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1958/03/06 第31回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第031回国会 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第4号
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1958/03/06 第31回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第031回国会 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第4号

#1
第031回国会 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第4号
昭和三十四年三月六日(金曜日)
    午前十一時五分開議
 出席小委員
   小委員長 山本 勝市君
      奧村又十郎君    鴨田 宗一君
      細田 義安君    山村庄之助君
      春日 一幸君    久保田鶴松君
      田万 廣文君    竹谷源太郎君
      松尾トシ子君    横山 利秋君
 出席政府委員
        大蔵事務官
        (主税局長)  原  純夫君
        国税庁長官   北島 武雄君
 小委員外の出席者
        大蔵事務官
        (主税局税制第
        二課長)    吉國 二郎君
        大蔵事務官
        (国税庁徴収部
        長)      勝原  啓君
        大蔵事務官
        (国税庁徴収部
        管理課長)   高田 壽史君
        大蔵事務官
        (国税庁調査査
        察部長)    竹村 忠一君
        専  門  員 抜井 光三君
    ―――――――――――――
三月六日
 小委員竹谷源太郎君二月二十四日委員辞任につ
 き、その補欠として竹谷源太郎君が委員長の指
 名で小委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国税徴収法案(内閣提出第一六二号)
 国税徴収法の施行に伴う関係法律の整理等に関
 する法律案(内閣提出第一七一号)
     ――――◇―――――
#2
○山本小委員長 これより会議を開きます。
 国税徴収法案及び国税徴収法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
 質疑の通告があります。これを許します。田万廣文君。
 なお、質問者にお願いしますが、会場の都合でこういうところになったのですけれども、速記の都合もありますので、ごめんどうだけれども、やはり立って質問していただいて、それから立って答えていただく。そうしないと、話が懇談的になって乱れますから、恐縮ですけれども……。
#3
○田万小委員 ちょっとお尋ねしますが、今度の国税徴収法の施行法について、いろんな角度から非常に考慮が払われていることはよくわかるのですが、この法案をなぜ提出しなければいけないかという根本的な態度について、先にお伺いしておきたいと思います。簡単でけっこうですから……。
#4
○原政府委員 国税徴収法の改正を思い立ちましたのは、由来するところが相当長くかつ深いのであります。御存じの通り、国税徴収法は明治三十年にできました法律でありまして、その後すでにまる五十余年をけみしておる。その間社会、経済の情勢もいわば一変するというほどのことでありますし、またそれを映して法律的な諸制度また法律的な諸関係の事実上のあり方というようなものも非常に変遷してきております。この間にあって、明治三十年の法律でありますから、率直に言うて、かなり国税徴収のために強権的な面が強いというのが、年来いわれたことであります。早くこれを近代化するということ、半面、社会、経済が進歩するに従いまして、いろいろな法律上の仕組みと申しますか、法律関係というものが複雑になって、とうてい五十余年前の徴収法ではとらえ切れないような関係が幾つも出て参った。つまり、とらえ切れないということは、俗に申せば穴であるということであります。穴が大きくなる。御案内の通り、租税というものは、課税自体租税の債権を幾らとする点においても公平でなくてはいけない。同時に、幾らときまった租税債権を確実に徴収するということがなければ、租税の負担の公平というものは、ついに絵にかいたもちになるということでありますので、私どもそういう穴はなるべく早くふさぎたいという気持を半面で持ったわけです。つまり近代化の要請と、それから穴をふさぐことによって、より公平な課税を最終まで確保したいという両面、長年問題になっておりましたのがついにその機に至って、三年ほど前に租税徴収制度調査会というものを作り、三年間みっちり勉強して、今回法案の形でお願いしたということであります。よろしく御審議願いたいと思います。
#5
○田万小委員 だいぶ古い法律で、時代に即応しないということが、大まかにいえば今度の改正案の骨子だと思うのです。いろいろ社会情勢も変りまして、やはり国税をすべての担保物件に優先しておった過去の時代に比較すれば、今度の改正案は、ある程度制限はあるけれども、担保物件、抵当権、そういうものを保護しようというような大きな気持で法案が出されておるということはよくわかるのですが、この法案が通過して、そして実際に施行された場合に、従来国税最優先の立場で税が徴収されておった場合に、果して見通しとしては従来の徴収限度からいったならばどれだけの差が出てくるかということについて、相当研究しておられるのですか。差はないのですか。あるいは、担保物件を認めたために、それだけの優先権を確保された債権者の保護にはなるけれども、国税としてはそれだけマイナスになるというような場合が出てくるかどうか。計算的にできればその点も御説明願いたいと思います。
#6
○原政府委員 お話の点は、改正しないで現行法の強い前提でとります場合よりも、当然徴収額がどうしても落ちるということにはなります。ただし、それが幾らになるかということになりますと、見ようによれば相当大きい計算もできますけれども、やはり現行法のもとにおきましても、強い権限をどんどん振り回してやるというようなことはとうていできるものではない。これはやっぱり自然の理法といいますか、そういうようなものもあって、強制徴収処分についてはかなり念入りに丁寧にやっております。ですから、それを一度にがしゃっとやるという前提と比べると、相当減る。しかし、実際現在行われている強制徴収処分のテンポを考えますれば、減収はあるけれども、取り立てて、これはたとえば財源措置を要するというほどのことではない。ただいま私最近の情勢に合せての数字をなにしておりません。研究を始めました二、三年前の時分には、見ようでは数億というような数字が出ましたけれども、もし詳細な数字が必要でありますれば、もう一度あらためて最近の情勢についてのなにをやってみますけれども、特に財源を用意してなにするほど、現在の滞納処分の執行は、こういう強い権限に乗っかって、非常にそれに依頼してよけいとっているということではない。さして大きな額ではないと思います。
#7
○田万小委員 しかし、計算のしようによっては、これで相当大きな金額になるということは、予想されるわけですね。
#8
○原政府委員 ただいま申し上げましたように、現行の徴収法の強い力を全面的に発揮して、たとえば例は悪いのですが、一斉射撃みたいなことで、現に懸案となっておる事案を全部これでやってしまうという場合に徴収できるであろうものが、今回の改正によって幾う減るという計算をいたしますれば、かなりな額になると思います。しかしながら、これは言うてみれば、実際にはそういう強い権限を一度に発揮するということはしないで、なるべくそういうところにいかないで、納税者の立ち直りを希望しながら徴収猶予等をやっているのですかう、ただいま申しました計算は、いわば数年分のなにを一回でとってしまう、またそれが徴収法の改正で一回で減収になるという計算をした場合のことでありますかう、やはり現実としては、現に行われている毎年の処分というものが、これによってどういう影響がくるかという計算をすべきだ。そうなれば、私の記憶の感じで申しますと億の位に上るが、上っても、それは数億といってもそう大きな額にはならぬというのが、大へん古いデータがもとで恐縮ですが、二年ばかり前に数字を作りました
 ときの私の感じであります。
#9
○田万小委員 国税徴収について、いろいろ柔軟な作戦でやられるということはけっこうだと思うのですが、私は、非常に悪意の滞納者に対しては、仮借なく徴税をやってよろしいという考えを持っております。そこで、お尋ねするのですが、現在滞納額が、国税において、個人と法人とに分けた場合にどういう割り振りになっておるか。これをちょっとお知うせ願いたい。
#10
○吉國説明員 ここにございます三十三年の十二月末現在の数字を申し上げますと、個人の申告所得税、これの滞納税額が、純滞納と普通申しておりますが、これは執行停止を差し引いた数字であります。執行停止と申しますのは、納税者が滞納処分によって困窮に陥るという場合にたな上げにする措置でございますが、その分に見合っておりますのを差し引いた数字が、百四十三億ということになっております。それから法人税が同じ数字にいたしまして百四十五億、申告所得税と法人税がほぼ同額になっておるという格好でございます。
#11
○田万小委員 個人と法人を合せると二百八十八億、これは相当な滞納額だと私は思うのです。これに対して従来どういう措置をとっておられたか、その点お話しを願いたいと思います。
#12
○原政府委員 滞納額が非常に膨大であるというのは、今おっしゃる通りでありますが、これは戦後のその関係を振り返ってみますと、かつて二十三年度、四年度という時分には、たしかもう三千億ぐういの滞納があった。割合も三割、四割というような高いものであったわけです。当時は、申告所得税にしましても、納税者の多い年は納税者の三分の二に対して更正決定をするというような、この世の租税とも思われないような状態であったわけです。これは、税制並びに税務行政というものが社会に調和したものであるためには、滞納が少い、またそのもとになる更正決定というようなものもなるべく少くして、納得して納められるようにというようなことで、まず税制の面では、二十五年のシャウプ改正以来、累次にわたって、特にその焦点であります所得税について何回となく減税の検討を重ねた半面、税務行政の面でも、納税者の大部分を相手にして更正決定をするという態度を一日も早く改めるというようなことで、青色申告の制度を作るとか、あるいは納税者に対する啓蒙と申しますか、新しい税制をいろいろお話しするということに努力いたしまして、逐年更正決定も減り、滞納額も減って参った。ただいま申し上げましたように、純滞納としては、他の税を入れまして三百数十億ということになっておりますが、これは総税収が予算額で一兆一千億余りでありますかう、約三%というようなところまできた。もちろんわれわれこれに満足しているのじゃございません。戦前のノーマルな時代には、一%にもなるかなうぬかというような低い滞納率であったわけで、もっと改善の余地もあるし、また努力すべきことだと思っておりますが、大きな方向としては、ただいま申しましたように、税制を極力合理化し、負担を軽減して、納得して納められるようにということと、税務行政についても納得していただく。また今後、税務署との関係は背中合せでなくて、なかなかこれは同じ方向を向くということはむずかしいことですけれども、やはりよりよい関係にいくようにという両面の努力を重ねつつあるということでございます。
#13
○田万小委員 滞納をするということについては、悪意の滞納と善意の滞納があると思う。私は、先ほど申し上げたように、悪意の滞納はやはり手きびしく徴収をやるべきだ。それでなければ、まじめに納めた人が、どうも正直者はばかを見るというような形で、税金を納める気持が非常に鈍くなる。だからして、今お話のあった三十三年の十二月末において、個人、法人を合せて三百億に近いところの滞納、これは先ほど言われたように徴収全額の三%くらいだ、三%はわずかだというけれども、これはやはり相当大きな金額であろうと思うのです。従って、悪意のある滞納者に対しては厳重にやってもらわなければならぬ。滞納の原因は、税務署の方では、やはりいろいろな動機からと思うが、おもにどういうところに滞納の原因があるように研究しておられますか。
#14
○原政府委員 ただいまのお話の悪意の滞納に対する態度については、私
ども全然同感でございます。やはり、先ほども申し上げましたように、穴があったり、また悪意の人が特にそういうものを利用して逃げるというようなことがあっては、税の負担の公平というのは画餅に帰するわけで、そういうことこそ、一般の納税者のためにも、意思を強くいかなければならないというふうな気持であります。
 それから、後段の滞納の原因につきましては、これまた税の問題としてどういう原因で滞納が生じているかということを見るのは、ただいまお話しの悪意によるか、あるいはやむを得ざることによるか、というようなことをこまかく見る態度が必要であるということで、税務行政は年来たびたび滞納原因調査というようなことをやっておるわけであります。国税庁の管理課長が見えておりますので、そちらから御説明願いたいと思います。
#15
○高田説明員 滞納の原因の問題についてお答え申し上げます。滞納の原因につきましては、ときどき調査いたしておりますが、数年前に調査いたしました結果によりますと、いろいろな事情がございますが、課税に非常に異
 議がある、従って納めないと主張する方もあるわけであります。それから、
 一番多いのは、やはり生活費その他の関係あるいは設備を拡張したために納められないというようなものが相当ございます。それから、納税者の方ではいろいろ言い分もあるわけでございますが、われわれの方から見ますと、どうも少し浪費的じゃないかというような関係で滞納になっておる、これまたかなりあるという状態でございます。
#16
○田万小委員 脱税というのはいろいろ方法があろうと思うのですが、国税庁としては取る方ですが、取ると取られるでは、お互いにタヌキとキツネのばかし合いみたいなことで、そこに脱税という方法がある。私は法人税が特に脱税の大きな抜け道になっておるのじゃなかろうかと思うのです。今まで相当大きな脱税を法人がやっておることは皆さんも知っておる通りでしょうが、それはどういうことをどういう方法でやっておったか。それは研究済みだと思うのですが、お門違いの質問かもしれぬが、だれか国税庁から来ている人がおったら、非常に悪質な悪意の脱税をやっておる連中が現在でもたくさんあるから、この点について御説明を願いたい。その問題について今直ちにお答えができにくければ、係の方がおられなければ……。
 それでは、責任者が来られるまで、ちょっとほかのことを聞きますが、今度の国税徴収法に関連して特に私ども変に思うのは、不動産抵当権者、留置権者、そういうものに対しては非常に恩恵的な取扱いをしておられます。従来は国税最優先で、担保物件、抵当権に優先して国税が徴収されておった。今度は、ある一定の制限はあるだろうけれども、制限の範囲内においては、抵当権者その他担保権者が保護されておる。これは私は大きな変化だと思うのですが、これに関連して考えるのは、同じ先取特権で、民法の三百六条、一般の先取特権として賃金債権の先取特権がございますが、この先取特権に対する保護というか、国税関係における立場をどういうふうに考えておられるか。抵当権者は保護された。国税で今までとられておったものがある程度残される。助かるわけです。ところが、その工場で働いておる労働者の賃金は、抵当権優先で抵当権者は満足するかしらないけれども、賃金債権はそのまま見捨てられてしまって、その日その日の生活に追われておる労働者の賃金債権というものは、満足に受けることはできない。国税がとり、抵当権者がとってしまうということになった場合には、食うや食わずで首をつらねばならぬということに現実になっているのです。だから、公平の観念からいったならば、金が余って貸しておるような抵当権者を保護することにきゅうきゅうとするような税法の改正でなくて、ほんとうにその日その日の生活に困っているところの労働者の賃金債権を国税関係においても調整してやるということが、私は大きな愛情の政治だと思うのです。これが何らここに表示されておらないということはもってのほかだと思うのですが、どういうことになるのですか。
#17
○原政府委員 その点はもちろん本案を作ります際に重大なポイントとして検討いたしました。徴収制度調査会においても論議の対象となった事柄であります。どういう角度で問題を処理したかといいますと、賃金債権につきましては、従来四分の三は差し押えちゃいけない、四分の一だけはよろしいという制度になっておりました。そうしますと、近ごろは千万円の給与というようなものも決してないではない。そういうところでも七百五十万円は差し押えちゃいかぬということになっているわけです。いかにもおかしい。やはりこれを下に厚く、それからある程度以上は差し押えてよろしいというふうにしたいということを、まず考えました。これが改正法案の七十六条というのにずっとそういう精神で出ております。翻っで、しからば、賃金債権については特別に全部を優先させるといいますか、そういう措置をとるかどうかという問題がお尋ねの中心でありますが、これについては、ただいまのような検討の結果、やはり一般の法律体系において賃金債権というものがどういう地位にあるかということを無視して、国税徴収法だけでこれの序列といいますか、そういうものに響くようなことをやりますと、いかにもそぐわない、また一般私法とのかみ合いがうまくいかないというようなことがあるわけです。一般の債権との関係においては 一般の債権者と賃金債権者と競争する場合に、特別に賃金債権に優先権を認めるということになっていないというようなことから、やはりその方の解決が先であろうということになったわけであります。徴収制度調査会の答申におきましても、「賃金債権に対する保護を現行民法等における先取特権の範囲をこえて社会政策的な見地から、拡充するかどうかは、今後の問題であるとしても、租税の優先権の法理からいえば、このような一般的制度をまたず、租税との関係においてのみ部分的な調整を図ることはむしろ適当ではない。」というふうなことをいうておられるわけで、具体的には他の債権との優先先後の関係あたりから、いわばぐるぐる回りになるというようなケースが出てきたりしまして、かなりややこしい関係にもなるというようなことから、一般の方でどういう成り行きになるか、その辺の成り行きを見守って、その間、税としては、おっしゃる趣旨の、いわば低い層の最低生活費というのは幾らかわかりませんが、これだけはという種類のものは全然手をつけないことにしようじゃないかという精神は、この七十六条である程度生かしていきたいというふうなことであります。
#18
○田万小委員 給与債権の差し押えが、従来よりも国税徴収に対してだいぶ手をゆるめた。これはいいですよ。私が言うのは、勘違いしておられるのかもしれぬのだが、要するに抵当権並みに、最初国税がとっていく、その次の順位、あるいはその次の順位くらいにでも賃金債権を優先的にとれるようにしてやる、そういうことが可能ではないかと思うんですが、抵当権者だけには特に親切であって、ほんとうに末端の賃金労働者に対する法的な考え方がなっとらぬじゃないかということなんです。これは今の話によると、一般債権一般債権と言われますけれども、時代は、すでに局長並びに課長も知っておる通り、賃借権が物権的効力を持つのじゃなかろうか、そういうふうな法制的な動きが非常にあるわけです。賃借権は債権ですから、そういう債権を物権的な取扱いにしようという今日の時代において、やはり旧態依然として、賃金債権は一般債権であるから抵当権におくれるというようなものの考え方自身が、時代錯誤的な考え方だと私は思う。この点についてはほんとうにまじめに考えていただかぬと、われわれ社会党の天下になったらすぐその日即日にこういう法律を出すが、いいことは早い方がいいのであって、善は急げというから、ただいま頭の切りかえを――皆さんはできているかもしれぬけれども、いろいろな関係で言いにくいということがあるかもしれぬけれども、腹の底は私と全く同感であろうと思うのですが、いかがでしょうか。
#19
○吉國説明員 ただいまの仰せまことにごもっともなところがあると思うのでありますが、御承知のように、今度の国税徴収法の改正におきまして最も問題の点は、国税徴収法が制定施行されましたときには、現在の民法が、すでにできてはおりましたけれども、まだ施行になっていないという関係で、当時の立法におきましては、抵当権、質権につきましては旧民法時代の形が残っておりまして、それに乗っかって抵当権、質権についての手当はしたわけでございますが、その他の先取特権につきましては全く手当がなかったわけでございます。その後民法が施行になりましたが、国税の優先権というものがお説の通り非常に強かったために、先取特権についての配慮を加えなかったわけでございます。今度先取特権につきまして配慮いたします場合に、この賃金債権の問題も当然出て参りまして、民法の現在の規定で申しますと、賃金債権の、雇用者の賃金の先取特権は、御承知のように三百六条の二号で一般の先取特権になっておるわけです。一般の先取特権でございますと、抵当権、質権におくれてしまう。今度は、先取特権を扱う場合の態度は、抵当権が納期限前に設定されておるか、あるいは納期限後に設定されておるかで区分をいたしまして、納期限前に設定されております抵当権に対しては租税が優先しない、納期後に設定されている抵当権に対しては租税が優先するという構成をとりました。これと他の一般の民法の担保物権との関係をそろえなければならぬ。やはり納期前後で優先をきめると同時に、抵当権、質権に絶対的におくれるという先取特権をもし一つ別に認めますと、この関係から私債権の間の、今の私法上の関係が乱れて参ります。この点は調査会におきましてもずいぶん議論があったわけでございます。結局、先取特権というものが、今の民法においては、かなり時代ずれがして参ったという点はあるわけでございます。どちらかと申しますと、先取特権からむしろ抵当権、質権という形に法律は進歩をするというのが近代法の性格でございますが、最近に至りまして、逆に抵当権、質権とは別個の形で、強力な先取特権によってこれを保護すべきだ、という社会立法的な考え方が出てきておることは事実でございます。今お説の賃金債権の先取特権を強くするという考え方も、その一つではないかと思います。この点は調査会でもさんざん議論になったわけでございますが、ちょうど賃金債権の先取特権と同様な意味におきまして、下請中小企業者の大企業に対する売掛債権といったようなものの先取特権という問題も当然起ってくるのじゃなかろうか。さらに、大企業の場合は賃労働がそういうふうに保護されても、中小企業の債権の保全がされておらなければ、中小企業の労務者というものは依然として保護されない。結局これは社会立法としての将来の発展を待つべき点が多いし、またその形をやることが必要な問題でございますけれども、現在の段階において徴収法を一般の私法との関係で調整する場合に、これだけ抜き出してやった場合には、たといこれを優先させましても、結局の段階に至りますと、やはり私法の順序でやらなければならないために、抵当権に先にやらなければならないということで、またおくれてしまうということにもなるので、そうなればやはり特別法による社会的な立法としての賃金債権の先取特権というものが成立することがまず先決ではないか。今の民法における先取特権の保護は賃金債権に対して非常に薄いということは事実でございますけれども、私法関係というものを税の方で一方的に直すということは行き過ぎであるという意見が多数になりまして、今回の改正におきましては、その点は一般の先取特権並みの扱いしかできない、現在の民法の範囲でやるということになったわけでございます。
#20
○田万小委員 いろいろ理屈はあるでしょうけれども、あなたの今のお話を聞いておると、私のいわゆる賃金債権を保護してやらなければいかぬじゃないかということについては、全幅の同感を表明せられた。ただ取扱い上、抵当権と一般の先取特権というものとの順位において、一般の先取特権の方が後順位にあるからして、それを先順位の抵当権と同一にして取り扱うということは、現在の法体制の上からいったならばどうかと思うというお話、また、先ほど何か読みましたが、あれは徴収調査会の報告かもしれませんが、そういう結論を出しておる。しかし、今申し上げたように、民法の規定は規定として、これは飛躍的な話になるかもしれないけれども、ほんとうに近代的な法体制の上からいうならば、理に合わないものはこの特別法――今出ておる国税徴収法というようなものは特別法ですが、特別法でこれを何とか救済しつつ、実際の態勢にマッチしていくようなことにしてやることが、私は必要ではなかろうかと思うのです。おそらく労働賃金の先取特権を主張するような立場の労働者というものは、官公労のような大きな組合を持っている労働者ではないのです。ほんとうに中小企業の労働者の賃金債権ということであろうと思います。それであれば、それだけに何とかこれを助けてやらねばならぬという気持になることが、いわゆる政治家のほんとうの愛情であろうと私は考える。その意味からいったら、多少いろいろの問題はあるかもしれないけれども、不可能ではないのです。私どもの見るところでは、税制調査会の結論というものは、不可能ではなくて、可能にでき得る取扱いができると思うのです。今日の段階においてこれをなし得ないということは、方法がないのではなくて、誠意がない。従って、今お話が出ましたが、下請業者の請負代金が、これまた賃金債権に影響するというお説からいうならば、これを拡大して下請代金までこれを認めてやればいいという理論が出てくるのでありますけれども、少くともこの段階では、賃金を先取特権として民法が規定している立場からいって、不動産の先取特権はこの法律で保護しているのでしょう。だから、一般の先取特権でも生活に支障を来たすような三百六条の順位に、一、共益の費用、二、雇人の給料、三には葬式の費用、四、日用品の供給とあり、そういうものも必要かもしれませんが、その四つの中でも、順位は二になっているけれども、ほんとうは生か死かという労働賃金に関しては、法律改正においては特に考えてもらいたい。そうでなければわれわれは賛成できない。これくらいに思っているのです。従って、あなたの方でもう一ぺん考え直していただかなければ困ると思うのですが、考える余地はないのですか。
#21
○吉國説明員 ただいま仰せの不動産保存の先取特権、不動産工事の先取特権、これは、御承知の通り登記をいたしますと、抵当権、質権のいかんにかかわらず優先するわけでございます。これはいわば付加価値をそこに加えているということで、民法上も最優先にしておりますので、今度は十九条におきまして最優先にしたわけでございますが、二十条におきましては、登記をした一般先取特権も優先順位の中に加えておりますので、これはむずかしいことかもしれませんが、賃金債権についての先取特権も、雇い主が非常に誠意を持って登記を認めておけば、これはもう当然優先するわけでございます。また、優先しない場合におきましても、登記に基きまして配当を受けるということになるわけでありますので、その点は認めているわけであります。一般の先取特権でございますから、相手方がこの不動産について登記を認めるということをいわなと認められませんが、登記をする道はあるわけでございます。
 それから、もう一つは、一般の先取特権、登記をしない先取特権では、今おっしゃいましたような抵当権の立つような効力を認めるということになりますと、担保物権の体系がこれはもう根本的に動いて参ると思います。その点で、賃金債権の保護という点の先取特権をいかなる形で保護するかということは民法上も非常にむずかしい技術を要すると思いますが、その技術を乗り越えて、社会立法として立案さるべきものと思いますけれども、それだけに、実は徴収法でそれを認める場合も、非常にむずかしい問題が山ほど出て参ります。そういう点もございますし、やはり今度の徴収法におきましては、地方の担保物権の体系をこちらから直してしまうということは、国税徴収法としての範囲では、何と申しますか、あまりにもひど過ぎるという点が手をつけなかった最大の原困でございまして、その点を御了承いただきたいと思うのであります。
#22
○田万小委員 根本の民法の規定から直していくのは容易でないということは、私もそう思います。賃金債権の確保について若干法制局にもいろいろ案を練ってもらったことがあり、三百人以上の工場労働者というような限界をつけて、いろいろ法制的な考え方もしたことはあるのです。ところが、むずかしさが現実の段階にあるのです。それと、今のお話では 一般の先取特権を認めないことはないけれども、登記をしなければならぬ。その登記をするには相手方が同意しなければならぬ。この相手方が同意をすることは、規則の上には書いてはあるけれども、あなた方は可能と考えますか。ほとんど不可能な規定じゃないですか。実際問題として机上の空文ではないですか。局長はどう思われますか。登記をすればよろしい。しかし一般の先取特権で登記ということは、果して現実問題として可能かどうか伺いたい。
#23
○原政府委員 それはおっしゃる通りだろうと思います。この問題は、やはり国税徴収法で賃金債権の一般的な優先性を入れるということが、一体バランスとしていいかどうかという問題になります。ある人がいて、その人の全財産が百万だとします。ところが債権が非常に大きい。税はないと仮定しても、抵当権のついた債権がこれに百五十万ある。それから賃金債権が五十万あるという場合には、やはり抵当権のついた債権が持っていってしまうわけです。次に、場合を変えまして、百万円の財産があるという人に税が百五十万円あり、賃金債権が五十万円という場合には、賃金債権が先になるということは、その賃金債権を仲介にして、税は抵当権におくれるということになるわけです。これはおくれる場合もありますけれども、一応この税は抵当権に対しても優先的な地位は持つという何はあるわけでありますから、そういうことが、期限の前後の問題でなしに税がおくれるというような結果になることは、法律制度として非常に変なことになると思うのです。先生のおっしゃる御趣旨はわかりますが、やはり民法、商法においても、一般の債権との間で賃金債権が先立つということは、おそらく先にあげたように、賃金債権なら五百万でも千万円でも先立つということは、とうていだれも認めないでしょう。やはりそこに規制を加えて、ある期間必要な形式なり基準を持った考え方が理念的に考えられると思いますけれども、そういうものが進まない間に徴収法だけでこれをやれというのは、どうも法律体系としてバランスがとれないというようなことになると思いますけれども、またそういうときにぐるぐる回るというようなことができました場合にも、結局私債権に抵当権つきのものが百五十万あり、それから賃金債権が五十万あり、税は税でもって二百万ある場合に、税がこれにおくれたとしても、結局その残りの中でまず抵当権の方に取られてしまうというようなこともあるわけで、その点気分を鮮明にしたということになりかねないわけです。私ども、制度として今そこまで踏み切ることは、どうもちょっとできないのではないかというふうに思っているわけでございます。
#24
○吉國説明員 ちょっと補足説明したいと思いますが、ただいまのことに関連いたしまして、各租税債権と他の優先債権との優先関係が出て参りますのは、御承知の通り競合の場合でございますが、これは公売処分なり、あるいは競売をやった場合に出て参るわけであります。この公売処分の場合に出て参るのは、税としてはかなり異例でございます。実際は、その前の段階では、営業が継続していける、しかもこれがしばらく待っていれば税金は自然に払えるという見込みがあれば、徴収猶予とか執行猶予をやっているわけでございますが、その場合に、先ほどお話が出ました徴収猶余をいたします場合等においては、納付能力調査ということを国税庁で綿密にやっております。納付能力調査ということは、滞納前にさかのぼりまして、現在払えない状態が何からきているか、浪費からきているという場合には、これは公売処分にまで進まねばなりませんが、たまたま企業の必須の資産を買い入れたために資金的に困っておるというような場合には、むしろ徴収猶予をするということにいたしております。これは現在納付が無理だという場合には今の猶予をいたすわけでございますが、その場合に、今やっておりますのは、納付能力調査の際に、給料はまず優先して支払うという前提で経費を見まして、その残りで納付能力があるかどうかというやり方をやっておりますので、実際上は、公売までぎりぎりのところにいった場合は別でございますけれども、動態として動いております滞納処分におきましては、給料の優先支払いということを織り込んだ納付能力調査をやっておるわけであります。そういう点では、実際の実務ではそういう点を非常に考えておるということが申せると思います。
#25
○田万小委員 公売になる前の徴収猶予とかなんとかということは問題がないと思うのです。もちろん今御丁寧に説明がありましたけれども、私どもが心配しておりますのは、公売になったときの話をしておるわけです。ただいまいろいろお話を承わりましたが、抵当権と一般債権、賃金債権は区別しなければならぬ。法的にそうなっておる。だから国税徴収法においてもやはり段をつけるべきだという話がありましたけれども、今までの国税徴収法では、国税は抵当権より優先しておったわけでしょう。そうじゃないですか。
#26
○吉國説明員 抵当権は、その設定の時期が問題になっております。税金の納期限から一年以上前に設定されておれば、抵当権が優先したわけです。今度の案は一年というのは取り払いまして、一年でございますと、抵当権を設定する場合には、税が今後滞納になるかどうか見通しができませんで、その点が不安定だったので、その点を一挙に下げまして、納期限にしておけば、そのときに税があるかないかわかりますから、そういうことで直したわけです。そういう意味では、抵当権に対して絶対優先ではなかったわけです。
#27
○田万小委員 絶対優先権があったわけではない、抵当権においてもある場合においては国税に優先する場合もあり得たのだ、しかし、今度は大幅に認めて、公売のときに優先権を認めているということになれば、私は先ほどからくどく申し上げましたけれども、やはり賃金債権というものを、少くとも生活保障の賃金債権だから、金持ちが金を貸して金利をとって、あり余った金の支払いについて公売を優先的に受けるという制度が認められるのであれば、もっと掘り下げて、税制調査会でもいろいろお話があったそうですが、今ここで議論しても水かけ論になるような結果になりますけれども、しかし、腹の底では、皆さんの方も何とか将来これは法制の改革をやって認めていかなければならぬということの考えがあるということを、われわれは確認できたのですが、これは大いに考えてもらわなければいかぬと思う。また、今度の法律の改正に当っても、でき得るならばもう一歩二歩踏み込んで御研究を願いたいと思うわけです。それから、何百万という金額になる危険性はないので、三百六条の雇い入れの給料というものは、ある一定の六カ月という制限がありますから、六カ月の限度くらいであれば、国税の徴収に何ら支障を来たさないと思いますので、その点からいっても、もう一ぺん考えてもらう必要があると思う。一応賃金債権についての皆さんの考え方、われわれの考え方を明らかにしておきたかったので、質問したわけです。
 それから、個人と法人の滞納理由についていろいろお伺いしたのですが、法人が脱税を非常にいろいろな方法でやっておるやに聞いておるのですが、一つその顕著な事例をできればお示し願いたいのです。とともに、その脱税の金額も話してもらいたい。
#28
○竹村説明員 お答え申し上げます。脱税事犯の典型的な形態と申しますと、まず架空仕入れを立てる。具体的に申しますと、原材料その他使わなかった経費につきまして、使ったことにいたします。それと、もう一つの方法は、売り上げを除外する方法でございます。現実に売り上げがあったにもかかわりませず、なかったことにして全部帳面から落してしまう。その二つの形態が一番多うございます。それによって生じました所得を留保する形態といたしましては、現金の場合もございますが、むしろ銀行におきます無記名定期だとか、あるいは架空ないし仮装の名義を使った預金の形で留保されている場合が非常に多うございます。私ども査察をやりまして、それによって出て参りました増差本税額だけについて申し上げますと、年によって違うわけでございますが、大体二十億前後でございます。それで告発したもの、しないもの込めて申し上げますと、昨年度の実績で一件当りの増差本税額が千三百万程度になっております。
#29
○田万小委員 脱税が悪質なものであるということは言うまでもないので、今度のこの徴収法によって、抵当権が多少優先的になってくる、税額の減額というものがある程度考えられる。だから、漸次滞納者に対しては非常に愛情を持っていかなければならぬ。悪質な脱税者に対しては厳重にやるべきだと思うのです。その意味においてお尋ねしたのですが、特に法人と個人とでは、脱税の度数は個人より法人が圧倒的に多いでしょうね。
#30
○竹村説明員 法人、個人に分けてみますと、御質問の通り法人の脱税犯が圧倒的に多うございます。具体的な数字を申し上げますと、昭和三十三年の四月から本年の一月までの件数でございますが、法人税につきましては八十五件、所得税につきましては二十三件、こういうことになっております。個人が二十三件でございます。
#31
○田万小委員 私の質問はこの程度で終りますが、先ほどいろいろ論議の間に話された賃金の債権の問題について、どうかもら一ぺんよく考えていただきたいと思います。
#32
○山本小委員長 ちょっと今のことに関連して、この国税徴収法で減収になるというのですが、国税徴収法を改めてこれまでの経済よりももっと健全になるというようなことがあれば、プラスの面もあるのじゃないか。ただ減る一方ではないのじゃないか。そういう点はないですか。
#33
○原政府委員 お話の通りございます。今回穴を埋めるという意味で、仮登記とか、譲渡担保とか、税は自分の税だが、財産は自分のところにはないというような場合に、第二次納税義務というような格好でそういう穴はきちんとふさいでやれるということになりますから、そういう面で増収になる面はあると思うのでございます。ただ、実際いいまして、そういう穴を利用するというのは納税者のそうよけいな部分ではございませんから、質的にはそういうところははっきり追及しなければいかぬ、また非常に多くの額で出てくるということはないということになるわけでございます。
#34
○山本小委員長 今の点ですが、もう一つ、これまでの国税が優先したために、ある企業が思わぬ打撃を受けて、それが連鎖的に打撃を受けた、今度はそういうことがなくてうまくいくということになれば、結局国民の方も得をするし国の方も税収もふえるというふうな影響が考えられないのか、こういうことなんですが、それはどうなんでしょう。
#35
○原政府委員 それは数字的にはなかなか確かめにくいことでありますが、税の賦課ないし徴収の根本の精神は私はそこだろうと思います。今回改正します中にも、いろいろ私債権の担保権に対して税がいわば遠慮をするというようなことをする以外に、納税者自身の企業の経営あるいはその他その私生活自体についても相当考えるという体制をとっているわけです。ですから、徴収の猶予についても、今までは一年しか猶予はできないということであるのを、二年までいけるとか、あるいは執行停止の条件にしましても、かなり条件を広げる、これはまさに、おっしゃったように、決して税は企業なり家計なりをいよいよぎりぎり最後の清算だというような状態に追い込んで取るというのが一番の道じゃなくて、やはり企業は栄えさせ、また家計は穏かに推移するようなことを願いながら、そういうふうにいけば、やはりそこにいわば税源というものが失われず、また発展していくという思想があるわけです。そういう思想に乗っかっておりますので、計数的にこの法律の影響を確かめるとなれば、おっしゃる通りやはりそういう面も確かに響く面だと思っております。
#36
○山本小委員長 もう一つだけ関連で。
 今の脱税の中で、悪質なやつは徹底的に取り締れという委員の御質問でもあり、また主税局の方でも同感だということでありましたが、その悪質の脱税というのと、それから悪質でない普通の脱税と区別の基準はどこにつけておるのか。それを国税庁の長官、査察部長でも……。
#37
○竹村説明員 査察制度が始まりましてから十年余りになるわけでございますが、その間相当数の事件を取り扱っておりますので、具体的に機械的な基準というものはもちろんございませんが、前例に照らしまして、これは告発するかどうかというふうな点につきまして、個別に審査することにいたしております。
#38
○山本小委員長 いや標準です。個別的ですけれども、大体悪質なものと悪質でないものと区別の標準があるでしょう。
#39
○竹村説明員 たとえば二重帳簿を作っておったとか、取引先と連絡をとりまして、売り上げをことさらに表面に出ないように隠蔽しておったとか、さような事案につきましては悪質なりというふうに考えております。
#40
○山本小委員長 こういうのは悪質ですか。ちょっと例を引いて聞きますが、たとえば実態は個人である。しかし税法上の関係で法人にした方が税が安くなるというふうな、錯覚かどうか、それを感じたために、法人の形態をとっておる。そこで、実態が個人であるために、実際そう帳面もこまかくつけていない。それから法人のように金の出し入れも厳密にやっていない。そこで、決算期になってきて、計理士か税理士を雇うてきて、決算報告をしてもらう、あるいは所得の申告をしてもらう、そういったような場合に、そのときに適当に書類を作った。それがつまり結果において脱税になっておるというのは、悪質ですか、悪質でないのですか。
#41
○竹村説明員 結果的に脱漏されております金額の大きさにもよるかとも思いますが、御質問のように、単に実態は個人企業でございますが、法人の形をとっておって、手不足のために記帳その他が不十分であって、正確な所得が把握されてなかった、その関係で若干の脱漏が結果的に出てきておったというような場合でございましたら、多くの場合におきましては悪質に該当しないものになるかと考えます。
#42
○山本小委員長 もう一つ。額によると言われましたが、額が多ければ悪質と見るのですか。
#43
○竹村説明員 お答え申し上げます。ごく簡単な例を申しますと、額の大きさにもよりますが、同時に申告額に対しましてどれだけ脱漏されておったかというふうな脱漏割合でございます。かような面もやはり考慮の要点になろうかと思います。
#44
○山本小委員長 悪質かどうかということの標準に額を問題にするのですか。
#45
○竹村説明員 具体的に申し上げますと、たとえば一億円、二億円というふうな所得が脱漏されておるということになりますと、多くの場合において、常識上やはり悪質の度が強くなって参るかと思います。また、たとえば百万円脱漏されておりましても、それが申告所得が多うございまして、一億円の申告所得のうち百万円抜けておる場合もございましょうし、あるいは無申告によって百万円脱漏されておるという場合もございましょう。従いまして、申告に対比いたしましてどの程度脱漏されておるかということは、やはり重大な要素になろうかと思います。
#46
○山本小委員長 脱漏の額だが、その額を、脱漏した分を会社の設備に使った、もし使わなければ税で持っていかれた、税で持っていかれれば、その次の年の所得はそんなにふえなかった、しかし、もっぱら設備を改善したために、金もないが、実際は設備がよくなって、その次の所得がふえて、そうしてどんどん去年よりも所得の申告額がふえてきた、国に対しても税金をよけい納めることができた、もし税金で持っていっておれば、それがその次の年、その次の年には税は納められなかったというようになっていたという場合に、それは悪質ですか。そういうのはどう扱っているのですか。
#47
○竹村説明員 脱漏されました所得をどういうふうに使っておるかという観点から見てみますと、個人的な消費に使われておる場合はないことはございませんが、比較的少うございます。事業の拡張ないしは将来危惧される不況に対処するために備えておる場合が多うございます。従いまして、御質問のように、脱漏所得を設備の拡張に注ぎ込みまして、その結果それから後の所得が増大されたというような場合におきましても、その後における所得の増大ということはあまり考慮する余地がないように考えております。
#48
○山本小委員長 春日一幸君。
#49
○春日小委員 特に私がお願いをしておきましたが、私がこれからお伺いをすることは、もしこれをせんじ詰めていきますと、それぞれ広範にわたって深刻な影響を与える結果になることをおそれますので、願わくは懇談の形にして、速記をおとりになることなく、質疑を続けたいと思うのです。そうしてまた必要の段階になったら速記をしていただく、一つそのようにお取り計らいをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#50
○山本小委員長 お諮りいたします。審査の便宜上この際懇談に移りたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#51
○山本小委員長 異議なしと認めまして、懇談に移ることにいたします。
     ――――◇―――――
    〔午後零時十一分懇談会に入る〕
    〔午後一時九分懇談会を終る〕
     ――――◇―――――
#52
○山本小委員長 これにて懇談会は終了いたします。
 この際春日委員より発言を求めております。これを許します。
#53
○春日小委員 本員は、過ぐる衆議院の予算委員会における質疑応答の状況にかんがみまして、かつは昨日の予算委員会における内閣総理大臣とわが党委員との質疑応答の状況に徴しまして、この際日本社会党国会対策委員会の決定に基きまして、次の資料を要求いたします。
 それは内閣総理大臣岸信介氏の過去五カ年間にわたるところの所得課税額が幾らであるか、これを各年度別について本委員会に御提示を願いたいと思います。なお、この課税額につきましてはすべての所得を包括いたしておりますので、すべての所得関係が明確になりまするように、できることならば、一切の書類を添付の上、本委員会に御提出を願いたいと存じます。もとより固定資産税、一時所得、その他ことごとくのものでございます。単なる決定額ばかりでなく、できることならば、そういう課税額の要素となりまする金銭の出納、これもあわせて一つ御提出を願いたいと思います。以上の資料を願わくは、国会審議のいろいろな必要もございますので、来週の火曜日までに本委員会に御提出願いたい。
#54
○山本小委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
#55
○山本小委員長 速記を始めて。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後一時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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