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1958/10/07 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 本会議 第5号
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1958/10/07 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 本会議 第5号

#1
第030回国会 本会議 第5号
昭和三十三年十月七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第五号
  昭和三十三年十月七日
    午後一時開議
 一 最低賃金法案(内閣提出)及び最低賃金法案(勝間田清一君外十六名提出)の趣旨説明
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査をなすための特別委員会、公職選挙法改正に関する調査をなすための特別委員会、科学技術振興の対策を樹立するための特別委員会、国土総合開発について諸施策を樹立するための特別委員会を設置することとし、その委員の数はそれぞれ二十五人とせられたいとの動議(松澤雄藏君提出)
 最低賃金法案(内閣提出)及び最低賃金法案(勝間田清一君外十六名提出)の趣旨説明並びに質疑
    午後二時四十七分開議
#2
○議長(星島二郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#3
○松澤雄藏君 特別委員会設置の動議を提出いたします。すなわち、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査をなすための特別委員会、公職選挙法改正に関する調査をなすための特別委員会、科学技術振興の対策を樹立するための特別委員会、国土総合開発について諸施策を樹立するための特別委員会を設置することとし、その委員の数はそれぞれ二十五人とせられんことを望みます。
#4
○議長(星島二郎君) 松澤君提出の動議を採決いたします。松澤君提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#5
○議長(星島二郎君) 起立多数。よつて、動議のごとく決しました。
 ただいま議決せられました四特別委員会の委員は迫つて指名いたします。
     ――――◇―――――
#6
○議長(星島二郎君) 内閣提出、最低賃金法案及び勝間田清一君外十六名提出、最低賃金法案の両案の趣旨の説明を順次求めます。
 労働大臣倉石忠雄君。
    〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#7
○国務大臣(倉石忠雄君) 最低賃金法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 終戦以来、わが国における労働法制は、労働組合法、労働関係調整法、労働基準法など急速に整備されたのでありますが、これらの法制により近代的労使関係が確立され、また、産業の合理化を促進し、わが国の経済復興に寄与するところ少くなかつたことは、否定し得ない事実であります。
 労働基準法は、労働条件の最低基準について詳細な規定を設けているのでありますが、同法に定める最低賃金に関する規定は、今日まで具体的に発動されなかつたのであります。これが理由について考えてみますと、まず、終戦後の経済の混乱が最低賃金制の実施基盤をつちかえなかつたことが指摘されるのでありますが、さらに、基本的には、中小企業、零細企業の多数存在するわが国経済の複雑な構成のもとにあつては、労働基準法に規定する最低賃金制のみによつてはその円滑な実施を期し得ないものが存したからにほかならないからであります。
 昭和二十五年、労働基準法に基いて設置されました中央賃金審議会は、絹人絹織物製造業等四業種に対する最低賃金の実施について、昭和二十九年に政府に答申を行なつたのでありますが、これが実現を見るに至らなかつたゆえんも、当時の経済情勢とともに、わが国経済における中小企業の特異性に存したと言えるのであります。
 しかしながら、賃金は労働条件のうち最も基本的なものであり、特に、賃金の低廉な労働者について今日最低賃金制を実施することは、きわめて有意義であると考えるのであります。
 最低賃金制の確立は、ただに低賃金労働者の労働条件を改善し、大企業と中小企業との賃金格差の拡大を防止することに役立つのみでなく、さらに労働力の質的向上をはかり、中小企業の公正競争を確保し、輸出産業の国際信用を維持向上させて、国民経済の健全な発展のために寄与するところが大きいのであります。
 翻つて世界各国に眼を転じますと、十九世紀末以来、今日までに四十数カ国が最低賃金制を実施し、また、国際労働機関においてもすでに三十年前に最低賃金に関する条約が採択され、これが批准国も三十七カ国に達していることは、御承知の通りであります。
 経済の復興と労働法制の整備に伴い、わが国の国際的地位は次第に高まり、昭和二十六年には国際労働機関へ復帰し、さらに、昭和三十一年には、念願の国際連合への加盟も実現されたのでありますが、また、それゆえに、世界各国は、わが国経済、特に労働事情に関心を有するに至つているのであります。
 なかんずく、諸外国において特に大きな関心を持つて注目しているのは、わが国の賃金事情であります。過去において、わが国輸出産業がソーシャル・ダンピングの非難をこうむつたのは、わが国労働者の賃金が低位にあると喧伝されたからであります。かかる国際的条件を考えましても、この際最低賃金制を実施することは、きわめて意義があると考えるのであります。
 しかしながら、諸外国における最低賃金制の実施状況を見ても知り得るごとく、その方式、態様は決して一様のものでなく、それぞれの国の実情に即した方式が採用されているのであります。従いまして、わが国の最低賃金制も、あくまで、わが国の実情に即し、産業、企業の特殊性を十分考慮したものでなければならないことは言うまでもないところであります。
 政府といたしましては、最低賃金制の大きな意義にかんがみ、最低賃金制のあり方について、かねてから検討して参つたのでありますが、昨年七月、中央賃金審議会に、わが国の最低賃金制はいかにあるべきかについて諮問したのであります。同審議会は、その後、真剣な審議を重ねられ、十二月に至り答申を提出されたのでありますが、その内容については、一部の労働者側委員が賛成できない旨の意見を述べたほか、他の労、使、公益全委員が賛成されたのでありまして、さらに、答申の提出については、全員が一致されたのであります。同答申は、その基本的考え方として、「産業別、規模別等に経済力や賃金に著しい格差があるわが国経済の実情に即しては、業種、職種、地域別にそれぞれの実態に応じて最低賃金制を実施し、これを漸次拡大して行くことが適当な方策である。」と述べているのであります。
 今日においても、最低賃金制の実施は、中小企業の実情にかんがみ、時期尚早であるとの論も一部にはあるのでありますが、現実に即した方法によつてこれを実施するならば、中小企業に摩擦と混乱を生ずるようなことはなく、その実効を期し得られるものであり、むしろ、中小企業経営の近代化、合理化等、わが国経済の健全な発展に寄与するものと考えるのであります。
 以上の見地から、政府といたしましては、中央賃金審議会の答申を全面的に尊重して最低賃金法案を作成し、第二十八回国会に提出したのであります。同国会では、衆議院においては政府案通り可決されたのでありますが、参議院におきましては、衆議院の解散によつて審議未了となりましたので、ここに前回提案いたしたものと同内容の法案を提出いたした次第であります。
 次に、その主要点について御説明いたします。
 その第一は、最低賃金の決定は、業種、職種または地域別に、その実態に即して行うということであります。最低賃金制の基本的なあり方について、全産業一律方式をとるべきであるとの意見があります。しかしながら、わが国においては、産業別、規模別等によつて経済力が相当に異なり、また、賃金にも著しい格差が存在しているのでありまして、かかる現状において全産業全国一律の最低賃金制を実施することは、ある産業、ある規模にとつては高きに失し、他の産業、規模にとつては低きに失し、これがため一般経済に混乱と摩擦を生じ、本制度の実効を期し得ないおそれがあると考えるのであります。ここに、対象となる中小企業の実態を最も適切に考慮して最低賃金を決定し得るごとく、業種、職種、地域別に最低賃金を決定し、漸次これを拡大していくこととした理由が存するのであります。
 第二は、最低賃金の決定について、当事者の意思をでき得る限り尊重し、もつて本制度の円滑なる実施をはかるため、次の四つの最低賃金決定方式を採用していることであります。
 すなわち、その第一は、業者間協定に基き、当事者の申請により最低賃金を決定する方式であり、第二は、業者間協定による最低賃金を、一定の地域における同種労使全部に適用される最低賃金として決定する方式であり、第三は、最低賃金に関する労働協約がある場合に、その最低賃金を一定の地域における同種労使全部に適用されるものとして決定する方式であります。これら三つの方式のいずれの場合も、政府は、中央、地方に設けられる労、使、公益各同数の委員よりなる最低賃金審議会の意見を聞いて最低賃金を決定することといたしております。第四は、以上一ないし三の方式によることが困難または不適当である場合に、行政官庁が最低賃金審議会の調査審議を求めて、その意見を尊重して最低賃金を決定する方式であります。
 以上のごとく、四つの決定方式を採用し、それぞれの業種、職種、地域の実情に即して最低賃金制を実施することとし、もつて本制度の円滑にして有効なる実施を期した次第であります。第三は、決定された最低賃金の有効な実施を確保するため必要な限度において、関連家内労働について最低工賃を定めることができることとしたことであります。
 わが国の中小企業は零細規模のものが多く、その経営は下請的、家内労働的な性格を有するものが多いのであります。しかも、わが国においては、これら中小企業と併存する関連家内労働者が多数存在し、これら家内労働者の労働条件には劣悪なものが少くないのであります。しかして、一般の雇用労働者に最低賃金が適用され、これと関連する家内労働を行う家内労働者の工賃が何ら規制されない場合には、家内労働との関係において最低賃金の有効な実施を確保し得ない事態を生ずるおそれがあるのであります。もとより、家内労働については改善すべき幾多の問題がありますので、政府は、家内労働に関する総合的立法のため調査準備を行うとともに、さしあたり、本法案中に必要な限度において最低工賃に関する規定を設け、最低賃金制の有効な実施を確保すると同時に、家内労働者の労働条件の改善に資することといたした次第であります。
 以上が本法案の主要点でありますが、本法の適用範囲は、原則として労働基準法及び船員法の適用あるもの全部とし、これが施行に関する主務大臣は、労働基準法適用関係については労働大臣とし、船員法適用関係については運輸大臣としております。その他、最低賃金審議会の設置運営に関する事項、業者間協定締結等に対する援助、勧告及び違反の防止等に関する所要の規定を設けるほか、関係法令に関する整備を行い、もつて最低賃金制の円滑なる実施を期しているのであります。
 最低賃金制を法制化することは、わが国労働法制上、まさに画期的なことであり、かつ、その意義もきわめて大きいと信ずるのであります。しかしながら、何分にも、最低賃金制はわが国においては初めての制度であります。いかにわが国の実情に即した最低賃金制でありましても、これを円滑有効に実施するためには、中小企業の経営基盤の育成をはかることが必要であることは申すまでもないところでありまして、政府といたしましては、最低賃金制の実施状況等を勘案しつつ、中小企業対策等について今後とも十分配慮を行なつて参りたい所存であります。
 また、いかに大きな意義を有する最低賃金制が実施されたとしましても、法制定の趣旨が十分認識されず、本制度が誤まつて運用される場合には、労使関係の安定が阻害されるのみならず、社会経済の混乱を招くことにもなりますので、政府といたしましては本制度に対する労使の深い理解と絶大なる協力を期待するとともに、広く国民一般の支援を求め、これが円滑なる運営をはかりたいと存じておる次第であります。
 以上が最低賃金法案の趣旨でございます。何とぞ、御審議の上、すみやかに御決定あらんことをお願いいたします。(拍手)
#8
○議長(星島二郎君) 提出者多賀谷真稔君。
    〔多賀谷真稔君登壇〕
#9
○多賀谷真稔君 最低賃金法案につきまして、その提案理由及び内容の概要について御説明申し上げます。
 労働基準法はその冒頭において、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とうたつております。しかして、労働時間と賃金は、労働条件における二つの柱になつており、天井と床の関係にありまして、いかに労働時間の規則が行われましても、賃金について何らかの最低保障がなければ、労働保護立法もその意義の大半は失われ、労働者の生活の安定は期し得られないのであります。ここに、労働時間がそれ以上に上り得ないように天井を設けたと同様、賃金がそれ以下に低下しないように床板を設ける必要があると思うのであります。労働基準法が制定されてすでに久しく、この法律の眼目たる最低賃金制度が日の目を見ないことはまことに遺憾であり、本法案は、労働基準法をして保護立法としての本来の使命を達成せしめるために、その補完的立法として提出いたした次第でございます。(拍手)
 最低賃金制度は、前世紀の末、ニュージーランドに実施されて以来、先進国において実施され、第二次世界大戦後の今日においては、インド、ビルマ、フィリピンのアジアの後進国及び中南米の諸国に至るまで、四十数万国において実施され、ILOにおきましても、一九二八年、第十一回総会において、最低賃金制度の創設に関する条約が採択されているのであります。
 わが国の労働者の賃金は、諸外国に比べて著しく低く、ことに、中小企業の賃金はまことに劣悪なのであります。日本の資本主義は農村の貧困と中小企業労働者の低賃金を土台として発展し、現在においても、独占資本は中小企業をその隷属下に置き、その基盤の上にそびえ立つているのであり、独占資本は経営の危険をほとんど下請の中小資本に転嫁し、中小企業の労働者は低賃金と長時間労働に苦しんできたのであります。神武以来の好景気といわれた時代も、これら低賃金労働者には潤わず、企業別労働者の賃金格差はますます拡大し、また、本工員と同じ作業をさせながら低い賃金で使用される臨時工、社外工という形の労働者を大量に発生せしめ、一たび不況になるや、いち早く、これらの労働者に解雇、賃金引き下げの犠牲がしいられ、社会問題を惹起しておることは、皆さん御存じの通りであります。(拍手)
 さらに、わが国の賃金構造の特質に、男女別賃金格差の大きいことをあげることができるのであります。同一労働、同一賃金の原則は、賃金決定における大憲章であります。労働基準法の制定と同時に、その条章にもうたわれたところでありますが、婦人労働者は依然として低賃金に押えられ、工場では、多年勤めておる婦人労働者が男子見習工員よりも安い賃金をもらつているという事実を幾多も指摘することができるのであります。わが国の、この封建的、慣習的賃金構成を打破して、近代的賃金構成にし、婦人の経済的地位の向上をはかることが肝要であると思うのであります。(拍手)
 賃金は、労働力の再生産を可能にするものでなくてはなりません。しかるに、現在の低賃金階層の人々は、労働力の再生産どころか、自己の労働力を消耗し続けておるような状態でございます。現在、生活保護法によつて保護を行なつておるのでありますが、その被保護世帯の約四割が、実は世帯主が就職をして働いておるのであります。世帯主が就職して働いておつて、なお生活保護法の保護をしなければならないというこの現実は、わが国の賃金のいかに低いかを雄弁に物語るものであり、最低生活水準も維持できないような低賃金で人を使用することは、社会正義上も許されないと思うのであります。(拍手)かような人格をも認めない低賃金の労働者に、資質の向上も能率の増進も望み得ません。中小企業も、いつまでも劣悪なる労働条件に依存し、企業間でお互いに価格の引き下げ、コストの引き下げ、賃金の引き下げという形の過当競争を行なつていたのではついには、かえつて中小企業崩壊の結果を招来すると思うのであります。(拍手)
 本法案は、いずれの企業にも賃金の最低線を画することによつて過度の不当競争をなくし、さきに国会で通過いたしました中小企業団体の組織に関する法律、また、今わが党が提出しております中小企業の産業分野の確保に関する法律案、商業調整法案、中小企業官公需の確保に関する法律案、その他税制、金融等の改正案とともに、中小企業の製品の高度化と量産の推進をはかり、わが国の後進的産業構造の近代化を行わんとするものであります。(拍手)
 他方、対外的見地よりいたしましても、本法案は必要欠くべからざるものであります。戦前におきまして、わが国の輸出品、特に繊維製品に対しましてソーシャル・ダンピングの非難があり、戦後においても、依然として、その復活の危惧が払拭されておりません。ガット加入に際しまして、イギリスを初め多くの国が第三十五条の援用をし、また、アメリカにおいて綿製品、洋食器その他の輸入の禁止並びに制限が問題になつていることは、御存じの通りであります。本法案は、わが国製品に対する諸外国のソーシャル・ダンピングのおそれを解消し、わが国の貿易の正常な発展に寄与せんとするものであります。
 さらに、本法案は、完全雇用への道に通ずるものであります。わが国の雇用問題は、完全失業者の問題ではありません。むしろ、一千万と数えられる、見えざる失業、半失業、潜在失業という名で呼ばれておる不完全就労者の問題であります。完全雇用とは、単に量の問題だけではなくて、質の問題も含むのであります。単に職につけばよいというのではなく、少くとも職についた以上は、労働力を償う賃金が支払われなければならず、雇用の質的転換をはからなければならないのであります。また、雇用の質が向上されるならば、家計補助のために労働市場に現われていた多くの者が姿を消し、労働力化率が健全化し、雇用事情が改善されると、われわれは確信しておるのであります。(拍手)最低賃金の設定は、労働時間の短縮、社会保障制度の確立とともに、わが国の非近代的雇用関係を解消し、完全雇用の達成に資するものであると思うのであります。
 以下、内容の概要について述べます。
 第一に、本法案は、附則において労働基準法の最低賃金の条項を一部改正し、その改正した労働基準法の規定に基いて定めたものであります。そこで、本法の適用労働者からは、雇用労働者でありましても、労働基準法の適用を受けない船員労働者、公企業体等関係労働法以外の国家公務員は除外し、これらの労働者に対しましては別に定めることにいたしたいのであります。
 第二に、最低賃金の決定は、全産業を通じ、全国一律方式を採用しました。業種別、職種別、地域別に最低賃金を決定すべきであるという意見もあり、その方式を採用している国々もございます。しかし、この業種別、職種別、地域別を採用した国々の多くは、その国の労働組合が産業別組合であり、職種別組合であるからであります。これらの産業別組合または職種別組合は、統一労働協約によつて最低賃金を持つており、これらの組合の組織のできない産業、職種の労働者は低賃金で放置され、ここに最低賃金の必要性が唱えられ、かかる方式がとられたわけでございます。しかるに、我国の労働組織の実態は皆企業別組合でありまして、企業規模の大小によつて組織率が変つているのであります。ゆえに、わが国の賃金分布の状態は、あらゆる産業、あらゆる職種にわたつて低賃金の労働者階層を発見することができるのであります。さらに、わが国の賃金構造の賃金格差の著しいことを理由に、全国一律方式の困難性を指摘していますけれども、現に産業別、規模別、地域別賃金格差が大きく、最低賃金を業種別、職種別、地域別に決定しているインドやメキシコにおきましても、このような形態が賃金の固定化をもたらし、賃金の引き上げにならないとして今や再検討され、画一的最低賃金の必要に迫られているという事実を知ることができるのであります。さらに、各国における最低賃金制度の発展の歴史を見ますると、当初苦汗労働分野に限られていたこの制度が、漸次全国的全産業的規模に拡大し、一般的低賃金の防止へと発展し、質的転換を遂げつつあることを看過することはできないのであります。以上の事実を総合し、ここに最低賃金は全産業一律方式を採用いたしたわけでございます。
 第三に、最低賃金の額は、十八才以上一カ月八千円といたしたのであります。十五才以上十七才未満のものにつきましては、別に政令により決定することといたしました。最低賃金の額の決定の基準は各国において種々でございますけれども、われわれは、主として厚生省社会局委託による労働科学研究所の最低生活費の研究の結果によつたのであります。これによりますと、昭和二十七年八月から十月までの調査で、住生活及び公租公課、社会保険料を除きまして、家族と共同生活をしております軽作業従事の成年男子の労働力の再生産に必要な最低限度の消費単位が七千円でありますので、これに単身者たるの条件を加え、さらに、その後のCPIの上昇率、地域差等により修正し、八千円といたしたのであります。しかしながら、この画期的法律を実施するに当り、賃金の一般水準、階層別分布、その他諸般の社会的、経済的情勢を勘案いたしまして、その経過措置として、施行後二カ年間は六千円を実施することといたしたのであります。
 第四に、右の金額に達しなくても使用できるものといたしまして、技能養成者、精神または身体の障害等により著しく労働能力の低位な者、労働者の都合により所定労働時間に満たない労働をした者、所定労働時間の特に短かい者、十五才に満たない労働者の除外例を設けたのであります。
 第五に、中央賃金審議会は、物価の変動その他によりその金額を百分の五以上増減する必要があると認めたときは労働大臣に報告しなければならないという規定を設け、労働大臣は、その勧告に基き、その必要な処置を講じなければならないといたしたのでございます。
 以上が本法案の概要でありますが、なお、本法案の円滑なる運用をはかるため、一カ年間の調査期間を設け、実態の把握に努め、本法案施行に万遺憾なきを期する所存であります。
 最後に一言申し上げたいことは、業者間協定をもつて法的最低賃金の決定方式とされている政府案についてであります。業者間協定は、業者間の競争を公正にするという意味はありますけれども、生活水準の向上を期するという労働立法として、どうしても容認できないのであります。(拍手)政府案は、わが国の賃金格差の著しいことを理由に、全国一律方式を排除されましたけれども、賃金の不均等があればあるほど、業者間協定による最低賃金は、その実情に即するのあまり、その職業や地域の低賃金をそのまま制度化するにとどまり、さらに、競争関係にある他の職業や地域の賃金をもくぎづけにし、または引き下げる武器に使われるおそれなしとしないのであります。(拍手)また、最低賃金に関するILO条約は、一九二八年、今から三十年前、いまだ多くの国において実施を見ていない初期の段階において採択されました関係上、その最低賃金の決定の内容につきましては各国の自主性にまかしてあるのであります。それを奇貨といたしまして、賃金を使用者のみで決定さすという全く労働法の原則違反の方式を採用されていることは、ILO条約の精神にもとり、このことは、かえつて国際社会の信用を失墜する結果になり、依然として、わが国の政府並びに資本家が、低賃金と労働強化にその輸出の源泉を求めて、業者間協定という似て非なる最低賃金制を作つたと非難を受けることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)
 本法案は、社会の最下層労働として呻吟しております家内労働者のための家内労働法案とともに、わが国の労働階級が長年にわたつて熱望してきた法律案であり、かつ、わが国経済の正常なる発展に緊要欠くべからざるものでありますので、本法案を十分慎重御審議の上、御賛同を賜わらんことをお願いする次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
#10
○議長(星島二郎君) ただいまの趣旨の説明に対し、質疑の通告があります。これを許します。赤松勇君。
    〔赤松勇君登壇〕
#11
○赤松勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました政府の最低賃金法案に対し、二、三お伺いしたいと思います。
 顧みれば、わが国において、最低賃金制度の確立が、労働者、識者、そして一般世論の間に叫ばれまして以来、実に長い年月が過ぎ去つたのであります。この間、多くの、あらゆる階層の人々によつて、いろいろな角度からこの問題が論議され、その中から、今日幾つかの結論を得るに至りました。その一つが、ただいま上程されておりまする政府の最低賃金法案であります。しかし、私たちがその内容を詳細に検討した結果、まず第一に感じさせられるのは、そうした長年月にわたる幾多の議論の集約としては、あまりにもお粗末であり、かつ、国際的ヴィザを持たない私生子的法案であると認めざるを得ないのであります。(拍手)
 言うまでもなく、今回の政府案は、最低賃金の決定について、第一に業者間協定、第二に業者間協定の地域的拡張、第三に労使協定の地域的拡張、さらに第四には行政官庁の決定という、四つの方法によつて最低賃金を決定することを内容としております。しかも、その中心は業者間協定であつて、それを最低賃金決定の第一義的な方式として採用しておるのであります。
 そこで、私は、まずこの問題を中心として、幾つかの角度から政府の見解をただしたいと思います。
 第一は、最低賃金法制定の目的と、業者間協定に基く最低賃金との関係についての問題であります。最賃法の目的については、ここに多言を要せずして、すでに国際的理念として、労働者の最低生活を確保することにあることは、広く一般の認めるところであります。平たくいえば、労働者に食つていける賃金を保障することが最低賃金法本来の目的でなければなりません。もちろん、最低生活費といい、食えるだけの金額といつても、それをどのように計算し、何を尺度として測定するかという問題は、おのずと議論が分れるところであり、また当然なことであります。それを実態生計費によるか、理論生計費によるか、ないしはマーケット・バスケット方式によるか、こういう問題は確かに残ると思うのであります。しかし、いずれにしても、労働者がそれで生きていけるだけのものであることが、それを法的秩序として保障することが最低賃金制のねらいでなければならぬと思うのであります。(拍手)ところで、業者間協定は、本来、賃金に関する業者間の不当競争防止を目的としたものであつて、それ自体、労働者の生活を保障し、ないしは救済しようとするものでは断じてないと、われわれは考えるのであります。(拍手)すなわち、それは、現在巨大企業等で行なつている製品価格についてのカルテル協定と全く同種のもので、ただ、そのカルテルの対象が賃金であることにほかならないのであります。(拍手)すなわち、目的の全く異なつている業者間協定を無理やりに最賃法の中に押し込めんとしたところに、政府案の第一の決定的な矛盾があると思うのであります。(拍手)ここで、私は最低賃金法の初歩から、まず政府の見解をお尋ねせざるを得ません。
 政府は、最低賃金法制定の第一義的目的が労働者の最低生活を保障するためのものであるという、そういう深い認識の上に立つてこの案を立案されたのかどうか、まず、そのことをお尋ねしたい。もし、そうであるとするならば、何ゆえに目的の全く異なつた業者間協定最低賃金決定の最も大きな柱としたのか、それを主柱としたのであるか、この点について、政府の一致した見解を、総理みずから明確に御答弁願いたいと思うのであります。
 以上の最賃法の目的と関連して、私は、また別の角度から質問をしてみたいと思います。
 最低賃金法の目的が労働者の最低生活を保障するものであることは、ただいま指摘した通りでありますが、そのことは、具体的には、広範に存在する低賃金を最賃法の制定によつて解消し、特に日本における賃金構造の特質である賃金格差を是正することが直接の目的となるわけであります。従つて、最賃法が考えられる場合に、まず第一に考慮されなければならぬことは、低賃金階層がどのような形で構成され、さらに、賃金格差がどの点において最も深刻化しているが、日本における賃金格差の特徴は何であるかということが非常に重大な問題になつてくると思います。ところで、政府案は、最低賃金の決定を事業、職種、地域別に定めることが適当であるとし、それに即応する方式を業者間協定に求めているのであります。この方式は、日本の賃金格差の特徴を業種別、地域別格差としてとらえた結果にほかなりません。ここに、最賃法立案の前提である現状認識の把握において根本的な誤まりが存在していると思うのであります。(拍手)
 私は、何ものにもとらわれない客観的な立場に立つて、日本における賃金格差の特徴について政府の注意を喚起したいと思うのであります。なるほど、政府が指摘するように、業種別、地域別、そういう格差が存在することは確かであります。その他いろいろな種類、分類によつて賃金格差をとりえることができます。しかし、いわゆる日本的な特徴として賃金格差をとらえた場合、その最も大きな特徴は、規模別格差であることが現在の統計で明らかになつているのであります。(拍手)これは、また、政府みずから作つた労働白書自体が、そのことを明確に指摘しております。
 個人別賃金調査、社会保険の基礎調査に基いて数字を当つてみますと、その規模別賃金格差は、千人を一〇〇とした場合、五百人から九百九十九人までが八五%、百人から四百九十九人までが七四%、三十人から九十九人までが六四%、十人から二十九人までが五五%、一人から四人までが四五%ということになつております。さらに、産業別、事業所規模別賃金格差から見ましても、ほぼ同様な比率で各産業ごとに規模別賃金格差が存在することが明瞭になつているのであります。すなわち、日本の場合は、全産業を通じて、その底には極端な低賃金が存在し、規模の縮小に伴つて賃金格差の比率がだんだんひどくなつているというのが、その本質的な特徴であると思うのであります。従つて、日本で最低賃金制が考えられる場合、そうした全産業に散らばつている低賃金労働者の賃金を全体的に引き上げる方式でなければなりません。従つて、法のあり方としては、そうした目的と機能を持つたものでなければ現実の事態を救い得ないというのが、われわれの確信するところなのでありますが、政府案は、まさにその逆をいつておるのであります。全産業的最低賃金制がいまだ確立されていない中で、政府案のごとき業種別、地域別最低賃金を、しかも、業者間協定という方式によつて推し進めようとすることは、むしろ、現在の極端な賃金の格差をさらに助長する危険を多分に含んでおるということを、この際指摘しなければなりません。
 この際、労働大臣にお伺いしたいことは、あなたがお作りになつた最賃法と現実の賃金構造とは全く違つた映像を描いているとは思わないか。言いかえれば、あなた方の最賃法は、現実の状態に即応しない、名ばかりの最低賃金法と考えないか。さらに、私が今まで指摘して参りました日本における規模別賃金格差の特徴と最賃法の目的とを何ゆえ業者間協定のきずなによつて結びつけたのであるか。その論理的、実際的経過を、この際明確に御説明願いたいと思うのであります。同時に、あなた方自体としても、業者間協定という方式の最低賃金制が本来望ましい形での最低賃金制でないということは提案理由の中でも指摘しておられます。しからば、あなた方は、業者間協定最低賃金の弊害、欠点、矛盾等について、どのような見解を持つておられるのか、この際、率直なお考えを承わりたいと思うのであります。
 次に、私は、再び業者間協定の本質の問題に触れて質問をしてみたいと思います。
 私たちの考えでは、業者間協定というものは、賃金決定の手段としてはきわめて不公正なものであり、あるいは業者の一方的な決定を労働者に押しつけるだけのものであるという判断に立つているのであります。こうした判断に対する労働大臣の見解をお伺いしたい。その理由は、賃金決定に当つての国際的原則、すなわち、賃金の決定は労使双方の合意に基くものでなければならないというILO条約の精神、並びに、同様のことを要求しているわが国労働法に完全に違反するからであります。
 周知のごとく、業者間協定は、文字通り業者間の勝手な賃金協定であつて、労働者の参加はもちろんのこと、その意見あるいは要求をその中に盛り込むことは、協定の性格上全く不可能なことであります。従つて、同協定によつてきまつた賃金が、業者間においては一定の拘束力を持つとしても、労働者がそれに縛られる理由は、ごうもないのであります。いわんや、それが最低賃金として法律上の拘束力を持つなどという飛躍した議論は、まさにナンセンスもはなはだしいものといわなければなりません。ところが、政府案は、そうした飛躍した議論をその基礎としているところに大きな問題が存在しておるのであります。そこで、私は、労働大臣に対し、業者間協定賃金と最低賃金との本質的な差異をどのように把握しておられるかを御伺いしたい。それと同時に、賃金決定の原則から全くはずれた業者間協定を最低賃金決定の基礎とした理由はいかなるものであるか。風が吹けばおけ屋がもうかるといつた政治的説明ではなく、国内はもちろんのこと、国際的にも通用する論理的な説明を、この際要求するものであります。(拍手)
 私は、以上の質問を通じて、業者間協定を中心として考えられた政府の最低賃金法案が、いかに日本の実情を無視した、かつ本質的に最低賃金法と相いれない要素を持つたものであるかを指摘して参りました。そこで、私は、最後は、そうした本質的な差異はともかくとして、あなた方がかねや太鼓で盛んに宣伝しておられる業者間協定の実際的効果についてお尋ねしてみたいと思うのであります。
 労働省の発表によれば、業者間協定はすでに四十八にわたつて協定されておるといわれております。その協定の内容を検討してみますと、その大部分が四千円台の賃金であり、しかも、三千円台のものも存在しているといつた状態であります。特に問題なのは、それら協定によつてきめられた賃金は、最低賃金としてではなく、最高賃金、すなわち、頭打ち賃金としての役割を果しておるという事実を、この際指摘せざるを得ません。だが、このことは、むしろ当然の成り行きでありまして、さきに指摘したように、業者間協定は、それが最低生活を保障することを目的としたものでないという本来の性格からいつて、企業利潤を度外視して考えられるものではないからであります。使用者は、できるだけ少い資本と経費をもつて最大限の利潤を確保することに専念し、労働者に支払うべき賃金も、何らかの拘束がない限り、最小限にとどめようと努力いたします。すなわち、そうした共通利害の上に立つ経営者が集まつて業者間協定を締結しても、そこに公正な最低賃金が生まれるわけは初めから考えられないことであります。そこから出てくるものは、自分たちの支払いたい賃金であり、これ以上は出さないぞという賃金にほかなりません。このことは、現実の業者間協定がきわめて低い線で固定し、かつ、最高賃金に変貌している事実が、明らかにこれを立証しておると思うのであります。(拍手)
 そこで、労働大臣にお尋ねいたしたい。あなたは、本気で業者間協定によつて公正な最低賃金が確保できると思つておられるのかどうか、また、この業者間協定の最低賃金と、国際労働憲章、ILO条約及び国内労働法が追求する最低賃金制とは同一のものだと考えておられるのかどうか、これを明確にお答え願いたいと思うのであります。
 以上、私は、業者間協定を中心として、政府案に対し質問を展開して参りましたが、時間の関係で他の重要な点に触れることができないことをきわめて遺憾に思います。
 私は、以上のごとき労働者の立場を全く無視した政府の最低賃金法案は、明らかに国際的交通違反に問われるものであり、かつ、ジュネーヴヘのヴィザを持たないものであるという認識の上に立つがゆえに、これがすみやかなる撤回を求めるとともに、ほんとうに全国労働者を低賃金の鎖から解放し、明るい生活を保障する最低賃金法、すなわち、われわれ日本社会党が主張している全産業一律最低賃金制のすみやかなる実施を要求し、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  [国務大臣岸信介君登壇]
#12
○国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。
 最低賃金法の趣旨は、今赤松議員が御質問のように、労働者に最低生活を保障するに足るような賃金を確保するというところにあると思います。ただ、この最低の標準をどこに置くかということにつきましては、各国においていろいろ事情が違います。ことに、日本においては、御承知のように、非常に賃金格差が大きい。また、日本の産業の特質でありますところの中小企業における労働条件というものはきわめて悪い状況にございます。しかも、この中小企業に対する問題は、やはり、根本的に言うと、中小企業の体質を改善して、改めていくということをしなければ、これが成り立たないというのが実情であることも、御承知の通りであります。こういう問題をかかえて、しかも、その実情に即して、労働条件をよくし、低賃金の状況をなくしていくということを考えることは、私は労働政策として当然考えなければならぬ、こう思うのであります。この意味において、実情に即してやるのには、やはり、業種によつて違つており、また、地域的に非常に違つておるこの現状を把握して、これに適応したものを作つていくことが望ましいことは、言うを待たないのであります。ここにこの政府案をきめるにつきましても、労働者側の意見も十分に取り入れて審議した結果、この成案を得た経緯につきましても、御承知の通りであります。
 私どもは、業者間の協定というものを最低賃金を定める方式の一つとして取り上げております。しかし、業者間の協定がすぐ最低賃金になるわけではございませんで、これが、労使の同数の委員を含んでおる最低賃金審議会の議を経て、行政官庁が決定をしたことによつてきまる、こういう建前をとつておりまして、いろいろと御議論もございましたが、私は、日本の産業の実情に即応して、特に低賃金に悩んでおる中小企業の実情を改善することに、きわめて有効な案であると信じております。(拍手)
    〔国務大臣倉石忠雄君登壇〕
#13
○国務大臣(倉石忠雄君) 最低賃金法は、赤松さんが御指摘のように、第一には苦汗労働を防止する、これは社会政策的な意味でございます。それから、また、過当競争、これは国内的にも国際的にも考えられることでありますが、こういうものは、やはり経済的目的から出たものであります。それらの多くの目的を包蔵いたしております最低賃金制は、やはり、できるだけ理想に近いものにだんだん近づけていく、こういうことがよいことであると存じます。
 そこで、その最低賃金について、その基礎になりまする賃金格差のお話がございました。このことは、御指摘のように、日本は、諸外国に比べまして規模別の賃金格差が非常に隔たつております。このことは、やはり、大企業と中小企業との間の著しい経営内容の格差、そういうことが主要な原因であることは、よく御存じの通りでありまして、産業別にも相当な格差が存在いたしております。このような現状で、直ちにお話のような全産業一律の最低賃金制を実施するということに、かりになりましたならば、どうなるか、日本の経済は混乱と摩擦を生ずることを、われわれはおそれるのであります。むしろ、それであるからこそ、業種別、地域別最低賃金を決定して、漸次これを拡大して参る、こういうふうにして格差を縮小していくことがきわめて適当ではないか。
 私どもは、本法案を作成いたしますに当りまして、先ほど申し上げましたように、苦汗労働防止、そういう意味から一つは出る。しかし、一方においては、赤松さんよく御存じのように、労使関係と申しますのは、私は二つの意味があると思います。一方においては一つの産業を両方でかついでもり立てていく、つまり、経営者と労働者という意味で、その同じ目的に向つていく労使関係、もう一つは、その利潤の配分に対するときの労使関係と、二つあると思うのでありますが、その最初の方の、労使関係の相手方である商工会議所の、いわゆる零細企業の経営の方々の実態を調査いたしますと、私が先ほど提案理由で御説明申し上げましたように、中央賃金審議会で、先年来、非常に気の毒な玉糸座繰り、あるいは絹人絹織物、そういうような業種について最低賃金を設けよというお話がありました。ああいうような指定されておる四業種などというものに、全国一律の最低賃金というものを法できめたら果してどうなるか、そういう実態に即して、われわれは、中小企業のうちの、ことに零細企業の支払い能力というふうなものを考えまして、このたび出しました政府案がきわめて妥当だ、こういうふうに思つておるわけであります。
 それから、業者間協定によつて最低賃金の決定はどうか、こういうことでありますが、ただいま総理大臣からもお話がありましたように、われわれは、業者間協定がすぐそのまま立法化されるというのではないのでありまして、中央賃金審議会というスクリーンをかけて、そうして業者間協定が法文化される、こういうのでありまして、業者間協定というものが、ただその基礎資料になつておる。従つて、協定も、労使間の協定その他、先ほど申し上げました四つのやり方を採用いたしておるのでございますから、現在の日本の経済状況では、私は、今のようなやり方が一番いいと思いますし、中央賃金審議会の答申にも、当分、現在の状態では今のやり方がよかろう、こういうことで答申を得ましたので、こういたした次第であります。
 それから、業者間協定によつて公正な最低賃金を確保することは困難であると考えないかというお話でございます。こういうお話について、われわれも、一応ごもつともなことであり、本案作成のときにいろいろ心配をいたしましたが、赤松さんも御存じのように、業者間協定というものは、本法案提出の前から各地で行われておりまして、最近の報告によれば、業者間協定は、御承知のように四千円ないし七千五百円の程度でありまして、これがだんだん各地に敷衍されてきておる実情であります。従つて、私は、行政当局としては、やはり、現在行われておるような方向を勧奨して参つて、そして、それが実際に合うようにだんだんしむけていきたい、こういう考えであります。従つて、この業者間協定による最低賃金の方式を進めていくことが、現在の日本では一番実情に合つた適切な方法ではないか、こういうふうに考えております。
 それから、また、業者間協定というようなものを取り入れた最低賃金法というものが、ILO条約その他で言つておる最低賃金と言えるかどうか。これは、先ほど来御説明申し上げておりますように、業者間協定が即法律ではないのであつて、業者間協定というものを参考にした審議会の答申というもの、これを取り上げること、及び、その他三つの方式で法律をこしらえておるのでございますから、私は、わが国の実情に合つた最低賃金方式である、こういうふうに考えておる次第であります。(拍手)
#14
○議長(星島二郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#15
○議長(星島二郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十五分散会
ソース: 国立国会図書館
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