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1958/10/30 第30回国会 参議院 参議院会議録情報 第030回国会 外務委員会 第6号
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1958/10/30 第30回国会 参議院

参議院会議録情報 第030回国会 外務委員会 第6号

#1
第030回国会 外務委員会 第6号
昭和三十三年十月三十日(木曜日)
   午前十時二十四分開会
  ―――――――――――――
  委員の異動
十月二十三日委員中田吉雄君辞任につ
き、その補欠として加藤シヅエ君を議
長において指名した。
十月二十四日委員加藤シヅエ君辞任に
つき、その補欠として中田吉雄君を議
長において指名した。
十月二十七日委員中田吉雄君辞任につ
き、その補欠として加藤シヅエ君を議
長において指名した。
  ―――――――――――――
 出席者は左の通り。
   委員長     青柳 秀夫君
   理 事
           井上 清一君
           苫米地英俊君
   委 員
           鹿島守之助君
           笹森 順造君
           杉原 荒太君
           野村吉三郎君
           岡田 宗司君
           佐多 忠隆君
           曾祢  益君
           羽生 三七君
           佐藤 尚武君
           安部 清美君
  政府委員
   外務政務次官  竹内 俊吉君
   外務省アジア局
   長       板垣  修君
   外務省条約局長 高橋 通敏君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       渡辺 信雄君
  説明員
   外務省経済局次
   長       佐藤 健輔君
   大蔵省理財局次
   長       磯田 好祐君
  ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○日本国とラオスとの間の経済及び技
 術協力協定の締結について承認を求
 めるの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査の件(国際
 情勢に関する件)
  ―――――――――――――
#2
○委員長(青柳秀夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 これより直ちに質疑に入りたいと存じますが、その前に、先般の委員会で、佐藤君及び石黒君よりの御質問に対し、政府側からの答弁が留保されておりますので、この際、政府側からの御発言を願います。
#3
○説明員(佐藤健輔君) 経済局長がよんどころない用事で昨晩出張いたしましたので、私からかわって佐藤委員にお答え申し上げます。
 実は外貨準備につきましては、諸般の事情より通貨別の保有高を発表しておりませんでございます。これは各国とも大体同じ歩調をとっておりますので、従いまして、ポンドの残高についても公表しておりませんので、その点申し上げておきます。
 石黒委員からの御質問は、アメリカに牛肉を出すについて、出ないのはどういう理由かという御質問であったと承知いたしますが、アメリカにおきましては、食肉衛生関係の法律及びそれに伴います規則がございまして、それに列挙された国、大多数南米諸国あるいは豪州、ニュー・ジーランドでございますが、そういう国からのみ輸入が許可されております。遺憾ながらわが国はその国名に指定されておりませんので、目下のところアメリカに対して牛肉の輸出及び牛肉カン詰の輸出はできない次第であります。もっとも、この輸入制限処置に対しましては、もし輸出をしようと思いました場合には、日本の食肉関係の衛生管理に関する規則及び日本におきます屠殺上のいろいろな状況を、これを先方とよく打ち合わせる必要がございますので、目下そういう面につきまして、農林省において検討中と承知いたしております。
#4
○委員長(青柳秀夫君) それでは、本件についての御質疑を願いたいと思いますが、一昨日衆議院から送付されまして、本付託となっておりますので、念のために申し上げておきます。それでは順次御発言を願ひます。
#5
○岡田宗司君 まずラオスの政情についてお伺いしたい。ラオスは北ヴェトナムと接触をしておる。それから南ヴェトナムとも接触しておる。それからカンボジアともなにしておりますが、あそこのインドシナ半島におけるそれぞれの国の対中国関係というもの、あるいはまたフランスとの関係というものは、かなり複雑ですが、そういう観点から見て、今ラオスは中国とどういう関係にあるか、北ヴェトナムとどういう関係にあるか、南ヴェトナムとどういう関係にあるか、フランスとどういう関係にあるか、その点一つ御説明願いたいと思います。
#6
○政府委員(板垣修君) 御承知のようにラオスの置かれておる地位は、非常に困難な情勢にあるわけでございますが、昨年まで、御承知のようにラオスにはパテト・ラオ――自由ラオスというのがございまして、ヴェトナム側に接触している地域二州ばかりほぼ半独立の形でやっておりました。その地域が北ヴェトナムとも友好関係を持ち、ひいては中共大陸とも友好関係を持っておることは御承知の通りであります。ところが、ラオス側の国内事情からいたしまして、漸次この両者の間に統一運動が起りまして、昨年の暮れから今年にかけまして、この両者間の統一の話し合いができ上りました。その結果に基きまして、五月に補欠選挙が行われたのでありますが、その補欠選挙の結果は、御承知のように、パテト・ラオ側の方がだいぶ優勢であったようでございます。しかしながら、全体を見まして、このパテト・ラオの首相スパナホン、それから従来ラオス側の首班であったプーマ総理というのが、実は兄弟でございまして、そういうような血縁関係もありまして、統一がうまく進んだということもございまして、今度の情勢を見ましても、御承知のように、現在の内閣はプーマ総裁の下におりますサナニコンという人が首相になっております。これはいわゆるラオス民衆党というのが今政権をにぎっておるのであります。この内閣は、いわゆるパテト・ラオの愛国党というのが参加しておりません。不安定といえば不安定でございますけれども、今言うように、党首間の血族関係、こういうようなものがございまして、私どもとしましては、将来話し合いによりまして、この両者間の友好も行われると思いまするし、そう不安定な政局ではないというふうに判断いたしております。
 それから、実は対外関係につきましても、私どもあまり正確な情報はありません。しかし、ラオスが置かれております困難な国情からいいまして、周辺地域とはできるだけ事を起さずに、平和関係を続けていこうという努力はしておるようでございます。外交政策としては中立主義を維持しておりまするし、北ヴェトナムとの関係につきましても、従来のように密接というわけではございませんけれども、不即不離の関係、ひいてはおそらく中共との関係も不即不離の関係を続けていく。一方自由諸国側に対しましても、御承知のように、アメリカの援助というものによってこのラオスの経済というものが相当大きく利益されておるわけでありまして、アメリカとの関係は友好関係でございます。フランスとの関係につきましても、独立後、特にフランスとの関係が非常に悪くなったという情報もございません。要するに、自由主義陣営とも共産主義陣営とも不即不離の関係で、中立政策を維持していこうという政策であろうと、私どもは判断しております。
#7
○岡田宗司君 そこで、その中国との関係ですが、カンボジアがああいうような形でもって中国を承認した。中国と国交回復したわけです――国交回復というか何というか、国交を開いたわけですけれども、ラオスは、今中国とどういう関係になっておりますか。
#8
○政府委員(板垣修君) 今申しましたように、中共ともおそらく不即不離の関係を続けると思いますが、承認にまで至るという動きは、私たちは今までのところ、情報を持っておりません。
#9
○岡田宗司君 次に、条文の第一条ですが、「ラオスの経済開発を援助することを目的として、日本国の生産物並びに日本国の国民及び法人の役務の供与からなる十億円の援助を、」云々と書いてありますが、「この経済開発を援助することを目的として」とありますが、それに与える「日本国の生産物」というのは、具体的には何を指すのか。また「国民及び法人の役務」とは、具体的に何を指すのか。その内容がすでに大体においてきまっておるならば、それについての御説明を願いたい。
#10
○政府委員(板垣修君) 協定上は、この条文の内容というものは確定をいたしておるわけではございませんが、従来の経緯からいたしまして、ラオス側は日本に対して経済開発の援助を求めた際に、具体的な希望項目といたしまして、ヴィエンチャン市の上下水道、できれば、ナム川の鉄橋、こういうものについて日本に経済援助をしてもらえないかという申し出がございました。日本側といたしましては、財政余力の関係もございまして、ラオス側の要望を一度に全部充足するということも困難な事情にありましたので、とりあえず昨年の暮れ調査団を派遣いたしまして、その調査の結果、まずヴィエンチャン市の上水道というものが大体十億円見当でできるということになりましたので、この十億円を援助をするということを申し出ましたところ、ラオス側も欣然と受諾をいたしまして落ちついた経緯がございますので、まず第一に十億円をもってヴィエンチャン市の上水道を建設いたしたいと存じます。ただその後、現地の建設等に要しまする現地費用というものは、ラオス側が出すということになりましたので、若干この十億円に余裕が出て参ると思います。これを使いまして、あるいは下水道――下水道は少しその金額じゃ足りないと思いますから、あるいは鉄橋を建設する。そういうものが第二段に考えられると思いまするが、さしあたりこの上水道の建設というものに主力を尽したいというふうに考えております。
#11
○岡田宗司君 それはいつごろから始められて、どれくらいの期間がかかるのですか。一条の2にある二年ですね、この二年の間に完成する、こういうことですか。
#12
○政府委員(板垣修君) この協定が国会の承認を得ますれば、これはもうすでにラオス側では承認を得ておるわけでありますので、すぐ具体的な実施計画を作る、大体上水道を建設することになりますが、これについての一応の調査結果はございますが、さらに詳細な実施計画を策定いたしまして、すぐ工事にかかりたいと思います。従って、工事にすぐ十二月に取りかかり得るか、一月、二月になるかこれはわかりませんが、大体この水道の工事に取りかかりましてから十四ヵ月で完成する予定でございます。従って、安全をとって二年としておるわけでございまして、二年以内ででき上る見込みでございます。
#13
○岡田宗司君 これは一応十億円の工事ということになりますが、これは、日本側の工事を請け負う会社でやることになると思うのですが、そういう工事の会社は、すでに決定しておるのですか。
#14
○政府委員(板垣修君) 御承知のように、ラオスにつきましては、一面、過当競争を防止するという目的もあり、何としても市場の狭い所でございますから、従来、あそこには日本の商社十数社が集まって、プールの形で仕事をしておりました。従って、この水道工事につきましても、商社につきましてはそれを利用してやろうということで、おそらく三菱あるいは東綿あたりが代表になってやろうということになっておると思いまするが、これは商売の方の内輪の話に政府としてはまかせております。それから水道工事を直接担当する水道会社といたしましても、今まで業者間で大体話ができておりまして、久保田水道であるとか荏原製作、そういうところがそれぞれの専門に応じて、どの会社はパイプ、どの会社はポンプとかいうふうに大体業者間の話し合いができ上っておるように聞いております。
#15
○岡田宗司君 ラオスにそういう十億円の供与をするわけですが、これはラオスの方でも喜ぶことですが、ラオスの方でこれと引きかえというようなことで、何か日本の貿易に対して有利な条件を許すとか何とかということがあったのですか。
#16
○政府委員(板垣修君) むしろこの日本側の今度の経済技術援助は、ラオスが日本に対して持っておりまする賠償権利を放棄した事実を考慮して、日本側も開発の援助をしたわけであります。もっともラオス側も賠億を放棄したからこれをよこせと言ったわけではございません。これとは全然別であるけれども、開発援助をしてもらえないかという申し出があったわけであります。日本側もこのラオスの好意に対して、一面、感謝の意思を表するとともに、それにさらに加えて、十億円のかわりとして、ラオス側がその他の貿易上の利益を与えるという申し合せは、この協定に関連をしては、ございません。しかしながら、長い目で見て、こういうような日本の経済援助を通じまして、従来から存しておりますこの日本とラオス間の友好関係がさらに増進されるということになりますれば、日本とラオス間の貿易は、長い意味において、非常に今後とも有利に発展して参ると思います。御承知のように日本とラオスとの貿易はそう大きくはございません。大体年間五百万ドルばかりでございますが、全然片貿易で、日本はラオスから買うものはない、こちらからの輸出だけでございます。その関係からして、日本に有利であります。今後友好関係を維持増進することによりまして、ラオス側がアメリカから受けております経済援助で外国に発注する場合に、できるだけ日本から物を買うというような関係が、ますます強化されるのではないかというふうに、私どもは期待しております。
#17
○岡田宗司君 今ラオスとの通商条約はどういうふうになっておりますか。それから日本品に対する関税だとか、どういうふうな状況になっていますか。
#18
○説明員(佐藤健輔君) お答え申し上げます。関税につきましては、日本に対して、事実上の最恵国待遇を与えております。それから通商条約、通商協定につきましては、目下のところ何もございません。従いまして、ただいまアジア局長から申し上げましたように、日本の方は買うべきものがなくて、向うに相当大幅な出超になっております。
#19
○岡田宗司君 今後通商条約は至急に結ばれることになりますか。
 それからもう一つ。日本品がラオスに行く場合には、どういう経路をとってあすこに入っていきますか。
#20
○説明員(佐藤健輔君) 通商条約につきましては、ここ二年以来、ラオスとの間に基本条約を結ぼうといたしまして交渉いたしておりますが、ラオスはまだ国ができて早々であり、かつ一般的に最恵国待遇ないし内国民待遇という正式な条約を結ぶ時期に至ってないというわけでございまして、今のところ、通商航海条約を結ぶ時期ではまだないようにわれわれ感じております。
 経路は、主として港がありませんために、タイの方から陸路ラオスの方に向っているわけでございます。
#21
○岡田宗司君 それからラオスの問題でなくて、あとやはりインドシナにおけるいろいろなことをお伺いしたいと思うのですが、もう少しこれはあとにした方がいいかな。一緒でいいですか。
#22
○委員長(青柳秀夫君) ラオスの御質問が直接ございましたら、先にお願いいたしまして、お済みになった上でお願いしたいと思います。
#23
○杉原荒太君 ラオスの方で、抽象的な権利として賠償権というものを持っておることは、平和条約に認められているが、その抽象的な権利とは別に、事実上ラオスに対して日本が損害を与えておったという、大体の見当はどうなんですか。
#24
○政府委員(板垣修君) ラオス、カンボジアにつきましては、そう大きな損害はございませんです。しかしながら、事実日本の軍隊がそこに駐屯をしておりましたし、それから御承知のように一九四五年の三月でしたか、日本が軍事占領に切りかえた際に、若干の戦闘が起きました。死傷があり、その他経済上の損害を与えたことは事実でございます。ただ、現実にどのくらいの損害かは、日本側からはわかりませんが、ラオス側が日本に対して賠償請求権を放棄する際に、ラオス側の計算によれば日本円に換算いたしますと二百億円ばかりの損害はある。しかしこれは放棄するのだということは言っておりました。若干の損害があったことは事実だろうと思います。
#25
○杉原荒太君 これの従来のいわゆる経済協力協定と違った特質は、実際上無償でこの十億円を提供するということだと思うのですが、まず十億円は国内的にはこれはどういう処置になりますか。
#26
○政府委員(板垣修君) 国内的の処置としましては、すでにラオス、カンボジアとの間には、無償ベースで経済ないしは技術援助をしようという方針が、政府としましてはございましたので一応賠償特別会計の中で、予備費としてイヤマークはしておった次第であります。しかしながら、法律的には賠償の項目から出すわけには参りませんので、この国会に法律の改正案を出しまして、ラオスに対して無償のベースで援助ができるという項目を加えました。それに基いて、この金額が、国会で通りましたらば、支出をすというふうな手続を、大蔵省から国会に対してやっている次第であります。
#27
○杉原荒太君 そうするというと、つまりその法律の改正と、それから予算措置というものが、これと関連を持ちつつ、手続が進められるわけですね。
#28
○政府委員(板垣修君) さようでございます。予算的な措置につきましては、今申し上げましたように、すでに金額としてはもうイヤマークしてございます。従いまして、その支出の権限の根拠を得るために、賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案が、今提出されておりまして、すでに私の知るところでは、衆議院を通過いたしまして、ただいま参議院の大蔵委員会にかかっていると思います。
#29
○杉原荒太君 そのイヤマークされているというもの、それはやはりなんでしょう、予算の中で新しくそれが国会で議決されなくちゃいかぬものなんでしょう。どうなんです。
#30
○説明員(磯田好祐君) ただいまの御質問の点でございますが、賠償交渉のとき、本年度ただいまの賠償等特殊債務処理特別会計法の予算におきまして、賠償等の債務のための引き当てといたしまして、二十七億円の予備費を見込んでいるのでございます。もし今度のラオスに対する経済援助が、国会の協賛を受けることになりました場合におきましては、この予備費の中から支出することになると思います。ただいまのところ、本年度のうちにおきまするラオスに対する経済援助が、かりに実行されると仮定いたしまする場合には、二億ないし三億程度の金額だと思う次第でございまして、従いまして十分二十七億円の予備費の中でもってまかない得るというように考えている次第でございます。
#31
○杉原荒太君 この生産物の供与または役務の提供というものは、事実これは日本政府じゃなくして、日本の国民または日本の法人が当事者になってやるわけですね、そうしてラオスの当局と日本の国民または日本の法人とが契約を結ぶ、そうしてその契約いよってラオス側が債務を負担する、その債務の支払いを日本政府が払って参る、こういう構成になるわけでしょう。
#32
○政府委員(板垣修君) さようでございます。実施の方式といたしましては、賠償の実施に準じまして、直接方式で参るということになると思います。
#33
○杉原荒太君 その際、つまり無償提供の部分と、それから日本の業者が当事者になって、向うの当局と結ぶその契約の中には、この日本政府がそのラオス側の債務は負担するという部分と、それとは別個に、純然たる商売としての部分もその中に含まれるような、そういうことを予想しているのですか。
#34
○政府委員(板垣修君) 日本政府といたしましては、このラオスの上水道の建設に関する限り、現地において、要する労務費とかそういうものは除きまして、日本から資材を運ぶ、あるいはこの建設のために日本の技師が行く、こういうような点につきましては、全部日本政府が負担するという建前でございますので、純然たる商業ベースの契約はないわけでございます。これにつきまして、日本側の業者自体とラオス政府が話し合いがついた金額を、そのまま日本政府が認証をした上支払う、こういうことになるわけでございます。
#35
○杉原荒太君 もう一点だけ。三条の第三項を特に設けた趣旨、その必要性というのはどこにあるのですか。一項だけでまかなってしまわないで、三項を……。
#36
○政府委員(板垣修君) この条項は、実はラオス側の希望によって設けられました念のための規定でございまして、ラオス側が、必ずしも契約がなくても支出しなければならぬ場合があるのではないか、金額は一千万円ということになりますが、ここで考えられまするものは、付帯経費の費用だけでございまして、それもおそらく銀行手数料だけしか考えられません。そうしますと、銀行手数料は全体の契約の何パーセントということになっておりますので、非常なわずかな金額になりまして、一千万円というような金額にはならないのでありますが、一応そういうような意味で、契約なしに政府の負担できる付帯経費のための念のための規定でございます。
#37
○委員長(青柳秀夫君) 他に御発言はございませんか。
#38
○佐多忠隆君 第二条にいう「事業の実施計画」、これは大体のアウトラインはおきまりになっていると思いますが、細目その他は必要はないのですが、アウトラインについては、何か、どういう考えでおられるのか。その点の御説明を願いたいと思います。
#39
○政府委員(板垣修君) この実施計画は、大体日本国とラオスとの間の話し合いによりまして、ヴィエンチアン市の上水道を建設するということになっておりますので、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、昨年の暮れ、日本側から調査団を派遣いたしまして、どれくらいの金額で、どれくらいの期間でできるというような、一応の見当はついてございます。その際に、大体十一億円ちょっと足らずの費用はかかるということになっておりますが、その後、ラオス側がそのうちで現地で要する労務費その他を出すということになりましたので、それを除きますと、ただいまの日本側だけの計算では、七億円ばかりでできるという一応の見当はついております。しかしながら、それ以上のこまかい具体的な計画につきましては、今後あらためてラオス側当局と日本側の実施主体との間に、もっと具体的な計画を作らなければいけないわけでありまして、ただいまのところ、私どもといたしましても、それ以上の見通しはない次第でございます。
#40
○佐多忠隆君 特に各年度別ということが書いてありますが、これは原則として二年にわたりというふうにもいっておられるのですが、そこらの年度割りの金額の支出別、そういうものは大体どういう見通しなんですか。
#41
○政府委員(板垣修君) この点もラオス側と実施計画をやってみないと確定しないわけでございます。特に工事の始期がいつになるかという点によってだいぶ変って参ると思います。先ほど申しましたように、大体工事に着手してから十四ヵ月くらいでできるという計算になりますので、これからなんぼ急いでやりましても、日本の会計年度からいいますれば、どうしても二カ年にわたるわけであります。その点は、いつから工事に着手するか、その場合に、本年の分は何ヵ月、あと来年にかかりまして何ヵ月でできるかという計画がきまりましてから、本年度支出が幾ら、来年度支出が幾らというふうにきまって参るかと存じております。
#42
○佐多忠隆君 協定実施細目であるとか実施計画というようなものをお立てになる場合に、これまでの例によると、非常に時間を要しているということになっておりますが、今度の場合には、今年度内にそういう工事着手に至る、従って、若干の初年度分を出さなければならぬというような見込みになるのか、そこらの見通しはどうですか。
#43
○政府委員(板垣修君) その他の国の賠償の実施と違いまして、これはもうプロジェクトが、まずさしあたり上水道建設ときまっておりまするし、それの基礎になります調査も一応行われているという事情からいいまして、この協定が国会通過後、直ちにラオス側と話を進めますれば、二カ年間の実施計画はすぐきまるものと私どもは期待いたしております。
#44
○佐多忠隆君 それがすぐきまるような見通しであるならば、二年の年次計画、ことしと来年ですから、大体の金額なり支出の方式は大体きまっているはずでしょう。すでに今度の予算でも出す予定にしておられるし、あるいは来年度予算の編成ももうすでに着手されているわけですから、少くとも金額その他に関しては、年度割りなり何なりがほぼきまっているのじゃないですか、そこらはどういうふうに。
#45
○政府委員(板垣修君) 日本側だけといたしましては一応の見通しはつけております。しかし、これは何といいましても、ラオス側と話し合いの上で支払われるものでございますから、はっきりしたことは申し上げられませんが、一応、日本側だけの計算によりますれば、大体本会計年度内の支出は三億円くらいになるのではないかというめどはつけております。
#46
○佐多忠隆君 それからその前提になる調査団を派遣されて調査報告を聞かれたと書いてありますが、それは報告書か何かになっているのか、それから、なるべく簡単なものでいいですが、報告書なり何なりの形で文書でお出し願いたいと思いますが、どうですか。
#47
○説明員(磯田好祐君) ただいま御質問の点につきましては、視察団の報告書が出ております。それを御要求のように国会に御提出申し上げるかどうかにつきましては、政府部内で相談さしていただきたいと思っております。
#48
○佐多忠隆君 資料提出を要求しておきます。それを考慮して至急に出していただきたいと思います。
 それから提案理由の説明に、生産物及び役務の供給の方式は現行の賠償実施方式に類したものという説明がしてありますが、この点を、もう少し詳しく御説明願いたいと思います。
#49
○政府委員(板垣修君) 私も実施の手続等につきまして詳しくは存じませんが、要するに、賠償等に準じた方式でございますので、直接方式、すなわち日本側の業者とラオスの機関との間の契約によって実施がきまり、その結果を日本政府が認証いたしまして、そうしてそれで確定すれば、それに要した費用を日本政府が日本側の業者に支払っていく、こういう形で行われる次第でございます。
#50
○佐多忠隆君 直接方式でやるという意味で、こういう文句がついているのですか。
#51
○政府委員(板垣修君) さようでございます。実施方式に関する限り、賠償に準じた方式に従うという意味でございます。
#52
○佐多忠隆君 その場合に、賠償に準ずるという内容は、直接方式によるという意味ですか、それ以外に何かありますか。
#53
○政府委員(板垣修君) さようでございます。実施方式、手続等の問題だけでございます。
#54
○佐多忠隆君 契約の当事者となる向うの「政府が指定するラオスの当局」というのは、どういうものを考えられているのですか。
#55
○政府委員(板垣修君) ラオス側は、ラオス政府の計画局がこの主体になるものと承知いたしております。
#56
○佐多忠隆君 政府の計画局ですね。
#57
○政府委員(板垣修君) さようでございます。
#58
○佐多忠隆君 その計画局が、従って政府自体が、契約の直接の相手になるわけすでか。
#59
○政府委員(板垣修君) さようでございます。
#60
○佐多忠隆君 そうすると、その政府自体、政府の計画局が契約の相手になるとすれば、受ける側の、日本側のここにいう「日本国民又はその支配する日本国の法人」、これはさっきちょっと三菱、東綿等というような話がありましたが、もう少しそれに対応する機関としては、そこのところがどういうものになるのか、どういう方式で対応するのか、そこいらをもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
#61
○政府委員(板垣修君) 賠償の場合も、御承知のようにフィリピンならフィリピンの政府がある相手に発注するという場合は、契約の主体は日本側のある特定の会社というのでございます。この場合も、この上水道の建設につきましては、商社代表といたしましては、三菱、東綿、水道側といたしましては、久保田水道あるいは荏原製作所その他の水道関係者が当ることになっておりまして、おそらく商社の関係とそれから現実に建設する業者との関係で一つの代表者をきめることになろうと思います。その間で契約をするという行き方になると思いますが、その点は、最後的にはまだ確定いたしておりません。
#62
○佐多忠隆君 特にこの対象が上水道建設ということ一つにきまっておるのですから、そういうふうな三菱なり東綿なりそういうものが、ただばらばらにやるということでは、非常に、何というか、効率的にというか効果的にというか、いかないのじゃないかと思うのですが、特に私それを心配するのは、御承知の通りユーゴに対する人絹のプラント輸出が、それらの問題に対して、そういう一つにまとめるところがないために、個々の会社が自分たちの直接の責任を回避しているという問題、あるいはそれをまとめるものが外国の無責任な商社であったために、その商社が非常に無責任なことをして、それで効果的なまとめ方になっていない、そのために、日本が非常な不信を買っておるというような実情があると思うのですが、これはすでに外務省でも御承知だと思うのですが、そういうことがこれに繰り返されないためには、何かまとまった一つのしっかりした責任を持つ契約の相手を、政府その他が世話をされることによって作ることが、非常に必要なんじゃないかという気がするですが、特にこの支出が予算からの支出になるわけですから、その点については、どういう配慮をしておられるのか、もう少し御説明願いたい。
#63
○政府委員(板垣修君) その点につきましては、政府が従来とも配慮いたしておる次第でありまして、ただいま申しましたようないろいろな各社が参加するわけでありまするが、これはばらばらにやるわけではございませんので、これが完全に分担の分野についてもきめまして、向う側と話をするわけでありますし、実際にラオス当局側と話します際には、これが一個の統一した機関になるかどうかはまだきまっておりませんが、まとまって向うと話をいたし、それにつきましては、日本政府といたしましても十分あっせん指導をいたす所存でございます。
#64
○佐多忠隆君 その各業者ばらばらのまとめ方をどういうふうにされるか、それについて、政府があっせんをし、介入をする場合に、どういう形で介入をし、あっせんを進めようとしておるのか、その点ですね、そこは実施計画がきまると、それに相応してもっと明確に具体的におきめになる必要があるのじゃない。そうしてそれを当委員会にももっと具体的にお諮りを願いたいという希望なんですが、それについてはどうですか。
#65
○政府委員(板垣修君) ただいまお話のような筋で進んでおりまするし、それから従来の交渉の経過からいたしましても、ラオス側からぜひ日本政府に対して適性のある業者を推薦してほしいという希望もございまして、日本政府もこれに応じまして推薦をする予定でございます。日本政府は、必ずしもラオス政府がそれに縛られるわけじゃございませんが、推薦をいたしたい。大体、日本政府が推薦する業者というところで、話がついて参ると思います。ただ具体的にどの仕事はどの商社でやるということを、まだ協定が通過する前に、事前にきめて話をするという段階には、現在のところはない次第でございますが、ただいまの御質問の趣旨に従って検討いたしておりまするし、今後、実施に移します際には、そういう御趣旨に従っていきたいと存じております。
#66
○岡田宗司君 これは南ヴェトナムとの賠償の問題で、まとまりかけておって、調印ができそうになってできなかった、これは、伝えられるところによると、向う側で日本の最恵国待遇を認めないということです。この南ヴェトナムの賠償の行き悩みのいきさつ、これを御説明願いたい。
#67
○政府委員(板垣修君) 南ヴェトナムの交渉につきましては、御承知のように、昨年植村大使が二回向うに参りまして交渉いたしましたものが、当時は金額につきまして、彼我の見解依然として隔たりがありまして、まとまらなかったわけでありますが、その後、今年八月になりまして、久保田大使が新しく着任される機会に、交渉を開始したのは御承知の通りであります。その後、大体の金額につきましては意見がまとまりまして、大体協定の内容につきまして、いろいろ細部の問題につきまして、約二ヵ月ばかり向うと交渉しておったのでありますが、大体において意見はまとまりつつあるわけでありまするが、なおまだ若干技術的な細目につきまして残っておる点がございますので、今引き続き交渉を継続中でございます。なお、ただいま御指摘の通商議定書に関する問題につきましては、向うは何も最恵国待遇を与えるのがいやだということではございません。ただ、これは東南アジア全体に共通する問題でございますが、どこの国も通商航海条約的なものを明文で結ぶのはまだ困るということを主張してきておる。ヴェトナム側も事実上最恵国待遇を与えておるのだからして、何も協定を結ぶ必要はないのじゃないかという態度を、今のところはとっております。しかしこの点につきましては、日本側もなおヴェトナム側を説得すべく努力中でございます。非常にこの問題は大きな障害になっておるとも思いませんけれども、なおしかし、この点につきましては本交渉を若干継続せざるを得ない状況でありまして、いわゆるヴェトナム賠償がまとまるかどうかは、今のところ予測を許さない状況でございます。
#68
○岡田宗司君 ただいまのお話ですと、まとまりそうだけれども、どうもいつまとまるか予測がつかない。どうもどっちがほんとうなのか私どもには真意をつかみかねるのですが、とにかく二ヵ月もかかってなお技術的ないろいろな細目の問題がきまらないということは、少々われわれにふに落ちかねるところがある。その細目の意見のまとまらない点というのは、どういう点にあるのか、それをお伺いしたい。
#69
○政府委員(板垣修君) これは御承知のように、賠償協定そのものが非常にわかりにくい条文でございまして、それと同じように、いろいろな細部の問題、字句の表現の問題もありましょうし、いろいろな点で、非常にたくさんございます。私自身も実は一々御説明するだけの知識を持ち合せておりません。しかし、これにつきましては、非常に根本的な対立があるというわけではございません。交渉の過程におきまして、たとえば、賠償使節団を日本に置くかどうか、普通の賠償交渉におきましては、賠償使節団を東京に置くのが普通でございます。しかし、今度の場合は、ヴェトナム側から言えば、交渉金額がそう大きくないし、わざわざ費用をかけて賠償ミッションを東京に置く必要はないということが一つの論点になりました。日本側としては、賠償ミッションを置かれないと手続上困るので、ぜひ置いてほしいということで、だいぶ時間がかかった。これもしかしヴェトナム側が折れまして片づいた。そういうような意味の、どちらかといいますと、技術的な点が非常にたくさんあるわけです。これを一々御説明する知識は、私今のところ持ち合せておりません。
#70
○岡田宗司君 行き悩みはそういう技術的な問題かもしれないけれども、私ら外から見ていると、必ずしもこの行き悩みはそういう技術的な面ばかりではないというふうに思うのですがね。やはりそれよりもう少し政治的なもの、たとえば今言った最恵国待遇を与えるか与えないかというような問題もその一つであろうし、そのほかにもまあいろいろあるかと思うのですが、技術的な面以外で、向うとの関係について意見が合わなかったり、あるいはまた何と言いますか、障害を除去するのに非常な困難な問題というようなものがあろうと思うのですが、そういうような点はどういうことがあるのですか。
#71
○政府委員(板垣修君) まあ今言ったような、なおいろいろなこまかい点について、協定の解釈について、それはたとえば議事録を作る場合に、どういう表現にするかというような点がだいぶ残っておりまして、こういうような点で、まだ交渉を継続しておる点がございます。
 それからもう一つは、先ほど御指摘がありましたように、入国滞在手続に関する規定をこの際どうするかという問題もかかっておりますが、しかし、こういう問題をめぐって今決裂するかせぬかというほど差し迫った問題ではございませんけれども、もっともいずれにしましても、この国会にはまあかけ得るという見込みはほとんどなくなりましたので、その点は、まだ時間が少しあるわけです。その意味で交渉が少しスロー・ダウンしたということはございますけれども、まあまとまらぬというのでもなければ、すぐまとまるというのでもない、もう少し時間をかけていただきたいというふうな実情であります。
#72
○岡田宗司君 私は新聞しか見なかったのでよくわからないのですが、この国会にかけられるだろうということが新聞に出ておった、それが急にどうもかけられなくなったということが、少しふに落ちない点があるのですね。細目について、今言った非常に技術的な点でもってたくさん解決しなければならぬ問題があるならば、これは前々からずっとやっているわけなので、急に、調印されるだろう、そうして国会にかけられるだろうという前になって、それがだめになって、またその細目の問題がごちゃごちゃ盛り返したというふうには、私どもには思えないのですが、何か政治的な問題があってそうなったというふうに考えられるのですが、なぜ急にまた話がもつれ出したのか、単に話を進めておったら、細目の問題がまた新たに蒸し返えされて問題になったのか、それとも何か別の原因があってそうなったのか、そこいらを一つお伺いしたい。
#73
○政府委員(板垣修君) 特に政治的な特別な原因があったわけではございません。結局技術上の理由でございます。と申しますのは、ヴェトナムとの賠償は、御承知のように、まず第一に金額につきまして非常な争いがあった、これが最後まできまらなかった次第であります。やっとこの総額につきまして両者の意見が一致したのが、この八月に久保田大使が着任をされたそのときでございます。それから大急ぎで案文の作定にかかるということになりましたけれども、やはり今度は、金額だけはきまりましたけれども、賠償の点は別としまして、賠償とともに実施しようといたします借款、これの性格というような点につきまして、なかなか問題があったのであります。日本側としては、あくまでも輸銀ベースの商業ベースに近い借款、向うはそうでなく、もう少し政治色の強い借款ということを考えております。こういう点については、今まで一回も議論されたことがなかったわけであります。これが八月、九月になりまして、やっと初めて議論された。それから賠償協定を作るということになれば、御承知のように、ああいうような複雑なわかりにくい協定をヴェトナムは初めて見るわけでございます。これは私非常に急ぎまして、できればこの国会に間に合わせたいと思っておったのですが、これは初めから間に合うか疑問があったわけです。やってみましたところが、こまかい点で向うはいろいろ疑問があり、質問が出る。これはどういうふうなことか、こういうふうに考えてもらいたいと、ブリンシプルな技術的な問題におきましても、向うがいろいろ疑問が出た。これをやっているうちに時間が過ぎた、こういう意味でございます。特別に政治的な原因でおくれたというわけではございません。
#74
○岡田宗司君 この問題と北ヴェトナムと日本との関係の問題ですね、私は、かなりからまっておるように思う。むろん外務省は南ヴェトナム政府の代表と話し合いをしておって、北ヴェトナムのことは、それは考慮の外におかれてあるいはやっておるのかもしれませんけれども、しかし、現在日本と北ヴェトナムの間には貿易が行われておるのですが、北ヴェトナムの政府の方では、日本が南ヴェトナムに賠償を払うということについて、これは認めないといいますか、南ヴェトナムに対する賠償はヴェトナム全体に対する賠償だととることには反対だという態度をとっております。そうしてたとえば過日北ヴェトナムの政府の方で見解が発表されたわけですが、こういうことで、将来の北ヴェトナムとのせっかく始まった貿易に相当な影響があるであろうということも予想されるわけなんですけれども、政府の方は全然北ヴェトナムとの貿易とか、そういうことは考慮の外に置いて、この南ヴェトナムとの話し合いをこれからも続けていかれるのかどうか、そこいらを一つお伺いしたい。
#75
○政府委員(板垣修君) 南ヴェトナムとの賠償交渉の結果、北ヴェトナムと日本との間に事実上行われておりまする貿易関係その他につきまして、障害を及ぼとすいうようなことがあるとすれば、これははなはだ政府としましては遺憾なことではございまするけれども、一方、南ヴェトナム政府との賠償問題というものは、この数年来の懸案でございまして、南ヴェトナム政府としましては、サンフランシスコ条約に参加し、調印し、日本とは正式の外交関係にある国が、平和条約十四条に基きまして請求権を行使してきておるということになりますると、やはり日本政府としましても、いつまでもこれをたな上げにするということができない事情で、この賠償交渉というものもやはり進めざるを得ない立場にあり、日本政府としましては、この正式の外交関係のある国との間の賠償関係を解決して、これは南ヴェトナム政府の支配が全ヴェトナムに及んでないという点は事実でございますけれども、この日本と正式の外交関係にある国との間で解決して、南ヴェトナムに対する賠償に関する限りは、これはヴェトナム全人民との間で解決をしたという方針で進めざるを得ないのでありまして、その方針で進んでおる次第でございます。
#76
○岡田宗司君 今度の賠償協定ですね、これのうちに、今度日本側で南ヴェトナム政府に払う賠償は、これは全体のヴェトナムに払う賠償ということになるわけですが、それとも南ヴェトナムの支配権というものは事実上南にしかないわけであります。そのヴェトナムの半分の国に対する賠償という建前をとっておるのですか、そこらは、ぼかしてあるのですか、それともはっきりしてあるのですか、そこいらを一つぼかさないで、はっきりしていただきたい。
#77
○政府委員(板垣修君) 日本政府といたしましては、ヴェトナムに対する賠償を、一応南だけ払って、北は保留しておいて将来払うということは、これは日本の財政上からいっても許しませんけれども、南ヴェトナム政府との間に解決いたしますれば、これでヴェトナム全体に対する賠償は済んだものという方針をとらざるを得ない。その方針で進んでおりまするし、この点は、南ヴェトナム政府にもはっきり申しておる次第であります。これがどういう形で協定に現われるかどうかはまだ確定いたしておりませんが、そういう方針で進んでおります。南ヴェトナム政府は当然これを承諾しておる次第でございます。
#78
○岡田宗司君 そこからまたむずかしい問題が将来起ってくると思います。インドシナは今事実上四つの国があるわけですが、それぞれ外交的な立場が違うわけです。もし日本がそういうような態度をとって、南ヴェトナム政府に賠償を払って、それが全体のヴェトナムにわたるものであるというようなことになれば、北ヴェトナムを刺激し、北ヴェトナムの方で日本に対して現在の貿易関係を途絶するというような問題も起ってくれば、これはトラブルが大きくなる。さらに将来北ヴェトナムというものは、ちゃんと一つの国としてそこら中の国が認めてくる。日本だけいつまでも北ヴェトナムの存在に目をつぶっているわけにいかないという事態も起ってくるでしょう。そうした場合に、北ヴェトナムの方から、おれの方は賠償要求するという権利を保留しておるというようなことで、何か、将来北ヴェトナムと南ヴェトナムの実際上の統一ができないで、別の国としてずっと続いていく場合に、何か関係が始まったときに、要求してこられた場合に、日本は南の方へ払ったからお前のところへ払えないのだといって突っぱね切れるものかどうか。そこいらのところを、将来のインドシナにおける政治関係とも関連のある問題ですけれども、どういうふうにお考えになっているでしょうか。
#79
○政府委員(板垣修君) その点が一番むずかしい問題でございまするが、ただしかし、一方、今御質問の趣旨を徹底させますと、二つのヴェトナムを認めるようなことになるわけで、そういう事態がしばらく続くかもしれませんが、しかしその場合には、今までのような事実上の関係が続く場合には、日本政府といたしましては、正式の外交関係にある国は南ヴェトナムである。もし、かりに世界の情勢が非常に動きまして、二つのヴェトナムを認め、北ヴェトナムを認めるということになりますれば、これは別の問題が発生してくるわけであります。その際に、日本政府といたしましては、財政の余力からいっても、南ヴェトナムとの間に話がついた、従って、北ヴェトナムの承認の関係は、一つの承認の条件になると思います。ただ、私の申しましたのは、ジェネバ精神に従いまして、いずれかに統一されるべきであるという建前で進んでおるわけであります。それが将来統一されますれば、南ヴェトナムの政府と日本の間に結ばれました賠償協定は、やはり新政権に統一されるべきであるという考え方をとらざるを得ないというふうに考えておる次第であります。
#80
○岡田宗司君 日本の主観的の考え方はそれでも済むけれども、なかなかそう済まないのじゃないですか。それから、まあ南北ヴェトナムの統一ということが、これはできれば非常にけっこうであるし、私らもできることを望んでおりますが、今事実上二つに分れておって、南にだけ賠償を払って、それからごちゃごちゃと問題が起って、将来もあまりうまくいかないというようなことでは困る。何かこの賠償をもう少し、統一の目鼻がつく、あるいは統一の目鼻がつかぬまでも、南北の間に何らかの接近がなされて、そして南北で多少話し合いがついていくようなときまで、賠償を延ばしておくというわけにいかないのですか。今ごちゃごちゃしてむずかしい問題が起っているのですから、そう何もこっちで急ぐ必要もないかと思うのですが、どうですか。
#81
○政府委員(板垣修君) もし、そういうことが可能であればけっこうな話でございますが、先ほども申しましたように、南ヴェトナムとの賠償問題は、数年来の懸案でございます。先ほど御質問にもありましたように、南ヴェトナムと賠償の交渉を進めることによって、北ヴェトナムとの貿易その他の技術交流関係に阻害があるという御質問がございましたが、逆のことも言えるわけでありまして、数年来の南ヴェトナムとの交渉をたな上げいたしますと、これは南ヴェトナムと日本の貿易関係は非常な阻害を受けるわけでございまして、政府といたしましては、非常に苦しい立場にあるわけでございますが、ともかく日本と正式な外交関係にある国が、正式な権利に基いて請求している賠償交渉というものを、でき得れば解決した方がいいという方針で現在進んでおり、また進まざるを得ない情勢にあるという点を御承知願いたいと思う次第でございます。
#82
○佐多忠隆君 先ほどのラオスの問題をもう少し聞きたいのですが、第六条にある両国の合同委員会、「両政府の代表者で構成される合同委員会」に、日本の政府代表というのは、どういうものが充てられるのですか。
#83
○政府委員(板垣修君) この六条の合同委員会は、ラオスのヴィエンチアンに設定されるという予定でございます。従って、一応日本側の代表といたしましては、ただいままだ任命されておりませんが、将来任命されるということができれば、日本の駐ラオス大使が代表になり、その下に専門家が常駐ないしは日本から派遣されることになろうと思います。
#84
○佐多忠隆君 この専門家というのは、どういうものを考えておるのですか。
#85
○政府委員(板垣修君) さしあたりプロジェクトが水道でございますので、おそらく厚生省の専門家が常駐あるいは臨時出張することになるだろうと思います。
#86
○佐多忠隆君 そこで、この上水道の建設計画というものは、そうすると計画自体は一体どこで作るのですか。原案は日本側で作るのですか、それともラオス側で作るのですか。
#87
○政府委員(板垣修君) 建前はあくまで両者合同でございますが、何といいましても、これは日本が与える技術援助であり、知識は日本側だけが持っている実情でございますので、ことに昨年調査団を派遣した経緯もございますので、大体原案は日本側が作って、ラオス側と協議することになろうと思います。
#88
○佐多忠隆君 その建設計画を日本側が作るという場合に、その作る計画委員会みたいなものはどういうふうに考えておるのですか、どこのだれがやるのですか。
#89
○政府委員(板垣修君) その人選はまだきまっておりませんが、実際問題といたしましては、昨年調査団を派遣いたしましたが、この調査団の人々が、中立的立場において建設計画の策定に当るものと、私どもは予想をしております。
#90
○佐多忠隆君 そうすると、調査団というのはどういう構成ですか。
#91
○政府委員(板垣修君) 私も全部の人員は覚えておりませんが、団長は水道関係者の亀田という方が団長になっております。その下に若干専門家――厚生省その他の専門家が参ったのでありますが、その亀田というのは、もともと業者の人でありますが、調査団の団長になった経緯もありまして、今度の上水道の建設計画には参加しないで、中立的な立場で今後ともこういう建設計画の方に参加してもらうつもりで私ども考えております。
#92
○佐多忠隆君 そこで、問題はその計画を作る場合の計画委員会、計画するという当事者と、それからさっきから非常に問題に私がしております個々に直接に契約を結ぶ各業者、それと計画委員会との関係、特に計画委員会と政府当局との関係、そこらが重要な問題になると思うのですが、そこを私はさっきから言っているように、はっきりしてもらわなければ、ただ単に業者のばらばらの資材なり役務なりの提供というようなことになりかねない危険性もある。そこらを政府としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
#93
○政府委員(板垣修君) 細目は、私もよくは存じませんが、こういうことになろうと想像いたします。日本側の中立的な技術者が中心になりまして、建設計画を作り、これをラオス当局、ことに計画局と打ち合せして、最終的に相当詳細なブルウ・プリントができ上ると思います。その際に、パイプはどのくらい要る、あるいはポンプはどれくらい要るということができ上るだろうと思います。その際に、このポンプについてはどこの業者が日本では一番専門家であるか、優秀であるか。パイプにはどうと、こういうことができ上りまして、それに基きまして、ラオス側が日本側の推薦する最も適当な業者へ発注をするという形式になると思いますが、その際に、ばらばらでは困りますので、日本側としましては、取引面につきましては商社が代表になりまして、そうしてそれぞれの適当なメーカーが分担をいたしまして、その発注を引き受ける。これを一つ統一的、総合的に日本政府も介入いたしまして、支障なくやっていきたいというふうに考えております。
#94
○佐多忠隆君 その点を、あなた個人の今のような思いつきなり、構想だけでなしに、政府全体のしっかりした意向なり計画として、もう少し具体的に、これは今すぐできなければ、もっとあとで御相談の上でもいいと思いますから、提示をしていただきたいと思います。もう実施計画その他も相当進んでいるでしょうから。
#95
○政府委員(板垣修君) その点は、協定は国会の批准を得ますれば、すぐ実施に取りかかって参ると思います。しかしその以前に、こういうおぜん立てになっておると言うのは、少し順序が違うような気持もいたしますので、私どもも、寄り寄り構想を練り、準備もいたしております。しかしこれも協定の通過したあとで、具体的に話がきまっていくものではないかと考えます。
#96
○佐多忠隆君 いや、そうでなくて、具体的にどれをどうするというようなことを、この協定ができる前にきめていただきたい、示していただきたいということを言っておるのではない。しかし、構想としては、実施計画の構想も、さっきアウトラインだけはお示しを願いたいと言ったのと同じように、やはり今の構成が、そういう合同委員会と、計画建設委員会と、政府と、それとの関連の問題、あるいはそれを供給する場合の業者と、そことの関係、さらに出先にいる合同委員会と、それとの関係、そういうものは、大体の構想としては、すでにおきまりになっていて、その上でこの協力協定を承認するか、承認しないかという問題がわかってくるのではないかと思います。そういう点、非常に早く、今年度内にでも工事も着手するし、予算も出すというようなことまで進んでいるはずですから、そういう構想は、もっと具体的に、政府全体の統一的な意見としてきまっているはずだと思いますから、また、きめなければならない問題でありますから、そういう意味で御提示を願いたいと思います。
#97
○政府委員(板垣修君) 今御質問の程度のことでしたら、おそらく大体の構想はきまっておりまするし、私先ほど私見として申し上げましたが、大体そういうラインで進んでおるわけでありまして、そういう点につきましては、大体の構想はある次第でございます。
#98
○佐多忠隆君 いや、それは今言われたことで済ますという意味ですか。そうでなくて、私は、今あなたが個人的に大体構想してみるとこんなものじゃないかと言われる。それをもっと関係当局、その他と、たとえば厚生省あたりが中心になって、計画自体を考えなければならぬとか等々の問題がありますから、そういう点も十分に打ち合せて、政府全体の統一した意見として具体的にお示しを願いたい。
#99
○政府委員(板垣修君) 大体の構想もありまするし、ラオス側と話をいたしまする場合には、そのときには、日本政府といたしましては構想をきめていくと思いまするが、何といいましてもこれは主体はラオス政府でございますから、日本政府はこうだということで事前にきめつけるということはできない実情にある次第でございます。まあしかし、何か構想を、日本側だけの考え方を示せということなら、不可能でもないと思いますが、そういう事情でございます。
#100
○佐多忠隆君 それでは次の機会までに。
#101
○委員長(青柳秀夫君) 他に御発言はありませんか。――では本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
#102
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないと認めます。それでは……
#103
○佐多忠隆君 質疑は全部これで打ち切るのですか。
#104
○委員長(青柳秀夫君) 速記をとめて。
#105
○委員長(青柳秀夫君) 速記をつけて下さい。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
#106
○委員長(青柳秀夫君) それではこれより採決に入ります。日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定の締結について承認を求めるの件全部を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手をお願いいたします。
#107
○委員長(青柳秀夫君) 全会一致でございます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
 なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
#108
○委員長(青柳秀夫君) 御異議ないと認めさよう決定いたしました。
  ―――――――――――――
#109
○岡田宗司君 アジア局長が来ておられるので、ついでに一つ質問をしたい。それは、日韓会談のことですが、一体あれは続いているのか、いないのか。一向ごちゃごちゃして何のことやらさっぱりわからないのですが、これについて、少しわかるように説明していただきたい。
#110
○政府委員(板垣修君) 最近柳公使及び漁業代表の張氏が、一応本国に帰っていることに関連して、また日韓会談が中断しているのではないかというようなうわさが流れておりますが、これは全然そういうことと関係ないのであります。これは一時的に、一週間ばかり本国政府に、今までの交渉の経過等を報告するために帰っただけでありまして、会談そのものとは何ら関係ございません。ただ御指摘のように確かに日韓会談はちょっと休んだり続いたりしたような形になっております。今年の四月十五日から開催されまして、七月末に例の大村収容所のハンスト問題に関連いたしまして、七月、八月が一時中断いたしまして、十月一日からまた再開されて、今回は漁業委員会も初めて開かれました。やっと日韓会談が一応形式的には軌道に乗ったということが言えます。その他の委員会も随時多くは十数回開かれているわけでありますが、七月ごろまでは大体手続問題で終始をしたのでありますが、今度の再開後は、やっと実質的な問題に入って参りました。しかし、御承知のように、どの問題を取り上げてみましても、事実問題に入りますれば、両者の見解は相当基本的な対立のある問題ばかりでございます。従って非常にむずかしい。会合してはまた次の会合まで検討するということで、会議を閉じたり、いろいろな経緯でやっております。会議の内容につきましても、非常に機微な関係がございますので、あまり詳しい報道はされておりません。そういうような関係で、一般には何をやっているのかわからぬという誤解を与えていると思いますが、私どもの感じといたしましては、一応続いてはおります。しかし、これはなかなか本格的な結論に達するかどうかは、非常にむずかしい問題でございますが、一応政府の方針といたしましては、できるだけ早く妥結の方途を見出すべく努力をしているということでございまして、現在特に中断しておるとか、中断しかかっておるとかという情勢にまでは、まだ至っておらないのでございます。
#111
○岡田宗司君 一体、四つでしたか、小委員会がありますね、あれは並行してやっているのですか。
#112
○政府委員(板垣修君) ただいまやっておりまする委員会は、請求権の関係で船舶の問題と文化財の問題、それから漁業委員会、それから国籍及び所遇の問題、それをずっと並行してやっております。それで、そのうちで国籍、処遇の問題が、一番早く実質問題に入っております。それから漁業問題が、いよいよ実質問題に入ろうとしておりますが、御承知のようにそろそろ基本的な問題につきまして対立しかかってきた、こういうような状況でございます。
#113
○岡田宗司君 またこの間、文化財を返してくれという話が出て、ちょっと新聞で見たのですが、前にあなたに御足労をわずらわしたわけですが、今度は大っぴらに要求してきているのですか、あれは一体どうなんですか。前のときはこそこそ返したような……。
#114
○政府委員(板垣修君) 文化財につきましては、韓国側は、前の全面会談以来、全般的な返還要求をしてきているわけでございます。先般、百六点につきましては、さしあたり引き渡し可能なものということで、ごく小範囲を渡したわけでありますが、今回の会談におきましては、全般的な問題として向うは取り上げてきております。しかし私どもとしては、まだこの問題につきましては全然向うの提議に応じてない、こういう状況でございますが、今度かりにこの文化財の返還ないし引き渡しの問題が解決いたしましても、これは両国間の協定であり、国会の審議を要する問題であるというふうに存じております。
#115
○岡田宗司君 そうすると、最初の百六点のときのように、やみからやみに、贈与だか、返したんだかわかりませんけれども、おそらくああいうやり方というものはなかったと思うのです、前例のないやり方だと思うのですけれども、ああいうことはもう起らないのですね。
#116
○政府委員(板垣修君) そういうことはございません。国会の承認を求めるわけでございます。
#117
○岡田宗司君 そうすると、この文化財の返還の問題も、相当いろいろ難問題があるので事実上これが解決するということは、やはりほかのものと並行して審議が行われている今日の事態から見て、相当先になる、あれだけ別個に協定を結ぶということではないように思われるのですが、そうじゃないですか。
#118
○政府委員(板垣修君) まあ韓国側は、船舶の問題なり、文化財の問題なりを切り離して盛んに要求はしてきております。しかし日本側といたしましては、これは日本と韓国との間の全般の問題の関係において解決すべきものであるという方針をとっておりまするし、そういう方向でわれわれとしましては進む方針でございます。
#119
○岡田宗司君 私どもも、これは全般の問題の一部である、そう思っているので、あれを切り離してやるということは反対だし、それからまた無協定でこそこそと贈与することも反対なのでございますから、その点は一つよく心得ておいていただきたいと思います。
 その次に、今度は漁業の問題なんですが、平和ラインだか、危険ラインだか知りませんけれども、線が引いてありますね、あの問題で衝突している。会談が始まればいきなり衝突をするだろうということも予想されるわけですけれども、すでにあの漁業関係の委員会が開かれて、現実にこの李ラインというのですか、あの問題は取り上げられたのですか、議題に供せられたのですか。
#120
○政府委員(板垣修君) すでに議題に取り上げられております。で、その点で基本的に対立しておりますので、それでいけば先に一歩も進みませんので、一応この問題は、双方が立場を留保しながら、何か具体的に、あの水域における漁業問題の実際的の解決法があるかという点につきまして、ただいま両方から案が出て審議をしかかっておりますが、いずれにしましても、いかなる問題でも、やはりこの基本的問題にひっかかってくるという点で、今のところ、ちょっと進みがたい状況になっておる次第でございます。
#121
○岡田宗司君 李ラインの問題について、今の御説明で多少わかったのですけれども、その李ラインの問題をたな上げにして、何か具体的に、たとえばまとまるようなこっち側の案というものは、どういうものなんですか。こっち側から示した案というのは。
#122
○政府委員(板垣修君) その点は、今後の交渉の最も中心問題でありますので、ただいまこの席で詳しく申し上げることはできませんが、日本側の考え方といたしましては、科学的調査に基きまして、双方の合意によって、漁業禁止区域なり、漁業調整区域を作る、それから両者の漁業紛争に関する委員会を設ける、こういうような形で、そういう実際的な問題につきましては、あるいは韓国側の立場というものも十分取り入れてやっていく、そういう点で妥協ができないかという考え方でございます。しかし韓国側としては、現在までのところ、地域の広狭についてはまだきめてはおりませんが、やはりある程度の漁業専管権というものの主張を捨てておりません。そういう点で、基本的な対立は残っておるわけでございます。この点は、もう少し回を重ねて討議を続行しなくてはならぬ問題だと思っております。
#123
○岡田宗司君 李ラインの問題につきましては、向うは一歩も譲歩を見せないという態度を、今までは示しておるわけですか。
#124
○政府委員(板垣修君) ただいまのところは、そういうふうに印象づけられております。なお、これは交渉の問題でございますから、今後なお交渉を継続し、できるだけ日本側の主張をのませるように努めたいと考えておる次第でございます。
#125
○岡田宗司君 それから、もう一つの例の国籍の問題の方ですが、その方はどういう問題が、今、難関になっておるのですか。
#126
○政府委員(板垣修君) 国籍の問題につきましては、いろいろ問題があるわけでございまするが、まず第一には、日本に戦前からおりまする朝鮮人の国籍及び処遇の問題が中心点でありますが、韓国側は、御承知のように、従来とも、日本におる朝鮮人は全部韓国民だということを主張しております。この点も依然として問題が残っております。
 それから処遇につきましては、現在おる朝鮮人のみならず、今までおった朝鮮人、これの子孫も、やはり日本に永住権がある、他の外国人とは少し違った特権的な待遇を与えるべきであるという主張をずっと従来からもしておりました。この点につきましては、日本側としては、ある程度までは韓国側の希望をいれる用意があるわけでありますが、ある点については問題がございまして、こういう点についてさらに議論をしておる最中でございます。
 それから先に進みまして、今後の問題に関連するわけでありますが、日本におる朝鮮人で、何回も刑に処せられたというようなアンデザイアラブルな人間については、日本は当然退去請求権がある、処分権があるという態度で進んでおります。韓国側は、これも拒否していたわけでありますが、その後、幾分か折れまして、それは認める、しかしある種の条件を付してきております。その条件、基準をどの程度できめるか、こういうことでございまして、こういう点につきましてただいま討議中でございます。
#127
○岡田宗司君 例の韓国籍にするかどうかという問題ですけれども、依然として、日本におる者は全部韓国籍だ、こっちにいる本人が何と言おうと、全部韓国籍にせいということを強く要求しておるのですか。
#128
○政府委員(板垣修君) 一応そういう主張はしております。しかし、それがどの程度強いのか、私どもも判断できませんが、日本側としては、建前として、韓国籍を主張することは反対はしない、しかし、これが実質問題にまで及ぶ場合は、これは厳然たる客観的事実と違うではないかということで、はね返しておるわけでございますが、韓国としては、今までのところ、一応建前の問題を中心とし、場合によっては、何か実質まで及ぶような意味において、これは全部韓国民だという主張を、今までのところは繰り返しております。
#129
○岡田宗司君 それは、結局さかのぼっていきますというと、韓国が全朝鮮を支配しているのだということからくるわけなんですね、そういう理論的根拠をもってやはりやってきておるわけですか。
#130
○政府委員(板垣修君) 韓国政府の主張は、今御指摘の通り、朝鮮における唯一の政府は韓国政府であり、これの支配地域は、向うの憲法によれば、全朝鮮だという建前から押してきておるわけであります。
#131
○岡田宗司君 その問題がからんでその問題から出発してくるところと事実と非常に違うところがあるわけです。この問題は、われわれとしては、事実を事実としていかないというと、あとで不自然なことがたくさんできてきて、トラブルの原因になって、本来の韓国政府との間のトラブルよりももっと大きいトラブルになる。私どもとしては、そういうような不自然な要求といいますか、事実に反する主張というものは認めるわけにはいかないと思うんです。それから起ってくる問題については、やはり、よほど日本側としてもはっきりした態度で臨んでいただかないと、対朝鮮関係――ことに日本に六十数万の朝鮮の人がおるんですから、非常にむずかしい問題になろうと思います。
 そこで、そういうような話が一方で行われておるわけですが、他方、例の百二十二人残ってますね、釜山に。あれは一体、向うじゃどうするつもりなんですか。依然として押えておくつもりなのか、刑を終えて収容所に移された者もまだ帰さないと言ってがんばっておるんですか。そこのところはどういうふうになっていますか。
#132
○政府委員(板垣修君) 御承知のように、昨年の暮れ現在で協定が結ばれ、昨年の十二月三十一日までの刑期を満了した日本人は皆帰って来たわけでありますが、そのとき残った者が二十九名ございます。その後拿捕されたのが九十三名で、合計百二十二名あるわけでありますが、これつきましては、一応、この日韓全面会談の議題外になっているわけでありまするから、私どもとしては連絡会議、もしくは外交交渉としまして、随時これが釈放を要求してきております。ただ、刑期を完了している者は、そのうち、私どものただいま持っておりますものでは十四名なんですが、この十四名だけ帰せとなると、これはこちらの理論的立場がくずれますので、全般的に帰せという主張はしてきております。韓国側がただいままでこれに対してどういう方針を持っておるか知る由もないのでありますが、なかなか承諾はしていないというのが実情でございます。
 私どもといたしましては、できるだけ早くこの全面会談を妥結の方向にもっていき、この解決と並行いたしまして釈放の問題を片づけたいというふうには考えておりますが、一方、この全面会談の方がこれだけ長くかかっており、先行きも必ずしも楽観はできないという情勢にもありまするので、この問題について、どういう今後交渉を踏んでいくかは、また別途検討しなければならぬと思いますが、随時、私どもとしては外交交渉の問題としまして、向うに強く要求はしておる次第でございます。
#133
○岡田宗司君 最近はあまり李ラインの所でつかまったという話を聞かないんですけれども、これは、交渉の最中であるので韓国側で多少警戒をゆるめておるのか、それとも日本側の漁船の方で非常に慎重な行動をとって接触を避けておるということからつかまらないのか、そこらはどうですか。
#134
○政府委員(板垣修君) まあこの点は微妙でございますから、裏話を申し上げるのは差し控えます。しかし、事実上あまりつかまらないということだけをお含み置き願いたいと思います。
#135
○曾祢益君 この次の委員会、定例ですね、そのときに、私は総理秘書官の川部氏を呼んでいただきたいと思います。お願いいたします。
#136
○岡田宗司君 それからもう一つ。
 その問題はまあそれでいいですが、例の朝鮮人の諸君が、北鮮系の諸君が帰国したいと、こういうことで、だいぶ運動も起ってきております。すでに朝鮮総連の方に申し出ているという人の数もかなりに上ってきておる。まあこれについてはいろいろ見方があると思います。しかし、どうも帰りたいと言う者を押えておくということは、これは何としてもよろしくないことだ。また、将来のことを考えましても、日本側としても帰りたいという人に帰ってもらうということの方が、いろいろな点でもって利益があると思う。そこで、まあ政治問題とからんでおるということも言えるでありましょうが、同時に、多少そういうことがあっても、これは政府として切り離して考えて、何か具体的な措置をとる。なかなか簡単にはいかないでしょうけれども、しかし具体的な措置をとるということを始められるつもりがあるかどうか、そこいらはどういうふうにお考えになっておるか。
#137
○政府委員(板垣修君) 北鮮帰国希望者の問題に関連いたしまして、日本政府としましては、従来も現在も、原則として本人の帰国先の意思の自由を尊重するという方針で進んで参っております。これは現在も変っておりません。ただ御承知のように、当面この問題につきましては、韓国側が非常に重大な関心を持っておりまして、このためにしばしば過去におきましても、全面会談も一時中絶するという事態をしばしば引き起しておる次第でございます。日本側といたしましても、全面会談を、まあできるかできないかわかりませんが、もう少し詰めてみたいという考えもありまして、この全面会談に非常に影響があるような措置は避けたいというところで現在進んできておる。この問題は、まだ今回の全面会談で討議されておりませんが、近く全面会談で討議を継続することになっております。日本側としましては、この方針をともかく韓国側に納得さして、納得の上でやっていきたいという方針をまだ捨てておりません。今のところ、日本側の主張を受け入れるという徴候もございませんが、なおこの努力を続けていきたい。従って、今この時期に、この問題を韓国側に何ら相談もせずに一方的にやるということは、明瞭に全面会談に悪影響を及ぼすわけでありますから、この点につきまして、いましばらく検討の余裕を与えていただきたいという考え方でございます。
#138
○岡田宗司君 むずかしい問題がからんできておることは私もよくわかる。しかし一面において、たとえば国際赤十字がこれを取り上げて、そうして日本の赤十字社の方に申し入れて、あるいは日本の政府の方にその促進方を申し入れるというようなことが起ってきた場合は、日本政府としてはどういうふうな態度をとるんですか。
#139
○政府委員(板垣修君) 事実そういう動きがもうあるわけでございまして、まだ国際赤十字から日本政府に直接申し入れてはおりませんけれども、日赤を通じまして、日本政府の意向はしばしば聞かれておるわけでございます。ところが、御承知の通り本年以来日韓会談そのものとの関連がございますので、全般の抽象的な考え方は述べておりますけれども、具体的にどうするという返事は、し得ない実情にあるわけであります。しかし、私からすでに韓国側に、その方面からしか解決の方法がないことは、正式に全面会談に提案いたしております。しかし韓国側は、それも困る、この問題は両国間で討議をし、解決し得るものであるとして、これは何もことさら第三の機関を引っぱってくる必要はないじゃないかというのが、韓国側の主張でございます。従って、この問題につきましても、まだ今後韓国側と十分話し合いを進めていかなければならぬと思いますが、われわれといたしましても、この北鮮帰国希望者の問題を解決するのは、やはり国際赤十字を利用するしかない、これが唯一の方法であるというふうに考えております。
#140
○岡田宗司君 そういたしますると、その基本的な方針は変らない、そうして韓国側を説得する、しかし韓国側はなかなか聞きそうもない、一面において日韓会談というものは、まあ韓国人の国籍の問題、朝鮮人の国籍の問題や処遇の問題で非常にむずかしい問題である。あるいは漁業問題でもむずかしい問題になっておる。そしてこの会談が続くか続かぬかわからぬという微妙な段階にきておるということになりますと、この問題は、解決の方向に進めていくつもりなのか、あるいはそうでない方向に放っておくという方向になるのか、ここいらはなかなか、私ども外から見ると判断がむずかししいのですけれども、あるいはそういう問題と関連してこれを進めていく方が、何か問題を解決する方向にいく面もあるのじゃないですか。
#141
○政府委員(板垣修君) 日韓交渉全般の問題と北鮮希望者の問題との関連において、いろいろ交渉のやり方はございましょうが、これは申し上げませんが、政府といたしましては、日韓会談は確かにいろいろな大きな根本的な問題があり、前途必ずしも楽観を許さないのでありますが、しかし、これは、あくまで解決できるものなら解決したいという方針で進んでおることは事実であります。その上にこそ過去の三回の会談も行われ、今度も第四回目になっておりますが、しかし一年に近くなっておるわけでありますが、日本側としましても、あらゆる努力を続けて、しんぼうを続けて、妥結のための努力を払っておる次第でございまして、これを中途半端にしていいという考えはございません。あくまで努力をする、努力をしてだめなものはだめということで進んで参るつもりでございます。
#142
○委員長(青柳秀夫君) それでは、本日はこれにて散会をいたします。
   午後零時一分散会
ソース: 国立国会図書館
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