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1958/02/24 第31回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第031回国会 社会労働委員会 第10号
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1958/02/24 第31回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第031回国会 社会労働委員会 第10号

#1
第031回国会 社会労働委員会 第10号
昭和三十四年二月二十四日(火曜日)
    午後四時十七分開議
 出席委員
   委員長 園田  直君
   理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君
   理事 藤本 捨助君 理事 八田 貞義君
   理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君
   理事 滝井 義高君
      小川 半次君    亀山 孝一君
      河野 孝子君    齋藤 邦吉君
      中村三之丞君    中山 マサ君
      古川 丈吉君    柳谷清三郎君
      伊藤よし子君    大原  亨君
      岡本 隆一君    河野  正君
      多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君
      中村 英男君    八木 一男君
      吉川 兼光君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        労働政務次官  生田 宏一君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      堀  秀夫君
 委員外の出席者
        専  門  員 川井 章知君
    ―――――――――――――
二月十九日
 委員久野忠治君、武知勇記君、永田亮一君、福
 家俊一君、福田一君、福永一臣君及び本名武君
 辞任につき、その補欠として藤本捨助君、中村
 三之丞君、野澤清人君、古川丈吉君、山田彌一
 君、大石武一君及び川崎秀二君が議長の指名で
 委員に選任された。
同月三十四日
 理事大石武一君及び藤本捨助君同月十九日委員
 辞任につき、その補欠として大石武一君及び藤
 本捨助君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
二月二十三日
 療術の禁止解除に関する請願(天野公義君紹
 介)(第一六三一号)
 同(受田新吉君紹介)(第一七四〇号)
 クリーニング業法の一部改正に関する請願(内
 海安吉君紹介)(第一六三二号)
 同(井原岸高君紹介)(第一六五一号)
 同(今松治郎君紹介)(第一六五二号)
 同(小泉純也君紹介)(第一六五三号)
 同(寺島隆太郎君紹介)(第一六五四号)
 同(増田甲子七君紹介)(第一六五五号)
 同(宇田國榮君紹介)(第一六七八号)
 同(志賀健次郎君紹介)(第一六七九号)
 同(赤路友藏君紹介)(第一七二五号)
 同(赤松勇君紹介)(第一七二六号)
 同(今井耕君紹介)(第一七二七号)
 同(井手以誠君紹介)(第一七二八号)
 同(今村等君紹介)(第一七二九号)
 同(北山愛郎君紹介)(第一七三〇号)
 同(高橋英吉君紹介)(第一七三一号)
 同(森島守人君紹介)(第一七三二号)
 同(山本猛夫君紹介)(第一七三三号)
 同(床次徳二君紹介)(第一七八〇号)
 同(三池信君紹介)(第一八一三号)
 同(八木徹雄君紹介)(第一八一四号)
 戦傷病者のための単独法制定に関する請願(田
 中龍夫君紹介)(第一六五六号)
 同(馬場元治君紹介)(第一六五七号)
 同(中馬辰猪君紹介)(第一六八〇号)
 はり、きゆう術の科学的研究所設立に関する請
 願(馬場元治君紹介)(第一六五八号)
 簡易水道事業に対する国庫補助増額に関する請
 願(亀山孝一君紹介)(第一七三四号)
 保健所に対する国庫補助増額に関する請願(亀
 山孝一君紹介)(第一七三五号)
 日雇労働者健康保険法等の一部改正に関する請
 願(赤路友藏君紹介)(第一七三六号)
 同(五島虎雄君紹介)(第一七三七号)
 失業対策事業の就労日数増加等に関する請願(
 赤路友藏君紹介)(第一七三八号)
 同(五島虎雄君紹介)(第一七三九号)
 保健所の強化に関する請願(多賀谷真稔君紹
 介)(第一七四一号)
 国立箱根療養所の戦傷者入所料国庫負担に関す
 る請願(高瀬傳君紹介)(第一名七七八号)
 国立伊東、別府保養所の重度戦傷病者の看護料
 徴収反対に関する請願(高瀬傳君紹介)(第一
 七七九号)
 生活保護法の保護基準引上げ等に関する請願(
 志賀義雄君紹介)(第一八一〇号)
 栄養士法の一部改正に関する請願(千葉三郎君
 紹介)(第一八一一号)
 大島青松園整備に関する請願(藤本捨助君紹
 介)(第一八一二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
二月二十三日
 戦没者遺族の処遇に関する陳情書(東京都千代
 田区九段旧軍人会館内財団法人日本遺族会長高
 橋龍太郎)(第三三一号)
 元満州及び北鮮地域の遺骨処理に関する陳情書
 (福井県議会議長山崎正一)(第三三六号)
 結核回復者の更生対策改善に関する陳情書(京
 都府議会議長俣野長蔵)(第三四一号)
 結核治療費全額国庫負担制度の立法化促進に関
 する陳情書(京都府議会議長俣野長蔵)(第三
 四二号)
 保育費措置費国庫負担金の交付基準単価引上げ
 等に関する陳情書外二件(浜田市大字長浜町長
 浜保育園長坪井忍外五十八名)(第三四三号)
 中小企業退職金共済事業法案に関する陳情書(
 東京商工会議所会頭足立正)(第三四五号)
 公衆衛生施設設置費国庫補助増額等に関する陳
 情書(埼玉県知事栗原浩外二名)(第三五五
 号)
 生活保護法による久留米市の保護基準引上げ関
 する陳情書(久留米市長杉本勝次外一名)(第
 三五六号)
 中小企業退職共済制度に関する陳情書(大阪商
 工会議所会頭杉道助)(第三七一号)
 旧軍人の傷病治療費全額補償等に関する陳情書
 (徳島県那賀郡羽ノ浦町古庄大道西五七の三岡
 本加賀蔵)(第三八六号)
 保健所医師充足対策費増額等に関する陳情書(
 奈良県宇陀郡榛原町長峯六郷青年団長福井充樹
 外二十三名)(第三八七号)
 社会福祉職員の待遇改善に関する陳情書(大阪
 府議会議長辰巳佐太郎外八名)(第三八八号)
 戦没者の葬祭料引上げに関する陳情書(香川県
 議会議長大久保雅彦)(第三九六号)
 結核医療費国庫補助増額等に関する陳情書(神
 戸市議会議長渡辺軍司外十九名)(第四一九
 号)
 国民皆保険制度確立に関する陳情書
 (全国町村議会議長会長須川勝造)(第四二〇
 号)
 中小企業労働福祉資金助成法制定に関する陳情
 書(長崎県議会議長水頭欽一)(第四二八号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の互選
 内閣提出の最低賃金法案に関する件
     ――――◇―――――
#2
○園田委員長 これより会議を開きます。
 この際一言申し上げます。本委員会は話し合いによる円満な議事運営と、慎重な審議とを旨としまして各位の御協力を得て参りましたが、不本意にも去る十九日の委員会において、社会党の欠席のまま自民党のみで採決する結果と相なりました。今後は互いに一そう信義を尊重し、相ともに正常な議事運営に努力いたしたいと存じますので、各位におかれましては、何とぞよろしく御協力のほどお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#3
○園田委員長 この際、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。去る十九日に理事の大石武一君及び藤本捨助君が委員を辞任せられましたので、理事に欠員を生じております。つきましてはその補欠選任を行わねばなりませんが、再び委員に選任せられました両君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○園田委員長 御異議なしと認め、大石武一君及び藤本捨助君を理事に指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○園田委員長 この際、内閣提出最低賃金法案に関し、小林進君から発言を求められています。これを許します。小林進君。
#6
○小林(進)委員 最低賃金法案につきまして、御質問を申し上げたいと思うのであります。
 先般私は、最低賃金法を政府が制定される目的が那辺にあるのかということをお伺いいたしました。それに対しまして大臣からいろいろお答えを得たのでありますが、私どもの立場からは、その目的はあくまで労働者のための、保護のものであり、その一点に目的を置いて、それを条文にも明確にしておくべきであるということをくどく申し添えたのでございます。それに対しまして政府原案の意図されるところは、最低賃金の本質はあくまでも目的の多様性にあるのだ。一つには経営者の不当競争を防止するのである。二には経営基盤の育成をはかるためである。三には労働力の質的向上をはかるためである。四には国民経済の健全なる発展に寄与するためにある。特に日本の低賃金から起る諸外国の、日本のソーシャル・ダンピングに対する懸念と申しますか、不信感と申しますか、そういったものに附する経営者の自己防衛のための手段として、国際信用を維持するためのごまかし的な最賃法を目途としておられるのではないかという懸念さえも含まれているということを申し上げたのでございます。そうしてほんとうのねらいといたしておりまする労働者を保護するという目的が、ほとんど重要視されていない。もしこの法案がこのままの形で、労働者保護という目的がかくのごとくぼやかされた形で、いよいよ通過をいたしました場合には、実は私はこういう心配があると思うのでございます。ということは、労働者が、業者間協定でございまするか、そういうことで与えられた賃金が、どうしても納得できない、これではあまりにも食えない賃金ではないかというふうな具体的な問題が起きたときにどうなりますかというと、いやこの法律の目的は、すなわち経済基盤の強化のためにあるんだ、あるいは産業の正常な発展のためだから、その低賃金で一つがまんをしてくれ、食えないだろうけれども、最低賃金法の目的に従ってがまんをしてくれという、そういういわば最低賃金法の第一条に定められた目的の多様性によって、労働者に最低賃金を押しつけておいて、むしろそれを押える一つの手段にこの法律が用いられるという懸念がたくさんある。これをわれわれはおそれるのでございまして、そういうような食えない賃金で抑えつけておいて、そうして最低賃金法という法律をたてにして、経営者の公正な競争のために、あるいは経営基盤の育成強化のためにというふうな、そういう言い分で低賃金を正当化されるおそれが、この最低賃金法の目的の中に多分に織り込まれている。だから私は、どうしても第一条をそういう懸念がないように、すっきりと改めてもらうわけにはいかないかということを申し上げたのでございます。これに対しまして、労働大臣のいろいろの御答弁がありましたが、最後には、これは中央賃金審議会の答申通りにやったのであるというふうにお答えになったのであります。それでありまするから、私はさっそく中央賃金審議会の答申書なるものを見たわけでございまするが、その中には、最低賃金に関する答申には、そういう大臣のおっしゃるような目的が明らかになっておらぬのでありまして、ここに私は大臣の御答弁に少しくごまかしがあると思う。昭和三十二年十二月十八日の中央賃金審議会の会長中山伊知郎さんが、当時の労働大臣の石田博英殿に出された答申書には、「この制度は、今後の労働条件の向上、企業の公正競争の確保、雇用の質的改善、国際信用の維持向上等、国民経済の健全な発展を促進する上に、大きな意義を有している。」云々というふうにございまして、これはこの最低賃金法を実施された結果、このような副次的な効果が現われてくる、むしろ結果論を述べられているのでありまして、最低賃金法の目的をいっているのじゃない。あるいはこういう効果、こういう意義が現われてくるぞというその結果をもって――どうも中央賃金審議会がこういう多くの目的のためにとの制度を用いられた方がいい、こういうふうにお答えになっていることは、主客転倒いたしておりまして、御答弁にはなっていないと思います。こんなことを繰り返しておりますると、とても時間がございませんので、一応私は大臣の御答弁がいただきかねる、私の質問に対する正確な答えになっていないということを申し上げまして、次の質問に移りたいと思うのでございます。本日は集約して申し上げまするから、どうか一つやじらないで下さい。
 第二問といたしまして、今度は最低賃金制の概括と申し上げましょうか、内容と申し上げましょうか、その内容の中の特に基本的な問題について、その一、二の重要な点をお伺いいたしたいと思うのでございます。今日諸外国における最低賃金制の実施状況によりますると、すでに実施をいたしておりまする国が五十四ヵ国、未実施の国が三十四ヵ国、その中でILOの最低賃金条約を批准せられた国がすでに三十有余、まだしない国が四十近くある、こういう現状でございますが、その最低賃金法を実施いたしている国及び批准をいたしておりまするそれぞれの国の中で、最低賃金法の型といいましょうか様式といいましょうか、型がいろいろあるようでございます。そのいろいろな型の中でどれが一番いいか悪いか、その優劣はその国情によって一がいに論ずるわけにはいかないと思うのでございますが、そういういろいろな最賃法の型の中で、日本の政府が一つの型をおきめになりまして、そして今日法案として国会に提出せられているのでございますけれども、この日本的な型をお作りになって国会に提出されるには、政府もまた各国のそれぞれの型を全部御研究になりまして、そうしてその優劣、長短を明らかにせられたことと私は拝察をするのであります。しかし私は私なりに、やはり微力をささげながら各国の型を一応研究させていただいたのでございますが、その結果から見て、どうも日本政府が今お出しになったこの型が、今わが日本の国情の中で、これを実施するにしても最良のものであるという確信は出て参りません。この観点に立つならば、一体政府がこの日本的な型、いわゆる自民党政府的なこの型がいろいろな型の中で一番優秀であるという、その法律的あるいは経済的、社会的な一つの論拠を承わりたいというのが、私の第二問になるわけでございます。
 私はその観点に立って、いろいろありまする型を私なりに四つに分けてみたのでございますが、四つに分けてその長短、優劣を比べながら政府の御意見を承わりたいと思うのであります。第一は適用労働者の範囲。いろいろな刑がありますうちの、労働者の適用する範囲がいろいろあるようでございますが、その労働者適用の範囲。第二番目は最低賃金決定の方式、これもまたいろいろ各国によって違っておりますが、この方式。第三番目は最低賃金決定の基準でございます。これは最低賃金法の第三条にございますが、この決定の基準の問題。第四番目は最低賃金の強制方式でございます。こういうふうな四つの型に分けてお尋ねをしたいとと思う。
 まず第一に、その最低賃金法を適用する労働者の範囲に関する問題から、一つ私は政府の御見解を承わりたいと思うのであります。この労働者を適用する範囲にも大体三つまた範囲があるようでございまして、第一番目には、定められ最低賃金法が全労働者に適用される、そういう型のものと、特定の賃金労働者のみに適用されておりまするものと、その中間に位するもの、こう範囲が三つに分れているようでございます。その特定の低賃金労働者のみに適用するものの中にも、苦汗労働者のみに適用されるもの、これは初期のビクトリア法ですか、イギリスの一九〇九年の賃金委員会法等がこの方式をとっているようでございまするし、また家内労働者のみに適用されている型がございます。一九一五年のフランス法などというのがこういう型であり、それから女子及び年少者のみに適用されているような型のものもございます。アメリカ州法の大部分とか、あるいはカナダの諸州の法律がそのようにできているようなわけでございます。その中間にあるものといたしましては、一九一八年の英国の賃金委員会法の改正で、特に低質金業種だけでなくても賃金委員会を設置することかできる等の規定を設けて、広く労働者に適用するような型に改められておりまするから、これが全労働者と特定の賃金労働者の間に適用される型ではないかというふうに私は考えております。その中で、今政府が、第二条によりまして労働基準法に定める全労働者にこの最低賃金法は適用されるのであるというふうに大体原案をお作りになったのでございまするが、その全労働者に適用するという型をとりながら、特に家内労働者については、非常に不完全なものでございまするが、第三章の二十条から二十五条に一応お定めになっておるのでございまするが、この中で女子労働者、特に女子年少労働者について、わが日本の最低賃金法には何らの規約がございません。これがどうも私は非常に物足りないのでございまして、やかましい議論は別にいたしましても、同一労働同一賃金ということは、私はやっぱり労働法規を制定いたしまする場合には、これは重要な項目として考えていただかなければならないのではないか、かように考えておるのでございます。特に最低賃金法などということを考える場合には、家内労働者と同時に、やはりわが日本における性別による賃金格差、女子なるがゆえに低賃金にくぎづけせられているという今日のこの現状を何とかやはり救済する、民主主義的にこれを解決するというふうな考慮というものは、私は当然払われていなければならないと思うのでございまして、社会主義国家におきましては男女の性別はもう全然ないことは、博学な大臣よく御承知の通りであります。質と量とに基いてのみ賃金の差があろうけれども、性別に基いてくれるべき賃金を節約して、女なるがゆえに半分にしていこうというような、そういうことは、あに社会主義国家のみならんや、先進国にもだんだんこれが改められてきているようでございます。アメリカとかカナダの各州法の一々具体的な法律をここで述べていたのでは時間がありませんので省略いたしまするが、この最賃法をお作りになりまするときに、一体女子の低賃金労働者に対してどのような御考慮をお払いになったかということを、まずお尋ねをしておきたいと思うのでございます。
#7
○倉石国務大臣 きょうはせっかくの大事な時間に御発言があったのでありまするから、誤解のあることは氷解しておく方がいいと思うのであります。先ほど、私がこの前に申しました最低賃金制に関する中央賃金審議会の答申を尊重して原案を策定いたしたということについて、小林さんから何か誤解があるようなお話がありましたが、今あなたがお読みになりました最低賃金制に関する中央審議会の答申のうち、「この制度は、今後の労働条件の向上、企業の公正競争の確保、雇用の質的改善、国際信用の維持向上等、国民経済の健全な発展を促進する上に、」云々ということを言っている。私どもが法を策定いたしまする趣旨はこれであった、こういうふうに申し上げていたのでありますが、それについて、ただいまのお話によりまするというと、それは法律を施行すればそういうことになるのだという結果をうたっているのだというのですが、結果というのは、結果を招来するために目的があるのでありまするから、代議士に当選するために立候補する、立候補するというのは当選するために立候補するのでありまして、目的があって、自的から結果が生まれるのでありますから、この法第一条に目的を掲げているということは、この目的が結果を招来するようにということなんで、従って、その結果を期待して目的に書くということは、これが一番大事なことであります。そこで、今まで何回かあなたのお話がございましたが、なるほど政府案の御審議を願いました第一条は、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」こういうのが目的であります。そこで今度は、社会党修正案というものを先般配付されましたので拝見いたしますと、その目的、第一条には「この法律は、すべての労働者について、又は全国若しくは一定の地域における一定の事業若しくは職業の種類ごとにその労働者について」こういうふうに先の方をお直しになりまして、そうしてあとは「賃金の最低額を保障することにより、」云々というのは、政府原案の全部をおとりになっておいでになる。社会党原案によりますというと、「賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」こういう工合で、半ば以後は全部政府案と同じ文句であります。そこで小林さんのおっしゃいますように、政府案は同じ文句であっても労働者のことを考えないで、社会党修正案だけが労働者だけのことを考えておるんだというふうな、注釈はちっとも書いてありませんが、御趣意は同じことだと思うのです。従って私どもは、やはりこの最低賃金法の目的というものは政府原案に書いてありますように、低廉なる賃金の労働者のために、同時にまた事業の公正なる競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする、この辺のところは小林さんの方の御修正と同じであります。そういう意味で、最低賃金法の趣旨が那辺にあるかということは御了解願ったことであると思いますし、また速記録等で非常に間違っておるような印象を与えられることはやはりよくありませんから、その点を私の方からあらためて是正をいたしておきます。
 それから性別によって区別をしてはならぬ、そのことは本法審議の最中にしばしばお話になりましたように、適用労働者というのは労働基準法適用労働者でありますから、労働基準法第四条にありますように、「使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」この趣旨を尊重いたしてあることは同様であります。
#8
○小林(進)委員 第一問の問題につきまして、どうもわが党の良心を疑われるような大臣の御答弁がありましたので、これもわが党の立場を一つ明確にしておきたいと思うのでございますが、わが党の修正案について、どうも政府原案と同じような文章ができ上っているではないか、こういうような大臣の御答弁がございました。その通りであります。その通りでありますが、これはあくまでもわが党の修正案でございまして、われわれがこの修正案の審議をいたします場合には、気に入らないところがたくさんあるけれども、なるべく一つ政府が望み得るような修正案を作って、両党一致の形でこの最低賃金案を作り上げよう、こういうことで、私は第一条なんか根本から反対をいたしました。反対いたしましたが、わか党の穏健な主張をなす者が、全国一律、業種別、地域別あるいは職種別だというようなものの下に、いわゆる最低を保障する一本の線が入って、そうして業者間協定などというインチキさえ政府が改めてくれれば、その他の点では少々譲歩してもよろしいということで、今大臣がお読みの第一条を泣きの涙でのんだわけであります。修正案でありますから元も干もなくしてはいけないから、この点ぐらいは政府の面目を立ててでもということで、われわれは同じ文章を使ったのでございますから、その点は一つ大臣の誤解のないように御了承をいただきたいと思います。これが私どもが政府にお譲り申し上げましたぎりぎり決着の妥協線でございますので、われわれのこの真意をお疑いにならないように御了承いただきたいと思うのでございまして、決して、だからということで政府案のこういう目的の多様性をわれわれが無条件に入れたわけではない。繰り返して申しますが、業者間協定などというような、ああいう最低賃金法にあらざるものをすぱっと削除してしまうならば、今おっしゃる通りです、第一条は政府原案の通り認めてよろしゅうございますから、その点を誤解のないようにお願いいたしたいと思うのでございます。第一条はこれぐらいにいたして起きまして、女子、年少者労働者の問題についても、あまり討論をいたしておりますと先へ進みませんから、これは不満足の意を表して次へ進みたいと思います。
 最低賃金の規定の方式ですが、これは政府原案の中でも一番私は重要だと思うのでございまして、その規定の方式についてお伺いいたしたい。最低賃金を決定される方式にはいろいろあるようでございまして、一つは法定賃金方式とでも申し上げましようか、これはアメリカの公正労働基準局だとか、ニュージーランドの一九四五年の最低賃金法がとっております方式、その他フィリピン、アルゼンチンなどが同じくこれを採用しております。議会みずからが法律によって最低賃金をきめる、そういう方式が一つ。それから仲裁裁判所方式による最低賃金の決定方法でございまして、これはオーストラリアとかニュージーランドの一八九四年法等で採用されております方法でございまするし、三番目では賃金委員会方式、この賃金委員会方式にも産業別、職業別委員会方式と一般委員会方式、その一般委員会方式の中でも全国または地域別に設けられているもの等がございまするし、四番目といたしましては行政官庁方式と申し上げましょうか、命令とか布告とか規則、閣令とかいうふうな形で最低賃金率等がきめられている方式のもの、それから労働協約の中に含むもの、それから日本政府が今おやりになっている業者門協定等によってでき上るもの、こういう賃金のきめ方で、私の知る範囲でも六つの方式があるのでございまするが、その中でまず日本方式と申しますか、日本案を選ばれた理由をお聞かせ願いたいと思うのであります。
#9
○堀政府委員 各国の最低賃金の決定方式については、ただいま御指摘のありましたように、賃金委員会方式あるいは仲裁裁判所方式あるいは法定最低賃金方式、団体協約の適用方式というようないろいろな型があるわけでございます。しかしながら各国の実情を見てみますと、これらのうちの一つをとっているというような国よりも、これらの方式を組み合せて実施しているという国の方が多いように考えられるのでございます。ILOの最低賃金決定制度の創設に関する条約の中にも「本条約を批准する各締盟国は、最低賃金決定制度の性質及形態並に其の運用方法を決定するの自由を有す。」と書いてあるのはそのゆえんに基くものだと思うのでございます。
 わが国におきましては、今回最も中小企業の実情に適した方式は何であるかということにつきまして、労働大臣から労、使、中立三者構成の中央賃金審議会に、日本の実情に応じていかなる方式が最も適当であるかという諮問を申し上げたのでございまするが、これに対しまして約半年の間慎重かつ熱心な御審議を続けられた結果、三十二年の十二月に労働大臣あてに答申が行われたのであります。答申の中には、まず第一に、業者間協定を締結したものが申請した場合には賃金審議会にかけて、そこで審議を受けた上で労働大臣が決定をするということ、それから第二番目に、これを同地域の他の同種の労使に拡張適用するように地域的最低賃金の方式をとるということ、第三には、労働協約によって最低賃金がきめられておる場合に、これを同地域の同種の労使に適用するように労働大臣が決定すべきであるということ、以上の措置による最低賃金の決定が困難、不適当である場合には、労働大臣が直接最低賃金審議会の調査審議を求めて最低賃金を決定する方式、このようなことで法制を作るのが至当であろう、このような答申があったわけでございます。従いまして政府にその答申を受けまして、今回の最低賃金法を立案した次第でございます。
#10
○小林(進)委員 実に平面的な御答弁をいただきました。賃金委員会方式やら、法定方式やら、仲裁裁判所方式やら、労働協約等々をミックスした日本案というものができたという御答弁でございました。
 私は次にお伺いしたいのは、ウエートの置き方なんです。日本案の特質を摘出いたしまして、その特質を明らかにしなければならぬのでありますから、その点においてお伺いするのでございますが、日本案の特質は、業者間の協定に最も重点を置いてあるのか、賃金審議会に一番ウエートを置いてあるのか、労働大臣または都道府県基準局長がこれを決定するという、その決定権に一番のウエートがあるのか、それによってわが国の政府原案の方式がそれぞれ学者によって適当に命名されると思うのですが、そのウエートの置き方によっては、わが国に現在ある案も、あるいは委員会方式という人もありましょうし、あるいは行政官庁方式というかもしれませんし、あるいは業者間協定方式というかもしれません。政府の原案を読んでみますと、一体どこに重点を置いてあるのか私は不明確なんです。この点をもう一度明確にお答え願いたいと思います。
#11
○堀政府委員 ただいま御答弁申し土げましたように、四つの方式を組み合せてあるわけでございます。その四つの方式のどれに重点があるかというお尋ねでありますが、これは中央賃金審議会の答申を読んでいただければわかりますように、どれに重点があるということはないわけでありまして、これらを併用していくという考え方でございます。その場合に業者間協定があるときには業者、それから労使協定がある場合には労使当事者というように、おのおの自主性を尊重して、まず一、二、三の方式でやっていく。それが困難、不適当な場合に第四の方式があるということで、中央賃金審議会の答申にもそのようなことで一、二、三、四というように続けて並べてあるわけであります。政府案はその答申の趣旨をそのまま全面的に尊重して作成してあるのでございます。
#12
○小林(進)委員 それはちょっと私にはしろうとみたいな答弁のように思いますが、一体政府が御決定になりまして、それが決定をせられてその法的拘束力を与えられたときに、それを発表されるのは省令ですか、閣令ですか、命令ですか、あるいは規則ですか、その発表の形式はどういうふうになるのですか。
#13
○堀政府委員 労働大臣の告示というような形になるわけであります。
#14
○小林(進)委員 労働大臣告示でございますか。告示というものに国家権力の拘束力を付与する――なるほどね。
 最低賃金法は、最低賃金が最低賃金としての効力を持って、民間団体の業者間協定と違うゆえんは、最後は国家がこれに法的拘束力を与えておって、法の権力の裏づけがあるということが最低賃金法の本質でございます。こういう告示だけで国家権力というものは拘束力を発動し得るものですか。
#15
○堀政府委員 これは最低賃金法の中に、労働大臣が定めた最低賃金を守らなかったものについては罰則の規定もありまするし、それから最低賃金を下回るような賃金は、その限度において無効とするという効力もあるわけでございます。すなわち刑事的の効力と民事的の効力と双方あるわけでございます。そうしてこの最低賃金法の中には、それぞれその業者間協定に基く最低賃金、労働協約に基く最低賃金、あるいは最低賃金審議会の調査審議に基く最低賃金、それぞれの条文に根拠がございまして、それに基いて労働大臣が定めるということになっているわけでございます。従いまして告示で定めますれば、当然民事的効力もあり、かつ刑事的効力もあるということになりまするので、これは賃金審議会等の意見に基いて行政官庁が定めておる。各国の例を見ましても、同様のことになっているわけでございます。
#16
○小林(進)委員 次に賃金委員会方式について、業者間協定と賃金審議会との関係、それから賃金審議会と労働基準局ないしは労働大臣との関係について、いま少しつまびらかにお尋ねいたしたいと思うのでございます。
 まず第一番目の賃金審議会と行政官庁の関係でありますが、労働大臣が賃金審議会の答申のあった場合に、一体その内容を変更することができるのかどうか、あるいは答申の変更ができる、――中央賃金審議会の答申があったときに単にこれを受諾するにすぎぬのか、特に尊重するとか、抽象的なやかましい文句だけでその点がごまかされておりますが、あるいは変更ができないのか、これを拒否して委員会に再検討させるだけの権限があるのか、これも賃金委員会方式をとる案の中にも、各国によってこういう点はそれぞれ違っているようでございます。一体日本政府はこの賃金審議会と行政官庁との答申案に対する取扱い方についてどういうふうにお考えになっているか、お伺いをいたします。
#17
○堀政府委員 賃金審議会は労働大臣あるいは地方の労働基準局長に対するところの諮問機関でございます。従いましてここれらの審議会から答申なり意見なりが提出されましたときに、労働大臣あるいは地方の労働基準局長はこれを尊重しなければならないということになっているわけでございます。そうして行政官庁と賃金審議会との関係は、行政官庁対諮問機関という関係でございます。従いましてその答申なり意見なりを尊重する、この通りに実施するということにつきましては、行政官庁はその通りに尊重して実施する政治的かつ道義的義務を負うものである、かように考えます。また実際問題といたしましても、三者構成の賃金審議会で意見がまとまりまして提出されました答申につきましては、これは尊重しなければならないところでございます。そのような意味におきまして、この行政官庁と賃金審議会との関係は成り立っているわけでございますが、各国の例を見ましても、あるいは賃金審議会が決定機関であるようなところもございますが、相当大多数の国におきましては、賃金審議会は諮問機関であるという国も非常に多いわけでございます。わが国におきましては、この中央賃金審議会の答申は、今の行政官庁対諮問機関の関係といたしまして、尊重しなければならないということを法律に規定してあるわけでございます。
#18
○小林(進)委員 そうすると諮問機関であり、尊重しなければならないということは法文で明らかでございますが、今の御答弁によりますと、尊重するということは中央審議会の答申をその通りに実施をすることであって、その通りに実施をする政治的、道義的責任があることを明らかにしたのである、こういう御答弁でございましたから、従いまして裏を返すと、労働大臣ないし労働基準局長は、この中央地方の審議会の答申を変更する権限といいますか、事実上変更することはできないのである、そのまま実施する以外には方法はないのである、まして、それが意思に沿わない場合にはこれを拒否して再検討を命ずることもできない、あるのはただ受諾だけである、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
    〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
#19
○堀政府委員 これは将来の仮定の問題になるわけでございますが、法律的にかりに行政官庁がこの賃金審議会の意見を変更して実施した、あるいは実施しなかったという場合に、それは無効であるかといえば、無効ではないと言えるだろうと思います。しかし政治的、道義的、あるいは事実上の問題といたしましては、これは三者構成の賃金審議会の御意見でございますから、行政官庁は政治的、道義的、あるいは事実上文字通り尊重することが必要である、このように考えております。
#20
○小林(進)委員 これは将来この法案を運営する場合において非常に重大な問題でございますから、いま一点念を押しておきたいと思うのでありますが、そうすると法律の規定の上からは、労働大臣、基準局長はその答申案を変更したり、実施をしなかったり、あるいは再検討を命じたりする法律的な行為はできる。できるけれども、三者構成で慎重審議の結果であるから、それを尊重いたしまして、事実の面においてはそれを受諾する以外にないのである、こう断定をしてもよろしゅうございますか。
#21
○堀政府委員 政治的、道徳的、あるいは事実上はその通りの措置をすることが妥当であろうと思います。
#22
○小林(進)委員 そこまで明確な御答弁をいただくならば、その点を法律上に明らかにせられてよろしいと思うのでございますが、またそういうことで論じておりますと先へ進みませんから、この問題は、ふに落ちない、了承できないままに一応とめます。
 次に賃金審議会と業者間協定との関係について、これも私は一つ念を押しておきたいと思うのでございますが、業者間協定できめられた貸金が一応賃金審議会にかかるのでございますが、その賃金審議会は、今もおっしゃった通り三者構成でできておりますから、その中の使用者代表でもよろしい、労働者代表でもよろしい。少数の者が、どうもこの賃金は不当じゃないか。だからこれを認めるわけにいかぬと言って反対をした場合に、一人でも反対した場合に、その協定が一体どういう扱いを受けるのか。その問の関係を伺いたいと思います。
#23
○堀政府委員 反対者がありました場合には、反対者はその協定には加わらないという意思表示をしておるわけであります。そこでその反対者を除いた他の賛成の方の合意によって申請がなされる。そうしますと、反対者を除いた他の全員の申請に基いて、賃金審議会の審議を経た後に最低賃金がその方に適用になるということになります。それが第一段でございます。次に第二段といたしまして、少数の者が適用を受けない、その適用を受けないためにその業態における最低賃金が円滑に実施されないということになりました場合には、適用になる方の大多数の申請によりまして、いわゆるアウトサイダーを包括するところの地域的最低賃金を確定することができる、こういう二段構えになっておるわけであります。
#24
○小林(進)委員 労政局長は私の質問を取り違えておいでのようであります。私は業者のことをお伺いしているんじゃない。同業者のことをお伺いしておるのではないのでありまして、賃金審議会の構成員の中で全会一致にならない場合のことをお聞きしておるのであります。前々委員会でしたかお尋ねしましたときに、賃金審議会の構成は省令か何かで七・七・七というふうにきめたい原案であるというふうにおっしゃいましたが、しからば二十一名といたしましょうか、その二十一名の賃金審議会の委員の中で、どうも申請に来た協定の賃金は安過ぎるとか、あるいは高過ぎるとかいうことで二十一名の意思が一致しなかった場合、一人でも二人でも反対があった場合に、一体どういう扱いを受けますかということをお伺いするのであります。
#25
○堀政府委員 審議会におきましていろいろ御審議になりまして、今後の運用といたしましては、なるべく多数決というようなことでなしに、みな審議を尽されて、そうしてその合意に基いて答申なり意見なりが出されることを期待し、またそのように運用して参りたいと思うのでございまするが、その間の議決の点につきましては、政令もしくは省令等で他の審議会同様の規定を設けるつもりでおります。従いまして、ごく少数の反対者がありました場合にも、他の大多数の者が一致してそれが答申として提出されたということになりますれば、その反対した方の意見は少数意見になるわけでございます。そこでその場合に、その答申を受けまして行政官庁がいかに対処するかということでございますが、これは実質的に全員が一致しておる答申であれば、これはほんとうに文字通りに尊重することになりましょうし、また大部分の方が一致しておられても反対者がある、しかもその数は相当多いというようなことになりますれば、それは、その諮問について、そのような少数意見があったという事実を尊重いたしまして、労働大臣もしくは地方労働基準局長が適切なる措置をとるということになろうと考えます。
#26
○小林(進)委員 私はどうも政府案に非常におそろしい含みがあると思うのでございます。少数者の意見のある場合には、多数の意見に従ってそれが決定せられるというのでございますが、先ほども申し上げまするように、少数多数というのが、政府の原案でいけば二十一名でございますが、その二十一名の中で七名が反対したところで、あと十四名が賛成をしたとするならば、七名の反対は少数意見であります。しかしその場合に、七名が全部労働者側の代表であった場合、労働者側の代表であろうとも七名は少数意見だということできめられたら、それは最初から業者間協定の方にするするといってしまう勘定になるのでございまして、賃金審議会などというものは、単に業者間の協定を合理化する一つの便法にしかすぎないという審議会に堕する危険が非常に多い。その意味において私は別の角度からお伺いしたいのでございまするが、この委員会方式でも、各国によりましては、労使の同数者が代表として委員会を構成するということは、日本の原案と同じでありまするけれども、第三者を同数に扱っているという各国の例はむしろ少いのじゃないか。中立委員というものはほんの少数にとどめて、これがやはり日本のように議長なり主宰を勤めますけれども、日本のように労使と第三者の構成委員が同数であるというような賃金審議会の構成は珍しいのではないか。そうしますと、一体どういう任命方式になるかしれませんけれども、第三者と称して政府が適当に経営者に近いような、経営者と同じ考えのような者を任命しておるとしますと、名は第三者委員であろうとも、内容はみな資本家代表であって、いつでも相手方の資本家側は十四名、労働者側は七名、こういうような結果になって、しかも多数決でみんな原案が通ってしまうということになるので、こういう構成も含めて、いま少し賃金審議会なるものも労働者の意見が強く反映するような形になるように改めてもらわなければいかぬと私は思うのでありますけれども、こういう点に対して御答弁をお願いしたい。
#27
○堀政府委員 これは最低賃金のみならず、たとえば労働基準法の施行につきまして重要事項を審議する労働基準審議会、あるいは職業安定法の施行について重要事項を審議する職業安定審議会、その他労働省関係のどの諮問機関を見ましても、労、使、中立、三者同数ということになっておるのであります。中立を減らした方がいいのではないかという御意見もございますが、やはり最低賃金というものが労働者、使用者それから世間一般の消費者、いずれに対しても非常に重要な影響を及ぼすものでございます。その意味におきまして、この中立の公益代表委員というものはやはり同数であるということが必要ではないかと考えておるわけでございます。
#28
○小林(進)委員 私は従来ある三者同数というやり方についても、ずいぶん不満を持っております。これが成功しておるというふうに私は考えるわけにはいきません。しかしそういう他の法律による他の委員会のことはしばらくおくといたしましても、私はこの最低賃金を決定する賃金審議会だけは、この三者同数方式はやめてもらいたいというふうな強い意見を持っております。しかし政府の方でおやりにならない、どうしても構成委員というものの隠れみのを作って、一つ労働者を最低賃金で押えつけておこうというお考えがあるなら仕方がありませんけれども、この点は私の賛成しかねるところでございます。
 ついては、話が若干前に戻りますけれども、わが社会党の修正案では、今まで申し上げました案の中で法定賃金方式というものをとりまして、やはり最低賃金というものは非常に重要なものだから、最後には国会にかけて、国会の協賛を経て決定しようというふうになっておるのであります。しかるに政府は、行政官庁が最後の決定権を持つというふうにおきめになっておるのでございまするが、法定賃金方式と行政官庁方式あるいは仲裁裁判所方式等々について、一体どれが一番合理的であり、かつ経済状況の変動に備えて一番適時適当に運営できるか、そういう運営の面から見ての優劣等に対する政府のお考えをお伺いしたいと思います。
#29
○堀政府委員 これは各国でいろいろな方式をとっておりますが、それはそれぞれその国の経済事情あるいは雇用事情、労働事情等によりまして、それに適した方式があるわけであろうと思うのであります。わが国におきましては、御承知のように中小企業と大企業との間の経済力あるいは賃金の格差も著しく大きく、あるいは中小企業相互の間においても業態、経済力あるいは賃金等の格差に非常に開きがあるというような複雑多様な実態でございます。そこでわれわれといたしましては、わが国の現状におきましてはやはり賃金審議会方式、それから団体協約の拡張適用方式等を併用し、それからその賃金審議会に至るまでの一つの段階として業者間協定に基いて賃金審議会の意見を求めるというような方式を加味いたしまして実施する政府案が最も適切である、このように考えております。
#30
○小林(進)委員 しからば一体わが社会党の国会において定めるという法定賃金方式のどの点が不合理であるか、お考えをお伺いしたいと思います。
#31
○堀政府委員 法定で一律最低賃金をきめるということは、遠い将来の形としては一つのあり方であり、理想であろうと思うのでありますが、ただいまのように中小企業と大企業間の経済力、賃金、業態等が非常に異なっている、また中小企業相互間でもいろいろな格差があるという実態におきまして、一律の最低賃金をきめるということは実情においては非常にむずかしいことである。それよりもやはり業種別、職種別、地域別に最低賃金を決定して、これを漸次拡大していくという方式が適当であろうと思います。
    〔田中(正)委員長代理退席、委員長者席〕
#32
○小林(進)委員 私は労基局長に一律のことをお聞きしているわけではないのであります。今お伺いしておりますのは、そのきめるのを、あなたの方は今も言うように業者間協定なり、労使の協定に基く、あるいは拡張、適用、拘束力、そういう四つの方式がありますけれども、そのきめ方は賃金審議会から労働大臣に来て、労働大臣なり基準局長が最終決定権を持ってこれを告示すると、法として効力を発揮する、こうおっしゃるのでございましょう。私どもの方はそれを国会にかけて、法律として公布して拘束力を持たせる、これを法律まで持ってきている。国会の議決をもって賃金を権威あらしめる、このやり方がなぜいけないかということを私はお聞きしておるのであります。私は一律賃金の長短をお聞きしているわけではないのでありますから、どうぞ一つ……。
#33
○堀政府委員 ただいま私が御答弁申し上げましたのは、社会党の修正案によりますと、全産業一律の、いわば二重底の下の方の一律最低賃金をきめる場合に、中央賃金審議会に諮って、そしてその決定に基いて労働大臣が国会の承認を求める、こういうことになっております。それで業種別、職種別の方は、その上に労働大臣が積み上げていく、それは国会の承認が要らない、こういうことになっていると私は拝聴しております。そこで一律の方につきまして申し上げたのですが、その一律につきまして今のような国会承認の手続を経るということにつきましては、私はやはりその一律というものが非常にむずかしいであろうと申し上げたわけでございます。
 そこで業種別、職種別の方について、しからば個々別々にそのつど国会の承認を求めるのは適当かということになりますと、その実態が非常に複雑多岐でございまして、一々国会の御承認を求めているのでは、立法府と行政府との間の関係も非常に不明確になると思うのでございます。これは社会党の修正案でも一々国会の承認は要らないということになっていると私は拝聴しております。私どもはその意味で業種別、職種別の最低賃金をきめていくという方式であるから、政府案については国会の承認を求めることは適当でないし、立法府と行政府との関係が一々承認を求めておったのでは複雑になる、このようなことを考えているということを申し上げたわけであります。
#34
○小林(進)委員 私はあとでもお伺いしたいのでありますが、わが党の一律案も出ましたから、この際政府のお考えをお伺いしておきたいのでありますが、一九五〇年のフランスの団体協約法には初めて最低保障賃金という条項が出て参りまして、労使の交渉によって賃金を自由に決定する、協約中に最低賃金条項を含める、協約中に一般的拘束力を付与する、こういうことのほかに全職業を通じ、かつ全国的に最低保障賃金に関する条項というものをこの改正案に新しく設けられておるわけでございまして、この最低保障賃金の性格は生活賃金でございまして、協定が定める賃金はその保障賃金を下回ることができないし、使用名はこの賃金以下では通常の労働能力を有する十八才以上の労働者を使用することもできない、かようなことに規定をせられておるのでございます。ちょうど今のわが党案、修正案と同じような行き方をしている、これは実に合理的、科学的であると私は思うのでございまするが、わが党案に対する感情的な労働省当局の排撃は別にいたしまして、一体この一九五〇年のフランス法に対する御見解はいかがでございますか、お伺いいたしたいと思います。
#35
○堀政府委員 これにつきましてはいろいろな御意見があると思います。私はどの法案がよいとか悪いとかいうことにつきまして感情的な批判などはすべきではない、このように思っております。フランスのただいま御指摘の団体協約法というものは、非常に古い歴史を持ち、古い沿革を持ち、その経験のもとにだんだんと積み上げられてきたということは小林先生御承知のことと思うのでございますが、わが国におきましては労働基準法が実施になりましてからまだ十年有余しかたっておりません。しかも労働基準法の中におきまする最低賃金の規定は実施されておらないわけでございます。そこで今度初めて最低賃金をいよいよ本格的に実施していこう、こういう段階でございまするから、やはりこれにつきましてはただいま私が申し上げましたような政府案の四つの方式を組み合せて実施していくということが労働者の労働条件の向上と、それから中小企業の基盤育成、双方にとって役に立つものである、その方が現状では適切ではないか、このように考えるわけでございます。
#36
○小林(進)委員 まあ最低賃金決定の方式だけでこだわっておりますと次の質問が進みませんが、これも非常に不満足であります。私はとうてい政府のお考えに賛成するわけにはいきませんけれども、これはこれにとどめて、次の最低賃金決定の基準の問題についてお伺いいたしたいと思うのでございます。
 これは政府原案の第三条の問題でございますが、最低賃金決定の基準として、生活賃金、公正賃金、支払い能力、この三原則が用いられているようでございますが、これはもう決して繰り返しではございません。前にも質問があったのでございまするけれども、繰り返しではないのでありますから、その意味においてお答え願いたいのであります。この生活賃金の観念がどうも明確ではないのでございます。これを明確にしておきませんと、将来どうしてもまた労働者がこの法律で痛めつけられるという結果になりますので、私は生活賃金の観念をできるだけ一つ政府当局から明確にお答えを願いたいと思うのでございます。私どもの考えから参りますならば、この生活賃金というものは正常な人間的、文化的生活水準を維持することができる賃金、これが私は生活賃金であるというふうに考えざるを得ないのでございますが、政府のお考えはいかがでございましょうか、お伺いいたしたいと思うのでございます。
#37
○堀政府委員 この最低賃金を決定するに当っての心がまえ、基準につきましては、第三条で三つの基準を設けておるわけでございます。これにつきましては、もとより労働者の生活のために必要な費用、これは一つの最も大きな要素として参酌されなければなりませんが、それと同時に類似の労働者の賃金、それから事業が正常な経営をやっていきます場合に期待し得る通常の事業の賃金の支配い能力、この三つを基準とし、これらを勘案して最低賃金を決定することがわが国の実態に即したゆえんであると考えます。
#38
○小林(進)委員 私はこの三つの原則の中の公正賃金、いわゆる類似の労働者の賃金とか支払い能力というものは、まああとにしていただきまして、この三つの中の第一番目の生活賃金という労働者の生計費、この政府のおっしゃる労働者の生計費という、その生活賃金の内容は一体どういうものなのか、これを具体的にお示しをお願いしたい、こういうのであります。労働者の生計費といわれているこの生活賃金は、すなわち正常な人間的、文化的生活水準を維持することのできる賃金を意味しているものと私は考えるが、一体政府はこの生計費の中にどんなものをお考えになっているのか、ブタやネコと同じように、さっと食ってさっと寝ているというだけの賃金なのか、ある程度読書もできれば娯楽もやる、文化的な生活もできるような、そういう一般的な人の生活水準までも考えておいでになるのかどうか、もう少しここを具体的にお示しを願いたい、こういうのでございます。
#39
○堀政府委員 その生計費という解釈につきましては、ただいま御指摘になりましたあとの方でございます。当然あとのような趣旨で考えられるべきである、このように考えます。
#40
○小林(進)委員 あとのようなわけで考えられるとおっしゃいましたが、しからばいま一つお伺いいたしたい。一体この生計費というのは労働者個人の生活費を言うのか、その家族を含めての生活費を言うのか、これもお伺いいたしたいと思います。
#41
○堀政府委員 これにつきましては、最低賃金がきめられますその場合々々に応じていろいろ問題があろうと思います。普通十五才あるいは十八才というようなものを基準にして最低賃金がきめられることになるわけでございますが、その場合には一応労働者の個人、労働者一人が生活し、あるいは文化的な生活を営むというために必要な費用というものが建前として基準になると考えます。しかしこれらの問題につきましては、しからば具体的にどのような線をきめるのかということにつきましては、中央最低賃金審議会がこの法律か通りました後においてすぐ発足をすることになっておりまするから、中央最低賃金審議会において各委員に十分御審議をいただきまして、これを尊重して参りたい、このように考えております。
#42
○小林(進)委員 私は最低賃金をおきめになるとぎのその一番中心、賃金を定める基準の労働者の生活費のウエートのとり方が、まだこの法案をお出しになる今日まできまっていなくて、今度の中央最低賃金審議会の審議にこれをゆだねるなんということになりますと、これは実に重大問題と考えざるを得ないのでございまして、なおかつその中のこの賃金のきめ方が労働者個人をさすのか、あるいは家族の者を含めての生活できる賃金をいうのかという、そういう基本的なことまで何もきまっていないなどということは、私は実に怠慢といえば怠慢、ごまかしといえばごまかし、その粗雑きわまれりと言わなければならないと思うのでございまして、参考までにメキシコ連邦労働法の立法例を一つ御紹介いたしますると、ここには最低賃金の中の生活費についてこういうような規定がございます。「労働者が世帯主であることを考慮して」、これが重大問題ですよ。「労働者が世帯主であることを考慮して、各地域の諸条件にかんがみ、労働者の生存、教育及び適当な娯楽に対する正当な要求を満たすに足りると思われる賃金」、こういうふうに丁寧に生活賃金の規定が書いてありますし、なおアルゼンチンの最賃法も「労働者及びその家族の食糧、健康的な住居、衣服、子女の教育、医療、交通費、年金、休日及び娯楽を確保するに足る報酬」、このように規定いたしておるのでございます。かくのごとく、個人のみならず、家族の娯楽から休日、年金までも含めて人間らしい生活を維持するに足る、その保障の裏づけが私は生活賃金でなければならないと思うのでございます。そこら辺が、日本の政府案は少しも意見が固まっていない。実にうまくさっとごまかして、さっと法律を仕上げてしまおうなどという大それたお考えをお持ちになっているのは、これは私は重大問題だと思うのでありまして、ここら辺はいま少し良心的に御答弁を願いたいと思うのであります。
#43
○堀政府委員 ただいま御指摘のメキシコ、アルゼンチン等には、確かにそのような例がございます。中南米諸国におきましてはそのような規定があるわけでございますが、他の世界各国の例を見てみますと、これはむしろ例外の方でございます。生計費というふうに単に規定してあるというところが通例でございます。わが国におきましては、やはりこれにならいまして、労働者の生計費ということを規定したわけでございますが、その際、私が先ほど申し上げましたのは、通例最低賃金がきめられますのは、満十八歳あるいは満十五歳というような程度の人の最低賃金がきめられるというところから始まると思います。これらにつきましては、今の単身労働者の生計費ということが一応の基準に考えられる、このようにお答え申し上げたわけでございます。しかしこれをさらに拡張していくかどうかというような点につきましては、これは中央最低賃金審議会において格委員に十分御審議をいただいて、その意見を今後尊重して参りたい、このように考えておるわけでございます。
#44
○小林(進)委員 それは今の局長の御答弁によりまして、満十五歳からきめるか満十八歳からきめるか。あるいは少数の法案によっては満二十歳以下を年少労働者というふうに規定している最賃法も一、二あるようでございますが、それは法律を作る体裁の問題でございまして、やはりそのおっしゃる満十五歳は、これは普通の常識からいえば年少労働者でございますから、こういうものにまで私は世帯主の生活費までも含めよなどということを要求しているわけではないのでございますけれども、政府が今ここで予定されておる法律は、満十八歳以上を一応成年者、一人前の人間に対する労働賃金のことを規定せられておるのでございます。いわゆる成年者として扱われる、そういうものの賃金をおきめになるときに、私は当然世帯主の考慮もあってしかるべきではないかと思うのでございます。ただいまも御答弁のように、これは確かに世帯家族を含まない法律もよそにはあるではないかとおっしゃいますが、私の知っているアメリカの公正労働基準法等は、確かにその世帯主ということは含んでいないようでございます。しかしこのアメリカの労働基準法による最低賃金の設定方式は、これは定額方式すなわち立法による画一的な賃金率の決定でありますが、その賃金設定基準は「健康、能率及び一般的福祉に必要なる最低生滅水準」、これもかくのごとく具体的に懇切にちゃんと規定がございまして、そして、その内容はといえば一九三八年には一時間二十五セント、一九四五年には四十セント、一九四九年には七十五セント、一九五五年には一ドルというふうに改正をせられておる。もちろんこれはアメリカの一時間一ドルと日本の金と比較対照して、九倍だとか十倍だとかいうことを私は申し上げるのではございませんけれども、かくのごとく丁寧にきめられておる。一番短かい規定でも、グワテマラというんですか、あれは中南米でございますが、そこらでも、これは短かいが、しかし短かいなら短かいでけっこうですけれども、やはり労働者の正常なる要求、それが生活賃金であるというふうに規定せられておる。日本には何もないじゃありませんか。そして今お聞きすれば、これからきめるとおっしゃる、こういうどうも無責任な話で最低賃金法がきめられておる。そうして先ほどのお話のように、産業基盤確立のためだ、輸出産業のためだ、だからこれがすなわち生活を維持する賃金などと勝手にきめられて、一ヵ月千円だの二千円だので食わされて、それで金縛りになったら、これじゃ労働者はたまったものじゃありません。最低賃金法をもってみずからのからだを縛る、自縄自縛というような形にならざるを得ないのでございます。これはどうも今の労働基準局長の御答弁をもって、われわれは満足するわけにはいかないのでございます。労働大臣、先ほどからどうも眠いようなお顔をされておる。生理的現象はやむを得ないといたしましても、こういう重大問題に対しては大臣みずからが一つ責任ある御答弁をお願いいたしたいと思います。
#45
○倉石国務大臣 うんちくを傾けられたお話を傾聴いたしておりました。賃金のあり方については、もちろん日本政府もいろいろな角度から、いろいろな産業をピックアップして、ことに中央の審議会でも検討を続けておりますが、これは御承知のようにどこの国でも一般に、この産業は一体どういう賃金ベースが妥当であるかというふうなことについては、特にこういうものが権威があるというふうなものがあまりないようであります。たとえば運輸交通、そういったようなものは一体どの程度が妥当なものであるか、あるいはまたその他の業種についても今研究しておるところでありますが、私はしばしば申し上げておりますように、働く人のふところに入るべき購買力というものは経済の土台になるのでありますから、これはなるべく多い方がいい。ただそのことが国民経済全般にどういう影響を持ってくるか、それは先ほど来あなたのお話しなさいましたように日本経済の国際競争力、そういうこともありましょう。それからまた労働しておいでになる方が、普通の生活をおやりになるのにどういうふうにあるべきかというふうなことは、非常に大事な問題であります。従ってこういう最低賃金などを考える場合におきましても、やはりしばしば申しておりますように、業種別、職種別、地域別にそれぞれ大体一般の人が社会通念として、この辺は十五才程度の人ならば妥当なものであろうというふうなものが、自然の間に定まるところに定まる。それがいわゆる業者間協定でも非常識なものが出ないように私どもは期待いたしております。またいたずらに安いものでかりに協定をいたしたとしても、そういうことだというとほかの業種の方にいい労働者が集まってしまうので、そういう非常識なばかげたことを協定してもそれは成立するものではありません。従って私どもはそういう面で、まずこの業者間協定等も今日の日本の零細な企業の経済状態に即応して、今こういうようなやり方をしていくということがまずもって妥当ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
#46
○小林(進)委員 この最低賃金法をおきめになるときに、人事院勧告の標準生活費等を政府はどういう工合に一体考慮されましたか。御参考までにお伺いいたしておきたいと思うのであります。
#47
○堀政府委員 人事院では、ただいま御指摘のように国家公務員の給与勧告資料としまして、満十八才成年単身男子の標準生計費を東京について計算しておりますが、これらのものは、この生計費がどの程度であるかということを考えまする際の一つの重要な資料にいたすつもりでございます。これだけではなしに、その他厚生省の厚生行政基礎調査あるいは生活保護法の保護基準あるいは家計費調査その他いろいろな生計費に関するところの調査資料がございますので、これらをあわせまして、そうして賃金審議会においてこれを重要な資料といたしまして、その地域あるいはその業種あるいはその職種に応じてどのくらいが妥当であるかという点の御審議を願う考えであります。
#48
○小林(進)委員 これは最低賃金ではございませんが、政府が一昨年あたりから御奨励になっておりまする民間業者の業者間協定ですが、あそこへ出て参りまする賃金の中には、今おっしゃったようなそういう人事院勧告に基く標準生活費などというものを、一体あの業者間同士に考慮しながら賃金をきめているのかどうか、あるいはそれを参考にしてそれぞれ業者間協定をやるように政府が一体奨励をされたのかどうか、お伺いをしたいと思います。
#49
○堀政府委員 ただいま事実上実施されております業者間協定におきましては、これは各地各業態、非常に広範にまたがっております。そのためにいろいろな方式をやっておるようでございますが、たとえば横浜あたりの手捺染の業者間協定をきめる場合に当りましては、ただいま御指摘の標準生計費あるいは生活保護法の保護基準というものを協定締結の際の参考にしたということを聞いております。事実上そうしてどのような線できまっておるかということにつきましては、これは低賃金の労働者をなるべく排除していくという見地から、その業種業態におきまするところの賃金の分布をとりまして、そしてその賃金の分布をとった上でその賃金の額の標準偏差を求めるというような方式、あるいは並み数をとるというような方式、いろいろございますが、要するに精神は低賃金の労働者分布をなるべく排除していくということで、適正な線を引くということで作業がなされておるように承知しております。
#50
○小林(進)委員 政府はこれから地域別、業種別、職種別、女子労働者も含めて最低賃金を実施していかれるときに、この生活賃金というものに対してちっとも具体的な案をお示しになりませんが、生活保護法にいうところの第三条と、この労働者の生活費というものを一体どのように区別して扱われるか。生活保障法の第三条には「この法律により保障される最低限度の生活」――生活保護法の適用を受ける人生の脱落者と申し上げては失礼でありますけれども、そういう落伍者がなおかつ国家から庇護を受ける、その状態においても、ここで規定せられておるように「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」かくのごとく民主的な日本の法律は、こういう落伍者の生活をあたたかく規定いたしておるのでございまするが、今度はこの場合は落伍者ではないのであります。いわゆる万物の霊長たる人間が、天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らずという、この福沢諭吉先生が言われた、このいわゆる崇高なる人間がなおかつ労働という一番崇高な仕事をいたしておるのでございますから、その労働に払われる賃金というものは、私はおのずからこれと異ならなくちゃならぬと思うのですが、一体、生活保護法の生活保護費と最低賃金とをどういう形で区別されるのか、お伺いいたしたいと思います。
#51
○堀政府委員 先ほどからの御質問にございまするように、生活というものは単に物質的なものでなしに、文化的なものでなければならない。その意味におきまして健康で文化的な生活を維持するに必要な費用ということになるのは当然のところであると思います。ただそれにつきまして憲法二十五条、それから労働基準法第一条あるいは生活保護法第三条等には同じような文句を使ってあるわけでございまするが、実際に生計費がどの程度であるかということを具体的に判断いたしまするに際しましては、たとえば生活保護法による保護基準によりますればいろいろな算定を厚生省ではしておるわけでございまするが、これは何と申しますか、非常に軽い程度の作業を営んでおる状態の人を対象にするわけでございます。ほとんど働かないというような人を対象にしております。そういう場合の生活費と、それからちゃんと雇用関係を結んで人並みの作業をやっておる場合の生活費とは具体的におのずから違ってくる。具体的に判断いたしますれば額が違ってくるということもあるだろうと思います。従いましてわれわれといたしましては、生活保護法による保護基準というのはやや低きに失するようにも思います。一般論としてはそのようにも考えます。しかし標準生計費ということになりますと、これは標準でございまするので、最低賃金をきめる場合の最低生計費というに値するかといいますと、やや高いような感じもいたすのでございます。これらのものを彼此勘案いたしまして、われわれとしては資料を十分一つ賃金審議会に提供いたしまして、これらのものを参考として具体的に個々別々の最低賃金をきめる場合の判断の資料にしていただきたい、このような方針でございます。
#52
○小林(進)委員 委員長から、これはマル秘でございまするので、委員長から御注意がありましたということにとどめておきまして、それでは質問を急ぎたいと思います。なるべく即刻に質問を終りたいと思います。また要領よく御答弁を願いたいと思うのでございますが、次に公正賃金についても私は一つの疑問を持っております。公正賃金、いわゆる政府の規定によれば、類似の労働者の賃金というふうになっておりまするが、普通はこれは他の労働者の一般的な賃金水準がその標準とされる、たとえば家内労働法で政府がおきめになっておりますように、家内労働者の賃金を同種の工場労働者並みに高めて支払わせる、こういうことをいわれているものと推定いたしまするか、しかしこの公正賃金の原則は、同時にまた異なる職業に従事している労働者に対しては、賃金もまた異なるのが正当であるというのです。こういう意味を含んでいると思うのでございまするが、これはいかがなものでございましょう。
#53
○堀政府委員 最低賃金を決定するに当りましては、やはりその従事する事業の業種あるいは職種あるいは作業の形態等によりまして、おのずから違ったものが出てくると思うのでございます。そこでこの第二の原則といたしまして、類似の労働者の賃金を考慮したものと定めたわけでございますが、これはその地方における同種ないし類似の事業または職業に従事する労働者の賃金またはこれらがないときは当該地方の一般労働者等の賃金水準を参考としてきめるようにいたしたい考えであります。
#54
○小林(進)委員 次の支払い能力の問題でございまするが、これは「通常の事業の賃金支払能力を考慮して」とおっしゃいまするが、これはもちろん個々の企業者の支払い能力をさしておられるのではなくて、産業全般あるいは地域も含めますか、その地域における一産業の賃金支払い能力を意味しておられるものと解釈せられるのでございまするけれども、それにいたしましても、最低賃金をきめるときには、こういう支払い能力などというものをわざわざ断わらぬでも、必ず潜在的に考慮せられるものでございまするから、あえてここへ書く必要はない。これも私が削除してもらいたい条文の一つです。特にこういうのがありますると、最低賃金決定の正当性をとかくゆがめる場合が多い。やはり最低賃金法の目的と同じに、どうも賃金の支払い能力がないから、それは賃金は高い方がいいだろうけれども、この企業には、この職業にはそういう賃金の支払いをする能力がないのだから、労働者諸君だめだよと、一言のもとにはねつけるいいとりでにされるおそれがあります。こういうものはやはり労働者保護の建前から、なくても考慮されることはきまりきったことでありますから、削除せられる方が世の中のためによろしいと私は思いますが、いかがなものでございましょう。
#55
○堀政府委員 賃金支払い能力と申しますのは、ただいまお話しのように、個々の企業の支払い能力をさしておるものではございません。その地方におけるその業種が正常な経営をしていく場合に、通常期待することのできる賃金支払い能力をさしておるわけでございます。従いまして、自分のところは特殊事情があって、そのために払えないのだというようなことを言って言いわけをすることはもとより許されないものであると考えます。これを削除したらどうかというようなお話もございましたが、やはりわが国の中小企業の実態から考えますると、国際的にも普通認められておりまするこの三つの基準を書いた方がやはり妥当なのではないか。先ほどよい例として御指摘のありましたコロンビア最低賃金法等におきましても、賃金支払い能力というものを規定してございます。国際的ないろいろな例を見ましても、そういうような例があるようでございますから、やはりこの三つの基準について考えることが有効適切な、最低賃金を実施する方法ではないかと考える次第でございます。
#56
○小林(進)委員 どうもわが日本の現状から見まして、これは第一の生活賃金やら公正賃金の決定を、むしろこの第三の支払い能力という条項が、消極的に他の二原則を修正をしている。むしろ資本家側に有利に、これを修正せしめる要素として作用する懸念が私は多分にあると思いまするので、どうしてもただいまの御答弁には私は満足することができない。むしろやはりこれは削除した方が至当であるというふうに考えるのでございます。
 次に移りまして、今まで御論議をいただきましたこの最低賃金の今度は先ほどの強制方式、一体どうして一たん決定したものの実行を迫られるかという、その方式について若干御意見を承わっておきたいのでございます。
#57
○堀政府委員 強制方式といたしましては、やはりこれは国際的な通念にならいまして、刑事的な効力と民事的な効力をもって強制することが妥当であると考えます。そこで第五条におきまして、第一項は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなかった使用者に対しては罰則の規定を課するということになっております。それから第二は民事的効力でございますが、その最低賃金に達しない賃金を定めるものは、その部分について無効とし、この場合において無効となった部分は最低賃金と同様な定めをしたものとみなすということで、民事的な効力も付与したわけであります。この刑事的効力及び民事的効力を併用いたしまして、そして最低の賃金が的確に実施されることを保障しようというものでございます。
#58
○小林(進)委員 刑事罰といたしましては四十四条に「一万円以下の罰金」というふうに書いてありますが、民事的な処置については契約がなかったものとみなすというだけなんですが、しからば一体労働者の損害、賃金をもらわなかったというその損害は具体的にいかなる方法でこれが償われるのか、それを一つ承わりたいと思うのであります。
#59
○堀政府委員 これにつきましては二つの方法があるわけであります。すなわち刑事的な効力の面におきましては、これは払わなかったものについては最低賃金法の罰則の適用があるわけでございますから、労働基準監督機関においてこれを支払えということを強制することができるわけでございます。それから第二番目に民事的な効果といたしましては、ただいま申し上げましたようにそれ以下の賃金を払う契約をしておりましてもその契約は無効になる、それで最低貸金額を払う契約をしたものとみなされることになるわけでありますから、労働者が民事的な手段によって裁判所その他に対しその支払いを訴えるという措置もできるわけであります。
#60
○小林(進)委員 私はそれをお伺いしたいのでございまして、労働者が正当な貸金を支払われないときに、やはり裁判所等に民事訴訟を起して、そして裁判に勝って初めてその賃金が償われるというようなことは、やはり正式に労働者を保護するということにならないのではないか。もっと簡便な方法でそれを償われる方法が別にないのかどうか。それと今の刑事罰の一万円でございますか、この一万円の刑事罰も、労働者個々の違反行為をやった場合に一万円ずつの罰金が加わるのか、一地域における一事犯についてその一万円の罰金が支払われるのか。たとえて言えばここで、話が大きくなりますけれども、三百人雇っている中小企業の経営者がいた、違反をして賃金を払わなかった、いわゆる協定を守らなかった、国家の法律で拘束力のある最低賃金を実施しなかった、それで一万円の罰金だ、これは不名誉かもしれませんが、罰金としては痛くもかゆくもありません。この一万円の罰則はどういうふうに適用されるのか、一つお伺いいたしたいと思います。
#61
○堀政府委員 ただいま申し上げました民事的な手続を裁判所等に一々訴訟を起すというのでは、これはなかなか急場の間に合わないということは、御指摘の通りであります。それらのものを救う意味において、労働保護法というものがあるわけであります。そこで最低賃金法もそれと同様に、刑事的な効力によって、直接に強制することによって支払いを期待する、このような方法になるわけでございます。そこで今の点は一件について一万円なのか、あるいは一人々々について一万円なのか、こういうお尋ねでございます。これは最近の判例等において明確にされておりまするように、わが国の裁判所におきましては、一人について一罪が成立するということになっておりまするので、罰金の最高限度は相当な額まで上ることが可能である、このように考えております。
#62
○小林(進)委員 時間も逼迫して参りましたので、私も急いで質問を終りたいと思いまするので、委員長におきましても、しばらくの間一つお許しをいただきたいと思うのでございます。
 次に私は政府案について端的に御質問申し上げたいと思うのでございまするが、政府案の特徴は、何といっても業者間協定がこの法案の主要目的である、これが政府案の最も大きな特徴である、かように考えておるのでございます。その業者間協定というのは、経営者の自主的な協定を法律上最も重要視することである、かような点が他の諸国の諸立法には見られないわが日本の独特の最賃法である、かように考えておるのでございます。経営者あるいは使用者が自主的に最低賃金をきめるのを原則として、そのきめたものを労働大臣または労働基準局長に届け出ると、賃金審議会の答申を経て、それを法が認定をする、こういう建前になっておるのでございます。行政官庁は労働条件の改善のために勧告権をお持ちになっているくらいなものでございます。先ほども御質問申し上げましたが、最低賃金の決定自体はあくまでも業者の自由意思にまかしている、業者が自由にこれをきめる、ここがわが日本の最低賃金の最も大きな特質でございまして、当事者が自主的に決定することの困難な場合だけ、労働大臣、労働基準局長が賃金審議会の意見を聞いてみずから賃金を決定することが可能であるという十六条の規定でございます。こういうふうにきめられてあって、国家みずからが賃金をきめ得る場合というのは副次的であって、非常に限られた場合である。当事者が自主的にきめることができないという困難な場合に限るというふうになっておるのでありまして、国家が最賃をきめるのは非常に狭い範囲です。業者が自由の立場で賃金をきめるということが大きく取り上げられている。ここに政府案の大きな特徴があるのでございます。労働基準法の規定するような国家の賃金規制は制度の片すみに追いやられて、私的な賃金取引や協定が事実上それにとってかわっている、こういうことも私は言い得ると思うのでございまして、しかも私的な賃金の取引や協定であります。この自由な賃金の協定の中には、法的な義務が一つもない。必ず最低賃金をきめなければならないという法律上の義務というものが、ちっとも課されていないのでありますから、やってもやらぬでもいいのです。きめてはみたものの、業者がいやだと言えば、きめぬでもよろしい、よろしいとはありませんけれども、どうしても義務的に最低賃金を作りなさいという法的根拠はない。それからその業者が自由に最低賃金をおきめになるときでも、こういうような法的基準でおきめなさいという基準も、ちっともお示しになっておらない。またそのきめることに対しても、先ほど申し上げたように、政府の強力な監督指導も一つもございません。ただ勧告権があるだけの話で、業者がきめることが困難なときだけ勧告せられるというだけの話であって、それ以上に、それをきめるように強力に監督指導していくような、そういう規定もない。特に一番はなはだしいのは、何といっても労働者がそういう賃金をきめる協定に参画できないということです。私はこの大きな矛盾を持っておりまする限り、政府のお作りになりましたこの最低賃金法というものは、労働者にとってきわめて危険である、かように考えざるを得ないのでありまして、この法律によってむしろはなはだしい低賃金が正当化されるおそれが出てくる。それを労働者に法の拘束力をもって押しつけて、その低賃金に対する将来への向上、改正を困難ならしめる意図が、この法律の中に濃厚に現われておるということを、われわれは感知感得せざるを得ないのでございまして、特に低賃金労働者を押えつけようというようなその意図は、一般的に拘束力をもってその他の業者にもちゃんと及ぶようになっておることは、さらにこの低賃金というものを一般的に拡大せしめるような危険もありまして、さらに危険が倍化されるというふうにまで考えておる。非常に反対せざるを得ないのでございまするが、この点一体政府はこういう野放しの業者の協定というものに対して、やはりこれはほんとうに正しいというふうにお考えになっておるかどうか、意見も含めて一つお伺いしたいと思うのであります。
#63
○堀政府委員 業者間協定に基く最低賃金がそのまま最低賃金になるわけではありませんので、労、使、中立、三者構成の賃金審議会においてこれを審議された上で、それに基いて労働大臣が決定するのでございます。それから業者間協定だけでなしに、労働協約に基く最低賃金の二つがあるのであります。これも同業のことになっておるわけであります。そうしてここれらのものに対しまして、まず当事者間の自主性を尊重して業者間協定に基く最低賃金あるいは労働協約に基くところの最低賃金の決定をまずはかる、それが困難、不適当であると思われる場合には、労働大臣が十六条の職権決定もできる、このようなことになっておるわけでございます。これらを併用して参りますれば、野放しの業者間協定というような弊害は起らない、これを賃金審議会等において十分スクリーンし、最後にまた困難、不適当の場合は十六条の発動もやることができることになるのでありまして、これらを併用していけば、適切な最低賃金が決定することを期待できると思います。
#64
○小林(進)委員 私はやはり業者間の一たんきめられたものが、中央審議会という窓を通じてそれが修正をせられる権限もないのでございまするし、とても私はいいものになるだろうというようなことは考えておりませんし、先ほどからくどく御質問いたしましたように、賃金審議会自体の構成が非常に経営者的であって、私をして言わしめればでたらめであります。しかもそれが多数決によって決定する。先ほど申し上げましたから繰り返しませんけれども。従いまして、一たんきめられた業者間協定の低賃金が、その後の上層機関へ持っていってそれが修正せられるなどというような甘い御答弁には、私はとうてい承服することができないのであります。できませんから、どうしてもこの業者間協定というものは、これは最低賃金じゃない、むしろ私は業者間における独禁法である、かようにしか考え得ないのでございまするし、なおただいま御答弁がありました労使間の協定につきましても、実は私はこれがわが日本の現状に照らして、今おっしゃるように妥当であるかという点についても、非常に危惧の念を抱いております。労使間協定については、参考までにお伺いするのでありますが、労働組合法の第十八条の規定が一体今日どの程度に実施をされておるか、御参考までに一つお伺いいたしたいと思います。
#65
○堀政府委員 労働組合法の労働協約の拡張適用に関する発動の中で、最低賃金に関するものは高知、滋賀の二件であります。労働組合法十八条の規定は、御承知のように、労働組合の団結権の擁護をはかるという観点から、これは一般的な規定として設けておるのであります。そのために、その拡張適用の際の決定をいたしますものは労働委員会がこれに当っているという状況でございます。この十八条を使いまして最低賃金条項を拡大するというようなことでございまするから、なかなか期待できないわけであります。そこで今回最低賃金法の中に、この労働協約に基く最低賃金――十一条を入れまして、これにつきましては、専門家であるところの賃金審議会において審議して、拡張するかどうかをきめるということになると思います。それからなお労働組合法の拡張適用は、これはあくまでも協約自体の拡張適用でございますから、もとになる協約が失効すれば拡張適用も失効するということになるわけであります。それでは最低賃金として労働者の地位を保護し、労働者の労働条件を保護する安定性もございませんから、今回の最低賃金法の十一条におきましては、これに基いて最低賃金が決定されました以上、もとになる労働協約が失効いたしましても、あくまでも最低賃金として残るという安定性を付与したものでございます。
#66
○小林(進)委員 申し上げるまでもなく、日本の労働者の意識状態からして、組織の進んでおりますのは近代的大企業だけでございまして、中小企業や零細工場までには十に分組合運動が浸透していないことは御承知の通りでございます。この労使協定の拘束力が拡張されていった場合でも、今のような野放しの法律では、中小企業の支払い能力や賃金格差から見て、そう簡単に実行されないと私は思う。労使間協定というものに対しては、法律を作ってみただけで、これが実行されるなどということはどうも私は考えつかないのでありまして、やはりこれにある程度の拘束力といいますか、違反した場合には云々という実行を強制するような何らかの手当がなければ困難じゃないかというふうに考えるのでございますが、いかがなものでありましょう。
#67
○堀政府委員 御質問の趣旨は全く同感でございます。でございまするから、この最低賃金法を制定することによって、違反した場合の刑事的効果及び民事的効果をつけることにいたしたわけであります。
#68
○小林(進)委員 私は次に地域別、業種別、職種別の問題についても、もう一言だけ御質問して注意を喚起しておきたいと思うのでありまするが、こういうやり方では必然的に産業別に最低賃金のアンバランスを生じてくる。また産業別でなくても、業者問、職種別によって、協定のあるのとないのとによって、そこにまた賃金のアンバランスが生じてきて、むしろこういう最低賃金法がないよりも、さらにこの先、日本の賃金系列というものはだんだんでこぼこが激しくなってくるのではないか、こういう疑問点が一つです。
 それから第二番目には、わが国の現状からながめまして、こういう地域別、業種別、職種別というような賃金を一つずつやっていく場合には、全部にこれを適用するためにはおそらく私は百年かかるのではないかと思う。政府がこういう法律をお書きになる以上は、一体日本の全労働者に対するこの最低賃金法の完全な実施は何年くらいで完成するかという法律上のめどがあると思いますが、完全実施する目標をどこに置かれるか。私は百年もかかってこれは大へんなことになると思うのでありますが、そういう点について一つ御答弁をいただきたい。
 第三番目には、今日のわが日本の大半の労働者については、むしろみな最低賃金が必要な状況にあるのであります。わが日本の現状から見ては、やはり全国一律方式による最低保障です。わが社会党の案です。それは私どもは八千円を若干譲ってもよろしゅうございますが、やはり最低方式というものを基本として、そしてその上に業種別、職種別というふうな山を績み重ねていく方が、一番わが日本に適当した合理的な方法ではないか。そのためには一定の期間を置いてもよろしゅうございます。一年でも二年でも、それは政府との話し合いによって置いてもいいのですよ。期間を置いて、その間に中小企業への融資の策を講じたり、中小企業の負担力の培養の政策等を徐々に打っていきまして、そうして中小企業を育成しながらわが党の合理的な最低賃金法を実施していく方が、一番時代に即応した正しい方法であるというふうに考えておりますが、以上三つの点について的確な御答弁をお願いいたしたいと思うのでございます。
#69
○堀政府委員 職種別、業種別、地域別に最低賃金をきめればますます格差を助長することになりはせぬか、こういう第一のお尋ねでございますが、これはわが国の中小企業の実態というものが、規模別あるいは業態別に経済力の格差、賃金の格差等が非常に大きい現状からいたしまして、やはりそのような方式でなければならないと思うわけでございます。そこで最低賃金をきめていきますれば、これは三つの原則のうち、生計費基準というようなものも一つの大きな要素になるわけでございますから、今までの業者間協定、事実上締結されました業者間協定の例を見るまでもなく、これは拡大作用ではなしに、やはり地ならし的な作用を営んでいくものである、このように考えております。
 それから第二の、しからばこの法律によって全部の労働者が完全に最低賃金の適用を受けるにはどのくらいかかるかということでございますが、これはただいま申し上げました四つの方式をからみ合せていくわけでございますから、われわれは、これは労、使、中立、三者構成の中央賃金審議会において、どのような速度で勧告をし、あるいはどのような速度で最後に十六条の発動をしていくかということを十分御審議を願っていくつもりであります。そうしてこれらのものを積み重ねていくということによりまして、なるべく早い機会に――ただいまの業者間協定がわれわれの当初予期いたしましたよりもはるかに順調に進んでおるということをもって見ましても、私はこれは相当順調に進むものではないかと考えておりますので、その点につきまして、機械的に何年かかるということでなしに、やはり中小企業の発展の速度に照らしまして順調なる前進を続けていくことを期待しておるものでございます。
 それから第三の一律最低賃金が適当ではないかということでございますが、これは私が先ほどお答え申し上げましたように、中小企業、大企業間の規模別の経済力及び賃金の格差が著しい日本の実態におきましてはやはり適当でなく、業種別、職種別、地域別の最低賃金を実施して、これを漸次拡大していくという方向が妥当なものであると思います。
#70
○小林(進)委員 私もまだたくさんの質問が残っておりまするが、そう皆さん方にお御迷惑をかけするわけにもいきません。私も非常に正当な常識屋でございまするので、みずから常識を逸脱するような行為は、これをやめたいと思います。
 そこで最後の質問を一つ労働大臣にお願いいたしたいのでありまするが、かりにこの政府原案の最低賃金法案が両院を通過いたしました場合には、労働大臣は最低賃金決定制度の創設に関するILOの二十六号の批准をおやりになる考えがあるのかどうか、お伺いいたしたいと思うのでございます。
#71
○倉石国務大臣 本法案が成立いたしました暁においては、なるべく早く批准の手続をとりたいと思います。
#72
○小林(進)委員 ただいま申し上げました最低賃金決定制度の創設に関する二十六号条約の第三条の第二項には、「関係ある使用者及労働者は、当該国の法令又は規則に依り定めらるべき方法及範囲に於て、」こういうところは労働大臣の一番お好きな文章でございまするが、その次なのでございます。その次において、「尚如何なる場合に於ても同一の員数に依り且同等の条件に於て、該制度の運用に之を参与せしむべし」。こういう明確な規定がございまして、関係ある労使の代表者が、同一の員数と同等の条件において、最低賃金法の運用に参画しなければならないという明確な規定がございます。なおわが日本の労働基準法にも、これは申し上げるまでもなく、第二条に「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」と規定しているのです。国内法にもこういう規定があるのです。いやしくも労働条件に関するものは、賃金であろうと、あるいは時間であろうと、休日であろうとも、すべて労使というものは対等に参画をして決定しなければならない。これは世界の法典ですよ。労働問題を決定する場合の千古不磨の原則です。しかるにわが日本の、今の政府の定められた最低賃金法の業者間協定というものは、労働者の最低賃金を決するに労働者の参画というものは認めていない。労働者の意見というものは一つもない。業者だけが勝手にやってしまって、全国的、地域的に賃金を決定したり、経営者、使用者だけが決定したものを最低賃金として認めるということは、これは国内法、労働基準法第二条に対する非常に明白なる違反であるのみならず、これはILO二十六号条約第三条二項に対する重大な違反行為ですよ。それを、これが通ったら直ちに批准する考えだなどというようなことは、まことに笑止千万でございまして、これはILOの八十七号というような問題じゃございません。これを一体どのように処置せらるる方針が、噴飯ものでございますけれども、一つ明確に御答弁をいただきたいと思うのでございます。
#73
○倉石国務大臣 政府は、本法案が通過いたしましたならば、ILOの最低賃金に対する条約の批准をするということは、先ほど申し上げた通りであります。私どもはこの法案通過後は、なるべく急いで批准の手続をとりたい、こう思っております。
#74
○小林(進)委員 政府が批准の手続をおとりになることは、これは自由でございましょうけれども、これを受け入れる側では、こういうものを最低賃金として世界の労働機構が認めはしないと私は思う。しないか、さもなければ、きょうも予算委員会で大臣が答弁にお若しみになったように、やはりこの法律を整備しなければならない。必ずそうなると思う。業者間協定などといって、労働者の参画しない勝手な賃金をきめてわれわれ労働者に押しつけているのだから、こういうような最低貸金法は条約二十六号の違反行為だから、これはやめてもらいたいということは、必ず労働者の側から出て、労働者はILOに申請しますよ。そうするとまた今の八十七号と同じように、この最低賃金法を整備する、すなわち国内法を整備するという、公労法第四条三項、地公労法第五条三項と同じような問題がまた持ち上ってごたごたしなければならないことは、火を見るよりも明らかな事実だと思う。私はこれを整備しなければ、とても二十六号の批准などというわけにはいかぬということを申し上げておく。だからそういう先の見えているむだをおやりにならないで、私が先ほどから申し上げているように、労働大臣は官僚出身でないのでありますから――官僚出身というのはなかなか先が見えない。殷鑑遠からず、それは岸総理大臣にこれを求むべし。どうも先が見えないが、さすがにその点倉石労働大臣は先を読まれる明晰な頭脳をお持ちになっており、大局をながめる目があると私は信頼いたしておりますので、先へいってつっかえてよたつくような、そういうむだなことをなさらずに、もうここら辺で、こういうごまかしの最低賃金法、労働者が対等の立場で参画しないようなインチキな業者間協定などというものは、削除せられた方が政府のおためになろうということを私は勧告申し上げるのでございますか、いま一言これに対する明確な御答弁を承わりたいと思うのでございます。
#75
○倉石国務大臣 御忠告はありがたく拝聴いたしましたが、政府の方針は先ほど申し上げた通りであります。
#76
○小林(進)委員 それでは私はあとの質問は省略いたしまして、本日はこれをもって私の質問を終りたいと思いますが、政府の御答弁は、なお諸多の点においてとうてい満足するわけにいかぬことを申し添えておく次第であります。
#77
○園田委員長 多置谷眞稔君
#78
○多賀谷委員 私は主として法文の技術的な点について質問いたしたいのであります。その前に、今小林委員より指摘がありました最低賃金決定制度の創設に関する条約、さらに最低賃金決定制度の実施に関する勧告、この勧告の中あるいは条約の中で、先ほど指摘されました第三条ただし書きの二項の、「関係ある使用者及労働者は、当該国の法令又は規則に依り定めらるべき方法及範囲に於て、尚如何なる場合に於ても同一の員数に依り且同等の条件に於て、該制度の運用に之を参画せしむべし。」こういうのに抵触しておりはしないかという質問でありましたか、この点に対して大臣はどういうような御所見であるか承わりたいと思います。
#79
○倉石国務大臣 政府が考えておりますのは、もうこの委員会でしばしば論議が行われましたように、四つの方法がある。その中の一つに業者間協定というものがあって、それを中央賃金審議会にかけて、そこで決定をしてきめるのだ、こういうことでありますから、業者間協定即最低賃金の決定でないことはしばしば申し上げておる通りであります。そこで私どもは、中央賃金審議会というものが、労使対等の立場で同数で出ておられて、そこで御相談を願って、その御返事があってからきめるのでありますから、ILO条約においても同様なことを期待いたしておる、その趣旨でありますから、私どもは本案が通過の上においては、これを批准して差しつかえない、こういうように解釈をしております。
#80
○多賀谷委員 そういたしますと、「関係ある使用者及労働者」というのは、最低賃金審議会の委員だ、こういうように理解になっているわけですか。
#81
○堀政府委員 法律技術的なことでございますので、私から答弁申し上げます。「関係ある使用者及労働者の名代表者」というのは賃金審議会の委員ということでございます。賃金審議会においては、普通の審議会も開きますが、そのほかに必要と認めた場合には、それぞれ専門部会等も設置することができることになっております。これらのもののからみ合せでいく、その場合に労使同数でございます。同数対等の原則で賃金審議会の運営がなされるわけでございまするから、条約の趣旨に合致しておると思います。
#82
○多賀谷委員 そういたしますと当局の意見はわかりましたが、勧告の第二の一項すなわち「最低賃金決定制度は、其の採れる形式の如何を問はず、当該職業又は職業の部分に於ける関係条件を調査し尚第一に且主として影響を受くる利害関係者、即ち該職業又は職業の部分に於ける使用者及労働者と協議して、之を運用すべく、如何なる場合に於ても、最低賃金率の決定に関する一切の事項に付ては、右使用者及労働者の意見を求め且其の意見に対しては充分にして均等なる考慮を払ふべし。」これにはどの委員が該当するわけですか。
#83
○堀政府委員 これにつきましては、その賃金審議会の委員が、これに関係ある業種を代表しておる場合には、もとよりその委員をもって代行されることと思います。それから全然関係がないというような場合に、特株な業種あるいは職種について最低賃金を決定するというような場合には、専門部会を開きまして、専門部会に関係者の参加を求めた上で御審議を願う状態であります。
#84
○多賀谷委員 しかし今答弁されましたのは、私は必ずしも的確ではないと思うのです。「該職業又は職業の部分に於ける使用者及労働者と協議して、」こう書いてありますね。
    〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
ですからこれは的確に適用していないのじゃないか。御存じのように、条約ができましたときは、国際法としては最初の賃金規則でありましたし、また当時は世界的に見てあまり最低賃金法が制定されてなかった当時のことでありますから、非常にラフに書いてある。いわば加盟国、締結国の自由裁量にまかせられる余地が非常に多い条約になっているわけですが、勧告のところはかなりシビヤーに書いてあるのじゃないか。その次にまたその決定すべき賃金率の権威を一そう高めるという条項がある。少くとも前段は、関係業者の協議という、そこに労働者の代表が入っていないじゃないか、この問題はかなり大きな論争になると思いますが、どういう御所見ですか。
#85
○堀政府委員 ILO条約につきましては、私は先ほど申し上げた理由から批准可能であると考えております。それから勧告につきましては、これは条約と違いまして拘束力がないわけでございます。しかしなるべくこういう方向が望ましい、しかしこれを条約の形として採択することは各国を拘束することになるので、条約にはしないで勧告にする、しかしこれはなるべく望ましいという考え方で勧告が規定されたものであると考えております。そこでこの勧告の趣旨につきましては、私は必ずしも合致しない面もあると思いまするが、なるべく運用につきましては勧告の趣旨もできるだけ尊重して運用をはかっていく、このような考えでおります。
#86
○多賀谷委員 はっきり御答弁になりましたから、そういうように理解しておきますが、勧告については必ずしも一致しないけれども、勧告というのは、望ましいということを勧告しておるのであって、条約の方は非常にラフな条約であるから批准できるのだ、こう解釈しておる、こう考えてよろしゅうございますね。
#87
○堀政府委員 条約がラフであるかどうかという問題は別といたしまして、条約は各国がこれを批准いたしますと、拘束されるものでございます。従いまして、包括的な規定を設けておる、これが条約の建前であると思います。それを各国のいろいろの事情によりまして、必ずしも機械的に守るというとができない、しかしなるべくその方が望ましいというものを勧告にしたものでございますから、その勧告の趣旨につきましては、運用におきましてなるべくその趣旨に沿わせるように配慮して参りたい考えでございます。
#88
○多賀谷委員 勧告については抵触する部分がある、こういうことをはっきりおっしゃいましたから、私は法文について御説明願いたいと思います。
 第一条でありますが、第一条に、「事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、」とある。それから十六号に「一定の事業、職業又は地域について、」――われわれ事業別、職業別、地域別最低賃金ということをしばしば聞いたわけですが、この意味ですね、これは全国的に事業別だけでいいのですか。それから全国的に職業別だけでいいのですか。それから地域別には、職業、事業のいかんを問わず地域別に賃金ができるのでしょうか。その点を明確に御答弁を願いたい。
#89
○堀政府委員 これにつきましては、全国的に事業別あるいは職業別という方法も可能でごさいましょう。それから地域につきましては、その地域における事業あるいは職業の種類ごとにというきめ方も考えられます。それから場合によりましては、その地域内におきまして事業、職業の種類を問わず適用になるという場合も考えております。
#90
○多賀谷委員 そうしますと、事業別が地域別というのと二重に重なっておるという意味ではないわけですね。二重に重なる場合もあるけれども、全然重ならない場合もある、こう理解してよろしゅうございますか。
#91
○堀政府委員 その通りでございます。
#92
○多賀谷委員 そういたしますと、労働協約の拘束力は、せっかく労組法の十八条があるのに特別にここに規定をしてあるわけですか。なぜ全国的な地域的拘束力をお認めにならないのですか。この点は業者間協定についても同じなんです。
#93
○堀政府委員 これにつきましては、やはり進み方といたしましては、業種、職種、地域につきまして漸進的に決定し、これを拡大していくという方向を考えたわけでございます。しかしこの一定の地域というのは、これは運用によりましては、相当広範な地域も含み得る、場合によりましては、全国的な場合も含み得る、このように考えておりますので、その点は御質問の趣旨にも合致するように法律は解釈されると考えます。
#94
○多賀谷委員 そういたしますと、「一定の地域内」と十条、十一条に書いてありますが、全国的にと読んでもよろしゅうございますね。
#95
○堀政府委員 これは実際問題としてそのようなことがあるのかどうかは別といたしまして、そのように運用されることも可能であると考えます。
#96
○多賀谷委員 そうすると、労組法の十八条の規定の地域内というのはそう読めないのですか。
#97
○堀政府委員 労組法には一定と書いてございません。「一の地域」と書いてございますが、これも実際そのようなことがあるかどうかは別といたしまして、「一の地域」というのが広範な地域に該当するという場合も当然予想されると思います。
#98
○多賀谷委員 そういたしますと、労組法の場合の「一の地域」というのも全国ということが当然予想され、また労働協約及び業者間協定による地域的最低賃金というのも全国が予想される、こう解釈していいわけですね。しかしこれは解釈にちょっと無理がありますね。
#99
○堀政府委員 十条、十一条等の「一定の地域」と書きましたのは、考え方といたしましては、再三御説明しておりますように、業種、職種、地域に積み上げまして、これを漸進的に拡大していくという方向でございます。その意味でその地域々々、特別な地域を一応よ定しておるわけで、こう書いたわけでありますが、一定の地域というのは全国的な地域というものも論理としては含み得る、このように解釈しておるわけであります。
#100
○多賀谷委員 労働省の解釈をはっきりしていただきたいと思うのですが、では全国的な労働協約を結んだ場合に、組合法の十八条でも、あるいはまたこの最低賃金法の十八条でも、全国協約の一般的拘束力の申請をしても、行政官庁としては法律に適用しておる、こう解釈してよろしいのですね。実は私の方は修正案を出すについてこの読み方がわからなかった。一体どう読むのか、それで私は詳しく調べてみたのですが、結局わからない。わからないものですから、私の方はこれに対しては地域的または全国的という修正案を出したわけです。でありますから一つ労働省の解釈をお願いいたしたい。
#101
○堀政府委員 最低賃金法十条、十一条等の「一定の地域」とありますのは、全国的地域も含み得る、このように解釈しております。
#102
○多賀谷委員 そういたしますと、むしろ明確にするためにやはり全国的、地域的というようにやってもらわなければ、われわれ頭が悪くて、なるほど一定の地域といえば、日本の国に適用する法律ですから、やはり日本国土に適用することはわかりますけれども、わざわざ書いてあるということになると、どうも限定をされておるのじゃないかという感じを受けるわけです。しかし今局長がはっきり答弁なさいましたから、今後の運営は全国的労働協約においても適用があるものだ、こう解釈いたしたいと思います。
 そこで次に質問いたしますが、この弟二条の「他人に物品を提供して」と、こういう場合でありますが、物品を提供しないで、いわゆる家内労働の実態を備えておるものが相当多いわけです。あるいは物品を提供する場合もかなりある。それが普通かもしれませんが、物品の提供のない場合がある。ことにこの法律が物品の提供をしてという条件をつけるならば、物品は自分で調達しなさい、こういう脱法行為が必ず行われる、こう解釈するわけですが、これについてはどういうような御見解ですか。
#103
○堀政府委員 物品を提供してということを条件といたしましたのは、家内労働者を保護する趣旨は、自営業の形をとっておりましても、委託者と家内労働者との関係が実質的には労使関係と変りないという実情をとらえまして、労働者と同様保護の対象としようとするものであります。物品の提供という要素がちょうど労働者の使用者に対する従属関係と対応して、家内労働者の委託者に対する経済的従属関係を現わす最大の要素と考えたので、物品の提供ということを要素にしたわけでございます。
#104
○多賀谷委員 物品の提供が雇用関係にあるいわば使用という言葉と同じだ、こうおっしゃるならば、しかもそれが絶対条件であるということならば、私はきわめて範囲の狭い家内労働者には幾らでも脱法ができると思います。資金を貸せばいいわけですから、それでみずから調達するということができるのですから、私は物品の提供とか物品の売り渡しというものが、移動というものが条件になるならば、この家内労働者を保護する家内最低工賃というものは、少くとも今局長がお話になったような条件であるということならば、意味をなさないと思うのですが、その点どういうようにお考えですか。
#105
○堀政府委員 「物品を提供して、」といたしましたことに対する脱法行為といたしまして最も考えられまするのは、物品を売り渡しまして、それを買い戻すというような形態が考えられるわけでございます。これについては第二条の第二項第二号で脱法行為を防いでいるわけでございます。資金等を借りまして自営業をやっておるという場合には、これは物品の提供と異なりまして、家内労働者自身の企業採算、危険負担におきまして加工等をなすのでありますから、物品の提供を受けたり、あるいは物品を買い受けてできたものを売り渡すというような場合と異なりまして、やはりこれは経済的に労働関係に準ずるものとは考えられないのであります。従いましてあとの場合は一応この家内労働の定義からはすしたわけでございます。
#106
○多賀谷委員 しかし外国でも必ずしも物品の提供ということが絶対条件にはなっていないでしょう、ですから家内労働の定義として物品の提供というのが雇用関係にある使用と同じだ、こういうことになると、この法律が実際作られても、またあなたの方で将来家内労働法というものをお作りになっても、これが条件であるならば必ず脱法行為が行われる、そうして特殊な品物しかとらえることができない、私はこういうように考えられますが、その点どうですか。
#107
○堀政府委員 家内労働につきましては、労働省におきまして、現在わが国に広範に存在しております家内労働者の実態を正確に把握いたし、そして委託者あるいは仲介人との関係等を正確に把握いたしまして、将来は家内労働法の制定準備に着手した方がよいと考えておる次第でございまして、この点につきましては目下実態調査を実施しておるところでございます。わが国の家内労働は非常に複雑多様でございまして、これを一律に現在直ちに規制することが適当かどうかということにつきましては、中央賃金審議会におきましても御意見をいただいておるわけでございますが、中央賃金審議会の答申におきましては、御承知のように家内労働につきましてはやはり将来はそういう方向で準備をすべきである、しかしさしあたりは関連の家内労働について最低賃金の円滑な実施を確保する見地から規定を設ける、このような答申をいただいおるのでございます。私といたしましては、このような規定で賃加工的な従属関係にある家内労働について最低工賃を規制する余地を開きまして、これによってさしあたり最低賃金法の円滑な実施を期して参りたいと思っておるのであります。それ以上の問題はさらに実態を調査いたしまして、将来また別途な企画を行いたい考えであります。
#108
○多賀谷委員 私があとから家内労働についてという話をしましたところが、家内労働法だけの話をされましたけれども、前段については全然御答弁がなかったわけですが、現実問題として物品の提供という問題は、それが条件であるということになると非常に大きな問題になると思うのですね。この法律は実施されません。材料が特殊である、こういう場合にしか私は実施されない、こういう状態になると思いますが、その点どうですか。
#109
○堀政府委員 労働省におきまして、今きわめて粗雑なものでありますが、家内労働の実態調査をした中間報告もあるわけであります。それらを勘案して、報告を聞いてみますると、家内労働で規制を要するものは、物品の提供あるいは物品を売り渡して買い戻すというようなものがほとんど大部分でございまして、資金の提供というような実態はほとんど存在しないという報告を受けております。
#110
○多賀谷委員 時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、現在はなくても、法律ができれば脱法されますよ、こういうことを言っておるわけであります。
 当局の意見だけはわかりましたから、私は続いて質問いたしたいと思います。今の家内最低工賃について関連して質問いたしたいと思うのでありますが、第二十条の最低工賃の決定でございます。これはこの家内労働と同一または類似の業務に従事する昔の最低賃金の確保が十分できない場合、要するに最低賃金を作ってもその実施が困難である場合にのみ限定をされておるわけですね。ところが家内労働の中には、工場生産と関係のないものがある。同じ工程でも、たとえば造花にいたしますと、染色とか型とか、あるいは抜き打ちというのは工場でやるけれども、組み立てというのは全部造花でも家内労働でやるわけです。これは類似の労働者というのはないわけです。本来工場では組み立てはやらない。全部出してしまう。こういう場合には私は全然適用がないじゃないか、こう思うのです。あるいはまた製本だってそうです。製本だって裁断は工場でやるけれども、製本は家内労働でやる。ですからこの法律ができましても、実際適用があるものは非常に少いのじゃないか。しかもこれは小林さんの議論をかりれば、百年もかかるような最低賃金ができて、その最低賃金の実施が困難である場合にできるのですから、私はとても二十条が適用されることはほとんどないのじゃないか、こう思うわけですが、こういった点はどういうようにお考えですか。
#111
○堀政府委員 家内労働につきましては、ただいまお話のように、関連の家内労働者の最低工賃をさしあたり規制するという方向で本案に織り込んであるわけでございます。これはこの問題につきまして中央賃金審議会において御審議を願ったときにも、その中央賃金審議会答申の第四号にありますように、「家内労働については、差し当り、決定された最低賃金の有効な実施を確保するために必要な限度において」最低工賃を定めることかできるようにすべきである、このような答申も出されておるわけでございます。そこで雇用労働者と全然別個のような業態の内職を実施しておるというようなものにつきましても、これを保護することは今後の問題でございます。これにつきましては家内労働の現在の実情を正確に把握するために調査を実施しておるわけでありますから、さしあたりの規制はこの最低賃金法案においてこのような規定を設けまして、最低賃金の円滑な実施をはかるということをねらいとしておるわけでございますが、将来の家内労働法の問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように今後さらに調査を継続いたしまして、その準備を考えていきたい、このように思っております。
#112
○多賀谷委員 結局、局長の御答弁によると、最低工賃と書いておるけれども、これは書いてあるだけで、将来家内労働法を作ってやるのだから、これは書いておくだけだ、こういうような答弁にしか受け取れないのですが、それはそれでよろしゅうございます。
 その次に第三条についていろいろ質問を申し上げたいのですが、先ほどから御議論がありましたから省略いたします。ただこの場合類似の労働者の賃金というのが、やはり答弁が的確でなかったと思います。そこで類似の労働者の賃金というのは、これは例の国際的な労働条約、勧告にもありますが、類似の場合は組織されかつ有効なる団体協約のある場合の労働者の賃金率、こういうことをはっきり定義づけられておるわけですね。ですからその通りであると考えてよろしゅうございますが。ない場合には別ですが、ある場合にはそういう……。
#113
○堀政府委員 これにつきましては類似の労働者の貸金と出しますのは、当核地方における同種ないし類似の事業または職業に従事する労働者の賃金水準、これがないときは当該地方の一般労働者、他地方の同種の事業または職業に従事する労働者の賃金水準等を参考としていきたいと考えております。ただいまお話の労働協約が締結されておるという場合の賃金水準は、もとより最も重要な参考資料にいたしたい所存でございます。
#114
○多賀谷委員 最も重要なとおっしゃいますが、やはり国際的にはっきりした定義というものは定義通りやってもらわなければ、われわれ条文を読むものはなかなか困るのです。先ほどから国際的な例をいろいろおあげになって立法の説明があったり、また質問者からもその質問があったわけですから、やはり類似の労働者、類似の場合というのは、組織されかつ有効なる団体協約のある場合の労働者の賃金率、こうはっきり書いてあるのですから、その通りにあなたの方は解釈していただかなければ、これが有力であるというようなことをされては、今後解釈するのに非常に困る。運用するのに非常に困ると思う。そういう点はみっちり局長から御答弁願いたい。
#115
○堀政府委員 わが国におきましては、御承知のように中小零細企業においては組合の組織率というものは非常に少いわけであります。そこでこういうような類似の労働者について有効な団体協約の締結されておる場合には、もとよりこれは最優先的に考慮されることは当然でございます。しかしそういうものがきわめて少いというような実情もわれわれは看過できないのでございます。これらのものを補うためには、やはりその地方における同種ないし類似の事業に従事する労働者の賃金水準をも参考にしていくということでございます。しかしその地方におきまして同種ないし類似の労働者が存在し、それが包括的に相当多数部分が労働組合を作って団体協約を結んでおるというような事情がございますれば、仰せのごとくこれらはまず第一にもとより考慮されるものであると考えております。
#116
○多賀谷委員 大体最低賃金というのは、団体交渉がむずかしい、組織することがむずかしい場合に最低賃金をきめるのだというのが、これは政府側の答弁ですね。ですからILOにおいてもいろいろな経緯がありまして、率直に申しますと主として未組織労働者を対象としておるのですから、その場合に組織率がなかなか困難であるということは前提条件になっておる。そういう場合の類似の労働者というのは、組織された労働者で有効な労働契約を持っておる――それが数が少かろうと、多かろうと、大部分であれば労働協約の一般的拘束力でいきますからね。それが少い場合を予想しておるのですから、当然今言ったような解釈になるのが至当である、かように考えるわけですが、もう一度御答弁願いたい。
#117
○堀政府委員 大部分がその協約の適用を受けておればお話のようなことになると思います。私は必ずしも大部分が労働協約の適用を受けておる場合に優先的に考えると申し上げたわけではございません。相当な数がその労働協約の適用な受けておれば優先的にまず考えらるべきものである、このように御答弁申し上げておるわけでございます。これらにいろいろな補足的な考慮も加える。しかしまずその組織された類似労働者の賃金というものが優先的に考慮されるものである、このように御答弁申し上げておるのでありまして、食い違いはないのではないかと考えております。
#118
○多賀谷委員 そういった考え方で今後運用されますと、私はこの最低賃金というものは有効に推進できない、こう嘆かざるを得ないのですが、まあ続いて質問いたしたいと思います。
 第四条の二項ですか、これはどういう場合を想定されておるのですか。
#119
○堀政府委員 第四条は、第一項にございますように、最低賃金額は時間給、日給、週給あるいは月給によってきめるという原則をうたっておるわけでございますが、業種によりましては事実上出来高払い制その他の請賃制で、通常賃金が定められておるような業種があるわけでございます。これには二つあると考えられますが、労働時間の把握ができず、定額給制によることができるにもかかわらず、何と申しますか、労務に対する刺激のような考え方で請負制をとっておる場合が考えられます。そのような場合には私は第四条第二項の適用はいたさない考えでございます。従いまして労働時間の把握が不可能である、困難である、その他労務管理上出来高払い制その他の請負制をとらざるを得ないような場合も考えられます。そういうような特殊な場合に限定いたしまして、このような場合には労働省令のきめるところにより、その方法で最低賃金額を定めてもよいということを設けたのか第二項の趣旨でございます。
#120
○多賀谷委員 第五条の二項でございますが、「最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。」これは非常にいい規定だと思います。これは当然の規定です。ところが先ほどから質問がありましたように、第九条の業者間協定に基く最低賃金で、審議会で不当に低いということで、最低賃金の決定として法律の保障をするについては不適当であるからというので、低過ぎて却下された場合に、高い方、いわば適当であると認められた場合については、第五条の三項の保障がある。低いものについては保障がないというのはどうしても納得いかないわけです。この点に対して小林委員も質問しておりましたが、明確なる御答弁を願いたい。これは大臣から一つお願いいたしたい。
#121
○堀政府委員 法律技術的な問題でございますから、私から関連してお答えいたします。この場合におきまして、賃金審議会の議を経まして、労働大臣もしくは労働基準局長によって決定されました最低賃金については、それを下回る部分はその限度まて引き上げられるというでとになるわけでごいざます。
 そこで低過ぎるということで却下されたものはどうかというお尋ねでございますが、低過ぎるということで却下いたしました場合に、その業種、業態におきまして、社会的に見て最低賃金をきわめることがやはり必要であるというように賃金審議会あるいは行政官庁において認めました場合には、勧告をして協定を締結して申請させる、このような手続をまず第一にとるわけでございます。しかもこの場合におきまして、勧告をしたにもかかわらず、なおどうしても締結して申請しない、しかも社会的に見て、その業種、業態に最低賃金を決定することがぜひ必要であると思われる場合につきましては、第十六条の職権決定によりまして最低賃金を決定することにいたしまして、関連労働者の貸金をきめたいと考える次第であります。
#122
○多賀谷委員 そうしますと、まず十四条の規定の業者間協定の締結等の勧告の中に、たとえば九条によって却下されたものについては勧告することができる、こういうように明確にお書きにならないのか、それが第一点。先ほど局長の答弁の中に、締結をさし、あるいは改正さし、申請さすことができると言われましたが、申請は間違いでしょう。申請さすことを勧告することはできないでしょう。
#123
○堀政府委員 その場合におきましては、業者間協定を締結して申請してくる場合には二つあると考えられます。論理的な説明になりますが、それはごかんべん願うといたしまして、二つ考えられます。結局一つは、その業態について、社会的に見て最低賃金を決定することが適当である、やらなければならないと思われる業態でございます。そのような業態につきまして、協定が締結されて申請してきたという場合に、適当であれば最低貸金は決定をするわけでございます。適当でなければ却下をいたすと同時に、最低賃金に関する協定を締結することをさらに勧告することができる。勧告を聞かない場合には十六条の方で発動する、こういう考え方でございます。しかし社会的に見まして、最低賃金をその業態で必ずしも今直ちにきめないでよろしいと思われるような業種、職種もあるわけでございます。そのような場合には、却下いたしました場合に必ずまた締結して申請することを勧告しなければならないというとを設けるのは、これはややよけいなことであると思いますので、そこでそれは中央賃金審議会あるいは地方賃金審議会あるいは行政官庁において、社会的に見て最低賃金を決定することが適当かいなかの判断をした上で、必要な場合には勧告いたしますし、必要でない場合には勧告をいたさない、このような考え方でございます。
#124
○多賀谷委員 申請は勧告できないでしょう。
#125
○堀政府委員 申請につきましてはいろいろ考えたのでございますが、申請した方がいいじゃないかということを勧告することは、もとよりできると考えております。しかし、締結改正というのは大体申請の前になる行為でございますか、これは一応業者相互間の純然たる関係でございまして、行政官庁との関係ではない。その場合におきましては、やはり勧告することができるという規定を入れておきませんと、業者だけ、関係者だけで、行政官庁とかかわりがないようなものについても、果して勧告ができるかどうかという点が疑問になりますので、その場合に勧告することができるということを書いたものでございます。その場合には賃金審議の諮問も要る、このようにしたのでございます。締結あるいは改正があった場合に申請したらどうかというとを勧告いたしますこととは、これは政府、行政機関と業者、関係者との関係でございますので、十四条にそのことを書かなかったのは、当然そういうことができるという趣旨で書かなかった、そういうことでございます。
#126
○多賀谷委員 政府対業者の関係なら法律で書かなければできない。そうでしょう。これはできませんよ。申請することかできるなんという――命令権は法律でなければできぬでしょう。勧告することですよ。
#127
○堀政府委員 命令するような場合にはもとより法律の規定がなければできないわけでございます。この場合は勧告でございますので、そういうような勧告は申し上げても差しつかえない、このように思っております。
#128
○多賀谷委員 そうすると、申請することを勧告することができるわけですね。それをはっきりしてもらえばいい。業者間協定すなわち任意協定を結んだ場合に、この最低賃金法の手続をとらない者が相当できると思うのですね。それをわざわざ手続をとって、罰則を受けて、そうして罰金まで食う、そのことを全員が承諾するなんということは容易なことじゃないと思う。だから私は業者間協定はなるほどできるだろう、しかしその業者間協定は任意協定であって、法律のルートには、乗らないだろう、こう考えざるを得ないのです。そうすると申請勧告することができる、こう考えてよろしいのですね。
#129
○堀政府委員 その通りでございます。
#130
○多賀谷委員 それはどういうところから出るのですか。その申請を拒否した場合はどうなんですか。法律に勧告することができると書いておかなければきわめて不親初であるし、業者の連中がお互いに申請しなくてもいいじゃないか、法律にないじゃないか、こう一人でも言い出したらどうしますか、それをたてにとって。
#131
○堀政府委員 十四条の場合でも、勧告した場合に、聞かない場合には強制権はないわけでございます。まず第一、第二、第三の方式によって最低賃金を決定していくことを建前といたしまして、勧告等によっても事実上結ばないというような場合には十六条にいくということでございまするから、締結の勧告につきましても、申請の勧告につきましても、どちらも強制権はないわけでございます。
#132
○多賀谷委員 私は第九条の申請の勧告ができるかということを言っておる。局長はおわかりになっておるようですが、私は、やはりはっきり書いておかなければ、これは政府と一般国民との関係でしょう。労働省の設置法でやるのですか。
#133
○堀政府委員 九条につきまして、申請の勧告は事実上できる、こう申し上げておるわけでございます。それは労働省設置法その他の法律に基いて行政官庁が援助し、あるいは勧告するということは、当然事実上できることであると考えております。
#134
○多賀谷委員 そうしますと、罰則がわざわざ伴うようなこの手続をとらすことが行政管庁として勧告できますか。これは非常に問題であると思うのですよ。その法的手続をとった場合に、罰則を伴うようなことを任意的に勧告できますか。
#135
○堀政府委員 勧告につきましては、先ほどから再三申し上げておりまするように強制力はないわけでございます。従いましてそのような勧告はできると考えております。
#136
○多賀谷委員 それは政府の権限でできるわけですね。そういう考え方が根本的に間違っておる。一体国民を縛るのに法律に書かずしてできるのだというものの考え方、これは私は根本的に間違っておると思う。いやしくもこういう法律を作るならば、やはり申請に対する勧告権があることを明記すべきです。それを一方においては労働省設置法があるからそれでできるのだ、こういうことは私は許されないと思う。一体大臣はどういうようにお考えですか。
#137
○倉石国務大臣 本日もILOのことについていろいろ論議されましたときにしばしば出た言葉でありますが、私は労使関係というものはなるべく行政官庁が携わらないで、自主的に運営されるのが原則であり、最も望ましいことだと思うのです。ことに賃金決定というのは私ども自由経済の立場から申して、原則として法律等で制定すべきものではないと思うのです。東欧社会主義国家では、御承知のようにやはり国の機関が押しつけて賃金を決定しております。ああいうことはやはり自主運営というILOの精神から申せば好ましくないことである。そこでなるべくは労使双方の間で需要供給の関係を考慮しながら自主的に賃金というものはきめられる方がよろしい。しかしそれでもなお日本の特殊な事情で零細な企業に大勢の人がおいでになる。それらの人々はまことにお気の毒な賃金状態にあるのでありますから、私どもはそういうような人々を対象にして最低賃金というものを早く決定する方が望ましい。そこで現在の段階におきましては、やはり四つあげておりますような方式に基いて、最低賃金というものをまずきめてあげるという方法がきわめて望ましいことだ、そういう立場に立っておるのでありますから、この法律が通過すればもちろんでありますが、通過しないでも、地方の通産局の出先と労働基準局の出先は、それぞれ関係の業者に向ってお勧めをいたしておるのでありますが、そういうふうなことによって業者問協定が結ばれ、同時にまたそれがただいま多賀谷君と政府委員との間にかわされましたようなお言葉の中の、つまり拘束力を持ち得るようなよいものが作られなければ、そこにはいい人が集まってきませんし、またそういうふうにすることが当該企業の社会的信用をかち得るゆえんでもあるのでありますから、やはりそういうふうに指導していって実効の上るようにしむけていく、こういうことで私どもはあえて申請の勧告を法律できめるということよりも、自主的ということを尊重してやっていく方かよりいいではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
#138
○多賀谷委員 大臣の御趣旨はよくわかりました。申請はやはり自主的にやるべきであって、いやしくも勧告なんということは書くべきでない、こうおっしゃるし、局長は勧告というのは当然できるのだ、というのは十四条は業者間協定の問題であるからわざわざ法律に書かなければならぬけれども、対政府との関係であるから、申請はそれは勧告できるのだ、こういう考え方だ。これは私は考え方の中に大きな相違があると思うのです。ですからいやしくも国民に対する権利関係を制限する問題につきましては、これはやはりはっきり政府で明記すべきである、こういうふうに考えます。時間がないそうでありますから、これは私は実は法制局長官に来てもらってこの点を聞いてみたいと思うのですが、次の機会にちょっと、一分でもいいですから、委員長においては法制局長官に来ていただいて、対政府と国民との関係を法律でもう少し明確にしてもらいたい、こういうように希望しておきます。
 次に第六条の現物給与等の評価ですが、これは御存じのように今結ばれております業者問協定におきましても、同じ東京でも三千円のがあるかと思うと四千円のがある、こういう状態です。郊外に行きますと、またいなかに行きますと、かなり差がある。差があるのも当然でしょうけれども、東京都内で差があるというようなことは、どうもわれわれとしては解せないのですが、こういった点はどういうように評価されるつもりであるか、ごく簡単でよろしゅうございますから御答弁願います。
#139
○堀政府委員 現物給与の評価につきましては、当該現物給与の実際の費用あるいはその当該地域における現物給与の一般市場価格等を参考価格といたしまして、最も客観的に妥当性ある評価が行われるようにいたしたいと思っております。これを業者が恣意的に、いたずらに高いというふうな評価をいたしますことは、本法に対する脱法行為として監督いたす考えでございます。
#140
○多賀谷委員 何か本を読まれているような感じの御答弁がありましたけれども、私はこれは非常に注意をしていただきたい、かように希望をしておきます。
 そこで第八条でありますが、第八条は職業調練を受ける者を今度は除いてあります。従来の基準法はこれを除いてなかった。ところが今度はこの第八条で職業訓練を受ける者については最低賃金から全然除外した。従来の場合は基準法の七十条の二項、技能者の養成というところで、一応最低賃金そのものの規則からは除外をするけれども、別に定めるということで、必ず別に定めなければならぬということになっておる。今度は全然除外をされておる。そこでわれわれいろいろ調べてみましたところが、驚くなかれ職業訓練法の一部改正のときにこの条項を削除している。役所というところは、われわれが知らないうちにこの最低貸金条項から技能者養成を削除するなんて、きわめて巧妙な法律手続をとられるので、実は私はびっくりしたわけです。われわれは最初法案が出ましたときには最低賃金法の法案の中に、その附則に、実は七十条の二項を改正すると書いてある、でありますからこの法律さえ通過させなければ一応七十条の二項というのは改正できないんだと思っておりましたところが、今度は職業訓練法で、われわれに賛成させておきながら、その附則の方で削っておる。こういうことをされるとわれわれしろうとはいつの間に法律が変ったのか気がつかないということで終るわけでありますが、この点はなぜ職業訓練者に対して全然最低賃金から除外されたのか、従来の基準法の建前からでも除外しなかった、別に定めるとしてあった、この点一つ答弁を願いたい。
#141
○堀政府委員 第八条は、ここにございますように野放しではずすということではなくて、使用者が都道府県労働基準局長の許可を受けるということを条件にしておるのでございます。そこで許可の基準につきましては中央賃金審議会等におきまして、許可の基準はさらに細目をきめていただく考えでおります。そうしてこのような許可の除外申請があります場合には、支払う賃金額も記載するというようなことにいたして参りたいと思っておりますので、中央賃金審議会の御審議を尊重いたしまして許可基準をきめて、それに基いて許可いたします場合には、その払われておる賃金額等も申請に記載されるというようなことでいきまして、そうして野放しで行われるというようなことは絶対にいたさない考えでございます。
#142
○多賀谷委員 これは別に定めなければなりませんか。
#143
○堀政府委員 許可の申請に当りましては、そのものに支払う賃金額を記載されることにしております。その賃金額はどの程度ならば許可するかということにつきましては、中央賃金審議会等において審議を願った許可基準を当てはめて参りたい考えであります。
#144
○多賀谷委員 それならばなぜ七十条の二項の第三十一条の最低賃金というのを除外されたわけですか。
#145
○堀政府委員 技能者養成に関連いたしましては、職業訓練法が制定されまして、そうして職業訓練法に基きまして認定を受けて職業訓練を行う、このようにいたしたわけでございます。その場合に職業訓練中の労働者につきまして、一般の労働者とおのずから異なった最低賃金をきめる必要が出てくる場合があると考えられるのでありまして、その場合には労働基準局長に許可申請いたします。その申請の場合にはどのくらいの賃金を払うかというこもと申請の内容に入れていただく考えでおります。これを中央賃金審議会の御審議を経てわれわれが定めたいと考えております許可基準に照らして、許可すべきかいなかを判断して参りたい考えであります。
#146
○多賀谷委員 その点を明確に願いたいのですが、別に定めなければならぬということは法律から除外されましたね。削除されましたね。なぜ削除されるんですか。こう聞いておる。ですから、最低賃金から一般的な基準の適用はしなくてもよろしゅうございますけれども、別に定めるという条項は必要でなかったか、それをなぜ全然削除されるのか、これを聞いているわけです。
#147
○堀政府委員 これは職業訓練のいろいろな方式があるわけでございます。その職種、職目等についていろいろな内容があるわけでございます。これらについて別段の定めをするといたしますよりは、他の適用除外と同様に基準局長の許可を受けるということで、許可で縛りまして、しかしその許可の場合には、一定の許可基準を設けて許可していく、そういう考え方をとることが適当かと考えたのでございます。
#148
○多賀谷委員 これ以上質問しませんけれども、私は明確でないと思うんです。そうしてその扱い方というものに対して、私たちは非常に不信の念を抱く。最低賃金法を出したときは、附則において基準法の七十条の二項を削って最低賃金条項からはずしておる。それはわれわれが八条を審議する場合に当然出てくるんですが、これができなかったからといって、今度は裏手に回って職業訓練法の一部改正をやって、職業訓練法を出すときにその一部改正で削っておるということは、私は許し得ない行為である、こういうように考えるのですか、それはさておきまして、次に、最低賃金でやるのに、なぜ軽易の業務というのをこれからはずされたかをお聞かせ願いたい。
#149
○堀政府委員 軽易な業務に従事する者ということにつきましては、私は大体この適用除外についてはこのような考え方があると考えております。すなわち一般的にその最低賃金を一般労働者に適用するというような場合に、それと同じ最低賃金を適用していくということになりますと、結局二つの場合が考えられるわけであります。一つはここに列記してございますような特殊なものにも適用して差しつかえないような低い最低賃金額がきめられるか、あるいは高い最低賃金額をきめて、それを特殊なものについても例外なしに適用していくということになれば、特殊なものについては使用者が雇用しないというような逆選択を起す可能性があります。これは労働者保護のためにとるべきところでないと考えておるわけでございまして、非常に軽易な業務に従事する者等につきましては、やはり基準局長は、中央賃金審議会に諮りましてきめる許可基準に該当するような特殊なものにつきましては、やはり適用除外を許可を条件として認めることが適当であると考えたのでございます。
#150
○多賀谷委員 精神または身体障害者というような場合には私はわかりますが、軽易な業務というようなことは、今までの基準法の最低賃金条項にはありませんでした。これが突然入ってきた、こういうときに。しかも最低賃金ですからね。当然最低賃金というのは、比較的軽易な労働も対象にして組むのです。それに軽易な業務というものをはずすということはどうしても納得がいかない。これは事業別に最低賃金ができる場合には、軽易な業務というのは当然軽易な業務を中心に最低賃金をきめるでしょう。その事業の中間の労働者を対象にきめるんじゃないでしょう、労働の質と量からいって。どうですか。
#151
○堀政府委員 軽易な業務に従事する者というのは、一、二、三、四に列挙してありますこのような比較においてとらえられる軽易な業務ということでございます。もとより一般の作業が軽易であるから全部それをはずすというようなことは考えておりません。軽易な業務に従事する者というのは、非常に特殊な場合を予想しておるのでございまして、しかもこれを野放しではずすということではなくて、再三申し上げておりますように、中央賃金審議会に審議を願って定める許可基準に照らして許可をしても差しつかえないと思われるものを例外的に許可していくという考え方でございます。
#152
○多賀谷委員 精神または身体の障害とか、あるいは技能者養成とか、あるいは所定労働時間の特に短かい者というのは国際的に例外規定になっておる。ところが軽易な業務に従事する労働者を最低賃金からはずすという観念自体が非常におかしい。しからば業者間協定を中心とする最低賃金がかりに高いかといえば、そうでない。職業の場合ならよくわかりますよ。ところが職業でなくて事業別最低賃金あるいは地域別最低賃金という場合に軽易な業務をはずすというようなことは意味をなさないじゃないですか。一体どういうようなお考えですか。
#153
○堀政府委員 再三申し上げておりますように、一般労働者と比べまして特に軽易なものについては一定の許可基準を設けまして、許可を条件としてはずしていくという例外措置を考えておりまして、これを一般的に適用しようというような考えは毛頭持っておりません。
#154
○多賀谷委員 国際的にどこかありますか、軽易な業務をはずしてあるのは。
#155
○堀政府委員 私不勉強でございまして、そこまでは勉強しておりませんが、この一、二、三、四の趣旨から申しまして、その点は、軽易な業務については許可を条件としてはずすことは適当な措置であると考えております。
#156
○多賀谷委員 堀基準局長はずいぶん勉強をされて、先ほどから伺っておると各国の労働行政に通じておるように承わっておるのですが、不勉強でよくわからないということです。これはないわけですね。そういうのは世界的にないのでしょう。あったら持ってきて下さい。ないんだ。それが突然こういうところに出てくるというところに、私はものの考え方が根本的に誤まっておると思う。労働大臣、どうですか。軽易な業務というのが実は適用除外になっておるのです。大臣はあまり条文をお読みになってないかもしれませんが、こういうことが書いてある。私は最低賃金の設定の場合に軽易な業務を除外するなんということは考えられないのですが、その点どうですか。最低賃金ですからね。
#157
○倉石国務大臣 政府委員が申し上げました通りに一つ御了承を願います。
#158
○多賀谷委員 大臣はきわめてお上手な答弁をされるのですが、結局先ほど局長が答弁した通りと言われますが、局長の答弁がわれわれにはさっぱり納得できない。この点も私は、この法案がいかにザル法案であるかということを立証したものである、こういうように考えて次の質問に移りたいと思います。
 十一条の労働協約に基く地域的最低賃金の場合ですが、労組法の十八条の二項には修正権があるわけですね。労働委員会において不適当と認めた場合に修正権がある。これは修正権をつけなかったのはどういうことですか。
#159
○堀政府委員 最低賃金法におきましては当事者の自主性ということを尊重しておるわけでございまして、そうして十条も同様でございますが、十一条につきましても賃金審議会に諮りまして、その労働協約の中に盛られました最低賃金条項が、最低賃金として政府が決定するのに恥かしくないものであるかどうかという点の審査を行うわけでございます。従いまして十一条は、この申請に基いて適当であれば最低賃金として告示をいたしますし、それから適当でなければこれを告示しない、こういう取扱いをいたす考えであります。
#160
○多賀谷委員 この法律の十一条と労組法の十八条というのは非常に似通っておる法律である。労組法十八条には労働委員会の修正権をつけておるのに、どうしてこちらには修正権がないのか、この点きわめておかしいじゃないかと言っておる。
#161
○堀政府委員 最低賃金法十一条の地域的最低賃金は、単なる労働協約の拡張適用ではなしに、これは最低賃金として政府の行為として決定するわけでございます。従ってもとの労働協約が失効いたしましても、その最低賃金としての効力は伴う。しかもこれに反すれば刑事的、民事的な制裁も課せられる、こういうことになるわけでございます。従いましてそういうものにつきましては当事者の申請を尊重いたしまして、そうしてこれに対しては修正することはしない。適当か不適当かを審査する。このような考え方をとったわけでございます。
#162
○多賀谷委員 最低賃金だけをきめた労働協約はどららに出せばいいのですか。労組法でいけばいいのですか、最低賃金法でいけばいいのですか。
#163
○堀政府委員 それは当事者の自由意思でございまして、どちらに申請されてもけっこうだと考えるわけであります。
#164
○多賀谷委員 そうなりますと、一方の方は修正権があり一方の方は修正権がない。こういうような取扱いを別にするというのはきわめておかしいじゃないか、こういうように私は考えるのですが、その点どうですか。
#165
○堀政府委員 これは先ほどから御答弁申し上げておりますように、最低賃金法の地域的最低賃金は国の行為として決定する手続でございます。それから労働組合法の十八条は労働協約の拡張適用でございます。従ってその効果にも全然違ったものがあるということを申し上げておるのは御承知の通りでございまして、これらのものにつきましては最低貸金の方で申請すべきだ、あるいは労働組合法の一般団体協約の拡張適用の方法をとるか、これは当事者の自由に決定さるべき問題であると考えます。
#166
○大坪委員長代理 多賀谷君にちょっと申し上げますが、申し合せの時間をだいぶ過ぎておりますし、大臣もその申し合せの時間を予定してほかに約束の時間もあるようでありますから、なるべく早く完結して下さい。
#167
○多賀谷委員 大臣お急ぎのようですから、最後に大臣に質問いたしたいと思いますが、私は業者間協定を含む最低賃金を作るよりも、ほんとうに最低賃金をやるならば、政府みずからやることがありはしないかと思うのです。隗より始めよということかありますけれども、政府がほんとうに最低賃金をやろうとするならば、なぜ政府はみずからの雇用者あるいはみすからが発注する品物を製造しておるところ、あるいは政府の公共事業に従事する労働者に最低貸金を作らないのか。その点を私は非常に遺憾に思うわけです。一年ほど前に総理に来ていただいて質問いたしたましら、これはいいことである、こうおっしゃいましたけれども、一向実行を見ない。アメリカはあれだけ、民間労組に対しては一ドルという規制をするかわりに政府みずからやっておる。やはり十万ドルをこえる原材料とか用度品とか、物品とか、設備の製造または供給を行う商店とか工場に対してば、その従事する労働者に対して、労働基準法が指定をするところの賃金よりもはるかに高い最低賃金を作っておる。もしそれに違反した者は三年間契約の解除をするわけです。全然契約をしない。こういうようなきつい法律関係を持っておる。すなわち一九四〇年ですから一時間四十セントのときに、鉄鋼においては一ドルからあるいは一・二三ドル、こういうようなところの最低賃金を作っておる。あるいは繊維につきましても一時間が七十五セントのときに一ドルという最低賃金を作っておるわけです。それから請負業者につきましては、二千ドル以上の場合にはやはり同じような法律を作っておる。こういうことをなぜ政府はおやりにならないのか、私は非常に疑問に思われるわけです。こういうことを政府みずからやれば、私は日本の最低賃金というのは前進すると思うのです。しかるに政府がやっておることは何かというと、PW政策というのをやっておる。職種別賃金というのを作って、これは逆に一般職種別貨金額をこえる額の賃金を支払ってはならない、すなわち公共事業なんかに従事する労働者にはこれ以上支払ってはならない、こういうような最高賃金をきめておる。私はここにアメリカ政府と日本政府の雲泥的な差違を見出すことができるのですが、大臣は一体どういうようにお考えてすか。こういった点、政府みずからやることにかえて、民間の者だけに強制しようということは、私はやはりできない相談ではないかと思うのです。むしろ政府みずから行なって、そうして民間は政府がやっておることについてこい、こう言うべきが至当ではないか。これに対する大臣の明快な御答弁をお願いしたい。
#168
○倉石国務大臣 今PWの話がありましたが、PWは多賀谷さん御承知のように、一定の機関において各資料を集めてそうしてPWの改訂を行なっております。目下政府でもPWについて検討しておることは御承知の通りであります。そこで最低賃金のことを、どうして業者間の協定のようなことを先にやるのかというお話でありますが、政府が支払いをいたします労務賃金につきましてもいろいろございましょう。今はPWの話がありましたが、やはり私ども日本の今日の状況では、結局政府負担と申しますのは言葉を返せば国民の負担であります。そこで国民の負担というものを考え、日本の国民経済全体というものを考えましたときに、今御指摘になりましたようなアメリカ等との非常な差のあること、これはもう各方面の賃金ベースを比較してもその通りであります。しかしながら私どもはやはりさっき申しましたように、賃金というものは本質的には使用者と従業員との話し合いできまるのが望ましいことであり、これが当然のことでありますけれども、しかもなおそれでは救われないというような人々に向って、日本経済の事情に応じて、どうやったならばできるだけ最低賃金というものの恩典に浴せしめることができるか。しばしば私は申し上げておりますように、現在の政府原案が理想的なものであって、これ以上もう将来も改める必要がないなどということを考えているのではないのでありまして、実情に応じて――これですら零細企業の面ではきわめて強い反対もあったのを説得してここまで持ってきたのでありますから、まずこういうものを実行に移して、それからだんだんと経済状況に応じて理想的な方向に引き上げていく、こういうのでありますから、私は現在の段階においては、まずもって政府の原案を一日も早く通していただくことが、日本の全労働者の非常な利益であり、また彼らも大いに待望しているところである、こういうふうに考えておるのであります。
#169
○多賀谷委員 一般職種別賃金については局長も答弁なさっておりますが、これは当然改正する、十分考えると総理も答弁されたし、石田労働大臣も答弁された。しかも同じ局長で何ら改正の動きがない、これは一体どういうわけですか。
#170
○堀政府委員 一般職種別賃金につきましてはいろいろな問題がございますが、これは現在御承知のように公共事業の労務者の賃金、それから失対労務者の賃金等にも準用されておるところでございます。これらを一つの資料として賃金をきめるようになっておるわけでございますので、影響するところが非常に多いわけでございます。これらの点につきましては、最低賃金法が成立した暁においては、その存置改廃については検討をしたいとこの前も御答弁申し上げたところであります。これらにつきましてはこの際最賃法が成立いたしました後において、われわれはその必要性につきまして、影響するところが相当ございますので、それを存置するかあるいは改正するかについては検討を行いたいと考えております。
#171
○多賀谷委員 最低賃金の法律とは関係ないでしょう。最低賃金を出そうというその政府の考え方と関係がある。ですからPWをそのままにして、すなわちこれ以上払ってはならぬという最高賃金を置いて、最低賃金法を出そうということがおこがましいのですね。これは全く矛盾しているのではないですか。出そうということと、また一方においては最高賃金として出してはならぬということ、これは矛盾しておりますよ。法律の通過の問題ではありません。
#172
○堀政府委員 職種別賃金は、先ほども申し上げましたように、公共事業の労務者の賃金、それから失対事業の労務者の賃金等におきまして、やはり現在はいろいろ使用されているわけでございます。その影響を考えなければならないと申し上げているわけでございます。しかしこれを果してそのまま存置するか、あるいは別個な調整を行うことが必要かという点につきましては、今後十分検討したいと思います。
#173
○大坪委員長代理 次会は明二十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後七時四十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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