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1958/02/24 第31回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第031回国会 法務委員会 第8号
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1958/02/24 第31回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第031回国会 法務委員会 第8号

#1
第031回国会 法務委員会 第8号
昭和三十四年二月二十四日(火曜日)
    午後一時二十四分開議
 出席委員
   委員長 小島 徹三君
   理事 鍛冶 良作君 理事 田中伊三次君
   理事 福井 盛太君 理事 村瀬 宣親君
   理事 井伊 誠一君
      綾部健太郎君    川島正次郎君
      竹山祐太郎君    辻  政信君
      中村 梅吉君    馬場 元治君
      濱田 正信君    三田村武夫君
      大貫 大八君    中村 高一君
      志賀 義雄君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 愛知 揆一君
 出席政府委員
        検     事
        (大臣官房司法
        法制調査部長) 津田  實君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総長      横田 正俊君
        最高裁判所事務
        総局事務次長  内藤 頼博君
        判     事
        (最高裁判所事
        務総局人事局
        長)      守田  直君
        専  門  員 小木 貞一君
    ―――――――――――――
二月二十三日
 泥酔犯罪者に対する処罰法制定に関する請願(
 河上丈太郎君紹介)(第一七一一号)
 布施市に大阪地方裁判所支部設置に関する請願
 (大倉三郎君紹介)(第一八〇二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
二月二十三日
 占領軍による被害者救済のための立法措置に関
 する陳情書(宮城県議会議長高橋文五郎)(第
 三九七号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
 一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(
 参議院送付)
 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出第一一九号)
 検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出第一二〇号)
     ――――◇―――――
#2
○小島委員長 これより会議を開きます。
 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律等の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題として審査を進めます。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。
 三田村武夫君。
#3
○三田村委員 去る十七日に、東京地方裁判所裁判官一同の名をもって当委員会に提出されました「裁判官報酬法の改正について」と題した要望書に関しまして、裁判司法上の基本問題、裁判官の地位などの問題について、最高裁判所当局の御所見を伺いたいと存じます。この決議文は、十九日の各新聞紙上に大きく報道されたことは御承知の通りであります。ごらんになっておると思いますが、朝日新聞には「検事と同格はゴメン」「東京地裁の判事が決議」「俸給改正案に反対」「頼むに足らぬ法務省」という見出しで大きく出ております。読売も同じでありますが、「検事と同じ給料はゴメンだ」「”違憲”と判事怒る」「新給与で国会へ決議文」別の新聞には「裁判官、大いに怒る」とあります。「検事と同格はご免」「報酬改正案めぐり国会に要望書出す」、こういう記事になって現われたのであります。町の話題に大きく取り上げられたことも御承知と思いますが、私もしばしばその話題を耳にするのであります。裁判所も総評並みになったなあ、賃金値上げ闘争の始まりだ、裁判所も変ったものだ、というようなささやきを耳にするのであります。これは非常に重要な問題でありまして、裁判官の権威、信用を高からしめるということはもとより必要であり、私もまた年来の主張であったのであります。そこで、こういう問題が提示されて参りましたので、一応その問題の真意、真相、その内容に含まれたものについて十分裁判所当局の御所見も伺っておきたいのであります。第一線の裁判官が決議の形式で直接国会にこのような意見書を出されたことは、私の関する限り前代未聞であります。全く異例中の異例ともいうべき事案でありますが、しかもこの要望書の内容を見ますと、冒頭にも書いてありますが、末尾には、「法案の審議にあたられる国会においては、事が単なる技術的事務的なものでなく、裁判制度そのものに連なる根本的本質的なものであることに留意され、特に慎重に審議されるよう要望してやまない。」こういう言葉があるのであります。従って、私たちは軽々に看過し得ない問題であると考えるのであります。最初に最高裁当局にお尋ねいたしたいのでございますが、私はこの問題に関する限り、実は田中長官に御出席願って、一つえりを正して厳粛に御所見を伺いたいと思っておったのであります。きょうは御出席がありませんので残念でありますが、一つ最高裁当局においても、そういうお気持から率直に真摯なる御所見をお述べ願いたいと思うのであります。田中長官は、当委員会で最高裁機構改革に関する法案が審議される際、御出席になりまして、十分意見を述べられたことがあるのであります。そのとき私は委員長をいたしておったのでありますが、長官はさらに言葉を加えて、これからできるだけ多くの機会をとらえて国会にも出席して意見を述べたい、所見を述べる機会を与えられたことは非常に幸いだと思う、こういう御意見があったのです。裁判は、言うまでもなく裁判所のためにあるのでなくて、国民のためにあるものでありますから、やはり国会を通して裁判所の最高責任者がその所信を述べられることは、私は非常にけっこうだと思う。特に今度の問題のように、一般世上に大きな話題を提供したのでありますから、私は当然長官の御出席があってしかるべきものだと考えておったのであります。御出席にならないことははなはだ残念でありますが、また長官には私あとから申し上げるかもしれません。別な機会に、口頭なり、あるいは書面なりでその御所見を伺いたいと思っております。
 そこで、まず最初にお尋ねいたしますが、最高裁判所当局は、この要望書の内容を十分御検討になっておられることと思いますが、その点はどうかということが第一点。
 それから、このような形式で、このような内容の要望書が国会に出されたことを、どのように御判断なさるかということであります。最初に申しましたように、何か裁判官が賃上げ要求の決議を国会に突きつけたような印象を与えておることは、はなはだ遺憾だと私は思います。このような形で出されたことについて、形式、内容をどのようにお考えになるか。
 それから、すでに活字になって出てしまったのですから、最初に伺っておきますが、新聞社としては当然な扱いでありますが、記事にする場合に、東京地方裁判所石田所長の意見を聞かれたのでしょう、所長の談話が載っております。これは読み上げることを省略いたしますが、石田所長の言われた談話について、同様にお考えですか、あるいは最高裁当局としては、この談話について別な御所見があるのか、この点もあわせて伺っておきたいのであります。
 以上三点をまず伺います。
#4
○横田最高裁判所説明員 先般東京地方裁判所裁判官一同という名をもちまして、国会に、報酬法の改正についての要望書が提出されましたことは、当時国会へこの書面が出ますと同時に、最高裁の方にも念のためにということで送付して参りましたので、内容は存じておるのでございます。この内容につきましては、ここにるる詳細に述べてございますように、裁判所としてのこの問題に対する立場を非常に詳細に意を尽して書いておるようでございます。裁判所に勤めまするおそらくすべての人が、同じような気持でおるのではないかと思うのでございます。
 なお、これを国会の方へ直接裁判所から提出しますということは、御指摘のようにまことに異例でございましょう。おそらく今までこういうことはなかったのではないかと思います。こういうものが国会に出されなければならなかったということにつきましては、私も非常に遺憾に存ずるのでございますが、この地方裁判所の裁判官の気持を察しまするに、ここに述べてございますように、この報酬問題と申しますものは、単に金銭上の問題でなく、いわゆる裁判官の地位がいかに重要なものであるかという点がここに述べられておる全趣旨でございまして、従いまして、この点につきましては裁判官が日夜考えておることでございます。ただ、今回の報酬法の内容につきまして、内容がここに述べてございまするいわば裁判官の理想とかなり懸隔がございますので、それを非常に遺憾にしておるわけでございます。これを訴える方法といたしまして、先ほど御指摘のように、賃上げ運動というふうに見られる方もあるかもしれませんが、こういう裁判官の気持をお訴えをする最も適当な場所は、やはり国家の最高機関であられる国会をおいてはほかにございませんので、実にやむを得ぬ処置といたしまして国会へお訴えをいたした次第であろうと推察いたすのでございます。なるほど、形式といたしましては、こういうことはあまりない方がいいとは思いまするが、先ほど申しましたようなやむにやまれない方法といたしまして国会へお願いをいたすということであろうと考えるのでございます。
 なお、新聞にこれが出ました点は、これはたしか産経の記者の方だと思いますが、国会方面でおそらくこのことを聞かれたと見えまして、最高裁の方へ一度見えたことがございます。しかし、これは地方裁判所の問題であるから、地方裁判所の方へ行って聞いてくれと申しまして、たしか地方裁判所の石油所長に会われましていろいろ事情を聞かれ、それがたしか読売、朝日と三紙だったと思いますが、それに流れまして、記事になったように記憶いたします。従いまして、裁判所の方で特にこれを新聞紙に積極的に発表したというようないきさつではございません。なおその際所長が――実はここに新聞を持ってきておりませんので、どういう内容のことを申したかはっきり記憶いたしておりませんが、おそらくこの中に書いてありますような地方裁判所の裁判官一向の気持を察しまして、所長が何か申したのではないかと思います。
#5
○三田村委員 ただいま事務総長のお述べになったことは非常に重要だと思います。第一の、この要望書と申しますか、議決書と申しますか、決議文と申しますか、その内容に盛られておるものは、ほとんど全裁判官が考えている事柄だ、こういう御意見のように伺いました。それからこういう要望書を国会に直接出したことについて、異例中の異例ではあるがやむを得ないことだと了承されておるようであります。
    〔委員長退席、福井委員長代理着席〕
もちろんそうでございましょう。私たちが資料をいただいたときは、最高裁判所の封筒に入ったのをいただいたのでありますから、最高裁判所から配付されたものであります。直接東京地方裁判所からいただいたものではないのであります。内容を御承知であることは当然であります。そういう立場でございますから、私は特にきょうは長官の御出席を求めたのでございます。
 今事務総長は東京地裁の石田所長がどういうことを言ったか自分は記憶がないとおっしやいましたが、本日この委員会へ御出席願った趣旨は、もともとこの問題について御意見を伺いたいということなのであります。これは非常にうかつ千万な話で、やはり最高裁当局として事務総長が長官にかわって御出席になったのですから、この問題について所長がどういうことを言っているかということは十分御承知の上で御出席になるべきはずだと私は思います。その点についてはあえて追及はいたしませんが、そこで、私は逐次その内容についてお尋ねいたしたいと思います。
  こういう考え方は、今、事務総長は、全裁判官が持っている考え方だとおっしゃいました。出し方も異例ではあるけれども、やむを得ない手段だとおっしゃいました。そこで私は、提出した形式についてはあとまた司法行政の問題のところでお尋ねいたしますが、内容はなかなか激しい調子です。最初に書いてある言葉は、「裁判所は、司法制度に関してさえ、閣議においても正式に発言する権限なく、国会に対する法律案の提出権もなく、これらは法務省の所管とせられながら、しかも法務省が裁判所のためには全く恃むに足りないことに想い到るとき、われわれは、怒りと憤りとをさえ覚えるのであります。」そうして、十三日の夕刻、期せずして一堂に集まり、別紙の要望書を議決したと書いてあります。これは非常に重要な内容を持っておる。裁判所は司法制度に関して閣議においても正式に発言する権限がないのだ、これは今制度上こうなっております。国会に対する法律の提案権もないのだ、これはその通りであります。中に書いてある通り、最高裁判所は、憲法の定むるところによって、法律の違憲審査権を持っている。違憲審査権を持っている裁判所みずからが法律の提案権を持っておるのは、論理上おかしいのです。こういう事項の所管は法務省である。その法務省が全く頼むに足りない、そこでわれわれは怒りと憤りを覚えるのだ、その怒りと憤りの上に立ってわれわれはこの内容を議決したとあります。これは、法律についても、また良識の点においても、裁判官自身が主張されるように、最も高いレベルの方々の要望であり、文書であります。一体こういう点をどのように考えられるのか、まずこの点からお尋ねしておきます。今、事務総長が言われたように、こういうものの考え方、法務省頼むに足らず、怒りと憤りを持つという意思が全裁判官の意思かどうかということをお尋ねいたします。
#6
○横田最高裁判所説明員 ただいま私が申し上げましたのは、要望書の内容の点を主として申し上げたのでございまして、この要望書の上書きと申しますか、前文のような部分につきましては、あるいは言葉の使い方等で、御指摘のような多少感情に走ったと思われる面もないではないのでございますが、これも、実はこの法案が出ますまでのいろいろないきさつにつきましては、この決議をいたしまする前に、最高裁判所当局にこの報酬法案の提案に至りますまでの事情を説明してくれということがございましたので、詳細にその説明をいたしたのでございますが、その間におきまして、今回の法案の提案者でございます法務省がとりました態度が、裁判官から見ますと、ここに書いてございますように、「全く恃むに足りない」というふうに裁判官諸君が考えられた、それがこの前文に出てきておるのではないかと思うのでございます。この法案の提案されますまでのいきさつにつきまして、裁判官がそういうふうに考えますことも無理がないと私どもも実は思う点がございます。それは、いきさつをだんだん申し上げますればおわかりいただけるかと思いますが、そういう気持がここに表われてきておるのではないかと考えます。
#7
○三田村委員 今、事務総長は、法案提案に至る経過、その過程のことについては地方裁判所側に詳しく説明したとおっしゃいましたが、私も実は法案提案の際には、いろいろこの扱いについて苦慮した一員であります。裁判所側の御意見もありましたし、法務省側の立場もありましたし、また大蔵省の主張もありました。御承知の通り、この文書にありますように、法律の提案権は法務省でありますから、法務省と相談の上、事務総長にも来ていただいて、一応話し合いをしたはずなんです。最高裁判所当局は、こういう内容では困るのだ、それでは困るのだということを言い切られてはおりません。どういう形で内部的に処理されたかわかりませんが、最高裁判所当局は、この法案の内容では困るのだということはまっ正面からおっしゃっておりません。私は、その間の事情は、あっせんに加わった一員でありますから知っておる。そうであります。そこへもってきて、今、事務総長は、説明した結果こうなったのだ、最高裁も裁判官一同も、法務省頼むに足らずという態度をとらざるを得なくなったのだ、こうおっしゃる。
 そこで、私はお尋ねするのですが、それではこれから一体どうするのですか。ここにあるように、閣議においても正式に発言する権限もない、国会に対する法律案の提案権もない、それは法務省の所管だ、すなわち政府の所管だ、その法務省も政府も頼むに足らないという裁判所の態度をおとりになるならば、制度上一体どうされるのか、全然国家と別の機関になるということか、どういうことか、これは、どういうふうに調和しどのようにこれを調整していく案をお持ちなのか、法務省頼むに足らずと言い切ってしまわれるなら、どのようになさるお考えか、まず伺いたい。
#8
○横田最高裁判所説明員 ただいま御指摘の点は、裁判所といたしまして、従来非常に頭を悩ましておる問題でございます。裁判所におきまするいろいろな法律の提案権は、申すまでもなく法務省等にあるわけでございまして、従いまして、われわれが、これが最もいい内容であると思われるものが必ずしも法務省を通じて出されない場合がある、今回の問題もその一つ、こういうふうにわれわれは見ておるわけでございます。あるいは予算の面につきましては、御承知のように最高裁判所の独立性というところからいたしまして、大蔵省と折衝のつきません場合には、別に二重予算を提案するということが認められておりまするが、法案の点に
 つきましては何らそういう道がないわけでございまして、やはり政府当局と折衝して、できるだけ裁判所の納得のいくような内容にこれを持っていくということ、あるいは国会にお願いいたしまして、われわれの希望するような法律を作っていただくかあるいは国会において政府の提案いたしておりますものを、われわれの希望するように修正をしていただくか、この道があるのみでございます。従いまして、従来予算の問題は別といたしまして、この法律案の提案につきましては、われわれは非常な苦労をして参っておるわけでございます。これを今後どういうふうにするかという問題につきましては、正直に申し上げまして、現在のところまだ私どもは成案を得ておりません。しかしながら、これは特に自民党等におきましてもやはりわれわれの立場を相当理解していただきまして、そういう裁判所の意向が最もよく反映できるような制度がどうしたらできるかということについては、いろいろ御心配をいただいている向きもございますので、われわれといたしましては、そういう御意向のある点も大いに多といたしまして、今後そういう面についても多少まとまりました方法によりまして、検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、またここで申し上げますような成案はもちろん得ておらない次第でございます
#9
○三田村委員 私が申し上げるまでもなく、非常に良識の高い、みずから高きをもって任じておられる裁判官の諸君がこういうことを言われるのです。そこで私も何とかいい方法はないかということを多少心配しておる一人でありますが、こういうことを言われる以上、もう少し具体的な御意見がほしいのです。法務省頼むに足らずと言い切ってしまって、そうして先ほど事務総長の言われましたように、東京地方裁判所から出してきたことは無理からぬことだ、そういうことをおっしゃいますと、東京だけでなくて簡易裁判所も出してくるかもしれません。あるいは大阪の裁判所も出してくるかもしれません。一体裁判行政の主体というのはどこにあるのか、この問題に戻ってこざるを得ないのであります。もともと閣議における発言権もない、法律案の提案権もないということ、これは裁判所が特にみずから求めて主張されることなんです。その司法行政のあり方についても、司法権はあくまでも独立しなければいけない、これはわかります。そのことのゆえに、裁判所は営繕管理まで裁判所の専管にしなければならないという思想をお持ちなんです。全部一切裁判所の手でやるのだ、政府や行政機関の干渉は許さないという建前をおとりなんです。とっておって、現在の憲法の建前上、今、事務総長のおっしゃった通りに、そういった予算とかあるいは法案の提案権というものは政府にあるのだ、実質上の事務所管は法務省にあるのだという建前をとっておるのです。それがふんまんやる方ないやり方であって、どうにもがまんできないから、こういう要望書を国会につきつけるというなら、どのように今後ものをお運びになるお考えかということを伺わないと私は非常に困る。これが単なる利益団体の陳情書とかあるいは決議文ならともかくといたしまして、最も良識の高い、そのことのゆえに制度上上裁判官の地位をもっと高めなければならぬという思想が盛られておる。その立場からの御発言ですから私は伺うのです。
    〔福井委員長代理退席、委員長着席〕
このような決議のあり方、表現のあり方をお認めになるならば、法務省頼むに足らずという、そういうふうに考え方を割り切っておっしゃるなら、私はどういうお考えかということをお尋ねせざるを得ないのであります。御所見を伺いたい。
#10
○横田最高裁判所説明員 先ほど申し上げましたのは、東京地方裁判所の裁判官の要望書にございます気持を申し上げたのでございます。ただ法務省が裁判所のために、よく最善を尽してくれておらないということに対する、今後の裁判所としてのやり方と申しますか、それをどうしたらもっと裁判所のためにいろいろやってくれるようになるかということにつきましては、先ほどから申し上げましたように、法律的にもまた実際問題といたしましても、非常に重要な問題でございまして、裁判所といたしまして、ここではっきり申し上げる成案をまだ得ておりませんので、これ以上お答えをすることはできない次第でございます。
#11
○三田村委員 私はここで法務省の代弁をやるのじゃありません。政府の代弁をやるのじゃないのであります。裁判所が特に主張される現状の建前から申し上げておる。繰り返し繰り返し、法務省頼むに足らず、裁判所の立場もよく理解してくれとおっしゃいますが、それならどういうことがあり得るかということを私はお尋ねする。これ以上事務総長を追及はいたしませんが、重要な問題として、最高裁御当局の御検討を願いたいと思うのであります。
 次の問題は、先ほど事務総長が言われましたこの内容に盛られておるのは、大体においておおむね同感だと言われました点についてでありますが、第一に、今ここで審議されているような法案の内容は、憲法の精神を無視して、裁判制度の基礎を危うくするものだ、こういうことが首尾一貫盛られている。「この法案には、これまでに例をみないほど、憲法上保障された裁判官の特別な地位に対する考慮が欠け、同時に提出された検察官の俸給等に関する法律の改正案と対照すると、その根底には、「裁判官の待遇も、検察官の待遇と同等でよい。」とする考えがひそんでいるように思われる。かような考え方に基いて立案された法案は、到底われわれの承服しえないところである。」こういうふうに書いてある。そして、「われわれは、右の法案に対しては、遺憾ながら、強く反対せざるを得ない。なぜならそれは、憲法の精神を無視し、この精神に従って確立された裁判制度そのものの基礎を危うくする虞れがある」こういうふうに書いてある。どの点が一体憲法の精神に反し、裁判制度の基礎を危うくするかという点について、具体的な御所見がありましたならば御説明願いたい。
#12
○横田最高裁判所説明員 これは非常に強いお言葉で書いてございますが、要するに、裁判官の地位を重視し、これにふさわしい待遇を与えなければ、いわゆる司法裁判というものが適正に行われないということを強く言っておるわけでございます。憲法を引き合いに出しておりますのは、御承知のように、この中にも書いておりますように、特に裁判官だけにつきまして、憲法の中で「定期に相当額の報酬を受ける。」ということをうたってございますのは、これは一般の役人と違いまして、裁判官には特に優秀な待遇を与えるということをうたったものであると解釈されるわけでございます。従いまして、その憲法の趣旨に沿った措置がとられておらなければ、これはひいては裁判そのものにいろいろよくない影響が及ぶということが、この骨子であろうと考える次第でございます。
#13
○三田村委員 特に裁判官の地位に対しては優遇しなければならないという趣旨が憲法の中に盛られているんだ、その憲法の趣旨を十分貫かないと、ひいては公正な裁判のあり方についても影響があるんだというようなお話であります。私はなかなか重要な御発言で、容易に納得しないのでございますが、それなら私は続いてお尋ねいたします。
 前段申し上げましたように、この要望書の中で一貫して流れておる主張、思想といいますか、これは今おっしゃいました裁判官の優位性の問題であります。つまり裁判官と検察官の地位について、待遇については当然等差を設ける必要があるんだという主張のようであります。この根本の問題、この中に流れている基本的なものの考え方について、私は一、二点具体的にお尋ねいたしますが、なるほど裁判官は身分の保障を有し、不覊独立、きぜんとして各自の責任において職務を遂行することであるがゆえに特別の高い地位にあり、高い給与を支給されるべきであるということは、これは当然でありますが、そのことによって差違をつけようという解釈、主張に対して、私は理解しがたいものであります。これは、裁判官という職務上当然の建前でありまして、独立不覊の立場になければならぬということは、裁判官の職務上の地位からくる当然の結果であります。一般の行政官が不覊独立、勝手なことをばんばんやったら、これは統一ある行政の実行にはなりません。一般の行政事務というものは、これは一つの一貫した政府作業であり、行政は一つの事柄を目標にして行われるのでありますから、これは上意下達の関係でありまして、勝手ほうだいなことをやっておると、とんでもない支離滅裂なことになってしまいます。だから、これはちゃんとそういう建前になっておるのであります。検察官も同様でありまして、これは検察庁法の規定によって、上官の指揮に従うということは、検察行政の当然のあり方であります。ある大きな事件を捜査する場合に、ばらばらの捜査をやられたら困ります。だから、こういう建前になっておるのでありまして、これは職務の内容上当然あるあり方であります。そのことのゆえに裁判官が独立不覊の身分を保障され、きぜんとして各自の責任において判断を下すのだから特別高い地位につけなければならぬという考え方には、私はどうしても理解しがたいものがある。職務の内容からくる当然の建前であります。行政官や検察官と違うんです。行政官や検察官が、裁判官と同じように、各自勝手に不覊奔放な処置をやったら大へんなことになる。そこに職務上の区分があるのでありまして、憲法にそういうふうに書いてあるから、裁判官だけ行政官や検察官とは制度上別個に高い地位に置かなければならぬという御主張に、私はどうしても理解しがたい点がある、この点はどうでしょう。
#14
○横田最高裁判所説明員 裁判官の地位が高くなければならぬということは、ただいま御指摘の不覊独立ということがもちろん非常に重要な点であろうと思いますが、それだけではなく、結局一国の法律の最後の番人である裁判官というものは、これがいわゆる最後の正義の実現をする国家機関でございまして、その点が他の行政官とは本質的に非常に違いがあるわけでございます。検察官といえども、結局この裁判所の判断のもとにその検察官の考えが正しいかどうかということが決定されるのでございまして、いわば検察官は裁判につきましては一つの当事者にすぎないという関係があるわけでございます。これは他の一般行政官につきましても、やはり裁判所の裁判を受けるという立場に立つわけでございます。裁判官がそういう職務を持っているという点から、優位に立つのはむしろ当然のことであろうと私は考えます。
#15
○三田村委員 私はどうもその点納得しがたいのであります。今、事務総長は、最後の正義を守る、最後の基本的人権を守るのは裁判所と言いましたが、なるほど制度上はそうでありますが、基本的人権の保障とか正義を守るということは、裁判官だけではないのでございます。国の政治全部がその任務を持っている。裁判官だけではございません。すべての立法、行政作用も、人権の保障と正義の実現のために直接、間接に動いている。裁判官だけではございません。裁判官のみがこれを実現するものでないということは、当然のことであります。司法統計を見ましても、検察庁が受理した全刑事事件七十四万六千人の中で三分の一ぐらいの二十六万二千余人は不起訴処分になっておる。三分の二弱が裁判所に起訴されておるのでありまして、そのうち公判請求はわずかに十一万六千人余りであります。全刑事犯の七分の一くらいにしかすぎません。裁判官だけが基本的人権の保障と正義の実現に当るというそういう考え方自身が私は少しおかしいと思う。国の活動、立法、行政、すべての作用が基本的人権の向上と正義の実現のために動いているんだ、裁判官だけが動いているんじゃないのでございます。どっかに私は裁判官諸君の思い違いがあるのではないかと思う。これは私はよほど冷静にお考え願いたいと思うのであります。こういうことが書いてある。「制度的にも、判事と検事との任用資格は、截然と区別されている」任用資格のことはあとでしますが、「このことは訴訟法上検察官が弁護人に対応する一方の当事者とされていること、両者ともに裁判長の訴訟指揮に服しなければならないとされていることからも当然である」こういう立場です。これは訴訟構造上の問題でないんですか。裁判官が訴訟指揮権を持っているから、検察官、弁護人よりも一段高いところにいるんだという考え方は私は少し理解しがたい。検察官も弁護人も同等なんです。ここの中に出てくるのは、いわゆる形式上の権力主義です。訴訟構造の上の問題であって、裁判官が訴訟指揮をしているから、裁判官が一段高いところにいるんだという考え方は、私はどうかと思う。それなら裁判官を裁判する弾劾裁判所の裁判官は、すべての裁判官よりもっと高くなければならない、こうなるじゃありませんか。これは職務上の区分であって、何も裁判官が訴訟指揮権を持っているから一段高いところにいるんだということではない。裁判所の構造を見れば、裁判長は高いところにおる。裁判長が高いところにおるから、自分たちはその制度においても人格においても給与においても一番高いところにいなければならぬという考え方それ自身が、私は少しどうかしてやしないかと思う。私は裁判所を愛するがゆえに申し上げるのです。この点はどうです。
#16
○横田最高裁判所説明員 先ほど私が申しました基本的人権の保障、正義の実現は、裁判所だけがそれに当るというふうには決して申さなかったつもりでございます。結局、基本的人権の保障、正義の実現のいわば国家組織としての最後のよりどころは裁判所にあるということを申し上げるつもりであったわけでございます。なお、この中にいろいろこまかに書いてございますうちに、訴訟指揮の問題等をお取り上げになりましたが、何ゆえにそういう訴訟構造になっておるか形のことを申すのではなく、そういう訴訟構造に何ゆえになっておるかということが実は大事であろうと私は思います。これは何も裁判官が高いところにすわっておるからそういうことになるというような形式的なことではなしに、何ゆえにそういうことになっておるかという、その基本が問題であろうと私は考えております。
#17
○三田村委員 そういう議論をいつまでも繰り返しておっては果てしがありませんのでその程度にいたしますが、正直に申し上げて私はそう思わないのですよ。ことに、この中にも出てくるのですが、前の、裁判所は天皇の名において裁判を行なった、こういう立場の場合の裁判と違い、今の裁判は、これは天皇の名において行うのではなくて、国民の名において行う裁判なんです。訴訟構造の面においても、今、事務総長はそういう必要があってそうなっているのだとおっしゃいますが、それはそれでいいのです。いいのですが、そのことのゆえに、待遇の点において、地位の点において、一般の行政官や検察官と区別しなければならないという考え方が私はおかしいと思うのです。何も私は裁判官の地位を下げようというのではないのですよ。優遇することは賛成なんです。それは私はしばしばこの委員会で発言してきた。この間の十七日の委員会でもその前の委員会においても、私はほんとに声をつぶしてまでもこの点については発言したのです。これは事務次長がお聞きのはずです。そうではなくて、私はその考え方自身を今問題にしているのです。旧憲法時代の考え方はいけないのだということを首尾一貫この中で言われながら、裁判官の地位については一番高いところにすわっているのだという、何か権力主義的な考え方がそこにあるような気がしてしようがないのです。それでは、先般事務総長がここで言われました裁判官の民主化、ほんとうの国民のための国民の名による裁判ということとは、縁遠いことになると思うのです。つまり親しまれる裁判、国民の信頼度を深めていく裁判と縁遠いような気がするのです。この点を私は申し上げるのです。特に、私は田中長官においでを願って、えりを正して申し上げてみようと思っておった。事務総長もかつて裁判官の席にあられたのですが、私は、待遇の点において、あるいは地位の点において、裁判官が高いことのみが裁判の権威を高めることではないのだ、これを申し上げたいのです。ほんとうにいい裁判がりっぱにすみやかに行われるならば、国民は喜んでどんな待遇もいたしましょう、どんな高い地位も与えましょう、問題はむしろそこにあるのだと思う。私が特にこの要望書なるものを問題にするのは、これは町の学生が書いた要望書ではないのです。裁判官が書いた要望書なんです。判決をお書きになる裁判官が書かれた要望書なんです。言葉の調子で感情のおもむくところこういうことになったかもしれないという御発言ですが、それはちょっとここでは理解できない。裁判官一同の名において議決したとあるのだから、良識の高い裁判官がそういう軽率のものを書かれるとは思わない。大きな疑惑の的になっておるから私は申し上げるのです。この中にもずっと述べてありますが、法の支配を完全にし、これを保障するものは裁判機関以外にない、これは裁判の機能から来る当然のことでありますが、それがゆえに裁判官のみが高い地位の職務を担当しておるのだ、こういうものの考え方は、私はどうも理解しがたい。立法行政の作用中には法の支配の保障を待つまでもなく、当然動かなければならない多くの作用があるのです。多くの人間の社会ですから、裁判官の活動だけではなくて、行政官も検察官もみんなが、すべてのもののすべての機能が有機的に最も合理的に、より効果的に動くことによって、法の支配も完全になるのです。警察官の活動、検察官の活動、裁判官の裁判、こういうものが有機的に調和がとれて――おのおのその職務は違いましょう、立場は違いましょうが、全体の調和統合がとれて初めて法の支配が完全になり、基本的人権が守られていくのです。裁判所のみが高い立場におるのだという考え方には、どうしても私は理解しがたいものがあるのです。すべてのあらゆる機関の協力がなければ、裁判だって円滑にいきはしません。検事は低い地位でよろしい、裁判官だけが高い地位におればよろしいのだという考え方では、私は訴訟活動というものは円滑にいかぬと思う。完全な法の支配、完全な法秩序というものは守っていけないと思う。英米法の建前からいたしますと、裁判官の地位は特別高くなっております。そういうシステムから、占領中現在の裁判制度ができたのでありますが、それはそれでもいいのであります。それならば、私が言いたいことは、米英のように、裁判なんかもっと早くさっさとやってもらいたい。実際は、今の裁判所はそういうふうになっていないのじゃないですか。英米法の建前からすると裁判官の地位は高いのだから、この憲法上の建前を守らなければいけないという気持はわからないわけではないのですが、それなら裁判の内容も機能も米英並みに、もっといい裁判をすぱすぱとすみやかに行われていいはずなんです。この点はどうですか。
#18
○横田最高裁判所説明員 裁判官がいたずらにみずからを高しとしているのではないかというようなお気持がお言葉の間に見えるのでございますが、なるほど裁判所が国民の要望に沿ったような完全な能力を上げておりませんことは、私ども大いに申しわけないというふうに考えております。裁判官あるいは事務当局もその点に日夜心を砕いておる次第でございます。この要望書も相当調子が高い書き方をしておりますけれども、しかし、これをよくごらんいただきますれば、最初にもあげてございますように、われわれがいたずらに一人高しとするものでもなければ、検察官の待遇をことさらに引き下げようとするものでもない。むしろわれわれは、みずから裁判官の地位に値するかどうかについて絶えず謙虚に反省しつつあるということを言っております。決して裁判官みずから、一人高しというような気持を持っておるものではないのでございます。ただ、先ほどから申しますように、こういうまじめな裁判官が、安心して重大な国務でございます裁判ができまするように、政府当局はもちろん、あるいは国会方面におきましても、この裁判官の気持を十分におくみ取り下さいまして、これらの人々の気持に沿うようにいろいろな措置をとっていただきますよう、常々考えておる次第でございます。
#19
○三田村委員 私の申し上げることに誤解があるといけませんから、一言つけ加えます。私は、日本の司法制度、裁判制度、これを総括して表現いたしますならば、法の権威を守ることが一番大事だと思っているのです。この法の権威、裁判の信用というものを高められないところに民主主義は成長いたしません。しかもそれは、裁判所の中に、裁判官諸君の頭の中に法の権威が高まることでなくて、国民の中に、国民の感覚の中に法の権威が高まる、裁判の威信が高まることでなかったら何にもならない。どんなに裁判官自身が、その裁判官自身の自己の良心が清潔であり、高遠であり、高邁であり、高きをもって任じておられましても、それが国民に理解されなければ何にもならないということです。それは何にもなりませんよ。国民から裁判が権威を失い、信頼を矢ったら一体どうなる。民主制度の根底はくずれる。ここに私の申し上げておきたいことがあるのであります。なぜそういうことを申し上げるか、私は、現に昭和十二年以来衆議院に議席を持っておる一員でありますが、どういう因縁か、常に司法省関係の委員会にずっと席を置いてきました。私は寡聞にして、この中に言われておる旧憲法時代、日本の裁判には、大審院といい、控訴院といい、地方裁判所といい、下級裁判所、上級裁判所、めったに誤判事件など聞かなかった。あんまり聞いておりません。横田さんもおそらくそうだと思いますが、ありません。ところが近ごろは、次から次に誤判事件が出てくる。御承知の通り、新聞に報道されます。いかに裁判官が地位の点において、報酬の点において高い地位に置かれても、次から次に誤判事件が現われて、これが新聞あるいはラジオを通じて国民に報道されるときには、そのことによって裁判の権威、信用というものは失われるということを私は申し上げたい。私がちょっと拾ってみただけでも、誤判事件が七つあります。「裁判史上珍しいミス、簡裁で実刑を言い渡す」、「再犯執行猶予」、これは最近の事件でありますが、その前にでも、極端なのは一審、二審、三審とも誤審、昭和三十年、検事が非常上告しておる。刑法百三十条の法定額以上の罰金刑を言い渡した。これは住居侵入事件ですが、一審、二審、三審、最高裁までいってしまって、第一線の検察事務官がいよいよ罰金を徴収するようになって気がついた。気がついたが、検事の方も一審、二審、三審とも誤判を素通りさせてしまった。こういうことが報道されれば、いかに給与がよくても、いかに地位が高くても、裁判の権威は失われていきます。私は、日本の裁判官を愛するがゆえに言葉を強めて申し上げるので、この点は一つ誤解のないように願いたいと思います。
 そこで、この中に書いてあります司法権の独立、裁判の権威とはどういうことかということなんであります。この点について少しばかり伺いたい。これは最高裁判所機構改革の法案をここで審議した際にも、しばしば議論になったのであります。最高裁判所も下級裁判所も、裁判官諸公は、旧憲法下の大審院時代とは違うのだ、新憲法になってからは裁判所の構造、制度が違うのだ、こういうことを言われます。その通り変ってきつつありますが、日本の裁判、日本の司法は、あくまでも日本の裁判、日本の司法であり、前のような大陸系統をそのまま踏襲しなければならぬこともありませんし、また、米英法の制度をそのまま日本に持ってこなければならぬということもないと考えるものであります。やはり日本の裁判でありますから、国民感情といい、また長い歴史と伝統の上にある裁判というものはどういうものが一番よいか――今の憲法は米英法の建前をとっているから、およそこれに反するものはすべて憲法の精神をじゅうりんする、裁判の基本的権威を危うくするという考えには容易に同調し得ない。いささか私事にわたって恐縮でありますが、私は同僚委員諸君のお許しを得て申し上げたい。私自身みずから体験者の一人であります。私は、旧裁判所時代には、厳然として日本の司法は守られてきたと思います。私自身昭和十八年の九月六日つかまったが、それこそ何にもなかった。あの当時の軍政下に東条内閣を批判しただけ、こういう独裁的な強権政治をやっては、日本の議会政治、憲法がじゅうりんされる、この主張をやっただけでつかまって、百日入れられた。検束で入って、裁判所に身柄を移された。当時軍政下であったが、日本の裁判所は厳然として無罪の判決をしている。ここに判決等もあります。判決等を読み上げる繁雑はやめますが、あの当時の裁判官は検事と同格です。裁判官だけが厳然として司法の独立を守ったのかというと、中にはやはり検察官も厳然として検察官の態度をくずさなかった者があった。われわれを逮捕するときに、東条総理大臣の命令を岩村司法大臣が受けたが、直接の責任者であった松阪広政氏は敢然としてこれを拒否しております。受け取っていない。仕方がないから、それでは法律を作ろうというので、戦時刑事特別法で国政変乱罪というのを作って引っぱるようにした。引っぱるようにしたけれども、なお日本の検察庁は受け付けなかった。私自身知っている。戦時刑事特別法の国政変乱罪で百日たたいたけれども、何もない。裁判所に送ったら、裁判所では言論出版集会結社臨時取締法の人心惑乱罪でようやく受け取った。しかも国会の議席を持っておる者は政治論をやるのが当然だというので、裁判所は無罪の判決を書いております。当時の裁判長八木田政雄氏は、私はあとから聞いたのでありますが、実に厳粛な態度でやっております。やみ物資の横行する時代、食糧の足りないときです。イモの粉を一斗カンに入れて、二はい、三ばい買いだめて、イモがゆをすすりながら八木田裁判長は判決文を書いたと言っている。そこにほんとうの裁判の権威があると思う。何も地位を高めることに裁判の権威、裁判の独立があるのじゃないと私は思う。この点は私の発言は一つ誤解のないように御了承を願いたいと思います。私は裁判を愛します。私は日本の司法を愛する。それゆえに申し上げる。こういうものが出たことによって、どれだけ大きな疑惑を世間に与えるか、これはおわかりになりましょう。しかも事務総長はこの内容には賛成だとおっしゃる。これでよいかと私は申し上げたい。日本の司法の権威のために、裁判の権威のために私は申し上げておきたい。冒頭に申し上げましたように、きょうはえりを正して申し上げます。私は忘れもいたしませんが、十八年十二月十五日、令状で巣鴨の拘置所に行きました。接見禁止が解かれたのは一月八日であります。そのときに、係の弁護士に来てもらって、保釈の申請をいたしました。特に裁判長にお目にかかって、このことは間違いのないように伝えてほしい、自分は日本の議会政治を守るために、憲法を守るためにこの行動をとった、しかしながら、その政治家の言論をとらえて、人心惑乱なりとの罪名で、もしそれ国会開会中身柄を拘束されるならば、憲法じゅうりんになるのだ、健全な議会政治はなくなってしまうじゃないか、もし国会が再会になっても、依然として巣鴨の拘置所に身柄が置かれるならば、国会再会の前日巣鴨の拘置所から衆議院議員辞任の手続をとる、そのことを裁判長に伝えてほしいと言って、私は係の弁護士に言ったのであります。検察官一体の原則で、検事局は保釈に反対しました。しかし忘れもいたしませんが、十九日の夜中に特使で公判通知がきました。二十日の午前九時から公判をやる。私は公判廷へ行ったのですが、立会検事がまだ出てこなかった。人定尋問と公訴事実を裁判長が言われて、これはどうだと言われますから、その通り認めましょう、しかし、その言をなすに至った原因、動機についてはつぶさに申し上げたい、そのことを留保して承認いたしますと言った。即座に裁判長は弁護士を呼んで保釈を許可いたしました。二十日の夜おそく自宅に戻ったのでありますが、二十一日の国会再会の朝、こういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、八木田裁判長自身が私のところに電話をくれました。健康はどうですか、きょう国会に出られますか、ぜひとも出ていただきたいと彼は言っておりました。私は出たのです。そこに私は裁判の権威があると思うのです。国会が終った三月二十四日以来、私はあの今の最高裁判所、当時の大審院に、恩威並び備えた横田大審院長の胸像を毎日見ながら、十二回その第一号法廷に通った。東条政権下ですよ。そこに厳然たる日本の司法の権威があった。私は何も制度や報酬の上には裁判所の権威はないのだということを申し上げたい。一つその点は十分お考え願いたいと思います。
 そこで、私は司法行政についてお尋ねいたしますが、現在の司法行政のあり方はこのままでいいでしょうか。と申し上げることは、何も裁判官の失態を一々、弾劾しようとか、身分上責任をとれと言うのじゃないのですが、今申し上げましたような誤判事件が次から次にとあるのです。懲戒にでもかけない限りそのままなんですよ。私も委員長をしているときには、大阪に行ったり名古屋に行ったりして、裁判所当局の御意見も方針もよく伺ってきました。すべてのことが裁判官会議できまるようでありますが、どうです、事務総長、今の司法行政のやり方はこのままでいいでしょうか、その点の御所見を一つ伺ってみたいと思います。
#20
○横田最高裁判所説明員 司法行政のあり方は、御承知のように、終戦後の裁判所法で変ったのでございます。裁判官会議がそのにない手であることは御指摘の通りでありますが、実際面におきまして、裁判官の数の非常に多い裁判所等におきまして司法行政をてきぱきやりますことは、いろいろ事務的に考えまして差しさわりのある点も見られるわけでございます。その点につきましては、あるいは裁判所法を改正して、従前のように長官あるいは所長というものに行政権を持たすべきではないかという議論もないわけではございません。しかし、現在の制度のもとにおきましても、その運用におきまして、たとえば大きな裁判所等におきましては、その権限の一部を少数の委員、あるいは場合によりましては所長に委任するというような方式にいたしまして、ただいま申し上げましたような支障を取り除くべくいろいろやっておるわけでございます。この点はもう十年たったと申しますが、なおまだ裁判所法のもとにおきまする司法行政のあり方につきましては、もう少し様子を見まして検討を加えた方がいいのではないかというふうにも考えられます。しかし、いずれにいたしましてもいろいろ問題はございますので、最高裁事務当局といたしましても、その点はいろいろ検討中でございます。
#21
○三田村委員 この司法行政のあり方については、当委員会でもしばしば論議されておるのでございますが、そこでまた話をもとに戻して、司法行政上こういうものの扱いですね、下級裁判所、第一線の裁判所が直接意見を文書にして、国会に出すというようなことは、今後どしどし行われてもいいというお考えでしょうか、この一点をお尋ねいたします。
#22
○横田最高裁判所説明員 先ほど申し上げましたように、こういう形で国会へ直接裁判官からいろいろ希望を申し上げる、そういうことになりますことは非常に異例でもございますし、そういうことにならないように、そういう必要のないようにいたしたいと考えておりますが、これは要するに、いわゆる正式の意味の裁判官会議で決議をいたしたというふうなことでなく、自然にこういう気持で集まりまして、こういう話し合いをいたし、それをこちらに出したというふうに私は見ておりますので、そういうことはそうなってはならないと思いますが、しかし、特にわれわれといたしましても、こういう裁判官の気持を国会によくわかっていただくためには、こういう方法も一つの方法ではないかというふうに見ましたので、特に積極的にこれを阻止するというようなことはいたさなかった次第でございます。
#23
○三田村委員 これは私はあえてここで責任を追及するつもりはありませんからやめますが、時間の関係もあって、私ここでお願いをいたしておきたいことがあるのです。今までずっと申し上げたことはお聞き取り願えたと思いますが、冒頭に申しましたように、ぜひ田中長官の御意見を伺いたかったのです。何も事務総長だからいけないとか軽いとか申し上げるのではないのですよ。やはり日本の裁判所、司法制度の最高の責任者は長官です。憲法上そうなっております。だから、長官の御意見を十分伺いたい。これほど重要な表現を第一線の裁判官がやられるのですから、長官のお気持、御所見を十分伺いたいと思っておったのでありますが、御出席になりませんからやむを得ません。そこで私は、当委員会も今後の裁判、司法のあり方について十分研鑚、検討を加えたいと思いますから、今まで申し上げたことを三、四点にしぼりまして、文書でも何でもいいですし、何もきょうというのではないのですが、一つ田中長官に御提出願いたいのです。
 第一は、要望書に対する所見。今まで繰り返し繰り返し申し上げておったのですが、司法行政の最高責任者としてどのようにお考えになるか、こういうあり方。これは事務総長はやむを得ないとおっしゃいましたが、やむを得ないとおっしゃいますと、私はどこの裁判所からも出てくると思う。うちの裁判所の定員をもっと増してくれとか、簡易裁判所を廃止してもらっては困るとか、これは地方の住民からの陳情ならいいのですが、裁判所みずからが出てこられると困りますよ。国の政治にはやはり一つの秩序があり、系列があるのですから、その点は一つ最高責任者として長官の御意見を伺いたい。
 それから、これも最初に申しました政府の予算編成、法案提出権、これはもちろん裁判所に関係のあるものでありますから、裁判所はどのようにしてこれを通すか。つまり憲法の定むるところによって、すべての法律案、予算案を審議する国会にどのように通してくるかということ、そしてどのように責任を負うていくかということですね。これは要求のしっぱなしでは困るのです。予算について発言され、法案について発言されるならば、発言されたことについてやはり責任を負うてもらわなければ意味がないのですから、発言のしっぱなしでは困る。この要望書のように発言のしっぱなしでは困るのですが、どのように発言し、要求し、かつ責任を負うかということについての長官の御意見を伺いたい。
 三には、裁判官の地位及び権威。すなわち一般国民の裁判に対する信頼の度を高からしむる方策いかん。私は繰り返し申しましたように、地位も報酬も高めることには反対がないのですよ。もとより賛成なんだ。これはしばしば言ってきたのですが、それだけで一体裁判に対する権威司法に対する信頼が高まってくるかというと、私はなお疑問があるのです。この点についての御所見。
 それから第四には、司法権の独立の問題です。これは今申しましたように、司法権の独立というのは、制度的に実体的にどのようなことをいうのか。裁判所の身分、給与、それから営繕、管理、そういったものを一切国家活動から切り離してしまうのが司法の独立なのか。三権分立といいますけれども、裁判権だけが国家から別に離れてあるのじゃないのです。三本の柱の一本であって、やはり三者が調和をとっていかなければ、ほんとうの国家活動はないのです。国民の安全も安寧もないのです。裁判所だけ別に離れてしまって、行政も立法も別々だ、これでは国の形態はなさないのであります。ですから、司法権の独立ということは、制度的、実体的にどういうことか。旧憲法時代には司法催の独立は保たれておらなかったのか、大審院時代には司法権の独立はなかったのか。ああいうあり方じゃ、ほんとうに司法権の独立は守れないのか。児島大審院長というようなりっぱな人もあったが、あれじゃいけないのですかということなんです。つまりどのような制度、形態にすることが、さらに実体的にどのようなことが司法権の独立に値するか、独立を保全するために必要なのかということを最高の責任者である長官の御所見として伺いたいのであります。これは今ここで総長から伺おうと思いませんから、ぜひ長官にお伝え願っておきたいと思います。
 委員長、法務大臣は来られないのですか。
#24
○小島委員長 来るでしょう。今、参議院の方の法務委員会に行っておりますから……。
#25
○三田村委員 法務大臣が出席されましたら一、二法務大臣に伺います。
 ここに津田部長がおられますが、先ほど来私が申し上げましたように、今度の報酬等の改正案については、裁判所側が非常に不満なんですね。法務省頼むに足らず言い切っております。これは大へんな問題です。これからどう調和をはかっていくか、われわれも苦慮し、努力いたしますが、法務省としてもこれほど不信任を突きつけられたのですから、何とかお考え願いたい。法務大臣が来られたら私は法務大臣にえりを正して言おうと思う。そのことの前に、今度の給与法について、これほどの不信任を突きつけられるに値するかどうかということについて、法務省側の御見解を伺いたいのです。
#26
○津田政府委員 ただいまの御質問がございましたので、この法案を立案し、提案するに至りましな経緯をやや詳しく御説明申し上げまして、それによりまして御了解を得たいと思うのであります。
 御承知の通り、裁判官及び検察官の俸給報酬の問題につきましては、多年いろいろな経過があったわけでございます。まず、この報酬の法律並びに俸給の法律ができました当初から簡単に申し上げますと、昭和二十三年第二回国会当時にこの問題が論議されたわけでありますが、そのときの実態はどうであったか、これは額を申し上げてはなはだ恐縮なんでありますが、本件は額の問題から発生しておるものでありますから、額の点を申し上げるわけでございます。本日お手元に御配付申し上げました比較変遷表をごらん下さいましてお聞き取り願えば非常に幸いだと思います。まず、第二回国会当時に、その一番左の欄にありますところによりますと、判事一号、検事特号、これは俗称でありますが、一万四千円という額になっております。その当時、それでは一般政府職員はどうであったかと申しますと、これは一番下の欄にあります十四級六号一万円という額でございます。ここで一般職に対しまして四段階優位の差が最高額についておった。要しますに、判事五号、検事四号がちょうど一般政府職員の最高に当るという形で出発して参ったのでございます。その際におきまして、判事、検事の間をいかにすべきかということが非常に問題になったわけでございます。当時は、御承知のように、占領治下にございまして、英米における裁判官優位の考え方のもとに制度が出発したことはその通りでございます。その際に、それでは俸給のあり方をいかにすべきかということが問題になったわけであります。その当時のこの制度を打ち立てます際の立法趣旨の説明にもございます通り、裁判官の任用制度も、英米のように根本的に改める場合はいざ知らず、旧憲法下と同様の任用制度をとるのみでなく、現実においても旧憲法下の裁判官がそのまま新憲法下の裁判官となる場合において、観念的には、裁判官優位論から、その現実の給与につき全く同一任用資格から任用されている検察官の給与と格段の差異をつけることは、十分な合理的な根拠がないとして、その観念論と現実論の調和という点から、判事についてはこれを一号とし、検事についてはこれを特号とする、こういうことになったわけでございまして、この立法趣旨は、当時の国会の本会議等の委員長報告の中にも盛られておるわけであります。そういうふうにいたしまして、判事と検事との間におきましては、一号、特号という名称の相違を来たしたのみであって、実額においては全く差異がない、一万四千円という額が与えられる、こういうことになったわけであります。ところが、その後給与の改訂がございまして、いわゆるベースアップが行われて参ったのでありますが、第十国会の際、すなわち昭和二十六年一月からは、判事一号、検事特号については三万七千円が与えられた、と同時に、このときに一般政府職員の最高俸は十五級四号ということになりまして、これは同じく三万七千円が与えられる、こういうことになりました。ここに判事、検事、一般職の最高額が同一であるという結果を来たしたのでございます。これは今差し上げました表の左から五番目のところにある段階でございます。問題はこのときにすでに起っておるのでございまして、このときに本来いえば判事として優位を保つというような議論も当然あってしかるべきだという際であったのでありますが、その際はとにかくも判事あるいは検事最高額三万七千円、一般職三万七千円ということになったわけであります。ただ、ここで御留意をいただきたいのは、さように一般職がここまで最高額が上ってきました際に、検事について特号の名称をそのまま踏襲しておったわけで、その点ははなはだ問題でありまして、検事は特別の者でなければ一般職と肩を並べられないという非常に不合理があったわけでありますが、この不合理は、当時としては是正されなかったのであります。そこで、その後に至りまして、昭和二十九年、すなわち第十八回国会で最高額が七万二千円となりましたが、これも判事一号、検事特号、ともに七万二千円、一般行政職の最高十五級四号やはり七万二千円ということで、これも同額であります。ところが、第二十六国会におきまして、すなわち昭和三十二年四月から適用されるこの給与の法律におきましては、その上に七万五千円という段階を判事、検事ともに設け、さらに一般政府職員につきましても七万五千円ということが設けられた。この七万五千円を設けられた趣旨は、これは現在の俸給の法律の二条の二、あるいは報酬の法律の二条の二にそれぞれあるところでございまして、たとえば検察官について申しますると、「検事がその最高額の俸給を受けるに至った時から長期間を経過した場合においては、一般官吏の例により、その最高額を超える月額の俸給を支給することができる。」こういう規定が設けられました。これは検事については二条の二でありますと同時に、裁判官の報酬の法律についても二条の二で同趣旨が設けられた。一般職についても同趣旨が設けられた。そこで、この検事の最高額の俸給を受けるというのは何であるかと申しますと、とりもなおさずこの特号の七万二千円でございます。その上の俸給を与えることができるということになりましたので、これは一般職の例にならい、あるいは例に準ずるということで、その上に三千円を積み上げた七万五千円を月額とするということになりまして、裁判官につきましても、判事につきましても、検事につきましても、それから一般政府職員につきましても、七万五千円の段階ができた。これは俗称は検事については特二号と申しており、判事につきましてはやはり俗称特号と申しております。けれども、検事につきまして特号の上にさらに特二号を積む。しかもそれは、先ほど申し上げました第二条の二の性質が年功加俸的性質である。長年月、長期間経過したということによって加える年功加俸的な性質でございますので、検事の特号という、いわゆる特別のものについて年功加俸をつけるということは、意味がないことであります。そこで、この年功加俸がつきました昭和三十二年四月の改正は、要するに検事の特号というのは単なる呼称の問題であって、実は一号と全く同じである、その上に判事も検事も同じく三千円の年功加俸がついた、こういうことになったわけでございます。そういう経過をたどりまして、これが現在の俸給の制度なのでございます。
 そこで、今回の立案をいたしますに際しまして考えられますることは、一般職につきまして七万二千円の本来の最高俸から二段階を積み上げて、七万五千円と七万八千円の俸給の段階を作る、こういうことになりましたので、判事につきましても検事につきましても同じ段階、すなわち七万二千円の上に二号継ぎ足す必要ができてきたわけであります。ところが、御承知の通り、一般職におきましては、一等級の一号、二号、三号というふうにだんだん額が上って参ることになる。でありまするから、一般職につきましては、従来ございました一等級七号七万二千円の上に、一等級八号の七万五千円、一等級九号の七万八千円を継ぎ足すだけの操作をすればよろしいわけでありますが、判事と検事の場合におきましては、号俸が上が一号になっておりまして、下の方が低いわけであります。いわゆる俸給の上り下りの番号を追う場合には、判事及び検事の場合と一般行政政府職員の場合とは違っているわけであります。そこで、この上に二号継ぎ足しますにつきましては、現在の判事につきまして、一号を三号としなければならぬという必要が出て参る。ところが、その上に継ぎ足す前の号俸の呼称はいかにすべきかという問題でありますが、先ほど来申し上げましたように、七万二千円ということは、七万五千円の年功加俸的な額ができてからは全く特号ということは有名無事になってしまっておりますので、これを三号に改めて、その上に二段階積んで、いわゆる判事一号、検事一号を同額にするのが実態に合う適当な処置であるのみならず、もし判事一号を七万八千円とし、検事特号を七万八千円とし、一般行政職一等級九号を七万八千円とした場合におきましては、検事は特別の者でなければ七万八千円の額、つまり一般行政職と同じ額になれないという結果を生ずる、そういうことは、少くともこの際上に号俸を継ぎ足して全部改正する上においては、そういう従来の呼び方をそのまま踏襲するわけにはいかないという法制上の要請、これは法務省も法制局もひとしくその意見でありますが、その意見に従って、判事一号、検事一号を並べて七万八千円にし、一般行政職一等級九号も七万八千円にすべきだ、こういうことになったわけであります。そこで、その際に、この問題につきまして最高裁判所事務当局と連絡をいたしまして御相談したわけでありますが、判事一号についてはそのままでいいが、検事は特号とすべきであるという御主張を強く持たれたわけであります。それに対しましては、先ほど申し上げました法制的の見地からもとうていそれは容認できないので、一号は並べなければならない、実態が同じであれば、一号は並べなければならない、こういうことになったわけであります。それで、一号々々と並べることは、判事と検事とが同じ号俸に並ぶことを好まないという考え方があるならば、それでは号俸を逆に一般職と同じように、号俸の数の上ほど額が高いということにすればどうであろうかということが考えられまして、判事につきましては、今度できるわけでありますが、判事七号をもって七万八千円、六号をもって七万五千円、検事の場合は十九号をもって七万八千円、十八号をもって七万五千円というふうに、以下順序同じように、いわゆる俗にいいます逆に並べればいいじゃないかということを御相談の過程に申し上げたわけでありますが、これは御承認が得られなかった。そこで、政府側としてはやむを得ず、判事につきましてはさらに一段階を上げるということを考えざるを得なくなりました。この点は、主として法務省の問題ではなく、大蔵、財政当局に大きな問題がある。そこで、その上に一号積むにつきましては、いろいろ閣僚の間におきましては御意見があったそうでありますが、結局政府側の努力によりまして、一号上の八万円という額を判事について設けることができることになったわけであります。この点につきましては、何と申しますか、政府側のあらゆる努力を払ったことをお認め願わなければならぬというふうに思うのであります。
 そこで、その八万円の額のつけ方については異論がないのでありますが、八万円を無条件にすべきかどうかということは、これはもう問題になる。従来簡易裁判所判事あるいは判事補につきましても、やはり特号というものがございます。判事につきましては、従来特号というものはなかった。年功加俸の俗称特号というものはあったということになっておるのでありますが、このたびは、判事につきましては、やはり今まで行政職と七年以上も比肩しておったのであるから、この際は一段階上げるについては、やはり特別の者について八万円を認めるということが相当であるという考え方に立ちまして、立法上は特別の者について当分の間という形で八万円、いわゆる俗称特号というものが認められたという形になりましたのがこの法律案でございます。ところが、この法律案を提案いたします前に問題になりましたのは、八万円の運用をいかにすべきかということでありますが、これにつきましては、大蔵当局におきましても相当強い希望がありました。そこで、その間の調整をいたしますために、協定というものが、最高裁判所事務総長と法務事務次官、大蔵事務次官の間に行われて、その協定ができる限りにおきましてこの特号を認めるという形がとられた。
 そこで、その特号の協定書を認めますに際しまして、いかなる形をとられたかと申し上げますと、これはすでに新聞紙等に発表と申しまするか、掲載されておりますので、もはやこの段階では申し上げるのが相当だと思いますけれども、これは判事六十三才以上であって、判事一号に在職二年以上の者について特号を認めるという協定でございます。何ゆえそれで六十三才以上に切ったかということが問題になろうと思うのでございますが、これは今まで申しましたように、判事、検事につきましては、従来判事の定年六十五、検事の定年六十三、一般の行政政府職員定年制なしという形のもとにおいてすら、判事と検事と一般政府職員の最高額が同じである、ここに一般政府職員にはもちろん、検事にも認めない八万円を認める際におきまして、従来の判事、検事並んで六十三才の者が六十五才と額が同じであったということをまず是正して、改善の第一歩にいくべきだという考え方に立ちまして、六十三才以上の方については特号を認めるというのが相当であろう、こういう結果になった。しかし、この考え方がいかにして出ましたかと申しますと、その背後にはやはり先ほど冒頭に申し上げましたように、任用資格における判事と検事に根本的に差違がないという現実に対する問題と、観念論として判事優位性を認めなければならぬということの調和がはかられたという点にあるのでありまして、この意味におきましては、現在判事と検事とはいかなる形においても同格ではない。とにかく六十三才以上の判事については八万円の制度がある、こういうことになっておる。また額の問題から申しますると、今回は据置になっておりますが、高等裁判所長官と検事長との間には、それぞれ五千円の格差が設けられております。そういう意味におきましても、判事と検事との間に、任用資格の点では同一でありながらも、ある程度の格差があるということは現在でもそのままである。
 この意味におきまして、この点の苦心といいますか、立案に至るまでのいろいろな問題は、一応私どもは十分に考慮せられた上に解決して、この法律案が提案されたと思うのであります。この法律案につきましては、一月三十一日、最高裁の裁判官会議におきまして御賛成を得たと私どもは連絡を受けております。よって、二月二日、この協定書に調印が行われまして、二月三日に閣議請議がなされた、こういう順序で国会に提案されたというのがこの間の経過でございます。
 そういう次第でありますが、私どもといたしましては、判事の給与につきまして、判事側におきましていろいろ御不満があることもわかります。けれども、いろいろの不満その他のことは、一般行政職との関係、検察官との関係を考慮した場合におきましては、ただいまのところ、これは至難であると私は思うのであります。しかもこれだけの手続なり連絡、経緯を踏んで提案いたしたものでありますので、今卒然としてこの法案に対して一線の裁判官から御反対を受けるということは、はなはだ遺憾であると思う次第であります。
#27
○三田村委員 今の法務政府委員の御説明は、その通り伺っておきます。私はここで最高裁当局と法務省当局と論争をしてもらおうと思うのではない。最高裁の立場から、今の法務省の説明はそれは違うという御意見もあるかもしれませんが、そうでなく、私たちは両当局から十分その御意思のあるところを伺って、委員会は委員会としての立場をきめるのでありますから、今の法務省の説明も伺っておきます。
 時間の関係もありますから、幸い法務大臣がおいでになったので、一、二点お尋ねしたい。実は、先ほど来、大臣も御承知と思いますが、去る十七日、当委員会に提出されました東京地方裁判所裁判官一同の名によってなされた「裁判官報酬法の改正について」という要望書であります。この問題について最高裁当局についてだんだん伺ってきたのでございます。要約いたしますと、この要望書の中に盛られている通り、大体最高裁当局もその内容を御主張になっておられるようであります。これは、御主張なり立場は立場として一応私はその通り伺っておきますが、ただ問題は、私は非常に困った段階に来たような気がするのでございます。私は、法務大臣に率直に申し上げて御所見を伺いたいのですが、先ほど来裁判所に伺った通り、この要望書の冒頭に、「裁判所は、同法制度に関してさえ、閣議においても正式に発言する権限なく、国会に対する法律案の提出権もなく、これらは法務省の所管とせられながら、しかも法務省が裁判所のためには全く恃むに足りないことに想い到るとき、われわれは、怒りと憤りとさえ覚える」こういう全文がついております。そのような趣旨をおおむね最高裁事務当局もお認めになっておるのでありますが、これはどうでしょうか。この場合、私は二つの点について大臣の御所見を伺いたいのです。第一にこの考え方、この見方です。法務省頼むに足りず、われわれは怒りと憤りとを覚えるというこの冒頭の表現に基いて、検察官と裁判官の制度上の地位、ことに待遇についての等差を設ける必要があるのだということがるる述べられておる。私は先ほど来申し上げておるように、何も法務省や検察官の擁護論をやるのではありませんが、一般国民の素朴なる感情からいいますと、司法活動、司法権というものは、検察活動も含めて考えておるのです。これは旧憲法時代ですからそれは昔のことだとおっしゃればそれまでですが、捜査事務を担当する警察官は、司法警察官といった。司法警察官職務規程というものがありまして、調書でも取る場合は、警部何がしと書きません。司法警察官何がしと書いた。つまり司法権というものは裁判所だけだ、純粋にいえばこれはそうですよ。純粋にいえば裁判所の専管でありますが、一般概念として広く国民一般に理解される司法権の概念は、検察庁も含めての認識であって、検察権、検察官というものが司法権の別にあるのだということは、一般国民の素朴な頭には、私は理解しがたいと思うのです。しかも、健全な司法権がりっぱに、円滑に、完全に行われるためには、その前提として検察活動がまた円滑に、完全に、りっぱに行われることが必要だと思う。検察活動が不十分でありますと、これは私は問題が長くなりますからやめますが、近ごろの裁判は非常に無罪が多い。ことに政治事犯は無罪が多いのです。国民はどうして無罪になったか疑問を持つと思うのです。これは検察フアッショ化か、政治的なねらいを持った検挙かなと思うのです。ところが裁判所はその罪を立証するに足る条件が整っていないということなんでしよう。そうすると検察活動の怠慢か、その立件的条件を整えることに努力が足りなかったのか、あるいは知能の程度か低いのか、技術が足らないのか、何かそういう問題も考えられる。従って、裁判官のみの地位を高め、検察官はその陰におってもいいのだという考え方は、私はどうも納得できないのです。まあ裁判所の方は、あくまでも裁判官というものは検察官の上位でなければいけないというお考えのようです。そういう主張であればそうしていいのですが、これはやはり検察官の職務活動にも影響することなんですよ。裁判所がこういう表現形式をとって、法務省頼むに足らず、われわれは怒りと憤りを禁じ得ないという表現で、こういう主張をされれば、検察官も、それではおれの方もものを言わざるを得ない、こういうことになってきはせぬかという懸念があるのです。これは大臣、どうでしょうか。検察行政については、法務大臣は最高の責任者です。今私が申し上げた事柄についてどのようにお考えになっておるか、私は、健全で、完全な司法権の作用、それからほんとうに国民の信頼を高めるためには、りっぱな人材を得て十分な検察活動を期待しなければならぬと考えるのですが、この点についての、さらにこういう考え方について、大臣の御所見をまず伺っておきたい。
#28
○愛知国務大臣 ただいま御指摘になりました東京地方裁判所の裁判官一同の決議されたものは、私も詳細に拝見いたしたのでありますが、まず第一に、この給与の問題についての今回提案いたしました法律案の趣旨とするところ、それからその立案の過程において、政府側において詳細に過去の経緯から現状に照らして検討いたしましたその経過が、十分に裁判官の方に浸透していないといううらみを私率直に持つのでありまして、これはただいま津田政府委員から御説明いたしました通りの経過であって、ただいまの御質問とちょっとはずれますけれども、ちょっと簡単に言わしていただきたいのであります。
 と申しますのは、二十六年でございましたか、報酬や給与の改正のとき以来、判事と検事の最高の号俸は、呼称は別でございますれども、上は一緒になってしまった。今度の改正案におきましては、ともかくも判事の方にそれを飛び抜けた一階級ができておりますことは、私どもとしては、二十六年以来の判事に対する失地を回復したものである、こういうふうに考えます。
 その際、今度は第二の問題として、それならその八万円というものに対して判事一号となぜつけぬか、そして検察官の方は一枚下目に見なければならぬから、その呼び名を違えろ、こういう意見がその次に出てくるかと思いますけれども、これは先ほどの説明にもありましたように、一般国家公務員とのバランスが出て参りますと、裁判所の方からごらんになれば、検事だけが目につくのだろうと思いますけれども、検事の方の関係からいえば、政府全体の総合的な立場からいえば、一般の国家公務員よりも下目になるようであれば、これはただいまもお話がございましたように、検察官の方としても忍び得ないところがございましょう。そこで、一面において一格上げて、判事は一つ高いのだというものを作ると同時に、呼び名の問題については、両方とも一号ということにせざるを得ない、これが現状において私は考え得るベストの考え方であり、また裁判官各位が非常に気にしておられるようなことは私どもとしては十分に考慮したつもりなのであって、これは話せば私はわかると思っております。それから、現に私の立場といたしましても、それらの方々の中には、私がしろうとで無能であるからこういうことにしたのだということになっておるそうでございますが、無能、有能は別といたしまして、私自身も十二分に検討いたましたし、それから閣議においてもこれはずいぶん何べんもきまらずに、最後に最高裁判所の御同意を得たので、これでよかった、やはり落ちつくところはこういう案だということで、私どもは確信を持ってこれを提案いたしておるわけでございます。そういうわけでございますから、この経緯やそれから総合的な立場から、良識を持って御判断いただけば、どなたがこの衝に当りましても、これをもってベストの案ということに私はなるであろうとひそかに思ってをるようなわけでございますから、そういう意味合いで御審議をお願いいたしたいと思うのでございます。従って、報酬の問題に端を発しまして、まあいろいろと誤解、その他あるいは十分に経過を御承知ない、あるいは感情的にも憤激された面があって、おのずから筆が私は走ったのだと思うのでありまして、これは根本的に、私どもといたしましては、そう大していきり立たれなくとも、十分にわかっておるのだからということで大して御心配をいただかぬでも私は済むものと思うのでありますが、今後とも裁判所との関係におきましては、さらに十分こういうことがありますところにもかんがみまして、十二分に事実上の話し合いで御相談を進めて参りたいし思っております。
 それから、この提案権あるいは予算の問題ということになりますと、これは私の私見も入りますけれども、たとえば裁判所の予算につきましてはやはり三権分立だということで、特殊な地位を持っておられるわけで、裁判所が大蔵省に対して査定に服し得ないような場合には、行政官庁とは違った、それこそ非常な優位性をお持ちになっておるわけでございます。ところが、実際問題として、裁判所の予算の要求を受ける方の大蔵省からいえば、法務省の予算の査定をする者と同じ係、同じ担当者がやっておるくらいでありまして、私も及ばずながら、裁判所の要求されることについては、法務省の関係とバランスをとって、裁判所の方も大蔵省の方にもっと話の筋が通るようにということを、事実上私は陰ながら、今回の場合も御援助申し上げておるつもりであります。その中には、具体的にも私いろいろ例をあげることができるのでありますが、そういうようなわけでこの予算の編成については、裁判所は優位だという法制上の立場を持っておられながら、事実上は大蔵省との関係においては非常に弱いというか、話がなかなか通じないような立場にあられる。そこで、これから先は私のほんとうの私見でございまして、法務大臣として正式にそういう意見を持っておるわけじゃございませんが、そういった予算とか営繕とかいったような、いわば常識的にアドミニストレーションの関係は、この裁判官の出された書類、あるいは新聞記事にもありましたけれども、それこそ司法官僚にやらされるならば、もっと能率的にいくんじゃなかろうか。法務省として
 は、私は現在の機構でもって、人員を一人もふやすことなくてして、さらにもっと効果をあげるようなやり方もあるのではなかろうかとすら思っておるのでありまして、これらの点については、別に懸案で、私も早く御提案申し上げたいと思っておりますが、最高裁判所の構成を含む裁判所法の問題がございますので、この際そのアドミニストレーションの面もあわせまして、私といたしましては早急によい案を作って、全体がうまくいくように、もっと裁判官と検察官というものの間柄が、感情というか、あるいはさらにいえば、もし感情的ないざこざのあるような沿革があるとすれば、この際抜本的に制度の上でも改善するようなことを、勇気を持って提案して参りたい、こういうように考えております。
#29
○小島委員長 三田村君、本会議の予鈴が鳴りましたから……。
#30
○三田村委員 それでは簡単に……。大体法務臣の気持はわかりましたが、私はその点をむしろ後段で強くお尋ねしたかったのです。この中にありますように、裁判所は司法制度に関して何らの発言権はない、閣議にも列席しない、法案の提案権もないのだ、しかも法務省からは冷淡な扱いを受けているのだ、頼むに足らぬ、怒りと憤りを禁じ得ない、こういう表現になっておるのです。それならどうしたらいいかということを考えなければ、裁判所だけ全然別個なものにして、国家制度、国家機構、国家活動の外にあるということはあり得ない。一つの国をなしている以上は、予算の面も法律の面もあるいは行政管理の面も、裁判制度は全然別個なものではあり得ない。どのように調和をとっていくかということが非常に重要だと思う。このような果し状を突きつけられたようなことで、法務省、頼むに足らぬということでは困ると思う。大体法務大臣はお気持をお述べになりましたが、その点せっかく十分御検討を願って、最高裁の方ともできるだけ感情の融和点を見つけていただいて、そして、こういうものは二度と再び国会に現われないように、せっかくの御努力を願いたいと思います。
 それでは私はこの程度で終ります。
#31
○小島委員長 辻委員。
#32
○辻(政)委員 専門家でありませんから、簡単に常識論を御質問申し上げます。
 私は、高裁の裁判官一同、地方裁の裁判官一同から出された要望を読みまして、きわめて不可解に感ずるわけであります。この中に書いてありますことを読んでみましたら、地裁から出たものはこう書いてあります。「裁判官の待遇も、検察官の待遇と同等でよい。」という考え方から出発しているこの考え方は「強く反対せざるを得ない。なぜならそれは、憲法の精神を無視し、この精神に従って確立された裁判制度そのものの基礎を危うくする虞れがあると考えられるからである。」こういうことが冒頭に書かれておる。憲法の精神のどこに、裁判官と検察官の俸給の差が確保されておるのか。裁判官に対する身分保障は憲法の七十八条、これは身分保障についてである。俸給を検察官より高くせよという憲法の規定はどこにあるのか、それを事務総長からお聞きしたい。
#33
○横田最高裁判所説明員 その点は先ほど三村委員からも御質疑がございましてお答えいたしたのでございますが、これは憲法に報酬に関する条文がございまして、裁判官につきましてだけ、特に憲法の中に「定期に相当額の報酬を受ける。」ということをわざわざうたってございますのは、特に裁判官の地位を重視いたしまして、これを優遇する趣旨であるというふうに解しておるわけでございます。
#34
○辻(政)委員 定期に相当額を受けるのは、一般の公務員も同じでしょう。そんなことはない。一体今日の裁判官のやり方に対して、国民は大きな不満を持っている。その一つの例を申しますならば、参議院議員の選挙違反事件について、小西英雄君と上條愛一君の問題が三年かかって、まさに任期が切れようとする最近、小西君が失格して上條君が当選を認められている。こういう簡単なものが三年以上放置されているところに、国民の裁判に対しての不信の念が出てくる。ことにこの前も山口地方裁の問題について質問しておりますが、軍艦陸奥の引き揚げ、財産権の訴訟が三年以上かかってまだ解決されていない。そういうことになると、裁判官は身分を保障された象牙の塔の中でだらだら裁判をやりながら、月給のときだけいきり立つのは、総評とどこに差があるか。総評と同じですよ。しかもこの二つの書類を見ると、両方とも「裁判官一同」となっている。こんな無責任な陳情があるか。その責任者はだれなんだ。これが正しい主張であるならば、なぜ最高裁判所の長官が堂々とその名前で陳情なさらぬか。裁判所の長官と一番若い裁判官が一緒になって「裁判官一同」として、こういうので一体権威のある要望書と言えるか。だれが責任をとって出したのか、これを伺いたい。この前の委員会において、私は、政府が判事を二十名増加する案に反対をした。その理由は、あなたの提案理由によると、裁判業務が非常に渋滞して社会不安を起すおそれがある、だから二十名やるのだ、それに対して、二十名の判事補の増員だけでは、この根本問題の解決はできない、不徹底だ、手不足をもう少し直さなければいけないという意味において反対したのです。今度のこの給与の問題は、政府の原案を支持する。むしろ検事と判事が同じ俸給を受けることが憲法の精神である。しいてあなた方が司法権の独立を強調されるなら、皆さんの下した判決にはいかなる権威も干渉できない、裁判官の人事は保障されている、この二つが独立を確保する条件です。だらだら裁判を引き延ばしながら、国民の期待に反するような仕事のしぶりで、月給だけ上げてくれということは、これは思い上った態度だと私は思う。その意味において政府の原案に賛成です。もう一ぺん考え直してもらいたい。
#35
○小島委員長 この際、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は終了したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○小島委員長 御異議なしと認めます。
 次に、本案についての討論採決をすることにいたします。
 討論の申し出もありませんから、直ちに採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
#37
○小島委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
 ただいま可決せられました法律案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#38
○小島委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。
    ―――――――――――――
#39
○志賀(義)委員 前の問題に返りまして、きょう法務大臣の発言は、最高裁の人事運営の問題まで法務省が握るような――私見としきりに断わっておられましたが、そういう危険を多分に感ずるのであります。
 もう一つは、朝日新聞の社説でもって、大蔵省と法務省と、それから最高裁の秘密の協定ができておる……。提案理由の中にそれは一つもされませんでした。それで、きょうになって、新聞に出たからしようがないからと言っておる。そういう裏面のこと、提案理由に至る裏面の事情を法務委員会には全然隠しておいてやられるというのは、非常にけしからぬことだと思うのです。きょうは、本会議のベルが鳴っておって、時間がありません。その点について法務省の責任ある答弁を伺いたいし、また事務総長にも伺いたい。この次に……。
#40
○愛知国務大臣 第一段は非常に大きな問題を含む御発言でございますから、私から一言いたしておきますが、今、人事その他というお話がございましたが、そういうことは考えてもおりません。私見といたしましても考えておりません。
 それから第二段は、別に秘密でも何でもないのでありまして、御審議の際に十分また御説明をしようと思っておったのであります。
#41
○志賀(義)委員 最初に説明すべきだ。この次に質問します。
#42
○小島委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は追って公報をもって御通知いたします。
    午後三時三十二分散会
     ――――◇―――――
    〔参照〕
  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)(参議院送付)に関する報告書
    〔別冊附録に掲載〕
ソース: 国立国会図書館
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