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1958/10/01 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 本会議 第3号
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1958/10/01 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 本会議 第3号

#1
第030回国会 本会議 第3号
昭和三十三年十月一日(水曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第三号
  昭和三十三年十月一日
    午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑
           (前会の続)

    午後二時十分開議
#2
○議長(星島二郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
            (前会の続)
#3
○議長(星島二郎君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。
 勝間田清一君。
    〔勝間田清一壇〕
#4
○勝間田清一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日行われた岸総理並びに藤山外務大臣の演説に関連いたしまして、経済並びに外交の当面の重要課題について、淺沼書記長に引き続いて質問をいたさんとするものであります。(拍手)
 岸内閣が政権を担当して以来今日に至るまで、政府の経済情勢の見通しは常に作為的であり、しかも、情勢の見通しと政策そのものとは常に食い違っていたのであります。このために、国民経済を無用に混乱させ、国民生活に重大な脅威を与えて参りましたことは、政府の責任きわめて重大といわざるを得ないのであります。(拍手)特に、国民は、この臨時国会において適切なる不況克服対策が樹立されるものと期待いたしておったにかかわらず、政府はこれを裏切り、補正予算を提出しようといたさないのであります。昨日の岸総理に至っては、今日の経済事情は、経済調整の余波と、国際経済の不況等による経済活動の停滞であると、しらを切っておるのであります。(拍手)
 私は、あらゆる指標から見て、現在の日本経済の現象を、戦後二回起った景気後退とは違って、世界的背景を持ったところの、日本資本主義の本格的な過剰生産恐慌の様相と見ることが妥当だと考えるのであります。(拍手)そして、多少の論点の相違があるにいたしましても、政治する者は、少くとも、今日の日本経済は、長期にわたって経済回復を期待し得ないという、その根拠に立って、まず不況の底をささえ、不況によって現に受けつつある中小企業者、農漁民並びに労働者の生活不安と苦痛とを救済する政策というものにまっ正面から取り組んでいくことが、政治的な責任を果すゆえんであると思うのであります。(拍手)
 岸総理は、今日の社会や経済に起きつつある不幸なる現象を、果してどう解決されようとするものであるか、現に苦しみつつある国民一人々々に納得のいける答弁をすべきであると思うのであります。また、佐藤大蔵大臣は、なぜ不況克服のための補正予算をこの際に組まないのか、また、そのことと三十四年度予算の編成の関係をどういうように考えているのか、大蔵大臣自身の経済の見通しと信念とを明らかにする責任がなると思うのであります。また、三木経済企画庁長官といえども、この際に、明確な日本経済の目標と見通しについて私は報告をする義務があると考えるのであります。
 私は、以下、順を迫って、われわれ社会党の見解を述べ、政府の具体的な施策を承わりたいと思います。
 まず、農村問題についてであります。
 米は、幸いに、不十分ながら最低価格によってささえられております。従って、豊作はそのまま農家所得の増大となって現われているのでありますが、畑作、畜産物並びに繭等は、支持価格が低過ぎるか、買い入れ資金に乏しいか、あるいはまた、全く価格政策から放置されているのであります。私は、表作における米、裏作における麦、夏作におけるカンショ、バレイショ並びに大小豆、その他畜産物と繭というものは、農業経済の柱として、重点的な価格政策が組まるべきだと考えるのであります。特に、基本的に食糧が不足いたしており、しかも、過剰農村人口をかかえております農家は、所得過少に苦しんでおります。こうした価格体系を確立することは、今日の農業政策の不可欠の条件であると思うのであります。(拍手)また、この価格体系が確立されることによって、麦畑が蔬菜畑に移る、あるいは麦畑がイチゴ畑に移る、そうした現象が起ることによって、あるいは蔬菜の過剰生産を起し、あるいは豊作貧乏の現象を起すのであります。そうした事態から農民を救済することは――これは価格体系を確立し得ないところに今日の最大の欠陥があると考えるのであります。(拍手)
 従って、私は、政府の農産物の価格維持政策を明らかにいたしたいと思うのでありますが、私は、次のごとく考えます。
 まず第一に、収穫期が迫っておるところのカンショの買上価格の発表が、ついに今日までおくれておったというのが、政府の政策の実態でありました。少くとも、これを早期に発表すると同時に、価格をつり上げていくべきであります。
 また、麦の作付反別が今日減少を続けておるということは、麦の価格が低過ぎることを意味するのであります。しかも、価格の決定が麦のまきつけ以前になされていないところに最大の欠陥があると考えるのであります。私は、麦の価格を引き上げ、まきつけ以前にこれを決定するという、積極的な増産政策をこの際とって、畑作及び裏作における経営の安定をはかるということに重点を置くべきであると考えるのである。
 また、酪農対策といたしましては、農産物価格安定法の中に乳製品を入れるとか、酪農振興法の改正によって、公正なる取引を保障するとか、飼料需給調整法の改正によって輸入飼料を実需者に扱わせるとか、学校給食法の改正によって冷蔵設備を補助対象にするとか、食品衛生法の改正によってこれら酪農の不安を根本的に解消することが絶対に必要だと考えるのであります。(拍手)
 また、糸価安定について、政府は十九万円の支持価格を引き下げようといたしております。特に、佐藤大蔵大臣は、これらの値下りが、あたかも農民の責任であるかのごとくに談話をされておることは、断じて許し得ざるところであります。(拍手)当然、支持価格十九万円を維持し、夏秋蚕繭価格を千四百円にささえて、桑園、掃き立て枚数の計画化に対しては、補償や作付転換資金を含むところの財政的、金融的裏づけをする等によって、筋の通った政策を行うべきであります。(拍手)
 また、畑作農業に依存して恵まれない開拓農民は、不況や災害の被害から常に脅かされているのであります。しかも、開拓資金の返済期に当面いたして、これらの諸君はきびしい生活不安に陥っているのであります。政府は、一方において、パイロット・ファームには一戸当り三百八十万円も投資をしながら、他方、既存の開拓民は負債と金利の重圧に苦しんでおるのであります。開拓者資金融通法を改正すべきであります。(拍手)そして、負債の返済の時期を引き延ばし、生活資金の融通の道を開き、さらに金利を引き下げることが絶対条件だと思うのであります。
 しかして、今日、私は、特に山村の問題について一言せざるを得ません。昨年の神武景気以来、木炭業者の原木の価格は暴騰いたしたのであります。政府は引き締め政策によって、かまをつき、製品が出てきたときには、一俵百円の暴落をいたしたのであります。こうした木炭業者の農民諸君の今日の炭価の値下りの被害に対して、政府は、原木並びに製品に対する価格政策を立てるべきだと思うのであります。
 しかして、もはや、今日の日本農業は、国民経済計画化の重要な地位を占めるべきであります。教育に教育基本法があるごとく、農業に農業基本法を制定する時期に到達したと確信いたすのであります。(拍手)
 政府は、豊作を自己の手柄であるかのごとくに、から宣伝することをやめまして、こうした農村の緊急問題に対して的確な政策を打ち出すということが農民の労苦に真に敬意を表するゆえんであると思うのであります。(拍手)農林大臣の見解を承わりたいと思います。
 なお、この際、災害対策について政府の見解をただしておきたいと思います。
 遠藤建設大臣は、昨日、この議場において、被害事情の中間報告を述べられました。しかし、それは主として建設省関係にとどまったのであります。各関係省の総被害額は遺憾ながら示されず、しかも、災害対策については一言も触れられておらぬのであります。従って、政府は、現在までに明らかになったところの総被害額を明らかにすると同時に、現在の予備金の残高、すなわち、すでに予定されておる支出を差し引いたところの純予備金の残高、それを明らかにいたしまして、本国会において補正予算を出すかいなかを、まず明らかにすべきであります。(拍手)
 なお、二十八年度九州災害においては、議員立法ではありましたが、冷水害地特別措置法が制定されたのであります。本年の災害においても、この被害事情から見て、当然同様の措置をとるべきであると思うのでありますが、政府は、一体いかなる用意を持っておるのであるか。
 また、岸総理が、昨日の答弁におきまして、治水事業に対し、きわめて認識不足な、冷淡な態度をとったことは、きわめて遺憾とするところであります。(拍手)わが国の治水事業の進捗率は、三十二年度現在においても、わずか一一%であります。この分で進むならば四十年の歳月を要するのであります。しかも、本年の治水事業の予算というものは、わずかに三百八十億円で、これはグラマン十台分にすぎないではないか。(拍手)岸内閣が、こうした目に見えざる基本的政策に対していかに不熱心であるかということは、この事実が物語っておると思うのであります。あの狩野川の災害にいたしましても、二千立米の水量の中で千立米を放水する計画でありましたが、その半分の五百立米の放水事業も、本年の予算はわずかに一億三千四百万円にすぎないのでありまして、これで進めたならば三十七年度までかかるのであります。私は、今回における天災は、自然災害ではなくて、政治的災害であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)岸総理は、今日の治水事業に対して新たなる決意があるならば、お聞かせを願いたいのであります。
 次に、労働問題について、主として労働大臣を中心にお尋ねをいたします。
 私は、不況下の労働問題の重点は雇用問題だと確信いたすのであります。そして、雇用の見通しについてわずか数カ月前になされた労働大臣の答弁は、今日、完全に誤まりであるということを認めざるを得ないことは、きわめて遺憾にたえないところであります。(拍手)いな、むしろ、企業の操短は一般化し、雇用の減少、失業の増大は全産業的規模にまで広がっております。このような状態の中で、一たん失業した者が再就職する機会を見出すことは容易ではありません。また、学校卒業者の新規就職希望者は、来春は百三十万に上るでありましょう。再就職いたしましても、従来より悪い労働条件に落されます。同一金業内においても、配置転換によって労働条件は切り下げられるのであります。こうしたことが公然たる一般現象になっておるにかかわらず、岸内閣の政策は、あく抜き政策の名をもって、過剰雇用の整理をもってこれに臨んでおるばかりでなく、労働者に対して弾圧政策に出ておることは、われわれの断じて許し得ざるところであります。(拍手)
 この際、政府は、近く再就職する見込みのない失業保険の受給者約五十万の生活をささえるために、失業保険の支給期間をもう三カ月暫定的に延長する暫定立法を制定すべきであります。
 また、失業対策事業の吸収人員は、現行二十五万人になっております。これは、一日平均三十五万人といたしまして、十一月以降来年三月に至るまでの五カ月の補正予算を組むべきでありましょう。
 また、雇用の減退に備えて、国の責任において雇用を確保し、かつ、公共事業費の繰り上げ支出に伴うところの来年一―三月の経費の不足分を、当然今回補てんすべきではないか。
 また、企業整備が今日、毎月八百件をこえて、貸金支払いの遅延を起しております。また、債権の取り立てに対して、貸金の優先権は認められておりません。私は、当然企業整備に伴うところの貸金債権の優先確保の政策を行うべきであると思うのであります。
 労働大臣は、王子製紙の労働組合に対しては、まことに聞くにたえない暴言を吐いておるのでありますが、私は、今日こうした苦しみに陥っておるところの労働者の生活を防衛し、適切なる法的、財政的措置を講ずることが労働大臣の任務であると確信いたしておるのであります。(拍手)
 次に、中小企業に対する政府の対策をお尋ねいたします。
 まず、中小企業の味方であると、から宣伝する岸内閣が、事実は独占資本の代弁者であることを遺憾なく暴露したものは、独占禁止法の改悪の謀略であります。(拍手)深刻なる経済不況下において、さなきだに企業が集中いたし、独占が支配的に拡大することは、資本主義経済の必然性であります。それを強化し、経済民主化の重要な柱をへし折ろうとする岸内閣は、中小企業の味方であるとは断じて申し上げるわけには参りません。さればこそ、今日、中小企業者及び農民諸君が鼓を鳴らしてこの法律に反対しておるのであります。
 今日、重要なことは、独占資本から中小企業の受ける圧迫を排除し、保護することであります。独占の強化ではなくて、経済の民主化だと思うのであります。不公正な取引を助長することではなく、公正な取引を保障することであります。具体的に言うならば、銀行の不当な干渉を退けること、通産行政の独占中心の誤まれる行政を改めること、メーカーや問屋の圧迫を排除してやること、百貨店の進出を阻止すること、こうしたことによって商業権を確保してやることは、今日の中小商工業者に対する絶対の条件であると思うのであります。(拍手)わが党が商業調整法案を提出いたさんとしておりますのも、これがためであります。政府は、すべからく、すでに提案した独禁法の改悪案を撤回すべきであります。私は岸総理の反省を求める次第であります。
 次に、中小企業の中で、特に政治の外に置かれているところの零細企業は重要であります。これら零細企業は、資本力と信用力に乏しいのみならず、労働は親子働く企業であります。所得の性格は、勤労所得の性格であります。さればこそ、シャウプ勧告においても、零細企業に対する勤労控除の制度が示唆されたのであります。大蔵大臣は、信用力の乏しいこれら企業に制度金融を拡充強化し、一方、資金源を確保し、そうして、税制上において、これら勤労控除の制度を設けることが妥当であると思うが、大蔵大臣の見解を承わりたいのであります。(拍手)
 経済政策のさらに重要な問題は、いわゆる貿易政策でありましょう。通産大臣は、過日、本年度の輸出貿易額はおよそ二十八億ドルであろうと発表されました。このことは、また、本年度予算編成の基礎になったところの三十一億五千万ドル輸出が全くでたらめであったことを証明いたしたのであります。(拍手)そして、貿易を振興する政府の政策にはほとんど見るものがありません。往復三億ドルを確実に約束したところの第四次日中貿易協定を破壊いたしまして、ひたすらアメリカに対する借金政策、東南アジアに対する賠償、延べ払い、円借款、開発基金等の供与によって、これら地域に対する貿易の伸びを期待いたそうといたしておるのが、経済外交の実態であります。
 しかるに、貿易政策で最も重要な対米片貿易の是正や、二十品目にわたるアメリカの不当な日本商品輸入抑制政策を取りやめさせることに対する努力については、何ら見るべきものが今日ないことは、きわめて遺憾とするところであります。(拍手)事実、統計の示すところによれば、三十二年度の対米貿易の実績は、輸出において、わずか七億五千四百万ドルであります。これに対して、輸入は、実に十八億六千八百万ドルに及ぶのであります。実に十一億ドルの対米輸入超過が今日の実態でありましょう。しかも、対米輸入は、日本の総輸入額中、三十二年度で四割六分を占めております。対米輸出は、逆に、わずかに二割六分であります。こうした片貿易は、単に貿易上の不利であるばかりでなく、特需依存、ドル依存の程度を高めて、日本の経済的、政治的自主権を阻害するもはなはだしいといわざるを得ません。(拍手)ましてや、こうした膨大な片貿易でありながら、主として中小企業の商品であるところの日本商品の輸入阻止に強く反対し得ない岸内閣の弱腰というものを、今日の窮乏に苦しむ中小企業者は断じて許し得ないでありましょう。(拍手)
 これに比して、アジアの貿易は、輸入において十一億七千五百万ドルであります。輸出においては、これまた十一億五千四百万ドルを示しておりまして、輸出入貿易は、ほぼ均衡を保っておるのであります。しかし、この地域における問題は、外貨不足にあることは言うまでもありません。そこで、政府は、対米片貿易を是正しようとはしないで、東南アジアに対しては、先ほど来申した通りに、賠償、延べ払い、円借款、開発基金、こういうものを供与して貿易を伸ばすというのが、これが今日の政府の政策でありますけれども、経済負担、国民に及ぼす影響から見るならば、私は、不必要に国民負担を増大せしむるものであると考えるのであります。すべからく、アメリカより輸入しておるところの商品を漸次アジア地域に切りかえ、正常貿易を通じて東南アジア貿易の拡大をはかるべきであります。(拍手)
 しかし、重要なことは、日本とアジア諸国との提携の仕方であります。すなわち、アメリカとの軍事同盟を強化したり、アメリカ資本と結びついて進出するという態度をやめまして、まず、平和的な日本として、中国を含むアジア全体の決済貿易方式をこの際考えるべきであります。このことは、バンドン精神に通ずるのみならず、アジアの信頼をかち得るところの貿易政策であると考えるのであります。私は、通産大臣の率直なる見解を承わりたいと思います。
 最後に、政府の外交問題について、総理大臣並びに外務大臣にお尋ねをいたします。――昨日行われた岸総理の演説や藤山外相の報告が、目下わが国の最大課題たる安保条約の改訂問題、さらに台湾問題について、何ら明確な基本方針が示されず、前進を見なかったことは、きわめて遺憾にたえないところであります。(拍手)
 岸総理は、安保条約改訂について、自主性を明確にした条約に改訂したいと考えておるようであります。そのねらいとするところは一体何であるか、すなわち、現行条約並びに協定は、第一に、内乱、騒擾等の内政問題にまで米軍を派遣するものとなっておること、第二に、日本を防衛する義務のないものとなっておること、第三に、米軍の極東平和に寄与するための出動及び装備について日本側に何ら通告や承認を求める必要がないようになっておること、しかも、無期限駐屯の、きわめて自主性のないものであることは、今日明白であります。その条約を自主性ある条約に変えるということは、一体いかなることを意味するのであるか、私は、岸総理のこの問題に関する基本的態度をお尋ねしておきます。御存じのごとく、日本には憲法が厳存いたしております。海外派兵を禁止いたしております。しかしながら、他方においては、バンデンバーグ決議が厳存し、相手国の義務が強く要望されております。従って、条約の改訂は日本の海外派兵を義務づけ、かえってアメリカの軍事的支配を強化する結果になるのではないか。岸総理は、日本の義務の限界をどこに置いて考えておるのであろうか、この点を明確に答弁を願いたいと思うのであります。
 また、かつて、重光外務大臣は、「日本は西太平洋の安全に寄与したい」と声明いたしました。岸総理は、過般のアメリカ上院における演説において、「アジアの防衛について、アメリカと共同の責任を負いたい」と言いました。安全保障条約改訂の重要な内容であるところの共同防衛の地域、この地域をどこに置こうといたしておるのであろうか。特に、われわれは、今日、沖縄、小笠原について領土返還を要求し、アメリカもまた、潜在的主権をこの地域に認めるといったような、きわめて巧妙な態度をとっておるのであります。従って、これら地域が、すなわち、沖縄、小笠原地域が共同防衛の地域に入れられて、事実上海外派兵に追い込まれる懸念があると私は確信いたすのであります。これに対する岸総理の今日の見解を承わりたい。
 岸総理は、また、常に、NEATO軍事同盟に参加したり、これを計画したりすることはないと言明いたして参りました。安保条約が改訂されるにしろ、新しい条約になるにしろ、結局は、米台軍事同盟、米韓軍事同盟と全く同じ性格のものになるのではないか。そうしたならば、アメリカの太い線に握られた三国間の軍事同盟と何ら変らない結果になるのではないか。(拍手)このことは、日中間の和解を妨げ、台湾問題、朝鮮問題を控えたアジアの緊張になることは当然であります。
 私は、安保条約の改訂はもちろん、ましてや、現状維持論に対して絶対反対するものであります。しかし、その解消には多くの条件と努力が必要であることは言うまでもありません。従って、台湾を中心とする緊張が今日存在しておるときになすべき最大のことは何か。私は、第一は、日本の軍事基地を台湾や朝鮮の紛争に使用させないということ、第二は、日本におるアメリカ軍隊を絶対に核武装させないこと、この二つの条件を条約上締結していただくことが今日の外交政策の最も努力すべきところであると確信いたすのであります。(拍手)
 藤山外務大臣は、今回国連総会に出席した際、台湾問題、あるいは中国問題について、イギリスのロイド外相その他と会談をいたし、国連における発言もいたして参ったようであります。そこで、まずお尋ねをいたします。
 第一は、金門、馬祖島は明らかに中華人民共和国に属すべきものであると発言されたといわれておるけれども、真実は一体どうであろうか。私は、ここから国府軍が撤退することが台湾問題平和的解決の前提条件であると確信いたすのであります。(拍手)外務大臣のこれに対する考えをお伺いいたしたい。
 第二は、藤山外相は――中米両国は、ワルシャワ会談において、平和的解決に努力をいたしております。しかし、この平和的解決に期待することは当然でありまするけれども、それが失敗に終った場合においては、国連にその舞台を移すべきであるという、アメリカの態度に追従いたしておるのであります。私は、今日大切なことは、それ以前において米中外相会談を開くことが当然日本の示すべき態度であると確信して疑いません。外務大臣の今日の見解を承わりたいのであります。そして、バンドン会議に参加し、アジアの一員として外交を進めていくことを一つの柱にしている岸内閣は、今こそ、台湾問題の平和的な解決について、アメリカに追従することをやめて、アジア・アラブ諸国とともに行動すべきであると思うのであります。(拍手)そして、また、アジアに対する第三国の政治的な、あるいは軍事的な干渉を排除して、アジアの問題はアジア人が解決するという、この大道に従って日本の外交をすべきではないか。(拍手)この場合における外交の原則は、政府も調印をしましたところのバンドン会議の決議であり、平和五原則の決議であると私は確信して疑いません。(拍手)この外交を今日アジアに進めることが日本の平和と繁栄に寄与する唯一の方針であると私は思います。
 岸総理大臣の答弁を求めて私の質問を終るのでありまするが、どうか、岸総理には、そつのない答弁ではなくて、そつはあっても誠実のある答弁を要求してやまないものであります。(拍手)
#5
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。勝間田議員の質問は各般の問題にわたっておりますので、私は特に私を指名されました点についてお答えをし、他はそれぞれ主管の大臣からお答えをさせることにいたします。
 第一は、外交に関して、この安保条約の改訂の問題についての御質問でありました。これは、私は明確にこの席から申し上げましたように、日米間の安保条約は、これが制定された当時と今日は、日本の防衛力におきましても、また日本の国際的地位におきましても非常に異なっておることは、御承知の通りであります。当時におきまして、こうしたアメリカに一方的な安保条約ができたということもやむを得なかったと思いますが、その後の運営を見ますると、いろいろの問題が起ってきておって、国民感情の上からいっても望ましい姿でないことは、私はだれもがそう思っておると思うのであります。従って、昨年私がアメリカを訪問したときにも、その問題に触れて、とにかく、とりあえず、この安保条約の運営、また安保条約から生ずる各種の問題を、両国の利益と国民感情に合致するようにこれを運営していき、検討していくという意味において、安全保障委員会ができて、一年を経ております。私は、こういう状況のもとにおいて、日本は、やはり、あくまでも自主的な立場、また日米対等の立場において、そうして、一面において日本の安全保障を確保すると同時に、世界の平和を増進していくことに努めることが、日本の根本でなければならないと思います。そういう見地に立って今の安保条約を検討いたしてみますと、各条文にそういう趣旨に反するものがたくさんあると思うのです。具体的に、私は、これをここで、どの事項をどうするのだということを申し述べることは、まだ早いと思うのです。適当の時期ではないと思うのです。私は、根本の趣旨が、日本の自主的な防衛、この立場を十分に達するように、また、御心配になっておりますが、私どもはあくまで日本憲法の範囲内でこの問題を進めることについてもアメリカと十分話しておるので、海外派兵の問題とか、義務を生ずるとかいうことは絶対にないことだけは、明確に申し上げておきます。(拍手)
 なお、台湾の問題につきましてはいろいろな御意見もございましたが、私は、きわめて明瞭に、この問題が中心に武力の行使が拡大していくという事態をなくさなければならない。すなわち、平和的にその紛争が解決されなければならない。これには、とにかく、当事者間において、これが話し合いによって決定されるということが最も望ましい。これがワルシャワ会談でございます。これが成功するやいなやは、まだその途上にありますが、私は前途必ずしも楽観はいたしておりません。
 また、それに引き続いて、直ちに国連に持ち込むという方法が適当であるかどうかも、私はなお検討の要があると思います。あくまでも話し合いなんです。武力解決ではないのです。話し合いによって解決するということが私どもの根本の考え方でございます。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作登壇〕
#6
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。いろいろ御意見にわたる点も多かったのですが、私に対する御質問は、中小零細企業のために勤労所得控除の制度を設けたらどうか、あるいは金融機関を特に設けてはどうか、こういう具体的なお尋ねがあったように伺います。
 中小零細企業者のために勤労所得控除の制度を設けるという要望につきましては、中小企業の所得が勤労に基く部分が多いから、そこで給与所得について認められているような給与所得控除をしろ、こういう御意見かと思うのでございますが、給与所得控除の問題は、給与所得に伴う必要経費の概算控除であるとか、あるいはまた、給与所得の担税力についての考慮をするとか、あるいはまた、給与所得と事業所得との間における税の執行上の所得の把握率の調整であるとか、こういうような点から特に考えられておるのでございますが、中小企業者の事業所得につきましては、かような条件はございませんので、この勤労所得控除の方法は考えておりません。ただ、今回、事業税の軽減の観点に立ちまして、いろいろ研究をいたしております。この点は、結果を待って御要望にこたえたいと思います。
 次に、金融機関を特に考えてはどうかということでございますが、政府関係の中小企業、零細企業も含めての三金融機関、これにおきましては、三十二年度に対して三十三年度は約一六%の増、金額において五百三十七億円の増加でございます。ただいまの状況から申しまして、今日の需要に対しては、一応これでまかなえるのではないか、かように考えております。
 なおまた、補正予算の点につきまして、ただいまお話がございましたが、具体的な問題としては、ただいまのところ二十二号台風の結果、災害対策といたしまして、調査の結果、必要がありますならば補正予算をも考える、かような考え方を持っておるのでございます。
 第一段の点につきまして、一般に事業不振ではないのか、不況に対する対策を講ずべきではないか、こういう御意見は伺いましたが、実ははっきりしたお尋ねはなかったように私は心得たのでございます。しかし、あらためてお答えをしてもよろしゅうございます。御承知のように、今日の経済情勢に対しましては、昨日も、岸総理から、経済の情勢についての見方をはっきりお話をいたしました。大蔵大臣といたしましても、同一の見解をとっておるのでございます。言いかえますならば、今日の経済の情勢は調整の期間に入っておる。この調整の期間の途上におきまして、二、三の事業において不幸にして摩擦を生じておるのでございますが、これらに対しては、それぞれの対策を講じて参っております。三十三年度予算を編成いたします際に、今日進行しておるような経済情勢に対しましては一応の見通しを立てておりまして、公共事業費を増加するとか、あるいは、ただいま御説明申し上げましたように、金融についても資金を増加するとか、あるいは失業対策の予算を増加するとか、それぞれ処置をとって参りました。今日までのところ、私どもは、この予算の実行が第一であり、それをさらに手直しする必要を認めておらないのでございます。(拍手)
    〔国務大臣三浦一雄君登壇〕
#7
○国務大臣(三浦一雄君) 勝間田君は、現在の農村問題を分析せられまして、過剰生産の傾向にあって、逐次不況の様相を呈している、この際価格体系を再検討すべきである、こういうことの要旨でございました。そして、麦、カンショ等の例をあげて御指摘でございましたから、これについてお答えを申し上げます。
 御承知の通り、政府の、経済企画庁の発表いたしました経済白書にもあります通り、農産物の収入等は、その七割方が現行の価格支持制度によって保持されておりまして――不況の様相であると、こう申しますけれども、比較的安定しておりますことは、御承知の通りであります。そして、同時に、農村の消費水準の高まっておりますことも事実でございます。
 麦につきましては、御承知の通り、現在逆ざやになっておりまして、買い上げは、高くて、そして払い下げが低い、こういう逆ざやの状況でありますので、ただ単に、これを高い麦を買えということでは解決できぬことは、御承知の通りであります。従いまして、私たちとしましては、畑作の重要なる作物としての麦は、価格の面、さらに生産面、相ともに考究いたしまして、その対策の十全を期したいという考えであります。
 第二には、カンショのことでございますが、本年は、不幸にして災害等がありまして、若干の減産になっております。きょう価格を決定いたしたいと思うのでございますが、若干の値上げをいたしまして、本日発表の見込みでございます。これは貫当り五十銭アップ、同時にまた、切りぼしにありましても、二十円アップの九百九十円にするつもりでございます。
 次に、酪農の問題でございますが、この問題につきましては、一種の支持価格をとれというふうな御提唱でございますけれども、われわれとしましては、なお、これは検討を要すべきものと考えます。現状にかんがみまして、政府は、過般来、学校給食、集団消費の奨励等を打ち出しまして、当面の施策としまして、すでに予備金から約九億円を投じて対処いたしておりますし、同時に、冷凍の施設に対しましても、市町村、学校等の設備に対しましては、四割程度に相当する減税の恩典をも与えておるのであります。なお、この問題は、近く発足します酪農振興基金等を運用して、その適切な方途を進めたい考えであります。同時にまた、酪農振興法等につきましては、当面所要の改正をいたしたい考えで、近く提案する見込みでございます。
 次に、繭の問題でございますが、出来秋の繭に対しましては、養蚕農家の要望がありますので、この方面には相当の自主乾繭の必要とする資金を供給するつもりであります。第二には、共同保管に対しましても助成の道を開きたい考えであります。同時に、糸の問題でございますが、世界市場の関係や繊維全体の趨勢にかんがみまして、今後いかようの支持価格をとるか等につきましては検討中でございますので、近く所要の措置を講じたい考えであります。
 次には、酪農民に対しまする関係でありますが、開拓地におきまして相当の困難にありますことは私たちも認めるのでございますが、まず資金面につきましては、昨年成立いたしました開拓営農振興臨時措置法等によりまして、開拓者の営農振興対策を強く推進いたして参っておるのであります。資金につきましては、開拓者資金特別会計から追加いたしまして、相当大幅の資金の増額をいたしておりまするし、償還期間の延長の措置も講じ、負担軽減をはかったほかに、農林金融公庫等の資金の増額、中央開拓融資保証協会に対する政府資金の増加等をはかりまして、そして、過去の負債の条件緩和等をはかりますために、これら融通資金の履行延期、条件緩和の措置をとることといたしておるのでございます。なお、災害経営資金につきましても、長期借りかえの措置を講ずることといたしております。このほかに、なお開拓建設工事の促進その他経営の指導につきましても、鋭意改善の道を講じて参りたいと存じます。
 次には木炭対策でございますが、これに対する民間の生産の競合もありますので、国の生産しております、いわゆる国営製炭につきましては、すでに売りどめをいたしております。原木の供給につきましては、国の力によります方面、国有林等の関係におきましては、すでにこの対策を指令して実行に移しておるわけでございます。
 最後に、農業基本法制定の提唱でございますが、勝間田君の農業基本法の構想をも、われわれはまだ了解しておりません。ただし、われわれとしましては、長期安定の観点から、農業を振興し、そして他産業との比例のとれました農業経営が営み得るという見地に立ちまして、この問題は目下検討中でございます。(拍手)
    〔国務大臣遠藤三郎登壇〕
#8
○国務大臣(遠藤三郎君) ただいまの御質問に対して、私の関係の部分についてお答えを申し上げます。
 第一は、今回の二十二号台風の災害復旧のために特別立法をする考えはないかどうかというお話でございました。この点については、実は、今回の台風は、全体といたしましては、二十九年の台風にほぼ匹敵するような台風でございます。その規模も大体同じようでございます。しかし、局地的には非常に深刻なものがございましたので、これらの点を考慮いたしまして、災害による被害の実態の判明するに従って十分に検討してみたいと存じます。現在は――多分きょうの夕方までには、道路を通ずる作業もだいぶ終るようでございますから、だんだん被害の実態がわかって参ると思います。それに応じて十分に考えてみたいと思う次第でございます。
 第二の点につきましては、狩野川の治水工事が非常におくれておったのではないか、こういうことでございますが、今回の災害は、昨日も報告申し上げましたように、奥地の山復の崩壊、あるいは土砂の流失によって大きな災害を起したのでございまして、今後の対策といたしましては、十分に砂防工事等を進めていく必要がある、そういうふうに考えるのでございます。なお、中流以下の問題につきましては、放水路工事の推進を一そうはかって参りたいと考えております。
 さらに政府全体といたしまして、治山治水の予算が足りないではないかという質問でございました。この点、治山治水事業がおくれておりましたことについては率直に認めたいと思います。しかし、今後はでき得る限り治山治水事業に力を入れて参る考えでございますことを申し上げておきたいと思います。
    〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#9
○国務大臣(倉石忠雄君) 失業保険の支給を延長する意思はないかというお話でございますが、失業保険につきましては、御承知のように、長く勤めておりました者には一カ月ないし三ヵ月の延長の措置をすでにやっておりますし、外国等との比較を見ましても、新たに、勝間田さんのおっしゃるように、延長の特別立法をする意思はございません。
 失対事業につきましてはお説の通りでございまして、私どもも、この失業問題については苦慮をいたしておりますが、御承知のように、政府は、昭和三十三年度予算の編成のときに、経済調整の施策を講じます結果出てくるであろうと想定される失業者に対して、すでに二十五万人という失対のワクを持っておる次第でありますし、その後の経過を見ておりますと、その当時政府が想定いたしましたほど、現実に、安定所の窓口の調査によれば、出て参っておりません。そこで、現在さしあたりわれわれが考えておりますことは、御承知のように、公共事業の繰り上げであるとか、そういうようなことを、急速に政府は手を打ちまして、第一・四半期から第三・四半期まで、四百三十一億円すでに増でありますが、第四・四半期においては四百二十三億円支出する、こういうふうにいたしますることによって、相当量公共事業の方でも吸収できる、こういう見込みを立てておりますので、そのために特に補正予算をわれわれの方から要求する考え方は持っておりません。
 それから、賃金債権の優先について特別立法をする考えはないかということでありますが、このことにつきましても、もちろん、働いた人々の賃金ができるだけ優先することは、われわれも希望するところでありますが、もし、そういうようなことを立法でいたしますと、反面において、そういうような事業をしておるところへ金を貸さないといったような傾向も出てきまして、従って、事業を経営される方の側からいいましても、そういう立法をされることはどうかという危険を感じておるようでありまして、私どもは、その点については、やはり、労働基準監督署を通じて、監督業務を通じて、賃金債権がなるべく優先されるような措置をとっていきたい、こういうふうに考えております。
 それから、私が王子製紙労働組合員に暴言を吐いたとおっしゃいましたが、勝間田さんの何か誤解のようであります。
    〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
#10
○国務大臣(高碕達之助君) 勝間田さんが御指摘になりました対米片貿易是正の点でありますが、お説の通り、非常に昨年片貿易になったことは事実であります。政府は、その後これを是正するために努力をいたしました結果、最近の数字で申しますと、昨年は、一月から六月は、輸出は二億八千四百万ドルでありましたが、本年に至りまして、本年一月から六月まで半年間に三億二千四百万ドル、実に一四%の増加をしておるのでございます。一方、輸入の方は、昨年の一月から六月までには七億九千五百万ドル、非常に大きな数字になりました。本年は、それが一月から六月までは四億四百万ドル、実に半減をしておるわけであります。従いまして、御心配になりました対米貿易の片貿易は、漸次是正されつつあるということを御記憶を願いたいと思うのであります。
 次に、東南アジア及び中近東、南米等は、御承知のごとく、全部どの国も外貨を持っていないのです。外貨が不足しておるのであります。この国々に対しましては、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア等が、非常な勢いをもって、延べ取引、あるいはクレジットの設定、あるいは経済協力等をもって進出しておるのであります。これに対抗いたしまして、わが国といたしましても、幸い、今日の外貨の保有高は最初予定しておりましたよりも非常に大きくなりまして、私どもの推定によりますれば少くとも三億ドルを超過する、こういう好況でありますから、これを利用いたしまして、今日、われわれが、行き詰っておるところの中小工業の製品、これをこの地方に持って行って、延べ取引、円クレジットの設定等でやるということは、断じて中小工業なりあるいは国民の負担を増すゆえんでないと私は信ずるのであります。もちろん、東南アジアに対しましては、わが国の経済進出と同時に、また武力進出が伴うだろうというふうな危惧の念を抱かれる点がありますから、この点は十分考慮して、そういうことのないように努力いたしたいと存じております。また、日中貿易の再開のことでありますが、これは、お説のごとく、この五月以来中絶しておりますことによって、われわれの予定しておりました一億ドルの輸出は減退する、なお、この八月には、政府が努力しておりましたココムが緩和された、こういうことを考えますというと、非常に大きな期待をかけておるわけでありますから、これが中絶されるということはまことに残念しごくでございますが、相手国は経済と政治とを分離することができない国柄であります。この点から考えまして、われわれは、目前の利益のために将来をなげうつというようなことはできないのでありますから、そこで、国際情勢の緊迫を緩和すること、それに相互の理解をもっと深めるということが第一と存じまして、それまでは静観することが当然だと存じます。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#11
○国務大臣(藤山愛一郎君) 安保条約の改訂の精神と趣旨につきましては、すでに総理から説明があったと思います。私は、その総理大臣の趣旨にのっとりまして、先般ダレス長官とこの問題について会談をいたしたわけでございます。ただいま勝間田君の御指摘のような点は、すでに十分ダレス氏に話をしておりますから、御安心いただきたいと思います。(拍手)
 ただいまワルシャワにおいて行われております米中会談の結果、国連に持ち込むことを主張するのが、何か悪いようなお話でありまして、むしろ、米中外相会談を開くことに日本が努力したらどうだという御質問のように承わったわけでありますが、今日、米中会談がワルシャワにおいて開かれております限り、われわれとしては、できるだけそれが平穏裏に解決するように希望してやまないのでございまして、今日、まだ、外相会談もしくは国連総会に移した方がいいというような主張をいたすべき時期ではないと思っております。ただ先ほど、勝間田議員が、日本が何か国連に移すことがアメリカの態度に追随しているというようなお話でありましたけれども、むしろ、アメリカの方が国連に移すことをきらって、どちらかといえば、ソ連が国連に早く移したいというような傾向があるように私は承知いたしております。
  〔「ロイド会談どうした」「沖縄問題は答弁していないじゃないか〕「答弁々々」と呼び、その他発言する者あり〕
#12
○議長(星島二郎君) 再質問の要求ですか。
    〔「議事進行」と呼び、その他発言する者あり〕
#13
○議長(星島二郎君) 外務大臣より……。
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#14
○国務大臣(藤山愛一郎君) 台湾海峡の問題が日本にとりまして非常に重要な問題でありますことは、申すまでもないことであります。従いまして、今後これら台湾の問題が平和裏に解決することを日本は念願しておりますので、できるだけこれが平和裏に解決するように希望しております。従いまして、私は、国連総会の機会に、また、ワシントンにおいてダレス長官と話しました際にも、これらの各国と台湾海峡の問題に対する率直な意見を交換いたしたわけであります。そうして、それらの国々がどういうふうにこれらの問題を考えておるかということを、十分率直に話し合いまして聞き得ましたことは、将来の日本の施策の上において十分有効だと思うのでありまして、そういう意味において、ロイド外務大臣とも十分懇談をいたしたわけであります。ただ、この懇談は、私的な会談でありますので、公的に発表をいたすわけには参らないので、御了承を願いたいと思います。(拍手)
#15
○議長(星島二郎君) 松本七郎君。
    〔松本七郎君登壇〕
#16
○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、岸首相の施政方針演説に対し、外交政策の主要な諸点につき、首相並びに外相に質疑を行わんとするものであります。
    〔議長退席、副議長着席〕
 日米安全保障条約の改訂問題、これがいよいよ具体的段階に入って参りましたことと、緊迫せる台湾海峡の事態に対して日本政府がいかなる見解と方策をもって臨むかというこの二つの問題は、日本のみならず、世界の平和に直接かかってくる問題であると同時に、岸内閣の基本的性格がきわめて端的に、具体的に現われるという点におきまして、ひとり日本国民のみならず、今や世界の注目すべき重要問題となって参っておるのであります。(拍手)
 台湾の情勢は、日本国民にとって死活の問題にも発展する危険な要素を含んでいるのであります。在日米軍はすでに準戦時体制下にあります。日本の基地から金門島その他に出動しておりまするし、第七艦隊や第五空軍は自由に行動を開始しておる現状でございます。ダレスのいわゆる戦争せとぎわ政策は、今や、国外では言うに及ばず、アメリカの国内においてさえ非難の的となりつつあるのであります。台湾海峡でダレス外交がもし失敗を見るようなことになれば、いよいよダレスの失脚を免れ得ないであろうといわれておるのでございます。一方、金門島の補給は今や不可能に陥りつつあります。こういう情勢になって参りますと、勢い、昨日の新聞にも報道されておりましたように、苦しまぎれにミサイルを使用するという事態にならざるを得ないのであります。九月の二十七日には、すでに、米空軍長官のダグラスが、必要とあれば中共に対し原子兵器を使用する旨を言明いたしておるのでありますから、いつ、かかる事態に突入しないとも保しがたいわけであります。もしさような事態になった暁には、日本は直接あるいは間接に原子戦争の基地と化することは必然でございます。
 かかる事態の抜本的解決は、もちろん、台湾問題が中国の内政問題であることを認めて、米軍の台湾よりの全面的な撤退、安保条約の解消にまで進まなければならない。(拍手)けれども、これらの政策の採用を拒否しておる現日本の政府であっても、さしあたり、この日本国民に振りかかろうとしておる危険を防止する具体策はあるはずであると思うのでございます。岸首相は、口では平和的解決を望むということをしきりに言っておられますけれども、実際には、先ほど申しますように、在日米軍の行動の自由を容認し、日本国民みずからの意思によらずして、核兵器戦争の基地となる道を選んでおるのでございます。(拍手)
 台湾の問題については、客観的にこれを見まするならば、日本の基地がこのおそるべき極東の原子戦争に利用されることを拒否する道と、もう一つは、アメリカのダレス政策と蒋介石を援助する道の二つしかないのでございます。政府がほんとうに日本国民の立場に立つならば、この二つの道のうちいずれを選ぶべきかは明瞭であるはずであります。日本としては、少くとも台湾問題が解決するまでは、アメリカ軍の日本基地の利用を中止させるべく米国に要求すべきであります。先ほど勝間田議員からもこの点の質問がなされたにかかわらず、総理は何らの答弁をなしておらないのであります。このように日本基地の使用を禁止する要求をするのでなければ、たとい日本国民の意思に反して日本の基地が中国攻撃の基地となった場合でも、アメリカが戦術的にしろ核兵器を使用するならば、日本の基地も中ソ両国から予防攻撃の目標になるということは、現在の軍事常識からいえば当然のことでございます。(拍手)政府としては、あるいは、安全保障条約で基地の提供を許している手前、日米協調の名のもとに、そこまで要求することを遠慮しておるのかもしれませんけれども、条約締結の当時と今日とでは情勢も変っておるばかりではなく、特にアメリカが核兵器の使用を宣言した今日におきましては、首相が真に日本国民の立場に立ち、常にみずから強調されるところの自主性を守り抜く意思があるのなら、今こそ国際法上認められているところの事情変更の原則にのっとり、このことを強くアメリカに要求すべきであると確信いたすのでございます。(拍手)この際、政府の猛省と決断を促すとともに、首相の明快なる答弁を要求する次第でございます。(拍手)
 昨今の注目すべき現象は、アメリカの内外でダレス外交の孤立化を立証する事件が次々と起っておることでございます。八月十七日付のニューヨーク・タイムズ紙の報ずるところによりますると、これまで、アイゼンハワー大統領の補佐官として、アイクの声明あるいは演説などの草稿作成について常に助言をして参りました、陰の筆者といわれておりましたアーサー・ラーソン及びシャーマン・アダムスが辞任をしております。また、陸軍参謀総長のテーラー、ニクソン副大統領、あるいは国防省内の上級将校や、陸軍内部のマーシャル及びブラッドレー派が、ダレスやトワイニングらの台湾強硬政策に反対の意向を示しつつあるのでございます。
 アメリカ政府は、今まで調印した多くの文書におきまして、次のようなことを明らかにしております。すなわち、「台湾、澎湖島やその他の島々は中国の領土であり、アメリカが中国の内政に干渉しないことを保証する。」こういう声明を出しておるのでございます。また、一九五〇年の一月五日のアメリカ大統領トルーマンの発した宣言には、「アメリカは、また軍隊を使って現在の情勢に干渉しようとは考えない。アメリカ政府はアメリカを中国の内紛に巻き込むような、どのような道をも歩みたくない。」こう言明しておるのでございます。中華人民共和国の人民が台湾、澎湖島、金門、馬祖などの地域をいまだ支配していないのは、まさにアメリカ政府によって全世界に発表されましたこのような声明に対し、アメリカ自身が恥ずべき裏切りをやったからにほかならないのでございます。さればこそ、現在、金門、馬祖に対する米国の武力干渉政策は、米国内でさえ反対者が多くなり、投書の八割まではこれを非難しておると報ぜられているほどになっておるわけでございます。アメリカの言論界をながめてみましても、政権の座にあった当時には中国人民を敵視するような政策をとった人物、たとえばアチソン元国務長官らでさえ、ダレスの戦争せとぎわ政策を評しまして、「目まいで方向を見失っている」「気違いざたである」あるいは「自殺行為である」と批評しているのであります。
 イギリスでは、労働党ばかりではなく、保守党政府もまた、アメリカの台湾政策に反対の方向を示しております。マンチェスター・ガーディアンのごときに至りましては、「ダレスの政策を支持するのは李承晩だけだ」とまで酷評をしておるありさまであります。こういうイギリスの情勢でございますから、当然に、私は、ロイド外相は、藤山外相と会談いたしましたときに、金門、馬祖の帰属は中共にあるべきであるという意見を吐いたことは、間違いないと思うのでございます。これに対して、これまた勝間田議員から質問が行われたにかかわらず、この内容を全くほおかむりして通そうとしておる態度、これについては、先ほどから、大臣の答弁についてもう少し懇切丁寧な答弁をなすべきであるとい旨を、わざわざ官房長官を通じて社会党から要求したはずであります。果して、官房長官は、総理大臣その他の閣僚にこのことを通じたのかどうか、ここに御答弁を願いたいのであります。
 また、アジア諸国は、一致して中共の立場を支持しております。フィリピンのガルシア大統領は、「アメリカの対中国戦争中は米国を支持しない」旨を言明しておるのであります。
 かくのごとく、台湾海峡緊張の責任は、中共側にあるのではなくて、ダレス外交にあるということは、世界の世論が公然と認めておるところであります。(拍手)しかるに、従来以上に米国との協調をことさら強く打ち出し、かくのごとく孤立しつつあるダレス路線を日本の外交政策の基礎に置いている岸政府の政策というものは、まさにヒトラーを支持した、かつての日本軍閥の政策と同じ性格のものであるといわなければなりません。(拍手)
 岸首相は、日中問題に関しましても、日中関係打開への努力をするということをしばしば言っておられます。けれども、中国の国連代表権の問題では日本は反対の一票を投じ、さらに台湾問題では、あえて世界の世論に抗してまで、蒋介石とダレス路線を実質的に支持するがごとき基本的態度をとっている間は、決して中国との友好の道を開拓することは不可能であることを知るべきであると思います。(拍手)蒋介石とアメリカの政策に強く抗議をしておる北ヴェトナムあるいは北朝鮮も、近く日本との経済的交流を断絶させることが予想される事態になってきております。
 国連総会における中国代表権の表決結果を見ますると、わが国の外交政策の危険をしみじみと感じさせるものがあるのであります。米国の必死の工作によって、今年も再び四十四票対二十八票で、米国は中華人民共和国の代表権を締め出すことに一応成功したのでございます。しかし、この四十四票を分析してみますと、中南米諸国が二十カ国、残りの大多数も、経済的、政治的あるいは軍事的に対米従属を余儀なくされているような国々ばかりでございます。この事実を見ますならば、この四十四票がいかに弱体なものであるかがわかるのであります。
 九月二十四日の日本経済新聞では、「米、孤立の形」とこれを批評し、同日の読売夕刊では、「米は孤軍奮闘」と表現しておるのであります。日本政府は、なぜ、あの際米国に追随して、信をアジア、アフリカ諸国に失うがごとき、かような醜い態度をとったのか、政府の所信をここに明らかにされたいのであります。
 日米安全保障条約の改訂は岸首相の以前からの公約であり、首相は、安保条約の不平等性を改訂することによって日本の自主独立外交を推進する、こういうことを強調されてきておるのでございます。この、りっぱな、耳ざわりのよい文句によりまして、以来、その改訂の内容のいかんを問わず、安保条約の改訂といえば、当然それが国民的要望と一致するものであるかのごとき空気をかもし出してきたのでございます。今回、米国が改訂にきわめて積極的に出てきたそのいきさつには、米国が、この日本国内の空気に乗じて、むしろ条約改訂をすることによって新しい情勢に対処するダレス外交の目的にかなった方向へ引きずり込まんとする意図が見られるのでございます。政府は、あたかも、米国を説き伏せて、この改訂の交渉に同意させたように公表し、これを一応の成功として自賛しておるのでありますけれども、果して今回の条約の改訂が日本側から切り出したものかどうか、疑わしい節があるのであります。今回の場合は、米国側からむしろ積極的に改訂を要求してきたものであるという報道さえ一部にはなされておるのでありますから、この間の真相をここに明らかにしていただきたいと思うのであります。(拍手)今日、台湾海峡の緊迫せる事態を前にいたしまして、安保条約改訂問題の含む危険性はいよいよ増大してきておるのであります。ゆえに、私どもは、この問題の核心的な要点について徹底的に論議を重ねて検討しなければならないと思います。
 まず問題となる点は、先ほどもこれは勝間田議員が質問されたにかかわらず、岸総理は答弁をされておらないのでございますが、安保条約改訂における自主性ということの具体的な内容であります。先ほどの質問に対して、岸さんは、勝間田さんが「自主性のねらいはどこにあるか」と質問をされ、これに対して、「自主性のねらいは、自主的な立場と日米対等の立場だ」と答弁されているだけである、これでは、自主性とは何ぞやということに対して、自主性とは、自主性であるというのにひとしいのであります。(拍手)総理は、二十九日の記者会見におきましても、記者団の方から、「一口に言えば、安保条約の改訂は、片務的なものを双務的なものにするということか」、こういう質問が発せられましたのに対して、岸さんは、「正確に言うと、双務性を持たせるというよりも、自主性を明確にするということである」と言明されておるのでございます。ところが、この岸さんの言われる自主性とはいかなる内容を持っておるかということになれば、さっぱり具体的にはわからないのであります。(拍手)
 たとい憲法上の制約はあるにしましても、いやしくも、相互防衛的な条約において自主性を確保せんといたしますならばまず第一には、条約を発動すべき危険が果して迫っているかどうかということについての情勢判断において自主的決定が許されなければなりません。あるいはまた、防衛力の使用、配備並びに条約発動の地域的要素をなすところの日本の周辺とはどこまでを含むものか、こういったような死活的な重要問題についても自主的決定が認められなければならないのでございます。これこそが自主性の具体的内容の核心をなすものであるのであります。これらの重要問題について、日米両国の間にもし意見の相違が生じた場合、米国の判断、決定や、それに基く要請を拒否し得るという保証が、条約上一体確保できるものかどうか、この点に関する岸首相の見通しと所信を明らかにされたいのでございます。(拍手)
 実は、この点こそが一番の問題点である。これが確保されるかいなかが、安保条約改訂がほんとうに改善になるか、それとも改悪になるかの分れ目であり、かぎでもあるわけでございます。今日の台湾海峡の緊迫にかんがみるときに、米国の判断、決定を拒否し得る保証が、条約上はっきり確保されない限りは、いかなる安保条約の改訂も改悪であるといわざるを得ないのでございます。(拍手)かかる改悪を意図すること自体、日中関係をさらに悪化させる重大原因ともなるのであります。
 条約文上では、いかに、日本国憲法の制約を認めた双務性や、あるいは平等を抽象的にうたってみましても、現実の日米関係からいたしますならば、実行面ではわが国に過重な義務負担となるであろうことは十分に予測できるところであります。口では自主性を唱えながら、実は最も肝心かなめなところで何の具体的自主性もない従属的軍事同盟と化すること明々白々たる安保条約の改訂は、ちょうど、台湾問題の平和解決を口にしながら、実は日本基地からの米軍の行動の自由を容認している事態と同様に、これは、岸首相一流の、そつのない、ごまかし策であると断ぜざるを得ないのでございます。(拍手)このような実体のない、から文句倒れの自主性ではなくて、ほんとうに具体的内容を持った、真の自主性を確保せんとするならば、平和五原則にのっとった外交政策を推進して、サンフランシスコ平和条約を改訂すべきであり、安保条約は、改訂にあらずして、これを廃棄する以外には道がないのであります。(拍手)
 伝えられるところによりますと、米国は、日本の主張しておる憲法上の制約ということについては、これを了解したといわれております。しかしながら有効なる自助と相互援助の能力の有無をその相互防衛の前提条件とされておるバンデンバークの決議がある以上は、米国が何らの代償もなしに日本側の憲法上の制約を容認することは考えられないところでございます。憲法上の制約ということがことさらにここに強調されたところから察するならば、完全な海外派兵は一応免除するとともに、このことによって日本国民の安心を得ながら、日本の潜在主権下にあるということを口実にして、沖縄の防衛義務までを日本に課そうとするのではないか、当然この疑問が生じてくるのでございます。
 これについても、先ほどは、あれほど明確に勝間田議員から質問がされたにかかわらず、外務大臣も総理大臣も、一言もこれには触れておられないのでございます。これはいかにもダレス流のやり口である。しかも、米国が、今日、日台条約や沖縄のミサイル基地化の承認を基礎にいたしまして、日本とアメリカ、蒋介石、李承晩の間の多面的な軍事同盟を形成する意図を持っておることは、周知の事実であります。この点から検討してみますならば、米国が日本に沖縄防衛の義務を要請することは当然予想されるところでございます。果して、ワシントン会談では、この問題が米国側から提起されたことはなかったのかどうか、あるいは今後提起されるおそれはないのか、この際明らかにされることを要求するものであります。
 安保条約改訂の問題は、このように問題の本質を究明すればするほど、その危険性が強く感ぜられるのでございます。川島幹事長や、あるいは赤城官房長官は、二十八日の政府・与党連絡会議後の記者会見におきまして、安保条約改訂に関する限り、藤山外相にけちのつけようがない、こういうふうに大へんおめでたい談話を発表されたそうでございますけれども、われわれから見れば、けちのつけたいことばかりであるといわざるを得ないのでございます。(拍手)条約改訂問題は、このように日本国民の利益に相反する危険きわまりない交渉に入っているのが現実の事実でございます。それなればこそ、藤山外相は、外交方針なりあるいは所信の一端さえ表明することができないで、旅行の日程報告にすりかえたのであろうと考えられるのであります。
 岸首相は、従来から、しばしば核非武装につきましても言明されてきております。しかるに、聞くところによりますと、藤山外相は、渡米の好機に際会しながらも、アメリカに対して、この問題についてはきわめて消極の態度で話をされたと伝えられております。藤山外相は、核兵器については日本国内には問題が多い、たったこれだけの説明をしておる。持ち込みは絶対困るという積極的な意思を政府の意思として表明されたことはなかったといわれておるのであります。現在、世界的規模で核武装を進めんとしておる米国に対しては、この問題を拒否する意向を幾たび繰り返して強調しても、し過ぎることはないのである。今回のごとき微温的な態度で臨んだことは、日本国民の強い要望を軽視したものとのそしりを免れません。外相よりこの間のいきさつを詳細に説明されんことを求めるものでございます。
 なお、核武装の禁止については、安保条約改訂ないしは新条約におきまして、禁止条項としてこの問題を挿入する意思があるかどうか、これについても、あわせて所信を明らかにされたいのでございます。
 以上指摘しました外交上の重要問題について、政府が明確な正しい方針を確立する上で、目下最も必要なことと考えられるのは、岸首相みずからの反省と決断にあると思います。中国からその敵視政策を指摘された岸首相は、しばしば、敵視はしない旨を言葉の上では声明されておる。しかし、いかに首相自身が主観的には敵視していないつもりでおりましても、日本政府の言動と政策が客観的には中国敵視政策であるところに問題があるのでございます。(拍手)
 日本の自主独立を達成するためには、アジア・アラブ諸国の民族主義運動と提携し、アメリカの新植民地主義や帝国主義政策を阻止する勢力となり、特に中国との協力提携が必要であることは、今では決して社会党だけの主張ではなくなっているのであります。自民党の中でも、世界の情勢を正しく認識し、しかも勇気のある人は、このことを公然と主張しておられるのであります。その代表的なものといたしましては、同僚議員の園田氏が、中央公論の九月号において、この点をきわめてすなおに強調しておられるのでございまして、まさに岸首相に対する頂門の一針ともいうべきものであります。(拍手)しかるに、岸内閣は、今や、安保条約改訂に取り組むことによって、全く逆の方向へ、日本国民を危地に陥らせる方向へ突入せんとしているのでございます。
 岸首相が過去において日本帝国主義の先導者の役を果したことにつきましては、ここでは、あらためて責める気はないのでございます。首相が民主政治家として立ち直り、過去の罪過を償わんとされているその心情は多とするものでございます。しかしながら、いかにその心情は善意でありましても、もし、昨今のような、基本政策を変えることなく、このまま推し進めていくならば、事志と違いまして、過去の罪悪の上塗りをする結果となるは、あまりにも明瞭であります。(拍手)このままで進めますならば、やがてアメリカ帝国主義と心中をせざるを得ない羽目に陥るは必至である。首相は、ここで重要な基本的政策についていま一度真剣に反省をなし、虚心たんかいに自民党内の具眼の士に傾聴し、さらには野党の意見にも耳をかしまして、政策の再検討をするために、わが党の鈴木委員長とじっくり懇談し、その意見を施策の面に取り入れる意思なきやいなやを伺いたいのでございます。
 以上の諸問題について明確なる答弁を要求いたしまして、私の質問を終る次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#17
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 第一は、安保条約の改訂の問題でございます。しばしば私が申し上げましたように、安保条約の改訂という問題は、すでに国会の本会議あるいは予算委員会におきましても相当論議をいたしまして、私の所信を申し述べております。日本の安全を確保していくためには、自主的な防衛力を持たなければならぬことは言うを待ちませんが、日本の経済力や日本の諸種の情勢から見まして、一挙にして日本の国民が安心できるような防衛力を持つことはできないことも、御承知の通りであります。われわれは、国力と情勢を考えつつ、漸次自衛力の増強に努めてきております。しかし、国の安全保障ということは一日も欠くことができないのであります。しこうして、私どもは、究極の理想としては、国連というものが強力になって国連によって世界の安全が保障されるような、りっぱな制度ができることを望んでおります。しかし、それにも相当な時日を要するというのが現状であります。その現状のもとにおいて、日本の安全保障をいかにして達成するかといえば、やはり日米の安全保障体制が一番適当であるというのが、私どもの基本的な考えであります。ただ、しかしながら、現在の安保条約は、その内容を見ますると、これが制定せられた当時、まだ日本は国際社会に復帰してはおりませんでした。また、日本の自衛力というものも全然なかった。従って、この条項というものは、すべてアメリカの一方的な立場からきめられ、それによって日本の安全が保障されるというこの形は、私は独立国として望ましくない。これを、自主的な立場から、対等の立場から、日本の、今申しました根本の考え方による安保条約というものを作り上げることが望ましいということを、私はしばしば申し上げております。そういう立場において今回話したわけでありまして、決して、アメリカ側から強制されるとか、あるいはアメリカ側からこれが提唱されたという事実はございません。これは明確に申し上げておきます。
 なお、具体的内容についていろいろの御意見がございます。今、勝間田君からも、あるいは松本君からもお話がありまして、それに対して明確に政府の考えを言え、こういうことでありますが、これは、今後外交のチャンネルを通じて東京において交渉さるべき問題でありまして、今日、そういうことを明確にここで具体的に言うことは、私は適当でないから申し上げないということを申しておるのでありまして、さよう御了承を願いたいと思います。
 台湾問題につきましては、これは御心配になっておるように、われわれも、この台湾海峡の問題を中心に、武力が行使され、そして戦争に拡大するようなことは、あらゆる努力をして、あくまでも防止しなければならぬ。それには、当事者の間におけるところの話し合いによって平和的に解決されることが望ましい。ワルシャワ会談が、この意味において行われておる。今日は、その前途楽観を許しませんけれども、これが成功することを望む。しかし、これがかりに成功しなかった場合におきましても、やはり、これにかわるような話し合いの手段によってこれが解決されなければいかぬ、武力行使によってこれを解決するというようなことには、われわれは絶対に反対であり、阻止するということを申し上げておきます。これが今日の考え方であります。この際、台湾問題が、いわゆる中国の内政問題であるかいなかというような問題の議論をすることでは、私は必ずしもこれを解決することはできないと思うのです。一面において、国内問題であるという議論も正しいと思います。同時に、これが国際的にかくのごとき紛争を生じておる事態を見ますると、これが国際問題であるという性格を持っておることも、いなむことができないのであります。ただ単に、これを割り切って、国内問題だといって解決できるような簡単な問題でないという実情は松本君も御承知の通りでありまして、私どもは、いずれにしても、今言ったような関係当事者において十分に話し合って、平和的に解決されることを望み、これを推進するように努力するつもりであります。
 アメリカの関係、ダレス政策についての、いろいろな分析や御批判がありました。これは、国際情勢をわれわれは常に正確に分析し、把握していく上におきまして、御意見として承わりますが、私どもは、言うまでもなく、アメリカとの間においては、きわめてお互いが理解し合い、その上に信頼関係を持って協力をし、親善友好を続けておるのでありまして、これが日本のためであると私どもは考える。この点は、あるいは社会党の皆さんとは考えが違うかもしれませんが、私ども保守党の者は、それを、日本の繁栄の基礎であり、日本のためであるという信念に立って、すべてのことをいたしておりますから、従って、責任者であるところのこのダレス国務長官の考え等をいろいろせんさくして批判することは、私は避けたいと思います。しかしながら、いずれにしても、私どもは、この台湾問題が今申しましたような方向において解決されることを常に念願して、また、それについて努力をしてきたということを、はっきりと申し上げます。
 また、中国の問題に関して、敵視云云のお話がありました。確かに、中共側は、私に対して、そういう言辞をもって私を非難しております。しかし、私は、かつて敵視したこともないし、私がこの内閣をとりましてからやってきておることを、詳細に、しさいに検討されるならば、私がいかにそうでないかという実績は多々あると思うのです。私ども保守党におきましては、従来――政治的の関係は、いろいろな国際情勢の調整を要するのである台湾問題につきましても、いろいろな御議論がありましたが、日本は、御承知の通り、日華の間に平和条約を結び友好条約ができております。この状況を、われわれが一方的に変更するというようなことは、国際信義の上から許されないことは、言うを待たないと思います。(拍手)こういう立場に立っておって、われわれは、そこに政治的な進め方の一つの限界があるけれども、しかし、貿易の面や、あるいは文化の面においては、これを盛んにして、そうして、両国の間の友好関係を進めていくというのが、歴代保守党の基本的方針でありまして、岸内閣においても少しも変っておらぬ。むしろ、岸内閣になりましてからは、従来の保守党内閣において解決のできなかったココムの制限の撤廃や、あるいは指紋問題の解決や、あるいは通商代表部の設置問題等、従来の懸案の解決をいたしておりまして、私は、誠意をもって、日中間の貿易や、あるいは経済交流というものを盛んにすることが両国のためであり、また、両国民の願望に沿うゆえんであるとして、従来解決のできなかった問題に対しましても力をいたしてきておることは、これは現実の事実でありますから、決して敵視するものでないということを明瞭に申し上げておきます。(拍手)
    〔国務大臣藤山愛一郎君登壇〕
#18
○国務大臣(藤山愛一郎君) 日米安全保障条約の交渉に当ってのいろいろの御意見がありました。私は、先ほど勝間田議員にも答弁いたしましたように、勝間田議員が言われました、たとえば、四つの項目等について、すでに話をダレス氏にはいたしております。なお、今後、交渉に応じて、沖縄の問題でありますとか、あるいは核兵器の問題でありますとか、そうした問題についても、いかような形においてか、これらのものが、協議事項として、直接現われますか、現われませんかは知りませんけれども、そういう問題として、われわれは十分考慮をして交渉を進めて参ることでありまして、将来の問題につきましては、交渉の進展を十分に見ていただきたいと存じております。
 中国の代表権の国連におきます問題につきましては、本年は、前年通りの態度をもって私どもやったわけでありまして、むろん、今後の状況に応じまして、われわれも、この問題については考えて参る必要もある場合があろうかとも思いますが、少くも現在の段階におきましては、特に台湾海峡の問題が混乱いたしており、また、ワルシャワ会談が進行しておる際に、われわれとしては、こういう問題について態度を変更する必要はないと存じておる次第なのであります。
 先ほど、安全保障の問題について、何かアメリカ側からの要求があったかということでありますが、これは総理がすでに答弁をされておりますので、申し上げる必要はないと思います。
 金門、馬祖の問題について、日本側の態度をということでありますけれども、日本側の立場といたしましては、現在ワルシャワで会談いたしております以上、これが円満に解決することを望んでおるのでありまして、当事者間に協議が進行しております以上、われわれは、これらの問題について何らかの発言をすることは適当でない、こう考えております。(拍手)
#19
○副議長(椎熊三郎君) 滝井義高君。
    〔滝井義高君登壇〕
#20
○滝井義高君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日行われました総理の施政演説に対し、若干の質問を試みんとするものであります。(拍手)
 岸内閣は、発足以来、口を開けば、革新勢力との対決、産業平和の確保ということを申して参りました。それは要するに、労使協調をもととして、現在の支配態勢を安定させ、そのため労働者の行動を一定のワクのうちに押えつけ、そして、そのことによって革新勢力の基礎を弱めるということのようであります。こうした政策の基調を貫くために、労働組合の行動に対してしばしば警官が動員をされ、不当な弾圧が至るところでなされております。
 警棒を振り回して国民大衆を抑圧し、労働秩序を押しつけるという思想は、ファシズムの思想であります。かつて、ワイマール憲法下のドイツにおいて、保守権力が押しつけた労働秩序は、そのままナチズムの前奏曲であったのであります。こうした歴史的な経験に徴するまでもなく、私は、現在の岸内閣が持っておる傾向はきわめて反民主的なものであり、それゆえに、危険この上もないものであると考えるのでございます。(拍手)
 独禁法改正、道徳教育の押しつけなど、これらに見るように、警察権力に守られた岸内閣の役割は、戦後の民主化の実績をなしくずしにこわしていき、政治的、経済的な意味における支配階級の失地回復であります。(拍手)すなわち、国民生活のあらゆる面に官僚的統制の黒い手を伸ばし、有無を言わさず権力の意思を押し通す態勢を作ろうといたしておるのでございます。
 この岸総理の姿は、巣鴨の拘置生活の中で民主主義の洗礼を受けた人のそれではなく、戦争中の東條内閣の商工大臣、軍需次官岸信介氏をほうふつせしめるのでございます。(拍手)岸総理青年時代から歩み来たった道を考えるとき、絶対的な官僚支配の態勢に郷愁を感じるのは無理からぬと思われるのですが、今日の日本は、新しい憲法を持つ民主主義の日本であります。よろしく、岸総理は、現在の反民主主義的、反国民的政策及び思想を改められ、今日の事態に即して真に国民のための政策及び思想に立ち返るべきであると考えますが、この点に対する岸総理の所信を伺いたいと思うのでございます。(拍手)
 そうした岸内閣のものの考え方を最も端的に表わしておるものの第一が、政府が今日までとり来たった労働政策であります。第一次岸内閣で労相を勤めた石田労働大臣のその労政は、その基調を、よき労働慣行の確立、賃金格差の是正、雇用の増強という三点に集約し、理解ある労政の断行を公約いたしたのであります。ところが、結果は、他のすべての公約と同様、空虚なうたい文句に終ってしまったのでございます。
 すなわち、第一の、よき労働慣行の確立とは、実は政府の手前勝手な労働慣行を作るということであって、その内容は、国鉄、全逓、日教組の争議に対して政府のとった態度で明らかなように、労働組合の合法的な戦いを警察権力によって一方的に弾圧し、他方においては、私鉄、合化労連、炭労争議に見られるごとき、経営者側の強硬態度を側面的に助長支持することによって労使の対立をますます激化させ、争議の長期化に油を注ぐ結果を招いたのでございます。事ここに至って、よき労働慣行の確立とは、むちと警棒によって労働者の正当な権利を弾圧し、資本家のたいこもちとなって、その利益を擁護する以外の何ものでもないことが明らかになったのでございます。そして、この点に関する石田労政の最後の終着点が、戦前の協調会の再現を思わせる、政府の一方的な労働者教育を目的とした、日本労働協会の設立ということで終止符が打たれたのでございます。
 第二の賃金格差についても、また同様であります。私がここで統計数字を引き合いに出すまでもなく、あなた方の作られた労働白書において、労務者と職員の賃金格差、男女別賃金格差、大企業労働者と中小企業労働者の賃金格差、常用と日雇い、臨時の賃金格差等は、三十一年に引き続いて、三十二年度も拡大の一途をたどっておることを明らかにいたしております。こうした状態の中で、石田労相は、最低賃金制度の確立という美名のもとに、業者間協定を主軸とする、えせ最低賃金法をさきの国会に提出し、現在の極端な低賃金状態の固定化を意図したのでありましたが、有識者や労働階級の反撃の前に、成立を断念せざるを得ない羽目に陥ったのでございます。かくて、第二の公約も、結果は、まさに逆の事態を招来するということに終ったのでございます。
 第三の雇用の増強に至っては、昨年下半期から現われ始めた不況の影響に伴って、戦後最悪の事態に直面をしており、ここでその状態を事こまかく説明するまでもないと思うのでございます。
 このように、第一次岸内閣における労政の実態は、労働者の諸権利の弾圧と、福祉の増進に逆行する政策に終始したのであります。ここにおいて、政府は、従来の労政のあり方を根本的に再検討し、深い反省の上に立って労政の転換をはかることが必要であると考えるのでございます。
 このような観点から、私は、まず第一に、倉石労働大臣の労働行政に対する基本的方針についてお伺いいたしたいと思うのでございます。
 あなたは、過去の歴代保守党内閣が犯してきた労政のあやまちと、さらには、前の石田労政が行なった誤まりをどのように反省し、今後、いかなる新方針に基いて労政を担当する決意をお持ちなのか、その基本的な考え方と、その裏づけとなる具体的な対策、計画を明らかにしていただきたいと思うのでございます。
 次に、私は、当面する重要な労働問題について、一、二お伺いをいたしたいと思うのでございます。
 まず第一に、ILO条約批准の問題であります。私たち社会党は、政府の言う、よき労働慣行の確立のすべての前提は、現在不当に制約されている労働者の基本的権利を回復することによって、労使間における対等の原則をすみやかに確立することが必要であるという認識の上に立って、すべての労働者にスト権を確立することの必要性を再三再四にわたって主張し続けて参ったのでございます。具体的には、前の国会で提出した公労法、地公労法の改正案が、すなわちこれであります。
 ところが、現在の日本の政府は、すべての労働者にスト権を与えるどころか、団体交渉権についてすら、公労法第四条第三項をたてにとって、これに応じようという態度をとっていないのでございます。あまつさえ、国際的にも広く認められた正当な権利を行使して、みずからの生活を確保せんとする労働者に、警棒と厳罰をもって臨む、こういう、およそ労働行政本来の姿とは全く違った力の政策をとり来たったのでございます。かかる政府の頑迷な態度は、日本における健全な労働運動の発展をはばみ、労使間の紛争を、なおさらに避けがたいものとしておる最大の原因であるということは、日本の労働階級はもちろんのこと、有識者、一般国民、さらには、世界のすべての労働階級が、ひとしく指摘しておるところでございます。
 先般の労働問題懇談会の国際条約小委員会の結論も、現在の公労法第四条第三項、地公労法第五条第三項が、ILO条約八十七号の二条、三条に明らかに抵触することを指摘し、結果的には、抵触条項の削除と、条約八十七号の批准を求めているのでございます。社会党の従来の主張の正しさが、ここにおいても、はっきり立証せられたのでございます。(拍手)
 岸総理大臣並びに倉石労働大臣は、そうした内外の世論をいかに評価し、これに応ぜんとするのか。また、日本はILOの常任理事国であるにもかかわらず、労働条件の基本に関する条約を、五十五もいまだ批准をせずして、サボタージュしておる現状を、いかに考えるのか。さらに、具体的には、結社の自由と団結権擁護に関する条約八十七号、強制労働の禁止に関する第百五号を直ちに批准する用意があるかどうか。それとも、内外の非難を今後ともほおかぶりをして、従来とってきた力による労働行政を押し進めていく気なのか、明快なる御答弁をお伺いいたしたいのでございます。
 第二の問題として、私は、最近特に問題化しつつある中小企業労働者保護の問題についてお伺いをいたしたいと思うのでございます。
 周知のごとく、中小企業労働者の雇用、賃金、労働条件は、きわめて不安であり、かつ、劣悪であるのが、今日までの日本の好ましからざる伝統でございます。すなわち、低賃金、長時間労働は慢性化し、社会保険は完全にサボタージュをされ、休日、安全衛生、福利厚生施設、退職金制度等は全く確保されていないというのが、中小企業における労働者諸君の今日の姿なのでございます。さらに、現実の深刻な不況は、一そうこれらの状態に対して拍車をかけつつあります。
 こうした中で、政府のとってきた態度は、まず第一には、首切り、労働条件切り下げの完全な野放しであり、第二には、業者間協定の積極的推進による現在の低賃金状態の固定化であり、第三には、五人未満事業所に対する各種社会保険の適用サボタージュであり、第四には、労働基準法違反の摘発を回避し、その適用を完全にサボタージュすることであり、第五には、最近、退職金制度確立という美名のもとに中小企業労働者退職共済事業法の制定を意図し、本来、使用者が負担すべき退職金の支払いを労働者に肩がわりすることによって、負担能力のない零細企業労働者に一そう過重な負担を押しつけようとする意図を露骨に現わしつつあるということであります。
 そうした政府のこれまでの態度を顧みるとき、選挙に際して、あれほど口をきわめて宣伝した中小企業労働者保護が、実は何一つ実行されていないばかりか、中小企業労働政策と名のつくものは過去現在を通じて全く皆無であることに気がつくのでございます。中小企業労働者保護の問題を産業政策の面からのみとらえんとすると、政府が過去においてとってきたように、労働基準法適用のサボタージュになり、業者間協定になり、はたまた、労働者の強制貯金的退職制度にならざるを得ないのでございます。その結果は、保護ではなくして、締めつけにほかならないのでございます。この際、政府としては、労働政策という観点から、真剣に中小企業労働者の問題と取り組んでいただきたいと思うのでございます。倉石労相の、この問題に対する明快な所信をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
 次に、私は、文教行政における教師の勤務評定の問題について質問をいたしてみたいと思うのでございます。
 戦後の日本のとうとい民主教育は、大達文相以来、政府の取り来たった反動的文教諸政策によって、風前のともしびの姿にあります。私たちは、とぎすまされた知性と、落ちついた勇気をもって、民主教育の頽勢挽回を願うものでございます。政府は、さきには、勤評問題解決のため良識ある学長グループのあっせんを拒否し、昨日は、この壇上でわが党の淺沼書記長の真情を吐露した忠告に対しても、頑迷にも、勤務評定強行の態度を岸総理の口を通じて宣言をしましたが、私は、あえて、再度忍耐を持って、一、二の点について質問いたしてみたいと思います。
 まず第一に、政府は、口を開けば、勤評の実施は法律できめておるから実施するのは当然であると言われるが、勤評問題の場合は、果して文字通りそう言えるかどうか、むしろ問題であるということを、もう一度深く反省されなければならぬと思うのでございます。なるほど、法律的には、地方公務員法四十条、地方教育行政の組織及び運営に関する法律四十六条に書いていますが、それは、単に任命権者が勤務評定を行うべきこと及び勤務評定を実施する主体を記しているにすぎないのでございます。その方式、内容及び実施の時期については、法律は厳粛な沈黙を守っておるのでございます。今日、勤務評定問題が混乱する大きな原因は、実に教育権の確立に大きな関係を有する勤務評定の方式と内容が一片の規則にゆだねられ、しかも、それが比較的短期間に、憲法や教育基本法や学校教育法、あるいは戦後の民主教育の理念と体験等を通じた広い視野から総合的に検討されることなく、一方的に作られたところに問題があるのでございます。(拍手)この点に関し、岸総理並びに灘尾文部大臣はいかに考えておられるのか、見解をお聞かせ願いたいと思うのでございます。
 さらに、法律家の持つ危険について、法律家でない私は一言しなければなりません。それは、法律を学んだ灘尾さん、あなたは何といたけだかなことでしょう。常に、自分の法律解釈が客観的に正しい唯一の解釈だと、客観性の名のもとに主張しているように見受けられます。しかし、また見方によると、法律を学んだ灘尾さん、あなたは何と気の弱い、狭量なことでありましょう。万事法律にたより、人間生活が法律によって残りくまなく律せられるような考え方を持っておらなければ心が落ちつかぬように見えます。これは私のひが目でしょうか。勤評問題の深刻化につれて、このような考え方を持つ法律家が権力を持った為政者の場合は、単なる嘆きとして見のがすわけには断じて参らないのでございます。(拍手)なぜならば、権力者が法律を口にするときは、彼の手を差し示す方向は、陰に陽に警察であり、刑務所であるからでございます。(拍手)文部大臣、このきびしい事態の中で、明るい、そして、あたたかい打開策について、もう一度、法律にあるからの一点張りではなく、謙虚な気持で、あなたが道徳教育の指導要領に教えておるように、他人の立場に立って、一歩下ってものを考えるだけの謙虚さをもっていただけないでしょうか。
 次に、私が問題にいたしたい点は、勤務評定の内容についてであります。それは、昨年十二月にきまった都道府県教育長協議会試案がひな型となっていますが、その内容がほとんど国民に知られていないということであります。このことは、現在の日本の文部行政における、知らしむべからず、よらしむべしとの、封建制の端的な現われ以外の何ものでもないのではなかろうかと思うのでございます。
 さらに、この試案の中で、評定する場合に、三十人の教師を持つ学校の校長先生は、一人の教師について八十三項目の評定をやらなければなりません。従って、三十人分の評定は二千五百項目の評定になることを見のがしてはならぬのでございます。一体、こんなことが、生々発展をしていく人間の教育の部面で、客観的、科学的に可能といえるでしょうか。きわめて大ざっぱな、主観的なものになり終ることは、火を見るよりも明らかでございます。
 また、試案の、適性、性格の欄の性格について見ますと、まさに天下の珍無類の性格集といわなければなりません。この九十四項目に上る性格なるものについて、一人々々の教師について詳細な検討を加えるならば、それは、まさにりっぱな擬装思想調査といわなければならぬのであります。しかも、これは父兄に渡す通信簿ではございません。教育能率を高め、教師の人事管理の適切公正化のための基本的な要件となるものであります。秘密の文書です。
 灘尾文部大臣、今、この性格欄をあなたに当てはめて、性格の勤評をやってみましょう。あなたの性格は、もし岸内閣総理大臣が評定をするとするならば、重厚、沈着、きちょうめん、信念的、積極的、進取的であるかもしれません。しかし、われわれからこれを見るならば、陰気、粗暴、浅慮、狭量、がんこ、不親切、冷淡、ぶあいそう、神経質、懐疑的、利己的、排他的、独善的、付和雷同的となるかもしれません。(拍手)これは、おそらく、温厚な灘尾文部大臣、了承いたしかねると思うのでございます。
 このように、勤務評定は、自己評価と相互評価とがりっぱに合致する場合は五割しかないという、この心理学的な考察を、われわれは忘れてはならない。(拍手)このように、その合理性、確実性、科学性を打ち出していますが、以上の点から見ると、勤務評定はきわめて不合理であり、不可能な部面が多いということを示しておるのでございます。しかも、スト権のない弱い教師に評定が行われるとき、評定者は絶体者となる可能性のあることを忘れてはならぬのでございます。この点に対する灘尾文部大臣の科学的な検討を経た答弁を要求するものであります。(拍手)
 次に、社会保障の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
 五月の総選挙において、政府、与党は、社会保障の問題を大きく取り上げ、その中に、国民年金を三十四年度から実施すること、国民皆保険を三十五年度までに完成することを公約したのであります。ここに社会保障の柱である医療保障制度、国民年金制度の夢が実現されるかに思われるのでありますが、歴代保守党内閣が進め来たった過去十数年にわたる社会保障対策を見ると、ちょうど、災害があれば、一時的な応急措置を講じて事足れりとし、根本的な治山治水対策をほとんど施さず、当面を糊塗し、絶えず相次ぐ悲惨な結果を繰り返してきたことは、建設大臣が今この壇上で認めた通りでございます。これと同様に、日本の社会保障においても、経済不況が起き、失業者が続出し、生活保護者が激増すれど、これを救済する一時的な上塗り政策だけを行い、恒久的な防貧制度を確立しなかったのでございます。岸さん、よく聞いて下さい。ここに、今日見るがごとき不完全な救貧対策としての社会保障制度が、つぎはぎだらけの姿ででき上ったのでございます。そうした状態の中にあって、今、皆保険と国民年金の柱を立てようとしても、それは、社会保障制度に複雑と混乱を加えこそすれ、何らの前進にはならないと思うのでございます。これらに関する岸総理の所見をお伺いいたしたいと思うのでございます。
 こうした観点に立って、まず医療保障の問題を取り上げてみたいと思うものでございます。
 今日の日本の医療保障制度は、健康保険、国民健康保険、船員保険、各種共済組合等、各保険が、群雄割拠の形で、それぞれの歴史的伝統を持って並立をいたしております。さらに、この制度を受け入れる側における医療機関を見れば、まさに百花繚乱たる混乱の姿を呈しております。すなわち、国立病院、鉄道、逓信等の準国立病院、県立病院、市町村立病院、日赤、済生会、聖路加病院、健康保険組合病院、共済組合病院、健康保険病院、労災病院、厚生年金病院、大学等の医育機関病院、公益法人、医療法人、その他の法人の病院、そして私的医療機関等、約二十種にも及ぶ医療機関が、何ら体系的に整備されることなく、無秩序に相競合している姿が、日本における医療機関の姿なのであります。
 また、これらの医療機関に支払わねばならない診療報酬について見ても、ばらばらでございます。甲地の甲表、乙地の甲表、甲地の乙1表、乙地の乙2表、歯科甲表という五つの診療報酬が、現在の医療面に作用いたしております。
 もっとわかりやすく、初診料を見てみましょう。甲地の甲では百八十九円、乙地の甲では百八十円、甲地の乙1では五十四円、乙地の乙2では五十円という、実に複雑怪奇な制度が、この十月一日より行われることに相なったのでございます。(拍手)患者の当惑する姿が目に見えるようであります。所管する役所も、厚生省、労働省、運輸省、郵政省、文部省、大蔵省などという広範囲にわたっているのが現状であります。
 このように、どれを見ても、日本の医療保障には一貫した体系がありません。政府が社会保障の充実をはからんとするならば、まず、制度の統合一元化にメスを入れ、さらに、医療機関の体系的整備を行い、同時に、診療報酬の一本化を断行することが急務と思うのでございますが、政府の具体的な方針について、岸総理並びに橋本厚生大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。(拍手)
 次に、政府の計画によれば、三十六年度以後は国民皆保険が確立し、全国民は何らかの医療保障制度の中に包含されるのでございまするが、その際における私的医療機関の姿はいかなるものとなるのか、また、保険医の身分がどのようになるのかをお示し願いたいのでございます。皆保険を推進するためには、全保険医の全面的な協力を得ることは当然必要なことでございます。この際、それらの医療機関や保険医の未来像を、はっきりこの議場から全国民の前に明白にすることは、政府の皆保険実施の場合における重大な責務であると考えるのでございます。(拍手)橋本厚生大臣の率直なる見解を御披瀝願いたいと思います。
 次は国民年金制度についてでありまするが、総理は、昨日の施政演説において、国民年金法案を通常国会に提出することを明らかにいたしました。現行の各種年金制度は、給付の条件、支給の年令、年金額等がそれぞれ不統一で、ばらばらになっております。しかも、それらが、何らの関連性もなく、雑然と並立しているところに、大きな問題があるのでございます。こうした現行制度間の調整を行なって総合的な制度を確立すること、さらに、その一環として全国民的な広がりを持たせること、ここに今日叫ばれている国民年金制度を確立する重要な意義があるのでございます。政府は、九月二十四日、国民年金制度に関する第一次要綱案を発表したのでありまするが、この問題については何ら触れていないのでございます。この際、政府は、総合的国民年金制度の構想を示すべきであると思うのであります。また、現行各種年金制度と国民年金制度との調整をどのようにするのか、総理の明確な御答弁をお願いしたいのでございます。
 さらに、当面の問題として最も重要な問題は、国民年金と軍人恩給制度との関係であります。第二十八回国会の予算委員会で、この私に対し、岸総理は、恩給制度と国民年金制度との調整を言明しているのでございまするが、その具体的な構想を、年金の構想が固まった現段階で、国民の前に明確にすることが責務であると考えるのでございます。(拍手)
 次に、年金の財政についてであります。国民年金制度の実現は、長期にわたり、末広がりの財政支出を伴うものであります。従って、わが国の国民経済及び財政的な見地に立って、長期の経済計画の一貫として考慮をする必要があるのでございまするが、三木経済企画庁長官は、国民皆保険四カ年計画及び国民年金制度に対して、長期計画の中で、いかなる位置づけと、いかなる考慮を払おうとしておられるのか、具体的な見解を明らかにしていただきたいと思うのでございます。
 さらに、来年度の日本経済の成長率は、当初の計画通り六・五%と見ても、国民所得の増加は六千億であり、これに応ずる税収増加は八百億、これを自然増的な経費増四百億、新規政策費四百億に充当すれば、三十四年度において国民年金実施に要する国費、厚生省の主張は二百億円が予想されておるのでございまするが、佐藤大蔵大臣に、新規政策に伴う費用の中で、その五〇%を国民年金制度に出すことを、自信を持ってこの議場から国民に確約ができるかどうかをお尋ねいたしたいのでございます。(拍手)また、醵出国民年金の財源として、加入者より保険税を徴収し、保険料を徴収する考えなのか、それとも売上税のごとき目的税をとる考えなのか、大蔵大臣の所信を同時に明白にしていただきたいのでございます。さらに、具体的な給付の時期を、昭和三十四年度の何月からやらんとするのか、これも、この際あわせて明白にしていただきたいと思うのでございます。年金制度の実施は、一年ごとに財政負担を増加せしめるが、政府は、社会保障と減税を大きく公約しており、大蔵大臣は、減税と社会保障を同時に実行する自信を具体的に御説明願いたいと思うのでございます。
 さらに、三十六年度の国民年金に要する国庫負担は、厚生省試案においても六百億ないし七百億円以上が予想されております。しかも、三十六年度は恩給支払いのピークでございます。こうなって参りますと、必然的に、再軍備か社会保障かという課題がここに解決されなければならないのでございます。政府は、国民年金制度の発足を前にして、大砲よりもバターに重点を置くことをこの際明確にすべきであると思うのでございまするが、総理の率直なる所見をお伺いいたしたいのでございます。(拍手)
 以上のように、皆保険を実施し、国民年金制度を創設するとすれば、膨大な政府機構と莫大な国費が必要となることは火を見るより明らかでございます。しかも……。
#21
○副議長(椎熊三郎君) 滝井君、申し合せの時間が参りました。簡単に願います。
#22
○滝井義高君(続) すぐ終ります。――同時に、経費節約と行政機構の簡素化を含めて厚生省の機構改革をし、各省にまたがる関連機構を統合して、ここに社会保障省を設置することは、今日当然行わなければならないと思うのでありますが、岸総理の所見をお伺いしたいと思うのでございます。
 以上、私は、労働、文教、社会保障について一応の質問を終るに当り、岸総理に対し、一言申し添えておきたいと思います。
 九月二十六日付朝日新聞の世論調査によれば、あなたが昭和三十二年三月内閣を組織したあの直後において、あなたの内閣をよくないとするものは一三%にすぎませんでした。しかるに、一年有余を経過した今日において、それが二三%に増加し、特に、自民党支持の中にも、また中小企業者の中にも、急激にあなたの人気の衰退が見られようとしておるということは、注意しなければならぬところでございます。(拍手)しかも、岸内閣はよくないという理由の筆頭が、政策がまずい、第二が、保守反動内閣、第三が、首相を信頼しない、第四が公約を実行しない、となっております。これでは、いかにあなたが永久政権を唱え、世論の支持があるといっても、怪しい状態が出てきておるということなのでございます。このようなきびしい世論の批判が出てきていることを深く反省すべきであるということでございます。
 私は、岸総理並びに各閣僚に対して、オウム返しの反射的な答弁ではなく、真に国家と国民を思う最高の公人としての答弁をお願いいたして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#23
○国務大臣(岸信介君) 勤評問題及び社会保障制度の問題に関しての御質問にお答えをいたします。
 勤評問題につきましては、すでに私も明確に申し上げているように、こういう人事管理の公正を期して、そうして教育の目的を十分に達成する、教育効果を向上するためには、勤務評定が行われることがいいのだ、従って、私どもは、法律にも規定されておる通りに勤務評定は実施するという、従来の方針を堅持していく。そうして、やった上におきまして、いろいろ内容的におきまして問題があり、適当でない、また、不十分であるというようなことは、やはり、その実績にかんがみて十分検討して、できるだけこれを完全なものにしていくという努力をすることが私は当然であると思います。
 医療保障の問題及び国民年金の問題について、いろいろ具体的な御質問がございました。これらにつきましては厚生大臣より詳しくお答えを申し上げますが、私はすでに施政方針でも明らかにいたしておるように、われわれは、あくまでも、政党として国民に公約したことはこれを実現する、あらゆる困難を克服して実現するという意図のもとに、医療保障につきましては、三十五年度に国民皆保険を実施する。また、国民年金につきましては三つの年金をあわせて実行する。その具体的内容なり、やり方等につきましては、法律案その他のものを今準備中であるということを申し上げたのであります。そうして、これが財源、将来の財政的負担等につきましても、十分に各般の事情を私どもは考慮して、これが実現をはかっておるわけであります。(拍手)
 また、機構の問題等についての御意見がございましたが、今直ちに社会保障省を作るとかいうようなことは、私は、まだそういう意図は持っておりませんが、行政機構の改革の問題につきましては、わが党及び政府におきましてそれぞれ検討いたしております。まだ結論は出ておりませんが、その結論に待っていきたい。それは、あくまでも簡素にして、そうして行政の能率を上げるように、このことを頭に置いて考えていきたいと思います。
 最後に、私自身の問題に関していろいろ御質問がございました。もちろん、私自身に対していろいろな批判があるということに対しては、私は、謙虚な気持でこれに反省を加え、また、みずからの足らざるところを努めていきたいと思っております。しかし、私のやっておる政策が反民主的であるというふうな論断につきましては、私は一言せざるを得ないのであります。(発言する者あり)私は、民主政治というものは、言うまでもなく、お互いが法秩序を守るということが前提でなければならぬと思います。(拍手)われわれは、国民の代表として、国会において多数をもって法律を制定すれば、その法律が、あるいは時代に合わない、あるいは実施してみて適当でないという場合においては、私は、これは法定の手続によって民主主義的に改正せらるべきだと思う。改正せずして、勝手にその法律は守らないというようなことをしては、これは、私は民主政治でないと思う。従って、そういう意味から申しまして、あるいは暴力により、あるいは組織の圧力によって法秩序を乱すというような場合におきまして、政府として、これに対して適当な取締りをするということは、決して反民主主義でなくて、民主主義を守るために、私は、むしろ当然にやらなければならぬことだ、われわれの責任である、こう考えております。(拍手)
 なお、私みずからのこの反省につきましては、私は、常に民主主義の精神からいって、国民の最後の審判を受けることが最も正しい、こういう意味におきまして、私は、過去の選挙におきましても、また、今回の選挙におきましても、私の信念、並びに、今申したような法秩序を乱す者に対しては、われわれは、政府として断固としてこれを取り締るということを国民に訴えて、国民の審判を受けてきているのであって、決して反民主的ではないと信じております。(拍手)
    〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#24
○国務大臣(倉石忠雄君) 労働政策の基本的な考えはどういうことかというお話でございますが、一口に申し上げますならば、御承知のように、今、日本では、大産業の方は比較的恵まれておりますけれども、いわゆる中小企業の従業員というものは気の毒な状態にあります。私どもとしては、そういうような、割合に日の当らない階層に属する人々にうんと力を入れていくべきである。(拍手)こういうことで、あるいは問屋街の週休制であるとか、あるいはまた、この間問題となっておりました中小企業の退職共済制度というふうなものを考え出したのは、そういうわけであります。階級闘争一点張りのホワイト・カラーの幹部から見れば、今日の私どものやっておりますことは、あるいは物足りないかもしれませんけれども、そういうところへ力を注いでいくのが、やはり、労働政策のきわめて必要なことであると思うのであります。滝井さんのお言葉によりますと、労働協会などというようなものの考え方は、労使協調というふうなことをやっていこうとすることであって、これは滝井さんたちのお考えから申せば、おもしろくないことだというふうなお話でございますが、労使協調ということは、労働者が自主的にお考えになるにあらざれば不可能なことでありますから、労使協調ができるなら、それは一番けっこうなことです。また、前大臣のときにきめられました労働協会について、とかくの御批判がありましたが、社会党に属する方々からも、労働協会にたくさんの人を推薦して下さっておるのであって、そんな悪いところであるならば、皆さんも私に就職を推薦されるはずはないのでありまして、やはり、私は、労働協会というものはりっぱなものだと思う。
 それから、第二は、ILO八十七号条約、第百五号条約の批准に関してお話がございました。この際、ILO条約について、私から明確にお答えをいたしておきたいと思いますが、政府といたしましては、従来とも、ILO条約の精神は十分に尊重しておるのでありまして、今後とも、ILOに協力して参る方針には変りはありません。ILO条約については、世界八十カ国の参加国のうちで、日本はすでに二十四を批准いたしておって、批准率からいえば、日本はずっと上の方の順序であります。そこで、国内における労働運動の実情を見まして、ILO八十七号条約は、いわゆる結社の自由、団結の自由、ということを保障せよということでありますが、滝井さんも御存じのように、この条約は、日本がまだ脱退いたしておる当時にきめられたものであります。日本が復帰いたしたのでありますから、なるべく早くこれは批准すべきものであるというのが私の考え方でありますが、これは、先ほどもお触れになりましたように、公労法第四条三項に関係のある問題であります。そこで、今日の国内における労働運動の実情を見ますと、御承知のように、全逓労組は、本年の春闘において、公労法の禁止する争議行為を行なって、そのために組合幹部が解雇されたにもかかわらず、公労法第四条三項に違反して、引き続きその地位にとどまり、さらに、七月の大会において、かかる幹部を再選して、その後も法違反の状態を続けておられるわけであります。しかも、全逓労組が、あえて結社の自由及び団結権の擁護に関するILOの第八十七号条約を批准することによって、このような公労法違反の既成事実を正当化しようとするような態度をとっておりますことは、法治国家としては、とうてい容認し得ざるところであります。(拍手)組合運動の健全な発達のためにもとらないところでありまして、政府としては、全逓労組が、現在の違法状態を解消して、労使関係を正常化するような良識ある措置がとられることを、私としては切望いたしておるのでありますが、現在の違法状態を条約の批准によって正当化しようとするような態度が変らない限りは、結社の自由及び団結権の擁護に関するILO第八十七号条約批准についての政府の態度について云々すべき段階ではないということを申し上げておきます。(拍手)
 なお、強制労働の廃止に関する第百五号条約、これは、御承知のように、一昨年、私がILOに参っておりましたときに、ソビエト・ロシヤその他社会主義独裁国家の強制労働に関して英国側から提案されたものでありまして、われわれとしては趣旨は同感でありますが、国内法等との調整のために、ただいま研究しておりまして、なるべく早い機会に、こういうものは批准を進めて参りたいと思っております。
 中小企業に対しての労働対策でありましたが、最初に私が申し上げましたようなことで御了承を願いたいと存じます。(拍手)
    〔国務大臣灘尾弘吉君登壇〕
#25
○国務大臣(灘尾弘吉君) お答えいたします。勤務評定の問題につきましては、先ほど、総理から、政府の態度についてはお答えになりました。重ねて申し上げることは避けたいと思います。
 滝井君のお尋ねの第一点といたしまして、これほど大事な問題が地方の委員会の規則にゆだねられておるのは一体どういうことか、こういうような御趣旨の御質問のように伺ったのでございますが、勤務評定は、御承知の通りに、任命権者と申しますか、人事の責任を持つ者がこれをやることは当然であります。従いまして、教育委員会が規則を作りまして勤務評定をやるということは、私はきわめて適当なことと考えるのでございます。この問題が非常にやかましくなっていることは申すまでもないことであります。ただ、この問題について、私が法律一点張りだ、法律があるから、こういうことばかり言っておるのはけしからぬ、こういうことでありますが、そう言われれば、そうかもしれません。しかし、この問題について、今まで激烈な争いになっておるのは、内容の問題ではございません。問題は、内容に入ってはいないのであります。この法律を実施するということについて頭から否定をいたしておるのであります。法律の存在を無視いたしておるのであります。私は、行政府の一人といたしまして、法律施行の責任があるわけでございます。その意味におきまして、法律があるということを「繰り返して御注意申し上げておるわけでございますので、さように御了承願いたいと思うのでございます。(拍手)
 なおまた、内容についていろいろ御意見がございました。今日までも、日教組の諸君との間に、穏やかに、内容についての話し合いが地方において行われておりますれば、かような騒ぎにもならなかったと私は思うのであります。頭から否定をするから問題がむずかしくなるのであります。この勤務評定の内容につきましては、すでにたびたび申し上げたのでございますけれども、地方教育委員会の教育長の協議会を持ちまして、相当な日子を費しまして、いろいろな実例を調べ、経験に徴し、検討を加えてでき上がりましたものが、これが試案でございます。これについての御批判であったように伺ったのでございます。多少事実と相違する点はあるようでございますが、一度よく御検討を願いたいと思うのでございます。なおまた、実際地方でやっております規則として制定いたしております内容等につきましては、必ずしもこの試案の通りに参っておりません。また、私は、それを干渉もいたしておりません。地方の自主性をもってきめることを、私はそのまま認めておるわけであります。これらにつきましても、なお、総理の申されましたように、実施の結果、十分また検討を加えてみたいと考えておるということを申し上げたいのであります。
 先般、九月十五日の、あの一日は、まことに心配な一日でございました。幸いにいたしまして、国民諸君の御協力と、良識ある多数の教師諸君の善処によりまして、大したことにならなかったことは、不幸中の幸いであると思うのでございます。願わくは、かようなことを繰り返さないようにお願いしたいのであります。社会党の皆さんも、ぜひ御協力を願いたいと思うのでございます。また、何か二波とか三波とかいううわさもあるようでございますけれども、ぜひ、この間のあの経験に徴して、日教組の諸君も真剣に反省をしていただいて、お互いに、静かに、仲よく日本の学童のために努力をしていく、この姿こそ、私の最も望むものでございます。闘争態勢を解き、平静な状態になってやってこられれば、いつでもお目にかかるつもりであります。願わくは、皆さんの御協力によりまして、教育界がすみやかに平静に立ち返るようにお願いいたしたいと思うのであります。(拍手)
    〔国務大臣橋本龍伍君登壇〕
#26
○国務大臣(橋本龍伍君) お答えをいたします。
 現在の医療保障制度を統合一元化することが皆保険を行う場合にぜひ必要であるという御意見でございました。御指摘のありました通り、地域保険といたしましての国民健康保険、それからまた、職域保険といたしましての健康保険等がございまして、今日の医療保障制度はいろいろになっておるのでありますが、ただ、皆保険を行いまする場合に、まずこの統合一元化に手をつけるということは適当でないと考えておるのでございます。現在といたしましては、やはり、国民の中で、いかなる社会保険の制度にも浴しておらない者が相当おりますので、まず、その人々のために国民健康保険制度を全国的に実施するということが第一に必要だと思いまして、現在のやり方をいたしておる次第でございます。ただ、将来の問題といたしまして、医療保障制度の統合をはかることが必要であると思いますので、このためには、まず、現在、内容の低い国民健康保険の給付内容の改善を、しんぼう強くはかって参ることが必要だと考えておりまして、今回提案をいたしておりまする国民健康保険法の改正にも、その趣旨を盛っておる次第でございます。
 それから、次に、医療機関の整備の問題については、これも御指摘のように、今日、非常にばらばらになっておるのでございます。ただ、今日の医療機関の整備の問題につきましては、憲法上、自由の問題等がございまして、なかなかむずかしい状態でございまするので、医療機関の都市に集中し過ぎておりますることの是正もいたさなければなりませんし、また、病院と診療所との機能の分化、また、一般医と専門医との機能の分化等もぜひはかって参らなければなりませんので、各方面の御協力を得て、これの行き方の案を立て、また、実行できまするように、医療制度調査会のようなものを作る必要があると思いまして、準備をいたしておる次第でございます。
 なお、この診療報酬の問題に関しましては、御承知のように、前大臣の時代に、この点数表の合理化をぜひ断行するという画期的な意図に基きまして、今日の甲表、乙表という案が出て参ったわけでございます。ただ、これは急激な変化に基きますやむを得ざる経過的な措置でございまして、同一の診療行為に対して二つの評価があるというのは異例でございますので、本日から、甲、乙2表を実施をいたしましたけれども、これも学術的にも十分検討いたしまして、これを一本化できまするように、近くさらに検討するために手続をとるつもりでございます。
 次に、国民皆保険の実施下における私的医療機関がどうなるかという御質問でございました。国民皆保険下におきましても、公的医療機関と私的医療機関の両者がともどもに相補いまして、国民医療の確保のために協力する必要がありますることはもちろんでございますので、私的医療機関でありまする一般開業医につきましては、今後とも、現在の制度を尊重していくつもりでございます。従いまして、一般開業医の診療報酬の問題についても、これが十分成り立っていくように考えて参りますし、なお、一般開業医の医療内容の向上のできまするように、今後とも十分配意をいたして参るつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣佐藤榮作君登壇〕
#27
○国務大臣(佐藤榮作君) 国民年金につきましては、醵出制を原則といたしまして、経過的に、無醵出制年金を実施する考えでありますことは、すでに御承知の通りでございます。無醵出制の場合は一般財源によってまかなうのでありますが、醵出制の場合は、社会保障制度審議会の答申にもありますように、保険料で主たる財源をまかなっていくことが適切であろうかと考えております。三十四年度には無醵出年金の支給を始める考えでありますが、支給時期につきましては、予算編成の一環として、今後検討を加えて参る考えであります。
 次に、公約いたしました国民年金の実施と減税、これが同時に実施できるか、こういうお尋ねでございます。公約を忠実に実施すること、これにつきましては、すでに岸総理からもお答えがございました。私は、大蔵大臣といたしまして、同様の考え方を持っております。公約を実現するかたい決意を持って、ただいま着々と準備を進めておることを御報告いたします。
    〔国務大臣三木武夫君登壇〕
#28
○国務大臣(三木武夫君) 私に対する御質問は、年金制度を長期経済計画の中に織り込んで考えてあるかという御質問であったと思います。社会保障を拡充し、年金制度を創設するということは近代政治の方向でもあるわけで、また、財政の規模にも消費水準にも影響を持つものでございますから、当然に長期経済計画の中には織り込んで考えてある。お答えといたします。(拍手)
#29
○副議長(椎熊三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#30
○副議長(椎熊三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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