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1958/11/01 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 社会労働委員会 第17号
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1958/11/01 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 社会労働委員会 第17号

#1
第030回国会 社会労働委員会 第17号
昭和三十三年十一月一日(土曜日)
    午前十一時十三分開議
 出席委員
   委員長 園田  直君
   理事 大石 武一君 理事 大坪 保雄君
   理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君
   理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君
   理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君
      小川 半次君    大橋 武夫君
      加藤鐐五郎君    亀山 孝一君
      川崎 秀二君    藏内 修治君
      河野 孝子君    齋藤 邦吉君
      田中 龍夫君    高石幸三郎君
      谷川 和穗君    寺島隆太郎君
      中村三之丞君    二階堂 進君
      古川 丈吉君    柳谷清三郎君
      山下 春江君    伊藤よし子君
      大原  亨君    岡本 隆一君
      河野  正君    多賀谷真稔君
      堤 ツルヨ君    中村 英男君
      長谷川 保君    八木 一男君
      山口シヅエ君
 出席国務大臣
        厚 生 大 臣 橋本 龍伍君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
 出席政府委員
        厚生政務次官  池田 清志君
        厚生事務官
        (保険局長)  高田 正巳君
        労働政務次官  生田 宏一君
        労働基準監督官
        (労働基準局
        長)      堀  秀夫君
        労働事務官
        (労政局長)  亀井  光君
 委員外の出席者
        労働事務官
        (大臣官房労働
        統計調査部長) 大島  靖君
        労働事務官
        (職業安定局失
        業対策部長)  三治 重信君
        専  門  員 川井 章知君
    ―――――――――――――
十一月一日
 委員井原岸高君、田中龍夫君、高石幸三郎君、
 細田義安君及び山下春江君辞任につき、その補
 欠として中山マサ君、山田彌一君、志賀健次郎
 君、亘四郎君及び小川半次君が議長の指名で委
 員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国民健康保険法案(内閣提出第一〇号)
 国民健康保険法施行法案(内閣提出第一一号)
 国民健康保険法の一部を改正する法律案(滝井
 義高君外十三名提出、第二十九回国会衆法第一
 三号)
 最低賃金法案(内閣提出第一九号)
 最低賃金法案(勝間田清一君外十六名提出、衆
 法第一号)
 家内労働法案(勝間田清一君外十六名提出、衆
 法第二号)
     ――――◇―――――
#2
○園田委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出の国民健康保険法案及び国民健康保険法施行法案並びに第二十九回国会に提出されました滝井義高君外十三名提出の国民健康保険法の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、審査を進めます。
 質疑を行います。八木一男君。
#3
○八木(一男)委員 国民健康保険法案につきまして、厚生大臣に御質問をいたしたいと存じます。同僚の委員が後刻相当の時間にわたって質問するよう準備ができているらしいので、ごく簡潔に一番中心点について御質問を申し上げたいと思います。
 今回政府が御提出になった国民健康保険法案、二十八国会にお出しになったものとほとんど変りがないものと私ども拝見をいたしておりますが、その通りでございましょうか。
#4
○橋本国務大臣 その通りでございます。ただ調整交付金の交付関係その他いろいろな問題がありまして、付則のところで実施期日等を多少條文をしております。
#5
○八木(一男)委員 昨年の二十八国会におきまして、一昨年出ました社会保障制度審議会の医療保障勧告について、私、岸内閣総理大臣臨時代理に御質問を申し上げたことがございます。そのときに、社会保障制度審議会というものは内閣の諮問機関であって、その設置法の第二条に、その勧告については内閣はこれを尊重しなければならないという文言が明らかに規定をされているという点につきまして、岸さんとお話しをいたしました。岸さんがこの問題について尊重した実際の具体的な案を早く出されないことにつきまして追及をいたしたわけであります。そのときに岸臨時代理の御答弁は、当然尊重すべきものであって、それを実現するために至急にやらなければならない、しかしことしは間に合わないから、至急にそれを具体化するからということで、その点御了承願いたいというような誤答弁でございました。その御答弁は厚生大臣は御承知であったかどうかわかりませんけれども、これは速記録に明記されていることでございますので、それを今聞いていただいた立場におきまして、そのような公約が果されているかどうか、厚生大臣としての御答弁を願いたいと思います。
#6
○橋本国務大臣 今回提案をいたしました国民健康保険法案は、先ほどお話がございました通り二十八国会に提出をいたしましたものをほとんどそのままの形で出したものでございます。しかして二十八国会に提案をいたしました国民健康保険法案を作成するに当りましては、社会保障制度審議会の御答申の趣旨を、財政状態その他いろいろな点を勘案いたしまして、可能な限り尊重をして取り入れるという根本方針で作成をいたしたものであります。
#7
○八木(一男)委員 社会保障制度審議会の医療保障勧告というのは、もちろん財政についても頭に入れまして、そうしてそういうものが作られているのでございます。ここには与党の代表の方も委員として多数おられますし、政府側の大蔵次官であるとか厚生次官であるとかいう人もおられ、学識経験者もおられる。特に会長の大内兵衛氏は財政学の泰斗である。現在の政府の財政方針を知って、なおかつ可能な限度においてこれができるということで医療保障勧告ができている。私もその中の一委員といたしまして、これでは少いという議論を大いにいたしたものでございますが、現在の保守党内閣ではこれが限度だということでこの答申が出された、そういうことも岸さんに申し上げました。そういう観点において、岸さんはこれを尊重する、ただし昨年のときにおいては、予算を組んでしまったのでこれは間に合わないから、来年以降において急速に実現をするから、それで了承願いたいという御答弁であったわけです。厚生大臣は新しく六月に大臣になられたわけでございますが、当然このようないきさつは厚生当局は知っているはずです。また社会保障制度審議会の経過も、その医療保障勧告も御存じのはずです。それと内閣とのつながりも御存じのはずです。それでこの法案が、この医療保障勧告を尊重するという当時の内閣総理大臣臨時代理、現在は総理大臣である岸さんの公約を果したものとは言えないと思うわけでございますが、それについて伺いたい。
#8
○橋本国務大臣 もちろん厚生省といたしましては、内閣の社会保障制度審議会の御答申の趣旨に従って国民健康保険制度の充実をはかりたいということは、これはもう御答申の前からもそうした情熱を持っておりますし、ましてや御答申もございましたので、この給付率等につきましてもできるだけそれを実現するように骨を折って参ったのでございますが、全体の財政計画その他から勘案をいたしまして、答申を尊重するという基本方針は変りありませんけれども、それで案を練りました結果、今日提出をいたしておりまする法案の程度でとにかくこの際は発足をしようということに相なったのでありまして、審議の過程におきましても、社会保障制度審議会の答申を尊重するという趣旨で政府部内をあげて努力をいたしました結果の今日の結論でございます。
#9
○八木(一男)委員 社会保障制度審議会がこの国民健康保険並びにそれに関連する問題について、国庫の支出――きっちりとした金額はかまいませんけれども、それについてはどうしていただきたい、どうすべきであるという勧告を出したか、これは釈迦に説法かもしれませんが、厚生大臣からお答えをいただきたい。
#10
○橋本国務大臣 国庫負担関係の大きな問題は、三割国庫負担、給付率については七割給付というのを御勧告になっております。
#11
○八木(一男)委員 国民健康保険並びにこれに関連すると申し上げましたので、もう一回御答弁を願います――。御存じないようですから、御存じなければそれでけっこうです。あの勧告を全部お読みになりますと、この三割だけではないのです。結核の全額公費負担というものと関連させてありまして、それと切り離してはいけないということを注意深く文章に書いてございます。関連すると二回も御親切に申し上げたわけでございますが、御存じであって言われないのか、御存じでなくて言われないのか、どちらでもけっこうでございますが、とにかく結核の医療費を――滝井君の所論によると、国民健康保険は結核には関係がほかのものより薄いという議論もありますけれども、とにかくこのような医療保障関係において結核が大きな比重を占めておるということは疑いを入れない事実でございますし、また七割給付ということになったら、受診率が多くなってさらに結核との関係がふえてくるということは当然なわけでございますが、そういうことで結核の医療費は、国民健康保険の中の部分も、健康保険の中の部分も、全部全額公費負担として、その残りに三割を――これは少くとも三割を国庫負担しろというのが医療保障勧告であります。その医療保障勧告を、岸さんは去年、これはすぐはできないけれども、来年以降において急速にそういうふうにしなければならない、尊重するということをはっきりと委員会でおっしゃった。速記録にはっきり残っておる。その公約から考えますと、今度調整交付金も入れて国庫負担を平均五分上げるということは一歩前進だとおっしゃりたいと思います。またそのつもりでこれを出されたのだと思いますけれども、しかし結核の医療費の全額公費負担と、そのほかに少くとも三割というものは、しろうと考えで概算すれば、四割五分か五割になる。現在いろいろなものを全部入れて平均二割のところを四割五分か五割にしなければならないのに、五分だけ上げて、それが一年半もたった今日公約通りに努力したとは、これは普通に、すなおに解釈して言えないと思う。それについてどうでございましょうか。
#12
○橋本国務大臣 これはお考えになり方はいろいろおありだろうと思いますが、社会保障制度審議会の御答申は国保の問題について、あるいは結核の問題につきましても、十分に御検討の上のことでございます。しかし財政全般の、ほかの財政需要に対してのものの考え方というのは、おのずからいろいろな見解があると考えられるのであります。今日、社会保障制度審議会の御答申の実現を、もうこの提案しておる国保の法案だけでとどめておるとは思いません。われわれは、この新国民健康保険法案にあげられましたところの財政負担を、さらに先般の社会保障制度審議会の答申の筋に近づけるような努力を今後も続けてやって参りたいと思いまするけれども、今日の段階といたしましては、相対彼此勘案いたしました結果、社会保障制度審議会の御答申を、今日与えられた条件のもとにおいて最大限に尊重してこの案を作ったつもりでございます。
#13
○八木(一男)委員 厚生大臣がこういう厚生問題に御熱心なことはわかっておる。しかしそれは今までの概念で、今までほかのあまり熱心でない人との比較において御熱心だということで、ほんとうの意味の御熱心になってもらわなければ困ると思う。私は社会保障制度審議会のことを、委員であるからがあがあ言うのじゃないのです。これは内閣に対する勧告権、答申権を持っておるので、内閣に対する答申であれば、大蔵省に対してもそれが大きな力になるはずです。内閣は大蔵省より上のものです。内閣がそれを尊重しなければならない義務があって、内閣総理大臣がそれをするということを約束したという立場に立てば、大蔵省がいろいろ文句を言っても、これはやりようは幾らもあります。それからもう一つ大蔵省に対してもっと強腰に出てもらいたい。大蔵省は財政々々と言うけれども、財政の使い方を私をして言わしめれば、非常に近視眼的な使い方をしている。医療保障で一時金が出ても、それによって病気がなおって、結核なら結核がすっかりなおって感染源がなくなる、そのほかの病気も早いうちになおしてしまう、受診率が高くなって一時国庫負担が出ても、早いうちになおして健康な体にすれば、次には病気にならない、またなった病気も長引かないということで、医療保障に対する国庫支出は将来減るのですよ。そういうことを大蔵省の連中はわからないで、一年、二年の間のことばかり考えて皆さん方の御要求をへずろうとする。そこで今までの常識のようなことでなしに、もっとほんとうに医療保障制度を完成しようとしたら、本腰になっていただかなければいけない。この前の国民健康保険法案の出されたときに、また国民健康保険法案について社会保障制度審議会が本年の二月に答申をいたしております。この中の答申、これは政府が国民健康保険法案を出されたという立場を十分に考慮して出した答申であります。その答申の重要点については、一点だにも修正がされていない。去年であれば、これを早く通さなければならない、手続が間に合わないからまあこれは国会で審議してもらうという言葉も、社会保障制度審議会の設置法を考えれば許されないけれども、まあまあ国会に対することとしてそれは了承できたが、それから半年の間に、それがいれられる準備は十分できたはずです。大蔵省との交渉も十分できたはずです。半年間に一つも前進していないじゃないですか。そんなことでほんとうに医療保障勧告をよく尊重しよう、国民健康保険をよく前進させようというようなことは一つも実績が上っていない。そういうことで、おっしゃることは信用できません。もう一回それについての御意見を伺いたいと思います。
#14
○橋本国務大臣 社会保障制度の充実の問題、ことにその中核になっております医療保障制度の充実に関しましては、これはもう全く真剣に考えておるつもりでございます。ただ今日の段階においてどういうふうにしたいという要望は、私自身も持っておりますし、また御意見はいろいろおありだろうと思いますが、今日も最善の努力をいたしておりますし、今後もその努力を続けるつもりでございます。
 なおお話がございましたが、立案の過程においては、それぞれやはり厚生当局と財務当局との間に意見を異にする場合もございます。しかし結論は、やはり総体的に審議をいたしました結果、内閣総体としての結論でございまして、財務当局のみが独走をしておるということはないわけでございます。今後もこれは立場々々でいろいろ意見はございますけれども、厚生当局といたしましては、国民のおのおのの福祉のために社会保障制度の充実、特に医療保障制度の充実の問題につきましては、今後とも御鞭撻いただきました筋に沿いまして十分努力をいたして参りたいと考えております。
#15
○八木(一男)委員 与党の方で、この国民健康保険法案についていろいろ修正の御努力があるそうであります。わが党もいろいろこれについて御意見を申し上げておるのは御承知の通りでありますが、とにかく衆議院はまだ審議の段階を終っておりません。まだ後に参議院の審議がございます。この法案を決定するまではまだ余裕がございます。もしほんとうにそういうお気持でございますならば、本年度の予算については、これは財政方針がきまっているからむずかしいでございましょう。しかし法案の中に三十四年度から三割の国庫負担をするということをうたうくらいのことは、ほんとうの決心がおありになったらできると思う。また橋本さんが社会保障の泰斗として、今までりっぱな国務大臣としてやられているその立場で、ほんとうに全身の努力を傾けられるならばそれは可能だと思う。即刻その御努力を願えるかどうか。
#16
○橋本国務大臣 全体の点を勘案いたしまして、これは滝井委員の御質問にもお答えを申し上げたのでありますが、今日国民健康保険制度を充実をするにいたしましては、いろいろな点が考えられるのであります。一つは給付範囲を健保並みにすることであります。また一つは、現在何ら社会保障制度の適用を受けていない国民階層に対しまして、この国民健康保険制度の拡充をいたすことであります。一つはまた給付率を引き上げる問題であります。そのほかにもいろいろ問題があるわけでございます。もちろん何もかもいたしたいと思いまするし、また社会保障制度審議会の勧告を実現をしていくという一つの政治的な責務もあるわけでございますが、当面の問題といたしましてはこの給付範囲を健康保険並みにし、かつまた内容を、従来いろいろな割り振りなどもありましたのを統一をいたしまして、今日何ら社会保障制度の適用のない階層に対しまして、とりあえずあと二年半の間に全面的にこの制度を拡充をいたすという点に当面の努力を傾けたいと考えておるのでございます。従いましてただいま御提案下さいましたことは、これはやりたいことはやまやまでございますけれども、今日直ちにこの場で法案の修正を考えるということは、これは現在いろいろ検討いたしました結果の順序といたしましては、今申し上げましたような意味におきまする面の拡充をまず優先して参りたいと考えておるのであります。
#17
○八木(一男)委員 そういう私どもの考えているようなことをやりたいというお気持を厚生大臣は披瀝されたわけでございます。これは国会で決定するものでございます。国会開会中にこれは与党の委員の方々あるいは野党の委員、あるいはまたそれについていろいろ御意見を言われる政府側、そういう方々の御意見でこの法案は十分に変え得るものでございます。決定はまだいたしておりません。それについて厚生大臣として、これは余裕を残します、最大限度の努力をこの法案ができ上るまでにはするが、それが非常に不十分なものができ上ってしまった場合には、来年度以降においてそれを至急に次の通常国会によくするだけの最大の努力をするということの御決心の御表明を願いたいと思う。言葉は含みを残してあります。橋本さんの御良心に従った最大の御努力を今国会並びに次の国会、在任中においてやられるということの御決意を御表明願いたいと思います。
#18
○橋本国務大臣 期日を限って私の在任中とか何国会とかということを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、私はやはり内閣といたしまして社会保障制度審議会の勧告の趣旨を、とにかくなるべく早く実現するように努力して参るのは当然だと思いまするし、私もそのつもりでやって参りたいと思います。
#19
○八木(一男)委員 厚生大臣の御熱意と御良心を信ずることにいたしましてその問題はやめます。そこで具体的な問題を簡単にてきぱきと申し上げますので、厚出大臣も一つ率直にお答えを願いたいと思います。
 まず医療保障勧告の中で、五人未満の事業所の労働者を、当然労働者としての健康保険に入れなければいけないという勧告がございます。これはもう釈迦に説法で、申し上げる必要もございませんけれども、労働者の場合に病気で職場を離れた場合は、これは店を持つ、田畑を持つ人よりは、現金収入がなくなると困る度合いが多いですから、傷病手当金の必要は、ほかの人も必要ですけれども、最も多い。それから賃金の水準から見ても、これは使用者負担ということでカバーしてもらわなければ、なかなかいい保険にならないというような点がございます。国庫負担で全部カバーしてもよろしゅうございますが、そういう点についてはまた一定のワクがございましょう。そういうことで、労働者は労働者の保険に入れるのが当然なわけでございますが、今の厚生省の御方針を見ますると、五人未満の問題はちょっとたなに上げておいて、国民健康保険のみで国民皆保険をやろうというような傾向が見えるわけであります。この方針は私は筋が違っていると思うのですが、この点について御答弁願いたい。
#20
○橋本国務大臣 五人未満の事業場に従事する人々に対しまして健康保険を適用したいという希望が表明されまするならば、これは任意包括の規定に従って健保に入れていくということはぜひいたしたいと考えております。これをはばむようなつもりは毛頭ございません。ただ、しからば積極的に五人未満の事業場を探して勧誘して歩くというようなことになりますると、これは人手の関係から申しましてもなかなかできかねる状態でございまして、一般の申請を受けておるわけでございます。手続としてもそういう手続になっておる。五人未満の事業場について任意包括の規定の適用を申請する者があれば、これは喜んでいたすつもりでありまして、これは何年か前には多少歓迎しないような空気で手加減をした時代がないでもなかったようでございますが、今日ではそういうつもりは毛頭ございません。
#21
○八木(一男)委員 そういうつもりが毛頭おありにならないようで安心をいたしましたが、それだけでとどまっているのじゃいけないので、それをよくするような方法をとらなければいけないと思う。任意包括の制度もございますが、宙ぶらりんのものでございます。これがなぜできないか、五人未満の事業場の適用ができないかという最大の原因を、滝井君その他の質問の都合上、私から申し上げます。ほんとうはつり出していって、それから考えの違った点を指摘した方がわれわれとしては有利なのですが、こっちからざっくばらんに先に申し上げます。それで、五人以上のところでもこういうことが放置されているところがあるわけです。六人、七人のところ、この問題もほうっておくことはできないわけです。これは法律違反でありますが、そういう事実がある。そういう事実はなぜ起ったか、零細企業の中でたとえば四人のところは強制適用ではない、そういうところがあれば、労働者はそういう法律を知らない、使用主が無理解であってずるいところは、六人以上のところでも、隣りでもやっていないじゃないか、うちがやっていないのは当りまえだというようなことでごまかす。たまたま一人知ったのがあっても、それは資本家対労働者で、資本家の方が力が強いですから、ぐっと押える。お前がごちゃごちゃ言うならば、お前ほかにかわってくれとか、給料の上げ方を少くするということで押えてしまうということになっている。ところが、これは一つ残らずどんな事業場でも適用になるのだということになれば、これは労働者の方に早く広まります。またりっぱな労働教育として、そういう社会保障制度がある、医療保障制度があるのだということはたちまち広まります。今みたいに、ないところとあるところがあるからごまかされる。すべての労働者というものは労働者の健康保険があるのだという立場にしたら、そういうことは一ぺんになくなる。事務上の問題で言われまするけれども、できるだけ事務は整備しなければなりませんけれども、全都入るということになったら調べ方は楽なのです。またそういうことがわかって労働教育が進みましたならば、これは労働組合も協力するでありましょう。自分の方から言って参ります。そんないい話はたちまち伝わるのです。健康保険ができたそうだ、自分たちも病気になっても困らない、これはいかに法律をあまり知らない、毎日々々働くことで一ぱいになっている労働者でも、そういう話はぱっぱっと一言言ったら忘れないのです。病気になっても困らないというような切実な問題でありますから、みんなが知ったならば、資本家の圧迫もきかなくなるし、労働者側の方からも厚生省の出先機関に連絡があるでありましょう。捕捉の困難ということも一ぺんに解消する、もちろん事務費は少しよけいに要ります。しかし医療保障を完成して、このような気の毒な人に医療保障を完全にやる、それをまた労働者に適した方法でやるということに御熱心であれば、強制適用に踏み切るべきであると思う。それについての厚生大臣の御答弁を願います。
#22
○橋本国務大臣 これは、お説はごもっともだと思います。ただ従来もいろいろ検討いたしたのでありますが、五人未満の事業場というものは、何分にも給与の実態等もいろいろになっておりまして、先ほど申し上げましたように、このごろでは標準報酬が低いから断わるとか、めんどうだから断わるということはございませんけれども、中にはやはり任意包括の申請のあるものでも、給与の実態等があまり不規則なものであって、もう一度審査をするというような必要のある部分も出て参るような実情にあるわけであります。従いまして、五人未満の事業場のものについてこれを強制適用にするかどうかということにつきましては、これは少し考えさしていただきたいと思います。
#23
○八木(一男)委員 ぜひ強制適用にするようなことをお考えになって、具体的な方法を至急に作られて、法案として御提出になっていただきたいと思います。今の給与の実態とかなんとか言われますが、また財政の点もあるでしょうけれども、これは国民健康保険の財政負担をしても、こちらで負担しても同じことになりますし、そういうようなことで至急にその施策を進めていただきたいと思います。
 次に結核の問題について、医療保障、国民健康保険の関係を申し上げますけれども、結核対策が非常に後退していると思う。濃厚感染源のなんとかということを施政方針で言われました。この前出すことを用意された法律は、これはけしからぬ法律で、社会保険の部分を離した法律でありますが、とにかく公費負担を非常にふやそうという案が準備されていたのが、大蔵省の無理解な態度にあって出されなかった。だんだん後退する。今度は濃厚感染源だけ、そういうことではいかぬと思う。結核対策について、もちろん社会保障適用者も含めた結核の医療費の公費負担の点について御推進をなさる気持があるかどうか、それを伺いたいと思います。
#24
○橋本国務大臣 推進をいたして参るつもりでございます。今日三十四年度の予算要求に関連して立てております案も、これは後退のつもりでは毛頭ございません。今日の結核予防法は、八木委員も御承知の通り国民全体を検診をして、見つかったらみんななおすという建前になっておるわけでございます。ただ実際問題といたしまして、初めは年令の制限がございましたが、今、年令の制限もないから、九千二、三百万人の国民を一年に一ぺんずつ検診をして、病気があったらなおすという建前に相なっておるわけであります。そう申しましても、これは技術的にもそうはできかねるので、実際は三五、六%しか検診ができない。毎年法律に書きながら、法律違反をやっておるような格好でございます。また見つかりました患者に対しても必ずしも十分なことはできないような状態でございます。そこで、私は今日の結核予防法の建前が間違っているとも思いませんし、これを後退させてはならないと思いますけれども、大事なのは、看板を上げて、おれはいいことをやっているのだ、できないのは人のせいだというようなことよりは、やはり現実にできる方法を進める方が筋だと思いまして、私はあえてこの検診の問題につきましても、既発見の患者の周辺でありますとか、そのほかの点を考えて、特に危険のありますところについては十分な検診をいたしますと同時に、見つけられました患者で感染の危険のある者に対しては強制入所命令といったような制度を活用しながら、そういう者については公費負担を増額をいたしていくという形が、一歩後退のごとく見えて、実際はそれをやるにも予算も相当かかりますから、私もよほどの熱意を持ちまして努力をしていかなければならないのでございまして、議会の方にも十分な御支援を願いたいと考えておるのでございます。私は、今日三十四年度の予算に対して結核対策として立てましたところは、後退のつもりではございませんので、ただ建前だけを前進のごとくして、それで責めをふさいでいるというよりは、名を捨てて実をとると申しますか、現実の結核対策というものを推進する方が大事だと考えまして、やっておる次第でございます。これでもただいま八木委員からは後退のように仰せられましたが、一見後退のごとく見えるような案でありましても、これはやるのになかなか相当骨の折れる仕事でございまして、厚生省としましては真剣に推進をはかりたいと思います。
    〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕
どうかそんなものは後退であるとおっしゃらずに、実質的前進の方向に向っては一つ御支援を願いたいと思っております。
#25
○八木(一男)委員 簡単にお答え願いたいのですが、その結核の濃厚感染源の処置でどのくらいの予算を要求されましたか、概数でけっこうです。
#26
○高田政府委員 所管でございませんので、数字が違うかもしれませんが、結核対策としましては前年度の予算が二十八億程度でございまして、三十四年度の要求額が八十二億、従って五十三億の増であります。
#27
○八木(一男)委員 橋本厚生大臣に率直に申し上げておりますので、率直にお受け取り願いたいのですが、この予防対策とか、濃厚感染源の対策をやることは当然なんですよ。やることはわれわれは大賛成で、もちろん協力はします。しかし結核対策というものは非常に金がかかります。予防というものは金はかからないので――これは厚生省が悪いとはいいません。大蔵省が無理解なんです。大蔵省が無理解で金を出し渋る。だから金のかからない方の予防に力を入れて、結核対策をいたしましたといってきたのが今までの厚生省の態度です。予防は大事です。予防はやったらいいのだけれども、治療というものを困った人たちが全部国の負担や公費負担でできるようにしなければ、ほんとうにそういう人たちの不仕合せは解消しない。予防というのはいえば公衆衛生行政上の問題であります。今、患者がもし濃厚感染の危険があれば、その人間が働かなくても、ほうっておいたら濃厚感染源みたいになって、しまいに死んでしまうというような状態になっても、その人に金がなければ死ぬのを待っているというようなことは社会保障ではない。衛生行政上の立場だったら感染のことだけ考えればいい。予防のことだけ考えればいい。ところが現在病気であって困っている人、命の心配をし、そうして働けないために、今まで結核で金を使ったために家財を蕩尽して、家族が心配しているという人をほったらかすのでは、これは社会保障ではない。医療保障ではない。衛生行政だけ考えている。予防対策だけ考えている。予防衛生はもちろん大事です。だからどんどんやったらよろしい。われわれも賛成し、推進するでありましょう。しかし結核対策がそれだけでいいのだということであれば、結核対策をするなんという大きなことは言えないはずです。医療保障をする、従って社会保障をするということは言えないはずです。制度審議会の勧告をもっと十分に読んで下さい。毎年三百億円ずつ出すのが当然である。われわれは三百億では少いという議論をしたけれども、今の内閣では三百億しかできないということで三百億になったのだ。それが予防の方に入れた額で五十億、そんなものは尊重したとも何にも言えない。厚生大臣は、そんなことは言わなくてもおわかりでしょう。苦しい事情はわかります。しかしこれが後退でないというのは内閣なり厚生省だけの立場です。厚生省の立場とか内閣の立場でなしに、社会保障や医療保障をよくするという立場で、はっきりとした偽わりのない御答弁を願いたい。激しい言葉を言いましたけれども、ほんとうに医療保障というものはもっとこうあるべきだということを率直にお答え願いたい。
#28
○橋本国務大臣 お答え申し上げます。私は後退と考えておりません。現在まで結核予防の建前を全面的に実施すべくいろいろなことをやって参っているわけであります。それに対して後退をしてはならない、前進をしなければならないということで私は今日考えておる次第でございます。前進の方法としてはいろいろなお考えがあろうと思います。それによって御賛成も不賛成もあることと思いますが、私はあくまでも、いかにしたら前進ができるかということ以外に考えておりません。それだけ御了承願いたい。
 それからもう一つは予防のことだけを考えておるのじゃございませんで、あくまでも結核の問題につきましては、新規に発生するものを防ぐのも大事ですけれども、そのためにもやはりなった方々をなおすことは非常に大事な問題でございます。その治療というものが大事でありまするだけに、結核を全部公費負担で治療するということができれば大へんけっこうでございますが、それへなかなか行きかねますので、その治療の重点として、はたに感染する危険の大きいものはせめても公費負担を上げて片づけてしまいたいということがねらいでございまして、予防のためにやっているのではないので、要するになった患者は治療したい、その全員の治療ができないなら、せめてこういう危険の多いものだけでも治療したいということを考えております。私は前進以外に何も考えておりません。
#29
○八木(一男)委員 その前進以外に何も考えていないという御決心でやっていただきたいと思うのです。ただ私が後退だと申したのは、今までやられた制度よりも前進でございましょう、だけれども去年厚生省の用意された法案の趣旨よりも後退であるということです。これは頭のいい橋本厚生大臣ですから、私の申し上げた趣旨はおわかりだろうと思う。与党という立場でいろいろ御答弁の言葉をおっしゃらなければならぬ立場があることはわかりますけれども、私はそういう立場で後退だと申し上げたのです。厚生省は今度、年金の問題でがんばられました。今までよりは、橋本さんががんばられてよくなったかもしれません。またその前の堀木さんもいろいろ御努力なさったかもしれません。しかし厚生行政というものが大蔵省に押され過ぎて、病気が起って貧乏の多い日本において、ほんとうにあるべき姿よりもはるかにほかとのバランスを失墜しているという現状は、橋本厚生大臣ははっきり御認識になっていただいておると思うのです。そういうことで申し上げている。歯にきぬを着せないで率直に申し上げている。野党の作戦なんか考えておりません。ほんとうに医療保障、社会保障をよくするつもりで申し上げている。何もそういう意図のない気持で国会の論議がされることが、厚生省が進められることのほんとうのバック・アップになると思って申し上げている。それを率直にお聞き願いたいと思います。
 次に国民健康保険のいろいろのことをやられるにつきまして、被保険者のことがまず第一であり、それから保険者のこと、診療担当者のことをいろいろと十分にお考え下さることがほんとうだと思いまするが、それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
#30
○橋本国務大臣 国民健康保険を実施するに当りまして、ただいまも八木委員のお話のございましたように、保険者につきましても、被保険者につきましても、診療担当者につきましても、それ相当に苦心を要する立場もございまするし、このそれぞれの立場を考えまして、この間がやはり円滑にいくように考えなければならぬと思っておるのでございます。この点につきましては、今日の現状というものが必ずしも満足すべき状態にあると考えておりません。やはり保険者、被保険者、療養担当者の間について、今日あります問題を如実に目を開いて見ながら、それに対して円滑にいきますように制度的にも、また運用の面においても十二分に心して参らなければならぬと考えております。提出いたしておりまする原案につきましても、これは当面とにかくこの案をまとめて参るのに最善の努力をして参ったわけでございます。提案者といたしましては原案をお願いするという建前でございますけれども、これにつきましてもいろいろ御意見のあります筋につきましては、十分心して虚心に耳を傾けたいと思います。
#31
○八木(一男)委員 被保険者、保険者、診療担当者、政府、この四つのいろいろな関係があるわけです。保険者の方に対しましては、政府との関係で事務費が十分に出ないというようなことはほんとうに不当なことだと思います。厚生省と大蔵省との関係があって、むずかしい事情もあることだろうと思いますけれども、ほんとうに国民健康保険をよくなさろうとしたら、国の方が保険者に見るべきものは完全に果すというやり方をなさるべきだと思います。
 次に保険者と診療担当者の間にいろいろの意見の食い違いがございます。この食い違いの最大の原因は何かというと、国が保険者に対してもっとしてやるべき手当をしていない、当然してやるべき手当が事務費その他で少くなっているということから起っていると思います。そういう国の方の保険者に対する手当を十分にして、診療担当者と保険者の間に意見の食い違いのあるような現状がなくなるようにしていただきたいと思います。診療担当者は国民皆保険が実施されますと、実際上国民皆保険の仕事をなさることになるわけです。この仕事はほんとうは財政の問題ではなしに、人の病気をなおす仕事であります。病気をなおす仕事のときに、診療担当者が最も重要な責任のある地位につくわけです。その人たちがいろいろ事務的に煩瑣なことをさせられたり、当然保険者がとるべきものの徴収の義務まで無理やりにおっつけられて、事実上入れてもらえないということになったりしては、ほんとうに落ちついて仕事ができる状態が少くなって、医は仁術で、ほんとうに一生懸命になられるお医者さんでも、時間的にそれだけよけいなものを課せられれば、御研究の時間も少くなる、そういうことではほんとうの医療保障の質的な向上はできないと思います。診療担当者が十分に研究できるような、事務的にいろいろわずらわされないような、そうして自分が良心に従ってやったことについて、いろいろ事務的な点で保険者あたりからぎゃあぎゃあ言われることのないようにする。そうしてまたそういう方々がやられただけの経済的なことが、経営の面においても家計の面においても成り立つように当然考えなければいけないと思う。お医者様、それから歯のお医者様、それから薬剤師というような人たちは高級技術者であります。東芝とか、そういうような理科工科系の高級技術者の俸給を考えてみましたならば、そうして夜間診療というような、夜間までそういう人たちが重労働をしたならば、相当大きな高給をとり、相当の待遇を受けるわけです。そういうことを考えると、お医者様のいろいろの経営の実態を知らないでお医者様は楽だろうという議論は、俗論であって、ほんとうの議論ではない。責任のある、生命をあずかる人たちが、十分に生命をあずかれるような態勢を固めていただかなければならないと思う。国が、あるいは市町村、保険者がそれを十分見ていないというところに、保険者とお医者さんのいろいろの対立が起る。国の責任でそういうことになっている。それではいけない。そのこと自体が被保険者に対して、被保険者が診療を受ける場合に不便であるとか、お医者様が十分研究ができない場合にはそれだけの治療だけしか受けられないということになる。それではほんとうの治療にはならない。経済の問題ばかり今考えられておりますけれども、ほんとうは早くよく十分になおすということがこの医療保障の目的であります。その目的のガンをなしているのは、国が保険者に対して金をいろいろしないで、倹約しようと思って医療担当者を抑えるというようなことからいろいろな問題が派生しております。この問題を根本的に片づけるために、厚生大臣としては強い考えで医療保障をよいものにするために活躍していただきたいと思いますが、それに対する総括的な御意見を伺いたいと思います。
#32
○橋本国務大臣 八木委員の仰せはもっともでございまして、そういう方針に邁進して参りたいと思います。ただ私は国庫負担を増額することだけで問題が全部片づくとは思いません。国庫負担を増額すると同時に、やはりお医者様の本来科学者であり技術者であるという立場をほんとうに反映をして、いい医療をし、そして早くなおるようにするというために、何かやはり在来の保険医療保障制度のあり方に対しまして、なお工夫しなくてはならぬ問題があって、これが国庫負担の増額と相待って理想的な状態にいくんだと考えておりますが、今日の事務費の問題でありまするとか、医療費の支払いの時期の問題でありますとか、それからそもそも国庫負担金額の問題とかいうものは、それを解決する上での非常に大きな要素だと考えておりますので、そういう考えで真剣に努力をし、改善の実を上げて参りたいと思います。
#33
○八木(一男)委員 大体それでけっこうなんですけれども、今の国庫負担を増額するとともに、科学者としてのお医者様としてという御発言がございました。私どももあまりばかではありません。いろいろなことを知っております。そこで純粋にその言葉であればいいのですが、医師の科学者という言葉にひっかけて、医師の方々の収入が減るような――これは憶測ですが、減るようなことをなさったら、これはとんでもないことになる。科学者であっても、仁術に携わるお医者さんであっても、これは人間であります。その人たちの経営が成り立たず、生活が成り立たなかったら、ほかの点で、科学的にいっても研究もできないし、また落ちついて診療もできないことになります。科学者という理由のもとに、経済的に実質的に圧迫するようなことをなさっては、国民健康保険を質的によくすることにはなりません。厚生大臣はそういうことをなさらないというお気持だろうと思いますので、その点について御表明を願いたいと思います。
#34
○橋本国務大臣 今単に国庫負担の増額だけでなしに、医療の内容をよくするというためには、お医者さんの科学技術者であるという立場を十分に考えて、医療保障制度のあり方を考えなければならぬと申し上げましたのは、もちろん診療報酬の面につきましても、それから研究の余暇というような点につきましても、いろいろな点を考えて、やはりもっと医者を優遇することを考えなければならないし、また保険としてはある程度国家的システムでこの収入と支出と見合うような仕組みは考えなければならぬ。その間にもやはり最高度に発達した最近代的な医療というものを実現するように、それをどうやって国家的なシステムの中に取り入れていくかという工夫をしなければならぬ。私がただいま申しました科学者、技術者としての医者の立場を考えていかなければならないというのは、収入と余裕、その診療の自由というか、考え方の尊重ですね。そういう工夫をなおよほどしていかなければならぬ。なかなか容易な工夫ではないけれども工夫しなければならないということを申し上げたのでありまして、具体的にどうやったらもう少しお医者をいろいろな面で優遇できるか、工夫をしなければならぬというつもりで申し上げたのであります。
#35
○八木(一男)委員 そういう御答弁でございましたならば非常に安心をいたしました。そこで一つお願いがあるのですけれども、そういうことにつきましては、厚生大臣がいい頭でお考えになり、保険局長はその他りっぱに御経験のある立場でお考えになるでありましょうけれども、やはり実際やっている人のいろいろの体験と、理論的に頭でいろいろ考えられることとの間には、ある程度の行き違いがあるわけです。そういうことを御決定になるとき、十分診療担当者の御意見を聞かれて、それを取り入れてやられるというお気持がおありになると思いますが、それをもう一回はっきり伺いまして、私の質問を終りたいと思います。
#36
○橋本国務大臣 これはぜひそうしなければならぬと思っております。誤解のないように申し上げておきますが、やはり保険者その他の方々ももちろん利害関係者でありますから、私は利害関係者の意見の発言を封ずるつもりは毛頭ございません。要するに事がきまるまでの間に、利害関係者はすべてそれぞれ発言の場がなければなりませんし、基本的には本来医療行為は科学的な問題でありますから、少くとも利害の調節というものは妥協が入って参りますから、利害の調節の議論になる前に、一つの筋の通った科学的な検討が、医療の点からいいましてもあるいは案の練り方からいっても、十分落ちついた形で行われなければならぬ。医療担当者の意見をそういうような科学的な意味においてもう少し落ちついて伺い、それが実際の案に反映するような仕組みなり扱いなりというものをなお考えて参りたいと思います。
#37
○八木(一男)委員 まだ具体的に質問申し上げたい点もございますが、同僚の滝井委員が前から準備してお待ちのようでありますので、一応質問を将来に保留いたしまして、ここできょうの質問を一応打ち切りたいと思います。
#38
○大坪委員長代理 滝井君。
#39
○滝井委員 今回のこの国民健康保険法ができた後における各医療機関の取扱いの問題を先にちょっとお尋ねしておきたいのです。
 現在国立病院あるいは社会福祉病院等においてそれぞれ軽費診療というものが行われております。今後いろいろな医療機関ができて参るわけでありますが、一体政府としては、そういう軽質の診療を認めるものは、どういう軽費を認めていく方針なのか。たとえば国立なら国立は認めていくのか、結核なら結核については認めるのか、現実にあるわけであります。たとえば直営診療所を見ても、これは軽費診療ですが、単価十一円五十銭が八円でよろしいのだ、そういう点を一体どういう範囲のものならば認めるのか。これも法律にもそういう差別的な取扱いをすることになっておるわけであります。勝手にどれもこれもということでは大へんなことになる。そうしますと、もし一定の十一円五十銭、十二円五十銭ときまっておるのを、低くすることを認めるなら高くすることも認めるということになる。これは理論的にいっても、低いものを認めるなら高いものを認めてもいい。なぜなら低いものを認めるなら患者の吸収になりますし、高いものを認めるのも患者の吸収になり得ないとは限らない。たとえば私のところはいい薬を使うから高いのだという宣伝をすればいいことになる。それぞれ十一円五十銭、十二円五十銭という単価をきめておる。それは今度は修正して甲乙二表にしておりますから、この法律が成立した暁における軽費診療は一体どういう理由で認めるか、そういうことをこの際一つはっきりしておいてもらわぬと先になって混乱が起りますから、伺います。
#40
○橋本国務大臣 直営診療所等において割引をするというようなことはきめませんで、今回の改正によりますれば、定められました診療報酬に従って直診等も割引をしないでやることにしておる次第であります。
 なお結核療養所等の問題があるわけでありますが、保険局長からお答え申し上げます。
#41
○高田政府委員 大臣仰せになりましたように、新法案の趣旨は、国保の直診は、従来保険者の設置する医療機関でございますので、特別な扱いをいたしておりました。しかしそれでは、直診の数も相当たくさんございますので、今回医療機関の制度を改めますにつきまして、この取扱いを全然他の医療機関と同じような取扱いにいたします。その点が従来の扱いと非常に変っております。
    〔大坪委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕
それから他の方面における割引の問題でございますが、国立病院は御存じのように割引をいたしておりません。国立の結核療養所が割引を今日いたしておりまするが、これは今後も続けられていくものと考えております。おそらくこの趣旨は、国がさような病気に対するそういう治療の施設を持っており、その運営に当って、ここに社会政策的な意味合いを含めて運営をしておる、こういうこふうな趣旨であろうかと存じます。なおそのほかに、医療機関といたしましては、被用者保険の方で、たとえば逓信病院とか鉄道病院とか、こういうふうなものとか、あるいは健康保険組合の設置しておりまする病院、診療所でございますとか、こういうふうないわゆる保険者が自分で設置をしてみずからの手によって療養の給付をしておるというふうな医療機関におきまして、自分の被保険者に対して――他の被保険者は別でありますが、自分の被保険者に対して割引の診療をしておる。そのいわゆる収入のへこんだというところは設置者がこれをカバーしておるというやり方につきましては、これは今後も私どもといたしまして、これを禁止してしまうというふうなこともいかがかと存ぜられますので、その点は従来通りに相なっていくと考えております。同じような立場でありますが、国保の直診の場合におきましては、今回の法案で先に申しましたような扱いに変って参るわけでございます。
#42
○滝井委員 そうしますと、直営診療所というものは、いわば健康保険の福利施設と同じような福利施設の役割をするところですが、これだけは一般のものと同じようにする。国立療養所は国の高い社会政策的な見地から作っておるものであるから、その中の結核部門の療養所はこれは今まで通りやっていく。その他の保険者の作っている逓信病院その他、これは保険者が作っているということになるのかどうか、とにかくああいった特殊な、準国立的なものは、そこの関係の被保険者については軽費を認めていこう。そうすると、そのほかに社会福祉関係のものがあるわけですね。そうすると、だんだんそういう例外をたくさん作ると、そういうところの中から直診だけは認めないという何か理論的な根拠が出てきますか。直診だけを一般と同じように取り扱わなければならぬという何か理論的な根拠が出ますか。
#43
○高田政府委員 理論的な根拠――まあ似たような性格としましては、被用者保険の保険者が自分で設置をして、自分の被保険者に療養の給付を自分自身がやる、他の人に頼まないで自分自身がやる。直診も同じ趣旨でありますから、理論的には似たような性格のものでございます。ただ、直診の実際の運営状況は、先生も御承知のように国保は大部分は公営になっておりますので、国保の診療所とはいうものの、それは市町村立病院と本質的には変りないというふうな立場にあります。さらに数も、先生御承知のように相当たくさんあります。従いまして一面から見ますると、保険者自身が設置して自分の被保険者に現物そのものを給付するという立場でございますので、払い、受け取りも自分自身のふところの中でやるような関係になりますので、その意味におきましては、他の保険者が設置した医療機関、被用者保険の保険者が設置した医療機関と同じ立場ではございますが、前に述べましたように、現実の問題としましてはこれは相当隔たりのあるものと考えてもよかろうかと思います。むしろ実情に即して、他の医療機関と同じように扱っていった方がこの際妥当なのではあるまいか、こういうふうな考え方をいたしておるわけでございます。
#44
○滝井委員 それでわかりました。そうしますと、次にお尋ねしたい点は、御存じの通り健康保険におきましては、健康保険法四十三条の三項で、一号、二号、三号の医療機関があるわけです。それは、一号は都道府県知事の指定を受けた病院、診療所または薬局、これを保険医療機関または保険薬局というのですが、それから二号、三号は、事業主病院とかあるいは組合の病院、健康保険組合が作った病院、こういうものだったわけです。そうしてその場合に、一号の保険医療機関は国民健康保険法の三十七条の指定医療機関にそのまま横すべりをしていくことになるわけですね。その開設者の申請に基いて、三十七条に基いて横すべりしていくことになるわけです。その場合に、一体そこの保険医は何になるのですか。
#45
○高田政府委員 保険医療機関の保険医は、原案におきましては国民健康保険医というふうな制度を設けておりませんので別に何にもなりません。何にもなりませんが、保険医療機関が国保の指定医療機関として活動をいたします場合には、健康保険法の方の四十三条の二の規定の、保険医でなければその診療に従事ができないというふうな規定が準用になっているわけでございます。
#46
○滝井委員 そうしますと、指定医療機関に保険医療機関がなったときには、その保険医というものは何にもならぬ、しかしとにかく準用をする、こういうことでございますから、一応そうしておきます。
 そうしますと、この健康保険法の四十三条の今申しました三項の二号、三号ですね、これが国民健康保険の指定医療機関になったときには、その医師は何になるのですか。
#47
○高田政府委員 健康保険法の二号、三号は、これは健康保険法のときにも御説明をいたしましたように、本来一般の人々を診療するという目的でなく、限られた被保険者の診療をする目的のものでございます。従ってこの中に働いておる医者につきましては、御存じのように、保険医制度もございません。従って、こういう病院がかりに一般の人々をだれでも受けるということになりますと、一号の保険医療機関の指定を受けなければならない、こういうふうにあの当時御説明をいたしました。そういたしますと、そこには、保険医でなければ一般の人々の保険診療は行えないわけでございますから、保険医がおるわけでございます。従ってその関係が、かりに国保の診療をやるということになりますと、一号と同じ関係になるわけであります。しかしそれが国保だけをやるということでありますれば、国保の原案におきましては保険医の制度を設けておりませんから、そのままその医療機関が国保の被保険者を見るためには、都道府県知事の指定を受けて国保指定医療機関になれば、国保の取扱いができる、こういう関係になるわけであります。
#48
○滝井委員 今後皆保険政策をやっていくことになりますと、たとえば事業主の病院が山の奥にあった、ところが部落は今まではそれにかかっていなかった、診療を受けていなかった、遠い山を越えて次の町なら町に行っておった、こういうときに、今度はその村も、町村合併によってその遠い町のものになってしまった、しかしその際やはりそこに二号、三号の病院があるのだから、それを国保の指定医療機関にしましょう、こうなったときには、当然それらの事業主なり組合の病院は一号の保険医療機関になるということにはならないのでしょうね。依然として、一般の者を見るのにもかかわらず、健康保険を見ないのだから、それは事業主病院であり、兼国保の指定医療機関、こういう形になるのですね。
#49
○高田政府委員 滝井先生のおっしゃった通り、その事業主病院は、国保の指定医療機関になれば、国保の被保険者は見れるわけであります。他の国保以外の被用者保険の被保険者を見ようとすれば、保険医療機関の制度をそのままとって利用しておりまする他の被用者保険の被保険者を見ようとすれば、健保の一号の保険医療機関の指定を受けなければならない、こういうことになるかと存じます。
#50
○滝井委員 それだけの確認をして、次に移ります。
 そうしますと、健康保険の保険医療機関が取り消された場合は、国民健康保険の指定医療機関も消える、こういうことになるわけですね。
#51
○高田政府委員 その問題は、今の事業主病院の問題とは別の問題でありますが、保険医療機関になっておるものが、別段の申し出――いやじゃとおっしゃらなければ、国保の指定医療機関になります。そうすると、その医療機関というものは、健保の取扱いもし、国保の取扱いもする、こういう状態になるわけであります。その際に、健保の方で何か事故がありまして取り消しを受けたということになりますと、それはこの原案では、国保の方も取扱いができないというような格好になっております。その趣旨は、なぜかと申しますと、保険医療機関というものを国保の方の指定医療機関にみなしたわけでございますから、本体がなくなっているので、従って国保の方の取扱いもそのままではできない。しかし、その際に国保の方の指定を新たにお受けになれば、これは当然できるわけでございます。そういうふうな法律構成に原案はなっております。
#52
○滝井委員 そうしますと、保険医療機関が取り消された場合は、国保の指定医療機関も消える、別に新たに指定を受ければそうだけれども、これは認められぬことになるのは当然だと思います。大体原則的には、そういう悪いことをして取り消されたものをまたその機関を生かすわけにいかぬでしょうから、一応そういう趣旨でわかります。
 そうしますと、今度はその逆の、国保の指定医療機関が取り消されたときには保険医療機関は生きていくのか、消えるのか。
#53
○高田政府委員 国保の指定医療機関を取り消された場合には、おそらく先生御指摘の場合は、保険医療機関で別段の申し出をしなくて、国保の取扱いも一緒にやっておる医療機関の場合だと思いますが、その場合に国保の方の指定を取り消されるということはないわけでございまして、国保の指定医療機関にみなされなくなるわけです。黙っておれば国保の取扱いもできる。健保の保険医療機関を国保の指定医療機関に一応みなすわけでございますから、従って国保の方で事故がありまして、国保の方から関係を絶たなければならぬということになりますと、国保の方の指定医療機関としてみなすことをやめるという措置が講じ得るわけであります。その措置を講じました場合には健康保険の方の取扱いは残って参る、こういう法律構成になっております。
#54
○滝井委員 そうしますと、国保の指定医療機関を取り消されても健保の保険医療機関には及ばない、簡単に言うと、こういう形ですね。筋道を簡単にしていかなければわかりにくいですから、なるべくしろうとわかりのするような一問一答でやらせていただきたい。国保の指定医療機関がはっきりやられた、その場合には健保の医療機関は残る、今の御答弁ではこう考えて差しつかえありませんね。
#55
○高田政府委員 ちょっと前提があるのでございます。不正確でございますが、国保では指定医療機関の制度を一つ設けたわけです。ところが従来のほとんどの医療機関は保険医療機関となっております。その場合には、それが黙っておられれば国保の方の二重の手続を要しない、国保の方の指定医療機関になります、こういう法律構成になっております。そういう医療機関におきまして、国保の方で事故があって、国保の方はもうやめてもらいたいということになりましても、健保の方は残ります。
#56
○滝井委員 そうはっきり言って下さればけっこうです。そうしますと、健保はとにかく残るということになりました。従って私が言うように、まあ健保には及ばぬ、こういうことになるわけですね。次には、保険医の登録を取り消された場合には、国保の診療ができますね。
#57
○高田政府委員 保険医療機関においてはできません。
#58
○滝井委員 そうしますと、保険医の登録が取り消されれば国保の診療は――保険医の登録ということは、当然保険医療機関を意味して言っておるわけですから、保険医がたくさんおれば別ですが、一応一保険医がおる。そしてそれが同時に診療所を代表しておるという場合を基礎にして言っておるわけですから、国保の診療はできない、こういうことになります。そうしますと、その場合は国保の指定医療機関は生きておりますか、死んでおりますか。
#59
○高田政府委員 国保の指定医療機関としてみなされることは生きております。
#60
○滝井委員 そうしますとここに一つの問題が出てくるわけです。健康保険の場合には、一対一であるならば、保険医は、取り消されてしまえば実質的にはできなくなることになるわけですね。そうすると国保の場合には、今度そこに国保の指定医療機関ができるわけですから、そして国保には保険医の制度がないのですから、よそから医者を雇ってくればその機関は続けられることになるわけですね。
#61
○高田政府委員 続けられますし、それは健保の場合でも人が変れば続けられます。
    〔藤本委員長代理退席、園田委員長着席〕
#62
○滝井委員 わかりました。
 次に健康保険の四十三条の三項の二号、三号の事業主病院あるいは組合病院の場合ですが、さいぜん質疑応答をしたように、その二号、三号の病院なり診療所は国保の医療機関にはなり得ることになったのですね。そうしますとその国保の医療機関になっている事業主病院が国保の機関指定の取り消しを受けるときには、普通の健康保険の保険医療機関であったならば、これはもう自分の病院がなくなったので診療が実際はできないことになるわけです。一対一のときですよ。一つの診療所に一人の医者がおるというときに、その診療所の指定が取り消されれば、その医者は場所がなくなるわけですから診療が実際にはできなくなる。よそに行ってまた雇われれば別ですが、そこではできなくなる。これはお認めになるのですね。さいぜんの問答でも明らかなように、普通の国保の指定医療機関というものは、この指定が取り消された場合には、健康保険は生きておりますけれども、国保はだめなんですよ。国保は機関を取り消されたのだから、そこに医者はおるけれども、そこの場所では診療できないわけなんです。これははっきりしておるわけです。ところが今度はその逆の場合に、その機関が保険医療機関である場合には、それが取り消されると国保に及んで、国保もできなくなってしまうわけですね。そうすると二号、三号の事業主病院や組合の病院が国保の機関の指定をされておって、それが取り消されても、これは何も健康保険関係には関係が及ばぬ、こういう形が出てくるわけです。そこに病院の取扱いの一つの不合理が出てくる場合があるわけです。それはどうしてかというと、一方はたまたま健康保険でやられた場合に国保に及んでくるでしょう、そういう場合がある。ところがこっちは、同じ国保というものをやっておるにもかかわらず、国保を取り消されても依然としてその病院は今まで通り健康保険を見ていけるわけです。なるほど健康保険と国民保険とは違いがあるかもしれぬけれども、二号、三号の病院というものは健康保険はやっていける。片一方は健康保険をやられると国保に及んでしまう。ところが二号、三号は国保の医療機関になったって健康保険のやられようがないという、こういう形が出てきているわけです。同じ医療機関、そして二号、三号も保険証で見る、事業主病院であっても保険証で見るのですが、片一方は同じ保険証で見るが、その片一方は、保険証で見た普通の一号の病院がばっさりやられると国保に及んでしまうという、皆保険のもとにおいて二号、三号の特権的な病院があると、こういう不合理が生まれてきたわけです。それで、この際直営診療所についても、あなた方は非常に数が多くなったからということで一律にされようとしているわけです。そうすると今後は、二号、三号の病院についても、私はやはり野放しではいけないと思う。医療機関の配置その他を考えてやろうとするならば、事業主病院、組合立病院だけを特権的に置いてはいかぬ。これらについても何らかの規制を、国民健康保険から加えなければならない。自分の、事業主の病院だからといって野放しではいけないという事態が出てきたわけです。これは私は理論的には筋道が立っていると思うのです。この点、依然として二号、三号を独占的な治外法権として置いていくのか、それともこの際、皆保険という段階がきたので、二号、三号について何かあなた方が再検討の要があるかという点です。
#63
○高田政府委員 どうも滝井先生の今おっしゃることはちょっと私に理解できないのですが、健保の保険医療機関、すなわちどの被保険者でも見ますという保険医療機関が国保をやりたければ国保がやれる、それから二号、三号の病院、診療所も国保をやりたければ国保をやれる、こういうわけですね。それで、国保の方で工合が悪いことがあって、そして国保の方の関係が切れれば、両方とも保険医療機関として残り、事業主病院として残る。これで別に変りはないわけですね。従って私はそんな矛盾がないと思うのですがね。
#64
○滝井委員 矛盾はないけれども、病院の取扱い方が必ずしも公平でなくなるということなんです。それはたとえばAならAという大きな会社があって直営の診療所を持っておる場合、Aの事業場に働いておる労働者は、その保険証を持って自己の直営診療所に行って見てもらう。同時にその保険証は今度はBという保険医のやっている診療所に行っても通用するわけです。ところが、そのBというものがたまたま取り消されてしまった。Bという診療所が取り消されたということは、同時に国保に及んでいくわけなんです。ところが今度このAという会社の診療所が、同時に国保のものを持っておったということになりました場合、ここで不正が行われても、それは内輪のことだからということになって、何でもなくなる、こういうことなんですよ。同じ医療機関でありながらそういうものがある、こういうことなんです。私がなぜそういうことを申し上げるかというと、最近あなたの監督のもとおける東京都における国民健康保険の組合の実態を見ても、それは何百万円の金が自由自在に動くということは許されぬ段階です。従ってまずわれわれがそれらのものに確実に目が届くようにするためには――こういう特権的な二号、三号を置いておるところに、ああいうものが起ってくるということなんです。従ってあそこにおける診療所というものを何らかの形で監視する方法が必要だと思う。今は監視のしようがありません。そしてああいう監視のしようのない健康保険組合連合会というものが、日本の医療に強力な発言権を持ってきておる。こういうことは許されぬと思うのです。そうであるならば、国会に国民健康保険組合の内部をはっきり見せてくれるような姿を作らなければ大へんだということです。同じ税金です。形の変った税金です。同じ事業場であっても、一個の労働者が払っている保険料は形の変った税金です。私はそういうことを言いたいのです。あの病院が治外法権であり、そして組合の状態というものがよくわからないということでは、監督のしようがないでしょう。なるほどあなた方は指導監査はやられますけれども、問題があるのです。だからあなた方は、特殊なもの以外は病院の機会均等ということを国民健康保険の成立に対して唱えていらっしゃる。こういうことでございますから、やはりそれらの二号、三号病院というものをこの段階では持続せしめてはいかぬ。もうこういうものも明るみに出して、大衆の前に公開なら公開をしていく。自分のところのものについては、ちょうど厚生省のやっている生活協同組合と同じような形で、員外利用は許さぬのだ、だからそこでは一定のものでいい。員外利用を許さぬといっても、値段は一つ同じにして下さい。そのかわりそこのもうけは配当金でやってもらう。これと同じです。だからそこで十二円五十銭なら十二円五十銭で見るが、しかしその分は付加給付で労働者に金で返すとか、方法は幾らでも私はあると思うのです。やはりこれは機会均等をしてやっていかないと、何か目の届かぬようなものがあるということはいかぬということなんです。そうしないと、こういうものがあって、そして何か大きな発言力を持つ。しかしそれらのものの内容というものはベールがかかってわれわれにはわからないということは許されないと思うのです。そして知っておるのはただ都道府県の保険課長だけだということではいかぬと思うのです。幸い東京にああいう事件が起ったのですから、これを契機にしてやってもらわなければいかぬ、こういうことなんです。これは大臣一つこういう二号、三号の事業主なり組合の病院というものを、今まで通り治外法権的にやらずに、何らかの形で厚生省がきちっとそれらの病院の診療単価とか経理というものを見得る姿を作ってもらわなければならぬ、こういうことなんです、
#65
○橋本国務大臣 やはりお話の筋の問題については、これは非常に大きな問題だと思いますので、御発言の趣旨をくんで、少し考えさせていただきたいと思います。
#66
○滝井委員 ぜひ一つ考えていただきたいと思います。何といっても日本のこの複雑怪奇な医療機関の配置の状態というものを適正にやっていき、しかもその金を合理的に使うためには、やはりむずかしいところにもメスを入れてもらわなければいかぬ、こう思うのです。
 次には保険医療機関に患者が入院しております。その場合にその保険医療機関を担当する医師、これは一対一ですから、その医師が死亡した、こういうことになると、そこは診療ができなくなるわけです。あるいは機関の指定の取り消しを受けたというときにもできなくなりますが、まず医師が死亡した、するとそれはできなくなる。その場合に今度は医師が死亡したのでございますから、かわりの医師を入れなければだめなんです。すると入れます。入れますと、それは保険医でないので、なかなか長期にわたってはできない、こういうことになるわけです。早くとらなければならない。これは実際は抽象的な問題になりますが、その間における療養費というものは請求ができないので、療養費払いということは可能でございますか。そういう場合はやむを得ないものと認めて、療養費払いをしてくれますか。入院している患者が、十月十五日まではお医者さんが生きておった、十六日に死んだ、しかし病気はまだずっと入院しなければならぬというときには、それから先のものは療養費払いを認めることができるのかどうか。
#67
○高田政府委員 それは現在の規定でも療養費払いできると思います。
#68
○滝井委員 国立病院なんかは、代表的な管理者というものはどういうことになっておるのですか。たとえば医務局長小沢龍なら龍、こういう工合になって国立病院というものは届出をしておるのですか。
#69
○高田政府委員 国立病院の開設者は厚生大臣であります。それから管理者は各病院長であります。しかも厚生大臣から各病院長に権限を委任しておりまして、すべて病院長の名前でやっておるわけであります。
#70
○滝井委員 そうしますと病院長がかわったとき、あるいは厚生大臣がかわったときには、私が言ったように、ちょうど私的医療機関で、滝井義高が死亡をした。そうすると滝井義高のやっておる病院というものはちょっとしばらくストップするわけですね。ところがそういう国立病院で厚生大臣がかわり、病院長がかわったというときにはストップしないですね。これは一体どういうわけですか。
#71
○高田政府委員 法律関係としては同じでございまして、事実上国立病院の場合には、院長が申請をいたしまして指定医療機関になっておるわけでありますが、院長が死にましても、他の医師なり組織がありますから、別に診療には差しつかえない。ところが滝井先生が開設者であって死んだ場合でも、滝井診療所というものは残っていくわけであります。しかし事実上そこに滝井先生一人しか見えないから診療ができないということだけが違う。事実関係が違うだけでございまして、法律関係としては健康保険の場合には同じでございます。
#72
○滝井委員 皆保険になりますと、保険医療機関が国民健康保険の指定医療機関になっておるわけです。その場合に健保が取り消されると国保もだめになる。こういうことになっておるわけです。そうしますと一人の医師が医師免許を持っておっても医療ができないという矛盾が、皆保険のもとにおいては出始める可能性が出てくるわけです。健保を取り消される、国保を取り消されるということになりますと、医師免許は持っておるけれども、自分の場所では医療ができないという、こういう状態が出てくるわけです。どこかよそに雇われる以外はできない、こういうような場合が出てくるわけです。あるいは保険医を取り消された、こういうことになると、もう皆保険になってどこも保険医でなければだめだ、こういうことになるのですから、医者ができない、自由診療はできなくなるという形です。これは原則論を言っておるわけですができなくなる。そうするとこの場合、医師免許があって医療ができないという、こういう状態をやはりこの際緩和する方法を一つ考えなければならぬ段階にきておると思うのです。現在保険医の取り消し、機関の取り消し等においては、いろいろ段階があります。しかし私は、この際保険医の取り消しということは、よほどの場合以外は――医師免許を持っておって医者ができぬと同じですから、この際私は罰金刑というものを取り消しの前の段階に設けてみたらどうかと思うのです。たとえば、そうやってくれという意味ではなくて、これは一つの例ですよ。鉄道のパスの期限が切れたときに、それを使っていると何倍かとられますね。あれと同じで、たとえば水増しを一万円やったということになれば、その五倍とか十倍の罰金を課す、こういうのも一つの方法じゃないかと思うのです。これは何かそういう一つのクッションを置かなければ、皆保険のもとにおいて、医師免許を持っておって医者ができぬという者がだんだん出てくる。しかも国保でやられ健保でやられる、こういうような工合で、なかなか保険が複雑になってくるわけです。指定が幾らでもある。指定は一つじゃない。労災の指定もあれば結核予防の指定もあるし、優生保護の指定もあるし生活保護の指定もある。指定が多いことも、これは厚生大臣に考えてもらわなければならぬ。なるべくこれは、むしろこの際どんどん統合してもらわなければならぬ段階ですが、そういう罰金刑というものを考えたことがあるのかないのかということなんです。
#73
○高田政府委員 指定の取り消しとかいうようなことはどういうことかといいますと、別に法律上の観念としましては罰ではないので、保険の取り扱いを
 一つやりましょう、お願いいたしますという関係づけを排除するという趣旨でございますから、従ってそこに罰金というようなものを入れるのは観念が少し違ってくると思います。しかし滝井先生のおっしゃっておるお気持、私も実はよくわかるのです。今保険との関係を断ち切るとか続けるとかいう場合に、断ち切る場合にははっきり取り消しであって、そうでない場合には戒告程度にとどまっておってそのまま続いて、実質的にそこに差が非常にはなはだしいじゃないかということで、その途中に何かあってもしかるべきじゃないかというお気持は、私も非常によくわかります。現在は御存じのように、取り消しをいたしますについても、大体医療協議会等で了解をいたしまして、これは何カ月ぐらいしたら、あるいはどのぐらいたったら再指定を認めようじゃないかというふうな、暗黙の取扱いで再指定をまた新たにするというようなことで、永久に取り消してしまうのとそうでないのと、運用でやっておるわけでございます。そういうふうな運用をいたしておりまして、大体先生がおっしゃっておられるようなお気持にこたえておるわけでございますが、あるいはその中間の、まあ平たく言ってみれば、言葉が悪うございますが、営業停止というふうな段階のことを言っておられると思うのでございますが、そういうふうなことで果して法律構成ができるものかどうかというふうなことにつきましては、私ども検討をいたしてみたいという、これはほんとうの個人的な考えでございますが、そういう気持を持っておるわけでございます。
#74
○滝井委員 皆保険のもとにおいて、医師免許を持ちながら医師ができないというような人ができるだけ少くなるような方法を、やはり考えてみる必要がある、ぜひ一つ考えていただきたいと思います。
 次には、健康保険においては、知事が医療機関を指定し、そして保険医の登録を受けるわけです。そうしますと、その保険医なり医療機関は、全国的な診療の広がりを持つ権利を確保するわけです。ところが、今回の国民健康保険の指定医療機関は、同じように知事が指定をするけれども、その広がりは県内にしか及ばないわけです。そしてしかも健康保険で保険医療機関となったものは、別段の申し出をしない限りは、右へならえで国保指定医療機関になるわけです。この矛盾なんです。なぜ健康保険で知事が指定をして全国的に見得るものが、国保では県内しか見得ないことになるのかということになるのです。これは全国で見得るようにしてもちっとも差しつかえないじゃないか。
#75
○高田政府委員 原則は先生仰せのように法律構成してございますが、その医療機関が、おれは全国やりたいよといって知事さんに言われれば、全国やれるようなことに、国保の法案におきましてもなっております。しかし原則は県内に限られるという形をとっております。そういたしましたのは、健保の場合には、たとえば政府管掌というようなことになりますと、被保険者は全国に散らばっておるわけでございます。国保は各市町村単位に保険をやっておりますので、何といっても地域性がございますので、被用者保険と地域保険との性格の相違というものから、一応原則をさような法律構成にいたしたわけでございます。
#76
○滝井委員 原則は県内に及ぶ、しかし特に申し出た場合には全国に及んでもいいのだということですが、私は原則を全国に及ぶことにしておって、特に申し出た場合は県内でよろしいという方がいいんじゃないかという感じがするのです。そうしないと、たとえば旅行なんかをした場合に、療養費払いにやるということの方がめんどうくさいのですよ。患者にとっても、保険証一枚旅行カバンに入れておけば、どこへ行っても半額で見られるという方がどうもいいような感じがするのです。その点一つぜひ将来考えてみて下さい。
 たくさんありますが、まだ一人、二人おりますから、最後に……。十月二十四日に、これは学術会議の総会の最終日だったのですが、その第七部の医学部門の比企能達幹事から、健康保険法改正によって大学病院の診療規定が変り、健保診療の規定を大学病院で強制されると、新しい診療研究が全くできなくなる、従って大学病院については、特に審議会を設けて特例を考えてほしいという提案がなされて、それが可決をされたということが新聞に出ておるわけです。そこで今後皆保険になって国民健康保険が出て参りますと、もはや大学には昭和三十五年を契機として自由診療というものはなくなってしまうわけです。先般私はこの場所に文部省の大学課長に来ていただきまして、あるいは大蔵省も来ていただきまして、研究費の増額の問題、事務費の増額の問題をいろいろ論議をいたしましたが、どうもこの問題については明白な答弁が得られていないのです。やはり日本の医学技術の進歩をはかろうとするならば、基礎的な研究や臨床上の研究を日々積極的にやる大学の診療の問題というものは、この際再検討されなければならぬ段階がきておると思うのです。一体厚生大臣は、日本の医学技術を進歩せしめるための大学における診療のあり方というものを、どういう工合に基本的にお考えになっているのか、これを一つお教え願いたいと思います。
#77
○橋本国務大臣 大学における診療の問題について、大学の方からもいろいろ御意見がございまして、私の方もいろいろ考えながら検討いたしておるのでございます。大学の方といたしましても、大学の付属病院でいたしまする診療の全部が非常に珍しい、新奇の治療方法をやらなければ大学診療機関の意味がないというふうな問題ばかりでもない。やはり医学生の実習といったようなことからみ合いながら、標準的な診療でいい部分もあると思うのであります。ただ、中でも特別な診療方法をとりたい、それが社会保険における診療の基準に合わないというようなものをどうするかという問題でございます。原則といたしましては、やはり社会保険という制度を通じて診療行為をせられる限りは、大学の付属機関につきましても社会保険の制度によって考えておるのであります。
    〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
中に非常に特別な診療方法をぜひやって参りたいというふうな御意見があって、それに特別な経費がかかる。それを大学で好きなようにやって、好きなように保険の方に御請求になるというのは少し行き過ぎであって、そういう面につきましては、社会保険の制度ができまする前には、大学自身が文部省の方から施療、診療に要する費用というものを大学の運営費としてとっておりましたように、非常に特別なものを経費をかけておやりになるということにつきましては、やはり大学の医学の研究費の上で考えていただかないと無理じゃないかと思うのであります。今日のところではその中間的な考え方、大学付属病院についても、社会保険診療については社会保険診療の制度に従ってもらいながら、なるべくその間において、ある意味で大まかに見ていくというような制度でやっておる部分もあるのであります。建前は、今私が申しましたように、社会保険である限り社会保険の制度に従って、非常に特別なものについてはやはり将来はっきり研究費として計上せらるべきであるというふうに考えております。なお大学の方でもいろいろ御検討願っておりますし、私の方もなおいろいろその後も研究はいたしております。
#78
○滝井委員 学術研究と現実の臨床上の具体的な日々の診療というものとが一緒の場で行われるところから、どこまでの限界を保険診療とし、その限界を越えるものを研究として、たとえば大学の研究費から出すということをきめることがなかなかむずかしいことになるわけです。これは時間がございませんから、いずれ機会をあらためてもう一回――これはわれわれもとくと研究をいたしますし、厚生省も研究をしていただき、文部省なり大蔵省も来ていただきまして、やはりこの問題の結論というものは早急に出してやる必要があると私は思うのです。そうしないと、学術会議で、健康保険の改正を契機として学者の諸先生方がそういう決議をしなければならないということは、これはやはり日本にとって一つの大きな不幸じゃないかと思うのです。これはこれくらいにして、ぜひ一つ考えていただきたいと思います。
 これで最後でございますが、国民健康保険団体連合会の問題でございます。これもいろいろ私たくさん問題を持っておりますが、その問題をきょういろいろ質問するつもりはございません。問題は、八十条に「保険者は、共同してその目的を達成するため、国民健康保険団体連合会を設立することができる。」と書いております。これは私非常に唐突な提案でございますが、現在日本の保険者と療養担当者の間には非常に多くのトラブルがあります。この際国民健康保険の共同の目的を達成するためには、保険者だけではこの共同の目的の達成はできません。従ってこの際、国民健康保険団体連合会は療養担当者と一緒になって連合会を作るという考え方を持つべきではないかと思うのです。保険者だけが寄っても、保険者というものは同時に被保険者であるわけです。そうすると国民健康保険団体連合会には一体どういうところの意向が反映してくるかというと、市町村に、今まで義務設置であったものが今度任意設置になったのですが、義務設置であった国民健康保険運営協議会の意向が反映してくるのです。同時にその国民健康保険運営協議会の意向というものは直接保険者である市町村長を通じて反映をしてきます。そうしますと、その団体が保険者である市町村長だけの集まりではなくて、これに療養担当者も加えてやれば、この団体というものは非常に強固な皆保険の推進をするものになってくると思うのです。そういう意味で、これは保険者だけでなくして療養担当者もこれに加えて国保連合会を作っていく、こういう形になるべきだ。そうしますとその両者による連合会が、たとえば審査をやるという場合は、両者による団体、いわば中立的な形でそこに両者が構成するものですから、その両者が知事と相談して、こういうものを一つ審査機関でやりましょうという形になると、今後の国保の運営は非常にうまくいくと思うのです。そういう意味で私が大臣にお尋ねしたいのは、療養担当者もこの中に当然加えるべきだ、共同の目的というものは――共同というからにはこれは保険者だけではできるものではない。それは療養担当者と被保険者と保険者の三者一体の形において、初めて皆保険政策というものは遂行できるのだから、どうだということです。
 それからいま一つは、今までの国民健康保険法では相扶共済という言葉があったのですが、今回の法案にはそれがなくなっておるわけです。なぜ第一条にそういうものがなくなったのかということですね。この二点について大臣の意見をお聞きしたい。
#79
○橋本国務大臣 国民健康保険を実施するに当って、保険者、療養担当者相互間の理解協力というものがどんなに大事かということは、幾ら言葉を尽しても足りないくらいであります。しかしそうだからといって、直ちに国民健康保険団体連合会が療養担当者と合同の形でなければ作る意味がないというわけではないと思うのであります。国保の保険者としてはいろいろしなければならぬことがあるわけでありまして、やはり保険者としての連合会というものを作って、それの機能をいろいろ考えておるわけでありますが、そこで私はやはり保険者の保険団体の連合会は連合会として作りまして、そうして各保険者ごと、また連合会と医師会といったふうな形での相互の理解、協力というものを深めていくということの方がいいのじゃないかと考えております。今日この法案の中にありまする国民健康保険団体連合会の中に、療養担当者団体との合同団体という性格づけをするのはいかがかと考えております。
 それから相扶共済という言葉があったのを削りましたのは、実ははなはだ恐縮でありますが、私は最初二十八国会のこの法案の原理を作りましたときのいきさつはあまり詳しく存じておりませんので、特別な深い意味があったとも思いませんけれども、保険局長から説明いたさせます。
#80
○高田政府委員 大臣の仰せのように、相扶共済という字があってもなくても――あっても別に差しつかえがあるというわけでもございませんけれども、旧法はみんなが寄り集まって助け合っていくという思想で出発をしたわけでございます。その時分には、国がどういうふうな責任を持つというふうなことはなかった時代の規定でございます。ところが今回の新法を一貫して流れておりまする思想といたしましては、やはり国保事業というものはみんなが寄り集まってお互いにやっていくのだということよりは、社会保障の重要な一環としてやっていくのだ、しかもそこに国が責任を持っていくのだ、従って新法では費用の点につきましても、国の負担というふうな言葉を使って責任を明確にいたしますとか、あるいは調整交付金の制度を設けて、負担力の少い被保険者をたくさんかかえておるところについては手当をしていくとか、いろいろそういうふうな国の責任というものを明らかにした規定があるわけです。それらの規定が裏づけになりまして、若干考え方を変えていった、こういうことでございます。従ってそこに相扶共済なんというのはなくてもいいじゃないかということで落したわけであります。
#81
○滝井委員 だから、そういうように相扶共済というのは昔のいわば隣保的な精神と申しますか、お互いに共同して、そして隣近所を助け合いながら病気という災害を防いでいこうじゃないか、不幸を防いでいこうじゃないか、こういうことだったのです。そこで市町村ということで、保険者でよかった。ところが今度は社会保障という、国がある程度責任を持つのだ、こういう形に出てきたからには、小さな市町村が保険者になって、その保険者が寄り集まって連合会を作る、こういう島国根性が問題だというのはそこなのです。しかも私は連合会のことをいろいろ調べておりますが、ことしは予算は三億くらいになっております。これは今後ますます莫大になってくる。三億の金でも、やはり保険料というものは血の結晶なのです。従いましてそういうものを使っていくということになると、療養担当者の側からいうと、待ったということになるのです。支払いがおくれておるのに、そういうものに先に回すということはどうなんだという問題も出てくる。だからそういう点、連合会の問題についてはもう少し立法の根本精神、第一条による相扶共済というものを抜いたからには、国が責任を持つという建前が出てきているのです。そうすると保険者というものが集まって、何か小さな――この前のお話のように、医師会という圧力団体があるから、あれはけしからぬというようなことではいけないのですよ。国が責任を持つからには保険者と担当者が一緒になってやろうという団体が全国的にできることの方がいいのです。それは保険者というものは医師会というものとは違うのです。その会員が出す金ではないのです。公けの金なのです。根本的に違う。保険料でまかなわれる。あるいは国の補助金でまかなわれるのです。そこが根本的に違う。ところが保険者が自分の金で、市町村長が自費を出して作る団体ならよろしい。そしてそれを財団法人にでも作るならいい。たとえば健康保険で事業主がやるのと同じもの、それならいいが、そうでないのです。だから問題は、連合会というものは保険者だけでなくて担当者も入れたものを作れという主張です。それならば公金をそこに出してもよろしい、そういう意味ですから、連合会のあり方については、なお今後の課題としてもう少し研究してみる必要がある。現在の連合会の機能をごらんになると、連合会が常任でやっておる人はおりません。全部兼職です。片手間です。それでは共同の目的を達成できない。それは常勤を置くだけの財政的余裕がないからです。ほんとうに本来の目的を達するならば、やはり何かもっと強い、担当者を入れたものにしなければならぬ、これが私の考え方です。これで終ります。
#82
○藤本委員長代理 河野君。
#83
○河野(正)委員 ただいままでいろいろと論議されて参りましたが、時間もございませんので、簡単に関連をして一点だけ質問を申し上げて、所信を明らかにしていただきたいと思います。
 御承知のように今度の国民健康保険が、皆保険政策でございますから、従ってこの制度が一つの前進を示すという点については私どもも了承するのにやぶさかでないのであります。ところが皆保険政策でございますから、組織網というものは拡充拡大されて参ります。従って組織網が拡大拡充されて参るために、不合理が非常に助長されて参るという面が必ずしもないではないわけでございまして、そういった具体的なことについては、ただいま滝井委員からいろいろ申し述べられた通りでございます。その他私が一点取り上げて大臣、当局側の所信を明らかにしていただきたいと思います点は、それはもちろん今日まで論議されて参りました甲表、乙表の問題もありましょう。それはさておくといたしまして、私が特にこの際御指摘を申し上げたいと思います点は、国民健康保険というものが一つの地域性を生かすということでございますならば、その地域の特殊性が大きく論議の対象にならなければならぬと思うわけでございます。その点からの質問でございますが、それは先ほど申し上げましたように甲表、乙表の問題も上って参りますが、しかし、私が今日ただいま申し上げますように取り上げてみたいと思います点は、それは地域性を中心としての考え方からでございます。この地域差、いわゆる特定地区指定の問題の点でございます。今日この地域差、いわゆる診療報酬の地域差につきましてはいろいろ論議のあった点でございます。ところが今度国民皆保険ということで市町村団体の必置性ということになりますと、その組織網なり規模が拡充拡大されて参るわけでございますから、従って今日ありました、いわゆる地域の不合理がさらに拡大されて参るというふうな結果が生まれて参ったのでございますが、こういったような診療報酬の地域差に対します大臣の基本的なお考え方をこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
#84
○橋本国務大臣 地域差は、いろいろな御意見はございまするけれども、方針といたしましてぜひ撤廃の方向でいきたいと考えております。昨年以来診療報酬の審議に当りましても、この地域差は撤廃をしていきたいという御意見が圧倒的であったようでありまして、ただこの場合におきましては、ならして平均をとるということは事実とれませんので、結局低い方を上げて参るという関係からいきまして、なかなか一気にはできにくいのであります。
    〔藤本委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕
今後なるべく早く機会を見まして、この地域差の撤廃をいたして参りたい。従いまして将来やはり地域差を撤廃していくという方向であるといたしますれば、今日ありまする甲表、乙表の差につきましてはいろいろな問題がございますけれども、ちょうど地域給の問題につきまして、地域給全廃の方針をとりまして以来、問題はありながらも現行地域をいじくらないという方針できておりますのと同じように、今日の地域の差というものはそのままにいたしまして、将来総体的に撤廃する方向にこれを持っていきたいというのが今日考えておる方針でございます。
#85
○河野(正)委員 地域差を将来撤廃したいという考え方につきましては、私どもも基本的には了承いたします。しかしながら問題は、撤廃するのであるけれども、どういう形で撤廃が行われるか、この点が私はきわめて重大だというふうに考えております。従って今回の甲表、乙表の設定の際におきましても、この地域差の撤廃に努力をしたいというようなことで、当局におきましては五%にその幅が縮められた。しかしながら乙表におきましては今日依然として八%前後の地域差があるということは御承知の通りでございます。そこで今日におきましてもいろいろ不合理につきましては問題になったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、国民皆保険という形で非常に組織網が拡大されて参りますると、言葉をかえて申し上げますならば、今日までの不合理がさらに大きく拡大されたというふうに御指摘申し上げましても過言ではなかろうかというふうに考えております。しかも今日までいろいろ地域給として全国的に問題となっておりまする公務員の地域給におきましても、いろいろ問題があるわけでございまするけれども、診療報酬の地域差はそれよりもさらに極端なる実情にあるということも、これまた当局側は御承知の通りだろうと考えます。具体的な例をあげて恐縮でございますけれども、たとえば例を福岡市にとりますと、福岡市は御承知のように今日四級地という最高の地域給に指定されております。ところが診療報酬の場合には、いわゆる特定地域の指定からはずれておるというようなことでありまして、具体的に申し上げましても、公務員の場合の地域給におきましても非常に大きな不合理がございますが、この診療報酬の場合にはさらに大きな不合理が存在しておるということでございます。しかも先ほど申し上げますように国民皆保険という形で組織網が拡充拡大されて参りますと、その不合理というものがさらに大きく拡充拡大されていく。極端な言葉で申し上げますならば、実害というものがさらに大きく増大していくというふうな結果になって参るわけでございます。そこで一般の公務員につきましても来年ごろには撤廃を行うという方針だけれども、その前提としてある程度の手直しをやりたいというふうな意向もあるかのように承わっております。大臣が基本的には何らかの形で撤廃という方向に進むべきだ、そのことにつきましては私ども基本的には了承できますけれども、しかしながら現実の問題として一挙に撤廃するということはなかなか不可能でございますので、その前段の処置として何らかの手直しをされる必要がありはせぬかというふうに私ども考えますし、なおまたその点に対しまして大臣はどのようにお考えになっておりますか、この点は率直に御披瀝願いたいと思います。
#86
○橋本国務大臣 福岡市の問題も、この間医師会の方がお見えになりまして承わりました。なお東京、大阪等の周辺の地区等も、境目で、いろいろな問題があるわけでございます。先にあげました地域給についてもそうでありますが、ある面だけ見て調整をいたしましても、すぐ別の面での矛盾が強く目に映るという形でございまして、今日ではやはりこれはもう骨は折れても、とにかく撤廃をする努力をやっていく、それまでの間は、いろいろ手直しをすることによってすぐまた次の矛盾が考えられまして、手直しによって基本的な矛盾を根本的に解決するということはちょっと考えにくいものでございますから、今日考えておりますところは、先に申し上げましたように、現在ありますこの地域の区分というものを、一つ何らかの形で撤廃の点まで持っていきたいという考え方でおります。その点は地域給の処理について考えておりますのと同じ方針でやっております。
#87
○河野(正)委員 関連でございますから、私はこれ以上御説明を求めることは避けたいと思いますけれども、現実の問題として、私は一挙に撤廃するという方向をとっていくことは至難なわざではないかというふうな判断をいたしますし、この点は先ほど私が御説明申し上げましたように、公務員の地域給の場合におきましても同じような経過をたどっているものと確信をいたしております。この公務員の場合におきましても、ただいま申し上げますようにいろいろ不合理があるわけでございます。先ほどもいろいろ陳情があっておるというふうなお話がございましたが、この医療費の場合には公務員の場合よりもさらに大きな不合理があるわけでございますから、私は少くとも公務員並みくらいの水準には現実の問題として当面引き上げておくべきではなかろうか、そうしてその上に立って逐次撤廃の方向に進むべきではなかろうか、大臣の申されますように、なるほど基本的には撤廃でございますから、そのことは望ましいことでございますが、私はそういった理想の方向に一挙に行くということは、現実の問題としてなかなか不可能であろうということが、今日までの情勢を見ましても明らかでございますから、従って今日まで行われております公務員と同じような水準まで引き上げて、そこに一つの歩調を合わして、そうして撤廃という方向に行くべきではなかろうかというふうに、きわめて現実に即した意見をもって大臣に御質問申し上げたようなわけでございます。そういった点につきましてあらためて大臣の御所見を承わっておきたいと思います。
#88
○橋本国務大臣 御趣旨はごもっともでございますが、しかしそういったようなことを考えました場合にも、たとえばどこかの地域を引き上げますと、その引き上げなかった境目のところにおいては、従来同じであったのが、片方を上げたために差ができる。きのうまで同じであったのがきょうから差ができる。やはり上げなければならぬということで、この地域給につきましても、甲乙両表の差についてもそうでありますが、従来非常に問題があってやって参ったのであります。今日そういったようなことを考えまして、御趣旨につきましてはごもっともな点があると思いますが、別の面に出て参ります、かりに上げた場合における矛盾をどう解決するかということを考えて参りますと、これはやはりなるべく早い機会に撤廃する努力を続けて参って、それまでの間は、将来撤廃という方針をきめたからには、今日のままでとにかくしばらくがまんしていただく、こういうふうにお願いしたいと考えております。
#89
○河野(正)委員 最後に一つ御要望申し上げておきたいと思いますが、なるほど大臣の仰せられますように、ここで是正をすると、それに関連をしていろいろな地区からいろいろな不平なり不満なりが申し出られる。そういった大臣の立場は私ども十分わかるわけでございます。従って私は、一つのステップを踏んでこの撤廃という方向に進むべきではなかろうか。大臣の置かれております立場も十分考慮して、私はステップを踏んで撤廃の方向に行くべきであるということを申し上げたのでありまして、その意味から、私は少くとも今日公務員の地域給の一つの基準がございますから、そこまで歩調をそろえていただけば何らかの大義名分も立つかと思います。私はただいたずらに診療報酬費の地域差の是正を無制限にここで申し上げるのではなく、少くとも今日公務員の場合には、すでに診療報酬費の場合以上の立場をとっている点がございますから、従ってそこまで引き上げるということについては、今日一つの既成事実があるわけでございますので、いろいろ文句はあろうけれども、一応の大義名分は立つであろうと考えておりますが、その点についてさらに御検討をいただきます余地はないものでしょうか、一つお伺いしておきたいと思います。
#90
○橋本国務大臣 いろいろ考えたのでありますが、ただいまのところは、先ほど申し上げましたように考えておる次第でございます。
#91
○園田委員長 多賀谷真稔君。
#92
○多賀谷委員 一、二点大臣に質問いたしたいと思います。
 皆保険といいながら国民健康保険の新法はかなり過渡的な、皆保険にいくまでの法律というにおいが非常に強い。あるいは皆保険ができて後の考え方もありますし、その点が考え方として、法律面に非常にちぐはぐな点があると思う。そこで医療機関の指定の問題もその一つではないか。これはやはり市町村との契約であるからそれを取り消す、こういうことが必要なのだ、こうおっしゃる。それから先般から委員諸君の意見を聞いてみると、どうも皆保険がなった後の問題と、過渡的な問題との意見の相違がそこに出てきておる。そこでまず、今の医療機関の指定は一例でありますけれども、取り消しというようなことをしなくてもいいと思うのです。罰則までいかなくても、たとえばそういう不正のあった医療機関に対しては、あるいは医療機関というものをやめて登録なら登録をするにいたしましても、そういう医者はこういうことがあったという公示をする。これは商売ですから、ある一定の名誉を棄損をするような公示はできぬでしょうけれども、ある一定の公示をすれば、そのお医者さんはそういうことをしたのだということになれば、これは行き手が少くなる、患者が少くなる、そういうことで契約の指定の取り消しということになりますと、これは営業停止をくらって、お医者さんという仕事ができない状態になるのですから、そういうことをしないで、むしろ皆保険が全部できた後の構図を描いて、そうして今申しましたような公示なら公示、こういう制度でいけば足りるのではないか。そこで皆保険が実施された後には、何も健康保険の指定あるいは一般の組合健康保険の指定、日雇い健保の指定、さらに国民健康保険の指定、こういうようなことをしないで、総合的に法律を一本にして、医療保険の法律はこれだとこういうようにされる必要があるのではないか。大臣の構想をお聞かせ願いたい。
#93
○橋本国務大臣 将来の理想といたしましては、当然そういう方向を考えて参りたいと思います。ただ今日といたしましては、職域の保険なり、共済なりというものが進みまして、あと国民皆保険をやりまするために、国民健康保険の制度をずっと拡充して補なって参りたいと考えておるのでありますが、その場合にはやはり今回提案をいたしましたように、国民健康保険制度自身の内容を拡充し、向上しながら、将来、ただいまお話のありました方向への実現のステップを踏んで参りたいと考えているのでございます。先々の問題といたしましては、完全に将来職域の差、地域の差というものをなくして一本化した方がほんとうにいいのかどうか、それがいつできるかということについては、まだはっきりした結論を持ちませんけれども、しかし理想としてやはりそういう方向へ行くべきものだと考えまして、とりあえずは国民健康保険制度の内容拡充をはかって参る。一応これで行きまして、今後は各種の保険について内容の向上、特に国民健康保険の内容向上をはかって、ただいま御提案のありました方向を実現する素地を築いて参りたいと思います。
#94
○多賀谷委員 日用者の健康保険と国民健康保険とが内容的に一致するということは理想でありまして、なかなかできぬと思うのであります。その前の段階で、手続的な問題として法律を一本にして、内容は一本にならないかもしれませんけれども、たとえば指定というものを考えましても、この法律を全然別にして別個に指定していく。そうして健康保険の方は指定を取り消される。しかし国民健康保険があるんだというようなことを考えること自体、少しおかしいのではないか。健康保険でそういう取り消しを受けるくらいの医者ですと、国民健康保険だってやはり困る。そういうふうに機械的に考えられないで、そういう面を統一する必要があるんじゃないか。それは大臣の言われる将来の理想の前に、もう一回統合的な法律の改正が必要ではないか、こういうことを言っておるわけです。
#95
○橋本国務大臣 現在のところでは、やはり経営の主体が違いまするし、それからいろいろ給付の仕方等も違っておりますので、どうしても社会保険を担当する指定と申しますか、認可と申しますか、そういった面が社会保険ごとにせざるを得ぬわけでございます。ただいまお話のございました取り消しなどをしなければならぬ場合においてどうするかといったような問題は、いろいろ御議論のあるところではあると思います。ただその場合にも問題の内容といったようなものが、いろいろ具体的には違っても参ると思いますので、今日といたしましては、制度があるのに、それによってやはり認可その他の処分もその制度ごとにどうもせざるを得ないし、そういうふうにいたした方が穏当かと考えております。
#96
○多賀谷委員 大臣は、私が一つ提案をしておるのですが、そのことに十分耳をかさないで、今まで大臣が考えられた通りをお話しになっております。時間もありませんから私これでやめますけれども、私は皆保険ができた暁には、療養の水準は違いましても、あるいは保険料は違いましても、やはりその他のものについてはもう一度考慮する必要があるのではないか、こういうことを提案をしておるわけです。
 次に私は、先ほど八木委員もおっしゃっておりましたけれども、国民健康保険ができ、あるいは国民年金ができますと、非常に今まで問題になっておりました五名未満のものが全く影を没してしまう。国民健康保険の中で何とか救済できるのではないか、あるいは国民年金でいけるのではないか、厚生年金をやらなくてもよいんじゃないか、こういうことで今までのことがだんだん影を没していく可能性があると思うのであります。最近の政府の政策も、依然としてこの零細な五名未満の問題については解決してくれません。今度の最低賃金もやはりでき得るものならば、そのでき得るような業態から最低賃金を作ろうというのですから、これがうまくいかない、そうして依然としてこの五名未満の零細企業というものは、全く包括的な一般的な健康保険あるいは年金の陰に隠れて、私は全く最後まで下積みになり日の目を見ることができないのではないかと思う。そこでこの問題については、国民健康保険だけを考えるからなかなかむずかしい。厚生年金だけを考えてもむずかしい。失業保険だけを単独に考えてもむずかしい。労災を単独に考えてもむずかしい。しかし今四つの社会保険がある、これを何とか政府の方で一本にまとめてやって、おのおのの会計の中にそれを入れてやれば私は決してむずかしい問題ではないと思う。保険料一つをとりましても、保険料一本でとってきて、そうしてあるいは厚生年金あるいは健康保険、あるいはまた失業保険、労災保険と、こういうふうに分けてやって、保険会計は別として、その徴収の窓口を一本にするとか、何らか対策はありそうなものだと思うのです。これについては厚生大臣はどういうふうにお考えですか。
#97
○橋本国務大臣 今までにもいろいろ御意見があるところでございまして、今日までもいろいろな工夫をいたして参っておるわけでありますが、仕事の簡素化をいたしまする上において、なかなかできそうにないことでも考えて参らなければなりませんので、ただいまの御提案のございましたことにつきましては、今までのところいろいろな事情があってなかなかうまくいきそうでかえってうまくいかないといったようなことがあるのでございますが、この上とも研究をいたして参りたいと思います。
#98
○園田委員長 これにて三法案に対する質疑は終局いたしました。
 この際、滝井義高君外十三名提出の国民健康保険法の一部を改正する法律案について、国会法第五十七条の三による内閣の意見があれば、これを聴取いたします。橋本厚生大臣。
#99
○橋本国務大臣 滝井委員外十三名提出の国民健康保険法の一部を改正する法律案につきまして、内容を拝見いたしました。この内容は現行法を基本にいたしまして、そしてその中で主として国庫負担の問題でございまするが、これを改正しようという御意見であります。政府といたしましては、一つには国民皆保険をやって参りまする上におきまして、今日私どもが提案をいたしておりまするような趣旨でやはり新しい法律を作っていく、内容をはっきりさせていくということが大切であると考えておりまする点が一点、それからもう一つの問題は、国庫負担金の問題でございまするが、これは将来の理想としてできるだけそういう方向に近づけて参りたいと思いますが、今日のところそこまでいくのはなかなかむずかしいと考えられまするので、滝井義高君外十三名御提出の国民健康保険法の一部改正法律案は適当でないと考えている次第でございます。
#100
○園田委員長 田中正巳君外二十四名より、国民健康保険法案に対する修正案及び国民健康保険法施行法案に対する修正案がそれぞれ提出されております。この際、提出者より趣旨の説明を聴取いたします。田中正巳君。
#101
○田中(正)委員 国民健康保険法案並びに国民健康保険法施行法案について、過日来本委員会において種々審議をいたしましたが、その審議の結果、私ども自由民主党においては若干の個所を修正すべしという意見をもちまして種々検討いたしました結果、修正案を一応作り上げたわけであります。現在お手元に修正案が配付になっておると思いまするが、相当条文によりますると広範な修正になりまするので、その要点を私から御説明申し上げたいと思います。
 第一は、国民健康保険の被保険者は、都道府県知事の登録を受けた国民健康保険医または国民健康保険薬剤師から診療または調剤を受けるようなことにするということでございます。そして国保の取扱いをなさんとする者は、その旨都道府県知事に申し出、それが受理されることを要するものとして、この場合、前記国民健康保険医または国民健康保険薬剤師がその診療または調剤に当ることとすることであります。すなわち、政府原案によりますると、国民健康保険の医療機関の指定を行い、そしてその指定機関の医師によって保険医療を行うことになっておりますが、この点について先ほど申し上げたような改正をいたそうというわけであります。
 第二点は、政府原案によりますると、健康保険法によって指定医療機関が取り消しその他の行政処分を受けた場合においては、国民健康保険の面においても指定の取り消し等がされるように由動的になっておりますが、反面国民健康保険法において指定の取り消し等を受けた場合には、健康保険法の取扱いにおいては、これがその行政処分が効果が及ばないという片手落ちな傾向がありましたから、これを改めまして、保険医療機関または保険薬局が健康保険法の規定によって取り消し等を受けても、国民健康保険においてはその地位が動かないというふうな改正をいたそうというわけであります。
 第三は、国民健康保険運営協議会の件でありまするが、政府原案によりますと、この設置について任意制になっておりまするが、運営協議会の任務の重要性にかんがみ必置機関と改めたことであります。
 第四は、療養費の一部負担金の問題でありますが、地方によりましては被保険者がそのつど一部負担金を払うことが困難な事情にあって、季節的にこれを払わせる方が適当である町村等がありまするから、かような町村においてはその一部負担の徴収を、そのつど払わなくてもよろしいことにいたし、その分については保険者がこれを徴収することに改めたことであります。
 第五に、政府原案によりますと、療養給付の期間については三年というふうに一応区切ってありまするが、この点につきまして、保険者さえ認めるならば、条例等によって三年以上の給付を行うことも差しつかえないというふうに改めようとするものであります。
 第六は、財政補助、負担等についての問題であります。保健婦に要する費用の三分の一以内を国庫が補助することになっておりまするが、われわれの修正案では三分の一ちょっきり国庫補助をいたすように、以内という文字を削除いたそうということでありますし、また国民健康保険組合に対する療養給付費については十分の二以内を国庫が補助すると規定してありまするが、この以内も取りまして、国庫は十分の二そのものを補助することというふうに改めたわけであります。
 第七は、都道府県の連合会の問題でございまするが、連合会の運営については従来若干整理すべき点もあったものでありまするから、今後はその区域内において三分の二以上の保険者が加入したときは、その区域内のその他の保険者はすべて当然に加入するものというふうにいたしまして、連合会ができなかったり、あるいは連合会内部が分裂するということを避けようとするのが修正の趣旨であります。
 第八は、一部負担金についてでありまするが、その一部負担金が、医療担当者が善良なる管理者の注意と同一の注意をもってしてその徴収を受けようとしてもなおかつ徴収ができなかった場合においては、保険者がその徴収をしてやって、医療担当者の負担にならないように条文を整備しようというものであります。
 その他これに関連をいたしまして、国民健康保険法案と施行法案と両方に、相当条文の整理をいたした次第であります。
 何とぞ御審議の上、御賛同あらんことを切にお願い申し上げます。
#102
○園田委員長 これより国民健康保険法案及び国民健康保険法案に対する修正案、国民健康保険法施行法案及び国民健康保険法施行法案に対する修正案、並びに国民健康保険法の一部を改正する法律案を一括して討論に付します。討論の通告があります、これを許します。柳谷清三郎君。
#103
○柳谷委員 私は政府提出の国民健康保険法案に対する修正案及び同施行法案に対する修正案、並びにこれらおのおのの修正案に基く修正部分を除く政府提出の両案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、賛成の討論をいたそうとするものであります。
 福祉国家建設のため、医療保障制度の確立こそ今日の急務でありますことは、疾病が貧困の最大の原因であることからいたしまして明白なことと存じます。わが国の医療保障制度の二大支柱は、職域保険である健康保険と、地域を基礎とする国民健康保険でありますが、これら医療保険の適用を受けない国民層がいまだ二千万人に達していることからして、その実効を示しておらないといわなければならないと思うのであります。しかして今度のこの改正法案によりまして、そのうち大よそ一千五百万人に及ぶ国民が、この制度を利用し、医療を受ける機会に恵まれるのでございます。
 国民健康保険制度は、御承知の通り、昭和十三年に創設せられ、当時不況下にあえぐわが国の農山漁村の住民に医療の保障を与えて、生活安定の基礎を築き上げました役割は、まことに顕著でありまするが、その後時勢の波にもまれ、崩壊の危機にも再三再四見舞われましたけれども、国保関係者一同の努力によりまして、これを脱却突破し、今日に至っているのであります。今やその普及状況は昭和三十二年三月現在におきまして、全市町村の七割六分、該当住民の六割八分に達しているのであります。今回政府が、国民皆保険の実現を目ざし、全面普及に障害となる点に検討を加え、新たに国民健康保険法案を提出いたしましたことは、国民の生活安定に対する強い要望にこたえたものであり、かつ、わが自由民主党が昭和三十五年度末までに国民皆保険の達成を公約していることにも合致する次第であります。
 本法案がまず第一に、市町村に対し国民健康保険の実施を義務づけましたことは、従来の普及の度合いからかんがみ、今後の強化拡充の対応策といたしまして、また国民皆保険の早期実現を期するためにとられた一大英断であるといわなければなりません。
 次に、従来の療養給付費及び事務費に対する補助を負担金と改め、療養給付費の二割をすべての保険者に対し均等に国が負担することを明示するとともに、療養給付費総額の五分に相当する調整交付金の制度を新たに設定いたしましたことは、国保財政の一般的な強化をはかり、かつ、従来伸び悩みの状態にあった都市部への普及促進に大きな効果をもたらし、さらに市町村の実施義務に対する国の責任を明確にいたし、国民皆保険への力強い地固めといたしまして、重要な意義を有するものであると信ずる次第であります。
 次に、従来健康保険、いわゆる職域保険に比較いたしまして給付範囲が著しく劣っていたのでありますが、これを同一に引き上げ、給付の率も財政面の充実とともに五割から漸次引き上げ得るよう規定いたし、給付内容の向上をはかったことは、医療の機会均等、すなわち量の拡大とともに医療の質の向上をも目ざしているものというべく、国民大衆の強い要望と相一致するところであるといわなければなりません。
 なお、七割給付、三割国庫負担の主張は各方面から唱えられているところでありますが、国民皆保険、すなわち医療の機会均等を大前提としている今日、諸般の情勢から判断いたしますれば、本法が調整交付金をあわせて二割五分の国庫負担、五割給付の建前をとっていることも、またやむを得ないものであるというべきでありましょう。もとよりわれわれといたしましては、皆保険達成を目途とするとともに、なるべくすみやかなる時期において、三割はおろか、四割あるいは五割の公費負担、七割あるいはそれ以上の給付実施の実現を強く念願するものであります。
 さらに診療報酬につきましては、健康保険と同一にいたし、従来一部に見られた割引診療を廃止して、療養担当者の地位の均一をはかったことは、まことに適切な措置であると思う次第であります。
 なお、ただいま修正されました事項は、いずれも審議の過程におきましてきわめて慎重、かつ熱心に討議されたところであり、国民健康保険事業の運営を円滑、かつ民主的に行う上において、今日の段階においては妥当なるものといわなければならぬと思います。
 以上申し述べましたところにより、政府提案の国民健康保険法案、同じく施行法案、並びにこれらおのおのに対する修正案につきまして、私は賛成討議をいたすものでございます。私の賛成討論はこれをもって終りといたします。(拍手)
#104
○園田委員長 岡本隆一君
#105
○岡本(隆)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、社会党提案にかかわるところの国民健康保険法の一部を改正する法律案に賛成し、政府提案の国民健康保険法案及び国民健康保険法施行法案、さらに自民党提案にかかわるところの同法案に対する修正案及び同施行法案に対する修正案に対して、反対の意思を表明せんとするものであります。
 国民皆保険の声は、これはすでに国民年金を要望する声とともに、国内にとうとうたることは言うまでもありません。その声に応じて自民党は国民健康保険法を新たに改正せんとして、政府が提出いたして参りましたけれども、しかしながらその内容を検討いたしてみますと、きわめてお粗末しごくなものといわなくてはなりません。国民健康保険がすでに国民の中に強く要望されているものであるのに、なおかつ今日までの間、全国民に広く普及しなかったということは、これは従来の法律の中で国民保険の実施をやりますと、非常に地方財政の負担が強くなるということが一番大きな理由であったと思うのであります。そしてまた現実の姿といたしまして、今日国民健康保険を実施しておるところの市町村にありましては、その九割までが地方自治体からの財政的な犠牲の上において、その実施が見られているのでありまして、従いましてこれを広くあまねく国民全体に及ぼそうとするなれば、ほんとうに皆保険をやっていこうとするなれば、もとより政府は大きな財政的な負担というものを覚悟してかからなければならなかったはずであります。ところが出してきました政府案は、現行は二割、ところが新法におきましても、二割の国庫負担に対してさらにまた五分の調整金を加えたのみでありまして、これをもってしては地方財政に及ぼすところの財政的な負担というものを抜本的に解決することはできません。しかもそのような形において各地方自治体に義務設置を要求するといたしますなれば、それはまさにやせ馬にむちを当てるようなものでありまして、地方自治体が好んでこれにみずから賛成して、その普及の実施に協力するということは考えることができません。従って声のみの皆保険に終ってしまう心配があると思う。
 さらにまたその内容とするところを見ましても、療養給付費の五割を被保険者が負担せなければならないことになっておる。この五割の被保険者の負担というものは、これは従来から非常に強い被保険者の間におけるところの不満になっておるし、さらにまた大きな矛盾でもあったわけであります。しばしばこの委員会でも取り上げられました通り、実質的には国民保険が実施されます。そしてすべての住民が義務として保険料を払っておる。さあ病気になった。そのときには今度はお医者に持っていかなければならない半額の一部負担金がございません。そのために受診をためらいます。ためらう間にだんだん重くなって手おくれになるという場合がしばしばあるわけでありまして、ほんとうに国民皆保険というものであり、しかもその医療保障の一環としての国民保険を口にする限り、これはどうしても被保険者の負担率というものをさらに軽減しなければ意味をなしません。現在の五割給付の形におきましては、まさにこれは貧しい人たちがかけておる保険金、これがかけ捨て、払い込み捨てになってしまいまして、それを利用して、貧しい人の犠牲において、比較的豊かな人が医療保障の恩恵を受けておる、これが現実の姿であります。従いまして日本社会党が、今般の保険制度、医療保障制度改正の機運に際しまして、どうしても三割の国庫負担をやらなければならない、さらにまた診療報酬、療養給付費の七割は保険者が負担しなければならない、こういうような法律案を出して参りましたのも、そこに理由があるわけであります。
 さらにもう一つ、大きな問題点として指摘しなければならない点といたしましては、今日五人未満の零細事業場に働いておる人たちが健康保険の網の目からは漏れておる、そしてまた今度それらの人たちが国民保険の中に包括されようとしておるのであります。しかしながら注目しなければならないことは、国民保険と被用者保険としての健康保険との違いというものは、その対象となる人が自営者であるかあるいは雇われておる人であるか、この二つにおいて大きな違いがあるということを、出発の当時から頭に入れて出発してきておるということを、私たちは注目していかなければなりません。自営者の場合にはこれは病気になりましても、たとえば家族の者が補ってそのかわりを勤めるとか、いろいろな形において収入の道がはたととだえることはございませんが、しかしながら被用者の場合におきましては、その被用者であるところの戸主が病気になった場合には、収入の道が立ちどころにとだえるわけであります。そのために被用者保険には傷病手当金の制度ができておる。従ってその傷病手当金の制度というものがなくては、どうしても気楽に養生することができない。零細企業に働いておる、小さな町工場で働いておる、そういう理由だけのゆえをもって、五割の一部負担金をお医者に持っていかなければならぬ、さらにまた傷病手当金は全然もらえない、こういうふうな形の保険の中へ投げ込んでしまうということは、これは非常に冷酷無情な考え方であるといわなければなりません。これはそれらの人たちは標準報酬が低いから、それらの人たちを健康保険の中へかかえ込むとするなれば、大きな財政負担を背負わなければならない、その財政的な負担を政府がきらって、ことさらにそういう国民保険の方に入れてしまっておるというふうに私たちは理解せざるを得ません。従いましてこういうふうな非情な姿をもしこのまま持っていくとしますなれば、それらの人たちを対象として考えましても、どうしても給付率をもっとよくし、さらにまた国庫もそれだけのものを国民保険の中へ導入するということは、政府のなさなければならない義務であり、五人未満の零細企業に働く人たちを今日すでに健康保険の中に取り入れていなければならなかった怠慢というものを、私たちはこの際あらためて政府に対して責めなければならないと思うのであります。
 さらにまた今日、療養担当者に対するところの診療費をめぐりまして非常な紛争が長く続いております。そしてまた甲表、乙表というような診療費が出て参りました。これは被保険者も非常に困るでありましょうし、同時にまた療養担当者の方でもこれには非常な迷惑が出て参っております。従いまして、こういうふうな事態が起りましたということも、今までの政府の適正な診療報酬制度というものを築き上げていくことに対する怠慢によるものであります。ところが今度の政府提案を見ましても、何らそれらの点に考慮が払われておりません。少くも厳正な、中立的な立場に立って適正な診療報酬をきめ、長い間続いておる紛争、ことにこれから先またいつまで続くかわからない紛争について円満な解決をはかり、保険者も被保険者も療養担当者も、すべての人が喜んでこの中において協力するというふうな形の国民皆保険の制度を作っていかなければならないのに、本法案においては何らそれらの点についての考慮が払われておりません。今日グラマン三百機を買うのに一千億をこえるところの金を使おうという自民党政府に、やろうと思ったならば、国民がほんとうに心から望んでおるところの国民保険はもっとりっぱな形のものを出してくることができるはずである。まさに今般出された政府提案というものは、おぼれんとする者にわらを与えるような形であって、私たちはこのようなお粗末な政府提案に賛成するわけには参りません。
 日本社会党は国庫負担三割、給付率七割を主軸としたところの国民健康保険法改正案を提案しておりますが、自民党諸君も従来の勤労者に対する冷酷非情な態度をお捨てになって、何とぞあたたかい社会党提案にかかるところの改正案に御賛成あらんことを心から希望いたして討論を終ります。(拍手)
#106
○園田委員長 これにて討論は終結いたしました。
 これより採決に入ります。
 まず、国民健康保険法案に対する修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#107
○園田委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。
 次に、ただいま修正に決しました部分を除いて、原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#108
○園田委員長 起立多数。よって修正部分を除いては、原案の通り決しました。
 右の結果、国民健康保険法案は修正議決すべきものと決しました。
 次に、国民健康保険法施行法案に対する修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#109
○園田委員長 起立多数。よって本修正案は可決されました。
 次に、ただいま修正に決しました部分を除いて、原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#110
○園田委員長 起立多数。よって修正部分を除いては、原案の通り決しました。
 右の結果、国民健康保険法施行法案は修正議決すべきものと決しました。
 ただいまの議決の結果、滝井義高君外十三名提出の国民健康保険法の一部を改正する法律案は、議決を要しないものと決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#111
○園田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。
 ただいま藏内修治君より、国民健康保険法案に対し附帯決議を附すべしとの動議が提出されました。本動議について、趣旨の説明を聴取いたします。藏内修治君。
#112
○藏内委員 ただいまの法案に対しまして、自由民主党並びに日本社会党の両党による附帯決議を朗読いたします。
    附帯決議
 一、政府は財政の許す範囲に於て、可及的速かに国庫負担率及び療養給付率の引き上げに努力すること。
 二、療養担当者の権利保護、苦情処理のため公正なる中立裁定機関を設置すること。
 三、調整交付金の算定の基礎となるべき療養給付費の見込額の算定に当っては、実績と相違が生じないよう努めるとともに、万一、相違が生じた際は、予算の補正等の措置を考慮すること。
   なお、事務費に対する補助については、その実情にかんがみ、実質的にその全額を国庫において負担するよう措置すること。
#113
○園田委員長 ちょっと速記を中止いたします。
    〔速記中止〕
#114
○園田委員長 速記を始めます。
 採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔総員起立〕
#115
○園田委員長 起立総員。よって国民健康保険法案に対しては、藏内委員の動議のごとき附帯決議を付することに決しました。
 この際厚生大臣より発言を求められておりますのでこれを許します。橋本厚生大臣。
#116
○橋本国務大臣 国民健康保険法案につきましては、長い間慎重な御審議を得まして、今日ここに修正議了を得ましたことはまことに幸いでございます。
 御審議の過程におきましてお述べのありましたいろいろな御意見につきましても、十分心して運用を考えて参るつもりでございます。ことにただいま提案可決せられました附帯決議につきましては、これを十分尊重いたすよう配意をいたすつもりであります。
#117
○園田委員長 この際お諮りいたします。ただいまの議決の結果、条項、字句等の整理を要するものがありますならば、その点は委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#118
○園田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。
 なお、右三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#119
○園田委員長 御異議なしと認め、そのように決します。
    ―――――――――――――
#120
○園田委員長 内閣提出、最低賃金法案並びに勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案の三案を一括議題とし、審査を進めます。質疑を行います。五島虎雄君。
#121
○五島委員 最低賃金法案が政府と社会党から出されたわけですけれども、これは最低賃金法を通して日本の経済体制の革命だと私たちは認識しております。それは中小企業経営者にも労働者にとっても重大な関係があるからであります。特に最低賃金法の制定に当って一番問題になるのは、何といっても最低賃金額をいかほどにきめるかという問題、これがはっきりしていない限りにおいて、それは有名無実の法律になる、法律だけがあってもその実効がほとんど上らないとわれわれは考えておるわけです。しかも第二点に問題になるのは、その最低賃金法を実施するときの方法であろうと思います。ところが政府提案によれば、四つの方式をもって、最低賃金法の実施、そうしてゆるやかな実現ということを従来まで説明してこられたわけです。私が今申し上げるように、第一に重要な問題の最低賃金額をいかにきめるかということは、この四つの方式からゆるやかな方式になっておりますから最低賃金額はない。従ってわれわれがどういうところから見ましても、この賃金額の決定ということに当っては、幾らでもいいような案の内容になっておる。従って私たちは、政府から提案されたところの最低賃金法なるものは、国民あるいは労働者にとってごまかしの最低賃金法であろうと思わざるを得ないわけです。従って政府の最低賃金法はもう全然だめだという立場の中に、しかも政府の法律案の作られたところの内容について若干質問をして、それについて大臣以下の方たちが説明されても、それはとうてい納得ができないと思うわけです。しかし政府案に対して若干短時間のうちに、そのものずばりとして審議を進めていきたいと思いますから、明快なる答弁をお願いしたいと思います。
 まず第一に、最低賃金法がもしも通過して実施されても、労働基準局の行政員の定員は増加しないということになっておるわけです。というのは、大体政府は二十八通常国会において通るべきものなりとして、その予算額を計上しておられる、しかしその予算は実施できないというようなことになっておるわけですが、当初予算は二百四十九万四千円になっていると思います。ところが二百四十九万円の当初予算を計上したにもかかわらず、労働基準局の関係の行政員は全然増加されていない、こういうことについてどういうように考えておりますか。従来と同じならば、今まで中央賃金審議会等々があったけれども、何もやってこられなかった。そうして予算に計上しても、定員の問題からはたった三名しかふえていない。都道府県の労働基準局の中には三名しか定員が含まれていないということは、冒頭に私が申しましたように、有名無実の最低賃金法を国民に与えて、そうしていつやるかわからないような最低賃金法をやることによって、国民をごまかすと言わなければならないわけですけれども、この点についてはどういうように考え、今後どういうようにやられるつもりがあるかということについて質問をしておきます。
#122
○倉石国務大臣 最低賃金法が実施されるようになりましたならば、お話のように労働基準局、従って地方の監督官等をそれに働かせることになるわけでありますが、今お話のように、私どもはこの法律を実施するために特に基準局の増員をいたさないからこれに熱意がないというお話でありますが、そういうつもりはないのでありまして、五島さんもよく御承知のように、政府が国会に本案を提出いたしたというだけでも、それに関係のある業界においては非常に熱心に本問題を研究いたしておりますし、この間から御説明申し上げておるように、この趣旨に沿うて現在でも六十数カ所がこれを実施する用意をしておる、こういうふうなことでありまして、われわれは原案で万全を期して一応推進をいたしていくようにしたい、こう思っております。
#123
○五島委員 そうすると、二十八年度当初予算において予算が計上されたにもかかわらず、労働基準局の定員なるものは中央においては全然一名もふやさない。そして都道府県におけるところの地方出先の定員はわずか三名である。これで自信を持たれるといっても、これからはあなたたちが今まで説明し来たったその問題について、すみやかに実施するのだ、そのために努力するのだという説明のもとにやっていくならば従前通りであって、中央も地方も関係職員は労働強化になるよりほかに仕方がない。まあこの問題はこれだけにします。
 次に、最低賃金の決定と行政官庁の勧告などは、すべて最低賃金審議会に諮った後行われるということになるわけですが、そうすると、さいぜん申しましたように、本年度の予算では二百四十九万四千円とってあるわけですけれども、その二百四十九万円の予算の使用方法はどうかということを、ちょっと調べてみますと、この金でどういうように審議会が実施されるかということについては、中央の賃金審議会が大体月に一回という予定になっているだろうと思う。それから地方では年に三回、四カ月に一回ということになっている。それ以外のことは予算には組んでないわけです。そういうような費用を二百四十九万円とっておられるだろうと思う。従って労働協約に基くところのこの法の十一条の地域的最低賃金を決定する場合は、使用者側の委員が反対して一回の審議会では結論が出ないというようなことができるわけです。そうすると、そういう場合は何カ月も延ばされる。四カ月に一回の中央審議会が開かれて、そして使用者側の意見が出たら、その四カ月に一回開かれるところの審議会で結論がつかない場合は、もう四カ月ずらされるということになって、労使間の申請に基いて地方賃金審議会でそれをどうしたらよかろうかというような審議会の意見が出ない場合は、二回目に決議されたとしても八カ月かかるということです。そうすると、政府の従来まで説明されたところのすみやかなる実施、そして中央賃金審議会は労使あるいは公益が出ているので労働者の意見もこれに参画できるのだ、あるいは業者間の協定は労働者の意見が含まれないから、ILO条約によるところの国際的な関係においても、あるいは労働基準法の関係においても、労働者の意見が含まれない賃金というものはこれは賃金じゃないじゃないか、われわれはこういうように言ってきたわけですけれども予算上から解釈すればそういうようになりはしませんか。こういうことをどうやって進めていかれるつもりですか。
#124
○堀政府委員 最低賃金の実施に関する経費でございまするが、三十三年度においては一千十四万円を新たに計上しております。そのうち、最低賃金審議会の運営費が四百二十八万八千円でございます。これにつきましてはただいまお話のような点はございまするが、本会議のほかに専門部会の経費も計上いたしております。また最低賃金審議会の運営費のほかに業種の実態調査費、最低賃金制度の普及調査費、それから協定制度の推進対策費、さらに家内労働の調査費、以上のようなものを合せまして約一千十四万円を計上しておるわけでございます。本年度の予算におきましては、最低賃金法が年度途中から実施されるということを予定しておりまするが、来年度におきましてはこの経費はさらに増額されるものではないか、このように期待しておるわけであります。
#125
○五島委員 次に、業者間協定方式で業者間の協定ができた場合は労働基準局に申請するということになり、そうして各関係の機関がそれを了承したら業者間協定によってきまったところの賃金が法律によって拘束され、そうしてそれから避けてはならないというようになるわけです。この業者間協定の問題については、われわれは業者間協定の賃金は賃金でないという立場に立っておるわけですけれども、これと、今度は労働法の関係によれば、労働法の関係による労使間の協定、これは地域的拡張ではなくて、単なる労使間の協定によって、労働協約で賃金がきまる。そうして双方の意思によって労働協約による最低賃金が当事者間においてきまるわけですけれども、これは法定化されないわけですね。法律の規制を受けないわけなんです。業者間協定は法律の規制が行われ、そうして労使間の協定は法制化しようとしない。それは賃金決定自由の原則によってそういうことになろうと思います。ところが、業者間協定ができないところの地域において組合と使用者が労働協約を結んで、そうして自由にそのつどつどの経済情勢に応じて上っていくことは、われわれは一向差しつかえないとは思う。ところが不況になった場合はどうするか。労使間の協定というのは――今、王子製紙でも、ああいう一流会社もどんどん協定を破って賃金の低下とか、ストップとかをされておる。まかり間違ったら首になってしまうという状態のとき、中小零細企業においては組合も結成されない、あるいは団体交渉において少々強い意見を出せば、うちの組合は左傾であるとか、赤であるとかいいながら労働協約は平気で破るような実情にあるとき、労働協約を法的に効果づけないというようなことは、一体どうであるか。はうすると、業者間協定と労働協約によるところの労使間の協定の問題をどういうバランスに置いたか、こういうことについて質問したい。
#126
○堀政府委員 業者間協定は現在も実施されておる部面があるわけでありまするが、この業者間協定というものは、事実上実施されておるにとどまるわけであります。業者間協定というものは、要するに同業者間の協定で、それによって最低賃金をきめたからと申しましても、その業者に使用されておる労働者は、業者間協定によって直接の法的保護を受けないわけであります。そこでこれに対して法的保護を受けさせるために、この最低賃金法案においては業者間協定に基く最低賃金を規定したわけでありますが。労働協約に基く最低賃金におきましては、労働組合法によりまして労働者は法的保護を受けるわけであります。従いまして、労働協約に基いて最低賃金をきめました場合には、労働組合法によるところの法的保護が労働者は受けられるわけでありますから、この法案に規定する実益がないということで規定しなかったわけであります。ただしその労働協約に基いて最低賃金が規定されました場合、アウトサイダーが存在するために労働協約が守られない、円滑に実行されないというおそれがある場合を考えまして、その場合には十一条に基きまして労働協約に基く地域的最低賃金という拡張適用的な規定を設けたわけであります。
#127
○五島委員 次に進みます。労組法の十八条は今局長が言われたような関係になると思いますが、労使間の協定の拡張適用、これは大臣あるいは都道府県知事が決定されるのであります。そうすると、その持っていき方というものはどういう経路を選ばれるかというと、大臣あるいは知事から労働基準局長の意見を聞いてこられる。労働基準局がこれをきめよう、意見を言おうとする場合は、次に基準局長から中央あるいは地方審議会の意見を聞いて、そして初めてその意見を聞いたのが大臣及び知事の決定ということになるのでしょう。それは本法の付則八条の関係からそういうことになると思います。ところがこの場合地方労働委員会は労組法の十八条によれば一項、二項によって決定権があります。するとこういう意見を聞く場合は労組法の十八条の一項、二項の規定があるにもかかわらず、今申し上げました順序によれば労働委員会はこの形態の中からは全然浮いてしまうということになるわけです。そして附則の八条によって労働組合法の十八条の四項にこれをみつけるということであれば、一項、二項、四項というものは何か対立してくる。労働委員会の機能というものは最低賃金に対してどういう働きをするのかというような疑いがあるわけです。そしてさいぜん申しましたように、審議会が四カ月に一回開催されるということになれば、労働委員会を浮かしてしまって、審議会は、あるいは特別の委員会ができましても、何か四カ月に一回、次は八カ月目、次は何カ月日というようなことになって、どんどん最低賃金の決定の時期がずらされてしまうということになれば、だれに一番影響があるかというと、労働者に一番影響があって、首を長くして賃金審議会がやってくれるだろう、そのうちにはあなた方が言われるように業者間協定――単なる業者間協定でも一〇%から一五%ぐらい上るというように首を長くして待っていても、それが四カ月伸ばされ、一年伸ばされというようなこともできてくる。従って労組法に規定された労働委員会の権限というものは、この附則八条によって非常に減退している。労組法そのものの権威をわれわれは認めておきたい。ところが特別立法ともいわれるような最低賃金法によって、労働組合法の労働委員会の権限が後退するようなことは納得できかねる、こういう問題について質問します。
#128
○堀政府委員 労働組合法の第十八条は、御承知のように労働協約が定められた場合におきまして、その当事者以外の者が存在するために労働協約の効力に悪影響を及ぼすという場合を保護するために、いわば労働協約、団体協約の保護のために規定されたものでございます。そしてこれは最低賃金のみならず他の労働条件一般についても、その労働協約は対象とするということを本来予定してあるものでございます。ところで最低賃金法案が立案されます前に、中央賃金審議会においてもこの関係が議論の対象になったわけでありますが、この最低賃金法を作ります以上、労働協約をもとにいたしましたところの一つの方式もやはりこの中に加えるべきではないか、こういう御議論が結局において決定的になったわけであります。それに基いてこの最低賃金法の十一条の地域的最低賃金の規定が設けられたわけであります。しかしこれはあくまでも最低賃金決定の一方式でありまして、労働組合法十八条とは並行はしておりますが、本来別個のものでございます。労働組合法十八条に基く拡張適用の方式は、そのもとになる労働協約が失効いたしました場合には、拡張適用された部分も失効することになるのは御承知の通りであります。最低賃金法十一条はこの労働協約をもとにいたしまして、一定の地域内の同種労使についての最低賃金を国が決定するわけであります。従いまして、もとになる労働協約が失効いたしましても、この最低賃金は残るわけであります。それから労働組合法十八条と最低賃金法十一条とは要件も違いますし、効力も別個になっております。従いまして、これらは本来別個の規定でありますが、しかし事実上この最低賃金法十一条が実施されますならば、労働協約の中に最低賃金条項が含まれる場合において、連絡規定、もしくは調整規定を設けることが必要である、このような観点から附則八条によりまして組合法十八条の改正をいたしたわけであります。その場合には、労働大臣、都道府県知事は、組合法第十八条の拡張適用の決定をする場合に、それが最低賃金条項を含んでおります場合には、やはり賃金の専門屋であるところの基準局もしくは賃金審議会の意見を聞いた上で決定を行う、これが妥当であろうということで、この労働組合法十八条の改正規定を設けたわけであります。従いまして労働組合法十八条と最低賃金法十一条とは並行して存在する別個の制度でございます。ただその間に連絡規定が設けてあるということで、最低賃金法がきまったために労働組合法十八条が制約されるという心配はないわけであります。
#129
○五島委員 さいぜんアウトサイダーの問題が局長から出ました。十二条の二項によれば、別個に最低賃金の決定の申請を行なって、アウトサイダーの使用者が異議の申し立てを行うことができることになっている。そうすると異議の申し立てを行なった場合は適用の猶予ができるということに五項によってなって、最低賃金額の減額がそのときは行い得るわけです。そういうような場合は、法文の文章によれば、一定の期間を限って猶予ができるというふうになるわけです。この一定の期間というのはそれぞれ話し合われるわけですが、そこにも心配が出てくる。そうすると地域々々の状況において一定の期間というものが認められるわけですか。それが無限に――無限ということは、まあ常識からはないわけですけれども、最大どういうような一定の期間を想定されておるのですか。
#130
○堀政府委員 労働協約に基く最低賃金、それから業者間協定に基く最低賃金の地域的な決定でございまするが、これにつきましては、アウトサイダーがその意に反しまして、最低賃金の拡張的な適用を受けることになるわけでございます。それによって罰則も受ける。このようなことになるわけでございますから、その場合に正当な理由があれば異議の申し出ができる、この規定を設けたわけでございます。その異議の申し出がありました場合には、十二条の三項によりまして、労、使、中立、二者構成の中央最低賃金審議会あるいは地方最低賃金審議会の御意見を伺って、その意見を伺って、その意見が、この業者については適当である、正当である、こういうことでありますれば、別段の定めをすることができる。その中には猶予規定も含まれる、こういうのが趣旨でございます。どの程度猶予するかということは、業種、職種、地域に応じまして、その地方あるいはその産業の労働条件、それから経済の実態をにらみ合せまして、賃金審議会で十分御審議をいただきまして猶予期間をつけてもらう、このような考えでございます。しかし事の性質上、この猶予期間が著しく長期にわたるということは望ましくありませんので、これがそれほど長期にわたるような運用はいたさない考えであります。
#131
○五島委員 そうすると、著しく延びることはない。限度はどこまで置く想定があるかという質問に対しては、著しく延びることはないというばく然たる問題である、そう考えておられるということを認識しておきましょう。
 その次に、同じく拡張適用方式の場合、拡張適用する場合は最低賃金の申請がまず行われる。そうして次には申請要旨の公示が行われる。そして公示後三十日以内に関係使用者は異議の申し立てができる。そうして審議会の審議が始まる。審議会の審議が始まって、そこで結論がついた場合、初めて決定の公示を行う。決定された公示があって、三十日以後に初めて効力が発生することになると思います。ところが、そういうような順序で行われましても、審議会は一体どのくらいで審議の結論を結ばなければならないかということについては法で規定してない。そうすると、さいぜん申しましたように、審議会ですったもんだやって結論が出てこない場合は、審議会でとどめられてしまうことになるわけです。そうすると、私たちが心配するのは、こういうようなやわらかい法律でも、やはりわれわれの心配する通りにいつまでもいつまでもずらされて、実施することができないというように考えられもしますけれども、この点については、基準局長が効力発生の日を別に定めるというようになっておりますね。たとえば十七条の二項に、「三十日」「別に定める」というのがある。そういうことが可能であるから、拡張適用に関する発効時期がますます延びてしまう、こういうようになりますが、この点についてはどうですか。
#132
○堀政府委員 第九条の業者間協定に基く最低賃金の場合には、異議の申し出の規定がございませんから、あまり長引くことはないと考えます。それから、業者間協定に基く地域的最低賃金、労働協約に基く地域的最低賃金については、異議の申し出期間がありますが、これは先ほど申し上げましたように、アウトサイダーがその意に反して強制的に決定された最低賃金の適用を受けることに対する保護規定でございます。この場合には賃金審議会の審議をやるということにいたしましたのは、労使の意見を平等に反映する機会を得たいといい配意に出たものでございます。ただその場合に、お話のようにこの審議会の審議が長引きまして、拡張適用的な十条と十一条の決定が遅延するのではないか、このようなお話でございますが、これは職権決定で、当事者の自主的な意思の一致がないような場合に、いきなり政府が職権決定を行うというような場合には相当遅延する場合も予想されますが、このもとになります労使協定にいたしましても、業者間協定にいたしましても、相当部分の大多数の労使もしくは使用者同士の間で意見の一致が自主的にあるわけでございます。それを前提にしておるのでございまするから、その審議があまり長引くおそれは少いのではないかと考えます。なおそういうようなおそれのあります場合を予想いたしまして、との法案が実施になりましたならば、中央最低賃金審議会をなるべくすみやかに開きまして、あまり遅延することのないように、議事手続その他についても適当な規程を設けて運用いたしたい、このように考えます。
#133
○五島委員 いろいろの関係で質問を進めます。次に五条の四項関係について、五条の四項では、労働者がその都合によって、所定労働時間もしくは所定労働日の労働をしなかった場合、または使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間もしくは所定労働日の労働をさせなかった場合には、それぞれ所要の賃金を払うというようになっております。その正当なる理由とは一体何だろうかということです。ところが今度は労働基準法の第二十六条の休業手当の項を開いてみます。そうするとこの労働基準法の二十六条の休業手当と、この五条四項の正当なる理由ということの関係は、一体どういう関係になるだろうかという疑問が出てきます。また労働基準法の二十六条には、使用者の責に帰すべき事由による場合においては賃金を支払う、それからこの最低賃金法における正当なる理由がある場合という、この正当なる理由と、労働基準法にいわゆる使用者の責に帰すべき事由ということの関連は一体どうなんだ、その適用範囲はどっちが広いのかというような疑いが出てきますけれども、この点について明らかにしてもらいたい。
#134
○堀政府委員 正当な理由ということは、使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべき事由でない場合をさすわけであります。これはなぜこのような規定を設けたかと申しますと、最低賃金は賃金の最低を保障するものでございまするが、それはあくまでも賃金決定の一般原則を変えるものではない。従いまして使用者の故意、過失又は信義則上これと同視すべき事由があった場合に休業をさした場合には、やはり使用者はその労働時間が短いからといって、その限度で差し引くことは許されないわけでありまするが、逆に故意、過失又は信義則上これと同視すべき事由でない、すなわち正当な事由で労働者を休業さした場合には、その限度で差し引くことはやむを得ないという賃金決定の一般理論は生きるものであるということを念のために規定したわけであります。ただし先ほどお尋ねの労働基準法二十六条の休業手当の問題でございまするが、休業手当は、いわゆる経営障害等の場合におきましては、やはり労働者を保護しなければならないという別個の法意で規定されたものでございますから、いわゆる経営障害の場合は二十六条の適用がある、このように考えております。ただいま申し上げましたように、この五条四項は賃金決定の一般原則を犯すものではない、貸金決定の一般原則はその場合にも当然適用があるということを念のため規定したものであります。
#135
○五島委員 次に進みます。今度は四条の二項です。四条二項関係は、出来高払い制度についての規定ですが、労働省令でこの賃金額が決定されることになっておるわけです。基準法の二十七条によれば「一定額の賃金の保障をしなければならない。」としておるわけであります。一定の賃金を保障しなければならないとしておるにもかかわらず、出来高払い制の保障給とこの最低賃金制との額がどういうようなものになるか、一体同額であるかどうか、あるいは最低賃金の方が下回ってもいいのかどうか、あるいはいずれが下回ってもいいのか、出来高払い制とこの最低賃金法との関係を伺いたい。
#136
○堀政府委員 基準法の二十七条は、ただいま御指摘の通り、出来高払いの場合におきましても一定の保障給を設けなければならないということを規定してございます。ただしこれは一定の保障給がなければならないということにとどまりまして、この金額には具体的な規定がないわけでございます。そこで二十七条によりますると、一定限度の保障給がありさえすればいいんだ、極言すれば、非常に低い額でも差しつかえないのだということで、基準法二十七条の規定は最低賃金を保障するというところまでいかない規定でございます。そこでこの最低賃金法案が通りまして最低賃金が実施されますれば、これによって具体的に金額がきまるわけでございます。それ以上を払わなければ罰則の規定の適用もありまするし、また法的の拘束力も生ずる、こういうことになるわけでございます。そこで一般の場合には第四条の一項によりまして、時間、日、週または月によって金額をきめる、これを一般の原則としておりますが、労働時間の算定把握が不可能であるというような特殊な業態におきましては出来高給、ピースレート方式によりまして最低賃金額をきめることは差しつかえないということを省令できめることにしております。ただいま御説明いたしましたように、基準法二十七条では不十分である、そこで今度の最低賃金法に基きまして具体的に最低賃金額を定めていくのが、最低賃金法案の規定の趣旨であります。
#137
○五島委員 いろいろその他にもありますが、私が最初に申し上げましたように、最低賃金法の最も重要な部分は何かというと、賃金額の決定とその方式の問題であろうと思います。ところが業者間協定を中核にするところの最低賃金法が制定されたと仮定した場合、しかも昨年の七月から現在まで一年三カ月になんなんとしておる、しかも労働基準局は全国の地方の基準局に命じて、業者間協定をすみやかにやらせるように行政措置をされたにもかかわらず、全国四十八しかできていない。中小零細企業まで労働組合を持てない今日の段階において、しかも中小零細企業に含まれる労働者は数百万ある。そのうち四十八の業者間協定ができて、そのうちに含まれる労働者は数万です。そうすると、われわれが指摘しておることは、この最低賃金法が実施されても、全国の労働者に最低賃金という、看板ばかりは最低賃金でも、効力を及ぼしてくるということは並み大ていのことではなかろう、こういうように思うわけです。政府の機能をあげて、堀局長以下、倉石労働大臣を頭に置いて、労働省が一生懸命やられたにもかかわらず、四十八の業者間協定しかできなかった。それから類推しつつ、今度はこの法律に基くところのあらゆる機能を発揮して業者間協定に力を注がれても、並み大ていで全国に普及するものではなかろうと思う。普及されない地域の労働者は一体どうなるかということです。そういうようなことの中から一体これがかりに通過したとして、業者間協定がいつ全国的に普及するものか、あるいは地域協定の拡大の問題等がいつ成功していくものか。だから為政者として、あるいは政府として、法律の作りっぱなしで実現できないようなものを通過させようとして国会に提案されて努力されているものではなかろうと思う。従って行き着く先は大体見通しができるんじゃないかと思うんです。これが通過した場合、業者間協定あるいはその四つの方式で全国に実施される最低賃金、そういうような賃金の制定がいつごろまで大体可能であるとお思いになりますか。
#138
○堀政府委員 ただいま技術上の措置といたして業者間協定が実施されておる数は、ただいまお話のように四十八件でございます。なおその他に、業者間協定を締結したいということで基準局に実態調査の援助を求めてきておりますのが六十八件ございます。これは一見少いようにも見えまするが、われわれといたしましては昨年の四月以来、この一年半ばかりの間に基準局は、これは業者間の純粋な自主性にまかせまして、向うから求めてこられれば援助をいたす、このような態度で臨んでおり、またこの業者間協定等についての基盤が全然成熟しておらなかったこの一年半におきましてこのような数ができたということは、最初の予定よりもむしろ相当成果が上ったのじゃなかろうか、このように考えておるわけでございます。今回の法案が実施されますると、この法律に基いて業者間協定に関する諸事項が実施されることになりまするし、また第十四条等に基きまして、労働大臣あるいは基準局長の勧告権等も認められるわけでございます。これに労使協定に基く最低賃金、あるいは十六条の職権決定というようなものを併用してやっていくのでございますから、今までの基盤が徐々に成熟しかかっておるということと、法律に基いて業務が実施されていくということから考えまして、この最低賃金法施行の暁には、漸進的にではありますが、地域別、業種別、職種別に最低賃金は、逐次拡大していくものであろう、このように考えておるわけであります。
#139
○五島委員 逐次的に漸進的に発展していくものであると考えられる。ところが従来までの質問者に対する答弁では、大体最低賃金法に該当し、これを適用しなければならない労働者が一体幾らあるか。千三百万人ばかりある。ところが一年かかって二万何千人だったら何年かかるのだというようなことです。しかし局長の御説明では、私もそうだろうと思うのですけれども、四つの方式を最高の機能をあげてできるだけすみやかに全国の労働者、業者に適用していくというようなことですが、漸進的では十年河清を待つで、十年先には日本の経済情勢がどうなっているかわからない。今はなべ底景気だといわれるけれども、なべ底をぶち割って、不況の不況のどん底になってくるかもしれぬ。従って、こういうようなものはすみやかにはっきりして実施しなければ、労働者に対して何にもプラスの影響がないのじゃないかということを私は言いたいわけです。だから、漸進的に漸進的にといって、今よりもちょっといいんだからそれでがまんしろというようなことは、あと君たちがへとへとになるまでがまんすればまんじゅうがあるんだというような法律の内容になっておるということは、労働者を救わざるゆえんのものである。あるいは中小企業の新時代におけるところの新しい企業形態にそれを向けることはできないと思うわけです。これは、労働大臣からはっきりした大体の気持というものを、そのときは大臣はおられないかもしれませんけれども、現在における倉石労働大臣の気持を聞いておきたいと思います。
#140
○倉石国務大臣 御審議を願っております最低賃金法は、御意見はいろいろありましょうけれども、われわれは名ばかりの法律になるとは思っておりません。ただ、しかし、先ほどからあなたが非常に憂えてお話し賜わりましたことについては、私どもも同感でございます。この法律はやはり作っただけでは一向値打がないと思います。そこで、基準局では、この前の委員会でも私は申し上げましたように、通商産業省の出先等とそれぞれ協力して、あらゆる機会をとらえて業者間協定の促進をされるように、この法律が行き渡るように努力をするつもりであります。そういうことでありますからして、政府としては、この法案が通過いたしました限りにおいては、できるだけ御期待に沿えるように努力をして参りたいと思っております。どうぞ御協力をお願いいたします。
#141
○園田委員長 多賀谷真稔君。
#142
○多賀谷委員 まず局長にお尋ねいたしたいのですが、われわれの手元に賃金上昇率といって、その増加率が示されてある。私たちも時間の余裕がありませんから全部を調査するというわけにはいきませんけれども、一、二調査をいたしましたそういたしますと、何を標準に賃金の上昇率というのを掲げたかわからない事情があるようです。あるいは、この協定締結状況一覧というその業者間協定を打ち出す以前にできた業者間協定かもしれませんけれども、たとえば新聞等でかなり報道された池尻商工会というのがあります。この業者間協定は実は六千二百円といわれております。ところが、六千二百円で基本給は幾らかというと四千円です。残業を三時間で二千二百円です。食事代が幾らかというと四千円。八時間で基本給がやっと食事代を払えるだけであるという、残業でやっていかなければならぬという、その残業の中には衣服なんか全部入るのですね。こういう賃金が最低賃金として今後行われるということになると大へんだと思う。あるいはまた池袋の長崎十字会、これも、大体残業で食えという、残業で生活して、食事代は基本給を充てるのだ、こういう方針だ。一体、労働時間は幾らとして、賃金は幾らとして、幾ら増加率になったのだ、こういうように算定なさっているのか、これをお聞かせ願いたい。
#143
○堀政府委員 賃金増加率と申しますのは、協定賃金以下の労働者の賃金の増加した率でございまして、これは、通常の労働時間労働した場合における賃金を、協定の実施前と実施後とに分けまして比較したものでございます。ただいま池袋もしくは池尻の商店街の業者間協定のお話が出ましたけれども、これは実はわれわれ労働省の方では全然援助もいたしておりません。われわれの方の援助業務としてお手元に提出いたしました四十八件の中にはこの二つは入っておりません。もちろん、われわれの方が援助業務としていたしました業者間協定も、全部これが模範的なものだと申すわけではございませんが、労働省が直接タッチいたしまして援助申し上げたものは、大体通常の労働時間働いて、その通常の労働時間に対する最低賃金が幾らであるということであります。通常の労働時間と申しますのは、いわゆる就業時間が八時間ときまっておりますれば八時間、七時間半ときまっておりますれば七時間半ということでございます。
#144
○多賀谷委員 そうしますと、この協定の中に、今までどんぶり勘定でやっておったのを全部基準内賃金として基本給としてやる、だからずいぶん上ったというような報告は来ておりませんか。
#145
○堀政府委員 業者間協定の実施によりまして、従来どんぶり勘定的な非常にルーズな賃金形態でありましたものが改善されたという報告は受取っております。ただし、その場合にどの程度上昇したかという具体例につきましては、ただいま持ち合せがございません。
#146
○多賀谷委員 なるほど、業者間協定を指導される場合に、どんぶり勘定をやめて基本給、こういうことはできておるわけですね。できた関係で残業手当がなくなっておるわけです。仕事は同じようにしておる。実態は同じだ。ただ、はっきり八時間ということになると、その八時間内には確かに上っておる。ところが、基準外をやめたから同じです。こういう例はありませんか。
#147
○堀政府委員 もしこの最低賃金法案が実施された暁には、いわゆる所定労働時間外の残業手当あるいは休日の割増し賃金というようなものは、最低賃金の中には算入されないという規定があるわけであります。これによって非常に明確に労働者の残業等によるところの苦汗労働は相当防止されるのではないか、このように期待しておるわけであります。現在実施中の業者間協定については、これはあくまでもこの最低賃金法というようなものに基いた法的な指導ではありませんで事実上の援助業務でありますので、あまり立ち入った指導はいたしておりません。大体において、業者同士の自主的な協定について、実態調査その他について援助を求められれば援助をいたし、資料を提供するという程度でございますので、そのようなかっちりとした把握はいたしておりませんが、最低賃金法案が実施されますれば、ただいま御懸念の残業手当あるいは休日労働の手当等が加算され、それによって、さらにそれを最低賃金に加算して事実上相当多くなったのだというような弊害が生ずることは相当防止される、このように考えております。
#148
○多賀谷委員 ところが、政府に申請した場合だけですから、政府に申請して最低賃金といっていわば認可をもらう分だけですから。それ以外は無効であるというならば、お話はお説ごもっともです。ところが、それは何も賃金として無効でも何でもない。これはあとから質問をいたしますから今答弁は要りませんけれども、事実はそれは有効だ。貸金の支払いとしては有効だ。ですから、ただ申請をして法的罰則をつける分だけが今のようなことができる。やかましく言えば申請しないだけだ、こういうことを言えばこの法律は終りだ。そこに非常に問題がある。
 さらに進めて、たとえば向島のメリヤスの百八十円、――東京で四千三百円というような賃金はきわめて低い。それから、時間がありませんから急ぎますけれども、輸出の金属玩具というものは、全くこれは指導されておやりになっておる。輸出の金属玩具というのは、かなり日本の玩具は輸出されておりますし、非常に安いですね。これなどは賃金を上げても十分にやっていけるのです。いやしくも指導をしたならば、もう少し最低賃金を上げるべきだ。上げても何も困らないのですよ。十分採算がとれる。コストがはね上ったって輸出はますます伸びるのです。これについては一体どういうように考えていますか。
#149
○堀政府委員 ただいま実施しております業者間協定につきましては、先ほど申し上げましたように、最低賃金法というような法律に基いて指導しておるのではない関係上、あくまでも、業者間の自主的な協定があり、それから資料等の援助を求められてきた場合には、受け身の立場で援助をする、このような基本方針で進んでおるわけでございます。今度最低賃金法が実施されますれば、その協定については申請があれは賃金審議会において十分御審議になるものである。従って、単なる最低賃金としてきめても意味のないような最低賃金は、これは最低賃金として決定をいたさない、こういうことになっております。
 なお、向島について、百八十円というのはあまり低いじゃないかというお話であります。これは低いようにも思いますが、これは満十五才の新制中学出の女工さんの日給でございます。もちろんこれが高いとかいうふうに申し上げるわけではございませんが、満十五才の女工さんの初任の基本給ということで、このような額で協定せられたものと見ております。
#150
○多賀谷委員 最近求人難ですけれども、新制中学を出た人たちは割合に求人難でないですね。そこで、政府がかねや太鼓で宣伝しました静岡のミカンあるいはマグロのカン詰の最低賃金の状態は今どうなっておるか、御存じであるならば御答弁願いたい。
#151
○堀政府委員 静岡のカン詰産業の最低賃金については、かねや太鼓で宣伝いたしたわけではございません。ただ、これが業者間協定としては最初のものである、そういう例があったということで新聞で有名になったのであります。われわれは何も宣伝や何かはしておりませんが、これにつきましては、この前の委員会等でも御答弁いたしましたような協定が一旦締結いたされまして、その後の情勢の推移に基きまして、最近業者間でさらに専門の委員会を設置されて、この金額の改定について目下御検討中であるという報告を受けております。
#152
○多賀谷委員 実は三十一年の四月に協定をして、そして翌三十二年度は一人も応募者がなかった。それは私は驚くべきことだと思うのです。その実態を知らないで盛んに宣伝されておるけれども、三十一年の四月にやって、翌年これで雇おうとしたけれども新制中学の生徒は一人も来ない。カン詰は手のやわらかい青少年でなくてはいけないのです。ところが、その手のやわらかい青少年がこの賃金では来ない。そこで、政府があまり宣伝をしてくれるものだから、改定しようにも改定ができないのです。非常に業者は困ったのです。改定をすると、あれほど政府が宣伝をするのに改定をしたと、また新聞で言われる。しかし、それでも募集をしたけれども、一人も来ない。中年の未亡人や何かは来ますよ。けれども、あの静岡においては残念ながらこの協定では来なかったという実情なんです。私はやはりこの実態を把握してもらいたい。
 さらに、日立製作所のあったところ、あの日立におきましても、山形県から従来入れておった工員がほとんど来なくなって、そうしてどうにもこうにもならなかったからああいう協定を結んだ。商工会議所などが結んだのは、一部の業者が賃金を上げなければならぬという協定をやったから商工会議所は結んだのだという現実です。ですから、現地の基準署に行って賃金は上りましたかと言うと、いや大したことはない、今までのものを制度化しただけだと言う。基準局に行きますと、いや相当上りましたよと言う。本省に行くと、これは大したものだと言う。これが業者間協定の実態ですよ。
 一々あげて質問をしておりますと、時間をこれだけでも一日くらいわれわれはとりたいくらいだが、この委員会の諸君も現地へ行ってみるといい。そうすると、いかに低賃金で、そうして実際この制度が実情に合わないものかということがわかると思うのです。これでは最低賃金として生活水準の向上にならないと思うのですね。島根ですか、鳥取ですか、山陰地方の塩干魚の問題だって、魚がどっと入ったときに季節的な労務者がいなければ困る、こういう場合には何とかしなければならぬけれども、とにかくお互いに引き抜き競争が非常に激しくなってどうにもこうにもならなかったからやっと作った。それも最低賃金は上っていないのです。むしろ賃金上昇の防止策です。ほうっておけばあのときの状態だと賃金は上るが、最低の業者間協定を作ったから賃金が下げられた。上るべきものが下った。ほんとうは、あれだけの事情において、しかも季節的労務者でお互いの業者が引き抜き工作をやっておったときだから、これはほうっておけば賃金が上ったはずです。これが業者間協定の実態です。
 そこで、大臣にお尋ねいたしたいのですが、業者間協定を結んでも、幾ら低くても、法律による申請がなければ、いかに労働大臣だって、あるいは基準局長だって、これはどうにもならないでしょう。
#153
○倉石国務大臣 この間からもたびたびお話がありましたけれども、非常に低いもので協定が行われたというようなものが申請がありましても、御承知のように賃金審議会を経てくるのでありまして、そういうところでチェックされる。従って、特にそういうふうな非常識なものが行われるということ、それが中心になって、業者間協定が土台になって最低賃金を法制化するということにはならないと思います。またそういうことがあってはいけないのでありまして、そういう御心配はこの法律によってはないと私どもは思うのです。
#154
○多賀谷委員 私が申しますのは、申請をしない場合にはどうにもならないでしょうと言っているのです。申請をしなければ、これは低いからだめだと言われてもどうにもならないでしょう、こういうことを言っているのです。
#155
○倉石国務大臣 御承知のように、その場合は勧告ができるのでありますから、本法に基いての勧告をいたして、そうしてそういう非常識な協定が行われないように指導いたしていく、こういうふうにやりたいと思っております。
#156
○多賀谷委員 勧告をしても何も効力はないでしょう。
#157
○倉石国務大臣 そういう政府が勧告をいたしてもどうにもやらないという場合には、御承知のように十六条でありますか、処置をとるように法律はなっていることは御承知の通りであります。
#158
○多賀谷委員 そうしますと、勧告をやった場合には十六条が直ちに適用されますか。十四条を適用したら十六条は直ちに適用になりますか。
#159
○倉石国務大臣 勧告をしてもなかなかやらないという場合、今御指摘のような場合は、社会通念上そういうことはよくないことでありますから、そこで職権を要する、こういうことであります。
#160
○多賀谷委員 この関連はないでしょう。十四条と十六条は関連はないでしょう。
#161
○堀政府委員 法律技術的な問題でありますから私から御答弁申し上げますが、十六条では、九条一項、十条等にあります業者間協定に基いて最低賃金を決定することが不適当である場合に十六条の発動がある、このように規定してございますから、やはり関連があるわけでございます。
#162
○多賀谷委員 別に十四条を発動してもどうにもならないという場合に十六条を適用するということはないでしょう。
#163
○堀政府委員 この法案の基本精神は、最低賃金というものは、当事者間で自主的に決定をしてもらったものをまずもとにして、それを労使中立、三者構成の審議会でよく御検討を願って、適当ならばきめるという当事者間の自主的な決定方式というものを尊重していくというのが基本精神でございます。そこで、そういう場合に、当事者が誠意がなくて、社会的に見ても非常にこれは最低賃金が必要であると思われるにもかかわらず、当事者がやらないという場合には、まず行政官庁が勧告することができるというのを規定したのが十四条でございます。そうして、勧告することによって事実上業者間協定を結ばせて、そうして最低賃金をそれをもとにして決定していくという方式をとることを建前にしておりますが、それでもどうしてもやらないということになりますれば、ただいま申しましたように、九条、十条等の手続で最低賃金を決定することが困難、不適当だということになりますので、その場合には賃金審議会にお諮りした上で十四条の適用の問題が出てくる、こういうことになるわけであります。
#164
○多賀谷委員 この十四条の業者間協定というのは、申請以前の業者間協定でしょう。法的な業者間協定じゃなくて、任意的な業者間協定じゃないですか。
#165
○堀政府委員 これは申請する前の業者間協定でございます。
#166
○多賀谷委員 なぜ低廉な場合に業者間協定を結べという勧告をするのか、これはわれわれときわめて考え方が違う点であると思うのです。むしろ、この低い賃金の業者間協定というのは、これは高賃金へ上るのを防ぐカルテルですよ。私は、こういうのはものの考え方としては禁止すべきだと思う。いやしくも法的な業者間協定以外は、業者間協定としては認めるべきでない。これは独禁法にも触れる。――これは商品ではありませんから直接独禁法には触れませんけれども、ものの考え方としては、むしろ法的に認める業者間協定以外は、これは認めるべきでない。業者間協定は許さない、こういうように法律の段階ではすべきですよ。十四条なんというのは、私はむしろこの方が弊害がある、かように考えるのです。
#167
○堀政府委員 十四条は、賃金の低廉の労働者の労働条件の改善をはかるため必要がある場合というふうに規定してございます。そこで、その低廉なものをそのままくぎづけにするというようなものについては、もとより十四条は発動いたしません。それから、なお、それが行政官庁の恣意にゆだねられるということがあっては、お話のように大へんでございますから、十四条の勧告をいたします場合にも、労・使・中立三者構成の賃金審議会にお諮りいたしまして、その審議会からこのような勧告をすることが適当であるという御意見の提出がありました場合には十四条の勧告をいたす、このようなことに運用いたしますので、十四条において、弊害はなく、むしろ賃金の改善のための効用が期待されると考えます。
#168
○多賀谷委員 議論を進める上において、これ以上十四条については私は言いませんけれども、この十四条なんという条文はきわめて弊害がある。十四条をやるくらいなら十六条を発動すればいい。十四条をやって若干上昇したけれども、まだ法的な最低賃金に達するには及ばないという場合もある。こういう場合には、私はむしろ最高賃金のカルテル協定になるおそれがあると思う。しかもそれを政府が勧めるということはどうかと思うわけです。
 そこで、私は条文について質問いたしたいと思いますが、第三条の生計費というものはどういうように考えられておるか、これをお聞かせ願いたい。
#169
○堀政府委員 生計費につきましては、これは労働者の生活のために必要な費用をいうものでございます。そこで、この生計費を考慮するのについてはどのような生計費を考えるのであるかということを御説明申し上げますと、これは一律に生計費がわが国においては幾らであるということを規定すべきではないかという御意見もありましょうが、これは、わが国の業種別、職種別あるいは地域別にそれぞれの業態に応じあるいは生活の状況に応じまして生計費にいろいろな差異がある実情にかんがみまして、その場合その場合に応じて労・使・中立三者構成の最低賃金審議会にこの具体的な賃金決定の場合に御意見を伺うことになりますので、その場合に、生計費と、それからそのほかの二つの基準、すなわち通常の事業の支払い、それから類似の労働者の賃金というようなものを、三つそれぞれ勘案されました上で御意見の提出があるわけであります。その御意見の提出に基いて最低賃金を決定する、こういうことになるわけであります。
#170
○多賀谷委員 実は、私が聞いておりますのは、生計費と書いてあるから、――なるほど地域差、物価差という問題はあるでしょう。しかし、最低の生計費というのはやはりこれは考えらるべきが至当である。これは地域差、物価差はありましても、最低の生計費というのは、全国物価差を除けば、ものの考え方は同じです。これは一体労務省はどういうように考えておるか。ほかの要素を抜きにして生計費はどういうように考えますか。
#171
○堀政府委員 地域差につきましては、物価その他の違いもございましょうし、それから、その従事しておる作業が重労働であるか軽労働であるか、あるいは農村周辺であるか都会の中心であるかというようなことに応じていろいろの差異があると考えます。
#172
○多賀谷委員 ですから、地域の差というのはあるだろうけれども、職業によって生計費が差があったり、そういうことは生計費としては考えられないのじゃないか。ほかの要素は別ですよ。生計費としては考えられないのじゃないか。労働省が考えておる生計費の最低というのはどういうのであるか、これをお聞かせ願いたい。
#173
○堀政府委員 ただいま申し上げましたように、地域差がございます。そのほか業態による生計費の差もあると考えます。従いまして、この場合には各種の資料がございます。たとえば、生活保護法による保護基準とか、人事院勧告における標準生計費とか、そのほか種々の家計費における調査関係の資料がございますので、こういうような資料をその場合その場合に応じまして具体的に賃金審議会に提供いたしまして御意見を伺う、このようになっております。
#174
○多賀谷委員 率直に言いますと、労働省は行き当りばったりで方針がないということです。法案は出したけれども、その法案を出すについて生計費は幾らだと言われても、労働省では答弁できない、答弁するものを持ってない、こう解釈する以外には今の答弁は聞くことはできない。そこで、続いて私は、類似の労働者の賃金というのは何をさしておるか、これをお聞かせ願いたい。
#175
○堀政府委員 類似の労働者の賃金と申しますのは、同一地域における同種ないし類似の事業もしくは職業に従事する労働者の賃金を考えております。こういうものがない場合は同一の地域に従事する労働者の賃金を考えております。
#176
○多賀谷委員 これは勧告の例があるでしょう。同種の類似の労働者というものの考え方が国際的にきまっておるでしょう。これは時間がありませんので私は言いますが、類似の労働者というのは、組織され、かつ有効な団体協約のある場合の労働者の賃金率と書いてあります。そうでしょう、これですか、間違いありませんか。
#177
○堀政府委員 ただいまのはILOの国際勧告の御引用だと考えますが、組織された労働者がある場合にはその組織の労働者の賃金、同種労働者の賃金ということはもちろん最も有力な参考資料になります。ただし、わが国のように中小零細企業においての組織というものがそれほど高くない実態においては、それだけを比べるのはちょっと危険がありますので、組織されていないところの労働者、同種労働者あるいは類似労働者の賃金も選考にいたしたいと考えます。
#178
○多賀谷委員 どうもだんだん聞いておると賃金が低くなりそうな気がするのです。類似の場合というのは、それは同一事業に組織のない場合は別です。組織のある場合においては、組織され、かつ有効な団体協約のある労働者の賃金率、こういうように当然解釈を統一して運用されたいと思いますが、どうですか。
#179
○堀政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、組織された事業における類似労働者の賃金、これはもう最も有力な資料にいたしたいと思います。しかし、それだけではなくて、それ以外の類似労働者の賃金も、これは参考にさせていただきたいと考えております。
#180
○多賀谷委員 またその次に通常の事業の賃金の支払い能力という要件があるのですから、あなたの方は、今申しました類似労働者の賃金というのはそれだけで十分ですよ。まだ下げる要素があるのです。そこで、私は、通常の事業の賃金の支払い能力というのはこれは御存じのように国際労働条約にも非常に問題になって、農業における国際労働条約の勧告の場合にもこれは削除されております。要するに、事業
 の賃金の支払い能力というのは削除されておる。そこで、政府はなぜこれを入れられたか、これをお聞かせ願いたい。
#181
○堀政府委員 この点につきましては、ILOの勧告には、お話のように、生計費と、類似の労働者の賃金率というもの二つをあげておりますが、これは事業の通常賃金支払い能力を否定する意味ではもとよりなくて、それは当然のことだという前提で勧告が行われておると考えております。それから、国際的な立法例を見ましても、対象産業の賃金支払い能力等の経済事情を基準として最低賃金をきめるということを明文で掲げておりますのは、アメリカ、フィリピンあるいはコロンビア、グアテマラ等の立法例にもある通りでございます。また、御承知と思いますが、リチャードソンの最低賃金も、これは国際的なきわめて権威のある通説としてとられておりますが、これもこの三つの基準が通例であるということを述べておりまして、国際的にもそのような例はあるところでございます。これらを参酌して定めたものでございます。
#182
○多賀谷委員 都合のいいときだけリチャードソンを出されては困る。彼は一律賃金を主張されておる。都合のいいときは出して、都合の悪いときはその説を言わないなんということはいけませんよ。そこで、支払い能力を前提としているということではないのですね。これは使用者側の委員から修正案が出たのです。支払い能力を入れろ、こういう修正案が出ました。ところが、これを入れると賃金が下る、ほんとうのその目的にそぐわないというので削られたのですよ。そうごまかしてはいけませんよ。国際労働条約の解釈をごまかしてはいけませんよ。あなたが政治家であって大臣ならあるいはわからないけれども、あなたは事務局ですから、ごまかしてはいけませんよ。
#183
○堀政府委員 ただいま私の申し上げましたのは、これはいろいろないきさつがあったことももとより御承知の通りでございます。われわれも承知しております。しかし、これが削られたからといって、この事業の支払い能力を否定するものである、このようにわれわれはILOの勧告を解釈いたしてはおらないということでございます。
#184
○多賀谷委員 それは日本政府がそうお考えになっておるだけです。現実の問題としてはなかなか支払い能力ということはないでしょうが、いやしくもこれを入れなかったというその理由には、それに拘泥されては困るという意味が入っておるからです。
 続いて、国際労働条約が出ましたから私申しますが、一体、大臣、これは国際労働条約の商工業における最低賃金創設の条約の批准ができますか。
#185
○倉石国務大臣 本案が通過いたしましたならば、政府はこの条約を批准したいと思っておりますし、またこれでできると思っております。
#186
○多賀谷委員 勧告はどういうようにお考えですか。勧告には条件が当てはまっておるとお考えですか。
#187
○倉石国務大臣 先ほど来お話のありました勧告をよく読んでみますと、これに必ずしも当てはまっておると私どもは強弁はいたしませんが、本案が通過の後においてはこの条約を批准できる、こういうように理解をしております。
#188
○多賀谷委員 勧告についてはどういうようにお考えですか。勧告に即応しておる、こういうようにお考えですか、お尋ねいたします。
#189
○倉石国務大臣 勧告の趣旨の基本線には、最低賃金制でありますからもちろん当てはまっておると私どもは理解しております。
#190
○多賀谷委員 賃金率の決定は労・使・公益三者構成でやらなければならぬ、必ず労働者の意見を反映しなければならぬとありますが、賃金率の決定は業者間協定においてはしないでしょう。
#191
○倉石国務大臣 御承知のように、本案は、最低賃金について業者間協定が行われて、それが即法律ということではないのでございまして、それを基礎にして最低賃金審議会というところで一ぺん洗って、それが法定化するということでありますから、私は本案でよろしいと思っております。
#192
○多賀谷委員 ただ申請をしたものについてのみ、何らの修正権もないという、こういう決定の仕方はないのです。いいか悪いかだけでしょう。その点はっきりしていただきたい。業者間協定を持ってきた場合、これは法律が保障する効力のある最低賃金、――効力があるというのは何かというと、違反した者は罰するというだけですね。それがないと言ったらどうなるか。ないと言っても、賃金としては有効なんですよ。一体こういうばかな話がありますか。どう考えてもわれわれは納得できない。法律によって申請をしたらだめだと言われた、――効力がないといえば別ですよ。その業者間協定を認めないというならば別ですが、認めなくても依然として業者間協定は有効というような制度はありますか。これは法律になっていないと思うのですがね。
#193
○倉石国務大臣 御承知のように、業者間協定が最低賃金審議会に持ってこられましたときに、適当でないという場合には却下をすることもできますし、またそれに基いての勧告をすることもできるのでありますから、もとよりこれは完全無欠であるというようなことは私どもは申しておるわけではありません。現在の実情で、まずこの辺から手をつけていくのがきわめて妥当であるということでやっておるわけでありますから、徐々に、だんだんと時勢に応じて理想的なものにしていきたい、このように思っておるわけであります。
#194
○多賀谷委員 ただ私は非常に心配いたしますことは、この前もエアハルトが来て日本の賃金水準が低い、これが輸出の伸びがない理由だということも指摘されておりますけれども、この業者間協定を含む最低賃金を持っていって、そうしてILO条約を批准したい、こう言いましても、このILO条約は今から三十年前にできた条約ですから、まだILOにおいて賃金に対する条約を一つも作ってない、初めてのときですから、その内容については全部国にまかされておる、批准国にまかされておる、これは寛大な条約なんです。それをいいことにして業者間協定を含む最低賃金、これは業者間協定だけですね。実質はこれだけです。これを持っていきますと全くペテンにかけたという感じを私は各国の人々は受けるんじゃないかと思う。最低賃金、最低賃金というけれども、最低賃金になっていないじゃないか、申請をしたものについてイエスといえば、それに対してただ若干の効力があるだけで、これは一体最低賃金になっているだろうか、しかも一方的にきめるのですね。こういったものが通用しますか。法律は、形式論としては条約は批准できますけれども、一体国際場裏に通用できるでしょうか。
#195
○倉石国務大臣 御承知のようにこの法律は、なるほど今まで御指摘のようにいろいろな面があります。そこでこの法律を実施するということは、とにかくわが国においては画期的な賃金政策でありますから、私はまずこれからスタートをいたしまして、徐々にその時勢に応じて改善をして参りたい。皆様方のお話を承わっておりますと、私どもも本案策定のときに考えましたように、うまくいかないだろうかといったようなところに非常に重点を置いて御心配なさっておられます御趣意はよくわかります。私どももそういうことも頭に入れながら、今日の日本の中小企業等の状況を勘案しつつ、まず今日は中央賃金審議会においても妥当であろうといわれた線を取り上げてここに提案をいたした次第でございます。
#196
○多賀谷委員 第九条の「定に基き、」というのは、定めに基いて自由に審議をして修正するという意味は全然入っていないのですか。
#197
○堀政府委員 「定に基き、」というのは、その定めを基準としてということでございます。従いまして賃金審議会で御審議を願いまして、適当であるということであればそれに基いて決定をする、それから適当でないということであれば却下する、こういうことになるわけであります。
#198
○多賀谷委員 真の最低賃金にはなってないと思うのです。最低賃金と言えるかどうか非常に疑問なんです。一番低いものはほうっておいてもいいというのですからね。三割農政ということがあるけれども、できるものだけはおやり下さい、それは効力を与えてやりましょう、これは私は日本の政治の最も悪い点だと思うのです。健康保険だってそうでしょう。もう法律ができて三十年になるけれども、五名以下は依然として放置されておる。さらに厚生年金だってそうでしょう。さらにまた失業保険だって、労災保険だって、全部日本の政治というのは零細は全然見ないのです。中小企業金融公庫だって、中企業の上しか恩恵を受けない。ある段階以上はできるけれども、それ以下はどうにもならないというのが日本の政治です。私は社会保険よりもまず一番初めは賃金だと思う。少くとも最低賃金がスタートするときには一番最低部から行うべきだと考えるのですが、大臣、どういうふうにお考えですか。
#199
○倉石国務大臣 日本の今の経済状態というものに立脚して、私どもまず第一に最低賃金というものを考える。もう一つは、日本は、御承知のように、とにかくいろいろな産業構造のもとにおいて、そのときどきの波はあるにしても、やはりコンスタントに一定度の失業者というものが出てくるような状態であって、いわゆる完全雇用の域に達しておりません。私どもはそういう点に自をつけまして、どんな零細な企業でありましても、やはりその方が生活を守るために小さな企業でもやっていく、それに従業する人はどんなことでもいいからとにかく収入を得たいということでそこにお働きになる、そういう人々に対していわゆる苦汗労働を防止するという考え方がまず優先的に考えられる。その他公正競争というふうなこともありましょうが、まず第一にそういう意味から考えまして、やはりせっかく最低賃金というものをきめましても、支払い能力のないこの企業を一体どうするか、そういうことにわれわれは頭を悩ましたわけであります。しばしば申し上げておりますように、今日のような最低賃金制ですら、地方の商工会議所の中の中小企業者、なかんずく零細企業の方の業者においては、時期尚早であるということで非常な反対をなさっておられる。しかしこういうものでもやはり一つの企業として存在いたしておるのでありますから、この企業に本法のような最低賃金制ですら実施していくためには非常に努力を要する。その支払い能力については中小企業対策で別途に一つ政治の面において考慮をして、そうして支払い能力を保ちつつ、まずこういうところからやっていこう、これはやはり多賀谷さんも御理解願えるものだと思います。
#200
○多賀谷委員 業種別に最低賃金ができますと、その最低賃金ができた業種には、何か金融面、税制面で政府は援助を与えますか。
#201
○倉石国務大臣 私ども最低賃金制を立案いたしますときに、多賀谷さん御承知のように、ドイツなどでは一ころ免税というようなこともやったように聞いておりますので、そういうようなことももちろん研究はいたしました。しかしそういうことも困難でありますので、やはり最低賃金制を実施するについてはそういう零細企業方面――補正予算提案の大蔵大臣の説明にも、年末に中小企業対策として百億円の融資をするというふうなことを述べておりますように、あらゆる角度からこういう零細企業の保護育成をしていくことを並行してやっていく、こういうふうに考えております。
#202
○多賀谷委員 そういたしますと、業者間協定による最低賃金ができても、その業者は特に税制の面とか金融面で政府の援助を受けるという担保がないわけですね。
#203
○倉石国務大臣 業者間協定を結びました者だけに特段の保護を与えるということは、今めんどうなようであります。
#204
○多賀谷委員 これは二十九年の最低賃金制度の勧告答申のとき、御承知のように四業種をあげて最低賃金を実施せよ、この業種については特に税制とか金融については努力をしなさい、こういったけれどもできなかった。理由は、その業種だけを特にやるということは日本の政治としてできないんだという答弁でした。ですから業者間協定というものが、担保ができない、補償はできないというのは経験済みですよ。そういうことはできない。それをまたここにおやりになっておる。こういうところに私は問題があるのじゃないかと思う。もうできないことは回答済みなんです。それをまた業種に最低賃金を作ろうとしているが、作ったって、大蔵省へ行ったってだめですよ。これは一体どういうふうにお考えですか。
#205
○倉石国務大臣 御指摘のような四業種についての勧告は数年前にございました。あれは職種できめろというようなお考えのようでありますが、そういうふうに単に一番下の四業種ということにしないで、やはり実情に即応した業者間協定というものを勧奨して、そこから徐々にやっていこう、こういう考え方であります。
#206
○多賀谷委員 次に、今低賃金の問題が出ましたから、私はドイツの経済相のエアハルトの発表に対する労働大臣としての見解を承わりたい。
#207
○倉石国務大臣 日本がお迎えした外国の賓客のお話でありますから、とかくの批評は遠慮いたしておりますが、実は、ドイツのDBG――労働総同盟の幹部が数名、今日本に見えております。昨晩私が歓迎のレセプションをいたしましたときに、ドイツ大使館の者も参りました。それでエアハルトのお話は断片的な新聞記者会見であるので、新聞によっていろいろニュアンスが違うが、あれは一つどういうことか聞かせてくれということをドイツ大使館の者に申しましたところが、昨日立教大学において日独の経済について講演をした。その講演は断片的な会見ではなくて筋の通った意見を発表しておるから、それを取り寄せて研究してくれ、新聞に伝えられておるものは誤まって伝えられている面もあるかと思うので、エアハルトは非常に心配しておった、こういうことを言っておりましたので、私も立教大学の講演資料を取り寄せてこれから勉強して、エアハルトの考えを研究したいと思っておりますが、先ほどあなたが御指摘になりましたように、日本の労働賃金が安いというふうなこと、それからまた輸出を増強するために為替レートをかえって引き下げた方がいいのではないかというふうなこと、こういうことにつきましては、私どもはエアハルトの考え方について必ずしも同調いたしません。ことに多賀谷さんよく御存じのように、労働賃金の比較というものは、国際為替関係をそのまま比較いたしても意味はないのであります。そこでまたよく労働関係で使用いたしておりますようないわゆる食糧賃金と申しますか、一日働いた賃金によって何ほどのパンを買い得るか、こういったようなものは私はやや妥当に近いものではないか、そういう見解を持っております。そういう為替換算率で計算をすることは何の意味もないのでありますが、そういう面で為替関係でいえば、かりに日本が一とすればアメリカは九になっておる、ドイツは二・四くらいになっているのでありましょうが、いわゆる食糧賃金ということからいえば、日本の一に対してアメリカは三であります。ドイツは一・四ぐらいであります。そういう点からいって、私はエアハルトの考え方というものは日本に対しては勉強が半分足りないのではないかというふうに思っておるのであります。そこでエアハルトの考え方を、新聞に伝えられたものだけから判断をいたすのは間違いかもしれませんけれども、単に為替換算率で賃金の高下をいうならば、アメリカに対してドイツが品物を輸出しておるのは、やはり安い賃金によるダンピングという理屈が成り立つのでありまして、私はそういう面においては、エアハルトの言っておることを基本的に研究してみなければ、何とも言えない、こういうふうに考えております。
#208
○多賀谷委員 私は食糧賃金のことも知っておりますけれども、日本の輸出産業のうちで外国、ことにアメリカが脅威を感じておるのは、そういう雑貨等については非常に賃金が安い。高くしたって売れるのですよ。そこに私はやはり問題があると思うのです。洋食器だって、これはおそらく二時間ぐらいの残業を含めてですが、プレス工で一万三千円、鍛造工で一万一千円、メッキ工で一万一千円、包装工で五千円から六千円。これは二時間くらいの残業を含めての賃金ですよ。あるいは今お話のありましたような輸出の玩具、あるいは造花の問題、まだあります。マグロのカン詰だってそうでしょう。協定を結んでも、あまり安過ぎて労働者が来ないのですから、そういうばかけた業者間協定を結ぶべきでないと思う。まだ上げても十分輸出が伸びるのです。そうするとダンピングのおそれもないし、もう少し私は業者間協定というものに対して、もし法的な申請をしてだめであるような業者間協定は認めない。これはカルテル行為です。最高賃金になるおそれがあるから認めない、こう言ってもいい。それ以上お互いに上げないというのですからね。これは最低であって、上げるのは自由だといったって、それ以上お互いに上げないという暗黙の了解が実際はできておるのですよ。一部高くなりそうなところに業者間協定ができているのです。日立へ行ってごらんなさい。私は業者間協定を結んだところをかなり歩いてきたのです。ですからこういう問題があると思うのです。これは労働大臣以外に閣僚で言う人はいないのですから、十分一つ労働大臣しっかりがんばってもらいたい。
 そこで、脱退してもこの協定の適用があるという九条一項は一般労働法でも通用しますか。たとえばこの規定がなくても、この考え方は法理論として通るかどうか。すなわち、この規定があって、初めて創設的にそういうことが認められるのか。その規定が法律の規定がなければ、一般の労働協約あるいは賃金協定、そういうものについては認められないのかどうか。創設的な規定ですか、確認的な規定ですか。
#209
○堀政府委員 九条一項はこれを規定することによって、脱退してもやはり適用があるのだという、創設的な規定であります。他の労働法の問題につきましては、それは労働協約その他の協定等の内容、きめ方によってそれぞれその場合に応じて違いがあるだろうと思いますが、この第一項を新たに書きましたゆえんのものは、脱退してもやはり拘束されるのである。脱退しても拘束されるというようにしなければ、最低賃金としての有効な実施が望めないという見地から第一項に特に書いたわけであります。
#210
○多賀谷委員 私が申しますのは、たとえば労働協約の場合、あるいは賃金協定を団体で結ぶ場合に、脱退をしても依然として結んだ当時の経営者なら経営者、あるいはそのときおった労働者なら労働者、いわばその結んだ当時の適用範囲のものは、その後脱退しても、きょうならきょうから脱退しても適用がある。こういうようなことは、協定が特に規定があれば別ですけれども、一般的には通用しますか、こう聞いておるのです。
#211
○堀政府委員 一般的には、特に規定しなければこのようなことは適用はないと考えます。ただしこの場合に一つ問題がありまして、あとからその団体に参加した者は、これは規定がなくても当然含まれるだろうと思います。そうでない者にきましては、やはり協定に最初入っておりまして、それが脱退したという場合には、特に法律的な規定がこのようにはっきりしておらなければ、いろいろな問題を生ずると思いますので、ここではっきりと脱退をしても適用があるのであるということを規定したのでございます。
#212
○多賀谷委員 これは解釈はいろいろあるのですがね。たとえば退職手当なら退職手当の協定をと労働組合の団体、連合会と、経営者の団体とが結んだとする。その後小さな方の企業は経営者が脱退する、大きなところの企業は労働者の方が脱退する、こういう場合も考えられるわけですが、その場合に脱退したものの効力はどうか、これは労働省はどういうふうにお考えですか。
#213
○堀政府委員 これはその場合の労働協約なり、あるいは当事者間の解釈問題として処理さるべきである。規定がない場合には、その際締結された、あるいはその審議の際使用された付属文書、あるいはその他の具体的な事情を勘案して解釈さるべき問題であると考えます。この最低賃金法の場合にははっきりと脱退しても適用があるということを書いておりますから、問題はないと思います。
#214
○多賀谷委員 非常にむずかしい問題ですからこれ以上質問いたしませんが、労働省はやはりこういう点は、あれだけ通牒を出しておるのですから、弾圧の解釈の通牒ばかり出さないで、こういうものについても解釈を統一しておく方が妥当ではないか、かように考えるわけです。そこで十条に入りますが、十条の、使用者の大部分の合意によってできるという規定があるのですが、十条、十一条を含めて申しますと、十一条のような場合、従来の組合法十八条の適用の申請はほとんど全部労働組合から出ていますね。ですからその実績を見ますると、第十条の場合も、これは業者間協定をした場合に他の業者にも適用さすということは、実際上十条の規定があっても行われないのではないか、こういう感じを持つわけですが、これについてどういうお考えですか。
#215
○堀政府委員 業者間協定に基き最低賃金が決定実施されております場合におきまして、その同一地域内にアウトサイダーが存在し、業者間協定の適用は自分に対してはないのだからということで、勝手な賃金をきめる、それで低賃金によるダンピングを行うというようなことがありましては、これはせっかく業者間協定を結んで最低賃金をきめていこうという当事者間の意図が、円滑に実施されないことになるわけでございます。そこでその場合にはアウトサイダーをやはり入れてもらいたいという申請をすることは、これは業者間協定を結んだ当事者によって当然問題になることでありますので、十条はそういうようなことを予想しての規定でございます。
#216
○多賀谷委員 実は賃金でない場合、販売価格、こういうような場合にはやはりアウトサイダーという問題に対しても適用させようという動きがあるでしょうが、賃金の場合は、業者というものは遠慮しますよ。そこでむしろその恩恵を受けるアウトサイダーの労働者の申請によったらどうでしょう。
#217
○堀政府委員 これは労働者のいろいろな御意見は、地方の賃金審議会にお入りになっておりまするし、あるいは労働条件一般については労働基準局長に勧告権もあるわけでございます。そこでそれはそれといたしまして、この十条の業者間協定を拡大適用してもらいたいということは、やはりアウトサイダーがあるために、せっかく業者間協定を結んで、最低賃金を円滑に実施しようとする団体にとって不利益なことになりまするので、やはりその責任者であるところの、最初業者間協定を締結して出講したその業者に申請をさせるということが適当であろうと考えます。
#218
○多賀谷委員 その結んだ業者の申請はけっこうですが、そのほかに恩恵を受けるアウトサイダーの従業員の方からも出講をさしたらいいじゃないか、そうしなければ、実際の十条の規定は効果を失うのではないか、こういうふうに考えるのです。
    〔発言する者あり〕
#219
○園田委員長 速記録が困難でございますから、御静粛に願います。
#220
○堀政府委員 労働者につきましては、各地域別に賃金審議会が設けられております。また必要に応じて業種別の専門部会等も設けられることになっております。この席上におきまして労働者側委員からいろいろな御希望は十分反映できるのではないか、このように考えております。これと十条の申請、この二つをにらみ合せましてこの十条の規定の適用の円滑をはかりたい、このように考えております。
#221
○多賀谷委員 この業者間協定に基く地域的拘束力というのは、第三者はできないのでしょう。第三者が職権でできますか。
#222
○堀政府委員 地域的拘束力は、その事業の同種の労使に対して適用されるわけでございます。
#223
○多賀谷委員 拘束の権限が行政官庁にありますか、こう言うのです。地域的拘束力をさすという権限がありますかと言うのです。
#224
○堀政府委員 この十条につきましては、十条の適用の申請がありましたならば、行政官庁はそれに基いてその地域内の同種の労使全部に適用する決定をすることができるわけでございます。
#225
○多賀谷委員 どうも局長は、故意に答弁を間違っておるようではないのですけれども、チンプンカンプンの答弁ばかりされるのです。私の聞いておるのは、申請権はまず第一にはアウトサイダーの労働者に持たしたらどうか、これは並立して持たしたらどうか、こう言うのです。第二には、先ほどそれはむずかしいとおっしゃいますから、それなら、ある地域の大部分の労働者に適用する、業者に適用する業者間協定が結ばれておるならば、職権でそれを拡大をするという、十条の適用をさすということができますか、こう聞いているのです。
#226
○堀政府委員 第一の御質問に対しましては、先ほど申し上げました通り、当事者の責任者である当初業者間協定の申請をした業者に認めることが適当である。労働者につきましては、いろいろの御希望もありましょうが、それは地域的な最低賃金審議会等の場を通じて十分その御意向は現わされるであろう、このように考えております。
 それから第二点の行政官庁につきましては、これは業者間協定の地域的最低賃金でございまするから、やはり申請があった場合に認めるとすることが、当事者の自主性を尊重するゆえんであると考えます。ただしその場合におきまして、どうしても社会的に見てもその地域の職種の労働者に最低賃金を規定した方が適当であると認められるにもかかわらず、申請がないような場合には、最後的には十六条の職権決定という方法も残されておると考えます。
#227
○藏内委員 議事進行。動議を提出いたします。ただいま議題となっておる三法案については、その質疑を終局せられんことを望みます。
#228
○園田委員長 藏内君の動議に賛成の諸君の御起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#229
○園田委員長 起立多数。よって三案に対する質疑は終局いたしました。
    〔「委員長横暴」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
#230
○園田委員長 申し上げます。衆議院規則第百三十九条、第百四十条、第百四十二条、衆議院委員会先例集第七十三号によって動議は採決いたしました。撤回されるならば別であります。
 この際、家内労働法案について、国会法第五十七条の三により、内閣の意見があればこれを聴取いたします。労働大臣。
#231
○倉石国務大臣 ただいまの点につきまして、政府といたしましては、わが国における家内労働関係はきわめて複雑でありまして、その実際が明確でないので、総合的な家内労働法の実現のためには、今後十分なる調査が必要であると考えておりますが、今次国会に提出いたしました最低賃金法案において、当面最低賃金制の実施に関連する範囲において、最低工賃の規制を行うことといたしております。社会党提出の家内労働法案は、家内労働の種類を問わず一律的に最低労働報酬化を制定せんとするものでありまして、これを実施することは、社会経済に混乱と摩擦を起すおそれがありますので、政府といたしましては賛成いたしがたいのでございます。
#232
○園田委員長 これより内閣提出の最低賃金法案並びに勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案を一括して討論に付します。討論の通告がありますのでこれを許します。齋藤君。
#233
○齋藤委員 私は自由民主党を代表いたしまして、内閣提出最低賃金法案に賛成し、勝間田清一君外十六名提出最低賃金法案及び家内労働法案に反対の討論をいたさんとするものであります。
 そもそも最低賃金制は、最低賃金労働者の労働条件を改善し、企業の公正競争をも促進するものでありますが、特にわが国におきましては、これにより中小企業の経営基盤の合理化、近代化にも資し、また輸出産業における対外信用の維持、向上も期待されるのでありまして、いまや最低賃金制が国民経済の健全なる発展の上に有する意義につきましては、何人も疑わないところでございます。わが国経済の構成はきわめて複雑でありまして、高度に近代化された大企業とともに、前近代的なきわめて多くの中小零細企業が併存いたしておるのであります。規模百人未満の事業所は全事業所数のうち実に九九・七%を占めており、従業者数においては七六%のものが百人未満の事業所において働いておるのであります。しかも大企業と中小中零細企業において、経済力に著しい格差が存し、かかる経済力、生産力の差は、また労働者の賃金の面においても規模別、産業別、地域別等に著しい格差を生ぜしめていることは、しばしば指摘されてきたところであります。私はもとよりかかるわが国の現状をそのまま是認せんとするものではありません。これが改善のためには、今後経済政策、社会政策の面において、着実に諸般の施策を進めていくことが必要であります。しかしながら、かかるわが国の現状において、社会党が提案されておる全国全産業一律八千円というがごとき最低賃金制には、とうてい賛成することはできないのであります。かかる最低賃金制は、多くの中小企業、零細企業の支払い能力を無視するものでありまして、もし強行されるならば、いたずらに社会経済に不安と混乱を惹起することとなるものと考えるのであります。これに反し、内閣提出最低賃金法案は、現実的立場に立って作成されたものでありまして、しかもその内容については、労使公益、三者構成の中央賃金審議会の答申を全面的に尊重いたしておるものであります。すなわち最低賃金は業種別、職種別、地域別等にそれぞれの実態に即して決定することとし、またこれが決定については、四つの方式を設けて、これを適宜活用することにより、最低賃金制を漸次拡大していくこととし、わが国経済、特に中小企業に無用な摩擦が生ぜざるよう十分配慮せられておるのであります。しかしてこのこと、ILO条約において、最低賃金制度の形態及び運用方法については各国が自由に決定するという建前をとっておるのでありまして、政府提出最低賃金法案はまさしくこのILO条約の趣旨に合致しておるものと言わなければなりません。
 また内閣提出法律案は家内労働の問題についても、全般的な家内労働法についてはなお今後の調査検討に待つこととし、さしあたり最低賃金と関連する家内労働について、工賃を規制し得ることとし、最低賃金制の有効なる実施を期しておるところであります。
 なおこの際政府案の最低賃金決定方式の一つである業者間協定に基く最低賃金について、一部に誤解が見受けられるので、この点について明らかにいたしておきたいと思うのであります。すなわち業者間協定は、業者が一方的にきめるものであるから、現状の低賃金を固定化せしめるおそれがあり、また労働者の意向が反映されず、従ってILO条約の趣旨にも反するかのごとき誤解であります。しかしながらこの法律は、業者間協定は直ちに法律上の最低賃金として決定されるものではないことを規定いたしております。すなわち労使公益、三者構成の審議会の審議を経た上で決定されるものであります。従って本方式は低賃金を固定化させるがごときおそれはなく、また審議会の審議を通じ労働者の意向も十分反映されるものでありまして、ILO条約の精神に反しないことはもとより、労働協約に基く方式、職権方式等の決定方法と相待って、わが国の現状における最低賃金決定方式の一つとして実効を上げ得るものと期待するものであります。
 最後に、一言つけ加えたいと思うのでありますが、さきに申し述べた通りのわが国中小企業の実情を見るとき、労働条件を改善し、特に賃金の上昇を期するためには、生産性を向上し、わが国経済を拡大せしめるための諸般の政策を強力に推進し、もって国民所得を増加させていくことが根本であると思うのであります。国民総所得の増加なくしては、賃金の増加を期待することも困難であります。かかる施策と並行してこそ、最低賃金制も真に効果を発揮することができると思うのであります。
 以上申し述べたように、私は、内閣提出法律案の実施は、従来比較的恵まれなかった中小零細企業労働者の福祉に大きな貢献をもたらすものであり、これら労働者諸君は本法案のすみやかなる成立を待ち望んでいると確信するものであります。中小企業労働者諸君の期待にこたえるためにも、本法案の早期成立をはかることはわれわれの責務でございます。ここに、わが国労働保護法として画期的なものであることを強調し、政府提出最低賃金法案に賛成し、社会党案に反対の討論を終えるものであります。(拍手)
#234
○園田委員長 五島虎雄君。
#235
○五島委員 私は日本社会党を代表いたしまして、政府提案の最低賃金法案に反対をし、わが党提案の最低賃金法案に賛成の討論をいたしたいと思います。
 討論に先だって、ただいま自民党が多数をもって質疑を打ち切り、そうしてこの法案を通過させようとした企図そのものに対して、ふんまんをもって討論をいたしたいと思うのであります。まだわが党には質問者が陸続と相続いており、なお十分なる審議をしないままに打ち切ろうとすることは一体どうしたことか。ただいまも自民党の代表が討論されましたように、こういうものをもって全国の労働者の今後の生活を保障しようとする、あるいは賃金を引き上げて社会福祉の実現をしようとするならば、よりよき、また慎重なる審議が必要であろうと思う。第二点としては、中小零細企業の近代化のために役立とうとするならば、より慎重なる審議が必要であろうと思うのであります。そうして日本の経済の正常なる発展のために今後寄与しようとするならば、この重大なる法律案そのものをより慎重に真剣に討論しなければならないと思う。しかもそれが質問さなかにおいて動議をもって打ち切り、これを多数によって押し切ろうとする政府及び自由民主党の考え方そのものは、最低賃金法案をほんとうに国民のものにしようとする誠意がないということ、さらにわれわれ社会党が従来から指摘しておったように、政府提案の最低賃金法案は有名無実である、底抜けの最低賃金法案であるということをまず第一に指摘せざるを得ないのであります。(拍手)しかもこういうような底抜け的な最低賃金法案を提案をしたということは、国際的な情勢及び国内的な情勢の中から、政府及び自民党は出さざるを得ないような情勢に追い込まれて提案したものである。しかもそういう中で最低賃金法という名をもって国民を欺瞞しようとする欺瞞的な法律案を提案して、そうして多数をもって押し切ろうとすることで、はっきりここに正体を現わしたと指摘しておきたいと思うのであります。(拍手)
 さいぜん申し上げたように、従来わが党の各委員から、意見もその中にはさみつつ質問を展開してきましたように、最低賃金法案は、すなわち労働者の賃金を向上せしめるとともに、生活を守らなければならぬ要件が第一である。そうしてその構成、方法、手続というものが第二に重要な問題である。しかもどこを読んでも、政府提案の最低賃金法案は、最低がどこやらさっぱりわからないということである、底抜けであるということである。しからば最低賃金の保障は全然ないじゃないかということになる。しかもその方法たるや、四つの方式で万全であるといって政府は説明し、自民党も一生懸命それに賛成をしている。しかもさいぜん自民党の代表である齋藤さんが、言われたように、業者間協定というものは不満ではあるというような、みずから不満を発表しておる。しかも先日開かれたところの公聴会においても、各公述人が口をそろえて、不満である、業者間協定というものは万全でないと言っておる。こういうものが政府提案の最低賃金法の中核となっておるから、われわれはこういうような法律案に賛成しかねるわけである。こういうような法律案が通ったとしても、どうして労働者は大きな期待をかけることができようかと思うならば、われわれは絶対にこういうような最低賃金法案に対して賛成をすることはできない。われわれは九千万国民の正常なる経済の発展と中小零細企業の近代化に役立てようと思うならば――勝間田清一君外十六名が提案いたしておりますわが日本社会党の法律案は、これを八千円と規定いたしまして、そうして労働者の最低の生活を救いつつ、反面中小企業の経済を安定に導くものである。日本経済の安定と正常なる発展を企図することは、何としても底抜けではいけないということです。一線は最低を引き上げつつ、労働時間等々で最高のげたをはかせる、こういうようなことにならなければ、どうして千万人以上に及ぶところの中小零細企業家の企業におけるところの労働者諸君の生活を保障することができようかと思うのである。
 次に来たるべきものは本会議である。本会議においても自由民主党の良識ある諸君は、わが日本社会党の法律案に賛成して初めて九千万国民の中の大多数を占める労働者の生活を保障し得るということに思いをいたされて、わが日本社会党の案に賛成していただきたいと思うのであります。
 以上をもちまして、政府提案の最低賃金法案には絶対反対、そうしてわが党提出の最低賃金法律案及び家内労働法律案に対しまして、全面的に心から賛成を出し上げまして、ふんまんをもって討論を終りたいと思います。(拍手)
#236
○園田委員長 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決に入ります。
 まず内閣提出の最低賃金法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#237
○園田委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。(拍手)
 ただいまの議決の結果、勝間田清一君外十六名提出の最低賃金法案及び家内労働法案は議決を要しないものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔〔賛成者起立〕
#238
○園田委員長 起立多数。よってそのように決しました。
 なお右三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#239
○園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。
 本日は、この程度にとどめます。次会は追って公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。
    午後四時三十二分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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