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1958/10/20 第30回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第030回国会 外務委員会 第6号
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1958/10/20 第30回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第030回国会 外務委員会 第6号

#1
第030回国会 外務委員会 第6号
昭和三十三年十月二十日(月曜日)
    午前十時二十七分開議
 出席委員
   委員長 櫻内 義雄君
   理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君
   理事 床次 徳二君 理事 山村新治郎君
   理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君
      菊池 義郎君    北澤 直吉君
      福家 俊一君    福田 篤泰君
      松田竹千代君    大西 正道君
      田中 稔男君    帆足  計君
 出席政府委員
        外務政務次官  竹内 俊吉君
        外務事務官
        (アジア局長) 板垣  修君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        外務参事官   新関 欽哉君
        外務参事官   高橋  明君
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定
 の締結について承認を求めるの件(条約第六
 号)
     ――――◇―――――
#2
○櫻内委員長 これより会議を開きます。
 日本国とラオスとの間の経済及び技術協力協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。質疑の通告がありますので、順次これを許します。帆足計君。
#3
○帆足委員 先日の外務委員会におきまして、私は小国との文化交流または手工業の交流等がきわめて重要であるということを申し上げまして、その趣旨につきましては、大方同僚議員諸君並びに政府当局の御賛同を得た次第でありますが、さらにそれに関連いたしましてお尋ねしたいと思います。
 現在日本の大公使館におきまして、文化交流のためにいろいろな御努力をなさっておられると思いますけれども、たとえば映画の交流につきまして、どのくらいの本数の映画を、それからどういうタイトル、どういう内容の映画を大公使館にお持ちでございましょうか、まずそれをお伺いいたしたいと思います。
#4
○高橋説明員 お答えいたします。現在外務省が在外公館に送付いたしております文化啓発関係の映画フィルム、これは最近若干ふえて参りましたが、まだ非常に十分というほどまでにはいっておりません。大体どんな内容のフィルムであるかと申しますれば、たとえば日本のいい風俗あるいは景色等を紹介しますもの、日本の着物とかあるいは非常に親しみを相手国に持たせる日本の芸術、たとえば雅楽とかああいうようなもの、一口に申しまして日本の伝統的な文化を紹介するものでございます。また同時に古い日本の文化の紹介だけでは十分ではございませんので、最近は日本の新しい工業技術を紹介するようなものを作るように意を用いておる次第でございます。
#5
○帆足委員 私どもは抽象論をあまり好んでおりません。日本社会党はもう具体的な問題と取り組む党でございますから、すべて問題を具体的に……。それはどういうような題目の映画ですか。私が先年モスクワに参りますときに、これは議員連盟として超党派的に与党、野党一緒に参りましたので、一つ何とかモスクワの諸君を驚かすほどのものを持っていきたいと思いまして、外務省関係その他から映画をお借りしたことがありますけれども、そのとき私はそれの審査委員長をしまして検討してみましたけれども、一向いい映画がなくて退屈して困りました。今さらフジヤマ、ゲイシャ、ハラキリ、サクラの時代でもありませんし、ドジョウすくいの時代でもありませんし、また貿易関係の観光協会の映画などというものはまことにつまらぬものであって、そういうものを外国に出すのは私は恥だと思っているのです。主として後進国を相手に作っているものですから、気楽な気持で作って大体つまらぬ。日本の実業家というものは芸術的感覚において非常におくれているのです。文化性が低いから労働組合や青年たちから尊敬されていない。もし実業家や貿易業者が高い見識と文化的教養を持っておれば、私は日本の工業の水準を上げるためにも、また国民から尊敬される点においても非常によいことであると思いますけれども、その映画は従来は概してよくなかった。ところが最近は「佐久間ダム」とか、「天龍ダム」の映画などは非常に優秀です。従いまして当然そういうものを――「マナスル」などはもちろん外務省でお買い上げになっていることと思いますけれども、あるいはまた文化映画の中では「綴方教室」とか、それから「結核の生態」とか「電子顕微鏡」、日本の電子工学の水準を描いた、そして結核との戦いを描いたすぐれた映画というものがありますから、そういう一国文化の粋を外務省の公館に送ることが必要であろうとは私は思っておりますが、予算もありませんし、多分そういう十分なことはできていないと思いますし、また外務省の諸君は外国を御旅行なさって、風采などはまことにスマートでありますけれども、従来の外務省が文化教養はそう高かったとも私は思っておりません。今日は御勉強になってだんだんよくなりつつあるものと期待しておりますけれども、私が外務大臣か次官であるならば、たとえば毎年の映画の一覧表を見て、これこれこういうものはぜひおもな公館に送っておいてくれ、こういうふうに指図せねばならぬほどの重要な問題だと思うのです 文化交流だからといって、ただ昔の伝統的文化、それから新しい文化も必要だといって、観光協会あたりから出た俗物映画を見せることは、これは芸者の腰巻を見せるようなもので、私はまことに恥かしいことであると思っております。従いまして日本の文化の最も象徴的な最高水準のものを公館に置くことが必要だと思いますけれども、同時に他方では予算の関係上、乏しい予算ではそういうことは困難であろうと思っておりますが、現在は一体どういう題目の映画を配っておられるか。特にただいまお伺いしたいのは、ソ連のモスクワの日本大使館にPRの関係も考えて、一体何本ぐらいの映画があるか、それからまたそれはどういう題目の映画を御準備になっておられるか、これを具体的に伺いたい。
#6
○新関説明員 ただいま帆足委員からモスクワの日本大使館にどの程度の映画が備えつけてあるかという御質問でございますが、現在の状況におきましては、確かに御指摘のように予算の点などもございまして、モスクワに具体的に実際に配付されております映画は数は少のうございます。私の記憶ではたしか――私はことし三月までモスクワにおりましたが、そのときの記憶ではモスクワ大使館にございますのが六本ないし七本、あるいは八木くらいあったかと思います。具体的な題名につきましては私現在記憶いたしておりますのは、たとえば「着物」という映画がございました。それから「日本の民族舞踊」というようなもの、それから「日本の陶器」、どうやって日本の陶器を作るかという映画でございます。それから「日本の真珠」、真珠の生まれるまでというような映画もございました。それからまだ私の記憶しておりますのは「日本の鉄道」といったような題で、日本の国内の景色を主として見せておるものもあったように記憶いたしております。
#7
○帆足委員 今モスクワの大使館にどういう日本映画があるかということを伺いましたら、今の題名を聞いておおむねつまらぬ映画をお集めになっておると思います。それは一体何年度にできた映画ですか、それを伺いたい。
#8
○新関説明員 私は正確に一々の映画につきまして、どれが何年度に作られたかということは遺憾ながら承知しておりませんが、大体四、五年ないし三、四年前の製作のものと記憶しております。
#9
○帆足委員 そういう古ぼけたつまらぬ映画を手持ちにして、そうしてモスクワとの映画の交換がどうのこうのといって、民間の映画交流を外務省当局は小じゅうとのように自分の無知と貧困をたなに上げて干渉をしておるというのが現状です。従って暫定的に今日本がインドと交流し、エジプトと自由に交流しておるように、ソビエトとの映画関係も暫定的にはできるだけ便宜をはかっておいて、さて原則的に将来日本とソビエトとの非商業的映画の交換をどういうふうにしたら双方のために、双方の互恵平等の文化交流のためによかろうということをお考えになるならば話はわかるけれども、モスクワに手持ちの映画が何もありもせぬのに、しかも映画について知識もなくて、そうして交流をじゃましておるというような現状は、私どもはまことにおこがましい笑止千万なことだと思うのです。せめて「マナスルに立つ」とか「佐久間ダム」とか「法隆寺」くらいの映画はモスクワにあって、それを切り札として、モスクワにもソ日親善協会ができたから、日本のすぐれた映画を見てもらう、そうして日本に対する誤解、日本は非常におくれた国で、アジアはおくれたところであると思っておる人が多いでしょうが、日本にはすぐれた技術があり、知識はフランスにも劣らぬところの文化的伝統もある、そうしてスエーデン、スイッツルを凌駕するような近代的な精密機械工業もあるというようなありのままの姿を知ってもらうということは必要なことですし、ソ連の国民もまたそれを望むと思う。特に今度ネステロフ君を会長にしてできたソ日協会などは、そういう映画をほしがると思うのです。従いましてそういうものを提供してやる便宜をはかり、そのためにお前の方からももっといい映画をもらいたいというようなことを好意的に話し合うのならいいのですけれども、依然として私が得た印象によりますると、警視庁外事課的感覚をもって安寧秩序を守るかのごとく、またはイデオロギーの押し売りをするかのごとき印象をわれわれが受けておることは、まことに遺憾なことと思います。そこで先日日ソ協会等から外務省当局に話をしたら、何か儀典課に手続をすればいいということであったそうですが、その手続も済ませた、それからまたソ連でも日本映画を非商業的に上映するならばいいからというので、その了解もとった。しかるに今度は本数をお互いに同じにせねばならぬというようなことで、まだ回答を得ていないというふうに聞いております。まさかそういうばからしいことはあるまい。たとえばモスクワの大使館の大使がハンバークステーキを幾ら食べるからお前の方もハンバークステーキを幾さら食べろ、そういうことを文化の世界において行うほど外務省は野蛮であるとは思っていないのです。旅行制限などは、ある区域向うが制限すればこちらも制限する、そういうことは理解し得ることですけれども、文化交流の点では見たい映画をお互いが見ればいいので、向うは芸者の手踊りは見たくないというならば、これはいたし方がないことである。原則としてお互いによい映画を交換して、お互いに協会ができておることであるから、そういう便宜をはかり合うということを互恵平等の見地から話し合ってきめておくことが私はいいと思います。向うがモスクワで日本の芸者の手踊りを四本見るから東京でも四本しか見ちゃならないというようなことは、まことに不合理なことだと思うのです。従いまして、この問題は早く解決してもらいたいと思いますが、これについての外務省当局の今日の態度と手続はどういうふうになっておりますか、お答えを願いたい。
#10
○新関説明員 お答え申し上げます。実は現在問題になっておりますのは、ソ連映画の館外上映の問題でございますが、これは日本にございますソ連の大使館に手持ちの啓発用の映画がございまして、これを館外で上映するという問題でございまして、昨年のたしか五月、六月のころだったと思いますが、ソ連の大使館からこれを館内ばかりでなく外部で見せるようにしたいという非公式の申し入れがございまして、それに対しまして、昨年のたしか八月でございましたか、わが方から、日本の大使館が館外で上映するということをソ連側で保障してくれるならば、この問題を研究してみようということを答えたのでございます。これに対しまして、ことしのたしか四月の末でございましたか、五月のはじめでございましたか、ソ連の大使館から返事がございまして、その啓発映画を公共団体に交付する権利というものを相互主義に基いて認めようというような提案がございまして、現在そのソ連側の回答に基きまして検討を重ねてきておる状態でございまして、おそらくこれに関する結論が近く得られることと思っております。
#11
○竹内(俊)政府委員 ただいま新関参事官がお答えいたしました通りでございまして、外国公館が持っております啓発映画の館外上映につきましては、原則として二つの条件を持っておるわけであります。それは先般お答えいたしましたように、第一は相互主義による、もう一つは内政干渉にわたるような宣伝をしないことということを原則として、このことは外務省から東京の外国公館に通達を出して了解を得ておるわけであります。その原則に従って外国公館の館外上映を認めるということにしておりますから、これはソ連に限って差別的待遇をいたしておるわけではありません。そこでその相互主義に基いて今お答えしたようなことをソ連の政府と交渉しておりますが、今お答えしたように向うからも貸し出してほしいという申し出があって、それに応じた経緯がありますが、それを館外上映したということをまだ確認をしておらないわけであります。その確認をいたしました際には、当然相互主義によってソ連にもその窓口を開いていくことは申すまでもありません。それが今日までのとってきた態度でありまして、決してソ連に対してのみ手かげんをいたしておるわけではありません。
#12
○帆足委員 そういう御趣旨ならけっこうだと思いますが、現に私はインド大使館が公開した映画をたびたび東京で見ております。そういうことがすなおにできておるのに、ソ連関係のみまだこうして支障があるということについて一、二お尋ねしたいのですが、第一には相互主義並びに内政干渉にわたるようなおそれのある映画は気をつけてもらいたい、抑制してもらいたい、これは私はけっこうなことだと思うのです。また映画にもいろいろ解釈もありましょうけれども、政治的な物議をかもすような映画を大使館が相互にわざわざ貸与したり主催したりする責任をとる必要はないのでありますから、ただいまの原則には私は賛成です。しかしその場合に本数を制限するというようなことはやぼなことである。もう一つは大使館の主催の映画という意味ですか、または民間の愛好家、たとえばソ連において、日本の民族芸術に対する愛好家が日本の民芸の映画を大使館から借りて映そうというような話があった場合、または日本の大使館が、お客様は見たかろうが見たくあるまいが、自分でこういう映画はいいからぜひ見てもらおうと思って、招待状を出して、大使館主催の映画の会をするという意味ですか、今の制限はどちらを意味するわけですか。
#13
○竹内(俊)政府委員 そのいずれをも含めるわけであります。
#14
○帆足委員 それでありましたら大へんけっこうなことでありますが、私はまさか本数を、向うがハンバークステーキを三さら食べたからこっちもハンバークステーキを三さら食べるというような意味のことではあるまいと実は理解しております。と申しますのは、それには非常な不都合があるのです。啓発映画といいましても大部分は文化映画とごく少数の劇映画だと思います。これは何と何を見てはならぬということをされては困るのであって、たとえばソビエトの建築の映画を見たい人もおりましょうし、舞踊の映画を見たい人もあるし、また音楽映画を見たい人もあるでしょう。また最近のドニエプルストロイなどの産業開発の実情を見たい人もあるでしょう。それを何本しか見てはならぬという制限を課することは間違っておるのです。同時にまたソ連側からいいますと、日本の大使館に日本のあらゆる種類の優秀な映画を集めておるならともかく、今のように芸者の手踊り式の、しかも時代おくれの映画が若干あるという状況で、これでは互恵平等になっていないと思うのです。ソ連側は映画は国営ですから、ソ連の公館が優秀な映画を入手することにおいて非常に楽なのです。しかし日本の場合は、私どもがモスクワでソビエト市民諸君に見てもらいたいというような映画を外務省が買い上げると、これは非常な経費がかかって、諸元は買い上げる力がないと思います。また映画選択について外務省がそういう専門の課を持っておられるかどうか、私疑問に思っております。おそらく悪い映画を選んで、いい映画をお選びになるほど時間がないのじゃないか。その二つの理由があって両方の間がアンバランスになっておりますから、今外務省にあるような映画を、お前これを見なければ東京でもお前の国の映画は見せないぞといえば、それはもう無限の忍耐力のあるモスクワ市民でなければ、日本大使館にある映画を終わりまで全部見るということは忍耐力競争の問題であって、文化交流の問題にならぬと思うのです。従いまして忍耐力競争をまさか国際的に行う必要はないし、忍耐力においては日本は世界一で、役所の言うことなら何でも忍耐して聞くという三百年来の訓練を積んでおりますから、泣く子と地頭には勝てない、長いものには巻かれろ、私のごとく役所に対してずけずけものを言う人間は戦前には好ましからぬ傾向を持っておるように言われたのです。民主革命になって初めて思うことをすなをに言うことの方がよいことだ。ということを小学校で教えているようで、御同慶の至りですけれども、そういうことだから両者の間にアンバランスがある。従いまして、まさか本数制限のようなやぼなことでなしに、両方が、今の政治的物議をかもすような内政干渉にわたらず、そして相互主義の原則で、お互いによい映画を見てもらう機会を作るような気持でいこう、ということで交渉なさっていることと思いますが、一つ政務次官に、この政府当局の原則をお伺いしたいと思います。
#15
○竹内(俊)政府委員 ソ連が持っております啓発映画は、非常に優秀なものがあることは、われわれも承知いたしております、しかしそれだからといって、何らの基準なしにこれを受け入れるということはできませんので、ただいま申し上げました相互主義と、内政干渉の宣伝にわたるようなことをしないという二つの原則に沿うてやるわけであります。そこで相互主義でありますが、この場合本数を同数にするかどうかということですが、大体今の外務省の考え方としては、本数をやはり同数にすることが、この場合相互主義としての建前であろうと考えております。と申し上げますことは、ソ連と日本との相互主義は、御承知の通り相当きびしいのでありまして、たとえば大使館の館員等も五十五名に限定する、あるいはプレス関係では、駐在記者の交換も五名に限定する、あるいは先ほど帆足さんがおっしゃったように、旅行も制限されておるというような事情もありますので、この場合の文化交流の相互主義も、特に館外上映については、まず同数の観念で相互主義の折衝をしたい。大体今の考え方で、きまっておるわけではありませんが、月五本ぐらいの見当で交流していくのがいいのではないか、そういうふうに考えております。
#16
○帆足委員 そういうばからしいことがありはせぬかと思って、実はお尋ねしているのであって、委員長の許可を得てきょう質問の時間を持って、まことに日本のために仕合せであったと思うのです。と申しますのは、月五本くらいの交流という基準は、現在の常識で考えて私は必ずしも悪くもないと思うのです。しかし、一体月五本とすれば年に六十本要るわけです。六十本の映画がモスクワにありますか。(佐々木(盛)委員「ラオスの問題じゃないじゃないか。」と呼ぶ)ラオスでも同じ問題です。これは各国の問題ですから……。六十本の御準備がございますか。しかも、それは馬が水を飲みたくないのに、無理にしょんべん水を飲ませるわけにいかぬのです。馬が飲みたくなるようなよい水を飲ませなければいかぬ。それは六十本は並み大ていのことじゃありませんよ。そういう予算がありますか。予算もなく手持ちの映画もなくてこういうことを言うのは、人に言いがかりをつけるものだ、こう言われても返す言葉がないでしょう。
#17
○竹内(俊)政府委員 五本と申しましたが、これは月五回という意味であります。一本一回に計算しまして……。今外国公館の館外上映は、一回ごとに外務省に申請してきて、これを認めていくという方法をとっておりますから、月五回という意味で申し上げたのであります。
#18
○高橋説明員 帆足委員のおっしゃる通り、外務省で現在作成しております映画でございますが、これは予算の関係で限られておりまするが、先ほどもお話に出ましたように、たとえば「マナルスに立つ」とか、あるいは「佐久間ダム」とか、こういう非常に優秀ないい映画は、民間でできております。そこで予算を効率的に使うという意味からいいましても、製作をいたしますと相当の金がかかりますので、その民間でできました非常にいい映画のプリントを、民間の御協力によりまして買い上げたり、あるいは貸与を受けまして、海外に巡回をいたしておるようなわけであります。そういうわけで、外務省自体で作成しまして、あるいは手持ちのものはきわめて限られておりまするけれども、幸いに、そういう民間でできましたいい映画を利用することによりまして、現在ある程度のことをやっております。今後も、先ほど帆足委員がおっしゃいましたように、もっといい映画を適切に海外に回したいというふうに考えているわけであります。
#19
○帆足委員 これは捕獲の交換じゃあるまいし、向うが何人帰すからこっちが何人帰す、私は文化交流というものはそういう性質のことじゃないと思うのです。たとえば今までオペラやバイオリンの演奏者が、幾たびかモスクワから日本に来ました。またモスクワからボリショイのバレーもこっちに来ました。だから日本の音楽家、日本のオペラといわれる歌舞伎を同じ回数だけモスクワにやるということは、必ずしもないと思う。それは原則として、向うから来るのにこっから何も行かないというのでは悪い。こっちから淡路の浄瑠璃も行きましたし、かつては猿之助も行きました。そういうことで、こっちからも向うに行く。それには便宜をはかる。向うからもこちらに来る。しかし、それが毎年回数または演技の種類が両者互恵平等だから同数、そういうばからしいことはないと思う。一体文化交流を捕虜交換と同じにお考えになっているかどうか、ちょっと次官にお伺いしたいと思います。
#20
○竹内(俊)政府委員 文化交流は、ただいま御指摘のような捕虜交換のようなものと本質的に違うことは承知しておりますが、今申し上げたように、そういう相互主義の原則によって文化交流をする。御承知の通りまだ文化協定もできておりませんから、その芸術なり何なりのジャンルに従って、個々にそのことを折衝しているわけでありますから、映画に関しての館外上映については、今申し上げたようなことをとるのが相互主義にのっとるゆえんだ、こういう考え方で、その方針で進んでいくということであります。
#21
○帆足委員 そういうことを申せば、その映画の水準で、こっちのどじょうすくいは五本でもって向うのボリショイのオペラは一本に当るとか、また長さとか時間とかということにも、相互主義といえばなるし、しまいには大使のハンバークステーキを、向うが三さらならこっちも三さら食べる、極端にいえばそうなる。それはまことに非常識だと思うのです。私は相互主義で原則をきめることはいいと思う。また最小限このくらいの映画は、一つ向うでも見るようにしてもらいたい。そういうことを言わなくても、先方にソ日協会ができて、そして日本の健康なる文化のありのままの姿を見たい、こう言っているわけでありますから、そういうふうに民間同士の話し合いに期待しても、政府が適当な行政指導をすれば、今そういうふうになっていきつつあると思う。それはモスクワ大使館の手持ちの映画は、われわれが見るにたえるものは一本も持っていないくせに――持っていないことが悪いと言っているのじゃない。持っていないことは仕方がないことです。予算がないし、従来そういうことに日本の外交が重点を置いていなかったために、大使館はいい映画をほとんど持っていない。そしてただいま高橋君は、外務省が映画を作るのもなんだがと言う。外務省が映画を作るというようなことは、夢にも考えてほしくない。そんなものを見ても、われわれは目をつぶってしまう。耳にせんをして見にいきますから、それは御心配なく……。映画というものは、芸術家の作るべきものであって、外務省の作るべきものじゃないのです。観光協会あたりの作る映画でも、あれは希望だけ言って、あとはすぐれた芸術家にやはりまかせるべきである。しかるに観光協会あたりの俗物が手を出すから、現われ出たるはサルでございというような映画ができるわけです。従いまして、モスクワの大使館が映画を持っていないのに、次官は互恵平等というようなことを言われる。それは間違っている。もし今の程度の制限をなさるなら、モスクワ側も日本の文化映画なり劇映画を、一年間のリストでどれでも選んでいい。それから日本側の方もどれを選んでもいいという、そういうように条件が互恵平等になっておればいいのですけれども、大使館に、現在の状況で、政策の貧困に制約されていい映画を持ち得ないために、われわれが東京にあるモスクワの映画を見る本数を制限される、大体私どもが憲法によって保障された見る権利をあなた方によって制約されるという、そういう侮辱を受けねばならぬ理由は私は何らないと思う。といって野放しでも困るから、今のように相互主義の原則を置き、それから内政不干渉という原則を置いて、そして一定のバランスのもとに見ようという、その原則を生かすことはいいのですけれども、政務次官は本数まで両方を制限するかどうかまだ目下考究中であると言われてきましたが、それは考究されることはけっこうです。しかしこれは重要なことです。国会議員が、外務委員が発言する以上、われわれが納得しない限りはこれは困ると思うのです。聡明なる政務次官がおられることですから、私の言うことの意味はおわかりになったと思います。一つそういう方針で、まあこれなら無理がなかろうというふうな方向に御善処下さることを要望いたしますが、それについて理解のある政務次官から御答弁を伺って、それで私は納得したいと思います。いかがでしょうか。
#22
○竹内(俊)政府委員 要するに日本の在外公館に送ります映画の質的な向上をはかることが第一だと考えます。その点に努力して善処いたしたいと思います。
#23
○帆足委員 今の本数のことをことさら避けておられますが、月五回公開を認めるというのならば、多少の考慮の余地はあると思うのです。その後日ソの文化交流が盛んになればその回数を若干ふやすということもいいでしょう。しかし映画の種類にことさら制限を加える必要はないと思うのです。日本の映画の非常にいいのがたくさんモスクワにいったときは、たくさんモスクワで映してもらえばよい。またモスクワの映画の優秀なのが日本にたくさんきたときは、いろいろ種類をかえて見てもいいと思うのです。また映画と一つに言いましても、長いのもあれば短かいのもある。漫画もあるし、教育映画も自然科学の映画もある。こういう状況ですから、弾力性のあるようなおとりきめをなさることを切望いたします。
 私は言うべきことは尽しましたし、聡明な委員長は私の言う議論が必ずしも筋の通らぬことでないというふうに了解なさっておるようなお顔つきと拝承しておりますので、外務省の善処を期待いたしまして、そういう方向に進みませんで両国の文化交流に害があるようなおそれのありますときは、また私も外務省にも参りますし、この委員会で同僚委員と相談いたしまして、強硬な抗議を申し入れますから、さよう御了承下さって、一つ国会の権威を重んじて御善処のほど希望いたしまして、私の質問を終ります。
#24
○竹内(俊)政府委員 大体月五回として、その本数の規定をするかしないかはこれから検討をいたしたいと存じます。
#25
○櫻内委員長 本日はこれにて散会いたします。
    午前十一時五分散会
ソース: 国立国会図書館
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