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1959/07/01 第32回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第032回国会 本会議 第6号
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1959/07/01 第32回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第032回国会 本会議 第6号

#1
第032回国会 本会議 第6号
昭和三十四年七月一日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  昭和三十四年七月一日
    午後一時開議
 一 沖縄布令二十三号(新刑法)に関する緊急質問(中村高一君提出)
 二 新潟地区地盤沈下に関する緊急質問(櫻井奎夫君提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 首都圏整備委員会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 中央更生保護審査会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 日本電信電話公社経営委員会委員任命につき事後の承認を求めるの件
 旧軍港市国有財産処理審議会委員任命につき同意を求めるの件
 公安審査委員会委員任命につき同意を求めるの件
 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件
 公正取引委員会委員長任命につき同意を求めるの件
肥料審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
一 沖縄布令二十三号(新刑法)に関する緊急質問(中村高一君提出)
二 新潟地区地盤沈下に関する緊急質問(櫻井奎夫君提出)
    午後一時三十九分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。
 内閣から、首都圏整備委員会委員に金子源一郎君、次田大三郎君、工藤昭四郎君及び島田孝一君を任命したので、首都圏整備法第八条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、中央更生保護審査会委員に久保田万太郎君を任命したので、犯罪者予防更生法第五条第三項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#7
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、日本電信電話公社経営委員会委員に井上富三君及び古野伊之助君を任命したので、日本電信電話公社法第十二条第二項の規定によりその事後の承認を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り承認を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、承認を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#9
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、旧軍港市国有財産処理審議会委員に荒井誠一郎君、田中治彦君、千金良宗三郎君、中村建城君及び渡邊武次郎君を任命したいので、旧軍港市転換法第六条第四項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#11
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、公安審査委員会委員に戸塚九一郎君を任命したいので、公安審査委員会設置法第五条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#13
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、国家公安委員会委員に安井英二君を任命したいので、警察法第七条第一項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#15
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、公正取引委員会委員長に佐藤基君を任命したいので、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二十九条第二項の規定により本院の同意を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#16
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
#17
○議長(加藤鐐五郎君) 次に、内閣から、肥料審議会委員に本院議員足立篤郎君、同重政誠之君、同永井勝次郎君、同三宅正一君及び参議院議員河野謙三君を任命するため、国会法第三十九条但書の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。
 右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
     ――――◇―――――
#19
○議長(加藤鐐五郎君) 本日の日程に掲げました緊急質問一及び二を逐次許可するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#20
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。
 沖縄布令二十三号(新刑法)に関する緊急質問を許可いたします。中村高一君。
    〔中村高一君登壇〕
    〔議長退席、副議長着席〕
#21
○中村高一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、新たに沖縄に公布されました新刑法に関連をいたしまして、政府に質問をいたしたいのであります。
 その前に、昨日起りました沖縄の事故につきまして、まず、お尋ねをいたしたいのであります。
 昨日、アメリカ軍のF100ジェット機が石川市宮森小学校に墜落をいたしまして、本日の報道によりますと、被害は相当大きく拡大をいたしまして、死者二十一人、負傷百名、民家三十九戸を焼失いたしたと報道せられているのであります。政府におきましても、もちろん報告を受けておると存じまするので、この際御報告を承わりたいと存じます。
 なお、当然起って参りますこの種の事故につきまして、損害の補償をいたさなければならないことは当然でありますが、政府としても、現地を支援いたして、アメリカ政府と適当な交渉を行うことが当然だと思うのであります。今までも、沖縄におきましては、占領以来、たびたびにわたって、こうした損害が起っておりますが、残念ながら、いまだに完全な解決がせられておらないのであります。日本の本土には、安保条約とか、あるいは行政協定等に基きまして、職務の執行中行われた場合、あるいは職務の行われなかった場合等におきまする損害について詳細な規定があるのでありますが、沖縄にはこうした法的措置がとられておらないために、依然として問題を残していると思うのであります。これに対しまして、政府はどういう対策をとるのがよろしいか、お尋ねをいたしておきたいと存じます。
 次は、問題になっております新しい刑法であります。詳しく言いまするならば、新しい刑罰法令で、市会第二十三号として五月十八日に公布せられたのでありますが、いろいろの問題が現在起っております。
 御承知の通り、沖縄の人々は、祖国への復帰を一日も早く実現したいと念願をいたしておりまして、今回の安保条約の改定についても深い関心を払っているのであります。占領後、今日まで、比較的治安もよく、戦後の復興も進んでいるときに、何ゆえに、一体、沖縄の人々の人権を侵害するようないろいろの制限や、過酷と思われるような刑罰を課したり、日本との交流に支障を来たすと思われるような法律を作らなければならないのか、われわれには、まことに理解ができないのであります。(拍手)おそらく、これは、安保条約の改定によって沖縄の軍事基地が一そう高度化し、軍機保護とか、あるいは秘密の保護とか、そういうような必要を前提として、こうした刑罰法令の強化が行われるのではないかと、われわれには推測できるのであります。
 この法律に関しましては、現地では、各政党初め十八の民間団体が立って、人権を擁護するために、この法律反対の運動を起しまして、アメリカ民政府もこの反対運動等を考慮せられたものだと存じますが、六月五日実施の予定を変更して、八月十五日まで実施を延期せられたのでありまするから、この八月十五日の延期までの間に、日本政府がアメリカ政府と適当な折衝をすることによって、問題の解決は必ずしも困難ではないと存じますが、この点についても政府のお考えを承わりたいのであります。
 今度の法律が、いかにわれわれが見ましても不当であるかという点について、おもなる点だけを二、三指摘いたしまして質問の資料にいたしたいのでありますが、沖縄人が外国人と通謀をして、もし情報活動などをやれば、死刑に処することもできるという、非常に重い刑罰を課せられるのであります。
 この法律の中に、すみやかにわれわれが修正を求めなければならないと思われます点は、この条文の中に、日本を明らかに外国と規定いたしている点であります。合衆国及び琉球以外のすべての国は、これを外国もしくは外国国民または外国政府というのでありますから、この定義の通りだといたしまするならば、日本は、明文上、沖縄とは外国であると断定をせられているのでありまして、まことに日本と沖縄との関係を無視した法律であるといわなければなりません。(拍手)沖縄に日本の潜在主権があり、将来日本に復帰することも既定の事実であります。しかも、アメリカの民政府の市会は法律と同じ効果を上げるのでありまして、法律に日本を外国と規定しているというようなことが今まであったでありましょうか。こんなことが法律に明記せられるというようなことをいたしまして、何らの異議も言わないとしますならば、日本の体面にもかかわるばかりでなく、祖国復帰を念願とする沖縄の人々に対して大きな失望を与えるものであると考えるのであります。(拍手)
 今までも、スパイの行為というものが処罰をされておったことは事実であります。ところが、今までの規定よりは、はるかに今度は過酷になってきたのであります。すなわち、今までは単に偵察行為というような説明でありましたが、今度は、情報の入手をしようと努める行為であればよろしいのであって、情報が目的通りとられようが、あるいは相手方に伝達されようが、そういうことは必要としない、入手しようと努力をしたことだけで死刑にすることもできるというのでは、まことにわれわれは過酷であると存じます。もし、こんなことが実際に行われるとしますならば、軍事基地をのぞいただけでもスパイ行為と認められるというような、まるで日本の戦時刑法以上の過酷なものであります。
 また、沖縄人が日本本土に渡航をいたしました場合において、外国とお前は通謀したというような嫌疑をかけられるとしますならば、全く渡航の自由というようなものは狭められてくるということも明らかであります。こんなことで死刑までも要求されるというような法律は、まことに人権を侵害するものであるといわなければなりません。(拍手)ことに、今までは、スパイ行為などは、相手方は暴力で政府を転覆することを目的とするような、非合法的な不法な団体が対象であったものが、今度は、だれに情報を漏らしてもいけないという、非常に範囲が拡大をせられたのであります。
 さらに、また、新たにサボタージュもいけないというような規定がありますけれども、こういう法律は、なかなか日本人にはわかりにくい言葉でありまして、サボタージュなどということが法律の中に出てくるということも、まことに危険であります。こういう点についても、いかにひどいかがおわかりになると思うのであります。
 なお、これも従来も問題になっておったのでありますが、依然として沖縄には日本の国旗を掲げるという自由がない点であります。これも、今度の市会の中にはもう除かれてもいい時代ではないかとわれわれは思っておりましたが、また今度の法律の中にも、日本の国旗は、高等弁務官の許可がなければ、官公署も、あるいはその構内でも掲揚してはならない、公的もしくは政治的な性質を有する集会、行列、こういうところでは一切日本の国旗を掲げてはいけない、ただし、個人の家ではこれを掲げてもいいという、まことに情ない規定が依然として残っているのであります。(拍手)平和になった今日、自国の国旗を掲げる自由が法律で禁ぜられるというようなことが、一体どこの国にあるでありましょうか。(拍手)こんなばかなことは、すみやかに撤回を求めることが当然過ぎるくらい当然であります。
 また、今まで、アメリカ政府や民政府を誹謗したり、扇動したりした文書を出したり、こういう政府攻撃をいたすことは禁ぜられておりましたが、今度は、琉球政府に対してもやってはならない。今までは文書だけであったものを、今度は口頭で行なってもいけないというのでありますから、政府の批判は、アメリカの民政府はもちろんのこと、沖縄の琉球政府の批判さえ許されないというようなことに相なって参りました。また、政党、労働組合のほか、会社も、組合も、クラブも、グループも、政治的目的であろうが、その他の目的であろうが、民政府や、新たにまた沖縄の琉球政府が加わりましたが、侮辱をしても、棄損をしても、虚偽の言論をすることもいけないということであります。これでは、政治的でも、あるいはその他の会合でも、うっかりすると世間話もできないというような、まことにもって不都合な規定であると思うのであります。こうした市会に似たものは、韓国の新国家保安法という非常にひどい反動的な法律がございますが、この法律の内容を見ますると、いずれも、国家に対する反逆は処罰をしておりまするけれども、政府に対する批判がいけないなどということは、韓国の新国家保安法でさえもないということを、この際に申し上げておきたいのであります。
 こういう事実を指摘いたしますると、たくさんあるのでありまするが、なお、私たちは、どうしてこんな情ないことをアメリカ政府がやってくれるのかと思うことは、今までの法律では、罰金は最高五万円でありました。ところが、今度は最高百八十万円、九十万円、四十五万円、こういうような多額な罰金を求めておりまするけれども、経済的に恵まれないことを承知でこういうことをやることは、おそらく沖縄の人々に対する一種の威嚇的効果をねらっているのではないかと私は思うのであります。金のない者にとっては、場合によっては体刑以上の苦痛を与えるものだと思うのであります。まことに不可解千万でございます。
 これらの事実は、私は、おもなるものだけを申し上げまして、詳細を省いたのでありまするが、これらの点に関しまして、一体、日本の政府は、全然これを無視して、見物しておってよろしいのかどうか。
 岸内閣に対して、もう一つ、交渉の確信を与えるために、私は、アメリカ大統領から、一九五七年、琉球列島の管理に関する行政命令というものが出ておりますから、この命令の趣旨に従ってアメリカ政府に勧告をせられたいと思うのであります。アメリカ大統領は、高等弁務官に対しまして、この命令の遂行に当っては、言論、集会、請願、宗教、出版その他のことについて、民主主義国の人民が享受する基本的自由を保障しなければならないという、実に的確にして適切なる命令を下しているのでありまするが、今度のこの法律を見ますると、全く大統領のこの行政命令に反しているばかりではなくして、人権を棄損することがはなはだ大だと思うのでございます。
 特に、問題になっておりまする立法権や司法権がアメリカ政府にあることは別といたしましても、基本的な人権の保障については、文明諸国に共通する国際的基準というものには従わなければならないということは、多くの学者によって支持されているところの議論であります。人権尊重の建前から、私は、大統領の命令を即時に実行するよう要請をしていただきたいと思うのであります。私は、条理を尽せば決して不可能なことではないと存じます。さきに土地問題についてプライス勧告が行われました。あのときでさえも、現地の沖縄の諸君と内地のわれわれが相ともに立ってその不当を責めました結果、アメリカ政府はこの地代の一括払いを撤回し、相当地代を毎年払いに改めた前例をどうぞ御記憶を賜わって、安心して交渉をしていただきたいと思うのであります。(拍手)
 平和条約の第三条によりますと、こういう行政、立法並びに司法の権力の全部または一部を行使する権利をアメリカが保有いたしていることは事実でありますけれども、私が申し上げたいのは、現に沖縄には立法院がございます。しかも、沖縄の法令を調べてみますと、立法権は立法院によって行使されると明らかに規定されております。しかも、今度のような、この沖縄の人権に関する重大な法律が、立法院には一言半句の相談もされずに、突然これを公布するというようなことを行われたのでは、立法院というものは何のためにあるのか。ことに、選挙を行なって、投票によって当選をした立法院の議員がいるのにもかかわらず、法律には関係がないという。立法院は一体何の存在理由があるのか。この点につきましては、平和条約の規定も、日本に対しまするところの立法権の一部を便宜上放棄するということまでも禁止されているわけではございません。おそらく、立法院を沖縄に作らしたということは、その一部を立法院に委譲するという前提があったからだと存じまするので、かくのごとく沖縄の住民に直接関係のある法令に対しては、すみやかに立法院の議に付するような勧告をすることが当然ではないかと思うのであります。(拍手)
 なお、この際、まことに重要でありまするから、引き続いて政府にお尋ねをいたしたいのでありまするが、それは沖縄の施政権の返還の問題についてであります。
 今度の、この厳重な沖縄の市会を考え、また、近く改定を協議されておりまするところの安保条約などにおいては、伝えられるところによると、今後十ヵ年間の有効期間を付するということでありまするが、それやこれをあわせ考えますると、施政権の返還は遠くなったのではないかというような見方がわれわれにはできるのでありまするけれども、政府の見解はいかがでありますか。特に、この点につきましては総理大臣からも御答弁を賜わりたいのであります。
 沖縄の県民にとって、祖国復帰、施政権の返還は、夢にだに忘れることのできない熱願であります。安保条約の改定の折衝において、沖縄、小笠原の包含論はずいぶん議論をされたようでありますけれども、施政権の返還についてどれだけ強い要求があったのか、われわれには知ることはできないのであります。近く返還の見込みがあるのかどうか、あるいはまた、返還の場合にはアメリカの一方的意思で返還ができるのかどうか、全くわれわれにはわからない状態に置かれております。
 総理大臣には、この重要な沖縄の返還問題について、昭和三十一年に本院で決議された決議を、どうぞもう一度思い起していただきたい。それは、岸信介君外十六名提出でありまして、ほかの者が提出した決議案ではございません。あなたが提出の筆頭者であります。「政府は、速やかに沖縄及び小笠原諸島の施政権が一日も早くわが国に復帰するよう最善の努力を払い、沖縄及び小笠原諸島の住民の期待にそうとともに国民の総意にこたえるべきである。」かように決議をいたしております。(拍手)総理大臣は、野にあるときには決議の筆頭に立ったけれども、朝に立てば、おれはやらなくてもいいのだと、おそらくお考えにはならないと存じます。どうぞ、決議の趣旨を十分にお考えを願って、御答弁を賜わりたいのであります。
 なお、この際つけ加えておきまするが、法務大臣に、ちょっと二、三の点だけをお尋ねをいたしておきたいのであります。
 今度のような過酷な刑罰法令というものが、かりに、沖縄のような特殊な事情のあることを前提といたしても、一体かくのごとき過酷な刑罰法令がどこの国にあるか、御存じでありましたならば承わりたいと思うのであります。もし、こんなものはどこの国にもないという御見解でございましたならば、場合によったならば国連の司法裁判所に提訴するというような方法もあると存じますけれども、その決意があるかどうか。また、もし、ここに規定されたように、法律として日本と沖縄とは外国であるということになれば、沖縄の諸君は外国人になるのでありまするからして、その場合には、出入国の管理令であるとか、あるいは外国人の登録令であるとか、こういうやかましい問題が付属して起ると存じますけれども、いや、そういうことについては別に外国人とは認めないというのかどうか。アメリカの法律でありまするから、この点も明確に御答弁を賜わりまして、私の質問を終りにいたしたいと思います。(拍手)
    [国務大臣岸信介君登壇]
#22
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 沖縄の、本年五月十八日に公布されました新刑法のことに関する御質問でございますが、この内容は、根本におきましては、御承知のように、一九五五年に百四十四号の市会で公布されておる刑法並びにその後の修正やあるいは追加等を取りまとめたものを骨子とし、これに対して新たに数点の修正を行なったものでございます。もちろん、この規定によって沖縄の地位やあるいは沖縄住民の本質が変るものでないことは言うを待ちません。従って、日本がこの潜在主権を持ち、また、沖縄の住民が日本人であるという本質につきまして、われわれは何らの変更をされたものではないと確信をいたしております。
 なお、この内容等につきまして、いろいろの点をおあげになっての御質問でございますが、今日、沖縄における、要するに一切の施政権をアメリカが持っておる関係上、その施政権に基いて出されたものであることは言うを待たないのでございまして、われわれは、今中村君がここでおあげになりましたような本院における決議の趣旨はもちろんのこと、沖縄の住民の熱願であり日本国民の願望であるところの沖縄の施政権返還の問題に関しましては、われわれは、あらゆる機会において、これが返還をせしめるように努力をいたしております。今日の現状におきまして、その目的に到達し得ることのできないことは、われわれは非常に遺憾に思っておることであります。ただ、安保条約の改定の問題に関連して、施政権の返還の時期が遠のいたのではないかという御質問の御趣旨でごさいましたが、私どもは、そう考えておりません。この問題は、安保条約の改定の問題とは関係なく、あらゆる機会に、あらゆる努力をして、施政権の返還を実現するように今後とも努力して参りたいと考えております。
 なお、本件に関するアメリカ側との折衝や、あるいは規定の内容等についての詳細につきましては、関係の大臣からお答えをすることにいたします。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#23
○国務大臣(藤山愛一郎君) 市会第二十三号は、ただいまお話のありましたように、五月十八日に公布されたわけでありまして、一九五五年発布されました百四十四号、その後にいろいろ追加されましたり修正されましたりした条文を一括して、今度は布令二十三号として出したわけであります。そうして、その内容につきましては、ただいま御指摘のありましたように、強化されたところもございますけれども、また同時に、被告人保護の点については、被告人の立場を十分擁護するようにいたしております。また、出版物は、従来許可制でございましたのを届出制にすることになっておりますので、そういう点もございます。そこで、五月十八日に出ました後、外務省といたしましては、アメリカ大使館を通じまして、この問題についての説明を聞いたわけであります。その説明によりまして、この法律が、従来行われておりますような線を必ずしも逸脱するものでなくて、従って、民衆運動その他を特に圧迫するものでもなし、従来の通りの関係を持続していくのだという説明をいたしております。従いまして、原水爆の反対運動でありますとか、あるいは祖国復帰運動に対しては弾圧を加えないということを説明として申しておるのでございます。で、そういう状況をわれわれ承知いたしましたが、同時に、この問題は、むろん御指摘のように重要な問題でございますので、われわれも深い関心を持っておるのでございますが、御承知のように、琉球政府の立法府は、アメリカと話をいたしまして、琉球政府の立法院の希望によって、話し合いをするために、ただいまお話のありましたように、八月の十五日まで、六月五日の施行が延期されることになったわけで、これにつきまして話し合いが行われておりますので、私どもは、その成り行きを見ながら、むろん――琉球政府の立法院の立場を十分了知して、そうして、話し合いがなおつかなかったり、あるいは、その間、そごがありますれば、むろん、日本政府として、外交ルートを通じて十分な努力もいたし、あるいは琉球立法院の希望等の達成にも努力をしていくことは、当然なことだと思うのであります。現在そういう状況下にありますので、われわれといたしましては、推移を見ておるわけでございます。
 そこで、ただいまお話のありましたように、第四条の外国というのは、この規定によりますれば本条に限るわけでございまして、他に影響を及ぼすことはないと思っております。
 また、日本国旗の問題につきましては、従来とも、われわれ、日本国旗の掲揚につきまして十分アメリカ側にも説明をいたし、要求もいたしておるわけでございますが、なお、それらの問題につきましては、今後とも、常時アメリカ側にも注意を喚起いたして参ることは当然のことだと思っております。そういうようなことでありまして、ただいまお話のありましたように、この権限の問題につきましては、全部または一部ということがございますが、これは、むろん、施政権を持っております以上、アメリカ側が全部の権限を持っておりますことは当然であります。しかし、その中において、琉球政府へどういうふうにこれを委任するかというような問題は、民政府の問題であろうかと思います。そういう意味からしても、ただいま立法院がアメリカ当局と話し合いをいたしておるのでありまして、どの程度まで立法院の議決による制度になるかどうかというような問題がそこに含まれておると存じております。
 法律の内容等については法務大臣から御説明申し上げると思います。
 最後に、沖縄の施政権の返還の問題は、当然、われわれといたしましても、沖縄国民の願望、日本人の熱望というものを体して、今後とも、絶えず、この問題については、アメリカ側に対して日本の立場を説明し、日本国民の願望を十分説明して参らなければならぬと思うのでありまして、安保条約締結とは別個の問題として、これらの問題につきましては、われわれ、将来とも、できるだけの努力を払っていく所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣井野碩哉君登壇〕
#24
○国務大臣(井野碩哉君) 私に対しまする御質問に対しましてお答えを申し上げます。
 今回の沖縄民政府の新刑法は、今までの個々の刑罰法令をかき集めて整備した、いわゆる集大成したものでございまして、その刑法の中で、日本を外国として取り扱っておりますが、これは、刑法の適用範囲の関係だけでありまして、日本の潜在主権には何ら関係ないものと考えます。従って、外国人登録令、出入国管理令の取扱いにつきましては、沖縄人はもちろん日本人として取り扱い、実質的には区別をいたすことはございません。
 また、スパイ行為を死刑に処することにつきましての立法例の御質問でございましたが、アメリカでは死刑、無期にいたしております。ソ連では、死刑を廃止しておりながら、これだけは銃殺にいたしております。フランスは死刑にいたしております。ドイツは五年以下の懲役、こういった立法例でございます。従って、これは大統領の行政命令に反するとは考えられないと承知いたしております。
    〔「飛行機のあれはどうした」と呼ぶ者あり〕
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#25
○国務大臣(藤山愛一郎君) 失礼いたしました。中村高一君の御質問の、飛行機の墜落につきましての御報告を申し上げます。
 昨六月三十日午前十一時に、ただいまお話がありました宮森小学校にジエツトのF100が一機墜落をいたしました。ただいま南方連絡事務所長からの電報によりますと、重軽傷百十二名、死亡十七名となっておりますけれども、重軽傷のうちには相当激しい人もあるので、死亡が追加されてくるのではないかということを心配されております。ただいま中村議員の二十一名という御数字は、公報よりも若干早いから、そういうことになったのではないかと思いますが、そういう点で、非常に心配をいたしております。とりあえず、南方連絡事務所長より、内閣を代表いたしまして、琉球政府の方に対して見舞をいたしておりますと同時に、これらの問題について、実情の判明、
  ――今後死亡者もふえて参るかもしれませんが、そこらの点を十分見た上で政府としては考えて参りたい、こう思っております。(拍子)
     ――――◇―――――
#26
○副議長(正木清君) 新潟地区地盤沈下に関する緊急質問を許可いたします。櫻井奎夫君。
    〔櫻井奎夫君登壇〕
#27
○櫻井奎夫君 私は、日本社会党を代表して、新潟地区における地盤沈下に関する諸問題について緊急の質問を行わんとするものであります。(拍手)
 今日、近代産業の発達はますます著しく、その国民に及ぼす恩恵もまた甚大であることは言を待たないところでありますが、反面、地域住民に及ぼす公害の影響もまた次第に顕著になりつつある事実を認めぬわけには参らないのであります。すなわち、工場の煤煙による空気の汚染、排水による汚毒水の問題、あるいは工場地帯の騒音、石炭、石油、ガスの採掘、採取に伴う鉱害等、いずれも近代鉱工業の発展によってその規模を大にしつつあるのであります。従って、これらの公害に対する予防、補償等については、当然一貫した考えのもとに体系づけられた政府の指導方針が確立していることが、近代工業国家としての当然の姿であろうと思うのであります。しかるに、今日、わが国の実情を見まするに、公害に対する何らの一貫性ある対策も指導もなく、政府の施策は四分五裂、いたずらに右往左往して、その場を糊塗するにすぎないのであります。
 御存じのごとく、地盤沈下は、単に新潟市に限らず、東京、大阪、横浜、これらの地方においても著しく、そのほとんどが近代企業と深い関係にあることは、今日、世間一般の常識と相なっているのであります。
 新潟地区における地盤沈下については、去る六月二十四日の科学技術庁資源調査会の発表によると、その主要なる原因が天然ガスの生産に伴う深層地下水の急激かつ大量の揚水であることを報告いたしているのであります。このことは、私どもが、昨年来、繰り仮し、今日の発表を予期して、関係省庁、業者等に注意を促してきたところでありますが、その沈下の主要な原因であるところのガスの採取をほしいままにし、無計画、無統制なる事業認可によって被害は日を追ってはなはだしくなり、年間三十センチをこえる沈下は、すでに新潟市全域に及んでいるのであります。特に沈下のおびただしい地点においては、年間五十センチをこえている実情でありまして、このまま放置するならば、港湾施設のみならず、新潟市周辺一帯はここ二、三年後においては完全に海底深く沈んでしまうという結果を招くことは、火を見るより明らかなのであります。かかるがゆえに、今日、住民はまくらを高くして休むこともできず、連日不安におののいているのでありまして、また、今日、一般民家、工場、公共施設等における損害は実に数千億に及び、目に余るものがあるのであります。
 言うまでもなく、天然ガス産業は政府においても積極的にその振興をはかられ、単に燃料源としてでなく、近代化学工業に利用せられるに及んで、飛躍的にこれが発達してきたのでありまして、わが国の重要な産業であることは論を待たず、地元産業振興の一環であるばかりでなく、国民経済一般にとっても、その興隆がきわめて重大であります。しかしながら、かかる産業の振興のために、人間の住む土地が海中に沈んでしまうということは、国土保全と民生安定の立場から申し上げましても許すことができないものであります。(拍手)大阪、尼崎、横浜等における工業用水による地盤沈下については、すでに国土保全の立場より、これを規制、制限しているのでありまして、新潟の沈下のみこれを放置しておくべき理由は何もないのであります。
 沈下の原因は天然ガスの採取に伴うところの多量地下水のくみ上げにあるという考え方は、昭和二十八、九年ごろより急激に沈下現象が増大したこと、天然ガス産業がこの時期よりして飛躍的に発展し、ガスの採取量が急増し、その結果として地下水のくみ上げがおびただしい量となり、一日実に五十万トンをこえるようになったことからして、つとに関係者間においては常識化されたところの意見でありまして、今日、資源調査会の発表を待つまでもなく、政府においては適切かつ総合的な施策を実施していなければならなかったと考えるものであります。
 私が第一に岸総理にお尋ねいたしたいことは、新潟地区の地盤沈下に見られるように、資源の開発による産業の振興によって国土が荒廃するという事実に対して、一体、どのような基本的な方針を持っておられるかということであります。すでに海面すれすれになっている新潟地区において、このまま放置もしくは単に業者の自粛を待つ程度の行政措置、指導では、海面以下に没し去る日がそう遠くないと考えられる現状の上に立って、国土の保全も大切であるが、産業の振興も重要であるというような、そつのない御答弁ではなくて、具体的かつ明確な答弁をお願いしたいと思うのであります。(拍手)
 すなわち、新潟地区の地盤沈下による今までの公共事業の災害復旧費は実に約二十億、来年度は応急対策のみでも三十億を下らぬ事業量を最低必要としているのでありまして、さらに政府がその対策を遷延せんか、その恒久対策事業費は最低二百億から三百億を必要とするといわれているのであります。かかる観点よりしても早急なる対策が要求されているのでありまして、私は、これまで数回にわたり、本院関係委員会においてこれを指摘してきたのであります。しかるに、この事実を全く無視するかのごとく、地元においては工場の大拡張を行い、農地等を考慮することなく大量のガス井戸を掘さくして、新たにこれを使用せんとしているのでありまして、全く私どもの常識をもってしてははかることのできない事実が平然として今日行われているのであります。(拍手)
 しかも、かかるガス事業等に対して政府は年間二千万円の補助を行い、本年度さらに五〇%の増額を行うと同時に、開発銀行、東北開発公庫等よりして多額の融資をなさしめ、もって事業の振興をはかっているのでありまして、これは、一方では国費をもって天然ガスを掘らせ、他方では国費をもってそのしりぬぐいをしているという、全く矛盾撞着もはなはだしく、かかる無計画かつ無統一な施策というものが果して許されていいかどうか。このような政府の施策によって、日一日と祖先伝来の土地、家屋、工場が海底に沈んでいくことを、いたずらに指をくわえてながめているということは、地元民の感情よりしても、とうてい許すことのできないものでありまして、政府としては、過去のあやまちを今日すみやかに改め、適切かつ迅速な施策を講じ、もって民生の安定と国土の保全をはかるべきであろうと思うのであります。対策が一日おくれるならば、応急対策のみを考えても、一日実に一千万円の国費が乱費されることになるのでありまして、水面以下に陥没した場合には、一日一億円の国費が使用されることと相なるのであります。その主要なる原因であるガスの採取を規制することが先決であるか、あるいはまた、従来通りの彌縫的応急対策をもって事足れりとするのであるか、岸総理の明確なる答弁を要求するものであります。
 次に、私は、通産大臣、経済企画庁長官、科学技術庁長官に対してお尋ねを申し上げます。
 去る六月二十四日発表されました新潟地区地盤沈下に関する調査報告についてでありますが、資源調査会の特別委員会は、すでに今年初頭において、地盤沈下の主要な原因が天然ガスにあるということが判明していながらも、委員会構成の中にガス事業代表が参加しているために、今日までその発表がおくれてきたと仄聞しているのでありまして、かつ、今回の報告書を拝見いたしましても、ガス説に対する反対意見が、かかるガス業界代表とそれに連なる少数者の意見であること等を知り、その感をさらに強めたものでありますが、さきに申し述べたごとく、今日急を要すべき事態に対して、かかる委員会の構成によって原因発表がおくれ、かつ、特定の企業を擁護するという立場だけによってその対策が遷延して、血税が乱費され、かつ国土が荒廃し、住民が不安におののいているという事態に対しまして、一体どのように考えておられるのでありましょうか。
 しかも、また、去る三十一通常国会において、経済企画庁設置法一部改正によって地盤沈下対策審議会が設置されたのであります。しかるに、これがいまだに発足していないと聞いているのでありますが、すでに数ヵ月を経過した今日、今もって発足できないのは、一体どのような理由によるものでありましょうか。まことにもって怠慢もはなはだしいと申さねばなりません。(拍手)かつ、また、この審議会におきましてもガス業界から委員が選任されるといわれておりますが、かような構成は、この審議会を有名無実なものとすると考えるが、一体どのような方針をもってこの審議会の運営をなさらんとするのであるか。地盤沈下の原因の排除と規制について、審議会の報告及び答申は、法律的にどのような効果を持つものでありましょうか。私は、政治的な意図を持った原因排除及び規制の隠れみのではないかと考えるのでありますが、経済企画庁長官の御答弁をお願いする次第でございます。
 次に、資源調査会の発表によれば、地盤沈下の主要な原因が天然ガスであることが明らかになり、しかも、今後千二百メートルの観測井戸の稼働によりまして、天然ガスの採取にかかる原因比重がさらに強められることがデータによって判明しているのであります。沈下のメカニズム等の解明が不十分であるという理由によって、沈下原因の排除、規制を行うことができないということは、法律に反するものと考えるのでありますが、鉱山保安法第二十四条の発動についてどのように考えているのか、単に鉱山保安規則の改正によって事足れりとお考えになっているのかどうか、鉱害との関係について明確な御答弁を通産大臣よりいただきたいと思うのであります。
 さらに、鉱害の賠償の問題でありますが、まず、法制局長官より鉱業法についてお伺いいたしたいと思うのであります。
 鉱業法第百九条によれば、「土地の掘さく、坑水若しくは廃水の放流、捨石若わくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出によって他人に損害を与えたときは、」鉱業権者に無過失賠償責任を課しているのでありますが、新潟地区地盤沈下のように、天然ガス採取に伴う多量の地下水揚水による鉱害は、このどの項目に当てはまるのか、百九条の解釈について御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
 今日、新潟地区地盤沈下がここまでこじれてきた原因は、この鉱業法百九条の解釈があいまいであり、不統一であったからであります。天然ガス業者といえども、被害額の無過失賠償責任が明確であるならば、あのように大胆かつ切り捨てごめん的な地下水くみ上げを行わず、地盤沈下も防止できたものと考えるのであります。石炭の場合は、実に二千億以上も売り上げを持っているため、年間二、三十億の賠償は必要悪と考えられているのでありますが、天然ガス産業は年間二、三十億の売り上げであり、これでは沈下の賠償は考えられないのであります。被害が膨大であることからして責任感をも喪失し、質源調査会の発表後といえども平然と天然ガスを採取し、地下水を多量にくみ上げて、沈下をますます加速せしめているのであります。通産省部内においては、この百九条とからむため、原因規制の行政的措置がとれないと聞いているのでありますが、一体どうなっておるのか、通産大臣の御答弁もあわせてお願いいたしたいのであります。
 なお、冒頭にも申し上げました通り、今日、産業の発達につれて、その公害もますますはなはだしくなっており、その損害に対する賠償は、いわゆる無過失賠償の理念に基いて、いずれも企業者にその責任を課しているのでありますが、今日、その損害の量がはるかに加害者の負担能力をこえるものが現われるに至ったのは、この新潟地区の地盤沈下現象がその最も好適なる例であると思うのであります。当然、近き将来に予想される原子炉の増設等による不慮の災害等を考えるならば、政府は、この際抜本的な対策を樹立して、もってわが国近代工業の発展に支障なからしめることが喫緊のことと思うが、通産大臣及び経済企画庁長官のこれに対する御所信を承わりたいのであります。
 次に、地盤沈下対策事業につきまして、大蔵大臣、建設大臣、運輸大臣及び農林大臣に対してお尋ねいたします。
 すでに申し述べましたごとく、新潟地区における地盤沈下の被害は実に言語に絶するものがありまして、その対策事業は、港湾のかさ上げ、防潮堤等、多岐にわたっているのであります。今後これらの事業を倍加し、さらに応急の措置を講ぜられ、もって民生の安定と国土の保全に資せられんことを強く要望するものであります。
 まず第一に、これらの対策事業に対しまして、一体、関係大臣はどのような基本的方針をもって臨んでおられるかということであります。地元におきましては、被害工場の対策事業だけを例にとってみましても、今日すでに五十二億をこえるところの事業量をみずからの力で実施しているのであります。これ以上事業量を増加させることは困難であり、工場を移転する以外に道はないとさえいわれているのであります。住民の生命、財産の安全を保障するため、この際、喫緊な対策のみでなく、恒久対策につきましても、その方針につきまして明確なる御答弁をお願いいたしたいと思うものであります。
 また、農地のように、これまで直接海水の流入による災害がなかったために、全くその対策が忘れ去られている感があるのでありますが、すでに近郊の亀田郷におきましてはその災害が現われ、今年の雨季及び台風季節におきましては膨大なる災害が発生することは火を見るよりも明らかであり、このまま放置するならば、二十四億余円を費し、約十年にわたり改良を続け、ようやく完成いたしました一万町歩の農地が、排水の不能、海水の流入によって耕作不可能になると考えられるのでありますが、農林大臣の明確なる御答弁をお願いする次第であります。(拍手)
 最後に、かような対策事業に要する経費に対しまして、地元住民、県、市におきましても、すでにその負担能力が限界に達し、今後緊急不可欠なる事業すらも放棄せざるを得ない結果を招来するのではないかと深く憂慮するものでありますが、直ちに国庫負担を増額し、高率なる国庫補助により総合的、計画的なる事業実施のために単独立法を制定し、もってこれが解決に当るべきであると考えるのでありますが、政府においてその意思ありやなしや、大蔵大臣初め関係大臣の御答弁を求めて、私の質問を終了する次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#28
○国務大臣(岸信介君) 新潟の地盤沈下の問題に関しましては、その原因が従来いろいろ議論されておりましたが、最近行われた資源調査会の調査報告によれば、これは、地下資源である天然ガスを採取する際に、同時にくみ上げられる多量の地下水のくみ上げられる結果であると報ぜられております。言うまでもなく、日本において、この地下にある天然ガスの採掘ということは、エネルギー資源の点から見ても、あるいは化学原料としても非常に重要なものでございますから、これが探鉱及び適正な開発をしていくことは必要であると思います。ただ、新潟における最近の事情は、私も現地においてこれを見たのでございまするが、その原因が今申したところにあるとする以上、私は、やはり、これに対して適正な規制を加えて、将来の沈下をとどめていくという方策を講じなければならぬし、すでに発生しておる沈下に対する復旧のこと及びそれから生ずるところの災害防止につきましては、それぞれ万全を尽していかなければならぬ、かように考えております。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#29
○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。
 地下水のくみ上げによりまする天然ガスの採取が鉱業法第百九条に該当するかどうか、いろいろ疑問の点があるのであります。また、該当するにいたしましても、個々の鉱業権者と被害者との因果関係、いわゆるその程度、結びつき等につきまして、よほど研究しなければならぬと思うのであります。従いまして、これらの問題につきましては、最近の資源調査会の答申を見まして、今後検討していきたいと思います。
 また、申し上げておきまするが、資源調査会の答申につきましても、前の新潟地盤沈下特別委員会の委員長としては、この原因がどれにあるかということを判然できなかったのであります。しかるに、先月の二十四日の資源調査会長の答申では、地盤沈下のおもなる原因が急激かつ多量の揚水にあるという説に対しては重く考えなければならぬ、こういうふうに二段がまえ、三段がまえになっているのでございます。こういう点は、今後の考え方につきまして、よほど注意をしていかなければならぬと思います。
 なお、鉱山保安法第四条並びに第二十五条の適用についての通産大臣の考えについての御質問でございますが、私は、昨年来の地盤沈下の状況を見まして、今年一月から三月までの間に、新潟市内におきまして一日七万五千立米のくみ上げをとめております。また、その後の状況によりまして、新潟市の相当広い場面について、いかなる規制をしていこうかということを、ただいま検討中であるのであります。しかし、何分にも、新潟市民の家庭のガスとか、あるいはバスその他公共機関がほとんど全部この天然ガスにたよっておりまする関係上、そういう民生並びに重点産業の状況等も考えまして、早急に適切な措置をとる考えでおります。
    〔国務大臣菅野和太郎君登壇〕
#30
○国務大臣(菅野和太郎君) お答えいたします。
 新潟地区の地盤沈下に関しまして資源調査会の発表がありましたので、経済企画庁といたくましては、さっそく関係各省の局長を集めまして、その対策について相談いたしたのであります。経済企画庁といたしましては、各省の対策についてその調整、推進をはかるのが私の方の役目でありますので、今お話がありました通り、地盤沈下対策審議会の政令の発布を今日まで見なかったことは非常に遺憾に思っておったのでありますが、各省との話し合いの結果、近くその政令の発布を見ることになりますので、その政令が発布されれば、この審議会の活動によりまして各省の対策を調整、推進したい、こう考えておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣中曽根康弘君登壇〕
#31
○国務大臣(中曽根康弘君) お答えいたします。
 新潟地方の地盤の沈下の原因につきましては、特別委員会の報告は少数説と多数説に分れておりまして、その結論は、地下水の大量かつ急激な揚水によるという説を重視せざるを得ないという表現になっております。それと同時に、これが対策につきましては、実情に即した対策を立てることを特に要望しておるのであります。
 さらに、新潟地区の地盤は構造が非常に複雑でありますので、正確なデータを得るために、昨年の五月から約一年間、二十メートルから千二百メートルの深さの観測井戸を十二本掘って観測を続けてきました。その結果、短かきは二ヵ月、長きは一年に及ぶ観測を行いまして、そうして正確なデータを得たのであります。発表が六月になりましたのは、そのように、やや長期間にわたる観測を必要としたからでありまして、故意に遷延したのではございません。また、地盤沈下特別委員会には各方面の権威者を集める必要がありまして、特に地球物理学者だけではなくして、一方においては地質の権威者もある程度入れる必要がある、こういう観点から地質に関係のある方を入れたのでありまして、特にガス関係の人を入れたということはございません。
 以上、お答え申し上げます。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#32
○国務大臣(佐藤榮作君) 新潟の地盤沈下対策につきましての基本的な考え方はどうかということでございますが、もちろん、不安を除くこと、同時に、また、経済の発展を期する、こういう点に重点を置いて考えて参りたいと思います。
 そこで、この沈下対策の事業費といたしましては、すでに相当多額のものを必要といたしております。ただいま御指摘になりましたように、この事業費が大きくなればなるだけに、負担能力の点、――地元の負担能力、あるいはまた、原因者負担等の問題につきましても十分検討する要あり、かように考えておりますので、これらの点も引き続いて検討して参るつもりであります。
 さらに、また、この事業に対して高率補助の適用をしろということでございますが、すでに御承知のように、東北開発促進事業のその事業として取り上げておりまして、ただいますでに高率の補助を実施いたしております。従いまして、私どもは、今日より以上の高率補助はただいま考えておりません。
 以上の点から、今日、さらに単独立法の要ありやいなや、これらの点は、今後の問題として、私ども研究いたしたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣村上勇君登壇〕
#33
○国務大臣(村上勇君) お答えいたします。
 新潟地方の地盤沈下対策として実施する必要のある事業は、港湾、河川、あるいは下水道、また農業施設等であります。そのうち、建設省といたしましては、河川及び下水道施設について、昨年度から引き続いて応急事業を継続いたしておるのであります。もちろん、これらの事業の効果を十分に発揮いたしますためには、御指摘の通り、各省が連絡をとって総合的計画のもとにやるということが最も肝要だろうと思うのであります。現在におきましても、関係各省と十分協議の上で実施いたしておりますが、さらに、今回経済企画庁に新設されました地盤沈下対策審議会等において十分調査、審議していただいて、抜本的かつ総合的な計画のもとに実施して参りたいと存じます。
 また、これらの対策事業を達成するためには相当多額の費用を要するために、地方財政負担も増加していくということは、御指摘の通りでございます。そのために、建設省の所管事業のうち、河川事業につきましては、本年度から東北開発促進法に基く重要事業に指定いたしておりますので、通常の、従来の負担率よりも相当高率の補助を行なったのであります。
 また、さらに高率の補助を行うかどうかという御質問でありますが、現在、総事業費等もまだ未定であります。さらに、私どもは、法律的あるいは技術的な検討を加えた上で、地盤沈下対策審議会において慎重に審議を願い、その必要があれば特別な措置を講じたいと思っております。(拍手)
    〔国務大臣楢橋渡君登壇〕
#34
○国務大臣(楢橋渡君) お答えいたします。新潟の地盤沈下の問題は、先般の予算委員会のときも櫻井君から非常な強い質問等がありまして、私も、運輸大臣になりましてから、重大な関心を持っておるのであります。
 第一に、運輸省といたしましては、港湾がやはり非常な大きな被害を受ける立場にありますので、今般、科学技術庁の報告によって、その原因が大体明らかになってきましたから、連絡会議等を一つ推進することに努力いたしたいと実は思うのであります。従って、当面の対策と恒久対策とに分れると存じますが、少くとも、急速な協議をやって、当面起っております問題といたしましては、三十四年度の予算の面から申し上げますと、第一に、運輸省といたしましては、港湾地帯等の応急対策といたしまして、水ぎわの民家、あるいは港湾の施設等を防御するために、事業費四億円をもって海岸の埠頭その他護岸工事のかさ上げをいたしております。また、直轄事業費としても、三億円をもって防波堤を作るというようなことに努力しておる次第でございまして、今申しましたように、急速にわれわれも推進して、この問題の対策に全力をあげたいと思っております。
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#35
○国務大臣(福田赳夫君) ただいま御指摘がありましたように、地盤沈下が農業施設の方にも影響してきております。特に、お話の亀田郷におきましては、さような傾向が現われ始めておるのでありまして、私どもも、ただいま早急に調査を進めておる次第でございます。この調査を待ちまして、亀田郷その他の諸問題につきまして善処するように努力をいたします。(拍手)
    〔政府委員林修三君登壇〕
#36
○政府委員(林修三君) 私に御質問の点、お答えいたします。
 御質問は鉱業法第百九条の解釈の関係でございますが、御承知の通り、鉱業法第百九条は鉱業権者の無過失賠償責任を規定した規定でございます。ここで問題とされておる鉱害は、「鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出によって」与えた損害、こういうことになっております。新潟地区の地盤沈下の問題は、この鉱業法第百九条の問題になるとすれば、天然ガスの採取のための地下水のくみ上げが、ここでいう鉱物の掘採のための土地の掘さくに当るかどうかという問題だと存じますが、これは、どうも、文字から申せば地下水のくみ上げでございまして、土地の掘さくではございませんから、文字解釈から申せば当らないと申すほかはないと思います。ただし、この鉱業法の第百九条の立法趣旨から考えまして、この場合における地下水のくみ上げが土地の掘さくというものに包含して解釈し得るのではなかろうか、こういう問題があるわけでございます。これについてはなお検討の余地がございますけれども、そういう、いわゆる条理解釈あるいは目的論的な解釈をする余地が全くないとは申せないと思っております。ただし、この点につきましては、御承知の通り、民事上の賠償責任が成立するためには、いわゆる相当因果関係、原因と結果との間に相当因果関係が立証されなければならない。相当因果関係と申しますのは、御承知と存じますけれども、こういう場合に、単に自然科学的な因果関係が立証されただけでは足りないのでございまして、特に、本件のような企業責任が問題になっております場合には、結局、その鉱業権者に損害の補てんを負わせることが公平であるかどうかという見地から、企業の負担能力、あるいは企業の経営規模、あるいは損害発生を予見し得る可能性があったかどうか、こういう点を、個々的に事情を総合的に判断して、具体的に判断すべき問題でございまして、これは、一がいに、簡単に、総括的には申し上げられない問題であります。裁判所の従来の判例等も考えまして、具体的ケースについて判断するほかないのであります。結論を申し上げるのは、多少なお検討を要すると思っております。
     ――――◇―――――
#37
○副議長(正木清君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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