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1958/04/01 第31回国会 参議院 参議院会議録情報 第031回国会 社会労働委員会 第24号
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1958/04/01 第31回国会 参議院

参議院会議録情報 第031回国会 社会労働委員会 第24号

#1
第031回国会 社会労働委員会 第24号
昭和三十四年四月一日(水曜日)
   午前十一時二十八分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
三月三十日委員紅露みつ君辞任につ
き、その補欠として青木一男君を議長
において指名した。
三月三十一日委員中野文門君、後藤義
隆君及び青木一男君辞任につき、その
補欠として谷口弥三郎君、横山フク君
及び紅露みつ君を議長において指名し
た。
本日委員谷口弥三郎君及び松岡平市君
辞任につき、その補欠として小柳牧衞
君及び大沢雄一君を議長において指名
した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     久保  等君
   理事
           勝俣  稔君
           柴田  栄君
           木下 友敬君
           常岡 一郎君
   委員
           有馬 英二君
           大沢 雄一君
           草葉 隆圓君
           小柳 牧衞君
           紅露 みつ君
           斎藤  昇君
           西田 信一君
           横山 フク君
           片岡 文重君
           小柳  勇君
           坂本  昭君
           藤田藤太郎君
           光村 甚助君
           田村 文吉君
  国務大臣
   労 働 大 臣 倉石 忠雄君
  政府委員
   運輸省船員局長 土井 智喜君
   労働政務次官  生田 宏一君
   労働大臣官房長 澁谷 直藏君
   労働省労政局長 亀井  光君
   労働省労働基準
   局長      堀  秀夫君
  説明員
   労働大臣官房労
   働統計調査部長 大島  靖君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働情勢に関する調査の件
 (国際労働条約批准等に関する件)
○最低賃金法案(内閣提出、衆議院送
 付)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(久保等君) これより社会労働委員会を開きます。
 委員の異動を報告いたします。三月三十日付をもって紅露みつ君が辞任し、その補欠として青木一男君が選任されました。
 三月三十一日付をもって中野文門君、後藤義隆君及び青木一男君が辞任し、その補欠として谷口弥三郎君、横山フク君及び紅露みつ君が選任されました。
 四月一日付をもって谷口弥三郎君が辞任し、その補欠として小柳牧衞君が選任されました。
#3
○委員長(久保等君) 労働情勢に関する調査の一環として、国際労働条約批准等に関する件を議題といたしまして、御質疑を願います。
#4
○小柳勇君 質問いたします。この前の光村君の質問に関連して質問をいたします。
 第一は、ILOの百四十一回理事会の、結社の自由委員会で、日本の政府に対して質問をいたしておりまして、先日の局長の答弁では、四月十五日までに政府の返事をもらいたいという書面がきている。その書面に対して、どのような返事をなされたか説明していただきたいと思います。
#5
○政府委員(亀井光君) 御指摘の通り、先般御指摘申し上げましたように、四月十五日までに、批准の手続につきまして、準備の進捗状況を、われわれとしましては御報告したいと思っております。まだその間、われわれの準備が今進んでいるところであります。その面前になりまして、そのとき現在における状況を報告したいと考えております。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
#6
○委員長(久保等君) ちょっと速記やめて。
   午前十一時三十分速記中止
   ―――――・―――――
   午前十一時四十分速記開始
#7
○委員長(久保等君) 速記を起して。
#8
○小柳勇君 それでは返事をやられる四月十五日までには向うに回答されるが、この間の労働大臣の答弁では、全逓三役の解雇は条件とする、こういうことをはっきり言明しておられるが、そのこともILOの理事会に回答として出されるのかどうか、お聞きしておきたいと思います。
#9
○政府委員(亀井光君) すでに先月の終りに、ILOに対しましては、先月の二十日に閣議で了解を得ました事項につきましては、そのまま報告をいたしております。その中に、大臣からこの前御答弁のございましたように、全逓問題が入っておるわけでございます、従って、この問題は事新しい問題ではございませんので、われわれとしましては、法案の準備その他の進捗状況につきまして報告したい、かように思っておる次第であります。
#10
○小柳勇君 大臣に質問いたしますが、全逓三役改選を条件とするということは、日本の政府が閣議で御決定になったのであるかどうか、お聞きしておきたいと思います。
#11
○国務大臣(倉石忠雄君) 閣議決定というわけでもありませんが、閣議で了解事項として方針を決定いたしております。
#12
○小柳勇君 そうしますと、結社の自由と団結権の擁護というのは、そのような、政府が組合の役員の改選なり選出については干渉しないという精神であるが、その精神にもとるだけではなくて、批准しようとするその内閣の、政府の腹というものが全然うそであるということに、われわれとしては認定するが、その点について大臣はどのように考えておるか。
#13
○国務大臣(倉石忠雄君) 解釈は御自由でありますが、われわれは干渉はいたしておりません。私どもは、従って、法律を守ってもらいたいということだけは何人に対しても要求しているのであります。従って、組合がどういう態度をとろうと、私どもは干渉はいたしませんけれども、批准の手続をするしないは政府の責任においてやるわけであります。
#14
○小柳勇君 法律を守る守らないの問題はあとでいたしまするが、もしここで全逓の三役が次の大会で批准をする条件として、日本の政府がきめたということをもって役員を改選したとするならば、その組合は政府の御用組合と判定されなければならぬが、その点について大臣はどのような見解を持っておるか。
#15
○国務大臣(倉石忠雄君) 御用組合というのは、経営者の便宜のために存在して、事務所を借りておるとか、月給を差し引いてもらっておるとか、いろいろなお世話をされて、そうして経営者の便宜のために存在するのをわれわれは御用組合と考えております。日本の全逓という労働組合は御用組合ではないと私は確信をしております。従って、全逓が正しい法を守るという態度をみずからおきめになることについては、私どもは非常に敬意を表しますが、そのために御用組合ではないのであります。
#16
○小柳勇君 大臣はしばしば国民の期待ということを言われるが、その国民の期待ということと、政府の行政的ないろいろな措置というものを、同じように結びつけて、大臣は常に答弁をしておられる。そのような観点からするならば、今ここで条件として内外に発表されるということは、そのような組合員に対するてこ入れであって、もしそのようなことによって組合員のこの役員選出の自由、そういうものについててこ入れしたという判定がなされる、私はそのように判定するが、そのようなことで組合の役員の改選がなされ、そうしてその政府の条件、そういうものについててこ入れされたとわれわれとしては認定せざるを得ない。そのような組合は、大臣がどのように弁解されようとも、政府のそういうようなてこ入れに会って、政府の思うように動かされたと判定せざるを得ないでしょう。そういうような組合は、ILOの理事会その他で問題になる、そういうときに、一体大臣はどのように答弁されるか。
#17
○国務大臣(倉石忠雄君) 藤林あっせんを尊重してりっぱな態度をとられた国鉄労組については、世間がみな敬意を表しております。それと同じことであります。
#18
○小柳勇君 国鉄労働組合の問題は、先日も言ったように、組織の問題である。組織内部でそのような情勢を組織自体が判断してこれを決定している。全逓の三役の解雇の問題は今起った問題ではない。すでにこの答申の出る前に、労懇などでも判定する、その前に、いろいろ事情があって、起っておって、その情勢を判断しながらそのことには触れないと労働問題懇談会としては答申している。それに触れて答申するということは、労働組合の自主性を阻害し、いろいろてこ入れするという判定をされてはいけないということで、答申する労懇としては、そのようなことを避けて、そのことに触れておらない。中山会長も、はっきりそのことは、全逓の問題は条件ではないと言明しておられます。その労懇の答申を尊重するといって、労働大臣が、今ここで条件としてこれを内外に発表して、そうしてこの全逓の三役が改選しなければ批准しないとはっきり言うということは、その批准するという大きな一つのてこ入れで、組合の自主性を阻害すると判定せざるを得ないのですが、そのことについて、大臣はどのようにお考えになりますか。
#19
○国務大臣(倉石忠雄君) しばしば私が本席で申し上げておりますように、労働問題懇談会というものは、労働大臣の諮問機関であります。従って、その意見を尊重することもわれわれの考え方でありますが、国民に対して責任を負うのは労働問題懇談会ではなくて、行政府たる政府でありますから、政府の独自の見解に基いてこれを尊重して処置をするのが当然であります。そこで、全逓がどういう態度をおとりになろうとも、全逓の御自由でありますが、私どもは国民の期待にそむかないように、正常な労働慣行を作っていきたいという、こういう考え方に立って、やはり現存する法律は守ってもらわなければならないという態度については、小柳さんも御理解をいただけると思うのであります。従って、そういうような、一方的な態度を故意におとりになっておる限りは、政府としては、八十七号条約を批准するという建前は、自由にして民主的なる労働運動をやっていこうという建前で批准するのでありますから、自由にして民主的な労働運動というのは、法律を犯すようなことをいうのではないのでありますからして、従って、われわれは、正常なる労働運動が行われるように期待をする。そういうわけでありますから、私は願わくば、なるべく表立っていろんな御議論をなさらないで、やはり全逓も政府もやりいいようにしていただくことが、みんなが必要なことではないかと、こういうことを何べんか申し上げておるのであります。
#20
○光村甚助君 御自由にされるのはけっこうだとおっしゃるのですから、全逓もやはり去年の大会で、解雇された組合の役員を再び選んでいるんですよ。全逓の解雇三役をかえない限り批准しないとおっしゃいますけれども、これは解雇の問題と批准と別々だと思う。解雇されたのは去年の三月なんですよ。批准の問題は数年も前から、二十七、八年ごろから批准をしてくれと言っている。あなたが労働大臣のときでも、たしか二十九年か何ぼのときでも、私、議員になる前からでも、公労法四条三項は削除しろという議論があったことは事実ですよ。その時分から四条三項は削除しろ、ILO条約を早く批准しなさいと言っていたのだから、そのときたまたま、これは例ですけれども、批准しておれば全逓の解雇三役の問題は問題にならないはずなんです。たまたまあなたの方は批准が追い詰められて、どうしても批准しなければならなくなった、そうしたら、たまたま全逓で解雇三役をかかえていた、ちょうどいい幸いだとして食いついている。私は居直り強盗のたぐいだと思っているのです。実際上は全然切り離して考えるべきだ――われわれが数年前から言っていることなんです。そのときに四条三項が解決しておれば、全逓の問題なんか起っていないじゃないですか。さきに批准しておれば起っていないということなんです。批准に追い込められて、たまたま全逓の問題があったから、それの足をつかまえて、言いがかりつけているとしか思えない。この点どうですか。
#21
○国務大臣(倉石忠雄君) あなたのおっしゃっておることに、二つの、私の見解から言えば間違っていることがあります。一つは、政府は批准せざるを得なくなったから批准をするのではないのであります。日本政府は、もともとILO機構について全面的に協力するという態度、従って、できるだけ多く条約を批准する建前であります。八十七号条約についても、やはりこれについては、早く批准をすることがいいということでありますが、批准をする場合に、どういうふうになるかという影響について、一年半前に労働問題懇談会に諮問をいたした。幸いにその結論が出ましたので、その趣旨を尊重して、批准をするという態度を決定いたしたわけでありまして、追い詰められたのではありません。正々党々たる労働政策の見地に立って、われわれは批准という態度を明らかにした。従って、ILO事務局においては、非常に歓迎するということを言っております。その通りであります。ただしかし、これによって来たる影響は、政府は行政府として国民に負わなくちゃなりませんからして、そこで諸般の準備を整えなければならない。そういうことで、もっぱら準備をしておる。同時にまた、公労協、関係のある公労協で特に違法な行為をいたしておるような方々は、やはりみずから反省されて、そうして、八十七号条約という正々堂々たるものを批准するのだからして、やはり現存する法律は守ろうではないかという御態度に出ることがりっぱではないか、こういうことを言っておるのであります。でありますから、私は、この批准をするということについての最終的責任は、国民に対して政府が負うのでありますから、そのことについて、政府のやるべき態度について、批判は御自由であります。それぞれのお立場で、そんなことは必要ないというお考えを持つ者もあるだろうし、そういうことが必要だと解釈する者もありましょう。しかしながら、政府は、国民に対しては、やはり違法行為をやられる者が現存する限りは、批准の態度をとるべきでないということが、国民に対して政府が責任を負うゆえんであると理解いたしておるのでありますから、何と言われても、やはり政府の責任においては、今のような状態が継続しておる限りは、諸般の準備が整っても、批准の手続きを国会に提出することは困難であるということを明確に申し上げておるわけであります。
#22
○光村甚助君 もう一点。それなら大臣にもう一つお伺いしますが、全逓という組合は、あなたの方の言い分では、公労法上の組合ではないから、団体交渉もしちやいかぬということをあなたの方ではおっしゃっている。郵政省でも、正当な組合ではないから団体交渉しないと、こうおっしゃっているのですね。そして全逓から調停の申請を出しても、正当な組合ではないから調停の申請書も受理するなということをあなたの方でおっしゃっているかどうか知らぬが、受理しない。(国務大臣倉石忠雄君「言っておりません」と述ぶ)言っておるかどうか知りません。認めていないのですよ。労政局長、人の質問を笑って聞いているのは不謹慎だぞ、実際。けしからぬぞ、実際。まじめに質問しているのに、何だ君の態度は。(「まじめに聞いております」「笑ってまじめになるか」と呼ぶ者あり)公労法の組合でないと言って認めないで、これを、団体交渉は拒否している。もう一つは、調停の申請も受理していない。それにもかかわらず、対外的には、全逓が違法な行為を行なっているから、これを解消しない限りこの批准をしないとおっしゃる。国内的には正当な労働組合でないと言っておきながら、国外的には、全逓がこういう違法行為をやっているから、いわゆる批准しないと言うことは、国内的には認めない、国外的には認めるのだ、全くこれは政府の考え方は矛盾している考え方じゃないですか。これはどうですか。
#23
○国務大臣(倉石忠雄君) ILO八十七号条約を批准するためには、公労法四条三項、地公労法五条三項を改正しなければなりません。もしそのことが先行いたしたとすれば、現在の全逓の態度が合法化するということに考えておる者もありましょう。八十七号条約を批准するということは、非合法を合法化するようなことになっては、われわれは、法治国家としては困るのでありますから、従って、八十七号条約に関連のある組合が現在のような態度をとっておる限りは、やはり批准の手続をすることができないということは、八十七号条約の批准ということを前提にしてそうしてすべてのことを考えまして、政府としては困難である、こういうことを申しておるのであります。
#24
○小柳勇君 労働大臣は法を守るということを言われる。その法というのと、それから守るというのを、二つに分けて聞いておきたいと思うのです。法というのは、労働大臣の頭の中には、公労法の四条三項、地公労法の五条三項、あるいは公労法十七条、十八条があると思う。それから、守る、守らないという点は、現在、守ったか守らないかという点については、裁判所で争っている。従って、前の、法の方から私は討論していこうと思うのだが、この公労法の四条三項、あるいは地公労法の五条三項というものは、憲法の結社の自由、あるいは団結権の擁護、そういうものにもとっておる。で、このILO条約の精神は、最低の生活の保障、あるいは適切な生活の保障がなければ争議権は禁止できない。そういうのがILOの条約の精神であろうと思う。そういうようなILOの条約の精神にもとる。しかも日本の憲法でも、そういうふうに、制限できない。そういうことで、われわれとしては前から公労法の四条三項、地公労法の五条三項については削除を常に叫んできておるわけです。そのような憲法にもとる、あるいはILOの八十七号の条約にも、ILOのほかの条約にももとっておる、そういうふうな法をまず中心にして労働大臣はこれを判定しようとしておる。そのところに大きなわれわれとの意見の食い違いがあると思います。しかも、公労法の四条三項、地公労法の五条三項は国内法であるから、国内法として処理しよう。そのことも、これは国際的にいろいろ日本に勧告しておることであるし、労懇としてもそのことは十分討論して国内法として処理しています。四条三項を削除する、地公労法五条三項を削除するならば、ほかの方の事業法についても何か検討するか。そこまで労懇としては、討論している。そのような四条三項について、なおこれを存置しなければならぬような頭で今全逓の問題に条件としておる点について私は理解できない。従って、その問題について大臣の意見を聞いておきたいと思う。
#25
○国務大臣(倉石忠雄君) 何かお考え違いをしておるのではないかと思うのでありますが、あなたのお説を拝聴いたしておりますというと、公労法というのは憲法違反の法律であると、こういうふうにおっしゃったように聞き取れるのでありますが、公共企業体の従業員が争議権を禁止されておるということについて、すでに最高裁判所の有権判決は出ております。またこれは、国会できめられた法律であることは御承知の通りであります。われわれは、現行法に即して、やはり現行法が存在する限りは、やはり現行法は、国民として、法治国家において守ろうではないかと言っているのであります。労働組合のみひとり法益の優先ということは認められないのは、あなたも御存じの通りであります。
 そこで、私は申し上げたいと思いますのは、四条三項で結社の自由を阻害するというふうなことについては、こういうことはなるべくすみやかに削除したい。このことは私どもも同感であります。従って、これはなるべく早く削除をして、そうして八十七号条約を批准したい。八十七号条約の批准のできなかったのは、そういうところに関連性があったのでありますから、批准という前提を得るためには、やはり四条三項、地公労法五条三項を削除するという態度が出ておるのでありますから、やはり私どもとしては、結社の自由、労働者の団結権を守っていこうという建前においては、小柳さんと全く同じ考えでありますから、そういうことをしていきたいと、しかし、現存する法律はやはり故意に守らないでいくというふうな態度はよくないのではないか、こういうことを言っているのであります。
#26
○小柳勇君 で、その前の方の一点、憲法にこれがもとると理解いたしております。従って、公労法の問題については、あとでまた別個に提案いたしまするが、その問題とは別に、公労法を守らなかったのではないかと、あるいは将来守らぬのではないかと、かような大臣の頭は、私は理解しにくいというわけです。守らなかったのではないかということについては、これは裁判所がこれを判定する以外に、いかに大臣であろうとも、労働大臣がこれを判定することはできない。それを、全逓は公労法四条三項を守らなかった、将来守らぬだろう━━もし批准したならば、この法律というものはもう全然守らぬだろう、そのようなことをこう関連して、批准とここに結びつけておられるところに、大臣がこれを飛躍しておる、そのように私は言うわけです。その四条三項が結社の自由と団結権の擁護について、しかもこの公共企業体の労働者については、これは行き過ぎである、争議権の禁止あるいは結社の自由を阻害しておるということについては、労懇の方でも答申が出ておるのだが、それはあなたもこれは将来は削除する腹でおられるようだ。その腹で考えるならば、全逓の三役解雇を条件としてこれをかえなければ批准できないというような先日からの答弁は、われわれ理解できない。そのことはさっき光村君が言っておるように全逓の三役の問題は、これは団結権の自由、結社の自由、その組合の自主にまかすべきものである。これを批准の条件とすべきものではない、それを言っておるわけです。そのことをはっきり割り切るならば、批准の問題の条件としてこれを回答するなどということは、政府としては組合の労働問題に介入しておると断定せざるを得ない、そのように私言っておるわけです。
 次に、守る、守らなかったという業務の正常化の問題について、私ははっきり言っておかなければならぬと思う。公労協の組合が過去何回かいろいろ実力行使というものをやってきた、それは原因をずっと調査してみるというと、調停案についても、十分に政府はこれを尊重しなかった、裁定すら尊重しなかった、そういう過去の何回かの、何年かの実績によってそういうふうに追い込まれてきた。そうして実力行使をやった、実力行使をやったために今回においては裁定が実施されるようになって、そのようにこの労働者の動きがなからねば、十分に団結をした労働運動の動きがなからねば、政府みずからが法を守らなかったではないか、そういうふうなことは今裁判所で争っておることであるし、その判決が出なければ、大臣が勝手に違法行為があった、そういうふうに断定することはできないではないか。従って、法を守ることを国民が期待しておる、国民の期待はそうでありましょう。私ども理解いたします。法としては悪法であっても、あくまでもわれわれとしても法を守る立場でいる。国民もそうであるし、労働組合も法を守るという立場におるわけです。しかし、それは労働運動の過程でいろいろの運動があるだろう。その幅は裁判所が判定することであって、それを労働大臣がここで業務の正常なる運営を阻害したなどと勝手に判断して、違法組合である、そういうふうに判定することは許しがたい、許し得ないことです。従って、私はその守る、守らないという問題は、これは裁判所にまかして、国民の期待というものは、決して大臣が言うように、今全逓の三役をかえよというような期待ではないと思う。それは組合みずからの問題です。大会の問題です。機関の問題です。そういうことでまかして、批准についての条件などということにはしない、もう一回一つ大臣はそういうようなことで考え直してもらいたい。
#27
○国務大臣(倉石忠雄君) お互いに、まあ専門家のおそろいで、そしてわかり切ったことをお互いに非常に何べんか言っておられるようでありますが、私は結論的に申し上げると、皆さんも私も一点だけ違っておるところがあるのです。つまり批准するということについては決定した、早く批准しろ、そのために政府も準備も整えております。全逓がああいうことでは困る、こういうことについてそれは関係ないではないか、こういうことのようであります。そこで私は皆さんにお願いいたしたいと思います。もうむずかしい理屈は抜きにして、ことに御関係のある光村先生もおいでになることでありますから、ここで表向きいろんなことをやっておることは、やはりうまくないじゃないか。それよりはせっかく大方針をきめたのだから、政府にこれは一つ早く批准をさせるように協力してやろうではないか、こういうふうに考えていただきたい。このことはもう理屈抜きにして私はお願いすることであります。日本の労働政策としてやはりそうあるべきだというので、協力してやろうというお立場に立っていただければ、こういうところで、しかも速記を置いていろいろやられますというとむずかしいから、そうしてその話し合えば、どういうことがやはり支障になっているかということはわかるのであって、お互いに全逓組合にもわれわれ個人的に知っている人は、なかなかおとなのりっぱな人がおりますから、そういう人たちがやりにくくなつちまう、こういうふうに解釈しておりますので、どうか一つ政府の考え方も十分もう理解しておられるのでありますから、そういうふうに御協力をお願いいたしたい、こういうふうに考えております。
#28
○光村甚助君 大臣に頼まれたのですが、私からも一つ大臣にお願いしたいことがあるんです。それは速記をつけて悪ければ、また光村甚助が全逓の委員長になっていってもいいというのならこれは話し合いにいきますけれども、そうはあなたの方もいかないだろうと思うんです。じゃ、違憲の問題なんかむずかしいことは私はやめましょう。ざっくばらんに言いますがね。首を切られたことは事実なんです。公労法四条三項のあることも私は否定しません。これは確かにあるんです。ただ、首を切られた問題が納得できない、ただ指令を出しただけだから納得できないといって今裁判所へ出しているわけですね。これは白と出るか、黒と出るかわかりません。わからないんです。あなたの方でもおととい出ました裁判の問題、特別刑法を適用したのは憲法違反の問題だという裁判所の問題ね、あれは第一審だから最高裁までいくとおっしゃっている。第一審でものがきまるのだったら憲法違反は成り立っている。しかし、上までいくでしょう。全逓で首を切られた問題でも白と、黒と出ないから最高裁までいかなければわからないわけなんですね。そうすると、当然まだほんとうに私は全逓が違法を起しているとも思わないんですよ。首を切られたが黒白つかない、最高裁までいってみなければ。ただ第一審できまるんだったら、それは政府は憲法違反を犯していることになる。そうでしょう。これは理屈になるかもしれませんがね、それだから全逓の方ではこれは首を切られていることが違法だから四条三項には抵触しないと言っているので、四条三項が無効だということを今言っているのじゃない。その点一つ御理解願いたい。その点を答弁していただきたい。
 それからもう一つはね。全逓が違法行為をやっている限り批准しないとおっしゃるんですが、そうなると労働組合は全逓だけじゃないですよ。国鉄もあれば、電電公社も、専売も、たくさん公共企業体があるわけです。そうすると、その連中は、非常に言えば迷惑をこうむっている。そうすると、あなた方の政策というものは公労協の中に一つのくさびを打ち込むねらいもあるだろうと思う。この点と二つ。もう一つ、あなたも私に頼まれたから、私も大臣にお願いしておきたい。と申しますのは、四条三項ができたことは、たびたびあなたとやりとりしましたが、あなたの方は、われわれの方から頼んで作ったんだとおっしゃるけれども、われわれの方は、あの当時私も組合におりましたが、確かにあのあなたの方から出ている文書の中にも、当時の極左勢力から労働組合を守るために、いわゆる進駐軍の命令であれが出たということになっている、出たんです。われわれもこれには積極的に反対しなかったことは、これは事実です、確かに。しかし、その当時としますると、労働組合の現状というものは、極左勢力に牛耳られていた時代から民同の組合になって、ずっとやってきている事実を御存じだと思う。あのときと今とは非常に組合の内部が違っていることも御存じだと思うんです。情勢が違っている。あなたの方では都合のいいときには占領当時と今は情勢が違うとおっしゃる、労働運動だって今の極左勢力と民同組合とは非常に事情が違っている。もう一つは、あなた方は、日本が今や六大産業国家になった、東洋の先進国とおっしゃっているんですが、確かにそうなんです。しかし、これはね、敗戦後、今日の日本の経済を資本家だけが立て直してきたと言うことは私は全くできないと思う。労働者がやはり低賃金に甘んじたり、栄養失調ながらやはり食わんがためにこつこつと終戦後十四年間働いたこの功績というものも私は認めてもらいたいと思う。それならば相当行き過ぎがあっても、敗戦後、日本が今日まで立て直った裏には労働者だって相当貢献しているのだから、幾らかぐらいの行き過ぎがあっても、四条三項を削除してやって、そうしてまた行き過ぎがあったら一つまた、カチンとやろうという親心を倉石さんあたり持ってもらえないか、最後に私はお願いですから、この三つの点をあなたに質問とお願いをしまして、あなたとはもうこういうやりとりはしないことにいたしますから、さように一つ答えていただきたいと思います。
#29
○国務大臣(倉石忠雄君) 大体光村さんのおっしゃることは私どもと非常に考え方が接近しているのでありますが、ただ最初のところでは、解雇された者がまだ最終判決を受けておらないから、そういう者がおることが違法であるとは言えないではないかというお話でありますが、このことは御承知のように、それぞれの法律に基いて違法を行なったということで解雇をされました。これは裁判に提訴されてあるとすれば、最終的判決があって、そのことが間違いであったということになれば、原状回復が行われることは御承知の通りであります。しかし、それまではやはり経営者側は、これは解雇をいたしたということで取扱いをいたしております。従来、他の公社においてもその通りです。従って、その解雇された者を特に代表者として選んできているものは、その限りにおいて合法的組合として正当なる代表権を持った者がおらないという解釈をいたす、このことは従来通りであります。そういう取扱いをいたしております。
 それから四条三項というふうなものを削除する、この精神というものは私どもは全く同感であります。私は基本的に考えておりますのは、今一般に考えられております労働組合の指導者たちに向って、ほとんど同じ社会に住み得ざる極左的なものであるような解釈をいたしておるようなものもありますが、なるほど少数はそういうものもありましょう。しかし、私は先ほどお話のように、終戦以来十三年、日本の経済をここまで立て直して参りました大きな力は、働く人々の力の結集であると確信をいたしておりますし、また、組織労働者大衆の大部分というものは、堅実な民族意識を持った日本の同胞であります。従って、私は労働者に対しては信を腹中に置くと申しますか、そういうまじめに働いておられる、こつこつ働いておられる労働者大衆というものを対象にして、そうしてその人たちに責任を持っていただくという考え方に立つ方がむしろ労働政策としては成功すると私自身は考えております。そういうじみちな労働者諸君を職業的に扇動して、そうして何か妙な目的の方へ持っていこうとするものも多少はあるかもしれませんが、日本人は諸外国の無学文盲な労働者と違うのでありますから、私はそういう考え方、従って、あなたのおっしゃることはその点において同感であります。だからして、私は政府が八十七号条約を批准しやすいように協力してもらいたいと言っておる私の言葉は、おそらく全逓大部分の人たちが十分に理解されておる。そして双手を上げて賛成しておられるだろうと確信をして、そういう方向に出ることを期待しておるのであります。その点において、あなたとちっとも変らないわけであります。
#30
○小柳勇君 そうすると、第一点から確認していきますが、四条三項、地公労法五条三項削除については、批准と別にして、これについては大臣も賛成をする、こういうことですか。
#31
○国務大臣(倉石忠雄君) 四条三項というものが公労法の中に存在いたしておる沿革につきましては、もうしばしばこの席でも論議されました。ああいうものはただいまも光村さんのおっしゃいましたように、設けらるべき理由があって設けられたんだ、従ってこのことはやはり結社の自由というものを阻害することになっておるから、やはりILO八十七号が今まで批准できなかったのがそこにも一つの原因がありましょう。これは削除することには当然踏み切らなければなりません。しかし、そのことは、やるについてはどういう影響をその他に持ってくるかということについて、政府部内において目下検討中でありますからして、趣旨はもちろん八十七号条約を批准するためには、四条三項、地公労法五条三項の削除をしなければなりませんが、単にそれだけではお話になりませんので、それについて及ぼす影響等について今検討している、こういうわけであります。
#32
○小柳勇君 第二点の確認しておきたい点は、批准する準備を急ぎつつあると、このような答弁がちょくちょくありましたが、この全逓の問題と別に、批准する準備というものは一体どのようなことを今腹中に置いておられるのか聞いておきたいと思う。
#33
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府では、労働関係閣僚懇談会というものを持ちまして、ときどき会合いたして意見の交換をやって、これは最高方針を決定いたしますが、そのほかに各省関係の事務当局、専門家を集めまして連絡協議会というものをやっておりますが、そこで諸般のことについて検討をしておる、こういうわけでございます。
#34
○小柳勇君 そうすると、そのようなものがやはり条件ですか。
#35
○国務大臣(倉石忠雄君) そういうところでただいま検討を続けておる。そこの検討の結論は、なるべく早く促進するように私の方から指図をいたして、早く結論が出るように検討を進めさしておる、こういうわけであります。
#36
○小柳勇君 私はさっき仲裁裁定の問題でも、裁定の問題を今度内閣が尊重するということになったのは組合のいろいろな動きによって、そういうことにまでやっとこぎつけたんだ。自民党内閣、特にさっき言われた与党などのいろいろな意見ということを気にしておられるようだが、そういう曙光すらが、数々の、ずっと長い間の、組合の動きを見てそうせざるを得なくなったと思うが、最近なおこの全逓の裁定などについて、とやかくの、たとえば仲裁委員会としては、全逓もこれに準ずるようなことも漏らしておったのにかかわらず、政府がこれを圧力を加えるというような新聞記事もあったが、そのようなことについて、大臣はどのようなことを閣僚として御発言になったのか、聞いておきたいと思う。
#37
○国務大臣(倉石忠雄君) 閣議の内容について御報告することはできませんが、基本的に申しまして、私どもは労働政策という立場からは、やはりこのたび正当なる代表者がないということで仲裁を申請できなかった全逓二十数万の労働者の諸君に、ほかが仲裁裁定が出ておるのでありますから、それだけほっておくということはおかしいんではないか、やはり政府としては思いやりのある処置を講ずべきではないかということを考えてはおりますが、それはやはり担当の閣僚がおりますからして、大蔵大臣と郵政大臣との間に、そういう点について目下相談検討を進めておると思います。
#38
○小柳勇君 先日の光村委員の質問に関連して、全逓をてこ入れして御用組合化する、労働大臣の前の発言をただして参りましたが、前と変らない。従って、私は今国際労働機構としても、相当重視してこの日本の国会を見守っておる。これはもう私が言うまでもないことでありますが、そのような情勢の中でこのような論議がされて、しかも削除しようとする、われわれが提案しようとするこの四条三項、地公労法五条三項が、なお大臣の考えではまだ前進しておらない。そういう点非常に不満でありますが、公労法四条三項、地公労法五条三項の削除については、あとでまた公労法の一部改正として別途提案するつもりでございまするので、私のこの仲裁裁定並びに四条三項に関連する質問は以上で終ります。
 重ねて再三になりますが、労懇の答申というものは、とにかく批准をしなさいということであるし、それからILO理事会の結論も、この間、結社の自由委員会から書面が来た。早く批准せよというのが第一項であるし、批准したその精神で国内法規を早急に整備せよというのが第二の精神であるしそれから条約を批准したならば、そのようにこれを完全に一つ実施してくれというのが第三の精神である。そのことは、この間の局長の書面の発表によって明らかになりました。従って、労懇の答申も、批准が第一、四条三項の削除が第二、あとは国内法の問題を処理するようにとありますので、労働関係閣僚として、あるいは労働大臣としても、早急にそのように運ばれることを要請して私の質問を終ります。
#39
○藤田藤太郎君 私は、ちょっと関連して申し上げるのですが、先ほど光村君も質問されたが、全逓の幹部は今解雇が正当であるか無効であるかという裁判中である、全逓の立場からすれば解雇される理由はない、そういう立場から、まだ第一審の中において係争中である、そういう状態の中であるのに、今のような憲法やその他外国の慣習、それから常識から言っても、そういう結社の自由、団結権擁護の問題について労懇の結論に従ってやるべきだという論争の中から、政府は往々法律があるのだから云々ということで問題が提起されて参りました。ところがそこに出て参りました砂川事件の今度の東京地裁の裁判の問題、第一審で明確に、憲法の九条からくる今の安保条約、行政協定初め、刑事特別法初め、アメリカ軍の駐留それ自体まで憲法違反であるという結論が出ている。さきのような答弁からいくと、まだ第一審の判決までいかない、これは白か黒かわからない、立場によっては全然関係のないことだというところに明らかにあるわけでありますのに、今第一審で判決を受けたのに、なお政府は、最高裁まであるから云々ということであるわけです。裁判の結論が出ている問題でもそういうあいまいな態度をとつておられる。こちらの方は、裁判にかけるまでの問題においても今のような格好で首を切る。だから、ILOの八十七号の四条の解釈にいたしましても、あれは解散の問題を中心にいたしておりますけれども、行政処分が先行してはいけないというように八十七号の四条の統一解釈というものをあえて国際労働機関でしたということ、特に労働問題については、労働者保護の立場からそういう統一解釈をしているということは、私は国際的に非常に意義のある問題だと思うのです。だから、今のような議論はちょっと承わりにくい。もう一度お聞かせ願いたい。
#40
○国務大臣(倉石忠雄君) 私が申し上げておりますのは、最終判決が出ておりませんから、最終判決が出て、当局のやったことが間違いであるということならば、原状回復もできますし、同時にまた、損害賠償の責めも負わなくちゃならないでありましょうが、今まで藤田さんもよく御存じのように、すでに法を犯したということで解雇された、そのことは、そういうふうな取扱いを今までいたしておるのでありますから、従って、この者がやはり代表権を持っておらないという解釈でありますから、そのように取り扱うのは私は当然だと思う。また、ILO条約で行政措置━━今お話のありました、あるいは特に立法措置をもって結社の自由等を阻害することのないように、私どもはそういう精神をできるだけ尊重するという立場はもちろんこれからとるのであります。同時にまた、八十七号条約を批准すれば、それによって一年後には政府も拘束を受けるわけであります。しかし、現存しておる法律というものはやっぱり守らなければいかぬというのは法治国家の常識でありますから、従って、全逓が今のような態度をとられている限りは、その手続はできない、こういうことを申しておるのであります。
#41
○藤田藤太郎君 私の議論をいたしておりますのは、一つは、今組合の側からいえば、この解雇というものは正当でない、そういう立場から係争が行われている問題です。片一方、今度の砂川事件の問題は、判決が明確に一審として出ている。権威ある裁判所で出ているわけです。それを、最高裁まで二審、三審ということで言いのがれられる。こちらは、まだ出ていない問題について行政処分が先行するという形で処分をしていること自身に問題がありはせぬか。だから、ILOの八十七号でもそういう統一解釈をしておる。行政処分が先行してはいかぬ、司法処分を待ってこの問題の処理をすべきだというのが私は八十七号の統一解釈の問題だと思う。だから、そういう意味からいって、結社の自由、団結権の擁護、八十七号条約を批准するという政府の大方針だと言われるなら、その大方針の精神、また、今後運営していく、これを理解していく問題と今の問題とは食い違ってきやせぬかということを私は言っているわけです。
#42
○国務大臣(倉石忠雄君) 藤田さんのお考えにも何かお考え違い、勘違いがあるじゃないかと思います。単なる行政処分ではありません。法律に基いて、違法な行為をいたしたということで処分されておるのでありますから、法に基いてやってるんであります。しかし、その法規に基いて行なったる行為が承服できないということで、その提訴の最終判決が下って、それによって決定が行われれば、その最終判決には従わなければなりますまい。その場合には、先ほど申し上げましたように、原状回復、損害賠償ということもあり得るでありましょうが、やはり今日解雇されておる人は代表権を持っておらないのでありますから、そういう人たちが出てこられるということは、組合というものは存在いたしでも、正当なる代表者がないという解釈でありますから、そこでそういう組合を相手に団交することができない、こういう措置をとっておるのは、これは法に基く当然なことだと私は思うのです。その法の解釈が間違っておる、いないということは、最終的に裁判所が決定するでありましょう。
#43
○藤田藤太郎君 法に基いてやる、その法律解釈に当って判決、結論を出すのは、司法処分として裁判所の問題だと私は思う。だから、法律に違反しているかいないかという裁判所の結論に応じて、それがノー、黒と出、白と出ることによってその処分がされるわけです。その問題がまだ明確にならないときに1法に基いて処分すると言われるけれども、これは行政処分じゃない。これは白か黒か、今論争中なんです。それは行政処分じゃない。それを私は言ってるんだ。だから、そういう行政処分の問題は司法処分に先行してはいけないというので、今日国際労働機関であるILOも、そういう懸念が将来起きるからといって、四条の問題は解散の問題を取り扱っておりますけれども、そこで統一解釈は、行政処分は先行してはいかぬという統一解釈をあえてしておるということですね。私はやっぱりそれから考えると、今のようなことでは少し理解ができない。
#44
○国務大臣(倉石忠雄君) 何べんか申し上げておりますように、政府の見解は、あの全逓労組に対して正当なる代表者を含まないものであるということで団交を拒否するという態度は正当なる行動である、こういうふうに理解いたしておるのでありますから全逓の現状は、やはり現状のままではILO条約八十七号条約を批准するという手続をとることには困難がある。こういうふうに御理解を願いたいと思います。
#45
○光村甚助君 さっき私が質問しましたが、労働組合は全逓だけではない、国鉄も機労も全専売、電通もあるわけです。そうすると、ILO条約を全逓だけ批准しないというならまだ話はわかりますがね。全逓の分だけ切り離して批准しないなら話はわかりますが、全逓二十三万以外にまだ何十万という組合があるのです。そうすると、全逓がやらない限りこれはもう一生批准しないというお考えなんですか。それを一つ承わっておきたいと思います。
#46
○国務大臣(倉石忠雄君) 批准するという手続をとるのは政府であります。それに対して同意を表されるかどうかということは国会の仕事であります。そこで、政府は国会に向って批准するという態度をとるためには、行政府としての労働政策上の責任を国民にすべて負うという決意をしなければなりません。従って、批准をするという前段のためには公労法四条三項、地公労法五条三項を修正しなければならない、そういう態度をとることによって現在非合法であると言われておるものを合法化するようなことがあっては、法治国家としての政府の責任を負うことができませんからして、政府の責任においては全逓労組がただいまのような態度をとっている限りは批准手続を国会に向っていたすことは困難であります。これが政府の決意であります。
#47
○委員長(久保等君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#48
○委員長(久保等君) 御異議ないと認めます。
 暫時休憩をいたします。
   午後零時三十五分休憩
   ―――――・―――――
   午後一時五十七分開会
#49
○委員長(久保等君) 午前に引き続き委員会を再開いたします。
 最低賃金法案を議題といたします。御質疑を願います。
#50
○小柳勇君 この前の質問に引き続きまして、きょうは質問をやっていきたいと思いますが、順序としてまず、基礎的な問題から質問をいたしまして、次に、各論的なものを質問いたします。最後に、この法文を追って逐条的に私どもの意見も述べながら、質問を展開していきたいと存ずる次第であります。
 まず、基礎理論の第一といたしまして、私は、最低賃金制そのものに対する政府の考え方が、この法案の中では非常に間違っておると思いますので、最低賃金制そのものから、意見をただしていきたいと思います。私どもとしては、最低賃金制とは、一定額の賃金以上の賃金を支払わなければならないということを、国が、国家が使用者に対しまして、法律によって一般的に強制する制度であろうと考えるのであります。従って、法律なしに、各企業の賃金体系、または労働協約において、最低賃金がきめられたり、特定の労使間に締結された労働協約、または団体協約などによって、最低賃金がきめられたとしても、それは最低賃金制とは考えられないと思いますが、政府としてはどのような考えでおられるか、お聞きしておきたいと思います。
#51
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金制とは、国家機関が、法的の強制力をもって、賃金の最低限をきめまして、使用者に、それ以下で賃金を支払ってはならないということを定める制度をいうものであろうと考えます。そこで、その最低賃金制を実施する方式といたしましては、いろいろな方式があります。これは、法律で直接最低賃金額を定める方式もありまするし、それから賃金審議会等におきまして、最低賃金に関する意見を決定いたしまして、それを賃金委員会なり、あるいは国家機関なりが決定して実施する、このような方式もあるわけでございます。また労働協約等の点につきましては、団体協約で最低賃金が定められておる場合において、これをその団体協約の当事者以外の当事者にも拡張適用するというような方式もあるわけでございます。いずれにいたしましても、いろいろな推移経過に基きまして、最終的には国家が最低賃金額を法律できめる、それに違反したものについては罰則の強制、あるいは民事的の効力をもって強制する、このような考え方をとるべきものであろう、このように考えております。
#52
○小柳勇君 そういたしますと、一般論としては、私が申し上げましたように、私がただいま文章をもって言いました最低賃金に対しては、政府としても同じような考えである、このように確認していいですか。
#53
○政府委員(堀秀夫君) 最終的には、国が法律等に基きまして、これを支払わないものについては、罰則をもって強制するとか、あるいはそれに達しない賃金額を定める契約については、それに達するものとして民事的に読みかえる、このような法的効果を付与するものが最低賃金制である、かように考えます。
#54
○小柳勇君 そういたしますと、政府がただいま提案しておられる最低賃金法案というものは、各地方の職種別、地域別、あるいは業種別に、下から業者間協定をもって積み重ねていくという方式であるが、私が今申し上げましたような、国家がこの賃金以上の賃金を支払わなければならぬと使用者に強制する、そういうような全般的な最低賃金制というものが成り立つためには、一体どのくらいの期間がかかってこのような形態になれるものと理解しておられるか、聞いておきたい。
#55
○政府委員(堀秀夫君) 業者間協定あるいは労働協約に基くところの最低賃金は、これは当事者間において自主的な交渉を行いまして、そうして、それに基いて、国が賃金審議会においてその適否を審査しました上で、最低賃金の制度としてきめる。それ以下のものを支払った場合には、罰則をもって強制する、このようなことになるわけでございます。それと同時に、十六条の職権決定方式も併用して参るわけでございまするが、何年間でどの程度の労働者に及ぶというようなことを機械的に考えるのではなくて、政府といたしましては、まず最低賃金審議会をこの法律に基いて設置いたしまして、この審議会において今後の運営方針をおきめ願って、それを尊重して実施して参る、このような考え方で参りたいと思っております。従いまして、何年間でこの最低賃金制が、何百万の労働者に及ぶというような機械的なことは考えておりません。最低賃金審議会において御決定を願って、そうしてその結論に基きまして、われわれとしては業種別、職種別、地域別に漸次拡大して参る、このような考え方で進みたいと考えております。
#56
○小柳勇君 最低賃金法については、すでに今まで委員会で質問して明らかになりましたように、すでに四十数カ国が最低賃金法を持っています。そういう国では、すでに労働者の最低生活の保護については、もう今言ったような制度が確立されておる。で、今政府が出されておるこの最低賃金法案は、これから中央賃金審議会を作り、あるいは地方賃金審議会を作り、そのようなものが発足するとともに、各地で基準局などが出向いて行って、あるいは勧告することもあろう、あるいはこれを指導することもあろう、そうして、部分々々にこれが一つの線に作り上げていくというようなことを考えておられるが、私どもが、今までの、たとえば労働基準法ができまして今日までの経過を考えましても、この法律が、たとえば万一、この国会で通ったといたしましても、これから、日本の大部分の低賃金労働者がこの法によって、保護されるのはほど遠いと思うが、今言われた局長の答弁によっても、非常に心もとないものを感ずるわけです。そのようなものについて、いま一回、局長、あるいはこの点については大臣の今後の構想についても聞いておきたいと思うのです。
#57
○政府委員(堀秀夫君) この法律制定以前におきまして、労働問題懇談会の意見書に暴きまして、政府において、業者間協定の締結について援助を行う、このような方針で参っておるわけでございます。そこで、現在まで約一年間の実績を見ますると、この業者間協定に関する援助を行い始めましてから今日まで、八十の業種につきまして、業者間協定によって最低賃金が実施されておるわけでございます。それ以外にも、七十の業種におきまして、現在、業者間協定締結の準備のための調査を行いつつある、こういう現状でございまして、この法律を実施しない以前において、また、労働基準局において法律に基くような援助あるいは勧告というようなものを全然実施しておらない現状におきましても、このように相当な速度で進展をいたしておるわけでございます。従いまして、この法案が成立いたしました暁には、この法律に基きまして労働基準局等におきまして、地方の通産の出先機関その他の出先機関と連絡しました上で、法律に基く援助を行う、また、法律に基くところの勧告を、必要な向きに対しては行なっていく、このような方向で進んで参る予定でございますので、法律が成立いたしました暁には、この速度はさらに倍加されるであろう、このように考えております。それと同時に、労働協約に基くところの最低賃金というものも、これも法律が実施されますれば、やはり締結され申請されてくる事例が多くなろうと考えております。また、それらの方法をもってしても、最低賃金を実施することが困難、不適当である、このように考えられますときは、十六条の最低賃金決定方式というものも最後に残っておるわけでございます。これらのものを並行してやりますれば、私は、この最低賃金法成立の暁には、低賃金の労働者層は、この最低賃金法の実施によって漸次救済されていく、その発展の速度は、やはりこれは、今後のわれわれの運営方式、これはもとより労・使・中立三者構成の最低賃金審議会の意見を十分尊重して進んで参る予定でありまして、このやり方によるものでございますが、われわれとしては、これが業種別、地域別あるいは職種別に漸次拡大し、そうして相当な速度でこれは発展していくものであろう、このように期待しておるわけでございます。
#58
○片岡文重君 関連。この業者間における賃金協定の進捗状況については、労働者としても、かなりテンポを早めておるかのようにごらんになっておられるようですし、せんだって本委員会に配られました労働者からの資料を見ましても、そうでないとは言いません。この資料の信憑性を私どもは疑うものではありません。従って、これに出されておる資料に載せられた数字を、そのまま私たちは信用するのでありますが、そこで一つこれに関連をして伺いたいのは、この協定締結件数合計八十件に対して、業種別に企業としてこの賃金協定を実施することが少くとも妥当である、あるいは望ましいと思われる事業所数というものは、一体どのくらいあるのか。その点が、この表では明らかになっておりませんが、ここに、鉱業、食料品製遺業、繊維工業、木材木製品製造業、それから家具装備品製造業、パルプ・紙・紙加工品製造業、化学工業、窯業土石製品製造業、金属製品製造業、機械製造業、電気機械器具製造業、その他の製造業、こう分かれております。この業種別の事業所の数と、それからそれの全労働者数、これをおわかりでしたならば一つお示しをいただきたい。
#59
○説明員(大島靖君) 規模別の事業所数でございますが、通産省の三十年度の鉱工業統計によりますと、製造業総数で十八万七千面十二になっております。それから千人以上で三百七十六、五百人から九百九十九人までが五百四十、三百人から四百九十九人までが八百十五、二百人から二百九十九人までが一千六十四、百人から百九十九人までが三千二百七十一、五十人から九十九人までが七千七百六十九、三十人から四十九人までが一万三千三百二十一、二十人から二十九人までが一万八千三百九十七、十人から十九人までが五万五千九百六十八、九人以下が八万五千五百九十一となっております。なお、産業別には、食料品製造業で合計が三万三千九百十一、繊維が三万二千四百四、衣服、身の回り品で六千六百十三、木材木製品で二万三千四十八、以下詳細申し上げますか……。大体以上のような状況であります。
#60
○片岡文重君 そうしますと、この提出されておりまする資料の協定締結件数は、このうちの二百人未満をとられたのか、あるいは三百人未満をとられたのか、ないしは五十人未満をとられたのか、そういう点はおわかりになっておられるのですか。
#61
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましては、規模別の分布にとらわれずに、労働省の援助によりまして業者間協定を締結し、その中に最低賃金条項が織り込まれていたものを全部含めてございます。
#62
○片岡文重君 関連ですから、あまり長くしても恐縮ですが、これでやめますから、御答弁もそのようにお願いしたいのですが、そうしますと、この協定締結件数八十件というもの、それから全労働者数、特に適用対象労働者数の約五万七千、この八十件、五万七千という人たちは、二年間に行われたこの協定の進捗状況としては、全労働者数、ことにこの最低賃金制を実施されることによって、その恩恵に当然浴するであろうという人たちの数から、事業所の数から見ると、あまりにも零細であり、この程度の資料をもってしては、業者間協定の進捗状況が好ましい状態などとはとうてい言えぬのではないか。ただ、今後法律が制定されることによって、これが一つの刺激剤となって急速に進んでいくであろうという見通しについては、これはその立場立場における見解の違いでありますから議論のほかとしても、今までの進捗状況が必ずしも好ましい状態ではなかった。好ましい状態であったと誇り得るほどの進捗状態ではなかったと思われますが、労働省としてはそれをどういうふうにごらんになっておられますか。
#63
○政府委員(堀秀夫君) この業者間協定につきましては、この差し上げました資料にもありますように、昭和三十二年四月に、労働問題懇談会の意見書に基きまして、労働事務次官から通達を発しまして、まずこれに関するところのPRを始めたわけでございます。その後、労働省の出先機関におきますところの援助によりまして、事実上締結されたものでございます。この締結された場合の例をとって見ますると、労働省におきましては、これは法律に基いて援助を行うというようなものではありませんので、半強制的にわたるごとき指導は、これは絶対にいたさないという建前で業者がほんとうに自発的に締結し、それに対するところの援助を求めてきた場合に、受け身の立場でこれに対して援助を行う、このような考え方で進めて参っておるわけでございます。そのように始まりましてからまだ期間がきわめて短かいということと、法律に基かないでほんとうに業者において自発的に締結されておる。事務当局はこれに対して勧告を行うというようなことは、これはもとより法律上その権限もございませんので、やっておりません。従いまして、これはお話のように、全体の労働者数あるいは全体の事業所数から考えますると、これはパーセンテージはきわめて低いものでございまするが、われわれといたしましては、今のような前提条件をもとにしました上で、そうしてその業者間協定が締結されたということを考えあわせてみますならば、これはやはり当初の予期以上に発展しているということが言えるのではないかと思うのでございます。もとよりこの最低賃金の法律が実施されますると、それに基いて業者間協定を締結する機運がさらに助長されまするし、それから必要な場合には、勧告権の発動というようなことも考えられます。また、労働協約に基くところの最低賃金の実施というようなことも出て参りましょうし、さらには十六条の職権決定というような手段が併用されるのでございますから、私どもといたしましては、最低賃金法案が成立いたしますれば、その暁にはこの四つの方式を併用して決定される最低賃金というものは相当期待できるのではないか、このように考えておる次第でございます。
#64
○小柳勇君 ちょっとわき道に入りますが、今の問題に関連して一つきわめていきたいと思いますが、今統計部長からの報告によりますと、食料品製造業が事業所として三万三千九百十一、これに対して協定参加事業所数は四百四十七、それから木材木製品などの事業所が二万三千四十八の事業所に対して九十八というようなことで、この一%か二%が二カ年間に業者間協定の最低賃金協定に参加しておる、しかもこの間の報告を聞きますというと一五%なり、二〇%なり賃金が上ったと言われました。そのような事業所は、これは全国一律の最低賃金法であろうが、業者間協定であろうが、賃金を引き上げ得る事業所であり、あるいは職種であろうと私は考えるのであります。私どもが一番心配している事業は、そういう業者間協定は幾ら勧告がいっても業者間協定をしたくない、政府から勧告がいっても、何か最低賃金法の実施をのがれようとする、そういう事業所、そういう労働者こそわれわれが保護しなければならない、そのような労働者なり家内労働者を一体どのように把握しておられるかという点についてお聞きしておきたいと思います。
#65
○政府委員(堀秀夫君) お話のように、この第一年目、第二年目において締結されましたところは、これは業者の自主的な協定に基くものでございまするから、これは率直に申しまして割合やりやすいところがやった、これはわれわれもその通り考えます。
 そこで、この法律実施の暁におきまして、しからばどのような方法で進めていくかということになりまするが、これはやはり業者間協定に基くものにせよ、あるいは労働協約に基くものにせよ、最低賃金条項がきめられまして、それが法律に基いてさらに裏づけをされるということになりますればこれは労働者の労働条件向上のために有意義であると考えますので、その方向はぜひ進めて参りたいと思っております。これにつきまして業者間協定が、あるいは労働協約等に基きましたところの最低賃金が必要である。にもかかわらず、業者間協定等が締結されないというようなところにつきましては、われわれはこれは最低賃金審議会において十分御審議を願わなければならないと思っておるのでありますが、その御意見を承わりまして、必要な低賃金のところであって、しかも最低賃金を制定することが社会的にも要請されるというようなものにつきましては、当事者間において協定を締結して申請するように勧告を行なって参りたい、このように考えております。また、勧告が行われました上でもこれに応じない、しかも社会的に見て低貸金産業であって、最低賃金制を実施することがぜひ必要である、このようなものにつきましては、これも賃金審議会において十分御協議願った上で十六条の発動というような方法も第二段の策としては考えて参りたい、このように考えておるわけでございます。
#66
○小柳勇君 基準局長は非常に広く概念的に答えられるから、私の質問をこれからずっと展開いたしますが、質問の要点に、一つ中心に、的をはずさないで答弁願いたいと思いますが、私が質問しておるのは、この業者間協定は、今言われたように、これはもう全国一律のものでも適用できるようなものが参加して労働省に協力しておる、これは二カ年間の間に皆さんが、労働省が努力された点については認めます。ただ、私が言うのは、われわれが最低賃金を今とにかく通して、低賃金労働者を救わなければならぬ。社会党のいう最低賃金法を考えても、そのような低賃金の労働者、あるいは業者間協定でも逃げられるようなそういう労働者を一体労働省としてはどのくらいの数に把握し、事業所というもの、あなた方が頭の中で考えている事業所はどのくらいの数を把握しておるか、また、家内労働者と、それからいわゆるこの適用の労働者とどのくらいの数を把握してこれを立案しているか、それを聞いているのです。
#67
○政府委員(堀秀夫君) 家内労働者につきましては、これはわれわれのところでまだきわめてラフな調査でございますが、一応地方の基準局におきまして実態を把握いたしました結果によりますと、世帯数、全国で五十七万世帯、それから家内労働者数が八十三万八千人というような状況になっておるわけでございます。そこで、これらの家内労働世帯の実態、それからそれに対するところの問屋製造業、仲買人等の発注の状況というようなより精細なことは、さらに調査をいたしたいと思いまして、現在調査も継続中でございますが、大体以上のような数になっております。また、低賃金の労働者につきましては、これは就業構造基本調査等におきまして四千円未満、あるいは六千円未満の低賃金労働者数というものが把握されておりますが、これらのもののうち、最低賃金を実施することが必要であると思われるものについては、最低賃金法実施の暁におきまして、これらのただいま申し上げました四つの方法を併用いたしまして、必要なところには逐次制定して参る、こういう考えであります。
#68
○小柳勇君 八千円未満、六千円未満、四千円未満、概数でよろしいから一つお教え願いたいと思う。
#69
○説明員(大島靖君) 賃金労働者総数一千七百万のうち、六千円未満が約二割、八千円未満が約三分の一という数字になっております。
#70
○小柳勇君 もう一回言って下さい。
#71
○説明員(大島靖君) 雇用労働者数一千七百万のうち六千円未満のものが二百三十五万、八千円未満のものが五百六十五万でございます。
#72
○小柳勇君 四千円未満というのはどのくらいになりますか。
#73
○説明員(大島靖君) 四千円未満が百二十万であります。
#74
○小柳勇君 政府が言っておられる地域別、業種別、職種別の事業所、あなた方の頭の中にある事業所というのは一体どのくらいに踏んでおられるのですか。
#75
○説明員(大島靖君) 業種別、産業別の事業所数につきましては、先ほど申し上げましたように、総数十八万、食料品以下、先ほど申し上げたような数字でございます。
#76
○小柳勇君 大体概数、労働省提案の、政府提案のこの最低賃金法の基礎的な根底にある低賃金労働者並びに業者といわれるものの概数については把握できました。従って、私はさっきの本論に返って参りますが、そのような多数の事業所、あるいは低賃金労働者が、私が言いましたような国家の保護を受けて、法律の保護を受けてその最低の生活が保障されるに足るまでには、一体どのくらいの努力とどのくらいの年数をかけて達成しようとされておるのか。大臣から一つ御答弁願っておきたいと思う。
#77
○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど政府委員から申し上げましたように、逐次できるだけの努力をして、早くそういう人たちにも均霑するように政府が指導をして、業者間協定その他を推進して参りたいと、こう思っております。
#78
○坂本昭君 関連。ただいま小柳委員の質問によって明らかになりましたように、非常に低所得層の労働者が多いということがよくわかりました。
 そこで、大臣、これは前にも一度伺ったんですが、明確な御返事をいただけなかったのであらためて伺いたいのですが、この低所得層対策としてこの最低賃金制はどういう役割を果すか。どういうふうに大臣はお考えになっておられますか。
#79
○国務大臣(倉石忠雄君) この前の委員会でもお話がありました通り、ただいまは自由企業の立場をとつておりますから、やはり賃金は労務の需要供給の関係によって一応は定まる。しかしながら、それだけではやはり救われないものができてくる。近代国家においてはそういう低所得層に対してどうすべきであるか。従って、就職もできない、そうして生活も維持することができないというものは、やはり国家としては社会保障の上で救済するよりいたし方ありませんが、働く意思と能力を持っておって、しかも、一定の企業に就業するというふうな人々に対しては、やはり政府がただいま御審議を願っておりますような方法で、だんだんと安定した収入を得られるような質金を確保するように努めてあげなくてはならない、こういう立場から政府は最低賃金案を考え出したわけでありますが、そこで、企業とその支払い能力その他を勘案いたしますというと、やはり今政府が提案いたして御審議を願っておりますような方法によることが一番実情に合ったやり方だ。しかし、これはどこまでもやはりだんだんとわれわれが理想に近い方向に前進していく、そういう建前で、一応現在の状況においては、ただいま御審議を願っておるような法案の程度がきわめて実情に即したものだと、こういうふうに解釈をいたしております。
#80
○坂本昭君 私は、今大臣の、政府提案のこの法案が非常にいいのだという推薦の言葉を承わるつもりでお聞きしたのではないのです。ただいま大臣は、低所得層対策としては社会保障をやらなければならない、まあそういう御意見を前提とせられて、そうしてこの労働者に対する最低賃金制というものをこの法案によってやることが一番適切であるというふうな御説明でございましたが、この社会保障の問題と低賃金制の問題とは私は全然別個だと思うのです。むしろ日本の実情では、大臣の今のようなお考えでいくというと、低賃金を補うために厚生省のやっているところの社会保障というものがそれをささえている。これは先般も、たとえば日雇い労働者の四〇数%というものは生活保護を受けている。言いかえれば、賃金が足りないから生活保護費の援助によって労働する人がその生計をささえている。言いかえれば、まあ労働大臣の至らざるがために厚生大臣の行政によって救われているということを私は指摘したのでございます。で、少くとも最低賃金の問題は、社会保障、単なる社会保障ではなく、低所得層対策ではなくて、もっと積極的なものであります。そうしてむしろ日本の低所得層対策というものをほんとうに解決しようとすれば、これは厚生省の所管ではなくて、労働省所管だと思います。そういう点では、今のようなこの業者間協定のような、そうして賃金の額を決定してないこういう法案では、きわめて不十分だと私は言わざるを得ない。現に厚生省の低所得国対策においてさえも生活保護の基準は、ここに資料も出ておりますけれども、いろいろと出されている。明確な金額というものを出されている。また最低賃金を作る場合に、各国の状態を見ますというと、決定基準の筆頭にあげられているものはいつも生計費であります。私は、労働大臣が一体労働者の生計費というものをどんなように考えておられるか。午前の御答弁によると、終戦後十三年営々として日本の国力の回復してきたことについて労働者諸君の努力に対して非常な敬意を表しておられました。しかし、敬意は表しておられるけれども、じゃ労働者の生活費、生計費というものを一体大臣は現在どういうふうにおつかみになっておられるか。大臣のこのまず━━こまかい数字まではお尋ねしませんが、どういうふうにおつかみになっておられるかまずお伺いして、それから局長から労働省自体は、労働者の生計費というもの、特に基準生計費というものをどういうふうにおつかみになっておられるか御説明をいただきたい。
#81
○国務大臣(倉石忠雄君) 後段の方の問題は、当委員会で数回にわたってお話し合いがありましたが、私が先ほど申し上げましたことに言葉が足りなくて、若干誤解を生じたようでありますが、今われわれは自由企業のもとに立っておりますからして、従って、賃金というものは、やはり労務を提供される方と、それから需要とのバランスによって保たれておる。従って、就職し得ざる者、そういう人に対しては、国家としては社会保障でめんどうを見てあげる義務があるということを申し上げたのであります。そこで、低所得のことでありますが、働く意思と能力を持っておって、それにそぐわない企業があるということはこれはいろいろの立場から御批判もありましょうが、われわれは、やはりそういうことのないように全力をあげて零細中小企業の保護育成に努めなければなりません。従って、最低賃金法を一方において実施するという考えを持つに至っては、やはりそれを、その一番多くの部分をささえております中小企業、なかんずく零細企業をどのようにしてできるだけ賃金の上昇のできるようにするかということについて、やはり中小企業、ことに零細企業の対策を講じなければならない。こういうことを私は申し上げたのであります。そこで、その低所得層の問題になります生活賃金という問題につきましては、今申し上げましたように、しばしば論議がかわされておりますから、その点については政府委員から申し上げます。
#82
○政府委員(堀秀夫君) 生計費の検討につきましては、これは当委員会において再三御説明申し上げたところでございまするが、最低賃金審議会に御意見をお伺いいたしまして、そこでその業種、地域、職種等に応じまして、必要な生計費、それからこれに対して同種の類似の労働者の賃金、それから企業の通常の支払い能力、このようなものをからみ合せて御意見をきめていただきたいと思っておるわけでございます。で、その際の参考の資料といたしましては、人事院の勧告によりますると、たとえば東京では成年の男子の月額標準生計費でございまするが、七千五百六十円というような算定をなされております。それからさらに、生活保護関係の保護基準、これはもとより職がなくてぶらぶらと遊んでおるという場合の、ほんとうの食べるだけの費用でございまして、働く労働者の最低生計費とはおのずから異なることは当然でございましょうが、まあこれらを見ますると、東京で月額三千五百円程度というようなことになっておることは御承知の通りであります。このほかに、家計調査その他の参考資料を整理いたしまして、また、そのほか業種、職種、地域に応じて必要な実態調査も行いまして、これらの資料等を合せまして、具体的に問題となりましたその業種、その職種、その地域におけるところのただいま申し上げました三つの基準について御検討を願い、これを尊重して最低賃金を確定する、このような段取りを考えておるわけでございます。
#83
○坂本昭君 一つだけ。関連ですからあまり長く聞きませんが、今、政府委員から御説明がありました、なるほど生活保護の基準の場合だと、成年の独身の男子だと、東京だと三千数百円くらいだと思いますね。それで、今お話の別の統計だと七千五再六十円ですか、非常な差が出てくるわけですね。これは重大な私は意味があると思うのです。厚生省自体でも、生活保護の基準というものについてはいろいろな疑問を持っているんです。できるだけ上げていきたいと思って努力をしておる。ことしの予算でも七%以上げようと努力して、ついにそれがうまくいかなくて、その三分の一程度にとどまったわけですね。で、私は、このせっかく労働者のその生計基準を御検討になっておられる皆さん方とせられて、こうした非常な違いがある、同じ東京においても非常な違いがある、そのことを勘案して、最低賃金をどういうふうに、どんな理念でどんな考えで定めようとしておられるか、とりあえずそのことだけ一つ御説明いただきたい。
#84
○政府委員(堀秀夫君) 厚生省の生活保護の保護基準を算定いたします際には、御承知のように、きわめて軽作業に必要なカロリーを基礎にして計算をしておるわけでございます。われわれといたしましては、基礎的な考え方といたしましては、もとより労働者は働きつつ生計を営むわけでございまするから、その労働の再生産のためにどの程度の費用が必要であるかという点を基準として必要な生計費を算定する、このような心がまえで臨みたいと考えております。
#85
○光村甚助君 最低賃金が社会保障制度が前提だというお話なんですが、最低賃金には社会政策的最低賃金だとか、あるいは労働政策的最低賃金制だとか、経済政策的最低賃金だとか、こういうふうなことが出ているわけです。今度政府の方で採用される最低賃金は、大体このどれに入るのか。
#86
○政府委員(堀秀夫君) これは各国の最低賃金制を実施されました歴史を見ますると、やはり当初におきましては苦汗労働の排除というような社会政策的目的から実施されたという歴史が非常に多いのでございます。また、それと並びまして、私どもといたしましては、あるいは過当競争の防止であるとか、あるいは労働力の質的向上であるとかというような、何と申しますか、経済的な目的、それから、あるいはアメリカ等において実施されましたのは御承知のように、有効、需要の喚起というような国民経済的な目的が第一義的になっております。それからそのほかにも私がただいま申しました労働力の質の向上であるとか、労働意欲の向上であるとか、あるいはそのほか労働者の組織化の促進というような労働政策的目的もあるわけでございます。われわれのただいま御審議願っております最低賃金法は、もとより低質、金労働者の賃金の向上をはかるという社会政策的目的、それから労働力の質的向上というような労働政策的目的も持っておりまするし、それからそれと並びまして、企業の過当競争の防止というような経済政策的な意義も合せて持つのであります。これら三つのものを一体といたしまして、究極において、労働者の労働条件向上を通じて国民経済の有効な発展をはかるという考え方でございまして、最近におきましては、諸外国の最低賃金制も以上三つのような意義を合せて持つものである、このように報告されておるところでございます。
#87
○光村甚助君 政府の方ではきのう予算が通ったのですが、この社会保障制度の中でも千円ずつやるのだと、非常に自慢たらしくきのうの報告でもありましたが、社会保障制度だけでは私は高度に発達しないと思うのです。社会保障制度を実現するためには、最低賃金法ができているということがやはり基本的前提でなければならぬと思うのですが、どうお考えですか。
#88
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金制と社会保障政策とからみ合いまして、そうしてこの労働者及び労働者を含めた国民の生活の水準の伸展、向上ということが期待されるものであると考えます。
#89
○光村甚助君 そうしますと、業者間協定の方には問題があるから、ほかの人がお尋ねしますが、著しい低賃金の中で労働者の生活が不安定な時代に、老齢年金とか、あるいは生活保護法とか、失業保険というようなものだけが高度に発達するということは私はないと思うのです。これはどうですか。
#90
○政府委員(堀秀夫君) 低賃金の労働者が非常に多い、しかもいろいろな見地からしてそこにおいて最低賃金制を実施することが必要である、このように社会的に認められました場合におきましては、行政当局といたしましては、本法実施の暁におきましては、最低賃金審議会の御意見に基きまして必要な勧告を行い、それによって業者間協定、あるいは労働協約等による最低賃金の決定を促し、それらの方法をもってしても最低賃金を実施することが困難、不適当な場合には、十六条による職権決定という方法で最低賃金を実施して参りたい、このように考えます。
#91
○光村甚助君 東京での成年男子の生活保護法が四千七百円ですか、八百円とかおっしゃるけれども、片方では四千円くらいの低賃金労働者があるわけですね。低賃金で食えない労働者が片方では生活保護法を受けているというのは、これは非常に矛盾していると思うのです。ここであなた方の尊敬されておる中山さんもこういうことをおっしゃっておるのです。「就業者でありながら、低賃金のために社会補助を受けている者がわが国の場合は少くないのである。これは明らかに最低生活を維持するに足りない賃金を雇い主が払って、その不足を国家に埋めさせている、このことにほかならない。この場合は、企業者は低賃金確保の手段として社会保障を悪用しているのである。」あなた方の尊敬されている中山さんでもこういうことをおっしゃっているんですね。私はこういう面からも、東京の成年男子の生活保護法が四千七百円か八百円になっているときに、四千円か四千五百円以下の最低賃金をきめるということを業者間協定にまかすことは、私は最低賃金の意義がないと思うのです。私はこの点は大臣の答弁を聞きたいと思うのです。
#92
○国務大臣(倉石忠雄君) 私が先ほど申し上げましたことは、最低賃金制というものは社会保障が前提であるというふうに今お話がありましたが、これらが両々相待って諸般の施策というものは並行していくべきものであると思っております。坂本さんの御質問にもお答え申し上げましたように、自由経済のもとにおいて、やはり働く能力と意欲のある人が就業してそうして賃金が低いと、こういう者については何らかのできるだけ政府の施策においてこれを救済することを考えたい。先ほど最低賃金制の目的についてはお話し合いがありましたが、それでなおかつ就業もできない、同時にまた、生活困窮であるという者は、やはり社会保障という意味で国家がこれを救済しなければならぬと、こういうことを申し上げたのであります。
 そこで、最低賃金のきめ方について業者間協定というものは意味をなさない。――私は、政府といたしましては、やはり企業とそこに従業する者との利害は一致しているという前提に立ちまするから、そこでその企業が成り立つようにも導いてやらなければならない。従って、零細企業については、政治の面においてできるだけ保護育成することはいたしますけれども、やはりその支払い能力――企業を維持するということも、やはり立っていかなければ賃金というものを生み出すべき源泉が枯渇してしまうのでありますから、そこで日本においては、とにかく現在のような国情において、九千何百万という人口をかかえている国家であります。いかに人口が増加いたしましても、やはり適当なる職業があり、適当なる収入があるということであるならば人口増加は慨嘆する必要がないのでありまするが、そこで、施策について、政府のやるべきことについて、立場々々で御批判はありましょうけれども、できるだけ大産業の従業員よりも零細企業の従業員の収入は低いのでありまするから、それを何とかして維持するように努めたいというのが最低賃金制実施の目的でありますから、それには一方において賃金を支払うべき源泉たる零細企業の存続ということも前提に考えなければならない、そういう立場から考えますならば、それを育成するのはもちろんのことでありまするけれども、その支払い能力ということも考慮してあけなければならない。しばしば私が申し上げておりますように、政府寮策定のときですら、零細企業の集団である地方の商工会議所のそれらの担当者たちは、今なお反対しているのであります。しかし、それをも押し切って政府案を策定するというのは、やはりそういうことにすることが終局においてその零細企業も益する結果なのだということについて、われわれは現在の日本の経済情勢のもとにおいては、政府案のごときものが一番妥当なところであると、これは賃金審議会の答申にもそういう趣旨のことを言っております。従って、これを採用して御審議を願っておる、こういうわけであります。
#93
○坂本昭君 大臣の御説明を伺いますと、御趣旨はよくわかるのですが、どうも大事な点で大きな誤まりがあるのじゃないかというふうに感ずるのです。それは、一体社会保障というものを労働大臣はどういうふうに考えておられるか。だんだん伺っていると、岸内閣の掲げておられる社会保障というものを、労働大臣、理解しておられないのではないかという、そういう危惧の念も抱かざるを得ないのです。というのは、現在岸内閣は、社会保障という言葉を具体的には医療保障と所得保障と、こういう二つの柱で私は実施しておられると思うのです。医療保障の面では、御承知の通り、従来あった健康保険のほかに、昨年の十二月にできた国民健康保険法によって、昭和三十五年度に皆保険を完成するという建前をとっておられる。それから所得保障については、この委員会でこれから審議します例の国民年金法、あれによって所得保障というものの第一歩を作り出そうとしている。で、国民皆保険の方は、三十五年度に完成されなければならぬことになっており、それから皆年金の方は、三十五年の四月から拠出制が始まります。いわばこれで一つの緒についたということができる、そうしたら今の最低賃金というものは、この中でどういう役割を果すか、役割というよりも、われわれが社会に生活をしていく上において、一番必要なことは健康であることと、飯が食えるということです。特にその前に病気になるという不幸を抜けば、やはり飯が食えるという所得保障、この所得保障の一番基礎になるものは、労働賃金です。労働賃金が基礎になって、そして労働ができない場合に、労働賃金を得ることができない人に所得保障をしていこう、つまり年をとった人あるいは母子家庭あるいは身体障害者、そういう人たちの所得保障をやろうというのが、つまり年金制度です。そうすれば、今岸内閣の掲げておられるこの社会保障の中で、つまり一番大事なものが一番おくれているのですよ。賃金の問題が一番おくれている。そしてほかの社会保障の中で副次的とはいいませんけれども、医療の面だとかあるいは老齢とかあるいは母子家庭、障害のための所得保障の方が先に発達して、肝心の賃金の問題が一番取り残されている。しかも今のようなお言葉だと、零細企業の人たちから、いろいろな反駁があった、その反駁のないような最低賃金制をしくということに、私は一番大事な岸内閣としての社会保障の根幹があるのじゃないかと思う。そういう点で私は、労働大臣が社会保障というものに対する御理解が間違っているのではないか、私は、あくまでこの賃金の問題が基盤になって言いかえれば、労働省で考えられる生計費というものが基準になって、それから年金の額が生まれてき、それからさらに生活保護の基準の額が生まれてくる。現実はそれが逆の形で生活保護の基準ができ、それに合せて今度の年金の額がきまり、それににらみ合せながら、労働省の方ではまあ一つの業者間協定ぐらいで適当に、ほどほどにやっていこうというふうにごまかしておられるのではないか。だから一番大事なことは、労働大臣が社会保障の概念をはっきり立てていただくことだと私は思うのですが、いかがでございますか。
#94
○国務大臣(倉石忠雄君) 坂本さんのうんちくを傾けられた御高説はまことに傾聴いたしたのでありますが、私はさっきから申し上げておりますように、自由経済を建前にいたしておる現在でありますから、そこで賃金というものについてはいろいろな理論もございましょうけれども、賃金というのはやはり労務を提供してその対価として受け取るべきものでありますから、その生まれる源泉を培養しなければ賃金というものは出てこない、これは自由企業のもとにおいては、肯定なさることだろうと思います。そこで、社会保障のことはそれから先のことにいたしまして、その賃金というものを生み出すべき源泉である日本の産業構造というものは、しばしばここでも言われておりますように、二重構造ともいわれ、三重構造ともいわれておるような状態で、しかもしばしば資料でも申し上げておりますように、賃金格差は大規模産業と零細企業との間に非常な格差がある、日本のいわゆる低賃金というものが論議されるのは、むしろその格差に大きな原因があると私は思うのであります。そこで、先ほど御説明がありましたように、本案の総則でもいっておりますように、まず苦汗労働の防止、そういうことが一番、これはいわゆる社会政策的な考え方が先立つでありましょう。その次には、公正競争を維持するように過当競争防止、これは経済政策的な考えでありましょう。いずれにいたしましても、賃金を生み出すべき源泉を培養するにあらざれば、やはり賃金というものはどうしても低賃金にならざるを得ないのであります。このことも御了解は願えると思います。そこで、先ほど私が申し上げました零細企業の中に反発があると申しましたのは、最低質金というふうなものを設けて、しかも業者間協定だけでなくて、四つの方式のうち、一つには職権決定というものがあります。このことについては、一部の方々が、非常におそれておられる人もあるような状態でありますが、やはり大局的に立って、政府は今日の日本の経済状態においてすら、なおかつ政府提案のごときものを実行することが、先ほど申しました法の目的に掲げてあるような趣旨を貫徹するためには必要なことである、どうか一つがまんをして協力してもらいたいという呼びかけをいたしておるのでありますから、そこで賃金を決定してからそれに基いて企業を経営するというのではなしに、両々相待って、一つ低賃金はできるだけ上昇するように努めると同時に、その賃金を生み出すべき源泉たる零細企業はあらゆる施策を講じて、政府もお手伝いをするから、一つこれが維持できるように培養してもらいたい、こういうことでありますから、やはり現状の段階においては、政府案の考え方というものはきわめて実情に即したものではないかと、こういう考え方であります。
#95
○光村甚助君 私のさきの質問に対して大臣のお答えは、私はちょっと受け取りかねるのです。私が申しましたのは、こういうことなんです。大臣は企業者の支払えない分まで政府がしりぬぐいすることはできないということはいつもおっしゃっておる、自由主義経済のもとでは。しかし、その半面、私がお聞きしたのは、さっき中山さんの言われた例を引いて、いわゆる雇い主が払えないその不足分を国家に埋めさせておるということなんですよ。片方ではつまり企業者が最低賃金確保のために、社会保障を悪用しているということなんです。大臣のさっきの答弁では、働いても食えない分はほかの面で国家がめんどうを見なければならないと、こうおっしゃっているのですね。そうすると、いわゆる中小企業者が全国一律の最低賃金をしいた場合に、そういう払える分まで国家がしりぬぐいする必要はないとおっしゃっている。片方では四千円か四千五百円もらって、食えないからといって社会保障でやったのだったら、ただこっちの金をこっちから出すといって、名目をすりかえているにすぎないじゃないか、私の質問は、こういう質問をしているのです。国家の金から出す分にはちっとも変りがないじゃないか、そうすればわれわれのいう全国一律の最低賃金を実施したところが大した違いはないのじゃないか。中山さんも、雇用者はこういうことを悪用している、こういう点は私たちも同感なんです。全国一律にやってみても、大した違いはないじゃないかという私の質問なんですが、これに対して大臣のお答えは、ちょっと私の質問と違うのです。その点を明らかにしてもらいたい。
#96
○国務大臣(倉石忠雄君) 中山博士の御論議について、まだ私は拝見いたしておりませんけれども、先ほど来申し上げておるように、われわれは自由経済の建前をとっておるのでありますから、当該企業の支払い能力がないからといってその賃金を政府が支弁するということは不可能であります。従ってこれを支払い得るように仕向けてやる、このことは政府の施策でできるだけのことはできることであります。食えない先のことについての社会保障のことについては、これは企業が別でありますから、私はそういうものがある限りにおいては、国家はやはりそういう人たちのめんどうを見るために生活保護法その他特別の措置を講じておるのでありますから、それは社会保障の方で救済ができる。しかしながら、どこまでも自由経済のもとにおいて、当該企業の支払い能力について、政府がそのままその分を補てんするということは不可能である、こういうことを申し上げておるのであります。
#97
○坂本昭君 つまり現在今度の予算でも、生活保護は四百十六億程度組まれております。その四百十六億のうち私は医療関係に六割くらい出るかもしれない、残りの四割が生活水準に……生活補助のうちの半数は働いておる人たちです。かりに今度の予算で四百十六億の二〇%として八十数億、百億に近いこの程度のものがいわば賃金補助に国が出しておるのですよ。つまり光村委員が指摘するのはそのことを指摘しておるのです。労働大臣は自由企業だから国は何もしりぬぐいをする必要はないと言っておりながら、実際はしりぬぐいをしておる。この矛盾をどう解決したらいいか、私は自由企業の資本主義社会においても解決する道があると思うのです。これはもちろん労働大臣にお聞きしても、たとえば日本の産業構造の体質改善のことについては労働大臣知らぬというかもしれぬが、これは大蔵大臣の任務であるより、むしろ労働大臣が積極的に関与して体質改善のために、場合によれば今の生活保護というような形で出ておるところの費用をもっと積極的に回す道があると思う。私は、まだあとこまかい点について同僚委員がお尋ねになると思いますから、今の問題あとで出てくる個所があると思いますから、あとでまた掘り下げてお尋ねをいたします。
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#98
○委員長(久保等君) 途中でありますが、委員の異動を報告いたします。
 四月一日付をもって松岡平市君が辞任し、その補欠として大沢雄一君が選任せられました。
#99
○小柳勇君 関連質問が多かったので整理していきたいと思いますが、私が今質問しておる課題は、最低賃金制というのは、国が使用者に対して法律をもって一定額の賃金以上の賃金を支払わなければならないと強制するものである、その法律が最低賃金法である。しかし、その法というものが一つありますと、これに今言われたように、日本の低賃金労働者の実態は、ここに労働省の統計部長が発表されました家内労働者五十七万世帯、八十三万八千人、八千円以下の労働者が、千七百万人の勤労者の中で五百六十五万人であるということでして、三分の一が八千円以下ということを発表されました。この中には十八才以上の者もいるでしょう、そのような低賃金を、しかも業種別に見ると十八万事業所、そうありますと、そのような各地域における業種別職種別、男女別、そのような、労働省の案にあるところのこのようなものから分類していきますと、このようなたくさんの何百万の者がこの線に引き上げられて、そうして生活保護を受けるには一体どれくらいかかるということをまず質問いたしました。それについては、労働省として最善の努力をやる。具体的にはまだ話しありませんから質問いたしますが、そういうふうなことでこれが苦汗労働は、労働大臣が言われた言葉の中に、この法律は苦汗労働の防止であり、過当競争の防止を主眼にしておると言われる苦汗労働者というのは一体何か。四千円以下の者が百二十万もいるという労働者の中で、家内工業はこの八十三万の中には相当四千円以下の家内工業労働者がおるでしょう。そういうものを合せますと、大体二百万から三百万、こういうような苦汗労働の者が生活保護基準ですら、東京で生活保護の三千五百十円、そのような苦汗労働者が二百万もおる、この労働者を何年間もかかって最低賃金法ができましたといって、これを放置することができないでしょう、できないならばこれに引き上げるために一体どのような努力を具体的にするのか。たとえば労働省の役人は何名おります、予算はどのくらいかけました、従って、業者間協定が二年の間これこれ進みましたから、何年先にはこの二百万の者がこの線には大体いきましょうという見通しがなければ、この最低賃金法を出しましても、これはただの看板をかけるだけのことではないかということを私は言いたいわけです。労働省が一体これを引き上げるためにどのくらいの速度にこの目標を立てて、どのくらいの予算で何名くらい増員をやろうとしているのか、具体的に質問しているわけです。
#100
○政府委員(堀秀夫君) 業者間協定、労働協約に基く最低賃金の決定方式及び十六条の職権決定に基く二方式を併用して業種別、職種別、地域別に逐次発展さしていきたい、その進め方は本法案成立の暁におきましては、すみやかに最低賃金審議会を設置いたしまして、そうしてこの最低賃金審議会において労・使・中立三者の御意見を十分に伺って進めていきたい、このように申し上げておるわけであります。そうしてこの法案を実施するにつきましては、全国の四十六の労働基準局、三百三十七の労働基準監督署における約八千名の職員によりましてこの法律を実施して参りたい、そうして低賃金の産業におきまして最低賃金を実施することが必要と認められるものにつきましては、最低賃金審議会の御意見を承わって、それに基きまして必要な勧告を行なっていく、そうして当事者の自主的な協定に基く最低賃金の決定を逐次発展さしていく、そういうことが期待できない場合には、十六条の職権決定による最低賃金の決定を行なって参りたい、このようなことを申し上げております。
#101
○小柳勇君 そのような局長の答弁なら、この前の委員会で聞いたわけです。その答弁なら必要ないわけですが、私が今言っているのは、労働基準局関係の職員八千名おりましょうけれども、その人たちは労働基準法が二十二年に施行されておりながら、なお実施されない、この前の資料にもありますように、ほとんど何一〇%しか実施されておらない、その方にも手が要るだろう、労働基準局の関係の職員は八千名おっても、その者が全部最低賃金法の業者間協定の関与なり、誘導なり、指導にいけない、このようなものも少し具体的に、どういうふうにして、何年くらいの目標を持って到達する━━私どもの言うのは何年じゃなくて、今すぐ食えない苦汗労働者、この前の委員会の討論もありましたように、人事院が出している標準生計費は東京都において男子十八才で八千円です。その八千円でやっとエンゲル係数は四五%です。そのような標準生計費が人事院から出ている。ここに言っている労働者の実態というものは、労働大臣が言っている苦汗労働者ですよ、その苦汗労働者を何年間の間に、労働基準局の職員八千名置いておりますからこれで指導しますでは、私どもは納得できない、そのような法律なら要らないというわけです。従って、もう少し具体的に、どのようにして指導いたしますということを聞きたいと思うわけです。あとで大臣からも一つ決意を聞いておきたいと思う。
#102
○政府委員(堀秀夫君) われわれは、このような何年計画でやるというような問題につきましても、この法案を作成いたします場合に前もって労・使・中立三者構成の中央賃金審議会に半年にわたり御討議を願ったわけでございます。その席におきまして、一部の委員からはただいまお話のように、これはもうこの際、理想的な一律方式で一挙に実施すべきであるというような御意見も出たことは事実でございます。しかし、それに対しまして、現段階においてこれを、理想を追って今一挙に実施するということをやると、かえって中小企業の倒産、あるいは失業者の増加というような事態を招くことになる、そこで職種別、業種別、地域別に最低賃金を制定して、これを逐次拡大していくという方式による最低賃金法が望ましい、こういう答申をいただいたわけでございます。そうしてこれをどのような速度で進めていくかという問題につきましては、最低賃金法を実施いたしました暁において、中央賃金審議会において三者の意見を十分聞いて、そうしてそれに基いて発展さして参りたい、こういう中央賃金審議会の御意見であったわけでございます。従いまして、われわれとしては、その三者構成の中央賃金審議会の御意見をそのまま尊重いたしまして、本法案を作成いたしました次第でありますが、本法案成立の暁には、さっそく最低賃金審議会を招集いたしまして、それにおいてただいまのような、どのような計画に基いてどのような速度で発展さしていくかという点を十分御討議願い、それに基いてわれわれは実施して参りたい、このように考えておるわけであります。
#103
○国務大臣(倉石忠雄君) ただいまのお話で、このような法律は要らないというお話でありますが、要る、要らないというのは見解の相違であります。全国に数百万おられる零細企業の労働者は旱天に慈雨を望むがごとく本案の成立を待望しておると確信をいたしております。
#104
○小柳勇君 答弁になりませんが、次にまだ要らないという理由についてはぼつぼつわかりますから、先に進みますが、基準局長に聞きますが、労働基準法二十八条とこの法案とはどのような関連がありますか。
#105
○政府委員(堀秀夫君) 基準法二十八条は、以下約四カ条におきまして基準法に基く最低賃金のきめ方を規定しておるわけでございます。そこで、この基準法の実施につきましても、数年前に基準法に基く中央賃金審議会から四業種の答申というものがあったことは御承知の通りでございます。ところが、その答申と申しますのは、この基準法による最低賃金を実施する際には、これらの四業種について経済的に実効性ある措置をあわせてとるということが必要である、こういうことになっております。そこで、これに基いていろいろ経済各省とも折衝いたしたのでありますが、やはり基準法の方式だけでは最低賃金というものはなかなか実施しにくいという結論に達したわけでございます。そこで、これらの点もあわせて中央賃金審議会に御報告申し上げて、この半年に及ぶ中央賃金審議会の御討議にはそれらのことを前提として織り込みながら御討議を願ったわけでございます。その結果がただいま申し上げたものでございます。従いまして、この法案の附則におきまして、本法案の成立の際には基準法二十八条以下四カ条は削除する、最低賃金は別途最低賃金法の定めるところによるということを残しまして他の条文は削除する、このようなことになっておるわけであります。
#106
○小柳勇君 労働基準法はこれは私が専門家に説明する必要もありませんけれども、この冒頭には、日本の労働者の最低基準を定めると書いてある、その労働基準法で定めた最低賃金の決定方式では、なお、日本の実情に適しないので、その下の線できめようというようなことでこの最低賃金法が出されたのですか。
#107
○政府委員(堀秀夫君) 基準法の二十八条には「行政官庁は、必要であると認める場合においては、一定の事業又は職業に従事する労働者について最低賃金を定めることができる。」このように書いてあるわけでございます。そこでこの「できる」と書いてあるこれをやったらどうだということについていろいろ検討をしたわけでございますが、中央賃金審議会の答申では、基準法だけではとうてい実施できない、従って、今回提出いたしました法案のような内容の法案をすみやかに実施することが必要である、このような答申が出たわけで、それに基きましてこの法案を提出いたしたような次第でございます。
#108
○小柳勇君 さっきの言葉と少しニュアンスが違いますが、この中央賃金審議会の答申というものは、この労働基準法の精神による最低賃金法を定めるには今事業主などの情勢がまだ悪いから、そのような方式では決定できないので、もう少し下の方の線で最低賃金の決定の線をとろうということでおきめになるということですか。
#109
○政府委員(堀秀夫君) そのようなことではございませんので、最低賃金を有効に実施するためには、基準法にあるこの四条だけでは不十分であってできない、もっと総合的な四つの方式をからみ合せて最低賃金立法を新たに制定して、それによって実施することによって有効な最低賃金、すなわち基準法の精神も実現できるような最低賃金が有効に漸次実施されていくことができる、こういう答申であります。それに基いて本法案を作成した次第でございます。
#110
○小柳勇君 そうしますと、今までたびたび私の質問に答弁してこられた局長の中央最低賃金審議会という、その審議会と、この二十九条の中央賃金審議会というのは、一体どちらがウェートが大きいか、あるいは同じか、この点について御答弁をしてもらいたい。
#111
○政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会と申しますのは、基準法に基くところの中央賃金審議会でございます。その中央賃金審議会において最低賃金制を今後どのように発展さしていくことが最も有効であるかという御討議を願ったわけでございます。それに基いて出されたのがこの前の中央賃金審議会の答申でございまするし、それによって今回の法案を作成したわけでございます。
#112
○小柳勇君 そうすると、私の初めの質問に対する、労働基準法とこの最低賃金法との関係についてはまだはっきりしませんが、もう一回はっきり答弁していただきたい。
#113
○政府委員(堀秀夫君) 労働基準法の二十八条以下の規定は、本法の附則によりまして削除されるわけでございます。すなわち労働基準法に基く中央賃金審議会というものはなくなるわけでございます。そのかわりに本法によりまして中央最低賃金審議会、地方最低賃金審議会が新たに設置される、これに重要な事項をお諮りして、この最低賃金法案を実施して参る、このようなことになるわけでございます。
#114
○小柳勇君 さっきの答弁の中には、中央賃金審議会の答申の中に四業種云々という答申があったけれども、それはまだ業者のいろいろな実態によって実施できなかった、その後また諮問して今度の新たなこの最賃法というような答申が出た、そこまでいいですね、そこまでいいが、その答申の中で、あのような、この前の労働基準法二十八条による最低賃金については実施できないので、新たにこういうふうな方式を求めた、と言われるというと、この労働基準法の精神に基く最低賃金というものが、この政府提案の最低貸金法によって引き下げられた線においてきめられる法律であるとわれわれは判定せざるを得ない。従って、さっき言われたような点、中央賃、金審議会の答申、四業種実施不可能であったといういきさつについて、もう少し明確にしておいてもらいたいと思う。
#115
○政府委員(堀秀夫君) 数年前の中央賃金審議会の答申では、四業種について最低賃金を実施することが必要であると認められるが、それについては経済的に実効性ある措置をあわせて講ずることが前提である、このような答申になっておるわけでございます。そうしてその答申について各省とも打ち合せましたが、これは経済的に実効性ある措置というものは一緒に実施することは困難である。このようなことで中央賃金審議会にもそのような事情を御説明申し上げ、そうして労働基準法の精神に基く最低賃金を有効に実施していくためには、どのようなやり方が現段階ではいいかということをお諮りいたしました。それに基いてただいまの前提を考慮に入れつつ今回の答申が行われたわけでございます。
#116
○小柳勇君 経済の実効というような言葉を使われましたが、あの前の二十八条による中央賃金審議会の答申のあの四業種、あの答申があったにもかかわらず、なおこれが実行できなかった、従って、今度の最低賃金法によりますと、すなわち業者間協定によるというと、その四業種に期待されたような実効性が出るということですか。
#117
○政府委員(堀秀夫君) これにつきましては、業者間協定あるいは労働協約というような当事者間の自主的な協定に基く最低賃金制をまず実施していくということが現段階では一番手つとり早い、こういうような考え方でございます。それからどうしても当事者間で実施しないというような場合に、しかも社会的に見てどうしても最低賃金制をこの業種に実施することが必要であると思われますときには、十六条の職権決定の方式も必要である、そのような場合には中央最低賃金審議会においてそれを十分検討して、それに基いて十六条の発動をしてもらいたい、こういう意見であったわけでございます。
#118
○小柳勇君 労働基準法のこの中央賃金審議会の四業種はできなくて、あとこの最低賃金法による業者間協定については、この十八万聖業所、そういうものの業者間協定が急速に――非常に生活のできないような低賃金労働者が直ちに業者間協定によって最低生活が守られるということですか。
#119
○政府委員(堀秀夫君) 十八万の事業所、そこに働いております労働者については、これは都会の者もありましょうし、それから農村周辺で従事しておる者もございます。また、農村周辺等におきまして、いわば家庭の手伝い的に、副業的に従事しておるものというようなものをすべてひっくるめておるわけでございます。これらのものにつきまして、最低、賃金を一律に直ちに何千円以下であってはならないというようなことを定めますると、それはいろいろ問題が起きる。企業をつぶすというようなことにもなりましょうし、あるいは場合によっては、かえって解雇というような逆選択を招くことも考えられる。そこでまず、業者間において、あるいは労使間において当事者が自主的に協定を結んで、それに基いて最低賃金を決定していく。その最低賃金をきめる場合、これはもとよりそのまま最低賃金とするのではなくて、最低賃金審議会においてそれが適当かどうかということを十分御検討願って、その上で検討していくということになるわけでございますが、まずそのような方法をとっていくことが現実的である。それでもなおやらないで、しかも社会的に見て最低賃金制実施がぜひ必要である、このようになった場合には、十六条の職権決定を次に発動していく。このような方向で進んでいくことが現実的である、このように考えておるわけでございます。
#120
○小柳勇君 で、今の問題の中には、二つの、あなたの答弁の中に二つの問題を含んでいます。一つは、政府提案のこの最低賃金法にいういわゆる最低賃金というものと、この労働基準法の二十八条にいわれる最低賃金というものとは、この政府提案の最低賃金法の決定基準というものはゆるやかであり、非常に下回った線であるということと、もう一つは、業者間協定というものは最低賃金ではないという理念が十六条の強制適用の言葉の中に裏づけられでおる。その点二つ確認しておきます。
#121
○政府委員(堀秀夫君) 基準法の最低賃金と、本法案にいう最低賃金とは私は全然同じである、このように御説明申し上げておるわけでございます。
 それから業者間協定がそのまま最低賃金になるならば、これはなるほど最低賃金制に基く最低賃金ではございません。しかし、そうではなくして、業者間協定というものは一つの手続であり、基礎である、それによって労・使・中立、三者構成の最低賃金審議会の十分に審査検討されたものを、国が最低賃金としてきめるものでございまするから、それは最低賃金である、最低賃金制としての最低賃金である。このように考えておるわけでございます。
#122
○小柳勇君 そうすると、この二十九条の中央賃金審議会と、この最低賃金法のいう中央賃金審議会というものは同じであるならば、あらためてこういうような法律を作らなくても、こちらの方の中央償金審議会で最低賃金ができるということじゃないか。
#123
○政府委員(堀秀夫君) これは繰り返して申し上げておりますに、基準法の四条だけではわが国に有効な最低賃金制を実施する方法としては適当でない。従いまして、新しく立法を行い、四つの方式を併用して実施していく。また、これと関連して雇用労働者だけを対象として規制していくということでは、いわゆる関連の家内労働者によるところの不公正競争というものを招くことになり、また、一面において、家内労働者だけが雇用労働者と区別された不利益な取扱いを受けることになるから、関連家内労働の最低工賃をきめることができるというような内容を持った新しい立法を行うことが必要である。これが中央賃金審議会の御意見であったわけでございます。
#124
○小柳勇君 第二の業者間協定と十六条を発動しなければ、このような労働基準法にいう最低賃金の精神にマッチしないということをさっきあなたは返事したでしょう、回答しておるでしょう。従って、この最低賃金法におけるあなたは四つを並行すると言うけれども、実際ねらっているのは一つしか発動してこないのですよ、順序的には、そうでしょう。業者間協定あるいは労働協約併用、地域適用、四ついかなければ基準局長の発動そうでしょう。そうしますと、その間の時間的ズレがある。従って、あなたのこの言葉の中で、私をごまかそうとしているのは、業者間協定と言われますけれども、十六条がございますから、最低賃金法については問題はございません。こちらと同じだと言っているでしょう、そうでしょう。
#125
○政府委員(堀秀夫君) 私はそういうことを申し上げておるのではございません。要するに、わが国の現状においては、まず当事者間協定をもとにいたしまして最低賃金を実施することが一番現実的であり、それが結局労働者自体にとっても一刻も早く最低賃金制を実施してもらうために有効な方法である。このように考えておる。従いまして、方法論の問題でございます。基準法の四条だけでわが国に最低賃金を実施していくということでは、方法として適当でない、従いまして、四つの方式をからみ合せて進展さしていくことが、わが国において真に実効性のある最低賃金を拡大発展さしていく道である。このように考えておるわけでございまして、これは中央賃金審議会の御答申でも全然同じことであったわけでございます。
#126
○小柳勇君 第一点の、二つの問題がありますから、第一点の、当事者の間で話し合うことが一番時宜に適しておるということは、労働者が自分の賃金をきめるに、発言する機会がないということです。そのことについてはあとでまた論議いたします。
 第二の、四者が並行して、これを利用して、並行してこれを活用したとき初めてこの労働基準法における最低賃金が実施される。で、あなたは答弁すると必ず業者間協定のあとでずっと並べていって、最悪の場合には十六条と言われる。私は一番今書いたいのは、一つのこの最低賃金という基準にどのような速度で、苦汁労働から脱却できるかということの質問の中の討論ですね。そのような速度の観念からいきまして、今度のこの最低賃金法というものが最終的には十六条の発動によらなければこの苦汁労働すら、苦汁賃金すら脱却できないということをあなたは証明しているようなものですよ。そのような法律を私どもとしては第二の理由で今のところ、それは事業主だけ、使用者だけを守る法律であると言っているわけです。そのようなことで、まず私は、次の問題に入っていこうと思います。
 次の問題は、労働組合法十八条の適用しておる、適用によって今までずっと賃金を決定した例がありまするが、今労働省としてこのようなことをどのくらいに把握しておられるか聞いておきたいと思います。
#127
○政府委員(堀秀夫君) 組合法十八条による事例は今まであまりございません。これは大体組合法十八条というものは団体協約一般の拡張適用方式でございます。最低賃金条項を予想して、最低賃金をこれによって発展さしていこうという目的を持った規定でないことは御承知の通りでございます。そこで、この労働組合法十八条に基く拡張適用の事例といたしましては、その中に最低賃金条項の入った例といたしましては、高知と滋賀にその例がございます。
#128
○小柳勇君 業者間協定については非常に詳細に報告をとっておられて、この十八条適用の賃金決定についてはなぜそう詳細に、あなた方は知らないというようなあいまいな報告をされるか。私の方でも相当資料ありますから、おわかりなければ発表いたしますけれども、そのようなえこひいきな考え方といいますか、そういうものについては納得できないから、もう少し詳細にその点を一つ報告願いたいと思う。
#129
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金に関する労働協約の、十八条に基く拡張適用の事例といたしましては、まず第一に、高知県の石灰製造業がございます。石灰製造業においては、労働協約の当事者は土佐石灰鉱業協同組合と稲生石灰協同組合協議会でございまして、その使用者は十全業、労働者数は五百六十四人、その協定の内容は時間給三十円以下では労働者を使用しない。こういうような内容であったわけでございます。そうして、拡張の申し立てば昭和三十二年四月二日にありまして、地労委で六月四日決議、知事の決定が六月十八日でございまして、結局協約の主文全条項を高知県内に全部に拡張適用したわけでございます。高知の地域内において石灰製造業を憎むもの及びその工場、事業場に雇用されている全労働者が拡張適用の対象になったわけでございます。
 第二は、滋賀の亜炭採掘業の事例でございます。労働協約の当事者は滋賀亜炭製造販売協同組合、滋賀亜炭鉱業労働組合連合会でございまして、五企業、労働者数は百八十三名、この協定内容は坑内夫一日八時間四百円、坑外夫三百五十円、選炭夫二百円、五十五才以上の者については労使で協議の上決定する。臨時雇い、試みの使用期間中の者は除く。こういうことになっているわけでございます。これにつきましては、昭和三十三年五月二十六日に拡張適用の申し立てがあり、滋賀の地労委において決議の上、滋賀県内の使用者に、同じ業種の使用者に拡張適用されておると、こういう事情になっております。
#130
○小柳勇君 この最賃法の最低賃金決定方式の第二の問題は、労働組合法十八条の適用によっても、この法案の中の精神は貫かれると私は判定しておるが、その点について、どういうふうにお考えであるか。
#131
○政府委員(堀秀夫君) 労働組合法十八条は、いわゆる労働協約の拡張適用方式でございまして、結局、これは協約の拡張適用にすぎないものでございます。従いまして、たとえば、もとになる労働協約が効力を失いました場合には、拡張適用そのものも効力を失う、このようなことになっておるわけでございます。また、これに違反した場合に刑事的な罰則というものもつかないわけでございます。そういうような点から考えまして、最低賃金法の中に、今回の労働協約に基く地域的最低賃金というものを規定したわけでございますが、これは、もとになる労働協約が効力を失いましても、結局、最終的に、国がきめた地域的最低賃金でございまするから、最低賃金の効力は安定性がある。従いまして、効力がぐらつかない、こういうことになるわけでございます。また、同時に、これに違反すれば、結局、最低賃金法によるところの罰則の適用もある、こういうことになるわけでございます。また、その審査をいたしますものも、賃金に関するところの権威者を集める最低賃金審議会において審査を願いまして、そうして決定していく、こういうことになるわけでございます。やはり、最低賃金としての安定性をはかるというゆえんから、最低賃金法に地域的最低賃金を設けたことは、これは実益があると考えております。なお、これによりまして、労働組合法十八条を削除するというようなことではありませんので、十八条はそのまま残る。その間の連絡規定を附則において規定したと、こういう考え方でございます。
#132
○小柳勇君 労働組合法十八条と、労働基準法の二十八、二十九、三十条をかみ合わしていけば、ちょうど今政府が出しておられる最低賃金法と同じような効果のある最低賃金はできるはずだと、私、思うわけです。私どもはそれでは不満足であるので、社会党なり総評など労働者の団体と、そのようなことでは、まだ、この苦汗労働者の苦汗賃金というものを救済できないということで、新たに最低賃金法を提出しなきゃならぬという方向にあるわけですね。政府も、今、労働協約の適用については非常に危険を感じておられるようだけれども、もし、そのような労組法十八条と労働基準法とをかみ合わしたものが危険であるならば、この最低賃金法の第二の協約拡張適用の最低賃金だって、危険なんだ。その点は同じなんだ。その点についてお伺いしておきたい。
#133
○政府委員(堀秀夫君) 労働組合法十八条が危険だと申し上げましたのは――労働組合法十八条においては危険であると申したことはありません。不安定であると申しましたのは、もとになる協約が失効いたしました場合には、拡張適用そのものも失効する、これでは最低賃金としての安定性を期し得ない、こういうことを申し上げたので、最低貸金法の地域的最低賃金によりますれば、もとになる協約が効力を失っても、あくまでも、最終的には、国家がきめた最低賃金でございますから、この最低賃金は最低賃金法に基く最低賃金として安定性があるということを申し上げたわけでございます。
#134
○藤田藤太郎君 関連ですが、先ほどから局長のお話を聞いておりますと、労働基準法の二十八条以下の最低賃金をきめる場合には「できる」と書いてある。だから、できなかった。今度の法律を見たって、「できる」と書いてある。これはどういうことですか。そういうごまかしを言っちゃいかぬと思う。この法案の骨子になっておるのは、今の基準法の関係と労組法の関係とを除けば――除けばとは言いませんが、業者間で賃金をきめて、この申請に基いて最低賃金をきめる、これができると、こう書いてある。先ほどからの質疑を私は繰り返しませんけれども、ほんのちょっぴりしか業者間協定はできない。その業者間ができたことだけで、要するに苦汗労働者が救われるかという問題が一つ出てこようと思います。しかし、もっと根本的に今日の世界の中で、業者が、働いておる労働者の意見も聞かずに賃金をきめたり、最低賃金をきめたりしておる国はどこにあるのですか。ここが私は問題だと思います。それをぬけぬけと、基準法を改悪してこういうところへ持ってきてこれが適当でございますと、そんな理屈が、あんた、通るのですか。そこを私は言いたい。先ほどからのいろいろ質疑を聞いておると、適当な答弁がある。たとえば、業者間だけで、業者だけで勝手に、働いておる労働者の賃金を、意見も聞かずに賃金をきめて、そうしてやっていくことがいかにも合理的であるように、いかにももっともらしく説明されるわけです。ちょっとだけ私は質問したことがありますけれども、私は、これから小柳君が終ったらばちぼち質問していきたいと思うんですけれども、実際問題として、そういう格好で、実際に今の苦汗労働者、そういうものが救われるかどうかという根本的な問題が、どうも何へん聞いても理解できないんです。(「同じことだよ」と呼ぶ者あり)同じことじゃない。そこで僕は聞きたいんだが、業者間協定というような格好のものがアメリカでやったことがあるというお話がこの前ありました。世界じゅうにどこにあるかという質問に対して、そういうお話があったんです。だから、どういう格好でアメリカで業者間協定のようなものがやられたかということを詳しく一つ説明してもらいたいことと、一番最初に言った「できる」と書いたから、できなかった。今度の法案を見ても、「できる」と書いてある。これはどういうことなんですか、その関連は。
#135
○政府委員(堀秀夫君) 第一の、基準法には「できる」と書いてあると申し上げましたのは、基準法の二十八条以下も、行政官庁が必要であると認めた場合にはできると書いてあるのであって、何か基準法が規定があるにもかかわらず、それの基準法違反が行われておるというような印象の御質疑がございましたので、私は、それは必要と認めた場合にはできるということになっておるのである、このように御答弁申し上げたわけでございます。
 それからアメリカの例といたしましては、これはわれわれ、最低賃金法を立案いたしましたのは、もとより各国の事例を参照いたしましたけれども、別にアメリカにあったからそれを選んだということではございませんので、あくまでもこれは労使中立三者構成の中央賃金審議会におきまして御答申になりましたそれをそのまま法案化したということでございます。
 それからアメリカにおける事例でございますが、これは産業復興法に基きまして、そうしてこれによって業者間においていわゆる公正規約というものを作成いたしまして、大統領の認可を受けるということにいたしましたのが、まあ外国に例を求めればそういう事例がある、こういうことを申し上げた次第でございます。
   〔「議事進行」「何が議事進行か」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然]
#136
○委員長(久保等君) お静かに願います。
   〔「質問中だ」「発言中じゃないか」「委員長、議事進行」「何を言うか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然〕
#137
○委員長(久保等君) 御着席を願います。
   〔「委員長、議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然]
#138
○委員長(久保等君) 御着席を願います。――御着席を願います。――お静かに願います。質疑を続行いたします。(「委員長、議事進行だよ」と呼ぶ者あり)発言中でございます。藤田君に指名をいたしております。藤田君に発言を許します。御着席を願います。
#139
○藤田藤太郎君 今の私が基準局長から聞いたのは、基準局長の答弁の中に、基準法は「できる」と書いてある、「できる」と書いてあるからできなかったんだという答弁があった。それで四業種の規定はあったけれども、できなかったんだというお話があった。私はそれを聞いているんですよ。今度の法案も「できる」と書いてあるじゃありませんかと言っているのはそこなんですよ。それが一点です。そういう聞き方なんです。これは一つ御理解願っておきたい。「できる」と書いたら何でもできるなら、なぜこの前もおやりにならなかったかということが発展的に解釈されて参ると思うのです。
 それからその次は、あなたはアメリカの公正労働基準法、要するに産業復興法との関係で、業者間協定が――私はここでこの問題を取り上げて言おうとしているのじゃないけれども、この前の質問のときに、業者間で賃金をきめて、最低賃金をきめているところがありますかと聞いたら、アメリカにありますとあなたははっきり言うたから、それでは実情はどうだという私は尋ね方をしている。そうでしょう。あなたがそういう開き直り方をされたから私は尋ねている。アメリカの産業復興法と再雇用協定の問題をあなたは御存じだと思う。あの一九三三年ごろに、アメリカの不況で失業者がたくさん出た。この中でアメリカの経済をまずどうするか。貧困生活者をどうするかということで非常に努力された。労働時間の短縮と雇用拡大と、それから賃金をこれだけ引き上げる。こういう形の中から、こういう中から再雇用協定を作る。それを経営者が大統領の要請によって公正競争規約というものを作って、そしてそれが一九三三年から四年に行われて、一九三八年に一律の公正労働基準法というものができたのでしょう。そうでしょう。それは私が言うまでもなくよく御存じだ。そのことを皆知らないと思って言われたのか、適当にお答えになったのか知らないけれども、そのことをもってアメリカに業者間協定がありますと、こういうこの前言い方をされておったから、私はここでもう少し詳しく、この前は時間がなかったから聞けなかったから、きょうどういうような格好で御説明されるか、それを承わりたい、これは今関連ですから、この二つだけ聞いておきます。
#140
○政府委員(堀秀夫君) 基準法の二十八条は、行政官庁が必要であると認める場合においては、最低賃金を一定の事業、あるいは職業に従事する労働者について決定することができるとなっておるわけでございます。従いまして、これについて、発動するかどうかは、行政官庁が必要と認める場合になっておるわけでございます。この点について先ほど御説明申し上げましたが、四業種等の答申もありましたが、これは結局経済的に統制ある措置があわせ講ぜられることが必要である、このような答申でありました。そうしてこれをいろいろやってみましたが、どうしてもこれだけでは実効性ある最低賃金をきめることが不可能であるというのが、先日行われた中央賃金審議会における審議の過程に現われたわけでございます。そうして中央賃金審議会においては、やはりわが国において有効な最低賃金を実施するためには、新しい最低賃金法を制定いたしまして、これに基いて最低賃金を業種別、企業別に拡大していくことが適当であると、こういう結論が出たわけでございまして、それに基いて作成したのが本法案でございます。
 それからアメリカの事例につきましては、もとよりわれわれは最低賃金法案を作成いたしましたのは、先ほど申し上げました中央賃金審議会における御答申の中に、業者間協定を基礎として最低賃金を作成する方式を入れるべきである、こういう御答申がありました。それに基いて本法案を作成したわけでございます。アメリカにおいてはそれに似たような例があるということは、先ほど申し上げましたように、公正労働基準法の元になりました産業復興法の中に、業者において個々に作りまして、それを大統領が認可して最低貸金を決定するという方式があるということを申し上げたわけでございます。
#141
○小柳勇君 私は冒頭に申し上げたように、きょうは基礎的な問題から入って、あとまだ各論、それから逐条的なこの法案に対する質問があるわけです。これはもう冒頭から申しておったわけです。その基礎的な質問の中で、今三つの問題しか質問しておらぬ。従って、大臣に質問いたしますが、この労働基準法第二十八条は、「行政官庁は、必要であると認める場合に」と書いてありますが、その二十八条の精神については、これを提案されたのですから、お認めになるかどうか、お聞きしておきたい。
#142
○国務大臣(倉石忠雄君) 精神はもちろん認めます。
#143
○小柳勇君 そうしますと、必要を認めたのでこの最低賃金法を提案した、こういうことですか。
#144
○国務大臣(倉石忠雄君) その通りであります。
#145
○小柳勇君 そうしますと、第二十九条の中央賃金審議会というもの━━今までこの最低賃金法を衆議院から参議院までずっと論議してきた中で、局長の答弁の中では、必ず最後にはもう中央賃金審議会というものが出るわけです。で、私が冒頭から質問をいたしておりまする最低賃金法というものは、使用者に全国一律に一定の金額以上の賃金を統制するものである、その統制する法律というものを、これは現在何百万のこのロウ賃の人々がおるから、この人々を引き上げるためのものでなければならない。そのために、この中央賃金審議会、最低賃金法が必要であるとするならば、この二十八条、二十九条、三十条における労働基準法の精神をもってやれるではないか、こういうことをるるとして質問をしておるわけであります。大臣の答弁を得たいと思います。大臣から答弁を願います。
#146
○国務大臣(倉石忠雄君) 政府は一体でありますから、政府委員の申し上げることは全責任を大臣が負うわけであります。先ほど来そのことについては政府委員がしばしば答弁している通りであります。
#147
○小柳勇君 それでは大臣は、今までの私の質問に対する局長の答弁は政府の答弁として責任を持たれますね。
#148
○国務大臣(倉石忠雄君) もちろんそうであります。
#149
○小柳勇君 そういたしますと、局長にまた逐次質問して参りますが、労働基準法のこの二十八、二十九、三十と、労働組合法第十八条の拡張適用、こういうことが、これはわれわれとしては最善じゃありませんが、これはそういうものをやろうとするならばできたのではないか。一体これに対して今までできなかった、そういう理由についてお述べ願いたいと思う。
#150
○政府委員(堀秀夫君) 二十八条、二十九条の規定によりまして基準法方式でいきなり最低賃金を実施するということは、これは中央賃金審議会の最初の答申にもございましたが、経済的に実効性ある措置をあわせ講じなければ困難である、こういうことになったわけでございます。そうしてそれと同時に、これらの産業において最低賃金を実施いたしまする場合には、やはりこれと類似した作業を営んでいる家内労働者というようなものが並行して存在するわけでございまして、関連の家内労働者についても、必要な場合には最低工賃をきめるというようなことにいたしませんと、その一般の人を雇用して経営を営んでいる企業、それから家内労働事業との間にやはり不公正競争というような不均衡が生ずるわけであります。有効な最低賃金を実施することは困難でございます。これらの点をからみ合わせまして、やはりさしあたり現段階においては、当事者間の自主的な協定に基くところのものを基礎といたしまして、最低賃金を実施していくということが適当である。必要な場合には、さらに第十六条の職権決定も考慮して、あわせて必要な場合に関連家内労働者について最低工賃を規制することができる、このような内容を持った法案を作成し、これを実施していくことが、いろいろ遠回りのような感じもいたしまするが、結局において最も近道ではないか、このような結論に達したわけでございます。
#151
○小柳勇君 そういたしますと、現在この提案されておる最低賃金法案には、家内労働者については、必要と認めるときと書いてある。この八十三万八千人の、五十七万世帯の家内労働者というものは、おそらく苦汗的賃金であろうと思う。そのような労働者について、この法案では必要あると認めるときだけにして、非常にそのものは労働者の方に中心を置いてやる。その点についてこの法案を修正して、家内労働者もこれと同じような方法によって家内工賃を決定する意思があるのかどうか。
#152
○政府委員(堀秀夫君) この点につきましても、中央賃金審議会における御討議の際に、きわめて御熱心な御議論が戦わされたわけでございます。そうしてその結論と申しますのは、将来の問題といたしましては、わが国の家内労働者について、総合的な家内労働立法を行うことが必要である、こういう結論でございました。しかし、現段階において、わが国のように複雑多岐ないろいろな仕事を各地で大小さまざまのメーカーが発注して、これを家内労働者が実施しておる、その実態が把握できないというような現段階においては、直ちに家内労働法を実施することは不可能であるから、従いまして、現段階においては、さしあたり関連の家内労働について最低加工賃をきめることができるという規定を設けて関連家内労働を規制していくべきである。それから、それと同時に、政府は最低賃金法実施とあわせ並行して、将来家内労働法を制定するための準備と調査に着手すべきである、こういう答申でありました。われわれもこの答申と同じ見解でございまして、本法案において、関連の家内労働について必要な規制を行なって最低加工賃をきめていく。あわせまして、本法実施とあわせて将来の問題としての家内労働法制定のため必要な準備及び調査に着手する予定でございます。
#153
○小柳勇君 今の局長の答弁の中に、また大きな二つの問題があります。第一は、この中央賃金審議会の答申というものが、あたかも満場一致であったかのごとく常に衆議院でも参議院でも答弁しておられるが、これは誤まりであります。中央賃金審議会の速記録を読んでみても、労働者側は常に反対しておる。そのことを私は第一に申し上げておきたい。第二は、家内労働者については、現在家内労働の最低工賃を決定する必要を認めておらないような発言があったので、それを確認しておいてよろしいのかどうか。
#154
○政府委員(堀秀夫君) 中央賃金審議会の答申の作成につきましては、いろいろな経緯がございました。結局のところ、この答申を出すことについては、全員異論がなかったわけであります。それから答申の内容につきましては、労働者側の一部委員は積極的に賛成、他の委員は、内容には反対である。このような御意見であったということは、議事録をごらんになってもおわかりの通りであります。それから第二番目に、家内労働については、さしあたり関連の家内労働について最低加工賃を決定する。その場合には、中央賃金審議会にかけて、その意見によって最低加工貨を決定する、このような内容であったわけであります。
#155
○小柳勇君 それではこの八十三万八千人の家内労働者は、いつになったら一体その生活を豊かにし、それを保護しようとしておられるのか、聞いておきたいと思います。
#156
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金が決定されました場合において、その最低賃金の適用を受ける労働者を雇用するような企業と同じような内容をもって併存しておる家内労働については、最低加工賃を逐次決定していく、こういうことになると思います。その他の問題につきましては、中央賃金審議会の御答申にもありましたように、まだ現在その全実態を把握しておりませんので、そのための必要な準備、調査をさっそく行なって参りたい、それによって結論を出したいと考えております。
#157
○小柳勇君 さっきから何度も言うように、労働基準法ができてすでに十二年です。家内労働なり最低生活者の実態についても、統計から一応数字は出たけれども、家内労働者の現在の実態ですね、それはこの間の資料にもあったように、非常な格差があるわけです。このような統計的なものについても、すでに把握しておられるにかかわらず、なおこの法案の中には、非常に冷淡に扱っている。さっき近い将来にという話があったけれども、一体具体的にどのくらいの見通しを持っておられるか。
#158
○政府委員(堀秀夫君) 先ほど御説明申し上げ、また、資料にもありまするように、大約八十三万の家内労働者がある、こういうような内容を把握しておりますが、その間における発注の状況とか、作業の内容とか、あるいは作業形態等については、まだ今のところ正確な調査ができておりません。これについては、さらに将来実態を把握しなければなりませんので、現在も調査を継続中でございます。それらの実態を把握いたしました上で、なるべくすみやかにこの中央賃金審議会の答申にもありまするように、家内労働の調査準備に着手したい考えでございます。
#159
○小柳勇君 われわれとしては、現在の家内労働者の苦汗的な賃金あるいは生活の苦しさ、そういうものについては、調査、その他身をもってもよくこれを見ているし、われわれとしては家内労働法というものを、最低賃金法と同時に制定することが最も妥当なことであろう、そうしなければ、この最低賃金法を出しましても、それこそなお賃金格差を大にするであろうという見解を持っている。そういう意味から、この最低賃金法については、われわれとして反対をしておる。
 次に、第四番目の問題は、民間の労働者に対しては、最低賃金をまあ十年か二十年かして、これによって生活を保護しようとしておられるんだろうが、政府の雇用者、たとえば自由労務者、そういうものに対する最低生活についてはどのように考えておられるか。
#160
○政府委員(堀秀夫君) 政府の雇用するような自由労務者、これは失対事業等の労務者がこれに当ると思いますが、これらにつきましてはPWを基礎にいたしまして、これらを勘案の上、現在その額をきめておるところでございます。これらにつきましては、PWの調査等につきましても、今後さらに補完するというような方法を考えております。ただし、本法によりますれば、必要な場合には政府の雇用者でございましても、特別職の者は労働基準法の適用を受けるわけでございます。従いまして、一般職でない特別職の労務者につきましては、これは労働基準法の適用を受けますから、最低賃金法による最低賃金の適用を受ける可能性があるのでございます。
#161
○坂本昭君 関連して……。局長に伺いますが、この前、大臣からは若干御説明いただきました今の一般職別賃金でございます。これで今全就労者は、特別失対について昭和三十二年にきまった額のたしか七%ぐらいですか、上って今度の予算も組まれているはずであります。ところが、一般失対に対しては、三百六円の頭打ちのまま予算を組んでいる。私はこのことと、今度皆さんの最低賃金制をおきめになることと何か関連があって、なるべく低いものを作っておこう、そういうつもりで一般失対については三百六円で頭打ちにされたのですか。
#162
○政府委員(堀秀夫君) 決してそのようなつもりがあったわけではございません。これは昭和三十二年におきまして、御承知のように、職種別賃金、いわゆるPWが、毎年実施されております労働者の統計調査部における屋外労務者の職賃の調査、職賃乙調査といっておりますが、それによりましてPWの変更が必要なときには変更いたしておりますが、昭和三十二年四月において、約七%のPWの改訂を行なったことはただいまお話の通りでございます。その後、昨年におきましては、一昨年の職賃乙調査の結果がその前と比べまして変動がほとんどございません。約一、二%の変動しかありませんでしたので、それを据え置いたわけでございます。そこで本年度の問題でございまするが、これは昨年の秋に統計調査部で職賃乙調査を実施しまして、その結果を目下集計中でございます。これが集計が完了いたしました暁においては、現行のPWとからみ合せてみまして、値上げが必要であれば値上げを行う。ただ前提となる調査の結果がまだ集計ができておりませんので、それを待っておる状態でございます。
#163
○坂本昭君 今……(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#164
○委員長(久保等君) 発言中です。
#165
○坂本昭君 質問中です。今の一般職特別賃金の問題でございますが、一般の失対に対して八〇%ないし九〇%いつも頭を押えて、私はこういうやり方は当然経済生活と同様に上っていくべきところの国民生活の水準というものを……(「議事進行だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
#166
○委員長(久保等君) お静かに願います。
#167
○坂本昭君 ことさらに押えていくものではないか。もし皆さんがほんとうに低所得層の家内労働の人たちの最低賃金というものを確保するという熱意があるならば、私はこういう公共事業などに働く人に対して、すべからくそういう八〇%ないし九〇%上から押えてしまう、こういういき方は早く取るべぎだと思う。お取りになったしで、そしてまた、最低賃金をやるというなら、皆さんの誠意をお認めすることができるんですけれども、一方ではそうやって押えてしまって、そうしてまた、こうやって今度最低賃金を出す、そういうところに私は非常に矛盾を感ずるのですが、この点どういうふうにお考えになりますか。
#168
○政府委員(堀秀夫君) 現在のところ、お話のように、PWが公共事業の労務者の賃金、それからあるいは失対事業の労務者の賃金等の基礎資料として使われております。そこで、これを取ることの影響等につきましては、今後なるべくすみやかな機会に検討いたしたいと思います。その検討によりまして、これをどういうような方向へ持っていくか、あるいは存置するか、あるいはやめるか、あるいは改正するかというような点についてはなるべくすみやかに検討を行いたい考えでございます。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#169
○委員長(久保等君) 小柳君が質問中です。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)ただいま小柳君が発言中です。関連質問ならば、関連質問で発言を求めて下さい。(「公平にやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)小柳君の質問に関連した御質問であれば御発言を願います。小柳君の質問に対する坂本君の関連質問であります。(「議事進行だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)ただいま小柳君の質問中であります。お静かに願います。小柳君、質問を続行して下さい。
#170
○小柳勇君 この前の委員会でも質問しているように、PW政策については、自由労働者をもう四年間も低賃金に据え置いているが、このような経過について、五月前後には統計が出る、また、調査の資料が出るという発言であるが、その後の経過について聞いておきたいと思います。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#171
○委員長(久保等君) お静かに願います。
#172
○政府委員(堀秀夫君) 現在、統計調査部において、その結果を目下集計中でございまして、五、六月ごろには統計の結果が出るかと考えております。
#173
○小柳勇君 次の問題に入りますが、私はさっきから言っているように、まだ質問は相当ありますので、静かにして下さい。時間としてもまだ四時です。(「何時だって同じだ」「議事進行」と呼ぶ者あり)質問が相当あるということを、前もって予告しておいたはずでありますので、最後まで静かにしておいて下さい。(「同じことだ「同じことじゃない」と呼ぶ者あり)この前の一般質問の中で、最後に、私は労働大臣並びに労政局長に確認しておきましたが、それは策議院の方で質問があった中で、三つの項目があって、それを確認しておきました。第一は地域というものが、全国的に広がったものを地域と考えるということが第一です。第二は、労働の質と量というものが、非常に今全国的にも格差が少くなってきた、このことも衆議院で確認されて、私はこれを確認しております。これが第二です。第三の問題は、生活実費、生活実費というものは、少くとも男子十八歳になれば、人事院が言っているように、八千円ぐらいの生計費というものは標準的に必要である、そのことも確認しておきました。しかも労政局長が再々答弁しているように、この最低賃金法の決定方式は四つあるけれども、その第一に着手することは、中央最低賃金審議会であり、地方最低賃金審議会である。ではその最低賃金委員会で、生計費やあるいは工場の支払い能力やあるいはそっちの労働者の分布などを、詳細に調査して、直ちに着手すると言っている。しかもその生計費を調査する中に、人事院の標準生計費なども、有力な資料であると言っている。従って、そういうようなことでずっといきますというと、われわれが言っている最低賃金というものは、全国的に一律にきめて、そうして初め低くともやむを得ないかもしれないけれども、そういうものを一応きめておいて、その線から地域的にでこぼこがある場合はこれを上げて、そこの上に業種的に、職種的に、地域的に積み重ねていって、これを基準局で認めて大臣がきめる、そうしてこれを最低賃金法とするのが最も合理的であり、しかも一番早いと、そういうことを私は今考えているが、この点について労働大臣の答弁を求めたいと思います。
#174
○国務大臣(倉石忠雄君) そのことはもうここで何べんか議論がありまして、(「その通り」「私は初めてだ」と呼ぶ者あり)そのときにおいでにならなかったかもしれませんが、もうすでに数回やっていることであります。それはやはり今日の段階においては、一律の最低賃金をきめるということには反対でありますし、また、経済界にもいろいろなフリクションを、波乱を招きますからして、やはり今日の段階においては、そういう方法はとらない、やはり私ども政府が原案として作成いたしましたのは、中央賃金審議会の長時間にわたる研究の結果でありまして、これがきわめて妥当なものである、こういうふうに考えております。
#175
○委員長(久保等君) ちょっと速記をとめて。
   〔速記中止〕
#176
○委員長(久保等君) 速記を起して。
 小柳君に発言を許しました。発言を続けて下さい。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#177
○小柳勇君 大臣からの答弁がありましたが、私は今初めてです。この前の質問からずっと一般論をやって、そうして各論に入って、私の質問をまとめていきながら、私なりの一つの意見を申し上げたい、このように考えて質問をいたしておるわけです。そこで、今大臣が何度も答弁されたという、私の質問は、そのようなことであるならば、基準局長がよく言われるような、中央賃金審議会というものがこの労働基準法にいうのと同じであるならば、この業者間協定という、この最低賃金法の表看板であるそういうものを新たに提案されないのが、この現在の最低賃金労働者を早急に引き上げる一番大きな方法であろう、そういうことをわれわれとしては言いたいわけです。従って、今から私は、逐次各論的に質問を展開していきたいと思うのです。
 最低賃金の決定方式について三つの方式を並べておられる。で、生活賃金も考えようあるいは公正賃金の原則も考えよう、支払い能力の原則も考えようと言われておるが、今までの大臣なり基準局長の答弁を聞いておると、現在の業者は、この労働基準法によって中央賃金審議会に諮問されて答申が出たように、四つの業者すら最低賃金をきめ得なかった、そのような実態ではないか、あれからまだ三年しかたっておらない。そのような実態をいま一回答弁願っておきたい。
#178
○政府委員(堀秀夫君) 三原則と申しますのは、この第三条に掲げたものでございますが、これらのものについては、われわれが今まで御答弁いたしました通り、賃金支払い能力というものにつきましては、通常の事業の賃金支払い能力でございます。個別的の企業の賃金支払い能力をさすものではございません。これらの三つの基準を参考といたしまして最低賃金を決定する、このような考え方で参ったわけでございます。
#179
○小柳勇君 そこでまだ三年もたたないのに、この労働基準法の最低賃金が実施できないのに、今この最低賃金法案が通りましても、この法案よりももうしばらく、たとえば今もしこれを響きかえられて、一年なり二年待って、もっと労働基準法にいうような賃金審議会などを発動されて、早急に生活実態なりあるいは業者の支払い能力なりを調査されて、直ちに私どものいうような全国一律の賃金を出せる機会に、最低賃金法を作られてもいいのではないかと私は言いたいわけです。その点について御答弁願っておきたい。
#180
○政府委員(堀秀夫君) 私どもは、中央賃金審議会の答申にありましたように、現段階においてはこれら四つの方式をからみ合せて実施し、これを拡大的に発展させていくということが最も適当であり、また、これを即急に実施する必要があると考えております。この法案の早期制定につきましては、関係者からも非常に早期に、促進を要望する声をわれわれ受けておるわけでございます。中央賃金審議会においても、この四つの方式をからみ合せた最低賃金法案をすみやかに制定すべきことという答申が出されております。私どもは、やはり基準法の方式だけでは、たった四条だけの条文で、この非常に複雑な日本の中小企業の実態を押えていくと、このようなわけにはなかなか参りませんので、やはり四つの方式をからみ合せて、それからまた必要な場合には、家内労働者の最低工賃も決定できるということを合せました総合的な本最低貸金法案を実施することが、結局わが国における労働者階層に最低賃金制を普及していく、これはいろいろの議論もございましょうが、われわれとしては、中央賃金審議会の御意見の通り、これを即急に実施していくことが、やはり現段階では最も要請されておるのではないか、このように考えておるわけでございます。
#181
○小柳勇君 四十六カ国くらい最低賃金法を持っていて、さっきの光村委員の質問にもありましたように、日本のようなこういうような決定方式を採用している国はない、しかも日本の経済情勢とそれからどこの国が一番似ておりますかという質問をした際にも、大臣も局長も正確な答弁もなかった。それにもかかわらず、このようなこの賃金の決定方式なりを決定された。これで一体、今後の賃金の格差、開き、それを縮めようとされておる、それが一体可能であるかどうか。また、これはインドの例もありあるいはフランスの例もありあるいはオーストラリアの例もありますが、外国において、こういうようなものはすでに失敗した。その決定方式をとって、すでにもうILOの二十六号条約ができてすでに十数年になりますが、今この時期にこういうような法律を出して、これから漸進的に十年から二十年の先を大方見でおられると思うけれども、そういうことをしなくてもよろしいのではないか。もし今無理ならば、来年私どもの言うようなものを作られることが、ほんとうにこの苦汗賃金を脱却する道ではないか、こういうように思いますが、この賃金格差の問題と、こういうような支払い能力を重点にする方式について、いま一応一つ御説明願っておきたい。
#182
○政府委員(堀秀夫君) これは、私どもこれも申し上げたことでございますが、現在まで法律によらないで実施されておる業者間協定の実績を見ましても、多いところでは三〇%程度、それから平均して一〇%から二〇%程度の貸金上昇が来たされておるということが報告されておるわけでございます。いわんや法案実施の後におきましては、労働者を含む最低賃金審議会において、その申請の内容を検討いたしまして、その上で最低賃金を決定することになるのでございまするから、私は今までより以上に賃金の向上は期待できると考えております。そのような面を考えまするときに、やはりこの最低賃金法を実施いたしました暁には、わが国における賃金格差の縮小に寄与するところが相当多いと、このように考えております。
 それから支払い能力の問題でございまするが、これは個別の支払い能力のことをさすものではございませんので、その業種の産業が支払うことが通常期待される、正常経営をしていく場合に、通常期待されるところの支払い能力をさすものでございます。
#183
○坂本昭君 関連、先ほど来局長の御答弁もそれから大臣の御答弁も、支払い能力ということに非常に重点を置いておられる。で、本来この最低賃金の問題は、労働者の生活の安定、それから労働力の向上、それから今の事業の公正なる競争、これは幾つかの目的が確かにありますが、私は一番大事な柱は労働者の生活の安定だと思う。どうもそういう点の皆様方の強調が非常に少いように思う。私はそういう点で皆さんの誠意をさえ疑わざるを得ない。なるほど労働者の生計費について皆さん方かなり計算はしておられる。しかし、いつも賃金支払い能力という面の方ばかり強調せられておる。先ほど四千円以下の雇用者が百二十万人もおるというような話が出まして、私が失対の三百六円の話も申し上げました。あなたの方ではできるだけすみやかにそういうことを訂正していくと、私はどこまですみやかにされるのだか、あのILO条約の批准と同じように、いつまでも条件をつけて引き延ばされるのじゃないかと思う。たとえば一例をあげると、今の低所得層の中で、特に労働能力のあって一番みじめな低所得層の人、これは一体何と思いますか。一番賃金の少い、そうして働き得る能力がありながら、一番このみじめな賃金をもらっている人、おそらく皆さん方の眼中にないのじゃないかとまで思うけれども、一応そういう者があるのです、実際。あなた方のこの法律案の中にも書いてあるのだけれども、念のためにちょっと局長さんに伺います。
#184
○政府委員(堀秀夫君) ちょっと御質問の趣意がはっきりいたしませんでしたが、たとえば家内労働者であるとかそういうようなところ、あるいは農村周辺の副業的な業務に従事しておるというような方には、相当低い所得の方があるようにわれわれは拝承しております。
#185
○坂本昭君 この間、大臣はもうすでに先刻御承知なんですけれども、この間の当委員会で、実は私が提案理由を申し上げました身体障害者雇用の問題です。この中にも「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」これは皆さんの中でもはずしておられる。私はこれははずしてはならぬと思うのですよ。こういうところに手厚い保護を加えることが、この低賃金の対策の一番大事な点なんです。で私、今なぜ特にこういうことを申し上げるかというと、この間の当委員会で、私たちは、皆さん方はそれをおやりにならないから、身体障害者の雇用を促進するためにああいう立法を出して、そしてその職場、同一職種の少くとも八〇%は賃金を確保すべきである、そしてその確保のでき得ないという認定を、特に雇用審議会が決定したときには、その差額を国が負担すべきである、私たちはそういう考えさえ持っている、しかし、皆さん方は「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」ははずしてしまおう、こういう考えのもとに立っておやりになるのでは、ほんとうの最低賃金制というものは確立できないと思う。私はこの点については、大臣もこの間から私の提案理由もお聞きになったはずですから、大臣の御答弁をいただきたい。
#186
○国務大臣(倉石忠雄君) 身体障害者の問題については、やはりこれは別に私どもは考えていくべきだと思っております。繰り返して申し上げますけれども先ほど来申しておるように、われわれは自由経済の立場に立っておるのでありますから、その支払い能力が欠除しているということで国庫がこれを負担するということはできない、反対であります。従って、自由経済のもとにおいて最低賃金というものをどのようにして実施していくか、そういうことにわれわれは重点を置いて、やはり政府の提案いたしておりますようなことが一番実情に沿うものである、こう考えておるわけであります。
#187
○坂本昭君 それでは支払い能力のないきわめて劣悪な企業、あるいは今のような身体障害のある人間は、一体どんなふうにして救われるのですか、彼らも憲法による労働の義務と権利があるわけです。こういう人の生活というものはどんなふうにして保障されるのですか。
#188
○国務大臣(倉石忠雄君) 坂本さんも御承知のように、今の世界で徹底的ないわゆる社会主義計画経済で統制している国、あるいはまた、昔のレッセフェールといったような野放図な自由経済をとっている国はほとんどございません。われわれもやはり基本的には自由経済主義の立場に立つが、それだけではやり切れない面が出てくることはおわかりの通りでありますから、そういう面については先ほどから申し上げておりますように、政治の力で社会保障というものを拡充していくべきである、しかし、社会保障についても、坂本先生はすでに専門家でいらしゃるからおわかりの通り、世界各国でやはり社会保障の限界というものについても相当学者も実際家も論議しております。われわれは、しかし、まだその限界を論議するところまで行っておりませんけれども、そこで自由企業のもとにおいては、しばしば申し上げておりますように、労働賃金というものを、その労働に対する対価を支払い得るものは何であるかというと、零細企業なんでありますから、この零細企業の支払い能力というものを無視しては賃金政策を考えることはできないのであります。あなたの先ほど来のお話を拝聴いたしておりますというと、御趣意はよくわかります。社会保障の面で国家が保障しているのだから、賃金を保障したらいいのではないか、しかし、それは建前が違います。われわれはやはり努力をしたものはやはりその努力に報いるだけの報酬があるという自由経済の立場に立っておるのでありますから、極端に申せば、やはり自由企業のもとにほっておいたならば落伍者が出てくるはずであります。その落伍者が出てくるということでは政治になりませんから、そこで、われわれは社会保障の重大性を痛感する、しかし、企業というものが成り立って、それが賃金を生み出すべき源泉であるという建前をとっておるのでありますから、その源泉である零細企業というものをどのようにして保護していくか、育成していくか、持ちつ持たれつでやっぱり企業が存在して、労働者の賃金の源泉があるわけでありますから、企業を国営にいたしまして、それに賃金を分配してやるという考え方に立てば、別な結論が出るかもしれませんが、やはり自由企業のもとにおいては、その支払い能力というものを無視したのでは話にならぬのではないか、こういうことを言っているのであります。
#189
○坂本昭君 そもそも支払い能力を無視するということは、これは確かにできないことです。しかし、その一点だけを御主張になって、皆さんの御主張になっておられる現在の最低賃金のこの法案が妥当だということには私はならないと思う。特に去年のこの委員会で、私が大臣に御質問申し上げたことがある。この最低賃金の問題はこれだけで解決のできるものではありません。また、今申し上げた、身体障害者の場合の雇用についても、これは広く完全雇用の問題、そういうものから全面的に取り上げていかなければ、企業の体質改善もできないし、それから毎年百五十万人も、従来の三倍もふえていくところの新しい労働力の吸収もできない。非常な大きな矛盾を持っている。だからその矛盾の中で、一つの組織的な企画というものを考えなければならない。大臣は、ともすれば支払い能力の問題を取り上げる。それともう一つは、社会保障の逃げ道へ逃げてしまう。それでは私は、労働行政の責任者として、十分の責任をとっておられると言えないのではないか。そういう点で、私はこの支払い能力にあまりにこだわりになられるから、あえてこういう身体障害者のような、今まで問題にならなかった点、こういうものについて、具体的にどうされるつもりか。先ほど局長は、一般失対の賃金については、これはすみやかに直していこう、こういう御意見でしたけれども、身体障害者の雇用の促進については、どういうふうなお考えを持っておられますか。また、その賃金、つまり生活の安定について、どういうふうなお考えを持っていられますか。
#190
○政府委員(堀秀夫君) 精神または身体の障害により能力のない方、これはまことにお気の毒でございます。これらの能力の低い方につきましては、これは私のみならず、労働に理解を持つ人ならば、いずれも同意見であられると思いますが、やはり私は、各企業者におかれましても、このような気の毒な方々については、なるべく多くこれを雇用し、これに対しては賃金をなるべく多く払うというような心がまえでやっていただくことが、これは望ましいところである、これは私も同意見でございます。ただそれにつきまして、最低賃金法実施等の場合に、これに反すれば罰則をつけるというような、岡の強制というものがつく問題になりますると、これにはいろいろな問題があると思います。現に諸外国の最低賃金法、これはわれわれ、いろいろ調べてみましたけれども、ブラジルを除きます他の諸国におきましては、いずれも最低賃金法の中に、精神、身体の障害により能力の著しく低い者については、除外規定を設けるということが、いずれもその国の最低賃金法にあるわけでございます。それからこの法案についても、そのような除外例があります。これはしかし、野放しではございませんので、使用者が都道府県労働基準局長の許可を受けたとき、このような前提があるわけでございます。そこで、この法案を実施する際におきましては、これは賃金審議会の御意見を十分聞きまして、これに対する許可基準等についても、十分御検討を願った上で、適当なものを定めていきたいと思っておりますが、やはりこの除外規定を設けるということは、法による罰則の直接強制の問題と関連いたしますので、やはり各国の例並みにこれは書いておくことが妥当ではないかと思います。ただ、心がまえとしては、あくまでも業者その他において、自発的に、なるべく多くの身体、精神の障害者を雇っていただく、それからそれに対して必要な賃金も確保していただくということが望ましいと思いますけれども、これは罰則をもって今直ちに強制することが妥当かどうかという点につきましては、私はやはり今の程度のことを各国の最賃法並みに設けておくことが妥当ではないか、このように考えております。
#191
○坂本昭君 今ブラジルのお話が出ましたけれども、ブラジルにも身体障害者の雇用法があるのです。(「がまんして聞けるような質問をして下さい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
#192
○委員長(久保等君) 坂木君、質疑を続行して下さい。
#193
○坂本昭君 ブラジルあたりには身体障害者の雇用法があって、そしてそういう人たちを一般の人たちの雇用の率の程度まで引き上げるようにし、そして今のような、たとえば、からだが不自由ですから、十分な時間、フル・タイムに働けない。そのために、時間的な制限━━パート・タイム制を与えている。そういうことによってその人の最低の生活というものを保障している。だから、必ずしもこの最低賃金のところでこれを除くということを私はいかぬということを言っているのじゃありませんよ。これは、社会党で出しました案の中でも一応除いておりました。おりましたけれども、それではいかぬから、身体障害者雇用法によってそれを補っているわけなんです。そして、それを明確に同一職種のそこの地域における平均の賃金の八〇%以下に下げてはいかぬと。そして、八〇%以下特に認められて六〇%になった場合には、八〇%と六〇%の差額は国が負担する。特に今度は、皆さん方が国民年金を作られて、障害年金を与えるようにする。その、六〇%に障害年金が加わったら、その差はもっと縮まってくる。そうしたら、その差だけを補えばいいわけであります。だから、そういう建前でいけば、先ほど来大臣は支払い能力のない場合には国がそれを負担することはできないという考えを再三にわたって述べられましたけれども、それは、所得保障という立場から言えば、すでに年金についても実施せられている。従って、そういう考慮もあり得るんではないか、私はそう思うのです。ですから、繰り返して、これはまあただ単に、今まで同じ問題ばかり出ていると一言うから、この身体障害者の例を取り上げて、おそらくこの問題は今まで取り上げられていないと思うから、あえてこの問題をお尋ねしているわけなんです。いつの時期にこういう問題を最低賃金の問題と組み合せて御解決する御予定ですか。
#194
○政府委員(堀秀夫君) 最低賃金法の中に除外例を設けることはまあ差しつかえないじゃないかと、こういう御意見でございます。私もその通りだと思います。従いまして。本法案においてはこのような規定を設けておきまして、これでさしあたり実施して参りたいと思います。
 ただいまお話の、従来のうんちくを傾けられましたいろいろな御意見がございました。これは、私どももつつしんで拝聴したのでございます。これらの問題につきましては、今の企業の実態を、精神、身体の障害者の雇用を行なっておるところの企業の実態等をもう少し調査いたしまして、ただいまの御意見等も十分今後参酌いたしまして、検討いたしたいと考えます。
#195
○小柳勇君 さっきの質問の続きに入りますが、賃金の決定基準が三つの原則によってきめられている。それは誤解のないように言っておきますけれども、社会党としても、支払い能力の原則、これを絶対に否定しておらない。最低賃金の決定については、生活、賃金の原則、公正賃金の原則、あるいは支払い能力の原則、この三つの原則は、これは世界共通のものであろう。そのウエートのとり方です。しかも、それがあとの決定の方法につながっていくわけです。もしあなた方が業者間協定というものを削除されるならば、この・三つの原則はそのままでよろしいと私は思う。この業者間協定があるために、さっき大臣がるると言われたように、現在の中小企業の支払い能力を無視し、零細企業の支払い能力を無視するならば、共倒れだと言われた。その通りでしょう。しかしながら、そのことによって労働者が生活するだけの賃金をやらないでいいという裏づけにはならないわけです。私どもとしては、この業者閥協定と銘打たれた最低賃金法でそのような支払い能力の原則というものを今出すことは、現在の貸金を、たとえば前の四業種ができなかったように、無理にきめろと基準局が言っているならば、現在の情勢がそのまま業者間協定になりましょう。そのことは、今四千円以下の者が百二十万あったというのが、そのままこれが最低賃金法として認められるということになるわけです。そのことをわれわれは反対しているわけです。従って、この支払い能力の原則そのものについては否定しておらないということをまず私は明らかにしておきたいと思う。そこで、この支払い能力などの三つの原則を盛ったこの最低貸金法が、もしそのままあなた方がこの原則を通したいというならば、あとの業者間協定というものは、あなたがるるとして説明するように、最後の賃金審議委員会というものを前面に出して、これで決定いたしますということになぜ変えられないかということを質問するわけです。
#196
○政府委員(堀秀夫君) 御意見は拝承いたしましたが、われわれとしては、中央賃金審議会の御答申にもありましたように、やはり業者間協定、あるいは労働協約に基くところの当事者間の自主的な協定、これをもとにして、しかもそれをそのまま認めるというのではなくて、労働者を含む賃金審議会において十分検討していただいて、その御意見を尊重して最低賃金を政府がきめると、この方式がやはり妥当であると、それに加えて十六条をつけていくと、やはりこの方式が中央賃金審議会の御答申にもありましたが、われわれは現状においては最も妥当であろうと考えます。
#197
○小柳勇君 そこで、中央賃金審議会並びに地方賃金審議会の性格が問題になってくるわけです。ILO二十六号条約、あるいは三十号条約の勧告にもありますように、最低賃金については労使対等の発言をもってきめる。それが、もし賃金審議会において、労働者、あるいは公益委員、使用者などが、今の仲裁委員会みたいにきめて、中央労働委員会みたいにきめて、これを答申して、これが決議機関になるならば、ある程度労働者の賃金というものについても第三者的に見ることができるであろう。しかしながら、現在のこの法案は諮問機関です。出しまして、これを労働大臣がいけないと言ったら、これはもう再度これを進言することはできない。しかも、これはどこに行くかというと、帰っていったら、業者間協定できまった以上、業者間も動けません。これでは、ただ勧告にとどまるでしょう。指導するといっても、指導して聞かなければ、それまでです。そのようなことでは、三つあるけれども、支払い能力だけが中心になる法律ではないか。だから反対しておるわけです。従って、今私どもとして言いたいことは、今ここでこのようなもので業者間協定とくっつけたものにするならば、この賃金審議会の性格を変えて、しかもこれを前面に出して、業者間協定というものはうんとうしろに控えて、支払い能力を検討する機関はほかにありますから、賃金審議会もあるし、統計調査部もあるし、いろいろありますから、そういうもので資料をおとりになって、賃金審議会の性格を変えて決議機関にする意思はないかどうか質問したいと思う。
#198
○政府委員(堀秀夫君) これは各国にもいろいろな事例がございますが、やはり、私が調べましたところでは、諮問機関的性格のものの例が多いように思います。わが国の実情で、最終の決定は、やはり経済政策、労働政策、社会政策に重要な関連のある問題でございまするから、行政的に責任を持つ労働大臣が最終の決定機関になると、審議会は諮問機関的性格を持つということが私どもは妥当であると考えております。ただ、その間の関連につきましては、私どもも、お話のように、この賃金審議会は各界の代表者、権威者をもって構成する権威のある機関でございますから、この御意見は文字通り十分に尊重して参りたいと、このように考えております。
#199
○小柳勇君 賃金審議会を決議機関とすると、今のこの法案のような性格よりも、もっと強い機関にするという決意はないということですか。
#200
○政府委員(堀秀夫君) これは、いろいろな御意見もございましょうが、私どもは、この法案を提出した者といたしまして、やはり現行の法案の内容が適当であると、私どもとしてはそのように考えております。
#201
○小柳勇君 それでは次に質問を続けますが、重ねて言いますけれども、賃金審議委員会の性格については変えることができないような発言です。そこで、そのような中央賃金審議会、地方賃金審議会であるならば、もう初めにきまった業者間協定、たとえばここに二つの木材屋があって、ここで四千円ときまったならば、労働大臣はその腹だから、自由主義の世界であるから支払い能力は無視できないと言っておられるから、このことで頭が一ぱいだから、それ以上に最低賃金というものを引き上げる可能性というものは私は大臣の答弁から受け取れないわけだ。そうしますと、その賃金審議会として、たとえばこれを諮問いたしましても、これじゃ少いと言いましても、大臣がああそれはもう業者間協定よりも少し上回っているからだめだと言われましたらそれきりでしょう。その点どうですか。
#202
○政府委員(堀秀夫君) 賃金審議会の三者がお集まりになりまして十分御検討の上、こうこうすべきであるという御意見が出ましたならば、事実上労働大臣がそれを文字通り十二分に尊重しなければならないところであります。われわれとしてはそのような考え方で運用したいと考えております。
#203
○小柳勇君 それでは労働者の意見、これはもう特に五人や十人の職場ではもう親方は親方日の丸で、親方が言うことについて反対する労働者はごくわずかである。反対でもしたら赤だと言って首切られるのが関の山だが、反対する労働者はごくまれだ。しかも高等学校を出て十八才で採用されるとき、親方に対して「私は幾らで雇ってくれます」と質問し得る新卒業生は一名もおらぬのではないかと思う。かようなとき、一体だれが最低生活を保障してくれるか。親から「お前四千円でもまあ遊んでいるよりいいから行け」と言って出される。そうすると、業者間協定になってくる。(「同じ質問じゃないか」と呼ぶ者あり)実際に出ている業者間協定の平均は四千百二十五円、かような四千百二十五円では、男子十八才の標準賃金にはならないと、人事院は勧告している。従って、いま一回質問するが、この賃金審議会というものを前面に出して、この業者間協定を引っ込める、そういうようなことをもう一回考えないかどうか。
#204
○政府委員(堀秀夫君) これは労働者代表が賃金審議会に御参加になっているところでありまするから、労働者代表に十分そういう御意見を発言していただくということが期待できると思います。私どもはそれによって決定を行いたい。これを変える意図はございません。
   〔「議事進行「質問中じゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
#205
○委員長(久保等君) 委員長の手元には多数の質問通告者がございます。議事は進行しております。小柳君。
#206
○小柳勇君 そこで今までの答弁によりますと……。
   〔「議事進行、議事進行「議事は進行しているじゃないか」と呼ぶ者あり、議場騒然〕
#207
○委員長(久保等君) お静かに願います。
   〔「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く議場騒然〕
#208
○委員長(久保等君) これでは議事が進行できませんから……
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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