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1958/10/07 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 商工委員会 第2号
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1958/10/07 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 商工委員会 第2号

#1
第030回国会 商工委員会 第2号
昭和三十三年十月七日(火曜日)
    午前十時五十分開議
 出席委員
   委員長 長谷川四郎君
   理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君
   理事 小平 久雄君 理事 中垣 國男君
   理事 中村 幸八君 理事 加藤 鐐造君
   理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君
      新井 京太君    岡部 得三君
      岡本  茂君    加藤 高藏君
      菅野和太郎君    木倉和一郎君
      坂田 英一君    始関 伊平君
      中井 一夫君    中村 寅太君
      野田 武夫君    細田 義安君
      山手 滿男君    渡邊 本治君
      板川 正吾君    今村  等君
      内海  清君    大矢 省三君
      勝澤 芳雄君    小林 正美君
      鈴木  一君    堂森 芳夫君
      中嶋 英夫君    永井勝次郎君
      水谷長三郎君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  高碕達之助君
        国 務 大 臣 三木 武夫君
 出席政府委員
        総理府総務長官 松野 頼三君
        公正取引委員会
        委員長     長沼 弘毅君
        総理府事務官
        (公正取引委員
        会事務局長)  坂根 哲夫君
        総理府事務官
        (経済企画庁長
        官官房長)   宮川新一郎君
        総理府事務官
        (経済企画庁調
        整局長)    大堀  弘君
        通商産業政務次
        官       中川 俊思君
        通商産業事務官
        (大臣官房長) 齋藤 正年君
        通商産業事務官
        (通商局長)  松尾泰一郎君
        通商産業事務官
        (企業局長)  松尾 金藏君
        通商産業事務官
        (重工業局長) 小出 榮一君
        通商産業事務官
        (鉱山局長)  福井 政男君
        通商産業事務官
        (鉱山保安局
        長)      小岩井康朔君
        中小企業庁長官 岩武 照彦君
 委員外の出席者
        大蔵事務官
        (銀行局特別金
        融課長)    磯江 重泰君
        通商産業事務官
        (軽工業局長) 森  誓夫君
        通商産業事務官
        (石炭局長)  樋詰 誠明君
        通商産業事務官
        (公益事業局
        長)      小室 恒夫君
        国民金融公庫副
        総裁      石渡忠四朗君
        中小企業金融公
        庫副総裁    中野 哲夫君
        参  考  人
        (商工組合中央
        金庫理事)   島田  磯君
        専  門  員 越田 清七君
    ―――――――――――――
十月三日
 委員大倉三郎君辞任につき、その補欠として中
 村寅太君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
十月二日
 軽機械の輸出の振興に関する法律案(内閣提出
 第二五号)
同月三日
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇
 号)
同月六日
 輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第二六号)
の審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 輸出入取引法の一部を改正する法律案(内閣提
 出第二六号)
 軽機械の輸出の振興に関する法律案(内閣提出
 第二五号)
 下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法
 律案(内閣提出第二一号)
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇
 号)
 通商産業の基本施策に関する件
 経済総合計画に関する件
 台風二十二号等による被災中小企業に関する件
     ――――◇―――――
#2
○長谷川委員長 これより会議を開きます。
 次に十月三日に付託になりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律案を議題とし、審査に入ります。まず趣旨の説明を聴取することといたします。松野内閣総務長官。
    ―――――――――――――
#3
○松野政府委員 ただいま上程されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由を説明いたします。
 御承知の通り、独占禁止法は、経済民主化法制の主要な一環として、自由かつ公正な競争を促進し、国民経済の健全な発達をはかる目的をもって昭和二十二年七月に施行されました。
 その後、内外情勢の推移に即応して同法は数回にわたって改正され、中でも昭和二十八年の改正は、いわゆる占領法規を再検討するという意味で行なったものであります。その後五年の歳月を経過した今日、わが国経済の実情を見ますと、企業数が多過ぎるためとかく過当競争の弊に陥りやすく、また、経済基盤が弱いため国際的な景気変動に影響されるところが大きい等の特殊事情があり、さらに最近における技術革新の趨勢に対処して企業の合理化を促進し、国際競争力の培養をはかる必要のあることが指摘されます。
 しかしながら、これらの問題を解決していきますためには、どうしても独占禁止政策との調整を必要とする面も多いと思われますので、政府は、この際、わが国における独占禁止政策に所要の検討を加える必要を痛感した次第であります。
 そこで、昨年十月、内閣に独占禁止法審議会を設け、わが国経済の実情に照らし独占禁止に関する法制はいかにあるべきかとの諮問を行いましたところ、本年二月同審議会からその答申を受けるに至りました。
 政府は、わが国経済の実情、なかんずく不況対策、合理化対策の緊要性にかんがみ、右の答申の趣旨を尊重し、その線に沿って本改正案を作成することといたしました。すなわち、本法の建前とする自由競争の原則はこれを堅持しつつ、当面わが国経済の運営に特に障害となっていると思われる諸点に関し、さしあたり所要の改正を加えることといたしました。
 次に、本改正案の内容につきましては、まず不況対策としての実効を期するため現行不況カルテルの規定をいささか緩和し、合理化対策の必要性にかんがみ現在の合理化カルテルの範囲を拡大し、生産過程の合理化をはかる合併の例外を容認し、不公正な取引方法の防止または健全で合理的な取引慣行の確立をはかるため公正取引規約に関する制度を新設し、その反面不公正な取引方法に関する規定の整備強化をはかることといたしました。このように本法を改正することによって、一般消費者、中小企業者、農林漁業者等の利益が不当に侵害される弊害はないかどうかという点につきましては、本改正案は制度上も運用上も十分の配慮を加えており、たとえばカルテルの容認は原則として認可制によることとし、しかもその認可の要件として一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者その他の関連事業者の利益を不当に害するおそれがないことを規定しており、また、その認可は独立機関、中立機関としての公正取引委員会が主務大臣と協議しながら厳正に実施することといたしました。さらに、一度認可したカルテルであっても、経済情勢の変化によって弊害を生じたときは迅速にこれを取り消す制度もあわせ考慮することによってカルテルの弊害規制について万全を期しております。他面、不公正な取引方法の指定制度の厳正な運用によって、経済的に優越した地位にある者の支配力乱用行為を取り締る等十分弱小企業者の保護をはかることができる建前になっておりますので、本改正によって一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者等に悪影響を与える心配はないものと考えております。申し上げるまでもなく独占禁止法は、わが国経済秩序に関する基本法としての性格を持つものでありますので、何とぞ慎重な御審議をお願いいたします。
#4
○長谷川委員長 ただいまの説明に補足をいたしまして公正取引委員長より細部にわたる説明を聴取することといたします。長沼公正取引委員長。
#5
○長沼政府委員 改正案の内容につきまして補足的に説明を申し上げます。改正の第一点は、わが国経済が当面いたしまする不況対策の一環といたしまして現行不況カルテルの規定を改正いたしたことであります。
 現行の不況カルテルの規定によりますと、商品の需給が均衡を失しましたため、その価格が現実に平均生産費を下り、かつ、その業界の相当部分の事業者が倒産するに至るおそれがある場合に、初めて不況カルテルが認められることになっております。
 これに対しまして、経済基盤の脆弱なわが国企業の現状からいたしますと、このような不況要件はいささか厳格に過ぎ、また不況対策としての実効を期しがたいうらみがございますので、これを緩和する必要が認められたのでございます。そこで改正法は不況カルテルを行い得る事態を、商品の価格が著しく低落し、当該事業者の相当部分について当該商品の生産にかかる事業の遂行が著しく困難となるに至るおそれがある場合に改め、深刻な不況状態を回避するための不況のおそれがある段階におきましてカルテルを容認し得ることといたした次第であります。
 次に、不況カルテルとして行い得る共同行為でございますが、現行法は生産もしくは販売の数量の制限、設備の制限または対価の決定とその範囲を限定しておりますが、現在の不況状況は、その様相がきわめて複雑でありますので、これに対処するための共同行為の型を限定することは必ずしも当を得ないと思われます。そこで、この際限定列挙主義でありましたものをやめまして、例示主義をとるということにいたした次第であります。でございますが、その反面価格協定、独占的な販路協定、または一手買取機関の設置は関連事業者、一般消費者等に影響するところも大きいので当該商品の数量制限が技術的理由によって実行ができないような場合であるかあるいは、数量の制限にかかる共同行為をした後においてなおその効果が上らない場合にだけ容認することといたした次第であります。
 また販売業者の不況カルテルは、現行法ではこれを認めておらないのでありますけれども、生産業者のカルテルだけでは不況克服が困難な場合が想定されます。かような場合におきましてこれを補完するために第二次的に販売業者のカルテルが協力する必要がございますので、改正案はその範囲内におきまして販売業者のカルテルを認め得ることといたしております。
 不況カルテルの処理の手続でございますが、これは弊害除去の万全を期するため現行法通り認可制を原則としていますが、その行為の態様が生産の数量、販売の数量または設備の制限ということでありまして、しかも、その制限の期間がわずかに三カ月というようなきわめて短期間であるという場合には事務処理の迅速化をはかりますために二十日の期限付認可制を認めることにいたしたわけであります。これは申せば経済上の緊急避難に対応する処置というふうにお考え下さってけっこうであります。
 改正の第二点は、合理化カルテルの範囲を現行法よりも拡大いたしかつ整備いたしたという点であります。
 まず、現行合理化カルテルのうち、主として標準化または規格の統一ということを目的とする技術、品質もしくは規格の制限というような軽度の共同行為、ないしは保管もしくは運送の施設の共同利用、副産物、くずもしくは廃物の共同利用は、これらによる弊害も少いので、現行の認可制を改めまして、三十日の事前届出制により認め得ることといたしました。
 また、これらの共同行為の中で保管もしくは運送施設の利用等は、生産業者のみならず販売業者にとりましてもその合理化に役立つ場合もございますので、新たに販売業者についても認め得ることといたした次第であります。
 次に、最近の経済情勢に即応いたしまして、事業の合理化を促進することは喫緊の要事であります。そこで概要次に述べるような共同行為を新たに容認することといたしたのであります。すなわち、まず専門生産のための生産分野協定であります。数量の制限を伴わない生産分野協定は、現行法におきましてもすでに認められているところでありますが、改正案は、品種の制限にかかる共同行為を実施することが困難であるという場合に限りまして数量制限を含む生産分野協定を認め得ることといたしたのであります。
 次に過剰設備の処理協定であります。これは、繊維、生糸等につきましてすでに特別法による前例のあるところでありますが、老朽設備をすみやかに廃棄、処理すること申せば贅肉を切り捨てるということによって産業の安定と若返りをはかろうとする共同行為を容認し得るものといたしたのであります。
 次に、設備の制限協定すなわち言うところの投資調整カルテルであります。わが国産業界において二重投資、過剰投資の弊が蔓延し、今日の不況の重大なる原因となっております事実にかんがみまして、今後かかる事態を未然に防止し、当該産業の安定的発展と国民経済の均衡のとれた成長をはかりますために、設備の新増設の制限にかかる共同行為を認めようというものであります。さらに、原材料の購入に関してであります。原材料の安定した供給を確保するということは、当該事業の安定した操業を維持することにもなりますし、合理化達成上必要なことでありますので、これを容認することといたしましたが、ただ、購入数量、購入価格の制限をあらゆる原材料について認めるということになりますと、その弊害も非常に大きく問題がありますので、この原材料の種類を限定し、供給の弾力性が乏しいかまたは価格の変動が著しい原材料についてだけ数量、価格の制限を認めることといたしたのであります。
 最後に買取機関設置の容認であります。供給の弾力性が乏しいかまたは価格の変動が著しい商品につきましては、その需給の安定をはかることが産業の合理化につながるという観点からいたしまして、その買取機関の設立を認めることといたしました。しかし、一方におきまして独占的な一手買取機関を容認することは、合理化カルテルというワク内から考えますと、いささか行き過ぎと思われますので、かような一手、独占的にならない場合にのみ買取機関を認めることにいたした次第であります。
 以上が新たに合理化カルテルとして容認したもののおもなるものでありますが、これらは、これによる弊害を厳に防止するため認可制度によることといたしたのであります。
 改正の第三点は、最近における世界的な技術革新に趨勢に対処して、企業の合理化を促進し、国際競争力の強化をはかるため、会社の合併等の規定に例外を設けたことであります。
 現行法においては、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる合併、営業の譲り受けは一切認められないということが建前となっております。改正案におきましては、たとい一定の取引分野における競争が実質的に制限されることとなる場合でありましても、新技術の工業化、大量生産方式の採用というようなことによりまして、生産過程における合理化を遂行するため特に必要がある場合にはその合併を例外的に容認することといたしたのであります。従いまして、生産の合理化につながらない販売ないしは流通さらには経営面の合理化を目的とする合併は認めないことを意味するのであります。しかしながら、このような独占体または準独占体の発生を容認いたしますことは、その弊害防止については特に注意する必要がありますので、その合併が一般消費者、関連中小企業者、関連農林漁業者等の利益を不当に害するおそれがないということを期待いたしております。また合併が容認された後におきまして、合併会社が一定の期限までに正当な理由がないのにその合理化の計画を実施しないような場合には、公正取引委員会が合併会社に対し必要な排除措置を命じ得ることといたしたのであります。
 改正の第四点は、不公正な取引方法に関する規定の整備強化とその一環として新たに公正取引規約の制度を創設したことであります。
 最近の経済界は過当競争による取引秩序の混乱がはなはだしく、これが経済の健全な発展を妨げていることの一因でもありますので、この際このような不公正な取引方法を防止し、さらに進んで好ましい取引慣行の確立をはかるため、事業者が自主的に過剰サービス等不当競争の自粛、商取引条件の適正化その他公正競争促進のために必要な規約を設定し得る道を開くことといたしたのであります。
 事業者は公正取引規約を設定した場合、その内容が所定の要件に適合する場合は公正取引委員会の認定を受けることができますが、この認定を受けた公正取引規約に基く行為につきましては、独占禁止法上手続の適用除外といたしました。従って、事業者は認定の取消がありますまでは独禁法違反に問われる不安はなく、もっぱら取引秩序の混乱防止に努めることができることに相なるわけであります。
 不公正な取引方法の規制の強化は一般から強く要請されているところであります。ところで現行法におきましては、単に当該行為の差しとめを命じ得るというだけでありまして、その類似行為の反復を阻止する方法がない。よって今回この不公正取引方法のもととなっております契約の廃棄等、根本的にさかのぼった排除措置を講じ得ることといたし、弊害防止の万全を期することといたしたわけであります。
 改正の第五点は、現在トラストの発生を防止するため、総資産が一億円をこえる会社からその所有株式の報告を受け、また競争会社の役員を兼任した場合におきましては、いずれか一方の会社の総資産が一億円をこえているときは、その旨の届出を受けることになっておりますが、最近におきまする会社資本の増加や企業規模の拡大化ということから考えまして、これらの場合におきまする会社の総資産のワクを一億円から五億円に増大することといたしました。
 第六点は、公正取引委員会へのカルテルの届出または認可申請に当りまして、当該事業の主務大臣をその経由官庁といたしたことであります。すなわち業界の実情に明るく、カルテル結成に至る経緯等についてもつまびらかな主務大臣を窓口とすることによりまして、その手続の円滑化をはかり、または申請書等の送付に際しましては、主務大臣が産業政策遂行の責任者としての立場から当該カルテルの国民経済において占めまする意義などにつきまして所要の意見を付し得ることといたしました。これによりまして認可官庁としての公正取引委員会の判断に資することにいたしたわけでありますが、これによりまして公正取引委員会が何らの拘束を受けるものではないということは、申すまでもないところであります。
 改正の第七点は、カルテルに関する規定を改正し、例外カルテルの範囲を拡大いたしました反面、その弊害規制に遺憾なからしめるべく所要の改正を加えた点であります。すなわちカルテルの処理手続といたしましては、認可制を原則といたしました。特に弊害の少いものについてのみ期限付認可制または事前届出制によることとしておりますが、その際、カルテルはすべて関連中小企業者または関連農林漁業者等の利益を不当に害するおそれがない場合に限って容認することといたしたのであります。さらに経済情勢の変化等によりましてカルテルが要件に適合しなくなったという場合におきましては、現行法のような審判手続を経ることなく、行政処分によりまして、機動的に認可を取り消しまたは変更を命ずることとし、迅速に弊害を排除し得るように改めたのであります。
 この場合、公正取引委員会の処分に対して不服がある者に対しましては審判手続による不服の申立制度を新設いたしまして、その保護の万全を期しておる次第であります。
 以上簡単に御説明申し上げました。
#6
○長谷川委員長 以上で本案についての趣旨の説明は終りました。本案についての質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#7
○長谷川委員長 次に九月三十日に付託になりました内閣提出、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案を議題とし、審議に入ります。まず趣旨説明を聴取することといたします。長沼政府委員。
    ―――――――――――――
#8
○長沼政府委員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。
 下請代金支払遅延等防止法が制定されましてから今日まで二年有余を経過しておるのでありますが、この間政府関係機関におきましてはこの法律の積極的な運用に鋭意努力いたしまして、下請代金の支払遅延防止等にかなりの効果を収めて参ったのであります。
 しかしながら、この法律の運用に当って参りました経験によりますと、下請取引を公正ならしめるとともに下請事業者の利益を保護するというこの法律の目的達成をはかる上におきまして、現行法の規定ではいささか不備と思われる点が感ぜられます。特に最近のような景気の後退期にありまして、親事業者が景気後退の理由による困難を下請事業者に転嫁するというふうな不公正な行為の態様は多岐にわたっておりますので、現行法の規定では何としても規制し切れないというものが見受けられるのであります。
 従いまして、このような親事業者の不公正な行為を防止し、下請事業者の利益を一そう保護するためには、下請代金支払遅延等防止法をさらに強化する必要があると考えまして、ここに本改正法案を提出いたした次第であります。
 次に本改正法案の概要について御説明いたします。
 第一は、親事業者の順守すべき事項に不当な買いたたき、自社製品手持原材料等の購入の強制、報復措置、この三つの事項を追加したことであります。
 第二は、親事業者が下請事業者に対し交付すべき書面の必要記載事項に追加いたしまして、下請代金の支払いの時期などにつきまして、これを追加したことであります。
 以上の二点が本法案の要点であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
#9
○長谷川委員長 以上で趣旨の説明は終りました。本案の質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#10
○長谷川委員長 去る十月二日付に付託となりました軽機械の輸出の振興に関する法律案及び昨六日に付託になりました輸出入取引法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、審議に入ります。まず趣旨の説明を聴取することといたします。高碕通商産業大臣。
    ―――――――――――――
    ―――――――――――――
#11
○高碕国務大臣 ただいま上程されました軽機械の輸出の振興に関する法律案についてその提案理由を説明いたします。
 ミシン、双眼鏡を初めとするいわゆる軽機械の輸出は年額一億ドルをこえ、船舶を除く機械輸出の三分の一を占めるに至っております。しかもこれらの輸出は年々確実な増加を示し、今後の輸出拡大のホープと目されているのでありますが、このような目ざましい輸出の拡大は、これらの軽機械が中小企業を主体とするアセンブル方式によって製造され、その工程に相当の人手を要することによってわが国がきわめて強い国際競争力を持っていることに負うものと考えます。
 しかしながらアセンブル方式をとっていることから開業するだけならばほとんど設備らしい設備もなしにできるために業界の過当競争が著しく、輸出価格の著しい低落を見ておるのでありまして、この結果当然得られるべき外貨をみすみす失っているという現状になっております。
 また中小企業を主体とすることによって海外事情に対する知識はほとんどなく、めくら貿易に近い状況に置かれている上、このような軽機械の輸出拡大に欠くべからざる海外市場への広告、宣伝活動もほとんど行われていないという状況であります。
 このような事態に対しまして軽機械の輸出の振興のために従来とられてきた方策を振り返ってみますと、過当競争防止のためには輸出入取引法、中小企業団体法等の施策があげられるのでありますが、軽機械という特殊の商品について考えますと不十分な面がなお存すると考えられますし、また軽機械の品質の向上ないし積極的な海外市場へのマーケッティングという観点についてはほんど未開拓のまま残されてきたといって過言ではありません。
 従ってここに従来の方策を補完し、軽機械の輸出をさらに一段と発展させるべく種々検討いたしました結果、従来から特に問題の多かったミシン及び双眼鏡を当面の対象として新たなる立法を要するとの結論に達した次第であります。
 この法律案の骨子は、製造業者の登録制の採用と輸出振興事業協会の設立という二点に要約されるのであります。
 第一に輸出向きの軽機械及び軽機械部品について製造業者の登録を行うことにより、メーカーらしいメーカーを育てていく基盤を作り、これによって軽機械の品質の向上を期するとともに、特に軽機械の組立業者について過当競争が著しくなりました場合には一時その登録を停止して新規開業を押え、業界の安定をはかることにしたいと考えます。
 第二には輸出振興事業協会を設立し、これを中核体として海外市場に対する調査、宣伝を活発に行い、同時に輸出向き軽機械の品質向上をはかりたいと考えております。これらはまさに輸出拡大のかぎとなるものでありながら、国内における過当競争によって従来業界にその余力がなかったのでありますが、協会への負担金の納入によってこれを活発に行うことが可能になると考えます。
 申し上げるまでもなく、輸出の振興はわが国経済発展のための最大の要請であり、その中でも機械の占める重要性は次第に高まっているのでありますが、このような要請に当面応ずることができるのはまさに軽機械と考えるのであります。このような事情をおくみ取りの上、何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
#12
○長谷川委員長 次に、大臣にかわって松尾政府委員より輸出入取引法の一部改正法律案の提案理由を御説明願います。
#13
○松尾(泰)政府委員 ただいま提案されました輸出入取引法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明いたします。
 現行輸出入取引法は、昭和二十七年八月輸出取引法として施行され、その後昭和二十八年八月輸出入取引法として改正されましたが、さらにその後三回の改正を経て今日に至っております。
 御承知の通り最近におけるわが国の輸出は、国際的な不況の影響を受けて、伸び悩みの状況を続けておりますが、原材料の輸入依存率の大きいわが国にとりましては、輸出の伸張によってこそ経済の拡大均衡が確保できるものであることは、言うまでもないことでありまして、この意味におきまして輸出の振興はわが国のまさに緊急事の一つであります。しかるにわが国の輸出が従来から過当競争のため、いろいろの面で問題を起してきたことは御高承の通りでありますが、輸出における過当競争の傾向はますます激化し、そのため海外輸入業者のわが国輸出品に対する不信ないしは輸入制限の傾向が現われて参り、さらには関税引き上げ等の動きを誘発しているような次第であります。このような傾向を是正し、わが国の貿易の健全な発展をはかるためには国内経済の安定とともに、輸出取引秩序の確立をはかることが何よりも必要なわけでありますが、現行輸出入取引法の運用によっては必ずしも十分でないと考えましたので、このたびこの改正案を提案いたした次第であります。
 次に、改正の主要点につきまして御説明いたします。
 第一は輸出品の生産業者等の協定の締結範囲の拡大であります。
 現行輸出入取引法におきましては、生産業者等は輸出すべき貨物について協定を締結することが認められておりますが、そのような協定だけでは輸出における過当競争を防止することが必ずしも十分でない場合もありますので、そのような場合におきましては、独禁法、中小企業団体法等の他の法令による適法な共同行為をもってしても過当競争を防止するに不十分な場合に限り、国内貨物及びその原材料をも含めた協定の締結ができるようにし、それでもなお不十分な場合におきましては、その貨物の販売業者及び原材料の生産業者等にも協定の締結を認めるよう改正せんとするものであります。
 第二は輸出組合及び輸出入組合の事務の明確化並びに出資組合から非出資組合への移行の規定の追加であります。
 現行輸出入取引法におきましては、輸出組合及び輸出入組合は、一定の調整事業と各種の協同事業を行えることとなっておりますが、これら組合の行う事業の重要性にかんがみ、その事業内容を明確にし、さらにこれら組合のうち非出資組合に限り、法人税法上の非課税法人とするための必要な規定並びに出資組合から非出資組合へ移行できる旨の規定を追加いたしました。
 第三は貿易連合の制度の創設であります。
 貿易商社が連合して輸出入取引を行うということは、輸出入取引の秩序の確立という点からも、また特に中小商社の健全な発展のためにも必要であり、かつ有効なことでありますが、現行法令における諸制度をもってしてはいまだ十分でありませんので、このたびこれを貿易連合という名のもとに新しい特殊法人として認めることにより、その助長をはかることにし、所要の規定を設けました。
 第四は生産業者等に対するアウトサイダー規制命令の追加であります。
 現行輸出入取引法におきましては輸出業者等の協定の場合と異なりまして、生産業者等の輸出すべき貨物についての協定に対しましてはアウトサイダー規制を行う規定を欠いておりますが、輸出における過当競争を防止するためには、状況によりこれも行う必要がありますので、このたびこれらについてもアウトサイダー規制を行うことができるように改正することといたしました。
 第五は輸出業者の登録制度の創設であります。
 特定仕向地において特定貨物について輸出の過当競争が行われているような場合においては、民間業者における自主的輸出規制等によりその防止をはかることが何よりも必要でありますが、同時に信用、経験等の不十分な新規の輸出業者が無制限に増加することを抑制することも必要であり、これによって初めて業界の自主的な規制も効果的なものとなることが考えられますので、過当競争の著しい特定仕向地に特定貨物を輸出する輸出業者について登録制度を創設し、登録を受けた者でなければ輸出できないこととするとともに、登録に関し必要な法的措置を講じました。
 以上が改正の主要点でありまして、その他これらの改正に伴う若干の修正を行っておりますが、わが国の輸出貿易の現状と特質にかんがみ、以上の改正は輸出における過当競争を防止し、わが国輸出貿易の健全な発達をはかるためぜひ必要なものと考えられます。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに可決あらんことを切望いたします次第であります。
#14
○長谷川委員長 以上で趣旨の説明は終りました。なおただいま説明を聴取いたしました二法案につきましての質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#15
○長谷川委員長 次に経済企画庁長官より経済総合計画に関する所信をお聞きしたいと存じます。三木経済企画庁長官。
#16
○三木国務大臣 昨年来の総合緊急対策の実施によりまして、経済活動は過熱状態を脱し、国際収支の逆調を回復するなど一応着実な調整過程をたどって参りましたが、反面、世界経済の低迷や過去の過大な投資による影響を受け、最近の経済活動はいわゆるなべ底横ばいの状態を続けております。
 すなわち、輸出は伸び悩み、鉱工業生産、出荷は停滞し、在庫調整も予定よりおくれ、ために卸売物価は依然下押しぎみに推移し、企業経営の悪化も伝えられているのであります。かように、当面の経済動向は停滞を続けておりますが、下期に入って経済活動はある程度明るい要因を加えていくものと見られるのであります。すなわち下期に入りますと、設備投資は上期より若干減少いたしますが、下期の消費需要は、季節性の影響も含めて引続き堅実な知調をたどり、ことに本年度の豊作による農家所得の伸びもありますので、上期に比べ約九%の増大になるものと見られます。輸出需要については、輸出振興に対する努力に加えて、若干の価格の上昇と下期の季節的な輸出上昇とをあわせ考えれば、通計いたしまして上期に対し七%程度の伸びも可能ではないかと見られます。ことに政府の財政支出による需要は、公共事業費の繰り上げ支出等もあって下期には相当の伸びが期待できます。
 このようにして総体としての需要増によりまして下期の鉱工業生産は上期に対して約七%近くの上昇となるのではないかと見込んでおるのであります。
 かように本年下期の経済動向は逐次好転するものと予想せられますが、当面の経済活動はなお停滞下にあり、ことに繊維産業等一部産業にあっては停滞の度合いが著しく、また、雇用面についても悪化を極力防止することが必要であります。従いましてそれぞれの産業の実情に即しつつ、操短の指導、過剰織機の買い上げ、繊維原料や原油等の輸入削減その他所要の措置を講じて参りましたが、今後とも適切な対策を講じてこの経済調整過程を乗り切るとともに、本年度下期以降、経済活動の基礎を安定成長の軌道に乗せるため、経済発展の基盤の充実をはかって参りたいと存じております。
 なお、昭和三十四年度の経済につきましては、予測上、なおかなり不確実な要因も多く、政策のあり方によって変化する事情も少くございませんので、さきに作成いたしました経済見通しにおきましても、政策策定の手がかりとして大体の輪郭をえがくにとどめましたが、今後の情勢の推移をいま少し見きわめた上でこの十一月ごろ、明三十四年度の経済見通しにつきましては詳細的確なものを策定いたしたいと考えております。以上、当面の経済動向と経済運営の態度につき一言いたしましたが、今後とも一そう各位の御協力を切望いたす次第であります。
#17
○長谷川委員長 以上で経済企画庁長官の所信に関する発言は終りました。
    ―――――――――――――
#18
○長谷川委員長 次に通商産業大臣より、通商産業の基本施策に関する所信を承わることといたします。高碕通商産業大臣。
#19
○高碕国務大臣 今後の産業政策について御説明申し上げますが、私のどを痛めておりますので、はなはだ勝手でございますが、齋藤官房長がかわって御説明申し上げますので御了承願います。
#20
○齋藤(正)政府委員 最近の経済情勢を見ますと、経済の調整過程は意外に長引き、現在のところ景気は停滞ぎみに推移しております。
 輸出は世界景気の停滞を反映して伸び悩み状態にあり、最近低調に推移いたしておりますが反面輸入が生産の停滞によってきわめて低い水準にあるため、国際収支は黒字基調を維持しており、年度間では当初の予想を大幅に上回る黒字を計上するに至るものと考えられます。設備投資は、基幹産業の継続工事を中心としてかなり高水準を維持しておりますものの最近の機械受注状況より判断いたしますと、今後はやや低下傾向をたどるものと思われます。消費のみは比較的好調を続けておりますが、産業の生産品に対する需要は依然として停滞状況にあり、各産業は引き続いて生産調整を実施いたしているにもかかわらず、在庫調整の終了は意外に長引き、その終了には少くとも年内一ぱいを要する見通しであります。このため物価は一時わずかの反騰を見たもののその後は引き続き低迷を続けております。
 このような経済の実情に対処し今後すみやかに経済の正常化をはかりますため、当面各産業の実施している生産調整の円滑な遂行を期しますとともに、特に経営難の著しい繊維産業や石炭鉱業等については過剰設備の買い上げ、輸入エネルギーの削減等業種の特性に応じた対策を講じ、また中小企業に対しては金融の円滑化に努力いたしておる次第であります。
 本年度の下期におきましては輸出、消費、財政支出等の需要面に若干の季節的な伸びが見込まれ、また公共事業費の繰り上げ支出や財政の散超による金融緩和の事情もありますので、これらの要因を手がかりとして今後における経済成長の契機をつかみたいと念じている次第であります。
 以上の当面の施策とあわせてわが国経済が長期にわたって安定した発展を遂げますためにはわが国経済の特質に基く問題点とその解決の方向を把握して所要の施策を着実に実施していくことが何よりも肝要であり、従いまして今後の通商産業政策は、これらの問題点を具体的に解明しつつ、安定した経済成長を確保することをその基本とし、第一に、国際収支の恒常的拡大均衡確保のため、輸出の振興を期しますとともに第二に、貿易の長期安定的市場を培養するため、経済協力の推進をはかるものとし、第三に、経済の長期的発展を確保するため、産業基盤の強化と産業体制の確立をはかり、第四に、国民経済に占める中小企業の重要性にかんがみ、中小企業の育成強化をはかり、第五に、世界的技術革新の趨勢に即応し、鉱工業技術の振興をはかりますることに、その重点を置かなければならないと存じます。
 以下各項目ごとにその具体的施策の概要について簡単に申し述べたいと存じます。
 第一は、輸出の振興であります。今後における世界的な輸出競争の激化に対応し、わが国輸出の恒常的伸長と国際収支の長期的均衡をはかりますため、特に次の施策を重点的に推進する方針であります。すなわち貿易振興の施策としては、従来から実施してきた海外市場の調査、輸出商品の普及宣伝、貿易あっせん、国際見本市等の諸事業につきましては、本年七月発足した特殊法人日本貿易振興会を中心としてその飛躍的強化拡充をはかりますとともに、今後におけるプラント輸出の促進を期するため、技術相談業務の画期的強化をはかるものとし、これが実施に当る中核団体の育成強化に努めたい所存であります。
 またわが国貿易における業種別、地域別の特質と実情に即応して、過当競争の防止と輸出の振興をはかりますために、輸出業者または製造業者の登録、輸出振興のためのカルテルの認容、一手買取機関の設立の促進等を主たる内容とする輸出入取引法の改正法案及び軽機械輸出振興法案を今回の臨時国会に提出いたした次第であります。
 さらに輸出品の品質意匠の向上及び盗用防止、検査設備の整備等につきましても今後一段と努めていく所存でございますが、特に雑貨産業につきましては、これが実施に当る機構の整備強化をはかっていきたいと考えております。
 第二は、経済協力の推進であります。現今、世界貿易における地域化傾向が高まり、かつ、後進国における外貨不足が依然深刻な段階にありますので、これらの国の経済開発に協力いたしますことは、今後におけるわが国貿易の長期安定的市場の培養、海外原料の安定した供給の確保、中小企業の海外進出等をはかる意味におきましてもきわめて重要であり、この意味において貿易振興対策と経済協力対策とは車の両輪のごときものといっても過言ではないと存じます。従いまして今後とも東南アジアを中心とする経済協力対策をむしろ貿易振興対策の一環として積極的に展開する方針であります。
 すなわち円クレジットの供与、延べ払い方式の採用等による資本協力につきましては、さきにインド及びアラブ連合に対して決定を見たのでありますが、今後さらにその他の諸国についても検討中であり、その際対象品目の拡大等につきましてもあわせて考えたいと存じます。
 また技術者の受け入れ及び派遣、並びにわが国中小企業の海外進出のための体制を一そう強化整備するほか、アジア産業経済の調査及び海外投資のための基礎調査を徹底的に行うため、近く発足するアジア経済研究所の組織機能の拡充強化をはかる方針であります。なお、本年度新たに設置を見たインド西ベンガルの海外技術センターの円滑な運営を期するとともに今後さらにその他の地域にもその新設をはかっていきたいと存じております。
 第三は、産業基盤の強化と産業体制の確立であります。わが国産業の対外競争力は、欧米諸国に比し、いまだかなり遜色があると考えられるのでありまして、この点、基礎産業、輸出産業、新規産業等の合理化、近代化をさらに徹底的に進めていきたいと存ずる次第でありますが、さらに今後の産業発展の趨勢に即応し、エネルギーを初めとする主要基礎原材料の供給の確保とその価格の安定をはかることが肝要と存ずる次第であります。このため、今後におきましては、財政投融資の誘導的、補完的機能をより一そう活用するものとし、国民経済的に最も緊要度の高い産業部門へのその重点的投入が必要と存じます。
 また産業立地条件の整備につきましては、今後の経済の拡大と近代化に果す役割の重要性にかんがみまして、これを強力かつ計画的に推進する必要性を痛感いたしておる次第でありまして、これがため、豊富かつ低廉な工業用水の確保をはかるための助成を強化いたしますとともに、道路、港湾、輸送施設等産業関連施設の飛躍的増強を期する方針であります。特に港湾につきましては、原油、鉄鋼原料の輸入港、石炭の積み出し及び陸揚港の整備に重点をおくものとし、また工業用地の積極的な造成と工場の適正配置施策の推進についても考究する所存であります。
 なお、工場排水に関する被害、紛争が、最近とみに問題化しており、早急に法的措置を講ずる必要があると考えられますので、今国会に工場排水法案を提案いたしたいと存じておりますが、これに伴い、汚水処理施設の設置及び汚水処理技術の研究について助成措置を講じていきたいと存じます。
 また、経済の安定的成長と国際競争力の強化に資するためには、わが国経済の実情に照らし、産業界の自主的協調体制のより一そうの整備確立をはかることが必要であると考える次第でありまして、このために不況カルテルの認可要件の緩和、合理化カルテルの認容範囲の拡大などを主たる内容とする独占禁止法改正法案を今国会に提案いたしております。
 最後に最近続出する中小炭鉱における災害を防止するため、緊急事態における侵掘停止命令、盗掘防止のための罰則の強化等を内容とする鉱業法改正法案及び鉱山保安法改正法案を今国会に提案いたしております。
 第四は、中小企業の振興であります。御存じの通り、中小企業はわが国経済上きわめて重要な地位を占めている反面、その規模が零細であり、かつその数がおびただしいため絶えず経営の不安定に悩んでおり、またその設備技術等においても立ちおくれておりますので、今後とも中小企業の特質に応じました振興策を適時適切に講じていく所存であります。
 このためにはまず中小企業の組織化によるその経営の安定をはかるため、中小企業団体法の円滑な運用をはかることが肝要と存じますが、一方中小企業の生産性の向上と経営の合理化のためには、設備近代化助成制度の飛躍的拡充、公設試験研究機関の設備の大幅増強をはかりますとともに、府県の指導員の増強による中小企業に対する指導を一そう積極的に展開したいと考えております。
 なお、当面経済活動が安定的上昇線に乗るまでの過程において過渡的に中小企業面に生ずる影響につきましては、すでに織機処理に対する予備費支出を行いましたごとく金融面その他において適時適切にその対策を講ずる方針であります。つ
 また小売商業の振興をはかりますため、消費生活協同組合、購買会及び小売市場の事業活動の規制を内容とする小売商業特別措置法案を今国会に提案いたしたいと思っておる次第であります。
 第五に、鉱工業技術の振興であります。以上の諸施策を推進いたしますための基礎条件として、鉱工業技術の画期的な振興が特に必要であることを痛感するのであります。御存じの通り欧米諸国の技術進歩はまことに目ざましいものがあり、わが国はこれに著しく立ちおくれていると存ずる次第でありまして、この際官民力を合せてその推進をはからねばならぬと存ずるのであります。
 これがためまず国立試験研究機関の設備の更新近代化等によりその機能の強化拡充をはかり、産業界からの各種の要請に応じ得る体制を整備いたしますとともに、今後最も緊急を要する電子技術、オートメーション技術、分析技術及び生産加工技術等の基本的かつ新規の技術の研究のほか、新たにエネルギー技術、汚水処理技術等の研究につきましては、各試験所の能力の総合的発揮に努め、迅速な成果を得て各界の要望に応じ得るようにいたしたいと存じます。
 また、民間研究活動の強化のため、重要研究の実施についての助成を一そう強化し、あわせて研究成果の普及徹底及び企業化の促進に関し、各般の施策を総合的に行い得るよう措置するものとし、特に中型輸送機の研究試作については、その急速な促進をはかる所存であります。
 以上により、今後における通商産業政策に関する基本的考え方と施設の概要を申し述べた次第であります。
#21
○長谷川委員長 以上で大臣の説明は終りました。
 大臣に対する質疑は一時保留し、午後一時に再開をいたします。これにて休憩をいたします。
    午前十一時五十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十二分開議
#22
○長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 通商産業の基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について、通商産業大臣及び経済企画庁長官に質疑に入るのでありますが、台風第二十二号等による中小企業の災害対策に関する問題について、発言の通告がありますので、まず本問題について調査を進めます。
    ―――――――――――――
#23
○長谷川委員長 参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。
 本問題について商工組合中央金庫理事の島田君を本日の委員会に参考人として御出席願うことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#24
○長谷川委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
    ―――――――――――――
#25
○長谷川委員長 次に質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。中村幸八君。
#26
○中村(幸)委員 私は過般九月二十六日の夜、本邦に襲来いたしました台風二十二号による被害の対策に関する件につきまして、政府当局並びに関係方面に御質問をいたしたいと思います。
 台風二十二号は二十六日の夜、南方海上から伊豆半島に上陸いたしまして、東海、関東、東北、北海道、わが国のきわめて広範囲にわたる地域において甚大なる被害をもたらしたのでありますが、特にそのうちでも伊豆半島一帯は、最大雨量六百ミリという未曽有の降雨に襲われまして、半島中央部を貫流する狩野川を初めといたしまして各河川は随所ではんらんし、その被害は目下判明いたしたところだけでも死者、行方不明者千名をこえるというような状態でありまするし、またその被害総額も百五十億円に上るという、きわめて大規模なものとなっておるのであります。この災害につきましては、現地静岡県におきましても、直ちに十九被災市町村に災害救助法を発動し、死傷者の収容、救助やあるいは道路、橋梁、河川の応急復旧はもとより、また被災地の衣料、食糧の補給、防疫等、これが救済に総力をあげておるのであります。また政府におきましても関係各省を網羅して、災害対策本部を二島に設置いたしまして、山口国務大臣がみずから現地にあって指揮し、災害対策、復旧対策に大わらわの努力をいたしておるのでありまするが、この被害の程度がきわめて広範囲にわたり、かつ激甚でありまするために、これら災害対策には今後政府においては一そうの努力を払っていただきたいと思うのであります。
 つきまして私は本委員会関係の災害対策といたしまして、中小企業者に対する災害復旧資金の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。御承知の通り、この伊豆地方は有名な観光地帯でありまして、旅館、料理屋あるいは観光に関連いたしました中小企業がきわめて多いのでありまするが、これらの旅館、料理店等がほとんどもう使いものにならないような非常な被害を受けておるのであります。しかるにこれらの旅館、料理屋等は銀行における貸し出し対象としてその順位が低いのでありますが、本災害にかんがみまして、これらの貸出順位の問題あるいはまた今すぐ借りても返すというめども立たないわけでありまするので、据置期間をおくとか、あるいは長期のしかも低利な復旧資金を貸し出す、あるいは生活資金を貸し出す、こういう面におきまして商工中金あるいは中小企業金融公庫、あるいはさらにまた国民金融公庫等の資金を動員いたしまして、対策に尽力していただきたいと思うのでありまするが、これに対する政府の今までとられました処置、また今後とられんとする対策につきまして、まずお尋ねいたしたいと思うのであります。
#27
○高碕国務大臣 今回の災害につきましては、まことに被害地に対してお気の毒な次第でありまして、通産省といたしましてもできるだけ迅速に対策を実行いたしたいと存じておりますが、ひとり静岡だけでなく、江東地区及び川口地区等も逐次検討いたしておる次第でありますが、被害の状況は全関東にまたがっておるようでございます。そこで罹災された中小企業に対する金融の措置といたしましては、中小企業金融公庫及び商工組合中央金庫に対しまして、第一に償還期限の延長、これは公庫については通常五年となっておりますが、これを七年ぐらいに延長しよう、中金につきましては通常二年を三年ないし五年程度に延ばすということをきめておるわけであります。なお据置期間の延長、これは公庫は六カ月になっておりますが、これを一年程度に延長する、また中金の方は一カ月になっておりますが、これを六カ月程度までに延長するように考えております。また担保の条件でございますが、これはなかなかうるさい担保条件がありますが、これをできるだけ緩和いたしまして、保証協会の保証のある場合は無担保にする、こういうことに進めたいと思います。
 それから貸出手続だとか、貸出事務を迅速かつ簡素化することについて、これを実行するように命じておるわけであります。
 それから元来旅館というものは今日までの金融公庫の対象となっておるのは、衛生設備については金融公庫の対象になっておりますけれども、そのほかのものは対象になっていないのですが、これははなはだ今日の場合気の毒だ、こう存じまして、旅館の建物そのほか全体のものにつきましてこれを延長するように一つ取り計らいたい。旅館そのほかそういう方面の被害が非常に多いわけでありますが、これをそういうふうに持っていきたいと存じております。期限の到来いたしております返済金の支払いの点でございますが、これは差しあたり延期しよう、いつまで延期するかということはまだきめておりませんが、差しあたって延期する、こういう方針をとっております。これは被害状況に応じましてきめたいと考えております。その他の点につきましては、また詳細のことは御質問によりまして、政府委員から御答弁いたします。
#28
○中村(幸)委員 いろいろ貸し出しの対象を広げる問題、あるいは償還期限の延長の問題、あるいは担保条件を緩和する問題、いろいろ適切なる御措置をとっておられるようでありまして満足でありますが、さらに一そうお気の毒な被災者の身の上を考えてお骨折り願いたいと思うのであります。つきましては、伊豆地方だけ申すのはどうかと思いますが、伊豆地方に対する資金融資の総額について、どのくらいお考えになっておりますか。
#29
○岩武政府委員 伊豆方面、静岡県下の被害状況につきまして、昨日でありますか、静岡県の商工部長が報告書を持って参りました。それによりますと、商店、工場、旅館等の被害は大体三十億円弱、資金の所要量が設備資金として約十九億円弱、運転資金として五億円弱、こういうふうになっております。この金額は一応の試算でございますので、実際に金融機関から復旧資金を出しますにつきましては、いろいろとまた変動があるかと思います。また政府関係の金融機関から、あるいはその他の地元の金融機関からどういうことになるかという点もいろいろ検討して、できるだけこの要望を満たせるようにはしたいと思っておりますが、何分金額のことは、まだ十分な調査あるいは審査等も済んでおりませんので、はっきりいたしておりませんが、大体県側の見方はこういうことでございます。
#30
○中村(幸)委員 時間がありませんので簡単にいたします。もう一点だけ、この災害によりまして電気施設がめちゃめちゃにこわれてしまいまして、被災者はまつ暗やみの中で、非常な不安におびえて毎日の生活をしておるようなわけでありますし、また電気施設が破壊いたしております関係上、復旧もはかばかしくないという実情でありますので、この電気施設、配電施設の整備につきましては早急にお願いしたいと思いますが、そちらの方の関係の局長からぜひ御答弁願いたいと思います。
#31
○小室説明員 このたびの台風被害は、御指摘のように、東電の管内において一番大きかったのでありまして、実は一時二、三割方発電所が停止したというような状況でございますが、現在では伊豆半島の関係の七つの発電所、主として狩野川のものでありますが、それを除いては全部発電所としては復旧いたしました。ところで伊豆半島でありますが、これは主たる発電所が二本やられまして、この関係で一時最悪の事態に陥ったのでありますが、半島内の残った発電所だけで電気を供給したというような始末であったのでありますが、これも一本は復旧いたしまして――応急的な復旧という傾きもありますが、現在では主要な町村は全部送電しております。大体平生の負荷と申しますか、平生の電力の需用に対しまして七割三、四分くらいの送電をやっておるわけであります。まだ送電線も完全に直っておりませんし、また配電線に至りましては、対象である人家が相当惨たんたる状況にありますために、ごく近所まで配電線が行っておって点灯ができないという状況でありますので、これは電力会社を督励いたしまして、できるだけすみやかに最終的な復旧をはかりたい、こう考えております。
#32
○長谷川委員長 勝澤芳雄君。
#33
○勝澤委員 台風二十二号に関する特に伊豆地方の被害の概況につきましては、今中村委員から言われましたように、公共施設百五十億といわれ、個人の損害を含め、その被害は実に甚大なものがあろうと思うのであります。その具体的な対策につきましては、今大臣からお聞かせをいただきました。私は中村委員の御質問の中から少し補足をしてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、中小企業庁長官からは被害の概況として三十億弱、設備資金として約十九億、運転資金として五億、具体的に今県の商工部としての要求が出されておるが、これについてはまだ調査が行き届いていないということで、金額の特別な手当の問題については具体的な金額が出されていないのでありますが、中小企業庁として金額をどのように見積られて手当をしようとされておるか、その経過についてお聞かせ願いたいと思います。
#34
○岩武政府委員 これはいろいろ現実の借り入れの申し込み等を見ませんと、はっきりつかめないと思います。県の方もこれは一応の概算であるというふうな説明でございます。やはり具体的な場合に即しまして計算いたしませんと、なかなかつかめないかと思います。従って金額を幾らのワクを設けて云々というところまで、まだ至っておりません。もう少し現地の金融機関なり、あるいは関係当局の調査を待ちたいと思っております。川口地区あるいは江東地区でも工場方面については、かなり被害もありますが、それもいずれも同様でございます。
#35
○勝澤委員 私は今度の問題については、従来と変ってやはり特別にワクを設けてやるべきだ、こういうふうに考えておりますが、その点についてはいかがでございましょうか。
#36
○岩武政府委員 何億を限度としてというふうなワクを設けた方がいいか悪いか、ちょっとまだわれわれとしても所要額の的確な数字がつかめませんので、とりあえずとしてワクを設けませんで、中金なりあるいは公庫なりの持っておりまする資金の中から操作していきたい、こう思っております。もうすでに貸し出しを始めておるところもございますので、ワクの決定にとらわれますとおくれますから、お話があり、調査できましたものから逐次復旧資金を出していきたい、こう考えておりますが、いずれもう少し全体の状況がわかりましてから、あるいはそういうふうなワクというものも考えなければいかぬかと思っております。
#37
○勝澤委員 もう随時貸し出しをしているようでありますので、私はこれ以上金融の問題については申し上げませんが、やはり特別の措置を講ずる用意があるというふうに理解をいたしておりますし、特に先ほど静岡県の議会の代表からも説明がありましたように、観光伊豆の火は今消えておる、早く火をつけてもらうための国の施策を待っておる、こういうことでありますので、早急に善処を要望いたしておきます。
 次に、特にこの地区には鉱山の関係があるわけでありますが、鉱山関係の被害の状況、並びにそれに対する対策等についてお聞かせを願います。
#38
○福井政府委員 伊豆地方には中小の山がだいぶあるのでございますが、その中で今回の台風の被害を受けました最も大きいのは大仁にございます大仁鉱山のようでございます。通産省としましては東京通商産業局の管内でございまして、局長、鉱山部長を現地の被害状況の調査に派遣をいたして調査をいたしたわけでございますが、大仁鉱山の被害につきましては、社宅が流出いたしますとか、あるいはまた死亡者、行方不明者等多数出て、非常に気の毒な状態のようでございまして、坑内も水没をいたしておるような状況のようでございます。なお持越鉱山というのが中外鉱業株式会社の所有鉱山でございますが、これも大体同じような、社宅でありますとかその他の施設が流れますとか、あるいはまた従業員、家族等の死亡者、あるいは行方不明者、こういった者が出ておるような状況であります。もう一つ中外鉱業の持っております湯が島鉱山というのが湯が島にございます。これも坑内が水没をいたしておるようでございまして、社宅の流失でございますとか、あるいはまた行方不明者が若干出ておるようでございます。なおこの付近は橋梁が全部流れておるようでございまして、交通が杜絶しておるようでございます。それから土肥に土肥鉱山というのがございますが、これも坑内の浸水がはなはだしいようでございまして、停電等のために坑内排水がうまくいかない、こういうような事情にあったようでありますが、現在では電気も通じまして排水を行なっておるようであります。そのほか日本鉱業の持っております河津鉱山、それから伊豆珪石鉱山、これは東海工業が持っております。こういった山がございますが、こういったところもそれぞれ相当の被害を生じておるようでございます。
 ごく簡単でありますが、大体以上のような状況でございます。
#39
○勝澤委員 被害の状況はわかりましたですが、それに対する鉱山局としての今日まで行なってきた復旧の経過につきまして、一つ御説明願いたいと思います。
#40
○福井政府委員 今後この根本的な復旧を会社の方と十分連絡をとってやっていかなければならぬわけでありますが、いずれにしましてももう少し詳細に会社側と復旧計画を練りまして、方針を立てていきたい、かように考えております。
#41
○勝澤委員 中小企業金融公庫側の方にお伺いいたしたいのですが、従来災害に対して金融公庫としてどういうふうに扱ってきたか、また特に今回の伊豆災害については今日まで扱っておる状況について御説明願いたいと思います。
#42
○中野説明員 今回の災害につきましては、静岡県及び川口地区に理事を派遣いたしまして、とりあえず現地の県庁、市役所あるいは代理銀行等といろいろ事情の聴取、打ち合せをいたしておるのでございまするが、静岡県下については先ほど中小企業庁長官からお話があったような、大体のただいままでのまとまった数字の連絡がございました。なお昨日県の商工部長のお話では、きわめて概算であるが、公庫へは先ほどの二十二億のうち七、八億程度の融資となるであろうというようなお話も口頭で伺ったのであります。いずれにいたしましてもこの地区の復旧については、もう少し公庫に対する資金の数字の固まった上で融資の対策をきめたい、かように考えております。ただ静岡県下の場合は、ただいまの鉱山もございますが、旅館、それから物品販売業の関係が多いので、一般製造工業は比較的少いようでございます。ところが手前どもただいま心配いたしておりますのは、旅館の復旧になりますと今公庫の貸し出し最高限度一千万円というのでは不足するのではないか、かように考えられますので、これももう少し事態が判明いたしましたならば、公庫資金と、地元なり従来の取引金融機関とカを合せて、復旧に要する資金の供給をやるというようなことに相なるのではないか、かように考えておる次第でございます。
 なお、ついでに川口地区の状況も調べたのでございまするが、約五百の鋳物工場、それからそれらの仕上げ加工工場六百くらいが、倒壊はほとんどございませんが、浸水の災害を受けまして、かつ操業不能による損害、製品なりあるいは原材料、砂などの損害合計十億くらいがただいま報告されておる損害総額でござでいまして、川口鋳物協同組合などでは二、三億の緊急な復旧資金を得て一日も早く事業を始めたい、こういうような状況でございます。
 東京地区につきましては、これも浸水の被害でございまするが、いろいろ原材料、製品、製紙関係とかゴム工業が被害が多いようであります。その被害総額については、まだ私の方で報告を受けておりません。つかんでおりません。
 公庫は、従来災害のたびに災害扶助法の適用のあった地域内で、公庫の対象である鉱工業あるいは商業等の被害について公庫融資をやっておるのでございますが、従来の例を申しますると、大体先ほど御指摘のワクというようなことも、復旧計画が固まるに従って要望書として各地方からワクの設定を要望せられております。それに基いて他の金融機関との協調の関係もございまして、おのずからワクというような運用の限度を大体きめて参っておるのが従来のしきたりでございます。
 それから従来はとりあえず原状復旧、こういうことにいたしまして、応急の原状復旧について先ほどお話のありました通り、貸付期限なり、担保条件なり、そういう融資条件の実情に即するような緩和をはかりまして融資を行なってきておるのでございます。
#43
○勝澤委員 従来とかくこういう対策は手おくれになりがちでありましたが、特に観光シーズンを控えておる伊豆にとっては一日を争うことでありまして、特に通産省といたしましても、いろいろな施策を行なっておるようでありますが、一つこれらにつきまして、早急に実施をし、特に特別な措置を要望いたしまして私の質問を終りたいと存じます。
#44
○田中(武)委員 ただいまの勝澤委員の質問に関連してちょっとお尋ねいたします。先ほど岩武中小企業庁長官は、この災害についての特別な貸付に対してワクを設けるのがいいかどうか、まだ検討してみないとわからない、こういうような御答弁だったと思います。そこでまず最初にお伺いしたいのですが、中小企業金融公庫、それから国民金融公庫、それから商工中金、これらの関係の方にお伺いしますが、特別なワクが政府から与えられずしてすべての災害地の要求に応じ得るかどうか。もう一つはそういうことによって一方へ予期していない資金を貸し付けるわけですから、そういうことでその方べ十分な貸付をやった場合に、他の中小企業に対する金融に応じ得るかどうか。それからそういうような場合に特別な措置を講じなければ、申し込みに対してやはり普通の基準でいった場合には貸し付けられない、こういうような場合も生じ得ると思いますが、そういうような点については貸付者側ではどういうふうにお考えになるか、それと同じような点について長官はどのようにお考えになるか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
#45
○岩武政府委員 この貸し出しの基準等は、先ほど大臣から申し上げましたように、緩和してできるだけ復旧資金の実情に合うように措置いたしたいと思います。ワクの問題はこういうふうに考えております。被害の資金需要のワクがはっきりいたしませんと、いたずらにワクということにとらわれてもなんでございますから、できるだけ早目に金が動くように措置されておるわけでございます。それでその結果、ほかの金融資金需要に影響を与えやせぬかという御質問でございますが、これも申し上げましたように金額いかんでございます。特に先ほど来伊豆の地区のことは申し上げましたが、ほかの地区、先ほど申し上げますように比較的工業関係等に被害が集団的に発生しておりますのは、川口付近と東京の江東地区とこの伊豆でございます。このあとにあげました二つの方がはっきりいたしませんので、一体どの程度の金を政府金融機関から見たらいいのか、よくわかりません。その金額のいかんでは、あるいはほかの方に回す金をそっちへ回して資金需要を押えることになるかしれません。これらにつきましてはいろいろ中小企業金融の特性等を考えまして、場合によっては全体の本年度の貸出計画、ことに第三・四半期の貸出計画をふくらますということも必要かと思っております。まだどの程度になってどうかということもわかりませんので、そういう心がまえでおることだけを申し上げておきます。
#46
○西村(直)委員 関連して簡単に通産大臣に御質問申し上げます。もちろん今回の二十二号台風では、伊豆を中心に各関係地は、非常な被害をこうむっておりまして、大へんわれわれ関係者はお世話になっております。問題は建設委員会あるいは農林委員会またこの委員会、社会労働委員会等でそれぞれ論議する問題でございますが、山口国務大臣も特に伊豆の災害に関して災害対策本部長として、また総理大臣も現地視察に行かれたようであります。そこで問題は今のワクあるいは金利の問題というようなものが当然出てくる場合に、特別立法というようなことについて、もちろんこれはまだ政府は態度をおきめになるには、あるいは被害の状況の真相をおつかみになっていない段階だと思いますが、それに対してのお心がまえ、これだけ承わっておきたい。この災害を建て直すについてはおそらく特別立法をしていただかないと、もちろん公共事業費関係もありますが、同時に金融等についてもワクであるとか、あるいは金利の問題であるとかいうようなことで制約を受けたのでは、建て直しはできないのではないかという不安感が現地では非常に強いようでございます。一言その点についての御所信だけ承わっておきます。いずれその点については後日あらためまして詳細承わりますが、大臣から一つ御答弁を願いたいと思います。
#47
○高碕国務大臣 実はきょうの閣議におきましても、山口本部長からいろいろ静岡県の被害の報告がありましたが、実際事態があまり急速であったから、みなぼう然としておって、まだどれだけの金が要るかという金融のことまで考える時期に達していない、これはごもっともだと思います。従いまして所要資金がどれだけ要るかというこの実情によりまして、中金の方面等におきましても、これは当然別ワクを設けてやるべきものだと存じますが、それでなお不足するといった場合に特別立法の問題も――これは二十八年の特別立法がありますが、中には時限法で期限が切れているものがあります。そういう点を考慮いたしまして、政府といたしましても特別立法をやるかやらぬかということ、実情に応じてきめたいと思っております。
#48
○長谷川委員長 この際商工組合中央金庫理事島田参考人と、石渡国民金融公庫副総裁からそれぞれの御意見を、簡単でよろしゅうございますから述べていただきたいと思います。
#49
○島田参考人 今回の被害につきましては、私の方が大体静岡、川口と大きく被害を受けましたこの二地方につきまして、いろいろ連絡をいたしておるわけでございます。金額につきましてはまだはっきりつかみ得ない状況にございまするけれども、昨日静岡県の商工部長のお話によりますと三億ないし五億程度必要になるのじゃなかろうかというお話でございました。その対象が主として旅館の施設でございまして、できるだけ早く何とかしてもらいたいというお話のようでございます。川口につきましては私の方も平素から相当取引がございますので、最近いろいろと連絡いたしておりますが、大体一億五千万ないし三億程度これも必要になるのじゃなかろうか、こういう連絡があったのでございます。
 先ほどからお話ございましたワクの設定につきましては、過去におきまする災害融資につきまして、実は必要に応じてこれを設定したという例もあるのでございますが、今回の場合はまだはっきり金額等が把握できるという状態にございませんので、必要に応じて融資して参りたい。現在のところかように考えております。なおかような融資につきましては、どうしても簡易迅速な措置が必要であるというふうに考えまするとともに、どうしても長期の資金に要望が集まってくるのじゃないか。その場合に長期資金でございますと、本来ならば担保融資ということになるわけでございますけれども、担保をとるいとまもございませんし、また適当な担保がないという場合が多いのではないかと考えております。従いまして県の信用保証協会の保証制度を活用する、あるいはまたできますれば従来もございましたように県の損失補償制度、そういうような制度を活用さしていただきまして、できるだけ簡易迅速な措置をとって参りたい、かように考えておるわけでございます。
 期間等につきましても、従来五年まで融資しておりますが、必要に応じましてこれも考えて参りたい、かように考えております。
#50
○長谷川委員長 次に国民金融公庫副総裁の石渡忠四郎君にお願いいたします。
#51
○石渡説明員 国民金融公庫について申し上げます。
 国民金融公庫といたしましては現在伊豆の方に大体千七百口、三億円貸しております。これについては据置を設けるとか、償還期限を延長するとか、それぞれ実情に応じて処置をとるようにいたしております。
 それから今度の災害に対しての応急資金につきましては、今ちょうど伊豆の伊東で県の方を中心として集まって、各金融機関で打ち合せしょうというのでやっているはずでございます。私の方から理事の松田が出ておりまして、大体振り合い、まあワクということはどうかと思いますが、やはり県の方としてはこの機関はこれくらい持ってくれという機関の大体の振り合いがあると思います。それについては大蔵省によく相談して、御指示を仰いできめたらいいのじゃないかと考えております。私の方には現在三億円くらい用意してもらえばいいというふうなお話がございましたが、その点についてはよく検討いたしまして、大蔵省の御指示をいただきます。
 それから資金のことでございますが、これは現在非常に窮屈でございます。第三・四半期分として、すでに四十億円くらいよけい出していただきたいということを、大蔵省にお願いいたしておるような実情でございまして、今回二億でも三億でもよけいその方にさくとなると窮屈さがひどくなるので、お金は出していただきたい、こう考えております。
#52
○長谷川委員長 災害対策の問題については、この程度にとどめておきます。
    ―――――――――――――
#53
○長谷川委員長 通商産業の基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について大臣に対する質疑を順次許可をいたします。加藤鐐造君。
#54
○加藤(鐐造)委員 私はまず三木経済企画庁長官に質問いたしまして、関連した質問があるだろうと思いますので、高碕通産大臣からも適当にお答えを願いたいと存じます。
 最初にお伺いしたいことは、今日の長期にわたる不況の見通しでございます。今日の不況が非常に深刻な様相を呈して参りましたのは、大体昨年の七月ごろからで、すでに一年有余にわたっておりますが、申し上げるまでもなくこうした長期の不況は戦後初めてでございます。従って政府として、この不況がいつ好転するかという見通しについては、相当的確な材料をもって判断していただかなければならないと思うわけでございます。本日両大臣からお述べになりました御意見では、まだ好転するというような見通しを持っておいでにならないのではないかと思うわけでございます。そこで三木長官はこの不況が短期のものであるとお考えになるか、長期のものであるとお考えになるか、その点からお伺いしたいと思います。
#55
○三木国務大臣 景気の見通しでありますが、こういうことは言えると思うのです。過去のことはともかく、将来のことである。下期における最終需要といわれておる個人消費、設備投資、輸出財政、こういう面から見ると、いずれも上期に比して設備投資が横ばいでありますが、それ以外の、今申し上げましたようなものは、上期よりも下期の方が割合が高まっている。これは購買力の源泉であります。これだけの購買力の増があるわけでありますから、どうしても生産活動もこれは高まらざるを得ない。従って下期にこのなべ底景気といわれているものが一そうずれ込んでいくとは見られない、購買力があるわけでありますから。そこでそれならば、景気の上昇というものが非常に大きなものかというと、そうはいわれない。鉱工業生産の面においても、上期よりは下期の方が約七%近く鉱工業生産が高まるのではないかと見るわけであります。しかし年度全体を見ると、これはまあ横ばいのようなものである。そこでどうしてもこうなってくると単に日本の経済動向ばかりでなくて、世界の経済動向というものも見なければならない。アメリカ等の経済は大体五月を底入れとして、その後上昇をしておることは間違いがない。欧州はアメリカに比べて停滞ぎみでありますが、大体世界の経済もやや立ち直りつつある。ただしかし大きく景気が上昇するというような要因には乏しい。従ってこの景気の沈滞というものは、今も来年からよくなるというふうに言い切れる段階ではない。やはり相当な長期の沈滞というものが続くが、その沈滞というものが下へ向いていくのではない、上向きになっていく。その間政府がある程度の景気水準を維持するということは、日本においても雇用問題の解決のためにも必要でありますから、政府はあらゆる施策を通じて景気をこれ以上ずれ込ますようなことのないように、できる限り経済の成長を高めていくということの施策を伴っていけば、景気が非常なこれ以上な不況になるとは言えない。前途は明るい見通しもある。それはあまり大きな期待は持てぬけれども、日本の経済の状態は暗いものではない。こういうことが言えると思います。
#56
○加藤(鐐造)委員 その程度の見通しでございますと、特別国会当時から政府がお述べになったことではないかと思います。特別国会当時の政府の不況打開についての見通しについてはいろいろ各大臣の間に食い違いもあったようですし、矛盾もあったようですが、大体九月ころには好転するから特別にてこ入れをする必要がない、いわゆる積極的な施策を講ずる必要はない、こういうことが一貫した政府の答弁であったようでございます。ところが九月になっても、十月になってもその特別国会当時政府のお考えになった通りにはなってこない。従って今三木長官は明るい見通しだけは立ったとおっしゃいましたけれども、しかし現在の状況から見ますると、もうすでに非常な社会不安を起しつつあるということが言えると思うのでございます。中小企業の倒産が相次いでおるということ、倒産しなくともいわゆる操短は著しいものがあるということ、それからさらに大企業の方面におきましても、すでに長い間の操短が各産業についておおむね続いております。特に繊維関係においては著しいものがありまして、最高四割五分程度の操短が続いておるわけでございます。従ってその間に多くの失業問題が続出しておるというようなことから、非常な社会不安を起しておる。これでは私は明るい見通しとは言えないと思う。政府としては一応明るい見通しというものをここにお述べになったような理由からおっしゃるけれども、一般国民の間では実感として明るいものが出ておりません。社会不安がつのりつつあるという状況であることは間違いないと思う。そこで私は今明るい見通しが立っておる理由を多少お述べになりましたが、今のお話では年末へかけての国民の需要の伸び、あるいは年末の輸出に対する期待とかいうような程度でございまして、しかしこれも私は果して的確にそういうことが今日の状況から言えるかどうかということは、これまた困難ではないか、従来の例から見て、多少はそういうことになるという淡い期得にすぎないのじゃないかというようなことが考えられるわけであります。そこでそういうことは将来のことで水かけ論ですから、さらに具体的にお伺いしたいことは、今日滞貨の重荷というものが相当市況を圧迫しております。そこで滞貨の調整が非常に長びいてはかばかしくいかぬということはお述べになっております。それは経済企画庁からお出しになりました経済指標を見てもわかります通り、滞貨は各産業についておおむね滅っておりません。ものによっては滞貨の数字がふえておる。こういうことがこの指標に表われております。この点についてどういうふうにお考えになりますか。滞貨の調整ということはこれらの不況打開、業界を好転させるところの一つの大きな要素であるということは言うまでもないと思いますが、この滞貨の調整ということが、まだ全然見通しがついておらないことについて、どういうふうにお考えになりますか。
#57
○三木国務大臣 適正な一つの滞貨といいますか、適正な在庫というものがどの程度であるかということは、実際なかなかむずかしい。物貨の前途、金融の状態、いろいろのものが在庫に対しては影響するわけであります。しかし問題は、メーカーの製品在庫、この水準がやはり高いとわれわれも判断するわけであります。大体生産の水準と製品在庫の水準というものは似たものが好ましいのではないか、そうなってくると、生産の水準は昭和三十年を基準にしておるのですが、一四〇見当、製品在庫は一五〇、テン・ポイントくらい高いのであります。ほかのよりもメーカーの製品在庫が滞貨の一番中心の問題であります。従って操業短縮はもう少し早く終るのではないかと思ったのでありますが、大体十二月まではかかる。ものによっては多少ずれるものもありますが、大体十二月までくらいはかかっていく、こういう考えで、これが卸売物価に対しての重圧にもなっておるし、生産活動を鈍化させる原因にもなっていることは事実ではありますが、しかしこれを在庫はそのままにしていいとは思わない。やはり経済のアク抜きのためには、在庫の整理が好ましい。従ってこれは操短などを行いますと同時に、賠償などにも、先方に押しつけるわけにはいかぬが、相手国が希望するならば、消費物資も賠償の中に一部繰り入れていいという考え方のもとに、今外交折衝をいたしておるわけであります。企業者側の操短による努力、また滞貨の整理ということに対しては、政府自体もできるだけの施策を講じていく、そうして適正な在庫という状態に早く持っていきたい、こう考えているわけであります。
#58
○加藤(鐐造)委員 生産者の在庫調整がはかばかしくいかぬということから、極端な操短が今日行われており、さらにこれが一そう強化されようとしている事実が、いろいろな面に現われているわけでございます。特に著しい例といたしましては、繊維紡績産業に現われておりますが、最近鐘紡では、単に各工場の操短を実行しているだけではなくて、工場の休止をやろうというので大きな問題を投げかけております。すでに三工場の工場休止を発表しているというような状態です。これは私は決して、在庫調整が進みつつあるからだんだんと明るくなってくるということには、この事実を見てもならないと思うわけでございます。要するに業界が、この不況は今後相当長期に及ぶ不況であるというふうに見ているから、こうした従業員の首を切って社会不安を起してでも、これをやろうという極端なやり方をやらんとしているということが言えると思うのでございます。業界は、政府がこの不況は今後それほど長期にわたらないとお考えになりましても、相当長期にわたるという見通しのもとに、こういう極端な処置をとろうとしていると思いますが、その点についてのお考えはどうですか。
#59
○三木国務大臣 鐘紡の例を御指摘になってお話しでありましたが、現在企業によって確かに不況産業があることは事実であります。しかしどの産業もというわけではない。でこぼこがある。その中において一番問題はやはり繊維産業である。これはやはり全体として設備過剰である。ことに東南アジアなどの後進国において、そういう繊維工業などが発達していくことは、歴史の必然であります。そういう点で、貿易の市場にも変化があった。どうしても繊維工業というものが、現在の能力を維持していけるとは思わない。そこで政府においても、全部の産業にそういう考えを持っていく考えはないのでありますが、繊維産業の設備過剰の現状にかんがみて、綿、スフ、人絹等の織機を七万台買い上げて、この面からも生産の規模を適正にすることに協力をしようという方針をきめたということは、加藤君御承知の通りであります。こういう鐘紡の問題も、繊維産業という、今日においては設備過剰な産業の一環であるということと、鐘紡自体に問題がないとも言えない。従ってこの鐘紡の事件、全産業にこういう状態が波及するものとわれわれは見ていない。これは非常にいろいろな社会問題を投げかけるわけでありますから、この企業の状態については非常な関心をわれわれは払っておるのですけれども、鐘紡の事態が全産業に波及するものとは思わない。やはりその会社の特殊な事情というものも相当ある、こう判断しておるわけであります。
#60
○加藤(鐐造)委員 各企業についてでこぼこがあることはおっしゃる通りであろうと思います。多少でこぼこのあることは事実でございますが、しかし今長官が言われたように、繊維産業の中で鐘紡という企業だけが、特殊な存在であるというようなお考えは間違いではないかと考えます。と申しますのは、あまり一つ一つの会社の名前をあげたくございませんが、これに続くものに大東紡がございます。それから私が調べたところによりますと、その他の十大紡の中でも、こうした鐘紡にならおうとするところの考え方が相当あるようでございます。従って、これは鐘紡の成り行きを見ておるという点が相当あるようでございます。そこで、これが単に今あなたがおっしゃったように、一鐘紡だけの特殊事情によるものならば、まだ問題は小さいわけですが、これが全繊維産業に波及するということになったならば、どうなります。こうした問題に対して、政府はどういうふうに対処しようとしておられるか。それは企画庁だけでなくして、むしろその対策の問題は通産省の問題でございますので、通産大臣からも御答弁を願いたい。
#61
○高碕国務大臣 先ほど三木長官からお答え申しました通り、全体的にいえば、この不況というものは前途は幾らかの明るみが見えておりますが、産業によりましては、なおこれから先もっと不況に入るものもあるということは事実でございます。特に繊維産業につきましても、これは御承知の現状でありますが、中にも綿製品等を主体といたしております企業につきましては販路の市場が東南アジアにおいては中共の製品に圧迫され、そのほか一般に不況でありますから、そういう点から考えて、これはある程度は合成繊維なり、あるいはそのほかの繊維との混織とかいうことについて、繊維産業全体としてのあり方は、さらにもう少し考えていけば、これは必ずしもそう悲観したものでないと考えますが、特殊の会社におきましては相当これは整理さるべきものだということを覚悟しなければならないと思います。同時にまた、これに引き続いて私ども今日頭を悩ましておりますのは、石炭の産業でありまして、これまた今日の状態においては、滞貨が予想以上に大きくふえておりまして、どうしてもこれに対抗するためには、ある程度の生産制限を、さらに一そう強化せなければならぬという状態でもありますが、これの対抗策として、外国から輸入しますエネルギー資源である油の輸入の制限を加えるようにいたしておりますが、なおかつこれでもまだ相当問題が起るだろうと思います。従いまして、ある種の産業については、今後失業問題が相当出るものという覚悟を持って進んでいきたいと存じておるわけなのでございます。これはできるだけ失業者を出さぬということのために、従前ある程度資本を蓄積しております大企業に対しましては、失業者を出さぬ方針でやってもらいたいという方針をとっておりますが、万一これが出たときには、別途の方法として失業対策を講じたい。これはどういう方法を講じるかといえば、政府の現在持っております事業の中で、できるだけ将来のものを繰り上げて、産業基盤の強化、あるいは公共施設というようなものについては、道路、港湾等について集中していきたい、こういうふうな考えで進んでいるわけなのでございます。
#62
○加藤(鐐造)委員 繊維産業の問題につきましては、他の同僚議員からの質問があるということも聞いておりますから、これが対策の問題につきましてはあとに譲りまして、質問を進めたいと思いまするが、今までの三木長官の御答弁によりましてもはっきりわかることは、日本の産業、経済というものが、従来輸出に大きく依存しておったことはいうまでもございませんが、その輸出の伸びが非常に弱いというところから、今深刻な不況から日本の経済が脱却できない、こういうことになろうと思うのでございます。先ほどお話しの、いわゆる設備の過剰ということは、神武景気以来各業界が競って設備投資をやって、そうしていつまでも神武景気が続くがごとく誤認して、そうして生産の過剰を来たした。そこへ輸出が急速に減退したというところに原因があるわけですが、そこで、今日世界全体の貿易の状況が不振になっておる。その影響で、日本の貿易も著しく伸び悩んでおるということがいえると思うわけでございます。その原因を一1体政府はどういうふうにお考えになるか、世界貿易不振の原因について、政府は具体的にどういうふうにお考えになるか伺いたい。
#63
○三木国務大臣 各地域によって違うと思うのですけれども、全体的にいうと、世界的に技術革新の波に乗って投資ブームが起った、これはどこも例外ではない、こういうことで、いわゆる需要に比して投資の行き過ぎというものがあって、これが一つの景気調節期に入っている。世界的に見れば一つの行き過ぎた経済に対する調整の時期である。これが全体的に世界の貿易の規模を縮小してきた。日本と関連の多い東南アジア地域などにおいては、第一次生産物と申しますか、農産物あるいは鉱産物、こういうものが非常な値下りをし、後進国が購買力を失った、こういうことが全体としての世界の貿易の規模を縮小している。日本の貿易の伸びは、非常に驚異的な伸びをしてきたわけであります。日本の輸出は世界に類例のないような伸びをしてきたのが、今年になってきて、御承知のように大体去年程度の輸出貿易しかできない。今年初めて貿易の不振ということが出てきた。今までは非常な伸びであった。従って、その世界的な経済の調整期に当る貿易の規模の縮小、これの余波を受けた、こう大局的には判断をしておるわけであります。
#64
○加藤(鐐造)委員 今おっしゃったような一つの理由をあげてみましても、いわゆるこの調整期が終って世界の貿易が活発になり、そうして日本の貿易が活発になるという見通しは、そこから出てこないと思うわけです。私の意見を申しますれば、今あなたがおっしゃったような事情から、世界各国であらゆるものができるようになった。しかも技術革命の時代に入って、すぐれた商品がどこでもできるようになった。そこでいわゆる有無相通ずるという貿易、要するにある国からない国に輸出するという状態ではなくなってきたと思うわけでございます。そして現在では同一の商品がAの国にもある、Bの国にもある、そのAとBとの間で、同一種類の商品の取引が行われる、こういう状態にだんだんとなってきつつあると考えられるのでございます。それを突破するところの日本の施策は、一体どういうところにあるとお考えになるか。
 それからもう一つの原因は、世界的なドル不足だと思うのです。現在ドルがアメリカと、それに続いてドイツ偏在しておることは御承知の通り。こうしたドル不足の状態でありますれば、やはり世界貿易は依然として片寄ったままで進んでいかなければならない。そこで欧州の共同市場計画というものが考えられて、欧州は欧州だけで取引をしていく、こういう状態になってきつつあるのであります。そうしますと、日本とヨーロッパとの間の取引というものは、少くとも日本の輸出というものは対ヨーロッパに関する限り、今までの状態では伸びない、こういうことが言えると思うわけです。
 それからもう一つ問題は、今もお話にありました東南アジアの市場の問題でございます。東南アジアは後進国としていわゆる購買力がないことはもちろんでございまするが、最近の大きな問題としましては、共産圏の生産力の急速なる発展から、特に中共が日本との競争を東南アジアの市場において打ち出してきた、こういう問題は御承知の通りであります。しかも中共は国家資本の力によって、あくまで東南アジアにおいて日本の商品をボイコットしょうという方針まで打ち出しております。そこで出血輸出といわれるようなやり方をして、すべての日本の商品と同一の商品を一割ないし、はなはだしきに至っては二割安で、日本の従来の市場に対して輸出をしておる、こういう問題があると思うわけでございます。中共の国内におきますところの最近の消費物資の生産が非常に伸びて参りまして、中共はこれをやろうとすればどこまでもやれる、日本の商品を東南アジアの市場から完全に駆逐するところまでやることができるということが考えられるわけであります。こういうような各種の事情の中で、日本の輸出を伸ばそうとするところの具体的な方策をお持ちになっているかどうかを伺いたいと思います。
#65
○三木国務大臣 大きく言えばやはり日本の産業構造、貿易構造ということが問題になってくると思います。中共は伸びていくのでありましょうし、そういう意味において東南アジアにおいて、今は限られた商品であるが、やがては日本の競争相手になってくるということは、これは予測がつくわけであります。そうなってくると日本は、今までは軽工業にウエートがあるわけでありますが、これが重化学工業ということに重点を置いた産業構造に変っていく。東南アジアの上を行くのだということでなければ、インドでもパキスタンでも、中共はもちろんのこと、そのほかの国でも軽工業というものは自然に育っていくものでありまして、そういう意味において日本の産業構造というものが変えられていかなければ、この問題は解決しない。それについてはやはり財政投融資等もありますけれども、投資のある程度の計画化というものは検討されなければならぬのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。そして貿易の、部分的な問題でありますが、これは加藤君が御指摘のように、各国ともいろいろなものができるようになったから貿易はできぬのではないかということは、そう単純に割り切るわけにはいかない。なぜならば、各国とも貿易がしたいのであります。したいためには買わなければならぬ、買わないで売るというようなことはできない。それからまたいろいろな特徴もある。たとえば一つのアメリカならアメリカを考えてみても、欧州市場でも、日本は日本としての輸出商品の特色があるわけであります。たとえば高級雑貨のごときものは開拓の余地が相当にあり、また日本も一面において行き過ぎて、経済のこういう調整をやっていろいろな摩擦を起しておりますが、また一面において日本の技術革新という面から設備の更新も行われ、物価面から見ても、大体日本の物価水準は国際物価で、海外の競争力というものもついてきている。こういう点でそう貿易の前途というものは悲観すべきものではない。また後進国については御指摘のようにドル不足であります。この点では日本としても絶えず後進国の購買力をつけなければ、後進国の貿易はなかなか拡大していけないし、大きく見れば政治の安定も期しがたいのでありますから、世界の世論になっている第二世界銀行のような、コマーシャル・ベースによらないで、後進国に対して開発資金を供与して、そしてそういう形において生活水準を高めて購買力をつけていく、こういうことに日本も協力したらいい、日本の国力に相応してそういうことに協力してもいいし、岸さんの言われるような東南アジア開発基金、あれもそういうアイデアの一つの現われでしょうが、何も岸さんにこだわる必要はない。第二世界銀行というようなものができれば、岸さんの理想も生かされるわけであります。そういう形において後進国に購買力をつける、これはやはり日本が声を大にして世界に言うべきである。日本も分相応の協力をして、そういう形で後進諸国の購買力を喚起していく。これだけをやれば輸出が増進するという一つの妙手はない。いろいろな総合対策を通じて輸出の拡大をはかっていくならば、貿易の前途必ずしも悲観に当らない、こう考えているわけであります。
#66
○加藤(鐐造)委員 いろいろな総合対策というものが非常に弱いので、先ほどからいろいろ質問しておるわけです。そこで今中共が日本のある市場を圧迫しておるという問題について、三木さんは産業構造を変えて、中共が雑貨で競争してくるならば、重工業でこい、こういうようなことを今おっしゃいましたが、それは政府の方針ですか。
#67
○三木国務大臣 これは政府の方針であるし、歴史の必然であります。そうでなければ東南アジアの経済協力といっても、東南アジアと競合する商品を日本が作って協力できるわけはない。日本の産業構造はできる限り――それを統制経済でやろうという考えではない、しかし民間もまた政府の施策も通じて日本の産業構造というもの、あるいは貿易構造というものが変えられなければ、アジアとの経済協力というものはできない、こう考えております。
#68
○加藤(鐐造)委員 それではもう一点、話のついでになりますから承わっておきたいことは、今三木長官はいわゆる日本の産業構造を重工業に重点を置いて東南アジアとの経済提携もやる、これは非常に確信を持っておっしゃいましたが、なるほどそれはけっこうですが、しかし従来日本の輸出貿易の大宗は繊維と各種の雑貨であったわけであります。そうすると、少くともこれらの日本産業の重要な部分を占めておるところの繊維、雑貨等については、東南アジアにおいて、もし市場を失えばそれもやむを得ない、あるいはヨーロッパにおいてもそういうことが言えるというふうにお考えになりますか。
#69
○三木国務大臣 それは、たとえば私が最初に、ヨーロッパにいろいろコモン・マーケットができても、高級雑貨のようなものはやはり市場たり得るのである、またアメリカでもけっこう市場たり得る、そういう点を申しました。そういう点で、日本の製品がやはり高級雑貨と申しますか、繊維製品のうちでも品質のすぐれたものならばいいが、もう重化学工業で、繊維は全然だめだ、そういうふうなものではない。やはり繊維産業というようなものも輸出貿易としての生命はありましょう。けれども、今日の生産設備を維持していくだけの市場というもの、私は無理だと思う。だから繊維産業というもののあり方にも、高碕大臣も言われたように、これは根本的に検討を加えなければならぬと思うのであります。全然余地がないということではないけれども、貿易の構造、産業構造がいわゆる軽工業に重点の置かれた日本の産業構造は、やはり次第に重化学工業に重点を置きかえられていかなければならぬ、こういうことを申し上げたので、繊維は国内においても相当な消費力を持っておりますし、貿易においても余地はあるのだけれども、重点というものはそうだ、それが日本の方向だ、こう申し上げたのであります。
#70
○加藤(鐐造)委員 もう一点だけ、ついでですから聞いておきたいが、今あなたがおっしゃったことは私も同感です。同感ですが、しかし今私が特にお聞きしたのは、東南アジアの市場に対して中共が、特に消費物資の生産が中共の国内において伸びてきて、日本の商品をこの市場から駆逐しようとして出血輸出をしてきておるということなんです。そうすると中共がこの方針を改めない限り、東南アジアにおいては繊維についても陶器についても、その他ミシン、自転車等に至るまで、完全に市場を失わなければならぬと考える。これは今あなたのおっしゃったような、単に現在までの日本の産業の行き方でもって、技術の革新とかというようなことで競争していくことができるかどうか。私はこれはできないと思う。そうすると中共において、重工業関係についてはあなたがおっしゃったように、中共もそこまで日本との競争を打ち出しておりませんから、重工業についてはそういう問題に逢着しておりませんけれども、軽工業関係についてはこれはもう深刻な問題です。あなたは、東南アジアにおけるところの繊維その他の雑貨については完全に市場を失っても、重工業に重点を置いて切りかえていけばいい、こういうようにお考えですか、これをはっきり承わりたい。今のような雑貨も捨てたものではない、必ずしも市場を失うものでもなかろうというような空漠とした考え方でなく、その点一つはっきり承わりたい。
#71
○三木国務大臣 失うようなことはあるまいというのではなしに、私は高級雑貨のごときは、将来やはり貿易はふやしていく余地がある、これはやはり市場を開拓できるのだ。だから、そう減りゃしないだろうという消極的な意見ではありません。これはやはりもっと開拓したらいい。中共との問題は中共自身がああいう共産主義の政治体制ですから、コストがあるのかないのかわからない。そういう点で、確かに一時的にはそういうこともあり得ましょう。しかし長い目で見れば、やはり品質においてあるいは価格において中共を追い越していくだけの商品を日本が輸出しなければ、また中共自身でもそういう状態がコストを無視した――今無視しておるかどうかということを断定することはできないかもしれませんが、しかしいずれにしてもやはり将来中共の工業力が伸びてくると思う。ある意味において中共との競争というものがアジアを背景にして起ってくることは――今ではありませんよ。やはり長い目で、十年なり十五年なりというアジアの将来を考えたときには、中共との競争ということをわれわれは考えなければならぬ。やはり日本の商品がそれだけの品質と価格の点において、そういう競争に耐え得るだけの態勢を持たなければ、一時的にどうこうしたところでだめなんだ。日本は今言ったように繊維製品においてもこれが全然だめだとは思わない。日本のすぐれた繊維製品については、まだまだ市場開拓の余地もあるくらいです。そこで繊維製品というものの将来を、中共にやられてそういう輸出は東南アジアはあきらめるのだ、そういうものではない、やはりもっと中共よりも高級なもので、しかも価格においても競争力のあるような点で、日本は東南アジアの市場というものも開拓すべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
#72
○加藤(鐐造)委員 質問はまだ続きますから次会に譲りますが、一つあなたの認識不足の点を指摘しておきたいと思う。というのは、今あなたは日本の技術の向上によって中共よりもすぐれた商品をもって競争していけばいい、こうおっしゃいましたが、それは理屈で言えばその通りですが、現在中共は日本の商品よりすぐれたものを東南アジアに輸出しておる。繊維にしてもそうです。私の特に詳しい陶磁器の関係におきましても、日本の最高水準をいくところの製品よりもすぐれた商品が、すでに東南アジアに出ておるのです。この事実を今あなたはどう考えられるか。今後今あなたがおっしゃったような方法でもって、中共と市場において競争していかなければならぬことは事実だけれども、現在すでにその点では後進国である中共が、繊維においても、特に陶磁器等においては、日本の商品よりすぐれた商品を生産して輸出しておるという事実、これは今あなたがおっしゃった中共は後進国だから、まだ日本だけのものはできない、だから安く売るのだというようなお考えは、これは少し認識不足ではないかという点だけ申し上げておきます。
#73
○三木国務大臣 それは加藤君の御指摘のように、ある商品に限ったならばそういうものはあり得るでしょう。しかし全体的な工業水準は高いといいえないのであります。一つの陶磁器について日本よりもいいじゃないかといえば、そうういうものがないとは言えません。ただしかし私が言うのはやはり長い目で見れば中共よりも品質や価格の点において、日本が競争力を持たなければ、東南アジアの市場を維持しようとしたって維持できるわけがない、それには今言ったように、中共自身一つや二つの種類でそういうものはあり得ても、全体としてはやはり中共の方が、日本の商品よりいいとはいえぬのだから、もしおくれておるものだったら中共を追い越すべきだ。日本の技術がそれだけの自信を持たなければ、どんなになげいたところで、それはやはり一つの経済の法則ですよ。品物がよくて安ければやられるのですから、そういう点で日本はそういうことを考えて、やはり今後の産業というものを育てていかなければならない、こう思います。
#74
○長谷川委員長 本日はこの程度といたします。次会は明日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。
    午後二時五十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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