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1959/06/26 第32回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第032回国会 本会議 第4号
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1959/06/26 第32回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第032回国会 本会議 第4号

#1
第032回国会 本会議 第4号
昭和三十四年六月二十六日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和三十四年六月二十六日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国土開発縦貫自動車道建設審議会
 委員の選挙
 鉄道建設審議会委員の選挙
 皇居造営審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
    午後二時三十九分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(加藤鐐五郎君) 国土開発縦貫自動車道建設審議会委員が五名欠員となっておりますので、この際その選挙を行います。
#4
○松津雄藏君 国土開発縦貫自動車道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、国土開発縦貫自動車道建設審議会委員に川島正次郎君、石井光次郎君、船田中君、小金義照君及び福永健司君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#7
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、鉄道建設審議会委員が四名欠員となっておりますので、この際その選挙を行います。
#8
○松津雄藏君 鉄道建設審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
#9
○議長(加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、鉄道建設審議会委員に川島正次郎君、石井光次郎君、船田中君及び小金義照君を指名いたします。
     ――――◇―――――
#11
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。内閣から、皇居造営審議会委員に本院議員星島二郎君及び参議院議員村上義一君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
#12
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
#13
○議長(加藤鐐五郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。足鹿覺君。
    〔足鹿覺君登壇〕
#14
○足鹿覺君 私は、日本社会党を代表して、農業の基本政策、米価、予約減税、災害対策並びにILO条約問題等に関し、内閣総理大臣、大蔵大臣、農林大臣、労働大臣並びに経済企画庁長官に対し若干の質問をいたします。
 第二次岸改造内閣の発足に当り、岸総理大臣は、記者会見において、十年後における所得倍増について所信を表明され、また、去る二十三日の閣議で、臨時国会で行う岸首相の所信表明演説の草稿中、「十年後の所得倍増を目標に長期経済計画を立案し、経済の安定と成長をはかる」旨を了承した、と伝えられているのであります。しかるに、昨日の本会議において、岸総理大臣は、今後における施政の基本方針について、その所信を明らかにされているのでありますが、その中に、「新しい要素を織り込んだ長期計画を樹立し、経済の適切な発展と国民福祉の向上をはかっていきたい所存であります」云々と述べられているのみであって、記者会見の所信も、閣議了承の構想の具体的な解明も何ら行われず、きわめて抽象的かつ空疎であったことを、われわれは国民とともに最も遺憾とするところであります。(拍手)
 私はこの際、最初に、岸総理大臣に所得倍増論の内容について御所信のほどを伺っておきたいのであります。
 前に述べた通り、岸総理は、しばしば、十年後の所得を二倍にすることを目標として長期経済計画を策定し、経済の安定と成長をはかる旨を述べられ、また、池田通産大臣は、その在野当時、月給二倍論をぶち、また、松野労働大臣も、総理府総務長官時代に、随時随所において農業所得二倍化を揚言しておられるのであります。私は、岸総理並びに各閣僚のこれらの一連の言説に関連し、その社会経済的な意義と、わが農業に対する影響いかんという基本問題について、まず伺いたいと思うのであります。
 日本の経済の成長度合いは、諸外国に比べ、きわだって高いといわれているのは御承知の通りであります。学者の計算によれば、終戦後三十一年までは年々平均一〇・六%、また、新長期経済計画によれば、三十七年まで年年の平均六・五%と予定され、三十二年度における国際収支の赤字により、政府は、あわてふためいて、経済成長のスロー・ダウンをはかったにもかかわらず、三十三年においても四%、三十四年当初には五・五%、最近においては八・四%と想定されているのでありますが、西欧各国で大体二%程度、せいぜい四%というのが通例と相なっているのであります。貧弱なる自然資源、乏しい国力を持つ日本において、何がゆえにこのような高い経済成長が示されているのでありましょうか。問題の所在は実にここにあるといあなければならないのであります。
 学界の定説によれば、一つには、貯蓄率が高いこと、二つに労働人口の増加率が高いこと、この二要因の決定的影響によるものと考えられているのであります。しこうして、貯蓄の多いか少いかは、個人の消費を犠牲にするがどうか、経済構造を不平等にするかどうか、そのいずれか、またはその両者によってもたらされるのであるが、それらを根本的に左右するものは所得の分配関係であります。労働の相対的分け前を小さくし、賃金を労働の限界生産力以下に切り下げれば、当然利潤部分は大きくなり、税金、配当を適当に控えれば、貯蓄律はいやでもおうでも高くなるはずであります。経済計画の立案者である経済企画庁の大来総合計画局長は、あこの間の事情を、ぬけぬけと、次のように説明をしている。すなわち、「生産の伸びと生活水準を比較した場合に、生産の上昇に比例して労働者の生活水準が上らないという、ある意味では好ましくない現象が出てくるが、それが一つには蓄積率の高い原因となるのであります」と。また、厚生白書三十三年度版は、「三十二年度においては、経済成長率が相当に高かったにもかかわらず、低位の所得階層における国民生活の改善はほとんど停止状態となり、その反面において、高額所得層における所得の増加は依然として急テンポであって、経済成長の一つの担保である高い蓄積率の裏づけとなる貯蓄率、三十一年度よりも一そう高まったのである」と指摘し、官庁出版物それ自体が、富める者はいついかなる局面にあってもますます富み、貧しき者はひたすらに貧窮のどん底にあえぐ資本主義経済現機構の矛盾を遺憾なく描き出しているのであります。(拍手)岸総理大臣の一枚看板たる三悪追放、貧乏追放のスローガンは、単なる口頭禅であるのでありましょうか。
 そこで、次に伺いたいのであります。冒頭に申し上げましたように、岸総理は、新たに経済十カ年計画を立て、十年後の目標を国民所得の倍増に置くとせられている。それは、一握りの資本家、高額所得者に対してではなく、九九%の国民大衆に対して何を約束されようとするのであるか、その内容を具体的に承わっておきたいのであります。
 わが日本の国民経済の規模は、よほど控え目に見ても、昭和五十年、つまり十五年先には現在の二・五倍、昭和五十五年ごろには、ほぼ三倍に拡大する可能性を持つといわれております。それを、ことさらに麗々しく、さも手柄顔して、岸内閣の新構想であるかのごとく売り出すのは、こっけい千万といわんか、厚顔無恥といわんか、国民を瞞着するもはなはだしいといわざるを得ないのであります。
 私の言わんと欲するのは、それにとどまらないのであります。都市産業における労働賃金の低さの原因をさらに掘り下げていくと、その根本に横たわるものは、農村における膨大な産業予備軍の存在と、その生活水準のみじめな低さであるということは、ここであらためて論ずるを待たないところであります。かくして、今日までにおける日本の目ざましい経済進歩は、農業部門における生産力や所得の低さを条件として実現されているのであります。逆に一言えば、日本の農業は、国民経済の進歩のために社会的な重荷をしょわされていると判断せざるを得ないのであります。
 わが農村の実情は、今日、岸総理みずから責任を持つところの、かの満州事変前夜をほうふつさせるといわれているのであります。すなわち、農村は過剰人口に満ちあふれ、総有業人口の実に三七%が、平均して〇・九ヘクタールという零細な耕地にしがみついて、うごめいております。しかも、その所得は、国民所得のわずかに一六%にすぎず、社会の平均所得の半ばを得ているにとどまっているのであります。
 福田農林大臣は、二十二日の閣議において、政府の長期経済計画の進展に伴い、鉱工業所得と農業所得に不均衡を生じている云々と発言されたやに伝えられておるが、まさにその通りであります。農林業と他産業間の所得較差は今日三倍の開きを持っており、独占金融資本に奉仕する戦後経済政策の結論が、そこに端的に示されているのであります。三十二年度版経済白書は、「満州事変直前の昭和五年に、農林業と鉱工業はその所得において四倍の較差を持っていたが、今日再びその状態に近づこうとしている」と述べておりますが、岸総理はいかなる感懐を持ってこの事態に直面されているか、率直なる御感想と御所見があれば伺いたいのであります。
 事ここに至った責任は、もとより歴代保守党内閣が負うべきは明らかであります。たとえば、総予算中に占める農業関係予算の比率を見ると、昭和二十八年の一六%をピークとして連年低下の一途をたどり、二十九年は一一%、三十年は九・五%、三十一年八・四%、三十二年一〇%、三十三年七・七%、三十四年は実に七・五%でありまして、三十八年に比して今年は半分以下という惨たんたる状態であるのであります。聞くところによれば、大蔵省は、農林関係予算を総予算の五%までに引き下げる陰謀を持っているという。元大蔵省主計局長たる福田農林大臣は、当然、この事態について責任を分担しなければならぬと思うが、今後いかように対処されようといたしますか、第二点として伺いたいのであります。(拍手)農林官僚の諸君がいかに計画と作文に苦労しようと、財政的裏づけのない農業政策は空中に楼閣を描くのと何ら選ぶところがないからでございます。
 次に、農業基本法制定の叫びが全国津々浦々の農山漁村にわき上り、それがこの白亜の殿堂を十重二十重に押し包んでいるのであります。岸内閣閣僚諸公は、もはや、農業窮状打開の切実な要請を馬の耳に念仏と聞き流すことを許されないでありましょう。去る三十一国会において、岸内閣は、しぶしぶと農林漁業基本問題調査会設置法案を提出し、その成立を見たのでありますが、農業基本法の制定に関しては、食糧の国内自給度向上や農業所得の引き上げについてきわめて冷淡かつ非協力的な財界や大蔵省方面の意向に押されて、農林事務当局には次第にニヒリスティックな空気がびまんしつつあるやに伝えられているのであります。政府与党は、よもや、参議院選挙の終了とともに看板をおろすわけではありますまい。通産官僚出身たる岸総理、大蔵官僚出身たる福田農相は、果して不退転の決意をもって農業基本法を制定し、農政の一大刷新に挺身される決意ありやなしや、全国農民大衆とともに、われわれが最も確かめておかんと欲する点でございます。(拍手)
 農業基本法の中心課題は、言うまでもなく、農業と他産業の所得の均衡をいかにして得せしめるかということであります。まず、農村の過剰人口をどうするか。近代国家はいずれも、総人口の二〇%以下の農業人口を持つにすぎない。アメリカは一一%、イギリスは実に五%であるのに対して、わが国では、およそ四割の農業人口の大部分が、しかも不完全就業の状態でうごめいているのであります。歴代内閣はこの状態を全く見て見ぬふりをしてきたといわれても一言もないと私は申し上げたいのであります。(拍手)しかも、昭和四十年代にかけ、生産年令人口は年々百五十万人に及ぶ急激な増長を見ることもは、もはや既定の事実でありますが、都市、農村を通じて、雇用問題をいかに解決し、しかも所得の増大をはかろうとするか、第四点として、企画庁長官の御所見を伺っておきたいと存ずるのであります。
 次に、農産物価格政策についてであります。農業生産の伸びは、四年続き、五年続きの豊作といわれますように、新長期計画に示されている年率三・三%をこえて、着実に上昇しているのであります。しかし、一面においては、農業生産のために投入される費用も著しく増大し、農産物価格がその割には上昇を押えられているか、あるいは下落しているために、農業所得は全体として低下していることは、さきに申し上げた通りであります。農業所得だけでは家計をまかない得ない農家は、こぞって兼業所得に走り、今日全農家の実に六五%が兼業農家と相なっているのであります。政府の農産物価格政策は、明らかにデッド・ロックにのし上げている。
 私は、当面の緊急問題たる三十四年産米麦価の形成方針について、まず農林大臣の所信をお尋ねしたい。
 数年来の農民の要望に抗し切れず、政府は、三十四年の米価算定方式については、いわゆる生産費及び所得補償方式を大幅に取り入れることに踏み切ったことは、農産物価格政策としては明らかに一歩前進と言えましょう。しかるところ、その原案をしさいに点検いたしまするに、その内容は実に生産費所得補償方式の完全な換骨奪胎、羊頭を掲げて狗肉を売る体のインチキ案と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)目下の政府原案は、農民が要望する生産費所得補償方式とは全く似て非なるものといわざるを得ない。われわれ及び農民、農業団体が長年にわたり研究し主張してきた米価の算定方式は、いわゆる八〇%バルク・ライン農家の生産費及び所得を補償する方式でありますが、しかるに、政府は、農家の評価労賃が都市労賃の上昇につれて上昇すること及びバルク・ラインが将来引き上げられることをおそれ、一部の御用学者を動員し、数百万円の経費を投じ、八〇%バルク・ライン農家の生産費及び所得には安定性、法則性がないということを反論し、宣伝する資料をわざわざ作成し、世間に誤まった先入観念を植え付けておいて、巧妙にバルク・ライン方式を一擲し、その代案として、三十一年から三十三年までの平均生産費を基準とし、これに同三カ年の実現米価との平均格差率をかけたものをもって基本米価とする方式をとっているのであります。これによって出てくる答えは、もはや最初から予定されているのであって、案の定、三十三年産米価と一銭一厘も違わぬ基本米価九千七百円を出しているのであります。
 生産費所得補償方式を大幅に取り入れると約束した三浦前農林大臣以下当局の累次の言明は、農民の期待を裏切る、まっかな偽わりであったと、私は断ぜざるを得ないのであります。(拍手)なぜかならば、この方式は三十四年米価を前三カ年のパリティではじいた政府支払い価格の水準に据え置くための便法にすぎず、本質的には、パリティ米価と何ら選ぶところはないからであります。政府はバルク・ライン方式反論のために費したエネルギーと経費とを何がゆえにバルク・ライン方式確立のために投入しなかったのでありましょうか。あえてその真意を疑わざるを得ないのであります。(拍手)バルク・ライン方式にも、単純バルク・ライン方式あり、あるいは理論バルク・ライン方式あり、学界の一部には、今回の政府案よりもはるかに安定性と連続性を持った方式が検討されているのであります。政府は、従来のパリテイ方式とあまり変りばえのしない計算方法をやめて、バルク・ライン方式を確立した真の生産費所得補償方式を採用する意思ありやいなや、農林大臣の御所見を伺いたいのであります。(拍手)
 次に、米価に直接関連の深い予約減税措置についてであります。この措置は、議員諸君も御存じのごとく、昭和三十七年、議員立法として成立し、昭和二十六年産米について実施されて以来、今日まで八年の長きにわたって実施せられ、農家経済の安定と国民食糧の確保の上に果してきた効果には見るべきものがあったのでありますが、政府は、本年の一般的な所得税減税措置の実施に伴い、予約減税対象農家数が半減するに至り、この制度の恩恵が一部上層農家に片寄るおそれがあるという理由でこれをやめ、そのかわり、所得税額十五億円、地方税額八億円に相当する金額として、石当り七十五円を予約米価に加算することとしているのであります。政府の説明は、一見もっともらしく聞え、つじつまが合っているかのようではありますが、これもまた多くのごまかしと矛盾を含み、農民の利益をそこなうものであることを否定できないのであります。
 そもそも、昭和二十年から実施している石当り平均一千四百円という非課税措置の中身は、予約加算金が本来二百円なるべきものを、百円だけは米価に織り込み、残りの百円は減税で見るということで、それに相当する非課税分を五百円、それに、二十九年までの各種奨励金に対する減税をやめるかわりに、実質手取額を確保するための非課税分を八百円、さきの米価に織り込む予約加算金百円も減税するということで、これを通計して一千四百円という非課税額を算定したものであって、予約加算の二百円と、各種奨励金にかわる減税措置とは、もともと実質的に別建で、農家の手取りとなるべきはずのものであるのであります。それを、たった七十五円だけを別途に加算するというのでは、全くそろばんに合わぬ話であります。これが第一点。
 次には、税制改正に伴って所得税がかかる農家は、ある程度減ることは事実でありましょうが、予約減税の廃止により所得税がかからぬことになるはずの農家も再び課税対象農家となって浮び上ることになりますから、予約減税対象農家戸数が四十四万戸に減るという政府の説明は、すこぶる怪しい計算に基くものであります。これが第二点。
 予約対象農家戸数が減るとしても、これらの農家が政府に売り渡す米の量は約一千万石以上と推定されるのであります。これらの農家が税金をおそれてやみ売りに向うことがあるとするならば、予約制度は崩壊し、統制撤廃に向わざるを得ない事態になる。統制方式の瓦解を手ぐすね引いて待っ資本家や一部商人は別として、農民の既得権を剰奪し、農家経済や国民経済への悪影響を真に憂慮する立場からは、断じてわれわれは賛成いたしがたいのであります。これが第三点であります。(拍手)
 さらに、予約減税推定額二十三億円という数字自体も、わが党の石田宥全君がさきの農林水産委員会で税務当局に質問したところによりましても、全くあやふやで、何らの根拠がない。これが第四点であります。
 地方税は、大多数の市町村が第二課税方式または第三課税方式をとっているので、所得税を納めない零細農家までも大幅増税となる。これが第五点。
 その他、数え上げれば、反対理由には際限がないのでありまして、予約減税廃止によって生ずる食糧農業政策上の混乱は、あげて政府の責任に帰すべきものと存ずるのであります。(拍手)大蔵大臣及び農林大臣は、すみやかに予約減税措置復活の手続を講ぜられる御意思があるかどうか、第六点として御答弁をわずらわしておきたいのであります。
 次に、現行農地法と農業法人の問題について、農林大臣にお伺いしたい。現在のわが農業政策が、かたい壁にぶつかり、行き悩み、よろめいているといわれるのは、現行農地法上の基本原則たる、いわゆる中堅自作農主義の持つ矛盾と深いつながりを持っていることは明白であります。農民の躍動する意欲に対し、農地法はすでに動脈硬化の症状を呈しつつあります。農業法人問題は、その発生の動機こそ税金対策にあったとしても、それは、農業の近代的合理化への契機を含むものであり、共同化を進めなければならないという重大な問題を提起しており、それは家を中心とした封建的な自作農主義農政を痛烈に批判し、それにかわるものとして、農民の個人としての存在を尊重し、その経済的基礎を確立し、その生活を向上させる新しい型の近代的な自作農主義を打ち立てようとしているところに重大な意義のあることを、われわれは考えなければならないのであります。(拍手)農地改革は、一面において、農村の民主化、生産力の向上に貢献を果しましたが、他面、経営の零細化を促進し、零細農、中小農の真の解放に役立つことがなかったのであります。世に三割農政とは、このことを端的に指摘した言葉であります。
 政府与党の内部では、合理主義の名において、貧農切り捨て論が白昼横行しているといわれます。現実の農業政策が、すでに下層農民に及んでいない事実は、いなみ得ないところでありましょう。それに追い打ちをかけ、断崖から突き落すような切り捨て政策が実施されることともなりますならば、わが国の民主主義はついに終えんを告げることとなりましょう。この困難に打ちかつ道は、農業共同化法人の育成以外にないとわれわれが考えざるを得ないゆえんのものは、またそこにあるのであります。旧地主等の土地兼併を防止しつつ、農業法人の農地取得または農地の使用、収益を認めるために、政府はすみやかに立法措置を講ずべきであると思いますが、第七点として、農林大臣の御所見を伺っておきたいのであります。
 第八点として、次に、農業災害対策と、農業災害補償制度の改正問題について伺いたい。最近、群馬、茨城、青森、栃木、長野、福島、岩手、山形等その他の各府県に相次いでひょう害が発生し、収穫寸前の麦、蔬菜、タバコ及び果樹類に前例を見ない被害を招き、被災地農民は塗炭の苦しみにあえいでいるのであります。農林水産委員会は、全会一致をもって、天災融資法の発動、自作農資金の貸付等を中心に決議を行なったのでありますが、大蔵、農林両省は、被害額が五十億円以上でなければ天災融資法の発動を認めないと称している由であります。ひょう害は、その特質上、局地に発生するものでありますが、しかし、その被災の深度と、その惨害の絶望的であるということは、他に類例を見ないのであります。一体、この法律のどこに損害五十億円以上に限ると書いてあるのか。官僚独善もここに至ってきわまれりと、われわれは断ぜざるを得ないのであります。(拍手)農林大臣は、この席上で、直ちに天災融資法を発動すると言明をしてもらいたい。と同時に、タバコ被害対策等についても、大蔵大臣から所見をあわせて伺っておきたいのであります。
 また、農業災害補償法については、過般の国会で、一筆石建制の実施その他若干の点について応急的な改正を行なったことは御承知のところと思いますが、農業技術と生産の安定向上に伴い、次第にかけ捨ての農家が増大し、また、掛金の割高のゆえに全国的に農民の不満は高じ、解散または事業中止組合が次々と現われ、重大なる危機に瀕していることは、今日おおうべからざる事実であります。さきの国会においても、農林水産委員会は同制度の抜本改正を決議したにもかかわらず、農林省は一向にそれを具体化する気配がないのであります。明らかに官僚のサボタージュといわなければなりません。最近、農林大臣は、記者会見の席上、この問題に言及されたやに聞き及んでおりますが、いつ、いかなる方法で御実行になるのか、この際、明確な御答弁をわずらわしておきたいのであります。(拍手)
 最後に、岸総理並びに松野労働大臣にお伺いをいたしたい。すなわち、ILO条約第八十七号の批准が大へんおくれておりますが、この批准には、全逓労組の違法状態の解消が先決だという政府の従来の態度についてであります。御承知の通り、労働問題懇談会の答申は、すみやかに批准すべきことを述べており、その批准について、何らむずかしい条件はつけていないのであります。このことは、去る第三十一回国会の衆議院の公聴会において、労働問題懇談会委員諸氏の公述にも明らかな通りであります。
 さらに、わが国は、ILO条約第九十八号、団結権、団体交渉権に関する条約を六年以前に批准している事実のあることをも指摘しておかなければなりません。今回、倉石前労相が出席をされたILO総会においても、「日本の公労法第四条三項は、ILO条約九十八号に抵触するから、これを廃止するのが望ましいという見解が、条約勧告専門家委員会によって報告をされ、続いて、今月三十四日政府に入った公電によれば、ジュネーブで開会中のILO第四十三回総会は、二十三日、「本委員会は専門家委員会が意見を付して指摘した法律(公労法第四条三項)の規定が日本政府の提案するごとく廃止されることを希望する」との条約勧告適用委員会の報告を採択したと伝えられているのであります。これらの経過から見るならば、公労法第四条三項は、第八十七号条約の批准を待つまでもなく、すでに六年前に削除されているべきものでありまして、政府がこの九十八号条約の存在をも無視し、かつまた、第八十七号条約批准についての内外の要望を無視し来たったことは、われわれの理解に苦しむところでありまして、断じて許容し得ないところであります。(拍手)従って、全逓の違法状態の解消が先決だとする政府の態度は、明らかに第九十八号条約の趣旨に反するものであり、さらにまた、公労法第四条二項は、条約を待つまでもなく、われわれが従来から主張するごとく、わが国憲法にも違反するものであることを重ねて指摘し、政府の猛省を強く要求してやまないものであります。
 そこで、政府のILO条約第八十七号の即時批准、公労法第四条三項の削除、全逓労組との団体交渉の再開、この三点について、岸内閣総理大臣及び新しく就任された松野労働大臣の率直にして確固たる御所信をただしまして、私の質問を終ることといたします。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#15
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一の長期経済計画の問題でありますが、国民生活の向上と雇用の増大を目標として経済計画を樹立しなければならぬことは言うを待たないのでありまして、現に、われわれは過去において立てた経済長期計画につきましても、年々六・五%の成長率を見込んで、大体その線が実現を見ておることは、御承知の通りであります。また、日本の戦後におけるところの経済成長率につきましても、すでに足鹿君の御議論のうちにもありましたように、相当大きな成長を示してきておるのであります。私どもは、今後ふえるところの労働人口に対する雇用の増大を考え、完全雇用を目標とし、国民生活を一そう向上せしめる意味から申しますと、この今まであるところの経済計画をさらに検討し、科学技術の発達や、消費面におけるところの変化、あるいは輸出入の関係等をも十分総合的に検討して、国民所得を倍増し、また、これに伴うところの雇用を増大するという計画を検討し、樹立していきたいというのが、私どもの考えであります。もちろん、こういう経済が安定した基礎において成長発展していくということは、自然、国民全体の生活も向上するでしょうし、雇用の問題もこれによって解決の方向にいくわけでありますが、それにもかかわらず、やはり、国民中におきましては、これらの計画の上から見まして、生活の上においてもいろいろ恵まれない立場にある者、あるいは雇用の面におきましてもいろいろ救われないというような者に対して、社会保障制度を拡充していかなければならぬことは、言うを待ちません。この社会保障制度の拡充にいたしましても、やはり、経済が安定した基礎の上に、今申しましたように、国民の所得もふえ、雇用も増大する基礎の計画に沿うて発展することによって、私は、社会保障制度も拡充でき、福祉国家も作り上げることができる、かように考えるものでありまして、基礎は、やはり、国民生活の向上と雇用の増大を目標としての経済成長率を考えた計画を長期にわたって立てるということが基礎であると思います。
 次に、農村問題につきまして、農村の現状についての御意見につきましては、大いに足鹿君の御議論に傾聴すべきことがあると思います特に、農業所得と他の産業、第二次産業等とを比較してみて、所得の較差がだんだん大きくなっておるというこの実情は、これはいなむことができないのであります。これを、いかにしてその較差を狭めていくかという問題自体が、やはり農村問題の今後の重要課題であることは、御指摘の通りでございます。私どもは、その意味において、農家経営を合理化していき、生産性を上げること、あるいは価格問題、あるいは、いかにして農家の所得をふやすか、あるいは、農村におけるところの過剰人口をどういうふうに他の産業に向けていくかというようなことを総合的に考えることによって、これらの問題を解決していかなければならぬと思います。
 農業基本法の制定問題につきましては、第三十一回国会におきまして成立をいたしました農林水産業基本問題調査会――基本政策の調査会が近く発足することになっております。これは、今申しましたような農村におけるところの解決の困難な幾多の問題を取り上げて、総合的にこれが解決についての方策を研究するということになっておることは、御承知の通りであります。私は、農業基本法の問題につきましても、この調査会の審議なり結論を待ってこれを決定することが適当であると、かように考えております。
 最後に、ILOの条約批准の問題でございますが、これはすでに、本年の二月二十日の閣議をもって、批准するということを決定しております。批准するにつきましては、今御指摘になりました公労法四条三項も廃止せねばならぬことは言うを待ちませんし、また、それに伴うところのいろいろな法規の整備も必要であるのであります。また、全逓の団体交渉の問題につきまして、郵政当局がこれを拒否しておりますことは御承知の通りでありますが、これは、現行の法律に違反しておる状況を是正しない限り、これを私は拒否することは正当であると思います。私は、やはり、労働問題懇談会の結論にもありますように、このILO条約八十七号を批准するについては、労使間の関係が正常にして、そして安定した基礎においてできるということを前提とする必要があるということを思うのであります。こういう趣旨で、政府としては、あらゆる準備を進めておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#16
○国務大臣(福田赳夫君) 総理大臣の答弁と重複するかもしれませんが、第一に人口問題。現在、日本の経済は、非常に世界からもすばらしいといわれるような状態で発展をしております。この傾向は、今後といえども持続するというふうに考えるのでございまするが、問題は、この発展の過程において、国民各層、各部門に所得の不均衡ができてはならぬ、この問題でございます。ことに、第一次産業である農村のことを考えますると、過去の傾向から見ましても、農村の生産量というものは、他の一般の生産量に比べまして、はるかに低位にあるわけであります。この傾向に対しまして、農業の所得の均衡をはかるという問題は、私といたしまして、今後農政をやっていく上の最大の問題である、かような考えをいたしておるわけであります。政府におきましては、経済規模を安定的に拡大するという政策をとるわけでございまするが、その間におきまして最も重大なる問題は、この農村との調整をどうするかという問題にかかっておるわけでございまして、私は、この方面に――農林大臣としての分野以外にわたりまするが、大きく努力を傾けていきたい、かように考えておる次第でございます。
 第二の問題といたしまして、予算が年々減少するではないかというようなお話でございまするが、総予算の中におきまする農林予算の額を比べますると、本年度の予算は、その率必ずしも増加していると申し上げられません。しかしながら、これは予算の組み方にいろ、いろ技術的な問題もありますので、実質的にこれを考えてみますると、すなわち、国民所得と農林予算を比べてみるのが一番適正じゃないか、かように考えるわけでございまするが、ここ数カ年間におきましては、逐次上昇をいたしております。私は、ただいま申し上げましたような事情のもとに農林漁業政策を進めたいと存ずるのでございまするが、これに必要なる予算は全力を尽して確保する所存であります。(拍手)
 なお、第三の問題といたしまして、農業基本法制定の問題がございました。ただいまも総理からお話がありましたように、私がただいま申し上げましたように、全経済における農村の地位をいかにするかという問題こそ当面の最大の問題である、かような角度から農業基本政策調査会というものができておる次第でございまするが、私といたしましては、この実質的な政策の決定、これに全力を尽して取り組んでいきたいと思います。それに必要なる法制、また予算、あるいは行政措置、これは当然全力を傾けてこれを獲得し、実施をするというふうに考えておる次第でございます。
 なお、価格政策の問題についてのお話でございます。農村の所得を向上するというふうに私は申し上げましたが、所得は、要するに、数量と価格の問題でございます。数量につきましては、所得を向上する方途といたしまして、私は、どこまでも農村における生産性の向上ということに努力をしていくのが本筋である、かように考える次第であります。あるいは土地改良に、あるいは技術の改善に、農薬の改善に、あらゆる手段を講じまして生産性の向上に努力する。また、第二の要素であるところの価格の要素につきましては、これは所得形成の要素ではありますけれども、経済全般にわたって重大なる影響もありますので、これが取り扱いにつきましては、そう簡単に結論を出すわけにはいかぬというふうに考えておる次第でございます。
 当面するところの米価の問題につきましては、生産費及び所得補償方式、これは、昭和三十三年来、農業団体その他の方面からいわれておるのでございますが、この方式を取り上げることにいたしておるのであります。ただ、この新しい方式を取り入れるに当りましては、平均生産費方式というものをとる考えでおります。農業団体で主張するバルク・ライン生産費の考え方につきましては、検討はしたのでございますが、その性格が、安定性がない。先ほどお話の通りの結論でございます。また、いかなるバルク・ラインをとるか。八〇にしますか、七五にしますか――といたしましても、その間にどうも同じ性格の生産費の要素というものは見出しがたいのであります。さようなことで非常に困難でありますので、私といたしましては、平均生産費を基礎にいたしました生産費並びに所得補償方式をやっていきたい、かような考えを持っておるのでございます。しかしながら、この考えにつきましては、非常にむずかしい要素がありますので、今後とも、これは、各界の意見を聞き、慎重に慎重にといって、この努力をいたしていきたい、このことだけを申し上げておきたいのでございます。
 なお、予約減税の制度につきましては、これは三十年度の予約売り渡し制度の際に、それを推進するための手段としてとられたわけでございます。その当時は、農家の所得税の納税額が百億円をこえておった。今日は、この改正をしない税制によりますと、約十五億円になってしまうのであります。そういたしますると、当時ねらいましたところのこの供米売り渡し推進のための減税という意味は大半失われておる。これを廃止するということが本年度の予算に織り込まれておるわけでございますが、これによって不利益をこうむるのは一割の農家である、九割の農家はその反面においてその利益の分け合いにあずかる、こういうことになりますので、これは社会党の皆さんにも御賛成を願える考え方ではないか……(「絶対反対だよ」と呼び、その他発言する者あり)というふうにも考えておる次第でございますから、御了承願いたいというふうに存ずる次第でございます。
 先ほど申し上げましたように、私は、農村の生産性を向上するということでございますが、今日の傾向を見ますると、ただいまもお話がありましたが、自作農主義に対しまして、一つの共同化の傾向というものが起っておるのでございます。すなわち、法人問題というのが起っております。この問題につきまして、法人のねらうところが税の軽減であり、あるいは企業の合理化であり、多種多様でございまするが、しかし、そのねらうところの合理化という問題につきましては、私はまことに魅力のある考え方だというふうに考えておるものでございます。しかし、今日までとられてきた自作農中心の農政という問題とも大きく対立する面もありますので、これは十分検討いたしまして、近く結論を出したい、かように御了承を願いたいのでございます。
 なお、農業災害に関連いたしまして、ひょう害対策をどうするかという問題でございます。この問題につきましては、当面緊急なる措置はすでに講じてございます。しかしながら、さらに天災法を発動するかどうか、もう数日で調査ができますので、善処をいたします。
 なお、農業災害補償制度を、いつ、いかなる形において改正するか、という問題でございまするが、私、着任直ちにこの問題に取り組みまして、なるべく早い機会に結論を得まして、皆様にもお諮りいたしまして、この制度の改善、合理化を考えていきたい、かように存じておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#17
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
 農林予算について総額がよほど減っておる。なるほど、形の上でごらんになりますと、二十八年度に対しまして相当減少いたしております。これは、いわゆる臨時的な支出とでも申しますか、最近は災害も減っておりますし、従って、災害対策費の事業費もよほど減っております。あるいは輸入食糧の予算も減らしております。あるいは、農林漁業金融公庫を作りましたそのときと今日とは違っております。従いまして、総額だけをごらんになりますと、ただいまのような御批評も当るかと思いますが、臨時的経費が大幅に減少しております今日、実質的には、たとえば食糧増産費であるとか、あるいは造林、漁港整備費等の公共事業費の増額を初めといたしまして、十分配意いたしておるのでございます。また、今後も農林漁業の振興のためには十分力を尽していく考えでございます。御了承いただきたいと思います。(拍手)
 次に、予約減税廃止の問題でございますが、ただいま農林大臣からも御説明いたしましたように、予約制度創設の際に作りました特別な措置であること、これは御承知の通りであります。従いまして、この予約減税による利益が一部の地域あるいは一部の上層階層に特に片寄る、こういうような不合理が今日まであったのであります。従いまして、これを排除いたしまして、全体としてこの増収分を配分していこう、いわゆる農家に全部均霑させよう。社会党の諸君は、しばしば、私どもの農林行政を目して三割農政というような言い方をされたと思いますが、今回、この措置こそは、実に九割農政の気持でこの措置をとっておるのでございます。(拍手)農林省のこの施策には、どうか十分の御理解を賜わりたいと思います。
 最後に、ひょう害の点についてのお尋ねでございますが、今回、各地にひょう害の惨害が発生いたしました。罹災の農家に対しましては心から御同情を申し上げておるところでございます。できるだけ早く実情の調査を終りまして、実情が判明いたしました上で、十分検討いたして対策を講ずる考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#18
○国務大臣(菅野和太郎君) 私に対する御質問に対しましては、総理大臣並びに農林大臣からもすでにお答えがあったのでありますが、私は補足してお答え申し上げたいと存じます。
 総理大臣が、国民所得を倍増するという長期計画については、しばしば、いろいろの機会において申し上げておるのでありますが、御承知の通り、すでに経済企画庁におきまして五カ年計画を立てておるのであります。この計画によりましても、十年たてば約倍増することに相なっておるのであります。しかしながら、その後における内外の経済の事情の変化によりまして、これよりも早く国民所得を倍増することができるのではないかという考えを、われわれはいたしておるのであります。と申しますのは、たとえば本年度の状況を見ましても、昨年から外国の経済事情の変化、並びに、日本国内におきましても、たとえば鉱工業生産につきましても、昨年などは三十二年度に比較いたしまして〇・七%の増加を見込んでおったのでありますが、事実は三・一%の増加になっておるのであります。かくのごとく、内外経済事情の変化によりまして、もっと国民所得の倍増を早くできるのではないかというようなことで、その国民所得の倍増についての長期経済計画を立てようという総理大臣のお考えがありましたので、目下、経済企画庁において、それを立案する準備をいたしておるのであります。従いまして、先ほどお尋ねの農業人口の問題についてでありますが、いずれ、この日本の経済の発展に伴いまして農業人口が現状のままでいいか悪いかというような問題につきましても、もちろんこれは検討すべき問題であります。農業技術の発展並びに第三次産業の発展のいかんによりましては、農業人口は漸減する傾向にあるのではないか、大体そういう予想をいたしておりますが、いずれまた、国民所得の倍増計画につきまして、この問題を取り上げてみたいと考えておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣松野頼三君登壇〕
#19
○国務大臣(松野頼三君) お答えいたします。
 今回のILOの総会の、条約勧告適用委員会の総会に対する報告においては、わが国政府代表の意見及びこれに対する意見を記録した後、委員会の希望として、本委員会は、専門家委員会が意見を付して指摘した法律の規定が日本政府の提案するごとく廃止されることを希望する旨が述べられております。この報告においての総会における審議に際して、わが国政府代表が、条約勧告適用委員会においては九十八号条約と国内法との関係について何らの結論を出していないものと了解しております、右委員会がその報告中に表明した希望については、これに留意する旨の発言を行いました。これに関して何ら異論はございませんでした。従って、今回のILO総会における審議の経過は以上の通りでございますから、九十八号条約に今日国内法が抵触しておるという事実は毛頭ございません。
 次に、全逓の問題でございますが、全逓の問題は、現行法ですでに違法行為でございますので、団体交渉及びその他につきまして、郵政当局との間における団体交渉ができないことは、今日、遺憾ながら仕方がないことだと存じます。なお、その端的な現われといたしまして、昨年七月全逓より東京地裁に対して提起されて係属中の団体交渉権確認等請求事件というのが全逓から今日出ておりますので、これ以上はこの議論は差し控えたいと存じます。
 ILOの批准につきましては、二月二十日の閣議ですでに決定されておりますので、私も、事務引き継ぎをいたしました今日、岸内閣の二月二十日の閣議決定をとやかく言うわけには参りませんので、既定方針通り私は進みたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(加藤鐐五郎君) 春日一幸君。
    〔春日一幸君登壇〕
#21
○春日一幸君 私は、日本社会党を代表し、岸総理の所信表明に関し、主として経済問題を中心といたしまして、総理並びに関係閣僚に対し、以下数点にわたって、その所見をたださんとするものであります。
 まず、その第一は、岸改造新内閣の経済政策の基調についてであります。すなわち、佐藤蔵相は消極的な安定成長論者であり、池田通産相は積極的な経済拡大論者であることは、すでに院の内外に周知の事柄であるのであります。組閣後における両大臣の言動を対照いたしますれば、池田通産大臣のそれは積極拡大論に終始して、たとえば、輸出は暮しを豊かにするものを輸入するための方便であるから、国際収支ばかりを心配するのは本末転倒であると論断し、また、設備投資は無理に押えるべきにあらずと、実に思い切った方針を述べられておるのであります。これに対し、佐藤大蔵大臣は、安定成長をはかる財政金融政策の基調は変らないと、いわゆる昭和三十二年度のなべ底不景気以来の岸内閣の慎重政策を強調し、しこうして、経済拡大の中心となる有効需要としては輸出の増大のほかにはないと断定しておるのであります。すなわち、この両論を集約するならば、池田通産大臣のそれは、個人消費、設備投資など、国内需要の増大をはかって経済の拡大を推し進めんとするものであり、これに対し、佐藤大蔵大臣のそれは、個人消費、設備投資を抑制して国際収支の改善をはからんとすることを先決とするものであって、まさにこれは二律背反、異質の政策と申さなければなりません。
 およそ、各省所掌の行政事務は所管大臣の権限に属するところではありましょうが、かりそめにも、内閣の経済に対する基本政策と財政金融に関する根本方針が、責任閣僚たる両大臣の間において、かくも明確かつ根本的に対立しておることについて、国民はこれをいかに理解すべきでありましょうかびそもそも、内閣総理大臣たるものの権威とその責任は、行政各部の統一を確保し、かつ、これを統括して掌握するところにあると思うのであります。世評は、この改造新内閣を称して、それ自体が派閥均衡の上に危なげに乗っかっておる軽わざ内閣であると酷評しておるのであります。(拍手)挙党一致の態勢を呼号しながら、ここに編成し得たものは自分の弟と、戦争内閣時代の旧友、アシスタントばらを加え、これに今回の仲たがいで割れた旧主流の破片をつなぎ合せて、他は、事もあろうに、反主流の本陣から三拝九拝して一時借りしたフリー・ランサーたちだけであります。まさに呉越同舟か、しからずんば同床異夢か、わずかに権柄欲につながる寄せ集め一座といっても過言ではないでありましょう。(拍手)さればこそ、期せずして派閥のスターたちの自意識がそのような政策上の対立論議となって、早くも閣内拮抗の様相を露呈するに至ったことは、しょせんはさらさねばならぬ、当然の醜態と申さねばなりません。
 まことに、経済はまつりごとの生命であります。しかるに、この命の根源において、佐藤、池田の両大臣が互いにその方針を堅持して譲らず、かつ、これをめいめいに放言してはばからぬのでありますが、これこそは、内閣一体の責任体制がすでに乱脈した姿でありまして、憲法上、かかる内閣の存在が果して許されるでありましょうか。総理は、この閣内不統一の責任をいかにしてとらんとするものであるか。それは、内閣がこの責任を負って総辞職をするか、しからずんば、想いれざる両大臣のうち、内閣の方針に反する者を罷免する以外に、その職責を全うする道はないと思うのであります。総理の選択はそのいずれであるか、この際、岸総理の責任ある御答弁を願いたいと存ずるのであります。(拍手)しこうして、岸内閣としての経済政策とその財政方針は、そも、いかなる方式のものであるか。すなわち、池田通産大臣のいう積極的な経済拡大方式と、佐藤大蔵大臣のいう消極約な安定成長方式と、この二様の基本方式のうち、岸総理は、そのいずれをとって、これを岸内閣の経済政策の基調となすものであるか、この際、総理の責任と権威において、この一点を明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 次に、政府のいわゆる二大政策の一つである国民所得二倍政策について、ただいま足鹿君の質問に答えて政府からの所見が述べられたところでありますが、私は、また別の角度から、この一点についてお伺いをいたします。
 昨年の政府の経済白書について見れば、戦後の日本経済は、技術革新、消費購買力の増大、国家の経済への介入の増大によって著しい成長を遂げたと、手放しでこれを自画自賛いたしておるのであります。しかしながら、この過程には、昭和二十八年から二十九年にまたがる、しこうして、近くは三十二年から三十三年に至る深刻なる不況事態の谷底のあったことを忘れてはなりません。すなわち、この景気の推移は、神武景気からいきなり仁徳不景気へ、言うなれば、それは山と谷との断層をよじ登り、また転落したものであって、ブームが来たかと思えば、たちまちにしてデフレが来襲し、その景気の変動は、極端なる明暗がこもごもに錯綜したものでありました。また、経済の成長とともに、資本の蓄積と集中は大企業、大資本の側に偏向し、かくて、大企業はいよいよ繁栄して市場を独占し、中小企業は次第にその窮乏を加えて、没落への道をせかれておるのであります。これが戦後十数年間にわたる保守政権の経済行政の成果であるのでありますが、ここに岸改造新内閣があらためて経済政策を樹立せんとするならば、かかる前車の轍を踏まざるように厳に反省し、かつ、みずからを戒められたいと思うのであります。私は、わが国の当面する経済政策の要訣は今後再び大幅な景気変動を巻き起すことのないよう、政府はそのつど景気を適正に調整すべきものであると思うが、これに対する佐藤大蔵大臣、池田通産大臣の御所見はいかがでありますか。
 私どもは、岸内閣のいう国民所得二倍論なるもの、その標語自体がはなはだ高調子の音響を放つので、これが、勢い、いまだ底の浅いわが国経済をいたずらに刺激して加熱せしめるという、きわめて危険な作用を働くものではないかと、深くこのことをおそれるのであります。しかのみならず、この所得二倍政策なるものは、わが国経済の実情において、果してこのような構想が成り立ち得るかどうか、私どもは、むしろ、その可能性について疑いを抱かざるを得ません。すなわち、ここに政府の言うがごとく、十カ年に国民所得を倍加するためには、複利計算によって算定すれば、年平均実質七・二%の成長率を継続的に確保せなければ相なりません。現行の経済五カ年計画では、その成長率は年平均六・五%が見込まれておるのであります、この六・五%を、さらに七・二%に引き上げんとすることは、安定と成長との間に自由経済が必然的に発生せしめるギャップ現象のあることをも勘案いたしますとき、かかる成長目標率を達成することは、すでにして、きわめて困難と見るべきでありましょう。いわんや、これを岸内閣のいう十年以内に達成せんとするにおいては、これは、もはや至難のわざと断ずべきでありましょう。しかるに、政府があえてこの至難の目標をここに掲げるにおいては、何かとっぴな冒険的政策を考慮しておるのではないかと、国民は、これに対し、かえって異様な不安を抱きつつあるのであります。すなわち、私どもは、この国民所得短期二倍論の可能性を探求する場合、政府は、近くあるいは公債発行に踏み切って、その国家財政の力によって、これを無理押しすることを意図しておるのではないか、このことを深くおもんばからざるを得ません。政府は、近い将来に公債政策に転ずることはないかどうか。また、この国民所得二倍政策を強行する場合、インフレを誘発し、通貨価値の安定を脅かし、特に国際収支の均衡を破るおそれ少しとはしないが、政府はこのような事態を未然に押えつつ、この所得倍加政策を実現する確信があるかどうか。この際、佐藤、池田両大臣並びに菅野経済企画庁長官より、その具体的政策をつまびらかにいたされたいと思うのであります。
 第一次岸内閣は、かつて、三悪追放をキャッチ・フレーズにいたされました。この軽薄な宣伝文句は、その後、岸内閣の実践を通じ、その結果は逆転して、すなわち、貧乏は増大し、暴力はばっこし、汚職のにおいは全内閣をおおうに至りました。(拍手)今、新内閣は、三大政策の一つとして、はしなくも国民所得倍増論を掲げられております。もし、それ、かかる重大政策が、転落に瀕する斜陽政権の単なる人気取りの絵看板として、かりそめにも宣伝的に取り扱われるがごときことあらば、ついには、経済現象の必然のおもむくところ、時に蹉跌し、破綻を生じて、これが国民所得半減の結果に立ち至ることなしとは断じがたいのであります。(拍手)かかる危険な要素を含む、かつ、えたいの知れない政策目標は、すべからく自重して、これを引っ込めるべきであると思うが、岸総理これに対しいかなる見解を有するものであるか、この際、その信念のほどを伺っておきたいのであります。
 次は、為替貿易の自由化の問題についてお伺いをいたします。昨年末、西欧通貨の交換性回復と欧州共同市場の発足以来、世界の為替貿易自由化の趨勢はいよいよ強まりつつあると思うのであります。政府は、かかる国際情勢に対処して、わが国の為替貿易の自由化の態勢をいかに整備し、いかに促進せんとする方針であるか。すなわち、米ドル相場の自由化、円為替の導入、商社の海外支店等の制限緩和、輸入ユーザンス制度の改善、外貨予算制度の改正等、これら諸問題は、今や早期に何らかの改善措置をとらなければならぬ段階に到達しておると思うのであります。
 申すまでもなく、およそ自国通貨を決済通貨に使用していないというがごときは、きわめて異常であり、かつ変則であります。また、円為替の導入は、外貨の節約、為替リスクの回避、輸出の伸張、貿易外収入の増加等、その利点はきわめて膨大なものであります。もとより、各種の自由化措置は、十分なる準備を前提とすることは当然でありましょうが、いたずらに右顧左眄の結果、無為にして終るがごときは、その職責に忠実なるゆえんではないでありましょう。政府は、この際、すべからく、戦後わが国が三百六十円の対ドル単一レートを設定した当時の英断に学ぶべきであると思うが、政府が構想している為替貿易自由化の前提条件は一体いかなるものであるか、また、それを実行する時期はいつであるか、これについて、佐藤大蔵大臣、池田通産大臣より、その方針と見解をつまびらかにされたいと存ずるのであります。
 次、デノミネーションに対する政府の方針についてお伺いをいたします。岸総理は、五月十三日、東北遊説中の記者会見で、「デノミネーションは経済が落ちついている今が好機だと思う」と、あたかもデノミの実施近しとだれしもが受け取るような積極発言を行いました。これにろうばいした当時の佐藤蔵相と福田幹事長は、追っかけてこれを否定し、強く反対意見を表明したことではありましたが、一犬虚にほえて万犬実を伝うのことわざもあります。いわんや、それが一国の総理大臣の言明であり、しかも、そつのないことを自負されているその人の公的な所信の発表でありましたから、この総理発言の一投石は、たちまちにして万波を描いて、デノミに対する誤解と錯覚が国民大衆の間におそるべき反響をもたらしたのであります。すなわち、これが現金や預金を株式、不動産、貴金属、骨董品への換物運動にかり立てることになり、ために、株価の高騰をさらにあおり立て、五月下旬には旧ダウ平均相場を八百円台に乗せるという異様なる現象を招来したものであります。かくて、この事態に驚いた岸内閣は、越えて六月五日、特に閣議をもって、現状においてはデノミネーションは行わないとの方針を決定し、これを発表するという特別異例の措置をとったのでありました。およそ、一国の総理、宰相たる者が、事もあろうに、通貨価値の根底に触れる重大問題について、不用意、軽率にも、かかるでたらめな発言を行うがごときは、まことにもって、無定見にして、かつ、無責任きわまるものと申さなければなりません。(拍手)岸総理は、この発言が広く経済界に及ぼした悪影響と、国民大衆に与えた損害に対し、いかなる責任をとらんとするのであるか、ここに、その政治家的良心に訴えて、責任ある御答弁を願いたいのであります。
 なお、加えて、この際、佐藤大蔵大臣並びに菅野経済企画庁長官にお伺いをいたしたいことは、その、現状においてはデノミネーションを行わないという閣議決定の具体的内容についてであります。すなわち、それは、近き将来に、政府は何らかの前提条件が満たされさえすればデノミネーションを行うことを考えておるのであるか、それとも、その閣議決定は、デノミネーションなるものは理論的にも実際的にもとうてい行い得ないものであるから、政府は全然このことを考えてはいないことを意味するものであるのか、この際、国民の疑惑を一掃するために、佐藤、菅野の両大臣より、デノミに対する岸内閣の方針を正確に御明示されたいと思うものであります。
 由来、デノミそのものは、事務的、技術的に処理すべき性格のものであるといわれております。しかしながら、それ、経済が全く安定し、かつ、物価水準が個々の価格を通じて正確に均衡を得ているということが、絶対的大前提とされておるのであります。しかるに、わが国の経済の現状は、一体いかがなものでありましょう。戦後、インフレの結果、戦前基準に対し、現在のそれは卸売物価指数において三百四十倍、小売物価指数は三百十倍であるのに、賃金、給料水準はせいぜい二百倍でありまして、これは、いまだなお低賃金、低給与のアンバランスの実態を示すものであって、このことは、デノミの前提であるインフレ後における個々の価格を通ずる均衡がいまだ達成されていないことの実証であります。岸内閣はいやしくもデノミを口にした以上、また、そのことを考えております以上、少くとも、かかる低賃金、低給与に対しては何らかの是正の方策を講ずべきであると思うが、この点について、松野労働大臣、佐藤大蔵大臣の御見解を、あわせてお伺いいたしたいのであります。
 次は、岸内閣の無為無策とも断ずべき証券行政についてお伺いいたします。株価は、この一年有半、あやしき燐光を放って、ただ棒高の一途をたどっております。証券業界はどこへ行く。その現状は、あたかも、もののけに取りつかれた狂人が、方角も知らず、ただまっしぐらにかけ抜けていったような、いわば、それは狂気のさたと申さなければなりません。すなわち、株価上昇の足取りを見るに、旧ダウ平均で、最近の底値は、三十二年十二月二十七日の四百七十一円がそれで、これが三十三年一月には五百円台に乗せられ、十月には六百円台に、三十四年二月には七百円台に、しこうして、五月末には八百円台へと、ただ真一文字に高騰を続けて参りました。また、この高騰のテンポを見るに、五百円から六百円に至るのに九カ月の期間を要したのに、六百円から七百円、七百円から八百円に至るのには、もはや四カ月という、ここに格段のスピード・アップが見受けられることは、まことに重大視されなければなりません。しかも、この間には各種の規制、警告、法令違反業者の処分、各種の行政指導という所管大蔵省のさまざまな圧力が加えられながら、株価は、その圧力を軽くはね返して、そのつど皮肉にも上昇して今日に至りました。この原因は一体何であるか。これを称して経済の先見性とか、業績相場とか、あるいは大衆の株式参加のもたらした証券市場の進展などと、これをそらぞらしく言いくるめることは、もはや責任ある地位にある者に許されるところではないでありましょう。
 一体、政府は、証券業務と投資信託業務との兼営をこのままにして放任する方針であるのか。はたまた、世論に従ってそれを分離する決意があるのであるかどうか。また、四大証券がマンモス化したことによって、そのバイカイ行為が、東京都においては全証券取引高の六五%を占めるに至り、ために、東京証券取引所は公正なる株価を形成するという本来の公的機能を喪失しつつあるが、政府は、これに対し何らかの規制を必要とはお考えにならないのであるか。また、大証券はブローカー業務、中小証券はディーラー業務といった、いわゆる職能を分化せよとの世論に対し、いかなる検討を加えたのであるか。しこうして、企業資本の充実を助長するための証券税制の改正は、いつ、いかなる方法で具体化するのか。これらの諸懸案は、わが国の証券市場の健全なる発展のためにも、また、企業資本の充実をはかるためにも、これこそが根本的な条件となるものであると考えるが、佐藤大蔵大臣はこれに対し、いかなる見解をお持ちであるか。もし、それ、政府の証券政策が、この期に及んでも相変らず事なかれ主義に終始して、結局、末梢的な、こうやくばりの域を出で得ずして、ために、やがてこれが破綻に至るがごときことあらば、政府の責任はまさに万死に値すると思うのであります。
 巷間、証券業界と保守政権とのつながりは牢固として抜きがたきものありと取りざたされておるのである。佐藤大蔵大臣にして、この際、その職責の何たるかを自覚されるならば、今こそ、従来の証券行政の陋習を打ち破り、その病根を摘出し、もって抜本的に証券行政の大改革を断行せざるを得ないはずの事態と思うが、これについて佐藤大蔵大臣の見解はいかなるものであるか、この際、所信のほどを明らかに示されたいと思うのであります。
 次に、独占禁止法改正に関する政府の御方針についてお伺いをいたします。池田通産大臣は、六月二十日、記者会見において、独禁法の改正に論及して、これに賛意を表されました。貴下は七年前、かつて通産大臣たりしとき、貧しきは麦を食うべしと放言されて、きびしくその責めを問われました。自来、貴下は、明暗の幾山河を越えられて、くしくも、ここに再び通産大臣の職にあられます。独禁法の改正に対する中小企業者、農民、消費国民大衆の反対がいかに強烈なものであるか、それ、この法案が去る第三十回国会に提出されながら、ほうはいたる世論の反撃によって押し流されたことに徴しても、貴下はこれを聡明に判断さるべきでありましょう。しかるに、貴下は、再びその世論を敵にして立ち向わんとされております。かくては、貴下にとって、その通産大臣なるポストは、ついには宿命の鬼門となり終るであろうことを、ここにあらためて御銘記願わなければなりません。(拍手)
 思うに、この独禁法は、その制定当初のものは、厳格にして公正、かつ、独禁政策の理想にきわめて忠実なものでありました。しかるに、その後幾たびか改悪されて、次第に独禁政策の後退となり、予防的規定は緩和され、各種のカルテルが容認せられて、今や、独禁法は、実質的に、骨のない、ぐうたら法律に堕し去らんとしておるのであります。
 しこうして、独禁法がこのようにして改悪された結果、法の体系は乱れ、随所に深刻なる弊害を生じつつあるのであります。たとえば、株の買い占めによる会社乗っ取り事件の頻発もその一例であります。過去においては、白木屋、大日本印刷、渋沢倉庫、帝国ホテル、大協石油、東海汽船等々、現には東洋精糖、汽車製造、帝国臓器、芝浦製糖等々、企業界には現に弱肉強食の一大恐怖時代が来襲せんとしております。他人が辛酸を傾けて完成した企業を、資力と謀略によってこれを奪い取る、まさに羅刹の所業と申さねばなりません。(拍手)産業の秩序も企業者の道義もかくては勧離骨灰であります。特に看過しがたきは、岸内閣の元法務大臣唐沢俊樹君が、事もあろうに、みずから渦中の闘士として、このほど、東急を代弁して、強引にも東洋精糖の重役として乗り込まれたことであります。
 池田通産大臣は、これら一連の、すさまじいばかりの格闘を、独禁法の精神に照らして何と見るか。もし、それ、わが国経済の現状において独占禁止法の改正を行わんとするならば、それは、独禁法をして法本来の使命を達成せしめ、その機能を確保するために、この際、巨大企業、寡占企業の市場独占を規制し、中小企業の保護育成措置を強化し、独禁法精神の行政各部への浸透措置をはかることこそが、緊急焦眉の先決問題であると思うのであります。しかるに、第三十回国会に政府提案を見たるがごとき、これ以上に各種カルテルやトラストを拡大せんとするがごとき改悪は、わが国の経済秩序を破壊し、国民大衆の利益を大企業の利益のために剥奪せんとする、まさに暴虐理不尽な仕打であって、かくのごときは全国民の断じて承認しあたわざるところであります。池田通産大臣の現行独禁法に対する御所見はいかなるものでありますか。並びに、政府は、その改正法案を再び国会に提出する方針であるかどうか。また、提出するならば、その時期はいつか。この際、池田通産大臣並びに所管岸総理大臣より責任ある御答弁をお願いいたしたいと存じます。
 最後に、岸内閣総理大臣の外遊についてお伺いいたします。
 貴下は、ここ数次の選挙に勝利を占めたりと潜称して、今や長期政権の夢を描かれております。思えば、かつて貴下とともに宣戦を布告し、貴下とともに戦争を指導した貴下の同僚たちの多くは、哀れ絞首台上の露と消えられたのに、ひとり貴下の運命だけに、けんらん華麗な繁栄が果てしなく続くかに見受けられます。国民は、この異様な光景に慨嘆し、たとえば、去る六月二日の参院選挙においては、ただ反岸、打倒岸一本やりの辻政信候補に対して六十八万三千二百五十六票の同情を示すことによって、その公憤のありかを明らかにいたしました。また、過ぐる六月三日には、貴下の官邸の正面において、国民の悲願の何であるかを死をもって貴下に知らしめんとした一僧侶が、壮烈にも割腹憤死して、貴下に反省を迫ったほどであります。これにこたうる貴下の心事は何でありましょう。いわく、実弟を蔵相に据えて天下の財嚢を掌握し、いわく、宣戦内閣以来の巣鴨の盟友に司法権を確保して、万一に備えられました。しこうして、貴下内閣総理大臣として、近く再度の外遊を思い立たれ、欧州、中南米諸国を望んで、豪奢な国賓の礼を満喫されんとしております。
 今や、日本をめぐるアジアの諸情勢はいかなるものでありましょうか。そこには、日米安保条約改正に対するソ連政府の冷厳たる警告あり、加えて、貴下の敵視政策をにらみ返す中国政府の無気味な沈黙がある。しこうして、朝鮮人送還をめぐる韓国の抵抗と、さらには南ベトナムヘの賠償締結に対する北ベトナムの憤激、はたまた、ビルマの賠償増額要求等々、これことごとくわが国存立の基礎をゆすぶる重大問題ばかりであります。まことに、貴下にして憂国隣民の微衷だにあらば、かかる険阻な情勢を外にして、長期にわたり国を離れ、あらぬ儀礼にうき身をやつすがごときは、断じて許されるところではないでありましょう。(拍手)総理は、その明敏をもって、いやしくも緩急前後の判断を誤まるべからず。すなわち、当面焦眉のこれら内外の諸懸案の解決に当るため、この際は、かかる外遊は断じて中止すべきであると思うが、総理にその反省はないのであるか。なお、たって外遊を強行せんとするのであるならば、その目的は何か。その緊急性と、しこうして、それが総理以外の余人をもってしてはかなわぬ事情について、国民が納得できるように御説明願いたいのであります。(拍手)
 以上七点に対し、おのおの指名大臣より明確なる御答弁をお願いをいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#22
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 池田通産大臣が経済政策として非常な積極論を唱えており、佐藤大蔵大臣が消極的な立場をとっておる、閣内不統一じゃないか、一体総理はどうするんだという御質問でございました。もちろん閣内におきましてもいろいろな議論がありますことは、これは当然でございますが、それは総理が責任を持って意見を統一しておるのが内閣制度の本体でございます。私は、産業官庁の責任者が自然積極的な考えを持ち、財政当局が自然消極的な考えを持つというのは、これは職責上当然なことであって、これを調整するのが政治であり、内閣のとるべき問題である、かように考えます。
 国民所得倍加の政策が、通貨の安定を害したり、あるいはインフレを起しはしないかという御懸念でございますが、私がしばしば申し上げておるように、経済の問題は、できるだけ大幅な景気変動がなく、安定した基礎の上に成長していくことが望ましいと思います。特に日本におきましては、年々ふえていくところの労働人口の増加を考えますというと、雇用の増大ということは経済政策の非常に大きな眼目であり、国民生活の水準を引き上げること、国民生活の向上、この二つの目標から、この経済の発展なり生産の拡大、国民所得の増加というものを考えていくのが当然であります。御指摘のように、数字的に言いますと、年々七・二%ずつ成長していけば、十年に倍加するということになります。最近の、われわれが立てた、この三十三年度からの五カ年計画、六・五%の成長率を見てきております。多少の移動は年によってありますけれども、大体その線に沿うてきておりますが、最近における科学技術の発達や、その他あらゆる面を取り入れて考えますと、私どもは、この成長率を、さらに安定した基礎の上に、いわゆるインフレを起したり通貨の価値を変動せしめるようなことはなしに、これを倍増することが可能であるという考えのもとに、その目標で、あらゆる総合的な検討をして計画を立てたい、かように考えております。
 デノミネーションの問題につきましては、すでに閣議で決定をいたして、これをやらないということを国民に明瞭にいたしております。
 独禁法改正の問題につきましては、すでに、日本の経済の実情から見て、現在の独禁法が実情に沿わない点等も考慮して、そうして専門家や有識者を集めて検討をいたしました案に基いて成案を得て国会に提案をいたしたのであります。しかし、これに対しましては、春日君の御指摘になりましたように、農民層やあるいは中小企業その他の方面からも相当強い反対があり、批判がありまして、審議未了になってきておることは、御承知の通りであります。そういう方面の事情も十分検討し、調整した上において、成案を得て、適当な時期にさらに提案をいたしたい、これが政府の考えでございます。
 それから、私の欧州及び中南米訪問につきましての御質問でありますが、この問題につきましては、すでに昨年の秋以来、これらの国々から招待を受けております。しかし、国内の情勢等も考え、さらに国際情勢の変化等も十分頭に置いて検討をいたして参ったのでありますが、すでに私が所信の表明において申し述べましたような目的、すなわち、現在の変化する国際情勢の見通しや、また、世界平和を増進する上においてのお互いの首脳部の隔意のない話し合い、さらに欧州共同市場やその他の経済上、政治上のいろいろな変化もございます。こういうものを正確に把握することが日本の将来の政策を立てる上において必要である。また、中南米に関しましては、日本移民がたくさんに参っておりますし、さらに将来これに対して通商貿易を拡大し、経済協力も拡大していく必要があると思います。そういう意味において、実情につきまして視察すると同時に、これらの国の首脳部と隔意なく話して理解を深め、友好関係を深めることが、私は、この際必要である、かように考えておるわけでございます。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#23
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 私の経済政策が積極的で、拡大の政策だ、これはもちろん安定の上の積極拡大であるのであります。安定なきところに、拡大も、あるいは積極もないのでございます。どうぞ、その辺を御了承願いたいと思います。
 次に、為替貿易の管理制度の自由化の問題でございます。お話の通り、世界的に自由化が叫ばれ、着々実行されておるのであります。わが国におきましても、国の経済を安定強化して、この線に沿っていく考えでおります。具体的に申しますると、為替の自由化も、手近な問題はやっております。また、輸入の自由化も、あるいはAA制等の拡大をはかりまして、この線に沿っていっておるのであります。しかし、この為替貿易の自由化は、何と申しましても、わが国経済の安定の上の拡大強化によってささえられるものであります。
 次に、独禁法の改正でございまするが、これは、お話の通り、昨年の秋の国会で審議未了になりました。私は、わが国の経済の現状から見まして、独禁法に適当な改正を加うる必要を感じておるものでございます。しかし、何分にも、この法律は、わが国経済秩序の基礎をなす重要なものでございまするから、各方面の理解と納得を得た上で、御審議をお願いいたしたい考えでございます。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#24
○国務大臣(佐藤榮作君) 私の経済論を慎重、安定、かように御指摘になり、あるいはまた、非常に消極的だ、こういうような御批評をなさる向きがあるやに伺いますが、絶対に、私、経済を縮小するような考えは持っておりません。どこまでも経済を安定的成長発展をさす、そうして、その成長度も高ければ高いほどよろしい。これは間違いなく私もさように考えております。
 次に、為替貿易の自由化の問題でございますが、これにつきましては、ただいま池田通産大臣からもお話がございました。十分連絡をとりまして、すでに指定通貨の拡大もいたしましたし、ユーザンス制度の改正もいたしましたけれども、今後さらに貿易の自由化という意味で自由化品目を拡大していく、こういう方向で、一そう検討を続けて参るつもりでおります。あるいはまた、為替管理法そのものも基本的に十分検討いたしまして、国際情勢におくれないように、十分注意して参りたいと思います。
 デノミネーションの問題につきましては、総理から先ほどお答えをいたしましたが、国民の誤解を一掃するために、この機会に、さらにあらためて、さような考えを持っておらないことを、この議場を通じて申し上げておきます。
 最後の証券行政についてのお尋ねでございますが、政府といたしましては、証券行政上の基本的な態度としては、第一に、証券の民主化による直接投資、これを推進して参る考えでございます。同時に、この証券市場を通じて、産業資本調達、この機能を十分発揮さす、こういうことを念願しておるのであります。第二に、証券業者の資力及び信用を向上さす。同時に、できるだけこの証券業者相互間の職能の分離、確立ということをはかって参る考えであります。第三に、取引所、証券業協会等、業界の自主的な体制を確立して、その民主的な運営をはかっていく。これは当然であります。私どもの念願といたしておりますのは、これらの方策を通じまして、大衆の投資家に対する保護を十分にして参りたい、不当の損失をこうむらないように万全の方策を考えて参りたいというのが、私どもの考えであります。そこで、先ほどお話しになりましたように、この投資者保護を一そう徹底さすという意味から、各方面の意見も十分聴取して、独断に陥らないように、私ども注意して参るつもりであります。最近、証券取引審議会をさらに再開をいたしまして、これが活用をはかっていくということをいたしておるわけであります。ただいま申し上げるような点で、今後も十分注意をいたしまして、善意の投資家に対して不当の損害を及ぼさないように注意して参るつもりであります。(拍手)
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#25
○国務大臣(菅野和太郎君) 国民所得を倍増することができるかどうかという御質問であったように思うのでありますが、皆さんも御承知の通り、戦後は、すでにわずか六、七年の間に資本形成は倍増いたしておるのであります。これは、もちろん、戦後の復興時代でありましたから特別の事例でありますが、大体復興が終りました今日におきましては、果してそう六、七年の間に国民所得が倍増するかどうかということは、これは今後の研究に待たなければならないと考えておるのであります。先ほど総理大臣からお話がありました通り、最近における科学技術の格段な発展ということが、この国民所得倍増に非常に影響するのでありまして、私は、最近における科学技術の伸展並びに日本人の今日までの経済活動の実績などから見て、十年を待たずして国民所得の倍増ができるのではないかというように、一応見通しをつけておる次第であります。
 なお、デノミネーションにつきましては、すでに総理大臣並びに大蔵大臣からお話がありました通り、デノミネーションをしないということは閣議決定いたしております。しかし、ただいま春日議員からお話がありました通り、デノミネーションを実施するについては二つの条件を必要とすると私は思っておるのであります。一つは、経済均衡が妥当であるということと、一つは、国民がデノミネーションということについて正当な理解を持つということであります。今日、デノミネーションのことを云々すれば、たちまちそれが経済界に影響を及ぼすということは、国民がデノミネーションについて正当な理解を持っていない証拠だと思うのであります。現に、フランスでは、最近デノミネーションを実施したおかげで、フランスの経済界が好転しておることは、皆さんも御承知の通りであります。しかし、現在の日本の経済状態のもとにおいては、まだ、国民の今のデノミネーションに対する理解のもとにおいては、私はデノミネーションは今日なすべきでないという考えを持っております。(拍手)
    〔国務大臣松野頼三君登壇〕
#26
○国務大臣(松野頼三君) お答えいたします。
 総理府の消費者物価指数、日銀の小売物価指数、労働省の製造工業の賃金を比較いたしますと、消費者物価は三百十四倍、小売物価が三百十倍、賃金は、製造業賃金以外に比較がとれませんので、これをとりますと、四百一倍でございます。実質賃金は、昭和二十七年はすでに戦前の二八%上昇しております。しかしながら、いずれにいたしましても、春日議員の御指摘のように、企業別賃金格差というものが今日ございますので、おそらく、今後は、賃金問題はその方向により以上政府は努力しなければならないことは当然なことだと考えております。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#27
○国務大臣(佐藤榮作君) 公債政策についての答弁を落したということでございますので、つけ加えさせていただきます。
 御意見のうちにもありましたように、通貨価値を安定さすということは、経済成長の場におきましても私どもの特に意を用いなければならない点でございます。従いまして、かような観点から、今日までは、公債政策を取り上げることが、いかにも通貨価値に何らかの変動を与えるのではないか、かような危惧を今日まで持って参っております。従いまして、公債政策を採用するという場合におきましては、十分当時の金融情勢なり財政情勢を勘案してこれを決定しなければならないことだと思っております。結論から申しますならば、ただいま公債政策を採用する考えは持っておりません。
#28
○議長(加藤鐐五郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#29
○議長(加藤鐐五郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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