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1958/10/29 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 地方行政委員会 第10号
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1958/10/29 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 地方行政委員会 第10号

#1
第030回国会 地方行政委員会 第10号
昭和三十三年十月二十九日(水曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 鈴木 善幸君
   理事 内田 常雄君 理事 亀山 孝一君
   理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君
   理事 吉田 重延君 理事 中井徳次郎君
   理事 門司  亮君
      相川 勝六君    天野 光晴君
      飯塚 定輔君    加藤 精三君
      金子 岩三君    田中 榮一君
      津島 文治君    富田 健治君
      中島 茂喜君    森   清君
      山崎  巖君    太田 一夫君
      加賀田 進君    佐野 憲治君
      阪上安太郎君    下平 正一君
      北條 秀一君    矢尾喜三郎君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 青木  正君
 出席政府委員
        警察庁長官   柏村 信雄君
        警  視  監
        (警察庁刑事局
        長)      中川 薫治君
        警  視  監
        (警察庁保安局
        長)      原 文兵衞君
 委員外の出席者
        専  門  員 圓地與四松君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 風俗営業取締法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第二四号)(参議院送付)
 警察官職務執行法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第二七号)
     ――――◇―――――
#2
○鈴木委員長 これより会議を開きます。
 この際、内閣提出参議院送付にかかる風俗営業取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。まず提案理由の説明を求めます。青木国務大臣。
#3
○青木国務大臣 ただいま議題となりました風俗営業取締法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 現行風俗営業取締法は、昭和二十三年七月、料理店、カフェー、キャバレー、マージャン屋等の営業につきまして、善良の風俗を保持する見地から必要な規制を加える目的をもって制定され、同年九月から実施を見たものであります。自来、数次にわたって部分的改正は行われたのでありますが、この法律にいう風俗営業の範囲等基本的な事柄に関しましては、おおむね制定当初の建前を堅持して参っているのであります。しかるところ近年、この法律に定める風俗営業に属さない営業で、いわゆる深夜喫茶等その業態が風俗営業に類似するものが現われて参り、また客席を設けて客に飲食をさせる営業で、深夜にわたって営業を営むものにつきましても、その弊害の看過し得ないものがありますので、この種の業態の規制に遺憾なきを期すため、この法律を改正する必要があると認め、所要の改正案を提出いたした次第であります。
 この法律案による改正の要旨について、以下御説明申し上げます。
 第一に、現行風俗営業取締法の適用を受ける風俗営業は、料理店、カフェー等客席で客の接待をして客に遊興または飲食をさる営業、キャバレー、ダンスホール等設備を設けて客にダンスをさる営業及びマージャン屋、パチンコ屋等設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業の三種に限られているのであります。一方、喫茶店、バー等で、客席における客の接待や設備を設けて客にダンスをさせることを伴わないものは、現行の法律にいう風俗営業に該当いたさないのでありますが、これらの営業の中には、その営業の実態が、遊興の場を提供し、享楽的雰囲気を助長するものがあり、この種の業態に伴う弊害には、善良の風俗保持上放置しがたいものがあり、特に、最近数年の間に、主として大都市等においてこれらの営業で、深夜にわたってその営業を営むものが急速に増加するに至りまして、その害悪は特に青少年の健全な育成と保護のために有害な影響をもたらしていることは周知の通りであります。今回、この種の営業につきまして、その範囲をできるだけ明確にして必要な規制を加えますために、喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客席における照明を暗くして営み、または、他から見通すことの困難な狭い客席を設けて営むものを新たに風俗営業に含ませることといたしたのであります。
 第二に、従前の風俗営業あるいはただいま申し上げました業態の営業以外のものでありましても、客席を設けて客に飲食をさせる営業で、深夜にわたって営業を営むものにつきましては、その深夜における営業には、善良の風俗保持の観点から規制を必要とすると認められる場合が少くないのであります。この改正案におきましては、これらの営業につきまして、都道府県は、条例で善良の風俗を害する行為を防止するために必要な制限を定めることができることといたし、その深夜における営業に関しまして、弊害が認められます場合に、個々の営業に対し、その深夜における営業につきまして必要な処分をなし得ることといたしますとともに、その処分をすることに当りましては、その適正を期するため、法律の定めるところに従いまして、公開の聴聞の手続を経ることとしたのであります。
 第三は、罰則に関するものでありまして、以上述べましたような規定の改正の趣旨に即応いたしまして、必要な整備を行い、その適正を期したのであります。
 今回の改正におきまして、その法律にいう風俗営業に該当しない営業につきましても、改正の第二点として述べましたように、その深夜の営業につき、必要な限度において、規制を加えることができることといたしましたので、この法律の名称を改めて風俗営業等取締法としたのであります。
 以上が、この法律案の提案理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
#4
○鈴木委員長 門司君。
#5
○門司委員 今大臣の言われている配付された資料を見ますと、みなこれは警察庁と書いてあるけれども、一体警察庁は提案権を持っているのですか。警察庁の仕事は警察法の十七条に何と書いてあるか。警察庁警察法十七条を守ればそれでいいのです。警察法には明らかに「内閣総理大臣の所轄の下に、」と書いてある。どうして一体こういうものを出してくるのか。参考資料ならいいですよ。少くとも法案の説明というものをやるのなら大臣からきちっとしたものを出しなさい。私は、そういうところに今日の警察がなつちゃいないと言うんだ。警察自身が警察法を知ってないじゃないですか。なぜ一体こういうものを出されるのか。これは大臣からはっきり聞いておかなければならぬ。今日の警察庁はあくまでも内閣総理大臣所轄のもとにおいて、そして警察庁の仕事というものは、十七条にちゃんと警察庁の権限と書いてある。私は形式的な文句を言いたくないけれども、そういうものの考え方がけしからんと思うのです。この点大臣は一体どうお考えになりますか。
#6
○内田委員 今同僚の門司君から、ただいま配られた資料が警察庁と印刷してあることについてお尋ねがあったようでありますが、私どもがいろいろな委員会に配られておる資料を見ますと、おおむねたとえば大蔵省であるとか、あるいは自治庁であるとか、あるいは防衛庁であるとか、その資料については、その所管大臣の庶務をつかさどっておる役所から出されておることが普通のように思います。しこうして警察法の第十三条には「国家公安委員会の庶務は、警察庁において処理する。」という規定がございますし、ここに青木国務大臣もおられますが、青木国務大臣は、国家公安委員長として国家公安委員会の仕事をされており、別に資料を整えるような役所を率いておられるわけではないので、その庶務は警察庁でやっておられる。これは従来の他の例を見てもそうであって、これは法律案を出したということではなく、単に資料であるから、門司さんのようなおとがめも必ずしも当らないように思いますので、私は御参考までに申し上げておきます。
#7
○青木国務大臣 御承知のように、国家公安委員会には事務部局というものがないのでありまして、庶務その他事務的なことはすべて警察庁が担当いたしておるのであります。そういう意味におきまして、従来もそうであったのでありますが、公安委員会関係と申しますか、警察関係の法律についての資料等は、従来も警察庁が事務部局としてこれを参考のために配付する、こういうことをしておるのであります。もちろん法律の提案は警察庁でないことは御指摘の通りであります。ただその参考資料を公安委員会の事務部局である警察庁が出したということであります。
#8
○門司委員 大臣の読まれたことは、警察庁の参考資料に基いて大臣は説明されたということでいいのですか。それでは大臣の立場としてはお困りでしょう。なぜ一体大臣は自分の説明書として出さないのですか。もう一ぺん出し直して下さい。こんなもので説明を受けてもしようがない。これは参考資料です。出し直して下さい。
#9
○青木国務大臣 私の提案説明を配付する印刷物を警察庁が作ったというだけのことでございまして、提案は、もちろん私自身国務大臣としての提案であります。
#10
○門司委員 はっきり資料と書いてある。逐条説明もあるし、大臣の説明とは書いてない。こういう僣越なことをしては困る。あまり形式的なことにとらわれてやかましく言いたくないけれども、ものの考え方に誤まりがある。こういうことでいいのか、大臣の説明が資料でいいのですか。もう少し気をつけてこしらえて下さい。
#11
○中井(徳)委員 関連して。今私は途中で入ってきて、もっとこれよりも大臣の提案理由の説明書があるかと思って探しましたら、ないので、伺いましたら、逐条説明でおやりになる。これはこの前私申し上げたでしょう。警察庁関係の政府委員の諸君は、この警職法も同じでありますが、あのときも簡単に出しませんといって、一週間たってまた出して、出された資料を見ますると、まことに法規に基いておらぬし、あるいは国会の審議というものについての基本的な考え方、心がまえという点、それを私申し上げた。それは風俗営業取締法の一部を改正する法律案は、大した法律でないかもしれません。しかし、大した法律でないから逐条説明だ、資料でいいわというのでは、全然問題にならぬ。一体参議院ではどういう取扱いをなすったのですか、それを一つ私伺ってみたい。参議院はこれが通っておりますが、参議院ではどういうような形でおやりになったのですか。―今事務当局から資料の中といわれましたが、これは警察庁の資料です。大臣は警察庁の内部機構ですか。どうもおかしい。こういうものの考え方です。私どもこまかいことを言いたくないのですよ。だけれども、これは思想に通じているから僕は言うんだ。国会に対する法案の説明について、警察庁の資料、警察庁と書いてある。警察庁を指揮監督している大臣が、それに基いて説明をする。全く逆じゃありませんか。そういう考えだ方からというのが、われわれがあの警職法を出されたときに一週間みました根本原因じゃありませんか。こういうことではまことに困る。一体どうなんです。
#12
○青木国務大臣 私は今よく調べていますが、実は、これでなしに、提案説明の印刷物がありますので、これが委員の皆さんに配付になっておったと了承しておったのであります。それが行ってなかったとすれば、行き違い、手落ちがあったと思いますが、こちらの方は、こういう私の提案説明その他参考資料を収録したということなんでありまして、提案説明というのは別に、私はそれを読んでおるのでありますけれども、それが行ってなかったのは、あるいは手落ちだったと思います。その点は私も恐縮に思います。
#13
○中井(徳)委員 大体こういうものの審議のときには、最初に大臣の提案理由の説明がありまして、それが出ましてから二、三日してこういうものが出てくるわけです。それに基きまして事務当局は印刷をする、こういうことなんです。それが先に出てきちゃって、肝心のものがないという。こういうものの考え方、われわれはそう簡単にやられては困るということを申し上げる。
#14
○鈴木委員長 暫時休憩いたします。
    午前十時五十五分休憩
     ――――◇―――――
    午前十一時十六分開議
#15
○鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 ただいま青木国務大臣から行われました風俗営業取締法の一部を改正する法律案についての、提案理由説明の関係書類の取扱いに手違いがありましたが、今後はかかる間違いのないよう、政府及び庶務をつかさどる警察庁に対し、注意いたしておきます。このことは、青木国務大臣にも追って申し伝えます。
 次に、本案について政府委員より逐条説明を求めます。柏村政府委員。
#16
○柏村政府委員 今回提出いたしました風俗営業取締法の一部を改正する法律案について、条を追って御説明いたします。
 まず、第一条につきましては、全文を改めることとしておりますが、第一号から第四号までは、現行の規定の第一号または第二号に該当する営業について、それぞれの営業の実態に即して分類し、規定を整えることといたしたにとどまるのであり、第五号及び第六号は、従前の風俗営業に属さなかった喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、従前の風俗営業に類似するものを新たに風俗営業に含ませたものであります。第七号は、従前の第三号と同一内容のものであります。第五号及び第六号の営業の定義に当りましては、客席における照度並びに客席の見通し及び広さについて一定の基準を設け、営業の範囲をできるだけ明確にし得るようにいたしたのでありますが、これによりがたい特別の事情がある場合において、都道府県の実情に応じて、法律に定めるところの範囲内で、それぞれ基準を定めることもできることといたしております。
 第二条第三項中の改正は、第一条の改正に伴うものであり、第四条中の改正は、第四条の二の規定の新設に関連して、カッコ書きの文言が不要となりましたので、これを削除したにすぎないのであります。
 次に、第四条の二の規定の新設について御説明申し上げます。従前の風俗営業または第一条の改正により新たに風俗営業とされた営業以外のものでありましても、客席を設けて客に飲食をさせる営業で、深夜にわたって営業を営むものにつきましては、都道府県は条例により、これらの営業の深夜における業態について必要な制限を定めることができることといたしますとともに、都道府県公安委員会は、その営業者または従業者が法令または都道府県の定める制限に違反し、善良の風俗を害するおそれがあると認められます場合に、当該営業の施設を用いて営む深夜における営業につきまして、期間を定めてその停止を命じ、または善良の風俗を害する行為を防止するために必要な処分をすることができることとしたのであります。深夜の時間につきましては、法律で基準を示しておりますが、なお現行風俗営業取締法施行条例に規定する風俗営業の営業時間との関係を考慮し、都道府県の条例で、法律で定める基準の範囲内でその時間を定めることもできることといたしております。
 第五条中の改正は、新設の第四条の二第二項の規定により、深夜における営業について停止の処分をいたします場合に、その処分の公正を期しますため、現行第四条の規定による処分と同様に、公開による聴聞の手続を経ることとしたものであり、第六条中の改正は、第四条の二の規定の新設に伴う必要な規定の整備であります。なお、同条中の改正で、当該官吏及び吏員を警察官と改めましたのは、従前の規定のもとにおきましても、警察官に限られておりますので、これを規定の上においても明らかにしたにすぎないのであります。
 第七条の罰則の改正は、以上申し述べました改正の趣旨に即応し、整備を行い、その適正を期したものであります。
 なお、今回の改正におきましては、この法律にいう風俗営業に該当しない飲食店営業につきましても、その深夜における営業について、必要な限度におきまして、規制を加えることができることといたしましたので、この法律の名称を風俗営業等取締法と改めたのであります。
 最後に、附則におきましては、施行期日に関する規定並びに法改正に伴い必要な経過規定及び関係法律の一部改正規定を設けております。
 以上が風俗営業取締法の一部を改正する法律案についての条文ごとの説明であります。
#17
○鈴木委員長 これにて本案の提案理由の説明並びに逐条説明は終りました。
    ―――――――――――――
#18
○鈴木委員長 次に前会に引き続き、警察官職務執行法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑を継続いたします。内田常雄君。
#19
○内田委員 まず第一に、警察庁長官にお尋ねをいたしたいのでありますが、今朝の日本経済新聞の朝刊を見ますると、社会党の某幹部が、現在国家公安委員をいたしておりますところの金正米吉氏に対して、金正氏が今回この国会に提出されておりますところの警察官職務執行法の立案に参画し、また現在総同盟会長の位置におりながら、この改正を支持しておることはけしからぬということで辞職を勧告した。こういう記事が出ておりまするが、これはいやしくも現在任りにある国家公安委員のことでありますから、当然金正委員から警察庁長官に対して、何らかこれについて申し出があったかと思われますが、警察庁長官はこのことを御承知でありましょうか。
#20
○柏村政府委員 われわれの方では、そのことは聞いておりません。
#21
○内田委員 社会党の幹部かりら申し出たというのは昨日でありますか、けさ現在において、警察庁長官は御存じないでありましょうし、また大阪発の新聞通信によりますと、金正委員の態度はきぜんとしておりますから、おそらく社会党からこのような勧告がありましても、これを受け付けて、公安委員長に対して辞職を申し出るというようなことは万あるまいと私は考えます。そこでこの新聞が正しいといたしますならば、その勧告に関連して、金正氏はこういうことを言っておるようであります。自分は総同盟の会長であるけれども、今回警職法改正案をきめた公安委員としての立場と、それから自分が同時に先般再任した総同盟会長との立場は何ら矛盾をしておらない。自分が公安委員としては、最近の世情を見て、人命の保護と治安維持のためにこの改正が必要だと考える。右翼の集団暴力とともに、左翼の暴力をも許すわけにはいかない。しかしこれは正常な労働組合運動を弾圧するようなものではない。こういって所信を明らかにいたしておりますが、これはこの金正氏が労働総同盟の会長の地位にありながら、しかも労働組合を率いておりながら、党派や自分の立場を超越して、全く社会、公安のためにこれだけの発言をいたしておりますことは、これは私ども自民党の者の言うことならば、これはためにする言であると世間にとられるかもしれませんが、これは労働総同盟会長の金正氏の所信でありますので、私はまことに敬服をいたしたのであります。しかも私がここで感心をいたしますと同時に安心をいたしましたことは、さすがば金正氏でありまして、今度の改正によって正常なる労働組合運動を弾圧するものではない。こう言っておりますから、私は非常に安心をした。しかりこうして警察庁というものは、国家公安委員の指揮を受けて警察作用を行うものでありますから、私は、もちろん金正氏のこのような考えに警察庁長官は服して、今回の改正が行われましても、正常なる労働組合運動を取り締ろうというような意図は毛頭ないと思いますけれども、一つこの機会において、警察庁長官である――公安委員ではない、実際取締りの実力を行使するあなたから所信を明らかにしておいていただきたいのであります。
#22
○柏村政府委員 正常な労働運動に対して干渉する、あるいは取り締る気持は毛頭ございません。
#23
○内田委員 それを聞いて私は当然そうあるべきだと思う。今のあなたの御発言は、これは一つ今後のあなたの態度としても、ここで十分銘記しておいていただきたいのであります。
 さらに私は、委員としてまことに遺憾な点があるのでありますが、先般この警察官職務執行法の改正案がこの委員会に付託せられて以来、いろいろの委員から質疑が行われて参っておるのでありますが、その質疑の大部分というものは、今度の改正案の内容に入っておらない。どういうところをどういうふうに改正するのかということにこまかく入っておらなくて――もちろんこれからやるでありましょうが、もっぱら入口で、これは大へんな改正をするんだ、警察官の職権を著しく拡大している。こういう改正を通すならば憲法の改正と同じことだ、あるいはまた秘密保護法を作る前段階であるとか、はなはだしきは、これを改正すると核兵器が持ち込まれるのであるとか、あるいは再び善良なる日本の国民を戦争に巻き込む法律だというようなことをしきりに言い振らされているのでありまして、果してこの改正が今申すようなことを含むものであるかどうかということは、国民一般が非常に不安を持っていることは事実であります。またその不安に乗じて、一般労働組合はもちろんのこと、文化団体、思想団体、はなはだしきは宗教団体、婦人団体、私どもの女房までもそういうふうに言い含めているのでありますから、知らない国民は、法律の内容がそんなことならば大へんだという心配を持っているのであります。そこで私は、そのような議論になるに先立って一日も早く、この改正法律案の内容というものはどんなものであるか、果してそんな不安を含むものであるかどうかということを明らかにいたすことが、私ども委員の一番大切なことだと思いますので、私はきょうはあえて大臣であるところの国家公安委員長などに質問をいたすのではなしに、取締り当局であるところの警察庁長官とか刑事局長というような方に、一体こういう改正というものは、個々の条文において、国民生活に対して一体どういう影響を与えるかということを一つ一つお尋ねいたしたい。これは私と同じ考え方を、国家公安委員であり、また総同盟会長の金正氏も持っておられると見えまして、同じ大阪の金正氏の言としてこういうことが伝えられております。これは新聞に書いてあるのでありますから、その通り読みますと、「社会党はこの法律案の国会審議を熱心にやりもせず、仮定や想像から観念的な反対をしているのはおかしい。」と書いてある。全く私は同感でありまして、これはもしこの改正の中身に入ったならば、国民は、そういうことか、それならば今日の世情に照らしてそういう改正をやってもらわなければ、自分たち国民が平穏な共同生活ができない。なるほど日本には九千万人の国民がおりますけれども、その九千万人の国民というものは、共同生活をしておるのでありますから、人の人権を侵そうとする人間もまたおるわけであります。従って、先般来たびたび国家公安委員長からお話がありましたように、人の人権を侵そうとしておるそういう人の人権を守ることも大切だけれども、しかし大多数の善良なる人の侵されんとする人権を守ることが大切だ、こういうことをたびたび言明をされておるのでありますから、そういった面に立って、国民を安心させてもらえるか、あるいは私自身がこういう改正はいかんということで断固反対に立たなければならないか、きょうはそれを一つ私は突きとめていきたいと思うのです。そのために私はもう超党派の立場に立ってお尋ねをいたします。また関連質問も、それは内田君の突っ込み方が足りないというのであれば、それは自民党の議員であろうと、社会党の議員であろうとを問わず、関連質問を認めます。さらにまた報道人の方々がおられまして、新聞などにも今までのところ――これからは違いましょうが、今までのところはずいぶん間違った改正案の手引きなどというものも載っております。でありますから、たとえばここに報道陣の諸君から、内田君こういうことを突っ込んで確かめてもらいたいということがありましたら、私のところにメモを回していただいて、報道陣の方にも確かめてもらいたい、かように思うわけであります。
 さっそく私は第一条からお尋ねをいたします。大体この警察官職務執行法というのは、全部でたしか八条しかないはずであります。大法典ではございません。今度改正されて一条ふえて九条になるのでありますか、初めから終りまででも九カ条しかないのでありますから、事は簡単であります。そこでまず第一条には、これは配付された法案並びに参考資料から見ますると、第一条は、この警察官職務執行法というものはどういう法律か、またこの法律を執行するについて、警察官はどういう態度をとらなければならないかということが書いてあります。どういうことが書いてあるかというと、警察官というものは個人の生命、身体及び財産の保護に任ずると同時に、公安の維持に当ることは警察官の任務であるから、その任務を遂行するための手段を定めるのがこの法律だと書いてある。この第一条と同じことは、警察組織法でありますところの警察法の第二条にも言葉を尽して書いてあるのであります。警察法の第二条ばかりでなしに、第一条にも同じことが書いてあるのでありますが、この警察法の第一条、第二条というものは、要するに警察というものは個人の権利と自由を保護するものであるのだ。また警察官というものは、これはその責務を遂行するに当っては不偏不党かつ公正、中立の立場をもって、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたっては粗ならぬということが、警察法つまり警察組織法の一条、二条にも書いてある。その上で今度改正の目的となっておりますところのこの警察官職務執行法の第一条第二項には、こういう規定まであります。警察官は、警察官職務執行法によって職務を行使するに当っては、「いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない。」ということが現に書いてあるのでありますが、今度の改正法案においては、これから私がお尋ねをいたしますところの改正において、どういう改正が企てられておるにいたしましても、この第一条の改正というものを政府が出されておらないのでありますから、この警察官職務執行第一条、並びに警察法一条、二条のいわば警察官の憲法ともいうべきものは、むろんその通り私は守らるべきものだと解釈するほかはありませんが、今度の改正に伴って警察官は不偏不党ではなくなる。一党一派に偏するとか、あるいは日本憲法の保障する個人の権利、自由に干渉するというようなおつもりであられるのかどうか、そこのところが一番大切なところであります。実は改正をするけれども、具体的改正に伴って当然警察官職務執行法の一条やら、あるいは警察法二条というものは、その影響を受けて職務的態度は変りますということか、そこのところを一つはっきり明確になさっておいて下さい。
#24
○中井(徳)委員 関連して。今、内田さんからいろいろお話がございましたが、まず第一の金正委員の問題です。これにつきましては、党はきのうあたり金正さんに対して何らかの交渉をやるということを決定いたしました。それは、きょう私どもも党の国会対策委員会において報告を受けました。しかし、この問題は警察庁長官に国会で委員から意見を求めても、なかなか答えにくかろう。(「辞表が出ているかどうか」と呼ぶ者あり)まだ交渉でありますから、辞表は出てないことは確実であります。そこまで行っておりません、交渉をするというのであります。そういうことでありますから、そういう事実問題をお尋ねになるならばいいですけれども、心境だとかなんとかいっても、それは答えようがないと思いますから、その点はそういうことで一つ……。もう少しこの委員会の品位のために、私はやはりおのずから限界があろうう思いますので、一言申し上げておきたいと思います。
 それから第二に、内田さん、言論は自由でございますが、私どもは法案の内容を何も知らずに勝手なことを言っている、これは聞き捨てならぬ一言だと思うのであります。やはり法律案は配られているのです。従いまして、私どもは私どもなりの解釈をいたしているのです。審議をしなければ批判ができない、そんなばかなことがどこにありますか。われわれは大いに批判はいたしております。私は、社会党の委員として、この内田君の御発言は聞き捨てならない。
 それからまた私もこの委員会におきまして、社会党委員の発言をずっと聞いておりますが、原爆、水爆に関係ある発言をした人はまだないと思うのです。われわれは関係があると思っておりますよ。しかしその発言を正式にした人はまだこの席ではないと思う。一ぺん私は会議録を調べてもらいたいと思うのです。われわれだって初めからどうこうというわけではありません。こういうふうな重要な法案です。内田君は、たった八条だから大きな法案でない、条文の数で法案の内容がきまってはたまりません。従いまして、私どもはまことに慎重な態度でこれに取り組んでおるのでございまして、きょうあたりも実は開かないでいいというのに、皆さんのたっての御要望でありましたので、私どもは了承した次第でございます。従いまして、そういうことは十分御了解の上で、今後とも質疑を続けていただきたい、かように存じます。
#25
○柏村政府委員 ただいまお尋ねの、この現行法の第一条は改正をしていないが、この精神は今度の改正においても貫かれておるのかという御趣旨とお聞きしたのでありますが、この第一条の精神に沿って、むしろこの一条の精神を生かす意味において今度の改正を考えるとういことでございまして、決して第一条なりあるいは警察法の一条、二条の精神にもとるようなことのないように、あくまでも努めて参りたいと思います。
#26
○内田委員 警察権執行の任に当られるところの警察庁長官から言明がありましたので、私は非常に安心をいたしたわけです。
 次に第二条が改正されておりまして、第二条の改正が世上いろいろ心配をされております。第二条は何が書いてあるかというと、警察官の職務質問と、そして今回の改正においては、この職務質問に関連して、凶器の提出あるいは所持品の提示を求めるように改正をされておるのであります。警察官の職務質問というものは、現行法においても、すでに警察官の職権として与えられておるわけでありまして、今度改正されるといたしますならば、それに関連して凶器の提出を求めるかどうかということになるわけであります。ただいま社会党の中井徳次郎君から、社会党といえども今度の改正案の内容はよく知っておる、よく知った上で、決して世間に誤解を与えるような宣伝はしておらない、こういうお話でありまして、その通りでありますならば心配はないのでありますが、先般、といいましても今月の二十四日に社会党は、「日本社会党政策審議会一という名前をもって、「警職法改正案の違憲性について」というものを発表されております。これは今度の警察官職務執行法が憲法違反の疑いがあるということについていろいろの意見があるので、社会党の統一見解を公表したといわれております。ところが、この中を見ますと、この改正案二条に触れて、「改正案、第二条の「質問」の権限の拡大により」これはここに書いてあることでありますよ。「改正案、第二条の「質問」の権限の拡大により、善良な子女及び一般市民が単に挙動不審ということによって交番、警察署に連行を強行されるおそれが十分にあり、これは憲法に違反する。こう書いてある。そこで警察庁長官にお尋ねするのでありますが、この社会党の統一見解にあるように、今度の第二条において質問の職務権限というものが拡大されて、その結果として善良な子女や一般の市民が、挙動不審ということで交番や警察署に連行されるという改正が行われておるのか。私この条文を見ましたところによると、さような改正は一切行われていない。もしさような善良な子女や一般市民を交番に連行して、職務質問をするということがありとすれば、これは現行法の執行に当って、不心得な警察官がこれを乱用しておるということで、改正の問題とはおのずから別である。この質問に関する警察官の権限を認められたのは、昭和二十三年、たしか片山、芦田連立内閣で、社会党の諸君がこの国会において、いやしくも警察官をしてその職務を執行させる上においては、職務質問ということは必要であるとして是認せられて作られたものでありまして、今回質問権限を拡大せんとするものではない。もし私の考えの通りでありますれば、今、中井徳次郎君はいろいろ言われましたけれども、やはり中井君も社会党の党員の一員として、中をよくごらんにならないで、入口で何でもたたきつぶしてしまえということで、いたずらなる不安を国民に対してあおっているとしか考えられません。この点を一つ明瞭にお尋ねいたしたい。
#27
○柏村政府委員 第二条は質問に関する規定でございますが、第二条の質問の一項、二項に規定されておりまする質問の仕方であるとか、あるいは同行を求める求め方であるとかについての規定は、何ら改正をいたしておりません。従いまして、今度の改正によりまして、善良な婦女子がむやみに交番等に連れていかれるというようなことは、絶対あり得ないことだと思います。
#28
○内田委員 そうでありましょう。そうすると、やはり社会党の統一見解の誤まりを指摘しなければならないと私は思う。これは社会党ばかりではない。この二十四日に警職法反対国民会議というものが――これは社会党と関係のあるいろいろの団体において全国で行われておるが、そのとき飛行機からビラがまかれた。そのビラにも、今度の改正について、こういうことであったならば大へんだと私をびっくりさせるようなことが載っておるのであります。どういうことが書いてあるかというと、今度の警職法の改正で第二条が改正されると、「警官は道を歩いている人でも、電車の中でも「何か凶器を持っていやしないか」と判断すると、だれの荷物でも取り調べることができるようになり、たとえ鉛筆一本でも「他人に危害を加えるのではないか」と警官が判断すれば没収されます。」と書いてあります。これは現行法でなしに、今度の新たなる二条の改正について心配されて、こうなるのだといわれておるのであります。そこで今度の二条の改正部分についてお伺いいたしますが、二条の改正というものは、今言うように凶器の提出を求める、あるいは凶器を持っておると疑われる場合は、所持品の提示を求めるという規定でありますが、今の、飛行機からまかれた総評のビラ、あるいは地方で配られたビラのように、電車の中でも何でも警察官が、凶器を持っておるときは、鉛筆一本でも、鉛筆は凶器だということで取り上げるのかどうか、それともこの改正の条文が示すように、そういうことでなしに、第一項と関連して、つまり異常な挙動でありますとか、その他周囲の事情から合理的に判断して、何らかの犯罪を犯し、または犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由があると認めた場合、しかもその場合のほかに、その凶器によって人の生命または身体に危害を加えるような状態が判断される場合に初めて凶器を持っているから出してくれとか、あなたの持っている所持品に凶器が入っているらしいからそれを調べさせてくれということになるだろうと思いますが、これはどう解釈するのが正しいのか。またあなた方は、この改正法が通りますならば、どういう執行をなさろうとするのか、はっきり説明していただきたい。
#29
○中川(薫)政府委員 ただいま長官から申し上げましたが、職務質問をする場合につきましては、何らこの改正法中においては改正を加えていないのです。従って改正法も現行法も同様ですが、職務質問をする場合につきましては、ここに書いてありますように、質問ができるのは、「何らかの犯罪を犯し、又は犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由ある者」だけでないしに、そのことについて知っていると認められる者も職務質問できるのであります。現行法も改正法も。ところが、この改正いたそうとする第三項は、まず職務質問の対象から、そのことについて知っている者は除いておるのでございます。従ってそのことについて知っていると認められる者に対しては、公共の福祉のために現行法も質問を許されておるのでありますが、凶器の問題につきましては、対象をまず限定して、職務質問の対象のうちまず半分落しておるということが言えると思います。言いかえますれば、凶器の問題が起りますのは、ここにございますように、「質問に際し、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、又は犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」だけに限り、対象が半分限られておる、こういう点も御了承置き願いたいと思います。「何らかの犯罪を犯し、又は犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」でありましても、次にしぼりがございます。「凶器その他人の生命又は身体に危害を加えることのできる物件を所持している」という場合にまず限るのでありまして、害を加えるものでない物件、たとえば書物を持っている、鉛筆を持っている、こういったものについては、疑うに足りる相当の理由がある者であっても、一口にいえば、うさんくさい事情がありましても、凶器の問題は起らないのであります。従いまして対象を半分にしぼり、しかも内容を、凶器その他人に危害を加えるという点にしぼってございますから、その点御了承を願いたいと思います。
#30
○内田委員 そういたしますと、総評が飛行機からまいたという、善良な国民が道を歩いておっても、電車に乗っておっても、警察官の判断で、異常な挙動ということで、鉛筆でさえも取り上げるとか、新聞にこの法律改正の手引きとして載せられておったように、たとえば婦人会の集まりがあります、そこで今度改正法律ができると、婦人の身体検査をやって、いやがらせをやって婦人会が開催できないようにする。これは杞憂であり、虚構の宣伝であると考えざるを得ない。またあなた方も、法律が改正されましても、法律をどう読んでも、また自分たちの行動としても、さようなことはしないということであれば、これらの文書はみな虚構である、こういうことになるのであります。昨日の委員会におきまして門司委員から、警察庁は、何か知らないけれども警察庁の名のもとに今度の改正案についてのいろいろな解説のようなものを頒布しておることは、多少疑義があるというような御発言もございましたが、それどころではない。公けの社会党が、統一見解として政策審議会の名において発表したり、また総評がこういう文書にして配っておるのでありますから、警察庁が積極的に警察庁という字を大きく書いて、そしてさようなことではないんだ、今までの宣伝は虚構だということを、あなた方が当然反駁する義務がある。これは一つやるべきだと私は思うのであります。いずれにいたしましても二条の改正につきましては、私はあなた方の言明を信じ、あなた方の言明を誤まりなく国民に伝えたいと思う。物件になる場合がございましょう。それからたとえば非常にとがった金属がある、こういうものもこの物件になる場合もございます。そういう金物類が比較的多いのでございますが、液体で危害を加えるものに該当いたしますものは、毒物、劇物、硫酸、こういったものが危害を加える物件に該当する場合がございます。硫酸が常に危害を加える物件というのではないのでありまして、用法の態様によりまして、受ける方の状態、たとえばここにお嬢さんたちがたくさんおる。そこに硫酸を持っておる者がいて、その硫酸がお嬢さんにかかって、お嬢さんが顔にけがをする。こういうような場合には、身体に危害を加える物件ということによりまして、硫酸のごとき液体もこれに該当する場合もございます。そういうふうに、性質上の凶器につきましては、銃砲刀剣類等所持取締法に規定する銃砲刀剣であるということは明確でございますが、対象と態様によって、毒物、劇物、こういったものが危害を加える物件に該当するわけでございますので、これを飛躍して、何でもかんでも広く読むという考えでないことはもちろんでございますが、考えないばかりではなしに、この法文の文字から見まして、身体に危害を加える物件が客観的に明確でなければならない、こういう考え方をとっておる次第でございます。万年筆、鉛筆の類は消極に解釈しております。
#31
○北條委員 今のに関連するわけでありますが、合理的に判断して疑うに足るという注釈がついているのですね。でありますから、内田委員は、今までの経歴から想像いたしましても、危害を受けた側に立っていない。私どもはいつも危害を受けた側に立っておる。ですから、私の言うことは事実に立脚した切実なことなんです。そこにものの考え方が違ってくるのです。一例を申し上げますれば、たとえばある人をつかまえてくる。合理的な判断を警察官がして、どうも疑わしいと思ったら、たばこ一本でも凶器になるわけです。そういうことを御存じかどうか知りませんが、たとえば愚連隊がけんかをするとき、一本のたばこに火をつける。そうしてこれを吸ったときには、たばこの先は御承知のように三百度、四百度という熱を持っております。でありますからこれを顔につけるのです。これは非常な凶器です。鉛筆一本でも、目玉の中に突っ込めば人間の命を奪うことができる。ですから、このたばこ一本、マッチ一本でも、そういうふうに凶器になる。それを合理的に判断して疑うに足る理由がある、こういうことになったら、人に危害を加える物件だということになってしまいますから、その物件はどういうものかと私は聞いたわけです。どういうふうに解釈するかということを聞いたわけです。でありますから、先ほど申しましたように、戦後万年筆が凶器だといって取り締られた場合がたくさんあった。こういう例がありますから、そういう事例について警察庁の知れる限りのことをこの際はっきりしていただきたいと思います。
#32
○中川(薫)政府委員 北條委員御指摘の「疑うに足りる相当な理由のある者」は、この「者」にかかるのでございますので、「兇器」にはかかりません。そういう「者」に対して行うということでございます。それから「兇器その他」以下云々の物件につきましては、客観的に判断されますように、万年筆の類は消極に解釈しております。
#33
○北條委員 私は、あとで私の質問の時間がありますから、そのときに言いますが、書いてあるだけのことを言っているのであって、書いてあればそれは行われる、また書いてあれば必ず警察は行いますというふうにあなた方は言うのですけれども、私の方としてはどうも承服できない。これはあらためて論議をいたします。
#34
○中井(徳)委員 今中川君のお答えを聞きましても、消極的に解釈するというので、凶器ではないと断定できないのです。私はこれは警察官の実態を見て当然だと思うのです。私は関連ですから一点だけ言いますが、万年筆の形をしました写真機があります。このごろは便利になって、万年筆の形をした写真機でぽんととれるのだという話をしましたところが、ある人がいわく、中井さん、もっといいものがないかな、何だ、写真機の形をしたピストルがあったらいい、そう言いました。こういうことになって参りますと、写真機の形をしたピストル、そうなりますと、あなた方は凶器というものを今一応限定しておきましても、客観的ないろいろな情勢によりまして、そういう限定をどうしても逸脱しなければならぬ事態が起りますよ。そういうときに、もし調べなかったら大へんなことになるんですよ。私はやはりそういうことを、それを乱用するということをわれわれはおそれている。こういうことなのですから、そういう場合について考えてみますと、ここで簡単に言い切ったところで、現実はもうそうではなくなる事態がたくさん出てきます。そういうことを考えて答弁をしてもらわないと、それは簡単にそうしますと言ったら、あくる日逆なことをやってくる。なぜ、そうしたと言ったら、客観的にこうだ、こういうふうになってくるんです。ですから、この全般の法案の審議に入る前に、やはりそういう一般論はもっとやっておかなくてはならぬというのが実は私どもの立場でありますから、この点を一言申し添えておきます。そう簡単にその逐条に入ってどんどんというようなわけにはいきません。問題はずいぶんだくさんあるということだけ私、一言申し添えておきます。その辺について、たとえば万年筆の形をした写真機、その逆に写真機の形をしたピストル、そういうものが世の中に出てきた。写真機ではないといったって形は写真機ですからね。それも、ちょっと形を見てそれは調べられない。われわれ質問したら、あなた方、写真機は調べられません、こう言いますよ。しかし、現実には写真機の形をしたピストルだ。こうなってくるのだ。そうなると警察官は調べざるを得ないのです。そうでしょう。それはピストルであるかないかの認定は現物だ。そこにこの法案に対する皆さんのお考えとわれわれの立場の基本的な違いがある。従ってそういうものとの関連において私は返事をしてもらいたい。あなたの返事は、鉛筆は消極的でありますと、こうなる。絶対やりませんとは言えない。こうなって参ると、われわれの立場としては、絶対やらないと言わない限りは、やはりビラもまかざるを得ない。こういうことになってくる。
#35
○中川(薫)政府委員 ちょっと私の言葉を補いたいと思いますが、私、三十年来法律制度をやっているものですから、消極ということを使うのですが、消極というのは、該当しないというふうな意味に御理解願いたいと思います。消極というのは、鉛筆の類はこの物件に該当いたしませんということを言うかわりに、消極に解しますと申し上げたのですが、言い方がまずかった点は訂正いたします。
 それから、中井先生の御質問の身体に危害を加えることのできる物件でございますが、危害を加えることのできる物件というのは、写真機はこれは危害を加えません。写真機の形をしておったら危害を加えませんが、かりに――私、そういうものを現在見たことがないし、考えられないのですけれども、写真機の形をしておって中からたまが出る、こういうものがありますと、それは危害を加える物件でございます。現在社会通念において、写真機の形をしているけれども突然たまが出る物件がありませんので、これは該当いたさない。こう私申し上げたのでございますが、世の中が変りまして、たまが出るけれども写真機の形をしているものが一ぱい出てきた。こういう状況で、そういう形のものでたまが出るものであるということが認識せられる限りにおきましては、積極に解釈します。
#36
○中井(徳)委員 それであなたは今出ない、あるかもしれない、こういうことになります。このごろは地球を一周するのに四日あれば一周できるのですが、そういう事態、それから現物はそういう形をしておるということ、中川君は日本中飛び歩くわけではないのですから……。何万人という警察官がおる、そういうところで問題がある。これを私は申し上げている。従って、凶器とは何ぞやということは、外形だけでは言えなくなる。ここに問題がある。そういうことを申し上げておきます。
#37
○加賀田委員 どうもおかしいのです。今の凶器というのはわかっています。銃砲刀剣類等所持取締法にちゃんと、刀とは刃渡り十五センチメートル以上の刀、飛び出しナイフは五・五センチメートル以上、こうなっておるのですから、凶器は大体わかりますけれども、いわゆる他人の生命または身体に危害を加える物件ではないのですよ。これは「加えることのできる物件」ですよ。だから、通常危害を加えない目的のもとに作られたものでも、用法上凶器になってくるのです。だから他人の生命に危害を加えることのできる物件というのは、極論すれば、手ぬぐいだってそうです。手ぬぐいで人を殺したのが現実にはあるのです。そういうようにして、広範な判断を結局一警官がするということになってくるわけでしょう。そこが問題になってくるのですよ。そういう客観的な情勢云々ということは、これは抽象論であって、その客観的情勢を判断するのも警察官じゃないですか。そういうところに問題があるのであって、他人の生命やあるいは身体に危害を加える目的で作られた品物であれば、こういうことで限定されておれば、私は必ずしも問題ないと思うのですが、「加えることのできる物件を所持している」こうなっておりますので、できることになれば、ここにある灰皿だってそうですよ。これはタバコの吸いがらを括てるところですが、先般も国会で灰皿が飛んだことがあるのです。あれだって身体に危害を加えることに用法上できるわけなんです。そういう広範な解釈ができるから危険だということであって、そこなんです。だから今の説明では「加える物件」ではなく、「加えることのできる物件」なんですから、ここを説明していただきたい。
#38
○中川(薫)政府委員 御指摘の「できる」ということは、客観的にできるということで、むしろ正確に限定する意味で書いた次第でございます。(「手ぬぐいはどうだ」と呼ぶ者あり)手ぬぐいはできません。手ぬぐいは危害を加えられません。それからいろいろ御質問がございますけれども、この三項のこの言葉は、他の立法令に相当多いのでございます。ちょっと例を申し上げますと、これは公職選挙法の規定でございますが、「銃砲、刀剣、梶棒その他人を殺傷するに足るべき物件」、こういう文字を用いております。これが乱用された例を私はあまり聞かないのです。それから軽犯罪法では「刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」、こういう言葉を用いているのですが、「ような器具」というのは、むしろしぼり方が少いのではないかと思うのです。私はそういった立法令も勘案いたしまして、さらにこれを正確にする必要があると考えまして、「危害を加えることのできる物件」と、正確に限ったつもりでございます。
#39
○内田委員 乱用や拡大解釈は私の厳に戒めるところであります。でありますから、私は二条の質問に入るに先立ちまして、この警察官職務執行法の第一条並びに警察組織法であり、警察基本法であるところの警察法第一条のことにつきまして、これは改正されておらないけれども、改正されておらないその精神というものは、今回この警職法が改正されても、それを貫くものであるかということをまず第一にお尋ねをした趣旨も、ここにあるのでありまして、今申すように拡大解釈や乱用は厳にこれを憎み、これを警告いたすものであります。
 次に第三条でございますが、第三条は、私の解するところによりますと、従来からありましたところの保護規定を整備したようであります。しかもその内容は三点ありまして、今までの現行法になかったところの自殺者の保護でありますとか、あるいは二十才未満の家出人の保護でありますとか、あるいは精神錯乱やまた泥酔者が、公開の施設や場所において、公衆に対して著しく迷惑をかけるおそれのある場合に、これを保護する規定を加えている。この三点のようであります。これについても非常に間違った解釈がされておるようであります。なかんずく、最後に申しました精神錯乱者やあるいは泥酔者が、公開の施設または場所に入って、公衆に対して著しく迷惑をがける場合には保護するということでありまして、ただ単に善良なる常識人や健康人が、公開の施設やまたは場所に入って乱暴しそうだからといってそれを保護するという改正には、この文章を読んでみると、どうしてもそういう解釈は引き出し得ないのであります。しかるに、この警察官職務執行法の改正案が国会に提出されまするや、この点の検討なくして、これは国会議員の猪俣浩三という人が、今度の第三条の保護規定の改正をいたしまするならば、これは公開の施設または場所において公衆に対して著しく迷惑をかけるおそれのある者が保護されるということで、国会や各官庁に対して陳情運動などをする場合には、これを保護の名のもとにおいて検束するから、今度の改正法はけしからぬ。こういう解釈をされておるのであります。これはちゃんと新聞の記事として残っている。かくのごときは、改正の前段において、精神錯乱者や泥酔者が、たとえば映画館でありますとか、演説会場に入って大あばれにあばれておる。さような場合に保護をするという趣旨であろうと私は思う。たとえば学校の卒業式に、酔っぱらいや精神錯乱者が入ってきて、卒業式の進行もできないような乱暴ろうぜきを働いておっても、現行法ではそれを保護する規定がない。そのため――これは事実でありますけれども、卒業式ができないために、警察にその保護を依頼したところが、警察官は現行の法律ではさような者は保護できないといって逃げて帰ってしまったので、これがPTAや学校の日教組の先生方の非常な非難を買って、今の警察はなってはおらぬということだった。これでは困るのでありますから、そういう趣旨の改正だと私は思うのでありますが、この点並びに他の二点を明確に言っていただきたい。
#40
○中川(薫)政府委員 これは、精神錯乱という概念は明確でございます。それから泥酔という概念も明確でございます。その結果「公開の施設若しくは場所において」と、こういうふうになりますので、二重にしぼりましたわけです。その二重のしぼりの一重が「公開の施設若しくは場所」でなければならないということで、家で酒を飲んで、奥さんに少々迷惑をかけたくらいでは保護の対象になりません。公けの施設あるいは他人のたくさんおる所で、精神錯乱のためにまたは泥酔のために迷惑をかけて、初てこの保護の対象になりますので、内田委員御指摘のような、卒業式の場合におきましては保護ができますけれども、それ以外のいろいろ陳情なんかにおいでの場合には、精神錯乱でもなければ泥酔でもございませんので、この規定は働きません。
#41
○内田委員 猪俣浩三議員のあれは間違いだね。それから自殺、家出人は……。
#42
○中川(薫)政府委員 自殺につきましても、「自殺をする虞のある」ということが客観的に明確な場合、具体的に申せば遺書その他の物件、その他の行為、当該人物の行為によって自殺をするおそれがあることが容観的に明確な場合に限ります。それから、きのうも申しましたごとく、家出少年につきましても、家出した少年というのは、家庭の意に反して家を出た少年という概念がはっきりありますし、それから「その他の少年」につきましても、「生命、身体又は財産に危害を受ける」ということのしぼりがございますので、その内容はきわめて正確に限定されておりますので、乱用されることはないと考えておる次第でございます。
#43
○北條委員 関連して。簡単なことですが、現行法では「泥酔」の「泥」がひらがなで「でい酔」と書いてあるのですが、今度は「泥」という字が書いてある。これはどういうわけですか。中川政府委員は、昨日も「提出」の「提」で非常に国語学上の御説明があったわけでありますが、この「泥酔」の程度、並びに何がゆえにこういうふうに書いたかということを御説明願いたい。
#44
○中川(薫)政府委員 これはいろいろ文部省を初め関係各庁で文字のあれがあるわけでありますが、二十三年のときには「泥」をでいと読まないで訓読みになっておったのでありますが、最近の例では、だんだん漢字制限をわかりやすくする趣旨により、「泥」を「でい」というふうに読む字が出てきましたので、「泥」と書いた方がはっきりすると思いましたから、そのようにいたしました。それから「泥酔」とは、アルコール含有飲料を喫することによって正常な行為、能力または弁別能力の大部分を一時欠いた状態をいう、こういうのであります。
#45
○内田委員 私は、以上の御説明を承わりましても、この三条の改正は当然だと思います。実は、先般私が社会党の某議員と警職法改正につきまして紙上討論会をいたしたのでありますが、そのとき、今度の改正の三条というものは、今の自殺者を保護するとか、あるいは成年に達せざる家出人を保護するとかいうような程度の規定が大部分であって、決して諸君が考えるような憲法違反に及ぶような改正を含むものじゃないからびつくりするな、と話をしましたら、なに、自殺者の保護をするというのは当りまえのことなんだ、警察官でなくたって、だれだってできる当然のことだ。こう言って私に反駁したのでありますが、それはその通りで、その言葉の通り、自殺者の保護をするなんということは当然のことであります。これはやってもらわなければならぬ。つまり、自殺をしようとしている、警察官が行って、それを保護しようとしても、よけいなことだといって、どんどん身を投げられたのではこれは困るのでありますから、こんな法律は憲法違反だといっている社会党の方も、反対じゃないだろうと思う。また、家出人、未成年の家出人の保護なんかにつきましても、世間にこういう歌がある。もしもし家出をしたのか娘さん、という歌、皆さん御承知でございましょう。早く、お前の気持はわかるけど、うちじゃ父さん母さんが心配しているから、送ってやる。こういうわけです。こういうわけで、これも当りまえのことであります。
 それから、公開の施設または学校の卒業式や何かで、酒を飲んであばれている者を保護するのも、これも当り前のことで、猪俣浩三君のように前段を隠したり、うその宣伝をしない限り、これは当りまえのことでありまして、私は、この三条の改正については、まず問題がないと解釈いたします。これも、日本国じゅう、どこへ行って演説会をしましても、三条の改正はけしからぬというものはなかろうと私は確信をいたすのであります。
 次に第三条の二であります。三条の二、これも新設の条文でありまして、これはいわゆる虞犯少年の保護規定の方であります。虞犯少年というのは、これは少年法とか、あるいは児童福祉法において、一定の何といいますか、札つきの少年、しかも年令が満十七才以下の少年であってかような法律に抵触し、またはそれを犯した者を看視せずに、その者が自己または他人の生命、身体、財産に危険を加えるような状態にあっても、ほうっておくということをいたすから、昨今のような少年犯罪が激増する。これは小松川高校の殺人事件を見ましても、そのほか、私の郷里の集団強姦事件のようなものを見ましても、やっているのはみな札つきである。警察で、これとこれは看視をしなければ危ないということがわかっておる。そういう者をほうっておくということは今日の世相に合わないのでありまして、日本国中の婦人会の方々、YWCAの御婦人を集めまして、このことをこの通りですと説明すれば、反対する人はないと思いますが、三条の二の精神とはどういうことですか、皆さんに心配をかけないように言って下さい。
#46
○中川(薫)政府委員 三条の二は、三条の二なかりせばということになるわけでありますが、現在日本の法律体系では、児童福祉法と少年法がございます。児童福祉法、少年法によって児童の保護、少年の保護は行われております。ところが、児童相談所は全国に百二十ばかりしかございません。少年鑑別所もそうたくさんございません。そうしてしかも関係機関に一生懸命尽力願っておるけれども、その組織は現場で、新宿でパトロールする。浅草でパトロールをする、大阪の千日前でパトロールする、こういう組織が欠けるところがあるのであります。それで警察官としては千日前でパトロールするという職責を持っておりますから、千日前でパトロールしておりまして、かかる少年を発見した場合におきましては、有益なる機関であるところの児童福祉法の機関並びに少年法の機関に引き継ぐ。こういう組織でございますので、現行法でやっておりますところの児童福祉法の保護、少年法の保護というものは、現場活動をやっておる警察官とタイアップして有効に行われるということによって、少年の不良化の防止に当りたい、こういう趣旨に出たものでございます。
#47
○内田委員 もう一点、この点に関連して私は確かめておきたい。これはむしろ社会党議員の立場に立っておただしをするのでありますが、こういうことをいわれておる。この虞犯少年、満十七才未満の虞犯少年の保護規定を設けたのは、全学連の学生を保護するための規定である、こういうことが新聞に書かれた。だれが書いたということではありませんが、そういう説をなす人の言説をそのまま新聞が警職法論争の手引きとして、そういう解釈を心配されておる。もしこんなことをするならば、全学連の高校部などは壊滅してしまうと社会党は憤慨しておる。こう書いておりますから、社会党の人にかわってお尋ねをするのでありますが、そういう意図を持っておられるのであるか。新聞なら公けです。
#48
○中井(徳)委員 きょうは大体十二時ごろまでだということで、もう半になっております。なかなかいい質問でありますが、譲っていただいて、予算委員会もやっておりますから、この辺で散会していただきたい。
#49
○内田委員 今の答えだけ聞いておいて……。
#50
○中川(薫)政府委員 私どもは、全学連の組織は詳しく存じませんけれども、大学はまず入りません。それで高等学校も、十八歳以下ということになりますと、三年生の一部が除かれますけれも、まず高等学校の生徒が入る場合もございますけれども、しかし、全学連の方々は、いずれにしても条件がきわめて限定されておりますので、この条件に当るものにつきまして、しかも児童福祉法とか少年法に定める規定に合せるだけでありますので、断圧とか何とかということは考えられないのでございます。
#51
○鈴木委員長 次回は明三十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後零時二十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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