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1958/10/02 第30回国会 参議院 参議院会議録情報 第030回国会 本会議 第4号
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1958/10/02 第30回国会 参議院

参議院会議録情報 第030回国会 本会議 第4号

#1
第030回国会 本会議 第4号
昭和三十三年十月二日(木曜日)
   午前十時五十六分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
 議事日程 第四号
  昭和三十三年十月ニ日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第三日)
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ─────・─────
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、国務大臣の演説に関する件(第三日)。
 昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。湯山勇君。
#4
○湯山勇君 私は日本社会党を代表して、総理の施政演説に関し、内政の問題を主として、総理及び関係大臣に質問をいたします。
 まず経済の現状認識についてであります。
 総理は前国会において、「昨年来政府がとってきた総合緊急対策は、予期以上の成果をあげ、長期経済計画は達成されつつある」と、言明されたのでありますが、この認識は誤まりであって、本年度当初の計画が大幅にくずれたことは、去る九月九日政府の発表した「今後の経済の見通しと経済運営の態度」によって明らかであります。すなわち、三十三年度予算編成の基礎となった鉱工業生産四・五%の伸びは、前年通り横ばい。経済成長率三%の伸びは、今回は一・八%に引き下げ。輸出三十一億五千万ドルは二十八億ドルに切り下げざるを得なくなっているのであります。そのうち、輸出については、総理が前国会において、「東南アジア貿易振興に重点を置き、延べ払いを拡張する等の具体策を講じ、ぜひ三十一億五千万ドルを達成するように格段の努力をする」と言明されており、高碕通産大臣も、「わが国に輸出の余力ができたことと、物価が低下したことの二つの好条件があるから、目的の達成は不可能ではない」と、答弁しておられるのであります。それが今日、このように引き下げなければならなくなったことは、政府の対策が成功しなかったことを示すものであります。今回の見通しで、なお下期において七%の輸出の伸びを見ていることについても、いささか不安の念を禁じ得ないのであります。中共の進出を見越した東南アジア貿易の見通し、アメリカの邦品輸入制限運動の影響等をも含めて、輸出の伸び七%の根拠をお示し願いたいのでございます。
 次に、同じく鉱工業生産が下期七%上昇するという見通しについてであります。生産調整は期待通り進まず、在庫調整も、本年三月完了の見込みが次第にずれて、来年一―三月になることは必至でございます。その上、販売業者の在庫の激増等、重なる悪条件下にあって、果して政府の見込み通り在庫投資の二倍増が果せるでしょうか。消費九%の伸びという前提条件は、絶対額が大きいだけに、これが狂えば非常に大きな影響を持つものであります。いかなる根拠からこんな大きな数値が出てきたのでございましょうか。ことに、今日なお鉱工業生産は下向きであって、八月も前月より〇・六%低下しております。この悪条件の中で鉱工業生産七%の上昇は、いかなる根拠に基いた見通しか、計数をあげて御説明願いたいのでございます。年頭の計画がすでにくずれ、今また、修正したばかりの見通しにも信頼がおけない、このような誤まった現状認識に立って、総理がいかに不況でないと強弁されましても、現実に操短は二十九年の不況時を上回って、三〇%をこえております。しかも長期化しつつあります。大企業においてさえも、繊維、鉄鋼、パルプ、造船等が不況にさらされつつあることは、単に不況でないという言葉だけでは解消しないのでございます。それにもかかわらず、総理がなお楽観的な認識を改めず、積極的な不況対策の必要を認めないのは、結局、不況に対する政府の無策を表明するものか。不況を認めることは政府の財政経済政策の失敗を認めることになるので、ことさらにそれを回避しているのか。あるいは伝えられるごとく、独占資本が不況を利用して、自主規制の名のもとに、アク抜き、すなわち過剰雇用及び高賃金を整理し、中小企業の過剰設備を廃棄せしめることによって、さらに独占資本の地位を強化しようとする要請にこたえようとしているのか。これらについて総理のお考えを伺いたいのでございます。資本主義経済の特性は、常に好景気は、大企業、大資本から先に訪れ、不況は、その反対に、弱いものにまっ先に襲いかかってくるということでございます。このことは、今日の不況下にあっても、大企業は、神武景気の蓄積と労働者の犠牲において、高度の操短を行いつつも、なお、なべ底の安定を保っているのに対し、中小企業、労働者、農漁民が、そのしわ寄せによって、まっ先に苦しんでいる事実によっても明らかであります。この不況の最大の原因は、過剰生産によるものであって、一昨年来の無計画な設備投資、野放しの輸入、さらに対米従属等、政府の経済政策の破綻に基くものでありますから、その責任はすべて政府の負うべきものであります。この際、政府は、その責任を痛感し、すみやかに現在の不況に対処する新たな施策を講ずべきであります。すなわち、当面、たな上げ資金の活用及び資金計画委員会等の新設による資金配分の一元化、外貨事情との見合いにおいて、国内需要を喚起する等の施策をとるとともに、特に、不況のしわ寄せにあえぐ中小企業、農漁民、労働者、生活困窮者に対して、適切な方途を講ずべきであると考えるのでありますが、総理の御意見を伺いたいのでございます。
 なかんずく中小企業対策については、総理は、すでに手を打ってあるとして、今回の演説においても何ら取り上げていないのでございます。中小企業の企業整備は、本年一月以降毎月六百件から八百件に達しているのでございます。その上、政府は、今回独禁法を緩和することによって、大資本を強化し、中小企業に追い討ちをかけようとしているのでありますが、これこそ中小企業にとっては泣きつらに蜂であります。なぜこのような無情な措置をとるのか、中小企業はこのまま放置するつもりかどうか、また、間近に迫ってくる年末金融をどのようにするか、政府のお考えを承わりたいのであります。
 次は農業政策についてであります。現在わが国の農業は、余剰農産物等の輸入、不況のしわ寄せ等によって過剰生産となり、生産物が値下りの上に、種々の災害が重なり、脱落農家は次第に増加しつつあります。農業に対する政府の政策は、適地適産、経営の多角化等の基本方針から、畑作振興、酪農振興を前面に打ち出したのでありますが、価格対策や流通面の改善が、きわめてその場限りに終始し、総合対策に欠けたため、結局、力の弱い酪農、養蚕、畑作農家等に大きな犠牲を強いているのでございます。今年の豊作にいたしましても、農民の努力と天候のたまもので、総理の言われたように政府の政策のよろしきを得たからでは決してないのでございます。政府は、この行き詰まった農業政策を根本から再検討する意思があるかどうか。農林大臣は、今日の支持価格や米価のあり方について、どのような認識に立っておられるかも伺いたいのでございます。また、当面行き詰まっている酪農の対策、この春までは奨励策をとっていながら、急に減産を強制して、その上、繭価格まで引き下げようとして、農民に希望を失わせている養蚕対策、手間賃も出ない木炭生産者に対する対策、急傾斜地帯、開拓地等畑作地帯の干害対策、これらについてもお伺い申し上げたいのであります。
 次に、農業問題に関連して、今次台風の災害対策についてお尋ねいたします。岸総理も佐藤大蔵大臣も、台風常襲地帯の御出身でございますから、台風がくれば補正予算が必要かどうかくらいは、直観的に判断がおできになるはずだと思うのであります。罹災者の立ち上りの士気に大いに影響があると思いますから、補正予算を出す必要があるかどうかについて、総理の直観的な判断でもよろしゅうございますから明確にお示し願いたいのでございます。
 次に、今日不況の頂点に立つ失業問題についてお尋ねいたします。昨年五月以来、繊維、鉄鋼、化学工業等に現われた不況、一月の八百件をこえた企業整備等が、雇用の危険信号であったことは、だれの目にも明らかなことでございます。在庫調整が進まず、高度の操短が続けば、大企業においても雇用の現状維持に限度がくることは、鐘紡その他がこれを証明いたしております。しかるに政府は、雇用の目標は達成できるとして、きわめて楽観的であります。しかし、同じ政府の中でも、労働省は見解を異にし、労働白書において、「経済の拡大による自然の解決だけに頼っていたのでは、とうてい処理できない事態に陥る気配を示しており、今年は昨年より月平均十万人も失業者がふえるものと見て、積極的な総合施策の必要」を強調しているのでありますが、総理は、そのいずれの見解をおとりになられますか、お伺いいたしたいのでございます。政府の意見は、二つに分れているのでございます。失業保険の受給者は昨年の五割増しで、月平均四十七万を数え、予算人員の三十七万八千人をはるかに上回っております。日雇い労働者も百五十万をこえております。このままでは、どうにもならないことを示しているのでございます。さらに一方、雇用の質の面におきましても、就業者の多くは、生産性の低い商業、サービス業に集中されており、また、一週間に七十時間をこえる生産性の低い過重労働者、週三十五時間未満の仕事不足の労働者の数は、それぞれ三百五十万をこえているのでございます。さらにまた、来春学校を卒業する百二十万の青少年たちは、かつてないきびしい就職難に、親子とも全く奔命に疲れている状態でございます。今これらの青少年が心から求めているものは、総理の激励の言葉ではなくて、安んじて働ける職場なのでございます。これらの事実を率直に認識するならば、政府の最重点施策は失業対策に集約されてしかるべきものだと思うのでありますが、新卒業生の対策とあわせて、総理及び関係大臣の御所見を伺いたいのでございます。歴史学者の説くところによりますと、明治時代の労働政策は産業政策に従属しており、大正から戦前にかけては、労働政策は治安問題として取り扱われたということであります。経済の拡大にのみ頼って雇用問題を解決しようとする政府のやり方は、まさに産業優先の明治時代の労働政策でございます。弾圧に明け、弾圧に暮れ、ことに北海道の王子製紙の争議には全道の半数に近い千八百名もの警官を動員し、その上、労働者をホスゲンで毒ガス攻めにせよと言った倉石労政は、まさに悪質なる大正時代の労政であって、人道上も許しがたいものであると思うのでございますが、労働大臣はどうお考えになられますか。戦後の新しい労働政策は、労働者の生活向上を第一に取り上げるべきであって、この観点に立てば、公約である完全雇用を達成するために、今こそ完全雇用を主軸とした新しい経済計画を打ち立てる努力が当然なされなければならないと思うのでございますが、また同じこの観点から考えますならば、結社の自由と団結権に関するILO条約八十七号のごときは、とっくに批准を終っていなければならない性質のものでございます。最低賃金の制度にいたしましても、政府の業種別、職種別、地域別などという産業優先の明治の労政を捨てて、すみやかに国際的、現代的な全国一律制とすべきであります。これらの点について総理及び労働大臣の御所見を伺いたいのでございます。
 次は文教の問題でございます。
 教育基本法に明記されている通り、教育の使命は憲法に掲げられた理想を実現することでありまして、全国の教師は、今日もなお、ひたむきにその努力を続けております。しかるに、今日まで政府は次第になしくずしに憲法を歪曲して、学校では持ってはならないと教えてきた軍隊や、軍艦、戦闘機等を持ってしまっているのでございます。その上、政府は、一貫して憲法に忠実であった教育を、政府の意図する方向に偏向させるために、教育委員を任命制にして、教育行政の支配体制を確立し、その支配を一人一人の教師に及ぼすため、勤務評定、管理職手当等、一連の政策を文字通り強行して参ったのでございます。同時に、教育内容についても同じ意図のもとに改正が行われまして、昨日でございましたか、新しく作られた学習指導要領によりますと、小学校の一年生に全く意味の理解できない「君が代」を教えることを強制している反面、最高学年である小学校の六年生では「憲法を教えるに当っては、その解説に深入りしてはならない」と、ことさらに強い注意を与えているのであります。中学におきましても、わが国憲法の特性として平和主義はあげてありますが、戦争放棄には一言も触れていないのでございます。従前は、いわゆる力の平和との混同を避けるために、戦争放棄こそが日本憲法の特性であるとして、戦争の罪悪と、他国に先んじて戦争を放棄したわが国の誇りを強調して、文部省もまた、そのような指導のためにわざわざ児童生徒向きの準教科書まで出版したのでございます。その戦争放棄が今回は姿を消しているのであります。このような意図を持った教科課程や勤務評定が、警察力を使ってまで強行されようとしているのが、今日の教育の現状でございます。法の定めるところによって憲法を守ることを宣誓している警官が、憲法を歪曲している政府の命令によって、憲法を正しく守ろうとしている教師に襲いかかるおそろしい矛盾が起っているのでございます。教育における一切の混乱がここに端を発していることは動かすべからざる事実であります。岸総理にお尋ねいたしたいことは、今後といえども、今まで通り、正しく憲法を守る教育、ロバートソン国務次官補の言葉をかりれば、「いかなることがあっても銃をとらない教育」、これが続けられるのかどうか、明確な御答弁を伺いたいのでございます。
 次に、教育を権力によって支配することは、いずれの政党が政権にある場合も断じて許されないところでありますが、政党内閣はともすればこのあやまちを犯しやすいものでありまして、このことは、憲法を歪曲し、教育基本法を無視して、みずからこそ偏向を犯している政府が、憲法を守ろうとする教職員を一方的に偏向ときめつけた、昨日、一昨日の総理及び文相の本院における発言からも、その感を深くするものであります。将来にわたって、教育を権力の介入から守るため、教育委員の公選制を復活し、教育行政に直接国民が関与する機会を与えるべきであると考えるのでありますが、総理の御意見を伺いたいのでございます。
 次に、社会保障についてお尋ねいたします。
 今回厚生省案として発表された国民年金制度の案は、わが党の案はもとより、社会保障制度審議会の答申に比べましてもなお後退したものであります。この制度の中心になる醵出制の老齢年金は、審議会の答申では、醵出額月平均七十五円、給付は年四万二千円となっているのに対し、厚生省案は、醵出は月百円、百五十円と二倍近くなっているにもかかわらず、給付は年四万二千円と変りがないのでございます。国庫負担が三分の一になっていることも少きに失すると思うのでございますが、なおその上に、この国庫負担の財源として、大蔵大臣は、大衆の負担を増大する売上税をその目的税として考慮していると伝えられているのでございますが、もしそのようなことになりますと、もはや社会保障の性格は薄れて、民間の養老保険に近いものになってしまうおそれがあるのでございます。社会保障は本来所得の二次配分でございますから、それにふさわしい醵出制と財源措置によって、国庫負担は少くとも二分の一以上にすべきものであると考えます。今回の案は、弱い農漁民、中小企業者に最大の負担をさせて、しかも給付は四十年後にやっと月三千五百円では、国民にとって魅力もなく、その期待を裏切るものでありまして、社会保障の本旨にも、もとると思うのでありますが、厚生大臣並びに大蔵大臣の御所見をあわせてお伺いいたしたいのでございます。なお大蔵大臣はこの際、売上税の問題についても御説明を願いたいと思うのでございます。
 次に国民皆保険についてでありますが、政府のいう国民皆保険は現行国民健康保険を単に拡大するというだけでありまして、今日までに政府が誠意を持って、事務費、国庫負担等を法律に忠実に実施しておれば、すでに完了しているはずのものでございます。極端な言い方をすれば、今回のやり方は過去のしりぬぐいにすぎないのでございます。現行国民健康保険は御承知の通り半額給付でございますから、貧困者の中には、残りの半額を自己負担ができないために、これを十分に利用できない者が相当数に上っているのでございます。貧富によって生命に軽重がつけられるような制度は真の皆保険とは言いがたいのでありまして、財政上の制約から、段階は踏むにいたしましても、国民皆保険の計画は、当然われわれが発表しているごとく、全国民、全額給付の年次計画でなければならないと思うのでございますが、政府の基本的なお考えをお伺いいたしたいのでございます。
 次に保育所についてお尋ねいたします。七月から保育所の措置基準が改正されたため、保育料の負担にたえられなくなって退園する子供が全国にわたって続出し、岸首相の山口県におきましても、最近の二ヵ月で四百名の退園者を出しているのでございます。このままでは全国の保育所が重大な危機に直面するばかりでなく、退園した子供の中には、保育に欠けたため、溺死したり、交通事故で重傷を受けたりした、人道上も看過できない事例さえ発生しているのでございます。今回の改正は、このような事実から、すみやかに再検討をすべきであると考えるのでありますが、厚生大臣はいかにお考えになっていられますか。さらに、これに対する対策は、どういう対策をお持ちになっているか、伺いたいのであります。
 次に、社会問題として、この際、部落解放の問題をお伺いいたします。岸総理は、かつて、「部落の完全解放は政府の責任である。そのため、内閣に、かつてあったような審議会を置くことを考慮する」と、私にも、また衆議院でも言明されたのでございます。今や、国内においては、この問題に対する関心が高まっております。解決の絶好の機会だと思うのでございますが、審議会の設置は、いつごろ、どのような構想で発足させられるのか、総理から承わりたいのであります。
 最後に私は、岸総理がかねがね公約しておられる三悪の追放についてお伺いいたしたいのでございます。総理が三悪追放を公約されて以来、すでに二ヵ年近くを経過したのでございますが、果してその成果はどのようになっておるのでございましょうか。汚職につきましては、最も忌まわしい売春汚職を初め、政界、官界から警察官にまで及んでおりますし、さらに、最近はまた、昨日千葉議員から御指摘がありましたように、戦闘機の問題で、全国民の新たな疑惑を招いているのでございます。貧乏については、不況のしわ寄せから、今日では、岸内閣成立以来の最悪の状態になっているのでございます。本来、貧乏は、本人の悪というより、むしろ政治の悪でありまして、この点では、その責任は岸総理自身にあると言っても過言ではないのであります。不況による貧乏の激増に対して、生活保護を拡大することもなく、積極的に不況対策、失業対策を講ずることもなく、ただ成り行きにまかせておいたのでは、貧乏はますますふえるばかりであります。
 この際、私が特に申し上げたいのは、最後の暴力についてであります。街の暴力は依然として横行しておりますが、その上さらに、岸内閣になって、新しく警察の暴力が登場してきたのであります。労働大臣は、労働運動を警察力で弾圧し、文部大臣は、教師や学生に警察力を差し向け、農林大臣は、工場汚水で仕事を失って工場に抗議している漁民に警察力を行使し、さらには、暴挙にひとしいようなやり方に憤って集まってきた養蚕農民や、米価の陳情ではるばる集まった農民を、警察の力で脅かす等々、今や、これら警察による暴力は、世論のきびしい批判を受けるに至ったのであります。このような政治が、ついに、本来手を携えて同じ道を進まなければならないはずの労働大臣と労働者が相敵視し、文部大臣は教師と争い、農林大臣は農漁民と衝突し、厚生大臣が医師と対立するというような、常識では考えられない不幸な事態を惹起しているのでございます。このような状態で、どうして国民のための明るい民主政治ができるでしょうか。暴力追放を願う岸内閣によって新しい暴力が生まれ、追放されるべきはずの三悪がますます国全体のひずみを大きくしつつある現実を、心から憂えるものであります。岸総理は、いかにして三悪追放の悲願ともいうべき大公約を果さんとされるのか。総理の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終る次第でございます。
#5
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一に、経済の見通しについて、不況と言わないが、不況ではないか、不況に対して特別の対策をすべきではないかという御議論であります。私は、現在のこの経済全般の状況が、われわれが長期計画を定めて、その線に沿うて経済の拡大をしてゆく、長期にわたってやるという計画を立てておりますが、その計画通りに行っておらないことは事実でございます。それは、根本において私どもはくずれたとは考えておりません。長い経済計画におきまして、昨年までは、われわれが計画する以上に、過度に伸びております。従って、その反動として、今日それの事態を調整し、将来長きにわたって安定した基礎において経済を拡大するための調整過程における経済活動の沈滞と、こう見ているのが私どもの考えでございます。しこうして、これに対して、今日、おあげになりましたような、あるいは、たな上げ資金をくずして内需を刺激するような不況対策を講ずべきではないかという御議論でありますが、私どもは、この経済の調整過程において、いろいろな対策は別に考えなければなりませんけれども、これをやはり十分にやるということが、将来の日本経済の長期にわたる安定した基礎における拡大上必要である。今、あまい考えでもってこれの対策をやるならば、せっかくわれわれが調整過程で苦心し、経済の基盤を強化するということがこわされるのであって、それはとるべきものにあらずというのが私どもの見解でございます。
 ただ、これに関連をいたしまして、雇用の問題をおあげになりましたが、私どもも、雇用の問題ということはきわめて重大な問題であり、われわれが長期経済計画を立てておりますゆえんのものも、年々増してゆくところの労働人口を吸収して、五年後においては、現在よりも、最初の計画発足当時よりも、約五百万の人々を雇用するということを目標としてあの計画の立てられておることも、御承知の通りであります。その途上において、その計画通りに参りますというと、特別の失業対策として考えなくても、大体の基礎で考えていいのでありますが、昨年来のこの状況にかんがみまして、失業がふえるという傾向を考え、これに対する失業対策費をふやすとか、あるいはそのための公共事業費をふやして、就職の機会を多くするとか、あるいはまた、失業保険を受ける人の予想を拡大して予算的措置を講ずるというようなことは、御承知の通り三十三年度でやっております。さらに、私どもは、その公共事業の繰り上げ施行等によりまして、できるだけこの失業をこれによって救うという形においてのことをやっているわけであります。しこうして、今お話がありましたが、労働問題というものを産業の立場から考えるとか、あるいは権力で弾圧するとか、そうじゃなくして、これが真に労働者の生活が向上され、福祉が増進され、労働条件が改善されていくことが、労働運動の目的でなければならない。――お話の通りであります。ただ問題は、それを実現する手段としては、あくまでも私は民主主義的な方法でいくことでなければならぬ、これを組織的集団の暴力や、あるいは行き過ぎた方法によって実現しようとするところに、いろいろな問題が起ると思うのであります。そこで、ただいま学校を出る人の就業の問題や失業の根本対策のお話がありましたが、私はやはりこれは決して産業中心の労働問題というわけではなくて、産業経済の活動を拡大するということでなければ、雇用の機会がふえないわけでありますから、われわれが長期経済計画を立てて、そうして安定した基礎において経済を拡大していく。これが私は、将来のこの労働の機会を多くし、就業の機会を多くし、これによって雇用問題を解決する根本はそこにあると思う。決して、ただ労働者の福祉を増すからという意味で、この雇用問題のなにはできないと思う。労働問題の中心が福祉を増進することにあることは、これは私も全然同感でありますけれども、雇用を多くしていくということについては、どうしても経済を拡大していく、それには長期計画の線によって安定していくということであります。
 教育の問題に関して、憲法を守る教育をずっと続けていく考えであるかどうか。これはもちろん、国の根本法であります、私は憲法のみならず、あらゆる民主的に成立したところの法律を守るということが民主政治の基本でありますから、そういう基礎のもとにやっていかなければならぬと思います。教育委員会の公選制の復活の意思があるかどうかということでありますが、私はこの教育委員会というものの重要なる地位にかんがみて、これの中立性ということを確保することが最も必要である。しこうして、公選制よりも、今の首長が議会の承認を得て任命するということの方がよりいいという考えに立っております。従って公選制復活の意思は持っておりません。
 次に、部落解放問題についての御質問であります。私は今日において、われわれ国民の間に差別感が存在するというようなことは許されないことであり、これをなくするということは、言うまでもなく最も必要なことであり、その意味において部落解放問題というものを非常に重要に考えております。ただ御承知の通り、この問題はきわめて複雑であり、また、地方々々によりますところの住民の感じゃ、いろいろな点も違っております。これに関係しておる団体等もいろいろあるようでありまして、これの取り上げ方及び進め方というものに対しては、慎重に考慮して十分な配慮をしないというと、かえって結果が悪くなるおそれもございますので、慎重に今考究をいたして参りたい、かように思っております。審議会につきましても、そういう意味において、私は実はいろいろの面から検討をいたしております。
 次に災害問題について、補正予算を出すという、直感でそのくらいのことはわかりそうだというお話でございます。私は、言うまでもないことでありますが、補正予算を総理が直感で出すとか、大蔵大臣が直感で出すという性質のものではありませんで、私は、まず事情を明らかにし、対策を立てて、必要があれば補正予算を出すことはちゅうちょしないということを申し上げて、今調査中でございますから、決してこれを拒むものでもありませんが、御承知の通り最も緊急なものその他のことにつきまして、あるいは金融の面において、あるいは税金を免除するというような方法によって、あるいは予備金の支出によりまして、緊急のことはやっておりますけれども、さらに根本的なものについては、必要があれば補正予算をなにするということは考えております。
 それから最後に、三悪追放の問題に関して私の所信をおただしになりました。実は私は、この問題は、私が政治家として責任を持つ限りにおいて、社会からこの三悪をなくしたいということは、私の衷心からの強い念願でございます。しかるに、これがなかなかなくならないじゃないかというお話でございます。私も決して、私が就任以来これがなくなったということは申し上げているわけじゃございませんが、いずれも、どの悪も簡単な悪でございませんで、あるいは歴代の総理なり、あるいは政治家が、これを追放しなければならぬということについて、だれもが考えたことであると思います。また、そういう努力が過去においても払われております。しかし、私は、民主政治を完成する意味からいったら、どんな困難があろうとも、また、長きにわたっても、絶えざる努力をして、社会からこの三悪をなくしていかなければならない、かように考えております。
 その点に関しまして、貧乏の問題については、お話の通り、不況がさらに国民の一部の生活を苦しくしているという事情につきましても、私どもは今言ったように、あるいは失業対策の問題なり、あるいは失業保険の問題なり、あるいは公共事業の繰り上げ等によりまして、努力はいたしておりますが、さらに根本的に言えば、私はやはり社会保障制度を確立することにあると思うのです。従って、国民皆保険のことを三十五年度に完成するという従来の方針を貫いていくことと、これをりっぱに完成するように努力を続けることと、それからさらに国民年金の問題については、三十四年度からこれを実施する意味において、鋭意立案を急いでおるのであります。これができれば、すべて貧乏がなくなるという簡単な問題ではもちろんございませんが、これは貧乏追放上、財政上その他いろいろな困難もございますけれども、必ずやり遂げて参りたいと、かように思っております。
 暴力の追放の問題に関しましては、お話の通り、街の暴力も、あるいは最近いわゆる集団的暴力と称せられるものも行われておりまして、これに対して、社会を平和な、明るい、また民主的な社会として確保していくためには、私たちはあらゆる面から努力をいたしたいと思います。ただ、現われた事件に対して、現われた事件――それは現実に国民の他の人々の自由や権利を侵したり、あるいはさらに、社会の秩序を乱し、あるいは法を破るというような事態に関しましては、これは当然私は警察力でもって取り締って、そういうことをなくするということをやらなければならぬと思います。決してこれをもって警察の暴力ということは、私は適当でないと思います。ただ、警察権の行使の途上において行き過ぎがあるかどうかというような問題に関しましては、十分に事情を調査し、行き過ぎのないように、また行き過ぎた者に対しては将来を戒める意味において適当な措置をとることは、これは当然であります。しかし、根本的にそういう、法を、秩序を乱すところの集団的な暴力等に対して、警察権が出動することをもって警察官の暴力と言うことは、私はどうしても間違いであると、かように思っております。
 なお、汚職の問題につきましては、売春汚職等の問題に関しましては、現に裁判所で審理されているところでありまして、私はこの追放の途上において、あるいは過去におけるところのそういうものが現われてくる事態はあると思います。しかし、それをおおい隠すことなく、やはり将来を戒める意味において、そういう事態があれば、これに対して検挙その他の方法によって粛正することは当然であると思っております。
 また、戦闘機問題について汚職の疑いがあるというようなお話がございましたが、この点は昨日も申し上げましたように、私は絶対にそれがないということは明言をいたしておりますとともに、また、委員会その他における御審議を何か党その他において押えつけているというふうな御議論もありましたけれども、絶対にそういうことは私ども考えておりません。疑惑があるならば、十分にそれは、あらゆる面において御審議なり御調査になることは当然である。しかし、絶対にそういう事態がこの問題についてからまってはいないということを、私は責任を持って明言いたしておきます。
#6
○国務大臣(三木武夫君) 経済の大局については総理が御答弁をされた通りでありますが、共産主義的な権力統制の経済をやらない限りは、多少景気の変動のあることは避けがたいことであります。そういう意味において、長期経済計画にも修正を加えるということはあり得ることでありまして、今年度の経済に対しても多少の修正を加えたわけであります。たとえば経済成長率を三%というのを一・八%ということに修正を加えた。けれども昨年度は、今、総理のお話にもありましたように、一・八%くらい行き過ぎがあって、これを二年間という年限を限ってみれば、三%という経済成長率というものはアジャストされるような結果になる。これくらいの調整は長期経済計画に認めざるを得ない、こう考えておるのであります。また、下期の経済の見通しが甘いではないかというお話でありますが、御承知のように、経済の一つのモーティブ・フォースなるものは国民の消費であります。この国民の消費については、これは国民の消費が非常に堅調であることは統計の示すところであります。これが下期には、やはり国民の消費は、季節性として例年七・五%くらい消費が上るのは、これは今日までのいろいろな消費水準の示すところであります。その上、上期は三%程度消費の伸びがあったのでありますけれども、下期にはその半分の一・五%程度を考えて、消費の九%の伸びということを下期の経済の見通しの中に入れたわけであります。また、輸出については、これは多少輸出価格の値上りも見込み、あるいはまた季節性もございます。あるいは輸出の振興の努力も加えて、七%程度の輸出の下期増というものを見込んだのであります。こういうふうな一番大きな問題である国民の消費あるいは輸出、また財政の面においては、今年度においても財政の購買力は千二百億円程度はふえるわけであります。これが下期に財政の支出が例年とも多いし、また、公共事業の繰り上げなどもやっておりますから、やはり財政の購買力も下期にはふえる、こういうことで、設備投資の問題、これは多少上期に比べて低くなると思いますが、しかし一方においては、在庫調整の済んだような部分に対しては、やはりこれは在庫の面においてもプラスの要因、たとえば生産がふえれば仕掛品の在庫などはふえるし、あるいは流通部門における在庫も多少ふえる、こういうものを勘案いたしますと、全体としての総需要というものは下期に一〇%程度はふえる。それで、そうなってくると、一つの需要、購売力というものがこれだけあるとすれば、生産というものは約七%程度ふえるのではないか、こういう見通しをしたのであります。ただ、経済には心理的な要素も加わりますから、われわれの発表した数字がそのまま的確だとは言えないけれども、この日本の経済が下期に向って絶対的な縮小均衡にはいかない、これだけの購買力を持っているから、やはり上向きの経済である、これ以上、なべ底景気といわれるものが落ち込んで二重底になることはない、こういうことが私どもの経済に対する下期の見通しであって、この基本的な考え方というものは誤まっていない。こう考えている次第であります。
#7
○国務大臣(高碕達之助君) 中小企業対策につきましての御質問にお答えいたします。
 昨年、緊急経済政策をとりましたけれども、一般の金融が梗塞いたしました結果、まず第一に、これが中小工業に及ぼしたことは事実であります。それがために本年、政府におきましては、中小工業の金融を緩和するために、政府機関への資金を充実いたしますとともに、中小企業の信用保持につきまして十分努力いたしました結果、中小工業の金融は、ある程度緩和されてきているわけであります。また同時に、中小企業団体法の成立によりまして、あの独禁法によって絞められておった中小工業、これを解放しつつあったわけでありますが、同時に、今回国民全体の経済の安定と国際競争力を強化するために、独禁法を改正せんとするのであります。これは、その結果によって物価が安定し、経済が安定いたしますから、大工業だけでなくて、これによって均霑されるのは中小工業も同様であります。もしそれが行き過ぎがあったということになれば、もちろんこれは、その合理化カルテルとか、あるいは不況カルテルというものは、この認可を取り消すということの力を公正取引委員会は持っているわけでありますから、その御心配はないと思います。
 貿易の金額につきまして、三十一億五千万ドルの達成をしたいという目標に努力したのでありますが、それが今日二十八億ドルに減ったということは、約一割一分ばかりの減であります。しかし景気、不景気に最も関係あるものは、物そのものが輸出できるかどうかということであります。御承知のごとく物価は七ないし一〇%減っております。数量におきましては、そんなに大きな変化はないのであります。ただ、この下半期におきましては、上半期の計画から検討いたしまして、先ほど三木企画庁長官が述べましたごとく、七%の増加をいたしていきたいという考えであります。
#8
○国務大臣(三浦一雄君) 湯山君のお尋ねに対しましてお答えを申し上げます。
 農山漁村の経済事情を検討せられまして、そしてその傾向として、過剰生産の傾向である、加うるに災害の頻発に伴って農山漁村は深刻な不況の態勢にある、こういう御認識でございましたが、私たちは必ずしもそう考えておりません。と申しまするのは、皆様すでに御承知の通り、米麦その他主要農産物につきましては価格支持制度を持っており、これによりまして農家収入の七割は、おおむねささえられておりますことは、経済白書によってすでに公表した通りであります。かつ現状におきましては、本年の豊作気がまえによりまして、若干、農村における消費水準の高まっているということを見のがすことはできないのであります。しかしながら、私たちは日本の農業政策を、長期的観点におきまして、これの生産力を高め、そして国民経済の一環として保持して参りませんければなりませんから、土地改良等の農業生産の基礎的条件を増強整備するということ、さらにまた、農業経済の改善をはかるということと同時に、また今申し上げました主要農産物の価格支持制度等は、いわゆる農政のバック・ボーンをなすものでございますので、これをいろいろ総合いたしまして、その適切なる措置をあやまたざらんことを期するに努めていきたいと考えております。しかしながら、まだ価格支持制度等につきましても、全部に及ぶわけじゃございませんので、御指摘になりました酪農の問題、繭等につきまして問題を生じて参ったのでございまして、すなわち牛乳の問題につきましては、余剰在庫のたな上げをいたしますこと、それから学校給食、集団消費の増大等に力を尽しまして消費の拡大をはかりたい。そうして需給の調整をはかって参ることにいたしまして、すでに所要の経費として予備金約九億を支出いたしまして、目下実行中でございます。これによりまして、需給の調整をはかりつつ合理的な解決に導きたいと考えております。次に、繭でございますが、春繭に対しまする対策につきましては、皆様御承知の通りでございます。従いまして、秋繭に対しましては、養蚕家方面には熾烈な要望もありますので、自主乾繭保管の措置につきましては、資金の供給と若干の政府の助成をいたしまして、繭の対策と同時に、また糸価安定の方策に進みたい考えでございます。今後の見通しにつきましては、生糸は、世界消費の事情も見、同時にまた国内における各般の情勢等も勘案いたしまして、恒久的な安定した対策を講じて参りたいと思う次第でございます。
 次に、木炭の対策でございますが、一時値下りいたしまして関係業者の困難した事情にかんがみまして、まず一般の業者と競争的に立ちます国の官行製炭等につきましては、これは雇用の関係もありますので、中止はいたしませんけれども、これは販売の売りどめをすでにいたしております。同時にまた、国の原木をも供給する面におきましては、低廉な、地元の事情に応じ得るような措置をすでに講じております。この面におきましては、皆様すでに御承知の通り、共同組織の欠除しておる面が非常に多いのでございますから、今後の対策といたしましては、共同組織の強化、これに伴いまして、資金の供給等をはかるほか、指導の適切を期したい。来年度の予算等につきましても、計画しておるような事情であります。
 次に、災害対策でございますが、干害等につきましては、すでに御承知の通り、井ぜきの掘さくであるとか給水設備につきましては、予備金支出によって助成の道を講じて、おおむねその成果をあげて参っております。同時に、天災融資法の発動によりまして、資金の供給をもいたしておるわけでありますが、今次二十二号台風等におきますところの農業災害は、農産物の被害、農業施設等の被害、さらにまた林野その他の被害におきましても、相当に甚大な損害を受けておりまして、現状では、概算でございますけれども、約六十七億程度の損害を見積られておるのでございますが、今、総動員いたしましてこの精査をいたしておる段階でございます。従いまして、これが出て参りまする場合には、これに応じたる措置を講ずること、先ほど総理大臣のお話の通りでございます。
 最後に、一言申し上げたいことは、私は、農民の人々にあたたかい政治をやりたいというのが念願でございまして、いやしくもこれらの人々に対しまして警察力を行使して弾圧するがごときことは絶対にいたしておりません。この点、御了承を得たいと思います。
#9
○国務大臣(倉石忠雄君) 雇用問題についての湯山さんの御意見の中には、きわめて傾聴すべきものがあると存じます。御承知のように、政府も、いわゆる新長期経済計画を立案いたしますに当りましては、まず第一に雇用の拡大ということを目標にしての経済政策を立案いたしておることは、御承知の通りでございます。それから、来年三月の新卒業生のことにつきましても、私は実際心配いたしておりますのは、中学校、高等学校、大学を通じまして、明年は本年に比べて約十六万人の増加を見る予定でございます。従って、上級学校に入る者も昨年よりふえるようでありますが、就職希望者も相当数増加するものであると考えておりますから、ことに現下の雇用情勢から見まして、これらの新卒業生の就職は必ずしも楽観を許さない状況にあるのでありまして、政府といたしましては、特別求人開拓の強化、あるいは御承知の集団求人方式等の推進、あるいはまた学校と事業主との協力体制を作りまして、私どもが中心になりまして、公共職業安定機関の全機能をあげて遺憾なきを期したいと存じております。
 それから、ILO八十七号条約につきまして、この際、私どもの考えを明白にしておきたいと存じますが、政府といたしましては、従来ともにILO条約の精神は十分に尊重いたしておるのでありまして、今後ともILOに協力していく建前でございます。しかしながら、国内にあります労働運動の実情を見まするというと、ILO八十七号条約に関連のありますいわゆる公労法四条三項の関係から、全逓労組は、本年春闘において、公労法の禁止いたしておる争議行為を行い、そのため組合幹部が解雇されたにもかかわらず、公労法四条三項に違反して引き続いてその地位にとどまり、さらにまた、七月の全逓の大会においては、このような幹部を再び選出して、その後も法律違反の状態を続けておる次第であります。しかも、全逓労組があえて、結社の自由及び団結権の擁護に関するILO八十七号条約を批准することによって、このような公労法違反の既成事実を正当化しようとするような態度をとっておりますことは、法治国家としてとうてい容認し得ないばかりでなく、組合運動の健全な発達のためにも私どもはとらないところであります。政府としては、全逓労組が現在の違法状態を解消して労使関係を正常化するように、良識ある措置をとられることを切望いたしておりますが、現在の違法状態を条約の批准によって正当化しようとするような態度が変らない限り、結社の自由及び団結権の擁護に関するILO第八十七号条約の批准についての政府の態度について云々すべき段階ではないと、私は考えております。
 それから、最低賃金制のことについてお尋ねがございました。最低賃金のことにつきましては、結論を申し上げますと、私どもは政府の提案いたしておるものが現在の段階においてはきわめて妥当なものであると存じまするので、それの通過に一つ御協力をお願いいたしたいと存じます。
 それから、政府の労働政策は治安警察的な政策に逆戻りしておるのではないかというふうなお話がございました。この際、私どもの考え方を申しますならば、先ほど総理大臣も申し上げましたように、労働省の考え方は、湯山さんもすでに御存じのように、日本の多くの労働者――組織されておるといなとにかかわらず、大産業部門の労働者は、比較的恵まれた環境に置かれておりますけれども、いわゆる六、七割を占めておる中小企業、ことに零細企業の労働者というものは、まだまだ日の当らない立場にあります。こういう人々に対して、あるいは週休制を推奨していったり、その週休制による余暇の利用に政府もお手伝いをしてあげるとか、あるいはまた退職共済制度というふうなものを設けて、そうして、そういう中小企業、零細企業に働かれる労働者の将来に明るい楽しみを持って働いていただけるようにと、そういうような考え方でサービスをいたして参ると、こういうものが基本的な考え方でございます。ただしかし、しばしば総理大臣からも申し上げておりますように、そういうふうにやって参りますためには、何としても産業の平和が大切であります。でありますからして、故意にそういう産業平和を阻害するような行為は、労働運動といえども、私どもは慎しんでいただかなければならぬし、最近また、労働運動の名を借りて違法な行為が行われるようになってきておる。そういうことを放置いたしておくということは、政府に与えられました国民に対する義務を履行せざるものである、そういうことは、政府としてはそういう怠慢なことをしているわけにはいきませんので、そこで厳正な取締りをする、こういうことであります。
 最後に、何か王子製紙の問題について私の申しましたことに誤解があったようでありますが、簡単に申し上げます。新聞記者会見のあとで雑談が行われましたときに、ある人が、王子製紙はどうにもなりませんなあ、という話でありましたから、ホスゲンでもまきますか、という冗談が出て、私の申しました趣旨はこういうことであります。つまり、私のつもりでは、皮肉な逆説的かいぎゃくを申した。皆さんも御承知のように、たとえば社会主義独裁国家においては、自己の信条と反したものは粛清と称して抹殺されております。その例は、たとえば中共においても、あるいはソビエト・ロシヤにおいても、近くはまたハンガリーのナジという前総理大臣は革命政府に反対をしたということで抹殺されてしまっている。御承知のように総評の幹事会においても、世界各国の労働組合では、イムレ・ナジの抹殺について、それぞれ御意見を述べられました。日本の総評でもそういうことをやろうということで御相談になりましたけれども、ある者はナジのごとき者を抹殺することは非民主的であると主張され、ある者は反社会主義者は抹殺するのが当然だというふうなことで、結局、結論が出ずに、総評の御意見を述べることができなかったのは御承知の通りであります。私どもはそういうことはやりませんよと、反対者といえどもそんな抹殺なんていうことはやりませんよ、という意味を含めた、かいぎゃくを申したのでありますが、それを相手方に私の言い方が下手で通じなかった、こういうことであります。
 もう一つ最後に、労働大臣という立場は労働者の福利増進のめんどうを見るのが当りまえであるのに、どうも敵視されているようなことだというお話でございましたが、それは何かの誤解だと思います。私の信ずるところによれば、まじめな労働者諸君は決して私を敵視しておりません。もし私を敵視しておる者がありとすれば、まじめな労働者の利益を無視して、偏向した政治目的のために労働者を利用しようとする者だけがあるいは敵意を持つかもしれません。
#10
○国務大臣(灘尾弘吉君) 明年度の新卒業生に対する就職の問題でございますが、きわめて大切な問題でございまするし、湯山君と同じように私も心配をいたしておるわけでございます。これにつきましては、ただいま労働大臣からもお答えがございましたが、文部省といたしましては、絶えず就職の進展状況を的確に把握いたしまして、大学を通じて学生の就職指導の徹底をはかりますとともに、労働省とよく協力いたしまして、求人開拓、情報提供の強化に努力いたしておるわけでございます。しかしながら、今後の雇用情勢は、ただいまも労働大臣も申されましたごとく、必ずしも楽観を許さないものがあると考えますので、九月の初旬に日本経営者団体連盟代表者とも十分懇談をいたしまして、特に新規卒業生の受け入れについて、心から要請を行いましたような次第であります。今後一そう重要な中小企業方面の求人開拓につきましても、関係組織を通じまして、その強化をはかるつもりでおります。
 なお、中学及び高等学校におきましては、職業指導として、生徒の個性調査、職業情報の提供、連絡相談等を実施し、生徒が自主的に職業を選択し、また職業生活によく適応できる能力を育成するように努めておるのでございます。また個々の生徒の就職につきましては、職業安定法に基きまして当該学校において十分努力しておりますが、文部省といたしましても、関係機関と連絡の上、採用、選考等について遺憾のないように督励をいたしておる次第でございます。
 なお、先ほどの総理大臣のお答えにつきまして、一言補足いたしておきたいと思うのでございますが、お話にも出ましたように、新しい学習指導要領を決定いたしまして、これを公けにいたしました次第であります。七月の末に発表いたしました案につきまして、各方面からいろいろ御注意なり御意見等もございましたので、さような点につきましては、謙虚に反省をいたしまして、改むべき点につきましてはある程度改めたつもりでおるわけでございますので、よく御検討をいただきたいと思うのでございます。もちろん憲法並びに教育基本法の精神をよりよく生かしたい、日本の現在及び将来にわたりまして、よりよい教育をいたしたいという心持のもとに作っておりますので、さよう御了承いただきたいと思うのでございます。
#11
○国務大臣(橋本龍伍君) 湯山さんの御質問にお答えをいたします。
 国民年金の制度が単なる任意保険的性格のものでなくて、社会保障制度としての性格を強く持つべきものでありますことは仰せの通りでございまして、従いまして、目下作業中の案におきましても、十分この点を考えて参るつもりでございます。現在すでに老齢に達しております人たちに対しましては、無醵出の年金を給付いたしますので、制度の発足のときに十割の国庫負担でございますが、現在検討いたしております案で十五年ぐらい先を見ましても、中間におきます全額年金の国庫負担でありますとか、そういうものを総合いたしまして、大体それくらいの年次におきます給付金額の約七割が国庫負担に相なるかと考えておるのであります。で、将来の問題につきましても、醵出制を原則とするという建前にいたしておりますけれども、その場合にも醵出金に対しまして相当大幅な割合の国庫負担を行うことにいたしておりまするし、また保険料の負担能力のない者につきましては、無醵出制をずっと併用をいたしまして、社会保障としての性格を強くするように、今後も案の成立過程において十分配慮いたす所存でございます。
 次に、国民皆保険の問題について、内容の改善をもっと骨を折り、全額給付を目標とすべきではないかという御意見でございます。私どもも、国民健康保険の給付内容の改善、その一番大きなものといたしましての給付率の引き上げというものは、今後とも十分考えて参るつもりでございます。ただ、当面の問題といたしましては、何と申しましても、今日なおいかなる社会保険の恩恵にも浴しておらない人々が相当ございますので、それに対しまして、国民健康保険の制度を全面的に施行いたしますることに今日精力をあげまして、中間の段階でできるだけ内容の改善をはかりたいと思いまして、今回の国民健康保険法の改正におきましても、将来の目標に対しての改善はある程度心がけて提案をいたしておる次第でございます。で、全額給付という問題につきましては、被保険者としても相当負担が無理になって参りますし、また健康保険と被用者保険の家族給付が五割になっておるということのつり合いもございますので、健康保険等との内容改善の問題も含めまして検討いたして参りたいと考えておるのでございます。ただ給付内容の改善、給付率の引き上げは心がけて参りたいと思いますが、全額給付までにいくかどうかということについては、なお一部負担の利害得失等につきまして、いろいろ検討いたして参りたいと考えております。
 それから保育所の措置費の問題でございますが、これは春以来、いろいろ問題がございまして、われわれも十分実情を把握いたさなければならぬと考えまして、先月も実は全国の児童課長を集めまして、事情を詳細に聴取しながら検討いたしておる次第でございます。七月に新基準を出しました趣旨はどういうところにございますかと申しますと、この保育所は近年非常に急激にふえて参りまして、十年ばかり先に千七百ほどありましたのが、今一万近くになり、入所児童もそのころ十五、六万でありましたものが六十万をこえておるのでございます。で、こうした急激な伸び方をいたして参りましたので、保育の単価だとか、保育料の徴収基準等が非常にばらばらになっておりまして、あれだけの国庫補助、十分の八までの国庫補助をいたしまするこの対象といたしましては、あまりにもこの保護者の負担なり施設の運営等の面に公平でない面がございまするので、各方面の意見もございまして、これに慎重な検討を加えて、本年の七月一日から制度の改正を行いました次第でございます。趣旨はあくまでも、ここまでとにかく、とりあえず雑多な格好で伸びて参りましたものを、今後さらにこれを一万にし、二万にし、また、措置児童もふやして参りますためには、これはもう少し基準をはっきりしなければならないという趣旨でございまして、ただ、でこぼこでありますのを、中間に基準を設けましたので、その上にありまする人々がまことに困られて御迷惑をかけたのは確かでございます。その後の実情に顧みまして、予算の追加をいたして、当面、ことしはこれでやっておるわけであります。将来の問題といたしましては、やはり七月一日に改正をいたしまするのが、保育の単価なり保育料徴収の基準というものを公平にして、将来の発展を期したいという観点でいたしましたので、この改正の基本というものは生かして参りたいと思います。ただ検討いたしました結果、保育料の基準額の一部をやはり緩和した方がいいと思われる部分がございまするし、それから保育の単価の増額についても考えて参らなければなりませんので、これは来年度予算とも関連をいたしまして、この改善をはかるために、目下努力をいたしておる次第でございます。
#12
○国務大臣(佐藤榮作君) 経済の現状並びに将来についての見通し等は、すでに総理大臣や企画庁長官からお答えをいたしましたので、省略をさしていただきます。
 二十二号台風対策につきましては、政府といたしましても、できるだけすみやかに所要の措置を講じたいと、かように考えておりまして、ただいま実情の調査を急いでおります。現地に本部を設けましたのも、そういう点からでございます。必要のある処置は、大蔵大臣としてもとることを、この機会に申し上げておきます。
 次に、国民年金制度の創設についての財源確保についてのお尋ねでございました。ただいま厚生大臣から、るる詳細なお答えをいたしましたが、湯山さんの御質問の趣旨を伺っておりますと、できるだけ低い醵出金で、できるだけ高い給付をもらうし、国庫の負担をふやすようにと、こういうように伺ったのでございますが、もちろんこの年金制度を今回創設するに当りましては、公約実施という観点に立ちまして、私どもも鋭意その具体化をはかっておる次第でございますが、他の社会保障との均衡、これも考えなければなりませんし、財政の負担力等をも考えていかなければならないのでございます。年金制度そのものは、やはり各人が老後のためあるいはその他の事故のために、いわゆる能力のあるうちに備えをするということが基本でなければならないと、かように考えておるのでございます。厚生年金その他の公的年金制度並びに他の社会保障制度との関連をも考えまして、適正でかつ実現可能な国庫負担を行うという方向で考えていきたいと、ただいま検討中でございます。この財源確保に当りまして、政府は売上税を創設することを考えているのではないか、こういうことでございましたが、ただいまのところ、さような考えは持っておりません。
    ―――――――――――――
#13
○議長(松野鶴平君) 野坂参三君。
#14
○野坂参三君 私は日本共産党を代表して、総理大臣及び外務大臣に、ごく短時間でありますけれども、質問申したいと思います。
 御存じのように、台湾海峡の事態はますます緊迫して参りました。一昨日、アメリカ軍に指揮される蒋介石の空軍が、ついにサイド・ワインダーを発射しました。しかもそれがワルソーで中米会談が行われているそのまっただ中で行われたのであります。これは明らかに新しい軍事挑発であり、原子戦争への第一歩であります。今、世界は、戦争か平和か、重大な岐路に立っております。このアメリカの軍事冒険を阻止し、台湾海峡に平和をもたらすことは、わが国民全体にとっても死活の問題であります。ところが、岸総理と藤山外相は、一昨日の演説や昨日の答弁においても、これに対して何ら積極的な態度を示しておられません。なぜそのような態度をとられるのか。考えるに、それはまず第一に、日本政府がアメリカと蒋介石一味の侵略行動を支持し、これに協力しているからであります。すなわち、アメリカが日本の基地を現に利用していることに対して、一片の抗議もしていないじゃありませんか。さらに、去る七月、中近東でアメリカが出兵を開始すると同時に、蒋介石政府は、戦時体制を実施し、また、蒋介石の軍隊は、日本商船であるニューヨーク丸を砲撃しているという事態も起っております。政府はこれらの事実を押し隠して、やれ中国が侵略したとか、いろいろの宣伝をしていること、これだけを見ましても、私の今申しましたことは明らかであります。政府がなぜ台湾問題に対してこのような態度をとるか。第二に申し上げたいことは、日本の独占資本の帝国主義的侵略を目ざして、軍国主義の復活を着々と遂行しているからであります。岸内閣が昨年成立して、いわゆる日米関係の新時代に入って以来、一貫してとっている基本的政策は、アメリカ帝国主義の原子戦略体制へ日本が積極的に参加し、これと結び付いて、軍国主義の復活を公然または非公然に急速に進めていくということであります。
 まず第一に指摘しなければならないことは、岸内閣の軍事政策であります。アメリカは新らしい国際情勢に即応して、日本にある数百の軍事基地を中国やソ連に対する原子攻撃の前哨基地として拡充し、沖縄を誘導弾基地として完成させようとしております。これに岸内閣は積極的に協力しているのであります。これと並行して、政府は自衛隊をさらに増強し、これをロケット兵器や誘導弾で武装しようとしているのであります。
 次に注目しなければならないことは、岸内閣がアメリカの援助のもとに軍需産業の育成に力を注いでいる事実であります。ここ二、三年のうちには、ジェット機や超音速機、誘導弾さえも日本で生産されようとしているのであります。重大なことは、このような既成事実の上に立って、今回のいわゆる安保条約改訂の計画がなされていることであります。政府は、条約改正を要求する国民の声に耳を傾けるかのようなゼスチュアをして、実は、きわめて危険な方向にわが国民を引きずっていこうとしております。すなわち政府の日米共同防衛体制の真のねらいは、すでに述べたような事実を合法化し、さらにアメリカの原子戦略体制に日本をもっと公然と参加させ、アジアの憲兵の役割を果させようとするアメリカの要請にこたえるだけでなく、日本の独占資本自体がみずからの軍国主義を公然と復活することを目ざしているのであります。総理は演説の中で、自主的と申されましたが、まさにこの点にあると言わなければなりません。わが国民は、安保条約のこのような改訂を望んではおりません。ただその廃棄だけを望んでいるのであります。
 第二に、政府は内政の面においても軍国主義的反動政策を露骨に強行しようとしております。特に最近、労働運動はもちろん、すべての勤労人民の一切の集団行動に対して、それがあたかも非合法ででもあるかのような言辞を弄して、警察権力を動員して、これを弾圧しております。それは、憲法で保障されている国民の基本的権利と、民主主義を実現する正当な手段を、勤労人民の手からすべて奪い取ることをその目的としております。さらに政府は、これを法制化するために、旧内務省の復活、警察官職務執行法、鉄道営業法、防諜法等等の反動立法の制定を急いでおります。民主主義の真の敵は実に岸内閣そのものであります。また政府は、自民党独裁を打ち立てるために、小選挙区制を準備しております。また公職選挙法を改悪して、民主的団体の政治活動を押えようとしております。それは憲法の改悪を促進する道を開くものであることは申し上げるまでもありません。さらに政府は、平和と民主主義的思想を抑圧し、反動的な民族主義思想を注入して、侵略的な思想動員を企てております。その努力は特に青少年をその対象としているのであります。勤務評定の強制や、警察権力を発動してまで道徳教育を強行実施した事実を見るだけでも、それは明らかであります。
 第三に、政府は終始一貫、中国敵視の政策をとり続けております。たとえ口先でそれを否定することはできても、事実をおおい隠すことはできません。現に総理も外相も、国会で、国際共産主義の脅威と称して、中国やソビエトの平和政策をことさらにゆがめ、台湾海峡でのアメリカの侵略政策を擁護する立場を再確認しているではありませんか。日台条約を最後まで守り抜くと大見得を切って、中国との国交正常化をやらない立場をはっきりと言明しております。これが中国敵視の政策でなく一体何でありましょう。また政府は、アジア、アフリカ諸国に対しても、民族主義への理解ある態度を口にしながら、実際の政策はそれとは全く逆に、きわめて侵略的な方向をたどっております。たとえばアメリカのドルと武力、日本の技術、東南アジアの資源と労働力の三つを結びつけ、自己の経済的進出をはかろうとする、いわゆる東南アジア開発機構の構想は、その最たるものであります。
 以上にあげた具体的事実が示すように、岸内閣の全政策は、帝国主義と軍国主義の復活を中心政策として推し進められております。しかし今ではそのような政策が成功する見通しはなくなってきました。総理がかつて東条内閣の商工大臣をやっておられたときとは、アジアも、世界も、わが国民も、すっかり変っています。今では社会主義は世界人口の三分の一を占め、強大な世界体制を形作って、目ざましい発展を遂げております。それとともに、アジア、アフリカにおける民族解放運動は、燎原の火のように燃え上っております。これらの力によって、世界は平和共存の方向に大きく動いております。これに対して、日本の独占資本、自由民主党、岸内閣がしがみついているあの自由主義諸国、すなわちアメリカを先頭とする帝国主義諸国は、ただ没落の一途をたどっております。これはどうしても押しとどめることはできません。しかしこれが世界の現実であり、大勢であります。いやしくも国の政治をつかさどる者は、この現実を直視し、世界の大勢に沿って、政治の根本をきめていかなければなりません。ところが岸内閣のやっている政策は、この歴史の法則にまっこうから逆らっております。だからこそ、現に政府の内外政策は、大きな困難と反対に直面して、動揺し、破綻し始めているのであります。たとえば岸内閣の対中国政策は、中国人民の断固たる反撃を受けて失敗に帰しております。いわゆる東南アジア開発機構の計画も同じような運命をたどろうとしております。国連総会で核兵器禁止に対して実質的にアメリカを支持するような態度を政府がとり、またヨルダン、レバノンヘの英米の侵略を容認することによって、全世界の平和を求める諸国民の信頼を一挙に失ったのではありませんか。また国内でも、新聞の世論調査によってさえ、最近、岸内閣に反対する声は、去年の三月に比べて倍近くにもふえているではありませんか。これが岸内閣のとっている軍国主義的反動的政策の当然の帰結であります。いまこそわが国の政治を根本的に転換すべきときであります。世界の大勢に従い、広範な国民の要望の上に立って、日本を減ぼすアメリカ帝国主義への追従と、日本みずからの帝国主義的野望を捨てて、バンドン会議の原則にのっとって、ソ連、中国などの社会主義諸国や、アジア、アフリカの国々と平和的に共存し、経済協力を進める方向に大胆に踏み出すことこそが、まさにわが国を平和と独立と繁栄に導くただ一つの正しい道であります。
 以上、私は、帝国主義的、軍国主義的復活を目ざす岸内閣の政策の本質を究明し、日本の進むべき平和と独立と民主主義の道に向って、その政策を根本的に転換することを要求するものであります。これは国民の要求であります。この点について岸総理大臣並びに藤山外務大臣の所信をただしたいと思うのであります。
#15
○国務大臣(岸信介君) ただいまの野坂議員の御質問は、私どもと世界観を全く異にするものでありまして、われわれが平和を望み、世界のほんとうの幸福、繁栄を望んでいるこの気持は、あらゆる面において、あるいは国連を通じ、その他の機会においても努力してきているところであります。ただいまの御意見は、私は十分に研究はいたしておりませんが、それでも、私の接するソ連その他の宣伝をそのままに聞くように思うのであります。私どもとは全然世界観を異にするということだけお答えいたしておきます。
#16
○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま総理からお話のありましたように、私どもと違った立場のお考えでありますから、特に内容について申し上げる必要はないのでありますが、ただ、私は東南アジアの外交をやっておりまして、インドにおきましても、インドネシアにおきましても、スカルノ大統領もしくはネール首相と話しまして、今、野坂さんの言われたような、共産党でなければ日本と協力しないという立場には両氏ともないように思われます、われわれとしては、ネール首相あるいはスカルノ大統領と十分協力しながら、経済開発あるいは国際政治に対する話し合いをやって参れるのであります。その方針のもとに私はやっております。
#17
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
     ―――――・―――――
#18
○議長(松野鶴平君) この際、お諮りいたします。杉山昌作君から裁判官弾劾裁判所裁判員予備員を、木内四郎君から裁判官訴追委員を、それぞれ辞任いたしたい旨の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
#19
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よっていずれも許可することに決しました。
     ―――――・―――――
#20
○議長(松野鶴平君) つきましては、この際、日程に追加して、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員及び裁判官訴追委員の選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
#21
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。
#22
○田中茂穂君 これらの選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
#23
○加賀山之雄君 私はただいまの田中茂穂君の動議に賛成いたします。
#24
○議長(松野鶴平君) 田中君の動議に御異議ございませんか。
#25
○議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員に平島敏夫君、裁判官訴追委員に成田一郎君を指名いたします。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十四分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程一 国務大臣の演説に関す
  る件(第三日)
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員
  及び裁判官訴追委員辞任の件
 一、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員
  及び裁判官訴追委員の選挙
ソース: 国立国会図書館
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