くにさくロゴ
1958/03/26 第31回国会 参議院 参議院会議録情報 第031回国会 社会労働委員会 第22号
姉妹サイト
 
1958/03/26 第31回国会 参議院

参議院会議録情報 第031回国会 社会労働委員会 第22号

#1
第031回国会 社会労働委員会 第22号
昭和三十四年三月二十六日(木曜日)
   午前十時五十七分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
本日委員坂本昭君及び田村文吉君辞任
につき、その補欠として山下義信君及
び高瀬荘太郎君を議長において指名し
た。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     久保  等君
   理事
           勝俣  稔君
           柴田  栄君
           木下 友敬君
           常岡 一郎君
   委員
           有馬 英二君
           草葉 隆圓君
           紅露 みつ君
           斎藤  昇君
           西田 信一君
           松岡 平市君
           横山 フク君
           小柳  勇君
           藤田藤太郎君
           光村 甚助君
  国務大臣
   労 働 大 臣 倉石 忠雄君
  政府委員
   運輸省船員局長 土井 智喜君
   労働政務次官  生田 宏一君
   労働大臣官房長 澁谷 直藏君
   労働省労政局長 亀井  光君
   労働省労働基準
   局長      堀  秀夫君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       増本 甲吉君
  説明員
   労働大臣官房労
   働統計調査部長 大島  靖君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働情勢に関する調査の件
 (国際労働条約批准等に関する件)
○最低賃金法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○派遣委員の報告
  ―――――――――――――
#2
○委員長(久保等君) これより委員会を開きます。
 委員の異動を報告いたします。
 三月二十六日付をもって坂本昭君が辞任し、その補欠として山下義信君が選任されました。
  ―――――――――――――
#3
○委員長(久保等君) 労働情勢に関する調査の一環として、国際労働条約批准等に関する件を議題といたします。
 御質疑を願います。
#4
○光村甚助君 先般の委員会で、実は全逓の問題を大臣にお聞きしたのですが、その前に、衆議院の予算委員会で、社会党の河野委員の質問の中で「全逓労働組合が何らかの態度を改めない限りは批准の手続をとらないというのは、閣議決定としても非常に総理のおっしゃられたことと矛盾だと思うのでありますが、これは一つ取りやめられる方が私は妥当だと思うのです。」こういう質問をしているのです。そのとき総理大臣の方では、「実はあの問題は、いろいろ新聞にも出ておりますが、閣議決定というような形をあの閣議ではとっておりません。」こういう答弁をしておるのです。ところが聞くところによりますと、日本政府からはILOの事務局に対して、全逓の労働組合の人たちが解雇三役をかえない限り批准しないのだということを報告しておられるということをわれわれは聞いているのですが、日本の政府から向うの事務局に出された文書の内容を読んでいただきたいと思うのですが。
#5
○政府委員(亀井光君) 日本政府からILO事務局に出しましたのは、閣議で了解いたしました事柄につきまして、そのまま出しております。このことはすでに新聞に政府の発表として出してございますが、全文は少し長くなりますがお読みしてよろしゅうございましょうか。……
 四つ項目がございまして、
  一、ILO第八十七号条約は、自由にして民主的な労使団体の基本的なあり方を定めたものであり、国際的にも極めて重要なものであるので、自由にして民主的な労働組合の発展を期するという労働政策の基本的立場から、これを批准することとする。
  二、右条約を批准するため、これと抵触する公労法第四条第三項及び地公労法第五条第三項は廃止することとするが、これを廃止するにあたっては、公共企業体等の労使関係の現状からみて、その業務の正常な運営を確保するため、公労法及び地公労法の関係部分について所要の改正を加えるとともに、事業法特に鉄道営業法の規定を整備することとし、これらの措置を講じた後、批准の手続をとるものとする。
  三、右の法的措置のほか、この際、公共企業体等の労働組合が国内諸法規を誠実に守り、正常な労働慣行が確立されるよう諸般の施策を講ずることとする。
  なお、本条約の批准が全逓労組の違法状態正当化する趣旨のものでないことは当然であるので、条約批准の手続は、その労使関係が正常化されるまではとらないものとする。
  すなわち、二と三の条件が可及的速かに措置された上、批准の手続をするものとする。
  四、なお、労働問題熟談会の答申にもあるとおり、ILO条約の趣旨とする労使団体の自主運営並びにその相互不介入という近代的労使関係の基本的精神がわが国の労使関係にも十分とり入れられるよう諸般の施策を進めて参るとともに、労使関係法全般についても、かかる観点から検討を進めて参りたいと考えている。
この趣旨をそのまま翻訳して、ILO事務局に提出いたしました。
#6
○光村甚助君 今読み上げられた第三項というものが労働問題懇談会の答申とも違うし、大体、この席で大臣が答弁された趣旨とも違うし、総理大臣が衆議院の予算委員会で答弁された趣旨とも違うのです。国会の中で、全逓の解雇三役の問題はこれは批准の条件じゃないのだということを言っておる。それにもかかわらずILOの事務局に対してこういういわゆる自分勝手な、労働省なりの勝手なこういう書面を出されるということは非常に私けしからぬと思うのですが、この点はどうですか。
#7
○国務大臣(倉石忠雄君) 今政府委員の申しました事柄は、労働問題懇談会の答申が出ました後に閣議で相談をいたしまして、閣議は、御承知のように、いろいろなやり方をいたします。閣議決定という取扱いをする場合もあり、閣議了解、この問題は、閣議でこういう意見が出て、それを了解事項として文書に残しておく、こういう取扱いであります。それで、今読み上げましたような趣旨は、もちろん閣議の了解事項でありまして、政府としは、やはり全逓労組が正常な方向に進んでもらうことを期待する、その上で八十七号条約は批准をしたいと、こういうことには変りがないのであります。
#8
○光村甚助君 当日の予算委員会で寺尾郵政大臣もこういうことを言っておるのですよ。これを直ちに批准というものと結びつけて考える立場に私はないのであります、こう言っている。郵政大臣がはっきり批准とこれを結びつけないと言っているのですよ。これはどうですか。
#9
○国務大臣(倉石忠雄君) 全逓労組が正常化してもらうということは、批准するとしないにかかわらず、これは郵政大臣が希望することであり、われわれもまた希望いたしておることであります。従って、全逓が正常化することが、それが批准に面接結びついているというわけではないのであるという郵政大臣の御説明のようでありますが、八十七号条約を批准するためには、ここに言っておりますように、正常なる運営が行われるということが大切であるからして、そこで私は、予算委員会のときにも申し上げましたし、いつもそういうことを申しておるのでありますが、あまり公開の席でそういうようなことをあらためて論議いたしますというと、いろいろかどが立ちますから良識を持たれた全逓労組の方々は、やはり政府が八十七号条約を批准するという大前提に立って労働政策を進めていこうというのであるからして、全逓の諸君もやはりそういう趣旨で必ず私は正常化されるものだと、こういうふうに良識を期待しておる、こういうふうに申し上げておるわけであります。
#10
○光村甚助君 今になって大臣は、ああいう席上で条件だというようなことを言えばかどが立つと言われますが、外国に出す日本政府の文書をわれわれは国会の中で聞いているのですよ。これを、全逓の解雇三役を変えることが批准の条件かということを、そういうことは条件じゃないとあなたの方ではおっしゃっているんですよ。ただ良識に待つという――良識に待つということはあなたの期待なんですよ。これは条件と期待とは違うと思うんです。そうして労働問題懇談会の意見を尊重するということをおっしゃっている。あの労働問題懇談会の中に全逓の解雇三役をかえなければ批准してはいけないという項がどこにありますか。それを一ぺん読んでいただきたい。
#11
○国務大臣(倉石忠雄君) しばしば私が説明いたしておりますように、労働問題懇談会というのは労働大臣の諮問機関でありまして、専門家がお集まりになって、諮問をいたしました事項について慎重検討していただく、それを政府は尊重いたして――実際に国民に責任を負う行政措置をとるのは政府でありますから、労働問題懇談会が述べられたることは尊重はいたしたいが、全面的にこれを取り入れるか、取り入れないかということは、行政府の責任において判断をすることであります。しかしながら、このたびの労懇の答申はわれわれは全面的に取り入れる、こういう非常にけっこうな答申である、このように存じて処理いたすわけでありますが、しかしながら、今あります全逓のあり方というものは、現在の法律に照らしてはやはり好ましからざる違法な行動であるからして、これはやはりただいまの法律を守っていただくようにしていただかなければならない。従って、ILO八十七号条約の批准ということは、ILO憲章にも言っておりますように、自由にして民主的な労使慣行が確立されるということを期待してありますから、そういう立場に立ってやはり現在ある法は守っていただかなければなりません。従って、行政府の責任においてILO条約の批准を国会に提出する場合には、今のような違法行為がなお存続いたしている限りは、やはりそれは提案することが困難である、そういうふうにわれわれは考えております。
#12
○光村甚助君 全逓の違法行為と八十七号条約の批准は私は別だと思うんです。全逓の方ではこれを提訴しているんですね。全逓と機労、総評が提訴して八十七号条約を早く批准しなさいということを勧告しているんですよ。そこで、あなたの方では、これを労働問題懇談会に持ち出して、早く批准しなさいとわれわれが言えば、労働問題懇談会にお願いしているから結論が出るまで待って下さいということを再三言っているんですね。そうして結論が出たら、結論以上の強いこれはいわゆる一つの罰則のようなものです。労働問題懇談会が出すまで待ってくれと、これを尊重するのだと言っておいて、出たら懇談会が出した以上の線でこの全逓の問題をやられることは、これはあなたが労働問題懇談会にお願いしておいてそれ以上のいわゆる罰則のようなものをつけるということは、これは非常に将来私は問題が起るだろうと思うんです。これはまあ別にしまして、労働問題懇談会の石井さんでさえも、この答申の中に、それから全逓なんかの現在起っている問題を三、四、五の問題にひっかけて再検討しろということは申し上げておりませんと、はっきり言っているんですよ。それにもかかわらず、労働省が勝手に、これがなければ条件としないということは、私はこれはもう非常に国会を侮辱し、われわれをだまして、いわゆるああいう発言をしたり、それから日本の労働運動を私は弾圧するものだと思うんですが、どうですか、この点。
#13
○国務大臣(倉石忠雄君) 日本の労働運動も政治活動もやはり国民大衆というものを相手に考えなければならぬと思います。私はやはり国民大衆というものは、自分が経営しておる公共性のある事業というものは、正常なる運営が行われることを期待いたしておると私どもは確信しております。その国家意思の表現は、やはり公労法という法律になって表われております。しかし、これは八十七号条約というようなものを尊重するという建前から見れば、やはり若干そぐわない点があるから、これは修正しようではないか、しかし、その修正をするという事柄も、やはり正常なる運営が行われることを期待しているのでありますから、政府が行政の責任を国民に対して負う限りは、国民の期待している公共性を持った事業が正常なる運営が行われるということは、政府が行政府として責任をもってやるごとであります。
 そこで特にここで申しておりますように、「事業の公共性にかんがみて、関係労使が、国内法規を遵守し、」こういうことを答申にもいっておりますし、この事柄は私どもは現在の違法行為が行われておることはやっぱりできるだけみんなが穏かに正常化していくことがいいことではないか、そういうことを言っているのであります。私はそういう意味で、もちろん全逓の諸君も良識に従って行動されることを確信をして、そして早く、そういう法にいっておりますように、よき労働慣行の確立に努めることが肝要である。こういうことになっていきたいと希望しているわけです。
#14
○小柳勇君 ただいま光村君が質問した順序に従って、補足質問をしていきたいと思います。
 第一は、一九五九年三月十日に開かれた第四十一回のILOの理事会で、日本政府が報告をいたしておる。その報告について今読まれたが、われわれはその理事会に出られる前にここで質問して、労懇の答申というものは前提として大きな筋は、これは批准しなさいということである。批准するためには、公労法の四条三項、あるいは地公労法の五条三項を削除しなさい、これだけが本体ではないか。あと条件とか何とか言われるけれども、それは条件ではない、そういうことをしばしば質問して、大臣も初めの方では大体そういう趣旨の答弁をされておった。ところが、その後の理事会に対して日本政府は、一方的に全逓の三役が再選されたということが――これを再選せぬことが大きな批准の前提のような報告をなされている。この点について、そのときのいきさつについてもう一度正確に大臣から答弁を願っておきたい。
#15
○国務大臣(倉石忠雄君) 私がしばしば申し上げておりますように、政府が行政の責任を負うのでありますから、労懇の答申というものを尊重することはもちろんでありますが、労懇の趣旨は、ILO八十七号条約を批准すべきものである、こういうことであります。これは政府もけっこうである。そこで、その批准をすることによってどういうふうになってくるかということについては、政府という行政機関が国民に対して責任を負って行政をやるのでありますからして、万全の措置を政府の責任においてやることは当然なことであります。国民に対するこれは義務でありますから、従って、国民の期符いたしておる公共性ある事業の正常なる運営をはかるためには、政府としてはこういうふうにしなければならない、こういう考えで、そのことの経過をILOの事務局にも報告をいたした、こういうことでございます。
#16
○小柳勇君 そのときの理事会は、他の国の問題は全部秋の方の総会に譲って、そうして日本の現在のこの条約の批准の問題だけを取り上げた。それはちょうど今国会が開会中であるし、この国会をのがすと、また秋の方に延びるというような……、批准することが大前提である。一番先にしなければならぬということで、ILO理事会で日本の問題を特に取り上げたと理解しているが、大臣はこの点についてどう考えておるか。
#17
○国務大臣(倉石忠雄君) ILO事務局というものは、御承知のように、やはりそこに参加しておる国及びその条約を批准しておる諸国が、ILOの精神に従ってILO憲章を尊重して行動をするということを一般的には期待いたしておるわけであります。しかしながら、ILO事務局といえども、所属しておる国家の内政に対して干渉することはできません。従って、私どもはILO憲章を尊重して、八十七号条約を批准するという大方針を決定したという通報をいたしたのでありますから、ILOに対して私どもがとるべき参加国としての意思表示は明白にいたしたのでありますから、これからはやはり国内問題で、政府が責任を負うて国内の諸般の状況を調整して、なるべく早く批准の手続をとりたいと、こういうふうに考えております。
#18
○小柳勇君 国内では、この全逓の問題については条件ではないというような答弁を国会にしておいて、ILOの理事会に対しては、これが条件であって、これを解消しなければ批准はできないというような報告がなされていいものであるかどうか、伺います。
#19
○国務大臣(倉石忠雄君) 私ども政府は、やはりILOの八十七号条約を批准する前提としては、公共性のある事業の正常なる運営ということを期待しておるのでありますから、先ほど申し上げましたように、現在ある法律は尊重してもらわなければならない。わざわざ違法な行為をおやりになっておるようなことは改めてもらわなければ、やはり批准手続というものは困難であると、こう申しておるのであります。
#20
○小柳勇君 現在全逓は、三役の首切りについては不当だとして裁判にかけておって、違法であるか合法であるかの問題は裁判所が決定すべき問題であって、労働大臣がこれを一方的に違法だとして処置しようとすることについては、それこそ労働運動に対する弾圧であるし、越権であると思う。大臣はどうお考えか。
#21
○国務大臣(倉石忠雄君) 労働大臣が今違法であるということを特に強調するわけではありませんが、郵政大臣というものは全逓に関係のある閣僚であります。やはり全逓の郵政当局の当事者としては、現在の全逓労組のあり方はこれは非合法である、こういう判断のもとに団体交渉を拒否いたしておることは御承知の通りであります。それはやはり私どもとしては正しい見解だと、こういうふうに郵政当局の態度を追認しておるのであります。
#22
○光村甚助君 関連。違法と批准とは別なんです。あなたの方はこれをうまく利用しているのです。全逓が違法――これはあなたのおっしゃる通り違法といたしましょうか、あなたの考え通り。解雇されない前からこれは批准しなさいと言っているのですよ、日本の労働組合は。全逓の三役が解雇されたのは去年の三月なんです。そのずっと何年前から批准しなさいと言っているのですよ。あなたの方は労働問題懇談会に頼んであると言っていて、今度答申が出たら全逓の三役が解雇されて、これをかえない限りは批准しないと言っている。これは言いがかりですよ。これは全く何といいますか、言葉を強く言いますれば、ごろつきが言いがかりを言っているとしか私はとれないのです。全然違法と批准というものは別個に考えなければならない問題である。たまたま全逓の三役が去年解雇された。これがあるから批准しないというのはこれは言いがかりですよ。どうですか、この点。
#23
○国務大臣(倉石忠雄君) 全逓労組が要求しようとしまいと、やはりILO憲章に協力をするという日本政府の態度は変らないのでありますからして、事情が許すならばなるべく多くの批准をいたしたいのであります。そこでたまたま全逓関係の問題を初めとして、大きくクローズ・アップして参りました八十七号条約は、やはりこれは何とか処置すべきものであるというので、一年半あまり前に労働問題懇談会という専門家に付託して審議を願った。そこで批准をしようという態度を政府はきめたわけであります。しばしば申し上げておりますように、条約を批准するということの責任は行政府が負わなければならないのであります。従って、その行政府としては、期待している国民に対しては相済まぬことをすることはできないのでありますからして、この政府の考え方が正しい、正しくないということは、議論は別として、やはり政府が、現在多数党によって選ばれたる政府というものがあるのでありますから、これが国民に対して期待を裏切らないためには、行政府としては、こういうふうなことをして万遺憾なきを期した上で批准をするという態度は、私は正々堂々たる態度だと思うのであります。従って、この答申にあるように、「特に事業の公共性にかんがみて、関係労使が、国内法規を遵守し」、と言っておるのであります。従って、故意にやはり法律を曲げて考えておられるようなものが存在する以上は、特に公労法四条三項の労組関係でありますから、そういう事態が続いている限りは批准ということは不可能である。かりに政府が単独でそれを国会に出したといたしましょう。国会の多数である自由民主党が党議で決定している方針を私ども読んでみましても、たな上げされるのが関の山であります。私どもといたしましては、従って、そういうことを荒立てて言い合わないようにして、光村先生のような、やはりその道の大家の、専門家がおいでになるのでありますから、じゅんじゅんとやはりその方は関係当局を説得していただき、われわれの方も多数党の人々を説得して、やはり将来永遠にわたってよき労使慣行を作ろうというために、みんなが協力をするということが大事じゃないか、従って、議論し合わないで、一口も早く批准の手続が円満に行われるようにということを期待しておるのであります。
#24
○小柳勇君 批准の手続がとられることを期待して、われわれもそれを今直ちにやりなさいということを要請して質問をしているわけです。ILO八十七号条約の精神そのものが、全逓のような問題に労働大臣が介入することをするなという条約であろうと私は理解しております。その点について、このILO条約の精神、八十七号条約というものは結社の自由、団結権の保障をするのだから、そのような組合の自主的な役員の選出については労働省などがくちばしを入れるな、そのようなことを勧告し、条約としてきめた条約であると理解しているが、大臣はこの八十七号条約の精神について、一体どのように解釈しているか。
#25
○国務大臣(倉石忠雄君) ILO八十七号条約をかりに日本政府が批准をしておる場合に、ただいま御指摘になりましたような介入を政府がいたすということはもちろん条約違反であります。さようなことをなすべきではない。しかしながら、日本の政府は、基本的にそういう今あなたのおっしゃったようなことに介入しようなどという意思を持っていないのであります。そこでこれを批准をすることがよろしい、批准するには四条三項が抵触するおそれがあるからということであるから、これを直さなければならない。これを直すことによって、先ほど来しばしば申し上げておるように、同属に対して責任を負う行政府としては、国民にこんなことをされては困るのではないかというふうな不安感を持っていただかないために、政府の責任においてそれぞれの措置を講ずる、これは国内法の問題でありますから、ILOの関与を受けないことであります。そういうふうにして、政府が国民に対して責任の負えるような、反対の立場の方はそのようなことはよけいなことだとお考えになるかもしれませんが、現存している政府は岸内閣であります。従って、この内閣が国民の負託にそむかないためには、こういうふうなことをすべきである、こういうことを言っておるのでありますから、その措置を講じて、そうしてすみやかに八十七号条約を批准する、こういう態度でもって、先ほど私が申し上げました全逓労組の諸君に対する期待というものは良識を持たれる組合の指導者たちであるからして、私たちがとかくの言辞を差しはさむとかえってまずいからして、その良識に訴えて正常な運営が期せられるようにいたしたいものだと、こういうことを希望しておるわけであります。
#26
○小柳勇君 全逓労組に対する期待と、ILOの総会に対する条件でございますという報告とは相当の隔たりがあるし、全然そのやり方について越権であると考える。で、このILO条約の解釈については、労働大臣が一方的に考えることよりも、たとえば国際自由労連の会議とか、あるいはILOのこの理事会などで、そのような全逓などの国内の問題もあることを承知しながら早く批准の手続をとりなさい、それには公労法四条三項、地公労法五条三項を削除する、それだけでよろしいということを世界の識者が了解しておる。それを日本の政府だけが全逓に対する期待、それを条件にすりかえて批准をサボっておる、こういうことについては私どもとしては納得できないし、そのことによって、この全逓の三役がもしかえられたとするならば、それこそ私は世界の良識に訴えて、労働大臣は労働運動に対する大きな不当弾圧をやったとして批判されても仕方ないと思う。そういうことでICFTUから一九五九年三月十四日に開催された小委員会で、日本政府の今のやり方について批判した勧告及び書記長提案の文書がきておりますが、この書記長提案について、労働大臣は、一体どのようにお考えか、見解を聞いておきたいと思う。
#27
○国務大臣(倉石忠雄君) 労働問題というものはきわめて国際性を持っておるものでありますし、究極的にわれわれは健全なる労働運動が発達していき、また、それがりっぱな国際的連合体に成熟いたしていくということは、世界の民主主義化のために喜ばしき現象であると思っております。従いまして、ICFTUが大いに力を伸ばしていただいて、日本の大きな労働組合もなるべくこの国際自由労連に参加して参るということの傾向は歓迎すべきことであると思っております。従いまして、ICFTUのおっしゃることは、やはり一応ICFTUの考え方として敬意は表しますけれども、日本の国内事情について、政府の態度に対して外国の労働組合がとかくの言辞を差しはさむことは私どもは感服いたしませんし、参考としては承わりますけれども、そのようなものに服従しようという考えはありません。日本の政府はどこまでもやはり国際情勢も勘案し、ILOの憲章も十分尊重し、しかる後に九千万国民の負託に背かないように、行政府の責任において処理をして参る、こういう考えであります。
#28
○小柳勇君 国民の負託という言葉を再々使われるが、国民は一体どのようなことを考えているかというと、それは現在の全逓の三役再選の問題について裁判所で今裁判中であるから、その判決をこそ国民は持っておれ、労働大臣は一方的にこういうふうな批准を天びんにかけてこれで全逓役員はかわれと、このようなてこ入れをすることを国民は期待しておらないと思う。この労懇の1繰り返して初めから質問するけれども、労懇の答申の精神は、全逓の三役をかえろということを言っておるのかどうか、答弁を願っておきたいと思う。
#29
○国務大臣(倉石忠雄君) 国民の多数の意思というのは、社会主義、独裁国家は別でありますが、やはり私は、議会に反映する意思は国家意思だと確信しております。そのために法律というものはそこで決定をされております。私どもは、その意味において、私どもが行政の責任を負っておるのでありますから、この行政の責任は何人の関与も受けない不順独立の見解に立ってやはりそれぞれの施策を推進していくべきだと思うのであります。もちろん少数者の御意見は十分尊重するし、外国の労働組合の御意見も十分拝聴する襟度を持たなければならぬことは当然でありまするが、最終的に腹をきめて行政の責任を負うのは政府であります。従って、私ども政府が考えた、検討いたしました立場から申せば、先ほど来申し上げておるように、やはりILO八十七号条約は批准し、公労法四条三項、これを削除するということの結果、どのような影響を行政に持ってくるかということに対して慎重に勉強し、検討するかということは、行政府が国民に対して責任を果す必要なる条件でありますから、そういう意味でわれわれは検討をいたしておる。そういう意味でありますからして、私どもはこのILO八十七号条約に対する答申において、個別的に全逓というような文句は最終的答申にはありませんけれども、私がさっき申し上げましたように、特に事業の公共性にかんがみて関係労使が国内法規を順守するということをいっておるのでありますから、やはり法律というものは守る建前をとっていただかなければ、国民は法治国家として不安を感じるでありましょう。それを申しておるのであります。
#30
○光村甚助君 大臣は多数党をとっておれば何でもできるというようなことをおっしゃいますね、行政の責任だから。話をあまりここに発展させてくれば、こちらも話を発展させますがね。多数党であれば何でもできるならば、小選挙区法だってつぶれないでしょう、警職法だってつぶれないでしょうがね、あなたの方が行政府の責任としてお出しになるのだったら。幾ら多数党だって、小選挙区法を出したときも、警職法を出したときも、国民の批判を買って引っ込めたのでしよう。あれと今のこれと非常にあなたの答弁は違ってくると思うのです。何でも多数党をとって、責任をまかされているのだから、行政府の責任でやられるのだとおっしゃるのだったら、さっき私が言った警職法、小選挙区法はどうしてお引っ込めになったのでしょうか。これは話は別です。あなたが話を発展さすから、私もそこまで話を発展さすのです。全逓の違法行為ということをおっしゃるけれども、これは全逓の違法行為というのは、あなたがおっしゃるのはわれわれと考え方が違って、全国大会で――ちょっと大臣聞いていない――全国大会でこういう闘争をやりましょうときめた。それをただ全逓の三役が時期をきめた、何月何日にやれといって指令をやっただけです。これで首を切られる理由はないと目下提訴している。国民大多数とおっしゃいますが、労働者はどのくらいおりますか、労働者の家族を入れてみんなこの八十七号条約を無条件に批准しないと言っているのです。あなた、どこをつかまえて国民の多数だとおっしゃいますか。常に話をぼかしてあなたはおっしゃいますけれども、多数党だったら何でもいいんだ、多数党の考え方でものを解釈して政治をやるのだという考え方は、非常に横暴だと私は思うのです。これは関連質問だから話をあまり発展させませんがね。そういう多数党の政府だから、おれの方に責任があるから、どういう考え方でものをきめてもいいという考え方は、これは非常に危険な考え方、ファッショですよ。こういう思想はやめてもらいたいと思うのです。
#31
○国務大臣(倉石忠雄君) 私が申し上げておりますことは、今は国民の多数意思というのが反映しておるのは国会である、その国会で多数をもっておるのが自由民主党であって、その上に内閣というものが立っておる。従って、われわれは自由民主党の意思を尊重して、そうして行政の責任を負う、こういうことを申しておるのであります。しかしながら、その行政の責任を負う場合でも、法律案を提出する場合でも、もちろん少数者の御意見を尊重して十分にそれを拝聴して、そうしてよいところはこれを取り入れて原案を修正するということもあり得るでありましょうし、それが民主主義国会だとわれわれは認識しておるわけであります。ただしかし、八十七号条約を批准するについては公労法に影響をもってくる。この公労法は公共性を持っておる。たとえば国鉄にしろ、郵政にしろ、それを経営しておる自体はだれであるかというと国民でございますからして、その国民の負託を受けておる政府としてはこんなことをしたのでは仕方がないのではないかというおしかりを受けないように万全の対策を講ずる義務があるのだ。しかも御承知のように、やはり八十七号条約批准と関連しまして、比較的国民の声が伝えられるところとまあ世間では思われておる新聞の論説などを見ましても、大体においてやはり全逓労組というものは善処した方がいいのではないかという論説も多いことは、光村さんもよく御承知の通りであります。そこであまりかしこまらないで、そして世の中というものはそう理屈通りにいきませんからして、何とかいう学者は、社会は見えざる手によって見えざるところへ導かれるものだと教えておりますから、その辺の呼吸のところで、一つ政府がやりいいように、皆さんに喜んでいただけるように、すみやかに批准をするにはどうしたらいいかということについて御協力をお願いいたしたいと、こういうことを言っているのでありますから、究極においては光村さんと全く同じ考え方で、よろしくお願いいたします。
#32
○光村甚助君 公労法の解釈でもあなたと考え方が迷うのですよ。この間から非常に大臣はうまいからごまかすけれども、四条三項ができた趣旨は、あなたはこの速記録に残しておられますけれども、違うのですよ。この違うことは、この間指摘しましたが、あの時分に占領軍が、共産党が非常に組合を牛耳っているからけしからぬ、首になった人がまた組合に入って指導するということは好ましくないといって四条三項、五条三項を入れたいきさつは、この間あなたとやりとりしました。しかし、当時の労働事情と今とどう違うかということを私は言っている。だんだん世の中というものは進歩して、組合も、考え方もだいぶ進歩発達してきている。当時の経済事情から今六大産業国家なっているということを大臣も認めておられるのですね、世の中が、そして労働者の大部分が国家経済に寄与してあの敗戦のときから六大産業国家になっているのです。これは労働者が一生懸命やった証拠ですよ、資本家もやっておられるが。その当時四条三項あるいは五条三項というものが非常に酷だからいけないということでわれわれはずっと前にILOにこれを頼んで、ざっくばらんに言えば頼んで、日本政府が批准しないからあなたの方からも勧告してくれといって頼んでいるのです。たまたま全逓と機労がそういう問題にぶつかって、日本の政府が四条三項を削除しないからといって勧告をしてきているのですよ。それをあなたの方がもっと早く勧告を聞き入れて、労働問題懇談会から早く答申をもらって批准すればこういう問題は起っていないわけですよ。全逓の問題を条件にすることはないわけなんです。だから、われわれは四条三項というものを早く削除しなさいと、こういうことを言っているのですから。私は全逓のこの問題とからませるということは、非常に私はあなたの考え方がけしからぬと思うのです。それから公労法四条三項ができたときのいきさつから考えても、これはもう全逓の解雇ということと関係なしに私はこれを削除するのがほんとうだと思うのですが、どうですか。
#33
○国務大臣(倉石忠雄君) 四条三項につきましては、三年ほど前に公労法の改正をいたしましたときにもいろいろ議論がありました。こういうものは不必要であるという競輪もわれわれの中にありました。まあ当時の事情であれは挿入されることになったわけでありますが、私は基本的にいえば、労働者に限らず、あらゆる人々が自由なる団結をし得るということは好ましいことだと思っておりますから、もちろんこの四条三項というふうな制約は加えない方がいいと思っております。しかし、そのよって来たる原因については光村さんも御指摘の通りであります。そこで、終戦以来の日本の産業の今日まで伸びて参りました背景には、やはり働く人々の偉大なる協力ということも十分われわれは理解をいたしております。従って、四条三項の削除についてはもう意見が一致しているのでありますが、そこで、それを削除し、批准の手続をしたい、そういうことにおいては政府はもう方針をきめておるのでありますが、それにしても、やはり正常なる労働運動を行うように現在の法律を守っていただくという立場をとっていただくことが、ILO八十七号条約批准の精神に合致するのだということを申しているのであります。
#34
○藤田藤太郎君 ちょっと今聞いておりますと、大臣は労使問題に介入しないという建前をとっておる、こうおっしゃる。このILOの八十七号条約批准の問題が積極的に出て参りましたのは二十八国会からだと言っていいと思います。それではこの二十八国会では、政府はどういう意思を国民に訴えたかというと、早くわれわれが批准せよという要求に対して、労働問題懇談会の結論に従いますということを国民に訴えているわけです。今の倉石労働大臣にかわってからでも、それは確認されていることであります。大臣一人が行政をやるんじゃなしに、大臣のもとにはいろいろとその道に堪能な行政官というのがたくさんおいでになる。だから、八十七号というものを批准したらどうなるかくらいのことは、積極的な日本に意見が出てきた前からもわかっているし、積極的にこの問題が議論になったときなら、なおさら私はこの問題はわかり切っている問題だと思う。そうすると、四条三項と五条三項というものが、この八十七号を批准するということになれば、障害になるといいますか、これを取り除くということが私は八十七号の大精神だと思うんです。そういう道がついてきて、進んできて、この場合になって全逓が云々という話になって参りますと、それではこれが平常な形で、私は結社の自由と団結権の擁護というものについて、政府はどういう工合にお考えになっているかということが、どうも私には、だんだん今の質疑を聞いているとわからなくなってくる。一つの瞬間をとらえてどういう工合に処理しようとされているのか。何かの意図がなければ今のような答弁というものはこれは生まれてこないと思う。たとえば八十七号を批准したという状態、四条三項、五条三項というものを削除された状態において、労働組合の幹部はどういう位置につくか。労働組合というものはどこかから命令されて幹部を作るんじゃない、自分の利益のためにおのずから一番利益になり、一番信頼する人を選ぶというのが、私は労働組合だと思うのです。だから干渉されて、これを委員長にせい、書記長にせいというような格好でできるものじゃないと私は思う。永古末代、幹部というものは固定するものでもないと思う。これが民主的に選ばれてくる、ほんとうの民主団体である労働組合の姿であると思います。そうすると、この結社の自由、団結権の擁護というこのILOの大精神に沿って、これを批准している姿というものはどうなのか。だれが選ばれても、どのような人が選ばれても、この大精神に沿って組合の運営、団体の運営というものは私はやられると思う。
 で、今問題になってくるのは、それじゃ何が問題になってくるか。これは批准されたときから、今のたとえばの話だが、全逓の幹部が永古末代までいくのかどうか、そういう保証は何人も私はすることはできないと思う。そうすると、いつの瞬間に――今政府の言われていることが、論理的に、結社の自由、団結権の擁護という大精神の問題と、今言われている問題というものとはどういう工合に解釈していいかということは私はわからない。労働問題を幾らかでもかじっている人なら、私はそういう疑問が出てくると思う。何のために全逓の云々ということが政府から出てくるかという、こういうこと自身は、結社の自由と団結権の擁護というこのILOの批准――八十七号を批准するという大精神と今議論されていることというものは、私はどうしたって理解ができないんです。これが批准されたという瞬間からどうなるのか。それでも政府は、これが批准されても、あなた方はその団結権の自由に対して何らかの処置でこれに制限を加えていくというお気持があるのかどうか。私はそこまで考えざるを得ないような質疑になってきていると思う。その点はどうか。一ぺん御意見を承わりたいと思います。
#35
○国務大臣(倉石忠雄君) ILOの八十七号条約を批准するということは、その次にくるものは、考えられることは、公労法四条三項の削除、地方公労法五条三項の削除、そこで、そういうふうなことが行われるという目的は、非合法を合法化するということではないのであります。私どもは、やはりILO八十七号条約を批准するということは、ILO憲章にうたっている精神を尊重するということでありますから、やはり正常な労使慣行が結ばれて、これが運営されていくということを期待しているわけでありますから、従って、そういう期待のもとにILO八十七号条約の批准を希望するという方々は、やはり正常な労使慣行が行われるということを期待される人々でありますからして、やはり国内法は順守するという民主的立場をおとりになることは当然なことだ。われわれは、労働組合の役員に対して干渉しようなどというようなことは毛頭考えておりません。自由に選ばれるべきものであります。しかしながら、そのことの結果、現在行われていることはどうであるかといえば、法で認めているところの代表権を持つ代表者がいないというようなことは、まことに悲しむべき事態である。従って、ILO八十七号条約を批准するという建前に立ったのでありますからして、やはり関係労使もそれに従って正常なる姿に返ってもらうということが大切ではないかと、こういうことを言っているのでありますからして、ILO八十七号条約をすみやかに批准するには、やはり国内法を順守する、こういう態度を関係労使ももちろん確認してもらわなければならぬ、これが行政府としては国民に対してその責をふさぐ第一の方法である、こういうことを政府は考慮しているわけであります。
#36
○藤田藤太郎君 今大臣の御意見がありましたけれども、八十七号の大精神というものを一条ずつ私は解釈していけば、非常に意義のある、味のあるものだと思っております。たとえばこの八十八号の四条の解釈にいたしましても、行政機関による――これは解散の問題を主として取り上げておりますけれども、一つの考え方として、行政処置が先行しちゃいかぬというような形の統一解釈というものが行われております。八条を、よく労働大臣は一項を取り上げて、その国の国内法規の尊重ということを言われるけれども、二項には明確に、そのような大精神に沿わない法律を、国内法を作ってはいかぬということは、明確に書いてあるのです。それが八十七号の、私は大精神だと思うのです。問題は、私たちが問題にしたいことは、この八十七号を批准するというのでありますから、私は不法行為云々という議論が出てくるけれども、だんだんと先日の意見から違って、郵政大臣がそう言ったから私はそれに共鳴しているのだというような考え方になってきておりますね、きょうは。そこで問題は、私はそれじゃこの八十七号批准というものが行われた場合に、むしろこの大精神に日本が沿っている状態のことを、どうなんですかと、こう言っている。制限をつけようとしているのですか。八十七号を批准しても、四条三項、五条三項にかわるような制限をつけようとする意図が政府にあるのですか。そうではない、そういうものはないとおっしゃるならば、なぜこの結社の自由、団結権の擁護というこの大精神を尊重して、この四条三項、五条三項というものを削除するという――政府が唯一の私は諮問委員会として託された労懇においても、そのことは明確に私は結論が出ていると思う。で、これはほかのものと違って、批准したという瞬間から、この八十七号の大精神に沿って、この条約を尊重する、守っていくという精神で、そのおのおのの批准した国は国内法を整備していく、これは私は当然のことだと思っております。そうなってくると、今全逓の問題云々ということが、私は出てくるということがどうも理解できない。先ほどから言いがかりか云々という言葉が出ましたが、どうも私たちはそういう感じがしてならないのであります。論理的にそれじゃもっとうまく説明ができるかどうか。先日からの質疑の中にも、私はうまい説明が出てこないと思う。八十七号を批准するというのだから、批准した瞬間からどうなるのか、それじゃ今の問題は、瞬間々々という問題だけで、瞬間々々というだけで、それじゃその批准したあとの問題はどうなるのかということが明確にならないと、今のおっしゃっているようなことがどうも僕らにはわからぬ。私は先ほどの質問から聞いていて、そういう工合に感じます。
#37
○国務大臣(倉石忠雄君) 世界各国でいろいろの機関に参加して条約を締結しております。条約上の義務をその国家が負うのは、条約を批准した後に条約上の義務を負うわけであります。従って、政府がかりに八十七号条約というものを批准をした上で、公労法四条三項のようなものは置けない、現在は批准をいたしておりません段階におきまして、こういうものがあるから批准をするということになれば四条三項は抵触するおそれがあるから、これは削除をしなければならないことは、しばしば議論のあった通りであります。
 そこで、現在ある法律というものは批准前の現行法であります。この現行法というものは守っていただく建前をとってもらうようにしなければならない。これは法治国家のもとにおいては当然のことだ、従って、政府は行政府として、やはりこの現行法を順守していただくということを要求するのは当然のことだと思うのです。そういう意味で、私は現行法はどこまでも尊重するというふうな態度をとってもらいたい、こういうことを希望しているわけであります。
#38
○藤田藤太郎君 そうすると、八十七号は批准し、四条三項と五条三項は削除するということは、政府は腹をきめて、その後についても、批准したあとについては制限云々ということは考えていない。それじゃその歴史というものは長いのです。この条約をめぐっての歴史というものは長い。少くとも積極議論をされたのは一年前の二十八国会からなんです。この内容を読んでみて、今批准してから云々ということじゃなしに、瞬間からどうなるのか、八条の一項だけはよく今までそこで答弁されましたけれども、二項のことはお言いにならない。並列上この大精神を生かすために、こういう工合な条約ができているわけです。そうしたら、瞬間からどうなるのだということには何の制限も、何もするつもりはないというなら、今全逓の問題が出てくるのはおかしいじゃないですか。どういう理屈で出てくるのです。瞬間的の気慰めということになるのですか。それじゃ今度労働組合が役員を選ぶときに、おのずから自分の意思を代表して、信頼する人を選んできた、こういうときにはどのような立場の人が選ばれるかわからぬ。それには何の制限も、労組への介入もしないというなら、今の瞬間の気慰めだけをもって、ここでそれがどうだ、こうだといって、結社の自由、団結権の擁護という大精神を批准するのだと口で言っているけれども、腹の底からは、そういうことを私たちは、今までの質疑の中ではどうもそこらがよくわからなくなってくる。だから、私は、現実の問題としていっても、この問題を処理されて、それが法を正常にするのだ云々と言うなら、その一つの理屈があるでしょう。さいぜんから聞いていると、そういう理屈をおっしゃいますけれども、実際問題として、この八十七号の内容をよくお読みになってみて、この精神を汲んで、直接の今さしあたりの四条三項と五条三項をはずすのだという精神で一年間おいでになった気持と、それから今全逓の問題といわれている結社の自由と団結権の擁護という大精神を守っていくのだという腹をきめたということは非常に矛盾するのじゃないですか。だから瞬間の気慰めだ。それをもってこういうわれわれが八十七号の批准という問題をめぐり、四条三項、五条三項の問題をめぐって、ここで政府の一時的な瞬間的な気慰めという問題をもって論議しているとしか考えられない。私は非常に残念でございます。これは労働関係法を少しでも見ている方なら、私は、そういうことはそういう工合に皆感じておられると思う。だから期せずして、労懇の結論もそういう方向に出たのだと私は思っている。だから、この際明確に、正常な形に、要するに八十七号を批准して、四条三項、五条三項というものを削除して、この国会で明確にされることが、組合運動の正常化云々ということは労働組合自身が自主的にやることであって、社会の中における労働組合としておのずから別個の問題として、労働組合の運動というものが自然に私は世の中の制約やおのずからの自主的な、民主的な決定によって運営されていくものだと私は思いますから、そういう問題と直接関係をしてここでおっしゃることについては、私はなかなかわかりにくい。だから、政府ははっきりここで明確に、八十七号を今国会で批准して、適当な処置をとられることが私はいいと思う。それでなければ、ただいまの論議を聞いていてもなかなか私にはわからぬ。これだけ申し上げておきます。
#39
○小柳勇君 抽象的では論議になりませんので、一つ一つきめていきたいと思うのですが、今藤田君の質問がありましたから、それに関連して一つ一つきめて参りますが、労懇の答申の中に、全逓の三役の問題が含まれておると大臣は考えておられるのかどうか、はっきり一つ答弁を、一つ一つきめて参ります。
#40
○国務大臣(倉石忠雄君) 労懇の答申の中には、全逓という文字を最終的には使っておりませんが、やはり労懇が言っておりますように、「特に専業の公共性にかんがみて、関係労使が、国内法規を遵守し、」云々ということは私どもが考えております考え方と同一意見であると思っております。従って、終局的に結論を申し上げますならば、やはり政府は、今鋭意法改正等について準備をいたしておる段階でありますが、今国会には間に合わないと思います。それから関係労組である全逓が今日のような態度を継続しておる限りは、批准手続というものは政府としては非常に困難であると、こういうことを申し上げます。
#41
○小柳勇君 第一点の、労懇の精神の中に含まれておると理解しておられるようだが、三十四年の一月十九日の十回の労懇の中で、速記録をここに持っておりますが、中山会長はこういうことを言っておられる。「それから全逓なんかの現在起っている問題を、345の問題に引っかけて再検討しようということは申し上げておりません。」とはっきり中山会長は言っておられる。従って、この労懇の答申の中には、あなたが今言ったような、全逓の三役をかえよと、それが国内法の順守である、このようなことではなくて、この国内法の順守という問題は、将来第二項ですから、四条三項、五条三項を削除した後、そういうことをさしているものと私は理解している。大臣はもう一度その問題について、一つこの中山会長の言葉、それから今この第二項を解釈したその解釈そのものについて見解を明らかにしておいてもらいたい。
#42
○国務大臣(倉石忠雄君) 私の方からいろいろな人の名前をあげて申すことは、言わぬ方がいいと思のでありますが、先ほど来申し上げておりますように、労働問題懇談会に付託をして慎重御検討を願った。その答申については、政府としては十分それは尊重する。従って、八十七号条約を批准すべきものであるという大方針については、これを尊重する。その後のことにつきましては、行政府たる政府が国民に対して責任を負うためには、これこれのことをしなければならないと、こういうことを考慮いたしておる中に、全逓労組が今日のような立場をとっておる限りは、批准手続はできない、こういう態度を政府はきめておるわけであります。
#43
○小柳勇君 そうすると、今まで言っておられた期待ということではなくて、条件だとはっきり大臣は言明されるわけですか。
#44
○国務大臣(倉石忠雄君) そういうことになりますから、私はあまり公開の席でいろいろなことを言い合うよりも、やはり良識をわれわれは信頼いたしておるのでありますから、八十七号条約を尊重してこれを批准するという建前、大方針に立っている以上は、やはり全体の人々にそれに協力してもらうという正常なる態度をとってもらうことを期待しているのだ、こういうことであります。
#45
○小柳勇君 また、少し表現がやわらかくなったけれども、期待ということは、これは大臣が期待されると同様に、ほかの者もさっき藤田委員も言ったように、全逓の三役がどうなるであろうかと、そのような一つの観測をいろいろやるわけです。私が言うのは、この条約を批准しようとする、批准しようとは考えているけれども、全逓の三役が改選するまでは批准ができませんと、このようにはっきり閣議としては条件として決定しておるかどうか、これを単刀直入、簡単に率直に答弁願いたいということです。
#46
○国務大臣(倉石忠雄君) 全逓労組が今日のような態度をとっている限りは、やはり批准手続は不可能であります。
#47
○小柳勇君 そうしますと、さっきからの労懇の精神に違反し、労懇を軽視して、労懇は批准しなさい、四条三項は削除しなさい、こういうような答申をしたにかかわらず、その労懇の答申の精神をじゅうりんして閣議はこれを全逓の問題が三役改選をしなければ批准しない、このようなことですか。
#48
○国務大臣(倉石忠雄君) 労懇の答申の趣旨は、先ほど来何べんも申し上げておるように、関係労使が国内法規を順守していることは現行法を認めているのでありまするからして、やはり国民に対して法律というものはやはり国家意思で決定しているのでありますから、それがある人に対しては都合が悪い場合もあり得るでしょう。しかしながら、これは国家意思として決定されたる法律は順守してもらわなければならない、こういうことを政府は言っているのであります。
#49
○小柳勇君 そうすると、この批准というものをもって全逓の三役を改選させようという、労働大臣は労働運動に対する不当干渉じゃないか、そういうことについてどう大臣は考えるか。
#50
○国務大臣(倉石忠雄君) それだから私が申し上げておるのは、良識を持たれた組合のリーダーの人たちは必ず私は正常なる運営に協力をしていただけるごとだと期待をしているし、そうなさるでありましょう。だから、あまりあらたまっていろいろな議論を戦わすよりは、やはり組合の人たちの良識を待つということが一番いいことではないかということを申し上げているのであります。
#51
○小柳勇君 組合は大会でしか役員改選ができないが、この労懇の答申があったのは二月十八日、しかもこの理事会では日本のこのような問題を重視しながら、さっき言ったように、ほかの国の問題は先に延ばしながら、日本の現在の動きを批准を待って早急にやるようにという再三の勧告をしているわけです。そのようなILOなり、あるいはICFTUなどの国際的なそういうものについても労働大臣は一顧もしないで、今の大臣のその考えを一方的に押しつけようと考えておられるのかどうか。
#52
○国務大臣(倉石忠雄君) 御承知のように、法律というものは各国それぞれ事情が違います。たとえば経済違反みたいな法律は、ある国においてはそれは違法ではなくて、ある国においては違法になります。そのときの客観的情勢に基いてやはり国家意思というものが決定されるのでありますから、公労法というものが生まれ、四条三項というもののよって来たる原因がそれぞれあったのでありますから、八十七号条約を批准せざる限りは、やはり私どもは現行法というものは現存している国家意思でありますから、多数の人々にその国家意思を尊重してもらわなければならぬ、こういう建前を行政府としては堅持しておる、こういうことであります。
#53
○小柳勇君 そうすると、結社の自由委員会の力で日本国政府に対して再度報告を求めておりますが、その報告についてはもうお出しになったのかどうかお聞きをしておきたいと思います。
#54
○政府委員(亀井光君) 情報として、一応結社の自由委員会が理事会に提案いたしまする議案の内容としましては入手いたしました。正式にILO事務局からは昨日外務省に公文として参っておるようでありまして、われわれはまだ公文を入手しておりませんが、それによりますと、四月十五日までにその間の経過を報告してもらいたいという趣旨のようでございます。われわれとしましても、政府が今大臣から申し上げましたように、準備をしております段階で、四月十五日までには報告したい、かように思っております。
#55
○小柳勇君 ICFTUの代表も来ているようだが、ベキュー氏が労働省に対して前にも勧告をやっておりますが、ICFTUに対しては、労働省としては、どのような回答をされたか、お聞きしておきたいと思います。
#56
○国務大臣(倉石忠雄君) ベキュー氏に私も会いました。私どもの方の方針についてはるる説明いたしたわけであります。
#57
○小柳勇君 この条約批准の問題については、どのようにお話になったか聞いておきたい。
#58
○国務大臣(倉石忠雄君) 外国人に関係することでありますし、個人の会談の内容は申し上げるわけにいきません。
#59
○小柳勇君 国際自由労連というのは世界的に大きな二つの連合体の中の一つであるが、その代表者が来て一番心配している、世界の労働者が心配している、あるいは労働者だけでなくて、労働機構が心配している、このような問題に対して、当委員会で代表質問をしておるのに、私は大臣が誠意あるならば、この問題に限っては現在当面している問題であるから答弁されるのが妥当であろうと思うが、大臣もう一回見解を一つ。
#60
○国務大臣(倉石忠雄君) やっぱり責任のある立場の方々と、ことにいろいろ影響を持ってくる人たちでしょうから、そういう人たちの会談の内容については、相手方の了解がなければ、そういうことは申し上げないというのが国際的儀礼であります。
#61
○小柳勇君 ILO八十七号条約の精神については、全逓などの問題について、労働省が介入しないという精神には大臣さっき答弁されたように、答弁については確認しておいていいわけですね。そうしますと、そのような八十七号条約を批准するというような大事なときに、国内的なその問題を、しかも労懇もこれに触れておらない問題を、政府が一方的に条約批准というてこをもって不当に労働運動に介入しようという事実がある。今日の大臣の答弁によってわかりました。しかもこれを改正しなければ条約批准をしないということも大臣はっきり言明されました。従って、これ以上私は今、質問を続けましても今の段階では無意味であろうと思いますので、私はきょうはこの問題についてはこれ以上質問いたしませんが、重ねて私は労働大臣に要請いたしますけれども、世界各国の労働代表なり、あるいはILOの労働機構の代表が見守っている非常に大事な問題であるし、しかも大臣はあるいは六月の総会にも出られるかもしれない。でき得べくんば早急に一つその全逓に対する期待は期待として、これは組合みずからきめることであり、国民の意思がそうであれば組合員が良識をもってきめることであろうし、これは将来の問題です。それをひっかけないで、早急に批准の手続をとって、しかもその批准した条約の精神にのっとって早急に国内法の文句の整備なりその他をやられる、そのことが私は日本の今後のたとえば貿易の問題も、産業の問題も、一切外国の借用を得るに必要なことでは私はなかろうかと思うのです。従って、くどくど言いますけれども、労懇の第一、第二の大前提を早急に実施されて、世界的な問題を早急に解決されるように努力されることを要請して、きょうは質問を終ります。
#62
○委員長(久保等君) それでは予算分科会の方から先ほど来労働大臣の出席を求めて参っております。なお、藤田君からの質問もあるような連絡を委員長は受けておりますが、時間の関係で本日のところは、本問題に対する質疑はこの程度にいたして、なお残余につきましては、次回にお願いをすることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#63
○柴田栄君 次回以降ということにして……。
#64
○委員長(久保等君) それでは次回以降に譲りまして、本日はこの程度にいたしたいと思いますが……。
#65
○藤田藤太郎君 次回以降というのはどういう意味をさしているのですか。
#66
○柴田栄君 きょうは打ち切つていただきたいということでございます。
#67
○委員長(久保等君) 明日以降ということでございます。それでは本日はこの程度にいたしたいと思います。
 暫時休憩をいたします。
   午後零時十一分休憩
   ―――――・―――――
   午後二時四十一分開会
#68
○委員長(久保等君) 午前に引き続き会議を再会いたします。
 委員の異動を報告いたします。三月二十六日付をもって田村文吉君が辞任し、その補欠として高瀬荘太郎君が選任されました。
  ━━━━━━━━━━━━━
#69
○委員長(久保等君) 最低賃金法案を議題といたします。
 御質疑を願います。
#70
○小柳勇君 この前の質問に関連いたしまして、その後、政府の資料などを調査したところまだ納得いかない点がありまするので、二、三点について質問を続行して参ります。
 第一は、国際労働条約、ILO条約二十六号の批准とこの政府提案の最低賃金法との関連であります。この前の私の質問に対して、この最低賃金法案についてはこれが原案のまま通過いたしましてもILO二十六号条約の批准については差しつかえないということを政府は答弁されました。きょういただきました資料の中にもそのことが書いてございます。国内法との関連は最低賃金法案であって、これは最低賃金法案は条約の規定を満たしていると書いてございます。ところが、去る二十三日に京都における公聴会に私参りまして、公益委員であった京都大学の岸本英太郎氏の公述を聞きまして、そのあと質問をいたしました際、私はこの二十六号条約を批准するにしてもこの政府の原案はそのまま批准できるかと質問いたしましたのに対しまして、岸本氏は、現在の政府原案では批准するには抵触いたします、批准ができませんと、こういう答弁をいたしておるのでございます。その他二、三学者などの意見を聞きましても、この政府の原案が通った場合、二十六号条約が批准できるとは言わない。逆に批准できないということを証言いたしておるのでございます。従いまして、先日の政府の答弁によって部内で検討いたしましたところ、これは批准できるという結論でございますと答弁がございましたので、その検討されたメンバーあるいは機関、そういうものについて詳細に報告を聞いておきたいと思います。
#71
○政府委員(堀秀夫君) 本法案を作成いたします前に、労・使・公益三者構成の中央賃金審議会において約半年の間御検討を願ったことはすでに御説明申し上げましたが、その際においても、この最低賃金法案を作成するに当ってはやはりILO二十六号条約を満たすということを一つの基準として討議をするという前提で御審議を願ったわけでございます。そうして小委員長でおられます稲葉秀三氏なども、この答申の線に沿って作成された本法案はILO二十六号条約に違反はしない、抵触はしないと認める、こういう御意見を持っておられるわけでございます。それから政府の部内におきましては、外務省、それから法制局、労働省、それから運輸省をまじえましてこの法案を作成するに当りまして、ILO二十六号条約との関係も十分討議をいたしたのでございまするが、結論といたしましては、ILO二十六号条約に抵触しない。従いまして、本法案を成立させた暁にはILO二十六号条約の批准は差しつかえないと認める、こういう結論が出ておるわけでございます。
#72
○小柳勇君 私も政府がこの前そのような答弁がありましたので、私どもとしては問題がありますけれども、法的に批准できるものであろうと理解はいたしております。その後、学者がたとえば賃金審議会の性格なりその他いろいろ検討した結果、この法案については二十六号条約を批准するわけにいかない。このような結論を出し、しかも公的立場で証言をされているわけです。そういうことで、これは京都の学者だけかと思いましたら、東京でもそういうふうな学者の意見もございますし、では政府の原案がたとえば通過するといたしますと、二十六号条約についての取扱いがどのようにされるつもりのであるかお聞きしておきたいと思います。
#73
○政府委員(堀秀夫君) 法案が成立いたしました暁には、ILO二十六号条約の批准の手続はなるべくすみやかな機会に、国会に対して批准の承認を求める手続を急ぎたいと考えるのであります。
#74
○小柳勇君 まだ検討しなければならぬ点も多々ありますので、今申し上げましたように、京都大学の教授などの参考人を呼ぶことについても当委員会として一応御検討していただきたいと思いますが、この点については、あとでまた委員長から別途お計らいを願いたいと思います。
 次の質問に入りますが、第二に、この前に関連した質問でございますが、今日、全国の消費物価の比較、あるはは消費支出の比較の資料をいただきました。これを見て、この前の質問に関連して質問するわけでございますが、この前、東京都成年男子十八才の標準生計費については若干質問をいたしました。その際にエンゲル係数四六で、たしか七千四、五百円になったと思いますが、この物価の全国的な格差を数字の上から見ますと、約一割二分くらいあるようでありますが、そうしますと、成年男子十八才の標準生活費として最低のものを一体労働省としてはどの辺を押えておられるか、お聞きをしておきたい。
#75
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、地域による差、及びその労働者がどのような作業なり職種に従事しているかということに伴う労働力をどの程度再生産するために必要かというようないろいろな隔たりがあるわけでございます。そこで具体的に、問題になりました業種、職種の労働者につきまして、具体的にそのつど最低賃金審議会にその辺の事情を御調査願いまして、そうしてその際の資料といたしましては、これはたとえば東京都における男子の標準生計費については人事院の調査資料も出ております。それからそのほかに家計調査でございますとか、あるいは厚生省の厚生行政基礎調査であるとかいろいろな資料があるわけでございますが、これらの資料と突き合せ、それと同時に、その業種、その態様、その地域におけるところの生計費がどの程度必要であるかというような点につきまして、必要な調査を実施いたしまして、そうして具体的に問題になりました業種、業態の労働者について生計費はどのくらいであるかという目安をつけると同時に、それと並んでその地域におけるところの類似の労働者の及びその地域におけるその業種の通常の支払い能力というような点の調査もあわせて行いまして、これらをからみ合せまして、最低賃金に関するところの御意見を得た上で労働大臣が決定する、このような考え方でおります。
#76
○小柳勇君 私は支払い能力などのような、今あなたが提案しておられるこの最低賃金法案を論議する場合の標準生計費というものを言っているわけではないのです。一般的に、この最賃法から離れまして、東京都における十八才の成年が生活するために一体どのくらいの生活費が要るのでございましょうか。一般的な討論の中で、この前はエンゲル係数四六で、七千四、五百円、これが日本の平均、たとえば四〇%ぐらいのエンゲル係数をとりますと、八千円になるでしょう。その一般的な標準生計費というものについては、労働省としては、一体どうお考えであろうか、そのことを質問しているわけです。その点についての御答弁を願っておきます。
#77
○政府委員(堀秀夫君) 標準生計費につきましては、ただいま東京におきましては、公的の機関が実施いたしました調査資料といたしましては、人事院の、ただいま先生御指摘の資料があるわけでございます。これらは一つの有力な参考資料になると思います。
#78
○光村甚助君 関連質問ですが、きのうの朝日新聞に労働省が出していますね。これはちょうど最賃法が出ているのに、あなたの方はこれはハッパをかけられるつもりか。内容を読んだだけではわからないので、これを一つあなたの方から説明していただきたい。
#79
○説明員(大島靖君) 昨日の新聞に発表になりました「毎月勤労統計調査臨時調査」の結果でありますが、これは従来毎月勤労統計は三十人以上の労働者の労働条件について調査いたしておったのでありますが、一昨年の七月から三十人以下についても調査を新しく実施することになりまして、五人から二十九人までは毎月でありますが、一人から四人までの事業所につきましては年一回七月に実施することにいたしたのであります。一昨年実施いたしました結果はすでに一応発表いたしました。昨年七月の調査の実績が最近まとまりましたのでこれを発表いたしましたのであります。
 これの概要を申し上げますと、昨年の七月における常用労働者一人――四人の規模におきまして平均定期給与額は七千三百九円、製造業では七千四百八円であります。これを今申しました一昨年の七月の調査と比べてみますと、調査産業総数におきましては約七%の上昇、製造業だけをとりますと、一・五%の上昇になります。これは同じ期間におきます三十人以上の規模の賃金上昇率に比べますと、若干上昇は上昇は高いようであります。そこで、今度は一人――四人の規模の定期の定期給与額と三十人以上の定期給与額、これの格差を見ますと、一人――四人は大体四一・六%になっております。男女別の定期給与額の格差につきましては、男子が九千二百八円、女子が四千八百五十三円でありますので、女子は男子の五二・七%に相なっております。それからこの小規模事業所におきましては、住み込みが非常に多いわけでありまして、従って、通勤と住み込みについて申し上げますと、定期給与額は、通勤労働者は九千六百四十円でございます。これに対しまして住み込み労働者は四千六百七十一円になるわけであります。これは住み込み労働者の場合は、おおむね食事の現物給与を中心としまして、現物給与が相当高いから現金給与はこういうふうに低くなっておるわけであります。大体現物給与がどのくらいあるかという評価につきましては、現物給与のうち、食事の給与の評価額は平均いたしまして一千六百三十九円、これが通勤労働者の場合は非常に少くて、二百二十円でありますが、住み込み労働者の場合は三千二百六十四円と、こういうふうな数字になっております。概要以上の通りでございます。
#80
○光村甚助君 この最低賃金制が実施されると、今お話があったように、食事が一千六百三十九円、それから紡績業者なんかは大がい住み込みでやっているわけですね、住み込みといいますか、寄宿舎に入っていて、賃金をある程度引き上げても食事料を値上げされる、そういう危険はないですか、話がだいぶ先に走りますけれども……。
#81
○政府委員(堀秀夫君) 使用者の中には、そのような意図で脱法的に現物給与を高く評価するというようなものが出る可能性もございます。そこで、その点につきましては、本法案の第六条に、「現物給与等の評価」という規定を設けたわけでございますが、要するに、通貨以外のもので支払われる場合、あるいは食事その他の現物給与の代金を賃金から控除するというような場合には、適正な市価をもって評価されなければならないということを規定しておるわけでございます。従いまして、従来の現物給与あるいは食事代あるいは住居費等の評価額と、最賃法が実施になった以後の評価額とが異なっておるというような場合が、これは適正に評価されない場合もあると考えられますので、これは法律実施の際におきまして十分監督いたしまして、第六条の規定にのっとって適正な市価をもって評価されなければならない。このように監督指導する予定でございます。
#82
○小柳勇君 さっきの質問の続きでございますが、東京都における男子十八才の標準生計費を八千円とすると、この労働省から出されました消費者物価地域差、約一割二分ですから、たとえば最低の鳥取などのような、生活費があまりかからないところでも、男子十八才にして標準生計費七千円ぐらいが妥当であろうという一般論についてはお認めになりますか。
#83
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、実は人事院で調査いたしました独身成年者の職種、それから作業の態様と、それから本日お手元に差し上げてありますいわゆるCPIあるいは消費支出等の家計調査の調査の対象になる労働者世帯との食い違いもございます。従いまして、これをもって単純に結びつけるというわけには参らないと思いますが、私は、この人事院の方式によりまして、かりに東京ではこのくらいの金額が標準化計費として支出されることが妥当であるというのに結びつけまして、それに地域別な格差をからみ合して参りますれば、おのずから議論の焦点はだんだんと出て参ると思います。ただし、これは標準生計費でございます。最低賃金の場合には標準生計費及び最低生計費、こういうようなものをからみ合せていろいろ議論をしなければならないと思いまするが、標準生計費がどのくらいであるというような問題につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、たとえば、東京都においては、法的な調査資料としては、人事院の調査というようなものは一つの権威を持っておることと思いまするので、これは討議の際、有力な参考資料の一つになるであろう、このように考えております。
#84
○小柳勇君 そうしますと、標準生計費と最低生計費というものについても、中央賃金審議会では論議がなされたものだと思うが、今そういう発言がありましたので、それについて政府の考えをお聞かせ願いたいと思います。
#85
○政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会におきまして、この点につきましてもいろいろ御討議がなされたわけでございます。そうして、その結果といたしましては、今、標準生計費がどのくらいであり、それから最低生計費がどのくらいであるというような問題について、まだ、これを算定することはいろいろな困難が伴うので無理である。そこで、政府がその答申の線に沿ったところの最低賃金法を実施すると同町に、その最低賃金を実施する暁におきまして、その際問題になる具林的な地域、業種及び作業の態様に応じまして、各労働者につきまして、その場合場合に応じて労・使・中立三者構成の最低賃金審議会において、その問題を具体的に検討する、それによって、それを尊重して政府は決定してもらいたい、こういうような結論であったわけでございます。
#86
○小柳勇君 言葉をはぐらかさないように、私の質問にそのままお答え願いたいと思います。私の言っておるのは、標準生計費という、あなたが尊重される人事院の方式は、職種とか地域とかということは言わないで、三千カロリーの栄養をとって労働再生産する成人男子が、エンゲル係数四六で、あれだけの数字が出たから、一〇〇、平均の四〇ぐらいにいたしたら、八千円くらいでございましょう、これがまあ標準生計費でございましょうと、その標準生計費と結びつけて最低生活費というものを論ずるならば、それには職種とか業種というものは結びつかないはずです。成年男子が生活するに最低どのくらいにお考えになるかと、この標準生計費に結びつけた議論を今やっているわけで、その標準生計費と結びつけたその最低生活費、最低生計費については、論議がなされておると思うが、そいつは一体どのくらいにお考えであるか、こういう質問をしているわけです。
#87
○政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会におきましては、そこまで問題を掘り下げなかったわけでございます。そこまで問題を突き詰めることは、この段階では妥当でない、最賃法実施の暁に、各最低賃金審議会においてその問題は討議すべきである、まあ、大体こういうことであったわけでございます。ただ、ただいま御質問でございまするから、私どもの一応の考え方を申し上げますると、標準生計費につきましては、東京都の成年男子につきまして、ただいまお話しのように、人事院では二千四百九十カロリーというものを標準にして算定をいたしておるわけでございます。そこで、これはおおむね中等度の労働再生産に要する費用であるとわれわれは了解しております。そこで、最低生計費というようなことになりますると、これはまた例が悪くておしかりを受けるかもしれませんが、一つの参考として申し上げるのでございまするから御了承を願いたいと思いますが、たとえば、厚生省の生活保護基準の金額を算定するに当りましては、厚生省では、五人世帯の男女の世帯を考えまして、それらの世帯における平均の一人のカロリー消費量、これはもとより子供もありますし、老人もある、それから成年の人もおるというような五人の世帯を参考にして、そうして一人平均、大体千六百二十カロリー程度を消費するとした場合に、その生計費がどうなるかということを算定いたしましたのが、この前御説明申し上げました生活保護法による生活扶助の基準でございます。しかし、これはこの前も御説明申し上げましたが、きわめて軽度の作業を憎むもので言葉をかえて言えば、職がなくてぶらぶらしておるという場合の消費量どございますから、従いまして、これらのものが、果してこれが妥当な最低生活であるかどうかという点については、いろいろ問題があるかと思いますが、一つの参考資料といたしましては、ただいまのようなことがある。千六百二十カロリーとして計算いたしました場合には、この前御説明申しましたように、約三千六百円でございますか、そういうような数字が出たということでございます。しかし、これは誤解のないように申しますが、私どもは、これが最低賃金の基礎になるというつもりはありませんので、これらのいろいろな資料がありますが、これらの資料の算定の基礎等につきましても、いろいろこれは関係者において御議論の分れるところでございますが、こういうものを参考にして、そうして労・使・中立の権威者がお集まりになった最低賃金審議会において、具体的な場合々々に当てはめて御検討願うことが妥当であろう、このように思っておるわけでございます。
#88
○小柳勇君 この最低賃金法は、ただ法律を作るための法律じゃないわけですね。労働者が最低生活を営むための保護の法律。千六百二十カロリーというのは、ただ、仕事をしないでぶらぶらしておる、寝ておれば、そのくらいでいいでしょう。さっきの二千四百九十カロリーというのは、中等度の労働再生産のカロリーである。そういたしますと、それは重労働であれば三千カロリー必要でしょう。そうしますと、二千四百九十カロリーで、東京では約八千円、地域では約七千円、こういう標準の生計費が一応数字の上で出る。これを労働省としては認めたくなくて、そうして、ただ寝ておって暮すような、厚生省の生活援護の、生活扶助のための、そういうようなものを持ってこられる。このことは、これはこの前も参考資料として来ましたけれども、一体あなた方は、この法律が通れば直ちに着手しなければならぬのですね。賃金審議会で一体どのくらいのカロリー、どのくらいが標準であろうか、最低であろうかを論議をしなければならぬ。それを何かずっと遠い将来の話のようなことでこの委員会を切り抜けようとされておるけれども、そのことは、私はほんとうにまじめな態度じゃないのじゃないかと思う。今まですでに業者間協定でもって、ここに資料が出ておりますが、二カ年ぐらい指導してきておられる。その場合、業者間協定の数字についてはあとで質問いたしますが、そういうような直面しておる問題に対して、将来中央賃金審議会あるいは地方賃金審議会が論議するでございましょう、ということでは、あまりにも提案者としてはふまじめではないかと思う。従って、いま一度重ねて質問いたしまするが、この千六百二十カロリー、二千四百九十カロリー、こういうものを、少くともあなた方の言葉では、中間ぐらいにまで考えを持っていかなければならぬと思いますが、その点についてどのようにお考えになりますか。
#89
○政府委員(堀秀夫君) 具体的に東京におきまして問題になりました場合におきましては、これらの資料が有力な参考資料になるわけでございます。そこで、その半分ぐらいじゃないかということでございますが、これは私どもは、この前も御答弁申し上げましたように、このカロリーの消費量あるいは最低生活とはどの程度が妥当であるかという具体問題につきましては、これは結局、具体問題といたしましては、労働者側、使用者側、それから中立側において、いろいろその問題について具体的に御意見が違うことも予想されるわけでございます。そこで、私どもは、これは前の中央賃金審議会において御討議を願ったわけでございますが、やはり具体的に、その地域と業種におきまして、最低賃金が幾らが妥当であるかということについて、三者が隔意ない御意見の御討議を願った上で、それを尊重してきめることが、最も妥当な態度であろうと思うわけでございます。この法案が成立いたしました暁においては、中央最低賃金審議会を早急に発足させたいと考えております。同時に、地方における最低賃金審議会もすみやかに発足さしたいと思っております。そうして、これが問題になります点につきまして、十分労・使・中立三者の御意見を一刻も早く御討議を願いまして、それに基いて具体的にこの法案が軌道に乗るように進めて参りたい。その意味におきましても、私どもは早くこの最低賃金審議会を発足させるためにこの法案の早期成立をぜひともお願いいたしたい、このように考えておる次第でございます。
#90
○小柳勇君 この最低賃金法というのは低額所得労働者の生活を引き上げる、いわゆる生活保護の労働者の生活保護の法律ですね。あなたの発言を聞いておりますると、この労働者の生活保護というよりも、たとえば企業の支払い能力とか、あるいは地域における業種の云々というようなことにウエートがとられまして、最低の生活をするという前提に立った法律であるかどうか疑問をいだくような気がする、疑問が出てきます。そういうことで、私が冒頭にILO二十六号条約との関連を質問いたしましたのに、ここにILO第二十六号条約の要素として、主要点としてあなた方で、労働省で書かれたのに書いてある。賃金が例外的に低廉な職業または職業の部分に使用せられる労働者のためと書いてあるのですね。最低賃金制度を設けなければならない、労働者のためという、このILO第二十六号条約の精神がこの法律である。この法律ができたら、この条約は批准できると、こう言われたが、このような条約の精神というものは、あなたの発言を聞いておりますと、半分あるいは三分の一しか入っておらぬような気がする。その点についてもう一回答弁を承わっておきます。
#91
○政府委員(堀秀夫君) これは国際的に最低賃金を施行する際にその基準を何に求めるかという点につきましてはいろいろ見解がありまするが、われわれは、この法案の第三条に掲げました三つの基準がやはり国際的に見ても通説であると考えております。たとえば最低賃金に関する権威をもって有名でありまするリチャードソンの最低賃金論、これは大体通説でありまするが、これを見ましても、最低賃金を決定するものはここにあるような三つの基準を参酌してきめられなければならないということを述べておるところでございます。しかし、この三つの基準がございまするが、もとよりこれはお説の通り、労働者の生計費ということは最低賃金法が労働保護立法であります以上、これは一つの最も大きな要素であることは当然でございます。労働者の最低生活のためにこれを保護しなければならない必要から最低賃金法が出ておるのでございますから、運用についてももとよりそのような趣旨でやらなければならないと思うのでありまするが、ここに掲げました三つの基準というものは、やはり国際的に見ても一応承認されておる三つの基準でございます。また、三つの基準と申しましても、そのうちのもう一つは、その地域における類似の労働者の賃金ということでございます。これは参酌してきめるということは、労働者保護の建前からいってむしろそれに沿うゆえんであると、このように考えられる。それから事業の支払い能力でございまするが、これも法案にありまするように、通常の事業の賃金支払い能力ということをいっておるのでありまして、転業が、正常な経営を営む場合に期待できる正常な賃金支払い能力のことであります。自分のところは払いたくないのだ、特別例外だから、これは除いてくれというような言いわけはもとより許さない。通常の経営を正常に営む場合に期待されるところの支払い能力のこと一般を言っているのでございます。
#92
○光村甚助君 関連して。今支払い能力のことが出ましたので関連して質問します。
 一つは、支払い能力ということはどうして判定するかということが第一点。それは支払い能力をどうして質問するかというと、これは人によって大分違うと思います。労働者の方はこうだと言うし、使用者の方はこうだと言うのです。それからその適用の対象となる中小企業が自力でたえる経済力を保持していることが前提と、こうおっしゃる、いつもあなたの方は。経済力を保持していることが前提ならば現状とどこが変わるかということが第二点。現在でもそうなんですから。それから支払い能力というものは個々の企業の支払い能力を言っておるのか。個々の企業の支払い能力を言っておるなら、最賃の意味は全然ないのですね。この三つを私は肝炎質問でお尋ねする。
#93
○政府委員(堀秀夫君) 賃金支払い能力と申しまするのは、これは付加価値、その事業が生産をいたしております場合に生み出すところの付加価値が一応の支払い能力として基準になるであろうと考えます。で、その限度内において、どのような支払い能力があるかという点が具体的に問題になろうかと思うわけでございます。それからこの場合には、「通常の事業の賃金支払能力」と書いてございますのは、ただいまお話しのような、個々の企業の賃金支払い能力、これをさすのではないことを表わしておるのでございます。すなわち当該業者におけるその事業が正常な経営をしていく場合に、通常期待することのできる正常な賃金支払い能力のことでありまして、個々の企業の支払い能力を問題にしておるのではございません。従いまして、ただいまお話しのように、個々の企業が自分のところのふところ工合だけを問題にしまして最低賃金に対する言いわけをすると、このようなことはもとより許されないことでありまして、この具体的な判定につきましては労・使・中立三者構成の審議会におきまして権威者にお集まり願って、社会通念上どの辺のところが正しいか、この辺を具体的に御判断願いまして、その御意見を参照して労働省のは最終的に決定をいたす、このような考え方でおるわけでございます。
#94
○光村甚助君 私もう一つ……。さっき読み上げましたその適用の対象となる中小企業が、自力でたえる経済力を保持していることが前提だということを私はこの前聞いた。そうするならば、自力でたえる経済力を保持していることが前提だというなら現在と変わりがないじゃないかと向うのです。私は、これはもう最賃法を設けても現在と同じようなら意味がないじゃないか。つまり中小企業が自力でたえる経済力を保持しているということは今と変わりはないじゃないですか。この点はどうですか。
#95
○政府委員(堀秀夫君) 自力でたえる経済力をもとより前提にするのでございまするが、その場合におきましても、側々の企業の支払い能力をさしておるわけではありません。通常期待することのできる賃金経費を負担する能力、これを言っておるのでございます。個々の企業の支払い能力まで一々見て、これより上回るからそれは及ばない、このようなことであれば、お説のように最低賃金を制定する意味はございません。そういうことではなくて、通常期待することができる支払い能力、これを労・使・中立の権威者に十分御討議を願って、社会通念上妥当なところまで御検討を願うのが適当であろうと考えております。
#96
○小柳勇君 標準生計費並びに最低生活費の問題についてはなおばく然としておりますが、この業者間協定によって締結された最低賃金の表を労働省から今もらいました。これを見てみますと、都道府県産業、年令別最低賃金各表の中で、十八才では大体四千円から五千円のところに最低賃金が決定されておるわけです。さっきからずっと論議してきましたように、東京都における男子十八才の標準生計費は約八千円である。地方におきましても約七千円くらいは二千四百九十カロリーの食物を食べてかかるということをわかっておりながら、こういもうのが業者間協定で締結されておる。これに対して一体労働省としてどのような御見解であるか、お聞きしておきたいと思います。
#97
○政府委員(堀秀夫君) 十八才の初任給をとってみますると、これは業者間協定を従来締結された八十のものについての例でございますが、最高はやはり相当高いところまでいっております。そうして、その平均的な数字は、十八才におきましても、これは初任給でございまするが、第一四分位が四千五百七十五円、第三四分位で五千二百六十三円、このようなことになっております。それからこれについて経験者でありまする場合には、第一四分位が五千二百五十円、第三四分位が七千百円、このような数字になっておるわけでございます。
 それから業者間協定につきましては、これは現在事実上労働省におきまして援助をして、業者が全然自発的に御検討願って、そうしてきめられておるものでございます。これらのものが妥当であるかどうかというような点につきましては、個々の場合につきまして、この法案が施行されました暁におきましては、賃金審議会におきまして審議を願った上で、労働者が適当であれば決定する、このようなことになるわけであります。
#98
○小柳勇君 さっき具体的な、具体問題ということをしばしば言われましたけれども、具体問題ということでこの中央賃金審議会などがいろいろ論議して参りましよう、その場合においても、私どもとしては、この労働者が生活するということ、これが基礎的な一番大きな前提条件でなければならぬと思うのです。そういうような、労働者が最低の生活を営み、あるいは中等度以上の労働の再生産をしなければならぬ、そういう立場からいきますと、このような出ている数字で見ました場合、一体これでどのくらいの食べ物を食べているのだろうか、これで一体ほんとうの労働ができるのだろうかということを常識上心配しなければならぬ、心配するのが当りまえだと思う、そういうものを見られて、これは業者間協定で出ました最低賃金でございますといってここに表が出ておりますが、そのような、私どもの常識からいきますと、こういうものを出しておって、一体日本の労働省として労働者の賃金などをいろいろ外国に向っても放送しなければならぬ労働省の立場として、一体これをどういうふうにお考えになっているか、もう一回伺っておきたい。
#99
○政府委員(堀秀夫君) 業者間協定は、労働省の技術的な援助によって業者において自主的に締結されたものでございます。従いまして、われわれの方から別に半強制的に指導したり、そのようなことはいたしておらないわけで、全然自然的なものでございまするが、これらの例を見ましても、これは大体中小規模の零細業態において締結されておるものが大部分でありますけれども、従来の賃金に比べまして、この業者間協定を締結した前とあととにおきましては、やはり高いところでは三割程度上っておるところもございます。それから平均いたしましても一割から二割程度の上昇を来たしておるということが報告されております。そこで、理想としては、これは労働者の賃金をだんだんと向上させていくということはもとより望ましいことであり、これは役所であると民間であるとを問わず、みんなその方向に向って労働者の福祉のために努力しなければならないところでございまするが、少くとも今まで出されております業者間協定が締結されたことによって、従来よりも一割から二割上っておるということを見ましても、やはり業者間協定が労働者の保護の見地からも相当役に立っておるということは言えるのではないかと思います。ただ、それが一挙にして理想額まで近ずかなかったという点について、いろいろ問題があると思いまするが、漸進的に労働者の賃金を向上させるのに一つの寄与をなしておるということは、これは何人も否定できないところではないかと思うのであります。いわんや、最低賃金法が実施になりました暁におきましては、これを業者だけにまかせるのではなしに、労使・公益三者構成の賃金審議会において御検討願って、適当かいなか、御意見を労働省に出していただくわけでございます。労働省ではそれによって決定を行うわけでございますから、これらの面はさらに助長されてくるのではないか、このように考えております。
#100
○小柳勇君 そうしますと、業者間協定は、これは政府が指導したのじゃないとおっしゃいますが、たとえばかりにこの法案が通った場合に手順を一つ説明していただきたい。
#101
○政府委員(堀秀夫君) この法案が成立いたしました暁におきましては、まず中央最低賃金審議会をなるべくすみやかにまず発足いたしたいと考えます。そうして、中央最低賃金審議会において、この法律を実施するための必要な命令であるとか、あるいは必要な認可その他の基準であるとか、そういうような根本的な方針を御検討願うことを始めていただきたいと思います。それと並びまして、地方の最低賃金審議会もなるべくすみやかに設置いたします。そうして、それによって業者間協定あるいは労働協約による最低賃金が申請がありました場合に、これを受け付けていくということの具体的に作業が始まるわけであります。また、それと並びまして、第十六条の最低賃金についてはどのようなことであるかというような問題についても、中央最低賃金審議会において十分御検討を願って、最低賃金を漸進的に拡大さしていく方向に向って一応進みたいと考えております。
#102
○光村甚助君 ちょっと前のに関連して、業者間協定の勧告をやっただけでも一割か二割上ったと、こうおっしゃいましたね、八十幾つ上っている。そうすると、じゃ今までは一割か二割もうけ過ぎておった、結局は反対解釈をやれはこういう結論ですね、どうですか。
#103
○政府委員(堀秀夫君) これは業者間協定の効果についてはいろいろな報告がなされておりますが、業者間協定をすることによってやはり中小企業自体の経営基盤が強化されたという面が否定されないところであると思います。たとえば企業の合理化、近代化等によりまして生産性が上ってきたというような面も見受けられるわけでございますので、経営の合理化、近代化を通じて賃金の支払い能力がさらに増加してきた、こういうことも考えられると思います。もうけ過ぎておったか、もうけ過ぎていなかったかという点につきましては、われわれの方でそこまで具体的に調査いたしておりませんが、いろいろな理論的な面から考えますると、最低賃金というものは労働者の賃金向上になると同時に、企業の経営基盤の合理化を通じて企業の経営基盤自体の強化にも役立つところである、それによって支払い能力がまたさらにふえる余地が出てくるのであろう、このようにいえると思います。
#104
○光村甚助君 半年やそこらで業者間協定をやったからといって、事業がすぐそう近代化されるものではないでしょう、そういうごまかしの答弁ではだめです。半年やそこらですぐ企業が近代化されるものではないのです。ただ協定しただけでも、もう一割か二割上っている、これではあなた当然もうけ過ぎておったという裏ずけになります。そこでもう一つ突っ込んで質問しますと、ただ単に協定ができた、半年ぐらいでそんなに上るのだったら、最賃法が最低六千円にしろ、こういう法律ができたら私は六千円で切ると思います。これはどうですか、もう一つ突っ込んでやった場合には。
#105
○政府委員(堀秀夫君) 一律最低賃金の問題につきましては、これは御意見が分れるところでございますが、わが国のように、産業の規模別それから業種別の格差が非常に大きいというところにおきましては、ある産業においては六千円でもまだ低いところがあるかもしれません。しかしながら、その反対に、ある産業におきましては、これは六千円ではとても負担し切れないというところもあるわけでございます。従いまして、これを一律に実施するとすれば、ある産業においては高きに失し、ある産業については低きに失するというようなことになると思います。従いまして、私はやはりわが国の産業経済の特殊性、産業構造の上からかんがみまして、やはり業種別、職種別に最低賃金をきめて、これを漸進的に向上拡大していく、この方向が現実的ではないかと考えております。
#106
○光村甚助君 前段じゃなくて別なんです。業者間協定やっただけで一割上ったということを非常にこの間から宣伝されている。八十何ぼできた。もうことし一ぱいすれば二百何ぼになるというようなことをおっしゃるのです。だから、何とかの神様が打ち出の小ずちを持っているのじゃないですよ。業者間協定やったら一割、二割上ったとおっしゃるのは、これは確かにもうけ過ぎておったというところの裏づけですよ。あなたが何とおっしゃったって、どうですか、そうでないとおっしゃる。半年やそこらですぐに一割か二割収入が上るほど近代化なんということがすぐにできますか。
#107
○政府委員(堀秀夫君) これはもうけ過ぎておったとかもうけ過ぎていなかったというような点については……。
#108
○光村甚助君 もうけ過ぎていなければ出せないじゃないか。
#109
○政府委員(堀秀夫君) そういうような点については、私どもは意見を申し述べる段階ではないと思います。やはり適正なところで賃金がどの程度の基準で払われるか、それによって最低賃金をきめていくべきであろうと思います。中にはお話のようにもうけ過ぎておったというようなところも確かにあると思います。それと同時に、非常な努力をしてこの最低賃金をきめて、そうして無理してやっていくというようなところもあると思います。その点につきまして、抽象的に一割上ったのだから今までは全部もうけ過ぎておったのだというような推定は、私どもとしてはいたしかねるところでございます。
#110
○小柳勇君 業者間協定の手順についてはわかりましたが、その場合に、まず中央賃金審議会を作るということを答弁されましたが、全体的に日本全体の動きを見て中央賃金審議会で最低生活を保障するための賃金を決定するということは最も妥当なことであろうと、そういうようなことで中央賃金審議会を先に作ろうと、こういうことですか。
#111
○政府委員(堀秀夫君) この最低賃金法の内部の重要な事項につきましては、全部中央最低賃金審議会で御審議を願って、そしてその御意見に基いてきめて実施していきたいと思っております。で、中央最低賃金審議会発足の暁には、この法案自体の内部について――施行について非常に重要な問題がございます。そういうような点についても御検討がなされると思います。それからまた、さらに今後において最低賃金制をわが国でどのように発展さしていくべきかという点についても、これは三者の間で十分熱心な意見が討論されるであろうと考えております。これは、前の中央賃金審議会の答申を見ましても、そのようなことがうかがわれるわけでございます。こういうようなことによりまして、われわれは中央最低賃金審議会をまず発足させて、この最低賃金法の実施の具体的な重要問題、それからさらに、最低賃金制をいかに発足さしていくかというような重要問題、これらの点について十分に御検討を願うことがまず必要である、このように思っているわけでございます。
#112
○小柳勇君 そうしますと、第一の任務が、最低賃金をきめる基準を論議するということです。そうしますと、その基準の中には、私がさっき言いましたように、標準生計費とか、あるいは最低生活費とか、あるいはいわゆる実費支出の費用とか、いろいろ論議されるはずです。その論議するとき、さっき言われたように、人事院の資料などを尊重していく、一つの重要な参考になるとおっしゃった。そうしますと、人事院の標準生計費というものは、まず二千四百九十カロリーしかとらないのに八千円かかると出ている。そういうものと、地方に行きましても地域で大体七千円ぐらいかかると出ている。そういうものを考えてみますと、その出て参りました業者間協定の数字、これは低過ぎる。低過ぎます、今見た場合はですね。そうしますと、それをこの中央の基準と照らしてどのように処理していかれるか、そのことによってこの法の性格は相当変ってくると思う。そのことを少し説明しておいてもらいたいと思う。
#113
○政府委員(堀秀夫君) 具体的に、各地における業者間協定の実情を見ますると、中には相当高度な労働量を要するような産業もございます。それから中には、何と申しますか、農家の副業的に、きわめて軽易な作業を営んでおるというような例もございます。きわめて個々ばらばらでございまして、これらのものにつきましては、やはり一つ一つについて判断をいたしていかなければならないと思います。その場合におきまして、地方の賃金審議会等においてどの程度のものを目安にするかという点につきましては、やはり地方地方の実情に応じてその地方の最低賃金審議会で御検討になるわけでございますが、中央の農低賃金審議会においても、全国的に見まして、全国的な影響の見地からどの辺のところが妥当であるかというような点も一つの問題点となって出て参ることは、これは当然であろうと思います。それらの問題点につきましても十分、労・使・中立三者構成のこの審議会におきまして十分御検討願う。われわれはその得られました結論を最大限に尊重して最賃法の実施をして参りたい、このように思っております。
#114
○小柳勇君 私が言っているのは、この中央でおきめになった基準が大体出ます。その基準と、業者間協定に出て参りました数字というものは、非常に違う。それをそのまま下にずっとダウンしてしまったら、これは生活保護になりませんでしょう。そういうものをどのように調整しようと考えておられるか、そのことを聞いておるわけです。
#115
○政府委員(堀秀夫君) これは業種――この八十の例を見ましても、多種多様でございます。非常に相当高度な労働量を必要とするものから、あるいは非常に軽易な作業量しか必要でないようなところもございます。それからその業態を見ましても、これは私どもの支払い能力というのはあくまでも通常の支払い能力のことでございますが、経営基礎の相当固まっておるところもありましょうし、あるいは非常に脆弱なところもありましょう。非常に強固なところならこれは問題はないわけてあります。それから非常に固くなくて脆弱なところについては、将来の問題としてはさらにここまで最低賃金を向上させることが理論的には必要だろうと思われましても、さしあたりのところでは、それを漸進的に推し進める見地からまずこの辺のところが妥当じゃないか、これについては最低賃金をきめた方がいいという議論もありましょうし、あるいはきめないで、そのまま理想的なところにくるまで待っておった方がいいという意見もありましょう。これらのものを総合いたしまして、やはり漸進的にはまず第一段階としてこの辺のところで最低賃金をきめて、さらにその後の実情を見てこれを向上さしていくことがいい、こういう結論が出た場合には今の漸進的な方法をとるところもございましょう。要するに、地域、業種、業態の状態によりまして多種多様でございますから、これはわれわれはそのつど具体的にその問題につきまして最低賃金審議会に御意見を伺って、具体的に処理して参りたい考えでございます。
#116
○小柳勇君 この間、労働省の予算を見ましたが、一体この法律を作りまして指導監督される、そういう従業員――職員というものは何名ぐらい全国でお持ちですか。
#117
○政府委員(堀秀夫君) 現在基準局には約八千人の職員がございます。これらの職員を各基準局、監督署において重点的にこの法案の実施にも当っていただくという考えでございます。もとよりこれは労働基準法の施行もございますし、労災保険法の施行もございます。いろいろな作業をやっておりますので、決して十分とは申せませんが、われわれはそれと同時に、たとえば計算方法等につきましては機械その他の近代化を行うというようなことで、最近地方の基準局、監督署等の作業の合理化、近代化をやっております。それからそのほか、たとえば自動車、オートバイ、ジープ等の機動力についても整備をいたしておりますが、これらのものをからみ合せまして、十分とは申せませんが、われわれとしてはこの法案の実施について遺憾のないよう十分努力したい考えでございます。
#118
○小柳勇君 そうしますと、中央賃金審議会で一応基準を出して――一本全国的な基準を出しておく。そのあとまた地方のファクターによって若干修正されるだろう。それを地方は地方で示しておく。そういうものに沿うように、八千名の基準監督官が各業種別に職種別に飛び回って、この最低賃金をこの線に引き上げるように努力する、こういうことですか。
#119
○政府委員(堀秀夫君) 具体的に問題となりました業種について最低賃金についての調査を行う。それと同時に、最低賃金が決定されましたならば、その決定されました業種につきまして、果して支払われておるかどうかという点につきまして重点的に監督を行いたい考えでございます。
#120
○小柳勇君 私は調査のところとあとの実施のところには問題ないわけです。この決定のとき――最低賃金を決定するとき、そのことを質問しておるわけです。中央の基準を示して、それから地方で、各地方の、各県なら県の局の基準を示しそれで修正する、これに沿うように基準監督官が最低賃金の決定に指導されるのかどうか、このことを言っておるわけです。
#121
○政府委員(堀秀夫君) ただいまの御質問は、最低賃金を決定する際におきまして現実の状況を調査して、そうして最低賃金を決定する際に、それを引き上げるについて労働基準局の監督官がどのような指導をするか、こういう御趣旨だと思いますが、それにつきましては、私どもはまず前提といたしまして、その具体的な業種、業態についてまず調査を行う。そうしてその調査した資料を、具体的に問題となりました最低賃金審議会に提供いたします。最低賃金審議会においては、具体的にその業種、業態についてどの程度の最低賃金が妥当であるかを――われわれの資料も求められますが、あるいは委員各位がみずから入手された資料等によりましていろいろ御討議願いまして、それによって意見が出て参る。そこで、それに基いて労働大臣が決定をする、あるいは地方――都道府県だけで処理される問題については都道府県労働基準局長が決定する、こういうことになるわけでございます。それでその決定いたしました暁には、それを、その水準に達しない最低賃金を支払っておるものは、この最低賃金法に違反することになりますから、これについては是正させるように労働基準監督官が最低賃金法に基いて監督指導を実施する、こういう段取であります。
#122
○小柳勇君 さっきのお話はこういうことだった。中央に中央賃金審議会を作って基準をきめる、それから地方の方は、地方の賃金審議会を作って、これで地方の修正する面は修正をする、それで大体のある一つの線がきまる。それで私の言っているのは、業者間協定などいろいろ指導しなければこれはできません。ただほっておいては業者間協定はできませんから指導する。そうしてこの基準の線に沿うように最低黄金というものを決定しなければならない。その後でもかまわぬなら何も賃金審議会が決定する必要はない。そうしますと、地方の水準の線に沿うように指導しなければならぬ。そうして最低賃金がきまる。そういう手順でございましょうか、こういう質問でございます。
#123
○政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、まず申請のありました業種、業態について最低賃金が決定されるわけでございます。しかし、それと並びましてやはりこの業種、業態については、やはり最低賃金を実施した方が適当であろうと思われる業種、業態があるわけでございます。これらにつきましては、賃金審議会の御意見を十分伺った上で労働省並びに出先の労働基準局において、まず当事者の自主的な協定によって、これは業者間協定でもよろしいだろうと思いますし、労働協約でもよろしいだろうと思いますが、それについて協定を結んで最低賃金を決定するように、必要な場合には勧告を行う、このような考えでおります。そうしてさらにこの勧告を行なったにもかかわらず、将来の問題といたしまして、社会的にこの業種、業態については最低賃金がぜひ必要であると思われるにかかわらず、当事者間の自主的な措置だけで最低賃金がきめられない場合には、十六条に基いて労働省におきまして最低賃金審議会に諮問して、いわば職権によって最低賃金を決定するという方式を最後に置いておるわけでございます。この点につきましては、私どもはまず第一段階としては、当事者間の自主的な発意によるところの申請を期待する、必要な場合には勧告を行なっていく。これは各地の基準局において最低賃金審議会の御意見を十分伺った上で必要なところにはそのような指導を行いたい考えでございます。
#124
○小柳勇君 そうしますと、業種、業態によっては最低賃金を作らなくてよろしいというようなお考えですか。
#125
○政府委員(堀秀夫君) 業種、業態によりましては、最低賃金がさしあたり第一段階として必要でないと思われるような産業もあると思いますが、たとえば非常に労働組合等の力が、組織が発達しておりまして、労働協約等によってもう相当高い賃金がすぐにきめられておるというようなところについて、最低賃金を今の第一段階できめるというようなことは、これはあまり益がないと考えております。やはり私どもといたしましては、まず低賃金であるということ、それからそれと同時に低賃金であって、しかもその同じような業種が同じような地域に相当多数存在しておる、それによっていろいろな弊害も起きておる、そこでこれについて最低賃金をきめるということが必要であると思われるような業種から重点的に実施をいたしまして、これを漸進的に拡大していく、これがILO条約二十六号の趣旨にも合致する運営方法ではないかと、このように考えておるわけでございます。
#126
○小柳勇君 基準監督官八千人おりましても、いろいろ労働基準法などの関係でこの業者間協定などの、最低賃金の関係の職員というものはごくわずかではないかと思う。そのような職員で、ただいま局長が言われたような指導なり、勧告なり、そういうことまで一体どの職種にどういうことができると考えておられるか。何かこう雲をつかむような話です、私ども話を聞いておって感ずるわけです。少し具体的に説明して下さい。
#127
○政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、最低賃金審議会をすみやかに発足させまして、それによってまずどのような方向に進んでいくことが妥当であるかという点を十分御審議願いまして、それによってわれわれも措置して参りたいと考えております。ただ、私の今の個人的な考え方を申し上げますれば、これはやはり賃金が例外的に低廉であるという業種、それから同じような地域に同種の産業が、中小規模の企業が併存しておりまして、そのために過当競争であるとか、あるいはさらに強大な業者からの買いたたきとか、そういうようなものを受けておる。要するに、その業者の相互の関係においても共通の不利益が存在するというようなところが、まず最低賃金をきめていくことによりまして労働者の保護にもなろうし、また、業者にとってもその方が大局的には有利になるだろう、このように考えております。従いまして、そのような中小企業であって、同じような業態で同じような地域に従事しておるというような、たとえば輸出産業の一部であるとか、あるいは今まで業者間協定が締結された例を見ますと、食料品関係の工業であるとか、あるいは紡織関係の事業であるとか、こういうようなところに協定締結の例が多いようでありまするが、また、そういうところが締結されたのは、やはりそれだけの発展性があったからだと思うのでございまして、まずその辺のところから始めまして、これを漸進的にさらに発展さしていく、このようなことが妥当ではないかと一応考えます。しかし、これらの問題については、やはり最低賃金審議会の十分な御検討を願いまして、その御意見を尊重して、具体的にわれわれとしても進めて参りたい考えでおります。
#128
○小柳勇君 まあこの話を聞いておりますというと、ぐるぐる変っていきまするが、今のお言葉で、まずこの中央賃金審議会では中央の基準を作り、地方の賃金審議会では地方の基準を作る。この基準を作るのは職種別、業種別、そういうふうに理解してよろしいですか。
#129
○政府委員(堀秀夫君) 基準と申しますのは、私が基準と申し上げましたのは、たとえば本法実施の際にいろいろ許可をいたしましたり認可をいたしましたりするような条文が非常に多いわけでございます。これらの点について、どのようなところまでは許可するとかというような基準、どのような点までは認めるかというような基準、こういうようなものについては、まずこれがありませんと最賃法の実施が不可能でございますので、これらをまずきめていただく、こういう意味で申し上げたのであります。
 あとのただいま御質問の点は、おそらくその何千円、何千何百円というような基準をまず中央できめるのかというような御趣旨ではないかと思ったのでありますが、そういうことは、私どもは最低賃金審議会において御検討を願った上でそれを待ちたいと考えております。私どもは一律にまず何千何百円が妥当であって、それからこの業種については何千円が妥当であるというようなものをまず中央できめるということは非常に困難なことではないかと思うのでございます。私どもはやはりそういうような金額につきましては、個々具体的の場合におきまして、その地方のこの業種、業態の労働者についてはどの程度の最低賃金が必要であるという点を個別的に審査を願って、そして必要な最低賃金を決定していく。将来の問題としてはこれらのものが土台になってさらに均斉がとれ、発展していく基盤が漸次形作られてくるのではないか、このように思っておりますが、これらの問題につきましては、やはり最低賃金審議会において十出御検討願い、その御意見を尊重して作業を進めて参りたい考えでおります。
#130
○小柳勇君 言葉の魔術、ごまかしといいますか、非常に言い回しで変っていくのですが、一体最低賃金というものをきめるのに、基準というのはどういうふうな基準があるか、もう金額の基準しかないではないかと私どもは言いたい。ほかに何かこの中央賃金審議会で一体金額のほかにどういう基準が最低賃金にあるのか、それを一つ聞かして下さい。
#131
○政府委員(堀秀夫君) 金額の点につきましては、これは私は一律な基準をきめることは困難ではないかと、こう申し上げましておるわけでございます。そこで、個々具体的に問題になりました場合に、その業種、業態によりまして都道府県別の、都道府県内だけの問題につきましては、その業種、業態によって都道府県の最低賃金審議会で出された御意見を尊重して参る、それから全国的な問題につきましては、中央最低賃金審議会においてその業種、業態について出されたところの金額を処理して参る、このような考えでおるわけでございます。
#132
○小柳勇君 何百種と職種があるとさっき言われたが、そのようなたくさんの職種がある、あるいは業態があって、その業態の一々水準は、それはもうほとんど不可能ではないかと思う。そうしますと、業種なりあるいは業態なり職種なり、そういうものについてのこの中央最低賃金審議会を先に作るとおっしゃった。だから、そういうことかと思ったら、今度は地方最低賃金審議会が中心になるようにおっしゃった。ところが、実際は地方最低賃金審議会にしたって、自分の県下におけるところの何百種の職種の一つ一つの最低賃金を決定することはほとんど不可能でしよう。あるいは勧告することもできないでしょう。調査とおっしゃるけれども、その調査もほとんど不可能ではないかと思う。一体そういうふうな職種――一つの工場に行って、帳簿を見て、君のところの支払い能力は幾らだからこの工場については幾らだ。こういうことが一体可能であるかどうかということを考えると、われわれの常識ではおそらく不可能ではないかと思う。それは、この委員会の中で局長が話されるのには都合がいいかもしれませんけれども、実際、法律が通りましてもこれはできないと思う。そういうことで私どもとしては、全国が一律に職種でもいいですよ、あるいは業種でもいいでしょう、そういうものをとにかく中央最低賃金審議会で一応検討をして、そうしてこの業種は大体基準はここだ。そういうことぐらいはなければ、地方に行きましても、全国をきめないで地方だけきめ得るはずがないわけです。そうしますと、あなたがおっしゃった通り、中央最低賃金審議会でもって一応基準を作ります。その基準というものはやはり最低賃金額、さっき言いましたような標準生計費とか、最低生活費とか、実際の消費基準とか、そういうものを参照してきめるところの金額でなければならぬと思う。金額でなければ尺度はありませんよ、最低賃金ですから。その金額を中央でにらんでおれば、全国一律と、言葉は何でもいいです、言い表わし方は全国一律という言い方がきらいであるならそういう言葉は使わぬでいいが、そういう一つの目やすがなければ、幾ら優秀な監督官だって一つ一つの指導はできません。そういうものをさっきのお言葉では私はお作りになっていると思った。地方では、たとえばこの指数によりますと、鳥取県などは消費水準も東京より一割二分くらい低いからその生計費を加味して地方は地方でお作りになる、こういうふうに私は理解しておった。そういう理解でいいかどうか。
#133
○政府委員(堀秀夫君) 私の説明も足りませんで、まことに失礼いたしましたが、結局問題は、その企業が、その同種の産業が、その都道府県内だけの問題であるか、あるいは全国的に分布しておる産業であるかというような点について問題が分れるところでございます。全国的に分布しております産業につきましては、これはやはりお話のように全国問題でございます。そこで、この最低賃金法によりましても全国的に影響のあるような産業の労働者につきましては、やはり中央最低賃金審議会において審議を願うということに職権分配もなされております。従いまして、ただいまお話のように、中央で、その業種のこういう職種についてはどのくらい、これは地域差も出る場合があろうと思いますが、大体そういうような基準の金額が、具体的に問題になったときにきまってくる。それから都道府県ごとの産業でございまして、全国的に全然影響のないその土地の特産というような事業につきまして、これは都道府県労働基準局それから都道府県の最低賃金審議会において問題になるわけでございます。おのずから二つの面があろうと思いまするが、そういうふうに二つに分けまして、全国的なものにつきましてはただいまお話のように、まずその業種の、その産業の、そのある職種の最低賃金についてはどのくらいであるかという点が中央最低賃金審議会において議論され、意見が出て参る。それを労働省は尊重して決定を行う。こういうことになると思います。
#134
○小柳勇君 その基準といいますのは、私が言いますように、尺度、その単位の金額ですね、そういうような金額、わかりました。そこで、中央最低賃金審議会では、全国的にわたる業種あるいは職種そういうものの一つのめどをきめる。それは金額において決定していく。地方においては、地方の特性によってそれを若干修正した基準が示されるだろう。これを示すときは地方だけにある職種、業種と考えてよろしい。そうですね。
#135
○政府委員(堀秀夫君) 原則としてその通りでございます。
#136
○小柳勇君 そういたしますと、この何百種とあるとおっしゃいますけれども、その何百種の最低賃金というものは一体どういうことになるか。初めからずっときておりますものは、労働者の最低生活費、それから労働者の低賃金を引き上げるということの目的のために法律を作る、そうですね。そういたしますと、その何百種の職種といたしましても、労働者の生活費というものはあまり格差はないのではないか。この表にも出ておりますね。生活費そのものについてはどんな業種であろうと、職種であろうと大した差はないのではないかと私は考えるが、それはいかがですか。
#137
○政府委員(堀秀夫君) これは地域差もございましょうし、それからその労働の態様によってやはり消費労働力がございまするから相当の違いがあろうと思います。
#138
○小柳勇君 そうしますと、その消費する労働の再生産のための費用、そういうものを主体として考える、それでよろしゅうございますか。
#139
○政府委員(堀秀夫君) 生計費についてはお話の通りでございます。
#140
○小柳勇君 そういたしますと、今私は標準生計費の問題を中心に質問して参りましたが、中央最低賃金審議会あるいは地方最低賃金審議会が一つの基準などを出す。そうして今度は審査する、調査する権限を持つ。あるいは業者間協定で申請されたものを、これを検討して、そうして労働省あるいは基準局長に対して答申する権限を持つ。その審議会の権限というものをもう少し一つ詳しくお教え願いたいと思う。
#141
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金審議会の権限は、要するに一言にして尽せば、最低賃金法の実施に関する重要事項について労働大臣の諮問に応じて意見を述べるというほか、その審議会独自の意見によりまして必要な建議を行う。こういうことでございます。さらにこれをもう少し分けて申しますれば、たとえば業者間協定、労働協約等に基づく最低賃金の申請がありました場合の審査を行う。それからまた、行政当局におきまして必要な勧告を行う場合には必ず最低賃金審議会にあらかじめ意見を聞かなければならないということにしておりますが、それについての審議を行う。それから最低賃金法におきまして、先ほども御説明申し上げましたが、いろいろな、たとえば許可等の条項があるわけでございます。これらの問題につきまして、たとえばどの辺を基準にして許可を与えるべきかというような基準についても、重要なものは最低質金審議会において御審議を願いたいと思っているわけでございます。
 以上のように、最低賃金法の実施にかかわる重要な事項につきましては、全部最低賃金審議会にお諮りいたしまして、その出された御意見を尊重して実行して参りたいと思います。また逆に、最低賃金審議会の方から自発的に建議等が提出せられました場合においても、この建議をなるべく尊重して、行政当局としては必要な措置を講じて参りたい。このような考え方でおります。
#142
○小柳勇君 労働基準法三十九条の中央賃金審議会ですね、その審議会と一体どちらが権限を打っておりますか。
#143
○政府委員(堀秀夫君) 労働基準法二十九条の中央賃金審議会は、これは基準法のあの最低賃金の条章に関する重要事項について労働大臣に意見を述べる。あるいは建議を行う。こういうような権限を持っているわけでございます。それと、この最低賃金法の最低賃金審議会は、性格としては同じものであろうとわれわれは考えております。ただ、最低賃金法におきましては、基準法がわずか四カ条の条文でありましたのに対しまして、こちらは実に四十六条に上る法典でございます。そうしてその内容も、雇用労働者の最低賃金だけでなしに、家内労働の最低加工賃についての規定もあるわけでございます。従いまして、扱います内容については、この最低賃金法に基づく最低賃金審議会が発足いたしましたならば、非常に中身についても大きな問題が出て参るであろう、このように考えております。
#144
○小柳勇君 労働基準法の三十九条の賃金審議会は、最低賃金だけじゃなくて、賃金に関する建議なり答申をすることができるようになっているのです。そのことについてはそうなんですか。
#145
○政府委員(堀秀夫君) 基準法の賃金審議会は、これはやはり「最低賃金に関する事項を審議させるために、中央賃金審議会及び地方賃金審議会を置く。」となっておりまして、やはり基準法の最低賃金についての諮問機関である、このようにわれわれは了解しております。
#146
○小柳勇君 それはあとでまた見て下さい。賃金についても答申することができるようになっておりまするが、そのような中央賃金審議会というものが権限があるなら、私どもが言っておるように中央は中央で全国的ににらんで、地方は地方でその地方の特殊性をにらんで、そうして一つの基準を示す、そういうことこそがほんとうの最低賃金法の中心でなければならぬと思うのです。今ずっとあなたの答弁を聞いていると、そういう意味に最低賃金法というものをわれわれは理解するのですが、それでいいですか。
#147
○政府委員(堀秀夫君) 御趣旨のような線に沿ってやっていくことが望ましいと考えております。
#148
○小柳勇君 そういたしますと、今の中央賃金審議会、地方賃金審議会は、この法文上はそのような、今局長が言われるようなふうにとれないわけです、法文が。従って、その局長が言われるような方向にこういう法文の作りかえなり、そういうものを準備されておるわけですか。
#149
○政府委員(堀秀夫君) 私どもは中央賃金審議会が御答申になりましたものをそのまま最低賃金法案として法文化したものでございます。従いまして、ただいま御説明申し上げましたように、本法案の運用に当りましては、最低賃金審議会というものがあくまでも最も重要な働きをしていただかなければならない、このように考えておるわけでございます。また、この法案でそのように十分運用できると私どもとしては考えております。
#150
○小柳勇君 具体的にはまたあとで質問いたしますが、一応具体的な質問の前に、衆議院の局長の答弁を確認しておかなければならぬ面が三つばかりありますから、確認いたしまして、最後の討論はこの次に譲りますが、第一には、地域という解釈は全国的にこれを広めて考えてもよろしいと、こういうふうに多賀谷代議士の質問に対して答えておる、そのように確認しておいてよろしいですか。
#151
○政府委員(堀秀夫君) 多賀谷代議士の御質問は、労働協約に基く地域的最低賃金、第十一条の「一定の地域」というのは全国的な地域も含むことになり得るかと、こういう御質問でございました。私はそれに対しまして、これは事実問題としてはおそらくそのようなことは考えられないけれども、抽象的な法律解釈からは、この一定の地域というものはこれが拡大されて全国という地域にも及び得る可能性があると、このように御答弁申し上げたつもりであります。
#152
○小柳勇君 第二は、滝井代議士の質問に対して、現在の労働者の労働の質と量というものは非常に均等化しつつある、それに対して局長はそうでございますと、そういうふうな答弁をされておるが、その点も確認しておいてよろしいですか。
#153
○政府委員(堀秀夫君) 私ちょっと記憶いたしませんが、労働の質と量がだんだん均等化していくという方向にあることは是認いたします。しかし、現在におきましては、先ほど来御説明申し上げておりまするように、従事する作業なり職種なりの態様によりまして労働量の消費量も違いますし、まだまだ格差があることは否定し得ない事実であると思いますが、やはりいろいろな産業が近代化し、合理化していくという過程に応じまして、方向としてはそのような方向に進んでいくであろうという感じがいたしております。
#154
○小柳勇君 それから、それに関連いたしまして、きょうもらいました、消費者物価の全国的な格差というものもだんだんだんだん縮まって参りまして、多くて一割五分であろう、こういうようなこともこの労働省の方から出した資料によってわれわれは確認して、次の論議を進めていきないと思うが、それでよろしいか。
#155
○説明員(大島靖君) 提出いたしました資料(三)の第一表によりますと、三十二年平均で、各都市の消費者物価、たしかこれは二十八都市でありますが、これは全都市を一〇〇といたしますと、高い方で神戸が一〇七・二、名古屋、京都、大阪この辺が一〇四、横浜が一〇二、福岡が一〇二とあります。低い方に参りますと鳥取が九三・一で、一番低い。さらに甲府が九四・九、松本が九五・一、今治が九五・四、都城が九五・三、この辺が低くなっております。この格差によりますと、全都市平均一〇〇といたしまして、その上下大体一五程度の格差になっております。ということはこの統計の示す通りであります。もちろん少々物価の動きというものは年々歳々月々非常に変化するものでありますが、年によっては違うと思いますが、三十二年平均では統計の示す通りでございます。
#156
○小柳勇君 そういうものを確認しておきまして、各論につきましては次の機会に質問いたしますが、船員法適用の海上労働者の低賃金について、資料をもって御説明願いたいと思います。
#157
○政府委員(土井智喜君) お手元に船員賃金資料をお配りしてございますので、この資料に即して御説明申し上げます。
 海上労働者である船員につきましては、一般的に申しますると陸上の労働賃金よりも、たとえば汽船船員の場合においては約五割方高いのでございますが、しかし、その業種、職種によりましてはいろいろ格差がございます。以下それにつきましては表について申し上げたいと思います。
 第一表は業種別、船員賃金のこれは平均でもって表わしております。これによりますと汽船と帆船と漁船とは、これは業種によって賃金の平均が非常に違っております。で、汽船はあとで資料について御説明申し上げますけれども、これは産業別労働組合である全日本海員組合と、船主の連合会である船団連との間に賃金並びに最低賃金について労働協約が締結されておりますので、一般的に汽船につきましてはほかの業種よりも高いわけでございます。まず、平均につきましてこの計で申し上げますというと、汽船の場合で平均で一番低いものが一万六千五百八十二円、これはこの所要旅費を除いた毎月の収入として見た場合に約一万六千円、その次に帆船でございまするが、これはやはり小型船舶として地域的に格差がございますし、また、業種、職種によって格差がございまするが、平均して申し上げますと、沿海の帆船で一万四千百三十四円になって、汽船よりは低くなっております。
 それから漁船につきまして申し上げますというと、ここへあげました漁船はおおむね船員法適用船舶でございますので、船員法の適用船舶は総トン数にいたしまして三十トン以上の船舶でございます。従って、それ未満の船舶は、さらに零細な企業もございますけれども。これによりますると、漁船のうち遠洋漁業に従事するようなもの、たとえば捕鯨であるとか、あるいは底びきであるとか、そういうような遠洋漁業に従事するものは、一般的に漁船の場合高いわけであります。しかしながら、たとえば近海で沖取り漁業をやるようなもの、この例によりますればカツオ漁業のような例をあげますると、これは二万一千五百七十一円になっております。しかもこの内訳を見てみますというと、本給というのは七百八十九円であって、あとは歩合給である。一万円以上のものは歩合給によっておる、こういうような沿岸及び近海の沖取り漁業のようなものにつきましては、大体八割程度が歩合給によっているものと思われるわけであります。それは平均でございます。
 で、次に、それではこの第二表である船舶職員の平均賃金はどうかということでございますが、船舶職員は、船長、機関長、その他のいわゆる商船のオフィサー、船舶職員でございますので、次の第三表よりもそれぞれ高い水準になっております。従って、この最低賃金の問題としましては、第三表の属員によってごらんになった方がよくおわかりになるかと存じます。
 で、この属員、いわゆる普通船員のうちで、やはりこれは先ほど平均で申し上げましたように、汽船が一番高うございまして、汽船の場合において一万三千二百五十一円となっております。それから帆船の場合におきましては、これは平水の機帆船の場合で一万二百六十八円。先ほどの例で引きましたカツオ漁業を例にとりますというと、これは一万一千十二円。しかもこれらの大部分は歩合給によっておるというのが現状でございます。
 続いて表について申し上げますと、第四表は、これは学歴別の一つの賃金の格差をここで参考のために出しておきました。やはり学校卒の方が若干よろしい。普通船員におきましても大体学校卒の方が、まあ七分から高いというような例でございます。
 それから第五表は、これは経験年数によるその賃金の高低でございまして、もちろんこれは年数を重ねるごとに上っておるわけでございます。
 それから第六表は、これは規模別で、船が大きくなるに従ってそれぞれ船員の給与が違ってきております。で、労働協約の建前でも、やはり千トン未満のものと、それから五千トン未満のものと、あるいは三千トンとの、こういうようなトン数によってそれぞれできておりますので、これに見ましても大体小型船になればなるほど低い。ここで調理員がたとえば一番小型船でもって八千八百六十八円というのが大体まあ最低になっておるわけでございます。
 それから第七表は、これは規模別でどういう格差があるか、規模別と申しますのは船をよけい持っておる場合において、この機帆船のような、いわゆる小型船でもそこで格差がありゃしないかということを一つ表わしたわけでございます。で、このうち職員の点は、これはまあいわゆる高給者でありますから省きますが、属員の方に例をとりますというと、まあ機関部の属員で九千三円、それがまあ平水の場合においてこれは九千三百三十一円。この点は、機帆船のような業態は、汽船に比べますとまだ近代化の割合が少いので、船の隻数の多い少いによって、必ずしも賃金がそれほど多く開いておるというような事情ではないというようなことをこれで物語っていると思うわけであります。
 それから第八表は、これは地域別の格差を一応出しておきました。で、八表で申し上げるよりも、これは八表は職員でございますので、第九表でもってこういった機帆船の地域別格差で申し上げますというと、給与合計で申し上げますが、終りから三番目の給与合計で申し上げますというと、この欄では一応北海道地区が三万三百四十三円、一番高いわけです。九州の方が七千七百九十二円、これは機帆船の就航の北海道の方が、たとえば航路が難渋するとか、あるいは九州における機帆船の業態が非常に多いというような点もありまして、こういったような格差が出ておる次第でございます。
 それから次に第十表でありますが、これは年令別にどういうような賃金の分布になっているかというのを、この機帆船を例にしてあげた次第であります。この表によりますというと、二千円、二千五百円と、大体五百円きざみでもって大体どれぐらいの格差になっているかというようなことを表にしてあげました。これによりますというと、たとえば六千円未満の船員の数というものは、機帆船船員の数は一九・三九%、いわば約三〇%程度のものがこの機帆船の場合においては六千円未満の賃金である、こういうような調査の結果になっておるわけであります。
 続いて申し上げますが、第十一表は、船員がそれでは関連産業とどういうような賃金の推移を示しているかということを出しましたわけでありますが、これは鉱業あるいは製造業、その他産業別に比較しまして、船員の場合においてはまあ高い。もちろんこれは各四半期別の毎月勤労統計を基準にしたものでありますが、一般的にいって船員の給与は高い。これはまあ海上労働の特殊性から見てうなずけることであろうと思います。
 続いて、お手元に資料一として機帆船船員の最低報酬に関する答申というのを出しておきましたけれども、これは海上労働関係におきまして、最低賃金問題が一帯問題になりましたのは、小型船、しかもそのうちで帆船の問題が、これは労働界からも、あるいは関係の労働委員会からも問題にされた次第でございまして、昭和二十九年以来調査された結果、船員中央労働委員会としては、このような答申が行われたという答申の内容をここに掲げてございます。
 それから資料の二としましては、これは産業別の労働協約として全日本海員組合が船主団体連合会との間に統一的な労働協約を締結しております。それに基く識別最低保障本給表というのが別紙の第一表にございます。この表によりますというと、労働協約によりましては、一応これは大体大型汽船を中心とするものでございますので、一番そのうちで低い賃金から申し上げましても初任給で沿海の五百トン未満、これが属員の八千四百円となっております。従って、こういったような労働協約によりましても一応その汽船の船員というものは一般の他の職種に比べて非常に待遇が労働協約の上ではよくなっている、こういうことが言えるかと思います。
 それから続いて資料の三には、一つはこれは小型船、地区の小型船と海員組合との協約のモデルを出しておきました。これは越後と佐渡の機帆船の例でありますが、それによりますというと、最低賃金は一番低いもので本給を五千五百円としておる。そのほかに職務手当あるいは機関部手当等がつきますけれども、本給としては、この協定によりまして五千五百円、大体こういうモデルでもって機帆船については協定ができておるというような次第でございます。
#158
○小柳勇君 御説明をありがとうございました。
 質問をいたしますが、最低賃金法が実施された場合、たとえば暫定的に六千円なら六千円と決定した場合は、恩恵に浴しなければならぬ低賃金労務者というのは一体何万人ぐらいいると推定されますか。
#159
○政府委員(土井智喜君) ただいまの表について御説明いたしましたように、大体汽船の乗組員つきにましては、統一的な労働協約によって六千円よりも上回っているような実情でございます。従って、そういった汽船を除きますると、機帆船あるいは漁船並びに交通船その他の雑船でもって、小型船というようなものが合せまして約十万というものがこの最低賃金法で問題になる職種であろうかと想像されます。
#160
○小柳勇君 その小型船の職種というのは、この今見た資料には説明はないわけですね。
#161
○政府委員(土井智喜君) ただいま御説明しましたこの資料のうち、漁船につきましては、その小型船の中に入っております。ただ漁船は遠洋漁船等が入っておりますので、若干その態様を異にしておりますけれども、もちろん部分的には入っておるわけでございます。
#162
○小柳勇君 そうしますと、このような約十万……まあ海員組合で調査しましたのが二十万と調査してきておりますけれども、まあ十万でよろしいですが、十万のこの低賃金労働者に対するたとえば業者間協定という、最低賃金法が通った場合に一体どのくらい、何年ぐらい指導されたらそのような線まで、まずふえるような線まで引き上げることができるか、一つ見通しなり見解をお聞かせ願いたいと思います。
#163
○政府委員(土井智喜君) 先ほどこの資料で申し上げましたように、小型船のうち、当面最低賃金の協定の急がれておりますものは機帆船でございます。で、機帆船につきましては、この資料の一に船員中央労働委員会の答申がございます。で、この答申の趣旨によりまするというと、もちろんその法制による最低報酬制度を実施するということは極力急ぐというようなことになっておりますけれども、しかし、その前提として、行政指導によっても業者間協定の締結を推進することが必要である、こういうようなことが出ております。
 それで、今までそれじゃ行政指導でどういうようなことをやったかと申し上げますというと、御承知のように、機帆船は一ぱい船主が相当多いわけなんであります。機帆船の業界というものは、昨年まではいわば未組織であったと言っても過言でないわけであります。戦時中は資材の関係であるいは燃料等の関係でもって一応統制されたのでありますが、今のこの不況の段階におきまして、実は機帆船業界というものはばらばらであった。ところが、昨年以来、海員組合法によりまして業態の組織化が行われて、そして全国的な海員組合の連合会もできたような次第であります。従って、そういったような業界の間の協定の母体になるような業者間の組織というものは、昨年以来の行政指導によって一応どうやら格好がついた。問題は、それじゃ実質的な賃金をどのくらいにきめたらいいかということになりますというと、先ほどこの表でも御説明いたしましたように、大体六千円未満のものが機帆船の船員の約二割あるわけであります。しかも地域的に申しますというと、たとえば北海道の場合と九州の場合とでは相当の開きがあるということでございますので、それを各地減刑にどういうように業者間協定を持っていったらいいかということはむしろ今後の問題となっておるわけであります。
#164
○小柳勇君 海員組合の機帆船主では約二十万ぐらいに掌握しているようです。従って、それについても今すぐ積極的に御調査になって、早急に行政指導などによる――最低賃金法が通りましたら別ですけれども、当面そういうことで御努力をお願いいたしまして質問を終ります。
 なお、各論については、私はきょうは保留いたしまして、次の機会にやらしていただきたいと思います。以上で質問を終ります。
#165
○松岡平市君 ちょっと私船員川長にお聞きしたいのだが、船員の賃金ですね、船に乗って航海しているときの食費というものについてはどういう計算になっているのか、それを説明していただかぬと、これからちゃんと控除してあるのか、航海中の食費というものは賃金のうちに加算されていないのか。そこのところを少し説明して下さい。
#166
○政府委員(土井智喜君) お答えいたします。これは海上航行の特殊性によりまして、船員法によって食料は現物で支給しなければならぬことになっております。もちろんこの食料の支給の方法について、カロリー計算等は遠洋の場合とそれから沿岸の場合とは違っておりますけれども、とにかく食料については船主持ちである。これが一般の陸上労働者の場合とは違っているわけであります。船の特殊性から、当然船内において勤務する場合においては食料を現物で支給しなければならない、こういう建前になっております。
#167
○委員長(久保等君) 本日は時間の関係もございますので、本案に対する質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#168
○委員長(久保等君) それでは御異議ないと認めます。
  ━━━━━━━━━━━━━
#169
○委員長(久保等君) 派遣委員の報告を議題といたします。
 最低賃金法案審査上の参考に資するため、地方における意見聴取のため京都府に派遣いたしました委員の報告を聞くことにいたします。派遣委員の方から御報告を願います。
#170
○藤田藤太郎君 三月二十三日、委員会の決定により、私ほか柴田、常岡両委員とともに、ただいま審査中の最低賃金法案の審査に資するため、京都において本法案に関する聴聞会を開き、公益代表四名、労使の代表各三名、計十名より参考意見を聴取いたしました。以下、順次聴取いたしました意見の概要を御紹介申し上げます。
 まず、関西経営者協会中小企業労働対策委員会会長竹中雄三君は、最低賃金法の必要性は十分に認識している。本法案は、われわれにとっても、また、労働者にとっても、必ずしも満足すべきものではないが、最低賃金の芽ばえであるから必要と考えている。世間ではオール・オァ・ナッシング、すなわち、完全なものでなければ、ない方がよいと主張する向きもあるが、これでは困るので、一歩でもよくするということを考えねばならない。今日の中小企業がさらに発展し、成り立つことを願うなら、本制度は認めなければならない。また、本制度を実施するに当っては、中小企業を育成するとともに、企業採算内でやられるような配慮が望ましい。
 次に細部の点として、最低賃金定義の上で、年令、学歴、職種、経験等の面で明確にすること、異議の申し立て期間三十日は、六十日くらいに改めること、中小企業、零細企業では、賃金は大つかみ月幾らときめ、家族手当、交通手当、時間外賃金等の基準外賃金も形式的に分けているので、これらは最低賃金の基礎額に繰り入れること、第十条及び第十一条の規定に基く地域的に最低賃金を拡張する場合には、告示のみでなく、当該地域の関係ある使用者に文書で通知すること、地方の労働基準局長が最低貸金を決定する場合、全国的見地から見て調整の必要もあるので、労働大臣の認可の上実施すること等を要望する旨の意見が述べられました。
 次に、京都大学教授岸本英太郎君は、ILO二十六号条約及び勧告の精神は、国際的最低賃金に対する常識的考え方を採用したものである。今日、日本の最低賃金の決定方式は、世界で深い関心をもって見ている。しかるに本法案の内容は、業者間協定を骨子としている。これは労働者保護でなく、業者保護の法律であり、最低賃金法の名に値しないものである。
 次に、業者間協定が、賃金審議会の審議を経て、その意見により最低賃金を決定する場合、労働者の意見が経営者と同等の立場、反映しているとは考えられない。このような最低賃金の決定方法では、国際的に見てソーシャル・ダンピングの疑惑を解消しないし、本法案提案理由の目的を実現しないから、本法案の内容に賛成できない。次にオール・オァ・ナッシングの傾向は日本に強いが、現実の日本の条件に適応することが必要である。全国一律方式は望ましいが、一まず、業種別、職穂別、地域別に実施することは必ずしも否定すべきでない。世界の最低賃金法の歴史を見ても、漸次改善されている。最後に、本法案についてどうしても承認できない点は、賃金審議会が諮問機関であることである。これでは一度できた最低賃金を改善することが困難である。この審議会は諮問機関でなく、決定機関とすべきである。これが決定機関となれば、本法案は実質的に最低賃金制実施の方法が確保できるとともに、ILO二十六号条約の精神に沿うものであり、これの批准も可能である旨の意見が述べられました。
 次に、同志社大学講師田辺哲巌君は、わが国が最低賃金制を実施することは、議論の段階でなく、どこからも異論はないはずである。ただ問題は、ただいま提案されている最低賃金法案が適当であるかないかの点にある。本法案は最低賃金の決定方式に四つの方法を採用し、このうち主軸を業者間協定に置いているが、この点が労働基準法及びILO二十六号条約との関連で問題となるであろう。しかし、現在の日本の経済の実情から見ると、業者間協定方法も認めざるを得ないであろう。
 次に、最低賃金審議会が、本法案では諮問機関となっているが、これを現在の労働委員会のごとく、場合によっては最低賃金の決定のできるように強化すると、業者間協定による最低賃金が、業者の一方的決定という非難を緩和するであろう。
 次に、全国一律方式については、これは理想ではあるが、現段階ではこれを採用できるほど機は熟していない。本法案のごとく、業種別、職種別、地域別に設けていく方法が賢明な方法であり、そして漸次拡大していく方がいい。
 次に、本法案が実施された場合、順守されるためには、中小企業対策をあわせ考えねばならない。この対策を怠ると業者に悪用され、労働者の保護となるより、中小企業の保護対策のみに終るおそれがある。中小企業の育成を忘れると、本法案はない方がよいという結果になるのではないか。また、法律順守のため罰則を設けることは適切でない。法律が守られないのは、それだけの理由がある。法律も尊重するだけの社会的、経済的裏づけがないものは死文化する。中小企業が法律を守れるよう育成すると同時に、労使に対する啓蒙もまた重要である。法の実施が罰則に依存するようなことがあってはならない。本法案については、賃金審議会の機能を強化することを要望して賛成するとの意見が述べられました。
 次に、日本労働組合総評議会大阪地方評議会組織部長中江平次郎君は、まず本法案は、百害あって一利なしであり、廃案にすべきである。本法案はILO二十六号条約及び勧告の精神も、また、労働基準法の原則も無視している。また、企業の支払い能力を一つの原則と考えているから、最低賃金の目的である労働者の生活の引き上げは実現できない。
 次に、日本の中小企業の発展のためには、低賃金をなくさなければならない。中小零細企業に低賃金をなくすために、まず全国一律八千円の最低賃金制を実施するとともに、これに必要な施策をとることが必要である。業者間協定による最低賃金制を実施すると、現在の中小企業の濁点がそのまま残ってしまう。また、生産性も、低賃金であるから低いので、高賃金になれば向上する。現在まで業者間協定の実施された例を見ると、賃金の上っているものは、新規採用者のみであり、新規採用の結果、老齢者は解雇されており、業者間協定は、労働者の利益となっていない。
 次に、賃金審議会では、労働者の発言は無効であり、決定された最低賃金が拡張適用される場合も、業者のすべてを納得させるものであるから、労働者の意見の反映は期待できず、また異議の申し立ても認められてない。
 次に、第十一条は労働組合法の改悪である。本法案は、拡張適用の部分を賃金に限定するとともに、労働委員会の決定を賃金審議会の諮問にとどめている。審議会では、労働者の発言はあまり効果は期待できず、労働者側の提案も勧告程度になってしまう。また、家内労働者の工賃についても、関連あるものに限られている。最低賃金は、家内労働のすべてを含めたものでなければならない。家内労働を普通の労働者より一段と下の額で定めることは、最低賃金制の効果を薄くするものである。結論的にいって、本法案は労働者の団結権を否認する点を含み、憲法、労働基準法の精神に反し、労働組合法を改悪するものであり、労働者が地域的に業者と統一協定を結ぶことを妨げ、低賃金を固定化しようとするものであるから、これに反対し、全国一律八千円の最低賃金制を実施することを要望する旨の意見が述べられました。
 次に、京都経営者協会副会長森下弘君は、最初に本法案に賛成する。日本の実情に適さない最低賃金制が制定されたら重大な問題となる。最低賃金法は社会政策ではあるが、これを経済政策と関連なしに実施することはできない。日本の経済の特長は大企業と中小企業との間に開きがある、つまり二重構造であり、異質の構造であることである。これを一元化、同質化するための合理化及び近代化が必要である。
 日本の経済の現状では、全国一律方式の最低賃金制を採用すると中小企業は大きな被害を受ける。ILO条約の中でもいわれているように、それぞれの国の実情を考えて、国情に応じた方式をとることが妥当であり、一律方式は暴挙である。
 次に本法案は、最低賃金決定に四つの方法を採用しているが、本法実施には常に経済政策が並行して行われなければ実施が困難である。業者間協定による最低賃金は低賃金化するといわれるが、三者構成の審議会の意見が尊重される建前であるから、著しい低賃金はチェックされるはずである。また、低賃金であるとよい労働者が得られないから、よい労働者を求めるために賃金は上昇せざるを得ない。関連家内労働の最低工賃の決定は、最低賃金とつり合いとれた工賃としなければ、最低賃金制の円滑な実施は期待できない、それで本法案の考え方は妥当である。
 次に、最低賃金の決定の主体は当局であるが、当局は賃金審議会の意見を尊重するので、その運営の面で審議会の良識に期待する。本法案は理想のものといえないが、さらに一歩々々よいものに近ずく方向に進むべきである旨の意見が述べられました。
 次に、日本労働組合総評議会京都地方評議会副議長西田修君は、本法案は、最低賃金の決定基準について三つの基準を設けているが、生活賃金を第一の決定基準としなければならない。本法案のごとく、三つを均等に考慮することは適当でない。特に、業者間協定は労働者の参加を排除しているから、これは支払い能力が第一となり、生活賃金とはならない。生活賃金を第一とするとともに、業者間協定にも労働者を参加させるべきである、これはILO条約の精神でもある。
 次に、決定方法についてみると、業者間協定によるものが主であり、これを現在推進している現行労働基準法でも最低賃金制は実施できたのにもかかわらず、政府はその努力をしなかった。また、労働協約の拡張は現行労働組合法に比して著しく後退している。労働委員会の決定が賃金審議会の意見を聞くことになっている。これは拡張方式による、実現を現在より困難とする。業者間協定による場合は、使用者の合意による申請であるから、労働者の意見は排除される。賃金は労使同等の立場で協議決定されたものでなければならない。このような賃金決定方法は、労働基準法の精神に反するものであるから、業者間協定による決定方法は削除すべきである。
 次に、業種別、職種別、地域別にきめると賃金格差ははなはだしくなり、企業の近代化を求めるためには、全労働者に全国一律方式をとることが望ましい。また、家内労働についても、関連あるものについてのみ最低工賃を決定しようとすることは適当でない。結論として、生活賃金を主として、使用者と同等の立場から参加してこれを決定し、全国一律方式を採用する最低賃金法の一日も早く実現することを強く要望する旨意見が述べられました。
 次に、立命館大学教授坂寄俊雄君は、まず第三条において、最低賃金は生計費、類似の労働者の賃金及び支払い能力の三つを考慮してきめることになっているが、本法案は、労働基準法の特殊規定と考えねばならないので、基準法の第一条の規定から離れて賃金を決定することは矛盾であり、ひいては、憲法第二十五条の精神に違反の疑いがある。
 次に、第九条、第十条の規定する業者間協定は、ILO二十六号条約及び勧告との関連及び憲法との関係において考えてみなければならない。個々の労働者の賃金を業者間協定により一方的に決定していくことは、労働基準法の対等の原則にもとるとともに、労使関係が前近代的な形で残っていき、労働条件の決定に本質的に違反した結果となってくるのではないか、また、憲法第二十八条の精神を無視することになるのではないか。
 次に、第八条最低賃金適用除外の点で「軽易な業務」は基準法の除外規定の中にはなく、新設されたものである。単純な軽労働者を最低賃金から除外することは、最低賃金の精神に反する。労働者をこのように分けて考えることは正しくないので、「軽易な業務」は削除すべきである。
 次に、第九条、業者間協定に基く最低賃金の場合、「全部の合意」という言葉がある。業者間協定が法的御東力を持たない場合は一応の最低額が出ると思うが、法律で規制する場合、「全部の合意」となると最低額を引き下げる結果となる。
 次に、第十二条第五項において、異議の申し立てのあった場合、一定期間猶予し、または別段の金額を定めることができることになっているが、これは第五条第二項の最低賃金の効力の規定を無効とすることになるのではないか。
 次に、現在家内労働者の分布は非常に拡大されているので、本法案による最低工賃の規制方法ではほとんど救済されない。現在六百万ないし八百万の家内労働者の日々の生活を考えて人道的処置を考えてほしい。
 次に、罰則関係についてみると、一万円以下の罰金刑となっているが、現行労働基準法第三十一条違反の罰則は六カ月以下の懲役または五千円以下の罰金となっている。罰金一本で法律順守を期待するためには、労働基準監督官の大幅な増員、予算の大幅な増額がぜひ必要である。
 以上の諸点が何らかの方法で解決されない限り、本法案は適当でないと考える旨の意見が述べられました。
 次に、京都府中小企業団体中央会会長堀宣一君は、結論として、本法案は不備な点もあるので賛成しかねるが、全国一律方式を強行されると将来は不安であるので、中小企業に適当するよう、十分に検討して制定されることが必要である。また、労働者に安定した賃金を出すことは必要であり、最低賃金制は国際的に信用を高める上に役立つものである。中小企業は過当競争があり、労働者にそのしわ寄せがくる。労働者に高賃金を望むためには、最低賃金制をしくこともやむを得ない。しかし、これと同時に、中小企業対策が十分考慮されねばならない。大企業の労働者は退職すると直ちに退職金で仕事を始めるので、競争相手が常に増加することになり、中小、零細企業をさらに圧迫する。
 次に、本法案には罰則が設けてあるが、これは削除してほしい。事業を圧迫するような法律であるなら、現在のようにない方が安全である。われわれ中小、零細企業者は、全国一律方式のおそろしいものができるより、この程度のものから順次改善され、考慮の余地も将来できるであろうから、条件付に賛成する旨の意見が述べられました。
 次に、京都民間産業労働組合連絡協議会長桜井敏雄君は、憲法の規定からも最低賃金制の実施は必要であるが、今回提案された最低賃金法案を見ると、その決定に当って、使用者に有利な法律である。特定の産業、職業に適用され、業種別、職種別、地域別に定められることになり、ほとんど現行の賃金通りに押えられる。しかも業者間協定が使用者に一方的にきめられることとなり、これは最低賃金決定の理念に反する。提案理由の中で、最低賃金の確立は労働条件を改善し、賃金格差を防ぎ、公正競争を確保し、労働者の質的向上をはかるものであるといっているが、これは、中小、零細企業にソーシャル・ダンピングとの非難が世界にあるので、この声をおさめるためのごまかしの最低賃金制である。真に過当競争をなくし、健全な中小企業の発展のためには、全産業一律方式が望ましい、また、労働者の異議の申し立て、賃金審議会の権限強化が必要である。労働者が真に希望する法律は現在政府の提案しているものでなく、衆議院において提案された社会党修正案である。これを可決、決定してほしい旨の意見が述べられました。
 次に、京都労働基準審議会委員佐々木善一君は、最低賃金法は労働者保護の面から必ず必要であり、これによって労働条件を改善するとともに、中小企業にもよい結果となる、すなわち労働者の質の向上、過当競争の防止となり、輸出産業においては外国からの非難も防止できる。最低賃金制は本法案の基本的考え方であるように、業種別、職種別、地域別に決定していく方が妥当である、全国一律方式は理想ではあるが、現状では困難であり、高過ぎるときは業者がその負担にたえず、低きに過ぎると労働条件の改善とはならない。業者間協定は、労働基準法、ILO条約等の趣旨に違反すると言われているが、三者構成の賃金審議会において労働者の意見を相当反映すると考えられる、この例は労働保険審査会にもあり、その運営の結果から見ても、本法案の方法で十分労働者側の意見を反映せしめる機会があるものと考える。本法案は理想的であるとは考えないが、低賃金労働者の保護に一歩前進するから賛成する旨の意見が述べられました。
 以上、参考人各位の御意見の概要を申し上げました。
 最後に一言申し添えておきたいことは、今回の突然の議員派遣にかかわらず、調査に御協力をいただいた京都労働基準局、京都府庁、特に御多忙中にかかわらず御出席をいただき、貴重な御意見を賜わりました参考人の各位に対して、厚くお礼を申し述べておきます。
 以上、御報告申し上げます。
#171
○委員長(久保等君) ただいまの報告に対して御質疑はございませんか。――別に御質疑もないようですから、派遣委員の報告は終了いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時五十三分散会
   ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト