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1958/10/03 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 本会議 第4号
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1958/10/03 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 本会議 第4号

#1
第030回国会 本会議 第4号
昭和三十三年十月三日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和三十三年十月三日
    午後一時開議
 一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
    午後三時二十六分開議
#2
○議長(星島二郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
  議員請暇の件
#3
○議長(星島二郎君) お諮りいたします。議員北村徳太郎君より、通商使節として訪ソのため、十月三日から十一月三日まで三十二日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(星島二郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
#5
○議長(星島二郎君) 裁判官弾劾裁判所裁判員が一名欠員となっておりますので、この際その選挙を行います。
#6
○松澤雄藏君 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
#7
○議長(星島二郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(星島二郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に鍛冶良作君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙
#9
○議長(星島二郎君) 畑地農業改良促進対策審議会委員が一名欠員となっておりますので、この際その選挙を行います。
#10
○松澤雄藏君 畑地農業改良促進対策審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
#11
○議長(星島二郎君) 松澤君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(星島二郎君) 御異議なしと認めます。
 議長は、畑地農業改良促進対策審議会委員に南條徳男君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#13
○議長(星島二郎君) 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨の説明を求めます。総理府総務長官松野頼三君
    〔政府委員松野頼三君登壇〕
#14
○政府委員(松野頼三君) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を説明申し上げます。
 御承知の通り、独占禁止法は、経済民主化法制の主要な一環として、自由かつ公正な競争を促進し、国民経済の健全な発達をはかる目的をもって、昭和二十二年七月に施行されました。
 その後、内外情勢の推移に即応して同法は数回にわたって改正され、中でも、昭和二十八年の改正は、いわゆる占領法規を再検討するという意味で行われたものであります。その後五年の歳月を経過した今日、わが国経済の実情を見ますと、企業数が多過ぎるため、とかく過当競争の弊に陥りやすく、また、経済基盤が弱いため、国際的な景気変動に影響されるところが大きい等の特殊事情があり、さらに、最近における技術革新の趨勢に対処して企業の合理化を推進し、国際競争力の培養をはかる必要があることが指摘されます。しかしながら、これらの問題を解決していくためには、どうしても独占禁止政策との調整を必要とする面も多いと思われますので、政府は、この際、わが国における独占禁止政策に所要の検討を加える必要を痛感した次第であります。
 そこで、昨年十月、内閣に独占禁止法審議会を設け、わが国経済の実情に照らし、独占禁止に関する法制はいかにあるべきかとの諮問を行いましたところ、本年二月、同審議会からその答申を受けるに至りました。
 政府は、わが国経済の実情、なかんずく、不況対策、合理化対策の緊要性にかんがみ、右の答申の趣旨を尊重し、その線に沿って、本改正案を作成することといたしました。すなわち、本法の建前とする自由競争の原則はこれを堅持しつつ、当面、わが国経済の運営に特に障害となっていると思われる諸点に関し、さしあたり所要の改正を加えることといたしました。
 次に、本改正案の内容につきましては、まず、不況対策としての実効を期するため、現行不況カルテルの規定をいささか緩和し、合理化対策の必要性にかんがみ、現在の合理化カルテルの範囲を拡大し、生産過程の合理化をはかる合併の例外を容認し、不公正な取引方法の防止または健全で合理的な取引慣行の確立をはかるため公正取引規約に関する制度を新設し、その反面、不公正な取引方法に関する規定の整備強化をはかることといたしました。このように本法を改正することによって、一般消費者、中小企業者、農林水産業者等の利益が不当に侵害される弊害はないかどうかという点につきましては、本改正案は制度上も運用上も十分の配慮を加えており、たとえば、カルテルの容認は原則として認可制によることとし、しかも、その認可の要件として、一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者その他の関連事業者の利益を不当に害するおそれがないことを規定しており、また、その認可は、独立機関、中立機関としての公正取引委員会が主務大臣と協議しながら厳正に実施することといたしました。さらに、一応認可したカルテルであっても、経済情勢の変化によって弊害を生じたときは迅速にこれを取り消す制度もあわせ考慮することによって、カルテルの弊害規制について万全を期しております。他面、不公正な取引方法の指定制度の厳正な運用によって、経済的に優越した地位にある者の支配力乱用行為を取り締る等、十分弱小企業者の保護をはかることができる建前になっておりますので、本改正によって一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者等に悪影響を与える心配はないものと考えております。
 以上が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案についての趣旨でございます。
     ――――◇―――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#15
○議長(星島二郎君) ただいまの趣旨の説明に対し、質疑の通告があります。順次これを許します。
 小平久雄君。
    〔小平久雄君登壇〕
#16
○小平久雄君 私は、ただいま提案されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案につき、自由民主党を代表して若干の質疑を試みたいと存じます。
 私的独占禁止法は、昭和二十二年、経済の民主化立法の重要な一環として制定され、自由競争を促進することによって、戦後のわが国経済の再建とその民主化に多大の貢献をしてきたのでありますが、施行後十年を経過した今日におけるわが国経済の現状を見まするに、過当競争はいよいよ激しく、また、経済基盤が脆弱でありますため、景気の変動は特に著しく、しかも、他方には、世界的な技術革新のとうとうたる流れがあることは、御承知の通りであります。これらの現実に対処して、わが国経済の安定的成長をはかり、また、合理化による国際競争力の培養をはかりますため、現行独占禁止法を経済の現状に即応するよう若干の改正を加えることは、まことに時宜を得たものと存ずるのであります。ただ、この法律は、いわゆる経済憲法として経済の取引秩序の基本を律するものでありますとともに、そのあり方のいかんによっては一般消費者、中小企業者等に影響するところも少からざるものがありますので、今回の改正に当って、政府の基本的な考え方、改正のあり方等につきまして各方面から強い関心を寄せられておることは、すでに御承知の通りであります。かかる見地から、以下、この改正案の最も問題の多いと思われる諸点につきまして、政府の所信をただしたいと存じます。
 まず、岸総理大臣に一点だけお伺いを申し上げます。すなわち、現行独占禁止法につきましては、これを改廃すべしとの主張と、これを維持強化すべしとの主張が従来相交錯して参ったのでありますが、政府は、独占禁止法審議会の意見等を尊重し、十分検討の末、今回の改正案を提出されたものと考えられるのであります。ところが、この改正案についても依然として賛否両論が伝えられておりますので、この際、改正案を提出された政府の基本的意図はいずれにあるのか、また、この改正を契機として、産業経済の運営、指導の基本方針に何らかの変更を来たすことになるのかどうか、この二点をあわせてお伺いいたしたいと存ずるのであります。
 以下、改正案の具体的な内容につきまして、高碕通産大臣並びに松野総務長官にお尋ねをいたします。
 まず、不況カルテルに関してお尋ねいたしたいと存じます。
 その第一点は、現行法の不況カルテルの規定は昭和二十八年の改正において挿入され、その後二度の不況を経験しているのでありますが、この規定は従来どのように運用されてきたのか、また、現在ある種の業界においては、成規の手続を経ず、いわゆる勧告操短等が実施されているようでありますが、それらは、今回の改正後いかなる取扱いをしていく御方針であるのかという点であります。
 その第二点は、従来は、不況に対処するため、生産業者の共同行為のみを認めておりましたが、今回の改正により販売業者のカルテルをも認めることとなりましたため、一般消費者の中には不安を感じている向きもあるようでありますが、この販売業者のカルテルはどのような性格のものであるかという点であります。
 次に、合理化カルテルについてお尋ねをいたします。
 その第一点は、現行法に規定する弊害の少いものについては、これを事前届出制で認め、また、新たに専門生産のための生産分野協定、過剰設備の処理協定、投資調整のための協定、原材料購入に関する協定、買取機関の設置等を認めることとしたことは、おおむね適切であると考えるのでありますが、ただ、原材料の購入に関する協定のうち、特に農林畜産物等につきましては、大企業から買いたたきが行われるのではないかとの不安を生産者に与えているようであります。これに対し、どのような対策が用意されておるかを伺いたいと存じます。
 第二点は、不況、合理化両カルテルを通ずる問題といたしまして、農業生産資材、特に肥料、農機具等につきまして、生産業者の共同行為が、不当な製品価格の維持、あるいは不当な値上りを招来して、農民に不利益を与えることになりはしないかとおそれられているのでありますが、これに関し、どのような措置が講ぜられているかを伺いたいと存じます。
 次は、公正取引の確保についてであります。不況克服のため、あるいは合理化のため、各種の共同行為を認める範囲を拡大することによりまして、経済的に優越した地位にあるものと弱小企業者との間の公正取引を確保する必要性はいよいよ重大となってくると思うのでありますが、この点につきまして政府はどのような配慮を払っているかという点であります。
 次は、他の法令との関係において御質問を申し上げたいと存じます。政府は、独禁法改正を必要とするおもな理由として輸出振興を考えておられたようでありますが、今回の改正案では、この点がやや不明確のように思われるのであります。政府はこれを輸出入取引法の改正に譲ったやに仄聞するのでありますが、この間の事情を御説明をいただきたいと存じます。
 また、本改正案との関連におきまして、中小企業団体組織法に定むる不況要件を緩和し、商工組合の結成を一そう容易にする必要があるのではないかと考えるのでありますが、この点はいかがでありましょうか。
 最後に、公正取引委員会の機構についてお伺いいたします。従来、ともすれば、公正取引委員会の事務処理はおくれがちでありますが、今回の改正により各種の新しいカルテル等も認められ、ますます公正取引委員会の事務処理件数が増加することが予想されるのであります。従って、今後本法運用の適用円滑化をはかるためには、公正取引委員会の機構を整備すると同時に、民間有識者の公正なる意見を十分反映し得るような組織を確立する必要があると考えるのであります。これに関して政府はいかなる御方針であるかを承わりたいと存じます。
 なお、この際、長沼公正取引委員会委員長の信念のほどを承わりたいと存じます。すなわち、本改正案が成立の暁は、法運用のいかんによりましては各種カルテルの著しい増加が予想されるのでありますが、独禁法第一条に掲げますところの「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という大目的を遺憾なく遂行し得る確信ありやいなや、その所信のほどを承わりたいと存じます。
 以上、私は、本改正案に関し重要と思われる諸点につきまして御質問申し上げたのでありますが、今回の改正案は、一言にして申しますならば、独占禁止緩和の方向に一歩前進したものと世間は解釈しておるようであります。それが産業政策的見地からはぜひ必要であることもまた理解しているのでありますが、独占には不可避的な弊害もあり、特に一般大衆は、事の善悪、適否を問わず、独占そのものにばく然たる不安と、ときには反感をすら抱くこともいなみがたいところであります。この意味におきまして、一般消費者、中小企業者並びに農林漁業者等の不安を除去するためにも、明快なる御答弁をわずらわしたいと存ずるものであります。
 これをもって質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#17
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 今回の独占禁止法の改正の趣旨は、先ほどの説明にも明らかなように、経済界の安定並びに日本の経済の発展のために必要な国際競争力を増大するという見地から、従来の独占禁止法の規定におきましては十分にその目的を達することができない点を改正しようというのであります。もちろん、自由経済において、自由かつ公正な競争を確保するということはその基本でありまして、この基本につきましては、何らわれわれはこれを変更する意思も持っておりませんし、今回の改正も、そういうことには触れておるわけではございません。
 今申しましたこの二つの目的を達するために、日本経済界の事情を見ると、過当競争が行われておる。これにはいろいろな原因がありますが、とにかく、日本の経済を安定した基礎に置くことが必要であって、その過当な競争、また、最近の技術の革命や、いろいろな国際情勢から見て、日本の各企業の弱体というようなことを考えますと、これを強化していく必要があることは、何人もこれをいなむことができぬと思うのであります。こういう見地から、われわれは、最小限度、従来ある独占禁止法のいろいろな条件をある程度緩和することによってこの目的を達成する。しかし、それが同時に中小企業者やあるいは一般消費者、あるいは農林漁業等に及ぼす悪影響、すなわち独占禁止法を緩和することによって生ずべき弊害につきましては、あらゆる点において十分な措置と十分な考慮を費しておることは、改正規定をごらん下されば明瞭であると思います。十分そういう点においても意を用いておる次第でございます。(拍手)
    〔政府委員松野頼三君登壇〕
#18
○政府委員(松野頼三君) 小平君の御質問にお答えをいたします。
 第一点は不況カルテルに関する規定でありますが、昭和二十八年にこの規定ができまして以来今日まで実行いたしましたものは二件でございます。これは、業者の自主調整が非常に困難であると同時に、今日までの現行法がきびし過ぎて実情にそぐわなかったためかと存じます。今後は、ただいま行われております勧告操短というようなものは、大部分は独禁法の規定のワク内に入って、特別のもの以外は、おそらく勧告操短というものは独禁法のワク内に入ると存じます。
 次に、改正案の販売業者を入れたということは、もちろんその影響が甚大でございますので、今回の改正案の中におきましても、相当各種の行為を行なって、その上に最終的にというのでありまして、直接販売業者のカルテルを認めるという趣旨ではございません。販売業者が参加しなければ、生産業者だけではこの実効が上らないものという、非常に例外的なものだけに限定しております。なお、三カ月以内の短期間のものについては、三カ月を何回も反復するようなことはございません。三カ月で期限は切れて、それだけにいたしております。
 次に合理化カルテルでございますが、原材料購入に関する協定は、原材料の生産事業の健全な発展に資する場合に限るという認可規定がございまして、公取委員会は主務大臣の意見を徴することにいたしております。また、農林生産資材、特に肥料の点は、農家の不利益を招かないように、当然でございますが、農林大臣の協議事項にいたしております。不公正な取引に関する規定は、今回新たに公正取引規約というものを設定いたしまして、そうして、公正取引をより以上に厳正に、また、下請代金支払遅延等防止法の一部改正もあわせて行いまして、親企業が子企業を買いたたくとか、あるいは無理に押し売りをするとか、あるいは報復的措置を厳に禁止、取り締るようにいたしております。
 今次の改正が一般消費者、中小企業、農林漁業に不利益を与えるようなおそれがないかという懸念につきましては、特に意を用い、また、法制上におきましても各条項に明文をいたして、そのようなことがないようにいたしております。
 また、そのほか、認可の際には、公正取引委員会は、これらの利益擁護機関としての立場に立って最終的の判決を下す場合、さらに事情が変った場合には、迅速にその認可を取り消すような手段も講じてございます。
 以上、私に対する御質問にお答えいたします。
    〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
#19
○国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。
 輸出振興カルテルを今度の独占禁止法からどうして離したか、こういう御質問でございますが、これは、政府は、輸出振興というものが重要であるということにかんがみまして、特定の品目に限り、特定の地域に限りまして、貿易業者を登録するとか、その他、単に貿易業者でなく、国内の取引等についての輸出の秩序を調整するために、新たに別に輸出入取引法を改正する考えでございます。
 また、第二の御質問の、中小企業団体法による商工組合の設立につきましての要件は、今回の独占禁止法の改正と相待ちまして、はるかに緩和された方法で、これは簡単にできるように改正いたします考えでございます。(拍手)
    〔政府委員長沼弘毅君登壇〕
#20
○政府委員(長沼弘毅君) お答えいたします。
 今回の独禁法の改正によって一般消費者の利益を侵害するようなことにはならぬのか、公取は自信を持って事態の収拾に当れるかというふうなお尋ねでございましたが、御承知のごとく、今回の改正によりましてカルテルの増加及びその事務の処理件数等が増加いたしますことは、これは当然予想してよいところであろうと存じます。これに対しまして、公取は機構を充実いたします。さらにまた、民間有識者の御意見等も十分に傾聴する機会も持ちます。結果におきまして、大企業が横暴いたしまして、中小企業者ないしは農林漁業者、さらには一般消費者大衆の利益をいささかでも侵害することがないように万全の措置を講ずることを、自信を持って御答弁申し上げます。(拍手)
#21
○議長(星島二郎君) 田中武夫君。
    〔田中武夫君登壇〕
#22
○田中武夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました私的独占禁止法改正案について、岸総理以下関係閣僚に若干の質疑を行い、独占禁止法を改正しようとする岸内閣の企図が那辺にあるかを国民の前に明らかにしてみたいと思います。(拍手)
 独占禁止法は、一般に経済憲法といわれて、労働法、農地法とともに、日本経済民主化の支柱として経済の理想像を描いてきたが、この経済憲法は、成立後、保守党政府の手によって、数回にわたる改悪と特別立法とによって後退の道を続け、今や岸内閣の手によって完全に骨抜きとするための引導を渡されようとしておるのであります。(拍手)
 この冷厳な事実は、かつて日本帝国主義の経済的支柱であった重要産業統制法の成立を思い起させ、岸総理が、当時商工省工務局長として、重要産業統制法の説明に際し、「何よりもまず第一に斯業に適正なる規律統制を与え、安定の基礎の上に産業の根幹を養わねばならぬ。これがためには、各産業ごとに当事者が一致団結して、その共同の力によって斯業を統制し、一糸乱れざる規律のもとに足並みをそろえていかねばならない。」と言った言葉を思い出します。(拍手)三つ子の魂百までというが、今さらながら驚かざるを得ないのであります。(拍手)
 日本経済は、今や歴史の分水嶺に立たされており、この事実は、われわれが現在迎えている歴史の位置を示すものであり、岸内閣の性格を雄弁に物語っております(拍手)。
 さきに、政府は、輸出振興のため独占禁止法を改正すると言っていたが、輸出入取引法改正を別に考えている今日、あえて独禁法を改正しようとするのは、独占禁止法成立以来、常に独禁法緩和に執拗に運動を続けてきた財界主流の要望にこたえ、大企業独占体に奉仕するためで、現在の経済組織を完全に独占資本に隷属せしめようとする陰謀であるといわねばなりません。(拍手)独禁法改正によって大きな不利益を受ける中小企業者、農業生産者、消費者大衆は岸総理の眼中にはなく、ただあるは、独禁法改正によって労せずして多くの利潤を得る大企業独占体のみであるといわれても、ごうも言いわけの余地はないと思うが、総理は、独禁法改正により不利益をこうむる側の人たちの生活について、一度でも考えたことがあるか、お伺いいたします。(拍手)
 総理は、昨年十二月、独禁法に関し、独禁法審議会中山会長の名をもって全国八十六団体に対し意見を求め、六十四団体より回答がなされたが、そのうち、産業団体、金融業団体及び貿易業団体のほかは、ことごとく独禁法緩和に反対であって、ことに、消費者団体、中小企業団体、農林業団体からは独禁法緩和に反対し、むしろ現行法を強化すべしとの回答がなされたことは御存じでありましょうか、お伺いいたします。(拍手)
 次に独禁法審議会についてでありますが、昨年十月、委員十五名からなる独禁法審議会が作られましたが、この審議会の委員の顔ぶれは、産業界代表が主流で、それに独禁法改正賛成の意見の学者若干が加わったものであって、世にこれをカルテル友の会といっているが、この顔ぶれを見ただけで、どのような結論が出るかは初めからわかり切っていたのであります。この委員はどのような観点から選ばれたのか。聞くところによると、最初は、学識経験者のみで十名をもって構成する予定であったのが、当時の河野企画庁長官から横やりが入って、独禁法の良心的支持者は除かれ、カルテル友の会的人選となったといわれているが、そのような事実があったのか、お伺いいたします。
 さらに、独禁法改正によって大きな不利益を受ける中小企業者、農業生産者、消費者代表を委員に入れなかったのは何ゆえか。商工中金理事長が中小企業の代表であり、農林中金理事長が農民の代表であるというような御答弁では、もちろん了解いたしません。(拍手)
 また、この審議会でどのような論議がなされたのか明らかにせられたい。政府委員は、去る二月十二日の商工委員会における私の質問に対し、この審議会の議事録は公開できないと言ったが、何ゆえ公開しないのか、その理由を承わりたいと思います。(拍手)
 このカルテル友の会ともいわれる審議会ですら、大幅緩和に対し、良心の苛責に耐えかねてか、不公正な取引の強化と公正取引委員会の強化拡充を答申しているにかかわらず、今回提案されている改正案は、財界に都合のよい面のみを取り上げ、強化面にほおかぶりしているのは何がゆえか、お伺いいたします。次に、具体的な内容の二、三についてお伺いいたします。まず第一はトラスト要件の緩和についてでありますが、この要件の緩和によって、合理化の名のもとに競争相手である大企業同士が合併して、不当な利潤を独占する戦前以上のマンモス企業が生まれ、集中排除法による成果が一挙にくつがえされることは確実である。しかも、このことによって、より巨大な独占企業を育成することとなり、この巨大資本の収奪から中小企業者、農業生産者、消費者大衆の生活を守ることは不可能となると思います。総理はどのようにお考えになるか、承わりたいと思います。
 第二の点は、カルテルの緩和についてであります。改正案は、現在すでに認めている不況カルテルのほかに、不況予防カルテル、さらに投資調整カルテルを認めており、景気変動の全周期にわたってカルテルが認められ、あらゆる種類のカルテルが可能である。しかも、産業の各所には服従命令、規制命令を持った広義の強制カルテルが点在し、加入命令を持った文字通りの強制カルテルさえ出現しているのでありますから、独禁法の緩和が強制カルテル化への突破口となり、まさにカルテル統制への危機といわねばなりません。現在、すでに石炭、化学、紡績等の事業においては操短のために人員整理が行われているが、このようにカルテルを大幅に認めるならば、ますます人員整理、首切りが行われると思うが、総理はどのような措置を考えておられるか、それに対する対策はおありか、お伺いいたします。(拍手)あるいは過当競争の排除のためにカルテルは必要であると言われるかもしれないが、資本主義経済機構の存するところ常に競争は存在し、過当競争を真に排除するためには、日本経済機構の質的改革を行わない限り、排除することは絶対に不可能であると思うが、いかがでございましょうか、お伺いいたします。
 また、すべて法の改正には、おのずからその限界があり、その法の目的に従ってなされねばならないにもかかわらず、今回の改正は、ほとんどすべてのカルテルを認めるような内容で、もはやカルテル禁止のカルテル以外はすべて許されているといっても過言ではなく、質的な転換となっているのであります。その限界を越えたものであって、独占禁止の名のみを残して、独禁法の否定であると思うが、どのようにお考えになるか、お伺いいたします。
 第三の点は公正取引委員会の機能の制限についてでありますが、今回の改正で、従来、準司法的機能を果す存在として行政庁から独立していた機関であった公正取引委員会を骨抜きにしようとしている。去る二十八年の改正に際しても、認可権を公正取引委員会から通産省に移そうとして、あらゆる策略をめぐらし、当初原案に入れていた。しかし、世論の猛烈な反対にあって引き下げざるを得なかったが、雌伏五年、認可申請の届け出窓口を通産省に移し、さらに、財界に都合のよい意見を付することができるようにしたのは官僚統制の前進と思われるが、総理はどのようにお考えになっておりますか。
 さらに、私は、今回改正の認可権や権限の移管問題に関連して、戦前のナチスのやり方を思い出します。かつてナチスが政権を獲得した後、一九三三年七月にカルテル裁判所の権限を経済大臣に移すことによって、経済地位乱用取締法を窒息せしめ、さらには、カルテルによる統制経済の道へと進んだ。このような歴史的な教訓を、われわれは忘れてはなりません。
 次に、高碕通産大臣にお伺いいたしますが、大臣は、去る八月十二日の本院大蔵委員会において、「中小企業の団体が全部独禁法改正に反対をするというならば考慮すべき点があると存じます。」と言われているが、昨年十二月の独禁法審議会に対する中小企業同友会、日中連、全中協、協同組合中央会のいずれもが、独禁法はこれを堅持するばかりではなく、現行法の改正強化を行うべきであると回答しておる。現在、中小企業者はあげて改正反対を叫んでおりますが、大臣は考え直される用意があるかどうか、お伺いをいたします。
 さらに、全国農業会議所、農協中央会を初め、多くの農林漁業団体が「独禁法は農業及び農民に有形無形の利益を与え、その存在意義は高く評価せらるべきである。むしろ基本的には独禁法制の強化を望む。」と回答しておる。また、九月十八日発行の農業協同組合新聞で、このように五段抜きで、「独禁法の改悪粉砕へ」という大見出しを掲げ、「独禁法の改正は財界と農民の対決であって、金が勝つか数が勝つかの岐路に立たされておる。」と論じ、大々的な反対運動に立っていることを御承知か。農林大臣は、よもや財界の味方をせられるとは思わないが、この際、この壇上から、このマイクで、全国農民に対して、あなたのお考えを明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 最後に、岸総理に申し上げますが、第二次世界大戦後、各国は独占禁止政策を新たに採用し、またはこれを強化する方向に向っており、西ドイツ、イギリス等は保守党内閣の手でこれを強化しているのに、岸内閣はこれを大幅に緩和しようとしておるのでありますが、総理は、これら諸外国の保守党に対しても恥かしいとは思われないか。岸総理が、過去はともかくとして、今は真の民主的政治家であると言われるならば、この際、中小企業者、農業生産者、消費者大衆の反対の声に耳を傾け、本案を撤回せられる御意思があるか、お伺いいたします。
 具体的詳細な質問は委員会において行うこととして、私の質問をこれで終ります。(拍手)
    〔国務大臣岸信介君登壇〕
#23
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。田中君の御質問は各般の事項にわたっておりますが、私は総括的な点についてお答えをいたしまして、他は主管の大臣から御答弁することにいたします。
 今回の独禁法の改正は、先刻提案の理由を説明し、また、小平君の質問に対して私がお答えをいたしましたように、日本の経済界の一つの弊害はいろいろな点に原因がございます。あるいは経済の基礎がまだ十分にでき上っておらない、あるいは企業体が非常に小さいとか、あるいはまた、企業体が非常に多いというようないろんな原因がございますが、とにかく、競争があまりに激しくて、それがために経済界の安定を欠く。これがひいて経済界にいろいろな景気変動というものを激しからしめ、ひいて消費者や中小企業、農林水産業等にもよからぬ影響を及ぼしておるということは、これは現実の状況であります。従って、これをどういうようにして自制するか。また、日本として海外に対して輸出貿易を大いに伸ばしていくということは、日本経済のために必要である。しかるに、海外における事情が、日本人同士が過当な競争をして、そのために輸出がかえって伸張しないというような弊害が至るところに見られ、多くの人々から指摘されているのであります。これらの状況に対処して、日本経済を安定した基礎の上に拡大していくにはどうしたらいいかということは――これは、私どもは、あくまでも自由経済の建前をとっております。あるいは、計画経済や社会主義経済によって、一つの意思でもって計画を定めて、国家権力によってこれを遂行するという考え方もございます。しかし、私どもは、そういう考え方をとっておらない。そこで、この経済の発展を自由経済の基礎に置くというと、一方においてそういう過当な競争が出てくる。それがかえって経済の発展を妨げる。その場合にどうするか。あくまでも自由公正なる競争は確保し、行き過ぎた過当競争はこれを防ぐ。これを権力で防ぐにあらずして、民間の自主的な調整作用に待とうというのが、要するにカルテルという形式であります。しかし、この事柄も、今度はカルテルの行き過ぎというものをある程度考えなければならない。ここに、あるいは認可制度であるとか、あるいは監督の制度であるとか、あるいは認可する場合の条件、あるいは将来の取り消しというような、あらゆる面において行き過ぎをさせないというこの考え方が、すべての独占禁止法に対する政府の根本的な考え方でございます。今回の改正というものは、そういう日本の経済界の実情に合って、日本の将来の経済の発展を考え、経済を安定した基礎に置いて、しかも、国際経済競争力をふやしていく上において、業者の自主的な調整というものを基礎に、安定と競争力をつけていこう、しかしながら、それにはカルテルの弊害というものも十分考えなければならぬから、その弊害の起らないように、最小限度において、また、いろいろな監督の規定を置いてこれが運営をしていこうという考えでありますので、今お話のように、独占資本の保護ばかりで、中小企業なり消費者なり農林水産業というものを全然顧慮しない、というようなことでは決してないのであります。これは改正の各規定を詳細に御検討下されば十分に御理解いただけることと思います。
 なお、第二次戦争以後、世界の情勢が独占禁止法を強化するという傾向になっておるということは、私も同様に認めます。しかし、独占禁止法に関する法規の状況は、各国の産業経済事情なり、その国のいろいろな沿革的事情なりというような実情から見まして、規定の内容がさまざまに違っておりますことは、御承知の通りであります。日本の現行法がアメリカの独占禁止法を模範として作られたことも、制定の沿革から明瞭であります。従いまして、国々によって違っておるのであります。私は、日本の実情に合った、そうして、日本の経済の安定と、また、これから生ずるところの弊害をできるだけなくするという考慮のもとに、適当に整備していく、改正していくということが最も実情に合っておる事柄だ、かように考えております。
 なお、強制カルテルを作るものじゃないかというようなこと、これは、全然そんなことは考えておりませんで、ごらん下すってもわかるように、員外の人を強制するとか、あるいは強制加入を命ずるとかいうようなことは、全然規定をいたしておりません。
 また、今回の改正案を出すにつきまして、私どもは、審議会において十分審議して、その結論の趣旨によってこれを出しておるわけであります。その場合に、審議委員の選定等についての御質問がございましたが、私どもは、学者、言論界、あるいは業界の有識者を網羅してやったわけであります。決して、私どもは、ある利益代表とか、ある消費者の代表とか、あるいは農民代表とか、だれそれの代表というような意味で委員を選定したわけではないのであります。しかして、各方面の意見が十分に反映するということを考慮いたしまして、そして有識者の審議に待ったわけであります。
 議事録を公表しないという問題は、こういう委員会におきまして、いろいろな議論があり、いろいろ関係圧力団体等もあるような場合におきまして、委員が、真に自分の信ずるところに従って、自由、かつ、はつらつたる論議をして、最も妥当な結論を得るという審議会におきましては、多くの場合において議事録を公表しないというのが従来の慣行であると私は思う。特別に本件だけをそういうふうに扱ったというわけではないのであります。
 その他は関係の大臣よりお答え申し上げます。
    〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
#24
○国務大臣(高碕達之助君) 今回の独占禁止法の改正に当りまして、中小企業者の間に相当強硬なる反対のあったことは事実でございます。その反対を考慮いたしまして法律案の作成に当ったのであります。すなわち、中小企業の利益を擁護するために、中小企業の利益を害するおそれがないということが前提で、この認可がされるのであります。従いまして、この申請がありました窓口におきましても、その点を十分考慮してから取り次ぐことにいたしますし、かりにこれが認可されましても、独立しておるところの公正取引委員会が、弊害があり、中小企業者の利益を害するということになれば、このカルテルを取り消すことができるような方法になっております。こういうような点におきまして、よく御考慮願えますれば、中小企業者も賛成願えることと私は思います。
    〔国務大臣三浦一雄君登壇〕
#25
○国務大臣(三浦一雄君) 田中君の御質疑に対しましてお答え申し上げます。
 今回の法律改正につきましては農林団体等の反対の意向があるが、この渦中においていかなる対処をするかということにあったと思うのであります。今回の改正が、わが国の経済事情にかんがみまして、不況カルテル並びに合理化カルテルをいたすのでございますが、現状上、この程度の改正はやむを得ないものと思います。しこうして、これらの改正に当りましては、不況カルテル等につきましても、このカルテルの認可あるいは届出、公正取引規約の認定等の処置につきましては、一般消費者、さらにまた関連の中小企業者、関連の農林漁業者等の利益を害せざることを前提として立法されておるのでありまして、具体的に申し上げるならば、原材料の購入に関する制限等にかかりまする合理化カルテル等につきましても一定の制限を置き、さらに、この原材料等の生産事業に関連しまして、主務大臣として農林大臣等も意見を開陳し、同時にまた、これに関与するの道を開いておるのであります。さらにまた、独占的買入機関、さらに独占的販路協定等におきましても、不況カルテルの場合でございますが、これにおきましても相当のきびしい制限を置いているのであります。ことに、合理化カルテル等の場合におきましては、独占的買取機関であるとか、あるいは独占的販路協定等は認めておりませんのでございます。
 さらに、農山漁村にとりまして重大な肥料等につきましては、主管大臣としまして、これに対しまして、その処分等につきましては事前に有効なる措置をとり得る道もあるのでございまして、これらの諸制度を十分に運用しまして、農山漁村の利益擁護に万全を期したいと存じておるのであります。(拍手)
#26
○議長(星島二郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#27
○議長(星島二郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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