもって述べているところの結論といいますか、勧告といいますか、これは、やはり私どもが一応傾聴してよろしいのではないかと思います。すなわち、ストレッチ氏は、在来型の発電方式の交代期がすぐ間近にくるまでには、運転経験を得るのに必要と考えられる規模での実験用発電所を建設し、初期燃料の蓄積をはかれる程度でよい、という結論を出しておられます。また、イギリスにとって、イギリス型原子炉の経済性を海外に対して宣伝するということについても、苦言を呈しております。つまり、あまりにも楽観過ぎる原子力発電コストの予測のうち、ある点はイギリスにとってその反動を呼び起こすことになりそうであるイギリス製の原子炉を海外に売りさばく場合に、これら楽観的な予測は、何らかの利益をもたらすことはあるけれども、また、低廉な発電コストというイリュージョンに一切を盛り込むことは、かえってイギリスの競争的地位を危うくするだろう、こういうふうに申しております。そこで、私なりに、この点で、原子力発電のコストの計算と、それから、そのコストの計算に含まれる要素というものが、われわれは現在どの程度信頼性を持って考えてよろしいかということについて、簡単に申し上げてみたいと思います。
 まず、原子力発電のコストを計算いたしますには、第一に、設備、敷地、つまり、資本費というものが問題になります。これは、つまり償却さるべきものでございまして、従って、電力の一単位当たりにかかるところの償却費というものは、大ざっぱに言いまして、結局耐用年数と金利というものできまるわけだと存じます。さて、しかしながら、この場合に、耐用年数は、イギリス炉の場合には大むね二十年を予想しておりますが、まだわれわれは耐用年数を二十年とする確実なる根拠というものを持っておりません。また、敷地の点、これは原子力発電が放射能を持っているものだという点から、安全性を期するためには、敷地が広くなければならず、また、人家に近いところであってはならない、それからくるところの敷地は、火力発電に対して数千倍というような数字も出るのでございますが、広い敷地を要する。このようなことをやはり十分に考慮に入れられて発電コストを出すのでなければならないと考えます。
 また、燃料でございますが、この燃料の点については、現在の技術の段階では、まだ不確定なものがきわめて多いと存じます。まず第一に、燃料を成型する費用でございますが、この燃料成型に要する費用も、たとえば、被覆にアルミニウムを使うのと、あるいはジルコニウムを使うのと、ベリリウムを使うのとでは、その間に二けた三けたの費用の違いが出て参ります。そればかりでなく、燃料についての主要な問題は、やはり燃料のサイクル、すなわち、使用した燃料から、再びまだ燃料として再生できるものを使う、あるいは、これを武器の材料として使い得る再生原料を差し引いて、再び原子炉に装荷するという、このサイクルの技術的過程がはっきりときまっておりませんし、現在においてこの燃料のクレジットは、主として軍事的な目的に使うということならばある程度出て参りましょうが、しかし、平和利用を前提としての燃料サイクル、従って、燃料クレジットの費用を出すことには、まだまだわれわれは未知なる要素があるということでございます。
 さらに、廃棄物の処理でございますが、これは非常に費用を食うものだと私どもは理解しております。しかも、廃棄物の処理の問題は、技術的に、また行政的に、まだ決定されておらない問題でございます。従って、その廃棄物の処理という要素をコストの中に燃料の関係で入れて参りますと、コストは違って参ると思うのでございます。
 さて、こういうふうに考えますと、現在私どもに示されておるところの〇・六ペンス、四円何がしというところの、火力発電に匹敵できるであろう原子力発電のコストは、一連の非常に重大な仮定を前提といたしまして、その仮定が正しければ、これだけでできるだろうという性質のものであると、私どもは考えるわけでございます。企業の生産費コストの場合に、すでに確立した産業である場合には、そのコストに含まれる諸要素が非常にはっきりしている点で、そのコストの性質も確実性は非常に高いと言うことができると思うのでございます。しかし、新しい企業に向かって進む場合には、そのようなコスト計算のやり方をやることができないことは当然でございます。しかも、原子力産業の場合には、このような、あまりにも新しい産業であるために、コスト計算については、いわば全くの新領域で、技術的に確立されていないところの、技術的に固められていないものがある。従って、経済的な値を出すのは全くの想定の問題であるという点では、特にコスト計算についてわれわれは慎重にこれを考えなければならないし、その性質をわきまえなければならないと考えるのであります。
 さて、現在の原子力開発の段階でございますが、これは一九五五年、第一回のジュネーブにおける原子力平和利用国際会議が開かれましたころは、このヒントン卿の言われたような、すでに火力発電と匹敵できる型の原子炉の実現が近づいているのだという機運が非常に強かったように私は存じます。しかし、その後、昨年の原子力平和利用国際会議の結果で見ますと、この当時の実用的な原子力発電所に対するところの期待は、その熱度がさめたという感がございます。これは決して一九五五年当時の予想が先走っていたとかなんとかいうふうに、一がいに申すべきではないと私は存じます。なぜならば、それは新しい領域でございまして、これから実際に炉を作ってみ、運転してみた結果、さらに燃料その他いろいろの面での研究が進むにつれて、原子力発電の技術の発展につれて、未知のものが既知のものになり、その結果として前のような安いコストではいかなくなったということが出てきたのだと思うのでありまして、これは一つの進歩を示すものだと思います。しかしながら、私どもは、この点を十分にわきまえておく必要があるように存じます。現在は、火力発電に匹敵するような実用炉が実現するまでには、まだ時間がかかる。一口で申しますと、コールダーホール炉よりも、天然ウランを燃料に使った炉よりも、むしろ濃縮ウランを燃料に使った炉でなければ、多くのコスト要素の増大に対して、能率を上げた電力生産はできないのではないかというような考えに、むしろ一般の方向は傾いているように存じます。さらにまた、濃縮ウランによるところの、濃縮燃料を使った炉によるところの経済性も望み薄であって、やはり、経済性をほんとうに確立するのは増殖炉に関する技術の完成を待たなければならないという考え方もあるようでございます。さらに進んで、核融合を待って初めて経済性のあるところの原子力発電はできるのだという考え方もあるようでございます。この点について、私はどれが正しいということを判断するべき地位にはないのでありまするが、しかし、現在の原子力開発の段階は、やはり動力実験炉の発展の段階にあるということは、これははっきりと私は言えるのではないかと考えます。すなわち、一般的な工業技術の開発の場合には、研究段階と実用化研究の段階とあって、そして実用化の段階に入るわけでございます。現在の段階は、原子炉については、あるいは研究段階から実用化研究の段階に入ったということはできると思いますが、実用化の段階に入ったということは私はまだできないと思うのでございます。しかし、この原子力委員会の答申の考え方にございますところの発電用原子炉開発のための長期計画は、これは新鋭火力発電の発電原価に匹敵する発電原価が可能であると言っておりまして、もはや実用化段階が寸前にあると考え、コールダーホール改良型もそのような想定のもとに入れられるということを私どもに考えさせます。私は、やはり、まだ現在の段階ではこのような時期はきておらないと考えるわけであります。
 さて、こういうふうに申しますことは、私が外国炉を入れることに反対であるとか、日本で一から十まで一切作るべきであるということを申しておるのではございませんので、日本は原子力においては後進国でございますから、外国から技術を入れることは必要でございましょう。しかしながら、それがあまりに早く経済性を想定いたしましてそれを入れるということになりますと、日本の原子力開発の基本方針がくずれることになるかと思うのでございます。従って、やはり現在は、動力実験炉として外国炉を入れるということがせいぜいでございまして、その動力実験炉をいかに日本で利用して日本の技術者を養成し、また、運転経験を積むかということが大事でございまして、それとともに、日本の原子力に関する科学技術の研究を促進するということに重点がなければならないと存じます。この意味で、実用的な原子炉の発電の条件がすでにできているということは、私は言いがたいと存ずるわけでございます。これは科学技術振興対策委員会のお仕事としても、科学技術の発展のために日本の原子力計画をどういうふうに考えるかということでございますが、このイギリス型原子炉が問題となっている機会において、私は、やはり、日本の原子力開発の計画というものをもう一度見直す必要があるように存ずるわけでございます。
 時間を超過いたしましたけれども、私の意見はこれで終わらしていただきます。
#8
○村瀬委員長 以上をもって参考人の方々の御意見の発表は一応終わります。
    ―――――――――――――
#9
○村瀬委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。石野久男君。
#10
○石野委員 岩瀬参考人にお尋ねいたしますが、素粒子論者の出しましたコールダーホール改良型発電炉の安全性についてという資料の検討、懇談の機会を作ってくれという話が出たというようなことでございます。これは後ほど、また学術会議としては御検討をなさるようにしておられるのでございますか。
#11
○岩瀬参考人 先ほど申しましたように、一月の十八日ごろにそういう会を持ちたいという計画はいたしております。それから、ちょっと付帯的に今の御質疑がございましたので申し上げますが、私ども学術会議という中でいろいろ仕事をお手伝いさせていただきますにあたりまして、こういうような非常に大きな厚いパンフレットの形で出て参りますのは非常に異例でありまして、これも当日間に合うようにといって非常に熱心に、やっと書き上げて持ってきたというようにして飛び込んできたのであります。これをもちろん読むひまもございませんし、これについて、何かその席上で意見を戦わせていく機会も持てなかったわけであります。この中に書いてある一番最後のところでございますが、若手の原子炉技術者や実験物理学者、化学者たちも、多くは今の原子力のやり方について批判的意見を持っている。しかし、これらの人たちは原子力関係に雇われているので、批判的な発言をすると首があぶない、従って、自分では発言ができないので、理論物理学者のところへ、こういうことを批判をしてほしいと言ってきているので、おれたちがかわって発言をしておるのだ、というようなことが書いてございます。もし、こういうことが事実であるとしますと、若い人たちの意見を何かの機会に十分に取り入れていただくというような態勢というものがどこかになくてはいけないのじゃないか、これは決して妨げているのではなく、非常に熱心で、こういう意見を述べたいということなんでございますから、反対のための反対とか、そういうような気持でこれを受け取られずに、もう少し広い意味で包容していただいて、若い人たちの気持をこういう技術の実際化にあたりまして取り入れていく態度というものをお示し願いたいと思います。これは私個人の、座長としてやりましたときの気持でございまして、学術会議がそうやっているという意味ではございません。
#12
○石野委員 今岩瀬参考人から、こうした安全性について原子力懇談会や素粒子論グループの諸君の言っておることをまじめに取り上げて聞くようにしていきたいというお話は、私どもとしましても非常にありがたいと思うのです。事実、ただいまのお話では、岩瀬さん個人としての御意見だというふうなことでございましたが、しかし、炉を今ここで認可するとか、受け入れるとかいうことの結論を出すにあたりまして、依然として必要なことは、やはり、さっきも参考人から述べられたように、いろいろな基準設定や何かの手続の問題からくる順序がさか立ちするようなことがあってはいけないということだろうと思うわけでございます。そういう意味合いから、最終的な結論を出す前に、必要な前段での措置として、特に学術会議の意見が非常に重要なウエートを持っておるだろうとわれわれ思っております。そういう意味で、学術会議全体としての御意見をここでお聞きできるかどうかわかりませんけれども、岩瀬さんに私この際はっきりお聞きしておきたいことは、こういう議論が学術会議の中にいろいろとおありになります場合に、皆さんの立場からして、この炉の受け入れ、認可というような問題にも最終的な結論を出してしまうことがいいのかどうかということ、これを真摯な立場で、一つ御意見を承っておきたいと思います。
#13
○岩瀬参考人 今のお言葉でございますけれども、これは会議といたしましては、また小委員会といたしまして、まだ取りまとめてあるわけでございませんで、あくまで私個人の意見といたしまして申し上げたいことは、日本の原子力の開発というものは、これは申すまでもなく、早く、そうして身を入れて進めていかなければならぬ、これだけはわかり切ったことで、申し上げるまでもないと思う、ただ、そのときに、できるだけ慎重にやってほしい。これだけの言葉で尽きることとは思いますが、今のさしあたっての問題と申しますと、コールダーホールの改良型を導入するということでありまして、この導入も、原理的に申しましたならば、だれもこれについて危険だということを申し上げる人はないと思うのでございます。ただ、原理でなく、実際に移します場合にいろいろと――現にこの審査の間にも設計の改良、あるいは変更ということで進歩していったわけでございまして、それには今のお話に出ましたいろいろな意見が取り入れられて進歩となったものとも思います。従って、これを許可、導入されまして、それから実際に移します場合に、今後とも、この設計の途中や、それから管理の仕方や運転の仕方において多くの学者、それぞれの学者の意見をよく取り入れられて監視され、また同時に指示されていくこと、推進されていくこと、この態度が望ましいことである、こう思っております。何分よろしくお願いいたします。
#14
○石野委員 岩瀬参考人にもう一つだけお聞きしておきたいのでございますが、最初のところでもお話がありました緊急事故時における公衆に及ぼす限界線量の問題で、そのきめ方の手続に問題があるということがその懇談の中で相当強く出ておった。そして、それについては岩瀬さん個人といたしましても、そういう問題については、やはり国際的ないろいろなものを基準にして、特に日本の食生活なども違うという観点から、真剣に考えなければならぬというような御意見であったようにお聞きしたわけであります。私はそういうふうにお聞きしたのですけれども、そうであるといたしますと、この炉を導入するにあたりましてこのこうした許容量の基準の問題とか、許容量を認定するについての基準の手続上の問題、そういうような問題がはっきりしない前に出されるいろいろな結論を、学術会議の立場から見て、そのまま見のがしておいていいかどうかという問題が、やはり問題になるだろうと思うので、この際、私どもとしますと、やはり学術会議の立場からも、そういう問題を原子力委員会なりあるいは政府なりにもっと率直に申し入れて、そうして皆さんが政府やあるいは原子力委員会を通じて、政府が最終段階での炉の導入についての結論を出す前に、皆さんの納得のいく線までの意見の開陳はなさるべきが至当だ、こう思うのでございます。そういうことについて、現在すでに原子力委員会は一つの結論を出しておりますし、おそらく、政府としてもそういう結論を近いうちに出すかもしれません。そうなりますと、一月中旬ごろにそういう問題を論議しようとする学術会議の結論の出し方というものは、だいぶずれてしまって、かりに結論が出たとしても何の役にも立たないようなことにもなりはせぬか、こういう懸念があります。そういう点について、岩瀬さんは学術会議の立場から、ぜひそういう意見を政府にも聞いてもらった上でその結論を出すようにというようなお考えをお持ちでございましょうか。もうどうにもしようがないのだ、政府がやるのだから仕方がないというお考えでしょうか、その点、率直にお聞かせ願いたいと思う。
#15
○岩瀬参考人 実は、昨日この方の意見を出されております方々、たとえば、先ほどもお話がございました田島さん、それから道家さん、――道家さんは先ほどお話がまだ出ておらないようでございますが、そういう方々に電話で連絡いたしまして、この場所に出て、あるいは十分でなくてもお話申し上げたらどうか、こういうことも勧めてみたのですが、何分にも急なことであるし、ここでの話が何か非常に重大な結果になる、こういうときには自分はよく考えなければならないしというので、きょう御出席になることを私はお勧めいたしましたけれども、なかなかお出になれなかったのであります。
 私の、原子炉安全審査小委員会という、学術会議の小委員会の中のことといたしましては、これをどう取り扱っていくかという問題は、なかなか大事な点もありますが、この基準の問題というのは、実は原子力委員会にそういう専門の基準部会というのがございますので、そのところでものさしというものが出てきておるのだろうと思うのです。もし、なければ大へんこの点がおかしいし、また、あれば、われわれとしても一緒にやっていってもいいのではないか、こう思うのですが、その意見は、もちろん基準部会というものがあって、そこからの基準は示されて出ております。この出方に従来と多少違う出方をしたもので、手続ということが出てきたわけでございますが、いろいろ基準をきめますときの仕事というものは、今申しました田島君とか道家さんとか、そのほかの人たちによってよく調べられております。目下調べも進めておられるようでございますが、これがすぐに結論が出るかどうかというような点は、私としてははっきり申し上げられないことでございます。
#16
○石野委員 私が今お聞きしたかったことは、結論がどう出るか。もちろん結論が出なければ皆さんとしては納得する線が出てこないわけですから、この結論が出ることを早急にやってもらう必要がありますし、また、こういう全く新しい問題で、経験も少ないものを入れます場合にあたって、ことに参考人からもお話がありましたように、日本は原子爆弾の被害を受けた、世界でも非常にまれな経験を持っておる国であります。平和利用の問題での経験はないけれども、災害を受けたことでは世界のどこにも負けないだけの経験を持っておるのでございます。そういう経験の立場から、私たちは、やはりこの炉を入れて、そして、その炉のいろいろな安全性の問題を判定するにあたっての基準になることにつきましては、一般の者ではほとんどわかりませんけれども、学術会議の立場からしますと、やはり、それが筋なんでございましょうし、また、皆さんの会合の中でもお話があったように、審査の基準をきめるにあたっての手順の問題でも逆じゃないか。結論を出したものを学術会議に持ってこられたのでは困るので、むしろ学術会議が一つの基準を出して、それをそれぞれの部門が実際に使っていく、そういうような手順じゃないかというようなことの意見、これは正しいと思うのであります。そういう正しいものが今すなおに通らない形で結論が出ていくということになりますと、やはり、われわれとしてもいろいろな心配ごとが非常に出てくるわけでございます。従って、私は、時期的にこの炉を入れるということの緊急性がどれだけあるかどうかの判定をする前に、そういう学術会議の御意見というものが率直に政府なり、原子力委員会、また一般の大衆にも理解できるような段階にまで固めてもらうということが非常に大事だと思います。おそらく学術会議の皆さん方は、そのことを非常に要望されておると思うわけでございます。先ほど参考人が安全性についてというパンフレットの一番最後のところをお読みになって、われわれは禄をはんでおるので言いたいことも言えない、だから、おれたちに言ってくれというからこういうまとめ方をしたのだという意見は、決して事をかまえてしたことではなくて、まじめな立場でやったのだということを参考人は申されました。私は、やはりそのことは重要なことだと思うのです。そういうことであるとするならば、学術会議としては、ぜひそういうことをまじめに、会議の結論として出していただきたい。どういう結論になるのかわかりませんけれども、その順序だけは一つ間違いのないようにしていただきたいと私は思うわけです。そういうことを実は岩瀬参考人に、あなた個人でもよろしゅうございますから、意見を一つ聞いておきたかったわけです。もし、御意見がありましたら一つ。
#17
○岩瀬参考人 小委員会といたしましては、その点、まだはっきりきまっておりませんので、ただ立教大学の田島さんをお呼びになって、そしてお話を早急にお聞かれになる、そして、もし御必要ならば、もちろん私も同席いたしますが、それで何かその線を出せ、こうおっしゃれば、そのように努力いたす覚悟でございます。
#18
○石野委員 小椋参考人にお尋ねいたしたいのですが、先生は、先ほど炉の導入にあたっての経済性の観点からいろいろなお話をいただいたわけでございます。結論的にお聞きしたところによりますと、この炉は、まだまだ言うような採算性のところまでいっていないのだというお話でございました。それと、もう一つは、長期計画の路線の中でわれわれが今どういう時点にあるかという問題についてもお話があったわけであります。今、日本の炉の実際での扱い方といいますか、それの入れ方というものは、先生は実用化研究の段階だというふうにおっしゃられておりますけれども、それは計画をなるべく早く達成させるという意味ではそういうこともいいと思いますが、日本のほんとうの学術的、技術的、経済・産業的というような立場から見て、炉はほんとうに実用化研究の段階まできておると見ていいでしょう。それとも、やはりまだ研究段階だというふうに先生はお思いになっておられるでしょうか。その点、もう少し突っ込んでお聞きしておきたいと思います。
#19
○小椋参考人 ただいまの御質問にお答え申しますが、先ほど申しましたように、まだ能率のある炉を作らなければ、経済的に在来のエネルギーと太刀打ちのできる原子力発電はできないという点で、濃縮燃料を使ったものの今後の発展によって経済的な炉ができるのだという考え方、あるいは、いや、濃縮燃料の炉ではだめであって、ブリーダーのところまでいかなければならない、さらに進んで、核融合のところまでいかなければだめであるという意見があるほど、技術的な基礎というものは、まだこれから発展しなければならない、これから開発しなければならない点が非常に多いわけでございます。そういう点で、今核融合は基礎研究の段階にあるという状態でございますし、また、私ブリーダーのことはよく存じませんが、ブリーダーの炉についても、いわゆる動力実験炉、実用試験の段階まではいっていない、こういうふうな状態でございます。従って、今実用化研究の段階に入っているということができますのは、これは例の、今問題になっておりますところのコールダーホール改良型と、それからもう一つは、アメリカの濃縮ウランを使いましたPWRあるいはBWRというものであると思うわけでございます。それにつけても、つまり基礎研究の必要ということは、今そういう若干の型の炉が実用化研究の段階に入ったにしろ、基礎研究の必要は非常に大きいといわなければならない。むしろ、将来における基礎研究の発展に原子炉の実用化はかかっておると私は申して差しつかえないと思うのでございます。ただ、しかし、とにかくコールダーホールの改良型は、そういう方向に向かっての世界の中で第一番の炉として浮かび出たものであるという点で、こういう炉を作ったところの科学技術の発展の成果をわれわれは喜んでもよろしいと思うのであります。従って、われわれは、これが日本の技術者の訓練であるとか、あるいは運転経験に役立つであろうということは認めるわけでございます。このような意味で、私は、今実用化研究の段階にあると申したわけで、あるいは不十分かもしれませんし、また、私の原子炉に対するテクノロジー、技術の問題についての知識というのは非常なしろうと議論でありますから、その点は専門家の訂正を願わなければならないのでありますが、私はそう考えております。それにつけても、ますます基礎研究の面に努力をする必要があり、特に科学技術振興対策特別委員会が、その点についての注意を今までよりも一そう払っていただきたいということは、私からもお願いしたいことであります。
#20
○石野委員 いま一つだけお聞きしておきたいのですが、それは、コールダーホール改良型の炉が入りまして、それについてのいわゆる経済性の観点から、キロワット当たりのコストがどのくらいになるかという見通し――今後ますます未知のものが既知になっていく、そのために、いろいろな施設、設備が、資本的な立場からも、あるいはその他のいろいろな立場からもかかってくるだろう、コストは将来高くなるという見通しこそあれ、安くなる見通しはないというふうなお話のように聞いたのでございますけれども、そういうように受け取ってよろしいのでございますか。
#21
○小椋参考人 簡単に申しますと、私はそう思います。まず第一に、火力発電のコストは、大体一九五五年ごろと現在では石炭、石油の値段がずいぶん下がっておりますので、燃料費の点では下がりつつあるわけでございますから、さっきのストレッチの言っておるように、火力発電のコストが急カーブで上がっていくというようなことは考えられないという点でございます。
 それから第二の点は、たとえば、今のコールダーホール改良型について炭酸ガスのインジェクションというアイデアが出ておりますが、これは、やはり安全性を高めるための一つのりっぱなアイデアだと思います。しかし、まだこれは、一体どのような具体的な装置となり、どのようなコストがかかるのかというところを算出するまでの具体性は持っていないアイデアの段階である、こういうふうに、炉自体について申しましても、安全性とか能率を高めるというような立場からいろいろな新しいアイデアが生まれてくる。それを実現するためには、私は、やはり炉のコストがかかってくるということになると思うのでございます。でありますから、当面問題になっている改良型原子炉についても、コストはまだまだこれから上がってくるものであると考えてよろしいと私は思います。
#22
○石野委員 いま一度岩瀬参考人にちょっとお尋ねいたしますが、この前の、先生が座長をなさいましたときの懇談の際に、敷地の問題で、敷地の件についてはもう初めからきまっていたので、というお言葉がちょっとありましたのですが、初めからきまっていたのでというそのお言葉は、学術会議としては、すでにもうそういうふうにきめておったのにということでございましたのでしょうか。どういう意味なのですか、その点をちょっと……。
#23
○岩瀬参考人 私の承知いたしました範囲では、この審査を原子力委員会から審査専門部会に移されたのは、コールダーホール改良型の炉を東海村に設置するのは安全かどうかという審査をするためであったのであります。従って、審査部会では、その範囲でやっておられることでありますから、そういう結論になりましょうが、しかし、それ以前のものがまだあるというのが、そのときのお話なんでございます。というのは、申し上げるまでもなく、東海村でなくても、ほかの場所に、もっと人間の少ない、北海道のようなところに置いたらどうかというような、率直に申しますと、これは空理空論というので、すぐに葬れるかどうかは問題ですが、そういうことがございました。それは、一面考えますと、炉の入れ方が、やはり経済ということを考えられて、出た電気を何かすぐにうまく使って、かたがた試験もされ、運転の経験も得ていくという両方の考えを持っておられるので、そういうことが必然的に出てこられましょうし、また、発電会社というものが、ある点会社組織という形になっておられるので、そういう点ともからみ合って、場所の選定ということにはいろいろ心を使われたのだろうと思います。しかし、そういうことを離れて、ただ、あれだけの金をぽんと試験のために使われるという立場を軽くとられれば、それは北海道に置いても何の差しつかえもないものではないか、こういうような意見が、その審査部会以前の問題としてあるのではないか、私たちは何を論ずるのか、あの報告書だけをすなおに論ずるのか、それより前にさかのぼって論ずるのがいいかということなのでございますが、私が司会いたしましたときには、あの審査の報告について質疑をかわすということでありましたので、私としましては、その問題は、その場から表に出さずに過ぎていったわけでございます。ただ、質問書の中にはそういうものもあったわけであります。
#24
○村瀬委員長 神近市子君。
#25
○神近委員 私も岩瀬参考人にちょっとお尋ねいたしたいと思っておったのですけれども、その点、大体石野委員の御質問で尽きたように思います。若い人たちが自由な批判をすることは非常にたっといのだ、それはぜひ十分に考慮されなければならないという御意見なんですが、今日、審査部会あるいは審査小委員会での論議の様子とか、あるいは何度か出ていただいての御意見を伺っていると、何か私どもから感じまして、学術会議の御意見をなるべく排除――というほどでもないのですけれども、聞くまい聞くまいというような態度が見える。今、自由な批判が行なわれなければならない。それは原子力三原則の、なるべく衆知を集めて決定をしなければならないということによくマッチするのですけれども、その自由な討議が、これは個人の意見として許されなければならないということをおっしゃる以上、何か今までの審査の過程に納得のできないような感じをお持ちになったということになるのでしょうか。それがちょっと伺いたいことであります。
#26
○岩瀬参考人 私は、小委員会の委員長の立場でございまするし、小委員会が意見をどういう工合に出しておるかということ、それは、この問題にはどの点が不届きであったかということはないのでございます。ただ、そのとき出ました質疑の内容を見ますと、経過的にそういうものが見取れた。たとえば、手続が逆になっていたのじゃないかというような点でございますね。それから、今後推定されないけれども、実際の設置、運転をしていく間までに、まだもっといいアイデアも出る、それに対しては、意見もいれて、改良もされていかなければならぬ、そういうようなことに対しては自由に聞いて、改良すべきものは改良をされていくというようにしていただきたい、こういうような点もまた出ております。推定できないということにどのくらいの見積もりをされているかということですが、これは大へんにむずかしい言い方になって参りましたけれども、推定というのは、今の段階では推定できないけれども、先々、これから三年なりたつ間に、この炉を建てます間にもどんどん意見をいれて、設計にも反映させていかなければいけない、だから、これは審査を終わったらもう何もやらなくなるというのじゃなくて、むしろ、われわれの自由な発言とか意見を取り入れていただくのは、審査段階を経たあとでも、この設置、運転の経過中、みながもっといいことをわれわれが――われわれといっては語弊がございますが、学者、専門家の意見を取り入れて、改良すべきことはどんどんやっていただく態度を持ってほしい、こういうのが若い人たちの考えではないか、こう思うのです。では、どこで審査をするか、これはなかなかむずかしい点だろうと私は思うのです。現段階においてできるだけのことを考えられて、そして審査をされたということでございます。私の個人の立場から申しますと、一応ごもっともだろうと思うのです。ただ、若い学者たちの考えをもう少し聞いてみますと、まだまだあるのじゃないかというようなこと、それが、今言ったような推測できないという意味の言葉で言われているものもあるわけですね。これは、日につれて進歩していきますこの原子力関係の事柄については、理屈だけから申しましても、当然そうあるべきでありまして、審査がいつ終わるかというのは大へんむずかしい問題だと思います。その後にどのような改良が考えられ、どのような施策が施されるかということを、審査ということが打ち切りでなくて、むしろ、それから始まるのだ、こういう形で改良の点あるいは意見の取り入れに努力していただきたい、こういうようなつもりでおります。
#27
○神近委員 私どもはしろうと考えですから、その基本的な設置ができてしまってからの手直しということは、たとえば、あそこのセメントを何メートルにするとか、三メートルにするものを五メートルにするとか、あるいは一メートルのものを二メートルにするとか、あるいはガス・ダクトを何センチにするとか、そういうようなことは、あとでやるということは非常にむずかしいと思うのですよ。これは小さなものだったらけっこうですけれど、膨大なものを作って、あそこを手直す、ここを手直すということは、ちょっと私どもには想像ができないのです。そのために、私は、この審査の過程が大へん大事だと考えるのですけれど、参考人は、ともかく作らせて、そしてそのあとの手直しでやっていこう、こういうようなことでいいとお考えになっているわけですか。
#28
○岩瀬参考人 私個人の立場から、では、意見だけ申します。私は、そういう原子炉のテクニックの方の専門家ではございません。ただ私は、自分の考えといたしまして、日本の国としてどんどん原子力は進めていきたい。そして、そのためには理論のための理論だけではなく、やはり実験をしながら進んでいくべきである。これは外国でもそうでございますし、日本だけ特別な例外ではないと思います。ただ、日本の例外というのは、先ほどもお話に出ましたように、日本の国は原爆の被害を受けた唯一の国であるということ、これが違いでございます。この点からは、特に安全、許容量というような問題は、日本は世界のどの国よりも特に関心を持っております。私個人といたしましても、当然これはこうあるべきであって、この点では世界のどの国よりも進んだ学問のレベルで、そのフィールドでは最も進んだ国でなければ、どうしてあの死んだ方々に対するわれわれあとに残った者のいろいろな点での償いができるか、こう思っておるのでありまして、外国の立場とはちょっとその点が違う。従って、先ほどからも出ましたように、許容量の問題というものは、特にほかの国よりも鋭く、鋭敏にさわるとぴっとするほどに、日本の国の人たちは、特に専門家は取り上げていることと思います。それが、どの辺までというのは、これはいずれも経験のない国々の人の話によりましてきまったことであり、あるいは食生活の違いというようなこともありますから、それをどのように処理していけるか、これが学術会議の中の委員会としてそういうことを考えていく場合に、ただそれだけにたよるかというような問題になりますが、あるいはもっと原子力委員会の専門部会とこの点は合流して、そしてやっていくというのも一つじゃないか。ただ学術会議という特別なものだけにその点をまかして、結論を出して、そして、それから上へ上がっていって最後の基準をきめるというような手続だけで済むものかどうか。個人といたしましては、むしろその際大同団結して、この問題だけについては特にそういう気持で、上も下もなく、一緒に早急にきめていくというような施策がほしいと思います。だから、学術会議だけにまかせる、こういうのもあまり投げやりで、その施策としては上々のものではないと思います。
#29
○神近委員 私どもも、今、先生がおっしゃったような点が、何かこう両者の間に――原発の安全審査小委員会の審査のやり方と、それから学術会議の御意見とが食い違いがあるんじゃないかということが一番関心なんです。それでいろいろ勉強したり、御意見を伺わしていただいたりしているわけでございますが、やはり学術会議の御意見は、私は、学者方があまり政治家におそれを抱いておいでになるんじゃないかと思います。もう少しはっきりと――それは政治的なというより、国民の利益あるいは安全を守るという立場から、もう少し勇気がおありになっていいんじゃないか。いつも、たとえば、申し入れを拝見いたしましても、ほんとうに強力に、審査委員会なんかは最高裁の機構のようなもので決定しなければならぬ、今日となってみれば非常にごもっともで、いい御意見なんです。それをどうしてもっと強力にお出しにならなかったか、このことが私は大へんに遺憾だと思うのです。
 向坊先生にちょっとお伺いいたしますけれども、アタッシェとしてアメリカに長くおいでになって、国際原子力委員会ですか、国際的な機構に御関係になっている。そうすれば、今、日本で一番私どもが頭にきているのは許容量の問題で、原発側の許容量と、最低許容量といわれるものと、それからこれを批判なさる方々の許容量と、イギリスの出している許容量との食い違いですね。原発側で出しているのは非常に低いですね。そのことと、それから、もう一つ伺いたいのは、そばに投爆練習の基地があるということ、その距離について、あるいは絶対にそういうそばにはこれは置かないということ、それから、もう一つは、今こういう問題が出ようと思わないから、ちょっと距離、キロ数を忘れましたけれど、小学校が二キロ幾らかのところにあるというこの問題は、国際的の基準というものと、この発表をごらんになったときに、それとの食い違いというものをお感じになったかどうか、それを御存じでございましたら伺わしていただきたいと思います。
#30
○向坊参考人 お答えいたします。私は、生物学的に、そういう安全基準量がどの程度でなければならないということの専門家でございませんので、そういうつもりでお聞き取り願いたいと思います。わが国と外国とは相当事情が違います点がいろいろあると思うのでございますが、非常に大きな違いといたしまして、人口密度と、それから土地が絶対的に狭いということと、二つあるわけでございまして、土地が絶対的に狭いということと人口密度とは似たようで、ちょっと違う問題だと思うのでございます。簡単に申しますと、アメリカとかソ連とかいった広い国でございますと、もし、まかり間違って多少のものが出ましても、まわりにあまり迷惑を受ける人はおらないわけでございます。たとえば、川にもし間違って流して、数マイルを立ち入り禁止区域にしたといたしましても、別にそれですぐ困る人はないわけです。日本の場合は土地が絶対的に狭いために、どこでそういうことが起こってもすぐ困る人が出てくる。そういった意味での違いが非常に大きな問題としてあるわけでございます。そういう意味で、安全の基準の取り方というようなものは、外国でもまだ絶対的にこれならよろしいという基準は設定されておらないように思いますけれども、わが国の場合の方がどうしてもこれはきびしくなるということは言えるのじゃないか、そう思います。
 それから、飛行場の問題と小学校の問題については、私そういうものがそばにある原子炉というものは、方々回りましたけれどもあまり見たことがないのでございまして、まず、これは個人として、常識でお答えするほかはないと思うのでございますが、どちらもこれは望ましくないわけでございますので、専門的な安全基準の専門家、並びに原子炉の設計の専門家によって、絶対に、安全なものであるかどうかということは十分検討していただきたいと思います。
#31
○村瀬委員長 岡良一君。
#32
○岡委員 これは私の記憶ですが、学術会議が、総会で原子力研究、開発についての基本原則というものをお立てになって、政府へ勧告されたことがあったと思いますが、その期日と内容を岩瀬さんから簡潔に御答弁願います。
#33
○岩瀬参考人 私は、そういうことがあることは知っておりますが、それを別段明確に記憶しておりません。
#34
○岡委員 それは原子力基本法の第二条にうたわれておるように、平和目的に限る、しかも、公開の原則を尊重し、民主的に運営すべきだ、こういう原則が総会で決定された、こう私は確かに記憶しておるのでございますが、このことについて、会員の皆さん方からこの際御答弁願います。
#35
○向坊参考人 私も、正確な記憶ではございませんが、平和目的に使うということのほかに、三原則があったのではないかと思います。自主、民主、公開……。
#36
○岡委員 学術会議も総会で太い方針を立てておる、基本法もこの旨をうたっておる。そこで安全審査部会、あるいはその答申を受け取っての原子力委員会の決定、これは、はたして学術会議の民主的な運営という線を正しく守られておるかどうか、この点についての率直な御所感を伺いたい。これはどなたでもけっこうです。
#37
○小椋参考人 私がお答えするのは必ずしも適当でないと思いますが、学術会議の三原則、公開、民主、自主というものの解釈でございますけれども、民主の原則の解釈というのは大へん複雑なものでございまして、この点にはいろいろな理解があるようでございます。しかし、私もこの三原則についての審議の総会には出席しておりましたので、私の記憶しておるところでは、これは民主的な態勢を作り、そして原子力の研究、開発、利用に従事する人人に、能力に応じてこれに適当なる部署を与えて、そしてその思想、あるいは信条というようなものに政治的立場で区別しないというところが、これが民主の意義であったわけでございます。すなわち、比較的狭義の民主的な運営ということを申しておったわけでございます。従って、ただいまの審議のあり方が、はたして学術会議の原子力三原則に違反しているかどうかということを、学術会議として特に討議したことはないわけでございますが、今の民主という問題よりも、むしろ、学術会議でしばしば申し入れておりますのは公開という点でございまして、資料をなるべく公開して、一般の、特に学術会議の場合には、科学者たちの十分な研究、それから討議を行なわせて、また、その研究、討議の結果を十分に取り入れていただきたい、こういうことはしばしば申すわけでございまして、安全性の審査の場合についても、資料をなるべく早くわれわれに公開してもらいたいということを申し入れておりますが、この点で、時期的に資料の公開がおそかったという遺憾な点は、これは私だけの意見でございますが、あったように思うのでございます。これはお答えになるかどうか知りませんが、学術会議が今までやってきたこと、学術会議の意思が現われたことという点から今の点にお答えすると、こういうようにお答えできると存じます。
#38
○岡委員 安全審査部会の安全と認められるという答申について、原子力問題委員長の坂田さんが責任を持てないという声明を出されました。そのときにも、その事前に、矢木部会長に対して幾つかの申し入れがあったわけです。その申し入れの一つとして、やはり学術会議と原子力委員会とで、一つこの問題についてひざを交えて話し合いをしてみたい、こういう機会を作ってくれということが満たされなかったということが、坂田さんの辞意を表明された大きな動機になっておる。それから去る四日にも、学術会議の方で、やはり内容についての問題と同時に手続上の問題として、学術会議との話し合いの機会を持ってもらいたいということが坂田さんから兼重さんに申し入れられております。ところが、これもむげに、いわば一蹴されておるという今日までの状態だそうでございます。私は、やはり原子力の研究、開発を進めるということになれば、なるほど原子力産業会議もございますから、日本の原子力産業を育てるという意味では、産業会議の意向も尊重すべきでしょう。同時に、日本学術会議があり、真剣に若い科学者の方が安全性や経済性の問題と取っ組んでおられるのですから、この諸君の御意見も聞く、産業会議と学術会議と、少なくともこの二本のレールの上に、また、その意向の調整、均衡の上に日本の原子力政策が進められることが、私は民主的な運営というもののあるべき姿である、こう考えるわけです。ところが、今申しましたような事情で、坂田さんの、また次の原子力委員会への申し入れも、現在のところは実現されておらない。しかも、四日に学術会議がこのような申し入れをされたのに、五日には緊急に原子力委員会を開いて、そしてこの答申を決定しておる。私は、そういう経過を見て、学術会議の総会の民主的な運営という皆さんの御要望なり、御決定というものが、少なくともコールダーホール改良型炉と導入の決定については、今のところ無視されておると感じておるわけでございますが、率直にその点についてどうお考えになりますか、岩瀬さん、小椋さん、向坊さん、どなたでもけっこうでございますが、個人としての御感想でけっこうでございますから、お聞かせ願いたいと思います。――それでは、先ほど岩瀬さんのお話の中に、まじめな若い学者の意見をもう少し尊重してくれということを言われました。私は、そのことは、言いかえれば、どうもまだこれが十分尊重されておらないというお気持からそう言われたのだ、そう解釈いたしましたので、私はその点を、学術会議の総会の御決定という観点から、もう一度お聞きしたかったわけでございますので、お気持は私ども十分わかります。
 いま一つ、この安全審査というものは、現在のような機構で一体いいのだろうか。こうして、ごらんの通り、その是非は別、その真偽は別といたしましても、ここまで学界内部にも大きな波紋を呼んでおる。それだけやはり安全に対する国民の信頼度も薄いということになるわけです。これは先ほど来御指摘のように、日本における原子炉の安全性というものは、何と申しましても、将来の原子力研究、開発を進める上においての一番大事なかなめでございますから、それが今の機構、今の運営で安全が審査される、また、決定が下されるということでいいのだろうか。今度の経験にかんがみまして、なお考え直して、新しい組織なり、また運営なりを考うべきじゃないか、こういうことを感じておるのでございます。その点について、特に岩瀬さんはこの安全についての小委員会の委員長でおられますが、どうお考えになりますか。
#39
○向坊参考人 岩瀬さんにかわって、ちょっと意見を述べさしていただきます。
 岡先生の御指摘になりました点は、一々ごもっともと存じますが、私は、安全審査部会のメンバーでございませんが、おそらく、外から見ておりまして、安全審査部会そのものは、今、先生の御指摘になりましたように、学会と産業界からもメンバーを入れまして、共同の体制で審査を進めていくという趣旨でやられておったものと思うのでございます。しかし、結果といたしましては、御承知のように学術会議から批判せられましたように、学術会議との連絡も不十分であり、若い科学者の意見も十分に反映しておらないという批判が出ておるわけでございますから、そういう意味におきまして、安全審査部会のやり方というものを、全面的に改むべきかどうかは存じませんけれども、今、批判の出たような点を改善していくということについては、今後十分関係の方々に努力していただきたい、そう思う次第でございます。
#40
○岡委員 アメリカの安全審査のやり方をちょっと聞かして下さい。
#41
○向坊参考人 アメリカと日本とは、そう詳しく私存じませんが、相当事情は違うように思うのでございます。一つは、アメリカの原子力委員会と日本の原子力委員会との性格が違いまして、日本は、原子力委員会と原子力局というものとが、アメリカの原子力委員会ほどには一本の実行機関の形にはなっておらないわけでございます。従って、その下部組織の行き方もある程度違うと思うのでございますが、日本の安全審査部会その他の部会は、原子力委員会自身の活動の一環となっておるように私了解しておりますが、アメリカの場合は、もう少し離れたと申しますか、諮問機関的な性格を持っておるのじゃないか、そういうように了解しております。
#42
○田中(武)委員 私は、先ほど来の参考人の御意見並びに委員からの質疑を通じまして、一言だけ関連して、これは参考人でなく、政府委員の方にお伺いいたしたい、このように思うわけであります。と申しますのは、このコールダーホール改良型原子炉の受け入れに関連いたしまして、先ほど来の参考人の御意見を聞いておりますと、学術会議の中においても、若い人たちにまだまだ十分納得のいかないというような点のあることも明らかであります。また、先ほど神近委員が申されたように、学者の皆さん方が、政府といいますか、そういった方面に対してやはり何か遠慮しておられる、ずばり言っておられない点があるようにも考えられます。また、若い人たちの意見を聞いて、なお改良していくというような意見もありましたが、これは神近委員も言われたように、一たん作ってから改良というようなことができるのか、こういうこともあるわけです。これを見ておりますと、まだまだこれの安全性及び経済性についていろいろ疑問がある。それが学術会議の学者の中にも、十分に納得がいっていないという状態ではなかろうかと思っております。まして、われわれ専門家でない者には、十分わからない点がある。にもかわらず、なぜ原子力委員会がその受け入れの決定を急がねばならなかったか、そこにどういったような政治的な事情があったのか。これはむしろ、委員長である中曽根大臣に聞くべきであったと思いますが、おられませんので、官房長官が見えておるので官房長官に伺うか、あるいは原子力局長でもいいと思いますが、みなが十分納得していないのに、なぜ急いでそういった緊急にきめる必要があったのか、その理由をお伺いいたします。
#43
○佐々木政府委員 それでは私からお答えします。政府の方では、ただいままでだんだんにお話がありましたように、安全審査部会というものを原子力委員会の下部機構に作りまして、百数回にわたって――時間にいたしまして実に三千数百時間ですか、長い時間をかけてたんねんに検討いたしました。そうしてその結果、安全審査部会といたしましては、安全であるという結論を出したわけでございます。そこで、原子力委員会の方ではその答申を受けまして、さらにその答申に加えていろいろなその他の事情も勘案いたしまして、慎重に、原子力委員会独自でさらに大所高所から検討いたしました結果、安全であるという結論に達したものですから、政府に答申いたしたという段階になっております。ですから、御説のように、審議もあまりしないで出したというのではなくて、政府といたしましては、本件に関しましてはできる限りの審査をし、詳細に検討したというふうに御理解いただきたいと私は存じております。
#44
○田中(武)委員 時間を何千時間やったとか、あるいは何回会議を持ったからということによって、私は必ずしも慎重とは言えないと思う。ただいま参考人の御意見を聞いておりましても、専門の学者の間においても、なお十分な了解といいますか、納得がいかない、しかも、現場で、働いておる、実際に仕事をしておる人たちの意見も、またこれに対して相当の危惧を持っておる。それをなぜ急いできめる必要があったのかということを申し上げておるのです。時間が長いことかかったからといって、慎重とは言えない。小田原評定のようなことをやっているならば、何万時間やっても同じことです。
#45
○佐々木政府委員 私どもといたしましては、この特別部会で御決議いただきました趣旨にも沿い、できるだけ産業界、また同時に、学界の方面の意向は十分取り入れまして、その上で結論を出すべき次第だといういふうに考えましたので、単に安全審査部会の皆さんが審査したというだけじゃなくて、公聴会を開きまして、学界からも代表三名を選んで十分意見を吐いてもらいたいということで、この八月には代表の方たちの御意見を公式にお伺いしまして、そして、その出されました問題点に関しましては、実にたんねんに検討しました。その結果、一つ一つの問題に対して大体これはこうだというふうに基準その他もきめまして、部会の方には、委員会としてはこう考えるという点を流し、安全審査部会の方でも、その問題に対してはその趣旨に沿って審議を進めまして、そうして学界等から出されました問題点に関しましては一つも疑問を残さぬように審議をいたしました、私はこういうふうに了解しております。ただ、相手のあることでございますから、私の方ではこれで十分だといっても、あるいは、それでは不十分だという向きがあるかもしれません。しかし、私の承知しておる範囲では、内容そのものではなくて、むしろその手続といったような点にいささか不満があったのじゃなかろうかというような御批判のようでございますので、最終的には、安全審査部会でも、委員会といたしましても、内容的には安全であるということで踏み切ったというふうに了解しております。
#46
○田中(武)委員 なるほど、産業界及び学術会議の意見、両方聞かれたと思うのです。しかし、やはり耳を向けた方は産業界の方に強く向けられておるのではないか、このように考えるわけなんです。たとえば、経済性の問題につきましても、現におひざ元のイギリスにおいて意見が異なっておるわけです。また、安全性の問題につきましても、先ほど来言っておるように、若い学者たちの間にも十分な了解といいますか、まだ納得がいかない、現場に働いている人たちにもいろいろ疑義がある、こういう状態であります。そういうことで、はたしていわゆる原子力の運営の三原則にのっとってこのことが進められておるのかどうか、こういうことに対して大きな疑惑を持っておる。そこで申し上げておるわけなんですが、どうもこの決定の裏にはいろいろと政治的な問題がある。もし必要というならば何と交換せられたか。たとえばカニのカン詰とか、そういうものとの交換だろうというようなうわさもあるから、その点についてもっと追及してもいいと思いますが、いかがですか。
#47
○佐々木政府委員 私は事務の局長でございますので、そういう政治的なことは全然わからないのでございますが、私の承知しておる限りでは、技術的に、経済的にあらゆる努力を傾注いたしまして、現段階といたしましては、これが出し得る最良の結論だというふうに考えて、踏み切ったものと信じております。
#48
○神近委員 関連して。今、佐々木局長の顔を見ましたので、また向坊さんにお尋ねすることができたのですけれども、向坊さんはアメリカに長くおいでになって、原子力に関するいろいろな御調査、あるいは会議やなんかにタッチなさったというお話があったので伺いたいのです。日本の原子力委員会のあり方に対して、今回の答申について、今田中委員からいろいろ不満も出ましたのですが、私どもも、原子力開発ということに決して反対ではないのでございますよ。ただ、今小椋参考人からもお話しになったように、経済べースの問題がいろいろ残っているということ、それからもう一つは、技術あるいは経験を積み重ねる上にいろいろ試験炉のようなものが必要だということ、それで、実は長期開発の構想のもとでは、この第一のコールダーホール型を手始めにして、次々に同じ型を持っていく。この第一号炉というものは、一つは、訓練、技術の練習用にというようなことが出ていたのです。ところが、原子力開発長期計画というものは、ここで変えなければならぬ段階にきている。一方から、危険性の問題でまだ納得ができない。今佐々木局長は、あらゆる方法を尽くしたとおっしゃったけれども、これは私どもは、ずっとこの問題を勉強してみて、どうも原子力委員会のあり方というものに疑惑――疑惑といっては佐々木局長に大へん悪いのですけれども、局長は、ゴフルは非常に御熱心だということです。この間私はちょっとその問題を取り上げかけたのですけれども、中曽根長官がヘリコプターに乗るというので大へんお急ぎだったので、そのままになっているのですけれども、いろいろわけのわからないことがあるのです。たとえば、原子力委員というものは国家の公務員であるはずでしょう。それが原発からお車代なんかをもらうということをこの間法貴次長がおっしゃったので、そういうようなことが一体あり得るかということが、私どもの疑惑なんです。
 それで向坊参考人にお聞きしたいことは、日本の原子力委員会というものの機構と――そして佐々木局長は、いろいろ主観的には、きっと御勉強なさっているだろうと思うのです。けれども、この間から、安全審査部会の方々はみんな学術会議の会員でございますとか、いや、それは間違っていましたとか、私どもには、ほんとうに常識的に頭にすぐ飛び込むようなことを御存じなかったというようなことから考えて、事務的にも完璧な機構というか、あるいは運営が行なわれていないというような印象を受けるわけなんです。それでアメリカの原子力委員会というものと、日本の原子力委員会というものの違いですね。アメリカのは非常に権威がある。その機構の構成について、もし向坊参考人が御存じでございましたら伺わしていただきたい。どの点がどのくらい違っているかということになれば、日本の原子力委員会の機構というものも、これは考え直さなければならないんじゃないかと私ども考えるわけなんです。一つ御存じだったら、アメリカの原子力委員会と日本の原子力委員会がどの程度違うかということを聞かせておいていただきたい。
#49
○向坊参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。私は、はなはだうかつな話でございますが、日本の原子力局の方はあまり存じないのでありまして、アメリカの事情を御参考までに申し上げたいと思います。
 御承知のように、アメリカの原子力は、全く戦争中の原子爆弾の製造から始まりましたものでございまして、一九四六年のマクマホン・ローで、原子力委員会というものが全面的に、国家全体としての原子力の責任を負うようになりました。ですから、兵器そのものの製造は軍の手にございますけれども、現在でも、兵器用の核物質の製造までは原子力委員会が管理しておるわけです。これはアメリカの国防と非常に密接な関係を持っておりまして、原子力委員長は国防会議のメンバーでもあるわけです。そういう性格を持っておりますので、日本とは国情が非常に違いまして、従って、原子力委員会の組織とか性格というようなものも、当然違ってきておるものと思うのでございます。アメリカでは、原子力委員会が一応そういう絶大な権限を持っておりますと同時に、一方、アメリカの議会に、御承知の原子力上下合同委員会という非常に強い組織がございまして、これが原子力委員会の仕事を批判しながらアメリカの計画を進めていっておる、そういう形でございます。学界との結びつきの問題につきましては、アメリカでも日本とそう違った状態ではないと思うのでございますが、そこにも、また国防という問題との関係がございまして、日本とはまた相当違っておる。学者でも、たとえば、国防に関係のある原子力の研究に従事してしまいますと、発言の自由も制限されることがあるわけであります。そういう意味で、日本の学者の方がはるかに自由な立場でこの原子力問題と取り組んでいける事情にあると思うのであります。
#50
○岡委員 官房長官お忙しいことでございまょうから、岩瀬さん、小椋さんに少しお尋ねしたいことはあとにいたしまして、官房長官にお尋ねいたします。
 実は、今度のコールダーホール改良型の動力炉のために使用する燃料の取り扱いの問題でございますが、閣議の了解というのはどういう効力を持っておるものでございますか。たとえば、だれをどう拘束するかという点でございますが、慣例上どういうことになっておりますか。
#51
○椎名政府委員 閣議決定と閣議了解とは使い分けておりますが、実際の効力は閣議決定と同様でございまして、了解の趣旨に沿うて物事が進めらるべきものである、かように了解しております。
#52
○岡委員 そこで、実は昨年の十月十四日の閣議了承でございます。それは表題は「核燃料物質の所有方式について」となっておりまして、「三木国務大臣(科学技術庁長官、原子力委員長)発言『核燃料物質の所有方式に関しては、さきに原子力委員会の決定を閣議に報告したが、対英米原子力協定に関連し、党としても総務会において同趣旨の決定を行っているので、国会答弁の都合もあり、政府としては核燃料物質については、内外における諸条件が整うに従って民間の所有を考慮するも、暫くの間は原則として国又は公社の所有とするよう措置する方針である旨、見解を統一したい。』」というのであります。そこで、さきに原子力委員会の決定として閣議に報告されたものと「総務会において同趣旨の決定」と書いてありますその決定というのは、「核燃料物質は、暫らくの間は原則として民間にその所有を認めないこと。但し、内外における諸条件が整うに従い、民間の所有を考慮すること。」これは三十三年四月四日の原子力委員会の決定でございます。このことが、いわば閣議において決定をされたわけであります。その効力は今日もやはり生きておるわけでございますね。
#53
○椎名政府委員 生きておるわけでございます。
#54
○岡委員 そこで先般、この点について私は中曽根委員長のお取り扱いに若干の疑義がありましたので、いろいろお尋ねをいたしましたが、まだ実は私としては納得いたしかねるので、官房長官の御出席を願ったわけであります。現在は、核燃料物質は国または公社が所有することに相なっております。ところが、今問題となっておるコールダーホール改良型動力炉の燃料については、この三月の下旬に原子力発電株式会社という一民間会社が英国へ出かけて、そうして買い取りの予備交渉をやり、予備交渉が成立をし、その結果、その契約に基づいて、形、量、金額等々を資料として動力炉の設置の申請をし、これが結局原子力委員会においても承認をされ、やがて、内閣総理大臣が設置の許可権者でございますから、総理大臣も設置を認められるかと私は思うのであります。そういたしますと、所有するものは国または公社である、この閣議で決定をされながら、実態的には、一民間会社が自由にこれを買うということは、閣議の決定というものを無視したやり方ではないか、この点が私は非常に疑問でございますが、いかがでございましょう。
#55
○椎名政府委員 岡委員から御指摘の通り、燃料の当初の所有は政府または公共機関ということになっておりますが、実際問題といたしまして、コールダーホールの燃料の具体的な問題につきましては、燃料購入の正式の契約は、本発電用原子炉の運転開始の一年前、すなわち、昭和三十八年になるものと考えられるのでございます。それまでの間にまだ三年間の時間的余裕がございますので、閣議の了解にいうところの、内外の諸条件が整って、そして民間所有を認める状況となるべき期間がまだそれだけ余裕がある。従って、今のところ、具体的な所有者はまだ確定しておらないという状況であります。一方、燃料購入のための交渉はすみやかに進める必要もございますので、国は当該燃料の使用者になるべき日本原子力発電会社において当該交渉に当たらせるということを認めておるような次第でございまして、必ずしも昨年の閣議了解と食い違うということはないと考えております。
#56
○岡委員 先般もこの委員会で、この問題については、中曽根国務大臣はこういうふうに答弁をしておられます。すなわち、原子力発電株式会社が契約に当たったことは、そういうことをする方が「政府当局の方から言わせれば、むしろ、これは非常に弾力性のある措置をとっておるのであって、融通性のある立場でもありますし、そういう観点から、日本に有利でこそあれ、必ずしも不利な態勢ではない」、こう答弁をしておる。今の官房長官の御答弁と非常に食い違ってくるのでございますが、どういうことでございますか。
#57
○椎名政府委員 ただいま私は、原子力発電会社がどうせこの燃料を使うのですから、契約の交渉の点に関してだけその衝に当たることを政府が認めた、こういうことを申し上げましたが、中曽根大臣は、その効果をさらに敷衍しておられるものと了承するのであります。でございますから、必ずしも趣旨においては食違いはないと考えております。
#58
○岡委員 そこで、先ほどの御発言と今の御発言とを合わせて、二つの疑問がございます。なるほど、本契約は三年後でございますが、しかし、予備契約というものも、本契約というものも、当然閣議の決定で所有権を持っておるということになった国あるいは公社が、もし行なえないとすれば、国または公社は、その民間会社に対して、購入についての契約なり権限を代理せしめるという手続がとられなければならぬと思う。閣議でこのように決定されておる以上、当然手続があってしかるべきだと思いますが、そのような手続はとられましたか。少なくとも、閣議のこの決定がある以上は、閣議にも報告があってしかるべきだと思いますが、そのような報告はございましたか。
#59
○椎名政府委員 代理権限の手続は、御指摘の通り、とられておりません。
#60
○岡委員 代理権限という手続がとられておらないということになれば、この民間会社の契約というものそのものが閣議決定に違反する。従って、それをこのままに見過ごされるということになれば、閣議決定というものの権威はどこにあろうかと私は申し上げたいのでございます。少なくとも、この燃料は総額約二千億といわれておる。しかも、これを所有するのは公社あるいは国というような重大問題でございますので、そういう場合、しかも、今度の原電でも、燃料購入等のために自後まだ四カ年間に七十億の政府出資を資金計画の中に入れております。こういうような問題を、ただ便宜上、何の権限委譲というような正当な手続なしに民間会社にさせるということが許されていいものでございましょうか。
#61
○椎名政府委員 実際の所有権を把握するというような段階にまだ達しておりませんので、便宜、将来燃料を使用する民間会社に交渉の任務に当たらせておる、これを認めるにすぎないのでございまして、だんだん事態が進むに従って、閣議の趣旨に合わせるようにしなければならぬということを考えております。
#62
○岡委員 私は納得できないのです。燃料公社なり国が、たといどういう交渉でも、交渉の実態は、どれだけ買うか、幾らで買うか、また、燃料は原子炉の安全性の中心の問題なんですから、こういう形のものを買うのだということを、実態的な交渉をやっておるのですよ。だから、これは事実上本契約といってもいいくらいのものです。しかし、それは別といたしましても、予備交渉でも、それから本交渉でも、あるいは予備契約でも、本契約でもそれほどのものであり、従って、国あるいは公社が所有するときめておる以上、正当な手続がなくても、ゆるゆるしてもよかろうということであれば、あなた方は閣議の決定などということをされる必要はない。それは、一国務大臣の裁量あるいは一委員会の自由な裁量によって無視されてもいいということをあなたは承認されるのですか。
#63
○椎名政府委員 私が今申しましたような趣旨におきまして、相手方のコールダーホールと一応の交渉の相手方となることについての完全な了解のもとにやっておるような状況でございまして、漸次閣議決定の趣旨に沿うようにいたしたい考えでございます。
#64
○岡委員 相手のGECが了解を与える与えないということを私は申し上げておるのではないのです。閣議で所有すると決定をして、その所有権者たるべき国及び公社が、何ら代理権限というものを与えておらないそういう仮購入契約というものは、そのこと自体が無効ではございませんか。閣議の決定というものに完全に違反するのではないでしょうか。
#65
○佐々木政府委員 私からその点は御答弁申し上げます。閣議できめましたのは、先ほどお読みになりましたような、いわゆる一般原則をきめたわけでございまして、その原則に従って、実際の天然ウラン二百トンなら二百トンというものを、どういうふうにして入手するかといったような問題になりました際には、お話のように、そういう一般原則がある限りは、問題を具体化する際には、その線に沿うて処理するのが当然のことだと思います。ただちょっと違う点は、閣議でそうきめたから、すぐそれが国の所有であるというふうにはならないのでありまして、その際には、やはり国で所有し、あるいは公社で所有する際には、それ相当の所有する手続というものは、もちろん要るわけでございます。そこで、ただいまの段階では、国または公社が現在すぐ本契約を結ぶということであれば、お説のように、閣議決定を変えない限りは、国または公社が契約するのは当然かと思います。しかし、三年後になって本契約の場合に実際の売買契約というものは成立するのでございますから、ただいまの段階で、一般的な原則が閣議できまっておるからといって、具体的に所有権まで直ちに国の所有であるというふうに断定するのは、これは少し法律的に飛躍しておるのではないかと思われますので、私どもといたしましては、ただいまの段階では、本契約を結ぶのは三年後でございますので、それまでには事態をはっきりしなければならぬ。今の段階といたしましては、英国の側にもはっきり申し入れてありますように、燃料購入契約に、日本側当事者については、現在政府として、核燃料は、しばらくの間は国有また公社所有とする方針であり、英側主張の通り今直ちに契約当事者を決定するとすれば、燃料公社が当たることになろうというふうに、向こうに言ってやってあります。ただし、正式契約の日本側当事者は別として、現在すでに交渉の必要があるので云々ということで、とりあえずは、この交渉は、最もその炉に付帯した経験のある原子力発電会社でやらせます。なぜかと申しますと、石油とか石炭と違いまして、それ自体として規格がきまっておるものではありません。炉に付帯した燃料でございますので、どうしても炉の折衝をする人間でないと、燃料の要素の性格がわかりません。そこで、燃料公社なり国が、そういうふうにきまっておるからといって、すぐそういう直接にわたる交渉ができるかと申しますと、できないのでありまして、向こう側ももちろん希望しておりません。従いまして、ただいま申しましたように、要式行為といたしましては、相手方にそういう申し入れをし、了承を得、国内的な手続といたしましては、原電から通産省並びに科学技術庁長官に、こういう交渉をしたいがよろしいかという正式の伺い文書をとりまして、それに対して今年の二月二日、高碕長官から、交渉の当事者となることを了承するというふうに、交渉のみを了承する、こういう手続になって、現在進んでおるわけでございます。従いまして、必ずしも岡先生の言われるように、閣議で一般原則がきまったから、すぐ全部国のものだというふうにお考えにならないで、それを具体化する際に、直ちにやるとすれば、お説の通りに措置するのが、閣議決定に沿うた当然の行政措置かと思いますけれども、しかし、それは三年先の問題であるということでありますれば、必ずしも今すぐ所有権者をきめなくてもいいんじゃないか――というと、交渉はできないかというと、所有権者の問題はしばらくそのままにしておいて、交渉だけは進める、そうして、もし交渉がまとまってきますと、一項起こしまして、そうして、将来国または公社がこれを所有する際には、かりに原子力発電会社と英国燃料公社とが仮契約を結んだ契約であっても、全部公社あるいは国に譲り渡すというのを了解させまして、いわゆる仮契約を結ばせようということをただいま考えております。しかし、まだ仮契約の段階にまで至っておりません。仮契約もまだまだしばらくあとでございまして、まして本契約は、先ほど申しましたように三年後ということになっております。このときに初めて、いわゆる売買契約としての性格を持った、はっきりした所有権者はどっちかということがきまるわけでございますので、私どもといたしましては、閣議了解の線に違反したと申しますか、もとった措置ではなかろうというふうに考えております。
#66
○岡委員 佐々木局長も、原子力委員会がいよいよ答申をしたので、少し愁眉を開いたと見えて、あなたこそ論理が飛躍をしておる。官房長官、私は決して原子力発電会社にやらすなというのじゃないのです。ただ問題は、少なくとも閣議の決定で所有することをきめた以上は、成規の手続を経てその権限を代理させるのでなければならぬ。今、佐々木局長の話を聞けば、伺いが出た。そこで相手の英国に対して、これはとりあえず日本の方の買い入れ方の交渉資格があるぞということを通知してやっておる。こういうように、閣議の決定も全く無視してしまって、ただ原電会社のためにきゅうきゅうとしておるというような手続がやられてはいけないと思うのです。そういう点、どうなんですか。やはり私は閣議の決定というものは無視されておるといわざるを得ません。
#67
○椎名政府委員 まだ物の所有権が国にあるわけでもございませんから、その意味における代理権の授与というようなことは考えられない段階であることは、御異論ないと思いますが、ただ、今交渉の段階にありますその交渉を、国または公社が当然やるべきものであるという前提にもし立つならば、国によって交渉する資格を認められておるかどうかという問題になると思います。それらの点につきましては、厳格な意味における法律上の手続はとられてないと思いますが、実際問題としては、その折衝の衝に当たることを政府も認めておるのでございますから、さよう御了承願います。
#68
○岡委員 これは話が平行線になりますが、問題は、どういう形のもので、それを何トン、幾らで買うという契約は、所有権者たるべき国あるいは公社が当然やるべきものなんでしょう。契約の一番主体的な内容でしょう。それを、閣議の決定にもかかわらず、手続をとらないでやらすということは、閣議の決定の違反ではございませんか。
#69
○椎名政府委員 一応は、これを公文書等において、交渉の任に当たることを政府が認めたと認釈される形跡はあるのでありますが、しかし、その点につきましてはなお十分に研究いたしまして、追完すべきものがあれば、追完したいと考えます。
#70
○岡委員 第一、そういう契約がまだ本固まりのものではない、これは先々のことで、三年後だと言われるなら、契約の内容である燃料というものは、炉の安全審査のための基本的な要件でしょう。だから、そういう固まらないものを出して安全審査部会に案を諮るなどということ自体が、原子力委員会としては、それこそさか立ちしておることでしょう。そういう意味で、とにかくけじめを立ててもらいたいと思うのです。これからの新しい大事な政策ですから、ちゃんとけじめを立ててもらいたい。これだけは、政府としてもぜひ一つ今後戒慎していただきたいということを強く私は要望いたします。
 次に、岩瀬さんにちょっとお尋ねをいたします。この間新聞紙で拝見をした事実でございますが、英国では中空燃料というようなものは採用しないことになったということが論文に出ておりました。あなたは燃料の方を専門的にお取り扱いでございますが、この間の経緯を、なお詳細に御存じでございませんでしょうか。また、あなた方の専門的立場から御推定になって、その事実についての御所信があったら、承らせていただきたいと思います。
#71
○岩瀬参考人 今の御質問に対しましては、私は、燃料と申しましても、燃料全般をやっているわけではありませんで、燃料を鉱石からどのようにして規格のものを作るかという作り方、金属のかたまりを得るということをやっておりまして、金属のかたまりを得ましたあとに加工をして、それから形を与える、こういうことになりますので、形の上で中空がいいか、あるいは中が詰まったものがいいか、こういうような問題が、長く使っております間のサイクルの問題とからみ合うことになります。これはウラン金属そのものの、長く使っていますときの形のひずみという問題にもからまることと思いますので、形を中空にしたという根拠が――もとは詰まっていたものを、中空な形を考えられたというのには、やはり相当な考え方の根拠を持っていたものと思います。それなのにもかかわらず、今お話のように、またそうでなくしていくというようなことが出て参りますと、これはなぜかという疑問はごもっともなことでございまして、燃料加工の立場からの専門家の意見というようなものは、また、これにも強く反映していかなければならぬわけで、日本としましては、中空がいいという立場をとられて一端の改良の形をとっているわけですが、経験の少ない、すなわち、まだやったことのないという問題でございますから、はたしていずれがいいかという段になりますと、英国の情報をさらによく検討してみなければ、一がいには言えないと思います。その論文あるいは報道がどの程度の詳細さで報告されておりますか、その辺のところが、もう少しよく論文の形式で詳しく出ておりますと、批判のあれにもなると思いますが……。
#72
○岡委員 これは十一月号のニュークリア・パワーに出ているわけですが、今その関連した分を読んでみますと、「『燃料要素』最初の頃、その設計について中空燃料要素の長所が考慮された。相当な利点が得られることは明らかであるが、これは主として中空要素が可能にする高度な比出力によって得られる高いチャンネル・ヒートによるものである。然しながら、利用できる時間内では使用に際して在来の中実権型から期待できる程の大きな信頼性を生むくらいまでに中空燃料要素の設計を発達させることは不可能であった。この両点を比較した結果、予想される困難の方が、得られる利点よりも多いことが考えられたので、中実権を採用することに決定された。」こういうことでございますので、これは専門的な皆さんの方でもう少し詳細にやはり御研究いただきたいと私ども思いますので、ぜひ一つお願いしたいと思います。
 それから小椋さんにお尋ねいたしますが、先ほどいろいろ英国の事情を承りまして、大へん私ども勉強になりましたが、今導入しようとするコールダーホール型改良炉は、現在英国で幾つ運転しており、また最近に幾つまで運転されるか、そういう実情を御存じでありましたらお答え願いたいと思います。
#73
○小椋参考人 今の御質問でございますが、実は私、ここに自分がしばらく前に書きましたものを持っておるわけでございますけれども、その点、今そのページを出してはっきりと確認するひまがございませんから、うろ覚えで申しておいて、あとで間違っていたら訂正さしてもらいたい。大きな違いは、おそらくないと思います。
 コールダーホール型原子炉の最初のものが運転開始したのが一九五六年五月でございまして、そのほかに、ただいま運転を開始しておるものが、たしかヒンクレーポイント、それからバークレーと二つあると思うのでございます。しかし、まだ計画として、そのほかに少なくとも三つのものがあったように記憶しております。その運転開始年度の予定も大体発表されておりますが、今それだけお答えいたしておきまして、あとで訂正いたします。
 それから、御質問の要旨に沿っているかどうかは知りませんが、一つ私どもが知っておりますことは、発電用専門の原子炉の運転開始がイギリスではなかなかおくれているということは事実でございます。すなわち、この五六年から運転開始いたしましたのは、発電用と、もう一つは、例の原爆材料であるプルトニウムの生産と、二つをやっているわけでございますが、純粋の発電用だけの炉の運転開始が予定されていたわけでございます。それが中途で変更になりまして、やはりプルトニウム生産と兼用になったという事実がございます。
#74
○岡委員 もう一点だけです。これは英国下院の原子力公社の予算特別小委員会のこの八月の報告なんですが、これによりますと、こういうことを言っておるのです。「AGRによる最初の商業用発電所は一九六六年、もしくはそれより若干早く運転開始するであろうが、その設備出力当たり建設費は八十五ポンドと推定され、これはマグノックス方式の最低建設コスト見積もり百ポンド」日本は百八十ポンドでございましたね。「よりかなり低くなっている。従って、AGR発電所の発電コストは」云々と書いてあるわけでございます。この英国の発電計画は、当初一九六五年ないし六年までに五百万キロワットないし六百万キロワットという計画でございましたのを、年次も一九六六年に繰り下げ、計画も六百万キロワットを五百万キロワットに切り下げたことは御承知の通りであります。さらにその上、英国の下院が、こういう予算的な観点から、一九六六年までにそれよりも若干早くAGRが運転するということを言っておる。さらに最近、第四番目か五番目に予定されておったダンゲネスの――これは当初コールダーホール型を入れるつもりであったのを、AGRに転換しようという情報があります。そうなってくれば、六五年か六六年にはAGRの建設が始まってくる。日本が六三年か六四年に古色蒼然たるコールダーホール型を作って運転をするころには、本国においていち早く、より経済的なAGRがもうすぐおっつけて運転を開始するということになると、いわば原子力発電史の記念碑的な存在を日本が経済的にかかえ込む結果になるということを私どもは憂えるのです。そういう点の見通しは、私はそう思っておるのでございますが、小椋さんの御所見はいかがでしょう。
#75
○小椋参考人 ただいまの御質問で、私が新しく伺ったこともあるわけでございまして、私どもも、なお詳しく勉強しようと思っておりますが、大体そういう傾向はすでに早くから見えておりまして、コールダーホール型の原子炉が、発電用としてはたして引き合うものであるかどうかということが、運転計画の進むにつれて次第に疑問になってきた。従って、やはりプルトニウム生産と発電と両様の方向でなければ引き合わないということになっておる。さらに、発電用専門の炉としては型が作り出されなければならないということが次第に明らかになりつつあるということだと思うのであります。
 それで、コールダーホール改良型の意義でございますが、これは、一番初めにこういう実用型の原子力発電の炉ができたという点では評価されなければならないと思います。たとえば、これについてイギリスのジェイが書きました小冊子を見ましても、これは古くさい最初の蒸気機関車のようなものであって、ばかでかいものであるが、能率の著しく低いものであるということに将来はなるかもしれない、こういうふうに申しておりますが、コールダーホール型の原子炉が早晩そういうようになり、また、そうならなければ、原子力発電、原子力開発の進歩というものはないのだという結論にもなるわけでございます。それが、しかも、今お話のありましたように、かなり早い期間にそういうことが目に見えてきておる、こういうことでございます。これは、私の意見にわたることでございますが、やはり、外国からどのような炉をただいま導入するにいたしましても、日本がそれによって運転経験を得る、あるいは技術要員を訓練するという役には立つでございましょうが、やはり、日本自身の技術の発展が十分に保証されない限りは、輸入した動力炉の役割はそのようなものにとどまって、日本における原子力発電の本格化ということにはなかなか役立たないであろうと考えるわけでございます。
#76
○石野委員 ただいまの御意見で、いろいろとわれわれもまた考えさせられるものが多いのですが、この際、お三人の方にお伺いしておきたいと思うことは、コールダーホール型の炉は、やがて記念碑的なものになってしまうのだろうという見通しが案外に早くくるであろうというようなときに、運転経験と技術を学び取るための目的をもってだろうと思いますが、この炉を入れることを非常に急いでおる面が見えるわけでございます。この際、ほんとうに日本の原子力に関する産業開発を考えるにあたって、やはり学術会議の立場、皆さん学者の立場から見ますると、今の日本の段階では、もっともっと基礎研究に力を入れるべき段階ではなかろうかというような感を強くするのでございます。もちろん、それは基礎研究だけではいけないので、総合的に動力用の実験もしなければなりませんし、いろいろなことをやらなければいけませんが、ことさらに、今日の段階では、その基礎研究に力を入れることが原子力長期開発の問題で重要なのじゃなかろうかという感がするのでございますけれども、お三人の方々の御意見を一つ聞かしていただきたいと思います。
#77
○岩瀬参考人 私個人の意見として申し上げますが、古くなるからもう要らぬというのでは、やはり、どうも簡単には割り切れないと思います。日本の国の立場から申しますと、イギリスの言葉にもベター・レート・ザン・ネヴアーという言葉ございますように、何もないのではしようがないのでありますから、どんなにおそくとも本物をこしらえていかなければならぬ。それが古くなっていくことは、進歩の当然の結果でございます。このコールダーホールの改良型を日本で作りたい、これはどうしてもほしいものでございますから、ぜひほしい。これが古くなることも当然であります。しかし、日本自身がこれを古くしてしまっていきたいもので、外国がまたこれを越したものを出して、一々その後塵を拝するのではなく、日本自身がこれを使って――大へん高いものでございますから、これを使って、ぜひ大ぜいの力でこれを越えるものを作っていかなければならぬ、こう思っております。
#78
○石野委員 御意見非常によくわかりました。今の場合、やはりそういうような古いものを新しいものにするためにという意欲は非常によくわかりますのですが、この際の段階としましては、この炉についての安全性の問題とか、あるいは経済性の問題などにもいろいろな疑点が残されている段階ででも、なおかつそういうような先生の御意見でございましょうか。
#79
○小椋参考人 岩瀬先生がお答えになると思いますが、その前に、一言、初めの、いま一つ前の御質問について私の考えを言わせていただければ、私は、現在コールダーホール改良型の導入が、経済性のあるものとして認められているという点に問題があるのじゃないかと思います。すなわち、火力発電と競争できるようなコストで、つまり商業ベーシスで運営できるような発電所がこれでできるんだという想定では、これは間違いだということになるわけでございます。ところが、この原子力委員会の答申に申しておりますところの発電用原子炉開発のための長期計画では、そういう建前でもってその動力炉を入れるべきだという方針を決定いたしております。この方針が変えられておらないで、そうしてコールダーホール改良型の原子炉が入れられるのは、やはりこの方針には合わない。従って、このコールダーホール改良型原子炉を入れるならば、この建前を先に変える必要があるんじゃないか。すなわち、岩瀬先生のお話にあったように、日本でもって、これを日本自身の力で古いものにするためには、今、石野さんから御指摘のありましたところの、もっと基礎研究に力を入れる。その次には、やはり実用化研究ということも、日本の科学研究の方では欠けておる面でございまして、この点も必要であろう。だが、実用化研究というのは、まだここで採算のとれるものをすぐ作り出すということではなくて、採算のとれるようなものを作るための技術の進歩をはかるというものでございます。従って、そのような面での研究にやはり非常に力を入れるということが、それと一緒に必要になると思うのでございます。
 それからまた、安全性の問題については、ここで私申し上げる必要はないのでございますが、もし、そのような、つまり火力発電と今直ちに競争しなくてもいい原子炉ならば、安全性の確保のために惜しみなく金をもっと使うようにしてもよろしい、私は、そういう建前でコールダーホール改良型の原子炉の導入をやるならやるべきだ。つまり、建前が今までの建前と違ってきておる、条件が違ってきておる。そうして、ここでそれを変えるべきときではないか、これを変えることは別に不賢明でも何でもないんであって、初めに立てた目標が、その後の情勢の変化によって変えることが心要になってきたのであるから、変えた方がよろしいのであって、むしろ、変えないで、このまま原子炉を入れるということは、今後の日本の原子力の研究、開発利用態勢にゆがみを作り出すということも心配されると思うのでございます。
#80
○村瀬委員長 石野委員に申し上げますが、もはや午後二時近くにもなっておりますし、参考人各位には御昼食も差し上げず御意見の開陳を願っておりますので、ごく簡潔に御質問を願います。
#81
○石野委員 私は、参考人の方には大体お話を承りましたので、もし岩瀬参考人から何かお話があればちょっと承りまして、そのあとで佐々木原子力局長にちょっと伺いたいと思います。
#82
○岩瀬参考人 お答えいたします。私の、コールダーホールを入れようといたします前の段階のときに、しろうと考えといたしまして一番疑問に思ったのは、これだけ大きなものにしなければ、あの勉強ができないのかどうかということだったのであります。それで、このことはいろいろお聞きもいたしましたけれども、あれより小さなものですと、その次の段階で動力炉としていくときにはモデルにならない。全然もう実験室内のようなことになりまして、中間というと、どうしてもあそこまでになる。しかも、それがたまたまあのくらいにいたしますと、先ほど小椋さんからもお話がありましたように、一応経済ということもたまたま成り立つ。たまたまだと私は思ったんですが、大へんそれが強調されて、これは採算がとれる、火力と比べてどうだとか、水力と比べてどうだとかいうところまでいってしまっておるようでございます。しかし、私たちから考えますと、動力炉を将来やらなければならぬ、これにある程度の大きさのものがモデルとしてはどうしても必要である、それが一ぺんにあのくらいの大きさにしなければならなかったかどうかということだけは疑問だったんですが、あのくらいにしないと全然モデルとしての意味がない、こういうお話だった。それが、たまたまあのくらいにすると引き合うのだ、こういうお話になったので、これは大へんいいことになったと思って、まあ、お話を了解したわけなんです。
#83
○村瀬委員長 参考人各位からの意見の聴取はこの程度にとどめます。
 この際、参考人各位に申し上げます。
 本日は長時間にわたり、しかも、貴重な御意見の発表をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して、私から厚く御礼を申し上げます。
    ―――――――――――――
#84
○石野委員 佐々木局長に、もう時間が非常に過ぎていますから一つだけお聞きいたしますが、先ほど田中委員からの質問に対して、佐々木さんは、とにかく原子力委員会は三千時間以上も使って、百何回も会合を持って、慎重に、水の漏れるすきもないほどの検討を加えたのだというようなお話でございました。ところが、今参考人の方々の御意見では――これはきわめてわずかの方の御意見でございますけれども、こういうふうに問題はたくさんあるわけでございます。私たちの承知する限りでも、いろいろと、たとえば、核設計の問題にしても、先ほど岡委員から言われた中空燃料の問題にしても、あるいはまた、ハチの巣型にした黒鉛の性質の問題にしても、あるいはまた、容器の放射線損傷の問題にしても、あるいは緊急用装置というような問題にしても、特に緊急用装置の問題などは、問題がやかましくなってきたので、特にいろいろと処置されたような形跡があります。しかし、それがほとんどアイデアの段階だとさえいわれている。こういうような問題を、私たちより以上に局長はよく知っているだろうと思うのです。それにもかかわらず、局長は、万全を期したのだ、こう言われることが、どうもやはり解せないわけです。私は、かかる問題は、ここで局長にお聞きするよりは、中曽根長官あたりにいろいろ意見を聞かなければならぬと思いますけれども、局長は先ほど大上段にかまえて、万全を期したのだ、こう言われた。局長は、こういうような問題が現在あるのだということについては、そんなことは必要ないのだ、ノー・コメントだという立場に立ってお話になっているのか、現に、こういう問題は学者間とか、あるいは一般の各方面において問題になっているということを承知の上で言われているのか、そうしてまた、それは考慮する必要はないという考え方でお話しになったのかどうか。ことに、きょうの小椋参考人あたりも言われているように、もう早晩この炉も、経済性の立場から見ましても、やがて古いものになってしまう、むしろ、日本が古いものにするならいいけれども、日本が古いものにする前に、世界が古いものにしてしまっている、この仕入れ先であるところのイギリスでは、もうすでに古いものになってしまうということがわかっておっても、なおかつそれを急がなければならぬ理由はどこにあるという疑念を持っておるわけです。そういう観点から、佐々木局長があまり面子や何かにこだわらないで、この事態を直視して、こういう問題をもう少し真剣に考え、学者の方々も納得のいくように、それからまた、一般の方々もやはり納得のいけるように――ことにこの立地条件なんかの問題になって参りますと、私どもも、ちょうどそのそばにおるものですから、非常に重要な問題があるわけでございます。ことに原研などというのは、原子力開発のための一番中心になる場所でありますが、この原研が原発との関連性から、やがて動きがとれなくなるような場合が不幸にして出るようなことも予想されるかしもれない。そういうことを考えまして、なるべく危険分散ということを考えて参りますれば、立地条件なんかもそんな簡単にきめらるべきものではないと思うわけでございます。従って、局長は、前からおれは議会でこういう答弁をしているのだから仕方がないという建前でものを言わないで、この際、こういう参考人の方々や何かのお話があることを真剣に取り上げて、もう一度原子力局あるいは委員会等にその問題の討議の時間をかし、念には念を入れるという配慮を持たれる気持は起きてこないのかどうかということを、この際局長に聞いておきたいと思います。
#85
○佐々木政府委員 ただいまの段階は、先ほど御説明申し上げましたように、原子力委員会としては、内閣に答申書を出しまして、内閣自体として、行政府としてどういう措置をとるかという段階になっておるわけですが、内閣の方あるいは通産省といたしましても、最後の手続と申しますか、そういう点をただいま踏んでおる段階でございまして、今の段階で、今までの審議をもう一ぺん再考慮するというふうなことは、なかなかむずかしいのではなかろうかと私考えます。ただし、お話もございますし、あるいは新しい問題でございますので、今後いろいろ注意すべき新しい問題が出てくると思います。そういう際には、どんな若い学者の意見であろうと、あるいは機関でなくて、一人の個人の意見であろうと、これが安全性その他重要な問題で、内容に関する問題でありますれば、私どもはこの問題と真剣に取っ組みまして、そのつど解決に向かっていきたいという決心は変わっておりません。その点だけははっきりいたしたいと思います。
#86
○村瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。
    午後一時五十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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