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1958/04/03 第31回国会 参議院 参議院会議録情報 第031回国会 本会議 第23号
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1958/04/03 第31回国会 参議院

参議院会議録情報 第031回国会 本会議 第23号

#1
第031回国会 本会議 第23号
昭和三十四年四月三日(金曜日)
   午前零時四十七分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第二十三号
  昭和三十四年四月三日
   午前零時三十分開議
 第一 最低賃金法案の中間報告
 第二 在日朝鮮人の集団帰国に関する請願(二件)
 第三 在日朝鮮人の帰国促進に関する請願(三件)
 第四 日韓漁業問題解決促進に関する請願
 第五 神奈川県鶴見川等改修工事促進に関する請願
 第六 富山県入善町用水への流砂防止対策に関する請願
 第七 砂防予算増額に関する請願
 第八 富山県黒部川若栗地先改修工事促進に関する請願
 第九 富山県黒部川水系砂防工事施行に関する請願
 第一〇 岐阜県養老、南濃両町地域における砂防工事促進に関する請願
 第一一 岩手県夏川堤防工事促進に関する請願
 第一二 滋賀県瀬田川流域直轄砂防事業予算増額に関する請願
 第一三 滋賀県下の砂防事業予算増額に関する請願
 第一四 熊本県行末、友田両河川改修工事促進に関する請願
 第一五 山形県最上川改修工事促進等に関する請願
 第一六 一級国道第二十八号線改良舗装工事促進に関する請願
 第一七 二級国道山形鶴岡線道路改修工事促進に関する請願(二件)
 第一八 関門トンネルの通過料金引下げに関する請願(三件)
 第一九 二級国道石巻酒田線中古川市内舗装工事促進に関する請願
 第二〇 国土開発中央自動車道建設促進に関する請願(五件)
 第二一 二級国道一五五号名古屋富山線中古川、神岡間改修工事促進に関する請願
 第二二 道路整備五箇年計画の規模拡大等に関する請願
 第二三 茨城県境町、千葉県関宿町間利根川に境橋本橋架設の請願(二件)
 第二四 二級国道飯田浜松線中一部改修工事促進に関する請願
 第二五 国道四十一号線中岐阜県神岡町地内東茂住橋架替等に関する請願
 第二六 公営住宅予算増額に関する請願(五件)
 第二七 住宅建設促進等に関する請願
 第二八 都市不燃化促進に関する請願
 第二九 下水道事業費国庫補助増額等に関する請願(二件)
 第三〇 建設業法施行令第一条改正に関する請願
 第三一 でい酔犯罪者の保安処分法制定促進等に関する請願(七件)
 第三二 でい酔犯罪者の保安処分法制定促進に関する請願(三件)
 第三三 福岡地方裁判所小倉支部庁舎等建築促進に関する請願
 第三四 盛岡地方法務局伊保内出張所庁舎等新築に関する請願
 第三五 布施市に大阪地方裁判所支部設置の請願
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○副議長(平井太郎君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○副議長(平井太郎君) これより本日の会議を開きます。
 参事に報告させます。
   〔参事朗読〕
本日議員椿繁夫君から委員会審査省略の要求書を附して左の議案を提出した。
 議長不信任決議案
     ―――――・―――――
#4
○副議長(平井太郎君) お諮りをいたします。ただいま報告いたしました議長不信任決議案の委員会審査を省略し、日程に追加して、これを議題とすることに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#5
○副議長(平井太郎君) 総員起立と認めます。
 よって議長不信任決議案(椿繁夫君発議)を議題といたします。
 これより発議者の趣旨説明を求めます。椿繁夫君。
   〔椿繁夫君登壇、拍手〕
#6
○椿繁夫君 私は、日ごろ尊敬する議長松野鶴平君の不信任案の趣旨弁明をしなければならぬことを、まことに遺憾に存ずるものであります。
 最初に決議案を朗読いたします。
 本院は、議長松野鶴平君を信任せず。
  右決議する。
   理 由
  議長は、院の代表者として最高の責任者であり、その行動は慎重かつ厳粛公正でなければならない。松野議長は、さきに国会正常化に関する自社両党申し合せの条件である党籍離脱に関しても、いまだ言を左右にして善処しないまま今日に至った。
  しかも、最低賃金法案にからむ議事の取扱いに関しては、いまだ長期の会期を余し、法案の内容にも多くの問題点を残しているにもかかわらず、自民党の圧力に屈して強引に職権をもって開会し、成立を急ぐことは、はなはだ納得のいかないところである。
  これが不信任の決議を提出する理由である。(拍手)
 その不信任の理由は今申し述べた点において尽きるのでありますけれども、私は、ただいま開会をされているこの本日の国会は、当然、これまでの慣行から申しましても、零時半から再開することは、自民党のだれかから動議が提出されて、それに基いて、議長は、院の意思を聞いて、零時半からの開会を宣告さるべきものであるにもかかわらず、だれにも相談することなく、院の慣行を無視して、全く議長の独断、職権によって、本日の会議を開いていることが、まず最も近い議長不信任の最大の理由であることを申し上げたいのであります。(拍手)
 松野君は、両党の国会正常化に関する申し合せが、前国会の末に、例の警職法の問題に関連して混乱いたしました際に、かくのごときことを繰り返したのでは国会の信用を国民の中に失うばかりであるから、これを収拾するために、両党の幹部会談が行われて申し合されたことは、諸君も御存じの通りでありますが、その第一項に、正副議長の党籍離脱の慣行を樹立する、このことが申し合せの第一項として掲げられ、さらに、これを参議院においても尊重することが申し合され、再々にわたって松野議長にこのことが勧告されたにもかかわらず、言を左右にして、このことを聞かれないまま今日に至っておるのであります。今回、最低賃金法案の中間報告を求める動議を先ほど議決されましたが、これなども、多くの問題点がまだ残っているし、質疑も尽きていないことは、多くの討論者によって明らかにされたところであります。議長が党籍を離脱していないから、こういうことを自民党の圧力に屈してやらなければならないところに最大の理由があることを、私はここに申し上げたい。(拍手)国会の正常化を私ども強く望んでおりますが、松野君が本院の代表者として、みずから両党の申し合せを率先してこれが実践躬行されることを望みながら、今日まで私ども議会運営に協力をして参ったのでありますけれども、事ここに至りましては、松野君に対して、これまでのような寛大な協力をすることのできない立場に至ったことを申し上げなければならぬのであります。
 さらに、いま一つ重大なことは、先ほども草葉君から答弁の中に説明されましたが、本院に最低賃金法案が回付されましたのが二月二十六日、今日に至りますまで十八時間と三十七分審議をしたのであるから、十分尽しているというのでありますけれども、衆議院は二十九国会以来二カ年にわたって審議を尽し、ようやくこの間、多数の力をもって、まだまだたくさんの問題点を残しながら可決して、本院に送付されたものであります。松野君はこういう経過を十分御存じであるにかかわらず、ここに自民党の中間報告の暴挙をあえてこれを認めたばかりでなく、本日の国会を、これまで私ども聞いたこともない、見たこともない、慣行を無視して、全く議長の独断で、職権で本日の開会を宣告されました。全く国会の審議権を軽視する、しかも、みずから参議院の審議権を軽からしめ、参議院の存在価値すらも薄れるような結果を招くようなことをあえてされたことは、断じて議長として許すことのできない理由の第二として、ここに申し上げなければならぬのであります。(拍手)
 さらに第三の理由といたしましては、一体、議長は、松野君は、この最低賃金法案が国際的にどのような目をもって見られている法律であるかということについての認識が全然ないのであります。諸君もすでに御承知でありましょうけれども、今回政府が出しておりますところの最低賃金法案は、労働者の意向を全く聞こうとせず、業者だけできめたものが最低賃金として法律的な効力を持つようになっているのであります。このことは、わが国がさきに国際機関のどれにも先だって戦後復帰を許されましたILO条約の二十六号の精神を、全く踏みにじった内容を持つものであります。私は、この議長不信任案を上程するに当って思い起すのでありますが、一九四八年、中米のキューバにおいて全世界の貿易業者の国際大会が開かれました際に、当時吉田内閣が労働政策に対して、ようやく反動的な政策をとりつつあるときでございましたが、この四十八カ国参加をいたしました世界の貿易業者の大会におきましては、「日本の政府が低賃金の政策をとり、自由にして民主的な労働組合活動に圧迫と干渉を加えるごときことがありとするならば、再び低賃金政策を強行することによってソシアル・ダンピングの道が日本によって開始されるに違いない。このことを許すことは、再び世界の平和を乱し、第三次大戦への危険を持つものであるから、このような低賃金政策を日本の政府がとる限り、日本商品の世界市場からの締め出しをやろうではないか」ということを決議しておるのであります。今にして政府が、今にして日本の国会が、このような国際的世論に耳を傾けて、貿易規模を拡大し、日本の経済の基盤を強化する道に、もっと忠実な検討をしなければ、日本は世界市場から追い出されて、政府の東南アジア経済開発だの貿易の振興などという政策は、全く絵にかいた餅同様のものに終るであろうことを、私はおそれるのであります。このような世界の世論に逆行する内容を持った法律を、議長は十分御存じない。こういうことでは、国会を代表する資格のない議長であるというのが、私の不信任の第三の理由でございます。(拍手)
 本院において松野鶴平君の不信任案を審議いたしましたのは、昭和三十一年五月にあったと思います。そのときはどういうことで松野君の不信任案が上程されましたか、諸君、記憶ございましょう。この神聖なるべき本院の議場に、教育二法を暴力をもって強行成立をはかるために警官の導入をはかったのは、松野君その人ではなかったかということであります。民主主義を破壊し、日本の反動化への道を開くこの法律の強行成立のために、松野君は、三十一年、このような措置をとったのであります。今回また、日本の労働階級をあげて反対し、先ほどからごらんになってもわかるように、これほど執拗なる反対の意思があるにかかわらず、諸君がこれをあえて強行しようとしているのであるが、自民党のこの誤まれる政策を、党員であるがゆえにこの圧力に屈して、再びここに中間報告の暴挙をあえて許している議長は、まことに私ども心から憎みても余りある存在であると言わなければならぬのであります。
 私は、政界の先輩としての松野君が、かつて衆議院に議席を持っておられたとき、お隣りの埼玉県から出られた粕谷義三氏の議長として公正であったことを、今思い起すのであります。政友会に籍は置いておりましたけれども、一たび議長に選ばれるや、副議長であった小泉又次郎氏と協議の上、党籍を離脱して、長年、議会の議長はかくのごときものであるという見本を、松野君は議員として見られておったはずであります。それを、両党の、しかも首脳部が申し合せをして、国会正常化方策の第一項に掲げた、党籍離脱の慣行を樹立しようじゃないかということに耳を傾けないで、言を左右にして、今日、松野君がこの議席にあられるからこそ、このような一方的な措置が平然としてとられるのでありますから、参議院の名誉のためにも、民主的な本院の伝統を守る見地からも、二院制度の存在をますます高揚していく立場からも、松野君のすみやかなる退陣を諸君とともに要求いたしたい。これが本案を提案する理由でございます。
 何とぞ満堂の御賛成をいただくようお願いをする次第でございます。(拍手)
#7
○副議長(平井太郎君) 本案に対し討論の通告がございますが、斎藤昇君外一名から、賛成者を得て、本案に対する討論時間は一人十五分に制限することの動議が提出されました。
 よって本動議について採決をいたします。表決は記名投票をもって行います。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#8
○副議長(平井太郎君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#9
○副議長(平井太郎君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#10
○副議長(平井太郎君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数   百五十票
  白色票    九十一票
  青色票    五十九票
 よって本案に対する討論時間は一人十五分に制限することに決しました。
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名  九十一名
   佐藤 尚武君  山本 利壽君
   手島  栄君  加藤 正人君
   松平勇雄君   松岡 平市君
   常岡 一郎君  西川甚五郎君
   藤野 繁雄君   竹下 豐次君
   谷口弥三郎君  新谷寅三郎君
   紅露 みつ君  杉山 昌作君
   田村 文吉君  村上 義一君
   石黒 忠篤君  笹森 順造君
   仲原 善一君  松野 孝一君
   西田信一君   堀本 宜実君
   鈴木 万平君  大谷藤之介君
   稲浦 鹿藏君  吉江 勝保君
   塩見 俊二君  江藤  智君
   三木與吉郎君  雨森 常夫君
   川口爲之助君  後藤 義隆君
   館  哲二君  山本米治君
   大谷 贇雄君  白井  勇君
   田中 茂穂君  有馬 英二君
   苫米地英俊君  近藤鶴代君
   小柳 牧衞君  井上 清一君
   斎藤  昇君  小山邦太郎君
   木暮武太夫君  石坂 豊一君
   植竹 春彦君  草葉 隆圓君
   高橋進太郎君  黒川 武雄君
   小林 英三君  重宗 雄三君
   野村吉三郎君  寺尾  豊君
   松村 秀逸君  石井  桂君
   木島 虎藏君  佐藤清一郎君
   柴田  栄君  大沢 雄一君
   平島 敏夫君  勝俣  稔君
   中野 文門君  西岡 ハル君
  横山 フク君  土田國太郎君
  前田佳都男君  高野 一夫君
  古池 信三君  迫水 久常君
  小沢久太郎君  小幡 治和君
  関根 久藏君  野本 品吉君
  秋山俊一郎君  梶原 茂嘉君
  上原 正吉君  安井  謙君
  伊能繁次郎君  岩沢 忠恭君
  杉原 荒太君  下條 康麿君
  吉野 信次君  郡  祐一君
  津島 壽一君  堀木 鎌三君
  木村篤太郎君  泉山 三六君
  林屋亀次郎君  佐野  廣君
  高橋  衛君
    ―――――――――――――
反対者(青色票)氏名  五十九名
  小柳  勇君  森中 守義君
  鈴木  強君  坂本  昭君
  相澤 重明君  柴谷  要君
  大矢  正君  森 元治郎君
  鈴木  壽君  木下 友敬君
  平林  剛君  横川 正市君
  加瀬  完君  阿具根 登君
  成瀬 幡治君  大和 与一君
  大倉 精一君  安部キミ子君
  近藤 信一君  伊藤 顕道君
  矢嶋 三義君  小笠原二三男君
  江田 三郎君  天田 勝正君
  荒木正三郎君  小林 孝平君
  藤原 道子君  加藤シヅエ君
  清澤 俊英君  棚橋 小虎君
  吉田 法晴君  藤田藤太郎君
  中村 正雄君  市川 房枝君
  占部 秀男君  北村  暢君
  光村 甚助君  秋山 長造君
  岡  三郎君  田畑 金光君
  永岡 光治君  亀田 得治君
  湯山  勇君  小酒井義男君
  松澤 兼人君  上條 愛一君
  河合 義一君  阿部 竹松君
  高田なほ子君  曾祢  益君
  東   隆君  重盛 壽治君
  佐多 忠隆君  椿  繁夫君
  千葉  信君  内村 清次君
  岡田 宗司君  山田 節男君
  赤松 常子君
     ―――――・―――――
#11
○副議長(平井太郎君) これより順次討論を許します。郡祐一君。
   〔郡祐一君登壇、拍手〕
#12
○郡祐一君 私は自由民主党を代表しまして、ただいま提出の松野議長不信任案に対して、絶対に反対するものであります。(拍手)
 松野議長が国会正常化に対して常にきわめて熱意を有し、これを実行しておりますることは、諸君の熟知せられるところであります。
 第一の反対理由を申し述べます。松野議長は、国会法の命ずるところに従い、国会の正常な運営をはかっておるのでありまして、もとより、ただいま椿君の独断するがごとく、一党一派の要求に耳を傾けておりませんことはもちろん、現に、昨日来きわめて円滑な執行に当っておるのであります。
 第二の理由を申し述べます。松野議長が、最低賃金法案の重要性にかんがみ、国会の多数の意思が現にかくのごとくすみやかにその審議を進めることを求めておりまする際に、国会の意思を体して、かくのごとく熱心な多数の議員とともに議事の進行をはかっておりますることは、その職責上当然のことであります。もし、かりに、ただいまの椿君の言うようなところに動かされまして、その進行を遅滞するがごときことがありましたならば、議長の職責を尽さざるものでありまして、むしろ曠職の責に任じなければならないものであります。議長が議院運営委員会の意向を十分に洞察し、今後における会期の状況を勘案して、中間報告を行わしめるのは当然のことであります。この国会の意思に即した民主的な行為は、当然賞讃しなければならないところであります。(拍手)
 第三の反対の理由を申し述べます。二院制度の本義に立脚し、参議院の権威保持のために、今日のごとき事態に対処いたしましては、むしろ、深夜と申しましても、すみやかにその事態の収拾をはかる議長としては、強くその職責を尽すべきものでありまして、そのことに当っている松野議長の労こそ多とすべきものと信ずるのであります。
 かくのごとく観察いたして参りまするならば、本不信任案の理由なきはもちろん、むしろ、かくのごとき議案のために議事を延引せしむることはまことに遺憾なことであります。かくのごとく正邪を転倒し、サギをカラスと言いくるめるような不信任案に対しましては、すみやかにこれを否決し、満堂の諸君の良識によりまして、国会の名誉を保持せんことを期待してやまないものであります。これをもって反対の討論といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○副議長(平井太郎君) 吉田法晴君。
   〔吉田法晴君登壇、拍手〕
#14
○吉田法晴君 私は日本社会党を代表して、松野議長不信任案に対する賛成の討論をなさんとするものでありますが、改選を前にして、同じ改選の直前であります議長の不信任動議に賛成討論をしなければならぬことを、はなはだ残念に思うものであります。
 松野氏個人については、先ほど来、椿議員から、提案理由の中で、尊敬する議長であるけれどもというお話でございました。私にとっては九州出身という点で先輩であって、あるいは政党政治家として、官僚出身の、今ほんとうにサギをカラスと言いくるめるような理由にならぬ理由をあげられましたようなのと違って、(笑声)私は、政党政治家としての民主政治家の性質を持っておられると信じておりますけれども、しかし、個人的な関係あるいは個人的な性格は別といたしまして、参議院が第二院として、抑制機関としてのその任務を果して参ります上において、議長として適当であったかどうかということは、これは別問題であります。この観点からいたしますならば、私は、松野議長がその参議院の使命を発揮し、あるいは参議院の良識を発揮するについて、適当でなかったと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)参議院の当初の事実を私ども回顧いたしてみますと、私どもが参議院に出て参りました当時、あるいは予算案が予算委員会において否決をされるというような事態もございました。法案が根本的に修正をされ、あるいは審議が十分に尽され、現在のように無理が通って道理が引っ込むのじゃなくて、道理が通っていくという実情等もございました。しかるに、自民党の議席の増加と、特に二十八年以降、自民党で議席の過半数を占めるに至って後、松野氏は議長に就任せられましたが、議長、副議長とも与党、自由党あるいは自民党に占められるに至ってから、参議院がその抑制機関としての、第二院としての使命を漸次失って参りましたことは、否定のできない事実であります。この参議院をしてその特色と使命とを失わしめるに至った松野議長の責任は、何としても追及をせざるを得ません。それが第一の賛成の理由でございます。
 「日本の九十九人」という本の中には、こういうことが書いてあります。これは松野鶴平氏について書いているところでありますが、「第十六国会で、自分が参議院議長になるつもりだったのが、ふたを開けてみれば河井彌八と決定した時は、珍らしく興奮していた。彼の言によると、しいて自分が議長になりたいとは思っていない。しかし自由党に協力するとみせかけて、実は裏では改進党、左右両派社会党と組んで、緑風会に議長のいすをとったそのやり方は卑劣だ。しかもこの時、自由党へ協力するはずだった縁風会のあるメンバーは、入閣を協力の代償にしていた。というのであって、この議長問題を機に、今や彼は緑風会絶滅六カ年計画の成案にかかっているとさえいうものがある。」と書いてあるのであります。これらは参議院の議長あるいは議長選挙の経緯の一部を物語っておるものでありますけれども、いかに参議院の特徴が漸次失われていったかを雄弁に物語っている一句だと考えるのであります。
 賛成の第二の理由は、自民党の党利党略がまかり通って、無理が通れば道理が引っ込むといわれますけれども、その無理が通るようになった結果、抑制機関としての任務が漸次失われてきた。質疑の打ち切りが続発をいたしておりますが、十分審議せられました当初の参議院のいい習慣が失われ、そして、先ほど来述べられましたように、中間報告を求めて、審議を打ち切り、不十分な審議を強行をして、これを強行成立せしめるというような事態が漸次多くなって参りました。男を女に、女を男にする以外は何でもできると、民主主義の弊害を指摘をしておりますけれども、こうした民主主義の否定は、審議権のみずからの放棄であり、行政権への屈服をみずからもたらすものである。みずから審議権の放棄をし、参議院の権威を失わしめ、あるいは第二院の存在をも否定するものでありますが、かかる自民党の党利党略を押し通す点に、私ども議長不信任に賛成をしなければならぬ第二の理由がございます。(拍手)
 中間報告が乱発をせられ、異例のことが常例となり、国会の正常化の申し合せば行方不明となり、民主主義が危機に瀕じて参っておりますことは、その国会の代表であり、あるいは本会議の進行の中心をなし、議長職権をもってこの会議を進めておられます、議長に対する不信任の第三の理由であります。(拍手)第一回の中間報告は、スト規制法をめぐって、二十八年八月の三日から五日にかけて行われておりますけれども、なお河井議長のもとにおける第一回のときには、慎重を期し、あるいは良心がなお残っておったと考えられることは、その経過、あるいは議運においても数日の経過を経ておるし、あるいは本会にかかっても三、四、五と三日を費している事実からも思い起すことができます。しかしながら、それが二回となり、三回となり、特に三回目の松野議長のもとにおいて、警官を導入して教育二法案の中間報告を求める暴挙が行われるに至りますや、慎重とかあるいは良心とかは全く吹き飛んでしまい、良心の喪失、異例が常例となり、異例に対する感覚を失って参りましたことは、私ども見のがすわけには参りません。かくて、公正なるべき議長が公正さを失い、平静なるべき議長が興奮をしてこられたことは、今日においても私ども見得るところであります。かくて、世論政治でなくて権力政治へ、民主政治でなくてファッショ政治への道を開く第一歩、端緒をなしております。しかも、ファッショヘの警戒心を失っておるところに、失いつつあるところに、重大な問題がございます。この最低賃金法案、最低賃金を保障しない最低賃金法案に対して、日本の労働法学者があげて反対をしている。国際的な評価については、先ほど椿君から説明がございましたけれども、この法案は前二回審議未了になっております。世論の反対があり、あるいは労働法学者、第三者にしてしかも専門家である諸君の反対があり、これを反映して、二回の国会にわたって審議未了になったこの事実の前に、もし、ほんとうに民主政治を行おうとするならば、あるいはこれを撤回するか、少くとも大修正をする程度の政府の当然の措置は講ぜらるべきだと思うのでありますが、全くかような良心は見受けることができません。全く同じ反対を受け、あるいは審議未了になった同じ法案を出している。そうして十分の審議もしないで、ここに中間報告で強行成立をはかろうとするところに、どこに民主政治家としての良心が、あるいは第二院の権威がございましょうか。こうした異例を常例とし、民主政治の危機をもたらすような中間報告を強行しようとする議長の処置に対しては、私ども承服することができないし、不信任に賛成をせざるを得ない第三の理由がございます。(拍手)
 第四に、そうして、最後に、党籍離脱を拒否した議長は、公正を失っていることを証明いたしておりますが、与野党において党籍離脱の申し合せがなされ、議長に対して申し出がなされたのに対し、もし公正を期しようとせられるならば、憲政史上における先輩のよき事例を、先ほど椿君からあげたところでありますけれども、もし参議院の議長として公正を期せられるならば、当然、党籍離脱について慎重な考慮が払わるべきであります。公正を期するといいながら、党籍を離脱せずして、現在行われている事態は何でありますか。(拍手)もし良心がおありになるとするならば、党籍を離脱するか、自発的にやめるべきだと思うのでありますが、もし良心があるならば、不信任の上程を待たずして責任をとられるのが、私は松野議長の公正なるゆえんだと思うのであります。選挙を前にして、もし参議院の存在の意義と権威とを保たれようとするならば、私は、松野議長個人も、選挙において、自民党の党略でなしに、あるいは民主主義を否定しようとする動向でなしに、参議院の権威のために戦っていただきたいことを切望するのでありますが、この松野議長にとっても、任期満了を前にして、この国会においてかかる強行が行われることをまことに残念に思うのであります。参議院の権威のために、その亀鑑であります議長として、すみやかに良心に従い責任をとられんことを望みますが、この党籍離脱を実現せずして、公正を失われた議長に対して、その責任を追及せざるを得ないという意味において、この参議院議長不信任案に賛成の意を表して、私の討論といたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#15
○副議長(平井太郎君) 岡三郎君。
   〔岡三郎君登壇、拍手〕
#16
○岡三郎君 日本社会党を代表しまして、椿議員発議の議長不信任案に対する賛成の辞をこれから述べたいと思います。
 先ほど椿氏からいろいろと不信任の理由を申されましたが、それに対して郡議員の方から反対の意見が述べられました。しかし、いつに似げなく、郡議員の発言はまことに精彩なく、また内容も実に粗末でありまして、日ごろの郡氏から言えば、松野議長は大先輩であるし、まあ親分とも言っていい方だという方からこれを見れば、もっと意気軒高として反対の辞を述べられるべきであるのに、正常化によくやっているとか、あるいは会期を考慮してとか、全くこれらの問題については、わが党の秋山議員あるいはその他各議員から十分指摘されているように、正常化ということになるならば、かりに議運でこれらの問題について協調が得られないとするならば、なぜ各派の代表を呼んで、こういう点についてさらに話を進めないのかどうか。これは、衆議院における益谷氏が、同じ議長でありながら、各種の問題に遭遇したときに、国会対策委員長のみならず、各派の代表等を招致して、そうして、ひざを交えて各種の検討をされたということは御存じの通りでありましょう。本日の議運をわれわれが傍聴しておったときにおいても、こういうふうな国際的にも重大なる影響のある最低賃金法の問題について中間報告をするということによって、いたずらに議事が混乱するということについて、議長はどう思うかという阿部委員の質問に対して、円満にやってもらいたいという口の裏から、委員長の散会の言葉のあとに、直ちに議事協議会を一方的に開いて、そうしてこのような会議の運営をしておるということが、果して国会の正常化ということについて誠心誠意努力を払っているということに当るのかどうか。これは何人に聞いても、このような軽挙妄動というものが松野氏の従来のやり方であって、口に穏当なことを言いながら、陰ではさまざまなる謀略を使うという、いわゆる一言にして言えば偽善者であるとも言えるし、天下の言葉をもって言うならば、松野鶴平ではなくして、まことにこれ、ずる平と言っても私は過言ではないと思う。この根本問題については、私はさらに言いたいが、自分で三日の公聴会を名古屋と仙台に許可しておきながら、しかも、みずから本日これを議事運営として、正常化という美名のもとに、ここにこのような議事運営をはかっているということは、自分が一方において国民年金の公聴会の許可を与え、三日間1この三日から五日まで委員派遣の許可を与えておきながら、しかも当然、深夜国会にわたり、三日にわたるということもわかっていながら、自分のやったことの上に、またそのようなことをするということ自体、これはまことに、ずるくなくして何という言葉があるか、私は教えてもらいたいと思う。そういうふうな点で、私は第二点の、郡君が言った会期を考慮してというならば、反対党の言うことも聞いて、きょう、あしたやらなくても、この問題について、自民党が多数を持っている限りにおいては、隠忍自重しても、過去の例からいって、必らずやり遂げるということを、あなた方は知っているはずだと私は思うのです。いざというときにおいては、警察官を入れてもこれを通すというふうな、強引な、憲政史上においてもまれなことをやっておきながら、今回だけは会期を考慮してと……。先ほど各議員が言っているように、一カ月余を残しているこの会期、途中、皇太子の御成婚がありといえども、一カ月間御成婚の式があるわけではない。しかも、各地において知事選挙が行われておるといえども、これもまた、あまたの議員がおるわけであって、国における法律の審議を無視して全部が全部行かなくても、これはやり得るということが言えると思う。従って、当面の社会労働委員会の各委員が当然その責任に任じて、ここ一週間、十日程度この審議をすることによって、皆さん方があわてるような、そのような審議というものを避けることが私はできると思うのであります。従って、こういう点をよくよく考慮をしたあげくに、初めて会期を考慮してということが言えるのであって、一カ月間以上も期間があるのに、その間一いろいろと行事があるとはいえ、社会労働委員は百何十名もによって構成されているのではないということになるならば、当該委員を十分検討の任に当らせるということは、これは、やればやり得ることなんです。それを、本日この深夜国会においてこれを強行するということは、正常化をよくやっているとは断じて言えないし、会期を考慮してとは断じて言えないことでありましょう。(拍手)従って私は、こういうふうな問題の経緯の中からこの最低賃金法が可決されたときに、全国の労働者諸君は、底の抜けた、あるいは上げ底の菓子箱に似たような、このような、口の先において最低賃金を保障すると言いながら、内容的には、かいもく労働者の利益にもならぬような、こういう名目的な法律を作ることによって、多くの労働者を欺瞞するということを、全国の労働者はやがては身に徹してこれを知るということを、私はここに申し上げておきたい。従って、このような最賃法を強行し、しかもこの深夜国会に当り、会期を一月有余も余し、このような時期にこれを強行した松野議長は、当然不信任に値することをここに明確に申し述べて、私の賛成討論にかえる次第であります。(拍手)
#17
○副議長(平井太郎君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより本案の採決をいたします。表決は記名投票をもって行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#18
○副議長(平井太郎君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#19
○副議長(平井太郎君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#20
○副議長(平井太郎君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数  百五十六票
  白色票    六十五票
  青色票    九十一票
 よって議長不信任決議案は否決せられました。(拍手)
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名  六十五名
  小柳  勇君  森中 守義君
  鈴木  強君  坂本  昭君
  相澤 重明君  柴谷  要君
  大矢  正君  森 元治郎君
  鈴木  壽君  木下 友敬君
  平林  剛君  横川 正市君
  加瀬  完君  阿具根 登君
  成瀬 幡治君  大和 与一君
  大倉 精一君  安部キミ子君
  近藤 信一君  伊藤 顕道君
  矢嶋 三義君  小笠原二三男君
  江田 三郎君  天田 勝正君
  荒木正三郎君  小林 孝平君
  藤原 道子君  加藤シヅエ君
  清澤 俊英君  棚橋 小虎君
  吉田 法晴君  栗山 良夫君
  羽生 三七君  藤田藤太郎君
  中村 正雄君  市川 房枝君
  占部 秀男君  北村  暢君
  光村 甚助君  秋山 長造君
  岡  三郎君  田畑 金光君
  永岡 光治君  亀田 得治君
  湯山  勇君  小酒井義男君
  戸叶  武君  松澤 兼人君
  上條 愛一君  河合 義一君
  阿部 竹松君  島   清君
  高田なほ子君  曾祢  益君
  東   隆君  松浦 清一君
  重盛 壽治君  田中  一君
  佐多 忠隆君  椿  繁夫君
  千葉  信君  内村 清次君
  岡田 宗司君  山田 節男君
  赤松 常子君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  九十一名
   佐藤 尚武君  山本 利壽君
   手島  栄君  加藤 正人君
   松平 勇雄君  松岡 平市君
   常岡 一郎君  西川甚五郎君
   藤野 繁雄君  竹下 豐次君
   谷口弥三郎君  新谷寅三郎君
   紅露 みつ君  杉山 昌作君
   田村 文吉君  村上 義一君
   石黒 忠篤君  笹森 順造君
   仲原 善一君  松野 孝一君
   西田 信一君  堀本 宜実君
   鈴木 万平君  大谷藤之介君
   稲浦 鹿藏君  吉江 勝保君
   塩見 俊二君  江藤  智君
   三木與吉郎君  雨森 常夫君   川口爲之助君  後藤 義隆君
   館  哲二君  山本米治君
   大谷 贇雄君  白井  勇君
   田中 茂穂君  有馬 英二君
   苫米地英俊君  近藤 鶴代君
   小柳 牧衞君  井上 清一君
   斎藤  昇君  小山邦太郎君
   木暮武太夫君  石坂 豊一君
   植竹 春彦君  草葉 隆圓君
   高橋進太郎君  黒川 武雄君
   小林 英三君  重宗 雄三君
   野村吉三郎君  寺尾  豊君
   松村 秀逸君  石井  桂君
   木島 虎藏君  佐藤清一郎君
   柴田  栄君  大沢 雄一君
   平島 敏夫君  勝俣  稔君
   中野 文門君  西岡 ハル君
   横山 フク君  土田國太郎君
   前田佳都男君  高野 一夫君
   古池 信三君  迫水 久常君
   小沢久太郎君  小幡 治和君
   関根 久藏君  野本 品吉君
   秋山俊一郎君  梶原 茂嘉君
   上原 正吉君  安井  謙君
   伊能繁次郎君  岩沢 忠恭君
   杉原 荒太君  下條 康麿君
   吉野 信次君  郡  祐一君
   津島 壽一君  堀木 鎌三君
   木村篤太郎君  泉山 三六君
   林屋亀次郎君  佐野  廣君
   高橋  衞君
     ―――――・―――――
#21
○副議長(平井太郎君) 日程第一・最低賃金法案の中間報告。
 社会労働委員長久保等君。
   〔久保等君登壇、拍手〕
#22
○久保等君 私は、ただいま議題となりました最低賃金法案につきまして、委員会における審議の経過につきまして中間報告を行わんといたすものでありますが、先ほど来、特にこの中間報告を求める動議をめぐりましての質疑の過程において、私自体きわめて理解できない多くの答弁を伺ったわけであります。すなわち、特に中間報告を求める条件としての緊急性につきまして、いろいろ言われておりますように、国会の会期が五月二日まであるという事実、そうして、さらにまた、委員会の運営につきましても、答弁者は、委員会における運営に特に障害となるべき事実がなかったということも答弁の中で言われておるのであります。果してそれならば、いかなる理由に基いてここに私が中間報告をいたさなければならないのか、きわめて理解いたしかねるのであります。当委員会におきましては、今期国会は、本法案及び国民年金法案等、きわめて重要なる法案を審査するのでありまするから、当初から審査に万全を期するため、委員会の運営等につきましては、委員長及び理事打合せ会の決定に基きまして、委員各位の御協力を得て、案件の十分なる審査と委員会の円滑なる運営に、特に努力をいたして参った次第であります。従いまして、委員会は今日まで常に平穏かつ円満に運営せられて参りました。もし、多少の混乱があったといたしまするならば、それは、四月一日、社会党委員の熱心なる質疑の途中、自民党委員よりの質疑打ち切りの動きから、委員会の審議困難が考えられ、散会をいたしました事実が、ただ一度あるだけであります。この散会も、時間的には、すでに午後五時近いこと等を考慮して私のとった措置であります。ところが、これを奇貨として、ただいま突如として委員長の中間報告を求めるという手段をもって、委員会において審査中の最低賃金法案を本会議に取り上げ、その成立を強行せんとするがごときは、全く理解しがたいところであります。国会の会期が本日をもって終了するとか、あるいはまた、二、三日しかないというのであれば別でありまするが、先ほども申し上げましたように、会期は五月二日まであるのであります。かりに五月二日会期一ぱいまで審査することが、諸般の事情から困難であるといたしましても、少くとも四月上旬一ぱい、ないしは中旬ぐらいまでは、国会における審議は十分続け得ると考えられる際に、かかる暴挙に出でて、本法案に対する委員会の審査を中断せしめることは、まことに遺憾のきわみと申すべきでありましょう。
 しかしながら、私は本院の決定を尊重し、以下、公正に報告せんとするものであります。
 まず、本法案の趣旨を説明いたします。
 わが国の労働法制は、今次の大戦後、急速に整備せられまして、近代的労使関係の確立と産業の合理化を促進し、わが国経済の長足なる復興に寄与したのであります。しかるに、最低賃金に関する規定は、労働基準法の中に設けられながら、中小企業、零細企業の多いわが国経済の複雑な構成等のために、いまだ実施せられていないのであります。しかしながら、最低賃金制度の確立は、低賃金労働者の労働条件の改善、大小企業間における賃金格差の拡大防止に役立つのみでなく、中小企業の公正な競争を確保し、輸出産業の国際信用を維持向上せしめ、国民経済の健全な発展をはかるため、きわめて緊要でありますので、政府は、さきに中央賃金審議会に諮問し、その答申を尊重して、わが国の現状に即した最低賃金制度を実施しようとするのが、本法案提出の理由であります。
 次に、本法案の内容を簡単に御説明申し上げます。
 第一に、最低賃金は、業種別、職種別、または地域別に、その実情に即して決定することとし、全産業全国一律の方式を採用していません。
 第二に、最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定めることとし、使用者は定められた最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
 第三に、最低賃金の決定については四つの方式を設けてあります。すなわち、その第一は、業者間協定に基き、当事者の申請により、最低賃金審議会に諮問して決定するもの。その二は、業者間協定による最低賃金を、当事者たる使用者の申請により、最低賃金審議会に諮問の上、一定の地域内の同種の労働者及び使用者の全部に適用すべく決定するもの。その三は、労働協約による最低賃金を、当事者たる労使双方の申請により、最低賃金審議会に諮問の上、一定の地域内の同種の労働者及び使用者の全部に適用すべく決定するもの。その四は、以上三つの方式によることが困難または不適当と認められる場合において、最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を尊重して、必要なる事業、職業または地域について最低賃金を定めるものであります。
 第四に、最低賃金審議会は、中央及び各都道府県に置き、委員は労、使、公益各同数とし、ほかに特別委員として関係行政機関の職員を加え得ること、また、必要に応じて業種別、職種別の専門部会を置き得ることを規定しております。
 第五に、前述の方式によって決定されました最低賃金の有効な実施を確保するため、必要な限度におきまして、家内労働につきましても、行政官庁は最低賃金審議会の調査審議を求め、その意見を尊重して、最低工賃を決定し得るのであります。
 最後に、本法の適用範囲を労働基準法及び船員法の適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣は、それぞれ労働大臣及び運輸大臣と規定するのほか、最低賃金の決定について利害関係ある使用者の異議の申し出、本法違反に対する罰則、関係法令の規定の整備等を規定しているのであります。
 本法案は、すでに第二十八回国会及び第三十回国会にも提出されたのであります。両国会とも、会期末、衆議院において原案通り可決され、本院に送付されたのでありますが、本委員会におきましては一度も審議の機会なく、審議未了に終ったものであります。本委員会におきましては、今回初めて審議を開始いたしたのでありまするが、本案の重要性にかんがみまして、委員長及び理事打合せ会の決定に基き、慎重に審議を進めることを決定いたした次第であります。
 まず、三月十日、労働大臣より本案の提案理由説明を求めるとともに、引き続いて質疑を行い、次いで十六日、十八日、十九日にも質疑を行い、二十日には公聴会を開き、学識経験者四名及び労使の代表各一名、合計六名より意見を聴取いたしましたほか、三月二十三日には京都におきまして、学識経験者四名、労使の代表各三名、合計十名より意見を聴取して、審議の参考といたしました。次いで、三月二十六日も質疑を行うとともに、二十七日にも本法案に対する質疑を続行せんといたしましたが、労働大臣の事故により委員会は流会となりました。次いで、四月一日にも質疑を行なったのであります。
 以下、質疑のおもなる点を御紹介いたしますると、まず、「今日四十九カ国の国が最低賃金制を実施している。これらの国々の最低賃金決定方式はどのような方法をとっているか」との質疑に対して、政府委員より、「最低賃金制は、十九世紀末ニュージーランドとオーストラリアで初めて採用されて以来、各国においてそれぞれの沿革を経て採用せられ、発展したもので、日本を除く世界の主要七十八カ国のうち四十九カ国がこの法制を有している。しかし、この中で具体的に実施を見ていない国が四カ国ある。次に、その決定方法について見ると、それぞれの国の国情に応じて種々の方式が採用されているが、大体四つの方法に分けられる。第一は、賃金委員会を設けて、これが決定するか、あるいは委員会の答申等に基いて行政機関が決定する方法。第二は、仲裁裁判所を設けて、その裁定もしくは決定等による方法。第三は、法律で最低賃金額を幾らであると直接規定する方法。第四に、団体協約の拡張適用による方法がある」との答弁がありました。
 続いて、「今回政府が提案された最低賃金法案を見ると、業者間協定がその骨子となっている。要するに、労働者が賃金決定に参加していないようなものを最低賃金とする例はあるか」との質問に対して、政府委員より、「本法案の業者間協定方式は、業者間協定に基いて、当事者の申請により、労、使、中立の三者構成の最低賃金審議会がこれを審議し、その意見によって政府が決定を行うから、第一の賃金委員会方式である。業者間協定の例としては、アメリカでニュー・ディール当時、業者間できめたコードにより大統領が決定することとした例がある」との答弁がありました。
 次に、「諸外国はわが国の賃金事情に深い関心を持っている。過去においてわが国はソシアル・ダンピングの非難をこうむること、しばしばであった。今日政府の経済政策を見ると、中小企業や零細企業は保護されていない。この困難な状態に置かれた企業が、支払い能力の範囲で業者間協定を作り、これが最低賃金に発展すると、外国から再び同じ汚名をこうむるのではないか」との質疑に対して、労働大臣より、「日本の産業政策として、当然、中小企業や零細企業の維持推進をはかり、最低賃金制を実施してもやっていけるよもに、これらの企業を育成しなければならない。また、賃金ベースの高低を比較するには、その国の国民所得や経済の実態等をも考慮に加えるべきで、たとえばアメリカに比べ日本が低賃金であるからといって、概念的にソシアル・ダンピングだということは当らない。最低賃金法案の成立は、国際貿易土日本の信用を増すことになると思う」との答弁がありました。
 次に、「家内工業労働者の最低工賃についても、本法案は最低賃金のきまった関連産業だけについて規定を設けている。低所得者を守るという最低賃金本来の意義が本法案に十分盛られていないではないか」との質問に対して、労働大臣より、「最低賃金を決定しても、関連する産業の家内工業について最低工賃を決定しなければ、画龍点睛を欠くことになるので本法案にこれを規定した。家内労働については、本法案の実施後引き続いて十分調査検討を行い、万全なものを考慮していきたい」との答弁がありました。
 次に、「政府は今回最低賃金法案を提出したが、これをめぐっての情勢判断をいかに考えているか」との質疑に対しましては、労働大臣より、「賃金は基本的には労使話し合いで自主的にきめらるべきであり、政府が干渉することはなるべく避けた方がよいと考えている。しかし、わが国の産業は、二重構造、三重構造といわれており、今日のような段階では政府が配慮を加えねば救われないという面もある。また零細な企業では決定せられた最低賃金の支払い能力があるかどうかという心配もある。中小企業、零細企業は最低賃金を支払い得る能力を培養して保護育成しなければならない。かくして賃金格差を徐々に狭め、労働者の生活環境をも改善するとともに、日本の産業を維持し、そこに働く労働者の労働条件をよくしていきたいと考えている」との答弁がありました。
 次に、「政府は最低賃金審議会の意見を尊重すると言っているが、これには程度がいろいろある、審議会は労働者の意見が伝達される唯一の機会であるから、この審議会の意見をもっと権威あらしめるような方法は考えないか」との質疑に対して、政府委員より、「各国にはいろいろな立法例があり、賃金審議会を決定機関とする例もある。しかし、大部分は諮問機関であると承知している。国の政策に関連するような重要な問題は、その行政に責任を持つ労働大臣、あるいは労働大臣の指揮を受ける都道府県の労働基準局長が決定する方が、わが国の行政の実情から見て妥当である。しかし、この賃金審議会は、労使及び中立側の意見が反映する最も大きな場であるから、これから出た意見は文字通り尊重する」と答弁し、さらにイギリスの例を引いて、「イギリスの例を見ると、最低賃金を決定する場合、最低賃金委員会から意見が出された場合、一度は意見を付して差し戻すことができるが、同じ意見が再び出てきた場合には、これに従うことが慣行になっている」との答弁がありました。
 次に、「最低賃金を決定する基準については何を基準にして考えているか」との質問に対して、政府委員より、「最低賃金を決定する場合には三つの基準を考えている。その第一は労働者の生計費を、第二には、類似の労働者の賃金を、第三には通常の事業の支払い能力を考えている。この三つの要素を勘案して適当な最低賃金をきめる」との答弁があり、さらに、生計費の決定については、「総理府の家計調査、厚生省の厚生行政基礎調査あるいは人事院において研究した標準生計費等を審議会に提供して、これらの資料等を参考にして適当な意見をきめてもらう」との答弁がありました。
 次に、「日本の賃金は、アメリカ、西欧と比較してみると、きわめて低賃金である。為替換算比較で見ると、アメリカは日本の九・一倍、イギリスは二・八倍、西独は二・二倍となっている。政府は各国との賃金差をどのように見ているか」との質疑に対して、労働大臣より、「為替換算率のみで比較することはあまり意味がない。賃金を比較するには国民所得の面からも見なければならない。日本の国民所得は各国に比較して低位にある。一人当りの国民所得の比率を見ると、賃金比率と大体同じである」との答弁があり、続いて政府委員より、「実質賃金の国際比較はきわめて困難であるが、アメリカの労働者が一九五二年に、賃金の国際比較を食糧購買力で換算した。それによると、アメリカは日本の三・四倍であり、イギリスは一・八倍、西独は一・四倍となっている。」との答弁がありました。
 次に、「最低賃金とはいかなる意味のものであるか。国が法律をもって強制する根本理由はどこにあるか」との質疑に対して、労働大臣より、「最低賃金とは、国家機関が法的強制力をもって規制し、それ以下の賃金では働かせてはならない賃金である。賃金は元来、労使が自由な立場できめるのが原則であるが、これでは一部の人々が救われない。これを救うために最低賃金をきめるものであって、その基礎となるものは生活費である。」こういう答弁がありました。
 続いて、「最低賃金の額はどの程度の額が適当であるか。政府に一応の考えがあるであろうし、その額を示せ」との質疑に対して、政府委員より、「最低生活費についてもいろいろの基準がある。生活保護法による東京における独身男子の扶助額は三千五百十円であり、昭和三十三年七月、人事院の出した給与勧告の資料では、東京における独身男子の標準生計費は、昭和三十三年三月で七千五百六十円となっている。その他、総理府、厚生省等で計算された資料がある。また、わが国の労働者の賃金状態は、地域、職種により、いろいろ格差がある。これらの資料を賃金審議会に提供して、審議を願い、その意見を尊重して決定する」との答弁がありました。
 次に、「政府は最低賃金法実施に当って、中小企業、零細企業に対して格別の援助を考えていない。社会党案の全国一律方式をとると、六千円で五百四億の費用を要すると批判している。また業者は、自分の支払い能力の範囲で協定賃金をきめ、これが最低賃金に発展する。このような、政府も業者も手をぬらさないでできる最低賃金は、その価値なしと認めるが、政府の考えはどうか」との質疑に対して、労働大臣より、「政府は、中小企業対策は困難であるが、あとう限り努力している。企業を保護育成して、この制度が実施できるよう指導している。支払い能力のない企業だけに特に世話をするということはできない。自由主義経済の上に立っている現在、支払い能力の範囲から始め、漸進的に制度を進めていくことが実情に即している」との答弁がありました。
 次に、「本法案は、最低賃金決定に四つの方法を採用しているが、業者間協定によるもの以外は皆現行法で可能である。業者間協定はできるべくしてできたものではないか。これ以外の救われない者をどうして救うか」との質疑に対して、政府委員より、「本法案は、中央賃金審議会の答申を尊重して策定したものであり、業者間協定も労働問題懇談会の意見に基いて協定締結の援助を行なったもので、昨年一年間で八十件の実施を見、このほか実態調査中のものが現在七十件ある。この八十件も、賃金は一〇ないし二〇%上昇している。次に、労働協約数の拡張は、労働組合法第十八条に規定されているが、この拡張を決定するのは労働委員会である。労働委員会より専門の賃金審議会で審議する方がより適当であり、また、拡張のもとになる労働協約が失効すれば、拡張された協約も無効となるので、これに安定性を保つためにも、新たに法律で定めて最低賃金制の運用を円滑にはかりたい。また、本法案に定める四つの方法を適宜かみ合せていこうとする考え方が妥当だと思う」との答弁がありました。
 次に、「ILOの二十六号条約及び最低賃金決定に関する勧告の趣旨と本法案の最低賃金決定の方法とは、相いれない点があるではないか」との質疑に対して、政府委員より、「賃金審議会は、三者構成であり、ここで審議せられるから、ILO二十六号条約第三条第三項は満たしているものと考える。また、勧告の趣旨は完全に満たしているものとは思わないが、勧告は条約と異なって、各国の特殊性を認めているものであるから、本法案は最低賃金法として国際的にも通用するものと思っている」との答弁があり、また労働大臣より、「本法案成立の後なるべく早期にILO二十六号条約は批准したい」との答弁がありました。
 以上が委員会における質疑のおもなる内容であります。
 次に、三月二十日の公聴会における各公述人の意見の概要を申し上げます。
 まず、全日本造船労働組合中央執行委員長柳沢錬造公述人は、次のように述べました。
 第一に、最低賃金法は労働者保護立法たることを明確にすべきである。労働基準法第一条において、労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営み得るものでなければならない旨を規定せられている。しかも、その労働条件のうちで、最も重要なものこそ、まさにこの最低賃金なのである。第二に、賃金は本来、労使対等の立場できめるのが当然で、これは国際的な通念であり、原則である。しかるに、政府案の主柱をなす業者間協定方式を見ても、締結といい、申請といい、はては異議申請に至るまで、ことごとく使用者側の一方的な意見にゆだねられており、労働者側の意見や主張は、わずかに審議会において多少の発言を認められているにすぎない。いわんや、業者間協定の動機としては、不当競争の防止、貿易上の顧慮など、使用者側の利益の擁護を目的とするものが多いと認められるにおいてなおさらである。第三に、わが国の産業構造や賃金格差の状況から見て、全国全産業一律方式は、わが国の実情にそぐわぬとの論をなす者もあるが、これは当を得ていない。中小企業には労働者の組織も労働協約もほとんどなく、低賃金で労働者が使えるところから、大企業の下請、さらにその下請という仕組みとなり、ここに膨大な臨時工、社外工という低賃金労働者群が存在することとなる。企業の不当競争を防止し、公正な発展を期する上からも、一律方式は良策と言うべきであり、最近、学校卒業者の初任給の全国的平均化の傾向も一律方式の可能性を裏書きしていると言えよう。この意味で、当面、全産業一律方式と、職種別、地域別方式との併用が好ましいと考える。第四に、政府案においては、審議会は単なる諮問機関にとどまっており、事を建議に限っても、労働基準法の規定よりも後退していると言える。審議会を労使対等の決定機関とすべきである。結論として、政府案に反対し、社会党の修正案に賛成するが、よりよい最低賃金法の成立を期待してやまない。
 以上が柳沢公述人の意見であります。
 次に、日本経営者団体連盟専務理事の早川勝公述人の意見を御紹介いたします。
 最低賃金制度の問題は、わが国において十数年前から論議せられているが、当時わが国の経済界はインフレに次ぐデフレという戦後の混乱期であり、時期尚早と考えられた。その後、わが国の経済の発展正常化に伴い、二、三年前から社会の実情も変り、中小企業者の間においても最低賃金制度の意義を認める機運が生じてきた。しかしながら、本制度の実施に当って最も考慮を要する問題は、何といっても中小企業への影響であって、一挙に理想に走って中小企業の存立を危うくするがごときことは避くべきであり、まず業者間協定を基礎とする方式により制度を創設し、次第に漸進的に進むことが賢明である。何となれば、第一に、全国全産業一律方式により六千円あるいは八千円の最低賃金を規定すれば、中小企業への影響は甚大であり、ひいては従業員の失職という事態を招くことは必定である。外国の例に徹しても、産業別、職業別等に応じて実施しているのが多い実情である。第二に、業者間協定による決定方式においては、業者のみの意思によって最低賃金が決定せられると非難されているが、業者間協定がそのまま最低賃金と決定せられるのではなく、審議会において労使対等の審査討議を経た上で決定に至るのであり、しかも一たび決定せられた後にその基礎となった業者間協定が改廃せられても、最低賃金はそれに伴って改廃せられるものでなく、業者間協定とこれを基礎として決定せられた最低賃金とは、全く別個のものである。また、業者間協定は使用者の都合のみを考慮すると非難されているが、これによって労働者の利益も増進している実情であって、統計によれば、昭和三十二年四月以来の協定締結件数は、しり上りにふえ、多くは協定締結前の賃金よりも上昇を示している。第三に、本法律案は、中央賃金審議会において労働者委員の一部を除いた過半数の委員の意見の一致による答申を尊重して、政府が立案したということに注意すべきであると思う。要するに、大企業においては、今後関連する中小企業の基礎の強化をはかり、これに適合した機械化、技術者養成、生産性向上等の面においてこれに協力すべきであり、政治の面においても、金融、税制、技術指導等にわたり、有効な中小企業対策を望みたい。また中小企業、零細企業と家内労働とは密接な関連を持つものであり、従って、ほんとうに最低賃金制度の効果をあげるためには、家内労働、農業労働の実態を検討し、これについても全般的な援助並びに規制の立法を必要とするが、これは容易ではないので、当面の方策として政府案の実施が適当だと考えると述べられました。
 次に明治大学教授松岡三郎公述人の意見を申し上げます。
 最低賃金法は労働者の生活を保障するための法律であるのに、経営者団体が賛成し、労働者団体は反対、しかもストライキに訴えてまで反対している実情を考えると、世にも不思議な法律案だという印象を受ける。この法律案を提出した積極的な理由として、政府は、既成の業者間協定が一割ないし二割の賃金増加をもたらしたという事実をあげているが、これは、地方における労働基準局の圧力と、業者間協定に賛成の場合は金融面を考えてやろう等々のサービスによるものであって、決して業者間協定そのもののために賃上げがなされたのではないと思う。消極的な理由としては、全国全産業一律方式の採用は経済を混乱に導き、中小企業の倒産を引き起すと説明しているが、これは抽象論であって、それを裏づける客観的なデータがなければ納得できない。次に、本法律案の問題点の第一は、本法律案により逆に小企業労働者が犠牲となる危険性が強いことである。本法律案第九条に基く業者間協定は、当事者全部の合意による申請が条件となっているから、その中の最も小さい企業の負担能力が基準として考えられるわけであって、労働者の生活は全く考えられていない。本法律案第十条によって拡張適用がなされた場合も、不服があれば同第十二条によって小企業主は異議を申し立てることとなるから、結果は同じである。この場合、もし異議の申し立てを厳格にするとしたら、それがため経営困難に直面する小企業の保護について、政府は何らの対策も立てていないという矛盾がある。問題点の第二は、本法律案第五条第二項において、業者間協定に基く最低賃金が労働契約の内容となるという点である。使用者が一方的にきめることができる唯一の例は、労働基準法第八十九条による就業規則の場合だけであるが、その場合も、同第九十条に基き労働組合の意見を聞くこととしているのである。労働条件は労使対等できめるという労働基準法の根本原則に、本法律案による業者間協定は違反するものである。問題点の第三は、中小企業の従業員が合同労組を作り、労働組合法第十八条に基く労働協約の拡張適用の運動を行う場合、本法律案による業者間協定によってその労働運動にくさびを打ち込まれる危険性がある。以上の理由により本法律案に反対を表明されました。
 次に、日本経済新聞論説委員友光正昭公述人の意見を申し上げます。
 中小企業、零細企業の現状は、数字が如実に示している。まず、規模別賃金格差は、千人以上に比べた場合、五十人以下は四〇ないし四五%であるが、生産性の格差は二七ないし三七%となる。これは、賃金はなるほど低いが、生産性はなお一そう低い。すなわち、分配率から見ると、相対的に中小企業の方が高いことを示している。これは資本の有機的構成の差に基くものであるが、また、中小企業において賃上げの可能性を必ずしも裏づけていないことになる。従って、かりに分配率を百。パーセントにしたとしても、なおかつ、賃金は大企業の八割にすぎないことになる。この状態において全国全産業一律方式の最低賃金を布いたとすればどうなるか。無理のない低い線に青めれば実効がないばかりでなく、低賃金くぎづけの逆効果を生むし、また分配率をこえる線をきめれば無理なものとなることは、理想に過ぎた基準法が守られていないのと同断である。これすなわち、法案第三条において、賃金決定原則の一つに支払い能力を掲げていゆえんである。政府案が業者間協定を基礎とすることは、あまりよい格好のものではないが、ある程度の利用価値は否定し得ないし、審議会をも通過し、協定の運命いかんにかかわらず効力も存続することになっているから、一つの決定方式として入れてよいものと考える。ただ、一度決定された賃金をくぎづけにしておくことは望ましくないから、徐々に賃金水準に応じ、あるいはそれ以上に上げていくよう行政官庁や審議会の配慮が望ましい。政府案は必ずしも理想的なものではないが、労働者にとって、今日の一円は明日の十円にまさることに思いをいたせば、今後、試行錯誤的に改めていくことを考えた上で、政府案に賛成するものであるとの意見が述べられました。
 次に、労働科学研究所の藤本武公述人の意見を申し上げます。
 業者間協定に基く最低賃金の決定方式は世界に例がない。類似した制度としてはただ一つ、一九三三年の米国の産業復興法に基くコードがあった。しかし、それは大統領の再雇用協定によって、世界最初の週四十時間制と四十セントの最低賃金という基準が与えられており、かつ労働組合との団体交渉を拒否できないこととしていた。これは、このあとを受けた一九三八年の公正労働基準法よりも高い基準でワクづけられていたものであって、とうてい本法律案による業者間協定とは比較できないものである。第二に、本法律案はILOの精神に反していると思う。ILO条約二十六号の第三条第一、項は労使対等の条件を規定している。この精神に立てば、最低賃金審議会の権限を拡大し、少くとも修正権を与えなければならないと思う。第三に、本法律案は労働保護立法の精神に全く背反するものである。万一、最低賃金について業者間協定が立法化されると、今後において労働時間についてもこのような協定がなされる危険があり、労働保護立法の危機的現象であると考える。以上の理由により、本法律案は最低賃金立法の性格を持っていないと言わなければならない。諸外国で全国全産業一律方式を採用しているのは五カ国であるが、それ以外の国をよく研究してみると、一般的に言って、労働組合の力が強く、団体交渉によって最低賃金を決定している例が多い。かかる実情にかんがみ、わが国の中小企業の現状をみるとき、全国全産業一律方式を採用することが必要だと思う。また審議会なるものは従来政府によって無視されてきたことが多く、本法案においてもその危険性がある。以上の点において本法律案に反対する。昨年四月、社会政策学会及び労働法学会で本法律案に対する反対声明を出したとき、百六十八名が反対声明に署名し、政府案を支持したのはわずかに二名であった。良識ある専門家がこぞって反対している事実をよく考慮してほしい。(拍手)以上のような意見、希望が述べられたのであります。
 次に、国民経済研究協会理事長稲葉秀三公述人の意見を申し上げます。最低賃金の将来のあり方としては、全国一律方式が望ましいが、現段階おいては、中小企業の支払い能力とか、産業構造の二重性、三重性とかの実情をよく考慮する必要がある。本法案による最低賃金決定の四つの方式のうち、二つまでが、業者間協定と、その拡張適用の方式であることは、率直にいって問題が残っている。しかし、その決定に当って最低賃金審議会に諮問することになっているから、現実的な第一歩として妥当なものであり、ILO条約についても何とか批准できるものと思う。中央賃金審議会の答申を手がけたものとして、若干その経緯を述べると、業者間協定については、昭和三十二年初めごろの労働問題懇談会ですでにその構想があり、中央賃金審議会の当初から一つの題目になっていたことはいなめない。第一に、中小企業の支払い能力を検討した結果、段階的にやっていくという結論に達せざるを得なかった。そうでなければ、現に日本で多くの生産活動がなされている家内労働に小企業を追い込む危険性があるからである。
   〔副議長退席、議長着席〕
 第二に、既成の業者間協定が労働者の福祉を全然考えていないわけではないが、求人難に対する一つの措置から出発したことは認めるけれども、その実績にかんがみ、かつ業者間協定を積み上げていくことが実情に即するという現実的配慮から答申したものである、との意見が述べられました。
 次に、京都においても本法案に関して聴聞会を開いたのでありますが、御出席の各氏の意見は次のようなものでありました。
 まず、関西経営者協会中小企業労働対策委員会会長竹中雄三君は、最低賃金法の必要性は十分に認識している。本法案は、われわれにとっても、また労働者にとっても、必ずしも満足すべきものではないが、最低賃金の芽ばえであるから必要と考えている。世間ではオール・オア・ナッシング、すなわち完全なものでなければ、ない方がよいと主張する向きもあるが、これでは困るので、一歩でもよくするということを考えなければならない。今日の中小企業がさらに発展し、成り立つことを願うなら、本制度は認めなければならない。また本制度を実施するに当っては、中小企業を育成するとともに、企業採算内でやれるような配慮が望ましい。次に、細部の点として、最低賃金の定義並びにこれを年令、学歴、職種、経験等の面でも明確にすること。異議の申し立て期間三十日は六十日ぐらいに改めること。中小企業、零細企業では、賃金は大づかみに月幾らときめ、家族手当、交通手当、時間外賃金等の基準外賃金も形式的に分けているので、これらは最低賃金の基礎額に繰り入れること。第十条及び第十一条の規定に基く地域的に最低賃金を拡張する場合は、告示のみでなく、当該地域の関係ある使用者に文書で通知すること。地方の労働基準局長が最低賃金を決定する場合、全国的見地からみて調整の必要もあるので、労働大臣の認可の上実施すること等を要望する旨の意見が述べられました。
 次に、京都大学教授岸本英太郎君は、ILO二十六号条約及び勧告の精神は、国際的最低賃金に対する常識的考え方を採用したものである。今日、日本の最低賃金の決定方式は世界で深い関心をもって見ている。しかるに、本法案の内容は業者間協定を骨子としている。これは労働者保護でなく業者保護の法律であり、最低賃金法の名に値しないものである。次に、業者間協定が賃金審議会の審議を経て、その意見により最低賃金を決定する場合、労働者の意見が経営者と同等の立場で反映しているとは考えられない。このような最低賃金の決定方法では、国際的に見て、ソシアル・ダンピングの疑惑を解消し得ないし、本法案提案理由の目的を実現しないから、本法案の内容に賛成できない。次に、オール・オア・ナッシングの傾向は日本に強いが、現実の日本の条件に適応することが必要である。全国一律方式は望ましいが、まず業者別、職種別、地域別に実施することは必ずしも否定すべきでない。世界の最低賃金法の歴史を見ても、漸次改善されている。最後に、本法案についてどうしても承認できない点は、賃金審議会が諮問機関であることである。これでは一度できた最低賃金を改善することが困難である。この審議会は諮問機関でなく決定機関とすべきである。これが決定機関となれば、本法案は、実質的に最低賃金制実施の方法が確保できるとともに、ILO二十六号条約の精神に沿うものであり、これの批准も可能である旨の意見が述べられました。
 次に同志社大学講師田辺哲崖君は、わが国が最低賃金制を実施することは、議論の段階でなく、どこからも異論はないはずである。ただ問題は、ただいま提案されている最低賃金法案が適当であるかいなかの点にある。本法案は最低賃金の決定方式に四つの方法を採用し、このうち、主軸を業者間協定に置いているが、この点が労働基準法及びILO二十六号条約との関連で問題となるであろう。しかし、現在の日本の経済の実情から見ると、業者間協定方法も認めざるを得ないであろう。次に、最低賃金審議会が本法案では諮問機関となっているが、これを現在の労働委員会のごとく、場合によっては最低賃金の決定のできるように強化すると、業者間協定による最低賃金が、業者の一方的決定という非難を緩和するであろう。次に、全国一律方式については、これは理想ではあるが、現段階ではこれを採用できるほど機は熟していない。本法案のごとく業種別、職種別、地域別に設けていく方法が賢明な方法であり、そして漸次拡大していく方がよい。次に、本法案が実施された場合、順守されるためには、中小企業対策をあわせ考えなければならない。この対策を怠ると、業者に悪用され、労働者の保護となるより、中小企業の保護対策のみに終るおそれがある。中小企業の育成を忘れると、本法案はない方がよいという結果になるのではないか。また、法律順守のため罰則を設けることは適切でない。法律が守られないのは、それだけの理由がある。法律も、尊重するだけの社会的、経済的裏づけがないものは死文化する。中小企業が法律を守れるように育成すると同時に、労使に対する啓蒙もまた重要である。法の実施が罰則に依存するようなことがあってはならない。本法案については、賃金審議会の機能を強化することを要望して賛成するとの意見が述べられました。
 次に、日本労働組合総評議会大阪地方評議会組織部長中江平次郎君は、まず、本法案は百害あって一利なしであり、廃案にすべきである。本法案は、ILO二十六号条約及び勧告の精神もまた労働基準法の原則も無視している。また企業の支払い能力を一つの原則と考えているから、最低賃金の目的である労働者の生活の引き上げは実現できない。次に、日本の中小企業の発展のためには低賃金をなくさなければならない。中小零細企業に低賃金をなくすために、まず全国一律八千円の最低賃金制を実施するとともに、これに必要な施策をとることが必要である。業者間協定による最低賃金制を実施すると、現在の中小企業の弱点がそのまま残ってしまう。また、生産性も低賃金であるから低いので、高賃金になれば向上する。現在まで業者間協定の実施された例を見ると、賃金の上っているものは新規採用者のみであり、新規採用の結果、老齢者は解雇されており、業者間協定は労働者の利益となっていない。次に、賃金審議会では労働者の発言は無効であり、決定された最低賃金が拡張適用される場合も、業者のすべてを納得させるものであるから、労働者の意見の反映は期待できず、また異例の申し立ても認められていない。次に、第十一条は労働組合法の改悪である。本法案は拡張適用の部分を賃金に限定するとともに、労働委員会の決定を賃金審議会の諮問にとどめている。審議会では労働者の発言はあまり効果は期待できず、労働者側の提案も勧告程度になってしまう。また、家内労働者の工賃についても関連あるものに限られている。最低賃金は家内労働のすべてを含めたものでなければならない。家内労働を普通の労働者より一段と下の額で定めることは最低賃金制の効果を薄くするものである。結論的に言って、本法案は労働者の団結権を否認する点を含み、憲法、労働基準法の精神に反し、労働組合法を改悪するものであり、労働者が地域的に業者と統一協定を結ぶことを妨げ、低賃金を固定化しようとするものであるから、これに反対し、全国一律八千円の最低賃金制を実施することを要望する旨の意見が述べられました。
 次に、京都経営者協会副会長森下弘君は、最初に、本法案に賛成する。日本の実情に適さない最低賃金制が制定されたら重大な問題となる。最低賃金法は社会政策ではあるが、これを経済政策と関連なしに実施することはできない。日本の経済の特徴は、大企業と中小企業との間に開きがある、つまり二重構造であり、異質の構造であることである。これを一元化、同質化するための合理化及び近代化が必要である。日本の経済の現状では、全国一律方式の最低賃金制を採用すると中小企業は大きな被害を受ける。ILO条約の中でも言われているように、それぞれの国の実情を考えて、国情に応じた方式をとることが妥当であり、一律方式は暴挙である。次に、本法案は最低賃金決定に四つの方法を採用しているが、本法実施には常に経済政策が並行して行われなければ実施が困難である。業者間協定による最低賃金は低賃金化すると言われるが、三者構成の審議会の意見が尊重される建前であるから、著しい低賃金はチェックされるはずである。また、低賃金であるとよい労働者が得られないから、よい労働者を求めるために賃金は上昇せざるを得ない。関連家内労働の最低工賃の決定は、最低賃金とつり合いのとれた工賃としなければ最低賃金制の円滑な実施は期待できない。それで本法案の考え方は妥当である。次に、最低賃金の決定の主体は当局であるが、当局は賃金審議会の意見を尊重するので、その運営の面で審議会の良識に期待する。本法案は理想のものとは言えないが、さらに一歩一歩よいものに近づく方向に進むべきである旨の意見が述べられました。
 次に、日本労働組合総評議会京都地方評議会副議長西田修君は、本法案は最低賃金の決定基準について三つの基準を設けているが、生活賃金を第一の決定基準としなければならない。本法案のごとく三つを均等に考慮することは適当でない。特に業者間協定は労働者の参加を排除しているから、これは支払い能力が第一となり、生活賃金とはならない。生活賃金を第一とするとともに、業者間協定にも労働者を参加させるべきである。これはILO条約の精神でもある。次に、決定方法についてみると、業者間協定によるものが主であり、これを現在推進している。現行労働基準法でも最低賃金制は実施できたのにもかかわらず、政府はその努力をしなかった。また労働協約の拡張は現行労働組合法に比して著しく後退している。労働委員会の決定が賃金審議会の意見を聞くことになっている。これは拡張方式による実現を現在より困難とする。業者間協定による場合は、使用者の合意による申請であるから、労働者の意見は排除される。賃金は労使同等の立場で協議決定されたものでなければならない。このような賃金決定方法は、労働基準法の精神に反するものであるから、業者間協定による決定方法は削除すべきである。次に、業種別、職種別、地域別にきめると、賃金格差は、はなはだしくなり、企業の近代化を求めるためには、全労働者に全国一律方式をとることが望ましい。また、家内労働についても、関連のあるものについてのみ最低工賃を決定しようとすることは適当でない。結論として、生活賃金を主として、使用者と同等の立場から参加してこれを決定し、全国一律方式を採用する最低賃金法の一日も早く実現することを強く要望する旨の意見が述べられました。
 次に、立命館大学教授坂寄俊雄君は、まず、第三条において、最低賃金は、生計費、類似の労働者の賃金及び支払い能力の三つを考慮してきめることとなっているが、本法律案は、労働基準法の特殊規定と考えなければならないので、基準法の第一条の規定から離れて賃金を決定することは矛盾であり、ひいては、憲法第二十五条の精神と違反する疑いがある。次に、第九条、第十条の規定する業者間協定は、ILO二十六号条約及び勧告との関連及び憲法との関係において考えてみなければならない。個々の労働者の賃金を業者間協定により一方的に決定していくことは、労働基準法の対等の原則にもとるとともに、労使関係が前近代的な形で残っていき、労働条件の決定に本質的に違反した結果となってくるのではないか。また、憲法第二十八条の精神を無視することになるのではないか。次に、第八条、最低賃金適用除外の点で、「軽易な業務」は、基準法の除外規定の中にはなく、新設されたものである。単純な軽労働者を最低賃金から除外することは最低賃金の精神に反する。労働者をこのように分けて考えることは正しくないので、「軽易な業務」は削除すべきである。次に、第九条、業者間協定に基く最低賃金の場合、「全部の合意」という言葉がある。業者間協定が法的拘束力を持たない場合は、一応の最低額が出ると思うが、法律で規制する場合、全部の合意となると、最低額を引き下げる結果となる。次に、第十二条第五項において、異議の申し立てのあった場合、一定期間猶予し、または別段の金額を定めることができることになっているが、これは第五条第二項の最低賃金の効力の規定を無効とすることになるのではないか。次に、現在、家内労働者の分布は非常に拡大されているので、本法案による最低工賃の規制方法では、ほとんど救済されない。現在六百万ないし八百万の家内労働者の日々の生活を考えて、人道的処置を考えてほしい。次に、罰則関係について見ると、一万円以下の罰金刑となっているが、現行労働基準法第三十一条違反の罰則は、六カ月以下の懲役または五千円以下の罰金となっている。罰金一本で法律順守を期待するためには、労働基準監督官の大幅な増員、予算の大幅な増額がぜひ必要である。以上の諸点が何らかの方法で解決されない限り、本法案は適当でないと考える旨の意見が述べられました。
 次に、京都府中小企業団体中央会会長堀宣一君は、結論として、本法案は不備な点もあるので、賛成しかねるが、全国一律方式を強行されると、将来は不安であるので、中小企業に適当するよう、十分に検討して制定されることが必要である。また、労働者に安定した賃金を出すことは必要であり、最低賃金制は国際的に信用を高める上に役立つものである。中小企業は過当競争があり、労働者にそのしわ寄せが来る。労働者に高賃金を望むためには、最低賃金制を布くこともやむを得ない。しかし、これと同時に中小企業対策が十分考慮されなければならない。大企業の労働者は、退職すると直ちに退職金で仕事を始めるので、競争相手が常に増加することになり、中小零細企業をさらに圧迫する。次に、本法案には罰則が設けてあるが、これは削除してほしい。事業を圧迫するような法律であるなら、現在のように、ない方が安全である。われわれ中小零細企業者は、全国一律方式のおそろしいものができるより、この程度のものから順次改善され、考慮の余地も将来できるであろうから、条件付に賛成する旨の意見が述べられました。
 次に、京都民間労働組合協議会議長桜井敏雄君は、憲法の規定からも最低賃金制の実施は必要であるが、今回提案された最低賃金法案を見ると、その決定に当って、使用者に有利な法律である。特定の産業、職業に適用され、業種別、職種別、地域別に定められることになり、ほとんど現行の賃金通りに押えられる。しかも、業者間協定が使用者に一方的にきめられることとなり、これは最低賃金決定の理念に反する。提案理由の中で、最低賃金の確立は、労働条件を改善し、賃金格差を防ぎ、公正競争を確保し、労働者の質的向上をはかるものであると言っているが、これは中小零細企業にソシアル・ダンピングとの非難が世界にあるので、この声をおさめるためのごまかしの最低賃金制である。真に過当競争をなくし、健全な中小企業の発展のためには、全産業の一律方式が望ましい。また、労働者の異議の申し立て、賃金審議会の権限強化が必要である。労働者が真に希望する法律は、現在政府の提案しているものではなく、衆議院において提案された社会党修正案である。これを可決、決定してほしい旨の意見が述べられました。
 次に、京都労働基準審議会委員佐々木善一君は、最低賃金法は労働者保護の面から必ず必要であり、これによって労働条件を改善するとともに、中小企業にもよい結果となる。すなわち、労働者の質の向上、過当競争の防止となり、輸出産業においては外国からの非難も防止できる。最低賃金制は、本法案の基本的考え方であるように、業種別、職種別、地域別に決定していく方が妥当である。全国一律方式は理想ではあるが、現在では困難であり、高過ぎるときは業者がその負担にたえず、低きに過ぎるときは労働条件の改善とはならない。業者間協定は、労働基準法、ILO条約等の趣旨に違反すると言われているが、三者構成の賃金審議会において労働者の意見を相当反映すると考えられる。この例は、労働保険審査会にもあり、その運営の結果から見ても、本法案の方法で十分労働者側の意見を反映せしめる機会があると考える、本法案は理想的であるとは考えないが、低賃金労働者保護に一歩前進するから賛成する旨の意見が述べられました。
 以上が公聴会及び地方聴聞会における意見の概要であります。
 これまで委員会における審議の状況を、つまびらかに御報告申し上げて参りましたが、元来、社会労働委員会は、去る昭和三十年、第二十二国会におきまして、労働、厚生両委員会を合併して今日に至ったものであります。従って、当委員会における案件は、労働、厚生両省の所管全般にわたるものでありますから、常にきわめて多く、今期国会におきましても、本日までに付託された法律案は十五件、このうち審査を終えたものは六件であります。また、予備審査のために付託された法律案は九件であります。また付託された請願は四月一日現在で三百五十九件に上っております。なお、一般調査事件に関しましても、ILO条約批准に関する問題のほか、労働、厚生の両行政の範囲にわたって調査すべき重要案件もまたきわめて多いのであります。以上のごとく、当委員会は、重要法案、調査案件等数多くの審査をしなければならない法案を付託されておりますので、委員各位の御協力を得て今日まで円滑に審査して参ったのであります。本法案につきましても、三月十日、提案理由の説明を求めるとともに質疑を開始し、今日まで、公聴会をも含めて七回の審査をいたしましたが、本法案以外の案件もあわせ審査して参りましたので、本法案に対する質疑の時間は総計十一時間余りに過ぎないのであります。この質疑にいたしましても、政府より提出された資料に対する質疑が主でありまして、あとは一部総括質問に入った程度であり、法案の各条についてはほとんど質疑が行われていないことはもちろん、質問通告のあった自民党委員の諸君からは、いまだ全然質疑がなされていないのであります。また、社会党委員の諸君の質問者も全員残っている状況であります。本法案は、衆議院より政府の原案通り送付されたのでありますが、さきに御紹介した公聴会等におきまする各公述人等の御意見でも明らかな通り、本法律案成立に賛成される公益代表の方々さえも、さらに検討し修正すべき多くの点を指摘されているのであります。また、藤田藤太郎委員より委員長の手元に修正案が提出されておりますが、いまだその説明もなされる機会なく、従って、これに対する質疑も全然なされておらない実情であります。
 以上のごとく、本法案に対しまして検討を行うとともに、必要により、さらに修正を加えるべき点も多々あるのであります。私、委員長といたしましては、問題となっている諸点を明らかにし、すみやかに結論を得なければならないと決心いたし、委員各位の御協力を得て、鋭意審議を進めて参りつつあるのでありまして、ただいまここに突如として中間報告を求められるに至りましたことは、まことに遺憾のきわみであると思う次第であります。本院におきまして、社会労働委員会における問題として、すでに昭和二十八年第十六回国会におきまして、いわゆるスト規制法制定の際に、次いで、同法施行後三年を経過して同法の効力の延長をはかったとき、及び昭和三十三年第十八回国会におきまして日本労働協会法の制定のときと、三たび中間報告を求められた悪例が残されておりまするが、今回さらにこの悪例を重ねんとすることは、まことに忍び得ないところであります。中間報告によって委員会の審査権を剥奪することは、本院が、みずからの手をもって国会の審議権を放棄せしめることであり、(拍手)国会の権威は全く地を払うに至るであろうことを心から憂うるものであります。国権の最高機関たる国会において、本院の良識ある行動を熱願してやみません。国会法第五十六条の三は、委員会の審査中の案件に対して中間報告を求め、さらに緊急を要すると認めたときといえども、委員会の審査に期限を付して審議することができる旨を規定いたしております。国会の期限は本日をもって終了するものではないのであります。委員長といたしましては、本法案を再び委員会に差し戻されるよう、各位、特に本院の多数党である自由民主党の諸君の良心に訴える次第であります。
 委員会におきまして、再び本法案を審議する機会を得まするならば、委員各位の御協力を得て、審議を尽し、必要があれば修正をも加えて、十分結論を出し得るものと確信するものであります。私の中間報告後、このような取扱いを行うことが、本院の良識であり、本院の権威を維持するゆえんでもあり、また、世論の要望にこたえるものであろうことを信ずるものであります。
 以上をもって報告を終ります。(拍手)
#23
○議長(松野鶴平君) 小林孝平君から、賛成者を得て、休憩の動議が提出されました。
 これより本動議の採決をいたします。表決は記名投票をもって行います。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#24
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#25
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#26
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数   百五十票
  白色票     六十票
  青色票     九十票
 よって本動議は否決せられました。
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名   六十名
   森中 守義君  鈴木  強君
   坂本  昭君  相澤 重明君
   大矢  正君  森 元治郎君
   鈴木  壽君  久保  等君
   木下 友敬君  平林  剛君
   横川 正市君  加瀬  完君
   阿具根 登君  大和 与一君
   大倉 精一君  安部キミ子君
   近藤 信一君  伊藤 顕道君
   矢嶋 三義君  相馬 助治君
   小笠原二三男君 江田 三郎君
   天田 勝正君  荒木正三郎君
   小林 孝平君  藤原 道子君
   加藤シヅエ君  棚橋 小虎君
   吉田 法晴君  栗山 良夫君
   藤田藤太郎君  中村 正雄君
   市川 房枝君  占部 秀男君
   北村  暢君  光村 甚助君
   秋山 長造君  岡  三郎君
   田畑 金光君  永岡 光治君
   亀田 得治君  湯山  勇君
   小酒井義男君  戸叶  武君
   上條 愛一君  河合 義一君
   阿部 竹松君  島   清君
   高田なほ子君  曾祢  益君
   東   隆君  松浦 清一君
   重盛 壽治君  佐多 忠隆君
   椿  繁夫君  千葉  信君
   内村 清次君  岡田 宗司君
   山田 節男君  赤松 常子君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名   九十名
   佐藤 尚武君  山本 利壽君
   手島  栄君  加藤 正人君
   松平 勇雄君  松岡 平市君
   常岡 一郎君  西川甚五郎君
   藤野 繁雄君  堀  末治君
   竹下 豐次君  谷口弥三郎君
   新谷寅三郎君  紅露 みつ君
   杉山 昌作君  田村 文吉君
   村上 義一君  石黒 忠篤君
   笹森 順造君  仲原 善一君
   松野 孝一君  西田 信一君
   堀本 宜実君  鈴木 万平君
   大谷藤之介君  稲浦 鹿藏君
   吉江 勝保君  塩見 俊二君
   江藤  智君  三木與吉郎君
   雨森 常夫君  川口爲之助君
   後藤 義隆君  館  哲二君
   山本 米治君  大谷 贇雄君
   白井  勇君  田中 茂穂君
   有馬 英二君  苫米地英俊君
   近藤 鶴代君  小柳 牧衞君
   井上 清一君  斎藤  昇君
   小山邦太郎君  木暮武太夫君
   石坂 豊一君  植竹 春彦君
   草葉 隆圓君  高橋進太郎君
   黒川 武雄君  小林 英三君
   重宗 雄三君  野村吉三郎君
   寺尾  豊君  平井 太郎君
   松村 秀逸君  石井  桂君
   木島 虎藏君  佐藤清一郎君
   柴田  栄君  大沢 雄一君
   平島 敏夫君  勝俣  稔君
   中野 文門君  西岡 ハル君
   横山 フク君  土田國太郎君
   前田佳都男君  古池 信三君
   迫水 久常君  小沢久太郎君
   関根 久藏君  野本 品吉君
   秋山俊一郎君  梶原 茂嘉君
   上原 正吉君  安井  謙君
   伊能繁次郎君  岩沢 忠恭君
   杉原 荒太君  下條 康麿君
   吉野 信次君  郡  祐一君
   津島 壽一君  堀木 鎌三君
   木村篤太郎君  泉山 三六君
   林屋亀次郎君  高橋  衞君
     ―――――・―――――
#27
○議長(松野鶴平君) 斎藤昇君外一名から、賛成者を得て、「社会労働委員長から中間報告があった最低賃金法案は、議院の会議において直ちに審議することの動議」が提出せられました。本動議を議題といたします。
 本動議に対し、討論の通告がございますが、斎藤昇君外一名から、賛成者を得て、本動議に対する討論時間は一人十五分に制限することの動議が提出せられました。
 よってこの時間制限の動議について採決をいたします。表決は記名投票をもって行います。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#28
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#29
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#30
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数  百四十九票
  白色票     九十票
  青色票    五十九票
 よって、議院の会議において直ちに審議することの動議に対する討論時間は、一人十五分に制限することに決しました。
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名   九十名
   佐藤 尚武君  山本 利壽君
   手島  栄君  加藤 正人君
   松平 勇雄君  松岡 平市君
   常岡 一郎君  西川甚五郎君
   藤野 繁雄君  堀  末治君
   竹下 豐次君  谷口弥三郎君
   新谷寅三郎君  紅露 みつ君
   杉山 昌作君  田村 文吉君
   村上 義一君  石黒 忠篤君
   笹森 順造君  仲原 善一君
   松野 孝一君  西田 信一君
   堀本 宜実君  鈴木 万平君
   大谷藤之介君  稲浦 鹿藏君
   吉江 勝保君  塩見 俊二君
   江藤  智君  三木與吉郎君
   雨森 常夫君  川口爲之助君
   後藤 義隆君  館  哲二君
   山本 米治君  大谷 贇雄君
   白井  勇君  田中 茂穂君
   有馬 英二君  苫米地英俊君
   近藤 鶴代君  小柳 牧衞君
   井上 清一君  斎藤  昇君
   小山邦太郎君  木暮武太夫君
   石坂 豊一君  植竹春彦君
   草葉 隆圓君  高橋進太郎君
   黒川 武雄君  小林 英三君
   重宗 雄三君  野村吉三郎君
   寺尾  豊君  平井 太郎君
   松村 秀逸君  石井  桂君
   木島 虎藏君  佐藤清一郎君
   柴田  栄君  大沢 雄一君
   平島 敏夫君  勝俣  稔君
   中野 文門君  西岡 ハル君
   横山 フク君  土田國太郎君
   前田佳都男君  古池 信三君
   迫水 久常君  小沢久太郎君
   関根 久藏君  野本 品吉君
   秋山俊一郎君  梶原 茂嘉君
   上原 正吉君  安井  謙君
   伊能繁次郎君  岩沢 忠恭君
   杉原 荒太君  下條 康麿君
   吉野 信次君  郡  祐一君
   津島 壽一君  堀木 鎌三君
   木村篤太郎君  泉山 三六君
   林屋亀次郎君  高橋  衞君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  五十九名
   森中 守義君  鈴木  強君
   坂本  昭君  相澤 重明君
   大矢  正君  森 元治郎君
   鈴木  壽君  久保  等君
   木下 友敬君  平林  剛君
   横川 正市君  加瀬  完君
   阿具根 登君  大和 与一君
   大倉 精一君  安部キミ子君
   近藤 信一君  伊藤 顕道君
   矢嶋 三義君  相馬 助治君
   小笠原二三男君 江田 三郎君
   天田 勝正君  荒木正三郎君
   小林 孝平君  藤原 道子君
   加藤シヅエ君  棚橋 小虎君
   吉田 法晴君  栗山 良夫君
   藤田藤太郎君  中村 正雄君
   市川 房枝君  占部 秀男君
   北村  暢君  光村 甚助君
   秋山 長造君  岡  三郎君
   田畑 金光君  永岡 光治君
   亀田 得治君  湯山  勇君
   小酒井義男君  戸叶  武君
   上條 愛一君  河合 義一君
   阿部 竹松君  島   清君
   高田なほ子君  曾祢  益君
   東   隆君  松浦 清一君
   重盛 壽治君  佐多 忠隆君
   椿  繁夫君  千葉  信君
   内村 清次君  山田 節男君
   赤松 常子君
     ―――――・―――――
#31
○議長(松野鶴平君) これより順次討論を許します。森中守義君。
   〔森中守義君登壇、拍手〕
#32
○森中守義君 私は、日本社会党を代表しまして、ただいまの動議に対し絶対反対の討論を行わんとするものであります。
 さて、私は討論に先だちまして、自由民主党及び岸政権を断固糾弾する必要を痛感するものであります。(拍手)それは、かの警職法の審議を通じ、国論はあげてその暴挙を痛撃し、その反動性を徹底的に非難をいたしました。そして国論の袋だたきにあった自由民主党と岸政権は、公党の面目を失い、岸政権はまたその信を喪失いたしたのであります。それは取りもなおさず、自由民主党が国会法を無視し、議会政治を否定する一党独裁、岸専制の許すべからざる日本政治の危局への導入に対する国民の憂いと憤りであったと存ずるのであります。かくして、かかる暴挙に気がさしたのか、わが日本社会党からの国会正常化の呼びかけに、ようやくにして応じ、ようやくにしてわが党のために、自由民主党と岸政権の余命は、今日辛うじてつなぎ得ているのでありますが、その際における自由民主党と岸政権の国会正常化とは、一体何を内容とし、何をさしていたのか、私はその分別ができ得ないことをまことに遺憾とするのであります。もとより、多数を頼み、しかも多数の暴力をもって民主政治を踏みにじる自由民主党と岸政権に、一片の誠実も一にぎりの謙虚さも求めることは、それが末期状態を露呈している今日、いささか、むだではありますが、そのことをとくと承知の上で、わが国政治の今日と将来のために、あえて私は言及をし、かつ糾弾をしなければならない点であります。
 すなわち、国会の正常化とは何か。言うまでもなくその第一は、余すところなく審議を尽し、いかなる法案といえども、広く民生の安定と民族永遠の発展繁栄のためにあくまで寄与するものでなければならないということであります。しかして、それらの法案が、かりに会期内に成立困難であるとするならば、当然継続審議にゆだねることが当然であり、さらにまた与野党の利害が相反し、一致点が発見できないとするならば、それなりに調整をはかる手段と方法をもって、虚心たんかいに法案の取扱いを誠実に検討すべきであること、これまた当然であるといわなければなりません。かくして悔いを千載に残さぬために、法案に対する十分なる審議、だれしもが納得のいく審議、話し合いの機会をより多く作るところに、国会正常化の意義がありその目的は果し得るのであります。しかるに、ただいまの動議は、正面より、国会の正常なる運営、民主政治、議会政治の方式をじゅうりんしたものと断ぜざるを得ないところであります。あれほど警職法における世論の袋だたきにあいながら、今また性こりもなく、世論に耳をかさず、国会の正常化を再び破棄せんとする自由民主党及び岸政権は、もはや天下の公党たるの資格を失い、政権担当の責任をみずから放棄したものといわなければなりません。要するに、ただいまの動議は、何たる暴挙でありましょう。
 ちなみに、本法案が本院に送付されて参りましたのは二月の二十六日であります。同日、社会労働委員会に付託され審議に入ったのでありますが、この間、委員会の審議回数は公聴会を含めわずかに七回、審議の時間、また公聴会を含めわずかに十八時間五十二分にすぎないのであります。さらにまた、今国会の会期は五月二日までであって、本日より三十日を残しているのであります。のみならず、本法案自体の持つ意義はあまりにも重要であるために、単に労働者保護の立場からのみならず、わが国産業経済の発展と伸長をこいねがい、加えて、国際的反響も十分考慮に入れながら、わが日本社会党は修正案を提出しているのであります。従って、本法案があまりにも重要性を有すれば有するほど、残された三十日間の会期に十分審議を尽し、同時に、修正案を政府提案と比較を加えながら、並行して審議を行うことこそ、正しい議会政治のあり方であり、国民に信託された国会の持つ任務でなければなりません。しかるに、ただいま申し述べましたごとく、わずかな審議の日数、わずかな審議の時間をもって、さらに向後三十日間の審議期間を持ちながら、かつまた、修正案に対し何らのしんしゃくをも加えず、委員会の質疑の打ち切り、本会議の中間報告を強引に求め、直ちに本法案の成立をはからんとすることは、あまりにも暴挙であり、暴政であり、多数の暴力であって、国会の審議権を封殺する行為は、まさしくわが国政治の破局なりと言わなければなりません。もとより、国会法第五十六条の三は、中間報告をうたっておりますが、その法の精神は、あくまで万やむを得ない場合とする情状制限によるものであり、しかも、それは期限をつけて委員会に差し戻すことを原則としており、国会の審議権尊重を主要件といたしておるのであります。かように、国会審議権尊重の国会法第五十六条の三は、断じて軽々しく発動すべきではなく、かつまた、先例は第十六国会、第十九国会、第二十九国会、前三回にとどまり、しかも、そのいずれの場合も、その行為の不当性と国会史に汚点を残すものとして激しく非難攻撃を政府与党が浴びたのは、いまだ耳目に新しいところであります。
 しからば、かかる理不尽な行為をなぜにあえて自由民主党は強行するのか。国会の正常化をみずから破棄するのか。思うに、それは最低賃金制が労働者の保護制度でなければならないものであり、この制度によって、長くわが国に存在して参りました低賃金の解消、即労働者の生活改善、健康にして文化的生活の保障、これらを主目標とすべき最低賃金制を、政府原案から参りますならば、すべてまっこうからこの制度の本旨を否定し、本法案の目的を、業者間協定を初め、経営者の不当競争を防止すること、経営基盤の育成強化をはかること、労働力の質的向上をはかること、国民経済の健全な発展に寄与すること、外国の非難に対処して資本家の国際的信用を維持することなど、すべて政府原案が、資本家や経営者側の保護育成強化のために本法案制定の意図に尽きているのでありまして、由来、労働者が賛成すべきこの法案に反対し、逆に、資本家、経営者が賛成をするという事態は、この本旨を明らかに運用、転用したものであります。私どもは断じてこのことを了承するわけには参らないのであります。しかるがゆえに、与党と政府は、一つには資本家や経営者側の圧力に屈し、さらに一つは、この法制定の本旨があるべき姿にあらずして、全く逆行しているために、世論の反対攻撃をおそれたこと、さらに地方選挙に次ぐ参議院議員選挙への資金集めのためであるともいうべきであって、われわれの断じて許容し得ないところであります。私は、論点をここにとらえ、そして、かかる陰謀による中間報告の動議であることを知るとき、今や、わが国民主政治、議会政治は、自由民主党と岸政権によって破局に陥ったことを慨嘆せざるを得ないのであります。(拍手)要するに、あまりにも重要な本法案を短かい審議日数と時間をもって、しこうして法審議のためのただ一つの場である常任委員会の審議を封鎖し、直ちに本会議の中間報告を求める動議は、わが憲政史上に一大汚点を残すものでありますがゆえに、すみやかに本動議の撤回を行い、残された会期三十日を最も効率的に運用し、社会党修正案を政府原案と並行して審議すべきものでありまして、かりそめにも国会正常化にそむくべきではなく、提案者及び自由民主党に残っているとすれば一片の良心と善意に期待をかけて、二たび三たび私は、かかる暴挙を即座に中止するよう直言をいたすものであります。これこそが本院の権威を守ることであり、自由民主党と岸政権によって侵犯されつつあるわが国政治の破局を、辛うじて救い得るただ一つの道であると信ずるのであります。もしも万一この直言が、提案者及び自由民主党並びに岸政権において実行し得られないとするならば、わが国議会史に永遠なる禍根を残し、後世にその反動の汚名を刻まれていくでありましょう。おこれる者は久しからず、ただ風前の塵にも似たりとする、平家であり、清盛であってはなりません。(拍手)
 私は、かく論じ、かく訴えまして、提案者草葉隆圓君及び自由民主党が、いさぎよく本動議を撤回されんことを強く要求するとともに、本院の権威をあくまで守り、わが国憲政史をゆがみなく残していくために、日本社会党を代表いたしまして、反対討論を終るものであります。(拍手)
#33
○議長(松野鶴平君) 近藤信一君。
   〔近藤信一君登壇、拍手〕
#34
○近藤信一君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました動議に対して、重ねて反対の意思を明らかにするものであります。
 昨日来、同僚諸君からしばしば指摘されておりまするように、この昨日の本会議、本日の本会議、この二日間にわたる本会議は、議長職権というところのいわゆる本会議でございます。私どもはいわゆる国会の正常化ということが今日の国会で非常に重要な点としてあげられているのでございます。しかし、この国会の正常化を一体だれが破ったのであろうかということは、しばしば指摘されている点で明らかになっていると思うのでございます。私は、いま一つ申し上げたいことは、自由民主党の諸君の中には相当年とられた方がございまして、非常にもう疲れておられる。そうして十分に意見もお聞きになっておらないようにも見受けられるのでございます。従って、わが党から先ほど休憩の動議が出されたにもかかわらず、それを否決してなお続行していこうとされたのでございます。私は、もし議長にしていわゆる人道的な気持があるならば、また敬老心があるならば、やはり敬老心に基いて、議長職権によって休憩をやるのがしかるべきであると思うのでございます。私どもは、先ほどの久保委員長の中間報告をお聞きいたしまして実に驚きましたことは、自由民主党の諸君が、十名の委員が社会労働委員会に出ておられるその人たちが、まだ一言の質問もしておらない、その質問をしておらない自民党側から、一体なぜ中間報告をさせなければならぬか、こういうことを私は非常に不思議だと思うのでございます。三百も質問を出せずして、質問が終った終ったと、こう言っておられまするけれども、社会党の委員の中にも、まだほとんどの人が質問をしていない。そういう委員会の重要なる審議をみずから放棄して中間報告をするというのが、今日の岸内閣の与党の立場であろうかということを、私は思わざるを得ないのです。今あと一カ月間の期間があるにもかかわらず、むりやりに委員会から審議権を取り上げて、そうして本会議にこれをかけよう、そうして一挙にこれを多数の暴力によって成立せしめようという、こういうファッショ的なやり方に対しては、私どもは何としても納得ができないのでございます。今日、自由民主党の諸君が言っておられるように、さらにここに御出席の岸総理が言っておられるように、いわゆる民主主義を盛んに唱えられるのでございます。この岸総理を初め与党の自由民主党の諸君の言っておられる民主主義とは、一体どういう民主主義であろうかと、私は疑問を抱かざるを得ないのであります。審議権を放棄して、十分に審議しようとするにもかかわらずそれをむりやりに剥奪しようとするのが、岸総理の唱えておられる民主主義ということであろうかと私は思うのでございます。今こうした委員会での審議が不十分なる中において、そうしてこれを本会議において一挙に解決しようというようなやり方は、先ほども久保委員長が言っておられましたように、私が国会に出て参りまして、今度で四回目、本院においてこの中間報告という問題が取り上げられております。私どもは、本院がなぜ好んでこの中間報告をやらなければならぬか、こういうところに私は疑問をいだかざるを得ません。自由党の諸君は、盛んに、社会党の同僚諸君が同じようなことを何べんも繰り返して質問をしているとか、引き延ばしをしているとか言っておりますけれども、私も過日傍聴しておりましたが、十分なる答弁ができないから、これは何回でも質問をしなければならぬと、こういうことに相なると思うのでございます。それを引き延ばしだ引き延ばしだと言われるならば、一体審議とは何であるかと言わなければなりません。審議をするということは――十分なる審議をするということは、わからないことを何回でもお尋ねをして、そうして十分に納得するまで質問をするというのが、私は慎重なる審議であろうと思うのであります。それをやらずに、おしのごとくに押し黙って一言も言わないのが審議というのであるならば、これはまことに不可解なことと私は思うのであります。こういうふうな自由民主党の諸君のいわゆる国会審議ということは、私は非常に疑問とせざるを得ません。
 さらに私は、こういうような国会の委員会での審議が十分にされずに、常に本会議でこれを取り上げて、中間報告をさせて一挙に解決しようというようなやり方は、かつてドイツにおける、ファッショ治下における、あのヒットラーのやり方、近くは東条軍閥のもとにおいて行われたあのファッショ的な政権下における国会の運営であろうと思う。戦後の日本の民主国会に、こういう不可解なことがあるとは私は予想をしていなかった。それが今日公然とやられるというにおいては、これは全くファッショ政治の運営であろうと私は思うのでございます。私どもは、今日、岸内閣が、いわゆる東条軍閥のごときファッショ的な国政の運営ということをやらなければならぬというこの考え方は、今、岸内閣は、やはり労働政策に対して、いわゆる労働者の保護をしていこうとか、いわゆる保護立法であるけれども、保護をしていこうとか育成をしようというふうなことは毛頭考えておらない、いわゆる労働者の弾圧立法のみを今日考えているというのが、岸内閣の労働政策の一環であろうと私は思うのです。今、私どもは、こうした岸内閣の労働政策こそが、いわゆる岸内閣の末期的症状であると私は断定せざるを得ません。私どもは、今日、本院において、先ほどの動議がもし取り上げられるとするならば、自由民主党の諸君は、一体何をさして民主主義といわれるのでございましょう。また諸君にして一片の良心があるならば、直ちにこの動議を撤回して、そうして委員会へもう一度差し戻して十分審議するというのが、民主政治のあり方であろうと私は思うのでございます。
 私は、いろいろ申し上げたいことはございまするが、同僚の諸君がしばしば指摘しておりまするから、ただ、私はもう一度、最後に、議長が議長職権において本会議を召集される権利を持っておられます。従って、議長職権において、ただいまの動議を撤回していただきたいことを重ねてここに申し上げまして、反対の意思表示をいたしまして、私の討論を終ります。(拍手)
#35
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより斎藤昇君外一名提出の議院の会議において直ちに審議することの動議の採決をいたします。
 表決は記名投票をもって行います。本動議に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#36
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れはないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#37
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#38
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数  百五十一票
  白色票    八十九票
  青色票    六十二票
 よって最低賃金法案は議院の会議において直ちに審議することに決しました。
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名  八十九名
   佐藤 尚武君  山本 利壽君
   手島  栄君  加藤 正人君
   松平 勇雄君  松岡 平市君
   常岡 一郎君  西川甚五郎君
   藤野 繁雄君  堀  末治君
   谷口弥三郎君  新谷寅三郎君
   紅露 みつ君  杉山 昌作君
   田村 文吉君  村上 義一君
   石黒 忠篤君  笹森 順造君
   仲原 善一君  松野 孝一君
   西田 信一君  堀本 宜実君
   鈴木 万平君  大谷藤之介君
   稲浦 鹿藏君  吉江 勝保君
   塩見 俊二君  江藤  智君
   三木與吉郎君  雨森 常夫君
   川口爲之助君  後藤 義隆君
   館  哲二君  山本 米治君
   大谷 贇雄君  白井  勇君
   田中 茂穂君  有馬 英二君
   苫米地英俊君  近藤 鶴代君
   小柳 牧衞君  井上 清一君
   斎藤  昇君  小山邦太郎君
   木暮武太夫君  石坂 豊一君
   植竹 春彦君  草葉 隆圓君
   高橋進太郎君  川村 松助君
   黒川 武雄君  小林 英三君
   重宗 雄三君  野村吉三郎君
   寺尾  豊君  松村 秀逸君
   石井  桂君  木島 虎藏君
   佐藤清一郎君  柴田  栄君
   大沢 雄一君  平島 敏夫君
   勝俣  稔君  中野 文門君
   西岡 ハル君  横山 フク君
   土田國太郎君  古池 信三君
   迫水 久常君  小沢久太郎君
   関根 久藏君  野本 品吉君
   秋山俊一郎君  梶原 茂嘉君
   上原 正吉君  安井  謙君
   伊能繁次郎君  岩沢 忠恭君
   杉原 荒太君  下條 康麿君
   吉野 信次君  郡  祐一君
   津島 壽一君  堀木 鎌三君
   木村篤太郎君  泉山 三六君
   林屋亀次郎君  佐野  廣君
   高橋  衞君
    ―――――――――――――
 反対者(青色票)氏名  六十二名
   小柳  勇君  森中 守義君
   鈴木  強君  坂本  昭君
   相澤 重明君  柴谷  要君
   大矢  正君  森 元治郎君
   鈴木  壽君  久保  等君
   平林  剛君  横川 正市君
   加瀬  完君  成瀬 幡治君
   大和 与一君  大倉 精一君
   安部キミ子君  近藤 信一君
   伊藤 顕道君  矢嶋 三義君
   相馬 助治君  小笠原二三男君
   江田 三郎君  荒木正三郎君
   小林 孝平君  加藤シヅエ君
   清澤 俊英君  棚橋 小虎君
   吉田 法晴君  栗山 良夫君
   羽生 三七君  藤田藤太郎君
   中村 正雄君  市川 房枝君
   占部 秀男君  北村  暢君
   光村 甚助君  秋山 長造君
   岡  三郎君  田畑 金光君
   永岡 光治君  亀田 得治君
   湯山  勇君  小酒井義男君
   戸叶  武君  松澤 兼人君
   上條 愛一君  河合 義一君
   阿部 竹松君  島   清君
   高田なほ子君  曾祢  益君
   東   隆君  松浦 清一君
   重盛 壽治君  佐多 忠隆君
   椿  繁夫君  千葉  信君
   内村 清次君  岡田 宗司君
   山田 節男君  赤松 常子君
     ―――――・―――――
#39
○議長(松野鶴平君) これにて三十分間休憩いたします。
   午前三時五十九分休憩
     ―――――・―――――
   午前四時四十八分開議
#40
○議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 最低賃金法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
#41
○議長(松野鶴平君) 本案に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。横川正市君。
   〔横川正市君登壇、拍手〕
#42
○横川正市君 私は、日本社会党を代表し、政府提案にかかる最低賃金法案に対し、以下数点について、総理及び関係大臣に質疑を行わんとするものであります。
 質疑に先立ちまして、本日は、昨夜からもうすでに七時間余、八時間になんなんとする会議の継続を、深夜を経て現在に至っておるのであります。その間、労働大臣の問責決議案が出され、議長の不信任案が出されまして、国会の運営から見ますと、きわめてこれは遺憾なできごとであったと言わなければなりません。今度のこの国会の会期は五月二日まであるのでありまして、先般、社会党より、この会期の日程につきまして自民党並びに政府に対して申し入れをいたしましたときも、会期のことに対しては、これは与党並びに政府から拒否を受けているのであります。このような経過を経まして、本日、昨夜以来深夜を経て、この国会のこの会議を継続いたしておるのでありますが、私は、中間報告を求め、その中間報告をめぐっていろいろと質疑が行われておりますけれども、その質疑の行われた結果として十分納得するに至っておらないということを、これは率直に申さなければならぬと思います。この点で、このようにこの会議が急がれる理由は一体どこにあるのか。これはまた、この会期について、政府並びに与党の皆さんは、いつこれを打ち切ろうとされているのか。この点については全(不問に付されたまま、しかも、一カ月余の会期を残して、この無理な審議をいたしておるのであります。この点について、総理の考えを率直にお伺いいたしたいと思います。
 次には、先ほどの中間報告をいたしました社会労働委員長の報告の中に、公聴会の十数人にわたる方々の意見が開陳されているのであります。国会の運営についてこれら有識者の意見を聞くことはきわめて重要でありますし、これまた、この意見をそんたくいたしますことは、国会の立場としてまた当然であります。この多くの人たちの意見の中には、条件をつけて賛成をされる方から、絶対に反対をするという方方まで、おそらくこの最低賃金に対しては多くの不満を持っておられる意見が非常に多いのであります。これらの公聴会を通じて意見の開陳を受けた国会側といたしましては、当然これをそんたくすべきだと思うのでありますが、この点についても総理の意見をお伺いいたしたいと思います。
 質問の第二は、政府案の最低賃金と称されるものは、「賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」とされているのであります。しかし、その内容は業者間協定に基く決定が柱となっていて、厳密にいえば、これは労働者のために最低賃金をきめる法律ではなく、業者がきめた最低賃金を法制化することを本旨としているのであります。かかる法案はとうてい最低賃金法とはいえるものではなく、目的とする趣旨にとうていこたえるものでないことは明らかであります。(拍手)すなわち、事業の最低賃金を規制する賃金カルテルによっては、事業間の競争を公正にすることは期待できるであろうが、目的のごとき「労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上」は全く期せられず、労働立法というより、むしろ産業立法、すなわち中小企業団体の組織に関する法律の調整事項の一部にも挿入さるべきものであります。しかも、業者間協定が申請され、その最低賃金額が不当に低くとも、労働大臣並びに基準局長は、法的最低賃金として不適当なりとして却下するのみで、何ら修正の権能がないのであります。しかも、却下された最低賃金の業者間協定は、民事的には有効であるということはいえても、本法そのものは全くのザル法案であり、しり抜け最低賃金であることを雄弁に物語っているものであります。これで最低賃金といえるのかどうか。底のない最低賃金が果して政府案のいう目的を達することができるのかどうか、私はこの点について所見を承わりたいと思うのであります。
 第三は、賃金の格差はむしろ最低賃金制の不備欠陥に基くといわれております。日本のごとくに各産業内部においてごく低賃金労働者が多く見出されている場合、ぜひとも全産業的最低賃金が必要であって、もし一部の業種にのみ最低賃金を設けるとすれば、その帰結するところは、最低生活をすべての労働者に確保しようとする本来の目的からはずれることになるのであります。政府案によれば、この立場を否定していますが、法的最低賃金が全労働者の問題となっている現在、政府はこの全産業の全労働者の期待にどう対処されんとするのか。さらに、具体的な制度として提案をいたしております四つの問題、すなわち、第一としては、業者間協定をそのままに法制上の最低賃金としての効力を与えること、第二に、さらにこの業者間協定の効力拡張を行うこと、第三に、地方労使協定の効力を拡張すること、第四に、右の諸方式によって最低賃金を決定するに困難なとき、または不適当な場合だけに、最低賃金審議会の諮問を得て行政官庁が最低賃金を決定するとなっていますが、利潤追求が最大の目的となっております業者のみの会合では、労働者保護の方策の一片も入らないと思うが、政府の考えを率直に表明してほしいと思うのであります。また、労働基準法では、現に十一年前から、低賃金業種、職業について、賃金審議会で最低賃金をきめることを規定いたしております。この場合は、業者間協定を優先させるという規定はないのであります。
 この点でも、この法は大きく一歩後退したものであると言わなくてはなりません。しかも、実質的には労働基準法の改悪がはかられたことになっているのであります。まさに悪法のそしりを免れないところでありましょう。よって、政府は、すみやかにこの中間報告を撤回し、慎重なる審議と、名実ともに最低賃金法とする修正に応ずべきと思うが、所見をお伺いいたしたい。
 さらに、ILO条約「最低賃金決定制度の創設に関する条約」及び「最低賃金決定制度の実施に関する勧告」は、関係労働者の意見を反映すべく規定しているが、業者間協定を柱とする政府案は、労働者の意見が十分にいれられず、最低賃金審議会も、業者間協定を承認するかどうかの判断しかできず、修正権能を持たないのであります。本政府案は、これらの条約及び勧告に抵触するものと考えるが、政府の所見はいかがでしょう。本法案は、条約批准をめぐって、私は、国際労働会議にその醜をさらすことになるのではないかと心配するのでありますが、関係大臣の答弁をいただきたいと思うのであります。
 第四は、本法の柱は、幾つかの最低賃金法の例のうち、行政指導による業者間協定をもって賃金規制を行うこととなっておりますが、わが国の行政指導の功罪は、一般に悪名高きをもって知られているところであります。すなわち、官僚及び官僚的指導者が、過去において、日本と日本人の社会制度が進歩発展する過程で、いかに多くの民主主義の芽をつみ、これを毒してきたかは、数知れないところであります。しかも、彼らは、能吏のゆえをもって国家権力と結び、独善的にふるまってきたのであります。今や、それらの戦前にひとしい回復が着々とはかられ、日本の支配構造は旧態依然とした姿を取り戻してきていると言って過言ではありません。しかして、日本の政治は、これらと一握りの資本家と手をつなぐ者の手によって支配されていることは明らかなところであります。これらの者の手中にある本法は、雇用者と被雇用者の関係は依然不当な圧迫者と被圧迫者の関係に置かれているし、労働者として労働を提供し、代償として賃金を得るのに、みずからの意思を表明する場所を持っていないのであります。このような法の措置で妥当公正な賃金の決定が行い得るであろうか、政府の所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
 第五に、政府は、現在の日本経済で最低賃金を施行したら、中小企業、零細企業はほとんどつぶれると答弁いたしております。このことに対しては、諸外国の例を見ると、実施前において、これらの問題となった点はすでに検討済みであります。すなわち第一に、最低賃金は最高賃金にならないか。第二に、最低賃金立法は、支払いの義務を免れるため不要な摩擦を起さないか。第三に、最低賃金は、その規模、内容によって企業を駆逐しないか。第四に、最低賃金は、能率の低下をもたらす等、懸念すべき問題を持っていないか。――いずれもこれらはそれぞれの国で解決をいたしている問題であります。また、現在すでに四十数カ国の国が最低賃金制をとっていますが、これらの国の経験が述べるところによれば、政府の答えは単なる憶測であり、中小企業の零細化によって大企業の基礎を固め、これらに従事する労働者の本質的改善により、これらの労働者が現在の政治に対し正当な批判を持つことをおそれる自民党の本質を暴露したものでないか、ということが考えられるのであります。しかして、政府はみずから中小企業を放置したことを告白したにすぎないということも言うことができるでしょう。すみやかに反省をいたしまして、諸外国の例にならうべきだと思いますが、所見をお聞きいたしたい。
 また、根本的には、政府が本格的最低賃金法の提出のできない理由とする、現状における日本の中小企業者の支払い能力を改善するために、中小企業者の体質を根本的に改善する政策が必要であります。ことに、政府の説明するごとく、中小企業者の体質改善が困難であるというのであるならば、その困難さが加わるだけに、この体質改善策を強固に持たねばならぬと思うが、政府の方策について、所見をこの際明らかにしていただきたいと思います。
 最後に、最低賃金制のねらいは、各国にそれぞれの特殊のものがあります。米国のように、経済政策のねらいを持っておるもの、または労使間の平和を守るもの、経営者間の不当な競争を防ごうとするもの、社会政策的なものなど、とりどりでありますが、しかし、いずれにしても、今回ここに提案を見ました最低賃金法の内容は企業者を圧迫するものではなく、むしろ企業経営者の利益にもなろうとするものであります。すなわち、労働者の本格的な最低賃金制を確立せんとする要求を押え、低賃金によるところのソシアル・ダンピングの非難を隠蔽するため、これらのおもなる趣旨のために今回提案されたと言っても過言ではないと思うのであります。この一般的な世評に対しまして、政府はいかように抗弁せられるかをお伺いいたしたいと思います。
 ことに、この最賃法は、業種別賃金協定を基としておるのでありまして、まさに最低賃金制とは言いがたいのであります。この協定には全く法律上の拘束がないために、結果的に、これを施行されましたあとにも、同業者の協定で他の産業に及ぼさない結果になりますから、よって来たるところ、たとえばAの店では六千円の決定が行われましても、BまたはCの店では三千円ないしは二千円で働く労働者や店員がいるということになるのであります。このような内容のものが最低賃金制であるという政府の態度は、この国のおくれた労働政策を世界に暴露することになるのではないかと思うのであります。
 さらにこの最低賃金制の法案とあわせまして、家内労働法も私は最も重要な法律案としなければならぬと思うのであります。家内労働の最低加工賃をきめることは、全般から見て緊急必要事項になっているのであります。さきに政府は調査準備に着手したといっておるのでありますけれども、実績からみますと、百年河清を待つがごとく、私は相当長年月必要とされるのではないかと思うのでありますが、最低賃金制とあわせまして、家内労働法によりまして、両者相待ってこの要望にこたえるということが妥当だと思うのでありますが、この点について政府の所見をお聞きいたしまして、私の質問を終りといたします。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 最低賃金の制度を設けて、特に労働者の低賃金の状態を改善するという必要は、一般に認められてきまして、いろいろと各方面で議論をされ、研究もされてきたことであります。しかしながら、同時に、日本の産業の特殊性というものもやはり頭において、実際に即して、日本に適した最低賃金法を定めることが適当であるという考えのもとに、政府は中央賃金審議会を設けて、労、使、公益の三者の御審議を願って、私どもの承知いたしております限りにおいては、労働者を代表されておる方々の一部の反対はありましたけれども、この中央賃金審議会の答申を得まして、それには労働者を代表する一部の人は賛成をされて、でき上りました案に対して、これを尊重して法案を制定したのが、今回御審議を願っておるものであります。従いまして、これはあくまでも日本の現状に即し、しかも日本の低賃金というものを改善していくのに最も実際的な適当な案として、政府は御審議を願っておるわけでありまして、一日も早くこれが成立を見ることが、日本の産業のために、また労働者のために適当であるという考えに立って、十分の御審議を願ったわけであります。しかして、こういう形において、中間報告の方法によって審議するというような状態になりましたことは、これは委員会あるいはまたこの御審議の道程におきまして、院において御決定をなさったことでありまして、政府が何でもこうしていただきたいという筋のものではないと思います。ただ政府としては、一日も早く成立することを願うのは、各法案ともそういうつもりでおるわけでございます。
 業者間の協定を柱としておるこの案は、最低賃金の趣旨に合わないというふうな御議論でございますが、御承知の通り、この最低賃金法の中には、最低賃金の決定方式として四つの方式を認めております。業者間の協定につきましても、最後の決定は、労、使、公益の三者を入れた最低賃金審議会に諮問して、その意見を尊重して行政官庁においてきめるということになっておるのでありまして、業者間の協定そのままが、すぐそれが最低賃金の決定になるわけではないことは御承知の通りであります。従いまして、こういう意味において労働者の意見も十分に反映する機会を持つわけでありまして、そういう意味において、私どもはこれが適当であり、またILO条約等の精神に違反するものじゃないと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府案の性格につきまして、ただいまお話がございました第二の賃金格差のお話でありますが、産業規模によりまして賃金格差がございますことは、しばしば論議されている通りでありますが、最低賃金法というふうなものを実施することによって、やはり賃金格差を縮めていくことになるのでありますから、私どもはぜひ本法の成立を期待いたします。ILO第二十六号条約については、今お話もございましたように、私どもは、本法が通過いたしましたら、すみやかに批准の手続をいたしたいと思っております。公聴会等の御意見を十分拝聴いたしましたその結果、やはり政府案が最も妥当であるという確信を持つに至った次第であります。
 なお中小企業対策について、もちろんこれは最低賃金の実施されるような状態に、なるべく多くの零細企業が早く成長いたすように、一方において政府がその施策に力を入れるべきであるということは、委員会においてもしばしば政府側から申し上げた通りであります。
 最低賃金法の目的についてお話がございました。これは本法の性格でもすでにおわかりのことでありますが、もちろんお説のように、やはり苦汗労働を防止するというような桂会政策的な意味もあり、同時にまた、公正競争を維持するという経済政策的目的、これも当然ありますが、やはり一番多くは、低賃金の労働者に対して安定したる賃金を支払い得るように仕向けていく、ということに大きなねらいがあることは御承知の通りであります。
 それから家内労働法のことについてでありますが、これもしばしば議論されておりますように、日本の家内労働の状態は千差万別でありまして、これはただいま政府が鋭意研究いたしておる最中でありますが、とりあえずは、やはり最低賃金法を実施するために、関連産業の家内工業については、最低工賃というものをきめて実施いたしていくことが妥当である、こういうふうに解釈をいたしておるわけであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#45
○議長(松野鶴平君) 坂本昭君。
   〔坂本昭君登壇、拍手〕
#46
○坂本昭君 社会労働委員会におきまして十分な審議を尽すことができなかったということ、特に本法案につきましては、国会外においてもこれに賛成する向きの方も多数おられました。しかしながら賛成する方といえども、強く修正しなければならないという個所が確かにあったはずであります。にもかかわらず、これらの修正点についても、委員会の中において審議するに至らなかったということは、社会労働委員の一人として、率直に、はなはだ遺憾だと思う次第でございます。きわめて限定せられました時間の中におきまして、私は日本社会党を代表しまして、国連の専門機関であるILOの精神と理念を通し、政府の最低賃金法案を批判しつつ、総理、労働大臣、厚生大臣、大蔵大臣に対しまして、二つの問題点について質問をせんとするものでございます。
 まず第一は最低賃金制と社会保障の関係の問題でございます。すでに、中央賃金審議会は、最低賃金制に関する答申の中におきまして、その重大前提として、「最低賃金制の実施に関連して、中小企業対策を強力に推進するとともに、社会保障制度の拡充をはかることが必要である」と指摘しておりますが、今や、医療保障制度確立のために国民皆保険が、さらにまた、所得保障制度確立のために国民年金が、来たる昭和三十六年四月より実質的に出発せんとする重要なときに当って、今回政府提案の最低賃金制度の内容は、一方には、低所得勤労階級の切実な要求に沿っていないばかりでなく、また他方には、業者、使用者中心に見えながら、実は本年度の中小企業対策費の予算のきわめて少い事実においてうかがわれますように、中小零細企業そのものに対しては何ものもプラスをすることがなく、社会保障と無関係であることを率直に指摘せざるを得ないのでございます。
 そもそも、社会保障の制度と体系に関するILOの構想は、第一が所得保障であり、第二が医療保障であり、しかして第三が完全雇用を目的とする雇用保障であります。しかしながら、雇用保障は、むしろ所得保障と医療保障の前提条件であり、所得保障の中心課題は賃金政策であるというようにILOの内部において論じられておるのであります。翻って、わが国におきましては、動物的な生存費用としての生活保護基準がまず最初に設定せられ、これに準じて国民年金の年金額が決定せられ、さらに、これら一連の社会保障の現行内容に水準をそろえて労働者の最低賃金を押しつけようとするのが、政府の変らざる労働政策であります。ILOの思想は、日本政府とは全然反対の理論に立つものであります。
 その一つの例をわれわれはアメリカの歴史の中に見ることができるのであります。すなわち、一九三〇年の大恐慌に際し、ニュー・ディール政策の一環として、ルーズベルト大統領は、全国産業復興法を制定して、特に労働時間と最低賃金の規定をきわめて強引に取り入れ、一九三八年にこれは連邦公正労働基準法となって、現在アメリカの一時間一ドル最低賃金制の出発点となったことは、御承知の通りであります。しかるに、わが国政府の指導者は、大蔵大臣はニュー・ディールの減税政策のみを考え、労働大臣は一九三〇年の最低賃金強制のうわべだけを見、厚生大臣は一九三五年の社会保障法の立法のみをとらえ、あたかも群盲が象に触れているのたぐいであって、全体的なルーズベルト政策を十分に把握していないのであります。ルーズベルト大統領の決意と構想に基く強硬な最低賃金制を初め、引き続く社会保障の諸施策が、当時危機にあったアメリカ労働者の生活をささえ、これを安定させ、さらに有効需要を刺激して、アメリカ大恐慌の危機を救ったのであり、ニュー・ディール主義者は二十年後の今日、今なお健在であります。以上、先進資本主義国アメリカの事実に徴しても、政府の最低賃金政策は理論的にも基本的な誤まりがあります。故ルーズベルト大統領の最低賃金政策、いわばILO伝統の精神を、岸総理は一体どう考えておられますか。ルーズベルトの方法を誠実に取り入れて、働く人人の生活水準を積極的に引き上げ、有効需要を正しく高めることによって日本経済を発展させるというお考えはないか、お伺いいたしたい。また、労働者の意思を反映することなく、業者間で協定させ、金額の指示強制もしない政府案の最低賃金制は、亡きルーズベルト氏に笑われるばかりでなく、ソシアル・ダンピングの隠れみのだとして、外国の疑念は少しも変らないだろうと思うのであります。
 また、労働大臣に伺いたい。経済政策と産業政策とを伴わない労働行政、こういうものは完全に失敗であり誤まりだと思うが、労働大臣はどのようにお考えになられますか。労働者の生活を顧みぬ最低賃金の扱い方、再度の勧告を受けながら、全逓労組の問題にこだわって完全に停頓しているILO条約の批准、さらにまた、労働者に対するたび重なる不当弾圧を通して、倉石労政は完全に行き詰まっていると私は診断をいたしますが、(拍手)大臣の反省と自己批判はいかがであるか、承わりたい。
 次に、厚生大臣に伺いたい。労働問題を解決しない所得保障、労働条件に無関心な所得保障、こういうものは世の中にあり得るはずがないのであります。第一、労働行政の欠陥と失敗による低賃金の穴埋めを、厚生行政が生活保護法の美名のもとでやっているのは、まことにおかしいことではありませんか。生活扶助を受けているほぼ半数の人は、賃金をもらって正当に働いている日雇い労働者であります。明年度四百十六億円の生活保護費予算のうち少くとも二〇%以上は、誤まれる労働行政の穴埋めに使われております。厚生大臣のお考えと、最低賃金問題についての態度を承わりたい。
 大蔵大臣に伺います。一時間二十五セントのルーズベルト氏最低賃金がニュー・ディールをいかに推進したと理解されるか、お伺いしたい。また、今日の日本の最低賃金法には、アメリカにおいて立法化された一九三〇年代の意気込みも、また理念も欠けております。大蔵大臣、三十四年度予算編成に、最低賃金制確定に始まったニュー・ディール的な要素が少しは入っておるのでありますか。もし入っているならば説明をしていただきたい。
 次の問題点は、憲法第二十七条には、賃金その他の勤労条件に関する基準は別に法律をって定めるとしてありますが、労働基準法第二条に、賃金その他の労働条件は、労働者と使用者が対等の立場において決定すべきものであると明確に書かれてあります。ILO条約第二十六号「最低賃金決定制度の創設に関する条約」第三条には、「関係ある使用者及び労働者は、いかなる場合においても、同一の員数により、かつ同等の条件において、この制度の運用に参与せしむべし」と明記されてあり、同じく「制度実施に関する勧告」の中にも、特に、「最低賃金率の決定に関する一切の事項については、使用者及び労働者の意見を求め、かつその意見に対しては十分にして均等なる考慮を払うべし」と、厳格に勧告されてあります。本法案第九条、第十条の業者間協定は、明らかに、労働者の意思を反映せず、これを無視して一方的に協定されるものであり、憲法の精神に反し、労働基準法の定めに反し、またILO条約の趣旨にも、もとるものであります。業者間協定の決定については、あらかじめ労働者代表委員の参加する「最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重してこれをしなければならない。」と、本法案の十五条に示されてはありますが、これでは、当該労働者と使用者が対等の立場で決定するという明確な保障は少しも認められません。(「それでいい」と呼ぶ者あり)法で定められた対等の地位にある労働者の意見を最初に十分反映させないことは、労働者に対しても冷淡であるばかりでなく、違法のそしりを免れません。それでいいことだとは、とんでもないお考えでございます。いわんや最低賃金率の決定に当って考慮すべき要素として、一九五一年のILOの勧告は、(一)生計費、(二)労働の客観的価値、(三)類似の労働に支払われる賃金、(四)労働者の地位の十分認められている地域の一般賃金水準という四つをあげておりますが、すべてこの基準は労働者中心に立てられてあります。これに反して政府原案は、(一)労働者の生計費、(二)類似の労働者の賃金、(三)事業の賃金支払い能力が基準でありまして、当参議院社会労働委員会において、特に労働大臣が原案を主張する根拠として、終始一貫、使用者側の支払い能力を強調されたことは、政府が、労働者の生活を守り、生活水準を高めるための最低賃金としてではなく、あくまで企業と使用者のために財布のひもを締め、支払いにブレーキをかける口実を作る法案にすぎない。勤労階級に対する政府の冷淡さを如実に物語っておるものと言わざるを得ません。業者間協定の違法性と賃金決定要素に対する政府の冷淡な態度について、総理の説明を求め、同時に、労働者の生活と地位を高めるためにはきわめて消極的であり、しかるに労働運動弾圧にはきわめて積極的な政府に対して、強い反省を求めるものであります。さらに労働大臣に対しては、労政上のこれらの大きな欠陥を将来いかように改善する方針であるか承わりたい。
 以上、時間の関係上質問を終りますが、特に前段第一の最低賃金とニュー・ディールについては、お忘れなく詳細明白なる御答弁を要求いたします。(拍手)
   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(岸信介君) 今回われわれが提案をいたしております最低賃金法案は、先ほどもお答え申し上げましたように、労、使、公益三者を入れた中央賃金審議会におきまして十分な御審議を願って、その答申に基いて、これを尊重して作り上げたものでございます。日本の事情は、よく御承知の通り、特に中小企業が非常に多く、しかもこれに従事している労働者の労働条件が悪い、賃金が低い、これを改善することが労働者にとって必要であるばかりでなく、この中小企業の近代化や、その体質改善の上からいっても、きわめて重要なものであると考えて、今回これを提案したのであります。こういう産業の実情に即して、漸次これを改善していくことが、私は、経済政策の上からいっても、労働政策の上からいっても望ましいことである、こういう考えを持っております。もちろん同時に、中小企業対策やあるいは社会保障制度というようなものを、あわせ行わなければならぬことは言うを待たないのでありまして、すでに中小企業対策につきましても、われわれは、財政的の面から、あるいは組織化の面から、あるいはまた設備の改善や経営の近代化の面から、いろいろと施策をいたしております。また、社会保障の制度につきましても、国民皆保険の問題、あるいは国民年金の問題につきまして、政府としては、すでにはっきりした方針をきめて、この国会にも御審議を願っておるというわけでございますから、ぜひこの最低賃金の問題も、この問題はむずかしい問題でありますから、いろいろな御議論のあることは当然でございます。しかしながら、十分、日本の実情に即して、そうしてこれを実現するということが、経済政策の上からいっても、労働政策の上からいっても私は最も望ましいことである、かように考えておるわけであります。ニュー・ディールとの関係についていろいろ御議論もございましたが、もちろん、アメリカにおいてニュー・ディール政策をとらざるを得なかった経済的各種の事情があったわけでありまして、私どもは、ニュー・ディールがどうだから、われわれがどうしなきゃならぬという考えではなく、むしろ、日本の実情に即して、今申しましたような心がまえで進んで参りたいと、かように考えております。(拍手)
   〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕
#48
○国務大臣(倉石忠雄君) いろいろ御意見を長く拝聴いたしたわけでありますが、その中で、私どものやっております労働政策は経済政策を考えていないというふうなお話でありましたが、経済政策の伴わない労働政策というものは私は存じません。(拍手)賃金は、労務の需要者と供給者との話し合いで決定される。このことは、法律にも、いろんな条約などにも書いてあります。本案では、先ほど来お話のありましたように、業者間協定できめられたものがそのまま効力を持つというのではなくて、三者構成でできております賃金審議会というものを通して、しかる後に決定されるのでありまして、労働者の意見が入っていることは坂本さんのよく御存じの通りであります。
 それから、支払い能力のことについて私がしばしば申し上げましたが、およそ、自由経済のもとにおける労働者の賃金を生み出すべき源泉は企業でありますから、この企業の支払い能力を考慮せざる賃金政策というものは、自由社会においては考えられないのであります。
 次に、労働者の地位のことについてお話がございましたが、労働者といわず、何人に限らず、自分の地位の向上ということは、他人がすべきものでなくて、私は、やはり各人が自分たちの地位を引き上げることを考えるべきだ。こういうふうに考えております。(拍手)
   〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手〕
#49
○国務大臣(坂田道太君) お答えを申し上げます。
 労働条件をよくしていくことが、やはり社会保障制度を推進していく上において必要なことは言うまでもないのでございまして、これはやはり最低賃金等を確立をしまして、そして所得をふやしていく。そして最低なる方々におきましても、社会保障、たとえば国民年金等における保険料等が納められるような、つまり所得活動に入られるような状況にしていくということが、これは必要かと思うわけでございまして、その意味から申し上げますると、車の両輪のようなものであると私どもは考えておるわけでございます。先ほど御指摘になりましたように、アメリカにおきましても、確かにこの最低賃金というものを指摘をされまして、いわばこの社会保障制度の拡充ということに踏み切ったような経緯のあることも承知をいたしておるわけでございます。私どもといたしましては、そういうようなことを考えまして、車の両輪の一つだというふうに考えて、大いに私たちの社会保障を推進して参りたいというようなふうに考えておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(佐藤榮作君) アメリカの最低賃金制度がルーズベルトのニュー・ディールの中の重要政策であった、こういう御指摘であり、わが国の場合においてアメリカがとったようなニュー・ディール的な各種の政策を十分考えておるのかどうかというお尋ねだったように思います。先ほど総理からもお答えございましたが、最低賃金制は産業の実情に即して行われるものでございまして、アメリカで採用いたしました最低賃金制創設当時の経済状況と、今日わが国の最低賃金制を設けようとする経済状態とは、これは根本的に違っておるのでございまして、その意味におきまして、アメリカのニュー・ディールの一つであるこの最低賃金制、これを基本にして、今日提案いたしております日本の最低賃金制について論議することは、私は当を得ないものと、かように考えます。しかしながら、坂本さんの御意見のうちにありましたように、賃金を高水準に保つことによって内需を喚起し、それが経済の再建前進に役立つのだ、こういう御議論があったのでございますが、私どもは、その考え方には根本的に違う立場をとっておるものでございます。言いかえますならば、賃金の高水準と申しますものは、同時に、その生産性の高水準であること、これを意味するものでなければならないというのが私どもの基本的考え方であります。言いかえますならば、生産性の低いところにいわゆる低能率、低賃金という言葉がございますが、高能率、高賃金、これこそが健全なる産業を育成するものだ、かように考えておるのでございます。かような意味において、三十四年度の予算編成に当りましても、わが国産業の膨張、また前進にふさわしい予算を作り、ここに産業の体質改善、これをはかりまして、いわゆる高能率、高賃金、これによって国民生活の向上をはかり、また経済の繁栄を期する、こういう観点に立っての最低賃金制を推進する考えでございます。三十四年度の予算はいわゆるニュー・ディール的な考え方は考えておらないのでありまして、いわゆる経済成長にふさわしい予算を計上しておる。かような立場をとっておるのでございます。(拍手)
#51
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。寺
#52
○議長(松野鶴平君) 本案に対し、藤田藤太郎君外一名から、また、草葉隆圓君外三名から、それぞれ成規の賛成者を得て、修正案が提出されております。
 この際、順次修正案の趣旨説明を求めます。藤田藤太郎君
   〔藤田藤太郎君登壇、拍手〕
#53
○藤田藤太郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になりました最低賃金法案に対する修正案につきまして、その提案理由及び内容の概要について御説明申し上げます。
 政府は、最低賃金決定方法として、第一に、業者間協定によるもの、第二に、業者間協定の地域的拘束力によるもの、第三に、労働協約による地域的拘束力によるもの、第四に、審議会の調査審議に基くものの四つを掲げております。第三の方式は、すでに労働組合法第十八条の労働協約の一般的拘束力の規定の適用によって十分であり、第四の方式も、労働基準法第二十八条以下によって十分なし得るところであります。ゆえに政府案の真のねらいは、第一、第二方式である業者間協定に基く最低賃金の新設にあることは明らかであります。業者間協定は次の条件がなければ締結が推進されません。第一に、求人難であるということ、第二に、企業者が地域的にまとまっている場合、第三に、企業の質が均一であること、第四に、過当競争の業種で不公正競争排除の必要があるもの、第五に、業者の組合が強力でかつ統制力がある場合でありまして、約二年間で八十件程度しか締結されていないのであります。今後果してどの程度推進されるか疑問であります。
 第二に、たとえ任意的業者間協定ができても、業者の全員の合意によって大臣または基準局長に申請をし、決定を受けなければ、この法律にいう最低賃金にはならず、罰則の適用もありません。業者間協定が任意協定として有効に効力があるのに、わざわざ罰則を伴う法的手続をとるかどうか、これまた疑問であり、業者のうち一人でも反対者があれば申請ができないのでありまして、もし全員一致して申請するというならば、それはよほど利益のある場合であり、地域的一般拘束力を持つことを欲する場合等のほかはないと思うのであります。任意の業者間協定中、法的手続をとるものはごく少いと考えなければなりません。
 第三は、業者間協定が申請され、その最低賃金額が不当に低くとも、労働大臣並びに労働基準局長は、法的最低賃金として不適当なりとして却下するのみで、何ら修正の権能がないということであります。これこそ何のために行政官庁に申請をさせ、決定するのか、意義がないと思うのであります。
 第四に、われわれは政府案に対してまことに奇異に感じますことは、却下された最低賃金の業者間協定が民事的契約としては有効であり、政府はこれに対して何らの介入もできないことであります。いやしくも申請をして不当として却下されだものが民事的には有効な協定であるということ自体、問題であり、かかる業者間協定は不当協定として、認むべきではなく、無効として禁止すべきであると思うのであります。現実に締結された業者間協定は、政府は一〇%から一五%アップになっていると説明しておりますけれども、しさいに検討すると、あるいは従来のどんぶり勘定を改めたにすぎないものもあり、大体は八時間労働で、やっと食事代が出て、その他の生活費は時間外労働でかせぐ程度のものであり、これでもっては労働者の生活の改善は期し得ないと思うのであります。
 業者間協定についてさらに重要なことは、労働条件の決定を使用者に一方的にまかせ、それをそのまま法によって保障するということであって、これは労働立法としてはうなずけないのであります。労働基準法第二条に、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」とうたい、たとえ組合の組織のできない場合でも、労働基準法は、時間外及び休日の労働協定、就業規則の作成等の場合には、「労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」と規定しております。労働条件の決定には、当該労働者の代表の意見を反映すべく非常な苦心と努力を払っているのであります。国際労働条約、ことに最低賃金決定制度の実施に関する勧告においては、「最低賃金決定制度は、その採れる形式の如何を問わず、当該職業又は職業の部分における関係条件を調査し、なお第一にかつ主として影響を受くる利害関係者、即ち該職業又は職業の部分における使用者及び労働者と協議して、これを運用すべく如何なる場合においても、最低賃金率の決定に関する一切の事項については、右使用者及び労働者の意見を求め、かつその意見に対しては充分にして均等なる考慮を払うべし。」と、こう規定しており、本法案がこの勧告に抵触することは政府みずから認めるところであります。ただ政府は、この法案は「最低賃金決定制度の創設に関する条約」に対しては何ら抵触することがないと強弁しておりますけれども、同条約の第三条ただし書きの規定に適応しているかどうか非常な疑問があります。業者間協定に基く最低賃金は、原案作成について何ら労働者は参与せず、しかも最低賃金審議会は原案を承認するかいなかの判断しかできず、原案を修正する権限を持たない場合、果してこの条約に抵触せずと言い切れるかどうか。本条約の批准をめぐって今後国際労働会議で論議され、労働者の意見の反映していない業者間協定を含む最低賃金法案は、本来ILO条約並びに勧告が期待する最低賃金法と本質的に異なる性格のものであるという批判を受けることは、火を見るより明らかであります。さらに政府は、業者間協定の方式の手本を、アメリカの一九三三年の「全国産業復興法」における各産業が自主的に作成する「公正競争規約」に求めているようでありまするが、同法は、あの世界的大恐慌を克服せんとして低賃金を排除し、購買力の増大を通じて産業の復興をはからんとした故ルーズベルト大統領の、「公正な企業者を悩まし、労働者に諸害悪をもたらした海賊的行為を排除する」という異常な決意によって制定されたものであり、それに基いて作成される「公正競争規約は」、もし大統領の承認を得られないならば、大統領みずからが作成するという、最低賃金の問題に対する連邦政府の強力な干渉を規定するものでありまして、政府の業者間協定とは全く雲泥の相違があるといわねばなりません。
 かように、業者間協定に基く最低賃金につきましては、本委員会において政府よりいろいろ御答弁を得ましたけれども、遺憾ながら納得することができず、修正案として排除いたすことといたしたのであります。
 最低賃金法制定に当ってまず第一に考慮されなければならないことは、わが国における賃金構造がいかなる特徴を持っているか、低賃金階層がどのような形で構成され、さらに賃金格差がどの点で最も深刻化しているか、という点に正確な認識が必要であると思うのであります。この点の認識いかんによっては、最低賃金法の性格、方式等が非常に異なるのであります。わが国の賃金は国際的に著しく低いといわれております。賃金の国際的比較はなかなか困難でありまするが、わが国の賃金の低いということは、単に賃金一般水準の低いということではなく、他に、賃金分布に問題があるわけです。諸外国と高賃金のもの同士を比較すれば、その差は非常に縮小しておりますが、低賃金のもの同士を比較すれば、その差は非常に拡大しており、賃金の分布の不平等度にきわめて問題があると考えるのであります。すなわち、わが国の賃金構造は、広範囲な低賃金階層の存在と、種々の賃金格差の拡大に、その特色を見出すことができるのであります。その賃金格差の第一は企業規模別賃金の格差であります。諸外国が五百人以上の事業所の労働者の賃金に対しし十人未満の事業所の労働者の賃金が八〇から九〇%であることに対して、わが国は四〇%程度という状態になっている。しかも、この格差は昭和二十五年ごろより拡大の傾向をたどっているということは、さらに憂うるべき現収であります。
 この企業規模別格差の要因を、わが国資本主義の構造的特質とわが国労働組合の組織のあり方から分析してみたいと思います。
 欧米の諸外国では、大企業と小企業との間の付加価値の違いが二〇%をこえないのに、わが国では五〇%という大きな開きを持っているということは事実であります。しかし、この付加価値の相違の中には、単に労働生産性の違いだけではなく、下請関係及び原料供給の関係を通じて行われる大企業の中小零細企業に対する支配従属関係、それをささえている財政金融面での諸政策全般が含まれているのであります。すなわち、わが国の産業構造の後進性と、それを打破せんとする政策の欠除が、中小企業の付加価値を不当に低め、企業間の賃金格差を拡大せしめているのであります。次に、規模別賃金格差を拡大せしめている原因として、わが国の労働組合の組織のあり方をあげることができるのであります。諸外国において企業間賃金格差の少いことは、決して自主的に生じたものではありません。むしろ、労働運動も発展せず、最低賃金制も確立してはいない時期には、賃金の格差は意外なほど大きかったことを、われわれは過去の資料で知ることができるのであります。しかし、賃金格差の大きいこの賃金を、現在のごとき型に変化させたのは、経済構造の変化だけではなくして、実に労働組合運動と最低賃金制であったのであります。御存じのごとく諸外国の組合は、産業別組合であろうと職業別組合であろうと、いずれも企業外の横断組合であります。その中小企業の労働者を含んだ産業別組合または職業別組合が、その経営者団体と統一交渉を行なって最低基準の設定を行なってきたのであります。これらを通じて統一的労働市場が形成され、企業間賃金格差は縮小されたのであります。しかるに、わが国の労働組合の組織は全く異なり、ほとんど企業内組合であります。しかも、中小企業の労組の組織率はきわめて低く、三十人より百人未満までの組織率はわずかに二割、三十人未満はまことにりょうりょうたるものであります。現状では、中小企業の労働組合は、とうてい賃金格差を縮小するだけの力を持ちません。わが国の労働組合が、企業別従業員組合から脱皮いたしまして、産業別労働組合の内部に中小企業の低賃金を緩和する必要があると思うのであります。しかるに政府は、産業別労働組合の組織化を指導するどころか、逆に、日経連とともに電産を初め多くの単産の切りくずしに狂奔し、労働次官の通牒をもって、「上部組織は、むちと拍車だけで、手綱を忘れた騎手である。」と、上部組織を最大限に誹謗しております。わが国の組織を企業組合にとどめた責任の大半は政府にあると断ぜざるを得ないのであります。現に、職員でなければ組合の組合員または役員にすることができないというこの公労法第四条第三項は、政府の従来の政策を明白に現わすものであり、これがILOを初め国の内外の批判を受けたことは、皆さん御承知の通りであります。
 以上、企業規模別賃金格差の拡大とその要因について述べたのでありますが、次に雇用形態別賃金格差、すなわち、常用、臨時、日雇い別賃金格差の拡大をあげることができるのであります。臨時工、社外工という名の不安定な労働者が現われ、本工員と同じ仕事をしながら、賃金は非常に低く、福利厚生その他の労働条件も不当に差別され、景気調整の安全弁として、神武景気には急激に膨張し、不況が始まるや整理の犠牲に立たされている労働階層の存在を忘れてはなりません。さらに男女別または年令別賃金格差のはなはだしいことは、わが国の賃金構成の封建性、慣習性を物語っているものであります。男女同一労働同一賃金の原則も容易に実行されず、その格差の改善も何ら見るべきものがありません。
 このように、わが国の賃金構造をながめて参りますと、この賃金構造の最大の特徴は、産業別、職業別賃金格差というよりも、ほとんど規模別賃金格差に集約することができ、男女別、年令別賃金格差の格大という封建的賃金構成にあると考えられるのであります。しかして低賃金階層は、全産業、全職業にわたって中小零細企業に群集し、婦人及び年少者の低賃金は全企業にわたって広範に分布しているのであります。このような低賃金、言いかえれば、賃金格差の実情を的確に把握し、わが国の賃金構造にマッチした最低賃金法を考える場合、その結論は、おのずから全産業一律最低賃金にならざるを得ないのであります。たとえ、業種別、職種別最低賃金を考えるにしても、それは全産業一律最低賃金がその根底にあって初めて意義を持ってくるのであり、その前提を欠く場合には、むしろ賃金格差を拡大する弊害の方が先に立つおそれが決して少くないのであります。よってわが党は、全国全産業一律最低賃金を底辺として、その上に、労働の質と量に応じて、事業別、職業別の最低賃金をあわせ設定することにいたしたのであります。
 次に、政府案に対する問題点は、最低賃金の額の決定についてであります。一九二八年のILOの勧告では「賃金決定機関は、いかなる場合においても、関係ある労働者をして適当な生活水準を維持することを得しむるの必要を考慮すべし」としております。また、この考え方は、一九五一年の農業の最低賃金勧告でも同様で、これは要するに、最低賃金は生活できる賃金でなければならないという考え方であります。一九五一年のこの勧告では、賃金率決定に当って考慮すべき要素として、次の四つの点を規定しました。一、生計費、二、なされた労務の公正かつ合理的な価値、三、労働協約にある類似の賃金率、四、組織化の十分な地方の比較できる労働に対する一般賃金水準。第一の生計費は、生活賃金という建前よりすれば当然のことであって、いわゆるマーケット・バスケットは生計費算出の一つの方法として参考になる点であります。ここにいう生活賃金ということは、実際には生活できる賃金ということであって、わが国でいう生活給か能力給かという狭い意味での生活給ではないと思うのであります。第二の、労務の公正かつ合理的価値とは、能率や生産性に関連する問題だと考えられる。最低賃金率の決定に当って、類似の賃金率や一般の賃金水準を考慮することは当然であります。ここで注意しなければならないことは、一九二八年の勧告も一九五一年の勧告も、ともに産業の支払い能力に言及していない事実であります。最低賃金をきめるに当って、産業の支払い能力を考慮しなくてもよいかという問題になる。総会では、支払い能力に言及することを主張した使用者側の修正案もありました。しかし、これに言及することは、支払い能力がないことを理由に最低賃金制の採用を渋るおそれがあるとして、総会はこれを拒否したのであります。
 以下、社会党修正案の主要点について御説明申し上げます。
 第一に、最低賃金の決定方式について、政府案の「業者間協定による最低賃金」及び「業者間協定による地域的最低賃金」の項を削除し、それにかわり、「すべての労働者についての最低賃金」を設け、その最低賃金額の決定については、中央最低賃金審議会の議決を経て、労働大臣が定め、国会の承認を受けることとし、国会承認の手続は、法施行後、最初の通常国会の召集後五日以内に求めることといたしました。さらにその実施については、法公布のときより三カ月の猶予期間を設けることといたし、最低賃金の変更については、中央最低賃金審議会の勧告権を設定することといたしたのであります。
 第二に、全国一律最低賃金額をこえることを相当とする労働者の最低賃金については、一定の事業または職業ごとに、全国もしくは地域に応じ決定することとし、次の場合にその決定を行うことといたしました。すなわち、一定の事業、職業に従事する相当数の労働者、労働団体、使用者または使用者団体、及びその最低賃金の決定に利害関係を有しまたはその労働条件の決定に慣行的に参加している労働組合その他の労働者団体の申請があった場合、さらに最低賃金審議会の勧告が行われた場合といたします。
 第三に、労働協約の一般的拘束力に基く最低賃金につきましては、一定の地域だけでなく、全国的にも拡張できることといたします。
 第四に、最低賃金決定の原則を、労働者の生計費、一般賃金水準その他の事情に改めることといたしました。
 第五に、最低賃金の適用除外から「試みの使用期間中の者」、「軽易な業務に従事する者」を削除し、これらの者も最低賃金法の適用を受けることとし、さらに、職業訓練を受けている労働者については、別の最低賃金を定めることといたしました。
 第六に、家内労働者の最低工賃の決定については、政府案は、最低賃金が決定された場合において、関連家内労働者の労働条件の改善及び当該最低賃金の有効な実施を確保するため必要があると認めた場合に、初めて最低工賃を定め、これを一定の家内労働者について適用することとしておりますが、これでは最低工賃の決定までには長き年月を要し、ほとんど大部分の家内労働者は放置されるので、真に家内労働者を救済することが困難であります。よって修正案においては、最低工賃の決定は全家内労働者が対象になるごとく、物品別に行うことといたしたのであります。さらに、最低工賃については、労働者が提供する資材、光熱費等の経費を別にし、労働の対価のみと明確にいたします。
 第七に、最低賃金審議会の性格については、諮問機関ではありますが、従来この種の機関の答申は十分尊重されず、しばしば政府の裁量により変更されてきましたので、最低賃金の決定は議決を経て行うことにいたしますとともに、みずから発議し勧告できるよういたしたのであります。なお、政府案中の政府職員たる特別委員は廃止し、委員の任命については労働委員会の例によることといたしました。
 その他、異議申立事項の削除その他、右修正に関連して技術的修正をいたしました。
 以上修正案について述べましたが、最後に、与党の諸君に一言申し上げたいのであります。政府に最低賃金制度を真に確立する意思があるならば、何ゆえ政府みずからできることをおやりにならないのか。アメリカ政府は、民間に最低賃金を強制する前に、みずから模範を示しているのであります。すなわち、公契約法というものを制定いたしまして、政府に対し一万ドルをこえる物品を納入する商社、工場、二千ドル以上の公共建物等を請け負う請負人に対しましては、公正労働基準法に規定する以上の高い最低賃金を定めて、これを支払わなければならないとし、もし違反するならば、その商社、工場、請負人に三カ年間請負契約の停止をすることにいたしているのであります。わが国の政府も、公契約法を作って、政府みずから率先して最低賃金を実施し、最低賃金の地ならしをするのが妥当であると思います。この点を私は強調したいと思うのであります。ところが、わが国の政府は、一般職種別賃金をきめてはおります。しかし、公共事業に従事する労働者にこれをこえる額の賃金を支払ってはならないという、逆に最高賃金をきめているのでありまして、このPW政策こそ、政府の低賃金政策を端的に表わすものと考えるのであります。賃金政策に対するアメリカ政府の態度とは、まさに雲泥の差異があるといわなければなりません。政府並びに自民党の諸君は、一体、真の最低賃金を設定する意思があるかどうか、疑問たらざるを得ないのであります。
 最低賃金法は労働立法の中でも最も基本的なものの一つであり、将来の日本の労働者、勤労国民の国民生活と、日本産業構造に及ぼす影響は、はかり知れないものがあるのであります。もし最賃法が政府原案のままで成立するようなことがあれば、それこそわが国の労働立法史上大きな汚点を残すばかりでなく、国際的信用を失墜するおそれがきわめて大きいと重ねて、注意申し上げる次第であります。この点十分御留意の上、何とぞ本修正案に御賛同賜わらんことをお願いし、修正案提案の理由の説明にかえたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#54
○議長(松野鶴平君) 草葉隆圓君。
   〔草葉隆圓君登壇、拍手〕
#55
○草葉隆圓君 最低賃金法案に対する自由民主党及び緑風会の共同提案にかかりまする修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 内閣提出の最低賃金法案は、わが国経済の複雑な構成、特に広範にいろいろ存在しておりまする経済力の乏しい中小企業の実情を十分考慮いたしまして、中央賃金審議会の答申に基いて作成されたものでありまして、きわめて妥当なものであると存ずる次第であります。しかしながら、本法案に対しまする各界の意見を考慮いたしますとき、次の諸点について修正を行うことが、本法案に対する無用の不安や疑義を一掃する上において必要であると存じますとともに、法の趣旨を一そう生かすこととなると存じまして、ここに本修正案を提案いたした次第であります。
 修正点の第一は、最低賃金審議会の権限の強化についてであります。本法案は、最低賃金ないし最低工賃の決定等の重要事項につきまして、すべて労、使、公益、これらの三者構成の最低賃金審議会の意見を聞いて行うこととなっておりまして、同審議会の機能はきわめて広範かつ重要であり、このことは、最低賃金制が社会経済に及ぼしまする影響を考慮いたしますとき、当然のことと考えるのであります。しかし、最低賃金の決定等については、労働大臣または下部機関でありまする都道府県労働基準局長が最終的に責任を持つという建前から、最低賃金審議会が諮問機関であるということは十分首肯し得るのでありまするが、いやしくもその意見が行政官庁において十分尊重されないことがあってはならないと思うのでありまして、その点については、法文にも最低賃金審議会の意見を尊重すべきことが一応明記されておりまするし、また政府も、国会の審議過程におきまして、最低賃金審議会の意見は十分尊重すると答弁はしておるのでありまするが、さらに最低賃金審議会の意見の行政官庁に対しまする拘束力を強化し、行政官庁は、最低賃金審議会の意見が提出されました場合において、これによりがたいと認めるときは、理由を付し、最低賃金審議会に再審議を求めなければならないこととして、最低賃金審議会の意見が提出されたにもかかわらず、行政官庁が一方的にその意見と異なる措置をとれない趣旨を明らかにし、本審議会の権限に関する不安を一掃しようとするものであります。
 修正点の第二は、申請された業者間協定の内容が不適当な場合において、最低賃金審議会の意見に基きまして、その内容を改正して再申請すべき旨の勧告ができることとしたことであります。本法案におきましては、業者間協定の当事者が行政官庁に申請し、最低賃金審議会がこれを最低賃金として決定することが適当でないと認めた場合は、行政官庁はその意見を尊重して、最低賃金として決定しない建前になっておりまするが、これだけでは、当該業種に有効な最低賃金が決定されないままに放置されることとなるおそれがあるのでありまして、かかる弊を防止いたしまするために、当該業者間協定について修正措置がとられることが必要であると考えるのであります。これと同時に、最低賃金の決定に当っては当事者の自主性をできるだけ尊重する見地から、本修正案におきましては、最低賃金審議会が必要と認めた場合に、行政官庁が、その協定内容を修正して再申請すべきことを、業者間協定の当事者に勧告できることとした次第であります。
 修正点の第三は、最低賃金の決定等に際しまして、労働者の意見が十分に反映されるような措置を明確にしたことであります。本法案におきましては、最低賃金の決定の重要事項については、行政官庁が三者構成の最低賃金審議会に諮問し、その意見を尊重して行うこととなっており、さらに必要と認めるときは、専門部会の設置その他の方法によりまして、審議の過程を通じて労働者の意見はこれに反映されるのでありまするけれども、一部におきましては、この規定だけではまだ現場における従業員その他の関係者の意見が十分反映されないおそれがあるとの見解もありまするので、最低賃金審議会の審議の過程において、審議会が必要と認めたときは、関係労使その他の関係者の意見を聞くことを法文に明記することが適当と考えたのであります。また、本法案第十二条の規定によりますと、第十条、第十一条の地域的最低賃金の決定に当りまして、いわゆる拡張適用を受けることとなる使用者に救済のため異議の申し出を認めることになっておりまするが、労使双方にできる限り嫁等の機会を与えることが望ましいということを考えまして、アウトサイダ―の労働者側からも異議の申し出ができることといたした次第であります。
 以上が本法案に対しまする共同修正案の概要であります。何とぞ各位の御賛成を得たいと存じまして、以上説明をいたします。(拍手)
#56
○議長(松野鶴平君) 草葉隆圓君外三名提出の修正案に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#57
○阿具根登君 私は、ただいま草葉隆圓君外五名提出の最低賃金法案に対する修正案に対し、日本社会党を代表して、以下数点について質問をいたさんとするものであります。
 まず、昨夜中間報告の動議を提案されたのは草葉隆圓君であったろうと思います。その草葉隆圓君が、先ほどの修正案を本会議において出されるならば、なぜ委員会においてもっと審議を尽して、その中において修正案を出さなかったか、(拍手)その一点をまず質問したい。その中において、十八時間何がしかの審議を尽したから、もう審議を尽す必要はないのだという理由で説明をされておるにもかかわらず、委員会においてかかる修正案も出すことがなく、本会議において直接出されて、ヤジっている諸君は、この修正案を聞いただけでおそらくわかっておられる方はいないだろうと思います。
 そこで、まず質問に入っていきますが、最賃法案は、十九世紀の末に、ニュージーランド及びオーストラリアの国々で制定され、一九二八年ILOが最低賃金条約を採択したのであります。三十年後の今日、わが政府はやっと最低賃金法を提出したが、三十年前のILOを採択した当時にも、かかる業者間協定を中心とする法律制度はどこの国にも見られないのでありますが、提案者は、業者間協定を認めた上での修正であると考えられるが、日本の経済情勢は三十年前の西欧よりもなお悪い情勢にあるのか、三十年も経過した今日であるから、西欧のそれよりも、もっと進歩しているというならばわかるが、業者間協定を中心にした修正の理由は一体那辺にあるのか。提案者は各国の例をあげて詳細に御説明を願いたい。
 次に、修正案は第九条において、「労働大臣または基準局長は、その申請にかかわる業者間協定における賃金の最低額が適当ではないと認める場合において、最低賃金審議会の意見に基き、当該当事者に対し、その賃金の最低額を改正し、再申請すべきことを勧告することができる」と修正し、さらに第三十一条において、「最低賃金審議会は、審議に際し必要と認める場合においては、関係労働者、関係使用者その他の関係者の意見をきくものとする。」と修正しているのであります。しかるに、ILO条約第二十六号は、その第三条ただし書きにおいて、「ある職業または職業の部分に該制度を実施するに先だち、関係ある使用者及び労働者の各代表者並びにその他の者にして職業または職務上右の目的のため特に資格を有し権限ある機関においてこれと協議するを適当なりと認むるものと協議すべし。」、「関係ある使用者及び労働者は、当該国の法令または規則により定めらるべき方法及び範囲において、なお如何なる場合においても同一の員数により且つ同等の条件において、該制度の運用にこれを参与せしむべし。」と規定し、また、最低賃金決定制度の実施に関する勧告においては、「最低賃金決定制度は、その採れる形式の如何を問わず、当該職業または職業の部分における関係条件を調査しなお第一にかつ主として影響を受くる利害関係者、即ち該職業または職業の部分における使用者及び労働者と協議して、これを運用すべく、いかなる場合においても、最低賃金率の決定に関する一切の事項については、右使用者及び労働者の意見を求め且つその意見に対しては充分にして均等なる考慮を払うべし。」と規定しているが、政府案はこの条約または勧告の規定に適合していると考えるかどうか。提案者から御答弁を願いたい。また、このたびの修正案については、この点いかに考えておられるか、お答えを願いたい。私は、提案者が修正案を提出した根本的な動機は、業者間協定を柱とする最低賃金法案がILO条約並びに勧告に違反し、批准に際し、今後国際労働機関で非難を受けるおそれがあり、これを是正せんとしたものと思量するのでありますが、いかがでございましょう。
 次に、修正案は、裁定額に関する定めを改正して再申請すべきことを勧告するというが、かかる迂遠な手続をとらず、むしろ審議会に、申請した裁定額を修正する権限を持たすべきであると考えるが、この点、提案者はいかに考えるか。また、業者に改正の意思がない以上は、幾たび手続を繰り返しても、業者の一方的な取りきめを承認するか否かの判断があるのみであって、労働者の意思が反映しないと考えるがどうか。さらに改正して再申請を勧告されても、それには別に強制力もなく、また、勧告された業者間協定は、再申請しなくても民事的には十分有効であるのであって、これでは効果が全く減殺されるのであります。むしろ、改正を勧告された協定は、不当賃金カルテルとして禁止すべきものと思うが、いかが考えておられるか。
 以上の点について提案者の明快な答弁をお願いいたします。
 次に、修正案は、第十五条に「最低賃金審議会の意見の提出があった場合において、その意見により難いと認めるときは、理由を附して、最低賃金審議会に再審議を求めなければならない。」と修正している。このことは、イギリスにおいても同様の規定があり、これを見習った点は了承いたしますが、イギリスにおいて、再審議の結果、再び原案と同じものが答申されれば、大臣はそれを採用して命令を出す慣行になっているが、提案者はこの点はいかに考えておられか。特にわが国においては審議会の意見を軽視する傾向がきわめて強く、再答申のあった場合、必ずこれを採用するようにすべきではなかったか、お尋ねをいたしたい。また政府は、本案が可決され、再答申をされた場合、いかにその意見を採択するか、法の運用に当っての労働大臣の答弁を求めます。
 さらに、第二十条の修正点についてお尋ねをいたしたい。政府原案に対する労働省の説明によれば、「第一項の決定によって、一定の地域内に営業所を有する委託者及びその者と委託契約を締結している家内労働者が最低工賃の適用を受けることになるが、その同一地域内で当該家内労働者と同種の業務に従事していながら、委託者の営業所が同一地域外にあるため、当該最低工賃の適用を受けない家内労働者の保護のため、これらの家内労働者及び委託者に対」ても、労働大臣または都道府県労働基準局長は、必要があると認めるときは、第一項の最低工賃を適用する決定ができる旨を規定したものである」と述べておるのであります。第二項の最低工賃の決定は、第一項の最低工賃の決定と同時のみならず、その後においても、必要と認めるときは、大臣または基準局長はそれを決定することができるものと考えられる。しかるに、本修正案は、同時のみの決定を認め、その後、他の同種の業務に従事する家内労働者の工賃がきわめて低廉であることが判明しても、それに対して工賃の決定をすることができなくなり、原案よりも逆に範囲を狭め、後退したことになるが、これはいかなる理由であるか。もし草葉君の答弁が原案と同じ趣旨であるとするならば、原案はきわめてずさんと言わなければならない。しかも、本原案は一年有余も審議され、幾たびも修正の機会があったにもかかわらず、なぜ政府は再提案に際し修正しなかったのか。(拍手)
 最後に、提案者に申し上げたいことは、草葉君外三名の労は多といたしますが、本修正案をもって原案の不備を補ったと考えておられるかもしれないが、似て非なる最低賃金法案をいかに修正しようとも、しょせんごまかしにほかならない。ILO条約ができて三十年、すでに四十数カ国において実施されておる今日、ILO常任理事国たる日本において、かかる業者保護を第一義とする、労働保護立法の精神を忘れた、名目のみのかかる最低賃金法案の成立は、国際的信用を落すばかりであろうと思います。これでは労働者の生活向上も期し得られず、産業構造の近代化は促進されず、労働者の期待を全く裏切ったものであると断ぜざるを得ないのであります。
 以上の点に対し、提案者の真摯なる答弁を求めて、私の質問を終ります。(拍手)
   〔草葉隆圓君登壇、拍手〕
#58
○草葉隆圓君 阿具根君の御質問に真摯な気持でお答え申し上げます。
 第一点は、参議院の社労の委員会の審議のときに十分審議を尽して、修正案を出しながらやるべきものでなかったかというお説でございまするが、これは、私どもが国会法の取扱いにおきまして、参議院では、従来、修正案は質疑が終りましてその後にいたすということが、国会法の解釈上、参議院がとっているやり方で、従いまして、修正案を出しまする際は、討論を終ったあとに出すということに相なっておることは、阿具根君も御承知の通りだと思います。
 第二の問題の、業者間協定について各国の例を引いて説明せよというお話でありますが、業者間の協定は政府原案で出ておりますから、どうぞ労働大臣からお聞きをいただきたい。
 第三の御質問は、ILOの条約並びに勧告に対して、この修正はむしろ適当ではないのではないか、あるいは国際会議その他において非難を受け、是正を要求されるようなことがありはしないか、という意味の御質問であったかと存じまするが、私は、修正案は、政府原案もそうでありましたが、さらに修正案は、ILOの条約並びに勧告を、十分その精神をくんでこれに沿うように努めたということにおいて、さようなことはないと信ずるのでございます。
 第四に、再申請することを勧告できることになっているが、審議会にこれは権限を移すべきものではないか、審議会がその権限を持つべきように修正すべきものではないかという意味の御質問であったと存じます。しかし、私は、審議会はやはり諮問機関であって、責任は行政庁である労働大臣またはその下部組織である基準局長が持つべきものである、という建前は一貫して参るべきものだと考えます。
 次に、第十五条の修正は、英国の最低賃金法を範として修正したのであろうから、それならば、英国のように、はっきりと再び出た場合には、それをそのまま原案としてとるようにという意味の御質問であったかと存じます。もちろん、かような場合におきましては、お話のように、英国は大体そういうふうな取扱いで、それが慣例となっております。しかし、これはやはり決定権は労働大臣または局長が持つべきものであって、しかし、労働大臣及び局長は必ずや私はその意見をとって、これに従ってやると信じております。また、そうあることが政治的にも道徳的にも、法文の今後の慣行を作り上げていきまする上にも、必ずそうあるべきものと信じて、かような修正をいたした次第でございます。
 次には、二十条の第二項の修正原案におきましても、この御質問の点は十分、一応の趣旨は原案で通っておると思います。同様の趣旨で、私が修正いたしました趣旨も原案も同様でありまするが、しかし、本修正案では、審議会の意見を聞いて行う旨をはっきりと明記しておくことが将来問題を起さないという意味で、明記をいたした次第であります。従って、意味そのものは原案と変りはないということを御了承をいただきたいのであります。
 大体の御質問に対する点は以上をもってお答え申し上げたと存じます。(拍手)
   〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手〕
#59
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府が法案を出す前に、今ごろ修正案が出るならば、なぜそういうものを取り入れて出さなかったかというお話でございますが、政府の考え方は、国会に一番いいと思って提出をいたしましたが、やはり国会で大ぜいの方々の御研究の結果、よりよいものが出たならば、これを取り入れるということは、やはり民主主義政治においては当然りっぱな態度であると私どもは考えております。聞くべき御意見は十分に尊重をして、政府の考えをきめていきたい、こう思っております。(拍手)
#60
○議長(松野鶴平君) 阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#61
○阿具根登君 ただいま草葉君の答弁でございますが、まず一番最初に、本院の委員会において質疑が終ってから修正案を出すのが慣行である、こういうことを言っておられます。私もその慣行は知っております。しかし、委員会においては質疑がまだ終了いたしておりません。特に、こういう修正案等をお持ちの草葉君等は、なぜに質問しなかったのか、全然質問しておられない。そうして質問の打ち切り動議を出して紛争に持ち込まれておるということは、質問をする意思が全くないのではありませんか。全くない人が、委員会でこういう修正を出す意思のなかったこともはっきりしておるのにかかわらず、質疑が打ち切られたので、ここで出したんだというのは、答弁になっておらないと私は考えます。
 それからILOの各国の業者間協定についてお尋ねいたしましたところが、それは大臣に尋ねてくれというお言葉でございます。十分このことは承知の上でこういう修正案を出しておられますので、この修正に関連して、私は草葉隆圓君に尋ねておるのでございますから、どうぞ一つ十分なるお答えをお願いいたします。
 それからもう一つ、労働大臣、基準局長に権限を与えたと言われております。その通り、原案にも、あなたの修正案にもそれは出ておりますが、それならば、それに関連してあなたにお尋ねをいたしますが、この大臣や基準局長は何を基準にしてそれを決定いたしますか。一体どういうものさしをもって、申請になられたものを決定し、あるいは再申請に落とすか、その点について、提案者は十分納得のいくものを持っておられると思いますので、私が納得のいくように御説明をお願いいたします。その答弁のあとで、また質問をさしていただきます。(拍手)
   〔草葉隆圓君登壇、拍手〕
#62
○草葉隆圓君 重ねての阿具根君の御質問にお答えを申し上げます。
 第一は、修正案の取扱いについての御意見であったと存じます。これは御意見として拝聴いたします。
 第二の問題は、ILOの問題について、各国の業者間協定の関係、これは本修正案とは直接に私は関係ないと存じます。
 第三の問題は、大臣や局長が何を基準にして決定するか。――審議会の意見を基準にして決定いたします。(拍手)
#63
○議長(松野鶴平君) 阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#64
○阿具根登君 草葉君のただいまの答弁をお聞きいたしますと、私の質問に対してお答えのできるほど熟知されておらないと私は考える以外に仕方ございません。(拍手)
 それはそれとして、大臣のものさしを、賃金審議会の答申を基準にするとおっしゃいました。それでしたらば、大臣の権限は何もない。賃金審議会の答申が基準であるならば、それ以外にきめようないではございませんか、それがものさしであるならば。お考え違いであったならば、一つ答弁をし直していただきたいと思います。
 それから、第十九条の方で落ちておりましたので、御答弁がありませんでしたが、たとえば、再申請に落した場合に、その業者がそれに応じなかった場合はどうなりますか。また、応じても、同じ申請を持ってきた場合にはどうなるか。何回繰り返しても同じではないかと、こういう質問を私はしておるのです。それに対してどういうお考えを持っておられるか。
 それから、第二十条についてはどこが違っておりますかという質問をしたはずでございます。よくおわかりになっておらないようですから、私が説明をいたしますが、原案では、他の工賃が低い場合には、おくれても大臣、基準局長が決定することができる。同じ業種の人が家内労働者であって、しかもその労働者に委託した方がよそにおられた場合、こういうときでも、その賃金が非常に安いというような場合には決定することができるけれども、あなたの修正案では、そのときと同時でなければ決定することができないということになるならば、原案よりも修正案が後退しておるではないか。(拍手)原案よりも修正案の方が範囲が狭くなってしまったではないか。それでは改悪ではないか。こういうことになるわけでございます。だから、原案とあなたの修正案の二十条はどこが違うのであるかということをはっきりしていただきたい。こういう点を質問いたしておりましたので、以上納得のいくように一つ御説明を願います。突っぱねないで、知らないところは知らないと答えていただきましょう。(拍手)
   〔草葉隆圓君登壇、拍手〕
#65
○草葉隆圓君 たびたびの御質問でございまするが、大臣の決定の基準、決定というのは、ここで御質問になりましたのは、多分賃金決定の場合をおっしゃったと思います。賃金決定の場合は、本法にずっとありまするような順序で決定するのでありますから、それは審議会を中心に……。さらに再申をしてきた場合には……、だから私は賃金審議会の意見を決定の基準とすると申し上げました。次には、この再申請をしても、何べんも何べんも突き返しても、同じことを出してくるときにはどうするか。――第六条を発動し得る前提になってくると思います。次には、最後の第二十条の問題をおっしゃった。この二十条の問題には、ここにはっきりと修正の点を、どこが違うかとおっしゃいまするから、ここへ書いてあります通りに、第二十条では「前項の決定をする場合において」、と書いてある。この「おいて」が問題の中心じゃないかとおっしゃる。かような場合、前の原案、いわゆる政府原案でも大した違いはありませんが、これをはっきりとしたということ、その場合においても審議会の意見によって決定し得る、こういうことであります。
#66
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。
 討論の通告がございます。順次発言を許します。柴谷要君。
   〔柴谷要君登壇、拍手〕
#67
○柴谷要君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました最低賃金法案に対する社会党修正案に対し、賛成の意を表するものであります。
 私たちは、最低賃金法のすみやかなる成立を念願して、今日まで幾多の努力を重ねて参りました。わが国において、労働基準法が制定をされ、その第二十八条以下に、最低賃金の決定に関する事項が規定されてから、すでに十数年経過をいたしましたが、その間、この規定が一回も発動されることなく、無為に空文をほしいままにしたことは、きわめて遺憾に思うものであります。このことは、ひとえに政府の全責任であると申さなければなりません。今日ここに、そうした長い空白期間を経て、政府の最低賃金法案が提出される運びとなったわけでありますが、私たちがその内容を詳細に検討した結果、明らかになったことは、政府案は、名前こそ最低賃金法となっておりますが、その実質は、最低賃金法とは全く異質なものであるということであります。(拍手)それは、多言するまでもなく、政府案が最低賃金の最も主たる決定方式として業者間協定を採用しているという点であります。それは、一口に言って業者間の勝手な賃金カルテルにほかならず、最低賃金とは異質無縁のものであるということであります。すなわち、業者間協定は、業者間の不当競争を防止することを本来の目的として締結されるものであって、それ自体、労働者の生活を保障しあるいは救済しようというものではないのであります。従って、労働者の参加はもちろんのこと、その意見あるいは要求をその中に盛り込むことが、協定の性格上全く不可能であることは申すまでもありません。こうした目的の全く異なったものを無理やりに最賃法の中に押し込めんとしたところに、政府案の根本的矛盾があると申さなければなりません。御承知の通り、最低賃金は、労働条件の中でも最も基本的なものの一つであります。その重要な労働条件について、労働者に一言の発言の余地も与えず、使用者に一方的にまかせ、それをそのまま法によって保障しようというやり方は、労働立法として、いかんとも肯定しがたいのであります。労働基準法第二条には、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」とうたい、労働条件の決定に当って労働者の意見の反映を強く要求いたしておるのであります。さらに国際労働条約、ことに「最低賃金決定制度の実施に関する勧告」においては、「最低賃金率の決定に関する一切の事項については、右使用者及び労働者の意見を求め、かつその意見に対しては充分にして均等なる考慮を払うべし。」と規定し、最賃制実施に際しては、国内法と同様、労働者の意見を十分とり入れることを要求しているのであります。従って、政府案が勧告にも違反することは明らかであります。政府自身も、このことはすでに委員会等の発言を通じてはっきり認めているところであります。ただ政府は、勧告の違反は認めるが、条約には抵触しないという欺瞞的見解をとり、政府案が国際的にも通用するかのごとき言をたびたび弄しておりますが、このことは言語道断と言わなければなりません。確かに勧告は道義的な拘束力しか持っておらず、その違反をもって直ちに制裁が加えられるという性格のものではありません。しかし、その基本的精神は条約と何ら変るものではなく、勧告の違反は同時に条約の違反と解釈すべきが順当であります。勧告に違反しても条約に直接抵触しなければかまわぬという政府の考え方は、法律さえ形式的に守れば道徳などは守る必要はないということと全く同じ理屈であります。もし、こうした考え方が一般社会で通用するとすれば、社会不安は、もはや収拾のつかないものになることは明らかであります。ともあれ、条約の第三条ただし書きは、「いかなる場合においても労使同一の員数によりかつ同等の条件において最賃制度の運用にこれを参与せしむべし」と規定し、政府の強弁にもかかわらず、条約にも抵触することがきわめて濃厚なのであります。かくて、政府の業者間協定最低賃金は、国内法に違反するばかりでなく、国際労働条約並びに勧告に違反することが明らかであります。このことだけをもってしても、政府案をそのまま最低賃金法として認めるわけにはとうてい行かないのであります。(拍手)
 ところで、政府は、業者間協定最低賃金は理論的にはいろいろ疑問があることは認めるが、実際には相当の効果をおさめているんだと宣伝をいたしております。この宣伝は、政府の最賃法案を正当化する唯一のよりどころとなっておりますが、この点も、政府の言っていることと事実とは、だいぶ食い違いがあることをあえて指摘しておきたいと思うのであります。労働省の発表によれば、業者間協定はすでに八十も協定されているそうですが、その協定の内容を検討してみますと、その大部分が四千円台の賃金であり、しかも三千円台のものも存在するといった状態であります。そして特に問題なのは、それらの協定によってきめられた賃金が、最低賃金としてではなく、最高賃金、すなわち頭打ち賃金としての役割を果しているという事実であります。使用者は、できるだけ少い資本と経費をもって最大限の利潤を確保することに専念し、労働者に支払うべき賃金も、何らかの拘束がない限り、最少限にとどめようと努力いたします。すなわち、そうした共通利害の上に立つ経営者が集まって業者間協定を締結しても、そこに公正な最低賃金が生まれるわけは初めから考えられないことであります。そこから出てくるものは自分たちの支払いたい賃金であり、これ以上出さないという賃金にほかなりません。このことは、現実の業者間協定がきわめて低い線で固定化し、かつ最高賃金に変貌している事実が、明らかにこれを立証していると思うのであります。
 以上で明らかなごとく、今回の政府案は、内容的に幾多の不合理と矛盾の累積によって作られたものであり、最低賃金法の本来の目的を見失った、最賃法にあらざる名ばかりの最賃法案だということであります。こうしたものを成立させることは、国内的には、労働者にプラスになるどころか、むしろマイナスになる危険がきわめて大であり、さらに国際的には、大いなる非難と失笑を浴びることは必至と申さなければなりません。ここに社会党が、かかる業者間協定に基く最低賃金を排除し、全国一律最低賃金を決定し、その上に、業種別、職種別、地域別最低賃金を積み重ねるという修正案を提出した重大なる理由があろうかと思うのであります。(拍手)
 私は、この修正案は、わが国において考えられる最低賃金構想としては、少くとも現在の時点においては、理想論は別として、至上のものであると確信し、立案者に対して大いなる敬意を払うものであります。最低賃金法の目的と機能は、今さら多言するまでもなく、労働者の最低生活を保障することであり、具体的には、広範に存在する低賃金を解消し、特に日本における賃金構造の特質である賃金格差を是正することであります。従って、最賃法が考えられる場合に、まず第一に考慮されなければならぬこと、わが国において低賃金階層がどのような形で構成され、さらに賃金格差がどの点において最も深刻化しているか、日本における賃金格差の特徴は何であるか、という点が重大な問題になってくると思います。ところで、政府案は最低賃金の決定について全国一律方式をとらず、もっぱら職種別、地域別に定めることとし、それに即応する方式として業者間協定方式を採用したのであります。この方式は、日本の賃金格差の特徴を、業種別、地域別格差としてとらえた結果にほかならず、すでに最賃法立案の前提である現状認識の把握において根本的な誤まりが認められるのであります。
 ここに労働白書を引き合いに出すまでもなく、いわゆる日本的賃金格差の特徴は規模別格差であることが、統計上明らかになっておるのであります。個人別賃金調査、社会保険の基礎調査に基き数字を当ってみますと、その規模別格差は、千人を一〇〇とした場合、五百人から九百九十九人までが八五%、百人から四百九十九人までが七四%、三十人から九十九人までが六四%、十人から二十九人までが五五%、一人から四人までが四五%ということになっておるのであります。さらに、産業別、事業所規模別賃金格差から見ましても、ほぼ同様な比率で、各産業ごとに規模別賃金格差が存在することが明瞭になっているのであります。すなわち、日本の場合は、全産業を通じてその底に極端な低賃金が存在し、規模の縮小に伴って賃金格差の比率がだんだんひどくなっているという特徴が見受けられるのであります。
 従って、日本で最低賃金制が考えられる場合、そうした全産業に散らばっている低賃金労働者の賃金を全体的に引き上げる方式でなければならないのであります。そして、その実情に対応する最賃の決定方式は、修正案の柱となっている全国一律最低賃金以外にはないのであります。(拍手)私は、この方式が他のあらゆる最低賃金に先行して実施されてこそ、初めて日本の労働者を低賃金の鎖から解放できると確信するものであります。全国的最低賃金制がいまだに確立されていない中で、政府案のごとく、業種別、地域別最低賃金を、しかも業者間協定という方式によって推し進めようとすることは、むしろ現在の極端な賃金格差をさらに助長する危険すら多分に含んでおるということを、この際指摘しておきたいのでございます。
 さらに重要なことは、この修正案が、総評、全労、新産別、中立の、日本の全労働組合を代表する各組合の一致した見解に基いて作成され、いわば日本の全労働者が修正案を支持し、その成立を念願していることであります。このことは、法案制定に際してのきわめて重要な要素であり、何人も看過すべからざる点であると信じます。
 私は、以上の諸点を総合し、日本の全労働者のために、修正案が本院においてすみやかに可決されることを希望し、最低賃金法案に対する社会党修正案についての賛成討論といたす次第でございます。(拍手)
#68
○議長(松野鶴平君) 柴田栄君。
   〔柴田栄君登壇、拍手〕
#69
○柴田栄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました最低賃金法案に対し、社会党提出の修正案に反対し、自由民主党及び緑風会共同提出の修正案並びにこの修正部分を除く政府原案に賛成の意を表明せんとするものであります。(拍手)
 そもそも、最低賃金制の実施は、ただに低賃金労働者の労働条件を改善するのみならず、労働力の質的向上、中小企業の公正競争の確保等、国民経済の健全な発展に寄与するものであることは、何人もひとしく認むるところであります。しかしながら、わが国におきましては、最低賃金制の基本的あり方について、全国全産業一律の最低賃金制と、業種別、職種別、地域別の最低賃金制度との二つの対立した考え方があるのでありまするが、高度に発達した大企業のある反面、経済力の乏しい中小零細企業が多数存在し、賃金にも著しい格差がありまするわが国の現状において、直ちに全国全産業一律の最低賃金制を実施することは不可能であると信ずるのであります。すなわち、一律の金額が高きに失すれば、多くの中小零細企業の支払い能力をこえることとなり、あえて強行するならば、いたずらに経済に摩擦と混乱を起す結果を招き、また、この金額が低きに失するならば、低賃金労働者の労働条件の改善に役立たない、単なる名目と化するのであります。労、使、公益、三者構成の中央賃金審議会は、一昨年末、最低賃金制に関する答申を提出したのでありますが、その答申においても、産業別、規模別等に、経済力や賃金に著しい格差があるわが国の経済の現状においては、業種別、職種別、地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制を実施し、これを漸次拡大していくことが適当な方策であると述べているのであります。社会党提出の修正案によりますと、まず全国全産業一律の最低賃金を決定し、しかる後に、その金額以上の金額で、業種別、職種別、地域別の最低賃金を決定できることとなっておるのでありまするが、その骨格は、あくまでも全国全産業一律の最低賃金制であります。社会党の諸君が、わが国の現状から遊離したかかる最低賃金制に固執されることは、まことに理解に苦しむところであります。これに対し、政府提出の最低賃金法案は、中央賃金審議会の答申を尊重し、わが国経済、特に中小企業の実態を考慮し、業種別、職種別、地域別に最低賃金を決定し、漸次これを拡大していくことを基本的あり方としているのであります。また最低賃金の決定方法としても、業者間協定に基く方式、労働協約に基く方式、職権方式等、四つの方式を採用し、これらの方式を適宜活用することによりまして、最低賃金が円滑に決定できるよう考慮されているのであります。
 以上、政府提出法案は、わが国の実情を十分考慮して作成されたものであり、その実効も期して待つべきものがあるのであります。しかしながら、国会におきまする審議経過、さらには各界の意見等を考慮いたしまするとき、政府案に対し、最低賃金審議会の権限強化を中心に修正を行うならば、一そう法の趣旨も明らかにいたし、法案に対する一部の疑義や、あるいは不安を一掃できるものと思うのであります。しこうして、画期的な本制度の実施は、中小企業に働く労働者諸君の福祉を増進するものであることは明らかでありまするが、今や、これら中小企業労働者諸君はもとより、世論の大勢も本法案の一日も早い成立を期待しているものと信ずるのであります。
 ここに私は、重ねて社会党提出の修正案に反対し、自由民主党及び緑風会共同提出の修正案並びにその修正部分を除く政府原案に賛成の意を表明いたしまして、討論といたします。(拍手)
#70
○議長(松野鶴平君) 小柳勇君。
   〔小柳勇君登壇、拍手〕
#71
○小柳勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提出の最低賃金法案並びに草葉隆圓君外五名発議の修正案に反対し、社会党修正案が満場一致御決定ならんことを念願しながら、ただいまから意見を述べる次第でございます。その意見を述べます前に、同僚議員がしばしばここで申しましたように、私も、国民の一人として、このような姿の中で、世紀の労働立法である最低賃金法が強引に成立せしめられようとすることに対して、まことに遺憾の意を表明いたしたい次第であります。(拍手)
 私は、政府提出の法案について、四つの特徴点をとらえまして、これが反動性と、非民主性と、内部矛盾を指摘しながら、反対の根拠を明らかにいたしていきたいと存ずるのでございます。
 反対いたしまする第一の根拠は、憲法の精神にもとり、労働基準法にいう労働条件の最低基準を引き下げ、労働者の犠牲において、大資本、中小資本の利益に奉仕せんとする岸内閣の反動性を指摘しなければなりません。労働基準法に基く中央賃金審議会は、すでに八年前に発足いたしまして、最低賃金の審議を開始いたしましたが、独占資本はあくまで最低賃金の決定に反対し、一九五三年十月、ガット仮加入が認められてからは、政府も最低賃金の実施の意図を全く失ってしまい、三年半の長い期間を通じて審議し提出されました中央賃金審議会の答申案も、ついにこれを実施しようとしなかったのでございます。いかにきれいな言葉で言いのがれをしようといたしましても、最低賃金の決定に労働者が参加することをおそれ、あくまで最低賃金の現状を固定化せんとする非民主的な独占資本の立場しか考えなかったといっても過言ではないと思うのでございます。思いまするに、労働基準法で決定される最低賃金について、これが直ちに実施されるといたしまするならば、ある事業、ある職種に対して一律に最低賃金を決定することができまするので、その部分だけの苦汗労働者は救われるのでございます。ないよりはましだと考えている次第でございます。しかるに、政府は、今回業者間協定を主体とする最低賃金に切りかえるために、労働基準法の最低賃金の条項を削除してしまったのでございます。その労働基準法は、御存じのように、昭和二十二年に公布されまして、あの当時、敗戦のさなか、経済的にも困窮のどん底にありまして、今とは比較にならない経済状態であったのでありますが、しかもあの当時、あの労働基準法が労働者の最低基準の労働条件を示してくれたのでございます。現在、生産指数も上り、生産性も相当向上を示しておりまして、政府は、たびたび本院で説明いたしまするように、長期的の経済の見通しは明るいと豪語いたしておるのでございます。そのような今日、労働基準法の最低賃金を削除いたしまして、新たに業者間協定という、似て非なる最低賃金法を提案いたしましたことは、われわれ労働者にとりまして、生存権の問題でありまするがゆえに、許せないところであるのでございます。憲法第二十五条のいわゆる最低生活の保障というものを、一体、政府はどのように考えているか、私はここではっきり問いたい気持が一ぱいでございます。これが第一に政府案に反対する理由でございます。(拍手)
 第二の反対いたしまする根拠は、この法案が業者の支払い能力本位の法律であって、労働者の最低生活を保護するための最低賃金法ではないという点でございます。人事院は、先ごろ、東京都における満十八才の男子の一カ月の生活標準費用は約八千円であるということを公表いたしました。しかるに、現在、日本の勤労者一千七百万名の中で、八千円以下の者が五百六十五万名、六千円以下の者が三百三十五万名、四千円以下の者が百二十万名もおるということを、労働省は発表いたしておるのでございます。千七百万の労働者の中で、その約三割の者が標準生活に達しない生活をやっているという状態、今、生活保護法の基準に近い――東京都におきましては三千五百十二円が生活保護の基準だと記憶いたしておりまするが、そのような生活に近い生活を百二十万名の労働者がやっているという事実は、現在まで、日本の資本家、使用者が、一方的な業者本位の賃金決定によって賃金を決定したために、このような低賃金労働者をたくさん作ったためであるということを、私はお訴え申し上げたいのでございます。最低賃金の決定に当りましては、この法案でも三つの原則を書いております。生活賃金の原則、公正賃金の原則、あるいは支払い能力の原則をうたってはおりまするが、今までの世界的ないろいろな歴史の中で、この三つを並べて出しましても、結局、資本家、使用者は、常に支払い能力本位によって賃金を決定して参っておるのでございます。この政府が出しました最低賃金法におきましても、生活賃金原則を書いてはおりまするが、その生活賃金の原則というものは、弱い、たとえば五人や十人のその一つの事業所では、一体これはだれが主張することができましょうか。そのようなことから、今から三十年前に採択されましたILOの条約では、先輩諸君がこの壇上で再々述べましたように、あのような勧告を出したものと私は理解いたしておる次第でございます。生活賃金の原則を前面に出さなければ世界の勤労者大衆は守れないというILO条約の精神こそ、私どもは、今ここに新たに発足する最低賃金法の、この世紀の法案の発足に当って、日を新たにして銘記しなければならぬとお訴え申し上げる次第でございます。(拍手)日本の労働基準法にも、第一条にそのことが書いてございます。このような根本原則に反しまするこの法案には反対せざるを得ないのでございます。これが第二の理由でございます。
 反対いたしまする第三の理由は、業者間協定に基く最低賃金は、労働者の生活を保護するものではなくて、業者の保護をする法律であるということを叫びたいのでございます。賃金決定の方式として、政府案には四つの方式を掲げております。しかしながら、労働協約の拡張適用、あるいは賃金審議会委員による決定方式については、それをやろうとするならば、ただいま持っている労働基準法と労働組合法によって、政府が考えているくらいの最低賃金は決定できるのでございます。従いまして、現在新たに労働基準法の最低賃金を削除して、政府がここに新たなる最低賃金法を提出いたしておりまするゆえんのものは、業者間協定を全面的に出し、これの拡張を適用していこう、これがほんとうのねらいであるということは、先輩諸君がるると述べた通りでございます。労働者側を排除して、使用者側の一方的な決定にゆだねる非民主的な最低賃金の決定方法と言わざるを得ないのでございます。その上、この業者間協定の地域的拡張適用に関しましては、使用者だけに異議の申し立てを許しているのでございます。ただいま草葉隆圓君の修正案の中で若干説明がございましたけれども、社会党の阿具根議員の質問に対して十分の答弁がございませんでした。使用者本位の最低賃金も、ここまでくればまさに至れり尽せりと言わなければなりません。労働組合の組織を持たない労働者の個人々々は、まことに弱いものでございます。小規模における企業者対労働者の場合は、賃金の決定はほとんど一方的に使用者によってきめられて参っておるという事実は、私が申し上げるまでもなく、皆さん十分御存じの通りでございます。従いまして、ILOの条約でも、さっきから述べているように、あのような勧告がなされ、日本の労働基準法も第二条でこれを明らかに明示しておるものと、私は理解いたしておる次第でございます。このような規定は、まさに歴史的にもさかのぼる最低賃金制の実質を保つ最低線であり、ブルジョア民主主義が、労働者階級の闘争の発展によりまして、その形式性の中に、実質をいささかでも織り込まざるを得なかった。そのような結果、このような現在の実態が生まれてきている。その対等の原則を、私はこの政府提案の最低賃金法案に見出すことができないのでございます。このように見て参りますると、業者間協定に基く最低賃金は、最低賃金にあらざること疑いのないことでございまして、ブルジョア民主主義でさえ踏みにじるものということができましょう。全国一律一定額の最低賃金制には、日本の現状から見て無理だと主張する学者でさえも、最低賃金を労使対等の立場できめるという民主主義的な方式を導き入れることに対しては、反対する理由を見出し得ないのでございます。このようなことで、私はこの業者間協定を中心にする政府の最低賃金法案並びに草葉隆圓君の修正案に対して反対するものでございます。
 第四の反対いたしまする理由は、この法案が、職種別、業種別及び地域別に最低賃金を決定するという形態をとり、しかも家内労働者に対してはその一部にしか最低工賃を決定しないという矛盾でございます。日本やインドのように、業種別、職種別、地域別に経済力や賃金が非常に不均等であればあるだけ、業種別、職種別または地域別に限られた範囲について決定された最低賃金は、全く無意味なものになるのでございまして、その職業や地域の低賃金を、ほとんどそのままくぎづけしてしまい、あるいはこれを引き下げてしまう、そういう今までの事実があるのでございます。産業構造が不均等であり、最低賃金制がいまだに実施されないで、賃金格差の拡大することも、低賃金労働者がどんどん増加していくことも野放しに放置されてきました日本のような国では、かえって全国全産業に画一的に、生存線を下回らない最低賃金をテコにして産業構造を再編成し、改善していくことこそが、苦汗賃金の脱却と不当競争防止の道と信ずる次第でございます。(拍手)ILO二十六号条約が採択されまして、すでに三十年経過いたしました今日ただいまから、日本には最低賃金法ができていくのでございます。その最低賃金法としては、まことにお粗末でございまして、このような法律では、さっき柴田議員は、労働者が待っている、たくさん鶴首している者があると言われましたけれども、この法律は、むしろ現在の日本にとりましては、日本の名誉にしるされた一つの大きな汚点であろうと申しても過言ではないと思う次第であります。また、この法律が通過いたしました暁には、低賃金労働者が喜ぶだろうと政府は主張いたしておりますけれども、一人々々が、みずからの首を絞め、手足を縛る法律であったということを、明らかに自覚する日も近いと私は思う次第であります。現在、家内労働者は八十万人と言われております。これらの人たちは、一体いつの日になったら最低生活が保障されることになるのでございましょうか。この法律が成立したことによって、かえって最低生活の基準にすら到達する日が、はるかに遠ざかっていくことを、私は家内労働者諸君にかわって憂えるものであります。このようなことで、この法案に第四の理由といたしまして反対いたしている次第であります。
 以上四つの点に分けて、政府案と草葉君の修正案に反対して参りましたが、この法律が、かりに今日この国会で成立いたしましても、一体いつの日にこの法律の効果が現われ、苦汁賃金労働者の台所を潤おし、また中小企業経営者の不当競争を防止して、企業の安定化に役立つでございましょうか。労働基準法が公布されて、すでにもう十二年の歳月をけみして参りました。それにもかかわらず、その完全実施までには、まだ相当の歳月を要すると考えられるのでございます。労働基準法を完全に実施せよという、労働組合の法を守る運動が、直ちに実力行使だと判定される現在のこの矛盾、労働組合が法を守る運動をやりますと、汽車がとまり、あるいは企業がストップするという、こういう事実、こういうナンセンスな現代のこの実情を考えますると、労働基準法が実施されてから、これが完全に実施されるまでのこの過程を考えますると、この最低賃金法が、今、きょう通りましても、これが最低生活を潤おし、あるいは家内労働者の生活を引き上げる日は、まだ前途遼遠であろうと言わざるを得ないでございましょう。利潤追求が生命である企業経営者に一切の権限を握られた業者間協定で、数十万に上る事業所に数百万の低賃金労働者がおりますが、その低賃金労働者に対しまして、この最低賃金法が一つ一つ実施されていって、これが四千円から五千円になり、六千円になり、八千円になる、そういうことを、今、私どもが考えますると、まことに心寒いものを感ずる次第でございます。しかしながら、今、日本には、さっき申しましたように、数百万の飢餓賃金にある低賃金労働者がいるのでございます。そのような人たちは、今から十年先、二十年先に、法律が自分のところにやってくるだろうといって、手をこまねいて見ておっては、あすの生活はもうだれも保障してくれないのでございます。
 そのようなことで、社会党といたしましては、修正案を出しまして、全国一律、とにかく最低の線を一つ出して、その上に、情勢によって積み重ね方式の最低賃金法を提案いたしました。どうぞ一つ、現在この国会を見守っている国民の一人となって、最低賃金に、勤労者大衆を一日も早く苦汗賃金から救い上げるために、満場一致の御決定をもって社会党案に御賛成あらんことをお願い申し上げて、意見とする次第でございます。(拍手)
#72
○議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
 これより採決をいたします。
 まず、藤田藤太郎君外一名提出の修正案全部を問題に供します。
 表決は記名投票をもって行います。本修正案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、御投票を願います。議場の閉鎖を命じます。氏名点呼を行います。
   〔議場閉鎖〕
   〔参事氏名を点呼〕
   〔投票執行〕
#73
○議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか。――投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。
   〔投票箱閉鎖〕
#74
○議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
   〔議場開鎖〕
   〔参事投票を計算〕
#75
○議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数  百五十六票
  白色票    六十四票
  青色票    九十二票
 よって藤田藤太郎君外一名提出の修正案は否決せられました。
     ―――――・―――――
 賛成者(白色票)氏名  六十四名
   小柳  勇君  森中 守義君
   鈴木  強君  坂本  昭君
   相澤 重明君  柴谷  要君
   大矢  正君  森 元治郎君
   鈴木  壽君  久保  等君
   平林  剛君  横川 正市君
   加瀬  完君  阿具根 登君
   成瀬 幡治君  大和 与一君
   大倉 精一君  安部キミ子君
   近藤 信一君  伊藤 顕道君
   矢嶋 三義君  相馬 助治君
  小笠原二三男君  江田 三郎君
   天田 勝正君  荒木正三郎君
   小林 孝平君  藤原 道子君
   加藤シヅエ君  清澤 俊英君
   棚橋 小虎君  吉田 法晴君
   栗山 良夫君  羽生 三七君
   藤田藤太郎君  中村 正雄君
   市川 房枝君  占部 秀男君
   北村  暢君  光村 甚助君
   秋山 長造君  岡  三郎君
   永岡 光治君  亀田 得治君
   湯山  勇君  小酒井義男君
   戸叶  武君  松澤 兼人君
   上條 愛一君  河合 義一君
   片岡 文重君  阿部 竹松君
   島   清君  高田なほ子君
   曾祢  益君  東   隆君
   重盛 壽治君  佐多 忠隆君
   椿  繁夫君  千葉  信君
   内村 清次君  岡田 宗司君
   山田 節男君  赤松 常子君
 反対者(青色票)氏名  九十二名
   佐藤 尚武君  山本 利壽君
   手島  栄君  加藤 正人君
   松平 勇雄君  松岡 平市君
   西川甚五郎君  藤野 繁雄君
   竹下 豐次君  谷口弥三郎君
   新谷寅三郎君  紅露 みつ君
   杉山 昌作君  田村 文吉君
   村上 義一君  石黒 忠篤君
   笹森 順造君  仲原 善一君
   松野 孝一君  西田 信一君
   堀本 宜実君  鈴木 万平君
   大谷藤之介君  稲浦 鹿藏君
   吉江 勝保君  塩見 俊二君
   江藤  智君  三木與吉郎君
   雨森 常夫君  川口爲之助君
   後藤 義隆君  館  哲二君
   河野 謙三君  山本 米治君
   白井  勇君  田中 茂穂君
   有馬 英二君  苫米地英俊君
   近藤 鶴代君  小柳 牧衞君
   井上 清一君  斎藤  昇君
   小山邦太郎君  木暮武太夫君
   石坂 豊一君  植竹 春彦君
   草葉 隆圓君  高橋進太郎君
   川村 松助君  黒川 武雄君
   小林 英三君  重宗 雄三君
   野村吉三郎君  寺尾  豊君
   平井 太郎君  松村 秀逸君
   石井  桂君  木島 虎藏君
   佐藤清一郎君  柴田  栄君
   大沢 雄一君  平島 敏夫君
   勝俣  稔君  中野 文門君
   西岡 ハル君  横山 フク君
   土田國太郎君  前田佳都男君
   宮田 重文君  古池 信三君
   迫水 久常君  小沢久太郎君
   小幡 治和君  関根 久藏君
   野本 品吉君  秋山俊一郎君
   梶原 茂嘉君  上原 正吉君
   安井  謙君  伊能繁次郎君
   鹿島守之助君  岩沢 忠恭君
   杉原 荒太君  下條 康麿君
   吉野 信次君  郡  祐一君
   津島 壽一君  堀木 鎌三君
   木村篤太郎君  泉山 三六君
   佐野  廣君  高橋  衞君
     ―――――・―――――
#76
○議長(松野鶴平君) 次に、草葉隆圓君外三名提出の修正案全部を問題に供します。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#77
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって草葉隆圓君外五名提出の修正案は可決せられました。
     ―――――・―――――
#78
○議長(松野鶴平君) 次に、ただいま可決せられました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。
 修正部分を除いた原案に賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
#79
○議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって修正部分を除いた原案は可決せられました。
 右の結果、最低賃金法案は修正議決せられました。(拍手)
 議事の都合により、本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#80
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午前七時四十五分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、議長不信任決議案
 一、日程第一 最低賃金法案の中間報告
 一、最低賃金法案
ソース: 国立国会図書館
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