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1958/10/08 第30回国会 参議院 参議院会議録情報 第030回国会 本会議 第5号
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1958/10/08 第30回国会 参議院

参議院会議録情報 第030回国会 本会議 第5号

#1
第030回国会 本会議 第5号
昭和三十三年十月八日(水曜日)
   午前十時四十八分開議
  ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和三十三年十月八日
   午前十時開議
 第一 私的独占の禁止及び公正取引
  の確保に関する法律の一部を改正
  する法律案(趣旨説明)
    ―――――――――――――
#2
○議長(松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
     ―――――・―――――
#3
○議長(松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。
 日程第一、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
 本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から、その趣旨説明を求めます。松野総理府総務長官。
#4
○政府委員(松野頼三君) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明いたします。
 御承知の通り、独占禁止法は、経済民主化法制の主要な一環として、自由かつ公正な競争を促進することによって、国民経済の健全な発達をはかる目的をもって、昭和二十二年七月に施行されました。その後、内外情勢の推移に即応して、同法は数回にわたって改正され、中でも昭和二十八年の改正は、いわゆる占領法規を再検討するという意味で行なったものであります。その後五年の歳月を経過した今日、わが国経済の実情を見ますると、企業数が多過ぎるため、とかく過当競争の弊に陥りやすく、また、経済基盤が弱いため、国際的な景気変動に影響されるところが大きい等の特殊事情があり、さらに、最近における技術革新の趨勢に対処しまして、企業合理化を推進し、国際競争力の培養をはかる必要のあることが指摘されます。しかしながら、これらの問題を解決していくには、どうしても独占禁止政策との調整を必要とする面も多いと思われますので、政府は、この際、わが国における占領政策以来の独占禁止政策に所要の検討を加える必要を痛感した次第であります。
 そこで、昨年十月、内閣に独占禁止法審議会を設け、「わが国経済の実情に照らし独占禁止に関する法制は如何にあるべきか」との諮問を行いましたところ、本年二月、同審議会からその答申を受けるに至りました。政府は、わが国経済の実情、なかんずく不況対策、合理化対策の緊急性にかんがみ、右の答申の趣旨を尊重し、その線に沿って本改正案を作成することといたしました。すなわち、本法の建前とする自由競争の原則はこれを堅持しつつ、当面のわが国経済の運営に特に障害となっていると思われる諸点に関し、さしあたり所要の改正を加えることといたしました。
 次に、本改正案の内容につきましては、まず不況対策としての実効を期するため、現行不況カルテルの規定をいささか緩和し、合理化対策の必要性にかんがみ、現在の合理化カルテルの範囲を拡大し、生産過程の合理化をはかる合併の例外を容認し、不公正な取引方法の防止または健全で合理的な取引慣行の確立をはかるため、公正取引規約に関する制度を新設し、その反面、不公正な取引方法に関する規定の整備強化をはかることといたしました。このように本法を改正することによって、一般消費者、中小企業者、農林水産業者等の利益が不当に侵害される弊害がないかどうかという点につきましては、本改正案は制度上も運用上も十分の配慮を加えており、たとえば、カルテルの容認は原則として認可制によることとし、しかも、その認可の要件として、一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者、その他の関連事業者の利益を不当に害するおそれがないことを規定しており、また、その認可は、独立機関、中立機関としての公正取引委員会が、主務大臣と協議しながら厳正に実施することといたしました。さらに、一たび認可したカルテルであっても、経済情勢の変化によって弊害を生じたときは、迅速にこれを取り消す制度もあわせ考慮することによって、カルテルの弊害規制について万全を期しております。他面、不公正な取引方法の指定制度の厳正な運用によって、経済的に優越した地位にある者の支配力乱用行為を取り締る等、十分に弱小企業者の保護をはかることができる建前になっておりますので、本改正によって、一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者等に悪影響を与える心配はないものと考えております。
 以上が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案についての趣旨でございます。
#5
○議長(松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。小幡治和君。
#6
○小幡治和君 私は自由民主党を代表いたしまして、独占禁止法の改正法律案に関し御質疑を申し上げたいと存じます。
 まず、独禁法改正そのものの質疑を申し上げます前に、日本の経済のあり方から、政府がこの複雑なる日本経済をいかに認識して、いかにこれを引きずって行こうとされているのか、その根本についてお伺いいたしたいと存じます。
 日本の経済は底が浅いといわれておりまするが、その根底には、人口の過剰、従って企業の過剰、それに資源の過小、従って貿易依存度の過大等の事情が伏在しており、さらに日本の企業の特徴として、一つには、身に余る借金をかかえ、他面には、本来ならば失業すべき者をそのまま企業内にかかえ込んでいるという特性があります。そのために、自由競争経済理論の作用も効果も、経済原論で私たちが習いました通りの本来の姿を呈せず、むしろその逆の現われ方を示しておるのでございます。その理由は一体何か。かかる日本経済のあり方は、そのまま独占資本形態に進む必然を持っているのでありましょうか。また、こういう日本経済の宿命を果して社会主義経済によって救い得るのでありましょうか。私は自由民主党に所属しておりますので、一応、自由主義経済、資本主義経済のあり方を是とするものでありまするが、今日の日本の経済は、もはや資本主義とか社会主義とかの公式論では割り切れないものがあるのではないかと存じます。今こそ、在来の公式論、観念論を乗り越えて、日本経済独自の理論を持ち、また、その上に立った経済政策を断行すべきであると思うのでありまするが、まず、岸総理並びに三木経済企画庁長官のこの点に関する御意見を承わりたいと存じます。
 また、さきに申し上げましたごとく、日本経済には、二重三重の投資過剰が産業の飽和状態を作り上げ、無謀な競争の宿命があり、銀行資本依序度の異常な高まりがあり、また、大企業の合理化とともに中小企業の弱小化、すなわち、二重構造の特殊性が現存する等、とれら日本経済の特異体質をいかにして改善されようとするのか。現在の不況というものは、単に独禁法の改正では救われないと思います。そのほかに、もっと基本的な政策があって、それと相待ってこそ独禁法の改正も効果を生ずると思うのでありますが、その根本政策を一体持っておられるのかどうか。岸総理並びに経済企画庁長官及び通産大臣にお伺いいたしたいと存じます。
 次に、独禁法そのものについて御質問申し上げます。
 まず第一に、独禁法改正の危険性についてお伺いいたします。日本の独禁法は、アメリカ占領政策の一環として、「カルテルそのものが悪なり」との思想に立脚して出発したのでありまして、イギリスその他の諸国におきましては、逆に自由競争を原則として、その行き過ぎをチェックするところに基本を置いたのでありまするが、要は、その運用に当って、自由競争と公共の利益擁護との調和をどこに置くかというところにあると存じます。すなわち、現在の日本の姿のごとく、過剰生産に悩んで、在庫も整理されがたいような状態におきましては、外国も足元を見て、買おうとはいたしません。また、無理にこれを売りましても、価格はたたかれて、貿易量はふえても貿易額は低下するという、ていたらくであります。しかも、過剰企業者の過当競争は激烈という状況では、いかんともしがたいのでありまして、ここに不況カルテル並びに合理化カルテルの強化を考えられるに至りましたことも、やむを得ないことと存ずるのであります。しかし、ここに危険が存するのであります。
 すなわち、第一に、大企業の企業集団化が強化されますれば、せっかく中小企業者のために作られた中小企業団体法の精神を乗り越えて、中小企業の隷属化を来たし、下請系列化の趨勢にますます拍車をかけて、二重構造の差をさらに大ならしめ、大企業の合理化促進は、そのしわ寄せを中小企業者に及ぼして、中小業者はますます没落の一途をたどるということになりはしないかをおそれるものであります。独禁法は、中小企業者、農林漁業者並びに消費者の利益を擁護するものである以上、カルテルの容認は、その必要最小限度にとどめねばならず、法律の形だけ残して、実質は法の精神を骨抜きにするがごときものでありまするならば、われわれは、断固として反対せねばならぬのでありまするが、この点、総理並びに通産大臣は、いかにお考えでありましょうか。かかること絶対になしとの保証を、いかなる根拠によって言明し得らるるや、お伺いいたしたいのであります。
 第二に、やみカルテル、地下カルテル、勧告操短についてであります。独禁法が存在するにもかかわらず、カルテルの存在しない業種はほとんど数うるに足りない状況でありますることは、公取の三十二年度年次報告によっても明らかなところであります。かくして大企業者は、自己防衛と中小企業者圧迫及び消費者搾取を現実に行いつつあるのであります。今回の改正によって、かかる、やみカルテル、地下カルテルは、独禁法の許容する範囲内においてのみ許されることになるのでありましょうが、今後は、法によらざるカルテルは、絶対に存在せしめざるよう取り締り得るかどうか。この点の政府の熱意と力あるやいなやを、総務長官並びに通産大臣にお聞きいたしたいと存じます。
 第三には、かかるカルテルの強化方策は一時的のものだと言われておりまするが、真実、一時的のみで乗り切れるような事態ではありませんことは、御承知の通りと思うのであります。さすれば、必ずや更新、延長の連続になりまして、長期カルテル化は必至であり、さらに進んで、トラスト、コンツェルンの強力結合に移行するおそれは十二分にあると存ずるのであります。岸総理並びに総務長官は、この点をいかに考えられるか、また、これをいかに阻止さるるか、お伺いいたしたいと存じます。
 さらに、カルテルのよい面は容認するといたしまして、悪い面が出たときに、政府や公取は、直ちに、かつ厳重にこれを阻止し得るやいなや、いかなる方法によってこれをなされますか、お伺いいたしたいのであります。
 次に、独禁法改正が危険なしと一応いたしまして、しからば逆に、この改正で所期の実効をあげ得るやいなやということについて、以下御質問を申し上げます。
 まず不況カルテルについてでありますが、現行法では、「価格が平均生産費を下回った場合」を要件にしておりまするが、調査の能力は、原価までには及び得ないのであります。そこに現行法の弱点があり、今回これを改正して、抽象文句にいたしたのであります。すなわち「価格が著しく低落し」とか、「事業の遂行が著しく困難となり」とかの文句にいたしたのでありますが、この認定は一体だれがするのか。公取委員会が最終決定者になりましたことはけっこうでありましたが、団体法の要件の審議のときにも議論いたしましたごとく、ルーズにすれば公共の利益が脅かされるし、また、厳重にすれば所期の目的は達せられません。総務長官は、この認定の程度をいかに考えておられるか、お伺いいたしたいのであります。
 第二に、合理化カルテルについて申し上げますと、現行法におきましては、製品の標準化、規格統一、くずの利用等のみについて考えておりましたのが、これでは確かに不足なので、ここに政府の勧告操短等が必要となったのであります。よってここに、これを強化し、技術、品種、設備並びに生産、販売の制限にまで及ぼそうとしたのでありまして、どうせ現実に、もぐりで行われておりまする以上、これを法規に明文化して、その行き過ぎを阻止しつつ、必要の限度を法律にのっとって行わせようといたしますることは、私も賛成するものであります。しかしながら、次の四点について疑義がありますので、総務長官並びに通産大臣のお答えを願いたいと存ずるのであります。
 その一つは、これらの制限は、業者の話し合いによって話し合いがついたときに認可を要求することに相なっております。一体、こういう話し合いというものが、現況の業界において可能なのかどうか、まことに疑いなきを得ないのであります。実情は、話し合いのできるのは数の少い業者で、業界を完全に独占しているような、むしろカルテルの悪の面の生ずるおそれのあるもののみが話し合いがすぐできて成立し、一方、過剰企業、過当競争のはなはだしい、むしろカルテルの必要のある業界が、かえって話し合いができずに、この法の改正の利益を受け得ないということになりはしないか。この点、いかにお考えになっておられますか、お伺いいたします。
 二つには、この業界の話し合いの過程において、弱小なる業者が圧迫され、いじめられ、泣き寝入りさせられるようなことになりはしないか。その配慮が、法文上されてあるのかどうか、お伺いいたしたいと存じます。
 三つには、このカルテルには、団体法のごときアウトサイダー規制の法文がありません。それで一体、実効があげられ得るでありましょうか、非常に疑問でありますが、いかにお考えでありますか、お伺いいたします。
 四つには、以上のように実効が至難な結果にかんがみ、独禁法は私的独占禁止であるから、公的に指導し勧告することはむしろ必要であるとの見地をもって、この独禁法改正をもってするもなお足らざるときにおいては、さらに政府は、勧告指導をもって補強する考え、方針を持っておられるのであるか、その点お伺いいたしたいと思います。
 次に、企業の合併について岸総理に御質問申し上げたいのであります。今回の改正中、企業の合併に関し、これを容易にし、助長するかのごとき条文を加えられたのでありますが、これによって、また昔日の財閥の復活を結果するようなおそれなきやいなや、その下地にこれがなったのでは、経済民主化の基本線をくずすことになるのでありまして、その配慮がされているのかどうか、お伺いいたしたいのであります。
 最後に、今回の改正によって、カルテル、トラストに関する規制が緩和されることになるわけでありますが、そうなりますればなりますほど、一方において、不公正な取引方法については、ますます厳格に、かつ適正に、その運用を確保する必要が生ずるのであります。しかし、これに関する審議会の答申の線に沿っての配慮が、今回の改正法案に見当らないようでありますが、この点、どうお考えになっておらるるのか、総務長官にお尋ね申し上げたいと思います。
 以上をもって私の代表質問を終りますが、独禁法改正といいますと、業界も世間も、目の色を変えて騒ぐわけでありますが、条件をルーズにすれば、それこそ経済の民主化を根底からくずす、ゆゆしき大事に至りますし、また一面、条件を厳に過ぐるようにいたしますれば、改正の趣旨は没却されて、依然、官僚の支配のみが残ることに相なるのでありまして、運用こそ最も大切であることを御注意申し上げまして、私の質問を終りたいと存じます。
#7
○国務大臣(岸信介君) お答えいたします。
 第一点は、日本経済の特質についていろいろと御意見がございまして、これに対して、基本的に政府はどう考えているかということであります。御意見のように、日本の経済については、あるいは人口が非常に多いというような点、あるいは資源が十分でないというような点、こういうことから、ひいて過当競争が非常に行われているというような関係は、御意見の通りであると思うのであります。私どもは、やはりこの経済に対処して、資本主義であるとか、あるいは社会主義というような一つの理論、主義に基いて政策を考えるということでなしに、やはり日本の実情に即したことを、適当な方策を立てていく必要があると思う。基本としては、言うまでもなく個人の自由なる創意工夫を十分に働かして、そうして産業の拡大や繁栄を期していく。しかしながら、先ほど来お話がありましたような特殊性にかんがみて、やはりこれに対して一定の計画性を持たして、その線に沿うて日本の経済の拡大を考えていくということが必要であろうと思います。この自由と計画性との調和をとっていくことが、私ども日本の経済政策の基本として考えていかなければならぬ問題であると、かように考えております。そうして、こういう日本の産業経済の特徴から見て、いろいろ体質の根本的改善をはかるにあらざれば、結局、日本産業経済というものの安定、また国際場裡における競争にも十分耐えて拡大繁栄を期することはできない。それにはどうしたらいいかという点についての御質問でございましたが、言うまでもなく、このことは、産業の構造の上においても考えなければならない。われわれは特に第二次産業と言われておる重化学工業に重点を置いて、日本の経済、産業の発達を考えていく問題、あるいはまた企業の近代的な性格を欠いている中小企業、これに対して企業の近代化をはかるためにどう考えているか。さらに雇用条件を合理的にしていく問題、日本においては非常に労働の条件なりあるいは就業の状況において、いわゆる不完全失業のような形においての内容を持ったものがずいぶん多い。こういうものに対して十分な策を考えていかなければならない。あるいは金融面やあるいは資本の面において、われわれは考えなければならぬ点もずいぶんあると思う。金利の点において、国際水準に近い金利に持っていくように考えなければならぬ。また、戦後の、特に日本の企業の底が浅いと言われる、資本蓄積の十分でない点についての考慮というようなものを、各方面から考えていかなければならぬ。今回の独占禁止法が、いわゆる経済の安定と国際競争力を強化するという意味において、従来の不況カルテルや合理化カルテルについての条件をある程度緩和するということも、要するに、これらの私が申し上げました日本経済の体質改善の一環として考えていかなければならぬというつもりでございます。もちろん、独禁法の改正だけでできるわけじゃございませんで、今申しましたような各般の施策とともにこれが行われるということが必要であります。
 次に、独禁法が改正された結果、中小企業やあるいは消費者の利益が侵される、ここに、しわ寄せがくるのじゃないかという御心配でありますが、この点については法文上も非常な制約が設けてあります。また運用の上におきましても、十分にその点については留意して、さようなことのないように運用していく考えであります。
 さらに、カルテルが長期化するおそれはないか、また合併の条件を緩和することによって財閥を作り上げるおそれはないかという御質問でありますが、カルテルは、一面において、経済の安定、不況克服やあるいは国際競争の上から必要であるけれども、それが限度を越えることは、また非常な弊害を生ずることは御指摘の通りであります。従って、われわれは、あくまでもカルテルというものを必要最小限度にとどめるというところに非常に留意をいたしておりまして、また認可制度の運用においても、そのことを特に注意し、認可後においても監督を厳にして、これが長期化したり、あるいはカルテルによるところの弊害を生ずるようなことのないように十分に運用して参りたいと思います。また合併や株式保有の条件を緩和をいたしますけれども、しかし、この法律の条文等をごらん下さればわかるように、決してかつての財閥というようなものを作りあげるような弊害は生じないものと、かように考えております。
#8
○国務大臣(三木武夫君) 私に対しての御質問は、日本経済を取り巻くいろいろな困難な条件をどう認識しているか、新しい日本経済の理論というものが要るのじゃないか。また第二には、日本経済の特異体質をどう改善していくか、という御質問であったと思います。総理から大体お答えになりましてそれに尽きるのでありますが、多少補足的に申し上げておきたい。
 それは、日本経済が小幡君の御指摘のように、いろいろ困難な条件と環境に取り巻かれていることは御承知の通りだと思うのであります。その中心の題目は、やはり人口の圧力ということである、これがやはり一番大きな重圧になっている。もっとも人口はこれから十年が問題で、毎年百万ないし百二十万の生産年令人口がふえていき、十五年ぐらいになると四十万台に落ちるということが推定されて、人口の重圧というものが緩和される。今後十年というものが、日本経済の政策の基本はやはり人口問題、裏を返せば雇用の問題である。どうして職を与えるかということの経済政策というものが中心の題目になるわけです。そのためには、小幡君の御指摘のように、これを公式的な社会主義理論で国有国営にしたからといって問題は解決するものではない。やはり日本の工業――農業は飽和点になっておりますから――工業を拡大して、貿易を拡大して、そうしてこの雇用の拡大をはからなければならない。縮小均衡では雇用問題は解決できない。経済を成長し発展させなければならない。そういう意味において、経済企画庁においても長期経済計画というものを策定して、日本経済の成長に資そうというのは、こういう意味であります。従って、そういうことについては、日本の実情に即した経済理論というものが生まれてくるかもしれないけれども、自由経済といっても、総理がお述べになりましたように計画性も入れなければならない。個人の創意といっても社会的な要請に合致するものでなければならない。そういう点で、自由経済の内容は変貌している。新しい理論が、将来、経済理論家によって構成されるかもしれませんが、とにかく雇用を拡大する、そのための経済政策というものが、今後の日本の大きな経済政策の中心題目であります。それは今申したような公式論では解決できないのだ、国有国営では問題は解決できないということを言ったのであります。
 それから第二の点でありますが、いろいろな特異体質がある。たとえば一々例をあげませんけれども、特異な体質の中で、特に今後力を入れなければならぬと思う点は、たとえば公共施設である。民間の企業のスケールに比べて公共施設というものは立ちおくれている。二十年間ぐらい非常に立ちおくれている。従って、道路、港湾、住宅というものに、やはり今後急速に公共投資というものはこれを充実していかなければならない。政府もどういうことをやっているかということでありますが、道路、港湾に対して非常に力を入れていることは御承知の通り、港湾なども特別会計を作ってこれをやる。これを財政面からその立ちおくれを取り直していく。あるいは金融の面では、小幡君御指摘のように、やはりオーバー・ローン、あるいはまた、金利は世界一の高金利である。企業は、ほとんど他人資本が七割である。世界一の高金利、これで健全な企業の経営というものが打ち立てられるわけはない。オーバー・ローンの解消、金利の引き下げ、こういうことについて、政府が公定歩合なども数回下げましたし、低金利政策という方向で、経済政策、金利政策を行なっていることは御承知の通り。また、産業の面においては、産業の二重構造、中小企業の持っている低い生産性、労働賃金の非常に低い水準、これをやはり近代的な企業にしなければ、日本のいろいろな問題、社会問題が起ってくる。これに対しては、いわゆる困れば救済するというのではなくして、企業の近代化をはかるために、あるいは生産性を高める技術を近代化するために、政府は、今後産業政策の重点を、中小企業政策の重点をそこに置いていく。最低賃金なども、こういう面からの配慮であります。あるいはまた、産業構造、貿易構造などを見ましても、東南アジア後進国の軽工業の台頭に対して、やはり日本が、この第二次産業、ことに重工業、化学工業、機械工業、こういう工業に日本の産業構造を変えていかなければならない。これは、やはり財政投融資などを通じて、日本の産業構造のこういう産業にウエートを置くような産業政策というものが行われなきゃならぬ。あるいは過当競争も一つの問題であります。過当競争のために、貿易においても、どれだけの国費の損失を招いているかということは、これは、もし計算をすれば驚くべきものだと思う。この過当競争を排して、秩序ある貿易をやろう。独禁法の改正なども、そのねらいもあるのだ。こういう点で、財政、金融、産業を通じて、日本の特異な体質、しかもそれは、国際競争力を皆減殺する要因でありますが、これを改革するために、政府は、そのための経済政策を今までもやっておりますが、一そう積極的にこの経済政策を推進して、日本の体質を近代的な体質に改善していきたい。これが政府の見解でございます。
#9
○国務大臣(高碕達之助君) 私に対する御質問に逐次お答えいたします。
 第一に、二重三重の投資過剰が今日の不況を来たしている、これはどうだ、こういうことでありますが、この無秩序なる設備の拡大というものが今日の不況を来たしているのであります。これを是正するためには、政府といたしましては、財政投融資面の手かげんをするとか、あるいは金融の引き締め、産業の合理化審議会を作っておりますけれども、これでは足りないのであります。しかるに、今回この独占禁止法が改正されまして、投資調整カルテルができるということになりますというと、これは是正できると存じます。
 第二の、今度の独占禁止法改正によって、消費者なり中小企業者の利益を阻害しないかと、こういう点でありますが、これは、元来この目的が、経済を安定せしむるということが目的であります。同時に、消費者なり中小企業者の利益を阻害するというものは、これはカルテルを認めないという原則になっておりますから、経済が安定すれば、中小企業者はこれによって利益を得るわけでありますから、断じてこれは中小企業者の利益を阻害するものではないと信じております。
 第三の、やみカルテルだとか地下カルテルがこれによって防止できるかと、こういう御質問でありますが、これは、従前秘密裏にそういうものが行われておるとすれば、当然これは、今回公然とカルテルを認めますれば取り締ることができます。従って、公正取引の確保という面から見まして、取り締ることはできると存じます。
 第四に、業界の談合、話し合いという場合に、大企業者は少数であるからこれはできるが、中小企業者は多数であるからできない。こういう御心配であるようでありますが、中小企業者のためには、これはアウトサイダーも規制することができるというふうになっているようなわけでありますから、こういう場合には、国民経済の安定の見地から、行政指導を行なって、これを話し合いをつけさせたいと存じます。
 第五の、アウトサイダーをこれに入れないで果してカルテルはできるのか、こういう御心配であるようでありますが、大企業は、これは自主的にやる、こういうことが原則になっておりますから、必ずしもこれはアウトサイダーを入れなくても実行できると思いますが、中小企業者は、いろいろ業者は多いわけでありますから、これは、中小企業団体法によりましてアウトサイダーを規制することができておりますから、これは、御心配のような点はないと存じます。
 最後に、独占禁止法の改正で、実行できない場合には、政府は勧告するか。こういうことでありましたが、原則といたしまして、政府の勧告はいたさないつもりであります。これが改正できますれば、政府は勧告はいたさないつもりでありますが、万やむを得ない場合には、個別的に行政指導をもってこれを勧告いたしたいと存じます。
#10
○政府委員(松野頼三君) 小幡君の御質問にお答えをいたします。
 独禁法の今日の運営は、非常に厳格なものでありまして、必ずしも業者間の話し合いも有効に行っておりません。従って、今日まで独禁法によって許可いたしましたものは二件でございます。これはすなわち、規定が厳格であると同時に、話し合いが非常にむずかしかったということを物語っております。従って、今回の場合は、今までの法文にございましたような平均生産費というものをある程度改正いたしまして、現状に合うように改正いたしまして、その事業の遂行が明らかに困難になるという明白な事実、いわゆる原料高で製品安という事例が明らかなものに限って、今後はある意味において弾力的運営をはかるように改正をいたしました。
 弱小企業に対する保護規定は、今回は、各条項について、中小企業、農林漁業の面については明確に規定を入れまして、もしもこの要件に合わない場合には許可をいたしませんし、かりに許可いたしましたあとにおいて、その事例の変更がございました際には、今までの審判規定を改正して、準則に、行政命令でこのカルテルの解除を命ずるような方法をとっております。
 なお、アウトサイダー命令につきましては、中小企業団体法にはございますが、これは、中小企業団体法そのものの特殊性によるものであって、今回の独禁法には、アウトサイダー命令というようなものは規制はございませんし、今後もそのような考えは持っておりません。
 公正取引方法につきましては、今日の規定も、相当明確に規定がございます。なお、運営を厳重にいたしまして万全を期すると同時に、今回はそれ以上に、ただ単なる行為からその行為を表わす協定まで、今後は公正取引において規定できるように、特別に厳重に改正をあわせて行なっております。
 なお、中小企業問題については、この方は、下請代金の支払い促進の改正案を出しまして、今後親企業が子企業を買いたたくとか、あるいは強制的に物を販売するというようなことがないように、明確な規定も下請代金の方に規制をいたしました。
    ―――――――――――――
#11
○議長(松野鶴平君) 相馬助治君。
#12
○相馬助治君 私は日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました議案に関して、岸首相以下関係閣僚に若干の質問をいたします。
 御承知のように、独占禁止法は、昭和二十二年に、企業の公正かつ自由な競争を促進することによって国民経済の健全な発達をはかることを目的として作られました。そうしてそのあと、わが国経済秩序の基本法、あるいは経済憲法として、大企業の資本の集中や、あるいは市場の独占を防ぎまして、よく中小企業者の事業活動と消費者利益を守って、その主要な役割を果して今日に至ったのであります。
 しかるところ、その後、本法は再三改正をされまして、今般は全く骨抜きとも称すべきところの改正が、今ここに行われようといたしております。私は、同僚議員にまず最初に注意を喚起したいと思いますことは、独禁法が、競争制限を禁ずることによって、独占資本の横暴な収奪から消費者の利益を守る上に、今日まで大きな役割を果してきたという事実を、残念ながら国民大衆は実感として知っていないという事実であります。しかも、一般消費者の絶対多数の者に、そうしてまた活動的な人々にすらも、独禁法の持つ重要な意味が理解されませんから、今般の独禁法緩和の動きなどということは、あまり、しさいにその内容を知らず、公正取引委員会というものは一体何じゃろうというような疑問すら持っているのでございまして、私たち国民を代表する立法府に議席を有する光栄を持つ者といたしましては、本法案のような審議に関しましては、特に慎重の上にも慎重を期さなければならぬと私は確信いたすものであります。
 従来、与党の質問というものは八百長が多くて、法案を提出した政府の援護射撃に終って、くだらないものが多かったのでありまするが、きょうの小幡君の質問は、まことにりっぱである。そして核心を突いている。これは小幡君の賢明にもその功績はあるが、より本質的なことは、今度の法改正というものは、どだい無理なものである、無謀なものである。そうして、本質的に、何人も研究さえすれば、大きな問題が存在することを発見するほどのこれは大問題なのだということを、明らかに物語るものであると私は思うのでございます。現在においてすら、中小企業者は大企業にいじめ抜かれているではありませんか。そうして今般この改正が行われまするならば、中小企業の苦しみというものは、言語に絶するものがあると思うのであります。加うるに、この法改正によりまして、町工場のあすの倒産を意味し、あるいは黙々と台所をあずかるところのおかみさんたちの財布にまで、直ちに直接間接に大きな影響をこの法律改正が与えるということを知るならば、私どもは、問題はきわめて重大であると考えなければなりません。岸首相が先ほど説いたように、日本の産業界に過当競争が存在していることを私は否定いたしません。そうしてその弊害も十分に知るものであります。しかし、それは業者の反省すべき問題ではなくて、しかもまた、独禁法があるから過当競争が起きるのだというような一部の御用学者の議論というものは、全く事実を知らない盲論で、問題になりません。要するに、これは小幡君指摘の通りに、過少資本、乏しい資材、資源、あり余る労働力、こういうふうな多くの矛盾をかかえたところの日本経済の構造自体の問題であるのでございまして、まずこの問題を解決せんとするならば、首相においては、中小企業政策を積極的に打ち出すとともに、農民、労働者の利益擁護の立法措置を行い、社会保障制度の確立という総合的な一環としてこの問題を把握しなければ、断じて解決しないと私は確信するのでありまするが、首相はどのようにお考えでございますか。しかも、三木経済企画庁長官は、かなり問題の所在をとらえたのでありますが、そういう問題の所在を明確にとらえるならば、独禁法改正などという芽は出てこないはずなのであります。しかるにもかかわらず、この法律案がここに提案されるからには、岸首相においては、当然ある種の日本産業の理想像というものをその胸に描いておられると思います。先ほどの答弁によれば、資本主義だとか、社会主義だとか、そういう公式議論でなくて、合理主義でなくちゃならぬというようなお話に聞きましたが、これは床屋や銭湯場のお茶飲み話ならそれでもよろしい。しかし問題は、一体、日本の経済の復興において、資本家の優先を認め、独占資本家を尊重するというならば、――私は反対だが、それも一つの方法であろう。また、国民大衆の利益をあくまでも守って、経済の民主化を断行することが先決要件であるとするならば、それも一つの道であろう。また、国際共産主義というような問題に対しては、どのように理解するか。このもろもろの問題を正確に把握することなくしては、あなた自身の世界観も生まれてこないし、しかもまた、経済を指導していくところの首相の腹もできていないと思うのでありまするが、どうかこの際、端的に、本国会を通じて、日本の経済構造の理想像と、日本の産業界が将来いかなる目標に向って進むべきか、その道を明示されたいと存ずるのであります。
 私はこの際、わが国の独禁法緩和の歴史と全く対照的であります西ドイツのそれを簡単に申し上げて、特に首相の注意を促したい。すなわち、近く来朝を伝えられておりまする西ドイツ保守党の経済相エアハルトは、一九四七年以来、競争制限禁止法を制定されるに至りました昨年まで、この十カ年間、常に、保守党の経済相ではありまするが、消費者の利益擁護のために独禁法を作ろうとして、財界の反対と戦って、ついに勝利を占め、今日の西ドイツ産業発展の基礎を築いたのであります。これに対して日本ではどうでありましょうか。今般、法改正に至る経過を見るというと、昨年九月六日、経団連がどうしても独禁法を改正しろということを主張した。それに呼応して政府は独禁法改正の審議会を作って、そうして財界の代表者を主力にして、「カルテル友の会」などと、あだ名をつけてひやかされるような御用審議会を作り上げた。そうして時間を切って答申を求めた。答申が出るというと、この御用審議会の答申すら勝手に理解して、都合のよいところは大幅にこれを上回ってこれを取り上げて、都合の悪いところは全く顧みないというところの悪質な法改正を行うに至ったのでありまして、事はきわめて問題でなければならない。今月四日午後二時半、経団連副会長植村氏は経団連を代表して、あなたに面会をして、改正案はほぼ満足すべき筋にでき上っているようである、一日も早く臨時国会において本法の成立を要望する、と激励したと、新聞が報じております。この経過は何を物語るか。財界の利益のために、消費者、中小企業者を敵として戦っていることを、これは端的に示すものでありまして、民主政治家をもって任ずる岸首相のために、私は惜しむところであります。一体、わが国の独禁法緩和の歴史は、消費者に対する戦いの歴史である。そうして、一部大企業家とその手先たる経済官僚の勝利の歴史であるということを、残念ながら指摘しなければならない。そうして、自由民主党の「自由」あるいは「民主」という、このありがたい、りっぱな名前が泣くというものだと、私は指摘しなければならない。
 要するに、今日私どもが問題とするところは、この問題に関しまして、岸首相は、謙虚に世論に聞き、撤回するならば、それでよろしいが、かりに撤回し得ないとするならば、本改正によって直接影響を受けるところの中小企業者のために、どんな積極的政策を、あなたは、なそうとするのであるか。また、直接影響を受ける農民あるいは消費者、こういう者たちのために、何を一体積極的にお考えになろうとするのであるか。本日ちょうど今ごろ、全国の業者が日比谷公会堂に集まって、全国大会を開いて、小売商振興法を通せという要求をやっている。これを指導しているのは自民党の代議士さんです。ところが、新聞の報ずるところによると、その法律の提案を見合わせたというのだが、一体これはどういうことなのですか。一つこの際、中小企業者に対する積極的政策ありやいなや、岸首相の見解を承わりたいと思います。
 次に、独占禁止の政策というものは、国際的に現在強化の方向をたどっております。ところが、今回の日本における法改正は、これに逆行しております。一体これは、岸首相は、どのような情勢の分析に基くのであるか。あなたは飾り物の首相ではない。経済閣僚としてたびたび台閣に列し、しかも、明敏をもって世界に鳴る岸さんなのでありますから、世界の情勢に暗いはずはない。一体どのような情勢分析に基いて、世界の情勢に反逆して、日本だけこういう独占禁止法緩和という方向をとったのか。ぜひこの際、承わっておかなければならない。特に、カルテル行為を否定しておりまするところの日米通商航海条約第十八条の規定と、今回のカルテル助長法とは、これは相反すると思うのでありまするが、この規定違反のおそれがありやなしや、この際一つお示しを願いたいと思うのであります。
 次に、首相に承わりたいことは、今度の法改正で重大な問題は、カルテルの認可申請の窓口を主務大臣に移したということです。これは手続だけが変ったのではありません。主務大臣というものは、本来、産業政策というものを助長する立場にあります。この人たちがカルテルを指導し、助長し、そうして業界を統制していくということになれば、中小企業者や、あるいはまた消費者に対する顧慮が払われなくなる。これは主務大臣の立場から当然起きてくる悲劇です。松野長官の説明によれば、全部それらは大丈夫のように法律はできていると言っておる。文句はなるほど書いてある。しかし、こういう経済立法で、あんな倫理規定を、うしろにただ付けたところで、これは隠れみのになるだけであって、何ら法効果を出していないことは、これは過去の事実が雄弁に物語っている。特に首相に承わりたいのは、こういうふうにして、今まで微力ながら、消費者や中小企業者や農民の利益を守ってきた公取委を無用化するところの、こういう法改正というものは、結局するところ、ある識者が指摘しているように、今般の法改正というものは、通産官僚のこれは失地回復なんだ、こういうことを言っている。もしそれが事実であるとするならば、次に予定されることは、独占資本を中核として、あなたのお手のものの経済統制に移行するであろうということを、私はおそれるのでありまするが、首相はこの点をいかようにお考えになりますか。明確なる答弁を承わりたい。
 なお、小幡君も触れたのでありまするが、事重大でありまするので、重ねて聞きたいが、一体あなたは、カルテルを悪と見る原則、すなわち独禁法の立法精神あるいは今般の答申案の基本原理、こういう原則をどのように考えているか。そうして将来、一部の資本家階級にとっては目の上のこぶであるところの独禁法、また貧しき人々にとっては、ありがたいお札として日夜拝まなければならないこの独禁法、この独禁法を、一体あなたはどっちの方の利益のために、どういう方向でこれは維持するつもりなのか。折あらば、これを切って捨てて葬むるつもりなのか。あるいはまた、独禁法は捨てるけれども、経済基本法とも言うべき立法措置を行なって、経済界の再編成民主化でも行うというような、もっと膨大な基本的構想でもあるとするのか。あるとするならば、これは一応うれしい話でございまして、ぜひともこの際、あなたの本音を聞かしていただきたいと思うのでございます。
 次に、先般、独禁法第四十四条一項の規定に基きまして、三十二年度の年次報告が国会に提出されましたが、あの年次報告を、しさいに読んでみると、現在でも、カルテル、トラストができていて、こういうことを今後やってみたところが、不況をより長期化し、悪性化するだけで、解決されないということを指摘しておる。一体、岸首相は、これらの問題に対してどのように理解されるか。また、公取委員長は、先般の報告に責任を持つとするならば、なぜ、こういう正論を持っておりながら、この本法改正にあなたは同調したのか。その辺を一つ承わりたいと思うのであります。
 残念ながら時間がないので、棒読みで一つお尋ねしておきまするが、独禁法審議会の答申におきましては、独禁法の緩和とともに、公正取引委員会の機構の拡充及び人員の増加というものを指摘しておるのでありまするが、本改正は何もそれに触れておりません。一体これはどういうのか。ぜひ、この際お尋ねをしておきたいと思います。
 また、新聞の伝えるところによりますると、公取委を経済企画庁に移管すると、うわさされておりまするが、事実かどうか。そうして本改正に伴いまして、結局、消費者、農民、中小企業者、こういう経済的弱者に不利益をしわ寄せするものであると思いまするが、貧乏を追放すると呼号する岸首相としては、独禁法改正案をなぜ出さなければならなかったのか。日ごろおっしゃっていることと相反するように思うのでありますが、この際、明確なる答弁を私は要求するものでございます。
 松野長官に承わっておきたいと思いまするのは、そもそも、この法律案を出す理由は、輸出入問題において過当競争防止のために独禁法を改正するという世論の動きがありました。ところが、その問題は輸出入取引法の改正に譲られたようでありまして、本法改正の根本理由がなくなった、大義名分がなくなった、かように思いまするが、なぜ一体お出しになるのか。そうして本法改正によりまして、大体今まで適用除外法令というものが幾つかあったが、その改廃の必要があると思うけれども、これに対してはどのようにお考であるか。しかもまた、従来、独禁法があったために、日本の企業体において、産業界において、どのような支障があったとするのか。年次報告は、支障があまりないと言っておるが、あなたはどのようにこれを理解するのか。科学的な数字をもって、その理論的根拠をお示し願いたいと思うのであります。
 次に、公取委員長にお尋ねしたい。公取委員長は、第一代の委員長から数えて三代目であります。「売り家と唐様で書く三代目」という川柳がございますが、あなたのことを、公取委員長じゃなくて、公取委員会葬儀委員長だと皮肉る者があります。私はそれを信じたくない。しかし問題は、一体あなたは、公取委員長といたしまして、今般の独禁法改正案のこの方向をどのように理解するか。これをぜひ承わっておきたい。と同時に、今後独禁法の法体系の整備の必要があると思うが、法体系整備のために何か基本的な構想があるかどうか。これを聞きたい。
 また、具体的な問題といたしまして、最近、雪印とクロバーの両乳業会社の合併をあなたは認可した。これは、昭和三十年五月三十日の参議院商工委員会の議事録の速記によりまするというと、前委員長の横田氏は、明瞭に、名前をあげて、雪印とクロバーの合同は届出が出ているが、許可できない、十五条一項の違反であると言い切っている。それを、あなたは、今般認めたということは、一体、今度の改正を見越して政策的にこれを認めたのか、あるいはまた何者かの圧迫によったのであるか。率直大胆なる御見解を承わっておきたいと思います。
 通産大臣には若干質問があったのでございますが、かなりこの問題については小幡君が具体的に触れております。しかも、その答弁は必ずしも当を得たものではございませんけれども、まあ一応これは委員会に譲るといたしまして、私はこの際、二点だけお聞きしたいと思うことは、この輸出入取引法において輸出振興カルテルの改正を行うという、その一体、政治的、理論的理由は何なのであるか、これを尋ねたい。
 第二には、中小企業団体法の存在の意義を本法改正は失わしめるものであると思うけれども、これに関連して、団体法をあなたはどのように改正するのか、特に第九条改正を行う意図があるのかどうか。これは中政連を初めとして、中小企業団体員の多くの者が注目しているところでございますので、明快なる御答弁を承わりたい。
 あと一点だけ承わりたいので、若干時間の延長をお許し願いたい。本改正のため、カルテル緩和のため、農民に甚大な影響ありといたしまして、農民及び農民団体は、今日これに反対をいたしております。事実、今般の改正の不況カルテル、合理化カルテルにおきましては、カルテル行為の範囲が広げられまして、販売方法の制限、原材料の購入、買取機関の設置が加わるために、原材料生産者たるところの農林畜産関係においては、必ず買いたたきが行われるでありましょう。かつ、肥料関係におきましては、輸出関係ともからみまして、価格騰貴が予定されるのでありまして、弱い農民が苦しむことは必定であります。三浦農相は衆議院におきまして、主務大臣として、協議を受ける事前に、農山漁村の人々の利益を擁護すると言っておりますが、運用の面で解決するとあなたは考えているのかどうか。私はそんな考えはあまいと思うのでありますが、ぜひこの際、農相は、本会議を通じまして、明快なる答弁をもって、多くの関心を持つ農民に対して安堵を与えていただきたいと存ずるのであります。
 以上、簡単でありますが質問をいたします。誠意あるところの答弁を期待いたします。
#13
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 経済政策の基本として、われわれはあくまでも公正かつ自由な競争を確保して、これによって国民経済の健全なる発達をはかっていかなければならない。いわゆる独禁法の基本的精神につきましては、あくまでもこれを堅持すべきものと私は考えております。しこうして、今日の改正が、相馬議員の言をもってすれば、独禁法のこの基本的精神をじゅうりんして、骨抜きにするものであるということを御心配のようでありますが、私は決してそう思っておりません。これは、今回の改正の条項を各項目にわたってしさいに御検討下されば、そういうことを意図しておるものでないことは十分に御了解いくと思います。ただ、問題の非常に必要な事柄は、法制度を作ると同時に、この法制度そのものがそういう根本精神に矛盾しないとか、あるいは根本精神を骨抜きにしないということについて考慮すると同時に、その運営の上において十分にこれを考慮しなければならぬということであります。この制度を立てることと、運営の問題と、両方において、十分私どもは、この独禁法の基本的精神はあくまでもこれを堅持し、貫いていく考えでございます。
 しこうして、経済の問題として、特に独占禁止法に関連して、中小企業者や消費者や、あるいは農民等に対しての考慮を十分にしなければいかぬ、これらの利益を害し、膨大なる独占資本によるところのしわ寄せをこれらのものにさしてはいかぬという御心配につきましては、私も同感でありますし、今回の立案につきましても特に意を用いておるところであります。しこうして、産業全般の政策として、さらに中小企業対策や、あるいは農林業対策、あるいは社会保障制度の拡充等を十分考えていく必要があるというお考えにつきましては、私も全然さように思っております。言うまでもなく、この経済政策、政治の根本が、国民生活の向上安定、また国家としてはあくまでも平和福祉国家を理想に持って、これを内容づけるような経済政策をとっていかなければならぬことでありますから、一部の独占資本家の利益を擁護して、多数の消費者あるいは中小企業者等の利益をじゅうりんしておるというようなことは毛頭考えておらないのでありまして、十分にわれわれとしてはその点に意を用いていかなければならないと思います。
 また、国際的の情勢として、独禁法の強化、また西独の独禁法のことについての御意見がございました。これは言うまでもなく、自由主義、資本主義経済を基本として経済政策をとっている国におきまして、今申しましたように、公正かつ自由な競争を確保するために、独占形態が強大になり、これが公正かつ自由な競争を妨げるということのないように、独占禁止法を設け、もしくはこれらを強化していくという情勢にあることは、御指摘の通りであります。ただ、問題は、各国の経済事情は必ずしも一様ではございません。また、独占禁止に関する従来の沿革も、それぞれ異なっております。相馬君もよく御承知のように、大体カルテルの思想はドイツにおいて最も戦前には発達し、最も強いカルテルの形態が行われております。あるいはさらに、それが国内だけではなしに、国際カルテルにまで強力な力を持っておったことも御承知の通りであります。それが戦後こういうものが一挙に廃止せられ、さらに、いろいろな面における隠れたカルテル等についての取締りも、ドイツにおいては非常に意を用いられてきたところであります。しこうして、そういう状況にありますが、各国の独占禁止法の内容を検討してみますというと、日本の戦後に作られたところの独禁法というものは、これは世界にも多く例を見ないようなきわめて厳格な条件のもとに独禁法が制定されております。今日強化されたといわれております西独の独禁法の内容と、今回われわれが改正をする、緩和したというこの独禁法の内容を、比較検討してみまするというと、私は、決して日本の、われわれが緩和したものが、国際的にどの何よりも骨抜きにしたものであるという結論には絶対にならぬと思います。要は、その国の実情と、また御心配になっておる消費者や、中小企業者や、弱小産業に対する十分な保障を、制度の上において、あるいは運営の上においてとるということであろうと思います。
 日米通商条約の十八条との関係の御心配でありますが、私どもはこれに抵触するものとは認めておりません。
 さらに、窓口として主務官庁を経由するということが、公取委員会の無力化になりはしないかという御心配でございます。私は、このカルテルというものが成立するというのにつきましては、いろいろな産業事情、経済上の事情、経緯がございます。また、一国の産業政策とのにらみ合せも考えなければならぬと思います。また、主務官庁は決して、独占資本家だけの、大企業だけの利益を擁護するものではなくして、たとえば農林省は多数農民の立場からの意見も十分に反映する、通産省も、中小企業の主務官庁として、中小企業の立場につきましても十分に考えておるのでありまして、これらのものを十分に事情を明らかにして、最後の決定におきましては公取委の中立性を十分に認めて、これによって決定されるということを考えております。これは、私はむしろ運用を実情に即応せしめ、十分にこの中小企業や、あるいは農林業、消費者等の立場を考える意味においても必要と思っております。何かこういうことをすることが、経済統制、あるいは戦時中等の御記憶から特に私を指摘して、経済統制をやる意思があるのではないかという御質問であると思いますが、当時の事情と今日の経済事情が全然違っておることは、私が申し上げるまでもないことであります。私は、先ほど来申し上げておるように、やはり経済の基本として自由経済を基礎に置き、公正かつ自由なる競争をあくまでも確保するという独占禁止法の精神を堅持するということを申し上げておりまして、従って、戦時中の経済統制のごときものを夢にも考えておるものではないということを明瞭に申し上げます。
 公取委員会の機構の改正拡充等について、何らこれに触れておらないがどうかというお話でありますが、この点につきましては、関係各庁との間で十分検討をいたしておりまして、適当な公取委の内容の拡充につきましても十分考えております
 また、経済企画庁に移管することについてのお話がありましたが、私どもは、ただいまのところ、そういうことは考えておりません。
 さらに最後に、独禁法をこういうふうに緩和するということは、私が申し上げておる貧乏追放に逆行するものではないかという御質問でございます。私はとにかく貧乏追放ということはあらゆる面から非常に努力をいたしておりますが、なかなか一日にしてその目的が達せられないことも御了解いただけると思います。要は、やはり経済の繁栄拡大を一方に考えると同時に、社会保障制度を拡充することによって、私は貧乏追放に邁進したいと考えております。その経済拡大の上からいって、日本の経済を繁栄拡大せしむるためには、やはり安定と、特に輸出貿易の増進を考えることが、日本の産業の特質から大切であると思います。この意味におきまして、今回の改正につきまして、特にこの不況対策の、これの安定を作り上げるということと、国際経済競争力を拡大する意味における合理化カルテルを緩和するというところに重点を置いて考えておるということは、私は、日本の経済の特質からいって、日本の経済の繁栄拡大をはかるためには、やはり安定と、こうした国際競争力を増さしめることが必要である。こういうふうに考えておるのでありまして、しこうして、これが同時に消費者や中小企業等の弱小なる企業に及ぼす影響につきましては、先ほど来申し上げておるように、十分に考慮を払って、これがそういう人々の貧乏を増加するようなことにならないように、十分に考えておるつもりでございます。
#14
○国務大臣(高碕達之助君) 私に対する御質問の二点についてお答えいたします。
 今回の独禁法改正以外に、輸出入取引法を改正してこれを別に置いたということにつきましては、輸出振興ということが今日の重要政策でありますから、現在の輸出入取引法を抜本的に改正いたしまして、これは輸出業者もこれを登録制にするとか、あるいは今回の独禁法ではうたっておりませんアウトサイダーを、これを規制するというふうな点に重点を置きたい、こう存じまして、これを全然別にしたわけでございます。
 第二の御質問の、今度の独占禁止法改正に伴って、中小企業団体法が必要ではないんじゃないか、こういうことにならぬか、こういう御質問でございますが、これは政府といたしましては、中小企業は、今日、輸出振興におきましても、また、雇用を吸収する点から言いましても、絶対必要でありまして、これをもっと強化するというために、商工組合の結成等も、もっと容易になるようにし、さらに、これをもっと増進していきたいと、こういうわけでありますから、従いまして、第九条は、今日の状態といたしましては改正するの必要はないと存じております。
#15
○国務大臣(三浦一雄君) 相馬君の御質疑に対しましてお答え申し上げます。
 今回の独占禁止法改正によりまして、農民の利益を害し、あるいは農畜産物等の買いたたきの目にあうようなことはないかということの要旨だと思いますが、先ほども御説明ありました通り、今回の改正のうち、カルテル等の認許可に当りましては、農山漁村の利益を害せざることを第一の条件にいたしております。
 第二には、原材料等の購入につきましては、合理化カルテルにつきましては、当該の原材料の生産の事業の健全な発達に資するものでなければこれを許さない、こういうふうにもなっておりまするし、さらにまた、原材料の生産の事業の健全な発達に資するかどうかという判断につきましては、農林大臣は有権的にこれに関与し得るの道も開いてございます。
 第三番目には、独占的な買い取り機関の設置であるとか、あるいは独占的な販売協定等は、合理化カルテルにつきましても、これは認めないということになっておりまするし、不況カルテルの場合につきましても制限的にしておるような次第でございます。特に農業生産上重要でありまするところの肥料等につきましては、販売業者はもとより、生産業者等の販売の制限に関するカルテル等につきましても、公取の行います事前に農林大臣は有権的にこれに関与し得るの道を開いたのでございまして、これらの条項につきまして、細心な注意を払い、周到な用意のもとに農村の利益を擁護して参りたいと考えておる次第でございまして、これらの法規とその制度を十全の用意をもちまして運用して、農山漁村の利益の擁護の十全を期したいと考えておる次第でございます。
#16
○政府委員(松野頼三君) お答えいたします。
 輸出入取引法に輸出カルテルを譲りましたことは、輸出カルテルという大きな場面が国内の消費者及び一般産業に及ぼすことをおそれまして、輸出入という特定なものに限って行います特定な輸出入取引法に譲ることが妥当であると感じました。なお、答申の中には、輸出入取引以外に、日本の経済の実情に沿い、国際競争に対処する基盤の強化、過当競争の防止という項目が大きな項目でございますので、今回の独禁法はその大項目を中心に改正をいたすことにいたしました。
 第二番目の適用除外法でございますが、輸出入取引法あるいは中小企業団体法あるいは農業協同組合法等は、そのもの自身の特殊性に応ずるため必要な除外法でございますから、今回この改正については、当然必要な除外法はそのまま存置いたす所存でございます。
 第三番目の年次報告でございますが、年次報告をごらんになると、よくおわかりのように、中小企業団体法において三百数十のカルテル行為が結ばれております。そのほかに、いわゆる勧告操短というものが大幅に行われ、あるものは第五次あるいは第六次、なおそれでもその条件を緩和することができないというような不況なものがたくさん出てきておる、という意味のことを年次報告には書いてございます。すなわち、これから申しますならば、今日、独禁法において許可されたものは、不況カルテルで二件、あるいは合理化カルテルで四件でございます。いわゆる年次報告で五百数十として指摘しております中に、今日の独禁法において公取の許可を得ましたものは二件と四件にしか当っておりません。すなわち、これは今日の独禁法があまりに厳格過ぎて、高いところにありまして、現在の経済に合わないということを物語っておる証拠でございます。計数をあげて御説明申し上げました。
#17
○政府委員(長沼弘毅君) お答えいたします。
 私といたしまして、今回の法律改正に何ゆえ賛成をしたかという御質問でございましたが、この法律の制定以来、今日のわが国の経済事情というものは大きく変っております。この法律の改正によりまして何らか新しい事態を持ち来たそうという前提に立っておるものではございません。経済の実情に即応して、何ら弊害のないという改正であることを確信いたしたからでございます。
    ―――――――――――――
#18
○議長(松野鶴平君) 田村文吉君。
#19
○田村文吉君 私は緑風会を代表して、本案に対し、若干の質問を試みたいと思います。
 通称独禁法は、昭和二十二年七月、経済民主化の名のもとに占領軍の強制によって作られたものであります。当時その内容が日本の実情に沿わないものがあったため、衆参両院ともこれが通過を渋ったのでありましたが、これに業を煮やしました占領軍のたしかウェルシュ氏とかいう人でありましたが、衆参両院の商工委員全部を衆議院の委員会室に集めまして、これが両院通過を絶対的に要請する旨の強硬な主張がありましたので、いわゆる泣く子と地頭には勝てないので、会期ぎりぎりで両院が通過させたことを覚えております。けだし、当時の占領軍といたしましては、戦前の日本経済を過大に評価し、今後の日本経済を弱体化し、これを農業国に転落せしめ、人口の増加を抑制し、再び立ち上ることのできないようにという冷厳なる考えのもとに、名を民主化にかりて、財界の解体とともに、集中排除、共同行為の禁止を強制したものにほかならなかったのであります。同じケースにおきまして、同年の二月、西ドイツでも占領軍命令として施行されたものであります。その後、数次の改正を見て今日に至ったものでありますが、この法律では、根本的に一つの矛盾を蔵しておるのであります。それは、不況カルテルあるいは合理化カルテルのいずれを問わず、かりに法の命ずるごとくあらゆる共同行為が正確に禁止されましたといたしたならば、それが、物資が非常に不足しておりました昭和二十五、六年ごろまでならいざ知らず、今日のように、設備過剰、生産過剰で、いわゆる余るものに値がないと申すことわざ通りに、市価がはるかに原価を割ることが継続した場合には、その企業の大多数が没落せざるを得ません。その従業員は支離滅裂して、大量の失業群を出し、たまたま残った優秀な資本を擁するものが自然的に独占的に業界に君臨することになるのであります。この法律のねらう独占排除が、カルテルの否定によって逆に独占奨励となるおそれが多分にあるのでありまして、その最も適例は、この法律の本家本元でありまする合衆国が、独禁法を施行して、ますます大きな資本家を造成しているのであります。われわれ日常手近な例で申すならば、新聞でありますが、もし各新聞が他を圧倒せんがために定価をくずし、勝手な自由競争をすることなどあるといたしましたら、いわゆる優勝劣敗で、残る新聞は二、三にとどまることも想像されるのであります。この法律の矛盾について、政府はどうお考えになっておられまするか、伺いたいのであります。
 次に、この問題は、自民党として、岸総理としても根本的のお考え方を指向することになるのでお伺いしたいのでありまするが、総理は、本法案に対する衆議院における田中武夫君の質問に答えて、「あくまでも自由経済の建前をとっている。計画経済、社会主義によって、一つの意思でもって計画を定めて、国家権力によって遂行する考え方もある。しかし、私どもは、そういう考え方をとっておらない。自由経済の場合には過当な競争が出てくる。この行き過ぎた過当競争を民間の自主的な調整に待つのが要するにカルテルである」と、大体さような意味で御答弁になっております。これはまことに筋の通った御議論であると思います。ただしかし、これは岸総理が絶対的自由主義をお述べになっているわけではなく、過去の御経歴によって起る世間の誤解を払拭するために、ことさらに自由主義を強調せられるのにすぎない。今日の世界観、経済観からしまして、絶対社会主義とか、絶対自由主義とか、絶対資本主義などによる政治は成り立ち得ない。すべての企業の国有化などは、国民の一割も虐殺するくらいの革命でもない限りあり得ない。そうかと申しまして、現にわが国でやっているように、財政投融資にいたしましても、鉄道電話等の企業が変形はされても依然国営になっていることなども、いわゆる資本主義、自由主義を修正しているものでありまして、それはそれでよろしいのではありますまいか。今後、さらにますます、しかし、徐々に、国民を代表する国会、国会によって選ばれた政府が、必要によって、国民全体の利益のために、必ずしも国民の自発的のみによらずとも、各種の施策を行うことはあり得る。たとえば政府が産業を守るためにカルテルを造成せしめる。あるいは二重投資を禁抑するというようなことがあってもよろしいのではないか。その辺のお考えを伺いたいのであります。
 以上の考え方からしまして、主として今度の改正の主眼点である不況カルテルに関して、三つの点を総理あるいは総務長官から御所見を承わりたい。
 その第一は、政府は、今後もいわゆる勧告操短、勧告設備制限等をおやりになるつもりかどうか。これをお尋ねするわけは、落下傘は落ちてから開いても何にもならないとともに、いかなる場合でも、同業者間に一、二の異論が出て、カルテルがまとまらない場合が多いものであります。このような場合、政府は大勢を達観して勧告操短をする必要のある場合があるのではないかと思うのでありまするが、どうお考えになっておりまするか。
 その第二は、長年にわたる景気の見通しは、なかなか困難である。すでに今日の現状から見まして、設備過剰であることは御承知の通りであり、さらに設備は日進月歩合理化されて参る。すると、ある程度は常に設備の余剰が残る。従って、企業の安定をはかるために、若干の生産調整は常に必要である。これを政府がやるか、カルテルにやらせるかであります。すでに民間のカルテルにやらせると考えられる限り、継続的のカルテルは必ず必要となると思うが、これを許可するお考えがあるかどうか。
 第三に、独禁法適用除外の法律が相当数多いのであります。今後も必要に応じ、この種の立法に応ずるお考えか、それとも漸減する御方針でありまするか、お伺いいたしたいのでございます。
 次に、総理大臣にお尋ねいたしたいことは、本法案と直接の関係はありません。しかし、いかにも刻下、経済界緊急の問題でありますので、あえてこの機会に御所見を伺いたい。
 第一は、金利の引き下げの問題でありますが、これは経済安定のため、世界的に見てわが国の金利を引き下げることは緊要でありまするが、さりとて金融緩慢の実質が伴わないで政策的に金利の引き下げを提唱されても、その実があがらない、昨今の証券市場の変動とあわせ考えて、金利政策に対しどう考えておられまするか、伺いたい。
 第二は、政府は、貿易の振興について非常の努力を払われる御決心と考えております。そこで、対米、対カナダの隣邦に対する貿易が常に輸出入のバランスを失っております。申すまでもなく、米加両国の人口は一億九千万に過ぎませんが、その購買力は中共及びインド十億の人口の購買力の五倍あるいは七倍を持っているのでないかと思うのであります。アジアの貿易の振興はもちろん必要であります。しかし一衣帯水の地にかの富める国があるのであります。しかも政治的にきわめて親善の関係にあるのでありますから、この際、日米加三国の経済市場共同体のようなものを作っていくお考えが出ませんかどうか。
 第三に、今次の独禁法の提案に当っても、わが国経済基盤の薄弱を嘆いておられます。第一に、企業資本の構成が、ただいま三木長官が申されましたように、借入資本が七割にも相なって、きわめて不健全である。そこで私は、第一、第二に述べた問題に加うるに、法人税に関する政府の根本的考え方を発展させていただきたいと思うものであります。昭和十年における臨時利得税を加えました大中小法人税相当額は、所得に対し九分二厘であったのでありまするが、今年度は実に三割八分強と相なっております。実に驚くべき高率でありまして、これでは断じて資本の蓄積も企業の合理化もできっこありません。日本の経済基盤を立て直すためには、何はおいてもこの問題を解決しないでは絶対不可能ではないかと思うのであります。御所見を伺いたいのでございます。
 以上をもちまして私の質問を終ります。
#20
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 私も、さきにお答えを申し上げましたように、政府としては、やはりこの独占禁止法の根本精神である公正かつ自由の競争を確保して、国民経済の健全な発達をはかるというこの根本は、あくまでも堅持していかなければならぬと思います。ただ、日本の経済の事情が、先ほど来論議がありましたように、いろいろな事情から、非常に過当競争が多く、その公正かつ自由の競争という名目のもとに、過当なあるいは不当な競争すら行われて、企業が倒れる、そうして産業全体の非常な危機を生ずるというような事例も少くないのであります。そういうことをそのままにしておきますというと、かえって今御指摘になったように、独占禁止法によって独占形態を作り出しはしないかという御心配も生ずるのでありまして、要は、経済の実情に合って、公正かつ自由の競争を確保しながら、過当競争に陥らないように、経済が常に安定した基盤の上に発展していくように考えなければならない。この上において、やはり経済にある一定の計画性を持たせなければいかぬ。われわれはいわゆる社会主義によるところの計画経済というようなことは考えておりませんけれども、やはり長期にわたる見通しを立てた計画は立てると同時に、その線に沿うて調整を行うのには、やはり業界の自主的な調整の作用を重視していく、すなわち業者間の協定カルテルの形において、これの過当競争というものの弊を防いで、そうしてこの根本である公正かつ自由の競争を確保していくということが望ましいと考えておるのであります。今回のわれわれの提案しておりまする改正案も、そういう趣旨で、カルテルというものの弊害を一方においては防ぐと同時に、そのいい面における作用によって、業界の安定、また、これに基くところの日本経済の発展を考えていきたいと、かように思っておるのであります。
 最後に、金利の引き下げの問題、対米、対加貿易の問題、資本蓄積の問題についての御質問でございます。私は、日本経済の一つの欠点は、金利が非常に高いということであると思うのです。国際水準に比較してみまして、日本の金利が非常に高いことは、われわれの目にすぐつくことであり、これが日本経済の発展の上、各産業の、企業の経営の上において、大きな負担になっているという実情を考えますというと、この引き下げ政策をとっていくということがどうしても必要であります。しかし、ただ単に公定歩合の率を引き下げたから、それでいいのだということではございませんで、やはりその裏づけとしての資本が、金融事情というものを十分に緩和するような健全な金融政策と相待って、初めて、この金利引き下げができるわけでありますから、われわれとしては、金利引き下げの方向にあらゆる金融政策を向けて参りたい、かように思っております。
 アメリカ及びカナダに対する貿易関係が、非常に片貿易になっておる、しかも、これらの国は、購買力においても非常に大きくあり、日本との関係も深い関係であるから、この貿易バランスをとるように、いろいろと交渉もし、努力もしなければならぬというお考えにつきましては、全然私もさように考えております。ただ、それについて、何か共同体というふうなものを作り上げる考えはないかというお話でありますが、そのことは、今日においてはまだ考えておりません。いずれにいたしましても、最近の外務大臣のカナダ及びアメリカ訪問におきましても、この貿易バランスの問題に関しては、隔意のない話をしておりまして、漸次、本年におきましても、対米貿易の状況は、昨年に比して相当改善を見つつありますが、今後におきましても、そういう方向で努力をしたいと思います。
 次に、日本の企業資本の構成が、非常に借入資本が多くあって、自己資本が非常に割合が少い、これが企業の弱体を招いている一つの大きな理由であるから、資本蓄積をやらなければいかぬ、それには法人税の改正をすべきであるという御議論、御趣旨につきましては、私は同感でございます。ただ法人税の問題に関しましては、今、税制懇談会その他において、全部の税制について検討をいたしております。御承知のような財政の事情もございますので、直ちにこれをもって、これだけを思い切って資本蓄積の実のあがるように改正できるかどうかにつきましては、なお検討を要すると思いますが、御趣旨につきましては私は賛成でございます。
#21
○政府委員(松野頼三君) お答えをいたします。
 勧告操短の問題につきましては、今日行政指導によりましてほとんど相当大幅に行われまして、産業別にいたしましても数にいたしますと相当なものが今日勧告操短を継続しております。しかしながら、今日の勧告操短そのものではなかなか解決ができませんし、またそのまま放置することはかえって不明確な点もございますから、この際、独禁法の改正によって、厳正な条件のもとに、これは大部分が吸収できると存じます。がしかし、特殊な事情、産業界が非常にまとまりが悪い、あるいは緊急な事態で産業政策上必要だというときにおいては、あるいは残るかも存じませんが、一応大部分の場合は、今日の勧告操短は公取の不況条件に合致あるいはその運用になると思います。
 第二番目の、不況条件が継続した場合、カルテルを継続するかというお話でありますが、これはもっぱら条件次第によってきめるべきものであって、今日相当長期的に麻のカルテルは行われておりまして、期限が切れましたけれども、なおその要件を満たすに至っておりませんので、あらためて審査をいたして継続いたしておりますので、継続するかしないか、長期化するかしないかということは、産業の実態に応じてこれは判定することが妥当だと存じます。なお、今回の改正案の中に、短期間の三ヵ月の期限付というものは、これは反復いたす所存はございません。これは三ヵ月だけで、再びこの継続は考えておりません。
 第三番目の適用除外法でございますが、独禁法は御承知のごとく全般的な全産業共通のものでございまして、特別に、特殊事情によっては、いわゆる特殊立法というものが除外法としてできておりますが、この除外法の数も相当大幅になって参りました。しかし、除外法は、相当大幅に独禁法に抵触するものと、一部抵触するものと、おのずからその産業の事態に応じて変っております。従って今回は、除外法というものは、一応私たちは現状の特殊事情に応じて認める所存で、今回の改正をいたしております。
    ―――――――――――――
#22
○議長(松野鶴平君) 大竹平八郎君。
#23
○議長(松野鶴平君) 暫時休憩いたします。
   午後零時三十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後二時三十一分開議
#24
○議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨説明に対する質疑を続けます。大竹平八郎君。
#25
○大竹平八郎君 ただいま議題になっておりまする法律案につきまして、無所属クラブを代表いたしまして、若干の質問をいたしたいと思うのであります。詳細につきましては、いずれ委員会に譲りますが、ここには本改正案の根本方針を中心といたしまして、関係大臣の御見解をお伺いいたしたいのであります。独禁法が経済民主化の基本法でありますることは、すでに小幡、相馬議員の力説した通りでありますが、その基本法がなしくずしに崩壊していくように感ぜられまするので、この点、特に岸総理の御答弁をわずらわしたいのであります。
 私は、中小企業団体法案のときにも申し上げましたが、統制はさらに統制を呼び、カルテルはさらにカルテルを呼ぶ。団体法というような法律によって中小企業を団結させることが、かえってカルテルを呼び、ついに独禁法の緩和になりはしないか。これをひそかに心配していたのでありますが、やはり、現実はその通りになって、今回の改正になってきたものと考えるのであります。昭和三十二年度の公正取引委員会の年次報告にも、カルテルの波及性と相互強化をうたっております。不況カルテル、合理化カルテルを緩和することが、やがて日本をして全面的なるカルテル時代を出現することになりはしないかを内心おそれるものであります。現在の独禁法の改正では、自主調整を主眼としており、官僚統制の弊害はないようにいたしておりますが、昭和二十八年の改正で、独禁法の外堀は埋められたのであります。三十三年の今度の改正で、内堀がまさに埋められようとしておるのであります。そうして、むき出しの天守閣があるだけになるのでありますが、この天守閣さえも、すでに団体法その他の除外立法の成立で、大小幾つかの弾丸が命中しておるのであります。こうなると、簡単に独占禁止政策そのものが敗れ去りまして、独占奨励政策に転ずる危険を持つのであります。顧みますれば、昭和六年の重要産業統制法は、まさにその適例と言わなければならないのであります。同法によりまするというと、一定重要産業では、業者の二分の一以上が加盟してカルテルを作った場合、加盟者三分の二以上の申請があり、かつ、産業の公正なる利益の保護及び国民経済の健全なる発達のため特に必要ありと認めた場合には、カルテル協定への服従を全業者に強制することができるという法案であります。あたかも、中小企業団体法の員外者規制命令のごときものであったのでございます。私は、団体法の審議のときに、一九三三年のドイツの強権経済立法を引用いたしまして、政府に警告を申し上げたことがあるのであります。重要産業統制法といい、戦前ドイツのカルテル法といい、これらの諸立法が国家総動員法への前駆者であり、やがて民主国家を壊滅に導いた事実を私どもは振り返りまするというと、今より十分警戒をしなければならぬと、かように信ずるのであります。従って、私は、今回の独禁法改正が、こうした統制経済への路線を築くものでないという、その点に関しまして、重ねて総理の御信念のほどをお伺いいたしたいと思います。
 いま一点、総理にお伺いいたしたいことは、独禁法は、労働立法、それから農地解放とともに、終戦後、日本の基本的大法案の一つであることは御承知の通りでありますが、独禁法の逐次改正によりまして、その波及が、無血革命といわれました農地解放の補償問題の攻勢に拍車をかけやしないか、もちろん、一律に申せませんが、一部には、同案によりまして悲惨な生活を続けておる者もあるのであります。すでに聞くところによりますると、自民党内部にも本問題の調査会ができまして、そうしてこの問題につきまして甲論乙駁があるやに聞いておりますが、この際、総理の御所見を承わっておきたいと存ずるのであります。
 次に、高碕通産大臣に二、三の点につきましてお伺いをいたします。
 過当競争を救うために不況カルテルの設立を容易にするといいますが、果して、過当競争の産業においてカルテルが設立せられるでありましょうか、こういうことであります。これは、さきに中小企業団体法において、「中小企業の過当競争を救うには、加入、脱退自由の商工組合だけではだめだ。員外規制命令が必要である。いな、員外規制命令の前に強制加入命令が必要だ」と称しまして、われわれの主張しました第五十五条の緩和ないし削除に賛成しなかったことは、これは皆さんのはっきりした記憶に新たなるところであります。独禁法を緩和いたしまして、不況カルテルの設立を容易にいたしましても、過当競争のある産業の多くは企業の数の多いのが普通でありますから、なかなか業界の歩調が一致しないのではないか。業界が一致しやすいのは、企業の集中の著しい産業部門で、そこでは過当競争も比較的少い部門ではないのでありましょうか。そうなると、過当競争の少いところの産業部門は比較的容易にカルテルを結成し、独占価格をもって消費者の方に臨む危険はないであろうか、この点をお答えいただきたいと思います。そうしてまた、過当競争のあると認定せられる産業部門でカルテルが作れないとき、おそらく、従前のように勧告操短が行われ、あるいは員外者規制命令のごときも必要とせられ、やがて大企業にも中小企業と同様の統制を行わんとするに至るであろうことが想像されるのでありますが、この点もあわせてお伺いいたしたいのであります。
 次にお伺いいたしたいのは、これは総務長官あるいは公取委員長に、一般消費者との関係につきまして、並びに関連事業者との利益をいかに守るか、こういう点につきましてお伺いいたしたいと思うのであります。すでに一応の御答弁もあったようでございますが、中小企業者に対しましては、さきに団体法を通過せしめて、その利益擁護を策した、この団体法がどれだけの効果を持ったかといいまするならば、これは単なる宣伝にすぎなかったと言っても私はあえて過言ではないと思うのであります。しかし、とにかく団体法を作って、大企業と太刀打ちができるようにしたのが、今回は、その大企業に対してもルカテル結成を容易にするのであります。これでは、せっかく中小企業に与えた特権が特権ではなくなってしまうのであります。左手にパンを与えて、右手に大きなむちを振り回す、こういう状態になっているのであります。しかし問題は、先ほど相馬議員も指摘をいたしましたごとく、消費者の問題でございます。中小企業も、大企業の製品を買う、こういう意味においてはやはり消費者なのであります。一般消費者ほど団結力のまた弱いものはないのでありまして、団結できるものは団結をして、その利益を擁護せよ、というのが政府の方針であるらしいように聞いております。その団結の比較的容易な大企業にカルテルを容認しながら、消費者の団結について何も考えていないのは、はなはだ遺憾至極と言わなければならないのであります。一般消費者の利益は、元来、政府において守らるべきものであり、その意味におきまして、独禁法はその唯一の信頼すべき法律でありましたのに、その法律がこのように緩和されて、独占容認法になり下ろうとしていることに対し、消費者は大きな不満を持っているのであります。中小企業者並びに一般消費者の利益を守るために、公取はいかなる計画を持っているか、この際、重複はいたすかもしれませんが、明確な御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終ります。
#26
○国務大臣(岸信介君) 御質問にお答え申します。
 今回の独禁法改正の趣旨につきましては、立法の提案の趣旨説明及び午前中の質疑応答において明らかにいたしましたごとく、私どもは、あくまでもやはり根本精神である公正かつ自由な競争によって国民経済の健全な発達をはかるという、この独禁法の根本精神については、あくまでもこれを堅持しなければならない、また堅持すべきものである。ただ、その実際の適用の状況を見まするというと、やはりわが国の経済産業の実情にこれを適するようにすることが必要である。すなわち、いかに薬でありましても、それがまた根本的にはきくにしましても、それが及ぼすところの影響、また、それが受けるところの体質――経済の実態というものに合わないというと、せっかくこの大切な原則というものが、十分に経済の発展や国民全体の生活の安定や、あるいは国民経済の健全な発達ということに資しない。ことに日本のような小さい企業や、あるいは人口が多いとか資源が十分でないとか、あるいはまた合理化が十分にいっておらないために、国際競争において優越した地位を占めることができないというような状況にあり、いわゆる経済の底の浅い所におきましては、この独禁法の制度のこまかい運営や、その他の問題につきまして、十分に実情に合わせるように考える必要がある。今回の改正は、従来ありますところの不況カルテル、合理化カルテルというものに対する従来の条件を幾らか緩和する、そうして実情に合わして、経済を安定し、また、国際競争力をつけるというところに重きを置いておるわけでありまして、根本精神には何の変りはございません。従って、御心配になっているような産業統制、これは先ほども相馬君の御質問にお答えを申し上げたのでありますが、当時の日本の置かれていた事情と今日とは全然違っていることも御承知の通りでありまして、私は、そういう意味において、産業統制に向って進んで行くとか、あるいはそういう方向を政府はとるというような考えは、毛頭持っておらないものでありまして、その点は十分に一つ御理解をいただきたいと思います。
 次に、農地解放の問題に関連しての御質問でありますが、これは言うまでもなく日本の農村におけるいわば一つの革命的な事業でありまして、この農地解放の原則そのものを後退せしめるとか、あるいはその効果をなくさしめるというようなことは、これは絶対に考えるべきものではないし、また、これについていわゆる補償というような意味のことをすべきものでないことも、すでに国会におきまして申し上げておる通りであります。ただ、今御指摘になりましたように、これが非常な変革であったために、農村における一つの社会問題として、決してこれを軽視することのできないような事態が起っておることも、かれは事実でございます。政治がようやく安定し、経済が安定してくるということになりますと、それをやはり社会問題として取り上げて、これに対する適当な方策を研究していくということも、これも私は当然であろうと思います。そういう意味において、自民党内にそういうものを調査研究の組織を設けておるわけでございます。この独禁法の改正は、この問題とは私は全然関連のない問題だと考えております。
#27
○国務大臣(高碕達之助君) ただいまの御質問は、大企業は少数であるからきわめてカルテルが作りやすい、中小企業は多数だからカルテルは作りにくい、その間の格差が出て困る、こういう御質問のようでありますが、大企業はなるほど少数でありますから、アウトサイダーの規制は設けておりませんが、合理化のための競争あるいは海外関係の競争というものが非常に激甚でありまして、これは、なかなかカルテルを作るということについては、そう簡単にいかない。よほど自覚し、ほんとうに不況になったということを自覚して初めてできることだと思います。ところが中小企業の方は、むしろ数が少いものでありますから、これの組合を結成させることを容易ならしめるためには、アウトサイダー規制を十分にしてやらなければいかぬ、こういうわけで、中小企業団体法にはアウトサイダーの規制をうたっておるようなわけであります。
#28
○政府委員(松野頼三君) お答えいたします。
 一般消費者に対する保護の規定は、各条項に明記してございますが、これは、いわゆる精神立法にあらずして、カルテル認可の重要要件でございます。従って、一般消費者及び中小企業者、農民、漁業者を圧迫するがごときカルテルの認可は不可能でございます。同時に、一たび認可したカルテルが、その要件を具体的に現わしました場合には、直ちに取り消し命令ができるようになっております。合併の場合には再び元の原型に分離するような強制的な命令権も与えております。従って、消費者に対する保護規定は、法文上も運営上も十分万全を期し得るものと信じております。なお、今後の認可権の問題につきましても、中立機関である公取が認可権を持ち、主管省は経由するだけでありまして、あくまでその認可は公正な公取に移しておるということ自身が、一般国民経済を守り、あるいは消費者を守るという地位に立って、今回の立法をいたしました。なお、将来この合理化及び公正取引によって、一般国民大衆に対して、日本の経済の総体的の中において、今後の運営が合理化されるならば、これが公取の言う第一の独禁法の精神に合致するものと信じております。そのほか、利害関係者は三十日以内に不平の申し立てができるようになっておりまして、この点については、中小企業、一般国民、農民、漁業者に関しては、その辺におきましても万全を期しております。
#29
○政府委員(長沼弘毅君) お答え申します。
 ただいま総務長官からお答えを申し上げたようなことでほとんど全部尽きております。今回の改正法によりまして会社の合併、不況のカルテル、合理化カルテル及び公正取引規約というのが認められることになっておるのでありますが、その各条項におきまして、一般消費者の利益を侵害しないということが、消極的な条件になっております。この条件を満たさない限りにおきまして、カルテルの許認可というものはいたさないことになっております。御懸念のようなことは全然ないと存じます。
#30
○議長(松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
 次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十一分散会
     ―――――・―――――
○本日の会議に付した案件
 一、日程第一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案
     ―――――・―――――
 出席者は左の通り。
   議 長     松野 鶴平君
   副議長     平井 太郎君
   議 員
    松野 孝一君 竹下 豐次君
    常岡 一郎君 山本 利壽君
    手島  栄君 中野 文門君
    杉山 昌作君 島村 軍次君
    松平 勇雄君 武藤 常介君
    河野 謙三君 北 勝太郎君
    岸  良一君 最上 英子君
    松岡 平市君 田中 啓一君
    石黒 忠篤君 森 八三一君
    青山 正一君 藤野 繁雄君
    堀  末治君 早川 愼一君
    谷口弥三郎君 新谷寅三郎君
    木内 四郎君 紅露 みつ君
    田村 文吉君 村上 義一君
    左藤 義詮君 本多 市郎君
    鶴見 祐輔君 笹森 順造君
    江藤  智君 成田 一郎君
    西田 信一君 鈴木 万平君
    稲浦 鹿藏君 吉江 勝保君
    塩見 俊二君 前田佳都男君
    三木與吉郎君 青柳 秀夫君
    雨森 常夫君 小西 英雄君
    館  哲二君 山本 米治君
    大谷 贇雄君 田中 茂穂君
    有馬 英二君 大谷 瑩潤君
    苫米地英俊君 小柳 牧衞君
    小林 武治君 斎藤  昇君
    小山邦太郎君 木暮武太夫君
    石坂 豊一君 西郷吉之助君
    植竹 春彦君 草葉 隆圓君
    安井  謙君 川村 松助君
    黒川 武雄君 小林 英三君
    野村吉三郎君 苫米地義三君
    石井  桂君 木島 虎藏君
    柴田  栄君 大沢 雄一君
    宮澤 喜一君 後藤 義隆君
    吉田 萬次君 西岡 ハル君
    横山 フク君 土田國太郎君
    伊能 芳雄君 宮田 重文君
    三浦 義男君 高野 一夫君
    上林 忠次君 古池 信三君
    小沢久太郎君 小幡 治和君
    関根 久藏君 野本 品吉君
    秋山俊一郎君 伊能繁次郎君
    石原幹市郎君 高橋進太郎君
    井野 碩哉君 杉原 荒太君
    下條 康麿君 吉野 信次君
    郡  祐一君 津島 壽一君
    堀木 鎌三君 永野  護君
    木村篤太郎君 青木 一男君
    西田 隆男君 泉山 三六君
    佐野  廣君 高橋  衞君
    勝俣  稔君 大川 光三君
    森中 守義君 北村  暢君
    鈴木  強君 藤田藤太郎君
    相澤 重明君 松永 忠二君
    木下 友敬君 小柳  勇君
    柴谷  要君 安部キミ子君
    江田 三郎君 近藤 信一君
    東   隆君 竹中 勝男君
    藤原 道子君 藤田  進君
   小笠原二三男君 成瀬 幡治君
    小林 孝平君 島   清君
    加藤シヅエ君 三木 治朗君
    千葉  信君 荒木正三郎君
    市川 房枝君 八木 幸吉君
    岩間 正男君 辻  武壽君
    大竹平八郎君 安部 清美君
    鈴木  壽君 北條 雋八君
    千田  正君 秋山 長造君
    阿部 竹松君 大矢  正君
    中村 正雄君 矢嶋 三義君
    相馬 助治君 横川 正市君
    小酒井義男君 河合 義一君
    高田なほ子君 重盛 壽治君
    永岡 光治君 岡田 宗司君
    佐多 忠隆君 曾祢  益君
    栗山 良夫君 山下 義信君
    清澤 俊英君 棚橋 小虎君
    内村 清次君 山田 節男君
  国務大臣
    内閣総理大臣 岸  信介君
      大蔵大臣
      臨時代理 三木 武夫君
      農林大臣 三浦 一雄君
    通商産業大臣 高碕達之助君
  政府委員
     法制局長官 林  修三君
   総理府総務長官 松野 頼三君
      総理府総
      務副長官 佐藤 朝生君
     公正取引委
     員会委員長 長沼 弘毅君
    公正取引委員
    会事務局長  坂東 哲夫君
ソース: 国立国会図書館
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