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#1
第033回国会 科学技術振興対策特別委員会 第9号
昭和三十四年十二月十八日(金曜日)
    午前十一時十三分開議
 出席委員
   委員長 村瀬 宣親君
   理事 西村 英一君 理事 平野 三郎君
   理事 前田 正男君 理事 岡  良一君
      今松 治郎君    大坪 保雄君
      加藤 高藏君    木倉和一郎君
      小平 久雄君    福家 俊一君
      細田 義安君    南  好雄君
      内海  清君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   原田  久君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   佐々木義武君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局次長)  法貴 四郎君
 委員外の出席者
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局原子炉規
        制課長)    藤波 恒雄君
        参  考  人
        (日本原子力研
        究所理事長)  菊池 正士君
        参  考  人
        (日本原子力研
        究所理事、物理
        部長、原子炉開
        発部長国産一号
        炉建設部長)  杉本 朝雄君
    ―――――――――――――
十二月十八日
 委員秋田大助君、小川平二君、正力松太郎君及
 び八木徹雄君辞任につき、その補欠として大坪
 保雄君、福家俊一君、今松治郎君及び加藤高藏
 君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員今松治郎君、大坪保雄君、加藤高藏君及び
 福家俊一君辞任につき、その補欠として正力
 松太郎君、秋田大助君、八木徹雄君及び小川平
 二君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 科学技術振興対策に関する件(日本原子力研究
 所の運営等に関する問題)
     ――――◇―――――
#2
○村瀬委員長 これより会議を開きます。
 科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。
 この際参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。
 すなわち、日本原子力研究所の運営等に関する問題について、本日、日本原子力研究所理事長菊池正士君及び日本原子力研究所理事杉本朝雄君の両君を参考人と決定し、意見を聴取いたいたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
#5
○村瀬委員長 これより日本原子力研究所の運営等に関する問題について、参考人より意見を聴取することといたします。
 御出席の参考人は、日本原子力研究所理事長菊池正士君、同理事杉本朝雄君の両君であります。
 両参考人には本委員会の調査のため御出席をいただき、ありがとうございました。
 直ちに御意見を伺うことといたします。菊池参考人には、先般日本原子力研究所理事長に就任せられましたので、この機会に、その運営等に関し御意見並びに所信を伺うことといたします。菊池参考人。
#6
○菊池参考人 はからずも、原子力研究所の理事長を仰せつかりまして、まだ、就任後二カ月にやっとなりまして、だんだん様子もわかって参りましたところであります。就任早々から、たびたび、抱負を語れとか、いろいろ御要求が方々からありましたが、私としましても、内情を十分知らずにどうする、こうするということも言えず、まだ、あまり抱負らしい抱負というものは発表したことも、ございません。現在、なお内情を十分によく知るということに努めております。しかし、一般的な見地から、この原子力はどういうふうに発展したらいいだろうか、それから、原子力研究所としてはこういうふうにあるべきだというふうな見地からは一応意見もあり、またそういう方向へ進めていきたいというふうに考えております。
 一番の問題点は、何と申しましても非常に新しい仕事であるということ、そして、それを始めました世帯がいろいろな世帯の寄り合いである、つまり、これはたびたびいわれることでありますけれども、大学関係、会社関係、それから官庁関係の人たちが寄り合いで集まりまして、それぞれがいろいろ異なった習慣でもってものを考え、事をやろうとするところにいろいろと困難な問題が今日でもなおあるようでございます。それで、何と申しましても、私の考えでは、運営と申しましても、事務的な運営をいかにうまくやっても、内容となる研究自体がうまくいかなければ、これは何にもなりませんから、研究をうまくやって、有効に進めていくということをまず第一と考えてやっております。理事長といたしましては、私は、もともと研究の方の出でありますから、こまかい事務的な運営の面についてはしろうとにひとしいと思いますので、副理事長に森田さんをお願いしまして、そういう方面を十分やっていただくようにお願いいたしまして、私は、できるだけ東海村の方に参りまして、研究所員と一緒にあちらで暮らして、研究所の意気が大いに上がるようにできるだけ努力していく、そういうことを考えております。もちろんそうかと申しまして、人的な運用に無関心でいるつもりは少しもございません。あの研究所につきましては、今までにもいろいろとそういう面から批判もありますから、そういう面については十分注意しまして、森田副理事長とともにすっきりした形に持っていきたいと考えております。
 それで、この研究をどういうように持っていくかということでありますが、これは非常にむずかしい問題でありまして、あわてたことをしては、決してうまくいかないということをつくづく考えております。とかく原子力と申しますと、方々から、いわゆる時代のフットライトを浴びまして、いろいろな問題が起こって参ります。たとえば、先日の放射能がちょっと炉から漏れたというようなことにいたしましても、決してわれわれとしては事故などといえるほどのものではない、ほんのちょっとした毎日の仕事のうちの一つのできごとであって――もちろん、そういうことができるだけ少ないように注意しなければならぬことは当然でありますが、その結果から見ましても、何から見ましても、あんなに世間で騒がれるような問題では少しもないのでありますけれども、それにもかかわらず、ああいうふうに新聞などに書かれるというようなこと、つまり非常に社会的に注目を浴びている事業であるということのために、とかくほんとうに地についたしっかりした研究をやっていこうとするときに、それが障害になるような面が多々あると思いますので、なるべくそういうことのないように、できるだけ落ちついて研究を進めていくということを一番に考えております。
 それで、あそこの研究所にはいろんな面がございまして、非常に基本的な研究をする面から、非常に応用的な面までわたっております。それで、基本的な研究ということと応用的な研究ということは非常に関連が深いのでありまして、どうしてもこの両方を両立してやっていかなければならないという事柄なのであります。しかし、なかなかその基本的研究の面はとかくいろいろな面で理解されにくいという点がございまして、予算なども出にくいという点があります。しかし、努めてその基本的な面を進めるとともに、それがただ単に基本的なもので終らないで、応用面へ有効につながっていくという努力を極力やっていく方針でやっていきたいと思います。
 まず、この基本的な面といたしましては、あそこにありますのは、物理の面と、物理化学、工学、みなその基本的な面にそれぞれタッチしております。それだけでは研究所としてはまだ十分とは思えませんので、ここに方々の部門が共通して一つの仕事を開発していくというような場面を作るために、今後非常に大切と思われる研究題目を選びまして、それをプロジェクトといたしまして、それに多数の基本研究をやっている者も、その研究の一部の基本的な部分を分担するというような形をとりまして、プロジェクトを何本かそこに立てて、そして、それを強力に進めるというやり方をとりたいと思っております。
 近々にプロジェクトとして取り上げたいという希望として話に出てきておりますのは、現在、すでにかなりそういう形をとって進行しつつあります平均質炉の問題もあります。緩中性子増殖炉の問題もあります。平均質炉の方は、すでにプロジェクトとして決定いたしまして進めつつあります。それから緩中性子増殖炉に対しましては、緩中性子の増殖炉として、今の方法をプロジェクトとして強力にやることがいいかどうかということの再検討をいま一度しようということに相なりまして、今その再検討の段階にあります。そのほかに、現在候補に上っておりますのは、国産一号炉の燃料を国産でやるというプロジェクトがあります。それをプロジェクトとして決定いたしまして進めることになっております。そのほかには、なお、直接発電の問題、これは蒸気に一度変えないで、すぐに原子炉から電気を取り出す研究、それから将来はプルトニウムをこの原子炉として使うことが必ず必要になる、これは資源経済からいいましても、ウランの二三八をブリーダのブリーデング・マテリアルとして使う限りはまず必要となりますから、プルトニウム金属の研究をやる、そういうようなことが話に出ております。しかし、これはまだプロジェクトとして決定する段階になっておりません。そういうようなことを徐々にやって参りまして、一方に、また現在いろいろな炉も完成いたしまして、その炉を使ってのいろいろな基本研究はこれからますます進んで参ります。それから、原研自体の基本研究を進めると同時に、この炉を方々の大学とか、あるいは会社のメーカーにも有効に使っていただいて、いわゆる施設の共同利用という面でも大いにサービスをする。それからさらにいろいろな問題についての共同研究、あるいは委託研究、受託研究というような制度も置きまして、これも今後大いに進めたいと思っております。
 いろいろとそういう考えを持っておりますが、とにかく、この原子力については、われわれは十年おくれたと申しますけれども、十年おくれたということは、ただ単にスタートが十年おくれて走っているということだけではなくて、もっと非常に大きな意味を持っておりまして、こういう状態から外国の原子力研究のようなああいう状態にまでいくことは、なみなみならぬ努力を必要といたします。決してぼんやりとゆっくりするわけではございませんが、時代の原子力々々々と、いわゆるうわついた意味の波に乗って変なまねをするというようなことは絶対に避けて、あくまでも落ちついて、しかも、それが一番早い有効な道であるということで、この仕事を進めていきたいと考えております。抱負というほどのことでも何でもございませんが、ごくあたりまえのことかと思いますけれども、今後の原子力の研究所をそういうふうにやっていきたいと思っております。従って、ここ数年中にはなばなしい業績を期待されるよりも、むしろ今後十年、十五年の後にほんとうにわれわれのやったことが意味があったのだという結果になることを念願してやっていきたい、こういうふうに思っております。
 簡単でございますが……。
#7
○村瀬委員長 次に、杉本参考人には、原子炉の運転操作等について、最近の事情を伺うことといたします。杉本参考人。
#8
○杉本参考人 ただいま私どもの研究所に運転中ないし建設中の原子炉が、計画中のものも含めまして四個ございます。現在運転中のものは、御承知の五十キロ出力のウオーター・ボイラーと申しますもので、これはすでに運転経験二年余を経ておりまして、ただいままでこの炉としては非常に順調な運転経過をたどってきております。この炉は、ただいま原子力研究所で動いております唯一の炉であります関係上、研究所の内部も、それから研究所の外部も、かなりこの炉を利用して、この炉でできます範囲のいろいろな原子力に関係する研究を行なってきております。
 それから二番目に、建設がほとんど終わりました炉は、出力が一万キロのCP5型と呼ばれる原子炉でございまして、これは炉体もほとんど完成したのでありますが、ただいまこの中に入れます濃縮ウランの燃料待ちの状態になっております。この燃料は、いろいろ皆さま方のお骨折りで、先般この燃料をファブリケートすることに関した法律が通りました関係で、二月末くらいには燃料が入る予定であります。そうなりますと、それ以降、まず原子炉本体の燃料を入れない状態の性能的ないろいろ試験をやりまして、そのあとでいよいよ燃料を入れて、いわゆる臨界実験というものを始めるわけでありますが、これが大体春、五月くらいからそういう状態に入る今のスケジュールでございますが、この炉が一応運転の状態に入れるのは九月くらいになるのじゃないかというように考えております。先ほど申しましたように、ウオーター・ボイラーは出力五十キロワット、それからJRR―2、CP5型は一万キロという出力で、出力に大へんな開きがございます。このような一万キロのようなCP5型の原子炉は世界でもまだ動いておりませんので、この炉を動かすまでのいろいろの準備はできるだけ慎重にやりまして、不都合なことが起こらないように十分気をつける考えでございます。ただ、この炉が運転に入りますと、先ほど申しましたように、出力が非常に高い関係で、中性子の強度も非常に強いために、まで今ウオーター・ボイラーでやっておりました実験よりももっと高度な実験が遂行できるようになります。従いまして、現在原子力研究所では、この炉を使うためにいろいろな器材の準備、整備を整えて、この炉が一日も早く正常に運転されることを待っておるような状況であります。
 それから三番目に、今建設中の原子炉は、いわゆる国産一号炉と呼ばれろ原子炉でありまして、前の二つが濃縮ウランを使った原子炉でございますが、この国産一号炉と呼ばれるJRR―3、三番目の原子炉は天然ウランと重水を使った原子炉でございます。この炉は国産一号炉と呼ばれるように、基本的な計画から設計等の基礎段階、それからその製作、建設をできるだけわが国の技術で行ないたいというわけでずっと進めてきたわけでありまして、この点については、すでに皆様よく御承知のことと思います。これは二十二年の三月ごろから日本のおもなメーカーと共同設計という形態をもって進めてきたわけでありまして、おもな会社と申しますと、石川島重工業、東京芝浦電気、日立製作所、富士電機製造株式会社、それから三菱原子力工業、こういう各社と共同設計という格好で、原子力研究所が中心になりまして設計を進めてきたわけであります。途中の段階におきまして、カナダの原子力公社に天然ウラン重水炉がございまして、カナダの原子力公社はかなり長い経験を持っておりますので、そこの公社と契約を結びまして、われわれが設計しました原子炉を、主として安全性の見地からいろいろ意見、御批判等を受けまして設計をなお固めてくるという操作を中間に入れて参ったわけであります。そのほか、もちろん途中におきまして広く日本の学界、工業界の御意見等も、委員会の形式等をとりましていろいろ盛り込んできたことは申すまでもないことであります。この共同設計が終了いたしましたのが三十三年の七月でございましたので、この際この製作を進めるべく、以下申し述べます各社に対しまして見積もりを提出することを依頼したわけであります。でありますから、それまでは、先ほど申しました会社と共同設計という形態をもって進んできたわけでありますが、ここで設計製作会社に次に申します会社を選定して依頼するということに踏み切ったわけであります。それは、原子炉の本体や実験設備、それからおもな重水の循環系統のポンプ、これを日立製作所にお願いしました。それから水・ガス系統とわれわれ呼んでおりまして、重水の主として冷却等をつかさどる部分でありますが、この部分の関係機器を三菱原子力工業にお願いする、それから、原子炉の中性子計測並びに原子炉を整備する設備、そのほか、これに非常に密接な関係のある電源設備を東京芝浦電気にお願いします。それから、この原子炉は、完成しました暁にはかなりの用途として放射性同位元素を国産するということがねらいでありまして、放射性同位元素製造の設備というものにかなり力を入れております。この部分を石川島重工業にお願いする、この二社は、御承知のように、その後日本原子力事業という一本の会社ができまして、この仕事はそこで一元的にやっておるわけであります。それから、先ほど申しました水・ガス系統の計測、制御に関係するいろいろな計測器、そのほか、この炉の放射線のモニター等につきましては、富士電機製造にお願いすることにしました。なお、この炉に使います黒鉛等も国産品を使うことにしまして、それは昭和電工と東海電極にお願いし、それからボラルというアルミニウムと硼素のまぜたようなものを使いますので、これは一部輸入したわけでありますが、住友商事、古河電工等に作ってもらうことにしております。その後、三十四年の二月下旬までに原研と製作分担の各社の技術陣営とでなお詳細な設計の完成に努力しまして、三十四年、つまり本年の三月下旬に契約が成立したわけであります。それから、原子炉を格納します建屋関係につきましては、主として竹中工務店でやることになり、建屋の方は年内にほぼ完成することになっておりまして、機器の方は、来年度から原子炉室で逐次組み立てが始まるというような段階になっております。この炉は、現在のスケジュールでございますと三十六年の三月に組み立てが完成しまして、約三カ月くらい置きまして臨界実験を始めたいと考えております。
 なお、この炉に使います燃料のことを付言いたしますと、この炉の燃料は、先ほども申しましたように天然ウランでございまして、約六トンを使用いたしますが、そのうち、地金の三トンは国際原子力機関から購入をいたしまして、これは先般わが方に入手済みでございます。焼料としての量は六トンでございますが、地金の場合は、申すまでもなく少し多く要るわけでございまして、合計で約七トンになります。従って、先ほどの三トンの残りの四トンは原子燃料公社で現在製造中でございます。この地金を燃料要素に加工することは海外のメーカーに頼むことになっておりまして、現在カナダのA・M・Fという会社がこの種の燃料要素に一番経験がございますので、ここと製作の契約を交渉中でございます。
 それから四番目の炉は、今度は出力一万キロの試験用動力炉でございますが、これは先ほど申しております出力と意味が違いまして、先ほどまで申しましたのは熱の出力でございますが、今度は電気出力の一万二千五百キロの炉でございます。この炉の件につきましては、契約はGEの沸騰水型原子炉ということで、今契約を締結せんとしておる段階でございます。現在動いております原子炉及び建設中の原子炉、計画中の原子炉につきましては、原子炉と呼ばれるものは今申しました四つでございますが、そのほかに、先ほど理事長からお話のございました平均質型原子炉、水均質型原子炉、そういうものを開発していく第一歩の段階として臨界集合体と申すようなものを作る段階がございます。その関係で目下建設中のものが、これはごく小さなものでございますが二つばかりあるわけです。
 簡単でありますが、全般の状況は大体そういうことであります。
#9
○村瀬委員長 以上をもって参考人よりの意見聴取は一応終わりました。
    ―――――――――――――
#10
○村瀬委員長 質疑の通告がありますので、この際、これを許します。岡良一君。
#11
○岡委員 御多用の菊池理事長、杉本理事の御出席を得ましたので、少しばかりお尋ねしたいと思います。
 私どもも、日本原子力研究所が日本の原子力研究のセンターにとどまらないで、行く行くはアジアにおける原子力センターとして、あるいはまた、国際原子力機関などによって権威づけられたアジアの原子力大学というような形に発展をさせたいものだと衷心から思っておる一人でございます。しかし、そのためにも、原子力研究所の運営が、もちろん今、理事長の御指摘になったように、何も原子炉の数の多数を誇るものではなく、研究そのものの内容の質の向上が研究所の生命であることには私どもも全く同感でございますが、同時に、やはり国民の信頼、世論の支持というものが大きくこの研究所に寄せられたいものだと思う。こういう立場からお尋ねをしたいのでございますが、これも理事長の御指摘のように、日本の国民は、原子力というものに対しては、一つの新しい問題であるだけに格段の興味を持っておると同時に、放射能というものに対して、ある意味において不合理とも言えるような敏感さを持っておることは御存じの通りでございます。そういうことから、しばしば研究所のできごとが非常に誇大に伝えられる、非常にショッキングなニュースとして取り扱われるというようなことがありますので、私どももそういう点を案じて、きょうは少しばかりそういう最近のできごとについての詳細な内容を、また具体的な事実をお聞かせ願いたいと思います。
 第一の問題は、事もなげに、先ほど理事長から、放射能が少し漏れたというお話でございましたが、いなかの新聞なんかでは、三面記事で五段抜きくらいで出しておるということでございますので、その事実はどういうことでございましたか、その具体的な点をこの際お聞かせ願いたいと思います。
#12
○杉本参考人 ただいま御質問のありましたことについて、先般起こりましたJRR―1、ウォーター・ボイラーの汚染の問題について、経過をちょっと簡単に御説明申し上げます。
 汚染の起こりましたのは十二月八日でありまして、この日は、この炉に、外部から照射依頼のありました燐酸アンモンというものを、炉の中心を貫通しております――われわれグローリー・ホールと呼んでおりますが、一番放射線の中性子の強い部分に、ちゃんとカプセルに封入して挿入して照射を行なっておったわけであります。この原子炉を四時十二分にとめまして、その後約三十分くらい時間を置いて取り出したわけであります。普通グローリー・ホールで照射いたしますときには、時間を置く関係上、次の日に取り出すというようなことを従来やっておったわけでございますが、この日は依頼者側から、この燐酸アンモンに生じます放射能の中で半減期の寿命の短いものを使いたいから早く取り出してくれという御依頼がございましたので、ただいま申しましたように約三十分を置いて取り出したわけであります。このとき、その穴に挿入してあります――われわれプラグと申しておりますが、このプラグを所員が引き抜いて、中のサンプルを引き出すというとをするわけでありまして、操作員がプラグをかかえて引き出しまして、これを所定の場所に置いたわけであります。こういう操作をいたしますときには、この炉室には保健物理部の方からそこの所属の管理者と申しますか、管理人が来ておりまして、その人が立ち会って操作をいたすわけでありまして、そういうことはその通り、従来通りやったわけであります。その立ち会いのときに使いますものはサーべー・メーターと呼んでおりますが、こういうもので取り扱ってみた範囲では、そのとき炉の停止後すぐでございまして、炉自体から相当放射線が漏れて参りますので、非常にバック・グラウンドと申しますか、そもそもそこらが炉心からまだ放射線が出たり何かしております関係上、感度のうんといいものを使ってそういうものを見るということはいたしませんで、サーべー・メーター等はそれほど感度のいいものではないわけでありますが、そういうもので調べたところでは、別段異常がなかったために、所員もそれほど――後に起こりましたような汚染に気がつかなかったわけでございます。それで、そういうことを終えまして、所員は退去時に必ず――原子炉室は放射線管理区域になっておりますので、この管理区域の出口には放射能汚染を監視するモニターが必ず備えてある。ハンド・フッド・モニターと申しまして、手足の汚染度を調べるものが置いてございます。そこでいつも調べるわけで、その日も調べたわけでありますが、かなり汚染を認めたわけであります。それで、直ちに保健物理部の、先ほどの放射線管理室から派遣してあります者に連絡しまして、そして、とりあえず人間の方が大事でございますから、衣服を脱がせ、はいているものをとって、そして、からだの方も除染を行ないまして、それから、一方、炉室の中の汚染を調べたわけです。そうしますと、先ほど申しましたグローリー・ホールの下その他数個所の炉室の床面に通常以上の、場所によってはかなり強い汚染を認めたわけであります。一番強いのは、先ほど申しました炉心の貫通孔の下の床面が――そういう炉室の中の床面の汚染として許される基準がきわめてあるわけでございますが、それの約二百倍くらいに汚染しておるということがわかったわけです。それで、これが何であるかということをとにかく調べる。それに従って、なぜこういう汚染が起きたかということを調べることが保健物理部及び放射線管理室の役目でございますので、それを保健物理部の方で調べたわけでございますが、その晩までの状況で、――その調べ方は、こういう放射性汚染のときには、半減週期と申しまして、放射能の減り方の様子と、それから、そのものから放射されます放射線のエネルギーをはかって調べる。その両方を併用いたしましてわかったことは、このおもな放射性物質はマンガンである。マンガン五六という放射性物質であるということが――その晩まではらしいということでありますが、そのエネルギー・スペクトルの点及び半減期から、かなり確実にそうらしいということがわかったのであります。ほかに、直ちにどういう原因でそういう汚染が起こったかということも、もちろん考えたわけでございますが、先ほど最初に申しましたカプセルに封入したものは燐酸アンモンであります関係上、このものからマンガンが生じるということは絶対ないわけであります。翌朝までちょっと原因がよくつかめなかったわけで、炉はもちろん停止したままにしまして、翌朝から運転開始をちょっと待ちまして、そして、もしこの放射能がマンガンでございますと半減期が二時間くらいでありますために、かなり急速に減少します。その割合で減少しますと翌日から作業を開始するのに差しつかえない程度になることが予想されましたので、少し昼ごろまで待ちまして、一応マンガンによる減衰ということがわかりまして、床の汚染もずっと少なくなりましたので、その日の午後から動かし始めたわけであります。人体には、先ほど申しましたように、すぐ着ていたものなどとりまして、それから、操作員はみなポケット・チェンバーと申すものとフィルム・バッジというものをつけて炉を操作しています。フィルム・バッジの方は現象に時間がかかりますが、ポケット・チェンバーという方は、すぐその読みを読めばどのくらい当たったかということがわかります関係上、ポケット・チェンバーで調べたところによると、三人の操作員のうちで、そのポケット・チェンバーの指示が問題になるような人は一人もいなかった。ごくわずかな量しか当たっていない。この当たった量が必ずしも汚染された放射性物質によるとは限らないわけでございまして、先ほどもちょっと申しましたが、炉をとめましたあとでも、その炉自身から放射能がどうしてもあとで出てきますので、そういうものに当たっているということも十分考えられるわけで、これはいずれにしましても全然問題にならない程度しか当たっていなかったので、非常にこれは幸いだったと思います。そういうようなわけで、保健物理部がすぐ炉室の床面等の汚染も迅速に検出しまして、その部分は立ち入り禁止、それから管理室ももちろん立ち入り禁止にしまして、翌日の炉の運転開始まで適当な措置をとったわけであります。
 なぜこのマンガンがそういうようにして床にこぼれたかというようなことにつきましては、こぼれましたとしてもごく微量なものであったと推定されるわけでありますけれども、その後いろいろ引続き原因等を追及して参ったわけでありますが、現在われわれが得ております結論は、この穴に差し込みますプラグの先端が少し腐食いたしまして、そこに生じておるさびが炉心の中にこぼれた。鉄は中性子、ことに早い中性子の照射を受けますとマンガンがその中に誘導される関係上、ごくわずかな、ことにマンガンというのは非常に半減期が短い関係もありますし、それからかなり強く誘導されます。そういうわけで、かなり強い誘導放射能がそういう原因で出てきた。そして、炉を割合にすぐあけて、中のものを取り出したために、そのサンプルを取り出すときにプラグに付着して落ちて床面を汚染した。それが操作員が認め得る程度にぱらぱら落ちたというようならば当然注意したでありましょうが、それほどでない、ごく気のつかない程度に落ちたために、多少その近所を汚染さして、鑑識に行って初めてわかったというような状況でございまいます。大体そういう経過でございますので、何かもっと御質問がございますれば御答弁申し上げます。
#13
○岡委員 国産一号炉が安全性の観点から、さらに設計の変更をされたやに、また、しようという御意図があるやに新聞に出ておりますが、その点はどういうことになっておりますか。
#14
○杉本参考人 ただいま御質問のありましたことは、十二月十三日の一部の新聞の朝刊に出ておりました事柄の御質向だと思います。あの記事は、私ども事情をよく知っております者から見ますと、非常に誤りが多い。それから、報道の手順と申しますか等につきましても非常に遺憾の点があったように思います。これはどういういきさつかと申しますと、国産一号炉の安全の問題は、先ほども私から申し上げましたが、設計の段階におきましても、われわれ初めてこういうものを自分で作る関係で非常に重要視しまして、そういう点で、一番こういう炉の運転に経験のあるカナダの原子力公社に安全性の問題から十分検討してもらうということをやったことは、先ほど申し上げた通りであります。そういうことを経て、設計を固めつつあったわけであります。そういうようなわけでありまして、あの新聞の記事に出ておりましたように、放射能が内部だけにこもって、外部に出てくることの事故想定というようなものを全然行なっていなかったということ、従って、最近何かやってみて、その結果から設計変更が起こるのではないかというようなことは、われわれとしてはないのでありまして、十分そういういろいろな事故想定に基づいて建物の設計とか機器の設計等を進めておったわけであります。ただ、安全対策書という形で原子力局の方にお出しするのは、この局の方とも十分お話済みで、出す段階は、この炉の工事施行の際に、施行許可を受けるときに出すということになっておりましたので、その準備をしておったわけであります。御承知のように、安全性の検討は、コールダーホール型原子炉の安全性の検討の関係上、この一年の間に、そういうことに携わっておる者の、検討する人たちの知識もずいぶんレベルが上がりまして、いろいろ計算に使います式等についても、その関係で以前よりも信頼性の置ける式を採用するようなことになっております。それから、その想定事故の考え方につきましても、以前はかなり現実離れのした想定事故を考えて、アメリカ等でそういうやり方をしておったわけでありますが、そういう、ほとんど考えられないような事故想定をして、そうしてそれを参考にして、炉をどうのこうのという議論をしておったわけであります。われわれ国産炉の安全性を検討いたしますときにそういうことを非常に問題にしまして、もう少し起こり得る事故で――どっちにしても非常に確率は少ないわけでありますが、もっと起こり得る事故の最大のものを想定していくべきではないかという考えでいろいろ想定事故を取り上げておった。この国産一号炉の場合には、この炉に非常に似ております――先ほどもちょっと申し上げましたが、天然ウラン重水のカナダにあります炉が、もう何年か前になりますが、御承知のように一度事故を起こしております。ただ、この炉とわれわれの炉とは冷却方式が違いまして、向こうの炉は他の軽い水が冷却しておりまして、われわれの炉は重い水で冷却しております。軽い水で冷却している炉は、その冷却能力が下がりますと非常に危険な状態になる。現にそういうことが原因になってあのような事故を起こしたわけでありますので、われわれの場合と比べると、われわれの方が安全性ははるかに高いわけでありますが、一応ああいうような事故が起こっているので、この炉で考え得る最大事故の想定としては、われわれは、カナダの炉よりもうちょっとばかりシビヤーな想定を一応立てまして、そうして、それに基づいて、この放射線がどのくらい出るとか、それからどのくらい漏れるだろうとか、どれくらい外部にいくだろうとか、そういうものを出しまして、一応安全性の検討をして参ったのであります。ただ、そこに使いました式等につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、もっといい式が最近出ておりますので、その辺のところをもう一度計算し直して原子力局にお出しする方がいいだろうというわけで、その取り扱い計算の仕方、それらを新しい式でやり、そうして、その式でも大丈夫であるということを確認した上でお出しする。普通の場合、その新しい式でやります方が古い式でやるよりも低目に出るということは傾向としてわかっておったわけでございますが、そういうふうにして、より確実と思われる線で安全性を検討してお出しするというわけで、まだ提出はおくれておったわけでございますが、そういう段階であったわけで、そういうようなことをやっておりましたことがおそらく誤り伝えられまして、先ほどのような記事になったのだと思います。
 それから、私の談話というようなものが同時に出ておりましたが、私は、そういうような談話を申し上げたことは全然ないわけで、これは明らかに新聞記者の方で作ったものであります。
#15
○岡委員 やはり非常に関心を持っているだけに、取り扱い方がまた誇大になる傾向もあろうかと思いますが、やはりそういうときには、研究所としてちゃんとそういうことのないように、しっかりした、責任を持てるスポークスマンがおられて、そうして報道に間違いのないように、また、間違った報道についても訂正をされるなり、そういう点、これからやはり御注意を願いたいと思うんです。さもなければ、あれを読んだ者は、そのままに受け取ってしまうということになると思うのです。僕も実は最初あの問題について、アンモンをカプセルに入れて炉心に入れるということになれば、特に被照射体として燐酸アンモンについては、厳重な上にも厳重な定性分析をしたものである、純度の高いものを入れておるに違いないのですが、それがなぜマンガンに変わったかということが、私ども化学の知識はありませんが、非常に懸念したわけです。たれかほかの者が無断でその実験でもやったのかとさえ思ったのですが、それはそれとして、今の御説明でその間の事情はわかりました。そうすると、その炉心に被照射のカプセルをつかんで入れるのですか、押し込んでやるのですか、外科の医者の鉗子のようなものでしょうが、鉄の先が中性子の照射で腐食するということが行く行くないようにする、あるいは事前に、そういうことがあるかもしれないということを皆さんの方では考えられておったわけで、ございましょうか、その棒の先の鉄が腐食するようなことが予想されておったことでございましょうか。
#16
○杉本参考人 このプラグの先には、実はある種の塗料が塗ってあったわけで、その塗料が、長い間の放射線の照射で変質してはげて、今度鉄がさびてきてなにされたということで、これは原理的には、長い照射を受ければ、そういう塗料もやられるということは考えられることであります。ただ、あのプラグとか、塗料とか、そういうものは、あの場合にはアメリカのものでございますので、どういう程度まで持つかということは、十分われわれわかっていなかったことは事実だと思います。今度そういうことがわかりましたので、ほかの部分にももっと注意を払って、あの炉も二年の余使用しておりますので、いろいろな部分も、一番心配な点を注意しまして、そういう予期しないことが起こらないように注意したいとは思っております。
#17
○岡委員 私ども、こういうことを申し上げるのは、しゅうとがお嫁さんに言うような気持ではないのです。やはり研究所で一番大事なのは、原子炉より人だと思うのです。たくさん若い研究者がおるのだから、それに対して何か万一のことがあってはお金にかえられないということから、そういうそそうが非常に気になるわけでございます。ポケット・チェンバーなりフィルム・バッジなり、出るとき入るときには手足を検査する。それでも中でそういうそそうが起こってきますと、そういう検査にもかかわらず、やはり実害を受ける可能性があるわけです。そういう点、CP5でもそういうことになればなおさらのこと、いろいろまた試料を照射するための操作をされることがだんだん多くなるのですが、そういう点、塗料がはげて鉄が出てくるというような、予期せざることのないように十分御研究を願いたいと思うわけであります。
 いろいろお話を承りたいと思いますが、時間もございませんので、所員の健康の万全を期するような態勢がほしいという点で、これは実際に研究所におられましてどう思われますか。現在の労災とか、健保というようなものでは、なかなか放射性障害は守り切れない、はみ出してくるようなケースがたくさん起こり得るわけですが、こういう点、何とかやはり特別な立法措置なり、法の改正なりで研究所の所員の健康を守れるように、また、それに対する生活保障が与えられ得るような措置が必要ではないかということを感ずるわけですが、こういう点いかがでございましょうか。
#18
○菊池参考人 この点は非常に苦慮しておることでございまして、われわれの一番心配しておりますのは、ああいう二次的に、こっちが放射能の汚染を受ける、これは量からいいましても、ニュートロンそれ自体の性能からいいましても、それほど大きくあり得ないものでございます。たとえば、今度の事故にいたしましても、こぼれました量はわずかに百六十マイクロキューリーということで、一ミリキュリーにもなっていない。ただ、汚染の原因がわからないために非常に追及いたしました。その一番心配した理由は、炉のフュエル自身が何かのことで外に出てきた、こうなるとほんとうの汚染になる。これがわれわれの一番心配しておることなんです。さっき杉本さんが言われましたように、この炉はすでに二年運転いたしておりまして、四万一千キロワットアワーくらい運転しております。あの種の炉を、あんなにまで研究に酷使しているところは世界にまだ例がない。従って、あの炉が何年持つかというようなことについても、正確な資料はないわけです。そういう点一番われわれ心配しまして、毎日スタートの前には、炉のあらゆるポイント、ポイントを押えてスタートするというように、その点には非常に神経を使ってやっておるわけです。そういうふうに、炉の運転自体には非常に注意しております。
 一方、また何か起こった場合にどうするかという対策の問題でありますが、これにつきましては、もちろん今申しましたように、平常時の管理体制、これは保健物理部に放射線管理室がございまして、フィルム・バッジ、それからポケット・チェンバーの両方を使います。それぞれ必要なところに管理区域を設けまして、そこには保健関係の人が常時出張しておりまして、管理しておるわけです。何か事故が起こった場合にどうしたらよいかという問題について、今いろいろ検討中でございまして、最近、非常事故措置暫定規則というものを作りまして、それからさらに、非常時のときの防護活動をするための要領、それからそういった場合の組織などを研究しておると思います。それにしましても、今おっしゃいましたような、実際に非常に汚染されたというような場合に、たとえば、そこへ入れということを言っていいのかどうかという問題です。一体どういうふうにそういうときの補償があるのだろうかということで、いろいろ中でも疑問が起きまして、一番問題なのは、救護班の編成の問題なんですが、その前に何かそういう立法措置が必要ではないかというような議論が中にございまして、また最後的な、防護活動をどうするかという案は、実際には研究中の段階でございますが、そういう努力も今しております。今の御注意のように、われわれ実際大ぜいの人を預かっておりまして、また周囲にも民家もございますし、こういった障害に対しては十分注意してやるつもりでおります。
#19
○岡委員 おそらく両先生とも、あちこちの国の原子力研究所をごらんになったと思いますが、私の知る限り、あれほど原子炉が密集したところもちょっとないのじゃないかと思う。それだけに研究者の健康については、モニタリングもさることながら、万一の場合における補償を立法化する必要があるだろうということを、私はお尋ねしておるのであります。と申しますのは、現に広島、長崎の被爆者が、今になっても悪性の急性の白血病でぽっくりぽっくりとやられるという事実もありますし、ああいうふうに急激に大量の放射能を浴びなくても、持続的に、緩慢に浴びましても、その総量によっていろいろ病気の変化が起こるわけであります。また、放射能による病気は、必らずしも放射能に基づくと断定しがたい病気もありますので、また十年後に病気になったが、これは原研におったから病気になったのかということになると、なかなかけじめがつかない場合もあると思うのです。さて、一たんかかってみると、それがなかなか早くなおらない。そうすると労災なり、あるいは少なくとも健康保険なんかでは、長期療養は現在三年くらいしかできない。なかなか三年くらいではなおらない。病気によっては、少し仕事をすれば、すぐ疲労感出てきて仕事ができない。症状自体が人の生産能力を奪いながら、見た目には大したことがないというような状態が起こったり、従来の病気という観念からはかなり厄介な、健保や労災で取り扱いにくいような症状を呈しているわけです。しかも、それが原研で働いたから起こったのかわからないということにもなり得るわけで、いろいろな点に放射能障害という病気は特殊性を持っているわけですから、健保や労災だけではざるの目を抜けて落とされてしまう可能性がある。その点は皆さん方も十分考えて、現在の健保や労災や国保でやれるかという点の十分の御研究もさることながら、理事者としては、所員のために、現行のいろいろの社会保障立法でやれるかどうかという点を御研究願いたいと思うのです。当然それは国会として手を打つべき重要な問題だと思いますので、お考えおきを願いたいと思います。
 それから、この間も私東海村の原研に参りましたが、街道筋にどんどん家が建っていますね。水戸から研究所までバスが何十台も来ておる。あたかも観光地みたいになっているのですが、あの周辺にどんどん新しい人家がふえ、人がふえてくるのです。そのこと自体も問題でございますが、それとは別に、ああいう方面に対してのモニタリングはどの程度やっておられますか。どういう組織で、どういうふうにやっておられますか。
#20
○菊池参考人 現在、所外には、一番遠いのは、十キロメートルくらい離れましてモニタリングのステーションがございます。これは保健物理部の野外モニタリング・ステーションで、七カ所ございます。全部はまだできておりまんが、そこと本部の中で無線連絡かございまして、そこの放射能が、常時本部で記録として見られるようになっております。もし何かあれば、すぐに時を移さずそこで検出できるようになっております。それから、ああいうふうに非常に参観人が多うございまして、今後いろいろ放射能の高いものができますし、炉も大きくなりますから、中でもいろいろ議論が出まして、今はあの中がほんとうに自由自在になっておりまして、かきねもありますが、それを越えて、どこからでも入れます。どこを歩いてもいいということにはなっておりますけれども、やはり安全のことを考えますと、どうしても多少立ち入り禁止というような区域を作らなければいけないのじゃないかと思っております。これは決して皆さんに来ていただくのを歓迎しないという意味ではないのでありますけれども、やはり安全の面から、それはしなければいけないのじゃないかという話が生じております。
#21
○岡委員 これは佐々木局長にお尋ねをした方がいいかもしれぬが、原子力施設周辺整備について、中曽根長官もいろいろ御抱負がある。ところがああして道がよくなれば、人家というものはいやなもので、どんどん道の辺に建ってくるという状態で、周辺整備が法制的に措置される以前に、相当人家が建て込んでくるのじゃないか、そういう勢いのように私は見てきたのです。これは何とか考えなければならないのじゃないかと思うが、原子力局あたりどうでしょうか。
#22
○佐々木政府委員 非常にむずかしい問題で、私どもも、ああいうような傾向はできれば、是正したいと思っておりますけれども、ただいまの法律そのままでは制限できない状況になっておりますので、近く周辺整備法のようなものでも出す際には、建設統制令と申しますか、建築を規制し得るような法規を作って、それをあの地点に準用するかどうか、まだ最終的にはきめておりませんけれども、あるいはそういう必要に迫られるかと思います。従って、そういう法規も必要だと感じておりますが、ただいまのところ、まだ最終的にはきめておりません。
#23
○岡委員 ぜひ一つ、そういう点も御努力をお願いしたいと思います。
 それから、この間参りまして研究所の方ともいろいろお話いたした際に、飛行機の墜落の問題が実は出たわけです。水戸の調達事務所で、飛行機の墜落の場所を地図の上でお聞かせを願いました。その結果によると、原研の南の方に標的もあるので、そこによく落ちておる、北の方にも落ちておる。そこで中曽根君がアメリカの方といろいろ御折衝になって、飛行機の爆撃のコースを変えるということになったようですが、私はコールダーホールそのものよりも、原研に万一そういう事故があると、えらいことになりはしないかということを実は心配したわけです。正常な練習をしておる飛行機のコースは変えられるでしょうが、墜落をさせないという保証は、米軍だってわれわれに与え得るわけでもない。墜落するコースはこの方向だということは、約束してもらえるはずのものでもない。そうなると、これは原研としてもよほど考えなければならない。日本原子力研究所をああいうところに置いたということは、私どもも責任問題だと思っていたわけでございますが、飛行機が落っこちたときの解析なんかされたことはございますか。
#24
○菊池参考人 非常な仮定を設けませんと実際計算はむずかしいわけでございますけれども、原則的な立場から、ある種類の仮定のもとにはいろいろやってはいるようでございます。そういうことがありましても、今の事故解析の最悪の事態というような、それを上回るということはちょっと考えられないというふうに考えております。しかし、解析ということ自体が非常にむずかしい問題でございまして、これは何とかあそこは、そういう意味で、どこかほかへ移してもらえばそれに越したことはないというふうに考えております。
#25
○岡委員 百ポンドの模擬爆弾の場合、あるいは二十五ポンドの模擬爆弾の場合、これが直撃した場合、マッハの速度で千メートルの上から落とした場合どうなるかということをいろいろ調べてもらいました。これはある程度まで数字が出てくるのですけれども、何トンの戦闘機がぶつかったときどうなるのか、あるいはそれが五十メートル離れたところに墜落したときの衝撃波はどうなるのか、二十二トンの爆撃機が落ちた場合どうなるのかということは、現在はとてもできない。ただ経験から判断をしてという前提の上に立って、かなり専門家の意見を聞きますと、三メートルのコンクリートのシールドで、かりに七トンの戦闘機が当たった場合、表面にかなりひずみが起こるだろう、しかし、問題は、三メートルでも、内部に亀裂ができやしないかということを心配しておられました。しかし、これは全然計算をして出た数字ではございませんので、ただ心配な予想という程度でございますが、やはり原研とすれば、そういう事態も考えて、今後の建物なり、労務管理も必要じゃないかというふうなことを私は現地で感じました。その点どうでございますか。
#26
○菊池参考人 それは御説の通りでありまして、非常に計算のやりにくい問題で、実験をやってみるわけにもいきませんし、大へん困る問題だと思います。ただ、衝撃波というようなことは、詳しい計算をしたわけではございませんけれども、遠くへ落ちたものの衝撃波ということであれば、まず問題はありません。やはり全力で直接ぶつかってくる場合が一番心配で、それ以外のケースはほとんど大丈夫だと思いますけれども、しかし、そういうケースがないとは言えないわけであります。先ほど申しましたように、できればどいてもらえば一番いいということであります。それで、ほんとうに当たったら大へんだという場所でございますが、それは非常に限られた局部の問題になります。ただ近所に落ちるというような問題では、今申したようなことが言えると思います。しかし、これはそういう確率だけでものを言うことはできませんけれども、起こり得る可能性としては非常にわずかな問題だということは言えると思います。だから、それでいいということは決して申せませんけれども、そういう意味で、できるだけ早くあそこをどいてもらえば、それに越したことはないということをいつも考えております。
#27
○岡委員 それからこの前、五月か六月ごろでございましたか、ストライキをやるぞというので組合の諸君が立ち上がられたことがあった。あのときに、いろいろ処遇問題については中労委の裁定ということになったが、その結果はどういうことになりましたか。
#28
○菊池参考人 あれはまだ裁定案が出ておりません。もう近日中に出していただけるものと思っております。こちらからの案と組合からの案と両方がすでに出ておりまして、これから裁定案が出る直前というふうに私了解しております。
#29
○岡委員 あのときにも率直に申し上げたのですけれども、非常に私どもが期待を寄せている原研が、毎年々々ストライキ権を確立してストライキを始めるということが繰り返され、しかも、それが大きく報道されるということは、原研の将来のために非常に好ましくないということで、この委員会でも問題にしたことがありました。幸いに、研究者の気持を十分御存じの新しい理事長を迎えられたことでもありますので、どうか一つ、今後は理事長が先頭に立たれて、所員の大きな和の中で、新しい研究と取り組んでいく。パイオニアの精神を十分に養っていただきたいということを、私心からお願いをしたいと思うのです。
 それから、今ちょっとお話がありましたが、日本原子力研究所の場合には、原子炉の安全審査報告はどういう手順で出すことになりますか。
#30
○佐々木政府委員 原子力研究所の場合は、設置の許可は要らないわけでございます。これは原子炉規制法では、原子力研究所以外のものが原子炉を設置する際には、事前に許可願いを出せということになっておりまして、原子力研究所は除外してあります。その理由は、御承知のように、監督も十分に行き渡りますし、同時に、基本計画等を総理が定めまして、それにのっとって事業を遂行しますので、設置の許可というものは研究所は除外されております。しかしながら、それでは安全問題はどういうふうに処理するのかという点になって参りますけれども、設計、工事方法等の認可の際に、安全問題はほかの原子炉同様十分に審査をする建前をとっておりまして、この方は先ほど杉本さんからもお話がございましたように、CP5もそうでございますけれども、今度も設計、工事方法の認可願いを出していただきまして――ただいまは、十一月十五日に原子炉の本体の申請は出ておりますけれども、それに伴っての安全対策書は実はまだ出ておりません。それは先ほど杉本さんからお話があった通りでありまして、まだ役所の方には出ておりません。それが出て参りますれば、ただいまの考え方といたしましては、これを安全審査部会にかけまして、安全審査部会で十分検討をいただいた上で、原子力委員会としてもよろしいということでございますれば、その設計、工事方法に対する認可というふうな手順になると思います。その認可がおりました上で、研究所といたしましても実施に入るというふうな手順になろうと考えております。
#31
○岡委員 そうすると、原子力委員会の安全審査部会が審査するというのでなくて、規制課あたりで大体結論を出されるわけでありますか。
#32
○佐々木政府委員 安全審査部会にかけたいと思っております。
#33
○岡委員 それから今杉本さんのお話で、天然ウラン重水型、これはチョーク・リヴァーかどこかでカナダがやっておるようでありますが、向こうの原子力公社と技術提携というようなことをされたわけでございますか。
#34
○佐々木政府委員 非常に自信のない答弁で、間違っていたらお許し願いたいと思いますが、たしか乙種の技術提携で、情報の提供を受けるという建前ではなかったかと思います。はたして乙種の契約を結んで援助を受けたのか、あるいは――おそらく乙種契約であろうと思います。
#35
○岡委員 カナダとの何か協力協定を結ばれるのじゃございませんか。
#36
○佐々木政府委員 条約の方は、御承知のように、カナダと協定を結びまして、それでイエロー・ケーキの提供あるいは細部にわたる情報の提供もできると申しますか、そういうものはでき得るような条約は結びますけれども、これはまだ批准を受けておりませんので、条約として発効しておりませんが、その事前に、条約に許されない範囲内、言いかえますと、条約がなくても援助できる範囲内で乙種契約を結びまして、そのもとで援助を得るというふうに承知しております。
#37
○岡委員 僕たちが日本原子力研究所を特殊法人にすべきだという考え方を支持したのは、そうしないと、一般の公務員だと、待遇の問題でいい人が来ないのじゃないかという心配があったことも大きな理由だったと思いますが、その後どうでございますか。大蔵省あたりがだいぶ締めつけているのじゃございませんか。率直なところどうでございますか。
#38
○菊池参考人 私どもとしましては、そういう点は、給与など上げていただければいただくほどいいわけでございますけれども、現在、大体公務員の二割ないし三割上回る線にあるわけでございまして、どういう線が適正であるかということは、これはわれわれとしてもちょっと判断いたしかねます。やはり税金でほとんどまかなわれているあれでありますから、公務員より非常に上回るということがいいのか悪いのか、その適正度ということは、私どもとしてはちょっと判断いたしかねるのであります。ただ実情として、そのために人がとりにいくという面は確かにございます。会社と比較しましたら、それは非常に低うございますから、そういう面でもそれは確かにございますけれども、しかし、これは私は、何でもかんでも上げさえすればいいものでもないし、やはり適正なところがあると思います。その辺は、やはり世間一般の方が判断して下さるのがいいんじゃないかと思います。
#39
○岡委員 ただ、問題は、御指摘の通りで、何でもかんでも上げろと言ったって無理な話でございますけれども、当初よりもだんだん先細りのような格好になれば、研究所の諸君にしてみれば、そこに元気がくじけるかと思いますので、その点を心配してお尋ねしたわけであります。
 それから、もう一つの問題は、僕たちは研究の環境を自由に、民主的にという気持を持っておるわけでございます。佐々木局長も非常にこの原子力問題ではエキスパートでもあり、熱心でもございますが、熱心のあまり、そこに繁文褥礼の傾向があるということをときどき聞くわけでございます。そういう点いかがでございますか。おられますから、一つ率直に……。
#40
○菊池参考人 これはないとは申しませんけれども、こういう一つの大きな機構になりますと、どうしてもそういう面はありますので、そういう面は、極力私の方で遠慮せずにどんどん申し上げることにしておりますし、それを率直に聞いてはいただいております。必ずしも佐々木さんのところだけで済まない問題もございまして、全体としてはそういう面でかなり束縛があるように感じております。
#41
○岡委員 最後に、希望でございますが、これから伸びる盛りの子供といったような環境におられるわけでございますから、これは自由にどんどん素質を伸ばしていかなければならぬので、佐々木さんも、ぜひ鬼千匹の小じゅうとにならないようにやっていただきたいと思います。
#42
○村瀬委員長 他に御質疑がなければ、参考人からの意見聴取はこの程度にとどめます。
 両参考人には、長時間にわたり御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、私から厚くお礼を申し上げます。
     ――――◇―――――
#43
○村瀬委員長 この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。
 すなわち、コールダーホール改良型原子炉の安全性及び経済性に関する問題について、来たる十二月二十二日、立教大学理学部教授、日本学術会議放射線影響調査特別委員会幹事、同原子力特別委員会委員田島英三君、東京大学教授、日本学術会議会員、原子核特別委員会委員藤本陽一君、京都大学工学部教授、日本学術会議会員、原子力問題委員会委員堀尾正雄君、以上三名の諸君を参考人と決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#44
○村瀬委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 なお、参考人の出頭日時等に変更の必要が生じたときの処置につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますので、御了承願います。
 次会は、十二月二十二日開会することとし、本日はこの程度にて散会いたします。
    午後零時四十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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