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1958/01/27 第31回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第031回国会 本会議 第9号
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1958/01/27 第31回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第031回国会 本会議 第9号

#1
第031回国会 本会議 第9号
昭和三十四年一月二十七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第七号
  昭和三十四年一月二十七日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説
 二 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 文教委員長の選挙
 岸内閣総理大臣の施政方針に関する演説
 藤山外務大臣の外交に関する演説
 佐藤大蔵大臣の財政に関する演説
 世耕国務大臣の経済に関する演説
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時九分開議
#2
○議長(加藤鐐五郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(加藤鐐五郎君) お諮りいたします。議員賀屋興宣君より、世界銀行と外債問題の研究を兼ね、欧米各国における政治経済状況調査視察のため、一月二十八日から三月三日まで三十五日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 文教委員長の選挙
#5
○議長(加藤鐐五郎君) 文教委員長坂田道太君は、去る十二日辞任いたされました。よって、この際、文教委員長の選挙を行います。
#6
○松澤雄藏君 文教委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#7
○議長(加藤鐐五郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、文教委員長に臼井莊一君を指名いたします。(拍手)
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説
#9
○議長(加藤鐐五郎君) 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、世耕国務大臣から経済に関し発言を求められております。順次これを許します。
 内閣総理大臣岸信介君。
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#10
○国務大臣(岸信介君) 第三十一回国会の休会明けに臨み、昭和三十四年度予算を提出して国会の審議を求めるに際し、私は、当面する内外の諸情勢と、これに対処する所信を明らかにしたいと思います。
 国民がひとしくお待ちしていました皇太子殿下の御婚儀が近くとり行われますことに対し、私、心からお喜びの言葉を申し上げたいと存じます。(拍手)皇太子殿下は、伸び行くわが国の希望の象徴であられます。全国民の胸に抱いているこの喜びが同胞親愛のきずなとなって、明るい次の時代が築かれることを期待してやみません。(拍手)
 施政の方針を述べるに当り、まず、私は、さきの国会が変則のままに推移したことについて、深く遺憾の意を表します。
 申すまでもなく、緊張する国際間にあってよくわが国の自立をはかり、福祉国家を築き上げることは、わが国の民主政治に課せられた使命であります。私は、この見地に立って、さきに日本社会党の鈴木委員長と率直な意見の交換を行い、自民、社会の両党が、その政策を異にするところはあっても、議会政治という共通の場において、寛容と互譲の精神に立脚した話し合いを進め、もって国政運営の実をあげることを誓い合ったのであります。
 私は、今般再び自由民主党の総裁に選ばれたに際し、反省すべきは反省し、党内、閣内の結束を固め、議会政治の信用を回復し、ここに、思いを新たにして国政の推進に当ることにより、積極的に責任を果す決意であります。(拍手)
 最近、多年にわたる貴重な試練の結果ようやく樹立された二大政党制に疑いを抱く者が一部にあるのでありますが、二大政党制こそは、憲政の常道を確立するものと、私はかたく信ずるのであります。(拍手)もとより、政府、与党に反省すべきものもありますが、社会主義政党の性格を労働者階級を主導力とする階級政党であるべきでありとし、その目的達成のためには社会経済の機能を麻痺させるようなストライキをも辞さないと揚言する政治的主張のありますこと、厳に戒心を要するところであります。(拍手)政治は、高い理想を追いつつも、国の安全と国民生活の向上に責任を持つべきであって、現実を無視して足元を踏みはずすことは許されないのであります。われわれは、いかなる場合においても、秩序のうちに着実な進歩を求めるものであります。そこには、少なからぬ忍耐を要し、一見回り道と思われる経路をたどらなければならないこともありますが、このような努力なくしては、民主主義政治の進展は期せられないと信ずるのであります。(拍手)私は、両党がもろもろの政策の是非を論ずる前に、このような反議会政治思想の動きに明確に対決する基本的立場を堅持し、民主主義のよりよき発展を見出す共通の場としての国会の権威をいよいよ発揚していくことを深く期するものであります。(拍手)
 最近の国際情勢を顧みますと、各国首脳の不断の努力にもかかわらず、東西両陣営相互の不信の念は依然根強く、その対立関係はいまだ解消を見るに至っておりません。他方、科学の急速な進歩は、ついに人類の活動を宇宙にまで広げましたが、大国間において、これを平和目的にのみ利用する保証はいまだなく、今日到達し得た科学技術は、一たびその目的を誤まれば、直ちに人類の破滅を招くこととなります。このような世界の現状において、われわれは、単に手をつかねて平和を望むような消極的態度をとることなく、建設的かつ具体的な努力によって、世界平和の維持と促進に貢献しなければなりません。このような使命に基き、わが国は、世界の安全保障機構としての国際連合に協力し、核実験の禁止、中近東等の局地的紛争の解決等に関して積極的な努力を払ってきたのであります。(拍手)
 かくのごときわが平和外交の目標は、人間の自由と尊厳を基調として国民の福祉を増進しようとする自由民主主義国家の理念と秩序の維持発展にあるのであります。国民の一部に、わが外交の方向を中立主義に求むべきであるとする主張がありますが、このような政策は、わが国を孤立化し、ひいては、共産陣営に巻き込む結果を招くこととなるのであります。(拍手)いわんや、当初から、これを積極的に意図するもののありますことは、特に警戒を要するところであります。従って、わが国は、このような中立主義をとらず、みずからの安全を保障するに当り、志を同じくする自由民主主義諸国と固く提携し、国際社会における信義を貫きたい考えであります。わが国が日米安全保障条約を締結したゆえんもここにあったのであります。しかしながら、その締結後七年を経過した今日、わが国の自衛力の漸増と内外情勢の推移に伴い、これに合理的な調整を加え、日米両国が対等の協力者としてその義務と責任を明らかにすべき段階に到達したので、政府は、国民の納得と支持を得て米国との交渉を進めたい考えであります。
 翻って、世界各国との国交は、年を追ってその範囲を広げ、かつ、緊密の度を加えて参りました。特に、インドネシア、イラン、インド、フィリピン各国の元首を初め、海外諸国からの指導的人物の来訪により、これら諸国との親善関係は一段と深められたのであります。また、かねてから政府が重視してきた東南アジア諸国等の経済開発については、今後、技術と資金の両面において協力の道を広げることとし、一そうその促進に努める方針であります。
 昨年五月以来日中間の貿易が中絶しておりますのは、双方にとってまことに不幸なことであります。双方が、いたずらに過去の経緯にとらわれることなく、互いにその政治的立場を理解しつつ、通商の再開を望むものであります。
 わが経済界は、調整の過程にあった一年を送って、明るい展望を持つ新しい年を迎えることができました。すなわち、政府のとった適切な諸施策が企業の自主的な努力と相待って、経済の基調は、昨年秋ころから次第に回復に向うに至りました。本年においては、さらに、世界経済の新たな動向に伴う輸出の伸びが見込まれるのでありますが、国内経済が再び行き過ぎにならないよう、投資と消費に堅実な態度が望まれるのであります。政府は、このような見地から、底の浅いといわれるわが国経済の安定した成長とその体質の改善をはかり、もって、国民生活の向上と雇用の増大を期し、確固たる経済基盤の上に立った福祉国家を実現することに一そう力を注ぐ方針であります。
 明年度の予算と財政投融資計画は、このような基本方針に基き、財政の健全性を堅持することにより、通貨価値の維持と国際収支の安定を確保するとともに、かねての公約に従い、減税の実施、国民年金の創設、文教施設の充実、道路港湾の整備等の重要施策を積極的に推進することに重点を置きました。
 予算の内容の詳細については、関係閣僚の演説に譲り、私は、施策のおもなものについて述べたいと思います。
 まず、国民の税負担を軽減するため、国税、地方税を通じ、初年度五百三十億円、平年度七百億円をこえる減税を行うこととしました。これにより、所得税、事業税、物品税、入場税等について特に大衆負担が軽減されることとなり、この面からも国民生活が明るさを増すことを期待しているのであります。(拍手)なお、中央、地方を通ずる今後の税制のあり方については、国民各層の意見をも徴し、その改善合理化をはかる所存であります。
 わが国経済の特質から考えて、輸出の増大をはかることは、経済成長の基本的な要件であります。昨年末実施された西欧諸国の通貨の交換性の回復によって、輸出競争が一そう激化することが避けがたい現段階においては、わが国産業が、自由と責任の原則にのっとり、みずから生産性の向上と経営の合理化に努めることが必要であります。政府としても、資金面において海外市場開拓の基盤を強固にし、また、輸出取引秩序を確立して過当競争を防止するなど、輸出振興のための施策を一そう積極的に進める方針であります。なお、中小企業については、税制上及び金融上、助成の措置をさらに強化することといたしました。
 農林漁業の生産力の持続的向上と経営の安定をはかることは、わが国農政の基調であります。政府は、土地改良等生産条件の整備に努めるなど、農林漁業全般について各般の施策を進めることとしております。しかしながら、今日の零細経営が、工業技術の進歩や流通経済の発展の趨勢の中にあって、よく安定を保ち、その近代化をはかり得るようにするには、根本的には、広い視野に立った総合的な検討を行うことが必要であります。政府は、わが国において占める農林漁業の大きな役割とその特性にかんがみ、新たに調査会を設け、農林漁業に関する基本政策を確立いたしたい考えであります。(拍手)
 産業経済発展の基盤を強化するため、総投資額一兆円に及ぶ道路整備五カ年計画を強力に推進するほか、新たに東海道鉄道新幹線と首都高速道路の建設を計画し、これを実施に移すことといたしました。(拍手)さらに、港湾緊急整備のため特別会計を設け、輸出専用の埠頭を新設するとともに、石油、鉄鋼、石炭等重要産業に関連のある港湾の整備を急ぐこととしました。また、治山治水対策の緊要性にかんがみ、関係予算を増額するとともに、災害の早期復旧には特段の配意をいたしております。
 消費水準が上昇して国民生活が年とともに安定した方向をたどっている反面に、低所得階層の生活は一般水準との開きが大きくなり、加えて、老齢人口が目立って増加していることなどは、見のがすことのできないところであります。社会保障制度の確立は、このような傾向にもかんがみ、政府が最も力をいたしてきたところであります。政府は、拠出制を基本とする包括的な国民年金法の制定により、老齢、障害、母子等の年金を創設することとし、とりあえず、明年度においては、無拠出制の年金を発足させることといたしました。(拍手)また、国民健康保険は、順調に普及を見ているところでありますが、さきに成立した新法律の実施によって、医療保険未加入者約千六百万人の早期加入を期し、かつ、その内容の充実をはかりたい考えであります。この国民年金制度の実施と国民皆保険の達成により、わが国の社会保障制度の基礎は確立されることとなります。(拍手)しかし、社会保障制度の充実は、今後膨大な財政負担を伴うものであり、国民一人々々の懸命な努力に待たなければその実をあげ得ないのであります。この際、特に国民諸君の深い理解によって、本制度がいよいよ堅実に発展することを期待してやみません。(拍手)
 多年にわたる懸案であったいわゆるすし詰め学級や危険校舎の解消、これを五カ年計画をもって達成するほか、文教諸施設を整備し、教職員を充実することといたしました。(拍手)また、道徳教育を振興し、基礎学力を高めるため、教育内容の改善を行い、義務教育の刷新充実をはかることとしたのであります。これと並んで、科学技術振興の長期かつ総合的な政策を樹立し、技術者の養成と施設の拡充に意を用い、世界の科学の進展におくれないように努めたい考えであります。
 なお、昨年来、勤務評定の実施をめぐり、教育界にまことに憂慮すべき事態が発生したのでありますが、教職員の良識ある行動と国民の協力とにより、今日においては、大部分の府県において、これが実施を見るに至っております。(拍手)私は、本制度の趣旨がなお一そうよく理解され、教育秩序の確立によって教育界が一そう明るくなることを期待してやみません。(拍手)
 青少年が明るい希望に燃えて心身の修練に励む機会を与え、その健全な育成をはかることは、かねて私が重視してきたところであります。貧困によって勉学の機会を与えられない有為の青少年のため進学保障の育英制度をさらに推し進めるとともに、新たに、全国から選抜された青年を海外に派遣してその国際的視野を広める道を開き、また、国立中央青年の家の設置を初め、青少年活動のための施設の整備を行うことといたしました。(拍手)
 わが国の労働運動は、逐年健全化の道をたどってきておりますが、なお一部に、かなり未成熟な面が見られることは事実であります。政府は、今後とも健全な労働慣行と労働秩序の確立をはかるため、さらに一そうの努力をいたす考えでありまして、公共の福祉を無視するがごとき労働運動については、きぜんたる態度をもって臨む決意であります。(拍手)
 雇用問題は、最近ようやく落ちつきの傾向を見せており、今後における経済活動の着実な上昇によって逐次改善の方向に進むものと思われますが、労働人口の増加にもかんがみ、特に、公共事業と財政投融資の増大によって積極的な雇用の拡大を期したい考えであります。また、最低賃金制度、中小企業退職金共済制度、産業災害防止計画等、諸般の施策を総合的に推進することにより、主として日の当らない中小企業従業員の労働条件を改善し、その福祉を増進いたしたいのであります。(拍手)
 最近、社会の一部において、法秩序を無視し、国会を軽視して、議会外の勢力によって社会変革を遂げようとする反民主主義的勢力や集団による暴力が、公共の福祉を侵害していることは、青少年の非行化の傾向とともに深く憂慮すべきところであります。(拍手)かかる事態にかんがみ、政府は、さきに警察官職務執行法の改正を提案いたしたのでありますが、その提案の時期、方法等において十分意を尽し得なかったことを率直に認めるものであります。しかし、このような社会事情は、なお解消していないので、政府は、国民世論の動向を慎重に見きわめつつ、国民の自由と規律が一切の暴力的支配から守られることを念願し、国民の理解を得て、これが検討を引き続き行うこととしているのであります。(拍手)
 最後に、私は、一言いたしたいと存じます。
 一部極端な分子が、外交、教育、労働等の各分野にわたり、イデオロギー一点張りの公式論を振り回して、国家と民族との思想的な基礎を脅かす傾向のありますことを、私は、深く憂うるのであります。(拍手)すなわち、科学や産業技術が日進月歩の勢いをもって進展している今日、このような古い公式的な階級闘争論によって国論が分断されることがあるとすれば、わが国は、世界の進運からひとり取り残されることとなるのであります。(拍手)世界各国の趨勢は、その政治形態は別として、いずれも生々はつらつとして、その国力の充実増進に全力を傾注しているのであります。私は、この変転する世界情勢のさなかにあって、わが国民が、民族的自覚と誇りをもって、世界の平和と人類の福祉に貢献することを、心から期待するものであります。(拍手)
 以上、所信の一端を述べ、国民諸君の一段の理解と協力を切望してやみません。(拍手)
#11
○議長(加藤鐐五郎君) 外務大臣藤山愛一郎君。
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#12
○国務大臣(藤山愛一郎君) 第三十一回通常国会の再開に際しまして、政府の外交方針を明らかにいたしたいと思います。
 過去一カ年間の国際情勢を顧みますれば、戦後久しきにわたる東西両陣営の対立は、根本的には何ら緩和しておりませんし、世界は依然として、東西両陣営の力の均衡によって平和が保たれている状態であります。他方、その間における科学技術の急速な進歩発展は、ついに、人類がその活動を宇宙に広げる可能性をも予想せしめるに至ったのでありますが、同時に、大量破壊兵器の発達は、もし一たび人類がその進路を誤まって、かくも発展した科学技術を乱用するに至りますれば、人類の破滅をもたらす危険性をも招来しているのであります。このような認識が世界一般に行われるようになりました結果、全面的戦争を回避しようとする機運は強くなりつつあるものと考えられるのであります。
 しかしながら、両陣営は、依然として相互の不信感に基き、思想戦、経済競争等を通じて勢力拡大に専念しております結果、局地的な形においては、武力をも背景とした紛争の種が随所にまかれているのであります。過去一カ年を回顧いたしますれば、中近東の騒擾、台湾海峡の紛争等に加えて、さらにベルリン問題の再燃等、局地的な形による東西間の抗争は相次いで起っておるのでありまして、類似の紛争が今後とも他に起り得ないとは、何人も断定いたしかねる情勢であります。かかる情勢のもとにおいて、東西両勢力の指導的国家の間に、あとう限りすべてを話し合いによって解決しようとする機運が高まりつつありますことはまことに当然な次第でありまして、巨頭会談ないし外相会議開催の試みも、この意味におきまして、当然歓迎せらるべきものであります。しこうして、このような話し合いが実を結ぶために最も必要でありますことは、関係各国が具体的かつ建設的な解決策を持ち寄り、相互の信頼と互譲の精神をもって話し合いを行うことでありまして、かかる用意のない限り、この種会談は常に空虚な宣伝に終るでありましょう。
 わが外交の基調は、世界平和確保のための建設的な努力を通じて国民の福祉と安寧をはかることにあるのでありますが、このような平和外交を推進するにつきましては、まず第一に、すべての国際問題は平和的手段によってのみ解決すべきであると考えるのであります。けだし、真の平和は平和的手段によってのみ達成し得るのでありまして、武力をもって事を処理しようといたしますれば、必ずや他の武力を誘発し、とどまるところを知らないのであります。
 次に、たとい武力の行使を伴いませんでも、その方法のいかんを問わず、いやしくも他国の内政に干渉し、またその秩序を乱し、あるいはその敵意や悪意をそそるがごとき行動は、相互に厳にこれを慎しむべきものと考えるのであります。(拍手)以上の二点は、相互に他人の立場を尊重し合いつつ平和的に問題を解決するという、民主主義の根本理念をそのまま国際社会に適用するものにほかなりません。国際民主主義とも称すべきものであります。また、これこそ、わが国平和外交の本旨でありまして、世界の安全と福祉を保障すべき機関としての国際連合もまた、実にこのような精神に出ているものであります。私は、各国がかかる精神に徹しますならば、世界の平和はおのずから招来されるものと、かたく信ずるのであります。
 ここに、私は、政府の当面いたしております重要外交問題につき、一言いたしたいと存じます。
 申すまでもなく、国際連合は、世界の平和と安全の支柱として大きな意義と価値とを有するものでありまして、加盟国、ひいては全世界の安全が、もっぱら国際連合によって保障されることが最も望ましい次第なのであります。しかしながら、他面、現下の国際情勢を反映し、国際連合が、大国の拒否権行使によって、しばしば多数者の意思の実現をはばまれ、また、緊急事態に際して迅速かつ有効な措置をとり得ぬ欠陥があることも、広く認められているところであります。かかる欠陥が是正され、国際連合が真の平和維持機構として確立されますまでは、加盟国は国連に協力しつつも、みずからの努力と責任によって自己の平和と安全とを保障する必要が存するのであります。わが国が、米国との安全保障条約によって、その防衛を達成しようとするゆえんもここにあるのであります。
 思うに、わが国の中立を唱え、あるいは、集団的不可侵条約の締結によってわが国の安全を保障すべしとの意見は、いずれも、今日の世界の情勢を無視する観念論にすぎないのであります。(拍手)けだし、国家が中立国たることによってその安全を保障するためには、その国にとり、右を可能とする政治上、経済上、地理上及び軍事上の具体的条件を必要とするのでありまして、遺憾ながら、東西両陣営が相対立し、しかも、東亜の各地に、御承知のごとき不安定な政治、経済情勢が支配しております今日、かかる政策をとることは、わが国の安全を達成するゆえんではないのであります。(拍手)また、東西両陣営にわたる集団的不可侵条約によりわが国の安全を確保しようとする考えにつきましては、一般軍縮問題についても、奇襲防止問題についても、東西間に何らの実効的な話し合いの成立しておりません現状におきましては、不可侵条約の美名も、具体的保障措置を伴いません限り、容易に国家の安全をゆだね得ないのであります。このことはわが国自身、過去の歴史においても経験したところであります。
 政府が、戦後わが国が国際社会に復帰するに当りまして、わが国の自衛力もきわめて不十分な状況のもとにおきまして、米国政府との間に現行日米安全保障条約を締結いたしましたのはこのような考慮によるものでありますが、同条約は、自来七年間、今日までわが国の安全保障の軸として、よくその使命を果して参ったのであります。
 しかしながら、その間わが国力も漸次回復するとともに、自衛力の漸増も行われ、国際社会におけるわが国の地位も向上して参りました結果、現行安全保障条約に合理的な修正を加える必要が一般に痛感されて参ったのであります。米国政府が、この点に十分の理解を示し、今次改定交渉に応ずるに至りましたことは、同国がわが国の自主性をあらためて確認し、対等の協力者としてその立場を尊重しつつ、相ともに、極東、ひいては世界の平和維持に貢献しようとする意図を示すものであると考えるのであります。
 われわれは、わが国の置かれている国際的環境を冷静かつ現実的に判断いたしますとともに、みずから果すべき責務は進んで果すという熱意と覚悟とが必要なのであります。政府といたしましては、本件交渉を進めるに当り、国民各位の声を十分に反映しつつ、早期にこれが妥結をはかる所存でありますが、この点、各位の十分なる御理解を期待する次第であります。
 次に、共産圏諸国とわが国との関係について、一言いたしたいと存じます。もとより、自由民主主義国たるわが国といたしましては、国際共産主義の浸透は、断じてこれを容認し得ないところであります。しかしながら、このことは決して共産主義諸国との友好関係を無視ないし軽視しようとするものではありません。すなわち、政府は、共産圏諸国との間にも、相互の立場を尊重しつつ、平和的な関係を維持増進することに努めたいと考えるのでありまして、これがひいて東西間の一般的緊張緩和に資することを期待する次第であります。
 わが国とソ連との間には、すでに国交が回復され、通商貿易の道も開かれ、すでに実績を重ねつつあるのでありますが、ソ連政府が、今日なお、わが国の領土に関する正当な要求を認めません結果、平和条約の締結がおくれており、また、これを理由にして、北海道近海漁業問題に関し話し合いを拒否しておりますことは、まことに遺憾であります。
 次に、中国大陸との関係について、所見を申し述べたいと思います。中共が中国大陸に政権を掌握して以来、相当の時日も経過しておりまする結果、中共の問題が世界政治においても重要な問題となりつつあることは、御承知の通りであります。由来、わが国と中国大陸とは、経済的にも、文化的にも、密接な関係にあり、従って、相互に貿易を行うのが自然の状態であり、また、これによって双方に利益がもたらされるのであります。しこうして、本来、これらの交流関係、双方が互いに善意をもって相手方の立場を尊重し合いますならば、国交の有無にかかわりなく、これを維持し、発展せしめ得るはずであると信ずるのであります。事実、わが国と中共との貿易は、昨年五月まで逐次伸張して参ったのでありますが、その後中共側がこれを断絶した結果、自来今日まで貿易は再開されるに至っておりません。しかしながら、政府といたしましては、日中貿易の促進が相互の経済的利益に合致するゆえんであると信じますがゆえに、わが国としても自主的立場を捨てることなく、今後とも現状打開に努力する所存であります。
 私は、中共側におきましても、この際、相互にその政治的理念と秩序とを尊重するとの建前のもとに、日中貿易の促進と善隣関係の樹立に資するよう、すみやかに現在の障害除去に努めることを希望するものであります。
 さらに、韓国との関係につきまして一言申し述べたいと思います。韓国との関係につきましては、御承知のごとく、両国政府は、過去久しきにわたり、漁業区域、船舶、文化財、在日韓国人の法的地位及び請求権等、両国間の懸案について意見の交換ないし討議を行なって参ったのであります。
 右のうち、特に漁業区域に関する韓国側のいわゆる李ラインに関する主張は、それが従来の国際通念に反するものであり、また、わが国民生活にも至大の影響を与えるべきものであることにかんがみまして、政府は、単にわが国民の利益に合致するのみならず、世界の良識ある人々を納得せしめ得るような公正妥当な方法で解決すべく、忍耐強く努力する所存でありまして、本件解決こそ、自余の案件解決のかぎとなるべきものであります。交渉はいまだ所期の進展を示すには至っておりませんが、これらの努力は決してむだではなく、相互の信頼感の回復に必ずや役立つものと考えるのであります。
 次に、わが経済外交上の重要な問題につきまして、政府の見解と方針を申し述べたいと思うのであります。
 最近の国際経済において、最も注目すべきできことは、昨年末欧州主要諸国が一斉にその通貨の交換性を回復する措置をとったことであります。これらの措置は、基本的には、貿易及び為替の自由化の方向に沿うものであり、また、ポンド、マルク等の西欧通貨がますます国際通貨としての信用と機能を増大し、世界貿易がそれだけ増進されると考えられる限りにおいて、わが国としても、その将来に対する意義を高く評価したいと思うのであります。しかしながら、今回の措置により西欧諸国が遠からず貿易を完全に自由にするであろうと考えますことは早計でありまして、このことは、関係諸国政府が交換性回復の措置をとるに当りまして、貿易管理は当分これを従来通り維持する方針である旨表明していることからもうかがわれるところであります。現に、これらの国においては、今なおわが国の輸出に対する差別的な輸入制限が続けられており、特に、わが繊維製品、雑貨等については、今後とも相当な貿易障壁に当面することが予想されるのであります。
 もとより、政府としては、いかなる地域においても、わが輸出産品が受ける待遇につき、今後とも外交交渉を通じてその改善に努力する所存でありますが、同時に、この際わが国貿易の将来の発展を期するため、国際経済の趨勢に沿って各国との貿易を相互に拡大することにより、通商自由の方向に進むべく、内外の経済施策を検討する要があると考えるのであります。
 幸い、各国における貿易上の諸制限や差別待遇を撤廃することを目的といたしておりますガットの総会が、本年秋東京において開催される運びになりましたが、この東京総会が、国際貿易の拡大と世界経済の繁栄に一時期を画するものになることを期待するものであります。
 さらに、経済外交の一環としてこの数年来とみに重要性を増しつつある対外経済協力の問題について一言いたしたいと思います。
 経済的に立ちおくれた諸国の開発が、国際貿易の増大と世界政治の安定に必要なことは申すまでもありませんが、特に、アジア、中近東、アフリカ諸国との緊密なる提携を重視するわが国といたしましては、右地域の経済的、社会的発展につき応分の寄与を行うことは、その平和外交の重要な任務であると考えるのであります。
 以上のごとき観点から、政府は、これら諸国の要望にこたえ、各種技術センターの設置に着手するほか、経済及び技術協力を通じ、諸国の経済開発計画に一そう協力する所存であります。また、本年発足いたしました国際連合特別基金の理事国として、世界の低開発国の開発事業に協力いたしますとともに、コロンボ計画に対しても、一そう積極的に参加する方針であります。
 最近、わが海外移住者が受入国において果している経済上の役割が特に高く評価されつつありますことは、まことに意義の深いことでありまして、政府といたしましては、今後とも、海外移住を推進する方針であります。このため、移住協定の締結等を通じ、ますます中南米諸国との友好関係増進に努めるとともに、内外の体制を整備して、海外移住を計画的に振興いたす所存であります。
 文化の交流は、わが国民と諸外国国民の相互の理解を深めますとともに、これら諸国との友好親善関係の増進に寄与するところ大でありますので、政府といたしましては、できる限り、民間における外国との文化交流を促進いたしたいと考えているのであります。
 かくして、諸国民の間における真に平和的な機運の醸成をはかりますことは、世界平和の維持に資するゆえんでもありますから、私は、広く人的、知的交流を促進することを、わが平和外交の一環として、今後とも推進いたしたいと考えるのであります。
 以上、私は、わが国の当面する外交上の重要な問題と、それに処する政府の方針を、率直に披瀝いたした次第であります。
 私は、かねがね、一国の外交の成否は、その方針が国民の願望と必要に沿うものであるかどうか、また、政府が外交を進めるに当って十分国民の理解と支持を受けているかどうかにかかっていることを痛感しているものであります。さきに外交政策の基調として述べましたところは、ひっきょう、国の安全を守り、国民生活の経済的、社会的基礎を固めることにあり、これは、とりもなおさず、国民の福祉全般を増進することにほかならないと信ずるのであります。
 私は、わが国の外交の衝にある者として、常にこの点に思いをいたし、広く国民各位の意思を反映し、国民全体の福祉に直結する民主的外交を行うことを念願するものであります。ここに、私は、政府のかかる方針について、各位の深い御理解と御支援とを重ねて要請する次第であります。(拍手)
#13
○議長(加藤鐐五郎君) 大蔵大臣佐藤榮作君。
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#14
○国務大臣(佐藤榮作君) ここに、昭和三十四年度予算を提出するに当りまして、わが国の当面する内外の経済情勢とこれに対処すべき政府の財政金融政策の基本方針を明らかにし、予算の概要を説明いたしたいと存じます。
 顧みれば、昭和三十三年のわが国経済は、世界経済の停滞を反映して、おおむね伸び悩みの状態を続けて参りました。しかしながら、最近における世界の経済及び貿易の情勢は、アメリカの景気回復を契機として好転の気配がうかがわれ、わが国経済を取り巻く環境は、ようやく明るさを加えて参っております。これとともに、国内経済の動向も、一部になお若干の問題を残してはおりますものの、漸次停滞から着実な上昇に転じつつあります。国際収支も引き続き黒字基調を維持し、昨年末における外貨準備高は八億六千百万ドルに回復いたしました。私は、この間における国民各位の御努力に対し、深甚なる敬意を表するものであります。(拍手)
 このように、内外の経済情勢には好転のきざしが見られるのでありますが、なお対内的にも対外的にも取り組まなければならない問題が多々あると存じます。
 戦後、わが国経済は急速な成長を遂げて参りましたが、その成長は、ともすれば国内需要の過度の膨張を伴いやすく、国際収支の悪化をめぐって幾たびか経済の大幅な変動を経験してきたのであります。また、その成長の内容も、経済の各部門にわたって必ずしも均衡のとれたものであるとは言いがたいのであります。他面、西欧諸国における通貨の交換性回復にも見られるごとく、国際競争は、より自由な基盤の上に今後ますます激しくなることと予想されるのであります。これらを考え合せますと、経済の急激な変動を避け、その安定的な成長を進めるよう常に心がけるとともに、経済の体質をこのような国際環境に十分対処し得る健全なものにしなければならないことを痛感いたすのであります。すなわち、経済の安定成長とその質的改善がわが国当面の経済政策の基本となるべきであると信ずるものであります。
 次に、昭和三十四年度における財政施策について申し述べます。
 まず、経済の安定成長を期するため、長期にわたり通貨価値の安定を確保することを第一義として、財政の健全性を堅持することといたしました。これがため、一般会計の規模は、租税収入その他の普通歳入と経済基盤強化資金の使用とによって支弁し得る範囲にとどめるとともに、財政投融資においても、新規原資のほかは、合理的な限度において、繰り越し資金を使用し、民間資金の活用をはかることといたしております。
 次に、経済の質的改善に資するため、国民生活の安定向上と経済基盤の充実強化をはかることを主眼とし、減税の実施、国民年金制度の創設、道路及び港湾の整備拡充並びに公立文教施設の整備充実等の重要施策を推進することといたしました。
 このような方針のもとに編成いたしました昭和三十四年度の財政の規模は、一般会計予算においては、歳入歳出とも一兆四千百九十二億円でありまして、昭和三十三年度予算に対し九百八十億円の増加となり、財政投融資計画においては五千百九十八億円でありまして、昭和三十三年度当初計画に対し一千二百三億円、改定計画に対しては八百四十五億円の増加となっております。これは経済の健全な成長を財政の面から着実に実現していくために必要なものであり、また、経済の発展に歩調を合せた適度なものであると確信いたします。(拍手)
 以下、政府が特に重点を置きました重要施策について申し述べます。
 まず、中央、地方を通ずる減税を中心とする税制の改正であります。この減税は、低額所得層の負担軽減を通じて国民生活の安定向上と中小企業の経営の改善をはかることを主眼としたものであります。
 所得税につきましては、扶養控除を引き上げるとともに、最低税率の適用範囲を拡大することといたしております。この改正により、たとえば、夫婦と子供三人の五人家族の給与所得者の場合、所得税を課されない限度が現在の約二十七万円から約三十三万円に引き上げられるなど、低額所得者の負担は著しく軽減されるのであります。このほか、退職所得の特別控除額の大幅な引き上げ、物品税及び入場税の軽減合理化を行うことといたしております。
 次に、地方税につきましては、特に中小企業の税負担の軽減をはかるため、個人事業税の基礎控除を現行十二万円から二十万円に引き上げ、法人事業税の税率を引き下げるとともに、所得税の減税に伴う住民税の軽減、固定資産税の免税点の引き上げ等をはかることといたしております。
 以上の改正により、初年度におきましては、国税四百三十二億円、地方税百一億円、計五百三十三億円の減税となり、また、平年度におきましては、国税四百八十八億円、地方税二百二十九億円、計七百十七億円の減税となるものと見込まれるのであります。
 このような減税を行う反面、最近の経済情勢に即応して、租税上の各種特別措置について所要の整備合理化をはかるとともに、道路整備の財源に充てるため揮発油税の引き上げを行う等、各般の要請にこたえて税制の改正を行うことといたしております。なお、租税と一般の債権との関係の合理的調整をはかる等のため、国税徴収法を全面的に改めることといたしております。
 しかしながら、税制につきましては、経済の推移等に照らし、なお解決を要する問題が少くないのであります。企業課税のあり方並びに国及び地方団体を通ずる税体系の確立の問題は、その最も大きなものでありまして、政府といたしまして、この際、法律により税制調査会を設置し、広く各界の意見を求めて、これらの問題の解決をはかりたい所存であります。
 次に、社会保障の充実に努めたことであります。
 民生の安定向上が、社会的にも経済的にも重要な意義を持つことは言うまでもないところであります。政府は、今回新たに老齢、障害、母子の三年金の制度を創設することといたしましたが、昭和三十四年度におきましては、これらを無拠出の援護年金として支給を開始することとし、所要額百十億円を計上しております。また、国民皆保険計画の推進、児童保護、結核対策、失業対策、住宅建設等各般にわたり、それぞれ相当の増額を行い、社会保障の充実を期することといたしております。
 次に、経済発展のための基礎部門の整備拡充であります。
 昭和三十四年度におきましては、道路、港湾の整備を中心に大幅に経費を増額計上いたしました。すなわち、道路整備につきましては、昭和三十三年度以降五カ年間に総額一兆円に達する資金を投入することとし、昭和三十四年度はこの計画に即して一般会計において二百九十五億円を増額いたしたのであります。
 港湾につきましては、四十八億円を増額計上しているのでありますが、このうち、特に輸出、石油、鉄鋼、石炭等にかかる特定港湾については、今回新たに特定港湾施設工事特別会計を設け、その急速な整備を行うことといたしております。
 このほか、治山治水、災害復旧等につきましても、それぞれ事業の重点的遂行に必要な予算措置を講ずることとし、また、電力、輸送等基礎部門の開発につきましては、既定計画の遂行に必要な資金措置を講ずることといたしました。
 次に、農林漁業につきましては、そのわが国経済に占める地位の重要性にかんがみ、昭和三十四年度においても格別の配意をいたしたのであります。すなわち、従来に引き続き生産基盤の充実と流通の改善とに重点を置いて、その振興をはかることとしております。これがため、土地改良、開拓、林道開発、漁港整備等の事業に約五十五億円を増額するほか、農林漁業金融公庫の融資ワクを拡大し、また、農林水産物の流通改善のために各種の措置を予定しているのであります。
 なお、わが国農林漁業の基本問題につき、新たに調査会を設けて検討を進めることといたしております。
 次に、文教及び科学技術の振興について申し述べます。
 教育水準の向上と、健全な次の世代の育成のためには、教育環境の整備改善をはかることがきわめて重要であります。これがため、いわゆる「すし詰め教室」の解消等を昭和三十四年度以降五カ年間で実施する計画を立て、教員数の充足と文教施設の整備を遂行することとし、義務教育費国庫負担金、文教施設費等、各般にわたり相当の増額を行うことといたしました。
 また、科学技術の振興につきましては、既定計画により原子力関係機関の研究施設の整備を進めるほか、基礎的研究部門を整備充実するための国立学校運営費等の増額、各省試験研究機関における研究要員の待遇改善、民間の研究に対する助成等の措置を通じて、各分野における均衡ある進展を期することといたしております。
 次に、中小企業につきましては、そのわが国産業における役割と特質とにかんがみ、国民金融公庫及び中小企業金融公庫において、合せて一千五百五十五億円の貸付を予定し、これに必要な資金措置を講ずるほか、商工組合中央金庫に対する政府出資を増加する等、中小企業金融の一そうの円滑化をはかるとともに、これら三機関の貸出利率の引き下げを行い、減税と相待って、その経営の改善に資することといたしました。
 さらに、中小企業設備近代化のための経費を増額いたしますほか、新たに中小企業退職金共済制度を創設し、経営の安定と従業員の福祉の増進をはかることといたしております。
 次に、輸出振興が経済の安定成長のため欠くべからざる条件である点にかんがみ、昭和三十四年度におきましても、輸出増進のための経費及び資金の確保には特に留意いたしております。すなわち、国連特別基金への加入、枝術援助の強化等に要する経費を計上するほか、日本輸出入銀行に対する財政資金の供給に格段の配慮をいたしているのであります。
 最後に、地方財政について申し述べます。
 地方財政は、ここ数年来の国、地方を通ずる健全化の努力等によりまして、全体としては著しく改善されてきております。昭和三十四年度におきましては、地方税の減税を予定する一方、地方財政の基礎をさらに強化するため、地方交付税の率を一%引き上げて二八・五%とし、昭和三十二年度精算分を含め、地方交付税交付金を二百四十六億円増額計上するほか、地方団体の起債ワクを拡大するとともに、その資金の重点的な配分をはかることといたしております。これらの措置により、地方団体の行政水準の向上と住民福祉の増大が推進されることと存じますが、地方団体におきましても、この際さらに経費使用の合理化をはかり、財政の一そうの健全化に努められるよう希望いたします。
 なお、この際、昭和三十四年度予算と同時に提出いたしました昭和三十三年度一般会計予算補正について、一言申し述べます。
 今回の補正は、義務教育費国庫負担金、災害復旧費等の義務的経費の追加を主たる内容とするものでありまして、その総額は百十八億円であります。その財源といたしましては、砂糖消費税、関税等の自然増収及び専売益金の増加等をもってこれに充てることといたしております。これにより、昭和三十三年度一般会計予算の歳入歳出の総額は、それぞれ、一兆三千三百三十億円となるのであります。
 以上、予算に関連する重要施策について申し述べましたが、次に金融政策について一言いたします。
 経済の安定成長と質的改善をはかるためには、申すまでもなく国民貯蓄の増強が必要とされるのでありますが、同時に、投資の量と質とを常に適正に保つことがきわめて重要であります。投資の適正化は、まず民間経済の自主的な調整に待つべきものと考えられるのでありまして、そのためには、企業が堅実な投資態度を持するとともに、金融機関が真にその健全性、合理性を発揮することが肝要であります。
 本年度に引き続き、昭和三十四年度においても財政は相当の散布超過となる見込みでありますが、これは資金需給の緩和により金利水準の低下と金融機関の日本銀行依存の是正とをもたらし、金融の正常化を招来する好機であると存じます。私は、この際、金融機関に対し、その資産構成の健全化、支払い準備の充実、経営の合理化等に努めるとともに、過当競争を排除し、融資の適正化をはかるよう協調を保つことを強く要請いたすものであります。政府といたしましても、常に経済情勢の推移に留意し、日本銀行の金融調節機能の弾力的な運用と相待って、財政金融を通じて適切な調整に遺憾なきを期する所存であります。
 また、私は、企業が自己資本の充実に努め、長期資金はできる限り増資または社債によってこれを調達する等、企業の自主性の確保と経営の安定とに心がけるよう希望いたします。政府といたしましても、再評価積立金の資本組み入れの促進をはかり、増資登録税の軽減を行う等、企業資本の充実を一そう推進いたしたいと考えております。
 次に、為替政策の基本的方向について申し述べます。
 今般、わが国は、国際通貨基金及び国際復興開発銀行の出資増加に際し、特別増額割当を受ける見込みでありますが、これは、わが国経済発展の実績に徴し、世界経済におけるその重要な役割が信認されたからにほかならないものと考えます。
 申すまでもなく、国際通貨基金の目的とするところは、為替及び貿易の自由化と、国際協調による世界貿易の拡大、世界経済の繁栄にあるのであります。すでに西欧諸国においても、通貨の交換性を回復して、着々とこの方向に進みつつあるのでありまして、わが国としても、このような基本的動向に即して、今後の為替及び貿易政策を進めて参ることが必要であると存じます。この際、政府は、為替管理のあり方等につきまして、単に技術的な問題にとどまらず、より広い見地に立って根本的に検討して参りたいと考えます。同時にまた、このような為替及び貿易の自由化の傾向により、国際競争がますます激化するものと予想されることは、さきに申し述べた通りでありまして、われわれとしては、従来に増して輸出増強べの努力を傾ける必要があると考えます。
 以上のような自由化と国際競争の激化という情勢を考えますと、やはり輸出増強をはかり、外貨準備を着実に増大させていくことが肝要であり、また、通貨価値の安定を政策の基本として堅持することがいよいよ必要となってくることを痛感するのであります。私は、わが国経済がこのような基盤の上に発展して参りますならば、世界経済の中にあってその前途はまことに明るいものがあると信じて疑わないのであります。(拍手)
 以上、わが国の当面する内外の経済情勢と政府の財政金融政策の基本方針を明らかにするとともに、予算の概要を説明いたしました。
 私は、ここに提出いたしました予算を中軸とする財政経済諸施策が、経済の健全な成長を進め、希望に満ちたわが国の将来を約束するものであることを確信いたすものであります。(拍手)
 今や、海外諸国における自由化と合理化への機運は、まことに注目に値するものがあります。わが国も、このような国際的動向に歩調を合せつつ、自由と責任の原則に基く民間経済の自主的な活動を基礎として経済の発展に努めて参らねばなりません。政府といたしましては、国民のはつらつとした創意と工夫とを十分に生かしつつ、国民経済の均衡ある発展のために合理的調整を行い、もって国民生活の安定と雇用の増大を着実に推進して参る所存であります。何とぞ政府のこの方針を了とせられ、全幅の御協力を賜わるよう切望する次第であります。(拍手)
#15
○議長(加藤鐐五郎君) 国務大臣世耕弘一君。
    〔国務大臣世耕弘一君登壇〕
#16
○国務大臣(世耕弘一君) ここに、昭和三十四年度を迎えるに当りまして、最近における内外経済情勢と、これに対処すべき経済運営の基本方針を明らかにいたしまして、国民各位の深い御理解と協力を得たいと存ずる次第であります。
 わが国の経済の最近の動向を顧みますると、一昨年春、緊急総合対策を実施いたしまして以来、経済は調整過程に入ったのでありますが、ようやく昨年の秋口ごろから好転のきざしを見せ始めました。その後、今日に至るまで、おおむね予測通り順調な足取りで推移しておる次第であります。すなわち、消費は、緩慢ながら伸びを続けております。輸出は、次第に停滞状態を脱して上昇の傾向へ転じたものと見られます。設備投資は、若干の低下はありましたが、在庫投資は上昇に転じ、さらに、財政支出も増加しております。これら内外需要の増大によりまして、鉱工業生産は、大部分の業種が増産に転じ、出荷もこれと並んで増加し、物価は、全般的に見れば下げどまりから強含みの傾向となっておるわけであります。
 翻って、海外の経済情勢を見ますると、まず、米国の経済は、昨年春ごろから立ち直りのきざしを見せ始め、また、その後急速に回復いたして参りまして、経済の基調は依然として上昇的であります。
 次に、西欧経済は、目下のところ、景気調整期にありますが、各国政府の景気回復策と輸出の立ち直りを背景といたしまして、遠からず上昇に転ずるものと期待されるのであります。
 他方、後進諸国について見ますと、依然沈滞状態を脱しておりませんが、本年後半には、次第に先進諸国の景気回復の影響も及んでくるものと思われます。
 このように、海外の経済情勢には今後好転の期待がかけられるほか、国際的な経済協調や後進諸国に対する援助の積極化が予想されますので、本年の世界貿易は、昨年よりやや拡大に向うものと思われます。もっとも、わが国の輸出市場をめぐる諸情勢を展望いたしますと、日本品に対する制限運動や、後進諸国に対する西欧、ソ連、中共の激しい進出など、楽観を許さない要素があります。また、欧州共同市場の発足や為替自由化など、新たな事態が生じておりますので、わが国の輸出増進のためにはなお一段の努力を必要とすると思われます。
 以上述べましたような内外の諸情勢を勘案いたしますると、本年は、さきに策定いたしました長期経済計画の構想に基きつつ、適度な経済成長とわが国経済の体質改善をはかることを経済運営の基本方針とする考えであります。すなわち、民間経済の成長力に財政の適度な働きを加えることによって経済の安定的成長をはかり、あわせて、日本経済のうちにひそむ質的な欠陥を是正していきたいのであります。
 このような見地から、本年度におきましては、輸出の振興、経済協力の推進など、国際的な経済交流の一そうの拡大をはかることを初めといたしまして、道路、港湾、輸送など、産業基盤強化に役立つ公共事業投資を拡充いたしたいと考えております。また、産業秩序の確立、企業資本の充実、金融正常化などにつきましては、政府としても逐次所要の対策を樹立推進して参りたいと存じます。
 さらに、経済の均衡ある発展をはかるためには、農林水産業につきましては、生産基盤の整備拡充と近代化を着実に推進するとともに、中小企業につきましては、一そうその組織化、近代化を推進し、わが国産業構造の弱い面を強化するよう努力したいと存じすす。
 このほか、経済の発展におくれないように、民生と雇用との両面につきましては特別の配慮をいたすこととし、国民年金や減税の実施を初めとして、経済成長に伴う雇用の増大、雇用状態の質的改善などに努めたいと考えております。(拍手)
 ただいま申し述べて参りました経済運営の基本方針によりまして経済を運営して参りますならば、昭和三十四年度の主要経済指標は、およそ次のごときものになると考えられます。
 すなわち、貿易及び国際収支につきましては、為替べースで輸入は二十九億ドル、輸出は三十億ドル程度と見込まれ、国際収支は、貿易外収支を考慮いたしますと、実質で約一億六千万ドルの黒字が期待されるのであります。また、個人消費支出は堅調な伸びを示し、財政支出も増大するほか、民間設備投資はやや減退するとしても、在庫投資及び住宅投資は増加し、需要は全体として増加が見込まれます。かくして、鉱工業生産水準、昭和三十三年度に比べ六・一%程度の上昇になるものと考えます。
 次に、物価は、内外需要の拡大はありますが、まだ相当に供給余力が存存することを勘案しますならば、おおむね強含み横ばい程度に推移するものと思われます。
 この結果、昭和三十四年度の国民総生産は約十兆七千六百億円となり、昭和三十三年度に比較しまして、実質五・五%程度の経済の成長を見ることになるのであります。この国民総生産の規模は、長期経済計画が想定しております昭和三十四年度の水準とほとんど隔たりのないものと考えられます。
 以上、私は、内外経済情勢と今後の経済運営の基本方針について、あらまし申し述べて参りましたが、今後、この方針を推進することによりまして、長期経済計画が指向するわが国経済の安定成長と基盤の確立は、必ずや達成できるものと信じているものであります。(拍手)なお、日本経済が、過去におきまして、大幅な景気変動により、苦い経験を繰り返した事実にかんがみ、特に政府といたしましては、経済動向の推移に応じまして、財政、金融及び産業各般の施策を適時、弾力的に運営していく所存であります。つきましては、今後とも、国民各位の一そうの御協力をお願いしてやまない次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
#17
○議長(加藤鐐五郎君) この際暫時休憩いたします。
    午後二時四十四分休憩
     ――――◇―――――
    午後五時六分開議
     ――――◇―――――
#18
○議長(加藤鐐五郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#19
○議長(加藤鐐五郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鈴木茂三郎君。
    〔鈴木茂三郎君登壇〕
#20
○鈴木茂三郎君 私は、日本社会党を代表して、岸首相に対し、最近の政治情勢の不安を引き起した政治的責任を問い、議会政治の危機を導いた権力主義的な政治方針をただし、総理の心からの反省を求めるために、ここに質問を行わんとするものであります。(拍手)
 私は、本日、岸総理の施政方針を拝聴いたしたのであります。率直に言って、空疎な、誠実の認められないものであることは、遺憾にたえません。(拍手)総理にとって、施政方針の前提となる必要なことは言動の一致、言うことと行うことが日ごろから一致するのでないと、施政方針も空疎に聞え、誠実のこもらないものとして国民の心に映るのであります。(拍手)信念を喪失した総理、確信を失った総理としては、本日の施政方針は無理ならぬとは思いますが、私は、ここに施政演説を承わって、ただ失望というよりは、あまりにそのそらぞらしさを感じたものであります。(拍手)
 質問に入る前に、あらかじめ承わっておきたいことは、去る二十四日持たれた自民党大会後の刷新懇話会の名で発表された声明書の中で、「金権政治と権力政治を排し、金のかからぬ政治、国民とともに行く政治のため投ぜられた百六十六票という票数の意義を、岸総理がこの際真剣に翫味されることを要望してやまない」という声明の行われたことに対しまして、これは、私は、きわめて総理にとって含蓄の深い言葉が含まれておると思うのであります。(拍手)このことは、単に岸総理の自民党内部の問題だとして看過できないのであります。なぜならば、これから私が岸総理にお尋ねしようとする総理の政治的責任の問題とこれは直接関連する国民や国会の問題だからであります。(拍手)この声明によれば、岸総理が金権政治、権力政治をおやりになってきたことに対して、党内からかような痛烈な批判が総理にたたきりけられたのであります。(拍手)総理は、これをいかに翫味されたのであるか。ほんとうにこれを翫味されたのであれば、岸総理は、本日こうして国会に来て国民の前に立つことができないはずであると思うのであります。(拍手)反省すべき、国民ではなくて、総理自身である。議会政治を守らなければならないのは、人ではなくて、総理自身であるはずである。(拍手)私は、総理には人を説教する資格はないと思います。まず、これをこの機会にお尋ねいたしまして、私がこれからお尋ねいたしたいことは、国会と国民の立場から、総理の政治的責任、国会と国民に対する責任と、民主主義と議会政治に対する所信をただしたいのであります。
 昨年の総選挙後の第三十臨時国会の開会されるや、岸総理は、その施政方針において、社会保障制度の確立や、減税等の選挙における公約の実施や、風水害、旱害など災害対策の法案の提出を約束され、次いで、議会政治の尊重、民主主義擁護の決意を、この国会において表明されたのであります。ところが、臨時国会の状態はいかがであったでありましょうか。風水害対策や減税や社会保障制度など、国民の生活に直結した公約や政策の実行について、岸総理は少しでも熱意や誠意を示されたでありましょうか。事実は全くそれと逆であって、諸君がよく知っておられるように、国民から総反撃を受けて、総理みずから審議未了にせざるを得なかった警職法改正案のために、国民に公約した政策を犠牲にして顧みず、これがため、臨時国会において、民主主義と議会政治の擁護を呼びかけたその総理の手で民主主義を踏みにじり、議会政治を打ちこわすような、驚くべき暴挙が行われたのであります。それゆえ、国民は、通常国会の再開に先だって、さきに岸総理の行なったこの暴挙に対して、岸総理は国民と国会に対して当然政治的責任を明らかにされるものと信じて、今日の通常国会の休会明けの再開を待ったのであります。しかるに、総理は、その政治的責任を負われないだけでなく、てん然として恥ずることを知らざるもののごとく、休会明けの国会に臨まれたのであります。総理の、こうした態度は、国権の最高機関たる国会を侮辱し、憲法の主権者たる国民を愚弄するものといわなければならないのであります。(拍手)
 申し上げるまでもなく、今日の憲法のもとにおける議会政治は、明治憲法下の政治体制と異なって、議会内閣制、すなわち完全な政党内閣制であって、党の方針、政策は、即政府の方針、政策であるのでありまして、当時自民党の党籍を持って党議に従って不当な国会の運営をはかった議長、副議長の責任は、まさに自民党の責任であるのであります。(拍手)また、総理は同時に自民党の総裁であり、最高幹部と協議の上で、国会の運営または国会への法案の提出等、重要な方針を指示されたのでありますから、政府もまたその責任を免れがたいものがあるのであります。(拍手)憲法第六十六条に照らしてみましても、「内閣は行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」と規定しておるのであります。すなわち、内閣は、国会、すなわち国民に対して一体の責任を負うべきことは、憲法上明々白々であるのであります。さらに、岸総理は、警職法の是非は別といたしましても、繰り返し、この法案のためには内閣の運命と総理の政治的生命をかけて通過させると決意を表明されております。(拍手)その法案が国民の総反撃を受けて審議未了となったのでありますから、今日、岸総理のために残された、とるべき道は、即時内閣総辞職を行うことでなければならないのであります。(拍手)
 岸総理は、さきに、かりそめにも、民主主義を擁護し、議会政治を尊重することを国民に呼びかけられたのであります。総辞職して、国民と国会に政治的責任を明らかにし、総理みずから、身をもって、言動の一致、言うことと行うことが別々でないということを、ここで国民に示されることが、私は、議会政治に忠実なゆえんであり、総理のお人柄を最後に飾る道もここにあるのではないかと信ずるのであります。(拍手)
 次に、第二の問題として、この質疑を通じて国民の前に事態を明らかにいたしたいことは、憲法によって明白であるように、民主主義の機構の基本は、立法、司法、行政の三権の分立にあるのであります。言いかえれば、三権分立の基本的な建前は、民主政治の機構の根幹をなすものであるのであります。私のお尋ねしたいことは、岸内閣のもとにおける三権分立の混乱、紛淆に関する問題であります。三権の分立は、対等の分立が原則であるのでありますが、わが憲法は、立法権の機関たる国会を国権の最高の機関として、その優位性を認めておるのであります。しかるに、岸内閣となりましてから、行政権の優越、すなわち、行政のもとに国会と司法があたかも従属しているような政治支配が次第に強まりつつあるように見受けられるのであります。このこと、健全な民主政治、真実の議会政治のために憂慮にたえないところであります。
 私は、まず、立法と行政の関係についてお聞きいたします。
 最近の行政と立法の紛淆は、行政府たる内閣の方針、政策を強行しようとして、議員の多数を頼んで国会を操縦し、運営しているところから起っていると思われるのであります。たとえば、憲法改正の審議調査を内閣の管轄下に設けたごときは、その顕著なものであるのであります。(拍手)また、安保条約改定のような重大な外交上の問題が、事前に国会に諮られることなく、外務官僚をして秘密裏に行わしめているごときも、その一つの例であるのであります。(拍手)また、勤務評定の実施、警職法改正の提案のごときも、国会の意思を無視して強行されてきたのであります。こうした事例は、岸内閣となってから枚挙にいとまないほどたくさんあるのでありまして、政府は、国権の最高の機関たる国会が行政に従属していることが当然であるかのごとくふるまっているように観察されるのであります。(拍手)
 次に、行政と司法権や検察権の関係についてお聞きいたします。
 司法権や検察権は、完全に行政権から分立し、独立して、いやしくも政府の手を一指も触るるあたわざるものでなければならないのであります。ところが、次から次へと起ってきた政界、官界、財界の大きな汚職は、さざなみのごとく波頭を見せただけで、国民の眼界から、あとからあとからとかき消されていっておるのであります。それゆえ、警察権や検察権が果して健全なりやいなやについて、国民をして疑いを抱かしめておるような現状にあるのであります。(拍手)その他、軍事基地の反対闘争や、勤評、警職法改正反対の闘争等、これらに対する警察権や検察権の不当な介入によって、憲法で保障された人権は不法に侵害されておるのであります。こうした一連の事態は、国家公安委員会を行政に従属させ、かつ、行政が警察権の中立性を侵犯するに至ったところから起ってきたようにも観察されるのであります。かような事態は、あたかも、三権の権力分立以前の藩閥や官僚の専制政治、権力政治をほうふつたらしめるものがあるのであります。(拍手)私は、こうした行政と司法権、検察権の紛淆から社会不安を誘発するおそれのあることを憂慮いたしておるものでございます。これらに対する総理の所信をただしたい。
 次に、一般的な通念といたしまして、民主政治の要諦の第一は、政治支配に国民がおびえるようなことなく、安心してだれでも日常生活を楽しむことができるよう、国民の一人々々に対して愛情を込めた、あたたかい、思いやりの深い政治が行われることであります。(拍手)民主政治の第二の要諦は、行政府たる政府は、権力的に人権を侵さないだけでなく、みずから法律の基本たる憲法を尊重し、憲法に基く法律、特に人権を積極的に擁護する政治を行うことでなければならないのであります。(拍手)
 それに関してお尋ねいたしたいことは、岸内閣の権力政治、警察政治を最も露骨に表明したものは、その労働政策によって見ることができると思うのであります。(拍手)政府は、労働者に法律を守らせるという美名に隠れて、その実は反動的な労働政策を強制し、一方においては、警察権と検察権とによって正常な労働運動を弾圧し、他方においては、労働者の生活に対して、愛情のない、無慈悲な政治を行なっておるのであります。(拍手)
 その最も顕著なものは、憲法第二十八条に認められておる労働三権に違反する立法、すなわち、公労法第四条三項、国公法第三十八条等のごとく、今日なお、かかるものを存続しているのみか、これをたてにとって労働運動を弾圧しつつある事実であります。私は、法的秩序を無視し、国会を軽視する政治、この問題を重大な問題として考えてもらいたいのであります。(拍手)
 団結権に関する国際的な条約は、国際労働機関においても、すでに結社の自由と団結権の擁護に関する条約が決定しておるのでありまして、日本政府は、国際的に義務づけられておる条約の批准を今日まで実行しておらない。それがため、政府は理事会から再三再四批准の勧告を受け、内外の情勢はもはや、労働問題懇議会の審議や結論がどうとかいうような逃げ口上をもって、じんぜん時を過ごすことは許されなくなって参っているのであります。(拍手)本国会で条約批准のできるような手続を政府は当然とるべきであると思うが、どうか。この機会に総理にお尋ねをいたしておきたいのであります。(拍手)
 第三にお尋ねをいたしたいことは、国際情勢と外交問題についてであります。
 米ソの対立は、究極兵器と呼ばれるロケット兵器の競争に発展するに至ったのでありますが、その優位性がいかようであろうとも、第三次大戦、すなわち核兵器の戦争は次第に回避されていくように考えられるのであります。かりに局地紛争または局地戦争として起るようなことがあるといたしましても、国連によってスエズの紛争や中近東の問題が解決されたように、米ソの対立が直接持ち込まれない限り、重大な事態に発展することはないであろうと思われるのであります。また、米ソ両国間においても緊張緩和の努力が払われていることも見のがせないことであって、核実験中止に関する協定違反を検討する専門家会議がまとまり、奇襲防止会議が核実験停止の問題の形で再開されたのであります。また、ミコヤン氏の訪米を契機として、ベルリン問題及びドイツ統一問題などを議題とした四カ国外相会議、さらに、対独平和条約の提案を通じて、やがて頂上会談の行われる可能性も考えられて参ったのであります。岸総理は、かかる最近の国際情勢をいかように把握しているか、これを承わる。私は、こうした国際情勢から見て、当然、日本の外交路線は再検討され、転換さるべきものと信ずるのであります。(拍手)これに対する総理の所信をただしたい。
 次に、自主独立、すなわち、中立の問題についてお尋ねをいたします。
 現在の世界情勢から見て、米ソのいずれにせよ、強大国との間に軍事提携を強化するとか、自国の、すなわち、自分の国の武力を強化するという、武力だけではどこの国も安全と平和は保障されるわけには参らない情勢になって参っているのであります。それどころか、対立する米ソのいずれか一方の陣営にくみしてその武力に加担することが、かえって自国の安全と平和を脅かし、また、米ソの対立を深めて、核兵器の世界戦争を誘発することにもなるのであります。いわんや、日本のような米ソの強大な両陣営の深い谷間に置かれているような国は、なおさら、自主独立の立場、すなわち、中立の立場を堅持することが必要であるのであります。それゆえ、日本と同じような、あるいは日本に近似したような立場にあって、米ソの戦争にまき込まれないために、両陣営の紛争、対立の武力問題に関する限り、そのどちらにもくみしないという、いわゆる自主独立の中立政策をとる国が次第にふえてきていることは、当然の世界情勢といわなければならないのであります。(拍手)オーストリアのごときは、米ソ両国から領土の保全を保障され、みずから中立を宣言し、その立場を堅持して、何ら危険な地位に置かれていないのであります。これらの中立を主張し、中立を維持している国々は、それらの国のささやかな武力によって中立が維持されておるのではありません。それらの国は、小軍隊を所有していることによって中立が維持されておるのではありません。政府と国民と一体となった強固な意思の統一によってこそ、自主独立の中立政策が堅持されておるのであります。(拍手)そうであればこそ、両陣営からその安全と平和が保障されておるのであります。
 私は、本日、岸総理の施政方針において、中立の問題に触れられて、「現在のアメリカから離れれば、結局ソビエトの方へ日本は加担することになるではないか」、そう言う総理自身、日本の独立に対しまして何らの信念もないと見ておる。(拍手)こっちにくっつくか、そうでなければ、こっちにくっつくか、どこに独立の信念がありますか。どこに日本民族のための気魄がありますか。(拍手)わが日本社会党は、あくまでも日本の自主独立の立場から、アメリカに対しては日米安保条約の解消を要求し、同時に、中ソに対しては中ソ友好同盟条約の軍事条項の解消を求め、あわせて、中、ソ、米に対し、これらの軍事問題にかわる集団安全保障条約の締結を提唱すべきものと確信をいたしておるものであります。幸いにして、最近、ソビエトや中国は、それぞれの立場から行われたことであるにいたしましても、日本の中立を望む外交方針を明らかにして参ったのであります。われわれは、日本の中立の問題がようやく真剣に考慮されなければならない段階に立ち至ったと信ずるのであります。(拍手)あらためて総理の所信をただしたい。
 さらにお尋ねいたしたいことは、日本の安保条約の改定の問題であります。
 岸総理は、さきに、改定について、相互防衛条約的なものにするということと同時に、沖縄、小笠原を共同防衛範囲に含めるという構想を国会において明らかにされております。これは早くも国民の総反撃を受けておるように、日本にとってはとんでもないことでありまして、そういうことになると、アメリカの新しい中距離弾道弾による核兵器の北氷洋戦略に巻き込まれ、また、アメリカのフィリピン、台湾、朝鮮との重事同盟条約との武力紛争に、連鎖反応によって同時的に巻き込まれるおそれがあるのであります。(拍手)同時に、そういうことになりますと、かえって沖縄、小笠原をもこれかために戦争に巻き込むことにもなるのであります。わが党は、アメリカ軍の撤退と、その軍事基地の返還、すなわち安保条約の解消を主張する立場に立って、当面、こうした安保条約改定の即時打ち切りを強く要求してきたのであります。総理は安保条約改定の条約案の通常国会への提案をお取りやめになったということでありますが、総理は、当国会への提案をお取りやめになっただけでなく、アメリカとの交渉をも即時打ち切り、改定を取りやめるべきであると思うが、総理の所信をただしたいのであります。(拍手)
 最後に、国際情勢並びに外交問題に関して、さらにお尋ねをいたしたいことは、日中問題、すなわち、中華人民共和国との国交回復並びに貿易、文化の交流等の、日中友好に関する問題であります。
 日中友好関係は、鳩山、石橋内閣の時代に、貿易や文化の面から、せっかく友好親善関係が次第に確立されてきた折柄、がぜん、岸内閣は、日中の友好関係を土台から掘り返し、これを打ちこわしたまま、いわゆる積極的静観なる外交方針をとられ、そのまま、なすところなく、今日に至っておるのであります。(拍手)もっとも、積極的静観と申しましても、今日までの経過を見ますと、何事もしないということではなかったようであります。岸総理は、この間、中国やソビエトに対する軍事同盟の形態をさらに強化する、岸総理の日米新時代なる外交方針を打ち出され、これは中国側をひどく刺激したことは申すまでもないのであります。しかも、岸総理は、日中友好親善を回復する何らの努力もされておらない。かりに、中国側に、岸総理に対し何らかの誤解があったといたしましても、総理はなぜ誤解を解くことをしなかったのであるか。(拍手)最近の岸総理は、こうした情勢に対しまして、日中友好問題に関して何とか打開したいとあせっておられ、心中の焦燥おおいがたいものが見受けられるのであります。岸総理が、鳩山内閣、石橋内閣時代にならって、ほんとうに日本のために日中の友好親善関係を回復するために、外交方針をここで立て直そうとされるなら、私は、まず総理の中国に対する認識の根本から改めなくてはならないと思うのであります。(拍手)中国の政治理念や社会制度がいかようであろうとも、中国が日本との友好親善を強く望んでおるのでありますから、隣国の、しかも大国に対する敵視観念を抱くがごとく中国側から見られるような中国に対する総理の認識を払拭して、台湾は中国の一部であって、中国は一つであるという真実を正しく認識しなければならないと思うのであります。(拍手)
 次に、かように中国に対する認識の根本を改めると同時に、中国に対する外交の一般方針といたしましては、日本はアジアの一員たることと、日米の新時代を作るということと、この矛盾いたしました、いわゆる両岸外交をここに清算して、バンドン会議の十原則の精神にのっとって日中の友好親善の外交方針を立て直すことを、まず具体的な方針の根幹としなければならないと思うのであります。私は、日中友好のための国民的外交が必要であると思いますが、岸総理の日中友好親善の問題に対する基本的な認識と方針、並びに、具体的にどうしようというのか、その対策を承わりたいのであります。(拍手)
 私は、総理の見解のいかんにかかわらず、今日の日本と中国との国交を回復いたしますために、国民の大きな要望にこたえて、社会党は、日中友好のための国民外交を国民が展開をいたして参りますのに対して、これを支援し、これに協力する信念をここに申し上げて、私の総理に対する質疑を打ち切りたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#21
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 去る五月の総選挙においてわれわれが国民に公約したことは、この国会に提案いたしております三十四年度の総予算におきまして、最も忠実にこれを実現いたしております。(拍手)
 去る臨時国会の運営について、特に警職法の審議をめぐって国会の運営が変則になりましたことについては、私が施政方針を申し述べる前に遺憾の意を表してあります。しこうして、かくのごとき運営につきまして、多数党であるわが党としても反省すると同時に、私は、少数党である社会党におきましても、当時のあの実情から、大いに反省をしていただきたいと思うのであります。(拍手)この問題に関しましては、臨時国会の最後において、鈴木委員長と私とは、国会を正常化し将来の国会の信用を高めるために率直に申し合せまして、すでにそのことは世の中に発表されております。私は、この法則に従って、忠実に今後の運営に当りたいと思います。(拍手)
 次に、三権分立に関する立法権と行政権の問題についての御質問でありましたが、私は決して憲法にいっておる三権分立の主義を混淆するようなことはいたしておらないつもりであります。例におあげになりました、憲法調査会を内閣のもとに置いたことが憲法違反であるがごときお話でありますが、それは当時国会におきましても十分論議を尽されたところであって、決してこれが立法と行政とを混淆するものでないことは、きわめて明瞭であります。(拍手)
 また、安保条約の交渉の問題については、何かこれは誤解であろうと思いますが、条約が調印された後において批准を国会に求むべきことは当然であります。しかしながら、その交渉の過程において一々国会にこれを諮るべきものでないことも、きわめて明瞭であると思います。(拍手)
 司法権や警察権の問題についてお話がありました。いわゆる司法権が行政から独立しておる三権分立は当然でありますが、しかしながら、検察の問題や警察の問題は、これは言うまでもなく行政の部門に属しておるものでありますし、決してこれがいわゆる行政権から完全に独立した形をとっておるものでないことは、きわめて明瞭であります。(拍手)
 次に、民主政治というものは、国民が安心しておのおのの生活を楽しむことのできるような、平穏な生活のできるような政治を行なって、そして国民に対して愛情を持った政治をしなければならぬというお話でありましたが、これはその通りであります。私どもは、最近の社会事情から言うと、集団的暴力によってそういう平穏な多数の生活が脅かされているような事態を、はなはだ遺憾とするものであります。(拍手)
 労働政策について、われわれが権力主義であり、労働者を弾圧しておるというお話でありますが、私どもは、われわれがすべてこの民主政治を完成していく上においては、おのおのが民主的に成立した法律秩序を守っていくということが前提でなければならぬと思います。私は、この問題については、あらゆる国民がそれを守らなければならないのであって、たとい労働運動という名においても、それは例外となすべきものではないと思います。(拍手)しかしながら、おあげになりましたような正常なる労働運動を、私どもは法や権力でもって弾圧するようなことは決していたしておりません。(拍手)
 公労法等の規定が憲法に違反するというお話でありますが、私どもは、そうは考えておりません。ただ、ILOの八十七号の批准の問題につきましては、これまた長い間の議論のある問題でありまして、国内の法制等の建前もございますので、労働問題懇談会に付議して慎重審議しておることも御承知の通りであります。私どもは、その結論を得て政府の態度をきめたいと考えております。
 核兵器による全面戦争ということがだんだんなくなっていき、局地における紛争も平和的に解決せられる傾向にあるというお話につきましては、すでに外務大臣の外交演説におきましても明らかにいたしておる通り、全くそういう傾向にあり、また、そうすることが望ましいと私は思います。しかしながら、現在の国際情勢は、なお東西両陣営の間の不信と対立は解消されておらないということも事実であります。われわれが今後いろいろな意味において努力しなければならぬことは言うを待ちません。私どもは、なるべく平和的手段によって、話し合いによって解決されるような方向にあらゆる努力を続けていかなければならぬと思っております。しかし、今日われわれがとっておる、自由主義の国々と提携をし、また、アジアの一国としての立場を堅持し、国際連合に協力するという外交の根本方針を今日再検討して、これを変えなければならないというような事態とは、私どもは考えておりません。
 中立政策についてのお話は、先ほど私がすでに施政方針の上におきましても明らかにいたした通りでございます。オーストリアの例をおあげになりましたが、この問題は、その国の置かれておる地理的の状況や、政治的の状況や、社会的な状況、軍事的の状況、いろいろの状況からきまるのでありまして、オーストリアがこうであるから日本が当然そうでなければならぬなんて考えることは、私は、外交上はきわめて危険であると思います。
 安保条約の問題につきましては、社会党は、以前から安保条約の廃棄を主張されております。私どもは、この安保条約ができてから今日までの状況を考えまして、日本の安全保障の上にこの安保条約が相当な貢献をしたことを、われわれは認めざるを得ないのであります。しかしながら、その規定の内容を見まするというと、この安保条約が成立した当時とは、今日の日本の状態は変っております。また、日米の関係も違っております。われわれは、できるだけ合理的な範囲においてこれを改定するということが望ましいと思います。しかしながら、今おあげになりましたような、この改定が日本を戦争に引き込むところの、巻き込むところの危険を増加するような御議論は、私どもは絶対にさように考えておりません。
 沖縄、小笠原を条約地域に入れるかいなかの問題につきまして、私が沖縄、小笠原を入れるということをこの国会で申したようなお話でありましたが、私は、そういうことを申したつもりはございません。よく、この問題は重大な問題であり、国民の間にも議論のある問題であるから、十分国民世論の動向を見きわめて交渉していきたいということを申しております。(拍手)従いまして、われわれは、これを廃棄する意思もありませんし、また、御説のように改定交渉を打ち切るという考えは持っておりません。あくまでも合理的な立場においてこれが検討されることを望んでおります。
 集団的安全保障をもってこれにかえたらいいじゃないか、中ソ、日米というようなものを入れて、その集団的な安全保障条約といいますか、不可侵条約を作って、これで安全を保障したらいいじゃないかというお話でありますが、そういうものは、現在の国際情勢からいって、実際、奇襲防止の問題や、あるいは核兵器の製造禁止の問題や、核実験禁止の問題等に関する国際会議がなお円満に進行しておらないという現状では、私は、そういうことは現実から離れておると思います。また、さらに一歩譲って、そういうことが可能であるといたしましても、これを誠実に裏づけるような具体的な保障がない限りは、かつて日本とソ連との中立条約についてわれわれが経験したようなことを国民は忘れ得ないのであります。
 日中関係についてのお話がございました。私どもも、日中関係が昨年の五月に中絶をいたしましてから今日に至っていることは、非常に遺憾に考えております。ただ、日中関係がかくのごとくなったことが何か岸内閣もしくは日本側のやった態度によるというふうなお話でありますが、これは、私は事実に反しておると思います。決して私どもの方からこれを断絶したような態度に出たことはございません。また、われわれ自身が中国に対して敵意を持っておるようなことを宣伝されておりますが、決してそういうつもりは毛頭ないのみならず、そういう態度をとってはおりません。また、私がアメリカに参って日米新時代というようなことを申しておりますが、それを、今鈴木委員長の言われたように、何か軍事的の関係における新時代というふうにおとりでありますが、それは、あのアイゼンハワーと私との共同コミュニケをごらん下されば、そういう意味じゃない、いわゆる占領時代におけるところのいろいろな関係や、あるいはその後に引き続いての問題を一切清算して、日米が真に対等な立場において両国の理解と信頼の上に提携を考えようというのが、日米新時代の真精神であります。従って、そういうことが中共側を刺激するということは、私は、これは誤解といわざるを得ないと思います。
 鳩山、石橋内閣時代のように中国との友好関係を考えろ、バンドン会議の原則にものっとれというお話であります。私は、すでにしばしば述べております通り、今日、中共とわれわれの方とは、政治的の考え方やあるいは政治形態を異にしておるけれども、お互いがそれを尊重し合って、それに対しては干渉しない、おのおの理解し尊重し合って、そして経済やあるいは文化の交流を重ねていこうじゃないかということを申しておるのであります。しこうして、このことは、バンドン会議の原則の、内政不干渉の原則と全くぴったりくるのでありまして、決してこれに反するものではないのであります。
 さらに、最後に一言いたします。この二十四日の自民党の総裁選挙のことにつきましてのお話がございました。これはわが党の内部の関係でありますが、すでに御承知の通り、私は党員の圧倒的多数の支持を得て総裁に再任をいたされておりますから――いろいろ党員の間には御議論もあります。われわれの党におきましては非常に党員が多数であります。われわれの方ほど党員のない社会党におきましても、いろいろな御議論があるように承わっております。われわれの方におきましても議論はあります。私は、党の総裁として、党員の意見に対しては謙虚に反省するつもりであります。(拍手)
     ――――◇―――――
#22
○松澤雄藏君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
#23
○議長(加藤鐐五郎君) 松津君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○議長(加藤鐐五郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時五十六分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 愛知 揆一君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
        文 部 大 臣 橋本 龍伍君
        厚 生 大 臣 坂田 道太君
        農 林 大 臣 三浦 一雄君
        通商産業大臣  高碕達之助君
        運 輸 大 臣 永野  護君
        郵 政 大 臣 寺尾  豊君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
        建 設 大 臣 遠藤 三郎君
        国 務 大 臣 青木  正君
        国 務 大 臣 伊能繁次郎君
        国 務 大 臣 世耕 弘一君
       国 務 大 臣 山口喜久一郎君
 出席政府委員
        内閣官房長官  赤城 宗徳君
        法制局長官   林  修三君
        総理府総務長官 松野 頼三君
     ――――◇―――――
○朗読を省略した報告
 (要求書受領)一、去る二十四日、内閣から、中央更生保護審査会委員に坂西志保君を任命したいので、犯罪者予防更生法第五条第一項の規定により本院の同意を得たい旨の要求書を受領した。
 (報告書受領)
 一、昨二十六日内閣を経由して法務大臣愛知揆一君から、破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第三十六条の規定に基く昭和三十三年団体規制状況の年次報告書を受領した。
 (応召議員)
 一、今二十七日召集に応じた議員は次の通りである。
 滋賀県選出          堤 康次郎君
 (議席変更)
一、今二十七日衆議院規則第十四条但書により議長において議席を次の通り変更した。
     四三六        丹羽喬四郎君
     四三七        前田  郁君
     四三八        大久保武雄君
     四三九        林  唯義君
     四四〇    群馬県第三区選出議員
     四五四        重政 誠之君
 (議案提出)
 一、昨二十六日内閣から提出した議案は次の通りである。
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案
 恩給法の一部を改正する法律案
 警察法の一部を改正する法律案
 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案
 法務省設置法の一部を改正する法律案
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案
 特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案
 文部省設置法の一部を改正する法律案
 盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案
 国立学校設置法の一部を改正する法律案
 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案
 開拓融資保証法の一部を改正する法律案
 特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律案
 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案
 中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案
 郵便貯金の旧預金者等に対し旧預金部資金所属の運用資産の増加額の一部を交付するための大蔵省預金部等損失特別処理法第四条の臨時特例等に関する法律案
 (議案受領)
 一、昨二十六日予備審査のため内閣から送付された次の議案を受領した。
 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案
 社会福祉事業法の一部を改正する法律案
 捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案
 (議案付託)
 一、昨二十六日委員会に付託された議案は次の通りである。
 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)
 恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)
 科学技術庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)
 法務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)
 特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)
 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
         以上六件 内閣委員会 付託
 警察法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)
            地方行政委員会 付託
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)
              法務委員会 付託
 盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)
 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)
         以上二件 文教委員会 付託
 農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案
 (内閣提出第五八号)
 開拓融資保証法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)
       以上二件 農林水産委員会 付託
 特定物資輸入臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)
 商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(内閣提出第六一号)
 中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出第六二号)
         以上三件 商工委員会 付託
 郵便貯金の旧預金者等に対し旧預金部資金所属の運用資産の増加額の一部を交付するための大蔵省預金部等損失特別処理法第四条の臨時特例等に関する法律案(内閣提出第六三号)
              逓信委員会付託一、
昨二十六日予備審査のため内閣から送付された案は次の委員会に付託された。
 市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出第六四号)(予)
            地方行政委員会 付託
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(予)
              法務委員会 付託
 社会福祉事業法の一部を改正する法律案(内閣提出第六六号)(予)
            社会労働委員会 付託
 捕獲審検所の検定の再審査に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六七号(予)
              運輸委員会 付託
ソース: 国立国会図書館
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