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1947/10/03 第1回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第44号
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1947/10/03 第1回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第001回国会 司法委員会 第44号

#1
第001回国会 司法委員会 第44号
昭和二十二年十月三日(金曜日)
    午前十一時二十分開議
 出席委員
   委員長 松永 義雄君
   理事 石川金次郎君 理事 荊木 一久君
   理事 鍛冶 良作君
      石井 繁丸君    榊原 千代君
      安田 幹太君    山中日露史君
      中村 俊夫君    中村 又一君
      八並 達雄君    山下 春江君
      吉田  安君    北浦圭太郎君
      花村 四郎君    明禮輝三郎君
      大島 多藏君    酒井 俊雄君
 出席政府委員
        司 法 次 官 佐藤 藤佐君
 委員外の出席者
        專門調査員   村  教三君
    ―――――――――――――
本日の會議に付した事件
 刑法の一部を改正する法律案(内閣提出)(第
 六號)
    ―――――――――――――
#2
○松永委員長 会議を開きます。
 刑法の一部を改正する法律案について審議を進めます。本案について四個の修正案が提出されております。順次これを朗読いたします。
 まず社会党、民主党、自由党及び國民協同党各派の共同提案にかかるいわゆる前科抹消に関する修正案を読み上げます。
 刑法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
 第三十四條の二第一項を次のように改める。
 「禁錮以上ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ十年ヲ経過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ罰金以下ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ五年ヲ経過シタルトキ亦同シ」
 同條第二項中「其言渡後」を「其言渡確定シタル後」に改める。
 次は社会党、民主党、協同党三派の共同提案にかかる単純侮辱罪復活に関する修正案であります。
 刑法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
  第二百三十一條削除を削る。
  第二百三十二條中「本章」を「第二百三十條」に改め、同條に次の一項を加える。を第二百三十二條に次の一項を加える。と改める。
 次に自由党北浦圭太郎君外五名より提案の修正案を読み上げます。
 刑法の一部改正案を次のように修正する。
 目次中「第一章皇室ニ対スル罪」を「第一章削除」に改めるを「第一章天皇ニ対スル罪」と修正する。
 「第一章皇室ニ対スル罪」を「第一章削除」に改めるを「第一章天皇ニ対スル罪」と修正する。「第七十三條乃至第七十六條削除」を修正して次の條項を加へる。
 第七十三條 天皇ニ対シ又ハ誹毀ハ侮辱ノ行為アリタル者ハ三月以上五年以下ノ懲役ニ處ス
 「第九十條及ヒ第九十一條削除」を修正して次の條文を加へる。
 第九十條日本國ニ滞在スル外國ノ君主又ハ大統領ニ対シ誹毀又ハ侮辱ノ行為アリタル者ハ五年以下ノ懲役ニ處ス但シ外國政府ノ請求ヲ待テ其ノ罪ヲ論ス
 第九十一條 日本國ニ派遣セラレタル外國ノ使節ニ対シ誹毀又ハ侮辱ノ行為アリタル者ハ三年以下ノ懲役ニ處ス但シ被害者ノ請求ヲ待テ其罪ヲ論ス
 「第二百三十二條中「本章」を「第二百三十條」に改め同條に次の一項を加へる。
 告訴ヲ為スコトヲ得ヘキ者ガ天皇、皇后、皇太后、皇太后又ハ皇嗣アルトキハ内閣総理大臣、外國ノ君主又ハ大統領ナルトキハ其國ノ代表者代リテ之ヲ行フ」を削除する。
 最後に榊原千代君提出の姦通罪に関する修正案を朗読いたします。
 刑法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
 「第百八十三條削除」とあるを次のように改める。
 「第百八十三條 配偶者アル者姦通シタルトキハ一年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ
 前項ノ罪ハ配偶者ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但シ配偶者姦通ヲ縦容シタルトキハ告訴ノ効ナシ」
 提出されております修正案は以上の四案であります。
    〔速記中止〕
#3
○松永委員長 それでは各修正案に対する提案趣旨説明を順次願います。石川君。
#4
○石川(金)委員 修正案の第一になつておりますいわゆる前科抹消の点でありますが、これは三十四條の二の第一項を次のように改めようとするのであります。委員長が朗読いたしましたように、「禁錮以上ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ十年ヲ経過シタルトキハ刑ノ言渡ハ其効力ヲ失フ罰金以下ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ其執行ノ免除ヲ得タル者罰金以上ノ刑ニ處セラルルコトナクシテ五年ヲ経過シタルトキ亦同ジ」
 同條第二項目中「其言渡後」を「其言渡確定シタル後」に改める。この案であります。この案はきわめて必要な、妥当な修正であると存じて提出した次第であります。前科抹消の要望は、法曹界並びに関心者の長年にわたるものでありまして、前科の名を附せられておりましたがために、いかに世の中に悲劇があつたかということはいうまでもありません。刑法改正にあたりまして、この問題がとり上げられ、しかも罰金刑の前科抹消にあたりましては、五年という短かい期間の経過によつて前科の抹消をなすことにいたりましたことは、國民の要望に応うるものであると信じまして、私たちは修正案を提出した次第であります。
#5
○松永委員長 荊木君。
#6
○荊木委員 三党共同提案になりまする二百三十一條にかかる修正案、単純侮辱罪の復活に関するこれは、刑法改正案においては名誉毀損については刑期の引上げとなつておりますが、逆にまた単純侮辱罪に関しては被害法益が簡単であるからという理由で抹消になつております。これは法文の体裁上も実際問題としても当を得ないという考え方から、名誉毀損にあらざる単純侮辱罪については、従来の規定をそのまま復活するというのであります。以上であります。
#7
○松永委員長 速記をやめて…。
    〔速記中止〕
#8
○松永委員長 北浦圭太郎君。
#9
○北浦委員 なるべく簡単に申し上げます。この新憲法の実施に基きまして、諸般の法律が改正せられるということは当然でございます。しかしながら、この法律の改正は、どこまでもこの新憲法の精神の線に沿うて行われなければならない。そうしてもちろんその精神を遵守せられなければならぬ。この刑法改正の案の一部は、われわれの見るところによりますと、この憲法の精神に従つていない。ゆえにわわれはさきに朗読いたされました通りの修正を試みるのでありますが、これによつて法理的にも、國民感情的にも、この刑法改正法案の不足の点を補い得るという確信をもちます。なぜか、第一に新憲法につきまして國体が変革されたか、この問題であります。そうして天皇不敬罪を廃止するのが適当であるのか否か、この問題であります。國体の変革ということにつきましては、学者間に今日なお議論多岐にわたつております。しかし少くても昨年のこの國会におきましては、いわゆるあこがれ國体観の原理をわれわれは承認いたしまして、政体には変更あつたけれども、國体には変更なし、あの当時の金森國務大臣の有名な言葉、天皇は國民あこがれの中心である。國民の心と心のつながりの中心である。この心は今も昔も変つていない。たとえば川の水が流れても川が流れないのと同じで、わが國の國体は変つてないのだ、國民精神の核心は変つてない。ゆえに國体に変更なし、このあこがれ國体観が、とにもかくにも昨年の國会において認められた。そういたしますと天皇の尊厳ということにも何ら変りがない。一体この新憲法の中核をなすところの個人の尊厳、國民個人の尊厳は、精神的にも法的にも尊重を要すると憲法に規定してある。この個人の尊厳の象徴、日本國民全体の象徴、これが天皇の大なる尊厳であります。しかるに政府は憲法第十四條の國民は法の前に平等であるという條文を根拠といたしまして、天皇も國民である、ゆえに法の前に特別の取扱いをなすことはできない。これが政府の説明の第一の根拠になつておる。はたしてその通りか、憲法は三権分立の形をとつておりますが、その三権の行政機関の最高峯であるところの内閣総理大臣を任命するのはたれか、司法の長官であるところの最高裁判所の長を任命するのはどなたであるか、國権の最高機関である國会、これすらも召集したり、衆議院を解散したりするところの権限はどなたにあるか、みな天皇であります。この通り大きな区別を設けておる。特別の扱いを設けておる。その他憲法の七條から八條に天皇の権限として設けるところ、一般國民と大なる区別を設けておるということは、今さら申すまでもない。現にこの刑法改正法律案につきましても、天皇に対して大きな区別を設けておる。内閣総理大臣が代つて告訴をする。一般國民のためには内閣総理大臣はさようなことはしない。われわれはこの内閣総理大臣が天皇に代つて告訴権を行使するということすら憲法違反であると考えております。政府の御説明の矛盾せることかくのごとき大きなるものを見まして、われわれはこれを承服することはできない。これ修正理由の第一点であります。
 次に政府は國際情勢をわれわれは深く考えるところがなければならない。これはまことに重大でございます。これはわれわれも深く考えもいたしましたし研究もいたしました。今日の日本國民といたしまして、國際情勢から離れていかなる法律行為もすることは許されないことはもちろんであります。そこでわれわれは一体世界の感情がどこにあるか、世界の道徳がどこにあるか、その感情なり道徳なりのよつてきたるところ、すなわち刑法法典をつぶさに政府提出にかかりまするところの資料によつて研究いたしてみましたが、いやしくもキングあるところ、いやしくもエンペラー制度の存在するところ、不敬罪の設けてない國家は一つもない。デモクラシーのチャンピオン、アメリカにおいてすら、大統領に対して脅迫的言辞を郵便に付した場合は特別の罪を設けておる。革命の本家本元であるところのフランスにおきましても、その大統領に対して、いやしくも文書、いやしくも絵画、何るた手段方法を選ばず、いやしくも誹毀の行為ある場合においては三千フランの罰金、一年以下の懲役という特別の規定を設けておる。世界至るところ元首、大統領、君主、こういう方々に対しましては、法律上特別の取扱いをしておることは、古今東西を通じて例外がない。そういたしますと、世界の法律はわれわれの修正を認める。従つて世界の道徳もこれを許す。世界の感情これに反する理由はどこにあるか。國際情勢ということも、ひつきようするに、日本の民主化ということを疑う、こういう規定をつくつておるようなことでは、日本の民主化は遅れるだろう、あるいはまた逆行するだろうという考えであろうと思いまするが、それは世界のデモクラシー國家が、現にこの法を設けつつりつぱな民主化が行われておる。御承知の通りロシヤにおいては、いかにもプロレタリアートばかりの民主國でありまするが英國にはキングがあり、ブルジョアがあり、プロレタリアがある。アメリカまたブルジョアとプロレタアの民主國家であります。日本に特に特別の取扱いをいたすべき天皇がおわしまして、どうしてこの民主化の妨げとなるか、少くともこの刑法法典に不敬罪だけを存したからというて、どうして世界がこれを疑うか、こういう理由をもちまして、政府の第二点の御説明、御意見にわれわれは賛成することができない。今日このわれわれの修正案に反対する資格のあるものは共産党の紳士諸君だけだ、私はそういう確信をもつ。かの人々は前から天皇制廃止、そうしてプロレタリアート國家の出現、これを唱え、今日もそれを唱えておる。ゆえに法の前に萬人平等であつて、天皇もまた國民と同一の取扱いをいたさなければならぬということは、共産党の紳士諸君は今日これを主張する資格がある。その他の諸君。昨年われわれとともに天皇制擁護を叫ばれたところの民主党の諸君。また民主主義と天皇制の存在とは何ら矛盾はしないと片山君が壇上において演説された、この社会党の諸君。今日実際から見てみますると、この不敬罪の削除ということは、明らかに刑法法典から天皇制を廃止するものである。今日まで天皇を特別に擁護いたしておる。今日これを國民のレベルまで引下げてくる。天皇制の廃止にあらずして何であるか。しかし國際情勢ということも考えなければならぬ。そこでわれわれは最小限度の修正を試みた。現行刑法から申しますると、不敬罪だけに止めた。そこで刑法全体をながめてみますると理論一貫を欠く憾みがある。たとえば暴行脅迫に対する罪とそうしてわれわれが修正せんとするところの罪の間に理論一貫を欠く。しかしながら、この点は学者間にも議論がありまする通りに、侮辱必ずしも今日刑法法典に規定されてあるところの犯罪構成要素のみに限らない。もつと廣義に解釈することができる。人を殴つて悪口雑言を吐くのも侮辱の一つである。こう考えてみますると、この間の理論一貫を欠くという欠点も緩和される。ただわれわれは最小限度の修正を試みたのだということを諒とせられまして、昨年同様、民主党の諸君も社会党の諸君も、われわれの修正に賛成せられんことを希望いたします。はなはだ簡単でありまするが、私の修正意見はこれで終ります。
#10
○榊原(千)委員 私はただいま委員長が御朗読くださいました修正案のように、姦通罪について男女両罰論を主張するものであります。以下その理由を申し上げます。
 思うに人間の生活において基礎となるものは婚姻であります。婚姻は夫婦の性生活の秩序であり、親子生活の根源であり、社会公共生活の組織単位であります。従つて婚姻によつて成立した夫婦は、生理生活において純潔であり、心理において愛情を基とし、経済において協力しなくてはなりません。これを一括して婚姻は神聖であるということは皆様御承知の通りであります。この婚姻の神聖は、人類普通の原理であり、古今東西に通じる真理であります。そうして人類の歴史は、実にこの方向に向つて進歩してきたのであります。この婚姻の神聖を蹂躙する最も悪質の行為がすなわち姦通であります。
 振り返つて憲法の精神をとつくり考えてみますと、第二十四條には次の通り規定しています。「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」世間一般の人々は、この條文は男尊女卑の封建的習慣を清算し、封建的思想を止揚して、夫婦同権に向つて女性を解放したものと見ているようであります。けれども私たち女性の立場からこれを見れば、條文の中央に掲げられてあるものは、実に両性は相互に協力して健全な家庭を維持しなければならないという理想に向つての努力を最も強く規定しているものと解釈します。ここにおいて単に姦通を犯罪として處罰するか否かの問題を越えて、婚姻神聖の目的に対して姦通がこれを邪魔する手段だとみるのであります。そうすると姦通をなくしようと努力し、あるいは少くしようと努めることを妨げたり、あるいはこの努力を怠ることは憲法の精神に反することであり、少くとも憲法を忠実に遵守することではありません。このような考えから少くとも今日の社会情勢道徳、文化水準の現実においては、私たちは姦通罪廃止論は姦通を放任するもので、憲法の精神に違反するものと断じてよいと思うのであります。もちろん現行日本刑法第百八十三條のような、姦通に際して妻のみ罰するという偏頗な法律は世界中どこにもないので、新憲法の男女平等の原則に従つて、夫婦平等、両罰にすべきことは言うまでもありません。それならば、なぜ憲法が結婚生活の理想に向つてかくも強い規定をおいたかというと、私は結婚は社会秩序、社会道義の源泉であり、社会活動の原動力であり、種族保存の重要機能をもつものだからと思います。つまり憲法において男女の場合本質的平等という表現を用いるように、男女は生理的自然状態が違い、相異なる特徴をもつて一体となり、相互に助け合つて相互の人格を伸長し、社会公共のためには活動単位となり、民族のためには種族発展に資するものであります。従つて姦通を夫婦相互の愛情、夫婦間の道義によつて解決すべき個人的な問題とみるのは間違いで、婚姻の神聖はどこまでも公共の取扱いを定める國法によつて擁護されなくてはならないのであります。以上が憲法から考えた姦通両罰論の第一の根拠であります。
 第二の根拠は特に敗戦後の風紀頽廃の時期がよくないということです。今日の状況は御承知の通り、主観的には國民は急激な解放によつて自由と放縦とをともすれば混同し、客観的には恐るべき戦争の結果男女の比率に変態を来し、また社会情勢の上からは、道義の頽廃と食糧不足、生活難等誘惑の機会は充満している。日本は今や民族として生理的危機にもまた直面していると言つても過言ではないのであります。姦通廃止論者のいうように、姦通は道徳的罪悪であるから、道義によつて解決すべきだと言つても解決されないのであります。今こそ刑法は最低限度の道徳なりという建前に立つて、道徳で賄いきれないこの破綻を救わなければなりません。これによつて後世歴史家から言わせれば、あるいは姦通両罰規定が、少くとも日本民族終戦後の性生活の危機を救つたということになるかもしれないとさえ考えられるのであります。以下に私は姦通廃止論の論拠を反駁したいと思います。
 廃止論を唱える文化人は、第一の論拠として、次のように言います。告訴しようとするときにはすでに夫婦間の愛情は喪失していて、それを法律で律しようとしても無益な努力ではないかと。しかし一時の浮気による姦通が、夫婦間の愛情を破壊する場合の多いことも事実であります。そして一度結婚した夫婦は離婚したくないことは人情であり、法律は幸福な夫婦生活、健全な家庭を守るために力を尽さなければなりません。
 論拠の第二点として、わが國のように相手の性格を深く験することなく、結婚生活に入る風俗のもとにあつては、結婚後夫婦間に性格の不一致を発見することが多いので、姦通が起りやすいといふことです。しかし今後は今までのような家による強制的な結婚というものは徐々になくなるでありましよう。新憲法は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」と規定して、当事者の厳粛な責任を要請しています。このことは次のセンテンスを待つまでもなく、あらゆる努力が結婚について払われねばならないことを命じているものであります。性格が合わないからといつて、安易に姦通に流れるということは、絶対に禁じられていることであります。お互いに深刻な努力を傾倒して、遂にだめなときには、新民法によつて離婚の自由な道も開かれています。協議離婚を認められましたし、またその他婚姻を継続しがたき重大な事由あるときは裁判上の離婚もできるのであります。結婚生活に対しては、あくまでも正々堂々と対處すべきものであります。離婚による苦痛には苦しくとも明るさがありますが、姦通の苦痛ははてしない陰鬱で、関係者すべてを覆います。不幸がどこまでも伸びていきます。殊に姦通によつて生れる不幸な子供、それを取りまく関係者のたれにも明るい處置を望んで、私たちは民法において苦労したのでありますが、考えても考えても、ついに解決できないのはこの問題であります。もちろん新民法においては、私生子あるいは庶子の名称はなくなります。しかしいかなる径路によつて生れてきたかという事実は、抹殺できるものではありません。入学試験や就職試験において、父母のことを聴かれるとき、それらの子供の表情が暗くおびえ、魂がうなだれるような有様を、ほんとうにかあいそうだと皆さんはお感じになりませんか。こういう子供たちに代つて、かかる運命から子供を守れと叫ばないではいられないのであります。私は司法省に私生子の犯罪比率の統計提出を求めましたが、ないということで遺憾に存じますが、恐らく正統な父母の中に育つた人間よりも、姦通によつて生み出されて人となつた人間に犯罪率が高いであろうとは、あらゆる面から推察されます。文化國家に対してネガティヴな作用をするかかる人間の輩出することは、文化國家の名において極力防がれなければならないことであります。
 廃止論の第三点は、司法事務家によつて指摘されるところのものであります。すなわち彼らは過去の経験を過重評価し、姦通罪が成立した事件は裁判所にあつてまれであり、妻の姦通を手段にして夫が脅喝して金品を巻き上げる事例を気に病んでいます。しかし私は過去の経験はものを言わない、理由にならないと考えるのであります。それは実に不平等な極梏のもとに女性が不当に圧迫されて、女に対しては貞淑を強要され、しかも男の姦通は自由であつたという事実を考慮しなければならないのであります。裁判上の姦通の犯罪が成立したというようなケースは、たとえば大氷山の海に浮んだごく表面の、それもほんの上つ面だけで、その下に大きく沈んでいる数知れない人間の苦悶を見逃しているものではないでありましようか。雑誌、新聞紙上、あるいは身の上相談所に現われる身の上相談の大部分は姦通にまつわるものであります。
 第四の論点は、これも専門実務家によつて強調されるもので、人殺しとか、窃盗のように、社会の通念が罪悪と感じている場合と違つて、妾をおくなど世間あたりまえのこととみている。そこに刑罰としての姦通罪をおいても意味をなさないというのであります。しかしこれに対しては、私はむしろ姦通両罰制度を規定することによつて人世観をかえていくものと確信します。なるほど家族制度に妾をおくことはつきものであつた。その結果妾をおくことは男の腕と考えられたような世界観のもとに、姦通が罪悪視されなかつたのは当然であります。今姦通罪を廃止したとしましようか、今までそれにしても陰然とした力となつていた姦通憎悪の情さえも次第に薄らぎ、遂にありふれた恋愛問題と同じ程度の比重しかもたない出来事になるであろうことは想像にかたくありません。殊に憲法が保障する個性の尊厳、すなわち女性の人間としての尊厳は無視されて、女性を玩弄視し、手段視する公然とした蓄妾の社会制度は改まることなく、世界に向つて日本の國辱として断然存続するのでありましよう。また、かつて世界の耳目を聳動させたあるインテリの女医が、その夫にチブス菌のはいつたパンを食べさせて毒殺しようとした事件をも考えていただきたいと思います。女の愛情を傾けて夫を助けて成功させたときに、彼が姦通をして他の女に走つたとき、どこへ訴える術もなく、國法によつても守られなかつたために、かくのごとき殺意を起したのであります。こういう事件のことを考えていただきたいのであります。
 廃止論の第五淨は、姦通罪をおくことは刃物をもたせるようなもので、振りまわされたら傷つく人が多いであろう。父あるいは母がこの罪に問われたら、子供への影響はどんなであろうというのであります。しかし姦通罪がないためにより平穏だとみるのは、きわめて皮想な観察で、関係するものすべてに深い傷手を負はすことは変りないのであります。だからこそ輿論に現われる両罰論は圧倒的に多いので、決して軽々に判断してはならないと思うのであります。私はここに東大法学部刑事法研究室によつて行われた輿論調査の報告書をもつています。その報告に、本調査は数量的観察と質的観察との二つに別れている、共に両罰を可とする結果を示しているのは注目に値いすると書いています。全國的調査は行い得ませんが、部分的調査に現はれる結果は、常に両罰が圧倒的であり、過日民主党婦人部大会においても、両罰にしてもらいたいという嘆願が大会を支配し、廃止論者の部長山下春江さんも、遂にそのように努力しますと約束せざるを得なかつたといいます。
 廃止の第六点は、ソ連や英國に姦通罪がないということで、それをもつて文明國における一般的傾向として日本をもその方向に向はしめようとしているのであります。しかしソ連はとにかくとして英國は、英國の歴史は教会の歴史を顧みないでは理解することはできないと言われるほどキリスト教が浸透し、そのキリスト教は実に夫婦の人倫の道を最も厳格に要請しているのであります。家族制度のもとの蓄妾が社会制度として行われ、前にも述べましたように、妾をおくことは男の働きと考えられてきた日本の状況を、英國と同断に扱おうとすることは早計であります。殊にその他の諸國においては、ほとんど姦通罪が存在し、最も進歩的と考えられる米國ニューヨーク州にしても、スイスにしても、両罰を規定しているのであります。一般に考察して廃止論者は現われた結果ばかりを論じていると思うのであります。しかしわれわれ國民としての努力は、また立法者としての任務は、結婚の幸福と家庭の健全を擁護し、ひいては社会の秩序を維持するために反人倫的、反社会的な行為を、できるだけ予防しようとするものでなければなりません。刑法が殺人は死刑に處す、強盗は懲役何年に處すと規定しているのは、単に罰するという以上に、そのような行動が犯罪であることを示して、それに近づこうとすることから國民を引止め、この脅威から社会を守ろうとしていることに重要な意味があると思うのであります。
 日本國新憲法が、結婚の理想を高く掲げているとき、刑法が姦通を國法による刑罰に値いすると明らかに示すことは当然であります。日本國再建は、家庭の再建にかかつている。殊に平和日本の再建は、平和な家庭の再建にかかつているのであります。喧々囂々たる姦通罪賛否両論に、國会が遂にいかなる判定を下し、いかに採決したかということは、國民の幸福と日本國再建に重大な意味をもつものであることを切に御考慮願いたいと思うのであります。
#11
○松永委員長 それでは刑法の一部を改正する法律案について討論にはいりますが、ちよつと速記をやめて…。
    〔速記中止〕
#12
○松永委員長 速記を始めてください。討論は各修正案ごとにいたします。
 まず第一の四派共同提案による修正案に対する討論に入ります。石川金次郎君。
#13
○石川委員 社会党を代表いたしまして賛成いたします。
#14
○荊木委員 民主党を代表いたしまして修正案に賛成いたします。
#15
○鍛冶委員 自由党を代表して修正案に賛成いたします。
#16
○大島(多)委員 私は國民協同党を代表いたしまして修正案に賛成いたします。
#17
○松永委員長 次に三派協同提案の単純侮辱罪に対する討論の発言をお願いいたします。
#18
○石川委員 社会党を代表いたしまして修正案に賛成いたします。
#19
○荊木委員 民主党を代表して修正案に賛成いたします。
#20
○鍛冶委員 私は自由党を代表いたしまして、第二案の前段二百三十一條削除を削るという案には賛成いたします。但しあとの方は第三案の討議を終つてから論ずるものでございますから、これは対する意見を留保いたします。
#21
○大島(多)委員 私は國民協同党を代表いたしまして、単純侮辱罰存置に賛成をいたすものであります。
#22
○松永委員長 次に自由党北浦圭太郎君外五名提案の修正案についてお願いします。
#23
○石川委員 私は北浦圭太郎氏外五名の提案にかかる修正案に反対するものであります。まずわれわれが本案の審議にあたりまして、われわれの態度を鮮明にいたしまして、自由党の諸君によつて提案せられました修正案に反対の理由を申し上げたいと存ずるのであります。
 昭和二十年八月十五日以後におけるわが國の立法にあたりましては、われわれ常に心に銘じておかなければならないことは、わが國は「ポツダム」宣言を受諾しておるという事実であります。われわれはこの宣言に規定せられてありまするところの諸條項を完全に履行する義務がありますとともに、この義務を果たすことによつてのみ、國際社会に参加し得るのであります。
 われわれはポツダム宣言の忠実なる履行の一つとして、憲法の改正をしたのであります。ポツダム宣言に示されている「民主主義傾向の復活強化に対する一切の障碍を除去すべし言論宗教、思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし」との規定は、新憲法の一原則と相なりましたことは、申し上げるまでもございません。すなわち新憲法は、第一に民主主義の原則を採用し、個人の尊厳と平等を宣明し、第十四條におきまして、「すべて國民は、法の下に平等であつて、」と明定したのであります。今般政府提出の刑法改正案の審議にあたりまして、われわれはこの憲法の精神を徹底せしむることをもつて第一の任務といたしたのであります。われわれは政府の提案理由の説明を聴き、政府の本案に対して採用したところの理念を妥当といたして、その努力に対して敬意を払うた次第であります。
 本案において第一に重要な事項は、皇室に対する罪を削除せられたという点であります。われわれはこれに対しまして賛意を表するものであります。従つて自由党の修正案に賛成し得ないのでありますがゆえに、その理由を簡単に表明したいと思います。
 私は天皇はわが國の象徴であり、國民統合の象徴といたして、永へに不変であられかしと希うものであります。この心は決して人後に落ちるものではありません。しかしまた現実國家の象徴としての天皇に、國民の多数が尊崇の念を有しております事実、将来もまたかくあらねばならぬことは、何らの疑いを挟むものではありません。かくあれかしと心から念願するものであります。しかし天皇並びに皇族を刑法上特に規定を設けまして、これを特に守らなければならぬという理由には賛成しかねるのであります。まず第一に、ポツダム宣言を忠実に履行し、もつて國際社会の信任を回復増進いたしまするためには、また新憲法の基本的原理の一つである民主主義の精神を、真にわれわれは体得しておることを、明らかに内外に示しまするためには、刑法改正にあたつて、如実にこれを示さなければならないと存ずるのであります。政府の説明を聴くに、わが國民主化の問題の一環として、列國の注目の的となつておりますることを考慮しまして、この際あえてこれを実行せんといたす次第なのであります。と述べておりますが、われらもまたこの見解に賛意を表するものであります。
 われわれは今新しき理念に適従することこそ、われわれ敗戦後の國家再建にあたる者の任務でなければならないと存ずるのであります。べての人は法の前に平等であるという民主主義の基本原則を、すべての法律に採用応用することにおいて、内民主主義体制確立の道を築き、外國際社会の信用を回復増進し得るのであると確信しておるのであります。かくてこそ、全國民の熱求してやまざるところの國家独立を確保し得るのであります。
 次にまた法律の進化発展の傾向より本問題を観察してみまするに、すべての人の正しき自由と平等の確保は、立法の趨勢であります。歴史の趨勢であります。歴史の方向であります。公共の福祉と一致する観念であると私は信ずるのであります。われわれは、この歴史の方向より見てまいりましても、皇室に対する罪を削除することが、人類歴史の流れに反するものでないと確信するものであります。当局の説明しておりまするがごとく、皇室に対する罪を削除したといたしましても、天皇に対し犯行をなす者のあつた場合において、なお裁判並びに處断において重大なる欠陥をもたらすものであるとは、私たちは見ないのであります。もし天皇に対して犯罪を敢行する者があるといたしますならば、私はないであろうことを信じまするけれども、かりにあつたといたしまするならば、裁判所が刑の量定において、十分の考慮をし得べき余地が、刑法の運用におきましてなし得るのであります。列強環視のもとにありて、あえてこの意向に反するごとき法を維持しまして、もしくは新たに設ける必要をわれわれは認めないのであります。われわれはわれわれの教養を高め、高度に道義を発揮することに努力し、正しき輿論の興隆を信じ、かくてわれわれは象徴たる天皇の地位と名誉を護り得るものであると信じ、かつ自覚しなければならぬと信ずるものでありますが、ゆえに、ここに自由党によつて提案されたる修正案によるごとき規定の必要、存在を認めないのであります。以上私の意見を申し述べました。
#24
○花村委員 私は自由党の提案になりまする修正案に対して、賛意を表さんとするものでございます。政府が今回の刑法の一部改正の法律案におきまして、皇室に関する罪を全面的に削除をいたしましたのみならず、國交に関しまする重大なる條章の一部を削除いたしましたことは、まことに遺憾にたえないところでありまして、私は心からこの種削除に対して反対の意思を表示するものであります。なかんずく天皇に関しまする特別罪の削除についてでございまするが、政府は天皇に関する特別罪の削除の理由といたしまして、まず憲法第十四條を採用いたしまして、國民は法律のもとに平等であることが規定されておる、従つて天皇も一般國民と平等な個人としての立場から法的に異なつた取扱いをなすべからざることが新憲法の趣旨に合致し、しかも個人の尊厳かつ平等の趣旨を徹底せしむるものであるとし、しかしわが國民主化の一環として、列國注視の的となつておるこの國際情勢を考慮して削除したのであるが、この削除に代るに名誉毀損罪の刑期を加重することにより、これが保護に遺憾なきを期していると申しておるのでございます。従つて天皇の特殊的地位を護る上においては、何らの影響も受けないと断定をいたしておるのであります。しかれども、吾人はかかる理由は正当とは認めません。けだし天皇に関する規定を設けることは、決して個人の尊厳と平等感を傷つくるものにあらざるのみらず、民主主義國家への移行に何らの支障なく、かつ國際情勢を悪化するものとは、断じて考え得ないのでございます。よつてかかる理由をもつてしては、われらの承服のできないところであります。思うに新憲法は、天皇に対して一面日本國民たると同時に、他面日本國の象徴であり、日本國民統合の象徴であるとして、憲法上あるいはまた法律上特別なる扱いをして、その特異性を認めておりますることは毫末の疑いを入れません。しかのみならず、歴史的な観点からいたしましても、はたまたわが國の國体観念から申しましても、日本國民がその心の奥深く根ざしている天皇とのつながりを基礎として、天皇をいわばあこがれの中心として仰ぎ、それによつて全國民が統合され、日本國存立の基礎をなしているという、この國家の根本的特色からいたしまして、天皇の地位は現実的、合理的な基礎の上に見ることができると申さなければなりません。これらの点から、刑法上特別なる取扱いをなすべきは当然であると申すべきであります。さらに憲法制定の折の國会の質疑応答に見ましても、金森國務大臣が、天皇の保護については、特別罪を認めてしかも重刑をもつて臨むことは当然であるという答弁をいたしておりまするのに鑑みても、不思議はないと申さなければなりません。しかも世界の民主國家の立法例に見るも、君主の存するところ、いずれも君主等に関する刑法上の特別罪を認めておる。英國、オランダ、ドイツ、イタリー、ベルギー等が君主國家であり、また君主國家であつたときの法律がそれであります。しかのみならず、先ほども北浦君から申されましたことく、米國、フランスのごときは、大統領に対する特別罪の規定さえも設けておるのであります。殊に國際信義の上よりいたしまして、わが國刑法に外國の君主並びに大統領に対するこの種保護規定を設けなければならないという必要からいたしまして、その権衡上、まず第一にわが國の天皇に対し特別罪を設けることは必然の要請であると申してよろしい。しかも単純侮辱罪を削除いたしましたる点より考慮して、これが保護規定の欠くべからざるは言うまでもないところでございます。これを要するに、天皇の特別なる地位に対し、元来不敬罪に対する犯罪の数多きに鑑み、かつその数が増しつつある統計上よりするも、またまた治安の維持全たきを得ない今日、しかし道義の廃頽著しく、思想的に動揺しているこの時代において、國際情勢を付度した最小限度の天皇に対する特別罪でありますところの誹毀または侮辱行為に対する保護規定を存置することは、当然と申さなければなりません。しこうして日本國天皇に関しまする特別罪を認める以上は、外國の君主、大統領または使節に関する特別な保護規定を設くることは、これまた國際法人からして妥当であると申さなければなりません。さらにまたこの種犯罪に対する諸外國の立法例に見まするも、米國、英國、フランス、イタリー、ドイツ、オーストリー、スペイン、スエーデン、スイス、トルコその他世界の多くの國家が、この種保護規定を設けているのであります。従つて他國において保護規定が存するに、ひとりわが國のみこれを欠くということは、日本の天皇並びに使節は、諸外國において保護せられるのにかかわらず、わが國内においては諸外國の君主、大統領等を保護せざる結果となり、國際信義に反するのみならず、國交上よりするも妥当を欠くものであると断言せざるを得ないのでございます。
 以上の理由によりまして、自由党の提案にかかります北浦君の御主張に対して、賛意を表する次第でございます。
#25
○松永委員長 荊木一久君。
#26
○荊木委員 私は民主党を代表して、自由党の修正意見に対して今日反対をしなければならないのを、まことに衷心から残念に思います。先ほどの提案理由において北浦委員の言われたこと、並びにただいまの賛成意見の大部分は、実は私どもも言いたいところであります。あるいは國民の相当部分もこれに対して共感を覚えるだろうと考えます。政府は提案理由の説明におきまして「それがわが國民の傳統的なる感情に異常の衝撃を与うるにあらずやとの点を懸念いたすのでありますけれども、これらの罰條の存否が、わが國民主化の問題の一環として例國注目の的となつていることを考慮いたしまして、この際あえてこれを実行せんといたす」こう述べておりますが、実は今まで長い間この委員会におきまして、自由党所属の委員諸君が天皇に対しては誹毀罪まで主張されるという意見が強かつたのであります。それか國際情勢に思いをいたされて、たまたま結論を得ました案は、われわれ民主党の同志がつい最近まで主張されておりました案と全く同一なのであります。従いまして、われわれの気持の一部には、これに対してただちに同意をしたいという衝動が多分にあるのであります。また何とかしたいという心のもとに、党は党として独自に動いて見たのでありますけれども、遺憾ながら現在の國際情勢のもとにおきましては、とうて自由党の御主張に対して同意をすることができないせつぱ詰まつたところにまいつておる認識を新たにいたしました。私どうは自由党の各位に対して、はなはだうらやましく感じます。もしわれわれが自由党の修正意見に同調いたしますれば、この委員会は多数をもつて通過いたします。通過いたしましたものが、そのまま本会議に移せるであろうかということを考えて見ますと、わが党の立場がすこぶる苦しいことを御了解願いたいと考えるのであります。従いまして、実はこの問題については、私は言いたくないのであります。残念ながらその修正意見に対してはただいま党として賛成できかねる。こう申し上げておきます。なお日本滞在中の外國の君主、大統領並びに使節、これに対しても、ただいま花村委員の言われるところは一々ごもつともと存じます。しかしながら情勢は天皇に対すると全く同様であり、しかももし御主張のごとくにして、前段が通過することを得ずして後段のみが法制化されたという形を考えて見ますと、さらに複雑なるものがそこにあろうと考えるのであります。私は先ほど修正案反対の石川委員の言われたことく、新憲法のもとにおいて、國民統合の象徴として、國家の象徴として厳として存する天皇に対しては、わが國民は刑法上特別の規定の有無にかかわらず、あくまでこれを象徴として永久に守り抜くであろうと固く信じまして、自由党修正案に対しては、不賛成の意思を表示いたします。
#27
○松永委員長 明禮三郎君。
#28
○明禮委員 私は自由党の提案に賛成の意を表すものであります。政府が七十三條以下の條文を削除されました理由は、今まで大分述べられました通り、憲法に一つの根拠をおき、またわが國の民主化というものとにらみ合わして対外情勢においてこれを削除すべきものであるというような御議論を承つておるのであります。しかし新憲法において、政府が述べられておりますところは、天皇は日本國の象徴であるという特別の地位を有せられておるのでありますけれども、他面これらの地位と矛盾せざる範囲において一般國民と平等な個人としての立場をも有せられることになつたのでありまして、その限りにおいて、法的に異つた取扱いをすることは、新憲法の趣旨に合致しないとの思想に基き、この改正を行わんとするものであると言われた。要するに個人の尊厳と平等の趣旨によるものであります。しかしながら天皇は今までも述べられました通り、日本國の國民であるといたしましても、同時に日本國の象徴として、しかも日本國民統合の象徴であらせられることは、憲法において明記しておりまして、私どもはこの意味において、公的尊厳が与えられておるということには、一点の疑いもない次第であると思います。またこの法案の存否が、わが國民主化の問題の一環として列國注視の的となつているということを主張しておられますけれども、世界の民主國家でありまして、王の存在するところで、このような特別罪を規定していないところはないのであります。しかのみならだ、天皇または王の存在しない國であるアメリカ合衆國を初めとして、連邦刑法千六十八條、フランス出版の自由に関する法律第二十六條においても、みな特別罪があるのであります。英國の大逆罪、國王誹毀罪、オランダ刑法第九十二條、第百八條、第百九條なし百十三條、ドイツ刑法第八十條ないし第百一條、イタリー刑法第二百七十六條ないし二百七十八條、チェコスロヴァキア刑法草案第二十七條以下、その他外國元首、使節に対する罪もまた同様にして、各國にその例を見る國際法上の今日の状況でございます。以上の次第でありますから、天皇に対する罪は、現在の法律的の不敬罪といいますが、天皇に対する罪の存否は、民主主義國家の完成とは何の関係もないいわゆる日本人特有の行き過ぎでありつて、われわれは日本國民大多数の支持を得てここに修正に賛意を表するものであります。なお、社会党の石川さんから公共の福祉論からも一言述べられましたようでありますが、私どもはこういう点からいいまして、逆に公共の福祉論から必要だということを申し上げたい。というのは、皆さん御承知の通り民衆の雑誌「真相」一九四七年九月一日発行の第十一号に、天皇は箒である。しかも天皇は箒であるなどと言つたら、とうふうに書き下してあります以外に、まことに申しにくいのでありますけれども天皇の帽子を振つておられたる御姿の、顔の部分を箒にすげかえてすげかえてある。かようなものが今日発行せられているということを考えますときに、一層その感を深くするのであります。こういうつものを取締るのには一体どういうふうにすればよいか。これが実際の問題であろうと私どもは考える。一般侮辱罪を復活されまして、それでやろうということかもしれませんけれども、一般侮辱罪というものは、これはわれわれ一同に適用されておる規定でありまして、國家の尊厳といいますか、天皇の尊厳という立場から考えまするときに、この二百三十一條かの一般侮辱罪によつて天皇のかくのごときことまでも取締るということは、あまりに私どもは弱すぎると考えます。
 平等論は人間の関係を横に見て平等だということでありましようが、一体人間の縦の関係を見ていつたらいかがでしようか。自分の親、兄弟、兄貴という目上の人に対する犯罪についてはいかなる取締りを受けておるか。尊族殺傷害罪というものが認められておるにかかわらず、國家の大本を握つておわします陛下に対する取締りがないということは、民主主義と申しましても、いかにもあまりに行き過ぎじやないか。今荊木委員からきわめて私ども感謝の意を表するようなお議論がありまして、実は私ども非常に意を強うしておつたのであります。ところが、きようは反対になつたのはまことに遺憾だと思います。私はこの法律を審議する前に、皆さんに申し上げた通り、法律の審議というものは、党派ということもいいけれども、党派即法律の審議ということはいけない。党派ということばかり考えないて…(「ノーノー」)個人的にも赤裸々にいきたいと、私どもは考えておるのであります。ノーノーと言う吉田君みずからが、そうでなかつた。今日國際情勢という吉田君の気持ちはよくわかるけれども、それでは一体國家に対する司法委員の責任が済むか。これから後の民主党の発展のためにも遺憾の意を表明するものであります。私はそういう意味において、吉田君ほか各委員に対し、どうかいろいろな情実を考え直されんことを勧告申し上げて私の賛成意見を終ります。
#29
○松永委員長 大島君。
#30
○大島(多)委員 私は國民協同党を代表いたしまして、先ほど提案になりました自由党の修正案に対して意見を申し上げることにいたします。
 天皇並びに外國の元首に対する不敬罪につきまして、先ほど来提案者より御説明があり、そしてまたそれに対して賛成の御意見も述べられたわけでありますが、私はその意見を拝聴いたしまして、一応も二応も御もつともと思うわけであります。わが党におきましても、同様の意見が出たのでありますが、目下の複雑なる國内情勢及び國際情勢を勘考いたしますと、この際思いきつて一切の差別待遇を削除することが、むしろ國家的にみてよいのではないかと考えるわけであります。昨年の憲法改正の際におきましても、明治憲法、それから新憲法とにおける天皇に関する規定の急激な変化を、われわれ大部分の者はみてびつくりいたしまして、これに対しまして、最初は強い反対をいたした次第であります。ところが後半期に至りまして、かえつて感情的に冷静になつた加減か、とにかく改正案の方がむしろいいのではないかというように、だんだん気分的な変化を来したわけであります。それと同様なことが、この不敬罪についても私は言えるのではないかと思うのであります。それでこの際思い切つて政府原案の通り、不敬罪の規定を削除しましても、提案者の方々が案ぜられるようなことは、案外杞憂となるのではないかと私は思うわけであります。かかる見地から、わが党は自由党案に対しまして深甚なる理解をもちながら、しかも原案を支持する次第であります。
#31
○松永委員長 鍛冶良作君。
#32
○鍛冶委員 私は北浦委員説明の修正意見に賛成するものであります。その大前提といたしまして、特に私は政府委員に聴いていただきたいと思うことは、およそ法律は國民の意思感情をもとにしてつくるべきものであつて、為政者の意思をもつて國民の感情を曲げんとするがごとき法律は、法律の価値のないものである。この点を深く反省していただきたいのであります。なおそのほかに最も注意すべき点は、國民の実生活に一致したる法律をつくろう。國民の実際生活と相反するがごとき法律はつくつてはいかぬものだ、こういう頭をもつて臨んでもらわなくてはいかぬと確信しております。ここにおいてわれわれは、本修正案をながめてみますときに、わが日本國民は、憲法第一條にあるがごとく、天皇をもつて國民統合の象徴であるということは、これは憲法に書いてあるがゆえに國民は統合の象徴と考えておるのではない。國民がかように考えておることをここに表わしておる。このことを考えてみますならば、天皇というものに対する國民統合の象徴であるという、この崇敬の念、尊厳維持の念は、絶対に変らぬものであります。従いまして、今大島君の言われたように、新憲法は、旧憲法とは偉大なる相違がある。それゆえに旧憲法の通りではいかぬと言われるが、もちろんその通り。その通りであるが、少くともこの第一條に現われておるところの日本國の象徴であり、國民統合の象徴であるということは、これは新憲法の大精神であります。これに基いたる天皇の特別の地位は、何としても否定することのできないものと考えます。従いまして、その地位を否定しないとするならば、その地位に対する特別の保護ということも、絶対に免れないものと確信いたすのであります。ここにおいて、政府は一切の皇室に対する罪を削除してしまうというのでありますが、これは旧憲法と違いますから、皇室全体に対する犯罪ということは認められぬが、何ゆえに國民統合の象徴である天皇というものに対する特別の保護を削らなければならないか。何としても合点のいかぬところであります。絶対にこの点は保護しなくてはならぬ。次いで國際情勢云々という点は、いずれの委員からも述べられました。われわれはこれは決して無視するものではありませんから、國際情勢上深甚なる考慮をいたしましたる結果、どうあつても譲ることのできない、また現実にこの尊厳を冒涜せられるという恐れあるものだけを保護しなければならぬというので、この修正案に止めたものであります。ところが憲法上すべての國民は平等であるというこの規定から、天皇も國民であるということになれば、平等として特別の保護を与える必要はないという議論もあります。しかし以前も質問に申したのでありますが、一体平等ということは均一ということと違う。特別の地位にあるものは、特別の地位にあるものとして認める。これを離しては平等ということは出てまいりません。強いて平等を維持するのであると言われるならば、何ゆえに尊族殺に対する特別規定を設けておられるか、この新別規定をそのまま保存せられるということも、わが日本國民の感情及び意思を土台として残しておかれるのではないかと言わざるを得ない。してみれば、天皇に対する特別保護を削るという理論にはなりません。これは何と弁明せられても出てまいりません。なおまた二百三十二條の第二項を設けようとしておられる点も、絶対の平等、均一をもつて平等とするということとは相反しております。われわれは親が他人から見てばかだと言われても、私は私の親として親に対する尊敬をもたなければならぬ。これ日本國民の通念である。これを保護するのはあたりまえである。従つて天皇に対しては、國民統合の象徴として特別の尊敬をしてこれを保護しなければならぬということは、何としても抜くべからざる大原則であろうと考えるのであります。これらの点を考慮せずして、平等論をもつてこれを削除せられんとすることは遺憾至極である。またこれは刑法だけの問題ではありません。今後一切の法律に対する政府当局として臨む態度に対して、私は深くここで釘を打つておきたいと考えるものであります。なお國際情勢上許さぬという点もあります。もちろんわが日本の法律は、今や世界監視の的になつておるのでありましようけれども、國際情勢が許さぬからといつて、わが日本の刑法は國民感情から離れたる不合理なるものにつくらなければならぬという議論は、どこからも出てまいらぬと考えるものであります。先ほど石川君はポツダム宣言を引かれて、これを忠実に履行すると言われるが、ポツダム宣言でも、日本の法律は日本國民の自由なる意思によつてこれを定めると出ております。強いて國民がこれを欲せざるにもかかわらず、われわれは一党一派をもつて天皇の特別保護規定を設けようとするならばこれは許さぬであらうが、國民の自由なる意思どころではない。國民大多数の象徴であるということを諸君が認められるならば、この点に向つて國際情勢上わが日本國民の大多数の意思及び感情は、これであるということを國際的に知らしめるということが、われわれの任務でありますまいか。私はこの法律の修正に当つて、われわれ全委員がこのことを國際情勢上わが日本の特別の地位、國民の特別の感情を世界に知らしめようという一段の努力を払われなかつたことを私は遺憾とするものである。今荊木君は、精神はわれわれと同一だ、しかしやむを得ぬと言われるならば、私は少くともわが日本の司法委員会においては、全会一致で通す、これをもし削らなければならぬだろうかという意思表示ぐらいはしてしかるべきものだ。しかるにやむを得ないから自由党の修正案に反対すると言うが、それならば、むしろわれわれと同一の考えを民主党の方々は支持せられて、これに違つた考えをもつておられる方に対してなぜ努力を払われないか。この点をもつて私は非常に遺憾とするものであります。われわれはこの大原則から出発いたしまして、ぜひとも少くとも天皇に対する侮辱罪、誹毀罪というものを、特別の取扱いをしなければならぬと確信いたします。なおこれと同時に、外交上の問題からいたしまして、外國の元首に対する特別の保護をせなければならぬことは、さきの一、二の方々から述べられましたから、あえて贅言を省きますが、これもどうあつてもやらなければ、わが日本の威厳を保つことはできません。日本だけは世界の仲間入りのできない法律をもつとおるという哀れなるものになるのでありまして、ぜひともこれは入れなくてはならぬ。これを入れなければいかぬというならば、まず第一番に、わが日本において、わが日本の象徴たる天皇に対する特別規定を設けなければならぬ。これは動かすべからざる議論だと考えますから、ぜひとも皆様方の再考を促し、全会一致をもつて、われわれの修正案に賛成せられんことを望んで、賛成意見に代えます。
#33
○松永委員長 次に榊原千代君提案の修正案について御発言がございませんか。明禮輝三郎君。
#34
○明禮委員 私も姦通罪両罰主義というものをぜひおきたいと賛成の意を表するものであります。いろいろ議論を申し上げる必要はありませんが、実際において姦通事件というものが法廷に現われて、今日までこれを厳罰的にやつたということは、ほとんどないくらいのものでありまして、たいてい和解によつて解決がついておるのであります。してみますれば、たいへん両罰主義のためにお困りの方もそうないのかと思います。殊に政策問題と言います。が、一つのこういう規定をおくために、男性も女性もともに緊張して世の中に處するということは必要なのでありまして、そうでなければ、榊原さんの言われるように、非常なる民族的な弊害が多く伴うことは、火をみるよりも明らかであります。従つて私はこういう規定はおきまして、そしてどうしてもこれでお困りになる方は、但書を附しまして、姦通を慫慂または宥恕したる者はこの限りにあらずというものを附け加えますると、慫慂または宥恕という問題によりまして、相当弾力性ができまするために、そういうふうにしてでもこれはやつていきたいと思うのであります。司法委員の方は全部御賛成がないかもしれませんが、大部分の方は無条件で御賛成になつていいのではないかと思うのであります。今の但書をつけることをつけていきますれば、御心配はないのでありますから、そういうふうにしてこれを生かすことに、皆さんの御賛意を得たいと思う。しかることが、結局は両罰主義をとつて、将来日本の民族を生かしていくということに大きなる役割をすると考えます。これだけ私は申しまして、私の賛成の意見を終ります。
#35
○中村(又)委員 私は姦通罪の存続には反対であります。年長のゆえをもちまして、民主党を代表して簡単に理由を申し述べたいと存じます。元来この姦通罪を存続せしむるか否かという問題は、昨年内閣に臨時法制調査会というものができまして、当時あらゆる社会の、学者あるいは政府の要路、あるいは議会関係者、いろいろな人が委員となりまして殊にこの問題などは高く取上げられまして、もう論議に論議を重ねまして、最後においては司法省の委員会のごときにおきましては、決選投票にまでなつたのであります。しこうして遂に大多数をもつてこの姦通罪は撤廃するということに決したというような結果をもつております。ただいま榊原委員の御説明を聴きますると、私どもといたしましても論議は十分傾聴し、かつ賛成するような論議があることはもとよりであるのであります。しかしわれわれの生活というものは、議論のみにおいて成立するのではなくて、多分に生活は事実に立脚するのであります。そこで最低の道徳が法律であつて法律がわれわれの生活秩序を維持するという観点から見ましても、この條項を残すことが、はたしてわれわれの生活のために、かつはまた婦人のためにもなるかどうかというようなことを見ますと、これは大きな考え方があるのでありまして、むしろこれを撤廃することが、婦人のためにも適当な處置だと考えております。元来この問題は、男に非常に都合のよい法律であつて、女に非常に都合の悪い法律であつたことは、間違いないのであります。しかしながら、われわれの実際上の生活は、この法律をもつてどうして存在せしめたかと申しますと、一つの理由は、今回は家督相続というようなものはなくなる傾向にあるのでありますが、過去においては家督相続というものが一番大きな日本の家族制度の支柱であつたのであります。その場合におきまして、女が勝手に他の男性と交わるということになると、一番大事な、相続をなすべきところの子孫が何人の子孫であるか、わけがわからぬという一つの混乱が生じてまいりますので、婦人に対しましては、特にその途をふさぐというような考え方もあつたようであります。また一面におきまして、榊原さんは妾という問題に対してお話があつたのでありますが、この妾というものも、一面におきまして、なるほど色欲的な問題から起つてくるものもありましようけれども、ごくまじめな意味におきまして、家督相続の関係などからいたしまして、自己の子孫の保存ができないという必要に迫られまして、いわゆるこの関係が生じてきておつたというのは、事実私はある著書によりまして調べた事柄であるのでありますが、そういう理論の考え方をもつておつた者もあつたのであります。いずれにいたしましても、結論的に申し上げますと、この規則が今後存続いたしますと、実際上の問題としては、両罰ということになりますので、社会の秩序を維持するのには、かえつて混乱を来す結果になるのではないか。むしろ道徳を高め、しこうして法律の力によらぬで道標に一任をいたしまして、この問題を解決するということが一番よろしいのであるということに結局は落ちつきまして、この両罰という点から、むしろこの法條をなくなしてしまうということに落ちついて、この問題が成文化されて議題となり、ここまで進展をいたしてきておるという順序と考えております。われわれの生活が実際であるというその点に立脚せられまして、私どもとしてもさらに道徳を高むることに努力を払いいろいろ榊原さんの御心配になるようなことを取除くことに努力をいたしまして、この法條は廃止するということに建前をとりまして、御提案に対しましては反対をいたす次第でございます。
#36
○北浦委員 明禮君の御意見は自由党代表でもないのでありまして、自由党はこの問題については自由の建前をとつております。私は簡単に自由党にも反対者がおるということを一言申し上げたいのでありますが、提案者は憲法の婚姻は両性の合意のみによつて成立するということを根拠とされましたが、これは姦通とは何の関係もないので、いかにも女子のポストを引上げるということについては疑いはありませんが、合意のみによつて成立する。第三者の干渉を許さないというので附け加えられた條文であります。しかしながら、男女平等ということは、これは到るところでうたつております。男女平等ということを憲法でうたつておるからというて、男女平等に處罰しなければならないという理論は出てこない。明禮君はお困りになることもあるだらうということでおりますが、私は毛頭困らない。真面目に考えていただきたいことは、御承知の通り今日犯罪者が非常に多い。明治以来から今日に至るまでの犯罪統計によりますと、実に多い。民主党の代表も言われましたように、これは実は道徳問題で愛の問題である。この問題にさらに刑罰をもつて臨もうとすることは、いたずらに犯罪者を激増とも行きますまいが、とにかく今そういうおそれある日本の社会状態である、この意味において、自由党にもおそらくたくさん反対者がありますから、私もその反対者の一人であるということを申し上げて、簡単に反対理由を申し述べました。
#37
○石井委員 社会党の代表という意味ではありませんが、社会党の一部の意見を代表して、榊原さんの修正意見には反対を申し述べたいと思います。ただいま中村さんも言われました通り、榊原さんの修正意見は、公聴会その他においても賛否両論ほとんど互角でありまして、歸結を得ておらないというような関係上、この問題については結論を下し得ないという状況にあるのであります。しかしながら、結婚というものが、お互いの人格の尊重であり、そうしてお互いの合意の上に成立するというものである限りは、次第にその結婚生活から刑罰の干渉を取除いていく刑罰の拘束下におかないようになつていくというものが、理想ではなかろうかと思うのであります。かような見解に立ちまして、今後両性を罰することによつて結婚生活を維持するということよりも、お互いの人格を向上し合つて、社会の人々の人格を向上し合うという見地に立つて、結婚生活を幸福に導いていくというのが、民主主義の希望するところであり、またわれわれはその途を選ばなければならない。こう信ずるものであります。かような結論からいたしまして、社会党としては多くのものの意見は当局の出しました原案に賛成いたしまして、榊原さんの修正意見には反対するものであります。
#38
○鍛冶委員 私は理論としては榊原さんの修正意見にまつたく賛成する者でありますが、どうも実際社会から見て、いくら賛成しても通らぬというなら、私はこの点で将来弊害の起らぬことを希望する意見を述べておきたいと思います。両性の平等ということになると、罰せなければならぬという議論も出てきますが、両方罰せないということも、平等論に間違いない。ただここでおそれることは、罰しないということになると、ある一部のものはこれから姦通お許しを得たのだ姦通しても差支えない世界になつてきた。この感情をもたせるということに最もおそれをいだくものであります。さようなことはどうしても道徳上いかぬのであつて、これを法律的に罰するということではなく、社会の徳義を向上せしめ、お互いの倫理感を深刻に典えまして、女はもちろんいかぬ。しかしそれじや男はいいのかというと男もいかぬ。このことで男は女に対して姦通の不徳義を要求するならば、女においても男にこれを要求する。社会全体においてこれを矯正していくというところにもつていく以外に、今日収まらぬのじやないかと考えまして、この点の努力をお互に考えて、一応原案に賛成するほかはないものと考えます。
#39
○松永委員長 通告による発言は全部終了いたしました。これで質疑及び討論は終局いたしました。これより採決いたします。まず榊原千代君の提案による姦通罪に関する修正案について採決いたします。この修正案に賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#40
○松永委員長 起立少数。よつて榊原千代君提出の修正案は少数をもつて否決せられました。
 次に自由党北浦圭太郎君ほか五名より提案にかかる修正案について採決いたします。この修正案のごとく修正するに賛成の諸君の起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#41
○松永委員長 起立少数。よつて修正案は少数をもつて否決せられました。
 次に社会党、民主党及び國民協同党三派の共同提案にかかるいわゆる単純侮辱罪復活に関する修正案について採決いたします。提案のごとく修正するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#42
○松永委員長 起立総員。よつて全会一致をもつて三派提案の修正案のごとく修正するに決しました。
 次に社会党、民主党、自由党及び國民協同党各派の共同提案になる前科抹消に関する修正案について採決いたします。提案のごとく修正するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#43
○松永委員長 起立総員。よつて全会一致各派共同提案の修正案のごとく修正するに決しました。
 次にただいま採決いたしました部分以外の部分について採決いたします。ただいま採決部分以外の部分については、原案の通り決するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔総員起立〕
#44
○松永委員長 起立総員。よつてただいま採決以外の部分は原案の通り決しました。
 それでは念のため最後にただいま修正議決いたしました部分を除いた他の部分について採決いたします。ただいま修正に決しました部分以外の部分については、原案の通り決するに賛成の諸君の御起立を願います。
    〔賛成者起立〕
#45
○松永委員長 起立多数。よつて修正部分以外の部分は、多数をもつて原案の通り可決いたしました。本会議における委員長報告については、でき得る限り皆様の御意見を織りこみたいと存じます。
 なおこの際お諮りいたしますが、本案に対する委員会報告書の作成方につきましては、あらためて委員会において御協議申し上げる余裕もございませんので、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
#46
○松永委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。次会は来る六日午後一時より開会いたします。
    午後一時三十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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